説明

HIV−1の増幅及び検出試薬

【課題】HIV−1標的配列を増幅・検出するために有用である、オリゴヌクレオチドプライマーセット、プローブ、及び前記したプライマーセットとプローブの組合せを提供する。
【解決手段】CRF及び群間組換え体を含めたHIV−1群M、N及びO株をすべて、特に、HIV−1変異体を、核酸増幅方法に従って、特異的且つ高感度で検出するために使用され得るプライマーセット。更に、前記各種プライマーセットと組合せて、HIV−1標的配列を増幅・検出するために使用され得る、プローブオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)に関する。特に、本発明はHIV−1核酸配列の増幅・検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中から集めたHIV株の分子キャラクタリゼーションにより広範囲の遺伝的多様性が明らかとなった。ウイルスゲノム配列の系統分析に基づいて、HIVはM、N及びOの3つの別個の群に分類されている。群MウイルスがHIVの大部分を占め、配列ダイバージェンスに基づいて更にサブタイプA、B、C、D、F、G、H、J及びKと称される9つの区別できるクレードに細分されている(D.L.Robertsonら,「ヒトレトロウイルス及びAIDS 1999−核酸及びアミノ酸配列の収集及び分析(Human Restroviruses and AIDS 1999- A Compilation and Analysis of Nucleic Acid and Amino Acid Sequences)」,C.Kuikenら編,p.492−505(1999))。群M単離物の系統パターンは、共通の祖先から分岐している、互いにおおよそ等距離離れているサブタイプを有する星形系統である。ウイルスエンベロープ(env)遺伝子アミノ酸配列のサブタイプ内ダイバージェンス度は最高20%であり、サブタイプ間ダイバージェンス度は25〜30%である(P.M.Sharpら,AIDS,8:S27−S42(1994))。
【0003】
1990年に、異常HIV−1株(ANT70)がカメルーン人患者から単離されたと報告された(R.DeLeysら,J.Virol.,64:1207−1216(1990))。入手し得る配列情報に基づいて、このウイルス株は他のHIV−1配列とは全く異なるようであった。類似のウイルス(MVP−5180)が別のカメルーン人患者から単離された(L.Gurtlerら,J.Virol.,68:1581−1585(1994))。完全ゲノム配列分析から、これらのウイルスは群M株と同一の全ゲノム構造を共有しているが、これらの配列は群M単離物と比較してenv遺伝子内のヌクレオチドホモロジーが〜50%しかなく高度に分岐していた(L.Gurtlerら,J.Virol.,68:1581−1585(1994))。群M株との遺伝子ダイバージェンス度により、これらの単離物は群O(域外値)ウイルスと称された。最近、群M及び群O株から系統的に等距離にあるHIV−1ウイルスがカメルーンで同定された。前記ウイルスはN群と称されている(F.Simonら,Nat.Med.,4:1032−1037(1998))。
【0004】
先天的にエラー頻発型の逆転写酵素、高いウイルス負荷及びインビボ選択圧すべてがHIV−1の遺伝的多様性の一因である。多様性の別の原因として、5’末端に結合している2つのゲノムRNA転写物がビリオンに包膜されているHIV複製サイクルの副産物が挙げられる。細胞に2つ以上のHIV−1株を同時に感染させると、ヘテロ接合型ビリオンが生じ得る。ビリオンに感染後、逆転写酵素は2つのRNA転写物間で前後に切り替えられ、組換えウイルスが生じ得る(W.S.Hu及びH.M.Temin,Scinece,250:1227−1233(1990))。この組換え能力により、遺伝子変化が迅速かつ劇的に生ずる機会が生ずる。天然に存在するサブタイプ間組換えウイルスは最初Sabinoらにより同定され、彼らは2人の疫学的に関連する患者で見つけたB/Fモザイクをキャラクタライズした(E.C.Sabinoら,J.Virol.,68:6340−6346(1994))。複数のサブタイプが同時循環している地域では、サブタイプ間組換え体がHIV−1感染者の20%以上を占める恐れがある(M.Cornelissenら,J.Virol.,70:8209−8212(1996))。現在までに公表されたウイルス組換え体の大部分は群Mサブタイプ間モザイクであるが、群M及び群O遺伝子セグメントからなる群間組換えウイルスも同定されている(M.Peetersら,J.of Virol.,73:7368−7375(1999))。
【0005】
完全長ゲノムのキャラクタリゼーションにより、群Mの2つの既に確認されているサブタイプのリファレンス株は実際にはサブタイプ間組換えウイルスであったことが明らかとなった。現在までに配列決定された“サブタイプE”株の代表例はすべてサブタイプA由来のgag及びRNA依存性DNAポリメラーゼ(pol)遺伝子から構成され、そのenv遺伝子はサブタイプEから誘導されている(F.Gaoら,J.Virol.,70:7013−7029(1996))。以前サブタイプI株として確認されていたHIV−1株はサブタイプA、G及びI由来のサブゲノムセグメントからなるトリプルモザイクであることが分かった(G.Nasioulasら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,15:745−758(1999))。流行が確認されている前記組換え株は循環組換え体形態(Circulating Recombinant Forms)(CRF;D.L.Robertsonら,「ヒトレトロウイルス及びAIDS 1999−核酸及びアミノ酸配列の収集及び分析(Human Restroviruses and AIDS 1999- A Compilation and Analysis of Nucleic Acid and Amino Acid Sequences)」,C.Kuikenら編,p.492−505(1999))として分類されてきた。
【0006】
CRF株の出現の可能性は既に文献に記載されている。CRF01_AEと称されるサブタイプE株はタイにおけるHIV−1の主形態である。カリーニングラードでは、注射薬使用者でA/B組換えウイルス(CRF03_AB)が大発生することが最近文献に記載されている(K.Liitsola,AIDS,12:1907−1919(1999))。独自で複雑なモザイクパターンを有するA/Gサブタイプ間組換え体(CRF02_AG)がナイジェリア、ジブチ及び西中央アフリカ領域で同定された(J.K.Carrら,Virology,247:22−31(1998))。
【0007】
HIV−1群、サブタイプ及びCRFの全分布は地理的地域毎にかなり異なり、常に変化している。サブタイプBは北アメリカ及び西ヨーロッパにおいて優勢であるが(F.E.McCutchan,AIDS,14(補遺3):S31−S44(2000))、非サブタイプB感染者の数がヨーロッパでも米国でも増えつつある。フランスでは、1985〜1995年の10年間で非Bウイルスの罹患率は約4%から20%以上に上昇した(F.Barinら,AIDS,11:1503−1508(1997))。非B反応性検体が調べたすべての地域で発見された。驚くことに、ほぼ全ての群Mサブタイプ及び群O感染がパリの1つの病院で報告された(F.Simonら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,15:1427−1433(1996))。最近感染した24人のドイツ人患者の分析から、該患者の33%が非Bウイルスに感染していたことが判明した。この中にはサブタイプA、E及びCが含まれていた(U.Dietrichら,AIDS,11:1532−1533(1997))。ベルギーでは、サブタイプA、C、D、E、F、G及びH感染が検出され、これらは全HIV−1感染者の30%以上を占めていた(L.Heyndrichxら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,14:1291−1296(1998))。サブタイプA、D、E、F及び群Oを含めた非サブタイプB感染者の数が米国でも上昇しつつある(P.J.Weidleら,J.Inferct.Dis.,181:470−475(2000))。よって、サブタイプBが伝統的に最も優勢の地域ではウイルス異質性も増えつつある。
【0008】
血漿中のビリオン随伴RNAを定量することがHIV−1感染患者の臨床的管理及び追跡のための十分確立された方法となってきた。逆転写酵素結合ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)及び分岐DNA(bDNA)を含めた各種の核酸ベース方法がHIV−1ウイルスRNAの検出及び定量のために開発された(J.Mulderら,J.Clin.Microbiol.,32:292−300(1994);T.Kievitsら,J.Virol.Methods,35:273−286(1991);D.Kernら,J.Clin.Microbiol.,34:3196−3202(1996);P.Swansonら,J.Virol.Methods,89:97−108(2000))。これらの方法はすべてオリゴヌクレオチドの標的配列へのハイブリダイゼーションを利用している。プライマー/プローブと標的配列がミスマッチであると、標的配列の増幅及び/または検出の効率がゼロになったり低減する恐れがある。よって、プライマー及び/またはプローブ配列の選択は前記アッセイの性能において重要な役割を果たす。
【0009】
