説明

HER−3の測定による患者の反応を判定する方法

本発明は、試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を、測定および/または定量化する方法を提供する。本発明はまた、Her−3に特異的な抗体も提供する。第一の態様では、本発明が、試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を測定および/または定量化する方法であって、試料を供給するステップと、該試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を決定するステップを含む方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2009年5月8日に出願された米国仮特許出願第61/176,630号、2009年6月17日に出願された米国仮特許出願第61/187,962号、および2009年1月15日に出願された米国仮特許出願第61/145,029号の利益を主張し、これらの米国仮特許出願の全体は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
バイオマーカーは、一般に、正常な生物学的過程、病理学的過程、または治療的介入の薬理学的反応の指標として、客観的に測定および評価し得る特徴を示す。非特許文献1を参照されたい。バイオマーカーは、性質、測定の容易さ、および目的の生理的状態との関連が多様に異なる。非特許文献2を参照されたい。新たに検証されたバイオマーカーを開発すると、ヘルスケアおよび薬剤開発の費用が大幅に軽減されると共に、多種多様の疾患および状態に対する治療が大幅に改善されると、広く考えられている。したがって、新たな技法を用いて、新たなクラスのバイオマーカーを見出すことに、多大の努力が向けられている。例えば、非特許文献3;ならびに非特許文献4; 非特許文献5; 非特許文献6; 非特許文献7; 非特許文献8を参照されたい。
【0003】
細胞表面の膜構成要素による相互作用は、正常な生理状態および疾患状態において、細胞外シグナルを細胞へと伝達するのに重要な役割を果たしている。特に、多くの種類の細胞表面受容体が、細胞外のイベントまたはシグナルを、例えば、増殖、遺伝子発現の上昇または低下などのような細胞反応へと伝達することと関連して、二量体化、オリゴマー化、またはクラスター化を受ける。例えば、非特許文献9; 非特許文献10; 非特許文献11; および非特許文献12を参照されたい。癌などの疾患におけるこのようなイベントの役割が、集中的な研究の対象となっており、これにより、複数の新たな薬剤および薬剤候補物質が開発されている。例えば、非特許文献13; 非特許文献14; 非特許文献15; ならびに非特許文献16を参照されたい。
【0004】
乳癌におけるHer−2など、個々の細胞表面受容体の発現レベルが、とりわけ、患者の予後診断、または特定の治療が患者に奏効するかしないかを判定するためのバイオマーカーとして用いられている。加えて、上皮増殖因子受容体ファミリーメンバーなど、発癌性のチロシンキナーゼも、薬物開発の標的となっている。しかし、EGFRおよびHer−2を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤が示す臨床的有効性は、有望な前臨床試験から予期される有効性よりも劣り、一部は、バイオマーカーとしての予後診断的価値のために、そして一部は、新たな薬物標的の可能性をもたらす他のファミリーメンバーとの相互作用のために、Her−3など、他のEGFRファミリーメンバーに対する関心を引き起こしている。非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19非特許文献20;ならびに非特許文献21を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Atkinsonら、2001年、Clin. Pharmacol. Ther. 69巻:89〜95頁
【非特許文献2】Frankら、2003年、Nature Reviews Drug Discovery 2巻:566〜580頁
【非特許文献3】Petricoinら、2002年、Nature Reviews Drug Discovery、1巻:683〜695頁
【非特許文献4】Sidransky、2002年、Nature Reviews Cancer 2巻:210〜219頁
【非特許文献5】LudwigおよびWeinstein、2005年、Nature Reviews Cancer 5巻:845〜856頁
【非特許文献6】Leeら、2007年、Adv. Cancer. Res.、96巻:269〜298頁
【非特許文献7】DhaniおよびSiu、2008年、 Cancer Metastasis Rev. 27巻:339〜349頁
【非特許文献8】Cardenら、2009年、Clin. Pharmacol. Ther. 85巻:131〜133頁
【非特許文献9】Georgeら、2002年、Nature Reviews Drug Discovery 1巻:808〜820頁
【非特許文献10】Melladoら、2001年、Ann. Rev. Immunol. 19巻:397〜421頁
【非特許文献11】Schlessinger、2000年、Cell 103巻:211〜225頁
【非特許文献12】Yarden、2001年、Eur. J. Cancer 37巻:S3〜S8頁
【非特許文献13】HerbstおよびShin、2002年、Cancer 94巻:1593〜1611頁
【非特許文献14】YardenおよびSliwkowski、2001年、Nature Reviews Molecular Cell Biology 2巻:127〜137頁
【非特許文献15】McCormick、1999年、Trends in Cell Biology 9巻:53〜56頁(1999年)
【非特許文献16】Blume−JensenおよびHunter、2001年、Nature 411巻:355〜365頁
【非特許文献17】MenendezおよびLupu、2007年、Breast Cancer Research 9巻:111頁
【非特許文献18】Lee−Hoeflichら、2008年、Cancer Res 68巻:5878〜5887頁
【非特許文献19】Fuchsら、2006年、Anticancer Res. 26巻:4397〜4402頁
【非特許文献20】;Serginaら、2007年、Nature 445巻:437〜441頁
【非特許文献21】Toveyら、2006年、J. Pathol. 210巻:358〜362頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Her−3は、場合によって、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、喉頭癌、膵臓癌、食道癌、神経膠腫、胆道癌、胆管癌、胃癌、子宮内膜癌、胆嚢癌、扁平上皮癌、または基底細胞癌において過剰発現することがある。Her−3の過剰発現を検出するには、従来の免疫組織化学(IHC)解析または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)解析が用いられている。残念ながら、IHCおよびFISHは、必ずしも正確でなく、また、異なる検査室員によって異なる解釈がされる傾向があるため、診断ツールとしては一定の限界がある。現在のところ、Her−3レベルを正確に評価する方法は存在しない。Her−3を測定する定量的方法が出現すれば、癌患者の予後、および/または特定の治療が患者に奏効する可能性があるかどうかを正確に判定することが容易にできるようになる。Mosessonら、2004年、Semin. Cancer. Biol. 14巻:262〜270頁を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様では、本発明が、試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を測定および/または定量化する方法であって、試料を供給するステップと、該試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を決定するステップを含む方法を対象とする。特定の実施形態では、試料を、そのHer−3(例えば、全Her−3、および/またはHer−3ホモ二量体、および/またはHer−3ヘテロ二量体)量が「高」量であるものとして層別化するようなHer−3量が、第1の閾値を上回る。一部の実施形態では、Her−3についての第1の閾値が、≧0.158の全Her−3(H3T)であり、この閾値未満を低いHer−3値とする。あるいは、患者コホートおよび/またはモニタリングされる重要事象に応じて、他の範囲も用いることができる。したがって、本明細書に記載される閾値および/または閾値範囲の各々は、対数目盛で約0.5log単位以下、かつ/または線形目盛(linear scale)で約25%以下(すなわち、本明細書で開示される具体的な範囲より≦25%大きく、かつ/または≦25%小さい)、もしくは約20%以下、もしくは約15%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下変化し得る。
【0008】
好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、新鮮な組織試料、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、新鮮な腫瘍試料または凍結腫瘍試料に由来する腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、乳癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌である。
【0009】
本明細書で開示される本発明の各々の方法および/または態様の特定の実施形態では、方法が、試料における他のバイオマーカーの検出を含む。例えば、Her−2および/またはp95など、他のバイオマーカーを測定することができる。または、他のバイオマーカーは、FOXM1、PRAME、Bc12、STK15、CEGP1、Ki−67、GSTM1、CA9、PR、BBC3、NME1、SURV、GATA3、TFRC、YB−1、DPYD、GSTM3、RPS6KB1、Src、Chk1、ID1、EstR1、p27、CCNB1、XIAP、Chk2、CDC25B、IGF1R、AK055699、P13KC2A、TGFB3、BAGI1、CYP3A4、EpCAM、VEGFC、pS2、hENT1、WISP1、HNF3A、NFKBp65、BRCA2、EGFR、TK1、VDR、Contig51037、pENT1、EPHX1、IF1A、CDH1、HIFlα、IGFBP3、CTSB、Her3、もしくはDIABLOのうちの少なくとも1つであり得る。特定の実施形態では、他のバイオマーカーが、VEGF、CD31、KDR、p95、またはHer−2であり得る。
【0010】
本明細書で開示される本発明の各々の方法および/または態様の特定の実施形態では、乳癌におけるHer−2の発現レベルが高い。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.14〜1.25である。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、極めて高い発現、および/または中程度に高い発現を含む。特定の実施形態では、極めて高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.84〜2.21である。本明細書で開示される各々の方法の特定の実施形態では、中程度に高い発現が、1.14〜1.25と、1.84〜2.21との間である(すなわち、≧1.14〜1.25かつ≦1.84〜2.21)。あるいは、患者コホートおよび/またはモニタリングされる重要事象に応じて、他の範囲も用いることができる。したがって、本明細書に記載される閾値および/または閾値範囲の各々は、対数目盛で約0.5log単位以下、かつ/または線形目盛で約25%以下(すなわち、本明細書で開示される具体的な範囲より≦25%大きく、かつ/または≦25%小さい)、もしくは約20%以下、もしくは約15%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下変化し得る。
【0011】
また、本明細書で開示される本発明の各々の方法および/または態様の特定の実施形態では、p95レベルも、高レベルまたは低レベルとして評価することができる。一部の実施形態では、p95についての第1の閾値が、≧90の全p95値(線形目盛において)であり、この閾値未満を低p95値とする。あるいは、患者コホートおよび/またはモニタリングされる重要事象に応じて、他の範囲も用いることができる。したがって、本明細書に記載される閾値および/または閾値範囲の各々は、対数目盛で約0.5log単位以下、かつ/または線形目盛で約25%以下(すなわち、本明細書で開示される具体的な範囲より≦25%大きく、かつ/または≦25%小さい)、もしくは約20%以下、もしくは約15%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下変化し得る。
【0012】
特定の実施形態では、Her−3レベルが高ければ、標的化療法が患者に奏効する可能性が低いかまたはその可能性がない。特定の実施形態では、Her−3レベルが低ければ、標的化療法が該患者に奏効する可能性がある。特定の実施形態では、該療法が、Her作用剤である。特定の実施形態では、該療法が、Her−2作用剤またはHer−3標的化剤のうちの少なくとも1つである。
【0013】
したがって、本明細書で開示される本発明の各々の方法および態様の特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−2および/またはHer−2ホモ二量体の量を測定するステップを含み、該Her−2および/またはHer−2ホモ二量体の量が中程度に高く、Her−3発現が低いならば、Her−2作用剤が患者に奏効する可能性があり、かつ/または該患者は長い時間経過を有する。特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−2および/またはHer−2ホモ二量体の量を測定するステップを含み、該Her−2および/またはHer−2ホモ二量体の量が中程度に高く、Her−3発現が高ければ、Her−2作用剤が患者に奏効する可能性がなく、かつ/または該患者は短い時間経過を有する。
【0014】
加えて、かつ/または代替的に、本明細書で開示される本発明の各々の方法および態様の特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてp95の量を測定するステップを含み、該p95およびHer−3発現の量が低いならば、治療作用剤が患者に奏効する可能性があり、かつ/または該患者は長い時間経過を有する。ある実施形態ではまた、患者のHer−2レベルも高い(または中程度に高い)。特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−2および/またはHer−2ホモ二量体の量を測定するステップを含み、該Her−2および/またはHer−2ホモ二量体の量が高く、および/または中程度に高く、Her−3発現および/またはp95発現が高ければ、Her−2作用剤が患者に奏効する可能性がなく、かつ/または該患者は短い時間経過を有する。
【0015】
好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。
【0016】
好ましい実施形態では、方法が、試料を結合化合物と混合するステップと、Her−3および/または複合体化したHer−3に結合した該結合化合物の存在および/または量を決定するステップを含む。好ましい実施形態では、結合化合物が、Her−3に特異的に結合する。好ましい実施形態では、結合化合物が、抗体を含む。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、方法が、(i)Her−3および/または複合体化したHer−3を含有し得る試料と;(ii)有効近接距離(effective proximity)を有する、Her−3に結合することが可能な近接プローブと;(iii)Her−3に結合することが可能であり、1つ以上のシグナル伝達分子が結合している、少なくとも1つの結合化合物とを混合するステップを含み、有効近接距離内において該近接プローブおよび該結合化合物が結合すると、Her−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量と相関するシグナルが分子タグから生成される。好ましい実施形態では、近接プローブおよび/または結合化合物が、Her−3または少なくとも1つの他の検体に特異的に結合することが可能である。好ましい実施形態では、近接プローブおよび/または結合化合物が、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における特定のエピトープに結合し得る。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、約2logである。より好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、乳癌試料において約1〜1.5logである。好ましい実施形態では、方法が、Her−3発現の定量的連続体を提供する。好ましい実施形態では、測定または量(measurement and quantity)が、十分に特徴づけられた細胞系モデルと、ELISAおよびフローサイトメトリーなどの交差検証法とを用いる正確度試験により決定される通り、少なくとも細胞1個当たりの受容体約1000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約5000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約10,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約25,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、アイソタイプの対照抗体、および従来のIHC法との比較を用いて決定される測定が特異的である。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、近接プローブが、抗体と第1の核酸とを含み、結合化合物が、抗体と第2の核酸とを含み、第1および第2の核酸が互いに対して相補的であり、ハイブリダイズして有効近接距離を決定することが可能であり、ハイブリダイゼーションを介して直接的または間接的にシグナルを発生させる。好ましい実施形態では、近接プローブおよび/または結合化合物が、Her−3に特異的に結合することが可能である。好ましい実施形態では、結合化合物および/または近接プローブが、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における異なるエピトープに結合する。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、約2logである。より好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、乳癌試料において約1〜1.5logである。好ましい実施形態では、方法が、Her−3発現の定量的連続体を提供する。好ましい実施形態では、測定または量が、十分に特徴づけられた細胞系モデルと、ELISAおよびフローサイトメトリーなどの交差検証法とを用いる正確度試験により決定される通り、少なくとも細胞1個当たりの受容体約1000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約5000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約10,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約25,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、アイソタイプの対照抗体、および従来のIHC法との比較を用いて決定される測定が特異的である。
【0018】
好ましい実施形態では、近接プローブは、切断誘導部分を有する切断プローブを含み、少なくとも1つの結合化合物は、切断可能な結合により1つ以上の分子タグが結合しており、該切断可能な結合が該有効近接距離内において切断されることにより、Her−3の存在および/または量と相関するシグナルが生成され得る。好ましい実施形態では、切断プローブおよび/または結合化合物が、Her−3に特異的に結合することが可能である。好ましい実施形態では、結合化合物および/または近接プローブが、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における異なるエピトープに結合する。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、約2logである。より好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、乳癌試料において約1〜1.5logである。好ましい実施形態では、方法が、Her−3発現の定量的連続体を提供する。好ましい実施形態では、測定または量が、十分に特徴づけられた細胞系モデルと、ELISAおよびフローサイトメトリーなどの交差検証法とを用いる正確度試験により決定される通り、少なくとも細胞1個当たりの受容体約1000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約5000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約10,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約25,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、アイソタイプの対照抗体、および従来のIHC法との比較を用いて決定される測定が特異的である。
【0019】
第二の態様では、標的化療法による治療が、癌を有する被験体に奏効する可能性があるかどうかを決定し、疾患の時間経過を予測し、かつ/または該被験体の癌の時間経過において重要事象が生じる確率を予測する方法であって、該被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−3の量を測定するステップを含み、Her−3レベルに依存する方法を、本発明が対象とする。特定の実施形態では、Her−3レベルが高ければ、標的化療法が患者に奏効する可能性が低いかまたはその可能性がない。特定の実施形態では、Her−3レベルが低ければ、標的化療法が該患者に奏効する可能性がより高い。本明細書でより詳細に記載される通り、特定の実施形態では、該療法が、Her作用剤である。さらなる実施形態では、該療法が、Her−2作用剤またはHer−3標的化剤のうちの少なくとも1つである。特定の実施形態では、試料を、そのHer−3(例えば、全Her−3、および/またはHer−3ホモ二量体、および/またはHer−3ヘテロ二量体)量が「高」量であるものとして層別化するようなHer−3量が、第1の閾値を上回る。一部の実施形態では、Her−3についての第1の閾値が、≧0.158の全Her−3(H3T)であり、この閾値未満を低いHer−3値とする。あるいは、患者コホートおよび/またはモニタリングされる重要事象に応じて、他の範囲も用いることができる。したがって、本明細書に記載される閾値および/または閾値範囲の各々は、対数目盛で約0.5log単位以下、かつ/または線形目盛で約25%以下(すなわち、本明細書で開示される具体的な範囲より≦25%大きく、かつ/または≦25%小さい)、もしくは約20%以下、もしくは約15%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下変化し得る。
【0020】
好ましい実施形態では、被験体の癌が、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、喉頭癌、膵臓癌、食道癌、神経膠腫、胆道癌、胆管癌、胃癌、子宮内膜癌、胆嚢癌、扁平上皮癌、または基底細胞癌である。好ましい実施形態では、被験体の癌が、乳癌、黒色腫、滑膜癌(synovial carcinoma)、結腸直腸癌、または卵巣癌である。好ましい実施形態では、被験体の癌が、Her−2陽性乳癌である。特定の実施形態では、乳癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌である。
