説明

HCVNS3−NS4Aプロテアーゼ耐性突然変異体

本発明は、HCV NS3/4Aプロテアーゼの突然変異体に指向される。より詳細には、本発明は、薬剤処理に対して耐性であるHCV NS3/4Aプロテアーゼの突然変異体を同定する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼの耐性突然変異体に関する。
【0002】
関連技術の背景
C型肝炎ウイルス(「HCV」)による感染は、動かさずにはおけないヒト医学の問題である。HCVは、全世界で3%の見積もられた人間の血清普及に伴い、非A型および非B型肝炎のほとんどの場合の原因因子と認められる[A. Alberti et al., "Natural History of Hepatitis C," J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 17-24 (1999)]。合衆国単独でも、ほぼ400万人の個人が感染し得る[M. J. Alter et al., "The Epidemiology of Viral Hepatitis in the United States, Gastroenterol. Clin. North Am., 23, pp. 437-455 (1994); M. J. Alter "Hepatitis C Virus Infection in the United States," J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 88-91 (1999)]。
【0003】
HCVへの最初の曝露に際して、感染した個人の約20%しか急性の臨床的肝炎を発症しない一方、感染の重篤な表面的症状を発症しないように見える者もいる。実例のほぼ70%においては、しかしながら、ウイルスは、数十年間存続する慢性感染症を確立する[S. Iwarson, "The Natural Course of Chronic Hepatitis,” FEMS Microbiorogy Reviews, 14, pp.201-204(1994);D. Lavanchy、Global Surveillance and Control of Hepatitis C," J. Viral Hepatitis, 6, pp.35-47 (1999)]。これは、通常再発および次第に悪化する肝炎を生じ、それはしばしば肝硬変および肝臓細胞カルシノーマのごときより重篤な疾患状態に通じる場合がある[M. C. Kew, "Hapatitis C and Hepatocellular Carcinoma", FEMS MIcrobiology Reviews, 14, pp.211-220 (1994); I. Saito et.al., "Hepatitis C Virus Infection is Associated with the Development of Hapatocellular Carcinoma", Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 6547-6549(1990)]。不運にも、慢性のHCVの衰弱進行のための広く有効な治療法は存在しない。
【0004】
HCVゲノムは、3010-3033のアミノ酸のポリタンパク質をコードする[Q. L. Choo, et. al., "Genetic Organization and Diversity of the Hepatitis C Virus." Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, pp.2451-2455 (1991); N. Kato et al., "Molecular Cloning of the Human Hepatitis C Virus Genome From Japanese Patients with Non-A, Non-B Hepatitis," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87,, pp.9524-9528 (1990); A. Takamizawa et al., "Structure and Organization of the Hepatitis C Virus Genome Isolated From Human Carriers," J. Virol., 65, pp. 1105-1113 (1991)]。HCV非構造(NS)タンパク質は、ウイルス複製の本質的な触媒機構を提供すると仮定される。NSタンパク質はポリタンパク質のタンパク質加水分解切断によって駆動する[R. Bartenschlager et. al., “Nonstructural Protein 3 of the Hepatitis C virus Encodes a Serine-Type Proteinase Required for Cleavage at the NS3/4 and NS4/5 Junctions,” J. Virol., 67, pp. 3835-3844 (1993); A. Grakoui et. al., “Characterization of the Hepatitis C virus-Encoded Serine Proteinase: Determination of Proteinase-Dependent Polyprotein Cleavage Sites,” J. Virol., 67, pp. 2832-2843 (1993); A. Grakoui et. al., “Expression and Identification of Hepatitis C virus Polyprotein Cleavage Products,” J. Virol., 67, pp. 1385-1395 (1993); L. Tomei et. al., “NS3 is a serine protease required for processing of Hepatitis C virus polyprotein”, J. Virol., 67, pp. 4017-4026 (1993)]。
【0005】
HCV NSタンパク質3(NS3)は、ウイルスのポリタンパク質を加工して大部分のウイルス酵素を創製するセリンプロテアーゼ活性を含み、それはウイルスの複製および感染性に必須である。NS3の最初の181アミノ酸(ウイルスポリタンパク質の残基1027−1207)はHCVポリタンパク質のすべての4の下流サイトを加工するNS3のセリンプロテアーゼドメインを含むことが示されている[C. Lin et al., “Hepatitis C Virus NS3 Serine Proteinase: Trans-Cleavage Requirements and Processing Kinetics”, J. Virol., 68, pp. 8147-8157 (1994)]。HCV NS3セリンプロテアーゼの触媒性の3の組合せの置換は、チンパンジーにおいてウイルス複製および感染性の喪失を生じた[A.A. Kolykhalov et al., “Hepatitis C virus-encoded enzymatic activities and conserved RNA elements in the 3' nontranslated region are essential for virus replication in vivo”, J. Virol., 74: 2046-2051]。黄熱ウイルスNS3プロテアーゼにおける突然変異はウイルス感染性を低下することが知られている[Chambers, T.J. et. al.,“Evidence that the N-terminal Domain of Nonstructural Protein NS3 From Yellow Fever Virus is a Serine Protease Responsible for Site-Specific Cleavages in the Viral Polyprotein”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 8898-8902 (1990)]。
【0006】
HCV NSセリンプロテアーゼおよびその関連する補因子、NS4Aは、ウイルスの非構造タンパク質領域をウイルス酵素のすべてを含む個々の非構造タンパク質に加工し[C. Failla, et al., “An amino-terminal domain of the hepatitis C virus NS3 protease is essential for interaction with NS4A”, J. Virol. 69, pp. 1769-1777; Y. Tanji et al., “Hepatitits C virus-encoded nonstructural protein NS4A has versatile functions in viral protein processing”, J. Virol. 69, pp. 1575-1581; C. Lin et al., “A central region in the hepatitis C virus NS4A protein allows formation of an active NS3-NS4A serine proteinase complex in vivo and in vitro”, J. Virol. 69, pp. 4373-4380]、ウイルスの複製に必須である。このプロセシングは、これもウイルスタンパク質のプロセシングに関与しているヒト免疫不全ウイルスのアスパルチルプロテアーゼによって行われるものに類似しているようである。ウイルスタンパク質のプロセシングを阻害するHIVプロテアーゼインヒビターはヒトにおける有力な抗ウイルス剤であり、これは、ウイルス生活環のこのステージを妨害することが治療上有効な剤を生じることを示している。したがって、それは薬剤の発見に魅力的な標的である。
【0007】
幾つかの有力なHCVプロテアーゼインヒビターが先行技術に記載されている[国際公開番号WO 02/18369, WO 02/08244, WO 00/09558, WO 00/09543, WO 99/64442, WO 99/07733, WO 99/07734, WO 99/50230, WO 98/46630, WO 98/17679およびWO 97/43310、米国特許第5,990,276, M. Llinas-Brunet et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 8, pp. 1713-18 (1998); W. Han et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, 711-13 (2000); R. Dunsdon et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, pp. 1571-79 (2000); M. Llinas-Brunet et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, pp. 2267-70 (2000); and S. LaPlante et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10, pp. 2271-74 (2000)]。しかしながら、これらの化合物が許容し得る薬剤であるという適当なプロファイルを有するかは知られていない。さらに、HCVプロテアーゼが他の許容し得る薬剤に対して耐性となる可能性もある。
【0008】
したがって、HCVの現在の理解では、いずれかの満足し得る抗HCV剤または治療につながらない。HCV疾患の唯一確立された療法は、インターフェロンαをベースとする治療である。しかしながら、インターフェロンαは重篤な副作用を有しており[M. A. Walker et al., “Hepatitis C Virus: An Overview of Current Approaches and Progress,” DDT, 4, pp. 518-29 (1999); D. Moradpour et al., “Current and Evolving Therapies for Hepatitis C,” Eur. J. Gastroenterol. Hepatol., 11, pp. 1199-1202 (1999); H. L. A. Janssen et al. “Suicide Associated with Alfa-Interferon Therapy for Chronic Viral Hepatitis,” J. Hepatol., 21, pp. 241-243 (1994); P.F. Renault et al., “Side Effects of Alpha Interferon,” Seminars in Liver Disease, 9, pp. 273-277. (1989)]、一部(〜25%)の症例においては長期間の緩解を誘導する[O. Weiland, “Interferon Therapy in Chronic Hepatitis C Virus Infection” , FEMS Microbiol. Rev., 14, pp. 279-288 (1994)]。治療の最新のスタンダード、リバビリンと組み合わせたPEG化インターフェロンαは、遺伝子型1に感染した患者についておおよそ40−50%の持続ウイルス応答(SVR)を有し、これは先進国における慢性C型肝炎患者の70%とみなされ、遺伝子型2または3のHCV感染患者の80%SVRとみなされる[J.G. McHutchison, et al., N. Engl. J. Med., 339: 1485-1492 (1998); G.L. Davis et al., N. Engl. J. Med., 339: 1493-1499 (1998)]。また、有効な抗−HCVワクチンに対する見通しは不確定のままである。
【0009】
したがって、より有効な抗−HCV療法に対する要望、より詳細にはHCV NS3プロテアーゼを阻害する化合物に対する要望が存在する。かかる化合物は、抗ウイルス剤、詳細には抗−HCV剤として有用になり得る。HCV耐性突然変異体を理解することは、有効なHCV治療に向かってさらに前進するであろう。
【0010】
発明の概要
本発明はC型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼの耐性突然変異体に関する。
【0011】
かくして、ある種の態様において、本発明は、突然変異体HCV NS3/4Aプロテアーゼまたはその生物学的に活性なアナログもしくはフラグメントをコードする単離されたHCVポリヌクレオチドを含み、ここに野生型ポリヌクレオチドのコドン156に対応するコドンおよび/または野生型ポリヌクレオチドのコドン168に対応するコドンは、156のアラニンおよび/または168のアスパラギン酸をコードしないように突然変異している。かかる突然変異の例は、本明細書全体を通して記載されており、それには、野生型ポリヌクレオチドの156に対応するコドンがセリン、バリンまたはトレオニンをコードするポリヌクレオチドが含まれる。他の例示的な形態には、野生型ポリヌクレオチドのコドン168に対応するポリヌクレオチドのコドンがアスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシンまたはチロシンをコードするポリヌクレオチドが含まれる。コドン156およびコドン168の突然変異のいずれかの組合せは特異的に意図される。野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼは当業者によく知られている。それは、配列番号:1のポリヌクレオチド配列によってコードされている。そのポリヌクレオチド配列は、配列番号:2のアミノ酸配列をコードしている。
【0012】
また、本明細書に記載するポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドまたはその生物学的に活性なフラグメントも本明細書において意図される。さらに、本発明は、かかるポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトされている宿主細胞を含むベクターおよびかかるポリヌクレオチドを含むセルラインを包含する。かかるベクターを作製し、宿主細胞を形質転換し、およびセルラインを調製する方法および組成物は当業者に知られている日常的かつ慣用的な技術である。本明細書に記載した突然変異ポリヌクレオチドまたは本明細書に記載したタンパク質を含む単離したHCV変異型も、本発明の一部分である。
【0013】
ポリヌクレオチドまたはタンパク質を単独で、または他の組成物および成分と組合せて含む組成物も、本明細書において意図される。
【0014】
本発明は、本明細書に記載するポリヌクレオチドの存在を検出することを含む、生物試料中の薬剤耐性HCVの存在を検出する方法を教示するものである。典型的は、かかる方法は、試料からポリヌクレオチドを得るかまたは単離し;ポリヌクレオチドの配列を決定し;ついで、本明細書に記載する1またはそれを超える突然変異のように、耐性に関連する突然変異(例えば、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼの残基156に対応する残基でセリン、バリンまたはトレオニンをコードするものおよび/または残基168に対応する残基でグルタミン酸、バリン、アラニン、グリシンまたはチロシンをコードするもの)がポリヌクレオチド中に存在するかを評価する
ことを含む。
【0015】
また、患者におけるHCV感染症が薬剤耐性であるかを判定または診断する方法も意図され、それには、HCV感染患者から生物試料を収集し;ついで血漿試料が突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする核酸を含むかを評価することが含まれ、ここに突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼの存在は、薬剤耐性HCV感染症に罹っている患者の指標である。
【0016】
他の態様は、HCV感染患者がVX−950に対する減少した感度または感受性を有しているかを評価する方法も意図し、それには、患者が、野生型C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼの残基156をコードするコドンに突然変異を有するC型肝炎ウイルスNS3/4AプロテアーゼDNAを有するかを評価することが含まれる。
【0017】
なおさらなる態様は、HCV感染患者がプロテアーゼインヒビターに対する減少した感度または感受性を有しているかを評価する方法に指向し、それには、患者が、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼの残基156をコードするコドンに突然変異を有するC型肝炎NS3/4AプロテアーゼDNAを有するかを評価することが含まれる。
【0018】
本発明は、さらに、候補または潜在的なHCVインヒビターを評価する方法を意図し、それには、本発明のポリヌクレオチドおよびインジケーターをコードするインジケーター遺伝子を含むベクターを宿主細胞に導入し;宿主細胞を培養し;ついで、インヒビターの存在下および不存在下におけるインジケーターを測定することが含まれる。
【0019】
他の方法では、本明細書に記載する突然変異プロテアーゼおよびプロテアーゼ基質を準備し;プロテアーゼと候補または潜在的なインヒビターとを基質存在下で接触させ;ついで、該プロテアーゼのタンパク質加水分解活性の阻害を評価または測定することによってHCVに対する活性について化合物をアッセイする。
【0020】
他の態様は、本明細書に記載する薬剤耐性プロテアーゼのインヒビターとして化合物を同定する方法を提供し、それは、化合物の不存在下でかかるプロテアーゼの活性をアッセイし;化合物の存在下でプロテアーゼの活性をアッセイし;化合物の存在下および不存在下で行ったアッセイからの結果を比較することにより、ここに、化合物が存在する結果としてのプロテアーゼ活性のいずれかの低下は、ギア化合物がプロテアーゼのインヒビターであることを示す。
【0021】
また、NS3/4AプロテアーゼがVX−950に耐性になる、VX−950の活性を救うことができる化合物を同定する方法も教示し、この方法では、耐性プロテアーゼを化合物と接触させ;ついで、プロテアーゼの活性を阻害するVX−950の能力をその化合物の存在下で評価する。
【0022】
本発明は、NS3/4Aプロテアーゼの三次元構造を解明したという事実を利用する(例えば、WO 98/11134)。かかる技術および本発明の教示を用いて、本発明の耐性プロテアーゼの三次元モデルを得;突然変異プロテアーゼの三次元構造と相互作用する化合物を設計または選択し、および、プロテアーゼに結合またはそれと相互作用する化合物の能力を評価する(例えば、分子モデリングを通して)。例示的な三次元モデルは、NS3/4AプロテアーゼのX線結晶構造に基づいている(図1および図2)。かかるモデルは、コンピュータ・インプリメンテーションで実行される方法またはX線結晶学を通して得ることができる。かかる評価は、野生型プロテアーゼから決定した評価と比較することができる。
【0023】
化合物は、コンビナトリアル化学ライブラリーから同定したものまたは合理的薬剤デザインを通して調製したものとし得る。例示的な形態において、化合物は、合理的薬剤デザインを通して調製した化合物およびVX−950の構造から誘導した化合物である。例示的な形態において、同定した化合物は、該化合物および医薬上許容し得る担体、補助剤またはビヒクルを含む組成物に処方化する。好ましくは、組成物は、NS3/4Aセリンプロテアーゼを阻害するのに有効な量の化合物を含む。いまだより好ましくは、化合物は患者に投与するために処方化する。化合物は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの第2のインヒビター;HCV生活環の別の標的のインヒビター;シトクロムP−450インヒビター;またはそれらの組合せから選択されるさらなる剤も含み得る。
【0024】
本発明の他の方法は、C型肝炎ウイルス NS3/4Aプロテアーゼの活性を阻害することを意図し、それは、セリンプロテアーゼとかかる化合物または組成物とを接触させる工程を含む。さらなる態様は、患者におけるHCV感染症を治療する方法を意図し、それは、患者にかかる化合物または組成物を投与する工程を含む。
【0025】
いまださらなる態様は、患者におけるHCV感染症を治療または軽減する方法を意図し、それは、本明細書に記載した突然変異の検出による本明細書に記載した方法を用いてHCV感染症を有する患者が療法に対して耐性であるかを決定し、ついで患者を薬剤耐性HCVの治療に指向された組成物または療法で処理することを含む。
【0026】
他のさらなる態様は、生物試料または医学もしくは研究室器具のHCV汚染を排除または減少する方法を教示し、それは、生物試料または医学もしくは研究室器具と本明細書に記載したように同定した化合物とを接触させる工程を含む。いまだ他の形態において、生物試料または医学もしくは研究室器具は、本明細書に記載した決定の方法に従って決定したHCVの薬剤耐性株で汚染する。
【0027】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の好ましい具体例を示すものの、詳細な説明および特定の実施例は説明目的のみで記載するものである。これは、本発明の意図および範囲内の種々の変形および修飾は、この詳細な説明から当業者に明らかになるであろうからである。
【0028】
好ましい形態の説明
HCV株をある種の化合物の治療効力に対して耐性とする該化合物の存在下においてHCV株が特定の突然変異を受けることを本発明者らによって決定した。特定の形態において、C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼが、突然変異体をプロテアーゼインヒビター化合物に対して耐性とするように、これらのHCV耐性突然変異体において突然変異していることを決定した。これらの知見は、HCV感染症の治療のために、治療剤の設計に活用し得る。
【0029】
具体的な形態において、野生型HCV NS3/4A(その配列を配列番号:2に示す)のアミノ酸残基156が突然変異に対して感受性であることを決定した。この残基の突然変異は、プロテアーゼインヒビターによる治療介在に対するHCVの耐性に通じる。1の形態において、野生型HCV NS3/4Aにおいてはアラニンをコードしている野生型コドン156が、HCV NS3/4Aポリペプチド中のその関連している位置でセリンをコードするコドンに突然変異していることが示された。もう1の形態において、該コドンは、HCV NS3/4Aポリペプチド中のその関連している位置でバリンをコードするコドンに突然変異している。なおもう1の形態において、HCV NS3/4A中のその関連している位置においてトレオニンがコードされている。
【0030】
前記知見に鑑み、本発明は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ(またはそのフラグメントもしくはアナログ)をコードするHCV DNAを提供し、ここに、DNAのコドン156はセリンをコードしている。本発明のもう1の形態は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ(またはそのフラグメントもしくはアナログ)をコードするHCV DNAを提供し、ここにDNAのコドン156はバリンをコードしている。いまだ、さらなる形態は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ(またはそのフラグメントもしくはアナログ)をコードするHCV DNAを提供し、ここにDNAのコドン156はトレオニンをコードしている。
