説明

HDAC阻害剤を用いる併用療法

【課題】癌、例えば肺癌、多発性骨髄腫、リンパ腫、および上皮性卵巣癌を治療する方法の提供。
【解決手段】ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101の第1の量もしくは用量および他の化学治療薬、例えばデキサメタゾン(DEX)もしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)の第2の量または用量を投与するステップを含んでなり、その場合、第1および第2の量または用量は治療上有効な量を含む上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関係出願
本出願は米国予備特許出願第60/649,991号(2005年2月3日出願);および米国予備特許出願第60/735,662号(2005年11月10日出願)に関わり;両出願の内容は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は癌を治療する方法に関する。より具体的には、本発明は患者の癌、例えば肺癌、多発性骨髄腫、リンパ腫、および上皮性卵巣癌を治療する方法であって、それを必要とする患者にヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、PXD-101またはその類似体)の治療上有効な量、およびある(すなわち、他の)化学治療薬(例えば、デキサメタゾンまたは5-フルオロウラシル)および/または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤(例えば、Tarceva(登録商標))の第2の量または用量を投与することを含んでなる上記方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
いくつかの特許および開示物が、本発明および本発明が関わる技術分野の状態を説明かつ開示する目的で本明細書に引用されている。これらの参考文献は、本明細書に参照によりその全てがあたかもそれぞれの個々の参考文献が具体的にかつ個々に本明細書に参照により組み入れられると示されたごとく、本明細書に組み入れられる。
【0004】
本明細書全体にわたって、添付せる請求の範囲を含めて、特に断らない限り、用語「含む」およびその活用変化は、表明した整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを包含し、いずれの他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループも排除しないことを意味すると解釈されうる。
【0005】
本明細書に使用される「ある(a、an)」および「その(the)」は、特に断りがなければ、単数および複数を意味する。従って、「ある活性薬」または「ある薬理学的活性薬」への言及は単独の活性薬ならびに2以上の異なる活性薬を組み合せて含み、「ある担体」への言及は2以上の担体の混合物ならびに単独の担体を含むなどである。
【0006】
本明細書において、範囲は「約(about)」ある特定の値から、および/または「約」ある他の特定の値までを表すことが多い。かかる範囲で表されるとき、他の実施形態は1つの特定の値からおよび/または他の1つの特定の値までを含む。同様に、値が近似値で、先行する「約」を用いて表されるとき、その特定の値は他の実施形態を形成すると解釈されうる。
【0007】
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫は、形質細胞の播種性悪性腫であって、米国では毎年約14,600人の新患が発生している。主に中高年集団が発症するこの稀な血液疾患の病因学はほとんど判っていないが、遺伝素因と環境因子が示唆されている。発病してから、クローン増殖から生じる悪性形質細胞は骨髄に蓄積して異常に高いレベルの免疫グロブリンを産生する。多発性骨髄腫は、初期段階には症候群がないので、初期に診断するのが困難である。とりわけ肋骨または椎骨の圧迫骨折の二次的な骨痛が最も一般的な症候である。
【0008】
デキサメタゾンがこの疾患の第1選択の治療に通常使用される体制である。さらに最近は、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン(VAD)の併用が多発性骨髄腫を治療するために用いられる。しかし、これらは効果的な長期治療薬ではない。デキサメタゾン治療は約25〜35%の応答率を有する。
【0009】
多くの患者において、自己幹細胞移植(ASCT)により支援される高用量化学療法は、もしその手順が最初の診断の12ヶ月内に実施されれば、無症候の生存を延長することができる。しかし、高用量の化学療法と自己幹細胞移植を受けるほとんど全ての患者は最終的に再発しうる。
【0010】
リンパ腫
何年もの新しい治療方法の開発研究にも関わらず、リンパ系の癌、またはリンパ腫は全く一般的なものとして残っている。例えば、米国において60,000人超が毎年リンパ腫と診断されてこれには非ホジキンリンパ腫(NHL)の55,000超の症例が含まれ、これらの数字は絶えず増加している。さらに、これらの疾患を患うものの予後は不良であることが多く、リンパ腫患者の生存率は低いままである。明らかにこれらの疾患を治療する新しい方法が必要とされている。
【0011】
リンパ腫に対する伝統的治療は典型的にはリンパ腫の型ならびに患者の治療歴に依存する一方、多くのリンパ腫の第1選択の治療は典型的には化学療法を含む。かかる化学療法は化合物の「カクテル」、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニソンを含む製剤CHOPの投与を行うことが多い。さらに、ある特定の第1選択の癌治療はまた、他の型の癌治療法、例えば照射療法なども含む。
【0012】
多くの場合、患者は最初のうちはかかる第1選択の治療に応答するが、その後、再発し、すなわち、腫瘍が再現するかまたは増殖を再開する。かかる再発の後、患者はしばしばさらなる化学療法、例えば、CHOPによりまたは他の製剤により治療されるか、または、いくつかの事例では患者は骨髄移植などの他の方法により治療される。再び、多くの場合、患者はかかるさらなる治療に対して最初は応答するが、その後、また再発する。概して、患者が再発することが多いほど、当技術分野で最適なその後の治療について一致することは少ない。他の事例では、最初ですら、患者は治療に対して全く応答せず、そして不応性癌であると言われる。かかる場合にも、当技術分野で最適なその後の治療について一致することは少ない。
【0013】
前立腺癌
前立腺癌は、米国男性のなかで、死に導く最も一般的な癌である。その発生率は過去20年にわたってかなり増加している。この癌はしばしば最初はホルモン治療に応答性であるが、その後、容易に治療されないホルモン非感受性状態に進行することが多い。しかし、一旦、癌が広がるかまたは前立腺から骨髄などの他の組織に転移すると、この癌は通常、現在利用しうる治療により治療することはできない、というのはこれらの治療はあまりにも毒性が強いかまたは転移に追いつくことができないからである。転移した前立腺癌を含む前立腺癌を治療するための低毒性の新しい方法に対する差し迫った必要性がある。
【0014】
卵巣癌
卵巣癌は米国女性のなかで、癌死の第4位の原因でありかつ組み合せた全ての他の婦人科の悪性疾患を超える死の原因である。
【0015】
米国において、婦人の卵巣癌を発症する生涯リスクは70中1である。1992年に、約21,000症例の卵巣癌が報じられ、そして約13,000人の女性がこの疾患が原因で死亡した。例えば、第321章「卵巣癌(Ovarian Cancer)」、Harrison's Principles of Internal Medicine、13版、Isselbacher ら、編、McGraw-Hill、New York (1994)、pages 1853-1858;およびAmerican Cancer Society Statistics、Cancer J. Clinicians、45:30 (1995)を参照されたい。最も普通の卵巣癌である上皮性卵巣癌においては、癌細胞が特有の伝播パターンで腹腔全体に遊走し、内臓および頭頂腹膜および半膜に多数の転移性小結節を生じる。さらに、転移は肝臓、肺および脳などの遠隔部位に生じうる。初期段階の卵巣癌はしばしば無症候であり、骨盤試験における卵巣塊を触診することにより同時に検出される。閉経前患者では、これらの塊の約95%は良性である。閉経後であっても、塊の70%は良性であるが、何らかの拡大を検出すれば評価して、悪性種を除外する必要がある。骨盤塊をもつ閉経後の女性で、65U/mLを超える顕著に高い血清CA-125レベルは96%陽性予測値で悪性種を示す。例えば、第321章「卵巣癌(Ovarian Cancer)」、Harrison's Principles of Internal Medicine、13版、Isselbacher ら、編、McGraw-Hill、New York (1994)を参照されたい。
【0016】
上皮性卵巣癌は、35才未満の女性でお目にかかることは滅多にない。その発生率は年齢の進行とともに著しく増加し、75〜80才でピークに達し、メジアン年齢は60年である。この癌についての単独の最も重要なリスク因子は、強い乳癌または卵巣癌の家族歴である。卵巣癌に関連する発癌遺伝子にはHER-2/neu(c-erbB-2)発癌遺伝子(卵巣癌の3分の1で過剰発現される)、fms発癌遺伝子、およびp53遺伝子の異常(卵巣癌のほぼ2分の1で見られる)が含まれる。いくつかの環境因子はまた高リスクの上皮性卵巣癌とも関係があり、それらとしては、比較的低い組織レベルのガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼをもつ被験者における高脂肪食およびラクトースの摂取が挙げられる。
【0017】
上皮性卵巣進行癌に対する国際的に許容される第1選択の化学療法はカルボプラチンとパクリタキセルの併用である。典型的な結果はメジアン無進行生存(PFS)17〜20ヶ月およびメジアン生存3〜5年である。第2選択の治療法は緩解期間により決定される。もし再発が最後の治療の6ヶ月以内に起こるようであれば、患者は「白金耐性」であると考えられる。この患者におけるカルボプラチン/パクリタキセル治療体制による再治療は短期間(3〜6ヶ月)の低い応答率(15%)、およびメジアン生存ほぼ12ヶ月に関連づけられる。この患者集団については、さらに有効な療法が必要である。
【0018】
肺癌
肺癌は米国において癌死亡率の首位にある(「2003年における癌の実情と数字(Cancer Facts and Figures 2003)」, American Cancer Society)。肺癌は、特に潜行性であり、その理由は、初期段階の局所疾患の症候群が非特異的でありかつ喫煙の影響に帰することが多いからである。患者が医療を求める時点には疾患が通常進行していて、完全な外科切除が可能なのは全症例の30%未満でしかなく、かつ全5年の生存率は15%未満でしかない。例えば「肺癌:癌スクリーニングと早期検出(Cancer of the Lung: Cancer Screening and Early Detection)」, Cancer Medicine、第5版、Bastら編、B.C. Decker Inc.、Hamilton、Ontario、Canadaを参照されたい。
【0019】
癌が早期に発見されれば、外科および放射線治療で治療可能であるが、転移性疾患に対する現行薬物療法はほとんど対症療法であって長期治療を提供することはまれにしかない。市場に進出中の新しい化学療法を用いてすら、患者生存の改善は数年というより数ヶ月で評価されており、第1選択の療法として既存薬剤との併用、ならびに耐性腫瘍の治療における第2および第3選択の治療法としての両方に有効な新しい薬物に対する必要性は存続している。
【0020】
HDAC阻害剤
ヒストンはクロマチンの主要タンパク質構成要素である。クロマチン構造の調節が遺伝子発現を制御する中心機構であることが明らかになりつつある。一般的パラダイムとして、ヌクレオソームヒストンのアミノ末端尾部中のリシン残基のε-アミノ基のアセチル化は転写活性化と関係があると同時に、脱アセチル化はクロマチンの凝縮および転写抑制と関係がある。ヒストンのアセチル化および脱アセチル化は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の酵素活性により制御される。p53およびGATA-1を含むいくつかの転写因子はまた、HDACに対する基質であることもわかっている。
【0021】
原型のHDAC阻害剤、例えば天然産物トリコスタチンA(TSA)およびスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、細胞周期停止および腫瘍抑制に関連する遺伝子の発現を誘導する。HDAC阻害剤により誘導される表現型変化には、腫瘍細胞におけるG1およびG2/M細胞周期停止およびアポトーシスが含まれる。抗腫瘍活性は、PXD-101を含むいくつかのHDAC阻害剤を用いて動物モデルにおいてin vivoで実証されている。
【0022】
PXD-101は強力なHDAC阻害剤であって、ヒドロキサム酸型のヒストンデアセチラーゼ阻害剤に属し、当該グループの様々なメンバーは骨髄腫およびリンパ腫に対して著しいin vitroおよびin vivo(前臨床および初期臨床試験)活性を示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】第321章「卵巣癌(Ovarian Cancer)」、Harrison's Principles of Internal Medicine、13版、Isselbacher ら、編、McGraw-Hill、New York (1994)、pages 1853-1858
【非特許文献2】American Cancer Society Statistics、Cancer J. Clinicians、45:30 (1995)
