説明

HIV感染の処置及び予防

本発明は、ブレカナビルを含んでなる非経口用調剤を比較的長い時間間隔で断続的に投与することによるHIV感染の長期間処置に関する。本発明はさらに、HIV感染の処置及び予防のための、製薬学的に許容され得る水性担体中に懸濁されたブレカナビルのマイクロ−もしくはナノ粒子を含んでなる非経口的投与用の製薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ブレカナビル(brecanavir)を含んでなる非経口用調剤を、比較的長い時間間隔で断続的に投与することによるHIV感染の長期間処置に関する。本発明はさらに、HIV感染の処置及び予防のための、製薬学的に許容され得る水性担体中に懸濁されたブレカナビルのマイクロ−もしくはナノ粒子を含んでなる非経口的投与用の製薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因として知られるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の処置は、大きな医学的挑戦であり続けている。HIVは免疫学的抑圧(immunological pressure)を逃れることができ、多様な細胞型及び生育条件に対応することができ、且つ現在利用可能な薬剤治療に対する耐性を発現することができる。後者にはヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTIs)、HIV−プロテアーゼ阻害剤(PIs)及びもっと最近の融合阻害剤(エントリー阻害剤(entry inhibitors)としても既知)が含まれる。
【0003】
これらの薬剤のそれぞれはHIVの抑制に有効であるが、単独で用いられると耐性突然変異体の発現に直面する。これは、通常は異なる活性側面を有するいくつかの抗−HIV薬の組み合わせ治療の導入に導いた。特に「HAART」(高度に活性な抗−レトロウイルス治療)の導入は、抗−HIV治療における顕著な向上を生じ、HIV−関連罹病率及び死亡率の大きな低下に導いた。抗−レトロウイルス治療に関する現在の指針は、初期の処置のためにさえそのような三重組み合わせ治療管理を薦めた。しかしながら、現在利用可能な薬剤治療のいずれも、完全にHIVを根絶することはできない。HAARTでさえ、多くの場合、抗−レトロウイルス治療への非−指示順守性及び非−持続性のために、耐性の発現に直面し得る。これらの場合、その成分の1つを他の種類の1つで置き換えることにより、HAARTを再度有効とすることができる。HAART組み合わせを用いる治療は、正しく適用されれば、ウイルスがもうAIDSの発病を引き起こし得ないレベルまで、最高で何十年の多年に及んでウイルスを抑制することができる。
【0004】
HAARTにおいて頻繁に用いられるHIV薬の1つの種類はPIsの種類であり、その複数が現在市販されており、いくつかの他のものが開発の種々の段階にある。開発中のPIは、N−(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イル−オキシカルボニル−,(4S,5R)−4−[4−(2−メチルチアゾロ−4−メチルオキシ)−ベンジル]−5−i−ブチル−[(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)スルホニル]−アミノメチル−2,2−ジメチル−オキサゾリジンとも命名される化合物、[(3R,3aS,6aR)−2,3,3a,4,5,6a−ヘキサヒドロ−フロ[5,4−b]フラン−3−イル]N−[(2S,3R)−4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルスルホニル−(2−メチルプロピル)−アミノ)−3−ヒドロキシ−1−[4−[(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)メトキシ]フェニル]ブタン−2−イル]−カルバメート(CAS 313682−08−5)であり、一般的にブレカナビルと称される。この化合物は野生型HIVに対して、ならびに突然変異した変異体に対して顕著な活性を示したが、調製に関する打ち勝ち難い問題の故に開発が中断された。
【0005】
ほとんどの抗−HIV薬は、それらの薬物動態学的性質及び血漿レベルをある最低レベ
ルより高く保つ必要性の故に、比較的高い投薬量の頻繁な投与を必要とする。投与されるべき投薬形態物の数及び/又は体積は、通常「薬剤負荷量(pill burden)」と呼ばれる。高い薬剤負荷量は、多くの場合に大きな投薬形態物を嚥下しなければならない不便さと一緒になった摂取の頻度ならびに多数のもしくは大きな体積の丸薬を保存し且つ輸送する必要性のような多くの理由で望ましくない。高い薬剤負荷量は、患者がそれらの全投薬量を摂取せず、それにより処方される投薬管理に従い損なう危険を増す。ならびに処置の有効性を低下させ、これはウイルス耐性の発現にも導く。高い薬剤負荷量と関連する問題は、患者が種々の抗−HIV薬の組み合わせを摂取しなければならない場合に増大する。
【0006】
従って、治療が比較的小さい寸法の投薬形態物の投与を含み、且つさらに頻繁な投薬を必要としない点で薬剤負荷量を減少させるHIV阻害治療を提供することが望ましいであろう。2週間かもしくはそれより長いか、又は1ヶ月かもしくはそれより長いような長い時間間隔における投薬形態物の投与を含む抗−HIV治療を提供することは、魅力的であろう。
【0007】
例えばリトナビル(ritonavir)のような、薬剤代謝及び/又は薬物動態学に正の効果を有してバイオアベイラビリティーを向上させる薬剤なしのブレカナビルの経口的投与は、試験管内データに基づいて、PI−耐性ウイルスの阻害に不十分であろうと予測されるブレカナビル暴露を生ずる。しかしながら、リトナビルとのブレカナビルの共−投与は、濃度−時間曲線下の血漿ブレカナビル面積及び最大濃度を有意に増加させ、PI−耐性HIVを阻害すると予測されるブレカナビル濃度を達成する(非特許文献1)。化合物ブレカナビル、その薬理学的活性ならびに複数のその製造方法は特許文献1に記載されている。リトナビルの共−投与は薬剤負荷量を増すのみでなく、リトナビル自身が多数の他の薬剤治療の有効性に影響もし、どのようにしてそれらを同時に投与するかを知るのを困難にする。さらに、それはそれのみで多数の副作用を引き起こし得る。
【0008】
従って、リトナビルを共−投与する必要のないブレカナビルに基づく治療を提供することは、治療が単純化され且つリトナビル投与の副作用が除去される点で、望ましい目標であろう。
【0009】
HIVは完全に根絶され得ず、HIVに感染した人は他者を感染させる継続的な危険を呈している。初期感染の後、AIDSの第1の症状の発病までに長い時間を要する。人々は感染したまま、その影響を経験せず、それによりウイルスを他者にさらに移す危険に気付かずに、何年も生存し得る。従って、HIV伝染の予防は重要である。現在予防は、特に感染する危険にある人々におけるコンドームの使用により、性的接触による伝染を避けること、HIVの存在に関して血液試料を注意深く監視すること、ならびにおそらく感染しているであろう患者の血液との接触を避けることに集中している。
【0010】
これらの手段にかかわらず、人(individuals)がHIVに感染した者又は感染しつつある者(becoming infected)と接触する差し迫った危険が常にある。これは特に感染患者又は感染する危険にある患者に医療を与える者、例えば医師、看護士又は歯科医の場合にそうである。危険にある人の別の群は、特に母乳育児に代わるものがあまり明白でない未開発国における、母親が感染したか又は感染する危険にある母乳で育てられている乳児である。
【0011】
従って、HIVの伝染に対する予防を与えるさらなる手段が必要である。特に適用が容易である有効な予防手段が必要である。そのような予防手段の提供は、本発明のさらなる目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2000/076961号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Antimicrob.Agents Chemother.50:2201−2206
【発明の概要】
【0014】
今回、2週間かもしくはそれより長い、例えば最高で1年の時間間隔におけるブレカナビルの非経口用調剤の断続的な投与が、HIV感染の有効な予防又はHIV感染の有効な抑制の提供において十分な血漿レベルを生ずることが見出された。これは投与回数を減らすことを可能にし、それにより薬剤負荷量及び患者の薬剤コンプライアンスの点で有益である。追加の利点は、薬剤代謝及び/又は薬物動態学にバイオアベイラビリティーを向上させるような正の効果を有する追加の薬剤、例えばリトナビルを共−投与する必要がなく、それによりこれも薬剤負荷量を減少させ、ならびにリトナビルの投与と関連する副作用を避けることである。
【0015】
発明の概略
1つの側面において、本発明は、HIV感染の伝染の予防用又はHIVに感染した患者の処置用の薬剤の製造のための、抗体−ウイルス的に有効な量のブレカナビル又はその製薬学的に許容され得る酸−付加塩ならびに担体を含んでなる非経口用調剤の使用に関し、ここで調剤は2週間〜1年間の範囲内である時間間隔で断続的に皮下もしくは筋肉内注入により投与されるかもしくは投与されるべきである(is to be administered)。
【0016】
他の側面において、HIV感染の伝染の予防方法又はHIVに感染した患者の処置方法を提供し、該方法は、抗−ウイルス的に有効な量のブレカナビル又はその製薬学的に許容され得る酸−付加塩ならびに担体を含んでなる非経口用調剤の投与を含んでなり、ここで調剤は2週間〜1年間の範囲内である時間間隔で断続的に皮下もしくは筋肉内注入により投与される。
