説明

HCVプロテアーゼ阻害剤

本発明は、明細書中、式(I)または(II)で表される大環状化合物に関する。当該化合物は、C型肝炎ウイルス感染症を治療するこができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロスリファレンス
本特許出願は、2008年5月16日出願の、米国仮特許出願61/053、857号の利益を請求し、この内容は、参照され、ここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus、HCV)、(+)−1本鎖型RNAウイルスは、非A(non-A)、非B(non-B)肝炎の主な場合における主要な原因物質である。HCV感染症は、人の切実な健康問題である。たとえば、WO05/007681;WO89/04669;EP381216;Alberti et al.、J.Hepatology、31(Suppl.1)、17−24(1999);Alter、J.Hepatology、31(Suppl.1)、88−91(1999);およびLavanchy、J.Viral Hepatitis、6、35−47(1999)を参照。
【0003】
HCV感染による肝炎は、ウイルスがすばやく突然変異して、自然免疫応答(natural immune response)から免れてしまうるため、治癒するのが困難である。現状で有用な抗HCV治療は、インターフェロンα、インターフェロンα/リバビリンの併用、およびPEG化インターフェロンαのみである。しかしながら、インターフェロンαまたはインターフェロンα/リバビリンの併用の持続応答力(sustained response rate)は、50%以下であることがわかっており、患者らはこれらの治療薬の副作用に非常に苦しんでいる。たとえば、Walker、DDT、4、518−529(1999);Weiland、FEMS Microbial.Rev.、14、279−288(1994);およびWO02/18369を参照。それゆえに、より効果的で、より耐性の高い治療薬の開発が求められている。
【0004】
ウイルス複製のために、HCVプロテアーゼは、およそ3000のアミノ酸を含む必要がある。それは、ヌクレオカプシドタンパク質(C)、エンベロープタンパク質(E1およびE2)、および数種の非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4a、NS5a、およびNS5b)を含む。
【0005】
NS3タンパク質はセリンプロテアーゼ活性を有しており、ウイルス複製および感染力に必須であると考えられている。NS3プロテアーゼの必要性は、黄熱病ウイルスNS3プロテアーゼにおける突然変異がウイルス感染を減少させるという事実によって推察される。たとえば、Chamber et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87、8898−8902(1990)を参照。また、HCV NS3プロテアーゼの活性部位における突然変異が、チンパンジーモデルのHCV感染症を完全に抑制したことが実証された。たとえば、Rice et al.、J.Virol.74(4)2046−51(2000)を参照。さらには、HCV NS3プロテアーゼは、NS3/NS4a、NS4a/NS4b、NS4b/NS5a、NS5a/NS5b接合部でのタンパク質分解を容易にし、それゆえにウイルス複製の間に4つのウイルスタンパク質を産生することに関与している。たとえば、US2003/0207861を参照。結果として、HCV NS3プロテアーゼ酵素は、HCV感染症を治療するための魅力的な目標である。有用なNS3 HCVプロテアーゼ阻害剤は、WO02/18369、WO00/09558、WO00/09543、WO 99/64442、WO99/07733、WO99/07734、WO99/50230、WO98/46630、WO98/17679、WO 97/43310、US5、990、276、Dunsdon et al.、Biorg.Med.Chem.Lett.10、1571−1579(2000);Llinas−Brunet et al.、Biorg.Med.Chem.Lett.10、2267−2270(2000);およびS.LaPlante et al.、Biorg.Med.Chem.Lett.10、2271−2274(2000)に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
要約
本発明は、ある大環状化合物がHCV NS3活性およびHCV RNAレベルの抑制に効果的であるという予期せぬ発見に基づくものである。
【0007】
ひとつの形態において、本発明は、式(I)で表される化合物に関する:
【0008】
【化1】

【0009】
式中、
およびRは、それぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Uは、−O−、−NH−、−NH(CO)−、−NHSO−、または−NHSO−;Wは、−(CH−、−NH(CH−、−(CHNH−、−O(CH−、−(CHO−、−S(CH−、−(CHS−、−SO−、−SO(CH−、−(CHSO−、−SO(CH−、または−(CHSO−であり、mは、1、2、または3であり、およびnは、0、1、または2であり;
Xは、−O−、−S−、−NH−、または−OCH−であり;
Yは
【0010】
【化2】

【0011】
式中、
VおよびTは、それぞれ独立して、−CH−または−N−であり;
Rは、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;ならびに
およびAは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよいC4−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;あるいは他のC3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールと縮合していてもよく、この際、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい;ならびに
Zは、−C(O)、−OC(O)−、−NR’C(O)−、−OC(S)−、−NR’−C(S)−、または−OC(NH)−であり;この際、R’は、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。
【0012】
種々のU、W、X、およびZで表される基は、言うまでもなく、2価である。それぞれの基は、上記と同じ配置で表され、規定された記号(variable)は、式中で表される。記号Uの規定である−NHSO−基を例としてみると、式中で示されるように、C=OとRの間に記号Uが割り込んでいる。該−NHSO−基におけるN原子は、C=OおよびRに結合しているS原子に結合している。
【0013】
式(I)によれば、上述の化合物の一様態(subset)としては、以下の形態のうちのひとつを有するものである:Rはシクロプロピルであり;RはC1−5アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;Wは、−CHCH−、−OCH−、−SCH−、または−SOCH−であり;Uは−NHSO−であり;Zは−OC(O)−であり;XはOであり;およびYは
【0014】
【化3】

【0015】
式中、
、Rii、Riii、Riv、R、Rvi、Rvii、およびRviiiは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニルl、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
である。
【0016】
他の形態において、本発明は、式(II)の化合物に関する:
【0017】
【化4】

【0018】
式中、
およびRは、それぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Uは、−O−、−NH−、−NH(CO)−、−NHSO−、または−NHSO−であり;
Wは、−(CH−、−NH(CH−、−(CHNH−、−O(CH−、−(CHO−、−S(CH−、−(CHS−、−SO−、−SO(CH−、−(CHSO−、−SO(CH−、または−(CHSO−であり、mは、1、2、または3であり、およびnは、0、1、または2であり;
Xは、−O−、−S−、−NH−、または−OCH−であり;
Tは、
【0019】
【化5】

【0020】
式中、
およびAは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよいC3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;ならびに
Zは、−C(O)、−OC(O)−、−NR’−C(O)−、−OC(S)−、−NR’C(S)−、または−OC(NH)−であり;この際、R’は、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。
【0021】
記号U、W、X、およびZで規定されたそれぞれの基は、上記と同じ配置で表され、規定された記号は、式中で表される。
【0022】
式(II)によれば、上述の化合物の一様態(subset)としては、以下の形態のうちのひとつを有するものである:Rは、シクロプロピルであり;RはC1−5アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;Wは、−CHCH−、−OCH−、−SCH−、または−SOCH−であり;Uは−NHSO−であり;Zは−OC(O)−であり;およびTは
【0023】
【化6】