第1代の核酸ベース試験は、主に米国及び西ヨーロッパに共通するHIV−1サブタイプBから誘導される配列情報に基づいて開発された。第1代Amplicor HIV−1モニター(バージョン1.0)アッセイにより増幅効率に対するHIV−1遺伝的多様性の影響がすぐに明らかとなり始めた。なぜならば、群MサブタイプA、E、F、G及び群O臨床検体及びウイルス単離物を全く検出できなかったり、過少にしか定量できなかったからである(J.Loussert−Ajakaら,Lancet,346:912−913(1995);J.Costeら,J.Med.Virol.,50:293−302(1996);P.Swansonら,J.Virol.Methods,89:97−108(2000))。HIV−1遺伝的多様性に起因するミスマッチがNASBA HIV−1 RNA QT試験による群MサブタイプA、G、H、J及び群O検体の定量に悪影響を及ぼすことも判明した(J.Costeら,J.Med.Virol.,50:293−302(1996);A−M.Vandammeら,J.Acquired Immune Defic.Syndr.Hum.Retrovirol.,13:127−139(1996);Z.Debyserら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,14:453−459(1998))。Amplicor HIV−1 Monitor及びNASBA HIV RNA QT試験はいずれも遺伝的に分岐なサブタイプB検体を過少にしか定量しないように、サブタイプ間多様性も上記アッセイに影響を及ぼす(A.Alaeusら,AIDS,11:859−865(1997);E.Gobbersら,J.Virol.Methods,66:293−301(1997))。アッセイ性能に対するHIV−1遺伝的多様性の影響はRT−PCR、NASBA及びbDNAアッセイの第2代バージョンでも認められた(M.Segondyら,J.Clin.Microbiol.,36:3372−3374(1997);A.Holguinら,Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.,18:256−259(1999))。現在のAmplicor Monitor 1.5試験は群Mサブタイプに対して著しい改善を示しているが、群O検体を検出できないかまたは信頼できる程度に定量できない(P.Swansonら,J.Virol.Methods,89:97−108(2000))。gagベースのNASBA及びbDNAアッセイも群O検体を検出できないかまたは過少にしか定量できない(E.Gobbersら,J.Virol.Methods,66:293−301(1997);P.Swansonら,J.Clin.Micro.,39:862−870(2001))。
【0010】
HIV−1群及びサブタイプの地理的分布は常に変化しており、HIV−1の組換え体形態の数が増えているために、血漿中のHIV−1 RNAレベルをモニターするために使用されるアッセイがHIV−1変異体すべてを検出できることが重要となってきた。理想的には、HIV−1ウイルスRNAを定量するために使用されるアッセイはすべての感染を高信頼性で確実に定量できるように群及びサブタイプと無関係に機能しなければならない。
【0011】
最初に高変異性HIV−1ゲノムの各種群及びサブタイプとハイブリダイスし得るプライマーセットを見つけることが更に困難になるのは、各種ゲノムと比較することにより選択したプライマーが必ずしも所期標的を増幅するために有効でないためである。Q.Heら,BioTechniques,17(1):82−86(1994)に記載されているように、当業者は特定標的配列にハイブリダイズするプライマーセットから十分な増幅産物を得るのに説明できない困難さを経験している。このことが、所与標的配列のためのプライマーセットを設計する際に直面する問題であり、既に困難なHIV−1標的のためのプライマヘの選択を複雑にしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】D.L.Robertsonら,「ヒトレトロウイルス及びAIDS 1999−核酸及びアミノ酸配列の収集及び分析(Human Restroviruses and AIDS 1999- A Compilation and Analysis of Nucleic Acid and Amino Acid Sequences)」C.Kuikenら編,p.492−505(1999)
【非特許文献2】P.M.Sharpら,AIDS,8:S27−S42(1994)
【非特許文献3】R.DeLeysら,J.Virol.,64:1207−1216(1990)
【非特許文献4】L.Gurtlerら,J.Virol.,68:1581−1585(1994)
【非特許文献5】F.Simonら,Nat.Med.,4:1032−1037(1998)
【非特許文献6】W.S.Hu及びH.M.Temin,Scinece,250:1227−1233(1990)
【非特許文献7】E.C.Sabinoら,J.Virol.,68:6340−6346(1994)
【非特許文献8】M.Cornelissenら,J.Virol.,70:8209−8212(1996)
【非特許文献9】M.Peetersら,J.of Virol.,73:7368−7375(1999)
【非特許文献10】F.Gaoら,J.Virol.,70:7013−7029(1996)
【非特許文献11】G.Nasioulasら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,15:745−758(1999)
【非特許文献12】K.Liitsola,AIDS,12:1907−1919(1999)
【非特許文献13】J.K.Carrら,Virology,247:22−31(1998)
【非特許文献14】F.E.McCutchan,AIDS,14(補遺3):S31−S44(2000)
【非特許文献15】F.Barinら,AIDS,11:1503−1508(1997)
【非特許文献16】F.Simonら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,15:1427−1433(1996)
【非特許文献17】U.Dietrichら,AIDS,11:1532−1533(1997)
【非特許文献18】L.Heyndrichxら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,14:1291−1296(1998)
【非特許文献19】P.J.Weidleら,J.Inferct.Dis.,181:470−475(2000)
【非特許文献20】J.Mulderら,J.Clin.Microbiol.,32:292−300(1994)
【非特許文献21】T.Kievitsら,J.Virol.Methods,35:273−286(1991)
【非特許文献22】D.Kernら,J.Clin.Microbiol.,34:3196−3202(1996)
【非特許文献23】P.Swansonら,J.Virol.Methods,89:97−108(2000)
【非特許文献24】J.Loussert−Ajakaら,Lancet,346:912−913(1995)
【非特許文献25】J.Costeら,J.Med.Virol.,50:293−302(1996)
【非特許文献26】A−M.Vandammeら,J.Acquired Immune Defic.Syndr.Hum.Retrovirol.,13:127−139(1996)
【非特許文献27】Z.Debyserら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,14:453−459(1998)
【非特許文献28】A.Alaeusら,AIDS,11:859−865(1997)
【非特許文献29】E.Gobbersら,J.Virol.Methods,66:293−301(1997)
【非特許文献30】M.Segondyら,J.Clin.Microbiol.,36:3372−3374(1997)
【非特許文献31】A.Holguinら,Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.,18:256−259(1999)
【非特許文献32】P.Swansonら,J.Clin.Micro.,39:862−870(2001)
【非特許文献33】Q.Heら,BioTechniques,17(1):82−86(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、HIV−1群M、N及びO、並びに前記群内ないし前記群に由来する各種サブタイプを含めたHIV−1変異体を特異的且つ高感度で増幅・検出するためのプライマーセット及び試薬が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、CRF及び群間組換え体を含めたHIV−1群M、N及びO株をすべて増幅・検出するために有用な試薬を提供する。特に、前記試薬は上記したHIV−1変異体を特異的且つ高感度で検出するために核酸増幅方法に従って使用され得るプライマーセットの形態を有する。本発明で提供するプライマーセットは、HIV−1標的配列を増幅させるために1対のプライマーを使用する公知の核酸増幅方法に従って使用され得る。プローブ配列も提供する。前記プローブ配列を各種プライマーセットと組合せて、HIV−1標的配列を増幅・検出するために使用され得るオリゴヌクレオチド、すなわち“オリゴ”セットを形成し得る。
【0015】
HIV−1を検出するために使用され得る本発明のプライマーセットは、本明細書中、プライマーセット1(配列番号1及び配列番号2)、プライマーセット2(配列番号3及び配列番号2)、プライマーセット3(配列番号4及び配列番号2)、プライマーセット4(配列番号5及び配列番号2)、プライマーセット5(配列番号6及び配列番号2)、プライマーセット6(配列番号7及び配列番号2)、プライマーセット7(配列番号8及び配列番号2)、プライマーセット8(配列番号9及び配列番号10)、プライマーセット9(配列番号9及び配列番号11)、プライマーセット10(配列番号1及び配列番号12)、プライマーセット11(配列番号13及び配列番号14)、プライマーセット12(配列番号13及び配列番号15)、プライマーセット13(配列番号13及び配列番号2)、プライマーセット14(配列番号9及び配列番号12)、プライマーセット15(配列番号1及び配列番号11)、プライマーセット16(配列番号16及び配列番号12)、プライマーセット17(配列番号16及び配列番号17)、プライマーセット18(配列番号3及び配列番号12)、プライマーセット19(配列番号3及び配列番号18)、プライマーセット20(配列番号19及び配列番号18)、プライマーセット21(配列番号13及び配列番号17)、プライマーセット22(配列番号13及び配列番号20)、プライマーセット23(配列番号21及び配列番号18)、プライマーセット24(配列番号21及び配列番号14)、プライマーセット25(配列番号21及び配列番号20)、プライマーセット26(配列番号4及び配列番号20)、プライマーセット27(配列番号5及び配列番号15)、プライマーセット28(配列番号21及び配列番号22)、プライマーセット29(配列番号21及び配列番号23)、プライマーセット30(配列番号5及び配列番号23)、プライマーセット31(配列番号28及び配列番号29)、プライマーセット32(配列番号28及び配列番号30)、プライマーセット33(配列番号28及び配列番号31)、プライマーセット38(配列番号37及び配列番号32)、プライマーセット39(配列番号37及び配列番号33)、プライマーセット40(配列番号38及び配列番号29)、プライマーセット41(配列番号38及び配列番号30)、プライマーセット42(配列番号4及び配列番号22)、プライマーセット43(配列番号4及び配列番号40)、プライマーセット44(配列番号34及び配列番号22)、プライマーセット45(配列番号34及び配列番号40)、プライマーセット46(配列番号24及び配列番号25)及びプライマーセット47(配列番号26及び配列番号27)と称される。
