説明

HIVワクチン処方物

本発明において提供されるのは、PLGおよび/あるいはHIVタンパク質を吸収するHIVポリペプチドをコードするDNAを含む、HIVワクチンである。被験体において免疫応答を生じさせるための、これらのワクチンの使用方法もまた、提供される。1つの側面において、本発明は少なくとも1つのHIV Gagコード配列またはEnvコード配列を含む核酸発現ベクター(例えば、プラスミド、ウィルス性ベクターなど)およびPLGを含むHIV DNAワクチン組成物を包含する。好ましくは、この核酸発現ベクターが、PLGに吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、広く免疫原性のHIV組成物、特にHIVワクチンならびにこれらワクチンの処方および投与の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、現代の医学が直面している最も大きな健康の脅威の1つとして認識される。現在もなお、この疾患についての療法は存在しない。
【0003】
1983年〜1984年においては、3つのグループが、AIDSの推測される病因学的な因子を別々に同定した。例えば、Barre−Sinoussiら(1983)Science 220:868−871;Montagnierら、Human T−Cell Leukemia Viruses(Gallo,EssexおよびGross編、1984);Vilmerら(1984)The Lancet 1:753;Popovicら(1984)Science 224:497−500;Levyら、(1984)、Science 225:840−842。これらの単離物は、リンパ節腫脹症(lymphadenopathy)関連ウイルス(LAV)、ヒトT細胞白血病ウイルスIII型(HTLV−III)、またはAIDS関連レトロウイルス(ARV)と、さまざまに呼ばれた。これらの単離物の全てが、同じウイルスの株であり、そして後にまとめて、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と呼ばれた。関連するAIDSを引き起こすウイルスの単離物を用いて、最初にHIVと呼ばれた株が、現在HIV−1と呼ばれており、そして関連するウイルスが、HIV−2と呼ばれている。例えば、Guyaderら(1987)Nature 326:662−669;Brun−Vezinetら(1986)Science 233:343−346;Clavelら(1986)Nature 324:691−695を参照のこと。
【0004】
1996年、合衆国において高活性抗レトロウィルス治療(HAART)の実行により、後天性免疫不全症候群(AIDS)と診断された人の数、およびAIDSで死亡した人の数は、実質的に下落し(Karonら(2001)Am J Public Health 91(7):1060−1068)、その結果としてAIDSと共に生きる人(persons living with AIDS)の数は増加してきた。疾病管理センター(The Centers for Disease Control、CDC)は、2000年12月31日時点で、合衆国においておよそ340,000の人がAIDSと共に生きていたと予測する(MMWR、Centers for Disease Control and Prevention.HIV/AIDS Surveillence Report、13(No.1)2001)。
【0005】
合衆国における臨床的な試みは、限定された被験体数に対して実施され、そしてさらなるHIVワクチンの開発は、HIVの血清罹患が十分に高く、プラセボコントロールと、免疫性を与えられた集団における防護との区別が可能である、適切な集団の同定を必要とし得る(Seage IIIら(2001)Am.J.Epidemiol.153(7):619−627;Halpernら(2001)J Acquir Immune Defic Syndr 27(3):281−8)。
【0006】
HIVの主な伝播様式は、性交渉を通じての伝播様式、および感染した体液(血液、精液、膣液、母乳および血液を含む他の体液)との接触によっての伝播様式である。先進国において、人々への危険性が知られている報告された事例の大部分は、男性と性交渉をもつ男性の事例である。HIV抗体に対する血液スクリーニングが始められる以前は、輸血関連HIVは合衆国において懸案であった(CDC.Update:HIV−2 infection among blood and plasma donors−−United States、1992年6月〜1995年6月、MMWR、1995 44:603−606頁)。他の伝播の様式には、注射薬物常用者による注射針の共有、病院勤務者における感染血液との不注意の接触、および汚染された医療機器の再利用を通じてのまれな医原性の伝播が挙げられる。より高い率の性的伝播感染は、危険な性交渉実践の増加の前兆である。Chenら(2001)Am J Public Health 92(9):1387−1388。異性間のHIV−1伝播は、特に女性、若者および経済的弱者の間で増加し続けており、そして現実に、異性間の伝播は発展途上の社会において優勢な伝播様式である。これらの傾向は、予防的ワクチンおよび/または治療に役立つワクチンの開発の必要性を強調する。Cataniaら(2001)Am J Public Health 91(6):907−914。
【0007】
HIVによってコードされるenv遺伝子産物およびGag遺伝子産物を含むワクチン開発のためのいくつかの標的が、試験されている。Gag遺伝子産物としては、Gagポリメラーゼ(pol)およびGagプロテアーゼ(prot)が挙げられるが、これらに限定されない。Env遺伝子産物としては、モノマーgp120ポリペプチド、オリゴマーgp140ポリペプチド(o−gp140)およびgp160ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
最近、免疫原性の組成物中でのHIV Envポリペプチドの使用が記載されている。(異なるHIV env改変体をそれぞれ発現する少なくとも4つの異なる組換えウイルスの混合物を含む免疫原性の組成物を記載している、1998年12月8日に発行されたHurwitzらの米国特許第5,846,546号;および、HIV−1 gp120タンパク質のエピトープに対応するペプチドを記載している、1998年11月24日に発行された、Vahlneらの米国特許第5,840,313号を参照のこと)。さらに、1999年3月2日に発行された、Siaらの米国特許第5,876,731号は、配列GPGRを含有しているHIV−1単離物のV3ループタンパク質のB細胞エピトープのアミノ酸配列に対して直接連結されたGagのT細胞エピトープのアミノ酸配列を含有しているHIVに対する候補のワクチンを記載している。しかしながら、これらのグループは有効なHIVワクチンを同定しなかった。
【0009】
米国特許第6,602,705号および国際特許公報WO 00/39302;WO /02/04493;WO 00/39303;およびWO 00/39304は、様々なサブタイプ由来の免疫原性HIVポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを記載する。
【0010】
従って、免疫原性HIV組成物の、特にHIVワクチン処方物の必要性が、なお存在している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
1つの側面において、本発明は少なくとも1つのHIV Gagコード配列またはEnvコード配列を含む核酸発現ベクター(例えば、プラスミド、ウィルス性ベクターなど)およびPLGを含むHIV DNAワクチン組成物を包含する。好ましくは、この核酸発現ベクターが、PLGに吸収される。特定の実施形態において、PLGの濃度は、核酸発現ベクターの濃度より約5倍と100倍の間で高い。例えば、核酸の濃度は、約10μg/mLと5mg/mLの間であり得、そしてPLGの濃度は約100μg/mLと100mg/mLの間であり得、そして/あるいは1用量あたりの核酸発現ベクターの濃度は約1μg/用量と5mg/用量の間であり得、そして1用量あたりのPLGの濃度は、約10μg/用量と100mg/用量の間であり得る。特定の処方物は、本明細書中に、例えば表1、表2、または表9のカラム2において記載される。
【0012】
別の側面において、本発明はHIVエンベロープタンパク質(例えばオリゴマーgp140(o−gp140));および薬学的に受容可能な賦形剤を含むHIVワクチン組成物を包含する。特定の実施形態において、o−gp140の濃度は、約0.1mg/mLと10mg/mLの間である。さらに、特定の実施形態において、このo−gp140の1用量あたりの濃度は、約100μg/用量である。HIVタンパク質ワクチンの特定の処方物はまた、本明細書中に、例えば表3および表11において記載される。
【0013】
別の側面において、本発明は、1つ以上の本明細書に記載されるHIV DNAワクチン(例えば、本明細書に記載されるHIV Gag DNAワクチンおよび本明細書に記載されるようなHIV Env DNAワクチン)および1つ以上の本明細書に記載されるHIVワクチン(例えば、HIV o−gp140調製物)を含むHIVワクチンを包含する。
【0014】
本明細書に記載される任意のHIVワクチン組成物は、さらに1つ以上のアジュバント(例えば、MF59またはCpG)を含み得る。MF50についての特定の処方物は、表4に記載される。
【0015】
さらに別の側面において、本発明は被験体において免疫応答を起こさせる方法を包含し、この方法は、(a)被験体に、本明細書に記載される少なくとも1つのHIVワクチン組成物を投与する工程、および(b)工程(a)の投与の後で、本明細書に記載される少なくとも1つのHIVワクチン組成物を投与する工程を包含する。特定の実施形態において、工程(a)において投与される少なくとも1つのHIVワクチン組成物は、本明細書に記載されるようなHIV DNAワクチン(例えば、少なくとも1つのHIV Gagワクチンおよび/または少なくとも1つのHIV Envワクチン)を含み、そして工程(b)において投与されるHIVワクチン組成物は、本明細書に記載されるHIVタンパク質ワクチンを含む。さらに、工程(a)は、本明細書に記載される1つ以上のHIV DNAワクチンの複数回投与(例えば、1ヶ月間隔で2回または3回の投与)を包含し得、そして工程(b)は、本明細書に記載される1つ以上のHIVタンパク質ワクチンの、少なくとも1回の投与(1、2または3ヶ月間隔で2回または3回の投与)を包含し得る。あるいは、工程(b)は、本明細書に記載される少なくとも1つのHIV DNAワクチン(例えば、HIV Gagワクチンおよび/またはHIV Envワクチン)および本明細書に記載される少なくとも1つのHIVタンパク質ワクチンを同時投与する工程を包含し得る。工程(a)の投与と工程(b)の投与との間の時間は変動し得、例えば1ヶ月と6ヶ月の間またはそれ以上である。本明細書に記載される任意の方法において、1回以上の投与は筋内および/または皮内であり得る。
【0016】
さらなる側面において、本発明はオリゴマーHIV Env gp140タンパク質を作製する方法を包含し、この方法は、gp140をコードする核酸を宿主細胞に導入する工程;gp140が細胞内において発現される条件下で宿主細胞を培養する工程;およびオリゴマーgp140(o−gp140)タンパク質を宿主細胞から単離する工程を包含する。特定の実施形態において、このo−gp140は、この細胞から分泌され、そしてこの細胞上清から単離される。
【0017】
なおさらなる側面において、本明細書に記載される任意のHIV DNAワクチンを作製する方法が提供される。この方法は、1つ以上のHIVポリペプチドをコードする配列を含む核酸発現ベクターと、無菌のPLG微粒子とを結合させる工程を包含し、その結果核酸発現ベクターがPLG微粒子に結合して、DNA/PLG HIVワクチンを形成する。特定の実施形態において、この方法は、さらにこのDNA/PLG HIVワクチンを凍結乾燥する工程を包含する。
【0018】
別の側面において、本発明は本明細書に記載されるようなHIVタンパク質ワクチンを作製する方法を包含し、この方法は、o−gp140とアジュバントを結合させる工程を包含する。
【0019】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態は、本明細書の開示を照らして当業者に容易に見出されるであろう。
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、他に特に示されない限りは、当業者の範囲内である、化学的、生化学的、分子生物学的、免疫学的、および薬理学的な従来の方法を使用する。このような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版(Easton、Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press,Inc.);およびHandbook of Experimental Immunology,第I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986、Blackwell、Scientific Publications);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);Short Protocols in Molecular Biology、第4版(Ausubelら編、1999、John Wiley and Sons);Molecular Biology Techniques:An Intensive Laboratory Course(Reamら編、1998、Academic Press);PCR(Introduction to Biotechniques Series)、第2版(NewtonおよびGraham編、1997、Springer Verlag);PetersおよびDalrymple、Fields Virology(第2版)、Fieldsら(編)、B.N.Raven Press、New York、NYを参照のこと。
【0021】
本明細書において引用される、全ての刊行物、特許および特許出願は、前出または後掲に関わらずその全体が参考として援用される。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形態の「a」、「an」、および「the」は、他に特に明確に示されない限りは、複数形の対象物を含む。従って、例えば、「抗原」に関しては、2つ以上のこのような抗原の混合物を含む。
【0023】
本発明を記載する前に、本明細書にこれ以降で使用される特定の用語の定義を最初に記載することは、それらの用語を理解する助けとなり得る。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「HIVポリペプチド」は任意のHIV株またはサブタイプ由来の任意のHIVペプチドをいい、これらとしては、Gag、pol、env、vif、vpr、tat,rev、nefおよび/またはvpu;それらの機能的(例えば、免疫原性)フラグメント、それらの改変ポリペプチドおよびこれらのフラグメントおよび/または改変ポリペプチドの組み合せが挙げられるが、これに限定されない。さらに、本明細書中に定義される「HIVポリペプチド」は、公知のHIVポリペプチドの正確な配列を有するポリペプチドに限定されない。むしろHIVゲノムは、絶えず流動的な状態であり、そして単体間に相対的に高い度合いの改変性を示すいくつかの領域を含む。本明細書中に明らかにされるように、ポリペプチドが免疫原性の特徴を有するということが重要である。この用語が任意の様々なHIV株およびサブタイプに由来するポリペプチドを包含することは、容易に明らかである。この用語はさらに、生成の方法に関わらず任意のこのようなHIVタンパク質を包含する(例えば、組換え的に生成されたポリペプチド、および合成的に生成されたポリペプチドが挙げられる)。
【0025】
さらに、用語「HIVポリペプチド」は、天然の配列に対するさらなる改変、例えばさらなる内部欠失、付加および置換(一般に天然に保存される)、を含むタンパク質を含む。これらの改変は、部位特異的変異誘発によるように故意であってもよく、または天然に存在する変異事象によるように偶然であってもよい。これら改変の全ては、本発明が意図する目的のための改変HIVポリペプチド機能である限りは、本発明において包含される。従って、例えばワクチン組成物において、改変は免疫学的な活性が失われないものであるべきである。同様に、ポリペプチドが診断的な目的のために使用される場合、このような能力は保持されなければならない。従って、この用語はまた、天然に存在するペプチドとは異なる、例えば1つ以上の欠失(例えば、Envから欠失した様々な領域)、置換および/または挿入を含むペプチドであるHIVポリペプチドを含む。非保存的な変化は、一般には上記アミノ酸の1つと異なる群からのアミノ酸との置換(例えば、AsnをGluに置換すること)、あるいは上記アミノ酸いずれかをCys、Met、HisまたはProに置換することである。共通のアミノ酸を含む置換は、都合の良いことには所望のタンパク質をコードする発現ベクターの部位特異的変異誘発、次いで変更された形態の発現によって実施される。アミノ酸は、合成的または半合成的な方法によってもまた、変更され得る。例えば、システイン残基またはセリン残基は、単離したタンパク質の適切な化学的処理によってセレンシステインに転化され得る。あるいは、共通でないアミノ酸は、インビトロタンパク質合成方法において標準的に組み込まれ得る。代表的に、変異体において天然の配列に対し変更、欠失または付加された残基の総数は、約20以下であり得、好ましくは約10以下であり得、もっとも好ましくは約5以下である。
【0026】
本明細書中で使用される場合には、「合成」ポリヌクレオチド配列は、HIVをコードするポリヌクレオチド(例えば、Gagコード配列および/またはEnvコード配列)をいい、その発現は、例えば阻害配列のコドンの置換および不活性化によって最適化されてきた。例えば、米国特許第6,602、705号および国際公報WO 00/39302;WO 02/04493;WO 00/39303;およびWO 00/39304の合成HIVをコードするポリヌクレオチドの例を参照のこと。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「野生型」配列または「天然の」配列は、それらが天然において見出される本質的なポリペプチドのコード配列をいう。例えば、C型の単離物(例えば、ボツワナ単離物、AF110965、AF110967、AF110968またはAF110975、あるいはサウスアフリカン単離物)のような他の単離物において発見されたGagコード配列および/またはEnvコード配列。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「ウイルス様粒子」または「VLP」は、以下にさらに議論される任意のいくつかのウイルスに由来する、複製性ではないウイルスの殻をいう。VLPは、一般的には、キャプシドタンパク質、コートタンパク質、殻タンパク質、表面タンパク質、および/またはエンベロープタンパク質と呼ばれるこれらのタンパク質、あるいはこれらのタンパク質に由来する粒子形成ポリペプチドのような、1つ以上のウイルスタンパク質から構成されるが、これらに限定されない。VLPは、適切な発現系においてタンパク質の組換え発現の際に自発的に形成し得る。粒子状のVLPを産生するための方法は当該分野で公知であり、そして以下により完全に記載される。ウイルスタンパク質の組換え発現後のVLPの存在は、当該分野で公知の従来技術(例えば、電子顕微鏡分析、X線結晶解析など)を使用して検出され得る。例えば、Bakerら、Biophys.J.(1991)60:1445−1456;Hagenseeら、J.Virol.(1994)68:4503−4505を参照のこと。例えば、VLPは、密度勾配遠心分離によって単離され得、そして/または特徴的な密度のバンド形成によって同定され得る。あるいは、低温電子顕微鏡分析が、対象のVLP調製物のガラス化された水溶性のサンプル対して行われ得、そして適切な露出条件下で画像が記録され得る。
【0029】
特定のウイルスタンパク質に由来する「粒子形成ポリペプチド」によって、全長またはほぼ全長のウイルスタンパク質、ならびにそれらのフラグメント、または内部欠失を有するウイルスタンパク質が意味される。これらは、VLP形成に好ましい条件下でVLPを形成する能力を有する。従って、ポリペプチドは、全長の配列、フラグメント、短縮された配列および部分的な配列、ならびに参照分子のアナログおよび前駆体の形態を含み得る。従って、この用語は、ポリペプチドがVLPを形成する能力を維持している限り、配列に対する欠失、付加,および置換を意図する。従って、この用語は、特定のポリペプチドの天然のバリエーションを含む。なぜなら、コートタンパク質におけるバリエーションはしばしば、ウイルスの単体間で生じるからである。この用語はまた、タンパク質がVLPを形成する能力を維持している限り、参照のタンパク質において天然には生じない欠失、付加、および置換を含む。好ましい置換は、天然に保存されている置換(すなわち、アミノ酸の側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で生じる置換)である。詳細には、アミノ酸は、一般的に、4つのファミリーに分けられる:(1)酸性−−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;ならびに(4)非荷電極性−−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時折、芳香族アミノ酸として分類される。