【0021】
上記で言及した通り、特定の実施形態では、方法が、試料における他のバイオマーカーの検出を含む。例えば、Her−2および/またはp95などの、他のバイオマーカーを測定することができる。または、他のバイオマーカーは、FOXM1、PRAME、Bc12、STK15、CEGP1、Ki−67、GSTM1、CA9、PR、BBC3、NME1、SURV、GATA3、TFRC、YB−1、DPYD、GSTM3、RPS6KB1、Src、Chk1、ID1、EstR1、p27、CCNB1、XIAP、Chk2、CDC25B、IGF1R、AK055699、P13KC2A、TGFB3、BAGI1、CYP3A4、EpCAM、VEGFC、pS2、hENT1、WISP1、HNF3A、NFKBp65、BRCA2、EGFR、TK1、VDR、Contig51037、pENT1、EPHX1、IF1A、CDH1、HIFlα、IGFBP3、CTSB、Her3、もしくはDIABLOのうちの少なくとも1つであり得る。特定の実施形態では、他のバイオマーカーが、VEGF、CD31、KDR、p95、またはHer−2であり得る。
【0022】
特定の実施形態では、乳癌におけるHer−2の発現レベルが高い。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.14〜1.25である。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、極めて高い発現、および/または中程度に高い発現を含む。特定の実施形態では、極めて高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.84〜2.21である。本明細書で開示される各々の方法の特定の実施形態では、中程度に高い発現が、1.14〜1.25と、1.84〜2.21との間である(すなわち、≧1.14〜1.25かつ≦1.84〜2.21)。あるいは、患者コホートおよび/またはモニタリングされる重要事象に応じて、他の範囲も用いることができる。したがって、本明細書に記載される閾値および/または閾値範囲の各々は、対数目盛で約0.5log単位以下、かつ/または線形目盛で約25%以下(すなわち、本明細書で開示される具体的な範囲より≦25%大きく、かつ/または≦25%小さい)、もしくは約20%以下、もしくは約15%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下変化し得る。
【0023】
また、特定の実施形態では、p95のレベルも、高レベルまたは低レベルのいずれかとして評価することができる。一部の実施形態では、p95についての第1の閾値が、>90または≧90の全p95値(線形目盛において)であり、この閾値未満を低p95値とする。あるいは、患者コホートおよび/またはモニタリングされる重要事象に応じて、他の範囲も用いることができる。したがって、本明細書に記載される閾値および/または閾値範囲の各々は、約25%以下(すなわち、本明細書で開示される具体的な範囲より≦25%大きく、かつ/または≦25%小さい)、もしくは約20%以下、もしくは約15%以下、もしくは約10%以下、もしくは約5%以下変化し得る。
【0024】
特定の実施形態では、Her−3レベルが高ければ、標的化療法が患者に奏効する可能性が低いかまたはその可能性がない。特定の実施形態では、Her−3レベルが低ければ、標的化療法が該患者に奏効する可能性がより高い。特定の実施形態では、該療法が、Her作用剤である。特定の実施形態では、該療法が、Her−2作用剤またはHer−3標的化剤のうちの少なくとも1つである。
【0025】
したがって、特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−2および/またはHer−2ホモ二量体の量を測定するステップを含み、該Her−2および/またはHer−2ホモ二量体の量が中程度に高く、Her−3発現が低いならば、Her−2作用剤が患者に奏効する可能性があり、かつ/または該患者は長い時間経過を有する。特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−2および/またはHer−2ホモ二量体の量を測定するステップを含み、該Her−2および/またはHer−2ホモ二量体の量が中程度に高く、Her−3発現が高ければ、Her−2作用剤が患者に奏効する可能性がなく、かつ/または該患者は短い時間経過を有する。
【0026】
加えて、かつ/または代替的に、特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてp95の量を測定するステップを含み、該p95およびHer−3発現の量が低いならば、治療作用剤が患者に奏効する可能性があり、かつ/または該患者は長い時間経過を有する。ある実施形態ではまた、患者のHer−2レベルも高い(または中程度に高い)。特定の実施形態では、方法が、被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−2および/またはHer−2ホモ二量体の量を測定するステップを含み、該Her−2および/またはHer−2ホモ二量体の量が高く、および/または中程度に高く、Her−3発現および/またはp95発現が高ければ、Her−2作用剤が患者に奏効する可能性がなく、かつ/または該患者は短い時間経過を有する。
【0027】
好ましい実施形態では、標的化療法が、少なくとも1つのHerファミリー標的化剤である。好ましい実施形態では、Herファミリー標的化剤が、複数標的化剤または単一標的化剤である。好ましい実施形態では、複数標的化剤が、二重キナーゼ阻害剤または二重特異性抗体である。好ましい実施形態では、Herファミリー標的化剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、またはペルツズマブである。好ましい実施形態では、少なくとも1つのHerファミリー標的化剤が、少なくとも2つの薬剤であり、該少なくとも2つの薬剤が、1つ以上のHer−2標的化モノクローナル抗体、ならびに/またはEGFR標的化モノクローナル抗体、ならびに/またはEGFRおよびHer−2に対する二重キナーゼ阻害剤である。好ましい実施形態では、モノクローナル抗体が、トラスツズマブである。好ましい実施形態では、EGFR標的化モノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである。好ましい実施形態では、二重キナーゼ阻害剤が、ラパチニブ、エルロチニブ、またはゲフィチニブである。好ましい実施形態では、標的化療法が、Her−3作用剤またはHer−3シグナル伝達経路作用剤である。好ましい実施形態では、Her−3標的化剤またはHer−3シグナル伝達経路標的化剤が、Her−3モノクローナル抗体、Her−3二量体化阻害剤、Her−3リン酸化阻害剤、ならびに/または、PI3K、Akt、mTOR、およびERK1/2からなる群から選択されるHer−3シグナル伝達経路メンバーに対する阻害剤である。好ましい実施形態では、奏効する可能性、長い時間経過を有する可能性、および/または重要事象が生じる可能性を、全生存率として、無増悪期間(time to progression)として、無病生存期間として、無増悪生存期間として、かつ/またはRECIST基準を用いる腫瘍縮小効果(objective tumor responnse)として測定する。
【0028】
好ましい実施形態では、癌がHer−2陽性であるかどうかを、IHC、FISH、CISH、定量的mRNA、ハイブリダイゼーションアレイ、またはVERATAG(登録商標)により判定する。好ましい実施形態では、Her−3レベルの決定が、IHC、FISH、CISH、定量的mRNA、ハイブリダイゼーションアレイ、またはVERATAG(登録商標)を用いて実施される。
【0029】
好ましい実施形態では、本方法は更に、本発明の方法による治療が奏功する可能性がないHer−2陽性癌に被験体が罹患していることを判定し、次いで、有効量の異なる治療剤を該被験体に投与する、治療の選択肢について、医療従事者に助言するステップを含む。
【0030】
第三の態様では、本発明が、Her−3に結合する精製抗体を対象とする。好ましい実施形態では、抗体が、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、モノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1(「発明を実施するための形態」を参照されたい)に示される配列番号10および12を有する抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、HER3発現ベクターでトランスフェクトされたHEK293(ヒト胎児腎臓細胞)の数種の安定的にトランスフェクトされたクローンにおける、Her−3 ELISAキット(R&D Systems,Inc.)によって決定されたHer−3発現レベルを示す図である。発現ベクターの構築については実施例1に記載している。高レベルのHER3を発現した1つのクローン、293H3−クローン1を、最適化されたHER3 VERATAG(登録商標)アッセイにおいて使用するための対照として選択した。
【図2A】図2Aは、Her−3に特異的な抗体を産生させるためにマウスを免疫するために使用したペプチド配列の一覧である。配列番号1はLGSALSLPVLNRPRGTGQSLLSPであり、配列番号2はSAYHSQRHSLLTPVTPLSPであり、配列番号3は、VGSDLSASLGSTQSCPLHPVPIであり、配列番号4はCQGPGHQAPHVHYARLKTLRSであり、配列番号5はLEEVELEPELDLDLDLEAEであり、配列番号6はCFDNPDYWHSRLFPKANAであり、配列番号7はCPDYWHSRLFPKANAQRTであり、配列番号8はCFPKANAQRTである。ペプチド配列は、Her−3のC末端領域からの異なるエピトープを表している(各ペプチドの長さおよびタンパク質のN末端に対する位置が示されている)。各ペプチドに対して産生させた抗体を4番目の列に列挙している。各抗体は、ELISA、IHCおよびVERATAG(登録商標)アッセイにおいて検査陽性が確認されている。
【図2B】図2Bは、Her−3ペプチドの1つに対して産生されたHer−3に特異的な抗体であるB9A11、HER−2に特異的な抗体であるAb8(HerceptTest(商標))、および対照抗体であるITC−IgG2aを用いて2つの細胞系をスクリーニングしたIHC試験の結果を示す図である。一方の細胞系、SKOV3(上のパネル)は、高レベルのHER2および低レベルのHER3を発現することが公知である。他方の細胞系、293H3−クローン1(下のパネル)は、HER3を過剰発現するが、低レベルのHER2を発現することが実施例1に記載され、図1に示されている、安定的にトランスフェクトされた細胞系である。IHCの結果は、予想された通り、293H3−クローン1細胞ではB9A11の強いシグナルを示しているが、SKOV3細胞では示していない。
【図3】図3は、4つの異なる細胞系からのFFPEブロックにおけるVERATAG(登録商標)によって決定されたHER3レベルの、3つの他のアッセイ(IHC、ELISAおよびフローサイトメトリー)からのデータとの交差検定を示す図である。これらの試験のために、様々なレベルのHER3を発現している細胞系を選択した:293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDAMB−468およびSKOV3(後の3つはATCCからのものである)。細胞系は、2log超にわたるHER3レポーターレベルを表すように選択した。HER3 VERATAG(登録商標)アッセイおよびIHCで試験するために、実施例3に記載の通りFFPEブロックを調製した。同ロットからの細胞の一部を、HER3レポーター数についてフローサイトメトリーを用いて試験した。さらに、ELISAキット(Human ErbB3−DuoSet ELISA:R&D Systems,Inc.)でHER3を定量化するために、全細胞溶解物を同じロットの細胞から調製した。データは、VERATAG(登録商標)アッセイに対して広範なダイナミックレンジを示し、結果は3つの他の方法論のすべてと一致している。
【図4】図4は、患者の腫瘍試料の例を示す図であり、会認定の(board−certified)病理学者によって腫瘍領域が丸で囲まれている。
【図5】図5は、HER3 VERATAG(登録商標)アッセイの使用機器およびワークフローを示す図である。まずFFPE試料を、一連の溶媒を使用して脱パラフィンし、再水和させる(上のパネル1)。圧力釜(pressure cooker) 内で1×DAKO(Lab Vision)を使用して抗原の回復を実現する(上のパネル2)。次いで、試料を水ですすぎ、疎水性ペンを使用して試料の周りに円を描き、スライドに試薬を保持する。次いで、試料をブロッキングし、VERATAG(登録商標)をコンジュゲートしたAb−6(Lab Vision)およびビオチンをコンジュゲートしたB9A11の混合物で処理する(上のパネル3)。インキュベートし洗浄したあと、ストレプトアビジンをコンジュゲートしたメチレンブルー試薬を加え、インキュベートし、洗浄し、その後フルオレセインを含有するイルミネーションバッファーおよび2種のキャピラリー電気泳動内部マーカー(MFおよびML、それぞれ、最初のマーカーと最後のマーカー)を加える。結合したVERATAG(登録商標)を、VERATAG(登録商標)の切断を光活性化するLEDアレイを使用して遊離させる(上のパネル4)。水酸化ホウ素ナトリウムを使用してVERATAG(登録商標)中間体を定量化可能な形態に還元し、キャピラリー電気泳動を用いてVERATAG(登録商標)レポーターを分離し、検出する(ABI3130 CE機器、上のパネル5)。
【図6】図6は、VERATAG(登録商標)アッセイのダイナミックレンジを最大にするための最適な抗体濃度を同定するために設計した実験からの結果を示す図である。アッセイのダイナミックレンジ全体にわたる細胞系を選択した:293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468、MDA−MB−231およびSKOV3。抗体B9A11−ビオチンおよびAb−6 Pro−11の濃度を以下の通り変化させた(表の列1):それぞれ、行4、行5および行6における、1mg/mLのB9A11−ビオチンと1mg/mLのAb−6 Pro−11、1mg/mLのB9A11−ビオチンと2mg/mLのAb−6 Pro−11、および2mg/mLのB9A11−ビオチンと1mg/mLのAb−6 Pro−11。各細胞系についての結果を棒グラフで示している。対比較について予想された倍率変化は、同じ細胞系のFFPEブロック調製物からのHER3フローサイトメトリーおよびELISAの結果に基づいた。表の行2に示した予想される倍率変化と比較したHER3の正確な検出に基づいて、最良の動作のために最適な濃度である2mg/mLのB9A11−ビオチンと1mg/mLのAb−6 Pro−11を選択した(丸で囲んだ)。ここで示されたダイナミックレンジはおよそ2logである。
【図7】図7は、4つのよく特徴付けられた細胞系(293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468およびSKOV3)からの成功した複製物3つを使用したHER3 VERATAG(登録商標)アッセイの正確度を示すグラフである。VERATAG(登録商標)の測定値を、自家で生成したフローサイトメトリーおよびELISAのデータと比較した。結果の100%が、293H3−クローン1>MDA−MB−453>MDA−MB468>SKOV3という点においてフローサイトメトリーおよびELISAからの自家のデータと一致した。4つの細胞系試料のいずれについてもシグナルレベル間にオーバーラップは観察されなかった。
【図8】図8は、HER3 VERATAG(登録商標)アッセイの感度を実証するグラフである。低いHER3発現の対照細胞系であるMDA−MB−468の8つの複製物を含有する1バッチを、低/陰性HER3発現の対照細胞系であるSKOV3の8つの複製物と比較して感度を決定した。MDA−MB−468とSKOV3との間で対比較したすべて(64/64)について、MDA−MB−468がSKOV3よりも高レベルのHER3を有するという結果になった。
【図9】図9は、HER3 VERATAG(登録商標)アッセイのアッセイ間の再現性を示すグラフである。4つのよく特徴付けられた細胞系である293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468およびSKOV3に対して、種々のCEイルミネーター、数人のオペレーターを使用し、4週間にわたって別の日に、8つの別々のHER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイを行った。バッチ正規化の手順後、データを8バッチにわたって比較して再現性を確認した。ダイナミックレンジにわたる変動係数は、8〜15%であった。値を、正規化した相対ピーク面積/腫瘍面積の対数であるLog10 normRPAで表し、次いで期待値を使用してバッチを正規化した。
【図10】図10は、HER3 VERATAG(登録商標)アッセイの精度を示すグラフである。HER3 VERATAG(登録商標)アッセイのアッセイ内再現性を、3つの対照細胞系、293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB468のそれぞれの15個の複製物の動作を比較することによって実証した。各バッチの15個の複製物について対比較を行ってアッセイの精度を決定した。293H3−クローン1のデータの95%が1.2倍以内であり、MDA−MB−468のデータの95%が1.37倍以内であった。各細胞系の15個の複製物についてのVERATAG(登録商標)データ(正規化RPAで示されている)を、各パネルの右側の15本の棒で示している。中レベル〜高レベルのHER3を発現している3つの細胞系、および低/陰性HER3発現細胞系であるSKOV3についての対照データを各パネルの左側に示している。
【図11】図11は、種々の試料サイズを使用した、HER3 VERATAG(登録商標)アッセイの直線性を示すグラフである。3つのよく特徴付けられた細胞系、293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468のそれぞれからのサイズを減少させた試料(1×、1/2×、1/4×、1/16×)をVERATAG(登録商標)アッセイで試験し、データを対様式で比較してアッセイの直線性を評価した。MDA−MB−453細胞系は、元の試料サイズのおよそ1/16に至るまで直線性を示し、MDA−MB−468は、元の試料サイズのおよそ1/2に至るまで直線性を示した。
【図12】図12は、アイソタイプ対照によって決定されたHER3 VERATAG(登録商標)アッセイの特異性を示すグラフである。アイソタイプ対照抗体を、VERATAG(登録商標)アッセイフォーマットで試験してアッセイの非特異的なバックグラウンドを確認した。HER3 Ab−6−Pro11抗体に対して、アイソタイプ対照はIgG1−Pro11であった。HER3 B9A11−ビオチン抗体に対して、アイソタイプ対照はIgG1−ビオチンであった。これらのアイソタイプ対照を使用して導かれたシグナルは抗原特異的ではなく、したがって非特異的なバックグラウンドを表している。各パネルにおいて、HER3 Ab6−Pro11抗体およびB9A11−ビオチン抗体を使用した通常のアッセイフォーマットについて、「対照」と表示された棒でVERATAG(登録商標)の結果を示している。左のパネルにおいて、HER3 Ab6−Pro11抗体およびIgG1−ビオチン抗体について、「IgG−bio」と表示された棒でVERATAG(登録商標)のデータを示している。右のパネルにおいて、HER3 B9A11−ビオチン抗体およびIgG1−Pro11抗体について、「IgG−Pro11」と表示された棒でVERATAG(登録商標)のデータを示している。標準の細胞系対照(293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB468、SKOV3およびT47D)ならびにいくつかの腫瘍試料(41776B1、32712A2、30345C2、106305A2、および106341A2)を含めたFFPE試料のアレイに対して各抗体対を試験した。単位は正規化RPA*IB/TAである。
【図13−1】図13は、International Serum Her−2/neu Study Group trialからの腫瘍試料に対するVERATAG(登録商標)のデータを示すグラフである。この患者コホート(n=105)は、1999年〜2006年にトラスツズマブで治療されている間、前向きに観察された。全患者についてIHCまたはFISHのいずれかによってHer−2陽性であることが決定され、また全患者はこの試験前にトラスツズマブに曝露されていなかった。8つの別々のバッチにおいてHER3 VERATAG(登録商標)アッセイを使用して、HER3レベルについて試料を評価した。結果を本図の8つのパネルに示す。各パネルは、5つの対照細胞系:293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468、SKOV3およびT47Dについての結果も含む(各パネルの左側に示されている)。結果はlog10正規化RPA単位で示されている。
【図13−2】図13は、International Serum Her−2/neu Study Group trialからの腫瘍試料に対するVERATAG(登録商標)のデータを示すグラフである。この患者コホート(n=105)は、1999年〜2006年にトラスツズマブで治療されている間、前向きに観察された。全患者についてIHCまたはFISHのいずれかによってHer−2陽性であることが決定され、また全患者はこの試験前にトラスツズマブに曝露されていなかった。8つの別々のバッチにおいてHER3 VERATAG(登録商標)アッセイを使用して、HER3レベルについて試料を評価した。結果を本図の8つのパネルに示す。各パネルは、5つの対照細胞系:293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468、SKOV3およびT47Dについての結果も含む(各パネルの左側に示されている)。結果はlog10正規化RPA単位で示されている。
【図14】図14は、トラスツズマブ(すなわちハーセプチン)への反応に対する最適なカットオフを決定するために使用した位置走査分析からのデータを示すグラフである。左側のパネルにおいて、統計的に有意なカットオフ(矢印参照)を上回る患者は、そのカットオフを下回る患者と比較して好ましくない無増悪期間(TTP)を有した(ハザード比=2.3;p=0.0004)。右側のパネルにおいて、有意なカットオフを決定することはできなかったが、TTPに対して見出されたカットオフを使用して、そのカットオフ(矢印で示されている)を上回る患者において全生存期間(OS)が悪化するトレンドが観察された(ハザード比=1.7;p=0.059)。
【図15】図15は、トラスツズマブ治療を受けた患者82人のコホートを、最初に全HER2レベル(H2T)によって層別化し、次に全HER3レベル(H3T)によってさらに層別化した、カプラン・マイヤープロットを示すグラフである。左上のパネルにおいて、カプラン・マイヤープロットは、(以前報告されたカットオフに基づいて)HER2正常群とHER−2過剰発現群とに細分された2つの患者群についての無増悪生存期間(月)の患者のパーセンテージを示す。次に、HER2過剰発現群を、図14に示したカットオフを使用して、HER3のレベルに基づいて2つのサブグループにさらに細分した。これら2つのサブグループのカプラン・マイヤープロットを右上に示す。下のパネルは、上のパネルからの結果の3セットを示す:正常HER2群(log(H2T)<1.14)、高いHER2、低いHER3群(log(H2T)>1.14、H3T<0.158)および高いHER2、高いHER3群(log(H2T)>1.14、H3T>0.158)。HER3過剰発現サブグループを検討する単変量コックス比例ハザード分析により、無増悪期間の最も重要な予測因子としてH3T(高対低)が同定された(TTP;HR=2.98、p=0.0004)。
