説明

HCV複製阻害の標的

HCV複製に関与する肝臓発現タンパク質は、HCVレプリコン活性に対する宿主細胞タンパク質発現阻害の影響を測定する方法を使用して同定された。同定されたタンパク質およびコードしている核酸は、それぞれが、HCV複製を阻害するため、およびHCV複製を阻害する化合物の能力を評価するための標的となる。HCV複製を阻害する化合物には、同定されたタンパク質を標的化する化合物および同定されたタンパク質をコードしている核酸を標的化する化合物が含まれる。HCV複製を阻害するための標的として同定された宿主遺伝子のいくつかはまた、HIV複製を阻害するための標的であることが発見された。HIVおよびHCV複製の両方を阻害するための標的となる能力は、このような同定遺伝子およびコード化タンパク質が様々なウイルスの複製を阻害するための標的となることができ、特定ウイルスの複製の阻害に限定されないことを示している。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、それぞれ参照により本明細書に組み込んだ2005年6月22日出願の米国特許仮出願第692821号および2005年8月19日出願の米国特許仮出願第710006号の優先権を主張する。
【0002】
本出願で引用した参考文献は、特許請求した本発明の先行技術であると自認しない。
【0003】
HCVに曝露すると、わずかな症例で顕性急性疾患が生じるが、ほとんどの場合、ウイルスは慢性感染を確立して肝臓の炎症を引き起こし、ゆっくりと肝不全および肝硬変に進行する(Iwarson、FEMS Microbiol.Rev.、14:201〜204、1994)。疫学的調査によって、HCVは肝細胞癌病理発生に重要な役割を果たすことが示されている(Kew、FEMS Microbiol.Rev.、14:211〜220、1994、Alter、Blood、85:1681〜1695、1995)。
【0004】
HCVゲノムは、アミノ酸約300個の前駆体ポリタンパク質をコードする長さ約9.5kbの1本鎖RNAから構成される(Choo他、Science、244:362〜364、1989、Choo他、Science、244:359〜362、1989、Takamizawa他、J.Virol、65:1105〜1113、1991)。HCVポリタンパク質は、ウイルスタンパク質をC−E1−E2−p7−NS2−NS3−NS4A−NS4B−NS5A−NS5Bの順番で含有する。
【0005】
個々のウイルスタンパク質は、HCVポリタンパク質のタンパク質分解により生成される。宿主細胞プロテアーゼは、推定構造タンパク質C、E1、E2およびp7を放出し、アミノ酸810でNS2のN末端を形成する(Mizushima他、J.Virol.、68:2731〜2734(1994);Hijikata他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:10773〜10777、1993)。
【0006】
非構造タンパク質NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bはおそらく、ウイルス複製機構を形成し、ポリタンパク質から放出される。NS2およびNS3のN末端に関連する亜鉛依存性プロテアーゼは、NS2とNS3との間の開裂に関与する(Grakoui他、J.Virol.、67:1385〜1395、1993、Hijikata他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:10773〜10777、1993)。
【0007】
NS3のN末端ドメイン中に位置する別のセリンプロテアーゼは、NS3/NS4A、NS4A/NS4B、NS4B/NS5AおよびNS5A/NS5B接合部でのタンパク質分解開裂に関与している(Bartenschlager他、J.Virol.、67:3835〜3844、1993、Grakoui他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:10583〜10587、1993、Tomei他、J.Virol.、67:4017〜4026、1993)。RNA誘発NTPアーゼおよびヘリカーゼ活性は、NS3のC末端に位置する。
【0008】
NS4AはNS3プロテアーゼ活性のコファクターとなる(Failla他、J.Virol.、68:3753〜3760(1994);DeFrancesco他、米国特許第5739002号明細書)。
【0009】
NS5Aはインターフェロン耐性を与える高リン酸化タンパク質である(Pawlotsky.J.Viral Hepat.Suppl.、1:47〜48、1999)。
【0010】
NS5BはRNA依存性RNAポリメラーゼとなる(DeFrancesco他、1996年11月28日公開WO96/37619、Behrens他、EMBO 15:12〜22、1996;Lohmann他、Virology 249:108〜118(1998))。
【発明の開示】
【0011】
HCV複製に関与する肝臓発現タンパク質は、HCVレプリコン活性に対する宿主細胞タンパク質発現阻害の影響を測定する方法を使用して同定された。同定されたタンパク質およびコードしている核酸は、それぞれが、HCV複製を阻害するための、および化合物がHCV複製を阻害する能力を評価するための標的となる。HCV複製を阻害する化合物には、同定タンパク質を標的とする化合物および同定タンパク質をコードする核酸を標的とする化合物が含まれる。HCV複製を阻害する標的として同定された宿主遺伝子のいくつかはまた、HIV複製を阻害するための標的であることが発見された。HIVおよびHCV複製の両方を阻害する標的となる能力は、このような同定遺伝子およびコードされたタンパク質が様々な種類のウイルスの複製を阻害するための有用な標的となることができ、特定のウイルス複製の阻害に限定されないことを示している。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様は、低分子干渉RNA(siRNA)ライブラリーを使用して、ウイルス(例えば、HCV)複製に関与する宿主細胞因子を同定する方法を説明する。この方法は、異なる細胞因子を標的化してウイルス(例えば、HCV)複製を阻害するsiRNAライブラリーの能力を測定するステップを含み、このsiRNAライブラリーには、従来はウイルス(例えば、HCV)複製に関与しなかった異なる宿主因子を少なくとも10個の異なるsiRNAが標的化することが含まれる。
【0013】
「ライブラリー」は、実験の一部としてスクリーニングされる異なるsiRNAの集合を含有する。実験結果は、ほぼ同一の時点または限定された期間にわたって得られる。様々な実施形態では、限定された期間は、約1週間または約1日の範囲内である。好ましくは、このライブラリーの構成要素は、同時に試験される。
【0014】
異なる宿主細胞因子を標的とするsiRNAの一定数を含むライブラリーについて記載することで、異なるsiRNAの少なくとも一定数が使用されることを表す。様々な実施形態では、このライブラリーは100、500または1000個の構成要素を含み、かつ/または異なる構成要素のそれぞれは、キナーゼまたはホスファターゼである。他の実施形態では、このライブラリーは5000、10000または20000個の構成要素を含み、ゲノム規模のライブラリーであると考えられる。
【0015】
本発明の他の態様は、化合物がウイルスの複製を阻害する能力を評価する方法を記載する。この方法は、
(a)AKAP8(配列番号11)、ALK(配列番号67)、ATM(配列番号68)、C14ORF24(配列番号69)、DGKD(配列番号15)、DGKZ(配列番号70)、DUSP19(配列番号49)、DUSP22(配列番号71)、DUSP6(配列番号9)、DUT(配列番号51)、DYRK2(配列番号72)、DYRK4(配列番号53)、ENPP5(配列番号73)、EPHA2(配列番号13)、FGFR2(配列番号74)、FHIT(配列番号75)、FRK(配列番号76)、GAK(配列番号55)、GCK(配列番号19)、MAP2K3(配列番号77)、NME4(配列番号1)、PANK1(配列番号78)、PCK1(配列番号3)、PFKL(配列番号63)、PIK4CA(配列番号21)、PRKWNK3(配列番号5)、PRPS1L1(配列番号79)、PSKH1(配列番号57)、PTK9L(配列番号80)、SOCS5(配列番号59)、SRPK1(配列番号17)、STK16(配列番号7)、STK35(配列番号81)、TAF1(配列番号82)、TBK1(配列番号83)、TJP2(配列番号84)、TNK1(配列番号61)、TPK1(配列番号85)、TRIB33(配列番号86)、TRPM7(配列番号87)、VRK(配列番号88)、ALPPL2(配列番号89)、AP4M1(配列番号23)、CAPZA1(配列番号25)、DNAH5(配列番号27)、DOM3Z(配列番号90)、FTCD(配列番号29)、PDIA3(配列番号31)、MDM4(配列番号91)、WDR66(配列番号92)、NOP5/NOP58(配列番号33)、NSUN6(配列番号93)、PAFAH1B1(配列番号35)、PARVB(配列番号37)、PHEX(配列番号39)、PKN1(配列番号44)、POLR2J2(配列番号41または65)、RAB20(配列番号43)、SYNPR(配列番号45)およびTRPM5(配列番号47)からなる群から選択された標的タンパク質またはこの標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する、この標的タンパク質と実質的に類似のタンパク質に結合する、または、このようなタンパク質の活性もしくは発現を阻害する化合物を同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定した化合物がウイルス複製を阻害する能力を測定するステップと
を含む。
【0016】
標的タンパク質に結合する、またはその活性もしくは発現を阻害する化合物の最初の同定は、実験的に実験することができるか、あるいは化合物が同定された標的の1つに結合するか、または同定された標的の1つを阻害する能力に関する公知の情報に基づくことができる。様々な標的に関する情報は、科学文献から入手できる。この化合物は活性阻害を最初に同定されることが好ましい。
【0017】
好ましい実施形態では、ウイルスはHIVまたはHCVである。化合物のウイルス複製阻害能力の測定には、(1)化合物が結合するか、またはウイルス複製を阻害することができることを最初に同定すること、あるいは(2)化合物がウイルス複製を阻害する範囲を測定することのいずれか、または両方が含まれる。ウイルス複製の阻害は、定量的または定性的測定法で測定することができる。例えば、化合物のHCV複製阻害能力の測定には、(1)化合物が結合するか、またはHCV複製を阻害することができることを最初に同定すること、あるいは(2)化合物がHCV複製を阻害する範囲を測定することのいずれか、または両方が含まれる。
【0018】
参照タンパク質配列との配列同一性は、タンパク質配列と参照配列とを整列させ、対応する領域内の同一アミノ酸の数を測定することによって決定される。この数を参照配列(例えば、配列番号1)内のアミノ酸の総数で除し、次に100を乗し、最も近い整数に四捨五入する。
【0019】
本発明の他の態様は、HCV複製を阻害する方法を記載する。この方法は、AKAP8(配列番号11)、ALK(配列番号67)、ATM(配列番号68)、C14ORF24(配列番号69)、DGKD(配列番号15)、DGKZ(配列番号70)、DUSP19(配列番号49)、DUSP22(配列番号71)、DUSP6(配列番号9)、DUT(配列番号51)、DYRK2(配列番号72)、DYRK4(配列番号53)、ENPP5(配列番号73)、EPHA2(配列番号13)、FGFR2(配列番号74)、FHIT(配列番号75)、FRK(配列番号第76)、GAK(配列番号55)、GCK(配列番号19)、MAP2K3(配列番号77)、NME4(配列番号1)、PANK1(配列番号78)、PCK1(配列番号3)、PFKL(配列番号63)、PIK4CA(配列番号21)、PRKWNK3(配列番号5)、PRPS1L1(配列番号79)、PSKH1(配列番号57)、PTK9L(配列番号80)、SOCS5(配列番号59)、SRPK1(配列番号17)、STK16(配列番号7)、STK35(配列番号81)、TAF1(配列番号82)、TBK1(配列番号83)、TJP2(配列番号84)、TNK1(配列番号61)、TPK1(配列番号85)、TRIB3(配列番号86)、TRPM7(配列番号87)、VRK(配列番号88)、ALPPL2(配列番号89)、AP4M1(配列番号23)、CAPZA1(配列番号25)、DNAH5(配列番号27)、DOM3Z(配列番号90)、FTCD(配列番号29)、PDIA3(配列番号31)、MDM4(配列番号91)、WDR66(配列番号92)、NOP5/NOP58(配列番号33)、NSUN6(配列番号93)、PAFAH1B1(配列番号35)、PARVB(配列番号37)、PHEX(配列番号39)、PKN1(配列番号44)、POLR2J2(配列番号41または65)、RAB20(配列番号43)、SYNPR(配列番号45)およびTRPM5(配列番号47)からなる群から選択された標的タンパク質、またはこの標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する、この標的タンパク質と実質的に類似のタンパク質の活性もしくは発現を阻害する化合物の有効量を使用する。
【0020】
本発明の他の態様は、宿主におけるウイルス複製を阻害する方法を記載する。宿主は、AKAP8(配列番号11)、ALK(配列番号67)、ATM(配列番号68)、C14ORF24(配列番号69)、DGKD(配列番号15)、DGKZ(配列番号70)、DUSP19(配列番号49)、DUSP22(配列番号71)、DUSP6(配列番号9)、DUT(配列番号51)、DYRK2(配列番号72)、DYRK4(配列番号53)、ENPP5(配列番号73)、EPHA2(配列番号13)、FGFR2(配列番号74)、FHIT(配列番号75)、FRK(配列番号76)、GAK(配列番号55)、GCK(配列番号19)、MAP2K3(配列番号77)、NME4(配列番号1)、PANK1(配列番号78)、PCK1(配列番号3)、PFKL(配列番号63)、PIK4CA(配列番号第21)、PRKWNK3(配列番号5)、PRPS1L1(配列番号79)、PSKH1(配列番号57)、PTK9L(配列番号80)、SOCS5(配列番号59)、SRPK1(配列番号17)、STK16(配列番号7)、STK35(配列番号81)、TAF1(配列番号82)、TBK1(配列番号83)、TJP2(配列番号84)、TNK1(配列番号61)、TPK1(配列番号85)、TRIB3(配列番号86)、TRPM7(配列番号87)、VRK(配列番号88)、ALPPL2(配列番号89)、AP4M1(配列番号23)、CAPZA1(配列番号25)、DNAH5(配列番号27)、DOM3Z(配列番号90)、FTCD(配列番号29)、PDIA3(配列番号31)、MDM4(配列番号91)、WDR66(配列番号92)、NOP5/NOP58(配列番号33)、NSUN6(配列番号93)、PAFAH1B1(配列番号35)、PARVB(配列番号37)、PHEX(配列番号39)、PKN1(配列番号44)、POLR2J2(配列番号41または65)、RAB20(配列番号43)、SYNPR(配列番号45)およびTRPM5(配列番号47)からなる群から選択された標的タンパク質、または前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する、前記標的タンパク質と実質的に類似のタンパク質の活性もしくは発現を阻害できる化合物の有効量を与えられる。
【0021】
「宿主」とは、ウイルスに感染した、または感染することができる細胞、動物、またはヒトを示す。この化合物は、ウイルス感染前またはウイルスに感染した宿主に投与することができる。
【0022】
「含む(comprise)」などの制限のない用語では、追加的要素またはステップが許可される。「1個または複数」などの補助的用語は、追加的要素またはステップの可能性を強調するために制限のない用語を伴って、または伴わずに使用される。
【0023】
明白に記載していなければ、「a」または「an」などの用語は、1つを限定して指していない。例えば、「細胞(a cell)」は、「細胞(複数)(cells)」を除外しない。1個または複数などの補助的用語は、複数の存在の可能性を強調するために使用される。
【0024】
本発明のその他の特性および利点は、様々な実施例を含む本明細書で提供された追加的記載から明らかである。提供された実施例は、本発明の実施に有用な様々な成分および方法を例示する。この実施例は、特許請求された本発明を制限しない。本開示に基づいて、当業者は本発明の実施に有用なその他の成分および方法を同定し、使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
HCV複製を阻害するための異なる宿主細胞タンパク質標的は、HCVレプリコン活性に対する宿主細胞タンパク質発現阻害の影響を測定する方法を使用し、標的タンパク質の肝臓発現を考慮して同定された。HCV複製に関与することが同定されたタンパク質およびコードしている核酸は、それぞれが、HCV複製を阻害し、HCV複製を阻害する化合物の能力を評価するための標的となる。
【0026】
HCV複製を阻害する標的として同定された宿主遺伝子のいくつかはまた、HIV複製を阻害することが発見された。HIVおよびHCV両方の標的となる能力は、このような標的が様々な種類のウイルスの複製を阻害するための有用な標的となることができ、特定ウイルスの複製の阻害に限定されないことを示している。
【0027】
HIVおよびHCVなどのウイルス複製の阻害は、研究上および治療上意味がある。研究への適用例には、ウイルスの複製および発現、例えば、HCVまたはHIVの複製および発現を研究するための手段の提供が含まれる。治療への適用例には、患者におけるウイルス感染(例えば、HCVまたはHIV感染)を治療するか、または発症を阻害するために効果的であり、かつ許容できない毒性を有さないなどの適切な薬理学的特性を備えた化合物を使用することが含まれる。
【0028】
標的の同定
本明細書で同定されたHCV複製などのウイルス複製を阻害するための標的は、宿主細胞因子である。同定された宿主細胞因子をコードしている核酸配列、宿主因子および実質的に類似の核酸またはタンパク質は、それぞれが、HCV複製などのウイルス複製を阻害するための標的として使用することができる。表1に、HCV複製、場合によってはHIV複製を阻害するために同定された宿主細胞因子に関する情報を挙げる。
【0029】
表1に挙げた標的はまた、HCV以外のウイルスの複製を阻害するために有用であり得る。HCV標的のサブセットについて、HCV複製阻害を試験した。実施例13に記載したように、以下のPIK4AC、SYNPR、DYRK4、PFKL、GAK、DUSP19およびDUTの阻害は、HIV複製も阻害する。HCVおよびHIV複製の両方を阻害する能力は、様々なウイルス種の複製におけるこのような標的としての役割を示す。
【0030】
【表1】



