説明

HIVの検出方法

【課題】HIV抗原を免疫学的に測定する前にHIV抗体を不活化する方法において、抗原の安定性を保持しつつHIV抗体を効果的に不活化する方法およびそれに用いる試薬を提供する。
【解決手段】非イオン性界面活性剤を含有する酸性アミノ酸緩衝液に還元剤であるチオール基を有する化合物および/またはホスフィンを添加した前処理液中で、試料の加熱処理を行うことを特徴とする、HIV抗原検出の前処理法、その前処理法を行う工程を含む免疫学的測定法、それらの方法のための試薬および試薬キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的測定によるヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus、以下、HIVという。)の検出方法に関する。より詳細には、HIV抗原検出法の検体前処理として、試料中に存在する抗体を不活化するための方法、それを含むHIV抗原の検出方法およびそれに用いる試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
HIVは、レトロウイルス科レンチウイルス属に分類される、後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome、以下、エイズという。)の原因ウイルスである。エイズは、1981年に初めて認識された公衆衛生上重要な疾患であり、現在までに全世界で6千万人以上がHIVに感染し、2千万人以上がエイズで亡くなっている(非特許文献1)。一方、日本国内の感染者数は1万人強であるが、その数は加速的に増加し続けており、感染拡大阻止および潜伏感染者の早期診断が重要とされている(非特許文献2)。
【0003】
HIV診断においては、酵素抗体法(ELISA)、粒子凝集法(PA)、免疫クロマトグラフィー法(IC)等のHIV抗体スクリーニング検査法、Western Blot法、蛍光抗体法(IFA)等の抗体確認検査および、HIV抗原検査、抗原抗体同時検査、ウイルス分離、核酸診断法(PCR)等の検査が行われている。HIV抗体検査では、感染後、感染を確認できるまでの期間(ウインドウ期)が3〜4週間であるため、この期間を短縮できるHIV抗原検査は有用である(非特許文献3)。
【0004】
HIV病原検査の一つである核酸診断法(PCR)は、前記の診断の他、輸血用血液を対象とした検査や抗ウイルス剤によるエイズ治療効果の評価、治療方針決定においても大きな役割を果たしている。しかし、核酸診断法は高価で操作が煩雑であるため、より廉価で簡便な抗原検査によって高感度にHIV抗原を検出できる方法が望まれている。
【0005】
一方、HIV抗原検査においては、感染初期にHIV抗原が検出されるが、その後、免疫系が活性化され抗体が産生されると一般的に抗原は検出されなくなる。これは、産生された抗体と抗原が免疫複合体を形成することにより抗原が測定できなくなるものであり、免疫複合体を解離して抗体を不活化することで抗原測定が可能になると考えられる。
【0006】
HIV抗体不活化法として従来、Triton(登録商標) X-100溶液中で煮沸する方法(非特許文献4)やグリシン−HCl緩衝液により不活化する方法(非特許文献5)等が行われてきた。しかし、Triton X-100溶液中での煮沸では抗体が不活化される一方で抗原も変性してしまい、また、グリシン−HCl緩衝液による不活化では抗体の不活化が不十分であるため、いずれの方法も測定値が低いという問題がある。
【0007】
一方、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール等の還元剤には、蛋白質のジスルフィド結合を還元してチオール基を還元形態で維持する作用があり、蛋白質の保護剤として使用されることが知られている。しかし、HIV抗原測定の前処理において、加熱処理による抗原の破壊を抑制する目的で還元剤を用いた例は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】AIDS Epidemic Update.December 2009.(http://data.unaids.org/pub/Report/2009/JC1700_Epi_Update_2009_en.pdf)
【非特許文献2】照屋勝治,臨床とウイルス 36(4), 247-256, 2008
【非特許文献3】嶋 貴子ら,感染症学雑誌 81(5), 562-572, 2007
【非特許文献4】Ruengpung Sutthent,et al.,Journal of Clinical Microbiology, Mar. 1016-1022, 2003
【非特許文献5】Denis R. Henrard,et al.,Journal of Clinical Microbiology, Jan. 72-75, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされた、HIV抗原を免疫学的に測定する前にHIV抗体を不活化する方法に関するものであり、抗原の安定性を保持しつつHIV抗体を効果的に不活化する方法およびそれに用いる試薬を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、非イオン性界面活性剤を含有する酸性アミノ酸緩衝液に、還元剤であるチオール基を有する化合物またはホスフィンを添加した前処理液中で試料を加熱処理することにより、HIV抗原の安定性を保ちつつ抗体を効果的に不活化できることを見出した。さらに、本発明者は、還元剤濃度を高めると試料が沈殿、凝固してしまうという問題を解決するために、還元剤を組み合わせて各還元剤の濃度を低く抑えることが有効であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づきなされたものである。