【0030】
「抗原」とは、体液性および/または細胞性抗原特異的応答を生じる宿主免疫系を刺激する1つ以上のエピトープを含む分子(線状、配座(conformational)のいずれか、またはその両方)をいう。この用語は、用語「免疫原」と交換可能に使用される。代表的に、B細胞エピトープは、少なくとも約5個のアミノ酸を含むが、3〜4個の程度の少なさのアミノ酸であり得る。T細胞エピトープ(例えば、CTLエピトープ)は、少なくとも約7〜9個のアミノ酸を含み、そしてヘルパーT細胞エピトープは、少なくとも約12〜20個のアミノ酸を含む。代表的に、エピトープは、約7と15との間のアミノ酸(例えば、9、10、12、または15個のアミノ酸)を含む。用語「抗原」は、サブユニット抗原(すなわち、抗原が天然に関連している生物全体から分離され、そして別個である抗原)、ならびに殺傷されたか、弱毒化されたか、または不活性化された細菌、ウイルス、真菌、寄生体、または他の微生物の両方を示す。抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体)、またはそのフラグメントおよび合成ペプチドミモトープ(これは、抗原または抗原決定基を模倣し得る)もまた、本明細書中で使用される場合、抗原の定義の下にとらえられる。同様に、例えば、遺伝子治療およびDNA免疫適用において、インビボで抗原または抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドもまた、本明細書中の抗原の定義内に含まれる。
【0031】
本発明の目的のために、抗原は好ましくは任意のHIVのサブタイプに由来する。抗原はまた、任意のいくつかの公知のウィルス、細菌、寄生体および真菌、または腫瘍抗原に由来され得る。さらに、本発明の目的のために、「抗原」はタンパク質が本明細書中に定義される場合、免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、例えば、ネイティブな配列に対する欠失、付加および置換(一般に天然に保存される)のような改変を含むタンパク質をいう。これらの改変は、部位特異的変異誘発によるように故意であってもよく、または抗原を産生する宿主の変異によるように偶然であってもよい。
【0032】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」は、目的の組成物に存在する抗原に対する被験体の体液性および/または細胞性免疫応答における発生である。本発明の目的のために、「体液性免疫応答」とは、抗体分子により媒介される免疫応答をいい、一方、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球により媒介されるものである。細胞性免疫の1つの重要な局面は、細胞傷害性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答に関する。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によりコードされるタンパク質と結合して存在し、そして細胞表面上に発現されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の破壊またはこのような微生物に感染した細胞の溶解の誘導および促進を補助する。細胞性免疫の別の局面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答に関する。ヘルパーT細胞は、それらの表面上にMHC分子と結合したペプチド抗原を提示する細胞に対する機能を刺激し、そしてこの細胞に対する非特異的エフェクター細胞の活性に焦点を当てることを補助するように作用する。「細胞性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカイン、ならびに活性化T細胞および/または他の白血球(CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む)により産生される他のこのような分子の産生をいう。
【0033】
細胞性免疫応答を誘発する組成物またはワクチンは、細胞表面でMHC分子と結合している抗原の提示により、脊椎動物被験体を感作するように働き得る。この細胞媒介性免疫応答は、その細胞の表面に抗原を提示する細胞に、またはその付近で指向される。さらに、抗原特異的Tリンパ球は、免疫された宿主の将来的な保護を可能にするように生成され得る。
【0034】
細胞媒介性免疫学的応答を刺激する特定の抗原の能力は、多くのアッセイによって(例えば、リンホ増殖(lymphoproliferation)(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイによって、または感作された被験体における抗原に特異的なTリンパ球についてアッセイをすることによって)決定され得る。このようなアッセイは、当該分野において周知である。例えば、Ericksonら、J.Immunol.(1993)151:4189−4199;Doeら、Eur.J.Immunol.(1994)24:2369−2376を参照のこと。細胞媒介性免疫応答を測定する最近の方法は、T細胞集団による細胞内サイトカインまたはサイトカイン分泌の測定、またはエピトープ特異的T細胞の測定を含む(例えば、テトラマー技術による)(McMichael,A.J.およびO’Callaghan,C.A.、J.Exp.Med.187(9)1367−1371、1998;Mcheyzer−Williams,M.G.ら、Immunol.Rev.150:5−21、1996;Lalvani,A.ら、J.Exp.Med.186:859−865、1997)により総説される)。
【0035】
従って、本明細書中で使用される免疫学的応答は、CTLの産生、および/またはヘルパーT細胞の産生もしくは活性化を刺激するものであり得る。HIV抗原もまた、抗体媒介性免疫応答を誘発し得る。従って、免疫学的応答は、1以上の以下の効果を含み得る:B細胞による抗体の産生;ならびに/あるいは目的の組成物またはワクチンに存在する抗原に対して特異的なサプレッサーT細胞および/またはγδT細胞の活性化。これらの応答は、感染性を中和し、そして/あるいは抗体−補体、または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介して、免疫された宿主に対する保護を提供するように働き得る。このような応答は、当該分野において周知である、標準的な免疫アッセイおよび中和アッセイを使用して決定され得る。
【0036】
「免疫学的組成物」は、被験体への組成物の投与が、目的の抗原性分子に対する被験体の体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を生じさせる抗原性分子を含む組物である。免疫原性組成物は、例えば、注射、吸入、経口、鼻腔内、および粘膜(例えば、直腸内または膣内)投与によって、レシピエント被験体に直接導入され得る。
【0037】
「サブユニット」ワクチンとは、目的の病原体由来(例えば、ウイルス、細菌、寄生体または真菌由来)の抗原に由来するか、またはそれに相同である、1以上の選択された抗原(しかし、全ての抗原ではない)を含むワクチン組成物を意味する。このような組成物は、インタクトな病原性細胞または病原性粒子、あるいはこのような細胞または粒子の溶解物を実質的に含まない。従って、「サブユニットワクチン」は、病原体から少なくとも部分的に精製された(好ましくは、実質的に精製された)免疫原性ポリペプチド、またはそれらのアナログから調製され得る。従って、サブユニットワクチンに含まれる抗原を入手する方法は、標準的な精製技術、組換え産生、または合成産生を含み得る。
【0038】
「実質的に精製される(た)」とは、一般に、基質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)が、存在するサンプルの主要な割合を含むように、基質を単離することをいう。代表的には、サンプル中に、実質的に精製された成分は、このサンプルの50%、好ましくは80%〜85%、より好ましくは90%〜95%を含む。目的のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを精製するための技術は、当該分野において周知であり、そして例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、および密度に従う沈降が挙げられる。
【0039】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列(または「制御エレメント」)の制御下に置かれた場合、インビボで転写される(DNAの場合)核酸分子、そしてポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端で開始コドンによって、そして3’(カルボキシ)末端で翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、ウイルス由来のcDNA、原核生物または真核生物のmRNA、ウイルスまたは原核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、および合成DNA配列さえも挙げられ得るが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列に対して3’に位置され得る。
【0040】
代表的な「制御エレメント」には、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止配列に対して3’に位置する)、翻訳の開始の最適化のための配列(コード配列に対して5’に位置する)、および翻訳終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「核酸」分子には、原核生物配列、真核生物mRNA、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、および合成DNA配列でさえも挙げられ得るが、これらに限定されない。この用語はまた、任意のDNAおよびRNAの公知の塩基アナログを含む配列を捕捉する。
【0042】
「作動可能に連結した」は、エレメントの整列をいい、ここで、そのように記載された成分は、それらの機能を行うように構成されている。従って、コード配列に作動可能に連結した所定のプロモーターは、その適切な酵素が存在する場合、コード配列の発現をもたらし得る。このプロモーターは、自身の発現を指向するように機能する限り、コード配列と隣接している必要はない。従って、例えば、転写はされるが翻訳はされない介在配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてプロモーター配列はなお、コード配列に「作動可能に連結」していると考えられ得る。
【0043】
本明細書において核酸分子を記載するために使用される場合、「組換え」は、その起源または操作により、(1)天然に関連しているポリヌクレオチドの全てまたは一部と結合していない;および/または(2)天然に関連している以外のポリヌクレオチドに連結している、ゲノム、cDNA、半合成または合成の起源のポリヌクレオチドを意味する。タンパク質またはポリペプチドに関して使用される場合、用語「組換え」は、組換えポリヌクレオチドの発現によって生成されたポリペプチドを意味する。「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、および単細胞部分として培養された原核生物微生物細胞株または真核生物細胞株を示すそのような他の用語は、互換的に使用され、そして組換えベクターまたはその他の移入DNAのためのレシピエントとして使用され得る、または使用されている細胞のことをいい、そしてトランスフェクトされている始原細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、偶発的な変異または意図的な変異に起因して、必ずしも、形態学上、または起源の親に相補的なゲノムもしくは全DNAにおいて完全に同一でなくてもよいことが理解される。関連する特性(例えば、所望のペプチドをコードするヌクレオチド配列の存在)によって特徴づけられるべき親に充分に類似している親細胞の子孫は、この定義によって意図される子孫に含まれ、そして上記の用語によって包含される。
【0044】
アミノ酸配列「類似性」を決定するための技術は、当該分野で周知である。一般に、「類似性」は、アミノ酸が同一であるか、または類似の化学的および/または物理的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する適切な部位での2つ以上のポリペプチドの正確なアミノ酸対アミノ酸の比較を意味する。次いで、いわゆる「パーセント同一性」は、比較したポリペプチド配列間で決定され得る。核酸配列およびアミノ酸配列の同一性を決定するための技術もまた、当該分野で周知であり、その遺伝子に対するmRNAのヌクレオチド配列を決定する(代表的に、cDNA中間体を介して)こと、およびそれによりコードされるアミノ酸配列を決定すること、およびこれを第2のアミノ酸配列と比較することを包含する。一般に、「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の、それぞれ、正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の対応をいう。
【0045】
2つ以上のポリヌクレオチド配列は、それらの「パーセント同一性」を決定することによって比較され得る。2つ以上のアミノ酸配列は、同様に、「パーセント同一性」を決定することによって比較され得る。2つの配列のパーセント同一性(核酸配列またはペプチド配列が一般に記載されているか否か)は、一般に、より短い配列の長さによって除算され、そして100を積算された2つの整列された配列間の正確な整合の数として記載される。核酸配列についてのおよその整列は、SmithおよびWaterman,Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所的な相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff編、5補遺、3:353−358、National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAによって開発され、そしてGriskov、Nucl.Acids.Res.14(6):6745−6763(1986)によって規格化された、スコア付けマトリックスを使用して、ペプチド配列を用いる使用にまで拡張し得る。核酸配列およびペプチド配列についてのこのアルゴリズムの実行は、それらのBestFitユーティリティーアプリケーションにおいてGenetics Computer Group(Madison,WI)によって提供される。この方法についてのデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Verson 8(1995)(Genetics Computer Group、Madison,WI、から入手可能)に記載される。配列間のパーセント同一性または類似性を計算するための他の等しく適切なプログラムは、当該分野で一般に公知である。
【0046】
例えば、特定のヌクレオチド配列の、参照配列に対するパーセント同一性は、SmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを、デフォルトスコア付け表および6ヌクレオチド位置のギャップペナルティーとともに使用して決定され得る。本発明の状況においてパーセント同一性を確立するための別の方法は、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokによって開発され、そしてIntelliGenetics,Inc.(Mountain View、CA)によって頒布されているUniversity of Edinburghに著作権の帰属するプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。このパッケージソフトから、Smith−Watermanアルゴリズムが、スコア付表(例えば、12のギャップオープンペナルティ、1のギャップ拡張ペナルティ、および6のギャップ)について使用されるデフォルトパラメータが使用される場合に、利用され得る。作成されたデータから、「マッチ」値は、「配列同一性」を反映する。配列間のパーセント同一性または類似性を計算するための他の適切なプログラム(例えば、整列プログラムBLAST(これはデフォルトパラメータでも使用され得る))は、一般に、当該分野で公知である。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメータでも使用され得る:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;記載=50配列;選別=高スコア;データベース=非縮重、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスで見出され得る:http://www.ncbi.nlm.gov/cgi−bin/BLAST。
【0047】
当業者は、上記のプログラムにおいて所定の配列について使用するための適切な検索パラメータを容易に決定し得る。例えば、検索パラメータは、問題の配列のサイズに基づいて変化し得る。従って、例えば、本発明の代表的な実施形態は、X個の連続するヌクレオチドを有する単離されたポリヌクレオチドを含み、ここで、(i)X個の連続するヌクレオチドは、本明細書に記載される任意の配列に由来するY個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも約50%の同一性を有し;(ii)XとYは等しく、かつ(iii)Xは、6ヌクレオチドよりも大きいか、それに等しく、そして5000ヌクレオチドまでであり、好ましくは、8ヌクレオチドより大きいか、またはそれに等しく、そして5000ヌクレオチドまでであり、より好ましくは、10〜12ヌクレオチドであり、そして5000ヌクレオチドまでであり、そしてさらにより好ましくは、15〜20ヌクレオチドであり、本明細書に記載される全長配列(例えば、配列表および特許請求の範囲を参照)に存在するヌクレオチドの数までであり、上記の範囲内の全ての整数値が含まれる。
【0048】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドには、本明細書に開示される配列に対して(例えば、本発明の特許請求された配列またはその他の配列)、本発明の配列が問い合わせ配列として使用された場合に、約80%〜100%の、80〜85%より大きい、好ましくは、90〜92%より大きい、より好ましくは、95%より大きい、そして最も好ましくは、98%より大きい配列同一性(これらの記載の範囲内に入る全ての整数値を含む)有する関連するポリヌクレオチド配列が含まれる。
【0049】
2つの核酸フラグメントは、本明細書に記載される場合、「選択的にハイブリダイズ」すると考えられる。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一の核酸配列は、少なくとも部分的に、完全に同一な配列が標的分子にハイブリダイズすることを阻害する。完全に同一な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野で周知のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロット、ノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーション、など、Sambrookら、前出、またはAusubelら、前出を参照のこと)を使用して評価され得る。このようなアッセイは、例えば、低ストリンジェントから高ストリンジェントまでの種々の条件を使用して、種々の程度の選択性を使用して行われ得る。低ストリンジェンシー条件が利用される場合、非特異的結合の不在は、非特異的な結合事象の不在下で、二次プローブが標的にハイブリダイズしないように、部分的な程度の配列同一性を欠損する二次プローブ(例えば、標的分子と約30%よりも少ない配列同一性を有するプローブ)を使用することによって評価され得る。
【0050】