【図16】図16は、滑膜癌、結腸癌および卵巣癌におけるHER3 VERATAG(登録商標)アッセイの結果を示すグラフである。上のパネルは、滑膜癌試料のパネルについての結果を示している。左側の4本の棒は、対照試料(左から右にそれぞれ、293H3−クローン13、MDA−MB−453、MDAMB−468およびSKOV3)である。真ん中のパネルは結腸癌試料のパネルについての結果を示している。同じ対照細胞系を使用した(左側の4本の棒で示されている)。下のパネルは、卵巣腫瘍試料のパネルにおいてHER2発現とHER3発現を比較した結果を示している。結果は正規化RPA単位で示されている。これらの腫瘍試料のダイナミックレンジは、癌に応じて0.5〜1.5にわたる。
【図17】図17は、高いHER2(H2T)群(log10H2T>1.25または線形目盛で>13.8)を用いて、p95が高いか低いか(p95>90またはP95≦90)およびHER3(H3T)が高いか低いかに基づいて患者を異なる群に細分できることにより、TTP中央値によって測定された臨床転帰をさらに層別化できることを示すグラフである。p95サブグループおよびH3Tサブグループの単変量KM分析を組み合わせて、本図においてKMプロットで結果を示している。これらのデータにより、HERmark/VERATAG(登録商標)によって評価されたHER2陽性の乳癌患者(すなわち高H2T、すなわち、log10H2T>1.25または線形目盛で>13.8)を、トラスツズマブによる治療後の転帰が異なる少なくとも4つのサブグループに分類できることが示唆されている。KMにおいて、低H3T(HER3アッセイの世代1において、H3T<0.158)かつ低p95(p95<90)である群は、低H3T(H3T<0.158)かつ高p95(p95>90)である群の9.3ヵ月に比べ;高H3T群(HER3アッセイの世代1においてH3T>0.158)および低p95群の6.4ヵ月に比べ、また、高H3T(H3T>0.158)かつ高p95(p95>90)の3.2ヵ月と比べ、15ヵ月のTTP中央値を有する。群間の差異のトレンドは有意である(p<0.0001)。
【図18】図18は、総HER2(高H2Tまたは低H2T)、p95HER2(高p95または低p95)、および総HER3(H3T)が高いこと(H3Tアッセイの世代1においてH3T>0.158)または低H3T(H3Tアッセイの世代1においてH3T≦0.158)のVERATAG(登録商標)測定値を組み合わせることによって定義された、リプトンコホートからの種々のサブグループの、x軸の時間に関するy軸の無増悪(progression−free)パーセントを比較した(無増悪期間、TTP)カプラン・マイヤー(KM)分析を示すグラフである。カットオフは位置走査分析における最低p値で同定された。高H2T=(log10H2T>1.25または線形目盛で>13.8)である。低H2T=log10H2T≦1.25または線形目盛で≦13.8である。低p95=p95≦90であり、高p95=p95>90であり(線形目盛)、H3Thiは線形目盛で>0.158であり、H3Tloは線形目盛で≦0.158である)。KM分析により、FISH陽性、高H2T、p95lo(低)かつH3Tlo(低)である患者は、同じようにならなかった他の4群と比べて、14.7ヵ月のTTP中央値を有することが実証された。直線をほぼ重ねることができる3群(すなわち、FISH陰性/H2Tlo群−TTP中央値=4.5、FISH陽性/H2Tlo(低)群−TTP中央値=3.7、およびFISH陽性/H2Thi(高)/p95hi(高)/H3Thi(高)−TTP中央値=3.2)はすべて、FISH陽性/高H2T/p95lo/H3Tlo−TTP中央値=15群よりも短いTTP中央値を有した。FISH陽性/H2Thi(高)/かつ高p95または高H3Tで定義される群は、TTP中央値=9.3を有し、それは、最良のTTP中央値を持つ群(FISH陽性/高H2T/p95lo/H3Tlo)と赤/青および黒の3群との間であった。したがって、HERmarkアッセイにより、トラスツズマブに基づく療法において、TTPによって測定された、様々な臨床転帰を伴うHER2陽性患者の複数のサブグループが同定された。HER2過剰発現の規模も、これらのサブグループについての転帰も、FISH/CEP17コピー数からは予測できなかった。高p95および/または高H3Tを伴うHER2 FISH陽性のMBC患者は、トラスツズマブに対するデノボ耐性を持つ患者サブセットを表し得る。本出願人はどんな特定の機械論にも制限されないことを望むが、これらのサブグループにおいて観察されるトラスツズマブに対する反応不良を説明し得る可能な機構として、トラスツズマブの不足および/またはトラスツズマブ結合標的(すなわちp95)の欠乏、およびトラスツズマブによって完全に抑制されないヘテロ二量体の形成を介したシグナル伝達の増加が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で用いられる「実施形態」および「態様」という用語は、互換的に用いられる。
【0033】
「抗体」とは、特定の空間的および極性的構成を有する別の分子に結合し、したがって、これと相補的なものとして定義される、免疫グロブリンを意味する。抗体は、モノクローナル抗体の場合もあり、ポリクローナル抗体の場合もあり、組換え抗体の場合もあり、宿主の免疫および血清の回収など、当技術分野で周知の技法により調製することもでき(ポリクローナル抗体)、ハイブリッドの継代細胞系(continuous hybrid cell line)を調製して、分泌されるタンパク質を回収することにより調製することもでき(モノクローナル抗体)、または、少なくとも、結合に必要とされるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列またはそれらの変異誘発異形をクローニングして発現させることにより調製することもできる。抗体は、完全免疫グロブリンを包含する場合もあり、その断片を包含する場合もあり、これらの免疫グロブリンは、IgA;IgD;IgE;IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3;IgMなど、各種のクラスおよびアイソタイプを包含する。これらの断片には、Fab、FvおよびF(ab')2、Fab'などが含まれ得る。抗体はまた、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、特定の結合部位に対して特異的な結合活性を保持する、当業者に公知の他の任意の抗体誘導体でもあり得る。加えて、適切な場合は、特定の結合部位に対する結合親和性が維持される限りにおいて、免疫グロブリンまたはそれらの断片の凝集体、ポリマー、およびコンジュゲートを用いることもできる。放出可能な分子タグ(下記で説明される)を用いるアッセイなどを含め、イムノアッセイにおいて用いられる抗体および抗体誘導体を作製および選択する際の指針は、容易に入手可能な教科書およびマニュアル、例えば、HarlowおよびLane、1988年、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York; HowardおよびBethell、2001年、「Basic Methods in Antibody Production and Characterization」、CRC Press; Wild編、1994年、「The Immunoassay Handbook」、Stockton Press、New Yorkにおいて見出すことができる。
【0034】
「結合化合物」とは、目的の別の分子に結合することが可能な分子を指すものとする。結合化合物とは、抗体、ペプチド、細胞表面受容体に対するペプチドリガンドもしくはペプチド以外のリガンド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸などのオリゴヌクレオチド類似体、レクチン、または、標的分子もしくは標的複合体に特異的に結合することが可能な他の任意の分子実体であり得る。一実施形態では、標的分子が、タンパク質またはタンパク質複合体である。別の実施形態では、結合化合物が、近接プローブをさらに含む。一実施形態では、結合化合物が、結合部分に結合している1つ以上の分子タグを含む。別の実施形態では、該結合化合物に第2の結合化合物を結合させ、これを、標的タンパク質に結合した結合化合物の存在に相関するものとして、測定または定量化することができる。別の具体例として、第1または第2の結合化合物が、有効近接距離を有する近接プローブと共に作用するエフェクター分子を生成することにより、標的タンパク質の存在と相関するシグナルが生成され得る。さらに、別の実施形態では、結合化合物が分子タグを有し、これらが有効近接距離内で互いに相互作用して複合体を形成することによりシグナルを発生させ、これを、標的タンパク質の存在と相関する様式で検出および測定することができる。より具体的には、標的タンパク質または標的複合体は、Her−3の場合もあり、複合体化したHer−3の場合もある。
【0035】
「結合部分」とは、分子タグを直接的または間接的に結合させ得る任意の分子であって、検体に結合することが可能な分子を意味する。結合部分には、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、ならびに、分子量が最大で約1000ドルトンであり、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、およびリンからなる群から選択される原子を含有する有機分子が含まれるがこれらに限定されない。結合部分は、抗体であることが好ましい。
【0036】
「細胞系」とは、それらの元の組織から分離され、クローンで複製され、かつ/または培養物で維持されている細胞を指す。具体例として、細胞系は、各種の癌に由来し得、複数の異なる細胞系が、同じ種類の癌試料に由来し得る。異なる種類の細胞系の例には、MCF−7、MDA−MB−453、MDA−MB−468、またはT−47Dなどの乳癌細胞系、またはSKOV3もしくはHEK293など、他の組織に由来する細胞系が含まれるがこれらに限定されない。
【0037】
「化学療法剤」とは、状態、特に、癌を治療するのに用いられる化学物質を意味する。
【0038】
本明細書で用いられる「切断可能な結合」とは、切断されると、切断可能な結合で結合部分に連結されている検出可能な分子タグを放出し得る化学結合基を指す。
【0039】
本明細書で用いられる「切断誘導部分」または「切断剤」とは、切断可能な結合を切断することが可能な活性種をもたらす基である。好ましくは、活性種とは、切断誘導作用が、その生成部位の近傍にのみ存在するように、短寿命の活性を示す化学種である。
【0040】
本明細書で用いられる「切断プローブ」とは、本明細書で定義される切断誘導部分と、抗体、ペプチド、細胞表面受容体に対するペプチドリガンドもしくはペプチド以外のリガンド、ストレプトアビジンなどのタンパク質、ビオチンなどの低分子、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸などのオリゴヌクレオチド類似体、レクチン、あるいは、標的タンパク質もしくは標的分子、または安定的な標的分子複合体に結合することが可能な他の任意の分子実体などの結合化合物を含む試薬を指す。
【0041】
「二重キナーゼ阻害剤」とは、例えば、ラパチニブなど、EGFRキナーゼ活性およびHer−2キナーゼ活性の両方に対する阻害剤であるがこれに限定されない、2つ以上のキナーゼを阻害する分子を指す。
【0042】
本明細書で用いられる「有効近接距離」とは、標的分子の存在を示す検出可能なシグナルを発生させるのに十分な、2つの結合化合物間の距離のことを指す。例えば、有効近接距離内において、Her−3に(または目的の別の検体と)結合した近接プローブおよび結合化合物は、検出可能なシグナルを発生させることにより、Her−3および/またはHer−3複合体の存在を示し、かつ/または定量化する。多くの検出系では、有効近接距離の範囲が200nM未満であることが好ましく、50nM未満であることがより好ましい。
【0043】
「EGFR」、「ErbB1」、「erbB−1」、「HER1」、「her−1」、および「Her−1」は、例えば、OnoおよびKuwano(OnoおよびKuwano(2006年)、Cuin. Cancer Res. 12巻:7242〜7251頁);ならびにGenbank受託番号P00533により記載される通り、上皮増殖因子受容体と、その対立遺伝子変異体とを指す。別段に示さない限り、本明細書で用いられる「EGFR」、「ErbB1」、「erbB−1」、「HER1」、「her−1」、「Her−1」という用語は、ヒトタンパク質を指す。
【0044】
「エピトープ」とは、分子、通常は、抗体分子または他の結合化合物が結合するタンパク質の表面における部位を指す。一般に、タンパク質は、また、抗原決定基とも呼ばれる、数種または多くの異なるエピトープを有し、異なる特異性を有する抗体と反応する。
【0045】
「FFPE」とは、固定された、特に、従来のホルマリンで固定されたパラフィン包埋試料である、一群の細胞またはある量の組織を指す。このような試料は、顕微鏡のスライドまたは同等の表面に載せた固定組織の、例えば、3〜10μmの厚さである、薄い切片の形態で、例えば、限定されないが、受容体複合体についてのアッセイで用いられることが典型的である。このような試料はまた、アッセイによる測定の一部として、またはその準備として、従来の再水和手順、および、場合によって、抗原回復手順を受けることが典型的である。
【0046】
特定の代替的な実施形態では、本明細書で用いられる「〜以上」(すなわち、≧または>=)が、「〜より大きい」(>)を意味する場合もある。また、特定の代替的な実施形態では、本明細書で用いられる「〜以下」(すなわち、≦または<=)が、「〜より小さい」(<)を意味する場合もある。
【0047】
本明細書では、「Her−2」、「ErbB2」、「c−Erb−B2」、「HER2」、「Her2」、および「neu」が互換的に用いられ、例えば、Sembaら、1985年、P.N.A.S. USA 82巻:6497〜650頁;およびYamamotoら、1986年、Nature 319巻:230〜234頁;ならびにGenbank受託番号X03363において説明される通り、天然のHer−2と、その対立遺伝子変異体とを指す。別段に示さない限り、本明細書で用いられる場合の「Her−2」、「ErbB2」、「c−Erb−B2」、「HER2」、および「Her2」という用語は、ヒトタンパク質を指す。本明細書では、Her2をコードする遺伝子を、「erbB2」と称する。
【0048】
本明細書で用いられる「Her−2作用剤」とは、Her−2、またはHer−2発現細胞、またはHer−2陽性癌細胞の生物学的活性を変化させ得る化合物を指す。このような生物学的活性には、二量体化、自己リン酸化、別の受容体のリン酸化、シグナル伝達などが含まれるがこれらに限定されない。生物学的活性には、細胞の生存および細胞の増殖が含まれ得るがこれらに限定されず、Her−2作用剤によるこのような活性の阻害は、直接的または間接的な細胞殺滅(例えば、ADCC)、タンパク質複合体の破壊もしくはタンパク質複合体の形成、タンパク質輸送の調節、または酵素阻害であり得る。生物学的活性にはまた、本出願に記載の患者の反応(patient response)も含まれ得る。例示的なHer−2作用剤には、高分子である4D5、ペルツズマブ、およびトラスツズマブ、ならびにAEE−788およびラパチニブなどの低分子が含まれるがこれらに限定されない。Her−2複合体は、Her−2が構成要素であるヘテロ二量体など、タンパク質の複合体を記載するのに用いられる。Her−2複合体には、Her−2ホモ二量体、またはHer−2を包含するヘテロ二量体(例えば、Her−2/Her−3ヘテロ二量体)が含まれ得る。
【0049】
本明細書では、「Her−3」、「ErbB3」、「c−erb−B3」、「erbB−3」、「HER3」、および「Her3」が互換的に用いられ、例えば、Kraus MHら(1989年)、Proc Natl Acad Sci USA 86巻:9193〜9197頁;およびPlowman GDら(1990年)、Proc Natl Acad Sci USA. 87巻:4905〜4909頁;ならびにGenbank受託番号P21860において記載される通り、天然のHer−3と、その対立遺伝子変異体とを指す。別段に示さない限り、本明細書で用いられる場合の「Her−3」、「ErbB3」、「c−erb−B3」、「erbB−3」、「HER3」、および「Her3」という用語は、ヒトタンパク質を指す。本明細書では、Her3をコードする遺伝子を、「erbB3」と称する。
【0050】
「Her−3複合体」は、Her−3が構成要素であるヘテロ二量体など、タンパク質の複合体について記載するのに用いる。Her−3を含めたヘテロ二量体の例には、Her−1/Her−3およびHer−2/Her−3が含まれるがこれらに限定されない。
【0051】
「Her−3標的化剤」または「Her−3シグナル伝達経路標的化剤」とは、Her−3またはHerファミリーシグナル伝達経路メンバーの生物学的活性を変化させる治療剤を指す。このような生物学的活性には、二量体化、自己リン酸化、別の受容体のリン酸化、シグナル伝達などが含まれるがこれらに限定されない。生物学的活性には、細胞の生存および細胞の増殖が含まれ得るがこれらに限定されず、Her−3作用剤またはHer−3シグナル伝達経路メンバー作用剤によるこのような活性の阻害は、直接的または間接的な細胞殺滅(例えば、ADCC)、タンパク質複合体の破壊もしくはタンパク質複合体の形成、タンパク質輸送の調節、または酵素阻害であり得る。生物学的活性はまた、本出願に記載の患者の反応も含まれ得る。例示的なHer−3作用剤またはHer−3シグナル伝達経路メンバー作用剤には、Her−3、PI3K、Akt、mTOR、ERK1/2、またはPYK2を標的とする高分子(抗体など)、または低分子(低分子のキナーゼ阻害剤など)が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0052】
「高い(high)」とは、量(measure)が正常の量より大きいこと、所定の量などの標準の量より大きいこと、またはあるサブグループの量が別のサブグループの量より比較的大きいことを指す。例えば、高いHer−3とは、Her−3量が、正常のHer−3量より大きいことを指す。正常のHer−3量は、当業者に利用可能な任意の方法により決定することができる。高いHer−3はまた、量が、所定のカットオフ値など、所定の量以上であることも指す場合がある。高いHer−3はまた、高いHer−3サブグループが、別のサブグループよりも相対的に高いHer−3レベルを有する、Her−3の量を指すことがある。例えば、限定されないが、本明細書に従い、中央値などの、これに限定されない、数学的に決定された点の近傍で試料を分割し、このようにして、その量が高い(すなわち、中央値より高い)サブグループと、その量が低い別のサブグループとを創出することにより、2つの異なる患者サブグループを創出することができる。例えば、VERATAG(登録商標)または任意の標準的な免疫組織化学(IHC)法などであるがこれらに限定されない、当業者に公知の任意の方法を用いることにより、Her−3を測定することができる。いくつかの場合、「高い」発現レベルは、極めて高い発現範囲と、「中程度に高い」発現範囲とを含んでいてよく、この場合、中程度に高いレベルとは、正常レベルよりは大きいが、「極めて高いレベル」より少ない発現レベルである。本明細書では、高いHer−2発現(極めて高いHer−2発現および中程度に高いHer−2発現を含む)、および/または高いHer−3発現、および/または高いp95発現の例示の範囲が示される。
【0053】
「IHC、FISH、およびCISH」は、細胞または組織における分子実体の存在を検出するのに用いられる方法(それぞれ、免疫組織化学、蛍光in situハイブリダイゼーション、および発色in situハイブリダイゼーション)である。例えば、これらの方法を用いて、Her−3および/または他のEGFRファミリーメンバーの受容体などの膜受容体を検出することができる。
【0054】
「アイソタイプの対照抗体」とは、結合化合物として用いられる特異的抗体と同じ免疫グロブリン基本構造を有するが、標的とされるエピトープに対する特異性は示さない抗体を指す。アイソタイプの対照抗体を用いると、非特異的結合に起因する任意の結合を観察することが可能となる。
【0055】
本明細書で用いられる「〜する可能性がある」(および「〜する可能性がない」)とは、項目、対象、事柄、または患者(person)が生じる確率が高い(または低い)ことを指す。したがって、一例では、トラスツズマブによる治療が奏効する可能性がある被験体は、参照の被験体または被験体群と比べて、トラスツズマブによる治療が奏効する確率が高い。
【0056】
本明細書で用いられる「長い」とは、期間である量が正常の量より長いこと、所定の量などの標準の量より長いこと、またはあるサブグループの量が別のサブグループの量より相対的に長いことを指す。例えば、患者の寿命との関連で、増悪までの期間が長いとは、代表的な(normal)無増悪期間(time progression)よりも長い無増悪期間を指す。増悪までの期間が長いかどうかは、当業者に利用可能な任意の方法により決定することができる。一実施形態では、「長い」とは、疾患において重要事象が生じるのに必要な時間経過の中央値より大きい時間を指す。
【0057】
「低い」とは、量が正常の量より小さいこと、所定の量などの標準の量より小さいこと、またはあるサブグループの量が別のサブグループの量より比較的小さいことを指す用語である。例えば、低いHer−3とは、特定の患者試料セットにおいて、正常のHer−3量より小さいHer−3の量を指す。正常のHer−3量は、当業者に利用可能な任意の方法により決定することができる。低いHer−3はまた、所定のカットオフなど、所定の量より小さい量も意味する場合がある。低いHer−3はまた、低いHer−3であるサブグループが、別のサブグループより相対的に低い場合の量も指すことがある。例えば、限定されないが、本明細書に従い、中央値などの、これに限定されない、数学的に決定された点の近傍で試料を分割し、このようにして、その量が高い(すなわち、中央値より大きい)別の群と比べて、その量が低い(すなわち、中央値より小さい)群を創出することにより、2つの異なる患者サブグループを創出することができる。例えば、VERATAG(登録商標)法または任意の標準的な免疫組織化学(IHC)法などであるがこれらに限定されない、当業者に公知の任意の方法を用いることにより、Her−3を測定することができる。本明細書では、低いHer−3発現値、低いHer−2発現値、および低いp95発現値の例示的な範囲が提供される。
【0058】
「溶解物」とは、細胞の細胞膜が、物理的方法または化学的方法により破壊されるときに生成される溶液を指す。例えば、「腫瘍溶解物」は、タンパク質マーカー、酵素、核酸、およびタンパク質複合体、ならびに、その後各種のアッセイで測定され得る他の分子が含まれるがこれらに限定されない、腫瘍を含む細胞の代表的構成要素を含有することが典型的である。
【0059】
本明細書で用いられる「分子タグ」とは、分離される分子間における、電気泳動移動度、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、電荷/質量比、極性などが含まれるがこれらに限定されない、1つ以上の、物理的、化学的、または光学的差違に基づき、直接的または間接的に測定することができ、他の分子から識別することができる分子を指す。一実施形態では、複数の分子タグまたは分子タグのセットが、電気泳動移動度および光学的検出特性において異なり、電気泳動により分離することができる。別の実施形態では、複数の分子タグまたは分子タグのセットが、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、極性において異なり、正相もしくは逆相のHPLC、イオン交換HPLC、キャピラリー電気クロマトグラフィー、質量分析、気相クロマトグラフィーなどの技法により分離することができる。
【0060】
分子タグの測定はまた、Her−3または複合体化したHer−3など、検体の存在および/または量に相関するものとして作用する測定可能なシグナルを、さらなる修飾を伴うかまたは伴わずに検出するか、増強するか、または増幅する、第2の分子間相互作用の使用も伴い得る。一実施形態では、2つ以上の分子タグのセットが、有効近接距離内で相互作用することにより、測定可能なシグナルが生成され得る。分子タグとして測定可能なシグナルは、例えば、相補的な配列が有効近接距離内にある場合にハイブリダイズする、2つの相補的な核酸配列を検出することにより発生させることができる。測定可能なシグナルを発生させるか、または当技術分野で公知の検出法を用いて測定され得る他の例には、FRET、BRET、BiFC、LCI、およびQPCRが含まれるがこれらに限定されない。