【0016】
本発明で提供される(増幅されていてもされていなくてもよい)HIV−1標的配列を検出するために使用され得るプローブ配列は、本明細書中、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64及び配列番号65と称される。
【0017】
HIV−1標的配列を増幅・検出するために使用され得るオリゴセットは、本明細書中、オリゴセット1(配列番号28、配列番号29及び配列番号41)、オリゴセット2(配列番号28、配列番号29及び配列番号42)、オリゴセット3(配列番号28、配列番号29及び配列番号43)、オリゴセット4(配列番号28、配列番号29及び配列番号44)、オリゴセット5(配列番号28、配列番号29及び配列番号45)、オリゴセット7(配列番号28、配列番号29及び配列番号47)、オリゴセット8(配列番号28、配列番号29及び配列番号48)、オリゴセット9(配列番号28、配列番号29及び配列番号49)、オリゴセット10(配列番号28、配列番号29及び配列番号50)、オリゴセット11(配列番号28、配列番号29及び配列番号51)、オリゴセット12(配列番号28、配列番号29及び配列番号52)、オリゴセット13(配列番号28、配列番号29及び配列番号53)、オリゴセット14(配列番号28、配列番号30及び配列番号41)、オリゴセット15(配列番号28、配列番号30及び配列番号42)、オリゴセット16(配列番号28、配列番号30及び配列番号43)、オリゴセット17(配列番号28、配列番号30及び配列番号44)、オリゴセット18(配列番号28、配列番号30及び配列番号45)、オリゴセット20(配列番号28、配列番号30及び配列番号47)、オリゴセット21(配列番号28、配列番号30及び配列番号48)、オリゴセット22(配列番号28、配列番号30及び配列番号49)、オリゴセット23(配列番号28、配列番号30及び配列番号50)、オリゴセット24(配列番号28、配列番号30及び配列番号51)、オリゴセット25(配列番号28、配列番号30及び配列番号52)、オリゴセット26(配列番号28、配列番号30及び配列番号53)、オリゴセット27(配列番号28、配列番号31及び配列番号41)、オリゴセット28(配列番号28、配列番号31及び配列番号42)、オリゴセット29(配列番号28、配列番号31及び配列番号43)、オリゴセット30(配列番号28、配列番号31及び配列番号44)、オリゴセット31(配列番号28、配列番号31及び配列番号45)、オリゴセット33(配列番号28、配列番号31及び配列番号47)、オリゴセット34(配列番号28、配列番号31及び配列番号48)、オリゴセット35(配列番号37、配列番号32及び配列番号55)、オリゴセット36(配列番号37、配列番号33及び配列番号55)、オリゴセット38(配列番号37、配列番号33及び配列番号57)、オリゴセット39(配列番号38、配列番号29及び配列番号50)、オリゴセット40(配列番号38、配列番号29及び配列番号51)、オリゴセット41(配列番号38、配列番号29及び配列番号52)、オリゴセット42(配列番号38、配列番号29及び配列番号53)、オリゴセット43(配列番号38、配列番号30及び配列番号50)、オリゴセット44(配列番号38、配列番号30及び配列番号51)、オリゴセット45(配列番号38、配列番号30及び配列番号52)、オリゴセット46(配列番号38、配列番号30及び配列番号53)、オリゴセット47(配列番号28、配列番号30及び配列番号58)、オリゴセット48(配列番号28、配列番号30及び配列番号59)、オリゴセット49(配列番号28、配列番号30及び配列番号60)、オリゴセット50(配列番号28、配列番号30及び配列番号61)、オリゴセット51(配列番号28、配列番号30及び配列番号62)、オリゴセット52(配列番号28、配列番号30及び配列番号63)、オリゴセット53(配列番号28、配列番号30及び配列番号64)及びオリゴセット54(配列番号28、配列番号30及び配列番号65)と称される。
【0018】
試験サンプル中のHIV−1を増幅・検出する方法も提供する。通常、前記方法は試験サンプルを増幅試薬及び上記プライマーセットと接触させて反応混合物を形成することを含む。次いで、前記反応混合物を増幅条件下に置いて増幅産物を形成し、よってHIV−1標的配列を増幅させる。増幅産物は各種検出方法を用いて検出され得る。しかしながら、増幅産物/プローブハイブリッドを形成し、試験サンプル中のHIV−1の存在の指標として検出することが好ましい。
【0019】
(発明の詳細説明)
本発明により提供されるプライマーセットは、試験サンプル中のHIV−1標的配列を増幅させるために使用され得る2つのオリゴヌクレオチドプライマーから構成される。本明細書中、「試験サンプル」はHIV−1標的配列を含んでいるかまたは含んでいると疑われるサンプルを指す。試験サンプルは生物学的ソース(例えば、血液、精液、眼房液、脳脊髄液、乳、腹水液、滑液、腹膜液、羊水、セット織、発酵ブロス、細胞培養物等)であるかまたは前記ソースから誘導され得る。試験サンプルは(i)前記ソースから入手したまま直接、または(ii)サンプルの特性を修飾するための予備処理後使用され得る。よって、使用する前に、試験サンプルを例えば血液から血漿を作成したり、細胞またはウイルス粒子を破壊したり、固体材料から液体を作成したり、粘性流体を希釈したり、液体を濾過したり、液体を蒸留したり、液体を濃縮したり、干渉成分を不活化したり、試薬を添加したり、核酸を精製したりして予備処理され得る。
【0020】
本明細書中、「標的配列」は本発明のプライマーセットを用いて増幅及び/または検出される核酸配列を意味する。更に、標的配列はときどき一本鎖と称されるが、標的配列が実際には二本鎖であり得ることを当業者は認識している。よって、標的が二本鎖の場合には、本発明のプライマー配列は標的配列の両鎖を増幅する。
【0021】
好ましくは、HIV−1標的配列を増幅させるために使用され得るプライマーセットはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)からなる。前記プライマーセットは、標的配列を増幅させるために2つのオリゴヌクレオチドを用いる核酸増幅方法に従って使用され得る。例えば、プライマーセットは公知の核酸増幅反応、例えば、参照により本明細書に含まれるとする米国特許第5,399,491号明細書に記載されているTMAのようなNASBAまたは類似の反応、いずれも参照により本明細書に含まれるとする米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,683,202号明細書に記載されているPCRに従って使用され得る。更に、HIVゲノムのRNA特性にてらして、プライマーセットはいずれも参照により本明細書に含まれるとする米国特許第5,322,770号明細書及び同第5,310,652号明細書に記載されている“RT−PCR”フォーマットに従って使用され得る。簡単に説明すると、RT−PCRフォーマットによりRNA標的配列からDNA鎖を転写する方法が提供される。RNA標的から転写したコピーDNA鎖は通常“cDNA”と称され、このcDNAはその後上記方法により増幅するための鋳型として使用され得る。cDNAの作成方法はPCRのような他の増幅方法を取り巻く多くのハイブリダイゼーション及び伸長原則を共有しているが、使用する酵素は逆転写活性を有していなければならない。逆転写活性を有する酵素及びRT−PCR法は公知であり、よって詳細な検討は省く。更に、cDNAの合成方法も公知であり、例えば参照により本明細書に含まれるとする1995年2月22日に出願された本出願人の米国特許出願第08/356,287号明細書に記載されている。一般的に、試験サンプル中のHIV−1標的配列の増幅方法は通常試験サンプルをプライマーセット及び増幅試薬と接触させて反応混合物を形成するステップ及び前記反応混合物を増幅条件下に置いて前記標的配列を増幅させるステップを含む。
【0022】
本明細書中、「増幅反応試薬」は、核酸増幅反応に使用することが公知の試薬を意味し、この中には1つまたは複数の試薬;逆転写酵素及び/またはポリメラーゼ活性またはエキソヌクレアーゼ活性を有する1つまたは複数の酵素;酵素コファクター、例えばマグネシウムまたはマンガン;塩;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);デオキシヌクレオシドトリホスフェート(dNTP)、例えばデオキシアデノシントリホスフェート、デオキシグアノシントリホスフェート、デオキシシトジントリホスフェート及びチミジントリホスフェートが含まれるが、これらに限定されない。使用する正確な増幅試薬は、使用する特定の増幅反応に基づく当業者の設計事項である。
【0023】
「増幅条件」は、通常プライマー配列のアニーリング及び伸長を促進する条件として定義され、当業者に公知であり、選択した増幅反応に基づく当業者の設計事項である。例えば、PCRの場合、増幅条件は熱サイクリングと称される2つ以上の温度間で様々に反応混合物をサイクリングさせることを含み得る。典型的には、PCR反応は所望通り増幅させるために20〜50回サイクリングさせる。所謂“等温度”増幅反応を使用する場合には、異なる温度間をサイクリングさせることなく増幅が生じ、反応混合物が形成される結果として増幅産物が生成されるが、反応を開始するために初期温度を高く設定しなければならないこともある。
【0024】
HIV−1標的配列を増幅させるために使用され得るプライマーセットが以下の表1、表3及び表7にリストされている。表中、正プライマーを対の上段、逆プライマーを対の下段に示す。これらのプライマーセットの多くは、該プライマーを用いて生成される増幅産物がゲルまたは以下に詳記する他の手段を用いて検出され得るような感度のよい方法でHIV−1標的配列を増幅させることが判明した。表1、表3及び表7にリストしたプライマーセットは、好ましくはサンプル1mlあたり100,000コピーのHIV−1核酸、より好ましくはサンプル1mlあたり10,000コピーのHIV−1核酸、最も好ましくはサンプル1mlあたり1,500コピーのHIV−1核酸から検出し得る増幅産物を産生するほど高感度である。
【0025】
【表1】


