説明

HCV併用療法

本発明の態様には、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症の治療のための、下記の化合物(1)(その特定の結晶形態および薬学的に許容されるその塩を含めた)と、本明細書に記載の少なくとも1種のさらなる選択されたHCV阻害化合物との組合せを投与することを含む方法が含まれる。これらの方法は、治療レジメンとしてを含めて、化合物(1)および少なくとも1種のさらなる選択されたHCV阻害化合物を別々にまたは一緒に投与することによって行うことができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年12月18日に出願された米国特許出願第61/288,004号、および2010年3月25日に出願された米国特許出願第61/317,343号(これらの両方とも参照により本明細書に組み込まれている)の利益を主張する。
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症の治療のための、本明細書において記載されているような化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩と、下記のような少なくとも1種のさらなる選択されたHCV阻害化合物とを含む治療的組合せに関する。本発明はまた、患者においてHCV感染症を治療し、または1つもしくは複数のその症状を軽減するためのこのような治療的組合せを使用する方法に関し、各化合物は、一緒にまたは別々に投与される。本発明はまた、本発明の治療的組合せを含むキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染症は、米国のみで毎年概ね150,000の新規に報告される症例を伴う世界的な人間の健康問題である。HCVは、非A非Bの輸血後および移植後肝炎において殆どの場合同定される病原体であり、かつ散発性急性肝炎の一般的原因である一本鎖RNAウイルスである。HCVに感染した患者の50%超は慢性感染となり、それらの20%は20年以内に肝硬変を発症すると推定される。
いくつかのタイプのインターフェロン、特に、α−インターフェロンが、慢性HCVの治療のために承認されている(例えば、インターフェロン−α−2a(ROFERON(登録商標)−A)、インターフェロン−α−2b(INTRON(登録商標)−A)、コンセンサスインターフェロン(INFERGEN(登録商標))、ならびにこれらおよび他のインターフェロンのペグ化形態(ペグ化インターフェロンα−2a(PEGASYS(登録商標))およびペグ化インターフェロンα−2b(PEG−INTRON(登録商標))など))。多くのRNAおよびDNAウイルスに対して広範囲の活性を有するグアノシン類似体であるリバビリンは、臨床試験において、インターフェロン−αと組み合わせて使用したときに慢性HCV感染症に対して有効であることが示されてきており(例えば、Poynardら、Lancet、352:1426〜1432、1998;Reichardら、Lancet、351:83〜87、1998を参照されたい)、この併用療法は、HCVの治療のために承認されてきた。REBETRON(登録商標)(インターフェロンα−2bおよびリバビリン、Schering−Plough);PEGASYS(登録商標)RBV(登録商標)(ペグ化インターフェロンα−2aおよびリバビリン併用療法、Roche);Mannsら、Lancet、358:958〜965(2001)およびFriedら、2002、N.Engl.J.Med.、347:975〜982をまた参照されたい。しかし、この併用療法によってでさえ、遺伝子型1に慢性感染した患者における持続性のウイルス学的奏効率はまだ、50%以下である。
【0003】
インターフェロンは注射による投与を必要とし、これは、患者の薬剤服用順守および利便性の観点から非常により好ましくない投与方法である。さらに典型的には、このような治療と関連するかなりの副作用が存在する。リバビリンは、催奇形作用、精子発生の妨害、溶血、貧血、疲労、頭痛、不眠、悪心および/または食欲不振症を含む不利益を生じる。リバビリンを有する、または有さないインターフェロンαは、多くの副作用と関連する。治療の間、患者は、インフルエンザ様症状、うつ、発疹および異常な血液細胞数について注意深くモニターされなくてはならない。インターフェロンα−2bおよびリバビリンで治療を受けている患者は、重大な肝臓機能障害の合併症を有するべきではなく、このような対象は、注意深くモニターされた状態においてのみ、C型肝炎の治療について検討される。
HCV複製を適当に抑制する有効で持続性のある治療は典型的には、HCV感染症と関連する異なる生物学的機序を標的とする作用剤の組合せを必要とする。当技術分野において、典型的には利用可能なインターフェロンおよびリバビリン併用療法と関連する不都合およびかなりの副作用を回避する、HCVに対する有効な併用療法についての継続的な必要性が存在する。
【0004】
下記の化合物(1)は、
【0005】
【化1】

HCV感染症の治療のためのHCV NS3セリンプロテアーゼの選択的および強力な阻害剤として公知である。化合物(1)は、米国特許第6,323,180号、同第7,514,557号および同第7,585,845号に開示されているHCV阻害剤の非環状ペプチドシリーズの範囲内に含まれる。化合物(1)は、米国特許第7,585,845号において化合物#1055として、および米国特許第7,514,557号において化合物#1008として特に開示されている。化合物(1)は、参照により本明細書に組み込まれている上記の引用文献において見出される一般手順によって調製することができる。化合物(1)の好ましい形態には、結晶形態、特に結晶性ナトリウム塩形態が含まれ、これは本明細書において例の項において記載されているように調製することができる。
化合物(1)はまた、上記の構造と同等であるその化学構造の下記の代わりの記述によって公知であり得る。
【0006】
【化2】

式中、Bは、
【0007】
【化3】

であり、L0は、MeO−であり、L1は、Brであり、R2は、
【0008】
【化4】

である。
下記の化合物(A)〜(U)はまた、HCV感染症の治療のために有用な公知の化合物である(明確にするために、下記で示す構造における任意の窒素または酸素原子上の任意の開放原子価は、水素によって占められていると考えるべきである)。
(A)
【0009】
【化5】

BMS-790052;
BMS−790052(Bristol Myers Squibb)は、例えば、WO出願第2008/021927号、WO出願第2008/021928号およびWO出願第2009/020828号に記載されている。
(B)
【0010】
【化6】

R7128;
化学名:2’−デオキシ−2’(R)−フルオロ−2’−メチル−3’,5’−ジ−O−イソブチリルシチジン。R7128またはRG7127(Roche)は、下記に示すPSI−6130のプロドラッグである。
【0011】
【化7】

PSI-6130
【0012】
R7128、PSI−6130および関連する化合物、それらの特性および合成は、例えば、WO出願第WO2005003147号、ならびにまたDrugs of the Future、2009、34(4):282〜290頁;Drugs、2009、69、2、151〜166頁(図6、159頁を参照されたい)、Clark,J.L.ら、J.Med.Chem.、2005、48、5504;およびStuyver,L.J.ら、Antiviral Chemistry and Chemotherapy、2006、17、79に記載されている。
(C)
【0013】
【化8】

フィリブビル(PF-868554)
化学名:6(R)−シクロペンチル−6−[2−(2,6−ジエチルピリジン−4−イル)エチル]−3−(5,7−ジメチル[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−2−イルメチル)−4−ヒドロキシ−5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン(CAS登録番号877130−28−4)。フィリブビルまたはPF−868554(Pfizer)は、例えば、WO出願第2006/018725号、ならびにまたJ Med Chem.、2009、52、5、1255〜1258頁(1257頁の上部、表3、化合物24を参照されたい))、Annual Report in Med Chem、第44巻、2009、397〜440頁(416頁、化合物40を参照されたい)、およびAntimicrobrial Agents and Chemotherapy、2009、53、6、2544〜2552頁(2545頁の上部を参照されたい)に記載されている。
【0014】
(D)商品名ANA−598(Anadys Pharmaceuticals Inc.)として公知のHCV非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤化合物。ANA−598ならびに関連する構造および合成は、WO出願第2006/066079号および同第2006/066080号、同第2007/150001号、同第2008/124450号および同第2010/042834号に記載されている。また、Hepatology、48(4、補遺S)、2008年10月、1026A、1163Aおよび1164Aを参照されたい。
(E)
【0015】
【化9】