【0061】
「全生存期間」または「OS」とは、治療の開始から死亡または打切りまでに測定される期間を指す。打切りは、試験の終了または治療の変更から生じ得る。全生存期間とは、例えば、治療の開始から死亡または打切りまでの期間である特定の期間において生存する、キャプラン−マイヤープロットで表される場合の確率などの確率を指す場合がある。
【0062】
本明細書で用いられる「所定のカットオフ値」とは、2つ以上の属性カテゴリー間の最良の識別を可能とする、特定の属性を示す被験体についての所定の量を指す。例えば、高いHer−3発現および低いHer−3発現などの、全生存期間を決定するための2つのカテゴリー間の識別を可能とする、所定のカットオフを用いることができる。所定のカットオフを用いて、所定のカットオフより低い値、またはこれより高い値を有す被験体を分けて、予測モデルを最適化することができる。
【0063】
本明細書で用いられる「近接プローブ」とは、有効近接距離内において結合化合物における分子タグに作用して、検出可能なシグナルを発生させることが可能な部分、および抗体、ペプチド、細胞表面受容体に対するペプチドリガンドもしくはペプチド以外のリガンド、ストレプトアビジンなどのタンパク質、ビオチンなどの低分子、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸などのオリゴヌクレオチド類似体、レクチン、あるいは、標的タンパク質もしくは標的分子、または安定的な標的複合体に特異的に結合することが可能な他の任意の分子実体を含む試薬を指す。例えば、分子タグを伴うHer−3標的化抗体からなる近接プローブは、1つ以上の分子タグが結合している、1つ以上のHer−3結合化合物に対して有効距離内にあるHer−3に結合することが可能であり得る。一実施形態では、近接プローブが、結合分子と、第1の核酸とを含み、結合分子が、抗体と、第2の核酸とを含み、第1の核酸と第2の核酸とが互いに相補的であり、それらの核酸が互いの有効近接距離内にある場合にそれらがハイブリダイズするように、各々が所定の長さである。ハイブリダイゼーションは、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例えば、ハイブリダイゼーションの指標として、フルオロフォアを、核酸に結合させることができる。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションが、例えば、ローリングサークル増幅法(例えば、Lizardiら(1998年)、Nat Genet. 19巻:225〜232頁を参照されたい)などであるがこれらに限定されない核酸増幅法により測定される。
【0064】
「RECIST」とは、「固形腫瘍における効果の評価判定基準」を意味するものとし、これは、治療期間において、癌患者が、改善する場合(「奏効」)、同じ状態にとどまる場合(「安定」)、または増悪する場合(「増悪」)を定義する一連の公表規則である。RECIST基準により定義される効果(response)は、例えば、Journal of the National Cancer Institute、92巻、3号、2000年2月2日において公表されており、RECIST基準は、他の同様に公表された定義および規則のセットを包含し得る。
【0065】
本明細書で用いられる通り、治療が「奏効する」、およびこの動詞の他の形態は、薬剤による治療に対する被験体の反応を指す。例として、被験体における腫瘍の増殖が約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上遅延すれば、治療が被験体に奏効する。別の例では、被験体における腫瘍が、任意の適切な量、例えば、質量または容量により決定したときに約5%、10%、20%、30%、40%、50%以上縮小すれば、治療が被験体に奏効する。別の例では、被験体の寿命が、治療を施さない場合に予測される寿命より約5%、10%、20%、30%、40%、50%以上長くなれば、Her−2作用剤による治療が被験体に奏効する。別の例では、被験体の全生存期間または無増悪期間が長くなれば、薬剤による治療が被験体に奏効する。本明細書に記載の通り、RECIST基準を含め、数種の方法を用いて、治療が患者に奏効するかどうかを判定することができる。
【0066】
「試料」または「組織試料」または「患者試料」または「患者の細胞試料もしくは組織試料」または「被検物」は各々が、被験体または患者の組織から得られる類似細胞の回収物を指す。組織試料の供給源は、新鮮組織、凍結および/もしくは保存した器官もしくは組織、または生検もしくは吸引物などに由来する固体組織;血液または任意の血液構成成分、脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液などの体液、または被験体の妊娠または発育の任意の時点に由来する細胞の場合もある。組織試料は、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養物、抗生物質など、天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。細胞は、FFPE様式などの従来の様式で固定することができる。
【0067】
本明細書で用いられる「短い」とは、期間である量が正常の量より短いこと、所定の量などの標準の量より短いこと、またはあるサブグループの量が別のサブグループの量より相対的に短いことを指す。例えば、患者の寿命との関連で、増悪までの期間が短いとは、正常の増悪までの期間より短いか、または予測される増悪までの期間より短い増悪までの期間を指す。増悪までの期間が短いかどうかは、当業者に利用可能な任意の方法により決定することができる。一実施形態では、「短い」とは、疾患において重要事象が生じるのに必要な時間経過の中央値より短い期間を指す。
【0068】
本明細書で用いられる「シグナル伝達経路」とは、細胞外のシグナル伝達分子が、細胞表面の受容体に結合することにより、細胞内におけるイベントが誘発される過程、および/または細胞内の相互作用を介して、細胞内のシグナル伝達カスケードが誘発され得る過程を指す。例えば、受容体チロシンキナーゼは、細胞表面から、増殖、分化、新脈管形成、およびアポトーシスの阻害など、重要な機能を制御する細胞内過程へと、増殖因子によるシグナルを伝搬させる膜貫通タンパク質である。癌では、これらのシグナル伝達経路が、腫瘍の増殖および転移を促進するのに用いられることが多い。受容体チロシンキナーゼのこのようなファミリーの1つは、上皮増殖因子受容体(EGFR)ファミリーである。EGFRファミリーメンバーである、EGFR、HER2、HER3、およびHER4は、多種多様な腫瘍で過剰発現している。
【0069】
本明細書で用いられる「重要事象」とは、当業者により重要であると判定される、患者の疾患における事象を指すものとする。重要事象の例には、例えば、初回の診断、死亡、再発、患者の疾患が転移性であるという判定、患者の疾患の再発、または患者の疾患が上記で言及した病期のうちの任意の1つから別の病期へと進行することが含まれるがこれらに限定されない。重要事象とは、OS、TTPを評価するのに用いられ、かつ/または当業者により判定される通り、RECISTもしくは他の効果判定基準を用いてOS、TTPを評価するのに用いられる任意の重要な事象であり得る。
【0070】
本明細書で用いられる「被験体」および「患者」という用語は、互換的に用いられる。本明細書で用いられる「被験体(subject)」および「被験体(subjects)」は、動物、好ましくは霊長動物以外(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ、ラクダ、ネコ、イヌ、モルモット、ラット、マウス、またはヒツジ)と、霊長動物(例えば、カニクイザルなどのサル、ゴリラ、チンパンジー、またはヒト)とを含めた哺乳動物を指す。
【0071】
「標的化療法」とは、正常細胞を害するかまたは変化させることなく、疾患に関与する特定の細胞を同定し治療しようと試みる治療的処置を指す。標的化治療剤は、ラパチニブおよびイレッサ/グリベックなどの低分子、トラスツズマブなどのモノクローナル抗体、または疾患過程に関与する遺伝子産物の発現を遮断するのに用いられるsiRNAなどの核酸からなり得るがこれらに限定されない。標的化療法は、癌など、多くの疾患過程を治療するのに有用である。
【0072】
本明細書で用いられる「時間経過」とは、初期事象と後続事象との間の期間の量を指すものとする。例えば、患者の癌の場合、時間経過は、患者の疾患に関し、疾患の進行における重要事象を判断することにより測定することが可能であり、例えば、最初の事象が診断であり、後続事象が転移であり得る。
【0073】
「無増悪期間」または「TTP」とは、治療の開始から癌の増悪または打切りまでに測定される期間を指す。打切りは、試験の終了から生じる場合もあり、治療の変更から生じる場合もある。無増悪期間はまた、例えば、キャプラン−マイヤープロットなどにおける確率としても表すことができ、この場合、無増悪期間は、治療の開始から増悪または打切りまでの間の期間である特定の期間にわたり無増悪である確率を表し得る。
【0074】
「治療」およびこの語の他の形態は、薬剤を投与して、癌の増殖などの疾患を阻害し、癌の重量もしくは容積を縮小させ、被験体の予測生存期間、および/または腫瘍の無増悪期間を延長させることなどを指す。治療はまた、当業者、例えば、治療する医師が適切であると見なす任意のコースを指す場合がある。
【0075】
「VERATAG(登録商標)」という用語は、単一アッセイならびに多重アッセイおよび多重標識アッセイ、試薬、分析手順、およびこれらのアッセイに関連するソフトウェアが含まれるがこれらに限定されない、このようなアッセイを実施および利用するための材料、方法、および技法を指す。VERATAG(登録商標)、vTag、およびETAG(登録商標)という用語は、互換的に用いられるものとする。
【0076】
第一の態様では、本発明が、試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を測定および/または定量化する方法であって、試料を供給するステップと、該試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を決定するステップを含む方法を対象とする。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、新鮮な組織試料、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、新鮮な腫瘍試料または凍結腫瘍試料に由来する腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、乳癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌である。特定の実施形態では、乳癌におけるHer−2の発現レベルが高い。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.14〜1.25である。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、極めて高い発現、および/または中程度に高い発現を含む。特定の実施形態では、極めて高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.84〜2.21である。あるいは、患者コホートに応じて、他の範囲も用いることができる。特定の実施形態では、Her−3レベルが高ければ、標的化療法が患者に奏効する可能性が低いかまたはその可能性がない。特定の実施形態では、Her−3レベルが低ければ、標的化療法が該患者に奏効する可能性がある。特定の実施形態では、本明細書により詳細に記載される通り、該療法が、Her作用剤である。さらなる実施形態では、該療法が、Her−2作用剤またはHer−3標的化剤のうちの少なくとも1つである。
【0077】
好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。
【0078】
好ましい実施形態では、方法が、試料を結合化合物と混合するステップと、Her−3および/または複合体化したHer−3に結合した該結合化合物の存在および/または量を決定するステップを含む。好ましい実施形態では、結合化合物が、Her−3に特異的に結合する。好ましい実施形態では、結合化合物が、抗体を含む。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、表1Bに示す通り、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Bに示される配列番号10および12を有する抗体である。
【0079】
(表1A)
【0080】
【表1A】

(表1B)
【0081】
【表1B】

表1Aおよび1B:Her3、Her3.B9A11.H1、およびHer3.F9B10.3に結合する2つの抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を、表1Aに示す。配列が由来するクローン単離物を示し、相補性決定領域(CDR)に下線を付す。「_LC」または「_HC」により、それぞれ、軽鎖および重鎖を示す。表1Bは、それぞれ、B9A11.H1の軽鎖および重鎖、ならびにF9B10.3の軽鎖および重鎖の3つのCDRを示す。
【0082】
好ましい実施形態では、方法が、(i)Her−3および/または複合体化したHer−3を含有し得る試料と;(ii)有効近接距離を有する、Her−3および/または少なくとも1つの他の検体に結合することが可能な近接プローブと;(iii)Her−3に結合することが可能であり、1つ以上のシグナル伝達分子が結合している、少なくとも1つの結合化合物とを混合するステップを含み、ここで、有効近接距離内において該近接プローブおよび該結合化合物が結合すると、Her−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量と相関するシグナルが分子タグから生成される。好ましい実施形態では、近接プローブおよび/または結合化合物が、Her−3に特異的に結合することが可能である。好ましい実施形態では、近接プローブおよび/または結合化合物が、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における特定のエピトープに結合し得る。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である(表1B)。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、本明細書で論じられる乳癌試料を含む。例えば、特定の実施形態では、乳癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌である。特定の実施形態では、乳癌におけるHer−2の発現レベルが高い。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.14〜1.25である。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、極めて高い発現、および/または中程度に高い発現を含む。特定の実施形態では、極めて高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.84〜2.21である。あるいは、患者コホートに応じて、他の範囲も用いることができる。
【0083】
好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、エクソソームおよび/または他の小胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、約2logである。より好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、乳癌試料において約1〜1.5logである。好ましい実施形態では、方法が、Her−3発現の定量的連続体を提供する。好ましい実施形態では、測定または量が、十分に特徴づけられた細胞系モデルと、ELISAおよびフローサイトメトリーなどの交差検証法とを用いる正確度試験により決定される通り、少なくとも細胞1個当たりの受容体約1000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約5000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約10,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約25,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、アイソタイプの対照抗体、および従来のIHC法との比較を用いて決定される測定が特異的である。
【0084】
好ましい実施形態では、Her−3に結合した結合化合物の存在および/または量を決定するステップが、Her−3に結合した結合化合物に特異的に結合することが可能な第2の結合化合物を供給するステップと、Her−3に結合した結合化合物の存在および/または量に相関するものとしての第2の結合化合物の存在および/または量を決定するステップとをさらに含む。好ましい実施形態では、第2の結合化合物が抗体である。
【0085】
第1の結合化合物に特異的に結合することが可能であり、1つ以上の分子タグを有する第2の結合化合物の使用は、実用的な利点を有し得る。例えば、1つ以上の分子タグが結合している単一の第2の結合化合物を用いて、Her−3特異性の複数の第1の結合化合物を調べることにより、Her−3特異性の複数の第1の結合化合物の各々に分子タグを結合させる必要をなくすことができる。好ましい実施形態では、第1の結合化合物がマウス抗体であり、第2の結合化合物が、切断可能な分子タグを結合させた、マウス以外の種において産生させた抗マウス抗体(例えば、ヤギ抗マウス抗体)である。
【0086】
第2の結合化合物は、検出に有用なプローブにより標識するのが典型的である。第2の結合化合物を検出するのに一般に用いられる検出系には、本明細書に記載される切断可能な分子タグ;放射性標識(すなわち、I−125などの放射性同位元素);化学物質を、測定可能な比色シグナル、蛍光シグナル、または電気化学シグナルへと転換する酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)、および蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、およびその多くの誘導体)が含まれるがこれらに限定されない。
【0087】
抗体は、モノクローナル抗体の場合もあり、ポリクローナル抗体の場合もあり、組換え抗体の場合もあり、当技術分野で周知の技法により調製することができる。抗体は、完全免疫グロブリンまたは、その断片を包含してよく、これらの免疫グロブリンは、例えばIgA;IgD;IgE;IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3;IgMなど、各種のクラスおよびアイソタイプを包含する。これらの断片には、Fab、FvおよびF(ab’)2、Fab’などが含まれ得る。抗体はまた、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、特定の結合部位に対して特異的な結合活性を保持する、当業者に公知の他の任意の抗体誘導体でもあり得る。加えて、適切な場合は、結合親和性が維持される限りにおいて、免疫グロブリンまたはそれらの断片の凝集体、ポリマー、およびコンジュゲートを用いることもできる。
【0088】
生物学的試料におけるHer−3を測定する方法の開発を容易とするために、Her−3特異的モノクローナル抗体が創出された。Her−3に由来するペプチドに対してマウスを免疫し(図2Aに示す)、本明細書でさらに記載され、当業者に公知である標準的な方法を用いて、ハイブリドーマを作製した。モノクローナル抗体を創出および作製するには、例えば、Koehlerら(1975年)、Nature 256巻:495〜497頁により最初に記載されたハイブリドーマ法、または文献(Goding, JW(1980年)、J. Immunol. Methods 34巻:285〜308頁; Harlow EおよびLane D(1988年)、Antibodies: A Laboratory Manual中の6章; Kennett RHら(1980年)、Monoclonal Antibodies、Plenum Press; Zola H(1987年)、Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques、CRC Pressを参照されたい)において記載されている他の方法など、多くの方法が公知である。
【0089】
一実施形態では、ハイブリドーマを創出する方法が、マウスなどの宿主動物を免疫し、目的のペプチドまたはタンパク質(複数可)を標的とする抗体を生成させるリンパ球の生成を誘発することにより始まる。リンパ球はまた、in vitroでも免疫することができる。用いられる抗原は、ペプチドの場合もあり、タンパク質の場合もあり、細胞表面に抗原を提示する細胞の場合もある。リンパ球を回収し、次いで、化学的方法(例えば、PEGによる)または電気的方法(例えば、電気融合)により、骨髄腫細胞と融合させ、典型的には、親骨髄腫細胞の増殖および/または生存を阻止する条件下において、ハイブリドーマ細胞を形成する。融合した細胞は、培地における生存を促進する酵素を含有するため、増殖することが可能となる。好ましい実施形態では、培地が、ヒポキサンチンキニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を欠く細胞の増殖を防止する、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する(HAT培地)。融合細胞にはリンパ球パートナーによりHPRTが供給されることにより、ハイブリドーマの生存は可能となるが、HPRTを欠く親骨髄腫細胞の生存は防止される。
【0090】
ハイブリドーマが増殖する培地(すなわち、馴化培地(conditioned medium))は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA; Engvall E(1977年)、「Biomedical Applications of Immobilized Enzymes and Proteins」、TMS Chang編、2巻:87〜96頁、Plenum Pressを参照されたい)、ラジオイムノアッセイ(RIA; Sonksen PH(1974年)、Brit. Med. Bull. 30巻:1〜103頁を参照されたい);ウェスタンブロット;またはフローサイトメトリーなど、免疫沈澱アッセイまたはin vitroにおける結合アッセイが含まれるがこれらに限定されない各種の技法(Vollerら(1978年)、J. Clin. Pathol. 31巻:507〜520頁を参照されたい)を用いて、抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の生成についてアッセイすることが典型的である。ハイブリドーマに由来する馴化培地は、ELISA(図1)、ウェスタンブロット(図2)、およびフローサイトメトリー(図3)を含めた一連のアッセイにおいてプロファイリングした。好ましい実施形態では、天然の固定細胞および透過性にした固定細胞の両方を用いる試験を実施して、免疫組織化学(IHC)など、固定細胞または固定組織を用いる適用において良好に動作得る抗体を同定する。限定希釈または単一細胞フローサイトメトリーにより、目的のクローンをサブクローニングすることができる。
【0091】
当業者に公知である通り、ハイブリドーマクローン(またはサブクローン)によって分泌されるモノクローナル抗体は、透析、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、またはプロテインA−セファロース(またはプロテインL−アガロース)クロマトグラフィーなどであるがこれらに限定されない、従来の精製手順を用いて精製することができる。
【0092】
Her−3に由来するペプチドであるCFDNPDYWHSRLFPKANA(配列番号6)に対して産生した、作製した1つの抗体であるB9A11(すなわち、配列番号9および11)を選択して、本明細書に記載するHer3−VERATAG(登録商標)アッセイ実験において用いた。抗体B9A11およびF9B10は、ブダペスト条約の条項下において、2010年1月13日に、American Type Culture Collection、バージニア州 20110,マナサス,ユニバーシティー ブールーバ−ド 10801に寄託され、ATCC受託番号XX−XXXおよびYY−YYYを付与された。