【0026】
本発明のプライマーセットを用いて産生した増幅産物は当業界で公知の各種検出方法を用いて検出され得る。例えば、増幅産物はアガロースゲル電気泳動にかけ、臭化エチジウム染色により可視化し、紫外(UV)光に露出させるか、またHIV−同一性を確認するために増幅産物の配列を分析することにより検出され得る。
【0027】
或いは、増幅産物はプローブとのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによっても検出され得る。プローブ配列は通常10〜50ヌクレオチド長、より典型的には15〜40ヌクレオチド長であり、プライマー配列と同様にプローブ配列も核酸である。よって、プローブはDNA、RNAまたは核酸アナログ(例えば、非荷電核酸アナログ)から構成され得、この中には国際特許出願公開第92/20702号パンフレットに開示されているペプチド核酸(PNA)、または米国特許第5,185,144号明細書、同第5,034,506号明細書及び同第5,142,047号明細書に記載されているモルホリノアナログが含まれるが、これらに限定されない。なお、上記特許文献はいずれも参照により本明細書に含まれるとする。前記配列は通常現在利用可能な各種方法を用いて合成され得る。例えば、DNA配列は慣用のヌクレオチドホスホルアミデート化学及びカリフォルニア州フォスターシティーに所在のApplied Biosystems,Inc.、デラウェア州ウィルミントンに所在のDuPont、またはマサチューセッツ州ベッドフォードに所在のMilligenから入手し得る装置を用いて合成され得る。また、所望ならば、プローブをいずれも参照により本明細書に含まれるとする米国特許第5,464,746号明細書、同第5,424,414号明細書及び同第4,948,882号明細書に記載されているような当業界で公知の方法を用いて標識してもよい。また、プローブは通常プライマー配列間の標的配列とハイブリダイズする。換言すると、プローブ配列は通常いずれのプライマーとも共伸長性でない。
【0028】
本明細書中、「標識」は検出し得る性質ないし特徴を有する分子または部分を意味する。標識は、例えば放射性同位体、発蛍光団、化学発光団、酵素、コロイド粒子、蛍光微粒子等のように直接検出され得る。或いは、標識は例えば特異的結合メンバーのように間接的に検出され得る。直接検出可能な標識では、該標識を検出し得るように基質、トリガー試薬、光等のような追加成分が必要な場合がある。間接的に検出可能な標識を使用するときには、該標識は通常“コンジュゲート”と組合せて使用される。通常、コンジュゲートは間接的に検出可能な標識に結合またはカップリングさせた特異的結合メンバーである。コンジュゲートを合成するためのカップリング化学は当業界で公知であり、この例には特異的結合メンバーの特異的結合性または標識の検出可能性を損なわない任意の化学的手段及び/または物理的手段が含まれ得る。本明細書中、「特異的結合メンバー」は、1つの分子がもう一方の分子に例えば化学的または物理的手段により特異的に結合する2種の分子という結合対のメンバーを意味する。抗原/抗体特異的結合対に加えて、他の特異的結合対にはアビジンとビオチン;ハプテンとこのハプテンに対して特異的な抗体;相補性ヌクレオチド配列;酵素コファクターまたは基質と酵素;等が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
プローブ配列は、増幅産物を検出するために各種の均一または不均一方法を用いて使用され得る。通常、前記方法はプローブが増幅産物の鎖にハイブリダイズして増幅産物/プローブハイブリッドを形成するステップを含む。次いで、前記ハイブリッドはプライマー及び/またはプローブ上の標識を用いて検出され得る。増幅産物を検出するための均一検出プラットフォームの例には、標的配列の存在下でシグナルを発するプローブに結合したFRET(蛍光共鳴エネルギートランスファー)標識の使用が含まれる。核酸配列を均一に検出するために使用され得る方法の例として、参照により本明細書に含まれるとする米国特許第5,210,015号明細書に記載されている所謂TaqManアッセイ及び参照により本明細書に含まれるとする米国特許第5,925,517号明細書に記載されているMolecular Beaconアッセイが挙げられる。均一検出方法によれば、増幅反応の産物が該産物が形成されたときかまたは所謂リアルタイムに検出され得る。その結果、反応混合物が増幅条件下にあるときに増幅産物/プローブが形成、検出される。
【0030】
不均一検出フォーマットでは、反応に使用した他の材料から増幅配列を分離するために通常捕捉試薬を使用する。典型的な捕捉試薬は、同一または異なる結合メンバーに対して特異的な1つ以上の特異的結合メンバーを被覆した固体支持材料である。本明細書中、「固体支持材料」は、不溶性であるかまたはその後の反応により不溶性となる任意の材料を指す。よって、固体支持材料はラテックス、プラスチック、誘導体化プラスチック、磁気または非磁気金属、ガラスもしくはシリコーン表面、試験管表面、微量滴定ウェル、シート、ビーズ、微量粒子、チップ、及び当業者に公知の他の構成であり得る。増幅産物/プローブハイブリッドを不均一的に検出するのを助けるために、微量粒子のような固体材料に結合させた結合パートナーに対して特異的な第1結合メンバーでプローブを標識してもよい。また、上記コンジュゲートに対して特異的な第2結合メンバーでプライマーを標識してもよい。次いで、プローブに結合した増幅産物は、反応混合物を上記固体支持体と接触させた後その固体支持体を反応混合物から除去することにより残りの反応混合物から分離され得る。次いで、固体支持体に結合した増幅産物/プローブハイブリッドをコンジュゲートと接触させて、固体支持体上のハイブリッドの存在を検出することができる。
【0031】
均一または不均一的に検出するかに関係なく、試験サンプル中の標的配列の検出方法は通常試験サンプルを本発明のプライマーセット及び増幅試薬と接触させて反応混合物を形成するステップを含む。次いで、前記反応混合物を上記したように増幅条件下に置いて増幅産物を形成する。次いで、増幅産物を試験サンプル中の標的配列の存在の指標として検出する。上記したように、反応産物はゲル電気泳動、均一反応または不均一方法を用いて検出され得る。従って、反応産物は、増幅条件下に置かれている間にTaqMan ProbesまたはMolecular Beaconsを用いるような均一方法を用いて反応混合物中で検出され得る。或いは、標的配列の増幅が完了後増幅産物を不均一方法またはゲルを用いて検出され得る。
【0032】
また、本発明は試験サンプル中のHIV−1標的配列を増幅・検出するために有用なオリゴヌクレオチドセットを提供する。前記オリゴヌクレオチドセット、すなわち“オリゴセット”は上記したように使用され得るプライマーセット及び分子ビーコンプローブからなる。更に、前記オリゴセットは適当な容器に収容されていてもよく、試験サンプル中のHIV−1を検出するためのキットを提供すべく(同様に適当な容器に収容されている)増幅試薬のような追加試薬と組合わせてもよい。
【0033】
分子ビーコンを用いて検出する場合、プローブ配列を修飾し、蛍光検出標識及び蛍光消光基で標識する。前記配列のプローブ部分を用いてプライマー配列より生じた配列とハイブリダイズさせ、通常はプライマー配列を含まない配列とハイブリダイズさせる。このフォーマットでは、それぞれが異なる発蛍光団で標識されている複数のビーコンを用いてプローブすることも可能である。コピー配列/分子ビーコンハイブリッドを形成する際、異なる分子ビーコンからの別の標識を使用して増幅産物中で予想され得る僅かな配列の変化を分離、検出することができる。増幅配列の変化が予想される状況の例には、増幅反応(例えば、HIV−1特異的及びHIV−2特異的)での複数のプライマーセットの使用、内部コントロール配列の初期標的配列への付加及び共増幅、または複数のHIVサブタイプを増幅するために1つのプライマーセットの可能性が含まれる。なぜならば、前記プライマーセットはそうするように設計されており、その後サブタイプ特異的分子ビーコン配列により区別され得るからである。検出は、当業者に公知のように蛍光検出のために利用し得る装置を用いて実施される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】gap p24遺伝子(399ヌクレオチド)の分析に基づいてHIV−1群M及び群Oリファレンス株に対してプライマーセットを試験するために使用したウイルス単離物の系統的類縁関係を示す。ウイルス単離物を太字で示す。リファレンス株の場合、株アイデンティファイアーの前にサブタイプ/群を記す。サブタイプ分類を弧及びサブタイプラベルで示す。CRF01_AE及びCRF02_AGでは、弧を点線で示した。主要分岐節では70%以上のブーツストラップ値を示している。
【図2】polインテグラーゼ遺伝子(864ヌクレオチド)の分析に基づいてHIV−1群M及び群Oリファレンス株に対してプライマーセットを試験するために使用したウイルス単離物の系統的類縁関係を示す。ウイルス単離物を太字で示す。リファレンス株の場合、株アイデンティファイアーの前にサブタイプ/群を記す。サブタイプ分類を弧及びサブタイプラベルで示す。CRF01_AE及びCRF02_AGでは、弧を点線で示した。主要分岐節では70%以上のブーツストラップ値を示している。
【図3】env gp41免疫優性領域(369ヌクレオチド)の分析に基づいてHIV−1群M及び群Oリファレンス株に対してプライマーセットを試験するために使用したウイルス単離物の系統的類縁関係を示す。ウイルス単離物を太字で示す。リファレンス株の場合、株アイデンティファイアーの前にサブタイプ/群を記す。サブタイプ分類を弧及びサブタイプラベルで示す。CRF01_AE及びCRF02_AGでは、弧を点線で示した。主要分岐節では70%以上のブーツストラップ値を示している。
【図4】完全長polインテグラーゼ遺伝子とアラインさせた各プライマーセットからの予想PCR増幅断片の構成図を示す。各断片にプライマーセット番号を付し、予想される断片長を塩基対(bp)で示す。群M及び群O単離物について完全長polインテグラーゼ遺伝子の第1回増幅のために使用した表3のプライマーの相対位置及び方向も示されている。
【図5A】すべての試験単離物についてRT−PCR増幅pol/インテグラーゼ断片のアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。図5Aはプライマーセット#1を用いる増幅を示す。600、500及び1000bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調されている。
【図5B】すべての試験単離物についてRT−PCR増幅pol/インテグラーゼ断片のアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。図5Bはプライマーセット#2を用いる増幅を示す。600及び1000bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調表示されている。
【図5C】すべての試験単離物についてRT−PCR増幅pol/インテグラーゼ断片のアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。図5Cはプライマーセット#12を用いる増幅を示す。600及び1000bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調表示されている。
【図5D】すべての試験単離物についてRT−PCR増幅pol/インテグラーゼ断片のアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。図5Dはプライマーセット#13を用いる増幅を示す。500bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調表示されている。
【図6】図5〜8に示していないすべてのプライマーセットを用いるRT PCR増幅群MサブタイプCRF02_AG単離物DJ263 pol/インテグラーゼ断片のアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。600、500及び1000bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調表示されている。
【図7A】図5に示していないすべてのプライマーセットを用いるRT−PCR増幅した群O単離物3012 polインテグラーゼのアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。600、500及び1000bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調表示されている。
【図7B】図5に示していないすべてのプライマーセットを用いるRT−PCR増幅した群O単離物3012 polインテグラーゼのアガロースゲル電気泳動及び臭化エチジウム染色による検出を示す。600、500及び1000bpマーカーに相当する分子量バンドは矢印で強調表示されている。
【0035】
以下、本発明を更に説明するために実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
下記実施例は、HIV−1の各種サブタイプの本発明のプライマーセットを用いる増幅・検出を説明する。プライマーセットからなるDNA配列を、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38及び配列番号40として同定する。
【0037】
実施例で使用するプローブ配列を、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64及び配列番号65として同定する。
【0038】
(実施例1)
オリゴヌクレオチドプライマーの作成
公知のHIV−1群M株、HIV−1群O株、またはHIV−1群M及び群O株すべてをRT−PCRにより増幅させるためにオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。これらのプライマーは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38及び配列番号40であった。プライマー配列を標準オリゴヌクレオチド合成法により合成した。
【0039】
(実施例2)
単離物のキャラクタリゼーション
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーセット(表1)がHIV−1変異株を検出・増幅できたかを調べるために、群M(最も優勢なサブタイプを含む)、CRF及び群Oウイルス単離物のパネルを使用して性能を試験した。HIV−1単離物は幾つかのソースから入手した。12個の群M単離物はメリーランド州ベセズダに所在のWalter Reed Army Institute of Research(WRAIR)から入手した。群O単離物の1個は提携研究開発契約(Collaborative Research and Development Agreement)に基づいてジョージア州アトランタに所在のCenters for Disease Control and Preventionから入手した。もう一方の群O単離物はジョージア州アトランタに所在のSerologicals,Inc.から受領した。単離物からの無細胞ウイルスストックはメリーランド州ロックビルに所在のSRA Technologiesにより作成した。ウイルス単離物を配列分析及び系統分析によりキャラクタライズして、HIV−1群/サブタイプ分類を指定した。
【0040】
HIV−1ゲノムの3つの領域、すなわちgap p24(399ヌクリオチド)、polインテグラーゼ(864ヌクリオチド)及びenv gp41免疫優性領域(IDR;369ヌクリオチド)を配列分析のための標的とした。ウイルスストックをHIV−1血清陰性ヒト血漿で希釈した。200〜400μlの血漿から全核酸をQIAamp Bloodキット(カリフォルニア州バレンシアに所在のQiagen Inc.)を用いて抽出した。上記した3つの領域をRT−PCR増幅するためのプライマー及び条件は公知である(Brennanら,AIDS,11:1823−1832(1997);Brennanら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,13:901−904(1997);Hackettら,AIDS Res.Hum.Retroviruses,13:1155−1158(1997);Swansonら,J.Virol.Methods,89:97−108(2000))。増幅産物をQIAquick PCR精製キット(Qiagen Inc.)を用いて精製した。精製PCR産物の両鎖をABIモデル377自動シーケンサー(カリフォルニア州フォスターシティーに所在のPE Applied Biosystems)及びABI Prism Big Dye Terminator Cycle Sequencingキット(PE Applied Biosystems)を用いて直接配列決定した。ヌクレオチド配列を、すべての群サブタイプ及び群Oを表す樹立リファレンス株からのヌクレオチド配列とアラインさせ、Lasergene 99(ウィスコンシン州マディソンに所在のDNASTAR,Inc.)を用いて分析した。Phylipソフトウェアパッケージ(バージョン3.5c;ワシントン州シアトルに所在のワシントン大学のJ.Felsenstein)を系統分析のために使用した。進化距離をDNADIST(キムラ2パラメーター法)を用いて推定し、系統学的再構成は近隣−結合法(neighbot-joining method)(NEIGHBOR)を用いて推定した。分岐パターンの再現性はSEQBOOTを用いてブーツストラップ分析(100サンプリング)により調べた。3つすべての領域は14個すべてのウイルス単離物からうまくRT−PCR増幅され、配列決定された。系統分析の結果を図1〜3に示し、表2に要約する。
【0041】
【表2】

