HIV−1の複数の株及びサブタイプを治療及び予防するための組成物及び方法
複数の免疫原を含む、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物であって、各免疫原は、リポペプチドキャップ、ユニバーサルTヘルパー配列、及びHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープを含む。免疫原は、1種以上のリンカー配列及び/又は極性荷電アミノ酸配列も含む。各免疫原のHIV−1 TatのB細胞エピトープは、アミノ酸配列V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−アミド(配列番号1)を有し、式中、Xaa7、Xaa9、及びXaa12のアミノ酸位置は、特定アミノ酸残基の選択肢から選択され、Xaa13〜Xaa16のアミノ酸位置は、存在しなくても特定アミノ酸残基の選択肢であってもよい。リポペプチドは、ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン又はトリパルミトイル−S−グリセリルシステイン又はN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)であり、それぞれ任意の中性アミノ酸リンカーを有する。少なくとも4個の荷電極性アミノ酸の任意の極性配列は、免疫原の溶解性を高め、リポペプチドキャップのカルボキシ末端に位置付けられて中性リンカーアミノ酸が隣接していてもよく、又は免疫原のどこかに位置付けられる。組成物において、各免疫原は、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープのアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって他の免疫原と異なっている。そのような組成物は、被験者を免疫するために使用する場合、付帯的アジュバントを用いることなく、複数のHIV−1 Tat変異体に対する幾何学的平均力価が1,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導することができる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
HIV−1の短時間な変異性は、ユニバーサルなHIV−1治療用免疫原性組成物及び予防用免疫原性組成物を作製するための試みを挫折させてきた。しかしながら、HIV−1にコードされ、HIV−1感染細胞によって分泌され、そして非感染CD4+ T細胞に取り込まれるTatと呼ばれるトランス活性化タンパク質は、大規模なHIV−1複製に必要不可欠なものである。休止期CD4+ T細胞は、HIV−1複製を持続させる主体「組織」であるが、HIV−1複製を容認せず、Tatの活性化がそれを許容させる。したがって、循環Tatタンパク質が、HIV−1ウイルス血症の維持に必要とされる必須経路を免疫学的に阻止するための有望な標的を提供する。
【0002】
tat遺伝子及びそのタンパク質は配列決定されており、HIVの提唱された治療への関与について研究されている(例えば米国特許第6,525,179号中の引用文献を参照されたい)。細胞によるTatの取り込みは非常に強力であり、前記タンパク質の短い塩基性配列によって介在されると報告されている(S.Fawellら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、91:664−668)。本発明者による先の科学出版物及び特許公報は、Tatのアミノ酸配列は非常に変化しやすいが、Tatの免疫優勢B細胞エピトープであるエピトープ1は、アミノ酸4〜16にわたっており、非常に保存され、7位で4倍変異(Arg、Lys、Asn、又はSer)、9位で2倍変異(Glu又はAsp)、そして12位で2倍変異(Lys又はAsn)を示すことを証明している。例えばG.Goldstein、1996、Nature Med.、2:960;G.Goldstein、2000、Vaccine、18:2789;1995年11月30日公開の国際公開公報WO95/31999号;1999年1月21日公開の国際公開公報WO99/02185号;2001年11月8日公開の国際公開公報WO01/82944号;米国特許第5,891,994号;第6,193,981号;第6,399,067号;第6,524,582号;及び第6,525,179号;米国特許出願公開US2003/0,166,832号及びUS2003/0,180,326号を参照されたい。その後他の研究者らは、Tat配列におけるこれらの変動性のいくつかについて記載している。例えば、とりわけ、Tikhonovら、2003、J.Virol.、77(5):3157−3166;Ruckwardtら、2004、J.Virol.、78(23):13190−13196;並びに関連する国際公開公報WO2005/062871号及びWO2004/056316号を参照されたい。
【0003】
Tatタンパク質に対するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が動物で作製され、Tatタンパク質の取り込みをin vitroでブロックすることが示されており、組織培養培地に添加したTatタンパク質に対するそのようなモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体はin vitroでHIV−1感染を弱毒化した(例えば米国特許第6,524,582号中の引用文献を参照されたい)。これら抗体の組み合わせ、特に1種のエピトープ1変異体に対する抗体とそれぞれ異なるエピトープ1変異体に結合する1種以上の抗体との組み合わせで形成される組成物は、Bクレード及び非BクレードともにHIV−1の複数の株及びサブタイプに特徴的な非常に多くのTat変異体配列に結合可能である。これらの抗体組成物は、被験者を受動免疫するため、即ち初期感染のあいだ及び/又は血清変換後のウイルス量がより少ないあいだにHIV−1感染性を阻害するために設計されており、したがってAIDSへの進行を遅延させる。更に、そのような抗Tat抗体のこれらの得られる組成物又は混合物は、ウイルスの多くの株及びサブタイプに対する治療となり、したがって、さまざまなそして株特異的な治療剤に対する必要性を除去する。HIV−1感染を治療するための各種受動免疫組成物の開発において多くの研究が進行中である。
【0004】
組成物が宿主において抗Tat抗体を誘導する活性な免疫は、治療及び予防に代替アプローチを提供する。発明者自身の出版物、及びその他によってそのような免疫が提唱されている。しかしながら、現在まで、AIDSを有効に治療又は予防するのに十分な免疫応答を誘導可能な、「ユニバーサル」なHIV−1治療用免疫原性組成物及び予防用免疫原性組成物を作製し、使用するための新規で有用な組成物及び方法に対する必要性が当該技術分野に依然として存在する。そのような組成物は、ヒト免疫不全ウイルス−1(HIV−1)に慢性的に感染している症候性又は非症候性の被験者に免疫してAIDSへの進行を最小限にするため(治療用組成物)、及び非感染被験者を免疫してその後のHIV−1感染後の慢性ウイルス血症やAIDSの確立を妨げるため(予防免疫)に有用であろう。当該技術分野において満たされていない必要性は、複数のTatエピトープ1変異体(したがって複数のHIV−1株及びサブタイプ)に対して誘導された抗体力価を得るために十分な方法でTatエピトープ1の変異体を提供し、その力価は十分に高く、組成物の頻繁な反復再投与の必要性を回避する治療用又は予防用組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本明細書に記載の組成物及び方法は、当該技術分野におけるこの必要性に取り組むための予防剤及び/又は治療剤として有用である。
【0006】
1つの側面では、複数の株及びサブタイプのHIV−1による感染予防に有用な、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物を記載する。この組成物には複数の免疫原が含まれ、各免疫原は、リポペプチドキャップ(R2)、ユニバーサルTヘルパー配列(R1)、及びHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープで構成される。1つの態様では、各免疫原は、式:R2−(R1−HIV−1 TatのB細胞エピトープ)(式I)を有する。この式によれば、R2は免疫原中に3カ所の位置的配置を有する。1つの態様では、R2リポペプチドキャップ(図8A〜図8Cを参照されたい)は、そのCysを介して、又は10アミノ酸以下の任意のリンカー配列を介して、Tヘルパー配列R1のアミノ端アミノ酸のαアミノ基に連結しており、R1はB細胞エピトープのアミノ端に連結している。他の態様では、R2リポペプチドキャップは、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、R1 Tヘルパー配列とB細胞エピトープとのあいだに挿入されたリジン残基のε−アミノ基に連結している。更に他の態様では、R2リポペプチドは、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、免疫原のB細胞エピトープのC端に挿入されたリジン残基のε−アミノ基に連結している。
【0007】
更に他の態様では、R1ヘルパー配列とB細胞エピトープは逆の順序でもよく、R2リポペプチドキャップは、上記3カ所の位置のうちいずれか1カ所においてそのリンカーアミノ酸を介して連結している。本明細書に開示の代替式によるものなど、更に他の順序の免疫原成分の配列が意図される。
【0008】
いくつかの態様では、R2リポペプチドキャップは、1〜10個の中性アミノ酸のリンカーを含み、免疫原の他の成分に連結している。他の態様では、類似のリンカーを使用して、免疫原の他の成分を一緒に連結する。
【0009】
更なる態様では、リンカー配列を提供するか又は提供しない荷電極性アミノ酸の配列が免疫原のさまざまな位置に存在する。1つの態様では、荷電極性配列は、R2キャップのCysの後に、又はR2リポペプチドキャップの任意のリンカー中性アミノ酸とR1ヘルパー配列とのあいだに挿入される。他の態様では、リンカー単独で又はそのような極性配列とともに、R1ヘルパー配列とHIV−1 TatのB細胞エピトープとのあいだにいずれかの順序で挿入される。更に他の態様では、リンカー単独で又はそのような極性配列とともに、R1又はHIV−1 TatのB細胞エピトープのカルボキシ端に挿入され、いずれにしても免疫原のC端に位置付けられる。更なる態様では、いずれかが免疫原のアミノ端に位置付けられている場合は、リンカー単独で又はそのような極性配列とともに、R1又はHIV−1 TatのB細胞エピトープのアミノ端に挿入される。
【0010】
各免疫原に関する特定の態様では、R2は、以下に記載のように、1個又は10個以下の中性リンカーアミノ酸を含んでいてもよい、図8Aのジパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam2Cys)である。各免疫原に関する特定の態様では、R2は、図8BのN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)(NAc−(Pam2)C)であり、任意のリンカーアミノ酸を含むこともできる。各免疫原に関する特定の態様では、R2は、図8Cのリポペプチド トリパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam3Cys)であり、任意にリンカー配列を含むことができる。
【0011】
これら免疫原性組成物の1つの態様では、上記広範な式の各免疫原は、組成物中の同一式の他の免疫原と、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ(即ちエピトープ1)のアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって異なっている。これら免疫原性組成物の1つの態様では、R1成分、R2成分、及びHIV−1 TatのB細胞エピトープ成分の配列が異なるか、あるいはR1成分及び/又はR2(Pam2Cys又はNAc(Pam2)C又はPam3Cys)成分の同一性が異なる、本明細書における広範な式の複数の免疫原は、混合物中で組み合わせることができる。そのような組成物は、被験者を免疫するために使用する場合、幾何学的平均力価(GMT)が少なくとも50,000、少なくとも300,000、又は100万より大きい、HIV−1 Tatタンパク質(Bクレード及び非Bクレード)の複数の変異体と反応性の抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。
【0012】
他の側面では、医薬組成物は、本明細書に規定する自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物、及び好適な医薬担体又は賦形剤を含む。この組成物は、哺乳動物被験者をそれで免疫する場合、Tatの複数の免疫優勢エピトープ(即ちエピトープ1)変異体に対するGMTが50,000より大きく、又は300,000より大きく、又は100万より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導することも立証している。他の態様では、この組成物は、哺乳動物被験者をそれで免疫する場合、Tatの複数のエピトープ1変異体に対するGMTが1,000,000より大きく、そして3,000,000に至るまでの抗HIV−1 Tat抗体を誘導することも立証している。
【0013】
更に他の側面では、本明細書に記載の有効な抗体誘導量の免疫原性組成物又は医薬組成物で被験者を免疫することによって、複数のHIV−1株及びサブタイプに対するGMTが高い抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する方法を提供する。特定の態様では、Tatの複数の免疫優勢B細胞エピトープ変異体に対するGMTは50,000より大きい。他の態様では、特に、本方法が組成物のプライム用量及び1回以上のブースター用量を使用する態様では、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTは顕著に高く、例えばおよそ100,000より大きく、300,000より大きく、又は1,000,000より大きい。
【0014】
他の側面では、HIV−1感染を治療及び/又は予防するための医薬の製造における上記免疫原の使用を提供するものである。医薬は、複数のHIV−1株及びサブタイプに対するGMTが高い抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する。
【0015】
更に他の側面では、本明細書に記載の組成物を作製する方法は、上記式においてXaa7、Xaa9、及びXaa12で示される変異体アミノ酸を等モル量で単一合成混合物中に導入することを包含する。
【0016】
更に他の側面では、免疫原内の少なくとも1カ所の位置に荷電極性残基を導入することにより水溶性を付与し、水性製剤及び/又は凍結乾燥製剤を容易にする。
【0017】
これらの方法及び組成物の他の側面及び利点を、以下の詳細な説明において更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、Tatの免疫優勢B細胞エピトープ(即ちTatエピトープ1;TEP1)免疫原によってアジュバントを加えることなく誘導された幾何学的平均力価(GMT)を有する抗Tat抗体を示すグラフである。Tatの2種の一般的な免疫優勢エピトープ変異体V−D−P−R−L−E−P−W−K(Tatの免疫優勢エピトープ7位、9位、及び12位に存在するアミノ酸残基を確認する上でREKとも称する)(配列番号7)及びV−D−P−N−L−E−P−W−N(上記と同一の理由で本明細書においてNENとも称する)(配列番号11)を含有する2種のrTatで免疫したマウス由来の免疫血清からこれらの結果をプロットした。図1のX軸の下に特定した免疫原には、実施例1に記載のように合成して同定した実験用免疫原(Pam2−QYIK−TEP1及びPam3−QYIK−TEP1)並びに余り有効でない免疫原(QYIK−TEP1及びPAM2K−QYIK−TEP1)が含まれる。実験用免疫原で免疫したマウスの血清は、GMT>50,000の抗Tat抗体を示し、これらは対照免疫原によって誘導された抗体のGMTよりも劇的に高かった。これらの結果は、液性免疫応答を増強するための実験用免疫原におけるリポペプチドキャップの必要性、並びに構造特異的リポペプチドキャップの必要性を立証しており、即ち、Pam2Kのリポペプチドとしての使用は、実験用免疫原で誘導される高GMT抗体を得るには十分でなかった。
【図2】図2は、式(Tat1の免疫優勢エピトープを太字の1文字アミノ酸略語で、ゆらぎを括弧内に示す):
【化1】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫した1匹のマウスの血清中の抗体の、組換え全長Tatの全変異体(1〜72アミノ酸)に対する力価を示すグラフであり、変異体は発生率の順にX軸に沿って左から右へ表示されている。アミノ酸R7、E9、及びK12、又はN7、E9、及びN12の優勢なrTat変異体、例えばREK(Bクレード)及びNEN(非Bクレード)は網掛けされている。変異体を表1及び実施例2に特定する。血清は、Tatの全8種の免疫優勢エピトープ変異体に対し、幾何学的平均抗体力価>100,000を示した。
【図3】図3は、実験用免疫原Pam2C−S−S−マウスTヘルパー配列−V−D−P−(R/K/N/S)−L−E−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド(配列番号3;Tatアミノ酸残基7位及び12位が「ゆらぎ」)で、第0日に1mg腹腔内プライミング用量、その後第2週に1mg腹腔内ブースター、そして第30週に0.3mg腹腔内第2ブースターのプロトコールにより免疫した2匹のマウス由来血清の逐次力価を示すグラフである。Tatの免疫優勢B細胞エピトープ変異体 配列番号15:V−D−P−R−L−E−P−W−K−H−P−G−S−(REK)(○、REKに対するマウス1;及び△、REKに対するマウス2)及び配列番号19:V−D−P−N−L−E−P−W−N−H−P−G−S−(4アミノ酸のC端隣接配列−H−P−G−S−を有するNEN)(◇、NENに対するマウス1;及び▽、NENに対するマウス2)に対して血清を滴定した。抗体力価は、第4週〜第16週に幾分減少し、第28週まで80,000で安定なままであった。抗体力価は、第30週の0.3mgブースト後2週間顕著な増加を示す。これらのデータは、プライム・ブースト法は少なくとも4ヶ月間有効レベルを維持することができ、その後の追加ブーストは力価を更に増加させることを立証している。
【図4】図4は、実施例4Aに記載のような、ヒトPBMCにおけるHIV−1複製のためのTat誘導性の許容の抗体阻害に関するバイオアッセイのグラフである。データは、HIV−1複製のためのPBMCのTat誘導性の許容の抗Tat Mabによる阻害を示している。下部の点線は、TatのないバックグラウンドHIV−1 p24レベル(ng/ml)を示す;そして上部の線は、10ng/ml Tatを有する平均HIV−1 p24レベル(ng/ml)を示す。阻害の用量反応曲線を作成したところ、3μg/ml抗Tatモノクローナル抗体(Mab)及び10μg/ml抗Tatモノクローナル抗体はそれぞれ87%及び97%阻害を生じ、統計的に非常に有意である(それぞれP<0.001及び0.0001)。
【図5】図5は、実施例4BのELISAにおける、図4で使用したのと同一の抗Tat MAbによる%阻害又は遊離Tat濃度の低下を示すグラフである。3〜10μg/mlの範囲にわたって完全阻害が観察され、これはTatに対する抗体力価12,000〜40,000に相当する。
【図6】図6は、実施例4BのELISAにおける、高力価マウス抗Tat血清の希釈による%阻害又は遊離Tat濃度の低下を示すグラフである。遊離Tat濃度の最大阻害は、12,000〜40,000力価範囲で生ずる。
【図7】図7Aは、実施例4BのELISAにおける、中等度力価の抗Tat血清マウス5匹/群)の使用による%阻害又は遊離Tat濃度の低下を立証しているグラフである。マウス血清の力価は256,000であり、10%希釈で力価25,000、1%希釈で力価2,500であった。試験REK(◇)は、実験用免疫原で免疫したマウスの、REK Tat変異体に対して試験した血清である。対照REK(◇、太字の菱形)は、REK Tat変異体に対して試験した正常マウス血清である。対照における高濃度Tatと比較して、1%希釈した免疫マウス血清では遊離Tat濃度の49%阻害を示し、10%希釈では血清は92%阻害を示した。 図7Bは、実施例4BのELISAにおける、中等度力価の抗Tat血清(マウス5匹/群)の使用による%阻害又は遊離Tat濃度の低下を立証しているグラフである。マウス血清の抗体力価は256,000であり、10%希釈で力価25,000、1%希釈で力価2,500であった。試験NEN(◇)は、実験用免疫原で免疫したマウスの、NEN Tat変異体に対して試験した血清である。対照NEN(◇、太字の菱形)は、NEN変異体に対して試験した正常マウス血清である。対照における高濃度Tatと比較して、1%希釈した試験NENでは遊離Tat濃度の33%阻害を示し、10%希釈では87%阻害を示した。
【図8】図8Aは、リポペプチドキャップ、ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam2C又はPam2Cys)の化学構造である。 図8Bは、リポペプチドキャップ、N−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)(NAc(Pam2Cys)又はNAc(Pam2C))の化学構造である。 図8Cは、リポペプチドキャップ、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam3C又はPam3Cys)の化学構造である。
【図9】図9は、式:
【化2】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫した1匹のラットの血清中の抗体の、ゆらぎ位置7位、9位、及び12位におけるアミノ酸残基によって名付けられた8種の全長rTat(1〜72アミノ酸)変異体タンパク質(REK、KEK、SEK、NEK、NEN、NDN、KEN、及びSEN)に対する力価を示すグラフである。各点は、8種の変異体のうち1種に対するGMTを表す。血清は、全8種のTatのエピトープ1変異体に対して抗体力価>1,000,000を示した。第0日にプライム、第3週に第1ブースト、第6週に第2ブースト、及び第8週に力価測定のために出血させるという好ましい免疫法を用いた。
【図10】図10は、実施例8のTat枯渇アッセイの結果を示すグラフである。溶液中に残留する各遊離全長rTat変異体(上記のように命名)の濃度を、1%又は10%ラット免疫血清(プロテインAビーズに結合した実施例1の免疫原で免疫したラットから採取)とともにインキュベーション後に測定した。遊離Tatを、正常非免疫ラット血清対照(1%又は10%正常ラット血清プロテインAコーティングビーズに曝露後の遊離Tat)に対する割合で表した。点線は10%遊離Tatである。
【図11】図11は、Pam3Cのリンカー(即ち−S−K−K−K−K−S−)(配列番号64)が隣接した極性荷電配列を有する式:
【化3】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫したラットの血清中の抗体の長期間の力価を示すグラフである。この免疫原を「TUTI−K4」と称する。第0日に0.1mg TUTI−K4(▽)、又は1mg TUTI−K4(◇)、又は10mg TUTI−K4(●)を各用量について3匹のラットにそれぞれ投与し、第3週に同一用量でブーストした。全長rTat(1〜72アミノ酸)変異体タンパク質REKに対する力価を測定する。第5週までに、10mg及び1mg用量はともにGMT約1,000,000を提供し、0.1mg用量はGMT約500,000を提供した。これらの力価は全て、遊離Tatレベルの99%を超える低下に関連している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書に記載の組成物及び方法は、ヒト被験者において複数の株及びサブタイプのHIV−1感染の治療、進行抑制、及び予防に使用するための、治療用及び予防用免疫原性組成物に関する当該技術分野における必要性に取り組むものである。1つの態様では、これらの組成物は、あらゆる種類のHIV−1株及びサブタイプに対して有効な製剤並びに治療的及び予防的療法の適用を包含する。「ユニバーサルな」HIV−1予防用及び治療用免疫原性組成物、即ち複数のHIV−1株及びサブタイプ、特に、最も頻繁に発生するそれらの株及びサブタイプのTatタンパク質を阻止する上で有効な組成物を作製するために、発明者は複数の課題を克服した。本明細書に記載の組成物は、(1)免疫原性エピトープのペプチド配列内に変動性を組み込んでユニバーサルな組成物を作製し;(2)ヒトへの使用に許容可能な強力な免疫原性部分を作製し;そして(3)注射用蒸留水で容易に再構成される凍結乾燥産物として提供することができる、水性溶媒に可溶性の免疫原を作製する。単一免疫原では、複数のHIV−1 Tatサブタイプ及び株に対し、B細胞応答とともに、ヘルパーT細胞応答を同時に高める選択配列を、自発的に抗原性を補強する特に望ましいリポタンパク質と組み合わせ、得られる配列を修飾して水溶性を高める。この組み合わせは、並外れて高い、持続的レベルの抗HIV−1 Tat抗体力価をin vivoで引き出す組成物を生ずる。
I. 組成物
1つの態様では、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物は、HIV−1 Tatペプチドを使用する特異的に設計されたさまざまな免疫原の混合物を含み、複数のHIV−1株のTatタンパク質に対する幾何学的平均力価が50,000より大きく、300,000より大きく、そして100万より大きい抗HIV−1 Tat抗体を組成物が誘導することを可能にする。本明細書で用いるような各「免疫原」は、天然には発生しないが、合成技術、例えば核酸又はアミノ酸の化学合成技術によって作製することができる組成物である。この化学合成は完全に拡張性があり、多量の免疫原を作製するための比較的安価なプロセスを可能にする。当該技術分野に熟練した者の選択で、組換えDNAの調製及び発現も利用し、免疫原のある部分を構築することも可能である。
【0020】
1つの態様では、免疫原性組成物は、1種以上の免疫原を含み、各免疫原には、リポタンパク質キャップ(R2)、ユニバーサルTヘルパー配列(R1)、及びHIV−1 Tatタンパク質の免疫優勢B細胞エピトープが含まれる。これら免疫原成分について以下に詳細に記載する。更なる態様では、免疫原性組成は、1種以上の以下の免疫原を含む:
式I: R2−(R1−HIV−1 TatのB細胞エピトープ)、あるいは
式II: R2−(HIV−1 TatのB細胞エピトープ−R1)、あるいは
式IIIa: R2−K(HIV−1 TatのB細胞エピトープ)−R1、あるいは
式IIIb: R2−K(R1)−HIV−1 TatのB細胞エピトープ。
【0021】
式I及び式IIではそれぞれ、R2リポペプチドキャップは、本明細書に記載のように、3カ所のうち1カ所の位置をとることができる。1つの態様では、R2キャップは、R2のCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、R1(式I)又はB細胞エピトープ(式II)のいずれかのN端アミノ酸のα−アミノに連結している。上記式の他の態様では、任意のリジン残基(K)が、R1 Tヘルパー配列とB細胞ペプチドとのあいだ(式I)、B細胞ペプチドとR1とのあいだ(式II)、R1のC末端(式II)、又はHIV−1 TatのB細胞エピトープのC末端(式I)に挿入されている。R2は、これら後者の態様では、R2のCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、挿入されたKのε−アミノ基に連結している。
【0022】
式IIIaにおいて、Kは挿入されたリジン残基である。括弧内のB細胞エピトープは、そのカルボキシ端でKのε−アミノ基に結合している。R1のアミノ端は、K残基のカルボキシ端に直接結合している。同様に、式IIIbにおいて、Kは挿入されたリジン残基である。括弧内のR1は、そのカルボキシ端でKのε−アミノ基に結合している。B細胞エピトープのアミノ端は、K残基のカルボキシ端に直接結合している。
【0023】
特定の態様では、R2には、長さ0〜10アミノ酸の中性アミノ酸配列又はリンカー配列が含まれ、R2のリポペプチドを他の成分へ連結して免疫原を形成する。他の態様では、任意のリンカーは、選択した式に依存して、R1のアミノ端若しくはカルボキシ端に、又はB細胞エピトープのアミノ端若しくはカルボキシ端に存在する。他の態様では、溶解性を高めるため、荷電極性アミノ酸配列が、隣接リンカーアミノ酸とともに又は隣接リンカーアミノ酸なしで式の成分間又は免疫原のカルボキシ端において免疫原の式に挿入されている。リンカー配列及び極性荷電配列について以下に詳細に記載する。
【0024】
本明細書に記載の免疫原は、上記式の選択に基づいて各種構造を形成することができる。式Iの免疫原の1つの態様では、R2リポペプチドキャップは、Cys及び任意に1個以上の中性リンカーアミノ酸を含有するが、B細胞エピトープに連結しているR1 Tヘルパー配列のアミノ端でα−アミノ基に連結しており、したがって直鎖状構築物を形成する。任意の極性荷電配列は、R2のCysの後に、又はR2リンカーアミノ酸間に位置し、したがってR1に連結しているが、溶解性を高めるために、免疫原のR1及びB細胞エピトープのアミノ末端又はカルボキシ末端における追加位置に位置付けられてもよい。この式の免疫原を以下の実施例に記載する。式Iの免疫原の他の態様では、R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸のみを介して及び/又は中性リンカーアミノ酸が隣接していてもよい荷電極性配列を介して、R1とB細胞エピトープの第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。式Iで定義されるような免疫原の更に他の態様では、R2は、そのCys、その任意のリンカーアミノ酸、及び/又は極性荷電配列を介して、B細胞エピトープのC端に位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。
【0025】
本明細書に記載のような免疫原の更に他の態様は、式IIの形態を取ることができる。多くの態様では、R2リポペプチドキャップのアミノ末端は遊離しており、即ちR1ヘルパー配列とHIV−1 TatのB細胞エピトープとのあいだに結合していない。式IIの免疫原の1つの態様では、その任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電アミノ酸配列を有するR2リポペプチドキャップは、R1ヘルパー配列に連結しているHIV−1 TatのB細胞エピトープのアミノ端のα−アミノ基に連結している。式IIの他の免疫原では、R2リポペプチドキャップは、そのCys、その任意のリンカーアミノ酸、及び/又はその極性荷電配列、又はそれらの組み合わせを介して、HIV−1 TatのB細胞エピトープとR1の第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。他の態様では、R2リポペプチドキャップは、上記のように、式IIのR1のC端に位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。任意のリンカー及び/又は極性荷電配列は、1種以上のこれら免疫原成分のあいだに位置付けることができる。他の代替免疫原は、本明細書の教示があれば当該技術分野に熟練した者によって、これらの成分及び式を使用して設計することができる。
【0026】
1つの態様では、免疫原性組成物は、上記式のうちの1つで規定される単一免疫原又は複数の同一免疫原を含有する。他の態様では、2種以上の異なる免疫原が組成物中に存在する。更なる態様では、2種以上の免疫原はそれぞれ異なる式である。同一の式又は異なる式である2種以上の異なる免疫原を含有する1つの態様では、組成物中の各免疫原は、HIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープのアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって組成物中の他の免疫原と異なっている。したがって、免疫原性組成物の1つの態様は、上記式I又は式IIの2種のそのような免疫原を含有する。他の態様では、免疫原性組成物は、3種以上のそのような免疫原を含有する。更なる態様では、免疫原は、以下で考察するTatのエピトープ中の7位、9位、又は12位における1カ所以上の可変アミノ酸位置のアミノ酸変異によって、組成物中の式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの他の免疫原のHIV−1 Tatの他のエピトープと異なるHIV−1 Tatのエピトープを有する。他の態様では、免疫原性組成物は、式中のHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープのこれらアミノ酸位置のうち1カ所以上のアミノ酸変異によって異なる少なくとも2種、3種、4種、6種、8種、12種、又は少なくとも16種の異なる免疫原を含有する。特定の態様では、免疫原性組成物は、それら可変残基で異なるHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープペプチドを有する少なくとも3種、4種、5種、6種、7種、又は8種の免疫原を含有する。
【0027】
他の態様では、組成物は、R1 T細胞ヘルパー配列の同一性が異なる2種以上の免疫原を有する。更に他の態様では、組成物中の異なる免疫原は、同一又は異なるR1をそれぞれ有することができる。他の態様では、組成物中の各免疫原は、異なる式、例えば式I、式II、式IIIa、及び/又は式IIIbのうちの1つを有することができる。
A. HIV−1 Tatのエピトープ1成分
上記免疫原のHIV−1 TatのB細胞エピトープは式IVの免疫優勢エピトープ:
V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16(配列番号1)である。式IVでは、Xaa7はアミノ酸R、K、N、又はSのうちの1つである。Xaa9はアミノ酸E又はDである。Xaa12はK又はNである。アミノ酸Xaa13〜Xaa16は、免疫原に含まれる任意の隣接配列を表す。Xaa13〜Xaa16の1個以上のアミノ酸は存在しなくともよい。これらのアミノ酸は免疫原性を高めるが、免疫優勢エピトープの本質的部分ではない。したがって、式IVのHIV−1 Tatのエピトープは、本明細書において、Xaa13〜Xaa16が存在しないか又はこれら4残基が存在するいずれかをさまざまに表すことができる。したがって、ある態様では、Xaa13は存在しないかHであり、Xaa14は存在しないかPであり、Xaa15は存在しないかGであり、そしてXaa16は存在しないかSである。
【0028】