PSI-7851ラセミ化合物
【0016】
PSI−7851(Pharmasset)は、例えば、AM Lamら、Global Antiviral Journal、第5巻、補遺1、137〜138頁、2009(アブストラクト103および152);Annual Reports in Medicinal Chemistry、第44巻、2009、第20章、397〜440頁;ならびにFurman,P.A.ら、15th International Symposium on HCV & Related Viruses、San Antonio、TX、2008年10月5〜9日(アブストラクト#275)に記載されている。PSI−7851は、2つの異性体であるPSI−7976およびPSI−7977のラセミ混合物である。PSI−7851は、下記に示すPSI−7409のプロドラッグである。
【0017】
【化10】

PSI-7409
PSI−7977はまた、ヌクレオチド類似体PSI−7409のプロドラッグである。関連する化合物および合成は、例えば、WO出願第2005/003147号に記載されている。PSI−7977は、Sofia MJ、Bao D、Chang W、Du J、Nagarathnam D、Rachakonda S、Reddy PG、Ross BS、Wang P、Zhang HR、Bansal S、Espiritu C、Keilman M、Lam AM、Steuer HM、Niu C、Otto MJ、Furman PA、J Med Chem.、2010年10月、14;53(19):7202〜18に記載されているように単一のジアステレオマーである。
【0018】
【化11】

PSI-7977
(F)商品名IDX184(Idenix Pharmaceuticals Inc.)として公知のHCVポリメラーゼ阻害剤化合物は、2’−メチルグアノシンのプロドラッグである。IDX184およびその特性、関連する化合物および合成は、例えば、Cretton−Scott,E.ら、European Association for the Study of the Liver、第43回年次総会、Milan、Italy、2008年4月23〜27日(アブストラクト#588)、J.Hepatology:50(補遺1)、2009、S37;48(補遺2)、2008、S220;48(補遺2)、2008、S30、WO出願第2008/082601号および同第2010/014134号に記載されている。
【0019】
(G)VX−222またはVCH−222(Vertex Pharmaceuticals Inc.)は、商品名によって公知である非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤化合物である。VX−222および関連する化合物および合成は、例えば、EP出願第1321463号およびCooper C.ら、J.Hepatology:50(補遺1)、2009、S340;50、Abs939、補遺1、2009および50、Abs940、補遺1、2009に記載されている。
(H)
【0020】
【化12】

MK-3281
MK−3281(Merck & Co.)は、例えば、WO出願第2007/129119号に記載されている。
(I)AZD7295またはA−689(AstraZeneca plc)は、例えば、Expert Opinion on Drug Discovery、4(3)(293〜314頁)、2009年3月;Anti−Infective Drug Discovery、3(2)(77〜92頁)、2008についての最近の特許;およびClinics in Liver Disease、12(3)、529〜555頁(2008)に記載されている。
(J)
【0021】
【化13】

GS-9190
GS−9190(Gilead)および関連する化合物および合成は、例えば、WO出願第2005/063744号、同第2008/005519号および同第2009/009001号;Annual Reports in Medicinal Chemistry、第44巻、2009、第20章、397〜440頁(419〜420頁、構造48を参照されたい);ならびにYang,C.ら、American Association for the Study of Liver Diseases、第58回年次総会、Boston、2007年11月2〜6日(アブストラクト#1398)に記載されている。
【0022】
(K)ABT−333(Abbott Laboratories)は、例えば、Koev,G.ら、J. Hepatology、50(補遺1)、2009、S346〜S348;Expert Opinion on Therapeutic Patents、19(2)(145〜164頁)、2009年2月;およびClinics in Liver Disease、13(3)(453〜465頁)、2009年8月に記載されている非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤化合物である。
(L)ABT−072(Abbott)は、例えば、Koev,G.ら、J.Hepatology、50(補遺1)、2009、S346〜S348およびS352に記載されている非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤化合物である。
(M)
【0023】
【化14】

VX-759
VX−759(Vertex)は、例えば、Bioorg.& Med.Chem.Letters、14(2004)、797〜800;Cooper C.ら、J.Hepatology、51(2009)39〜46(そこでは、その以前の参照名であるVCH−759と称している)およびWO出願第2002/100851号に記載されている、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤化合物である。同様の化合物は、WO出願第2004/052885号に記載されている。
(N)
【0024】
【化15】

アリスポリビル(Debio 25)
アリスポリビル(Debiopharm)またはDebio25は、例えば、WO出願第2000/001715号、WO出願第2006/038088号;Coelmontら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第53巻、第3、967〜976(2009年3月);およびHerrmann,E.ら、J. Hepatology、2009、50、S344に記載されているシクロフィリン阻害剤である。
(O)
【0025】
【化16】

NIM-811
NIM−811(Novartis)は、シクロフィリン阻害剤である。NIM−811および関連する化合物および合成は、例えば、WO出願第2006/071619号;WO出願第2006/071618号;Mathyら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第52巻、第9、3267〜3275(2008年9月);Lawitz,E.ら、J.Hepatology、2009、50、S379に記載されている。
(P)
【0026】
【化17】

SCY-635
SCY−635(Scynexis)は、シクロフィリン阻害剤である。SCY−635および関連する化合物および合成は、例えば、WO出願第2006/039668号;WO出願第2009/828330号;およびChatterji U.ら、J.Biol.Chem.、2009、284、16998に記載されている。
【0027】
(Q)BMS−791325は、米国国立衛生研究所の臨床試験データベース(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00664625)において報告されているような、HCV感染患者の治療のための臨床試験におけるHCV複製阻害剤である。
【0028】
(R)BMS−824393は、米国国立衛生研究所の臨床試験データベース(http://clinicaltrialsfeeds.org/clinical−trials/show/NCT00971308)において報告されているような、HCV感染患者の治療のための臨床試験におけるHCV NS5A阻害剤である。BMS−824393は、2010年11月2日の米国肝臓病学会(AASLD)の第61回年次総会(Boston)で示されたアブストラクト1858(Nettles R.Eら)に記載されている。
【0029】
(S)PSI−352938としてもまた公知であるPSI−938(Pharmasset)は、HCV感染患者の治療のための臨床試験におけるβ−D−2’−デオキシ−2’−フルオロ−2’−C−メチルプリンモノホスフェートプロドラッグである。PSI−938は、2010年11月2日の米国肝臓病学会(AASLD)の第61回年次総会(Boston)で示されたアブストラクト1890(Symondsら)に記載されている。
(T)PPI−461(Presidio)は、米国国立衛生研究所臨床試験データベース;欧州肝臓学会(EASL)の第46回年次総会(2011年3月30日〜4月3日、Berlin、Germany);および米国肝臓病学会の第61回年次総会(2010年10月30日〜11月3日)で報告されているような、HCV感染患者の治療のための臨床試験におけるHCV複製阻害剤である。
(U)
【0030】
【化18】

