説明

HIV感染のペプチド誘導体融合阻害剤

【課題】HIVおよびSIVの治療に有用な新規のペプチド組成物の提供。
【解決手段】ウイルス感染阻害剤であるgp41ペプチド誘導体、および/または抗融合誘導性を示すgp41ペプチド誘導体。天然gp41タンパク質配列に基づくヘリックス形成ペプチドであり、ペプチドの選択されたアミノ酸を変えることによって改変されている。改変されるアミノ酸は、ウイルスのエンベロープタンパク質gp41のヘリックスとのコイルドコイル複合体形成に寄与する相互作用の混乱を避けるように選択される。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)に対して阻害活性を有し、それぞれのウイルス感染を治療するための作用期間が延長したgp41誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、ウイルス感染阻害剤である、および/または抗融合誘導性を示す、ヒト免疫不全ウイルス(以下「HIV」)gp41 C末端ペプチド誘導体に関する。特に、本発明は、HIVおよびサル免疫不全ウイルス(以下「SIV」)に対して阻害活性を有し、溶解性が改善し、それぞれのウイルス感染を治療するための作用期間が延長した、ペプチド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の概要
膜融合事象は正常な細胞生物学的プロセスにおいてありふれたものである。膜融合はまた様々な疾患状態(例えば、細胞へのエンベロープウイルスの侵入を含む)にも関与している。エンベロープウイルスの中には、ウイルスエンベロープのタンパク質と細胞表面タンパク質との特異的な結合反応が起こり、それにより関連するウイルスタンパク質の高次構造が変化し、その結果としてウイルスエンベロープと細胞膜の融合が促進することによって標的細胞と融合するものもある。
【0003】
エンベロープウイルスの1つであるHIVはレトロウイルスのレンチウイルス科の一員である。HIVには2つの主要な型であるHIV-1およびHIV-2が存在し、それぞれの型には様々な株が同定されている。HIVとその宿主細胞の融合は、ウイルスエンベロープタンパク質gp120およびgp41と、細胞表面のCD4糖タンパク質およびケモカイン補助受容体(chemokine co-receptor)との結合によって媒介される。gp120とT細胞表面のCD4との結合およびgp120と補助受容体(例えば、CCR5またはCXCR4)との結合の後に、gp41が標的細胞の膜に挿入される。次いで、gp41のN末端部分に由来するヘリックスが同じタンパク質のC末端部分に由来するヘリックスとコイルドコイル構造を形成し、それによってウイルスおよび細胞が融合する(Malashkevich,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998 Aug 4;95(16):9134-9(非特許文献1))。
【0004】
膜融合に関連する事象を阻害するか、または混乱させる(例えば、非感染細胞へのレトロウイルス伝播の阻害を含む)ペプチドが知られている。HIVエンベロープタンパク質gp41の第2の7アミノ酸繰り返し領域(heptad repeat region)に由来するペプチド(T20(DP178)およびC34を含む)はインビトロでHIVに対して強力な抗ウイルス活性を示した(Wild,et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:9770-4(非特許文献2);Chan,et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:15613-15617(非特許文献3)を参照のこと)。証明された抗ウイルス活性として、遊離ウイルスによるCD4+細胞感染の阻害および/または感染CD4+細胞と非感染CD4+細胞との間のHIVによる合胞体形成の阻害が挙げられる。阻害は、これらのペプチドとgp41の第1の7アミノ酸繰り返し領域が結合し、従って、第1の7アミノ酸繰り返し領域と第2の7アミノ酸繰り返し領域が融合誘導性ヘアピン構造を形成しないようにすることによって生じると考えられている。
【0005】
当技術分野において述べられている抗ウイルスペプチドまたは抗融合誘導性ペプチドの多くはインビトロでは強力な抗ウイルス活性および/または抗融合誘導活性を示すが、主に急速な血清クリアランスならびにペプチダーゼ活性およびプロテアーゼ活性のために、インビボでは短い半減期を欠点として有する。これは、結果として、ペプチドの有効抗ウイルス活性を著しく低下させる。従って、抗融合誘導活性に実質的に悪影響を及ぼすことなく、インビボでのペプチドの半減期を延長する方法が必要とされている。
【0006】
ペプチドの半減期を延長する方法の1つは米国特許第5,612,034号(特許文献1)に開示され、この特許は、治療用ペプチドと血流に見られる天然タンパク質を共有結合する方法について述べている。ペプチドは、血流中のタンパク質に存在する官能基と反応することができる化学的反応性部分を用いて改変される。この改変ペプチドを血流に注入すると、改変ペプチドは半減期の長い血液成分と連結し、半減期の長いペプチドデポー剤を形成する。しかしながら、血流中のタンパク質の分子量が50〜600kDに及ぶので、このような連結ペプチドの生物学的活性は、サイズが非常に大きな方のタンパク質の立体障害によって損なわれる可能性があるという懸念がある。
【0007】
既知の抗融合誘導性ペプチドの半減期を延長しようという試みは、Conjuchem,Inc.による国際特許公開公報WO00/69902(特許文献2)(以下「‘902公報」)に開示されている。この開示では、DP178が、3-マレイミドプロピオン酸をリジンのεアミノ基にアミド結合によって取り付け、次に、これをDP178のC末端Pheにペプチド結合によって連結することによって改変されている。‘902公報はまた、DP178または他のHIVウイルス分離株に由来するgp41の対応する断片が短縮されたものである、改変DP178類似体も有する。‘902公報は、抗融合誘導性ペプチドを得るための他のどの設計基準も示唆していない。
【0008】
従って、抗融合誘導活性に実質的に悪影響を及ぼすことなく、インビボでのペプチドの半減期を延長する方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,612,034号
【特許文献2】国際特許公開公報WO00/69902
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Malashkevich,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998 Aug 4;95(16):9134-9
【非特許文献2】Wild,et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:9770-4
【非特許文献3】Chan,et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:15613-15617
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
本発明は、抗ウイルス活性、ウイルス抑制(virostatic)活性、および/または抗融合誘導活性を有する、HIV gp41ペプチド誘導体に関する。このHIV gp41ペプチド誘導体として、表1、表2、および表3、ならびに図1の改変ペプチド、ならびにその改変型および誘導体型(以下、総称して「変異体gp41ペプチド」と呼ぶ)が挙げられるが、これに限定されない。これらの変異体gp41ペプチドはインビボ安定性が増大し、ペプチダーゼ分解またはプロテアーゼ分解に対する感受性が低下している。結果として、変異体gp41ペプチドは、非改変HIV gp41ペプチドで考えられるような頻繁な投与またはさらには連続的な投与の必要を最小限にする。本発明のペプチド誘導体および他のウイルスに由来するgp41様配列に対して本発明の方法を用いて作成された誘導体、例えば、多くのウイルス(HIVおよびSIVが挙げられるが、これに限定されない)の感染に対する予防薬および/または治療剤として使用することができる。
【0012】
本発明によって、今や、HIV gp41の対応する非改変ペプチド配列と比較して溶解性および抗ウイルス活性が上昇したペプチド誘導体が提供される。さらに詳細に説明すると、本発明は、以下の表1、表2、および表3、ならびに図1に示した式の化合物に関し、インビボまたはエクスビボで血液成分のチオール基と反応して安定な共有結合を形成することができるペプチド誘導体を含む。
【0013】
(表1)gp41および改変類似体のペプチド断片