【0042】
試験のために選択した単離物パネルは地理的な広範囲にわたり、2つのCRF株を含め群Mの最も広く分布しているサブタイプ及び群Oが含まれている。これらの単離物はpolインテグラーゼ遺伝子の系統分析の結果に基づいて選択した。なぜならば、本発明のプライマーはHIV−1のpolインテグラーゼ遺伝子を標的するように設計されているからである。14個の単離物のうち、polインテグラーゼ領域の分析(図2、表2)が示すように群Mサブタイプあたり2つの単離物及び2つの群O単離物が均一に分布している。上記したように、CRF01_AEはpolインテグラーゼ領域においてサブタイプAであり、よってサブタイプCRF01_AE単離物の検出はサブタイプA及びCRF01_AEを検出するプライマーセットの能力を立証している。このパネルの試験から、本発明のプライマーはHIV−1の遺伝学的に多様の株を検出するために有効である。
【0043】
(実施例3)
HIVサブタイプ検出
表1のプライマーセットがHIV−1群Mサブタイプ及びCRF株及び群O単離物をそれぞれ検出するかを確かめるために、実施例2でキャラクタライズしたウイルス単離物を用いて表1のプライマーセットを試験した。
【0044】
PCR増幅産物の分析を容易とするために、精製HIV−1 RNA希釈物を逆転写し、完全polインテグラーゼ遺伝子を表3にリストした群M(polI8及びpolI5)または群O(O−polI8及びO−polI5)特異的プライマーを用いてPCR増幅した。次いで、別の反応で本発明のHIV−1プライマーセット(表1)を用いて第2回増幅を実施した。
【0045】
【表3】

