説明

HIVペプチド、抗原、ワクチン組成物、免疫学的検定キット及びHIVによって誘発された抗体を検出する方法

【課題】HIVの新規な抗原の提供。
【解決手段】本発明は、HIVに対して有効な予防及び治療用ワクチンを達成する目的で細胞障害性T細胞活性に拮抗すること無くHIV-1特異的免疫応答を誘発する能力をもつ新規の及び修正されたペプチドを含む。ペプチドは、HIV gag p24タンパク質の保存された領域に基づいている。前記ペプチドのうちの少なくとも1つを含む遊離した又は担体に結合した形の抗原、抗原のうち少なくとも1つの含有するワクチン組成物、免疫学的検定キット及びかかる抗原を使用してHIV又はHIV特異的ペプチドによって誘発された抗体を検出する方法が記述されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHIV gag p24タンパク質の保存された領域に基づく新規ペプチド、前記ペプチドのうちの少なくとも1つを含む遊離した又は担体に結合した形の抗原、抗原のうち少なくとも1つの含有するワクチン組成物、免疫学的検定キット及びかかる抗原を使用してヒト免疫不全症ウイルス(HIV)又はHIV特異的ペプチドによって誘発された抗体を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HIV感染による広域伝染病を制御する緊急の必要性が存在しており、HIVに対するワクチンの開発は、エイズ研究における主要な目標の1つである。一般に、ワクチンは、抗原提示細胞を活性化し、T細胞応答における遺伝的制約を克服し、T及びB記憶細胞を生成すべきものである。ウイルス個体群の可変性は、有効なHIVワクチンを得る上でさらなる問題を提起する。現在進められている対エイズワクチン開発の試みにおける飛躍的な前進はこれまでのところ報告されていない。有効な予防及び治療用ワクチンの開発には、抗原特異的な体液性及び細胞媒介性免疫の誘発が非常に重要であるということが現在一般的に受け入れられている。CD8+CTL及びT−ヘルパー1(TH1)細胞という中和抗体を内含する免疫系の3つの腕の全てが、HIVに対する保護的免疫のために必要とされる可能性がある。
【0003】
CTLがその他のウイルス感染を一掃できること(Ada Immunol. Cell Biol.,72:447〜454, 1994)及びCTLは、ウイルス後代が産生され細胞溶解により放出されない感染早期のうちに感染された標的を分解することができることが知られている(Ada ら、前出)。焦点は、抗原の選択ならびに異なるアジュバントの設計及び評価にあてられてきた。異なるin vitro及びin vivo 研究で使用された抗原は全て、粗製タンパク質から、主としてgp160からのそして或る程度はp24からのさまざまな合成のペプチドにまで至るものであった。gp120のV3ループについて多数の研究がなされてきた。B細胞及びT細胞の両方の応答の誘発が観察されてきたが、in vitro研究から、gp41の保存された領域からのペプチドが感染の増強を示していたということが報告されている(Bell S. J.ら、Clin. Exp.Immunol., 87(1):37-45 (1992年1月) 。
【0004】
ワクチン候補内の天然に発生するHIV配列は、感染細胞の細胞表面上に提示されたエピトープの外観を変えることによって隠れることのできるウイルスの固有の能力に起因して、安定した免疫応答を刺激することができない。免疫系は、実際に重要なアミノ酸が隠されている場合でも、一つの特定のアミノ酸配列が関連しているとうかつにも信じさせられてしまう。
【0005】
gag p24タンパク質に対する抗体力価についての最近の研究は、エイズの発生に向かっての緩慢な進展が高力価に結びつけられ、一方エイズの発症に向けての急速な進展が低力価と結びつけられるということを示した。低いp24抗体力価をもつ人が高いp24抗体力価をもつ人よりも著しく急速にエイズを発生させるということが立証されており(Zwart G., et al. Virology, 201 p285-93, 1994年6月)、これはp24がエイズの発症を制御するための主要な役割を果たしうるということを表わしている。
偽性及び真性の診断を受けたHIV陽性血清標本間の弁別方法においてペプチドが使用される新しいHIVp24ペプチドが、W091/13360中で記述されている。
【0006】
Johnson R.P らのThe Journal of Immunology, 第147巻、p1512〜1521, 第5号、1991年9月1日は、3人のHIV-1血清反応陽性患者におけるgag特異的CTL応答の微妙な特異性の分析について記述しており、gag特異的CTL-応答は、HLAクラス1制限を受けているCD3+CD8+リンパ球によって媒介されることがわかった。
EP-A-0356007は、抗原決定基を開示しており、特に、HIV-1中に存在するタンパク質に関係づけられエイズに対する潜在的ワクチンのための基礎として使用可能である合成ポリペプチド配列に関するものである。
【0007】
Rosenberg E.S.ら、Science, 第278巻、1997年11月、p1447〜1450は、ウイルス特異的CD4+Tヘルパーリンパ球が一定数の慢性ウイルス感染における有効免疫の維持にとって非常に重要であるものの、慢性ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)の感染においては特徴的に検出不可能であることを記述している。p24に対するHIV-1特異的増殖性応答は、ウイルス負荷と反比例していた。彼らは、HIV-1特異的ヘルパー細胞が、免疫治療処置及びワクチン開発において重要である可能性が高いという結論を下している。
【0008】
全て、F.Hoffmann-La Roche & Co.Aktiengesell schaft名義のEP0230222, EP0270114, DE3711016及びGB2188639は、HTLVIII Gag/Env遺伝子タンパク質又は融合タンパク質の組換え型発現及び精製に関する。未変性配列から成るタンパク質を均質になるまで精製し、エイズに結びつけられたウイルスに対する抗体の検出のための診断試験用の基礎として使用することができる。gag/envタンパク質は同様に、予防免疫化を通したエイズに対する防御のためのワクチンとして使用するように処方することもできる。
【0009】
診断及び治療の見地からみると、検定又は療法の一部としてp24を用いることに伴う主要な問題点は、潜在的な突然変異を受けた配列に対する反復的な追加免疫を通して自己抗体を作り出すことのできる、特異性の低い多数の抗体の産生を刺激するp24のエピトープの数が多いということに関連するものである(HIV感染におけるアルファ/ベータT細胞レセプタに対する自己抗体;調節不完全及び擬態、Lake D.Fら、Proc. Natl, Acad. Sci. USA(23); 10849-53, 1994年11月8日)。さらに、p24抗体力価が、外被タンパク質(gp120及びgp41)の場合と同様の高いレベルに達しないということが報告されている。