【0014】
(表2)マレイミド改変ペプチド



【0015】
本発明は、活性および溶解性を改善するために導入された、天然ペプチドと比較して予め決められた残基の改変(すなわち、点変異)を有するペプチドを含む新規の組成物を提供する。予め決められた残基は、表3に見られるペプチド配列の下線のアミノ酸残基からなる。残基が改変されたペプチドは、天然アミノ酸残基が高親水性または高疎水性の特性を有するアミノ酸残基で置換された置換アミノ酸残基を含むが、これに限定されない。変異体gp41ペプチドはまた、αヘリックス形成傾向が高いアミノ酸残基で置換されてもよい。または、残基が改変されたペプチドは、予め決められたアミノ酸残基にカップリング基が結合され、それにより誘導体化ペプチドと血液成分との共有結合を可能にする誘導体化アミノ酸残基を含むが、これに限定されない。
【0016】
別の局面において、本発明は、前記の式の誘導体と薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。このような組成物は、HIV(HIV-1、HIV-2、およびその全ての血清型を含む)ならびにSIVの活性を阻害するのに有用である。
【0017】
本発明のさらなる態様において、HIVまたはSIVの感染を阻害する方法が提供される。この方法は、ウイルス阻害に有効な量の1つまたは複数の変異体gp41ペプチドを単独で、または薬学的担体と併用して、または他の抗ウイルス剤(他の変異体gp41ペプチドを含む)と併用して対象(好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒト)に投与する段階を含む。本発明の特に好ましい態様では、変異体gp41ペプチドの少なくとも1つが単独で、または薬学的担体と併用して、または他の抗ウイルス剤(他の変異体gp41ペプチドを含む)と併用してウイルス阻害量で対象に投与されてもよい。
【0018】
本発明のさらなる局面において、血液成分に共有結合された変異体gp41ペプチドの少なくとも1つを含む結合体が提供される。本発明の1つの態様において、本発明の化合物との反応に好ましい血液成分として、免疫グロブリン(IgGおよびIgMを含む)、血清アルブミン、フェリチン、ステロイド結合タンパク質、トランスフェリン、チロキシン結合タンパク質、α-2-マクログロブリンなどのタンパク質が挙げられ、血清アルブミンおよびIgGが本発明のより好ましい態様であり、血清アルブミンが本発明の最も好ましい態様である。
【0019】
本発明のさらなる局面において、対象における変異体gp41ペプチドのインビボ半減期を延長する方法が提供される。この方法は、変異体gp41ペプチドの1つまたはそれ以上を血液成分に共有結合する段階を含む。
【0020】
本発明の別の態様において、様々なウイルスに対して抗ウイルス活性、ウイルス抑制活性、または抗融合誘導活性を有する新規のペプチドを設計、合成、および試験する方法が提供される。この方法は、細胞侵入に関連するウイルスタンパク質をスクリーニングして、αヘリックスを形成する傾向のあるペプチド配列を同定する段階、およびこれらのペプチドから、同じウイルスにより引き起こされる疾患を治療するのに使用することができる組成物を設計する段階を含む。この方法はまた、抗ウイルス活性、ウイルス抑制活性、または抗融合誘導活性を確かめるためのペプチド組成物のインビトロ試験も意図する。
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する「誘導体化」は、ペプチド配列へのカップリング基の付加を意味するものとする。代表的なカップリング基は以下でさらに詳細に示される。
【0022】
本明細書で使用する「改変」は、天然ペプチド配列の中の第1のアミノ酸を第2のアミノ酸で置換することを意味するものとする。第2のアミノ酸は、親水性アミノ酸、疎水性アミノ酸、ヘリックス傾向を有するアミノ酸、非天然アミノ酸、および天然L-アミノ酸のD-異性体の限定しない群から選択されてもよい。
【0023】
HIV-1および関連するレンチウイルスと標的細胞との融合は、融合を行う天然ウイルスエンベロープタンパク質のペプチド断片によって阻害することができる。これらのペプチド断片はエンベロープタンパク質に結合し、ウイルスエンベロープタンパク質の末端部分の結合を阻害し、それによって、HIV-1と標的細胞との融合に重要な天然タンパク質の高次構造変化を阻害することができる。これらのペプチドは、ウイルスと細胞との融合を阻害することによって、疾患進行に必要な感染プロセスを妨害する。
【0024】
本発明は、既存の抗ウイルスペプチドおよび抗融合誘導ペプチドの特性を改善し、HIVおよびSIVの治療に有用な新規のペプチド組成物を提供する。本発明のペプチドによって阻害することができるウイルスとして、ヒトレトロウイルスHIV(HIV-1およびHIV-2、ならびにその全ての他の血清型を含む)、ならびにSIVが挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
改変ペプチド
本発明に従って、レンチウイルスに対する抗融合誘導活性を有する改変誘導体化ペプチドを調製することができる。この抗融合誘導ペプチドは天然gp41タンパク質配列に基づくヘリックス形成ペプチドであり、ペプチドの選択されたアミノ酸を変えることによって改変されている。改変されるアミノ酸は、ウイルスのエンベロープタンパク質gp41のヘリックスとのコイルドコイル複合体形成に寄与する相互作用の混乱を避けるように選択される。1つの態様において、改変のために選択されるアミノ酸残基は、コイルドコイル境界から離れたところにある側鎖を有するアミノ酸残基である。これらの残基はペプチドの疎水性もしくは親水性を高める別の残基で置換されるか、または、ペプチドと循環血液タンパク質との共有結合を可能にする反応性部分を生じるように誘導体化される。ペプチド配列に親水性残基を導入すると、ペプチドの溶解性が増大する。ペプチド配列に疎水性残基を導入すると、ペプチドの溶解性が減少する。本発明の1つの態様において、改変ペプチドは、FB005、FB006、およびFB066で示されるペプチド、特に、マレイミドカップリング部分(例えば、[2-(2-アミノ-エトキシ)エトキシ]酢酸によってリジンにカップリングされた3-マレイミドプロピオン酸)または他の等価なカップリング構造を有する、これらのペプチドの誘導体を含む。本発明の別の態様において、ペプチド配列の中のアミノ酸は、αヘリックスを形成する傾向を有するアミノ酸で置換される。
【0026】
または、例えば、ペプチドの安定性、反応性、および/または溶解性が上昇するように、化学基がペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端に付加されてもよい。例えば、カルボベンゾキシル基、ダンシル基、アセチル基、またはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水基がペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。同様に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシ-カルボニル基がペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。さらに、疎水基t-ブチルオキシカルボニルまたはアミド基がペプチドのカルボキシ末端に付加されてもよい。同様に、p-ニトロベンジルエステル基がペプチドのカルボキシ末端に配置されてもよい。このような改変を導入する技法は当業者に周知である。
【0027】
ペプチドは、ペプチドの立体配置が変化するように合成されてもよい。例えば、通常のL-異性体ではなく、ペプチドのアミノ酸残基の1つまたは複数のD-異性体が使用されてもよい。本発明の1つの態様において、少なくとも2つまたはそれ以上のアミノ酸置換は天然L-アミノ酸のD-異性体を含む。本発明の別の態様において、完全なペプチド配列の中にある天然L-アミノ酸の1つ1つが同じアミノ酸のD-異性体で置換される。本発明はまた、変異体gp41ペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1つが周知の非天然アミノ酸残基の1つで置換されてもよいことも意図する。本発明の別の態様において、変異体gp41ペプチドに対して、天然L-アミノ酸のD-異性体または非天然アミノ酸の置換の任意の組み合わせが行われてもよい。これらのような変化は、変異体gp41ペプチドの安定性、プロテアーゼ耐性、活性、反応性、および/または溶解性を増大させるのに役立つ可能性がある。
【0028】
非天然アミノ酸は当技術分野において周知である。さらに、天然L-アミノ酸のD-異性体または非天然アミノ酸を有するペプチドを合成する方法も当技術分野において周知であり(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,840,697号および第6,268,479号ならびにBiochemistry(Chap.4),D.Voet and J.G.Voet,Wiley&Sons(1990)の開示を参照のこと)、また本発明により意図される。
【0029】
本発明の1つの態様において、改変ペプチドは、FB005、FB006、およびFB066で示されるペプチド、特に、マレイミドカップリング部分(例えば、[2-(2-アミノ-エトキシ)エトキシ]酢酸によってリジンにカップリングされた3-マレイミドプロピオン酸)または他の等価なカップリング構造を有する、これらのペプチドの誘導体を含む。
【0030】
本発明は、アミノ酸残基が親水性残基または疎水性残基で置換され、それにより水中でのペプチドの特性が変化した、変異体gp41ペプチドをさらに含む。または、変異体gp41ペプチドの他のアミノ酸残基がマレイミド連結部分で誘導体化される。本発明の好ましい態様において、(表3に示した)以下の変異体gp41ペプチドの下線のアミノ酸残基が親水性残基または疎水性残基で置換されるか、マレイミド連結部分で誘導体化される。C末端リジン残基を有する本発明に含まれる他のどのペプチドも、C末端リジン残基が親水性残基で置換されてもよく、マレイミド連結部分で誘導体化されてもよい。
【0031】
(表3)

【0032】
任意の下線のアミノ酸の代わりに置換することができる親水性アミノ酸として、表4に列挙したアミノ酸が挙げられる。
【0033】
任意の下線のアミノ酸の代わりに置換することができる疎水性アミノ酸として、表5に列挙したアミノ酸が挙げられる。
【0034】
さらに、表3に示した任意の下線のアミノ酸残基はマレイミド連結部分で誘導体化することができ、それにより、1つまたは複数の変異体gp41ペプチドと、血液成分に存在する1つまたは複数の利用可能なチオール基との共有結合を可能にするアミノ酸残基が得られる。本発明の好ましい態様において、リジン残基がマレイミド連結部分で誘導体化される。本発明の特に好ましい態様において、マレイミド連結部分で誘導体化された1つまたは複数のリジン残基が、血液成分に存在する1つまたは複数のチオール基に共有結合される。
【0035】
本発明の別の態様において、表3に示した任意の下線のアミノ酸残基は、ヘリックス傾向が高いアミノ酸で置換することができる(Creamer,T.,et al.,Alpha-helix-forming propensities in peptides and proteins.Proteins,Jun;19(2):85-97(1994)を参照のこと)。ヘリックス傾向が高いアミノ酸を、表6にαヘリックス傾向の大きいものから順に列挙する。ウイルス標的gp41に結合している時、これらのペプチドの活性型高次構造はαヘリックスであると考えられているので、ヘリックスを形成する傾向の増大は、潜在的に抗ウイルス活性を増大させる可能性がある。
【0036】
(表4)親水性アミノ酸