ハイブリダイゼーションに基づく検出システムが利用される場合、標的核酸配列に対して相補的な核酸プローブが選択され、次いで適切な条件の選択により、そのプローブおよび標的配列が、互いに、「選択的にハイブリダイズする」か、結合して、ハイブリッド分子を形成する。「中程度のストリンジェント」な条件下で標的配列に選択的にハイブリダイズし得る核酸分子は、代表的には、選択された核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14個のヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、代表的には、選択された核酸プローブの配列と約90〜95%より大きな配列同一性を有する少なくとも約10〜14個のヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブと標的が特定の程度の配列同一性を有するプローブ/標的ハイブリダイゼーションのために有用なハイブリダイゼーション条件は、当該分野で公知なように決定され得る(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach、B.D.HamesおよびS.J.Higggins編、(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Pressを参照のこと)。
【0051】
ハイブリダイゼーションについてのストリンジェンシー条件に関して、多数の等価な条件が、例えば、以下のファクターを変化させることによって、特定のストリンジェンシーを確立するために利用され得ることは、当該分野で周知である:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩およびその他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、およびポリエチレングリコール)の存在または非存在、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメータ、ならびに種々の洗浄条件。特定の組のハイブリダイゼーション条件の選択は、当該分野での標準的な方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、前出、またはAusubelら、前出を参照のこと)。
【0052】
第1のポリヌクレオチドが、第2のポリヌクレオチドの領域、そのcDNA、その相補物と、同一の塩基対配列を有するか、または実質的に同一の塩基対配列を有する場合、あるいは第1のポリヌクレオチドが上記のように配列同一性を示す場合、その第1のポリヌクレオチドは、その第2のポリヌクレオチドに「由来する」。
【0053】
第1のポリペプチドが、(i)第2のポリヌクレオチドに由来する第1のポリヌクレオチドによってコードされる場合、または(ii)上記のように第2のポリペプチドと配列同一性を示す場合、その第1のポリペプチドは、その第2のポリペプチドに「由来する」。
【0054】
ウイルスポリペプチドが、(i)そのウイルスのポリヌクレオチド(ウイルスポリヌクレオチド)のオープンリーディングフレームによってコードされる場合、または(ii)上記のようにそのウイルスのポリペプチドに対して配列同一性を示す場合、一般に、そのウイルスポリペプチドは、ウイルスの特定のポリペプチド(ウイルスポリペプチド)に「由来する」。
【0055】
「コードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列をいい、ここで、ポリペプチド配列またはその部分は、核酸配列によってコードされるポリペプチド由来の、少なくとも3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも8〜10アミノ酸、そしてなおより好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸のアミノ酸配列を含む。その配列によってコードされるポリペプチドを用いて免疫学的に同定され得るポリペプチド配列もまた、含まれる。
【0056】
「精製されたポリヌクレオチド」とは、そのポリヌクレオチドが天然に関連するタンパク質を実質的に含まない(例えば、約50%未満を含む、好ましくは約70%未満を含む、そしてより好ましくは約90%未満を含む)目的のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントをいう。目的のポリヌクレオチドを精製する技術は、当該分野において周知であり、そして、例えば、カオトロピック剤を用いるポリヌクレオチドを含有する細胞の破壊、およびイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度による沈降によるポリヌクレオチドおよびタンパク質の分離が挙げられる。
【0057】
「核酸免疫」によって、インビボにおける抗原(単数および複数)あるいはエピトープ(単数および複数)の発現のために、宿主細胞中に1つ以上の選択した抗原をコードする核酸分子を導入することを意味する。核酸分子は、例えば、注入投与、吸入投与、経口投与、鼻腔内投与、および粘膜投与などによってレシピエント被験体中に直接的に導入され得るか、あるいは、エキソビボで宿主から取り出された細胞中に導入され得る。後者の場合、形質転換された細胞は、被験体中に再導入され、被験体中で、核酸分子によってコードされる抗原に対する免疫応答を開始し得る。
【0058】
「遺伝子移入」または「遺伝子送達」とは、宿主細胞中に目的のDNAを確実に挿入するための方法または系をいう。そのような方法は、非組み込み型移入DNAの一過性の発現、染色体外複製および移入レプリコン(例えば、エピソーム)の発現、または宿主細胞のゲノムDNA中への移入された遺伝子物質の挿入を生じ得る。遺伝子送達発現ベクターとしては、アルファウイルス、ポックスウイルスおよびワクシニアウイルス由来のベクターが挙げられるが、これらに限定されない。免疫のために使用される場合、そのような遺伝子送達発現ベクターは、ワクチンまたはワクチンベクターと称され得る。
【0059】
「Tリンパ球」または「T細胞」は、免疫系の細胞媒介性攻撃の部分を構成する非抗体産生リンパ球である。T細胞は、骨髄から胸腺(胸腺でTリンパ球は、胸腺ホルモンの指令のもと、成熟化プロセスを受ける)に移動する未成熟のリンパ球から生じる。ここで、成熟リンパ球は、迅速に分裂し、非常に大多数に増加する。成熟するT細胞は、特定の抗原を認識しそして結合するその能力に基づいて、免疫適格となる。免疫適格T細胞の活性化は、抗原がリンパ球表面レセプターに結合する場合に、誘発される。
【0060】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取り込みをいうために使用される。外来DNAが細胞膜の内部に導入される場合、その細胞は、「トランスフェクト」されている。多数のトランスフェクション技術が、当該分野において一般に公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、およびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。そのような技術を使用して、適切な宿主細胞中に1つ以上の外来DNA部分を導入し得る。この用語は、遺伝子物質の安定な取り込みおよび一過性の取り込みの両方をいい、そしてペプチド結合DNAおよび抗体結合DNAの取り込みを含む。
【0061】
標的細胞への「自殺遺伝子」(例えば、薬物感受性遺伝子)の移入は、代表的にの細胞に対して比較的非毒性の化合物または組成物に対して細胞を感受性にする。Moolten、F.L.(1994)Cancer Gene Ther.1:279−287。自殺遺伝子の例は、単純疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−tk)、シトクロムP450(Manomeら(1996)Gene Therapy 3:513−520)、ヒトデオキシシチジンキナーゼ(Manomeら(1996)Nature Medicine 2(5):567−573)および細菌酵素シトシンデアミナーゼ(Dongら(1996)Human Gene Therapy 7:713−720)である。これらの遺伝子を発現する細胞は、比較的非毒性のプロドラッグであるガンシクロビル(HSV−tk)、シクロホスファミド(シトクロムP450 2B1)、シトシンアラビノシド(ヒトデオキシシチジンキナーゼ)または5−フルオロシトシン(細菌シトシンデアミナーゼ)の効果に対して、感受性となる。Culverら(1992)Science 256:1550−1552、Huberら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8302−8306。
【0062】
「選択マーカー」または「レポーターマーカー」とは、治療的活性を有さないが、むしろ遺伝子移入ベクターのより単純な調製、操作、特徴付けまたは試験を可能にするために含まれる、遺伝子移入ベクター中に含まれるヌクレオチド配列をいう。
【0063】
「特異的結合剤」とは、分子の特異的結合対のメンバーをいい、ここでこの分子の1つは、化学的および/または物理的手段を通じて、第2の分子に特異的に結合する。特異的結合剤の1つの例は、選択された抗原に対する抗体である。
【0064】
「被験体」とは、限定ではなく、ヒトおよび他の霊長類(非ヒト霊長類、例えば、チンパンジーおよび他の尾なしザル種およびサル種を含む);ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマのような家畜;イヌおよびネコのようなペット;マウス、ラットおよびモルモットのようなげっ歯類を含む実験室動物;ニワトリ、シチメンチョウ、および他のキジ類のトリ、アヒル、ガチョウなどのようなペット、野生のトリおよび競技用のトリを含むトリ、を含む脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢を意味しない。従って、成熟個体および新生個体の両方を含むことが意味される。これら全ての脊椎動物の免疫系は、同様に作動するので、上記の系は、上記の任意の脊椎動物種における使用が意図される。
【0065】
「薬学的に受容可能」または「薬理学的に受容可能」とは、生物学的ではなく、またそれ以外においても望まれないことのない物質、すなわち、望まれない生物学的効果を全く生じることもなく、その物質が含まれる組成物のいずれの成分とも有害な様式において相互作用することもなく、処方物または組成物中で個体に投与され得る物質を意味する。
【0066】
「生理学的pH」または「生理学的範囲のpH」とは、約7.2〜8.0の範囲内のpH(pH7.2およびpH8.0を含む)、より典型的には約7.2〜7.6の範囲内のpH(pH7.2およびpH7.6を含む)を、意味する。
【0067】
本明細書において使用される場合、「処置」とは、(i)伝統的なワクチンにおけるような、感染または再感染の予防、(ii)症状の減少または排除、および/または(iii)問題の病原体の実質的な排除または完全な排除、のいずれかをいう。処置は、予防的(感染前)であっても、治療的(感染後)であってもよい。
【0068】
「核酸発現ベクター」とは、目的の配列または目的の遺伝子の発現を指向し得るアセンブリをいう。核酸発現ベクターは、目的の配列または目的の遺伝子と作動可能に連結したプロモーターを含み得る。他の制御エレメントもまた、存在し得る。核酸発現ベクターとしては、プラスミド、ウィルス性ベクター、アルファウィルスベクター(例えば、シンドビス)、真核細胞層状ベクター開始系(例えば、米国特許第6,342,372号参照のこと)、レトロウィルス性ベクター、アデノウィルス性ベクター、アデノ随伴ウィルスベクターなどが挙げられるが、これに限定されない。種々の核酸ベクターの説明については、米国特許第6,602,705号もまた参照のこと。発現カセットは、核酸発現ベクター内に含まれ得る。このベクターはまた、細菌の複製起点、1つ以上の選択マーカー、構築物を1本鎖DNAとして生成させるシグナル(例えば、M13複製起点)、多重クローニング部位、および「哺乳動物」複製起点(例えば、SV40複製起点またはアデノウイルス複製起点)を含み得る。
【0069】
「パッケージング細胞」とは、組換えレトロウィルスベクターにおいてでは欠失しているが、感染性組換えレトロウィルスの産生に必須なエレメントを含む細胞をいう。典型的には、そのようなパッケージング細胞は、Gagタンパク質、polタンパク質およびenvタンパク質をコードする、タンパク質を発現し得る1つ以上の発現カセットを含む。
【0070】
「プロデューサー細胞」または「ベクター産生細胞」とは、組換えレトロウィルスベクター粒子の産生のために必須なエレメントの全てを含む細胞をいう。
【0071】
さらに、以下は本明細書で使用される略語の部分的なリストである:
μg マイクログラム
AIDS 後天性免疫不全症候群
APC 抗原呈示細胞
CCR5 ケモカインレセプター5
CD4+ CD4レセプター
CD8+ CD8レセプター
CDC 疾病管理センター
CHO cells チャイニーズハムスター卵巣細胞
CMV サイトメガロウィルス
ConA コンカナバリンA
CRF 事例様式
CRF’s 循環組換え様式
CTAB セチルトリメチルアンモニウムブロミド
CTL 細胞障害性Tリンパ球
Cv クロミウム(cromium)
DEAE ジエチルアミノエチル
DNA デオキシリボ核酸
DTH 遅延型過敏症
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
ELISPOT 酵素結合免疫スポット測定法
ENV エンベロープ
FIGE 領域反転ゲル電気泳動
GAG 群特異的抗原
GLP 良好な実験実践
gp 糖タンパク質
HAART 高活性抗レトロウィルス治療
HAP ハイドロジアパティック(hydroziapatic)
HBsAg B型肝炎皮相抗原
HCV C型肝炎ウィルス
HIV/HIV−1 ヒト免疫不全ウィルス/1型
hr 時間
HSV 単純疱疹ウイルス
IFN インターフェロン
IFNγ インターフェロンγ
IM 筋内
IND 研究新薬
IV 静脈内
Kb キロベース
kD キロダルトン
Kg キログラム
mg ミリグラム
mL ミリリットル
MF59 水中油型乳剤アジュバント
NaCl 塩化ナトリウム
NIAID 国立アレルギーおよび感染症研究所
NIH 国立衛生研究所
o−またはO− オリゴマー
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PEG ポリエチレングリコール
PLG カチオンポリラクチド−コ−グリコリド
pSIN シンドビスウィルスベクター
PVA ポリ(ビニルアルコール)
REV ウィルス性タンパク質−ウィルス性発現の制御に関する
SAE 重篤な有害事象
SHIV シミアンヒト免疫不全ウィルス
SP resin 改変ポリエステル−カーボネート樹脂
(全体的な概観)
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、もちろん、特定の処方物もプロセスのパラメーターも変動し得るので、特定の処方物にもプロセスのパラメーターにも限定されないことが理解されるべきである。本明細書中で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的のためでしかなく、限定されることは意図されないこともまた理解されるべきである。
【0072】
本明細書中に記載された方法および材料と類似するかまたは等価な多数の方法および材料が、本発明の実施で用いられ得るが、好ましい材料および方法は本明細書中に記載される。
【0073】
本発明は、HIVに対する免疫原性組成物(例えば、ワクチン)の開発のための方法および組成物に関する。例えば、本明細書に記載されるHIVワクチンは、3つ以上の成分を含み得る。本明細書に記載されるワクチンは筋内注射が意図され得る。特定の実施形態において、2つの核酸成分がカチオンポリラクチド−コ−グリコリド(cationic poly−lactide−coglycolide)(PLG)微粒子上に処方され(吸収され)、そして初回刺激免疫として投与される。DNA成分に加えて、タンパク質成分がまた、1回以上の追加刺激免疫に投与される。このタンパク質成分は、典型的には、MF−59アジュバントと混合された少なくとも1つのHIVポリペプチド(例えば、CHO細胞によって生成されるV2領域に欠失がある組換えオリゴマーエンベロープタンパク質)を含む。
【0074】
(薬学的組成物)
好ましい実施形態において、本明細書に記載されるHIVワクチンは、6〜9ヶ月またはさらに長い期間において(例えば、筋内投与)が意図される複数回(例えば、3以上)投与の成分を含む。この成分は同時にまたは異なる時点で与えられ得る。例えば、2つの核酸「初回刺激」免疫が与えられ得、ここで各初回刺激免疫が、Gagタンパク質(例えば、HIV−1 SF2由来のp55 Gag)および/またはEnvタンパク質(例えば、HIV−1 SF162由来の、オリゴマーで、V2が欠失しているgp140エンベロープタンパク質)をコードするDNAの2つの別個の調製物を含み、両方の調製物がPLG微粒子上に処方される。これらの核酸は、1μgと10mgの間のDNAおよび10μgと100mgの間のPLG(例えば、1mgのDNAおよび25mgのPLG微粒子)を含む単位用量バイアルにおいて、代表的に別個に提供される。このDNA含有用量は、代表的に凍結乾燥された形態において保存され、そしてバイアルは一般に使用時に元に戻される。各単位用量バイアルは、典型的には、実際に患者に投与されるより多いDNA(またはタンパク質)を含むことに注意するべきである。最終的な投薬量は、代表的に、Gag DNAおよびEnv DNAそれぞれ0.5mL中1mgからなる。このワクチンのDNA成分は、初回刺激抗体、HIV抗原(例えば、GagおよびEnv)に応答するCD4T細胞およびCD8T細胞が意図される。
【0075】
上に言及されるように、本明細書に記載される免疫原性系(ワクチン)はまた、少なくとも1つのタンパク質成分、代表的に任意のHIV単離物またはHIV株由来のHIVポリペプチドを含む。例えば、特定の実施形態において、このタンパク質成分は、HIV−1のSF162株由来の組換えオリゴマーエンベロープタンパク質を含む。HIV Envのタンパク質モノマーは、(例えば、可溶性を向上させるために)約140kDの分子サイズに切断され得、そしてV2ループは少なくとも部分的に取り除かれ得る。得られたオリゴマー分子は、HIVのエンベロープ構造に非常に似ている。このV2可変ループの除去は、レセプター結合および/または共レセプター結合に関する保存されたエピトープを露出する。サブタイプB(CCR5)一次単離物SF162由来のオリゴマーV2欠失gp140をコードする裸のDNAワクチンで初回刺激され、対応する組換えタンパク質で追加刺激されたマカークザルは、異なるサブタイプB一次単離物の範囲を中和することが可能な抗体を産生しする。Barnettら(2001)J Viol.75(12):5526−40;Srivastavaら(2002)J Viol.(6):2835−47;Srivastavaら(2003)J.Viol.77(20):11244−11259。
【0076】
マカークザル研究においてみられる、マカークザルを保護するために必要とされる受動的に投与される量ならびに中和力価の大きさと幅に基づき、本明細書に記載されるワクチンにより誘発される抗体は、動物の大部分において感染からの保護を提供するであろうことが示唆される。Mascolaら(1999)J Viol.73(5):4009−18。1用量あたりのタンパク質の量は、マイクログラム量からミリグラム量まで変動し得る。特定の実施形態において、このタンパク質は、投与された用量が、防腐剤無しでpH6.0のクエン酸ナトリウム緩衝液において、エンベロープタンパク質を含んでいる単位用量バイアルにおいて約100μgであるように提供される。
【0077】
本明細書に記載されるタンパク質組成物および/または核酸組成物はまた、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。このキャリアは、宿主に有害な抗体の産生をそれ自体が誘導すべきでない。薬学的に受容可能なキャリアは、当業者に周知である。適切なキャリアは、代表的に、大きな、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集物(例えば、油小滴またはリポソーム)、および不活性ウィルス粒子)である。粒子キャリアの例としては、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来の粒子状キャリアならびにポリ(ラクチド)およびPLGとして知られているポリ(ラクチド−コ−グリコリド)に由来する微粒子が挙げられる。例えば、Jefferyら、Pharm.Res.(1993)10:362−368;McGeeら(1997)J Microencapsul.14(2):197−210;O’Haganら(1993)Vaccine 11(2):149−54参照のこと。このようなキャリアは当業者に周知である。さらに、これらのキャリアは免疫刺激剤(「アジュバント」)として機能し得る。さらに抗原は、ジフテリア、破傷風、コレラなどに由来するトキソイドのような細菌性のトキソイド、ならびにE.coli.に由来する毒素に結合され得る。
【0078】