【0017】
1つの態様において、本発明は、非経口用調剤が2週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内である時間間隔で投与されるか又は投与されるべきである本明細書に規定される使用又は方法に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、非経口用調剤が2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は3ヶ月毎に1回投与されるか又は投与されるべきである本明細書に規定される使用又は方法に関する。
【0019】
本発明の1つの側面は、薬剤代謝及び/又は薬物動態学にバイオアベイラビリティーを向上させるような正の効果を有する薬剤、例えばリトナビルなしで非経口用調剤を投与できるということに関する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は:
(a)表面に吸着した表面改質剤を有するマイクロ−もしくはナノ粒子形態におけるブレカナビル又は塩;及び
(b)中にブレカナビル活性成分が懸濁されている製薬学的に許容され得る水性担体
を含んでなるマイクロ−もしくはナノ粒子の懸濁剤の形態における、治療的に有効な量のブレカナビル又はその塩を含んでなる、筋肉内もしくは皮下注入により投与するための製薬学的組成物に関する。
【0021】
本発明はさらに、HIVに感染した患者の処置方法に関し、該方法は上記又は下記で規定される抗−HIV的に有効な量の製薬学的組成物の筋肉内もしくは皮下注入による投与を含んでなる。あるいはまた、本発明は、HIV感染の処置用の薬剤の製造のための、上記又は下記で規定される製薬学的組成物の使用に関する。1つの態様において、組成物はHIV感染の長期間処置用である。
【0022】
別の態様において、HIVに感染した患者の長期間処置のための方法を提供し、該方法は、筋肉内もしくは皮下注入による投与用の上記もしくは下記で規定される製薬学的組成物の有効量の投与を含んでなり;ここで組成物は2週間〜1年間又は2週間〜1年間の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されるべきである。あるいはまた、HIVに感染した患者の長期間処置用の薬剤の製造のための、筋肉内もしくは皮下注入による投与用の上記もしくは下記で規定される製薬学的組成物の使用に関し、ここで組成物は2週間〜1年間又は2週間〜2年間の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されるべきである。
【0023】
本発明はさらに、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防方法に関し、該方法は上記で規定されたか又は下記でさらに規定される製薬学的組成物のHIV感染の予防に有効なある量を該患者に投与することを含んでなる。あるいはまた、本発明は、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための上記で規定されたかもしくは下記でさらに規定される製薬学的組成物の使用に関する。
【0024】
別の側面において、本発明はHIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の長期間予防のための方法に関し、該方法は上記で規定されたかもしくは下記でさらに規定される製薬学的組成物の有効量を該患者に投与することを含んでなり、ここで組成物は2週間〜1年間又は2週間〜2年間の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されるべきである。
【0025】
本発明はさらに、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の長期間予防用の薬剤の製造のための上記で規定されたかもしくは下記でさらに規定される製薬学的組成物の使用に関し、ここで組成物は2週間〜1年間又は2週間〜2年間の範囲内である時間間隔で断続的に投与されるか又は投与されるべきである。
【0026】
1つの態様において、本発明は、製薬学的組成物が2週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内である時間間隔で投与されるか又は投与されるべきである本明細書に規定される使用又は方法に関する。
【0027】
他の態様において、本発明は、製薬学的組成物が2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は2ヶ月毎に1回又は3ヶ月毎に1回投与されるか又は投与されるべきである本明細書に規定される使用又は方法に関する。
【0028】
さらなる製薬学的組成物、処置もしくは予防方法ならびにこれらの組成物に基づく薬剤の製造のための使用を下記に記載し、それは本発明の一部であるものとする。
【0029】
図の記述
図1:ラットにおいてブレカナビルの溶液を2mg/kgで静脈内投薬した後の個々の血漿濃度(ng/ml)対時間分布。
図2:ラットにブレカナビル溶液を16(△)及び56mg/kg(○)で1回皮下注入した後のブレカナビルの個々の及び平均の血漿濃度。
図3:ラットに
A.50mg/kgにおけるブレカナビルTween20マイクロ懸濁剤(62.5mg/ml);
B.50mg/kgにおけるブレカナビルTween20ナノ懸濁剤(100mg/ml);
C.50mg/kgにおけるブレカナビルF108ナノ懸濁剤(100mg/ml);
D.50mg/kgにおけるブレカナビルTween20ナノ懸濁剤(200mg/ml);
を1回、筋肉内(○)及び皮下(△)注入した後のブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
図4:動物当たり50mgのTween20ナノ懸濁剤(100mg/ml)を1回、筋肉内投薬した後のウサギにおけるブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のさらなる説明
ブレカナビルは塩基形態で、又は製薬学的に許容され得る塩の形態として、例えば酸付加塩の形態として用いられ得る。製薬学的に許容され得る付加塩は、治療的に活性な無毒性の塩の形態を含むものとする。本明細書で用いられる場合は常に、「ブレカナビル」という用語はその製薬学的に許容され得る塩の形態と同様に遊離の形態を指す。
【0031】
「HIV感染の予防」という用語は、患者がHIVに感染するのを予防するか又は避けることに関する。感染の源はHIVを含有する材料、特にHIVを含有する体液、例えば血液又は精液あるいはHIVに感染している他の患者のように種々であり得る。HIV感染の予防は、HIVを含有する材料から又はHIVに感染した人から未感染の人へのウイルスの伝染の予防に関するか、あるいはウイルスが未感染の人から体内に入るのを妨げることに関する。HIVウイルスの伝染は、性的伝染によるか又は感染患者の血液との接触、例えば感染患者に医療を与える医療スタッフによるようなHIV転移のいずれの既知の原因によることもできる。HIVの転移は、例えば血液試料を扱うかもしくは輸血の場合のHIV感染した血液との接触によっても起こり得る。それは例えばHIV感染細胞を用いて実験室実験を行なう場合の感染細胞との接触によることもあり得る。
【0032】
「HIV感染の処置」、「抗−HIV治療」という用語ならびに類似の用語は、HIVのウイルス負荷(特定の体積の血清中のウイルスRNAのコピーの数として表される)を減少させる処置を指す。処置が有効であるほど、ウイルス負荷は低い。好ましくは、ウイルス負荷は可能な限り低いレベルまで、例えばml当たり約200コピーより低い、特にml当たり約100コピーより低い、さらに特定的にml当たり50コピーより低い、可能ならウイルスの検出限界より低いレベルまで下げられるべきである。1、2又は3桁ものウイルス負荷の低下(例えば約10〜約10又はそれより大きい、例えば約10の次数(order)における低下)は、処置の有効性の指標である。抗−HIV処置の有効性を測定するための他のパラメーターはCD4カウントであり、それは正常の成人においてμl当たり約500〜約1500個の細胞の範囲である。低くなったCD4カウントはHIV感染の指標であり、μl当たり約200個の細胞より低くなるとAIDSが発症し得る。例えばμl当たり約50、100、200個か又はそれより多くの細胞でのCD4カウントの増加も、抗−HIV処置の有効性の指標である。CD4カウントは、特にμl当たり約200個の細胞より高いか又はμl当たり約350個の細胞より高いレベルまで増加するべきである。ウイルス負荷又はCD4カウントあるいは両方を用いて、HIV
感染の程度を診断することができる。
【0033】
「HIVの有効な処置」という用語及び類似の用語は、上記の通りウイルス負荷を低下させるか、CD4カウントを増加させるか、又は両方である処置を指す。
【0034】
「HIV感染の処置」という用語は、HIV感染と関連する疾患、例えばAIDS又は血小板減少症、カポージ肉腫ならびに進行性脱髄を特徴とし、痴呆及び進行性構語障害、運動失調及び失見当識のような症状を生ずる中枢神経系の感染を含むHIV感染と関連する他の状態ならびにやはりHIV感染が関連するさらに別の状態、例えば末梢神経障害、進行性全身性リンパ節症(PGL)及びAIDS−関連症候群(ARC)の処置にも関する。
【0035】