INX-189
NX−189(Inhibitex)は、HCVの治療のために現在臨床開発中であるO6−メチル修飾2’−Cメチルグアノシンモノホスフェートの新規な強力なホスホロアミデートをベースとするプロドラッグである。INX−189およびその特性は、例えば、米国肝臓病学会の第61回年次総会(アブストラクト#1874)および米国国立衛生研究所の臨床試験データベースhttp://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01159808に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の一実施形態は、哺乳動物に、治療有効量の下記の各々を投与することを含む、哺乳動物においてHCV感染症を治療する方法を対象とする。
(a)その結晶形態、または薬学的に許容されるその塩を含めた、上記のような化合物(1);ならびに
(b)上記のような下記のさらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数
(A)BMS−790052
(B)R7128
(C)フィリブビル(PF−868554)
(D)ANA−598
(E)PSI−7851ラセミ化合物、またはPSI−7977もしくはPSI7976異性体
(F)IDX184
(G)VX−222
(H)MK−3281
(I)AZD7295
(J)GS−9190
(K)ABT−333
(L)ABT−072
(M)VX−759
(N)アリスポリビル(Debio25)
(O)NIM−811
(P)SCY−635
(Q)BMS−791325
(R)BMS−824393
(S)PSI−938
(T)PPI−461
(U)INX−189
または薬学的に許容されるその塩。
【0032】
本発明の個々および別々の実施形態には、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩と、個々の化合物(A)〜(P)の各々、または薬学的に許容されるその塩とを合わせることによって得られる16の異なる組合せが含まれる。本発明のさらなる実施形態には、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩と、個々の化合物(Q)〜(U)の各々、または薬学的に許容されるその塩とを合わせることによって得られる組合せが含まれる。
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物に、治療有効量の
(a)その結晶形態、または薬学的に許容されるその塩を含めた、上記のような化合物(1);ならびに
(b)BMS−790052、R7128、フィリブビル(PF−868554)、ANA−598、PSI−7851、PSI−7977、PSI−7976、IDX184、VX−222、MK−3281、AZD7295、GS−9190、ABT−333、ABT−072、VX−759、アリスポリビル(Debio25)、NIM−811、SCY−635、PSI−7977、BMS−791325、BMS−824393、PSI−938、PPI−461およびINX−189、または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される上記さらなるHCV阻害化合物の1つもしくは複数
の各々を投与することを含む、哺乳動物においてHCV感染症を治療する方法を対象とする。
【0033】
化合物(1)は、その任意の結晶形態で使用することができ、化合物(1)の薬学的に許容される塩もまた、結晶形態でもよい。化合物(1)の特に好ましい塩は、ナトリウム塩形態である。したがって、「化合物(1)」または「化合物(1)の薬学的に許容される塩」という列挙は、本明細書において使用する場合、これらの化合物の任意の結晶形態を包含する。
【0034】
化合物(A)〜(U)はまた、可能であれば、任意の特定の異性体形態(例えば、エナンチオマー、立体異性体、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ化合物など)で、または結晶形態もしくはその薬学的に許容される塩の形態で使用し得る。例えば、化合物(E)は、PSI−7851ラセミ化合物、またはその異性体であるPSI−7977およびPSI7976の1つでよい。したがって、提供した化学構造によって別段の定義がない限り、(A)〜(U)、またはその薬学的に許容される塩の形態の列挙は、したがって本明細書において使用する場合、これらの化合物の任意の異性体または結晶形態を包含する。さらに明確化するために、化合物(A)〜(U)についての化学構造は、本出願において提供される場合、化合物についての正しい構造であると考えられる。それにも関わらず、言及した抗HCVの開発候補である(A)〜(U)のいずれかについての実際の構造が本明細書において提供される構造と異なる場合、実際の化学構造によって決定され、これは参照により本明細書中に組み込まれていると考えられる。
別の実施形態は、上記の方法を対象とし、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩、およびさらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の2つ以上(例えば、2つ、3つもしくは4つ)、または薬学的に許容されるその塩、またはこれらの混合物が投与される。当業者が認識するように、化合物(1)とさらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の2つ以上との組合せは好ましくは、別個の耐性プロファイルを有し、またはその作用機序が別個のHCV結合ポケットを伴う2つ以上のさらなるHCV阻害化合物を選択する。
【0035】
別の実施形態は、上記の方法を対象とし、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩、およびさらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数、または薬学的に許容されるその塩、またはこれらの混合物を投与することに加えて、HCV阻害のための1種もしくは複数のさらなる化合物もまた投与される。HCV阻害のためのさらなる化合物は、例えば、インターフェロンもしくはリバビリンまたはこれらの組合せでよい。さらなるインターフェロンの例として、いくつかのタイプのインターフェロン(例えば、α−インターフェロン、λインターフェロン、ωインターフェロン)、特に、α−インターフェロンは、慢性HCVの治療のために承認されている。例えば、インターフェロン−α−2a(ROFERON(登録商標)−A)、インターフェロン−α−2b(INTRON(登録商標)−A)、コンセンサスインターフェロン(INFERGEN(登録商標))、ヒトアルブミンおよびインターフェロンαの融合生成物(Abuferon(登録商標))、ならびにこれらおよび他のインターフェロンのペグ化形態(ペグ化インターフェロンα−2a(PEGASYS(登録商標))ペグ化インターフェロンα−2b(PEG−INTRON(登録商標))、およびPEG−インターフェロンλなど)を使用し得る。リバビリンは、多くのRNAおよびDNAウイルスに対して広範囲の活性を有するグアノシン類似体であり、臨床試験において、インターフェロン−αと組み合わせて使用したときに、慢性HCV感染症に対して有効であることが示されてきた(例えば、Poynardら、Lancet 352:1426〜1432、1998;Reichardら、Lancet 351:83〜87、1998を参照されたい)。HCV感染症を治療するための特定のインターフェロンを含有する併用療法はまた、下記の米国特許出願公開第US2005/0112093号;同第US2005/0129659号;および同第US2008/0138316号に開示されている。
別の実施形態は、HCV感染症の治療のための、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の1つもしくは複数の用量と、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の投与を指示する説明書と、さらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数、または薬学的に許容されるその塩とを含むパッケージを対象とする。
【0036】
本発明の別の実施形態は、さらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数、または薬学的に許容されるその塩、またはこれらの混合物、および少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と合わせた、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象とする。
別の実施形態は、さらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の2つ以上(例えば、2つ、3つもしくは4つ)、または薬学的に許容されるその塩、またはこれらの混合物、および少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と合わせた、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を対象とする。
【0037】
本発明の別の実施形態は、一緒にパッケージした、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩の1つもしくは複数の用量を別々に、ならびに、さらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数、または薬学的に許容されるその塩、またはこれらの混合物の1つもしくは複数の用量を別々に含むキットを対象とする。キットにはまた、上記の併用療法の少なくとも1つをもたらすための用量を投与するための説明書が含まれてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
本明細書において特に定義されていない用語は、開示および状況に鑑みて、当業者によって与えられた意味を与えられるべきである。しかし本出願に亘って使用されるように、それとは別に明記しない限り、下記の用語は示された意味を有する。
「薬学的に許容される」という用語は、物質に関して本明細書において使用する場合、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などを伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに適した物質が、医薬組成物中で使用したときに、合理的な便益/リスク比に見合っており、使用目的のために有効であることを意味する。
「治療する」という用語には、患者における病態の治療に関して、
(i)患者において病態を阻害または寛解すること、例えば、その発症を抑止または遅延させること;あるいは
(ii)患者において病態を軽減する、すなわち、病態の後退または治癒をもたらすことが含まれる。HCVの場合、治療には、患者においてHCVウイルス量のレベルを減少させることが含まれる。
【0039】
化合物(1)
米国特許第6,323,180号、同第7,514,557号および同第7,585,845号において記載された一般手順によって合成されたとき、化合物(1)は、アモルファス固体として調製される。しかし、化合物(1)はまた、特定の医薬の必要性および基準のために好ましい場合がある結晶形態で生成することができる。さらに、化合物(1)が生成される方法は、大規模な生成を受け入れられることが好ましい。さらに、生成物は容易に濾過でき、かつ容易に乾燥される形態であるべきであることが好ましい。最後に、生成物は、特殊化された保存条件を必要とせずに長期間安定的であることが経済的に好ましい。
一実施形態において、化合物(1)は、結晶形態、塩の形態、または結晶塩形態で使用される。したがって、一実施形態において、本発明は、方法、および本明細書においてタイプAと命名される結晶多形の結晶形態の、またはまた化合物(1)の結晶塩の形態の組成物のための、化合物(1)を提供する。塩の形態について、ナトリウム塩が好ましいが、他の薬学的に許容される塩の形態を使用することができる。結晶形態は、医薬加工の問題のために好ましくあり得る。
化合物(1)のタイプA結晶形態は、CuKα照射を使用して測定して、度2θ(±0.2度2θ)で表して、4.8、6.8、9.6、13.6、17.3、19.8および24.5において特徴的なピークを有する特徴的なX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0040】
タイプAのXRPDパターンについての特徴的なピーク位置および相対強度を、下記の表1に示す。
【0041】
表1:

「タイプA」という用語は、本明細書において使用する場合、CuKα照射を使用して測定したとき、9.6度2θ(±0.2度2θ)において少なくとも1つの特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを有する化合物(1)の結晶多形を意味する。この特徴的なピークによって、タイプAは化合物(1)の他の結晶形態から識別されると考えられる。
したがって、1つの特定の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、少なくとも下記の特徴を有する結晶多形の形態である:CuKα照射を使用して測定したとき、9.6度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含むX線粉末回折パターン。
【0042】
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、CuKα照射を使用して測定したとき、上記のように9.6度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含み、かつ19.8度2θ(±0.2度2θ)においてピークをさらに含むXRPDパターンを有する、結晶多形の形態である。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、CuKα照射を使用して測定したとき、上記のように9.6度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含み、かつ4.8および19.8度2θ(±0.2度2θ)においてピークをさらに含むXRPDパターンを有する、結晶多形の形態である。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、CuKα照射を使用して測定したとき、上記のように9.6度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含み、かつ4.8、6.8、13.6、17.3、19.8および24.5度2θ(±0.2度2θ)においてピークをさらに含むXRPDパターンを有する、結晶多形の形態である。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、前記化合物(1)の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%は、上記のXRPDによって定義される実施形態のいずれかによって特性決定されるように、結晶形態で、例えば、タイプA結晶多形の形態で存在する。多量の化合物(1)中のこのような量のタイプA多形の存在は典型的には、化合物のXRPD分析を使用して測定可能である。
【0043】
タイプA多形は、タイプAを生じさせる条件下で、溶媒中の溶液から化合物(1)を結晶化することを含む方法によって調製することができる。タイプAが形成される正確な条件は経験的に決定してもよく、実際に適切であることが見出されてきた下記の方法を記載する。
【0044】
例えば、化合物(1)のタイプA多形は、下記のステップを含む方法によって調製してもよい。
(i)混合物を約65〜75℃の温度に加熱することによって、化合物(1)を、共溶媒として水を任意選択で含有する脂肪族アルコール溶媒に溶解し、溶液を得ること、
(ii)溶液を約70〜75℃の温度に維持しながら、ステップ(i)において得た溶液に水を加え、スラリーを得ること、
(iii)ステップ(ii)において得たスラリーを冷却し、固体材料を得ること、
(iv)ステップ(iii)の固体材料を集め、約65〜80℃の温度で前記材料を乾燥させ、化合物(1)のタイプAを得ること。
この方法において用いてもよい脂肪族アルコールには、例えば、エタノール(例えば、変性、200プルーフまたは100%純度)、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソ−ブチルアルコールおよびイソ−ペンチルアルコール、好ましくはエタノールが含まれる。タイプAのこのように得られた結晶は、当技術分野において公知の任意の従来の方法によって回収し得る。
【0045】
最終ステップ(iv)において、ステップ(iii)において得たこのように得られた固体は、従来の収集および高温度乾燥技術、例えば、濾過および真空オーブンを使用して、集め、高温で乾燥させ得る。
調製の好ましい一実施形態において、化合物(1)が完全に溶解するまで、混合物を撹拌し、約72〜74℃の温度まで加熱することによって、アモルファス化合物(1)を、共溶媒として約10%v/vまでの水を含有する脂肪族アルコール溶媒(例えば、エタノール)に溶解する。水および約10%v/vまでの脂肪族アルコール(例えば、エタノール)を含有する別々の水添加溶液を調製し、この水添加溶液を、化合物(1)の溶液に時間をかけて概ね直線的に加え、一方混合物を約72〜74℃の温度に維持する。化合物(1)のタイプAは、水溶液の添加の間に結晶化を始める。このように得られた結晶スラリーを、従来の技術を使用して、冷却し、撹拌し、次いで、結晶を分離し、洗浄し、約65〜75℃の温度で乾燥させる。
プロセスステップは当然ながら、方法を容易にするためによく理解されているように、従来のかき混ぜ技術(例えば、撹拌)、および他の従来の技術によって促進し得る。
化合物(1)の成分として、式(1)の化合物のナトリウム塩は、安定的な結晶形態として調製することができるという事実によって、医薬加工のために好ましいことが見出されてきた。一般に、化合物(1)の結晶性ナトリウム塩は、度2θ(±0.2度2θ)で表して、5.4、6.5、8.7、10.1、11.9、13.0、18.2、20.2、および24.7において特徴的なピークを有する特徴的なX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【0046】
結晶性ナトリウム塩形態のXRPDパターンについての特徴的なピーク位置および相対強度を、下記の表2に示す。
【0047】
表2:

結晶塩形態、特に、ナトリウム塩形態は、医薬製剤加工のために好ましい場合がある。特に、ナトリウム塩形態は、特定の特性を有し、それによって脂質をベースとする薬物送達システム(LBDDS)で製剤化するのに特に適したものとなる。
ナトリウム塩形態は、例えば、プロピレングリコールおよびエタノールを含めた、LBDDS製剤のために通常の使用される賦形剤中でより改善された溶解性を有することが見出された。下記の表は、特定の賦形剤中の、化合物(1)のタイプA形態と比較した、化合物(1)のナトリウム塩形態のより改善された溶解性を示すデータを提供する。
【0048】
様々な賦形剤中の化合物(1)のNa塩に対する化合物(1)のタイプAの溶解性の比較
【0049】
【表1】