薬学的に受容可能な塩もまた、本発明の組成物において使用され得る(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩または硫酸塩のような無機塩類、ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩または安息香酸塩のような有機塩類)。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、卵アルブミン、破傷風トキサイドおよび当業者に周知な他のタンパク質である。本発明の組成物はまた、液体または賦形剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、デキスロトース、エタノールなど)を、単独もしくは組み合せて、ならびに湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤のような物質を含み得る。リポソームはまた、本発明の組成物のためのキャリアとして使用され得、このようなリポソームは上に記載されている。
【0079】
簡単に、ウィルス性粒子に関しては、複製欠陥ベクター(上で粒子とも称される)は、天然のままの形態または精製形態のいずれかで保存され得る。保存方法および条件は、米国特許第6,015,694号に記載される。
【0080】
さらに、本明細書に記載される組成物は、様々の賦形剤、アジュバント、キャリア、補助物質、調節剤などを含み得る。好ましくは、この組成物は免疫学的応答を開始させるのに十分な量の抗原を含む。適切な有効量は、当業者により決定され得る。このような量は、慣用的試験によって決定され得る比較的広い範囲に入り、そして一般に、約0.1μg〜約1000μg(例えば、抗原および/または粒子)、より好ましくは約1μg〜約300μgの粒子/抗原の程度の量である。
【0081】
すでに示されたように、1つ以上の組成物は、さらに1つ以上のアジュバントを含み得る。有効性を増強し得る好ましいアジュバントとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない組成物を含む:(1)アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど);(2)水中油型エマルジョン処方物(ムラミルペプチド(以下を参照のこと)または細菌細胞壁成分のような他の特定の免疫刺激剤を有するかまたは有さない)(例えば、(a)5%スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span85を含み(必要に応じて種々の量のMTP−PEを含む)、マイクロフルイダイザーを用いて1ミクロン未満の粒子へと処方された、MF59TM(国際公報WO 90/14837;Vaccine design第10章:the subunit and adjuvant approach、PowellおよびNewman編、Plenus Press、1995)、(b)1ミクロン未満のエマルジョンへとマイクロフルイダイズされたかまたはより大きな粒子サイズのエマルジョンを作製するためにボルテックスされたかのいずれかの、10%スクアレン、0.4% Tween 80、5% プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDP(以下を参照のこと)を含むSAF、ならびに(c)2%スクアレン、0.2% Tween 80、ならびにモノホスホリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)からなる群より選択される1以上の細菌細胞壁成分、好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM)を含む、RibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,MT));(3)サポニンアジュバント(例えば、QS21またはStimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA)が用いられ得る)またはそれから作製された粒子(例えば、ISCOMs(免疫刺激複合体))このISCOMSは、付加的な洗浄剤を欠き得る(例えば、WO 00/07621を参照のこと));(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(WO 99/44636)、IL16など)、インターフェロン(例えば、ガンマインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、βケモカイン(MIP、1−α、1−βRantesなど)など);(6)必要に応じて、肺炎双球菌の糖と共に使用される場合、実質的にミョウバンの非存在下で、モノホスホリル脂質 A(MPL)または3−O−ジアシレートMPL(3dMPL)(例えば、GB−222021、EP−A−0689454)(WO 00/56358);(7)例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンと3dMPLとの組み合わせ(例えば、EP−A−0835318、EP−A−0735898、EP−A−0761231);(8)CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(Romanら、Nat.Med.1997、3:849−854;Weinerら、PNAS USA、1997、94:10833−10837;Davisら、J.Immunol.、1998、160:870−876;Chuら、J.Exp.Med.、1997、186:1623−1631;Lipfordら、Eur.J Immunol.1997、27:2340−2344;Moldoveanuら、Vaccine、1988、16:1216−1224;Kriegら、Nature、1995、3742:546−549;Klinmanら、PNAS USA、1996、93:2879−2883;Ballasら、J Immunol.、1996、157:1840−1845;Cowderyら、J Immunol.、1996、156:4570−4575;Halpernら、Cell.Immunol.、1996、167:72−78;Yamamotoら、Jpn. J Cancer Res.、1988、79:866−873;Staceyら、J Immunol.、1996、157:2116−2122;Messinaら、J Immunol.、1991、147:1759−1764;Yiら、J Immunol.、1996、157:4918−4925;Yiら、J Immunol.、1996、157:5394−5402;Yiら、J Immunol.、1998、160:4755−4761;およびYiら、J Immunol.、1998、1605:5898−5906;国際特許出願WO 96/02555、WO 98/16247、WO 98/18810、WO 98/401005、WO 98/55495、WO 98/37919およびWO 98/52581)すなわち、必要に応じてシトシンの代わりに使用される5メチルシトシンと共に少なくとも1つのCGジヌクレオチド含む;(8)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチロン(polyoxyethylone)エステル、例えばWO 99/52549;(9)オクトキシノールと組み合せたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(WO 01/21207)もしくは少なくとも1つのさらなる非イオン性の界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合せた、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤またはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤(WO 01/21152);(10)サポニンおよび免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)(WO 00/62800);(11)免疫刺激剤および金属塩の粒子(例えば、WO 00/23105);(12)サポニンおよび水中油型エマルジョン(例えば、WO 99/11241);(13)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL=IL−12(必要に応じて+ステロール)(例えば、WO 99/57659)(14)組成物の有効性を増強する免疫刺激剤として作用する他の物質。ミョウバン(特にリン酸アルミニウムおよび/または水酸化物アルミニウム)およびMF59TMが好ましい。
【0082】
ムラミルペプチドとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(N−acetyl−normuramyl−L−alanyl−D−isogluatme)(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)など。
【0083】
本明細書に記載される薬学的組成物の投与は、任意の適切な経路により行われ得る(例えば、セクションCを参照のこと)。特に、筋内投与または粘膜(例えば、直腸および/または膣)投与が好ましい。投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであり得る。複数回の用量スケジュールは、最初のコース(course)のワクチン接種が、1〜10回の別々の用量であり得、次いで他の用量が、免疫応答を維持および/または増強するように選択された時間間隔の後(例えば、第2の用量について1〜6ヶ月間)で与えられ、そして必要な場合、続いての用量が数ヵ月後に与えられるスケジュールである。この投薬レジメンはまた、少なくとも部分的に、モダリティーの有効性、送達が行われるワクチン、被験体の必要性によって決定され、そして開業医の判断に依存する。
【0084】
特定の実施形態において、このタンパク質成分は、水中油型エマルジョンアジュバントである独立のMF59C.1(以後MF59と称される)と投与前に混合される(例えば、国際公報WO番号 90/14837参照のこと)。様々なサブユニット抗原(例えば、HCV E2、HIV gp120、HBsAg、CMV gBおよびHSV 2gD)が、MF59アジュバントと組み合わせられ、そして優れた安全性および許容できるプロフィールで現在までに、18,000人以上のヒト被験体に投与されてきた。タンパク質ブースターは、初回刺激抗体およびCD4+T細胞応答を幅と継続時間において増幅することが意図され、免疫系の体液性区画および細胞性区画の両方において平衡のとれた応答を提供し、HIV−1感染の予防を達成することを可能にする。
【0085】
すでに示されたように、MF59アジュバントは、インフルエンザ、単純疱疹ウィルス2(HSV)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、サイトメガロウィルス(CMV)およびB型肝炎ウィルス(HBV)由来のサブユニット抗原を含む、多数の異なるサブユニット抗原を用いて臨床試験において徹底的に評価されており、そしてこれは、一般的に一過性でかつ軽度から中等度の重篤度である、最小の局所的有害反応および全体的有害反応に十分許容される。30を超える臨床研究において、12,000人を超える被験体が、MF59アジュバントエマルジョンと組み合わせてインフルエンザウィルスワクチンを受けた。わずか2人の患者が、深刻な副作用を受けた。さらに、副作用の発生率は、使用される抗原に依存する。
【0086】
(初回刺激−追加刺激レジメン)
特定の実施形態において、複数回投与(例えば、初回刺激−追加刺激型投与)は有利に行われ得る。例えば、1つ以上の目的のHIV抗原を発現する核酸構築物が投与される。次いで、例えば、ポリペプチド抗原および適切なアジュバントを含む組成物において、同一のおよび/または異なるHIV抗原が投与される。あるいは、抗原はDNAより前に投与される。複数回ポリペプチド投与および複数回核酸投与(任意のオーダーで)がまた、行われ得る。
【0087】
本明細書に記載のように、本明細書に記載されるある典型的な初回刺激−追加刺激のレジメンは、一つ以上のHIV抗原をコードするDNAの二回以上の投与、続いてHIVポリペプチド抗原そのものの一回以上の投与を含む。例えば、HIV GagおよびHIV EnvのDNA/PLG組成物(例えば、別個のGagおよびEnv)の二回以上の投与後、HIV Envタンパク質の一回以上の投与がなされ得る。HIV−1 DNA構築物は、免疫系の細胞性部門(cellular arm)および体液性部門(humoral arm)を刺激し得、チンパンジーにおけるHIV感染予防可能な免疫応答を惹起し得る。Boyerら(1997),Nat Med3:526−532。PLG微粒子の表面上へのDNAの吸着は、抗原提示細胞(APC)によるDNAの取り込みを改善し、細胞性免疫応答および液性免疫応答を高める。O’Haganら、(2001)J.Virol.75(19):9037−43。PLGは、DNAを送達するのに特に好まれる。なぜなら、このポリマーは、生物分解性であり、生体適合性であり、いくつかの薬物送達系を開発するのに使われてきたからである。Okadaら(1997)、Adv Drug Deliv Rev28(1):43−70。ある実施形態では、DNA:PLGの比率は、約1w/w%と16w/w%との間(またはその間の任意の値)である。
【0088】
「ブースター」構成成分は、任意のHIV株またはサブタイプ由来のHIVタンパク質(例えば、サブタイプB株(例えば、SF2、SF162など)および/またはサブタイプC株(ボツワナ株および/またはTV1のような南アフリカ株)由来の、組換えオリゴマー化エンベロープタンパク質)を含む。例えば、Scribaら(2001),AIDS Res Hum Retroviruses 17(8):775−81;Scribaら(2002)、AIDS Res Hum Retroviruses 18(2)149−59;Treurnichtら(2002),J Med Virol.68(2):141−6を参照のこと。Envタンパク質のタンパク質単量体は、トランケートになり得、そしてV2ループは、交差反応性中和抗体を惹起するためにより効率的である保存されたエピトープの露出を増やすために、部分的に除去され得る。一つの理論に縛り付けられることなく、上記タンパク質ブースターは、一次抗体およびCD4+ T細胞の応答を幅および期間において増幅するように意図されている。Barnettら(2001),J Virol75(12):5526−40;Cherpelisら(2001),J.Virol.75(3):1547−50。各々の用量におけるタンパク質濃度は、約1μgから1000μgを超えるまで(またはその間の任意の値)、好ましくは約10μgと500μgとの間で、そしてなお好ましくは約30μgと300μgの間で変化し得る。
【0089】
今日まで、本明細書に記載されるような、HIVワクチンは、前臨床研究および臨床試験において安全性についての強力な記録を示してきた。以下の実施例4もまた参照のこと。ワクチン関連の免疫不全の証拠は、報告されていない。HIVワクチンを用いてマウスおよびラビットで実施された毒物学研究は、このワクチンが非常によく寛容されることを示した。発見は、他のウイルスサブユニットワクチンまたはMF59アジュバントを用いて実施された研究と一致していた。可逆的局部(筋肉内)炎症は、そのようなワクチンで観察される唯一の顕著な変化である(実施例4参照)。
【0090】
HIVワクチンの開発計画の目的は、広い体液応答および細胞性応答の組み合わせを惹起し得、かつHIVの感染または進行したHIV疾患/AIDSの発症を予防し得る、新規なDNAプライムプラス組換えタンパク質−追加刺激HIVワクチンの安全性および効力を証明することである。
【0091】
(HIV抗原の供給源)
ポリヌクレオチド配列(例えば、核酸発現構築物における使用のための)は、例えば、その遺伝子を発現する細胞からcDNAライブラリーおよびゲノムライブラリーをスクリーニングすること、またはその遺伝子を含むことが公知のベクターからその遺伝子を取得することによって、組換え技術を用いて、得られ得る。さらに、所望の遺伝子は、その遺伝子を含む細胞および組織から、標準的な技術、例えば、フェノール抽出およびcDNAまたはゲノムDNAのPCRを用いて、直接単離され得る。DNAを取得および単離するために用いられる技術の説明については、例えば、Sambrookら上記参照。目的とする遺伝子は、クローン化されるよりもむしろ、化学合成によってもまた生産され得る。そのヌクレオチド配列は、所望される特定のアミノ酸配列について適切なコドンを用いて設計され得る。一般的に、そのアミノ酸配列が発現される意図される宿主にとって好ましいコドンが選択される。完全配列は、標準的な方法により調製される重複オリゴヌクレオチドから完全なコード配列1へと組み立てられる。例えば、Edge,Nature(1981)292:756;Nambairら,Science(1984)223:1299;Jayら,J.Biol.Chem.(1984)259:6311;Stemmer,W.P.C.,(1995)Gene 164:49−53を参照のこと。
【0092】
次に、所望される抗原をコードする遺伝子配列は、例えば、米国特許第6,602,705号および国際特許出願公開WO 00/39302;WO 02/04493;WO 00/39303;およびWO 00/39304に記載のベクターに挿入され得る。これらの特許は、適切な例示的な核酸発現ベクターおよび本明細書に記載の組成物および方法において有用な、さらなるベクターを取得する方法を記載している。
【0093】
発現構築物(例えば、プラスミド)は、代表的には、上記コード配列に作動可能に連結された制御エレメントを含み、この制御エレメントは、対象種中におけるインビボでのその遺伝子の発現を可能にする。例えば、哺乳動物細胞発現のための代表的な発現プロモーターとしては、とりわけSV40初期プロモーター、CMV最初期プロモーターのようなCMVプロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)、および単純ヘルペスウイルスプロモーターが挙げられる。マウスメタロチオネイン遺伝子由来のプロモーターのような、他の非ウイルス性プロモーターもまた、哺乳動物発現のために用途が見出される。代表的には、翻訳終止コドンに対して3’側に存在する転写終結配列およびポリアデニル化配列もまた、存在する。好ましくは、上記コード配列に対して5’側に位置する、翻訳開始の最適化のための配列もまた、存在する。転写ターミネーター/ポリアデニル化シグナルの例としては、上記Sambrookらに記載されるような、SV40由来のものおよびウシ成長ホルモンターミネーター配列が挙げられる。
【0094】
エンハンサーエレメントはまた、上記哺乳動物構築物の発現レベルを上げるために本明細書で使われ得る。例としては、Dijkemaら、EMBO J.(1985):761に記載されるような、SV40初期遺伝子エンハンサー、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1982b)79:6777に記載されるような、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、およびBoshartら、Cell(1985)41:521に記載されるような、ヒトCMV由来のエレメント(例えば、CMVイントロンA配列に含まれるエレメント)が挙げられる。
【0095】
さらに、キメラ抗原をコードする遺伝子配列(例えば、目的とする複数の抗原/エピトープ(例えば、一つ以上のウイルス単離株由来のもの)をコードする)を含むHIVポリペプチドをコードする核酸が、構築され得る。あるいは、マルチシストロン性カセット(例えば、2−シストロン性カセット)が構築され得、EMCV IRESなどを用いた単一mRNAからの複数の抗原の発現を可能にする。
【0096】
さらに、本願処方物に用いられる上記HIV抗原(およびこれらの抗原をコードするポリヌクレオチド)は、HIVの一つ以上のサブタイプから得られ得る。HIV−1の配列の系統発生樹には、3本の別個の枝があり、これらの間で、M(主要)ウイルスは、世界中のヒトの感染のほとんど全てを占める。上記M群のウイルスは、9個の別個の遺伝子サブタイプまたは(AからKまでの)クレードに分類されてきた。世界中で、上記サブタイプAおよびCは、上記感染のほとんどを占め、これらのサブタイプは、南アフリカおよびインドにおいて最も一般的である。上記サブタイプBは、アメリカ大陸、オーストラリアおよびヨーロッパで支配的である。Malimら,(2001)Cell 104(4):469−72。これらのサブタイプの後に頻繁に、より新しい循環組換え形態(CRF)が生じる。HIV−1は、サブタイプの内部で、および単一の個体の内部でさえ、新規の遺伝的多様性を示す。Kwongら,(2000)J Virol.74(4):1961−72。有効なワクチンが開発されたウイルスにおいて見出される多様性と比べた場合、この多様性は非常に莫大である。Mooreら,(2001)J Virol.75(13):5721−9。従って、HIVに関して、本明細書に記載されるワクチンは、代表的には、支配的な遺伝子サブタイプに基づいて開発されるが、特定のサブタイプに対して有効なワクチンは、本明細書に記載の教示を用いて容易に生産され得る。
【0097】
(産業上の利用可能性)