【0024】
式中、
nは1または2である、
である。
【0025】
「アルキル」との語は、−CHまたは−CH(CHなどの、飽和の、直鎖状または分枝状の炭化水素部位を意味する。「アルコキシ」との語は、−O−(C1−6アルキル)ラジカルを意味する。「アルケニル」との語は、−CH=CH−CHなどの、少なくともひとつの二重結合を含む、直鎖状または分枝状の炭化水素部位を意味する。「アルキニル」との語は、−C≡C−CHなどの、少なくともひとつの三重結合を含む、直鎖状または分枝状の炭化水素部位を意味する。「シクロアルキル」との語は、シクロヘキシルなどの、飽和の、環状炭化水素部位を意味する。「シクロアルケニル」との語は、シクロヘキセニルなどの、少なくともひとつの二重結合を含む、非芳香族の環状炭化水素部位を意味する。「ヘテロシクロアルキル」との語は、4−テトラヒドロピラニルなどの、少なくとも1つの環へテロ原子(たとえば、N、O、またはS)を有する、飽和の、環状部位を意味する。「ヘテロシクロアルケニル」との語は、4−ピラニルなどの、少なくとも1つの環へテロ原子(たとえば、N、O、またはS)を有する、非芳香族の環状部位を意味する。「アリール」との語は、1以上の芳香族環を有する炭化水素部位を意味する。アリール部位の例としては、フェニル(Ph)、フェニレン、ナフチル、ナフチレン、ピレニル、アントリルおよびフェナントリルが挙げられる。「ヘテロアリール」との語は、少なくとも1つのヘテロ原子(たとえば、N、O、またはS)を含む、1以上の芳香族環を有する部位を意味する。ヘテロアリール部位の例としては、フリル、フリレン、フルオレニル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリルおよびインドリルが挙げられる。「アミノ」との語は、−NH、−NH−(C1−6アルキル)、または−N(C1−6アルキル)のラジカルを意味する。
【0026】
特記しない限り、本明細書に記載のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、およびヘテロアリールは、置換および非置換の双方の部位を含む。シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリール、およびヘテロアリール上の可能性のある置換基としては、以下に制限されないが、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、C−C20シクロアルキル、C−C20シクロアルケニル、C−C20ヘテロシクロアルキル、C−C20へテロシクロアルケニル、C−C10アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C−C10アルキルアミノ、C−C20ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、C−C10アルキルスルホンアミノ、アリールスルホンアミノ、C−C10アルキルイミノ、アリールイミノ、C−C10アルキルスルホンイミノ、アリールスルホンイミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、チオ、C−C10アルキルチオ、アリールチオ、C−C10アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、グアニジン、ウレイド、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルボキシル、およびカルボキシルエステルが挙げられる。これに対し、アルキル、アルケニル、またはアルキニル上の可能性のある置換基としては、C−C10アルキルを除いた上記の全ての置換基が挙げられる。シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、アリールおよびヘテロアリールはまた、互いに縮合していてもよい。
【0027】
本発明の化合物の60の例を以下に記載する。
【0028】
【化7−1】

【0029】
【化7−2】

【0030】
【化7−3】

【0031】
【化7−4】

【0032】
他の実施形態において、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症を治療する方法に関する。当該方法は、上述の式(I)または式(II)で表される化合物の1以上を、必要とする患者に投与することを含む。
【0033】
さらに他の実施形態において、本発明は、HCV感染症の治療に用いる薬剤組成物にも関する。当該組成物は、少なくとも1以上の、式(I)または式(II)で表される化合物の有効量を含み、および薬学的に許容されるキャリヤを含む。HCVライフサイクルにおいて、HCV NS3プロテアーゼ以外のターゲット(標的)阻害剤、たとえば、NS5Bポリメラーゼ、NS5A、NS4B、またはp7を含みうる。このような阻害剤の例としては、以下に制限されないが、N−[3−(1−シクロブチルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソ−1、2−ジヒドロ−キノリン−3−イル)−1、1−ジオキソ−1、4−ジハイドロ−1l6−ベンゾ[1、2、4]チアジアジン−7−yl]−メタンスルホンアミド(WO04041818)、trans−1、2−ジ−4−[(フェニルアセチル−ピロリジン−2−(S)−カルボニル)アミノ]−フェニルエチレン(N-[3-(1-cyclobutylmethyl-4-hydroxy-2-oxo-1,2-dihydro-quinolin-3-yl)-1,1-dioxo-1,4-dihydro-1l6-benzo[1,2,4]thiadiazin-7-yl]-methanesulfonamide (WO04041818), trans-1,2-di-4-[(phenylacetyl-pyrrolidine-2-(S)-carbonyl) amino]-phenylethylene)(WO0401413)、および1−アミノアダマンタン(1-aminoadamantane)(Amentadine、Griffin、2004、J.Gen.Virol.85:p451)などが挙げられる。薬剤組成物は、さらに免疫調節薬または第2の抗ウイルス薬をさらに含む。免疫調節薬とは、免疫反応を媒介する活性薬剤を意味する。免疫調節薬の例としては、以下に制限されないが、Nov−205(Novelos Therapeutics Inc.、WO02076490)およびIMO−2125(Idera Pharmaceuticals Inc.、WO05001055)などが挙げられる。抗ウイルス薬とは、ウイルスを殺すかまたはその複製を抑制する活性薬剤を意味する。抗ウイルス薬としては、以下に制限されないが、リバビリン、α−インターフェロン、ペグ化インターフェロン、および2−(2−{2−シクロヘキシル−2−[(ピラジン−2−カルボニル)−アミノ]−アセチルアミノ}−3、3−ジメチル−ブチリル)−オクタヒドロ−シクロペンタ[c]ピロール−1−カルボン酸(1−シクロプロピルアミノオキサリル−ブチル)−アミド(2-(2-{2-cyclohexyl-2-[(pyrazine-2-carbonyl)-amino]-acetylamino}-3,3-dimethyl-butyryl)-octahydro-cyclopenta[c]pyrrole-1-carboxylic acid (1-cyclopropylaminooxalyl-butyl)-amide)(Telaprevir、Vertex Pharmaceuticals Inc.、WO02018369)や、3−[2−(3−tert−ブチル−ウレイド)−3、3−ジメチル−ブチリル]−6、6−ジメチル−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2−カルボン酸(2−カルバモイル−1−シクロブチルメチル−2−オキソ−エチル)−アミド(3-[2-(3-tert-butyl-ureido)-3,3-dimethyl-butyryl]-6,6-dimethyl-3-aza-bicyclo[3.1.0]hexane-2-carboxylic acid (2-carbamoyl-1-cyclobutylmethyl-2-oxo-ethyl)-amide)(Boceprevir、Schering−Plough Research Institute、WO03062265)、および4−フルオロ−1、3−ジハイドロ−イソインドール−2−カルボン酸 14−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−シクロプロパンスルホニルアミノカルボニル−2、15−ジオキソ−3、16−ジアザ−トリシクロ[14.3.0.04、6]ノナデシ−7−エン−18−イルエステル(4-fluoro-1,3-dihydro-isoindole-2-carboxylic acid 14-tert-butoxycarbonylamino-4-cyclopropanesulfonylaminocarbonyl-2,15-dioxo-3,16-diaza-tricyclo[14.3.0.04,6]nonadec-7-en-18-yl ester)(ITMN−191、InterMune Inc.、US2005/0267018)のような、HCVプロテアーゼ阻害剤などが挙げられる。
【0034】
また、本発明の範囲には、本明細書中記述された治療における薬剤の製造のための薬剤組成物の使用も含まれる。
【0035】
本発明の1つまたは1つ以上の実施形態の詳細は、下記明細書中に記述されている。本発明の他の形態、目的および有用性は、明細書および請求の範囲から明らかである。
【0036】
詳細な説明
本発明の化合物は、公知の方法によって、市販の原料から合成することができる。たとえば、本発明の化合物は、下記スキーム1に示される経路により調製できる。
【0037】
【化8】