【0093】
分析のための生物学的試料を調製するには、多くの方法および試薬を用いることが一般的である。本明細書では数種の方法が概説または参照され、他の多くの方法が当業者に公知である。バイオマーカーとして用いるのに適するHer−3を含有する試料は、細胞培養物、動物組織または植物組織、患者の生検、血液などを含め、多種多様な供給源に由来し得る。試料は、ヒト患者試料であることが好ましい。試料は、試料がそこから採取される供給源に依存し得る、従来の技法を用いて、本発明のアッセイのために調製する。生検および医学的被験物については、以下の参考文献: Bancroft JDおよびStevens A編、1977年、Theory and Practice of Histological Techniques、Churchill Livingstone、Edinburgh; Pearse、1980年、Histochemistry. Theory and applied、第4版、Churchill Livingstone、Edinburghにおいて、指針が示されている。
【0094】
用い得る患者組織試料の例には、乳房組織、前立腺組織、卵巣組織、結腸組織、肺組織、子宮内膜組織、胃組織、唾液腺組織、または膵臓組織が含まれるがこれらに限定されない。組織試料は、手術による切除、吸引、または生検を含め、各種の手順により得ることができる。組織は、新鮮試料の場合もあり、凍結試料の場合もある。一実施形態では、生物学的試料が、in vitroにおいて培養され、遠心分離により細胞ペレットとして回収される細胞であり得る。一実施形態では、試料が、患者の血液試料の場合もあり、特定の血液細胞型の場合もあり、血液細胞型のサブセット(例えば、バフィーコート)の場合もある。一実施形態では、生物学的試料が、エクソソームの場合もあり、エクソソームを含有する試料の場合もある。エクソソームは、in vivoおよびin vitroにおいて、腫瘍細胞(Mignotら(2006年)、J. Cell. Mol. Med. 10巻:376〜388頁を参照されたい)を含めた大半の細胞型により分泌され得る小型の(30〜200nm)小胞である。腫瘍に由来するエクソソームは、腫瘍が免疫系に浸潤する能力において役割を果たし、診断的適用および治療的適用の両方に対する可能性を有すると考えられており(TaylorおよびBlack(1985年)、J. Natl. Cancer Inst. 74巻:859〜867頁を参照されたい)、したがって、目的の生物学的試料である。
【0095】
好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。腫瘍試料の種類の例には、癌腫(carcinoma)、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、および混合種の癌などであるがこれらに限定されない癌が含まれる。一実施形態では、癌が、骨癌、例えば、ユーイング肉腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫、ならびに他の軟組織肉腫である。別の実施形態では、癌が、脳腫瘍、例えば、希突起神経膠腫、上衣腫、髄膜腫、リンパ腫、神経鞘腫、または髄芽腫である。別の実施形態では、癌が、乳癌である。別の実施形態では、癌が、内分泌系癌、例えば、副腎癌、膵臓癌、副甲状腺癌、下垂体癌、および甲状腺癌である。別の実施形態では、癌が、消化器癌、例えば、肛門癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝癌、および小腸癌である。別の実施形態では、癌が、婦人科癌、例えば、子宮頚癌、子宮内膜癌、子宮癌、卵管癌、妊娠性絨毛疾患、絨毛癌、卵巣癌、膣癌、または外陰癌である。別の実施形態では、癌が、頭頚部癌、例えば、喉頭癌、口腔咽頭癌、副甲状腺癌、または甲状腺癌である。別の実施形態では、癌が、黒色腫、扁平上皮癌、または基底細胞癌である。別の実施形態では、癌が、白血病、例えば、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞白血病、または骨髄増殖性障害である。別の実施形態では、癌が、肺癌、例えば、中皮腫または非小細胞肺癌である。別の実施形態では、癌が、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、または非ホジキン病などのリンパ腫である。別の実施形態では、癌が、転移性癌である。別の実施形態では、癌が、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫である。別の実施形態では、癌が、陰茎癌である。別の実施形態では、癌が、前立腺癌である。別の実施形態では、癌が、精巣癌である。別の実施形態では、癌が、甲状腺癌、例えば、甲状腺乳頭癌、甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、または甲状腺未分化(anaplasticまたはundifferentiated)癌である。別の実施形態では、癌が、尿路癌、例えば、膀胱癌、腎癌、または尿道癌である。
【0096】
in vitroにおいて培養した細胞を、新鮮試料、凍結試料、または固定試料として調製する方法は、当業者に公知であり、例示的な方法は、本明細書において記載されている。一実施形態では、固定され、パラフィンに包埋された組織試料に対して本発明のアッセイを実施し、脱パラフィンのステップを実施することができる。従来の方法論により、組織試料を固定(すなわち、保存)することができる。例えば、Lee G. Luna, HT(ASCP)編、1960年、「Manual of Histological Staining Method of the Armed Forces Institute of Pathology」、第3版、The Blakston Division、McGraw−Hill Book Company、New York; Ulreka V. Mikel編、1994年、「The Armed Forces Institute of Pathology Advanced Laboratory Methods in Histology and Pathology」、Armed Forces Institute of Pathology、American Registry of Pathology、Washington, D.C.を参照されたい。当業者は、組織を組織学的に染色するか、または他の方法で分析する目的により、固定剤の選択が決定されることを理解する。当業者はまた、固定化の長さが、組織試料のサイズ、および用いられる固定剤に依存することも理解する。
【0097】
一般に、まず、組織試料を固定し、次いで、濃度を上昇させた一連のアルコールにより脱水し、組織試料を切片化し得るように、パラフィンまたは他の切片化媒体を浸透させてこれにより包埋する。代替的に、組織を切片化し、得られた切片を固定することもできる。例示目的で、従来の技法による従来の方法によって、または本明細書に記載される通りに、組織試料をパラフィンに包埋および加工する。組織試料を包埋したら、従来の技法により、ミクロトームにより試料を切片化することができる。切片は、厚さが約3ミクロン〜約12ミクロンの範囲であり、約5ミクロン〜約10ミクロンの厚さであることが好ましい。一実施形態では、切片が、約10mm〜約1cmの面積であり得る。切断したら、数種の標準的な方法により、切片をスライドに付着させることができる。スライド接着剤の例には、シラン、ゼラチン、およびポリ−L−リシンが含まれるがこれらに限定されない。パラフィン包埋された切片は、正に帯電したスライド、および/またはポリ−L−リシンによりコーティングされたスライドに付着させることができる。
【0098】
パラフィンを包埋材料として用いた場合は、一般に、バイオマーカーを検出する前に、組織切片を脱パラフィンおよび再水和する。従来の数種の標準的な方法により、組織切片を脱パラフィンすることができる。例えば、本明細書に記載の参考文献により説明される従来の技法により、キシレンと、段階的に濃度を低下させる一連のアルコールとを用いることができる。代替的に、Hemo−De(登録商標)(テキサス州、ヒューストン、CMS社製)など、市販の非有機の脱パラフィン剤を用いることもできる。
【0099】
従来の細胞溶解法(例えば、0.14M NaCl、1.5mM MgCl、10mMトリス−Cl(pH8.6)、0.5%Nonidet P−40、および、必要に応じてプロテアーゼ阻害剤ならびに/またはホスファターゼ阻害剤)により、哺乳動物組織培養細胞の細胞溶解物または新鮮組織もしくは凍結組織を調製することができる。新鮮な哺乳動物組織の場合、試料調製はまた、粉砕(crusing)、ミンチ化(mincing)、すりつぶし(grinding)、または超音波処理など、組織の脱凝集(tissue disaggregation)ステップも包含する。
【0100】
多様なレベルのHer−3を発現する安定的な細胞系を作製した。多様なレベルの対象のタンパク質を安定的に発現する細胞系は、抗体の最適濃度、正確度(accuracy)、感度、再現性、精度(precision)、直線性、特異性、およびダイナミックレンジなど、多くのパラメータについて、Her−3 VERATAG(登録商標)アッセイなど、新規のアッセイを検証するのに有用である。HEK 293細胞を用いて、安定的なHer−3発現細胞系を創出した。HEK 293細胞は、元来、アデノウイルスのDNAにより形質転換したヒト胚性腎細胞に由来する特定の細胞系である(Grahamら(1977年)、J. Gen. Virol. 36巻:59〜74頁を参照されたい)。HEK 293細胞は、培養物での増殖が容易であり、トランスフェクするのも容易であり、多年にわたり、細胞生物学の研究の他、バイオテクノロジー産業のためのタンパク質作製に広く用いられてきた。Her−3発現細胞系の作製については実施例1に記載し、これらの細胞系の各々におけるHer−3レベルを決定するELISAアッセイの結果を図1に示す。
【0101】
さらに好ましい実施形態では、近接プローブが、抗体と第1の核酸とを含み、結合化合物が、抗体と第2の核酸とを含み、第1および第2の核酸が互いに対して相補的であり、ハイブリダイズして有効近接距離を決定することが可能であり、ハイブリダイゼーションを介して直接的または間接的にシグナルを発生させる。好ましい実施形態では、近接プローブおよび/または結合化合物が、Her−3に特異的に結合することが可能である。好ましい実施形態では、結合化合物および/または近接プローブが、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における異なるエピトープに結合する。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である(表1B)。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、本明細書に記載される乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、エクソソームおよび/または他の小胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、約2logである。より好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、乳癌試料において約1〜1.5logである。好ましい実施形態では、方法が、Her−3発現の定量的連続体を提供する。好ましい実施形態では、測定または量が、十分に特徴づけられた細胞系モデルと、ELISAおよびフローサイトメトリーなどの交差検証法とを用いる正確度試験により決定される通り、少なくとも細胞1個当たりの受容体約1000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約5000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約10,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約25,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、アイソタイプの対照抗体、ならびに従来のIHC法との比較を用いて決定される測定が特異的である。本明細書に記載の近接プローブおよび結合化合物の例は、例えば、任意の図面を含め、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第7,306,904号;同第7,320,860号;および同第7,351,528号において見出すことができる。
【0102】
近接アッセイは、分子複合体の生物学的役割を理解する他、バイオマーカーについて調べるにもますます有用である。例えば、Her−3または複合体化したHer−3に特異的に結合する結合化合物を、多くの異なる検出系と連結し、Her−3または複合体化したHer−3の存在および/または量を測定することができる。Her−3または複合体化したHer−3の量を決定するのに有用であることが当業者に公知の任意の方法を、本発明に従って用いることができる。このような方法には、Foerster共鳴エネルギー移動(FRET)法、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法、生体分子蛍光補完法、近接ライゲーションアッセイ(PLA)法、シンチレーション近接アッセイ(SPA)法、およびローリングサークル増幅(RCA)法、または核酸の相補鎖を有する結合プローブと、核酸の相補鎖を有する近接プローブとが近接することにより形成される核酸二重鎖を検出する他の任意の方法が含まれるがこれらに限定されない。
【0103】
本発明の方法を実施するには、被験試料と、結合化合物と、場合によって、近接プローブとを含めた、アッセイ成分の組み合わせ物を作製する。一般に、アッセイ成分は、任意の順序で組み合わせることができる。しかし、特定の適用では、添加の順序が重要となり得る。例えば、定量的アッセイなどにおいて、競合的結合についてモニタリングしたい場合がある。あるいは、構築した複合体の安定性をモニタリングしたい場合もある。このような適用では、反応物を段階的に構築することができる。
【0104】
各試薬の量は、一般に、経験的に決定することができる。アッセイで用いられる試料の量は、存在することが予測される標的複合体の数と、アッセイのシグナルをモニタリングするのに用いられる分離および検出の手段とにより決定される。一般に、結合化合物および近接プローブの量は、試料において予測される標的分子の量と比べたモル過剰、一般に、少なくとも約1.5モルの過剰、より望ましくは約10倍以上のモル過剰で供給することができる。特定の適用において、用いられる濃度は、結合化合物または近接プローブの親和性、および単一の細胞において存在することが予測される標的分子の数に応じて高濃度の場合もあり、低濃度の場合もある。
【0105】
アッセイ混合物は、通常、約10〜200mMの範囲の濃度のバッファーにより維持される、一般に、生理的pH(細胞が培養されるpHと同等のpH)にある水性媒体において、細胞表面分子へのプローブの結合をもたらす条件下で混合およびインキュベートすることができる。従来のバッファーの他、必要に応じて、塩、増殖媒体、安定化剤など、他の従来の添加物も用いることができる。一般に、生理的な一定温度を用いる。インキュベーション温度は、一般に、約4℃〜70℃、通常約15℃〜45℃であり、より通常の場合には、約25℃〜37℃である。
【0106】
好ましい実施形態では、近接プローブは、切断誘導部分を有する切断プローブを含み、少なくとも1つの結合化合物は、切断可能な結合により1つ以上の分子タグが結合しており、ここで、該切断可能な結合が該有効近接距離内において切断されることにより、Her−3の存在および/または量と相関するシグナルが生成され得る。好ましい実施形態では、切断プローブおよび/または結合化合物が、Her−3に特異的に結合することが可能である。好ましい実施形態では、結合化合物および/または近接プローブが、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における異なるエピトープに結合する。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号10および12を有する抗体である。好ましい実施形態では、試料が、生物学的試料である。好ましい実施形態では、試料が、組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、固定試料、凍結試料、または溶解物である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍試料である。好ましい実施形態では、試料が、凍結腫瘍組織試料である。好ましい実施形態では、試料が、腫瘍溶解物を含む。好ましい実施形態では、試料が、本明細書に記載される乳癌試料を含む。好ましい実施形態では、試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である。好ましい実施形態では、試料が、血液試料、血漿試料、またはリンパ試料である。好ましい実施形態では、血液試料または血漿試料が、循環腫瘍細胞を含有する。好ましい実施形態では、試料が、細胞系を含む。好ましい実施形態では、測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る。好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、約2logである。より好ましい実施形態では、広範なダイナミックレンジが、乳癌試料において約1〜1.5logである。好ましい実施形態では、方法が、Her−3発現の定量的連続体を提供する。好ましい実施形態では、測定または量が、十分に特徴づけられた細胞系モデルと、ELISAおよびフローサイトメトリーなどの交差検証法とを用いる正確度試験により決定される通り、少なくとも細胞1個当たりの受容体約1000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約5000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約10,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、測定または量が、少なくとも細胞1個当たりの受容体約25,000個〜細胞1個当たりの受容体約200,000個の感度である。好ましい実施形態では、アイソタイプの対照抗体、および従来のIHC法との比較を用いて決定される測定が特異的である。
【0107】
2つの抗体近接アッセイを最適化した。Her−3の細胞質側末端に対するエピトープ特異性を示すHer−3特異的モノクローナル抗体であるAb−6(LabVision社製)を、VERATAG(登録商標)受容体(Pro 11)にコンジュゲートし、近接プローブ(Ab−6−Pro 11)として用いた。所有のモノクローナル抗体であるB9A11は、ビオチンにコンジュゲートして(B9A11−ビオチン)、ストレプトアビジン−メチレンブルーと複合体化させて切断プローブ(「分子ばさみ」)として用いた。アッセイの方法を、実施例5に記載する。極めて高いレベル(293H3−クローン1と呼ばれる、安定的にトランスフェクトされたHEK 293細胞系のうちの1つにおける)から、中程度〜低レベル(それぞれ、MDA−MB−468およびMDA−MB−453)を経て、低いHer−3〜検出不能のHer−3(SKOV3細胞における)までの範囲にわたる多様なレベルのHer−3を発現する数種の細胞系を、最適化試験で用いた。最適化過程には、ダイナミックレンジを最大化する最適抗体濃度の決定(実施例7および図6を参照されたい)、アッセイの正確度(accuracy)の決定(実施例8および図7を参照されたい)、アッセイの感度、再現性、および精度(precision)の検定(それぞれ、実施例9/図8、実施例10/図9、および実施例11/図10を参照されたい)、試料サイズが異なる場合におけるアッセイの直線性(実施例12および図11を参照されたい)、ならびにアイソタイプ対照を用いて非特異的結合について調べることによるアッセイの特異性(実施例13および図12を参照されたい)が含まれた。
【0108】
アイソタイプ対照は、結合の結果が、個々の抗体に起因するのではなく、特定の抗体アイソタイプに起因する可能性を除外するために実施することが典型的である。加えて、アイソタイプ対照において見られる任意のシグナル「ノイズ」を、全シグナルから差し引くことにより、潜在的により精密な結果をもたらし得ることを、当業者は理解する。アイソタイプ対照による実験を実施したところ、非特異的結合による寄与は、極めて低いことが観察された(図12を参照されたい)。
【0109】
放出可能な分子タグを用いてHer−3または複合体化したHer−3を測定することにより、放出された分子タグをアッセイ混合物から分離することにより、バックグラウンドの大幅な低下による、感度の有意な増大が得られ、ならびに分離および検出により、受容体複合体の複数の成分を同じアッセイで同時に容易に測定し得るような、簡便な多重化能(multiplexing capability)がもたらされることを含む、多くの利点がもたらされる。このようなタグを用いるアッセイは、各種の形態を取ることが可能であり、以下の参考文献:それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第7,105,308号;同第6,627,400号;同第7,402,397号;同第7,402,398号;および同第7,402,399号、ならびに国際特許公開第WO2004/011900号において開示されている。電気泳動移動度、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、電荷/質量比、または極性を含め、分離される分子間における、1つ以上の、物理的、化学的、または光学的差違に基づき分子を識別し得る、多種多様な分離法を用いることができる。一実施形態では、複数の分子タグまたは分子タグのセットが、電気泳動移動度および光学的検出特性において異なり、電気泳動により分離される。別の実施形態では、複数の分子タグまたは分子タグのセットが、分子量、形状、溶解性、pKa、疎水性、電荷、極性において異なり得、正相もしくは逆相のHPLC、イオン交換HPLC、キャピラリー電気クロマトグラフィー、質量分析、または気相クロマトグラフィーより分離される。
【0110】
結合化合物から放出された後で、分離法により異なるバンドまたはピークへと分離され得る、分子タグのセットが供給される。このようなピークを同定および定量化することにより、Her−3の存在および/または量の尺度またはプロファイルがもたらされる。セット内における分子タグは、化学的に多様であり得る;しかし、簡便のため、分子タグのセットは、通常、化学的に類縁である。例えば、それらがすべてペプチドの場合もあり、それらが同じ基本的構成要素(basic building block)または単量体の異なる組合せからなる場合もあり、または、それらを、異なる置換基を有して異なる分離特性を付与する、同じ基本的足場(basic scaffold)を用いて合成する場合もある。複数の分子タグの数は、用いられる分離方式、検出用分子タグにおいて用いられる標識、結合部分の感度、および切断可能な結合が切断される効率を含め、複数の因子に応じて変化し得る。
【0111】
組織試料に対して直接なされた測定は、試料における全細胞数、および/または試料における特定の細胞亜型の数を表す細胞標的または組織標的についての測定を組み入れることにより、正規化することができる(例えば、任意の図面を含め、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第US2009/0191559号を参照されたい)。実質的な割合で正常細胞を含み得る患者試料、特に、腫瘍試料においては、細胞および組織が不均質性であるため、さらなる測定が好ましい場合もあり、さらに必要な場合もある。
【0112】
一実施形態では、結合化合物を、以下の式:
B−(L−E)
[式中、Bは、結合部分であり;Lは、切断可能な結合であり;Eは、分子タグである]により表すことができる。ホモジニアスアッセイでは、切断可能な結合Lが、易酸化結合であり得、より好ましくは、それが一重項酸素により切断され得る結合である。部分「−(L−E)」は、単一の結合化合物が、切断可能な結合を介して複数の分子タグを結合させ得ることを示す。一態様では、kが1以上の整数であるが、他の実施形態では、kが数百を超える、例えば、100〜500の場合もあり、または、kが数百を超えて最大数千もの数である、例えば、500〜5000である。通常、複数の異なる種類の結合化合物の各々は、異なる分子タグEを有する。切断可能な結合、例えば、易酸化結合と、分子タグEとは、通常の化学反応によりBに結合している。
