説明

HGF/HGFR活性の観察と調節

リンパ管の発生及び機能を調節するために肝細胞増殖因子活性を調節するための方法及び組成物を提供する。皮膚障害、リンパ浮腫、及び転移性癌の観察及び治療のための方法及び組成物を開示する。また、肝細胞増殖因子依存性リンパ管新生の阻害剤を同定する方法も説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
当該出願は、2005年3月31日に出願された米国特許出願番号第60/667,463号に対する優先権を主張する。この出願の内容全体を本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
肝細胞増殖因子(HGF)は、ヒト血清中に見られる増殖因子である。HGF受容体(HGFR)は、c-Met癌原遺伝子の生成物として同定された。例えば、Bottaroら、Science, 251:802-804ページ(1991年);Naldiniら、Oncogene, 6:501-504ページ(1991年);WO 92/13097;及びWO 93/15754を参照のこと。
【発明の開示】
【0003】
概要
1つの側面において、開示は、望ましくない皮膚の症状、例えば、皮膚の構造を損なう症状、を有する対象の治療方法を特徴とする。その方法は、治療的有効量のHGF/HGFRモジュレーターを対象に投与するステップを含む。1つの側面において、開示は、医薬品の製造における治療的有効量のHGF/HGFRモジュレーター(例えば、作動薬又は拮抗薬)の使用を特徴とする。
【0004】
1つの態様において、モジュレーターは、HGF/HGFR作動薬である。HGF/HGFR作動薬は、対象におけるHGF/HGFR活性を直接的又は間接的に増強する作用物質である。
作動薬は、増強されたリンパ管形成が望まれる症状を治療するために、又はその症状を治療するための医薬品の製造において使用されてもよい。そのような症状には、リンパ浮腫、例えば、後天性リンパ水腫が含まれた。後天性リンパ水腫の例には、外科処置又は放射線療法後になったリンパ浮腫、又は、例えば、病原菌による感染、例えば、フィラリア症などの感染、によって少なくとも部分的に引き起こされたリンパ浮腫が含まれる。増強されたリンパ管形成が望まれる他の症状には、老化した皮膚又は痛んだ皮膚、例えばUVBによって痛んだ皮膚、が含まれる。更なる他の症状には、遺伝的又は環境要因、例えば、紫外線、によって部分的に引き起こされたものが含まれる。例えば、前記症状は、表皮剥離、例えば、老化又は紫外線への過度の暴露によって引き起こされた表皮剥離である。
【0005】
多くのHGF/HGFR作動薬が、HGFRシグナル伝達活性を高める。HGF/HGFR作動薬の例には、(例えば、成熟ヘテロ二量体型に修飾された)肝細胞増殖因子ポリペプチド、又は生物学的に活性なその断片若しくは類似体を含めたタンパク質、肝細胞増殖因子、又は生物学的に活性なその断片若しくは類似体をコードする核酸が含まれる。HGFR活性を高める他のタンパク質及び分子、例えば、抗体及び小分子もまた、使用されてもよい。例えば、HGFRに結合し、そして、必要に応じて架橋(例えば、二量化)する抗体が、HGFR活性に使用されてもよい。
【0006】
例えば、望ましくない症状は、炎症性又は自己免疫性皮膚障害(例えば、乾癬)、あるいは酒さ性皮膚病(rosacea dermatosis)である。治療的有効量のHGF/HGFR作動薬が、炎症性又は自己免疫性皮膚障害又は酒さ性皮膚病を治療するための医薬品の製造において使用されてもよい。
【0007】
1つの態様において、モジュレーターは、HGF/HGFR拮抗薬である。HGF/HGFR拮抗薬は、細胞又は対象におけるHGF/HGFR活性を直接的又は間接的に低下させる作用物質である。拮抗薬には、核酸及びタンパク質、例えば、抗体又は可溶性HGF受容体断片が含まれる。例えば、前記拮抗薬は、HGFと相互作用し、そして、例えば、細胞表面のHGFRに対するHGF結合親和性を低下させる、タンパク質であってもよい。例えば、前記タンパク質は、(i)HGF若しくはHGFRを認識する抗体、又は(ii)HGFRの細胞外領域を含むタンパク質、例えば、(例えば、Fcドメインに融合した)可溶性HGF受容体であってもよい。拮抗薬の例には、以下の:HGF mRNAを結合できるか、又はその他の方法でHGF mRNA、例えば、mRNAの産生、プロセシング、若しくは翻訳、を抑制できる核酸分子が含まれる。更に他の拮抗薬には、以下の:ドミナント・ネガティブなHGFタンパク質又はその断片、及びHGF核酸発現を減少させる作用物質(例えば、人工転写因子若しくは人工転写因子をコードする核酸)が含まれる。
【0008】
一部の実施において、モジュレーターは、HGF又はHGFRの内在レベルを低下させる。
1つの側面において、開示は、腫瘍性疾患、例えば、転移性癌、特に、リンパ管内への細胞転移を伴うもの、又はリンパ節に転移する可能性を持った癌、を患うか、又はそうした危険性がある対象の治療方法を特徴とする。前記方法は、前記対象においてHGF/HGFR活性を低下させる治療的有効量のHGF/HGFR拮抗薬をその対象に投与するステップを含む。HGF/HGFR拮抗薬の治療的有効量は、腫瘍性疾患、例えば、転移性癌を患うか、又はそうした危険性がある対象を治療するための医薬品の製造において使用できる。
【0009】
拮抗薬は、核酸及びタンパク質、例えば、抗体又は可溶性HGF受容体断片を含む。例えば、前記拮抗薬は、HGFと相互作用し、そして、例えば、細胞表面HGFRに対するHGF結合親和性を低下させるタンパク質又は他の作用物質であってもよい。例えば、前記タンパク質は、HGF抗体、又はHGFRの細胞外領域、例えば、可溶性HGF受容体であってよい。拮抗薬の例には、以下の:例えば、HGF mRNAを結合するか、又はその他の方法でHGF mRNA、例えば、mRNAの産生、プロセシング、若しくは翻訳、を抑制することができる核酸分子が含まれる。更に他の拮抗薬には、以下の:ドミナント・ネガティブなHGFタンパク質又はその断片、及びHGF核酸発現を減少させる作用物質(例えば、人工転写因子又は人工転写因子をコードする核酸)が含まれる。
【0010】
他の側面において、開示は、腫瘍性疾患、例えば、転移性癌、特に、リンパ管内への細胞転移を含むもの、又はリンパ節に転移する可能性を持った癌、を患うか、あるいはそうした危険性のある対象の治療方法を特徴とする。前記方法は、前記対象においてα9インテグリン活性を低下させる治療的有効量のα9インテグリン拮抗薬をその対象に投与するステップを含む。例えば、前記拮抗薬は、α9インテグリン又はカウンターパート・インテグリンβサブユニットと相互作用し、そして、例えば、細胞へのインテグリン結合親和性を低下させるタンパク質又は他の作用物質である。例えば、前記タンパク質は、α9インテグリン、カウンターパート・インテグリンβサブユニット、又はα9インテグリン受容体の細胞外領域に対する抗体であってよい。α9インテグリン拮抗薬の治療的有効量は、腫瘍性疾患、例えば、転移性癌を患うか、又はそうした危険性を持つ対象を治療するための医薬品の製造において使用されてもよい。
【0011】
拮抗薬の例には、以下の:α9インテグリンmRNAを結合するか、又はその他の方法でα9インテグリンmRNA、例えば、mRNAの産生、プロセシング、又は翻訳、を抑制することができる核酸分子が含まれる。更に他の拮抗薬には、以下の:ドミナント・ネガティブなα9インテグリン・タンパク質又はその断片、及びα9インテグリン核酸発現を減少させる作用物質(例えば、人工転写因子又は人工転写因子をコードする核酸)が含まれる。更に他の側面において、開示は、(例えば、対象から得られた細胞を使用する)細胞又は対象の評価方法を特徴とする。前記方法は、細胞又は対象からの細胞におけるインテグリンα9及びスタニオカルシン1のmRNA又はタンパク質の発現を評価するステップを含む。前記方法は、対象におけるHGF活性を評価するために使用できる。例えば、対象から得られた(単数又は複数の)細胞には、内皮細胞、例えば、リンパ内皮細胞(LEC)が含まれる。細胞又は対象は、例えば、評価前、評価中、又は評価後に、本明細書中に記載の作用物質、例えば、HGF/HGFRの作動薬又は拮抗薬で治療されることができる。前記方法は、本明細書中に記載の障害を患うか、又はそうした危険性がある対象、あるいは本明細書中に記載の作用物質で治療されてよい対象を観察するために使用できる。
【0012】
他の側面において、開示は、リンパ内皮細胞活性、例えば、増殖又は遊走、を調節する化合物の同定方法を特徴とする。前記方法は、以下のステップ:HGF/HGFR活性を観察することができる細胞又は生物体を準備し;上記細胞又は生物体を、試験化合物と接触させ;そして、上記細胞又は生物体におけるHGF/HGFR活性を評価する、を含む。例えば、前記細胞、又はそのような細胞を含む生物体は、HGF/HGFR活性のレポーターを含む。HGF/HGFR活性は、例えば、タンパク質、mRNA発現、又はレポーター活性、をアッセイすることによって評価できる。レポーター活性又は他の関連パラメーターにおける変化は、例えば、HGF/HGFR活性における変化を示す。前記方法は、細胞増殖又は細胞遊走、例えば、リンパ内皮細胞の増殖又は遊走に対する試験化合物の効果を評価するステップを更に含むことができる。
【0013】
1つの態様において、レポーターは、検出可能なタンパク質をコードする配列、並びにHGF又はHGF-R遺伝子のプロモーター領域、例えば、転写開始部位から少なくとも100、200、300、500、800、1000、2000、又は5000塩基上流までの位置、開始METコドンから少なくとも100、200、300、500、800、1000、2000、又は5000塩基上流までの位置、又はTATAボックスから少なくとも100、200、300、500、800、1000、2000、又は5000塩基上流までの位置の領域、を含む作動できるように連結されたプロモーターを含む遺伝子である。
前記細胞又は生物体は、通常、哺乳動物、例えば、ヒト、又はヒト以外、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サルなど、である。
【0014】
他の側面において、開示は、内皮細胞活性を調節する化合物、例えば、肝細胞増殖因子依存性リンパ内皮細胞増殖又は遊走を抑制する化合物、の同定方法を特徴とする。前記方法は、以下のステップ:肝細胞増殖因子受容体を発現する内皮細胞(例えば、リンパ内皮細胞)を準備し;肝細胞増殖因子を伴った内皮細胞を、試験化合物と接触させ;そして、例えば、性質、例えば、HGF/HGFRによって調節される性質、例えば、増殖又は遊走など、に関して細胞を評価する、を含む。例えば、前記方法は、リンパ内皮細胞の増殖又は遊走が試験化合物の存在下で変更されるかどうか、測定するステップを含んでもよい。増殖又は遊走の減少は、試験化合物が肝細胞増殖因子依存性リンパ内皮細胞増殖を抑制することを示唆する可能性がある。
【0015】
前記内皮細胞は、哺乳動物細胞、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、又はヒト細胞であってよい。前記細胞を培養されるか、又は分離されるかもしれず;例えば、前記細胞は、細胞株又は初代細胞からである。1つの態様において、細胞は、Prox1及びヒアルロナン受容体LYVE-1を発現する。
【0016】
前記方法は、他のHGF/HGFR経路モジュレーターの存在下、例えば、可溶性HGFを含むタンパク質、HGFRの可溶性細胞外ドメインを含むタンパク質、又はHGF又はHGFRに対する抗体の存在下、試験化合物を評価するステップを含んでよい。
【0017】
前記方法は、例えば、試験化合物が減少を引き起こすかどうか測定するために、肝細胞増殖因子受容体のチロシン・リン酸化を評価するステップを含んでよい。1つの態様において、リンパ内皮細胞は、組み換え型肝細胞増殖因子受容体又はその突然変異体を発現する。
【0018】
前記方法は、試験化合物を生物体、例えば、ヒト又はヒト以外の哺乳動物に投与するステップを更に含んでよい。前記方法は、試験化合物、又は例えば、医薬として許容される担体と化合物を混ぜ合わせることによって、医薬組成物としての試験化合物の生物活性を保持する修飾された試験化合物を処方するステップを更に含んでよい。
【0019】
更に他の側面において、開示は、試験化合物、例えば、試験生物、例えばHGF/HGFR経路活性のレポーターを含むトランスジェニック生物体、に局所的に適用される化合物、の評価方法を特徴とする。前記方法は、試験化合物を試験生物に接触させ、そして、HGF/HGFR経路活性を評価するステップを含む。例えば、評価は、HGF、HGFR、あるいはHGFRによって調節される遺伝子又は遺伝子産物、例えば、α9インテグリン又はスタニオカルシン1のタンパク質又はmRNA発現を評価するステップを含んでもよい。前記方法は、また、他のHGF/HGFR経路モジュレーターの存在下、例えば、可溶性HGFを含むタンパク質、HGFRの可溶性細胞外ドメインを含むタンパク質、又はHGF又はHGFRに対する抗体の存在下、試験化合物を評価するステップも含んでよい。
【0020】
1つの態様において、レポーターは、検出可能なタンパク質をコードする配列、及びHGF、HGFR、α9インテグリン又はスタニオカルシン1遺伝子のプロモーター領域を含む作動できるように連結されたプロモーター、例えば、転写開始部位から少なくとも100、200、300、500、800、1000、2000、又は5000塩基上流までの位置、開始METコドンから少なくとも100、200、300、500、800、1000、2000、又は5000塩基上流までの位置、又はTATAボックスから少なくとも100、200、300、500、800、1000、2000、又は5000塩基上流までの位置の領域、を含む遺伝子である。前記方法は、また、2つ以上の前述のレポーターを評価するステップも含んでよい。
【0021】
前記方法は、それがHGF/HGFR経路活性を増強するか、又は減少させる場合に、(例えば、試験化合物のライブラリから)試験化合物を選択するステップを含んでよい。選択された試験化合物は、例えば、局所投与又は他の投与経路に好適な、例えば、医薬組成物に、処方されてよい。前記方法は、対象、例えば、本明細書中に記載の障害を患うか、又はそうした危険性を持つ対象、に医薬組成物を投与するステップを更に含んでよい。
【0022】
1つ以上の本発明の態様の詳細は、添付の図面、及び以下の記載において説明される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、記載及び図面、並びに請求項から明らかになる。引用された特許、出願、及び参考文献の全てが、本明細書中に援用される。
【0023】
詳細な説明
我々は、特に、リンパ系のリンパ内皮細胞(LEC)において、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)が高度に発現されることを見つけ出した。HGFでのLECの処理は、脈管内のLECsの増殖、遊走、及び組織化を促進する。加えて、マウスへのHGFの投与は、新しいリンパ管形成を強力に促進した。更に、LEC遊走の誘導は、α9インテグリンを介して主に媒介された。
従って、HGF/HGFR活性を調節することによって、リンパ系に影響を受けた病状を治療することが可能である。対象は、また、HGF/HGFR活性を評価するパラメーターを評価することによっても診断できる。HGF/HGFR活性を調節する作用物質は、例えば、本明細書中に記載のアッセイ及びスクリーニング方法を使用して同定できる。
【0024】
I. HGF及びHGFR
ヒト血清から精製される主形態に該当する成熟型のヒトHGF(hHGF)は、アミノ酸R494とV495の間の、ヒト・プロホルモンのタンパク質分解的開裂によって得られたジスルフィド結合ヘテロ二量体である。この開裂過程は、440個のアミノ酸から成るαサブユニット(M.W. 69kDa)及び234個のアミノ酸から成るβサブユニット(M.W. 34kDa)で構成された分子を生じる。αとβ鎖は、プレプロ前駆体タンパク質をコードする単一のオープン・リーディング・フレームから産生される。代表的な成熟hHGFの予測される一次構造において、鎖間S-S架橋が、α鎖のCys487とβ鎖内のCys604の間で形成される。(例えば、Nakamuraら、Nature 342:440-443ページ(1989年)を参照のこと)。α鎖のN末端は、メチオニン基で始まる54個のアミノ酸によって先行される。このセグメントは、31残基の特徴的な疎水性リーダー(シグナル)配列、及びプロ配列を含む。α鎖は、第55アミノ酸(aa)にて始まり、そして、4つのクリングル・ドメインを含む。クリングル1ドメインは約第128aa〜約第206aaに広がり、クリングル2ドメインは約第211aa〜約第288aaにあり、クリングル3ドメインは約第303aa〜約第383aaと規定され、そして、クリングル4ドメインはα鎖の約第391aa〜約第464aaに広がる。代表的なHGFは、α鎖の294位及び402位、並びにβ鎖の566位及び653位に位置する4つの推定グリコシル化部位を含む。
【0025】
肝細胞増殖因子受容体(HGFR)は、c-Met癌原遺伝子の産物として同定された、Bottaroら、Science, 251:802-804ページ(1991年);Naldiniら、Oncogene, 6:501-504ページ(1991年); 1992年8月6日に公開されたWO 92/13097;1993年8月19日に公開されたWO 93/15754。受容体(別名c-Met)は、通常、天然型では、190kDaのヘテロ二量体(ジスルフィド結合した50kDaのα鎖と145kDaのβ鎖)膜貫通チロシンキナーゼ・タンパク質を含む(Parkら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:6379-6383ページ(1987年))。
【0026】
受容体に対するHGFの結合活性は、最初の2つのクリングル・ドメインを含めたHGF分子のN末端部分に位置する機能ドメインによって伝えられると考えられている(Matsumotoら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 181:691-699ページ(1991年);Hartmannら、Proc. Natl. Acad. Sci., 89:11574-11578ページ(1992年);Lokkerら、EMBO J., 11:2503-2510ページ(1992年);Lokker及びGodowski、J. Biol. Chem., 268:17145-17150ページ(1991年))。HGF結合により、c-Metタンパク質は、145kDのβサブユニットのチロシン残基においてリン酸化されるようになる。