【0011】
すなわち、本発明は以下のような構成からなるものである。
(1)免疫学的測定において、非イオン性界面活性剤を含有する酸性アミノ酸緩衝液にチオール基を有する化合物および/またはホスフィンを添加した前処理液中で、試料の加熱処理を行うことを特徴とする、HIV抗原検出の前処理法。
(2)試料の加熱処理温度が56℃以上であることを特徴とする(1)に記載のHIV抗原検出の前処理法。
(3)チオール基を有する化合物が、2-ジエチルアミノエタンチオールもしくはその塩、または2-メルカプトエタノールであることを特徴とする(1)または(2)に記載のHIV抗原検出の前処理法。
(4)ホスフィンがトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか1項に記載のHIV抗原検出の前処理法。
(5)酸性アミノ酸緩衝液のpHが1.0以上2.5以下であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載のHIV抗原検出の前処理法。
(6)非イオン性界面活性剤がエーテル型またはエステル型であることを特徴とする(1)から(5)のいずれか1項に記載のHIV抗原検出の前処理法。
(7)以下の工程を含むことを特徴とするHIV抗原の免疫学的測定方法。
(a)(1)から(6)のいずれか1項に記載の前処理法を行う工程、
(b)HIV抗原に結合するプローブを用いてHIV抗原の有無を検出する工程またはHIV抗原に結合するプローブを用いてHIV抗原を定量する工程。
(8)プローブが抗HIV抗体であることを特徴とする(7)に記載の免疫学的測定方法。
(9)以下の(a)から(c)を含有することを特徴とする、HIVを含む試料の前処理液。
(a)非イオン性界面活性剤
(b)酸性アミノ酸緩衝液
(c)チオール基を有する化合物および/またはホスフィン
(10)チオール基を有する化合物が、2-ジエチルアミノエタンチオールもしくはその塩、または2-メルカプトエタノールであることを特徴とする(9)に記載の前処理液。
(11)ホスフィンがトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩であることを特徴とする(9)または(10)に記載の前処理液。
(12)非イオン性界面活性剤がエーテル型またはエステル型であることを特徴とする(9)から(11)のいずれか1項に記載の前処理液。
(13)(9)から(12)のいずれか1項に記載の前処理液を含有し、さらに、HIV抗原に結合するプローブを含むことを特徴とする、HIV抗原の有無を検出する試薬または試薬キット。
(14)プローブが抗HIV抗体であることを特徴とする(13)に記載の試薬または試薬キット。
(15)(9)から(12)のいずれか1項に記載の前処理液を含有し、さらに、HIV抗原に結合するプローブを含むことを特徴とする、HIV抗原を定量する試薬または試薬キット。
(16)プローブが抗HIV抗体であることを特徴とする(15)に記載の試薬または試薬キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明のHIV検出方法またはそれに用いる試薬により、抗原の安定性を保ちつつHIV抗体を不活化することができ、高感度で正確なHIV抗原測定が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、免疫学的測定によるHIV抗原検出の前処理において、非イオン性界面活性剤を含有する酸性アミノ酸緩衝液に還元剤であるチオール基を有する化合物および/またはホスフィンを添加した溶液中で試料の加熱処理を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明で検出対象とする抗原は、HIVのgag遺伝子によってコードされる蛋白質の全部またはその一部であれば特に限定されない。HIV-1抗原としては、p24、p17等が挙げられ、HIV-2抗原としては、p26、p16等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる還元剤は、高温および界面活性剤の処理によりHIV抗原が破壊されるのを抑制して抗原の安定性を保持する目的で用いる。還元剤であれば何でも良いというわけではなく、チオール基を有する化合物である2-メルカプトエタノール(以下、2-MEという。)、2-ジエチルアミノエタンチオールもしくはその塩(以下、DEAETという。)、またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンもしくはその塩(以下、TCEPという。)等が適している。中でも、2-MEとTCEPを組み合わせることで、各還元剤の濃度を抑え、試料の沈殿、凝固を抑制しつつ最大限にHIV抗原の安定性を保持することができる。還元剤の使用濃度は、検体前処理液中の濃度として0.001M以上0.12M以下とすることが好ましい。より詳細には、2-MEは、0.01M以上0.1M以下、DEAETは、0.04M以上0.12M以下、TCEPは、0.001M以上0.002M以下とすることが好ましい。
【0016】
