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HIF−1媒介遺伝子発現を低下させる方法

本発明は、低酸素誘導因子のヒドロキシル化酵素の不活化を防止することにより低酸素誘導性遺伝子発現を阻害するための、内因性アミノ酸類およびそれらの誘導体の特定分子の特徴の解明に関する。本発明は、組織新血管形成、癌細胞生存を減少させるために、および肥満を治療するために使用できる薬剤を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
アジェイ・ベルマおよびルー・ハーシェン
政府援助
本発明は一部、米国国立衛生研究所の連邦補助金NS37814、ならびに米国国防省のMDA−905−02−2−0005およびMDA−905−03−2−0001により資金供給された研究に基づいた。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、酸素供給が減少した条件下で、細胞生存の改善をもたらす、ヒト組織における遺伝子発現の変化に関する。本発明は特に、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体による低酸素誘導性遺伝子発現の薬理学的阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
低酸素に刺激される遺伝子の産物は、グルコースの取り込みを促進し、嫌気性グルコース代謝を増強し、いくつかの細胞生存機構を誘導する。低酸素による遺伝子発現を調節する能力は、「低酸素誘導因子1」または「HIF−1」として知られている転写因子に依存している。この転写因子は、細胞生存を促進する48超の遺伝子を活性化できる(表1)。細胞のHIF−1活性に対する制御を可能にする薬理学的アプローチは、我々の社会における3つの主要な死亡原因:心臓発作、癌および脳卒中に影響を与え得ることから、熱心に追求されている。HIF−1のアップレギュレーションにより、脳卒中および心臓発作による損傷を軽減することができる。しかし、癌はHIF−1レベルの上昇によって悪化する。これは、HIF−1活性が癌細胞の生存をも促進し、血管形成を誘導するからである。
【0004】
低酸素がHIF−1を、次いで遺伝子発現を活性化する機構は、急速に明らかになりつつある。HIF−1アルファ(HIF−1α)およびHIF−1ベータ(HIF−1β)と呼ばれる2つの異なるタンパク質がこの転写因子を構成しており、HIF−1α要素の濃度は特に酸素圧によって調節される(図1)。HIF−1α濃度の調節にはHIF−1αタンパク質の分解を直接制御する新規な酸素感知機構が含まれる。HIF−1αとHIF−1βは双方とも身体の殆どの細胞で構成的に合成される。しかし、HIF−1αタンパク質は、酸素の存在下、連続的に分解される。HIF−1α−プロリルヒドロキシラーゼ(HPH)として知られている酵素の新規に発見されたファミリーは、HIF−1αの酸素依存性分解を制御する。これらの酵素は、HIF−1αタンパク質における重要なプロリン残基の酸素依存性ヒドロキシル化を触媒する。次いでこの修飾がHIF−1タンパク質のユビキチン結合およびプロテアソーム分解を指令する。他の最近同定されたHIF−1αアスパラギンヒドロキシラーゼ酵素活性もまた、通常の酸素圧下におけるHIF−1の転写活性能力の阻害に関与していると思われる。HIF−1αアスパラギンヒドロキシラーゼは、因子阻害HIFまたはFIH−1と称されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HPHおよびFIK−1は全て、それらの活性のためにいくつかの補因子:酸素、鉄、アスコルビン酸塩、および2−オキソグルタレートを必要とする。したがって、酸素の不在下では、HIF−1αはヒドロキシル化または分解されず、その結果、その濃度は劇的に増加する。これにより、HIF−1αおよびHIF−1βサブユニットが二量体化し、核に転座し、低酸素レベル下での生存を促進するいくつかの遺伝子の転写を活性化することが可能になる(図1)。また、HPH酵素機構の発見により、デスフェリオキサミン(DFO)などの鉄キレート化剤が、HIF−1を活性化し、低酸素によって誘導されたものと類似した遺伝子を活性化する理由が明らかになる。他の補因子部位における分子相互作用もまた、HPH活性、HIF−1α濃度、および低酸素誘導性遺伝子を調節することが示されている。したがって、N−オキシルグリシン(NOG)などの2−オキソグルタレートの人工的類縁体、または細胞浸透性のジメチルオキサリルグリシン(DMOG)は、HPHおよびFIH−1の活性を阻害し、したがって、HIFに媒介された遺伝子発現の活性化を可能にすることが示されている。しかし、これらの人工的な2−オキソグルタレート類縁体は、最初、コラーゲン合成に関与する酵素であるプロコラーゲンプロリンヒドロキシラーゼの阻害を目的としてデザインされたため、HPHまたはFIH−1の阻害に特異的ではない。
【0006】
HPH、FIH−1およびプロコラーゲンプロリンヒドロキシラーゼは全て、鉄および2−オキソグルタレートに依存性のジオキシゲナーゼとして知られている酵素の大きなクラスに属している。これらの酵素は広く天然に見出され、有用な生物学的ヒドロキシル化を行っている。これらの酵素の特徴の1つは、共触媒的に非活性化されることである。これによって意味されることは、鉄媒介酸化を触媒する結果、これらの酵素は経時的に重要なアミノ酸残基において酸化されるか、または鉄の酸化還元状態が反応サイクルの持続実施において役に立たなくなることである。この共触媒的非活性化は、アスコルベートによって防止または逆転できる。多くの細胞系が低酸素不在下で、有意なHIF−1αタンパク質濃度およびHIF媒介遺伝子発現を表し、これがアスコルベートによって逆転できることが、最近示されている。これが示唆するのは、多くの細胞において、HPHおよびFIH−1は非活性形態で存在し得るか、またはアスコルベート逆転性の何らかの機構によって非活性にされ得ることである。今までのところ、この現象の明確な理解は得られておらず、また、HPHおよびFIH−1を活性化する可能性のある機構を利用する薬剤学的アプローチも開発されていない。グルコース代謝により、2−オキソグルタレートに構造的に関連しているピルベートおよびオキサロアセテートなどの2−オキソ酸が生成し(図1D)、また、最近、実証されていることであるが、ヒト膠種および他の癌細胞において、HIF−1αの高い基礎的発現は、実際にこのようなグルコース代謝からの2−オキソ酸の生成に依存性である。
【0007】
新鮮培養培地交換とHIF−1αタンパク質濃度との間の正の相関が見られている。培養培地から比較的単純なクレブス緩衝液への切り替えにより、グルコースからピルベートの代謝に対するHIF−1α濃度の依存性が判定された。さらに、グルコース代謝物であるピルベートとオキサロアセテートは、癌細胞におけるHIF−1濃度上昇の維持を担っていることも判定されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当業界において他の分子もHIF活性を阻害することが示されている(例えば、米国特許出願公開第20050215503号明細書および同第20050096370号明細書を参照)。これらの分子は、HIF転写因子に直接的に作用するか、またはHIF−1α発現に影響を及ぼす。これらの分子は、HIF転写因子に全体的に影響し、全てのHIF発現遺伝子を抑止する。このような全体的調節は通常の哺乳動物細胞に対して毒性となり得る。本明細書に開示された薬剤および方法は、HIF−1αのヒドロキシル化と分解に関してHIF活性を制御する(図7を参照)。これらの薬剤は、低酸素によるHIF活性化によってではなく、2−オキソ酸グルコース代謝物によってHIF−1活性を選択的に低下させる。したがって、本発明の薬剤および方法は、より特異的様式でHIFを制御し、通常の哺乳動物細胞に対してより低毒性となる。
【0009】
発明の概要
本発明は、低酸素誘導因子ヒドロキシル化酵素の不活化を防止することによる低酸素誘導性遺伝子発現の阻害に関する内因性アミノ酸およびそれら誘導体の特定分子の特徴の解明に関する。本発明は、組織の新血管形成、癌細胞の生存、炎症、組織浮腫を減少させるために、および肥満症の治療に使用できる。
【0010】
本発明は、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む組成物を、癌と診断された哺乳動物に投与することを含む、前記哺乳動物における癌細胞の増殖を阻害するための方法を包含する。一実施形態において、該方法は、追加の癌療法を含む。他の実施形態において、追加の癌療法は、化学療法、放射線療法、ホルモン療法および免疫療法よりなる群から選択される。
【0011】
また、本発明は、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含む組成物を、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における組織の新血管形成を阻害する方法を包含する。一実施形態において、新血管形成は癌(例えば血管新生)に関連する。他の実施形態において、該方法は、アンギオスタチンおよび/またはエンドスタチンなどの追加の抗血管新生剤との併用療法を包含する。
【0012】
他の実施形態において、新血管形成は炎症病態に関連する。一実施形態において、炎症病態は、皮膚炎、乾癬および関節炎よりなる群から選択される。他の実施形態において、該方法は、本発明は、本発明の薬剤を、少なくとも1つの追加の抗炎症剤と共に投与することを考慮している。
【0013】
HIF−1活性は正常な細胞免疫にとって必要である。本発明は慢性炎症の設定において、免疫細胞内のHIF−1を低下させるために本発明の薬剤を投与することを考慮している。
【0014】
他の実施形態において、組織の新血管形成は視力の喪失(例えば、黄斑変性(湿性および乾燥性)、糖尿病性網膜症)に関連する。一実施形態において、視力の喪失は網膜の新血管形成によって生じる。
【0015】
他の実施形態において、新血管形成過程に伴う組織浮腫が標的化される。本発明は、虚血潅流後、外傷後の、またはHIF−1ヒドロキシラーゼの不活性化を促進する代謝病の設定における血管原性の組織浮腫を減少させるために本発明の薬剤を投与することを考慮している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
全般的説明
HIF−1は細胞の生存を促進する50近い遺伝子を調節することが知られている。解糖代謝によるHIF−1活性化の新規機構が、最近、国際特許出願PCT/US04/37045号の明細書に記載され、これは参照として、その全体が本明細書に援用されている。HIF−1活性化のこの様式は、酸素に無関係であり、グルコースの特定の2−オキソ酸代謝物によって媒介されていることが示された。出願人は、現在、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体をHIF−1阻害剤として同定している。これらの薬剤は低酸素によるHIF−1活性化ではなく、2−オキソ酸グルコース代謝物によって、HIF−1活性を選択的に低下させる。本発明は、転写因子HIF−1の細胞活性を低下させ、癌などの過剰HIF−1活性に関連した疾患を治療するための、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の使用を含む。
【0017】
解糖代謝物によるHIF−1活性化は癌細胞に見られるHIF−1活性の高い基礎的レベルの基礎をなしている。癌細胞における基礎的HIF−1活性を低下させ、HIF−1に関する遺伝子発現を低下させることのできる薬剤は、腫瘍成長因子を制御した。これらの薬剤は、低酸素によるHIF−1の誘導を損なうことなく、癌細胞におけるHIF−1の高い基礎的濃度を低下させると考えられる。高血糖症の医学的合併症のいくつかは、HIF−1の解糖活性化を介して発現し得る。したがって、糖尿病性網膜症などの糖尿病合併症もまた、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよび/またはそれらの誘導体のいずれかによって治療できる。
【0018】
別に規定しない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似した、または等価な任意の方法および材料を、本発明の実施および試験に使用できるが、好ましい方法および材料が記載されている。
【0019】
本明細書に用いられる用語の「結合」とは、限定はしないが、基質に対する酵素、タンパク質に対するタンパク質、タンパク質に対する小分子、DNAに対する転写因子タンパク質、および相補鎖に対するDNA鎖またはRNA鎖などの、分子同士の付着を言う。結合は、分子表面の部分の形状および化学的性質が相補的であるために生じる。酵素がそれらの基質と相互作用する仕方を述べる上でよく用いられる喩えは、「鍵と鍵穴」である。
【0020】
本明細書に用いられる用語の「転写因子」とは、DNAの特定の調節領域に結合して遺伝子発現を刺激するタンパク質またはタンパク質複合体を言う。
【0021】
本明細書に用いられる用語の「遺伝子発現」とは、DNAからのメッセンジャーRNA(mRNA)の産生増加を言い、これが結局は、タンパク質発現の増加およびタンパク質活性の増加へと至る。
【0022】
本明細書に用いられる用語の「低酸素」とは、約5パーセント以下の酸素圧を言う。通常の大気は、20パーセントから21パーセントの酸素からなり、この状態を当業界では、「酸素正常状態」と称する。
【0023】
本明細書に用いられる用語の「薬剤」または「治療薬」とは、HIF−1αヒドロキシル化酵素に結合してその活性を阻害する任意の分子を言う。例としては、限定はしないが、アスコルベート、システイン、ヒスチジン、グルタチオン、システイン−ヒスチジン、ヒスチジン−ヒスチジン、ならびにシスチンおよびヒスチジンのメチル−、エチル−、およびグリセロールエステルが挙げられる。他の例としては、ジペプチドシスチニル−ヒスチジンにおけるようなシスチンとヒスチジンの構造を合わせた薬剤を挙げることができる。
【0024】
HIF−1α発現の調節
本発明の方法は、HIF−1の異常な発現および/または活性に関連した疾患を治療するために、HIF−1αの発現および活性を調節する(例えば阻害する)薬剤の投与を含む。該薬剤のアスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体は、HIF−1αの分解に関与する酵素が非活性化されることを防ぐ。これは、癌細胞におけるHIF−1αの高い基礎的レベルの低下をもたらすが、正常細胞における低酸素によるHIF−1の正規の誘導を損なうことはない。
【0025】
このタンパク質の活性に関連した疾患を治療するための遺伝子療法において、遺伝子、遺伝子断片、またはHIF−1αタンパク質および断片の調節は有用である。一実施形態において、異常なHIF−1αタンパク質活性に関連した疾患(例えば癌)において、活性を低下させるために、発現を調節する。本発明の核酸を細胞内に導入するために発現ベクターを使用できる。このようなベクターは一般に、プロモーター配列の近くに位置する便利な制限部位を有し、核酸配列の挿入を提供する。転写開始領域、標的遺伝子またはその断片、および転写終止領域を含む転写カセットを調製できる。転写カセットは、種々のベクター、例えば、プラスミド、レトロウィルス、レンチウィルス、アデノウィルスなどの中に導入でき、該ベクターは、細胞内に、一時的にまたは安定して、通常は、少なくとも約1日の期間、より通常には、少なくとも約7日から数週間の期間、維持することができる。
【0026】
HIF−1αタンパク質またはその断片をコードする核酸は、ウィルス感染、マイクロインジェクション、または小胞体の注入などの任意の数の経路によって、組織または宿主細胞に導入できる。ファース(Furth)ら、(1992)Anal.Biochem.205、365−368頁に記載されたジェット注射もまた、筋肉内投与に使用できる。文献(例えば、タング(Tang)ら、(1992)Nature 356、152−154頁を参照)に記載されているとおり、核酸を金の微粒子にコーティングし、粒子射撃デバイスまたは「遺伝子銃」により皮膚内に送達でき、金の微小弾丸を核酸でコーティングしてから皮膚の細胞内へ撃ち込まれる。
【0027】
細胞において本発明の核酸またはタンパク質の発現をダウンレギュレートするために、アンチセンス分子を使用できる。該アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に天然核酸からの化学的修飾を有する合成アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはRNAのようなアンチセンス分子を発現する核酸構築体であり得る。該アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに相補的であり、標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、種々の機構により、例えば、RNアーゼHの活性化または立体障害により、翻訳に利用できるmRNAの量を減らすことによって、遺伝子発現を阻害する。アンチセンス分子の1つまたは組み合わせを投与でき、組み合わせは複数の異なる配列を含み得る。
【0028】
