説明

HIV感染の治療的介入のための新規標的及び化合物

新規薬剤標的及び抗ウイルス剤が、レンチウイルス疾患、特にAIDSの治療的介入のために提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に分子生物学及びウイルス学それぞれの技術分野、特に抗ウイルス薬の開発に関する。一つの態様において、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と関連するタンパク質と相互作用することができ、したがって単独で又はHIVタンパク質との複合体により抗ウイルス薬の開発のための標的としての機能を果たすのに適している、新たな種類のタンパク質又はそのフラグメントをコードする核酸分子を同定及びクローニングする方法に関する。これに関連して、本発明は、新規HIV相互作用タンパク質及び複合体、並びに複合体を特異的に認識し、それに結合するか又はHIVタンパク質の特定のドメインに結合する抗体を提供する。本発明の更なる目的は、ヒト宿主細胞タンパク質とHIVタンパク質の複合体の形成及び/又は安定性を調節することができる抗HIV薬を同定し、提供する方法である。したがって、本発明は、また、ウイルス感染の確立に必須であると考えられるHIVタンパク質とヒトタンパク質の複合体を検出し、標的にするのに有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
AIDS(後天性免疫不全症候群)は、先進国における死亡の主な原因の一つであり、汎流行的な比率で蔓延している。1984年には、AIDSの病原体がヒト免疫不全ウイルス(HIV)として発見され、これは、レンチウイルスサブファミリーのメンバーであるレトロウイルスである。レンチウイルス科(Lentiviridae)には、通常免疫系の細胞、特にマクロファージ及びT細胞に感染し、長い潜伏期間を有し、感染細胞に合胞体及び細胞死のような細胞変性効果を及ぼす持続感染を疾患において引き起こす、非腫瘍形成性レトロウイルスが含まれる。レンチウイルス感染は、免疫系により排除されず、長年にわたって蓄積される免疫損傷をもたらす。
【0003】
レンチウイルス科(Lentiviridae)のメンバーであるHIVはレトロウイルスであり、すなわちRNAゲノム及び逆転写活性を含有し、したがってその成長周期の間に、HIVはRNAをプロウイルスDNAにコピーし、これを宿主細胞の染色体DNAの中に組み込むことができる(プロウイルス)。レトロウイルス特性及びゲノムが小型であることに起因して、HIV複製は、宿主の細胞機構に強く依存している。したがって、HIVは、宿主の転写及び翻訳機構を使用してウイルスRNA及びタンパク質を発現し、最終的に、細胞質膜から出芽することにより細胞から成熟したウイルスを放出する。HIVの場合、ウイルス複製は宿主のヘルパーT細胞の死をもたらし、それは、重篤な免疫不全の状態(AIDS)、多様な悪性腫瘍及び日和見感染の発症、最終的には感染生物の死をもたらす。
【0004】
env(ウイルスのエンベロープタンパク質をコードする)、gag(カプシド及びヌクレオカプシド構造の形成に関与する内部タンパク質をコードする)及びpol(酵素のリバーストランスクリプターゼ、インテグラーゼ及びプロテアーゼをコードする)のようなHIVゲノムの「通常」の遺伝子の他に、転写トランスアクチベーター(tat)及びウイルス発現遺伝子のレギュレーター(rev)は、ウイルス複製に必須である小型の非ビリオンタンパク質を産生する。また、vif、vpr、vpu及びnefのようなウイルス発現に関与しない幾つかの遺伝子も、HIVによりコードされる。
【0005】
HIV疾患の治療は、HIVの生活環に例えばウイルスの逆転写を阻害すること、プロテアーゼ活性又は融合を阻害することにより多くの段階において介入できることが認識されたことによって、著しく進歩してきた。その結果、3つの主な種類の薬剤:リバーストランスクリプターゼインヒビター、プロテアーゼインヒビター及び融合インヒビターが開発されており、現在、約25の抗レトロウイルス薬がHIVに感染した個人を治療するために承認されている。更に、ウイルスの異なる生化学的機能に対する、特定の活性を有する異なる薬剤の組み合わせ(併用治療)は、単剤治療への反応において観察された薬剤耐性ウイルスの急速の発生を低減するのに役立ちうることが知られている。
【0006】
しかし、感染した人を上記に参照された薬剤の種類の少なくとも2つの抗ウイルス薬の組み合わせで治療することに基づいている、現在までAIDSの進行及び蔓延を低減する唯一の有効な治療である、現行の「高活性抗レトロウイルス剤療法」(HAART)でさえも、長期間使用すると、複雑な投与レジメンの厳守、毒性の副作用及び高い費用のような幾つかの欠点及び制限と関わっている(例えば、リッチマン(Richman)、ネイチャー(Nature)410(2001)、995〜1001:非特許文献1を参照すること)。加えて、不適切なコンプライアンスと組み合わされた、ゲノムの高い突然変異率に起因するHIVの高度な遺伝的及び抗原的変異性が、HAART薬への耐性の原因であり、そのため、HAARTの使用はHIV/AIDSによる死亡数を著しく低減してきたが、完全なウイルス抑制は達成されなかった。
【0007】
「必須」ウイルス酵素(リバーストランスクリプターゼ、プロテアーゼ及びインテグラーゼ)のインヒビターの開発に加えて、研究は、現在、HIVアクセサリータンパク質を標的にすることに焦点を当てている。HIVアクセサリータンパク質のVif、Vpu、Vpr及びNefについては、正確な生化学的構造は依然として調査中であるが、これらのタンパク質のいずれもそれ自体触媒作用を有さず、むしろ、他のウイルス又は細胞性因子を多様な細胞経路に連結する「アダプター分子」として機能すると思われることを示唆する証拠が、ますます増えている。
【0008】
4つのアクセサリータンパク質のうちの1つのビリオン感染因子(Vif)は、23kDaの分子量を有し、192個のアミノ酸から構成される小型塩基性リンタンパク質であり、ビリオン産生の後期にRev依存様式で合成される。Vifの相同体は全てのレンチウイルスに存在し、唯一の例外は、ウマ感染性貧血ウイルス(EIVA)であり(オベルスト(Oberste)及びゴンダ(Gonda)、ウイルス遺伝子(Virus Genes)6(1992)、95〜102:非特許文献2を参照すること)、異なるレンチウイルスのvifのオープンリーディングフレームに有意に保存されている(ソニゴ(Sonigo)ら、細胞(Cell)42(1985)、369〜382:非特許文献3を参照すること)。
【0009】
HIVの場合では、Vifは、一般に一次T細胞におけるウイルス複製を必要とする。更に、宿主タンパク質、すなわち、酵素のAPOBECシトジンデアミナーゼファミリーのメンバーであるヒトアポリポタンパク質B mRNAエディティング酵素触媒ポリペプチド様3G(APOBEC3G)により仲介されるHIV複製の抑制に対して、反作用することが知られている。APOBEC3Gは、レトロウイルスビリオン(感染性成熟ウイルス粒子)の中にパッケージされ、デオキシシチジンを、新たに合成されたウイルスマイナス鎖DNAにおいてデオキシウリジンに脱アミノ化し、それによりGからAへの超変異を誘発することが知られている。ウイルス産生細胞におけるVifとAPOBEC3Gの相互作用は、APOBEC3Gがビリオンに組み込まれるのを防止し、したがってAPOBEC3Gが、新たに合成されたHIV cDNAに作用するのを防止する。それに対して、Vifは、細胞タンパク質のCul5、エロンギンB、エロンギンC及びRbx1と相互作用して、APOBEC3Gのユビキチン化のためにE3ユビキチンリガーゼ複合体を形成し(例えば、ユー(Yu)ら、サイエンス(Science)302(2003)、1058〜1060:非特許文献4を参照すること)、それにより、APOBEC3Gに結合するとユビキチン化及びプロテオソーム分解、最終的には細胞からのAPOBEC3Gの排除を誘発し、HIVが感染性ウイルスを産生することを可能にすることが示された。
【0010】
Vifは、また、SrcチロシンキナーゼFyn及びHckと相互作用して、それらの触媒活性の低減をもたらすこと(例えば、ハサイン(Hassaine)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)276(2001)、16885〜16893:非特許文献5を参照すること)及びジンクフィンガータンパク質と相互作用して、NF−KBを阻害すること(フェング(Feng)ら、ウイルス学ジャーナル(J. Virol.)78(2004)、10574を参照すること)が示された。宿主細胞におけるVifのタンパク質相互作用ネットワークがウイルスアクセサリータンパク質の機能的役割に関与していることは部分的にしか理解されていないので、近年、感染細胞の細胞周期調節における新規機能が、ワング(Wang)ら、ウイルス学(Virology)359(2007)、243〜252(非特許文献6)において記載された。
【0011】
しかし、HIVアクセサリータンパク質と相互作用することが今まで同定されているヒトタンパク質のうち、抗HIV薬剤開発の標的として適切でありうることを示すものは一つもなかった。したがって、組み合わせ抗HIV治療において、「必須」タンパク質、リバーストランスクリプターゼ、プロテアーゼ及びインテグラーゼを補う又はその代わりを提供する、抗HIV薬の標的を提供する必要性が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ネイチャー(Nature)410(2001)、995〜1001
【非特許文献2】ウイルス遺伝子(Virus Genes)6(1992)、95〜102
【非特許文献3】細胞(Cell)42(1985)、369〜382
【非特許文献4】サイエンス(Science)302(2003)、1058〜1060
【非特許文献5】生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)276(2001)、16885〜16893
【非特許文献6】ウイルス学(Virology)359(2007)、243〜252
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ウイルス疾患の治療に有用な新規薬剤標的に関する。より詳細には、本発明は、HIV関連Vifタンパク質と相互作用するヒトタンパク質及び前記相互作用に介入する薬剤を対象とする。
【0014】
本発明に従って実施した実験は、驚くべきことに、ウイルス疾患関連タンパク質、特にVifと相互作用する新たな種類のタンパク質を明らかにし、これは今までVifの標的として知られていないものであった。HIVタンパク質に結合するタンパク質の同定に使用した実験系のため、本発明の方法によって同定された前記宿主タンパク質が、真に、AIDSのような対応するウイルス障害と関連するタンパク質に結合すると予測することは、賢明である。したがって、そのように同定されたタンパク質、並びにタンパク質−タンパク質相互作用及びHIV Vifと宿主タンパク質の複合体形成は、それぞれ、治療的介入に適した標的及びそれを調節することができる作用物質の設計を提供する。これに関連して、本発明は、ウイルス疾患関連タンパク質と相互作用する対応するタンパク質をコードする核酸分子及び前記核酸分子によりコードされる又は本発明の方法により得られるタンパク質の両方、並びにウイルス疾患関連タンパク質と本発明の方法により同定される宿主(ヒト)タンパク質とを含む複合体を提供する。
【0015】
更に、本発明は、HIVタンパク質とヒトタンパク質との複合体に又はHIVタンパク質及びヒトタンパク質それぞれの結合ドメインに特異的に結合する抗体、或いはアミノ酸置換、欠失及び/若しくは付加によって、対応する複合体をVifと形成することができなくなったタンパク質に結合する抗体に関する。
【0016】
本発明は、また、特定のタンパク質−タンパク質相互作用及び複合体形成及び/又は安定性をそれぞれ調節することができる化合物をスクリーニングする方法、並びに前記方法により得られる化合物及びレンチウイルス疾患の治療のための医薬の調製における前記化合物の使用に関する。例えば、適切な抗ウイルス薬は、結合ドメインを同定する及び対応するペプチド又はその模倣体を設計することによって、HIVアクセサリータンパク質のタンパク質結合パートナーとして同定されるヒトタンパク質から誘導することができ、未変性タンパク質とHIVアクセサリータンパク質の相互作用に介入することができる(例えば、実施例4を参照すること)。
【0017】
別の態様によると、本発明は、本発明の抗体又は化合物と、場合により薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。加えて、本発明の方法を実施するのに有用なキットが提供される。
【0018】
図面の簡単な説明
図面は、本発明を例示して示す。
図1は、2つの融合タンパク質を同時に発現する酵母細胞の増殖を例示する(第1融合タンパク質は、Sosに〔リンカーを介して〕縮合しているVifを含み、第2融合タンパク質は、膜局在化ドメインに融合した胸腺ライブラリー由来のタンパク質を含む)。特に図1は、2つのタンパク質の相互作用を示し、それによってSosが細胞膜に動員され、Rasシグナル伝達経路を活性化し、検出可能な表現型をもたらす、すなわち酵母細胞の増殖を制限温度の37℃でも可能にする。第1融合タンパク質の発現は、構成的アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)プロモーターの制御下であるが、第2融合タンパク質の発現がGAL1プロモーターの制御下であるので、制限温度での細胞増殖は、ガラクトースの添加によってのみ検出される(左側部分)。グルコースの添加は、GAL1プロモーター依存性発現を抑圧し、細胞増殖をもたらさなかった。グルコースプレートと比較したガラクトースプレートにおける陽性クローンの増殖が同定され、白丸で示されている。両方の培地に増殖しているクローンは、復帰突然変異体であると同定された。一対の既知の相互作用タンパク質を発現している対照酵母細胞は、点線の丸により示されている。
【0019】
図2は、Vifタンパク質と本発明の方法により同定された異なる宿主因子との複合体から得られた微生物増殖反応を示す。Vifへの宿主タンパク質の結合特異性も実証されている。制限温度の37℃での酵母細胞の増殖は、宿主タンパク質とVifとの相互作用によってのみ細胞増殖に関与するエフェクターが細胞膜に動員されるので、宿主因子の発現にも、相互作用標的タンパク質Vifの発現にも依存している。しかし、同定された宿主タンパク質が最も結合しそうにない、陰性対照標的タンパク質cJunの場合では、相互作用、したがって細胞増殖は、何も検出されない。特に、図2の左欄は、本発明の方法により同定され、Vifとの対応する及び特異的な相互作用が実証された後に配列決定された、宿主タンパク質を表す。
スクリーニング条件下(ガラクトース37℃の欄)では、宿主因子の発現が誘発され、増殖は、それとVif融合タンパク質との相互作用に依存している。見て分かるように、全ての宿主因子がVif融合タンパク質との組み合わせによってのみ増殖を仲介しているが、異種cJun融合タンパク質との組み合わせの場合では、仲介していない。第3欄(グルコース37℃)は、宿主因子発現の抑圧(グルコースはGAL1プロモーター誘導発現カセットを抑圧する)が全ての場合において増殖反応を消滅させたので、宿主因子依存性増殖を示している。図2の右欄は、非制限温度(24℃)での対照の細胞増殖を表す。
【0020】
図3aは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)プルダウン実験の結果を表す、12%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラフィーを示す。特に図3aは、GST−Vifとインビトロ翻訳タンパク質との相互作用の検出を示す。
レーン1〜4は、放射能標識インビトロ翻訳タンパク質を表し、特に、レーン1はインビトロ翻訳APOBEC3G(A3G)を示し、レーン2はインビトロ翻訳HSPA8を示し、レーン3はインビトロ翻訳PTENを示し、そしてレーン4はインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.)を示す。
レーン6〜9は、GST−Vifグルタチオンセファロースビーズによる前述の放射能標識インビトロ翻訳タンパク質の対応するプルダウン結果を表す。
特に、レーン6はGST−Vif及びインビトロ翻訳APOBEC3G(A3G;陽性対照)を示し、レーン7はGST−Vif及びインビトロ翻訳HSPA8を示し、レーン8はGST−Vif及びインビトロ翻訳PTENを示し、そしてレーン9はGST−Vif及びインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.;陰性対照)を示す。
レーン11〜14は、GSTプルダウン実験の特異性、すなわちVifへのインビトロ翻訳タンパク質の結合特異性についての対照を表す。したがって、レーン11〜14は、特に、GSTが単独で、すなわちVifと融合しないで使用されている、GSTプルダウンの結果を表している。より詳細には、レーン11はGST及びインビトロ翻訳APOBEC3G(A3G)を示し、レーン12はGST及びインビトロ翻訳HSPA8を示し、レーン13はGST及びインビトロ翻訳PTENを示し、そしてレーン14はGST及びインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.)を示す。GST単独へのインビトロ翻訳タンパク質の非特異的結合のないことが実証されている。
【0021】
図3bは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)プルダウン実験の結果を表す、12%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラフィーを示す。特に図3bは、GST−Vifとインビトロ翻訳タンパク質との相互作用の検出を示す。
レーン1〜5は、放射能標識インビトロ翻訳タンパク質を表し、特に、レーン1はインビトロ翻訳APOBEC3G(A3G)を示し、レーン2はインビトロ翻訳HERC4を示し、レーン3はインビトロ翻訳NUP50を示し、レーン4はインビトロ翻訳TOM1L1を示し、そしてレーン5はインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.)を示す。
レーン6〜10は、GST−Vifグルタチオンセファロースビーズによる前述の放射能標識インビトロ翻訳タンパク質の対応するプルダウン結果を表す。
特に、レーン6はGST−Vif及びインビトロ翻訳APOBEC3G(A3G;陽性対照)を示し、レーン7はGST−Vif及びインビトロ翻訳HERC4を示し、レーン8はGST−Vif及びインビトロ翻訳NUP50を示し、レーン9はGST−Vif及びインビトロ翻訳TOM1L1を示し、そしてレーン10はGST−Vif及びインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.;陰性対照)を示す。