本発明の検体前処理は、低温では抗体の不活化が不十分である一方、高温で処理時間が長くなると測定時に反応液中の試料が沈殿または凝固しやすくなる。そのため、処理温度、時間は反応液中の試料の沈殿、凝固を抑制しつつ十分に抗体を不活化できる範囲にする必要がある。温度を56℃以上100℃以下とすることで本発明の効果が得られるが、適した処理時間は温度によって異なる。当業者であれば本発明の実施例を参考にして処理温度、時間を設定することができる。実施例に示したように、56℃以上65℃以下では、処理時間を1時間以上とすることが好ましく、1時間以上3時間以下とすることがさらに好ましい。70℃付近では、処理時間を30分以上とすることが好ましく、30分以上1時間以下とすることがさらに好ましい。また、97℃付近では、5分以上15分以下とすることが好ましく、10分以上15分以下とすることがさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いる非イオン性界面活性剤は、加熱処理と組み合わせることで、効果的にHIV抗体を不活化するために使用する。エーテル型非イオン性界面活性剤またはエステル型非イオン性界面活性剤であれば、特に限定せずに使用できる。エーテル型としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、エステル型としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。HLB値は12以上18以下が好ましく、13以上18以下がさらに好ましい。また、本発明で使用する界面活性剤の濃度は、検体前処理液中の濃度として0.5%以上10%以下が好ましい。
【0018】
本発明で用いるアミノ酸は、検体前処理液の緩衝剤として、さらにHIV抗原の安定性保持効果を上げる目的で使用する。アミノ酸であれば特に限定されず、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸またはヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン等の修飾されたアミノ酸が使用できる。使用濃度は、検体前処理液中の濃度として0.05M以上0.3M以下が好ましく、0.1M以上0.2M以下がより好ましく、0.1M以上0.15M以下がさらに好ましい。
【0019】
本発明の検体前処理液は、測定時に反応液中の試料の沈殿、凝固が生じにくく、HIV抗原と抗体の解離を効果的に行える酸性のpHに調整する。検体前処理液のpHは、1.0以上2.5以下が好ましく、1.5以上2.0以下がより好ましく、1.75以上2.0以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の検体前処理後のHIV抗原測定方法は、免疫測定法であれば特に限定されない。酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、金コロイド凝集法、イムノクロマト法、ラテックス凝集法(LA)、免疫比濁法(TIA)等の種々の方法に適用できる。
【0021】
本発明の検体前処理後のHIV抗原測定には抗体等のプローブを用いることができる。抗体は、HIV抗原を検出可能であれば由来する動物種やクローンは特に限定されない。ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ヒツジ、ラクダ、ニワトリ等に由来する抗体が挙げられ、モノクローナル抗体でも、ポリクローナル抗体でも構わない。また、HIV抗原への特異的な結合に適する全てのサブクラスの抗体を用いることができる。組換え抗体、Fab、Fab'又はF(ab')2断片のような断片を用いることももちろん可能である。
【0022】
本発明の検体前処理に供する試料は、HIV抗原を含む可能性のある試料であれば特に限定されない。血清、血漿、全血、尿、唾液、リンパ液、細胞組織抽出液、その他の生体由来検体等が試料として挙げられる。
【0023】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
(還元剤の検討1)
HIV陰性ヒト血清にHIV抗原を添加した検体を試料とし、検体前処理液に含有する還元剤の種類、濃度を変化させ、検体前処理による抗原失活抑制の程度を調べた。
【0025】
(1)固相化抗体
市販の抗HIV-1 p24抗体(Meridian製c65690M、c65941M)または抗HIV-2 p26抗体(AUSTRAL Biologicals製H12A-851-5 、Fitzgerald製10-001401)をPBSで希釈し、製品の取扱説明書に記載の方法に従い活性化した磁性粒子(invitrogen製Dynabeads(登録商標) M-280-T Tosylactivated)を添加し25℃で1時間撹拌し、その後、0.5%BSA(オリエンタル酵母製)中で25℃、1時間撹拌し固相化抗体溶液を得た。
【0026】
(2)ルシフェラーゼ標識抗体
定法に従いマレイミド基を導入したストレプトアビジンと、還元してチオール基を得た前記の抗HIV-1 p24抗体または抗HIV-2 p26抗体を反応させて結合させた。これにビオチン化ルシフェラーゼ(キッコーマン製)を反応させ、Superdex(登録商標) 200(GE HealthcareBioscience製)を用いて分画精製し、0.5%カゼインNaを含むPBSで100倍に希釈して使用した。
【0027】
(3)発光試薬1、2
Tris(hydroxymethyl)aminomethane(和光純薬製)にHClを添加して、50mM Tris-HCl pH8.5水溶液を作製し、発光試薬1とした。D-ルシフェリンを0.47mM、ATP・Mgを2mM、硫酸Mgを16mMになるようにpH6.4、20mM ADA(同仁化学製)緩衝液に添加して発光試薬2とした。
【0028】
(4)検体前処理液
0.875% Triton X-100(ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル)、0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0に以下の表1に示す各種還元剤を添加した。
【0029】
【表1】