【0031】
いまださらなる形態において、ある種の形態において、156のコドンが、天然/野生型HCV NS3/4Aにおいては通常アラニン残基である残基156でバリン、セリンまたはトレオニンをコードするものであることを決定し、通常アスパラギン酸残基である天然/野生型HCV NS3/4Aの残基168のコドンが、バリン、アラニン、グリシンまたはチロシン残基に突然変異しているさらなる突然変異が存在することを決定した。ある種の形態において、突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼが156および165ポジションの両方に突然変異を有することを予定しているが、突然変異体が単一の突然変異を含むことも本発明の一部分であることも予定している。
【0032】
本発明の具体的な態様は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ(またはそのフラグメントもしくはアナログ)をコードするHCV DNAを含み、ここにDNAのコドン156はバリンまたはトレオニンをコードし、コドン168はアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードしている。本発明のもう1の形態は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ(またはそのフラグメントもしくはアナログ)をコードするHCV DNAを提供し、ここにDNAのコドン168はバリンをコードしている。本発明のもう1の形態は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ(またはそのフラグメントもしくはアナログ)をコードするHCV DNAを提供し、ここにDNAのコドン168はアラニン、グリシンまたはチロシンをコードしている。
【0033】
本発明のDNAについての番号付けシステムは、配列番号:1に従う。本発明によるDNAは、配列番号:1から誘導し得る。DNAは固相合成手段または組換え手段によって誘導し得る。具体的な形態において、配列番号:2の配列の部位特異的突然変異は、本明細書に記載する1または他の突然変異体を作製するために特に予定している。
【0034】
タンパク質突然変異が完全(すなわち、タンパク質の全部またはほぼ全部を突然変異タンパク質に変換する)、部分的またはなし(すなわち、全くまたはほぼ全く突然変異が存在しない)とすることができることは認識される。したがって、本発明の組成物または方法は、野生型タンパク質および突然変異したタンパク質の混合物を含み得る。
【0035】
本発明のもう1の形態によれば、プロテアーゼのアミノ酸156を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を提供し、ここにアミノ酸156はセリンである。
【0036】
本発明のもう1の形態は、プロテアーゼのアミノ酸156を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を提供し、ここにアミノ酸156はバリンである。
【0037】
本発明のもう1の形態は、プロテアーゼのアミノ酸156を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を提供し、ここにアミノ酸156はトレオニンである。
【0038】
本発明のもう1の形態は、プロテアーゼのアミノ酸156を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を提供し、ここにアミノ酸156はバリンまたはトレオニンであり、アミノ酸168はアスパラギン酸またはグルタミン酸である。
【0039】
本発明のもう1の形態は、プロテアーゼのアミノ酸156を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を提供し、ここにアミノ酸168はバリンである。
【0040】
本発明のもう1の形態は、プロテアーゼのアミノ酸156を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を提供し、ここにアミノ酸168はアラニン、グリシンまたはチロシンである。
【0041】
本発明によるDNAおよびタンパク質は、日常的な技術を用いて修飾し得る。例えば、DNAは当該DNAを固体支持体に結合するために修飾を含み得る。タンパク質は、共有結合したマーカー化合物を含み得る。
【0042】
本発明によるDNAまたはタンパク質は、限定されるものではないが、コンピュータ判読可能な担体および/またはコンピュータ判読可能なデータベースを含むコンピュータ判読可能な形態で存在し得る(例えば、WO98/11134ご参照)。
【0043】
ある種の使用については、本発明によるDNAはベクターに挿入し得る。いずれの好適なベクターも本発明の範囲内に含まれる。好適なベクターは当該技術分野で知られている。1の形態は発現ベクターを提供する。もう1の形態はウイルスベクターを提供する。ベクターはクローニングツールとし得、あるいはプロモーター、エンハンサーおよびターミネーターまたはポリアデニル化シグナルのごとき調節配列をさらに含み得る。
【0044】
したがって、本発明は、HCV NS3/4AプロテアーゼDNA(またはそのフラグメントもしくはアナログ)を含むベクターも提供し、ここに:
DNAのコドン156はセリンをコードし;
DNAのコドン156はバリンをコードし;
DNAのコドン156はトレオニンをコードし;
DNAのコドン156はバリンまたはトレオニンをコードし、コドン168はアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードし;
DNAのコドン168はバリンをコードし;
DNAのコドン168はアラニンをコードし;
DNAのコドン168はグリシンをコードし;および/または
DNAのコドン168はチロシンをコードする。
【0045】
もう1の形態は、発現ベクターを提供する。もう1の形態はウイルスベクターを提供する。ベクターはクローニングツールとし得、あるいはプロモーター、エンハンサーおよびターミネーターまたはポリアデニル化シグナルのごとき調節配列をさらに含み得る。これらのベクターは、いずれの適当な宿主細胞においても使用し得る。宿主細胞は当該技術分野において知られている。
【0046】
したがって、本発明は、NS3/4AプロテアーゼDNAを含む宿主細胞も提供し、ここにDNAのコドン156はセリンをコードし;DNAのコドン156はバリンをコードし;DNAのコドン156はトレオニンをコードし;DNAのコドン156はバリンまたはトレオニンをコードし、コドン168はアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードし;DNAのコドン168はバリンをコードし;DNAのコドン168はアラニンをコードし;DNAのコドン168はグリシンをコードし;および/またはDNAのコドン168はチロシンをコードする。DNAの発現は、A156のセリン突然変異;A156のバリン突然変異;A156のトレオニン突然変異;A156のバリンまたはトレオニンおよびD168のグルタミン酸突然変異;D168のバリン突然変異;D168のアラニン突然変異;D168のグリシン突然変異;および/またはD168のチロシン突然変異、を有するプロテアーゼを含む宿主細胞を提供する。また、本発明によるDNAまたはタンパク質を含むセルラインも提供する。
【0047】
本発明は、本発明によるDNAまたは本発明によるタンパク質を含むHCV変異型、ならびにDNAおよびタンパク質を含む組成物も提供する。
【0048】
本発明によるHCV変異型、ならびにDNAおよび/またはタンパク質は、薬剤の発見ならびに適当なHCV療法をモニターするのに有用となり得る。
【0049】
したがって、本発明のもう1の形態は、生物試料中のHCVの存在を検出する方法を提供し、該方法は本発明によるDNAの存在を検出することを含む。これらの方法は、a)DNAを得(または抽出し);b)DNAの配列を決定し;c)DNAにおいて、コドン156がセリンをコードするか、コドン156がバリンをコードするか、ポリヌクレオチドのコドン156がトレオニンをコードするか、コドン156がバリンまたはトレオニンをコードし、コドンの168がアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードするか、コドン168がバリンをコードするか、あるいはコドン168がアラニン、グリシンまたはチロシンをコードするかを決定または推断する工程を含み得る。ある種の態様において、HCVを含有する生物試料は、HCVに感染している哺乳動物に由来する。かかるDNAの存在の検出は、個人が、HCV感染がプロテアーゼインヒビターによる治療に対して耐性またはその他難治性のようであることを開業医に案内するのに診断的に使用し得る。かかる案内が得られれば、当業者はかかる感染症を有する対象の療法を修飾し得るが、例えば、対象に感染しているHCV株が非耐性である剤を用いるさらなる療法を提供する療法の用量を増加し得る。
【0050】
本発明の方法は、ある種の量のDNAを得ることが必要となり得る。当業者により認識されるごとく、DNAを得、ついで増幅する。標準的な技術(例えば、PCR、ハイブリダイゼーション)を用いて、本発明を実施し得る。かかる技術は当業者によく知られている。
【0051】
また、本発明は、本明細書中に記載した突然変異についてモニターすることによってHCV感染症を治療または予防する方法も提供する。耐性の突然変異体がHCVに存在する場合には、患者はそれに従って治療し得る。かかる方法は:a)HCV感染患者から試料(例えば、血漿試料、PBMC、肝細胞または他の試料)を収集し;ついで、b)コドン156にアラニンとセリンとの置換を生じる突然変異を有するHCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする核酸を血漿試料が含有するかを評価することを含む。156−アラニンからセリンへの突然変異を本明細書に記載した他の突然変異で置換することによっても、同様の方法を用いることができる。また、同様の方法は、A156のセリンへの突然変異(または本明細書で同定した他の突然変異)および他のプロテアーゼ突然変異を同定することを含み得る。これらの方法は、すべて、DNAを得、DNAを増幅し、ついでDNAの配列を決定することを含む。
【0052】
また、本発明は、HCV感染患者のNS3/4Aプロテアーゼインヒビター治療の有効性を評価する方法を提供する。かかる方法は:a)HCV感染患者から試料(例えば、血漿試料)を収集し;ついで、b)コドン156に突然変異を有するHCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする核酸を血漿試料が含有するかを評価することを含み、ここに該突然変異がアラニンのセリンでの置換を生じる。同様の方法を本発明の他の突然変異を用いて行うことができる。
【0053】
本発明の方法は、HCVプロテアーゼインヒビターを投与した患者における耐性突然変異を同定することを意図する。これらの方法は、治療を受けているまたは治療を受けた患者に対して行うことができる。これらおよび他の診断技術は当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,631,128号および第6,489,098号ご参照)。
【0054】
したがって、1の態様は、HCV感染患者がコドン156で突然変異を有するC型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ DNAを含むかを評価する方法を提供する。かかる患者は、VX−950のような薬剤による治療に耐性のようである。したがって、患者は、VX−950の代わりを用いる療法で治療し得る。もう1の形態は、HCV感染患者がコドン168に突然変異を有するC型肝炎ウイルスNS3/4AプロテアーゼDNAを含むかを評価する方法を提供する。
【0055】
これらの突然変異のある種のものは、VX−950に対する低下した感度または感受性を生じる。同様に、ある種の突然変異は、BILN2061(WO 00/59929; 米国特許第6,608,027号)への低下した感度または感受性と相関するかまたは生じる。他の突然変異は、VX−950およびBILN2061の両方への低下した感度または感受性を生じる。いずれかまたは両方の化合物に対する低下した感度または感受性は、本発明により評価し得る。耐性突然変異パターンを知ることによって、より有効な治療様式を開発し得る。
【0056】
例えば、本発明は、本明細書に記載した耐性突然変異体に対して有効である化合物のデザインおよび/または発見することを許容する。
【0057】
したがって、本発明は、候補または潜在的HCVインヒビターを評価する方法を提供し、当該方法は:
a)本発明によるDNAインジケーターをコードするインジケーター遺伝子を含むベクターを宿主細胞に導入し;
b)宿主細胞を培養し;ついで
c)インヒビターの存在下および不存在下でインジケーターを測定することを含む。
【0058】
この方法において、試験化合物は、工程a)−c)のいずれか1またはそれを超えるものに添加し得る。
【0059】
本発明のもう1の形態は、HCVに対する活性について化合物をアッセイする方法を提供し、当該方法は:
a)本発明によるプロテアーゼおよびプロテアーゼ基質を準備し;
b)プロテアーゼと候補または潜在的インヒビターとを基質存在下で接触させ;ついで
d)プロテアーゼのタンパク質加水分解活性の阻害を評価または測定する、ことを含む。
【0060】
本発明のもう1の形態は、本発明によるプロテアーゼのインヒビターを同定する方法を提供し、当該方法は:
a)化合物の不存在下でプロテアーゼの活性をアッセイし;
b)化合物の存在下でプロテアーゼの活性をアッセイし;ついで
c)a)の結果とb)の結果とを比較する、ことを含む。かかる方法は、さらに:
d)化合物の不存在下で野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
e)化合物の存在下で野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;ついで
f)d)の結果とe)の結果とを比較する、ことを含む。これらの方法からのデータは、例えば、a)および/またはb)からの結果とd)および/またはe)の結果とを比較することによって分析し得る。
【0061】
また、本発明は、
d)化合物の不存在下で、プロテアーゼのアミノ酸168を含む第2のNS3/4Aプロテアーゼの活性をアッセイし、ここにアミノ酸168はバリン、アラニン、グリシンまたはチロシンであり;
e)化合物の存在下で第2のプロテアーゼの活性をアッセイし;ついで
f)d)およびe)の結果を比較する、ことを含む方法を提供する。方法は、さらに、
g)化合物の不存在下で野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
h)化合物の存在下で野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
i)g)の結果およびh)の結果を比較する、ことを含む方法を提供する。より特異的な形態において、該方法は、a)および/またはb)からの結果とd)および/e)の結果と;および/または、g)および/またはh)からの結果とを比較することを含む。
【0062】
ウイルスが薬剤に対して耐性となった後は、ウイルスがさらに突然変異し、いま一度薬剤に対して感受性になる可能性がある。このことが起こる1の方法は、ウイルスを第2の薬剤と接触させることを介することである。したがって、本発明は、VX−950の活性を助けることができる化合物を同定する方法も提供し、ここにNS3/4AプロテアーゼはVX−950に耐性になっており、該方法は、
a)本明細書に記載した突然変異プロテアーゼと関心のある化合物とを接触させ;
b)a)のプロテアーゼの活性を阻害するVX−950の能力をアッセイすることを含む。また、耐性突然変異体に対するBINL2061の活性および/またはVX−950およびBILN2061二重耐性突然変異体の活性を助ける同様の方法も提供する。
【0063】
薬剤耐性ウイルスに対するもう1の態様は、このウイルスをもう1の薬剤で処理可能なことである。したがって、薬剤耐性ウイルスに対して有効である化合物を同定する方法は、非常に有用な薬剤発見ツールである。本明細書に記載する方法は、ハイスループット・スクリーニング技術に適用し得る。あるいは、本発明は、合理的薬剤デザイン技術を行う方法も提供する。本明細書において解明したHCV NS3/4Aプロテアーゼについての構造情報(すなわち、野生型タンパク質の156および/または168の特定の残基の突然変異)を、有効なプロテアーゼインヒビターのデザインの基礎として用いる。より詳細には、本発明は、VX−950およびBILN2061のごときプロテアーゼインヒビターによる治療に耐性であるそのHCV株を初めて同定した。
【0064】
合理的薬剤デザインは、潜在的プロテアーゼインヒビター薬剤標的をコンビナトリアルライブラリーからの化合物と試験する大規模スクリーニング実験の体系的な方法と組合せることもできる。
【0065】
合理的薬剤デザインは、薬剤レセプターの構造またはその天然リガンドの構造についての情報を用いて候補薬剤を同定または創製する集中されたアプローチである。タンパク質の三次元構造は、X線結晶学または核磁気共鳴分光学のごとき方法を用いて決定し得る。本発明においては、残基156または168の突然変異の1、他または両方を含むHCV NS3/4Aプロテアーゼ突然変異体の三次元構造を、日常的なX線結晶学および/または核磁気共鳴分光学技術を用いてここに容易に決定し得る。
【0066】
合理的薬剤デザインは、潜在的プロテアーゼインヒビター薬剤標的をコンビナトリアルライブラリーからの化合物と試験する大規模スクリーニング実験の体系的方法と組合せることもできる。本明細書に記載した情報で装備して、当業者はコンピュータ・プログラムを利用して、多くの異なる化学化合物の構造を含むデータベースを介してサーチすることができる。コンピュータは、薬剤耐性突然変異体からHCV NS3/4Aプロテアーゼと最も相互作用しそうな化合物を選択し、本明細書に記載する試験のごときプロテアーゼインヒビターからの日常的な研究室試験において、かかる同定した化合物を試験することができる。
【0067】
ある種の形態において、VX−950またはBILN2061の構造(図4を参照されたい)は、それからさらなる分子を設計し得る出発構造として使用し得ることを予定している。突然変異プロテアーゼは、VX−950の相互作用を低下するものであることを本明細書において示す。残基156がバリン、セリンまたはトレオニンおよび/または残基168がバリン、アラニン、グリシンまたはグルタミン酸である場合に創製した三次元構造に容易にフィットし、およびそれを相互作用するVX−950由来の構造は、HCV NS3/4Aプロテアーゼ中に突然変異が存在するHCVの耐性株に対して使用し得る有用な新たなプロテアーゼインヒビターであろう。かかる化合物は、HCV NS3/4Aプロテアーゼが突然変異していない野生型HCV株に対しても有効になり得る。本発明の教示は、当業者がサーチを可能な限り集中および狭めて、大規模スクリーニングの出費を制限することを可能にする。
【0068】
詳細な形態において、出発物質の構造は、VX−950の構造(構造Bで以下に示す)を有する。VX−950を例示するが、950のいずれの立体異性体も用いることができ、n−プロピル側鎖におけるD−およびL−異性体の混合物は表示して含まれる。以下の構造、構造Aはかかるジアステレオ異性体を描いている。これは、構造B(VX−950)および構造Cの化合物の混合物である。
【0069】
【化1】

【0070】
合理的薬剤デザインを用いて、この分子量の異なる位置を順次修飾して、プロテアーゼインヒビターとして有用となり得るその誘導体を生成することができる。野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼとそれに結合したVX−950の結晶構造を図1に示す。その図に示すデータは、HCV NS3/4AプロテアーゼのD168のマイナス電荷の除去がR155の拘束の欠如を生じ、その結果、BILN2061の大きなP2との積み重なりの欠失を生じ、脱溶媒和のコストを増大することを示している。R155はVX−950分解された構造中のD168によって拘束されず、D168V突然変異はその結合に影響しない。かかる結合実験は、合理的薬剤デザインを通して解明した誘導体を用いて容易に行い、突然変異体において結合キャパシティーおよび/または治療効力を有する薬剤を同定することができる。
【0071】
合理的薬剤デザインは以前に使用され、インフルエンザを治療するために使用するレレンザ(Relenza)を同定した。レレンザの発見に通じるデザインは、ノイラミニダーゼ、感染細胞から新たに形成されたウイルスを放出するのに必要なウイルス生成酵素、と最も相互作用しそうな分子を選択することによって開発した。HIV感染症を治療する多くの最近の薬剤(例えば、リトニビル(Ritonivir、登録商標)、インジナビル(Indinavir、登録商標))も、薬剤をウイルスプロテアーゼ、ウイルスタンパク質を分裂し、それらが適当にアセンブルすることを許容する酵素と相互作用するように設計した合理的薬剤デザインスキームを介して同定した。
【0072】
リガンドをベースとする合理的デザインによって創製されたもう1のよく知られている薬剤はビアグラ(Viagra、登録商標)である。この薬剤は、cGMP、ホスホジエステラーゼに結合するリガンド、に似せて設計された。
【0073】
合理的薬剤デザインの技術が有効であることが証明され、薬剤の標的の構造が知られれば、公知のHCVインヒビターに耐性であるHCV株に見られるNS3/4Aプロテアーゼの構造を示す本発明の発見が予定され、当業者が合理的薬剤デザインを使用してHCVの治療に有用な薬剤を同定することができる。
【0074】
したがって、本発明により、本発明のプロテアーゼに対して有効な化合物を同定する方法も提供され、当該方法は:
a)該プロテアーゼの三次元モデルを得:
b)化合物をデザインまたは選択し;
c)化合物が該プロテアーゼに結合するかまたはそれと相互作用する能力を評価する
ことを含む。
【0075】
かかる方法では、三次元のモデルは、NS3/4AプロテアーゼのX線結晶構造(図1および図2)に基づく。方法は、例えばコンピュータに実行された方法分子モデリング(参照、例えば米国6,162,613、WO 98/11134、またはWO 02/068933)によって結晶構造からのモデルを開発することで知られている。三次元モデルは本発明のタンパク質のX線結晶学によって得られてもよい。当該技術分野で認識されるように、タンパク質は、リガンド(評価されている化合物のような)の不存在が存在する場合で結晶してもよい。
【0076】
プロテアーゼに結合する、またはそれと相互作用する化合物の能力を評価することは、当該技術分野において知られている(参照、例えば米国6,162,613、WO 98/11134、またはWO 02/068933)。評価は、例えば分子モデリングによって行われてもよい。化合物が選択された後、それは、標準アッセイ、または本明細書に提供するアッセイによってテストして、種々のHCVプロテアーゼの化合物効果を判定し得る。
【0077】
このように、本発明の教示が与えられれば、薬剤耐性のHCV感染症に対して有効なプロテアーゼインヒビターを同定するスクリーニングアッセイを行うことが可能であろう。本発明は、HCV NS3/4Aプロテアーゼの一方の残基156または168のいずれかに突然変異を有しているHCV株に薬物耐性が誘導されることを示す。より詳細には、セリン、バリンまたはトレオニンへのA156の突然変異、および/またはバリン、アラニン、グリシンまたはグルタミン酸へのD168の突然変異が、薬物治療にHCVが耐性になることを生じることを本明細書において示す。
【0078】
上記の明瞭に表現された突然変異の一つ以上を含む突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼのインヒビターとして作用する組成物は、HCVの治療のための療法実施態様に有用であろうことを予定している。該化合物は、VX−950またはBILN2061の作用を模倣するようデザインされたもの、またはVX−950またはBILN2061から誘導したものとし得る。かかる化合物を同定するスクリーニングアッセイで、候補物質は最初に、基本的な生化学的活性についてイン・ビトロ(in vitro)でスクリーニングし、ついで、HCV感染症のイン・ビボ(in vivo)においてHCV感染症を低減する、改善する、その他療法的に介在するその能力に関して試験する。本発明の突然変異体プロテアーゼはプロテアーゼ活性を所有する。いずれかのスクリーニングアッセイを設定して、いずれかの慣用的なアッセイを用いて突然変異体HCV NS3/4Aプロテアーゼ活性を決定して、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼ活性を決定することができる。好ましい実施態様において、突然変異体HCV NS3/4Aプロテアーゼに対するインヒビターの活性を、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼに対するインヒビターの活性と比較する。
【0079】
候補物質がプロテアーゼを抑制する能力は、HCV NS3/4Aプロテアーゼを含む試料を得;ついで、候補物質と試料とを接触させることによって決定する。
候補物質の存在下および不存在下のHCVプロテアーゼ活性を決定する。プロテアーゼは単離されたタンパク質、単離されたタンパク質を含む膜フラクション、あるいはそれはプロテアーゼを発現する細胞内に存在していてもよい。かくして、典型的に、プロテアーゼ活性は、候補物質の不存在下のプロテアーゼを含んでいる試料で決定する。その場合、候補物質をプロテアーゼを含んでいる試料の同一または同様の組成物に加え、ついでプロテアーゼ活性を決定するであろう。試料のプロテアーゼ活性を低下させるいかなる候補物質も、所望のインヒビター活性を有する候補物質を示す。