7位、9位、及び12位のアミノ酸のさまざまな選択によって形成される16種の可能な変異体の中で、8種の変異体は免疫学的に異なる野生型変異体であることが知られている。残り8種の他の変異体は天然に発生することが知られている。免疫優勢ペプチドの8種の免疫学的に異なる変異体を、表1に示すように、7位、9位、及び12位のアミノ酸のみを特定する簡単な参照によって特定する。以下の表1に列挙する同一エピトープペプチドは、H−P−G−S配列が隣接する場合、それぞれ配列番号15〜22として特定される。これら簡単な参照を本明細書全体で使用する。
【0029】
【表1】
【0030】
したがって、1つの態様では、組成物を形成する免疫原のHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープは、任意の隣接配列のない、これら8種のペプチドの中から選択される。他の態様では、免疫原中の8種のペプチドには、免疫原性を高めるため、各ペプチドのC端に残基H−P−G−S(配列番号4)が含まれる。更に他の態様では、1種以上のペプチドは、わずか1個、2個、又は3個の隣接アミノ酸を含有する。更に他の態様では、なし、1個、2個、3個、又は4個の隣接アミノ酸を含有するB細胞エピトープペプチド混合物を免疫原に使用する。
【0031】
組成物が単一免疫原を含有する1つの態様では、上記免疫原のうちの1種を使用する。本明細書に規定する組成物の更なる態様では、式IVの少なくとも2種、少なくとも3種、4種、5種、6種、7種、又は8種の上記Tat変異体エピトープが、自発的に抗原性を補強する組成物の各種態様を形成する個々の免疫原に含有される。
【0032】
組成物をどのように作製するかに応じて、他の免疫原性組成物は、8種より多い異なるHIV−1 Tatのエピトープペプチドを含有することができる。したがって、組成物は、アミノ酸位置Xaa7、Xaa9、及びXaa12において異なる8〜16種の可能な種々のHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ変異体配列を含有することができ、それにより、上記8種のペプチドへ以下の追加のペプチド成分を付加する。隣接アミノ酸のないこれら追加の8種の変異体を以下の表2に報告し、簡単な参照を本明細書全体で使用する。
【0033】
【表2】
【0034】
先に言及したように、特定の態様では、これら組成物の免疫原中のHIV−1 Tatのエピトープは、組成物中のHIV−1 Tatのエピトープの免疫原性を高めるために、各エピトープのカルボキシ端に隣接配列H−P−G−Sも含有する。隣接配列を有する表2に列挙したような同一エピトープをそれぞれ配列番号32〜39と特定する。
【0035】
したがって、1つの態様では、免疫原性組成物は、式I〜式IIのそれぞれに関し1〜16種以下の異なる免疫原を含有し、これらは免疫原のHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープが異なっている。更なる態様では、HIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープ端における隣接アミノ酸Xaa13〜Xaa16の存在によって追加の変動性を導入することができる。
【0036】
組成物中に存在することができる得られる免疫原は、以下のように、式Iによって個々に規定される(R2を上記のような3カ所うちの1カ所の位置に有し、任意のリンカー及び/又は極性荷電配列を本明細書に記載のような1カ所以上の位置に含む):
R2−(R1−配列番号15)、
R2−(R1−配列番号16)、
R2−(R1−配列番号17)、
R2−(R1−配列番号18)、
R2−(R1−配列番号19)、
R2−(R1−配列番号20)、
R2−(R1−配列番号21)、
R2−(R1−配列番号22)、
R2−(R1−配列番号32)、
R2−(R1−配列番号33)、
R2−(R1−配列番号34)、
R2−(R1−配列番号35)、
R2−(R1−配列番号36)、
R2−(R1−配列番号37)、
R2−(R1−配列番号38)、及び
R2−(R1−配列番号39)。
【0037】
それぞれ配列番号15〜22のHIV−1 Tatのエピトープを有するこの上記リスト中の最初の8種の免疫原が、1〜8種の異なる免疫原を含有する組成物に最も好ましい。9種以上の免疫原を含有する組成物では、リスト中の最後の8種の免疫原の中から追加の免疫原を選択する。しかしながら、このリストからのB細胞エピトープの他の組み合わせも本明細書に記載の免疫原に有用である。
【0038】
組成物中に存在することができる同様に得られる免疫原は、以下のように、式IIによって個々に規定される(R2を上記のような3カ所のうちの1カ所の位置に有し、任意のリンカー及び/又は極性荷電配列を本明細書に記載のような1カ所以上の位置に含む):
R2−(配列番号15−R1アミド)、
R2−(配列番号16−R1アミド)、
R2−(配列番号17−R1アミド)、
R2−(配列番号18−R1アミド)、
R2−(配列番号19−R1アミド)、
R2−(配列番号20−R1アミド)、
R2−(配列番号21−R1アミド)、
R2−(配列番号22−R1アミド)、
R2−(配列番号32−R1アミド)、
R2−(配列番号33−R1アミド)、
R2−(配列番号34−R1アミド)、
R2−(配列番号35−R1アミド)、
R2−(配列番号36−R1アミド)、
R2−(配列番号37−R1アミド)、
R2−(配列番号38−R1アミド)、及び
R2−(配列番号39−R1アミド)。
【0039】
1つの態様では、組成物は、上記式I、式II、式IIIa、又は式IIIbにおいて表1の最初の8種のHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ配列、即ち配列番号7〜14又は同一式内に隣接アミノ酸を有する配列番号15〜22を含有する免疫原から選択される3〜8種以下の異なる免疫原を含有する。更に他の組成物は、各リストからの9〜全16種以下の異なるHIV−1の免疫優勢エピトープペプチド、又は表1及び表2のTatの免疫優勢エピトープ配列(C端隣接アミノ酸は存在するか又は存在しない)を含有する。更に他の態様では、組成物は、わずか1個、2個、又は3個の隣接アミノ酸を有する上記免疫原のいずれかを含めることができる。
【0040】
上記免疫原の中でHIV−1 Tatのエピトープを修飾することも可能である。例えば、他のHIV−1 Tatのエピトープは、相同の又は類似の修飾免疫優勢エピトープ配列を含めることができ、ここで、式:V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12(配列番号2)中の非可変アミノ酸(即ち、1文字と下付き文字とで表記されていないもの)は、類似の特徴を有するアミノ酸残基で個別に保存的置換することができる。例えば、配列番号2の非可変アミノ酸残基は、同一電荷及び/又は類似側鎖長を有する他のアミノ酸残基で置換することができる。1例として、Tatのアミノ酸残基8のロイシンは、時にTat配列において天然に生ずるようにイソロイシンで置換することができる。同様に、配列番号2の非可変天然アミノ酸は、非天然アミノ酸残基、即ち化学構造に修飾を有するアミノ酸、例えばD−アミノ酸;非天然側鎖を有するアミノ酸、N−メチル化アミノ酸などで置換することができる。とりわけ、N−メチル化アミノ酸に関する引用文献を参照されたい。例えばL.Aurelioら、2002、Organic Letters、4(21):3767−3769、及びその中の引用文献を参照されたい。
【0041】
更に、免疫優勢エピトープの式:V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16(配列番号1)の4〜12個のTatアミノ酸残基を組み込んでいるが、N端及び/又はC端に追加のアミノ酸を含有する、より長いペプチドを使用することができる。しかしながら、そのように長い配列は免疫原に機能的相違を提供しそうにない。例えば、上記のようなHIV−1 Tatのエピトープは、C端の隣接アミノ酸を有することなく、HIV−1 Tatの長さ9アミノ酸残基を含有する。しかしながら、他のTatの免疫優勢エピトープペプチドは、そのようなアミノ酸(可変アミノ酸7、9、及び12を含むことが好ましい)の長さ約6残基のより短い配列から約25アミノ酸残基まで含有することができる。更に他の免疫優勢ペプチドは、HIV−1 TatのN端配列より多くを含有することができる。あるいは、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープの隣接配列Xaa13〜Xaa16のH−P−G−S(配列番号4)を、免疫優勢エピトープペプチドの免疫原性を高める他の配列で同様に置換することができる。更に他の態様では、H−P−G−S(配列番号4)アミノ酸のそれぞれを、Tatの免疫優勢エピトープの不可変アミノ酸残基に関して上記したような修飾物で個別に置換することができる。
【0042】
更に他の態様では、本明細書に記載の免疫優勢エピトープ免疫原とともに使用するための代替免疫原を調製することができる。例えば以下の実施例1の代替免疫原の記載を参照されたい。そのような代替免疫原の使用は、本明細書に記載の免疫優勢エピトープ免疫原を含有する免疫原性組成物によって誘導されるHIV−1 Tatに対する応答を高めることができる。
B. ユニバーサルTヘルパー配列R1
本明細書に記載の免疫原性組成物の免疫原の他の成分は、免疫原中のB細胞エピトープ、即ちHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープの免疫原性を高めるために用いるユニバーサルTヘルパーエピトープである。「Tヘルパーエピトープ」という用語は、1種以上のクラスII MHC分子との関連でTヘルパーリンパ球を活性化するアミノ酸鎖を意味することを意図するものであり、免疫原のHIV−1 Tatのエピトープに対する抗体応答を高める。特定の態様では、免疫原のTヘルパーエピトープ成分は、大部分の個体に存在するTヘルパー細胞によって認識されるものである。これは、多くの、大部分の、又は全てのHLAクラスII分子に結合するペプチドを選択することによって達成することができる。これらは、「HLAで緩く拘束された」又は「無差別」Tヘルパー配列として知られている。特に、無差別T細胞エピトープは、上記式においてR1部分として用いられる。選択した免疫原の式に応じて、R1配列は、HIV−1 TatのB細胞エピトープに、エピトープのアミノ端又はカルボキシ端において直接又は任意のリンカー及び/又は極性荷電配列を介して連結することができる。
【0043】
また、選択した免疫原の式に応じて、R1とR2との連結は以下のうちの1つである:R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を介して、R1のN端アミノ酸のα−アミノに連結している。あるいは、R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を介して、R1とB細胞エピトープとのあいだに挿入された追加のリジン残基のε−アミノ基に連結している。あるいは更に、R1が免疫原のカルボキシ端に位置付けられている場合、R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を介して、R1のカルボキシ端に挿入されたリジンのε−アミノ基に連結することができる。
【0044】
多くの無差別又はユニバーサルTヘルパー配列は、さまざまな供給源、例えば微生物において天然に生じ、又は人工的に操作された配列である。そのような好適なT細胞エピトープは公知であり、これらの免疫原及び組成物におけるこの使用のために選択することができる。
【0045】
1つの態様では、そして以下の実施例で例示するように、本明細書の式I又は式IIに記載のような免疫原のR1 Tヘルパー配列は、配列番号6:Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−Xaaの配列を有し、式中、Xaaは存在しないかLである。この配列は破傷風毒素のアミノ酸830〜843(844)に天然に見られる;Panina−Bordignonら、1989、Eur J Immunol 19:2237を参照されたい。R1として有用な他のそのような破傷風毒素配列(破傷風毒素のアミノ酸947〜967)は、配列番号23:F−N−N−F−T−V−S−F−W−L−R−V−P−K−V−S−A−S−H−L−Eの配列、又は破傷風トキソイドのアミノ酸950〜969のようなその誘導体を有する。Reece JCら、1994、J Immunol Methods 172:241−54を参照されたい。式IのR1として使用するための更に他の破傷風トキソイドT細胞ヘルパー配列には、破傷風トキソイドのアミノ酸632〜651である配列番号40:I−D−K−I−S−D−V−S−T−I−V−P−Y−I−G−P−A−L−N−Iの配列、破傷風トキソイドのアミノ酸580〜599である配列番号41:N−S−V−D−D−A−L−I−N−S−T−K−I−Y−S−Y−F−P−S−V、破傷風トキソイドのアミノ酸916〜932である配列番号42:P−G−I−N−G−K−A−I−H−L−V−N−N−E−S−S−E、及び破傷風トキソイドのアミノ酸830〜842である配列番号43:Z−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−Eが含まれる。免疫原のR1として有用な更に他のユニバーサルT細胞ヘルパー配列に関し、例えば、全て本明細書に援用される、Hoら、1990、Eur J Immunol 20:477;Valmoriら、1992、J Immunol 149:717−721;Chinら、1994、Immunol 81:428;Vitielloら、1995、J Clin Invest 95:341;Livingstonら、1997、J Immunol 159:1383;Kaumaya PTPら、1993、J Mol Recognition 6:81−94(1993);及びDiethelm−Okita BMら、2000、J Inf Dis 175:383−91を参照されたい。また、本明細書に記載の免疫原のR1として使用できる特定のジフテリア毒素T細胞ヘルパー配列について考察している、本明細書に援用される、Rajuら、1995、Eur J Immunol 25:3207−14及びDiethelm−Okita BMら、2000、J Inf Dis 181:1000−9を参照されたい。上記式のR1のためのTヘルパーエピトープ配列として有用であり得る更に他の配列は、本明細書に援用されるNardinら、2001、J Immunol 166:481−9に開示されている。
【0046】
無差別な他のTヘルパー配列の例には、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質378〜398位(D−I−E−K−K−I−A−K−M−E−K−A−S−S−V−F−N−V−V−N−S;配列番号44)、及び連鎖球菌の18kDタンパク質116位(G−A−V−D−S−I−L−G−G−V−A−T−Y−G−A−A;配列番号45)のような抗原由来配列が含まれる。例えば本明細書に援用される米国特許第7,026,443号を参照されたい。
【0047】
R1ユニバーサルT細胞ヘルパー配列は、例えば米国特許第5,736,142号(例えば本明細書に援用されるPCT公開公報WO95/07707号を参照されたい)に記載のPan HLA DR結合(PADRE)分子(エピミューン、カリフォルニア州サンディエゴ)のような人工的に操作された配列であることもできる。これらの合成化合物は、大部分のHLA−DR(ヒトHLAクラスII)分子に最も好ましく結合するように設計されている。他の例には、DR 1−4−7スーパーモチーフ、又はDR3モチーフのいずれかを有するペプチドが含まれる。これらの配列は、B細胞及びマクロファージ及び樹状細胞上のクラス2主要組織適合性(MHC)抗原によって認識され、B細胞による抗原提示を高める。
【0048】
したがって、1つの態様では、R1 Tヘルパー配列は、配列番号46:Xaa1−K−Xaa2−V−A−A−W−T−L−K−A−A−Xaa3の式によって規定され、式中、Xaa1及びXaa3はD−Ala又はL−Alaから個別に選択され、そしてXaa2はL−シクロヘキシルアラニン、Phe、又はTyrである。これらのTヘルパー配列は、HLA型にかかわらず、大部分のHLA−DRアレルに結合し、大部分の個体由来Tヘルパーリンパ球の応答を刺激することがわかっている。1つの態様では、R1は上記式を有し、式中、Xaa1及びXaa3はともにD−Alaであり、そしてXaa2はシクロヘキシルアラニンである。他のPADRE配列には、全て「L」天然アミノ酸で構成されるpan−DR結合エピトープの代替物が含まれ、エピトープをコードする核酸の形態で提供することができる。更に他のPADRE配列は、全て本明細書に援用される、Vitielloら、1995、J Clin Invest 95:341;Alexander Jら、1994、Immunity 1:751−61;Del Guercio M−Fら、1997、Vaccine 15:441−8;Alexander Jら、2000、J Immunol 164:1625−33;Alexander Jら、2004、Vaccine 22:2362−7;及びAgadjanyan MGら、2005、J Immunol 174:1580−6に開示されている。
【0049】
これらのTヘルパーペプチド配列R1は、修飾して生物学的特性を変更することもできる。例えば、それらは、D−アミノ酸又は他のアミノ酸修飾を含むように修飾し、プロテアーゼに対する耐性を高めて血清半減期を延長させることができる。更に、これらの無差別T細胞ヘルパー配列又はR1配列は、以下に考察するように、リンカー配列及び/又は極性荷電配列を更に含めることができる。
【0050】
当該技術分野に熟練した者は、他の公知の無差別T細胞ヘルパー配列の中から選択して、本明細書に記載のような免疫原性組成物のための他の特異的免疫原を設計することが予想される。以下に記載の特異的態様は、HIV−1 Tatタンパク質に対する幾何学的平均力価(GMT)が高い抗体を誘導する上で、免疫原内で有用なユニバーサルTヘルパー配列について説明する。
C. リポペプチドキャップ成分R2
本明細書に記載の免疫原の他の成分はリポペプチド成分であり、好ましくは「リポペプチドキャップ」(R2)であり、本明細書に記載のようなHIV−1予防用及び治療用免疫原性組成物に必要とされる、GMTが50,000より大きく、又は300,000より大きく、又は1,000,000より大きい抗体を誘導するために免疫原の他の成分と協調して作用する。リポペプチドは、ウイルス抗原に対するCTLをプライミングし、また、特定抗原に対する液性抗体応答をin vivoで高めることが可能な物質として同定されている。したがって、免疫原のR2部分は、以下に記載のように、それにCys及び任意に1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を結合させた望ましいリポペプチド成分の中から選択される。1つの態様では、R2リポペプチドは、直接、又はその任意のリンカー及び/又は極性荷電アミノ酸を介して、免疫原のアミノ端のα−アミノ基に結合している。即ちR1 T細胞ヘルパー配列のアミノ端に結合しているか、又はR1が異なる位置にある場合は直接HIV−1 Tatのエピトープに結合している。免疫原の他の態様では、R2リポペプチドは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、R1とHIV−1 Tatのエピトープの第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノに結合している。更なる態様では、免疫原のR2リポペプチドキャップは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、免疫原のC端、即ちHIV−1 Tatのエピトープ又はR1のC端に位置付けられたK残基のε−アミノに連結している。更なる態様では、免疫原のR2リポペプチドキャップは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、B細胞エピトープ又はR1のN端に直接連結しているK残基に連結している。この構造では、B細胞エピトープ又はR1は、そのカルボキシ端を介して、K残基のε−アミノ基に連結することができる(式IIIa又は式IIIbを参照されたい)。
【0051】
そのような使用のための特異的R2リポペプチドには、例えば大腸菌リポタンパク質のN端配列が含まれる。1つの態様では、R2は、2つのアミノ酸リンカー及び/又は極性荷電配列を有する、図8Aのジパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam2Cys)であるリポペプチドである。他の態様では、R2は、そのアミノ酸リンカー及び/又は極性荷電配列を有する、図8Cのトリパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam3Cys)であるリポペプチドである。
【0052】
他のR2キャップには、R−(ジパルミトイル−S−グリセリル)システインが含まれ、式中、Rは、水素、1〜6個のC原子のアルキル、アルケニル、又はアルキニルから成る群である。1つの態様では、R2は、任意のアミノ酸リンカー及び/又は極性荷電配列を有する、図8BのN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)((NAc(Pam2C))であるリポペプチドである(RはN−アセチルである)。他の潜在的R2部分は、ヘキサデカン酸、Hda、及びマクロファージ活性化ペプチドMALP−2である。
【0053】
そのようなリポペプチドキャップは、全て本明細書に援用される以下の引用文献:Deresら、1998、Nature 342:561;Weismullerら、1989、Vaccine 7:29;Metzgerら、1991、Int J Peptide Protein Res 38:545;Martinonら、1992、J Immunol 149:3416;Vitielloら、1995、J Clin Invest 95:341;Muhlradtら、1997、J Exp Med 185:1951;Livingstonら、1999、J Immunol 162:3088;Zengら、2002、J Immunol 169:4905;Borzutskyら、2003、Eur J Immunol 33:1548;Scgjetneら、2003、J Immunol 171:32;Jacksonら、2004、Proc Natl Acad Sci USA 101:15440;Borzutskyら、2005、J Immunol 174:6308;Muhlradt PFら、J Exp Med 11:1951−8(1997);Obert Mら、Vaccine 16:161−9(1997);Zeng Wら、Vaccine、18:1031−9(2000);Gras−Masse H、Mol Immunol 38:423−31(2001);Zeng Wら、J Immunol 169:4905−12(2002);Schjetne KWら、J Immunol 171:32−6(2003);Spohn Rら、Vaccine 22:2494−9(2004);Jackson DCら、Proc Natl Acad Sci USA 101:15440−5(2004);Zeng Wら、Vaccine、23:4427−35(2005);国際特許出願公開公報WO2006/026834号、WO2006/040076号、WO2004/014956号、又はWO2004/014957号に記載のものから選択し、合成し、調製することができる。
【0054】
1つの態様では、特に有効な免疫原性組成物は、Pam2CSSのR2、即ちリンカー、例えばSer−Ser、及び/又は極性荷電配列を介して結合している、ジパルミトイル−S−グリセリル−Cysのジパルミチン酸部分を含む。リンカーを有するPam2Cは、本明細書に援用されるPCT公開公報WO2004/014957号に記載されている。他の態様では、特に有効な免疫原性組成物は、Pam3Cys−S−S−のR2、即ちジパルミトイル−S−グリセリル−Cysのトリパルミチン酸部分を含み、これはリンカー、例えばSer−Serを介して結合している。
【0055】
他の態様では、R2はNAc(Pam2C)−S−S−、即ちN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)のジパルミチン酸部分であり、これはリンカー、例えばSer−Serを介して結合している。
【0056】
先に記載したように、このR2リポペプチドは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、R1 T細胞ヘルパー配列のアミノ端のα−アミノ基に連結しており、R1は順にB細胞エピトープに連結している。式IIにおけるようにB細胞エピトープとTヘルパー配列が逆である場合、このR2リポペプチドは、そのCysを介して、又はその任意のリンカー及び/又は任意の極性荷電配列を介して、B細胞エピトープのアミノ端のα−アミノ基に連結しており、B細胞エピトープは順にR1に連結している。あるいは、R2は、そのCys、その好適なリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電アミノ酸配列を介して、免疫原のR1とHIV−1 Tatのエピトープ成分の第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノに連結している。この同一構造は、式IIにおけるようにR1とB細胞エピトープが逆である場合にもあてはまる。更に他の代替免疫原構造では、R2は、そのCys、その任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電アミノ酸配列を介して、免疫原のC端に挿入されたK残基のε−アミノに連結している。例えば、R1がB細胞エピトープに連結している場合、リジン残基をB細胞エピトープのC端に挿入し、R2をリンカーを介してそのリジンのε−アミノ基に連結することができる。この構造は、式IIにおけるようにB細胞エピトープとR1基が逆である場合に類似する。同様に、式IIIa及び式IIIbの免疫原は、上記のようにこのR2キャップを用いている。全ての態様において、R2リポペプチドキャップのN末端は遊離しており、免疫原の他の成分に結合していない。
【0057】
R2キャップは、免疫原性組成物を形成する式I、式II、式IIIa、及び/又は式IIIbの免疫原において抗体応答を高め、非常に有効であることが判明している。R2と免疫原のR1及び/又はHIV−1 TatのB細胞エピトープとのさまざまな結合の更に他の態様が、上記式I及び式IIに具体化されている。
D. 任意のリンカー及び極性配列
R2キャップはそのCysを介して直接連結することができ、T細胞ヘルパー配列R1は、免疫原のHIV−1 TatのB細胞エピトープ成分にいずれの順序でも直接連結することができるが、リンカーを任意に導入して、R2リポペプチドキャップ成分のC末端を各免疫原の他のいずれかの成分に連結することが望ましい。他の態様では、リンカーアミノ酸又は配列は、B細胞エピトープとR1ヘルパー配列とのあいだにも用いられる。他の態様では、アミノ酸配列は、免疫原の式に応じて、免疫原の1つの成分を他の成分へカップリングするためにR1ヘルパー配列又はB細胞ペプチドのN端又はC端に結合した任意のリンカーとして用いるか、又は免疫原のアミノ端又はカルボキシ端に位置付けられる。
【0058】
R2キャップ内に位置付けられるか又は免疫原のどこかに位置する「リンカー」は、典型的には、生理的条件下で実質的に非荷電のアミノ酸又はアミノ酸模倣物のような1〜10個の比較的小さい中性分子で構成される。リンカーは、典型的には、例えばGly、Ser、Pro、Thr、又は非極性アミノ酸若しくは中性極性アミノ酸の他の中性リンカーから選択される。任意のリンカーは、同一残基で構成される必要はなく、したがって、ヘテロオリゴマー、例えばGly−Ser−でも、ホモオリゴマー、例えばSer−Serでもよい。存在する場合は、1つの態様におけるリンカーは少なくとも1個のアミノ酸残基、例えばSer又はGlyである。他の態様では、リンカーは少なくとも2個アミノ酸残基、例えばSer−Ser又はGly−Serである。更に他の態様では、3〜6個のアミノ酸残基、10個以下の残基、又はそれ以上の残基を用いてリンカーを形成する。したがって、特定の態様では、リンカー配列には、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個のアミノ酸又は模倣物が含まれる。
【0059】
例えば、リンカーを用いて、R2のリポペプチドキャップを免疫原の他の成分へカップリングすることができる。1つの態様では、リンカーはジペプチドSer−Serである。他の態様では、リンカーはGly−Glyである。更に他の態様では、Gly−Ser又はSer−Glyなどのヘテロオリゴマーを用いてもよい。他の態様では、−Ser−などのリンカーは、Tヘルパー配列R1を免疫原のB細胞エピトープのN端アミノ酸に連結するか、又はB細胞エピトープをR1のN端アミノ酸に連結する。
【0060】
免疫原の他の態様では、荷電極性アミノ酸の配列は、比較的非荷電のリンカー配列内に導入されるか、又はそれと置換される。荷電極性配列の導入は、以下の実施例で立証するように、組成物の水溶性を高めることがわかっている。例えば、これら荷電極性配列は、緩衝液を必要とすることなく、注射用蒸留水及び任意に等張性のためのマンニトールを有する製剤中の免疫原の溶解性を高めるために使用される。これら荷電極性配列は、免疫原を容易に調製し、可溶化し、凍結乾燥することを可能にする。これら極性配列は、溶解性を高めることによって、B細胞エピトープの免疫原性を高めることにも有用であり得る。
【0061】
1つの態様では、極性配列は、4個、5個、6個、7個、又は8個の荷電極性アミノ酸で構成される。更なる態様では、極性配列は、4個のアミノ酸で構成される。更に他の態様では、極性配列は、6個のアミノ酸で構成される。1つの態様では、極性配列は、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸で構成される。更なる態様では、極性配列は、リジン、アルギニン、及びアスパラギン酸から選択されるアミノ酸で構成される。他の態様では、極性配列中のアミノ酸は同一である。更なる態様では、2個、3個、又は4個の異なるアミノ酸を極性配列に用いる。したがって、1つの態様では、極性荷電配列は、−Lys−Lys−Lys−Lys−、−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−、又は−Lys−Glu−Lys−Glu−、又は−Glu−Glu−Glu−Glu−(それぞれ配列番号65、66、67、及び68)であるか、あるいは4〜8個の同一若しくはさまざまな極性荷電アミノ酸の反復である。
【0062】
任意に、極性アミノ酸配列は、いずれかの端でリンカーのアミノ酸に隣接され、配列−リンカーアミノ酸−(極性アミノ酸)n−リンカーアミノ酸−を形成しており、式中、nは極性アミノ酸数、例えば4〜8個である。あるいは、隣接リンカー(中性、非荷電)アミノ酸を用いることなく極性アミノ酸配列を用いることができる。1つの態様では、極性アミノ酸配列を有するリンカーは、Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Ser(配列番号64)、即ちSer−Serリンカー内に4個の同一アミノ酸極性配列、即ちSer−[Lys]4−Ser(配列番号64)で構成される。他の態様では、極性配列を含有するアミノ酸リンカーは、Ser−[Lys]6−Ser(配列番号69)である。他の態様では、極性配列を有するリンカーは、Gly−[Lys]4−Gly(配列番号70)又はGly−[Lys]6−Gly(配列番号71)である。更に他の態様では、極性配列を有するリンカーは、−Ser−(Lys−Glu−Lys−Glu−)−Ser−(配列番号72)である。上記のように、この配列の反復は、上記定義及び−リンカーアミノ酸−(極性アミノ酸)n−リンカーアミノ酸の式があれば、当該技術分野に熟練した者によって組み立てることができる。
【0063】
したがって、1つの特異的態様では、極性荷電配列を含有するアミノ酸リンカー、又はリンカー単独、又は極性荷電配列単独は、免疫原成分R2とそれが連結している免疫原の他のいずれかの成分とのあいだに位置付けられる。他の態様では、リンカー及び/又は極性配列は、R1と免疫原の他のいずれかの成分とのあいだに位置付けられる。更に他の態様では、リンカー及び/又は極性配列は、B細胞エピトープと免疫原の他のいずれかの成分とのあいだに位置付けられる。他の態様では、極性配列は、隣接リンカーアミノ酸とともに又は隣接リンカーアミノ酸なしで、B細胞エピトープ又はR1の遊離端、即ち、免疫原の端のB細胞エピトープ又はR1ヘルパー配列の遊離N端又はC端のような免疫原の外側へ結合することができる。
【0064】
他の態様では、極性荷電配列は、隣接リンカーアミノ酸とともに又は隣接リンカーアミノ酸なしで免疫原内に1カ所のみ存在し、例えばR2のジパルミチン酸部分又はトリパルミチン酸部分のカルボキシ端リンカー−Ser−にのみ結合しており、R2を、R1若しくはB細胞エピトープに、又は免疫原内に挿入されたリジンに連結する。更に他の態様では、リンカー及び/又は極性配列は、免疫原の複数の位置(即ち2カ所以上)に存在する。
【0065】
免疫原性組成物を形成する各免疫原のR1成分、R2成分、及びB細胞エピトープ成分は、各成分の端へリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を付加することによって修飾し、担体支持体又はより大きなペプチドへのカップリング、ペプチド又はオリゴペプチドの物理的又は化学的特性の修飾、などを提供することもできる。
E. 特異的態様
式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの免疫原の特異的態様を以下の実施例で使用し、以下の免疫原も含める。1つの態様では、各免疫原において、R2は、チオールグリセリル基を介してシステインに連結した2単位のパルミチン酸及び−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列で形成され、−S−S−残基はR2をR1 Tヘルパー配列の第1アミノ酸に連結している。R1は、−S−のアミノ酸リンカーを有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)であり、−S−はHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープのN端アミノ酸残基に連結しており、B細胞エピトープは上記のようにTatのアミノ酸7位(R/K/N/S)、アミノ酸9位(E/D)、及びアミノ酸12位(K/N)に異なるアミノ酸の選択肢を含有する。したがって、式Iの1つの免疫原は以下のように規定される:
配列番号48:Pam2C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0066】
更なる態様では、4個のリジンの極性配列(下線)をリンカー配列(−S−S−)内に導入し、R2とR1とを接続する。式Iのこの更なる免疫原を以下のように規定する:
配列番号60:Pam2C−S−K−K−K−K−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0067】