【0113】
Bは、Her−3などの標的に特異的に結合する抗体であることが好ましい。Her−3エピトープに特異的な抗体は、本明細書に記載の実施例で示される。抗体組成物は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である多種多様な市販の抗体から容易に形成することもでき、本明細書で開示される方法により容易に形成することもできる。
【0114】
切断可能な結合Lは、放出される分子タグEの構造を分解しないし、その検出特性に影響を与えることのない条件下で切断され得る、実質的に任意の化学結合基であってもよい。ホモジニアスアッセイフォーマットで切断プローブを用いる場合は常に、切断可能な結合Lが、近接プローブの有効近接距離内にある切断可能な結合だけを切断するように、作用距離が短い切断プローブにより作製される切断剤により切断される。拡散して、切断可能な結合へと至り、切断に影響を及ぼす短命の活性種が、このような薬剤によりもたらされるように、反応混合物に物理的または化学的な変化をもたらすことにより、その薬剤を活性化しなければならないことが典型的である。
【0115】
非ホモジニアスフォーマットでは、特異的に結合した結合化合物が、結合しなかった結合化合物から分離されるため、切断可能な結合および切断剤のより広い選択を用いることが可能である。切断可能な結合には、過酸化水素、一重項酸素など、局所的に作用する反応種との反応を受けやすい結合だけでなく、塩基に不安定な結合、光により切断可能な結合、還元により切断可能な結合、酸化により切断される結合、酸に不安定な結合、および特定のプロテアーゼにより切断可能なペプチド結合など、反応混合物全体に作用する薬剤に対して不安定な結合も含まれる。多くのこのような結合について記載する参考文献には、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、GreeneおよびWuts、1991年、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley & Sons、New York; Hermanson、1996年、「Bioconjugate Techniques」、Academic Press、New York;ならびに米国特許第5,565,324号が含まれる。
【0116】
ガスクロマトグラフィーまたは質量分析により複数の分子タグを分離する場合、本発明における分子タグEは、以下の参考文献(例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Zhangら、2002年、Bioconjugate Chem. 13巻:1002〜1012頁; Giese、1983年、Anal. Chem. 2巻:165〜168頁;ならびに米国特許第4,650,750号;同第5,360,819号;同第5,516,931号;および同第5,602,273号を参照されたい)において記載される電気泳動タグを含み得る。
【0117】
分子タグEは、活性種、とりわけ、一重項酸素に対して安定であり、検出基またはレポーター基を包含する、水溶性の有機化合物であることが好ましい。その他の点において、Eは、サイズおよび構造が多種多様に変化し得る。一実施形態では、Eの分子量が、約50〜約2500ドルトン、より好ましくは、約50〜約1500ドルトンの範囲にある。Eは、電気化学シグナル、蛍光シグナル、または発色シグナルを発生させる検出基を含み得る。質量による検出を用いる実施形態では、Eが、検出の目的で別個の部分を有し得ない。検出基は、蛍光シグナルを発生させることが好ましい。
【0118】
複数の分子タグは、各々が、同じ複数タグの他のメンバーに対して、固有の分離特性および/または固有の光学特性を有するように選択される。一実施形態では、クロマトグラフィーまたは電気泳動における分離特性が、当技術分野における従来の標準的な一連の分離条件(例えば、電圧、カラム圧、カラム種類、移動相、または電気泳動の分離媒体)下における保持時間である。別の実施形態では、光学特性が、所与の波長または波長バンドにおける発光スペクトル、蛍光寿命、または蛍光強度など蛍光特性である。蛍光特性は、蛍光強度であることが好ましい。複数の分子タグのうちの1または2以上の分子タグは、同一の移動時間または保持時間を有し得るが、分子の分離および蛍光の測定を組み合わせることにより、該複数の分子タグのうちのすべてのメンバーが識別可能であるように、それらは、固有の蛍光特性、例えば、スペクトル分解可能な発光スペクトルを有す。
【0119】
放出された分子タグは、電気泳動による分離、および検出基による蛍光発光によって検出することが好ましい。このような実施形態では、分離条件下で、電気泳動図において異なるピークが形成されるように、実質的に同一の蛍光特性を示す分子タグが、異なる電気泳動移動度を有す。本発明による複数の分子タグは、従来のふるい分けマトリックス(sieving matrix)が存在する場合も、これが不在の場合も、従来のキャピラリー電気泳動装置により分離することが好ましい。電気泳動による分離中において、またはその後において、蛍光シグナルおよび分離される化合物の移動時間(または移動距離)を記録することにより、または相対蛍光発光および分子タグの移動順序についてのチャート(例えば、電気泳動図としての)を構築することにより、分子タグを検出または同定する。分子タグの存在、不在、および/または量は、1つ以上の標準品を用いることにより測定することが好ましい。
【0120】
切断誘導部分または切断剤とは、好ましくは酸化により、切断可能な結合を切断することが可能な活性種を生成させる基である。活性種とは、その切断誘導効果が、その発生部位の近接距離内だけにおいて存在するように、短寿命の活性を示す化学種である。活性種が創出される近接距離を越えて顕著なバックグラウンドを創出しないように、活性種を固有の形で短命とするか、またはその発生部位からの短距離を越えて、切断可能な結合と反応することが可能でないように、活性種を効果的に除去するスカベンジャーを用いる。例示的な活性種には、一重項酸素、過酸化水素、NADHおよびヒドロキシルラジカル、フェノキシラジカル、スーパーオキサイドなどが含まれる。酸化を引き起こす活性種に対する例示的な抑制剤には、ポリエン類、カロテノイド類、ビタミンE、ビタミンC、チロシン、ヒスチジン、およびグルタチオンのアミノ酸−ピロールN−コンジュゲートが含まれる。例えば、Beutnerら、2000年、Meth. Enzymol. 319巻:226〜241頁を参照されたい。
【0121】
切断誘導部分および切断可能な結合を用いるアッセイをデザインする際の1つの考慮点は、受容体複合体と結合したとき、切断誘導部分により生成される活性種が切断可能な結合を効果的に切断することが不可能となる程度に遠く、切断誘導部分および切断可能な結合が、互いから引き離されないようにすることである。一実施形態では、切断可能な結合が、結合した切断誘導部分の約1000nm以内にあることが好ましく、約20〜200nm以内にあることが好ましい。一重項酸素を発生させる、光増感剤の切断誘導部分の場合は、切断可能な結合が、受容体複合体内において光増感剤の約20〜100nm以内にあることがより好ましい。当業者は、特定の増感剤の有効近接距離が、特定のアッセイデザインの詳細に依存する場合があり、日常的な実験により決定または改変され得ることを認識する。
【0122】
増感剤とは、反応中間体、または、通常一重項酸素である種を発生させるように誘導され得る化合物である。本発明により用いられる増感剤は、光増感剤であることが好ましい。本発明の範囲内に包含される他の増感剤は、熱、光、イオン化放射、または化学的活性化により励起されると、一重項酸素分子を放出する化合物である。このクラスの化合物のうちで最も周知のメンバーには、1,4−ビスカルボキシエチル−1,4−ナフタレンエンドペルオキシド、9,10−ジフェニルアントラセン−9,10−エンドペルオキシド、および5,6,11,12−テトラフェニルナフタレン−5,12−エンドペルオキシドなどのエンドペルオキシド類が含まれる。これらの化合物を加熱するか、またはこれらの化合物が直接的に光を吸収すると、一重項酸素が放出される。さらなる増感剤については、Di Mascioら、1994年、FEBS Lett. 355巻:287頁;およびKanofsky、1983年、J. Biol. Chem. 258巻:5991〜5993頁; Pierlotら、2000年、Meth. Enzymol. 319巻:3〜20頁により開示されている。
【0123】
光増感剤は、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的に抗体と結合し得る。このような組成物を構築するための指針は、例えば、光線力学療法、免疫診断学などの分野の文献において得られる。例示的な指針は、Ullmanら、1994年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻、5426〜5430頁; Strongら、1994年、Ann. New York Acad. Sci. 745巻:297〜320頁; Yarmushら、1993年、Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Syst. 10巻:197〜252頁;ならびに米国特許第5,709,994号;同第5,340,716号;同第6,251,581号;および同第5,516,636号において見出すことができる。
【0124】
光増感剤を光活性化して一重項酸素を発生させるには、多種多様な光源が利用できる。光源が、実用的な時間内で十分な一重項酸素を生成させるのに十分な強度を示す限りにおいて、多色光源および単色光源の両方を用いることができる。照射の距離は、光増感剤の性質、切断可能な結合の性質、照射光源の出力、および試料からの照射光源の距離に依存する。一般に、照射時間は、約1秒間未満〜最長約3時間であり、通常、15分間〜2時間の範囲内である。例示的な光源には、例えば、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンレーザー、YAGレーザー、He/Cdレーザー、およびルビーレーザー;光ダイオード;水銀灯、ナトリウム灯、およびキセノン灯;ならびに、例えば、タングステン灯およびタングステン/ハロゲン灯および閃光灯などの白熱灯が含まれる。本発明の方法において用いるのに適する例示的な光活性化デバイスは、任意の図面を含め、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第WO03/051669号において開示されている。このような実施形態では、光活性化デバイスが、96ウェルプレートのすべてのウェルを同時に照射することが可能な、ハウジング内に搭載された発光ダイオード(LED)のアレイである。
【0125】
本発明において用い得る光増感剤の例は、上記の特性を有する増感剤、ならびに、任意の図面を含め、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,536,834号;同第5,763,602号;同第5,565,552号;同第5,709,994号;同第5,340,716号;同第5,516,636号;同第6,251,581号;および同第6,001,673号;欧州特許出願公開第0484027号; Martinら、1990年、Methods Enzymol. 186巻:635〜645頁;およびYarmushら、1993年、Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Syst. 10巻:197〜252頁により開示される増感剤である。増感剤の場合と同様、特定の実施形態では、固相支持体の表面へと共有結合または非共有結合により結合させるか、または固相支持体の本体へと組み込むことにより、光増感剤を、固相支持体と会合させることができる。一般に、光増感剤は、必要量の一重項酸素を達成するのに必要な量で、支持体と会合させる。一般に、光増感剤の量は、日常的な方法により、経験的に決定される。
【0126】
次いで、切断後、試料を解析して、放出された分子タグを識別することができる。複数の結合化合物を用いるアッセイを用いる場合は、一般に、分子タグの分離が、それらの検出に先行する。分離および検出のいずれの方法も、アッセイのために分子タグをデザインする過程で決定される。好ましい分離方式では電気泳動が用いられ、そこでは、各種のタグが、それらの電気泳動移動度における公知の差違に基づき分離される。
【0127】
第二の態様では、本発明が、癌を有する被験体に、標的化療法による治療が奏効する可能性があるかどうかを決定し、疾患の時間経過を予測し、かつ/または該被験体の癌の時間経過において重要事象が生じる確率を予測する方法であって、該被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−3の量を測定するステップを含み、Her−3レベルに依存する方法を対象とする。
【0128】
特定の実施形態では、Her−3レベルが高ければ、標的化療法が患者に奏効する可能性が低いかまたはその可能性がない。特定の実施形態では、Her−3レベルが低ければ、標的化療法が該患者に奏効する可能性がある。本明細書により詳細に記載される通り、特定の実施形態では、該療法が、Her作用剤である。さらなる実施形態では、該療法が、Her−2作用剤またはHer−3標的化剤のうちの少なくとも1つである。
【0129】
特定の実施形態では、乳癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌である。特定の実施形態では、乳癌におけるHer−2の発現レベルが高い。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.14〜1.25である。特定の実施形態では、高いHer−2発現が、極めて高い発現、および/または中程度に高い発現を含む。特定の実施形態では、極めて高いHer−2発現が、log10H2T≧約1.84〜2.21である。または、患者コホートに応じて、他の範囲も用いることができる。
【0130】
好ましい実施形態では、患者の疾患の経過における重要事象間の期間を決定することにより、時間経過を測定し、測定により、患者の増悪までの期間が長いかどうかが予測される。好ましい実施形態では、重要事象が、初回の診断から死亡までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、初回の診断から転移性疾患までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、初回の診断から再発までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、手術から死亡までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、手術から再発までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、手術から転移までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、転移性疾患から死亡までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、転移性疾患から再発までの増悪である。好ましい実施形態では、重要事象が、再発から死亡までの増悪である。好ましい実施形態では、全生存率、無増悪期間との関連で、かつ/またはRECIST基準もしくは他の効果判定基準を用いて、時間経過を測定する。
【0131】
Her−3 VERATAG(登録商標)アッセイを用いて、国際血清Her−3/neu研究グループ試験の患者コホートにおけるHer−3レベルを検討した。これらの患者(n=105)は、単一の病理学者により、中心の場所(central location)において実施された、Her−2陽性についてのIHCにより主に選択され、これらすべてにトラスツズマブを施した。Her−2過剰発現腫瘍(>10%腫瘍細胞がHercepTestによりIHC 3+と判定された)および/またはErbB2が増大した(ICH 2+症例のすべてについて、必須のFISH試験で陽性を示す)転移性乳癌を有する患者だけを、本試験に組み入れた(さらなる詳細については、実施例14を参照されたい)。これらの患者試料に対してHer−3 VERATAG(登録商標)アッセイを実施したところ、アッセイを実施した105例の試料のうち、85例が、検出限界を上回る、測定可能なHer−3レベルを有した(8例は検出可能な腫瘍を有さず、1例の試料はフルオレセインの不成功(failure)を示し、8例の試料は検出限界を下回り、そのアッセイにおいて低レベル/陰性と考えられた)。結果を、図13に示す。
【0132】
Her−3レベル、および、特に、Her−2陽性腫瘍におけるHer−3レベルは、疾患増悪の時間経過および全生存期間の他、治療への反応、ならびに、特に、EGFRファミリー標的化治療剤からの逸脱に関して予後診断価値を有することに関係している。Serginaら(2007年)、Nature 445巻:437〜441頁; Osipoら(2007年)、Int J Oncol. 30巻:509〜520頁; De Alavaら(2007年)、Clinical Oncol. 25巻:2656〜2663頁; MaおよびBose(2008年)、「HER1 and HER2 Targeting in Breast Cancer」、電子改訂版、2巻; Toveyら(2006年)、J. Pathol. 210巻:358〜362頁; MenendezおよびLupu(2007年)、Breast Cancer Res. 9巻:111頁; Fuchsら(2006年)、Anticancer Res. 26巻:4397〜4402頁; Lee−Hoeflichら(2008年)、Cancer Res. 68巻:5878〜5886頁を参照されたい。
【0133】
EGFRファミリーメンバーを標的とする治療剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラピチニブ(lapitinib)、セツキシマブ、ゲフィチニブ、およびエルロチニブ)、ならびに化学療法剤により治療される患者の腫瘍を含め、多くの癌において、Her−3発現が調査されている。Herファミリーメンバーのレベルを、臨床転帰と比較すると、データにより、とりわけ、Her−3発現ならびに/またはHer−2およびHer−3の相対量が、卵巣癌(Amierら(2008年)、J Clin. Oncol. 26巻:要約、5552頁; Amierら(2008年)、集会:2008 Molecular Markers、、要約、25頁;およびXuら(1999年)、Clin. Cancer Res. 5巻:3652〜3660頁を参照されたい)および非小細胞肺癌(Cappuzzoら(2005年)、Brit. J. Cancer 93巻:1334〜1340頁)における予後診断的および予測的な診断のバイオマーカーとして有用であり得ることが示唆される。好ましい実施形態では、方法が、Her−2陽性患者の試料群を、高量のHer−3を有すサブグループと、低量のHer−3を有す少なくとも1つの他のサブグループを含む、少なくとも2つのサブグループへと分割することにより、Her−3レベルが高いかまたは低いかを決定するステップをさらに含み、ここで、Her−3が低レベルであれば、Her−2標的化療法が患者に奏効する可能性があり、疾患の時間経過が長くなる可能性があり、患者が重要事象を示す可能性がない。好ましい実施形態では、被験体の癌が、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、喉頭癌、膵臓癌、食道癌、神経膠腫、胆管癌(bile duct carcinoma)、胆道癌、胆管癌(cholangiocarcinoma)、胃癌、子宮内膜癌、胆嚢癌、扁平上皮癌、または基底細胞癌である。好ましい実施形態では、被験体の癌が、乳癌、黒色腫、結腸直腸癌、または卵巣癌である。好ましい実施形態では、被験体の癌が、Her−2陽性乳癌である。好ましい実施形態では、被験体の乳癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌である。
【0134】
好ましい実施形態では、標的化療法が、少なくとも1つのHerファミリー標的化剤である。好ましい実施形態では、Herファミリー標的化剤が、多重標的化剤または単一標的化剤である。好ましい実施形態では、多重標的化剤が、二重キナーゼ阻害剤または二重特異性抗体である。好ましい実施形態では、Herファミリー標的化剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、またはペルツズマブである。好ましい実施形態では、少なくとも1つのHerファミリー標的化剤が、少なくとも2つの薬剤であり、該少なくとも2つの薬剤が、1もしくは複数のHer−2標的化モノクローナル抗体、ならびに/またはEGFR標的化モノクローナル抗体、ならびに/またはEGFRおよびHer−2に対する二重キナーゼ阻害剤である。好ましい実施形態では、モノクローナル抗体が、トラスツズマブである。好ましい実施形態では、EGFR標的化モノクローナル抗体が、セツキシマブまたはパニツムマブである。好ましい実施形態では、EGFR標的化モノクローナル抗体が、ザルツムマブ、ニモツズマブ、およびマツズマブである。好ましい実施形態では、二重キナーゼ阻害剤が、ラパチニブ、エルロチニブ、またはゲフィチニブである。好ましい実施形態では、標的化療法が、Her−3作用剤またはHer−3シグナル伝達経路作用剤である。好ましい実施形態では、Her−3標的化剤またはHer−3シグナル伝達経路標的化剤が、Her−3モノクローナル抗体、Her−3二量体化阻害剤、Her−3リン酸化阻害剤、ならびに/または、PI3K、Akt、mTOR、ERK1/2、もしくはPYK2からなる群から選択されるHer−3シグナル伝達経路のメンバーに対する阻害剤である。好ましい実施形態では、奏効する可能性、長い時間経過を有する可能性、および/または重要事象が生じる可能性を、全生存率として、無増悪期間として、無病生存期間として、無増悪生存期間として、かつ/またはRECIST基準を用いる腫瘍縮小効果として測定する。シグナル伝達とは、細胞により、1つの種類のシグナルが別の種類のシグナルへと転換される任意の過程を指す。典型的には、これには、細胞表面におけるある種類のシグナル(例えば、細胞表面受容体に対するリガンドの結合)が関与し、それに続いて酵素により進められる、細胞内部における生化学反応のカスケードが関与し、この結果、シグナル伝達経路(signal transduction pathwayまたはsignaling pathway)がもたらされることにより、多くの細胞機能が達成される。チロシンキナーゼ受容体のEGFRファミリーの場合、該ファミリー内の4つの受容体の各々が、二量体化ドメインおよびリガンド結合ドメインの両方を含む細胞外ドメインの他、チロシンキナーゼ活性を有する膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを有する(Burgessら(2003年)、Mol Cell.12巻:541〜542頁を参照されたい)。Her−3の場合、キナーゼドメインは機能性でないが、他のファミリーメンバーとの二量体化を介して、Her−3が、重要なシグナル伝達経路作用を発揮することができる。細胞の形質転換を開始するには、複数のErbB受容体およびリガンドの協同作用が必要であることを、証拠は示唆している。活性化されると、この受容体ファミリーは、シグナル伝達経路の複雑なネットワークを維持する。各種の癌では、EGFRファミリーのすべてのメンバーが、発現および/または変化することが判明しており、これらは、増殖、アポトーシス、および転移を含めた腫瘍の発達において、重要な役割を果たし得る(Burgess(2008年)、Growth Factors 26巻:263〜274頁;およびNormannoら(2006年)、Gene 366巻:2〜16頁を参照されたい)。EGFRファミリーメンバー(Biancoら(2007年)、Int. J. Biochem. Cell. Biol. 39巻:1416〜1431頁を参照されたい)、特に、EGFRおよびHer−2の標的化に対する強い関心は、数種の標的化療法の承認を結果としてもたらしている。in vitroおよびin vivo両方の試験モデルにおける有望な前臨床データに基づくと、臨床試験における結果は、ある意味で失望をもたらすものであり、この結果、Her−3など他のファミリーメンバー、ならびに下流におけるシグナル伝達経路のメンバーに対する関心が増大している。