【0027】
本明細書中に開示された方法に関して、HGFは、アミノ酸配列が、以下に列挙した配列番号1〜4又はHGFの他の自然発生変異株のいずれかと少なくとも80%同一(すなわち、85%、87%、89%、90%、92%、94%、96%、98%、99%、又は100%同一)であっててよい精製されたポリペプチドとして製造されてよい。HGFに対する受容体(HGFR)は、アミノ酸配列が、以下に列挙した配列番号5〜8又はHGFRの他の自然発生変異株のいずれかと少なくとも80%同一(すなわち、85%、87%、89%、90%、92%、94%、96%、98%、99%、又は100%同一)であってよい精製されたポリペプチドとして製造されてよい。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
いくつかの態様において、HGF及び生物学的に活性なその断片が、精製されたポリペプチドとして提供される。精製されたポリペプチドには、(例えば、試験管内における翻訳又は自動ポリペプチド合成装置の使用によって)試験管内において作り出されるポリペプチド、及び、まず、細胞(例えば、原核細胞、真核細胞、昆虫細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、植物細胞)において発現され、それに続いて精製されるポリペプチドが含まれる。精製されたポリペプチドを発現する細胞は、内在性遺伝子をコードする細胞、ポリペプチドをコードする発現ベクターで形質導入された細胞、及びその細胞型において通常発現されない内在性遺伝子の発現を誘導するように実験的に操作された細胞(例えば、遺伝子活性化技術)を含んでよい。いくつかの態様において、ポリペプチドは、別々のポリペプチドへの融合タンパク質の開裂及び分離を許容するプロテアーゼ開裂部位を含んでよい融合タンパク質(例えば、HGFR-グルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合)である。いくつかの態様において、ポリペプチドは、ポリペプチドの精製を容易にするアミノ酸配列(例えば、多重ヒスチジン・タグ、FLAGタグなど)を含んでよい。細胞からのタンパク質、又は細胞によって発現されたポリペプチドを単離するための方法には、アフィニティー精製、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、及び他のクロマトグラフィー精製方法が含まれる。前記ポリペプチドは、翻訳後修飾される、例えば、グリコシル化されてよい。
【0038】
精製されたHGF(例えば、精製されたヒトHGF)は、配列番号2として本明細書中に列挙されたヒトHGFポリペプチドをコードするcDNAで安定的にトランスフェクトされ、且つ、例えば、Schwallに対する米国特許番号第5,686,292号、又はNakaら、Journal of Biol. Chem., 267(28):20114-20119ページ(1992年)中に記載のとおり成熟HGFを分泌する哺乳動物細胞株から入手できる。いくつかの態様において、HGFは、Lokkerら、EMBO J., 11(7):2503-2510ページ(1992年)に記載されているように、マイトジェン活性を欠いているが、高親和性受容体結合性を保持する一本鎖変異体であってよい。
【0039】
II. HGF及びHGFR HGF/HGFRモジュレーター
様々な作用物質が、例えば、誘発性リンパ浮腫、リンパ管腫、腫瘍リンパ管新生、又は腫瘍転移を含めたリンパ系に関連する病状を治療するためにHGF/HGFRモジュレーターとして使用できる。前記作用物質は、対象に投与することができるあらゆるタイプの化合物であってよい(例えば、抗体、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、生体有機分子、ペプチド模倣薬、薬理学的物質及びその代謝産物、転写及び翻訳制御配列など)。1つの態様において、HGF/HGFRモジュレーターは、生物学的な、例えば、5〜300kDaの分子量を有するタンパク質、である。
【0040】
例えば、HGF/HGFRモジュレーターは、HGFRへのHGFの結合を抑制し得る、又はHGF媒介性NF-κB活性化を妨げ得る。典型的なHGF/HGFRモジュレーターは、HGFRに結合することができる、例えば、マイトジェン活性を欠いているが、高親和性受容体結合性を保持するHGFの一本鎖変異体(例えば、Lokkerら、EMBO J., 11(7):2503-2510ページ(1992年)を参照のこと)。HGFに結合するHGF/HGFRモジュレーターは、HGFの立体構造を変更するか、HGFRへのHGFの結合を妨げるか、あるいはその他の方法でHGFRに対するHGFの親和性を低下させるか、又はHGFとHGFRの間の相互作用を妨げ得る。
【0041】
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体)は、10-6、10-7、10-8、10-9、又は10-10M未満のKdでHGFに又はHGFRに結合し得る。1つの態様において、HGF/HGFRモジュレーターは、肝細胞増殖因子様又はマクロファージ刺激タンパク質(HGF1/MSP)に対する親和性に比べて、少なくとも5、10、20、50、100、200、500、又は1000倍優れた親和性でHGFに結合する。1つの態様において、HGF/HGFRモジュレーターは、マクロファージ刺激の1型受容体(RON)に対する親和性に比べて、少なくとも5、10、20、50、100、200、500、又は1000倍優れた親和性でHGF又はHGFRに結合する(例えば、NP 002438)。好ましいHGF/HGFRモジュレーターは、HGF又はHGFRに特異的に結合する、例えば、HGF又はHGFR特異的抗体などである。
【0042】
代表的なHGFタンパク質分子には、ヒトHGF(例えば、配列番号1として示されるNP 001010932)、チンパンジーHGF(例えば、配列番号2として示されるXP 519174)、マウスHGF(例えば、配列番号3として示されるCAA51054)、及びラットHGF(例えば、配列番号4として示される1602237A)が含まれる。また、先に触れたHGFタンパク質の熟成処理された領域に対して少なくとも90、92、95、97、98、99%同一、及び完全に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質(例えば、配列番号1の第25〜1390アミノ酸に対して少なくとも90、92、95、97、98、99%同一、又は完全に同一のアミノ酸配列、及び高いストリンジェンシー条件下、天然のHGFタンパク質をコードするヒト、チンパンジー、マウス、又はラット遺伝子にハイブリダイズする核酸によってコードされたタンパク質)が含まれる。好ましくは、HGFタンパク質は、処理された成熟型において、少なくとも1つのHGF活性、例えば、HGFRへの結合、を提供できる。
【0043】
2つの配列の間の「相同性」又は「配列同一性」(その用語は互換性を持って本明細書中に使用される)の計算は、以下のとおり実施される。配列は、最適な比較目的のためにアラインされる(例えば、最適のアラインメントのために、ギャップが第1及び第2のアミノ酸、又は核酸配列の一方又は両方に導入されてもよく、且つ、比較目的のために、非相同性配列が無視されてもよい)。最適のアラインメントは、12のギャップ・ペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティ、及び5のフレームシフト・ギャップ・ペナルティのBlossum 62スコアリング・マトリックスを用いたGCGソフトウェア・パッケージのGAPプログラムを使用して最高スコアとして測定される。次に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド配列位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが、比較される。第1の配列の位置が第2の配列の対応位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている時、分子はその位置において同一である(本明細書中では、アミノ酸又は核酸「同一性」は、アミノ酸又は核酸「相同性」と同義である)。2つの配列の間のパーセント同一性は、その配列によって共有される同一である位置の数の関数である。
【0044】
本明細書中では、用語「高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件について説明する。ハイブリダイゼーション反応を実施するための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989年)、6.3.1〜6.3.6中に見ることができる。前記文献を本明細書中に援用する。水性及び非水性の方法が、その参考文献中に記載されており、いずれかが使用されてもよい。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件には、6×SSC中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、それに続く0.2×SSC、0.1%のSDS中、65℃での1回以上の洗浄、又は実質的に同様の条件が含まれる。
【0045】
代表的なHGF/HGFRモジュレーターには、HGF又はHGFRに結合する抗体、及びHGFへの結合に関して細胞表面HGFRと競合するHGFRの可溶性形態が含まれる。HGFRの可溶性形態の例は、HGFR-Fcと呼ばれる、HGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部(例えば、HGFRの可溶性HGF結合断片)を含むFc融合タンパク質である(例えば、Markら、Journal of Biol. Chem., 267(36):26166-26171ページ(1992年)を参照のこと)。HGFRの他の可溶性形態、例えば、Fcドメインを含んでいない形態、もまた使用できる。抗体HGF/HGFRモジュレーターについて以下で更に議論する。例えば、小分子、核酸若しくは核酸ベースのアプタマー、及びペプチドといった他のタイプのHGF/HGFRモジュレーターが、例えば、Jhaveriら、Nat. Biotechnol. 18:1293ページ及び米国特許番号第5,223,409号に記載の、スクリーニングによって単離されてよい。作用物質がHGF又はHGFRに結合するかどうかを測定するため、及び作用物質がHGF/HGFR相互作用を調節するかどうかを測定するための代表的なアッセイは、例えば、Schwallらに対する米国特許番号第6,468,529号に記載されている。
【0046】
HGFRタンパク質の代表的な可溶性形態は、HGFに結合するHGFRタンパク質の領域、例えば、細胞外ドメイン、例えば、細胞外領域内のドメイン、を含む。この領域は、N又はC末端にて物理的に結び付く、例えば、他のアミノ酸配列、例えば、Fcドメイン、に融合し得る。HGFRからの領域は、異種のアミノ酸配列からのリンカーによって区切られてよい。Michieliら、(2005年)、Cancer Cell, 6:61-73ページは、代表的なHGFR融合タンパク質について説明している。
【0047】
A. 抗体
代表的なHGF/HGFRモジュレーターには、HGF、及び/又はHGFRに結合する抗体が含まれる。1つの態様において、抗体は、例えば、相互作用を物理的に遮断することによって、そのカウンターパートに対するHGF、及び/又はHGFRの親和性を低下させることによって、HGF複合体を崩壊させるか又は不安定化させることによって、HGF又はHGFRを隔離することによって、あるいは分解のためにHGF又はHGFRを標的化することによって、HGFとHGFRの間の相互作用を抑制する。1つの態様において、抗体は、HGF/HGFR結合界面に関与する1つ以上のアミノ酸残基を含むエピトープにてHGF又はHGFRに結合することができる。そのようなアミノ酸残基は、例えば、アラニン走査によって、同定できる。他の態様において、抗体は、HGF/HGFR結合に関与しない残基に結合することができる。例えば、抗体は、HGF又はHGFRの立体構造を変更し、その結果、結合親和性を低下させることができるか、あるいは抗体は、HGF/HGFR結合を立体的に妨げ得る。前記抗体は、HGFのαサブユニット又はβサブユニットに結合し得る。
【0048】
HGF、及び/又はHGFRに結合する抗体に加えて、他の抗体を使用できる。1つの態様において、抗体は、HGF/HGFR媒介性の事象又は活性の活性化を妨げることができる。例えば、HGFによって上方制御されるα9インテグリンに対する抗体を使用することが可能である。例えば、α9に対する特定の抗体は、細胞のHGF誘導性遊走を抑制することができる。
【0049】
本明細書中では、用語「抗体」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域、例えば、免疫グロブリン可変ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列を提供するアミノ酸配列、を含むタンパク質を指す。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(VHと本明細書中で略記される)、及び軽(L)鎖可変領域(VLと本明細書中で略記される)を含むことができる。他の実施例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域、及び2つの軽(L)鎖可変領域を含む。用語「抗体」は、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、及びdAbフラグメント)、並びにIgA、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgE、IgD、IgM型(並びにそのサブタイプ)の完全な抗体、例えば、損なわれていない、及び/又は完全長の免疫グロブリンを網羅する。免疫グロブリンの軽鎖は、κ型又はλ型のものであってよい。1つの態様において、抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存性細胞傷害性、及び/又は補体媒介性細胞傷害性に関して機能的であってよいか、あるいはこれらの活性の一方又は両方に関して機能的でなくてよい。
【0050】
VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる、より多く保存されている領域が点在する「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性領域に更に細分されてよい。FRs及びCDRsの範囲は、正確に規定された(例えば、Kabat, E. A.ら、(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Department of Health and Human Services, NTH Publication No. 91-3242;及びChothia, C.ら、(1987年)J. Mol. Biol. 196:901-917ページを参照のこと)。カバットの定義が、本明細書中で使用される。各VH及びVLは、通常、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシル末端に並んだ3つのCDRs及び4つのFRsで構成される。
【0051】
「免疫グロブリン・ドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変又は定常ドメインからのドメインを指す。免疫グロブリン・ドメインは、通常、約7本のβ鎖で形成された2つのβシート、及び保存されたジスルフィド結合を含む(例えば、A. F. Williams及びA. N. Barclay(1988年)Ann. Rev Immunol. 6:381-405ページを参照のこと)。「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、抗原結合に好適な立体構造にCDR配列を位置づけるのに十分な構造を形成することができるアミノ酸配列を指す。例えば、前記配列は、天然の可変ドメインのアミノ酸配列の全部又は一部を含んでよい。例えば、前記配列は、1つ、2つ、又はそれ以上のN又はC末端アミノ酸、内部アミノ酸を除いてよく、1つ以上の挿入又は追加の末端アミノ酸を含んでよいか、あるいは他の変更を含んでよい。1つの態様において、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、他の免疫グロブリン可変ドメイン配列と結び付いて、標的結合構造(又は、「抗原結合部位」)、例えば、HGF又はHGFRと相互作用する構造、を形成し得る。
【0052】
抗体のVH又はVL鎖は、重鎖又は軽鎖定常領域の全部又は一部を更に含み、その結果、それぞれ、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖を形成し得る。1つの態様において、抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖及び2つの免疫グロブリン軽鎖から成る四量体である。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖は、ジスルフィド結合によって接続されてよい。重鎖定常領域は、通常、3つの定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。軽鎖定常領域は、通常、CLドメインを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含む。抗体の定常領域は、通常、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクタ細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含めた宿主組織又は因子への抗体の結合を媒介する。
【0053】