レーン11〜15は、GSTプルダウン実験の特異性、すなわちVifへのインビトロ翻訳タンパク質の結合特異性についての対照を表す。したがって、レーン11〜15は、特に、GSTが単独で、すなわちVifと融合しないで使用されている、GSTプルダウンの結果を表している。より詳細には、レーン11はGST及びインビトロ翻訳APOBEC3G(A3G)を示し、レーン12はGST及びインビトロ翻訳HERC4を示し、レーン13はGST及びインビトロ翻訳NUP50を示し、レーン14はGST及びインビトロ翻訳TOM1L1を示し、そしてレーン15はGST及びインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.)を示す。GST単独へのインビトロ翻訳タンパク質の非特異的結合のないことが実証されている。
【0022】
図3cは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)プルダウン実験の結果を表す、12%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルのオートラジオグラフィーを示す。特に図3cは、GST−Vifとインビトロ翻訳タンパク質との相互作用の検出を示す。
レーン1〜6は、放射能標識インビトロ翻訳タンパク質を表し、特に、レーン1はインビトロ翻訳EIF4A2を示し、レーン2はインビトロ翻訳TPT1を示し、レーン3はインビトロ翻訳PTGES3を示し、レーン4はインビトロ翻訳TOM1L1を示し、レーン5はインビトロ翻訳HSPA8を示し、そしてレーン6はインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.)を示す。
レーン7〜12は、GST−Vifグルタチオンセファロースビーズによる前述の放射能標識インビトロ翻訳タンパク質の対応するプルダウン結果を表す。
特に、レーン7はGST−Vif及びインビトロ翻訳EIF4A2を示し、レーン8はGST−Vif及びインビトロ翻訳TPT1を示し、レーン9はGST−Vif及びインビトロ翻訳PTGES3を示し、レーン10はGST−Vif及びインビトロ翻訳TOM1L1を示し、レーン11はGST−Vif及びインビトロ翻訳HSPA8を示し、そしてレーン12はGST−Vif及びインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.;陰性対照)を示す。
レーン13〜18は、GSTプルダウン実験の特異性、すなわちVifへのインビトロ翻訳タンパク質の結合特異性についての対照を表す。したがって、レーン13〜18は、特に、GSTが単独で、すなわちVifと融合しないで使用されている、GSTプルダウンの結果を表している。より詳細には、レーン13はGST及びインビトロ翻訳EIF4A2を示し、レーン14はGST及びインビトロ翻訳TPT1を示し、レーン15はGST及びインビトロ翻訳PTGES3を示し、レーン16はGST及びインビトロ翻訳TOM1L1を示し、レーン17はGST及びインビトロ翻訳HSPA8を示し、そしてレーン18はGST及びインビトロ翻訳ルシフェラーゼ(Luc.)を示す。GST単独へのインビトロ翻訳タンパク質の非特異的結合のないことが実証されている。
【0023】
図4は、GSTプルダウン実験に使用するVifの発現のために使用した、ベルターpGEX−4T2−vifを概略的に表す。lacIQプロモーター、GST及びvifの部位を示す。
【0024】
図5は、本発明の方法に使用する第1融合タンパク質の発現のために使用した、ベクターpADH Sos−2xSpc−vifを概略的に表す。(構成的)ADHプロモーター、Sos、スペーサー(リンカー)及びvifの部位を示す。
【0025】
図6は、本発明の方法に使用する第2融合タンパク質の発現のために使用した、ベクターpMyrを概略的に表す。(誘導性)GAL1プロモーター、ミリストイル化シグナル及び胸腺cDNAライブラリーの部位を示す。
【0026】
図7は、2つの融合タンパク質を同時に発現する酵母細胞の増殖を例示する(第1融合タンパク質は、Sosに〔リンカーを介して〕縮合しているVifを含み、第2融合タンパク質は、膜局在化ドメインに融合した胸腺ライブラリー由来のタンパク質を含む)。特に図7は、2つのタンパク質の相互作用を示し、それによってSosが細胞膜に動員され、Rasシグナル伝達経路を活性化し、検出可能な表現型をもたらす、すなわち酵母細胞の増殖を制限温度の37℃でも可能にする。第1融合タンパク質の発現は、構成的アルコールデヒドロゲナーゼプロモーターの制御下であるが、第2融合タンパク質の発現がGAL1プロモーターの制御下であるので、制限温度での細胞増殖は、ガラクトースの添加によってのみ検出され(左側部分)、一方、グルコースの添加はプレイ(餌)発現を抑圧し、検出可能な増殖を生じることができない。vifの宿主タンパク質への結合特異性は、Sosに融合した対照タンパク質cJunがシグナルを生じないことによって示されている。ベイト及びプレイ(餌)発現プラスミドを有する単一の酵母株からの5つの異なるクローンが、糖としてガラクトース又はグルコースのいずれかを含有し、制限温度にシフトされた選択プレートにおいて見出された。
【0027】
定義
「cDNA」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に相補的DNA、すなわち内部非コードセグメント(イントロン)及び転写調節配列を欠いている一片のDNAを示す。cDNAは、更に、対応するRNA分子における翻訳制御に関与している非翻訳領域(UTR)を含有することができる。cDNAは、実験室において細胞から抽出されたメッセンジャーRNAから逆転写する合成のような多様な方法を使用して、産生することができる。
【0028】
「感染」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、宿主細胞へのウイルスの侵入、複製、挿入、溶解、又は病因に関わる他の事象若しくはプロセスに関する。したがって、感染を減少することには、細胞又は被験者へのウイルスの侵入、複製、挿入、溶解、若しくは他の病因又はこれらの組み合わせを減少することが含まれる。感染には、非組み換えウイルス、組み換えウイルス、プラスミドのような感染病原体、又は被験者の細胞のような宿主を感染することができる他の病原体の導入が含まれる。
【0029】
「模倣体」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に病原体の活性を模倣する分子を意味する。用語「模倣体」は、ペプチドの文脈で使用されるとき、HIV Vifとの相互作用において本発明のペプチドの代わりとして機能する分子構造を意味する。ペプチド模倣体には、本明細書で使用されるとき、アミノ酸及び/又はペプチド結合を含有しても含有しなくてもよいが、ペプチドリガンドの構造及び機能特性を保持する合成構造が含まれる。用語「ペプチド模倣体」には、また、ペプチド及びオリゴペプチドも含まれ、これらは、N置換アミノ酸のペプチド又はオリゴマーである。ペプチド模倣体として更に含まれるものは、ペプチドライブラリーであり、これは、所定のアミノ酸の長さに設計され、対応する考えられる全てのアミノ酸配列を表すペプチドのコレクションである。
【0030】
「機能的に結合している」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、第1核酸配列を第2核酸配列と機能的な関係で配置した場合に、第1核酸配列が第2核酸配列と機能的に結合していると記載する。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列と機能的に結合している。一般に、機能的に結合しているDNA配列は隣接しており、必要な場合には2つのタンパク質コード領域を同じリーディングフレーム内で結合する。
【0031】
「医薬品又は薬剤」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、被験者に単独で又は1つ以上の治療剤若しくは薬学的に許容される担体と組み合わせて投与した場合、所望の治療又は予防効果を誘発することができる化学化合物又は組成物に関する。
【0032】
疾患を「予防する」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、疾患が完全に発症するのを阻害すること、例えばウイルス感染の発症を予防することに関する。
【0033】
「治療」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、例えばHIV−1感染に関連する疾患又は病理状態の兆候又は症状を改善する治療的介入、例えばHIV−1感染を阻害又は減少することを示す。
【0034】
「第1融合タンパク質」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、エフェクターと「標的」タンパク質、例えばHIVタンパク質とを含むタンパク質に関する。標的タンパク質は、一般に、タンパク質−タンパク質相互作用に関与しうるかについて検査される既知のタンパク質である。好ましくは、本発明の第1タンパク質は、エフェクターと標的タンパク質の間に配置されているペプチドリンカー分子を含む。
【0035】
「第2融合タンパク質」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、細胞区画局在化ドメインと、標的タンパク質に結合できる又は標的タンパク質に結合できることが推定されるヒトタンパク質のような第2タンパク質とを含むタンパク質に関する。
【0036】
「エフェクター」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、融合タンパク質として発現することができ、エフェクタータンパク質が、レポーター分子を含有する細胞区画に転位している場合には、そのように発現したとき、レポーター分子を活性化することができる、ペプチド又はポリペプチドを示す。しかし、グアニン交換因子(GEF)のようなエフェクターの活性フラグメントも、活性フラグメントがエフェクター機能を付与するのに十分なエフェクター部分を含む場合には、本発明を実施するために使用することができる。そのようなエフェクターの活性フラグメントは、本明細書で使用される用語「エフェクター」の意味の範囲内であると考慮される。
【0037】
「レンチウイルス」は、この用語が本明細書で使用されるとき、ヒト免疫不全ウイルス−1(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス−2(HIV−2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)及びネコ免疫不全ウイルス(FIV)を意味する。
【0038】
「候補タンパク質」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、HIV標的タンパク質に結合することが推定されるタンパク質に関する。用語「候補タンパク質」は、用語「宿主タンパク質」及び「ヒトタンパク質」と交換可能に使用することができる。本発明によると、用語「候補タンパク質」は、完全長タンパク質を含むばかりでなく、タンパク質の一部分も、例えばオリゴペプチド及びペプチドをそれぞれ含んでいる。
【0039】
本明細書で使用されるとき、組成物は任意の混合物を意味する。溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性又はこれらの任意の組み合わせであることができる。
【0040】
本明細書においてタンパク質又はペプチドに適用される用語「誘導体」は、ペプチドの側鎖における1つ以上のアミノ、ヒドロキシル若しくはカルボキシル基、又は末端アミノ若しくはカルボキシル基が誘導体官能基に改質されている化合物を意味する。アミノ基を誘導体化して、アミド(例えば、アルキルカルボキサミド、アセトアミド)、カルバメート(例えば、アルキルカルバメート、例はメチルカルバメート若しくはt−ブチルカルバメート)、又は尿素にすることができる。ヒドロキシル基を誘導体化して、エステル(例えば、アルカノエート、例はアセテート、プロピオネート又は全てのアレーンカルボキシレート、例はベンゾエート)、カルバメート(例えば、アルキルカルバメート、例はメチルカルバメート)、カーボネート(例えば、アルキルカーボネート、例はエチルカーボネート)にすることができる。カルボキシル基を誘導体化して、エステル(例えば、アルキルエステル、例はエチルエステル)又はアミド(例えば、第一級カルボキサミド、N−アルキル第二級カルボキサミド若しくはN,N−ジアルキルカルボキサミド)にすることができる。当業者は、誘導体基の組み込みがペプチドの特性を変化させないか又は誘導体化基がインビボで(例えば、代謝を介して)除去されるために、ペプチドの誘導体は、親ペプチドの特性の保持をもたらすことが予測されることを理解する。本発明の好ましい実施態様は、3つ以下のアミノ、カルボキシル及びヒドロキシル基、好ましくは2つ以下若しくは1つが誘導体官能基に改質されるか、又は何も改質されないものである。用語「誘導体」には、塩が含まれ、塩の誘導体も含まれる。誘導体には、末端誘導体が含まれうる。
ペプチドを参照して使用される用語「末端誘導体」は、C末端カルボキシレート基若しくはN末端アミノ基、又はその両方が誘導体官能基に改質されているペプチドを意味する。C末端カルボキシル基を誘導体化して、エステル(例えば、アルキルエステル、例はエチルエステル)又はアミド(例えば、第一級カルボキサミド、N−アルキル第二級カルボキサミド若しくはN,N−ジアルキルカルボキサミド)にすることができる。N末端アミノ基を誘導体化して、エステル(例えば、アルキルエステル、例はエチルエステル)又はアミド(例えば、第一級カルボキサミド、N−アルキル第二級カルボキサミド若しくはN,N−ジアルキルカルボキサミド)にすることができる。C末端カルボキシル基及び/又はN末端アミノ基は、塩の形態であることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】2つの融合タンパク質を同時に発現する酵母細胞の増殖を例示する図である。
【図2】Vifタンパク質と本発明の方法により同定された異なる宿主因子との複合体から得られた微生物増殖反応を示す図である。
【図3】グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)プルダウン実験の結果を表す図である。
【図4】GSTプルダウン実験に使用するVifの発現のために使用した、ベルターpGEX−4T2−vifを概略的に表す図である。
【図5】本発明の方法に使用する第1融合タンパク質の発現のために使用した、ベクターpADH Sos−2xSpc−vifを概略的に表す図である。
【図6】本発明の方法に使用する第2融合タンパク質の発現のために使用した、ベクターpMyrを概略的に表す図である。
【図7】2つの融合タンパク質を同時に発現する酵母細胞の増殖を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本発明は、AIDSのようなウイルス疾患の治療及び予防に使用される薬剤発見のための標的の同定に焦点を当てている。
【0043】
背景のセクションで記載されているように、HIV感染と更に戦う一つの戦略は、潜在的には、ウイルスのアクセサリータンパク質及びそれらの宿主タンパク質結合パートナーとの相互作用を標的にすることでありうる。しかし、この手法は、一方ではこれらのアクセサリータンパク質のタンパク質相互作用ネットワークの複雑性に対する知識の欠如により、他方では今まで知られているヒトタンパク質は細胞の正常な機能の観点から薬剤開発に適切な候補であるとは思われないことにより、妨げられている。HIVアクセサリータンパク質と他のウイルス性又は細胞性因子との相互作用の特異性を更に特定する初期の試みは、失敗した。しかし、米国特許第5,776,689号に本質的に記載されている改変型のSos動員系(SRS)を使用して本発明に従って実施した実験は、今までウイルス/ヒトタンパク質相互作用の文脈で考慮されたことはないが、驚くべきことに、HIVアクセサリータンパク質の一つ、すなわちVifの特異的標的として新規ヒト宿主タンパク質を明らかにした。したがって、HIV感染に関与する新たな種類のヒト細胞タンパク質を同定することができ、それによって薬剤開発の新規標的を提供することができる。
【0044】
Sos動員系の特性及び信頼性、並びに本発明の方法の展開の際に実施される更なる展開のために、本発明の方法により同定される宿主(好ましくは、ヒト)HIV Vif結合タンパク質が、事実、HIV感染、ウイルス生活環及びAIDSそれぞれの経過において主要な役割を果たすとすることは、賢明である。したがって、本発明は、また、ウイルス疾患関連タンパク質とその結合パートナーとの相互作用を調査するためにSos動員系を使用すること、特にVifのようなHIV関連タンパク質に結合するタンパク質の同定に特定して取り組むことに関する。
【0045】
したがって、一つの態様において、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質と相互作用することができるタンパク質又はそのフラグメントをコードする核酸分子を同定及びクローニングする方法であって、
(a)宿主細胞において、標的HIVタンパク質に融合している、転写因子ではないエフェクタータンパク質を含む第1融合タンパク質をコードする第1核酸分子を発現させること;
(b)前記細胞において、ヒトタンパク質又はそのフラグメントに融合している細胞膜局在化ドメインを含む第2融合タンパク質をコードする第2核酸分子を更に発現させること;及び
(c)(a)の標的HIVタンパク質と(b)のヒトタンパク質との相互作用を同定するシグナルを検出することにより、レポーター分子の活性化を検出すること;並びに場合により
(d)工程(c)でレポーター分子の活性化が検出されたヒトタンパク質又はそのフラグメントをコードする核酸分子をクローニングすること
を含む方法に関する。
【0046】
本発明の方法は、HIVと関連する多種多様な異なる因子、酵素又はタンパク質の調査に有用であるが、好ましい実施態様において、本発明の方法に使用される標的HIVタンパク質は、アクセサリーHIVタンパク質、好ましくはウイルス感染因子(Vif)である。
【0047】
本発明に従って実施され、効率的な方法を確立するために必要である初期最適化実験の際に、驚くべきことに、Vifと相互作用するタンパク質(「候補タンパク質」と「宿主タンパク質」それぞれ)の同定は、追加のペプチドリンカー分子の存在によって著しく改善されたことが判明した。配列Gly−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号3)を有するリンカーの使用及びその記載又は類似の記載は、例えば、エバーズ(Evers)ら、生化学(Biochemistry)45(2006)、13183及びマエダ(Maeda)ら、バイオ技術(BioTechniques)20(1996)、116において見出すことができ、エフェクター分子と候補タンパク質の間に配置されると、Vifの標的であるヒトタンパク質を同定する可能性をもたらすが、これは従来の方法を使用して今まで同定されたことはなかったものである。したがって、更なる実施態様において、本発明の方法は、更に、ペプチドリンカーにより標的HIVタンパク質に融合しているエフェクターを含む第1融合タンパク質をコードする第1核酸分子を、宿主細胞において発現させることを含む。