【0135】
Her−3のシグナル伝達は癌と関連しており、特に、Her−2/Her−3二量体の形成は、Her−2を過剰発現する腫瘍の浸潤の増大にとって重要であり得、二量体形成、ならびにHer−3により活性化される下流経路を阻害する標的化治療剤に対する関心を惹き起こしている。Her−3が、ホスホイノシチド3'−キナーゼ(PI3K)に対する6つの結合部位を有し、PI3Kが、タンパク質キナーゼB(また、AKTとも呼ばれる)を活性化するため、Her−3は、特に、シグナル伝達にたけている。「PI3K/AKT」シグナル伝達経路は、極めて広範にわたる細胞活性(とりわけ、細胞の増殖および生存)に必要とされることが示されており、Her−3ならびに下流のシグナル伝達経路のメンバーの両方を標的とし、新規の標的化治療剤を創出するか、または現行のEGFRファミリー標的化治療剤の治療的価値を強化することに対する関心を呼び起こしている。(総説については、Stern(2008年)、J Mammary Gland Biol Neoplasia 13巻:215〜223頁; SithanandamおよびAnderson(2008年)、Cancer Gene Ther. 15巻:413〜448頁;ならびにArkinおよびMoasser(2008年)、Curr. Opin. Investig. Drugs 9巻:1264〜1276頁を参照されたい)。
【0136】
好ましい実施形態では、癌がHer−2陽性であるかどうかを、IHC、FISH、CISH、定量的mRNA、ハイブリダイゼーションアレイ、またはVERATAG(登録商標)により判定する。好ましい実施形態では、Her−3レベルの決定が、IHC、FISH、CISH、定量的mRNA、ハイブリダイゼーションアレイ、またはVERATAG(登録商標)を用いて実施される。好ましい実施形態では、その方法は、被験体の癌におけるHer−3の量を、予め決定されたカットオフと比較することにより、Her−3タンパク質の量が低いかどうかを決定するステップをさらに含む。好ましい実施形態では、その方法は、Her−2陽性患者の試料群を、高量のHer−3を有するサブグループと、低量のHer−3を有する少なくとも1つの他のサブグループを含む、少なくとも2つのサブグループへと分割することにより、Her−3レベルを決定するステップをさらに含み、ここで、Her−3が高レベルであれば、Her−2標的化療法が患者に奏効する可能性がなく、疾患の時間経過が短い可能性があり、および/または患者が重要事象を示す可能性がある。
【0137】
好ましい実施形態では、この方法はさらに、本発明の方法による治療が奏功する可能性がないHer−2陽性癌に被験体が罹患していることを判定し、次いで、該被験体に、有効量の、異なる治療剤を投与する治療の選択肢について、医療担当者に助言するステップを含む。
【0138】
第三の態様では、本発明が、Her−3に結合する精製抗体を対象とする。好ましい実施形態では、抗体が、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、モノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、実施例2に記載され、図2Aに示される、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である。好ましい実施形態では、抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;ならびに/または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体である(表1B)。好ましい実施形態では、抗体が、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号9および11を有する抗体、ならびに/または軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1Aに示される配列番号10および12を有する抗体である。
【0139】
好ましい実施形態では、本発明が、抗体をコードするDNAを対象とする。モノクローナル抗体をコードするDNAは、クローニング技術分野の当業者には一般に公知の技法を用いて単離および配列決定される。単離したら、該DNAを発現ベクターにライゲーションし、適切な宿主細胞内へとトランスフェクトし、培養細胞から組換え抗体を得ることができる(Plueckthun(1992年)、Immunological Rev. 130巻:151〜188頁を参照されたい)。
【0140】
当業者は、抗体のアミノ酸配列を改変することができ、治療、解析、または診断に用いられる抗体の特性を増強するには、改変が望ましい場合があることを理解する。さらに、抗体の結合特性を大きく減じることなしに、挿入、欠失、または置換により、これらの抗体の1つ以上のアミノ酸を変化させ得ることが理解される。例示的なアミノ酸変化は、類似の分子特徴を示すアミノ酸を用いる置換(すなわち、保存的置換、例えば、以下の、芳香族アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、またはアミドもしくは硫黄を有するアミノ酸のサブグループ内に由来するアミノ酸の変化)である。分子の完全性または結合特性を大きく変化させずに、他の非保存的置換または挿入も行い得る。さらに、一部のアミノ酸変化またはアミノ酸変化の集合により、より良好な結合親和性、より大きな安定性(例えば、プロテアーゼに対する耐性)、選択性、および/または作製の容易さが含まれるがこれらに限定されない抗体の特性が増強される。アミノ酸配列を変化させ、かつ/または特性がより良好な分子を選択する方法は、当業者に公知である。完全抗体の場合、改変後の配列同一性の程度は、少なくとも50%であることが好ましく、少なくとも75%であることがより好ましく、少なくとも90〜95%であることが最も好ましい。これらの抗体の各々が、意図される発明の範囲内にあることを意図する。
【0141】
好ましい実施形態では、Her−3を標的とする抗体を用いて、さらなるHer−3標的化分子を開発することができる。本明細書に記載される抗体の改変は、エフェクター機能の増大、免疫原性の低下、安定性の増大、血清半減期など、薬理学的特性の改善、ならびに作製の容易さおよび収量に対する支援が含まれるがこれらに限定されない品質を改善するのに望ましい場合がある。これらの標的分子の各々が、意図される発明の範囲内にあることを意図する。
【0142】
好ましい実施形態では、ヒトフレームワーク内に、本明細書に記載される、抗体の抗原結合領域(表1Aを参照されたい)を含む、ヒト化抗体を治療的適用のために用いることができる。ヒト化抗体についての数種の方法が報告されている(Jonesら(1986年)、Nature 321巻:522〜525頁; Riechmannら(1988年)、Nature 332巻:323〜327頁;およびVerhoeyenら(1988年)、Science 239巻:1534〜1536頁を参照されたい)。ヒト軽鎖可変ドメイン配列およびヒト重鎖可変ドメイン配列の全レパートリーに対して、可変ドメインの非ヒト配列をコンピュータによりスクリーニングして、げっ歯動物配列に最も近いヒト可変フレームワーク配列を見出すことが典型的である(Simsら(1993年)J. Immunol. 151巻:2296〜2308頁; Chothiaら(1987年)、J. Mol. Biol. 186巻:901〜917頁を参照されたい)。代替的に、コンセンサスフレームワークも用いることができる(Carterら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4285〜4289頁;およびPrestaら(1993年)、J. Immunol. 151巻:2623〜2632頁を参照されたい)。好ましい実施形態では、コンピュータ支援によるデザインを用いて、安定性を付与し、結合特性を保持または改善する配列を選択する。これらの各々が、意図される発明の範囲内にあることを意図する。
【0143】
別の実施形態では、抗体のCDRを用いて、Her−3の同じエピトープに結合するが、天然抗体ではないフレームワークに含有される標的化結合分子を創出することができる。例えば、フレームワークが、抗体の一部であり得る結合分子、例えば、scFvまたはF(ab')を創出する方法が利用可能であることを、当業者は理解する(これらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、WO93/16185;およびCarterら(1992年)、Bio/Technology 10巻:163〜167頁のそれぞれを参照されたい)。当業者はまた、完全に非類縁のタンパク質(細菌性ベータラクタマーゼなど)が、結合化合物を形成するための結合ドメイン(複数可)を適正に提示し得ることも理解することができる。この意味で、本明細書で定義される類縁抗体が、本発明の範囲内にあることを意図する。
【0144】
抗体は、結合だけを介して治療的に作用する場合もあり、他の特性(例えば、酵素活性または毒素の弾頭)を介して治療的に作用する場合もある。一実施形態では、標的化タンパク質を改変して、抗原依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)または補体依存性細胞傷害作用(CDC)を介する治療効果またはより大きな治療効果を及ぼすことができる。別の実施形態では、抗体または標的化タンパク質に毒素をコンジュゲートすることもできる。例示的な低分子毒素には、メイタンシン、カリケアマイシン、およびCC−1065が含まれるがこれらに限定されない(例えば、CarterおよびSenter(2008年)、Cancer J. 14巻:154〜169頁を参照されたい)。加えて、抗体に放射性標識を連結して、標的化治療剤を創出することもできる。生物学的毒素もまた、標的化タンパク質に連結することができ、これらには、ジフテリア毒素、Pseudomonas属外毒素、アブリン、およびリシンが含まれるがこれらに限定されない(Kreitman(2006年)、AAPS J. 18巻:E532〜551頁を参照されたい)。
【0145】
さらなる実施形態では、標的化抗体(またはそれらの断片)を酵素に融合させて、抗体指向性酵素プロドラッグ療法に用いることができる(ADEPT;Bagashawe(1987年)、Br. J. Cancer 58巻:700〜703頁;およびSenterら(1988年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:4842〜4846頁を参照されたい)。別の実施形態では、抗体または標的化タンパク質を、血清半減期などの薬理学的特性を増強する、ポリエチレングリコールなどの分子に融合することができる(HarrisおよびChess(2003年)、Nat. Rev. Drug Discov. 2巻:214〜221頁を参照されたい)。
【実施例】
【0146】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0147】
(実施例1)
様々なレベルのHER3タンパク質を発現している安定な細胞系の生成
全長HER3(NM_001982.2)に対する市販のcDNA(Origene Technologies,Inc.)を制限酵素Not IおよびXba Iで消化し、得られた断片をpcDNA.3 1 Zeocin選択発現ベクターにサブクローニングした。得られたプラスミドを細菌に導入して形質転換し、スクリーニングして正しい挿入を検証した。陽性クローンを配列検証し、細菌で増殖させ、プラスミドをQiagen Maxi−prepキットを使用して精製した。ヒト胎児腎臓細胞(HEK−293)をAmerican Type Culture Collectionから購入し、5%CO中、37℃において、10%FBS、1×ペニシリン−ストレプトマイシン(100Xは10,000U/mlのペニシリン−Gと10,000μg/mlのストレプトマイシンである)、およびGlutamax(GIBCO)を補充したDMEMで維持した。トランスフェクトするより前の日に、細胞をおよそ25〜30%集密に分割し、ペニシリン−ストレプトマイシンを含まない培地で一晩インキュベートした。次いで細胞を、製造者の説明書に従ってFugene HD(Roche)でトランスフェクトした。次の日に培地を新鮮な完全培地と交換し、細胞を完全培地で48時間インキュベートした後、400mg/mLのZeocin(Invitrogen)を加えた。Zeocinの濃度は、トランスフェクトされたプラスミドを含まない野生型293細胞に対して様々な濃度のZeocinを使用して死滅曲線を実行することによって決定した。クローニングリングを使用しておよそ16個のZeocin耐性クローンを単離し、液体窒素で凍結させた。元のクローンのサブセットを首尾よく増殖させることができ、
HER3特異的ELISAキット(R&D Systems,Inc)を使用して、製造者の説明書に従って試験し、過剰発現しているHER3を検証した(図1)。ELISAによって実証された、HER3を高度に発現している1つのクローン(293−H3クローン1)を、最適化アッセイに使用するための対照として選択した。
【0148】
(実施例2)
HER3に対する抗体の生成およびスクリーニング
HER3の細胞質末端に対してエピトープ特異性を持つHER3特異的なモノクローナル抗体(Ab−6)をLabVisionから購入した。VERATAG(登録商標)レポーター(Pro11)およびストレプトアビジンをコンジュゲートしたメチレンブルー(「分子はさみ」)を以前記載されたプロトコールに従って合成し、精製した(例えば、任意の図を含め、上記、および本明細書に参照により組み込まれている米国特許第7,105,308号を参照されたい)。抗体−VERATAG(登録商標)コンジュゲートおよび抗体−ビオチンコンジュゲート、すなわち、Ab6−Pro11およびB9A11−ビオチンを、sulfo−NHS−LC−LC−ビオチン(Pierce)を製造者のプロトコールに従ってリンカーとして使用して作製し、コンジュゲート産物をHPLC(Agilent)によって精製した。一連の所有の抗体を以下の通り生成した。固定した293クローン13細胞またはHER3タンパク質のC末端領域に含有される種々のエピトープを提示している一連のペプチドでマウスを免疫した(図2A)。免疫の期間中、各マウスに、4週間にわたって数回の免疫を受けさせた。ハイブリドーマを作出し、限界希釈物を用いてクローンを単離した。CellSpot(商標)またはELISAスクリーニングを含めた一連のアッセイによって個々のクローンからの馴化培地をプロファイリングし、その後目盛アップし、次いで免疫組織化学的検査(IHC)によってさらにスクリーニングし(図2B)、その後、最終的に化学物質遊離法(メチレンブルー)(図2C)または二重抗体光遊離法(図2D)のいずれかを用いたVERATAG(登録商標)技術によってスクリーニングした。これらの方法を使用してうまく機能したいくつかの抗体を、図2Aに記載している。とりわけ1つの抗体、B9A11は最も強力であり、最大のダイナミックレンジと感受性を示し、実施例5において下記されているアッセイの最終フォーマットの開発へ進展させた。
【0149】
(実施例3)
FACSおよびELISAによる、様々なレベルのHER3を発現している細胞系パネルからのブロックおよびFFPE切片の生成
HER3タンパク質の発現が様々である3つの細胞系、MDA−MB−453、MDA−MB−468およびSKOV−3を、American Type Cell Culture Collectionから購入した。MDA−MB−453およびMDA−MB−468細胞系を、37℃、5%COにおいて、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle medium(DMEM))、10%FBS、1×ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1×Glutamaxで維持した。SKOV3細胞を、37℃、5%COにおいて、10%FBS、1×ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1×Glutamax(GIBCO)を補充したマッコイ5a培地(McCoy’s 5a Media)で維持した。293−H3クローン1細胞を、37℃、5%COにおいて10%FBS、1×ペニシリン−ストレプトマイシンおよび1×Glutamaxを補充したDMEMで維持した。各細胞系に対して少なくとも10個の500mmの培養皿において、細胞をほぼ集密になるまで増殖させた。培地を取り除いた後、細胞を冷たい1×PBSで1回洗浄し、各皿に1×Pen−fix(Thermo Scientific)15mLを加えた。細胞を掻き取り細胞溶液を4℃で一晩(>16時間)固定した。一晩固定した後、細胞を3200×gで15分間遠心分離した。細胞ペレットをゴム製のOリングに移し、濾紙で包み、処理カセットに置いた。処理するために自動Tissue−Tek処理装置を使用した。簡単に記載すると、細胞ペレットを、濃度を次第に上昇させたアルコール、Clear−rite(キシレン代替品)、そしてパラフィンに曝露させた。処理後、パラフィン包埋ステーション(paraffin embedding station)を使用してペレットをブロックに包埋した。細胞ペレットを処理するために使用したすべての溶媒は、Richard−Allen Scientificから入手した。以下の方法によってフローサイトメトリーを用いて、HER3受容体数について同じロットの細胞の割合を試験した。市販のELISAキットを使用し、製造者の推奨に従うことにより(Human ErbB3−DuoSet ELISA;R&D systems)、HER3受容体のレベルを定量化するために細胞の調製物から全細胞溶解物を調製した。ミクロトーム(LEICA)を用いて厚さ7μmの切片を切り取り、正電荷を帯びたガラススライド(VWR)に置いた。スライドを30分間風乾し、次いで70℃に設定した加熱したオーブンで1.5時間焼いた。すべての試料スライドを将来のアッセイのために4℃で貯蔵した。ELISA、フローサイトメトリー、IHCおよびVERATAG(登録商標)比較の結果を図3に示す。
【0150】
(実施例4)
市販の乳癌FFPE切片からの切片の生成
FFPE乳癌ブロックをAsterandから購入した。ミクロトーム(LEICA)を用いて厚さ5μmの切片を切り取り、正電荷を帯びたガラススライド(VWR)に置いた。切片を30分間風乾し、次いでオーブンで、70℃で1.5時間焼いた。すべての試料スライドを将来のアッセイのために4℃で貯蔵した。臨床材料から以前切片化された乳腺腫瘍もこれらの試験に使用した。ガラススライドでH&E染色した腫瘍の例を図4に示す。
【0151】
(実施例5)
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)された細胞系および乳房組織における、Her−3 VERATAG(登録商標)アッセイ
FFPE試料を、一連の溶媒を使用して脱パラフィン/再水和させた。簡単に記載すると、スライドをキシレン(2×、5分)、100%エタノール(2×、5分)、70%エタノール(2×、5分)および脱イオン水(2×、5分)に順次浸漬した。再水和した試料の熱誘導性エピトープ回復(Heat−induced epitope retrieval)を、圧力釜(Biocare)を使用して、1×DAKO(pH9.0)(Lab Vision)250mLを含有するスライドホルダーで行った。室温で30分間冷却した後、スライドを脱イオン水で1回すすいだ。疎水性ペン(Zymed)を使用してスライドに疎水性の円を描いて試薬をスライド上に保持した。次いで、1×PBS中1%マウス血清、1.5%BSAおよびプロテアーゼ阻害剤とホスファターゼ阻害剤のカクテル(Roche)を含有するブロッキングバッファーで試料を1時間ブロッキングした。吸引してブロッキングバッファーを取り除いた後、ブロッキングバッファーで調製した、VERATAG(登録商標)をコンジュゲートした抗体(Ab−6:LabVision、1μg/mL)およびビオチンをコンジュゲートした抗体(B9A11;Monogram proprietary、2μg/mL)の混合物を加え、結合反応物を加湿チャンバー内、4℃で振とうしながら一晩インキュベートした。抗体混合物を吸引し、試料を、1×PBS中0.25%TritonX−100を含有する洗浄バッファーで洗浄し、ストレプトアビジンをコンジュゲートしたメチレンブルーを1×PBS中、2.5μg/mLの濃度で加えた。室温で1時間インキュベートした後、過剰のストレプトアビジン−メチレンブルー試薬を吸引し、試料を洗浄バッファーで1回洗浄した後、脱イオン水を3回交換して洗浄した。0.01×PBS中、3pMのフルオレセインおよび2種のCE内部マーカー(MFおよびML)を含有するイルミネーションバッファー(Illumination buffer)を試料切片に加えた。電子冷却ブロック(Torrey Pine Scientific)を備えた自家LEDアレイイルミネーターを使用して、結合したVERATAG(登録商標)を約4℃で光活性化切断によって遊離させた。照射後、水酸化ホウ素ナトリウムを加えることによってVERATAG(登録商標)中間体を還元して、定量化可能な形態にする。遊離したVERATAG(登録商標)レポーターを含有するCE試料を上記スライド上の組織切片上から回収し、CE試料における遊離したVERATAG(登録商標)レポーターを、30℃で6kV、50秒のCE注入条件下、ABI3130 CE機器(22cmのキャピラリーアレイ;Applied Biosystems)で分離し、検出した。臨床検査室における一般的なH3Tアッセイのワークフローを図5に示す。
【0152】
(実施例6)
CEピークの分析、腫瘍面積の正規化およびバッチの正規化
VERATAG(登録商標)Informerソフトウェアを使用してVERATAG(登録商標)の同定および定量化を行った(例えば、米国特許出願公開第2007−0203408−A1号を参照されたい)。未加工のCE電気泳動図においてVERATAG(登録商標)シグナルを分析するために、2種のCE内部マーカー、MF(最初のマーカー)およびML(最後のマーカー)を使用して、VERATAG(登録商標)ピークを、それらの電気泳動移動度、または2種のマーカーに対する移動時間t、すなわち[t(VERATAG(登録商標))−t(MF)]/[t(ML)−t(MF)]に従って同定した。次いで、同定されたVERATAG(登録商標)ピークを、各VERATAG(登録商標)についてピーク面積を算出することによって定量化した。組織切片からのVERATAG(登録商標)回収におけるばらつき、およびキャピラリーアレイにわたるCE注入効率および/または検出感度における処理のばらつきを補正するために、フルオレセイン(3pM)をイルミネーションバッファーに含め、各試料の処理における内部参照対照として一緒に電気泳動した。次いで、各VERATAG(登録商標)ピークの面積を、VERATAG(登録商標)ピーク(VERATAG(登録商標)ピーク面積)を内部フルオレセインピーク(フルオレセインピーク面積/3pMに対して面積正規化することによってRFUまたはRPAとして報告した。これは、可変腫瘍試料に対するRPA*IB 容積/TA(=相対ピーク面積×試料切片にローディングされたイルミネーションバッファーの容積(IB)÷腫瘍面積mm(RPA*IB 容積/TA=pモル/L*L/mm=pモル/mm)として定量化される。詳細には、VERATAG(登録商標)レポーターのCE蛍光シグナル強度、またはピーク面積(PAVeraTag(登録商標))は、時間に対して積分した相対蛍光単位(シグナルの高さ)で得られる(RFU−S/S)。相対ピーク面積(RPAVeraTag(登録商標))は、VERATAG(登録商標)ピーク面積(PAVeraTag(登録商標))を既知濃度の内部フルオレセイン標準(PA)に関して正規化することによって測定することができ、したがって、測定される検体の最初の濃度に比例する。VERATAG(登録商標)アッセイのシグナルは腫瘍含量に比例する定量的な読み出し情報であるので、臨床試料にわたってVERATAG(登録商標)アッセイシグナルを正確に比較するには、このパラメータにおける差異を調整する必要がある。したがって、試料のVERATAG(登録商標)アッセイシグナルデータ収集に対して腫瘍含量を測定し、その腫瘍含量を使用してVERATAG(登録商標)アッセイの結果を正規化する。腫瘍試料が非常に小さいまたは非常に大きい場合、反応体積(すなわち、抗体、ストレプトアビジンをコンジュゲートしたメチレンブルーおよびイルミネーションバッファー試薬の体積)を調整し、この調整を腫瘍含量の正規化に反映させることに注意するべきである。移動時間、フルオレセイン、イルミネーションバッファーおよび腫瘍面積についてVERATAG(登録商標)ピーク面積を調整した後、対照および試料を、それらの調整されたピーク面積にそれぞれの算出されたバッチ正規化係数(BNF)を掛けることによって正規化する。調整されたRPA値のそれぞれに、それぞれのBNFを掛けて正規化RPA値を得る。この正規化RPA値は定義上単位をもたないので、その値はVERATAG(登録商標)単位で示される。所与の試料についての報告できる(役に立ち、飽和していない)正規化された値すべてを平均してその試料についての最終的な値を決定する。