抗体の1つ以上の領域が、ヒト型、事実上ヒト型、又はヒト化されていてよい。例えば、可変領域の1つ以上が、ヒト型であるか、又は事実上ヒト型であってよい。例えば、CDRs、例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3、の1つ以上が、ヒト型であってよい。軽鎖CDRsのそれぞれが、ヒト型であってよい。HC CDR3が、ヒト型であってよい。フレームワーク領域、例えば、HC又はLCのFR1、FR2、FR3、及びFR4、の1つ以上が、ヒト型であってよい。1つの態様において、全てのフレームワーク領域が、例えば、ヒト体細胞、例えば、免疫グロブリンを産生する造血細胞又は非造血細胞、に由来するヒト型である。1つの態様において、ヒト型配列は、例えば、生殖細胞系の核酸によってコードされた、生殖細胞系の配列である。定常領域の1つ以上が、ヒト型、事実上ヒト型、又はヒト化されていてよい。他の態様において、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、及びFR3全体として、又はFR1、FR2、FR3、及びFR4全体として)の少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98、又は99%、又は抗体の全体が、ヒト型、事実上ヒト型、又はヒト化されていてよい。例えば、FR1、FR2、及びFR3全体として、ヒト生殖細胞系セグメントによってコードされるヒト型の配列に対して少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98、又は99 %同一であるか、又は完全に同一であってよい。
【0054】
「事実上ヒト型」の免疫グロブリン可変領域は、その免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫原性応答を誘発しないように、十分な数のヒト・フレームワーク・アミノ酸位置を含む免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒト型」の抗体は、その抗体が正常なヒトにおいて免疫原性応答を誘発しないように、十分な数のヒト・アミノ酸位置を含む抗体である。
【0055】
「ヒト化された」免疫グロブリン可変領域は、修飾された形態が、非修飾形態がするのに比べて、ヒトにおいて少ない免疫応答しか誘発しないように、修飾された免疫グロブリン可変領域であり、例えば、正常なヒトにおいて免疫原性応答を誘発しないように十分な数のヒト・フレームワーク・アミノ酸位置を含むように修飾される。「ヒト化」免疫グロブリンの説明には、例えば、米国特許番号第第6,407,213号及び同第5,693,762号が含まれる。場合により、ヒト化免疫グロブリンは、1つ以上フレームワーク・アミノ酸位置にヒト以外のアミノ酸を含んでよい。
【0056】
HGF又はHGFRに結合する抗体は、例えば、動物を使用した、免疫化、又は、例えば、ファージ・ディスプレイなどの試験管内における方法を含めた様々な手段によって作り出されてよい。HGF若しくはHGFRの全部又は一部が、免疫原として、又は、選択のための標的として使用できる。例えば、HGFR若しくはその断片、又はHGF若しくはその断片が、免疫原として使用できる。1つの態様において、免疫された動物は、天然の、ヒト型の、又は、部分的にヒト型の免疫グロブリン遺伝子座を持つ免疫グロブリン産生細胞を含む。1つの態様において、ヒト以外の動物が、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、ヒトIg遺伝子座の巨大な断片を持つマウス抗体産生を欠いたマウス系統を操作することが可能である。従って、ハイブリドーマ技術を使用することによって、少なくとも一部がヒト型の、所望の特異性を有する抗原特異的モノクローナル抗体が、作り出され、そして、選択されてよい。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら、(1994年)、Nat. Gen. 7:13-21ページ;US 2003-0070185;米国特許番号第5,789,650号;及びWO 96/34096を参照のこと。
【0057】
HGF及びHGFRに対するヒト以外の抗体は、また、例えば、齧歯動物においても、産生できる。ヒト以外の抗体は、例えば、EP 239 400;米国特許番号第6,602,503号;同第5,693,761号;及び同第6,407,213号などに記載されているように、ヒト化されるか、脱免疫化(deimmunized)されるか、又はそれを事実上ヒト型にするように他の方法で修飾されてよい。
【0058】
EP 239 400(Winterら)は、ある種のそれらの相補性決定領域(CDRs)の、他の種からのものでの(所定の可変領域内の)置換によって抗体を変えることを説明している。通常、ヒト以外(例えば、マウス)の抗体のCDRsは、所望の置換抗体をコードする配列を作り出すために組み換え核酸技術を使用することによってヒト抗体内の対応部分に置換される。所望のアイソタイプ(通常、CHに関してγI及びCLに関してκ)のヒト定常域遺伝子セグメントが付加されてもよく、そして、ヒト化重鎖及び軽鎖遺伝子が哺乳動物細胞において同時発現されて、可溶性ヒト化抗体が産生されてよい。抗体をヒト化するための他の方法もまた使用できる。例えば、他の方法は、抗体の3次元構造、結合決定基に対して3次元近接の状態にあるフレームワーク位置、及び抗原性ペプチド配列を考慮に入れてよい。例えば、WO 90/07861;米国特許番号第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;及び同第5,530,101号;Tempestら(1991年)Biotechnology 9:266-271ページ、並びに米国特許番号第6,407,213号を参照のこと。
【0059】
HGF及びHGFRに結合する完全なヒト・モノクローナル抗体は、例えば、Boernerら(1991年)J. Immunol. 147:86-95ページによって説明されるように、試験管内における準備刺激ヒト脾臓細胞を使用することで産生できる。それらは、Perssonら(1991年)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88:2432-2436ページによって、又はHuang及びStellar(1991年)J. Immunol. Methods 141:227-236ページによって;また、米国特許番号第5,798,230号によっても説明されている、レパートリー・クローニングによって製造されてよい。巨大な非免疫ヒト・ファージ・ディスプレイ・ライブラリが、また、標準的なファージ技術を使用したヒト治療薬として開発されてよい高親和性抗体を分離するために使用されてよい(例えば、Hoogenboomら(1998年)Immunotechnology 4:1-20ページ;Hoogenboomら(2000年)Immunol Today 2:371-378ページ;及びUS 2003-0232333を参照のこと)。
【0060】
本明細書中に記載の抗体及び他のタンパク質は、原核生物及び真核細胞において産生されることができる。1つの態様において、抗体(例えば、scFvのもの)は、例えば、ピキア属(Pichia)(例えば、Powersら(2001年)J. Immunol. Methods 251:123-35ページ)、ハンセウラ属(Hanseula)、又はサッカロミセス属(Saccharomyces)などの酵母細胞において発現される。
【0061】
抗体、特に、完全長の抗体、例えば、IgGs、は、哺乳動物細胞において産生されてよい。組み換え発現のための代表的な哺乳動物宿主細胞には、(例えば、Kaufman及びSharp(1982年)Mol. Biol. 159:601-621に記載されているようなDHFR選択マーカーと共に使用される、Urlaub及びChasm(1980年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220ページに記載のジヒドロ葉酸レダクターゼ陰性CHO細胞を含めた)チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO細胞)、リンパ球細胞株、例えば、NS0骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞、K562、並びにトランスジェニック動物、例えば、トランスジェニック哺乳動物、からの細胞が含まれる。例えば、前記細胞は、乳房上皮細胞であってよい。
【0062】
免疫グロブリン・ドメインをコードする核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)などの追加の核酸配列、及び選択可能なマーカー遺伝子を保有し得る。前記選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許番号第4,399,216号;同第4,634,665号;及び同第5,179,017号を参照のこと)。代表的な選択可能なマーカー遺伝子には、(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞において使用するための)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子と(G418選択のための)neo遺伝子が含まれる。
【0063】
抗体(例えば、完全長抗体又はその抗原結合性部分)の組み換え発現の代表的な系において、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr-CHO細胞内に導入される。組み換え発現ベクター内で、抗体重鎖及び軽鎖の遺伝子は、その遺伝子の高レベルでの転写の駆動するように(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する、例えば、CMVエンハンサ/AdMLPプロモーター調節エレメント、又はSV40エンハンサ/AdMLPプロモーター調節エレメントなどの)エンハンサ/プロモーター調節エレメントにそれぞれ作動できるように連結される。組み換え発現ベクターは、また、メトトレキサート選択/増幅を使用してそのベクターでトランスフェクトされたCHO細胞の選択を許容するDHFR遺伝子も保有する。選択された形質転換体宿主細胞は、抗体重鎖及び軽鎖の発現を許容するように培養され、そして、完全な抗体が培地から回収される。標準的な分子生物学技術が、組み換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトさせ、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、そして、培地から抗体を回収するために使用される。例えば、一部の抗体は、プロテインA又はプロテインGを用いたアフィニティー・クロマトグラフィーによって分離できる。
【0064】
抗体(及びFc融合体)は、また、修飾、例えば、Fc機能を変更する、例えば、Fc受容体若しくはC1q、又はその両方との相互作用を減少させるか、又は排除する、修飾も含んでよい。例えば、ヒトIgG1定常領域は、1つ以上の残基、例えば、米国特許番号第5,648,260号における番号付けによる、例えば、第234残基及び第237残基の1つ以上、にて変異されてよい。他の代表的な修飾には、米国特許番号第5,648,260号に記載のものが含まれる。
【0065】
Fcドメインを含む一部のタンパク質に関して、抗体/タンパク質産生系は、Fc領域がグリコシル化された抗体又は他のタンパク質を合成するように設計されてよい。例えば、IgG分子のFcドメインは、CH2ドメイン内の297位のアスパラギンにてグリコシル化される。Fcドメインは、また、他の真核生物の翻訳後修飾も含んでよい。他の場合において、タンパク質は、グリコシル化されない形態で産生される。
【0066】
抗体及び他のタンパク質は、また、トランスジェニック動物によっても産生されてよい。例えば、米国特許番号第5,849,992号は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現する方法を説明している。ミルク特異的プロモーター、及び注目の抗体、例えば、本明細書中に記載の抗体、をコードする核酸配列、並びに分泌のためのシグナル配列を含む導入遺伝子が、構築される。前述のトランスジェニック哺乳動物の雌によって産生されたミルクは、そこに分泌された、注目のタンパク質、例えば、抗体又はFc融合タンパク質、を含む。前記タンパク質は、ミルクから精製されても、又は一部の適用に関しては、そのまま使用されてもよい。
抗体との関連で記載される方法は、他のタンパク質、例えば、Fc融合体及び可溶性受容体断片、に適合されてもよい。
【0067】
B. HGF変異体
いくつかの態様において、HGFタンパク質は、HGFの2鎖形態への生体内における変換ができる酵素によるタンパク質分解的開裂に抵抗性であるHGF変異体であってよい。前記変異体は、好ましくは、HGFを2鎖形態に変換できる酵素によって認識される領域内の部位特異的突然変異誘発によって一本鎖形態を安定させる。これらのHGF変異体は、対応する野生型HGFの実質的に完全な受容体結合親和性を保持するが、HGFRを活性化しない。1つの態様において、HGF変異体は、対応する野生型HGFと比べて受容体結合親和性は強化されていてよいが、HGFRを活性化することができない。そのような化合物は、対応する野生型HGFの競合的拮抗薬であり、そして、十分な濃度で存在している時、HGFRへの野生型HGFの結合を抑制することができる。例えば、Lokkerら、EMBO J., 11(7):2503-2510ページ(1992年)、及びGodowskiらに対する米国特許番号第5,316,921号を参照のこと。従って、それらをHGF/HGFR拮抗薬として使用できる。
【0068】
C. ペプチド
いくつかの態様において、HGF/HGFRモジュレーターは、標的分子(例えば、HGFR)に独立に結合するが、それを活性化しない32個以下のアミノ酸から成るペプチドであっててよい。そのようなペプチドのいくつかは、1つ以上のジスルフィド結合を含んでよい。いわゆる「線状ペプチド」である他のペプチドは、システインを欠いている。1つの態様において、ペプチドは、人工、すなわち、天然に存在しないか、又は1つ以上の着目のゲノム、例えば、ヒトゲノム、によってコードされたタンパク質の状態で存在しない。合成ペプチドは、溶液中でほとんど構造がない(例えば、非構造化)か、不均一な構造(例えば、選択的な立体構造、又は「ゆるい」構造化)か、あるいは特異的天然構造(例えば、協調的な折り畳み)を持ってよい。いくつかの合成ペプチドは、標的分子に結合した時に、特定構造をとる。いくつかの代表的な合成ペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合、及び、例えば、約4〜12個の非システイン残基から成るループを持つ、いわゆる「環状ペプチド」である。代表的なペプチドは、28、24、20、又は18アミノ酸以下の長さである。
【0069】
独立にHGFRに結合するペプチド配列は、様々な方法の中のいずれかによって同定できる。例えば、それらは、ペプチドのディスプレイ・ライブラリー又はアレイから選択されてよい。同定の後に、そのようなペプチドは、合成的に、又は組み換え手段によって作り出されることができる。前記配列は、より長い配列内の取り込まれてよい(例えば、挿入されるか、付加されるか、又は取り付けられる)。
【0070】
Kayら、Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual (Academic Press, Inc.、San Diego 1996年)、及び米国特許番号第5,223,409号において議論されている技術は、選択された親の鋳型に相当する潜在的な結合物質のライブラリを調製するために有用である。ペプチド・ディスプレイ・ライブラリーは、そのような技術によって調製され、そして、HGFRに結合し、且つ、抑制するペプチドに関してスクリーニングされることができる。
【0071】
加えて、ファージ・ライブラリー又はファージ・ライブラリーから選択された集団は、例えば、共にHGFへの結合に貢献するSEMA(セマホリン)ドメイン又はPSI(プレキシン/セマホリン/インテグリン)ドメインを欠くHGFR結合領域との対抗選択によって対抗選択されてよい。そのような手順は、HGF結合部位と接触しないペプチドを切り捨てるために使用されてよい。
【0072】
ペプチドは、また、例えば、プロテアーゼ抵抗性が増強された化合物を作り出すために、代替骨格、例えば、ペプトイド骨格、を使用して合成されてもよい。具体的には、この方法は、HGFRに結合し、且つ、その活性化を抑制し、そして、例えば、血清プロテアーゼによって、開裂されない化合物を作製するために使用されてよい。
【0073】
HGFRの活性化を抑制するポリペプチドは、重合体、例えば、実質的に非抗原性の重合体、例えば、ポリアルキレン・オキシド又はポリエチレン・オキシドなど、に結び付けられる(例えば、結合される)ことができる。好適な重合体は、重量によって大幅に異なる。約200〜約35,000(又は約1,000〜約15,000、及び2,000〜約12,500)の範囲に及ぶ分子数の平均重量を持つ重合体が使用できる。複数のポリマー部分、例えば、約2,000〜7,000ダルトンの平均分子量を持つ、例えば、少なくとも2つ、3つ、又は4つのそのような部分、が、1つのポリペプチドに取り付けられてよい。
【0074】
例えば、前記ポリペプチドは、水溶性重合体、例えば、親水性ポリビニル重合体、例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン、に結合させることができる。そのような重合体の制限されることのない一覧には、例えば、ポリエチレン・グリコール(PEG)又はポリプロピレン・グリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール(polyoxyethylenated polyols)、その共重合体、及びそのブロック共重合体などのポリアルキレンオキシド・ホモ重合体が含まれるが、但し、上記ブロック共重合体の水溶性が維持されることを条件とする。追加の有用な重合体には、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンのブロック共重合体(Pluronics)などのポリオキシアルキレン;ポリメタクリレート;カルボマー;例えば、ラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチル・デンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲンなどのホモ多糖及びヘテロ多糖、又は酸性ムコ多糖の多糖サブユニット、例えば、ヒアルロン酸、を含めた、サッカリド単量体のD-マンノース、D及びL-ガラクトース、フコース、フルクトース、D-キシロース、L-アラビノース、D-グルクロン酸、シアル酸、D-ガラクツロン酸、D-マンヌロン酸(例えば、ポリマンヌロン酸若しくはアルギン酸)、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-グルコース、及びノイラミン酸を含めた分枝又は非分枝の多糖;例えば、ポリソルビトールやポリマンニトールなどの糖アルコールの重合体;ヘパリン又はヘパロン(heparon)などが含まれる。