更なる態様では、4個のリジンの極性配列(下線)を含有するリンカーを利用して、R1ヘルパー配列をHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ成分に連結する。式Iのこの更なる免疫原を以下のように規定する:
配列番号61:Pam2C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−K−K−K−K−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0068】
更なる態様では、4個のリジンの極性配列(下線)を含有するリンカーを免疫原内の2カ所に、即ちリポペプチドを配列の残りに連結するため、及びR1をHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ成分に連結するためのR2リンカーの部分として利用する。式Iのこの更なる免疫原を以下のように規定する:
配列番号62:Pam2C−S−K−K−K−K−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−K−K−K−K−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0069】
他の態様では、各免疫原において、R2は、グリセリル基を介してN−アセチルシステインの硫黄に連結した2単位のパルミチン酸(図8Bを参照されたい)及び−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列で形成され、−S−S−残基はR2をR1の第1アミノ酸に連結している。R1は−S−のアミノ酸リンカーを有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)であり、−S−はHIV−1 TatのエピトープのN端アミノ酸残基に連結しており、Tatのエピトープは、上記のようにTatのアミノ酸7位(R/K/N/S)、アミノ酸9位(E/D)、及びアミノ酸12位(K/N)に異なるアミノ酸選択肢を含有している。したがって、式Iの1つの免疫原を以下のように規定する:
配列番号49:NAc(Pam2C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。更なる態様では、上記を反映したPam2Cを含有する態様と平行して極性配列を包含する。
【0070】
他の態様では、各免疫原において、R2は、グリセリル基を介してパルミチル−システインの硫黄に連結した2単位のパルミチン酸及び−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列で形成され、−S−S−残基はR2をR1に連結している。R1は、−S−のアミノ酸リンカー有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)であり、−S−はHIV−1 TatのエピトープのN端アミノ酸残基に連結している。したがって、式Iの他の免疫原を以下のように規定する:
配列番号50:同一可変アミノ酸残基を有する、Pam3C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。更なる態様では、上記を反映したPam2Cを含有する態様と平行して極性配列を包含する。
【0071】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)CSS−を含有する部分が、ユニバーサルTヘルパー配列とHIV−1 Tatのエピトープとのあいだに挿入されたリジンのε−アミノにカップリングしている態様では、式Iの免疫原は、以下のように、挿入されたK残基(太字)を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号51として規定される。
【0072】
【化4】
【0073】
更なる態様では、上で定義した通りの極性配列を含むリンカーを、Tヘルパー配列をHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープ配列に連結する−S−の場所へ挿入することができ、及び/又は極性配列を、ユニバーサルTヘルパー配列とHIV−1 Tatのエピトープとのあいだに挿入したリジンのε−アミノへPam2Cキャップを接続するSer(−S−)間に挿入することができる。
【0074】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−S−を含有する部分が、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープペプチドのカルボキシ端に挿入されたリジンのε−アミノにカップリングしている態様では、式Iの免疫原は、以下のように、C端に挿入されたK残基(太字)を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号52として定義される。
【0075】
【化5】
【0076】
更なる態様では、上で定義した通りの極性配列を含むリンカーは、Tヘルパー配列をHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ配列に連結する−S−の場所へ挿入することができ、及び/又は極性配列を、HIV−1 Tatのエピトープ1ペプチドのカルボキシ端に挿入されたリジンのε−アミノへPamキャップを接続するセリン間へ挿入することができる。
【0077】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−S−を含有する部分が、HIV−1 TatのエピトープとユニバーサルTヘルパー配列とのあいだに挿入されたリジンのε−アミノへカップリングしている態様では、式IIの免疫原は、以下のように、挿入されたK残基を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号53として規定される。
【0078】
【化6】
【0079】
更なる態様では、上で定義した通りの極性配列を含むリンカーは、R1 Tヘルパー配列をHIV−1 TatのB細胞エピトープ配列に連結する−S−の場所へ挿入することができ、及び/又は極性配列は、ユニバーサルTヘルパー配列とHIV−1 Tatのエピトープとのあいだに挿入されたリジンのε−アミノへPamキャップを接続する−S−S−間へ挿入することができる。
【0080】
R1ヘルパー配列が、挿入されたK及びSを介して、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープのN端アミノ酸へカップリングし、Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−Sを含有する部分が、同一リジン残基のε−アミノを介してカップリングしている態様では、免疫原は、以下のように、挿入されたK残基を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号54として規定される。
【0081】
【化7】
【0082】
更なる態様では、上記式I及び式IIの態様に関して記載したものと平行して、極性配列を含むリンカーを挿入することができる。
【0083】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−S−を含有する部分が、挿入されたリジン及びセリンスペーサーを介してR1ヘルパー配列のN端アミノ酸へカップリングし、HIV−1 TatのB細胞エピトープが同一リジン残基のε−アミノを介してカップリングしている式IIIの他の態様では、免疫原は以下のように規定される。
【0084】
【化8】
【0085】
免疫原の更に他の態様は、式IIIbを使用する。更なる態様では、上記を反映したPam2Cを含有する態様と平行して、極性配列を包含する。
【0086】
上で定義した通りの、そして以下の実施例で説明するような2種以上の免疫原を含有する免疫原性組成物は、以下で更に詳細に考察するように、複数のHIV−1 Tat変異体に対する幾何学的平均力価が50,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を哺乳動物において誘導する能力を特徴とする。他の態様では、以下の実施例で例示するように、GMTSは300,000より大きく、又は1,000,000より大きく、又は3,000,000より大きい。
【0087】
上記教示があれば、当該技術分野に熟練した者は、上記成分の中から選択することによって、式I、式II、式IIIa、及び/又は式IIIbに適合する他の免疫原を容易に設計することができる。
II. 免疫原及び免疫原性組成物の作製方法
免疫原は、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープアミノ酸7位、9位、及び12位に「ゆらぎ」を含有する上記式にしたがい、固相又は溶液中で化学合成を行うことによって調製することができる。いずれの合成技術も当該技術分野に熟練した者に周知である。例えば、そのような技術は、Atherton&Shepard、『固相ペプチド合成』(IRL出版、オックスフォード、1989);Stewart&Young、『固相ペプチド合成』第2版(Pierce Chemical社、1984);及びHoubenweyl、“Methoden der organischen Chemie”[有機化学方法]、E.Wunschにより出版、第15−I巻及びII巻、シュトゥットガルト、1974などの慣用のテキストに、また、本明細書にその全体が援用される以下の記事:P E Dawsonら(Science 1994;266(5186):776−9);G G Kochendoerferら(1999;3(6):665−71);P E Dawsonら(Annu.Rev.Biochem.2000;69:923−60)に記載されている。各種の自動合成装置又はコンピュータプログラム可能な合成装置が市販されており、公知のプロトコールにしたがって使用することができる。更に、個々のペプチドエピトープを化学連結により結合させてより大きいペプチドを作製することができ、これらは依然として本明細書に記載の式I又は式IIの免疫原の範囲内である。
【0088】
望ましくは、合成には、RAMAGE樹脂上のHBTUを用いるFmoc化学を用いるなど、最初に最もC端のアミノ酸残基を固体支持体上に固定することによって免疫原をC端からN端の方向へ構築することが含まれる。アミノ酸を順次付加するあいだ、Xaa7、Xaa9、及びXaa12の「ゆらぎ」位置で示される変異体アミノ酸を等モル量で単一合成混合物中に導入する。得られる免疫原性混合物内に存在する「異なる」HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ配列数を、これらのゆらぎ位置に導入されるアミノ酸を制御することによって操作することができる。例えば、必要に応じて、7位にわずか2残基、9位に2残基、そして12位に1残基を導入し、わずか4種(2×2×1)の異なるHIV Tatのエピトープ成分を含有する混合物を得ることができる。他の態様では、7位に3つのゆらぎ、9位に1つのゆらぎ、そして12位に2つのゆらぎを導入して、6種(3×2×1)の異なるHIVペプチド成分を得ることができる。同様にして、全ての可能なゆらぎ選択肢(4×2×2)を導入することによって、単一合成混合物中に全16種の異なるTat配列を得ることができる。ゆらぎのいずれか他の可変付加により、1〜16種の異なるペプチド免疫原を含有する混合物を生ずることができる。HIV−1 Tatのエピトープを組み立てた後にユニバーサルTヘルパー配列を導入する。合成により、示したTatのエピトープゆらぎ位置において異なる1〜16種以下の異なる免疫原を含有する混合物を生ずる。
【0089】
次に、本明細書に援用されるPCT公開公報WO2004/014957号に記載のように、本質的にリポアミノ酸としてリポペプチドキャップを合成する。例えば、1つの態様では、Pam2Cys又はNAc(Pam2)Cys又はPam3Cysリポペプチドキャップを、合成Tatエピトープのゆらぎ配列及びTヘルパー配列上に、各リポペプチド部分をキャップのCysアミノ酸を介して又は任意のリンカー及び/又は極性アミノ酸配列を介してTヘルパー配列のN端アミノ酸のα−アミノ基へ、又はTヘルパー配列とTatの免疫優勢B細胞エピトープゆらぎペプチドとの間に挿入されたリジンのεアミノ基へ、又はTatの免疫優勢B細胞エピトープ配列のC端へ導入されたリジンのεアミノ基へ共有結合的に結合させることによって導入する。次に得られる免疫原を標準法、例えばトリフルオロ酢酸(試薬K)を用いて樹脂から切断し、やはり慣用の手順、例えばBIO−RAD酢酸樹脂を用いて任意に塩に変換する。
【0090】
得られる組成物は1〜16種以下の異なる免疫原を含有し、それぞれ、R1若しくはB細胞エピトープのN端のα−アミノ基へ、R1とB細胞エピトープとのあいだに挿入されたリジン残基のεアミノ基へ、又はR1若しくはHIV−1 TatのB細胞エピトープのC端に挿入されたリジン残基へ結合したリポペプチドキャップを有する。他の態様では、各免疫原は異なるR1ヘルパーを有することができる。1つの態様では、組成物は、式I、式II、式IIIa、又は式IIIbに記載のように、組成物中の他の免疫原とは異なる位置にリポペプチドキャップを有する免疫原を含有することができる。
【0091】
例示的合成を実施例1に記載する。このようにして免疫原を合成することによって、最終免疫原性組成物の1つの態様は、現在までに報告されているHIV−1 Tat変異体を95%より多く含む16種の配列の順列(4×2×2)を含有する。免疫原性組成物は、最低限精製して溶媒及び試薬を除去することができる。組成物の安全性試験を通過するための厳密な精製は必要ないようである。次にこの合成された混合物を、部分的に精製したか又は未精製型で動物に試験し、又はヒトに用いることができる。しかしながら、必要であれば任意の慣用精製スキームを用いてもよい。
【0092】
上記合成法はその簡便性に関して望ましいが、免疫原を調製する代替法には、組換えDNA技術の使用が含まれる。当該技術分野において周知のように、ヌクレオチド配列(HIV Tatペプチドをコードする)、任意のリンカー(例えば溶解性のための極性配列とともに又は伴わずに)、T細胞ヘルパー配列、及びリンカー(リポペプチドキャップ用)を発現ベクターへ挿入し、適切な宿主細胞へ形質転換又は形質導入し、発現に好適な条件下で培養する。これらの手順は、一般にSambrookら、『分子クローニング、実験室マニュアル』、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)に記載のように、当該技術分野において一般に公知である。リポペプチドキャップの結合は上記のような合成法を包含する。
【0093】
当該技術分野に熟練した者は、これらの方法にしたがうことによって、1〜16種の異なるHIV Tatのエピトープを含有する2〜16種の異なる免疫原を含有する様々な免疫原性組成物を容易に作製することができる。上で提示するように、個々のアミノ酸の修飾、任意リンカー配列の使用、異なるT細胞ヘルパー若しくはリポペプチドキャップの使用、より大きいかより小さいTatペプチドの使用、又はそのような修飾配列で作られた異なる免疫原性組成物の組み合わせのように、免疫原の式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの各種成分を個別に又はまとめて修飾する場合、更に他の組み合わせを得ることができる。
【0094】
そのような免疫原性組成物は、HIV−1感染を予防するか、又は少なくとも部分的に既存の疾患の症状の進行を阻むか若しくは遅らせるのに十分な幾何学的平均力価(GMT)を有する抗Tat抗体を誘導することによって、HIV−1 Tatタンパク質に対する予防的免疫応答又は治療的免疫応答をin vivoで誘導することができる。力価は、対照値の平均+8標準偏差(SD)のレベルで依然として検出される最大血清希釈の逆数である。幾何学的平均力価(GMT)は、2以上の血清の各力価をlog10に変換し、これらのlog10値を平均することによって決定される。この後者の値の真数がGMTである。多くの態様では、GMTは3以上の個別の力価から決定される。個々の力価よりもGMTを使用することで範囲から極端にはずれた結果を最小限にし、したがって精度を高める。
【0095】
1つの態様では、上記のような免疫原性組成物は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが50,000より大きく、又は300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。特定の態様では、免疫原性組成物は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが100,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体をin vivoで誘導する。他の態様では、誘導された抗体は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対する力価が500,000より大きい。更に他の態様では、免疫原性組成物は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが1,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。更に他は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが3,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。
【0096】
以下の実施例は、実験動物における実験について報告するものであり、本明細書に記載の免疫原性組成物によって誘導される並外れた力価の証拠を提供する。医薬組成物に使用する他の成分の選択及び組成、並びにこれら組成物の投与方法及び投与経路に応じて、そのようなGMT応答の誘導が、具体的に例示したもの以外の組成物についても予期される。
III. 治療用/予防用の医薬組成物及び方法
式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの上記免疫原を含有する医薬組成物は、HIV−1感染の治療処置に及び/又は予防用免疫原性組成物として有用である。各種態様では、医薬組成物は、上記式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの複数の異なる免疫原、及び医薬的に許容可能な担体を含有する、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物を使用する。上記のようにして調製した未精製免疫原性ペプチド免疫原の混合物は、許容可能な担体、このましくは水性担体に溶解又は懸濁させることが望ましい。
【0097】
本明細書に規定するように、これら免疫原性組成物における使用に好適な医薬的に許容可能な担体は、当該技術分野に熟練した者に周知である。1つの態様では、好ましい医薬担体は、約45mg/mLの濃度で添加された等張性のためのマンニトールとともに注射用蒸留水を含有する。他の可能な担体には、限定されるものではないが、そしてpH調整に依存するが、緩衝用水、0.8%生理食塩水のような緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝液、0.3%グリシン、ヒアルロン酸、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液が含まれる。他の慣用的に使用される希釈剤、アジュバント、及び賦形剤は、慣用技術にしたがい添加することができる。そのような担体には、エタノール、ポリオール、及びそれらの好適な混合物、植物油、並びに注射用有機エステルを含めることができる。緩衝液及びpH調整剤を使用することもできる。緩衝液には、限定されるものではないが、有機酸又は有機塩基から調製される塩が含まれる。代表的な緩衝液には、限定されるものではないが、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、若しくはフタル酸の塩のような有機酸塩、例えばクエン酸塩、トリス、塩酸トリメタミン、又はリン酸緩衝液が含まれる。非経口用担体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲル・デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油を含めることができる。静脈内用担体には、リンゲル・デキストロースなどをベースとしたもののような流体及び栄養補給液、電解質補給液を含めることができる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどのような防腐剤及び他の添加剤を医薬担体に提供することもできる。これら免疫原性組成物は担体の選択によって限定されるものではない。上記成分から、適切なpH等張性、安定性、及び他の慣用の特徴を有するこれら医薬的に許容可能な組成物を調製することは、当該技術分野の技術範囲内である。例えば、レミントン:『薬学の科学と実践』、第20版、Lippincott Williams&Wilkins出版、2000;及び『医薬賦形剤便覧』、第4版、R.C.Roweら編、APhA出版、2003などのテキストを参照されたい。
【0098】
任意に、医薬組成物は、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムのような弱いアジュバントを含有することもできる。
【0099】
医薬製剤中の式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの免疫原の量は広く、即ち重量で約0.1mg/mL未満から、通常約2mg/mL又は少なくとも約2mg/mLから、20mg/mLもの量まで、あるいは50mg/mLに至る量又は50mg/mL以上まで変化させることができ、選択した具体的投与様式にしたがい、流体容積、粘度などによって最初に選択されるであろう。
【0100】
免疫原性組成物のヒトの単位用量の形態は、典型的にはヒト単位用量の許容可能な担体、好ましくは水性担体を含む医薬組成物中に含まれ、そのような組成物をヒトへ投与するために用いられることが当該技術分野に熟練した者に公知の流体容量で投与される(例えばレミントンの『薬学』、第17版、A.Gennaro編、Mack出版、ペンシルバニア州イーストン、1985を参照されたい)。
【0101】
これら組成物を、生物学的物質に対する滅菌濾過のような慣用の周知滅菌技術で滅菌することができる。得られる水溶液をそのまま使用するために包装することができる。少なくとも1つの極性配列、例えば−K−K−K−K−(配列番号65)が組成物の免疫原中に存在する特定の態様では、水溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌溶液と組み合わされる。
【0102】
したがって、更に他の側面は、上で提示したように、複数のHIV−1株及びサブタイプに対するGMTが50,000、又は300,000より大きく、又は1,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する方法である。1つの態様では、医薬組成物は、ウイルス感染を処置又は制御するために、HIV−1に感染したヒトへ治療的に投与することができる。そのような感染したヒトは無症候性でも症候性でもよい。医薬組成物は、感染被験者における慢性的ウイルス増殖を低下させ、AIDSへの進行を最小限にするのに有用である。また、そのような患者には、HIV−1に感染した妊娠女性、感染した母親の新生児、及び汚染が予想される非免疫患者(例えばHIV−1に感染したヒトが使用した針を不注意に「突き刺した」ヒト)がいる。他の態様では、医薬組成物は、HIV−1感染を予防するための予防用免疫原性組成物として健常被験者へ投与する。
【0103】
本方法は、複数のHIV−1 Tat変異体に対するGMTが50,000より大きく、300,000より大きく、1,000,000より大きく、又は3,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導するように、有効抗体誘導量の本明細書に記載の医薬組成物を被験者へ投与することを包含する。上記のように、この方法は、同様に非常にGMTが高い抗体を誘導する。既に感染した患者では、抗体は慢性HIVウイルス血症の維持をブロックし、したがってAIDSへの進行を妨げる。この方法は、組成物を反復投与するが低頻度の間隔、例えば6ヶ月毎に投与することを包含することができる。健常患者では、予防用免疫原性組成物は、急性HIVウイルス血症が弱まった後で慢性ウイルス血症の設定確立をブロックする抗体を免疫被験者に提供する。
【0104】
この方法の1つの態様では、これら医薬組成物の投与経路は皮下注射である。他の好適な投与経路には、限定されるものではないが、経鼻、経口、膣内、又は直腸内のような粘膜内、並びに非経口、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び動脈内が含まれる。適切な経路は、組成物の性質、即ち予防用免疫原性組成物として又は治療用免疫原性組成物としての性質、並びに患者の年齢、体重、性別、及び総体的な健康の評価、並びに免疫原性組成物中に存在する成分、並びに関与する医師による類似要因を含めた各種検討事項に応じて選択される。
【0105】
同様に、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物の好適用量は、患者が既に感染しているか、治療的処置を必要としているのか予防用免疫原性組成物処置を必要としているのか、患者の健康、年齢、及び体重にかかわらず、当該技術分野に熟練した者によって容易に決定される。投与方法及び投与経路並びに組成物中の追加成分の存在も組成物の投薬量や量に影響を与え得る。有効用量のそのような選択及び上方又は下方調整は、当該技術分野の技術範囲内である。顕著な副作用を伴うことなく患者に好適な応答を生ずるのに必要な組成物量は、これらの要因に応じて変化する。好適用量は当該技術分野に熟練した者によって容易に決定される。好適用量は上記のように医薬組成物中に処方され(例えば、約0.1mL〜約2mLの生理的適合担体に溶解させる)、好適手段で送達される。投薬量は典型的には「単位投薬量」で表し、用量/被験者、例えば1mg免疫原の単位投薬量として規定される。あるいは、投薬量は、体重を80kgとする治療的換算の基準を用いて、量/被験者又は患者の体重で表すことができる。例えば、1mg単位用量/被験者は約12.5μg/kg体重に等しい。
【0106】
1つの態様では、意図する治療効果又は予防効果は、プライミング/ブースティング投与法によって与えられる。例えば、1つの態様における初回の治療的投与のための投薬量又は治療用若しくは予防用免疫原性組成物の第1プライミング投与のための投薬量は、約0.01mg未満〜100mgの免疫原の「単位投薬量」である。1つの態様では、単位投薬量は0.01mgである。他の態様では、単位投薬量は0.1mgである。他の態様では、単位投薬量は1mgである。更に他の態様では、単位投薬量は10mgである。したがって、特定の態様では、ヒトの初回プライミング投薬量は、非常に低量の単位投薬量である少なくとも約0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mgから、より高量の投薬量である少なくとも1mg、少なくとも3mg、少なくとも5mg、少なくとも7mg、少なくとも10mg、少なくとも12mg、少なくとも15mg、少なくとも20mgまでの範囲であり得る。更に他のヒトの投薬量は、21〜30mg、31〜40mg、41〜50mg、51〜60mg、61〜70mg、71〜80mg、81〜90mg、及び91〜100mg/70〜80kg被験者の範囲である。更に高量の投薬量でさえも意図することができる。
【0107】
1つの態様では、用いる治療用免疫原性組成物又は予防用免疫原性組成物のブースティング投薬量は、上記プライミング投薬量と同一である。上記プライミング投薬量と同一の特異的単位投薬量又は単位投薬量範囲は、ブースティング投薬量に使用することができる。したがって、特定の態様では、ヒトのブースティング投薬量は、単位投薬量範囲内で、約0.01mg未満〜100mgの免疫原の「単位投薬量」が起こり得る。1つの態様では、単位投薬量は0.1mgである。他の態様では、単位投薬量は1mgである。更に他の態様では、単位投薬量は10mgである。したがって、特定の態様では、ヒトのブースター単位投薬量は、非常に低量の単位投薬量である少なくとも約0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mgから、より高量の投薬量である少なくとも1mg、少なくとも3mg、少なくとも5mg、少なくとも7mg、少なくとも10mg、少なくとも12mg、少なくとも15mg、少なくとも20mgまでの範囲であり得る。更に他のヒトの投薬量は、21〜30mg、31〜40mg、41〜50mg、51〜60mg、61〜70mg、71〜80mg、81〜90mg、及び91〜100mg/70〜80kg被験者の範囲である。更に高量の投薬量でさえも意図することもできる。
【0108】
代替態様では、ブースティング投薬量は、上で特定したプライミング投薬量よりも低量である。
【0109】
1つの態様では、第1「ブースティング」は、初回プライミング用量の数週間以内に投与される。1つの態様では、ブースティング用量は、プライミング用量の少なくとも3週間後に投与され、その後、先のブースティング用量から3週間以降に再ブースト投与される。他の態様では、第1ブースティング用量は、プライミング用量後約3〜4週間に投与される。追加のブースティング投薬量は、第1ブースター用量後、少なくとも3週間以降、より好適には約6ヶ月〜1年以上後に投与される。投与プロトコールの他の態様では、本明細書に記載の自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物のプライミング投薬量は、約10mg投与される。その後の第1ブースティング投薬量(例えば0.01mg、0.1mg、1mg、又は10mg)は、プライミング投薬量の少なくとも3週間後に投与される。その後、追加のブースティング投薬量は、先のブースティング投薬量から6ヶ月毎、1年まで投与される。
【0110】
プライミング/ブースティング投与計画のタイミング及び投薬量は、患者の健康状態、例えば身長、体重、年齢、一般的な身体の健康、他の医薬などに関連した通常の検討事項とともに、患者の血液から採取した特異的抗HIV−1 Tat抗体の力価を測定することによって決定されるように、患者の応答及び状態に応じて、関与する医師によって選択することができる。
【0111】
予防/治療方法の1つの態様は、約10mg以下、1mg以下、又は0.1mg以下の単位投薬量でプライミング有効量の免疫原性組成物を投与することを包含し、第3週及び第6週に同一有効単位投薬量で投与される2回のブースターによる投与が続く。この方法は、GMTが100,000より大きい抗体を誘導する。
【0112】
予防/治療方法の他の態様は、約10mg以下、1mg以下、又は0.1mg以下の単位投薬量でプライミング有効量の免疫原性組成物を投与することを包含し、第3週及び第6週に同一有効投薬量で投与される2回のブースターによる投与が続く。この方法は、GMTが1,000,000より大きい抗体を誘導する。
【0113】
投与は、少なくとも臨床症状又は臨床検査が、ウイルス感染が排除されているか軽減されていることを示すまで、及びその後一定期間継続することが好ましい。投薬量、投与経路、及び投与予定は、当該技術分野において公知の手順にしたがって調整される。
【0114】
予防用免疫原性組成物用途に関し、プライミング及びブースティング投薬量は、治療用免疫原性組成物のブースティング投薬量と類似しているが、予防用免疫原性組成物の初回投与後約2週間〜6ヶ月の特定の規定する期間に投与される。おそらく追加の予防用免疫原性組成物をその後投与することが望ましいかもしれない。
【0115】
以下の実施例に示すように、本明細書に記載の例示的医薬組成物又は免疫原性組成物によって誘導される高GMTの抗体は、治療用途でもワクチン用途でも高頻度のブースティング投薬量の必要性を減少させることができる。
【0116】
本明細書に記載の方法の更に他の態様では、組成物は、他のHIV−1抗ウイルス療法又は医薬投与計画とともに、又はそれに続いて用いることができる。
【0117】
以下の実施例は、上で考察した組成物及び方法の特定の態様について説明するものである。これらの実施例は、特許請求の範囲及び明細書の開示を限定するものではない。
IV. 実施例
【実施例1】
【0118】
本発明の免疫原性組成物の作製
A. 実験用免疫原
複数の異なるTatペプチド成分(太字)、T細胞ヘルパー配列(イタリック体及び太字)、リンカーアミノ酸(イタリック体のみ)、及びPam2C−又はPam3C−リポタンパク質キャップを含有する上記のような各種免疫原性組成物を下式にしたがい調製した(NAc(Pam2)C−S−Sでキャップされた式は、この式によって記載されるPam2C及びPam3Cでキャップされた免疫原と同様に調製されるはずであることに注意されたい)。
【0119】
【化9】
【0120】
類似の結果を生ずることが予想される他の類似組成物と類似の方法で代替免疫原を調製する。そのような類似免疫原には、例えば以下が含まれる。
【0121】
【化10】
【0122】
先の3つの式のうち第1の式にしたがって調製されるPam2C−及びPam3C−免疫原は、Bachem Biosciences社又はMimotopes,Pty社により、慣用の固相合成技術及び自動合成装置を用いて合成された。アミド化したC端のセリンから開始して、合成サイクルはTatエピトープ1のC端においてN端方向へ進行し、リンカーアミノ酸を介し、ヘルパーT細胞エピトープ配列(例えば破傷風トキソイド無差別Tヘルパー配列Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L;配列番号47である)を介し、そしてN端のSer−Serを介した。アミノ酸7位、9位、及び12位に対応する「ゆらぎ」位置に、それぞれ等モル量の4種、2種、及び2種の必要なアミノ酸(上記式中の括弧内)を加えた。
【0123】
トリパルミトイル−S−グリセリルシステイン及びfmoc保護ジパルミトイル−S−グリセリルシステインはBachemにより合成され、記載のような新生ペプチド鎖のN端セリンにカップリングさせた。トリフルオロ酢酸を用いてリポペプチドを樹脂から切断し、ペプチドを脱保護した。得られる免疫原性産物を乾燥させ、次に水溶液中に取り、酢酸塩の形態に変換し、乾燥させた。
【0124】
最終産物を、アミノ酸の適切な含量についてアミノ酸解析で確認し、質量分析で確認したところ、複雑なピークのパターンを見せた。純度は一般におよそ70%であると概算したが、得られるリポペプチドは更に精製しなかった。合成し、試験した免疫原に用いたHIV−1 TatのB細胞エピトープを、2つの式において配列番号15〜22及び32〜39として列挙する。
【0125】
【化11】
【0126】
B. 対照免疫原
上で考察した免疫原と比較するため、上記合成手順を使用して、以下の実施例に用いる他の免疫原も調製した。そのような「対照」免疫原は、Tatエピトープ1へ融合したT細胞ヘルパー配列のみを含有する免疫原であり、即ち以下の式である。
【0127】