【0048】
本発明は、核酸ライブラリー、例えばcDNA又はESTライブラリーによりコードされたタンパク質及びタンパク質の個体群を用い、その例は実施例において詳細に記載されている。したがって、本発明の方法に使用されるヒトタンパク質は、cDNAによりコードされ、好ましくは、cDNAは、cDNAのプールの中から、より好ましくはcDNAライブラリーの中から提供される。T細胞ライブラリー、ヒトBリンパ芽球様cDNAライブラリー、リンパ節由来cDNAライブラリー又はHeLa細胞ライブラリーのような幾つかのライブラリーを本発明の方法に使用することができるが、最も好ましくは、本発明の方法に使用されるcDNAライブラリーは、胸腺ライブラリーである。
【0049】
本発明の方法の一つの大きな利点は、哺乳類、鳥類、昆虫、酵母及び大腸菌細胞のようにほぼあらゆる種類の細胞に適用できることである。しかし、好ましい実施態様において、本発明の方法に使用される宿主細胞は、酵母細胞である。
【0050】
本発明の方法によると、タンパク質−タンパク質相互作用は、細胞増殖の発生又は不在によって示される。したがって、細胞を使用することが必要であり、その表現型(細胞増殖)はタンパク質−タンパク質相互作用によって変わる。例えば、最終的に細胞増殖を誘発するRasシグナル伝達経路を活性化するのに必要な内因的に発現したエフェクターの欠如によって対応する表現型を明白にしている、従来技術で既知の細胞株が存在する。そのような細胞株の一つは、例えば、cdc25遺伝子(cdc25−2)が突然変異している酵母細胞株である。Cdc25は、原形質膜に局在化したときにRasの活性化をもたらすグアニン交換因子(GEF)である(プティジャン(Petitjean)ら、遺伝学(Genetics)124(1990)、797〜806を参照すること)。したがって、Cdc25−2の突然変異は、機能性Rasエフェクターの発現の欠失をもたらし、制限温度、すなわち37℃で増殖欠損をもたらす。この欠損は、対応するRasエフェクターを細胞膜に/細胞膜で提供する又は「動員」することにより克服できる。これに関連して、本発明の融合タンパク質は、一方の融合タンパク質が細胞膜局在化ドメインを含み、他方の融合タンパク質が、Rasシグナル伝達経路を活性化することができるエフェクター分子を含むように設計されるので、タンパク質−タンパク質相互作用の際に、Rasエフェクターを細胞膜に動員し、それによりRasシグナル伝達経路を活性化し、細胞の増殖を可能にする。したがって、前記細胞の使用は、細胞増殖の存在又は不在を光学的に観察することによって、この方法がタンパク質−タンパク質相互作用を決定するのを非常に容易にするので、本発明の方法の特に好ましい実施態様では、酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)cdc25−2細胞である。
【0051】
上記に記述されているように、本発明の実験の際に、アッセイを実施した細胞の増殖は、タンパク質−タンパク質相互作用を示している。しかし、既に記述しているように、これは一方の融合タンパク質が細胞膜局在化ドメインを含み、他方の融合タンパク質がエフェクター分子を含むことを必要とする。当該技術において、対応するRas活性化を実施することができる幾つかの分子が知られているが、本発明の方法の好ましい実施態様では、このエフェクター分子は、セブンレス(Sos)タンパク質の息子(Son)である。
【0052】
当然のことながら、本発明は、本発明の方法により得られる核酸にも関し、好ましくは、核酸分子は、Vifと相互作用することができるタンパク質をコードする。しかし、コードされたタンパク質の配列の決定は、驚くべきことに、本発明の方法により同定された核酸分子が、当業者には認識されるであろう、一般に認められているアミノ酸の1文字コードを使用して表されるモチーフ:〔DLN〕〔∧AF〕〔DLN〕〔∧P〕〔∧P〕〔∧P〕〔∧P〕〔DLN〕を含む、新たな種類のVif結合タンパク質をコードすることを明らかにした。しかし、符号及び文字それぞれの簡潔な説明を以下に示す。
【0053】
「〔DLN〕は、この位置のアミノ酸がD、L又はN(アスパラギン酸、ロイシン又はアスパラギン)のいずれかであることを意味する。
「〔∧AF〕」は、A、F(アラニン、フェニルアラニン)以外の任意のアミノ酸がこの位置でありうることを意味する。
「〔∧P〕」は、P(プロリン)以外の任意のアミノ酸がこの位置でありうることを意味する。
【0054】
したがって、更なる実施態様において、本発明は、本発明の方法により得られる核酸分子を参照し、最も好ましくは、コードされるタンパク質は、モチーフ:〔DLN〕〔∧AF〕〔DLN〕〔∧P〕〔∧P〕〔∧P〕〔∧P〕〔DLN〕を含む。
【0055】
一般に、本発明において使用される第1及び第2融合タンパク質をそれぞれコードする第1及び第2核酸分子は、融合タンパク質の相互作用が生じる特定の細胞に適した発現ベクターに存在する。適切な発現ベクターの例は、例えば、本方法が実施される細胞に応じて、酵母発現ベクター又は哺乳類発現ベクターを含む。特に、本発明のベクターは、標的タンパク質をコードする核酸分子の挿入に都合の良い手段をもたらす多重クローニング部位のようなクローニング部位を含有する。本発明によると、プロモーター及び核酸分子は、いわゆる「発現カセット」に配置されており、第1融合タンパク質の発現カセットは、エフェクタータンパク質とのフレーム中で、標的タンパク質(Vif又はその相同体、誘導体若しくはフラグメント)をコードする核酸に機能的に結合しているプロモーターを含み、他の発現カセットは、リンカー及び細胞区画局在化シグナルとのフレームの中で、候補(宿主)タンパク質(又はその相同体、誘導体若しくはフラグメント)をコードする核酸に機能的に結合しているプロモーターを含む。加えて、ベクターは、適切な転写又は翻訳の開始又は終止シグナルなどを含有することができる。好ましくは、発現カセットは、異種プロモーターを含むキメラ発現カセットである。
【0056】
したがって、別の実施態様において、本発明は上記記載の核酸分子を含むベクターに関し、好ましくは、ベクターは、上記で定義された標的HIVタンパク質又はその結合フラグメントをコードする核酸分子を更に含む。
【0057】
当然のことながら、本発明は、本発明の方法により又は上記記載のベクターにより得られる核酸分子を含む組み換え宿主細胞にも関する。
【0058】
更なる実施態様において、本発明は、HIVタンパク質と又はHIVタンパク質及びヒトタンパク質を含む複合体と相互作用することができるタンパク質を調製する方法であって、
(a)インビトロで、上記の特徴決定された宿主細胞を培養する、及び/又は本発明の方法により若しくは本発明のベクターにより得られうる核酸分子を発現すること、
(b)タンパク質又は複合体を単離すること
を含む方法を提供する。
【0059】
現在まで、幾つかのタンパク質は、HIV複製サイクルに関与するタンパク質と相互作用することが同定されている。しかし、本発明の方法を使用すると、今までVifと結合することが決定されたことのない宿主(ヒト)タンパク質が同定された。更なる分析は、タンパク質が新たな種類のタンパク質に属していることを明らかにし、そのメンバーは、Vif及び上記参照のモチーフに結合する能力を共有している。
【0060】
したがって、なお別の実施態様において、本発明は、核酸分子によりコードされるか又は本発明の上記に記述された方法により得られうるHIV相互作用タンパク質を対象とし、好ましくは、タンパク質は、PTEN(配列番号4及び5)、HERC4(配列番号6及び7)、Tom1L1(配列番号8)、EIF4A2(配列番号9)、TCTP(TPT1:配列番号10、11、12及び13)、NUP50(配列番号14)、CTCF(配列番号15)、hnRPU(配列番号16)、MRCL(MRCL3:配列番号17)、SDCCAG1(配列番号18及び19)、PTGES3(配列番号20)、HSPs(HSP90:配列番号21;HSPA1:配列番号:22、23、24、25、26、27及び28;HSPA5:配列番号:29、30及び31;HSPA8:配列番号:32、33及び34;HSPH1:配列番号:35)、CSDE1(配列番号36)、KIA1429(配列番号42)、CUL4A(配列番号43)、RAG2(配列番号44)、CCT5(配列番号45)、VCP(配列番号46)、PDIA3(配列番号47)、PTPRC(配列番号48)、CAB39(配列番号49)、PPM1B(配列番号50)、RAB4A(配列番号51)、RAB21(配列番号52)又はこれらのいずれかのフラグメント若しくは誘導体からなる群より選択される。
【0061】
Vifの機能は宿主細胞因子の活性と密接につながっていると思われるが、Vifの分子機構は依然として不明のままである。理論に束縛されることを意図するものではないが、Vifはウイルス種と宿主との接触を「仲介する」、すなわちウイルス性因子と細胞性因子及び/又は宿主の経路とを連結する「アダプター」として作用すると考えられる。このことは、HIVのレトロウイルス特性、また小型であることに起因して宿主細胞機構の利用可能性に強く依存しているウイルスが、複製プログラムを通過することを可能にする。したがって、Vifと宿主の相互作用を防止すること及びそれに介入することは、宿主細胞機構の利用を拒絶し、HIV複製、したがってAIDSの発症又は進行を防ぐ治療手法であると考えられる。
【0062】
したがって、Vifは、新たな治療手法を考えるときに対処されるべき重要な標的であると思われ、Vifと相互反応する宿主因子を同定すること及びHIV複製に対するそれらの可能な影響力を評価することが必要となる。タンパク質−タンパク質相互作用を調査する幾つかの方法が従来技術において記載されているが、生理学的条件下において、ウイルスタンパク質の相互作用パートナーを同定する及びウイルスタンパク質と宿主タンパク質との相互作用を検出する、それぞれの方法を開発することが、主な関心事である。
【0063】
以下に、健康な生物に保持されている、本発明の方法によりVif結合タンパク質として同定されているタンパク質の「通常」の機能について、簡潔な概要を提示する。以下は、更に、検出されたタンパク質のどれもが、以前にVifの標的であると決定されていなかったこと又は示唆さえもされていなかったことを実証している。
【0064】
・ホスファターゼ及びテンシン相同体(PTEN)(異名:BZS、MHAM、TEP1、MMAC1、PTEN1、MGC1127)、受入番号NM_000314。この酵素は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)の作用により生成され、それ自体T細胞レセプターとB細胞レセプターの会合に反応して活性化する、第2メッセンジャー分子のホスファチジルイノシトール3,4,5−トリスホスフェート(PI−3,4,5−P3)の脱リン酸化を触媒する。とりわけ、PI3Kは、また、インスリン様増殖因子IGF−1(ヤマモト(Yamamoto)ら、内分泌学(Endocrinology)130(1992)、1490〜98)及びインスリン(ハダリ(Hadari)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)267(1992)、17483〜17489)により誘発されるシグナル伝達によって活性化され、主に抗アポトーシス、繁殖及び腫瘍形成に関与するセリン−トレオニンキナーゼPKB/Akt経路の下流において自身を活性化する。PTENは、PI3Kシグナル伝達経路の負のレギュレーターであり、その不在下では、PKB/Akt経路の過剰活性化が、アポトーシスに対する抵抗性の増大、細胞生存の増強及び繁殖をもたらす。T細胞特異的欠失PTENのマウスによる調査は、胸腺における発生中のT細胞の繁殖に対するその重要な調節機能を示した(ハーゲンビーク(Hagenbeek)ら、実験医学ジャーナル(J. Exp. Med.)200(2004)、883〜894を参照すること)。
【0065】
HIV感染の際のT細胞アポトーシスの調節は、臨床潜伏及び更なる疾患進行の期間において重要であるが、HIVによるT細胞死の誘発、また、HIV感染T細胞の保護について分子機構は、十分に定義されていない。HIV感染の場合、ウイルス感染誘発アポトーシスは、免疫不全に関連する、CD4+T細胞の涸渇及びHIV感染とAIDSの進行に寄与する。したがって、CD4+T細胞のアポトーシスの阻害は、HIV感染の予防又は治療の戦略でありうる。
【0066】
異なるHIVタンパク質が細胞死の調節において役割を果たすことが記載されている(セリアー(Selliah)及びフィンケル(Finkel)、細胞死及び分化(Cell death and differentiation)8(2001)、127〜136を参照すること)。例えば、非感染バイスタンダーT細胞のアポトーシスは、HIV−Tat及びHIV−Vprによって誘発されうる。更に、エンベロープ糖タンパク質HIV−Envの細胞レセプターCD4及びCXCR4への結合も、一次Tリンパ球のアポトーシスを誘発することが示されている(シカラ(Cicala)ら、PNAS 97(2000)、1178〜1183を参照すること)。一方、PI3Kとウイルスタンパク質Nefの相互作用は、PI3K活性化のために抗アポトーシスシグナル伝達をもたらすことが実証された(ウルフ(Wolf)ら、ネイチャー医薬(Nature Med.)7(2001)、1217〜1224を参照すること)。細胞内Tat及びHIV−1感染によるPTENの下方制御は、PI3K/Akt生存経路を刺激する潜在的な機構として示唆されている(クー(Chugh)ら、分子生物学ジャーナル(J. Mol. Biol.)366(2007)、67〜81を参照すること)。これに関連して、HIV Gag及びPI3Kを含むタンパク質複合体、並びにこれらのタンパク質複合体の使用は、国際出願WO02/090549において既に記載されている。
【0067】
更に、国際出願WO03/060067は、有効量のPI3K経路インヒビター、並びにPI3Kの調節サブユニット、Hercユビキチンリガーゼ及びNefのタンパク質複合体を投与する、ウイルス感染及びウイルス成熟を阻害する組成物及び方法を記載する。
【0068】
PETN触媒反応の産物であるPI(4,5)P2も、Gag局在化及びウイルス構築の調節に関与することが示されている(オノ(Ono)ら、PNAS 101(2004)、14889〜14894を参照すること)。更に、ウイルス産生は、原形質膜PI(4,5)P2のレベルの低減により強力に阻害されることを示し、この効果は、原形質膜へのGag局在化の阻害に起因する。加えて、Gag及びPI(4,5)P2のマトリックスドメインの複合体の構造研究が、サード(Saad)ら、PNAS 103(2006)、11364〜11369において実施された。しかし、PTENとHIV Vifの複合体は、以前に記載されたことはない。
【0069】
このような状況において、PTEN(それぞれ配列番号4及び5)を本発明の方法によりVifそれぞれの直接的相互作用パートナー及び標的として同定することにより、HIV感染及びAIDSそれぞれの治療及び予防の新たな戦略に選択肢が提供され、例えば、PTEN若しくはその模倣体を供給することにより又はPTENの発現を修飾することができる若しくはPTENとVifの複合体に影響を与えることができる化合物を適用することにより、対応する相互作用を防止する。その結果、ウイルスの、宿主細胞機構の利用が禁止され、ウイルス複製が停止する。更に、宿主のアポトーシス調節は、まるでHIVの不在の場合のように、宿主に対してそれぞれ維持及び再指示されるであろう。
【0070】
・HERC E3ユビキチンリガーゼ、受入番号HERC4:NM_001017972、NM_015601、NM_022079。HECTドメインに加えてRCC1(染色体凝縮1のレギュレーター)様ドメイン(RLD)を含有するE3ユビキチンリガーゼは、HERCと命名されている。RCC1は、RanのGEF(グアニンヌクレオチド交換因子)であり、核細胞質間輸送及び紡錘体形成に参加する。したがって、GEF及びユビキチンリガーゼの両方の役割が、HERCタンパク質において想定されるが、そのタンパク質ファミリーは、6つの異なるHERCタンパク質(大型が2つ、小型が4つ)から構成されている。
【0071】
HIV Vifと、カリンに基づいたE3リガーゼとの相互作用は、既に、ユー(Yu)ら、サイエンス(Science)302(2003)、1056〜1060;メール(Mehle)ら、遺伝子及び開発(Genes and Dev.)18(2004)、2861〜2866;メールら、生物化学ジャーナル(J Biol. Chem.)281(2006)、17259〜17265において示されている。更に、このタンパク質相互作用は、シチジンデアミナーゼAPOBEC3Gの脱活性化に必須であることが、シラカワ(Shirakawa)ら、ウイルス学(Virology)344(2006)、263〜266、コバヤシ(Kobayashi)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)280(2005)、18573〜18578において記載されている。加えて、HIVタンパク質Vifは細胞内で急速に分解することが示されており、Vifの急速な代謝回転は、このタンパク質の高い発現レベルでの有害な影響を防止するのに生物学的に重要であることが示唆されている(フジタ(Fujita)ら、微生物及び感染(Microbes and Infection)6(2004)、791〜798を参照すること)。大量のVifのポリユビキチン化誘導体が細胞において検出された。更に、HIV Vifのユビキチン化が、デュソー(Dussart)らにより2004年に調査され、HECT E3ユビキチンリガーゼファミリーのタンパク質との相互作用が報告され、また、VifとhNedd4−1及びAIP4との複合体が記載された。しかし、本発明の方法により発見されたHIV VifとHERC E3ユビキチンリガーゼとのタンパク質複合体は、以前に記載されたことはない。
【0072】
更に、国際出願WO02/090549は、HERCタンパク質とHIV Gagの相互作用が、ウイルス成熟において役割を果たすことを記載し、国際出願WO03/060067は、HERCユビキチンリガーゼと、Nefタンパク質を含有するPI3Kの調節サブユニットとのタンパク質複合体を記載する。
【0073】
したがって、HERC E3(それぞれ配列番号6及び7)を本発明の方法によりVif結合タンパク質として同定することにより、それが、HIV感染及びAIDSの分野における新規戦略を考えたときに適切な標的となる。PTENに関連して既に記述されたように、このことは、ウイルス複製を停止させるために、HERC E3若しくはその模倣体の供給、又はHERC E3の発現若しくはHERC E3とVifとの複合体の形成のいずれかを修飾することができる化合物の供給を含むことができる。
【0074】