【0031】
特定の同定された配列に実質的に類似の核酸およびタンパク質は、特定の同定された配列に対して少数の変化を有する配列である。実質的に類似の配列には、1種または複数の天然に生じる多形化または人工的変化を含有する配列が含まれる。
【0032】
実質的に類似のタンパク質配列は、参照配列と少なくとも95%同一である。実質的に類似のタンパク質配列はまた、参照配列より活性が著しく低くてはならない。著しく低い活性とは、同定されたタンパク質の活性の約80%未満である。
【0033】
様々な実施形態では、実質的に類似のタンパク質配列は、参照配列とは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸変化によって異なる。アミノ酸変化はそれぞれ独立して、付加、欠失および置換である。実質的に類似の配列は、天然に生じる変種であることが好ましい。
【0034】
実質的に類似の核酸は、参照配列と少なくとも95%同一である。実質的に類似の核酸配列は、参照配列によってコードされるタンパク質よりも活性が著しく低いタンパク質をコードしてはならない。著しく低い活性とは、同定されたタンパク質の活性の約80%未満である。
【0035】
参照核酸配列との配列同一性は、核酸配列と参照配列とを整列させ、対応する領域内の同一ヌクレオチドの数を測定することによって決定する。この数を参照配列(例えば、配列番号2)内のヌクレオチドの総数で除し、次に100を乗し、最も近い整数に四捨五入する。
【0036】
様々な実施形態では、実質的に類似の核酸配列は、参照配列とは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のヌクレオチド変化によって異なる。ヌクレオチド変化はそれぞれ独立して、付加、欠失および置換である。実質的に類似の配列は、天然に生じる変種であることが好ましい。
【0037】
タンパク質生成
タンパク質は、化学合成の技術およびそのタンパク質を生成する細胞からの精製に関する技術を含む当業界で周知の技術を使用して産生することができる。タンパク質の化学合成技術は、当業界で周知である(例えば、Vincent、Peptide and Protein Drug Delivery、New York、N.Y.、Decker、1990参照。)。組換えタンパク質産生および精製技術はまた、当業界で周知である(例えば、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley、1987〜2002参照。)。
【0038】
細胞からのタンパク質の獲得は、そのタンパク質を産生するための組換え核酸技術を使用すると容易である。タンパク質産生のための組換え核酸技術には、そのタンパク質をコードしている組換え遺伝子を細胞内に導入するか、または細胞内で産生させ、そのタンパク質を発現させることが含まれる。
【0039】
組換え遺伝子は、タンパク質発現のための調節因子と共にタンパク質をコードする核酸を含有する。組換え遺伝子は、細胞ゲノムに存在するか、または発現ベクターの一部であることができる。
【0040】
組換え遺伝子の一部として存在することができる調節因子には、タンパク質をコードしている配列に天然に関連した因子およびタンパク質をコードしている配列に天然では関連してない外来調節因子が含まれる。外来プロモーターなどの外来調節因子は、特定の宿主で組換え遺伝子を発現させるか、または発現レベルを増加させるのに有用であり得る。一般的に、組換え遺伝子に存在する調節因子には、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、場合によって存在するオペレーターが含まれる。真核細胞においてプロセシングされるために好ましい因子は、ポリアデニル化シグナルである。
【0041】
細胞における組換え遺伝子の発現は、発現ベクターを使用すると容易である。好ましくは、発現ベクターは、組換え遺伝子に加えて、宿主細胞での自発的複製のための複製起点、選択可能なマーカー、制限された数の有用な制限酵素部位、および高コピー数能力も含有する。発現ベクターの例は、クローニングベクター、修飾されたクローニングベクター、特異的に設計されたプラスミドおよびウイルスである。
【0042】
遺伝子コードの縮重のため、多数の様々なコード核酸配列を特定のタンパク質のコードに使用することができる。遺伝子コードの縮重は、ほとんどのアミノ酸がヌクレオチドトリプレットまたは「コドン」の様々な組み合わせによってコードされるゆえに生じる。アミノ酸は以下のようなコドンによってコードされる。
【0043】
A=Ala=アラニン:コドン GCA、GCC、GCG、GCU
C=Cys=システイン:コドン UGC、UGU
D=Asp=アスパラギン酸:コドン GAC、GAU
E=Glu=グルタミン酸:コドン GAA、GAG
F=Phe=フェニルアラニン:コドン UUC、UUU
G=Gly=グリシン:コドン GGA、GGC、GGG、GGU
H=His=ヒスチジン:コドン CAC、CAU
I=De=イソロイシン:コドン AUA、AUC、AUU
K=Lys=リシン:コドン AAA、AAG
L=Leu=ロイシン:コドン UUA、UUG、CUA、CUC、CUG、CUU
M=Met=メチオニン:コドン AUG
N=Asn=アスパラギン:コドン AAC、AAU
P=Pro=プロリン:コドン CCA、CCC、CCG、CCU
Q=Gln=グルタミン:コドン CAA、CAG
R=Arg=アルギニン:コドン AGA、AGG、CGA、CGC、CGG、CGU
S=Ser=セリン:コドン AGC、AGU、UCA、UCC、UCG、UCU
T=Thr=トレオニン:コドン ACA、ACC、ACG、ACU
V=Val=バリン:コドン GUA、GUC、GUG、GUU
W=Trp=トリプトファン:コドン UGG
Y=Tyr=チロシン:コドン UAC、UAU
組換え遺伝子産生、細胞への導入および組換え遺伝子発現の技術は、当業界では周知である。このような技術の例は、Ausubel、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley、1987〜2002およびSambrook他、「Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版」Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989などの参考文献に挙げられている。
【0044】
所望するならば、特定の宿主での発現は、コドン最適化によって促進することができる。コドン最適化には、より好ましいコドンの使用が含まれる。異なる宿主でのコドン最適化の技術は、当業界で周知である。
【0045】
標的タンパク質への結合、または標的タンパク質の活性もしくは発現を阻害する化合物の同定
標的タンパク質に結合する、またはその活性もしくは発現を阻害する化合物の最初の同定は、実験的に決定することができるか、あるいは標的に関する利用可能な情報に基づくことができる。タンパク質に結合するタンパク質、またはタンパク質活性を阻害する化合物は、タンパク質を対象とする。タンパク質発現を阻害する化合物は、タンパク質をコードしているか、または調節機能を有する核酸を対象とする。
【0046】
化合物がタンパク質に結合する能力は、競合および非競合結合アッセイなどの技術を使用して測定することができる。このようなアッセイは、例えば、結合を直接測定する標識化合物を使用して、または化合物に結合する検出可能な試薬を使用して結合を測定して、実施することができる。
【0047】
キナーゼおよびホスファターゼ活性をアッセイする技術は、当業界では周知である。例えば、NME4、PCK1、STK16、DUSP6、PIK4CA、PKWNK3、AKAP8、GCK、SRPK1、DGKD、DUT、GAK、PFKL、PSKH1、SOCS5、TNK1、DUSP19およびEPHA2の活性を測定するために使用できる技術を記載した文献には、Kowluru他、Arch.Biochem.Biophys.、398(2):160〜169、2002(NME4)、Mahoud他、Biochemica Biophysica Acta、1336:549〜556、1997(PCK1)、Ohta他、Biochem J.、350(Pt2):395〜404、2000(STK16)、Kim他、Biochemistry、42(51):15197〜207、2003(DUSP6)、Varsanyi他、Eur.J.Biochem.、179:473〜479、1989(PIK4CA)、Xu他、J.Biol.Chem.275:16795〜16801、2000、(PRKWNK3)、Akileswaran他、J.Biol.Chem.、18:276(20):17448〜54、2001(AKAP8)、Van Schaftingen他、Eur.J.Biochem.,179:119〜184、1989(GCK)、Aubol他、Proc.Natl.Acad.Sci,USA.、100(22):12601〜6、2003(SRPK1)、Imai他、J.Biol.Chem.277(38):35323〜32、2002(DGKD);Climie他、Protein Express Purif.5(3):252〜25S(1993)(DUT)、Greener他、J.Biol.Chem.275(2):1365〜1370、2000およびKimura他、Genomics 44:179〜187(1997)(GAK)、FuruyaおよびUyeda、J.Biol.Chem.256(14):7109〜7112、1981、Hirada他、Biosci.Biotechnol.Biochem.64(70):2047〜2052、2000(PFKL)、Brede他、Genomics 70(1):82〜92、2000、Brede他、Nucl.Acid Res.30(23):5301〜5309、2002(PSKH1);Kario他、J.Biol Chem.、280(8):7038〜7048、2005(SOCS5);Felschow他、Biochem.Biophys.Res.Comm.273:294〜301、2000(TNK1);Zama他、J.Biol.Chem.277(26):23909〜23918、2002;およびPratt他、Oncogene 21(50):7690〜9、2002(EPHA2)が含まれる。
【0048】
異なるキナーゼおよびホスファターゼの阻害剤は、当業界で周知である。このような阻害剤の例には、ATMを阻害する2−モルホリン−4−イル−6−チアントレン−1−イル−ピラン−4−オン(KU−55933)(Hickson他、、Cancer Res.、64(24):9152〜9、2004)、PIK4CAを阻害する(5R,6S)−5−アジド−6−ベンゾイルオキシ−2−シクロヘキセン−1−オン(Pelyvas他、J.Med.Chem.、44:627〜632、2001)、PCK1を阻害する1−アリル−3−ブチル−8−メチルキサンチン(Foley他、Bioorg.Med.Chem.Lett、13(20):3607〜10、2003)、DUTを阻害する5−マーキュリ−dUTPおよびその他のUTP類縁体(Climie他、Protein Express Purif 5(3):252〜258、1993、Beck他、Adv.Exp.Med.Biol、195 PtB (97〜104)、1986およびPFKLを阻害するN−ブロモアセチルエタノールアミンホスファート(Hirada他、Biosci.Biotechnol.Biochem.64(10):2047〜2052、2000)が含まれる。
【0049】
酵素活性をアッセイするために使用できる技術および/または表1に記載した非キナーゼ標的タンパク質に結合する化合物も公知である。TRPM5、PHEX、MDM4、PDIA3、APPL3およびPARVBを測定するために使用できる活性測定技術を記載した参考文献の例には、Prawitt他、Proc Natl Acad Sci USA、700:15166〜15171、2003(TRPM5)、Boileau他、Biochem J.355:707〜713、2001(PHEX)、Badciong and Haas、J.Biol.Chem.、277:49668〜49775、2002(MDM4);Frickel他、J.Biol Chem.、279:18277〜18287、2004、(PDIA3)、Hoylaerts他、Biochem.J.277:49808〜49814、1992(ALPPL2)、Olski他、J.Cell Sci.114:525〜538(2000)(PARVB)が含まれる。PAFAH1B1は血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼの触媒的に不活性なサブユニットであるが、完全なアセチルヒルドロラーゼ酵素複合体の測定条件は、Hattori and Inoue、J.Biol.Chem.268:18748〜18753、1993(PAFAH1B1)に見いだすことができる。
【0050】
同定されたタンパク質をコードしている核酸配列は、その核酸にハイブリダイズすることができる化合物の標的となる。核酸配列にハイブリダイズできる化合物の例には、siRNA、リボザイムおよびアンチセンス核酸が含まれる。阻害機構は、化合物の種類に応じて変化する。siRNA、リボザイムおよびアンチセンス核酸の生成および使用技術は当業界で周知である(例えば、Probst、Methods 22:271〜281、2000、Zhang他、「Methods in Molecular Medicine Vol.106、Antisense Therapeutics」第2版、p.11〜34、I.Philips著、Humana Press Inc.、Totowa、NJ、2005)。さらに、以下に挙げた実施例は、siRNAの使用を例示する。
【0051】
核酸をベースにした化合物を輸送するためのベクターには、プラスミドおよびウイルスをベースにしたベクターが含まれる。治療的応用に好ましいベクターはレトロウイルスおよびアデノウイルスをベースにしたベクターである(Devroe他、Expert Opin.Biol.Ther.4(3)319〜327、2004、Zhang他、Virology 320:135〜143、2004)。
【0052】
HCV阻害活性の測定
化合物がHCV複製を阻害する能力は、in vitroで、または動物モデルを使用して測定することができる(Pietschmann他、Clin Liver Dis.7(1):23〜43、2003)。化合物がHCV複製を阻害する能力を測定するin vitro技術には、HCVまたはHCVレプリコンの使用が関与する。HCVは培養で増殖させることが困難なので、好ましいin vitro技術ではHCVレプリコンを使用する。
【0053】
HCVレプリコンとは、Huh7のように培養細胞中で自発的に複製できるRNA分子である。HCVレプリコンは、複製機構のHCV由来成分を発現し、培養細胞中での複製に必要なシス因子を含有する。
【0054】
HCVレプリコンの生成および使用は、様々な文献に記載されている(例えば、Lohmann他、Science、285:110〜113、1999、Blight他、Science、290:1972〜1974、2000、Lohmann他、Journal of Virology、75:1437〜1449、2001、Pietschmann他、Journal of Virology、75:1252〜1264、2001、Grobler他、J.Biol.Chem.、278:16741〜16746、2003、Murray他、J.Virol、77(5):2928〜2935、2003、Zuck他、Anal Briochem.334(2):344〜355、2004、Ludmerer他、Antimicrob.Agents Chemother、49(5):2059〜69、2005、Rice他、2001年11月29日公開の国際公開第01/89364号、Bichko、2002年5月16日公開の国際公開第02/238793号、Kukolj他、2002年7月4日公開の国際公開第02/052015号、2002年8月1日公開のDe Francesco他、国際公開第02/059321号、Glober他、2004年9月2日公開の国際公開第04/074507号およびBartenschlager、米国特許第6630343号を参照)。
【0055】
化合物がHCV複製を阻害する能力は、HCV感染の疑われる天然由来の、または人工的な動物モデルを使用して測定することができる。ヒトおよびチンパンジーなどの数種の動物のみがHCV感染に感受性である。チンパンジーは、HCV感染に対する化合物の効果を測定するための動物モデルとして使用されてきた。
【0056】
HCV感染に感受性のある人工的動物モデルは、マウスにヒト肝臓を移植することによって作製された(Pietschmann他、Clin Liver Dis.7(1):23〜43、2003)。キメラマウス−ヒト肝臓を有するトランスジェニックマウスが小動物モデルのために使用される。
【0057】
HIV阻害活性の測定
化合物がHIV複製を阻害する能力は、in vitroで、または動物モデルを使用して測定することができる。化合物がHIV複製を阻害する能力を測定するためのin vitro技術には、例えば、ウイルス生活環の初期段階(組み込みによる侵入)を測定する技術が含まれるか、またはウイルス感染拡大が続くT細胞系または末梢血単核細胞のHIV感染の使用が関与する(例えば、Joyce他、、J.Biol.Chem.277(48):45811〜20、2002、Nunberg他、J.Virol 65(9):4887〜4892、1991、Goldman他、Antimicrob Agents Chemother.36(5):1019〜1023、1992)。
【0058】
化合物がHIV複製を阻害する能力は、HIVまたはSHIV(サル−ヒト免疫不全ウイルス)と称されるHIVおよびSIV(サル免疫不全ウイルス)ゲノムの断片を一緒にすることによって創出されたキメラウイルスのいずれかによる感染に感受性のある非ヒト霊長類モデルで測定することができる。ヒトおよびチンパンジーなどの数種の動物のみがHIV感染に感受性がある。チンパンジーは、HIV感染に対する化合物の効果を測定するための動物モデルとして使用されてきた。(Grob他、Nat Med.3(6):665〜670、1997)。非ヒト霊長類におけるHIV感染に対する化合物の効果の測定は、SHIVに感染したアカゲザルで実施されることが極めて多い(Hazuda他、Science 305(5683):528〜32、2004)。
【0059】
投与
一般的な治療用化合物の医薬品投与の指針は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第20版、Gennaro,Mack著、2000年出版および「Modern Pharmaceutics」第2版、Banker and Rhodes著、Marcel Dekker、Inc.、1990に記されている。
【0060】
適切な官能基を有する治療的標的に活性のある化合物は、酸塩または塩基塩として調製することができる。薬学的に許容される塩(水溶性または油溶性または分散可能な生成物の形態)には、例えば、無機または有機の酸または塩基から形成される従来の非毒性塩または四級アンモニウム塩が含まれる。このような塩の例には、酸付加塩、例えば、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンホスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩ならびに塩基付加塩、例えば、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基による塩、N−メチル−D−グルカミン、およびアルギニンおよびリシンなどのアミノ酸による塩が含まれる。
【0061】
化合物は、経口、経鼻、注射、経皮および経粘膜を含む様々な経路を使用して投与することができる。懸濁液として経口的に投与される活性成分は、製薬業界で周知の技術に従って調製することができ、増量のために微結晶性セルロース、懸濁剤としてアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてメチルセルロースおよび甘味剤/矯臭剤を含有することができる。即放性錠剤として、これらの組成物は、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウムおよび乳糖および/またはその他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および光沢剤を含有することができる。
【0062】
経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与するとき、組成物は製薬業界で周知の技術に従って調製することができ、ベンジルアルコールまたはその他の適切な保存剤、生物学的利用率を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または溶解剤または分散剤を使用して、生理食塩水に溶かした溶液として調製することができる。
【0063】
この化合物はまた、静脈内(ボーラスおよび注入)、腹腔内、皮下、閉塞を伴うか、または伴わない局所型、あるいは筋肉内型で投与することができ、いずれも製薬業界の当業者に周知の形態を使用する。注射によって投与するとき、注射溶液または懸濁液は、適切な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンゲル溶液または等張塩化ナトリウム溶液、あるいは適切な分散剤または湿潤剤または懸濁剤、例えば、滅菌の無刺激性鉱油、例えば、合成モノまたはジグリセリド、および脂肪酸、例えば、オレイン酸を使用して製剤化することができる。
【0064】
座薬の形態で直腸から投与するとき、組成物は、薬剤を適切な非刺激性の賦形剤、例えば、カカオ脂、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコールと混合することによって調製することができ、通常の温度では固形であるが、直腸腔内で液化および/または溶解して薬剤を放出する。
【0065】
本発明の治療上の適用に適切な投与計画は、患者の年齢、体重、性別および健康状態、治療する病状の重症度、投与経路、患者の腎機能および肝機能、使用した特定の化合物を含む当業界で周知の要素を考慮して選択される。医薬品投与および医薬組成物の指針は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第20版、前述、および「Modern Pharmaceutics」第2版、前述に記載されている。
【0066】
毒性を伴わず効果を発揮する範囲内の薬剤濃度を最適な精度で実現するには、標的部位に対する薬剤の利用性の反応速度論に基づいた計画が必要である。これには、薬剤の分布、平衡および排泄を考慮することが必要である。患者の1日用量は、成人患者1日当たり0.01mgと1000mgとの間であると予測される。
【0067】
実施例
実施例を以下に挙げ、本発明の様々な特性をさらに例示する。これらの実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法を例示する。この実施例は、特許請求された本発明を制限しない。
【実施例1】
【0068】
タンパク質キナーゼおよびホスファターゼsiRNAライブラリーのスクリーニング
HCVレプリコン複製を阻害するための潜在的宿主細胞因子標的は、Huh−7細胞で発現したHCVCon1−1bβ−ラクタマーゼ発現レプリコンおよび宿主siRNAを標的化するsiRNAライブラリーを使用して同定された。その方法は以下の通り実施した。
【0069】
1日目:組織培養適合HCVCon1−1bβ−ラクタマーゼ発現レプリコン(Zuck他、Anal.Biochem.、334(2):344〜355、2004)を発現するHuh−7細胞を黒色、透明底96ウェルプレート(Costar、カタログ番号3603)に2000個細胞/ウェルで播種する。DMEM(Invitrogen、21063−029)100μL、牛胎児血清(Invitrogen、16140−071)10%、1×非必須アミノ酸(Invitrogen、11140−050)、1×Glutamax(Invitrogen、35050−061)に細胞を播種する。細胞を接着させ、37℃、5%COで一晩増殖させる。
【0070】
2日目:播種したHuH−7/レプリコン細胞を以下の通りにトランスフェクトする。
【0071】
1.1×緩衝液(Dharmacon)200μlを各ウェルに添加することによってsiRNAを再懸濁し、siRNAの最終濃度10μMを作製する。
【0072】
【化1】