【0046】
RT−PCRをPerkin Elmer Gene Amp RNA PCRキットの成分を製造業者の指示に従って用いて実施した。PCR緩衝液II、5mMのMgCl、2.5U/反応物の濃度のMuLV逆転写酵素、それぞれ1.0mMの濃度のdNTP類(dATP、dGTP、dTTP及びdCTP)、1U/反応物の濃度のRNaseインヒビター及び1μMのプライマーを含む反応物(総容量20μl)中で3μlのサンプルを用いて核酸を逆転写することにより相補性DNA(cDNA)を合成した。反応混合物を逆転写し、Perkin−Elmer 9600サーマルサイクラーにおいて増幅した。RT反応混合物をまず42℃で40分間インキュベートした後99℃で5分間インキュベートした。
【0047】
第1回PCR増幅を、100μlの総反応容量につき20μlのcDNA反応物に対して追加試薬を添加して実施した。反応物は最終濃度で5mMのMgCl、2.5U/反応物のAmplitaq DNAポリメラーゼ、0.5μMの正プライマー及び0.5μMの逆プライマーを含んでいた。次いで、反応を次のようにサイクリングした:95℃×1分間の初期変成、94℃×30秒間,45℃×30秒間及び72℃×90秒間を1サイクルとして40サイクル、その後72℃×10分間の最終インキュベーション。
【0048】
次いで、完全長polインテグラーゼ増幅産物を鋳型として用いて、本発明のHIV−1プライマーセット(表1)の性能を試験した。各プライマーセットを、5μlの初期PCR反応物、PCR緩衝液、それぞれ0.2mMの濃度のdNTP類(dATP、dGTP、dTTP及びdCTP)、2.5U/反応物のAmplitaq DNAポリメラーゼ及び0.5μMの各プライマーを含む反応物100μl中で個別に試験した。反応混合物をPerkin−Elmer 9600または9700サーマルサイクラーにおいて増幅させた。反応混合物を次のようにサイクリングした:95℃×1分間の初期変成、94℃×30秒間,50℃または55℃×30秒間及び72℃×90秒間を1サイクルとして40サイクル、その後72℃×10分間の最終インキュベーション。アガロースゲル電気泳動までサンプルを4℃に保持した。
【0049】
反応産物をアガロースゲル電気泳動により検出した。各100μlの反応物から、5μlを分子量マーカーと一緒にアガロースゲル上に流して、断片の長さを測定した。図4は、各プライマーセットに関してインテグラーゼ遺伝子に対して予想される断片サイズ及び位置を概略的に示す。臭化エチジウムで染色後UV光に曝すことにより断片を可視化した。前記データの代表的サンプリングを図5〜7に示す。図5は、各単離物のプライマーセット#1、#2、#12及び#13を用いる増幅を示す。図6及び7は、群MサブタイプCRF02_AG単離物DJ263及び群O単離物3012の2つの特定単離物について残りのプライマーセットを用いる増幅を示す。本実験で実施した試験データを表4に要約し、HIV−1プライマーセット#1〜30によるHIV−1群MサブタイプA〜G及び群Oの検出を示す。
【0050】
幾つかの断片に関して、反応物の残りの部分を精製し、配列決定して、所期産物の増幅を確認した。精製は、QIAamp PCR精製キットまたはQIAquickゲル抽出キット(Qiagen Inc.)を製造業者の指示に従って用いて実施した。精製PCR断片を本発明の対応プライマー、ABI Prism Big Dyeターミネーターサイクルシーケンシクング反応キット(カリフォルニア州フォスターシティーに所在のPE Applied Biosystems)、AmpliTaq DNAポリメラーゼ及びABIモデル377自動シーケンサー(PE Applied Biosystems)を用いて直接配列決定した。表5は配列決定結果を要約し、予想断片が増幅されたことを示している。
【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
HIV−1プライマーセット#1〜30は、遺伝的に分岐した群O単離物を含めて試験したすべてのHIV−1サブタイプ(表4)をうまく検出した。各プライマーセットに関して、予想される長さを有する断片がアガロースゲル分析に基づいて検出された。配列決定した断片に関して、各増幅断片が標的単離物のインテグラーゼ配列との比較に基づいて予想される断片であったことが配列分析から確認された。
【0054】
(実施例4)
HIV−1感受性
実施例2及び3に記載されている2つのウイルス単離物を使用して、表1のプライマーセットの感受性を評価した。前記単離物を脱繊維素HIV−1血清陰性ヒト血漿で希釈した後Abbott LCx HIV定量RNAアッセイ(イリノイ州アボットパークに所在のAbbott Laboratories)を用いて試験してウイルス負荷を測定した。次いで、希釈したサンプルを実施例3に記載されているプライマーセット1〜30を用いて試験した。試験のために選択した2つの単離物のうち1つは、1585コピー/mlの群M単離物のUG274(サブタイプD)、1つは1479コピー/mlの群O単離物の3012であった。
【0055】
感受性試験の結果を表6に示す。すべてのプライマーセットが両方の単離物をうまく検出した。1つのプライマーセット#1では、群O単離物を検出するためにPCR条件を僅かに修正しなければならなかった。群O単離物をプライマーセット#1を用いて最初に試験したところ、混合結果を示した。第1の試験は、アガロースゲルで予想される断片長さの非常に弱いバンドを示した。しかしながら、試験を繰り返してもバンドは示さなかった。サイクリング中のアニーリング温度を50℃から45℃に下げることによりPCR条件を僅かに修正すると、結果が改善され、アガロースゲル電気泳動により明瞭なバンドが検出された。実施例3に記載されている条件はすべての単離物に対してプライマーセットを通常スクリーニングするために設計した。プライマーセット#1の結果は、最適感受性のために増幅条件が各プライマーセットに対して特異的に最適化し得ることを示している。
【0056】
上記結果は、本発明のプライマーセットがHIV群M及び群Oを試験した最低濃度の1500コピー/mlという感受性で検出することを示している。
【0057】
【表6】