「HIVの有効な予防」という用語及び類似の用語は、HIVを含有する材料又はHIV感染患者のようなHIV感染の源と接触している集団において、新しく感染する患者の相対的数が減少する状況を指す。例えばHIV感染者及び非−感染者の混合集団において、本発明の製薬学的組成物を用いて処置された非−感染者と未処置の非−感染者を比較する時に、新しく感染した者の相対的数が減少しているかどうかを測定することにより、有効予防を測定することができる。この減少は、与えられる集団における時間を経ての感染及び非−感染者の数の統計的分析により測定することができる。
【0036】
「有効量」という用語は、投与されるとHIVの有効な処置を与えるブレカナビルの量を指す。「有効血漿レベル」という用語は、特に上記のコピー数より少なくまでウイルス負荷を減少させるブレカナビルの血漿レベルを指す。「有効量」という用語は類似して、投与されるとHIVの有効な予防を与えるブレカナビルの量を指す。
【0037】
「治療的に有効な量」、「HIV感染の予防において有効な量」という用語及び類似の用語は、有効な血漿レベルを生ずる活性成分ブレカナビルの量を指す。「有効な血漿レベル」を用いて、HIV感染の有効な処置又は有効な予防を与えるHIV阻害剤ブレカナビルの血漿レベルを意味する。
【0038】
「患者」という用語は、特に人間に関する。
【0039】
本発明に従うブレカナビルの非経口用組成物の使用又は使用方法は、長期間のHIV感染の処置又はHIV感染の伝染の予防のためであることができる。予防の場合、組成物は感染の危険が存在する限りは適用されるであろう。あるいは危険が限られた期間存在する場合、適用は感染の危険が存在する期間、例えば2〜3週間又は3〜4週間の範囲内の期間あるいは1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜6ヶ月又は6〜12ヶ月又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内の期間であろう。HIV感染の処置のためには、ブレカナビルの非経口用組成物は1年間又は数年間のような長期間投与されるであろう。
【0040】
「少なくとも約2週間かそれより長期間有効」という表現により、活性成分ブレカナビルの投薬間隔の最後又は2回の投薬間隔の間における血漿濃度の最小値が閾値より高くなければならないことを意味する。治療的適用の場合、該閾値はブレカナビルがHIV感染の有効な処置を与える最低血漿レベルである。HIV感染の予防における適用の場合、該閾値はブレカナビルがHIV感染の伝染の予防において有効である最低血漿レベルである。
【0041】
種々の時間間隔で本発明の製薬学的組成物を投与することができる。HIV感染の予防において用いる場合、本発明の製薬学的組成物を1回だけ又は2回、3回、4回、5回もしくは6回又はそれより多数回のような限られた回数投与することができる。限られた期
間、例えば感染の危険がある期間、予防が必要である場合にこれを薦めることができる。
【0042】
本発明の製薬学的組成物を上記の時間間隔で、例えば2週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内の時間間隔で投与することができる。1つの態様において、製薬学的組成物を2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は3ヶ月毎に1回投与することができる。他の態様において、時間間隔は1〜2週間又は2〜3週間又は3〜4週間の範囲内であるか、あるいは時間間隔は1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜4ヶ月又は3〜6ヶ月又は6ヶ月〜12ヶ月又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内である。時間間隔は少なくとも2週間であることができるが、数週間、例えば2、3、4、5又は6週間であることもできるか、あるいは1ヶ月又は数ヶ月、例えば2、3、4、5もしくは6ヶ月又はそれより長い、例えば7、8、9もしくは12ヶ月の時間間隔であることさえできる。1つの態様において、本発明の製薬学的組成物は1、2又は3ヶ月の時間間隔で投与される。本発明の製薬学的組成物の各投与の間のこれらの比較的長い期間は、薬剤負荷量及びコンプライアンスの点でさらなる改善を与える。コンプライアンスをさらに向上させるために、組成物が週毎のスケジュールで投与される場合には週のある曜日に、あるいは月毎のスケジュールの場合には月のある日に彼らの薬(medication)を摂取するように、患者を指導することができる。
【0043】
本発明の組成物の各投与の間の時間間隔の長さは様々であることができる。例えば該時間間隔を血漿レベルの関数において選択することができる。ブレカナビルの血漿レベルが低すぎるとみなされる場合、例えばこれらが下記で規定する最低血漿レベルに近づいている場合、間隔はより短いことができる。ブレカナビルの血漿レベルが高すぎるとみなされる場合、間隔はより長いことができる。1つの態様において、本発明の組成物は等しい時間間隔で投与される。組成物は、好ましくは介在する追加の投与なしで投与されるか、あるいは言い換えると、さらなるブレカナビルが投与されない様々なもしくは等しい長さの時間間隔、例えば少なくとも2週間の時間間隔又は本明細書に規定される他の時間間隔により互いから隔てられた時間内の特定の時点に組成物を投与することができる。同じ長さの時間間隔を有することは、投与スケジュールが単純である、例えば週の同じ曜日又は月の同じ日に投与が行われる利点を有する。そのような投与スケジュールは、従って限られた「薬剤負荷量」を含み、それにより処方される投薬管理への患者のコンプライアンスに有益に寄与する。
【0044】
本発明における使用のための非経口用調剤中のブレカナビルの量である投与されるブレカナビルの投薬量(又は量)は、ブレカナビルの血漿濃度が長期間、最低血漿レベルより高く保たれるように選ばれる。HIV処置の状況での「最低血漿レベル」(Cmin)という用語は最低有効血漿レベルを指し、後者はHIVの有効な処置を与えるブレカナビルの血漿レベルあるいは別の用語で、HIVの抑制に有効であるブレカナビルの血漿レベルである。ブレカナビルの血漿レベルはこれらの閾血漿レベルより高く保たれねばならず、それは、それより低いレベルにおいて薬剤はもはや有効でなく、それにより突然変異の危険が増すからである。HIV予防の場合、「最低血漿レベル」(又はCmin)という用語は、HIV感染の伝染の有効な予防を与えるブレカナビルの最低血漿レベルを指し、これは該伝染の阻止に有効である最低血漿レベルである。
【0045】
投与されるブレカナビルの投薬量は、それが投与される時間間隔にも依存する。投与の頻度がより低い場合に投薬量はより多いであろう。
【0046】
投与されるブレカナビルの投薬量は、本発明の製薬学的組成物中のブレカナビルの量に、あるいは投与される与えられる組成物の量に依存する。より高い血漿レベルが望ましい場合、より高いブレカナビル濃度の組成物又は与えられる組成物のより多くのいずれか又は両方を投与することができる。より低い血漿レベルが望ましい場合には、これが逆に適
用される。ある望ましい血漿レベルを得るために、様々な時間間隔及び様々な投薬量の組み合わせを選ぶこともできる。
【0047】
投与されるブレカナビルの投薬量(又は量)は、投与の頻度(すなわち各投与の間の時間間隔)にも依存する。通常、投与の頻度がより低い場合に投薬量はより高いであろう。これらのパラメーターのすべてを用い、血漿レベルを所望の値に向けることができる。
【0048】
投薬管理は、HIV感染の予防が意図されているか又はその処置が意図されているかにも依存する。治療の場合、ブレカナビルの血漿濃度が最低血漿レベルより高く保たれるように、投与されるブレカナビルの投薬量又は投薬の頻度あるいは両方を選ぶ。特定的に、ブレカナビルの血漿レベルは約24ng/mlの最低血漿レベルより高い、又は約40ng/mlより高い、又は約50ng/mlより高い、又は約75ng/mlより高いレベルに保たれる。ブレカナビルの血漿レベルをもっと高い最低血漿レベルより高く、例えば約100ng/mlより高く、又は約150ng/mlより高く、又は約200ng/mlより高く保つことができる。EC50値にタンパク質結合及び安全域を表わす因子を乗ずることにより最低血漿レベルを決定することができ、因子を約10に設定することができる。野生型HIVを用いる試験でEC50値を得ることができる。それはAntimicrobial Agents and Chemotherapy,Apr.2007,pp.1202−1208からも既知である。
【0049】
1つの態様において、ブレカナビルの血漿レベルはある範囲内に、特に上記の最低血漿レベルから選ばれる最低血漿レベルから始まって約100ng/ml又は約200ng/ml又は約500ng/ml又は約1000ng/mlのようなもっと高い血漿レベルで終わる範囲内に保たれる。1つの態様において、ブレカナビルの血漿レベルは約5〜約500ng/ml又は約10ng/ml〜約200ng/ml又は約10ng/ml〜約100ng/ml又は約10ng/ml〜約50ng/mlの範囲内に保たれる。
【0050】
ブレカナビルの血漿レベルは上記の最低血漿レベルより高く保たれねばならず、それは、それより低いレベルにおいてウイルスをもはや十分に抑制することができず、ウイルスが増殖して突然変異の発現の危険が加わり得るからである。
【0051】
特にHIV予防の場合、ブレカナビルの血漿レベルを、治療に関連して上記で言及した最低血漿レベルより高いレベルに保つことができる。しかしながら予防においては、ブレカナビルの血漿レベルをもっと低いレベルに、例えば約1ng/ml又は約5ng/ml又は約10ng/mlより高いレベルに保つことができる。好ましくは、ブレカナビルの血漿レベルをこれらの最低血漿レベルより高く保つべきであり、それは、それより低いレベルでは薬剤がもはや有効でなく、それによりHIV伝染の危険が増し得るからである。安全域を持つために、ブレカナビルの血漿レベルをいくらかより高いレベルに保つことができる。そのようなより高いレベルは約24ng/mlかそれより高い濃度から始まる。ブレカナビルの血漿レベルを、治療に関連して上記で言及した範囲内であるレベルに保つことができるが、ここで下限は約4ng/ml又は約5ng/ml又は約8ng/mlの血漿レベルを含む。