【0073】
対照も10μMで使用する。細胞に添加したsiRNAの最終濃度は、50nMである。
【0074】
2.Optimenを33μL/ウェルで滅菌96ウェルプレートに分配し、12番目の列は空にしておく。
【0075】
3.親プレートのA3ウェルからsiRNAを娘プレートのA2ウェルに移すように、siRNAストックプレートの各ウェルからsiRNA1μLをOptimen含有プレートに移す(各ウェルからsiRNA1μLを対応するプレートの同位置の行のN−1列の位置に移す。)。
【0076】
4.上下にピペッティングすることによって混合する。
【0077】
5.試験管に、Oligofectamine(Invitrogen、12252−011)100μL、Optimen減少血清培地(Invitrogen、11058−021)1210μLを添加する。室温で5分間インキュベートする。
【0078】
6.各ウェルにOligofectamine6μLを分配し、上下にピペッティングすることによって混合する。プレートを室温で15分間インキュベートする。
【0079】
7.細胞から培地を除去し、(DMEM(フェノールレッドを含まない)、1×非必須アミノ酸、1×Glutamax)80μLと交換する。各対応ウェルにsiRNA/Oligofectamine混合物20μLを添加する。
【0080】
8.プレートを37℃、5%COで4時間インキュベートする。
【0081】
9.DMEM(フェノールレッドを含まない)+牛胎児血清30%、1×非必須アミノ酸、1×Glutamax、50μLを添加する。プレートを37℃、5%COで48時間インキュベートする。
【0082】
10.細胞から培地を除去し、DMEM(フェノールレッドを含まない)、FBS10%、1×非必須アミノ酸、1×Glutamaxおよびクラブラン酸0.5μM、100μL/ウェルと交換する。細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートする。
【0083】
11.細胞から培地を除去し、以下の溶液、DMEM(フェノールレッドを含まない)12mL、CCF(DMSOに溶かした1mM溶液)24μL、溶液C(Aurora)2mL、溶液B(プルロニック酸、Aurora)120μLの50μLと交換する。
【0084】
12.細胞を暗所で室温で1.5時間インキュベートする。
【0085】
13.蛍光強度を読み取ることができるプレートリーダーを使用して、460nmおよび530nmでプレートを読み取る。
【0086】
14.データ分析:A460およびA538の両方の平均バックグラウンド(カラム12の値の平均)を決定する。各ウェルからバックグラウンドを差し引く。バックグラウンドを差し引いた後、A460をA538で除し、各細胞の青/緑比を決定する。形質移入毎の平均および標準偏差を計算する。
【0087】
DharmaconキナーゼびホスファターゼsiRNAライブラリーの各プレートについて、2連でこの分析を実施した。ヒットは、β−ラクタマーゼ活性によって測定すると(NS1siRNAで形質移入した対照と比較したA460/A530比)レプリコンの複製を40%以上抑制し、NS1siRNA形質移入対照と比較したA530の読み取りによって測定すると細胞生存率阻害は20%を上回らないsiRNAと考えられた。
【0088】
結果
第1のスクリーニングで89個のヒットを同定した。AKAP8、ALK、ASP、ATM、C14ORF24、CSNK1E、CSNK2A1、CSNK2B、CXCL10、DDR1、DGKD、DGKG、DGKZ、DLG2、DUSP18、DUSP19、DUSP22、DUSP5、DUSP6、DUT、DYRK2、DYRK4、EGFR、ENPP5、EPHA2、EPHA3、FBP2、FGFR2、FGFR4、FHIT、FLJ20442、FLJ35107、FN3K、FRK、GAK、GCK、HIPK3、HK3、I−4、IGBP1、IMPK、LOC339221、LPPR4、MAP2K3、MAP2K6、MAP3K1、MAP3K7IP1、MGC1136、MTMR1、MTMR7、NME4、PANK1、PCK1、PCK2、PCTK1、PFKL、PK4CA、PHKA2、PHKG2、PPAP2C、PPP1R11、PPP1R2、PRKCL2、PRKD2、PRKWNK3、PRKY、PRPS1、PRPS1L1、PRPSAP1、PSKH1、PTK2B、PTK9L、PTP4A3、PTPN2、RIPK2、SOCS5、SRPK1、STK16、STK3、STK33、STK35、STK38、TAF1、TBK1、TJP2、TNK1、TPK1、TRPM7、TXK、ULK2およびVRK1。
【実施例2】
【0089】
Body Atlasを使用した肝発現のヒットのカウンタースクリーニング
HCVは肝臓で複製するので、宿主HCV標的の1必要条件は、遺伝子が肝臓で発現することである。実施例1で記載した遺伝子89個の様々な組織における遺伝子発現は、既に作製されたBody Atlasを使用して評価した。このBody Atlasは、多数の組織のmRNAプールの発現と比較した様々な組織における様々な遺伝子の相対的遺伝子発現を示す。
【0090】
相対的発現レベルが1.5相対強度を上回る場合、遺伝子は肝臓において高発現であると考えられ、遺伝子の相対強度が0.5と1.5の間であれば中程度の発現であり、遺伝子の相対強度が0.05と0.5の間であれば低発現であると考えられた。相対発現0.05未満の遺伝子は、肝臓では発現しないと考えられた。
【0091】
標的としてさらに考慮から排除される遺伝子には、肝臓で発現しない遺伝子および2種類の複製スクリーニングのうち1つでのみヒットとして同定された肝臓での発現レベルが低い遺伝子が含まれる。肝臓で発現しない遺伝子には、ASP、FBP2、I−4、LPPR4、MTMR7、PRP4A3およびSTK33が含まれる。これらの遺伝子は、擬陽性、または培養細胞においてのみレプリコンを維持するために必須である遺伝子と考えられた。
【0092】
肝臓内での発現レベルが中程度から高程度である遺伝子をさらに分析するために選択した。肝臓での発現レベルが低い遺伝子は、ライブラリーを2回スクリーニングしていずれにおいてもHCV複製を阻害した場合のみ、さらに分析するために選択した。さらに分析するために選択されなかった肝臓での発現レベルが低い遺伝子には、CSNK1E、DGKG、DLG2、DUSP5、MAP3K1、MAP3K7P1、PCTK1、PTK2B、RIPK2およびSTK38が含まれた。
【0093】
表2は、さらに分析するために選択された標的遺伝子のリストで、肝臓での発現の相対的レベルを示す。
【0094】
【表2】