【0080】
インビボ・スクリーニングアッセイでは、化合物は所定の期間にわたり、種々の投与量でモデル動物に投与し、HCV感染と関連する症状の緩和をモニターする。これらの症状の一つ以上におけるいかなる改善も、有用な薬剤である候補物質を示すであろう。
【0081】
本明細書において用いる用語「候補物質」は、プロテアーゼが野生型のものまたは突然変異品種のものであるかにかかわらず、HCVプロテアーゼのインヒビターとして潜在的に作用し得るいずれの分子をもいう。かかる薬剤はタンパク質またはそのフラグメント、小分子インヒビター、または核酸分子さえである可能性がある。最も有用な医薬化合物がHCVプロテアーゼの他の公知のインヒビター、例えばVX−950、BILN2061または本明細書で論じた他のインヒビターのごとき、に構造的に関連する化合物であるという場合が判明し得る。合理的薬剤デザイン、公知のかかるインヒビターとの比較のみならず、かかるインヒビターの標的分子の構造に関連する予測をも含む。
【0082】
他方、様々な商用ソースから、有用な化合物の同定の「力ずく」の努力における有用な薬剤の基本的基準に合致すると考えられる小さな分子ライブラリーを得ることもできる。コンビナトリアル的に創製したライブラリー(例えば、ペプチド・ライブラリー)を含むかかるライブラリーのスクリーニングは、活性につき関連する(および無関係な)化合物の多数をスクリーニングする迅速かつ効率的な方法である。また、コンビナトリアル・アプローチは、能動的にモデル化する第二、第三および第四世代の化合物の創製による潜在的薬剤の迅速な発展に役立ち、さもなければ望ましくない化合物にはそうはならない。
【0083】
候補化合物は、天然発生する化合物のフラグメントまたは一部分を含んでいてもよいし、さもなければ、不活性である公知化合物の有効な組合せとして見出され得る。化合物を、動物、細菌、菌類、葉および樹皮を含む植物起源、および海洋試料のような天然起源から分離された化合物を、潜在的に有用な医薬剤が存在する候補としてアッセイし得ることが提唱される。医薬剤は、化学組成物または人造化合物から誘導化または合成され得るものとし得ることは理解されるであろう。
【0084】
ある種の状況下における候補剤の「有効量」とは、HCV NS3/4Aプロテアーゼの発現または活性の阻害、HCV生成または病原性の阻害、HCV感染症の阻害、またはかかる剤の不存在下でパラメーターのレベルと比較したHCV感染症の1またはそれを超える症状の改善または緩和における変化を再現的に生成するのに有効な量である。かかるパラメーターの重要な適切な変化を達成する化合物が用いられるだろう。活性および/または発現の重要な変化は、少なくとも30%−40%の活性における変化、および最も好ましくは少なくとも約50%の変化によって表されるものであろうが、勿論、より高い値も可能である。
【0085】
優性VX−950耐性突然変異体、A156Sは、BILN2061に感受性のままである。Ala156またはAsp168のいずれかの観察された突然変異が、各々、VX−950またはBILN2061に対する耐性を付与するのに十分であるかを確認するために、部位特異的突然変異を用いて、ポジション156または168の各々個々の突然変異を野生型NS3プロテアーゼドメインへ導入した。
【0086】
部位特異的突然変異は、本発明の方法で用いる突然変異体プロテアーゼタンパク質の調製に有用なもう1の技術である。この技術は、基礎をなすDNA(それは、修飾にために標的化するアミノ酸配列をコードする)の特異的な突然変異導入を使用する。該技術は、DNAへ1以上のヌクレオチド配列変化を導入することにより、先の考察の1以上を組込んで、シーケンス変形を調製し試験する迅速な能力をさらに提供する。部位特異的突然変異は、所望の突然変異のDNA配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド配列ならびに隣接したヌクレオチドの十分な数の使用を通じて突然変異の生成を可能にして、十分なサイズおよび配列複雑度のプライマー配列を提供して、横断されている削除接合部の両側で安定した二本鎖を形成する。典型的に、長さで約17〜25ヌクレオチドのプライマーが好ましいが、配列の接合部の両側の約5〜10の残基を変化させる。
【0087】
該技術は、典型的に、一本鎖および二本鎖形態の両方で存在するバクテリオファージベクターを使用する。部位特異的突然変異に有用な典型的なベクターは、M13ファージのごときベクターが含まれる。これらのファージベクターは市販されており、それらの使用は一般的に当業者によく知られている。二本鎖プラスミドも部位特異的突然変異に日常的に使用され、それは、関心のある遺伝子をファージからプラスミドへ移す工程を排除する。
【0088】
一般に、特定部位の突然変異誘発は、最初に一本鎖ベクターを得または所望のタンパク質をコードするDNA配列をその配列に含む二本鎖ベクターの2の鎖を融解することによって行う。所望の突然変異配列を運ぶオリゴヌクレオチドプライマーは合成的に調製する。ついで、突然変異を運ぶ鎖の合成を完成するために、このプライマーを、ハイブリダイゼーション(アニーリング)条件を選択する場合にミスマッチの程度を考慮しつつ一本鎖DNA調製物とアニーリングさせ、イー・コリ(E.coli)ポリメラーゼIクレノウ・フラグメントのごときDNA重合酵素に付す。したがって、ヘテロ二本鎖が形成され、ここでは1の鎖が元の非突然変異配列をコードし、第2の鎖が所望の突然変異を運ぶ。ついで、このヘテロ二本鎖ベクターを用いてイー・コリ(E.coli)細胞のごとき適当な細胞を形質転換し、突然変異配列配置を運ぶ組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0089】
勿論、部位特異的突然変異の前記したアプローチは、潜在的に有用な突然変異プロテアーゼ種を作製する方法のみでなく、それに限定することを意味するものではない。本発明は、関心のある遺伝子を運ぶ組換えベクターをヒドロキシルアミンのごとき突然変異誘発剤で処理して配列変異型を得るような、突然変異導入を達成する他の方法も予定している。
【0090】
遺伝子型1aおよび1bからの野生型NS3プロテアーゼドメインについてのFRET基質の動力学パラメーターは、本発明者らのアッセイ条件下において同一であった[表1Aおよび1B]。NS4Aペプチド補因子はHCV遺伝子型1aからのものであるが、動力学パラメーターにおける識別可能な差異は観察されなかった。このことは分子モデリングと一致し、遺伝子型1aおよび1bの間のNS4Aの中央領域の保存的変化がNS4AコアペプチドとNS3プロテアーゼドメインとの間の相互作用に影響しないことを示している。
【0091】
VX−950およびBILN2061のKi値は遺伝子型1aおよび1b野生型プロテアーゼを用いて決定し、2の野生型プロテアーゼ間に統計学的有意差はなかった(表2)。
【0092】
A156S突然変異体プロテアーゼ用のFRET基質の動力学パラメーターは、事実上、野生型プロテアーゼ(表1Aおよび1B)のそれと同じだった。しかしながら、VX−950のKi値はA156S突然変異プロテアーゼに対して2.9μMだった。それは、野生型プロテアーゼ(0.1μM)(表2)に対するものより29倍高い。BILN2061は、A156S突然変異体に対して112nMのKi値を有していた。それは、野生型プロテアーゼに対する19nM(表2)よりも6倍高かった。
【0093】
A156S置換を含んでいるレプリコン細胞のHCV RNAレベルは、野生型レプリコン細胞(データは示さず)のそれに類似し、それはA156S突然変異体および野生型NS3セリンプロテアーゼの同様の酵素触媒効率と一致している。A156Sレプリコン細胞に対するVX−950のIC50値は4.65μMであり、それは野生型レプリコン細胞(0.40μM)(表3)に対するそれより12倍高い。A156S(7nM)および野生型レプリコン(4nM)細胞に対するBILN2061のIC50値と細胞の間の差は重要ではなかった(表3)。
【0094】
主なBILN2061耐性突然変異体(D168VとD168A)はVX−950に完全に敏感なままである。
【0095】
基質動力学パラメーターはD168V突然変異によって影響されず、野生型および2の突然変異体NS3セリン・プロテアーゼ(表1Aおよび1B)のkcatおよびkcat/Km値の比較によって示されるようなD168A突然変異体についての小さい値(10倍未満の)を示した。同様に、Asp168の一方の置換の重要な影響は、VX−950(表2)のKi値の上で観察されなかった。しかしながら、ポジション168でのアスパラギン酸に対するバリンまたはアラニンの置換は、1.2μMまでのBILN2061(表2)によって抑制されなかった突然変異体NS3プロテアーゼに起因した。これらのデータは、野生型プロテアーゼと比較して、一方の突然変異体プロテアーゼが少なくとも63倍BILNに対する感受性が低いことを示す。650nmで吸光度によって測定されるように、BILN2061はアッセイ緩衝液中に1.2μMを超える濃度では可溶でないため、耐性の実際の程度は決定することはできない。D168VまたはD168A突然変異も部位特異的突然変異によって野生型HCVレプリコンへ導入され、いずれかの置換を運ぶ安定なレプリコン細胞を作製した。BILN2061は、D168Vレプリコン細胞に対して5.09μMのIC50を有していた。それは、野生型レプリコン細胞に対するよりも(4nM)(表3)1,300倍を超えて高かった。BILN2061のIC50はD168A突然変異レプリコンに対して1.86μMだった。D168Vおよび野生型レプリコン細胞に対するVX−950のIC50値に変化はほとんどなかった(表3)。
【0096】
したがって、本発明は、本発明の方法によって同定した化合物を提供し、ここに該化合物はHCV NS3/4Aプロテアーゼのインヒビターである。かかる化合物は、例えば前記に論じたような合理的薬剤デザインを介して創製し得る。
【0097】
本発明は、また、前記化合物を含む組成物およびその使用を提供する。かかる組成物は、患者に挿入する侵襲的デバイスを前処理するため、患者に投与する前に血液のごとき生物試料を処理するため、および患者に直接投与するために使用し得る。各場合において、組成物は、HCV複製を抑制し、HCV感染症の危険または重篤度を減少させるために用いられるであろう。
【0098】
本発明の他の実施態様は、本発明に従って同定した化合物またはその医薬上許容される塩を含む組成物を提供する。好ましい実施態様に従って、本発明により同定した化合物は、試料または患者におけるウイルス負担を減少するのに有効な量で存在し、ここに該ウイルスはウイルス生活環に必要なセリンプロテアーゼおよび医薬上許容し得る担体をコードする。
【0099】
本発明の化合物の医薬上許容される塩をこれらの組成物に使用する場合、これらの塩は好ましくは無機または有機酸および塩基に由来する。かかる酸性塩に含まれるのは以下のものである:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラートおよびウンデカン酸塩。塩基性塩に含まれるのは、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウム塩のごときアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩のごときアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミンのごとき有機塩基との塩、N−メチル D−グルカミン、およびアルギニン、リシンのごときアミノ酸との塩などである。
【0100】
また、塩基性の窒素を含む基は、メチル、エチル、プロピルおよびブチル塩化物、臭化物およびヨウ化物のような低級アルキルハロゲン化物;ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸のごときジアルキル硫酸、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物ごとき長鎖ハロゲン化物、臭化ベンジルおよびフェネチルのごときハロゲン化アラルキルなどのごとき剤で四級化されていてもよい。水または油性物に可溶性または分散性の生成物はそれによって得る。
【0101】
本発明の組成物および方法に利用される化合物は、適当な官能基を付随することにより修飾して、選択的な生物学の特性を増強してもよい。かかる修飾は当該技術分野で知られており、与えられた生物系(例えば血液、リンパ系、中枢神経系)へ生物学的貫通を増大させ、経口アベイラビリティーを増加させ、溶解性を増加させて注射による投与、代謝を変化させ、排泄の速度を変化させるものが含まれる。
【0102】
これらの組成物に使用し得る医薬上許容される担体には、限定されるものではないが、イオン交換性物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのごとき血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩のごとき塩または電解質、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂質が含まれる。
【0103】
好ましい形態によれば、本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトへの医薬投与用に処方化される。
【0104】
本発明のかかる医薬組成物は、経口、非経口、経鼻スプレー、局所、直腸、経鼻腔、口内、膣内または植込み式リザーバーを介して投与し得る。本明細書で用いる”非経口”なる用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、鞘内、肝内、病巣内および頭蓋内の注射または注入技術が含まれる。好ましくは、組成物は経口または静脈内投与する。
【0105】
本発明の組成物の無菌注射剤形式は、水性または油性の懸濁液とし得る。これらの懸濁液は、適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当該技術分野で知られている技術に従って処方化し得る。無菌注射調製物は、非毒性非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオールの溶液とし得る。使用してもよい許容されるビヒクルおよび溶剤の中には、水、リンゲル液および生理食塩液がある。さらに、無菌の不揮発性油は、溶剤または懸濁化媒体として慣用的に使用される。この目的のために、いかなる低刺激性の不揮発性油も、合成のモノまたはジグリセリドを含めて使用されてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油、とりわけそれらのポリオキシエチル化版のごとき天然の医薬上許容される油性物として注射可能な調製物に有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、カルボキシメチルセルロース、またはエマルジョンおよび懸濁液を含む医薬上許容し得る投与量形態の処方に通常使用される分散剤のごとき長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含み得る。ツイーン(Tween)、スパン(Span)および医薬上許容される固体、液体またはその他の投与量形態の製造に通常使用される他の乳化剤のごとき他の通常使用される界面活性剤も、処方の目的のために使用し得る。
【0106】
本明細書に記載したプロテアーゼインヒビター化合物の約0.01ないし約100mg/kg体重/日、好ましくは約0.5ないし約75mg/kg体重/日の投与量レベルは、抗ウイルス、詳細には抗HCV媒介疾病の予防および治療のための単一療法に有用である。典型的に、本発明の医薬組成物は、一日当たり約1ないし約5回、あるいは別法として連続注入として投与する。かかる投与は、慢性または急性療法として使用し得る。単一の投与量形態を製造するために担体物質と組合せ得る有効成分の量は、治療する宿主および投与の特定の様式に依存して変化する。典型的な調製物は、約5%ないし約95%の有効化合物(w/w)を含むであろう。好ましくは、かかる調製物は、約20%ないし約80%の有機化合物を含む。
【0107】
本発明の組成物が本発明により同定した化合物および1またはそれを超えるさらなる治療または予防剤の組合せを含む場合、両方の化合物およびさらなる剤は、単一療法様式において通常投与する投与量の約10ないし100%、より好ましくは約10ないし80%の投与量レベルで存在すべきである。
【0108】
本発明の医薬組成物は、限定されるものではないが、カプセル剤、錠剤、水性の懸濁液または溶液を含むいずれの経口的に許容し得る投与量形態で経口投与し得る。経口使用の錠剤の場合においては、通常使用される担体にはラクトースまたはコーンスターチが含まれる。ステアリン酸マグネシウムのごとき滑剤も典型的に添加する。カプセル形態の経口投与については、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。経口使用に水性懸濁液が必要な場合、有効成分を乳化剤および懸濁化剤と組合せる。望むなら、ある種の甘味剤、香味剤または着色剤も添加し得る。
【0109】
あるいは、本発明の医薬組成物は、直腸投与用に坐剤の形態で投与し得る。これらは、剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸中で溶解して薬剤を放出する適当な非刺激賦形剤とを混合することによって調製し得る。かかる材料にはカカオ脂、ミツロウおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0110】
本発明の医薬組成物は、とりわけ治療の標的が目、皮膚または下部消化管を含む局所適用によって容易にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所投与もし得る。好適な局所処方は、これらの領域または器官用に各々容易に調製する。
【0111】
下部消化管の局所適用は、直腸坐剤処方(上記を参照されたい)または好適な浣腸処方で有効となり得る。典型的に、経皮パッチも使用し得る。
【0112】
局所適用については、医薬組成物は、1またはそれを超える担体に懸濁または溶解した有効成分を含む好適な軟膏に処方化し得る。本発明の化合物の局所投与用の担体には、限定されるものではないが、鉱油、液体ペトロラタム、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化性ワックスおよび水が含まれる。別法として、医薬組成物は、1またはそれを超える医薬上許容される担体に懸濁または溶解した有効成分を含有する好適なローションまたはクリームに処方化し得る。好適な担体には、限定されるものではないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれる。
【0113】
眼病用の使用については、医薬組成物は、等張、pH調整した無菌の塩類溶液中の微小化懸濁液、または好ましくは塩化ベンジルアルコニウムのごとき保存剤を含むかまたは含まない、等張、pH調整した無菌の塩類溶液の溶液として処方化し得る。別法として、眼科使用については、医薬組成物は、ペトロラタムのごとき軟膏に処方化し得る。
【0114】
本発明の医薬組成物は、鼻腔エアロゾルまたは吸入によっても投与し得る。かかる組成物は医薬処方の技術分野においてよく知られた技術に従って調製し、ベンジルアルコールまたは他の好適な保存剤、バイオアベイラビリティーを向上するための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または他の慣用的な可溶化剤または分散剤を用いて、塩類溶液の溶液として調製し得る。
【0115】
最も好ましいのは、経口投与用に処方化した医薬組成物である。
【0116】
もう1の形態において、本発明の組成物は、もう1の抗ウイルス剤、好ましくは抗HCV剤をさらに含む。かかる抗ウイルス剤には、限定されるものではないが、α−、β−およびγ−インターフェロン、PEG化誘導化インターフェロン−α化合物およびチモシンのごとき免疫調節剤;リバビリン、アマンタジンおよびテルビブジンのごとき他の抗ウイルス剤;C型肝炎ウイルスプロテアーゼの他のインヒビター(NS2−NS3インヒビターおよびNS3−NS4Aインヒビター);ヘリカーゼおよびポリメラーゼインヒビターを含むHCV生活環の他の標的のインヒビター;内部リボソームエントリーのインヒビター;IMPDHインヒビターのごとき広スペクトルウイルスインヒビター(例えば、米国特許第5,807,876号、第6,498,178号、第6,344,465号、第6,054,472号、WO 97/40381、WO 00/56331の化合物、およびマイコフェノリック・アシッド(mycophenolic acid)およびその誘導体、および限定されるものではないが、VX−497、VX−148および/またはVX−944を含む);または前記のいずれかの組合せが含まれる。W. Markland et al., Antimicrobial & Antiviral Chemotherapy, 44, p.859 (2000)および米国特許第6,541,496号も参照されたい。
【0117】
以下の定義を本明細書において用いる(本願出願日に入手可能な製品をいう登録商標とともに)。
【0118】
”peg−Intron(ペグ−イントロン)”とは、Schering Corporation, Kenilworth, NJから入手可能なPEG−Intron(登録商標)、ペグインターフェロンα−2bを意味し;”Intron(イントロン)”とは、Schering Corporation, Kenilworth, NJから入手可能なIntron−A(登録商標)、インターフェロンα−2bを意味し;”リバニリン”とは、ICN Pharmaceuticals, Inc., Costa Mesa, CAから入手可能なリバビリン(1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシアミド;Merck Index,エントリー8365, 第12版に記載されており;Schering Corporation, Kenilworth, NJからレベトール(登録商標)として、またはHoffmann-La Roche, Nutley, NJからオペガス(登録商標)としても入手可能である;”ペガシス”とは、ペガシス(登録商標)、Hoffmann-La Roche, Nutley, NJから入手可能なPEGインターフェロン−α−2aを意味し;”ロフェロン”とは、Hoffmann-La Roche, Nutley, NJから入手可能なロフェロン(登録商標)、組換えインターフェロン−α−2aを意味し;”ベレフォー”とは、Boehringer Ingelheim Pharmaceutical, Inc., Ridgefield, CTから入手可能なベレフォー(登録商標)、インターフェロン−α−2a;Sumitomo, Japanから入手可能なスミフェロンのごとき天然αインターフェロンの精製ブレンドであるスミフェロン(登録商標);Glaxo Wellcome LTD, Great Britainから入手可能なウェルフェロン(登録商標)、インターフェロンα−n1;Interferon Sciences製のおよびPurdue Frederick Co., CTから入手可能な天然αインターフェロンの混合物を意味する。
【0119】
本明細書中において用いる”インターフェロン”なる用語は、ウイルス複製および細胞増殖を阻害し、免疫応答を調節する、インターフェロンα、インターフェロンβまたはインターフェロンγのごとき高ホモロジー種特異的タンパク質ファミリーのメンバーを意味する。Merck Index、エントリー5015、第12版。本発明の1の形態によれば、インターフェロンはα−インターフェロンである。もう1の形態によれば、本発明の療法組合せは、天然αインターフェロン2aを使用する。別法として、本発明の療法組合せは、天然αインターフェロン2bを使用する。もう1の形態において、本発明の療法組合せは、組換えαインターフェロン2aまたは2bを使用する。
【0120】
いまだもう1の形態において、インターフェロンはPEG化αインターフェロン2aまたは2bである。本発明に好適なインターフェロンには:
(a)イントロン(インターフェロン−α2b、Schering Plough)、
(b)Peg−イントロン、
(c)ペガシス、
(d)ロフェロン、
(e)ベロフォー、
(f)スミフェロン、
(g)ウェルフェロン、
(h)Amgen, Inc., Newbury Park, CAから入手可能なコンセンサスαインターフェロン、
(i)アルフェロン;
(j)ビラフェロン(登録商標);
(k)インファージェン(登録商標)が含まれる。
【0121】
当業者によって認識されるごとく、プロテアーゼインヒビターは、好ましくは経口投与する。インターフェロンは典型的には経口投与しない。それにもかかわらず、本明細書においては本発明の方法または組合せをいずれかの特定の投与量形態または様式に限定するものは存在しない。したがって、本発明による組合せの各成分は、別々に、一緒に、またはいずれかのその組合せで投与し得る。
【0122】
1の形態において、プロテアーゼインヒビターおよびインターフェロンは、別々の投与量形態で投与する。1の形態において、プロテアーゼインヒビターとの単一投与量形態の一部として、または別の投与量形態としていずれかのさらなる剤を投与する。本発明は化合物の組合せを含むため、各化合物の特異的な量は、組合せた他の各化合物の特異的な量に依存し得る。当業者によって認識されるごとく、インターフェロンの投与量は、典型的にIU(例えば、約4百万IUないし約1千2百万IU)で測定する。
【0123】