【0052】
ある場合には、ブレカナビルの血漿レベルを比較的低いレベルに、例えば本明細書で規定される最低血漿レベルに可能な限り近いレベルに保つのが望ましいかも知れない。これは投与の頻度及び/又は各投与を用いて投与されるブレカナビルの量を減少させることを可能にするであろう。それは望ましくない副作用を避けることも可能にし、それは、感染する危険にある健康な人々であり、従って副作用を耐える傾向が低い目標とされる集団群(population groups)のほとんどにおける投薬形態物の許容に寄与するであろう。予防の場合にはブレカナビルの血漿レベルを比較的低いレベルに保つことが
できる。他の場合、例えば感染の高い危険があり、より頻繁な及び/又はより高い投薬量が問題とならない場合には、ブレカナビルの血漿レベルを比較的高いレベルに保つのが望ましいかも知れない。これらの場合、最低血漿レベルは、HIVの有効な処置を与えるブレカナビルの最低血漿レベル、例えば本明細書で言及する特定のレベルに等しいことができる。
【0053】
予防の場合、非経口的に投与されるべき投薬量は、約0.2mg/日〜約50mg/日又は約0.5mg/日〜約50mg/日又は約1mg/日〜約10mg/日又は約2mg/日〜約5mg/日、例えば約3mg/日に基づいて計算されるべきである。これは、約1.5mg〜約350mg、特に約3.5mg〜約350mg、特に約7mg〜約70mg又は約14mg〜約35mg、例えば約35mgの1週間の投薬量あるいは6mg〜約3000mg、特に約15mg〜約1,500mg、さらに特定的に約30mg〜約300mg又は約60mg〜約150mg、例えば約150mgの1ヶ月の投薬量に相当する。他の投薬管理に関する投薬量は、1日の投薬量に各投与の間の日数を乗じることにより、容易に計算され得る。
【0054】
治療の場合、非経口的に投与されるべき投薬量はいくらかもっと高くなければならず、約1mg/日〜約150mg/日又は約2mg/日〜約100mg/日又は約5mg/日〜約50mg/日又は約10mg/日〜約25mg/日、例えば約15mg/日に基づいて計算されるべきである。対応する1週間又は1ヶ月の投薬量は、上記で示した通りに計算され得る。予防における適用の場合、投薬量はもっと低いことができるが、治療的適用の場合と同じ投薬量を用いることができる。
【0055】
投与されると、ブレカナビルの血漿レベルは大体安定である、すなわちそれらは限られた限界内で変動することが見出された。血漿レベルは長時間、大体定常状態モードに近づくか、あるいは大体ゼロ次放出速度に近づくことが見出された。「定常状態」により、患者の血漿中に存在する薬剤の量が長時間に及んで大体同じレベルに留まる状態を意味する。ブレカナビルの血漿レベルは一般に、薬剤が有効である最低血漿レベルより低い血漿レベルへの下降を示さない。「大体同じレベルに留まる」という用語は、許容される範囲内における血漿濃度の小さい変動、例えば約±30%又は約±20%又は約±10%又は約±5%の範囲内の変動があり得ることを排除しない。
【0056】
ブレカナビルの非経口用調剤は、少なくとも2週間の時間間隔で、又は特に本明細書で言及される時間間隔で断続的に投与され、それは介在する追加のブレカナビルの投与なしで非経口用調剤が投与されることを意味する。あるいは他の用語を用いると、ブレカナビルは、ブレカナビルが投与されない少なくとも2週間の時間又は特に本明細書で言及される時間間隔により互いから隔てられた時間内の特定の時点に投与される。従って投与スケジュールは単純であり、わずかな回数の投与しか必要とせず、従って標準的なHIV薬剤治療の場合に直面する「薬剤負荷量」の問題を劇的に軽減する。これは今度は、処方される薬剤治療への患者のコンプライアンスを向上させるであろう。
【0057】
ブレカナビルの非経口用調剤を上記の時間間隔で投与することができる。1つの態様において、時間間隔は2〜3週間又は3〜4週間の範囲内である。他の態様において、時間間隔は1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜4ヶ月の範囲内である。時間間隔は少なくとも2週間であることができるが、数週間、例えば2、3、4、5又は6週間あるいは1ヶ月又は数ヶ月、例えば2、3、4、5又は6ヶ月かもしくはもっと長い、例えば7、8、9又は12ヶ月の時間間隔であることもできる。1つの態様において、非経口用調剤は1、2又は3ヶ月の時間間隔で投与される。
【0058】
非経口用調剤の各投与の間のこれらの比較的長い期間は、「薬剤負荷量」及びコンプラ
イアンスをさらにもっと改善することにある。コンプライアンスをさらに向上させるために、調剤が週毎のスケジュールで投与される場合には週のある曜日に、あるいは月毎のスケジュールの場合には月のある日に彼らの薬を摂取するように、患者を指導することができる。ブレカナビルの非経口用調剤の各投与の間の時間間隔は様々であることができる。例えばブレカナビルの血漿レベルが低すぎるとみなされる場合、例えばこれらが下記で規定される最低血漿レベルに近づいている場合、間隔はより短いことができる。ブレカナビルの血漿レベルが高すぎるとみなされる場合、間隔はより長いことができる。1つの態様において、ブレカナビルの非経口用調剤は同じ時間間隔で、例えば2週間毎に、1ヶ月毎に又は本明細書で言及される時間間隔毎に投与される。同じ長さの時間間隔を有することは、投与が例えば週の同じ曜日又は月の同じ日に成される利点を有し、それにより治療のコンプライアンスに寄与する。
【0059】
好ましくは、非経口用調剤は1回の投与で、例えば少なくとも2週間の時間間隔の後の1回の注入により、例えば2週間毎又は1ヶ月毎又は3ヶ月毎の1回の注入により投与される。
【0060】
ブレカナビルの血漿濃度は、有意な副作用を引き起こすことなく比較的高いレベルに達することができるが、ブレカナビルが有意な副作用を引き起こす血漿レベルである最大血漿レベル(又はCmax)を超えてはならない。本明細書で用いられる場合、「有意な副作用」という用語は、関連する患者集団において、副作用が患者の正常な機能に影響を与える程度まで副作用が存在することを意味する。細胞アッセイにおける試験データの外挿から、又は臨床試験の評価からブレカナビルに関するCmaxを決定することができ、それは好ましくは約1000ng/mlの値を超えてはならない。
【0061】
皮下又は筋肉内投与により、非経口用ブレカナビル調剤を投与することができる。
【0062】
担体
本発明は活性成分ブレカナビルの非経口用調剤の使用に基づいており、従って担体の性質は非経口的投与に適合するように選ばれねばならないであろう。担体は液体であり、油性であることができるが、ほとんどの場合に水性であろう。後者の場合、担体は無菌水を含むが、他の成分が含まれることができる。担体は補助溶媒、例えばアルコール、例えばエタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールあるいは補助溶媒として働くポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)又はポリエトキシル化ひまし油(Cremophor(R))も含有することができる。
【0063】
活性化合物の溶解性を強化するために、溶解性増強効果を有する追加の成分、例えば可溶化剤及び界面活性剤又は界面活性剤及び可溶化剤の両方である成分を、ブレカナビルの非経口用調剤に加えることができる。そのような追加の成分の例はシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体である。適したシクロデキストリンは、シクロデキストリンの無水グルコース単位のヒドロキシ基の1個もしくはそれより多くがC1−6アルキル、特にメチル、エチル又はイソプロピルで置換されているα−、β−、γ−シクロデキストリン又はそれらのエーテル類及び混合エーテル類、例えば無作為にメチル化されたβ−CD;ヒドロキシC1−6アルキル、特にヒドロキシルエチル、ヒドロキシ−プロピルもしくはヒドロキシブチル;カルボキシC1−6アルキル、特にカルボキシメチルもしくはカルボキシエチル;C1−6アルキルカルボニル、特にアセチルで置換されているものである。錯体化剤及び/又は可溶化剤として特に注目すべきなのはβ−CD、無作為にメチル化されたβ−CD、2,6−ジメチル−β−CD、2−ヒドロキシエチル−β−CD、2−ヒドロキシエチル−β−CD、2−ヒドロキシプロピル−β−CD及び(2−カルボキシメトキシ)プロピル−β−CDならびに特に2−ヒドロキシプロピル−β−CD(2−HP−β−CD)である。
【0064】
界面活性剤性を有する他のそのような成分はポロキサマーであり、それは一般的に式HO−[CHCHO]−[CH(CH)CHO]−[CHCHO]−Hに従うポリオキシエチレン,ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、式中、x、y及びzは種々の値を有することができ、商品名Pluronic(R)、例えばx、y及びzの平均値がそれぞれ128、54及び128であるポロキサマー338に相当するPluronic(R) F108の下に入手可能である。さらに別のそのような成分はα−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、特にビタミン E TGPS;商品名Tween(R)、例えばTween(R)80の下に入手可能なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベートとも称される);PEG 400のようなポリエチレングリコール(PEGs)である。