アンチセンス分子は、適切なベクターにおいて、標的遺伝子配列の全部または一部の発現によって作製でき、転写の開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として作製されるように方向づけられる。あるいは、該アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般的に長さが少なくとも約7ヌクレオチド、通常は少なくとも約12ヌクレオチド、より通常には少なくとも約20ヌクレオチドである。典型的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは通常、長さが約500ヌクレオチド以下、より通常には約50ヌクレオチド以下、さらにより通常には約35ヌクレオチド以下であり、この長さは、交差反応性の不在などの阻害の効率、特異性によって制御される。7塩基長から8塩基長の短いオリゴヌクレオチドが、遺伝子発現の強くて選択的な阻害剤であり得ることが判明している(ワグナー(Wagner)ら、(1996)Nat.Biotech.14、840−844頁を参照)。
【0029】
内因性センス鎖mRNA配列の特定領域(1つまたは複数)が、アンチセンス鎖と相補的となるように選択される。オリゴヌクレオチドに関する特定配列の選択は、経験的方法が使用でき、インビトロで、または動物モデルにおいて、標的遺伝子発現の阻害に関して、いくつかの候補配列がアッセイされる。配列の組み合わせを使用することもでき、mRNA配列のいくつかの領域が、アンチセンス相補性に関して選択される。
【0030】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業界に知られた方法により化学的に合成できる(ワグナー(Wagner)ら、Nat.Biotech.14、840−844頁を参照)。好ましいオリゴヌクレオチドは、それらの細胞内安定性および結合親和性を増加させるために、天然のホスホジエステル構造から化学的に修飾される。主鎖、糖またはヘテロ環塩基の化学を変化させる多数のこのような修飾が文献に記載されている。
【0031】
アンチセンス阻害剤の代替として、触媒的核酸化合物、例えば、リボザイム、アンチセンス結合体などが、遺伝子発現を阻害するために使用できる。リボザイムはインビトロで合成して患者に投与できるか、または標的細胞において、リボザイムを合成する発現ベクター上にコード化できる(例えば、国際公開第95/23225号パンフレット;バイゲルマン(Beigelman)ら、(1995)Nuc.Acids Res.23、4434−4442頁を参照)。触媒活性を有するオリゴヌクレオチドの例は、国際公開第95/06764号パンフレットに記載されている。
【0032】
治療の方法
上記で検討したように、HIF−1は、新血管形成および解糖などの腫瘍増殖、ならびに転移において重要な役割を演じていることが示されており、抗癌治療戦略にとって可能性のある標的として確認されている(セメンザ(Semenza)(2003)Nature Rev.3、721−732頁;ウィリアムズ(Williams)ら、Oncogene(2002)21、282−90頁;グリフィス(Griffiths)ら、(2002)Cancer Res.62、688−95頁;ウェルシュ(Welsh)ら、(2003)Mol.Cancer Ther.2、235−43頁)。HIF−1は、乳癌において過剰発現することが示されており、より侵襲的な腫瘍に関連している可能性がある(ボス(Bos)ら、(2001)J.Natl.Cancer Inst.93、309−314頁)。さらに、HIF−1は、炎症および発癌との重大な関連性が最近確認されている(ユング(Jung)ら、(2003)FASEB J.17、2115−2117頁)。脳癌、乳癌、子宮頚癌、食道癌、口咽頭癌および卵巣癌の生検におけるHIF−1αの過剰発現は治療の不成功および死亡に関連している。増加したHIF−1活性は腫瘍の進行を促進するため、HIF−1などのHIFの阻害は、癌療法の新規アプローチとなり得る。したがって本発明は、癌細胞の分化および増殖を阻害するために、HIF−1αの発現および/または活性を調節する(例えば阻害する)薬剤の投与を含む。このような方法は、異常な細胞増殖および分化に関連した癌などの疾患の治療に有用となろう。細胞の増殖および分化に関係した疾患に罹っていると診断された哺乳動物(すなわちヒト)の治療としては、限定はしないが、過剰血管形成(例えば、糖尿病性網膜症、動静脈形成異常、および血管腫)が挙げられ、やはり本発明の方法に含まれる(下記参照)。これらの疾患の治療にとって、HIF−1α活性を阻害するアスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与は有用である。したがって、本発明の方法および薬剤を用いたHIF−1の阻害は、癌の予防および治療にとって有用であり、単独で、または他の治療オプションと組み合わせて、新規の抗癌戦略を提供する。本発明の薬剤を投与することによるHIF−1の阻害はまた、放射線療法および/または化学療法剤による治療などの他の癌療法の有効性を増強することもできる。具体的な癌標的としては、限定はしないが、固形悪性腫瘍および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0033】
下記の例に示されるように、本発明の薬剤および方法は、細胞ベースのアッセイにおいて腫瘍増殖を有効に阻害し、したがって、限定はしないが、膵臓癌、大腸癌、および肺癌などの種々の腫瘍の治療のための有望な抗癌剤である。
【0034】
また、HIF−1は、例えば、心臓疾患、発作(ギアシア(Giaccia)ら、(2003)Nat. Rav.Drug Discov.2、803−822頁)、および慢性肺疾患などの、低酸素が主要な態様である疾患一般の標的として確認されている。したがって、本発明の薬剤はまた、例えば、心血管疾患(虚血性心血管疾患など)など、心筋虚血、心筋梗塞、鬱血性心不全、心筋症、心肥大、および発作などの低酸素関連疾患および病態の予防および治療にも使用できる。
【0035】
HIF−1α酵素経路下流の複数の解糖酵素およびグルコーストランスポーターの発現をダウンレギュレートする能力により、肥満治療に関する適用も提供される。HIF−1αの発現および/または活性を阻害し、引き続きHIF−1α経路下流の酵素を阻害する薬剤の投与もまた肥満の治療に有用である。
【0036】
また、本発明の薬剤および方法は、米国での失明の主要な原因である糖尿病性網膜症の寛解、治療および/または予防など、眼科にも有用である。さらなる眼科標的としては、湿性型(新血管形成)または乾性型(非新血管形成)の加齢関連黄斑変性症(AMD)、および移植関連角膜新血管形成が挙げられる。
【0037】
また、本発明の薬剤および方法は、例えば、乾癬、角膜新血管形成、感染または外傷に関連した病的血管成長の予防および治療にも有用である。
【0038】
また、新血管成長は、発作におけるものなどの虚血損傷の境界領域にも見られる。このようなHIF−1媒介作用は、損傷領域に対する血液供給を回復させようとするものだが、この応答の大きさにより、時々組織損傷を促進することになり得る。これは、新たに形成された血管が漏出性であり、血管原性浮腫を生じさせ得るからである。脳においては、これが頭蓋内圧を増加させ、ヘルニア形成に至り得る。本発明の薬剤および方法は腫瘍および発作の設定において、血管原性浮腫の管理に使用できることが予想される。HIF−1を誘導することが確認されているグルコース代謝物の中でも、分枝鎖ケト酸、アルファケトイソ吉草酸がある。この代謝物は、カエデシロップ尿症として知られている稀な遺伝的代謝疾患ではきわめて上昇する。この疾患に罹っている患者は、時には命にかかわる脳浮腫を示す。本発明の薬剤および方法は、カエデシロップ尿症の管理に使用できることが予想される。過大な血管内皮成長因子誘導によるHIF−1の活性化過剰に関連した他の疾患は、高い高度に急に登った一部の個体に見られる肺浮腫である。過剰活性のHIF−1によって誘導される胚浮腫、頭痛、および多血症が、慢性高山病として知られている他の疾患の核心にある。本発明の薬剤および方法は、慢性高山病または高高度病の管理に使用できることが予想される。
【0039】
白血球、T細胞およびマクロファージに媒介された免疫反応と共に、血管形成の増加は、滑膜炎、および関節炎における骨モデリングの重要な要素である。炎症性関節炎の動物モデルにおける新血管形成阻害剤の臨床前試験は、新血管形成の阻害が炎症および関節の損傷を減少させ得るという仮説を支持している。したがって、さらなる治療標的には、関節リウマチ(RA)などの関節炎、および筋骨格系疾患などの炎症性疾患が含まれる。さらに詳しいことは、例えば、ウォルシュ(Walsh)およびヘイウッド(Haywood)(2001)Curr.Opin.Investig Drugs 2、1054−63頁を参照されたい。また、腫瘍増殖と同様に、子宮内膜症インプラントが、確立、増殖および侵入するためには新血管形成が必要である。この過程は、本発明の薬剤によって防止でき、したがって、本発明の薬剤および方法に、産児制限処置的人工中絶における役割が与えられる。テイラー(Taylor)ら、(2002)Ann NY Acad Sci.955、89−100頁もまた参照されたい。HIF−1関連疾患など、HIFのさらなる詳細に関しては、例えば、セメンザ(Semenza)(2000)Appl.Physiol.88、1474−1480頁を参照されたい。
【0040】
癌、新生血管疾患および/または炎症性疾患の治療、予防または管理において本発明の薬剤が有効となる用量の決定は、標準的な調査法によって決定できる。例えば、癌、新生血管疾患および/または炎症性疾患の治療、予防または管理において有効となる組成物の投与量は、本明細書に開示されたまたは当業者に知られた動物モデルなどの動物モデルに、該薬剤を投与することによって決定できる。また、最適な投与量範囲の確定を助けるために、インビトロアッセイを任意に使用できる。
【0041】
好ましい有効用量の選択は、当業者に知られているであろういくつかの因子の考慮に基づいて当業者によって決定できる(例えば、臨床試験により)。このような因子としては、治療または予防すべき疾患、関与する症状、患者の質量、患者の免疫状態、および投与された製薬組成物の正確性を反映する、当業者に知られた他の因子が挙げられる。
【0042】
製剤に用いられる正確な用量はまた、投与経路、および治療される疾患の重篤度に依存し、実施者の判定および各々の患者の状況によって決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から誘導された用量−応答曲線から外挿できる。本発明の薬剤に関して、患者に投与される用量は、典型的には、患者の体重の0.1mg/kgから100mg/kgである。患者に投与される用量は、好ましくは、患者の体重の0.1mg/kgから20mg/kgの間であり、より好ましくは、患者の体重の1mg/kgから10mg/kgの間である。本発明の一定の好ましい実施形態では、癌、新生血管疾患および/または炎症性疾患の予防、治療、管理または寛解にとって有効であると以前考えられていたよりも低用量の公知の予防的または治療的薬剤を投与する何らかの方法が提供される。公知の抗癌療法の低用量を、本発明の薬剤の低用量と組み合わせて投与することが好ましい。
【0043】
また、本発明は、ヒトなどの哺乳動物に、ある量の細胞毒性薬剤、または本発明の薬剤の効果増強に有効な細胞障害性薬剤のある量を含む製薬組成物を投与することを含む、前記哺乳動物における癌、新生血管疾患および/または炎症性疾患を予防、管理または治療するための方法および組成物もまた含む。前記細胞毒性薬剤は前記薬剤の前に、または同時に投与できる。好ましい一実施形態において、HIF−1αの発現および/または活性を調節する(例えば阻害する)ための前記薬剤は、癌細胞の分化および増殖を阻害する。このような方法は、癌などの、細胞の異常な増殖および分化に関連した疾患の治療に有用となろう。細胞の増殖および分化に関連する他の疾患の治療としては、限定はしないが、過剰血管形成(例えば、糖尿病性網膜症、動静脈形成異常、および血管腫)が挙げられ、やはり本発明の方法に含まれる(下記参照)。HIF−1α活性を阻害するアスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与は、これらの疾患の治療に有用である。本発明の薬剤によるHIF−1の阻害は、癌の予防および治療に有用であり、単独で、または他の治療オプションと組み合わせて、新規の抗癌戦略を提供する。本発明の薬剤の投与によるHIF−1の阻害は、放射線療法および/または化学療法剤による治療などの他の療法の有効性を増強させることもできる。具体的な癌標的としては、限定はしないが、固形悪性腫瘍および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0044】
新血管形成に関連する疾患
新血管形成は、既存血管からの発生によって新たな血管が形成する過程である。この多段階過程は、内皮細胞へのシグナル伝達を含むが、これによってもたらされるものは、(1)もとの血管の膜溶解、(2)内皮細胞の移動および増殖、(3)移動細胞による新血管の形成である(アルバーツ(Alberts)ら、(1994)Molecular Biology of the Cell.ガーランド出版(Garland Publishing)。この過程は、創傷治癒および心筋梗塞の修復などの有益な生理学的事象において身体に利用されるが、不要な細胞によっても利用され、望ましくない疾患および病態を引き起こす。異常な過剰血管発生に関連している疾患および病態を、本発明の薬剤、方法および製剤によって治療または予防することができる。
【0045】
治療または予防することができる疾患および病態の例としては、限定はしないが、癌(例えば、脳癌および他の固形組織腫瘍)、高酸素インキュベーターに入れられた新生児における角膜の新血管形成、外傷および感染後の目、皮膚、および他の器官の新血管形成が挙げられる。外傷または感染の結果としての血液新生に加えて、無制御の血管形成により生じる新生血管眼疾患などの他の眼疾患もまた治療または予防できる。この例では、網膜および脈絡膜循環に由来する病的血管形成が多くの眼疾患の重大な結果であることが認められる。網膜の新血管形成は、糖尿病性網膜症、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞、および未熟児網膜症(ROP)において生じる。網膜の中心静脈またはその分枝の1つの閉塞は、後に網膜新血管形成の後遺症を伴う急速な視力の減損に至り得る。前部の虚血性眼ニューロパシーでは、脈絡膜系から誘導された眼神経に対する血管供給が妨害され得る。脈絡膜毛細管から生じる新たな血管は、湿性型(新血管形成)または乾性型(非新血管形成)の加齢関連黄斑変性、およびいくつかの黄斑疾患に生じる脈絡膜の新血管形成へと至る。したがって、本発明は、新血管形成の増加が疾患の病状である疾患の治療のために、HIF−1転写因子の調節を考慮している。これは、本明細書に記載されたように、HIF−1α活性を阻害し、新血管形成疾患の治療に有用である、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体などの投与によるHIF−1α活性の調節によって達成できる。
【0046】
不適切な血液管形成はまた、例えば、アテローム硬化症および再狭窄、突発性肺線維症、急性成人呼吸窮迫症候群、喘息、皮膚炎、乾癬、滑膜炎、骨髄炎、関節リウマチを含む関節炎、炎症性の腸および歯周病における有害なリモデリングに関係している。これらの疾患の全てが、本発明の薬剤、方法および製剤によって治療または予防できる。したがって、本発明の一実施形態において、本明細書に記載されているHIF−1α活性の調節としては、HIF−1α活性を阻害し、炎症性病態の治療に有用である、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与が挙げられる。他の一実施形態において、本発明の方法は、HIF−1α活性を調節する薬剤と共に、限定はしないが、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、ステロイド抗炎症薬、ベータアゴニスト、抗コリン剤、およびメチルキサンチンなどの1つまたは複数の抗炎症薬の投与を包含する。
【0047】
新血管形成は、固形腫瘍の増殖および転移にとって必要である。新血管形成が存在しない場合、腫瘍は数ミリメーターの直径以上に展開する能力を有することは稀であると研究により確認されている(イサイェバ(Isayeva)ら、(2004)Int.J.Oncol.25、335−43頁)。また、新血管形成は、血液循環内への腫瘍細胞の進入を促進し、転移部位における腫瘍増殖にとっての栄養および酸素を供給する新たな血管を提供することによって、転移形成にとっても必要である(タケダ(Takeda)ら、Ann Surg.Oncol.9、610−16頁)。したがって、本発明の一実施形態において、本明細書に記載されているHIF−1α活性の調節としては、HIF−1α活性を阻害し、新血管形成を阻害することにより固形腫瘍の治療に有用である、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与が挙げられる。例えば、本発明は、肺癌、骨癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭部癌または頚部癌、皮膚黒色腫または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、輸卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚部癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、膠腫、髄膜腫および下垂体腺腫の治療を考慮している。他の実施形態において、本発明の方法は、本発明の薬剤と組み合わせた1つの追加抗新血管形成剤(例えば、アンギオスタチンまたはエンドスタチン)を、それを必要とする哺乳動物に投与することを包含する。
【0048】