【実施例3】
【0095】
siRNAヒットの確認
キナーゼおよびホスファターゼライブラリーの1次スクリーニングから、HCVレプリコンを抑制し、肝臓でも発現する80個のsiRNAプールを選択した。siRNAプールは、プールプレートの各ウェルの同一遺伝子を対象とする4個のsiRNAを有するように設計された。ヒットを確認するために、このプールの4個のsiRNAそれぞれを8回2倍希釈して個々に試験した。確認されたヒットは、(2個の異なるsiRNA配列が同じ標的外効果を有するとはほとんど考えられないので)プール中に存在する個々のsiRNAの少なくとも2個で力価測定可能な阻害を示すと予測された。
【0096】
1日目
試薬および消耗品
CM.10細胞(Invitrogen)
トリプシン(Invitrogen)
DMEM接種培地:DMEM(Invitrogen)、FBS(Invitrogen)10%、1×GlutaMax(Invitrogen)、1×非必須アミノ酸(Invitrogen)
トリパンブルー(Invitrogen)
96ウェル細胞用プレート(Corning)
方法
1.CM.10細胞のフラスコをトリプシン処理する。
【0097】
2.DMEM接種培地をフラスコに添加することによってトリプシンを不活性化する。
【0098】
3.細胞懸濁液の一部10μlを取り出し、生細胞染色のためにトリパンブルーで1:2に希釈する。
【0099】
4.血球計数器を使用して細胞を計数する。
【0100】
5.DMEM接種培地で細胞を最終濃度20000細胞/mlまで希釈する。
【0101】
6.細胞懸濁液(20000細胞/ml)100μlを96ウェル細胞用プレートの1〜11列に添加することによって、細胞を2000細胞/ウェルの密度で播種する。
【0102】
7.96ウェル細胞用プレートを通常の増殖条件(37℃、5%CO)で18〜20時間インキュベートする。
【0103】
2日目
試薬および消耗品
siRNAマスタープレート
Oligofectamine(Invitrogen)
Optimen−I(Invitrogen)
DMEM接種培地:DMEM(Invitrogen)、1×GlutaMax(Invitrogen)、1×非必須アミノ酸(Invitrogen)
96ウェル細胞用プレート(Corning)
方法
1.Optimen−Iを96ウェル力価測定プレート(2連で8回)に添加する。この力価測定プレートは、1〜12に番号付けされた列およびA〜Hの行の格子を設定することができる。1列のA〜H行には33μl、2〜11列のA行には66μl、2〜11列のB〜H行には34μlを入れ、列12は空のままにする。
【0104】
2.96ウェルマスタープレートは、1〜12に番号付けされた列およびA〜Hの行の格子を設定することができる。1列のA〜H行には対照、2〜11列のA行には試料を入れ、列12は空にする。
【0105】
3.マスタープレートのA行の2〜11列のウェルから96ウェル力価測定プレートのA行の2〜11列のウェルにsiRNA(10μM)(試料)2μlを移す。
【0106】
4.マスタープレートの1列のウェルから96ウェル力価測定プレートの1列のウェルにsiRNA(10μM)(対照)1μlを移す。
【0107】
5.上下にゆっくりピペッティングすることによって試料を混合する。
【0108】
6.A行の2〜11列のウェルからB行の2〜11列のウェルに試料34μlを移し、混合することによって、siRNA(試料)の2倍希釈を8回実施する。C行からD行、D行からE行、E行からF行など試料34μLを移し、混合することによって力価測定を継続する。各力価測定点のsiRNAの最終濃度は、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、1.5625nM、0.78125nMおよび0.390625nMである。プレートの設定および力価測定設定を8回繰り返し、マスタープレートの試料の8行全てを占める。
【0109】
7.コニカル試験管15mL内に、Optimen−I 5.50mLおよびOligofectamine 0.50mLを添加する。ゆっくり混合する。
【0110】
8.この混合物を室温で5分間インキュベートする。
【0111】
9.siRNAを含有する96ウェル力価測定プレートの各ウェルにこのOligofectamine混合物6μLを添加する。ゆっくり混合する。
【0112】
10.形質移入複合体を形成するために、このsiRNA:Oligofectamine混合物を室温で15分間インキュベートする。
【0113】
11.siRNA:Oligofectamineのインキュベーション中、96ウェル細胞用プレートの細胞から培地をマルチチャンネルピペッターで取り除く。
【0114】
12.培地をDMEM形質移入培地50μLと交換する。
【0115】
13.siRNA:Oligofectamine複合体形成に必要な15分経った後、96ウェル力価測定プレートから複合体20μLを96ウェル細胞用プレートの一致するウェルに移す。各力価測定点のsiRNAの最終濃度は、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.125nM、1.5625nM、0.78125nMおよび0.390625nMである。
【0116】
14.96ウェル細胞用プレートを通常の増殖条件(37℃、5%CO)で4時間インキュベートする。
【0117】
15.4時間のインキュベーション時間が経った後、96ウェル細胞用プレートの細胞および形質移入混合物を含有するウェルそれぞれにDMEM FBS培地30μlを添加する。
【0118】
16.96ウェル細胞用プレートを通常の増殖条件(37℃、5%CO)で48時間インキュベートする。
【0119】
4日目
試薬および消耗品:
クラブラン酸
DMEM接種培地:DMEM(Invitrogen)、FBS(Invitrogen)10%、1×GlutaMax(Invitrogen)、1×非必須アミノ酸(Invitrogen)
方法
1.96ウェル細胞用プレートのウェルから培地を除去する。
【0120】
2.DMEM接種培地100μl、クラブラン酸0.5μMを添加する。
【0121】
3.96ウェル細胞用プレートを通常の増殖条件(37℃、5%CO)で24時間インキュベートする。
【0122】
5日目
試薬および消耗品:
DMEM染色培地:DMEM(Invitrogen)
HEPES 1M
CCF
溶液B(Aurora、CET338P41)
溶液C(Aurora、CET338P39)
方法
1.以下の通り(プレート8枚に十分な量の)染色溶液を調製する。
【0123】
a.DMEM染色培地72mL、HEPES 25mM
b.CCF(1mM)0.144mL
c.溶液B 0.720mL
d.溶液C 12mL
2.96ウェル細胞用プレートのウェルから培地を除去する。
【0124】
3.列12のウェルを含む96ウェル細胞用プレートのウェル全てに染色溶液50μLを添加する。
【0125】
4.プレートを暗所で室温で1.5時間インキュベートする。
【0126】
5.A460およびA530の蛍光強度を読み取る。
【0127】
データ分析
各試料の読み取りからバックグラウンド(細胞を含まないウェル)を差し引く。A460/A530比を計算する。非サイレンシング対照siRNAの割合として正規化する。各siRNAのデータを対照A460/A530対形質移入したsiRNAの濃度の%として図にする。
【0128】
有効と考えられるsiRNAでは、試験した4種のsiRNAのうち少なくとも2種がHCV複製を対照レベルの少なくとも40%から60%阻害し、その阻害は、少量の形質移入siRNAで力価測定すべきである。
【0129】
前記基準を使用してHCVレプリコンの維持に不可欠であると確認された遺伝子を次に4種類の群に分類し、HCV標的に最も望ましい基準を有するものを優先順位1とした。遺伝子分類は以下の通りに決定した。 優先順位1:最も潜在能力のあるsiRNAは、HCVレプリコン複製を≧70%阻害した。肝臓で中程度から高程度に発現する。これらの遺伝子およびコードされたタンパク質は、HCV感染を阻害するのに好ましい標的である。
【0130】
優先順位2:最も潜在能力のあるsiRNAは、HCVレプリコン複製を≧60%阻害した。肝臓で任意のレベルで発現する。
【0131】
優先順位3:最も潜在能力のあるsiRNAは、HCVレプリコン複製を60%と50%の間で阻害した。
【0132】
優先順位4:最も潜在能力のあるsiRNAは、HCVレプリコン複製を50%と40%の間で阻害した。
【0133】
HCVレプリコン複製に不可欠な遺伝子および指示された分類を表3に示す。
【0134】
【表3】