【0065】
ブレカナビルの非経口用調剤はさらに懸濁化剤及び緩衝剤及び/又はpH調整剤ならびに場合により防腐剤及び等張化剤を含むことができる。特別な成分はこれらの薬剤の2つもしくはそれより多くとして同時に機能することができ、例えば防腐剤及び緩衝剤のように挙動するか、あるいは緩衝剤及び等張化剤のように挙動する。
【0066】
緩衝剤及びpH調整剤は、分散系を中性から非常にわずかに塩基性(pH8.5まで)、好ましくは7〜7.5のpH範囲内とするのに十分な量で用いられることができる。特定的な緩衝剤は弱酸の塩である。加えることができる緩衝剤及びpH調整剤は、これらの混合物を含んで酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム/乳酸、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、重炭酸ナトリウム/炭酸、コハク酸ナトリウム/コハク酸、安息香酸ナトリウム/安息香酸、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ベンゼンスルホン酸、ベンゾエートナトリウム/酸(benzoate sodium/acid)、ジエタノールアミン、グルコノデルタラクトン、塩酸、臭化水素、リシン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、トロメタミン、グルコン酸、グリセリン酸、グルタル酸(gluratic)、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミンから選ばれることができる。
【0067】
防腐剤は抗微生物剤及び酸化防止剤を含んでなり、それらは安息香酸、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロルブトル、ガレート、ヒドロキシベンゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、ベンズエトニウムクロリド、ミリスチル−γ−ピコリニウムクロリド、フェニル水銀アセテート及びチメロサルより成る群から選ばれることができる。ラジカル掃去剤にはBHA、BHT、ビタミン E及びパルミチン酸アスコルビルならびにそれらの混合物が含まれる。酸素掃去剤にはアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−システイン、アセチルシステイン、メチオニン、チオグリセロール、アセトンナトリウムビサルファイト、イソアスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが含まれる。キレート化剤にはクエン酸ナトリウム、ナトリウムEDTA及びリンゴ酸が含まれる。
【0068】
等張化剤は、例えば塩化ナトリウム、デキストロース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マンニトール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ラクトース、硫酸ナトリウムである。懸濁剤は、簡便には0〜10%(w/v)、特に0〜6%の等張化剤を含んでなる。典型的な非イオン性等張化剤、特にグリセリンが好ましく、それは電解質がコロイド安定性に影響し得るからである。
【0069】
1つの態様において、本発明に従う使用のためのブレカナビルの非経口用調剤は、有効量のブレカナビル及び水性担体を含んでなる溶液の形態をとる。好ましくは、可溶化剤又
は界面活性剤、特に上記で挙げた可溶化剤又は界面活性剤のいずれかが加えられる。
【0070】
さらに、ブレカナビルの物理−化学的性質はマイクロもしくはナノ粒子懸濁剤の製造を可能にすることが見出され、それをHIV感染の長期間処置ならびにHIV感染の長期間予防のために用いることができる。
【0071】
「マイクロ−もしくはナノ粒子」という用語は、マイクロメーター又はナノメーター範囲内の粒子を指す。粒子の寸法はある最大寸法より小さくなければならず、それより大きいと皮下もしくは筋肉内注入による投与が損なわれるか又はもはや不可能でさえある。該最大寸法は、例えば針の直径により、又は大きな粒子への体の不利な反応あるいは両方により課せられる限界に依存する。1つの態様において、本発明の製薬学的組成物はナノ粒子形態におけるブレカナビルを含む。
【0072】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子の平均有効粒度は約50μmより低いか、又は約20μmより低いか、又は約10μmより低いか、又は約1000nmより低いか、又は約500nmより低いか、又は約400nmより低いか、又は約300nmより低いか、又は約200nmより低いことができる。平均有効粒度の下限は低いことができ、例えば約100nmのように低いか又は約50nmのように低いことができる。1つの態様において、平均有効粒度は約50nm〜約50μm又は約50nm〜約20μm又は約50nm〜約10μm又は約50nm〜約1000nm、約50nm〜約500nm又は約50nm〜約400nm又は約50nm〜約300nm又は約50nm〜約250nm又は約100nm〜約250nm又は約150nm〜約220nm又は100〜200nm又は約150nm〜約200nmの範囲内、例えば約130nm又は約150nmである。
【0073】
本明細書で用いられる場合、平均有効粒度という用語は当該技術分野における熟練者に既知のその通常の意味を有し、当該技術分野において既知の粒度測定法、例えば沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光分析、レーザー回折又は分離板型遠心沈降により測定され得る。本明細書で言及される平均有効粒度を、粒子の体積分布と関連付けることができる。その場合、「約50μmより低い有効平均粒度」により、粒子の体積の少なくとも50%が50μmの有効平均より低い粒度を有することを意味し、言及される他の有効粒度に同じことが当てはまる。類似のやり方で、平均有効粒度を粒子の重量分布と関連付けることができるが、通常これは平均有効粒度に関する値と同じか又は大体同じ値を生ずるであろう。
【0074】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物は長期間に及ぶ活性成分ブレカナビルの放出を与える。投与の後、これらの組成物は体内に留まり且つ一定してブレカナビルを放出し、長期間、患者の系内にこの活性成分を保ち、それにより該期間の間、抗−HIV治療又はHIV感染の伝染の予防を与える。
【0075】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物は、優れた局所的許容性及び投与の容易さを示す。優れた局所的許容性は、注入の部位における最小の刺激及び炎症に関し;投与の容易さは、特定の薬剤調製物のある投薬量を投与するのに必要な針の寸法及び時間の長さに関する。さらに、それらは優れた安定性を示し、且つ許容され得る貯蔵期間を有する。
【0076】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子は、それらの表面上に吸着した表面改質剤を有する。表面改質剤の機能は、湿潤剤としてならびにコロイド懸濁剤の安定剤として働くことである。
【0077】
1つの態様において、本発明の組成物中のマイクロ−又はナノ粒子は、主に結晶性ブレカナビル又はその塩;及び表面改質剤を含んでなり、それらの合わされた量は、マイクロ
−又はナノ粒子の少なくとも約50%又は少なくとも約80%又は少なくとも約90%又は少なくとも約95%又は少なくとも約99%を構成することができる。
【0078】
さらに別の態様において、本発明は、本質的に:
(1)表面に吸着した表面改質剤を有するマイクロ−もしくはナノ粒子形態におけるブレカナビルあるいはその立体異性体又は立体異性体混合物;ならびに
(2)活性成分が中に懸濁されている製薬学的に許容され得る水性担体
から成る粒子の懸濁剤の形態において、治療的に有効な量のブレカナビルあるいはその立体異性体又は立体異性体混合物を含んでなる、筋肉内又は皮下注入による投与のための製薬学的組成物に関する。
【0079】