【0030】
(5)検体の前処理
HIV陰性血清(SCANTIBODY LABORATRY社)にp24抗原(Meridian製R18301)10ng/mlまたはp26抗原(AUSTRAL Biological製H12A-850-5)10ng/mlを添加したものを試料とした。この試料100μlに(4)の検体前処理液を400μl添加し、撹拌後97℃水浴で10分間加熱した後に冷却し、前処理済検体とした。
【0031】
(6)免疫学的測定法
(5)の前処理済検体200μlを免疫反応用チューブに秤取し中和液(0.7M Tris-HCl pH8.5)200μlを加えた。この時、対照として、前処理を行っていない試料40 μlを別途免疫反応用チューブに秤取し、中和液添加以外の操作を同様に行った。各免疫反応チューブの中に(1)で調製した固相化抗体溶液20μlを添加し、37℃、15分間反応させた(第一反応)。反応後、洗浄液(PBS+0.05% Tween(登録商標) 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル))を1ml添加し固相化抗体を磁石で集磁し反応液を除去した。さらに、洗浄液を1ml添加して撹拌した後、同様に固相化抗体を磁石で集磁し洗浄液を除去した。この操作を3回繰り返した後、洗浄液の代わりにルシフェラーゼ標識抗体を50μl添加し、37℃、15分間反応させた(第二反応)。反応後、洗浄液を1ml添加して固相化抗体を磁石で集磁し、反応液を除去した。これに洗浄液を1ml添加して撹拌した後、同様に固相化抗体を磁石で集磁して洗浄液を除去した。この操作を3回繰り返した後、洗浄液の代わりに発光試薬1を100μl添加し、さらに発光試薬2を100μl添加してルーマットLB9507(ベルトールドジャパン社製)で発光強度(5秒間の積算値)を測定した。
【0032】
(7)結果
発光強度および、前処理なしの発光強度に対する各還元剤濃度における発光強度の割合(%)を表2〜5に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
これらの結果から、前処理液への還元剤添加により、前処理を行うことによるHIV抗原の失活が抑制されること(表2〜4)、各還元剤の添加濃度が多い程、HIV抗原失活抑制効果が増す傾向がある(表2、3)が、還元剤濃度が高くなるほど、血清中の蛋白質等の不溶化による凝固が起こりやすくなること(表2〜4)が示された。一方、還元剤として2-MEおよびTCEPを含有する前処理液を用いると、特に、p26抗原において、単独の還元剤を含有した前処理液では得られない高いHIV抗原失活抑制効果、すなわち、抗原の安定性保持効果があることが示された(表5)。p24抗原に比べてp26抗原において、前処理を行うことによる抗原失活度が大きいが、これは、p24抗原がnative抗原であるのに対して、p26抗原がrecombinant抗原であることが影響しているものと考えられる。なお、各表の欄外にも記載したが、表中の数字の末尾に「*」と記載があるものは、反応液の凝固により固相化抗体の集磁が不良となり測定が良好に行われなかったことを示す。
【実施例2】
【0038】
(還元剤の検討2)
HIV-1陽性検体を試料とし、本発明の前処理法の効果を調べた。
以下に示す実施例9までのすべてにおいて固相化抗体、ルシフェラーゼ標識抗体、発光試薬1、2の調製の各操作は実施例1と同様に行った。
【0039】
(1)検体前処理液
0.875% Triton X-100、0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0に以下の表6に示す各種還元剤を添加した。なお、対照として、還元剤無添加の前処理液も調製した。
【0040】
【表6】

