説明

HIV侵入阻害剤及び局所殺菌剤としてのデンプン−ザクロジュース複合体

デンプンと、当該デンプンが水不溶性の形態であるとき当該デンプン上に吸着される、ザクロジュースの抗HIV−1活性成分又は抗HIV−2活性成分とを含む(comprising)複合体に関する。当該複合体は、HIV−1感染(infection)又はHIV−2感染(infection)を阻害し、CD4受容体(receptor)並びにCCR5及びCXCR4共受容体(coreceptors)とのHIV−1又はHIV−2の結合をブロックする。当該複合体は、薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を含む当該複合体をヒトの粘膜に投与することを含む(comprising)、HIV−1感染(infection)又はHIV−2感染(infection)を予防する方法において使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、HIV−1又はHIV−2侵入阻害剤及び局所殺菌剤として使用することができるデンプン−ザクロジュース複合体、並びに女性に経膣的に複合体を投与することによりHIV−1又はHIV−2感染(infection)を予防する方法に関する。
【0002】
[政府の権利]
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(“NIH”)からのPO1 HD41761の付与下での米国政府の支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0003】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2004年9月21日に出願された米国仮出願番号第60/611,778号に関して、米国特許法第119条(e)項に基づき優先権の利益を請求しており、この内容全体が本明細書中に参照により援用される。
【背景技術】
【0004】
[発明の背景]
後天性免疫不全症候群(AIDS)流行病は、およそ24年間で、およそ3,000万人の命を奪い、2003年には世界で1日に約14,000の新たなヒト免疫不全ウイルス型(HIV−1)感染(infections)を引き起こしている。感染(infections)の約80%は異性間伝播(transmission)によるものである。ワクチンがないため、ウイルス伝播(transmission)をブロックすることが期待される局所殺菌剤が、この流行病を制御するための希望を与える。抗レトロウイルスの化学療法剤は先進工業国のAIDS死亡率を低減させているが、発展途上国ではその効果は最小限にすぎない。類似の二分のもの(an analogous dichotomy)を予防するために、殺菌剤が、開発からマーケティングへの移行において、許容可能、利用可能、手軽に入手可能及び促進性であるべきである。安全記録を確立し、相当の抗HIV−1活性を有する、既に市場に出された医薬品賦形剤又は食品は、このオプションを提供することができる。
【0005】
世界的なAIDS禍は、およそ24年間、目に見えて有望な予防薬の市場介入も期待されないまま、執拗に進行している。2003年には、新たに500万人がHIV感染(infection)し、300万人がAIDSによって死亡した[UNAIDS:AIDS流行最新情報(AIDS Epidemic Update)(2003年12月)2004年(http://www.unaids.org/en/other/functionalities/ViewDocument.asp?href=http%3a%2f%2fgva-doc-owl%2fWEBcontent%2fDocuments%2fpub%2fPublications%2fIRC-pub06%2fJC943-EpiUpdate2003_en%26%2346%3bpdf) ]。生存しているHIV−1感染(infection)/AIDS患者の数は、今までに4,000万人に達し、上述のように、この流行病の発生からもう既におよそ3,000万人の人々がAIDSにより亡くなっている[UNAIDS:AIDS流行最新情報(2003年12月)2004年;WHO/SEARO CDS HIV/AIDS:2000年末の世界推定(子供及び成人)、2001年(http://w3.whosea.org/hivaids/fact.htm#End-2000%20global%20estimates) ]。新たな感染(infections)の多くは粘膜経路でもたらされ、異性間伝播(transmission)が主要な役割をになっている(約80%)。無防備な性交行動1回による伝播(transmission)の発生率は低いと推測されるが(0.0001−0.004)、急性感染した(infected)個人が関与する場合に、際立って増加し[Shattock, R.J., Moore, J.P.著「HIV−1感染の性的伝播の阻害(Inhibiting sexual transmission of HIV-1 infection)」Nat. Rev. Microbiol., (2003), 1:25-34; Pilcher, C.D., Tien, H., Eron, J.J., Vernazza, P.L., Leu, S-Y, Stewart, P.W., Goh, L-E, Cohen, M.S.著「簡潔だが有効な:急性HIV感染及びHIVの性感染(Brief but efficient: Acute HIV infection and the sexual transmission of HIV)」J. Infect. Dis., (2004), 189:1785-1792]、この蓄積的影響は、計り知れない。
【0006】
世界的な免疫予防接種プログラムに適用可能な抗HIV−1ワクチンが利用可能になるとは、長年期待されていない。したがって、他の予防戦略が緊急に必要とされている。これには、教育的努力並びに機械的及び/又は化学的遮断方法の適用が含まれる。性交する前に経膣的に(及び直腸内の場合もある)適用されるとき、後者(機械的及び/又は化学的遮断方法)は殺菌剤、すなわちHIV−1感染(infection)(及び他の性感染症(transmitted diseases)の伝播(transmission)の場合もある)をブロックするのに設計された局所製剤に相当する[Shattock, R.J., Moore, J.P.著「HIV−1感染の性的伝播の阻害(Inhibiting sexual transmission of HIV-1 infection)」Nat. Rev. Microbiol., (2003), 1:25-34; Stone, A.著「殺菌剤:HIV及び他の性伝播する感染を予防するための新たな試み(Microbicides: A new approach to preventing HIV and other sexually transmitted infections)」Nat. Rev. Drug Discov., (2002), 1:977-985; Shattock, R., Solomon, S.著「殺菌剤−安全な性交への補助(Microbicides - aids to safer sex)」Lancet, (2004), 363:1002-1003; Brown, H.著「驚異的な殺菌剤。膣内ジェルが何百万の命を救うことができるであろうが、始めに誰かがこれらの働きを証明しなければならない(Marvellous microbicides. Intravaginal gels could save millions of lives, but first someone has to prove that they work)」Lancet, (2004), 363:1042-1043]。概念的に、殺菌剤製剤の活性成分(複数可)が、(1)細胞受容体(receptor)CD4、共受容体(coreceptors)CXCR4/CCR5、及び樹状/遊走細胞上の受容体(receptors) 、それぞれとのHIV−1の結合を防ぐ(ウイルス複製に直接関与する細胞にウイルスを捕捉、及び伝播する(transmitting))ことによって、ウイルスの感受性細胞への侵入をブロックすることが好ましく[Shattock, R.J., Moore, J.P.著「HIV−1感染の性的伝播の阻害(Inhibiting sexual transmission of HIV-1 infection)」Nat. Rev. Microbiol., (2003), 1:25-34; Moore, J.P., Doms, R.W.著「侵入阻害剤の侵入:科学と医学との融合(The entry of entry inhibitors: a fusion of science and medicine)」 Proc. Natl. Acad. Sci., USA, (2003), 100:10598-10602; Pierson, T.C., Doms, R.W.著「HIV−1侵入阻害剤:新たな標的、新規の治療法(HIV-1 entry inhibitors: new targets, novel therapies)」Immunol. Lett., (2003), 85:113-118; Davis, C.W., Doms, R.W.著「HIV伝播:全てのドアを閉めること(HIV Transmission: Closing all the Doors)」J. Exp. Med., (2004), 199:1037-1040; Hu, Q., Frank, I., Williams, V., Santos, J.J., Watts, P., Griffin, G.E., Moore, J.P., Pope, M., Shattock, R.J.著「付着及び融合受容体の阻止が、ヒト頸部組織のHIV−1感染を阻害する(Blockade of attachment and fusion receptors inhibits HIV-1 infection of human cervical tissue)」J. Exp. Med., (2004), 199:1065-1075]、及び/又は、(2)殺ウイルス性であることが好ましい。この製剤は、標的組織に悪影響を及ぼしてはならず、これらの組織が殺菌剤の除去後により感染(infection)しやすくさせないものとすべきである[Fichorova, R.N., Tucker, L.D., Anderson, D.J.著「ノノキシノール−9誘導性の膣炎症の分子基盤、及びそのヒト免疫不全ウイルス1型伝播への考えられる関連性(The molecular basis of nonoxynol-9-induced vaginal inflammation and its possible relevance to human immunodeficiency virus type 1 transmission)」J. Infect. Dis., (2001), 184:418-428; Fichorova, R.N., Bajpai, M., Chandra, N., Hsiu, J.G., Spangler, M., Ratnam, V., Doncel, G.F.「インターロイキン(IL)−1、IL−6、及びIL−8が膣殺菌剤避妊薬の粘膜毒性を予測する(Interleukins (IL)-1, IL-6 and IL-8 predict mucosal toxicity of vaginal microbicidal contraceptives)」Biol. Reprod. Epub ahead of print May 5 2004 (http://www.biolreprod.org/cgi/rapidpdf/biolreprod.104.029603v1)]。
【0007】