【実施例4】
【0135】
ゲノム規模のsiRNAライブラリーのスクリーニング
22000個を上回るsiRNAプールのライブラリーのスクリーニングは、実施例1で記載した方法を本質的に使用して実施した。簡単に説明すると、ベータ−ラクタマーゼ(CM.10)を発現するHCVCon1−1bレプリコンを含有するHuH−7細胞を384ウェルプレートに接種した。翌日Oligofectamineを使用し製造者の指示に従って、細胞に対照siRNAを含む一連のsiRNAプールを形質移入した。形質移入72時間後に、CCF4を使用し製造者の指示に従って、細胞のベータ−ラクタマーゼ発現を染色した。実施例1とは異なり、クラブラン酸を細胞に添加しなかった。
【0136】
ベータ−ラクタマーゼ発現に影響を与える640個のsiRNAプールをその後さらに3回アッセイして、HCV複製に対するそれらの影響を確認した。
【0137】
次に、さらに確認するために39個のsiRNAプールを選択した。39個のsiRNAプールによって標的化される遺伝子それぞれを標的とする6個のsiRNAそれぞれを別々にCM.10細胞に形質移入して、前記のようにアッセイした。試験した遺伝子の1つを標的とする最小限2個のsiRNAによってHCV複製が効果的に阻害されたことにより、HCVcon1 1b複製のために宿主因子が重要であることが確認されたと考えられた。
【0138】
結果
このスクリーニングで、ALPPL2、AP4M1、CAPZA1、DNAH5、DOM3Z、FTCD、PDIA3、MDM4、WDR66、NOP5/NOP58、NSUN6、PAFAH1B1、PARVB、PHEX、PKN、POLR2J2、RAB20、SYNPRおよびTRPM5を含む19個の遺伝子が確認された。確認されたsiRNAプールは全て、肝臓での発現が少なくとも低レベルである遺伝子を標的とした。
【実施例5】
【0139】
キメラBK:2b(NS5b)レプリコンを使用したヒットのスクリーニング
実験は、キメラBK:2b(NS5b)レプリコンがCon1 1bレプリコンと同様の遺伝子のノックダウンに感受性であるかどうかを決定するために実施した。使用した方法は、遺伝子型2b NS5b配列を含有するBKレプリコンを使用すること以外は、実施例1および4で記載されている。BK:2b(NS5b)レプリコンは、Grobler他、J.Biol.Chem.、278:16741〜16746、2003に記載されている。
【0140】
データ分析は、確認されたsiRNAヒットそれぞれについて実施した。BK:2b(NS5b)レプリコンに対するsiRNA形質移入の効果を表4に示す。
【0141】
【表4】