【0075】
他の化合物、例えば、細胞毒、標識、他の標的作用物質、又は非関連作用物質、もまた、同じ重合体に取り付けられることができる。モノ-活性化されたアルコキシ末端ポリアルキレン・オキシド(PAO’s)、例えば、モノメトキシ末端ポリエチレン・グリコール(mPEG’s);C1-4アルキル末端重合体;及びビス-活性化されたポリエチレン・オキシド(グリコール)が、架橋に使用できる。例えば、U.S. 5,951,974を参照のこと。
【0076】
D. 核酸拮抗薬
特定の実施において、核酸拮抗薬が、HGF、HGFR、インテグリンα9、又はスタニオカルシン1をコードする内在性遺伝子の発現を低下させるために使用される。1つの態様において、核酸拮抗薬は、HGF又はHGFRをコードするmRNAを標的とするsiRNAである。他のタイプの拮抗核酸、例えば、dsRNA、リボザイム、三重らせん形成体、又はアンチセンス核酸、もまた、使用されてよい。いくつかの態様において、核酸拮抗薬は、HGFR活性化の下流エフェクタ標的(例えば、ヒトα9インテグリン、ジェンバンク番号NM 002207の下で一覧に記載される代表的な配列)に向けられてよい。
【0077】
siRNAsは、必要に応じて、オーバーハングを含む、小さい二本鎖RNA(dsRNAs)である。例えば、siRNAの二本鎖領域は、約18〜25ヌクレオチドの長さ、例えば、19、20、21、22、23、又は24ヌクレオチドの長さである。通常、siRNA配列は、標的mRNAに対して厳密に相補的である。dsRNAs及びsiRNAsは、具体的には、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)において遺伝子発現を封じるために使用できる。siRNAsは、また、29塩基対のステムと2ヌクレオチドの3’オーバーハングを持つ短いヘアピンRNAs(shRNAs)を含む。例えば、Clemensら(2000年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6499-6503ページ;Billyら(2001年)Proc. Natl. Sci. USA 98:14428-14433ページ;Elbashirら(2001年)Nature. 411:494-8ページ;Yangら(2002年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:9942-9947ページ;Siolasら(2005年)Nat. Biotechnol. 23(2):227-31ページ;20040086884;U.S. 20030166282;20030143204;20040038278;及び20030224432を参照のこと。
【0078】
アンチセンス物質は、例えば、約8〜約80個の核酸塩基(すなわち、約8〜約80ヌクレオチド)、例えば、約8〜約50個の核酸塩基、又は約12〜約30個の核酸塩基を含んでよい。アンチセンス化合物には、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、及び標的核酸にハイブリダイズし、その発現を調節する他の短い触媒RNAs又は触媒オリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンス化合物には、標的遺伝子内の配列に相補的である少なくとも8つの連続した一続きの核酸塩基を含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズすべき標的核酸配列に対して100%相補的である必要はない。オリゴヌクレオチドは、標的へのオリゴヌクレオチドの結合が有用性の損失を引き起こすように標的分子の正常機能を妨げ、そして、特異的な結合が望まれる条件下、すなわち、生体内のアッセイ若しくは治療的療法の場合における、生理的条件下、又は、試験管内のアッセイの場合における、アッセイが行われる条件下、非標的配列へのそのオリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある時に、特異的にハイブリダイズできる。
【0079】
mRNA(例えば、HGF又はHGFRをコードするmRNA)とアンチセンス・オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、mRNAの正常機能の1つ以上を妨げ得る。妨げられるmRNAの機能には、例えば、タンパク質翻訳の場所へのRNAの移行、RNAからのタンパク質の翻訳、1種類以上のmRNA種を得るためのRNAのスプライシング、及びRNAによっておこなわれ得る触媒能などの全ての主要な機能が含まれる。RNAへの特異的タンパク質の結合は、また、そのRNAへのアンチセンス・オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによっても妨げられてよい。
【0080】
代表的なアンチセンス化合物には、標的核酸に特異的にハイブリダイズするDNA又はRNA配列、例えば、HGF又はHGFRをコードするmRNAが含まれる。相補的な領域は、約8〜約80個の核酸塩基の間に広げ得る。前記化合物は、1つ以上の修飾された核酸塩基を含んでもよい。修飾された核酸塩基には、例えば、5-置換されたピリミジン、例えば、5-ヨードウラシル、5-ヨードシトシンなど、及びC5-プロピニル・ピリミジン、例えば、C5-プロピニルシトシンやC5-プロピニルウラシルなどが含まれてよい。他の好適な修飾された核酸塩基には、N4-(C1-C12)アルキルアミノシトシンやN4,N4-(C1-C12)ジアルキルアミノシトシンが含まれる。修飾された核酸塩基は、また、例えば、7-ヨード-7-デアザプリン、7-シアノ-7-デアザプリン、7-アミノカルボニル-7-デアザプリンなどの7-置換された-8-アザ-7-デアザプリン及び7-置換された-7-デアザプリンが含まれてよい。これらの例には、6-アミノ-7-ヨード-7-デアザプリン、6-アミノ-7-シアノ-7-デアザプリン、6-アミノ-7-アミノカルボニル-7-デアザプリン、2-アミノ-6-ヒドロキシ-7-ヨード-7-デアザプリン、2-アミノ-6-ヒドロキシ-7-シアノ-7-デアザプリン、及び2-アミノ-6-ヒドロキシ-7-アミノカルボニル-7-デアザプリンが含まれてよい。更に、N6-メチルアミノアデニン及びN6,N6-ジメチルアミノアデニンを含めたN6-(C1-C12)アルキルアミノプリン及びN6,N6-(C1-C12)ジアルキルアミノプリンもまた、好適な修飾された核酸塩基である。同様に、例えば6-チオグアニンを含めた他の6-置換されたプリンが、適切な修飾された核酸塩基を構成し得る。他の好適な核酸塩基には、2-チオウラシル、8-ブロモアデニン、8-ブロモグアニン、2-フルオロアデニン、及び2-フルオログアニンが含まれる。前述の修飾された核酸塩基のいずれかの誘導体もまた、適切である。先の化合物のいずれかの置換基には、C1-C30アルキル、C2-C30アルケニル、C2-C30アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロ、アミノ、アミド、ニトロ、チオ、スルホニル、カルボキシル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルなどが含まれてよい。
【0081】
他のタイプの核酸物質の説明もまた、入手可能である。例えば、米国特許番号第4,987,071号;同第5,116,742号;及び同第5,093,246号;Woolfら(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. USA;Antisense RNA and DNA、D.A. Melton編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor, N.Y.(1988年);89:7305-9ページ;Haselhoff及びGerlach(1988年)Nature 334:585-59ページ;Helene, C.(1991年)Anticancer Drug Des. 6:569-84ページ;Helene(1992年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36ページ;並びにMaher(1992年)Bioassays 14:807-15ページを参照のこと。
【0082】
E. 人工転写因子
人工転写因子もまた、HGF、HGFR、インテグリンα9、又はスタニオカルシン1の発現を調節するために使用できる。人工転写因子は、例えば、HGF又はHGFRをコードする内在性遺伝子内、例えば、調節領域内の配列に、例えば、プロモーターに、結合する能力に関して、設計されるか、又はライブラリから選択されてもよい。例えば、人工転写因子は、(例えば、ファージ・ディスプレイ、米国特許番号第6,534,261号を使用して)試験管内若しくは生体内における選択によって、又は認識コードに基づいた設計(例えば、WO 00/42219及び米国特許番号第6,511,808号を参照のこと)によって製造されてもよい。特に、様々なジンク・フィンガー・ドメインのライブラリを作り出す方法に関して、例えば、Rebarら(1996年)Methods Enzymol 267:129ページ;Greisman及びPabo(1997年)Science 275:657ページ;Isalanら(2001年)Nat. Biotechnol 19:656ページ;及びWuら(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:344ページを参照のこと。
【0083】
必要に応じて、人工転写因子は、転写調節ドメイン、例えば、転写を活性化するために活性ドメイン、又は転写を抑制するために抑制ドメイン、に融合させることができる。具体的には、抑制ドメインはHGF又はHGFRをコードする内在性遺伝子の発現を減少させるために使用できる。人工転写因子は、それ自体、細胞にデリバリーされた異種の核酸によってコードされるか、又は細胞にデリバリーされたタンパク質自体であっててよい(例えば、米国特許番号第6,534,261号を参照のこと)。人工転写因子をコードする配列を含む異種の核酸は、誘導プロモーター、例えば、細胞、例えば、内皮細胞、において人工転写因子レベルの細かい制御を可能にするように作動できるように連結されてよい。
【0084】
F. 医薬組成物
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質、例えばFcに融合させたHGFR細胞外領域)は、例えば、リンパ系に関連する病状(例えば、リンパ浮腫、リンパ性フィラリア症、リンパ管腫、腫瘍リンパ管新生、又は腫瘍転移などの本明細書中に記載の障害)に対する対象への投与のために、医薬組成物として処方されてもよい。通常、医薬組成物は、医薬として許容される担体を含む。本明細書中では、「医薬として許容される担体」には、生理的に適合しうる、いずれか又はあらゆる溶剤、分散媒質、コーティング、抗菌剤、抗カビ剤、等張剤、及び吸収遅延化剤などが含まれる。前記組成物は、医薬として許容される塩、例えば、酸付加塩又は塩基付加塩、を含んでもよい(例えば、Berge, S. M.ら(1977年)J. Pharm. Sci. 66:1-19ページを参照のこと)。
【0085】
HGF/HGFRモジュレーターは、標準的な方法に従って処方されることができる。医薬製剤は、十分に確立された技術であり、そして、例えば、Gennaro(編)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins(2000年)(ISBN:0683306472);Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & Wilkins Publishers(1999年)(ISBN:0683305727);及びKibbe(編)、Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association、第3版(2000年)(ISBN:091733096X)中に、更に詳しく記載されている。
【0086】
1つの態様において、HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又はHGFR-Fc)は、例えば、塩化ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物、一塩基性リン酸ナトリウム、及び安定化剤などの賦形剤材料と一緒に処方されてもよい。それは、例えば、好適な濃度の緩衝化溶液で提供され、そして、2〜8℃で保存されてもよい。
【0087】
医薬組成物は、様々な形態で存在し得る。これらには、液体、半固体及び固体剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射用溶液、注入用溶液)など、分散液又は懸濁液、錠剤、丸薬、散剤、リポソーム、並びに坐剤が含まれる。好ましい形態は、意図される投与様式と治療的適用に依存し得る。通常、本明細書中に記載の作用物質のための組成物は、注射用又は注入用溶液の形態である。
【0088】
前述の組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内注射)によって投与されてよい。語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、本明細書中では、経腸及び局所投与を除いた、通常、注射による投与の様式を意味し、そして、これだけに制限されることなく、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、並びに胸骨内注射及び注入が含まれる。
【0089】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高濃度における安定貯蔵に好適な他の秩序構造として処方されてもよい。無菌の注射用溶液は、先に列挙した成分の1種類若しくはその組み合わせを適切な溶剤中に必要な量で、本明細書中に記載の作用物質を組み込むことによって、又は、必要に応じて、その後に濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒体、及び先に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む、無菌溶媒中に本明細書中に記載の作用物質を組み込むことによって調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌の散剤の場合において、好ましい製造方法は、本明細書中に記載の作用物質に加えて、先に無菌濾過したその溶液からのいずれかの追加的な所望の成分の散剤を得る真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンなどの使用によって、分散液の場合に必要な粒径の維持管理によって、及び界面活性剤の使用によって、維持できる。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅らせる作用物質、例えば、モノステアラート塩及びゼラチン、を含むことによってもたらされる可能性がある。
【0090】
特定の態様において、HGF/HGFRモジュレーターは、例えば、移植片及びマイクロカプセル化デリバリー・システムを含めた制御放出製剤などの、迅速な放出に対抗する化合物を保護する担体を用いて調製されてよい。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生体分解性で、生物学的に適合している重合体が使用されてもよい。そのような製剤の多くの製造方法が、特許権を取得しているか、又は一般に、知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J. R. Robinson編、Marcel Dekker, Inc.、New York、1978年を参照のこと。
【0091】
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質)は、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、又は50倍まで、例えば、循環中、例えば、血液、血清、又は他の組織中での安定、及び/又は保持を改善する部分を用いて、修飾されてもよい。
【0092】
例えば、HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質)は、重合体、例えば、実質的に非抗原性の重合体、例えば、ポリアルキレン・オキシド又はポリエチレン・オキシドなど、と結び付けられてもよい。好適な重合体は、重量によって大幅に異なる。約200〜約35,000ダルトン(約1,000〜約15,000、及び2,000〜約12,500)の範囲に及ぶ分子数の平均重量を持つ重合体が使用できる。
【0093】
例えば、HGF/HGFRモジュレーターは、水溶性ポリマー、例えば、親水性ポリビニル重合体、例えば、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンに結合させることができる。そのような重合体の制限されることのない一覧には、例えば、ポリエチレン・グリコール(PEG)又はポリプロピレン・グリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、その共重合体、及びそのブロック共重合体などのポリアルキレンオキシド・ホモ重合体を含むが、但し、上記ブロック共重合体の水溶性が維持されることを条件とする。追加的な有効な重合体には、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンのブロック共重合体(Pluronics)などのポリオキシアルキレン;ポリメタクリレート;カルボマー;分岐又は非分枝の多糖が含まれる。