【0037】
(表5)疎水性アミノ酸

【0038】
(表6)ヘリックス傾向が高いアミノ酸1

1出典:T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties(2nd Ed.),W.H.Freeman and Co.,1993.
【0039】
概して、本発明のペプチドは、コイルドコイルタンパク質複合体の1つのαヘリックスの5つの7アミノ酸繰り返し(heptad)を含むC-34類似体であり、好ましい類似体はマレイミドカップリング基を有し、親配列より極性の高い残基が、第1の7アミノ酸繰り返しの7つのうちの残基2で、第2の7アミノ酸繰り返しの7つのうちの残基6で、第3の7アミノ酸繰り返しの7つのうちの残基3で、および/または第4の7アミノ酸繰り返しの7つのうちの残基7で置換されている。本発明の別の態様において、本発明のペプチドはこれらの前記のペプチドを含むが、C-34ペプチドのN末端に導入された、gp41に由来するさらなる10個の残基を含む。
【0040】
ペプチドFB006は、2番目および17番目の残基がグルタミン酸に変異され、13番目の残基がリジンに変異されたC34ペプチドに基づく。変異位置はN36/C34複合体の結晶構造に基づいて選択された。選択基準は、これらの残基がN36ヘリックスへの結合に関与しないことである。グルタミン酸およびリジンへの変異は、溶解性、および水溶液中でヘリックスを形成する傾向であるヘリックス傾向を改善することを目的とした。C34の活性型高次構造はN36/C34結晶構造にあるようなヘリックスであると考えられているので、ヘリックス傾向を高めると生物学的活性が改善されるはずである。ペプチドFB005、FB006、FB066、FB005M、FB005CM、FB006M、およびFB007Mも、これらの置換を含む。
【0041】
変異体gp41ペプチドは、表1、表2、および表3、ならびに図1に列挙したペプチド配列、ならびにその改変型および誘導体型を含む。ペプチドFB005はFB006ペプチドに基づくが、他の変異体gp41ペプチドと比較して、さらなる10個のアミノ酸残基がN末端に配置されている。
【0042】
ペプチドFB066はFB006に基づく。これは、28位のリジンをグルタミン酸に変えた1個のアミノ酸置換を有する点でFB006とは異なる。この変化によって、結合部位として機能する唯一のリジン残基として13番目のアミノ酸残基が残る。この変化によって、マレイミド改変を有する類似体の合成が著しく簡単になる。
【0043】
本発明はまた、血清アルブミンと結合して長期間効果のある阻害剤になり得る、FB005、FB006、およびT-1249(WO01/03723を参照のこと)に基づく誘導体を提供する。ペプチドFB005MおよびFB005CMはFB005配列に基づく。ペプチドFB006MおよびFB007MはFB006配列に基づく。ペプチドFB010MおよびFB010KMはT-1249配列に基づく。
【0044】
血液タンパク質担体との連結を可能にするペプチドの連結部位を選択する方法もまた新規である。本発明者らは、変異体gp41ペプチドとアルブミンをペプチドの内部リジン残基を介して連結することによって、C末端連結より効力が改善した結合体が得られることを発見した。FB006、FB006M、およびFB007MのIC50は、それぞれ、1.4nM、3.9nM、および9.1nMである(IC50値は50%のウイルス阻害を生じる薬物濃度であり、TC50値は50%の細胞傷害性を生じる薬物濃度である)。FB006は天然ペプチドであり、FB006Mは、13番目の残基にマレイミド連結を有する改変ペプチド複合体であるのに対して、FB007MはC末端で連結されている。FB006Mが血清アルブミンに連結されると、抗ウイルス効果に必要な量は2.8倍増加するのに対して、FB007MのC末端連結を介してアルブミンに連結されると、IC50の値は6.5倍増加する。担体分子への連結はペプチドの半減期を延長すると予想されたが、概念的に、アルブミン(66kDaタンパク質)への結合は、立体障害を生じることでペプチドの生物学的活性を阻害するとも予想された。しかしながら、予想外のことに、本発明者らがFB006Mペプチドを調製し、それをアルブミンに結合した時、複合体の抗ウイルス活性は目に見えるほど損なわれなかったことが(2.8倍しか増加しなかったことが)判明した。
【0045】
本発明のカップリング基は、血液成分に存在する官能基と共有結合を形成することができる化学基である。カップリング基は、一般的に、水性環境において安定である。カップリング基との共有結合のために血液成分において利用可能な反応性官能基は、主に、アミノ基、カルボキシル基、およびチオール基である。本発明の1つの態様において、カップリング基として、反応性二重結合、カルボキシ基、ホスホリル基、もしくは便利なアシル基(エステルまたは混合無水物として)、またはイミダートが挙げられるが、これに限定されない。これらのカップリング基によって、移動性のタンパク質(特に、血液タンパク質)にある標的部位の官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、またはチオール基)との共有結合の形成が可能になる。反応性エステルカップリング基は、フェノール化合物、チオールエステル、アルキルエステル、リン酸エステルなどからなる。本発明の特に好ましい態様において、カップリング基はスクシンイミジル基またはマレイミド基からなる。
【0046】
本発明の焦点は、gp41ペプチドの抗ウイルス性、ウイルス抑制性、または抗融合誘導性を実質的に改変することなく、改善したバイオアベイラビリティー、延長した半減期、および良好な分布(タンパク質担体へのペプチドの選択的結合による)をgp41ペプチドに付与するようにgp41ペプチド配列を改変することである。本明細書に記載の変異体gp41ペプチドの誘導体化によって、誘導体化ペプチドは血液成分の基(特に、利用可能なチオール基)と反応して、安定な共有結合を形成できるようになる。変異体gp41ペプチドの好ましい誘導体は、移動性の血液タンパク質のチオール基と特異的に反応するように設計される。このような反応は、マレイミド連結を有するペプチドと、移動性の血液タンパク質(例えば、血清アルブミンまたはIgG)のチオール基との共有結合によって確立される。従って、本発明の1つの態様は、血液タンパク質(移動性の血液タンパク質を含む)と共有結合される改変ペプチドを含む。本発明の特に好ましい態様は、改変ペプチドと血清アルブミンとの共有結合を含む。
【0047】
本発明の変異体gp41ペプチド誘導体が共有結合する血液成分は固定されているものでもよく、移動性のものでもよい。固定された血液成分は非移動性の血液成分であり、組織、膜受容体、間隙タンパク質、フィブリンタンパク質、コラーゲン、血小板、内皮細胞、上皮細胞、およびこれらの関連する膜および膜受容体、身体の体細胞、骨格筋細胞および平滑筋細胞、ニューロン成分、骨細胞および破骨細胞、ならびに全ての体組織(特に、循環系およびリンパ系に関連する体組織)を含む。移動性の血液成分は、長期間(一般的に5分以下、より一般的には1分間)固定した位置のない血液成分である。これらの血液成分は膜に関連せず、少なくとも0.1μg/mlの最少濃度で血液中に長期間存在する。移動性の血液成分として、血清アルブミン、トランスフェリン、フェリチン、および免疫グロブリン(例えば、IgMおよびIgG)が挙げられる。移動性の血液成分の半減期は少なくとも約12時間である。本発明のえり抜きの担体は、遊離チオールを介して結合されるアルブミンである。
【0048】
本発明の別の態様において、レトロウイルスを含むウイルスによる感染を予防または治療するための、抗ウイルス活性、ウイルス抑制活性、または抗融合誘導活性を有するペプチド融合阻害剤を生成する方法が提供される。この方法によれば、細胞へのウイルス侵入に関与する、および/または融合誘導活性を有するウイルスタンパク質が同定される。次いで、このウイルスタンパク質のアミノ酸配列が、タンパク質間の結合に関与すると考えられているαヘリックス形成領域についてスクリーニングされる。当業者は、タンパク質配列のαヘリックス形成領域についてスクリーニングするために、コンピュータに基づくアルゴリズムを使用することができる。αヘリックス形成領域の同定に有用なコンピュータに基づくアルゴリズムとして、DNASTARのようなプログラム集において利用可能なヘリックス優先度のガルニエ-ロブソン(Garnier-Robson)指数およびチョウ-ファスマン(Chou-Fasman)指数が挙げられるが、これに限定されない。
【0049】
ウイルスタンパク質のαヘリックス形成領域に由来するペプチドは、前記の方法に従って、予め決められたアミノ酸残基を、ペプチド配列の親水性、疎水性、またはαヘリックス形成傾向を高めるアミノ酸残基で置換することによって設計することができる。または、天然L-アミノ酸のD-異性体または非天然アミノ酸を使用した置換が本発明のペプチドに行われてもよい。本発明の1つの態様において、少なくとも2つ以上のアミノ酸置換は天然L-アミノ酸のD-異性体を含む。本発明の別の態様において、完全なペプチド配列は天然L-アミノ酸のD-異性体を含む。これらのような変化は、本発明のペプチドの安定性、プロテアーゼ耐性、活性、反応性、および/または溶解性を増大させるのに役立つ可能性がある。
【0050】
これらのペプチドの誘導体型は、例えば、血清アルブミンのような血液成分に結合すると半減期が延長する治療剤として有用である。天然L-アミノ酸のD-異性体を含むペプチド配列は、ペプチドが血液成分に結合するかどうかは関係なく、ペプチド配列に存在する天然L-アミノ酸のD-異性体の数に比例してプロテアーゼ活性に対する耐性の増大を示すと予想される。
【0051】
本発明のこの方法は、抗ウイルス活性、ウイルス抑制活性、または抗融合誘導活性を確かめるためのペプチド組成物のインビトロ試験をさらに意図する。例えば、当業者は、本明細書の実施例9の開示を変更して抗ウイルス活性をスクリーニングするアッセイを同じように構築することができる。限定しない例として、当業者は、IC50値およびTC50値を得る目的で、ある細胞タイプ(例えば、PBMC)に対して特異性を有するウイルスの存在下で抗ウイルスペプチドの効果を試験するために、実施例9の開示を利用または変更することができる。ある細胞タイプを(適切な対照と共に)ペプチド阻害剤の存在下および非存在下で感染させ、この細胞をインキュベートした後に、ウイルス力価が求められ、IC50値およびTC50値が求められる。
【0052】
本発明のこの方法が適用することができるウイルスとして、ヒトレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2を含む)、ヒトTリンパ球ウイルス(HTLV-IおよびHTLV-II)、ならびに非ヒトレトロウイルス(ウシ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、ネコ白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、サル肉腫ウイルス、サル白血病ウイルス、およびヒツジ進行性肺炎ウイルス(sheep progress pneumonia virus)を含む)が挙げられるが、これに限定されない。レトロウイルスでないウイルスもまた、この抗ウイルス性、ウイルス抑制性、または抗融合誘導性ペプチドによって阻害することができる。レトロウイルスでないウイルスとして、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、B型肝炎ウイルス、およびサルメーゾンファイザーウイルスが挙げられるが、これに限定されない。非エンベロープウイルスもまた本発明のペプチドによって阻害することができる。非エンベロープウイルスとして、ピコルナウイルス(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルス)、パポーバウイルス(例えば、パピローマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、およびレオウイルス)が挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
ペプチド合成
誘導体化変異体gp41ペプチドは、当業者に周知の標準的な固相ペプチド化学法によって合成することができる。例えば、ペプチドは、ライニンPTIシンフォニー(Rainin PTI Symphony)合成機を使用して、Steward et al.,Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd Ed.,Pierce Chemical Company,Rockford,III.,(1984)に記載の手順に従う固相化学法によって合成することができる。または、ペプチド断片を合成し、その後に、一体にするか、または共に連結して、溶液中でgp41ペプチド配列を形成することができる(例えば、米国特許第6,281,331号に記載のセグメント縮合)(これらの開示は両方とも参照として本明細書に組み入れられる)。
【0054】
固相ペプチド合成のために、多くの技法の概要がSteward et al.,「Solid Phase Peptide Synthesis」,W.H.Freeman Co.(San Francisco),1963およびMeienhofer,Hormonal Proteins and Peptides,1973,2 46で見ることができる。古典的な溶液合成については、例えば、Schroder et al.「The Peptides」,volume 1,Acacemic Press(New York)を参照のこと。一般的に、このような方法は、1つまたは複数のアミノ酸または適切に保護されたアミノ酸を、ポリマーに付着している成長中のペプチド鎖に連続的に付加することを含む。通常、第1のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが適切な保護基によって保護される。次いで、この保護および/または誘導体化されているアミノ酸は不活性固体支持体に取り付けられるか、適切に保護された相補(アミノまたはカルボキシル)基を有し、アミド結合の形成に適切な条件下にある、配列の次のアミノ酸を付加することによって溶液中で使用される。次いで、この新たに付加されたアミノ酸残基から保護基が除去され、(適切に保護された)次のアミノ酸が付加される(以下同様)。
【0055】
所望のアミノ酸が全て適切な配列で連結された後、最終ペプチドを得るために、残っている全ての保護基(および全ての固体支持体)が連続的にまたは同時に切断される。この一般手順の簡単な変更によって(例えば、保護トリペプチドと適切に保護されたジペプチドを(キラル中心をラセミ化しない条件下で)カップリングして、脱保護の後にペンタペプチドを得ることによって)1つを超えるアミノ酸を成長中の鎖に一度に付加することが可能である。保護基は、本発明のペプチド誘導体の合成プロセスの間に必要とされてもよい。これらの保護基はペプチド合成の分野で従来からあるものであり、ペプチド誘導体が他の官能基と反応しないように保護することができる化学部分として一般的に説明することができる。様々な保護基が市販されており、その例は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,493,007号に記載されている。適切な保護基の代表例として、アセチル、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)などが挙げられる。さらに、表7は天然アミノ酸の三文字略号および一文字略号を示す。
【0056】
(表7)天然アミノ酸およびその略語