異常な新血管形成はまた、眼の出血および機能的障害をもたらし、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞、および加齢関連黄斑変性などの疾患に関連した視力の減損の一因となる種々の眼疾患にも見られる(ヨシダ(Yosida)ら、(1999)Histol Histopathol.14、1287−94頁)。これらの病態は、幼児、労働年齢者および高齢者の間の失明の主要原因である(アイーロ(Aiello)(1997)Ophthalmic Res.29、354−62頁)。したがって、本発明の他の実施形態において、本明細書に記載されているHIF−1α活性の調節としては、限定はしないが、HIF−1α活性を阻害し、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞、および湿性型(新血管形成)または乾燥型(非新血管形成)の加齢関連黄斑変性などの眼の新血管形成疾患の治療に有用である、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与が挙げられる。
【0049】
異常な新血管形成はまた、以下の疾患にも関連している:血管形成異常、関節硬化症、移植アテリオパシー(ateriopathy)、肥満症(脂肪食により誘導された新血管形成)、いぼ、化膿性肉芽腫、原発性肺高血圧症、鼻ポリープ、子宮内膜症、子宮出血、卵巣嚢腫および卵巣過刺激。したがって、本発明の他の実施形態において、本明細書に記載されているHIF−1α活性の調節としては、HIF−1α活性を阻害し、新血管形成が疾患の症状である任意の疾患を含む上記の確認された疾患の治療に有用である、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与が挙げられる。
【0050】
血管内皮成長因子(VEGF)は、血管形成時に内皮細胞特異的分裂促進因子として作用する特に強力な血管形成因子である(ビネトルイ−ターニエル(Binetruy−Tourniere)ら、(2000)EMBO J.19、1525−33頁)。VEGFは、腫瘍関連新血管形成を刺激することにより固形腫瘍の増殖および転移の促進に関係している(ルー(Lu)ら、(2003)J.Biol.Chem.278、43496−43507頁)。VEGFは、関節リウマチ(RA)に罹っている患者の滑液および血清中に見られており、その発現は、疾患の重症度に相関している(クラベル(Clavel)ら、(2003)Joint Bone Spine.70、321−326頁)。VEGFはまた、眼内の新血管形成および透過性の主要なメディエーターとして関係している。VEGFを過剰発現する形質転換マウスは、網膜内および網膜下の臨床的新血管形成を示し、血管造影によって検出可能な漏出性眼内血管を形成し、ヒト疾患との類似性を示している(ミラー(Miller)(1997)Am.J.Pathol.151、13−23頁)。HIF−1転写因子の活性化は、VEGF活性の増加に関連していた(ライアン(Ryan)ら、(2000)Cancer Res.60、4010−4015頁)。したがって、本発明はまた、HIF−1α活性を阻害し、血管形成の制御に有用である、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与などの本明細書に記載されているHIF−1α活性の調節によるVEGF活性の制御も考慮している。他の実施形態において、本発明の方法は、本発明の薬剤と併用して、1つまたは抗VEGF剤を、それらを必要としている哺乳動物に投与することを包含する。
【0051】
癌療法
新生物または腫瘍は、良性または悪性であり得る異常な制御されていない細胞増殖から生じる新生物塊である。良性腫瘍は一般に局在したままである。悪性腫瘍は集合的に癌と称される。用語の「悪性」とは一般に、該腫瘍が隣接構造に侵入し、破壊し、遠隔部位に広がって死をもたらし得ることを意味する(レビューに関しては、ロビンス(Robbins)およびアンジェル(Angell)(1976)Basic Pathology、第2版、W.B.サウンダース(W.B.Saunders)、68−122頁を参照)。癌は身体の多くの部位に生じ得、その出所に依って異なる挙動をとる。癌細胞はそれらが生じた身体部分を破壊し、次いで、身体の他の部分に広がり、そこで新たな増殖を始めてさらなる破壊をもたらす。
【0052】
現在、癌療法は、外科手術、化学療法、ホルモン療法および/または患者における新生物細胞を照射する放射線治療を含み得る(例えば、ストックデール(Stockdale)(1998)Scientific American:Medicine、第3巻、ルーベンシュタイン(Rubenstein)およびフェーデルマン(Federman)編、第12章、第IV節におけるPrinciples of Cancer Patient Managementを参照)。最近の癌療法はまた、生物学的療法または免疫療法も含み得る。これらのアプローチは全て、患者にとって著しい欠点を示している。例えば、外科手術は、患者の健康状態によっては禁忌であり得るか、または患者に許容できないものであり得る。また、外科手術によって新生物組織を完全に除去できない場合がある。放射線療法は新生物組織が正常組織よりも放射線に対してより高い感受性を示す場合にのみ有効であり、また放射線療法はたびたび重篤な副作用を引き起こし得る。ホルモン療法は、単一の薬剤として投与されることは稀であり、有効であり得ても、他の治療によって癌細胞の大多数を取り除いた後に、癌の再発を防ぐか、または遅らせるために用いられることが多い。生物学的療法/免疫療法は、数が限られており、発疹および腫脹、発熱、悪寒および倦怠などのインフルエンザ様症状、消化管問題またはアレルギー反応などの副作用が生じ得る。
【0053】
化学療法に関しては、癌の治療に入手できる種々の化学療法剤がある。癌の化学療法のかなり多くは、DNAの複製および随伴する細胞分裂を防ぐために、デオキシリボヌクレオチド三リン酸前駆体の生合成を阻害することによる直接的または間接的なDNA合成の阻害によって作用する(例えば、ギルマン(Gilman)ら、(1990)グッドマン(Goodman)およびギルマン(Gilman):The Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、パーガモン出版(Pergamom Press)、ニューヨークを参照)。ニトロソ尿素などのアルキル化剤、メトトレキサートおよびヒドロキシ尿素などの抗代謝物質、およびエトポシド、カンパセシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノルブシンなどの他の薬剤を含むこれらの薬剤は、必ずしも細胞周期特異的ではないが、DNA複製に及ぼすそれらの作用のため、S期の細胞を殺す。他の薬剤、特にコルヒチン、ならびにビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイドは、微小管のアセンブリーを妨害し、その結果、分裂を阻止する。化学療法プロトコルは一般的に、治療の有効性を増大させるために、化学療法剤の併用投与を含む。
【0054】
種々の化学療法剤が入手できるにも関わらず、化学療法は多くの欠点を有する(例えば、ストックデール(Stockdale)(1998)Scientific American Medicine、第3巻、ルーベンシュタイン(Rubenstein)およびフェーデルマン(Federman)編、第12章、第X節におけるPrinciples of Cancer Patient Managementを参照)。ほとんど全ての化学療法剤が毒性であり、化学療法は、激しい吐気、骨髄抑制、免疫抑制などの著しい、多くの場合危険な副作用を生じさせる。また、化学療法剤を併用投与しても、多くの腫瘍細胞はそれらの化学療法剤に耐性であるか、または耐性を発現させる。実際、治療プロトコルに用いられた特定の化学療法剤に耐性の細胞は、特定の治療に用いられた該薬剤の作用機構とは異なる機構によって作用する他の薬剤にも耐性であると証明されることが多く、この現象は、多面的薬剤耐性または多剤耐性と称される。したがって、薬剤耐性のため、多くの癌が標準的な化学療法治療プロトコルに抵抗性であることが証明されている。
【0055】
代替の癌治療、特に外科手術、放射線療法、化学療法、およびホルモン療法などの標準的な癌治療に抵抗性であることが証明されている癌の治療に対する必要性は著しい。さらに、癌がただ1つの方法によって治療されることは稀である。したがって、癌の治療に対する新規治療薬の開発、および癌の治療に対する新規でより有効な併用療法が求められている。
【0056】
癌はHIF−1濃度の上昇によって悪化する。これは、HIF−1の活性化が、癌細胞の生存、代謝、侵襲性、および新血管形成を促進するからである。本発明者は、癌細胞におけるHIF−1αの高い基礎的濃度を低下させることによって、これらの細胞の生存および侵襲性が損なわれることを示した(下記参照)。したがって、本発明は、癌細胞の分化および増殖を阻害するために、HIF−1αの発現および/または活性を調節する(例えば阻害する)薬剤を、それらを必要としている人に投与する方法を考慮している。このような方法は、癌などの、細胞の異常な増殖および分化に関連した障害の治療に有用であろう。したがって、本発明の一実施形態において、癌またはその1つまたは複数の症状は、HIF−1α活性を阻害する、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与などの本明細書に記載されているHIF−1α活性を調節する薬剤の投与によって、予防されるか、治療されるか、管理されるか、または寛解される。他の実施形態において、HIF−1α活性を調節する薬剤および限定はしないが、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および/または生物学的療法/免疫療法などの1つまたは複数の療法を含む併用療法も考慮されている。
【0057】
特定の一実施形態において、本発明の方法は、HIF−1α活性を調節する薬剤と共に、1つまたは複数の血管形成アンタゴニストを投与することを包含している。他の実施形態において、本発明の方法は、HIF−1α活性を調節する薬剤と共に、限定はしないが、化学療法剤および非化学療法的免疫調節剤などの1つまたは複数の免疫調節剤の投与を包含している。
【0058】
本発明の製薬組成物および剤形ならびにキットを含む本発明の種々の実施形態に使用できる抗癌剤の具体的な例としては、限定はしないが、以下のものが挙げられる:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼラシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビスアントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナーナトリウム;ブロピリミン;ビスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマー。
【0059】
さらに特定の実施形態において、本発明はまた、限定はしないが、抗癌剤などの1つまたは複数の療法の投与と併用して、HIF−1α活性を阻害する、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与など、本発明に記載されたHIF−1α活性を調節する治療薬の投与を含む。癌の治療としては、肺癌、骨癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭部癌または頚部癌、皮膚黒色腫または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域癌、胃癌、大腸癌、乳癌、子宮癌、輸卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚部癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性または急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、膠腫、髄膜腫および下垂体腺腫の治療が挙げられる。併用療法に用いられる場合、リストに挙げられた投与の用量および/または回数を減少させることができる。
【0060】
自己免疫疾患および炎症性疾患
炎症は、代謝要求の増大によって生じた局所的な低酸素を特徴とする。最近、ヘテロ二量体転写因子HIF−1が、細胞生理学における変化に影響を与える分子機構の鍵であることが明らかになった。HIF−1によって誘導された遺伝子には、低酸素に対する細胞、組織全体、および動物全体の適応応答にとって必要なものが含まれる。HIF−1は、炎症など、より多様な設定において遺伝子発現を制御し得ることが、最近明らかになった(クレイマー(Cramer)ら、(2003)Cell Cyle、2、192−193頁)。βインテグリン発現の転写制御因子として、HIF−1は炎症病巣への骨髄白血球の移動を制御するように機能し得ることが、研究によって解明されている。
【0061】
上記で検討したように、酸素正常状態において、HIF−1発現は、ユビキチン−プロテアソーム経路を介した、そのαサブユニットの分解に、主に依存している。この過程の開始段階は、酸素依存性分解ドメイン内の鉄依存性プロリンヒドロキシル化である。呼吸窮迫症候群、網膜炎、糖尿病、および関節炎などの種々の炎症性疾患内の内在性防御経路におけるHIF−1の中心的役割の可能性が、最近の研究によって解明されている(セメンザ(Semenza)ら、(2000)Adv.Exp.Med.Biol.475、123−130頁)。また、HIF−1αの発現が潰瘍性大腸炎において誘導されることが、最近のcDNAプロファイリング研究によって示唆されている(ローエンス(Lawence)ら、(2001)10、445−456頁)。
【0062】
低酸素に対する白血球応答が炎症および自己免疫疾患の進行に寄与していることは、現在明らかである。虚血−再潅流傷害などの急性病態、ならびに関節炎で生じるような慢性炎症の双方で、白血球が低酸素に曝露されることは十分に実証されている(ルイス(Lewis)ら、(1999)J.Leukocyte Biol.66、889−900頁)。さらに、白血球の接着を媒介し、白血球の血管外遊走、化学走化作用、および貪食作用を果たすβインテグリンのような分子の発現増加を、低酸素がもたらし得ることを示唆する証拠が存在する(コング(Kong)ら、(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101、10440−10445頁)。また、IL−1およびTNFαなどの免疫調節ペプチドが、酸素正常状態の細胞においても、HIF−1依存性遺伝子発現を刺激することを示唆する証拠が存在する(ヘルウィッグ(Hellwig)−バーゲル(Burgel)ら、(2005)J.Interferon Cytokine Res.25、297−310頁)。したがって、T細胞、マクロファージおよび/または好中球などの白血球に媒介された慢性炎症には、炎症応答を生じるためにHIF−1活性化が必要である。このように、本発明では、マクロファージ、T細胞、および好中球などの白血球が活性化され、疾患の病状として炎症を生じる疾患の治療のために、HIF−1転写因子の調節が考慮されている。これは、HIF−1α活性を阻害し、炎症性疾患の治療に有用な、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与など、本発明に記載されたHIF−1α活性の調節によって達成できる。
【0063】
本明細書に記載された本発明の組成物および方法は、自己免疫障害および/または炎症性障害の予防または治療に有用である。自己免疫障害の例としては、限定はしないが、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎および睾丸炎、自己免疫血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、腹腔スプルー皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ−ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状狼蒼、本態性混合寒冷グロブリン血症、線維筋痛−線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン−バレ、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少症紫斑病(ITP)、IgA神経疾患、若年性関節炎、扁平苔癬、紅斑性狼蒼、メニエール病、混合結合組織疾患、多発性硬化症、1型または免疫媒介真性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、リウマチ性多発筋痛、結節性多発動脈炎、ポリクロンドリチス(polychrondritis)、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋痛および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ様関節炎、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群(メールシュ−ウォルツマン(Moersch−Woltmann)症候群)、全身性紅斑性狼蒼、紅斑性狼蒼、タカヤス関節炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹性皮膚炎血管炎などの血管炎、白斑、およびウェジナー肉芽腫が挙げられる。
【0064】