【0041】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加して撹拌後、97℃水浴で10分間加熱した後、冷却した。
【0042】
(3)免疫学的測定法
前処理していない試料(対照)の測定を行わないこと以外は、実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0043】
(4)結果
発光強度および、還元剤として0.001M TCEPおよび0.1M 2-MEを添加した場合の発光強度に対する各還元剤濃度における発光強度の割合(%)を表7に示す。
【0044】
【表7】

【0045】
いずれの還元剤を用いた場合も、還元剤無添加に比べて顕著に発光強度が増加しており、HIV抗原の破壊を抑制して抗原安定性を保ちつつHIV抗体を効果的に不活化できていることが示された。中でも、還元剤として2-MEおよびTCEPを含有する場合に、最も高い発光強度となることが示された。
【実施例3】
【0046】
(従来法との比較)
HIV-1陽性検体を試料とし、本発明の方法(A法)と従来法(B法(PerkinElmer Life Sciences製キット)、C法(ZeptMetrix製キット)、D法(非特許文献4)、E法(非特許文献5))による前処理後の測定値を比較した。
【0047】
(1)検体前処理液および検体前処理
A.本発明の方法
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)100μlに検体前処理液(0.875% Triton X-100、0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0、0.1M 2-ME、0.001M TCEP(塩酸塩) 含有)を400μl添加して撹拌後、97℃水浴で10分間処理した。冷却後、200μlを秤取し、0.7M Tris-HCl pH8.5を加えて中和した。
B.PerkinElmer Life Sciences製キットの方法
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)108μlに、検体前処理液(5% Triton X-100 24μl、グリシン試薬(1.5M グリシン含有) 108μl)を添加して撹拌後、37℃で60分間処理した。その後、Tris試薬(1.5M Tris含有) 108μlを加えて中和した。
C. ZeptMetrix製キットの方法
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)105μlに、検体前処理液(グリシン-HCl緩衝液を含有)105μlを添加して撹拌後、37℃で60分間処理した。その後、塩基試薬(Tris-HClおよびアジ化ナトリウムを含有)105μlおよびLysing Buffer 35μlを加えて中和した。
D.非特許文献4の方法
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)100μlに、検体前処理液(0.5% Triton X-100)600μlを添加して撹拌後、100℃で5分間処理した。冷却後、免疫学的測定法の試料として用いた。
E.非特許文献5の方法
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)100μlに、検体前処理液(0.15M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0)190μlを添加して撹拌後、70℃で10分間処理した。冷却後、3.5M Tris-HCl 10μlを加えて中和した。
【0048】
(2)免疫学的測定法
(1)のAの方法で調製した試料の400μl、(1)のBの方法で調製した試料の129μl、(1)のCの方法で調製した試料の137μl、(1)のDの方法で調製した試料の280μl、(1)のEの方法で調製した試料の120μlをサンプリングし、免疫学的測定を行った。(サンプリング量はすべて、HIV-1陽性血清40μl相当量になるように調整した。)前処理を行わずに、市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)をPBSで10倍希釈した試料およびHIV陰性血清(SCANTIBODY LABORATRY社)にp24抗原(Meridian製R18301)10ng/mlを添加しPBSで10倍希釈した試料を対照とした。前記の各試料のサンプリング量以外は、実施例1(6)と同様にして発光強度を測定した。
【0049】
(3)結果
各前処理法による測定値(発光強度)およびPCR法HIV-RNA測定値(HIV-1陽性血清購入時に添付されていた製品情報に記載されていたもの)を表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
A〜E法はいずれも、前処理なしの結果に比べて測定値が高くなっていたが、検体No.4の測定値が、B法、C法、E法では本発明の方法(A法)に比べて約1/10であり、D法についても本発明の方法(A法)の約1/3の値であった。このことから、検体No.4は抗体が壊れにくいため、B法(Triton X-100、グリシン試薬中37℃で処理)、C法(グリシン-HCl緩衝液中37℃で処理)、E法(グリシン-HCl緩衝液中70℃で処理)では抗体の不活化が不十分であったこと、D法(Triton X-100中100℃で処理)では抗体が不活化するとともに抗原が変性したために本発明の方法に比べて測定値が低くなったことが推察される。検体No.1についても、同様の傾向が認められた。一方、検体No.2、No.3はD法以外では測定値に大きな差が無く、D法が他の方法に比べて低値であったことから、これらの検体は抗体が不活化されやすいために、B法、C法、E法によって抗体不活化が十分になされたが、D法では、抗体が不活化するとともに抗原が変性したため低値になったものと推察される。本検討により、検体No.1からNo.6までのすべてにおいて最も高い測定値が得られた本発明の方法(A法)は、抗体を十分に不活化しつつ抗原を保護して安定性を保持できるため、従来法に比べて顕著に高い検出感度を実現可能であることが示された。
【実施例4】
【0052】
(処理温度および時間の検討1)
HIV-1陽性検体を試料とし、処理温度および時間を変化させて、抗体不活化および抗原の安定性の保持効果を調べた。
【0053】
(1)検体前処理液
以下の処方の検体前処理液とした。
・0.875% Triton X-100
・0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0
・0.1M 2-ME
・0.001M TCEP(塩酸塩)
【0054】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1陽性血清(ProMedDx社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加し、撹拌後37℃、50℃、70℃または97℃で10分、30分、1時間、3時間または21時間加熱した後、冷却した。
【0055】
(3)免疫学的測定法
実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0056】
(4)結果
発光強度および、97℃10分処理の発光強度に対する各前処理条件の発光強度の割合(%)を表9に示す。
【0057】
【表9】