【0038】
スキーム1に示されるように、多環状化合物(i)は、まず最初に、N−(t−ブトキシカルボニル)−L−プロリン(ii)とカップリングし、続いてメチル化により中間体(iii)を形成する。中間体(iii)は、N−ブトキシカルボニル基を除去して脱保護され、N−フリー化合物(iv)が得られる。N−フリー化合物(iv)は、カルボン酸(v)とカップリングして、中間体(vi)が得られる。中間体(vi)は、加水分解されて、酸(vii)が得られ、酸(vii)はアミン化合物(viii)とカップリングして、2つの末端アルケニル基を有するピロリジン化合物(ix)が得られる。中間体(ix)はグラブス触媒の存在下で、オレフィンメタセシス反応をして、所望の大環状化合物(x)が得られる。
【0039】
下記スキーム2および3は、本発明の化合物の合成経路の2つの代替経路である。
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
上述の方法は、また、所望の化合物を最終的に合成するために、適した保護基を追加したり除去したりといった、追加の工程を、特に、スキーム1〜3において記載された工程の前後のどちらかに含むこともある。また、様々な合成工程が、所望の化合物を得るために代替順序で行われうる。式(I)で表される適切な化合物を合成するのに有用な合成化学の変形および保護基方法論(保護および脱保護)は公知であり、たとえば、R.Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts、 Protective Groups in Organic Synthesis、2nd Ed.、John Wiley and Sons(1991); L.Fieser and M.Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);および L. Paquette、 ed.、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons (1995)ならびにこれらの続版に記載された方法を含む。
【0043】
模範となる化合物1〜60が実際に合成される方法を下記の詳細な説明に示した。
【0044】
本明細書中に記載された化合物は、非芳香族二重結合および不斉中心を含む。それゆえに、それらはラセミ化合物もしくはラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、互変異性体、およびcisまたはtrans異性体が生じる。そのような異性体は、全て考えられる。たとえば、上記式(I)および(II)で表される化合物は、それぞれ、以下の立体化学構造(III)および(IV)を有する:
【0045】
【化11】

【0046】
上記化合物は、それら化合物自身と、それらの塩、プロドラックおよび溶媒和物も含む。たとえば、上記塩は、化学式(I)上の正の電荷を有する基(たとえば、アミノ)とアニオンとの間で形成されてもよい。好適なアニオンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、トシレート、酒石酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩、乳酸塩、グルタル酸塩およびマレイン酸を含む。同様にして、式(I)で表される化合物の負電荷(たとえば、カルボキシレート)は、カチオンと塩を形成してもよい。好適なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウムカチオンなどが挙げられる。式(I)で表される化合物は、また、第4級窒素原子を含む塩も含む。プロドラッグの例としては、エステルや他の製薬上許容される誘導体があり、これらは患者に投与されると、活性な式(I)で表される化合物が提供できる。溶媒和物とは、活性な式(I)で表される化合物と製薬上許容される溶媒との間で形成される複合体を意味する。製薬上許容されうる溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられる。
【0047】
また、本発明の範囲には、式(I)で表される化合物の1以上の有効量を投与することによって、HCV感染症を治療する方法も含まれる。「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という語は、HCV感染症、HCV感染症の症状、またはHCV感染症になりやすい体質を治癒する(cure)、緩和する(relieve)、変化させる(alter)、影響を与える(affect)、改善する(ameliorate)、または抑制する(prevent)ことを目的として、その感染症、感染症の症状、または感染症になりやすい体質を持つ、患者に有効量の式(I)で表される化合物1以上を投与することと規定される。「有効量」ということばは、処置された患者に治療効果を付与する活性な本発明の化合物の量を意味する。有効服用量は、当業者には認識されているように、治療される疾患のタイプ、投与経路、賦形剤量、および他の治療療法との併用の可能性に左右されて変動する。
【0048】
本発明の方法を実施するために、1以上の本発明の化合物を含む組成物は、非経口で、経口で、経鼻で、経直腸で、局所に、または口腔に投与されうる。本明細書で用いられる場合、「非経口に」との語は、皮下の、皮内の、静脈内の、筋肉内の、関節内の、動脈内の、滑液嚢内の、胸骨内の、髄腔内の、病巣内の、または頭蓋内の注射、および任意の適当な注入技術を意味する。
【0049】
注射可能な滅菌組成物は、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口で許容されうる希釈剤または溶媒中の溶液または懸濁液でありうる。用いられうるかような許容されうる媒体および溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液(Ringer’s solution)および等張塩化ナトリウム溶液がある。また、固定油(たとえば、合成モノまたはジグリセリド)が溶媒または懸濁化媒体として従来用いられている。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油(特にポリオキシエリレン化されたもの)のような製薬上許容されうる天然油のように、注射剤の調製に有用である。これらの油の溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、カルボキシメチルセルロース、または類似の分散剤を含みうる。ツィーン(Tween)もしくはスパン(Span)などの一般的に用いられている他の界面活性剤または類似の乳化剤、あるいは製薬上許容されうる固体の、液体のまたは他の剤形の製造に一般的に用いられているバイオアベイラビリティ向上剤もまた、製剤化の目的で用いられうる。
【0050】
経口投与用の組成物は、カプセル、錠剤、乳剤および水性懸濁剤、分散剤、ならびに溶液などの、経口で許容されうる任意の剤形でありうる。錠剤の場合、一般的に用いられる担体としては乳糖およびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、一般的に添加される。カプセル形態での経口投与の目的で、有用な希釈剤としては乳糖および乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤または乳剤を経口的に投与する場合には、乳化剤または懸濁化剤と組み合わされた油相中に活性成分を懸濁または溶解させればよい。所望により、ある種の甘味剤、矯味剤または着色剤を添加してもよい。
【0051】
経鼻エアロゾルまたは吸入組成物は、医薬の製剤の分野において周知の技術に従って調製されうる。たとえば、かような組成物は、ベンジルアルコールもしくは他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを改善するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または本技術分野において公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調製されうる。
【0052】
1以上の活性な本発明の化合物を有する組成物は、また、直腸投与用に坐薬の形態で投与されうる。
【0053】
薬剤組成物中の担体は、組成物中の活性成分と適合し(好ましくは、当該活性成分を安定化でき)、治療される対象に対して有害でないという意味で「許容されうる」ものでなければならない。1または2以上の可溶化剤が、活性な本発明の化合物を送達するための医薬の賦形剤として用いられうる。他の担体としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムおよびディーアンドシーイエロー(D&C Yellow)♯10が挙げられる。
【0054】
上述した本発明の化合物は、インビトロでのアッセイ(後述する実施例61および62を参照)によりHCV感染症の治療における効果を予めスクリーニングされた後、動物実験および臨床試験によって確認されうる。他の方法は本技術分野における当業者には明らかであろう。
【0055】
以下の具体例は単に例示のためのものであって、開示の残部をいかようにも制限するものではないと解釈されるべきである。さらに実験することなく、当業者であれば本明細書の記載に基づいて本発明をその全体にわたって実施可能であると考えられる。本明細書で引用されている全ての文献は、その全体が参照により本明細書に引用される。
【0056】
実施例1:{4−シクロプロパンスルホニルアミノカルボニル−2、15−ジオキソ−18−[2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンゾ[4、5]フロ[3、2−d]ピリミジン−4−イルオキシ]−3、16−ジアザ−トリシクロ[14.3.0.04、6]ノナデシ−7−エン−14−イル}−カルバミン酸シクロペンチルエステル({4-Cyclopropanesulfonylaminocarbonyl-2,15-dioxo-18-[2-(4-trifluoromethyl-phenyl)-benzo[4,5]furo[3,2-d]pyrimidin-4-yloxy]-3,16-diazatricyclo[14.3.0.04,6]nonadec-7-en-14-yl}-carbamic acid cyclopentyl ester)(化合物1)の合成
化合物I−3を、下記に示される経路で、市販の1−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−ビニル−シクロプロパンカルボン酸エチルエステルから調製した:
【0057】
【化12】