・myb1様1の標的(TOM1L1)、受入番号NM_005486及び関連タンパク質Tom1及びTom1L2は、N末端領域におけるVHSドメイン(Vsp27p、Hrs及びStam)及び小胞運搬に関与するGAT相同ドメイン(GGA及びTom)によって特徴決定されているタンパク質ファミリーを構成する(ボニファシノ(Bonifacino)JS、ネイチャーレビュー分子細胞生物学(Nat. Rev. Mol. Cell Biol.)5(2004)23〜32;ローヒ(Lohi)ら、FEBSレターズ513(2002)、19〜23を参照すること)。フランコ(Franco)ら、分子細胞生物学(Mol. Cell Biol.)26(2006)、1932〜1947は、SFK(srcキナーゼファミリー)/レセプター会合を調節することによって、Src分裂促進シグナル伝達の負のレギュレーターとしてTOM1L1を同定した。更に、Vifは、SrcチロシンキナーゼのFyn及びHckと相互作用し、それらの触媒活性に低減をもたらすことが、ハサイン(Hassaine)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)276(2001)、16885〜16893;ドゥアイシ(Douaisi)ら、生化学、生物理学研究通信(Biochem. Biophys. Res. Commun.)(2005)において示された。
【0075】
TOM1L1と多小胞体ソーティング機構との相互作用が、プエルトリャノ(Puertollano)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)280(2005)9258〜9264において示されている。より詳細には、TSG101とのタンパク質相互作用が実証され、このタンパク質は、エンドソームタンパク質ソーティングに関与する因子である。興味深いことに、Tsg101とのHIV−1 Gag相互作用は、効率的なウイルス出芽にとって重要である(マーチン−セラノ(Martin-Serrano)ら、ネイチャー医薬(Nat Med)7(2001)1313、国際出願WO02/090549及びWO02/072790を参照すること)。加えて、抗TSG101抗体及びTSG101誘導ペプチドが、ウイルス感染の治療において記載されている(国際出願WO04/031209及びWO02/094314を参照すること)。
【0076】
したがって、本発明の方法によりTOM1L1(配列番号8)とVifとの分子相互作用を同定することによって、TOM1L1又はTOM1L1とVifとの複合体が、HIV及びAIDSそれぞれの治療及び予防の分野における適切な標的となる。特に、ウイルスタンパク質Vifがウイルス生活環の後期に発現することが知られており、Vifがウイルス構築プロセスに関与することが考察されたので(チャン(Zhang)ら、ウイルス学ジャーナル(J. Virology)74(2000)、8252〜8261を参照すること)、理論に束縛されることを意図するものではないが、VifとTomタンパク質との分子相互作用は、Tom1L1がシグナル伝達と分解性細胞経路とを連結し、したがってウイルス複製において重要な役割を果たすと思われるので、細胞宿主因子のVif調節における主要な構成要素であると考えられる。したがって、対応するTOM1L1/Vif複合体の形成を防止することは、ウイルス複製を停止する、並びに宿主においてタンパク質ソーティング及び分解機構をそれぞれ維持及び再指示すると考えられる。
【0077】
・ヒト真核生物翻訳開始因子4A(eIF4A)、受付番号NM_001967、eIF4Fの構成要素は、翻訳開始のリボソーム動員工程において機能するDEADボックスヘリカーゼである。eIF4F複合体は、また、ATP非依存性様式でmRNAキャップ構造に結合するeIF4E及び43S開始前複合体のmRNA結合を仲介するモジュールの足場であるeIF4Gを含む。eIF4Aは、mRNAの5′領域の二次構造を巻き戻して翻訳を促進する重要な役割を果たす。eIF4Aは、mRNAリボソーム結合において、その遊離形態でも、eIF4F複合体の一部としても関与することができる。
【0078】
宿主細胞のウイルス感染の際に、ウイルスmRNAは、ウイルスと細胞の両方のmRNAへのリボソーム動員を仲介する真核生物翻訳開始因子の限定されたプールを宿主mRNAと競合しなければならない。したがって、ウイルスは、ウイルスゲノムの複製のために感染細胞内の特定のeIFを修飾する。eIF4Aと、単純ヘルペスウイルスのビリオン宿主シャットオフ(vhs)タンパク質との相互作用(フェング(Feng)ら、ウイルス学ジャーナル(J. Virology)79(2005)、9651)及びHCVのNS5Bタンパク質との相互作用(キョーノ(Kyono)ら、生化学、生物理学研究通信(Biochem. Biophys. Res. Commun.)292(2002)、659)が既に実証されているが、本発明は、eIF4Aと、HIVのタンパク質、すなわちHIV Vifとの複合体の検出を提供する。
【0079】
したがって、eIF4A(配列番号9)がVifの直接的な標的でもあるという本発明の方法による新たな所見は、新たな抗HIV/AIDS治療手法を開発するために有用な潜在的標的を提供する。例えば、eIF4A又はeIF4AとVifの複合体に影響を与えることは、eIF4Aのような宿主翻訳開始因子への結合についてウイルスと宿主との競合を防止し、それによりウイルス複製を妨害するばかりでなく、天然であるが限定された開始因子のプールを宿主の支配下に維持すると考えられる。
【0080】
・翻訳制御された腫瘍タンパク質(TCTP)(異名:フォーチリン、ヒスタミン放出因子、HRF、TPT1、p02)、受入番号NM_003295は、腫瘍特異的又は組織特異的タンパク質ではなく、全ての真核生物及び500を超える組織及び細胞型に普遍的に発現する(ボマー(Bommer)及びティエレー(Thiele)、生化学細胞生物学ジャーナル(J. Biochem. Cell Biol.)36(2004)、379〜385;サンチェス(Sanchez)ら、電気泳動(Electrophoresis)18(1997)、150〜155を参照すること)。TCPTレベルは、ストレス条件のような広範囲の細胞外刺激に反応して、高度に調節されている(ボマー(Bommer)ら、RNA 8(2002)、478〜496;ボネット(Bonnet)ら、酵母(Yeast)16(2000)、23〜33を参照すること)。TCPTは、また、ヒスタミン放出因子として細胞外機能を有すること及び抗アポトーシス活性を有することを示した(リー(Li)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)276(2001)、47542〜47549を参照すること)。
【0081】
フォーチリンとしても知られているTCTPは、抗アポトーシスBcl−2ファミリーのタンパク質であるMCL1に結合し、フォーチリンがアポトーシスの調節においてMCL1特異的補助因子であるかもしれないことを示唆している(チャン(Zhang)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)277(2002)、37430を参照すること)。フォーチリン活性及びMTL−1及びp53との相互作用を調節する方法が、国際出願WO02/36624に記載されており、抗アポトーシス遺伝子MTL−1は、バレストリエリ(Balestrieri)ら、医療ウイルス学ジャーナル(J. Med. Virol.)79(2007)、111〜117において、HIV患者の成功した抗レトロウイルス療法に反応して有意に上方制御されたことが示された。
【0082】
加えて、TCTPは、アポトーシスレギュレーターBcl−XLと特異的に相互作用する(ヤン(Yang)ら、腫瘍遺伝子(Oncogene)24(2005)、4778〜4788を参照すること)。Bcl−XLは、アポトーシスのレギュレーターとして機能し、かつミトコンドリア膜に局在することが見出されているBcl−2関連タンパク質でもあり、ミトコンドリア電位依存性アニオンチャンネルに結合して、それを閉鎖し、それによってカスパーゼアクチベーターであるチトクロームcの、ミトコンドリア内腔から細胞質への輸送を防止する(シミズ(Shimizu)ら、ネイチャー(Nature)399(1999)、483〜487を参照すること)。Bcl−XL/TCTPタンパク質複合体のモジュレーターのスクリーニングアッセイ、調節化合物の同定、及びHIVを含むアポトーシス関連疾患の治療における治療用途が、US2002/0177692に記載されている。更に、TCTPは、国際出願WO01/16322においてHIV阻害タンパク質として記載された。しかし、HIV Vif及びTCTPを含有するタンパク質複合体は、以前に記載されたことはない。
【0083】
Vif結合タンパク質として同定された上記に参照されているタンパク質の状況において既に考察された利点によると、Vifの直接的な標的としてTCTP(TPT1:それぞれ配列番号10、11、12及び13)を同定することも、HIV/AIDSの分野における新規戦略の開発のための、更に適切な標的、すなわちTCTPか、又はVIfとの対応する複合体を提供すると考えられる。特に、VifとTCTPとの各相互作用を防止することは、ウイルスが宿主の細胞機構を利用するのを防止し、それによってウイルス複製を防止すると考えられる。更に、アポトーシスの調節は、HIVによって影響を受けることがないはずであり、むしろ、非感染生物の場合のように、宿主により制御されるはずである。
【0084】
・ヌクレオポリン(NUP50)(異名:NPAP60、NPAP60L、MGC39961、DKFZ564A043)、受入番号NM_007172、NM_153645。
生活環を完了するために、ヒト免疫不全ウイルスは、そのゲノムを宿主の非分化細胞の核に導入することを必要とする。宿主細胞を感染した後、HIVカプシドは急速に脱コートされ、ゲノムHIV RNAは、直鎖dsDNAに逆転写され、核タンパク質複合体と関連したままの状態を維持し、組み込み前複合体(PIC)と呼ばれる。ウイルスゲノムは、核局在化シグナル(NLC)を含有するウイルスタンパク質と複合体を形成し、3つのHIVタンパク質は、細胞核内移行機構:HIV−1マトリックスタンパク質、補助タンパク質Vpr及びHIVインテグラーゼを動員することによって、PICの核内移行において核親和性タンパク質として関与することが知られている(概説については、ブクリンスキー(Bukrinsky)、分子医学(Mol. Med.)10(2004)、1〜5を参照すること)。加えて、ウイルスタンパク質Revは、短C末端ロイシン豊富モチーフを、ウイルスmRNAの核細胞質間往復輸送及びRev依存性輸送に重要な核外移行シグナルとして有する。
【0085】
Vifの細胞内局在化についての調査は、Vifが主に細胞質タンパク質であること明らかにした(コンサルヴェス(Goncalves)ら、ウイルス学ジャーナル(J. Virol.)68(1994)、704〜712;コンサルヴェスら、ウイルス学ジャーナル69(1995)、7196〜7204;マイケルズ(Michaels)ら、エイズ研究ヒトレトロウイルス(AIDS Res. Hum. Retroviruses)9(1993)、1025〜1030を参照すること)。それにもかかわらず、Vifの核酸局在化も観察された(ヴィクロスキー(Wichroski)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)280(2005)、8387〜8396を参照すること)。Vif配列は、塩基領域の90RKKR93を含有し、これはプロトタイプ核局在化シグナルと類似しており、このモチーフは、潜在的な核輸送阻害シグナルとして同定された。Vifが核細胞質間輸送のレギュレーターとして機能しうることが前提とされている(フリードラー(Friedler)ら、分子生物学ジャーナル(J. Mol. Biol.)289(1999)、431〜437を参照すること)。更に、VifのNLS様配列の主鎖環状ペプチド類似体が、ウイルスゲノムの核内移行の阻害に基づいた薬剤の候補として国際出願WO99/28338に記載されている。
【0086】
ヌクレオポリンNUP50は、移入複合体解体及びインポーチン再利用と協調して機能することが示された(マツウラ(Matsuura)ら、EMBOジャーナル(EMBO J.)24(2005)、3681〜3698を参照すること)。その局在化のために、NUP50は、NPCの核質部分の範囲内、おそらく主に核バスケットにおいて機能すると示唆されている(グアン(Guan)ら、分子細胞生物学(Mol. Cell Biol.)20(2000)、5619〜5630を参照すること)。他のヌクレオポリンNUP62及びNUP133は、cDNAスクリーニングによりHIV感染のエンハンサーとして同定されている(グエン(Nguyen)ら、ウイルス学(Virology)362(2007)、16〜25を参照すること)。
【0087】
したがって、NUP50(配列番号14)をVifの直接的な標的として同定することにより、HIV感染及び/又はAIDSの治療の新規治療手法を考えている場合、NUP50及び/又はNUP50とVifの複合体が適切な標的になる。複合体形成を防止する場合、ウイルス複製が妨害又は停止されると考えられる事実のほかに、加えて、理論に束縛されることを意図するものではないが、HIV VifとNUP50の分子相互作用が、宿主の核細胞質間輸送機構を調節すると考えられるので、対応するVif/NUP50相互作用を防止する又は崩壊させると、細胞内の核細胞質間輸送の制御は、まるでHIV感染がないかのように、宿主に戻されるはずである。
【0088】
・CCCTC結合因子(CTCF)、受入番号NM_006565。
転写リプレッサーCTCFは、遺伝子サイレンシングをもたらす複数のタスクに関与する普遍性タンパク質である。CTCFは、プロモーター活性化又は抑圧、ホルモン反応性遺伝子サンレンシング、メチル化依存性クロマチン遮断及びゲノムインプリンティングを含む遺伝子調節の異なる局面において役割を果たす11ジンクフィンガー転写因子である(ダン(Dunn)及びデーブ(Davie)、生化学及び細胞生物学(Biochem. Cell Biol.)81(2003)、161〜167;ダンら、実験細胞研究(Exp. Cell Res.)288(2003)、218〜223を参照すること)。興味深いことに、転写リプレッサーCTCFの特定の上方制御は、T細胞クローンを分泌するHIV−1耐性因子のHIV−1に対する細胞抵抗性に直接関連していた(カルトベリシュビリ(Kartvelishvili)ら、免疫学レターズ(Immunology Letters)93(2004)79〜86を参照すること)。しかし、HIV Vif及びCTCFを含有するタンパク質複合体は、以前に記載されたことはない。
【0089】
したがって、Vifと相互作用するタンパク質としてCTCF(配列番号15)を同定することによっても、HIV感染及びAIDSそれぞれの分野において新規治療手法を開発することを考える場合、取り組むべき更なる標的が提供される。特に、理論に束縛されることを意図するものではないが、Vifと転写因子CTCFとの相互作用がヒト宿主細胞におけるHIV複製にとって重要であると考えられるので、その対応する防止は、ウイルスが宿主の細胞機構を利用するのを邪魔し、したがってウイルス複製を停止させるはずである。
【0090】
・HNRPU(異名:hnRNPU、足場付着因子A、SAF−A、p120、pp120)、受入番号NM_004501、NM_031844。
このタンパク質は普遍的に発現しているヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)のサブファミリーに属する。hnRNPは、特有の核酸結合特性を有し、かつヘテロ核RNA(hnRNA)と複合体を形成する、RNA結合タンパク質である。これらのタンパク質は、核においてプレmRNAと関連し、プレmRNAプロセシング、並びにmRNA代謝及び輸送についての他の局面に影響を与えると思われる。hnRNPは全て核に存在するが、一部は、核と細胞質の間を往復すると思われる。
【0091】
タンパク質hnRNPUは、RNA結合ドメイン及び足場関連領域(SAR)特異的二分DNA結合ドメインを含有することが記載されており、更に、大型リボヌクレオタンパク質複合体へのhnRNAのパッケージングに関与すると考えられる。アポトーシスの際には、このタンパク質はカスパーゼ依存的に切断され、切断はSALD部位において生じ、その結果、DNA結合活性の損失及び核構造部位からのこのタンパク質の同時脱離をもたらす。しかし、この切断は、RNA代謝におけるコードタンパク質の機能に影響を与えない。
【0092】
組み換えHIV−1ゲノムによる感染に対して抵抗性を誘発するクローンのヒトcDNAライブラリーからの選択は、HIV制限活性を持つ遺伝子フラグメントの同定をもたらした。活性cDNAは、hnRNPUのN末端フラグメントをコードする。遺伝子フラグメントは、ウイルスmRNAの3′LTRを標的にして、HIV mRNAの細胞質蓄積を阻止する(バレンテ(Valente)及びゴフ(Goff)、分子細胞(Mol Cell)23(2006)、597〜605を参照すること)。異なるヘテロ核リボヌクレオタンパク質が、cDNAスクリーニングによりHIV感染のエンハンサーとして同定されている(グエン(Nguyen)ら、ウイルス学(Virology)362(2007)、16〜25を参照すること)。
【0093】
したがって、本発明によりHNRPU(配列番号16)をVif結合タンパク質として同定することにより、一般に、上記のタンパク質について考察したウイルス複製に関して、同じ利点及び選択肢がそれぞれ提供され、すなわち、VifとHNRPUの対応する相互作用を防止すると、ウイルスの宿主細胞の使用が阻止され、したがってHIV複製がそれぞれ妨害又は防止及び停止されるはずである。更に、理論に束縛されることを意図するものではないが、宿主RNAとの複合体形成、並びにRNA代謝及び輸送それぞれにおけるHNRPUの「通常」の関与は、VifとHNRPUの相互作用を防止すると、宿主のみの支配下に置かれ、HIVにより悪用される危険性がなくなるはずである。
【0094】
・ミオシン制御軽鎖MRCL(異名:MLCB、MRLC3)、受入番号NM_006471。
HIVタンパク質と宿主細胞細胞骨格構成要素との相互作用は、効率的なウイルス複製にとって大きな重要性がある。ウイルス侵入、細胞内運搬、出芽及びウイルス放出におけるアクチン及び微小管の特定の機能が実験的に実証されている。加えて、細胞骨格の調節も、HIV誘発アポトーシスにとって重要であると考えられる。ウイルスタンパク質のTat、Rev、Vpr及びNefは、細胞骨格再構築の決定因子として同定されている(ファクラー(Fackler)及びクロイスリッヒ(Krausslich)、微生物学の最新見解(Curr. Opinion Microbiol.)9(2006)、409〜415;マタレーセ(Matarrese)及びマロリーニ(Malorni)、細胞死及び分化(Cell Death Differ.)12(2005)、932〜941を参照すること)。
【0095】
更に、HIVアクセサリータンパク質Vifの細胞骨格会合が実証され、共焦点顕微鏡検査法によって確認することにより、中間体フィラメントのビメンチン及びケラチンの近接した局在下を明らかになった(カルチェウスキー(Karczewski)及びストレベル(Strebel)、ウイルス学ジャーナル(J. Virol.)70(1996)、494〜507を参照すること)。細胞骨格Vifは、可溶性細胞質ゾルVifよりもプロテアソーム分解に対して安定していることが見出された(フジタ(Fujita)ら、微生物及び感染(Microbes and Infection)6(2004)、791〜798を参照すること)。Vifによるビメンチン及びプレクチン凝集の誘発が異なる細胞で観察された(ヘンツラー(Henzler)ら、一般ウイルス学ジャーナル(J. Gen. Virology)82(2001)、561〜573を参照すること)。