プロピレングリコールおよびエタノール中のナトリウム塩形態のより改善された溶解性によって、この形態は、これらの通常の賦形剤の1つまたは複数を用いたLBDDS製剤の開発において使用するときに、本発明の組成物中の化合物(1)の成分として特に適しているものとなる。
【0050】
第2に、ナトリウム塩は、タイプA形態と比較して、プロピレングリコールおよびエタノール中でより高い形態安定性を予想外に示す。特に、化合物(1)のタイプA形態は、そのXRPDパターンの変化によって示されるように、エタノールまたはプロピレングリコール中でスラリー化したときに明らかな形態変化を示す。対照的に、化合物(1)の結晶性ナトリウム塩形態をプロピレングリコールまたはエタノール中でスラリー化したときに、残りの固相について観察されたXRPDパターンの変化はない。これは、これらの賦形剤中でのナトリウム塩形態の改善された安定性を示し、これによってまた、ナトリウム塩形態は、これらの通常の賦形剤の1つまたは複数を用いたLBDDS製剤の開発において使用したときに、本発明の組成物中の化合物(1)の成分として特に適したものとなる。これらの結果を生じさせるために使用した方法を、下記の特性決定の方法の項に記載する。
化合物、特に、化合物(1)の遊離形態と異なる塩の形態との間の、溶解性、および物理的安定性の任意の傾向におけるこのような差異を予想することは、このような形態が首尾よく調製された後でさえ一般に可能でないため、結晶性ナトリウム塩で得られた上記の結果は予想外である。
よりさらに特定の実施形態において、本発明は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、少なくとも下記の特徴を有する結晶性ナトリウム塩形態である:CuKα照射を使用して測定したとき、10.1度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含むX線粉末回折パターン。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、CuKα照射を使用して測定したとき、上記のように10.1度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含み、かつ13.0および18.2度2θ(±0.2度2θ)においてピークをさらに含むXRPDパターンを有する、結晶性ナトリウム塩形態である。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、CuKα照射を使用して測定したとき、上記のように10.1度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含み、かつ5.4、8.7、13.0および18.2度2θ(±0.2度2θ)においてピークをさらに含むXRPDパターンを有する、結晶性ナトリウム塩形態である。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、化合物(1)は、CuKα照射を使用して測定したとき、上記のように10.1度2θ(±0.2度2θ)においてピークを含み、かつ5.4、6.5、8.7、11.9、13.0、18.2、20.2および24.7度2θ(±0.2度2θ)においてピークをさらに含むXRPDパターンを有する、結晶性ナトリウム塩形態である。
別の実施形態は、上記の方法および組成物を対象とし、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の化合物(1)の成分は、上記のXRPDによって定義される実施形態のいずれかによって特性決定し得るように、化合物(1)の結晶塩、好ましくはナトリウム塩の形態で存在する。多量の化合物(1)中のこのような量の化合物(1)の結晶塩の存在は典型的には、化合物のXRPD分析を使用して測定可能である。
【0051】
化合物(1)の結晶塩は、結晶塩を生じさせる条件下で、溶媒中の溶液から化合物(1)を結晶化することを含む方法によって調製することができる。結晶塩が形成される正確な条件は経験的に決定してもよく、下記は、実際において適切であることが見出されてきた方法を単に例示するのみである。
【0052】
化合物(1)の結晶性ナトリウム塩は、下記のステップを含む方法によって調製し得る。
(i)化合物(1)を、混合物をスラリーとして加熱することによって、または完全な溶液を得ることによって、共溶媒として水を任意選択で含有するケトンまたはアセテート溶媒に溶解すること、
(ii)ステップ(i)で得られた溶液に水を加え、その一方で溶液を約50〜70℃の温度に維持し、溶液またはスラリーを得ること、
(iii)化合物(1)の結晶性ナトリウム塩を添加すること、
(iv)ステップ(iii)において得られたスラリーを冷却し、固体材料を得ること、
(iv)ステップ(iii)の固体材料を集め、前記材料を約45〜75℃の温度で乾燥させ、化合物(1)の結晶性ナトリウム塩を得ること。他の薬学的に許容される塩を、類似して調製し得る。
化合物(1)の結晶塩を調製するためのさらなる代わりの方法は、下記の例の項において見出し得る。
【0053】
医薬組成物および方法
化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩、および下記のさらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の少なくとも1つを使用した上記の併用療法は、HCV NS3セリンプロテアーゼに対する化合物(1)の示された阻害活性、および化合物(A)〜(U)の示されたHCV阻害活性を考慮して、HCV感染症の治療のために有用である(各化合物に関して上記の引用を参照されたい)。併用療法は、したがって哺乳動物においてHCV感染症の治療において有用であり、患者においてHCV感染症を治療し、またはその1つもしくは複数の症状を軽減するための医薬組成物およびキットの調製のために使用することができる。この併用療法は、他のHCV遺伝子型(HCV遺伝子型4、5および6を含めた)に対して有効であることが期待されているが、サブ遺伝子型1aおよび1bを含めたHCV遺伝子型1感染症を治療することが好ましい。個々の活性剤化合物(1)および化合物(A)〜(U)は、別々の医薬品剤形によって別々に(いずれかの順序で、もしくは同時に)、または1つの医薬品剤形の部分として一緒に投与することができる。
特定の患者のための適切な投与量およびレジメンは、当技術分野において公知のものと類似の方法によって、ならびに化合物(1)についての米国特許第6,323,180号および同第7,585,845号における開示、ならびに例えば、化合物(A)〜(U)の記載における上記で言及した特許および参照文献の各々を参照することによって決定することができる。さらに、インターフェロン(例えば、ペグ化αインターフェロン)および/またはリバビリン(ribivarin)が併用療法に含まれていてもよい限りにおいて、これらの生成物についての周知および承認された投与量レベルを参照することができる。
一般に、哺乳動物におけるHCV感染症の治療のための治療有効量を投与する。一実施形態において、約50mg〜約1000mg、さらに好ましくは約120mg〜約480mgの化合物(1)の成分を、成人毎に1日当たり単回用量または多回用量で投与し、化合物(A)〜(U)の成分の有効用量を、上記の文献を参照することによって決定し得るように、成人毎に1日当たり単回用量または多回用量で投与する。上記で考察するように、化合物(1)の成分および化合物(A)〜(U)の成分の用量(複数可)は、単一の組成物として一緒に、または別々に投与することができる。
【0054】
本発明による別のレジメンにおいて、化合物(1)、もしくは薬学的に許容されるその塩の初回投与量、および/または化合物(A)〜(U)、もしくは薬学的に許容されるその塩の初回投与量を、治療の最初の投与用量のために投与する。初回投与量は、治療におけるそれに続く投与のために投与される投与量より高い。好ましくは、初回投与量は、治療においてそれに続く投与における量の約2倍である(重量で)。例えば、一実施形態において、1日当たり1回または2回、化合物(1)の最初の用量を、約240mgの投与量で投与し、化合物(1)のそれに続く用量を、約120mgの投与量で投与する。別の実施形態において、1日当たり1回または2回、化合物(1)の最初の用量を、約480mgの投与量で投与し、化合物(1)のそれに続く用量を、約240mgの投与量で投与する。
【0055】
初回用量レジメンのさらなる実施形態において、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩を、好ましくは1日1回投与(QD投与)によって、1日目に480mgの初回用量、およびそれに続く日に240mg/日を投与する。この初回用量レジメンの代替において、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の初回用量は、1日2回(BID投与)、最初の用量は480mgであり、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩のそれに続く用量は240mgである。この初回用量レジメンの別の代替において、好ましくは1日1回投与によって、1日目の化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の初回用量は、240mgであり、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩のそれに続く1日用量は、120mg/日である。
この初回用量概念を使用することによって、明らかな利点は、それによって患者の系において活性薬物の定常状態レベルを、別の方法で達成されるであろうより早く達成することが可能なことである。2倍にした初回用量を使用することによって達成される血中濃度は、2倍用量で達成されるであろうものと同じであるが、2倍用量のそれに続く連続投与に伴う安全性の危険を伴わない。治療において活性薬物の標的とする定常状態レベルにより早く到達することはまた、耐性ウイルス株が現れる確率がより低いように、治療の初めに薬物圧力が不十分である可能性がより少ないことを意味する。