【0058】
1−t−ブトキシカルボニルアミノ−2−ビニル−シクロプロパンカルボン酸エチルエステル(1-t-butoxycarbonylamino-2-vinyl-cyclopropanecarboxylic acid ethyl ester)(0.34g、1.3mmol)のTHF(5mL)およびメタノール(5mL)溶液に、LiOH(0.13g、5.3mmol)の水(1.4mL)懸濁液を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応を10%HCl(2mL)でクエンチして溶媒を真空下で除去した。得られた固体粉末を、水(10mL)で洗浄し、化合物I−1(0.27g、90%)を得た。
【0059】
【化13】

【0060】
化合物I−1(0.52g、2.3mmol)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1、1、3、3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ−リン酸メタンアミニウム(2-(1H-7-azabenzotriazol-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyl uronium hexafluoro-phosphate methanaminium)(HATU、1.74g、4.6mmol)、および4−ジメチルアミノピリジン(1.39g、11.6mmol)のCHCl(40mL)の溶液を室温で1時間撹拌し、続いてシクロプロパンスルホンアミド(0.57g、4.7mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.81mL、14.0mmol)、および1、8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデシ−7−エン(1,8-diazabicyclo[5,4,0]undec-7-ene)(1.80g、11.7mmol)を15分以上かけてゆっくりと添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物I−2(0.51g、66%)を得た。
【0061】
【化14】

【0062】
化合物I−2(0.50g、1.5mmol)のMeOH(8mL)溶液に、SOCl(0.26g、2.2mmol)を室温で添加した。反応混合物を1時間還流した後、MeOHおよびSOClを真空下で除去した。残部を、ペンタンで粉砕し、ろ過して黄色がかった白色固体の中間体I−3(0.32g、91%)を得た。
【0063】
【化15】

【0064】
化合物1を、下記に示される経路で調製した。
【0065】
【化16】

【0066】
3−アミノ−ベンゾフラン−2−カルボン酸アミド(3-amino-benzofuran-2-carboxylic acid amide)(1.00g、5.7mmol)およびピリジン(1mL、12.26mmol)のTHF(25mL)溶液を10分間0℃で撹拌した。得られた溶液に、4−トリフルオロメチル−ベンジルクロリド(1.48g、7.1mmol)をゆっくりと添加した。その後、温度を室温に上げて、混合物を12時間撹拌した。溶媒が減圧下で除去された後、得られた固体を回収し、水で洗浄し、および空気乾燥して、I−4(1.92g、96.0%)を得た。MS: m/z 349.0(M+1)。
【0067】
I−4(1.92g、5.5mmol)および2N NaOH(13mL)のEtOH(25mL)分散液を12時間85℃に加熱した。冷却後、混合物を酸性化した後、EtOHは除去された。得られた固体を回収し、ろ過、水で洗浄、乾燥して、I−5(1.71g、95.0%)を得た。MS m/z 331 (M+1)。
【0068】
I−5(1.71g、5.2mmol)および過剰のオキシ塩化リン(POCl)を2時間還流した。冷却および十分に濃縮した後、混合物を塩化メチレンおよび10%水酸化ナトリウムで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮して、CHClおよびn−ヘキサンで結晶化して、化合物I−6(1.49g、82%)を得た。
【0069】
【化17】

【0070】
Boc−trans−4−ヒドロキシ−プロリン(boc-trans-4-hydroxy-proline)(0.53g、2.3mmol)のDMSO(25mL)懸濁液に、t−BuOK(0.82g、5.1mmol)を0℃で添加した。混合物を室温まで温め、1時間撹拌した後、化合物I−6(0.81g、2.3mmol)を10℃でゆっくりと加えた。撹拌を一晩継続した。ヨードメタン(1.02g、6.9mmol)を添加して、反応混合物を室温でさらに30分撹拌した。反応混合物をpH6〜7になるよう、10%HCl水溶液で中和し、塩化メチレンで抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、真空で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製して、化合物I−7(1.12g、86%)を得た。
【0071】
【化18】

【0072】
化合物I−7(1.13g、2.0mmol)のMeOH(20mL)溶液に、SOCl(1.21g、9.8mmol)を室温で添加した。反応混合物を1時間還流し、MeOHおよびSOClを除去した。残部をペンタン中で粉砕した。懸濁液をろ過して、黄色がかかった白色固体の化合物I−8(0.87g、95%)を得た。MS m/z 458.1(M+1)。
【0073】
HATU(1.12g、3.0mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、0.41g、3.0mmol)、I−8(0.86g、1.9mmol)および2−t−ブトキシカルボニルアミノ−ノン−8−エノ酸(2-t-butoxycarbonylamino-non-8-enoic acid)(1.21g、1.9mmol)のCHCl(40mL)溶液に、室温で、N−メチルモルホリン(NMM、1.02g、9.9mmol)を添加した。一晩撹拌後、混合物を真空下で濃縮した。残部をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、化合物I−9(1.03g、73%)を得た。MS m/z 711.3(M+1)。
【0074】
化合物I−9(1.01g、1.4mmol)のTHF(20mL)溶液に、0.5M LiOH(5.7mL、2.9mmol)を室温で添加した。一晩撹拌後、反応混合物は、10%HCl溶液でpH<7に中和され、真空下で濃縮された。得られた残部は、ろ過、水で洗浄され、化合物I−10(0.91g、92%)を得た。MS: m/z 697.3(M+1)。
【0075】
化合物I−3(0.28g、0.4mmol)、HATU(0.31g、0.8mmol)、HOBT(0.08g、0.6mmol)および化合物I−10(0.09g、0.4mmol)のCHCl(10mL)溶液に、NMM(0.12g、1.2mmol)を室温で添加した。一晩撹拌した後、反応混合物を真空下で濃縮した。残部をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、化合物I−11(0.10g、85%)を得た。
【0076】
【化19】