【0010】
通常、p24に対する抗体は、感染の非常に早期の段階において発生するが、力価は、初期感染期間の後かなり迅速に安定化する。後に、p24力価は、漸進的に減少し、一方gp160の場合この逆のことが起こる。これらの発見事実は同様に、細胞障害性T細胞活性が、天然に発生するHIV-1gag 変異体によって拮抗されることを述べた最近の報告書に関しても見い出すことができる(Klenerman P.ら、Nature, 2:369(6479), p.355, 1994年6月2日)。これは、p24力価の急速な安定化が何故みられるか、そしてそれがその後なぜ減少し始めるかの理由の1つでありうる。
【0011】
上述の背景データに基づき、我々は、有効な予防及び治療用ワクチンの必要性を満たすため、細胞障害性T細胞活性を拮抗することなくp24エピトープを擬態できる新規の合成ペプチドを設計する可能性について調査する決心をした。
初期の研究は、Korber B.,ら、ヒトレトロウイルスとエイズ-1997, Theoretical Biology and Biophysics Group, Los Alamos National Labaratory, Los Alamos, NM(編)により公表された1つのエピトープに基づいていた。このエピトープのアミノ酸配列(203〜222)は以下のとおりであった:
【0012】
【化1】

【0013】
本明細書中に示されている配列中のアミノ酸を定義づける1文字ならびに3文字コードは、国際規格に従ったものであり、例えばLehninger A.L.「生化学の原理」,Worth Publishers Inc. NewYork, 1982といった教本中に記されている。最初の配列の下に与えられたアミノ酸は、この配列の天然の変異を表わす。この修飾されたエピトープを含有する配列の最初の研究は、以下の配列について行なわれた:
【0014】
【化2】

【0015】
なおここで、Xは2−アミノヘキサン酸を示し、システイン残基は、酸化された状態にある、すなわち、連鎖内ジスルフィド架橋を形成している。診断キットの一部としてこのペプチドを使用する研究からの(未公開の)結果は、特異性がアフリカ血清の予め選定されたパネルについて87%(n=279)となることを示した。感受性は、HIV-1亜型O血清を内含するHIV-1陽性血清のパネルについて、驚くべきことに100%であった。これはその他の亜型と全く異なっている。
特異性を改善するため、すなわち純粋な非交叉反応抗体応答に寄与するアミノ酸を定義づけするため、著しく短かくさらに修飾されたペプチドに対して類似の研究が適用された:
【0016】
【化3】

なおここで、Xは上述の意味をもち、システイン残基は、連鎖内ジスルフィド架橋を形成している。
【0017】
この研究からの結果は、検定の特異性がp24ペプチドを使用することなく検定において得られた特異性と類似である96%及び(n=293)まで増大することを示した。第1のペプチドが内含された検定に対する87%の特異性で、このペプチドがワクチン候補として使用された場合に非特異的抗体によって認識されることから、このペプチドが複数のエピトープに対する免疫応答を誘発することになる可能性が高いと思われた。しかしながら、後者の方は、ペプチド配列がHIV-1に独自の免疫応答をとり上げていることを示している。従って、これに基づく1つの配列がワクチン候補内で抗原として用いられている場合、それがHIV-1に対する独自の免疫応答を促進する可能性は最も高くなる。
【0018】
T細胞エピトープの数をさらに増加させ、エスケープ突然変異体の発生の確率を低減させるため、3つの付加的なペプチド配列が、それぞれ、ヒトレトロウイルスとエイズ1997;「核酸及びアミノ酸配列のコンパイレーションと分析」編集者:Theoritical Biology and Biophysics Group, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos中で公示された残基264〜284, 253〜271及び166〜186からの以下の3つの配列に基づいていた:
【0019】
【化4】

HIV-1に対し特異的でかつ感受性ある独自の配列を決定するため、複数の修飾されたペプチドが合成されてきた。
【発明の概要】
【0020】
発明の説明
本発明に従ったペプチドは、HIV-1-エピトープの独自性(感受性及び特異性)を維持する特性をもつ、上述のHIV-1コアタンパク質p24の4つの異なる保存された領域に由来している。さらに、本発明に従った新しいペプチドは、認識された細胞障害性Tリンパ球(CTL)拮抗効果を全くもたず、少なくとも1つの潜在的CTLエピトープを有することになる。
【0021】
上述の基準を満たした本発明に従ったペプチドは、以下のグループの中から選択される:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Ala Xaa8 Xaa9 Gln Thr Pro Trp Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Xaa18 Val Xaa20(配列番号1)
〔式中、鎖中のアミノ酸は、以下のような意味をもちうる:すなわち
ペプチド誘導体の位置1のXaaは、Lys又はArgであり、
位置2のXaaは、Ala, Gly, Ser又はArgであり、
位置3のXaaは、Leu又はMetであり、
位置4のXaaは、Gly又はArgであり、
位置5のXaaは、Pro, Thr, Val, Ser, Gln又はAlaであり、
位置6のXaaは、Gly, Ala, Lys, Arg, Gln又はGluであり、
位置8のXaaは、Thr又はSerであり、
位置9のXaaは、Leu又はIleであり、
位置14のXaaは、Thr, Ser又はValであり、
位置15のXaaは、Ala又はSerであり、
位置16のXaaは、Cys又はSerであり、
位置17のXaaは、Gln又はLeuであり、
位置18のXaaは、Gly, Glu又はArgであり、
位置20のXaaは、Gly又はArgである、
そしてペプチドは、配列番号1の配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含む。〕;
【0022】
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Gly Leu Asn Pro Leu Val[Gly]n Xaa12 Xaa13 Tyr Xaa15Pro Xaa17 Xaa18 Ile Leu Xaa21 Xaa22(配列番号4)
〔式中、鎖中のアミノ酸は、以下のような意味をもつ:すなわち、
位置1のXaaは、Arg, Lys, Asp又は無であり、
位置2のXaaは、Trp, Gly, Lys又はArgであり、
位置3のXaaは、Ile, Leu, Val又はMetであり、
位置4のXaaは、Ile, Val又はLeuであり、