【0153】
種々の品質管理チェックを開発した。それによりデータが最高品質のものであることを確実にする。
【0154】
1.範囲外のフルオレセイン。フルオレセインが範囲外である試料追跡は役に立たない。フルオレセインの範囲は、調整されたフルオレセイン値+/−XX%の中央値を使用することによって算出する。XX%の値、一般には20〜40%は調整可能であり、個々のテンプレートに関連する。試料のピークの絶対的な高さが、飽和ピークと称される7000単位を超える場合、その試料ピークは役にたたない。
【0155】
2.RPAは0.03以上でなければならない。
【0156】
3.無希釈の変換されたピーク試料が、RPAが<0.03であるために役に立たない場合、対応する変換されたピーク希釈試料すべても役に立たない。
【0157】
4.進行するために、少なくとも2つの変換されたピーク対照が、変換されたピークバッチ正規化についての値を必要としなければならない。
【0158】
5.追跡品質が不十分な試料または対照は役に立たない。
【0159】
6.イルミネーションバッファーのみの対照が混入を有するならば、追跡品質が影響を受ける可能性がある場合、例えば、混入ピークが遊離ピークとオーバーラップする場合は、試料は役に立たない可能性がある。
【0160】
7.バッチ正規化が不十分なバッチは役に立たない。
【0161】
8.バッチ正規化係数が異常に高いバッチは役に立たない。
【0162】
各試料について、VERATAG(登録商標)アッセイの後にH&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)染色および評価を行って、腫瘍細胞の存在を確実にし、腫瘍面積の推定を可能にした。これらのスライドを脱パラフィンし、水和させ、染色し、その後、標準の手順を用いて脱水し、マウントした後、顕微鏡で検査する。
【0163】
(実施例7)
ダイナミックレンジを増大させるための抗体濃度の最適化
Ab−6抗体およびB9A11抗体の最適濃度を、アッセイのダイナミックレンジ全体にわたる細胞系パネル(293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468およびSKOV3)に対するVERATAG(登録商標)HER3トータルアッセイ(上記)における最終濃度を変化させることによって決定した。次いで、これらの結果を、同じ細胞系のFFPEブロック調製物からのHER3のフローサイトメトリーおよびELISAの結果に基づいて予想される倍率変化と比較した。2:1のB9A11対Ab−6の比を丸で囲んだ図6に示した通り、同じ細胞系セットにおけるELISAおよびフローサイトメトリーと比較して予想される倍率変化と比較したHER3の正確な検出に基づいて、最適濃度、2mg/mLのB9A11−ビオチンおよび1mg/mLのAb−6 Pro−11が、実行するために選択された。
【0164】
(実施例8)
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの正確度
4つのよく特徴付けられた細胞系(293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB468、MDA−MB−231およびSKOV3)から首尾よく複製された3つの複製物を使用して、1バッチのHER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイを行い、次いでVERATAG(登録商標)測定の正確度を自家で生成したフローサイトメトリーおよびELISAのデータと比較した。結果の100%が、293H3−クローン1>MDA−MB−453>MDA−MB468>SKOV3という点においてフローサイトメトリーおよびELISAからの自家データと一致した。4つの細胞系試料のいずれについてもシグナルレベル間にオーバーラップは観察されなかった、すなわち、各細胞系が完全に分離された。ELISAおよびフローサイトメトリーの両方によりHER3の総レベルに対する内部データセットを生成した。4つの正確度の細胞系についての結果を図7に示す。HER3のフローサイトメトリーからの結果とHER3のELISAからの結果は、これらの交差検定技術を使用することによって同じ順位序列(same rank order)保存性が実証されたという点において、非常に類似していた。
【0165】
(実施例9)
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの感度
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの感度を、低いHER3発現の対照細胞系であるMDA−MB−468の8つの複製物を含有する1バッチを、低/陰性HER3発現の対照細胞系であるSKOV3の8つの複製物と比較することによって決定した。MDA−MB−468の各複製物についての値を、対比較によってSKOV3複製物と比較して感度を決定した。MDA−MB−468とSKOV3との間で対比較したうちの100%(64/64)が、MDA−MB−468>SKOV3という結果になった(図8)。
【0166】
(実施例10)
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの再現性
アッセイ間の再現性を、4つのよく特徴付けられた細胞系(293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468およびSKOV3)に対して、種々の機器類(CE、イルミネーター)、数人のオペレーターを使用し、4週間にわたってアッセイを行って、上記の通りHER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイを8つの別々のバッチで行うことによって決定した。バッチ正規化の手順の後、データを8バッチにわたって比較して再現性を確認した。ダイナミックレンジにわたる再現性は、8〜15%であった(図9参照)。
【0167】
(実施例11)
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの精度
アッセイ内の再現性を、1バッチ/細胞系のHER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイを行い、3つの対照細胞系(293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468)のそれぞれの15個の複製物の動作を比較することによって決定した。各バッチの15個の複製物について対比較を行ってアッセイの精度を決定した。293H3−クローン1のデータの95%が1.2倍以内であり、MDA−MB−453のデータの100%が1.23倍以内であり、MDA−MB−468のデータの95%が1.37倍以内であった。結果を図10に示す。
【0168】
(実施例12)
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの直線性
HER3 VERATAG(登録商標)の結果の直線性を、よく特徴付けられた細胞系対照である293H3−クローン1、MDA−MB−453、MDA−MB−468)を取得し、連続的な「縮小(cut−down)」実験を行って以下の寸法、1、1/2、1/4、1/16のFFPE切片を創出することによって決定した。次いで、切片サイズに関してアッセイの直線性を理解するために、これらの「縮小」切片を、H3T VERATAG(登録商標)アッセイにおいて処理し、最終的な切片面積の正規化データを対様式で比較した(図11)。MDA−MB−453は、元の切片サイズのおよそ1/16に至るまで直線であり、一方MDA−MB−468は、元の切片サイズのおよそ1/2であるはずのところに至るまで直線であった。結果を図11に示す。
【0169】
(実施例13)
HER3トータルVERATAG(登録商標)アッセイの特異性
患者由来の腫瘍試料および細胞系対照を、VERATAG(登録商標)HER3トータルアッセイを用いて、アイソタイプ対照抗体を使用して処理した。HER3 Ab−6−Pro11に対して、一致したアイソタイプ対照はIgG1−Pro11であった。HER3 B9A11−ビオチンに対して、一致したアイソタイプ対照は同様にIgG1−ビオチンであった。これらの反応からのシグナルは抗原特異的ではなく、非特異的なバックグラウンドを表す。試料を、以下の3つのフォーマットのそれぞれにおいて処理し、同じバッチ内で並列に処理した:
フォーマット1:HER3 Ab6−Pro11/B9A11−ビオチン(通常のフォーマット)
フォーマット2:HER2 Ab6−Pro11/IgG1−ビオチン
フォーマット3:IgG1−Pro11/B9A11−ビオチン
各IgG1フォーマット(フォーマット2およびフォーマット3)からの試料の結果を、各バッチに存在する陰性対照であるSKOV3(比較パラメータA)と比較した。試料の結果を、それぞれの実際のHER3総シグナル(フォーマット1)とも比較した。結果を図12に示す。
【0170】
(実施例14)
臨床的な乳腺腫瘍の測定とダイナミックレンジ
試験集団は、1999〜2006年の間の単一の施設におけるトラスツズマブに基づく療法(the International Serum Her−2/neu Study Group trial)の間に前向きに観察された患者(n=105)で構成された。HER−2/neuを過剰発現している(HercepTest;DAKO Diagnostics、Austriaによって決定された腫瘍細胞IHC3+が>10%)および/またはERBB2が増幅した(すべてのIHC2+の症例において義務があるFISH試験で陽性を示す)MBCを持つ外来患者(ECOG PS 0〜2、年齢>18歳、推定寿命>12週間)のみを含めた。さらに、患者にはトラスツズマブ未処置であり、治療開始前4週間以内に2次元的に測定可能な疾患の進行を有すること(以前に放射線照射した病変は除外)が要求された。この試験群の試行実験からの試料を、8つの別々のバッチでのH3T VERATAG(登録商標)アッセイにおいて処理した。各バッチについて、腫瘍面積分析の他にCEピーク分析も行い、それに応じてバッチを正規化した。アッセイにおいて処理した105個の患者試料のうち、85個の試料が、検出限界を超える測定可能なH3Tレベルを有し、8つの患者試料が検出可能な腫瘍を有さず、1つの試料について、データを除いてフルオレセイン不足が実証され、最終的に、8つの患者試料がアッセイの検出限界を下回り、低/陰性H3T発現と見なされた。結果を図13に示す。
【0171】
(実施例15)
トラスツズマブへの反応に対する最適なカットオフの決定
位置走査分析を用いて最適なカットオフを決定し、それにより、統計的に有意なカットオフを上回る患者は、このカットオフを下回る患者と比較して好ましくない無増悪期間(TTP)を有した(図14)。カットオフは、試験した集団の結果のおよそ中央値であった(0.158、HR=2.3、p=0.0004。TTPは、トラスツズマブを含有する治療の開始から増悪(SWOG)または打ち切りまでの時間として定義され、OSはトラスツズマブを含有する治療の開始から死亡または打ち切りまでの時間として定義された。この患者集団の全生存期間に着目した場合、有意なカットオフを決定することはできなかったが、0.158カットオフを使用したOSにトレンドがあった(HR=1.7;p=0.059)。
【0172】
(実施例16)
TTPについてのカプラン・マイヤー(KM)分析
以前報告されたH2Tカットオフ(logH2T≧1.14)を使用して、患者を、HER2正常群(N=26、TTP中央値=4.1mos)とHER2過剰発現群(N=55、TTP中央値=11.1mos、HR=0.43、p=0.0002)とに細分した。HER2過剰発現群において、位置走査によって定義された最適なカットオフ(H3T>0.158;図14)を上回るH3T発現のレベルでは、カットオフを下回るH3T発現(N=30、TTP中央値=13.1mos、HR=2.7、p=.0002)と比較して短い無増悪期間中央値(N=25、TTP中央値=6.1mos)が予測された。HER2過剰発現サブグループを調査する単変量コックス比例ハザード分析により、TTPの最も重要な予測因子としてH3Tが同定された(特定のカットオフを上回る対下回る)(HR=2.98、p=0.0004)。これらの結果を図15に示す。
【0173】
(実施例17)
他の悪性腫瘍におけるVERATAG(登録商標)によるHER3の総発現
H3T VERATAG(登録商標)アッセイを、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、滑膜の腫瘍を含めた乳癌以外の多くの異なる悪性腫瘍に対して行った(図16)。これらの癌のすべてについて、以下の範囲の順位序列で同様のダイナミックレンジが観察された:卵巣癌>滑膜癌≧結腸癌。これらの腫瘍におけるダイナミックレンジは、癌に応じて0.5〜1.5logにわたる。
【0174】
(実施例18)
P95と併せたHER3の測定およびトラスツズマブへの反応との相関
以前報告されたP95のカットオフ(米国特許出願第12/629,037号)を使用して、上記のHER−2が過剰発現している患者を、そのHER3レベルに基づいて最初に細分した後、さらに層別化して、図17に示した4つの患者サブグループを生じさせた。位置走査によって予測された適切なカットオフを下回ると定義された、P95およびHER3が低レベルである患者は、他のどのサブグループよりも長い無増悪期間中央値(TTP=15.0mos)を有した(トレンドに対するログランク検定、p<0.0001)。P95およびHER3が高レベルである患者は、最短の無増悪期間中央値(TTP=3.2mos)を有した。結果を図17に示す。
【0175】
(実施例19)
HER2、HER3およびP95の測定ならびにトラスツズマブへの反応との相関
実施例17における患者集団を、図18に示した通り、そのHER2、P95およびHER3のレベルによって細分した。位置走査の方法論によって定義された、高いHER2、低P95および低いHER3である患者は、高レベルのHER2および高レベルのHER3またはP95またはその両方を有する患者よりも長い無増悪期間を有し、後者はH2T VERATAG(登録商標)アッセイによって決定された、低いHER2値を有する患者と同様の無増悪期間を示した。HER2発現レベルが正常であるサブグループ(H2Tlo)内で、FISH陽性群およびFISH陰性群は同様の無増悪期間を経験した。
【0176】
本明細書に記載のすべての刊行物および他の材料は、本発明を照らすため、または実施についての付加的な詳細を提供するために使用され、その全体が参照により組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に由来する試料におけるHer−3または複合体化したHer−3の存在および/または量を測定および/または定量化する方法であって、試料を供給するステップと、前記試料におけるHer−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量を決定するステップを含む方法。
【請求項2】
Her−3レベルが高ければ、標的化療法が前記患者に奏効する可能性が低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Her−3レベルが低ければ、前記標的化療法が前記患者に奏効する可能性がある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が腫瘍試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、FFPE試料または可溶化FFPE試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、乳癌試料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記測定が、広範なダイナミックレンジにわたり定量的であり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料を結合化合物と混合するステップと、Her−3および/または複合体化したHer−3に結合した前記結合化合物の存在および/または量を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結合化合物が、Her−3に特異的に結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記結合化合物が、抗体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、前記軽鎖および前記重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号9および11を有する抗体、または前記軽鎖および前記重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、表1に示される配列番号10および12を有する抗体のうちの少なくとも1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
(i)Her−3および/または複合体化したHer−3を含有し得る試料と;(ii)有効近接距離を有する、Her−3に結合することが可能な近接プローブと;(iii)Her−3に結合することが可能であり、1つ以上のシグナル伝達分子が結合している少なくとも1つの結合化合物とを混合するステップを含み、ここで、前記有効近接距離内において前記近接プローブおよび前記結合化合物が結合すると、前記Her−3および/または複合体化したHer−3の存在および/または量と相関するシグナルが分子タグから生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記近接プローブおよび/または前記結合化合物が、Her−3または少なくとも1つの他の検体に特異的に結合することが可能である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記近接プローブおよび/または前記結合化合物が、抗体をさらに含み、各抗体が、Her−3における特定のエピトープに結合し得る、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記近接プローブは、切断誘導部分を有する切断プローブを含み、前記少なくとも1つの結合化合物は、切断可能な結合により1つ以上の分子タグが結合しており、前記切断可能な結合が前記有効近接距離内において切断されることにより、Her−3の存在および/または量と相関するシグナルが生成され得る、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
標的化療法による治療が、癌を有する被験体に奏効する可能性があるかどうかを判定し、疾患の時間経過を予測し、かつ/または前記被験体の癌の時間経過において重要事象が生じる確率を予測する方法であって、前記被験体の癌に由来する生物学的試料においてHer−3の量を測定するステップを含み、ここで、前記方法が、Her−3レベルに依存する、方法。
【請求項19】
前記Her−3レベルが高ければ、標的化療法が前記患者に奏効する可能性が低い、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Her−3レベルが低ければ、前記標的化療法が前記患者に奏効する可能性がある、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体の癌が、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、または胃癌である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体の癌が、早期乳癌(すなわち、アジュバント療法)または転移性乳癌のうちの少なくとも1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記標的化療法が、少なくとも1つのHerファミリー標的化剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記Herファミリー標的化剤が、多重標的化剤または単一標的化剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記Herファミリー標的化剤が、二重キナーゼ阻害剤または二重特異性抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記Herファミリー標的化剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、またはペルツズマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
奏効する可能性、増悪までの期間が長い可能性、および/または重要事象が生じる可能性を、全生存率として、無増悪期間として、無病生存期間として、無増悪生存期間として、かつ/またはRECIST基準を用いる腫瘍縮小効果として測定する、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
本発明の方法による治療が奏功する可能性がないHer−2陽性癌に被験体が罹患していることを判定し、次いで、前記被験体に、有効量の、異なる治療剤を投与する前記治療の選択肢について、医療担当者に助言するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
配列番号1〜8を有するペプチドのうちの1つに対して産生させた抗体。
【請求項30】
(a)それぞれ、配列番号13、14、および15に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)配列番号16、17、および18に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体;または(a)それぞれ、配列番号19、20、および21に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域と、(b)それぞれ、配列番号22、23、および24に示される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体のうちの少なくとも1つである、請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号9および11を有する抗体、または前記軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が、それぞれ、配列番号10および12を有する抗体である、請求項29に記載の抗体。

【図2A】
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【図4】
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【図1】
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【図2B】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−515226(P2012−515226A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546410(P2011−546410)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/021281
【国際公開番号】WO2010/083470
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(511172461)ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス (3)
【Fターム(参考)】