任意の特定の患者についての特定の最適な投与量および治療レジメンは、当然ながら、年齢、体重、身体全体の健康状態、性別、食事、投与時間、排せつ率、薬物の組合せ、感染症の重症度および経過、感染症に対する患者の素質、ならびに治療を行う医師の判断を含めた種々の要因によって決まる。一般に、化合物は、有害または害のある副作用をもたらさずに抗ウイルス的に有効な結果を一般に可能にする濃度レベルで投与することが最も望ましい。
【0056】
本発明の特定の実施形態には、哺乳動物に、治療有効量の下記の組合せのいずれかを投与することを含む、哺乳動物においてHCV感染症を治療する方法が含まれる。
(1)化合物(1)+化合物(A)
(2)化合物(1)+化合物(B)
(3)化合物(1)+化合物(C)
(4)化合物(1)+化合物(D)
(5)化合物(1)+化合物(E)(PSI−7851のラセミ化合物またはPSI7977の光学的に純粋な形態として)
(6)化合物(1)+化合物(F)
(7)化合物(1)+化合物(G)
(8)化合物(1)+化合物(H)
(9)化合物(1)+化合物(I)
(10)化合物(1)+化合物(J)
(11)化合物(1)+化合物(K)
(12)化合物(1)+化合物(L)
(13)化合物(1)+化合物(M)
(14)化合物(1)+化合物(N)
(15)化合物(1)+化合物(O)
(16)化合物(1)+化合物(P)
(17)化合物(1)+化合物(Q)
(18)化合物(1)+化合物(R)
(19)化合物(1)+化合物(S)
(20)化合物(1)+化合物(T)
(21)化合物(1)+化合物(U)
【0057】
上記の実施形態の各々において、化合物(1)および/または他の抗HCV化合物(A)〜(U)は、その薬学的に許容される塩の形態でよい。上記のように、化合物(1)の好ましい形態は、結晶形態でもよいナトリウム塩である。したがって、本発明の18のさらなる個々の実施形態には、上記の18の実施形態のいずれかが含まれ、化合物(1)は、そのナトリウム塩の形態である。
化合物(1)の成分、化合物(A)〜(U)の成分、および任意選択でさらなる抗HCV剤の成分の用量を典型的には、単一または別々の医薬組成物によって、選択された投与量レベルで患者に投与する。例えば、本発明に用いてもよい様々なタイプの組成物の形態の例について、米国特許第6,323,180号および同第7,585,845号の記載を参照されたい。医薬組成物(複数可)は、経口的、非経口的に、または埋込レザバーを介して投与し得る。非経口という用語には、本明細書において使用する場合、皮下、皮内、静脈内、筋内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、および病巣内の注射または注入技術が含まれる。経口投与が好ましい投与であり、その実施形態において、併用療法において全ての薬剤は経口的に投与される。
【0058】
本発明の医薬組成物は、任意の従来の無毒性の薬学的に許容される担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを含有し得る。場合によっては、製剤のpHを薬学的に許容される酸、塩基または緩衝液で調節し、製剤化された化合物またはその送達形態の安定性を増強し得る。
【0059】
医薬組成物は、無菌の注射可能な調製品の形態、例えば、無菌の注射可能な水性または油性懸濁剤でよい。この懸濁剤は、適切な分散化剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術によって製剤化し得る。
医薬組成物はまた、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩、およびさらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数、または薬学的に許容されるその塩、および任意選択でさらなる抗HCV剤の別々の経口医薬組成物、あるいはこれらの成分の合わせた経口医薬組成物の形態でよい。経口医薬組成物は、これらに限定されないが、錠剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)(液体入りカプセル剤を含めた)、ならびに水性懸濁剤および溶液剤を含めた、任意の経口的に許容される剤形で経口的に投与し得る。経口使用のための錠剤の場合、通常使用される担体には、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムなど)をまた典型的には加える。カプセル剤形態での経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。使用することができるソフトゼラチンカプセル剤の例には、EP649651B1および米国特許第5,985,321号に開示されているものが含まれる。水性懸濁液が経口的に投与されるとき、活性成分を、乳化剤および懸濁化剤と合わせる。必要に応じて、特定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を加え得る。
【0060】
上記の製剤および組成物のための他の適切なビヒクルまたは担体は、標準的な医薬テキスト、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19編、Mack Publishing Company、Easton、Penn.、1995に見出すことができる。
【0061】
化合物(1)に関して、1つの製剤タイプは、液体または半固体入りカプセル剤による経口投与に適した脂質をベースとする医薬組成物である。この脂質をベースとする医薬組成物は、自己乳化薬物送達系(本明細書において下記で「SEDDS」)の1タイプを構成し、許容される安定性およびバイオアベイラビリティーを示し、したがって化合物(1)の治療的送達に特に適している。下記は、このような系において使用するための、化合物(1)のナトリウム塩の液体充填製剤の1つの一般例である。
(a)約10%〜20重量%のナトリウム塩としての化合物(1);
(b)約40%〜50重量%のカプリル酸およびカプリン酸脂肪酸のモノグリセリド;カプリル酸およびカプリン酸脂肪酸のジグリセリド、ならびにこれらの混合物から選択される薬学的に許容される脂質;
(c)約25%〜35重量%のトコフェリルポリエチレングリコールスクシナート、ポリオキシル40水添ヒマシ油、およびポリオキシル35ヒマシ油、ならびにこれらの混合物から選択される薬学的に許容される親水性界面活性剤;
(d)約5%〜10重量%のプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、水、およびこれらの混合物から選択される薬学的に許容される親水性溶剤。
この充填組成物は、例えば、液体成分、例えば、薬学的に許容される脂質(複数可)、界面活性剤(複数可)および溶剤(複数可)を一緒に混合することと、得られた混合物を必要に応じて任意選択で加熱し、混合物の成分の1つまたは複数を十分に溶融させることと、化合物(1)をこのように得られた混合物に加え、化合物(1)の全てまたは実質的に全てが可溶化するまで、例えば、溶液が視覚的に透明となるまでさらに混合することとを含む方法によって従来の態様で調製し得る。次いで、このように得られた充填溶液を、公知の製造技術によって、所望の剤形、例えば、ハードシェルまたはソフトゲルカプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)を含めたカプセル剤に製剤化する。SEDDSカプセル製剤の例を、本明細書において例の項に提供する。
【0062】
化合物(1)の結晶塩形態を含有する組成物が、液体ビヒクル中で、例えば、経口投与または注射のための溶液剤または懸濁剤として(例えば、液体入りカプセル剤中を含めた)製剤されるとき、塩はその結晶性の性質を喪失する。それにも関わらず、最終の液体をベースとする医薬組成物は、化合物(1)の塩を含有し、したがってこのような塩を含有する組成物は、本発明に包含される別々の実施形態と考えられる。上記で考察するように、安定的な結晶形態の塩、特にナトリウム塩を調製する方法を使用することによって、塩の形態を使用した効率的な医薬加工および医薬製剤製造が容易にされる。
別の実施形態は、HCV感染症の治療のための、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩を含有する1つもしくは複数の薬学的に許容される剤形と、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の投与を指示する説明書と、さらなるHCV阻害化合物(A)〜(U)の1つもしくは複数、または薬学的に許容されるその塩とを含むパッケージを対象とする。化合物(1)の用量は典型的には、個々の医薬品剤形、例えば、錠剤またはカプセル剤として含まれ、パッケージは典型的には、これらの剤形を含有する箱である(剤形自体は、パッケージ中に含有されるボトルまたはブリスターパック中に含有されてもよい)。説明書は典型的にはパッケージ中に含有される添付文書に含まれるが、また外側のパッケージ自体の上および/または内側のパッケージング上に書かれていてもよい。本発明のさらなる個々のパッケージの実施形態には、上記のパッケージが、HCV感染症の治療のための、化合物(1)、または薬学的に許容されるその塩、および化合物(A)〜(U)から選択されるさらなるHCV阻害化合物の1つのみ、または薬学的に許容されるその塩の投与を指示する説明書を含有する場合が含まれる。
【0063】
特性決定の方法
1.X線粉末回折