【0094】
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質)が、第2の作用物質と組み合わせて使用される時、2つの作用物質は、別々に又は一緒に処方されてもよい。例えば、それぞれの医薬組成物が、例えば、投与の直前に混合され、そして、一緒に投与されても、又は別々に、例えば、同時に若しく異なる時間に投与されてもよい。
【0095】
リンパ管系は、例えば、癌細胞転移;例えば、外科処置、放射線照射療法、又は感染によって誘発された、リンパ浮腫;皮膚病、例えば、老化又は紫外線への過度の暴露によって引き起こされた表皮剥離、を含めた多くの病状に影響を与え、且つ、影響を受ける組織液の恒常性に極めて重要な役割を担っている。加えて、腫瘍転移は、主として、リンパ系を通して起こり、そして、リンパ節の関与の程度が、疾患の重さに関する主要な予後因子である。原発腫瘍におけるリンパ管新生及び腫瘍内リンパ管の量は、例えば、乳癌における、動物実験において腫瘍転移と相関がある(Skobeら、Nature Medicine 7(2):192-198ページ(2001年))。腫瘍内リンパ管系は、例えば、乳癌、結腸癌、肺癌、甲状腺癌、胃癌、扁平上皮癌、中皮腫、骨肉腫、及び神経芽細胞腫などの多くの腫瘍型の転移において重要な役割を果たし得る。
【0096】
G. 投与
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質)又は他の作用物質は、様々な方法によって対象、例えば、ヒト対象に投与されてもよい。多くの適用に関して、投与経路は、以下の:静脈内注射若しくは注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、又は筋肉内注射、の中の1つである。HGF/HGFRモジュレーターは、固定用量、又は対象の体重について調節された用量(例えば、mg/kg用量)として投与されてよい。
【0097】
用量は、また、HGF/HGFRモジュレーターに対する抗体の産生を減少させるか、又は回避するようにも選択されてよい。
それらの投与経路、及び/又は様式は、また、例えばトモグラフィー像、リンパ管造影、及び特定の疾患に関連する標準的なパラメーター、例えば、リンパ管若しくはリンパ系関連障害を評価するための基準、を使用して、例えば、対象を観察することによって、個々の症例に合わせられてもよい。
【0098】
投与計画は、所望の応答、例えば、治療反応又は組み合わせ治療効果を提供するように調節される。一般に、HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体)(及び必要に応じて、第2の作用物質)の用量の(別々、又は同時に処方される)あらゆる組み合わせが、生物学的に利用可能な数量の作用物質を対象に提供するように使用されてよい。例えば、1mg/kg〜100mg/kg、0.5〜20mg/kg、又は1〜10mg/kgの範囲の用量が投与されてよい。
【0099】
本明細書中では、投薬量単位形態又は「固定用量」は、治療される対象のための単一の投薬量として適した物理的に別個の単位を表し;各ユニットは、必要とされる医薬担体と結び付けて、及び必要に応じて、他の作用物質と結び付けて、所望の治療効果を生じるように計算された所定の数量の活性物質を含む。
【0100】
HGF/HGFRモジュレーターは、リンパ管、又はリンパ系関連障害の症状又は徴候の発現後、約10分〜約48時間、より好ましくは、約10分〜24時間、より好ましくは、3時間以内に少なくとも1度、投与されてよい。例えば、前記作用物質は、リンパ浮腫を患うか、又はそういった危険性を持つ患者に投与されてよい。単回又は複数回の投薬が与えられてよい。あるいは又は加えて、HGF/HGFRモジュレーター作用物質は、連続点滴を通して投与されてよい。治療は、リンパ管、又はリンパ系関連障害におけるリンパ管新生を適切に調節するために、何日でも、何週間でも、何カ月でも、又は何年間であっても続けることができる。
【0101】
HGF/HGFRモジュレーターは、約1〜10週間、好ましくは、2〜8週間、より好ましくは、約3〜7週間、そして、より一層好ましくは、約4、5、又は6週間、1週あたり1回、投与されてよい。当業者は、これだけに制限されることなく、疾患又は障害の重症度、これまでの治療、対象の健康全般、及び/又は年齢、及び現在の他の疾患を含めた特定の因子が対象を効果的に治療するのに必要とされる投薬量及びタイミングに影響を及ぼし得ることを理解している。そのうえ、化合物の治療的有効量での対象の治療は、単回の治療を含んでもよく、又は好ましくは、一連の治療を含んでもよい。
【0102】
対象が本明細書中に記載の障害(例えば、フィラリア症)又は他のリンパ系関連障害を発現する危険性を持つ場合に、HGF/HGFRモジュレーターが、予防措置として症状の発症前に投与されてもよい。そのような予防的な処置の持続は、HGF/HGFRモジュレーターの単回の投薬であってもよく、又はその治療が続けられてよい(例えば、複数回の投薬)、例えば、本明細書中に記載の障害の危険性を持つ対象は、損傷が起こるのを防ぐために何日でも、何週間でも、何カ月でも、又は何年間であってもHGF/HGFRモジュレーターで治療されてよい。
【0103】
医薬組成物は、本明細書中に記載の作用物質の「治療的有効量」を含んでよい。前述の有効量は、投与された作用物質の効果、又は2種類以上の作用物質が使用された場合には、作用物質の組み合わせ効果に基づいて判断できる。作用物質の治療的有効量は、また、例えば、個人の病状、年齢、性別、及び体重、並びに個人において所望の応答、例えば、少なくとも1つの障害パラメーターの改善又は少なくとも1つの障害の症状の改善、を引き出す化合物の能力などの要因に従っても変化し得る。治療的有効量は、また、組成物のいずれかの毒性、又は有害な効果を治療的に有益な効果が上回るものでもある。
【0104】
HGF/HGFRの拮抗薬は、癌を治療するために使用されてもよい。癌性障害の例には、これだけに制限されることなく、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、及び転移性病巣が含まれる。固形腫瘍の例には、様々な臓器系の悪性腫瘍、例えば、肉腫、腺癌、及び癌腫、例えば、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例えば、結腸)、及び尿生殖路(例えば、腎臓、尿路上皮細胞)、咽頭部、前立腺、卵巣を侵すものなど、並びにほとんどの結腸癌、直腸癌、腎細胞腫、肝臓癌、肺の非小細胞癌、小腸癌などの悪性腫瘍を含む腺癌が含まれる。前述の癌の転移性病巣、特に、これらの癌の転移形態もまた、本明細書中に記載の方法及び組成物を使用することで治療又は予防できる。
【0105】
前記方法は、様々な臓器系の悪性腫瘍、例えば、肺、乳房、リンパ系、胃腸(例えば、結腸)、及び尿生殖路、前立腺、卵巣、咽頭部を侵すものなど、並びにほとんどの結腸癌、腎細胞腫、前立腺癌、及び/又は睾丸腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸癌、及び食道癌などを含めた悪性腫瘍を含む腺癌を治療するために使用できる。治療できる代表的な固形腫瘍には、以下の:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞腺癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮性癌腫、グリオーマ、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫が含まれる。
【0106】
用語「癌腫」は、当業者によって認識されており、そして、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、泌尿生殖系癌腫、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌腫、及びメラノーマを含めた上皮又は内分泌組織の悪性腫瘍を表す。代表的な癌腫には、子宮頚部、肺、前立腺、乳房、頭頚部、結腸、及び卵巣の組織からのそれらの形成が含まれる。前記用語には、また、例えば、癌性及び肉腫性の組織から成る悪性腫瘍を含めた癌肉腫も含まれる。「腺癌」は、腺組織から得られた癌腫、又は腫瘍細胞が認識可能な腺状構造を形成する癌腫を表す。用語「肉腫」は、当業者によって認識されており、間葉由来の悪性腫瘍を表す。
【0107】
H. 器具及びキット
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFR)を含む医薬組成物は、医療器具を用いて投与されてもよい。前記器具は、例えば、訓練を受けていない対象によって、又は医療設備及び他の医療装置と離れた、現場の救急隊員によって、緊急事態で使用できるように、例えば、携帯性、室温保存、使いやすさなどの特徴を考慮して設計されることができる。前記器具には、例えば、HGF/HGFRモジュレーターを含む医薬調剤を保存するための1つ以上のハウジング、を含んでもよく、且つ、HGF/HGFRモジュレーターの1つ以上の単位用量をデリバリーするように構成されてもよい。
【0108】
例えば、前記医薬組成物は、針のなしの皮下注射器具、例えば、米国特許番号第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;又は同第4,596,556号に開示された器具など、を用いて投与されてもよい。周知の移植物及びモジュールの例には、以下の:制御された速度にて薬剤を投薬するための埋め込み式マイクロ注入ポンプを開示する米国特許番号第4,487,603号;皮膚を通して医薬品を投与するための治療器具を開示する米国特許番号第4,486,194号;正確な注入速度にて薬剤をデリバリーするための薬剤注入ポンプを開示する米国特許番号第4,447,233号;連続した薬物デリバリーのための可変流量埋込み式注入装置を開示する米国特許番号第4,447,224号;多室型の区画を持つ浸透圧薬物デリバリー・システムを開示する米国特許番号第4,439,196号;及び浸透圧薬物デリバリー・システムを開示する米国特許番号第4,475,196号、が含まれる。多くの他の器具、移植物、デリバリー・システム、及びモジュールもまた、知られている。
【0109】
HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質)は、キットで提供されてもよい。1つの態様において、キットには、(a)HGF/HGFRモジュレーターを含む組成物を含むコンテナ、及び、必要に応じて、(b)情報資料を含む。前記情報資料は、記述的な資料、教育的な資料、マーケティングの資料、又は本明細書中に記載の方法、及び/又は治療効果のための作用物質の使用に関する他の資料であってもよい。1つの態様において、キットには、また、リンパ管及びリンパ系関連障害を治療するための第2の作用物質も含まれる。例えば、前記キットには、HGF/HGFRモジュレーターを含む組成物を含む第1のコンテナ、及び第2の作用物質を含む第2のコンテナが含まれる。
【0110】
キットの情報資料は、その形態が制限されない。1つの態様において、情報資料は、化合物の製造、化合物の分子量、濃度、期限切れ日、バッチ若しくは製造場所の情報などに関する情報を含むことができる。1つの態様において、情報資料は、リンパ管又はリンパ系関連障害を患うか又はそういった危険性を持つ対象を治療するために、例えば、好適な用量、投与形態、又は投与様式(例えば、本明細書中に記載の用量、投与形態、又は投与様式)にて、HGF/HGFRモジュレーター(例えば、抗体又は可溶性HGFRタンパク質)を投与する方法に関する。前記情報は、印刷された文章、コンピュータが読み込み可能な資料、ビデオ記録、又はオーディオ記録を含めた様々な形式で、あるいは実際の資料へのリンク又はアドレスを提供する情報として提供されてもよい。
【0111】
HGF/HGFRモジュレーターに加えて、前記キットの組成物は、例えば、溶剤若しくはバッファー、安定化剤、又は保存料などの他の成分を含むことができる。前記HGF/HGFRモジュレーターは、好ましくは、実質的に純粋、及び/又は無菌の、いずれの形態で、例えば、液体、乾燥させた、又は凍結乾燥した形態、で提供されてもよい。前記作用物質が液体溶液で提供される時、その液体溶液は、好ましくは、水性溶液である。前記作用物質が乾燥形態で提供される時、一般に、再構成は、好適な溶剤の付加によって達成させる。前記溶剤、例えば、滅菌水又はバッファー、が、必要に応じて、キットに提供される。
【0112】
前記キットは、作用物質を含む(単数又は複数の)組成物のための1つ以上のコンテナを含んでもよい。いくつかの態様において、キットは、組成物と情報資料のための別々のコンテナ、仕切り、又は区分を含む。例えば、前記組成物は、ボトル、バイアル、又はシリンジ内に含まれることができ、そして、情報資料はプラスチックのスリーブ又はパケット内に含まれることができる。他の態様において、キットの別々の要素は、単一の、仕切られていないコンテナ内に含まれる。例えば、前記組成物は、ラベルの形で情報資料が取り付けられた、ボトル、バイアル、又はシリンジ内に含まれる。いくつかの態様において、キットは、1つ以上の単位投与形態(例えば、本明細書中に記載の投与形態)の作用物質をそれぞれ含む、複数の(例えば、一組の)個々のコンテナを含む。前記コンテナは、併用単位投薬量、例えば、所望の比率で、例えば、HGF/HGFRモジュレーターと第2の作用物質の両方を含む単位、を含んでもよい。例えば、前記キットには、例えば、それぞれ1つの併用単位用量を含む、複数のシリンジ、アンプル、ホイル・パケット、ブリスターパック、又は医療器具が含まれる。前記キットのコンテナは、気密であり、(例えば、湿気又は蒸発の変化に対して不透過性の)防水であり、及び/又は遮光であっててよい。
【0113】
前記キットは、必要に応じて、組成物の投与に好適な器具、例えば、シリンジ又は他の好適なデリバリー器具を含む。前記器具は、一方又は両方の作用物質が最初から組み込まれて提供されるか、又は空であるが、組み込みに好適であっててよい。
【0114】
III. HGF/HGFR経路活性のモジュレーターのスクリーニング方法
HGF/HGFR経路(例えば、HGF、HGFR、インテグリンα9、及びスタニオカルシン1)の発現に関する推定上のモジュレーターのスクリーニングは、試験管内又は生体内におけるHGF又はHGFRプロモーター活性に対するモジュレーターの効果を測定することによって実施されることができる。例えば、HGFRプロモーター(例えば、ヒト、サル、又はマウスHGFR遺伝子)若しくはその調節領域、例えば、Gambarottaら(1994年)、J. Biol. Chem., 269(17):12852-12857ページ;又は、例えば、HGFプロモーター(例えば、ヒト、サル、又はマウスHGF遺伝子)若しくはその調節領域、例えば、Bellら(1998年)、J. Biol. Chem., 273(12);6900-6908ページを含む核酸は、レポーター・ポリペプチド、例えば、以下で説明したレポーター・ポリペプチド(例えば、高感度緑色蛍光タンパク質)、の1つをコードする核酸に作動できるように連結されてもよい。使用できる他のプロモーターには、例えば、インテグリンα9、及びスタニオカルシン1といったHGF/HGFR経路活性によって調節される他の遺伝子のものが含まれる。レポーター核酸に作動できるように連結された標的プロモーターを含む核酸は、培養細胞内に導入されても、及び/又は生体内におけるプロモーター活性の評価を許容する、トランスジェニック動物を作り出すために使用されてもよい。いくつかの態様において、トランスジェニック動物は、また、HGF/HGFRモジュレーターの投与によって影響を受ける他の表現型(例えば、皮膚における遺伝子発現の誘導又は抑制)についても評価されてよい。
【0115】
A. 皮膚に対する推定上のHGF/HGFRモジュレーターの効果の評価
本明細書中に開示した方法は、実験の対象におけるHGF、HGFR、又は他の標的遺伝子の発現に対する効果について化合物を評価することを可能にする。いくつかの態様において、皮膚に対する化合物(例えば、皮膚の状態のための治療的な化合物)の効果は、発現が測定された同じ実験の対象において評価されてもよい。皮膚に対する効果は、通常、皮膚代謝関連プロモーターの制御下の遺伝子の発現に対する効果として測定される。そのようなプロモーターには、以下の:皮膚の成分である生成物、例えば、真皮又は表皮;皮膚の水和又は栄養に影響する生成物;皮膚の成分の合成又は分解を促進する生成物;皮膚の脈管構造に影響する生成物;毛嚢代謝に影響する生成物;皮膚の腺状構造に影響する生成物;皮下筋系に影響する生成物;脂肪組織に影響する生成物;又は、皮神経に影響する生成物、の発現、及び/又は合成を制御するものが含まれる。
【0116】
本発明の方法は、皮膚の外観又は健康に関連するパラメーター、例えば、皮膚の弾力性、しわに対する皮膚の性向、液体、例えば、水又はオイルを保持する皮膚の能力、傷害、例えば、光又はUV誘発性傷害、に抵抗する又はそれを修復する皮膚の能力、増殖サイクル又は色素沈着を含めた毛嚢の代謝、あるいは皮下筋の緊張又は機能、に対する効果について化合物を評価するために有用である。一般に、これらのパラメーターに対する効果は、例えば、これらのパラメーターのいずれかに影響する生成物をコードする遺伝子に通常連結されているプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子の発現に対する効果によって、間接的に評価される。
【0117】
トランスジェニック動物
本発明の方法で使用できるトランスジェニック動物には、ヒト以外の哺乳動物、例えば、ブタ、例えば、ミニ・ブタ;又は、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、又はモルモット、例えば、(例えば、Begona M.ら(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. 91:7717-7721ページに記載の)無毛マウス、ヌード・マウス、(例えば、Takedaら(1991年)L. Am. Geriatr. Soc. 39:911-19ページに記載の)老化促進マウス、又は促進された老化の表現型を示すトランスジェニック突然変異マウスなどが含まれる。1つ以上、そして、好ましくは基本的に全ての動物細胞が導入遺伝子を含む。トランスジェニック動物は、導入遺伝子に関してホモ接合であっても、ヘテロ接合であってもよい。マウスは好ましい対象動物である。