HIVがAIDSの病因物質であるという1983年から1984年における発見は、ワクチンの迅速な開発に希望をわかせた。40種類より多くのHIVのワクチンの候補が、すでにフェーズIおよびフェーズIIの臨床試験で試験されており、最初のフェーズII試験は、米国およびタイで現在進行中である。Esparza,J.(2001)Bull World Health Organ.79(12):1133−7。しかし、そのワクチンの開発の主な障害は、HIVおよびAIDSに対する防御の免疫学的相関に関する科学的証拠が欠如していることであった。Clericiら(1996)、Immunol Lett 51(1−2):69−73。HIVに感染したほとんどの個体は、広汎な免疫学的応答を上記ウイルスに対して発生するけれども、これらの応答は、上記感染も除去し得ないし、疾患の進行も防止し得ない。この問題は、HIV株は世界の様々な地域で著しく変わるという事実により、さらに複雑となる。HIVは、特にウイルスエンベロープタンパク質をコードしている遺伝子において、広範囲にわたる遺伝子配列不均一性を示す。種々のサブタイプのウイルスは、それら自体の間で結合し得、付加的循環組換え形態(CRF)を産生する。McCutchanら(1996)、J.Virol.70(6):3331−3338。
【0098】
HIV−1感染に対する天然の応答よりも効果的である特異的抗HIV−1免疫応答を誘導するためのワクチン接種の使用は遂行し難いことが、証明されてきた。ワクチンが有効な感染の大部分において、ウイルス血症または菌血症は、病原体が標的器官に到達する前に免疫系がその病原体を含むことを可能にする重大な段階である。Adaら(2001)、New Engl.J Med.345:1042−1053。従って、想定されてきた。HIV−1の十分な免疫制御の欠損が、そのウイルス血症の初期段階の間の主要な標的であるCD4+細胞にHIV−1が感染して瀉出する能力(Greeneら(2002),Nat Med.8(7):673−80);表面抗原の配列を変異させるHIV−1の能力;HIV−1は、マスクしなければ中和抗体に認識される表面エピトープをマスクする能力を有する、弱い抗原であるという事実;および/またはHIV−1は、細胞性免疫応答を回避し得、免疫系に接近不能な部位での潜在性感染を確立し得るという事実(Gotchら,(2000)Curr Opin Infect Dis 13(1):13−17)を含む、いくつかの要因に起因する可能性があるいうことが想定されてきた。
【0099】
さらに、ほとんどの認可されたワクチンは、細胞性応答および抗体応答の両方を惹起するが、これらの公知のワクチンが感染に対して実際にどのように防御するかについてはほとんど知られていない。機能的抗体応答は、細菌を殺すこと、ウイルスを不活化することまたは毒素を中和することのいずれかにより、その接種物を排除し得る。Plotkinら(2001),Pediatr Infect Dis J.20(1):63−75。しかし、以前に、試験されたそのHIVワクチンは、HIV−1の多様な一次単離株に対する、広汎なHIV−1特異的中和抗体の十分な力価を惹起し得なかった。
【0100】
科学界には、成功するために、HIV/AIDSのワクチンは、i)広範囲の一次単離物を中和し得る抗体を誘導し、ii)種々の株に対する持続性のCD8+培介性細胞傷害性応答を誘導し、そしてiii)CTL活性を維持する強いCD4+T細胞応答を誘導するべきである、という全体的な合意がある。例えば、Mascolaら(1999),J Virol 73(5):4009−18を参照のこと。受動的に投与された抗体だけで、病原性SHIVを用いた粘膜性およびIVの両方のチャレンジに対して、マカクを防御し得る。例えば、Mascolaら,(2001)Curr Opin Immunol 13(4):489−95を参照のこと。しかし、広汎に交差反応性の中和抗体が免疫化によりヒトにおいて惹起され得るという疑いが存在する。これは、何人かの研究者に、ワクチンにエンベローブを含ませる努力をあきらめさせ、防御のために細胞性免疫に専ら頼るワクチンを奨励させた。また、Kaulら(2001),J Clin Invest 107(3):341−9参照のこと。しかし、そのようなワクチンは、感染から防御する見込みがなく、疾患の進行を制限することが期待され得る。
【0101】
従って、本明細書に記載される組成物および方法は、好ましくは体液性応答(中和抗体)ならびに細胞性応答(CD4+T細胞およびCD8+T細胞)の組み合わせを惹起する。(体液性応答または細胞性応答それぞれで十分であり得るのだが。)その初回刺激レジメンは、好ましくはGag HIV遺伝子および/またはEnv HIV遺伝子をそれぞれ含む核酸ベクター(例えば、pCMVもしくはpSIN)に基づく。DNAを基にしたワクチンは魅力的である。なぜなら、そのワクチンは融通がきき、比較的生産しやすいからである。そのワクチンの配布は、簡単にされ得る。なぜなら、DNAそれ自体は、適切に保存された場合、非常に耐久性だからである。抗原性タンパク質をコードするDNAを用いた免疫化は、抗体媒介性免疫応答および細胞媒介性免疫応答の両方を惹起する。DNA免疫化は、様々な動物モデルにおいて防御性免疫を提供した。例えば、Donnellyら(1997),Life Sci.60(3):163−72を参照のこと。マラリア抗原をコードするDNAワクチンは、20人の志願者により、比較的十分に寛容され、ほんのわずかな穏やかな局部的反応原生および全身性症状しか伴わなかった。Wangら(1998),Science 282(5388):476−80。HIV−1のEnv遺伝子およびRev遺伝子を含む、DNAを基にしたワクチンは、抗ウイルス薬を用いていない15人の無症候のHIV感染患者に投与された。そのワクチンは、局部反応も全身反応も誘導せず、実験の異常は何も検出されなかった。特に、自己免疫抗体を生じた患者はいなかった。MacGregorら(1998),J Infect Dis178(1):92−100。進行中のフェーズ1の臨床試験は、治療ワクチンは、ヒトにおいて抗HIV−1免疫応答を実際に追加刺激するということを示す。Ugenら(1998),Vaccine 16(19):1818−21。
【0102】
本明細書に記載される組成物および方法の追加刺激構成成分は、代表的にはHIVタンパク質(例えば、V2ループの欠損を有し、それゆえに保存されたエピトープを露出しているHIVエンベロープgp140タンパク質)を含む。本明細書に記載されるHIVタンパク質ワクチンは、一般的に、サブユニット組換え抗原を含み、そして、非組換えHIVタンパク質ワクチンを用いて得られる安全日および有効日を考慮して、十分に寛容され、かつ(体液性および細胞性)免疫原性であることの両方が予測される。
【0103】
(処方物および投与)
上記に言及されている通り、上記組成物は、好ましくは「初回刺激−追加刺激」アプローチを使用して投与される。例えば、2回の初回刺激注射物(例えば、各々が、HIV−1のSF2由来のp55 GagをコードするDNA調製物およびHIV−1のSF162由来の、V2ループを欠損したオリゴマーgp140エンベロープタンパク質をコードするDNAの調製物という2種の別個の調製物を含み、その両方が、PLG微粒子(Env PLG/DNAまたはGag PLG/DNA)上に処方されている)が投与される。追加刺激組成物は、タンパク質を含み、例えば抗原は、MF59アジュバントと組み合わせた、組換えオリゴマーの、V2ループの欠失したgp140エンベロープタンパク質(HIV o−gp140)から構成されている。そのタンパク質は、代表的には、注射の直前に上記アジュバントと混合される。
【0104】
上記DNAワクチンは、バイアル1本当たり1.4mgのDNAおよび35mgのPLG微粒子を凍結乾燥形態で5.0mLのI型のガラスバイアルにて提供され得る。HIV
o−gp140抗原は、バイアル1本当たり0.35mL中に140μgを含む、3mLのI型ガラスバイアルに入った液体として供給される。MF59アジュバントは、バイアル1本当たり0.7mLを含む3mLのI型ガラスバイアルに入れて供給される。一般的に、実際に被験体に投与されるDNAおよびタンパク質の用量は、そのバイアルに含まれる用量未満である。例えば、そのバイアルが1.4mgを含む場合、約1.0mgのDNAが、代表的に被験体に投与される。同様に、各々の単位容量バイアルが、140μgのタンパク質を含む場合、約100μgのタンパク質が、代表的に被験体に投与される。
【0105】
核酸およびポリペプチドに関しては、任意の適切な送達様式が使用され得る。リポソームもまた、これらの分子の送達のために用いられ得る。核酸の送達用のキャリアとしてのリポソームの使用の概観として、Hug and Sleight, Biochim.Biophys.Acta.(1991)1097:1−17;Straubingerら、Methods of Enzymology(1983)のVol.101のpp.512−527を参照のこと。本発明における使用のためのリポソーム調製物としては、カチオン性(正に荷電している)調製物、アニオン性(負に荷電している)調製物および中性調製物が挙げられ、カチオン性リポソームが特に好ましい。カチオン性リポソームは、機能的形態でのプラスミドDNA(Felgnerら,Proc.Natl. Acad. Sci.USA(1987)84:7413−7416);mRNA(Maloneら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1989)86:6077−6081);および精製転写因子(Debsら,J.Biol.Chem.(1990)265:10189−10192)の細胞内送達を媒介することが示されてきた。カチオン性リポソームは、容易に入手できる。例えば、N[1−2,3−ジオレイルオキシ]プロピル]−N,N,N−トリエチルアンモニウム(DOTMA)リポソームが、GIBCO BRL,Grand Island,NYから商標Lipofectinの下で入手可能である.(また、Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1987)84:7413−7416も参照のこと。)市販されている他の脂質としては、(DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE(Boerhinger)が挙げられる。
【0106】
同様に、アニオン性リポソームおよび中性リポソームは、例えば、Avanti Polar Lipids(Birmingham,AL)から容易に入手可能であり、または容易に入手可能な物質を用いて容易に作られる。そのような物質には、とりわけ、フォスファチジルコリン、コレステロール、フォスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルフォスファチジルエタノーコリン(DOPC)、ジオレオイルフォスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。これらの物質はまた、適当な比率でDOTMA開始剤およびDOTAP開始剤と混合され得る。これらの物質を用いてリポソームを作る方法は、当業者に十分に公知である。
【0107】
前記DNA抗原および/またはタンパク質抗原はまた、Papahadjopoulosら、Biochem.Biophys.Acta.(1975)394;483−491に記載されるものに類似した蝸牛殻状(cochleate)脂質組成物の状態で送達され得る。また、米国特許第4,663,161号および第4,871,488号を参照のこと。
【0108】
上記ワクチンの構成成分はまた、粒子カプセル状キャリアにカプセル化されるか、粒子状キャリアに吸着されるか、または結合され得る。そのようなキャリアは、複数のコピー数の選択された抗原を免疫系に提示し、局部リンパ節中での抗原の捕捉および保持を促進する。その粒子は、マクロファージにより貪食され得、そしてサイトカインの放出により抗原提示を増強し得る。粒子状キャリアの例として、ポリメチルメタクリレートポリマー由来のものならびにポリ(ラクチド)およびPLGとして公知のポリ(ラクチド−コ−グリコチド)由来の微粒子−が挙げられる。例えば、Jefferyら、Pharm.Res.(1993)10:362−368;McGee JPら、J.Microencapsul.14(2):197−210,1997;O’Hagan DTら、Vaccine 11(2)149−54,1993を参照のこと。適切な微粒子はまた、例えばアニオン性洗剤またはカチオン性洗剤のような、電荷を帯びた洗剤の存在下で生産され得、正味負の電荷または正味正の電荷を持つ表面を有する微粒子を生産する。例えば、アニオン性洗剤(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB))を用いて生産される微粒子(すなわち、CTAB−PLG微粒子)は、負に荷電している高分子(例えば、DNAを吸着する。)(例えば、国際出願番号PCT/US99/17308を参照のこと。)核酸を送達するためのPLG粒子の製造方法および使用方法が、国際特許出願公開WO 98/33487;WO00/06123;WO02/26212;およびWO 02/026209に記載されている。
【0109】
ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジンのようなポリマーおよびこれらの分子の結合体もまた、目的とする核酸を移入するために用いられ得る。
【0110】
さらに、金およびタングステンのような粒子状キャリアを用いたバイオリスティック送達ステムは、本発明の核酸ベクターを送達するのに特に有用である。上記粒子は、送達されるべき核酸で覆われ、「遺伝子銃」からの火薬発射を使って一般的には減圧雰囲気下で、高速に加速される。そのような技術およびそれゆえ有用な装置の説明に関しては、例えば、米国特許第4,945,050号、第5,036,006号、第5,100,792号、第5,179,022号;第5,371,015号;および第5,478,744号を参照のこと。無針注射システムもまた使用され得る(Davis,H.L.ら、Vaccine 12:1503−1509,1994;Bioject,Inc.,Portland,OR)。
【0111】
本明細書に記載された組成物は、予防薬(感染を予防するため)であるか、または治療法(感染後に疾患を治療するため)のいずれかであり得る。上記組成物は、「治療上有効な量」の目的の遺伝子を、その組成物が投与される個体において免疫応答が生成されるような量の抗原がインビボで産生され得るように、含む。正確な必要量は、治療される被験体に依存して変化する;とりわけ、処置される被験体の年齢および全身的状態;その被験体の免疫系が抗体を合成する能力;所望される保護の程度;処置される状態の重篤度;選択される特定の抗原およびその投与様式に依存して変化する。適切な有効量は、当業者により容易に決定され得る。従って、「治療上の有効量」は、慣用的試行を通して決定され得る比較的広い範囲にある。
【0112】
その組成物は、一つ以上の「薬学的に受容可能な賦形剤またはビヒクル」(例えば、水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなど)を一般的に含む。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)はそのようなビヒクルに存在し得る。核酸取り込みおよび/または核酸発現の特定の促進物質もまた、上記組成物に含まれ得るか、または、たとえばブピバカイン、心臓毒性およびスクロース(これらに限定されない)と共に投与され得る。
【0113】
一旦処方されれば、本発明の組成物は、(例えば、上に記載されたように)被験体に直接投与され得るか、あるいは、上記の方法のような方法を用いてエキソビボで上記被験体由来の細胞に送達され得る。例えば、被験体への形質転換細胞のエキソビボでの送達のための方法および被験体への形質転換細胞の再移植のための方法は、当該分野で公知であり、そして、この方法としては、例えば、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、リポフェクタミンおよびLT−1媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中へ(対応する抗原を含むかまたは含まない)ポリヌクレオチドのカプセル化、ならびに核への上記DNAの直接微量注入が挙げられ得る。
【0114】
ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのインビボでの直接送達は、一般的には本明細書に記載のように、従来の注射器またはAccell(登録商標)遺伝子送達システム(PowderJect Technologies,Inc.,Oxford,England)のような遺伝子銃のどちらかを用いた注入により遂行される。上記構築物は、皮下注射、表皮注射、皮内注射、および粘膜内注射(例えば鼻内注射、直腸内注射、および膣内注射、腹腔内注射、静脈注射、口腔注射もしくは好ましくは、筋肉内注射)のいずれかにより注入され得る。投与処理は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであり得る。核酸の投与はまた、ペプチドまたは他の物質の投与と組み合わされ得る。
【0115】
下記は、本発明を実行するための具体的な実施形態の例である。これらの実施例は、例示の目的のためにだけ提供され、これらの実施例は、決して本発明の範囲を制限することを意図しない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを保証するための努力がなされてきたが、いくらかの実験的誤差および偏差は、当然計上されるべきである。
【実施例】
【0116】
(実験)
(実施例1:ワクチン製造プロセスおよび放出)
(A.PLG/DNA HIVワクチン)
核酸を用いたPLG/DNA初回刺激免疫化に関して、プラスミドDNA(EnvまたはGag)を、本質的には以下の通りに生分解性ポリマー微粒子(PLG)上に吸着させた。そのDNAワクチンを製造するために、大腸菌(DH5株)を、上記HIV Env遺伝子およびGag遺伝子をコードするプラスミドを用いて形質転換した。改変型アルカリ溶解方法を使用して、プラスミドDNAを、染色体DNA、タンパク質および他の細胞断片から単離した。プラスミドDNAを、PEG8000を用いた沈殿により濃縮した。その後、上記プラスミドは、二回のクロマトグラフィー工程により精製し、限外濾過により処方物緩衝液中に移した。
【0117】
PLG微粒子を、無菌製造プロセスによって生産した。例えば、米国特許第5,603,960号;第6,534,064号および6,573,238号;Guptaら(1998),Adv Drug Deliv Rev.32(3):225−246;O’Hagan(1998)J Pharm Pharmacol.50(1):1−10を参照のこと。特に、(塩化メチレンに溶解した)PLGを、高速および高せん断の混合条件下で処方物緩衝液およびCTAB(カチオン性界面活性剤)溶液を用いてホモジネートし、安定なエマルジョンを形成した。窒素パージによる塩化メチレンの除去は、そのカチオン性界面活性剤がPLGの界面にとどまる傾向に起因して、PLGに微粒子を形成させる。これらの正に帯電した微粒子は、負に帯電したDNAと結合し、上記PLG/DNA免疫原を形成する。
【0118】
(B.HIV o−gp140抗原)
上記組換えオリゴマー性HIV gp−140(o−gp140)を、本質的にはSrivastavaら(2003)、J Virol.77(20):11244−11259に記載のように調製した。宿主細胞の発酵に続き、細胞培養液の上清を得、濾過し、濃縮し、そして精製した。
【0119】
その精製o−gp140タンパク質画分を、外来性ウイルスを除去するためにさらに処理した。これらの工程の第1の工程は、pH3.5で1時間のウイルスの不活性化であった。その後、サンプルを濃縮し、SP樹脂を用いたカチオンの捕獲のためにpH4で緩衝液にディアフィルトレーションした。SP樹脂は、o−gp140レジンを捕捉し、多くのウイルスを通り抜けさせる。そのo−gp140を溶出し、濃縮して処方物緩衝液中にディアフィルトレーションした。この処方された大量生産物を、次にUltipor(登録商標) VF グレード DV50ウイルス除去膜を通して濾過した後、0.2μm膜を通して濾過した。
【0120】
(C.MF59 アジュバント)
MF59アジュバント(MF59C.1)は、スクアレン内部油相およびクエン酸塩緩衝液外部水相を持つ、水中油滴型エマルジョンである。例えば、米国特許第6,299,884号および6,086,901号;Ottら,「MF59−−Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.and Newman,M.J.eds.)Plenum Press,New York,pp.277−296(1995)。二つの非イオン性界面活性剤、トリオレイン酸ソルビタンおよびポリソルベート80は、上記エマルジョンを安定化させるのに役立つ。上記MF59アジュバンドの安定性は、動物およびヒトにおいて、多くの抗体と組み合わせて示されている。例えば、Higginsら,「MF59 Adjuvant Enhances the Immunogenecity of Influenza Vaccine in Both Young and Old Mice」Vaccine 14(6):478−484(1996)を参照のこと。
【0121】
(実施例2 ワクチン組成物)
上記PLG/DNA初回刺激ワクチン、o−gp140追加刺激抗原、およびMF59アジュバンドの要素を、以下の表において規定する。
【0122】
(表1 PLG DNA(Env)ワクチン組成物)
【0123】
【表1】