炎症性疾患の例としては、限定はしないが、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性障害、敗血症性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨破壊、および慢性ウィルスまたは細菌感染から生じる慢性炎症が挙げられる。本発明の組成物および方法は、上記疾患の予防、管理または治療に用いられる1つまたは複数の従来の療法と共に使用できる。
【0065】
本明細書に記載された組成物および方法は、関節リウマチ、脊椎関節症(例えば、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群(a.k.a.、反応性関節炎)、炎症性腸疾患関連関節炎、および未分化脊椎関節症)、乾癬、未分化関節症、および関節炎の予防または治療に特に有用である。本明細書に記載された組成物および方法はまた、炎症性骨溶解、異常な骨再吸収を特徴とする他の障害、または骨喪失を特徴とする障害(例えば骨粗しょう症)に関連した1つまたは複数の症状の予防、治療、管理または寛解にも適用できる。
【0066】
製薬製剤
製薬使用に関して、本発明の薬剤は、製薬的に許容できる担体と組み合わせて使用でき、また、任意に製薬的に許容できる希釈剤または賦形剤を含み得る。したがって、本発明はまた、対象への投与に好適な製薬組成物を提供する。該担体は、該組成物が非経口投与のために適合化されるように液体であり得るか、または経口投与のために製剤化された固体、すなわち、錠剤または丸剤であり得る。さらに、該担体は、該組成物が吸入のために適合化されるように噴霧可能な液体または固体の形態であり得る。非経口投与される場合、該組成物は、発熱物質が無く、許容できる非経口担体中にある必要がある。あるいは、活性剤は、公知の方法を用いて、リポソーム中に剤形化またはカプセル化できる。
【0067】
本発明の製薬組成物は、製薬的に許容できる担体と組み合わせて、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体の投与など、本明細書に記載されたHIF−1α活性を調節する有効量を含む。該組成物は、標的にされている特定の疾患の治療に好適な他の公知の薬剤をさらに含み得る。本発明の薬剤の有効量は、該薬剤の不在下で生じると考えられる内皮細胞の刺激に比較して、それを、阻止、抑制または減少させる量;言い換えると、該薬剤の不在下で生じると考えられる内皮細胞の血管形成活性に比較して、それを低下させる量である。該有効量(および投与様式)は、個体ベースで決定され、使用されている具体的な治療用分子、ならびに対象(大きさ、年齢、全身の健康状態)、治療されている病態(癌、関節炎、眼疾患など)、処置される症状の重症度、求められる結果、使用されている具体的な担体または製薬製剤、投与経路、および当業者に明らかであると考えられる他の因子についての考慮に基づく。該有効量は、当業界に知られている方法を用いて、当業者によって決定できる。本明細書に記載された薬剤の治療的有効量は、当業界に知られているインビトロ試験、動物モデルまたは他の用量応答試験を用いて決定できる。
【0068】
本発明の薬剤は、急性的に(すなわち、炎症へと至る事象の発現時に、または該事象の直後に)投与するか、または変性疾患の過程中に投与して、そうでない場合には生じると考えられる症状の進行を低下させるか、または寛解させることができる。投与のタイミングおよび間隔は、対象の症状によって変わり、当業者によって決定されると考えられるように、数時間、数日、数週間またはより長期にわたって、数時間から数日の間隔で投与できる。典型的ない1日の用法は、1日当り、約0.01μg/kg体重から、1日当り、約1mg/kg体重から、1日当り、約10mg/kg体重から、1日当り、約100mg/kg体重からであり得る。
【0069】
本発明の薬剤は、該薬剤の製剤化および治療される疾患を考慮して、静脈内、経口、形鼻、眼内、粘膜内、脊髄内で、または任意の好適な経路で投与できる。炎症性関節炎の治療用薬剤は、滑液内に直接注射できる。固形腫瘍の治療用薬剤は、該腫瘍内に直接注射できる。皮膚疾患の治療用薬剤は、局所に、例えば、ローションまたはスプレーの形態で適用できる。脊髄内投与、すなわち、脳腫瘍の治療用のものは、脳内への直接注射を含み得る。あるいは、血液−脳関門を通過し、該活性剤を血液−脳関門を越えて輸送する能力に関して選択されるペプチドまたは非タンパク質様部分である第2の分子(「キャリヤー」)に、薬剤を結合または共役できる。好適なキャリヤーの例は、参照として本明細書に全体が援用されている、米国特許第4,902,505号明細書;同第5,604,198号明細書;および同第5,017,566号明細書に開示されている。
【0070】
HIF−1αの結合相手を同定する方法
本発明の他の実施形態は、HIF−1αの結合相手の単離および同定に使用される方法を提供する。一般に、HIF−1αタンパク質を、可能性のある結合相手とHIF−1αタンパク質との結合を可能にする条件下で、可能性のある結合相手または細胞の抽出物またはフラクションと混合する。混合後、HIFと結合したペプチド、ポリペプチド、タンパク質または他の薬剤(システインまたはヒスチジン)を該混合物から分離する。次いで、HIFに結合した結合相手を取り出し、さらに分析する。結合相手を同定し、単離するために、HIF−1αタンパク質の全体が使用できる。あるいは、該タンパク質の断片を使用できる。
【0071】
本明細書で用いられる細胞抽出物とは、溶解または破壊した細胞から作製された調製物またはフラクションを言う。細胞抽出物の好ましい供給源は、アレルギー性過敏症に罹っている患者におけるヒト皮膚組織またはヒト気道由来の細胞、またはヒト肺組織の生検サンプルに由来する細胞である。あるいは、細胞抽出物は、正常組織または入手できる細胞系、特に膠腫細胞系などの癌細胞系から調製できる。
【0072】
細胞の抽出物を得るために、種々の方法を用いることができる。細胞は物理的または化学的いずれかの破壊方法を用いて破壊できる。物理的破壊法の例としては、限定はしないが、音波処理および機械的剪断が挙げられる。化学的溶解法の例としては、限定はしないが、界面活性剤溶解および酵素溶解が挙げられる。当業者は、当該方法に使用する抽出物を得るために細胞抽出物を調製する方法を容易に適合化できる。
【0073】
細胞の抽出物が調製されたら、HIF−1αタンパク質と結合相手との結合が生じ得る条件下で、該抽出物を、本発明の薬剤と混合する。種々の条件が使用できるが、最も好ましいのは、ヒト細胞の細胞質に見られる条件によく似た条件である。浸透圧、pH、温度、および使用される細胞抽出物の濃度などの特性は、該タンパク質と結合相手の結合を最適化するために変えることができる。
【0074】
適切な条件下での混合後、結合した複合体を該混合物から分離する。該混合物を分離するために種々の方法を利用することができる。例えば、本発明のタンパク質に特異的な抗体を用いて、結合相手の複合体を免疫沈降させることができる。あるいは、クロマトグラフィおよび密度/沈降遠心分離などの標準的な化学的分離法が使用できる。
【0075】
該抽出物に見られる非結合細胞構成要素を除去した後、通例的方法を用いて、該複合体から結合相手を解離させることができる。例えば、該混合物の塩濃度またはpHを変えることによって解離を達成できる。該混合抽出物から結合した結合相手対の分離を助けるために、本発明の薬剤を固体支持体に固定できる。例えば、該薬剤を、ニトロセルロースのマトリクスまたはアクリルビーズに付着させることができる。固体支持体への該薬剤の付着により、該抽出物に見られる他の構成要素からの結合相手の分離が助けられる。同定された結合相手は、単一のタンパク質か、または2つ以上のタンパク質から作られた複合体のいずれかであり得る。あるいは、結合相手は、タカヤマ(Takayama)ら、(1997)Methods Mol.Biol.69、171−184頁、またはサウダー(Sauder)ら、(1996)J.Gen.Virol.77、991−996頁の方法によるファーウェスタンアッセイを用いて同定できるか、またはエピトープタグ化タンパク質もしくはGST融合タンパク質の使用によって同定できる。
【0076】
あるいは、HIF−1をコードする核酸分子を、酵母2ハイブリッド系において使用できる。酵母2ハイブリッド系は、他のタンパク質相手対の同定に使用されているが、本明細書に記載された核酸分子の使用に容易に適合させることができる。
【0077】
HIF−1α発現を調節する薬剤を同定する方法
癌の薬剤開発のための新規標的機構が確認された。薬剤のアスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体は、HIF−1α分解に関与する酵素が非活性化されることを防ぐ。これは、癌細胞におけるHIF−1αの高い基礎的レベルの低下をもたらすが、正常細胞における低酸素によるHIF−1αの通常の誘導を損なうことはない。したがって本発明は、HIF−1α発現に対して、アスコルベート、システイン、ヒスチジンおよびグルタチオンと同じ効果を有する薬剤を同定する方法を包含する。
【0078】
本発明の一実施形態において、HIF−1αの減衰を促進する薬剤を同定する方法が提供される。グルコース由来の代謝物がHIF−1αをヒドロキシル化し、したがって、タンパク質分解性の分解に関してHIF−1αをタグ化する酵素の可逆的不活性化を引き起こす、HIF−1活性化に関する新規機構が確認された。低酸素では、ピルベート、オキサロアセテートおよびアルファ−ケトイソカプロエートなどのグルコース代謝物によって培養物中で処理された細胞は、HIF−1αタンパク質の蓄積を示す。しかし、低酸素細胞への酸素の再導入により、HIF−1減衰の再開が速やかに促進されるが、この減衰は洗浄によるグルコース代謝物の除去後、はるかに緩慢である。アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体などの薬剤の添加は、HIF−1ヒドロキシラーゼの再活性化により、HIF−1の減衰を速やかに促進することができる。したがって、この分析様式により、HIF−1ヒドロキシラーゼの不活性化後に、それを再活性化することのできる新規薬剤を同定することができる。
【0079】
本発明の他の実施形態において、HIF−1αタンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬剤を同定する方法が提供される。このようなアッセイでは、本発明の核酸の発現レベルにおける変化をモニタリングする入手できる任意の手段が利用できる。本明細書に用いられる際、薬剤は、細胞内の核酸の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートできる場合に、本発明の核酸の発現を調節すると言われる。HIF−1αタンパク質の発現をダウンレギュレートする薬剤の例としては、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0080】
一アッセイ様式において、HIF−1α制御化遺伝子のオープンリーディングフレーム、または5’および/または3’制御要素と、任意のアッセイ可能な融合相手との間にレポーター遺伝子融合体を含有する細胞系が調製できる。ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子などの多数のアッセイ可能な融合相手が知られており、容易に入手できる(アラム(Alam)ら、(1990)Anal.Biochem.188、245−254頁)。次いで、レポーター遺伝子融合体を含有する細胞系を、適切な条件と時間で、被験薬剤に曝露する。該薬剤に曝露したサンプルと対照サンプルとの間のレポーター遺伝子の発現の差異によって、HIF−1αタンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬剤が同定される。
【0081】
HIF−1αタンパク質をコードする核酸の発現を調節する薬剤の能力をモニターするためにさらなるアッセイ様式を使用できる。例えば、mRNA発現を、本発明の核酸に対するハイブリダイゼーションによって直接モニターすることができる。細胞系を適切な条件および時間で、被験薬剤に曝露し、総RNAまたはmRNAを、サムブルック(Sambrook)ら、(2001)Molecular Cloning−A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版)に開示されたような標準的方法によって単離する。
【0082】
該薬剤に曝露した細胞と対照細胞との間のRNA発現レベルの違いを検出するためのプローブは、HIF−1αタンパク質をコードする核酸から調製できる。高ストリンジェンシーの条件下で標的核酸とのみ特異的にハイブリダイズするプローブをデザインすることが好ましいが、必ずしも必要ではない。高ストリンジェンシーの条件下では、相補性の高い核酸ハイブリッドのみが形成する。したがって、アッセイ条件のストリンジェンシーが、ハイブリッドを形成するために2つの核酸鎖間に存在する相補性の量を決定する。プローブ:標的ハイブリッドとプローブ:非標的ハイブリッドとの間の安定性の違いを最大化するようにストリンジェンシーを選択すべきである。
【0083】
プローブは、当業界に知られている方法により、HIF−1α制御タンパク質をコードする核酸からデザインできる。例えば、プローブのG+C含量およびプローブの長さが標的配列に対するプローブの結合に影響を与え得る。プローブ特異性を最適化する方法は、サムブルック(Sambrook)ら、(2001)Molecular Cloning−A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、またはオースーベル(Ausubel)ら、(1995)Molecular Biology、グリーン(Green)出版におけるCurrent Protocolsにおいて、一般的に入手できる。
【0084】
ハイブリダイゼーション条件は、各プローブで必要ならば、サムブルック(Sambrook)らおよびオースーベル(Ausubel)らによって記載されたものなどの公知の方法を用いて改変される。総細胞RNAまたはポリA RNAの豊富なRNAのハイブリダイゼーションを、任意の入手できる様式で達成することができる。例えば、総細胞RNAまたはポリA RNAの豊富なRNAを、固体支持体に固定し、該プローブが特異的にハイブリダイズする条件下で、該固体支持体を、本発明の配列の少なくとも1つ、またはその少なくとも1つの部分を含む少なくとも1つのプローブに曝露することができる。あるいは、本発明の配列の少なくとも1つ、またはその少なくとも1つの部分を含む核酸断片を、シリコンチップまたは多孔性ガラスウェーハなどの固体支持体に固定することができる。次いで、固定された配列が特異的にハイブリダイズする条件下で、該ガラスウェーハを、サンプルの総細胞RNAまたはポリA RNAに曝露することができる。例えば、国際公開第95/11755号パンフレットに開示されたものなど、このような固体支持体およびハイブリダイゼーション法は、広く入手できる。無処置細胞集団のRNAサンプルおよび該薬剤に曝露した細胞集団のRNAサンプルに特異的にハイブリダイズする所与のプローブの能力を調べることによって、HIF−1αタンパク質をコードする核酸の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする薬剤が同定される。
【0085】
また、mRNAの定性的および定量的分析のためのハイブリダイゼーションを、RNアーゼ保護アッセイ(すなわち、RPA、マー(Ma)ら、(1996)Methods 10、273−238頁を参照)を用いて実施できる。簡単に述べると、該遺伝子産物をコードするcDNAおよびファージ特異的DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7、T3またはSP6RNAポリメラーゼ)を含む発現媒体を、cDNA分子の3’端で、ファージプロモーターの下流に線状化し、このような線状化分子を、引き続きインビトロ転写によるcDNAの標識化したアンチセンス転写体合成のための鋳型として使用する。次いで、80%のホルムアミド、40mMのPipes(pH6.4)、0.4MのNaClおよび1mMのEDTAを含む緩衝液中、45℃で一晩のインキュベーションによって、該標識転写体を、単離されたRNA(すなわち、総または分画化されたmRNA)の混合物にハイブリダイズする。次いで、生じたハイブリッドを、40μg/mlのリボヌクレアーゼAおよび2μg/mlのリボヌクレアーゼHを含む緩衝液中で消化する。外来性タンパク質の脱活性化および抽出後、該サンプルを分析するため、尿素/ポリアクリルアミドゲル上に装填する。
【0086】
他のアッセイ様式において、生理学的にHIF−1α遺伝子産物を発現する細胞または細胞系(例えば、U87膠腫)が先ず同定される。このように同定された細胞または細胞系は、薬剤と適切な表面トランスダクション機構および/または細胞質カスケードとの外来性接触に関して、転写機構調節の正確さが維持されるように、必要な細胞機構を含むことが予想される。さらに、このような細胞または細胞系に、当該遺伝子産物に特有な1つまたは複数の抗原性断片に融合した当該遺伝子産物をコードする構造遺伝子の末端を含有する操作可能な非翻訳5’プロモーターを含む発現媒体(例えば、プラスミドまたはウィルスベクター)構築体をトランスデュースまたはトランスフェクトし、前記断片は、前記プロモーターの転写制御下にあって、天然ポリペプチドと区別できる分子量を有するポリペプチドとして発現するか、または免疫学的に区別されるタグまたは他の検出可能なマーカーをさらに含むことができる。このような方法は、当業界に十分に知られている(サムブルック(Sambrook)ら、(2001)Molecular Cloning−A Laboratory Manual、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照)。