【0057】
変異体gp41ペプチドを調製する特に好ましい方法は、アミノ酸のα-N末端が酸感受性基または塩基感受性基によって保護される固相ペプチド合成を伴う。このような保護基は、ペプチド結合形成の条件に対して安定でありながら、成長中のペプチド鎖の破壊もペプチド鎖に含まれるどのキラル中心もラセミ化もすることなく容易に除去できるという特性を有するはずである。N-保護基およびカルボキシ保護基の例は、参照として本明細書に組み入れられる、Greene,「Protective Groups In Organic Synthesis」(John Wiley & Sons,New York pp.152-186(1981))に開示される。N-保護基の例は、低級アルカノイル基(例えば、ホルミル、アセチル(「Ac」)、プロピオニル、ピバロイル、t-プチルアセチルなど(他のアシル基として、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、4-ニトロベンゾイルなどが挙げられる);スルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニル、o-ニトロフェニルスルホニル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(pmc)など);カルバメート形成基(例えば、t-アミルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-エトキシベンジルオキシカルボニル、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5-トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1-(p-ビフェニルイル)-1-メチルエトキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル(boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Aloc)、2,2,2,-トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4-ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル-9-メトキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなど);アリールアルキル基(例えば、ベンジル、ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)など)、およびシリル基(例えば、トリメチルシリルなど)を含むが、これに限定されない。好ましいα-N-保護基は、o-ニトロフェニルスルフェニル;9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;t-ブチルオキシカルボニル(boc)、イソボルニルオキシカルボニル;3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル;t-アミルオキシカルボニル;2-シアノ-t-ブチルオキシカルボニルなどであり、9-フルオレニル-メチルオキシカルボニル(Fmoc)がより好ましく、その一方で、好ましい側鎖N-保護基は、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(pmc)、ニトロ、p-トルエンスルホニル、4-メトキシベンゼン-スルホニル、Cbz、Boc、およびアダマンチルオキシカルボニル(リジンおよびアルギニンのような側鎖アミノ基の場合);Aloc(リジンの場合);ベンジル、o-ブロモベンジルオキシカルボニル、2,6-ジクロロベンジル、イソプロピル、t-ブチル(t-Bu)、シクロヘキシル、シクロフェニル、およびアセチル(Ac)(チロシンの場合);t-ブチル、ベンジル、およびテトラヒドロピラニル(セリンの場合);トリチル、ベンジル、Cbz、p-トルエンスルホニル、および2,4-ジニトロフェニル(ヒスチジンの場合);ホルミル(トリプトファンの場合);ベンジルおよびt-ブチル(アスパラギン酸およびグルタミン酸の場合);ならびにトリフェニルメチル(トリチル)(システインの場合)を含む。
【0058】
カルボキシ保護基は、従来法では、カルボン酸を保護するエステルまたはアミド基を指す。このようなカルボキシ保護は当業者に周知であり、米国特許第3,840,556号および第3,719,667号(この開示は参照として本明細書に組み入れられる)で述べられているようにペニシリンおよびセファロスポリンの分野におけるカルボキシル基の保護に広く用いられてきた。
【0059】
代表的なカルボキシ保護基は、C1-C8低級アルキル;アリールアルキル(例えば、フェネチルまたはベンジル)およびその置換誘導体(例えば、アルコキシベンジル基もしくはニトロベンジル基);アリールアルケニル(例えば、フェニルエテニル);アリールおよびその置換誘導体(例えば、5-インダニル);ジアルキルアミノアルキル(例えば、ジメチルアミノエチル);アルカノイルオキシアルキル基(例えば、アセトキシメチル、ブチリルオキシメチル、バレリルオキシメチル、イソブチリルオキシメチル、イソバレリルオキシメチル、1-(プロピオニルオキシ)-1-エチル、1-(ピバロイルオキシル)-1-エチル、1-メチル-1-(プロピオニルオキシ)-1-エチル、ピバロイルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル);シクロアルカノイルオキシアルキル基(例えば、シクロプロピルカルボニルオキシメチル、シクロブチルカルボニルオキシメチル、シクロペンチルカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルカルボニルオキシ-メチル);アロイルオキシアルキル(例えば、ベンゾイルオキシメチル、ベンゾイルオキシエチル);アリールアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、ベンジルカルボニルオキシメチル、2-ベンジルカルボニルオキシエチル);アルコキシカルボニルアルキルまたはシクロアルキルオキシカルボニルアルキル(例えば、メトキシカルボニルメチル、シクロヘキシルオキシカルボニルメチル、1-メトキシカルボニル-1-エチル);アルコキシカルボニルオキシアルキルまたはシクロアルキルオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、メトキシカルボニルオキシメチル、t-ブチルオキシカルボニル-オキシメチル、1-エトキシカルボニルオキシ-1-エチル、1-シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ-1-エチル);アリールオキシ-カルボニルオキシアルキル(例えば、2-(フェノキシカルボニルオキシ)エチル、2-(5-インダニルオキシカルボニルオキシ)-エチル);アルコキシアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、2-(1-メトキシ-2-メチルプロパン-2-オイルオキシ)-エチル);アリールアルキルオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、2-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)エチル);アリールアルケニルオキシカルボニルオキシアルキル(例えば、2-(3-フェニルプロパン-2-イルオキシカルボニルオキシ)エチル);アルコキシカルボニルアミノアルキル(例えば、t-ブチルオキシカルボニルアミノメチル);アルキルアミノカルボニル-アミノアルキル(例えば、メチルアミノカルボニルアミノメチル);アルカノイルアミノアルキル(例えば、アセチルアミノメチル);複素環式カルボニルオキシアルキル(例えば、4-メチルピペラジニル-カルボニルオキシメチル);ジアルキルアミノカルボニルアルキル(例えば、ジメチルアミノカルボニルメチル、ジエチルアミノカルボニルメチル);(5-(低級アルキル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)アルキル(例えば、(5-t-ブチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル);および(5-フェニル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)アルキル(例えば、(5-フェニル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル)を含むが、これに限定されない。代表的なアミドカルボキシ保護基はアミノカルボニル基および低級アルキルアミノカルボニル基を含むが、これに限定されない。前記のカルボキシ保護基のうち、低級アルキル、シクロアルキル、もしくはアリールアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec-ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル、イソアミルエステル、オクチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエチルエステルなど)、あるいはアルカノイルオキシアルキル、シクロアルカノイルオキシアルキル、アロイルオキシアルキル、またはアリールアルキルカルボニルオキシアルキルエステルが好ましい。好ましいアミドカルボキシ保護基は低級アルキルアミノカルボニル基である。
【0060】
固相ペプチド合成方法において、α-C末端アミノ酸は適切な固体支持体または樹脂に取り付けられる。前記の合成に有用な適切な固体支持体は、段階的な縮合-脱保護反応の試薬および反応条件に対して不活性であり、ならびに使用される媒質に不溶性の材料である。α-C末端カルボキシペプチドの合成に好ましい固体支持体は、4-ヒドロキシメチルフェノキシアセチル-4'-メチルベンジヒドリルアミン樹脂(HMP樹脂)である。α-C末端アミドペプチドの好ましい固体支持体は、Bachem Inc.,Californiaより製造および販売されているFmoc保護ラメージ(Ramage)樹脂である。
【0061】
好ましい合成において、連結用リジンはAlocによって保護される。合成が完了した後、AlocはPd(Ph3)4によって切断されるが、ペプチドはまだ樹脂に付着しており、リンカー分子およびマレイミド基をカップリングすることができる。詳細に述べると、リンカーは[2-(2-アミノ)エトキシル]エトキシ酢酸であり、マレイミド基は3'-マレイミドプロピオン酸である。改変の後、Fmoc基は除去され、ペプチドは樹脂から切断される。
【0062】
固相合成の終わりに、ペプチドは樹脂から取り出され、連続操作でまたは一回の操作で脱保護される。ペプチドの取り出しと脱保護は、従来法では、樹脂に結合しているポリペプチドを切断用試薬(チオアニソール、トリイソプロピルシラン、フェノール、およびトリフルオロ酢酸を含む)で処理することによって一回の操作で行うことができる。ペプチドのα-C末端がアルキルアミドである場合、樹脂はアルキルアミンによるアミノ分解によって切断される。または、ペプチドは、エステル交換反応(例えば、メタノールとのエステル交換反応)を行い、その後に、アミノ分解または直接アミド基転移を行うことによって取り出されてもよい。この保護ペプチドはこの時点で精製されてもよく、直接、次の段階に向けられてもよい。側鎖保護基の除去は前記の切断用混合物を用いて行われる。完全に脱保護されたペプチドは、以下の段階:弱塩基性樹脂(酢酸塩型)によるイオン交換;非誘導体化ポリスチレン-ジビニルベンゼン(例えば、アンバーライト(Amberlite)XAD)による疎水性吸着クロマトグラフィー;シリカゲル吸着クロマトグラフィー;カルボキシメチルセルロースによるイオン交換クロマトグラフィー;分配クロマトグラフィー(例えば、セファデックス(Sephadex)G-25,LH-20による分配クロマトグラフィー)または向流分配;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(特に、オクチル-またはフェニル/ヘキシルシリル-シリカ結合相カラム充填材による逆相HPLC)のいずれかまたは全てを使用した一連のクロマトグラフィー段階によって精製することができる。当業者は、変異体gp41ペプチドの許容可能な精製を得るために必要とされる好ましいクロマトグラフィー段階または順序を決定することができる。