【非特許文献3】「2003年における癌の実情と数字(Cancer Facts and Figures 2003)」, American Cancer Society
【非特許文献4】肺癌:癌スクリーニングと早期検出(Cancer of the Lung: Cancer Screening and Early Detection)」, Cancer Medicine、第5版、Bastら編、B.C. Decker Inc.、Hamilton、Ontario、Canada
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の概要
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101を化学治療薬および/または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤と併用すると、治療上有効な抗癌効果を与えることができるという発見に基づく。さらに、HDAC阻害剤と化学治療薬またはEGFR阻害剤との間の予想しなかった相乗的相互作用がもたらされ、上記併用効果は2つの治療薬をそれぞれ治療用量で投与することからもたらされる相加効果より大きい。
【0025】
従って、本発明の一態様は癌を治療する方法であって、それを必要とする患者にヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101の第1の量または用量、および(他の)化学治療薬、例えばデキサメタゾンもしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)の第2の量または用量を投与することを含んでなる上記方法に関する。第1および第2の量または用量は治療上有効な量を含む。
【0026】
本発明の他の態様は、癌の治療用の医薬品の製造におけるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD101の使用であって、上記治療が(i)上記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および(ii)他の化学治療薬、例えばデキサメタゾンもしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)を用いる治療を含んでなる上記使用に関する。
【0027】
本発明の他の態様は、癌の治療用の医薬品の製造における、他の化学治療薬、例えばデキサメタゾンもしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)の使用であって、上記治療が(i)ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101、および(ii)上記他の化学治療薬または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤を用いる治療を含んでなる上記使用に関する。
【0028】
本明細書に記載の治療手順は、いずれかの順序で逐次的に、同時に、またはそれらの併用で行うことができる。例えば、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を投与する第1の治療手順は、第2の治療手順、(すなわち、他の)化学治療薬または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤の投与の前に;第2の治療手順の後に;第2の治療手順と同時に;またはそれらの併用で行うことができる。例えば、全治療期間をHDAC阻害剤について決定してもよい。第2の治療薬はHDAC阻害剤による治療の開始前に、またはHDAC阻害剤による治療後に投与することができる。さらに、第2の治療薬は、HDAC阻害剤投与期間に投与することができるものの、全HDAC阻害剤治療期間全体にわたって行う必要はない。
【0029】
併用療法は2つの治療様式に関連する示差毒性の視点から治療上の利点を与えることができる。より具体的に言うと、HDAC阻害剤を用いる治療は血液学的毒性に導きうるが、化学療法治療薬は該組織部位に隣接した組織に対して有毒でありうる。このように、この示差毒性は患者の病状を悪化させることなく、それぞれの治療薬をその治療用量で投与することを許容する。しかし、驚くべきことに、併用治療の結果として達成される治療効果は高められまたは相乗的であって、例えば、相加的な治療効果より有意に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】骨髄腫細胞株(すなわち、U266細胞)に対するPXD-101とデキサメタゾンに関わる併用研究の結果を実証するグラフ(「%阻害」対「Log M DEX」)を示す:PXD-101プレインキュベーション、続いてPXD-101+デキサメタゾンによるインキュベーション)。下側の曲線はDEX単独であり、上側の曲線はPXD-101+DEXである。
【図2】CalcuSyn(登録商標)により計算した、WST-1抗増殖性アッセイにおけるPXD-101と5-FUの相乗作用を示すグラフ(「併用指数」対「併用番号」)を示す(HCT116、24時間PXD-101+48時間5-FU単独、併用)。添付データ表5も参照されたい。
【図3】CalcuSyn(登録商標)により計算した、クローン原性アッセイにおけるPXD-101と5-FUの相乗作用を示すグラフ(「併用指数」対「併用番号」)である(HCT116 PXD-101/5-FU 24時間共インキュベーション)。
【図4】PXD-101の化学増感効果を表すグラフ(「腫瘍体積(cm3)」対「日」)である(対照;5-FU、15mg/kg;PXD-101、100mg/kg;PXD-101/5-FU、100/15mg/kg)。
【図5】2つの棒グラフ(in vitro増殖阻害(%))であり;(上のグラフ)はPXD-101(0.25μM)、Tarceva(登録商標)(0.32μM)、および併用(PXD-101/Tarceva(登録商標)、Calu03に対して、72時間共処理)を示し;そして(下のグラフ)はPXD-101(0.35μM)、Tarceva(登録商標)(0.04μM)、および併用(PXD-101/Tarceva(登録商標)、HCC-4006に対して、72時間共処理)を示す。
【図6】2つの棒グラフ(in vitro増殖阻害(%))であり;(上のグラフ)はPXD-101(1.8μM)、Alimta(登録商標)(0.16μM)、および併用(PXD-101/Alimta(登録商標)、A549に対して、24時間Alimta(登録商標)、48時間共処理)を示し;そして(下のグラフ)はPXD-101(1.8μM)、Alimta(登録商標)(0.04μM)、および併用(PXD-101/Alimta(登録商標)、NCI-H460に対して、24時間Alimta(登録商標)、48時間共処理)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は癌を治療する方法に関する。上記方法は、それを必要とする患者にヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101の第1の量または用量、および(他の)化学治療薬、例えばデキサメタゾンもしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)の第2の量または用量を投与することを含んでなる。第1と第2の量または用量は一緒に治療上有効な量を含む。
【0032】
(ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、化学治療薬またはEGFR阻害剤と異なる;すなわち、併用療法は少なくとも2種の異なる薬剤による治療であることを意図する)
一実施形態においては、第2の量または用量はある(すなわち、他の)化学治療薬の第2の量または用量である。
【0033】
一実施形態においては、第2の量または用量はある上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤の第2の量または用量である。
【0034】
一実施形態においては、第2の量または用量は、シスプラチン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン、トポテカン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、タモキシフェン、デキサメタゾン、5-アザシチジン、クロランブシル、フルダラビン、Tarceva(登録商標)、Alimta(登録商標)、メルファラン、および製薬上許容される塩およびそれらの溶媒和物から選択される化合物の第2の量または用量である。
【0035】
一実施形態においては、上記方法は相乗的である抗癌薬効果を提供する。
【0036】
本明細書で使用される用語「癌の治療」および「癌治療」は、哺乳動物、例えばヒトにおいて、癌転移を含む癌の進行を部分的にまたは全体として阻害し、遅延させ、または予防すること;癌転移を含む癌の再発を阻害し、遅延させ、または予防すること;または癌の発生および発達を予防すること(化学防御)を意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語「治療上有効な量」は、併用療法において第1と第2の治療薬の組み合された量が適格であることを意図する。組み合わされた量は所望の生物学的応答を達成しうる。本発明において、所望の生物学的応答は、哺乳動物、例えばヒトにおいて、癌転移を含む癌の進行を部分的にまたは全体として阻害し、遅延させ、または予防すること;癌転移を含む癌の再発を阻害し、遅延させ、または予防すること;または癌の発生および発達を予防すること(化学防御)である。
【0038】
本発明の併用療法は、広範囲の癌の治療における使用に好適である。本明細書で使用される用語「癌」は、腫瘍、新生物、癌、肉腫、白血病、リンパ腫などを意味する。例えば、癌には、限定されるものでないが、白血病およびリンパ腫、例えば皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、例えば、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ性白血病、急性非リンパ指向性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫、小児期固形腫瘍、例えば脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、および軟組織肉腫、成人の通常の固形腫瘍、例えば頭部および頸部癌(例えば、口腔、喉頭、および食道の)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎、子宮、卵巣、精巣、直腸、および大腸)、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫およびその他の皮膚癌、胃癌、脳癌、肝臓癌および甲状腺癌が含まれる。
【0039】
一実施形態においては、本明細書に開示した方法により治療される癌は肺癌である。
【0040】
一実施形態においては、本明細書に開示した方法により治療される癌は多発性骨髄腫である。
【0041】
一実施形態においては、本明細書に開示した方法により治療される癌はリンパ腫である。
【0042】
一実施形態においては、本明細書に開示した方法により治療される癌は上皮性卵巣癌である。
【0043】
ヒストンデアセチラーゼとヒストンデアセチラーゼ阻害剤
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)はヒストンおよび非ヒストンタンパク質(p53、チューブリン、および様々な転写因子)の可逆的アセチル化に関わる。哺乳動物のHDACは公知の酵母因子とのそれらの類似性に基づいて3クラスに整理されている。クラスI HDAC(HDAC1、2、3および8)は酵母RPD3タンパク質と類似性があり、核内に位置し、転写のコリプレッサー(co-repressor)に関連する複合体中に見出される。クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7および9)は酵母HDA1タンパク質に類似し、核と細胞質細胞下の両方に局在する。クラスIII HDACは酵母SIR2タンパク質に関係するNAD依存性酵素の構造的に遠隔なクラスを形成する。
【0044】
HDAC活性を阻害することがわかっている化合物は、構造的に多様な5クラス:(1)ヒドロキサム酸;(2)環状テトラペプチド;(3)脂肪酸;(4)ベンズアミド;および(5)求電子ケトンに入る。
【0045】
ヒドロキサム酸はその中でも最初に同定されたHDAC阻害剤であり、そしてこれらの薬剤はHDAC阻害剤のモデルとなるファルマコフォアを規定するのを助ける。これらの薬剤のリンカードメインは直線状または環状構造からなり、飽和または不飽和であって、かつその表面認識ドメインは一般的に疎水基、最も多くは芳香族である。フェーズIおよびフェーズII臨床試験が現在、PXD-101を含む複数のヒドロキサム酸系HDAC阻害剤について進行中である。
【0046】
PXD-101は非常に強力なHDAC阻害剤であって、低いマイクロモル力価で多様な腫瘍細胞株の増殖(IC50 0.08〜2.43μM)およびHDAC酵素活性(IC50 9〜110nM)をブロックする。異種移植モデルにおいて、PXD-101は用量に応じて腫瘍増殖を遅らせかつ特に白血病マウスモデルにおいて活性がある。さらに、PXD-101は急速に増殖する細胞において細胞周期停止およびアポトーシスを引き起こす。従って、ヒドロキサム酸系HDAC阻害剤は本発明における使用に好適である。
【0047】
一実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、次式:
【化1】