抗レトロウイルス剤による治療が、先進工業国におけるAIDSによる死亡率を低減させているが、今までのところ発展途上国ではその効果は最小限である[Weiss, R.:AIDS著「その無敵の20年(AIDS: unbeatable 20 years on)」Lancet, (2001), 357:2073-2074]。殺菌剤に対する同様の二分を避けるために、調査及び開発及びこれらのマーケティング及び流通の間の時間をできるだけ短縮しながら、抗菌剤を手軽に入手可能に、且つ幅広く利用可能にするために、設計及び選択しなければいけない。安全記録を確立した大量の工業製品に抗HIV−1活性があることが見出された場合、これは容易となるであろう。殺菌剤の開発のために検討される適格な候補は、抗ウイルス特性に関して、医薬品賦形剤(=薬剤の投薬形態の“inactive”成分)及び食品をそれぞれスクリーニングすることにより見出されるだろう。この試みによって、有望な候補殺菌剤として、(腸溶錠及びカプセルのコーティングに使用される)セルロースアセテート1,2−ベンゼンジカルボキシレートの発見が既にもたらされた[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y, Lin, K., Jiang, S.著「「不活性」の医薬品賦形剤を使用する性感染症の予防のための「殺菌剤」の設計(Design of a "microbicide" for prevention of sexually transmitted diseases using "inactive" pharmaceutical excipients)」Biologicals, (1999), 27:11-21; Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y, Debnath, A.K.著「一般的な医薬品賦形剤であるセルロースアセテートフタラートがHIV−1を不活性化し、ウイルスエンベロープ糖タンパク質gp120上の共受容体結合部位をブロックする(Cellulose acetate phthalate, a common pharmaceutical excipient, inactivates HIV-1 and blocks the coreceptor binding site on the virus envelope glycoprotein gp120)」BMC Infect. Dis., (2001), 1:17; Neurath, A.R., Strick, N., Jiang, S., Li, Y-Y, Debnath, A.K.著「セルロースアセテートフタラートの抗HIV−1活性:可溶性CD4と「終末」gp41 6−へリックス束の誘導との相乗効果(Anti-HIV-1 activity of cellulose acetate phthalate: Synergy with soluble CD4 and induction of "dead-end" gp41 six-helix bundles)」BMC Infect. Dis., (2002), 2:6; Neurath, A.R., Strick, N., Li Y-Y著「アニオン性ポリマーの抗HIV−1活性:候補殺菌剤の比較研究(Anti-HIV-1 activity of anionic polymers: A comparative study of candidate microbicides)」BMC Infect. Dis., (2002), 2:27; Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y著「水分散性の殺菌性セルロースアセテートフタラートフィルム(Water dispersible microbicidal cellulose acetate phthalate film)」BMC Infect. Dis., (2003), 3:27]。酸度によって引き起こされる非特異的な効果を差し引く(discount)ためにpHをおよそ7に中性化したフルーツジュースのスクリーニング結果を本明細書中に記載している。
【0008】
ザクロは、その医薬特性のために何千年間も崇拝されおり、世界的に主要な宗教の多くが神聖なものであると考えてきた。ザクロに敬意を表して、英国医師会及び幾つかの英国王立大学はその紋章がザクロを特徴としている。ロンドンの王立医科大学(Royal College of Physicians of London)は、16世紀の半ばまで、その紋章にザクロを採用していた[Langley, P.著「なぜザクロなのか(Why a Pomegranate?)」BMJ, 2000, 321:1153-1154]。ザクロの種の避妊能力に関する最もよく知られた参考文献は、古典ギリシア神話である。ペルセポネが、ザクロの実(ここからジュースが得られる)を6つ食べると、地上では、秋及び冬の何ヶ月もの間、土地がやせたままになった。皮肉にも、本出願は、ザクロジュースには、未だ開発が十分ではない抗レトロウイスル剤の分類に対応しているHIV−1又はHIV−2侵入阻害剤が含まれていることを示している[Greene, W.C.著「HIV治療学の明るい未来(The brightening future of HIV therapeutics)」Nat. Immunol., 2004, 5:867-871]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[発明の概要]
本発明の目的は、HIV−1又はHIV−2侵入阻害剤として使用することができるデンプン−ザクロジュース複合体を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、HIV−1又はHIV−2感染(infection)を予防することである。
【0011】
これらの目的、並びに他の目的及びこれらの利点は本発明によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、デンプンと、デンプンが水不溶性の形態であるとき当該デンプン上に吸着される、ザクロジュースの抗HIV−1活性成分又は抗HIV−2活性成分とを含む(comprising)複合体を提供する。上記複合体は、HIV−1感染(infection)又はHIV−2感染(infection)を阻害する。上記複合体は、CD4受容体(receptor)並びにCCR5及びCXCR4共受容体(coreceptors)とのHIV−1又はHIV−2の結合をブロックする。
【0013】
本発明はまた、デンプン上に吸着される、ザクロジュースの抗HIV−1活性成分又は抗HIV−2活性成分を含む(comprising)、薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する上記の複合体を、ヒトの粘膜に投与することを含む(comprising)、HIV−1又はHIV−2感染(infection)を予防する方法に関する。
【0014】
本発明はまた、薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて、薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する上記の複合体を含む(comprising)、薬学的組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する上記の薬学的組成物をヒトの粘膜に投与することを含む(comprising)、HIV−1又はHIV−2感染(infection)を予防する方法に関する。
【0016】
本発明を図示するために、図面が提供される。しかし、本発明は図面に示される明確な主題に限定されないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[発明の詳細な説明]
本発明による複合体は、デンプンと、当該デンプンが水不溶性の形態であるときデンプン上に吸着される、ザクロジュースの抗HIV−1活性成分又は抗HIV−2活性成分とを含有する(comprises)。このデンプンはザクロジュースの抗HIV−1活性成分又は抗HIV−2活性成分を選択的に吸着するデンプンである。
【0018】
本発明の複合体はHIV−1又はHIV−2感染(infection)を阻害する。したがって、この複合体は、HIV−1又はHIV−2の感染(infection)をブロックするために、局所殺菌剤として作用する。この複合体は、CD4受容体(receptor)並びにCCR5及びCXCR4共受容体(coreceptors)とのHIV−1又はHIV−2の結合をブロックするので、HIV−1又はHIV−2侵入阻害剤である(すなわち、HIV−1又はHIV−2の細胞への侵入を予防する)。
【0019】
上記複合体は、デンプン100〜250mgをザクロジュース1mlと混合することによって、好ましくはデンプン150〜225mgをザクロジュース1mlと混合することによって、製造される。
【0020】
本発明のデンプン−ザクロジュース複合体をHIV−1又はHIV−2感染(infection)を予防するために、男性又は女性の粘膜に投与することができる。したがって、このデンプン−ザクロジュース複合体を膣又は直腸等の身体内部領域に投与することができる。投与形態としては、局所的、経膣的又は直腸内が挙げられる。
【0021】
本発明は、性交等の性的接触間のHIV−1又はHIV−2感染(infection)を予防するのに特に効果的である。
【0022】
ヒトへの投与のためには、本発明の複合体が薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて、薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する複合体を含む(comprising)薬学的組成物の形態であることが好ましい。
【0023】
好ましくは、薬学的に許容可能なキャリアは、本発明によるデンプン−ザクロジュース複合体を坐薬、水分散性フィルム、水分散性錠剤、スポンジ、又はジェルの形態で投与することができるようなものとすべきである。
【0024】
キャリアが固体である場合の直腸投与又は膣投与に好適な薬学的な製剤は、坐薬の単位用量として表すのが最も好ましい。好適なキャリアとしては、「FATTIBASE」として既知の脂肪酸の坐薬の基剤(又は水素化植物油の坐薬の基剤)、ココアバター及び当該技術分野で一般的に使用される他の物質が挙げられ、これらの坐薬は本発明の複合体と軟化又は溶融キャリア(複数可)との混合、これに続く冷却及び鋳型成形によって好都合に製造することができる。
【0025】
粘膜付着性で即効性の分散性(水分散性)錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、「PHARMABURST」(かさ密度0.450、タップ密度0.536及びカール指数16.0%の素早く溶解するデリバリープラットホーム(SPI Pharma製))、「CARBOPOL 947P」ポリマー(オハイオ州クリーブランドのNoreon, Inc.製)及び「CARBOPHIL」(オハイオ州クリーブランドのNoreon, Inc.製)と組み合わせ、凍結乾燥したザクロ/デンプン複合体から調製することができる。
【0026】
本発明によるこの複合体を(広く利用可能な「呼吸コントロール」ストリップと同様に)水分散性フィルムに組み込むことができる。
【0027】
また、本発明の複合体を、局所適用の後にジェルに変換される水分散性スポンジに組み込むことができる[Neurath他(BMC Infect. Dis., 2003, 3:27); USP6,572,875;及びUSP6,596,297(USP6,572,875及びUSP6,596,297の内容全体が、本明細書中で参照により援用される)を参照のこと]。
【0028】
また、本発明に従って使用される薬学的組成物は、殺精子剤、抗菌剤、防腐剤又は他の抗ウイルス剤といった他の活性成分を含み得る。
【0029】
また、本発明の薬学的組成物は、防腐剤、風味剤及び芳香剤等の添加剤を含み得る。これらの添加剤は、任意の所望の濃度で存在し得る。これらの添加剤の濃度は、所望の特性、放出される作用物質(agent)、その有効性、所望の用量、溶解時間等によって変わるであろう。
【0030】
上記の各製剤は、以下の要求を満たすべきである:(1)殺菌性のジェル/クリームの送出に必要な塗布器の使用に伴う廃棄物処理問題の最小化;(2)簡易性;(3)購入、携帯及び保存に関する小型包装及び裁量(discretion);(4)低製造コスト;(5)世界的な複数の地点での産業的大量生産への対応性及び(6)直腸殺菌剤としての潜在用途。
【0031】
上記複合体は、0.5〜3g、好ましくは1〜1.5gの濃度で投与することができる。
【0032】
さらに、局所使用のために保存期限が制限されたPJ−S21系のゲル製剤を製造することは依然可能であり、これは適切な低温乾燥プロセスを介した乾燥PJ−S21粉末の製造コストを抑えるであろう。
【0033】
これらの製剤のどちらが選択されるとしても、最終製品(複数可)の均質な抗HIV−1又は抗HIV−2活性を確保する、又は製造における再生産条件を確立するのに、十分な品質管理が必要であるだろう。
【0034】
本発明を達成する際、細胞受容体(cell receptors)としてCD4及びCXCR4を使用して、HIV−1 IIIBに対する阻害活性に関してフルーツジュースをスクリーニングした。(1)細胞共受容体(cellular coreceptor)としてCCR5を利用するHIV−1 BaLによる感染(infection)阻害、(2)CXCR4及びCCR5とのgp120 IIIB及びgp120 BaLのそれぞれの結合阻害に関して、最適なジュースを試験した。最も着色したジュース成分を除去するために、分散性賦形剤及び他の食品への有効成分(複数可)の吸着を調査した。最初のHIV−1分離株による感染(infection)の阻害に関して、選択された複合体を分析した。
【0035】
ザクロジュースからのHIV−1侵入阻害剤は、コーンスターチ上へ吸着されることがわかった。この得られた複合体はCD4及びCXCR4/CCR5とのウイルスの結合をブロックし、最初のウイルス分岐群(clade:クレード)A〜G及び群Oによる感染(infection)を阻害する。