位置5のXaaは、Leu, Met, Val, 又はProであり、
位置12のXaaは、Arg, Lysであり、
位置13のXaaは、Met又はLeuであり、
位置15のXaaは、Ser, Cys又はGlnであり、
位置17のXaaは、Thr, Val, Ile, Ser又はAlaであり、
位置18のXaaは、Ser, Gly又はThrであり、
位置21のXaaは、Asp, Glu, Cys又はGlyであり、
位置22のXaaは、Gly又は無である、
そしてここで、配列番号4の配列は少なくとも6個の連続するアミノ酸を含み、n=0,1,2又は3である。〕
【0023】
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro Ile Pro Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 [Gly]n Xaa13, Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Xaa18 Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24(配列番号9)
〔式中、
位置1のXaaは、Asn, Ser, Gly, His, Ala, Pro, Arg又は無であり、
位置2のXaaは、Asn, Ala又はLysであり、
位置3のXaaは、Pro, Gln, Gly, Ile又はLeuであり、
位置7のXaaは、Val又はAlaであり、
位置8のXaaは、Gly又はLysであり、
位置9のXaaは、Glu, Asp, Lys, Phe又はThrであり、
位置10のXaaは、Ile, Met, Val又はLeuであり、
位置11のXaaは、Tyr, Leu又は無であり、
位置12のXaaは、Ser又は無であり、
位置13のXaaは、Arg又は無であり、
位置14のXaaは、Asp, Arg, Trp, Ala又は無であり、
位置15のXaaは、Ile又は無であり、
位置16のXaaは、Tyr又は無であり、
位置17のXaaは、Lys又はArgであり、
位置18のXaaは、Arg, Lys又はAspであり、
位置19のXaaは、Trp又はGlyであり、
位置20のXaaは、Ile, Met, Val, Gln又はAlaであり、
位置21のXaaは、Ile, Val又はAlaであり、
位置22のXaaは、Leu, Met又はValであり、
位置23のXaaは、Gly又はCysであり、
位置24のXaaは、Leu又は無である、
そしてここで、配列番号9の配列は少なくとも6個の連続的アミノ酸から成り、n=1,2又は3である。〕;
【0024】
並びに
Xaa1 Xaa2 Ile Ile Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Leu Xaa11 [Gly]n[Arg]m Xaa12, Xaa13, Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Xaa18 Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25(配列番号15)
〔式中、
位置1のXaaは、Pro, Lys, Arg又は無であり、
位置2のXaaは、Glu, Arg, Phe又はLysであり、
位置5のXaaは、Pro又はThrであり、
位置6のXaaは、Met, Thr又はNleuであり、
位置7のXaaは、Phe又はLeuであり、
位置8のXaaは、Ser, Thr, Ala又はMetであり、
位置9のXaaは、Ala, Glu又はLeuであり、
位置11のXaaは、Ser又は無であり、
位置12のXaaは、Ala, Arg又は無であり、
位置13のXaaは、Ile, Leu又は無であり、
位置14のXaaは、Ser, Ala, Leu又は無であり、
位置15のXaaは、Tyr, Glu又はAspであり、
位置16のXaaは、Gly又はAspであり、
位置17のXaaは、Ala又はLeuであり、
位置18のXaaは、Thr, Ile, Val, Leu又はAsnであり、
位置19のXaaは、Pro, Thr又はSerであり、
位置20のXaaは、Tyr, Phe, Nleu, His又はGlnであり、
位置21のXaaは、Asp, Asn, Leu又はAlaであり、
位置22のXaaは、Leu, Ile, Val又はAsnであり、
位置23のXaaは、Asn, Tyr, Cys又はGlyであり、
位置24のXaaは、Thr, Met, Ile, Ala, Val又は無であり、
位置25のXaaは、Gly又は無である、
そしてここで、配列番号15の配列は、少なくとも6個の連続するアミノ酸から成り、n=1,2又は3及びm=0,1,2又は3である。〕
【0025】
そして、これらの配列の末端は、遊離カルボキシル又はアミノ基、アミド、アシル、アセチル又はその塩であってよく、
Cys残基のうちの2個以上は、連鎖内又は連鎖間ジスルフィド結合、-S-(CH2)P-S-又は-(CH2)P-架橋の一部を成すことができ、ここでp=1〜8で、O,N,及びSといったような単数又は複数のヘテロ原子が任意に介在しており、そして/又は前記ペプチド配列が固体支持体に対し固定化されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
新しいペプチド配列は、優れた抗原として役立つ潜在性をもち、ここで該抗原は配列番号1,配列番号4,配列番号9又は配列番号15の配列グループの中から選択された少なくとも1つのペプチドを含んでいる。抗原性は、例えば2量体化又は重合及び/又は固相への固定化などによってペプチドのサイズ又は異なるペプチドの比率又は濃度を調整することを通して適合可能である。抗原は、本発明に従うと、2つ以上のポリペプチド配列を含み、これらの配列は、場合によってO、S又はNといったような単数又は複数のヘテロ原子が介在するC1〜Caアルキレンといったような連鎖又は架橋のCys残基の間のジスルフィド架橋といった架橋によってリンクされているか、又は好ましくはリンクされていない。連鎖は、単量体、2量体又はオリゴマ形態で固相に固定化されうる。固定化を容易にするための「腕」を達成するべく末端にさらにアミノ酸を付加することもできる。
【0027】
本発明のペプチド中のアミノ酸は全て、D形又はL形の両方の形をしていてよいが、天然に発生するL形が好ましい。
ペプチド配列のC末端及びN末端は、末端NH2基及び/又はCOOH基の修飾によって天然配列から逸脱することができ、例えば、担体又はもう1つの分子のための結合部位を提供するべくアシル化、アセチル化、アミド化又は修飾され得る。
本発明に従ったペプチドは、6〜50個、好ましくは10〜30個のアミノ酸で構成されている。これらは、同定された位置におけるアミノ酸の全ての天然変異を網羅している。
【0028】