【0048】
[式中、Aは無置換のフェニル基であり;
Q1は共有結合、C1〜7アルキレン基、またはC1〜7アルケニレン基であり;
Jは式:
【化2】

【0049】
(式中、R1は水素、C1〜7アルキル、C3〜20ヘテロシクリル、C5〜20アリール、またはC5〜20アリール-C1〜7アルキルである)
であり;そして
Q2は式:
【化3】

である]
で表される化合物ならびにそれらの製薬上許容される塩および溶媒和物から選択される。
【0050】
一実施形態においては、Q1は共有結合またはC1〜7アルキレン基である。
【0051】
一実施形態においては、Q1は共有結合である。
【0052】
一実施形態においては、Q1はアルキレン基である。
【0053】
一実施形態においては、Q1は-CH2-、-C(CH3)-、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH(CH2CH3)-、-CH2CH2CH2-、または-CH2CH2CH2CH2-である。
【0054】
一実施形態においては、Q1はC1〜7アルケニレン基である。
【0055】
一実施形態においては、Q1は-CH=CH-または-CH=CH-CH2-である。
【0056】
一実施形態においては、R1は水素、C1〜7アルキル、C3〜20ヘテロシクリル、またはC5〜20アリールである。
【0057】
一実施形態においては、R1は水素である。
【0058】
一実施形態においては、R1はC1〜7アルキルである。
【0059】
一実施形態においては、R1は-Me、-Et、-nPr、-iPr、-nBu、-iBu、-sBu、または-tBuである。
【0060】
一実施形態においては、R1は-Me、-nBu、または-iBuである。
【0061】
一実施形態においては、R1はC3〜20ヘテロシクリルである。
【0062】
一実施形態においては、R1はC5〜20アリールである。
【0063】
一実施形態においては、R1はフェニルである。
【0064】
一実施形態においては、R1はC5〜20アリール-C1〜7アルキルである。
【0065】
一実施形態においては、R1はベンジルである。
【0066】
一実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は次の化合物:
【化4】



【0067】
およびそれらの製薬上許容される塩または溶媒和物から選択される。
【0068】
一実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、次式:
【化5】