【実施例6】
【0142】
HCV遺伝子型1a、Con−1bおよび2aレプリコンに対する活性
定量的マルチプレックスTaqManアッセイは、3種のHCVレプリコン細胞系、Con−1b、1aおよび2aにおけるHCVレプリコンRNAの相対量を測定するために確立された。簡単に説明すると、全RNAを、RNeasy96ウェルキット(Qiagen、#74182)を使用してsiRNAで形質移入したレプリコン細胞から単離した。TaqMan反応は、TaqMan EZ RT−PCRキット(Applied Biosystems、#403028)、TaqMan PDAR対照試薬ヒトシクロフィリンA(Applied Biosystems、#4310883E)ならびにHCVレプリコンゲノムのネオマイシン耐性遺伝子を標的化するプローブおよびプライマーセット(Neo fwd:配列番号98、Neo rev:配列番号99およびNeo probe 5’FAM−配列番号100−TAMRA3’)を使用した。反応混合物中の各成分の最終濃度は以下の通りである。1×TaqMan EZ緩衝液、Mn(Oac) 3mM、dATP 0.3mM、dCTP 0.3mM、dGTP 0.3mM、dUTP 0.6mM、フォワードプライマー0.2mM、リバースプライマー0.2mM、プローブ0.1mM、1×PDARシクロフィリンAミックス、rTthDNAポリメラーゼ0.1ユニット/μl、AmpErase UNG 0.01ユニット/μl、全RNA10μlおよびHOで50μlにする。96管光学プレート(Applied Biosystems#N801−0560)を光学粘着性カバー(Applied Biosystems#N4311971)で覆い、数回反転することによって混合した。この試料をマルチプレックスTaqMan分析のためにABI7700(Applied Biosystems)に入れ、プレート全体を「未知」(HCV)ではFAM色素層に、内部対照、シクロフィリンAではVIC色素層に設定した。サイクリング変数は、スペクトル補正および曝露時間10ミリ秒を使用して、50℃2分、60℃30分、95℃5分(94℃20秒、55℃1分)40回に設定した。
【0143】
試料中における各標的RNAの相対量を計算するために、3種のHCVレプリコン細胞株のそれぞれにおいて、HCV Neoプライマーおよびプローブセットならびに内部対照、シクロフィリンA予備開発アッセイ試薬(PDAR)について標準曲線を作製した。RNeasyミニキット(Qiagen、#74104)を使用し、製造者のプロトコルに従って、レプリコンから全RNAを単離した。TaqManサイクル閾値(Ct)は、全RNAを7回5倍希釈して測定した。全RNAの質量(ng)の自然対数を測定し、Ct値に対してプロットした。HCVレプリコン細胞株のそれぞれにおいて、各プローブおよびプライマーセットで方程式を計算して、それぞれのCt値からHCV RNAおよび内部対照シクロフィリンA mRNAの相対量を得た。HCV RNAレベルは、内部対照、シクロフィリンA、mRNAレベルに対して正規化した。
【0144】
結果
第1優先標的:HCV遺伝子型1a、Con−1bおよび2aレプリコンの複製を30%超阻害するsiRNA:DUSP19、DUT、DYRK4、GAK、PARVB、PFKL、PK4CA、PSKH1、SOCS5、SYNPRおよびTRPM5。
【0145】
第2優先標的:2種のHCV遺伝子型の複製を少なくとも50%超阻害するsiRNA:PAFAH1B1、STK16およびTNK1。
【0146】
第3優先標的:2種のHCV遺伝子型の複製を少なくとも30%超阻害するsiRNA:AKAP8、ALK、AP4M1、CAPZA1、DGKD、DNAH5、DYRK2、EPHA2、FGFR2、FRK、FTCD、GCK、NOP5/NOP58、PDIA3、PHEX、POLR2J2、PRKWNK3、RAB20、STK35、TJP2、TPK1、TREB3およびTRPM7。
【0147】
第4優先標的:1種のHCV遺伝子型の複製を少なくとも30%超阻害するsiRNA:ALPPL2、CSNK2A1、CSNK2B、DDR1、DGKZ、D0M3Z、DUSP22、DUSP6、MAP2K6、NME4、PCK1、PRPS1L1、PTK9L、SRPK1、TAF1、TBK1、VRK1およびWDR66。
【実施例7】
【0148】
HeLa細胞におけるHCV1bサブゲノム複製の阻害
HeLa細胞において複製するように操作されたレプリコンクローンにおいて第1優先標的がHCV1bサブゲノム複製を阻害する能力を試験した。HeLa細胞においてサブゲノム複製が阻害されることは、標的遺伝子の必要性がHuH−7細胞株の人為的結果ではないことの証拠となる。HCVのHeLa細胞複製系は、Zhu他、J.Virol、77(17):9204〜9210、2003に記載された通りであった。siRNA形質移入およびサブゲノム複製の定量は、実施例6に説明したように実施した。
【0149】
結果:
第1優先標的、DUT、GAK、PFKL、PIKACA、PSKH1およびSYNPRは、HeLa細胞においてHCVcon1bサブゲノム複製を少なくとも30%阻害した。PARVB、SOCS5およびTRPM5siRNAは、これらの細胞では毒性であり、HCV複製に対する効果は評価できなかった。DUSP19およびDYRK4siRNAは、HeLa細胞におけるHCVサブゲノム複製に対して効果がなかった。
【実施例8】
【0150】
ワートマニンによるHCV複製の阻害
PIK4CAは、2個のアイソフォームが報告されている。アイソフォーム1(mRNA:NM_002650、タンパク質:NP_00264)は短く、アイソフォーム2(mRNA:NM_058004、タンパク質:NP_477352)のN末端部分のほとんどが欠如している。PIK4CAアイソフォーム1は、ホスファチジルイノシトール4−キナーゼII型として特徴づけられており、アデノシンには感受性で、ワートマニンには非感受性であるが(Wong and Cantley、J.Biol.Chem.、269:28878〜28884、1994)、PIK4CAアイソフォーム2はホスファチジルイノシトール4−キナーゼIII型として特徴づけられており、ワートマニンには感受性で、アデノシンには非感受性である(Gehrmann他、Biochim.Biophys.Acta、1437:341〜356、1999)。
【0151】
アイソフォーム2がHCV複製に関連したアイソフォームであるかどうかを確かめるために、細胞においてマイクロモルレベルでホスファチジルイノシトール4−キナーゼIII型を阻害するキナーゼ阻害剤、ワートマニンのHCV複製に対する効果を試験した。簡単に説明すると、ベータラクタマーゼを発現するHCV Con1−b CM10細胞株を96ウェルBlack組織培養処理プレート上で細胞完全培地(DMEM、FBS10%、1×NEAA、1×Glutamax、(−)Pen/Strep)50μlに7500細胞/ウェルで接種した。ワートマニンの10mM DMSO保存液(Sigma、#W1628)を完全培地200μlで100μMに希釈し、2.5倍で7回系列希釈して力価測定した。希釈点それぞれから50μlを、HCV Con1−b CM10細胞を含有するアッセイプレートに移し、以下の濃度(μM)のワートマニン:50、20、8、3.2、1.28、0.512および0.2048を作製した。細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした。
【0152】
HCV Con1−b CM10細胞系において内在性β−ラクタマーゼ活性を阻害するために、クラブラン酸の1mM DMSO保存液(US PHarmocopeia、#1134426)を完全培地で5.5μMに希釈し、その10μlを細胞に添加して、最終濃度0.5μMを作製した。細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした。
【0153】
HCV Con1−b CM10細胞系においてβ−ラクタマーゼ活性を測定するために、GeneBlazer β−ラクタマーゼ(Invitrogen、#K1085)染色混合物を製造者のプロトコルに基づいて調製した。細胞培養/化合物培地を細胞から除去して、GeneBlazer β−ラクタマーゼ染色混合物と置換した。細胞を暗所で室温で1.5〜2.0時間インキュベートした。A460およびA530の蛍光強度をLJL分析で測定した。
【0154】
結果
ワートマニンはHCV複製をIC507.1μMで阻害した。このデータは、PIK4CA機能を必要とするHCV複製と一致した。
【実施例9】
【0155】
PIK4CAアイソフォーム2を特異的に標的化するsiRNAはHCV複製を中断する
HCV複製におけるPIK4CA2アイソフォーム2の必要性を示すために、アイソフォーム2mRNAのみを標的化するsiRNA(NM_058004)のHCV複製の阻害を試験した。以下のsiRNAをCM.10細胞に形質移入して、実施例1に記載した通りにHCVサブゲノム複製の阻害を試験した。
【0156】
【化2】