【0036】
本明細書中での結果は、抗HIV−1殺菌剤の品質を十分に標準化し、モニタリングするのであれば、その安全性が何百年もの間ずっと立証されている、安価で広く利用可能なソースから抗HIV−1殺菌剤を製造することの実現可能性を実証している。
【0037】
ザクロジュースは、幾つかの成分を含有し[Poyrazoglu, E., Goekmen, V., Artik, N.著「トルコで成長したザクロ(Punica granatum L.)の有機酸及びフェノール化合物(Organic acids and phenolic compounds in pomegranates (Punica granatum L.) Grown in Turkey)」J. Food Composition and Analysis, (2002, 15:567-575; Module 2:植物化学物質(ミネラル、フィタミン、及びビタミン)(Phytochemicals (minerals, phytamins and vitamins))]、この成分はザクロジュース以外の天然産物から単離され、抗HIV活性を有すると報告された:例えば、カフェー酸[Mahmood, N., Moore, P.S., Detomassi, N., Desimone, F., Colman, S., Hay, A.J.P.C.著「カフェオイルキナ酸誘導体によるHIV感染の阻害(Inhibition of HIV-infection by caffeoylquinic acid-derivatives)」Antivir. Chem. Chemother., (1993), 4:235-240]、ウルソル酸[Ma, C., Nakamura, N., Miyashiro, H., Hattori, M., Shimotohno, K.著「シノモリウム・ソンガリカム由来のウルソル酸誘導体、及びヒト免疫不全ウイルスプロテアーゼに対する関連のトリテルペンの阻害効果(Inhibitory effects of ursolic acid derivatives from cynomorium songaricum, and related triterpenes on human immunodeficiency viral protease)」Phytotherapy Research, (1998), 12 :s138-142]、カテキン及びケルセチン[Mahmood, N., Piacente, S., Pizza, C., Burke, A., Khan, A.I., Hay, A.J.著「ロサ・ダマスケナから単離された純粋化合物の抗HIV活性及び作用の仕組み(The anti-HIV activity and mechanisms of action of pure compounds isolated from Rosa damascena)」Biochem. Biophys. Res. Commun., (1996), 229:73-79; DeTommasi, N., Piacente, S., Rastrelli, L., Mahmood, N., Pizza, C.著「Margyricarpus setosusの抽出物の分画に関する抗HIV活性 (Anti-HIV activity directed fractionation of the extracts of Margyricarpus setosus)」Pharmaceutical Biology, (1998), 36:29-32]。しかし、精製形態での市販のこれらの化合物は、ザクロジュースからの侵入阻害剤(複数可)とは違って、本明細書中で記載されるELISAで測定されるgp120−CD4結合を(200μg/mlで)ブロックせず、コーンスターチに吸着しなかった。事実上は、デンプンによるザクロジュースの処理、及び上記侵入阻害剤の除去後の上澄みは、デンプン上に吸着したHIV−1侵入阻害剤とは違って、抗HIV−1活性を維持し、またヘルペスウイルス1型による感染(infection)を阻害した。したがって、この上澄みの抗ウイルス活性は非特異的であり、おそらく、ザクロ外皮からの抽出物の活性と同様であると考えられ[Reuters NewMedia, Inc「ザクロは、AIDSとの戦いに有効であり得る(Pomegranates could help in battle against AIDS)」1996 Mar 10. http://www.aegis.com/news/re/1996/RE960310.html; British Muslims Monthly Survey: 医学的大発明、 1996 March; IV:6 (http://artsweb.bham.ac.uk/bmms /1996/03March96.html#Medical%20breakthrough]、さらには特徴付けられなかった。
【0038】
さらなる情報[Jassim, S.A.A., Denyer, S.P., and Stewart, G.S.A.B.「ザクロ外皮若しくは他の植物の抽出物を含む抗ウイルス又は抗菌組成物及びその使用方法(Antiviral or antifungal composition comprising an extract of pomegranate rind or other plants and method of use)」1998年11月24日に発行された米国特許第5,840,308号; Shehadeh, A.A.「免疫増進能を伴うハーブの抽出組成物及びその方法(Herbal extract composition and method with immune-boosting capability)」2000年2月29日に発行された米国特許第6,030,622号; Jassim, S.A.A., Denyer, S.P., and Stewart, G.S.A.B.「抗ウイルス組成物又は抗菌組成物及びその方法(Antiviral or antifungal composition and method)」2001年2月2日に発行された米国特許第6,187,316号; Jassim, S.A.A. and Denyer, S.P.「抗ウイルス組成物又は抗菌組成物及びその方法(Antiviral or antifungal composition and method)」2002年5月30日に公開された米国特許出願第2002/0064567号]は、この知見が本明細書中で記載されるHIV−1侵入阻害剤を破壊する条件下で高温で調製されるザクロ外皮からの粗製抽出物に適用することを示している。
【0039】
CD4とのgp120の結合を阻害する阻害剤(複数可)(図2及び図5)は、CXCR4/CCR5共受容体(coreceptors)(図4、図6、及び図7)との相互作用を伴うgp120(図3)上の付加的な部位をブロックした。このことは、完全には予想されておらず、PJ−S21の異なる若しくは重複した特異性を有する複数の阻害剤の存在によって、又は、gp120の構造変化の誘導によってのいずれかで説明することができ[Hsu, S-T, Bonvin, A.M.J.J.著「HIV−1 gp120のCD4結合誘導性構造変化への原子的な見識(Atomic insight into the CD4 binding-induced conformational changes in HIV-1 gp120)」Proteins, (2004), 55:582-593]、その結果、gp120上のCD4結合部位及びCXCR4/CCR5結合部位の両方の阻止をもたらす。同様の効果が他の小分子の阻害剤について報告されている[Neurath, A.R., Strick, N., Lin, K., Debnath, A.K., Jiang, S.著「ヒトのヘム代謝の制御に使用されるスズプロトポルフィリンIXは、HIV−1感染を効果的に阻害する(Tin protoporphyrin IX used in control of heme metabolism in humans effectively inhibits HIV-1 infection)」Antiviral Chem. Chemother., (1994), 5:322-330]。ウイルス侵入に関するHIV−1上の単一部位より多くの同時阻止は、候補殺菌剤の有効性を増大することが期待される[Hu, Q., Frank, I., Williams, V., Santos, J.J., Watts, P., Griffin, G.E., Moore, J.P., Pope, M., Shattock, R.J.著「付着及び融合受容体の阻止がヒト頸部組織のHIV−1感染を阻害する(Blockade of attachment and fusion receptors inhibits HIV-1 infection of human cervical tissue)」J. Exp. Med., (2004), 199:1065-1075]。(末端マンノース残基に特異的な)標識化したガランサス・ニバリス(Galanthus nivalis)のレクチン[Hammar, L., Hirsch, I., Machado, A.A., de Mareuil, J., Baillon, J.G., Bolmont, C., Chermann, J-C著「in vitroでのHIV1型感染のレクチン介在性の効果(Lectin-mediated effects of HIV type 1 infection in vitro)」AIDS Res. Hum. Retroviruses, (1995), 11:87-95]、及び他のレクチンのgp120オリゴ糖への結合がザクロジュース又はPJ−S21の存在下で低減しなかったので(データは図示せず)、阻害剤(複数可)に対する標的部位がgp120のタンパク質部分内に位置している可能性が高い。
【0040】
モノクローナル抗体又はCD4−IgG2組み換えタンパク質によるHIV−1 gp120上のCD4結合部位の阻止は、ex vivoでのヒト頸部組織のHIV−1感染(infection)を阻害するのに十分であり[Hu, Q., Frank, I., Williams, V., Santos, J.J., Watts, P., Griffin, G.E., Moore, J.P., Pope, M., Shattock, R.J.著「付着及び融合受容体の阻止が、ヒト頸部組織のHIV−1感染を阻害する(Blockage of attachment and fusion receptors inhibits HIV-1 infection of human cervical tissue)」J. Exp. Med., 2004, 199:1065-1075]、及び経膣的に投与するときのマカクザルへのウイルス伝播(transmission)を予防するのに十分である[Veazey, R.S., Shattock, R.J., Pope, M., Kirijan, J.C., Jones, J., Hu, Q., Ketas, T., Marx, P.A., Klasse, P.J., Burton, D.R., Moore, J.P.著「HIV−1 gp120に経膣的に投与されるモノクローナル抗体によるマカクザルへのウイルス伝播の予防(Prevention of virus transmission to macaque monkeys by a vaginally applied monoclonal antibody to HIV-1 gp120)」Nat. Med., 2003, 9:343-346]ことが示されている。したがって、PJ−S21が同様に効果的であろうことが予測される。
【0041】
局所抗HIV−1殺菌剤としてのPJ−S21の投与は、異なった時間及び位置で製造されるバッチ間での適度な均一性(reasonable uniformity)を要求する。未知の保存された異なる、新たに調製したジュースと市販のジュースとの間のgp120−CD4結合阻害活性の類似点(図2)は、このことが実現可能であるはずであることを示唆している。85℃での30秒間のジュースの低温殺菌によって、阻害活性の完全な損失がもたらされた。61℃にさらされた市販のザクロジュース濃縮物1つと、及びおそらく高温での蒸発により調製された2つの別の濃縮物は、活性が全くないか、又は劇的に低減していた。PJ3(フルクトース及びクエン酸添加ジュース)からのgp120−CD4の阻害活性によって、デンプンと結合しなかった。これらの化合物がコーンスターチとの結合を阻害剤によって阻害することが、別々の実験によって明らかになった。したがって、PJ−S21複合体の製造用の(intended for)ザクロジュースは、濾過により殺菌されなければならず、添加剤を含んではならない。
【0042】