したがって、本発明の化合物と組合せて使用し得る剤(免疫調整剤または他として作用するかにかかわらず)には、限定されるものではないが、インターフェロン−α−2b(イントロンA, Schering Plough);レバトロン(Schering Plough, インターフェロンα−2B+リバビリン);PEG化インターフェロンα(Reddy, K. R. et al."Efficacy and Safety of Pegylated (40-kd) interferon alpha-2a compared with interferon alpha-2a in noncirrhotic patients with chronic hepatitis C" (Hepatology, 33, pp.433-438 (2001));コンセンサスインターフェロン(Kao, J.H., et al., "Efficacy of Consensus Interferon in the Treatment of Chronic Hepatitis" J. Gastroenterol. Hepatol. 15, pp.1418-1428 (2000)、インターフェロン−α−A(ロフェロンA;Roche))、リンパ芽球または”天然”インターフェロン;インターフェロンτ(Clavette, P. et al., "INF-tau, A New Interferon Type I with Antiretroviral activity" Pathol. Biol. (Paris) 47, pp. 553-559 (1999);インターロイキン2(Davis, G.L. et al., "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminers in Liver Disease, 19, pp.103-112(1999);インターロイキン6(Davis et al., "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminers in Liver Disease 19, pp.103-112 (1999);インターロイキン12(Davis, G.L. et al., "Future Options for the Management of Hepatitis C." Seminers in Liver Disease, 19, pp.103-112(1999);リバビリン;および1型ヘルパーT細胞応答の発達を高める化合物(Davis et al., "Future Options fot the Management of Hepatitis C." Seminars in Liver Disease, 19, pp. 103-112 (1999). インターフェロンは、直接抗ウイルス効果を発揮することによっておよび/または感染症に対する免疫応答を修飾することによって、ウイルス感染症を改善し得る。インターフェロンの抗ウイルス効果は、ウイルス貫通または脱コート、ウイルスRNAの合成、ウイルスタンパク質の翻訳、および/またはウイルスのアセンブリーおよび放出の阻害を介して媒介される場合もある。
【0124】
細胞におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物(Tazulakhova, E.B. et al., "Russian Experience in Screening, analysis, and Clinical Application of Novel Interferon Infucers" J. Interferon Cytokine Res., 21 pp.65-73)には、限定されるものではないが、二本鎖RNA、トブラマイシンおよびイミクイモド(3M Pharmaceuticals; Sander, D.N. "Immunomodulatory and Pharmacologic Properties of Imiquimod" J. Am. Acad.Dermatol., 43 pp. S6-11 (2000))の単独または組合せが含まれる。
【0125】
他の非免疫調節または免疫調節化合物は本発明の化合物と組合せて使用し得、それには限定されるものではないが、出典明示して本明細書の一部とみなすWO 02/18369に特定されているものが含まれる(例えば、出典明示して本明細書の一部とみなす273ページ、9−22行および274ページ、4行から276ページ11行を参照されたい)。
【0126】
細胞におけるインターフェロンの合成を刺激する化合物(Tazulakhova et al., J. Interferon Cytokine Res., 21,65-73)には、限定されるものではないが、二本鎖RNA、トブラマイシンおよびイミクイモド(3M Pharmaceuticals)( Sander, J. Am. Acad.Dermatol., 43 pp. S6-11 (2000))の単独または組合せが含まれる。
【0127】
非免疫調節機構によりHCV抗ウイルス活性を有することが知られているまたは有し得る他の化合物には、限定されるものではないが、リバビリン(ICN Pharmaceuticals);イノシン 5’−モノリン酸デヒドロゲナーゼ・インヒビター(本明細書に記載するVX−497処方);アマンタジンおよびリマンタジン(Younossi et al., In Seminers in Liver Disease 19, 95-102 (1999));LY217896(米国特許第4,835,168号)(Colacino, et al., Anitimicrobial Agents & Chemotherapy 34, 3156-2163 (1990));および9−ヒドロキシイミノ−6−メトキシ−1,4a−ジメチル 1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−フェナントレン−1−カルボン酸メチルエステル;6−メトキシ−1,4a ジメチル−9−(4−メチル−ピペラジン−1−イルイミノ)−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−フェナントレン−1−カルボン酸メチルエステル塩酸;1−(2−クロロ−フェニル)−3−(2,2−ビフェニル−エチル)−尿素(米国特許第6,127,422号)が含まれる。
【0128】
前記分子に関する処方、用量および投与経路は、以下に引用する参考文献に教示されているか、例えば、F.G. Hayden, in Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition, Hardman et al., Eds., McGraw-Hill, New Yorl (1996), Chapter 50, pp. 1191-1223およびそれに引用されている参考文献に開示されているように当該技術分野においてよく知られている。別法として、HCV抗ウイルス活性を示す、詳細にはHCVの薬剤耐性株に対して抗ウイルス活性を示す化合物が同定されたら、その化合物の医薬上有効量を当業者によく知られている技術を用いて決定し得る。例えば、Benet et al., in Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition, Hardman et al., Eds., McGraw-Hill, New YorK (1996), Chapter 1, pp.3-27およびそれに引用されている参考文献を注記しておく。したがって、かかる化合物の適当な処方、用量(複数の用量)範囲、および投与様式は、日常的な方法によって簡単に決定し得る。
【0129】
本発明の薬剤組合せは、同時または順次に投与する別の医薬上許容し得る処方、1を超える治療剤を含む処方、または、単一剤および複数剤処方の分類によって、細胞または複数の細胞、あるいはヒト患者に提供し得る。
【0130】
本発明の方法に使用し得る多数の他の免疫調節および免疫刺激剤は現在入手可能であり、AA−2G;アダマンチルアミドジペプチド;アデノシンデアミナーゼ、Enzon補助剤、 Alliance; 補助剤、Ribi;補助剤、Vaxcel; Adjuvax; アゲラスフィン(agelasphin)-11; AIDSセラピー、Chiron; アルガル(algal)グルカン、SRI; アルガニュニュリン(alganunulin)、Anutech; Anginlyc; 抗細胞因子(anticellular factors)、Yeda; Anticort; 抗−ガストリン(antigastrin)-17 免疫原、Ap; 抗原デリバリーシステム、Vac; 抗原処方、IDBC; 抗GnRH免疫原、Aphton; Antiherpin; アルビドール(Arbidol); アザロール(azarole); Bay-q-8939; Bay-r-1005; BCH-1393; ベータフェクチン(Betafectin); Biostim; BL-001; BL-009; ブロンコスタット(Broncostat); カンタスティム(Cantastim); CDRI-84-246; セフォディダイム(cefodizime);ケモカイン・インヒビター, ICOS; CMV ペプチド、City of Hope; CN-5888; サイトカイン放出因子, St; DHEAS, Paradigm; DISC TA-HSV; J07B; I01A; I01Z; ナトリウムジチオカルブ; ECA-10-142; ELS-1; エンドトキシン、Novartis; FCE-20696; FCE-24089; FCE-24578; FLT-3リガンド、Immunex; FR-900483; FR-900494; FR-901235; FTS-Zn; G-タンパク質, Cadus; グルダプシン(gludapcin); グルタウリン(glutaurine); グリコホスホペプチカル(glycophosphopeptical); GM-2; GM-53; GMDP; 成長因子ワクチン(growth factor vaccine)、EntreM; H-BIG, NABI; H-CIG, NABI; HAB-439; ヘリコバクター・ピロリワクチン(Helicobacter pylori vaccine); ヘルペス特異的免疫因子(herpes-specific immune factor); HIVセラピー、United Biomed; HyperGAM+CF; ImmuMax; Immun BCG;免疫療法、Connective; 免疫調節剤、Evans;免疫調節剤、Novacell; imreg-1; imreg-2; インドミューン(Indomune); イノシン・プラノベックス(inosine pranobex); インターフェロン、Dong-A (アルファ2); インターフェロン、Genentech (ガンマ); インターフェロン、Novartis (アルファ); インターロイキン-12、Genetics Ins; インターロイキン-15、Immunex; インターロイキン-16、Research Cor; ISCAR-1; J005X; L-644257; リコマラスミン酸(licomarasminic acid); LipoTher; LK-409, LK-410; LP-2307; LT (R1926); LW-50020; MAF、Shionogi; MDP誘導体、Merck; met-エンケファリン、TNI;メチルフリルブチロラクトン; MIMP;ミリモスティム(mirimostim); 混合細菌ワクチン、Tem, MM-1; モニリアスタット(moniliastat); MPLA、Ribi; MS-705; ムラブチド(murabutide);マラブチド(marabutide)、Vacsyn;ムラミル・ジペプチド誘導体;ムラミルペプチド誘導体ミエロピド(myelopid); -563; NACOS-6; NH-765; NISV, Proteus; NPT-16416; NT-002; PA-485; PEFA-814; ペプチド, Scios; ペプチドグリカン、Pliva; パーソン(Perthon), Advanced Plant; PGM誘導体、Pliva; Pharmaprojects No. 1099; No. 1426; No. 1549; No. 1585; No. 1607; No. 1710; No. 1779; No. 2002; No. 2060; No. 2795; No. 3088; No. 3111; No. 3345; No. 3467; No. 3668; No. 3998; No. 3999; No. 4089; No. 4188; No. 4451; No. 4500; No. 4689; No. 4833; No. 494; No. 5217; No. 530;ピモチモド(pidotimod); ピメラウチド(pimelautide);ピナフィド(pinafide); PMD-589;ポドフィロトキシン (podophyllotoxin)、Conpharm; POL-509; ポリ-ICLC; ポリ-ICLC、Yamasa Shoyu; PolyA-PolyU; ポリサッカライドA;タンパク質A、Berlux Bioscience; PS34W0; Pseudomonas MAbs、Teijin; ソマグロビン(Psomaglobin); PTL-78419; ピレキソール(Pyrexol); ピリフェロン(pyriferone);レトロゲン(Retrogen);レトロプレップ(Retropep); RG-003; リノスタット(Rhinostat);リファマキシル(rifamaxil); RM-06;ローリン(Rollin); ロムルチド(romurtide); RU-40555; RU-41821; ルベラ抗体(Rubella antibodies), ResCo; S-27649; SB-73; SDZ-280-636; SDZ-MRL953; SK&F-107647; SL04; SL05; SM-4333; ソルテイン(Solutein); SRI-62-834; SRL-172; ST-570; ST-789; スタファージ・ライゼート(staphage lysate); スチムロン(Stimulon);サプレッシン; T-150R1; T-LCEF; タビラウチド(tabilautide); テムルチド(temurtide); テラディグム(Theradigm)-HBV; Theradigm-HBV; Theradigm-HSV; THF、Pharm & Upjohn; THF、Yeda; チマルファシン(thymalfasin); 胸腺ホルモンフラクション;サイモカルチン(thymocartin); サイモリンホトロピン(thymolymphotropin); サイモペンチン(thymopentin);サイモペンチン・アナログ; サイモペンチン、Peptech;サイモシン・フラクション5、Alpha; サイモスティムリン(thymostimulin);サイモトリナン(thymotrinan); TMD-232; TO-115; 移行因子、Viragen;タフトシン(tuftsin)、Selavo;ウベニメックス(ubenimex);ウルサスタット(Ulsastat); ANGG-; CD-4+; Collag+; COLSF+; COM+; DA-A+; GAST-; GF-TH+; GP-120-; IF+; IF-A+; IF-A-2+; IF-B+; IF-G+; IF-G-1B+; IL-2+; IL-12+; IL-15+; IM+; LHRH-; LIPCOR+L LYM-B+; LYM-NK+; LYM-T+; OPI+; PEP+; PHG-MA+; RNA-SYN-; SY-CW-; TH-A-I+; TH-5+; TNF+; UNが含まれる。
【0131】
本発明において有用な代表的なヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物には、限定されるものではないが、(+)−シス−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−[1,3−オキサチオラン−5イル]シトシン;(−)−2’−デオキシ−3’−チオシチジン−5’−トリホスプベート(3TC);
(−)−シス−5−フルオロ−1−[2(ヒドロキシメチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(FTC);
(−) 2’,3,ジデオキシ−3’−チアシチジン[(−)−SddC];
1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−ベータ−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシン(FIAC);1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−ベータ−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードシトシン三リン酸酸(FIACTP);1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−ベータ−D−アラビノフラノシル)−5−メチルウラシル(FMAU);1−ベータ−D−リボフラノシル−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシアミド;2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−5−メチル−デキソシチジン(FddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−クロロ−5−メチル−デキソシチジン(ClddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−アミノ−5−メチル−デキソシチジン(AddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロ−5−メチル−シチジン(FddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3'−クロロ−5−メチル−シチジン(ClddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−アミノ−5−メチル−シチジン(AddMeCyt);2’,3’−ジデオキシ−3’−フルオロチミジン(FddThd);2’、3’−ジデオキシ−ベータ−L−5−フルオロシチジン(ベータ−L−FddC)、2’,3’−ジデオキシ−ベータ−L−5−チアシチジン;2’,3’−ジデオキシ−ベータ−L−5−シチジン(ベータ−L−ddC);9−(1,3−ジヒドロキシ−2−プロポキシメチル)グアニン;2’−デオキシ−3’−チア−5−フルオロシトシン;3’−アミノ−5−メチル−デキソシチジン(AddMeCyt);2−アミノ−1,9−[(2−ヒドロキシメチル−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ]メチル]−6H−プリン−6−オン(ガンシクロビル);2−[2−(2−アミノ−9H−プリン−9y)エチル)−1,3−プロパンジル二酢酸(ファムシクロビル);2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[(2−ヒドロキシ−エトキシ)メチル]6H−プリン−6−オン(アシクロビル);9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−ブト−1−イル)グアニン(ペンシクロビル);9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−ブト−1−イル)−6−デオキシ−グアニン二酢酸(ファムシクロビル);3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT);3’−クロロ−5−メチル−デキソシチジン(ClddMeCyt);9−(2−ホスホニル−メトキシエチル)−2’,6’−ジアミノプリン−2',3’−ジデオキシリボシド;9−(2−ホスホニルメトキシエチル)アデニン(PMEA);アシクロビル三燐酸(ACVTP);D−炭素環式−2’−デオキシグアノシン(CdG);ジデオキシ−シチジン;ジデオキシ−シチジン(ddC);ジデオキシ−グアニン(ddG);ジデオキシ−イノシン(ddI);E−5−(2−ブロモビニル)−2’−デオキシウリジン三燐酸;フルオロ−アラビノフラノシル−ヨードウラシル;1−(2’−デオキシ−2’−フルオロ−1−ベータ−D−アラビノフラノシル)−5−ヨード−ウラシル(FIAU);スタブジン;9−ベータ−D−アラビノフラノシル−9H−プリン−6−アミン一水和物(Ara−A);9−ベータ−D−アラビノフラノシル−9H−プリン−6−アミン−5’−一燐酸一水和物(Ara−AMP);2−デオキシ−3’−チア−5−フルオロシチジン;2’,3’−ジデオキシ−グアニン;および2’,3’−ジデオキシ−グアノシン。
【0132】
本発明に有用なヌクレオシドおよびヌクレオチドの調製のための合成法は、Acta Biochim Pol., 43, 25-36 (1996); Swed. Nucleosides Nucleotides 15, 361-378 (1996); Synthesis 12, 1465-1479 (1995); Carbohyd. Chem. 27, 242-276 (1995); Chena Nucleosides Nucleotides 3, 421-535 (1994); Ann. Reports in Med. Chena, Academic Press;およびExp. Opin. Invest. Drugs 4, 95-115 (1995)に開示されているように当該技術分野においてよく知られている。
【0133】
前記に引用した参照文献に記載された化学反応は、本発明の化合物の調製へのその最も広い適用の観点から一般的に開示される。時として、本明細書に開示する化合物の範囲に含まれる各化合物に記載されるように、反応は適用可能ではないかもしれない。これが起こる化合物は、当業者によって容易に認識されるであろう。すべてのかかる場合において、いずれかの反応は、当業者に知られている慣用的な修飾、例えば妨害している基の適当な保護によって、別の慣用試薬に変更することによって、反応条件の日常的修飾などによって、または本明細書に開示する他の反応は本発明の対応する化合物の調製に適用し得る。すべての分取的方法において、すべての出発物質は知られているか、または公知の出発物質から容易に調製可能である。
【0134】
ヌクレオシド・アナログが一般的にそのまま抗ウイルス剤として使用されるが、細胞膜の通過を促進するために、ヌクレオチド(ヌクレオシドリン酸)をヌクレオシドに変換しなければならない場合もある。細胞に入ることができる化学修飾ヌクレオチドの例は、S−1−3−ヒドロキシ−2−ホスホニルメトキシプロピルシトシン(HPMPC、Dilead Sciences)である。酸である本発明において使用するヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物は塩を形成する。例には、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムのごときアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩、あるいは有機塩基または塩基性四級アンモニウム塩との塩が含まれる。
【0135】
当業者は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼ・インヒビターを投与することを選択することもできる。かかるインヒビターは、シトクロムP450によって阻害される化合物の肝臓濃度を増大させおよび/または血液レベルを増加させるのに有用となり得る。
【0136】
本発明の形態がCYPインヒビターを含む場合、対応するNS3/4Aプロテアーゼの薬物動力学を改善するいずれのCYPインヒビターも本発明の方法において使用し得る。これらのCYPインヒビターには、限定されるものではないが、リトナビル(ritonavir)(WO 94/14436)、ケトコナゾール(ketoconazole)、トロレアンドマイシン(troleandomycin)、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アムプレナビル、フォサムプレナビル、サクイナビル、ロピナビル、デラビルジン、エリスロマイシン、VX−944およびVX−497が含まれる。好ましいCYPインヒビターには、リトナビル、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリンおよびクロメチアゾールが含まれる。リトナビルの好ましい投与量形態については、米国特許第6,037,157号およびそれに引用されている書類;米国特許第5,484,801号、米国特許出願第08/402,690および国際公開WO 95/07696およびWO 95/09614を参照されたい。
【0137】
シトクロムP50モノオキシゲナーゼ活性を阻害する化合物の能力を測定する方法は知られている(米国特許第6,037,157号およびYun et al., Drug Metabolism & Disposition, Vol.21, pp.403-407 (1993)。
【0138】