【0118】
トランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製する多くの方法が、当該技術分野で知られている。1つの代表的なアプローチを以下に説明する。
胚操作及びマイクロインジェクションの手順は、例えば、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY.、1986年、上記文献の内容を本明細書中に援用する)に記載されている。妊馬血清(PMS)と、それに続いて48時間後にヒト絨毛性ゴナドトロピンで過剰排卵させた6週齢の雌からマウス接合体を採集することができる。準備刺激された雌は、雄と一緒に置かれて、そして、翌朝、腟栓がないかどうか調べられる。疑似妊娠雌は、発情期に関して選択されて、不妊パイプカット雄と一緒に置かれ、そして、受容者として使用される。接合体は採集され、そして、卵丘細胞が取り除かれる。更に、胚盤胞が採取されてもよい。前核胚が、雄と交尾した雌マウスから回収される。雌は、卵胞成長を誘発するために妊馬血清、PMSで処理され、そして、排卵を誘発するためにヒト絨毛性ゴナドトロピン、hCGで処理される。胚を、ダルベッコ変性リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中で回復させ、10%のウシ胎仔血清が補われたダルベッコ変性基本培地(DMEM)中で維持する。
【0119】
トランスジェニック構築物のマイクロインジェクションは、顕微鏡に取り付けられた標準的なマイクロ・マニピュレータを使用することで実施できる。例えば、胚は、通常、マイクロインジェクションされている間、オイル下の100マイクロリットルのDPBS滴中に保持される。DNA溶液は、雄性前核内にマイクロインジェクションされる。成功したインジェクションは、前核の膨張によって観察される。組み換えES細胞は、同様の技術を使用して、胚盤胞内に注射することができる。注射直後、胚は、受容雌、例えば、パイプカット雄マウスと交尾した成熟マウス、に移植される。一般的なプロトコールにおいて、受容雌は、麻酔され、卵管が露出するようにパラランバー(paralumbar)を切開し、そして、上記胚を卵管の膨大部領域に転換する。体壁は縫合され、そして、皮膚は創傷クリップで閉じられる。
【0120】
標的構築物の存在についてのスクリーニング
トランスジェニック動物は、出生後に標準的なプロトコールによって特定できる。尾部組織からのDNAが、サザン・ブロット法、及び/又はPCR法を使用した標的構築物の存在についてスクリーニングされてもよい。それらが生殖細胞系に標的構築物を保有すると考えられる場合、ホモ接合トランスジェニック動物を生み出すために、次に、モザイクであるように見える子孫が互いに交配される。子孫が生殖細胞系伝播を持つかどうか不明瞭である場合、それらは親又は他の系統と交配されて、そして、子孫がヘテロ接合性についてスクリーニングされてよい。ヘテロ接合体は、DNAのサザン・ブロット、及び/又はPCR増幅によって特定される。
【0121】
ホモ接合トランスジェニック子孫を作り出すために、ヘテロ接合体は、次に、互いに交配されてもよい。ホモ接合体は、この交配の成果であるマウス、並びにヘテロ接合体と知られているマウス、及び野生型マウスからの等量のゲノムDNAのサザン・ブロットによって特定されてよい。サザン・ブロットを選別するためのプローブは、先に記載のとおり設計される。
【0122】
トランスジェニック子孫を特定し、そして、特徴づけする他の手段が、当該技術分野で知られている。例えば、レポーター遺伝子をコードする転写産物の存在又は不存在についてmRNAを調べるために、ノザン・ブロット法が使用できる。加えて、この遺伝子が発現されている場合には、導入遺伝子によってコードされたタンパク質に対する抗体、又はマーカー遺伝子産物に対する抗体を用いてウエスタン・ブロットを探索することによってこれらの子孫の様々な組織における導入遺伝子の発現レベルを評価するために、ウエスタン・ブロットが使用できる。
【0123】
最終的に、子孫からの様々な細胞の原位置における解析(例えば、細胞を固定し、そして、抗体で標識するなど)、及び/又は、FACS(蛍光標示式細胞分取器)分析が、導入遺伝子産物の存在又は不存在を調べるために好適な抗体を使用して実施されてもよい。例えば、個々のプロモーター-レポーター導入遺伝子トランスジェニック・マウスを同系交配することによって、検出可能な異なるレポーターに作動できるように連結された異なるプロモーターを伴う2種類の別個の導入遺伝子を持つトランスジェニック動物が作り出されることができる。
【0124】
他のトランスジェニック動物が、本発明の方法で使用できる。様々な動物の調製方法が、当該技術分野で知られている。トランスジェニック・ブタの製造のためのプロトコールは、White及びYannoutsos、Current Topics in Complement Research:第64回Forum in Immunology、88-94ページ;米国特許番号第5,523,226号;同第5,573,933号;PCT出願WO 93/25071;及びPCT出願WO 95/04744、の中に見ることができる。トランスジェニック・ラットの製造のためのプロトコールは、Bader及びGanten、Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology、付録3:S81-S87ページ、1996年の中に見ることができる。トランスジェニック・ウシの製造のためのプロトコールは、Transgenic Animal Technology、A Handbook、1994年、編、Carl A. Pinkert、Academic Press, Inc.の中に見ることができる。トランスジェニック・ヒツジの製造のためのプロトコールは、Transgenic Animal Technology、A Handbook、1994年、編、Carl A. Pinkert、Academic Press, Inc.の中に見ることができる。
【0125】
レポーター遺伝子
プロモーター活性は、レポーター遺伝子を着目のプロモーター(例えば、HGF、HGFR、インテグリンα9、又はスタニオカルシン1プロモーター)と対にすることによってアッセイできる。レポーター遺伝子は、検出可能な生成物、好ましくは、比較的容易に検出できるもの、例えば、蛍光性である遺伝子産物か、又は有色、蛍光性、若しくは発光性の生成物の形成によって測定することができる反応を触媒する遺伝子産物、をコードするいずれかの遺伝子であってよい。例えば、レポーター遺伝子は、酵素、例えば、検出可能な生成物、例えば、有色、蛍光性、若しくは発光性の生成物、を産生する酵素、をコードすることができる。レポーター遺伝子は、当該技術分野で知られており、そして、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、アルカリ・ホスファターゼ遺伝子、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ遺伝子、β-ラクタマーゼ遺伝子、又はクロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ遺伝子を含む。レポーター遺伝子は、例えば、Sambrook, J, Fritsh, E. F及びManiatis, T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY、1989年、に記載されている。
【0126】
IV. 診断アッセイ
A. 核酸及びタンパク質の検出
アレイは、サンプル、例えば、対象からのサンプル、を特徴づけするための有用な分子ツールである。例えば、アレイは、HGF、HGFR、インテグリンα9、及びスタニオカルシン1核酸に対するプローブを含めた複数の遺伝子に対する、あるいは複数のタンパク質に対する捕獲プローブがある。アレイは、基板上に多くのアドレス、例えば、位置を特定できる部位、を持ってよい。紹介されるアレイは、様々な形式で構成されることができ、その制限されることのない例を以下に説明する。
【0127】
基板は、不透明、半透明、又は透明であってよい。アドレスは、一次元、例えば、線状アレイで;二次元、例えば、平面アレイで;又は三次元、例えば、三次元アレイで、基板上に配布させてもよい。固体基板は、あらゆる都合よい形状又は形態、例えば、正方形、長方形、卵形、又は円形、であってよい。
【0128】
アレイは、様々な方法、例えば、フォトリソグラフィー法(例えば、米国特許番号第5,143,854号;同第5,510,270号;及び同第5,527,681号を参照のこと)、機械的方法(例えば、米国特許番号第5,384,261号に記載の定方向流法)、(例えば、米国特許番号第5,288,514号に記載の)ピン・ベースの方法、(例えば、PCT US/93/04145に記載の)ビーズ・ベースの技術、によって作り上げることができる。
【0129】
前記捕獲プローブは、一本鎖核酸、二本鎖核酸(例えば、ハイブリダイゼーション前若しくはハイブリダイゼーション中の変性されたもの)、又は一本鎖領域と二本鎖領域を持つ核酸であってもよい。好ましくは、前記捕獲プローブは1本鎖である。前記捕獲プローブは、様々な基準で選択されることができ、そして、好ましくは、最適化パラメーターを用いたコンピュータ・プログラムによって設計される。前記捕獲プローブは、遺伝子の配列に富む(例えば、非ホモ重合体)領域にハイブリダイズするように選択できる。捕獲プローブのTmは、相補性領域と長さの慎重な選択によって最適化できる。理想的には、アレイに対する全ての捕獲プローブのTmは、類似しており、例えば、互いの2 0、10、5、3、又は2℃以内である。
【0130】
単離された核酸は、好ましくは、例えば、(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, N.Y.に記載の)ゲノムDNAを取り除くためのDNase処理、及びオリゴdTを結合させた固体基板へのハイブリダイゼーションを含めた、日常的な方法によって単離できるmRNAである。基板は洗浄され、そして、mRNAが溶出される。
【0131】
単離されたmRNAは、例えば、(米国特許番号第4,683,202号)に記載のように、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR法)によって、逆転写され、そして、必要に応じて、増幅されることができる。核酸は、例えば、PCR(米国特許番号第4,683,196号及び同第4,683,202号);ローリング・サークル増幅(「RCA」、米国特許番号第5,714,320号)、等温RNA増幅又はNASBA(米国特許番号第5,132,38号;同第5,409,818;及び同第5,554,517号)、並びに鎖置換増幅(米国特許番号第5,455,166号)、からの増幅生成物であっててよい。核酸は、例えば、標識ヌクレオチドの取り込みによって、増幅中に標識されてもよい。好ましい標識の例には、蛍光標識、例えば、赤色螢光色素Cy5(商標)(Amersham)又は緑色蛍光色素Cy3(商標)(Amersham)、又は、例えば、米国特許番号第4,277,437号に記載のような、化学発光標識が含まれる。あるいは、核酸は、ビオチンで標識され、そして、標識されたストレプトアビジン、例えば、ストレプトアビジン・フィコエリトリン(Molecular Probes)、とのハイブリダイゼーション後に検出されることができる。
【0132】
標識された核酸は、アレイに接触させることができる。加えて、対照核酸又は基準核酸は、同じアレイに接触させることができる。対照核酸又は基準核酸は、サンプル核酸以外の標識、例えば、異なる発光極大を有するもの、で標識されてよい。標識された核酸は、ハイブリダイゼーション条件下で、アレイに接触させることができる。アレイは洗浄され、次に、アレイ上の各アドレスにおける蛍光を検出するために撮像されてよい。
【0133】
HGF又はHGFRタンパク質の発現レベルは、(例えば、ウエスタン・ブロット又はELISAアッセイを使用して)ポリペプチドに特異的な抗体を使用することで測定されてよい。そのうえ、HGF及びHGFRを含めた複数のタンパク質の発現レベルは、それぞれポリペプチドに対する抗体捕獲プローブを持つポリペプチド・アレイを使用することで平行して迅速に測定することができる。ポリペプチドに特異的な抗体は、本明細書中に記載の方法によって作り出すことができる(「抗体の創出」を参照のこと)。
【0134】
タンパク質がニトロセルロース膜上にスポットされている低密度(96ウェル形式)タンパク質アレイが、開発された(Ge(2000年)Nucleic Acids Res. 28, e3, I-VII)。抗体スクリーニングに使用される高密度タンパク質配列(例えば、222×222mm内に100,000個のサンプル)は、ポリビニリデン・ジフルオライド(PVDF)上にタンパク質をスポットすることによって作り出すことができる(Luekingら(1999年)Anal. Biochem. 270:103-111ページ)。また、例えば、Mendozaら(1999年)Biotechniques 27:778-788ページ;MacBeath及びSchreiber(2000年)Science 289;1760-1763ページ;並びにDe Wildtら(2000年)Nature Biotech. 18:989-994ページを参照のこと。これらの当該技術分野で知られている方法及び他のものが、サンプル中の多数のポリペプチドを検出するために抗体のアレイを作り出すために使用できる。サンプルは、標識されてもよく、例えば、蛍光標識と結合させたストレプトアビジンを用いたその後の検出のために、ビオチン化されてもよい。アレイは、次に、各アドレスにおける結合を計測するために走査されてよい。
【0135】
本発明の核酸及びポリペプチド・アレイは、幅広い適用に使用できる。例えば、前記アレイは、患者サンプルを分析するために使用できる。前記サンプルは、以前に得られたデータ、例えば、公知の臨床標本又は他の患者サンプル、と比較される。更に、前記アレイは、細胞培養サンプルを特徴づけするために、例えば、その細胞培養物を抗原、導入遺伝子、又は試験化合物に晒して、例えば、パラメーターを変更した後の細胞の状態を測定するために、使用できる。
【0136】
発現データは、データベース内、例えば、リレーショナル・データベース、例えば、SQLデータベース(例えば、Oracle又はSybase database environments)など、に保存できる。前記データベースに、複数の表を持たせることができる。例えば、未加工の発現データが、各行がアッセイされた遺伝子、例えば、アドレス又はアレイに対応し、そして、各列がサンプルに対応する、1つの表の中に保存できる。別の表に、識別子及びサンプル情報、例えば、使用したアレイのバッチ番号、日付、及び他の品質管理情報、を保存できる。
【0137】
アレイによる遺伝子発現解析から得られた発現特徴は、Golubら(1999年)Science 286:531ページに記載のように、様々な状態のサンプル、及び/又は細胞を比較するために使用できる。1つの態様において、HGFをコードする遺伝子、及び/又はHGFRをコードする遺伝子の発現(例えば、mRNA発現又はタンパク質発現)情報は、例えば、基準値の比較によって、例えば、基準値が、評価される。基準値は、対照、基準対象から得られてよい。基準値は、また、例えば、対象、例えば、年齢及び性別が適合した対象、例えば、正常な対象又はリンパ管若しくはリンパ系関連障害を患うか、又はそういった危険性を持つ対象、のコホートについて基準値を提供するための、統計的分析から得られ得る。同定の基準に対する(例えば、危険性に関連するコホートについての基準に対する)又は正常なコホートに対する統計的な類似性は、対象、例えば、事前のリンパ管障害を患わず、リンパ障害(例えば、遺伝的素質)の危険性を持つ対象、又はリンパ障害を患った対象、に対して評価(例えば、リンパ障害の危険性の指摘)を提供するために使用できる。
【0138】
治療に好適な対象は、また、HGF/HGFR経路活性の発現、及び/又は活性、例えば、HGF発現、HGFR発現、インテグリンα9発現、及びスタニオカルシン1発現、並びにこれらの因子に関連する修飾状態又は他のパラメーターについても評価されてよい。いくつかの態様において、対象は、HGF、及び/又はHGFRの発現、及び/又は活性が基準、例えば、基準値、例えば、定常に関連する基準値、と比べて変化する(例えば、上がる)場合に、治療に適していると同定されることができる。
【0139】
本明細書中に記載の作用物質が投与されているか、又はリンパ管又はリンパ系関連障害の他の治療を施されている対象は、HGF、及び/又はHGFRの発現、及び/又は活性について、記載のとおり、評価されてよい。前記対象は、複数の時間、例えば、療法の経過中の、例えば、治療計画中の、複数の時間、において評価できる。対象の治療は、対象がその治療にどう応答するかによって修飾できる。例えば、投与されている作用物質が拮抗薬である場合には、HGF、及び/又はHGFRの発現又は活性の低下が、応答性を示唆している。
【0140】
作用物質によって媒介された特定の効果が、統計的に有意である(例えば、P値<0.05又は0.02)(例えば、未治療の対象、対照の対象、又は他の基準に対する)相違を示し得る。統計的有意性は、いずれの技術分野で知られている方法でも測定されることができる。代表的な統計的テストには、以下の:スチューデントt-検定、マン・ホイットニーUノンパラメトリック検定、及びウィルコクソン・ノンパラメトリック統計的検定、が含まれる。一部の統計的に有意な相関は、0.05又は0.02未満のP値を持つ。
【0141】
B. 遺伝物質の評価方法
遺伝情報を提供するための遺伝物質を評価するための多数の方法が存在する。これらの方法は、HGFをコードする遺伝子又はHGFRをコードする遺伝子、並びに他の座位を含めた遺伝子座を評価するために使用できる。前記方法は、1つ以上のヌクレオチド、例えば、調節領域(例えば、プロモーター、非翻訳領域又はイントロンをコードする領域など)内の、例えば、遺伝子のコードすること又は非コード領域、を評価するために使用できる。