で表されるPXD-101およびそれらの製薬上許容される塩または溶媒和物から選択される。
【0069】
本発明における使用に好適な他のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤には、米国特許出願第10/381,790号;第10/381,794号;および第10/381,791号に開示された化合物が含まれ、これらの内容はそれぞれ本明細書に参照によりその全文が組み入れられる。
【0070】
立体異性体
本発明は、上に掲げた化合物の使用だけでなく、かかる化合物の立体異性体およびそれらの混合物の使用を包含することを意図する。
【0071】
多数の有機化合物は光学活性型で存在し、偏光平面を回転する能力を有する。光学活性化合物を記載する際に、接頭辞DおよびLまたはRおよびSを用いてキラル中心についての分子の絶対的立体配置を記述する。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)を用いて化合物による偏光の回転のサインを記述し、(-)またはlをもつ化合物は左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞をもつ化合物は右旋性である。所与の化学構造について、立体異性体と呼ばれる化合物は、それらがスーパーインポーズできないお互いの鏡像であることを除くと同一である。特定の立体異性体はまた、エナンチオマーと呼ばれることもあり、かかる異性体の混合物はエナンチオマー混合物と呼ばれることが多い。エナンチオマーの50:50(モルで)混合物はラセミ混合物と呼ばれる。本明細書に記載の化合物の多くは1以上のキラル中心を有してもよく、それ故に、色々なエナンチオマー形態で存在しうる。所望であれば、キラル炭素原子をアステリスク(*)を用いて記述してもよい。キラル炭素原子に対する結合が本発明の式において直線で記述される場合、キラル炭素原子の(R)および(S)立体構造の両方が、従って、両方のエナンチオマーとそれらの混合物がその式に包含されると解釈される。当技術分野で使用されるように、キラル炭素についての絶対的立体配置を記述するのが所望であれば、キラル炭素に対する結合の1つを楔(平面上側の原子との結合)として記述してもよくかつ他の1つを短い平行線の列または楔(平面下側の原子との結合)として記述してもよい。Cahn-Inglod-Prelogシステムを用いて(R)または(S)立体配置をキラル炭素に割り当てることができる。
【0072】
本明細書に記載のHDAC阻害剤が1つのキラル中心を有する場合、化合物は2つのエナンチオマー型で存在する。エナンチオマーは当業者に公知の方法により、例えば、ジアステレオ異性体塩の形成(これは例えば、結晶化による分離することができる)(例えば、CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma (CRC Press、2001)を参照);ジアステレオ異性体誘導体または複合体の形成(これは例えば、結晶化、ガス-液体または液体クロマトグラフィにより分離することができる);1つのエナンチオマーのエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば酵素によるエステル化;またはキラル環境における(例えばキラル支持体、例えばキラルリガンドが結合したシリカ上で、またはキラル溶媒の存在のもとで)ガス-液体または液体クロマトグラフィ;により分割することができる。所望のエナンチオマーが上記の分離手順の1つにより他の化学的実体に変換される場合、所望のエナンチオマー型を遊離するためのさらなるステップが必要となることは理解されるであろう。あるいは、特異的エナンチオマーは、光学的に活性な試薬、基質、触媒または溶媒を用いる不斉合成により、または1つのエナンチオマーの他のエナンチオマーへの不斉変換による変換により合成することができる。本発明は、上に掲げた化合物の使用だけでなく、それぞれのエナンチオマーおよびエナンチオマーの混合物、例えばラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50(モルで)混合物の使用を包含することを意図する。
【0073】
化合物のキラル炭素の具体的な絶対的立体配置の指定は、指定される化合物のエナンチオマー型がエナンチオマー過剰(ee)である、言い換えれば他のエナンチオマーを実質的に含まないことを意味すると解釈される。例えば、化合物の「R」型は実質的にその化合物の「S」型を含まない、従って「S」型のエナンチオマー過剰である。逆に、化合物の「S」型は実質的に該化合物の「R」型を含まない、従って、「R」型のエナンチオマー過剰である。本明細書に使用されるエナンチオマー過剰は、特定のエナンチオマーが50%より高く存在することである。例えば、エナンチオマー過剰は約60%超、例えば、約70%超、例えば約80%超、例えば約90%超でありうる。特定の絶対的立体配置が指定される特別な実施形態においては、指定される化合物のエナンチオマー過剰は少なくとも約90%である。さらに特別な実施形態においては、化合物のエナンチオマー過剰は少なくとも約95%、例えば、少なくとも約97.5%、例えば、少なくとも99%エナンチオマー過剰である。
【0074】
化合物が2個以上のキラル炭素原子を有するとき、2個以上の光学異性体を有することができ、ジアステレオ異性体型で存在しうる。例えば、2個のキラル炭素原子があるとき、該化合物は4種までの光学的異性体および2対のエナンチオマー((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))を有しうる。エナンチオマーの対(例えば、(S,S)/(R,R))はお互いの鏡像立体異性体である。鏡像でない立体異性体(例えば、(S,S)および(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体対は当業者で公知の方法、例えばクロマトグラフィまたは結晶化により分離することができ、そしてそれぞれの対内の個々のエナンチオマーは上記の通り分離することができる。本発明は、上に掲げた化合物の使用だけでなく、かかる化合物のそれぞれのジアステレオ異性体およびそれらの混合物の使用を包含することを意図する。
【0075】
塩および溶媒和物
本明細書に開示した活性化合物は、先に記載した通り、それらの製薬上許容される塩の形態で調製することができる。製薬上許容される塩は、親化合物の所望の生物学的活性を保持しかつ望ましくない毒性学的効果を与えない塩である。製薬上許容される塩の例は、Bergeら, 1977, 「製薬上許容される塩(Pharmaceutically Acceptable Salts)」, J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19に考察されている。
【0076】
開示した活性化合物は、先に記載した通り、それらの溶媒和物の形態で調製することができる。用語「溶媒和物」は、本明細書において、通常の意味で使用され、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒の複合物を意味する。もし溶媒が水であれば、溶媒和物は便宜的に水和物、例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物などを意味しうる。
【0077】
プロドラッグ
本発明は、上に掲げた化合物の使用だけでなく、本明細書に開示した化合物(例えば、HDAC阻害剤)のプロドラッグの使用を包含することを意図する。いずれかの化合物のプロドラッグは周知の薬理学的技法を用いて作ることができる。
【0078】
同族体および類似体
本発明は、上に掲げた化合物の使用だけでなく、かかる化合物の同族体および類似体の使用を包含することを意図する。本明細書の文脈において、同族体は上記化合物と実質的な構造類似性を有する分子でありかつ類似体は、構造類似性に関係なく、実質的な生物学的類似性を有する分子である。
【0079】
化学治療薬
本発明における使用に好適な化学治療薬には、1種以上の他の抗腫瘍物質、例えば、有糸分裂阻害剤、例えばビンブラスチン;アルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、およびシクロホスファミド;微小管アセンブリーの阻害剤、例えば、パクリタキセルまたは他のタキサンなど;抗代謝物、例えば5-フルオロウラシル、カペシタビン、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシウレア、または、例えば、インターカレーション抗生物質、例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン;免疫賦活薬、例えばトラスツズマブ;DNA合成阻害剤、例えば、ゲムシタビン;酵素、例えばアスパラギナーゼ;トポイソメラーゼ阻害剤、例えばエトポシド;生物学的応答改変因子、例えばインターフェロン;および抗ホルモン、例えば、抗エストロゲン、例えばタモキシフェンまたは、例えば、抗アンドロゲン、例えば(4'-シアノ-3-(4-フルオロフェニルスルホニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-3'-(トリフルオロメチル)-プロピオンアニリド、または他の治療薬、ならびに例えば、DeVita, V. T., Jr., Hellmann, S., Rosenberg, S. A.; in: Cancer: Principles & Practice of Oncology, 第5版, Lippincott-Raven Publishers (1997)に記載の原理から選択される物質が含まれる。
【0080】
一実施形態においては、化学治療薬はデキサメタゾンである。
【0081】
一実施形態においては、化学治療薬は5-フルオロウラシルである。
【0082】
EGFR阻害剤
本明細書で使用される用語「EGFR阻害剤」は、生来の上皮成長因子レセプター(EGFR)の生物学的機能を阻害できる分子を意味する。従って、用語「阻害剤」はEGFRの生物学的役割の文脈において定義される。ここで好ましい阻害剤はEGFRと特異的に相互作用する(例えば、結合する)一方、EGFRシグナル伝達経路の他のメンバーと相互作用することによりEGFR生物学的活性を阻害する分子も明確にこの定義内に含まれる。EGFR阻害剤により阻害される好ましいEGFR生物学的活性は腫瘍の発生、増殖、または伝播と関連している。EGFR阻害剤には、限定されるものでないが、ペプチド、非ペプチド小分子、抗体、抗体フラグメント、アンチセンス分子、およびオリゴヌクレオチド・デコイ(decoy)が含まれる。
【0083】
一実施形態においては、EGFR阻害剤はTarceva(登録商標)である。
【0084】
いくつかの好ましい化学治療薬およびEGFR阻害剤
いくつかの好ましい化学治療薬およびEGFR阻害剤の例には、シスプラチン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン、トポテカン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、タモキシフェン、デキサメタゾン、5-アザシチジン、クロランブシル、フルダラビン、Tarceva(登録商標)、Alimta(登録商標)、メルファランが含まれる。
【0085】