ザクロジュースからのウイルス侵入阻害剤の効果的な結合のために膣製剤において一般的に使用される医薬品賦形剤であるデンプンの選択に、特に注意しなければならない[Garg, S., Tambweker, K.R., Vermani, K., Garg, A., Kaul, C.L., Zaneveld, L.J.D.著「膣製剤に関する医薬品賦形剤の概要(Compendium of pharmaceutical excipients for vaginal formulations)」Pharmaceutical Technology Drug Delivery, (2001), Sept.:14-24. (http://ptech.adv100.com/pharmtech /data/articlestandard/pharmtech/512001/5133/article.pdf)]。試験した12個のデンプンの中では、PURITY(登録商標)21コーンスターチNFグレード(S21)で最も良好な結果が得られた。しかし、異なるブランドのデンプンが効果的である場合もあり、本発明はS21に限定されないと考えられる。試験した他のデンプンのブランドでは、阻害剤の吸着が不完全であったか、又はこれらの結合が、おそらくザクロジュース阻害剤の不可逆的結合のために、gp120−CD4結合阻害を測定するELISAでの活性を有する複合体をもたらさなかった(ARGO(登録商標)コーンスターチ)。
興味深いことに、異なる化合物に対する吸着剤としてのデンプンの使用に関して利用することができる参考文献がほんのわずかだけ存在した:風味剤[Yao, W., Yao, H.著「多孔性デンプンの吸着特性(Adsorbent characteristics of porous starch)」Starch/Starke, 2002, 54:260-263; Whistler, R.L.「微小孔性の粒状デンプンマトリクス組成物(Microporous granular starch matrix compositions)」1991年1月15日に発行された米国特許第4,985,082号]、染料[Berset, C., Clermont, H., Cheval, S.著「吸収性支持体により影響される天然の赤色着色剤の有効性(Natural red colorant effectiveness as influenced by absorptive supports)」J. Food Sci., 1995, 60:858-861, 879; Stute, R., Woelk, H.U.著「デンプンの研究に関する新たな技術である、デンプンと反応染料との相互作用。II.デンプンの固定反応の影響(Interaction between starch and reactive dyes, New technique for the investigation of starch. II. Influence of fixation reaction of starch)」Starch/Starke, 1974, 26:1-9; Seguchi, M.著「コムギデンプン粒の表面と結合する染料(Dye binding to the surface of wheat starch granules)」Cereal Chemistry, 1986, 63:518-520]、低分子量の単糖類[Tomasik, P., Wang, Y-J, Jane, J.L.著「低分子糖類とのデンプンの複合体(Complexes of starch with low-molecular saccharides)」Starch/Starke, 1995, 47:185-191)、脂質(Zhang, G., Maladen, M.D., Hamaker, B.R.著「デンプン、タンパク質、及び遊離脂肪酸から成る複合体の新規の3つの成分の検出(Detection of novel three component complex consisting of starch, protein, and free fatty acids)」J. Agric. Food Chem., 2003, 51:2801-2805; Johnson, J.M., Davis, E.A., Gordon, J.著「加工コーンスターチの脂質結合の電子スピン共鳴による研究(Lipid binding of modified corn starches studies by electron spin resonance)」Cereal Chemistry, 1990, 67:236-240]、タンパク質[Tomazic-Jezic, V.J., Lucas, A.D., Sanchez, B.A.著「グローブ粉末上の天然ゴムラテックスタンパク質の結合及び測定(Binding and measuring natural rubber latex proteins on glove powder)」J. Immunoassay Immunochem., 2004, 25:109-123]、及びヨウ素[Conde-Petit, B., Nuessli, J., Handshin, S., Escher, F.著「光学顕微鏡、流量計、及びヨウ素結合の挙動による水溶性デンプンの分散の比較特性(Comparative characterization of aqueous starch dispersions by light microscopy, rheometry, and iodine binding behavior)」Starch/Starke, 1998, 50:184-192]。
【0043】
本発明の複合体の所望の用量、例えば膣投与のためのPJ−S21は、1.0〜1.5g(=デンプン上に吸着されるザクロジュースからの固形分3.17〜4.76mg)、すなわち、in vitroでのHIV−1感染(infection)をブロックするのに必要な用量の100倍以上であり(図10、表1)、したがって、膣への攻撃(challenge)に対する適当なin vivo保護の要件を満たすことが期待される[Moore, J., Wainberg, M., Amman, A., Veazey, R., Pope, M., Shattock, R.J., Doms, R.W.著「局所殺菌剤としての融合/侵入阻害剤の開発(Development of fusion/entry inhibitors as topical microbicides)」In Proceeding of the Microbicides, (2004): 28-31 March 2004; London (http://www.microbicides2004.org.uk/progtue.html)]。この量のPJ−S21は、ザクロジュース5〜7.5ml、すなわち、この提案される候補の局所殺菌剤の安全性、実現可能性、及び経済性を実証する、一回分のジュース(a single serving of juice)(150ml)の5%以下から製造される。
【実施例】
【0044】
本発明は、以下の非限定的な実施例に関して、これから記載されるであろう。
【0045】
試薬
ザクロジュース(「PJ」)は、米国ニューヨーク州ニューヨークの地元の小売店で購入し、これらの製造元は丸かっこ内に与えられる:PJ1(Madeira Enterprises Inc.,カルフォルニア州マディラ);PJ2は、本発明者の研究所において新鮮で完熟したザクロから調製された;PJ3(Sadaf7; Sadaf7 Foods,カルフォルニア州ロサンゼルス; 付加成分:フルクトース、クエン酸);PJ4(Cortas Canning & Refrigeration Co. S.A.L.,レバノン国ベイルート);PJ5(Kradjian, Import & Wholesale Distribution,カルフォルニア州グレンデール,イラン製);PJ6(R.W. Knudson; Just Pomegranate; Knudsen & Sons, Inc.,カルフォルニア州チーコ);PJ7(Aromaproduct Ltd.,ジョージア製;販売元:Tamani, Inc.,ニューヨーク州ニューヨーク)。使用されるデンプンは、以下の通りであった:PURE−DENT(登録商標)B815コーンスターチNF、PURE−DENT(登録商標)B816コーンスターチUSP、Spress(登録商標)B825アルファ化コーンスターチNF、Spress(登録商標)B820アルファ化コーンスターチNF、INSTANT PURE−COTE(商標)B792食品用加工デンプン、INSCOSITY(商標)B656食品用加工デンプン(Grain Processing Corporation,インディアナ州マスカティーン);PURITY(登録商標)21コーンスターチNF及びPURITY(登録商標)826コーンスターチNF(National Starch and Chemical Company,ニュージャジー州ブリッジウォーター);Remyline AX−DRもち米デンプン及びRemy DR天然米デンプン、中挽き(medium grind)(A&B Ingredients,ニュージャジー州フェアフィールド);ARGO(登録商標)コーンスターチ(Best Foods Division, CPC International Inc.,ニュージャジー州イーグルウッドクリフ)、STALEY(登録商標)純食品用粉末デンプン(Tate & Lyle,イリノイ州ディケーター);STARCH1500アルファ化デンプンNF(Colorcon,ペンシルバニア州ウェストポイント)。
【0046】
以下のポリマーを使用した:ポリエチレングリコール(PEG)1000NF、1500NF、及び8000NF;並びにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC), 50 cps、USP(Spectrum,ニュージャジー州ニューブランズウィック);Carbopol974P−NF(B. F. Goodrich Co.,オハイオ州クリーブランド);Carbophil, Noveon AA1(Noveon, Inc.,オハイオ州クリーブランド);並びにPharmaburst B2(SPI Pharma,デラウェア州ニューカッスル)。Fattibaseは、Paddock Laboratories, Inc.(ミネソタ州ミネアポリス)製であった。
【0047】
以下の組み換えタンパク質を使用した:HIV−1 IIIB gp120、ビオチニル−HIV−1 IIIB gp120、CD4、及びビオチニル−CD4(ImmunoDiagnostics, Inc.,マサチューセッツ州ウォバーン);(トランスフェクトした293T細胞[Zhao, Q., Alespeiti, G., Debnath, A.K.著「CCR5とのHIV−1 gp120の結合をブロックする侵入阻害剤を同定するための新規のアッセイ(A novel assay to identify entry inhibitors that block binding of HIV-1 gp120 to CCR5)」Virol., 326:299-309]内で作られた)HIV−1 IIIB BaL gp120及びFLSC(20個のアミノ酸リンカーによりCD4のD1D2ドメインと結び付くBaL gp120から成る全長単鎖タンパク質)。
【0048】
フィコエリトリン(PE)標識化ストレプトアビジンは、R & D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)製であった。ビオチニル化ガランサス・ニバリスのレクチンは、EY Laboratories, Inc.(カルフォルニア州サンマテオ)製であった。
【0049】
gp120からの合成ペプチドに対するウサギ抗体(Neurath, A.R., Strick, N., Jiang, S.著「ウイルス集合に関与するドメイン間の相互作用を研究するためのプローブとしての合成ペプチド及び抗ペプチド抗体:ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)のエンベロープ(Synthetic peptides and anti-peptide antibodies as probes to study interdomain interactions involved in virus assembly: The envelope of the human immunodeficiency virus (HIV-1))」Virol. (1992), 188:1-13)の通りの残基の番号付け)は、Neurath他, Virol., (1992), 188:1-13で記載されるように調製された。
【0050】