【0087】
上記で概説したようにトランスデュースまたはトランスフェクトした細胞または細胞系を、次に、適切な条件下、薬剤(例えば、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体)に接触させる。例えば、製薬的に許容できる賦形剤中の該薬剤を、生理的pHにおけるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理的pHにおけるイーグルの平衡化塩溶液(BSS)、血清を含むPBSもしくはBSS、またはPBSもしくはBSSおよび/または37℃でインキュベートした血清を含む調整培地などの水性生理的緩衝液中の細胞と接触させる。前記条件は、当業者によって必要と考えられる調整ができる。該細胞を該薬剤に接触させた後、前記細胞を破壊し、ライセートの該ポリペプチドを分画して、ポリペプチドフラクションをプールして抗体に接触させ、さらに免疫学的アッセイ(例えば、ELISA、免疫沈降またはウェスタンブロット)によって処理されるようにする。「薬剤接触」サンプルから単離されたタンパク質のプールを、賦形剤または対照薬剤(アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体)のみを該細胞に接触させる対照サンプルと比較し、対照と比較した薬剤接触サンプルからの免疫学的に生じたシグナルの増加または減少を用いて、該薬剤の有効性を識別する。
【0088】
活性を調節する薬剤を同定する方法
本発明は、HIF−1αタンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬剤を同定する方法を提供する。このような方法またはアッセイは、所望の活性をモニタリングまたは検出する任意の手段を利用できる。
【0089】
一様式において、被験薬剤に曝露していない対照細胞集団と比較した、曝露した細胞集団間での、標準的単位に正規化したHIF−1αタンパク質の特異的活性をアッセイできる。適切な条件および時間で、細胞系または細胞集団を被験薬剤に曝露する。曝露した細胞系または細胞集団、および対照である曝露していない細胞系または細胞集団の細胞ライセートを調製できる。次いで細胞ライセートを、プローブによって分析する。
【0090】
本発明のタンパク質またはそれらの抗原含有断片を用い、適切な免疫化プロトコルを利用して、好適な哺乳動物宿主を免疫化することによって抗体プローブを調製できる。免疫原性を高めるために、これらのタンパク質または断片を、好適な担体に結合することができる。BSA、KLHなどの担体、または他の担体タンパク質による免疫原性結合体の調製方法は、当業界で十分知られている。いくつかの場合、例えば、カルボジイミド試薬を用いた直接的結合が効果的であり得;他の場合、ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.)により供給されるものなどの結合試薬が、ハプテンへの実施容易性を提供する上で望ましいと考えられる。ハプテンペプチドは、アミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかで、システイン残基により伸長させることができるか、または、例えば、担体との結合を促進するために、システイン残基により散在させることができる。免疫原の投与は、当業界において一般に認識されているように、好適な期間にわたり注射によって、および好適なアジュバントを使用して行われる。免疫化スケジュールの間、抗体の力価を用いて、抗体形成の妥当性が判定される。
【0091】
このようにして生産されたポリクローナル抗血清は、いくつかの適用には満足すべきものであるが、製薬組成物には、モノクローナル製剤の使用が好ましい。所望のモノクローナル抗体を分泌する継代細胞系を、標準的方法、例えば、コーラー(Kohler)& ミルシュタイン(Milstein)(1992)Biotechnology 24、524−526頁を参照、または一般に知られている、リンパ球または脾臓細胞の継代を行う改変を用いて調製できる。抗原が、ペプチドハプテン、ポリペプチドまたはタンパク質である免疫アッセイによって、所望の抗体を分泌する継代細胞系をスクリーンできる。所望の抗体を分泌する適切な継代細胞培養物を同定する場合、該細胞は、インビトロ、または腹水中での生産のいずれかによって培養できる。
【0092】
所望のモノクローナル抗体は、培養物の上澄み液から、または腹水の上澄み液から回収できる。完全抗体と同様に、免疫学的に有意な部分を含有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片を、アンタゴニストとして使用することができる。FabまたはFab’断片などの免疫学的に反応性である断片は、免疫グロブリン全体よりも免疫原性が低いため、これらの使用が、特に治療的コンテキストでは好ましいことが多い。
【0093】
また、該抗体または断片は、組換え手段により、最新のテクノロジーを用いて作製できる。また、該タンパク質の所望の領域に特異的に結合する抗体領域は、複数種の出所を有するキメラのコンテキストにおいても作製できる。
【0094】
また、該タンパク質の所望の領域に特異的に結合する抗体領域は、複数種の出所を有するキメラ、例えば、ヒト化抗体のコンテキストにおいても作製できる。したがって、該抗体は、米国特許第5,585,089号明細書、またはリーチマン(Riechmann)ら、(1988)Nature 332、323−327頁に記載された、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る。
【0095】
上記の方法においてアッセイされる薬剤は、ランダムに選択できるか、合理的に選択できるか、またはデザインできる。本明細書に用いられる際、HIF−1αタンパク質の結合に関与する特定の配列単独、またはそれと共に、その結合基質、結合相手などを考慮せずに、薬剤がランダムに選択される場合に、薬剤はランダムに選択されると言われる。ランダムに選択される薬剤の一例は、化学物質ライブラリーまたはペプチド組み合わせライブラリー、または生物の増殖ブロスの使用である。
【0096】
本明細書に用いられるように、標的部位の配列または該薬剤の作用と関連したコンホメーションを考慮に入れ、非ランダムベースで該薬剤が選択される場合、薬剤は合理的に選択、もしくはデザインされると言われる。これらの部位を構成するペプチド配列を利用することによって、薬剤は薬剤は合理的に選択できるか、または合理的にデザインできる。例えば、合理的に選択されたペプチド薬剤は、そのアミノ酸配列が何らかの機能的コンセンサス部位と同一の、またはその誘導体であるペプチドであり得る。合理的に選択された薬剤の例としては、限定はしないが、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0097】
本発明の方法においてスクリーンされる薬剤の例としては、ペプチド、ペプチド模倣物、抗体、抗体断片、小型分子、ビタミン誘導体、ならびに炭水化物がある。本発明のペプチド薬剤は、当業界に知られている標準的な固相(または液相)ペプチド合成法を用いて調製できる。また、これらのペプチドをコードするDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成機器を用いて合成でき、標準的組換え生産系を用いて組換え生産できる。非遺伝子コードアミノ酸が含まれる場合は、固相ペプチド合成を用いる生産が必要である。
【0098】
本発明の薬剤の他のクラスは、HIF−1αタンパク質に結合する抗体またはその断片である。抗体薬剤は、該抗体によって標的にされることが意図されているタンパク質の部分を抗原領域として含有するペプチドによって、好適な哺乳動物対象を免疫化することによって得ることができる。
【0099】
薬剤のさらに他のクラスにおいて、本発明は、HIF−1αタンパク質の三次元構造を模倣したペプチド模倣物を含む。このようなペプチド模倣物は、天然ペプチドよりも、例えば、より経済的な生産、化学的安定性の増大、薬理学的性質(半減期、吸収、力価、有効性など)の増強、特異性の変化(広範囲スペクトルの生物活性)、抗原性の減少およびその他などの有意な利点を有し得る。
【0100】
一形態において、模倣物は、タンパク質の二次構造の要素を模倣したペプチド含有分子である。ペプチド模倣物を使用する背後の基礎になっている原理は、タンパク質のペプチド主鎖が、主に、抗体と抗原のものなどの分子相互作用を促進するような仕方でアミノ酸側鎖を方向づけるように存在していることである。ペプチド模倣物は、天然分子と同様に分子相互作用を可能にすることが予想される。
【0101】
他の形態において、ペプチド類縁体が、鋳型ペプチドの性質と類似した性質を有する非ペプチド薬剤として、製薬業で一般的に用いられている。これらのタイプの非ペプチド化合物もまた、ペプチドの模倣物またはペプチド模倣物と称され(参照として本明細書に援用されているフォーチャー(Fauchere)(1986)Adv.Drug Res.15、29−69頁;ヴェーバー(Veber)&フライディンガー(Freidinger)(1985)Trends Neurosci.8、392−396頁;エヴァンス(Evans)ら、(1987)J.Med.Chem.30、1229−1239頁)、通常、コンピュータ化分子モデリングの補助により開発されている。
【0102】
治療的に有用なペプチドに構造的に類似したペプチド模倣物は、等価な治療的または予防的効果を生むために使用できる。一般に、ペプチド模倣物は、範例ポリペプチド(すなわち、生化学的性質または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当業界に知られている方法により、任意にある結合によって置換された1つまたは複数のペプチド結合を有する。
【0103】
ペプチド模倣物の標識化は、通常、定量的な構造−活性データおよび分子モデリングによって予測されるペプチド模倣物上の非妨害的位置に、直接的な、またはスペーサー(例えばアミド基)を介した、1つまたは複数の標識の共有結合を含む。このような非妨害的位置は一般に、該ペプチド模倣物が結合して治療効果を生じる高分子との直接的接触を形成しない位置である。ペプチド模倣物の誘導体化(例えば標識化)によって、該ペプチド模倣物の所望の生物学的または薬理学的活性が実質的に妨害されないことが必要である。
【0104】
ペプチド模倣物の使用は、薬剤ライブラリーを創製する組み合わせ化学を用いることによって増強できる。タンパク質のその結合相手に対する結合を増加または減少させるアミノ酸変異体を同定することによって、ペプチド模倣物のデザインを補助することができる。使用できるアプローチとしては、酵母二ハイブリッド法(チエン(Chien)ら、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88、9578−9582頁)およびファージ表示法の使用が挙げられる。二ハイブリッド法では、酵母におけるタンパク質−タンパク質相互作用が検出される(フィールズ(Fields)ら、(1989)Nature 340、245−246頁)。ファージ表示法では、固定化されたタンパク質とラムダおよびM13などのファージの表面に発現するタンパク質との間の相互作用が検出される(アンバーグ(Amberg)ら、(1993)Strategies 6、2−4頁;ホグレフェ(Hogrefe)ら、(1993)Gene 128、119−126頁)。これらの方法により、タンパク質−タンパク質相互作用に関する陽性および陰性の選択、ならびにこれらの相互作用を決定する配列の同定が可能となる。
【0105】
本明細書に用いられる「本発明の薬剤」では、アスコルベート、システイン、ヒスチジンおよびグルタチオンと同様な仕方で作用する化合物が考慮されている。下記のとおり、ヒドロキシル化し、タンパク分解性の分解に対してHIF−1αをタグ化する酵素の可逆的不活性化を、グルコース由来の代謝物が引き起こすHIF−1活性化の新規機構が確認された。低酸素では、ピルベート、オキサロアセテートおよびアルファ−ケトイソカプロエートなどのグルコース代謝物を有する培養物中で処置した細胞は、HIF−1αタンパク質の蓄積を示す。しかし、低酸素細胞に酸素を再導入すると、HIF−1減衰の再開が速やかに促進されるが、この減衰は、洗浄によるグルコース代謝物の除去後は、はるかに緩やかである。アスコルベート、システイン、ヒスチジン、グルタチオンおよびそれらの誘導体などの薬剤の添加により、HIF−1ヒドロキシラーゼの再活性化によるHIF−1減衰を速やかに促進することができる。したがって、この分析様式によって、HIF−1ヒドロキシラーゼの不活性化後、それを再活性化できる全く新規な薬剤を同定することができる。このように、本発明では、アスコルベート、システイン、ヒスチジンおよびグルタチオン(アミノ酸のD異性体)と同様な様式で作用する「薬剤」が考慮されている。
【0106】
さらに、このような薬剤の誘導体もまた考慮されている。例えば、システイン−ヒスチジン、ヒスチジン−ヒスチジン、システイン−システインなどのジペプチドが考慮されている。さらに、ランダムな、または認識可能な様式におけるシステインおよび/またはヒスチジンからなるペプチドもまた考慮されている。該ペプチドは、3つのアミノ酸から100個のアミノ酸の範囲であり得る。このペプチドは、HIF−1ヒドロキシラーゼの再活性化によってHIF−1の減衰を促進する。
【0107】
また、インビボおよび/またはインビトロでの安定性および/または吸収性を高めるために、本発明のアミノ酸、ジペプチドおよびペプチドを修飾できることも考慮されている。例えば、安定性を高めるために、アミノ酸にN−アセチル基を付加できる。また、安定性および/または細胞内への吸収性を高めるために、ペプチドにメチル基および/またはエステル基を付加できる。また、本発明によるアスコルベート、システイン、ヒスチジンおよびグルタチオンの作用を模倣した分子も包含されることが考慮されている。このような分子は、HIF−1αに対して、アスコルベート、システイン、ヒスチジンおよびグルタチオンと同様な作用を及ぼす。このような化合物を、本明細書に記載された方法を用いて同定することができる。
【実施例】
【0108】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであるが、本開示の残部を決して限定するものと解釈すべきではない。他の一般的な形態は、当業者に明らかであろう。全ての引用された特許、特許出願およびこの出願に引用された刊行物は、参照として、それらの全体が本明細書に援用されている。以下の材料および方法は、全ての実施例に適用される。
【0109】
細胞培養および低酸素処置
ヒトU87、U251、U251、U251−Hre(20)およびU373膠腫細胞を、イーグルMEM培地(メディアテック(Mediatech))中で培養した。DU145ヒト前立腺癌細胞およびO22ヒト頭部および頚部癌細胞を、RPMI 1640倍地(シグマ(Sigma))中で培養した。22Bヒト頭部および頚部癌細胞を、2mMのグルタミンを含有する高グルコースDMEM(ギブコ(Gibco))中で培養した。C6ODD−GFPラット膠腫細胞を、1.5mg/mlのG418と共に、高グルコースDMEM中で培養した。全ての培養培地に、10%ウシ胎仔血清および1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した。ラットC6膠腫細胞を、高グルコースDMEM中で培養した。細胞の低酸素処置には、培養ディッシュをモジュラーインキュベーターチャンバー内に密封し、1%O、5%COおよび94%Nを含有する気体を5分間流し、この環境において37℃で、指定された時間インキュベートした。
【0110】
抗体および化学的試薬
タンパク質の抽出、ウェスタンブロット分析、および免疫細胞化学法を先に記載したとおり実施した。マウスモノクローナル抗HIF−1α抗体は、610958(BDバイオサイエンス(BD Bioscience))およびNB100−123(ノヴァス(Novus))であった。マウスモノクローナル抗GFP抗体は、1814460(ロッシュ(Roche))であった。マウスモノクローナル抗β−アクチン抗体は、ab6276−100(アブカム(Abcam))であった。ジメチルオキサリルグリシンは、D1070(フロンティアサイエンティフィック(Frontier Scientific))であった。他の化学物質は全てシグマ(Sigma)から入手した。HPH相同体を認識する抗体はノバスバイオロジカル(Novus biological)から入手し、HIF−1αのヒドロキシプロリン654を認識する抗血清は、R.フリーマン(R.Freeman)氏から恵受した。
【0111】
インビトロ翻訳およびHPH プロリルヒドロキシル化アッセイ
TNT結合網状赤血球ライセート(TNT Coupled Reticulocyte Lysate)インビトロ転写/翻訳(プロメガ(Promega))のために、ヒトHPH−1、2、3およびVHL pcDNA3.1/V5−HISベクター(R.ブルイック(R.Bruich)氏より恵受)を用いた。HPH活性用の細胞質抽出物は、アッセイ緩衝液(20mMのトリス、pH7.5、5mMのKCl、1.5mMのMgCl、および1mMのDTT)中、4℃で、ホモジェナイザーを用いて、細胞ペレットを溶解させ、20,000gで15分間、遠心分離し、アッセイ用上澄み液を採集することによって作製した。IVT産物または細胞抽出物のいずれかを用い、HPH酵素反応を、先に記載されたとおり実施した。HPH反応に対するその特異性に関して選択されたこのアッセイは、30分間にわたって直線的であった。各反応で、7.5μLのIVT産物または100μgの細胞抽出タンパク質のいずれかを、酵素源として用いた。10%〜20%のトリスグリシン勾配ゲル(インビトロゲン(Invitrogen))上でのゲル電気泳動後、定量的シンチレーションカウンティングまたはオートラジオグラフィーによって、活性を測定した。