再構成の後。
【0124】
(表2 PLG DNA(Gag)ワクチン組成物)
【0125】
【表2】

再構成の後。
【0126】
(表3 HIV o−gp140抗原組成物)
【0127】
【表3】

(表4 MF59C.1アジュバント組成物)
【0128】
【表4】

ワクチン注射のスケジュールは、複数の時点で(例えば、5つの異なる時点または6つの異なる時点で)注射することであり、0月目、1月目、2月目、6月目、9月目および可能ならば12月目に投与される。いくつかの免疫化スケジュールは、免疫応答を最大化するように評価される。これらのスケジュールは、例えば、以下に記載されるような任意のスケジュールに従う、4つの時点または5つの時点でのワクチン接種を含み得る。すべてのワクチン接種は、外来患者の設定で筋肉内注射により投与される。表5は、例示的な免疫化プロトコールを示す。
【0129】
(表5 免疫化のプロトコール)
【0130】
【表5】

#スケジュール
*免疫応答を維持する必要がある場合
(実施例3:取り扱いおよび保存)
投与用に上記DNA/PLGワクチンを調製するため、一本のバイアルの各々のDNA/PLG(EnvまたはGag)を、0.7mLの注射用水を注射器に引き出すことおよびそれをその二本のバイアルに添加することにより、再構成する。そのバイアルを、二分間まで激しく攪拌する。上記懸濁物が均一であり、乳白色であり、十分に分散した場合、その混合物は完成している。その再構成された溶液を、最大のDNA/PLG用量(1000μg)を送達するために、更なる調製なしに投与する。500μg用量および250μg用量を調製するために、新しい注射器を使って0.7mLまたは2.1mLのさらなる0.9%のNaCl溶液(生理食塩水)それぞれを、準備され、再構成されたすべてのバイアルに加え、かき混ぜて混合する。新しい注射器を用いて、0.5mLの上記Env PLG/DNA混合物を、その後0.5mLの上記Gag DNA/PLG混合物を同一の注射器に引き出す。その後、合わせた容積1mL中の、全DNA用量を、三角筋に筋肉内注射(IM)し得る。
【0131】
HIVのo−gp140抗原を、投与前にMF59アジュバンドと混合する。ワクチンの投与用量を調製するため、上記MF59バイアルの中身を繰り返し施回させること、および(激しい振盪ではなく)反転させることにより混合し、次に0.35mLを1mLの無菌注射器に引き出す。このアジュバントを、解凍したHIV o−gp140抗原を含む上記3mLバイアルに注入し、そして緩やかに施回することにより混合する。新たな注射器を用いて上記混合物の0.5mLを引き出し、その後、その混合物を三角筋に筋肉内注射(IM)し得る。最終ワクチンは、乳白色の不透明性を有する。上記注射は、上記アジュバントの添加の直後に投与するべきである。
【0132】
上記解凍したHIV o−gp140抗原は、2℃〜8℃で8時間安定である。8時間より長時間解凍された抗原は、(冷蔵されていても)好ましくない。なぜなら、それは減少した効力を有し得るからである。
【0133】
偽薬を受ける個体は、カルシウムを含まずかつマグネシウムを含まない、リン酸緩衝化生理食塩水を0.5mL受ける。1mL用量を送達するための一定容積を含むバイアルに入れて、無色透明な溶液として供給する。上記バイアルは、2℃〜8℃にて冷蔵庫中で保存しなければならない。
【0134】
(A.ワクチン保存条件)
前記凍結乾燥したDNA/PLGワクチンを、2℃〜8℃にて保存する。HIV o−gp140を、−60℃未満で凍結して保存し、そして上記MF59アジュバントを、冷蔵庫中に2℃〜8℃にて保存する。MF59は、凍結するべきではない。
【0135】
(実施例4:動物研究)
非臨床安全評価計画を、上記HIV DNAワクチン処方物の3筋肉内(IM)用量、次いで上記HIVタンパク質ワクチン処方物の3IM用量の臨床投与を援助するために設計した。上記DNAワクチン処方物の1臨床用量(1.0mL)は、1mgのEnv−DNA、1mgのGag−DNAおよび50mgのPLGを含み、一方、上記HIVタンパク質ワクチンの1臨床用量(0.5mL)は、0.1mg/0.25mLのEnvタンパク質および0.25mLのMF59を含む。
【0136】
以下のGLP研究を、上記HIV DNAワクチン処方物を単回のIM注射として、ニュージーランドシロウサギに投与した場合、宿主のゲノムDNA中への組込みが生じるかを評価するため、そしてBALB/cマウスに投与した場合は上記HIV DNAワクチン処方物の組織局在および持続性を特徴付けるためにそれぞれ行った。これらの研究を、以下の「ニュージーランドシロウサギに対する単回筋肉内注射後のDNA−PLG処方物を用いた組み込み研究」と題したセクションAおよび「BALB/cマウスにおけるHIV DNAワクチン処方物の単回用量生体分布研究」と題したセクションBにおいてさらに記述する。
【0137】
以下にさらに詳細に記述するように、これらの研究では、生存度、臨床的知見、体重および肉眼的剖検に基づいて毒性を評価した。注射部位の理学的検査および皮膚評点付けもまた、マウス生体分布研究においても遂行した。これらの研究の結果は、上記Env−DNAワクチン処方物の単回用量の投与により、上記ウサギのゲノムDNAへの組込みが生じず、そしてニュージーランドシロウサギおよびBALB/cマウスに十分な耐性が生じることを証明した。上記HIV DNAワクチン処方物の分布に関するマウス組織の分析もまた行った。
【0138】
さらに、以下のGLP毒物学研究を実行して、ニュージーランドシロウサギにIM注射により投与した場合の、上記HIVワクチン処方物の全身的寛容および局部的寛容を評価した。(「ニュージーランドシロウサギにおける、HIV DNAワクチン処方物を用いた複数回用量の筋肉内注射毒性研究」と題した以下のセクションCを参照のこと。)本研究では、動物に、上記HIV DNAワクチン処方物の4用量を二週間間隔で与え、続いて上記HIVタンパク質ワクチン処方物の4用量を二週間間隔で与えた。最初のHIVタンパク質ワクチン用量は、最終HIV DNAワクチン用量と同じ日に投与した。二週間の回復期間を、その研究計画は含んだ。ウサギに、上記予定の臨床用量(1mL HIV DNAワクチン/用量;0.5mL HIVタンパク質ワクチン/用量)を臨床的投与経路(IM)で与えた。しかし、ウサギに、上記HIV DNAワクチンの各々の4用量および上記HIVタンパク質ワクチンの4用量を与えた。これは、意図した臨床的レジメン(各3用量)よりも1用量だけ多かった。ウサギ投与レジメンは、(月1回の)臨床的レジメンに比較して濃密であるが、ウサギ免疫原性研究は、2週ごとのレジメンが免疫学的観点から適当であるということを示した。
【0139】
本研究では、毒性を、臨床的徴候、注射部位の皮膚評点付け、体重、体温、食物消費、検眼鏡検査、臨床病理学(血液学、血清化学およびフィブリノーゲンを含む凝固)、器官の重さ、ならびに肉眼的剖検および組織病理学的検査に基づいて評価した。抗体(抗核抗体ならびに抗Env抗体および抗Gag抗体)に関する血清の分析もまた実行した。本研究の条件のもとでかつ利用可能な予備データ(末期の器官の重さ、肉眼検査評価および未解決の組織学)に基づいて、上記HIVワクチン処方物の投与に関連するいかなる全身的効果も局部的効果も確認されなかった。
【0140】
上記HIV DNAワクチン処方物の注射部位における安全性および存続性を、以下の非GLP研究においてさらに評価した。そしてその非GLP研究には、さらに詳細に、以下の「雄のニュージーランドシロウサギにおける、予備的DNA/PLG局部刺激寛容研究」と題したセクションDおよび「PCR注入部位評価を用いた、単回用量筋肉内マウス免疫原性研究および複数(2)用量筋肉内マウス免疫原性研究」と題したセクションEに記述した。
【0141】
上記単回用量研究を行い、単回のIM注射により投与した場合の、雄のニュージーランドシロウサギにおける、種々の濃度のDNA/PLGの潜在的局部刺激効果を評価した。潜在的毒性を、臨床的徴候、注射部位の皮膚評点付け、体重、総合肉眼検診および注射部位の顕微鏡検査に基づいて評価した。本研究の条件下では、単回IM注射として雄のニュージーランドシロウサギに投与した場合、種々の濃度のDNA/PLGは、十分に寛容された。
【0142】
上記複数回用量免疫原性研究は、Gag−DNA PLG処方物の2回投与(0日目および28日目)を受けた雌のBALB/cマウスにおける、最終投与の4週間後および8週間後の、上記IM注射部位でのGag−DNA PLGの存在を評価した。結果は、上記PLG処方物は、裸のDNAコントロールと、持続性という観点で匹敵するということ、および最終投与の4週間後および8週間後での注射部位に残存する量は、不十分(上記感染量の約10−7%)であるということを示した。
【0143】
(A ニュージーランドシロウサギに対する、単回筋肉内注射後のDNA−PLG処方物を用いた組み込み研究)
ニュージーランドシロウサギに対する単回IM注射によって上記HIV DNA−PLGワクチン処方物(Env−DNA PLGおよびGag−DNA PLG)の宿主ゲノムDNAへの組込みを評価するため、以下の研究を行った。その研究は、3群から成り立っており、その1群あたり雌雄二匹ずつのウサギを含んでいた。0日目に、処理したウサギの各々の後脚に上記Env−DNA PLGまたは上記Gag−DNA PLGのどちらか一方の単回IM注射(0.5mL/脚)をした(表6参照)。コントロールのウサギには、いかなる注射もしなかった。全ての動物を、29日目に剖検した。
(表6 実験的研究設計)
【0144】
【表6】

動物一匹あたりの全用量2mgのDNA、50mgのPLG与えるために、群2および群3の動物に、各々の後脚に、脚一本あたり1mg/0.5mLのDNA、25mg/0.5mLのPLGの1用量を与えた。本研究の0日目に投与を行った。
動物一匹あたり総容積1mLを与えるために、群2および群3の動物に、脚一本あたり容積0.5mLの量を与えた。
剖検を、投与30日後(29日目)に行った。
【0145】
潜在的毒性を、死亡率に関する生存度の知見および全身的状態に関する生存度の知見、体重ならびに総合的剖検肉眼検査に基づいて評価した。さらに、剖検の際にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析のために注射部位を集め、上記ウサギのゲノムDNA中への上記DNAワクチンの組み込みを評価した。上記注射部位で陽性組み込み結果の事象がある場合にあり得るPCR分析のために、さらなる組織(表7参照)もまた集めた。上記PCR分析のために、DNAを上記ウサギ組織から抽出し、定量し、フィールド逆転ゲル電気泳動に供して、上記ウサギゲノムDNAを染色体外プラスミドDNAから分離した。17kbより大きいサイズのDNAをゲルから切り出し、精製した。上記の抽出したDNAおよびFIGE精製DNA(1μg)の両方を、定量的PCRアッセイを用いて分析し、各々の調製物における標的配列(プラスミドベクターEnv−DNA PLG)の組み込みを評価した。コントロール動物の組織から抽出したDNAを、性別に従ってプールした;処理した動物由来のDNAをプールしなかったが、別々に分析した。
【0146】
(表7 PCR分析のために収集した組織)
【0147】
【表7】

死亡は一つもなく、臨床的徴候および体重に対する処理関連の副作用も一つもなかった。肉眼的検査における、処理関連の変化も注目されなかった。上記PCR組み込み分析の結果は、上記Env−DNA PLGの上記宿主ゲノムDNA中への組み込みがないことを示した(表8参照)。上記注射部位で組み込みが一つも生じなかったので、さらなる組織は評価しなかった。
【0148】
(表8 注射部位の定量的PCRアッセイ結果)
【0149】
【表8】

フィールド逆転ゲル電気泳動(染色体外プラスミドDNA+ゲノムDNA)の前のゲノムDNA中の上記標的配列の定量
フィールド逆転ゲル電気泳動(ゲノムDNAのみ)により精製したゲノムDNA中の上記標的配列の定量
LLD=上記アッセイの低い方の検出限界(5コピー数/μg DNA)よりも低い。
【0150】
結論として、合計2mgのDNAおよび50mgのPLGを含む、Env−DNA PLGまたはGag−DNA PLGのいずれかの単回IM用量は、ニュージーランドシロウサギにおいて十分に寛容された。処理関連の副作用は全く注目されず、そしてプラスミドベクターEnv−DNAの、上記注射部位から得たウサギゲノムDNA中への組み込みは検出されなかった。
【0151】
(B.BALB/cマウスにおける、HIV DNAワクチン処方物の単回用量生体分布研究)
BALB/cマウスに対する筋肉内(IM)注射による単回投与後の、上記HIV DNA PLGワクチン処方物(Env−DNA PLGおよびGag−DNA PLG)の組織局在および持続性を評価するため、以下の研究を行った。その研究は、1群あたり雄雌15匹ずつの動物からなる群を5つ含んでいた。1日目に、処理したマウスの右大腿二頭筋領域に、高用量のEnv−DNA PLGもしくはGag−DNA PLG、または低用量のEnv−DNA PLGもしくはGag−DNA PLGのいずれかを単回筋肉内(IM)注射した。コントロールのマウスには、いかなる注射もしなかった。一群あたり雄雌5匹ずつの動物を、投与1週間後(8日目)、投与2ヶ月後(61日目)または投与3ヶ月後(91日目)に剖検した。(表9)。
【0152】
潜在的毒性を、死亡率および全身的状態に関する生存度の知見、理学的検査、体重、注射部位の皮膚のDrazie評点付け、ならびに総合的剖検肉眼検査に基づいて評価した。さらに、選択した組織(表10参照)を、各々の剖検の際に、PCR分析のために収集し、マウス組織中への上記DNAワクチンの生体分布および持続性を評価した。上記PCR分析のために、各々のマウス組織からDNAを抽出し、定量し、蛍光プローブを用いるPCR増幅に供し、その後、蛍光検出を行った。収集した組織の内、上記Env−DNA PLGで処理したウサギ由来の組織のみを分析した。
【0153】
(表9 実験的研究設計)
【0154】
【表9】

本研究の1日目に投与を行った。
【0155】
(表10 PCR分析のために収集した組織)
【0156】
【表10】

上記試験物質の投与に関連し得る死亡は一つもなく、臨床的徴候および体重に対する処理関連の副作用も一つもなかった。注射部位において、紅斑も浮腫も見られなかった。肉眼検査において注目された処理関連の変化はなかった。
【0157】
結論として、100μgまでのDNAおよび2.5mgまでのPLGを含む、Env−DNA PLGまたはGag−DNA PLGのいずれかの単回筋肉内(IM)用量は、BALB/cマウスにおいて十分に寛容された。処理関連の副作用は、何も気付かれなかった。
【0158】
(C.ニュージーランドシロウサギにおける、HIV DNAワクチン処方物を用いた複数回用量筋肉内注射毒性研究)
上記HIVワクチン処方物の、反復投与後のニュージーランドシロウサギにおける局所的毒性および全身的毒性を評価するため、ならびに知見の可逆性を決定するため、以下の研究を行った。一群あたり雌雄8匹ずつの動物の群を二つ用いた。処理したウサギに、隔週与える上記HIV DNAワクチン処方物(Env−DNA PLGおよびGag−DNA PLG)を4回投与した。その後、上記処理したウサギに、同様に隔週与える上記HIVタンパク質ワクチン処方物を4回投与した。最後のHIV DNAワクチン用量および最初のHIVタンパク質ワクチン用量を、同じ日(43日目)に投与した。用量は、筋肉内(IM)注射により大腿四頭筋に投与し、両足に注射した43日目を除いて、脚を交互に選んだ。コントロール動物に、生理食塩水溶液の筋肉内(IM)注射を4回し、その後、MF59の筋肉内(IM)注射を4回した。一群あたり雄雌4匹ずつを、投与の3日後(88日目、主要剖検)または投与の2週間後(99日目、回復剖検)に剖検した。表11は、実験的研究設計を示す。
【0159】
潜在的毒性を、臨床的徴候、注射部位の皮膚評点付け、体温、体重、食物消費、眼の検査、臨床的病状(血液学、凝固、および血清化学パラメーター)、器官の重さ、総合肉眼検査試験、および選択した組織の顕微鏡的な評価に基づいて評価した。
【0160】
(表11 実験的研究設計)
【0161】
【表11】

16匹の動物(8匹の雄+8匹の雌)
0.25mLのMF59+0.25mLの生理食塩水からなる。
0.5mLのEnv−DNA PLG(2mg/mLのDNA,50mg/mLのPLG)+0.5mLのGag−DNA PLG(2mg/mLのDNA,50mg/mLのPLG)からなる。
0.25mLのEnvタンパク質(0.4mg/mL)+0.25mLのMF59からなる。
一群あたり雄雌4匹ずつの動物。
【0162】
上記動物を、死亡率および罹患率に関して1日に2回観察し、そして毒性の徴候に関して1日に1回観察した。さらに、詳細な観察を、投与前、各々の投与日の4時間後、毎週1回および各剖検の際に行った。注射部位を刺激の徴候に関して評価し、投与前、ならびに各注射の24時間後および48時間後に、改変Draizeスコアに基づいて等級付けした。体温を、処理前、各投与前および各投与の24時間後に測定した。体重を、処理前、その後毎週1回、および剖検の際に記録した。食物消費を毎週1回評価した。眼科学的評価を、処理前および各剖検の前に行った。血液学、血清化学および(フィブリノーゲンを含む)凝固分析についてのさらなる血液サンプルを、処理前、29日目および57日目の投与前、ならびに87日目および99日目に収集した。各々抗体(抗核抗体ならびに抗Env抗体および抗Gag抗体)分析のために、血液サンプルを、処理前、15日目、43日目および71日目の投与前、ならびに87日目および99日目にさらに採取した。各剖検の際、完全な肉眼検査および選択した組織の顕微鏡的評価(表12参照)を行った。選択した器官(表13)に関する器官の重量のデータをまた収集した。さらに、PCR分析による上記DNAワクチンの宿主組織中への分布の可能な評価(表14)のために、選択した組織を収集した。
【0163】
(表12 組織病理学組織一覧表)
【0164】
【表12】