CD4結合部位に特異的なモノクローナル抗体(mAb)588D、及びgp120V3ループに特異的な9284はそれぞれ、Dr. S. Zolla-Pazner及びNEN Research Products, Du Pont(マサチューセッツ州ボストン)から入手した。非核酸系HIV−1逆転写酵素阻害剤TMC−120の“generic”版[Van Herrewege, Y., Michiels, J., Van Roey, J., Fransen, K., Kestens, L., Balzarini, J., Lewi, P., Vanham, G., Janssen, P.著「ヒト免疫不全ウイルス殺菌剤としての非核酸系逆転写酵素阻害剤であるUC−781及びTMC120−R147681のin vitroでの評価(In vitro evaluation of nonnucleoside reverse transcriptase inhibitors UC-781 and TMC120-R147681 as human immunodeficiency virus microbicides)」Antimicrob. Agents Chemother., (2004), 48:337-339]がAlbany Molecular Research, Inc.(ニューヨーク州アルバニー)により合成され、5μMの最終濃度で対照実験に使用した。
【0051】
ペレット化した、1,000倍の濃度のHIV−1 IIIB(6.8×1010ウイルス粒子/ml)及びBaL(2.47×1010ウイルス粒子/ml)は、Advanced Biotechnologies, Inc.(メリーランド州コロンビア)製であった。
【0052】
最初のHIV−1分離株、MT−2細胞、HeLa−CD4−LTR−β−gal及びU373−MAGI−CCR5E細胞並びにCf2Th/synCCR5細胞は、McKesson BioServices Corporation(メリーランド州ロックビル)で運営されるエイズ研究及び参考試薬プログラム(the AIDS Research and Reference Reagent Program)から得られた。
【0053】
CD4及びCXCR4並びにCCR5共受容体(coreceptors)を発現する、HIV−1の長い末端反復配列の(LTR)−緑色蛍光タンパク質及びルシフェラーゼレポーター構築物で変換したCEMx174 5.25M7細胞[Hsu, M., Harouse, J.M., Gettie, A., Buckner, C., Blanchard, J., Cheng-Mayer, C.著「エンベロープgp120に関するCCR5指向性(CCR5-tropic)のサルAIDS誘導性のサル/ヒト免疫不全ウイルスSHIVSF162P3マップは粘膜伝播を増大するが、病原性を増大しない(Increased mucosal transmission but not enhanced pathogenicity of the CCR5-tropic, simian AIDS-inducing simian/human immunodeficiency virus SHIVSF162P3 maps to envelope gp120)」J. Virol., (2003), 77:989-998]は、Dr. Cecilia Cheng-Mayerから得られた。この細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、1μg/mlのピューロマイシン及び200μg/mlのG418が補充されたRPMI−1640培地で維持された。これらの細胞は、X4及びR5 HIV−1両方の分離株の滴定、並びに信頼できる再現性を伴う抗HIV−1剤の有効性の決定に適している。異なる個体由来の細胞間のHIV−1感染(infection)に対する感受性の違いのため、末梢血液単核細胞(PBMC)を使用することによりこのことを達成することは不可能である[Schwartz, D.H., Castillo, R.C., Arango-Jaramillo, S., Sharma, U.K., Song, H.F., Sridharan, G.著「長期間もしくは近年感染したHIV−1陽性患者における低ウイルス血症に相互関係するヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)に対するin vitroでのケモカイン非依存性の耐性(Chemokine-independent in vitro resistance to human immunodeficiency virus (HIV-1) correlating with low viremia in long-term and recently infected HIV-1-positive persons)」J. Infect. Dis., 1997, 176:1168-1174; Wu, L., Paxton, W.A., Kassam, N., Ruffing, N., Rottman, J.B., Sullivan, N., Choe, H., Sodroski, J., Newman, W., Koup, R.A., Mackay, C.R.著「in vitroでのマクロファージ指向性のHIV−1による感染力に相互関係するCCR5レベル及び発現パターン(CCR5 levels and expression pattern correlate with infectability by macrophage-tropic HIV-1, in vitro)」J. Exp. Med., 1997, 185:1681-1691; Blaak, H., Ran, L.J., Rientsma, R., Schuitmaker, H.著「NS1 HIV−1に対するin vitroで刺激したPBMCの感染しやすさは、CCR5発現及びβ−ケモカイン生成のレベルに関する(Susceptibility of in vitro stimulated PBMC to infections with NS1 HIV-1 is associated with levels of CCR5 expression and beta-chemokine production)」Virol., 2000, 167:237-246]。PBMCは、記載されているように、HIV−1陰性ドナーから単離された[Gartner, S., Popovic, M.著「ウイルス単離及び生成(Virus isolation and production)」In Techniques in HIV Research, Edited by Aldovini, A., Walker, B.D., New York; M., Stockton Press; 1990:53-70]。
【0054】
製剤
gp120−CD4結合阻害活性をザクロジュースの他の成分のほとんどから分離する試みにおいて、ザクロジュース1mlにつき、200mgの異なるデンプン調製物を添加した。20℃で1時間混合後、過剰なジュースをデカントし、このペレットを1mlの蒸留水で再懸濁した。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の結果に基づき、PURITY(登録商標)21コーンスターチ、NFグレード(S21)をさらなる研究のために選択し、対応するザクロジュース複合体をPJ−S21として表した。PJ−S21は凍結乾燥し、以下の製剤を調製するために使用した:PEG坐薬(50%PJ−S21、45%PEG 1000、5%PEG 1500);Fattibase坐薬(50%ザクロジュースS21、50%Fattibase);及び粘膜付着性の即効性の分散性錠剤(50%PJ−S21、20%HPMC、20%Pharmaburst、7.5%Carbopol974P及び2.5%Carbophil)。
【0055】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
HIV−1 IIIB及びBaLによるそれぞれの感染(infection)の阻害は、β−ガラクトシダーゼ読み出しシステムに従って決定された[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y著「アニオン性ポリマーの抗HIV−1活性:候補殺菌剤の比較研究(Anti-HIV-1 activity of anionic polymers: A comparative study of candidate microbicides)」BMC Infect. Dis., (2002), 2:27]。この酵素は、Microlight ML2250照度計(Dynatech Laboratories, Inc.,バージニア州シャンティリー)を使用してGalacto−Light Plusシステム化学発光レポーター分析(Applied Biosystems,カルフォルニア州フォスターシティ)によって定量された。殺ウイルス活性を測定するために、PEG8000での遠心分離及び/又は沈殿により過剰な不活性化剤からウイルスを分離した[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y著「アニオン性ポリマーの抗HIV−1活性:候補殺菌剤の比較研究(Anti-HIV-1 activity of anionic polymers: A comparative study of candidate microbicides)」BMC Infect. Dis. (2002), 2:27; Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y著「水分散性の殺菌性セルロースアセテートフタラートフィルム(Water dispersible microbicidal cellulose acetate phthalate film)」BMC Infect. Dis. (2003), 3:27]。処理ウイルスの連続希釈液の感染性(infectivity)を上記のように試験した。処理ウイルス及び対照ウイルスに関する用量反応曲線(すなわち、蛍光対希釈)が得られ、ウイルスの不活性化の割合を算出した[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y著「水分散性の殺菌性セルロースアセテートフタラートフィルム(Water dispersible microbicidal cellulose acetate phthalate film)」BMC Infect. Dis., (2003), 3:27]。最初のHIV−1株による感染(infection)の阻害を決定するために、37℃で3日間、段階的濃度でPJ−S21非存在又は存在下、最初のHIV−1株の100×TCID50で、CEMx174 5.25 M7細胞をインキュベートした。この実験は3点併行で行われた(done in triplicate)。Ultra384照度計(Tecan,ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク)でPromega(ウィスコンシン州マディソン)製のキットを使用して、ルシフェラーゼ活性を測定することで感染(infection)を定量化した[Hsu, M., Harouse, J.M., Gettie, A., Buckner, C., Blanchard, J., Cheng-Mayer, C.著「エンベロープgp120に関するCCR5指向性のサルAIDS誘導性のサル/ヒト免疫不全ウイルスSHIVSF162P3マップは粘膜伝播を増大するが、病原性を増大しない(Increased mucosal transmission but not enhanced pathogenicity of the CCR5-tropic, simian AIDS-inducing simian/human immunodeficiency virus SHIVSF162P3 maps to envelope gp120)」J. Virol., (2003), 77:989-998]。
【0056】