本発明の組合せ療法において有用な免疫調節剤、免疫刺激剤および他の剤は、当該技術分野において慣用的な量よりも少ない量で投与し得る。例えば、インターフェロンαは、典型的に、約1×10単位/個人を一週間当たり3回ないし約10×10単位/個人を一週間当たり3回の量でHCV感染症の治療のためにヒトに投与する(Simon et al., Hepatology 25: 445-448 (1997))。本発明の方法および組成物においては、この用量は約0.1×10単位/個人を一週間当たり3回ないし約7.5×10単位/個人を一週間当たり3回;より好ましくは、約0.5×10単位/個人を一週間当たり3回ないし約5×10単位/個人を一週間当たり3回;最も好ましくは、約1×10単位/個人を一週間当たり3回ないし約3×10単位/個人を一週間当たり3回の範囲内とし得る。本発明のHCVセリンプロテアーゼインヒビターの存在下における免疫調節剤、免疫刺激剤または他の抗HCV剤の高められたC型肝炎ウイルス抗ウイルス有効性に起因して、減少した量のこれらの免疫調節剤/免疫刺激剤を本明細書において予定している治療方法および組成物において使用することができる。同様にして、免疫調節剤/免疫刺激剤の存在下における本発明のHCVセリンプロテアーゼインヒビターの高められたC型肝炎ウイルス抗ウイルス有効性に起因して、減少した量のこれらのHCVセリンプロテアーゼインヒビターを本明細書において予定している治療方法および組成物において使用することができる。かかる減少した量は、療法を受けている感染患者におけるC型肝炎ウイルス力価の日常的なモニターによって決定し得る。これは、例えば、スロット−ブロット、ドット−ブロットまたはRT−PCR技術によって、またはHCV表面または他の抗原の測定によって、患者の血清中のHCV RNAをモニターすることによって行い得る。患者は、本明細書に開示するHCVセリンプロテアーゼインヒビターおよび抗HCV活性を有する他の化合物、例えばヌクレオシドおよび/またはヌクレオチド・抗ウイルス剤、を使用する組合せ療法の間に、同様にしてモニターして、組合せて用いる場合の各々の最低有効用量を決定し得る。
【0139】
本明細書に開示する組合せ療法の方法において、ヌクレオシドまたはヌクレオチド抗ウイルス化合物、またはそれらの組合せは、約0.1mg/個人/日ないし約500mg/個人/日;好ましくは約10mg/個人/日ないし約300mg/個人/日;より好ましくは約25mg/個人/日ないし約200mg/個人/日;なおより好ましくは約50mg/個人/日ないし約150mg/個人/日;および最も好ましくは約1mg/個人/日ないし約50mg/個人/日の範囲の量でヒトに投与することができる。
【0140】
化合物の用量は、単一用量または比例した用量で患者に投与し得る。後者の場合において、投与量単位組成物は、その約数のかかる量を含有して、日用量を構成し得る。一日当たりの複数用量は、薬剤を処方化された個人によって望まれる合計日用量を増加させることもできる。
【0141】
HCV感染症に苦しむ個人を本発明の化合物および/または組成物を用いて治療する様式は、年齢、体重、性別、食事および患者の医療条件、感染症の重篤度、投与の経路、使用する特定の化合物の活性、効力、薬物動力学および毒性プロファイル、およびドラッグデリバリーシステムを利用するか否かを含む種々の因子に従って選択する。本明細書に開示する薬剤組合せの投与は、一般的に、ウイルス力価が許容し得るレベルに達し、感染症が制御または撲滅されたことを示すまで、数週間ないし数ヶ月または数年の期間にわたって続けるべきである。本明細書に開示する薬剤組合せを用いて治療を受けている患者は、スロット−ブロット、ドット−ブロットまたはRT−PCR技術により患者の血清中の肝炎ウイルスRNAを測定することにより、または血清中の表面抗原のごときC型肝炎ウイルス抗原を測定により日常的にモニターして、療法の有効性を決定し得る。これらの方法によって得られたデータの連続した分析は、組合せでの各成分の最適量が投与され、治療の期間も決定し得るように、療法の間の治療様式の修飾を許容する。したがって、治療様式/用量スケジュールは、一緒になって満足のゆく抗C型肝炎ウイルス有効性を示す組合せて使用する抗ウイルス化合物の各々の最小量を投与するように、および、組合せてかかる抗ウイルス化合物の投与を感染症を首尾よく治療するのに必要な限りのみに続けられるように、療法の過程にわたって合理的に修飾し得る。
【0142】
本発明は、抗HCV活性を有する化合物の前記および同様の型との種々の組合せで本明細書において開示したHCVセリンプロテアーゼインヒビターの使用を包含して、患者、詳細にはVX−950および他の標準的なプロテアーゼインヒビターによる治療に対して耐性を発達させたHCV感染症を有する患者、におけるHCV感染症を治療または防ぐ。例えば、1またはそれを超えるHCVセリンプロテアーゼインヒビターを:1またはそれを超えるインターフェロンまたは抗HCV活性を有するインターフェロン誘導体;1またはそれを超える抗HCV活性を有する非インターフェロン化合物;または、1またはそれを超えるインターフェロンまたは抗HCV活性を有するインターフェロン誘導体と抗HCV活性を有する1またはそれを超える非インターフェロン化合物、と組合せて使用することができる。ヒト患者におけるHCV感染症を治療または防ぐために組合せて使用する場合、本明細書に開示するHCVセリンプロテアーゼインヒビターおよび抗HCV活性を有する前記化合物のいずれかを、医薬上有効量または抗HCV有効量で存在させることができる。その相加的または相乗的効果により、本明細書に記載する組合せで使用する場合、各々は、準臨床的な医薬上有効量または抗HCV有効量、すなわち、単独で使用する場合に、医薬上有効量で使用する場合に抗HCV活性を有するかかるHCVセリンプロテアーゼインヒビターおよび抗HCV活性を有する化合物と比較して、HCVビリオンの蓄積を完全に阻害または減少するおよび/または患者におけるHCV感染症または病理と関連する状態または症状を減少または改善することにおける減少した医薬上の有効性を提供する量でも存在させることができる。また、本発明は、前記したHCVセリンプロテアーゼインヒビターおよび抗HCV活性を有する化合物の組合せの使用を包含して、1またはそれを超えるこれらのインヒビターまたは化合物が医薬上有効量で存在し、かつ、他の化合物がそれらの相加的または相乗的効果により準臨床的な医薬上有効量または抗HCV有効量で存在する場合、HCV感染症を治療または防ぐ。本明細書において使用するごとく、”相加的効果”なる用語は各々の剤を単独で与えた場合の効果の合計に等しい2(またはそれを超える)医薬有効剤の合わせた効果を説明している。相乗的効果とは、2(またはそれを超える)医薬有効剤の合わせた効果が各々の剤を単独で与えた効果の合計よりも大きい場合の効果である。
【0143】
患者の状態が改善した際、必要な場合に、本発明の化合物、組成物または組合せの維持用量を投与し得る。その後に、投与の投与量または頻度またはそれらの両方を、症状の関数として、症状が望ましいレベルまで緩和していて治療を終えるべき場合には改善された状態が維持するレベルまで減少することができる。しかしながら、患者は、疾患症状のいずれかの再発の際に、長期間ベースで完結的治療を要求してもよい。
【0144】
いずれか特定の患者のための具体的な投与量および治療様式は、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食事、投与の時期、排泄速度、薬剤の組合せ、および治療する医師の判断および治療する特定の疾患の重篤度を含む種々の因子に依存するであろうことは理解されるべきである。有効成分の量は、特定の記載した化合物、ならびに組成物におけるさらなる抗ウイルス剤の存在または不存在および性質にも依存するであろう。
【0145】
もう1の形態によれば、本発明は、ウイルスの生活環に必要である実質的にコードされたセリンプロテアーゼによって特徴付けられるウイルスに感染した患者を治療する方法を提供し、当該方法は、該患者に本発明の医薬上許容し得る組成物を投与することによる。好ましくは、本発明の方法を用いて、HCV感染症に苦しむ患者を治療する。かかる治療は、ウイルス感染症を完全に撲滅し、またはその重篤度を減少することができる。より好ましくは、患者はヒトである。
【0146】
別の形態において、本発明の方法は、さらに、該患者に、抗ウイルス剤、好ましくは抗HCV剤を投与する工程を含む。かかる抗ウイルス剤には、限定されるものではないが、α−、β−およびγ−インターフェロン、PEG化誘導化インターフェロン−α化合物およびチモシンのごとき免疫調節剤;リバビリンおよびアマンタジンのごとき他の抗ウイルス剤;C型肝炎ウイルスの他のインヒビター(NS2−NS3インヒビターおよびNS3−NS4Aインヒビター);ヘリカーゼおよびポリメラーゼインヒビターを含むHCV生活環における他の標的のインヒビター;内部リボソームエントリーのインヒビター;IMPDHインヒビター(例えば、VX−497および米国特許第5,807,876号に開示された他のIMPDHインヒビター、マイコフェノリック・アシッド(mycophenolic acid)およびその誘導体)のごとき広スペクトルウイルスインヒビター;または前記のいずれかの組合せが含まれる。
【0147】
かかるさらなる剤は、本発明の化合物およびさらなる抗ウイルス剤の両方を含む単一投与量形態の一部分として該患者に投与し得る。あるいは、さらなる剤は、複数投与量形態の一部分として、本発明の化合物から分離して投与することもでき、その場合、該さらなる剤は本発明の化合物を含む組成物の前、一緒にまたはその後に投与する。
【0148】
いまだもう1の形態において、本発明は、患者に投与することが意図される生物物質を予め処理する方法を提供し、当該方法は、該生物物質と本発明の化合物を含む医薬上許容される組成物とを接触させる工程を含む。かかる生物物質には、限定されるものではないが、血液および血漿、血小板、赤血球の亜集団などのごとき血液の成分;腎臓、肝臓、心臓、肺ほかのごとき器官;精子および卵子;骨髄およびその成分、ならびに塩類溶液、デキストロースほかのごとき患者に注入する他の流体が含まれる。
【0149】
もう1の形態によれば、本発明は、ウイルスと潜在的に接触するようになり得る材料を処理する方法を提供し、当該方法は、その生活環に必要な実質的にコードされたセリンプロテアーゼによって特徴付けられる。この方法は、該材料を本発明にかかる化合物と接触させる工程を含む。かかる材料には、限定されるものではないが、外科手術器具および衣類;研究室器具および衣類;採血装置および材料;ならびにシャント、ステントのごとき侵襲的デバイスほかが含まれる。
【0150】
もう1の形態において、本発明の化合物は、実質的にコードされたセリンプロテアーゼの単離を助けるための研究室ツールとして使用し得る。この方法は、固体支持体に結合した本発明の化合物を提供し;該固体支持体とウイルスセリンプロテアーゼを含む試料とを該プロテアーゼの該固体支持体への結合を引き起こす条件下で接触させ;ついで、該固体支持体から該セリンプロテアーゼを溶出する工程を含む。好ましくは、この方法によって単離したウイルスセリンプロテアーゼはHCV NS3−NS4Aプロテアーゼである。より詳細には、それは、本明細書に記載するVX−905および/またはBILN2061による治療に耐性である突然変異HCV NS3−NS4Aプロテアーゼである。かかるプロテアーゼの例には、配列番号:2のタンパク質のポジション156および/または168に突然変異(すなわち、非野生型)残基を有する本明細書に記載するものが含まれる。
【0151】
別段必要でない限り、本明細書において使用する用語”含む”およびその変形は、陳述した要素を包含するが、いずれか他の要素を排除しないことを示す。
【0152】
当業者に知られている日常的な技術を用いて本発明を実施することができる。かかる技術は、発表された書類に見出し得る。例えば、標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野でよく知られている。例えば、すべて出典明示して本明細書の一部とみなす、F.M. Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., Media, PA; Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, 1989, ならびに米国特許第6,617,156号および第6,617,130号において引用された文献書類を参照されたい。
【実施例】
【0153】
本発明がより完全に理解されるために、以下の調製例およびテスト例を記載する。以下の実施例は、本発明の特定の好ましい具体例を実施するために含まれる。以下に続く実施例において開示される技術は、本発明の実施において上手く機能するように発明者によって発見された技術を示し、従って、その実施に好ましいモードを構成すると考えることができることは、当業者に理解されるべきである。しかしながら、本発明の開示に鑑みて、当業者は、開示された特異的な具体例において、多くの変更を加え、それでもなお本発明の精神および範囲から逸脱せずに、類似したまたは同様の結果を得ることができることを理解するべきである。
【0154】
実施例1:プラスミドの構築
HCV NS3 プロテアーゼ (GenBank CAB46913)の残基Ala1- Ser181をコードするDNAフラグメントを、PCRによって、HCV Con1レプリコンプラスミド, I377neo/NS3-3'/wt (この研究において、pBR322-HCV-ネオと名前をつけ直した) [V. Lohmann et al., Science, 285, pp. 110-113 (1999)]から入手し、E. coliにおけるC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグとHCVタンパク質の発現のために、pBEV11 (S. Chamber, et al., personal communication)に挿入した。HCV NS3・4A PIに対する耐性突然変異を、PCR系部位特異的突然変異誘発によって、この構築体に導入した。PI耐性突然変異を含有するHCVレプリコンを発生させるために、HCV Con 1 レプリコンから由来する1.2-kb Hind III/BstX Iフラグメントを、TAクローニングベクター、pCR2.1 (Invitrogen)へとサブクローン化した。NS3セリンプロテアーゼドメインにおけるPI耐性突然変異を、Hind III/BstX I HCVフラグメントを含有するpCR2.1ベクターに、PCRによって導入し、突然変異した残基を含有する579-bp BsrG I/BstX Iフラグメントを、3つの適応変異を含有する第2世代Con1 レプリコンプラスミド、pBR322-HCV-ネオ-mADEへと、サブクローン化して戻した(下記参照)。全構築体を、配列決定することによって確認した。
【0155】
実施例2:HCVレプリコン細胞の創製
Con1サブゲノムレプリコンプラスミド pBR322-HCV-ネオ [Lohmann et al., Science, 285, pp. 110-113 (1999)]を、Sca I (New England Biolabs)で消化した。完全長HCVサブゲノムレプリコン RNAを、T7 Mega-script kit (Ambion)を用いて、線形DNA鋳型から発生させ、DNaseで処理して、鋳型DNAを除去した。流出RNA転写体を、Huh-7細胞へと電気穿孔し、安定HCVレプリコンセルラインを、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するダルベッコ修飾基礎培地(DMEM)中の0.25または1 mg/ml G418 (Geneticin)で選択した。HCVレプリコン安定細胞を、DMEM, 10% FBSおよび0.25 mg /ml G418中で維持した。
【0156】
HCVサブゲノムレプリコン安定セルラインを発生させる過程において、いくつかの異なる適応変異のパターンを同定した。1つのパターンは、部位特異的突然変異誘発によって、元来のpBR322-HCV-ネオプラスミドに導入されて、第2世代サブゲノムレプリコンプラスミド、pBR322-HCV-ネオ-mADEを発生したHCV非構造タンパク質中に3つの置換を有する。Sca I-線形pBR322-HCV-ネオ-mADE プラスミドからのT7ランオフRNA転写物をHuh7細胞へ電気穿孔すると、安定したレプリコン細胞コロニーが、元来のCon1レプリコンRNAよりもずっと高い効率で形成された。この研究において同定された耐性突然変異を、部位特異的突然変異誘発によって、pBR322-HCV-ネオ-mADEレプリコンプラスミドに導入した。安定したレプリコンセルラインを、野生型pBR322-HCV-ネオ-mADEまたは耐性突然変異を有するもののいずれかから由来するT7転写物を用いて発生させた。
【0157】
実施例3:HCVレプリコン細胞アッセイプロトコル
C型肝炎ウイルス (HCV) レプリコンを含有する細胞を、適切な補給剤(培地A)によって、10% ウシ胎児血清 (FBS)、0.25 mg/mlのG418を含有するDMEM中で維持した。
【0158】
第1日目、レプリコン細胞単層を、トリプシン:EDTA混合物で処理し、除去し、次いで、培地Aを、最終濃度の100,000細胞/ml witへと希釈した。100 ul中の10,000細胞を、96ウェル組織培養プレートの各ウェルにプレートし、37℃にて、組織培養インキュベーター中で、一晩、培養した。
【0159】
第2日目、(100% DMSO中の)化合物を、適切な補給剤(培地B)によって、2% FBS, 0.5% DMSOを含有するDMEMに、順次、希釈した。DMSOの最終濃度を、希釈系列を通して、0.5%で維持した。
【0160】
レプリコン細胞単層上の培地を除去し、次いで、種々の濃度の化合物を含有する培地Bを添加した。いずれの化合物も有さない培地Bを、どの化合物も制御しないように、他のウェルに添加した。
【0161】
細胞を、37℃の組織培養インキュベーター中で、48時間、培地Bにおいて、化合物または0.5% DMSOによってインキュベートした。48時間インキュベーションの終了後、培地を除去し、レプリコン細胞単層を、一度、PBSで洗浄し、RNA抽出の前に、-80℃にて保存した。
【0162】
処理されたレプリコン細胞単層を有する培養プレートを解凍し、固定量のウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)のようなもう1つのRNAウイルスを、各ウェル中の細胞に添加した。(RNeasyキットからの試薬のような)RNA抽出試薬を、直ぐに細胞に添加して、RNAの分解を避けた。総RNAを、製造者の指示に従い、抽出効率および一貫性を改善するための修飾を施して、抽出した。最終的に、HCVレプリコンRNAを含む総細胞RNAを溶離し、さらなる処理まで、-80℃で保存した。
【0163】
TaqmanリアルタイムRT-PCR定量化アッセイを、2組の特異的プライマーおよびプローブで設定した。一方はHCV用で、他方はBVDV用であった。処理されたHCVレプリコン細胞からの総RNA抽出物を、同一のPCRウェルにおいて、HCVおよびBVDV RNA両方の定量化のためのPCR反応に添加した。実験上の失敗が警告され、各ウェル中のBVDV RNAのレベルに基づき拒否された。各ウェル中のHCV RNAのレベルを、同一のPCRプレートにおける標準曲線ランに従い計算した。化合物処理によるHCV RNAレベルの阻害または減少のパーセンテージを、DMSOを用いて算出し、あるいは化合物を含まない対照を0%の阻害とした。化合物の細胞毒性を、ミトコンドリア内酵素系細胞生存率アッセイ、CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega)を用いて測定した。IC50 (HCV RNAレベルの50%阻害が観察された濃度)およびCC50 (細胞生存率の50%減少が観察された濃度)値を、4パラメーター曲線適合(SoftMax Pro)を用いて、いずれかの所与の化合物の滴定曲線から計算した。
【0164】
実施例4:HCV PI-耐性レプリコン細胞の選択
HCV Con1 サブゲノムレプリコン安定細胞を、0.25 mg/ml G418の存在下で順次通して、VX-950 (系列A)、BILN2061 (系列B)、またはVX-950およびBILN2061両方の組合せ (系列C、D、およびE)の濃度を増加させた。VX-950の濃度は、48時間アッセイ(上記参照)において、3.5 μM (または10x IC50)ないし28 μM (80x IC50)の範囲であった。BILN2061については、出発濃度は80 nM (80x IC50)であり、最終濃度は12.5 μM (12,500x IC50)であった。選択の過程において、レプリコン細胞は、70-90%の集密に達した時、週に二度分裂した。細胞培養液が分裂したか否かにかかわらず、新鮮なHCV PIを、3ないし4日毎に添加した。
【0165】
実施例5:HCV PI-耐性突然変異の同定
HCV PI-耐性レプリコン細胞の選択の過程において、細胞ペレットを、細胞培養液が分裂する度に収集した。総細胞RNAを、RNeasyミニ調製キット(Qiagen)を用いて抽出した。HCV NS3 セリンプロテアーゼ領域を網羅する1.7-kb長cDNAフラグメントを、Titan One-Step RT-PCRキット(Roche Applied Science)を用いて、一対のHCV-特異的オリゴヌクレオチドs (5'-CCTTCTATCGCCTTCTTG-3' (配列番号:3)および 5'-CTTGATGGTCTCGATGG-3' (配列番号:4))によって増幅した。増幅した産物を、QIA-高速PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製した。選択の間、HCV NS3 セリンプロテアーゼドメインにおけるHCV PI-関連突然変異体の出現をモニターするために、いくつかの異なる培養時点からのPI-処理レプリコンの精製された1.7-kb RT-PCR産物を、配列決定に付した。PI耐性突然変異の頻度を決定するために、VX-950またはBILN2061-耐性レプリコン細胞のHCV RNAの1.7-kb RT-PCR産物を、TAクローニングベクター pCR2.1 (Invitrogen)に連結した。各時点につき、複数の個々の細菌コロニーを単離し、精製されたプラスミド DNAのHCV NS3 プロテアーゼコード領域を配列決定した。
【0166】
実施例6:HCV NS3 セリンプロテアーゼドメインの発現および精製
野生型配列または耐性突然変異(A156S、D168V、またはD168A)を含有するHCV NS3 セリンプロテアーゼドメインに対する発現構築体の各々を、BL21/DE3 pLysS E. coli細胞(Stratagene)に形質転換した。新に形質転換した細胞を、37℃にて、100 μg/ml カルベニシリンおよび35 μg/ml クロラムフェニコールで補充したBHI培地 (Difco Laboratories)において、600 nMにて0.75の光学密度まで成長させた。1 mM IPTGによる導入を、4時間、24℃にて実施した。細胞ペーストを、遠心分離によって収集し、タンパク質精製前に、-80にて、急速冷凍した。全精製工程を、4℃で実施した。HCV NS3 プロテアーゼの各々につき、100 gの細胞ペーストを、1.5 Lの緩衝液A {50 mM HEPES (pH 8.0)、300 mM NaCl、0.1 % n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、5 mM β-メルカプトエタノール、10% (v/v) グリセロール}中で溶解し、30分間、撹拌した。溶解物を、Microfluidizer (Microfluidics, Newton, MA)を用いて均一化し、その後、45分間、54,000x gにて超遠心した。5 mM イミダゾールを含有する緩衝液Aで予め平衡した2 mlのNi-NTA樹脂と一緒に、イミダゾールを、最終濃度の5 mMまで、上澄みに添加した。混合物を、3時間、揺り動かし、20カラム容量の緩衝液Aおよび5 mM イミダゾールで洗浄した。混合物を、3時間、揺り動かし、20カラム容量の緩衝液Aおよび5 mM イミダゾールで洗浄した。HCV NS3 タンパク質を、300 mM イミダゾールを含有する緩衝液A中で溶離した。溶離物を濃縮し、緩衝液Aで予め平衡したHi-Load 16/60 Superdex 20カラム上に装填した。適切な画分の精製されたHCV タンパク質をプールし、-80℃にて保存した。
【0167】
実施例7:HCV NS3 セリンプロテアーゼドメインのための酵素アッセイ
A HPLC酵素アッセイプロトコル
5AB基質および産物の分離のためのHPLC Microbore法
基質:
NH2-Glu-Asp-Val-Val-(alpha)Abu-Cys-Ser-Met-Ser-Tyr-COOH
20 mM 5AB (または所望の濃度)のストック溶液を、DMSO w/ 0.2M DTT中に作成した。これを、-20℃にて、分割量で保存した。
緩衝液:50 mM HEPES, pH 7.8; 20% グリセロール; 100 mM NaCl
総アッセイ容量は100 μLであった。
【0168】
【表1】

【0169】
緩衝液、KK4A、DTT、およびtNS3を組合せた。96ウェルプレートのウェルに、各々、78 μL分配した。これを、5ないし10分間、30℃にてインキュベートした。
【0170】
2.5 μLの適切な濃度のテスト化合物を、DMSO (対照に対してDMSOのみ)中に溶解し、各ウェルに添加した。これを、室温にて、15分間インキュベートした。
【0171】
反応を、20 μLの250 μM 5AB 基質の添加によって開始した(25 μM濃度は、5ABに対するKmと同等であるか、あるいは僅かにそれより低い)。反応物を、30℃にて、20分間インキュベートし、次いで、25 μLの10% TFAの添加によって終了した。120 μL分割量の最終反応最終生成物を、HPLCバイアルに移した。SMSY生成物を、基質およびKK4Aから、以下の方法によって分離した:
Microbore分離法:
器具類:Agilent 1100
脱気剤 G1322A
バイナリーポンプ G1312A
オートサンプラー G1313A
カラムサーモスタットチャンバー G1316A
ダイオードアレイ検出器 G1315A
カラム:
Phenomenex Jupiter; 5ミクロンC18; 300オングストローム; 150x2 mm; P/O 00F-4053-B0.