本発明に従ったポリペプチド抗原は、遊離した形又は担体結合した形のいずれかである。ペプチドが任意に結合される担体又は固相は、既知のさまざまな担体の中から選ぶことができる。これは、ワクチン中の免疫化成分としてか又は診断用抗原としての固定化されたポリペプチドの意図された用途を考慮して選択されるべきである。
【0029】
例えば診断目的で使用できる担体の例としては、スチレン−ジビニルベンゼン、水酸化スチレン−ジビニルベンゼン、ポリスチレン、カルボキシル化ポリスチレンといったような共重合体の磁性ビーズ又はラテックス、カーボンブラック、非活性化又はポリスチレン又はポリ塩化ビニルで活性化されたガラス、エポキシ活性化多孔質磁性ガラス、ゼラチン又は多糖体粒子又はその他のタンパク質粒子のビーズ、赤血球、モノクローナル又はポリクローナル抗体又はかかる抗体のfabフラグメントがある。
【0030】
本発明のさらなる実施形態に従うと、抗原は、場合によって担体、アジュバントと組合された、又はenv遺伝子を支持するカナリア痘ウイルスといったようなその他の免疫刺激性要素と組合わされて、ワクチンの一部を成すことができる。ワクチンを目的とする担体及び/又はアジュバントの例としては、ヒト又はウシ血清アルブミン及びキーホールリンペットヘモンシアニンといったようなその他のタンパク質がある。免疫刺激物質は、アジュバント、抗原用担体、そしてビヒクルの3つのグループに分けることができる。アジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、アルミニウム塩、サポニン、ムラミルジ及びトリペプチド、モノホスホリル脂質A,B.pertussis 及びTh1サイトカインIL-12及びIL-1を含むさまざまなサイトカインがある。
【0031】
CTLワクチンを開発する上で有用である一定数のタンパク質毒素を、シトゾル内へと細胞膜を横断してパッセンジャタンパク質を運ぶのに使用することができる。担体には、細菌トキソイド例えば不活性化された破傷風及びコレラ毒素、遺伝的に解毒された細菌毒素例えばE.coliからの非耐熱性腸毒素、脂肪酸、生菌ベクター例えばポリオキメラ及び酵素レトロトランスポゾンハイブリッドTY粒子及びHBcAg粒子といった微粒子を形成するハイブリッドタンパク質が含まれる。
【0032】
近年のワクチン中に頻繁にみられる成分であるビヒクルは、鉱油エマルジョン、完全及び不完全フロイントアジュバント、植物油エマルジョン、非イオン性ブロック共重合体界面活性剤、スクアレン又はスクアラン、リポソーム及び生分解性小球から成る。新しいワクチンの開発のための有意な潜在性を有する2つの新規のアジュバントとしては、水中油型マイクロエマルジョン(MF59)及び重合体小粒子がある。抗原の免疫原性を高めることのできるあらゆる物質が使用可能であり、米国又は欧州の薬局方の中に、いくつかのさらなる担体又はアジュバント代替物が示されている。
【0033】
免疫刺激性用途のための抗原の適切な処方には又、INF-γといったインタフェロン、抗ウイルスケモカイン又は顆粒球マクロファージ成長因子といったような造血性成長因子も含まれうる。
例えば腸内の刺激及び吸収を増強させるためのもう1つのアプローチは、ジ、トリ又はテトラペプチドといったような小さいペプチドと共に、本発明のペプチドを投与することにある。これらのペプチドは、本発明のペプチドに付加して又はそれと組合せた形で投与することができる。好ましくは、ペプチドはD形又はL形、好ましくはD形のアミノ酸から成るトリペプチドYGGと合わせて投与される。
【0034】
例えば粘膜を介したワクチンの非腸管外での送達に対する最近のアプローチには、粘膜アジュバントの非毒性誘導体を作り出すための遺伝子融合技術、必須遺伝子内の欠失を伴う遺伝的に不活性化された抗原、粘膜免疫応答の変調及び制御において重要である特異的サイトカインと抗原の同時発現及び、DNA又はRNAの摂取及び宿主細胞内でのその内因性発現を可能にすることになる遺伝的材料自体、が含まれる。
細胞性免疫が必要とされる持続性応答を発生させるための1つのアプローチは、1又は複数の特異的抗原をコードするプラスミドDNAを予防接種することにある。
【0035】
HIV感染から防御するため、ワクチンは、粘膜性及び全身性の両方の免疫応答を誘発すべきであり、腸管外又は非腸管外、例えば皮下、皮内、静脈内、筋内、経口、経粘膜又は鼻腔内での適切なあらゆる経路を通って投与することができる。
本発明に従ったワクチンの好ましい実施形態においては、配列番号1,4,9及び15のペプチドを含有する抗原が含まれ、より好ましくはペプチドは、1:1:1:1の比率で発生する。
さらに好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、次のような抗原を含有する:
【0036】
RALGPAATLQTPWTASLGVG-NH2(配列番号:3)
RWLLLGLNPLVGGGRLYSPTSILG-NH2(配列番号:6)
RAIPIPAGTLLSGGGRAIYKRTAILG-NH2(配列番号:11)
及び
RFIIPNIFTALSGGRRALLYGATPYAIG-NH2(配列番号:18)
【0037】
配列のうち1つはB細胞エピトープを含有し、体液性免疫系を活性化することになり、一方その他の配列はCTL-エピトープと共に貢献し、CTL-エピトープの枠内で実現されるアミノ酸変更は、増強された結合を達成するように設計される。ペプチドの合成を容易にしかつ/又はペプチドの可溶性を増大させるために、その他のアミノ酸変更が行なわれてきた。
当該抗原を用いた体液標本中のHIV-1又はHIV-1特異的ペプチド又はタンパク質によって誘発された抗体の検出方法が、本発明のさらなる実施形態である。同様にこの検出向けに設計された免疫学的検定キット及び前記抗原と選択的に反応する能力をもつ抗体も、本発明によって包含されている。
【0038】
ペプチド調製についての説明
本発明のペプチドは、組換え型DNA技術といったような、線形アミノ酸配列を産生する既知のあらゆる方法によって産生することができる。本発明のペプチド又はこのペプチドの多量体をコードする核酸配列が、発現ベクターの中に導入される。適切な発現ベクターは、例えば、複製及び発現のために必要な制御領域を含むプラスミド、コスミド、ウイルス及びYAC(酵母人工染色体)である。発現ベクターは、宿主細胞内で発現するに至るまで刺激を受けることができる。適切な宿主細胞は、例えば、細菌、酵母細胞及び哺乳動物細胞である。
【0039】
このような技術は、当該技術分野において周知のものであり、例えば、Sambrookらの「分子クローニング:実験室マニュアル」Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,1989によって記述されている。その他の周知の技術は、例えばいわゆるMerrifield合成による、液相又は好ましくは固相(樹脂)内で1つのアミノ酸残基を次の残基にカップリングすることによる分解又は合成である。例えばBarany及びMerrifield「ペプチド、分析、合成、生物学、第2巻,E.Gross and Meinhofer, Ed.(Acad.Press, N.Y.,1980),Kneib-Coronier and Mullen int. J. Peptide Protein Res., 30, p.705-739 (1987) 及びFields and Noble int.J.Peptide Protein Res.,35, p.161-214 (1990) を参照のこと。