【0112】
2−オキソグルタレート:HPH結合アッセイ
推奨された製造元のプロトコルを用いて、2−オキソグルタレートに結合したエポキシ活性化セファロース(Epoxy−Activated Sepharose(アマシャム(Amersham))を作製した。100μLの2−オキソグルタレートセファロースゲルに、25,000cpmの35S標識ヒトHPHタンパク質を加えた。指示された緩衝液でゲルを4回洗浄した。HPH結合の分析をシンチレーションカウンティングによって測定した。
【0113】
VHL:ODD結合アッセイ
指示された緩衝液中、ウルトラリンクイムノピュア固定化ストレプトアビジン(Ultralink ImmunoPure Immobilized Streptavidin)ビーズ(ピアス(Pierce))に結合させた1μgのヒドロキシル化HIFペプチドに、35,000cpmの35S標識ヒトVHLタンパク質を加えた。該ビーズを、冷NTEN緩衝液で3回洗浄し、結合した35S−VHLをシンチレーションカウンティングによって測定した。
【0114】
HIF−1レポーターアッセイ
先に記載したとおり、U251−HRE細胞を用いて、HIF−1ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した(ラピサルダ(Rapisarda)ら、(2002)Cancer Res.62、4316−4324頁)。
【0115】
RT−PCRおよび定量的RT−PCR分析
RNeasy キット(キアゲン(Qiagen))を用いて、総RNAを単離した。RT−PCRには、スーパースクリプトワンステップシステム(SUPERSCRIPT One−Step System)(インビトロゲン(Invitrogen))によって、1μgの総RNAを用いた。VEGF、GLUT3、およびβ−アクチンプライマーは、先に記載したものであった。定量的PCR分析には、iQ SYBRグリーンスーパーミックス(Green Supermix)およびMyiQシングル−カラー(Single−Color)。
【0116】
リアルタイムPCR検出システム(Real−Time PCR Detection System)(バイオラッド(Bio−Rad))を用いた。総RNA(5μg)は、高性能cDNAアーカイブキット(High Capacity cDNA Archive Kit)(アプライドバイオシステム(Applied Biosystems))を用いて逆転写した。以下のプライマーを用いた:
ラットHO−1(ジェンバンク(GenBank)登録番号NM_012580):
正:5’−AAGAGGCTAAGACCGCCTTC−3’(配列番号.1)
逆:5’−CCTCTGGCGAAGAAACTCTG−3’(配列番号.2);
ヒトCAIX(ジェンバンク(GenBank)登録番号NM_001216):
正:5’−CACTCCTGCCCTCTGACTTC−3’(配列番号.3)
逆:5’−AGAGGGTGTGGAGCTGCTTA−3’(配列番号.4);
ヒトGLUT3(ジェンバンク(GenBank)登録番号NM_006931)
正:5’−TGACGATACCGGAGCCAATG−3’(配列番号.5)
逆:5’−TCAAAGGACTTGCCCAGTTT−3’(配列番号.6);
ヒトMMP−2(ジェンバンク(GenBank)登録番号NM_004530)
正=5’−GTGGATGCCGCCTTTAACT−3’(配列番号.7)
逆=5’−GGAAAGCCAGGATCCATTTT−3’(配列番号.8)。
分析前に、プライマーの温度、濃度、およびcDNA希釈の最適化を行い、多成分分析および増幅産物の配列決定により、特定の単一バンドの増幅を検証した。
【0117】
細胞侵襲アッセイ
24ウェルバイオコートマトリゲル(Biocoat Matrigel)を用いて細胞侵襲実験を実施した。製造元の指示に従った8μm孔のポリカルボネートフィルターを有する侵襲チャンバー(Invasion Chamber)(ベクトンディッキンソンラブウェア(Beckton Dickinson Labware))。増殖期の細胞をトリプシン化し、1×10細胞/mlの濃度で、0.5%ウシ胎仔血清(FBS)を有する培地中に再懸濁した。プレートの下方区画に、750μlの無血清培地または血清培地を加えた。細胞の平板培養前に、全ての薬剤および血清処置を下方区画に加えた。各挿入体に、5×10細胞を平板培養し、21%のOを有する加湿インキュベーター内で48時間侵襲させた。48時間後、挿入体内部に残っていた細胞を綿スワブで完全にふき取り、侵襲細胞を固定し、ディフ−クイック染色液(Diff−Quick Stain Solution)(デイドベグリング(Dade Begring))を用いて染色した。染色した侵襲細胞を、10の予め決められた領域における20×拡大でのカウンティングによって定量化した。処置群は全て三重に試験した。侵襲性における差異を、両側スチューデントt検定を用いて統計解析した。
【0118】
細胞反応性酸素種および亜硝酸測定
細胞(80%の集密性)を、クレブス緩衝液中、5μMのCM−H2DCFDA(モレキュラープローブズ(Molecular Probes))と共に1時間装填し、2mMのピルベートまたはオキサロアセテートによって2時間処置した。陽性対照を、40μMのHと共に、2回添加した。次いで細胞を回収し、PBSで2回洗浄し、PBS/0.1%(w/v)BSA中に再懸濁してから、コールター(Coulter)フローサイトメーターにおいて蛍光を測定した。培養培地中の亜硝酸濃度は、先に記載したとおり測定した。
【0119】
VEGF ELISA、グルコース代謝物、および細胞ATPアッセイ
培養培地VEGFを、ELISA(クウォンティカイン(Quantikine))によって測定した。CMA 600/マイクロダイアリシスアナライザー(Microdialysis Analyzer)(CMAマイクロダイアリシスAB(CMA Microdialysis AB))を用いて、フェノールレッドの無いDMEM中、グルコース、ラクテート、およびピルベートを測定した。ATPバイオミネセンスアッセイキット(Bioluminescence Assay Kit)CLS II(ロッシュ(Roche))を用いて、細胞のATP濃度を測定した。
【0120】
細胞の遊離鉄に関するカルセイン蛍光アッセイ
細胞内の反応活性鉄プールにキレート化する2−オキソ酸の能力を、先に記載されたとおり、カルセイン蛍光アッセイを用いて測定した。陽性対照として、鉄キレート化剤のデスフェリオキサミンおよびビピリジルを用いた。
【0121】
細胞低酸素に関するEF−5アッセイ
細胞低酸素状態は、先に記載されたとおり、EF−5細胞付加体の免疫蛍光検出を介してモニターされた(コッホ(Koch)ら、(1995)Br.J.Cancer 72、869−874頁)。
【0122】
実施例1:特定代謝フュエルは低酸素に無関係なHIF−1α濃度を維持する
細胞培養において、血清は主要な成長因子源であり、主要な鉄源であり、一方、培地は代謝フュエルを提供する。基礎的HIF−1αが、広範囲で変化するグルコース濃度であるが、血清添加は同一である培地中で培養されたいくつかの癌細胞系であった場合、アスコルベート可逆性であることが知られている基礎的HIF−1αの蓄積は、RPMI(11.1mM)またはMEM(5.5mM)におけるよりも、高グルコースDMEM(25mM)において増殖させた細胞系で、典型的により高いことが観察された(図2A)。22B細胞における基礎的HIF−1αの時間依存性蓄積にはグルコースが必要だったが、10%FBSの有無には影響されなかった(図2B)。これらの細胞は、非解糖エネルギー源であるグルタミンと共に、DMEM中で培養した。グルコースが存在していても、していなくても、22B細胞は低酸素下で、依然として顕著にHIF−1を誘導することができた(図2B)。これは、該細胞が単一のエネルギー源としてのグルタミンの存在下で、長期の生存力を維持し得ることだけではなく、別個の機構としての明確に区別できるHIF−1の解糖制御および低酸素制御を示した。
【0123】
グルコース代謝と基礎的HIF−1αとの間の関係をさらに調査するために、U87およびU251ヒトグリア芽腫細胞(MEM中で培養した)を用いた。それらの天然MEM培地からクレブス緩衝液へ、4時間交換した場合、グルコースを非解糖エネルギー源であるグルタミンに置換しなければ、U251細胞は、基礎的HIF−1αの蓄積を示さなかった(図2C)。10mMのグルタミンの存在に関わらず、U251細胞における基礎的HIF−1αの蓄積はグルコースにより用量依存的に増加した。
【0124】
実施例2:2−オキソ酸官能基は内因性HIF−1α安定化代謝物を識別する
多くの代謝経路にグルコースは流入するため、クレブス緩衝液中、グルコースの替わりに置換した際に、どの細胞中間代謝物がHIF−1αの蓄積を促進できたかを決定できた。全ての解糖的な、全てのトリカルボン酸(TCA)回路、および多くのアミノ酸代謝中間体の広範囲の分析により、ほとんどの代謝基質置換は、4時間の細胞培養にわたって、細胞のATP濃度を有意に変化させなかったことが明らかになった。さらに、2−オキソ酸の選択基のみがHIF−1αの蓄積を促進することが判明した。この試験に用いられたすべての癌細胞系において、これらのうち、ピルベートおよびオキサロアセテートのみが活性であることが判明した。4時間の細胞培養時間にわたって、これらの2−オキソ酸によるHIF−1α蓄積誘導の閾値用量は、約300μMであると判定された。しかし、8時間より長い培養時間では、100μMほどの低い用量でもHIF−1αが誘導された。分枝鎖の2−オキソ酸であるα−ケトイソカプロエート、およびα−ケト−β−メチルバレレートもまた、いくつかの細胞系で活性であったが、全ての培養系で活性であるとは限らず、α−ケトイソバレレートは、より低い活性を示した(図2C)。2−OGおよび人工的HIF−1αに共通の1−カルボキシレートおよび2−オキソ官能基は、NOGおよびDMOGを誘導した(図2D)が、HIF−1αを誘導する天然の代謝中間体の特徴でもあった。スクシネート、フマレート、アラニン、ピルブアルデヒド、マレート、アセトアセテートおよびβ−ヒドロキシブチレートは全て2−オキソ基を欠いており、したがって、完全な、またはジギトニン透過化細胞において、HIF−1α蓄積を誘導することはできなかった(図2C)。しかし、1−カルボキシレートおよび2−オキソ基を含有したケトマロネート、α−ケトブチレート、およびα−ケトアジペートなどのいくつかの2−オキソ酸は、完全細胞においてHIF−1α蓄積を誘導せず、該分子の2−オキソ端の反対側の分子の特徴もまたHIF−1α誘導には重要であることを示唆した。2−オキソ酸基の反対側の端が修飾されているフェニルピルベートおよびフルオロピルベートは、HIF−1α蓄積を誘導できなかったが、1位におけるエチルエステルおよびメチルエステルは、有効であった。ラクテートはHIF−1α蓄積を誘導できるが、これには、ラクテートデヒドロゲナーゼによるピルベートへの変換が必要である(ルー(Lu)ら、(2002)J.Biol.Chem.277、23111−23115頁)。
【0125】
実施例3:2−オキソ酸によるHIF−1活性化はアスコルベートにより選択的に逆転される
培地中で培養したU87およびU251膠腫細胞の基礎的HIF−1α発現では、グルコースの無いクレブス緩衝液中、3mMのピルベートまたはオキサロアセテートによるHIF−1αの誘導もまた、100μMのアスコルベートによって、完全に逆転した(図2E)。この効果は、10mMの2−OGによっては逆転せず、また、アスコルベートも2−OGも、低酸素またはDMOGによるHIF−1α誘導を逆転することはできなかった。ピルベートおよびオキサロアセテート誘導性HIF−1α蓄積のこの選択的なアスコルベート阻止は、この試験に用いた全ての細胞において見られた(データは示していない)。低酸素制御要素(HRE)−ルシフェラーゼ構築体を安定的に発現するU251細胞(U251−HRE細胞;図2E)を用いて、ピルベートおよびオキサロアセテートが、低酸素またはDMOGと同じように効果的に、HIF−1制御レポーター遺伝子を誘導したことが判明した。HRE−緑色蛍光タンパク質をトランスフェクトした膠腫細胞を用いて、同様の効果が見られた。2−オキソ酸によるHIF−1レポーター遺伝子の誘導もまた、アスコルベートによって選択的に逆転されたが、2−OGによってはされなかった。アスコルベートは、低酸素またはDMOGによるHRE−ルシフェラーゼ活性化を逆転させず、やはり、ピルベートおよびオキサロアセテートによるHIF−1α制御の特有な様式が示唆された。
【0126】
実施例4:システイン、ヒスチジン、およびグルタチオンは解糖的HIF−1誘導に拮抗する
等しい培養時間において、ヒト膠腫細胞におけるHIF−1α発現は、グルコース濃度が同じ場合でも、完全培養培地中よりもクレブス緩衝液中での方が高い傾向があった。したがって、MEM中で培養したU87膠腫細胞を、同一の(5.5mM)グルコース濃度を有するクレブス緩衝液または新鮮MEMのいずれかに、4時間変えると、クレブス緩衝液で、はるかに高いHIF−1α誘導が常に見られた(図3A)。クレブス緩衝液も完全MEM培地もアスコルベートを含有していなかったため、これは、完全MEMが、HIF−1αの解糖的活性化に拮抗する何らかの阻害活性を含有したことを本発明者らに示唆した。
【0127】
MEMは、ビタミンとアミノ酸添加物の点でクレブス緩衝液と異なっている。これらの添加物を有するクレブス緩衝液を再構成した際、ビタミン混合物ではなくてアミノ酸混合物が、基礎的HIF−1α蓄積を特異的に阻止することが発見された(図3A)。また、アミノ酸混合物は、グルコースの無いクレブス中で4時間培養された細胞において、ピルベートによって誘導されたHIF−1α蓄積も阻止した。MEM中に通常存在する濃度において、一度に1つの必須アミノ酸によってクレブス緩衝液を再構成することによって、システインとヒスチジンが、基礎的HIF−1α蓄積を阻害する原因となる重要なアミノ酸であったと判定された(図3B)。全ての天然アミノ酸を評価した後に、この判定に至ったが、その一部だけが示されている。MEM中、各アミノ酸の濃度を、その通常濃度の5×に高めることによって、システインとヒスチジンが、完全培養培地における基礎的HIF−1α蓄積の内在性阻害物質である可能性が高いことが明らかになった。システインおよびその二量体システイン(Cys)は双方とも有効であったが、D−システインおよびD−ヒスチジンは有効でなかった(図3C)。双方のアミノ酸とも、この試験で用いられた全ての細胞系において、グルコース、ピルベート、およびオキサロアセテートによるHIF−1α誘導を低下させた(データは示していない)が、低酸素または鉄キレート化剤DFOによるHIF−1α蓄積には影響を与えなかった(図3C)。システインはグルタチオン(GSH)合成に関与している。アスコルベート、システイン、およびヒスチジンによるのと同様、GSHもまた、ピルベートおよびオキサロアセテートによって誘導されたHIF−1α蓄積を選択的に阻害したが、低酸素またはDFOによるものは阻害しなかった(図3C)。他のアミノ酸ではそうではなかったが、システインおよびヒスチジンの濃度を、MEM中に通常見られる濃度の5×に高めると、RT−PCRによって判定したHIF−1制御遺伝子VEGFおよびGLUT3の基礎的発現も低下させた(図3D)。システインおよびヒスチジンはまた、U251−HRE細胞において、ピルベートまたはオキサロアセテートによって誘導されたHRE−ルシフェラーゼ活性も低下させた(図3D)。また、オキサロアセテートによって処理した細胞がHIF−1αを誘導することが核抽出物のこのウェスタンブロットにより示された。システインおよびヒスチジンのペプチド二量体のミリモル以下の用量と細胞との同時インキュベーションにより、HIF−1α蓄積が低下した(図3E)。これらのデータによって、細胞代謝物による基礎的HIF−1発現の、酸素に依存しない陽性および陰性制御に関する証拠が提供される。
【0128】
実施例5:ピルベートおよびオキサロアセテートは、酸素依存性タンパク質減衰を妨害する
HIF−1に対する該代謝物の効果が、実際に酸素に無関係であることを確認するために、ピルベートなどの2−オキソ酸が、細胞呼吸の増強により細胞培養物において局所低酸素を誘導し得る可能性を除外するためのさらなる実験を行った。ミトコンドリア電子伝達連鎖活性の変化が、細胞培養物における局所的酸素圧を変化させることが示されている。これに取り組むために、還元的代謝の際にのみ細胞付加体を形成し、嫌気性環境下で反応性中間体にする低酸素局在化ニトロイミダゾール化合物EF−5を使用した。EF−5付加体は、低酸素細胞において免疫蛍光法により明瞭に検出されたが、酸素正常状態下ではピルベート(図4A)またはオキサロアセテート(図示せず)によるHIF−αの蓄積にもかかわらず、ピルベートを添加してもしなくても、付加体は見られなかった。幾つかの反応性酸素種もまた、HIF−1αを誘導できる。アスコルベート、システイン、ヒスチジンおよびグルタチオンの全ては、抗酸化性および/または鉄還元性を有することから、ピルベートまたはオキサロアセテートによるHまたはNOなどの酸化剤の産生増強を排除するためにさらなる実験を実施した。U251細胞においてHIF−1α蓄積を誘導するHおよびNOの能力が確認されたにもかかわらず、ピルベートまたはオキサロアセテートによりU251細胞の処理時にHまたはNOレベルの増加は検出されなかった(図4B)。HIF−1αの安定化に関係があるタンパク質のアセチル化、P13K、mTOR、およびhsp70などの他のシグナル伝達経路の薬理学的阻害によっても、ピルベートおよびオキサロアセテートによるHIF−1α誘導の変化は生じなかった(図4C)。次に、2−オキソ酸に対する標的としてHIF−1αプロリンヒドロキシル化に注目した。これを調査するために、2−オキソ酸により誘導されたHIF−1αが、ODDドメインにヒドロキシプロリンを含有するかどうかについての実験を行った。これによって、2−オキソ酸が、プロリンヒドロキシル化に続くpVHL結合またはプロテアソーム活性などのステップを妨害するかどうかを予想し得るであろう。HIF−1αC末端ODD領域におけるヒドロキシル化Pro564を検出する抗体を用いると、ヒドロキシプロリンは、プロテアソーム阻害剤MG132により誘導されたHIF−1αにおいてのみ検出された。ピルベート、オキサロアセテートまたはHPH阻害剤DMOGにより誘導されたHIF−1αは、ヒドロキシプロリンを含有しなかった(図4D)。