【0157】
結果
PIK4CAを標的化する6種のsiRNAは全てHCVサブゲノム複製を阻害し、PIK4CAのアイソフォーム2はHCV複製に関連したアイソフォームであることが確認された。
【実施例10】
【0158】
PIK4CA2を標的化するsiRNAは、HCV複製中断の前にPIK4CAmRNAレベルをノックダウンする
HCV複製がPIK4CA発現または活性に左右されるならば、PIK4CAを標的化するsiRNAを形質移入した後で生じるHCV複製の減少は、PIK4AC発現欠如に続いて生じるはずである。これを確かめるために、HCV Con1−bレプリコンを含有するHuH−7細胞を、PIK4CAを標的化するsiRNAで形質移入した。形質移入後、0,12、24、36、48および72hの時点で、細胞から全RNAを単離し、PIK4CAおよびHCV RNAレベルを実施例6に記載したように測定した。
【0159】
結果
図1に示したように、PIK4CAを標的化するsiRNAは、形質移入後12hと24hとの間でPIK4CA mRNAレベルの最大阻害を引き起こした。対照的に、HCV RNAレベルは形質移入後36hと48hとの間で減少し始め、72h時点まで減少し続けた。
【実施例11】
【0160】
ポリクローナルPIK4CA抗体を使用したPIK4CAタンパク質レベルのノックダウンの確認
抗原IP1240配列番号113(aa893〜904)およびIP1241配列番号114(aa696〜707)に対して抗体を作製した。ウサギ2匹(D3792およびD3793)の抗血清は、ウェスタンブロットによってアッセイしたとき、PIK4CAの内部レベルを検出するのに十分敏感であった。V5タグを付けたPIK4CAまたは空のpCDNA3.1ベクターは、HCV HV1 Con1b細胞で過剰発現した。細胞溶解物をRIPA緩衝液中に収集して、4%トリス−グリシンSDS−PAGEゲルに添加した。カスタム抗体(1mg/ml)は、Licor Odysseyイメージングシステムを使用したウェスタンブロット分析用に1:1000に希釈した。PIK4CAのゲル移動特性を測定するために、V5およびD3972抗体を使用して2重プローブウェスタンブロットを実施した。2色ウェスタンブロットによって、D3972ブロットで見られた強度の弱い低いバンドは、V5でタグ付けしたタンパク質と同じ大きさで移動することが示された(図2A)。
【0161】
PIK4CAタンパク質がPIK4CAsiRNAの存在下で減少するかどうかを測定するために、HCV HB1 Con1b細胞を対照siRNAおよびPIK4CA mRNAのORFまたは3’UTPを標的化するPIK4CAsiRNAで形質移入した。その結果は、HCV RNAレベルがPIK4CAsiRNAおよび陽性対照、HCV siRNAによって減少することを示している(図2B)。さらに、PIK4CA mRNAのORFおよび3’UTP両方を標的とするPIK4CA siRNAは、ウェスタンブロットによるとPIK4CAタンパク質を検出不可能なレベルまで減少させる(前述のように、低い、強度の弱いバンドはPIK4CAを表す、図2C)。これらのデータによって、使用したsiRNAによるPIK4CAタンパク質レベルのノックダウンが実証され、D3792抗体によって認識されたPIK4CAバンドの同一性が確認される。
【実施例12】
【0162】
いくつかの標的に関する追加情報
標的のいくつかに対する追加情報を以下に挙げる。
【0163】
DUSP19(2特異性ホスファターゼ19)
DUSP19は、2特異性分裂促進剤活性化プロテインキナーゼホスファターゼファミリーの1つである。そのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号49および50によって表される。DUSP19多形を表5に示す。
【0164】
【表5】

【0165】
DUT(dUTPポリホスファターゼ)
DUTは、複製中にDNAに誤取り込みされるのを防ぐためにdUTPを低レベルに維持し、5−フルオロウラシルに対する耐性を媒介し、ペルオキシソーム増殖を調節することができる。そのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号51および52によって表される。DUT多形を表6に示す。
【0166】
【表6】

【0167】
DYRK4(2特異性チロシン調節キナーゼ4)
DYRK4は、タンパク質チロシンキナーゼのDYRKファミリーの1つである。そのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号53および54によって表される。DYRK4多形を表7に示す。
【0168】
【表7】

【0169】
GAK(サイクリンG関連キナーゼ)
GAKは、テンシンおよびオーキシリンと相同性を有する推定セリン/トレオニンタンパク質キナーゼであり、細胞周期調節において役割を果たすことができる。そのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号55および56によって表される。GAKヌクレオチド多形を表8に示す。
【0170】
【表8】

【0171】
PARVB(パルビンベータ)アイソフォームA
PARVBは、インテグリン結合キナーゼに結合する2個のカルポニン相同性ドメインを含有する接着斑タンパク質であり、細胞−基質接着を確立するためにインテグリン−ILKシグナリングが関与するようである。そのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号37および38によって表される。PARVBヌクレオチド多形を表9に示す。
【0172】
【表9】

【0173】
PFKL(ホスホフルクトキナーゼ、肝臓)
肝臓ホスホフルクトキナーゼは、解糖作用においてフルクトース−6−リン酸のフルクトース−1,6−2リン酸へのリン酸化を触媒する。欠乏すると糖原病VII型と関連し、過剰発現するとダウン症の認識障害と関連し得る。PFKLのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号63および64によって表される。
【0174】
PIK4CA
PIK4CAは、ホスファチジルイノシトール4−キナーゼIII型である。ホスファチジルイノシトール4,5−2リン酸の形成の第1段階を触媒し、その活性は高濃度のワートマニンによって阻害される。PIK4CAのタンパク質配列およびコードしているcDNA配列は、配列番号21および22によって表される。PIK4CAヌクレオチド多形を表10に示す。
【0175】
【表10】

【0176】
PSKH1(タンパク質セリンキナーゼH1)
PSKH1は、カルシウム依存性自己リン酸化を受けるタンパク質セリンキナーゼである。PSKH1の過剰発現は、スプライシング因子SFRS1およびSFRS2の核再構築を導き、RNAスプライシングを刺激する。PSKH1のタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号57および58によって表される。
【0177】
SOCS5(サイトカインシグナリング5の抑制因子)
SOCS5は、SH2ドメインおよびSOCSボックスを含有するサイトカイン誘導性タンパク質である。JAK−STAT経路によってサイトカインシグナリングを負に調節する。SOCS5のタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号59および60によって表される。SOCS5について同定されたヌクレオチド多形を表11に示す。
【0178】
【表11】

【0179】
SYNPR(シナプトポリン)
シナプトポリンは、シナプス小胞の標的化に関与するシナプス小胞内在性膜タンパク質、ラットシナプトフィジンと高い相同性を有するタンパク質である。膜関連ドメインを含有し、脂質関連タンパク質で発見されることが多い。SYNPRのタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号45および46によって表される。
【0180】
TRPM5(一過性受容器電位カチオンチャンネル、サブファミリーM、構成要素5)
TRPM5は、カチオンチャンネルの一過性受容器電位ファミリーと関連している。6個の予測膜貫通ドメインを有する。TRPM5のタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号47および48によって表される。TRPM5について同定されたヌクレオチド多形を表12に示す。
【0181】
【表12】

【0182】
PAFAH1B1(血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(アイソフォーム1b)アルファサブユニット(45kD)
PAFAH1B1は、血小板活性化因子を不活性化するヘテロ3量体酵素の非触媒性サブユニットである。PAFAH1B1のタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号35および36によって表される。PAFAH1B1のヌクレオチド多形を表13に示す。
【0183】
【表13】