(表13 器官重量一覧表)
【0165】
【表13】

(表14 潜在的PCR分析のために収集した組織)
【0166】
【表14】

(84日目までの)予備的データは、上記試験物質の投与に関連し得る死はなく、臨床的徴候、体重、食物消費および体温に対する処理関連の副作用はないということを示した。注射部位の皮膚評点付けは、コントロール群および処理群の両方からの、少数の動物における浮腫または紅斑が時折生じる事例を示した。これらの皮膚刺激反応の発生率は、(HIVワクチン処理した)群2の動物においてわずかに高かったが、上記所見は重篤度が軽かった(非常にわずか〜わずか)。そして上記所見は、次の観察期間までに完全に消散した。臨床病理学に関する(57日目までの)入手可能な予備データは、血液学、凝固または臨床化学パラメーターに対する処理関連の影響はないということを示した。
【0167】
結論として、本研究の条件下でしかも入手可能な予備データに基づき、上記HIVワクチン処方物の投与に関連する全身的な効果は、何も同定されなかった。局部的効果は、非常にわずかからわずかの紅斑または浮腫の予備例から成り、それは次の観察期間までに完全に消散したようだった。隔週与える上記HIV DNAワクチンの4回の筋肉内(IM)注射、次いでまた隔週与える上記HIVタンパク質ワクチンの4回の筋肉内(IM)注射は、ニュージーランドシロウサギにより十分に寛容された。
【0168】
(D.雄のニュージーランドシロウサギにおける、予備的DNA/PLG局部刺激寛容研究−筋肉内単回用量)
単回筋肉内(IM)注射により投与した場合の、種々の濃度のDNA/PLGの潜在的局部刺激効果を、雄のニュージーランドシロウサギにおいて評価するため、以下の研究を2群の雄のウサギ9匹をそれぞれ用いて行った。1日目に、各々のウサギに、上記試験物およびコントロール物質の0.5mLの筋肉内(IM)注射を与えた。1群あたり3羽のウサギを投与の1日後(2日目)、投与の1週間後(8日目)、または投与の2週間後(15日目)に剖検した。実験設計を、表15に示す。
【0169】
潜在的毒性を、臨床的徴候、注射部位の皮膚評点付け、体重、総合的肉眼検査、および注射部位の顕微鏡評価に基づいて評価した。
【0170】
(表15 実験設計)
【0171】
【表15】

注射容積=0.5mL
DF=開発処方物
RF=研究処方物
死亡は一つもなく、また体重に対するいかなる処理関連の影響もなかった。注射部位の明確な挫傷を、1日目から4日目の間に、群1のウサギ9匹中4匹および群2のウサギ9匹中5匹においてそれぞれ散発的に観察した。損傷は、注射部位番号2を除くすべての注射部位において注目された。注射部位におけるわずかの損傷のこの所見は、筋肉内(IM)注射に一致している。注射部位における皮膚のDraize評点付けの結果を、表16に提示する。13日目から15日目にかけて、群1の2羽のウサギ(IM部位3および4)に、そして13日目から14日目にかけて群2の1羽のウサギ(IM部位4)に、非常にわずかな浮腫があるのが注目された。剖検肉眼的所見を、注射部位に限定した。剖検肉眼所見は、赤く堅い領域、黄褐色領域、筋肉を覆う筋膜での出血、皮下出血領域からなった。これらの所見は、2日目の方がより有勢であった。注射部位の組織病理学的検査は、生理食塩水処理部位において針外傷に対する特徴的応答(筋線維変性および出血)を示した。試験物質処理部位の評価は、2日目に、全ての処方物に関して同様の、最小限の処理関連の炎症〜軽度の処理関連の炎症を示した。8日目に、肉芽腫性変化は、顕著な所見であり、処方物の間に違いはなかった。これらの肉芽腫性変化は、PLG微粒子に対する公知の応答および/または再生プロセスと一致している。15日目までに、上記組織病理的変化は、部分的[1%DNA+100mgPLG(開発(development)処方物および研究(research)処方物),2%DNA+50mgPLG,4%DNA+25mgPLG]にまたは完全[100mg PLG/PVA]に消散した。また、表16を参照のこと。
【0172】
(表16 皮膚刺激の結果)
【0173】
【表16】

DF=開発(Development)処方物
RF=研究(Research)処方物。
【0174】
結論として、単回筋肉内(IM)注射として雄ニュージーランドシロウサギに投与した場合、種々の濃度のDNA/PLGは、十分に寛容された。注射部位所見は、2日目に最も頻繁で最も強く(軽度〜最小限)、そして注射部位の所見は、回復期間の終期までに部分的にまたは完全に消散した。
【0175】
(E.PCR注射部位評価を用いた複数(2)用量マウス免疫原性研究)
Gag−DNA PLG処方物の筋肉内(IM)注射部位での免疫原性および持続性を評価するため、1群あたり10匹の雌BALB/cマウスを、表17で概説するように処理した。0日目および28日目に動物に投与し、筋肉内(IM)注射部位を最終投与後4週目および8週目に取得した。本研究で試験した上記処方物は、上記毒性研究で用いた処方物と類似していた。
【0176】
(表17 実験設計)
【0177】
【表17】

筋肉内(IM)注射により、0日目および28日目に投与した。
投与の4週間後
投与の8週間後
注射部位の上記PCR分析の結果を、表18に提示する。結果は、上記DNA−PLG処方物は、持続性という点で上記裸のDNAのコントロールに匹敵するということを示した。上記Gag−DNAは、最終投与後の4週間および8週間で、注射部位でまだ検出可能であるが、その残存する量は、不十分(上記注射されたDNAの約10−7%)であるということを示した。
【0178】
(表18 注射部位のPCR分析)
【0179】
【表18】

最終投与の4週間後
最終投与の8週間後
時間0での平均DNAコピー数を、コピー数/注射したDNAのμgに基づいて推定した。
【0180】
(結論)
これらの研究の条件下で、上記HIVワクチン処方物の単回投与および/または複数回投与は、動物モデル(ニュージーランドシロウサギおよびBALB/cマウス)において十分に寛容され、そしてさらに、上記処方物は、強力な免疫応答を惹起した。上記複数回用量ウサギ研究では、上記HIVワクチン処方物は、臨床的知見、体重、体温、食物消費、ならびに臨床病理学(血液学、凝固および臨床化学)に対して、処理関連の副作用を全く生じなかった。注射部位の皮膚評点付けは、非常にわずか〜わずかの紅斑または浮腫が時折生じる事例を示した。そしてその事例は、可逆的であるようだった。上記注射部位でのこれらの所見は、単回用量局所寛容ウサギ研究において観察される所見と一致している。後者において、組織病理学的評価は、上記注射部位において、処理に関連する最小限〜軽度の炎症を示し、上記回復期間の終期までに部分的にまたは完全に消散した。さらなる研究では、上記注射部位のPCR分析は、上記Env−DNA PLGは上記宿主ゲノムDNAに組み込まないということ、および上記Gag−DNA PLGは4週間後にも8週間後にも上記注射部位で持続しないということを示した。
【0181】
上記複数回用量ウサギ研究では、上記計画臨床用量(1mL HIV DNAワクチン/用量、0.5mL HIVタンパク質ワクチン/用量)を、臨床的投与経路(IM)により動物に与えた。しかし、ウサギに、上記HIV DNAワクチンおよび上記HIVタンパク質ワクチンの各々の4用量を与えた。これは、上記意図される臨床的レジメン(各々3用量)より1用量だけ多かった。さらに、体重をもとにすると、ウサギ(約2.5Kg)での上記用量は、ヒト(約60Kg)における同じ量より約24倍高かった。それゆえ、上記臨床用量の投与および正常ヒト被験体に対するレジメンは、十分に寛容されることが予想される。
【0182】
さらに、Gag抗体およびEnv抗体の高い力価を観測したので、上記処方物は免疫原性であることが示された。
【0183】
(実施例5:組換えタンパク質で初回刺激−追加刺激するレジメンを用いた、アカゲザルマカクにおけるプラスミドDNA/PLG微粒子HIVワクチンの増大した効力)
以下の研究を実行し、免疫原性に対するPLG媒介性送達の効果を決定した。
【0184】
(A.ベクター、タンパク質、PLGの調製)
本明細書に記載されるHIVワクチンを、赤毛ザルマカクにおいて次のように評価した。プラスミドpCMVKm2.GagMod.SF2およびプラスミドpCMVKm2.o−gp140.SF162を、本質的には米国特許第6,602,705号に記載のように調製した。gag挿入部分およびenv挿入部分をpCMVKm2構築物から切除し、pSINCP(pSIN1.5の改変版であって、本質的にはHariharanら(1998)、J Virol 72(2):950−8に記載されている)に連結することにより、シンドビス構築物を調製した。
【0185】
組換えEnvタンパク質o−gp140SF162ΔV2を、本質的にはSrivastavaら(2003)、J Virol.77(20):11244−11259に記載のように、CHO細胞において産生し、精製した。
【0186】
カチオン性PLG微粒子を、以下のように調製した。上記微粒子を、IKAホモジェナイザーを高速で用いて、10mlの5%w/vのポリマー溶液を1mlのPBSと一緒に塩化メチレン中で乳化した。その後、その最初のエマルジョンを、CTAB(0.5% w/v)を含む50mlの蒸留水に加えた。これにより、水中油中水エマルジョンの形成が生じ、これを、室温で12時間6000rpmで攪拌される、塩化メチレンを気化させた。生じた微粒子を、10,000gでの遠心分離により蒸留水中で4回洗浄し、凍結乾燥した。上記DNAを、1mgのDNAを1mlの1X TE緩衝液に100mgの微粒子と一緒に、穏やかに振盪しながら4℃で一晩インキュベートすることにより、PLG−CTAB微粒子に吸着させた。その後、10,000rpmで10分間遠心分離することにより、上記微粒子をペレットにし、1X TE緩衝液で洗浄し、再度遠心分離し、そして5mlの脱イオン水に懸濁し、そして凍結乾燥した。微粒子のサイズ分布を、粒子径分析器(Master sizer,Malvern Instruments,UK)を用いて決定した。
【0187】
DNA構築物を、上記のようにPLG粒子上に吸着させた。同様に、HIV p55 gagタンパク質を、以下のようにアニオン性PLG微粒子に吸着させた。10mlの6% w/vポリマー溶液を、SDS(1% w/v)を含む40mlの蒸留水と一緒に塩化メチレン中で、10mmのプローブを使って高速でホモジェナイズすることにより、微粒子を調製した。これにより、水中油エマルジョンが生じ、そのエマルジョンを室温で12時間1,000rpmで攪拌し、上記塩化メチレンを気化させた。その生じた微粒子を、38μmのメッシュを通して濾過し、3回蒸留水で洗浄し、そして凍結乾燥した。上記微粒子のサイズの分布を粒子径分析器(Master sizer,Malvern Instruments,UK)を用いて決定した。
【0188】
50mgの凍結乾燥したSDSブランク微粒子を、0.5mgのp55 gagタンパク質と一緒に、pH9の6M尿素を含む25mMのホウ酸塩緩衝液10ml中でインキュベートした。50mgの凍結乾燥したDSSブランク微粒子を、0.5mgのgp120タンパク質とともに10mLのPBS中でインキュベートした。粒子を、室温で5時間、研究室の振盪機(Aliquot mixer,Miles Laboratories)に放置した。上記微粒子を、遠心分離によりインキュベーション媒体から分離し、上記SDSペレットを一回、6Mの尿素を含むホウ酸塩緩衝液で洗浄し、その後、蒸留水で3回洗浄し、そして凍結乾燥した。
【0189】
微粒子に吸着するタンパク質の負荷レベルを、10mgの上記微粒子を5% SDS−0.2Mの水酸化ナトリウム溶液2ml中に室温で溶解することにより決定した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Rockford,Illinois)により測定した。ブランク微粒子および吸着微粒子の両方についてのゼータ電位を、Malvern Zeta分析器(Malvern Instruments,UK)を用いて測定した。
【0190】
(B.ワクチン接種)
アカゲザル免疫化研究を行って、組換えタンパク質を用いた初回刺激−追加刺激レジメンにおける、2つのDNAワクチンベクターおよびカチオン性PLG微粒子DNA送達系を評価した。5匹のアカゲザルマカクの群を、筋肉内注射により免疫化した。PLG微粒子に吸着しているか吸着していない、HIV SF2 Gag(0.5mg)およびHIV SF162 gp140 Env(1.0mg)をコードするDNAワクチンで、0週目、4週目、14週目に注射した。上記動物を、29週目に、アニオン性PLG微粒子上に吸着した酵母由来のp55 Gagタンパク質(Gag/PLG)で追加刺激した。最後に、上記動物を、38週目および75週目に、水中油MF59アジュバントと共に投与した、CHO細胞由来のV2領域欠失オリゴマーgp140Envタンパク質(Env/MF59)を用いて追加刺激した。
【0191】
上記ワクチン組成物の免疫原性を、抗体(ELISA,中和)の定量測定および定性測定ならびにT細胞の応答(リンパ球増殖,細胞内サイトカイン染色,CTL)により、各々の免疫化後の様々な時点で評価した。
【0192】
(C.抗体アッセイ)
Envタンパク質およびGagタンパク質に対する抗体応答を、酵素結合免疫反応吸着測定法(ELISA)により測定した。両方のELISAに関し、Nunc Maxisorpプレートを、PBS(pH7.0)中5μg/mlのEnvタンパク質50μlまたはPBS(pH7.0)中5μg/mlのGagタンパク質50μlで、一晩4℃で被覆した。上記被覆ウェルを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の5%ヤギ血清(Gibco BRL,Grand Island,NY)150μlで、37℃にて1時間ブロッキングした。血清のサンプルをまず、ブロッキング緩衝液中に1:25または1:100で希釈し、次いで3倍ずつの段階希釈を行った。結合抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ヤギ抗サルIgG(Southern Biotechnology Associates,Inc,ブロッキング緩衝液で1:5000に希釈した)を用いて検出し、37℃で1時間インキュベートした。発色のため、3,3’,5,5’テトラメチルベンズジジン(TMB)を、製造者の指示に従って15分間インキュベートし、そしてその反応を、2NのHClを加えることにより停止させた。その後、上記アッセイプレートを、ELISAプレートリーダーで、450nmの吸収波長にて読み取った。血清標準を、各々のマイクロタイタープレート上に含んだ。上記標準の参照値を、上記サンプルELISA力価の正規化のために用いた。上記力価は、上記血清希釈の逆数を表し、光学密度0.5を与える。ウイルス中和抗体を、標準的技術を用いて、同族のHIV−1 SF162ウイルスに対して評価した。
【0193】
(D.アカゲザルPBMCの精製およびBリンパ芽球様様細胞株(B−LCL)の誘導)
アカゲザルの末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール−ハイパーク勾配にヘパリン化した全血から分離した。アカゲザルBリンパ芽球様細胞株を誘導するために、PMBCを、0.5μg/mLのシクロスポリンA(Sigma)の存在下で、上記594S細胞株からヘルペスウイルスのパピオ含有培養上清に曝露した。アカゲザルPBMCを、24ウェルプレート中の、10%の熱非働体化ウシ胎仔血清(AR10)を補充したAIM−V:RPMI1640(50:50)培養培地(Gibco)1.5ml中で、1ウェル当たり2×10〜3×10個の細胞にて8日間、培養した。抗原特異的細胞を、gagペプチドまたはenvペプチド(10.7μg/mlの総ペプチド)のいずれかのプールの添加により刺激した。組換えヒトIL−7(15ng/ml,R&D Systems,Minneapolis,MN)を、培養の開始時に添加した。ヒトrIL−2(Proleukin,20 IU/ml,Chiron)を、1日目、3日目および6日目に添加した。
【0194】
(E.CTL活性に関する51Cr放出アッセイ)
自己のB−LCLを、gag(rVV gag−polSF2)またはenv(rVV gp160 envSF162)を発現する組換えワクシニアウイルス(rVV)を用いて感染させ、その後、一晩Na51Cr]O(NEN,Boston,MA;2.5×10のB−LCLあたり10μCi)で標識し、そして洗浄した。組換えVV(組換えワクチニアウイルス)に感染した51Cr標識B−LCL(1丸底ウェル当たり2500個)を、培養PBMCの3回の段階希釈を含む複製ウェルに添加した。非標識B−LCL(1ウェル当たり1×10個)を、非特異的細胞溶解を防止するために添加した。4時間後、50μlの培養の上清を取得し、Lumaplate(Packard,Meriden,CT)に添加し、Wallac Microbeta TriLux液体シンチレーションカウンター(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)を用いて計測した。溶解した標的から放出された51Crを、以下の式:
(特異的51Cr放出パーセント)=100%×(平均実験放出−自然発生放出)/(最大放出−自然発生放出)
で正規化した。ここで、
自然発生放出=PBMCの不在下で標的細胞から放出された毎分平均カウント(cpm)であり、そして
最大放出=0.1% Triton X−100の存在下で標的細胞から放出された平均cpm
である。PBMCの二回の段階希釈(consecutive dilution)の際、正味の特異的溶解(抗原特異的溶解−非特異的溶解)が10%以上の場合、応答を陽性として評点付けた。
【0195】
(F.リンパ球増殖アッセイ)
p55 Gagタンパク質(3μg/ml)またはEnvペプチド(16μg/ml)のプールの不在下または存在下で、2×10個のPBMCを、平底マイクロタイターウェル中で、0.2mlの容積のAR10中でインキュベートした。 6つのレプリカ培養を確率した。4日間のインキュベーションの後、[H]−チミジン([H]TdR,Amersham,Piscataway,NJ)を加えた(1μCi/ウェル)。一晩のインキュベーションに続き、培養物をガラス微小繊維フィルタ上に得た。Microbeta TriLux液体シンチレーションカウンター(Perkin Elmer)を用いて、細胞の[H]TdR取り込みを測定した。
【0196】
(G.細胞内サイトカイン染色およびフローサイトメトリー)
抗原gagペプチドプール30μg/mlまたはenvペプチドプール30μg/ml)の不在下または存在下で、アカゲザルPBMCを37℃にて1晩培養した。抗CD28(1μg/ml,Pharmingen,San Diego,CA)を同時刺激の供給源として添加し、ブレフェルジンA(1:1000、Pharmingen)を、サイトカインの分泌を防止するために加えた。1晩のインキュベーションの後、PBMCを、細胞表面のCD4(抗CD4アロフィコシアニン結合体、クローンSK3、Becton Dickinson,San Jose,CA)およびCD8(抗CD8α PerCP結合体、クローンSK1、Beckton Dickinson)について染色し、Cytofix/Cytoperm(Pharmingen)を用いて透過性処理し、そしてその後、細胞内IFN−γ(モノクローナル抗体4S.B3、フィコエリトリン結合体、Pharmingen)、および細胞内TNF−α(MAb11、FITC結合体、Pharmingen)について染色した。染色した細胞を、FACSCaliburTMフローサイトメトリー(Becton Dickson)を用いて分析した。
【0197】
(H.DNAワクチンベクターの比較)
PLGを伴わないDNAベクターの免疫原性を評価した。抗Gag抗体について、最初の免疫原性レジメンとして生理食塩水中にて加えた場合、(pCMVもpSINCPも)いずれのベクターも有効ではなかった。しかし、Gag/PLGタンパク質抗原を用いて、裸のgag DNAで初回刺激した動物の追加刺激は、著しい抗体応答を迅速に惹起した。同様に、Env/MF59タンパク質は、抗Env抗体の量を迅速にブーストした。いかなる時にも、pCMVまたはpSINCPにより誘導される抗体の力価に有意差はなかった。
【0198】
ヘルパーT細胞の応答を、リンパ球増殖(LPA)および細胞内サイトカイン染色(ICS)の両方により測定した。末梢血単核細胞(PBMC)を、組換えp55 gagタンパク質で刺激するか、または合成envペプチドのプールで刺激した。抗体応答と同様に、上記裸のpCMV DNAワクチンおよびpSINCP DNAワクチンは、LPA応答もICS応答も誘導するのにそれほど有効ではなかった。しかし、Gag LPA応答に関して、pSINCPは、一般的に、より効力があるようだった。上記pSINCP群とpCMV群との間の統計的有意性は、20週目および27週目(それぞれ、p=0.018,0.023)に達せられた。
【0199】
同様に、pSINCPは、Env LPA応答を惹起するのに、より効果的であるようだった。群間で有意に高いLPA応答を、20週目、24週目および27週目のDNA初回刺激の間(それぞれp=0.028,0.022および0.044)ならびに44週目の上記Envタンパク質の追加刺激の後(p=0.016)に観察した。
【0200】
さらにT細胞応答を定量するために、PBMCを抗原で1晩刺激し、そしてその後、上記PBMCを、PE結合体化抗IFN−γ mAbおよびFITC結合体化抗TNF−α mAb(細胞内)で染色した。PBMCをAPC結合体化抗CD4およびPerCP結合体化抗CD8で対比染色し、サイトカイン陽性細胞、特に最も有勢な抗原提示細胞であったIFN−γ/TNF−α二重陽性細胞について、フローサイトメトリーで分析した。pSINCPを受ける動物群とpCMVを受ける動物群との間で、抗原特異的T細胞の頻度の有意差は見られなかった。
【0201】
CTLの測定のために、gagペプチドのプールまたはenvペプチドのプール、IL−2およびIL−7の存在下で、PBMCを培養した。8日目に、PBMC培養を取得し、段階希釈し、そしてgag(rVV gagpolSF2)またはenv(rVVgp160envSF162)を発現する組換えワクチニアベクターを用いて前日に感染させた51Cr標識自己B−LCLを含むマイクロタイターウェルに添加した。pCMVは、Gag CTL応答を惹起する点で、pSINCPより有効であるようで、上記研究の過程の間ずっと、非常に沢山の応答を伴った。
【0202】
要約すれば、pCMVの裸のDNAワクチンおよびpSINCPの裸のDNAワクチンの両方は、HIV GagおよびHIV Envに対して抗体応答およびT細胞応答を誘導した。
【0203】
(I.DNAワクチンのPLG微粒子送達)
動物をまた、DNA/PLG組成物を用いて上記のように免疫化し、PLG微粒子に吸着したDNAワクチンの免疫原性を評価した。上記HIV DNAワクチンのカチオン性PLG微粒子上への吸着は、(特に抗体応答に関する)免疫応答を増強するのに有効であった。PLG送達は、pCMVまたはpSINCPのいずれかを受けるマカクにおける抗体力価を、有意に増加した。DNA初回刺激フェーズの間ずっと、PLG群の抗gag力価は、測定した全ての時点において、裸のDNAに比べて有意に高く(p=0.0003〜0.04)、力価のピーク値は約1000倍高かった(図1)。タンパク質追加刺激の後、これらの差は維持され、pCMV/PLGおよびpSINCP/PLGは、裸のDNAと比較して、約10倍〜25倍高かった(p=0.02〜0.04)。抗Env抗体の応答はまた、上記PLG群において有意に高かったが、DNA初回刺激後(第2のDNAの投与の2週から6週後)のピークの応答においてのみであった(P=0.003〜0.015)。タンパク質追加刺激の後およびタンパク質追加刺激の間、上記抗env力価は、全ての群において類似していた。上記PLG/DNAワクチン群については、抗体応答のピークを、2回目のDNA免疫化の後に取得したが、一方、裸のDNAによる応答のピークには、3回の免疫化が必要だった。
【0204】
上記PLG/DNAワクチンは、LPAおよびICSにより測定した場合、GagおよびEnvに対するヘルパーT細胞応答を誘導した。裸のDNA群およびPLG/DNA群における応答の規模は一般的に同様であったが、まとめられた場合(pCMV+pSINCP)、PLGは、裸のDNAと比較して、Gagについては6週間目に、そしてEnvについては16週間目に、有意に高い応答を起こした(p=0.05)。CD4 T細胞によるサイトカイン産生の頻度は、ICSにより測定した場合、第2のDNAの投与の二週間後に、裸のDNAと比較して、上記Gag/PLG群(pCMV+pSINCP群の結合体)においては応答の強化を示した(p<0.05)。上記Env DNAワクチンに関しては、違いが全く観察されなかった。CD8 T細胞応答を、ICSおよび51Cr放出により測定した。ICSによって、その応答は一般的に低く、群間に違いは見られなかった。培養PBMCの51Cr放出により、良好なCTL応答がGagに対して検出されたが、Envに対しては検出されなかった。本研究の過程にわたるGag CTL応答の総数は、PLG群においては24、そして裸のDNA群においては18であり、上記pCMV/PLG群における抗Gag−CTLの明らかに早期の開始を伴った(5匹の動物のうち、3匹の動物が最初のDNAの二週間後)。
【0205】
結論として、HIV DNAワクチンのPLG送達は、抗体免疫応答および細胞性免疫応答を誘導するのに有効であった。さらに、PLGは、裸のDNAと比較すると免疫応答を有意に強化した。抗体応答の特に強力な強化が、上記pCMV DNAワクチンおよびpSINCP DNAワクチンの両方に関して観察された。Gagに関しては、本研究の上記DNA初回刺激フェーズおよびタンパク質追加刺激フェーズの両方の間に、これが当てはまる。応答の早期の開始、応答の規模の増大、および応答の頻度の増加により見られるように、いくつかの場合では、細胞性免疫応答はまた、DNA初回刺激の間にPLGにより強化される。
【0206】
(J.タンパク質追加刺激)
上記動物を、29週目にアニオン性PLG微粒子に吸着した組換えGagタンパク質を用い、その後38週目および75週目にMF59アジュバント中の組換えEnvを用いて、追加刺激した(それぞれ最終DNA免疫化の15週間後、24週間後、51週間後)。抗体の力価が全ての群において増加した(図1、図2)。gagタンパク質を用いて追加刺激した後、PLG/CTAB−DNAで初回刺激された動物における上記抗gag抗体の力価は、裸のDNAで初回刺激された動物より約10倍高かった。上記抗gag力価は、DNA初回刺激により達成されるピークの力価に等しい(DNA/PLG)か、またはDNA初回刺激により達成されるピークの力価を超えていた(DNA/生理食塩水)。Envに関しては、DNA初回刺激の後、全ての群の力価が、ピークの力価を超えて著しく増加された(p=0.0002〜0.02)(図2)。第2のEnvタンパク質追加刺激は、抗体の力価を、第1のEnvタンパク質追加刺激の後に見られるレベルにまで回復した。DNAワクチン初回刺激の後、ウイルス中和抗体応答は、どの動物においても検出されなかった。しかし、1回および2回のタンパク質追加刺激免疫化の後、増加する力価が観察され、全幾何平均力価(それぞれ8または64)(p=0.00071)であった。(図3)。これらの時点の両方において、上記力価は、種々のワクチン群の間で統計的に異なっていた。
【0207】
タンパク質免疫化の後、T細胞の応答もまた、増加されるようであった。Gagに関しては、タンパク質追加刺激の後、平均SIが、基準線の4倍〜7倍に増加し、応答細胞の数が20のうち、7から14に増加した。しかし、上記応答の規模は、DNA初回刺激の後のピーク時に見られる規模ほど大きくはなかった。
【0208】
Envタンパク質追加免疫化の後、平均SIが、基準線を越えて11倍〜25倍増加し、そしてこれらの応答は、DNA初回刺激の後測定した応答よりも大きかった。ICSにより、Gagタンパク質の追加刺激の後、観察された増加は、ほとんどまたは全くなかったが、各々のEnvタンパク質の追加刺激の後、IFN−γおよびTNF−αを分泌する細胞の比率の実質的増加が、見られた。さらに、第2のタンパク質追加刺激後の上記ICS応答の全体規模は、第1のタンパク質追加刺激後のICS応答の全体規模に比べて大きく(p=0.0008)(図4)、何匹かの動物中では、応答がCD4 T細胞の4%に接近していた。
【0209】
要約すれば、DNA初回刺激したマカクを組換えGagタンパク質および組換えEnvタンパク質で追加刺激すると、抗体応答およびT細胞応答の迅速かつ有意な強化を生じた。いくつかの場合、これらの応答の規模は、DNA初回刺激後に得られる応答の規模よりも著しく大きかった。
【0210】
従って、本明細書に記載のDNA/PLGワクチンは、アカゲザルマカクにおいて強力な免疫応答を誘導し、特に抗体応答ならびにヘルパーT細胞およびキラーT細胞に対する効力を強化した。DNA/PLGで初回刺激されたマカクを、組換えタンパク質で追加刺激する有効性(Envタンパク質追加刺激後の、T細胞からのTh−1型サイトカインの強力な産生を含む)は、また確立された。
【0211】
(実施例6:ヒト研究)
上記HIVワクチン試験(および他の成果)からのデータに基づけば、偽薬コントロールにおける深刻で有害な経験の割合は、約3.5%であった。他の組換え糖タンパク質抗原をMF59と一緒に使用した広範な安全性データは、そのようなワクチン抗原は、MF59と一緒に投与された場合、非常に安全で一般的に十分に寛容されるということを示す。さらに、これらのワクチンは、特定の抗原に対して、強力な抗体応答を惹起した。DNA/PLGで初回刺激されたマカクを、組換えタンパク質で追加刺激する有効性(Envタンパク質追加刺激の後、T細胞からのTh−1型サイトカインの強力な産生を含む)は、また証明された。
【0212】
ヒト研究のための例示的なプロトコールを、以下の表19に示す。サブタイプBに関して例示されているが、上記プロトコールはまた、HIVの他の株または他のサブタイプに関して、そのままでか、または改変されて使われ得ることが容易に明らかである。
【0213】
(表19 ヒトプロトコール)
【0214】
【表19】