適した表面改質剤を、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然製品及び界面活性剤を含む既知の有機及び無機製薬学的賦形剤から選ぶことができる。特定の表面改質剤は、非イオン性及びアニオン性界面活性剤を含む。表面改質剤の代表的な例には、ゼラチン、カゼイン、レシチン、負に帯電したリン脂質の塩又はその酸形態(例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノサイト、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸(phosphatic acid)及びそれらの塩、例えばアルカリ金属塩、例えばそれらのナトリウム塩、例えば卵ホスファチジルグリセロールナトリウム、例えばLipoidTM EPGの商品名の下に入手可能な製品)、アラビアゴム、ステアリン酸、ベンズアルコニウムクロリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばマクロゴルエーテル、例えばセトマクロゴル 1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化ケイ素、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、胆汁塩、例えばタウロコール酸ナトリウム、デソキシタウロコール酸ナトリウム、デソキシコール酸ナトリウム;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、マグネシウムアルミネートシリケート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるポロキサマー、例えばPluronicTM F68、F108及びF127;チロキサポル(tyloxapol);ビタミン E−TGPS(α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、特にα−トコフェリルポリエチレングリコール 1000 スクシネート);ポロキサミン、例えばエチレンジアミンへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドの逐次付加(sequential addition)から誘導される四官能基性ブロックコポリマーであるTetronicTM 908(T908);デキストラン;レシチン;ナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステル、例えばAerosol OTTM(AOT)の商品名の下に販売されている製品;ラウリル硫酸ナトリウム(DuponolTM P);TritonTM X−200の商品名の下に入手可能なアルキルアリールポリエーテルスルホネート;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TweensTM 20、40、60及び80);脂肪酸のソルビタンエステル(SpanTM 20、40、60及び80又はArlacelTM 20、40、60及び80);ポリエチレングリコール(例えばCarbowaxTM 3550及び934の商品名の下に販売されているもの);スクロースステアレート及びスクロースジステアレート混合物、例えばCrodestaTM F110又はCrodestaTM SL−40の商品名の下に入手可能な製品;ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC);ポリビニルピロリドン(PVP)が含まれる。望ましければ、2種もしくはそれより多い表面改質剤を組み合わせて用いることができる。
【0080】
特定的な表面改質剤は、ポロキサマー、α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び負に帯電したリン脂質の塩又はその酸形態から選ばれる。さらに特定的に、表面改質剤はPluronicTM F108、ビタミン E TGPS、TweenTM 80、TweenTM 20及びL
ipoidTM EPGから選ばれる。これらの表面改質剤の1種もしくはそれより多くを用いることができる。PluronicTM F108はポロキサマー 338に相当し、それはポリオキシエチレン,ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、それは一般に、式HO−[CHCHO]−[CH(CH)CHO]−[CHCHO]−Hに従い、ここでx、y及びzの平均値はそれぞれ128、54及び128である。ポロキサマー338の他の商品名はHodag NonionicTM 1108−F及びSynperonicTM PE/F108である。1つの態様において、表面改質剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びホスファチジルグリセロール塩(特に卵ホスファチジルグリセロールナトリウム)の組み合わせを含んでなる。
【0081】
表面改質剤に対するブレカナビルの最適な相対的量は、選ばれる表面改質剤、平均有効粒度及びブレカナビル濃度により決定されるブレカナビル懸濁液の比表面積、表面改質剤がミセルを形成するならそのミセル形成臨界濃度などに依存する。ブレカナビル対表面改質剤の相対的な量(w/w)は、好ましくは1:2〜約20:1の範囲内、特に1:1〜約10:1の範囲内、例えば約4:1である。
【0082】
機械的手段による、及び過飽和溶液からの制御された沈降による、あるいはGAS法(「ガス 非−溶剤(gas anti−solvent)」)におけるように超臨界流体の使用による、あるいはそのような方法の組み合わせによるマイクロ化/粒度低下/ナノ化により、本発明の粒子を調製することができる。1つの態様において、液体分散媒中にブレカナビルを分散させ、そして磨砕媒体の存在下で機械的手段を適用して約50μmより低い、特に約1000nmより低い平均有効粒度までブレカナビルの粒度を低下させる段階を含んでなる方法が用いられる。表面改質剤の存在下で粒子の寸法を縮小させることができる。
【0083】
本発明の粒子の調製のための一般的な方法は、
(a)マイクロ粒子化された形態でブレカナビルを得るか、又は必要なら超微粉砕された形態でマイクロ粒子化ブレカナビルを得;
(b)ブレカナビルを液体媒体に加えて予備混合物/予備分散系を形成し;そして
(c)予備混合物/予備分散系を磨砕媒体の存在下で機械的手段に供して、平均有効粒度を低下させる
ことを含んでなる。
【0084】
ブレカナビル出発材料はマイクロ粒子化形態にされねばならず、それはその平均有効粒度がマイクロメーター範囲内にあることを意味する。予備分散系の調製のためのブレカナビル活性剤の平均有効粒度は、篩別分析により決定される約100μmより低いのが好ましい。超微粉砕されたブレカナビルの平均有効粒度が約100μmより高い場合、当該技術分野で既知の方法を用いる超微粉砕により、ブレカナビルの粒子の寸法を100μmより小さく縮小させるのが好ましい。
【0085】
次いでブレカナビルを、それが本質的に不溶性である液体媒体に加え、予備分散系を形成することができる。液体媒体中のブレカナビルの濃度(重量/重量パーセンテージ(weight by weight percentage))は広く変わることができ、選ばれる表面改質剤及び他の因子に依存する。組成物中のブレカナビルの適した濃度は、約0.1%〜約60%又は約1%〜約60%又は約10%〜約50%又は約10%〜約30%、例えば約10%、20%又は30%で変わることができる(この節中の各%はw/vに関する)。
【0086】
予備混合物を直接、それを機械的手段に供することにより用い、分散系中の有効平均有効粒度を2,000nmより低く低下させることができる。磨砕のためにボールミルが用
いられる場合、予備混合物を直接用いることができる。あるいはまた、例えばローラーミルのような適した撹拌を用いてブレカナビル及び場合により表面改質剤を液体媒体中に、均一な分散が達成されるまで分散させることができる。
【0087】
ブレカナビルの平均有効粒度を低下させるために適用される機械的手段は、簡便には分散ミルの形態をとることができる。適した分散ミルにはボールミル、磨砕機/磨砕ミル、振動ミル、遊星形ミル、媒体ミル(media mill)、例えばサンドミル及びビーズミルが含まれる。媒体ミルは、粒度を所望通りに低下させるのに必要な磨砕時間が比較的短いために、好ましい。
【0088】
粒度低下段階のための磨砕媒体は、好ましくは3mmより小さい、より好ましくは1mmより小さい平均寸法を有する球形又は粒子状の形態の剛性の媒体(200μmのように小さいビーズ)から選ばれることができる。そのような媒体は、望ましくはより短い処理時間で本発明の粒子を与えることができ、且つ磨砕装置に与える摩耗がより少ない。磨砕媒体の例は、マグネシアで安定化された又はイットリウムで安定化された95%ZrOのようなZrO、ケイ酸ジルコニウム、ガラス磨砕媒体、高分子ビーズ、ステンレススチール、チタニア、アルミナなどである。好ましい磨砕媒体は2.5g/cmより高い密度を有し、マグネシアで安定化された95%ZrO及び高分子ビーズが含まれる。磨砕媒体は、好ましくはZrOビーズである。
【0089】
ブレカナビル化合物を有意に分解しない温度で粒子の寸法を縮小させなければならない。30〜40℃より低い、特に室温の処理温度が通常好ましい。
【0090】
本発明に従う製薬学的組成物は、好ましくは製薬学的に許容され得る水性担体を含有する。該水性担体は、場合により他の製薬学的に許容され得る成分と混合されていることができる無菌水を含む。他の製薬学的に許容され得る成分は、注入可能な調剤における使用のための成分を含む。これらの成分を、懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、等張化剤などの成分の1つもしくはそれより多くから選ぶことができる。1つの態様において、該成分は懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤ならびに場合により防腐剤及び等張化剤の1つもしくはそれより多くから選ばれる。特別な成分はこれらの薬剤の2つもしくはそれより多くとして同時に機能することができ、例えば防腐剤及び緩衝剤のように挙動するか、あるいは緩衝剤及び等張化剤のように挙動する。
【0091】
適した緩衝剤及びpH調整剤は、分散系を中性から非常にわずかに塩基性(pH8.5まで)、好ましくは7〜7.5のpH範囲内とするのに十分な量で用いられねばならない。特定的な緩衝剤は弱酸の塩である。加えることができる緩衝剤及びpH調整剤は、これらの混合物を含んで酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム/乳酸、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、重炭酸ナトリウム/炭酸、コハク酸ナトリウム/コハク酸、安息香酸ナトリウム/安息香酸、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ベンゼンスルホン酸、ベンゾエートナトリウム/酸、ジエタノールアミン、グルコノデルタラクトン、塩酸、臭化水素、リシン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、トロメタミン、グルコン酸、グリセリン酸、グルタル酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミンから選ばれることができる。