【0142】
核酸サンプルは、生物物理学的技術(例えば、ハイブリダイゼーション、電気泳動など)、配列、酵素ベースの技術、及びその組み合わせを使用することで分析されることができる。例えば、マイクロアレイ核酸へのサンプル核酸のハイブリダイゼーションは、mRNA集団内の配列を評価し、且つ、遺伝的多型を評価するために使用できる。他のハイブリダイゼーション・ベースの技術には、配列特異的プライマー結合(例えば、PCR法又はLCR法);DNA、例えば、ゲノムDNA、のサザン解析;RNA、例えば、mRNA、のノーザン解析;蛍光プローブ・ベースの技術(例えば、Beaudetら(2001年) Genome Res. 11(4):600-8ページを参照のこと);及び対立遺伝子特異的増幅が含まれる。酵素技術には、制限酵素消化;配列決定;及び単一塩基伸長(SBE)が含まれる。これら及び他の技術が、当業者に周知である。
【0143】
電気泳動技術には、キャピラリー電気泳動及び一本鎖DNA高次構造多型(SSCP法)検出が含まれる(例えば、Myersら(1985年)Nature 313:495-8ページ、及びGanguly(2002年)Hum Mutat. 19(4):334-42ページを参照のこと)。他の生物物理学的方法には、変性高圧液体クロマトグラフィー(DHPLC)が含まれる。
【0144】
1つの態様において、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術は、遺伝情報を得るために使用されてよい。特異的増幅用のプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、(増幅が示差的なハイブリダイゼーションによるように)分子の中心に(Gibbsら(1989年)Nucl. Acids Res. 17:2437-2448ページ)、又は適切な条件下で、ミスマッチがポリメラーゼ伸長を防止若しくは低減できる場合には、一方のプライマーの極端な3末端に(Prossner(1993年)Tibtech 11:238ページ)着目の突然変異を保有し得る。加えて、突然変異の領域内に制限部位を導入して、開裂に基づく検出を作リ出すことが可能である(Gaspariniら(1992年)Mol. Cell Probes 6:1ページ)。他の態様において、増幅は、増幅のためにTaqリガーゼを使用することで実施できる(Barany(1991年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189ページ)。そのような場合、5’配列の3’末端に完全な一致が存在する場合にのみ連結が起こり、増幅の有無を探すことによって特定の部位における既知の突然変異の存在を検出することを可能にする。
【0145】
配列の検出のための酵素的方法には、増幅ベースの方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法;Saikiら(1985年)Science 230:1350-1354ページ)及びリガーゼ連鎖反応(LCR;Wu.ら(1989年)Genomics 4:560-569ページ;Barringerら(1990年)Gene 1989:117-122ページ;F Barany(1991年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988:189-193ページ);転写ベースの方法は、RNAポリメラーゼによるRNA合成を利用して、核酸を増幅する(米国特許番号第6,066,457号;同第6,132,997号;及び同第5,716,785号;Sarkarら、(1989年)Science 244:331-34ページ;Stoflerら、(1988年)Science 239:491ページ);NASBA(米国特許番号第5,130,238号;同第5,409,818号;及び同第5,554,517号);ローリング・サークル増幅(RCA;米国特許番号第5,854,033号及び同第6,143,495号);並びに鎖置換増幅(SDA;米国特許番号第5,455,166号及び同第5,624,825号)、などが含まれる。増幅方法は、他の技術と組み合わせて使用できる。
【0146】
他の酵素技術は、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼ及びその変異体を使用した配列決定、例えば、単一塩基伸長技術など、を含む。例えば、米国特許番号第6,294,336号;同第6,013,431号;及び同第5,952,174号を参照のこと。
【0147】
蛍光ベースの検出もまた、核酸多型を検出するために使用できる。例えば、異なるターミネーターddNTPsは、異なる蛍光色素で標識されることができる。プライマーは多型の近く又はそのすぐ隣にアニーリングすることができ、そして、多型部位のヌクレオチドが、組み込まれた蛍光色素のタイプ(例えば、「色」)によって検出できる。
【0148】
マイクロアレイへのハイブリダイゼーションもまた、SNPsを含めた多型を検出するために使用できる。オリゴヌクレオチドによって様々な位置に多型ヌクレオチドを持つ一連の異なるオリゴヌクレオチドが、核酸アレイ上に配置されてもよい。位置の関数としてのハイブリダイゼーションの範囲、及びもう一方の対立遺伝子に対して特異的なオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションが、特定の多型が存在しているかどうかを測定するために使用できる。例えば、米国特許番号6,066,454号を参照のこと。
【0149】
1つの実施において、ハイブリダイゼーション・プローブは、二本鎖形成を不安定化させて、アッセイを増感するために、1つ以上の追加のミスマッチを含んでもよい。前記ミスマッチは、照会位置に直に隣接するか、照会位置の10、7、5、4、3、若しくは2ヌクレオチドの範囲内にあっててよい。ハイブリダイゼーション・プローブは、また、特定のTm、例えば、45〜60℃、55〜65℃、又は60〜75℃、を持つように選択されてもよい。多重アッセイにおいて、Tmsは、互いに5、3、又は2℃の範囲内にあるように選択されることができる。
【0150】
例えば、増幅及び配列決定、又は増幅、クローニング、配列決定によって、特定の遺伝子座に関する核酸の直接的な配列決定もまた、可能である。高処理自動化(例えば、毛細管又はマイクロチップ・ベース)配列決定装置が使用できる。更に他の態様において、着目のタンパク質の配列は、その遺伝子の配列を推測するために分析される。タンパク質配列を分析する方法には、タンパク質配列決定、質量分析法、配列/エピトープ特異的免疫グロブリン、及びプロテアーゼ消化が含まれる。
【0151】
前記の方法のいずれかの組み合わせもまた、使用できる。前記の方法は、例えば、個人の特定の群からの遺伝情報を分析するための方法において、又は例えば、HGF、HGFR、インテグリンα9、若しくはスタニオカルシン1をコードする遺伝子内の、リンパ管、又はリンパ系関連障害に関連する多型を分析するための方法において、いずれかの遺伝子座を評価するために使用できる。
【0152】
C. 生体内における造影
HGF/HGFR結合物質(例えば、抗体)は、それぞれ、生体内におけるHGF、及び/又はHGFRの存在の検出(例えば、対象における生体内造影)に使用できる。前記方法は、本明細書中に記載の症状、例えば、リンパ障害、又はそのような障害の危険性、を評価する(例えば、診断する、部位を特定する、又は病期分類する)ために使用できる。前記方法は、以下のステップ:(i)結合物質とHGF又はHGFRの相互作用が起こるのを許容する条件下で、対象(及び必要に応じて、対照対象)にHGF/HGFR結合物質(例えば、HGF又はHGFRに結合する抗体)を投与し;そして、(ii)上記結合物質を検出して、例えば、HGF又はHGFR発現細胞の位置を特定するか、又はその他の方法で識別する、を含む。基準(例えば、対照対象又は対象のベースライン)に対する対象における複合体量の統計的に有意な増加は、リンパ管、又はリンパ系関連障害、あるいはそのような障害の危険性の診断につながりお得る要因となり得る。
【0153】
好ましくは、生体内(また、試験管内)における診断法で使用されるHGF/HGFR結合物質は、結合又は非結合の結合物質の検出を容易にするために検出可能な物質で直接的又は間接的に標識される。好適な検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、及び放射性物質が含まれる。1つの態様において、HGF又はHGFR結合タンパク質を、放射性イオン、例えば、インジウム(111In)、ヨウ素(131I又は125I)、イットリウム(90Y)、アクチニウム(225Ac)、ビスマス(212Bi又は213Bi)、硫黄(35S)、炭素(14C)、トリチウム(3H)、ロジウム(188Rh)、又はリン(32P)、と結合させる。他の態様において、HGF/HGFR結合タンパク質は、NMR造影剤で標識される。
【0154】
1つの側面において、本発明は、リンパ管、又はリンパ系関連障害の危険性を持つか、又は進歩しているそのような障害を患っている患者の脈管構造(例えば、リンパ管構造)の造影方法を特徴とする。前記方法は、以下のステップ:HGF又はHGFRに結合する作用物質、例えば本明細書中に記載の作用物質、を準備し、ここで、タンパク質は造影剤と物理的に結び付けられており;上記作用物質を、例えば、リンパ管、又はリンパ系関連障害の危険性を持つ、患者に投与し;そして、例えば、HGF又はHGFR発現細胞を検出するための、例えば、上記患者の造影によって、患者体内の上記作用物質の位置を特定する、を含む。
【実施例】
【0155】
実施例1. HGFRは、血管内皮細胞に比べて、リンパ内皮細胞において高いレベルで発現され、且つ、機能的である。
定量的リアルタイムRT-PCR法(QPCR)は、3つの独立に確立された初代LEC株が、血管内皮細胞(BVEC)と比較して、主要なリンパ系統マーカーであるProx1及びLYVE-1のmRNAを高いレベルで発現したが、血管系統マーカーであるFlt-1を低いレベルでしか発現しなかったことを確認した(図1A〜C)。LECのHGFR mRNAレベルをQPCRによって計測し、そして、BVECのレベルに比べて、2倍よりも高いことがわかった(図1D)。加えて、免疫沈降反応、及びウエスタン・ブロット分析では、HGFRタンパク質の発現が、BVECに比べて、LECにおいてより高かったことが実証された(図1E)。30ng/mlのHGFでのLEC処理がHGFRのリン酸化の増加をもたらしたので(図1F)、HGFRはLEC内において機能的である。要するに、HGFRは、BVEC内に比べて、LEC内で高いレベルで発現されており、且つ、LECがHGFで処理される時に、活性化される。
【0156】
実施例2. HGFR発現は、生体内において炎症及び組織修復中にリンパ管内において発現される。
HGFR、及びリンパ特異的ヒアルロナン受容体のLYVE-1に対する抗体を使用して、正常なマウス皮膚の示差的免疫蛍光分析を実施した。HGFRの発現は、正常な皮膚中の静止状態のリンパ管においてほとんど検出されなかった。HGFRが生理学的過程中にリンパ内皮によって上方制御される可能性があるかどうかを測定するために、我々は、リンパ管の膨大及び増殖を特徴とするVEGF-Aトランスジェニック(VEGF-TG)マウス(Kunstfeldら(2004年)Blood, 104(4):1048-1057ページ)において実験的に誘発した遅延型過敏症から得られた慢性的な炎症マウス皮膚のサンプルを免疫染色した。皮膚炎誘導の7日後に、拡大したLYVE-1陽性リンパ管がVEGF-TGマウスにおいて検出されたが、野生型マウスにおいて検出されなかった(図2A、D)。LYVE-1陽性リンパ管がHGFRを強く発現したのに対して、野生型マウスの正常なリンパ管においてHGFR発現はほとんど検出されなかった(図2A〜F)。
【0157】
マウスにおいて全層皮膚創傷を実験的に誘発した2〜3週間後に、顕著なリンパ管新生を肉芽組織内で発見した。創傷後21日目における、創傷組織の二重免疫蛍光分析が、HGFRも同様に発現する数個のLYVE-1陽性リンパ管を明らかにした(図2G〜L)。
【0158】
胚性リンパ管形成中のHGFRの見込まれる役割を更に特徴づけるために、マウス胚組織を、リンパ管先祖の活性な出芽及び増殖が起こる胎生(E)10.5〜14.5日目に調べた。E11.5では、LYVE-1発現は、前主静脈の内皮細胞上に検出された。これらの細胞がHGFRをほとんど発現しなかった一方で、HGFR発現は、前腸の咽頭部内、及び間葉細胞内において既に検出されていた(図3A〜C)。しかしながら、E12.5では、HGFR発現が、前主静脈のLYVE-1陽性内皮細胞上ではっきりと検出可能であったが(図3F:矢印)、その一方で、偶発的なHGFR発現だけが、LYVE-1反応性と重なり、原始リンパ管を内張りする内皮細胞上に見られた(図3D〜F)。E14.5までには、強いHGFR発現が、LYVE-1陽性リンパ管内皮細胞の大部分で検出された(図3G〜I)。この段階では、HGFRは、LYVE-1陰性である頚静脈及び動脈を内張りする内皮細胞によってまだわずかに発現されていた。
【0159】
実施例3. HGFはLECの増殖及び遊走を直接的に促進する。
HGFは、唯一知られているHGFRのリガンドであり、そして、ヒト血管内皮細胞(HVEC)の増殖と遊走を引き起こすことを示した、例えば、Bussolinoら(1992年)、J. Cell Biol., 119:629-641ページ。LEC対BVECによるHGFRの示差的な発現レベルがHGF刺激に関してそれらの示差的な応答をもたらすかどうか調査するために、我々は、次に、試験管内におけるLEC対BVECの増殖に対するHGFの効果を調査した。HGFは、未処理対照培養物と比べた場合に、1ng/ml(p<0.01)の最小有効濃度でLECの増殖を強力に誘導した。HGFもまた、この濃度にてBVEC増殖を誘導したが、増殖刺激の程度は、BVECと比べて、LECにおいてより高かった(図4A)。これまでのところ、VEGF-C及びVEGF-Dが、VEGF受容体-3(VEGFR-3)の活性化を介して直接的にLEC増殖を促進する唯一知られている増殖因子であり(例えば、Jussila及びAlitalo(2002年)、Physiol Rev, 82:673-700ページ)、そして、それらがVEGFR-3経路のブロックによって抑制され得るので、リンパ管新生に対するFGF-2の効果が、VEGFR-3リガンドの上方制御の結果であることが提案された(例えば、Changら(2004年)、PNAS, 101:11658-11663ページ;Kuboら(2002年)、PNAS, 99:8868-8873ページ)。HGFが直接的又は間接的にLEC増殖を刺激するかどうか調査するために、我々は、次に、VEGFR-3又はHGFRに対するブロッキング抗体の存在下又は不存在下、HGFでLECを処理した。HGFRブロッキング抗体と一緒のLECのインキュベーションが、HGFによるLEC増殖の刺激を強力に遮断したが(p<0.001)、その一方で、−VEGF-CによるLEC増殖の刺激を効果的に遮断した用量(データ未掲載)における−、VEGFR-3ブロッキング抗体と一緒の、又は対照IgGと一緒のインキュベーションは、HGF誘発増殖に影響を与えなかった(図4B)。これらの結果は、HGF誘発LEC増殖が、VEGF-R3経路の活性化から独立して起こり、且つ、HGFのその受容体への効果的な結合に依存していることを示唆している。
【0160】
HGF処理は、また、3ng/mlの最小有効濃度でLEC及びBVECの遊走も用量依存的に促進した(図4C)。HGF刺激が、また、試験管内におけるリンパ管形成も促進するかどうか調査するために、集密LEC培養物に、先に記載のHirakawaら(2003年)、Am. J. Pathol., 162:575-586ページのように、I型コラーゲンを被せた。HGFは、未処理対照培養物と比較して、3ng/mlの最小有効用量で(p<0.001)LECによるコード形成を強力に誘導した(図5A、B)。
【0161】
実施例4. HGFは、生体内においてリンパ管形成を促進する。
HGFが、また、生体内においてリンパ管新生も誘導するかどうか調査するために、我々は、Hirakawaら(2003年)、Am. J. Pathol., 162:575-586ページに記載のとおり、HGFを含むか又は含まないマトリゲルをFVBマウスの皮下に埋め込んだ。リンパ管特異的糖タンパク質であるポドプラニン、例えば、Schachtら(2003年)、EMBO J., 22:3546-3556ページ、についての免疫染色が、埋め込み後7日目のHGF含有マトリゲル内の新しいリンパ管の顕著な形成を明らかにしたが、その一方で、対照マトリゲル内にリンパ管は観察されなかった(図5C、D)。
【0162】
実施例5. HGFRの全身的な遮断は、実験的な皮膚炎中のリンパ管の膨大を抑制する。
我々はマウスにおいて実験的な皮膚炎中に膨大したリンパ管によってHGFRが強く発現されることを発見したので、我々は、次に、HGFが、生体内におけるリンパ管膨大に直接的に貢献するかどうか調査した。遅延型過敏反応を、Kunstfeldら(2004年)、Blood, 104(4):1048-1057ページに記載のとおり、マウス耳部への局部塗付によって誘導した。実験的炎症の誘導の1日前に、100μgのHGFRに対するブロッキング抗体、又は等量の対照免疫グロブリンGを、腹腔内に注射した。炎症誘導の24時間後の免疫蛍光分析は、対照IgGを受けたマウスと比べて、HGF-Rブロッキング抗体での処理を受けたマウスにおいてリンパ管のサイズの大幅な減少を明らかにした(図6A、B)。LYVE-1及びCD31について染色した切片のコンピュータを利用した形態計測による分析は、リンパ管の平均サイズ、及びリンパ管によって覆われている組織領域のパーセンテージが、対照IgG処理マウスと比較して、HGF-Rブロッキング抗体の注射後に有意に減少した(P<0.01)ことを実証した(図6C、D)。リンパ管の密度は、2つの処理群の間で有意に異なっていなかった(図6E)。
【0163】
実施例6. HGFは、インテグリンα9を介してLECの遊走を促進する。