【0096】
加えて、ミオシンIIは、感染細胞からのHIV−1ビリオンの放出において重要な役割を果たすことが示されており、ミオシン軽鎖キナーゼの化学インヒビターは、ササキ(Sasaki)ら、PNAS 92(1995)、2026〜2030において、HIV−1の放出を阻止することが示されている。MLCリン酸化の阻害は、チャオ(Zhao)ら:http://medschool.slu.edu/imv/index. phtml?page=zhao&cat = directoryにおいて観察され、MLCとVprとの直接相互作用に関連付けられた。しかし、HIV Vif及びMRCLを含有するタンパク質複合体が、記載されたことは未だにない。
【0097】
したがって、MRCL(MRCL3:配列番号17)をVifの直接的な標的として同定することにより、それ及びVifとの対応する複合体が、ウイルスが宿主タンパク質、酵素及び因子それぞれを使用して生活環を経過するのを停止させることが意図される治療手法において、適切な標的になる。特に、Vifと細胞骨格構成要素MRCLとの相互作用が宿主細胞骨格のウイルス修飾を可能にしうるので、MRCLとVifとの複合体形成を防止することは、まるでHIV感染がないかのように、骨格構造の構成を宿主の制御下にそれぞれ維持及び再指示するはずである。
【0098】
・血清学的に定義された結腸癌抗原1(SDCCAG1)(異名:NY−CO−1、FLJ10051)、受入番号NM_004713は、腫瘍サプレッサータンパク質として同定された。SDCCAG1を誘発することにより細胞周期停止が癌細胞株に生じた(カルボネレ(Carbonnelle)ら、国際癌ジャーナル(Int. J. Cancer)92(2001)、388〜397を参照すること)。加えて、SDCCAG1が核外移行のメディエーターであることが、ビー(Bi)ら、腫瘍遺伝子(Oncogene)24(2005)、8229〜8239において示された。しかし、HIV病因の疾患関連機能は、報告されていない。
【0099】
このような状況において、SDCCAG1(それぞれ配列番号18及び19)をVifの直接的な相互作用パートナーとして同定することにより、対応する相互作用を防止又は破壊してウイルスが宿主細胞機構を利用するのを中断するため、それを標的にすること又はVifとの対応する複合体を標的にすることが可能になる。更に、理論に束縛されることを意図するものではないが、腫瘍の抑制及び核外移行それぞれにおけるSDCCAG1の「通常」の関与は、宿主のみの支配下に置かれ、HIVにより悪用される危険性がなくなるはずである。したがって、SDCAG1をVif結合タンパク質として決定することは、新たな抗HIV及び抗AIDSのそれぞれの戦略に更なる選択肢を提供する。
【0100】
・プロスタグランジンEシンターゼ3(PTGES3)(異名:P23、TEBP)、受入番号NM_006601。
プロスタグランジンE2(PGE2)は、有効なcAMP上昇脂質メディエーターであり、幾つかの免疫調節効果を有している。PGE2の血清レベルは、HIV感染の際に有意に増加することが示されている(デレマール(Delemarre)ら、エイズ(AIDS)9(1195)、441〜445;フォレイ(Foley)ら、免疫学(Immunol.)75(1992)、391〜397を参照すること)。細胞研究において、PGE2は、HIV複製を増強することが実証された(クノ(Kuno)ら、PNAS 83(1986)、3487〜3490;リマ(Lima)ら、IAS会議HIV病因、治療2005:要約WePe8.6B04(2005)(IAS Conf HIV Pathog. Treat 2005: abstract No. WePe8.6B04 (2005))を参照すること)。これに関連して、ヒトCD8+Tリンパ球における機能性阻害CD94/NKG2AレセプターのPGE2誘発発現が、ゼッドウ(Zeddou)ら、生化学的薬理学(Biochemical Pharmacology)70(2005)、714〜724において観察されている。更に、PGE2産生は、HIVコアタンパク質p24の保存配列モチーフから誘導されるペプチドにより刺激されることが示されている(ジャコミニ(Giacomini)ら、免疫学スカンジナビアジャーナル(Scand. J. Immunol.)48(1998)248〜253を参照すること)。
【0101】
このような状況において、本発明によりPTGES3(配列番号20)をVif結合タンパク質として同定することにより、それが又はVifとの対応する複合体が、前記相互作用を防止又は破壊するのに適した標的になる。特に、理論に束縛されることを意図するものではないが、VifとPTGESとの直接的な相互作用によりHIV病因の際に免疫調節効果の調節が想定されるので、HIV感染の間の免疫調節効果の前記調節は、相互作用の対応する禁止により防止されるはずであり、むしろ免疫系の調節は、健康な生物のように、宿主の制御下となるはずである。
【0102】
・熱ショックタンパク質:HSPA1、HSPA5、HSPA8、HSPB(異名:HSP72、HSP70−1)受入番号HSPA1:NM_005345、(異名:BIP、MIF2、GRP78)受入番号HSPA5:NM_005347、(異名:LAP1、HSC54、HSC70、HSC71、HSP71、HSP73、HSPA10 MGC29929)受入番号HSPA8:NM_006597、NM153201、(異名:HSP90B、HSPC2、D6S182)受入番号HSPB:NM_007355。
熱ショックタンパク質は、細胞において分子シャペロンとして作用する高度に進化的保存されたタンパク質である。分子機能は、タンパク質折り畳み、輸送及び構築に関連している。HSPも、タンパク質の凝集及び分解の防止に関与している。更に、HSPの生合成は、熱ばかりでなく、酸化ストレス、重金属の影響、細菌及びウイルス感染を含む他の細胞ストレスによっても誘発されることが示された。
【0103】
熱ショックタンパク質は、ブレナー(Brenner)及びワインベルグ(Wainberg)、生物学的治療における専門家の意見(Exp. Opin. Biol. Ther.)1(2001)、1471〜2598において、HIV感染の治療の新規治療ツールとして既に認識されている。しかし、HIV疾患の病因におけるHSPの役割は部分的にしか理解されていない。CD4+リンパ球細胞株を使用したインビトロ研究、並びにHIV感染者のリンパ球の分析は、HIV感染が熱ショックタンパク質の合成の増加を誘発したことを示した(ワインベルグ(Wainberg)ら、ウイルス学(Virology)233(1997)、364〜373:アグニュー(Agnew)ら、エイズ(AIDS)17(2003)、1985〜1988;フュースト(Fust)ら、分子免疫学(Mol. Immunol.)42(2005)、79〜85を参照すること)。加えて、感染の後期に誘発されたHsp70は、細胞をアポトーシスから保護することが示された(モッサー(Mosser)ら、分子細胞生物学(Mol. Cell Biol.)17(1997)、5217〜5237を参照すること)。
【0104】
異なるHIVタンパク質と熱ショックタンパク質との相互作用は、既に観察されており、例えば、NefとHsp40の相互作用は、感染細胞の核へのHsp40の転位の増加のために重要であることが示された(クマール(Kumar)ら、生物化学ジャーナル(J. Biol. Chem.)280(2005)、40014〜40050を参照すること)。加えて、異なる熱ショックタンパク質へのビリオンの組み込みが、グラー(Gurer)ら、ウイルス学ジャーナル(J. Virol.)76(2002)、4666〜4670において実証された。このような状況において、Gag相互作用は、Hsp70のビリオン組み込みに決定的に関与している。HECT−RCC1ポリペプチドとHIV gag及び熱ショックタンパク質とのタンパク質複合体、並びにHIV治療におけるこれらの複合体のモジュレーターとしての使用は、国際出願WO02/090549に記載された。しかし、熱ショックタンパク質とのVif複合体は、以前に記載されたことはない。
【0105】
したがって、本発明の方法によりHSP(HSP90:配列番号21;HSPA1:それぞれ配列番号22、23、24、25、26、27及び28;HSPA5:それぞれ配列番号29、30及び31;HSPA8:それぞれ配列番号32、33及び34;HSPH1:配列番号35)をVifの直接的な相互作用パートナーとして同定することにより、一般に、新規抗HIV及び抗AIDS戦略それぞれの開発のために、上記に参照したタンパク質について既に考察したものと同様の選択肢が提供される。特に、VifとHSPとの相互作用を防止することによって、ウイルスタンパク質を折り畳むためのHIVによる宿主の分子「シャペロン」機構の使用(悪用)(ウイルス構築又はウイルス複合体の形成)は、防止されるはずであり、それによりウイルス複製周期が妨害されるはずである。更に、相互作用を防止することにより、宿主HSPに結合するためのVifと宿主との競合が禁止され、最終的に十分なプールのHSPが宿主の支配下に維持されることが確実になる。
【0106】
・寒冷ショックドメイン含有タンパク質E(CSDE1)、受入番号NM_001007553、異名:UNRタンパク質、N−ras上流遺伝子タンパク質は、約70個のアミノ酸から構成され、かつ核酸結合モチーフRNP1及びRNP2を含有する、高度に保存された寒冷ショックドメイン(CSD)を含有するRNA相互作用タンパク質である。このタンパク質は、ヒトライノウイルス及びポリオウイルスRNAの内部リボソーム侵入部位(IRES)仲介翻訳開始に関与する(ハント(Hunt)ら、遺伝子開発(Genes Dev)15(1999)、437:ボウサディア(Boussadia)ら、ウイルス学ジャーナル(J Virol.)77(2003)、3353〜3359を参照すること)。これは、mCRD結合及びPABP相互作用タンパク質であることが見出され、主要な細胞質ポリ(A)結合タンパク質であるPABPとのRNA非依存性相互作用が、チャン(Chang)ら、遺伝子開発(Genes Dev)18(2004)、2010において実証された。しかし、HIVのタンパク質との複合体は、以前に記載されたことはない。
【0107】
したがって、CSDE1(配列番号36)をVifの直接的な標的として同定することにより、前述したタンパク質に関して既に考察したものと同様の選択肢が提供され、例えば、それぞれ、ウイルスが宿主の「資源」を利用することが中断され、ウイルス生活環が妨害され、例としてはVifとCSDE1との対応する複合体形成が防止される。特に、宿主CSDE1への結合のためのVifと宿主との競合が防止され、それにより十分なプールのCSDE1が宿主の支配下に維持され、したがって、まるでHIV感染がないかのように、宿主のmRNA代謝回転が確実になる。
【0108】
本発明の更なる標的は、ヒトRNA結合モチーフタンパク質39、受入番号NM184234.1である、RBM39である。このステロイド核レセプターの転写補助因子は、プレmRNAスプライシングプロセスに関与する。この標的も、HIV薬剤の開発を可能にする。配列番号41は、Vif結合モチーフ〔アミノ酸195〜530〕を有することが部分的に同定されているタンパク質を開示する。
【0109】
本発明の標的は、KIAA1429(受入番号NM015496.3)である。このタンパク質(配列番号42)は、mRNAスプライシングに関与していると考えられている。配列番号42は、アミノ酸1360〜1753を開示する。
HIV遺伝子発現は、ウイルス転写、選択的スプライシング、核細胞質間輸送及び翻訳の間の複雑な相互作用に関与し、これは多くの場合に内在性ウイルス調節配列及びウイルスタンパク質により調節される。HIVタンパク質のTatにより増強された転写は、30個の異なるウイルスmRNAの合成をもたらす。これらのウイルス転写物は、約9kbのゲノムRNA、約4kbの単独スプライスmRNA及び2kbの多重スプライスmRNAを含む。これらは、単独完全長転写物の選択的スプライシングにより誘導され、共通の5′及び3′末端を有するmRNAを生じ、これは3′末端においてポリアデニル化されている。単独にスプライスされた及びスプライスされていないウイルスmRNAは、両方とも、ウイルスタンパク質Revの結合によりイントロン含有mRNAの輸出を促進する、RRE(Rev応答配列)を含有する。細胞質へイントロン含有mRNAが輸送されることにより、ウイルスmRNAが翻訳され、後に成熟ビリオンへパッケージングされうることが確実になる。異なるウイルス機構が、宿主mRNAスプライシングの特異的阻害を含む宿主mRNAレベルの下方制御おいて知られている。したがって、HIV−Vifと、mRNA及びプレmRNAスプライシングプロセスに関与するタンパク質との相互作用は、ヒト細胞におけるウイルス複製に介入する新規手法を提供する。
【0110】
ペプチド/タンパク質CUL4Aは、本発明の更なる標的である(ヒトカリン4A(CUL4A)、転写物変種2、受入番号NM_003589.2)。本明細書において配列番号43として開示されている。この配列は、アミノ酸498〜659を包含する。
Cul4Aは、標的タンパク質のユビキチン化、続くプロテアソーム分解を仲介する、多重カリンRINGに基づいたE3ユビキチン−タンパク質リガーゼ複合体のコア構成要素である。足場タンパク質として、このタンパク質は、基質及びユビキチン結合酵素を配置することにより触媒作用に寄与することができる。複合体のE3ユビキチン−タンパク質リガーゼ活性は、カリンサブユニットのnedd化に依存し、脱nedd化カリンサブユニットとTIP120A/CAND1との会合により阻害される。E3ユビキチン−タンパク質リガーゼ複合体の機能的特異性は、多様な基質認識構成要素によって決まる。
【0111】
DDB1−Cul4−ROC1は、DNA修復、DNA複製及び転写を調節し、病原性ウイルスにより破壊されて、ウイルス感染に利することもありうる。HIVタンパク質Vprは、DDB1及びCul4Aを含有するユビキチンリガーゼ複合体と会合して、G2の細胞周期停止を仲介することが示された。
【0112】
RAG2は、本発明の更なる標的である(ヒト組み換え活性化遺伝子2、受入番号NM000536.2)。配列番号44として開示されている。この配列は、アミノ酸182〜527を開示している。
リンパ球発生の際に、免疫グロブリン及びT細胞レセプターをコードしている遺伝子が、可変(V)、多様(D)及び連結(J)遺伝子セグメントから構築される。このV(D)Jの組み換えプロセスにより、限定された遺伝子情報供給源から途方もなく大きな範囲の結合特異性を生させることが可能になる。RAG1/RAG2複合体は、保存組み換えシグナル配列(RRS)に結合すること及びRSSシグナルと隣接するコード配列セグメントとの境界に二重鎖切断を導入することによって、このプロセスを開始させる。このプロセスは、平滑シグナル末端及び閉鎖ヘアピン構造を有するコード末端を生じる。これらのヘアピンは、構築された抗原レセプター遺伝子の形成をもたらす中間体である。RAG2における欠損は、活性化されたアレルギー性及び少クローン性T細胞の存在により特徴決定される重篤な免疫不全を引き起こす。
Vifと、T細胞発生の重要なレギュレーターであるRAG2との相互作用は、以前に記載されたことはない。したがって、本発明の方法によるRAG2の所見は、HIVの治療的介入に有用である潜在的な標的を提供する。
【0113】
CCT5は、本発明の更なる標的である。(TCP1、サブユニット5を含有するヒトシャペロン、受入番号NM012073.3)。この配列の配列番号45は、アミノ酸1〜541を開示する。
CCT5は、タンパク質の折り畳みを助ける細胞質ゾルシャペロンCCT環複合体のサブユニットである。折り畳まれていないポリペプチドが複合体の中心空洞に侵入し、ATP依存性の様式で折り畳まれる。CCT環複合体は、アクチン及びチューブリンの折り畳みにおいて役割を果たすことが知られている。HIV感染細胞におけるTCP1タンパク質レベルの減少が示されている(ヒックマン(Hickman)ら、2003)。 HIVインテグラーゼを含む異なるレトロウイルスタンパク質と、TCP1複合体のサブユニットとの相互作用は、既に記載されている。したがって、CCT5をVif相互作用タンパク質として同定することにより、タンパク質折り畳みに関与する宿主細胞機構へのウイルスの利用を阻害するために、それを標的にすること又は対応するタンパク質複合体を標的にすることが可能になる。
【0114】
VCPは、本発明の更なる標的である(ヒトバロシン含有タンパク質、受入番号NM07126.3)。異名は、移行型小胞体ATPアーゼ、TER ATPアーゼ、15S Mg(2+)−ATPアーゼp97サブユニットである。配列番号46は、アミノ酸274〜806を開示する。
タンパク質VCPは、有糸分裂の際のゴルジ層板の断片化、並びに有糸分裂後の再構築及び移行型小胞体の形成に関与する。小胞体からゴルジ体への膜の移動は、小胞体の部分的に粗く部分的に平滑な移行要素から誘導される50〜70nmの移行小胞を介して生じる。tERからの小胞出芽は、ATP依存性プロセスである。UFD1L、VCP及びNPLOC4を含有する三成分複合体は、ユビキチン化タンパク質に結合し、誤って折り畳まれたタンパク質の、ERから細胞質への輸出に必要であり、そこでプロテアソームにより分解される。これに関連して、VCPは、また、免疫系の中心的レギュレーターの核因子κB(NFκB)のインヒビターである、インヒビターκBα(IκBα)のユビキチン依存性プロテアソーム分解経路に関与すると考えられている。VCPにより形質移入された細胞株は、NFκBの定常的な活性化、リン酸化IκBα(p−IκBα)の急速な分解及び腫瘍壊死因子アルファ刺激後アポトーシス率の減少を示す。
HIVは、CD4の下方制御に効率的な機構を発生して、感染性ビリオンを産生する。CD4の小胞体関連タンパク質分解(ERAD)は、HIV−Vpuの結合により誘発される。Vpuはリン酸化されると、E3複合体SCFβTrCPの基質を模倣する。HIVに感染した細胞において、SCFβTrCPは、Vpuと相互作用し、CD4をユビキチン化し、続いてプロテアソームにより分解される。このプロセスは、また、VCP/p97に依存性であると考えられている。
VCPは、ERAD及びタンパク質の輸送プロセスにおいて重要な役割を果たすことが示された。したがって、VCPを本発明の方法によりVif相互作用タンパク質として同定することにより、新規抗HIV治療戦略にとって更なる選択肢が提供される。
【0115】
PDIA3は、本発明の更なる標的である(ヒトタンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーA、メンバー3(PDIA3)、受入番号NM_005313.4)。異名は、ジスルフィドイソメラーゼER−60、ERp60、58kDaミクロソームタンパク質、p58及びERp57である。配列番号47は、アミノ酸322〜505を開示する。
ERp57は、オキシドレダクターゼのタンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーのメンバーであり、哺乳類細胞の小胞体における天然のジスルフィド結合形成に関与する。この酵素は、糖タンパク質特異的オキシドレダクターゼであると提案されている。異なる強ジスルフィド結合糖タンパク質が、インテグリン及びラミニンを含む基質として同定されている(ジェソップ(Jessop)ら、2007)。2つのERタンパク質カルネキシン及びカルレチキュリンと会合して、ERp57は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI装填複合体に不可欠な構成要素を形成する。この複合体は、CD8+Tリンパ球に表示するため、最適なペプチドをMHCクラスI分子に装填するように機能する。
異なるウイルス免疫回避分子阻害クラスI抗原表示が、既に見出されている。単純ヘルペスウイルスのICP47タンパク質及びヒトサイトメガウイルス(HCMV)のUS6タンパク質は、ペプチド装填複合体の重要な構成要素であるTAP(抗原プロセッシングと関連するトランスポーター)のインヒビターとして同定されている。他のウイルスタンパク質、例えばHCMVタンパク質US3は、タパシンに結合して、クラスI分子によるペプチド獲得を促進するその能力を阻害する。VifとERp57の相互作用は、以前に記載されたことはない。したがって、本発明は、ERp57及びHIV−Vifとの対応するタンパク質複合体を、抗HIV治療の新規標的として提供する。免疫反応におけるタンパク質の中心的な役割のため、複合体形成を阻害する化合物を、ウイルス感染及び疾患進行の阻害のために使用することができる。
【0116】
PTPRCは、本発明の更なる標的である(ヒトタンパク質チロシンホスファターゼ、レセプター型、C(PTPRC)、転写変種3、受入番号NM_080922.2)。配列番号48は、アミノ酸743〜1256を開示する。異名は、白血球共通抗原、L−CA、T200及びCD45抗原である。チロシンホスファターゼCD45は、多重リンパ球シグナル伝達経路の主要な正の構成要素であり、抗原レセプターを介したT細胞活性化に必要である。T細胞活性化の際に、脱リン酸化物SKAP1及びFYNを動員する。HIV−1疾患の異なる病期の患者からのリンパ球のCD45関連チロシンホスファターゼ活性は、疾患進行の間に低減したことを示した。対照的に、長期非進行型(LTNP)において、チロシンホスファターゼ活性は、有意に損なわれなかった。T細胞活性化の初期段階でオンになったNFAT1転写因子の、CD45による負の調節が、観察された。したがって、チロシンホスファターゼCD45をVifの相互作用物質として同定することにより、それ及びVifとの対応するタンパク質複合体が、HIVの治療的介入に適した標的となる。特に、リンパ球シグナル伝達及びT細胞活性化における中心的な機能のため、ウイルスタンパク質との複合体形成の防止は、ウイルス感染及び疾患進行を阻害することができる。
【0117】
CAB39は、本発明の標的である(ヒトカルシウム結合タンパク質39(CAB39)、受入番号NM_016289.2)。異名は、タンパク質Mo25、CGI−66及びFLJ22682である。配列番号49は、アミノ酸80〜341を開示する。
STE20関連アダプターアルファ(STRADアルファ)偽キナーゼと一緒に、このタンパク質は、LKB1セリン/トレオニンタンパク質キナーゼの活性を刺激することができる調節複合体を形成する。LKB1は、細胞繁殖及び極性の調節に関与している。LKB1は、腫瘍サプレッサーとして機能すると考えられている。CAB39とウイルス又はレトロウイルスタンパク質との相互作用は、以前に記載されたことはない。CAB39をVifの相互作用物質として同定することにより、新規抗HIV治療の開発に更に適した標的が提供されると考えられる。
【0118】
PRM1Bは、本発明の標的である(ヒトタンパク質ホスファターゼ1B(旧2C)、受入番号NM_002706.4)。異名は、タンパク質ホスファターゼ2Cアイソフォームベータ及びPP2Cベータである。配列番号50は、アミノ酸258〜479を開示する。この遺伝子でコードされたタンパク質は、Ser/Thrタンパク質ホスファターゼのPP2Cファミリーのメンバーである。PP2Cファミリーメンバーは、細胞ストレス反応経路の負のレギュレーターであることが知られている。このホスファターゼは、サイクリン依存性キナーゼ(CKD)を脱リン酸化することが示されており、したがって、細胞周期制御に関与しているかもしれない。このホスファターゼの過剰発現は、細胞増殖停止又は細胞死を引き起こすことが報告されている。PPM1Bは、IKBキナーゼ複合体と関連していることが示され、したがって、NF−KB活性の調節に関与すると考えられている。PPM1BとHIVタンパク質との相互作用は、以前に記載されたことはない。この細胞ストレス反応のレギュレーターのVif相互作用タンパク質としての同定は、新規治療化合物の開発に使用することができる。
【0119】
RAB4Aは、本発明の標的である(ヒトRAB4A、RAS腫瘍遺伝子ファミリーのメンバー(RAB4A)、mRNA、受入番号NM_004578.2)。配列番号51は、アミノ酸115〜218を開示する。
RAB21は、本発明の更なる標的である(ヒトRAB21、RAS腫瘍遺伝子ファミリーのメンバー(RAB21)、受入番号NM_014999)。配列番号52は、アミノ酸95〜225を開示する。
Rab遺伝子は、分泌及びエンドサイトーシス経路内で輸送小胞の標的化及び融合を調節するrasスーパーファミリー内の小型GTP結合タンパク質のサブグループを、コードする。HIVを含む異なるウイルスは、エンドサイトーシス/運搬機構の多様な要素を使用して宿主細胞の中に入り、感染を成功させる。
したがって、Vifと、タンパク質輸送及び運搬に関与する宿主タンパク質との相互作用は、新規抗ウイルス治療戦略の開発に新たな可能性を提供する。
【0120】
ELF4Aが特に好ましい。次の標的も同様に極めて好ましい:CCT5、CUL4A、HSP90、HSPA1、HSPA5、HSPA8、HSPH1、RAB4A、RAB21、RAG2、PDIA3、PTEN、PTPRC、TPT1及びVCP。
【0121】
本発明は、レトロウイルス科のファミリーからのウイルス感染因子タンパク質(Vif)又は、その約12個を超えるアミノ酸のペプチドフラグメントと、ElF4A2タンパク質又はその約12個を超えるアミノ酸のペプチドフラグメントとを含む組成物に関し、ここでタンパク質又はペプチドフラグメントは、互いに結合することができる。ペプチドも12個のアミノ酸を有していることができる。好ましくは、ペプチドは、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、20個のアミノ酸、21個のアミノ酸、22個のアミノ酸、23個のアミノ酸及び24個のアミノ酸よりも長い。理想的には、ペプチドは、タンパク質自体の完全長よりも短い。何を意味するかの例としては、組成物におけるタンパク質ElF4A2は、12個以上の長さのアミノ酸であることができるが、その最長は、タンパク質の既知の完全長に対応する。
【0122】
好ましくは、このウイルス感染因子タンパク質(Vif)は、HIVからのものである。より好ましくは、ElF4A2に結合することができる、配列番号2の配列である若しくは配列番号1の配列でコードされているウイルス感染因子タンパク質(Vif)、又はそのペプチドフラグメントである。
本発明の組成物の一つの実施態様において、2つのタンパク質又はペプチドが複合体の中にある。
【0123】
本発明は、請求項4の複合体に特異的に結合する、或いは対応するHIVタンパク質及び/又はヒトタンパク質又はペプチドそれぞれの結合ドメインに特異的に結合する抗体に関する。
【0124】
本発明は、複合体形成及び/又は複合体安定性を調節することができる化合物をスクリーニングする方法であって、(a)試験化合物を(i)本明細書上記に概説された組成物及び/又は(ii)本明細書上記に概説された複合体に付す工程、(b)複合体形成及び/又は複合体安定性における変化をモニタリングする工程、(c)(i)のタンパク質の複合体形成を変える及び/又は(ii)の安定性を変える能力に基づいて、化合物が、対照と比較して複合体形成及び/又は安定性を調節できるかを決定する工程を含む方法に関する。
【0125】
本発明は、VIF及びEIF4A2の複合体形成及び/又は複合体安定性を調節することができる化合物をスクリーニングする方法であって、(a)試験化合物を、EIF4A2タンパク質又は配列番号9でコードされているタンパク質又はそれらのフラグメントを含む組成物に付す工程、(b)EIF4A2タンパク質又は配列番号9でコードされているタンパク質又はそれらのフラグメントに結合することができる化合物を同定する工程、(c)工程(b)の同定された候補化合物を、(i)本発明の組成物及び/又は(ii)上記に概説された複合体に付す工程、(b)複合体形成及び/又は複合体安定性における変化をモニタリングする工程、(c)(i)のタンパク質の複合体形成を変える及び/又は(ii)の安定性を変える能力に基づいて、化合物が、対照と比較して複合体形成及び/又は安定性を調節できるかを決定する工程を含む方法に関する。この方法におけるEIF4A2タンパク質は、完全長タンパク質であることもできる。
【0126】
本発明は、EIF4A2の配列(配列番号9)を有するタンパク質又はその小型ペプチドフラグメント若しくはその誘導体に関し、タンパク質、誘導体又はペプチドは、レトロウイルス科のファミリーのウイルス感染因子タンパク質(Vif)に結合することができる。好ましくは、前記タンパク質、誘導体又はペプチドは、HIVウイルス感染因子タンパク質(Vif)に結合することができる。
【0127】
本発明は、PTEN(配列番号4及び5)、HERC4(配列番号6及び7)、Tom1L1(配列番号8)、EIF4A2(配列番号9)、TCTP(TPT1:配列番号10、11、12及び13)、NUP50(配列番号14)、CTCF(配列番号15)、hnRPU(配列番号16)、MRCL(MRCL3:配列番号17)、SDCCAG1(配列番号18及び19)、PTGES3(配列番号20)、HSPs(HSP90:配列番号21;HSPA1:配列番号:22、23、24、25、26、27及び28;HSPA5:配列番号:29、30及び31;HSPA8:配列番号:32、33及び34;HSPH1:配列番号:35)、CSDE1(配列番号36)、KIA1429(配列番号42)、CUL4A(配列番号43)、RAG2(配列番号44)、CCT5(配列番号45)、VCP(配列番号46)、PDIA3(配列番号47)、PTPRC(配列番号48)、CAB39(配列番号49)、PPM1B(配列番号50)、RAB4A(配列番号51)、RAB21(配列番号52)からなる群より選択される配列を有するタンパク質又はこれらのいずれかのフラグメント若しくは誘導体に関し、ここでタンパク質又はペプチドは、Vifに結合することができる。
【0128】
本発明は、本発明の組成物及び/又は本発明の抗体及び/又は本発明のタンパク質を含むキット又はアッセイ系に関する。
【0129】
本発明の方法を使用して同定される上記に参照されたVif結合タンパク質は、Vifの直接的な標的として以前に記載されたことはなく、したがって、特に本発明の主題である。
【0130】
上記に既に記載されているように、Vifは、ウイルス因子を宿主因子に連結する「アダプター」として作用すると考えられ、相互作用すると、宿主の幾つかの細胞機能が、中断、再プログラム又はウイルスの目的に悪用され、Vifのこれらの異なる機能は、Vifと異なる宿主タンパク質との結合によって実施される。したがって、Vifは、相互作用するタンパク質に応じて、幾つかの異なる効果を発揮する。上記に記載されているように、そして理論に束縛されることを意図するものではないが、Vifは、PTEN又はTCTPに結合したときは、アポトーシスに影響を与え、TOM1L1と結合したときは、タンパク質ソーティング及び分解を修飾し、Nup50と複合体を形成する場合は、宿主の核細胞質間輸送機構に影響を及ぼし、また、MRLCに結合したときは、細胞骨格の組織に影響を及ぼす。更に、Vifは、例えばEIF4A2又はCTCFに結合する場合、宿主と競合して、それにより宿主から開始因子又は転写因子を取り除くと想定される。加えて、Vifは、PTGESと複合体を形成する場合、宿主の免疫調節に影響を与えると考えられ、HSPに結合する場合、宿主の「タンパク質折り畳み」機構を悪用し、また、例えばHERC E3に結合して、APOBEC3Gを脱活性化することが更に想定される。
【0131】
しかし、既に個別のタンパク質についてそれぞれ考察されているように、これらのVifの効果は、本発明の方法により同定される、今まで記載されたことがなく知られていなかった新たな種類のVif結合タンパク質の知識に基づいた新規戦略を開発することによって防止されると考えられる。上記に既に記述されているように、新規抗HIV戦略の一つの例は、同定されたタンパク質若しくはその模倣体を供給すること、又は対応する同定されたタンパク質の発現に影響を及ぼすことができる若しくは同定された宿主タンパク質とVifとの対応する複合体に影響を与える(それを防止する又は破壊する)ことができる化合物を投与することを含む。しかし、Vifと同定された(ヒト)宿主タンパク質又は個別のタンパク質との相互作用を調節する幾つかの様式が存在しうる。したがって、Vifの新たに同定されたこれらの結合パートナーは、治療的介入及び薬理学的調節それぞれにとっての新規標的を表す。
【0132】
更に、本発明の方法によりVifの標的として同定されたタンパク質に加えて、Vifと宿主タンパク質の複合体を、HIV/AIDSの分野において分析、治療又は診断用途に使用することもできる。特に、Vifと、本発明の方法により同定された宿主タンパク質との複合体、好ましくはVifと上記参照タンパク質との複合体も、新規抗HIV/抗AIDS戦略の対応する分析又は開発のために適した標的を提供する。しかし、本発明による複合体は、完全長タンパク質のみならず、標的及び宿主タンパク質のフラグメント、また、その相同体又は誘導体も含む。このような状況において、本発明による複合体は、対応する複合体相互作用を形成することができる限り、標的及び/又は宿主タンパク質の任意のフラグメント又は最少部分を含むことができることが理解される。本発明のタンパク質−タンパク質複合体を、例えば、HIV疾患の発生を診断するために使用することができ、その実施においては、それをタンパク質マイクロチップ又はマイクロアレイに組み込むことができる。
【0133】
したがって、更なる態様において、本発明は、HIVタンパク質、好ましくはVifのようなアクセサリーHIVタンパク質及び前述したように同定される又は本発明の方法により得られる核酸分子によりコードされたタンパク質を含む複合体を提供する。
【0134】
本発明は、また、本明細書に開示されている組成物又は複合体の産生のための、本明細書において同定される新規標的をコードする核酸の使用に関する。
【0135】
更に、概して本発明により同定されるタンパク質に対応するが、Vifと複合体を形成することがもはやできないタンパク質が望ましい場合がある。これらのタンパク質は、例えば置換、欠失又は付加により、例えば同定されたタンパク質のアミノ酸配列を調節することによって達成することができ、これらの調節、また影響を与える方法も、当業者に知られている。特に、これらのタンパク質は、結合領域及びVifへの結合に必須のアミノ酸それぞれを決定するような分析目的に有用であると考慮されうる。しかし、例えば、一方では「通常の健康な機能」を発揮することができるが、他方ではVifに結合することができず、それによりウイルスが細胞を利用するのを拒み、通常の細胞機能を維持する、対応するタンパク質を設計及び使用することが考えられる幾つかの目的が存在する。したがって、別の実施態様において、本発明は、本発明により同定される核酸分子によりコードされるタンパク質から、アミノ酸置換、欠失及び/又は付加によって誘導され、上記において特徴付けられた複合体を形成することがもはやできないタンパク質に関する。
【0136】
なお更に提供されるものは、上記において特徴付けられた複合体に、又は対応するHIVタンパク質及びヒトタンパク質それぞれの結合ドメインに、又は本発明の核酸分子によりコードされたタンパク質から誘導されるが、アミノ酸配列変更によりもはや対応する複合体を形成することができない上記に参照されたタンパク質に、特異的に結合する抗体である。
【0137】
本発明に有用である適切な抗体は、好ましくはモノクローナル抗体であり、また合成抗体、並びにFab、Fv又はscFvフラグメントなどのような抗体のフラグメントである。抗体又はそのフラグメントは、例えば、ハーロー(Harlow)及びレーン(Land)「抗体、実験室マニュアル」("Antibodies, A Laboratory Manual")、CHSプレス、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)1988年又は欧州特許出願EP−A0451216及びそれに引用されている参考文献に記載されている方法を使用して得ることができる。キメラ抗体の産生は、例えば国際出願WO89/09622に記載されており、特にヒト化抗体の産生方法は、例えばEP−A10239400及びWO90/07861に記載されている。本発明により利用される抗体の更なる供給源は、いわゆる異種抗体である。マウスにおけるヒト抗体のような異種抗体を産生する一般的な原理は、例えば国際出願WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096及びWO96/33735に記載されている。
【0138】
本発明の一つの大きな要旨は、VifのようなHIV関連タンパク質と相互作用することができる、宿主タンパク質、好ましくはヒトタンパク質を同定することである。しかし、いったん宿主タンパク質が、本発明の方法によりVifに結合することが同定されると、このことは、ウイルス生活環と結びつく新たな接触点を更に提供する。HIVウイルスは、その生活環及び増殖それぞれを維持するために、宿主の細胞機構に強く依存し、更にVifは、とりわけ、宿主の細胞「資源」へのウイルスの利用をもたらすための「機能」を有する「アダプター」であると考えられるので、このウイルスと宿主の相互作用を邪魔することは、ウイルス複製、感染進行及びAID発症それぞれを停止させる有望な治療ツールであると考えられる。したがって、本発明の方法により同定され、今までVifと結合することが知られていなかった新規Vif結合タンパク質の知識は、Vif、Vif結合タンパク質又はそれらの相互作用に影響を与えることができる適切な化合物をスクリーニングすることを可能にする。
【0139】
したがって、本発明の方法によるVif相互作用タンパク質の同定の他に、宿主タンパク質とVifの相互作用に影響を与える、好ましくは前記相互作用を阻害又は妨害できる化合物を、それぞれ同定及びスクリーニングすることが、本発明の別の要旨であった。対応する化合物を発見する一つの方法は、相互作用が生じ、Vifそれ自体又は相互作用タンパク質が影響を受ける、例えば阻害される細胞を、化合物に、すなわち試験化合物に、上記に例示された効果を発揮する能力に関して暴露することを含むことができる。特に、試験化合物を、アッセイが実施される細胞に、HIV標的タンパク質又はそのフラグメントと、宿主タンパク質のような推定される相互作用パートナーとの複合体形成の前、その間又はその後に付すことができる。化合物との接触による複合体形成及び/又は安定性における変化をモニタリングすることができ、試験化合物は、宿主タンパク質へのVifの結合を調節する能力によって選択され、好ましくは上記に記載された本発明の方法により同定されるタンパク質である。