CD4−HIV−1のgp120との結合及びその阻害をELISAにより測定した。96ウェルのポリスチレンプレートのウェル(Immulon II, Dynatech Laboratories, Inc.,バージニア州シャンティリー)を100ng/ウェルのgp120 IIIB又はgp120 BaLのいずれかで被覆して、記載されているように後被覆した(post-coated)[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y.Y., Debnath, A.K.著「一般的な医薬品賦形剤であるセルロースアセテートフタラートがHIV−1を不活性化し、ウイルスエンベロープ糖タンパク質gp120上の共受容体結合部位をブロックする(Cellulose acetate phthalate, a common pharmaceutical excipient, inactivates HIV-1 and blocks the coreceptor binding site on the virus envelope glycoprotein gp120)」BMC Infect. Dis., (2001), 1:17]。100μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を含む0.14MのNaCl、0.01MのTris、0.02%ナトリウムメルチオレート(pH7.0)(TS)中のザクロジュース及びPJ−S21のそれぞれの希釈液を37℃で1時間、上記ウェルに添加した。このウェルをTSで5回洗浄した。TS−1%のゼラチン中のビオチニル−CD4(1μg/ml)を37℃で5時間、上記ウェルに添加した。TS−0.1%Tween20で1回、及びTSで5回の洗浄後、TS−2%ゼラチン−0.05%Tween20中でセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)−ストレプトアビジン(0.625μg/ml; Amersham,イリノイ州アーリントンハイツ)を添加した。37℃で30分後、このウェルをTS−0.1%Tween20で4回、及びTSで2回洗浄した。Kirkegaard and Perry Laboratories Inc. (メリーランド州ゲイサーズバーグ)製のキットを使用して、結合したHRPを検出し、450nmで吸光度(A)を読み取った。阻害剤の非存在下においてAは、1.0〜1.5であり、ビオチニル−CD4の非存在下では0〜0.005であった。代替的なアッセイでは、20℃で30分間、阻害剤の存在下、又は非存在下において、ビオチニル−gp120(1μg/ml)でCD4(500ng/ml)を混合した。この混合物の連続希釈液を抗CD4 mAb OKT 4(Ortho-Clinical Diagnostics,ニューヨーク州ロチェスター)で被覆したウェルに添加し、捕捉されたビオチニル−gp120を上記のようにHRP−ストレプトアビジンで検出した。gp120ペプチドに対する抗体のgp120との結合を測定するために、0.1%Tween20を含むFBSとヤギ血清との(9:1)混合物(pH8.0)中で、それぞれのウサギ抗血清を50倍に希釈し、gp120ウェルに添加した。結合したIgGをHRP標識化抗ウサギIgGで検出した(Sigma,ミズーリ州セントルイス;TS−10%ヤギ血清−0.1%Tween20中の1μg/ml)。細胞に基づいたELISAを使用して、PJ及びPJ−S21のそれぞれによるHIV−1 BaL gp120上のCCR5結合部位の阻止を測定した[Zhao, Q., Alespeiti, G., Debnath, A.K.著「CCR5とのHIV−1 gp120の結合をブロックする侵入阻害剤を同定するための新規のアッセイ(A novel assay to identify entry inhibitors that block binding of HIV-1 gp120 to CCR5)」Virol., 326:299-309]。簡潔に述べると、阻害剤の非存在下、又は段階的な量の存在下におけるFLSC(125ng/ml)を96ウェルプレートのウェルに5%ホルムアルデヒドで固定化されたCf2Th/synCCR5細胞に添加した。37℃で1時間後、CD4のD2ドメインに特異的なmAb M−T441(125ng/ml;Ancell,ミネソタ州ベイポート)で、続いてビオチニル化した抗マウスIgG及びHRP−ストレプトアビジンで、結合したFLSCを検出した。
【0057】
[結果]
ザクロジュースの抗HIV−1活性
ジュース(リンゴ、ブラックチェリー、ブルーベリー、ココナッツミルク、クランベリー、エルダーベリー、ブドウ(赤)、グレープフルーツ、ハチミツ、レモン、ライム、パイナップル、ザクロ、及びレッドビート(10%再構成乾燥粉末))の連続した2倍希釈液をCD4及びCXCR4の受容体(receptors)及び共受容体(coreceptors)を発現する細胞のHIV−1 IIIBによる感染(infection)の阻害に関して試験した。ブルーベリー、クランベリー、ブドウ及びライムジュースそれぞれを除くほとんどのジュース(4倍希釈)は、阻害活性を有していなかった[50%の感染(infection)阻害における終点(ED50)が1/16〜1/64]。常に、異なる地理上の区域からのザクロジュースは、最も高い阻害活性を有していた(図1;斜線部分)。共受容体(coreceptor)としてCCR5を利用するHIV−1ウイルス(=R5ウイルス)が主に性的に伝播される(transmitted)ので[Shattock, R.J., Moore, J.P.著「HIV−1感染の性的伝播の阻害(Inhibiting sexual transmission of HIV-1 infection)」Nat. Rev. Microbiol., (2003), 1:25-34; Shattock, R.J., Doms, R.W.著「AIDSモデル:殺菌剤はワクチンから学ぶことができる(AIDS models: Microbicides could learn from vaccines)」Nat. Med., (2002), 8:425]、ザクロジュースは共受容体(coreceptor)としてCXCR4を利用するウイルス(=X4ウイルス)であるHIV−1 IIIBによる感染(infection)だけでなく、R5ウイルスであるHIV−1 BaLによる感染(infection)も阻害することができるかどうかを試験することが重要であった。図1の結果(非斜線部分)は、HIV−1 IIIBによる感染ほど効果的ではないが、後者のウイルスによる感染(infection)も阻害されることを示す。
【0058】
ウイルス侵入をブロックすることは、殺菌剤開発における主な目的である[Shattock, R.J., Moore, J.P.著「HIV−1感染の性的伝播の阻害 (Inhibiting sexual transmission of HIV-1 infection)」Nat. Rev. Microbiol., (2003), 1:25-34; Moore, J.P., Doms, R.W.著「侵入阻害剤の侵入:科学と医学との融合(The entry of entry inhibitors: a fusion of science and medicine)」Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (2003), 100:10598-10602; Pierson, T.C., Doms, R.W.著「HIV−1侵入阻害剤:新たな標的、新規の治療法(HIV-1 entry inhibitors: new targets, novel therapies)」Immunol. Lett., (2003), 85:113-118; Davis, C.W., Doms, R.W.著「HIV伝播:全てのドアを閉めること(HIV Transmission: Closing all the Doors)」J. Exp. Med., (2004), 199:1037-1040; Hu, Q., Frank, I., Williams, V., Santos, J.J., Watts, P., Griffin, G.E., Moore, J.P., Pope, M., Shattock, R.J.著「付着及び融合受容体の阻止が、ヒト頸部組織のHIV−1感染を阻害する(Blockade of attachment and fusion receptors inhibits HIV-1 infection of human cervical tissue)」J. Exp. Med., (2004), 199:1065-1075]。したがって、ザクロジュースがX4及びR5ウイルス両方についての共通の受容体(common receptor)であるCD4に対するHIV−1エンベロープ糖タンパク質gp120の結合を阻害するか否かを決定することが重要であった(of interest)。ザクロジュースによるgp120 IIIB及びBaL両方の前処理が可溶性の標識化CD4のその後の結合を阻害した(図2)。このことは、1つ又は複数のザクロジュース成分がgp120上のCD4結合部位と強く、又は不可逆的に結合することを示唆していた。ポリスチレンプレート上に固定化されたgp120を使用して、ELISAで得られたこれらの結果が、gp120及びCD4の両方が可溶性形態であった別のアッセイで確認された(データは図示せず)。反対の実験では(In reverse experiments)、ザクロジュースによるCD4の前処理により、その後のgp120結合をブロックすることができなかった。抗HIV−1活性を有する他のジュース(ブルーベリー、クランベリー、ブドウ、及びライム)では、gp120−CD4結合をブロックすることができなかった。
【0059】
ザクロジュース阻害剤(複数可)によってブロックされるgp120上の部位を描写するために、gp120のアミノ酸配列由来のペプチドに対する抗体のgp120 IIIBとの結合に関するザクロジュースの阻害効果が研究された。ペプチド(102−126)、(303−338)、(306−338)、(361−392)、(386−417)、(391−425)、(411−445)及び(477−508)に対する抗体の結合は、有意に(約50%)阻害された(図3)。gp120 V3ループ(残基303−338)及びCD4結合部位にそれぞれ特異的なモノクローナル抗体9284及び588Dのgp120 IIIBとの結合[Skinner, M.A., Ting, R., Langlois, A.J., Weinhold, K.J., Lyerly, H.K., Javaherian, K., Matthews, T.J.著「HIVエンベロープ糖タンパク質に対する中和モノクローナル抗体の特性(Characteristics of a neutralizing monoclonal antibody to the HIV envelope glycoprotein)」AIDS Res. Hum. Retroviruses, (1988), 4:187-197; Laal, S., Zolla-Pazner, S.著「ヒト免疫システムにより認識されるHIV−1糖タンパク質のエピトープ(Epitopes of HIV-1 glycoproteins recognized by the human immune system)」In Immunochemistry of AIDS, Chemical Immunology, Volume 56, Edited by Norrby E. Basel: Karger; 1993:91-111]は、それぞれ97%阻害された。この関連ペプチドの幾つかには、CD4結合に関与する残基が含まれており[Kwong, P.D., Wyatt, R., Robinson, J., Sweet, R.W., Sodroski, J., Hendrickson, W.A.著「CD4受容体及び中和ヒト抗体を伴う複合体中のHIV gp120エンベロープ糖タンパク質の構造(Structure of an HIV gp120 envelope glycoprotein in complex with the CD4 receptor and a neutralizing human antibody)」Nature, (1998), 393:648-659; Xiang, S.H., Kwong, P.D., Gupta, R., Rizzuto, C.D., Casper, D.J., Wyatt, R., Wang, L., Hendrickson, W.A., Doyle, M.L., Sodroski, J.著「CD4結合状態の変異原性の安定化及び/又は崩壊が、ヒト免疫不全ウイルス1型のgp120エンベロープ糖タンパク質の異なる構造を明らかにする(Mutagenic stabilization and/or disruption of a CD4-bound state reveals distinct conformations of the human immunodeficiency virus type 1 gp120 envelope glycoprotein)」J. Virol., (2002), 76:9888-9899; Pantophlet, R., Ollmann Saphire, E., Poignard, P., Parren, P.W.I., Wilson, I.A., Burton, D.R.著「中和及び非中和モノクローナル抗体のヒト免疫不全ウイルス1型のgp120のCD4結合部位との相互作用の精細なマッピング(Fine mapping of the interaction of neutralizing and nonneutralizing monoclonal antibodies with the CD4 binding site of human immunodeficiency virus type 1 gp120)」J. Virol., (2003), 77:642-658]、その一方で全ての識別されるペプチドには、共受容体(coreceptor)結合に関与する残基が含まれる[Westervelt, P., Gendelman, H.E., Ratner, L.