【0063】
または、マレイミド基の付加を含むペプチド断片は固相において合成することができ、最終的な誘導体化ペプチドは、これらの断片の溶液カップリング(solution coupling)によって得ることができる。
【0064】
これらのペプチドの分子量はエレクトロスプレー(Electrospray)質量分析を用いて決定されてもよく、MALDI-TOF質量分析を用いて決定されてもよい。
【0065】
改変ペプチドの治療使用
表1、表2、および表3、ならびに図1に列挙した化合物を含む変異体gp41ペプチドは、例えば、細胞間融合または遊離ウイルス感染を阻害することによって、細胞のウイルス感染を阻害する。感染経路は、エンベロープを有するウイルスまたはキャプシドを有するウイルスの場合で起こるような膜融合を伴うものでもよく、ウイルス構造および細胞構造(例えば、細胞受容体)を伴う他の融合事象でもよい。
【0066】
変異体gp41ペプチドは、血液成分との結合がインビボで起こるようにインビボで投与されてもよい。または、変異体gp41ペプチドは最初にエクスビボで血液成分に結合され、結果として生じた結合誘導体がインビボで投与されてもよい。本発明の別の態様において、患者の血液試料中の所望の血液成分を分離するために、プラスマフェレシスが用いられ、次いで、所望の血液成分が本発明のペプチドに結合された後に患者に投与して戻される。
【0067】
インビボでは、血漿タンパク質に含まれるチオール基は、例えば、アミノ基より少ない。従って、マレイミド改変変異体gp41ペプチドに共有結合するタンパク質は少ない。例えば、アルブミン(最も多量にある血液タンパク質)には、1つしかチオール基がない。従って、改変gp41ペプチド-マレイミド-アルブミン結合体は、約1:1のモル比のgp41ペプチド:アルブミンを含む傾向がある。アルブミンの他に、IgG分子(クラスII)にも遊離チオールがある。IgG分子および血清アルブミンは血中の可溶性タンパク質の大分を占めるので、これらはまた、変異体gp41ペプチドに共有結合可能な血中の遊離チオール基の大部分も占める。
【0068】
さらに、IgGを含む遊離チオール含有血液タンパク質の中でも、アルブミンそれ自体の独特の特徴のために、マレイミドによる特異的標識によって改変gp41ペプチド-マレイミド-アルブミン結合体が優先的に形成される。アルブミンの1個の遊離チオール基は種間で高度に保存されており、アミノ酸残基34(Cys34)に位置する。最近、アルブミンのCys34は、他の遊離チオール含有タンパク質の遊離チオールと比較して反応性が高いことが証明されている。これは、一部には、アルブミンのCys34のpK値が5.5と非常に低いためである。これは、概して、システイン残基の代表的なpK値(一般的に、約8)より非常に低い。この低いpKのために、通常の生理学的条件下では、アルブミンのCys34は大部分がイオン化しており、このために反応性が著しく高い。Cys34の低いpK値に加えて、Cys34の反応性を高める別の要因はその位置である(Cys34は、アルブミンの領域Vの1つのループの表面に近い疎水性ポケットにある)。この位置は、Cys34を全ての種類のリガンドに容易に使用できるようにし、フリーラジカル捕捉および遊離チオールスカベンジャーとしてのCys34の生物学的な役割における重要な要因である。これらの特性のためにCys34はマレイミド結合を有するgp41ペプチドとの反応性が高く、反応速度は、マレイミド結合を有する変異体gp41ペプチドと他の遊離チオール含有タンパク質との反応速度と比較して1000倍も速められることがある。
【0069】
改変gp41ペプチド-マレイミド-アルブミン結合体の別の利点は、1:1のペプチド:アルブミン(特に、Cys34での)ローディング(loading)に関連した再現性である。グルタルアルデヒド、DCC、EDC、および他の化学活性化(例えば、遊離アミンの化学活性化)などの他の技法には、この選択性が無い。例えば、アルブミンは52個のリジン残基を含み、このうち25〜30個はアルブミンの表面に位置し、従って、結合に使用することができる。これらのリジン残基を活性化すると、またはこれらのリジン残基を介してカップリングするように変異体gp41ペプチドを改変すると、不均一な結合体集団が生じる。1:1モル比のgp41マレイミドペプチド:アルブミンを使用しても、アミン誘導体化アルブミンの生成物は複数の結合生成物からなり、中には、アルブミン1個につき0個、1個、2個、またはそれ以上のgp41ペプチドを含むものもあり、それぞれの結合生成物には、25〜30個の使用可能なリジン部位のいずれか1つまたはそれ以上でペプチドがランダムにカップリングされている。非常に多くの可能な組み合わせがある場合、それぞれの結合体バッチの正確な組成および性質の特徴づけが難しくなり、バッチ間の再現はほとんど不可能であり、このために、このような結合体は治療剤として望ましくない。
【0070】
さらに、アルブミンのリジン残基を介した結合には、少なくとも、アルブミン分子1個あたりより多くの治療剤を送達するという利点があるように思われるが、1:1の治療剤:アルブミン比が好ましいことが研究から分かっている。Stehle, et al.,「The Loading Rate Determines Tumor Targeting properties of Methotrexate-Albumin Conjugates in Rats」Anti-Cancer Drugs,Vol.8,pp.677-685(1988)(その全体が参照として本明細書に組み入れられる)による論文において、著者らは、グルタルアルデヒドを介して結合された1:1の抗癌剤メトトレキセート:アルブミン比が最も見込みのある結果を示したことを報告している。これらの結合体は腫瘍細胞に優先的に吸収されたが、5:1〜20:1のメトトレキセート分子を有する結合体はHPLCプロファイルが変化し、インビボでは肝臓に素早く吸収された。これらのより高い比では、アルブミンに対する高次構造変化によって治療剤担体としてのアルブミンの有効性が低下すると仮定されている。
【0071】
インビボで変異体gp41ペプチドの制御された投与によって、インビボでのアルブミンおよびIgGの特異的標識を制御することができる。一般的な投与では、投与された誘導体化変異体gp41ペプチドの80〜90%がアルブミンを標識し、5%未満がIgGを標識する。遊離チオール(例えば、グルタチオン)の微量の標識も起こる。このような特異的標識は変異体gp41ペプチドの概算半減期の正確な計算を可能にするので、インビボでの使用に好ましい。
【0072】
誘導体化変異体gp41ペプチドは、制御された特異的インビボ標識をもたらすことに加えて、エクスビボで血清アルブミンおよびIgGを特異的に標識することができる。このようなエクスビボ標識は、マレイミド結合を有する変異体gp41ペプチドを、血液、血清、または血清アルブミンおよび/もしくはIgGを含む食塩水に添加することを伴う。変異体gp41ペプチドとの結合がエクスビボで起こったら、血液、血清、または食塩水はインビボ治療のために患者の血液に再投与されてもよく、凍結乾燥されてもよい。
【0073】
変異体gp41ペプチドは単独で使用されてもよく、または治療効果を最適化するために組み合わせて使用されてもよい。本発明の別の態様において、変異体gp41ペプチドは、1つまたは複数のさらなる抗ウイルスHIV治療剤と同時投与される。変異体gp41ペプチドと同時投与することができる、さらなる抗ウイルスHIV治療剤として、アジェネラーゼ(AGENERASE)(アンプレナビル;GlaxoSmithKline);コンビビル(COMBIVIR)(ラミブジン,ジドブジン;GlaxoSmithKline);クリキシバン(CRIXIVAN)(インジナビル,IDV,MK-639;Merck);エムトリバ(EMTRIVA)(FTC,エムトリシタビン;Gilead Sciences);エピビル(EPIVIR)(ラミブジン,3TC;GlaxoSmithKline);フォートベイス(FORTOVASE)(サキナビル;Hoffinann-La Roche);ハイビッド(HIVID)(ザルシタビン(Zalcitabine),ddC,ジデオキシシチジン;Hoffinann-La Roche);インビラーゼ(INVIRASE)(メシル酸サキナビル,SQV;Hoffinann-La Roche);カレトラ(KALETRA)(ロピナビル,リトナビル;Abbott Laboratories);ノービア(NORVIR)(リトナビル,ABT-538;Abbott Laboratories);レスクリプトール(RESCRIPTOR)(デラビリジン(Delaviridine),DLV;Pfizer);レトロビル(RETROVIR)(ジドブジン,AZT,アジドチミジン,ZDV;GlaxoSmithKline);レイアタッツ(REYATAZ)(硫酸アタザナビル;Bristol Myers-Squibb);サスティバ(SUSTIVA)(エファビレンツ;Bristol Myers-Squibb);トリジビル(TRIZIVIR)(アバカビル,ジドブジン,ラミブジン;GlaxoSmithKline);ヴァイデックス(VIDEX)EC(腸溶性ジダノシン;Bristol Myers-Squibb);ヴァイデックス(VIDEX)(ジダノシン,ddl,ジデオキシイノシン;Bristol Myers-Squibb);ビラセプト(VIRACEPT)(メシル酸ネルフィナビル(nelfinavir mesylate),NFV;Agouron Pharmaceuticals);ビラミューン(VIRAMUNE)(ネビラピン,BI-RG-587;Boehringer Ingelheim));ビリアード(VIREAD)(フマル酸テノホビルジソプロキシル;Gilead);ゼリット(ZERIT)(スタブジン,d4T;Bristol Myers-Squibb);ザイアジェン(ZIAGEN)(アバカビル;GlaxoSmithKline)が挙げられるが、これに限定されない。
【0074】
本発明のさらなる態様において、変異体gp41ペプチドは、HIVまたはHIVにより引き起こされる疾患を治療するのに用いられる1つまたは複数のさらなる化合物と同時投与される。変異体gp41ペプチドと同時投与することができる、これらのさらなる化合物として、グルクロン酸トリメトレキセート(カリニ肺炎の治療用);ガンシクロビル(サイトメガロウイルス網膜炎の治療用);エアロゾル化ペンタミジン(カリニ肺炎の治療用);エリスロポエチン(ジドブジン関連貧血の治療用);アトバクオン(カリニ肺炎の治療用);リファブチン(マイコバクテリウム-アビウムの治療用);ビスタイド(VISTIDE)(再発性サイトメガロウイルス網膜炎の治療用);およびセロスティム(SEROSTIM)(AIDS関連るいそうの治療用)が挙げられるが、これに限定されない。
【0075】
変異体gp41ペプチド(表1、表2、および表3、ならびに図1に示したペプチドを含むが、これに限定されない)は、表1、表2、および表3、ならびに図1に列挙した1つまたは複数のさらなる変異体gp41ペプチドと同時投与することができる。本発明の別の態様において、変異体gp41ペプチドド(表1、表2、および表3、ならびに図1に示したペプチドを含むが、これに限定されない)は、T-20またはT-1249ペプチドと同時投与することができる。
【0076】