【0092】
防腐剤は抗微生物剤及び酸化防止剤を含んでなり、それらは安息香酸、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロルブトル、ガレート、ヒドロキシベンゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、ベンズエトニウムクロリド、ミリスチル−γ−ピコリニウ
ムクロリド、フェニル水銀アセテート及びチメロサルより成る群から選ばれることができる。ラジカル掃去剤にはBHA、BHT、ビタミン E及びパルミチン酸アスコルビルならびにそれらの混合物が含まれる。酸素掃去剤にはアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−システイン、アセチルシステイン、メチオニン、チオグリセロール、アセトンナトリウムビサルファイト、イソアスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが含まれる。キレート化剤にはクエン酸ナトリウム、ナトリウムEDTA及びリンゴ酸が含まれる。
【0093】
等張化剤又は等張剤(isotonifier)は、本発明の製薬学的組成物の等張性を保証するために存在することができ、糖類、例えばグルコース、デスキトロース、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラクトース;多価糖アルコール、好ましくは三価もしくはそれより高い糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。あるいはまた、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム又は他の適した無機塩を用いて溶液を等張にすることができる。これらの等張剤を単独で又は組み合わせて用いることができる。懸濁剤は、簡便には0〜10%(w/v)、特に0〜6%の等張化剤を含んでなる。興味深いのは非イオン性等張剤、例えばグルコースであり、それは、電解質がコロイドの安定性に影響し得るからである。
【0094】
本発明の製薬学的組成物に望ましい特徴は、投与の容易さに関連する。本発明の製薬学的組成物の粘度は、注入による投与を可能にするのに十分に低くなければならない。特にそれらは、長すぎない時間内に容易にシリンジ中で(例えばバイアルから)それらを吸収し、細い針(例えば20 G 11/2、21 G 11/2、22 G 2又は22 G 11/4針)を介して注入できるように設計されねばならない。1つの態様において、本発明の組成物の粘度は約75mPa・sより低いか、又は60mPa・sより低い。そのような粘度又はもっと低い粘度の水性懸濁剤は、通常、上記の基準を満たす。
【0095】
理想的には、本発明に従う水性懸濁剤は、注入される体積を最小に保つために、許容され得る限り多くのブレカナビル、特に3〜40%(w/v)又は3〜30%(w/v)又は3〜20%(w/v)又は10〜30%(w/v)のブレカナビルを含むであろう。1つの態様において、本発明の水性懸濁剤は約10%(w/v)のブレカナビル又は約20%(w/v)のブレカナビル又は約30%(w/v)のブレカナビルを含有する。
【0096】
1つの態様において、水性懸濁剤は、組成物の合計体積に基づく重量により:
(a)3%〜50%(w/v)又は10%〜40%(w/v)又は10%〜30%(w/v)のブレカナビル;
(b)0.5%〜10%又は0.5%〜2%(w/v)の湿潤剤;
(c)0%〜10%又は0%〜5%又は0%〜2%又は0%〜1%の1種もしくはそれより多い緩衝剤;
(d)0%〜10%又は0%〜6%(w/v)の等張化剤、
(e)0%〜2%(w/v)の防腐剤;及び
(f)100%とするのに十分な注入用水
を含んでなることができる。
【0097】
場合により懸濁剤に、pHを約pH7の値にする量の酸又は塩基を加えることができる。適した酸又は塩基は、生理学的に許容され得るもののいずれか、例えばHCl、HBr、硫酸、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOHである。
【0098】
本発明におけるようなブレカナビルの投与は、HIV感染の処置に十分であり得るが、複数の場合に他のHIV阻害剤を共−投与することを薦めることができる。後者には、好
ましくは他の種類のHIV阻害剤、特にNRTIs、NNRTIs及び融合阻害剤から選ばれるものが含まれる。1つの態様において、共−投与される他のHIV阻害剤はNNRTIである。好んで共−投与され得るHIV阻害剤は、PIを含んでなるHAART組み合わせ中で用いられるものである。例えばさらに2種のNRTIs又は1種のNRTIと1種のNNRTIを共−投与することができる。そのような共−投与は経口的投与によるか、又は非経口的であることができる。
【0099】
本発明は、HIV感染の処置又は予防における薬剤として使用するための、本明細書で前に記載した製薬学的組成物にも関する。
【0100】
さらに本発明は、HIV感染の予防又は処置用の薬剤の製造のための、本明細書に記載される製薬学的組成物の使用に関する。
【0101】
本発明はさらに、HIVに感染した患者の処置方法に関し、該方法は、本明細書に記載される製薬学的組成物の治療的に有効な量を投与することを含んでなる。
【0102】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は「完全に」を排除せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まないことができる。必要なら、「実質的に」という用語を本発明の定義から省略することができる。数値と結び付けられた「約」という用語は、数値の範囲内のその通常の意味を有するものとする。必要なら、「約」という用語を数値±10%又は±5%又は±2%又は±1%により置き換えることができる。本明細書で引用されるすべての文書は、引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【0103】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明をそれに制限するとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】ラットにおいてブレカナビルの溶液を2mg/kgで静脈内投薬した後の個々の血漿濃度(ng/ml)対時間分布。
【図2】ラットにブレカナビル溶液を16(△)及び56mg/kg(○)で1回皮下注入した後のブレカナビルの個々の及び平均の血漿濃度。
【図3A】ラットに50mg/kgにおけるブレカナビルTween20マイクロ懸濁剤(62.5mg/ml)を1回、筋肉内(○)注入した後のブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
【図3B】ラットに50mg/kgにおけるブレカナビルTween20ナノ懸濁剤(100mg/ml)を1回、筋肉内(○)及び皮下(△)注入した後のブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
【図3C】ラットに50mg/kgにおけるブレカナビルF108ナノ懸濁剤(100mg/ml)を1回、筋肉内(○)注入した後のブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
【図3D】ラットに50mg/kgにおけるブレカナビルTween20ナノ懸濁剤(200mg/ml)を1回、筋肉内(○)注入した後のブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
【図4】動物当たり50mgのTween20ナノ懸濁剤(100mg/ml)を1回、筋肉内投薬した後のウサギにおけるブレカナビルの個々の血漿濃度−時間分布。
【実施例】
【0105】
実施例
この実施例は、ブレカナビルの非経口用調剤の投与が長期間安定な血漿レベルを生ずることを示す目的の研究を示す。非経口用調剤のブレカナビルの投薬量を増すことにより、より高い血漿レベルを得ることができる。
【0106】
溶液としてのブレカナビル及び水性ナノ−もしくはマイクロ懸濁剤としてのブレカナビルの非経口的(静脈内、筋肉内及び皮下)投与を用いて、ラットにおける薬物動態学的研究を行い、種々の投薬量における血漿速度論を調べた。
【0107】
ブレカナビル溶液の静脈内注入
ラット(n=3)において、ブレカナビルを1mg/ml溶液(PEG400/食塩水
70:30)として静脈内注入し、これらの動物におけるブレカナビルの血漿速度論を決定した。投与後の選ばれた時点にラットのそれぞれから血漿試料を集めた;LC/MSを用いて、試料をブレカナビル濃度に関して分析した(図1を参照されたい)。
【0108】
ブレカナビルの静脈内注入の後、化合物は高い濃度及び従って中から小程度の(moderate to small)分布容積を示した。化合物は、中程度の血漿クリアランスを以て有効に血漿からクリアランスされた(cleared)。
【0109】
【表1】

【0110】
ブレカナビル溶液の皮下注入