従って、一実施形態においては、本発明の治療は、(i)ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101、ならびに(ii)シスプラチン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン、トポテカン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、タモキシフェン、デキサメタゾン、5-アザシチジン、クロランブシル、フルダラビン、Tarceva(登録商標)、Alimta(登録商標)、メルファランから選択される化合物およびそれらの製薬上許容される塩および溶媒和物を用いる治療を含む。
【0086】
投与の方式と用量
本発明の治療の方法は、それを必要とする患者に、第1の手順において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101の第1の量または用量を、そして、第2の手順において、(他の)化学治療薬、例えばデキサメタゾンもしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)の第2の量または用量を投与することを含んでなる。第1および第2の量または用量は、共に、治療上有効な量を含む。いくつかの実施形態においては、上記併用療法は相乗効果をもたらす。
【0087】
本明細書で使用される用語「患者」は治療のレシピエントを意味する。哺乳動物および非哺乳動物患者が含まれる。一実施形態においては、患者は哺乳動物である。一実施形態において、患者は、げっ歯類(rodent)(例えばモルモット、ハムスター、ラット、マウス)、マウス類(murine)(例えばマウス)、ウサギ類(lagomorph)(例えばウサギ)、鳥類(例えばトリ)、イヌ類(canine)(例えばイヌ)、ネコ類(feline)(例えばネコ)、ウマ類(equine)(例えばウマ)、ブタ類(porcine)(例えばブタ)、ヒツジ類(ovine)(例えばヒツジ)、ウシ類(bovine)(例えばウシ)、ヤギ類(caprine)(例えばヤギ)、霊長類(primate)、サル類(simian)(例えばモンキーまたは類人猿)、モンキー(monkey)(例えばマモセット、ヒヒ)、類人猿(ape)(例えばゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ギボン)、またはヒトである。一実施形態においては、患者はヒト、イヌ類、ネコ類、マウス類、ウシ類、ヒツジ類、ブタ類、またはヤギ類である。
【0088】
一実施形態においては、患者はヒトである。
【0089】
HDAC阻害剤の投与
本発明のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は経口剤形、例えば、錠剤、カプセル(それぞれ徐放性または持続放出製剤を含む)、丸薬、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁剤、シロップ、および乳剤で投与することができる。
【0090】
同様に、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、全て医薬品技術分野の業者に周知の剤形を利用して、静脈内(ボーラスまたは輸液)、腹腔内、皮下、または筋内剤形で投与することができる。
【0091】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、活性成分の徐放を可能にする方法で製剤できるデポ注入または移植片調製物の剤形で投与することができる。活性成分をペレットまたは小円柱に圧縮し、そして皮下または筋肉内にデポ注入または移植片として移植することができる。移植片は、不活性材料、例えば生分解性ポリマー、または合成シリコーン、例えばSilastic(登録商標)、シリコーンゴム、または、例えばDow-Corning Corporation製の他のポリマーを用いることができる。
【0092】
HDAC阻害剤はまた、リポソーム送達系の剤形、例えば小単層小胞、大単層小胞および多層小胞で投与することもできる。リポソームは様々なリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから作ることができる。
【0093】
HDAC阻害剤はまた、個々の担体としてモノクローナル抗体を使用し、その抗体に化合物分子を結合させることにより送達することもできる。
【0094】
HDAC阻害剤はまた、標的化しうる薬物担体として可溶ポリマーを用いて調製することもできる。かかるポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピラン・コポリマー、ポリヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチル-アスパルトアミド-フェノール、またはパルミトイル残基により置換されたポリエチレンオキシド-ポリリシンを挙げることができる。さらに、HDAC阻害剤は、薬物の徐放性を達成するのに有用である生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋したまたは両親媒性ブロックコポリマーを用いて調製することができる。
【0095】
投与体制
HDAC阻害剤を用いる投与体制は、型、種、年齢、体重、性別および治療する癌の型;治療する癌の重症度(すなわち、段階);投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに使用する特定の化合物またはその塩を含む、様々な因子によって選択することができる。当技術分野の医師または獣医は、治療する、例えば、疾患の進行を予防し、阻害し(全てまたは部分的に)または停止するために必要な薬物の有効量を、容易に決定しかつ処方することができる。
【0096】
投与速度と製剤
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の経口投与量は、所望の癌(例えば、ヒトにおける)を治療するために用いる場合、1日当たり約2mg〜約2000mg、例えば1日当たり約20mg〜約2000mg、例えば1日当たり約200mg〜約2000mgの範囲でありうる。例えば、経口投与量は1日当たり約2、約20、約200、約400、約800、約1200、約1600または約2000mgでありうる。1日当たりの全量は、単一用量で投与してもよくまたは1日当たり2、3または4回などの多回投薬で投与してもよいと解釈される。
【0097】
例えば、患者は約2mg/日〜約2000mg/日、例えば、約20〜2000mg/日、例えば、約200〜約2000mg/日、例えば、約400mg/日〜約1200mg/日の範囲で受けることができる。従って、1日1回投与用の好適に調製された医薬品は、約2mg〜約2000mgの範囲、例えば、約20mg〜約2000mg、例えば、約200mg〜約1200mg、例えば、約400mg/日〜約1200mg/日を含有しうる。HDAC阻害剤は、単一用量でまたは1日当たり2、3、または4回の分割用量で投与してもよい。それ故に、1日に2回投与する場合、好適に調製された医薬品は、必要な一日用量の半分を含有しうる。
【0098】
静脈内または皮下に、患者はHDAC阻害剤を1日当たり約3〜1500mg/m2の範囲で、例えば、1日当たり約3、30、60、90、180、300、600、900、1200または1500mg/m2を送達するのに十分な量だけ受けうる。かかる量を、いくつかの好適な方法で、例えば、大体積の低濃度HDAC阻害剤を長期間にわたってまたは1日数回、投与することができる。上記の量を1週(7日間)当たり、1日以上連続した日に、または間欠した日に、またはそれらの組合わせで投与することができる。あるいは、小体積の高濃度HDAC阻害剤を短期間に、例えば、1日1回、1週(7日間)当たり、1日以上連続して、間欠的に、またはそれらの組合わせで投与することができる。例えば、1日当たり300mg/m2の用量を5連続日、1治療当たり全1500mg/m2投与してもよい。他の投与体制では、連続日数は5日であって、治療を2または3連続週の間、続行して全3000mg/m2および4500mg/m2全治療であってもよい。
【0099】
典型的には、約1.0mg/mL〜約10mg/mLの間のHDAC阻害剤の濃度、例えば2.0mg/mL、3.0mg/mL、4.0mg/mL、5.0mg/mL、6.0mg/mL、7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mLおよび10mg/mLを含有する静脈内製剤を調製し、そして上記の用量を達成する量だけ投与することができる。一例では、十分な体積の静脈内製剤を1日のうちに投与して、その日の全用量が約300〜約1500mg/m2となるようにすることができる。
【0100】
ある好ましい実施形態においては、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤はPXD-101であり、そして静脈内に毎24時間に900mg/m2の速度で投与する。
【0101】
HDAC阻害剤の静脈内投与に許容されるpH域の合理的な緩衝化能力をもつグルクロン酸、L-乳酸、酢酸、クエン酸、またはいずれかの製薬上許容される酸/複合体塩基をバッファーとして用いることができる。酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いてpHを所望の範囲に調節しておいた塩化ナトリウム溶液も用いることができる。典型的には、静脈内製剤用のpH範囲は約5〜約12の範囲でありうる。HDAC阻害剤がヒドロキサム酸部分を有する静脈内製剤用の好ましいpH範囲は約9〜約12でありうる。適当な賦形剤を選択する際に、HDAC阻害剤の溶解度および化学的適合性を考慮しなければならない。
【0102】
好ましくは当技術分野で周知の手順により約5〜約12の範囲のpHに調製された皮下製剤は、好適なバッファーおよび等張剤も含む。上記製剤は、一日用量のHDAC阻害剤を、1日1回以上、例えば、それぞれの日に1、2または3回の皮下投与で送達するように製剤してもよい。製剤の適当なバッファーおよびpHの選択は、投与するHDAC阻害剤の溶解度に応じて、当業者により容易に行われる。pHを所望の範囲に酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調節した塩化ナトリウム溶液も、皮下製剤に用いることができる。典型的には、皮下製剤用のpH範囲は約5〜約12の範囲でありうる。HDAC阻害剤がヒドロキサム酸部分を有する皮下製剤用の好ましいpH範囲は約9〜約12でありうる。適当な賦形剤を選択する際に、HDAC阻害剤の溶解度および化学的適合性を考慮しなければならない。
【0103】
HDAC阻害剤はまた、適当な鼻腔内ビヒクルの局所使用を介して鼻腔内剤形でまたは、当業者に周知の経皮皮膚パッチの剤形を用いて経皮経路を介して投与することもできる。経皮送達系の剤形で投与する場合、用量投与は、勿論、投与体制全体にわたって間歇的であるよりむしろ連続的であろう。
【0104】
HDAC阻害剤は活性成分として、意図する投与剤形、すなわち、経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップなどとの関係で適切に選択された好適な製薬希釈剤、賦形剤または担体(本明細書ではまとめて「担体」材料と呼ぶ)との混合物で、かつ通常の製薬作業に従って投与することができる。
【0105】