変異体gp41ペプチドは、生理学的に許容される媒質(例えば、脱イオン水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、食塩水、エタノールおよび他のアルコールの水溶液、血漿、タンパク質溶液、マンニトール、グルコース水溶液、アルコール、植物油など)に溶解して投与される。好ましくは、変異体gp41ペプチドを含む薬学的組成物は薬学的に許容される担体と共に投与される。添加することができる他の成分として、緩衝液(この場合、媒質は、一般的に、約5〜10の範囲のpHに緩衝化され、緩衝液は、一般的に、約50〜250mMの濃度である);塩(この場合、塩の濃度は、一般的に、約5〜500mMである);生理学的に許容される安定剤などが挙げられる。組成物は、簡便な保存および輸送のために凍結乾燥されてもよい。
【0077】
変異体gp41ペプチドは経口投与されてもよく、非経口投与されてもよい(例えば、血管内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、皮下(SC)などに投与されてもよい)。投与は、適切な状況において、輸血によるものでもよい。場合によっては、官能基の反応が比較的遅い場合、投与は、経口投与、鼻投与、直腸投与、経皮投与でもよく、エアロゾル手段によるものでもよい(この場合、結合体の性質によって血管系への移動が可能になる)。通常、一回の注射が用いられるが、所望であれば、1回を超える注射が用いられてもよい。ペプチド誘導体は、注射器、トロカール、カテーテルなどを含む任意の簡便な手段によって投与することができる。特定の投与方法は、投与しようとする量、単回ボーラスまたは連続投与かどうかなどに応じて異なる。好ましくは、投与は、導入部位が本発明にとって重要でない場合、血管内で行われ、好ましくは、急速な血流がある部位(例えば、静脈内(末梢静脈または中心静脈))で行われる。投与が徐放技法または保護マトリックスと一緒に行われる場合、他の経路が使用されることがある。この目的は、変異体gp41ペプチドが血液成分と反応できるように血中に効果的に分散させることである。投与される結合体の量は大きく異なり、一般的に、約1mg〜500mgである。血管内に投与される総量は、一般的に、約0.5μg/kg体重〜約50mg/kg、より通常には、約0.5mg/kg〜約10mg/kgである。
【0078】
血液の半減期の長い成分(例えば、免疫グロブリン、血清アルブミン、赤血球、および血小板)に結合することによって、多くの利点が結果として生じる。変異体gp41ペプチドの活性は数日〜数週間延長する。この間、一回しか投与を必要としない。活性化合物は大部分が大きな分子に結合するので(大きな分子は細胞内に取り込まれ、他の生理学的プロセスを妨げる可能性は小さい)、より大きな特異性を得ることができる。
【0079】
血液成分との共有結合の形成はインビボで生じてもよく、エクスビボで生じてもよい。エクスビボ共有結合形成の場合、誘導体化変異体gp41ペプチドは、誘導体と血液成分との間で共有結合を形成するために、血清または精製血液成分(例えば、ヒト血清アルブミンもしくはIgG)を含む食塩水に添加される。好ましい態様において、変異体gp41ペプチドは食塩水中のヒト血清アルブミンと反応される。結合体の形成後、後者は対象に投与されてもよく、凍結乾燥されてもよい。
【0080】
哺乳動物宿主の血液は、変異体gp41ペプチドの活性および/または存在についてモニターすることができる。異なる時間で宿主から血液試料を採取することによって、変異体gp41ペプチドが治療に有効であるのに十分な量で半減期の長い血液成分に結合したかどうかを、従って、血中の変異体gp41ペプチド濃度を確かめることができる。所望の場合、どの血液成分に変異体gp41ペプチドが共有結合したかも確かめることができる。モニタリングはまた、gp41ペプチド活性に特有のアッセイ、HPLC-MS、または変異体gp41ペプチドに対する抗体を使用することによって行うこともできる。
【0081】
変異体gp41ペプチドは、本明細書に記載の方法および当技術分野において周知の他の方法に従って患者に投与することができる。治療が意図される患者として、本明細書で言及された任意のウイルス(特に、HIV-1およびHIV-2)に感染した患者が挙げられる。変異体gp41ペプチドの有効治療投与量は当業者に周知の手順によって決定することができ、これらのgp41ペプチドの潜在的な毒性に関する全ての事柄を考慮に入れている。
【0082】
変異体gp41ペプチドはまた、以前に感染していない個体に予防的に投与することもできる。この投与は、患者が感染個体と接触したことがある場合のように個体が高リスクのウイルス暴露を受けたことがある場合、および高リスクのウイルス伝播が存在する場合に有利であり得る。これは、ウイルス(例えば、HIVウイルス)の既知の治療法が無い場合に特に有利であり得る。限定しない例として、医療従事者がHIV感染個体の血液に暴露されたことがある場合において、または個体をHIVウイルスに潜在的に暴露する高リスク活動に患者が従事したことがある場合において、gp41ペプチドの予防的投与が有利である。変異体gp41ペプチドの他の用途は、感染個体から非感染個体にウイルス(例えば、HIV)が伝播しないように、ウイルスを保持する個体に変異体gp41ペプチドを投与することを含む。このような用途はまた、授乳もしくは他の日常の接触によって母親から乳児に伝播しないようにすること、または性的な活動を通じて伝播が生じないようにすることも含む。
【0083】
本発明の別の態様において、HIV(HIV-1、HIV-2,またはその全ての他の血清型)およびSIVウイルス粒子が患者において複製しないようにするために、変異体gp41ペプチド(表1、表2、および表3、ならびに図1に示したペプチドを含むが、これに限定されない)は、表1、表2、および表3、ならびに図1に示した1種類もしくはそれ以上の種類のさらなるペプチド、T-20、T-1249、または他のHIV治療剤と同時投与することができる。
【0084】
局所適用
変異体gp41ペプチド(表1、表2、および表3、ならびに図1に示したペプチドを含む)は単独で使用されてもよく、有効濃度のペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む組成物または有効濃度のペプチドおよび薬学的に許容される担体から本質的になる組成物の形で使用されてもよい。有効濃度は、1つまたは複数の薬剤の適用によってウイルス感染を妨げることができるかどうかを観察することによって決定することができる。
【0085】
本発明の組成物は、インビトロ目的およびインビボ目的の局所の殺菌使用、ウイルス抑制使用、または抗融合誘導使用(特に、腟内使用および直腸内使用)を含む。これらの目的のために、改変ペプチドは、任意の適切なビヒクルに溶解して(すなわち、改変ペプチドの抗融合活性がビヒクルによって低下しない条件で)処方することができる。従って、組成物は、クリーム、ゲル、発泡体、ローション剤、軟膏、錠剤、液剤、またはスプレーの形でもよい。担体またはビヒクル希釈剤は水性でもよく、非水性(例えば、アルコール性もしくは油性)でもよく、またはその混合物でもよく、他の界面活性剤、緩和薬、潤滑剤、安定剤、染料、香料、抗菌剤(活性成分または防腐剤として)、およびpH調節のための酸または塩基をさらに含んでもよい。好ましいpHは約4〜5である。組成物の調製には従来法が用いられる。
【0086】
好ましくは、局所適用組成物用の薬学的に許容される担体またはビヒクルは、本発明の化合物を含む液体、ゼリー、または発泡体の形のものである。化合物は、(a)軟膏およびゼリー、(b)挿入物(坐剤、スポンジなど)、(c)発泡体、(d)圧注器、ならびに(e)洗浄液またはボディウォッシュに入れることができる。好ましくは、組成物は、ちょうど性交の時に、好ましくは性交の前に、女性の膣または男性もしくは女性の直腸に導入されるが、他の粘膜に投与されてもよい。組成物は、HIVを含む性感染症の治療および保護に使用することができる。投与方法は、好ましくは、本発明のペプチド含有組成物と性感染症の原因因子が直接接触するように設計される。
【0087】
局所適用のために、薬学的に許容される担体は、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、加湿剤、安定剤、他の界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、徐放剤、ならびに少量の保水剤、金属イオン封鎖剤、染料、香料、および局所投与のために薬学的組成物に一般的に用いられる他の成分をさらに含んでもよい。
【0088】
本発明により提供される物品に関して、本発明の組成物は、組成物を膣上皮または他の感染する可能性のある上皮に(好ましくは、性交の前または性交の間に)送達するために、吸収性ベース材料(例えば、スポンジ)に注入されてもよく、固体ベース材料(例えば、コンドーム、ペッサリー、または医療用手袋)の表面にコーティングされてもよい。他の物品およびこのタイプの送達システムは当業者に容易に明らかであろう。本発明に好ましい物品は、当技術分野において周知のプロセスによる製造中に改変ペプチドをコンドーム表面に噴霧することによって、またはペプチドをコンドームに注入することによってコーティングされたコンドームである。好ましいコーティング組成物として、潤滑性を与え、改変ペプチドを徐々に放出させるシリコンが挙げられる。使用される特定の局所医薬品または他の医薬品の徐放性を引き伸ばすために、生体接着性ポリマーも使用することができる。
【0089】
局所投与用の固体剤形として、坐剤、散剤、錠剤、および顆粒が挙げられる。固体剤形において、組成物は、少なくとも1種類の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプン)と混合されてもよく、潤滑剤、緩衝剤、および当業者に周知の他の成分をさらに含んでもよい。
【0090】
本発明の組成物および物品における改変ペプチドの実際の投与量レベルは、特定のペプチドおよび投与方法に望ましい治療反応およびまたは予防反応を得るような、性行為により感染する液体の部位での量を得るように変更することができる。従って、選択された投与量レベルは、感染の種類および部位、所望の治療目的、投与経路、所望の治療期間、および他の要因に左右される。一般的に、本発明の改変ペプチドの好ましい投与量は約0.01〜2.0重量パーセントである。好ましい局所膣剤形は0.01〜2.0重量パーセントの本発明による組成物を含む前記のクリームまたは坐剤である。治療毎に(一般的に、一日に2回)、約1〜約5mlのこのような剤形が腟内に(好ましくは、膣口の高い所に)、または直腸内に塗布される。漏出を最小限にするために、一般的に、多量に使用しないようにする。
【0091】
本発明の方法および組成物は、病原性微生物による広範囲の感染症を予防および治療するのに使用することができる。
【0092】
実施例
本発明のさらに完全な理解を容易にするために、多くの実施例を以下に示す。しかしながら、本発明の範囲はこれらの実施例に開示される特定の態様に限定されず、実施例は例示のみを目的とする。
【0093】
総論
特別の定めのない限り、それぞれの変異体gp41ペプチドの合成は、シンフォニーペプチド合成機による自動固相手順と、誘導体生成間の手作業による介入を用いて行った。合成は、Fmoc保護ラメージアミドリンカー樹脂においてFmoc保護アミノ酸を使用して行った。カップリングは、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中での活性化剤としてO-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を使用し、塩基としてジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して行った。Fmoc保護基は20%ピペリジン/DMFを使用して除去した。合成間に使用した全てのアミノ酸はL-立体配置を有する。合成中はガラス反応容器を使用した。
【0094】
実施例1 FB005の合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した:

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0095】
段階2:ペプチドを、85%TFA/5%トリイソプロピルシラン(TIPS)/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階2)。
【0096】
実施例2 FB005Mの合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した:

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0097】
段階2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護を手作業で行い、C6H6 CHCl3(1:1):2.5%NMM(v:v):5%AcOH(v:v)5mLに溶解した3当量のPd(PPh3)4溶液で樹脂を2時間処理することによって行った(段階2)。次いで、樹脂を、CHCl3(6×5mL)、DCMに溶解した20%AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)で洗浄した。
【0098】
段階3:次いで、Fmoc-AEEA-OHおよび3-マレイミドプロピオン酸を付加するために、合成を再度自動で行った(段階3)。カップリングごとの間に、樹脂を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で3回、イソプロパノール(iPrOH)で3回洗浄した。
【0099】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0100】
実施例3 FB005CMの合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した:

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0101】
段階2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護を手作業で行い、C6H6 CHCl3(1:1):2.5%NMM(v:v):5%AcOH(v:v)5mLに溶解した3当量のPd(PPh3)4溶液で樹脂を2時間処理することによって行った(段階2)。次いで、樹脂を、CHCl3(6×5mL)、DCMに溶解した20%AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)で洗浄した。
【0102】
段階3:次いで、Fmoc-AEEA-OHおよび3-マレイミドプロピオン酸を付加するために、合成を再度自動で行った(段階3)。カップリングごとの間に、樹脂を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で3回、イソプロパノール(iPrOH)で3回洗浄した。
【0103】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0104】
実施例4 FB006の合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した:

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0105】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0106】
実施例5 FB006Mの合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した:

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0107】
段階2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護を手作業で行い、C6H6 CHCl3(1:1):2.5%NMM(v:v):5%AcOH(v:v)5mLに溶解した3当量のPd(PPh3)4溶液で樹脂を2時間処理することによって行った(段階2)。次いで、樹脂を、CHCl3(6×5mL)、DCMに溶解した20%AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)で洗浄した。
【0108】
段階3:次いで、Fmoc-AEEA-OHおよび3-マレイミドプロピオン酸を付加するために、合成を再度自動で行った(段階3)。カップリングごとの間に、樹脂を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で3回、イソプロパノール(iPrOH)で3回洗浄した。
【0109】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0110】
実施例6 FB007Mの合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した:

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0111】
段階2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護を手作業で行い、C6H6 CHCl3(1:1):2.5%NMM(v:v):5%AcOH(v:v)5mLに溶解した3当量のPd(PPh3)4溶液で樹脂を2時間処理することによって行った(段階2)。次いで、樹脂を、CHCl3(6×5mL)、DCMに溶解した20%AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)で洗浄した。
【0112】
段階3:次いで、Fmoc-AEEA-OHおよび3-マレイミドプロピオン酸を付加するために、合成を再度自動で行った(段階3)。カップリングごとの間に、樹脂を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で3回、イソプロパノール(iPrOH)で3回洗浄した。
【0113】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0114】
実施例7 FB010Mの合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した。

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0115】
段階2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護を手作業で行い、C6H6 CHCl3(1:1):2.5%NMM(v:v):5%AcOH(v:v)5mLに溶解した3当量のPd(PPh3)4溶液で樹脂を2時間処理することによって行った(段階2)。次いで、樹脂を、CHCl3(6×5mL)、DCMに溶解した20%AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)で洗浄した。
【0116】
段階3:次いで、Fmoc-AEEA-OHおよび3-マレイミドプロピオン酸を付加するために、合成を再度自動で行った(段階3)。カップリングごとの間に、樹脂を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で3回、イソプロパノール(iPrOH)で3回洗浄した。
【0117】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0118】
実施例8 FB010KMの合成
段階1:この実施例は、1mmoleスケールでの化合物の固相ペプチド合成について説明する。以下の保護アミノ酸を樹脂に連続的に付加した。

これらをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、配列に従って、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した。Fmoc保護基の除去は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した20%(V/V)ピペリジン溶液を20分間使用して行った(段階1)。最後のアミノ酸のアミノ基を、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して活性化した酢酸を用いてアセチル化した。
【0119】
段階2:Lys(Aloc)基の選択的脱保護を手作業で行い、C6H6 CHCl3(1:1):2.5%NMM(v:v):5%AcOH(v:v)5mLに溶解した3当量のPd(PPh3)4溶液で樹脂を2時間処理することによって行った(段階2)。次いで、樹脂を、CHCl3(6×5mL)、DCMに溶解した20%AcOH(6×5mL)、DCM(6×5mL)、およびDMF(6×5mL)で洗浄した。
【0120】
段階3:次いで、Fmoc-AEEA-OHおよび3-マレイミドプロピオン酸を付加するために、合成を再度自動で行った(段階3)。カップリングごとの間に、樹脂を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で3回、イソプロパノール(iPrOH)で3回洗浄した。
【0121】
段階4:85%TFA/5%TIS/5%チオアニソールおよび5%フェノールを使用して、ペプチドを樹脂から切断し、その後に、ドライアイスで冷却したEt2Oによって沈殿させた(段階4)。
【0122】
実施例9 改変ペプチドによるウイルス阻害
HIV-1IIIBに対する、FB005、FB006、FB006M、FB007M、FB010KM、およびFM010Mの抗ウイルス活性および細胞傷害性を新鮮なヒトPBMC培養物において試験した。抗ウイルス試験の前に、混合によって4種類の改変ペプチドFB006M、FB007M、FB010M、およびFB010KMをヒト血清アルブミン(HSA)に結合させた。結果を以下の表8に示す。表中のIC50値は50%ウイルス阻害薬物濃度であり、TC50値は50%細胞傷害性薬物濃度である。
【0123】
抗HIV細胞アッセイ法
使用直前に、予め力価測定されたHIV-1IIIBアリコートをフリーザー(-80℃)から取り出し、生物学用安全キャビネットの中で室温まで急速解凍した。
【0124】
HIVおよびHBVについて血清陰性である検査されたドナーから、新鮮なヒトPBMCが単離された(Interstate Blood Bank,Inc.;Memphis,TN)。混入している血小板を除去するために、細胞を低速遠心分離およびPBSへの再懸濁によって2〜3回ペレット化/洗浄した。次いで、白血球除去された血液をダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS)で1:1に希釈し、50mL遠心管に入っているリンパ球分離培地14mLの上に層にし、次いで、600×gで30分間遠心分離した。結果として生じた界面からPBMCのバンドを穏やかに吸引し、その後に、低速遠心分離によってPBSで2回洗浄した。最後の洗浄の後、細胞をトリパンブルー排除によって数え、15%胎仔ウシ血清(FBS)、2mM L-グルタミン、4μg/mLフィトヘマグルチニン(PHA-P,シグマ)を添加したRPMI1640に1×107細胞/mLで再懸濁した。細胞を37℃で48〜72時間インキュベートした。インキュベーションの後、PBMCを遠心分離し、15%FBS、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10μg/mLゲンタマイシン、および20U/mL組換えヒトIL-2(R&D Systems,Inc)を含むRPMI1640に再懸濁した。PBMCを、この培地において1〜2×106細胞/mLの濃度で維持し、アッセイプロトコールに使用するまで、培地を2週間に一回交換した。細胞がアッセイに使用するには古すぎるとみなされ、捨てられる前に最大2週間、細胞を培養した。組織培養フラスコに付着させた結果として、培養物から単球が無くなった。
【0125】
標準的なPBMCアッセイのために、少なくとも2人の正常ドナーに由来するPHA-P刺激細胞をプールし、新鮮な培地で最終濃度1×106細胞/mLまで希釈し、96ウェル丸底マイクロプレートの内壁に50μL/ウェル(5×104細胞/ウェル)でプレートした。各プレートは、ウイルス/細胞対照ウェル(細胞+ウイルス)、実験用ウェル(薬物+細胞+ウイルス)、および化合物対照ウェル(薬物+細胞を含まない培地,細胞傷害性のMTSモニタリングに必要である)を含む。HIV-1はPBMCに対して細胞変性を示さないので、抗ウイルス活性の測定および細胞傷害性の測定に同じアッセイプレートを使用することができる。試験薬物希釈液をマイクロタイターチューブの中で2×濃度で調製し、標準的な方法を用いて各濃度の100μLを適切なウェルに入れた。予め決められたウイルスストック希釈液50μLを各試験ウェルに入れた(最終MOI約0.1)。PBMC培養物を、感染後7日間、37℃、5%CO2で維持し、この後に、逆転写酵素活性および/またはHIV p24含有量の分析のために、無細胞上清試料を収集した。上清試料を取り出した後、細胞生存率を求めるためにMTSをプレートに添加することによって、化合物の細胞傷害性を測定した。細胞を顕微鏡でも調べ、どんな異常も記録した。
【0126】
二次細胞傷害性アッセイ法
抗HIV効力評価に用いられた濃度より高い濃度の化合物の細胞傷害性を試験するために、二次アッセイを使用した。このアッセイは、抗HIV効力評価について前記で述べられたものと本質的に同じであった。しかしながら、ウェルにはウイルスを添加せず(代わりにウイルスを含まない培地を使用した)、高試験濃度を25μMまで上げた。インキュベーションの後、プレートを、下記のようにMTSを使用して細胞生存率についてアッセイした。
【0127】
(表8)