【0040】
リンクされた又は環状のペプチドが望まれる場合には、アミノ酸配列は、適切な線形アミノ酸配列が合成された時点で1つのペプチド配列内又は2つのペプチド配列間で2つのシステイン残基を環化又はリンクするため化学的酸化段階に付される。Akajiら、Tetrahedron Letter, 33, 8, p.1073-1076, 1992を参照のこと。
【実施例】
【0041】
合成についての一般的説明
以下で記した例において調製されている全てのペプチド誘導体は、標準的なプログラムを用いてMilligen9050ペプチド合成装置上で合成された。使用された樹脂は、Tenta Gel P RAMで(RAPP POLYMERE GmbH, Tubingen)、理論上の負荷は0.20meg/gであった。合成の最終産物を、真空下で一晩乾燥させた。次にペプチドを、スカベンジャとしてのエタンジチオール(5%)と水(5%)の存在下で90%のトリフルオロ酢酸で処理すること(RTで1.5時間)によって樹脂から分割させた。
【0042】
次に樹脂を、ろ過しフィルタ上で付加的なトリフルオロ酢酸(100%)(2×20ml)で洗浄した。組合せたろ液を真空下で蒸発させ(RTの水浴)、残基をエチルエーテル(200ml)で研和させ、沈殿した生成物をろ過により除去した。固体を氷酢酸(100ml)でフィルタ上で迅速に溶解させ、これをエタノール中の20%の酢酸1.5lに添加し、かすかな褐色が残るまでメタノール中のヨウ素の0.1M溶液で処理した。その後、酢酸塩の形での(15g)Domex 1×8イオン交換(Bio-Rad, Richmond,(A)を添加し、混合物をろ過した。
【0043】
ろ液を蒸発させ、残渣を酢酸液から凍結乾燥させた。次に、生成物を、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液中のアセトニトリルを含む適切なシステム内でKromasil(商標)100〜5C8(EKA Nobel, Surte, Sweden)が充てんされたカラム上の逆相液体クロマトグラフィによって精製した。カラムから収集した標本を、Kromasil(商標)100-5C8カラム(EKA Nobel, Surte, Sweden)を備えた分析高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)(Beckman System Gold, USA)によって分析した。純粋な物質を含有する分画をプールし、溶液を蒸発させ、生成物を酢酸から凍結乾燥させた。最終的HPLC分析を最終生成物について実施し、ペプチドの構造をアミノ酸分析及び質量分析計(LDI-MS)によって確認した。
【0044】
合成中に使用した全てのアミノ酸は、L−アミノ酸であり、これらはα−アミノ官能基においてフルオレニルメトキシ−カルボニル基で保護されていた。側鎖は、以下のように保護されていた。
Cys(Trt), Gln(Trt), Glu(OtBu), Thr(tBu)
カッコ内の略号は以下の通りである:
Trt=トリフェニルメチル
t-Bu=第3ブチル
OtBu=第3ブチルエステル
アミノ酸誘導体はスイスのBachem AG.から供給されたものである。
【0045】
例1KALGPGATLQTPWTACQGVG-NH2(配列番号2)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):87%
【0046】
例2RALGPAATLQTPWTASLGVG(配列番号3)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):95%以上
分子量(遊離塩基):1966
分子構造式:C88H144O25N26
【0047】
例3WIIPGLNPLVGGGKLYSPTSILCG-NH2(配列番号5)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):95%
質量分光分析:理論分子量:2454.9
実験分子量:2454.8 ES+
【0048】
例4RWLLLGLNPLVGGGRLYSPTSILG(配列番号6)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):95%以上
分子量(遊離塩基):2552
分子構造式:C119H195O29N33
【0049】
例5KILLGLNPLVGGGRLYSPTSILG(配列番号7)、RLLLGLNPLVGGGRLYSPTTILG(配列番号8)、及びNIPIPVGDIYGGGDIYKRWQALCL(配列番号24)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
【0050】
例6RNIPIPVGDIYGGGDIYKRWQALCL(配列番号10)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):85%
質量分光分析:理論分子量:2817.3
実験分子量:2813.7 ES+
【0051】
例7RAIPIPAGTLLSGGGRAIYKRWAILG(配列番号11)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):95%以上
分子量(遊離塩基):2707
分子構造式:C125H208O29N38
【0052】
例8ALPIPAGFIYGGGRIYKRWQALG(配列番号12)、KIPIPVGFIGGGWIYKRWAILG(配列番号13)、及びKIPIPVGTLLSGGGRIYKRWAILG(配列番号14)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
【0053】
例9KFIIPNIFSALGGAISYDLNTNILNCI(配列番号16)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。配列中のNlはノルロインシンである。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):80%以上
質量分光分析:理論分子量:2783.3
実験分子量:2783.3 ES+
【0054】
例10KFIIPNIFSALSGGGAISYDLNTFLNCIG(配列番号17)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。配列中のNlはノルロイシンである。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):80%以上
質量分光分析:理論分子量:2932.4
実験分子量:2931.8 ES+
【0055】