【0129】
次にGFP(ODD−GFP)に融合させたHIF−1αODD領域をコードするベクターにより安定に形質移入されたC6ラット膠腫細胞を用いて、酸素依存HIF−1α分解に関する生細胞アッセイを実施した。ODD−GFPタンパク質はヒドロキシル化され、HIF−1αと同様な酸素依存様式で分解する。HIF−1αに関して、ODD−GFPの基礎的ならびに低酸素誘導蓄積が報告されている。DMEM培地中で24時間培養されたC6細胞における基礎的ODD−GFPの蓄積は、アスコルベートにより選択的に阻害されたが、一方、低酸素誘導性ODD−GFP発現は阻害されなかったことが判明した(図4E)。クレブス緩衝液において、ODD−GFP蓄積は、グルコース、ピルベート、およびオキサロアセテートによっても刺激されたが、スクシネートでは刺激されなかった。同じパターンがジギトニン透過C6細胞に見られたことから、これらの細胞におけるピルベートまたはオキサロアセテートに対するスクシネートの無効性もまた、細胞透過性における相対的差異によるものではなかった。さらにヒスチジンおよびシステインもまた、ピルベートまたはオキサロアセテートによりODD−GFP誘導を減じた。これらの結果により、2−オキソグルタレートに類似している内因性2−オキソ酸は、O依存タンパク質分解を選択的に阻止することが示唆された。
【0130】
実施例6:ピルベートおよびオキサロアセテートは、直接HPH類と相互作用する
ピルベートは、プロテオソーム活性を阻害せず、ピルベートもオキサロアセテートも、ヒドロキシル化ODDに結合する35S−pVHLを阻害しないことが判明した(図5A)。NOGなどの人工的2−OG類縁体は、HPH類において2−OG結合部位と強く競合することによってHIF−1α蓄積を促進する。ピルベートおよびオキサロアセテートが、HPH酵素の2−OG結合部位により認識されたかどうかを判定するために、固定化2−OGおよびインビトロ翻訳35S−HPH相同体を用いて結合アッセイを開発した。これらのアッセイ条件下で2−OGカラムに対する各相同体の観察された結合は、200μMの第一鉄の添加により倍増した(図5B)。さらに、固定化2−OGへの35S−HPH類の鉄依存結合もまた、遊離2−OGの添加により容易に置換されたが、スクシネートによっては置換されなかった(図5C)。ピルベートおよびオキサロアセテートはまた、固定化2−OGへの35S−HPH類の鉄依存結合を反転させることから(図5D)、これらの2−オキソ酸類は、HPH酵素活性部位と相互作用できることが示唆されている。
【0131】
実施例7:HPH活性の2−オキソ酸阻害は、アスコルベート感受性である
HPH活性が、ピルベートまたはオキサロアセテートにより直接調節されたかどうかを判定するために、ビオチン化HIF−1αODDペプチドにおけるインビトロで翻訳されたHPH1、HPH2、およびHPH3によるPro564ヒドロキシル化を調べた。ビオチン化ペプチドに結合した35S−pVHLをプルダウンするストレプトアビジンビーズの能力を、HIF−1αODDペプチドのヒドロキシル化の証拠として用いた。これは、HPH活性に対して最も特異的で鋭敏なアッセイである。1−14C2−オキソグルタレートからの14CO放出アッセイなど、高度の過剰発現HPH酵素に好適である他のアッセイは、有効な基質のヒドロキシル化が生じない非結合2−オキソグルタレート脱炭酸反応でもシグナルを生じさせることができる。このようなアッセイはまた、細胞抽出物において高いバックグランド値を与え得る。HPH−1により例示されるように、各HPH相同体の35S−pVHLプルダウン酵素アッセイ活性は、2−OG、Fe(II)、およびアスコルベートに依存した(図5E)。このアッセイにおいて、アスコルベートまたは他の還元剤の不在下、システインおよびヒスチジンもまた、アスコルベートの替わりに用いられ、HIF−1α ODDヒドロキシル化を用量依存的に刺激できることが判った(図5F)。幾つかの2−OG依存ジオキシゲナーゼは、2−OGの代替物としてピルベートおよびオキサロアセテートを受け入れることができるが、他のものはこれらの2−オキソ酸により阻害されることが知られている。2−OGは、反応混合物中で等しい濃度のピルベートまたはオキサロアセテートで置き換えられた場合、3種のHPH相同体にいずれにも酵素活性が検出されなかった(図5G)。単離組換えHPH酵素の持続活性は、アスコルベートを必要とし、上記に示されたように、アスコルベートはまた、HIF−1α安定化に対する2−オキソ酸の効果を選択的に反転させた。したがって、アスコルベート濃度のある範囲に亘ってHPH活性に及ぼすピルベートおよびオキサロアセテートの影響を調べた。アスコルベート濃度のウィンドウに亘って3種の相同体全てに関してピルベートおよびオキサロアセテートによる酵素活性が検出されたことから、2−OGの阻害が支持された。結合[35S]−pVHLのシンチレーションカウンティングを用いた定量的評価の例を図5Hに示す。2−オキソ酸によるHPH2およびHPH3の阻害は、HPH1よりも、アスコルベートによってより強く反転された。1mMのアスコルベートは、HPH類全ての2−オキソ酸阻害を反転させた。
【0132】
実施例8:2−オキソ酸類は、細胞HPH類を可逆的に不活化する
アスコルベートは、2−OG依存ジオキシゲナーゼのシン−触媒的不活化を防止するために必要である。したがって、ピルベート誘導およびオキサロアセテート誘導HIF−1α蓄積のアスコルベート可逆性により、これらの2−オキソ酸類は、何らかの理由で細胞HPH類を不活化し得ることを示唆している。これを試験するために、U251細胞を、低酸素(1%O)または2mMのピルベートのグルコースの無いクレブス緩衝液に4時間曝した。核HIF−1αタンパク質の蓄積は、両方の処理により誘導された(図6A)。次いで該細胞を21%Oに戻すか、またはグルコースの無いクレブス緩衝液で広範に洗浄することによってピルベートを除去した。HIF−1α免疫反応性は、酸素依存HIF−1αヒドロキシル化およびタンパク質分解の再開により予想され得るように、低酸素細胞の再酸素化(21%Oへの戻り)の際に迅速に消失した。完全に異なるパターンが、ピルベート処理細胞に見られた。ピルベートの広範な洗浄除去後でも、核HIF−1αタンパク質レベルは、直ぐには減衰しなかった。持続性の核HIF−1αもまた、ピルベートまたはオキサロアセテート処理U87細胞において、いずれの2−オキソ酸の洗浄40分後でも検出された。しかしながら、アスコルベート、GSHまたはMEMに見られる必須アミノ酸類を洗浄液に加えた場合、HIF−1α減衰は迅速に再開した(図6B)。膠腫細胞におけるHPH活性が、ピルベートおよびオキサロアセテートにより可逆的に不活化されたかどうかを直接判定するために、2−オキソ酸類で4時間処理された細胞からの抽出物におけるHPH活性を測定する目的で35S−pVHLプルダウンアッセイを用いた。HPH活性の内因性状態を捕捉するために、細胞抽出物を最初、内因性還元剤、アスコルベート、または鉄を添加せずにアッセイした。細胞と2mMのピルベートまたはオキサロアセテートとをインキュベーションすることにより、細胞抽出物におけるHPH活性が明らかに減少した。この減少は、アスコルベートで共処理された細胞には見られなかった(図6C)。さらに、HPH活性の喪失は、アスコルベートと共に、またはそれ無しで低酸素またはDMOGにより4時間処理された細胞からの抽出物に見られなかった。ピルベートまたはオキサロアセテート処理細胞からの抽出物の最低のHPH活性は、アッセイ時にアスコルベートまたは外因性第一鉄(FeSO)による抽出物の添加によっても再生できた(図6D)。
【0133】
Fe(II)からFe(III)状態へのHPH関連鉄の酸化は、JunDに関して変異された細胞においてHIF−1のH調節に関する機構として最近提案されている(ジェラルド(Gerald)ら、(2004)Cell 118、781−794頁)。別の潜在的鉄酸化剤であるNOもまた、このように作動し得ることが仮定され、アスコルベート、Fe(II)、およびGSHによるNO誘導HIF−1α蓄積の完全阻害が観察された(図6E)。培養された細胞へのFe(II)の添加はまた、ピルベートまたはオキサロアセテートによるHIF−1α誘導を防止した。さらに、NO処理細胞はまた、MEMによる広範な洗浄後でも(図6E)、緩慢なHIF−1α減衰を示した。洗浄液へのFe(III)ではなくてFe(II)の添加により、NO誘導HIF−1αの減衰が促進された。Fe(III)ではなくてFe(II)を含有する洗浄によるHIF−1α減衰の同様の増強が、ピルベートまたはオキサロアセテートによる誘導後に見られた(図6F)。誘導後の洗浄時に、HIF−1αの減衰のために第一鉄が必要であることもまたDFOを用いて証明された。この薬剤による細胞鉄のキレート化は、細胞HPH活性を阻害し、HIF−1α減衰を防止する。DFOの洗浄後、Fe(III)ではなくてFe(II)の添加により、蓄積されたHIF−1αタンパク質の減衰が促進された。ピルベートおよびオキサロアセテートが細胞内鉄をキレート化した可能性を除くために、不安定な鉄に関する生細胞蛍光ベースのアッセイを用いた。細胞内に捕捉されたカルセインと鉄との相互作用は、その蛍光を特異的に低下させる。次に鉄キレート化剤が蛍光を増加させる。カルセイン負荷U251細胞は、細胞が鉄キレート化剤DFOまたはビピリジルにより誘発された場合に蛍光増加を示し、Fe(II)を加えた場合に蛍光減少を示した(図6G)。ピルベートまたはオキサロアセテートの添加(図示せず)により、細胞内カルセイン蛍光の増加は生じなかった。
【0134】
実施例9:嫌気性解糖は、ヒト癌細胞における基礎的HIF−1活性および侵襲的表現型を制御する
酸素存在下でも、癌細胞の大部分は、高レベルのピルベートおよびラクテートを蓄積する。頭部および頚部癌ならびに他のヒト癌における高い腫瘍レベルは、実際、転移および不良な臨床結果の可能性を予測するものである。癌細胞侵襲性におけるHIF−1の強力な役割を考慮すると、嫌気性解糖を経た2−オキソ酸の蓄積が、基礎的HIF−1αを誘導することによる癌細胞侵襲性に寄与し得ることが仮定された。これを調査するために、異なる基礎的HIF−1レベルを有することが知られている2種の頭部および頚部扁平上皮癌の細胞系を調べた。JHU−SCC−022細胞系(022)は、11.1mMのグルコースを含有するRPMI中で増殖させ、UM−SCC−022B細胞系(22B)は、25mMのグルコースを含有するDMEM中で増殖させた。両細胞系の培地は、10%FBSおよび非解糖的エネルギー源のグルタミン(2mM)を等しく添加した。両細胞系は、低酸素下でHIF−1αの蓄積を示した(図7A)。しかしながら、22B細胞は、022細胞よりも、はるかに高い基礎的HIF−1α、精巧な高い基礎的レベルのVEGFを示し(図7B)、マトリゲル(Matrigel)を介した高い基礎的侵襲率を有した(図7C)。多くのシグナル伝達経路を活性化する血清は、同様の程度に両細胞系の侵襲性を著しく増大させた。両細胞系を高グルコースDMEM中で培養すると、22B細胞はさらに、022細胞よりも迅速にグルコースを消費し、培地交換後、高率でピルベートおよびラクテートを産生した。これは、培地中のこれらの代謝物濃度のその後の変化後によって判定された(図7D〜F)。
【0135】
ピルベートの内因性蓄積が、22B細胞におけるHPH活性の不活化に至るかどうかを判定するために、培地を新鮮なDMEMに交換後に細胞抽出物を進行時点で調製し、図6Cのように35S−pVHL捕捉アッセイを用いて、細胞抽出物のHIF−1αプロリルヒドロキシル化を直接モニターした。細胞抽出物が、外因性アスコルベートを添加しなかった場合、シンチレーションカウンティングを用いた捕捉35S−pVHLの定量化により、全体的HPH活性の進行的減退が明らかになった(図7G)。さらに、細胞抽出物への100μMのアスコルベートの添加により、全体的35S−pVHL捕捉シグナルが上昇したばかりでなく(図示せず)、実際、培養時間が増すと共にシグナル増大が示された(図7H)。これらの同じ抽出物のウェスタンブロット解析により、HPH−3免疫活性ではなくてHPH−2の増大が示された(図7I)。
【0136】
22B細胞における進行性アスコルベートの可逆的HPH不活化は、アスコルベートの可逆性基礎的HIF−1αの蓄積と平行しており、アスコルベートは、これらの細胞において低酸素またはDMOG刺激HIF−1αを反転させなかった(図7J)。さらに、DMEMへの過剰のピルベート(10mM)添加により、HIF−1αの進行性蓄積が著しく増強された(図7K)。24時間のHIF−1α蓄積時間後、培地を、第二鉄または第一鉄またはアスコルベート(各100μM)を添加し、さらに30分間培養物をインキュベートした。蓄積HIF−1αは、第二鉄によるよりも第一鉄による減少の程度が大きく、一方、アスコルベートは免疫反応を消滅させたことが判明した。アスコルベートはまた、炭酸脱水素酵素IX(CAIX)、GLUT3、およびマトリクスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)など、22B細胞における幾つかのHIF−1制御遺伝子の基礎的発現を低下させた(図7L)。さらに、アスコルベートは、血清誘導侵襲性に影響を及ぼすことなく、マトリゲル(Matrigel)を介して22B細胞の基礎的侵襲性を低下させた。これらの結果は、癌進行におけるアスコルベート可逆性、解糖依存基礎的HIF−1活性を示唆している。
【0137】
2−OGジオキシゲナーゼの活性に関する提案された経時的分子機構(図8A−C)は、最初、2−OGの1−カルボキシレートおよび2−オキソ酸の官能基によるアポ酵素Fe(II)錯体の二座結合を含む。5−カルボキシレートの異なるサブサイトへの結合、ならびに第一級基質(例えば、HIF−1α)の結合はまた、第一鉄のアキシャル配位部位への分子状酸素のアロステリックな開始アクセスを必要とし得る。これらの成分を適切に組合わせることにより、ジオキシゲナーゼは、2−OGの2−炭素への1個の酸素原子の挿入を分子状酸素に触媒させてスクシネートおよびCOを形成させ、他の酸素分子と共にフェリル中間体を形成し易くさせ、引き続き基質ヒドロキシル化を生じさせる。共基質の酸素(低酸素による)、鉄(DFOによる)、または2−OG(NOGまたはDMOGなどの人工的2−OG類縁体による)の利用可能性の減少により、このファミリーの酵素が阻害されることが知られている。また2−OG依存ジオキシゲナーゼを、シン触媒的に不活化できる(図8D)。これは、鉄媒介酸化を触媒する結果、これらの酵素が経時的に、重要なアミノ酸残基における酸化を受けるか、または鉄のレドックス状態が、反応サイクルの維持を実施する上で無用となることを意味する。大抵の場合、このシン触媒的不活化は、アスコルベートにより阻止できるか、または反転できる(図8E)。癌細胞におけるアスコルベートおよびFe(II)可逆性基礎的HIF−1αのルーチン観察により、HPH類の不活化状態は、悪性疾患の顕著な特徴であるか、または細胞培養および腫瘍ミクロ環境の結果であることが示唆される。
【0138】
要約すると、多くの培養癌細胞において、培地グルコースは、血清誘導因子よりも基礎的HIF−1αに対してはるかに大きく寄与することが示された。2−オキソ酸グルコース代謝物は、この効果のメディエーターとしての可能性が高いことが確認されている。スクシネートまたはフマレート蓄積とHIF−1活性との間の関連を示唆する最近の報告にもかかわらず、この分析法では、HIF−1α蓄積、HPH類に対する2−OG結合、ODD−GFP制御、またはHRE−Luc発現に対するスクシネートまたはフマレートの有意な効果が見られなかった。これらのデータを合わせると、低酸素に無関係なHIF−1の調節におけるグルコースおよびアミノ酸代謝物の顕著な役割が支持される。これらのデータはまた、L−ヒスチジンおよびL−システインの臨床投与が、癌患者を治療するために有効かつ無害なアジュバント療法を示し得ることを示唆している。
【0139】
本発明は、上記の例を参照して詳細に説明したが、本発明の趣旨から逸脱することなく種々の変更を成し得ることを理解されたい。したがって、本発明は、上記の特許請求の範囲によってのみ限定される。本出願に引用された全ての特許、特許出願および刊行物は、参照としてその全体が本明細書に援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】低酸素シグナル伝達経路を示す図である。多細胞生物におけるほとんど全ての細胞は、ヘテロ二量体転写因子、HIF−1によって制御される遺伝子発現を介して低酸素に適応する。酸素調節されたHIF−1αサブユニットは全ての細胞において構成的に合成される。酸素正常状態下(>5%酸素、図の右側)、特定のHIF−1αヒドロキシラーゼはHIF−1αタンパク質内に酸素を直接取り込む。FIHによるアスパラギンのヒドロキシル化により、HIF−1αのトランス活性化能力が抑止される。HPH異性体1、2および3によるHIF−1αのプロリンヒドロキシル化により、ユビキチンリガーゼ複合体のE3要素であるフォンヒップルリンダウタンパク質(pVHL)への結合に関する認識モチーフが生成する。酸素正常状態下でのHIF−1αのユビキチン化およびタンパク質分解により、HIF−1応答遺伝子は転写されないことが確証される。低酸素下(<8%酸素、図の左側)、HIF−1αはヒドロキシル化を免れ、HIF−1βと二量体化し、核に転座して、解糖、細胞生存および血管形成の増強をもたらす幾つかの遺伝子の転写を活性化する。通常、これらの適応により、細胞および生物体の生存改善が導かれる。低酸素癌細胞もまた同じ経路を用いて遺伝子発現を活性化するが、これが腫瘍低酸素の有害臨床作用を基礎づけることとなり得る。さらに、癌細胞は酸素の存在下においてもHIF−1の高い基礎的濃度を示す。これにより、癌細胞におけるHIF−1分解活性の損傷が示唆される。