【0077】
化合物I−11(0.10g、0.11mmol)のCHCl(10mL)溶液に、ホベイダ−グラブス第2世代(Hoveyda-Grubbs 2nd)(35mg、0.056mmol)をN雰囲気下、室温で添加した。その後、反応混合物を40℃で24時間撹拌して、メタセシス環化(metathesis cyclization)を行った。反応をクエンチし、反応混合物はカラムクロマトグラフィで精製し、化合物1(30mg、31%)を得た。
【0078】
【化20】

【0079】
実施例2:{4−シクロプロパンスルホニルアミノカルボニル−2、15−ジオキソ−18−[2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンゾ[4、5]フロ[3、2−d]ピリミジン−4−イルオキシ]−3、16−ジアザ−トリシクロ[14.3.0.04、6]ノナデシ−7−エン−14−イル}−カルバミン酸シクロペンチルエステル({4-Cyclopropanesulfonylaminocarbonyl-2,15-dioxo-18-[2-(4-trifluoromethyl-phenyl)-benzo[4,5]furo[3,2-d]pyrimidin-4-yloxy]-3,16-diaza-tricyclo[14.3.0.04,6]nonadec-7-en-14-yl}-carbamic acid cyclopentyl ester)(化合物2)
化合物2を、下記に示される経路で調製した。
【0080】
【化21】

【0081】
化合物I−II(0.11g、0.14mmol)の5mL CHCl溶液に、4N HClのジオキサン(2mL)を室温で4時間かけて添加した。HCl、ジオキサン、およびCHClは濃縮により除去され、粗化合物I−12を得て、精製せずに次の工程に用いた。
【0082】
粗化合物I−12をアセトニトリル2mLに溶解し、その後飽和NaHCO水溶液(1mL)を添加した。10分間撹拌した後、クロロギ酸シクロペンチル(cyclopentyl chloroformate)(0.02g、0.15mmol)を室温で反応混合物に添加した。反応混合物をさらに2時間撹拌した。飽和NaHCO水溶液でクエンチした後、混合物はCHClで抽出し、粗化合物I−13(0.11g、83%)を得た。
【0083】
【化22】

【0084】
化合物I−13をホベイダ−グラブス第2世代(Hoveyda-Grubbs 2nd)(35mg、0.056mmol)で処理し、上記実施例のようにして、メタセシス環化を行い、化合物2を得た。
【0085】
【化23】

【0086】
実施例3〜52:化合物3〜52の合成
化合物3〜52は、実施例1および2と同様の方法で調製した。
【0087】
【化24−1】

【0088】
【化24−2】

【0089】
【化24−3】

【0090】
【化24−4】

【0091】
【化24−5】

【0092】
【化24−6】

【0093】
実施例53:{4−シクロプロパンスルホニルアミノカルボニル−18−[2−(5、6−ジヒドロ−4H−シクロペンタチアゾール−2−イル)−7−メトキシ−キノリン−4−イルオキシ]−2、15−ジオキソ−3、16−ジアザ−トリシクロ[14.3.0.04、6]ノナデシ−7−エン−14−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル({4-Cyclopropanesulfonylaminocarbonyl-18-[2-(5,6-dihydro-4H-cyclopentathiazol-2-yl)-7-methoxy-quinolin-4-yloxy]-2,15-dioxo-3,16-diaza-tricyclo[14.3.0.04,6]nonadec-7-en-14-yl}-carbamic acid tert-butyl ester)の合成
化合物53を、下記に示される経路で調製した。
【0094】
【化25】

【0095】
アミノ-チオキソ-酢酸エチルエステル(amino-thioxo-acetic acid ethyl ester)(6.00g、45.0mmol)および2−クロロ−シクロペンタノン(5.60g、47.0mmol)のトルエン混合物を4時間還流下で加熱した。そのようにして得られた茶色溶液を室温まで冷却し、EtOAc(50mL)で希釈し、飽和NaHCO(50mL)および食塩水(50mL)で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、ろ過して真空下で濃縮した。ベージュ色固体をフラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(10%EtOAcのヘキサン溶液)によって精製して、薄茶色の粘稠油の5、6−ジヒドロ−4H−シクロペンタチアゾール−2−カルボン酸エチルエステルI−14(7.60g、86%)を得た。ESI−MS(M+H)=198.3。
【0096】
5、6−ジヒドロ−4H−シクロペンタチアゾール−2−カルボン酸エチルエステルI−14(2.00g、10.0mmol)の4:1:1 THF/MeOH/HO(30mL)溶液と、2N NaOH水溶液(7.5mL、1.5eq.)とを室温で5時間処理した。混合物は真空下で乾燥し、5、6−ジヒドロ−4H−シクロペンタチアゾール−2−カルボン酸I−15を得て、このまま精製せずに次の工程に直接用いた。ESI−MS(M+H)=170.2。
【0097】
4−メトキシ−2−アミノ−アセトフェノン(1.67g、10.0mmol)および5、6−ジヒドロ−4H−シクロペンタチアゾール−2−カルボン酸I−15(1.69g、10.0mmol)のピリジン(80mL)溶液を、クールバスを用いて−30℃に冷却した。続いてオキシ塩化リン(2.8mL、30.0mmol)を15分の間、滴下した。反応は−30℃で0.5時間撹拌後、バスを除去して反応混合物を室温まで温めた。反応混合物を2時間撹拌後、氷水に注いだ。混合物のpHを、2N NaOH水溶液で11に調整し、混合物をCHClで抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させ、ろ過、および真空下で濃縮した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(30%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、薄ベージュ色固体のアミド化合物I−16(1.10g、35%)を得た。ESI−MS(M+H)=317.3。
【0098】
アミド化合物I−16(0.71g、2.2mmol)の無水t−BuOH(10mL)の懸濁液に、t−BuOK(1.00g、8.8mmol)を添加した。反応混合物を、2時間還流下で加熱し、室温まで冷却し、HCl(4Nのジオキサン溶液、3mL)の添加により酸性にした。混合物を真空下で濃縮し、得られた残部は10%KHSOの溶液中に注入された。ろ過後、固体をエタノールと水で洗浄し、真空下で乾燥させて、ベージュ固体の化合物I−17(0.41g、61%)を得た。
【0099】
【化26】