【化12】
【0128】
同様に、リポペプチドキャップPam−2Kを上記免疫原のPam−2Cの位置に含有する対照免疫原、即ち以下の式は、図面中、Pam2K−QYIK−TEP1として特定した。
【0129】
【化13】
【実施例2】
【0130】
免疫プロトコール及びTat試薬
A. 免疫
動物はHarlan Laboratoriesから購入し、Molecular Diagnostic Services社にて免疫前に少なくとも1週間順応させた。BALBc及びC57BL6/BALBc F1マウスを用いた。示したように、ルイスラットを用いた。
【0131】
実施例1に記載のようにして調製した免疫原を緩衝生理食塩水に取り、マウス及びラットに腹腔内注射、並びにウサギに皮下注射した。特に明記しない限り、マウスを1mgの免疫原で第0日及び第2週に腹腔内免疫し、滴定のため血清を第4週に採取した。他の投与計画及び種は図面に記載した通りである。
【0132】
表3は、以下の実施例で使用する免疫プロトコール及び動物血清のGMTについて説明する。
【0133】
【表3】
【0134】
本明細書で考察する免疫原に用いる破傷風トキソイドT細胞ヘルパー配列はもともとヒト細胞において無差別ヘルパー活性を有することが発見されたものであり、複数の動物種において幅広い活性を有すると思われることに注意されたい。
B. 組換え全長Tat
rTat−His6はATG Laboratories社によって作製された。コンセンサスHIV−1 Tat HXBIII配列を部位特異的突然変異誘発法で修飾し、8種の全長(1〜72アミノ酸)免疫優勢Tat変異体を作製し、これらを上記表1にREK、KEK、SEK、NEK、NEN、NDN、KEN、NEN、及びSENとして特定した。
【0135】
各変異体を大腸菌で発現させ、非変性型で抽出し、ニッケルカラムで非変性条件下にて単離した。透析してイミダゾールを除去後、アリコートを−70℃で凍結保存した。これらの調製物を、以下に記載するように、バイオアッセイに、及び抗Tat結合の抗体滴定の基質として用いた。
【実施例3】
【0136】
血清の滴定
抗Tat力価を測定するために慣用のELISA法で血清をアッセイした。簡潔に言えば、Maxisorpイムノプレートを2ng/ウェルのrTatでコーティングし、22℃で1時間又は4℃で一晩インキュベーションした。0.1%Triton X−100緩衝液で徹底洗浄後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングし、再洗浄し、血清希釈を適用し、22℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートをTriton X−100緩衝液で再度徹底洗浄し、1/10,000希釈のヤギ抗マウスIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(又はラット若しくはウサギに適切な試薬)を適用した。次にプレートを22℃で1時間インキュベーションし、その後徹底洗浄し、ABTSを用いてシェーカーテーブル上で室温にて45分間現像した。405nmにて吸光度を測定した。血清が欠如している対照ウェルを測定し、滴定終点は、ODが平均+8SDより高い最低希釈の逆数とした。
A. 実験用免疫原で免疫した動物と対照免疫原で免疫した動物との幾何学的平均抗体力価(GMT)の比較
図1は、2種の一般的エピトープ1変異体、V−D−P−R−L−E−P−W−K(配列番号7)及びV−D−P−N−L−E−P−W−N(配列番号11)を含有する2種のrTatに対する、免疫マウス由来免疫血清の幾何学的平均力価(GMT)を示すグラフである。図1のX軸の下に特定した免疫原は、実施例1に記載のようにして合成し、その実施例で特定されている。Tヘルパー配列として用いる免疫原は、ヒトに用いるために記載した破傷風トキソイド無差別Tヘルパー配列(Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L;配列番号47)又は無差別ヒトDR結合のために操作したPADRE Tヘルパー配列(Xaa1−K−Xaa2−V−A−A−W−T−L−K−A−A−Xaa3;配列番号46)であり、式中、Xaa1及びXaa3はそれぞれD−アラニンであり、Xaa2はL−シクロヘキシルアラニンである。PADRE含有免疫原に関するデータは図面に示していない。
【0137】
図1の結果は、これらTat変異体単独に対する血清の交差反応性欠如とは逆に、免疫血清は2種の一般的Tatエピトープ1変異体と同様に反応したことを示している。実験用リポペプチド免疫原は、GMTが50,000より大きいことを実証する抗体を誘導した。逆に、リポペプチドキャップが欠如している免疫原及びPam2KSSキャップを有する免疫原も含め、Pam2CSS−又はPam3CSS−N端キャップが欠如している免疫原は、最大GMTが2〜3,000の抗体を誘導した。
B. 実験用免疫原で免疫した動物のrTat変異体に対するGMT
実施例1の式
【0138】
【化14】
【0139】
の実験用免疫原で免疫した1匹のマウス由来の血清を、抗Tat抗体力価について試験した。図2は、X軸に沿って提示した全長変異体組換えTatタンパク質、即ち上記表1に特定されているようなREK、NEN、KEK、KEN、SEK、NEK、SEN、及びNDN、即ちそれぞれ配列番号15、19、16、21、17、18、22、及び20に対する、血清中の抗体のGMTを示すグラフである。
【0140】
Tat変異体REK(Bクレード)及びNEN(非Bクレード)は最も頻出するものであり、図2において網掛けされている。血清は、全てのTatエピトープ1変異体に対するGMTが>100,000を示した。
C. 実験用免疫原のブースター用量のGMTに対する効果
2匹のマウスを、第0日に1mgの腹腔内プライミング用量、その後第2週に1mgの腹腔内ブースター、そして第30週に0.3mgの腹腔内第2ブースターというプロトコールにて、実験用免疫原Pam2C−S−S−マウスTヘルパー配列−V−D−P−(R/K/N/S)−L−E−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド(配列番号3;Tatアミノ酸残基7及び12が「ゆらぎ」)で免疫した。全長Tat変異体REK(配列番号15)及びNEN(配列番号19)に対して血清を滴定した。力価は第4週〜第16週に幾分低下し、第28週にわたって80,000にて安定に維持され、その後、第30週の0.3mgブースト後2週間顕著な上昇を示した。図3は、2匹のマウス血清に関するこれらの結果を示すグラフである。
【実施例4】
【0141】
Tat活性及び抗体による阻害のバイオアッセイ
A. バイオアッセイ
HIV−1は、休止期CD4+ T細胞へ入ることができるが、T細胞が活性化されないと複製することができない。Tatはヒト末梢血単核細胞(PBMC)においてCD4+ T細胞を活性化する。このTat誘導性の活性化及びHIV−1複製に対する寛容性は、Liら、1997、Proc Natl Acad Sci USA 94:8116において考察されているように、抗Tat抗体によって阻害することができた。以下のようにして実施した、ヒトPBMCにおけるHIV−1複製に対するTat誘導性の寛容性の抗体による阻害に関するバイオアッセイは、これらの観察に基づいている。
【0142】
PBMCは、Astarte Biologicsから入手したものであり、所定の献血において同一ドナーから採取した30本の凍結PBMCアリコートで構成されていた。細胞を溶解し、適切に希釈し、平底96穴組織培養プレートに入れた500,000個の細胞を含有する100μl培地(完全RPMI培地、ギブコ)中で分散させた。適切な濃度のrTat又はrTat/Ab溶液を加えた(室温で30分間のプレインキュベーション後)。5〜6%CO2及び80〜90%湿度にてプレートを37℃で5日間インキュベーションした。5日目に培地をピペットでウェルに入れ、細胞をプレート表面から剥がした。細胞をV底96穴プレートへ移し、400×G(約1300rpm)にて10分間室温で遠心分離し、その後培地を除去した。原液HIV−1(HXBIII)(Zeptometrix社)を1/10希釈したもの100μlを加え、CO2インキュベーター中で37℃にて4時間インキュベーションした。徹底洗浄後、細胞を培地中で更に4日間インキュベーションした。次に細胞を上記のように遠心分離し、HIV−1 p24レベルのELISA測定(Xeptometrix社製キット)用に培地を回収した。製造者の指示にしたがいp24アッセイを行った。
【0143】
代表的バイオアッセイの結果を図4に示す。下部の点線はTatを含まないバックグラウンドHIV−1 p24レベル(ng/ml)を示し、上部の線は10ng/ml Tatを有する平均p24レベル(ng/ml)を示す。3μg/ml抗Tatモノクローナル抗体(Mab)及び10μg/ml抗Tatモノクローナル抗体を用いて阻害の用量反応曲線を作成したところ、それぞれ87%及び97%阻害を生じ、非常に統計的に有意であった(それぞれP<0.001及び0.0001)。
【0144】
正常マウス血清(NMS)は、Tat非存在下でさえこのアッセイで予測できない効果を有していた。したがって、抗Tat Mabと力価比較するために、10μg/mlのMabをNMSへ加えた。この「抑圧された」NMSのTatに対する力価を実施例3に記載のようにして測定した。10μg/ml抗Tat Mabの力価は40,000であり、これは、Tat誘導性のHIV−1複製の>90%阻害を与えるために免疫マウスにおいて必要とされるであろう血清力価の概算値、即ち12,000〜40,000を提供した。
B. 抗体による遊離Tat濃度の阻害
毒素の抗体処理は、高親和性抗体による毒素の結合が前提となっており、遊離毒素濃度を低下させ、それにより毒素に関連する毒性をブロックする(Nowalowskiら、2002、Proc Natl Acad Sci USA 99:11346)。これは、in vitroでもin vivoでも当てはまる(前記)。したがって、抗Tat Mab及び免疫抗Tat血清による遊離Tat濃度の低下を測定するためのアッセイを行い、独立した手順により、HIV−1複製をin vivoで制御するために必要な力価の上記概算値を検証した。
【0145】
このTat ELISAアッセイの原理は、抗Tat Mab又は抗Tat免疫血清を、正常IgG又はNMS対照と平行して、プロテインAコーティングビーズ(Pierce ImmunoPure Protein A plus resin)を用いて結合させることである。必要な希釈にてこれを行い、チューブを室温にて少なくとも1時間チューブローテーター上でインキュベーションした。次にチューブをマイクロ遠心機にて6,000rpmで30秒間遠心分離し、樹脂を沈殿させ、血清サンプルを取り出した。次に樹脂を徹底洗浄し;Tat溶液(200ng/ml)を加え;チューブを室温にて少なくとも1時間チューブローテーター上でインキュベーションした。次にチューブを6,000rpmにて30秒間遠心分離し、樹脂を沈殿させ、解析のために上清を新たなチューブへ取り出した。
【0146】
Tat ELISAは、プレートのコーティングに高親和性抗Tat免疫優勢エピトープMabを使用し、検出抗体としてポリクローナルウサギ抗Tatエピトープ2(1/4,000)を使用する。エピトープ2配列は、保存されたHIV−1 Tat配列K−(A/G)−L−G−I−S−Y−G−R−K(配列番号5)である。rTat(実施例2)を用いて検量線を作成する。次に試験上清及び対照上清中の未結合Tat濃度を用いて、抗Tat曝露条件における遊離Tat濃度の%阻害を対照濃度との比較により計算する。
【0147】
図5及び図6は、そのようなアッセイ実験を用いて、in vivoでHIV−1複製を制御するために必要な力価が12,000〜40,000であるという先の概算の正当性を実証している。図5は、抗Tat Mabによる遊離Tat濃度の%阻害を示しており、3〜10μg/mlの範囲で完全阻害され、これはTatに対する力価12,000〜40,000に相当する(上記を参照されたい)。図6は、高力価(640,000)マウス抗Tat血清を希釈して実施した同様の実験を示している。やはり遊離Tat濃度の最大阻害は、12,000〜40,000の力価範囲で生じている。
【0148】
10%及び1%希釈のTat免疫血清及び正常マウス血清にて、同様に第2のELISA実験を5重に行った;2種の最も一般的な形態である免疫優勢エピトープREK配列(配列番号7)又はNEN配列(配列番号11)を有する2種の組換えTatタンパク質のそれぞれに対する免疫血清のTat抗体力価は256,000であった。2種のTat変異体の減少を試験した。
【0149】
図7A及び図7Bは、血清中の抗体による%阻害又は遊離Tatの減少を実証している。10%希釈の力価は25,000、1%希釈の力価は2,500であった。実験用免疫原(試験REK)で免疫したマウス血清は、REK Tat変異体に対して試験したところ、対照の高Tat濃度と比較して、1%希釈では遊離Tat濃度の49%阻害を、10%希釈では92%阻害を示した。NENに対して試験した免疫マウス血清で同様の結果を示した。対照の高Tat濃度と比較して、1%希釈では遊離Tat濃度の33%阻害を測定した;一方、10%希釈では87%阻害を測定した。これらの阻害は、図面に提示したP値によって示すように統計的に有意であった。
【実施例5】
【0150】
力価−ワクチン構築、用量、頻度、及び種の効果
A. 免疫
動物は、Harlan Laboratoriesから購入し、Molecular Diagnostic Services社にて免疫前に少なくとも1週間順応させた。BALBc及びC57BL6/BALBc F1マウスを用いた。記載のようにルイスラットを用いた。実施例1に記載のようにして調製した免疫原を緩衝生理食塩水中に取り、マウス及びラットに腹腔内注射し、カニクイザルに皮下投与した。第0日及び第2週(第14日)に動物を免疫原で免疫し、第4週(第28日)に滴定のため血清を採取した。用量/動物を抗Tat力価とともに表4に記載する。
【0151】
【表4】
【0152】
B. 結果
ラット及びサルに関して10.0mg/動物の最適用量を同定した。匹敵する用量/動物を用いたところ、サルにおける力価はラットよりも大きく、ラットにおける力価はマウスよりも大きかった。毒性は用量/kgに関係するようであるが、免疫原性は関係しないようである。Pam2Cでキャップされた免疫原は、Pam3Cでキャップされた免疫原よりも高い力価を誘導することがわかった。
【実施例6】
【0153】
用法・用量の最適化
A. 免疫
動物は、Harlan Laboratoriesから購入し、Molecular Diagnostic Services社にて免疫前に少なくとも1週間順応させた。BALBc及びC57BL6/BALBc F1マウスを用いた。実施例1に記載のようにして調製したPam2Cでキャップされた免疫原を緩衝生理食塩水に取り、腹腔内注射した。1.0mg/マウスのPam2Cでキャップされた免疫原を3回注射することによりマウスを免疫し、第1ブースト前、及び表5による各ブーストの2週間後に力価を測定した。表5に示すように血清を採取した。
【0154】
【表5】
【0155】
B. 結果
3週毎の連続的注射が最高の力価を提供した。表4のデータ(実施例5を参照されたい)に基づき、このプロトコールがラット及びサルにおいて更に高い力価でさえ誘導することが予想される。
【実施例7】
【0156】
Pam3Cでキャップされたペプチドで免疫したラットのGMT
実施例6のプロトコールにしたがい、実施例1の式
【0157】
【化15】
【0158】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫したラット由来の血清を抗Tat抗体力価について試験した。図9は、8点それぞれが1種のTat変異体に対する血清中の抗体のGMTを表すグラフである。血清のGMTは>1,000,000であった。
【実施例8】
【0159】
免疫血清による遊離Tatレベルの低下
A. Tat枯渇アッセイ
抗体を保持するがrTatの拡散は容認する膜の欠如により、Tat枯渇を測定するための古典技術を使用することはできなかった。簡潔に言えば、このアッセイは、rTatへ曝露する抗体でコーティングしたビーズを使用し、インキュベーションする。抗体は溶液中のTat量に応じてTatに結合する。したがって、このアッセイは、血清中の抗体が全長組換えTatの量を枯渇させるのはどのウェルかを測定する。
【0160】
対照:HIV−1 TatのB細胞エピトープ(10%又は1%)で免疫していない正常ラット血清をプロテインAビーズに結合させ、洗浄した。
【0161】
サンプル:免疫ラットの10%及び1%血清のIgGをプロテインAビーズに結合させ、洗浄した。実施例3に記載の方法にしたがって測定したところ、未希釈血清の抗Tat力価は1,000,000である。
【0162】
次に対照及びサンプルのプロテインAビーズを室温で30分間rTat溶液とともにインキュベーションした。遠心分離後、上清中のTatレベルをサンドイッチELISAで測定した。10%又は1%の免疫血清コーティングプロテインAビーズへの曝露後の遊離Tatを、それぞれ10%又は1%の正常マウス血清コーティングプロテインAビーズへ曝露後の遊離Tatに対する割合で表した。
B. 結果
図10はアッセイの結果を反映している。10%の血清は上清中でおよそ90%のTatに結合することがわかった。同様に、1%の血清は上清中でおよそ50%のTatに結合することがわかった。
【実施例9】
【0163】
リポペプチドキャップのリンカー内への極性荷電配列の挿入による水可溶化
本明細書に記載のようなPam2Cys又はPam3Cys又はNAc(Pam2)Cとともに設計した免疫原は、水性溶媒に不溶であることがわかった。全3種のリポペプチドキャップを有するリポペプチドの水性溶媒への溶解性を達成するため、これら免疫原をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、リン酸緩衝生理食塩水で希釈して5〜10%DMSOとした。これは乳白色の幾分混濁した溶液を生じ、これを動物へ注射した。
【0164】
Pam2CSKKKKS(配列番号73)でキャップされたリポペプチドを合成したところ、溶解性が向上し、透明溶液を生ずることがわかった。溶解性は低下したpH値で最高であり、pH4.0で最適であり、pH5.0〜6.0では透明溶液を得るために最初に加温と攪拌が必要であった。4℃で一晩保存後も透明溶液を維持した。得られた結果の詳細は、以下の表6に反映されている。Pam2CSKKKKS(配列番号73)でキャップされたリポペプチドは、注射用蒸留水中の25mg/mLマンニトールにも完全に可溶性であり、容易に凍結乾燥されて「ケーク」を形成し、これは加えた注射用蒸留水に完全に溶解性であった。
【0165】
【表6】
【実施例10】
【0166】
荷電極性配列含有免疫原で免疫したラットのGMT
1群あたり3匹のラットを、Pam3Cのリンカーに隣接した極性荷電配列(即ち−S−K−K−K−K−S−)を有する式
【0167】
【化16】
【0168】
に包含される全実験用免疫原の混合物にて異なる投薬量/群で免疫した。この免疫原を「TUTI−K4」と称する。各ラットに、0.1mg TUTI−K4、又は1mg TUTI−K4、又は10mg TUTI−K4の用量を第0日に投与した。各ラットを同一用量で第3週にブーストした。各ラットの、全長組換えTat(1〜72アミノ酸)REK変異体タンパク質に対する血清抗体力価を測定した。
【0169】
図11のグラフに示すように、第5週までに、全ての用量は約500,000(0.1mg用量)又は約1,000,000(1mg及び10mg用量)のGMTを提供した。これらの力価は全て99%を超える遊離Tatレベルの低下に関連している。10mg群においてより急速に初期力価が上昇したにもかかわらず、1mg/ラットを投与されたラットは5週間にわたり同一力価を達成したように見えた。第8週に投与すべき第2ブースト後に得られる力価は3,000,000を超えることが期待される。
【0170】
このデータに基づき、この免疫原は、良好な治療的力価を達成するために必要とされるワクチン量において10〜100倍の用量低下を可能にすることが期待される。例えば、0.1mg/mLもの低用量、又は0.01mg/mLであっても、治療的に有効な力価を達成すると思われる。そのように低い治療的有効用量は、劇的且つ予想外の治療効果及び費用便益を世界中の患者集団に提供するであろう。
【0171】
上で説明した態様の数多くの修飾及び変異は、本明細書に含まれるものであり、当該技術分野に熟練した者にとって自明であることが予想される。本明細書に記載の組成物及びプロセスに対するそのような修飾及び改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内に包含されると考えられる。先に列挙又は参照した全ての文献は、米国仮出願第60/837,493号を含め、添付の配列表とともに本明細書に援用される。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
HIV−1の短時間な変異性は、ユニバーサルなHIV−1治療用免疫原性組成物及び予防用免疫原性組成物を作製するための試みを挫折させてきた。しかしながら、HIV−1にコードされ、HIV−1感染細胞によって分泌され、そして非感染CD4+ T細胞に取り込まれるTatと呼ばれるトランス活性化タンパク質は、大規模なHIV−1複製に必要不可欠なものである。休止期CD4+ T細胞は、HIV−1複製を持続させる主体「組織」であるが、HIV−1複製を容認せず、Tatの活性化がそれを許容させる。したがって、循環Tatタンパク質が、HIV−1ウイルス血症の維持に必要とされる必須経路を免疫学的に阻止するための有望な標的を提供する。
【0002】
tat遺伝子及びそのタンパク質は配列決定されており、HIVの提唱された治療への関与について研究されている(例えば米国特許第6,525,179号中の引用文献を参照されたい)。細胞によるTatの取り込みは非常に強力であり、前記タンパク質の短い塩基性配列によって介在されると報告されている(S.Fawellら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、91:664−668)。本発明者による先の科学出版物及び特許公報は、Tatのアミノ酸配列は非常に変化しやすいが、Tatの免疫優勢B細胞エピトープであるエピトープ1は、アミノ酸4〜16にわたっており、非常に保存され、7位で4倍変異(Arg、Lys、Asn、又はSer)、9位で2倍変異(Glu又はAsp)、そして12位で2倍変異(Lys又はAsn)を示すことを証明している。例えばG.Goldstein、1996、Nature Med.、2:960;G.Goldstein、2000、Vaccine、18:2789;1995年11月30日公開の国際公開公報WO95/31999号;1999年1月21日公開の国際公開公報WO99/02185号;2001年11月8日公開の国際公開公報WO01/82944号;米国特許第5,891,994号;第6,193,981号;第6,399,067号;第6,524,582号;及び第6,525,179号;米国特許出願公開US2003/0,166,832号及びUS2003/0,180,326号を参照されたい。その後他の研究者らは、Tat配列におけるこれらの変動性のいくつかについて記載している。例えば、とりわけ、Tikhonovら、2003、J.Virol.、77(5):3157−3166;Ruckwardtら、2004、J.Virol.、78(23):13190−13196;並びに関連する国際公開公報WO2005/062871号及びWO2004/056316号を参照されたい。
【0003】
Tatタンパク質に対するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が動物で作製され、Tatタンパク質の取り込みをin vitroでブロックすることが示されており、組織培養培地に添加したTatタンパク質に対するそのようなモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体はin vitroでHIV−1感染を弱毒化した(例えば米国特許第6,524,582号中の引用文献を参照されたい)。これら抗体の組み合わせ、特に1種のエピトープ1変異体に対する抗体とそれぞれ異なるエピトープ1変異体に結合する1種以上の抗体との組み合わせで形成される組成物は、Bクレード及び非BクレードともにHIV−1の複数の株及びサブタイプに特徴的な非常に多くのTat変異体配列に結合可能である。これらの抗体組成物は、被験者を受動免疫するため、即ち初期感染のあいだ及び/又は血清変換後のウイルス量がより少ないあいだにHIV−1感染性を阻害するために設計されており、したがってAIDSへの進行を遅延させる。更に、そのような抗Tat抗体のこれらの得られる組成物又は混合物は、ウイルスの多くの株及びサブタイプに対する治療となり、したがって、さまざまなそして株特異的な治療剤に対する必要性を除去する。HIV−1感染を治療するための各種受動免疫組成物の開発において多くの研究が進行中である。
【0004】
組成物が宿主において抗Tat抗体を誘導する活性な免疫は、治療及び予防に代替アプローチを提供する。発明者自身の出版物、及びその他によってそのような免疫が提唱されている。しかしながら、現在まで、AIDSを有効に治療又は予防するのに十分な免疫応答を誘導可能な、「ユニバーサル」なHIV−1治療用免疫原性組成物及び予防用免疫原性組成物を作製し、使用するための新規で有用な組成物及び方法に対する必要性が当該技術分野に依然として存在する。そのような組成物は、ヒト免疫不全ウイルス−1(HIV−1)に慢性的に感染している症候性又は非症候性の被験者に免疫してAIDSへの進行を最小限にするため(治療用組成物)、及び非感染被験者を免疫してその後のHIV−1感染後の慢性ウイルス血症やAIDSの確立を妨げるため(予防免疫)に有用であろう。当該技術分野において満たされていない必要性は、複数のTatエピトープ1変異体(したがって複数のHIV−1株及びサブタイプ)に対して誘導された抗体力価を得るために十分な方法でTatエピトープ1の変異体を提供し、その力価は十分に高く、組成物の頻繁な反復再投与の必要性を回避する治療用又は予防用組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本明細書に記載の組成物及び方法は、当該技術分野におけるこの必要性に取り組むための予防剤及び/又は治療剤として有用である。
【0006】
1つの側面では、複数の株及びサブタイプのHIV−1による感染予防に有用な、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物を記載する。この組成物には複数の免疫原が含まれ、各免疫原は、リポペプチドキャップ(R2)、ユニバーサルTヘルパー配列(R1)、及びHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープで構成される。1つの態様では、各免疫原は、式:R2−(R1−HIV−1 TatのB細胞エピトープ)(式I)を有する。この式によれば、R2は免疫原中に3カ所の位置的配置を有する。1つの態様では、R2リポペプチドキャップ(図8A〜図8Cを参照されたい)は、そのCysを介して、又は10アミノ酸以下の任意のリンカー配列を介して、Tヘルパー配列R1のアミノ端アミノ酸のαアミノ基に連結しており、R1はB細胞エピトープのアミノ端に連結している。他の態様では、R2リポペプチドキャップは、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、R1 Tヘルパー配列とB細胞エピトープとのあいだに挿入されたリジン残基のε−アミノ基に連結している。更に他の態様では、R2リポペプチドは、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、免疫原のB細胞エピトープのC端に挿入されたリジン残基のε−アミノ基に連結している。
【0007】
更に他の態様では、R1ヘルパー配列とB細胞エピトープは逆の順序でもよく、R2リポペプチドキャップは、上記3カ所の位置のうちいずれか1カ所においてそのリンカーアミノ酸を介して連結している。本明細書に開示の代替式によるものなど、更に他の順序の免疫原成分の配列が意図される。
【0008】
いくつかの態様では、R2リポペプチドキャップは、1〜10個の中性アミノ酸のリンカーを含み、免疫原の他の成分に連結している。他の態様では、類似のリンカーを使用して、免疫原の他の成分を一緒に連結する。
【0009】
更なる態様では、リンカー配列を提供するか又は提供しない荷電極性アミノ酸の配列が免疫原のさまざまな位置に存在する。1つの態様では、荷電極性配列は、R2キャップのCysの後に、又はR2リポペプチドキャップの任意のリンカー中性アミノ酸とR1ヘルパー配列とのあいだに挿入される。他の態様では、リンカー単独で又はそのような極性配列とともに、R1ヘルパー配列とHIV−1 TatのB細胞エピトープとのあいだにいずれかの順序で挿入される。更に他の態様では、リンカー単独で又はそのような極性配列とともに、R1又はHIV−1 TatのB細胞エピトープのカルボキシ端に挿入され、いずれにしても免疫原のC端に位置付けられる。更なる態様では、いずれかが免疫原のアミノ端に位置付けられている場合は、リンカー単独で又はそのような極性配列とともに、R1又はHIV−1 TatのB細胞エピトープのアミノ端に挿入される。
【0010】
各免疫原に関する特定の態様では、R2は、以下に記載のように、1個又は10個以下の中性リンカーアミノ酸を含んでいてもよい、図8Aのジパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam2Cys)である。各免疫原に関する特定の態様では、R2は、図8BのN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)(NAc−(Pam2)C)であり、任意のリンカーアミノ酸を含むこともできる。各免疫原に関する特定の態様では、R2は、図8Cのリポペプチド トリパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam3Cys)であり、任意にリンカー配列を含むことができる。
【0011】
これら免疫原性組成物の1つの態様では、上記広範な式の各免疫原は、組成物中の同一式の他の免疫原と、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ(即ちエピトープ1)のアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって異なっている。これら免疫原性組成物の1つの態様では、R1成分、R2成分、及びHIV−1 TatのB細胞エピトープ成分の配列が異なるか、あるいはR1成分及び/又はR2(Pam2Cys又はNAc(Pam2)C又はPam3Cys)成分の同一性が異なる、本明細書における広範な式の複数の免疫原は、混合物中で組み合わせることができる。そのような組成物は、被験者を免疫するために使用する場合、幾何学的平均力価(GMT)が少なくとも50,000、少なくとも300,000、又は100万より大きい、HIV−1 Tatタンパク質(Bクレード及び非Bクレード)の複数の変異体と反応性の抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。
【0012】
他の側面では、医薬組成物は、本明細書に規定する自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物、及び好適な医薬担体又は賦形剤を含む。この組成物は、哺乳動物被験者をそれで免疫する場合、Tatの複数の免疫優勢エピトープ(即ちエピトープ1)変異体に対するGMTが50,000より大きく、又は300,000より大きく、又は100万より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導することも立証している。他の態様では、この組成物は、哺乳動物被験者をそれで免疫する場合、Tatの複数のエピトープ1変異体に対するGMTが1,000,000より大きく、そして3,000,000に至るまでの抗HIV−1 Tat抗体を誘導することも立証している。
【0013】
更に他の側面では、本明細書に記載の有効な抗体誘導量の免疫原性組成物又は医薬組成物で被験者を免疫することによって、複数のHIV−1株及びサブタイプに対するGMTが高い抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する方法を提供する。特定の態様では、Tatの複数の免疫優勢B細胞エピトープ変異体に対するGMTは50,000より大きい。他の態様では、特に、本方法が組成物のプライム用量及び1回以上のブースター用量を使用する態様では、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTは顕著に高く、例えばおよそ100,000より大きく、300,000より大きく、又は1,000,000より大きい。
【0014】
他の側面では、HIV−1感染を治療及び/又は予防するための医薬の製造における上記免疫原の使用を提供するものである。医薬は、複数のHIV−1株及びサブタイプに対するGMTが高い抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する。
【0015】
更に他の側面では、本明細書に記載の組成物を作製する方法は、上記式においてXaa7、Xaa9、及びXaa12で示される変異体アミノ酸を等モル量で単一合成混合物中に導入することを包含する。
【0016】
更に他の側面では、免疫原内の少なくとも1カ所の位置に荷電極性残基を導入することにより水溶性を付与し、水性製剤及び/又は凍結乾燥製剤を容易にする。
【0017】
これらの方法及び組成物の他の側面及び利点を、以下の詳細な説明において更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、Tatの免疫優勢B細胞エピトープ(即ちTatエピトープ1;TEP1)免疫原によってアジュバントを加えることなく誘導された幾何学的平均力価(GMT)を有する抗Tat抗体を示すグラフである。Tatの2種の一般的な免疫優勢エピトープ変異体V−D−P−R−L−E−P−W−K(Tatの免疫優勢エピトープ7位、9位、及び12位に存在するアミノ酸残基を確認する上でREKとも称する)(配列番号7)及びV−D−P−N−L−E−P−W−N(上記と同一の理由で本明細書においてNENとも称する)(配列番号11)を含有する2種のrTatで免疫したマウス由来の免疫血清からこれらの結果をプロットした。図1のX軸の下に特定した免疫原には、実施例1に記載のように合成して同定した実験用免疫原(Pam2−QYIK−TEP1及びPam3−QYIK−TEP1)並びに余り有効でない免疫原(QYIK−TEP1及びPAM2K−QYIK−TEP1)が含まれる。実験用免疫原で免疫したマウスの血清は、GMT>50,000の抗Tat抗体を示し、これらは対照免疫原によって誘導された抗体のGMTよりも劇的に高かった。これらの結果は、液性免疫応答を増強するための実験用免疫原におけるリポペプチドキャップの必要性、並びに構造特異的リポペプチドキャップの必要性を立証しており、即ち、Pam2Kのリポペプチドとしての使用は、実験用免疫原で誘導される高GMT抗体を得るには十分でなかった。
【図2】図2は、式(Tat1の免疫優勢エピトープを太字の1文字アミノ酸略語で、ゆらぎを括弧内に示す):