【0140】
化合物の作用様式は異なることができ、すなわちVifそれ自体又は好ましくは本発明の方法により同定される宿主タンパク質と相互作用することができ、前記相互作用は、通常、対応する相互作用パートナーとの結合に関与するタンパク質結合部位で生じ、前記部位を阻止することができる。しかし、相互作用は、潜在的な相互作用分子との結合に通常は直接関与しない部位においても生じることができ、それにより例えばタンパク質の立体配座を変え、結合部位の消滅又は変更をもたらし、結果的に前述の相互作用を防止する。したがって、試験化合物は、競合的又はアロステリックインヒビターとして作用することができる。更に、本発明によると、「調節する」又は「影響を与える」は、相互作用の形成中に影響を与えることを意味するのみならず、既に形成された複合体にも作用する、すなわちそれらを破壊することも意味する。しかし、上記に既に記述されているように、前記宿主タンパク質/Vif相互作用が成功している場合では、ウイルスは、宿主の細胞機構への利用が邪魔されており、ウイルス感染及び拡散はそれぞれ防止されているか又は少なくとも高度に制限されているはずである。
【0141】
したがって、更なる実施態様において、本発明は、複合体形成及び/又は複合体安定性を調節することができる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)試験化合物を、
(i)HIV標的タンパク質及び上記で定義及び特徴決定されたヒトタンパク質、又は
(ii)本発明の複合体
に付す工程、
(b)複合体形成及び/又は複合体安定性における変化をモニタリングする工程、並びに
(c)(i)のタンパク質の複合体形成を変える及び/又は(ii)の安定性を変える能力に基づいて、化合物が、対照と比較して複合体形成及び/又は安定性を調節できるかを決定する工程
を含む方法に関する。
【0142】
本方法は所望の効果及び特徴をそれぞれ有する新規化合物のスクリーニングに有用であるが、この方法は、実際の効能及び効果それぞれについて抗ウイルス特性を有すると思われる又は考えられる化合物又は薬剤のアッセイにも有用である。特に、本発明のタンパク質複合体を使用する本方法は、例えば国際出願WO06/111866に記載されているVif関連治療用ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド又は抗体の機能研究及び品質管理に使用することもできる。したがって、特定の実施態様において、本発明は、既知の抗ウイルス薬の効能分析について上記に参照された方法に関する。
【0143】
潜在的な調節化合物の不在下及び存在下で複合体形成、安定性及び複合体の結合定数それぞれを検出する当該技術において既知の幾つかの方法が存在し、等温熱量測定法、表面プラスモン共鳴分光法、蛍光技術及びNMR分光法のような方法が、対応する調査のためによく使用され、本発明において使用することもできるが、上記の方法の一つの欠点は、大規模な実験設定及び高価な装置の必要性である。したがって、本発明の好ましい実施態様において、複合体形成及び/又は安定性は、GSTプルダウン実験、続くSDSゲル分析により試験され、それは実施例3において詳細に記載されている。SDS−PAGEの実施は、当業者に既知であり、最新号の分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(サムブルック(Sambrook)ら、(1989)分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press))のような関連教科書に十分に記載されている。既知の医薬化合物及び薬剤を実際の抗ウイルス効果について試験するには、一般に、標準的教科書「薬学的研究におけるインビトロ法」("In vitro Methods in Pharmaceutical Research")、アカデミックプレス(Academic Press)1997が参照される。
【0144】
本発明の方法によると、化合物又は化合物群は、化合物が添加されない対照と比較して、前記化合物又は化合物群の存在下でそれぞれ妨害及び減少されたとき、複合体の形成を調節できるかが評価される。当然のことながら、複合体安定性及び結合定数それぞれを試験するときにも同じことが当てはまり、化合物は、化合物が添加されない対照と比較して、前記化合物の存在下で安定性が弱められた(減少した)とき、複合体安定性を調節できるかが評価される。一般に、本発明によると、試験化合物を用いない方法による実施と比較した複合体形成又は複合体安定性の減少は、推定される有力な治療剤(薬)を示している。そのように同定された薬剤を任意の標準的アッセイに付して、HIV生活環、すなわち、例えばウイルス複製及び増殖それぞれに対する効果を更に試験することができる。次に、好ましくはHIV感染により仲介される障害から救出する及び/又は障害に対して抵抗性を付与する薬剤を選択する。
【0145】
上記から、本発明は、Vif及びHIVタンパク質との対応する複合体に結合する多数の新たに同定された宿主タンパク質を提供し、すなわちHIV生活環に介入することが予測され、したがってウイルス疾患、好ましくはAIDSのようなレンチウイルス疾患を改善する潜在的な療法として大変有望な化合物をスクリーニングするために実現性のある標的を提供する。本発明の化合物は、所望の効果を示す、すなわち、Vif、宿主タンパク質又はこれらの対応する相互作用に影響を与えることによりVifと宿主タンパク質との相互作用に介入することができる任意の物質を含むことができる。そのような化合物には、天然に生じるか又は合成的に調製される、ペプチド、ポリペプチド、PNA、ペプチド模倣体、抗体、核酸分子、アプタマー又は小型有機化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
いったん潜在的な化合物が同定されると、追加的に化学類似体を、メルク(Merck)、グラクソウエルカム(GlaxoWelcome)、ブリストールマイヤズースクイブ(Bristol Meyers Squib)、モンサント/サール(Monsanto/Searle)、エリリリー(Eli Lilly)、ノバルティス(Novartis)及びファーマシアアップジョン(Pharmacia UpJohn)を含むほとんどの大きな化学薬品会社から市販されている化学薬品のライブラリーから選択することができるか、あるいは新規に合成することができる。これらの潜在的な化合物の合成は、当業者には知られている。
【0147】
Vifと(ヒト)宿主タンパク質のような相互作用分子との相互作用に影響を与えることができる、上記に記述された方法により同定される化合物は限定されないが、本発明の好ましい実施態様において、化合物は、抗体、タンパク質、ペプチド及びアプタマーからなる群より選択され、好ましくはペプチドである。本発明の更に好ましい実施態様において、ペプチドは、HIV標的タンパク質から又はヒトタンパク質から誘導され、好ましくは約10〜20個のアミノ酸から構成される。
【0148】
適切なペプチドは、2006年8月31日に出願された係属欧州特許出願EP06018277.1「ペプチド−ペプチド相互作用を検出する手段及び方法」("Means and methods for detecting protein-peptide interactions")(代理人案件番号CA18A04/P−EP)、続く2007年8月31日に出願された国際出願において出願人により開示されているように、特に、タンパク質−タンパク質相互作用をインビボで検出し、対応する相互作用パートナーを単離する方法により得ることもできる。しかし、当然のことながら、例えば本発明の方法により同定されるタンパク質から誘導される合成ペプチドも考慮され、固相、液相若しくはペプチド縮合技術、又はこれらのいずれかの組み合わせの周知の技術を使用して調製することができる。これらには、天然及び非天然アミノ酸が含まれうる。有用なペプチドは、Dアミノ酸、D−及びLアミノ酸の組み合わせ、並びに特殊な特性を伝える多様な「デザイナー」アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸及びNa−メチルアミノ酸など)を含むことができる。本発明の方法により同定されるものから誘導されるが改質アミノ酸配列を含んでいるタンパク質に関して既に記述されているように、結合領域又は最少必量アミノ酸配列を同定するために、ペプチドを使用して、対応する複合体を形成することもできる。本発明によると、好ましくは、Vifに結合することが決定され、実施例4に詳細に記載されているタンパク質の相互作用ドメインの同定に使用されるペプチドは、例えば、国際出願WO05/111061に記載されているようにして調製した。
【0149】
加えて、新たに同定された化合物の他に、本発明は、本発明の方法により同定されるが、今までウイルス疾患、特にAIDSのようなレンチウイルス疾患の治療に有用であると考えられたことのなかったVif相互作用タンパク質のいずれかに結合することが知られている化合物又は作用物質の確認も考慮する。そのような化合物は、Vif相互作用タンパク質のいずれかに関する文献、例えば欧州特許庁主催の“espacenet”又は公開文献のデータベース、例えば“Medline”のような特許データベースから容易に検索することができる。加えて、当業者は、例えば受入番号又はIUPAC命名法又はタンパク質の名称を入力して、ヌクレオチド及びタンパク質配列それぞれについて“Genbank”、“EMBL”又は“UniprotKB/Swiss-Prot”のようないわゆる「一次データベース」をスクリーニングすることにより、本発明に使用される化合物を同定することができる。記述されたデータベースにおけるヌクレオチド及びアミノ酸配列は、通常、対応する引用により注釈が付けられており、それは対応する遺伝子の調節に関して更なる情報を提供し、したがって、本発明に使用される調節作用物質についての指針を提供する。加えて、いわゆる「二次データベース」、例えば“PROSITE”、“PRINTS”、“Pfam”、“INTER Pro”、“SCOP”又は“CATH”を使用することができ、これらはタンパク質ファミリー及びドメインのデータベースであり、配列分類のフィンガープリント又はタンパク質構造を提供する。探索の開始を可能にする最も適切なウエブインターフェースは、NCBIの“Entrez”及び配列検索システム“SRS”によりそれぞれ提供されている。多くの場合、“Google”によるキーワード探索は、適切な情報供給源を確認するのに既に成功するだろう。
【0150】
本発明のスクリーニング方法において、相互作用に影響を与えることができる、標的タンパク質、宿主タンパク質又は化合物を、固体表面に固着することができる。本発明の方法を実施する一つの方法は、例えば、標的タンパク質(Vif)を固体支持体に付着し、次にそれを洗浄して、付着していない過剰標的タンパク質を除去することでありうる。続いて、支持体を、例えば相互作用を試験する標識候補タンパク質又は試験化合物と接触させ、したがって、Vifをそれらに暴露する。その後、固体支持体を再び洗浄して、標的タンパク質に結合していないタンパク質又は化合物を除去し、固体支持体に残留している、したがってVifに結合していると確認される量を決定することができる。あるいは又は加えて、例えば標識化合物とVifの解離定数を決定することができる。Vif、候補タンパク質又は化合物に適した標識は、当該技術において周知であり、酵素、蛍光体(幾つかの蛍光体を挙げると、例えば、フルオレセインイソチオチシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド(RT)、ローダミン、遊離又はキレートランタニドシリーズの塩、特にEu3+である)、発色団、35Sのような放射性同位体、キレート剤、染料、金コロイド、ラテックス粒子、リガンド(例えば、ビオチン)及び化学発光剤が含まれる。
【0151】
したがって、本発明の方法の更に好ましい実施態様において、スクリーニングされるHIV標的タンパク質、ヒトタンパク質又は化合物は、固体支持体に配列され、ここで、好ましくは、固体支持体は、マイクロチップ又はマイクロアレイのようなアレイ又はチップである。このような状況において、本発明は、当然のことながら、本発明の方法に使用されるチップ又はアレイにも関する。
【0152】
例えばタンパク質を固体支持体に付着する方法は、当該技術において周知であり、例えばタグを標的タンパク質に結合することが含まれる。本発明及び実施例3に詳細に記載されている方法によると、タグは、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)であり、標的タンパク質は、Vifであり、好ましくは、Vifは対応するVif−GST融合タンパク質として発現している。更に、グルタチオン(GSH)アガロースビーズのような対応する固体支持体及びマトリックスが、それぞれ提供される。GSTタグVifを固体支持体に接触させ、続いて洗浄して非反応種を除去すると、Vifは、グルタチオン−GST相互作用を介して支持体に結合する。ビオチンをVifに結合すること及びアビジンを固体支持体に結合することのような、タンパク質を固体支持体に付着させる幾つかの更なる方法が存在する。タンパク質を固体支持体に付着させる対応する適切な方法の選択が、実施される個別のアッセイの特徴及び実験設定それぞれによって左右されうることは、当業者の一般知識の範囲内である。
【0153】
しかし、複合体形成及び/又は複合体安定性を調節することができる化合物をスクリーニングする本発明の方法の特に好ましい実施態様において、HIV標的タンパク質は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼを含む融合タンパク質であり、好ましくは、ヒトタンパク質はS35−メチオニンで標識されている。
【0154】
本発明のさらにより好ましい実施態様において、複合体形成は、細胞に基づいた2又は3ハイブリッド系のタンパク質−タンパク質相互作用によってもたらされる。
【0155】
上記のアッセイは固体支持体に付着する標的タンパク質(Vif)について例示的に記載されているが、当業者は、このアッセイは当然のことながら逆に実施できる、すなわち、例えば候補タンパク質を固体支持体に付着することにより実施できることを理解している。
【0156】
スクリーニング方法を実施するときは、多くの場合、多様な化合物を1回の実験でスクリーニングすることが意図される。したがって、本発明の方法は、一般に、従来の実験室で使用されるフォーマットに設計することができるか又はハイスループットスクリーニングに適合させることができる。このような状況において、用語「ハイスループットスクリーニング」(HTS)は、複数試料の容易な同時分析及びロボット操作能力を可能にするアッセイ設計を意味する。ハイスループットアッセイの別の望ましい特徴は、試薬の使用を低減するように又は所望の分析を達成するための操作数を最小限にするように最適化されたアッセイ設計である。
【0157】
当然のことながら、更なる実施態様において、本発明は、本発明の方法により同定できた又は得られえた化合物に関し、好ましくは、前記化合物は、今まで当該技術においてウイルス疾患、特にAIDSのようなレンチウイルス疾患の治療のための薬剤として開示されたことがない。
【0158】
更に、本発明は、本発明の抗体又は化合物と、場合により薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、当該技術において周知の方法に従って配合することができる(例えば、フィラデルフィアのユニバーシティ・オブ・サイエンス(the University of Sciences in Philadelphia)によるレミントン:化学及び薬学の実施(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)(2000)、ISBN0−683−306472を参照すること)。適切な薬学的に許容される担体は、対応する文献から取ることができ、例えば、リン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルションのようなエマルション、多様な種類の湿潤剤、滅菌溶液などが含まれる。医薬組成物は、適切な用量で被験者に投与することができ、適切な組成物は、異なる方法、すなわち適切な投与経路で実施することができ、それらのうちの幾つかは、対応する文献に記載されており、例えば、経口、鼻腔内、直腸内、局所、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮下、経皮、鞘内及び頭蓋内投与が含まれる。鼻腔スプレー製剤のようなエアゾール製剤は、例えば、活性剤の精製された水性又は他の液剤を防腐剤及び等張剤と共に含む。そのような製剤は、好ましくは鼻粘膜と適合するpH及び等張状態に調整される。直腸内又は膣内投与用の製剤は、適切な担体を有する坐剤として存在することができる。多様な種類の投与に適した製剤に関する更なる指針を、ペンシルベニア州フィラデルフィアのメイス・パブリッシング・カンパニー(Mace Publishing Company, Philadelphia, PA)のレミントン医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)第17版及び対応する最新版において見出すことができる。薬剤送達の方法のついての簡潔な検討は、ランガー(Langer)、サイエンス(Science)249(1990)、1527〜1533を参照すること。
【0159】
投与レジメンは、担当医師及び臨床要因によって決定される。医療技術において周知であるように、任意の患者への投与は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時期及び経路、身体全体の健康状態及び同時に投与される他の薬剤を含む、多くの要因によって決まる。非経口投与用の調合剤には、滅菌水性又は非水性液剤、懸濁剤及び乳剤が含まれうる。非水性溶媒の例は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油及びエチレンオレエートのような注射用有機エステルを含む。水性担体には、食塩及び緩衝媒質を含む、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液又は固定油が含まれる。静脈ビヒクルには、流体及び栄養補液、電解質補液(例えば、リンゲルデキストロースに基づいたもの)などが含まれる。例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤及び不活性ガスのような、防腐剤及び他の添加剤も存在していてよい。更に、医薬組成物を、例えば本発明の医薬組成物が受動免疫化のために抗HIV抗体を含む場合は、ワクチンとして配合することもできる。
【0160】