【0100】
化合物I−17(0.66g、2.2mmol)、プロリン化合物I−18(0.89g、2.2mmol)およびトリフェニルホスフィン(1.2g、4.5mmol)のDMF(30mL)溶液を0℃まで冷却した。ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(Diisopropyl azodicarboxylate)(DIAD、0.9mL、4.5mmol)を15分かけて滴下して加えた。反応混合物を、その後室温までゆっくり温め、一晩撹拌を続けた。溶媒を真空下で除去した後、混合物をCHCl(100mL)で希釈して、水(100mL)および食塩水(50mL)で洗浄し、無水MgSOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。残部を、フラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(50%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、エステル化合物I−19(1.23g、82%)を得た。ESI−MS(M+H)=679.3。
【0101】
エステル化合物 I−19 (1.91g、トリフェニルホスフェートオキサイド(triphenylphosphate oxide)含有)のTHF(40mL)溶液に、.2N NaOH水溶液(10mL)を添加した。MeOH 10mLの添加により、均一溶液が得られ、得られた溶液を室温で4時間撹拌した。混合物を、1N HClでpH3に調整した後、CHClで2回抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させて、ろ過して、真空下で濃縮した。残部を、フラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(10%MeOHのCHCl溶液)で精製し、黄色固体の酸性化合物I−20(0.94g、1.4mmol、64%(2段階))を得た。ESI−MS(M+H)=665.3。
【0102】
酸性化合物I−20(0.73g、1.1mmol)、HATU(0.91g、2.2mmol)、およびDMAP(0.1g、1.1mmol)のCHCl(30mL)溶液を室温で0.5時間撹拌し、続いて、エチル1−アミノ−2−ビニルシクロプロパンカルボキシレート(0.29g、1.1mmol)およびDIPEA(1.2 mL、6.7mmol)のCHCl(20mL)溶液を添加した。添加終了後、反応混合物を室温でさらに6時間撹拌し、CHCl(100mL)で希釈し、水(100mL)および食塩水(50mL)で洗浄し、無水MgSOに乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮した。残部を、フラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(50%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、黄色固体の酸性化合物I−21(0.72g、82%)を得た。ESI−MS(M+H)=802.3。
【0103】
エステル化合物I−21(0.68g、0.85mmol)のトルエン(70mL)溶液に、窒素で脱気した。ホベイダ−グラブス触媒第2世代(Hoveyda−Grubbs 2nd)(0.05g、10%mol)を室温で添加した。反応混合物を50℃で一晩加熱した。溶媒を濃縮し、残部を、フラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(1%MeOHのエーテル溶液)で精製し、化合物I−22(0.33g、50%)を得た。ESI−MS(M+H)=774.3。
【0104】
化合物I−22(0.33g、0.43mmol)のTHF(30mL)溶液に、2N NaOH水溶液(6mL)を添加した。MeOH 6mLの添加により、均一溶液が得られ、得られた溶液を室温で2時間撹拌した。混合物を、1N HClでpH3に調整した後、CHClで2回抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥させて、ろ過して、真空下で濃縮した。粗化合物I−23を、精製せずに次の工程に用いた。ESI−MS(M+H)=746.3。
【0105】
化合物I−23(0.23g、0.3mmol)、HATU(0.23g、0.6mmol)およびDMAP(0.03g、0.3mmol)のTHF(20mL)溶液を室温で0.5時間撹拌し、続いて、シクロプロパンスルホン酸アミド(0.11g、0.9mmol)、DIPEA(0.3mL、2mmol)およびDBU(0.3mL、2mmol)を添加した。添加した後、反応混合物を50℃で6時間加熱し、CHCl(100mL)で希釈し、水(50mL)および食塩水(50mL)で洗浄し、無水MgSOに乾燥し、ろ過して、真空下で濃縮した。残部を、フラッシュクロマトグラフィのシリカゲルカラム(50%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、黄色固体の化合物53(0.12g、47%)を得た。
【0106】
【化27】

【0107】
実施例54:{4−シクロプロパンスルホニルアミノカルボニル−18−[6−(3−フルオロ−フェニル)−9−チア−1、5、7−トリアザ−フルオレン−8−イルオキシ]−2、15−ジオキソ−12−オキサ−3、16−ジアザ−トリシクロ[14.3.0.04、6]ノナデシ−7−エン−14−イル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル({4-Cyclopropanesulfonylaminocarbonyl-18-[6-(3-fluoro-phenyl)-9-thia-1,5,7-triaza-fluoren-8-yloxy]-2,15-dioxo-12-oxa-3,16-diaza-tricyclo[14.3.0.04,6]nonadec-7-en-14-yl}-carbamic acid tert-butyl ester)(化合物54)
化合物54を、下記に示される経路で調製した。
【0108】
【化28】

【0109】
6−(3−フルオロ−フェニル)−7H−9−チア−1、5、7−トリアザ−フルオレン−8−オン(6-(3-fluoro-phenyl)-7H-9-thia-1,5,7-triaza-fluoren-8-one)(1.83g、6.16mmol)のPOCl(5.66mL、61.6mmol)溶液を3時間還流下で加熱した。真空でPOClを除去した後、残部は水に注ぎ、飽和NaHCOでpH>7にクエンチし、15分間撹拌した後、ろ過をして粗化合物I−24(1.82g、93%)を得た。ESI−MS(M+H)=316.0.。
【0110】
Boc−4R−ヒドロキシプロリン(1.33g、5.76mmol)のDMSO(13.3mL)懸濁液に、t−BuOK(1.94g、17.28mmol)を室温で添加した。反応混合物を1.5時間撹拌した後、化合物I−24(1.82g、5.76mmol)をDMSO(18.2mL)に溶解させて、氷バスの反応混合物に一晩で滴下した。得られた混合物を、冷水に注ぎ、および水溶液を1N HClでpH<2に調整し、ろ過して、粗化合物I−25(2.77g、94%)を得た。ESI−MS(M+H)=511.1。
【0111】
化合物I−25(3.41g、6.68mmol)、HATU(5.08g、13.36mmol)、HOBT(1.35g、10.02 mmol)およびシクロプロパンスルホン酸(1−アミノ−2−ビニル−シクロプロパンカルボニル)−アミド(1.69g、7.35mmol)のCHCl(33.4mL)溶液に、NMM(3.67mL、33.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。得られた混合物は、飽和NHClでクエンチし、CHClで抽出し、飽和NaHCOと食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥した。濃縮後、残部をシリカゲルクトマトグラフィ(50%EtOAcのヘキサン溶液)により精製し、化合物I−26(3.20g、66%)を得た。ESI−MS(M+H)=723.2。
【0112】
I−26(0.51g、0.69mmol)のCHCl(3.45mL)の溶液に、CFCOOH(0.53mL、6.9mmol)を室温で添加した。反応混合物は一晩撹拌した後、溶液を濃縮して粗化合物I−27を得た。当該化合物は、精製せずに次の工程に用いた。ESI−MS(M+H)=623.2。
【0113】
化合物I−27(0.43g、0.69mmol)、HATU(0.34g、0.9mmol) および(s)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペント−4−エンイルオキシ)プロパン酸(0.25g、0.9mmol)のCHCl(3.45mL)溶液に、NMM(0.3mL、2.76mmol)を添加した。反応混合物は、室温で一晩撹拌した。得られた混合物は、飽和NHClでクエンチし、CHClで抽出し、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させた。濃縮後、残部はシリカゲルクロマトグラフィ(50%EtOAcのヘキサン溶液)で精製し、化合物I−28(0.52g、85%)を得た。ESI−MS(M+H)=877.7。
【0114】
I−28(0.52g、0.59mmol)のトルエン(59mL)溶液を窒素で脱気した。ホベイダ−グラブス触媒第2世代(Hoveyda-Grubbs 2nd)(0.04g、10%mol)を室温で添加した。反応混合物を50℃で一晩加熱した。溶媒を濃縮し、残部を、TLC(1%MeOHのエーテル溶液)で精製し、化合物54(0.07g、14%)を得た。
【0115】
【化29】