【化1】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫した1匹のマウスの血清中の抗体の、組換え全長Tatの全変異体(1〜72アミノ酸)に対する力価を示すグラフであり、変異体は発生率の順にX軸に沿って左から右へ表示されている。アミノ酸R7、E9、及びK12、又はN7、E9、及びN12の優勢なrTat変異体、例えばREK(Bクレード)及びNEN(非Bクレード)は網掛けされている。変異体を表1及び実施例2に特定する。血清は、Tatの全8種の免疫優勢エピトープ変異体に対し、幾何学的平均抗体力価>100,000を示した。
【図3】図3は、実験用免疫原Pam2C−S−S−マウスTヘルパー配列−V−D−P−(R/K/N/S)−L−E−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド(配列番号3;Tatアミノ酸残基7位及び12位が「ゆらぎ」)で、第0日に1mg腹腔内プライミング用量、その後第2週に1mg腹腔内ブースター、そして第30週に0.3mg腹腔内第2ブースターのプロトコールにより免疫した2匹のマウス由来血清の逐次力価を示すグラフである。Tatの免疫優勢B細胞エピトープ変異体 配列番号15:V−D−P−R−L−E−P−W−K−H−P−G−S−(REK)(○、REKに対するマウス1;及び△、REKに対するマウス2)及び配列番号19:V−D−P−N−L−E−P−W−N−H−P−G−S−(4アミノ酸のC端隣接配列−H−P−G−S−を有するNEN)(◇、NENに対するマウス1;及び▽、NENに対するマウス2)に対して血清を滴定した。抗体力価は、第4週〜第16週に幾分減少し、第28週まで80,000で安定なままであった。抗体力価は、第30週の0.3mgブースト後2週間顕著な増加を示す。これらのデータは、プライム・ブースト法は少なくとも4ヶ月間有効レベルを維持することができ、その後の追加ブーストは力価を更に増加させることを立証している。
【図4】図4は、実施例4Aに記載のような、ヒトPBMCにおけるHIV−1複製のためのTat誘導性の許容の抗体阻害に関するバイオアッセイのグラフである。データは、HIV−1複製のためのPBMCのTat誘導性の許容の抗Tat Mabによる阻害を示している。下部の点線は、TatのないバックグラウンドHIV−1 p24レベル(ng/ml)を示す;そして上部の線は、10ng/ml Tatを有する平均HIV−1 p24レベル(ng/ml)を示す。阻害の用量反応曲線を作成したところ、3μg/ml抗Tatモノクローナル抗体(Mab)及び10μg/ml抗Tatモノクローナル抗体はそれぞれ87%及び97%阻害を生じ、統計的に非常に有意である(それぞれP<0.001及び0.0001)。
【図5】図5は、実施例4BのELISAにおける、図4で使用したのと同一の抗Tat MAbによる%阻害又は遊離Tat濃度の低下を示すグラフである。3〜10μg/mlの範囲にわたって完全阻害が観察され、これはTatに対する抗体力価12,000〜40,000に相当する。
【図6】図6は、実施例4BのELISAにおける、高力価マウス抗Tat血清の希釈による%阻害又は遊離Tat濃度の低下を示すグラフである。遊離Tat濃度の最大阻害は、12,000〜40,000力価範囲で生ずる。
【図7】図7Aは、実施例4BのELISAにおける、中等度力価の抗Tat血清マウス5匹/群)の使用による%阻害又は遊離Tat濃度の低下を立証しているグラフである。マウス血清の力価は256,000であり、10%希釈で力価25,000、1%希釈で力価2,500であった。試験REK(◇)は、実験用免疫原で免疫したマウスの、REK Tat変異体に対して試験した血清である。対照REK(◇、太字の菱形)は、REK Tat変異体に対して試験した正常マウス血清である。対照における高濃度Tatと比較して、1%希釈した免疫マウス血清では遊離Tat濃度の49%阻害を示し、10%希釈では血清は92%阻害を示した。 図7Bは、実施例4BのELISAにおける、中等度力価の抗Tat血清(マウス5匹/群)の使用による%阻害又は遊離Tat濃度の低下を立証しているグラフである。マウス血清の抗体力価は256,000であり、10%希釈で力価25,000、1%希釈で力価2,500であった。試験NEN(◇)は、実験用免疫原で免疫したマウスの、NEN Tat変異体に対して試験した血清である。対照NEN(◇、太字の菱形)は、NEN変異体に対して試験した正常マウス血清である。対照における高濃度Tatと比較して、1%希釈した試験NENでは遊離Tat濃度の33%阻害を示し、10%希釈では87%阻害を示した。
【図8】図8Aは、リポペプチドキャップ、ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam2C又はPam2Cys)の化学構造である。 図8Bは、リポペプチドキャップ、N−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)(NAc(Pam2Cys)又はNAc(Pam2C))の化学構造である。 図8Cは、リポペプチドキャップ、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam3C又はPam3Cys)の化学構造である。
【図9】図9は、式:
【化2】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫した1匹のラットの血清中の抗体の、ゆらぎ位置7位、9位、及び12位におけるアミノ酸残基によって名付けられた8種の全長rTat(1〜72アミノ酸)変異体タンパク質(REK、KEK、SEK、NEK、NEN、NDN、KEN、及びSEN)に対する力価を示すグラフである。各点は、8種の変異体のうち1種に対するGMTを表す。血清は、全8種のTatのエピトープ1変異体に対して抗体力価>1,000,000を示した。第0日にプライム、第3週に第1ブースト、第6週に第2ブースト、及び第8週に力価測定のために出血させるという好ましい免疫法を用いた。
【図10】図10は、実施例8のTat枯渇アッセイの結果を示すグラフである。溶液中に残留する各遊離全長rTat変異体(上記のように命名)の濃度を、1%又は10%ラット免疫血清(プロテインAビーズに結合した実施例1の免疫原で免疫したラットから採取)とともにインキュベーション後に測定した。遊離Tatを、正常非免疫ラット血清対照(1%又は10%正常ラット血清プロテインAコーティングビーズに曝露後の遊離Tat)に対する割合で表した。点線は10%遊離Tatである。
【図11】図11は、Pam3Cのリンカー(即ち−S−K−K−K−K−S−)(配列番号64)が隣接した極性荷電配列を有する式:
【化3】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫したラットの血清中の抗体の長期間の力価を示すグラフである。この免疫原を「TUTI−K4」と称する。第0日に0.1mg TUTI−K4(▽)、又は1mg TUTI−K4(◇)、又は10mg TUTI−K4(●)を各用量について3匹のラットにそれぞれ投与し、第3週に同一用量でブーストした。全長rTat(1〜72アミノ酸)変異体タンパク質REKに対する力価を測定する。第5週までに、10mg及び1mg用量はともにGMT約1,000,000を提供し、0.1mg用量はGMT約500,000を提供した。これらの力価は全て、遊離Tatレベルの99%を超える低下に関連している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書に記載の組成物及び方法は、ヒト被験者において複数の株及びサブタイプのHIV−1感染の治療、進行抑制、及び予防に使用するための、治療用及び予防用免疫原性組成物に関する当該技術分野における必要性に取り組むものである。1つの態様では、これらの組成物は、あらゆる種類のHIV−1株及びサブタイプに対して有効な製剤並びに治療的及び予防的療法の適用を包含する。「ユニバーサルな」HIV−1予防用及び治療用免疫原性組成物、即ち複数のHIV−1株及びサブタイプ、特に、最も頻繁に発生するそれらの株及びサブタイプのTatタンパク質を阻止する上で有効な組成物を作製するために、発明者は複数の課題を克服した。本明細書に記載の組成物は、(1)免疫原性エピトープのペプチド配列内に変動性を組み込んでユニバーサルな組成物を作製し;(2)ヒトへの使用に許容可能な強力な免疫原性部分を作製し;そして(3)注射用蒸留水で容易に再構成される凍結乾燥産物として提供することができる、水性溶媒に可溶性の免疫原を作製する。単一免疫原では、複数のHIV−1 Tatサブタイプ及び株に対し、B細胞応答とともに、ヘルパーT細胞応答を同時に高める選択配列を、自発的に抗原性を補強する特に望ましいリポタンパク質と組み合わせ、得られる配列を修飾して水溶性を高める。この組み合わせは、並外れて高い、持続的レベルの抗HIV−1 Tat抗体力価をin vivoで引き出す組成物を生ずる。
I. 組成物
1つの態様では、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物は、HIV−1 Tatペプチドを使用する特異的に設計されたさまざまな免疫原の混合物を含み、複数のHIV−1株のTatタンパク質に対する幾何学的平均力価が50,000より大きく、300,000より大きく、そして100万より大きい抗HIV−1 Tat抗体を組成物が誘導することを可能にする。本明細書で用いるような各「免疫原」は、天然には発生しないが、合成技術、例えば核酸又はアミノ酸の化学合成技術によって作製することができる組成物である。この化学合成は完全に拡張性があり、多量の免疫原を作製するための比較的安価なプロセスを可能にする。当該技術分野に熟練した者の選択で、組換えDNAの調製及び発現も利用し、免疫原のある部分を構築することも可能である。
【0020】
1つの態様では、免疫原性組成物は、1種以上の免疫原を含み、各免疫原には、リポタンパク質キャップ(R2)、ユニバーサルTヘルパー配列(R1)、及びHIV−1 Tatタンパク質の免疫優勢B細胞エピトープが含まれる。これら免疫原成分について以下に詳細に記載する。更なる態様では、免疫原性組成は、1種以上の以下の免疫原を含む:
式I: R2−(R1−HIV−1 TatのB細胞エピトープ)、あるいは
式II: R2−(HIV−1 TatのB細胞エピトープ−R1)、あるいは
式IIIa: R2−K(HIV−1 TatのB細胞エピトープ)−R1、あるいは
式IIIb: R2−K(R1)−HIV−1 TatのB細胞エピトープ。
【0021】
式I及び式IIではそれぞれ、R2リポペプチドキャップは、本明細書に記載のように、3カ所のうち1カ所の位置をとることができる。1つの態様では、R2キャップは、R2のCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、R1(式I)又はB細胞エピトープ(式II)のいずれかのN端アミノ酸のα−アミノに連結している。上記式の他の態様では、任意のリジン残基(K)が、R1 Tヘルパー配列とB細胞ペプチドとのあいだ(式I)、B細胞ペプチドとR1とのあいだ(式II)、R1のC末端(式II)、又はHIV−1 TatのB細胞エピトープのC末端(式I)に挿入されている。R2は、これら後者の態様では、R2のCys又はその任意のリンカーアミノ酸を介して、挿入されたKのε−アミノ基に連結している。
【0022】
式IIIaにおいて、Kは挿入されたリジン残基である。括弧内のB細胞エピトープは、そのカルボキシ端でKのε−アミノ基に結合している。R1のアミノ端は、K残基のカルボキシ端に直接結合している。同様に、式IIIbにおいて、Kは挿入されたリジン残基である。括弧内のR1は、そのカルボキシ端でKのε−アミノ基に結合している。B細胞エピトープのアミノ端は、K残基のカルボキシ端に直接結合している。
【0023】
特定の態様では、R2には、長さ0〜10アミノ酸の中性アミノ酸配列又はリンカー配列が含まれ、R2のリポペプチドを他の成分へ連結して免疫原を形成する。他の態様では、任意のリンカーは、選択した式に依存して、R1のアミノ端若しくはカルボキシ端に、又はB細胞エピトープのアミノ端若しくはカルボキシ端に存在する。他の態様では、溶解性を高めるため、荷電極性アミノ酸配列が、隣接リンカーアミノ酸とともに又は隣接リンカーアミノ酸なしで式の成分間又は免疫原のカルボキシ端において免疫原の式に挿入されている。リンカー配列及び極性荷電配列について以下に詳細に記載する。
【0024】
本明細書に記載の免疫原は、上記式の選択に基づいて各種構造を形成することができる。式Iの免疫原の1つの態様では、R2リポペプチドキャップは、Cys及び任意に1個以上の中性リンカーアミノ酸を含有するが、B細胞エピトープに連結しているR1 Tヘルパー配列のアミノ端でα−アミノ基に連結しており、したがって直鎖状構築物を形成する。任意の極性荷電配列は、R2のCysの後に、又はR2リンカーアミノ酸間に位置し、したがってR1に連結しているが、溶解性を高めるために、免疫原のR1及びB細胞エピトープのアミノ末端又はカルボキシ末端における追加位置に位置付けられてもよい。この式の免疫原を以下の実施例に記載する。式Iの免疫原の他の態様では、R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸のみを介して及び/又は中性リンカーアミノ酸が隣接していてもよい荷電極性配列を介して、R1とB細胞エピトープの第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。式Iで定義されるような免疫原の更に他の態様では、R2は、そのCys、その任意のリンカーアミノ酸、及び/又は極性荷電配列を介して、B細胞エピトープのC端に位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。
【0025】
本明細書に記載のような免疫原の更に他の態様は、式IIの形態を取ることができる。多くの態様では、R2リポペプチドキャップのアミノ末端は遊離しており、即ちR1ヘルパー配列とHIV−1 TatのB細胞エピトープとのあいだに結合していない。式IIの免疫原の1つの態様では、その任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電アミノ酸配列を有するR2リポペプチドキャップは、R1ヘルパー配列に連結しているHIV−1 TatのB細胞エピトープのアミノ端のα−アミノ基に連結している。式IIの他の免疫原では、R2リポペプチドキャップは、そのCys、その任意のリンカーアミノ酸、及び/又はその極性荷電配列、又はそれらの組み合わせを介して、HIV−1 TatのB細胞エピトープとR1の第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。他の態様では、R2リポペプチドキャップは、上記のように、式IIのR1のC端に位置付けられたK残基のε−アミノ基に連結している。任意のリンカー及び/又は極性荷電配列は、1種以上のこれら免疫原成分のあいだに位置付けることができる。他の代替免疫原は、本明細書の教示があれば当該技術分野に熟練した者によって、これらの成分及び式を使用して設計することができる。
【0026】
1つの態様では、免疫原性組成物は、上記式のうちの1つで規定される単一免疫原又は複数の同一免疫原を含有する。他の態様では、2種以上の異なる免疫原が組成物中に存在する。更なる態様では、2種以上の免疫原はそれぞれ異なる式である。同一の式又は異なる式である2種以上の異なる免疫原を含有する1つの態様では、組成物中の各免疫原は、HIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープのアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって組成物中の他の免疫原と異なっている。したがって、免疫原性組成物の1つの態様は、上記式I又は式IIの2種のそのような免疫原を含有する。他の態様では、免疫原性組成物は、3種以上のそのような免疫原を含有する。更なる態様では、免疫原は、以下で考察するTatのエピトープ中の7位、9位、又は12位における1カ所以上の可変アミノ酸位置のアミノ酸変異によって、組成物中の式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの他の免疫原のHIV−1 Tatの他のエピトープと異なるHIV−1 Tatのエピトープを有する。他の態様では、免疫原性組成物は、式中のHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープのこれらアミノ酸位置のうち1カ所以上のアミノ酸変異によって異なる少なくとも2種、3種、4種、6種、8種、12種、又は少なくとも16種の異なる免疫原を含有する。特定の態様では、免疫原性組成物は、それら可変残基で異なるHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープペプチドを有する少なくとも3種、4種、5種、6種、7種、又は8種の免疫原を含有する。
【0027】
他の態様では、組成物は、R1 T細胞ヘルパー配列の同一性が異なる2種以上の免疫原を有する。更に他の態様では、組成物中の異なる免疫原は、同一又は異なるR1をそれぞれ有することができる。他の態様では、組成物中の各免疫原は、異なる式、例えば式I、式II、式IIIa、及び/又は式IIIbのうちの1つを有することができる。
A. HIV−1 Tatのエピトープ1成分
上記免疫原のHIV−1 TatのB細胞エピトープは式IVの免疫優勢エピトープ:
V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16(配列番号1)である。式IVでは、Xaa7はアミノ酸R、K、N、又はSのうちの1つである。Xaa9はアミノ酸E又はDである。Xaa12はK又はNである。アミノ酸Xaa13〜Xaa16は、免疫原に含まれる任意の隣接配列を表す。Xaa13〜Xaa16の1個以上のアミノ酸は存在しなくともよい。これらのアミノ酸は免疫原性を高めるが、免疫優勢エピトープの本質的部分ではない。したがって、式IVのHIV−1 Tatのエピトープは、本明細書において、Xaa13〜Xaa16が存在しないか又はこれら4残基が存在するいずれかをさまざまに表すことができる。したがって、ある態様では、Xaa13は存在しないかHであり、Xaa14は存在しないかPであり、Xaa15は存在しないかGであり、そしてXaa16は存在しないかSである。
【0028】
7位、9位、及び12位のアミノ酸のさまざまな選択によって形成される16種の可能な変異体の中で、8種の変異体は免疫学的に異なる野生型変異体であることが知られている。残り8種の他の変異体は天然に発生することが知られている。免疫優勢ペプチドの8種の免疫学的に異なる変異体を、表1に示すように、7位、9位、及び12位のアミノ酸のみを特定する簡単な参照によって特定する。以下の表1に列挙する同一エピトープペプチドは、H−P−G−S配列が隣接する場合、それぞれ配列番号15〜22として特定される。これら簡単な参照を本明細書全体で使用する。
【0029】
【表1】
【0030】
したがって、1つの態様では、組成物を形成する免疫原のHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープは、任意の隣接配列のない、これら8種のペプチドの中から選択される。他の態様では、免疫原中の8種のペプチドには、免疫原性を高めるため、各ペプチドのC端に残基H−P−G−S(配列番号4)が含まれる。更に他の態様では、1種以上のペプチドは、わずか1個、2個、又は3個の隣接アミノ酸を含有する。更に他の態様では、なし、1個、2個、3個、又は4個の隣接アミノ酸を含有するB細胞エピトープペプチド混合物を免疫原に使用する。
【0031】
組成物が単一免疫原を含有する1つの態様では、上記免疫原のうちの1種を使用する。本明細書に規定する組成物の更なる態様では、式IVの少なくとも2種、少なくとも3種、4種、5種、6種、7種、又は8種の上記Tat変異体エピトープが、自発的に抗原性を補強する組成物の各種態様を形成する個々の免疫原に含有される。
【0032】
組成物をどのように作製するかに応じて、他の免疫原性組成物は、8種より多い異なるHIV−1 Tatのエピトープペプチドを含有することができる。したがって、組成物は、アミノ酸位置Xaa7、Xaa9、及びXaa12において異なる8〜16種の可能な種々のHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ変異体配列を含有することができ、それにより、上記8種のペプチドへ以下の追加のペプチド成分を付加する。隣接アミノ酸のないこれら追加の8種の変異体を以下の表2に報告し、簡単な参照を本明細書全体で使用する。
【0033】
【表2】
【0034】
先に言及したように、特定の態様では、これら組成物の免疫原中のHIV−1 Tatのエピトープは、組成物中のHIV−1 Tatのエピトープの免疫原性を高めるために、各エピトープのカルボキシ端に隣接配列H−P−G−Sも含有する。隣接配列を有する表2に列挙したような同一エピトープをそれぞれ配列番号32〜39と特定する。
【0035】
したがって、1つの態様では、免疫原性組成物は、式I〜式IIのそれぞれに関し1〜16種以下の異なる免疫原を含有し、これらは免疫原のHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープが異なっている。更なる態様では、HIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープ端における隣接アミノ酸Xaa13〜Xaa16の存在によって追加の変動性を導入することができる。
【0036】
組成物中に存在することができる得られる免疫原は、以下のように、式Iによって個々に規定される(R2を上記のような3カ所うちの1カ所の位置に有し、任意のリンカー及び/又は極性荷電配列を本明細書に記載のような1カ所以上の位置に含む):
R2−(R1−配列番号15)、
R2−(R1−配列番号16)、
R2−(R1−配列番号17)、
R2−(R1−配列番号18)、
R2−(R1−配列番号19)、
R2−(R1−配列番号20)、
R2−(R1−配列番号21)、
R2−(R1−配列番号22)、
R2−(R1−配列番号32)、
R2−(R1−配列番号33)、
R2−(R1−配列番号34)、
R2−(R1−配列番号35)、
R2−(R1−配列番号36)、
R2−(R1−配列番号37)、
R2−(R1−配列番号38)、及び
R2−(R1−配列番号39)。
【0037】
それぞれ配列番号15〜22のHIV−1 Tatのエピトープを有するこの上記リスト中の最初の8種の免疫原が、1〜8種の異なる免疫原を含有する組成物に最も好ましい。9種以上の免疫原を含有する組成物では、リスト中の最後の8種の免疫原の中から追加の免疫原を選択する。しかしながら、このリストからのB細胞エピトープの他の組み合わせも本明細書に記載の免疫原に有用である。
【0038】
組成物中に存在することができる同様に得られる免疫原は、以下のように、式IIによって個々に規定される(R2を上記のような3カ所のうちの1カ所の位置に有し、任意のリンカー及び/又は極性荷電配列を本明細書に記載のような1カ所以上の位置に含む):
R2−(配列番号15−R1アミド)、
R2−(配列番号16−R1アミド)、
R2−(配列番号17−R1アミド)、
R2−(配列番号18−R1アミド)、
R2−(配列番号19−R1アミド)、
R2−(配列番号20−R1アミド)、
R2−(配列番号21−R1アミド)、
R2−(配列番号22−R1アミド)、
R2−(配列番号32−R1アミド)、
R2−(配列番号33−R1アミド)、
R2−(配列番号34−R1アミド)、
R2−(配列番号35−R1アミド)、
R2−(配列番号36−R1アミド)、
R2−(配列番号37−R1アミド)、
R2−(配列番号38−R1アミド)、及び
R2−(配列番号39−R1アミド)。
【0039】
1つの態様では、組成物は、上記式I、式II、式IIIa、又は式IIIbにおいて表1の最初の8種のHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ配列、即ち配列番号7〜14又は同一式内に隣接アミノ酸を有する配列番号15〜22を含有する免疫原から選択される3〜8種以下の異なる免疫原を含有する。更に他の組成物は、各リストからの9〜全16種以下の異なるHIV−1の免疫優勢エピトープペプチド、又は表1及び表2のTatの免疫優勢エピトープ配列(C端隣接アミノ酸は存在するか又は存在しない)を含有する。更に他の態様では、組成物は、わずか1個、2個、又は3個の隣接アミノ酸を有する上記免疫原のいずれかを含めることができる。
【0040】
上記免疫原の中でHIV−1 Tatのエピトープを修飾することも可能である。例えば、他のHIV−1 Tatのエピトープは、相同の又は類似の修飾免疫優勢エピトープ配列を含めることができ、ここで、式:V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12(配列番号2)中の非可変アミノ酸(即ち、1文字と下付き文字とで表記されていないもの)は、類似の特徴を有するアミノ酸残基で個別に保存的置換することができる。例えば、配列番号2の非可変アミノ酸残基は、同一電荷及び/又は類似側鎖長を有する他のアミノ酸残基で置換することができる。1例として、Tatのアミノ酸残基8のロイシンは、時にTat配列において天然に生ずるようにイソロイシンで置換することができる。同様に、配列番号2の非可変天然アミノ酸は、非天然アミノ酸残基、即ち化学構造に修飾を有するアミノ酸、例えばD−アミノ酸;非天然側鎖を有するアミノ酸、N−メチル化アミノ酸などで置換することができる。とりわけ、N−メチル化アミノ酸に関する引用文献を参照されたい。例えばL.Aurelioら、2002、Organic Letters、4(21):3767−3769、及びその中の引用文献を参照されたい。
【0041】
更に、免疫優勢エピトープの式:V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16(配列番号1)の4〜12個のTatアミノ酸残基を組み込んでいるが、N端及び/又はC端に追加のアミノ酸を含有する、より長いペプチドを使用することができる。しかしながら、そのように長い配列は免疫原に機能的相違を提供しそうにない。例えば、上記のようなHIV−1 Tatのエピトープは、C端の隣接アミノ酸を有することなく、HIV−1 Tatの長さ9アミノ酸残基を含有する。しかしながら、他のTatの免疫優勢エピトープペプチドは、そのようなアミノ酸(可変アミノ酸7、9、及び12を含むことが好ましい)の長さ約6残基のより短い配列から約25アミノ酸残基まで含有することができる。更に他の免疫優勢ペプチドは、HIV−1 TatのN端配列より多くを含有することができる。あるいは、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープの隣接配列Xaa13〜Xaa16のH−P−G−S(配列番号4)を、免疫優勢エピトープペプチドの免疫原性を高める他の配列で同様に置換することができる。更に他の態様では、H−P−G−S(配列番号4)アミノ酸のそれぞれを、Tatの免疫優勢エピトープの不可変アミノ酸残基に関して上記したような修飾物で個別に置換することができる。
【0042】
更に他の態様では、本明細書に記載の免疫優勢エピトープ免疫原とともに使用するための代替免疫原を調製することができる。例えば以下の実施例1の代替免疫原の記載を参照されたい。そのような代替免疫原の使用は、本明細書に記載の免疫優勢エピトープ免疫原を含有する免疫原性組成物によって誘導されるHIV−1 Tatに対する応答を高めることができる。
B. ユニバーサルTヘルパー配列R1
本明細書に記載の免疫原性組成物の免疫原の他の成分は、免疫原中のB細胞エピトープ、即ちHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープの免疫原性を高めるために用いるユニバーサルTヘルパーエピトープである。「Tヘルパーエピトープ」という用語は、1種以上のクラスII MHC分子との関連でTヘルパーリンパ球を活性化するアミノ酸鎖を意味することを意図するものであり、免疫原のHIV−1 Tatのエピトープに対する抗体応答を高める。特定の態様では、免疫原のTヘルパーエピトープ成分は、大部分の個体に存在するTヘルパー細胞によって認識されるものである。これは、多くの、大部分の、又は全てのHLAクラスII分子に結合するペプチドを選択することによって達成することができる。これらは、「HLAで緩く拘束された」又は「無差別」Tヘルパー配列として知られている。特に、無差別T細胞エピトープは、上記式においてR1部分として用いられる。選択した免疫原の式に応じて、R1配列は、HIV−1 TatのB細胞エピトープに、エピトープのアミノ端又はカルボキシ端において直接又は任意のリンカー及び/又は極性荷電配列を介して連結することができる。
【0043】
また、選択した免疫原の式に応じて、R1とR2との連結は以下のうちの1つである:R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を介して、R1のN端アミノ酸のα−アミノに連結している。あるいは、R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を介して、R1とB細胞エピトープとのあいだに挿入された追加のリジン残基のε−アミノ基に連結している。あるいは更に、R1が免疫原のカルボキシ端に位置付けられている場合、R2は、そのCys又はその任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を介して、R1のカルボキシ端に挿入されたリジンのε−アミノ基に連結することができる。
【0044】
多くの無差別又はユニバーサルTヘルパー配列は、さまざまな供給源、例えば微生物において天然に生じ、又は人工的に操作された配列である。そのような好適なT細胞エピトープは公知であり、これらの免疫原及び組成物におけるこの使用のために選択することができる。
【0045】
1つの態様では、そして以下の実施例で例示するように、本明細書の式I又は式IIに記載のような免疫原のR1 Tヘルパー配列は、配列番号6:Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−Xaaの配列を有し、式中、Xaaは存在しないかLである。この配列は破傷風毒素のアミノ酸830〜843(844)に天然に見られる;Panina−Bordignonら、1989、Eur J Immunol 19:2237を参照されたい。R1として有用な他のそのような破傷風毒素配列(破傷風毒素のアミノ酸947〜967)は、配列番号23:F−N−N−F−T−V−S−F−W−L−R−V−P−K−V−S−A−S−H−L−Eの配列、又は破傷風トキソイドのアミノ酸950〜969のようなその誘導体を有する。Reece JCら、1994、J Immunol Methods 172:241−54を参照されたい。式IのR1として使用するための更に他の破傷風トキソイドT細胞ヘルパー配列には、破傷風トキソイドのアミノ酸632〜651である配列番号40:I−D−K−I−S−D−V−S−T−I−V−P−Y−I−G−P−A−L−N−Iの配列、破傷風トキソイドのアミノ酸580〜599である配列番号41:N−S−V−D−D−A−L−I−N−S−T−K−I−Y−S−Y−F−P−S−V、破傷風トキソイドのアミノ酸916〜932である配列番号42:P−G−I−N−G−K−A−I−H−L−V−N−N−E−S−S−E、及び破傷風トキソイドのアミノ酸830〜842である配列番号43:Z−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−Eが含まれる。免疫原のR1として有用な更に他のユニバーサルT細胞ヘルパー配列に関し、例えば、全て本明細書に援用される、Hoら、1990、Eur J Immunol 20:477;Valmoriら、1992、J Immunol 149:717−721;Chinら、1994、Immunol 81:428;Vitielloら、1995、J Clin Invest 95:341;Livingstonら、1997、J Immunol 159:1383;Kaumaya PTPら、1993、J Mol Recognition 6:81−94(1993);及びDiethelm−Okita BMら、2000、J Inf Dis 175:383−91を参照されたい。また、本明細書に記載の免疫原のR1として使用できる特定のジフテリア毒素T細胞ヘルパー配列について考察している、本明細書に援用される、Rajuら、1995、Eur J Immunol 25:3207−14及びDiethelm−Okita BMら、2000、J Inf Dis 181:1000−9を参照されたい。上記式のR1のためのTヘルパーエピトープ配列として有用であり得る更に他の配列は、本明細書に援用されるNardinら、2001、J Immunol 166:481−9に開示されている。
【0046】
無差別な他のTヘルパー配列の例には、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト周囲(CS)タンパク質378〜398位(D−I−E−K−K−I−A−K−M−E−K−A−S−S−V−F−N−V−V−N−S;配列番号44)、及び連鎖球菌の18kDタンパク質116位(G−A−V−D−S−I−L−G−G−V−A−T−Y−G−A−A;配列番号45)のような抗原由来配列が含まれる。例えば本明細書に援用される米国特許第7,026,443号を参照されたい。
【0047】
R1ユニバーサルT細胞ヘルパー配列は、例えば米国特許第5,736,142号(例えば本明細書に援用されるPCT公開公報WO95/07707号を参照されたい)に記載のPan HLA DR結合(PADRE)分子(エピミューン、カリフォルニア州サンディエゴ)のような人工的に操作された配列であることもできる。これらの合成化合物は、大部分のHLA−DR(ヒトHLAクラスII)分子に最も好ましく結合するように設計されている。他の例には、DR 1−4−7スーパーモチーフ、又はDR3モチーフのいずれかを有するペプチドが含まれる。これらの配列は、B細胞及びマクロファージ及び樹状細胞上のクラス2主要組織適合性(MHC)抗原によって認識され、B細胞による抗原提示を高める。
【0048】
したがって、1つの態様では、R1 Tヘルパー配列は、配列番号46:Xaa1−K−Xaa2−V−A−A−W−T−L−K−A−A−Xaa3の式によって規定され、式中、Xaa1及びXaa3はD−Ala又はL−Alaから個別に選択され、そしてXaa2はL−シクロヘキシルアラニン、Phe、又はTyrである。これらのTヘルパー配列は、HLA型にかかわらず、大部分のHLA−DRアレルに結合し、大部分の個体由来Tヘルパーリンパ球の応答を刺激することがわかっている。1つの態様では、R1は上記式を有し、式中、Xaa1及びXaa3はともにD−Alaであり、そしてXaa2はシクロヘキシルアラニンである。他のPADRE配列には、全て「L」天然アミノ酸で構成されるpan−DR結合エピトープの代替物が含まれ、エピトープをコードする核酸の形態で提供することができる。更に他のPADRE配列は、全て本明細書に援用される、Vitielloら、1995、J Clin Invest 95:341;Alexander Jら、1994、Immunity 1:751−61;Del Guercio M−Fら、1997、Vaccine 15:441−8;Alexander Jら、2000、J Immunol 164:1625−33;Alexander Jら、2004、Vaccine 22:2362−7;及びAgadjanyan MGら、2005、J Immunol 174:1580−6に開示されている。