例11RFIIPNIFTALSGGRRALLYGATPYAIG(配列番号18)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。配列中のNlはノルロイシンである。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
純度(HPLC):95%以上
分子量(遊離塩基):2894
分子構造式:C137H217O32N37
【0056】
例12KIIPNIFSALGGGRLLYGATPYAIG(配列番号19)、RIIPNIFTALSGGGRLLYGATPYAIG(配列番号20)、及びWIIPNIFSALGGAISYDLNTNILNCI(配列番号25)の調製
ペプチドは、合成の一般的説明に従って、対応する出発材料から、アミド形態で合成された。純度をHPLC分析によって決定し、構造をアミノ酸分析及び質量分析法(LDI-MS)により確認した。
【0057】
例13ジスルフィド架橋を介した2量体化
例1及び3のペプチド配列は、システイン残基がジスルフィド架橋を形成したジペプチドを形成するべく、酸化段階を介してリンクされた。架橋は、次のいずれかの方法で形成された:
A) l2での酸化。酢酸/メタノール(1:4)中で等量の複数のペプチドを溶解させ、メタノール中の0.1Mのl2を添加し、2量体混合物を生成した。又は
B) [Cys(Spy)16]−配列番号2を介しての酸化:2MのAcOH(aq)及び2−プロパノール(1:1)中に溶解した配列番号2のペプチド2,3mMを2,2ジチオジピリジン(3当量)で処理し、[Cys(Spy)16]−配列番号2を生成した。等量の[Cys(Spy)16]−配列番号2及び配列番号5を10mMのNH4Oac(aq pH=6.5)及びメタノール(5:2)中で溶解させて、配列番号21の2量体を生成した。ペプチドの純度をHPLC分析によって決定し、ペプチドの構造をアミノ酸分析によって確認した。ペプチド含有量(アミノ酸遊離残基)は80%であった。
純度(HPLC):92%
【0058】
例14
配列番号3,6,11及び18のペプチドを含むワクチンを調製した。凍結乾燥したペプチドを4mg/mlの最終濃度で無菌水中に溶解させた。最終塩濃度は0.9%であった。顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GM-CSF)の調製物も同じくメーカーの使用指示事項に従って、最終濃度0.3mg/mlとなるように調製された。2つの溶液を、皮内投与した。標準的注射量は100μlである。
【0059】
例15
抗原溶液又は懸濁液を、等量のBehring の完全又は不完全フロイントアジュバントと混合し、次に注射器内に吸引し勢い良くそこから押出すことによってか又はホモジネータを用いて細かく乳化させる。エマルジョンは、少なくとも30分間安定した状態にとどまらなくてはならない。抗原−アジュバントエマルジョンは、デポー剤として皮下注射されるのが最もよい。
【0060】
例16毒性データ
例13のジペプチドを0.9%のNaCl中で、4mg/mlのテスト溶液濃度まで希釈させた。ペプチドを、体重1kgにつき100μgの用量でNMFI雌マウスに対し注射により投与した。毒物学的効果は全く見られず、ペプチドは毒性のないものとみなされた。
【0061】
毒性研究を、例14のワクチンのペプチド組成物についてマウス及びラットにおいて実施した。マウスは、第2の一般に用いられているげっ歯類の種からの比較データを提供するべく、当該研究のために選択された。テスト物質は、生理食塩水での再構成のための凍結乾燥された材料を含む1本のバイアルとして供給された4つのペプチドの混合物であり、用量レベルは、合計ペプチド負荷として表現された。個々のペプチドは、1:1:1:1の比で存在し、最高で意図されたヒト用量の500倍である体重1kgあたり0.0075mg,0.075mg及び0.75mgの各ペプチド用量レベルを提供した。
【0062】
テスト動物は、各々10匹ずつ(雄5匹、雌5匹)の4つのグループすなわち、1つの食塩水対照グループと、低、中、高用量向けのグループに分けられた。テスト組成物は、1分あたり3mlの用量速度で尾静脈内への静脈内輸注によって、一度だけ投与された。動物をペントバルビトンナトリウムの腹腔内注入により15日目及び16日目に屠殺した。
これらの研究の結果は、マウス及びラットに投与された用量レベルが不利な反応を全く惹起しなかったこと、又効果レベルが3mg/kgを超えることはなかったことを示した。
【0063】
例17HIV-1によって誘発された抗体の検出のための免疫学的検定
磁性粒子試薬は、メーカーの推奨プロトコルに従って調製されなくてはならない。Dynal ASが、利用されるDynabeads のメーカーである。リガンドでコーティングされた磁性粒子は、試薬1と呼ばれる。本発明に従った1つのペプチドが磁性粒子の予め活性化された表面に共有結合によりカップリングされる。磁性粒子の表面に対しペプチドを物理的に吸収させることも同じく可能である。試薬1中の粒子の濃度は、1mg/mlから15mg/mlまでの範囲内にある。粒度は0.2μm〜15μmの間で変動する。ペプチド濃度は、粒子1mgにつき0.01mgから1mgの範囲内にある。
【0064】
抗ヒトIgアルカリホスファターゼ(AP)と接合された抗体試薬は、DakoASの推奨プロトコルに従って調製される。このプロトコルはこの分野において標準的なものである。この試薬は試薬2と呼ばれる。
基質溶液フェノールフタレイン−モノホスファターゼは、FlukaAGの推奨プロトコルに従って調製されなければならない。このプロトコルは、この分野において標準的な手順である。基質溶液は、試薬3と呼ばれる。
使用される洗浄及びインキュベーション用緩衝液は、Tween 20(0.01%〜0.1%),グリセロール(0.1%〜10%)及び塩化ナトリウム(0.2%〜0.1%)という付加的化合物を伴う標準的な0.05Mのトリス塩基緩衝液である。
【0065】
検定手順には、各ウェル内で1滴の試薬1が2滴の洗浄用緩衝液と混合されるインキュベーション段階が含まれる。混合の後、30μlの標本を添加し、溶液を5分間インキュベートする。磁性粒子を磁石によって捕捉することができ、磁石を分離する前に液体を除去する。次に、試薬2でのインキュベーションの前に、洗浄用溶液4滴内でウェルを2回洗浄し、溶液を5分間インキュベートする。磁性粒子を磁石により捕捉することができ、磁石を分離する前に液体を除去する。その後、試薬3でのインキュベーションの前に洗浄段階を反復する。各ウェルに対し2滴の試薬3を添加し、溶液を3分間インキュベートする。結果は白色背景に照らして読取ることができる。陽性結果は赤色(3+=強い赤色)であり、一方陰性結果は、負の対照内で得られるように明らかに明黄色/褐色溶液である。
【0066】
HIVウイルス又は本発明のペプチドといったHIV-特異的ペプチド又はタンパク質のいずれかによって誘発された抗体の検出において、免疫学的検定キットを使用することができる。