【0116】
実施例55〜60:化合物55〜60の合成
化合物55〜60は、実施例54と同様の方法で調製した。
【0117】
【化30】

【0118】
実施例61:NS3/4Aプロテアーゼの抑制
タンパク質発現および精製
N−末端His6−tagged−NS4A(21−32)−GSGS−NS3(3−181)をコード化する遺伝子を含むプラスミドをタンパク質過剰発現(protein over-expression)のために、E.coli strain BL21(DE3) pLysS(Novagen)に形質転換した。形質転換されたBL21 (DE3) pLysSの単一コロニーをLauria−Bertani(LB)培地200mL中でカナマイシン(Kanamycin)およびクロラムフェニコール(Chloramphenicol)と一緒に37℃で一晩培養した。細菌培養物を、抗生物質を含む6L LB培地(Difco)に形質転換し、22℃で揺らしながら培養した。600nmの吸収が0.6に達した後、培養物を1mMイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)と、22℃で5時間誘導した。培養物を、続いて、遠心分離(6、000×g 15分間、4°C)により採取した。細胞ペレットを150mLバッファーA(50mM HEPES、pH7.4、0.3M NaCl、0.1%(w/v) CHAPS、10mM イミダゾール、10%(v/v) グリセロール)に再懸濁した。混合物を、マイクロフルイダイザー(Microfluidizer)を30psiの条件で、4回通過させて破壊した後、細胞破片は、遠心分離(58、250×g 30分間、4°C)により取り除いた。His−taggedタンパク質を含む細胞溶解物を、gradiFracシステム(Pharmacia)を用いて、10mMイミダゾール存在下、25mL Ni−NTA(Qiagen)カラム上に3mL/分でチャージした。カラムは10カラム容積の溶菌バッファーで洗浄した。固定されたNS4A(21−32)−GSGS−NS3(3−181)を、8カラム容積の300mMイミダゾールが添加されたバッファーAで溶出させた。溜めたフラクションをさらに、バッファーB(50mM HEPES、pH7.4、0.1%(w/v) CHAPS、10%(v/v) グリセロール、5mMジチオスレイトール(DTT)、および1M NaCl)を備えたQ−セファロース(Q-Sepharose)カラムによって精製した。NS4A(21−32)−GSGS−NS3(3−181)を含む溶離液を回収し、バッファーC(50mM HEPES、pH7.4、0.1%(w/v) CHAPS、5mM DTT、10% (v/v) グリセロール)が予め備えられたセファクリル−75(sephacryl-75)カラム(16´100cm、Pharmacia)のサイズ−フラクションクロマトグラフィでさらに精製した。精製されたタンパク質を使用までの間、−80℃で冷凍保存した。
【0119】
HPLCマイクロボア分析
50mM Tris、pH7.4、100mM NaCl、20%グリセロール、0.012% CHAPS、10mM DTT、5μM 基質Ac−Asp−Glu−Asp(EDANS)−Glu−Glu−Abu−φ−[COOAla]−Ser−Lys(DABCYL)−NH(RET S1、ANASPEC)および10μM試験化合物を含む溶液を調製した。80μLの溶液を、96−ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加した。50mM Trisバッファー、pH7.4、100mM NaCl、20% グリセロール、および0.012% CHAPSを含む10nM NS3/4Aプロテアーゼを20μL添加することにより、反応を停止した。NS3/4Aプロテアーゼの最終濃度は2nMで、基質RET S1のKmより低かった。
【0120】
分析溶液は、30℃で30分間培養した。その後、100μLの1%TFAの添加により反応を停止した。200μLずつ、アジレント96−ウェルプレートのそれぞれのウェルに移した。
【0121】
反応生成物は、後述する逆相HPLCを用いて分析した。HPLCシステム一式(HPLC system included):アジレント(Agilent) 1100、脱気剤(Degasser) G1379A、バイナリポンプ(Binary pump) G1312A、オートサンプラー(Autosampler) G1367A、カラム 恒温チャンバー(thermostated chamber) G1316A、ダイオードアレイ検出器(Diode array detector) G1315B、カラム:アジレント(Agilent)、ZORBAX Eclipse XDB−C18、4.6mm、5mm、P/N 993967−902、カラム 恒温thermostat:室温、インジェクション容量(Injection volume):100μL、溶媒A=HPLCグレード 水+0.09%TFA、溶媒B=HPLCグレード アセトニトリル+0.09%TFA。HPLCの所要時間の合計は、7.6分で、溶媒Bが25〜50%までは4分間の線形勾配をつけ、溶媒Bが50%を30秒間維持し、さらに溶媒Bが50〜25%まで30秒勾配をつけた。カラムは、次のサンプルのインジェクション前に、25%溶媒Bで2.6分間洗浄(re-equilibrated)した。IC50値(NS3/4A活性の50%抑制が観測される濃度)は、それぞれHPLCの結果に基づいて、サンプル化合物にそれぞれ計算した。
【0122】
化合物1〜60について、上述の抑制分析を行った。54の化合物は、20nMよりもIC50値が低く、4の化合物は、IC50値が20から100nMの範囲内であることを示す結果が示された。
【0123】
実施例62:HCVレプリコン細胞分析プロトコル
HCVレプリコンを含む細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、G418 1.0mg/mLおよび適当な補充剤(supplements)(培地A(media A))を含むDMEM中に培養(maintain)した。
【0124】
1日目、レプリコン細胞単一層を、トリプシン/EDTA混合物で処理し、除去して、培地Aで最終濃度48,000細胞/mLとなるよう希釈した。溶液(1mL)を、24ウェル組織培養プレートのそれぞれのウェルに添加し、組織培養5%COインキュベータで37℃、終夜培養した。
【0125】
2日目、テスト化合物(DMSO100%中)を、10%FBSおよび適当な補充剤(supplements)(培地B(media B))を含むDMEMで逐次希釈した。DMSOの最終濃度が、希釈系列を通して、0.2%になるようにした。
【0126】
レプリコン細胞単一層の培地を除去して、その後、様々な濃度の化合物を含む培地Bを添加した。化合物を含まない培地Bを、化合物フリーのコントロールとして、他のウェルに添加した。
【0127】
細胞を、組織培養5%COインキュベータで37℃、72時間、培地B中の化合物または0.2%DMSOと培養した。その後、培地を除去し、レプリコン細胞単一層を、PBSで一度洗浄した。RNイージーキットまたはTRIZOL試薬からRNA抽出試薬を、細胞に添加し、すぐにRNAの分解を回避した。トータルRNA(total RNA)を、メーカーから提供された指示書に従い、抽出効率および一貫性(consistency)を改良するために変更を加えて、抽出した。最終的に、HCVレプリコンRNAを含む全ての細胞RNAを、溶離して、次の工程まで−80℃で保存した。
【0128】
特定のプライマーの2つセット:ひとつはHCV用であり、他方はACTB(ベータ−アクチン)用、を用いて、TaqMan(商標) real−time RT−PCR定量分析を行った。同じPCRウェルで、HCVおよびACTB RNAを共に定量するためのPCR反応に、トータルRNAを加えた。各ウェル中のACTB RNAのレベルに基づいて、失敗した実験を判定し、それを除いた。それぞれのウェルのHCV RNAのレベルは、同じPCRプレート中の標準曲線(a standard curve run)によって計算した。HCV RNAレベルの化合物処理による抑制のパーセンテージは、DMSOまたは化合物フリーのコントロールを抑制0%として計算した。EC50(HCV RNAレベルの抑制が50%に達したときの濃度)は、得られた化合物の滴定曲線によって計算した。
【0129】
化合物1〜60は、HCVレプリコン細胞分析で確認された。結果は、52の化合物はEC50値が20nMよりも低いことを示し、3の化合物は、EC50値が20〜100nMの範囲内であることが示された。
【0130】
他の実施形態
本明細書に開示されたすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせられうる。本明細書に開示されたそれぞれの特徴は、同一の、等価な、または類似の目的に資する他の特徴により置換されうる。よって、そうでないと明記しない限り、開示されたそれぞれの特徴は、等価な、または類似の上位概念の一連の特徴の例示にすぎない。
【0131】
上述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に把握することができ、その思想および範囲から逸脱することなく、本発明を種々の用途および条件に適合させる目的で種々の変更および修飾を加えることが可能である。よって、他の実施形態もまた、後述する特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物:
【化1】