例えば、錠剤またはカプセルの剤形での経口投与については、HDAC阻害剤を経口、無毒性、製薬上許容される、不活性担体、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなど、またはそれらの組合わせと併用することができる。液剤形での経口投与については、経口薬物成分を経口、無毒性、製薬上許容される、不活性担体、例えば、エタノール、グリセロール、水などと併用することができる。さらに、所望または必要であれば、好適なバインダー、滑沢剤、崩壊剤および着色剤も混合物に組み込むことができる。好適なバインダーとしては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコースまたはβ-ラクトース、コーンシロップ、天然および合成ガム、例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投与剤形に使用しうる滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム 、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定されるものでないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0106】
本発明の方法に使用するのに好適である本明細書に記載のヒストンデアセチラーゼ阻害剤の好適な製薬上許容される塩は、通常の無毒性塩であり、それらとしては、塩基との塩または酸付加塩、例えば無機塩基との塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩;有機塩基との塩、例えば、有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩など)など;無機酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など);有機カルボン酸またはスルホン酸付加塩(例えば、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩など);塩基性または酸性アミノ酸(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)との塩;などを挙げることができる。
【0107】
併用療法
治療手順はいずれかの順序で逐次的に、同時に、またはそれらの組合わせで行うことができる。例えば、第1治療手順、HDAC阻害剤の投与は、第2治療手順、化学治療薬またはEGFR阻害剤の投与前に(例えば、7、14、21日まで前に)、第2治療手順後に(例えば、7、14、21日まで後に)、第2治療手順と同時に、またはそれらの組合わせで行うことができる。一実施形態においては、第1治療手順の少なくとも一部は第2治療手順の一部と同時に行われる。
【0108】
例えば、HDAC阻害剤の全治療期間を決定してもよい。化学治療薬またはEGFR阻害剤を、HDAC阻害剤による治療の開始前にまたはHDAC阻害剤による治療後に投与することができる。さらに、化学治療薬またはEGFR阻害剤を、HDAC阻害剤投与の期間中に投与してもよいが、全体のHDAC阻害剤治療期間にわたって行う必要はない。
【0109】
一実施形態においては、本発明は癌(例えば、多発性骨髄腫)を治療する方法であって、患者に、デキサメタゾン(DEX)の投与前にPXD-101を数日間投与することを含んでなる上記方法を提供する。
【0110】
一実施形態においては、併用療法を21日サイクルで行い、その場合、PXD-101を毎24時間、5日間投与し、次いでデキサメタゾン(DEX)とPXD-101を第2〜5日および第10〜13日に投与する。
【0111】
他の実施形態においては、本発明は癌(例えば、上皮性卵巣癌)を治療する方法であって、患者に、カルボプラチン/パクリタキセル治療体制を投与する前にPXD-101を数日間投与することを含んでなる上記方法を提供する。特定の実施形態においては、PXD-101を3週毎に、毎24時間、5日間投与しうる。それぞれのサイクルにおいて、カルボプラチン/パクリタキセル治療体制は、サイクルに合わせてPXD-101の投与後3日に投与しうる。
【0112】
他の実施形態においては、本発明は、癌(例えば、リンパ腫)を治療する方法であって、患者に、第1用量または量のPXD-101および第2用量または量の5-FUを投与して治療上有効な抗癌効果を与えることを含んでなる上記方法を提供する。
【0113】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤と化学治療薬およびEGFR阻害剤はまた、細胞において細胞増殖を阻害する方法に使用することもでき、その場合、上記方法は細胞をヒストンデアセチラーゼを阻害できる化合物(例えば、PXD-101)またはその塩もしくは溶媒和物の第1の量と接触させるステップおよび、細胞を細胞増殖を防止、阻害(全てまたは部分的に)または停止する化学治療薬またはEGFR阻害剤の第2の量と接触させるステップを含んでなる。細胞はトランスジェニック細胞であってもよい。他の実施形態においては、細胞は患者、例えば哺乳動物、例えばヒトの細胞であってもよい。
【0114】
一実施形態においては、細胞の癌を治療する第1の量は、HDAC阻害剤の接触濃度で約1pM〜約50μM、例えば、約1pM〜約5μM、例えば、約1pM〜約500nM、例えば、約1pM〜約50mM、例えば、1pM〜約500pMである。特定の実施形態においては、該濃度は約5.0μM未満である。他の実施形態においては、該濃度は約500nMである。
【0115】
キット
本発明の一態様はキットまたはパーツのキットであって、
(a)好ましくは製薬上許容される製剤の一成分としての、そして好ましくは好適な容器に入れておよび/または好適な包装を施して提供される、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、例えばPXD-101;および
(b)好ましくは製薬上許容される製剤の一成分としての、そして好ましくは好適な容器に入れておよび/または好適な包装を施して提供される、他の化学治療薬、例えばデキサメタゾンもしくは5-フルオロウラシル、または上皮成長因子レセプター(EGFR)阻害剤、例えばTarceva(登録商標)を含み、かつ癌を治療する方法に使用するのに好適である、上記キットまたはパーツのキットに関する。
【0116】
一実施形態においては、キットまたはパーツのキットはさらに説明書、例えば、文書による使用の説明書、例えば、2種の薬物の投与の説明書を含む。一実施形態においては、説明書は本薬物の併用が好適な治療薬となる適応症(例えば、癌、癌の型)の表を含む。
【0117】
一実施形態においては、キットまたはパーツのキットはさらに、組立ておよび使用(例えば、投与)のための適当な試薬(例えば、バッファー、溶媒)およびデバイス(例えば、チューブ、シリンジ)も含む。
【実施例】
【0118】
次の実施例はさらに十分に本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、これらの実施例は、本明細書に記載した広い本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【0119】
実施例1
標準化学治療薬と併用したHDAC阻害剤の効果をin vitroで試験し、併用化学療法におけるHDAC阻害剤(すなわち、PXD-101)の臨床使用の可能性を確認した。例えば、以下の添付データ表を参照されたい。
【0120】
WST-1増殖アッセイを用いて薬物併用の抗増殖効果を評価した。例えば、4種の骨髄腫細胞株(例えば、JJN3、LP-1、RPMI-8226、U266)、HCT116ヒト大腸癌細胞株、ならびに卵巣細胞株、A2780、および、とりわけ、その白金耐性サブ細胞株、A2780/cp7を併用研究に用いた。市販プログラム、CalcuSyn(登録商標)を使用して併用効果が相乗的、拮抗的、または相加的であるかどうかを決定した。
【0121】
WST-1アッセイ
細胞を培養し、PXD-101単独でまたは化学治療薬と組合わせて曝し、そしてある時間インキュベートし、次いで生存細胞の数を、次に記載したBoehringer Mannheim製の細胞増殖試薬WST-1(Cat. No. 1 644 807)を用いて評価した。
【0122】
細胞を96-ウエルプレート中で3〜10 x 103細胞/ウエルの密度にて100μLの培養培地にまいた。翌日、色々な濃度のPXD-101を単独でまたは化学治療薬と組合わせて加え、その細胞を37℃にて48時間インキュベートした。その後、10μL/ウエルのWST-1試薬を加え、細胞を1時間インキュベートした。インキュベーション時間の後に、吸収を測定した。
【0123】
WST-1は、細胞の酵素により切断されてホルマザン色素になるテトラゾリウム塩である。生存細胞の数が拡大すると、サンプル中のミトコンドリアのデヒドロゲナーゼの全活性が増加する。酵素活性の増加は、形成されるホルマザン色素の量の増加をもたらし、この増加は培養中の代謝的に活性な細胞の数と直接相関がある。産生されるホルマザン色素を、走査マルチウエル分光光度計により色素溶液の450nm波長の吸収を測定することによって数値化する(対照波長690nm)。
【0124】
生存細胞数の減少で表した%活性を各試験化合物に対して、次式:
%活性 = {(Sc - B)/(S0 - B)} x 100
[式中、Scは試験化合物の存在のもとで測定したシグナルであり、S0は試験化合物の非存在のもとで測定したシグナルであり、そしてBは培地だけを含有するブランクウエルで測定したバックグラウンドシグナルである]
を用いて計算した。IC50は50%活性を達成する濃度に対応する。IC50値は、ソフトウエアパッケージPrism(登録商標) 3.0(GraphPad Software Inc., San Diego, California, USA)を用いて計算し、最高値を100および最低値を0に設定した。
【0125】
試験化合物の濃度を増加しながら色々な時点における細胞生存率の測定値を用いて、試験化合物の細胞傷害性および細胞増殖に対する効果の両方を評価した。
【0126】
その結果をさらに、Biosoft製CalcuSyn(登録商標)プログラムによる併用指数(CI)法を用いて分析した。1未満のCI値は相乗作用を示し;1のCI値は相加効果を示し;そして1より大きいCI値は拮抗作用を示す。
【0127】
CIは、CalcuSyn(登録商標)プログラムを用いて、アイソボログラム式:CI=(D)1/(Dx)1+(D)2/(Dx)2により決定した。薬物1の用量(D)1と薬物2の用量(D)2の併用はX%阻害し、そして、薬物1の用量(Dx)1と薬物2の用量(Dx)2はそれぞれ単独でX%阻害する。各化合物について、WST-1アッセイで決定した各用量における%増殖値を用いた。1未満、1と等しい、または1より大きいCI値はそれぞれ相乗作用、相加効果、または拮抗作用を示す。CI値を様々な%阻害濃度において比較した。
【0128】
結果
PXD-101+5-FU
PXD-101と5-FUの併用の抗増殖効果を様々な細胞株(例えば、HT-116、A2780)および様々な条件、例えば、化学治療薬5-FUの投与と同時、24時間前、または24時間後のもとで試験した。これらの実験結果を図2および添付データ表3に総括したが、これらはWST-1抗-増殖性アッセイにおけるPXD-101と5-FUの相乗作用を示し、CalcuSyn(登録商標)により計算したものである。
【0129】
図2および添付データ表5は、それぞれ、WST-1抗-増殖性アッセイにおけるPXD-101と5-FUの相乗作用を示すグラフおよびチャートであり、CalcuSyn(登録商標)により計算したものである。
【0130】