【0049】
これらのTヘルパーペプチド配列R1は、修飾して生物学的特性を変更することもできる。例えば、それらは、D−アミノ酸又は他のアミノ酸修飾を含むように修飾し、プロテアーゼに対する耐性を高めて血清半減期を延長させることができる。更に、これらの無差別T細胞ヘルパー配列又はR1配列は、以下に考察するように、リンカー配列及び/又は極性荷電配列を更に含めることができる。
【0050】
当該技術分野に熟練した者は、他の公知の無差別T細胞ヘルパー配列の中から選択して、本明細書に記載のような免疫原性組成物のための他の特異的免疫原を設計することが予想される。以下に記載の特異的態様は、HIV−1 Tatタンパク質に対する幾何学的平均力価(GMT)が高い抗体を誘導する上で、免疫原内で有用なユニバーサルTヘルパー配列について説明する。
C. リポペプチドキャップ成分R2
本明細書に記載の免疫原の他の成分はリポペプチド成分であり、好ましくは「リポペプチドキャップ」(R2)であり、本明細書に記載のようなHIV−1予防用及び治療用免疫原性組成物に必要とされる、GMTが50,000より大きく、又は300,000より大きく、又は1,000,000より大きい抗体を誘導するために免疫原の他の成分と協調して作用する。リポペプチドは、ウイルス抗原に対するCTLをプライミングし、また、特定抗原に対する液性抗体応答をin vivoで高めることが可能な物質として同定されている。したがって、免疫原のR2部分は、以下に記載のように、それにCys及び任意に1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を結合させた望ましいリポペプチド成分の中から選択される。1つの態様では、R2リポペプチドは、直接、又はその任意のリンカー及び/又は極性荷電アミノ酸を介して、免疫原のアミノ端のα−アミノ基に結合している。即ちR1 T細胞ヘルパー配列のアミノ端に結合しているか、又はR1が異なる位置にある場合は直接HIV−1 Tatのエピトープに結合している。免疫原の他の態様では、R2リポペプチドは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、R1とHIV−1 Tatのエピトープの第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノに結合している。更なる態様では、免疫原のR2リポペプチドキャップは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、免疫原のC端、即ちHIV−1 Tatのエピトープ又はR1のC端に位置付けられたK残基のε−アミノに連結している。更なる態様では、免疫原のR2リポペプチドキャップは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、B細胞エピトープ又はR1のN端に直接連結しているK残基に連結している。この構造では、B細胞エピトープ又はR1は、そのカルボキシ端を介して、K残基のε−アミノ基に連結することができる(式IIIa又は式IIIbを参照されたい)。
【0051】
そのような使用のための特異的R2リポペプチドには、例えば大腸菌リポタンパク質のN端配列が含まれる。1つの態様では、R2は、2つのアミノ酸リンカー及び/又は極性荷電配列を有する、図8Aのジパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam2Cys)であるリポペプチドである。他の態様では、R2は、そのアミノ酸リンカー及び/又は極性荷電配列を有する、図8Cのトリパルミトイル−S−グリセリルシステイン(Pam3Cys)であるリポペプチドである。
【0052】
他のR2キャップには、R−(ジパルミトイル−S−グリセリル)システインが含まれ、式中、Rは、水素、1〜6個のC原子のアルキル、アルケニル、又はアルキニルから成る群である。1つの態様では、R2は、任意のアミノ酸リンカー及び/又は極性荷電配列を有する、図8BのN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)((NAc(Pam2C))であるリポペプチドである(RはN−アセチルである)。他の潜在的R2部分は、ヘキサデカン酸、Hda、及びマクロファージ活性化ペプチドMALP−2である。
【0053】
そのようなリポペプチドキャップは、全て本明細書に援用される以下の引用文献:Deresら、1998、Nature 342:561;Weismullerら、1989、Vaccine 7:29;Metzgerら、1991、Int J Peptide Protein Res 38:545;Martinonら、1992、J Immunol 149:3416;Vitielloら、1995、J Clin Invest 95:341;Muhlradtら、1997、J Exp Med 185:1951;Livingstonら、1999、J Immunol 162:3088;Zengら、2002、J Immunol 169:4905;Borzutskyら、2003、Eur J Immunol 33:1548;Scgjetneら、2003、J Immunol 171:32;Jacksonら、2004、Proc Natl Acad Sci USA 101:15440;Borzutskyら、2005、J Immunol 174:6308;Muhlradt PFら、J Exp Med 11:1951−8(1997);Obert Mら、Vaccine 16:161−9(1997);Zeng Wら、Vaccine、18:1031−9(2000);Gras−Masse H、Mol Immunol 38:423−31(2001);Zeng Wら、J Immunol 169:4905−12(2002);Schjetne KWら、J Immunol 171:32−6(2003);Spohn Rら、Vaccine 22:2494−9(2004);Jackson DCら、Proc Natl Acad Sci USA 101:15440−5(2004);Zeng Wら、Vaccine、23:4427−35(2005);国際特許出願公開公報WO2006/026834号、WO2006/040076号、WO2004/014956号、又はWO2004/014957号に記載のものから選択し、合成し、調製することができる。
【0054】
1つの態様では、特に有効な免疫原性組成物は、Pam2CSSのR2、即ちリンカー、例えばSer−Ser、及び/又は極性荷電配列を介して結合している、ジパルミトイル−S−グリセリル−Cysのジパルミチン酸部分を含む。リンカーを有するPam2Cは、本明細書に援用されるPCT公開公報WO2004/014957号に記載されている。他の態様では、特に有効な免疫原性組成物は、Pam3Cys−S−S−のR2、即ちジパルミトイル−S−グリセリル−Cysのトリパルミチン酸部分を含み、これはリンカー、例えばSer−Serを介して結合している。
【0055】
他の態様では、R2はNAc(Pam2C)−S−S−、即ちN−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)のジパルミチン酸部分であり、これはリンカー、例えばSer−Serを介して結合している。
【0056】
先に記載したように、このR2リポペプチドは、直接、そのCysを介して、又はその任意の1〜10個以下の中性アミノ酸リンカー残基及び/又は任意に荷電極性アミノ酸の配列を介して、R1 T細胞ヘルパー配列のアミノ端のα−アミノ基に連結しており、R1は順にB細胞エピトープに連結している。式IIにおけるようにB細胞エピトープとTヘルパー配列が逆である場合、このR2リポペプチドは、そのCysを介して、又はその任意のリンカー及び/又は任意の極性荷電配列を介して、B細胞エピトープのアミノ端のα−アミノ基に連結しており、B細胞エピトープは順にR1に連結している。あるいは、R2は、そのCys、その好適なリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電アミノ酸配列を介して、免疫原のR1とHIV−1 Tatのエピトープ成分の第1N端アミノ酸残基とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノに連結している。この同一構造は、式IIにおけるようにR1とB細胞エピトープが逆である場合にもあてはまる。更に他の代替免疫原構造では、R2は、そのCys、その任意のリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電アミノ酸配列を介して、免疫原のC端に挿入されたK残基のε−アミノに連結している。例えば、R1がB細胞エピトープに連結している場合、リジン残基をB細胞エピトープのC端に挿入し、R2をリンカーを介してそのリジンのε−アミノ基に連結することができる。この構造は、式IIにおけるようにB細胞エピトープとR1基が逆である場合に類似する。同様に、式IIIa及び式IIIbの免疫原は、上記のようにこのR2キャップを用いている。全ての態様において、R2リポペプチドキャップのN末端は遊離しており、免疫原の他の成分に結合していない。
【0057】
R2キャップは、免疫原性組成物を形成する式I、式II、式IIIa、及び/又は式IIIbの免疫原において抗体応答を高め、非常に有効であることが判明している。R2と免疫原のR1及び/又はHIV−1 TatのB細胞エピトープとのさまざまな結合の更に他の態様が、上記式I及び式IIに具体化されている。
D. 任意のリンカー及び極性配列
R2キャップはそのCysを介して直接連結することができ、T細胞ヘルパー配列R1は、免疫原のHIV−1 TatのB細胞エピトープ成分にいずれの順序でも直接連結することができるが、リンカーを任意に導入して、R2リポペプチドキャップ成分のC末端を各免疫原の他のいずれかの成分に連結することが望ましい。他の態様では、リンカーアミノ酸又は配列は、B細胞エピトープとR1ヘルパー配列とのあいだにも用いられる。他の態様では、アミノ酸配列は、免疫原の式に応じて、免疫原の1つの成分を他の成分へカップリングするためにR1ヘルパー配列又はB細胞ペプチドのN端又はC端に結合した任意のリンカーとして用いるか、又は免疫原のアミノ端又はカルボキシ端に位置付けられる。
【0058】
R2キャップ内に位置付けられるか又は免疫原のどこかに位置する「リンカー」は、典型的には、生理的条件下で実質的に非荷電のアミノ酸又はアミノ酸模倣物のような1〜10個の比較的小さい中性分子で構成される。リンカーは、典型的には、例えばGly、Ser、Pro、Thr、又は非極性アミノ酸若しくは中性極性アミノ酸の他の中性リンカーから選択される。任意のリンカーは、同一残基で構成される必要はなく、したがって、ヘテロオリゴマー、例えばGly−Ser−でも、ホモオリゴマー、例えばSer−Serでもよい。存在する場合は、1つの態様におけるリンカーは少なくとも1個のアミノ酸残基、例えばSer又はGlyである。他の態様では、リンカーは少なくとも2個アミノ酸残基、例えばSer−Ser又はGly−Serである。更に他の態様では、3〜6個のアミノ酸残基、10個以下の残基、又はそれ以上の残基を用いてリンカーを形成する。したがって、特定の態様では、リンカー配列には、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個のアミノ酸又は模倣物が含まれる。
【0059】
例えば、リンカーを用いて、R2のリポペプチドキャップを免疫原の他の成分へカップリングすることができる。1つの態様では、リンカーはジペプチドSer−Serである。他の態様では、リンカーはGly−Glyである。更に他の態様では、Gly−Ser又はSer−Glyなどのヘテロオリゴマーを用いてもよい。他の態様では、−Ser−などのリンカーは、Tヘルパー配列R1を免疫原のB細胞エピトープのN端アミノ酸に連結するか、又はB細胞エピトープをR1のN端アミノ酸に連結する。
【0060】
免疫原の他の態様では、荷電極性アミノ酸の配列は、比較的非荷電のリンカー配列内に導入されるか、又はそれと置換される。荷電極性配列の導入は、以下の実施例で立証するように、組成物の水溶性を高めることがわかっている。例えば、これら荷電極性配列は、緩衝液を必要とすることなく、注射用蒸留水及び任意に等張性のためのマンニトールを有する製剤中の免疫原の溶解性を高めるために使用される。これら荷電極性配列は、免疫原を容易に調製し、可溶化し、凍結乾燥することを可能にする。これら極性配列は、溶解性を高めることによって、B細胞エピトープの免疫原性を高めることにも有用であり得る。
【0061】
1つの態様では、極性配列は、4個、5個、6個、7個、又は8個の荷電極性アミノ酸で構成される。更なる態様では、極性配列は、4個のアミノ酸で構成される。更に他の態様では、極性配列は、6個のアミノ酸で構成される。1つの態様では、極性配列は、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸で構成される。更なる態様では、極性配列は、リジン、アルギニン、及びアスパラギン酸から選択されるアミノ酸で構成される。他の態様では、極性配列中のアミノ酸は同一である。更なる態様では、2個、3個、又は4個の異なるアミノ酸を極性配列に用いる。したがって、1つの態様では、極性荷電配列は、−Lys−Lys−Lys−Lys−、−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−、又は−Lys−Glu−Lys−Glu−、又は−Glu−Glu−Glu−Glu−(それぞれ配列番号65、66、67、及び68)であるか、あるいは4〜8個の同一若しくはさまざまな極性荷電アミノ酸の反復である。
【0062】
任意に、極性アミノ酸配列は、いずれかの端でリンカーのアミノ酸に隣接され、配列−リンカーアミノ酸−(極性アミノ酸)n−リンカーアミノ酸−を形成しており、式中、nは極性アミノ酸数、例えば4〜8個である。あるいは、隣接リンカー(中性、非荷電)アミノ酸を用いることなく極性アミノ酸配列を用いることができる。1つの態様では、極性アミノ酸配列を有するリンカーは、Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Ser(配列番号64)、即ちSer−Serリンカー内に4個の同一アミノ酸極性配列、即ちSer−[Lys]4−Ser(配列番号64)で構成される。他の態様では、極性配列を含有するアミノ酸リンカーは、Ser−[Lys]6−Ser(配列番号69)である。他の態様では、極性配列を有するリンカーは、Gly−[Lys]4−Gly(配列番号70)又はGly−[Lys]6−Gly(配列番号71)である。更に他の態様では、極性配列を有するリンカーは、−Ser−(Lys−Glu−Lys−Glu−)−Ser−(配列番号72)である。上記のように、この配列の反復は、上記定義及び−リンカーアミノ酸−(極性アミノ酸)n−リンカーアミノ酸の式があれば、当該技術分野に熟練した者によって組み立てることができる。
【0063】
したがって、1つの特異的態様では、極性荷電配列を含有するアミノ酸リンカー、又はリンカー単独、又は極性荷電配列単独は、免疫原成分R2とそれが連結している免疫原の他のいずれかの成分とのあいだに位置付けられる。他の態様では、リンカー及び/又は極性配列は、R1と免疫原の他のいずれかの成分とのあいだに位置付けられる。更に他の態様では、リンカー及び/又は極性配列は、B細胞エピトープと免疫原の他のいずれかの成分とのあいだに位置付けられる。他の態様では、極性配列は、隣接リンカーアミノ酸とともに又は隣接リンカーアミノ酸なしで、B細胞エピトープ又はR1の遊離端、即ち、免疫原の端のB細胞エピトープ又はR1ヘルパー配列の遊離N端又はC端のような免疫原の外側へ結合することができる。
【0064】
他の態様では、極性荷電配列は、隣接リンカーアミノ酸とともに又は隣接リンカーアミノ酸なしで免疫原内に1カ所のみ存在し、例えばR2のジパルミチン酸部分又はトリパルミチン酸部分のカルボキシ端リンカー−Ser−にのみ結合しており、R2を、R1若しくはB細胞エピトープに、又は免疫原内に挿入されたリジンに連結する。更に他の態様では、リンカー及び/又は極性配列は、免疫原の複数の位置(即ち2カ所以上)に存在する。
【0065】
免疫原性組成物を形成する各免疫原のR1成分、R2成分、及びB細胞エピトープ成分は、各成分の端へリンカーアミノ酸及び/又は極性荷電配列を付加することによって修飾し、担体支持体又はより大きなペプチドへのカップリング、ペプチド又はオリゴペプチドの物理的又は化学的特性の修飾、などを提供することもできる。
E. 特異的態様
式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの免疫原の特異的態様を以下の実施例で使用し、以下の免疫原も含める。1つの態様では、各免疫原において、R2は、チオールグリセリル基を介してシステインに連結した2単位のパルミチン酸及び−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列で形成され、−S−S−残基はR2をR1 Tヘルパー配列の第1アミノ酸に連結している。R1は、−S−のアミノ酸リンカーを有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)であり、−S−はHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープのN端アミノ酸残基に連結しており、B細胞エピトープは上記のようにTatのアミノ酸7位(R/K/N/S)、アミノ酸9位(E/D)、及びアミノ酸12位(K/N)に異なるアミノ酸の選択肢を含有する。したがって、式Iの1つの免疫原は以下のように規定される:
配列番号48:Pam2C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0066】
更なる態様では、4個のリジンの極性配列(下線)をリンカー配列(−S−S−)内に導入し、R2とR1とを接続する。式Iのこの更なる免疫原を以下のように規定する:
配列番号60:Pam2C−S−K−K−K−K−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0067】
更なる態様では、4個のリジンの極性配列(下線)を含有するリンカーを利用して、R1ヘルパー配列をHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ成分に連結する。式Iのこの更なる免疫原を以下のように規定する:
配列番号61:Pam2C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−K−K−K−K−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0068】
更なる態様では、4個のリジンの極性配列(下線)を含有するリンカーを免疫原内の2カ所に、即ちリポペプチドを配列の残りに連結するため、及びR1をHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ成分に連結するためのR2リンカーの部分として利用する。式Iのこの更なる免疫原を以下のように規定する:
配列番号62:Pam2C−S−K−K−K−K−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−K−K−K−K−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。
【0069】
他の態様では、各免疫原において、R2は、グリセリル基を介してN−アセチルシステインの硫黄に連結した2単位のパルミチン酸(図8Bを参照されたい)及び−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列で形成され、−S−S−残基はR2をR1の第1アミノ酸に連結している。R1は−S−のアミノ酸リンカーを有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)であり、−S−はHIV−1 TatのエピトープのN端アミノ酸残基に連結しており、Tatのエピトープは、上記のようにTatのアミノ酸7位(R/K/N/S)、アミノ酸9位(E/D)、及びアミノ酸12位(K/N)に異なるアミノ酸選択肢を含有している。したがって、式Iの1つの免疫原を以下のように規定する:
配列番号49:NAc(Pam2C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。更なる態様では、上記を反映したPam2Cを含有する態様と平行して極性配列を包含する。
【0070】
他の態様では、各免疫原において、R2は、グリセリル基を介してパルミチル−システインの硫黄に連結した2単位のパルミチン酸及び−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列で形成され、−S−S−残基はR2をR1に連結している。R1は、−S−のアミノ酸リンカー有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)であり、−S−はHIV−1 TatのエピトープのN端アミノ酸残基に連結している。したがって、式Iの他の免疫原を以下のように規定する:
配列番号50:同一可変アミノ酸残基を有する、Pam3C−S−S−Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L−S−V−D−P−(R/K/N/S)−L−(E/D)−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド。更なる態様では、上記を反映したPam2Cを含有する態様と平行して極性配列を包含する。
【0071】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)CSS−を含有する部分が、ユニバーサルTヘルパー配列とHIV−1 Tatのエピトープとのあいだに挿入されたリジンのε−アミノにカップリングしている態様では、式Iの免疫原は、以下のように、挿入されたK残基(太字)を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号51として規定される。
【0072】
【化4】
【0073】
更なる態様では、上で定義した通りの極性配列を含むリンカーを、Tヘルパー配列をHIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープ配列に連結する−S−の場所へ挿入することができ、及び/又は極性配列を、ユニバーサルTヘルパー配列とHIV−1 Tatのエピトープとのあいだに挿入したリジンのε−アミノへPam2Cキャップを接続するSer(−S−)間に挿入することができる。
【0074】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−S−を含有する部分が、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープペプチドのカルボキシ端に挿入されたリジンのε−アミノにカップリングしている態様では、式Iの免疫原は、以下のように、C端に挿入されたK残基(太字)を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号52として定義される。
【0075】
【化5】
【0076】
更なる態様では、上で定義した通りの極性配列を含むリンカーは、Tヘルパー配列をHIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ配列に連結する−S−の場所へ挿入することができ、及び/又は極性配列を、HIV−1 Tatのエピトープ1ペプチドのカルボキシ端に挿入されたリジンのε−アミノへPamキャップを接続するセリン間へ挿入することができる。
【0077】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−S−を含有する部分が、HIV−1 TatのエピトープとユニバーサルTヘルパー配列とのあいだに挿入されたリジンのε−アミノへカップリングしている態様では、式IIの免疫原は、以下のように、挿入されたK残基を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号53として規定される。
【0078】
【化6】
【0079】
更なる態様では、上で定義した通りの極性配列を含むリンカーは、R1 Tヘルパー配列をHIV−1 TatのB細胞エピトープ配列に連結する−S−の場所へ挿入することができ、及び/又は極性配列は、ユニバーサルTヘルパー配列とHIV−1 Tatのエピトープとのあいだに挿入されたリジンのε−アミノへPamキャップを接続する−S−S−間へ挿入することができる。
【0080】
R1ヘルパー配列が、挿入されたK及びSを介して、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープのN端アミノ酸へカップリングし、Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−Sを含有する部分が、同一リジン残基のε−アミノを介してカップリングしている態様では、免疫原は、以下のように、挿入されたK残基を介して結合したリポペプチドキャップを有する配列番号54として規定される。
【0081】
【化7】
【0082】
更なる態様では、上記式I及び式IIの態様に関して記載したものと平行して、極性配列を含むリンカーを挿入することができる。
【0083】
Pam3CSS−又はPam2CSS−又はNAc(Pam2)C−S−S−を含有する部分が、挿入されたリジン及びセリンスペーサーを介してR1ヘルパー配列のN端アミノ酸へカップリングし、HIV−1 TatのB細胞エピトープが同一リジン残基のε−アミノを介してカップリングしている式IIIの他の態様では、免疫原は以下のように規定される。
【0084】
【化8】
【0085】
免疫原の更に他の態様は、式IIIbを使用する。更なる態様では、上記を反映したPam2Cを含有する態様と平行して、極性配列を包含する。
【0086】
上で定義した通りの、そして以下の実施例で説明するような2種以上の免疫原を含有する免疫原性組成物は、以下で更に詳細に考察するように、複数のHIV−1 Tat変異体に対する幾何学的平均力価が50,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を哺乳動物において誘導する能力を特徴とする。他の態様では、以下の実施例で例示するように、GMTSは300,000より大きく、又は1,000,000より大きく、又は3,000,000より大きい。
【0087】
上記教示があれば、当該技術分野に熟練した者は、上記成分の中から選択することによって、式I、式II、式IIIa、及び/又は式IIIbに適合する他の免疫原を容易に設計することができる。
II. 免疫原及び免疫原性組成物の作製方法
免疫原は、HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープアミノ酸7位、9位、及び12位に「ゆらぎ」を含有する上記式にしたがい、固相又は溶液中で化学合成を行うことによって調製することができる。いずれの合成技術も当該技術分野に熟練した者に周知である。例えば、そのような技術は、Atherton&Shepard、『固相ペプチド合成』(IRL出版、オックスフォード、1989);Stewart&Young、『固相ペプチド合成』第2版(Pierce Chemical社、1984);及びHoubenweyl、“Methoden der organischen Chemie”[有機化学方法]、E.Wunschにより出版、第15−I巻及びII巻、シュトゥットガルト、1974などの慣用のテキストに、また、本明細書にその全体が援用される以下の記事:P E Dawsonら(Science 1994;266(5186):776−9);G G Kochendoerferら(1999;3(6):665−71);P E Dawsonら(Annu.Rev.Biochem.2000;69:923−60)に記載されている。各種の自動合成装置又はコンピュータプログラム可能な合成装置が市販されており、公知のプロトコールにしたがって使用することができる。更に、個々のペプチドエピトープを化学連結により結合させてより大きいペプチドを作製することができ、これらは依然として本明細書に記載の式I又は式IIの免疫原の範囲内である。
【0088】
望ましくは、合成には、RAMAGE樹脂上のHBTUを用いるFmoc化学を用いるなど、最初に最もC端のアミノ酸残基を固体支持体上に固定することによって免疫原をC端からN端の方向へ構築することが含まれる。アミノ酸を順次付加するあいだ、Xaa7、Xaa9、及びXaa12の「ゆらぎ」位置で示される変異体アミノ酸を等モル量で単一合成混合物中に導入する。得られる免疫原性混合物内に存在する「異なる」HIV−1 Tatの免疫優勢エピトープ配列数を、これらのゆらぎ位置に導入されるアミノ酸を制御することによって操作することができる。例えば、必要に応じて、7位にわずか2残基、9位に2残基、そして12位に1残基を導入し、わずか4種(2×2×1)の異なるHIV Tatのエピトープ成分を含有する混合物を得ることができる。他の態様では、7位に3つのゆらぎ、9位に1つのゆらぎ、そして12位に2つのゆらぎを導入して、6種(3×2×1)の異なるHIVペプチド成分を得ることができる。同様にして、全ての可能なゆらぎ選択肢(4×2×2)を導入することによって、単一合成混合物中に全16種の異なるTat配列を得ることができる。ゆらぎのいずれか他の可変付加により、1〜16種の異なるペプチド免疫原を含有する混合物を生ずることができる。HIV−1 Tatのエピトープを組み立てた後にユニバーサルTヘルパー配列を導入する。合成により、示したTatのエピトープゆらぎ位置において異なる1〜16種以下の異なる免疫原を含有する混合物を生ずる。
【0089】
次に、本明細書に援用されるPCT公開公報WO2004/014957号に記載のように、本質的にリポアミノ酸としてリポペプチドキャップを合成する。例えば、1つの態様では、Pam2Cys又はNAc(Pam2)Cys又はPam3Cysリポペプチドキャップを、合成Tatエピトープのゆらぎ配列及びTヘルパー配列上に、各リポペプチド部分をキャップのCysアミノ酸を介して又は任意のリンカー及び/又は極性アミノ酸配列を介してTヘルパー配列のN端アミノ酸のα−アミノ基へ、又はTヘルパー配列とTatの免疫優勢B細胞エピトープゆらぎペプチドとの間に挿入されたリジンのεアミノ基へ、又はTatの免疫優勢B細胞エピトープ配列のC端へ導入されたリジンのεアミノ基へ共有結合的に結合させることによって導入する。次に得られる免疫原を標準法、例えばトリフルオロ酢酸(試薬K)を用いて樹脂から切断し、やはり慣用の手順、例えばBIO−RAD酢酸樹脂を用いて任意に塩に変換する。
【0090】
得られる組成物は1〜16種以下の異なる免疫原を含有し、それぞれ、R1若しくはB細胞エピトープのN端のα−アミノ基へ、R1とB細胞エピトープとのあいだに挿入されたリジン残基のεアミノ基へ、又はR1若しくはHIV−1 TatのB細胞エピトープのC端に挿入されたリジン残基へ結合したリポペプチドキャップを有する。他の態様では、各免疫原は異なるR1ヘルパーを有することができる。1つの態様では、組成物は、式I、式II、式IIIa、又は式IIIbに記載のように、組成物中の他の免疫原とは異なる位置にリポペプチドキャップを有する免疫原を含有することができる。
【0091】
例示的合成を実施例1に記載する。このようにして免疫原を合成することによって、最終免疫原性組成物の1つの態様は、現在までに報告されているHIV−1 Tat変異体を95%より多く含む16種の配列の順列(4×2×2)を含有する。免疫原性組成物は、最低限精製して溶媒及び試薬を除去することができる。組成物の安全性試験を通過するための厳密な精製は必要ないようである。次にこの合成された混合物を、部分的に精製したか又は未精製型で動物に試験し、又はヒトに用いることができる。しかしながら、必要であれば任意の慣用精製スキームを用いてもよい。
【0092】
上記合成法はその簡便性に関して望ましいが、免疫原を調製する代替法には、組換えDNA技術の使用が含まれる。当該技術分野において周知のように、ヌクレオチド配列(HIV Tatペプチドをコードする)、任意のリンカー(例えば溶解性のための極性配列とともに又は伴わずに)、T細胞ヘルパー配列、及びリンカー(リポペプチドキャップ用)を発現ベクターへ挿入し、適切な宿主細胞へ形質転換又は形質導入し、発現に好適な条件下で培養する。これらの手順は、一般にSambrookら、『分子クローニング、実験室マニュアル』、コールドスプリングハーバー出版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)に記載のように、当該技術分野において一般に公知である。リポペプチドキャップの結合は上記のような合成法を包含する。
【0093】
当該技術分野に熟練した者は、これらの方法にしたがうことによって、1〜16種の異なるHIV Tatのエピトープを含有する2〜16種の異なる免疫原を含有する様々な免疫原性組成物を容易に作製することができる。上で提示するように、個々のアミノ酸の修飾、任意リンカー配列の使用、異なるT細胞ヘルパー若しくはリポペプチドキャップの使用、より大きいかより小さいTatペプチドの使用、又はそのような修飾配列で作られた異なる免疫原性組成物の組み合わせのように、免疫原の式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの各種成分を個別に又はまとめて修飾する場合、更に他の組み合わせを得ることができる。
【0094】
そのような免疫原性組成物は、HIV−1感染を予防するか、又は少なくとも部分的に既存の疾患の症状の進行を阻むか若しくは遅らせるのに十分な幾何学的平均力価(GMT)を有する抗Tat抗体を誘導することによって、HIV−1 Tatタンパク質に対する予防的免疫応答又は治療的免疫応答をin vivoで誘導することができる。力価は、対照値の平均+8標準偏差(SD)のレベルで依然として検出される最大血清希釈の逆数である。幾何学的平均力価(GMT)は、2以上の血清の各力価をlog10に変換し、これらのlog10値を平均することによって決定される。この後者の値の真数がGMTである。多くの態様では、GMTは3以上の個別の力価から決定される。個々の力価よりもGMTを使用することで範囲から極端にはずれた結果を最小限にし、したがって精度を高める。
【0095】