カラムサーモスタット:40℃
注入容量: 100 μL
溶媒A = HPLC等級純水 + 0.1% TFA
溶媒B = HPLC 等級アセトニトリル+ 0.1% TFA
【0172】
【表2】

【0173】
B FRET酵素アッセイプロトコル
酵素アッセイを、Taliani et al.によって記載されたアッセイの修飾を用いて決定した[Taliani et al., Anal. Biochem., 240, pp. 60-67 (1996)]。内部消光蛍光ペプチド (FRET基質)、Ac-DED(EDANS)EEαAbuψ[COO]ASK (DABCYL)-NH2を、AnaSpec Incorporated (San Jose, CA)から購入した。アッセイを、96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットにおいて、連続モードで実行した。緩衝液は、50 mM HEPES (pH 7.8)、100 mM NaCl、20 % グリセロール、5 mM DTT、および25 μM KK4A ペプチド (KKGSVVIVGRIVLSGK; 配列番号:5)から成っていた。KK4A ペプチドは、溶解性を改善するために添加されたリジン残基を有する遺伝子型 1aからのNS4A共同因子の中心領域を示す[Landro et al. Biochemistry, 36, pp. 9340-9348 (1997)]。反応を、緩衝液要素の室温での2 nMのNS3 プロテアーゼとの10分間のプレインキュベーションの後、FRET基質の添加によって開始した。反応を、Molecular Devices fmax蛍光分析プレートリーダーを用いて、20分間、30℃にてモニターした。励起および発光波長のためのフィルターは、それぞれ、355 nmおよび495 nmであった。基質速度パラメーターの決定のために、FRET ペプチドの濃度を、0.5から7.0 μMまで変動させた。分子間クエンチングは、この範囲では観察されなかった。基質速度パラメーター、KmおよびVmaxを、ミカエリス-メンテン式に、データを適合することによって決定した。DMSO (2% v/v DMSO以下; 溶媒のみを対照として使用した)中に溶解した化合物を、上記のように初期の10分間のプレインキュベーション後に、緩衝液要素および酵素に添加したことを除いて、阻害定数 (Ki)を、上記のアッセイを用いて、酵素活性の滴定によって決定した。この混合物を、室温にて、さらに15分間インキュベートし、その後、さらに20分間、30℃にて、FRET基質とインキュベーションした。7ないし8濃度の化合物をアッセイし、得られたデータを、強力結合阻害に対するMorrison式の統合形態に適合した[J.F. Morrison, Biochim. Biophys. Acta, 185 pp. 269-286 (1969)]。全基質およびインヒビターデータを、GraphPad Prismソフトウェアによって、Marquardt-Levenberg非線形回帰を用いて適合させた。
【0174】
実施例8:HCVレプリコン細胞におけるVX-950への耐性の開発
VX-950 (図4A,化学構造)は、C型肝炎治療の臨床候補である。VX-950は、HCV NS3・4A セリンプロテアーゼの可逆性、共有結合インヒビターである。活性部位においてペプチド基質と競合的であるが、それは、その強力結合特性および時間依存性阻害メカニズムの結果として、明白な非競合性阻害を呈する(C.Gates and Y-P. Luong)。VX-950とのHCV Con1 サブゲノムレプリコン細胞のインキュベーションは、リアルタイムRT-PCR (Taqman)法(図5B)によって測定されるように、HCV RNAレベルの濃度依存性減少を招いた。VX-950のIC50値は、48時間アッセイにおいて354 nMである。
【0175】
VX-950 耐性突然変異を同定するために、Con1 サブゲノムレプリコン細胞を、0.25 mg/mlのG418の存在下で、連続的に、継代 (つまり、継代培養)して、VX-950 (系統 A)の濃度を緩やかに増加させた(図5A, 選択曲線)。VX-950の出発濃度は、3.5 μMまたはIC50の10倍であり、最高濃度は28 μMまたはIC50の80倍であった。レプリコン細胞は分裂し、培地を、3または4日毎に補充し、新鮮なVX-950を添加した。VX-950は、HCV NS3 セリンプロテアーゼ活性を阻害し、結果的にHCV RNAの複製を遮断するため、HCV タンパク質およびネオマイシントランスフェラーゼタンパク質の定常レベルは、緩やかに減少し、最終的に、高濃度のVX-950の存在下では検出不可能になった。低ネオマイシントランスフェラーゼタンパク質を有するまたは全くネオマイシントランスフェラーゼタンパク質を有さない細胞は、緩やかに減少する速度で増殖し、最終的には、G418の存在下で死滅する。VX-950に耐性のある突然変異体を有するHCV RNAのみが、高濃度のVX-950の存在下で複製し、それらを有するレプリコン細胞の成長を支持することができる。系統Aにおけるレプリコン細胞は、3.5 μM VX-950の存在下で、最初の10日間、正常に成長した。10日後、系統A細胞は、有意に成長が遅くなり、大規模な細胞死滅が、10日目および17日目の間で観察された(図5A,選択曲線)。正常な成長は、21日目まで再開しなかった。56日目での系統Aレプリコン細胞に対するVX-950のIC50は、8.1ないし12.0 μMであると決定され、これは、野生型レプリコン細胞に対するIC50 (354 nM)より23ないし34倍高い(図5B, IC50曲線)。
【0176】
7日目、21日目、および56日目での系統A細胞からの総細胞RNAを抽出し、RT-PCRに付して、NS3 セリンプロテアーゼドメインのコード領域を増幅した。RT-PCR産物を大量配列決定して、VX-950に対する感受性の観察された減少の原因であり得る潜在的な突然変異の(複数の)部分を同定した。元来のレプリコン細胞からの野生型HCVプロテアーゼのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、配列番号:1および配列番号:2に示す。VX-950の不在下で培養された野生型 Con1 レプリコン細胞と比較した時、7日目での系統Aレプリコン細胞のNS3 セリンプロテアーゼドメインにおいて、VX-950関連突然変異体は観察されなかった。
【0177】
系統Aにおける21日目および56日目にて、プロテアーゼドメインにおけるAla156での置換が観察され、これは、残基156での突然変異が、VX-950に対する感受性の減少に重大かもしれないことを示す。NS3・4A セリンプロテアーゼによって開裂されたHCV 非構造タンパク質領域における4つのタンパク質分解部位のいずれにおいても、突然変異は発見されなかった。置換の同一性および頻度を描写するために、7日目または98日目での系統Aレプリコン細胞の1.7-kb RT-PCR産物を、TA ベクターにサブクローン化し、複数のクローンを、両方の試料につき配列決定した。7日目から由来する全クローンは、野生型 Ala156を含有した。63日間、28 μM VX-950の存在下で培養された系統Aレプリコン細胞の98日目の試料において、79%または76のクローンのうち60は、アラニン対セリン(A156S)置換を有した。
【0178】
加えて、VX-950 耐性細胞を、VX-950およびG418の一定の濃度下で選択した。この場合、耐性細胞の複数のコロニーが、VX-950およびG418下の延長された培養期間後に観察された。HCV NS3 セリンプロテアーゼ配列を、これらの抵抗コロニーから決定し、HCV セリンプロテアーゼのアミノ酸 156にて、同様の突然変異体が発見された。
【0179】
実施例9:HCVレプリコン細胞におけるBILN2061に対する耐性の開発
もう1つのHCV NS3・4A プロテアーゼインヒビター、BILN2061 (図4B, 化学構造) (WO 00/59929; US 6,608,027)は、C型肝炎患者において、効果的であることが示されている(Lamarre et al., Nature Medicine, 2003)。BILN2061 (系統B)に対して耐性のあるHCVレプリコン細胞を、VX-950に対してと同様の様式で選択した。再び、野生型 Con1 サブゲノムHCVレプリコン細胞を、0.25 mg/mlのG418の存在下で、連続的に通し、BILN2061の濃度をゆっくりと増加した(図6A, 選択曲線)。系統B レプリコン細胞は、80 nM BILN2061またはIC50の80倍上の存在下で、最初の7日間、正常に成長した。しかしながら、系統B細胞の増殖は、7日目後有意に速度が落ち、大規模な細胞死滅が、7日目および17日目の間に観察された。以前のように、正常な成長は、21日目まで再開しなかった。BILN2061は、59日目にて、系統B細胞に対して1.0ないし1.8 μMのIC50値を有し、これは、野生型レプリコン細胞(図6B, IC50曲線)に対して、IC50 (1 nM)より1,000ないし1,800倍高い。
【0180】
7日目にて、いずれのBILN2061関連突然変異も、NS3 セリンプロテアーゼドメインにおいて観察されなかった。24日目までに、種々の置換が、NS3 タンパク質のアミノ酸 168にて観察され、これは、残基168での置換が、BILN2061に対する耐性の主な原因であり得ることを示唆する。NS3・4A セリンプロテアーゼによって開裂されたHCV 非構造タンパク質領域における4つの部位にて、突然変異は観察されなかった。NS3残基168での種々の置換の頻度を決定するために、3.2 μM BILN2061の存在下で培養された、98日目での系統B レプリコンのNS3 セリンプロテアーゼを配列決定した。94クローンのうちの60または64%は、Asp168対Val (D168V)置換を有し、23クローンまたは24%は、Asp168対Ala (D168A)突然変異を有した。
【0181】
加えて、BILN2061 耐性細胞を、BILN2061およびG418の一定の濃度下で選択した。この場合、耐性細胞の複数のコロニーを、BILN2061およびG418下で、延長された培養期間後に観察した。HCV NS3 セリンプロテアーゼ配列を、これらの耐性コロニーから決定し、HCV セリンプロテアーゼのアミノ酸 168での同様の突然変異を発見した。
【0182】
実施例10:VX-950およびBILN2061の両方に耐性のあるレプリコン細胞の選択
A. VX-950-耐性細胞からの交差耐性HCVレプリコンの開発
VX-950およびBILN2061の両方に交差耐性を示す耐性突然変異を同定するために、選択のいくつかのスキームを使用した。まず、VX-950-耐性レプリコンセルライン[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, pp. 17508-17514 (2004)における系統A]を、0.25 mg/mlのG418, 14 μM VX-950の存在下で、連続的に通して、BILN2061 (系統C)の濃度をゆっくりと増加した(図8A)。BILN2061に対して、出発濃度は40 nMであり、最終濃度は6.4 μMであった。レプリコン細胞は分裂し、培地を、3または4日毎に補充し、新鮮なVX-950およびBILN2061を添加した。HCV PIは、NS3・4A セリンプロテアーゼ活性を阻害し、結果的にHCV RNAの複製を遮断するため、HCV タンパク質およびネオマイシントランスフェラーゼタンパク質の定常レベルは緩やかに減少し、最終的に、高濃度のHCV PIの存在下で検出不可能になった(データ示されず)。低ネオマイシントランスフェラーゼタンパク質を有するまたはネオマイシントランスフェラーゼタンパク質を有さない細胞は、緩やかに減少する速度で増殖し、最終的に、G418の存在下で死滅する。主なVX-950耐性突然変異体、A156Sを有するレプリコン細胞は、BILN2061の阻害に対して感受性を示しているため、BILN2061の増加する濃度の存在下で死滅すると予測される[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, pp. 17508-17514 (2004)]。VX-950およびBILN2061の両方に交差耐性を示す突然変異体を有するHCV RNAのみが、高濃度のHCV PIの両方の存在下で複製し、それらを有するレプリコン細胞の成長を支持することができる。しかしながら、系統Cにおけるレプリコン細胞は、56日間かかる全選択プロセスの間、正常に成長した。52日目での系統Cレプリコン細胞に対するBILN2061のIC50値を、系統A (VX-950耐性) レプリコン細胞(〜10 nM)に対するIC50より300倍高い〜3 μMであると決定した(図8B)。30 μM VX-950は、52日目での系統C レプリコン細胞におけるHCV RNAの50%以上の減少を生じなかったため、VX-950の実際のIC50値は決定することができず、これは、52日目の系統C レプリコン細胞がVX-950に耐性のあるままであることを示す(図8C)。
【0183】
14 μM VX-950および0.32 μMのBILN2061の存在下で培養された32日目の系統C細胞からの総細胞RNAを抽出し、RT-PCRに付して、NS3 セリンプロテアーゼドメインのコード領域を増幅した。RT-PCR産物を大量配列決定して、両方のHCV PIに対する感受性の観察された減少の原因であり得る潜在的な突然変異の(複数の)位置を同定した。プロテアーゼドメインにおけるAla156での置換が観察され、これは、残基156での突然変異が、両方のPIに対する感受性の減少に重大かもしれないことを示唆する。主なVX-950耐性突然変異体はA156Sであることが分かっているため、この観察はどういうわけか予想外であった[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, 17508-17514 (2004)]。NS3・4A セリンプロテアーゼによって開裂されたHCV 非構造タンパク質領域における4つのタンパク質分解部位のいずれにおいても、突然変異は発見されなかった。置換の同一性および頻度を描写するために、32日目の系統Cレプリコン細胞の1.7-kb RT-PCR産物を、TA ベクターへとサブクローン化し、10の個々のコロニーを、配列決定に付した。6つのクローンはAla156対Thr (A156T)置換を有し、3つのクローンは、Val (A156V)によるAla156の置換を有した。10番目のクローンは、A156S突然変異体を保持する。
【0184】
B. BILN2061-耐性細胞からの交差耐性のあるHCVレプリコンの開発
第2の選択スキームは、BILN2061およびVX-950の両方の存在下で、BILN2061耐性レプリコン細胞を成長させることであった。この場合、BILN2061耐性レプリコン系統[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, pp. 17508-17514 (2004)における系統B]を、0.25 mg/mlのG418の存在下で連続的に通して、VX-950およびBILN2061 (系統D)の濃度をゆっくりと増加させた(図9A)。BILN2061に対して、出発濃度は160 nMであり、最終濃度は6.4 μMであった。VX-950の2つの濃度のみを使用した:7 μMおよび14 μM。主なBILN2061耐性突然変異体、D168VまたはD168Aを有するレプリコン細胞は、VX-950の阻害に感受性があることが示されているため、高濃度のVX-950の存在下では死滅すると予測される[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, pp. 17508-17514 (2004)]。再び、VX-950およびBILN2061の両方に対して交差耐性を示す突然変異体を有するHCV RNAのみが、高濃度の両方のHCV PIの存在下で複製し、それらを有するレプリコン細胞の成長を支持することができる。しかしながら、系統Dにおけるレプリコン細胞は、56日間続く選択プロセスのほとんどの間、正常に成長した。30 μM VX-950は、52日目にて、系統D レプリコン細胞において50%以上の減少を生じなかったため、VX-950の実際のIC50値は決定することができないが、それは系統B (BILN2061-耐性) レプリコン細胞に対するIC50 (〜0.3 μM)より少なくとも100倍以上高いであろう(図9B)。52日目での系統D レプリコン細胞に対するBILN2061のIC50値は、〜4 μMであると決定され、これは、52日目の系統D レプリコン細胞が、BILN2061に対して耐性のあるままであることを示す(図9C)。
【0185】
14 μM VX-950および0.32 μMのBILN2061の存在下で培養された32日目の系統D細胞からの総細胞RNAを抽出し、RT-PCRに付して、NS3 セリンプロテアーゼドメインのコード領域を増幅した。RT-PCR産物を大量配列決定して、両方のHCV PIに対する感受性の観察された減少の原因であり得る潜在的な突然変異の(複数の)位置を同定した。再び、プロテアーゼドメインにおけるAla156での置換が観察されて、残基156での突然変異体が、両方のPIに対する感受性の減少に重大であり得ることを確認した。NS3・4A セリンプロテアーゼによって開裂されたHCV 非構造タンパク質領域における4つのタンパク質分解部位のいずれでも、突然変異は発見されなかった。置換の同一性および頻度を描写するために、32日目の系統A レプリコン細胞の1.7-kb RT-PCR産物を、TA ベクターへとサブクローン化し、14の個々のコロニーを配列決定に付した。12のクローンは、A156V置換を有し、1クローンはA156T置換を有した。14番目のクローンは2つの突然変異体、A156SおよびD168Vを有する。
【0186】
C ナイーブなレプリコン細胞からの交差耐性のあるHCVレプリコンの開発
VX-950またはBILN2061のいずれかの単一のHCV PIに対する耐性突然変異の我々の先の研究において、細胞成長は数日間止まり、その間、大規模な細胞死滅が観察され[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, pp. 17508-17514 (2004)]、これは、耐性突然変異レプリコン細胞の出現および非耐性レプリコンの同時発生的な死滅を示唆した。しかしながら、上記のように、交差耐性のあるレプリコン系統CまたはDの選択において、そのような細胞死滅または細胞成長の遅れは観察されなかった。交差耐性突然変異体、A156TおよびA156Vが、少数の集団として、VX-950- (系統 A)またはBILN2061- (系統 B)耐性レプリコン細胞中に、既に存在しているかもしれない。もしそうならば、これらの2つの選択スキームは、他の潜在的交差-耐性突然変異にわたり、A156TまたはA156V突然変異体に対するバイアスを提供し得る。従って、第3の選択スキームを、いずれかのインヒビターに対して感受性のあるナイーブなHCVレプリコン細胞を用いて実施した。
【0187】
pBR322-HCV-ネオ-mADEからのCon1 サブゲノムレプリコン細胞[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, pp. 17508-17514 (2004)]を、0.25 mg/mlのG418の存在下で、連続的に通して、VX-950およびBILN2061 (系統E)両方の濃度を増加した(図10)。VX-950の出発濃度は3.5 μMであり、最高濃度は14 μMであった。BILN2061に対して、出発濃度は80 nMであり、最終濃度は3.2 μMであった。レプリコン細胞は分裂するかあるいは培地を3または4日毎に補充し、新鮮なVX-950およびBILN2061を添加した。系統Eにおけるレプリコン細胞は、3.5 μM VX-950および160 nM BILN2061の存在下で、最初の10日間、正常に成長した。10日後、系統E細胞は、有意にゆっくりと成長し、大規模な細胞死滅が、10日目および21日目の間に観察された(図10)。正常な成長は、21日目まで再開しなかった。10日目、21日目、および48日目にて、系統C細胞からの総細胞RNAを抽出し、RT-PCRに付して、NS3 セリンプロテアーゼドメインのコード領域を増幅した。両方のHCV PIの不在下で培養した野生型 Con1 レプリコン細胞と比較した時、HCV PI関連突然変異体が、10日目の系統Eレプリコン細胞のNS3 セリンプロテアーゼドメインにおいて観察された。置換の同一性および頻度を描写するために、21日目または48日目にて、系統E レプリコン細胞の1.7-kb RT-PCR産物を、TA ベクターへとサブクローン化し、複数のクローンを両方の試料につき配列決定した。14日間、3.5 μM VX-950および0.32 μMのBILN2061の存在下で培養された系統E レプリコン細胞の21日目試料において、65%または46クローンのうちの30は、Ala156対Thr (A156T)置換を有し、Val (A156V)によるAla156のもう一方の置換は、35%または46クローンのうちの16において発見された。14日間14 μM VX-950および1.6 μMのBILN2061の存在下で培養された系統Eの48日目試料に対して、80%または44クローンのうちの35はA156T置換を有し、A156V置換は、20%または44クローンのうちの9において発見された。いずれかの場合において、NS3 セリンプロテアーゼドメインにおいて他の突然変異体は、10%以上のTA プラスミドクローンにおいて発見されず、これは、A156TおよびA156Vが、VX-950およびBILN2061の両方に交差耐性を授与する唯2つの突然変異体であることを示す。
【0188】
実施例11:酵素およびレプリコン細胞アッセイにおけるアミノ酸 156または168での耐性突然変異体の実施および確認
Ala156またはAsp168のいずれかで観察された突然変異体が、それぞれ、VX-950またはBILN2061に対して耐性を授与するのに十分であるかを確認するために、部位特異的突然変異誘発を使用して、位置156または168での各個々の突然変異体を野生型NS3プロテアーゼドメインに導入した。
【0189】
部位特異的突然変異誘発は、本発明の方法で使用された突然変異プロテアーゼタンパク質の調製において有用なもう1つの技術である。この技術は、(修飾に標的されたアミノ酸配列をコードする)根底にあるDNAの特異的突然変異誘発を使用する。さらに、該技術は、1以上のヌクレオチド配列変化をDNAに導入することによって、1以上の前述の考慮を組み込み、配列変異体を調製しテストする用意ができた能力を提供する。部位特異的突然変異誘発は、所望の突然変異体のDNA配列をコードする特異的オリゴヌクレオチド配列、ならびに十分な数の隣接するヌクレオチドの使用を介して、突然変異体を精製して、十分なサイズおよび配列複雑性を有するプライマー配列を提供して、横切られる欠失接合部の両側上に安定した二本鎖を形成することを可能にする。典型的には、改変される配列の接合部の両側上に約5ないし10の残基を有する長さ約17ないし25のヌクレオチドのプライマーが好ましい。
【0190】
該技術は、典型的には、一本鎖および二本鎖形態の両方に存在するバクテリオファージベクターを使用する。部位特異的突然変異誘発において有用な典型的なベクターは、M13ファージのようなベクターを含む。これらのファージベクターは、商業的に入手可能であり、それらの使用は、一般的に、当業者によく知られている。また、二本鎖プラスミドを、ファージからプラスミドへ関心のある遺伝子を移す工程を排除する部位特異的突然変異誘発に、定期的に使用する。
【0191】
一般的には、まず一本鎖ベクターを入手する、あるいはその配列内に、所望のタンパク質をコードするDNA配列を含む二本鎖ベクターの2つの鎖を融解することによって、部位特異的突然変異誘発を実施する。所望の突然変異配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーは、合成的に調製する。次いで、このプライマーを、ハイブリダイゼーション(アニーリング)条件を選択する際に不適合の程度を考慮しながら、一本鎖DNA調製とアニールし、E. coliポリメラーゼIクレノウ・フラグメントのようなDNAポリマー化酵素に付して、突然変異を有する鎖の合成を完了する。従って、1つの鎖が元来の非突然変異配列をコードし、第2の鎖が所望の突然変異体を有するヘテロ二本鎖が形成される。次いで、このヘテロ二本鎖ベクターを使用して、E. coli細胞のような適切な細胞を形質転換し、突然変異配列配置を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0192】
もちろん、部位特異的突然変異誘発に対する上記のアプローチは、潜在的に有用な突然変異プロテアーゼ種を発生する唯一の方法ではなく、そのようなものとして、制限するように意図されていない。また、本発明は、ヒドロキシルアミンのような、例えば、関心のある突然変異誘発物質の遺伝子を有する組換えベクターを処理して、配列変異体を得るような、突然変異誘発を達成する他の方法を考える。
【0193】
A. 優性VX-950耐性突然変異体、A156Sは、BILN2061に対して感受性のあるままである
Ala156のSerによる観察された置換が、VX-950に対して耐性を授与するが、BILN2061に対しては授与しないのに十分であるかを核にするために、部位特異的突然変異誘発を使用して、野生型 NS3 プロテアーゼドメインにおいて、Ala156をSerで置換した。
【0194】
遺伝子型1aおよび1bからの野生型 NS3 プロテアーゼドメインに対するFRET基質に対する速度パラメーターは、我々のアッセイ条件下で同一であった(表1)。NS4A ペプチド 共同因子はHCV 遺伝子型 1aからであるが、速度パラメーターにおいて識別できる差は観察されなかった。これは、分子モデリングと一貫しており、これは遺伝子型1aおよび1bの間のNS4Aの中心領域における保存的変動が、NS4AコアペプチドおよびNS3 プロテアーゼドメインの間の相互作用に影響を及ぼさないことを示唆する。VX-950およびBILN2061のKi値を、遺伝子型1aおよび1b野生型プロテアーゼを用いて決定したが、2つの野生型プロテアーゼの間に統計学的に有意な差は存在しなかった(表2)。
【0195】
A156S突然変異プロテアーゼに対するFRET基質の速度パラメーターは、野生型プロテアーゼのものと実質的に同一であった(表1)。しかしながら、VX-950のKi値は、野生型プロテアーゼ (0.1 μM)に対するものより29倍高いA156S突然変異プロテアーゼに対して2.9 μMであった(表2)。BILN2061は、野生型プロテアーゼに対するもの、19 nMより6倍高い、A156S突然変異体に対して112 nMのKi値を有した(表2)。
【0196】