X線粉末回折分析を、Bruker AXS、Inc.、Madison、WIから入手可能なBruker AXS X線粉末回折計モデルD8DiscoverでCuKα照射を使用して行った。機器は、高精度長焦点X線管を備えている。管のパワーは、40kVおよび40mAに設定した。0.6mm出口スリット、0.4°ソーラースリット、LiFフラット結晶回折ビームモノクロメーターおよびNaIシンチレーション検出器を使用してGobel Mirrorによって平行ビームモードで機器を操作した。1°2θの管角度を使用して、検出器スキャンを行った。ステップスキャンは、ステップ毎に0.05°、ステップ毎に4秒で2〜40°2θで行った。石英の参照標準を使用して、機器のアライメントをチェックした。ゼロバックグラウンド石英ホルダーをファイリング(filing)することによって、試料を分析のために調製した。
【0064】
2.溶解性および形態変化の研究
タイプAまたはナトリウム塩形態としての化合物(1)の溶解性を、様々な非水性溶媒中で調査した。過剰な化合物(1)を、Teflonで内側を覆ったキャップを有する琥珀色のねじ蓋バイアルにおいて0.25ml〜1.0mlの賦形剤に加えることによって溶液を調製した。試料を、室温で4日まで回転させた。遠心分離し(エッペンドルフモデル5415C卓上型遠心機で14,000rpm)、0.45μmのPVDFフィルターにかけることによってサンプリングを行った。溶解性を決定するために、濾液をHPLC分析にかけた。勾配または定組成条件を使用して、Agilent1100でHPLC分析を行った。両方の方法は、アセトニトリル/水(各々、0.1%トリフルオロ酢酸(Triflouroacetic Acid)を有する)およびACE C−18固定相を使用し、カラム加熱を40〜45℃で維持した。検出の波長は、220nmまたは264nmに設定した。湿った固体を集め、XRPDによって形態変化(安定性)について分析した。
【0065】
形態変化研究のためのXRPD分析を、Bruker AXS、Inc.、Madison、WIから入手可能なBruker AXS X線粉末回折計モデルD8DiscoverまたはD8AdvanceでCuKα照射を使用して行った。管のパワーは、40kVおよび40mA、または40kVおよび30mAに設定した。0.6mm出口スリット、0.4°ソーラースリットおよびLiFフラット結晶回折ビームモノクロメーターを使用し、または1mm発散スリット、0.12mmソーラースリットを使用して、機器(複数可)を、Gobel Mirrorによって平行ビームモードで操作した。1mm発散スリット、0.12mmソーラースリットによるいくつかの分析のために、D8AdvanceによるBragg−Brentano配置をまた使用した。各配置/機器は、NaIシンチレーション検出器を用いた。1°2θの管角度を使用して検出器スキャンを行った。ステップ毎に0.05°、ステップ毎に0.6秒または4秒で2〜35°または40°2θでステップスキャンを行った。石英の参照標準を使用して、機器のアライメントをチェックした。ゼロバックグラウンド石英ホルダーまたはNiめっきホルダーをファイリングすることによって、試料を分析のために調製した。
本発明をより十分に理解するために、下記の例を記載する。これらの例は本発明の実施形態を例示する目的のためであり、本発明の範囲を決して制限するものと解釈されない。下記の例において使用される反応物は、本明細書に記載のように得てもよく、または本明細書に記載されていない場合、それ自体が市販であるか、もしくは当技術分野において公知の方法によって市販の材料から調製してもよい。特定の出発物質は、例えば、国際出願第WO00/09543号、同第WO00/09558号、同第WO00/59929号、米国特許第6,323,180号、同第6,608,027号、同第7,514,557号および同第7,585,845号に記載されている方法によって得てもよい。
他に特定しない限り、溶媒、温度、圧力、および他の反応条件を、当業者は容易に選択し得る。典型的には、反応進行は、必要に応じて高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニターしてもよく、中間体および生成物は、シリカゲル上のクロマトグラフィーによって、および/または再結晶によって精製してもよい。
【実施例】
【0066】
化合物(1)および化合物(1)のNa塩の調製方法
アモルファス化合物(1)の調製方法は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,323,180号、同第7,514,557号および同第7,585,845号に見出すことができる。下記の例1〜5は、本発明に使用し得るさらなる形態の化合物(1)を調製する方法を提供する。
【0067】
例1−化合物(1)のタイプA多形の調製
アモルファス化合物(1)(バッチ7、13.80g)を、1000mlの三つ口フラスコに加えた。無水エタノール(248.9g)を、フラスコに加えた。撹拌している間、フラスコの内容物を摂氏60度/時間〜摂氏約74度で加熱した。(固体は、摂氏74度で溶解しない)。次いで、水(257.4g)をこのように得られたスラリーに直線的に4時間に亘り加え、その間撹拌し、温度を摂氏74度に維持した。水の添加が完了した後、温度を摂氏8度/時間で周囲温度に直線的に低下させ、次いで、撹拌しながら周囲温度で6時間保持した。このように得られた固体を、濾過によって集め、50mlの1/1(w/w)EtOH/水で洗浄した。湿った固体を、ケークを通してN2を吸引することによって漏斗上で30分間乾燥させた。(この試料のXRPD分析は、パターンがEtOH溶媒和物と同様であることを示す)。次いで、固体を、摂氏65〜70度で真空(P=25(Hg))および窒素ブリード下にて1.5時間乾燥させた。このように得られた固体(12.6g、95.5%補正収率)を、XRPDによってタイプA化合物(1)であると確認した。
【0068】
例2−化合物(1)のナトリウム塩の調製−方法1
2.1gの化合物(1)のアモルファスナトリウム塩および8.90gのアセトンを、バイアルに加え、周囲温度で3時間撹拌した。スラリーは濾過した母液であり、このように得られた固体を20分間窒素流下で20分間乾燥させた。固体として1.51gの化合物(1)の結晶性ナトリウム塩を集めた。
【0069】
例3−化合物(1)のナトリウム塩の調製−方法2
15.6gの化合物(1)のタイプA、175mlのアセトンおよび3.6mlの水を、250mlの反応器に加え、摂氏53度に加熱し、固体を溶解した。10.0NのNaOH(900ul)を反応器に加え、溶液にタイプAを添加した。種晶添加された溶液を摂氏53度で10分間撹拌した。第2の900ul部分のNaOH(10.0N)を加え、系を摂氏53度で30分間撹拌し、それによってスラリーが発生した。スラリーを1時間当たり摂氏15度の冷却速度で摂氏19度に冷却し、摂氏19度で一晩保持した。最終的なこのように得られたスラリーを濾過し、湿った固体を15mlのアセトンで洗浄した。固体を摂氏52度で真空下にて窒素流によって1時間乾燥させ、次いで固体を実験室の空気に1時間曝露させた。12.1gの化合物(1)の結晶性ナトリウム塩の固体を集めた。
【0070】
例4−化合物(1)のナトリウム塩の調製−方法3
25.4Kgのアモルファス化合物(1)、228LのTHFおよび11.1Kgの10wt%NaOH(水溶液)を、反応器に加えた。成分を摂氏25度で混合し、全ての固体を溶解した。このように得られた溶液を濾過し、反応器およびフィルターを23LのTHFで洗浄した。摂氏65度で常圧蒸留を使用して、180Lの溶媒を除去した。195LのMIBKを加え、摂氏約44度で減圧蒸留によって166Lの溶媒を除去した。161LのMIBKおよび0.41Kgの水を反応器に加え戻し、内容物を摂氏70度に加熱した。255gの化合物(1)のナトリウム塩種晶を摂氏70度で加え、1.42Lの水を1.5時間に亘り加えた。水の添加後、スラリーを摂氏70度に45分間保持し、次いで1時間に亘り摂氏45度に冷却した。このように得られたスラリー化物を濾過し、約0.8重量%の水を含有する64LのMIBKで洗浄した。湿ったケークを摂氏55度で乾燥させ、約25Kgの化合物(1)の結晶性ナトリウム塩を得た。
【0071】
例5−化合物(1)のナトリウム塩の調製−方法4
2.00gのアモルファス化合物(1)、9.96gのTHFおよび0.11gの水を反応器に加え、周囲温度で撹拌し、固体を溶解した。エタノール中の0.820mlの21重量%NaOEtを、滴下で添加し、その間に溶液を撹拌し、溶液Aを得た。15.9gのn−BuAcおよび160ulの水を第2の反応器に加え、摂氏65度に加熱した(溶液B)。2.56gの溶液Aを溶液Bに摂氏65度で加え、このように得られた混合物に、40mgの化合物(1)のナトリウム塩種晶を添加した。種晶添加した混合物を摂氏65度で45分間熟成させた。2.56gの溶液Bを溶液Aに加え、4つの別々の間隔で45分間熟成させた。最終的な添加および熟成の後、スラリーを摂氏50度に1時間に亘り冷却し、濾過した。湿ったケークを、0.5重量%の水を含有する6mlのn−BuAcで洗浄した。最終的な固体を、窒素パージを使用して、真空下にて摂氏50度で乾燥させた。化合物(1)の結晶性ナトリウム塩の固体を、集めた。
【0072】
例6−化合物(1)のナトリウム塩の調製−方法5
室温で、ナトリウムエトキシドのエタノール(21重量%;306ml)溶液を、撹拌しながら、化合物(1)(745g)のTHF(2000ml)および水(76.5ml)溶液に加えた。30分間撹拌した後、混合物を濾過し、フィルターをTHF(85ml)で洗浄した。このように得られた溶液を65℃に温め、30分以内に濾過した酢酸ブチル(6640ml、任意選択で65℃に事前に温める)で処理した。種結晶(0.50g)を加え、混合物を65℃で2時間撹拌し、その間約30分後に結晶化が開始した。懸濁液を1時間以内で50℃に冷却し、この温度でさらに1時間撹拌した。表題化合物を濾過によって単離し、濾過した酢酸ブチル(765ml、任意選択で50℃に事前に温める)で洗浄し、65℃で約16時間乾燥させ、化合物(1)の結晶性ナトリウム塩(約725g)を得た。
【0073】
化合物(1)のNa塩カプセル製剤
3つの異なる液体充填製剤を製造し、それらの2つはソフトゲルカプセル剤(SGC)にカプセル化し、1つは、ハードシェルカプセル剤(HSC)にカプセル化した。
例7−ソフトゲルカプセル製剤#1
液体充填製剤の組成
【0074】
【表2】