1つの態様では、上記のような免疫原性組成物は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが50,000より大きく、又は300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。特定の態様では、免疫原性組成物は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが100,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体をin vivoで誘導する。他の態様では、誘導された抗体は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対する力価が500,000より大きい。更に他の態様では、免疫原性組成物は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが1,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。更に他は、Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体に対するGMTが3,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する。
【0096】
以下の実施例は、実験動物における実験について報告するものであり、本明細書に記載の免疫原性組成物によって誘導される並外れた力価の証拠を提供する。医薬組成物に使用する他の成分の選択及び組成、並びにこれら組成物の投与方法及び投与経路に応じて、そのようなGMT応答の誘導が、具体的に例示したもの以外の組成物についても予期される。
III. 治療用/予防用の医薬組成物及び方法
式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの上記免疫原を含有する医薬組成物は、HIV−1感染の治療処置に及び/又は予防用免疫原性組成物として有用である。各種態様では、医薬組成物は、上記式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの複数の異なる免疫原、及び医薬的に許容可能な担体を含有する、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物を使用する。上記のようにして調製した未精製免疫原性ペプチド免疫原の混合物は、許容可能な担体、このましくは水性担体に溶解又は懸濁させることが望ましい。
【0097】
本明細書に規定するように、これら免疫原性組成物における使用に好適な医薬的に許容可能な担体は、当該技術分野に熟練した者に周知である。1つの態様では、好ましい医薬担体は、約45mg/mLの濃度で添加された等張性のためのマンニトールとともに注射用蒸留水を含有する。他の可能な担体には、限定されるものではないが、そしてpH調整に依存するが、緩衝用水、0.8%生理食塩水のような緩衝化生理食塩水、リン酸緩衝液、0.3%グリシン、ヒアルロン酸、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液が含まれる。他の慣用的に使用される希釈剤、アジュバント、及び賦形剤は、慣用技術にしたがい添加することができる。そのような担体には、エタノール、ポリオール、及びそれらの好適な混合物、植物油、並びに注射用有機エステルを含めることができる。緩衝液及びpH調整剤を使用することもできる。緩衝液には、限定されるものではないが、有機酸又は有機塩基から調製される塩が含まれる。代表的な緩衝液には、限定されるものではないが、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、若しくはフタル酸の塩のような有機酸塩、例えばクエン酸塩、トリス、塩酸トリメタミン、又はリン酸緩衝液が含まれる。非経口用担体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲル・デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は固定油を含めることができる。静脈内用担体には、リンゲル・デキストロースなどをベースとしたもののような流体及び栄養補給液、電解質補給液を含めることができる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどのような防腐剤及び他の添加剤を医薬担体に提供することもできる。これら免疫原性組成物は担体の選択によって限定されるものではない。上記成分から、適切なpH等張性、安定性、及び他の慣用の特徴を有するこれら医薬的に許容可能な組成物を調製することは、当該技術分野の技術範囲内である。例えば、レミントン:『薬学の科学と実践』、第20版、Lippincott Williams&Wilkins出版、2000;及び『医薬賦形剤便覧』、第4版、R.C.Roweら編、APhA出版、2003などのテキストを参照されたい。
【0098】
任意に、医薬組成物は、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムのような弱いアジュバントを含有することもできる。
【0099】
医薬製剤中の式I、式II、式IIIa、又は式IIIbの免疫原の量は広く、即ち重量で約0.1mg/mL未満から、通常約2mg/mL又は少なくとも約2mg/mLから、20mg/mLもの量まで、あるいは50mg/mLに至る量又は50mg/mL以上まで変化させることができ、選択した具体的投与様式にしたがい、流体容積、粘度などによって最初に選択されるであろう。
【0100】
免疫原性組成物のヒトの単位用量の形態は、典型的にはヒト単位用量の許容可能な担体、好ましくは水性担体を含む医薬組成物中に含まれ、そのような組成物をヒトへ投与するために用いられることが当該技術分野に熟練した者に公知の流体容量で投与される(例えばレミントンの『薬学』、第17版、A.Gennaro編、Mack出版、ペンシルバニア州イーストン、1985を参照されたい)。
【0101】
これら組成物を、生物学的物質に対する滅菌濾過のような慣用の周知滅菌技術で滅菌することができる。得られる水溶液をそのまま使用するために包装することができる。少なくとも1つの極性配列、例えば−K−K−K−K−(配列番号65)が組成物の免疫原中に存在する特定の態様では、水溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌溶液と組み合わされる。
【0102】
したがって、更に他の側面は、上で提示したように、複数のHIV−1株及びサブタイプに対するGMTが50,000、又は300,000より大きく、又は1,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する方法である。1つの態様では、医薬組成物は、ウイルス感染を処置又は制御するために、HIV−1に感染したヒトへ治療的に投与することができる。そのような感染したヒトは無症候性でも症候性でもよい。医薬組成物は、感染被験者における慢性的ウイルス増殖を低下させ、AIDSへの進行を最小限にするのに有用である。また、そのような患者には、HIV−1に感染した妊娠女性、感染した母親の新生児、及び汚染が予想される非免疫患者(例えばHIV−1に感染したヒトが使用した針を不注意に「突き刺した」ヒト)がいる。他の態様では、医薬組成物は、HIV−1感染を予防するための予防用免疫原性組成物として健常被験者へ投与する。
【0103】
本方法は、複数のHIV−1 Tat変異体に対するGMTが50,000より大きく、300,000より大きく、1,000,000より大きく、又は3,000,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導するように、有効抗体誘導量の本明細書に記載の医薬組成物を被験者へ投与することを包含する。上記のように、この方法は、同様に非常にGMTが高い抗体を誘導する。既に感染した患者では、抗体は慢性HIVウイルス血症の維持をブロックし、したがってAIDSへの進行を妨げる。この方法は、組成物を反復投与するが低頻度の間隔、例えば6ヶ月毎に投与することを包含することができる。健常患者では、予防用免疫原性組成物は、急性HIVウイルス血症が弱まった後で慢性ウイルス血症の設定確立をブロックする抗体を免疫被験者に提供する。
【0104】
この方法の1つの態様では、これら医薬組成物の投与経路は皮下注射である。他の好適な投与経路には、限定されるものではないが、経鼻、経口、膣内、又は直腸内のような粘膜内、並びに非経口、皮内、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び動脈内が含まれる。適切な経路は、組成物の性質、即ち予防用免疫原性組成物として又は治療用免疫原性組成物としての性質、並びに患者の年齢、体重、性別、及び総体的な健康の評価、並びに免疫原性組成物中に存在する成分、並びに関与する医師による類似要因を含めた各種検討事項に応じて選択される。
【0105】
同様に、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物の好適用量は、患者が既に感染しているか、治療的処置を必要としているのか予防用免疫原性組成物処置を必要としているのか、患者の健康、年齢、及び体重にかかわらず、当該技術分野に熟練した者によって容易に決定される。投与方法及び投与経路並びに組成物中の追加成分の存在も組成物の投薬量や量に影響を与え得る。有効用量のそのような選択及び上方又は下方調整は、当該技術分野の技術範囲内である。顕著な副作用を伴うことなく患者に好適な応答を生ずるのに必要な組成物量は、これらの要因に応じて変化する。好適用量は当該技術分野に熟練した者によって容易に決定される。好適用量は上記のように医薬組成物中に処方され(例えば、約0.1mL〜約2mLの生理的適合担体に溶解させる)、好適手段で送達される。投薬量は典型的には「単位投薬量」で表し、用量/被験者、例えば1mg免疫原の単位投薬量として規定される。あるいは、投薬量は、体重を80kgとする治療的換算の基準を用いて、量/被験者又は患者の体重で表すことができる。例えば、1mg単位用量/被験者は約12.5μg/kg体重に等しい。
【0106】
1つの態様では、意図する治療効果又は予防効果は、プライミング/ブースティング投与法によって与えられる。例えば、1つの態様における初回の治療的投与のための投薬量又は治療用若しくは予防用免疫原性組成物の第1プライミング投与のための投薬量は、約0.01mg未満〜100mgの免疫原の「単位投薬量」である。1つの態様では、単位投薬量は0.01mgである。他の態様では、単位投薬量は0.1mgである。他の態様では、単位投薬量は1mgである。更に他の態様では、単位投薬量は10mgである。したがって、特定の態様では、ヒトの初回プライミング投薬量は、非常に低量の単位投薬量である少なくとも約0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mgから、より高量の投薬量である少なくとも1mg、少なくとも3mg、少なくとも5mg、少なくとも7mg、少なくとも10mg、少なくとも12mg、少なくとも15mg、少なくとも20mgまでの範囲であり得る。更に他のヒトの投薬量は、21〜30mg、31〜40mg、41〜50mg、51〜60mg、61〜70mg、71〜80mg、81〜90mg、及び91〜100mg/70〜80kg被験者の範囲である。更に高量の投薬量でさえも意図することができる。
【0107】
1つの態様では、用いる治療用免疫原性組成物又は予防用免疫原性組成物のブースティング投薬量は、上記プライミング投薬量と同一である。上記プライミング投薬量と同一の特異的単位投薬量又は単位投薬量範囲は、ブースティング投薬量に使用することができる。したがって、特定の態様では、ヒトのブースティング投薬量は、単位投薬量範囲内で、約0.01mg未満〜100mgの免疫原の「単位投薬量」が起こり得る。1つの態様では、単位投薬量は0.1mgである。他の態様では、単位投薬量は1mgである。更に他の態様では、単位投薬量は10mgである。したがって、特定の態様では、ヒトのブースター単位投薬量は、非常に低量の単位投薬量である少なくとも約0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mgから、より高量の投薬量である少なくとも1mg、少なくとも3mg、少なくとも5mg、少なくとも7mg、少なくとも10mg、少なくとも12mg、少なくとも15mg、少なくとも20mgまでの範囲であり得る。更に他のヒトの投薬量は、21〜30mg、31〜40mg、41〜50mg、51〜60mg、61〜70mg、71〜80mg、81〜90mg、及び91〜100mg/70〜80kg被験者の範囲である。更に高量の投薬量でさえも意図することもできる。
【0108】
代替態様では、ブースティング投薬量は、上で特定したプライミング投薬量よりも低量である。
【0109】
1つの態様では、第1「ブースティング」は、初回プライミング用量の数週間以内に投与される。1つの態様では、ブースティング用量は、プライミング用量の少なくとも3週間後に投与され、その後、先のブースティング用量から3週間以降に再ブースト投与される。他の態様では、第1ブースティング用量は、プライミング用量後約3〜4週間に投与される。追加のブースティング投薬量は、第1ブースター用量後、少なくとも3週間以降、より好適には約6ヶ月〜1年以上後に投与される。投与プロトコールの他の態様では、本明細書に記載の自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物のプライミング投薬量は、約10mg投与される。その後の第1ブースティング投薬量(例えば0.01mg、0.1mg、1mg、又は10mg)は、プライミング投薬量の少なくとも3週間後に投与される。その後、追加のブースティング投薬量は、先のブースティング投薬量から6ヶ月毎、1年まで投与される。
【0110】
プライミング/ブースティング投与計画のタイミング及び投薬量は、患者の健康状態、例えば身長、体重、年齢、一般的な身体の健康、他の医薬などに関連した通常の検討事項とともに、患者の血液から採取した特異的抗HIV−1 Tat抗体の力価を測定することによって決定されるように、患者の応答及び状態に応じて、関与する医師によって選択することができる。
【0111】
予防/治療方法の1つの態様は、約10mg以下、1mg以下、又は0.1mg以下の単位投薬量でプライミング有効量の免疫原性組成物を投与することを包含し、第3週及び第6週に同一有効単位投薬量で投与される2回のブースターによる投与が続く。この方法は、GMTが100,000より大きい抗体を誘導する。
【0112】
予防/治療方法の他の態様は、約10mg以下、1mg以下、又は0.1mg以下の単位投薬量でプライミング有効量の免疫原性組成物を投与することを包含し、第3週及び第6週に同一有効投薬量で投与される2回のブースターによる投与が続く。この方法は、GMTが1,000,000より大きい抗体を誘導する。
【0113】
投与は、少なくとも臨床症状又は臨床検査が、ウイルス感染が排除されているか軽減されていることを示すまで、及びその後一定期間継続することが好ましい。投薬量、投与経路、及び投与予定は、当該技術分野において公知の手順にしたがって調整される。
【0114】
予防用免疫原性組成物用途に関し、プライミング及びブースティング投薬量は、治療用免疫原性組成物のブースティング投薬量と類似しているが、予防用免疫原性組成物の初回投与後約2週間〜6ヶ月の特定の規定する期間に投与される。おそらく追加の予防用免疫原性組成物をその後投与することが望ましいかもしれない。
【0115】
以下の実施例に示すように、本明細書に記載の例示的医薬組成物又は免疫原性組成物によって誘導される高GMTの抗体は、治療用途でもワクチン用途でも高頻度のブースティング投薬量の必要性を減少させることができる。
【0116】
本明細書に記載の方法の更に他の態様では、組成物は、他のHIV−1抗ウイルス療法又は医薬投与計画とともに、又はそれに続いて用いることができる。
【0117】
以下の実施例は、上で考察した組成物及び方法の特定の態様について説明するものである。これらの実施例は、特許請求の範囲及び明細書の開示を限定するものではない。
IV. 実施例
【実施例1】
【0118】
本発明の免疫原性組成物の作製
A. 実験用免疫原
複数の異なるTatペプチド成分(太字)、T細胞ヘルパー配列(イタリック体及び太字)、リンカーアミノ酸(イタリック体のみ)、及びPam2C−又はPam3C−リポタンパク質キャップを含有する上記のような各種免疫原性組成物を下式にしたがい調製した(NAc(Pam2)C−S−Sでキャップされた式は、この式によって記載されるPam2C及びPam3Cでキャップされた免疫原と同様に調製されるはずであることに注意されたい)。
【0119】
【化9】
【0120】
類似の結果を生ずることが予想される他の類似組成物と類似の方法で代替免疫原を調製する。そのような類似免疫原には、例えば以下が含まれる。
【0121】
【化10】
【0122】
先の3つの式のうち第1の式にしたがって調製されるPam2C−及びPam3C−免疫原は、Bachem Biosciences社又はMimotopes,Pty社により、慣用の固相合成技術及び自動合成装置を用いて合成された。アミド化したC端のセリンから開始して、合成サイクルはTatエピトープ1のC端においてN端方向へ進行し、リンカーアミノ酸を介し、ヘルパーT細胞エピトープ配列(例えば破傷風トキソイド無差別Tヘルパー配列Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L;配列番号47である)を介し、そしてN端のSer−Serを介した。アミノ酸7位、9位、及び12位に対応する「ゆらぎ」位置に、それぞれ等モル量の4種、2種、及び2種の必要なアミノ酸(上記式中の括弧内)を加えた。
【0123】
トリパルミトイル−S−グリセリルシステイン及びfmoc保護ジパルミトイル−S−グリセリルシステインはBachemにより合成され、記載のような新生ペプチド鎖のN端セリンにカップリングさせた。トリフルオロ酢酸を用いてリポペプチドを樹脂から切断し、ペプチドを脱保護した。得られる免疫原性産物を乾燥させ、次に水溶液中に取り、酢酸塩の形態に変換し、乾燥させた。
【0124】
最終産物を、アミノ酸の適切な含量についてアミノ酸解析で確認し、質量分析で確認したところ、複雑なピークのパターンを見せた。純度は一般におよそ70%であると概算したが、得られるリポペプチドは更に精製しなかった。合成し、試験した免疫原に用いたHIV−1 TatのB細胞エピトープを、2つの式において配列番号15〜22及び32〜39として列挙する。
【0125】
【化11】
【0126】
B. 対照免疫原
上で考察した免疫原と比較するため、上記合成手順を使用して、以下の実施例に用いる他の免疫原も調製した。そのような「対照」免疫原は、Tatエピトープ1へ融合したT細胞ヘルパー配列のみを含有する免疫原であり、即ち以下の式である。
【0127】
【化12】
【0128】
同様に、リポペプチドキャップPam−2Kを上記免疫原のPam−2Cの位置に含有する対照免疫原、即ち以下の式は、図面中、Pam2K−QYIK−TEP1として特定した。
【0129】
【化13】
【実施例2】
【0130】
免疫プロトコール及びTat試薬
A. 免疫
動物はHarlan Laboratoriesから購入し、Molecular Diagnostic Services社にて免疫前に少なくとも1週間順応させた。BALBc及びC57BL6/BALBc F1マウスを用いた。示したように、ルイスラットを用いた。
【0131】
実施例1に記載のようにして調製した免疫原を緩衝生理食塩水に取り、マウス及びラットに腹腔内注射、並びにウサギに皮下注射した。特に明記しない限り、マウスを1mgの免疫原で第0日及び第2週に腹腔内免疫し、滴定のため血清を第4週に採取した。他の投与計画及び種は図面に記載した通りである。
【0132】
表3は、以下の実施例で使用する免疫プロトコール及び動物血清のGMTについて説明する。
【0133】
【表3】
【0134】
本明細書で考察する免疫原に用いる破傷風トキソイドT細胞ヘルパー配列はもともとヒト細胞において無差別ヘルパー活性を有することが発見されたものであり、複数の動物種において幅広い活性を有すると思われることに注意されたい。
B. 組換え全長Tat
rTat−His6はATG Laboratories社によって作製された。コンセンサスHIV−1 Tat HXBIII配列を部位特異的突然変異誘発法で修飾し、8種の全長(1〜72アミノ酸)免疫優勢Tat変異体を作製し、これらを上記表1にREK、KEK、SEK、NEK、NEN、NDN、KEN、NEN、及びSENとして特定した。
【0135】
各変異体を大腸菌で発現させ、非変性型で抽出し、ニッケルカラムで非変性条件下にて単離した。透析してイミダゾールを除去後、アリコートを−70℃で凍結保存した。これらの調製物を、以下に記載するように、バイオアッセイに、及び抗Tat結合の抗体滴定の基質として用いた。
【実施例3】
【0136】
血清の滴定
抗Tat力価を測定するために慣用のELISA法で血清をアッセイした。簡潔に言えば、Maxisorpイムノプレートを2ng/ウェルのrTatでコーティングし、22℃で1時間又は4℃で一晩インキュベーションした。0.1%Triton X−100緩衝液で徹底洗浄後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングし、再洗浄し、血清希釈を適用し、22℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートをTriton X−100緩衝液で再度徹底洗浄し、1/10,000希釈のヤギ抗マウスIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(又はラット若しくはウサギに適切な試薬)を適用した。次にプレートを22℃で1時間インキュベーションし、その後徹底洗浄し、ABTSを用いてシェーカーテーブル上で室温にて45分間現像した。405nmにて吸光度を測定した。血清が欠如している対照ウェルを測定し、滴定終点は、ODが平均+8SDより高い最低希釈の逆数とした。
A. 実験用免疫原で免疫した動物と対照免疫原で免疫した動物との幾何学的平均抗体力価(GMT)の比較
図1は、2種の一般的エピトープ1変異体、V−D−P−R−L−E−P−W−K(配列番号7)及びV−D−P−N−L−E−P−W−N(配列番号11)を含有する2種のrTatに対する、免疫マウス由来免疫血清の幾何学的平均力価(GMT)を示すグラフである。図1のX軸の下に特定した免疫原は、実施例1に記載のようにして合成し、その実施例で特定されている。Tヘルパー配列として用いる免疫原は、ヒトに用いるために記載した破傷風トキソイド無差別Tヘルパー配列(Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L;配列番号47)又は無差別ヒトDR結合のために操作したPADRE Tヘルパー配列(Xaa1−K−Xaa2−V−A−A−W−T−L−K−A−A−Xaa3;配列番号46)であり、式中、Xaa1及びXaa3はそれぞれD−アラニンであり、Xaa2はL−シクロヘキシルアラニンである。PADRE含有免疫原に関するデータは図面に示していない。
【0137】
図1の結果は、これらTat変異体単独に対する血清の交差反応性欠如とは逆に、免疫血清は2種の一般的Tatエピトープ1変異体と同様に反応したことを示している。実験用リポペプチド免疫原は、GMTが50,000より大きいことを実証する抗体を誘導した。逆に、リポペプチドキャップが欠如している免疫原及びPam2KSSキャップを有する免疫原も含め、Pam2CSS−又はPam3CSS−N端キャップが欠如している免疫原は、最大GMTが2〜3,000の抗体を誘導した。
B. 実験用免疫原で免疫した動物のrTat変異体に対するGMT
実施例1の式
【0138】
【化14】
【0139】
の実験用免疫原で免疫した1匹のマウス由来の血清を、抗Tat抗体力価について試験した。図2は、X軸に沿って提示した全長変異体組換えTatタンパク質、即ち上記表1に特定されているようなREK、NEN、KEK、KEN、SEK、NEK、SEN、及びNDN、即ちそれぞれ配列番号15、19、16、21、17、18、22、及び20に対する、血清中の抗体のGMTを示すグラフである。
【0140】
Tat変異体REK(Bクレード)及びNEN(非Bクレード)は最も頻出するものであり、図2において網掛けされている。血清は、全てのTatエピトープ1変異体に対するGMTが>100,000を示した。
C. 実験用免疫原のブースター用量のGMTに対する効果
2匹のマウスを、第0日に1mgの腹腔内プライミング用量、その後第2週に1mgの腹腔内ブースター、そして第30週に0.3mgの腹腔内第2ブースターというプロトコールにて、実験用免疫原Pam2C−S−S−マウスTヘルパー配列−V−D−P−(R/K/N/S)−L−E−P−W−(K/N)−H−P−G−S−アミド(配列番号3;Tatアミノ酸残基7及び12が「ゆらぎ」)で免疫した。全長Tat変異体REK(配列番号15)及びNEN(配列番号19)に対して血清を滴定した。力価は第4週〜第16週に幾分低下し、第28週にわたって80,000にて安定に維持され、その後、第30週の0.3mgブースト後2週間顕著な上昇を示した。図3は、2匹のマウス血清に関するこれらの結果を示すグラフである。
【実施例4】
【0141】
Tat活性及び抗体による阻害のバイオアッセイ
A. バイオアッセイ
HIV−1は、休止期CD4+ T細胞へ入ることができるが、T細胞が活性化されないと複製することができない。Tatはヒト末梢血単核細胞(PBMC)においてCD4+ T細胞を活性化する。このTat誘導性の活性化及びHIV−1複製に対する寛容性は、Liら、1997、Proc Natl Acad Sci USA 94:8116において考察されているように、抗Tat抗体によって阻害することができた。以下のようにして実施した、ヒトPBMCにおけるHIV−1複製に対するTat誘導性の寛容性の抗体による阻害に関するバイオアッセイは、これらの観察に基づいている。
【0142】
PBMCは、Astarte Biologicsから入手したものであり、所定の献血において同一ドナーから採取した30本の凍結PBMCアリコートで構成されていた。細胞を溶解し、適切に希釈し、平底96穴組織培養プレートに入れた500,000個の細胞を含有する100μl培地(完全RPMI培地、ギブコ)中で分散させた。適切な濃度のrTat又はrTat/Ab溶液を加えた(室温で30分間のプレインキュベーション後)。5〜6%CO2及び80〜90%湿度にてプレートを37℃で5日間インキュベーションした。5日目に培地をピペットでウェルに入れ、細胞をプレート表面から剥がした。細胞をV底96穴プレートへ移し、400×G(約1300rpm)にて10分間室温で遠心分離し、その後培地を除去した。原液HIV−1(HXBIII)(Zeptometrix社)を1/10希釈したもの100μlを加え、CO2インキュベーター中で37℃にて4時間インキュベーションした。徹底洗浄後、細胞を培地中で更に4日間インキュベーションした。次に細胞を上記のように遠心分離し、HIV−1 p24レベルのELISA測定(Xeptometrix社製キット)用に培地を回収した。製造者の指示にしたがいp24アッセイを行った。
【0143】
代表的バイオアッセイの結果を図4に示す。下部の点線はTatを含まないバックグラウンドHIV−1 p24レベル(ng/ml)を示し、上部の線は10ng/ml Tatを有する平均p24レベル(ng/ml)を示す。3μg/ml抗Tatモノクローナル抗体(Mab)及び10μg/ml抗Tatモノクローナル抗体を用いて阻害の用量反応曲線を作成したところ、それぞれ87%及び97%阻害を生じ、非常に統計的に有意であった(それぞれP<0.001及び0.0001)。
【0144】
正常マウス血清(NMS)は、Tat非存在下でさえこのアッセイで予測できない効果を有していた。したがって、抗Tat Mabと力価比較するために、10μg/mlのMabをNMSへ加えた。この「抑圧された」NMSのTatに対する力価を実施例3に記載のようにして測定した。10μg/ml抗Tat Mabの力価は40,000であり、これは、Tat誘導性のHIV−1複製の>90%阻害を与えるために免疫マウスにおいて必要とされるであろう血清力価の概算値、即ち12,000〜40,000を提供した。
B. 抗体による遊離Tat濃度の阻害
毒素の抗体処理は、高親和性抗体による毒素の結合が前提となっており、遊離毒素濃度を低下させ、それにより毒素に関連する毒性をブロックする(Nowalowskiら、2002、Proc Natl Acad Sci USA 99:11346)。これは、in vitroでもin vivoでも当てはまる(前記)。したがって、抗Tat Mab及び免疫抗Tat血清による遊離Tat濃度の低下を測定するためのアッセイを行い、独立した手順により、HIV−1複製をin vivoで制御するために必要な力価の上記概算値を検証した。
【0145】
このTat ELISAアッセイの原理は、抗Tat Mab又は抗Tat免疫血清を、正常IgG又はNMS対照と平行して、プロテインAコーティングビーズ(Pierce ImmunoPure Protein A plus resin)を用いて結合させることである。必要な希釈にてこれを行い、チューブを室温にて少なくとも1時間チューブローテーター上でインキュベーションした。次にチューブをマイクロ遠心機にて6,000rpmで30秒間遠心分離し、樹脂を沈殿させ、血清サンプルを取り出した。次に樹脂を徹底洗浄し;Tat溶液(200ng/ml)を加え;チューブを室温にて少なくとも1時間チューブローテーター上でインキュベーションした。次にチューブを6,000rpmにて30秒間遠心分離し、樹脂を沈殿させ、解析のために上清を新たなチューブへ取り出した。
【0146】
Tat ELISAは、プレートのコーティングに高親和性抗Tat免疫優勢エピトープMabを使用し、検出抗体としてポリクローナルウサギ抗Tatエピトープ2(1/4,000)を使用する。エピトープ2配列は、保存されたHIV−1 Tat配列K−(A/G)−L−G−I−S−Y−G−R−K(配列番号5)である。rTat(実施例2)を用いて検量線を作成する。次に試験上清及び対照上清中の未結合Tat濃度を用いて、抗Tat曝露条件における遊離Tat濃度の%阻害を対照濃度との比較により計算する。
【0147】
図5及び図6は、そのようなアッセイ実験を用いて、in vivoでHIV−1複製を制御するために必要な力価が12,000〜40,000であるという先の概算の正当性を実証している。図5は、抗Tat Mabによる遊離Tat濃度の%阻害を示しており、3〜10μg/mlの範囲で完全阻害され、これはTatに対する力価12,000〜40,000に相当する(上記を参照されたい)。図6は、高力価(640,000)マウス抗Tat血清を希釈して実施した同様の実験を示している。やはり遊離Tat濃度の最大阻害は、12,000〜40,000の力価範囲で生じている。
【0148】
10%及び1%希釈のTat免疫血清及び正常マウス血清にて、同様に第2のELISA実験を5重に行った;2種の最も一般的な形態である免疫優勢エピトープREK配列(配列番号7)又はNEN配列(配列番号11)を有する2種の組換えTatタンパク質のそれぞれに対する免疫血清のTat抗体力価は256,000であった。2種のTat変異体の減少を試験した。
【0149】
図7A及び図7Bは、血清中の抗体による%阻害又は遊離Tatの減少を実証している。10%希釈の力価は25,000、1%希釈の力価は2,500であった。実験用免疫原(試験REK)で免疫したマウス血清は、REK Tat変異体に対して試験したところ、対照の高Tat濃度と比較して、1%希釈では遊離Tat濃度の49%阻害を、10%希釈では92%阻害を示した。NENに対して試験した免疫マウス血清で同様の結果を示した。対照の高Tat濃度と比較して、1%希釈では遊離Tat濃度の33%阻害を測定した;一方、10%希釈では87%阻害を測定した。これらの阻害は、図面に提示したP値によって示すように統計的に有意であった。
【実施例5】
【0150】
力価−ワクチン構築、用量、頻度、及び種の効果
A. 免疫
動物は、Harlan Laboratoriesから購入し、Molecular Diagnostic Services社にて免疫前に少なくとも1週間順応させた。BALBc及びC57BL6/BALBc F1マウスを用いた。記載のようにルイスラットを用いた。実施例1に記載のようにして調製した免疫原を緩衝生理食塩水中に取り、マウス及びラットに腹腔内注射し、カニクイザルに皮下投与した。第0日及び第2週(第14日)に動物を免疫原で免疫し、第4週(第28日)に滴定のため血清を採取した。用量/動物を抗Tat力価とともに表4に記載する。
【0151】
【表4】
【0152】
B. 結果
ラット及びサルに関して10.0mg/動物の最適用量を同定した。匹敵する用量/動物を用いたところ、サルにおける力価はラットよりも大きく、ラットにおける力価はマウスよりも大きかった。毒性は用量/kgに関係するようであるが、免疫原性は関係しないようである。Pam2Cでキャップされた免疫原は、Pam3Cでキャップされた免疫原よりも高い力価を誘導することがわかった。
【実施例6】
【0153】
用法・用量の最適化
A. 免疫
動物は、Harlan Laboratoriesから購入し、Molecular Diagnostic Services社にて免疫前に少なくとも1週間順応させた。BALBc及びC57BL6/BALBc F1マウスを用いた。実施例1に記載のようにして調製したPam2Cでキャップされた免疫原を緩衝生理食塩水に取り、腹腔内注射した。1.0mg/マウスのPam2Cでキャップされた免疫原を3回注射することによりマウスを免疫し、第1ブースト前、及び表5による各ブーストの2週間後に力価を測定した。表5に示すように血清を採取した。
【0154】
【表5】
【0155】
B. 結果
3週毎の連続的注射が最高の力価を提供した。表4のデータ(実施例5を参照されたい)に基づき、このプロトコールがラット及びサルにおいて更に高い力価でさえ誘導することが予想される。
【実施例7】
【0156】
Pam3Cでキャップされたペプチドで免疫したラットのGMT
実施例6のプロトコールにしたがい、実施例1の式
【0157】
【化15】
【0158】
に包含される全実験用免疫原の混合物で免疫したラット由来の血清を抗Tat抗体力価について試験した。図9は、8点それぞれが1種のTat変異体に対する血清中の抗体のGMTを表すグラフである。血清のGMTは>1,000,000であった。
【実施例8】
【0159】
免疫血清による遊離Tatレベルの低下
A. Tat枯渇アッセイ
抗体を保持するがrTatの拡散は容認する膜の欠如により、Tat枯渇を測定するための古典技術を使用することはできなかった。簡潔に言えば、このアッセイは、rTatへ曝露する抗体でコーティングしたビーズを使用し、インキュベーションする。抗体は溶液中のTat量に応じてTatに結合する。したがって、このアッセイは、血清中の抗体が全長組換えTatの量を枯渇させるのはどのウェルかを測定する。
【0160】
対照:HIV−1 TatのB細胞エピトープ(10%又は1%)で免疫していない正常ラット血清をプロテインAビーズに結合させ、洗浄した。
【0161】
サンプル:免疫ラットの10%及び1%血清のIgGをプロテインAビーズに結合させ、洗浄した。実施例3に記載の方法にしたがって測定したところ、未希釈血清の抗Tat力価は1,000,000である。
【0162】
次に対照及びサンプルのプロテインAビーズを室温で30分間rTat溶液とともにインキュベーションした。遠心分離後、上清中のTatレベルをサンドイッチELISAで測定した。10%又は1%の免疫血清コーティングプロテインAビーズへの曝露後の遊離Tatを、それぞれ10%又は1%の正常マウス血清コーティングプロテインAビーズへ曝露後の遊離Tatに対する割合で表した。
B. 結果