【0058】
(実施例5)
HIV−1 M及びO増幅産物の分子ビーコンプローブを用いる検出
分子ビーコンプローブを用いて検出した増幅産物を作成するために使用したプライマーは、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号4、配列番号37、配列番号38、配列番号22及び配列番号40であった。プライマー配列は標準オリゴヌクレオチド合成法を用いて合成した。HIVを検出するために、プライマー配列を下表7に示すようにプライマーセットで一緒に使用した。表中、正プライマーを対の上段、逆プライマーを対の下段に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
(実施例6)
HIV分子ビーコンプローブの作成
増幅したHIVインテグラーゼ標的配列とオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションによりハイブリダイズするために分子ビーコンプローブを設計した。これらのプローブは、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64及び配列番号65であった。プローブ配列は標準オリゴヌクレオチド合成法を用いて合成し、援用により本明細書に含まれるとする米国特許第5,464,746号明細書に記載されている標準シアノエチルホスホルアミデートカップリング化学を用いて5’末端を蛍光6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、3’末端をC6−NH−DABCYLで標識した。使用したHIV分子ビーコンプローブ配列を下表8に示す。
【0061】
【表8】


【0062】
上表8において、大文字はHIVに特異的な配列を表し、小文字は分子ビーコンプローブのステムを作成するために使用したランダム配列を表し、囲んだ領域はこのステムを形成する配列である。
【0063】
プローブA(配列番号41)、プローブB(配列番号42)、プローブC(配列番号43)、プローブD(配列番号44)、プローブE(配列番号45)、プローブF(配列番号46)、プローブG(配列番号47)及びプローブH(配列番号48)はプライマーセット31、32、33、34及び35と一緒に使用され得る。プローブI(配列番号49)はプライマーセット31、32、34及び35と一緒に使用され得る。プローブJ(配列番号50)、プローブK(配列番号51)、プローブL(配列番号52)及びプローブM(配列番号53)はプライマーセット31、32、34、35、40及び41と一緒に使用され得る。プローブO(配列番号54)はプライマーセット34、35、36及び37と一緒に使用され得る。プローブP(配列番号55)はプライマーセット34、35、36、37、38及び39と一緒に使用され得る。プローブQ(配列番号56)及びプローブR(配列番号57)はプライマーセット35、37及び39と一緒に使用され得る。
【0064】
(実施例7)
分子ビーコンプローブを用いるプライマーセットの感受性
実施例5で作成した表7に示すプライマーセットの性能を、HIV RNAサンプルの希釈物(K.Abravayaら,J.Clin.Microbiol.,38:716−723(2000))を実施例6で作成した表8に示す特定の分子ビーコンプローブで試験して評価した。精製HIV RNAを100,000コピー/ml、10,000コピー/ml、1,000コピー/ml、100コピー/ml及び25コピー/mlに希釈した後、いろいろなプライマーセット/プローブの組合せを用いる別々の反応で逆転写し、PCR増幅し、検出した。HIV RNAを含まないネガティブコントロールもそれぞれのプライマーセット/プローブの組合せに含めた。RT−PCRを、130nMの適切な正プライマー、478nMの適切な逆プライマー、81nMの適切なHIV分子ビーコンプローブ、4.38mMのMnCl、0.375mMの各dNTP(dATP、dGTP、dTTp及びdCTP)、13単位の組換えサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)ポリメラーゼ、Bicine緩衝液及びHIV RNA希釈物またはネガティブコントロールを含む反応混合物100μl中で実施した。
【0065】
反応混合物を逆転写し、Perkin−Elmer 9700サーマルサイクラーにおいて増幅させた。まず、反応混合物を59℃で30分間インキュベートしてRNAを逆転写した後、95℃×30秒間、54℃×30秒間及び72℃×30秒間を4サイクル実施した。次いで、90℃×30秒間、59℃×30秒間及び72℃×30秒間を36〜40サイクル実施して増幅させた。反応混合物を熱サイクルにかけた後、混合物を94℃に5秒間上昇させ、温度を45℃に15秒間下げ、更に25℃に10秒間下げることによりプローブオリゴハイブリダイゼーションを実施した。反応産物が検出されるまでサンプルを25℃で維持した。反応産物をCytofluor(マサチューセッツ州フレーミングハムに所在のPerceptive)またはBioTek 600(カリフォルニア州フォスターシティーに所在のApplied Biosystems)のような蛍光リーダーを用いて検出した。蛍光単位で表示した結果を下表9に示す。
【0066】
【表9】

【0067】
プライマーセット31、32及び38は最良の性能を与え、ネガティブコントロール(0コピー/ml)と簡単に判別される25コピー/mlのHIVを検出した。プライマーセット33、39、40及び41は1000〜10,000コピー/mlのHIVを検出した。プライマーセット34、35、36及び37はうまく働かなかったが、これは使用したプローブのせいではなかった。なぜならは、プローブAまたはPは他のプライマーセットと併用したときには良好な結果を示したからである。
【0068】
プライマーセット42、43、44及び45をプローブアニーリングステップを省いた以外は上記したように試験した。ゲルをRT−PCR産物と一緒に流すことにより結果を分析した。10,000コピー/mlのHIVを用いて予想されるバンドが観察された。
【0069】
(実施例8)
分子ビーコンプローブの感受性
実施例6で作成した表8に示す分子ビーコンプローブA〜Mの性能を、実施例7のHIV RNA希釈物を実施例5で作成したプライマーセット32を用いて試験することにより評価した。また、プローブOをプライマーセット35と併用し、プローブP、Q及びRをプライマーセット39と併用した。結果を下表10に示す。
【0070】
【表10】


【0071】
プローブA、B、E、H及びIは25コピー/mlのHIVを検出し、この量はネガティブコントロール(0コピー/ml)と判別できた。プローブJ、K、M、P及びRは100〜1000コピー/mlのHIVを検出した。プローブF、O及びQはあまり有効でなく、プローブC、D、G及びLはネガティブコントロールでより高いバックグランウンド値を示した。プローブC、D、E及びFで観察された性能の違いは驚くものであった。なぜならば、これらのプローブは同じHIV結合配列を有していたからである。しかしながら、これらのプローブはステム配列の組成にしか違いがなかった。プローブJ、K及びLも、HIV結合配列中の塩基の違いは1つしかなく、ステム配列セット成は同一またはほぼ同一である点で驚くことであった。プローブJ及びKは約1000コピー/mlのHIVを検出したのに対して、プローブLはJまたはKよりも高いバックグラウンド値を与えた。
【0072】
(実施例9)
インドールまたはイノシン置換基を有する分子ビーコンプローブの感受性
プローブA、B、E、H及びIを325個の公知HIV−1配列に対して分析した。最も一般的なミスマッチを有する部位を同定し、プローブをそのミスマッチ位置にユニバーサル塩基を含むように修飾した。プローブ内のミスマッチ位置を表11に示すようにニトロインドールまたはイノシンで置換した。これらの修飾プロープは実施例6のように合成した。前記修飾プローブの配列を下表11に示す。
【0073】
【表11】


【0074】
インドールまたはイノシン分子ビーコンプローブの性能を、上記実施例7のようにHIV RNAの希釈物を実施例5で作成したプライマーセット32を用いて試験することにより評価した。結果を下表12に示す。インドールまたはイノシン置換基を含むプローブはすべて25コピー/mlのHIVを検出し、この量はネガティブコントロール(0コピー/ml)と判別できた。
【0075】
【表12】

【0076】
(実施例10)
各種HIVサブタイプの分子ビーコンプローブを用いる検出
各種HIVサブタイプを入手し、RNAをK.Abravayaら,J.Clin.Microbiol.,38:716−723(2000)及びJ.Johnsonら,J.Virol.Methods,95:81−92(2001)に記載されているように単離した。各種サブタイプから単離したHIV RNAを約1000コピー/mlに希釈し、プライマーセット32+プローブA、プライマーセット32+プローブHまたはプライマーセット38+プローブPを用いてRT−PCR及びプローブオリゴハイブリダイゼーションを実施して実施例7に記載されているように試験した。プライマーセットは実施例7に記載されており、蛍光単位で表示した。下表13から分かるように、すべてのHIVサブタイプが試験した3つのプライマー/プローブセットで検出された。
【0077】
【表13】

【0078】
RNA転写物を、K.Abravayaら,J.Clin.Microbiol.,38:716−723(2000)及びJ.Johnsonら,J.Virol.Methods,95:81−92(2001)に記載されているようにHIVサブタイプA、C、D、CRF01_AE及びFのクローンから作成した。転写物を約10,000コピー/mlに希釈し、プライマーセット32+プロープAまたはプローブHを用いて実施例8に記載されているように増幅し、検出した。表14の結果は、試験したすべてのHIVサブタイプが使用した2つのプライマー/プローブセットで検出されたことを示している。
【0079】
【表14】

【0080】
(実施例11)
各種HIVサブタイプの分子ビーコンプローブを用いる定量
実施例10に記載されている各種HIVサブタイプから単離したRNAを約1000(すなわち、3log)コピー/mlに希釈し、プライマーセット32+プローブAまたはプライマーセット32+プローブHを用いて実施例7に記載されているように試験した。定量結果を得るために、RT−PCR反応混合物には0.1μMのInternal Control転写物配列に対して特異的な分子ビーコンプローブ
【0081】
【化1】

及び500コピー/反応物のInternal Control転写物(配列番号67)を含めた。IC転写物はHIVと同一のプライマー結合部位及び特異的なICブローブ結合領域を有している。ICプローブは実施例6と同様に合成したが、合成後5’末端をスルホニルクロリド誘導体化スルホローダミン101(Texas Rod)とコンジュゲートしたC6−NH−誘導体化プローブを用いて5’末端を異なる蛍光発色団のスルホローダミン101を用いて標識した。この競合フォーマットでは、標的HIVの濃度が高くなるとHIVプローブからのシグナルは上昇し、ICプローブからのシグナルは低下する。HIVプローブシグナルのlogをICプローブシグナルのlogで割ることにより検量曲線を作成し、その後この検量曲線を用いてHIVサンプルを定量した。
【0082】
各種HIVサブタイプからのRNA単離物のこの方法による定量結果を表15に示す。結果はlogコピー/mlで表示する。サブタイプA単離物327を除いて、試験したすべての単離物が約3logコピー/mlで定量された。この単離物をプライマーセット31を用いても試験した。このプライマーセット31は逆プライマーが3塩基長いこと(表7参照;5’末端に2つの追加ヌクレオチド、3’末端に1つの追加ヌクレオチド)を除いてプライマー32と同一であった。シグナルは2倍高かった(データ示さず)。
【0083】
【表15】