併用が相加的、相乗的、または拮抗的であるかどうかを決定するために、アイソボログラムをプロットし、市販ソフトウエアプログラムCalcuSyn(登録商標)を用いて併用指数を計算した。アイソボログラムにおいて、Xインターセプトは所与の%の増殖阻害をもたらす1つの薬物の濃度を示しかつYインターセプトは他の薬物が細胞増殖を阻害する濃度を示す。軸間に存在するデータ点は細胞増殖を阻害する薬物併用の濃度を示す。インターセプトを接続する直線からさらに上側または下側にデビエートするこのデータ点は、それぞれ拮抗的または相乗的効果である。インターセプトを接続する線上にあるまたは近接する併用データ点は相加的効果を示す。
【0131】
図1はHCT116細胞株におけるPXD-101と5-FUの併用に対するアイソボログラムであって、この場合、5-FUだけをPXD-101後24時間に単独に加えた。この併用は予想外の相乗効果を生じることを実証する。
【0132】
リンパ腫細胞株において、5-FUをPXD-101の投与後24時間に加えたときに相乗効果が観察された。
【0133】
添付データ表8はPXD-101と5-FUの間の相乗作用がin vivoでも存在することを示す。マウスP388白血病モデルにおいて、薬物の併用により治療したマウスの生存率はそれぞれの薬物単独で治療したマウスの生存率より高かった。注目すべきは、マウスを「PXD-101」と「5-FUとオキサリプラチンの組合わせ」の併用により治療するときも相乗作用が存在する(添付データ表9を参照)。
【0134】
PXD-101+フルダラビン
マウスP388モデルにおいてPXD-101とフルダラビンの相乗効果が存在する:薬物の併用により治療したマウスの生存率は、それぞれの薬物単独で治療したマウスの生存率より高い(添付データ表10を参照)。
【0135】
PXD-101と他の化学治療薬
L-フェニルアラニンマスタード(PAM、メルファラン)は、いくつかの骨髄腫細胞株においてPXD-101と相乗作用を示す(添付データ表1を参照)。さらに、相乗作用は、いくつかの腫瘍細胞株において、PXD-101と他の化学治療薬、特に、シスプラチン、5-FU、トポテカン、ゲムシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、タモキシフェン、デキサメタゾン、および 5-アザシチジンとの間にみられる(添付データ表2を参照)。最後に、培養リンパ腫細胞の細胞増殖実験において、PXD-101とクロランブシルの相乗作用およびPXD-101とフルダラビンの相乗作用が見られる(添付データ表4を参照)。
【0136】
PXD-101+デキサメタゾン
化学治療薬デキサメタゾンをJJN3、LP-1、RPMI-8226、U266腫瘍細胞に加えると同時に(例えば、48時間、共インキュベーション)、加えた後24時間に、または加える前24時間に、PXD-101を加えることの抗増殖効果も上記の方法により試験した。
【0137】
PXD-101とデキサメタゾンを併用して同時に(すなわち、48時間、共インキュベーションにて);24時間PXD-101、次いで48時間PXD-101+DEXにて;または24時間DEX、次いで48時間PXD-101+DEXにて細胞を処理したとき、LP-1、RPMI-8226、およびU266腫瘍細胞株に対して、ある濃度領域にわたって相乗効果を得た(添付データ表1を参照)。U266細胞株においては、PXD-101を24時間、次いで48時間PXD-101+DEXを投与したとき、そしてLP1細胞株において、DEXを24時間投与し、次いで48-時間、PXD-101とDEXの共インキュベーションを行ったとき、ある濃度範囲および条件にわたって、強い相乗作用(CI<0.3)を観察した(添付データ表1を参照)。
【0138】
PXD-101+ドキソルビシン
骨髄腫細胞株(例えば、JJN3、LP-1、RPMI-8226、U266)をPXD-101およびドキソルビシンを用いて処理した。上記のように、骨髄腫細胞株に対するこれらの化合物の併用効果を、アイソボログラムをプロットして併用指数を計算することにより確認した。
【0139】
この併用について、PXD-101およびドキソルビシンを48時間、共インキュベートすると、ある範囲の濃度にわたって、相加ないし相乗効果が観察された。
(添付データ表1および添付データ表2を参照)。
【0140】
PXD-101+ビンクリスチン
骨髄腫細胞株(例えば、JJN3、LP-1、RPMI-8226、U266)を、PXD-101およびビンクリスチンを用いて処理した。上記のように、骨髄腫細胞株に対するこれらの化合物の併用の効果を、アイソボログラムをプロットして併用指数を計算することにより決定した。この併用について、PXD-101およびビンクリスチンを共インキュベートすると、ある範囲の濃度にわたって、相加ないし相乗効果が観察された(添付データ表1を参照)。
【0141】
PXD-101+Alimta(登録商標)
葉酸代謝拮抗薬ペメトレキセド(Alimta(登録商標))は肺癌用に市販されている。培養細胞を用いる増殖実験において、PXD-101をAlimta(登録商標)と併用すると、明らかな相乗効果がある(添付データ表12および図6を参照)。
【0142】
考察
本実施例は、PXD-101を標準化学治療薬と併用することの効果を報じている。
【0143】
U266細胞をDEXの投与前にPXD-101を用いて24時間インキュベートすると、そしてLP1細胞をPXD-101の投与前にDEXを用いて24時間インキュベートすると、ある濃度範囲と条件にわたってPXD-101とDEXの間に強い相乗作用が存在する(添付データ表1および図1を参照)。
【0144】
PXD-101のドキソルビシンとの併用は、化合物を共インキュベートしたとき、ある濃度範囲および条件にわたって、骨髄腫細胞株に対して相加ないし相乗効果を生じた。(添付データ表1を参照)。
【0145】
同様に、PXD-101のシスプラチンとの併用は、化合物を共インキュベートしたとき、ある濃度範囲および条件にわたって、卵巣細胞株に対して相加的ないし相乗効果を生じた。(添付データ表2を参照)。
【0146】
さらに、PXD-101の5-FUとの併用は、様々な細胞株において強い相乗効果を生じた(例えば、卵巣細胞株、A2780およびOVCAR3、肺細胞株、NYH、乳癌細胞株、MCF-7、および大腸癌細胞株、HT116およびHT116p53)。ほとんどの環境において、最強の相乗作用は、5FUをPXD-101の投与後24時間に加えたときに観察された(添付データ表2を参照)。さらに、PXD-101と5-FUの併用は、リンパ腫細胞株において、PXD-101の投与後24時間に5-FUを投与したときに、相乗効果を生じた。
【0147】
従って、上記の併用研究は、PXD-101の臨床試験における使用に対する効果的な治療上の併用を同定するものである。
【0148】
実施例2
クローン原性アッセイ
クローン原性アッセイを、本質的に(Jensenら、1993)に記載の通り実施して、PXD-101に関わる併用、特にPXD-101と5-FUに関わる併用の抗増殖効果を確認した。
【0149】
このアッセイにおいて、HCT116またはp388細胞をPXD-101と5-FUの併用に、示した時間だけ曝した。次いで細胞を6cmペトリ皿中の0.3%寒天中に、フィーダー層としてヒツジ赤血液を用いて、三重でプレートにまき、37℃にてインキュベートした。プレートを14〜21日後に数えた。結果の総括を添付データ表6に掲げた。添付データ表7および図3はこの総括の基礎となるデータであり、CalcuSyn(登録商標)により計算したクローン原性アッセイにおけるPXD-101と5-FUの相乗作用を示す。
【0150】
添付データ表6は、両方の細胞株において、PXD-101と5-FUを24時間、共インキュベートしたとき、およびPXD-101を5-FUの投与後24時間に投与したとき、PXD-101と5-FUの併用は相乗的ないし強く相乗的であることを実証する。
【0151】
実施例3
In vivo研究
HCT116大腸癌皮下異種移植モデル(nu/nuマウス)でPXD-101の腫瘍増殖阻害効果を研究するために、2通りのPXD-101用量(60および100mg/kg)、q1d x 5/週、2週間を計画した。5-FUと併用したPXD-101の化学感受効果も研究した。5-FU用量は15mg/kgに設定した。
【0152】
PXD101はヌードマウスにおいてHCT-116大腸癌異種移植モデルの有意な腫瘍増殖阻害を引き起こした。5-FUは選ばれた投与体制ではHCT116モデルに無効であり、最適投与量未満であることを示した。
【0153】
図4はPXD101の化学感受効果を示す。HCT116大腸癌異種移植。毎日、PXD101(朝)および5-FU(午後)のi.p.投与。平均/SEM、n=10(9)。
【0154】
PXD101の5-FU処理に対する化学感受効果を示した。結果は、第1処理サイクル後のPXD101および5-FUの相乗効果を示し、ここで、単一5-FU療法は15mg/kgでは無効である。図4はHCT116大腸癌異種移植におけるPXD-101の化学感受効果を総括するグラフである。
【0155】
P388マウスモデル
P388マウス白血病細胞をB6D1F1雌性マウスに腹腔内(IP)注射した。PXD-101および/または化学治療薬を第3日に、次いで毎日、所要の連続日数の間、IP投与した。Kaplan-Meierの生存率分布グラフをそれぞれの併用に対して示した。
【0156】
実施例4
EGFR阻害剤とHDAC阻害剤に関わる増殖阻害アッセイ
本研究の目的は、PXD-101単独療法またはTarceva(登録商標)との併用療法がA431細胞(ヒト類表皮癌)またはCalu-3細胞(ヒト非小細胞肺癌)の増殖に効果があるかどうかを確認することであった。
【0157】
材料と方法
細胞を96-ウエルプレート中に3,000細胞/ウエルをまき、PXD-101またはTarceva(登録商標)(EGFR-キナーゼ阻害剤)を単独または組合わせて用いて、示した濃度で72時間処理し、そして増殖/生存率を上記CellTiter-Gloアッセイを介して評価した。
【0158】
結果:
PXD-101+Tarceva(登録商標)の併用は、単独で使用した薬物より大きい増殖阻害を引き起こす。例えば、図5および添付データ表11を参照されたい。この効果は相乗的である。
【0159】
結論:
Tarceva(登録商標)と併用したPXD-101は、非小細胞性肺癌およびおそらく他の型の癌の治療に有益でありうる。
【0160】
実施例5
ウェスタンブロット
本研究の目的は、PXD-101処理がEGFRタンパク質レベルに影響を与えるかどうかを確認することであった。
【0161】
材料と方法
A431細胞(ヒト類表皮癌)を6-ウエルプレートに約80%集密度でまき、PXD-101を用いて、示した濃度で24時間処理し、次いで全細胞溶菌液を収穫し、そして抗-EGFR抗体を用いてウェスタンブロットにより分析した。ブロットを抗アクチン抗体を用いて再プローブしてレーン負荷を調節した。
【0162】
結果:
PXD-101処理は明らかにA431細胞中のEGFRタンパク質のレベルを低下させる。
【0163】
結論:
A431細胞は野生型EGFRを過剰発現し、EGFR経路を阻害する試薬による増殖阻害に対して感受性があることは公知である。PXD-101により誘発されるEGFRタンパク質の低下は、単独で使用したPXD-101がこれらの細胞に対して増殖阻害性である1つの機構でありうる。さらに、PXD-101をTarceva(登録商標)と併用したときに、PXD-101が介在するEGFRタンパク質の低下は、観察された相加/相乗増殖の阻害機構の理論的根拠を提供しうる。
【0164】
添付データ:
添付データ表1
骨髄腫におけるPXD101のin vitro併用研究の総括。括弧内の数字は、各実験で用いたスケジュールを示す(以下参照)。表の結果は「標準」併用プロトコルを用いて得た結果である。
【表1】