図10はアッセイの結果を反映している。10%の血清は上清中でおよそ90%のTatに結合することがわかった。同様に、1%の血清は上清中でおよそ50%のTatに結合することがわかった。
【実施例9】
【0163】
リポペプチドキャップのリンカー内への極性荷電配列の挿入による水可溶化
本明細書に記載のようなPam2Cys又はPam3Cys又はNAc(Pam2)Cとともに設計した免疫原は、水性溶媒に不溶であることがわかった。全3種のリポペプチドキャップを有するリポペプチドの水性溶媒への溶解性を達成するため、これら免疫原をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、リン酸緩衝生理食塩水で希釈して5〜10%DMSOとした。これは乳白色の幾分混濁した溶液を生じ、これを動物へ注射した。
【0164】
Pam2CSKKKKS(配列番号73)でキャップされたリポペプチドを合成したところ、溶解性が向上し、透明溶液を生ずることがわかった。溶解性は低下したpH値で最高であり、pH4.0で最適であり、pH5.0〜6.0では透明溶液を得るために最初に加温と攪拌が必要であった。4℃で一晩保存後も透明溶液を維持した。得られた結果の詳細は、以下の表6に反映されている。Pam2CSKKKKS(配列番号73)でキャップされたリポペプチドは、注射用蒸留水中の25mg/mLマンニトールにも完全に可溶性であり、容易に凍結乾燥されて「ケーク」を形成し、これは加えた注射用蒸留水に完全に溶解性であった。
【0165】
【表6】
【実施例10】
【0166】
荷電極性配列含有免疫原で免疫したラットのGMT
1群あたり3匹のラットを、Pam3Cのリンカーに隣接した極性荷電配列(即ち−S−K−K−K−K−S−)を有する式
【0167】
【化16】
【0168】
に包含される全実験用免疫原の混合物にて異なる投薬量/群で免疫した。この免疫原を「TUTI−K4」と称する。各ラットに、0.1mg TUTI−K4、又は1mg TUTI−K4、又は10mg TUTI−K4の用量を第0日に投与した。各ラットを同一用量で第3週にブーストした。各ラットの、全長組換えTat(1〜72アミノ酸)REK変異体タンパク質に対する血清抗体力価を測定した。
【0169】
図11のグラフに示すように、第5週までに、全ての用量は約500,000(0.1mg用量)又は約1,000,000(1mg及び10mg用量)のGMTを提供した。これらの力価は全て99%を超える遊離Tatレベルの低下に関連している。10mg群においてより急速に初期力価が上昇したにもかかわらず、1mg/ラットを投与されたラットは5週間にわたり同一力価を達成したように見えた。第8週に投与すべき第2ブースト後に得られる力価は3,000,000を超えることが期待される。
【0170】
このデータに基づき、この免疫原は、良好な治療的力価を達成するために必要とされるワクチン量において10〜100倍の用量低下を可能にすることが期待される。例えば、0.1mg/mLもの低用量、又は0.01mg/mLであっても、治療的に有効な力価を達成すると思われる。そのように低い治療的有効用量は、劇的且つ予想外の治療効果及び費用便益を世界中の患者集団に提供するであろう。
【0171】
上で説明した態様の数多くの修飾及び変異は、本明細書に含まれるものであり、当該技術分野に熟練した者にとって自明であることが予想される。本明細書に記載の組成物及びプロセスに対するそのような修飾及び改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内に包含されると考えられる。先に列挙又は参照した全ての文献は、米国仮出願第60/837,493号を含め、添付の配列表とともに本明細書に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の免疫原を含む、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物であって、各免疫原は:
(a) アミノ酸配列V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−アミド(配列番号1)を有するHIV−1 TatのB細胞エピトープ、式中、Xaa7はR、K、N、及びSから成る群より選択され、Xaa9はE及びDから成る群より選択され、Xaa12はK及びNから成る群より選択され、Xaa13は存在しないかHであり、Xaa14は存在しないかPであり、Xaa15は存在しないかGであり、そしてXaa16は存在しないかSである;
(b) ユニバーサルTヘルパー配列;
(c) ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン、N−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)、及びトリパルミトイル−S−グリセリルシステインから成る群より選択されるリポペプチドキャップ、
を含み、
ここで、組成物中の各免疫原は、HIV−1 Tatのエピトープのアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって他の免疫原と異なっている、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
式R2−(R1−HIV−1 TatのB細胞エピトープ)を有し、式中、R2はリポペプチドであり、R1はTヘルパー配列である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
式R2−(HIV−1 TatのB細胞エピトープ−R1)、又は
R2−K(HIV−1 TatのB細胞エピトープ)−R1、又は
R2−K(R1)−HIV−1 TatのB細胞エピトープ、
を有し、式中、R2はリポペプチドであり、R1はTヘルパー配列である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
1〜10個の中性アミノ酸のリンカー配列を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
リンカー配列が、R2のCysに結合してR2を免疫原の他の成分に連結しているか、又は免疫原の他の成分間に位置付けられる、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
そのリンカー配列を有するR2が、R1のアミノ端のα−アミノ官能基に連結している、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
R2が、R1とHIV−1 Tatのエピトープのアミノ端とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノに連結している、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
R2が、HIV−1 TatのエピトープのC端に位置付けられたK残基のε−アミノに連結している、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
各免疫原が、1個以上の中性リンカーアミノ酸が隣接していてもよく、且つ(a)R2のカルボキシ端の部分としての位置;(b)R1の遊離アミノ端の位置;(c)B細胞エピトープの遊離アミノ端の位置;(d)R1のカルボキシ端の位置;(e)B細胞エピトープのカルボキシ端の位置;(f)KとR1とのあいだに介在する位置;及び(g)KとB細胞エピトープとのあいだに介在する位置、から成る群より選択される位置に位置付けられた荷電極性アミノ酸の配列を更に含む、請求項2又は3に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
リンカーが、−S−、−S−S−、−G−、及び−G−S−から成る群より選択される、請求項2又は4に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
極性配列が、K、E、D、及びRから成る群より個別に選択される4〜8個のアミノ酸の配列を含み、リンカーアミノ酸が隣接していてもよい、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
極性配列が、−K−K−K−K−、−S−K−K−K−K−S−、G−K−K−K−K−G、S−K−K−K−K−K−K−S、及びG−K−K−K−K−K−K−G(配列番号65、64、70、69、及び71)から成る群より選択される、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
R1配列が:
(a) Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−Xaa(配列番号6)、式中、Xaaは存在しないかLであり、任意のアミノ酸リンカーを有する;
(b) Xaa1−K−Xaa2−V−A−A−W−T−L−K−A−A−Xaa3(配列番号46)、式中、Xaa1及びXaa3はそれぞれD−アラニンであり、Xaa2はL−シクロヘキシルアラニンである;及び
(c) F−N−N−F−T−V−S−F−W−L−R−V−P−K−V−S−A−S−H−L−E−(配列番号23)、
から成る群より選択される、請求項2又は3に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
HIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープの1〜16種以下の異なる変異体を含有する免疫原を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
V−D−P−R−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号15)、
V−D−P−K−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号16)、
V−D−P−N−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号18)、
V−D−P−S−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号17)、
V−D−P−K−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号21)、
V−D−P−N−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号19)、
V−D−P−S−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号22)、及び
V−D−P−N−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号20)、
から成る群より選択される、HIV−1 Tatの1〜8種の異なる免疫優勢B細胞エピトープ変異体を含有する免疫原を含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
V−D−P−R−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号15)、
V−D−P−K−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号16)、
V−D−P−N−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号18)、
V−D−P−S−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号17)、
V−D−P−K−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号21)、
V−D−P−N−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号19)、
V−D−P−S−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号22)、
V−D−P−N−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号20)、
V−D−P−R−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号32)、
V−D−P−K−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号33)、
V−D−P−N−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号34)、
V−D−P−S−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号35)、
V−D−P−R−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号36)、
V−D−P−R−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号37)、
V−D−P−K−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号38)、及び
V−D−P−S−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号39)、
から成る群より選択される、1〜16種の異なる変異体を含有する免疫原を含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
各免疫原において、R2は、ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン、又はN−アセチル−(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)、又はトリパルミトイル−S−グリセリルシステインから成る群より選択され;R2は、−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列を更に含み;そしてR1は、B細胞エピトープに連結している−S−アミノ酸リンカーを有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)である、請求項2、15、又は16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
極性アミノ酸配列−K−K−K−K−(配列番号65)が、リンカー残基−S−S−のあいだに位置付けられる、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
免疫被験者において、HIV−1 Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体配列に対する幾何学的平均力価が300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
幾何学的平均力価(GMT)が500,000より大きい、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
幾何学的平均力価(GMT)が100万より大きい、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
幾何学的平均力価(GMT)が300万より大きい、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物、及び好適な医薬担体又は賦形剤を含む医薬組成物であって、免疫被験者において、HIV−1 Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体配列に対する幾何学的平均力価が300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する、前記医薬組成物。
【請求項24】
幾何学的平均力価が1,000,000より大きい、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
複数のHIV−1株及びサブタイプに対する抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する方法であって、有効な抗体誘導量の請求項23又は24に記載の医薬組成物で被験者を免疫することを含み、前記有効な量は、HIV−1 Tatの複数の免疫優勢B細胞エピトープ変異体配列に対する幾何学的平均力価が300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する、前記誘導方法。
【請求項26】
幾何学的平均力価が1,000,000より大きい、請求項25に記載の誘導方法。
【請求項27】
幾何学的平均力価が3,000,000より大きい、請求項25に記載の誘導方法。
【請求項28】
初回プライミング有効量の組成物、その後ブースター有効量の組成物を被験者へ投与することを含む、請求項25に記載の誘導方法。
【請求項29】
プライミング量の少なくとも3週間後に第1ブースター有効量を被験者へ投与することを含む、請求項28に記載の誘導方法。
【請求項30】
プライミング量及び第1ブースター量の後に定期的に第2ブースター有効量を被験者へ投与することを含む、請求項29に記載の誘導方法。
【請求項31】
有効量が10mg以下である、請求項25〜31のいずれか1項に記載の誘導方法。
【請求項32】
有効量が1mg以下である、請求項25〜31のいずれか1項に記載の誘導方法。
【請求項33】
有効量が0.1mg以下である、請求項25〜31のいずれか1項に記載の誘導方法。
【請求項34】
プライミング有効量が10mg未満の単位投薬量であり、2回のブースター有効量が第3週及び第6週に同一有効量で投与され、GMTが100,000より大きい、請求項29に記載の誘導方法。
【請求項35】
プライミング有効量が10mg未満の単位投薬量であり、2回のブースター有効量が第3週及び第6週に同一有効量で投与され、GMTが1,000,000より大きい、請求項29に記載の誘導方法。
【請求項36】
請求項1に記載の免疫原性組成物を作製する方法であって、固相合成法を用いて免疫原を合成し、そしてXaa7、Xaa9、及びXaa12で示される変異体アミノ酸を等モル量で単一合成混合物中に導入することを含む、前記作製方法。
【請求項37】
複数のHIV−1株及びサブタイプに対する抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導するための医薬の製造における、請求項1に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項38】
組成物の用量が1mg以下である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
組成物の用量が0.1mg以下である、請求項37に記載の使用。
【請求項40】
抗HIV−1 Tat抗体の幾何学的平均力価が100,000より大きい、請求項37に記載の使用。
【請求項41】
抗HIV−1 Tat抗体の幾何学的平均力価が500,000より大きい、請求項37に記載の使用。
【請求項42】
抗HIV−1 Tat抗体の幾何学的平均力価が1,000,000より大きい、請求項37に記載の使用。
【請求項1】
複数の免疫原を含む、自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物であって、各免疫原は:
(a) アミノ酸配列V−D−P−Xaa7−L−Xaa9−P−W−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−アミド(配列番号1)を有するHIV−1 TatのB細胞エピトープ、式中、Xaa7はR、K、N、及びSから成る群より選択され、Xaa9はE及びDから成る群より選択され、Xaa12はK及びNから成る群より選択され、Xaa13は存在しないかHであり、Xaa14は存在しないかPであり、Xaa15は存在しないかGであり、そしてXaa16は存在しないかSである;
(b) ユニバーサルTヘルパー配列;
(c) ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン、N−アセチル(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)、及びトリパルミトイル−S−グリセリルシステインから成る群より選択されるリポペプチドキャップ、
を含み、
ここで、組成物中の各免疫原は、HIV−1 Tatのエピトープのアミノ酸位置Xaa7、Xaa9、又はXaa12におけるアミノ酸変異によって他の免疫原と異なっている、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
式R2−(R1−HIV−1 TatのB細胞エピトープ)を有し、式中、R2はリポペプチドであり、R1はTヘルパー配列である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
式R2−(HIV−1 TatのB細胞エピトープ−R1)、又は
R2−K(HIV−1 TatのB細胞エピトープ)−R1、又は
R2−K(R1)−HIV−1 TatのB細胞エピトープ、
を有し、式中、R2はリポペプチドであり、R1はTヘルパー配列である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
1〜10個の中性アミノ酸のリンカー配列を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
リンカー配列が、R2のCysに結合してR2を免疫原の他の成分に連結しているか、又は免疫原の他の成分間に位置付けられる、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
そのリンカー配列を有するR2が、R1のアミノ端のα−アミノ官能基に連結している、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
R2が、R1とHIV−1 Tatのエピトープのアミノ端とのあいだに位置付けられたK残基のε−アミノに連結している、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
R2が、HIV−1 TatのエピトープのC端に位置付けられたK残基のε−アミノに連結している、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
各免疫原が、1個以上の中性リンカーアミノ酸が隣接していてもよく、且つ(a)R2のカルボキシ端の部分としての位置;(b)R1の遊離アミノ端の位置;(c)B細胞エピトープの遊離アミノ端の位置;(d)R1のカルボキシ端の位置;(e)B細胞エピトープのカルボキシ端の位置;(f)KとR1とのあいだに介在する位置;及び(g)KとB細胞エピトープとのあいだに介在する位置、から成る群より選択される位置に位置付けられた荷電極性アミノ酸の配列を更に含む、請求項2又は3に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
リンカーが、−S−、−S−S−、−G−、及び−G−S−から成る群より選択される、請求項2又は4に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
極性配列が、K、E、D、及びRから成る群より個別に選択される4〜8個のアミノ酸の配列を含み、リンカーアミノ酸が隣接していてもよい、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
極性配列が、−K−K−K−K−、−S−K−K−K−K−S−、G−K−K−K−K−G、S−K−K−K−K−K−K−S、及びG−K−K−K−K−K−K−G(配列番号65、64、70、69、及び71)から成る群より選択される、請求項11に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
R1配列が:
(a) Q−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−Xaa(配列番号6)、式中、Xaaは存在しないかLであり、任意のアミノ酸リンカーを有する;
(b) Xaa1−K−Xaa2−V−A−A−W−T−L−K−A−A−Xaa3(配列番号46)、式中、Xaa1及びXaa3はそれぞれD−アラニンであり、Xaa2はL−シクロヘキシルアラニンである;及び
(c) F−N−N−F−T−V−S−F−W−L−R−V−P−K−V−S−A−S−H−L−E−(配列番号23)、
から成る群より選択される、請求項2又は3に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
HIV−1 Tatの免疫優勢B細胞エピトープの1〜16種以下の異なる変異体を含有する免疫原を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
V−D−P−R−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号15)、
V−D−P−K−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号16)、
V−D−P−N−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号18)、
V−D−P−S−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号17)、
V−D−P−K−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号21)、
V−D−P−N−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号19)、
V−D−P−S−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号22)、及び
V−D−P−N−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号20)、
から成る群より選択される、HIV−1 Tatの1〜8種の異なる免疫優勢B細胞エピトープ変異体を含有する免疫原を含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
V−D−P−R−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号15)、
V−D−P−K−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号16)、
V−D−P−N−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号18)、
V−D−P−S−L−E−P−W−K−H−P−G−S(配列番号17)、
V−D−P−K−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号21)、
V−D−P−N−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号19)、
V−D−P−S−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号22)、
V−D−P−N−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号20)、
V−D−P−R−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号32)、
V−D−P−K−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号33)、
V−D−P−N−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号34)、
V−D−P−S−L−D−P−W−K−H−P−G−S(配列番号35)、
V−D−P−R−L−E−P−W−N−H−P−G−S(配列番号36)、
V−D−P−R−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号37)、
V−D−P−K−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号38)、及び
V−D−P−S−L−D−P−W−N−H−P−G−S(配列番号39)、
から成る群より選択される、1〜16種の異なる変異体を含有する免疫原を含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
各免疫原において、R2は、ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン、又はN−アセチル−(ジパルミトイル−S−グリセリルシステイン)、又はトリパルミトイル−S−グリセリルシステインから成る群より選択され;R2は、−S−S−残基のアミノ酸リンカー配列を更に含み;そしてR1は、B細胞エピトープに連結している−S−アミノ酸リンカーを有するQ−Y−I−K−A−N−S−K−F−I−G−I−T−E−L(配列番号47)である、請求項2、15、又は16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
極性アミノ酸配列−K−K−K−K−(配列番号65)が、リンカー残基−S−S−のあいだに位置付けられる、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
免疫被験者において、HIV−1 Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体配列に対する幾何学的平均力価が300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
幾何学的平均力価(GMT)が500,000より大きい、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
幾何学的平均力価(GMT)が100万より大きい、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
幾何学的平均力価(GMT)が300万より大きい、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の自発的に抗原性を補強する免疫原性組成物、及び好適な医薬担体又は賦形剤を含む医薬組成物であって、免疫被験者において、HIV−1 Tatの複数の免疫優勢エピトープ変異体配列に対する幾何学的平均力価が300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する、前記医薬組成物。
【請求項24】
幾何学的平均力価が1,000,000より大きい、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
複数のHIV−1株及びサブタイプに対する抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導する方法であって、有効な抗体誘導量の請求項23又は24に記載の医薬組成物で被験者を免疫することを含み、前記有効な量は、HIV−1 Tatの複数の免疫優勢B細胞エピトープ変異体配列に対する幾何学的平均力価が300,000より大きい抗HIV−1 Tat抗体を誘導する、前記誘導方法。
【請求項26】
幾何学的平均力価が1,000,000より大きい、請求項25に記載の誘導方法。
【請求項27】
幾何学的平均力価が3,000,000より大きい、請求項25に記載の誘導方法。
【請求項28】
初回プライミング有効量の組成物、その後ブースター有効量の組成物を被験者へ投与することを含む、請求項25に記載の誘導方法。
【請求項29】
プライミング量の少なくとも3週間後に第1ブースター有効量を被験者へ投与することを含む、請求項28に記載の誘導方法。
【請求項30】
プライミング量及び第1ブースター量の後に定期的に第2ブースター有効量を被験者へ投与することを含む、請求項29に記載の誘導方法。
【請求項31】
有効量が10mg以下である、請求項25〜31のいずれか1項に記載の誘導方法。
【請求項32】
有効量が1mg以下である、請求項25〜31のいずれか1項に記載の誘導方法。
【請求項33】
有効量が0.1mg以下である、請求項25〜31のいずれか1項に記載の誘導方法。
【請求項34】
プライミング有効量が10mg未満の単位投薬量であり、2回のブースター有効量が第3週及び第6週に同一有効量で投与され、GMTが100,000より大きい、請求項29に記載の誘導方法。
【請求項35】
プライミング有効量が10mg未満の単位投薬量であり、2回のブースター有効量が第3週及び第6週に同一有効量で投与され、GMTが1,000,000より大きい、請求項29に記載の誘導方法。
【請求項36】
請求項1に記載の免疫原性組成物を作製する方法であって、固相合成法を用いて免疫原を合成し、そしてXaa7、Xaa9、及びXaa12で示される変異体アミノ酸を等モル量で単一合成混合物中に導入することを含む、前記作製方法。
【請求項37】
複数のHIV−1株及びサブタイプに対する抗HIV−1 Tat抗体のin vivo産生を誘導するための医薬の製造における、請求項1に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項38】
組成物の用量が1mg以下である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
組成物の用量が0.1mg以下である、請求項37に記載の使用。
【請求項40】
抗HIV−1 Tat抗体の幾何学的平均力価が100,000より大きい、請求項37に記載の使用。
【請求項41】
抗HIV−1 Tat抗体の幾何学的平均力価が500,000より大きい、請求項37に記載の使用。
【請求項42】
抗HIV−1 Tat抗体の幾何学的平均力価が1,000,000より大きい、請求項37に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−500407(P2010−500407A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524644(P2009−524644)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/017874
【国際公開番号】WO2008/021295
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(500020966)サイモン・エル・エル・シー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/017874
【国際公開番号】WO2008/021295
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(500020966)サイモン・エル・エル・シー (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]