【0058】
97℃10分処理時の発光強度を100%とした場合、70℃30分および1時間処理ではすべての検体で100±15%の範囲内の発光強度が得られ良好な結果であったが、その他の温度、処理時間では一部の検体またはすべての検体において100±15%の範囲外の発光強度であった。検討に用いた検体のうち、No.11、12、13はNo.14、15に比べて抗体が不活化されにくい傾向が認められたが、中でも検体No.11が最も抗体が不活化されにくく、70℃10分では、(97℃10分の発光強度を100%とした場合の)61.8%の発光強度であった。
【実施例5】
【0059】
(処理温度および時間の検討2)
HIV-1陽性検体を試料とし、処理温度および時間を変化させて、抗体不活化および抗原の安定性の保持効果を調べた。
【0060】
(1)検体前処理液
以下の処方の検体前処理液とした。
・0.875% Triton X-100
・0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0
・0.1M 2-ME
・0.001M TCEP(塩酸塩)
【0061】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加し、撹拌後56℃、60℃または65℃で30分、1時間、3時間または21時間加熱した後、冷却した。なお、対照として97℃10分間の加熱処理を行った。
【0062】
(3)免疫学的測定法
実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0063】
(4)結果
発光強度および、97℃10分処理の発光強度に対する各前処理条件の発光強度の割合(%)を表10に示す。
【0064】
【表10】

【0065】
97℃10分処理時の発光強度を100%とした場合、56℃、60℃、65℃ともに1時間および3時間処理ではすべての検体で100±15%の範囲内の発光強度が得られ良好な結果であったが、その他の処理時間では一部の検体またはすべての検体において100±15%の範囲外の発光強度であった。検討に用いた検体のうち、検体No.31が最も抗体が不活化されにくく、56℃、60℃、65℃のいずれにおいても30分では、(97℃10分の発光強度を100%とした場合の)85%未満の発光強度であった。
【実施例6】
【0066】
(界面活性剤の検討1)
HIV-1陽性検体を試料とし、検体前処理液に添加する界面活性剤の種類を変えて、抗体不活化および抗原の安定性の保持効果を調べた。
【0067】
(1)検体前処理液
0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0、0.1M 2-ME、0.001M TCEP(塩酸塩)に以下の表11に示す各種界面活性剤を添加した。なお、対照として、界面活性剤無添加の前処理液も調製した。
【0068】
【表11】

【0069】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1陽性血清(ProMedDx社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加し、撹拌後97℃水浴で10分間加熱した後、冷却した。
【0070】
(3)免疫学的測定法
前処理していない試料(対照)の測定を行わないこと以外は、実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0071】
(4)結果
発光強度および、0.875% Triton X-100 添加時の発光強度に対する各界面活性剤添加時の発光強度の割合(%)を表12に示す。
【0072】
【表12】