【0165】
JJN3、RPMI 8226およびU266細胞はデキサメタゾン耐性である。
【0166】
添付データ表2
PXD101とのin vitro併用研究の総括。括弧内の数字は、各実験で用いたスケジュールを示す(以下参照)。
【表2】




【0167】
添付データ表3
【表3】

【0168】
添付データ表4
リンパ腫におけるPXD101とのin vitro併用研究の総括。括弧内の数字は、各実験で用いたスケジュールを示す(以下参照)。表の結果は「標準」併用プロトコルを用いて得た結果である。
【表4】

【0169】
添付データ表5
【表5】

【0170】
添付データ表6
PXD101/5-FUによるin vitroクローン原性アッセイ併用研究の総括。
【表6】

【0171】
添付データ表7
【表7】

【0172】
添付データ表8
P388マウスモデルにおける、5-FUとPXD101のin vivo相乗作用。
【表8】

【0173】
添付データ表9
P388マウスモデルにおける、PXD101とオキサリプラチンおよび5-FUとの併用のIn vivo相乗作用。
【表9】

【0174】
添付データ表10
P388マウスモデルにおける、PXD101のフルダラビンとのIn vivo相乗作用。
【表10】

【0175】
添付データ表11
培養細胞を用いる増殖実験からのデータ、PXD101のTarceva(登録商標)との相乗作用を実証する。
【表11】

【0176】
添付データ表12
PXD101のAlimta(登録商標)との相乗作用を実証する、培養細胞を用いる増殖実験からのデータ。
【表12】

【0177】
添付データ表13
次表において、PXD101と5-FUにより単独でまたは併用して治療したマウスのメジアン生存時間を、それぞれのグループ内の最小および最大観察生存時間と一緒に掲げた。
【0178】
%増加生存期間(ILS%)を、メジアン生存(治療グループ)−メジアン生存(ビヒクル対照)/メジアン生存(ビヒクル対照)に100を乗じて計算した:
ILS%=(メジアン生存(治療グループ)-メジアン生存(ビヒクル対照))/メジアン生存(ビヒクル対照)x100。
【0179】
PXD101と5-FUを併用した治療の効果を、Log Rank統計解析を用いて5-FU単独治療と比較し、そしてp-値<0.05は統計的に有意であると考えた。
【表13】

【0180】
P388i.p.マウス白血病腫瘍。PXD101(mg/kg/治療)と5-FU(mg/kg/治療)i.p.による腹腔内治療、腫瘍移植後の第3日に出発して5日間、毎日。ILS%は生存期間を増加した。
*Log Rank統計学:5-FU(30mg/kg)単独と比較した。
【0181】
P388IP移植マウスをPXD101と5-FU(MTD)を併用して治療したとき、PXD101または5-FUを単独治療として与えたときと比較して、生存の有意な延長が観察された。5-FU治療に加えたときに、PXD101の用量応答効果が示された。
【0182】
同等物
当業者は、さらに日常的実験を用いることなく、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多数の同等物を認識しうるか、または確認できるであろう。かかる同等物は以下の請求の範囲に包含されると意図している。
【0183】
従って、本発明の好ましい実施形態が説明されかつ記載されているとしても、本発明は変法および修飾が可能であって、説明した正確な用語に限定されないと解釈されるべきである。本発明者らは本発明を様々な用途および条件に適合させるために行われうるかかる変化と改変が利用されることを所望する。かかる改変と変化には、例えば、本発明による薬剤を哺乳動物に投与するための色々な医薬組成物;投与すべき組成物中の色々な量の薬剤;本発明による薬剤を投与する色々な時間と手法;および投与用量に含有される色々な材料、例えば、色々な薬剤の組合わせ、または本発明による薬剤の(本明細書に特定して開示された薬剤の所望の効用と同じの、類似の、または異なる目的のための)他の生物学的活性化合物と一緒の組合わせが含まれうる。かかる変化および改変にはまた、かかる変化が薬剤の所望の効力を変化しないが、投与する医薬組成物中のまたは体内の薬剤の溶解度、身体による薬剤の吸収、有効期間中のまたは体内における(薬剤の生物学的作用が所望の効果を挙げうるまでの)薬剤の保護、ならびにかかる類似の修飾を変化する方法で薬剤を改変する、本明細書に記載の特定の所望の薬剤の修飾が含まれることも意図している。従って、かかる変化および改変は、同等物の全範囲内に、そしてそれ故に以下の請求の範囲内に包含されることを当然のことながら意図している。
【0184】
本発明ならびに本発明を作りかつ使用する方式および方法はこのように十分、明白、簡潔かつ正確な用語で記載されているので、本発明に関する、または本発明と最も近く関係する当業者は上記本発明を作りかつ使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療用の医薬品の製造におけるヒストンデアセチラーゼ阻害剤の使用であって、上記治療が(i)上記ヒストンデアセチラーゼ阻害剤および(ii) カルボプラチン/パクリタキセルを用いる治療を含んでなり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が次式:
【化1】

の化合物、またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物である、上記使用。
【請求項2】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が次式の化合物である、請求項1に記載の使用。
【化2】

【請求項3】
癌が卵巣癌である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
癌が上皮性卵巣癌である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
癌が膀胱癌である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
癌が白血病、リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ性白血病、急性非リンパ指向性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、または多発性骨髄腫である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
癌が脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、ウイルムス腫瘍、骨腫瘍、または軟組織肉腫である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項8】
癌が頭部および頸部癌、口腔癌、喉頭癌、食道癌、尿生殖器癌、前立腺癌、膀胱癌、腎癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、直腸癌、大腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫もしくはその他の皮膚癌、胃癌、脳癌、肝臓癌または甲状腺癌である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
キットまたはパーツのキットであって、
(a)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;および
(b)カルボプラチン/パクリタキセルを含み、該ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が次式:
【化3】

の化合物、またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物であり、かつ癌を治療する方法に使用するのに好適である、上記キットまたはパーツのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136532(P2012−136532A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31556(P2012−31556)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2007−553700(P2007−553700)の分割
【原出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(504367645)トポターゲット ユーケー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】