式中、
およびRは、それぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Uは、−O−、−NH−、−NH(CO)−、−NHSO−、または−NHSO−であり;
Wは、−(CH−、−NH(CH−、−(CHNH−、−O(CH−、−(CHO−、−S(CH−、−(CHS−、−SO−、−SO(CH−、−(CHSO−、−SO(CH−、または−(CHSO−であり、mは1、2、または3であり、およびnは0、1、または2であり;
Xは、−O−、−S−、−NH−、または−OCH−であり;
Yは、
【化2】

式中、
VおよびTは、それぞれ独立して、−CH−または−N−であり;
Rは、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;ならびに
およびAは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよいC4−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;あるいは、他のC3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールと縮合していてもよく、この際、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい;ならびに
Zは、−C(O)、−OC(O)−、−NR’C(O)−、−OC(S)−、−NR’−C(S)−、または−OC(NH)−であり;この際、R’は、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。
【請求項2】
Wが、−CHCH−、−OCH−、−SCH−、または−SOCH−である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがOである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Yが、
【化3】

式中、
、Rii、Riii、Riv、R、Rvi、Rvii、およびRviiiは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アミノ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;ならびに
Tは、請求項1に定義されたものと同じである、
で表される請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Zが−OC(O)−である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Uが−NHSO−である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
がシクロプロピルである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がC1−5アルキルまたはC3−8シクロアルキルである請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Yが、
【化4】

式中、
、Rii、Riii、Riv、R、Rvi、Rvii、およびRviiiは請求項4に記載されたものと同じであり、
Tは請求項1に記載されたものと同じである、
で表される請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Yが、
【化5】

式中、
、Rii、Riii、Riv、R、Rvi、Rvii、およびRviiiは、請求項4に記載されたものと同じである、
で表される請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
XがOであり、Zが−OC(O)−であり、Uが−NHSO−であり、Rがシクロプロピルであり、およびRがC1−5アルキルまたはC3−8シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
下記立体化学:
【化6】

を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
化合物1〜51および54〜60のひとつである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化学式を有する抗ウイルス薬および製薬上許容されるキャリアを含む薬剤組成物。
【請求項15】
免疫調節薬、他の抗ウイルス薬、またはNS5Bポリメラーゼ、NS5A、NS4B、もしくはp7阻害剤をさらに含む、請求項14に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
式(II)で表される化合物:
【化7】

式中、
およびRは、それぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
Uは、−O−、−NH−、−NH(CO)−、−NHSO−、または−NHSO−であり;
Wは、−(CH−、−NH(CH−、−(CHNH−、−O(CH−、−(CHO−、−S(CH−、−(CHS−、−SO−、−SO(CH−、−(CHSO−、−SO(CH−、または−(CHSO−であり、mは1、2、または3であり、およびnは0、1、または2であり;
Xは、−O−、−S−、−NH−、または−OCH−であり;
Tは、
【化8】

式中、
およびAは、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよいC3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;ならびに、
Zは、−C(O)、−OC(O)−、−NR’−C(O)−、−OC(S)−、−NR’C(S)−、または−OC(NH)−であり;この際、R’は、H、C1−6アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−10ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。
【請求項17】
Wが、−CHCH−、−OCH−、−SCH−、または−SOCH−である請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Zが、−OC(O)−であり、Uが、−NHSO−であり、Rが、シクロプロピルであり、およびRが、C1−5アルキルまたはC3−8シクロアルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Tが、
【化9】

式中、nは1または2である、
で表される請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
化合物52および53のひとつである、請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
請求項16に記載の化学式を有する抗ウイルス薬および製薬上許容されるキャリアを含む薬剤組成物。
【請求項22】
免疫調節薬、他の抗ウイルス薬、またはNS5Bポリメラーゼ、NS5A、NS4B、もしくはp7阻害剤をさらに含む、請求項21に記載の薬剤組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、C型肝炎ウイルス感染症を治療する方法。
【請求項24】
請求項16に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、C型肝炎ウイルス感染症を治療する方法。
【請求項25】
化合物1〜60のひとつの有効量を、必要とする患者に投与することを含む、C型肝炎ウイルス感染症を治療する方法。

【公表番号】特表2011−523411(P2011−523411A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509462(P2011−509462)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/082329
【国際公開番号】WO2009/139792
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505367785)タイゲン バイオテクノロジー カンパニー,リミテッド (10)
【Fターム(参考)】