【0073】
非イオン性界面活性剤であるTriton X-100を添加した前処理液を使用した時の発光強度を100%とした場合に、陰イオン界面活性剤であるSDS、陽イオン界面活性剤であるC12TABまたは両イオン界面活性剤であるC12APSを添加した前処理液を使用した時の発光強度はほとんどが85%以下であった。このことから、前処理液に添加する界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が適していることが示唆された。
【実施例7】
【0074】
(界面活性剤の検討2)
HIV-1陽性検体を試料とし、検体前処理液に添加する非イオン性界面活性剤の種類および濃度を変えて、抗体不活化および抗原の安定性の保持効果を調べた。
【0075】
(1)検体前処理液
0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0、0.1M 2-ME、0.001M TCEP(塩酸塩)に以下の表13に示す各種界面活性剤を添加した。なお、対照として、界面活性剤無添加の前処理液も調製した。
【0076】
【表13】

【0077】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1陽性血清(ProMedDx社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加し、撹拌後97℃水浴で10分間加熱した後、冷却した。
【0078】
(3)免疫学的測定法
実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0079】
(4)結果
発光強度および、1.0% Triton X-100添加時の発光強度に対する各界面活性剤添加時の発光強度の割合(%)を表14および15に示す。
【0080】
【表14】

【0081】
【表15】

【0082】
表14において、Triton X-100を添加した前処理液を使用した時の発光強度を100%とした場合に、エーテル型のEmalex 620(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、Triton X-305(ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル)およびTriton X-405(ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル)、エステル型のTween 20を添加した前処理液を使用した時の発光強度は検体No.41、43以外のすべてが85%以上であったのに対して、エステルエーテル型のEmalex GM-40(モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン)を添加した前処理液を使用した時の発光強度はEmalex GM-40濃度0.5%における検体No.44、45以外のすべてが85%以下であった。検体No.41、43は抗体が不活化されにくい検体であると考えられる。表14の結果から、前処理液に添加する界面活性剤としてはエーテル型またはエステル型の非イオン性界面活性剤が適していることが示された。また、表14および15から、添加濃度を0.5%以上10%以下とすることで本発明の効果が得られることが示された。
【実施例8】
【0083】
(緩衝液の検討)
HIV-1陽性検体を試料とし、検体前処理液が含有する緩衝液の種類を変えて、抗体不活化および抗原の安定性の保持効果を調べた。
【0084】
(1)検体前処理液
0.875% Triton X-100、0.1M 2-MEおよび0.001M TCEP(塩酸塩)に、グリシン、グルタミン、アルギニン、クエン酸、KCl、セリン、バリン、メチオニン、ヒスチジン、プロリン、トリプトファンまたはグルタミン酸を0.1M添加し、HClにてpHを2.0に調整し、検体前処理液とした。
【0085】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加して撹拌後、97℃水浴で10分間加熱した後、冷却した。
【0086】
(3)免疫学的測定法
前処理していない試料(対照)の測定を行わないこと以外は、実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0087】
(4)結果
発光強度および、グリシン-HCl緩衝液含有時の発光強度に対する各緩衝液含有時の発光強度の割合(%)を表16、17−1および17−2に示す。
【0088】
【表16】

【0089】
【表17−1】

【0090】
【表17−2】

【0091】
クエン酸-HCl、KCl-HCl緩衝液を用いた場合には、反応液の白濁、凝固により測定不良となったが、アミノ酸を含有する緩衝液の場合は、いずれもグリシン-HCl緩衝液と同等の抗体不活化および抗原安定性の保持効果があることが示された。
【実施例9】
【0092】
(添加抗原の回収率)
HIV-1陽性検体にp24抗原を添加し、抗原添加前後、前処理有無による抗原測定値を比較し、添加抗原の回収率を調べた。
【0093】
(1)検体前処理液
以下の処方の検体前処理液とした。
・0.875% Triton X-100
・0.1M グリシン-HCl緩衝液 pH2.0
・0.1M 2-ME
・0.001M TCEP(塩酸塩)
【0094】
(2)検体の前処理
市販のHIV-1抗体陽性血清(ProMedDx社)、対照としてのHIV陰性血清(SCANTIBODY LABORATRY社)を試料とし、この試料100μlに(1)の検体前処理液を400μl添加して撹拌後、97℃水浴で10分間加熱した後、冷却した。さらに前記のHIV-1陽性血清、HIV陰性血清それぞれ90 μlにp24抗原(Meridian製R18301)200ng/mlを10 μl添加したものを試料とし、同様に97℃で10分間の前処理を行った。
【0095】
(3)免疫学的測定法
実施例1(6)と同様の方法で行った。
【0096】
(4)結果
発光強度、HIV陰性血清(対照)にp24抗原を添加した時の発光強度に対する各試料の発光強度の割合(%)およびPCR法HIV-RNA測定値(HIV-1陽性血清購入時に添付されていた製品情報に記載されていたもの)を表18に示す。
【0097】
【表18】