A156S置換を含有するレプリコン細胞におけるHCV RNAレベルは、野生型レプリコン細胞のものと同様であり(データ示されず)、これはA156S突然変異体および野生型NS3セリンプロテアーゼの同様の酵素触媒効率と一定である。A156S レプリコン細胞に対するVX-950のIC50値は4.65 μMであり、これは野生型レプリコン細胞に対するもの(0.40 μM)より12倍高い(表3)。A156S (7 nM)および野生型レプリコン (4 nM)細胞に対するBILN2061のIC50値の間の差は有意ではなかった(表3)。
【0197】
B 主なBILN2061耐性突然変異体、D168VおよびD168Aは、VX-950に対して完全に感受性のあるままである
Asp168のValまたはAlaとの観察された置換が、BILN2061に対して耐性を授与するが、VX-950に対しては授与しないのに十分であるかを確認するために、部位特異的突然変異誘発を使用して、野生型NS3プロテアーゼドメインにおいて、ValまたはAlaのいずれかとAsp168を置換した。
【0198】
基質速度パラメーターは、D168V突然変異体によって影響を受けず、野生型および2つの突然変異NS3セリンプロテアーゼのkcatおよびkcat/Km値の比較によって示されるように、D168A突然変異体に対して僅かな変化のみ(10倍未満)を示した(表1)。同様に、VX-950のKi値に対するAsp168でのいずれかの置換の有意な効果は観察されなかった(表2)。しかしながら、位置168のアスパラギン酸に対するバリンまたはアラニンの置換は、1.2 μMまでのBILN2061によって阻害されなかった突然変異体NS3 プロテアーゼを生じた(表2)。これらのデータは、いずれかの突然変異体プロテアーゼが、野生型プロテアーゼと比較した時、BILN2061に対して少なくとも63倍感受性が低いことを示す。耐性の実際の規模は、650 nmの吸収によって測定されるように、BILN2061は、アッセイ緩衝液において、1.2 μMより大きい濃度にて溶解性でなかったため、決定することができない。また、D168VまたはD168A突然変異体を、部位特異的突然変異誘発によって、野生型 HCVレプリコンに導入し、いずれかの置換を有する安定したレプリコンセルラインが発生した。BILN2061は、D168V レプリコン細胞に対して5.09 μMのIC50を有し、これは、野生型レプリコン細胞に対して(4 nM)よりも、1,300倍以上である(表3)。BILN2061のIC50は、D168A突然変異レプリコンに対して1.86 μMであった。D168V および野生型レプリコン細胞に対するVX-950のIC50値にはほとんど変化がなかった(表3)。
【0199】
表1は、野生型 または突然変異 HCV NS3 セリンプロテアーゼドメインの酵素特性の特徴を示す。遺伝子型 1aおよび1b 野生型 (wt) プロテアーゼ、および遺伝子型 1b の3つの突然変異体(A156S, D168V, and D168A)を含む5つのHCV NS3 セリンプロテアーゼドメイン タンパク質を発現し、物質および方法に記載したように精製した。これらのNS3 プロテアーゼのkcatおよびKm値を、KK-NS4Aコアペプチド およびFRET基質を用いて決定した。
【0200】
【表3】

【0201】
表2は、酵素アッセイにおける耐性の確認を示す。VX-950およびBILN2061のKi値を、KK-NS4A ペプチドおよびFRET基質を用いて、遺伝子型 1aまたは1bからの野生型 (wt) プロテアーゼ、ならびに3つの変異体、遺伝子型 1bにおけるA156S、D168V、およびD168Aを含む5つの精製されたHCV NS3 セリンプロテアーゼドメインに対して決定した。反応緩衝液におけるBILN2061の溶解性を、1.2 μMを超える濃度に制限した。1.2 μM BILN2061の存在下で、D168VまたはD168A突然変異体NS3 プロテアーゼのいずれに対しても、阻害は観察されなかった。
【0202】
【表4】

【0203】
表3は、HCVレプリコンにおける耐性の確認を示す。野生型 (wt)、および3つの突然変異体 A156S、D168VおよびD168Aを含む4つのHCV サブゲノムレプリコン安定セルラインを、対応する高効率Con1 レプリコンプラスミドからのT7 RNAランオフ転写対を用いて発生させた。VX-950およびBILN2061のIC50値を、標準48時間アッセイにおいて、4つのHCVレプリコンセルラインに対して決定した。
【0204】
【表5】

【0205】
C. A156TおよびA156V突然変異体は、VX-950およびBILN2061の両方に対して交差耐性がある
Ala156にて観察された突然変異体が、VX-950およびBILN2061の両方に対して交差耐性を授与するのに十分であるかを確認するために、部位特異的突然変異誘発を使用して、野生型 NS3 プロテアーゼドメインにおいて、ValまたはThrのいずれかとAla156を置換した。
【0206】
FRET基質に対するA156TまたはA156V突然変異体プロテアーゼの触媒効率(kcat/Km)は、野生型プロテアーゼのものより約5ないし7倍低かった(表4)。VX-950のKi値は、A156TまたはA156V突然変異体プロテアーゼに対して、それぞれ、9.9μMまたは33 μMであり、これは、野生型プロテアーゼに対するもの(0.1 μM)より、それぞれ、99または330倍高い(表5)。いずれかの突然変異体プロテアーゼは、1.2 μMまでのBILN2061によって阻害されなかった(表5)。これらのデータは、いずれかの突然変異体プロテアーゼが、野生型プロテアーゼと比較した時、BILN2061に対して少なくとも63倍感受性が低いことを示す。耐性の実際の規模は、BILN2061が、650 nmでの吸収によって測定されるように、アッセイ緩衝液において1.2 μMより大きい濃度で溶解性でないため、決定することができない(データ示されず)。
【0207】
【表6】

【0208】
表4概要:野生型プロテアーゼおよび2つの突然変異体、A156TおよびA156Vを含むCon1株の3つのHCV NS3 セリンプロテアーゼドメイン タンパク質を発現し、精製した。これらのNS3 プロテアーゼのkcatおよびKm値を、KK-NS4AコアペプチドおよびFRET基質を用いて決定し、2つの独立アッセイの平均を示す。
【0209】
【表7】

【0210】
表5概要:VX-950およびBILN2061のKi値を、KK-NS4A ペプチドおよびFRET基質を用いて、野生型プロテアーゼ、ならびに2つの突然変異体、A156TおよびA156Vを含む5つの精製されたHCV NS3 セリンプロテアーゼドメインに対して決定した。反応緩衝液におけるBILN2061の溶解性を、1.2 μMを超える濃度で制限した。1.2 μM BILN2061の存在下で、A156TまたはA156V突然変異体NS3 プロテアーゼのいずれかについて、阻害は観察されなかった。
【0211】
A156TまたはA156V置換を含有するレプリコン細胞のHCV RNAレベルは、野生型レプリコン細胞のものより低く(データ示されず)、これは、野生型 NS3 セリンプロテアーゼのものと比較すると、2つの突然変異体のより低い酵素触媒効率と一貫している。30 μMまでのVX-950によるHCVレプリコンの有意な減少は、いずれの突然変異体レプリコンセルラインにおいても観察されず、いずれかの突然変異体によって授与された感受性の少なくとも75倍の減少を示した(表6)。いずれかのA156T レプリコン細胞に対するBILN2061のIC50値は1.09 μMであり、これは、野生型レプリコン細胞に対するもの(4 nM)より約272倍高い。A156V突然変異体レプリコンに対して、BILN2061は、5.76 μMのIC50値を有し、これはA156V突然変異体によって授与された感受性の1,400倍以上の減少を示す(表6)。
【0212】
【表8】

【0213】
表6概要:野生型、および2つの突然変異体、A156TおよびA156Vを含む3つのHCV サブゲノムレプリコン安定セルラインを、対応する高効率Con1 レプリコンプラスミドからのT7 RNAランオフ転写体を用いて発生させた。VX-950およびBILN2061のIC50値を、標準48時間アッセイにおいて、3つのHCVレプリコンセルラインに対して決定し、2つの独立したアッセイの平均を示した。
【0214】
実施例12:モデリング- I
Yao et al., [Yao., et al., Structure Fold Des., 7, pp. 1353-1363 (1999)] (PDBコード: 1CU1)によって公開された完全長HCV NS3 タンパク質の構造を用いて、VX-950およびBILN2061を、NS3 セリンプロテアーゼドメインの活性部位にモデル化した。この構造におけるAセグメントのプロテアーゼドメインの座標は、NS3 タンパク質のC-末端鎖がプロテアーゼの基質結合部位に結合することを示した。この鎖の末端カルボキシル基は、それが、His57およびSer139の側鎖ならびにオキシアニオン孔を形成する残基137および139の骨格アミドと水素結合を形成するように、活性部位残基His57、Asp81、およびSer139の近くに位置する。加えて、NS3 タンパク質の最後の6つの残基(626ないし631)は、プロテアーゼ βバレルのE2鎖の端に沿って、延長した、逆平行のβ鎖を形成し、12の骨格対骨格水素結合を作る。BILN2061のような生成物主体のインヒビターは、同様の様式でNS3 プロテアーゼを結合すると予測される。従って、我々は、この結晶構造の座標を利用して、インヒビター-プロテアーゼ共複合体(co-complex)の我々のモデルを構築した。BILN2061分子を、QUANTA分子モデリングソフトウェア(Accelrys Inc., San Diego, California, USA)において構築し、そのカルボキシル基は完全長NS3 タンパク質のNS3 C-末端カルボン酸塩と重複するように、活性部位に手動で入れた。次いで、以下の骨格水素結合を全て作るように、インヒビター分子を回転させた:Arg155 カルボニルとP1 NH、Ala157 NHとP3 カルボニル、およびAla157 カルボニルとP3 NH。このモードの結合は、Arg155 側鎖との直接的衝突に、BILN2061の大きなP2基を置いた。衝突を避けるために、Arg155 側鎖を、BILN2061に類似するインヒビターとのNS3プロテアーゼ複合体の結晶構造の記載によって示した伸長したコンフォメーションでモデル化した[Y.S. Tsantrizos, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 42, pp. 1356-1360 (2003)]。 インヒビターは、2つの段階で、エネルギー最小化した。第1の段階において、プロテアーゼのArg155、Asp168およびArg123のインヒビターおよび側鎖原子のみが、1000工程に対して、エネルギー最小化の間、動くことができた。第2の段階において、活性部位の全側鎖原子は、1000のさらなる工程に対して、インヒビターに沿って動くことができた。このモデル化構造は、BILN2061アナログの公開された構造に近似する[Y.S. Tsantrizos, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 42, pp. 1356-1360 (2003)]。
【0215】
同様の手順を、VX-950をプロテアーゼ活性部位へとモデリングするのに採用した。インヒビターを、インヒビターのケトカルボニルへのSer139 側鎖のsi-face付着を有する共有結合付加体としてモデル化した。この結合モードが、類似したケトアミドインヒビター[Perni et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 14, in press (2004)]およびケト酸インヒビター[Di Marco et al., J. Biol. Chem., 275, pp. 7152-7157 (2000)]について観察されている。インヒビターの主鎖は、以下の骨格水素結合を全て作成するように、NS3 C-末端鎖の残基626ないし631で覆った: Arg155 カルボニルとP1 NH、Ala157 NHとP3 カルボニル、Ala157 カルボニルとP3 NH、およびCys159のNHとP4 キャップ カルボニル。この結合モードにおいて、VX-950のP2基を、Arg155 側鎖を動かす必要なしに、S2ポケットに置いた。t-ブチルおよびシクロヘキシル基を、それぞれ、S3およびS4ポケットに置いた。一貫性のあるように、我々は、BILN2061モデルに使用したのと同じ2段階エネルギー最小化プロトコルを使用した。これらの2つの共複合体モデルを使用して、プロテアーゼインヒビターの結合に対するAla156およびAsp168での突然変異体の効果を予測した。
【0216】
Asp168の側鎖を溶媒に暴露する。D168V突然変異体のバリン側鎖は、χ1 = 60°、-60°または180°である3つの標準配座を採用することができる。Val168 側鎖の全ての3つの配向をモデル化した。D168V突然変異体酵素およびインヒビターの相互作用エネルギーを、タンパク質分子の他の原子全ての位置を固定する間、インヒビターおよびVal168原子を動かすことによって、最小化した。全ケースにおいて、Val168 側鎖は、インヒビター原子といずれの立体的衝突も起こさない。Ala156のセリン突然変異体は、以下の手順によってモデル化した。Ala156 側鎖は、両方のインヒビターのP2基とのファンデルワールス接触にある(図9)。A156S突然変異体のセリン側鎖を、χ1 = 60°、-60°および180°の3つの標準配座でモデル化し、残りのタンパク質の配座を固定したまま維持することによって、エネルギーを最小化した。これらのモデルを使用して、インヒビター結合に対するこの突然変異体の効果を検査した。-60°配座は、隣接するArg155 カルボニルと水素結合を形成する時、最小エネルギーを有することが分かったが、それは、最大数の両方のインヒビターとの好ましくない接触を引き起こす。60°および180°配座は、エネルギー的に同等であるが、60°配座は、好ましくない接触がより少なく、我々の分析に使用した。
【0217】
Ala156を、HCV NS3・4A プロテアーゼ構造中のE2鎖上に置く[R.A. Love at al, Cell 87, pp. 331-342 (1996)]。この鎖のいくつかの骨格原子(主に、Arg155のカルボニルおよびAla157の主鎖窒素およびカルボニルの両方)は、基質の骨格原子または基質系インヒビターと水素結合を作る。VX-950:NS3 プロテアーゼ 共複合体の我々の構造モデルにおいて(図9)、3つの水素結合が、P1 NHおよびArg155 カルボニル、P3 カルボニルおよびAla157 NH、ならびにP3 NHおよびAla157 カルボニルの間で形成される。また、同一の水素結合が、BILN2061の共複合体モデルにおいて形成される。Ala156 側鎖は、これらのインヒビターのP2基とのファンデルワールス接触中にある。我々のA156S突然変異体モデルにおいて、Ser156の末端酸素は、VX-950のP4 シクロヘキシル基に近すぎ、また、BILN2061の末端シクロペンチルにも近い。BILN2061のシクロペンチルキャップは、インヒビターの柔軟な末端にあるため、それは、結合をあまり失わずに、この好ましくない接触から離れることができる。VX-950のP4 シクロヘキシル基の同様の動きは、インヒビターおよびプロテアーゼのS4およびS5サブ部位の間の相互作用の不安定化を引き起こす。従って、A156S突然変異体プロテアーゼとのBILN2061に対してよりも、VX-950に対して、結合のより大きな喪失が予測される。
【0218】
Asp168は、NS3 プロテアーゼ構造のF2鎖に位置し、Arg123およびArg155の側鎖との塩橋相互作用に関与する(図9) [R.A. Love at al, Cell 87, pp. 331-342 (1996)]。また、それはS4結合ポケットの一部でもある。この側鎖における脂肪族部分は、BILN2061の末端シクロペンチル基とのファンデルワールス接触中にあり、これは、この位置のバリン側鎖が、インヒビターとのいずれの立体衝突も起こさないため、D168V突然変異体によって影響を受けるとは考えられない。しかしながら、このD168V置換は、隣接するE-2鎖上でArg155 側鎖との塩橋相互作用の喪失を招き(図1)、これは、代わりに、本明細書に記載されるモデルにおいて、BILN2061の大きなP2基との複数の接触を作る。BILN2061:野生型 NS3 プロテアーゼ複合体のモデルにおけるArg155 (図9, シアンで色分けされた)の配座は、もはや、2つの理由で、D168V突然変異体においてエネルギー的に起こりやすくない。まず、それは、Arg155およびAsp168の間の塩橋相互作用の不在下で、E-2鎖の骨格に近いままでいることができない。第2に、Arg155 側鎖の非代償性および溶媒暴露された正電荷は、タンパク質データバンクにおいて入手可能なアポ-プロテアーゼおよび2つのプロテアーゼ:インヒビター複合体(コード: 1DY8および1DY9)において観察されるように、より大きな溶媒和殻を求めるであろう [S. Di Marco et al., J. Biol. Chem., 275 pp. 7152-7157 (2000)]。Arg155のこれらの配座は、BILN2061のP2 キノリン基との直接的衝突中にあり、その結合を不安定化する。従って、グルタミン酸塩以外のいずれかのアミノ酸とのAsp168の置換は、Arg155との塩橋相互作用を撹乱し、BILN2061結合の減少を生じるであろう。他方で、NS3 プロテアーゼ:インヒビター複合体の2つの公開された結晶構造におけるArg155の配座は、(図9においてオレンジ色で色分けされた)我々のVX-950:プロテアーゼ複合体モデルにおけるものと同様である。加えて、Arg155 側鎖およびインヒビターの間の最大数のファンデルワールス接触を可能にするため、Arg155のこの配座は、VX-950結合の安定化を授与する。従って、VX-950は、BILN2061と比較すると、Asp168での置換によって影響を受けるとは考えられない。
【0219】
実施例13:モデリング - II
完全長HCV NS3 タンパク質 [N. Yao et al., Structure Fold Des. 7, pp. 1353-1363 (1999)] (タンパク質データベースコード: 1CU1)の結晶構造を用いるNS3 セリンプロテアーゼドメインの活性部位へのVX-950およびBILN2061のモデル化は、先に記載した[C. Lin et al. J. Biol. Chem. 279, 17508-17514 (2004)]。HCV NS3・4A プロテアーゼのE2 β-鎖上のAla156 側鎖は、酵素活性部位のS4およびS2ポケットを分離し、2つのインヒビターのP2基とのファンデルワールス接触中にある(図7)。Ala156のValまたはThr置換は、野生型酵素およびインヒビターの間のコンパクト空間へと、2つのさらなる(メチルまたはヒドロキシル)基を有する側鎖を延長する。Val156またはThr156 側鎖を、A156S突然変異体のモデリングについて先に説明した手順に従い、χ1 = 60°、-60および180°の3つの可能な標準配座全てにてモデル化した[C. Lin et al., J. Biol. Chem., 279 pp. 17508-17514 (2004)]。側鎖配座を、残りのタンパク質の配座を固定したまま維持することによって、エネルギー最小化した。インヒビター、VX-950およびBILN2061を、これらの突然変異体酵素活性部位へと入れて、インヒビター結合に対する突然変異体の効果を明らかにした。
【0220】
位置156でのSer 側鎖の3つの潜在的配座(図11)のうち、χ1 = 60°を有する配座は、VX-950およびBILN2061との最小数の好ましくない接触を有する。(χ1 = 180°および-60°を有する)他の2つの配座異性体は、P2 側鎖またはP3 カルボニル基にてのいずれかで、両方のインヒビターとの複数の好ましくない接触を有する。A156TまたはA156V突然変異体において、側鎖のCβ原子でのさなる基を、χ1 = 180°または-60°を有するこれらの2つの位置のうちの1つを占有させ、これは、インヒビターとの好ましくない接触を作る。Thrの3つの可能な配座を、図11に模式的に示す。全てのケースにおいて、さらなる基は、インヒビターおよび/または酵素骨格原子との反発相互作用を有する。エネルギー最小化によって、我々は、-60/180°配座は最小の反発相互作用を有し、反発の主な原因が、突然変異体側鎖の末端メチルまたはヒドロキシル基およびインヒビターのP3 カルボニル基の間の近い衝突であることを発見した。従って、A156TおよびA156V突然変異体は、両方のインヒビターに対して耐性がある。
【0221】
本明細書中に開示し主張した全組成物および/または方法は、本開示に鑑みて、過度の実験なしに、作成し実行することができる。本発明の組成物および方法を、好ましい具体例の観点から記載してきたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱せずに、組成物および/または方法および本明細書中に記載した方法の工程または工程の順序に、変化を適用してもよいことは、当業者に明白であろう。より具体的には、化学的かつ生理学的に関連した特定の剤を、本明細書中に記載した剤と置き換えても同一または同様の結果が達成されることが明白であろう。当業者に明白な全てのそのような同様の代用物および修飾は、添付の請求の範囲によって規定されるように、本発明の精神、範囲および概念内であると考えられる。
【0222】
例示的な手順のまたは本明細書中に記載のものに補足の他の詳細を提供する限り、本明細書を通して援用された引用文献は、全て、本明細書中に引用によって具体的に援用される。本明細書を通して援用された引用文献の以下のリストは、引用によって本明細書中に具体的に援用される。
【0223】
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【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】図1はBILN2061およびVX−950の2のHCV NS3プロテアーゼ−プロテアーゼインヒビター(IP)複合体のX線構造である。2の共複合体構造を解明し、重ねた(青色のVX−950および赤色のBILN2061)。球と棒で示す3の残基(R123、R155およびD168)はBILN2061構造において塩架橋を形成するが、VX−950構造においては形成しない。D168におけるマイナス電荷を除去すると、R155の拘束の欠如を生じ、その結果、BILN2061の大きなP2との積み重なりの欠失を生じ、脱溶媒和のコストを増大する。R155はVX−950構造中のD168によっては拘束されず、D168V突然変異はその結合に影響しない。
【図2】図2はA156S突然変異がVX−950との立体衝突に起因する結合の喪失を生じるが、BILN2061とは立体衝突しないことを示す。野生型A156とVX−950(青色の上部左)またはBILN2061(赤色の下部左)とのX線構造は黄色で強調する。VX−950(青色の上部右)またはBILN2061(赤色の下部右)とのA156S突然変異(灰色)のモデル。すべての許容されたねじれ角度は、突然変異した残基におけるセリンの側鎖を考慮した。
【図3】図3はA156V突然変異がVX−950またはBILN2061との立体衝突に起因するPIの結合の喪失を生じることを示す。VX−950(左、青色)またはBILN2061(右、赤色)とのA156V突然変異(灰色)のモデル。
【図4】図4はVX−950(A)およびBILN2061(B)の化学構造を示す。
【図5A】図5AはVX−950に耐性であるHCVレプリコン細胞の発達を示す。HCV Con1サブゲノムレプリコン細胞は、材料および方法に記載したようにG418の存在下および増加する濃度のVX−905(A)で順次通過した。レプリコン細胞を分割し、新鮮なPIを一週間に2度培地に添加した。影付き領域は、レプリコン細胞が同時発生の大量の細胞死を伴ってほとんどまたは総合的に増殖していない時間を示す。耐性選抜の間の種々の時点(矢印によって示す)でのレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。56日目におけるシリーズAまたは野生型レプリコン細胞に対するVX−950のIC50値を、標準的な48時間アッセイにおいて決定した(B)。
【図5B】図5BはVX−950に耐性であるHCVレプリコン細胞の発達を示す。レプリコン細胞を分割し、新鮮なPIを一週間に2度培地に添加した。影付き領域は、レプリコン細胞が同時発生の大量の細胞死を伴ってほとんどまたは総合的に増殖していない時間を示す。耐性選抜の間の種々の時点(矢印によって示す)でのレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。56日目におけるシリーズAまたは野生型レプリコン細胞に対するVX−950のIC50値を、標準的な48時間アッセイにおいて決定した(B)。
【図6A】図6AはBILN2061に耐性であるHCVレプリコン細胞の発達を示す。HCV Con1サブゲノムレプリコン細胞は、材料および方法に記載したようにG418の存在下および増加する濃度のBILN2061(A)で順次通過した。レプリコン細胞を分割し、新鮮なPIを一週間に2度培地に添加した。影付き領域は、レプリコン細胞が同時発生の大量の細胞死を伴ってほとんどまたは総合的に増殖していない時間を示す。耐性選抜の間の種々の時点(矢印によって示す)でのレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。59日目におけるシリーズBまたは野生型レプリコン細胞に対するBILN2061のIC50値を、標準的な48時間アッセイにおいて決定した(B)。
【図6B】図6BはBILN2061に耐性であるHCVレプリコン細胞の発達を示す。HCV Con1サブゲノムレプリコン細胞は、材料および方法に記載したようにG418の存在下および増加する濃度のBILN2061(A)で順次通過した。レプリコン細胞を分割し、新鮮なPIを一週間に2度培地に添加した。影付き領域は、レプリコン細胞が同時発生の大量の細胞死を伴ってほとんどまたは総合的に増殖していない時間を示す。耐性選抜の間の種々の時点(矢印によって示す)でのレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。59日目におけるシリーズBまたは野生型レプリコン細胞に対するBILN2061のIC50値を、標準的な48時間アッセイにおいて決定した(B)。