上述の例は単に本発明を例示するものにすぎない。当業者であれば、クレーム中で記されているような本発明の概念及び範囲から逸脱することなく、本書で記述されたペプチド、抗原及びワクチンを修正できる、ということを理解しなければならない。
【0067】
本発明のポリペプチドは、抗原を形成するべく配列番号1,配列番号4,配列番号9及び配列番号15という各々の配列グループの中から選択された少なくとも1つのペプチドと、ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)に対する防御を提供するように意図された予防又は治療用ワクチンの有効成分の組合せの中で使用することができる。ワクチンは、例えばインタロイキン、インタフェロン、顆粒球マクロファージ成長因子、造血性成長因子又はそれに類似するものといった宿主の免疫系(人間又は脊椎動物)を防御又は刺激する上で有益な効果をもつ化合物を内含していてもよい。
【0068】
好ましくはワクチン組成物はさらにアジュバント又はビヒクルを含有し、より好ましくは、アジュバント又はビヒクルは、場合によってミョウバンを伴うモノホスホリル脂質A(MPL(商標)),フロイントアジュバンド(完全又は不完全)又は水酸化アルミニウムである。アジュバント1ビヒクルの最適な量は、選択されるタイプ(単複)によって左右されることになる。
ペプチド又はワクチン製剤は、保管に先立ち凍結乾燥することができる。ワクチンは、いつでも使用できる状態で単数又は複数の用量単位を含むアンプルの形で、好ましくは低温で保管され得る。
【0069】
本発明に従ったペプチドの標準的な用量単位は、体重1kgあたり1μg〜1mg,好ましくは2μg〜0.15mgの濃度範囲内にある。当業者であれば、適切な用量が、患者の体重、疾病タイプ、状態の重症度、投与経路及びいくつかのその他の要因によって左右されるということを理解することだろう。ワクチンは、最高12回まで投与され得、標準的には、約3回投与されることになる。注射溶液の調製に際しては、ペプチドは、0.9%の塩化ナトリウム及びペプチド1つにつき1mg/mlの最終濃度で無菌塩化ナトリウム溶液中に溶解させられる。
【0070】
標準的には、注射体積は100μl〜200μl(2×100μl)である。ペプチドは好ましくは適切なアジュバント及び/又は顆粒球−マクロファージ成長因子例えばLeucomax(商標)《Shering Plough》と同時投与される。適切な投与は、皮内、皮下、静脈内、経口、筋内、鼻腔内、経粘膜又はその他の適切なあらゆる経路で行なわれる。防御を維持するためには、追加免疫投与が必要となるかもしれない。当業者であれば、本発明に従ったワクチン組成物が感染予防のみならず感染の治療においても有用であることを理解できるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のアミノ酸配列:
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Xaa6 Ala Xaa8 Xaa9 Gln Thr Pro Trp Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Xaa18 Val Xaa20(配列番号1)
〔式中、鎖中のアミノ酸は、以下のような意味をもちうる:すなわち
位置1のXaaは、Lys又はArgであり、
位置2のXaaは、Ala, Gly, Ser又はArgであり、
位置3のXaaは、Leu又はMetであり、
位置4のXaaは、Gly又はArgであり、
位置5のXaaは、Pro, Thr, Val, Ser, Gln又はAlaであり、
位置6のXaaは、Gly, Ala, Lys, Arg, Gln又はGluであり、
位置8のXaaは、Thr又はSerであり、
位置9のXaaは、Leu又はIleであり、
位置14のXaaは、Thr, Ser又はValであり、
位置15のXaaは、Ala又はSerであり、
位置16のXaaは、Cys又はSerであり、
位置17のXaaは、Gln又はLeuであり、
位置18のXaaは、Gly, Glu又はArgであり、
位置20のXaaは、Gly又はArgであり、そして
該ペプチドは、配列番号1の配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含む〕;
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Xaa4 Xaa5 Gly Leu Asn Pro Leu Val[Gly]n Xaa12 Xaa13 Tyr Xaa15Pro Xaa17 Xaa18 Ile Leu Xaa21 Xaa22(配列番号4)
〔式中、鎖中のアミノ酸は、以下のような意味をもつ:すなわち、
位置1のXaaは、Arg, Lys, Asp又は無であり、
位置2のXaaは、Trp, Gly, Lys又はArgであり、
位置3のXaaは、Ile, Leu, Val又はMetであり、
位置4のXaaは、Ile, Val又はLeuであり、
位置5のXaaは、Leu, Met, Val, 又はProであり、
位置12のXaaは、Arg又はLysであり、
位置13のXaaは、Met又はLeuであり、
位置15のXaaは、Ser, Cys又はGlnであり、
位置17のXaaは、Thr, Val, Ile, Ser又はAlaであり、
位置18のXaaは、Ser, Gly又はThrであり、
位置21のXaaは、Asp, Glu, Cys又はGlyであり、
位置22のXaaは、Gly又は無であり、そして
ここで配列番号4の配列は少なくとも6個の連続するアミノ酸を含み、n=0,1,2又は3である〕;
Xaa1 Xaa2 Xaa3 Pro Ile Pro Xaa7 Xaa8 Xaa9 Xaa10 Xaa11 Xaa12 [Gly]n Xaa13, Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Xaa18 Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24(配列番号9)
〔式中、
位置1のXaaは、Asn, Ser, Gly, His, Ala, Pro, Arg又は無であり、
位置2のXaaは、Asn, Ala又はLysであり、
位置3のXaaは、Pro, Gln, Gly, Ile又はLeuであり、
位置7のXaaは、Val又はAlaであり、
位置8のXaaは、Gly又はLysであり、
位置9のXaaは、Glu, Asp, Lys, Phe又はThrであり、
位置10のXaaは、Ile, Met, Val又はLeuであり、
位置11のXaaは、Tyr, Leu又は無であり、
位置12のXaaは、Ser又は無であり、
位置13のXaaは、Arg又は無であり、
位置14のXaaは、Asp, Arg, Trp, Ala又は無であり、
位置15のXaaは、Ile又は無であり、
位置16のXaaは、Tyr又は無であり、
位置17のXaaは、Lys又はArgであり、
位置18のXaaは、Arg, Lys又はAspであり、
位置19のXaaは、Trp又はGlyであり、