2つの特定のソフトゲルカプセル薬物製品製剤を、上記の一般の製剤#1によって調製した(40mgの生成物および120mgの生成物)。
【0075】
【表3】

142.30mgの化合物(1)のNa塩は、40.0mgの活性部分と同等である。
2126.90mgの化合物(1)のNa塩は、120.0mgの活性部分と同等である。
3窒素は加工助剤として使用し、最終生成物中には現れない。
4乾燥および最終加工の前のカプセルシェルの概ねの重量は、280mgである。乾燥および最終加工の後のカプセルシェルの概ねの重量は、198mgである。
5乾燥および最終加工の前のカプセルシェルの概ねの重量は、590mgである。乾燥および最終加工の後のカプセルシェルの概ねの重量は、404mgである。
【0076】
例8−ソフトゲルカプセル製剤#2
液体充填製剤の組成
【0077】
【表4】

特定の150mgのソフトゲルカプセル薬物製品製剤を、上記の一般式によって調製した。
【0078】
例9−ハードシェルカプセル製剤#3
液体充填製剤の組成
【0079】
【表5】

特定の150mgのハードシェルカプセル剤薬物製品製剤を、上記の一般式によって調製した。
製剤1〜3の調製
バルクの充填製造のために混合時間が一貫し、適度に短いように、薬物物質をジェットミルにかけ、大きな凝集物を除去する。薬物物質の標的粒度分布は、Sympatecによって測定して、x90(v/v)を10ミクロン以下に、およびx98(v/v)を20ミクロン以下に減少させることである。薬物物質を加える前に、充填製剤中の全ての賦形剤を、混合容器中で合わせ、均一となるまで混合する。薬物物質の添加の後、目視検査によって充填溶液が透明となるまで混合を続ける。調製に亘って、標準的技法として、充填溶液を覆う窒素ブランケットを使用する。充填溶液をフィルターに通し、外来性粒子を除去する。標準的なソフトゼラチンまたはハードゼラチンカプセル剤技術およびインプロセスコントロールを利用して、カプセル剤への濾過したバルクの充填材料のカプセル化を行う。充填カプセル剤を乾燥させ、次いで包装の前に仕上げ/洗浄液で洗浄し、輝く薬学的にエレガントなカプセル剤を生じさせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に、治療有効量の
化合物(1)
【化1】

または薬学的に許容されるその塩、
および、別々にまたは一緒に、化合物(A)〜(U)
(A)BMS−790052、
【化2】

(B)R7128、
【化3】

(C)フィリブビル、
【化4】

(D)ANA−598、
(E)PSI−7851、もしくはその単一の異性体形態、
【化5】

(F)IDX184、
(G)VX−222、
(H)MK−3281、
【化6】

(I)AZD7295、
(J)GS−9190、
【化7】

(K)ABT−333、
(L)ABT−072、
(M)VX−759、
【化8】

(N)アリスポリビル(alisporavir)、
【化9】

(O)NIM−811、
【化10】

(P)SCY−635、
【化11】

(Q)BMS−791325、
(R)BMS−824393、
(S)PSI−938、
(T)PPI−461、および
(U)INX−189
からなる群から選択される少なくとも1種のさらなるHCV阻害化合物、または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、哺乳動物においてC型肝炎ウイルス感染症を治療する方法。
【請求項2】
さらなるHCV阻害化合物が、BMS−790052
【化12】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらなるHCV阻害化合物が、R7128
【化13】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらなるHCV阻害化合物が、フィリブビル
【化14】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらなるHCV阻害化合物が、MK−3281
【化15】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらなるHCV阻害化合物が、GS−9190
【化16】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらなるHCV阻害化合物が、VX−759
【化17】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらなるHCV阻害化合物が、アリスポリビル(alisporavir)
【化18】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
さらなるHCV阻害化合物が、NIM−811
【化19】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
さらなるHCV阻害化合物が、SCY−635
【化20】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
HCV感染症の治療のための、化合物(1)
【化21】

または薬学的に許容されるその塩を含有する1つもしくは複数の薬学的に許容される剤形と、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の投与を指示する説明書と、化合物(A)〜(U)
(A)BMS−790052、
【化22】

(B)R7128、
【化23】

(C)フィリブビル、
【化24】

(D)ANA−598、
(E)PSI−7851、もしくはその光学的に純粋な形態、
【化25】

(F)IDX184、
(G)VX−222、
(H)MK−3281、
【化26】

(I)AZD7295、
(J)GS−9190、
【化27】

(K)ABT−333、
(L)ABT−072、
(M)VX−759、
【化28】

(N)アリスポリビル(alisporavir)、
【化29】

(O)NIM−811、
【化30】

(P)SCY−635、
【化31】

(Q)BMS−791325、
(R)BMS−824393、
(S)PSI−938、
(T)PPI−461、および
(U)INX−189
からなる群から選択される少なくとも1種のさらなるHCV阻害化合物、または薬学的に許容されるその塩とを含むパッケージ。
【請求項12】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、BMS790052
【化32】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項13】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、R7128
【化33】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項14】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、フィリブビル
【化34】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項15】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、MK−3281
【化35】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項16】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、GS−9190
【化36】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項17】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、VX−759
【化37】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項18】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、アリスポリビル
【化38】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項19】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、NIM−811
【化39】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項20】
さらなるHCV阻害化合物が、HCV感染症の治療のための、SCY−635
【化40】

または薬学的に許容されるその塩である、請求項11に記載のパッケージ。

【公表番号】特表2013−514276(P2013−514276A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543421(P2012−543421)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001935
【国際公開番号】WO2011/072370
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】