LECに対するHGFの効果を媒介し得る可能性のある分子機序を規定するために、LECの独立した2種類の系統を30ng/mlのHGFと一緒に、又はそれなしに6時間、インキューベートし、それに続いて、Affymetrix HU133v2(商標)アレイを使用してマイクロアレイ分析をした。我々は、スタニオカルシン1がHGF処理後に最も高く上方制御された遺伝子の1つであったことを発見した。そのうえ、インテグリンα9の発現もまた、HGF処理後に有意に上方制御された。これらの結果を、QPCR分析によって確認した(図7A)。
インテグリンα9の存在下、又は不存在下のHGFとLECの同時インキュベーションは、インテグリンα9遮断は、HGF誘導性遊走を部分的にしか遮断しなかったが(p=0.0143)、その一方で、HGF-Rブロッキング抗体とのインキュベーションは、LEC遊走に対するHGFの効果を完全に抑制する(p=0.0074)ことを明らかにした(図7B)。
【0164】
実施例7. HGFは、VEGFとは独立に、生体内におけるリンパ管形成を促進する。
生体内におけるHGF過剰発現の効果を測定するために、リンパ管構造を、先に確立したメタロチオネインIプロモーター駆動HGFトランスジェニック・マウスにおいて調査した(Takayamaら(1996年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:5866-5871ページ)。分析は、リンパ管が最も豊富であり、且つ、遺伝的マウス・モデルにおいてリンパ系の異常が最も容易に検出される皮膚及び小腸に注目した。脈管の膨大を、野生型マウスと比べて(図8A)、HGFトランスジェニック・マウス(図8B)の粘液と回腸の粘膜下組織において検出した。リンパ特異的マーカーであるポドプラニンについての免疫蛍光染色が、HGFトランスジェニック・マウスの回腸の粘膜下組織の中心乳び腔の顕著な拡張と、リンパ管の膨大を明らかにした(図8C、D)。ポドプラニン染色は、また、HGFトランスジェニック・マウスの皮膚においてリンパ管の数の増加と膨大が明らかになったが(図8G、H)、その一方で、主要な組織学的異常は観察されなかった(図8E、F)。増強されたリンパ管形成と膨大は、また、HGFトランスジェニック・マウスの十二指腸及び肝臓においても観察された。
【0165】
HGFがVEGFR-3経路を通して、直接的又は間接的に新しいリンパ管形成を促進するかどうか調べるために、(HGFを含むか又は含まない)持続放出ペレットを、マウス耳部の皮下に埋め込み、そして、マウスを、マウスVEGFR-3に対するブロッキング抗体、又は対照IgGで全身的に処理した。14日後、CD31及びLYVE-1についての免疫蛍光染色が、HGF含有ペレットを取り囲む顕著なリンパ管形成を明らかにしたが、対照ペレットは取り囲まれなかった(図9A〜C)。しかしながら、抗VEGFR-3ブロッキング抗体での処理は、HGFによって誘導されるリンパ管形成を妨げなかった(図9B、C)。HGF含有ペレットを埋め込んだマウスは、適度に増強された血管の成長を示した。
これらに実施例において示された結果は、HGFがリンパ管新生を制御するためのタンパク質標的であることを示唆している。
【0166】
他の態様
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、様々な修飾が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく作られ得ることは理解される。例えば、核酸、及びHGFとHGFR活性の抗体モジュレーターの組み合わせが、想定される。従って、他の態様は、添付の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】リンパ細胞系統マーカーmRNAレベルに関する定量的RT-PCRデータ、及び、それぞれ、HGFR mRNAとタンパク質に関する定量的RT-PCRと免疫ブロット・アッセイを示す。
【図2】リンパ管におけるリンパ・マーカーLYVE-1(緑色)及びHGFR(赤色)に関する二重免疫蛍光染色を示す。
【図3】マウス胚発生中のリンパ嚢の内皮細胞におけるリンパ・マーカーLYVE-1(緑色)及びHGFR(赤色)に関する二重免疫蛍光を示す。
【図4】HGFで処理したLEC細胞に関するリンパ内皮細胞(LEC)に関する増殖及び遊走アッセイのデータを示す。
【図5】HGFに応答した試験管内におけるLEC管形成、及び生体内におけるリンパ管形成に関するデータを示す。
【図6】実験的な皮膚炎後のLYVE-1(緑色)及びCD31(赤色)に関するリンパ管の二重免疫蛍光染色を示す。
【図7】HGFでの処理後のLECにおけるインテグリンα9及びスタニオカルシン1のmRNAレベルに関するQPCRデータを示す。
【図8】HGFトランスジェニック(図8B、D、F、H)及び野生型マウス(図8A、C、E、G)における回腸の代表的な組織画像(H&E染色、及びポドプラニンを検出するための免疫蛍光染色)を示す。スケール・バー:100μm。
【図9】LYVE-1(緑色)及びCD31(赤色)に関するマウス耳切片の二重免疫蛍光分析を示す。LYVE-1陽性リンパ管形成の誘導は、HGF含有持続放出ペレットの埋め込みの14日間後に観察されたが(9B及びC、矢印)、しかし、対照ペレットについて観察されなかった(9A)。ブロッキング抗VEGFR-3抗体での全身処理(9C)は、対照IgG処理(9B)と比べて、HGF誘発性リンパ管形成を抑制しなかった。新たに形成された血管は、全てのサンプルにおいて観察された。P:ペレット。スケール・バー:100μm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない皮膚状態にあるか、又はそういった危険性を持つ対象を治療するための医薬品の製造における、治療的有効量の肝細胞増殖因子活性作動薬の使用。
【請求項2】
前記望ましくない皮膚状態が、皮膚の構造に影響する状態である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記状態が、遺伝的要因によって引き起こされる可能性がある、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記遺伝的要因が、表皮剥離である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記状態が、環境要因によって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記環境要因が、紫外線である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記望ましくない状態が、老化した皮膚である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記望ましくない状態が、乾癬である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記望ましくない状態が、酒さ性皮膚病である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記望ましくない状態が、光照射によって引き起こされる皮膚損傷である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記肝細胞増殖因子活性作動薬が、以下の:肝細胞増殖因子ポリペプチド、又は生物学的に活性なその断片若しくは類似体、肝細胞増殖因子、又は生物学的に活性なその断片若しくは類似体をコードする核酸、及び肝細胞増殖因子の作動薬、から成る群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記肝細胞増殖因子活性作動薬が肝細胞増殖因子の内在レベルを高めるために有効な作用物質である、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
リンパ浮腫を患うか、又はそういった危険性を持つ対象を治療するための医薬品の製造における、治療的有効量の肝細胞増殖因子活性作動薬の使用。
【請求項14】
前記肝細胞増殖因子活性作動薬が、以下の:肝細胞増殖因子ポリペプチド、又は生物学的に活性なその断片若しくは類似体、肝細胞増殖因子、又は生物学的に活性なその断片若しくは類似体をコードする核酸、及び肝細胞増殖因子の作動薬、から成る群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記肝細胞増殖因子活性作動薬が、肝細胞増殖因子の内在レベルを高めるために有効な作用物質である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
腫瘍性疾患を患うか、又はそういった危険性を持つ対象を治療するための医薬品の製造における、治療的有効量の肝細胞増殖因子活性拮抗薬の使用。
【請求項17】
前記腫瘍性疾患が、癌である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記癌が、転移性癌である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記癌が、リンパ節への転移の危険性を特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記転移性癌が、リンパ管内への細胞転移を伴う、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記肝細胞増殖因子活性拮抗薬が、以下の:細胞の肝細胞増殖因子mRNAに結合でき、且つ、タンパク質の発現を抑制できる肝細胞増殖因子の核酸分子、肝細胞増殖因子タンパク質に特異的に結合する抗体、可溶性肝細胞増殖因子受容体、ドミナント・ネガティブな肝細胞増殖因子タンパク質又はその断片、及び肝細胞増殖因子の核酸発現を減少させる作用物質、から成る群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項22】
前記肝細胞増殖因子活性拮抗薬が、肝細胞増殖因子の内在レベルを低下させるために有効な作用物質である、請求項16に記載の使用。
【請求項23】
腫瘍性疾患を患うか、又はそういった危険性を持つ対象を治療するための医薬品の製造における、α9インテグリン活性拮抗薬の使用。
【請求項24】
前記腫瘍性疾患が、癌である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記癌が、転移性癌である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記癌が、リンパ節への転移の危険性を特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記転移性癌が、リンパ管内への細胞転移を伴う、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
前記α9インテグリン活性拮抗薬が、以下の:細胞のα9インテグリンmRNAに結合でき、且つ、タンパク質の発現を抑制できるα9インテグリンの核酸分子、α9インテグリンに特異的に結合する抗体、可溶性α9インテグリン受容体、ドミナント・ネガティブなα9インテグリン・タンパク質又はその断片、及びα9インテグリンの核酸発現を減少させる作用物質、から成る群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項29】
肝細胞増殖因子依存性リンパ内皮細胞増殖を抑制する化合物の同定方法であって、以下のステップ:
肝細胞増殖因子受容体を発現しているリンパ内皮細胞を準備し;
上記リンパ内皮細胞を肝細胞増殖因子及び試験化合物と接触させ;そして、
上記リンパ内皮細胞の増殖が上記試験化合物の存在により減少するかどうかを測定する、
を含み、ここで、上記増殖の減少が、上記試験化合物が肝細胞増殖因子依存性リンパ内皮細胞増殖を抑制することを示唆するものである前記方法。
【請求項30】
前記リンパ内皮細胞が、哺乳動物細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物細胞が、以下の:マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、及びヒト、から成る群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記リンパ内皮細胞が、培養細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物細胞が、Prox1及びヒアルロナン受容体LYVE-1を発現する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記培養細胞が、細胞株からのものである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記試験化合物が、ペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記試験化合物が、抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
肝細胞増殖因子受容体のチロシン・リン酸化が減少するかどうかを測定するステップを更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記リンパ内皮細胞が、組み換え型肝細胞増殖因子受容体又はその突然変異体を発現する、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
請求項29に記載の方法によって同定された、リンパ内皮細胞増殖を抑制する試験化合物。
【請求項41】
肝細胞増殖因子依存性リンパ内皮細胞遊走を抑制する化合物の同定方法であって、以下のステップ:
肝細胞増殖因子受容体を発現しているリンパ内皮細胞を準備し;
上記細胞を肝細胞増殖因子及び試験化合物と接触させ;そして、
上記リンパ内皮細胞の遊走が上記試験化合物の存在により減少するかどうかを測定する、
を含み、ここで、上記遊走の減少が、上記試験化合物が肝細胞増殖因子依存性リンパ内皮細胞遊走を抑制することを示唆するものである前記方法。
【請求項42】
前記リンパ内皮細胞が、哺乳動物細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物細胞が、以下の:マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、及びヒト、から成る群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記リンパ内皮細胞が、培養細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記哺乳動物細胞が、Prox1及びヒアルロナン受容体LYVE-1を発現する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記培養細胞が、細胞株からのものである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記試験化合物が、ペプチドである、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記試験化合物が、抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
肝細胞増殖因子受容体のチロシン・リン酸化が減少するかどうかを測定するステップを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記リンパ内皮細胞が、組み換え型肝細胞増殖因子受容体又はその突然変異体を発現する、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
請求項41に記載の方法によって同定された、リンパ内皮細胞の遊走を抑制する試験化合物。
【請求項53】
肝細胞増殖因子依存性リンパ管新生を抑制する化合物の同定方法であって、以下のステップ:
肝細胞増殖因子受容体を発現しているリンパ内皮細胞を準備し;
上記リンパ内皮細胞を肝細胞増殖因子及び試験化合物と接触させ;そして、
リンパ管新生が減少するかどうかを測定する、
を含み、ここで、リンパ管新生の減少が、上記化合物が肝細胞増殖因子依存性リンパ管新生を抑制することを示唆するものである前記方法。
【請求項54】
前記細胞が、生体内において準備される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記リンパ内皮細胞が、哺乳動物細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記哺乳動物細胞が、以下の:マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、及びヒト、から成る群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記哺乳動物細胞が、培養細胞である、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記哺乳動物細胞が、Prox1及びヒアルロナン受容体がLYVE-1を発現する、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記培養細胞が、細胞株からのものである、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記試験化合物が、ペプチドである、請求項53に記載の方法。
【請求項62】
前記試験化合物が、抗体である、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記試験化合物が、ペプチドである、請求項53に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−I】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A−H】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−538551(P2008−538551A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504520(P2008−504520)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/012389
【国際公開番号】WO2006/105511
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】