【図2】2−オキソ酸代謝物はアスコルベート可逆性HIF−1αを誘導することを示す図である。(A)25mM(22B),11.1mM(MCF−7、DU145)または5.5mMグルコース(U87、U251)を含有する完全培地中、24時間増殖させた酸素正常状態ヒト癌細胞系内の核HIF−1αタンパク質±アスコルベート(Asc)。(B)完全DMEMまたは無グルコース培地±血清中培養した22B細胞内の核HIF−1α濃度。HIF−1αの低酸素応答性は、細胞を4時間1%Oに曝露することによって試験した。(C)U251、U87、およびDU145細胞を、特定の代謝フューエルまたは中間代謝物によって指示されたとおり改変したクレブス緩衝液に切り替えた。非標識レーンは無グルコースクレブス緩衝液でのみ処理した細胞を表す。(D)重要な代謝中間体の構造。囲み線は、HIF−1α誘導天然代謝物(直線)および人工的2−OG類縁体(点線)を示す。(E)低酸素下(1%O)または酸素正常状態で、DMOG(0.5mM)、ピルベート(3mM)、またはオキサロアセテート(3mM)のいずれかと共に、無グルコースクレブス緩衝液中、指示された細胞を培養した。核のHIF−1α蓄積を4時間目に測定し、HREルシフェラーゼ活性を8時間目に測定した。培養物はまた、指示された2−OG(10mM)またはアスコルベート(100μM)を含有した。略号は以下のとおりである:AcCoA、アセチルCoA;Asc、アスコルベート;Cit、シトレート;DMOG、ジメチルオキサリルグリシン;DMS、コハク酸ジメチル;E−Pyr、ピルビン酸エチル;Fum、フマレート;Glc、グルコース;Gln、グルタミン;Kic、ケトイソカプロエート;Kiv、ケトイソバレレート;Kmv、ケトメチルバレレート;M−Pyr、ピルビン酸メチル;2−OG、2−オキソグルタレート;Oaa、オキサロアセテート;Pyr、ピルベート;Succ、スクシネート。
【図3】システインおよびヒスチジンは代謝性HIF−1α蓄積を防ぐことを示す図である。(A)新鮮MEMまたはクレブス緩衝液のいずれかにおいて4時間培養させたU87細胞内の核HIF−1α。MEM中に見られるアミノ酸(aa)およびビタミン(Vit)添加物を指示されたクレブス緩衝液に添加し、また、グルコースの替わりに指示されたピルベート(1mM)に置換した。(B)無グルコースクレブスをピルベート(1mM)によって再構成したもので、個々のアミノ酸は、完全MEMにおいて通常見られる濃度であった。核HIF−1αは、培養4時間後に測定した。あるいは、核アミノ酸を個々に、完全MEM中、通常の濃度の5×に増加させ、細胞を2日間培養した。(C)150μMのDFO、または1mMのピルベートもしくはオキサロアセテートを含有する無グルコースクレブス緩衝液中、U87細胞を4時間培養した。細胞をさらに指示されたシステインのLまたはD異性体に、およびヒスチジン(250μM)、減少させたグルタチオン(GSH)または1%Oに曝露させた。DU145細胞による1つの実験もまた示されている。(D)5×システイン、ヒスチジン、またはフェニルアラニンを含有するMEM中、2日間培養後のU87細胞におけるVEGF、GLUT3、およびアクチンのRT−PCR発現。ルシフェラーゼ活性は、ピルベートまたはオキサロアセテート(2mM)±システインまたはヒスチジン(250μM)を含有する無グルコースクレブス中、8時間培養したU251−HRE細胞において測定した。(E)酸素正常状態HIF−1αの低下に対するシステインおよびヒスチジン誘導体の有効性の証明。オキサロアセテートで処置した細胞は、核抽出物のこのウェスタンブロットによって示されたように、HIF−1αを誘導する。システインおよびヒスチジンのペプチド二量体のミリモル下用量による細胞の同時インキュベーションにより、HIF−1αの蓄積が低下する。
【図4】ピルベートおよびオキサロアセテートは酸素依存性のタンパク質分解を抑止することを示す図である。(A)U251膠腫細胞におけるEF−5染色。培養培地にEF−5(500μM)を加え、次いで、指示された条件下で、細胞を4時間インキュベートし、引き続き、固定し、EF−5付加体に関して免疫蛍光染色を行った。(B)HまたはDETA−NOの指示された用量で4時間処置したU251細胞における核HIF−1α。40μMのH、3mMのピルベート、3mMのオキサロアセテート、または300μMのDETA−NOのいずれかを添加した無グルコースクレブス(対照)中、4時間培養後、培地Hおよび細胞中の亜硝酸塩を測定した。(C)ブチレート(Butyr、10mM)、トリコスタチンA(TSA、300ng/ml)、ワートマニン(Wort、1μM)、LY294002(LY、20μM)、ラパマイシン(Rapa、100nM)、またはゲルダナマイシン(Gelda、3μM)の存在下、グルコース無しの培地単独(レーン1、7、11)中、またはピルベートまたはオキサロアセテートを添加したグルコース無しの培地中で4時間増殖させたU87における核HIF−1α濃度。(D)HIF−1αヒドロキシプロリン検出。U251細胞はMEM中(レーン1、2)または指示された薬剤を添加したグルコース無しのクレブス中で4時間培養した。次いで、細胞抽出物全体を、HIF−1αまたはP546にヒドロキシプロリンを含有するHIF−1αODD領域のいずれかを認識する抗体で染色した。(E)ODD−GFPトランスフェクトC6膠腫細胞におけるGFP発現を蛍光顕微鏡またはウェスタンブロッティングによって測定した。(F)ODD−GFPトランスフェクトC6膠腫細胞を、指示された量のグルコース、または2mMのオキサロアセテート、スクシネート、もしくはピルベートを含有するように改変したクレブス緩衝液中、24時間増殖させた。指示されたアスコルベート(100μM)ならびにアミノ酸のヒスチジン、システインおよびアスパラギン(各0.5mM)を加えた。
【図5】ピルベートおよびオキサロアセテートはHPHと相互作用し阻害することを示す図である。(A)10mMのピルベートまたはオキサロアセテートの存在下または不在下、ヒドロキシル化HIF ODDペプチドに対する35S−pVHLの結合を測定した。(B)200μMのFe(II)の存在下または不在下、2−OGセファロースに対する35S−HPHの結合を測定した。(C)遊離2−OGまたはスクシネート(各10mM)の存在下、2−OGに対する35S−HPH−1の結合を測定した。(D)ピルベートまたはオキサロアセテート(10mM)の存在下、2−OGに対する35S−HPH−2の結合を測定した。(E)増加用量の2−OG、Fe(II)およびアスコルベート(Asc)の存在下で、他の成分は一定に保ち(1μgのビオチン化HIF−1αペプチド、2.5μlのIVT産物によって予備インキュベートした2mMの2−OG、250μMのFeSO、2mMのアスコルベート、1mMのDTT、ストレプトアビジンビーズ)インビトロ翻訳HPHの活性を測定した。または(F)アスコルベートまたはDDTの不在下におけるシステインおよびヒスチジン。(G)ピルベートおよびオキサロアセテート(2mM)は生産基質として2−OGに取って代わることはできなかった。ピルベートおよびオキサロアセテートは、特定ウィンドーのアスコルベート濃度において酵素活性を低下させた。定量的データは、平均値+/−SEMである(P<0.05、**P<0.01)。
【図6】2−オキソ酸による細胞のHIF−1αヒドロキシル化の可逆的不活性化を示す図である。(A)1%Oにおいて、または3mMのピルベートと共に21%O2において、グルコース無しのクレブス中で4時間培養したU251細胞を、洗浄し(3×)、ホルマリン固定および指示された時間におけるHIF−1αの免疫反応性に関する染色まで、酸素化グルコース無しのクレブス緩衝液中に維持した。(B)U87をグルコース無しのクレブス緩衝液±1mMのピルベートまたはオキサロアセテート中で処置した。4時間後、細胞を種々の回数でグルコース無しのクレブス中洗浄し、該洗浄液中に、±100μMのアスコルベート、5mMのGSHまたはMEMアミノ酸混合物を含めた。(C)グルコース無しのクレブス緩衝液±指示された2mMのピルベート、2mMのオキサロアセテート、もしくは1mMのDMOGまたは100μMのアスコルベートを添加した中で、U251を4時間培養した。洗浄後、細胞抽出物全体を、調製し、鉄、またはアスコルベートの外からの添加なしに、35S−pVHLプルダウンアッセイにおけるHPH酵素源として使用した。(D)各々100μMのアスコルベートまたはFeSOを該抽出物に添加したことを除いては、(C)と同様の実験を行った。(E)DETA−NO(300μM)を添加したMEM中4時間、またはピルベート(3mM)もしくはオキサロアセテート(3mM)を添加した無グルコースクレブス中4時間、増殖させたU251において、各HIF−1αの蓄積をモニターした。細胞を、指示されたアスコルベート(100μM)、Fe(II)(100μM)またはGSH(5mM)と共に同時インキュベートした。グルコース無しのクレブス±Fe(II)またはFe(III)添加(各100μM)により洗浄後、NO−誘導HIF−1αの減衰を追跡した。(F)グルコース無しのクレブス±Fe(II)またはFe(III)添加(各100μM)により洗浄後、ピルベート、オキサロアセテート、またはDFOのいずれかによって誘導されたHIF−1αの減衰を追跡した。非標識レーンは、グルコース無しのクレブス緩衝液単独中で培養した細胞を示す。(G)細胞内の鉄濃度は、指示された薬剤に曝露させたカルセイン担持U251細胞における蛍光によって測定した。
【図7】グルコース代謝による基礎的HIF−1活性化は、浸潤性癌の表現型に相関することを示す図である。頭部および頚部の扁平細胞癌細胞系O22および22Bは、HIF−1α(A)、VEGF(B)、侵襲性(C)、グルコース消費(D)、ピルベート賛成(E)、およびラクテート蓄積(F)の基礎レベルに差異を示す。22B細胞抽出物における(G)および(H)細胞HPH活性は、35S−pVHLプルダウンアッセイによって測定した。細胞抽出物は、培地交換後、指示された時間に調製した。HPH活性は、該アッセイにアスコルベートを添加して(G)および添加せずに(H)測定した。(I)培地交換後、指示された時間に調製されたU251抽出物におけるHPH−2およびHPH−3のウェスタンブロット解析。(J)アスコルベートは、22B細胞における基礎的HIF−1αの増加を選択的に低下させる。K.22B細胞におけるピルベート(10mM)に増強されたHIF−1α増加は、アスコルベートおよびFe(II)>Fe(III)(各100μM)によって容易に反転する。添加は、24時間のインキュベーション時間の最後の30分の間になされた。(L)22B細胞におけるHIF−1調節遺伝子の基礎的発現に及ぼすアスコルベートの効果。(M)22B細胞の基礎的侵襲性に及ぼすアスコルベートの効果。
【図8】酸素利用能による(A〜C)、または可逆的不活化による(D〜E)HIF−プロリルヒドロキシラーゼの調節用モデルを示す図である。詳細は明細書を参照されたい。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIF−1α遺伝子発現に関連する疾患を治療する方法であって、HIF−1αの活性および/または発現を阻害できる1つまたは複数の薬剤を含む組成物を細胞に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記HIF−1α媒介遺伝子発現が、血管内皮成長因子(VEGF)、グルコーストランスポーターアイソフォーム3(Glut−3)、アルドラーゼA(aldo A)およびエリスロポエチンをコードする遺伝子よりなる群から選択される少なくとも1つのさらなる遺伝子の発現阻害を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤が、前記細胞におけるHIF−1αのヒドロキシル化を促進する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤が、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオン、システイン−ヒスチジン、ヒスチジン−ヒスチジンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシル化が、プロリルヒドロキシラーゼまたはアスパラギンヒドロキシラーゼにより媒介される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
癌と診断された哺乳動物における癌細胞の増殖を阻害する方法であって、HIF−1αのヒドロキシル化を促進する1つまたは複数の薬剤を含む組成物を前記哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項7】
前記薬剤が、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオン、システイン−ヒスチジン、ヒスチジン−ヒスチジンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、少なくとも1つの追加癌療法をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記追加療法が、化学療法、放射線療法、ホルモン療法および免疫療法よりなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
HIF−1αのヒドロキシル化を促進する1つまたは複数の薬剤を含む組成物を患者に投与することを含む哺乳動物における組織の新血管形成を阻害する方法。
【請求項11】
前記薬剤が、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオン、システイン−ヒスチジン、ヒスチジン−ヒスチジンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組織新血管形成が、癌と関連している請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、黒色腫、前立腺癌、大腸癌および肺癌よりなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、少なくとも1つの追加抗新血管形成剤をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組織新血管形成が、炎症性病態と関連している請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性病態が、皮膚炎、乾癬、関節炎よりなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記関節炎が、リウマチ様関節炎である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、少なくとも1つの追加抗炎症剤をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組織新血管形成が、視力喪失と関連している請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記視力喪失が、網膜新血管形成により引き起こされる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記網膜新血管形成が、糖尿病性網膜症、黄斑変性または鎌状赤血球網膜症により引き起こされる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記黄斑変性が、湿性型である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記黄斑変性が、乾性型である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
HIF−1αのヒドロキシル化を促進する1つまたは複数の薬剤を含む組成物を患者に投与することにより、哺乳動物におけるVEGFの増加レベルと関連している哺乳動物における組織新血管形成を阻害する方法。
【請求項25】
前記薬剤が、アスコルベート、シスチン、システイン、ヒスチジン、グルタチオン、システイン−ヒスチジン、ヒスチジン−ヒスチジンおよびそれらの誘導体よりなる群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、少なくとも1つの追加抗VEGF剤をさらに含む請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−517943(P2008−517943A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538156(P2007−538156)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038317
【国際公開番号】WO2006/047485
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(503366243)ザ ヘンリー エム ジャクソン ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】The Henry M.Jackson Foundaion
【Fターム(参考)】