【0184】
STK16(セリン/トレオニンキナーゼ16)
セリン/トレオニンキナーゼ16は、トランスフォーミング成長因子ベータによる情報伝達に応答して転写を調節することができるミリストイル化およびパルミトイル化されたタンパク質キナーゼである。STK1のタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号7および8によって表される。
【0185】
TNK1(チロシンキナーゼ、非受容体1)
TNK1は、ホスホリパーゼCガンマ1(PLCG1)と相互作用するキナーゼである。胎児発生中およびリンパ球造血系の成人細胞におけるリン脂質シグナリング経路を調節することができる。TNK1のタンパク質およびコードしているcDNA配列は、配列番号61および62によって表される。
【実施例13】
【0186】
HIV感染も遮断するsiRNAヒット
優先順位の高いsiRNAプールがHeLa細胞においてHIV感染を中断させる能力について試験した。その方法は以下の通りに実施した。
1日目:HeLa(P4/R5)細胞を4×96ウェルプレートにウェル当たり2000個で接種する。
2日目:siRNAプールによるHeLa(P4/R5)細胞の形質移入は以下の通りである。
【0187】
1.siRNAを最終濃度0.5%のOligofectamine(商標)試薬(Invitrogen)を使用して最終濃度100nMで形質移入した。陽性および陰性対照siRNAを以下の通りに含めた。
【0188】
サイクリンT1(陽性対照):Santa Cruz Biotechnology(カタログ番号sc−35144)から購入。
【0189】
ルシフェラーゼ(陰性対照):CGUACGCGGAAUACUUCGAdTdT(配列番号115)
2連で試験したsiRNAには、DUSP19、DUT、DYRK4、GAK、PARVB、PFKL、PIK4CA、PSKH1,SOCS5、SYNPRおよびTRPM5を標的とする3種のsiRNAのプールが含まれた。
【0190】
2.OptiMEMを66μL/ウェルで滅菌96ウェルプレートに分配し、12番目の列は空にしておく。
【0191】
3.各siRNA(10μMで再懸濁)2μLをOptiMEM含有プレートに移した。
【0192】
4.上下にピペッティングすることによって混合した。
【0193】
5.試験管に、Oligofectamine240μL、OptiMEM1210μLを添加した。室温で5分間インキュベートした。
【0194】
6.各ウェルにOligofectamine12μLを分配し、上下にピペッティングすることによって混合した。プレートを室温で15分間インキュベートした。
【0195】
7.HeLa(P4/R5)細胞の各ウェルにsiRNA−Oligofectamine複合体20μLを添加した。
3日目:形質移入したHeLa(P4/R5)細胞に以下の通りにHXB2 HIVを感染させた。
【0196】
1.培地を細胞から除去した。
【0197】
2.新鮮な培地80μLを各ウェルに添加した。
【0198】
3.HXB2 HIVを培地で希釈した。希釈したHXB40μLを各ウェルに添加した。
【0199】
4.ウイルス感染を96時間継続させた。
5日目
ベータガラクトシダーゼ活性、ウイルス感染の指標を以下の通りに測定した。
【0200】
1.培地を細胞から除去した。
【0201】
2.細胞をウェル当たり200μLのPBSで洗浄した。
【0202】
3.DTTを含有する溶解緩衝液(Galacto−Light Plus、Tropix、カタログ番号BL100P)20μLを各ウェルに添加し、プレートを10分間振盪した。
【0203】
4.次に、基質80μLを各ウェルに添加し、プレートを室温で暗所で1時間インキュベートした。
【0204】
5.増強溶液100μLを各ウェルに添加して、プレートをDynex照度計で読み取った。
【0205】
データは、以下の方法で分析した。各プレートの読み取り値は、ルシフェラーゼ陰性対照の読み取り値に正規化して、「ルシフェラーゼ対照のパーセント」として表した。好ましい標的は、平均40%以上でベータ−ガラクトシダーゼ活性を抑制するsiRNAプールと考えられた。
【0206】
結果
PIK4CA、SYNPR、DYRK4およびPFKLを標的とするsiRNAは、HIV複製を40%超阻害した(図3参照)。したがって、これらの遺伝子は、ヒト細胞系においてHIVおよびHCV両方の複製に不可欠である。HIV複製の30%と40%との間の阻害が、GAK、DUSP19およびDUTを標的とするsiRNAで認められ、これらの遺伝子はまた、HIVおよびHCV感染を標的化できることを示唆する。
【0207】
実施例7に示したように、HeLa細胞におけるSOCS5、PARVBおよびTRPM5siRNAに関連した毒性は、これらの細胞におけるウイルス感染においてこれらの遺伝子が果たす役割のいかなる理解も妨害する。PSKH1siRNAでは、HIV複製に対して影響は認められなかった。
【0208】
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。いくつかの実施形態を示し説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく様々な変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】PIK4CAを標的とするsiRNAを形質移入した後のPIK4CAmRNAレベルおよびHCVRNAレベルのノックダウンの経時変化を示す結果を表した図である。
【図2A】PIK4CAタンパク質を認識するウサギポリクローナル抗血清の産生を示す結果を表した図である。
【図2B】PIK4CAを標的とする2個の別個のsiRNAまたはHCVを直接標的とするsiRNAを形質移入した後ではHCV複製の阻害を示すが、非サイレンシングsiRNA(NSI)の形質移入の後では示さない結果を表した図である。
【図2C】図2Bで使用したPIK4CAを標的とするsiRNAはPIK4ACタンパク質レベルもノックダウンするが、HCVを標的とするsiRNAおよび非サイレンシングsiRNA(NS1)はPIK4CAタンパク質レベルに影響を及ぼさないことを示す結果を表した図である。
【図3】異なる宿主遺伝子を標的とするsiRNAがHIV複製を阻害する能力を示す結果を表した図である。以下の遺伝子、1−CycT1;2−PFKL;3−PIK4CA;4−DYRK4;5−SYNPR;6−GAK;7−DUSP19;8−DUT;9−PSKH1;10−LUC;11−S0CS5;12−PARVB;および13−TRPM5のsiRNAの結果を図1に挙げる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる細胞因子を標的化するsiRNAライブラリーがウイルスの複製を阻害する能力を測定するステップを含み、前記siRNAライブラリーは、前記ウイルスの複製に従来は関与しなかった異なる宿主因子を少なくとも10個の異なるsiRNAが標的化すること、を含む、前記ウイルスの複製に関与した宿主細胞因子の同定方法。
【請求項2】
ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)であり、siRNAライブラリーは、HCV複製に従来は関与しなかった異なる宿主因子を少なくとも100個の異なるsiRNAが標的化すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも100個の異なるsiRNAの各々がキナーゼまたはホスファターゼである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)AKAP8(配列番号11)、ALK(配列番号67)、ATM(配列番号68)、C14ORF24(配列番号69)、DGKD(配列番号15)、DGKZ(配列番号70)、DUSP19(配列番号49)、DUSP22(配列番号71)、DUSP6(配列番号9)、DUT(配列番号51)、DYRK2(配列番号72)、DYRK4(配列番号53)、ENPP5(配列番号73)、EPHA2(配列番号13)、FGFR2(配列番号74)、FHIT(配列番号75)、FRK(配列番号76)、GAK(配列番号55)、GCK(配列番号19)、MAP2K3(配列番号77)、NME4(配列番号1)、PANK1(配列番号78)、PCK1(配列番号3)、PFKL(配列番号63)、PIK4CA(配列番号21)、PRKWNK3(配列番号5)、PRPS1L1(配列番号79)、PSKH1(配列番号57)、PTK9L(配列番号80)、SOCS5(配列番号59)、SRPK1(配列番号17)、STK16(配列番号7)、STK35(配列番号81)、TAF1(配列番号82)、TBK1(配列番号83)、TJP2(配列番号84)、TNK1(配列番号61)、TPK1(配列番号85)、TRIB3(配列番号86)、TRPM7(配列番号87)、VRK(配列番号88)、ALPPL2(配列番号89)、AP4M1(配列番号23)、CAPZA1(配列番号25)、DNAH5(配列番号27)、DOM3Z(配列番号90)、FTCD(配列番号29)、PDIA3(配列番号31)、MDM4(配列番号91)、WDR66(配列番号92)、NOP5/NOP58(配列番号33)、NSUN6(配列番号93)、PAFAH1B1(配列番号35)、PARVB(配列番号37)、PHEX(配列番号39)、PKN1(配列番号44)、POLR2J2(配列番号41または65)、RAB20(配列番号43)、SYNPR(配列番号45)およびTRPM5(配列番号47)からなる群から選択された標的タンパク質または前記標的タンパク質との配列同一性が少なくとも95%である前記標的タンパク質と実質的に類似のタンパク質に結合するか、またはその活性もしくは発現を阻害する化合物を同定するステップと、
(b)ステップ(a)で同定された前記化合物がウイルスの複製を阻害する能力を測定するステップと
を含むウイルス阻害化合物のスクリーニング方法。
【請求項5】
標的タンパク質が、配列番号21、45、47、49、51、53、55または63のいずれか、あるいは前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する実質的に類似のタンパク質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
標的タンパク質が、配列番号21、45、47、53または63のいずれかである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)のいずれかである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)で同定された化合物が標的タンパク質の活性を阻害する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスがHCVであり、標的タンパク質が配列番号7、21、35、37、45、47、49、51、53、55、57、59、61または63のいずれか、あるいは前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する実質的に類似のタンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
標的タンパク質が、配列番号7、21、35、37、45、47、49、51、53、55、57、59、61または63のいずれかである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)がHCVレプリコンを含有する培養細胞を使用して実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ウイルスがHIVであり、標的タンパク質が配列番号21、45、47、49、51、53、55または63のいずれか、あるいは前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する実質的に類似のタンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
標的タンパク質が、配列番号21、45、47、53または63のいずれかである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
AKAP8(配列番号11)、ALK(配列番号67)、ATM(配列番号68)、C14ORF24(配列番号69)、DGKD(配列番号15)、DGKZ(配列番号70)、DUSP19(配列番号49)、DUSP22(配列番号71)、DUSP6(配列番号9)、DUT(配列番号51)、DYRK2(配列番号72)、DYRK4(配列番号53)、ENPP5(配列番号73)、EPHA2(配列番号13)、FGFR2(配列番号74)、FHIT(配列番号75)、FRK(配列番号76)、GAK(配列番号55)、GCK(配列番号19)、MAP2K3(配列番号77)、NME4(配列番号1)、PANK1(配列番号78)、PCK1(配列番号3)、PFKL(配列番号63)、PIK4CA(配列番号21)、PRKWNK3(配列番号5)、PRPS1L1(配列番号79)、PSKH1(配列番号57)、PTK9L(配列番号80)、SOCS5(配列番号59)、SRPK1(配列番号17)、STK16(配列番号7)、STK35(配列番号81)、TAF1(配列番号82)、TBK1(配列番号83)、TJP2(配列番号84)、TNK1(配列番号61)、TPK1(配列番号85)、TRIB3(配列番号86)、TRPM7(配列番号87)、VRK(配列番号88)、ALPPL2(配列番号89)、AP4M1(配列番号23)、CAPZA1(配列番号25)、DNAH5(配列番号27)、DOM3Z(配列番号90)、FTCD(配列番号29)、PDIA3(配列番号31)、MDM4(配列番号91)、WDR66(配列番号92)、NOP5/NOP58(配列番号33)、NSUN6(配列番号93)、PAFAH1B1(配列番号35)、PARVB(配列番号37)、PHEX(配列番号39)、PKN1(配列番号44)、POLR2J2(配列番号)41または65)、RAB20(配列番号43)、SYNPR(配列番号45)およびTRPM5(配列番号47)からなる群から選択された標的タンパク質または前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する前記標的タンパク質と実質的に類似のタンパク質の活性もしくは発現を阻害することができる化合物の有効量を細胞に提供するステップを含む、HCVレプリコンを含有するか、HCVに感染した前記細胞におけるC型肝炎ウイルス(HCV)複製の阻害方法。
【請求項15】
標的タンパク質が配列番号7、21、35、37、45、47、49、51、53、55、57、59、61または63のいずれか、あるいは前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する実質的に類似のタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HCVレプリコンに感染した培養細胞においてHCV複製を阻害するために使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
AKAP8(配列番号11)、ALK(配列番号67)、ATM(配列番号68)、C14ORF24(配列番号69)、DGKD(配列番号15)、DGKZ(配列番号70)、DUSP19(配列番号49)、DUSP22(配列番号71)、DUSP6(配列番号9)、DUT(配列番号51)、DYRK2(配列番号72)、DYRK4(配列番号53)、ENPP5(配列番号73)、EPHA2(配列番号13)、FGFR2(配列番号74)、FHIT(配列番号75)、FRK(配列番号76)、GAK(配列番号55)、GCK(配列番号19)、MAP2K3(配列番号77)、NME4(配列番号1)、PANK1(配列番号78)、PCK1(配列番号3)、PFKL(配列番号63)、PIK4CA(配列番号21)、PRKWNK3(配列番号5)、PRPS1L1(配列番号79)、PSKH1(配列番号57)、PTK9L(配列番号80)、SOCS5(配列番号59)、SRPK1(配列番号17)、STK16(配列番号7)、STK35(配列番号81)、TAF1(配列番号82)、TBK1(配列番号83)、TJP2(配列番号84)、TNK1(配列番号61)、TPK1(配列番号85)、TRIB3(配列番号86)、TRPM7(配列番号87)、VRK(配列番号88)、ALPPL2(配列番号89)、AP4M1(配列番号23)、CAPZA1(配列番号25)、DNAH5(配列番号27)、DOM3Z(配列番号90)、FTCD(配列番号29)、PDIA3(配列番号31)、MDM4(配列番号91)、WDR66(配列番号92)、NOP5/NOP58(配列番号33)、NSUN6(配列番号93)、PAFAH1B1(配列番号35)、PARVB(配列番号37)、PHEX(配列番号39)、PKN1(配列番号44)、POLR2J2(配列番号41または65)、RAB20(配列番号43)、SYNPR(配列番号45)およびTRPM5(配列番号47)からなる群から選択された標的タンパク質または前記標的タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有する前記標的タンパク質に実質的に類似のタンパク質の活性もしくは発現を阻害することができる化合物の有効量を宿主細胞に提供するステップを含む、宿主におけるウイルス複製の阻害方法。
【請求項18】
標的タンパク質が、配列番号7、21、35、37、45、47、49、51、53、55、57、59、61または63のいずれかである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスがC型肝炎ウイルス(HCV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)のいずれかである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
標的タンパク質が、配列番号21、45、47、53または63のいずれかである、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−501513(P2009−501513A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518260(P2008−518260)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023646
【国際公開番号】WO2007/001928
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【出願人】(505441904)ロゼッタ インファーマティックス エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】