【0098】
HIV-1陽性検体に抗原を添加してそのまま測定した場合は、1例(検体No.48)を除いて検出されないかまたは非常に低値であった。一方、検体前処理を行うと、抗原の回収率は前処理なしHIV陰性検体を対照にした場合には75.2〜84.5%、前処理ありHIV陰性検体を対照にした場合は、89.6〜100.6%であった。このことから、前処理によって抗体がほぼ不活化される一方で、抗原の安定性は保持されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の検体前処理法およびそれに用いる試薬は、免疫学的測定によるHIV抗原検出において、抗原の安定性を保ちつつ抗体を効果的に不活化することができるため、感染後、抗体が産生された後にも高感度かつ高精度のHIV抗原測定が可能である。そのため、HIV感染有無の診断の他、高感度の抗原測定法が必要とされる抗ウイルス剤治療効果の評価や輸血用血液を対象とした定性検査、定量検査等に応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫学的測定において、非イオン性界面活性剤を含有する酸性アミノ酸緩衝液にチオール基を有する化合物および/またはホスフィンを添加した前処理液中で、試料の加熱処理を行うことを特徴とする、HIV抗原検出の前処理法。
【請求項2】
試料の加熱処理温度が56℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のHIV抗原検出の前処理法。
【請求項3】
チオール基を有する化合物が、2-ジエチルアミノエタンチオールもしくはその塩、または2-メルカプトエタノールであることを特徴とする請求項1または2に記載のHIV抗原検出の前処理法。
【請求項4】
ホスフィンがトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のHIV抗原検出の前処理法。
【請求項5】
酸性アミノ酸緩衝液のpHが1.0以上2.5以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のHIV抗原検出の前処理法。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤がエーテル型またはエステル型であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のHIV抗原検出の前処理法。
【請求項7】
以下の工程を含むことを特徴とするHIV抗原の免疫学的測定方法。
(a)請求項1から6のいずれか1項に記載の前処理法を行う工程、
(b)HIV抗原に結合するプローブを用いてHIV抗原の有無を検出する工程またはHIV抗原に結合するプローブを用いてHIV抗原を定量する工程。
【請求項8】
プローブが抗HIV抗体であることを特徴とする請求項7に記載の免疫学的測定方法。
【請求項9】
以下の(a)から(c)を含有することを特徴とする、HIVを含む試料の前処理液。
(a)非イオン性界面活性剤
(b)酸性アミノ酸緩衝液
(c)チオール基を有する化合物および/またはホスフィン
【請求項10】
チオール基を有する化合物が、2-ジエチルアミノエタンチオールもしくはその塩、または2-メルカプトエタノールであることを特徴とする請求項9に記載の前処理液。
【請求項11】
ホスフィンがトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンまたはその塩であることを特徴とする請求項9または10に記載の前処理液。
【請求項12】
非イオン性界面活性剤がエーテル型またはエステル型であることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の前処理液。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載の前処理液を含有し、さらに、HIV抗原に結合するプローブを含むことを特徴とする、HIV抗原の有無を検出する試薬または試薬キット。
【請求項14】
プローブが抗HIV抗体であることを特徴とする請求項13に記載の試薬または試薬キット。
【請求項15】
請求項9から12のいずれか1項に記載の前処理液を含有し、さらに、HIV抗原に結合するプローブを含むことを特徴とする、HIV抗原を定量する試薬または試薬キット。
【請求項16】
プローブが抗HIV抗体であることを特徴とする請求項15に記載の試薬または試薬キット。