【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1A】図1Aは、DNAワクチンによって誘発された抗Gag抗体応答に対するPLG粒子の効果を示すグラフである。図1Aは、0週、4週、および14週にプラスミドDNAで免疫し、次いで38週および75週に、MF59と共に処方した組換えEnvタンパク質で追加刺激した動物の、相乗平均ELISA力価を示す。抗Gag抗体は、裸のpCMV(黒丸)およびPLG/pCMV(白丸)についての相乗平均ELISA力価としてプロットされ、エラーバーはSEMを表す。
【図1B】図1Bは、DNAワクチンによって誘発された抗Gag抗体応答に対するPLG粒子の効果を示すグラフである。図1Bは、0週、4週、および14週にpSINCP DNAで免疫し、次いで38週および75週に、MF59と共に処方した組換えEnvタンパク質で追加刺激した動物の、相乗平均ELISA力価を示す。抗Gag抗体は、裸のpCMV(黒丸)およびPLG/pCMV(白丸)についての相乗平均ELISA力価としてプロットされ、エラーバーはSEMを表す。
【図2A】図2Aは、DNAワクチンによって誘発された抗Env抗体応答に対するPLG粒子の効果を示すグラフである。図2Aは、0週、4週、および14週にプラスミドDNAで免疫し、次いで38週および75週に、MF59と共に処方した組換えEnvタンパク質で追加刺激した動物の、相乗平均ELISA力価を示す。抗Env抗体は、裸のpCMV(黒丸)およびPLG/pCMV(白丸)に対する相乗平均ELISA力価としてプロットされ、エラーバーはSEMを表す。
【図2B】図2Bは、DNAワクチンによって誘発された抗Env抗体応答に対するPLG粒子の効果を示すグラフである。図2Bは、0週、4週、および14週にpSINCP DNAで免疫し、次いで38週および75週に、MF59と共に処方した組換えEnvタンパク質で追加刺激された動物の、相乗平均力価を示す。抗Env抗体は、裸のpCMV(黒丸)およびPLG/pCMV(白丸)に対する相乗平均ELISA力価としてプロットされ、エラーバーはSEMを表す。
【図3】図3は、DNA投与後の相乗平均中和力価を示すグラフである。
【図4】図4は、DNAワクチンによって初回刺激されたT細胞応答に対する、Envタンパク質追加刺激の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV DNAワクチン組成物であって、
少なくとも1つのHIV Gagコード配列またはEnvコード配列を含む核酸発現ベクター;および
PLG
を含む、HIV DNAワクチン組成物。
【請求項2】
前記PLGの濃度が、前記核酸発現ベクターの濃度より約5と100倍の間で高い、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のワクチン組成物であって、ここで、前記核酸の濃度が約10μg/mLと5mg/mLの間であり、そして前記PLGの濃度が約100μg/mLと100mg/mLの間である、ワクチン組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のワクチン組成物であって、ここで、1用量あたりの前記核酸の濃度が約1μg/用量と5mg/用量の間であり、かつ1用量あたりの前記PLGの濃度が、約10μg/用量と100mg/用量の間である、ワクチン組成物。
【請求項5】
表1または表2において記載される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
表9のカラム2において記載される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
HIVワクチン組成物であって、
オリゴマーgp140(o−gp140);および
薬学的に受容可能な賦形剤
を含む、HIVワクチン組成物。
【請求項8】
前記o−gp140の濃度が、約0.1mg/mLと10mg/mLの間である、請求項7に記載のHIVワクチン。
【請求項9】
1用量あたりの前記o−gp140の濃度が、約100μg/用量である、請求項7に記載のHIVワクチン。
【請求項10】
表3または表11において記載される、請求項7に記載のHIVワクチン。
【請求項11】
さらにアジュバントを含む、請求項7に記載のHIVワクチン。
【請求項12】
前記アジュバントが、MF59またはCpGである、請求項11に記載のHIVワクチン。
【請求項13】
前記アジュバントがMF59であり、そして該MF59が表4に記載される、請求項12に記載のHIVワクチン。
【請求項14】
HIVワクチンであって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のHIV Env DNAワクチン;
請求項1〜6のいずれか1項に記載のHIV Gag DNAワクチン;および
請求項7〜13のいずれか1項に記載のHIVワクチン
を含む、HIVワクチン。
【請求項15】
被験体において免疫応答を起こさせる方法であって、
(a)該被験体に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1つのHIVワクチン組成物を投与する工程、
(b)工程(a)の投与の後に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1つのHIVワクチン組成物を投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、ここで、
工程(a)が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1つのワクチン組成物を投与する工程を包含し、かつ
工程(b)が、請求項7〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのワクチン組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、ここで、
工程(a)が、請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1つのワクチン組成物の複数回投与を包含し、かつ
工程(b)が、請求項7〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのワクチン組成物の複数回投与を包含する、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、ここで、
工程(a)が、1ヶ月間隔で2回または3回の投与を包含し;
工程(b)が、1、2または3ヶ月間隔で2回または3回の投与を包含し;かつ
工程(a)の投与と工程(b)の投与との間の時間が、1〜5ヶ月である、方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに1項に記載の方法であって、ここで工程(a)が、少なくとも1つのHIV Gagワクチンおよび少なくとも1つのHIV Envワクチンを投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
請求項15または18に記載の方法であって、ここで、工程(b)が請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1つのDNAワクチン、および請求項7〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのHIVワクチンを同時投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、ここで、工程(a)が少なくとも1つのHIV Gagワクチンおよび少なくとも1つのHIV Envワクチンを投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、少なくとも1回の投与が、筋内または皮内である、方法。
【請求項23】
オリゴマーHIV Env gp140タンパク質を作製する方法であって、以下の工程:
gp140をコードする核酸を宿主細胞に導入する工程;
gp140が細胞において発現される条件下で宿主細胞を培養する工程;および
オリゴマーgp140(o−gp140)タンパク質を宿主細胞から単離する工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
前記o−gp140が、前記細胞から分泌され、そして該細胞上清から単離される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のHIV DNAワクチンを作製する方法であって、
核酸が無菌のPLG微粒子に結合して、DNA/PLG HIVワクチンを形成するように、1つ以上のHIVポリペプチドをコードする配列を含む核酸発現ベクターと、該PLG微粒子とを結合させる工程を包含する、方法。
【請求項26】
さらに前記DNA/PLG HIVワクチンを、凍結乾燥する工程を包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項7〜13のいずれか1項に記載のHIVワクチンを作製する方法であって、o−gp140とアジュバントとを結合させる工程を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502228(P2006−502228A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543559(P2004−543559)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/031935
【国際公開番号】WO2004/032860
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】