【0128】
前述の発明ははっきりと理解できるようにするために例示および実施例によっていくらか詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の修正および変更を実施できることは明らかである。医学、免疫学、ウイルス学、薬理学、タンパク質の合成および改変、ならびに/または関連する分野の当業者に明らかな本発明を実施するための前記の態様の変更は以下の特許請求の範囲の範囲内であると意図される。
【0129】
本明細書で述べられた全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する当業者の技術レベルを示す。このような全ての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が参照として組み入れられるように詳細かつ個々に示されたのと同じ程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【0130】
ウイルス感染(特に、HIV感染)の予防および/または治療に有用なある特定のペプチドおよびその誘導体は、2002年9月24日に出願された米国仮特許出願第60/412,797号に開示された。この内容は(これに含まれる全ての配列を含めて)その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に開示される様々なペプチドの整列化した配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1の配列を含む、単離されたFB005ペプチド。
【請求項2】
配列番号:2の配列を含む、単離されたFB006ペプチド。
【請求項3】
配列番号:7の配列を含む、単離されたFB066ペプチド。
【請求項4】
(a)配列番号:1;
(b)配列番号:2;
(c)配列番号:3;および
(d)配列番号:7
からなる群より選択され、ペプチド配列中の予め決められた位置に少なくとも1つの置換アミノ酸残基を有する単離された改変ペプチドであり、少なくとも1つの置換アミノ酸残基は、親水性アミノ酸残基、疎水性アミノ酸残基、αヘリックスを形成する傾向を有するアミノ酸残基、天然L-アミノ酸の1つのD-異性体、または非天然アミノ酸残基である、改変ペプチド。
【請求項5】
(a)配列番号:8のFB005Mペプチド;
(b)配列番号:9のFB005CMペプチド;
(c)配列番号:10のFB006Mペプチド;
(d)配列番号:11のFB007Mペプチド;
(e)配列番号:12のFB010Mペプチド;
(f)配列番号:13のFB010KMペプチド;
(g)配列番号:14のFB066Mペプチド;および
(h)配列番号:15のFB066KMペプチド
からなる群より選択される、単離された誘導体化ペプチド。
【請求項6】
(a)配列番号:1;
(b)配列番号:2;
(c)配列番号:3;および
(d)配列番号:7
からなる群より選択され、ペプチド配列中の予め決められたアミノ酸残基が、カップリング基と該予め決められたアミノ酸残基との結合によって誘導体化された、単離された誘導体化ペプチド。
【請求項7】
ペプチド配列中の予め決められたアミノ酸残基が、カップリング基と該予め決められたアミノ酸残基との結合によって誘導体化された、請求項4記載の改変ペプチド。
【請求項8】
23位のグルタミン酸に対して置換されたリジンまたはC末端に付加されたリジンに、カップリング基を取り付けることによって誘導体化された、請求項1記載の単離されたペプチド。
【請求項9】
13位のリジンにカップリング基を取り付けることによって誘導体化された、請求項2記載の単離されたペプチド。
【請求項10】
13位のリジンをグルタミン酸で置換することによって改変され、C末端に付加された付加リジン残基にカップリング基を取り付けることによって誘導体化された、請求項2記載の単離されたペプチド。
【請求項11】
配列番号:3の配列からなり、13位のグルタミン酸をリジンで置換し、リジンにカップリング基を取り付けることによって改変された、またはC末端に付加されたリジンにカップリング基を結合することによって誘導体化された、単離された誘導体化ペプチド。
【請求項12】
13位のリジンまたはC末端に付加された付加リジンにカップリング基を取り付けることによって誘導体化された、請求項3記載の単離されたペプチド。
【請求項13】
カップリング基が、
(a)マレイミド基;
(b)スクシンイミジル基;
(c)ヒドラジン基;および
(d)カルボニル基
からなる群より選択される、請求項5〜12のいずれか一項記載の誘導体化ペプチド。
【請求項14】
マレイミド基が、[2-(2-アミノ)エトキシル]エトキシ酢酸によってリジンのεアミノ基に結合された3'-マレイミドプロピオネートである、請求項13記載の誘導体化ペプチド。
【請求項15】
請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチドまたは請求項5〜12のいずれか一項記載の誘導体化ペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項16】
血液成分に結合された請求項5〜12のいずれか一項記載の誘導体化ペプチドを含む、結合体。
【請求項17】
血液成分が、
(a)ヒト血清アルブミンタンパク質;
(b)ヒトトランスフェリンタンパク質;
(c)ヒトフェリチンタンパク質;
(d)ヒト免疫グロブリンタンパク質;
(e)ヒトフェリチンタンパク質;
(f)ヒトα-2-マクログロブリンタンパク質;
(g)ヒトチロキシン結合タンパク質;
(h)ヒトステロイド結合タンパク質;および
(i)その組み合わせ
からなる群より選択される、請求項16記載の結合体。
【請求項18】
ウイルスによる哺乳動物細胞の感染を減少させる方法であって、請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチドまたは請求項5〜12のいずれか一項記載のペプチド誘導体を該哺乳動物細胞に提示する段階を含む方法。
【請求項19】
ウイルスによる哺乳動物細胞の感染を阻止する方法であって、請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチドまたは請求項5〜12のいずれか一項記載のペプチド誘導体を該哺乳動物細胞に提示する段階を含む方法。
【請求項20】
ウイルスによる哺乳動物細胞におけるウイルス複製を阻止する方法であって、請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチドまたは請求項5〜12のいずれか一項記載のペプチド誘導体を該哺乳動物細胞に提示する段階を含む方法。
【請求項21】
ウイルスの存在下でペプチドが提示される、請求項18〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
ウイルスが、
(a)ヒト免疫不全ウイルス(HIV);および
(b)サル免疫不全ウイルス(SIV)
からなる群より選択される、請求項18〜21記載の方法。
【請求項23】
ペプチドまたはペプチド誘導体が経口投与、局所投与、血管内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与される、請求項18〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
ペプチドまたはペプチド誘導体が1つまたは複数のさらなるHIV治療剤と同時投与される、請求項18〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
1つまたは複数のさらなるHIV治療剤が少なくとも1つの他の変異体gp41ペプチドを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
さらなるHIV治療剤が、
(a)アジェネラーゼ;
(b)コンビビル;
(c)クリキシバン;
(d)エムトリバ;
(e)エピビル;
(f)フォートベイス;
(g)ハイビッド;
(h)インビラーゼ;
(i)カレトラ;
(j)ノービア;
(k)レスクリプトール;
(l)レトロビル;
(m)レイアタッツ;
(n)サスティバ;
(o)トリジビル;
(p)ヴァイデックスEC;
(q)ヴァイデックス;
(r)ビラセプト;
(s)ビラミューン;
(t)ビリアード;
(u)ゼリット;および
(v)ザイアジェン;
からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
ウイルスがHIVであり、哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項18〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
HIV感染を阻止するかまたは減少させる方法であり、以下の段階を含む方法:
請求項5〜12のいずれか一項記載の変異体gp41ペプチド誘導体を、HIVに曝されたことのある細胞を有する患者に投与する段階であり、該ペプチド誘導体は該患者の血液成分と結合し、それによって該患者の血液中でのペプチドの半減期が延長する段階。
【請求項29】
抗ウイルス結合体を作成する方法であって、
1つまたは複数の誘導体化変異体gp41ペプチドと血液成分を混合し、誘導体化変異体gp41ペプチドと血液成分との間で共有結合を形成させる段階を含む方法。
【請求項30】
血液成分が、
(a)ヒト血清アルブミンタンパク質;
(b)ヒトトランスフェリンタンパク質;
(c)ヒトフェリチンタンパク質;
(d)ヒト免疫グロブリンタンパク質;
(e)ヒトフェリチンタンパク質;
(f)ヒトα-2-マクログロブリンタンパク質;
(g)ヒトチロキシン結合タンパク質;
(h)ヒトステロイド結合タンパク質;および
(i)その組み合わせ
からなる群より選択される、請求項27〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
血液成分がヒト血清アルブミンタンパク質である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
結合がインビボで起こる、請求項27〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
結合がエクスビボで起こる、請求項27〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
1つまたは複数の血液成分が、誘導体化ペプチドとの結合の前にプラスマフェレシスによって分離される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜14のいずれか一項記載の単離されたペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項36】
抗ウイルス活性、ウイルス抑制活性、または抗融合誘導活性を有するペプチドを生成する方法であり、以下の段階を含む方法:
(a)1つまたは複数のウイルス毒性タンパク質をスクリーニングして、αヘリックスを形成する傾向を有するウイルス毒性タンパク質配列を同定する段階;
(b)該同定された配列の少なくとも1つのアミノ酸残基を改変または誘導体化することによって、変化したペプチドを設計する段階;
(c)該変化したペプチドを合成する段階;および
(d)抗ウイルス活性、ウイルス抑制活性、または抗融合誘導活性を確かめるために、該ペプチドを試験する段階。

【図1】
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【公開番号】特開2010−209097(P2010−209097A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105068(P2010−105068)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【分割の表示】特願2004−540158(P2004−540158)の分割
【原出願日】平成15年9月23日(2003.9.23)
【出願人】(305045737)フロンティア バイオテクノロジーズ カンパニー リミテッド (2)
【出願人】(505107619)
【出願人】(505107620)
【Fターム(参考)】