著「一次単球の増殖感染にとって重要であるヒト免疫不全ウイルス1の表面エンベロープ糖タンパク質内の決定基の同定(Identification of a determinant within the human immunodeficiency virus 1 surface envelope glycoprotein critical for productive infection of primary monocytes)」Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1991), 88:3097-3101; Westervelt, P., Trowbridge, D.B., Epstein, L.G., Blumberg, B.M., Li, Y., Hahn, B.H., Shaw, G.M., Price, R.W., Ratner, L.著「in vivoでのヒト免疫不全ウイルス1型のマクロファージ指向性の決定基(Macrophage tropism determinants of human immunodeficiency virus type 1 in vivo)」J. Virol., (1992), 66:2577-2582; Rizzuto, C.D., Wyatt, R., Hernandez-Ramos, N., Sun, Y., Kwong, P.D., Hendrickson, W.A., Sodroski, J.著「ケモカイン受容体結合に関与する保存されたHIV gp120糖タンパク質構造(A conserved HIV gp120 glycoprotein structure involved in chemokine receptor binding)」Science, (1998), 80:1949-1953; Cormier, E.G., Dragic, T.著「V3ループの頂部及び基部はCCR5共受容体とのヒト免疫不全ウイルス1型エンベロープ糖タンパク質の相互作用において異なる役割を果たす(The crown and stem of the V3 loop play distinct roles in human immunodeficiency virus type 1 envelope glycoprotein interactions with the CCR5 coreceptor)」J. Virol., (2002), 76:8953-8957; Suphaphiphat, P., Thitithanyanont, A., Paca-Uccaralertkun, S., Essex, M., Lee, T-H著「CCR5利用に対するヒト免疫不全ウイルス1型C亜型のgp120におけるV3及び架橋シート残基のアミノ酸置換の効果(Effect of amino acid substitution of the V3 and bridging sheet residues in human immunodeficiency virus type 1 subtype C gp120 on CCR5 utilization)」J. Virol., (2003), 77:3832-3837; Liu, S., Fan, S., Sun, Z.著「分子モデリング研究によるHIV gp120エンベロープ糖タンパク質とCD4受容体との複合体におけるヒトCCR5受容体の構造的及び機能的特性(Structural and functional characterization of the human CCR5 receptor in complex with HIV gp120 envelope glycoprotein and CD4 receptor by molecular modeling studies)」J. Mol. Model (Online) (2003), 9:329-336]。gp120のX線結晶構造上で結合している受容体(receptor)/共受容体(coreceptor)に関する上記ペプチド及び残基の位置を図4に示す。これらの結果は、ザクロジュース阻害剤(複数可)がgp120−共受容体(coreceptor)結合もブロックすることができることを示唆している。
【0060】
ザクロジュースからの抗HIV−1阻害剤(複数可)の分離
ザクロジュースは強い色調である。したがって、ザクロジュースが衣類を染めては良くないので、直接殺菌剤に処方することができない。ザクロジュースから活性成分(複数可)を分離又は単離する試みが為された。これを達成するために4年を超える断続的な努力の後、gp120−CD4結合の阻害剤(複数可)をコーンスターチの選択されたブランド上で効果的に(99%以上)吸着することができることを発見し(図5)、結果としてほぼ無色の製品ができ、PJ−S21として表した。水又は非緩衝(unbuffered)0.14MのNaCl中で懸濁したPJ−S21はpH3.2であり、これは適用後に安定を保つであろう酸性の膣環境に適合する(本明細書を参照のこと)。gp120−CD4結合の阻害剤は、5:4のエタノール/アセトンでの抽出によってPJ−S21から溶出することができた。この抽出物の乾燥に続く重量測定によって、この抽出物が1gのPJ−S21に付き3.17mgの固体を含むことが示された。
【0061】
PJ−S21は、フローサイトメトリーによって測定したところ、元のザクロジュースと同程度まで、CXCR4を発現する細胞とのgp120 IIIB−CD4複合体の結合を阻害した(図6)。同様に、細胞に基づいたELISAによって測定したところ、CCR5を発現する細胞とのgp120 BaL−CD4融合タンパク質の結合が、ザクロジュース及びPJ−S21によってブロックされた[Zhao, Q., Alespeiti, G., Debnath, A.K.著「CCR5とのHIV−1 gp120の結合をブロックする侵入阻害剤を同定するための新規のアッセイ(A novel assay to identify entry inhibitors that block binding of HIV-1 gp120 to CCR5)」Virol., 326:299-309](図7)。したがって、PJ−S21は、細胞受容体(receptor)CD4及び共受容体(coreceptors)CXCR4/CCR5へのX4及びR5ウイルス両方の結合の阻害剤である。また、PJ−S21は、フローサイトメトリーにより測定したところ、PBMCとのgp120の結合を阻害した(図8−A及び図8−B)。PJ−S21がウイルス侵入阻害剤として働くことを確認するために、HIV−1 IIIB及びBaLのそれぞれによる細胞感染(infection)の前後、時間の間隔をおいて、上記複合体を細胞に添加した。図9で示される結果は、PJ−S21がウイルス複製サイクルの初期段階で阻止することを実証している。
【0062】
PJ−S21が局所殺菌剤と考えられるためには、熱帯環境での保存に耐えるように処方しなければいけない。熱安定性の加速(Accelerated)研究は、PJ−S21の水懸濁液が、60℃で30分間、及び50℃で又は40℃で1週間保存したとき、それぞれ、(gp120−CD4結合の阻害によって測定された)この元の活性の4、11、及び33%だけ維持したことを明らかにした。その一方で、乾燥PJ−S21粉末は50℃での12週間(評価において利用した最長時間)の保存後にも完全な活性を保った。結果として、無水製剤が望ましいであろう。
【0063】
3つのこのような製剤を調製した:37℃で溶解する2種類の坐薬、及び錠剤(本明細書で記載される組成物)。PJ−S21の阻害活性は、錠剤で50℃、及び坐薬で30℃(溶解を妨げると思われる最高温度)での12週間の保存のあと、完全に保存された。HIV−1 IIIB及びBaLそれぞれによる感染(infection)の、PJ−S21及びその製剤による阻害を示すデータ(PJ−S21以外の抗HIV−1阻害剤も含む錠剤、すなわち、Carbopol974P[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y著「アニオン性ポリマーの抗HIV−1活性:候補殺菌剤の比較研究(Anti-HIV-1 activity of anionic polymers: A comparative study of candidate microbicides)」BMC Infect. Dis., (2002), 2:27]を除いた)を図10に要約する。元のザクロジュースの阻害活性(図1)とは違って、HIV−1 IIIB及びBaLに対するこれらの阻害活性は同程度であった。感染(infection)の阻害に十分な組成物のより高い濃度であっても、これらの製剤は殺ウイルス性でもあった。また、これらの実験は、利用される実験条件下でPJ−S21が細胞毒性ではなかったことを明らかにした。この阻害/殺ウイルス活性が、精液(SF)とPJ−S21との比が1:1(w/w)であるSFの存在下で維持された(データは図示せず)。
【0064】
殺菌剤が、異なるウイルスクレード及び表現型に属する最初のウイルス分離株に対する抗ウイルス活性を有する場合に限り、成功する可能性があると考えることができる。PJ−S21がR5及びX4R5(=二重指向性)表現型を有する試験された全てのクレードの一次HIV−1株による感染(infection)を阻害したので、PJ−S21はこの要件を満たす(表1)。
【0065】
PJ−S21は、“AAAA”候補殺菌剤、すなわち、開発からマーケティングへの移行において、許容可能、利用可能、手軽に入手可能及び促進性であるとして分類することができる。したがってPJ−S21は、抗レトロウイルス剤及びおそらく幾つかの他の候補殺菌剤に関する幾つかの問題、すなわち、副作用の可能性に関する不確定性、安価で大規模な製造を確立するのに必要な資本及び時間、並びに供給の独占を回避することが期待されるだろう。
【0066】
【表1】

ED50(90)=感染(infection)の50%(90%)阻害に関する有効量(複数可)
【0067】
1gのPJ−S21には、ザクロジュースからデンプンに吸着した阻害剤がおよそ3.2mg含まれている。
【0068】
本明細書は、例示として記載されるが、これに限定されず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更が為され得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】ザクロジュース(PJ)による、HeLa−CD4−LTR−β−gal細胞及びU373−MAGI−CCR5E細胞のそれぞれのHIV−1感染(infection)の阻害を示すグラフである。斜線部分=HIV−1 IIIB、非斜線部分=HIV−1 BaL。4つの異なるザクロジュース(PJ1〜PJ4)を試験した。感染(infection)は、β−ガラクトシダーゼを測定することによってモニタリングされた。
【図2】ザクロジュース(PJ)による、組み換えgp120 IIIB及びBaLのそれぞれとのCD4の結合の阻害を示すグラフである。ザクロジュースの希釈液を37℃で1時間、ウェルにインキュベートした。ジュースの除去、及びウェルの洗浄後、ビオチニル−CD4が添加され、ウェルとの結合がELISAにより測定された。
【図3】ザクロジュース(PJ)による、gp120配列からの合成ペプチドに対する抗体のgp120との結合の阻害を示すグラフである。4倍希釈したザクロジュースを37℃で1時間、gp120 IIIBで被覆されたポリスチレンプレートのウェルにインキュベートした。ザクロジュースの除去後、ウェルを洗浄し、50倍に希釈した抗ペプチド抗血清[Neurath, A.R., Strick, N., Jiang, S.著「ウイルス集合に関与するドメイン間の相互作用を研究するためのプローブとしての合成ペプチド及び抗ペプチド抗体:ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)のエンベロープ(Synthetic peptides and anti-peptide antibodies as probes to study interdomain interactions involved in virus assembly: The envelope of the human immunodeficiency virus (HIV-1))」Virol., (1992), 188:1-13]が添加された。結合したIgGは、ELISAにより定量化された。ザクロジュースは、対照ウェルには添加されなかった。それぞれの対照ウェルと比較した吸着の低減が、プロットされた。