200〜300gのSprague−Dawleyラット(Crl:CD(R)(SD)IGS)に、16(n=4)及び56(n=4)mg/kgにおいてブレカナビルの水溶液を1回皮下注入した。投薬量投与の1日前に溶液を調製した;水性30%(w/v)DMA/50%(w/v)PEG400溶液中で35mg/mlにおいてブレカナビルを調製した。溶液の成分は:ブレカナビル、DMA 30%(w/v)、PEG400 50%(w/v)及び発熱物質を含有しない水であった。調剤中のブレカナビルの含有量を、LC−UVを用いて調べた。調剤中のブレカナビルの濃度は35mg/mlであった。
【0111】
投薬から1、2、4、7及び24時間後ならびにさらに3、4、8、14、29、42及び56日後に、尾静脈(tail vein)を介してラットから血液試料(EDTA上で0.3ml)を集めた。LC/MS/MS上で適格とされる研究法を用い、血漿試料をブレカナビルに関して分析した。血漿濃度を投薬から後の時間の関数としてプロットした(図2)。WinNonlinソフトウェアを用いて薬物動態学的パラメーターを計算した。ラットにおけるブレカナビルの水溶液の皮下注入は、少なくとも8週間の持続時間を以て、長時間放出薬物動態学的分布を生じた(図2)。血漿濃度−時間分布及び静脈内投与と皮下投与の間の半減期の値の比較から、ブレカナビルは、高投薬量溶液の皮下注入
の後、体循環中への化合物の非常に遅い吸収を示すことが明らかである。16mg/kgの投薬量の平均絶対的バイオアベイラビリティーは、実質的に完全(complete)であったが(F=0.91)、より高い投薬量である56mg/kgの場合にはいくらかそれより低かった(F=0.66)。
【0112】
【表2】

【0113】
ブレカナビルナノ−及びマイクロ懸濁剤の筋肉内及び皮下注入
25mg/mlの非経口用ポリソルベート20(polysorbate 20 parenteral)及び100mg/mlのブレカナビルを含有する水性ナノ懸濁剤としてブレカナビルを調製した。ナノ懸濁剤の成分は:ブレカナビル、非経口用ポリソルベート20 2.5%(w/v)、デキストロース 5%(w/v)及び発熱物質を含有しない水であった。LC−UVを用いて調剤中のブレカナビルの含有量を調べた。調剤中のブレカナビルの濃度は100mg/mlであった。Malvern MastersizerTM上で、レーザー回折を用い、粒度分布を測定した。d50値は125nmであった。
【0114】
200〜300gのSprague−Dawleyラット(Crl:CD(R)(SD)IGS)に、筋肉内(n=4)及び皮下(n=4)経路を介し、ブレカナビルの水性ナノ懸濁剤を50mg/kgで1回注入した。投薬から1、7及び24時間後ならびにさらに2、6、10、13、16、20、24、27、31、36、43、48、55及び59日後に、尾静脈から血液試料を集めた。血漿を分離し、LC/MS/MS上で適格とされる研究法を用いてブレカナビルに関して分析した。血漿濃度を投薬から後の時間の関数としてプロットした(図3)。WinNonlinTMソフトウェアを用いて薬物動態学的パラメーターを計算した。
【0115】
ブレカナビルの水性ナノ懸濁剤の筋肉内注入は、56日間に及んで長時間放出血漿濃度−時間分布を生じた。筋肉内注入後の血漿濃度は、皮下注入後の血漿濃度より高かった。この期間に及んで体循環中に放出された量は、筋肉内注入後に完全(F〜1)であると見積もられ、皮下注入後に約半分(F〜0.5)であると見積もられる。ナノ懸濁剤の皮下注入は、溶液の皮下注入と比較して注入後にずっと低いピーク血漿暴露を生じたことが明らかであった。また、ナノ懸濁剤の皮下注入後、血漿濃度が最初の2週間の後にゆっくり低下し続ける溶液と対照的に、血漿濃度は長時間に及んで約10ng/mlにおいて非常
に安定なままである。
【0116】
25mg/mlの非経口用ポリソルベート20及び100mg/mlのブレカナビルを含有するマイクロ懸濁剤としてブレカナビルを調製した。ナノ懸濁剤の成分は:ブレカナビル、非経口用ポリソルベート20 2.5%(w/v)、デキストロース 5%(w/v)及び発熱物質を含有しない水であった。LC−UVを用いて調剤中のブレカナビルの含有量を調べた。調剤中のブレカナビルの濃度は62.5mg/mlであった。Malvern MastersizerTM上で、レーザー回折を用い、粒度分布を測定した。d50値は1.613μmであった。
【0117】
200〜300gのSprague−Dawleyラット(Crl:CD(R)(SD)IGS)に、筋肉内(n=4)を介し、ブレカナビルの水性ナノ懸濁剤を50mg/kgで1回注入した。投薬から1、7及び24時間後ならびにさらに2、6、10、14、16、20、24、27、31、36、43、48、55及び59日後に、尾静脈から血液試料を集めた。血漿を分離し、LC/MS/MS上で適格とされる研究法を用いてブレカナビルに関して分析した。血漿濃度を投薬から後の時間の関数としてプロットした(図3)。WinNonlinTMソフトウェアを用いて薬物動態学的パラメーターを計算した。
【0118】
【表3】

【0119】
ウサギにおけるブレカナビルナノ懸濁剤の筋肉内注入
25mg/mlの非経口用ポリソルベート20及び100mg/mlのブレカナビルを含有する水性ナノ懸濁剤としてブレカナビルを調製した。ナノ懸濁剤の成分は:ブレカナビル、非経口用ポリソルベート20 2.5%(w/v)、デキストロース 5%(w/v)及び発熱物質を含有しない水であった。LC−UVを用いて調剤中のブレカナビルの含有量を調べた。調剤中のブレカナビルの濃度は100mg/mlであった。Malvern MastersizerTM上で、レーザー回折を用い、粒度分布を測定した。d50値は125nmであった。
【0120】
約2.5kgのニュージーランド白ウサギ(New Zealand White rabbits)に、ブレカナビルの水性ナノ懸濁剤をウサギ当たり50mgにおいて筋肉内(n=5)経路を介して1回注入した。投薬から6及び24時間後ならびにさらに2、5、8、12、15、19、22、26、29、33、36、40、43、47、50、54、57、64及び71日後に、血液試料を尾静脈から集めた。血漿を分離し、LC/MS/MS上で適格とされる研究法を用いてブレカナビルに関して分析した。血漿濃度を投薬から後の時間の関数としてプロットした(図4)。WinNonlinTMソフトウェアを用いて薬物動態学的パラメーターを計算した。
【0121】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIVに感染した患者の処置用の薬剤の製造のための、薬剤代謝及び/又は薬物動態学にバイオアベイラビリティーを向上させるような正の効果を有する追加の薬剤なしで、抗−ウイルス的に有効な量のブレカナビル又はその製薬学的に許容され得る酸−付加塩及び担体を含んでなる非経口用調剤の使用であって、ここで調剤は2週間〜1年の範囲内である時間間隔で断続的に皮下又は筋肉内注入により投与されるべきである使用。
【請求項2】
薬剤代謝及び/又は薬物動態学にバイオアベイラビリティーを向上させるような正の効果を有する追加の薬剤がリトナビルである請求項1に従う使用。
【請求項3】
非経口用調剤が有効量のブレカナビル及び水性担体を含んでなる溶液である請求項1に従う使用。
【請求項4】
該溶液に可溶化剤又は界面活性剤を加える請求項3に従う使用。
【請求項5】
調剤を2週間〜1ヶ月の範囲内である時間間隔で投与するべきである請求項1〜4のいずれかに従う使用。
【請求項6】
調剤を1ヶ月〜3ヶ月の範囲内である時間間隔で投与するべきである請求項1〜4のいずれかに従う使用。
【請求項7】
調剤を3ヶ月〜6ヶ月の範囲内である時間間隔で投与するべきである請求項1〜4のいずれかに従う使用。
【請求項8】
調剤を1ヶ月毎に1回投与するべきである請求項1〜4のいずれかに従う使用。
【請求項9】
調剤を3ヶ月毎に1回投与するべきである請求項1〜4のいずれかに従う使用。
【請求項10】
血漿レベルを約28ng/mlより高いレベルに保つ請求項1に従う使用。
【請求項11】
(a)表面に吸着した表面改質剤を有するマイクロ−もしくはナノ粒子形態におけるブレカナビル又はその塩;及び
(b)中にブレカナビル活性成分が懸濁されている製薬学的に許容され得る水性担体
を含んでなるマイクロ−もしくはナノ粒子の懸濁剤の形態における、治療的に有効な量のブレカナビル又はその塩を含んでなる、筋肉内もしくは皮下注入により投与するための製薬学的組成物。
【請求項12】
表面改質剤がポロキサマー、α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び負に帯電したリン脂質の塩より成る群から選ばれる請求項1又は2に従う組成物。
【請求項13】
表面改質剤がPluronicTM F108、ビタミン E−TGPS、TweenTM 80、TweenTM 20及びLipoidTM EPGから選ばれる請求項11又は12に従う組成物。
【請求項14】
ブレカナビルマイクロ−もしくはナノ粒子の平均有効粒度が約200nmより低い請求項11〜13のいずれかに従う組成物。
【請求項15】
非経口用調剤が請求項11〜14のいずれかに記載の製薬学的組成物である請求項1〜
4のいずれかに従う使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−505224(P2013−505224A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529305(P2012−529305)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063930
【国際公開番号】WO2011/036159
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ (94)
【氏名又は名称原語表記】Tibotec Pharmaceuticals
【Fターム(参考)】