【図7】図7はプロテアーゼ:インヒビター複合体のモデルを示す。タンパク質は、明灰色でその二次構造に基づいてアニメーションとして示す。インヒビターは窒素を青色にし、酸素を赤色にし、硫黄をオレンジ色にして球−棒として示す(紫色のVX−950および黄色のBILN2061)。鍵となる残基の側鎖は、異なる色の棒として示す:Ala156(緑)、Asp168(オレンジ)およびArg123(オレンジ)。BILN2061:プロテアーゼモデルのArg155側鎖をシアン色で示し、VX−950:プロテアーゼモデルのそれをオレンジ色で示す。これらの側鎖は点線表面で強調する。触媒トライアド、Ser139、His57およびAsp81は灰色で示す。(図面はPyMOL Molecular Graphics Systems, DeLano Scientific LLC, San Carlos, California, U.S.A.によって作製された。著作権1998−2003)
【図8】図8はVX−950耐性レプリコン細胞からの二重耐性レプリコンの発達を示す。(A)VA−950耐性レプリコン細胞は0.25mg/mlのG418、14μMのVX−950の存在下および増加する濃度のBILN2061で順次通過した。レプリコン細胞を分割し、新鮮なVX−950およびBILN2061を、各々黒塗り四角および三角によって示すように、一週間に2度培地に添加した。耐性選抜の間の32日目のレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。(B)VX−950による52日目のシリーズA(VX−950耐性)(三角)またはシリーズC(二重耐性)(白抜き四角)レプリコン細胞に対するVX−950の滴定を示す。HCV RNAレベルはVX−950との48時間インキュベーションの後に決定した。(C)BILN2061による52日目のシリーズA(VX−950耐性)(三角)またはシリーズC(二重耐性)(白抜き三角)レプリコン細胞に対するBILN2061の滴定を示す。HCV RNAレベルはBILN2061との48時間インキュベーションの後に決定した。
【図9】図9はBILN2061耐性レプリコン細胞からの二重耐性レプリコンの発達を示す。(A)BILN2061耐性レプリコン細胞は0.25mg/mlのG418、7もしくは14μMのVX−950の存在下および増加する濃度のBILN2061で順次通過した。レプリコン細胞を分割し、新鮮なVX−950およびBILN2061を、各々黒塗り四角および三角によって示すように、一週間に2度培地に添加した。耐性選抜の間の32日目のレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。(B)VX−950による52日目のシリーズB(BILN2061耐性)(三角)またはシリーズD(二重耐性)(白抜き三角)レプリコン細胞に対するVX−950の滴定を示す。HCV RNAレベルはVX−950との48時間インキュベーションの後に決定した。(C)BILN2061による52日目のシリーズB(BILN2061耐性)(三角)またはシリーズD(二重耐性)(白抜き三角)レプリコン細胞に対するBILN2061の滴定を示す。HCV RNAレベルはBILN2061との48時間インキュベーションの後に決定した。
【図10】図10は本来のレプリコン細胞からの二重耐性レプリコンの発達を示す。HCVサブゲノムレプリコン細胞は0.25mg/mlのG418の存在下、および増加する濃度のVX−950およびBILN2061で順次通過した。レプリコン細胞を分割し、新鮮なVX−950およびBILN2061を、各々黒塗り三角および逆三角によって示すように、一週間に2度培地に添加した。四角で囲んだ領域は、レプリコン細胞が同時発生の大量の細胞死を伴ってほとんどまたは総合的に増殖していない時間を示す。耐性選抜の間の矢印によって示す種々の時点でのレプリコン細胞の全細胞RNAを抽出し、HCV NS3セリンプロテアーゼをカバーするRT−PCR産物を直接的またはTAベクターにサブクローニングした後にシークエンシングした。
【図11】図11はインヒビター結合に対する関係でのThr156側鎖コンフォメーションの概略図を示す。太線は突然変異酵素のThr156の側鎖およびインヒビターまたは基質のP2側鎖を表す。同じ3つのコンフォメーションは、Val156側鎖について考慮している。最後の(−60/180°)コンフォメーションは、いずれかの突然変異について最低のコンフォメーション、両方のインヒビターに対して反発性のままである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ポリヌクレオチドのコドン156に相当するコドンおよび/または野生型ポリヌクレオチドのコドン168に相当するコドンが、156のアラニンをコードしないようにおよび/または168のアスパラギン酸をコードしないように突然変異している、HCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする単離されたHCVポリヌクレオチドまたはその生物学的に活性なアナログ。
【請求項2】
野生型ポリヌクレオチドのコドン156に相当する該ポリヌクレオチドのコドンが、セリンをコードする請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項3】
野生型ポリヌクレオチドのコドン156に相当する該ポリヌクレオチドのコドンが、バリンをコードする請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項4】
野生型ポリヌクレオチドのコドン156に相当する該ポリヌクレオチドのコドンが、トレオニンをコードする請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項5】
野生型ポリヌクレオチドのコドン156に相当する該ポリヌクレオチドのコドンがバリンまたはトレオニンをコードし、かつ、野生型ポリヌクレオチドのコドン168に相当する該ポリヌクレオチドのコドンがアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードする請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項6】
野生型ポリヌクレオチドのコドン168に相当する該ポリヌクレオチドのコドンが、バリンをコードする請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項7】
ポリヌクレオチドのコドン168が、アラニン、グリシンまたはチロシンをコードする請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項8】
野生型HCVポリヌクレオチドが配列番号:1の配列を有する請求項1記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項9】
HCV NS3/4Aプロテアーゼの生物学的に活性なフラグメントをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドのフラグメントが、野生型ポリヌクレオチドのコドン156に相当するコドンおよび/または野生型ポリヌクレオチドのコドン168に相当するコドンを含むHCV NS3/4Aプロテアーゼドメインをコードすることを特徴とし、ここにコドン156に相当する該コドンおよび/またはコドン168に相当する該コドンが、それが156においてアラニンをコードせずおよび/または168においてアスパラギン酸をコードしないように突然変異している該ポリヌクレオチド。
【請求項10】
コドン156がアラニン残基の代わりにバリン、トレオニンまたはセリン残基をコードする、HCV NS3/4Aプロテアーゼドメインのコドン156を含むことを特徴とする請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
該ポリヌクレオチドが、HCV NS3/4Aプロテアーゼドメインのコドン156および168に相当するコドンを含むことを特徴とし、ここにコドン156がアラニンの代わりにバリンまたはトレオニンをコードし、かつ、コドン168がアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードする請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
HCV NS3/4Aプロテアーゼドメインのコドン168に相当するコドンを含むことを特徴とし、ここにコドン168がバリンをコードする請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
HCV NS3/4Aプロテアーゼドメインのコドン168に相当するコドンを含むことを特徴とし、ここにコドン168がアラニン、グリシンまたはチロシンをコードする請求項9のポリヌクレオチド。
【請求項14】
野生型HCVポリヌクレオチドが配列番号:1の配列を有する請求項9記載の単離されたHCVポリヌクレオチド。
【請求項15】
野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼのアミノ酸156に相当するアミノ酸残基がアラニン残基でなく、および/または、HCV NS3/4Aプロテアーゼのアミノ酸168に相当するアミノ酸残基がアスパラギン酸残基ではない配列を含む、単離されたHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質またはその生物学的に活性なフラグメントもしくは生物学的に活性なアナログ。
【請求項16】
野生型プロテアーゼのアミノ酸156に相当するアミノ酸がバリン、トレオニンまたはセリンである請求項15記載の単離されたHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質またはそのフラグメントもしくはアナログ。
【請求項17】
プロテアーゼのアミノ酸156に相当するアミノ酸がセリン、バリンまたはトレオニンであって、アミノ酸168がアスパラギン酸またはグルタミン酸である請求項15記載の単離されたHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質またはそのフラグメントもしくはアナログ。
【請求項18】
野生型プロテアーゼのアミノ酸168に相当するアミノ酸がバリンである請求項15記載の単離されたHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質またはそのフラグメントもしくはアナログ。
【請求項19】
野生型プロテアーゼのアミノ酸168に相当するアミノ酸がアラニン、グリシンまたはチロシンである請求項15記載の単離されたHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質またはそのフラグメントもしくはアナログ。
【請求項20】
野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼが配列番号2の配列を有する請求項15記載の単離されたHCV NS3/4Aプロテアーゼタンパク質。
【請求項21】
請求項1−14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項22】
請求項1−14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞またはセルライン。
【請求項23】
請求項21記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞。
【請求項24】
請求項15−21のいずれか1項に記載のタンパク質を含む宿主細胞またはセルライン。
【請求項25】
請求項1−14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む単離されたHCV変異型。
【請求項26】
請求項15−23のいずれか1項に記載のタンパク質を含む単離されたHCV変異型。
【請求項27】
請求項1−14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組成物。
【請求項28】
請求項1−4または7−10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、および請求項5、6、11または12のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組成物。
【請求項29】
請求項15−21のいずれか1項に記載のタンパク質を含む組成物。
【請求項30】
請求項15−18のいずれか1項に記載のタンパク質、および請求項19または23に記載のタンパク質を含む組成物。
【請求項31】
生物試料中の請求項1−14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの存在を検出することを含む、該生物試料中の薬剤耐性HCVの存在を検出する方法。
【請求項32】
a)該試料から該ポリヌクレオチドを得;
b)ポリヌクレオチドの配列を決定し;
c)該ポリヌクレオチドにおいて、コドン156および/またはコドン168が、該コドンがアスパラギン酸をコードしていない点において非野生型コドンであるかを判定する
ことを含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
該非野生型コドンが、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼの残基156に相当する残基でセリン、バリンまたはトレオニンをコードし、および/または、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼの残基168に相当する残基でグルタミン酸、バリン、アラニン、グリシンまたはチロシンをコードする請求項31の方法。
【請求項34】
ポリヌクレオチドにおいて、
a)コドン156がセリンをコードし、コドン156がバリンをコードし、コドン156がトレオニンをコードし、コドン156がバリンおよびトレオニンをコードし、および、コドン156がアスパラギン酸またはグルタミン酸をコードし;かつ
b)コドン168がバリンをコードするかまたはコドン168がアラニン、グリシンまたはチロシンをコードするか
を判定または推断することを含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
患者におけるHCV感染症が薬剤耐性であるかを判定する方法であって:
a)HCV感染患者から生物試料を収集し;ついで
b)血漿試料が突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする核酸を含むかを評価することを含み、
ここに該突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼの存在が薬剤耐性HCV感染症を有する該患者を示す該方法。
【請求項36】
該核酸がHCV NS3/4Aの残基156および/または残基168に相当するアミノ酸に突然変異を有する突然変異HCV NS3/4Aプロテアーゼをコードし、ここに野生型HCV NS3/4Aの残基156に相当する残基にアラニンではないアミノ酸、および/または、野生型HCV NS3/4Aの残基168に相当する残基にアスパラギン酸ではないアミノ酸が存在することが、該患者が薬剤耐性HCV感染症を有することを示す請求項35記載の方法。
【請求項37】
該突然変異が、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼの残基156に相当するアミノ酸残基にセリン、バリンまたはトレオニンの存在を含む請求項35記載の方法。
【請求項38】
HCV NS3/4Aプロテアーゼが、野生型HCV NS3/4Aプロテアーゼの残基168に相当するアミノ酸残基にアスパラギン酸、バリン、アラニン、グリシンまたはチロシンの存在を含む、請求項35、36または37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
生物試料中に存在するHCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする核酸がコドン156に突然変異を含み;ここに該突然変異がセリン、バリンまたはトレオニンでのアラニンの置換を生じ、および/または、該突然変異が残基168のアスパラギン酸のグルタミン酸での置換を含む請求項35−37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
該生物試料中に存在するHCV NS3/4Aプロテアーゼをコードする核酸が、コドン168に突然変異を含み;ここに該突然変異がアラニン、グリシン、バリンまたはチロシンでのアスパラギン酸の置換を生じる請求項35−39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
HCV感染患者がVX−950に対する減少した感度または感受性を有するかを評価する方法であって、該患者が野生型C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼの残基156をコードするコドンに突然変異を有するC型肝炎ウイルスNS3/4AプロテアーゼDNAを有するかを評価することを含む該方法。
【請求項42】
HCV感染患者がプロテアーゼインヒビターに対する減少した感度または感受性を有するかを評価する方法であって、該患者が野生型C型肝炎ウイルスNS3/4Aプロテアーゼの残基156をコードするコドンに突然変異を有するC型肝炎ウイルスNS3/4AプロテアーゼDNAを有するかを評価することを含む該方法。
【請求項43】
突然変異が、BILN2061に対する減少した感度または感受性と関連するかまたはそれを生じる請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
突然変異が、VX−950およびBILN2061に対する減少した感度または感受性と関連するかまたはそれを生じる請求項41または42記載の方法。
【請求項45】
候補または潜在的なHCVインヒビターを評価する方法であって:
a)請求項1−14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクターおよびインジケーターをコードするインジケーター遺伝子を宿主細胞に導入し;
b)宿主細胞を培養し;ついで
c)インジケーターの存在下または不存在下でのインジケーターを測定する
ことを含む該方法。
【請求項46】
HCVに対する活性について化合物をアッセイする方法であって:
a)請求項15−23のいずれか1項に記載のプロテアーゼおよびプロテアーゼ基質を準備し;
b)該プロテアーゼと候補または潜在的インヒビターとを基質の存在下で接触させ;ついで
c)プロテアーゼのタンパク質加水分解活性の阻害を評価または測定する
ことを含む該方法。
【請求項47】
請求項15−23のいずれか1項に記載のプロテアーゼのインヒビターとして化合物を同定する方法であって:
a)化合物の不存在下のプロテアーゼの活性をアッセイし;
b)化合物の存在下のプロテアーゼの活性をアッセイし;
c)a)の結果とb)の結果とを比較する
ことを含む該方法。
【請求項48】
d)化合物の不存在下の野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
e)化合物の存在下の野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
f)d)の結果とe)の結果とを比較する
ことを含む請求項47記載の方法。
【請求項49】
a)および/またはb)の結果とd)および/またはe)の結果とを比較することを含む請求項48記載の方法。
【請求項50】
d)化合物の不存在下にて、第2のNS3/4Aプロテアーゼの活性をアッセイし、ここに該第2のプロテアーゼは野生型プロテアーゼの残基168に相当するアミノ酸を含み、ここに該アミノ酸はバリン、アラニン、グリシンまたはチロシンに突然変異しており;
e)化合物の存在下で第2のプロテアーゼの活性をアッセイし;ついで
f)d)およびe)の結果を比較する
ことを含む請求項47記載の方法。
【請求項51】
g)化合物の不存在下の野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
h)化合物の存在下の野生型プロテアーゼの活性をアッセイし;
i)g)の結果とh)の結果とを比較する
ことを含む請求項50記載の方法。
【請求項52】
a)および/またはb)の結果と、d)および/またはe)の結果とを;および/またはg)および/またはh)の結果とを比較することを含む請求項51記載の方法。
【請求項53】
VX−950の活性を助けることができる化合物を同定する方法であって、ここにNS3/4AプロテアーゼがVX−950に耐性になっており:
a)請求項15−23のいずれか1項に記載のプロテアーゼと化合物とを接触させ;
b)a)のプロテアーゼの活性を阻害するVX−950の能力をアッセイする
ことを含む該方法。
【請求項54】
請求項15−23のいずれか1項に記載のプロテアーゼに対して有効な化合物を同定する方法であって:
a)プロテアーゼの三次元モデルを得;
b)化合物を設計または選択し;
c)化合物がプロテアーゼに結合するかまたはそれと相互作用する能力を評価する
ことを含む該方法。
【請求項55】
三次元モデルがNS3/4AプロテアーゼのX線結晶構造(図1および2)に基づく請求項54記載の方法。
【請求項56】
モデルを、コンピュータ・インプリメントした(implemented)方法で実行することによって得る請求項55記載の方法。
【請求項57】
三次元モデルを、請求項15−21のいずれか1項に記載のタンパク質のX線結晶学によって得る請求項54記載の方法。
【請求項58】
評価することが、分子モデリングによる請求項54−57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
化合物を野生型プロテアーゼと接触させる請求項54−58のいずれかの1項に記載の方法。
【請求項60】
化合物を請求項15−19のいずれか1項に記載のタンパク質と接触させる請求項54−59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
化合物を請求項20または21記載のタンパク質と接触させる請求項54−60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
該化合物がコンビナトリアル化学ライブラリーから同定した化合物である請求項54−61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
該化合物が合理的薬剤デザインを介して調製した化合物である請求項54−62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
該化合物が合理的薬剤デザインを介して調製したかまたはVX−950の構造から誘導化した化合物である請求項54−62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
請求項56−61のいずれか1項に記載の方法により同定された化合物。
【請求項66】
請求項65に記載の化合物;および医薬上許容し得る担体、補助剤またはビヒクルを含む組成物。
【請求項67】
化合物がNS3/4Aセリンプロテアーゼを阻害するのに有効な量で存在する請求項66記載の組成物。
【請求項68】
該組成物が、患者への投与用に処方化されている請求項67記載の組成物。
【請求項69】
該組成物が、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの第2のインヒビター;HCVの生活環における別の標的のインヒビター;シトクロムP−450インヒビター;またはそれらの組合せから選択されるさらなる剤を含む請求項68記載の組成物。
【請求項70】
該免疫調節剤がα−、β−またはγ−インターフェロンまたはチモシン(thymosin)であり;該抗ウイルス剤がリバビリン(ribavirin)、アマンタジン(amantadine)またはチモシンであるか;または、HCV生活環における別の標的のインヒビターがHCVヘリカーゼ、ポリメラーゼまたはメタロプロテアーゼのインヒビターである請求項69記載の組成物。
【請求項71】
該シトクロムP−450インヒビターがリトナビル(ritonavir)である請求項70記載の組成物。
【請求項72】
該セリンプロテアーゼと請求項65記載の化合物とを接触させる工程を含む、C型肝炎NS3/4Aプロテアーゼの活性を阻害する方法。
【請求項73】
請求項65に記載の化合物を患者に投与する工程を含む、該患者におけるHCV感染症を治療する方法。
【請求項74】
患者におけるHCV感染症を治療または軽減する方法であって:
a)該患者が、請求項35−44のいずれか1項に記載の方法を用いる療法に耐性であるHCV感染症を有するかを判定し;
b)該患者を、薬剤耐性HCVの治療に指向された組成物または療法で治療する
ことを含む該方法。
【請求項75】
該患者に、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼの第2のインヒビター;HCV生活環における別の標的のインヒビター;またはこれらの組合せから選択されるさらなる剤を投与するさらなる工程を含み;ここに該さらなる剤を単一投与量形態の一部分または別の投与量形態として該患者に投与する請求項73または74記載の方法。
【請求項76】
該免疫調節剤がα−、β−もしくはγ−インターフェロンまたはチモシンであり;該抗ウイルス剤がリバビリンまたはアマンタジンであり;または、該HCV生活環における別の標的のインヒビターがHCVヘリカーゼ、ポリメラーゼまたはメタロプロテアーゼのインヒビターである請求項75記載の方法。
【請求項77】
生物試料または医学もしくは研究室器具のHCV汚染を排除または減少する方法であって、該生物試料または医学もしくは研究室器具と請求項65記載の化合物とを接触させる工程を含む該方法。
【請求項78】
該生物試料または医学もしくは研究室器具が、請求項31−34のいずれか1項に記載の方法により判定されたHCVの薬剤耐性株で汚染する請求項77記載の方法。
【請求項79】
該試料または器具が、血液、他の生体流体、生物組織、外科手術器具、外科手術衣類、研究室器具、研究室衣類、血液または他の身体流体収集装置;血液または他の身体流体保存材料から選択される請求項77記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−502308(P2008−502308A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538256(P2006−538256)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035839
【国際公開番号】WO2005/042570
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】