位置20のXaaは、Ile, Met, Val, Gln又はAlaであり、
位置21のXaaは、Ile, Val又はAlaであり、
位置22のXaaは、Leu, Met又はValであり、
位置23のXaaは、Gly又はCysであり、
位置24のXaaは、Leu又は無であり、そして
ここで、配列番号9の配列は少なくとも6個の連続的アミノ酸から成り、n=1,2又は3である〕;
並びに
Xaa1 Xaa2 Ile Ile Xaa5 Xaa6 Xaa7 Xaa8 Xaa9 Leu Xaa11 [Gly]n[Arg]m Xaa12, Xaa13, Xaa14 Xaa15 Xaa16 Xaa17 Xaa18 Xaa19 Xaa20 Xaa21 Xaa22 Xaa23 Xaa24 Xaa25(配列番号15)
〔式中、
位置1のXaaは、Pro, Lys, Arg又は無であり、
位置2のXaaは、Glu, Arg, Phe又はLysであり、
位置5のXaaは、Pro又はThrであり、
位置6のXaaは、Met, Thr又はNleuであり、
位置7のXaaは、Phe又はLeuであり、
位置8のXaaは、Ser, Thr, Ala又はMetであり、
位置9のXaaは、Ala, Glu又はLeuであり、
位置11のXaaは、Ser又は無であり、
位置12のXaaは、Ala, Arg又は無であり、
位置13のXaaは、Ile, Leu又は無であり、
位置14のXaaは、Ser, Ala, Leu又は無であり、
位置15のXaaは、Tyr, Glu又はAspであり、
位置16のXaaは、Gly又はAspであり、
位置17のXaaは、Ala又はLeuであり、
位置18のXaaは、Thr, Ile, Val, Leu又はAsnであり、
位置19のXaaは、Pro, Thr又はSerであり、
位置20のXaaは、Tyr, Phe, Nleu, His又はGlnであり、
位置21のXaaは、Asp, Asn, Leu又はAlaであり、
位置22のXaaは、Leu, Ile, Val又はAsnであり、
位置23のXaaは、Asn, Tyr, Cys又はGlyであり、
位置24のXaaは、Thr, Met, Ile, Ala, Val又は無であり、
位置25のXaaは、Gly又は無であり、そして
ここで、配列番号15の配列は、少なくとも6個の連続するアミノ酸から成り、nとmは互いに独立して、n=1,2又は3、及びm=0,1,2又は3である〕
から成る群から選択された少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、
配列の末端は、遊離カルボキシルもしくはアミノ基、アミド、アシル、アセチル又はその塩であってよく、
Cys残基のうちの2個以上が、連鎖内又は連鎖間ジスルフィド結合、-S-(CH2)P-S-又は-(CH2)P-架橋の一部を成すことができ、ここでp=1〜8で、O,N,及びSのごとき1又は複数のヘテロ原子が任意に介在しており、そして/又は前記ペプチド配列が固体支持体に対し固定化されていることを特徴とするペプチド。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列が、配列番号2及び配列番号3の群中から選択されることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号4のアミノ酸配列が配列番号5,配列番号6,配列番号7及び配列番号8の群中から選択されることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号9のアミノ酸配列が、配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13及び配列番号14の群中から選択されることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号15のアミノ酸配列が、配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19及び配列番号20の群中から選択されることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載の少なくとも1つのペプチドを含むことを特徴とする抗原。
【請求項7】
配列番号1,配列番号4,配列番号9及び配列番号15の群の各々の中から選ばれた少なくとも1つのペプチドを含むこと特徴とする、請求項6に記載の抗原。
【請求項8】
薬学的に受容可能な希釈剤及び任意にはアジュバント、担体及び/又はビヒクル及び任意には付加的な免疫刺激性化合物と共に請求項6に記載の抗原を含んで成ることを特徴とするワクチン組成物。
【請求項9】
配列番号1,配列番号4,配列番号9及び配列番号15の群の各々から選択された少なくとも4つペプチドを含んで成ることを特徴とする請求項8に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
配列番号3,配列番号6,配列番号11及び配列番号18のペプチドを含んで成ることを特徴とする請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
ペプチドが食塩水溶液中で溶解され、任意の免疫刺激性化合物が顆粒球マクロファージ成長因子であることを特徴とする請求項8〜10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
組成物がモノホスホリル脂質A(MPL(商標)),完全又は不完全フロイントアジュバント又は水酸化アルミニウムのグループの中から選択されたアジュバントを含んで成ることを特徴とする請求項8〜11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
1又は複数の抗原が請求項1,2,3,4及び5のペプチドの中から選択されている、免疫学的検定に標本を付すことを特徴とする、体液標本中でHIV又はHIV特異的ペプチド又はタンパク質によって誘発された抗体を検出する方法。
【請求項14】
体液標本中でHIV又はHIV特異的ペプチド又はタンパク質によって誘発された抗体を検出するための免疫学的検定キットにおいて、診断用抗原が、先行請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドであることを特徴とするキット。
【請求項15】
請求項6及び7の抗原と選択的に反応する能力をもつことを特徴とする抗原。

【公開番号】特開2011−74081(P2011−74081A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−275025(P2010−275025)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【分割の表示】特願2000−602264(P2000−602264)の分割
【原出願日】平成12年3月2日(2000.3.2)
【出願人】(501347899)
【Fターム(参考)】