【0084】
また、実施例10に記載されているようにサブタイプA、C、D、CRF01_AE及びFを代表とするHIV−1単離物のクローンから作成したRNA転写物を約10,000コピー/mlに希釈し、プライマーセット32+プローブAまたはプローブHを用いて実施例11に上記したように定量した。表16の結果は、ほとんどすべてのHIV転写物(K.Abravayaら,J.Clin.Microbiol.,38:716−723(2000)参照)が4logコピー/mlで定量されたことを示している。
【0085】
【表16】

【0086】
本発明を特定実施例を参照して詳細に説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく前記実施例に各種の変更び改変を加えることができることは当業者に自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマーセット1(配列番号1及び配列番号2)、プライマーセット2(配列番号3及び配列番号2)、プライマーセット3(配列番号4及び配列番号2)、プライマーセット4(配列番号5及び配列番号2)、プライマーセット5(配列番号6及び配列番号2)、プライマーセット6(配列番号7及び配列番号2)、プライマーセット7(配列番号8及び配列番号2)、プライマーセット8(配列番号9及び配列番号10)、プライマーセット9(配列番号9及び配列番号11)、プライマーセット10(配列番号1及び配列番号12)、プライマーセット11(配列番号13及び配列番号14)、プライマーセット12(配列番号13及び配列番号15)、プライマーセット13(配列番号13及び配列番号2)、プライマーセット14(配列番号9及び配列番号12)、プライマーセット15(配列番号1及び配列番号11)、プライマーセット16(配列番号16及び配列番号12)、プライマーセット17(配列番号16及び配列番号17)、プライマーセット18(配列番号3及び配列番号12)、プライマーセット19(配列番号3及び配列番号18)、プライマーセット20(配列番号19及び配列番号18)、プライマーセット21(配列番号13及び配列番号17)、プライマーセット22(配列番号13及び配列番号20)、プライマーセット23(配列番号21及び配列番号18)、プライマーセット24(配列番号21及び配列番号14)、プライマーセット25(配列番号21及び配列番号20)、プライマーセット26(配列番号4及び配列番号20)、プライマーセット27(配列番号5及び配列番号15)、プライマーセット28(配列番号21及び配列番号22)、プライマーセット29(配列番号21及び配列番号23)、プライマーセット30(配列番号5及び配列番号23)、プライマーセット31(配列番号28及び配列番号29)、プライマーセット32(配列番号28及び配列番号30)、プライマーセット33(配列番号28及び配列番号31)、プライマーセット38(配列番号37及び配列番号32)、プライマーセット39(配列番号37及び配列番号33)、プライマーセット40(配列番号38及び配列番号29)、プライマーセット41(配列番号38及び配列番号30)、プライマーセット42(配列番号4及び配列番号22)、プライマーセット43(配列番号4及び配列番号40)、プライマーセット44(配列番号34及び配列番号22)、プライマーセット45(配列番号34及び配列番号40)、プライマーセット46(配列番号24及び配列番号25)及びプライマーセット47(配列番号26及び配列番号27)からなる群から選択されることを特徴とするプライマーセット。
【請求項2】
オリゴヌクレオチドセットがオリゴセット1(配列番号28、配列番号29及び配列番号41)、オリゴセット2(配列番号28、配列番号29及び配列番号42)、オリゴセット3(配列番号28、配列番号29及び配列番号43)、オリゴセット4(配列番号28、配列番号29及び配列番号44)、オリゴセット5(配列番号28、配列番号29及び配列番号45)、オリゴセット7(配列番号28、配列番号29及び配列番号47)、オリゴセット8(配列番号28、配列番号29及び配列番号48)、オリゴセット9(配列番号28、配列番号29及び配列番号49)、オリゴセット10(配列番号28、配列番号29及び配列番号50)、オリゴセット11(配列番号28、配列番号29及び配列番号51)、オリゴセット12(配列番号28、配列番号29及び配列番号52)、オリゴセット13(配列番号28、配列番号29及び配列番号53)、オリゴセット14(配列番号28、配列番号30及び配列番号41)、オリゴセット15(配列番号28、配列番号30及び配列番号42)、オリゴセット16(配列番号28、配列番号30及び配列番号43)、オリゴセット17(配列番号28、配列番号30及び配列番号44)、オリゴセット18(配列番号28、配列番号30及び配列番号45)、オリゴセット20(配列番号28、配列番号30及び配列番号47)、オリゴセット21(配列番号28、配列番号30及び配列番号48)、オリゴセット22(配列番号28、配列番号30及び配列番号49)、オリゴセット23(配列番号28、配列番号30及び配列番号50)、オリゴセット24(配列番号28、配列番号30及び配列番号51)、オリゴセット25(配列番号28、配列番号30及び配列番号52)、オリゴセット26(配列番号28、配列番号30及び配列番号53)、オリゴセット27(配列番号28、配列番号31及び配列番号41)、オリゴセット28(配列番号28、配列番号31及び配列番号42)、オリゴセット29(配列番号28、配列番号31及び配列番号43)、オリゴセット30(配列番号28、配列番号31及び配列番号44)、オリゴセット31(配列番号28、配列番号31及び配列番号45)、オリゴセット33(配列番号28、配列番号31及び配列番号47)、オリゴセット34(配列番号28、配列番号31及び配列番号48)、オリゴセット35(配列番号37、配列番号32及び配列番号55)、オリゴセット36(配列番号37、配列番号33及び配列番号55)、オリゴセット38(配列番号37、配列番号33及び配列番号57)、オリゴセット39(配列番号38、配列番号29及び配列番号50)、オリゴセット40(配列番号38、配列番号29及び配列番号51)、オリゴセット41(配列番号38、配列番号29及び配列番号52)、オリゴセット42(配列番号38、配列番号29及び配列番号53)、オリゴセット43(配列番号38、配列番号30及び配列番号50)、オリゴセット44(配列番号38、配列番号30及び配列番号51)、オリゴセット45(配列番号38、配列番号30及び配列番号52)、オリゴセット46(配列番号38、配列番号30及び配列番号53)、オリゴセット47(配列番号28、配列番号30及び配列番号58)、オリゴセット48(配列番号28、配列番号30及び配列番号59)、オリゴセット49(配列番号28、配列番号30及び配列番号60)、オリゴセット50(配列番号28、配列番号30及び配列番号61)、オリゴセット51(配列番号28、配列番号30及び配列番号62)、オリゴセット52(配列番号28、配列番号30及び配列番号63)、オリゴセット53(配列番号28、配列番号30及び配列番号64)及びオリゴセット54(配列番号28、配列番号30及び配列番号65)からなる群から選択されることを特徴とするプライマーセット及び検出プローブを含むオリゴヌクレオチドセット。
【請求項3】
配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64及び配列番号65からなる群から選択されることを特徴とするプローブ。
【請求項4】
a)試験サンプルを増幅試薬及び請求の範囲第1項に記載のプライマーセットと接触させて反応混合物を形成するステップ、及び
b)前記反応混合物を増幅条件下に置いてHIV−1標的配列を増幅させるステップ
を含むことを特徴とするHIV−1標的配列の増幅方法。
【請求項5】
更に、増幅したHIV−1標的配列を検出するステップを含むことを特徴とする請求の範囲第4項に記載の方法。
【請求項6】
a)試験サンプルを増幅試薬及び請求の範囲第2項に記載のオリゴヌクレオチドセットと接触させて反応混合物を形成するステップ、
b)前記反応混合物を増幅条件下に置いて増幅産物を形成するステップ、
c)増幅産物/プローブハイブリッドを形成するステップ、及び
d)前記ハイブリッドを試験サンプル中のHIV−1の存在の指標として検出するステップ
を含むことを特徴とする試験サンプル中のHIV−1の存在の検出方法。
【請求項7】
反応混合物が増幅条件下に置かれている間に増幅産物/プローブハイブリッドが形成されることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の方法。
【請求項8】
(a)請求の範囲第1項に記載のプライマーセット及び(b)増幅試薬を含むことを特徴とするHIV−1増幅用キット。
【請求項9】
(a)請求の範囲第2項に記載のオリゴヌクレオチドセット及び(b)増幅試薬を含むことを特徴とするHIV−1検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2013−63072(P2013−63072A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246079(P2012−246079)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2009−180578(P2009−180578)の分割
【原出願日】平成14年7月12日(2002.7.12)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】