【図4】X線結晶構造から得られ、抗ペプチド抗体に対応する部分のgp120構造上の位置を示す図であり、抗ペプチド抗体のgp120との連結は、ザクロジュース(斜線部分)及びCD4及びCXCR4/CCR5共受容体(coreceptor)結合に関与するアミノ酸残基の存在下でそれぞれ50%以上阻害される。この構造の非斜線部分が、gp120との連結がザクロジュースによって有意には阻害されていない、抗ペプチド抗体に対応している。中和抗体のCD4ドメイン及び抗原結合性フラグメントをgp120−CD4−抗体複合体の構造から取り出した[Kwong, P.D., Wyatt, R., Robinson, J., Sweet, R.W., Sodroski, J., Hendrickson, W.A.著「CD4受容体及び中和ヒト抗体を伴う複合体中のHIV gp120エンベロープ糖タンパク質の構造(Structure of an HIV gp120 envelope glycoprotein in complex with the CD4 receptor and a neutralizing human antibody)」Nature, (1998), 393:648-659]。(タンパク質データバンク(pdb)(http://www.rcsb.org/pdb/)から取ってきた1gc1)。ホモロジーモデリングで生成したV3ループを上記のようにgp120構造に付与した[Neurath, A.R., Strick, N., Li, Y-Y, Debnath, A.K.著「一般的な医薬品賦形剤であるセルロースアセテートフタラートがHIV−1を不活性化し、ウイルスエンベロープ糖タンパク質gp120上の共受容体結合部位をブロックする(Cellulose acetate phthalate, a common pharmaceutical excipient, inactivates HIV-1 and blocks the coreceptor binding site on the virus envelope glycoprotein gp120)」BMC Infect. Dis., (2001), 1:17]。この図は、Molscript[Kraulis, P.J.著「MOLSCRIPT:タンパク質構造の詳細なプロット及び概要のプロットの両方を作り出すプログラム(MOLSCRIPT: a program to produce both detailed and schematic plots of protein structures)」J. Appl. Cryst., (1991), 24:946-950)及びRaster3D(Bacon, D.J., Anderson, W.F.著「空間充填の分子図を得るための高速アルゴリズム(A fast algorithm for rendering space-filling molecule pictures)」J. Mol. Graphics, (1988), 6:219-220; Merritt, E.A., Bacon, D.J.著「Raster3D:写真のようにリアルな描写の分子グラフィクス(Raster3D, Photorealistic molecular graphics)」Methods Enzymol., (1997), 277:505-524]で作り出された。gp120可変ループ(V1−V5)並びにこの配列のN−末端及びC−末端の位置が表されている。
【図5】コーンスターチ上へのザクロジュース(PJ)由来のgp120−CD4結合阻害剤(複数可)の吸着を示すグラフである。コーンスターチ(PURITY(登録商標)21、NFグレード(S21)、200mg/ml)を微粒子を除去するために前濾過したザクロジュースに添加した。およそ20℃で1時間の混合後、デンプンを沈澱させ、上澄みを吸引で除去した。リン酸緩衝生理食塩水で再懸濁した(200mg/ml)ペレット及び上澄みを図2で記載されるように、gp120 IIIBとのCD4の結合の阻害に関して、連続希釈法で試験した。その後、gp120 BaL−CD4結合に対する再懸濁したペレットの阻害活性を確認した。対照のデンプンは、gp120−CD4結合を阻害しなかった。
【図6】CXCR4共受容体(coreceptors)を発現する細胞と結合するgp120 IIIB−CD4複合体のザクロジュース(PJ)及びPJ−S21それぞれによる阻害を示すグラフである。HIV−1 IIIB gp120(5μg)及びビオチニル−CD4(2.5μg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS−BSA)100μlに添加した。なおこのリン酸緩衝生理食塩水は、ウシ血清アルブミン(BSA)100μg/mlと、ザクロジュース(PJ)(最終希釈3倍)又はPJ−S21(67mg)とを含む。20℃で1時間後、それぞれの混合物を10個のMT−2細胞に添加した。30分後、細胞をPBS−BSAで3回洗浄して、PE−ストレプトアビジン(ビオチンに特異的な蛍光標識、0.1μg)を添加した。20分後、この細胞を洗浄し、PBS中の1%ホルムアルデヒドで固定化した。フローサイトメトリー分析をFACSCaliburフローサイトメーターで実施した(Becton Dickinson Immunocytometric Systems,カルフォルニア州サンノゼ)。gp120−CD4、gp120−CD4+PJ、gp120−CD4+PJ−S21、及び対照細胞にさらされた細胞に関する平均の相対蛍光値は、それぞれ、13.7、4.0、4.3、及び2.1であった。
【図7】ザクロジュース及びPJ−S21それぞれによるCf2Th/synCCR5細胞を発現するCCR5と結合するFLSCの阻害を示すグラフである。FLSCは、CD4のD1D2ドメインと結び付くgp120 BaLから成るキメラ組み換えタンパク質である。この阻害効果は、細胞に基づいたELISAを使用して定量された[Zhao, Q., Alespeiti, G., Debnath, A.K.著「CCR5とのHIV−1 gp120の結合をブロックする侵入阻害剤を同定するための新規のアッセイ(A novel assay to identify entry inhibitors that block binding of HIV-1 gp120 to CCR5)」Virol., 326:299-309]。PJ−S21の開始濃度は、200mg/mlだった。
【図8−A】末梢血液の単核細胞(PBMC)と結合するビオチニル−gp 120 IIIBのPJ−S21による阻害を示すグラフである。HIV−1 IIIBビオチニルgp120(5μg)を段階的な量のPJ−S21を含むPBS−BSA100μlに添加した。20℃で1時間後、それぞれの混合物を10個のPBMCに添加した。30分後、細胞をPBS−BSAで3回洗浄して、PE−ストレプトアビジン(0.1μg)を添加した。続いて、上記の図6の手順を使用した。対照細胞並びにPJ−S21の非存在下及び存在下(100mg/ml)でビオチニル−gp 120にさらされた細胞に関する平均の相対蛍光値は、それぞれ、4.1、81.31、及び12.2であった。100mgのPJ−S21が、デンプン上のザクロジュースから吸収された固体およそ320μgに対応する。
【図8−B】末梢血液の単核細胞(PBMC)と結合するビオチニル−gp 120 IIIBのPJ−S21による阻害を示すグラフである。HIV−1 IIIBビオチニルgp120(5μg)を段階的な量のPJ−S21を含むPBS−BSA100μlに添加した。20℃で1時間後、それぞれの混合物を10個のPBMCに添加した。30分後、細胞をPBS−BSAで3回洗浄して、PE−ストレプトアビジン(0.1μg)を添加した。続いて、上記の図6の手順を使用した。対照細胞並びにPJ−S21の存在下(6.25、及び3.12mg/ml)でビオチニル−gp 120にさらされた細胞に関する平均の相対蛍光値は、それぞれ、4.1、35.2、及び50.0であった。
【図9】HIV−1 IIIB又はBaL複製の阻害が、感染前(pre-infection)又は感染後(post-infrection)のPJ−S21添加の時間によって変化することを示すグラフである。比較のために、HIV−1後に、異なる間隔で細胞に添加される非核酸系の逆転写酵素阻害剤TMC−120による感染(infection)の阻害を測定した(点線)。ウイルス感染(infection)をβ−ガラクトシダーゼの定量により測定した。
【図10】PJ−S21及びこの製剤のHIV−1阻害性及び殺ウイルス活性を示すグラフである。HIV−1 IIIB及びBalのそれぞれによる感染(infection)の阻害は、図1で記載されているように測定した。殺ウイルス活性を測定するために、それぞれのウイルスを段階的な量のPJ−S21で37℃で5分間、混合した。低速度の遠心分離のあと、PEG8000による沈澱及び遠心分離によりウイルスを分離させた。再懸濁したペレット及び対照の未処理のウイルスを連続して希釈し、希釈液の感染性(infectivity)を検査した。横座標上に与えられる濃度範囲は、ザクロジュースからデンプンに吸着される固体0.31〜1,268μgに対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンと、該デンプンが水不溶性の形態であるとき該デンプン上に吸着される、ザクロジュースの抗HIV−1活性成分又は抗HIV−2活性成分とを含む(comprising)複合体であって、HIV−1感染(infection)又はHIV−2感染(infection)を阻害し、CD4受容体(receptor)並びにCCR5及びCXCR4共受容体(coreceptors)とのHIV−1又はHIV−2の結合をブロックする複合体。
【請求項2】
HIV−1感染(infection)を阻害する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
HIV−2感染(infection)を阻害する、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
デンプン100〜250mgをザクロジュース1mlと混合することにより製造される、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する請求項1に記載の複合体、及び薬学的に許容可能なキャリアを含む(comprising)薬学的組成物。
【請求項6】
薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する請求項1に記載の複合体をヒトの粘膜に投与することを含む(comprising)、ヒトにおけるHIV−1感染(infection)又はHIV−2感染(infection)を予防する方法。
【請求項7】
HIV−1感染(infection)を予防するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
HIV−2感染(infection)を予防するための、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が膣投与によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が直腸投与によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
薬学的に有効な量の抗HIV−1又は抗HIV−2を有する請求項5に記載の薬学的組成物をヒトの粘膜に投与することを含む(comprising)、ヒトにおけるHIV−1感染(infection)又はHIV−2感染(infection)を予防する方法。
【請求項12】
HIV−1感染(infection)を予防するための、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
HIV−2感染(infection)を予防するための、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複合体が0.5〜3g投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記投与が膣投与によって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記投与が直腸投与によって行われる、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−A】
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【図8−B】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−513468(P2008−513468A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532466(P2007−532466)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/032979
【国際公開番号】WO2006/033971
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591090208)ニューヨーク ブラッド センター,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】