加えて、他の作用物質の同時投与又は連続投与が望ましい場合がある。治療有効用量又は量は、症状又は状態を改善するのに十分な活性成分の量を意味する。そのような化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的薬学手順により、例えばED50(個体群の50%に治療上有効な用量)及びLD50(個体群の50%が致死の用量)を決定することができる。治療と毒性の効果の用量比は、治療指数であり、これはLD50/ED50比として表わすことができる。上記に既に記述されているように、作用物質の投与量は、治療、投与経路、療法の性質、療法に対する患者の感受性などによって左右される。LDSO動物データ及び他の情報を利用して、臨床医は、個人にとっての最大安全用量を決定することができる。組成物は、被験者に1回を超える一連の投与により投与することができる。治療組成物では、時には定期的な投与が必要であり、望ましい場合がある。治療レジメンは、作用物質によって変わり、例えば、小型有機化合物を、1日に1回又は1日に2回で長期間摂取することができ、一方、ペプチド模倣体又は抗体のようなより選択的な作用物質を、より確定された期間、例えば1日に1回、1日に2回、週に2回、週に1回などで摂取して、1、2、3又はそれ以上の日数、1週間又はそれ以上、1か月又はそれ以上などで投与することができる。
【0161】
Vifと複合体を形成するタンパク質、並びに前記複合体形成及び/又は安定性に影響を与える化合物の検出及び同定に加えて、一つの大きな関心事は、複合体、特に本発明の複合体、すなわちウイルス要因と宿主要因で形成された複合体の「性質」に関連する。特に、治療的手法を考える場合、複合体それ自体を、薬剤標的として考慮することができるので、対応する複合体の性質についての知識が、治療剤及び療法それぞれの開発において必要となる。複合体の典型的な特性は、安定性、種類、大きさ(多量体又は単量体の複合体)、形状及び三次元構造のような物理的又は構造的特性を含むが、また、結合領域のアミノ酸組成又は結合領域における相互作用の種類、並びに、例えば個別の複合体パートナーが配置されない更なる結合部位を生じる複合体形成の影響のような生物学的特性も含む。これらの代替的結合部位の発生は、例えば、複合体形成の際の少なくとも1つの複合体パートナーの立体配座の変化に起因するか、又は複合体パートナーにより若しくは立体配座の再構成により前記部位が占領され、それにより前の結合部位の消滅をもたらすので、前の結合部位の欠如に起因することがありうる。更に、塩濃度、pH値などのような当該技術に既知の多様なパラメーターによって決まる複合体の寿命に関する知識が、重要でありうる。加えて、化学的、磁気的又は静電気的特性も関心事であり、例えば水素結合、また複合体の表面電荷のような複合体をまとめて保持する相互作用の種類でありうる。
【0162】
既に記述されたように、上記に例示的に列挙された特性の知識は、例えば、複合体の挙動又は潜在的な結合領域(特に、複合体の形成及び/又は安定性を調節することができる作用物質、並びに薬剤標的化における)を予測するのに重要である。したがって、複合体特性の知識は、破壊又は形成の防止のような多様な目的において対応する複合体にどのように影響を与えるかを考えるときに、必要な情報を提供する。当業者は理解するように、対応する複合体を調製、検出及び分析する幾つかの方法が存在する。これらの方法は、インビトロ及びインビボのシステムを使用するタンパク質複合体の形成手順を含むことができ、これを本発明に適合することができる。例えば、方法は、第1タンパク質Vif及び宿主細胞タンパク質の群から選択された第2タンパク質の合成及び単離、周知のインビトロ方法を使用したタンパク質複合体の形成を含むことができる。あるいは、タンパク質複合体は、組織若しくは細胞から単離若しくは精製することができるか、又はタンパク質メンバーの組み換え発現により産生することができる。どの方法を使用するかは、複合体の種類、調査の目的、また個別の実験パラメーターによって決まる。
【0163】
しかし、一つの特定に実施態様において、本発明は、本発明の及び上記で定義された複合体を調製する、検出する及び分析する方法であって、
(a)HIVタンパク質を合成及び/又は単離する工程;
(b)ヒトタンパク質を合成及び/又は単離する工程;
(c)(a)と(b)のタンパク質を接触させる工程;
(d)複合体形成をモニタリングする工程;及び場合により
(e)既知のインビトロ方法により複合体特性(安定性又は動態)を決定する工程
を含む方法を提供する。
【0164】
なお別の実施態様において、本発明は、本発明の核酸、ベクター、組み換え宿主細胞、タンパク質、複合体、抗体、化合物及び/又はチップ若しくはアレイを含む診断用組成物に関する。
【0165】
上記に既に記載されているように、いったん化合物が、複合体形成及び/又は安定性に介入することが本発明により同定されると、有望な治療ツールであると考えられ、したがってこれを治療剤、薬剤及び医薬それぞれを開発するために使用することができる。前記薬剤は、好ましくは、複合体形成を防止すること又は既に形成された複合体を崩壊すること又は少なくとも複合体安定性を減少することができ、したがって、宿主の細胞機構へのウイルスの利用及びウイルスの効果を阻害することができる。しかし、ウイルス利用が拒否される場合、結果的にウイルス複製、増殖、拡散及びAIDSのようなウイルス疾患の発症がそれぞれ防止されるか又は少なくとも高度に減少されると想定される。更に、宿主の細胞機構は、宿主のためだけに「働く」ことが維持され、ウイルスにより悪用されない。
【0166】
したがって、本発明は、更に、レンチウイルス疾患、好ましくはAIDSの治療のための医薬の調製における、本発明の複合体形成及び/又は安定性に介入できる前述の化合物の使用に関する。
【0167】
更なる実施態様において、本発明は、また、本発明の方法に使用されるキット又はアッセイ系に関し、前記キット又はアッセイ系は、上記に記載された本発明の構成要素及び/又は試薬、自動ツール、貯蔵装置、液体操作ロボット、モニタリング配置などを含む。特に、本発明は、上記に記載された方法のいずれかで使用するためのキット、すなわち、本発明の核酸分子、タンパク質、化合物、複合体及び複合体形成それぞれ若しくは組成物を、同定する、クローニングする、調製する、スクリーニングする、モニタリングする、決定する、試験する、分析する並びに/又は使用するキットに関する。したがって、そのようなキットは、好ましくは、標的タンパク質(Vif)、1つ以上の候補(宿主)タンパク質若しくはそのフラグメント、又は対応するタンパク質(Vif、候補タンパク質若しくはフラグメント)をコードする組み換え核酸分子のような必須構成要素を、より好ましくは、対応する第1及び第2発現性核酸分子の形態で含む。さらにより好ましくは、発現性核酸分子は、相互作用アッセイが実施される特定の細胞に適した発現ベクターに存在する。適切な発現ベクターは、例えば、本方法が実施される細胞に応じて、酵母発現ベクター又は哺乳類細胞発現ベクターであることができる。
【0168】
望ましい場合、キットは、更に、例えば特定の宿主細胞の種類にとって最適な核酸形質移入効率をもたらす試薬を含有する。加えて、適切な宿主細胞をキットに含めることができるが、そのような細胞は、一般に入手可能であるか、又は本方法の特定の実施態様から選択することができる。好ましくは、本発明のキットは、例えば、選択性マーカー、培地構成要素、基準試料、マイクロアレイ、培養容器、ベクター、タンパク質、ペプチド、場合により、複合体形成を、すなわち(場合によりタグを付けた)Vifと(場合によりタグを付けた)宿主タンパク質のような相互作用分子との複合体形成の減少又は増加をモニタリングすることができる、適切な検出手段、分光装置及び/又はモニタリングシステムを含む、本発明の上記記載の方法のいずれかを実施するのに有用な本明細書前記に記載されたような試薬を含有する。更に、対照と比較して増加又は減少した結合能は、例えば、当業者に既知の蛍光標識、リン光標識、放射性標識を含む標識により検出することができる。場合により、キットは、本発明のいずれかの方法をどのように実施するかについての使用説明書、好ましくは、Vifの相互作用分子をコードする核酸分子の同定及び/若しくはクローニングに関する、又は前記相互作用に影響を及ぼす(それを阻害する又は増強する)潜在的な薬剤、作用物質、組成物若しくは化合物の確認若しくは評価に関する方法におけるキットの使用についての使用説明書を含む。これらの使用説明書はキットの構成要素の使用を詳述するために提供することができ、例えば書面の使用説明書、ビデオ表示又はコンピューターで開くことができる、例としてはディスケット若しくはCD−ROMディスクのフォーマットの使用説明書である。
【0169】
更に、そのようなキットは、典型的には少なくとも1つの容器を密閉して保持するのに適した区画化担体を含み、キットの化合物は適切であれば滅菌でありうる。キットは、更に、任意の流動性構成要素を移動するためピペットのような移動手段を含むことができる。本発明のキットは、好ましくは商業的な製造及び規模に適しており、また更に、適切な基準、陽性及び陰性対照を含むことができる。
【0170】
本発明の方法及び構成要素、それにより得られるタンパク質、並びに本明細書に実質的に記載されている又は記載及び実施例に例示されている使用も、本発明及び特許請求されている主題であることが理解される。この観点から、また、実施例のいずれかにおいて記載されている実施態様を、独立して使用できること及び本明細書前記に記載され、添付の請求項において特許請求される実施態様のいずれかと組み合わせることができることも理解される。したがって、これら及び他の実施態様は、本発明の記載及び実施例に開示及び包含されている。本発明に用いられる物質、方法、使用及び化合物のいずれかに関する更なる文献は、例えば電子装置を使用して公共の図書館及びデータベースから検索することができる。例えば、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)及び/又は国立衛生研究所(National Institutes of Health)の国立医学図書館(National Library of Medicine)が主催する公共データベース“Medline”を利用することができる。更なるデータベース及びウェブアドレス、例えば欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である欧州バイオフィンフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EBI)のものが当業者には知られており、検索エンジンを使用して得ることもできる。バイオテクノロジーについての特許情報の概説、並びに遡及検索及び最新知識に有用な特許情報の関連供給源の調査は、ベルクス(Berks)、TIBTECH 12(1994)、352〜364に提示されている。
【0171】
上記の開示は、本発明を一般的に記載する。幾つかの文書は、本明細書の文章の全体にわたって引用されている。完全な書誌引用は、請求項の直前の明細書の最後の部分において見出すことができる。引用された全ての参考文献(本出願の全体にわたって引用された参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び製造会社の仕様書、使用説明書など)の内容は、参照として本明細書に明確に組み込まれるが、引用されたいずれかの文書を本発明の従来技術として認めるということは全くない。
【0172】
本発明は、また、本明細書に開示されている標的タンパク質又はペプチドのいずれかとVifとの複合体が検出されるHIV検出のための診断アッセイに関する。そのようなアッセイにおいては、血液又は他の任意の組織が使用されてもよい。したがって、本発明は、また、本明細書の標的タンパク質のいずかが使用される、HIV検出のための診断アッセイに関する。
【0173】
上記の開示は、本発明を一般的に記載する。より完全な理解は、以下の特定の実施例を参照して得ることができ、これは例示のみの目的で本明細書において提示され、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0174】
本明細書に特許請求されているペプチドは、以下のように生成することができる。EIF4A2タンパク質をコードする核配列を、小型フラグメントが生成されるように、酵素的に消化する又は機械的に剪断する。フラグメントは所望の長さを有する。フラグメントを、コードペプチドの発現のために、ベクターにクローンする。多様なペプチドをVifへの結合について試験する。結合領域を決定することができる。また、所定の長さのペプチドを化学的に合成することができ、Vifへの結合を試験することができる。
【0175】
実施例
以下の実施例は、本発明を更に例示するが、本発明の範囲をいかようにも制限するものとして考慮されるべきではない。本明細書に用いられる従来の方法の詳細な記載は、引用文献において見出すことができる(「診断及び治療のメルクマニュアル」("The Merck Manual of Diagnosis and Therapy")第17版、ベールズ(Beers)及びベルコウ(Berkow)編(メルク社(Merck & Co., Inc.)2003)も参照すること)。
【0176】
本発明の実施は、特に指示のない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換生物学、微生物学、組み換えDNA及び免疫学の従来の技術を用い、それらは当業者の技能の範囲内である。
分子遺伝子技術及び遺伝子技術の方法は、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、(サムブルック(Sambrook)ら、(1989)分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press);DNAクローニング(DNA Cloning)、第I及びII巻(グローバー(Glover)編、1985);オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)(ガイト(Gait)編、1984);核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)(ハメス(Hames)及びヒギンズ(Higgins)編、1984);転写及び翻訳(Transcription And Translation)(ハメス 及びヒギンズ編、1984);動物細胞の培養(Culture Of Animal Cells)(フレッシュニー(Freshney)及びアラン(Alan)、リス社(Liss, Inc.)、1987);哺乳類細胞の遺伝子導入ベクター(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells)(ミラー(Miller)及びカロス(Calos)編);分子生物学の現行プロトコール及び分子生物学のショートプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology)第3版(アウスベル(Ausubel)ら編);組み換えDNA方法論(Recombinant DNA Methodology)(ウー(Wu)編、アカデミックプレス(Academic Press));哺乳類細胞の遺伝子導入ベクター(ミラー及びカロス編、1987、コールドスプリングハーバーラボラトリー);酵素学における方法(Methods In Enzymology)、第154及び155巻(ウー(Wu)ら編);固定細胞及び酵素(Immobilized Cells And Enzymes)(IRLプレス(IRL Press)、1986);ペルバル、分子クローニングの実践的指針(Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning)(1984);論文、酵素学における方法(the treatise, Methods In Enzymology)(アカデミックプレス社(Academic Press, Inc.)、N.Y.);細胞における免疫科学法及び分子生物学(Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology)(メイヤー(Mayer)及びウオーカー(Walker)編、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン、1987);実験免疫学のハンドブック(Handbook Of Experimental Immunology)、第I〜IV巻(ウイアー(Weir)及びブラックウエル(Blackwell)編、1986)の最新号において一般的に記載されている。本開示において参照される試薬、クローニングベクター及び遺伝子操作用のキットは、バイオラッド(BioRad)、ストラタジーン(Stratagene)、インビトロゲン(Invitrogen)及びクローンテック(ClonTech)のような商業的供給者から入手可能である。細胞培養及び培地採取についての一般的技術は、大規模哺乳類細胞培養(Large Scale Mammalian Cell Culture)(フー(Hu)ら、バイオテクノロジーにおける最新見解(Curr. Opin. Biotechnol.)8(1997)、148);血清無含有培地(Serum-free Media)(キタノ(Kitano)、バイオテクノロジー(Biotechnology)17(1991)、73);大規模哺乳類細胞培養(バイオテクノロジーにおける最新見解2(1991)、375)及び哺乳類細胞の懸濁培養(Suspension Culture of Mammalian Cells)(ビルヒ(Birch)ら、バイオプロセス技術(Bioprocess Technol.)19(1990)、251);cDNAアレイから情報を抽出する(Extracting information from cDNA arrays)、ヘルツェル(Herzel)ら、CHAOS 11、(2001)、98〜107において概説されている。
【0177】
実施例1:新規Vif相互作用物質の同定
この実施例は、組み換えHIV Vif(配列番号2)と、胸腺cDNAライブラリー(CytoTrap(登録商標)XRヒト胸腺cDNAライブラリー(Human Thymus cDNA Library)、ストラタジーン(Stratagene))によりコードされた新規ヒトポリペプチドとのタンパク質複合体の同定を実証する。
【0178】
ベイト構造
NL4−3Vif cDNAを、小型スペーサー(配列番号3)を含むSosを有する融合タンパク質として異種タンパク質を酵母において発現するために、適切なベクター(pADH−Sos−2xSpc、pSosベクター(シコルスキー(Sikorski)及びハイエター(Hieter)、遺伝学(Genetics)122(1989)、19〜27)を改質)にクローンした。Vif cDNAを、プライマーのVif/RsrII(5′−ttttCGGACCGGAAAACAGATGGCAGGTGATG−3′;配列番号37)及びVif/NotI(5′aaatatGCGGCCGCCTATCTGGGGCTTGTTCCATCTG−3′;配列番号38)を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。続いて、RsrII及びNotI制限消化Vif PCR産物を、同様に消化されたpADH−Sos−2xSpcにクローンし、pADH−Sos−2xSpc−vifおいてアミノ末端Sos融合タンパク質の発現をもたらした(図5を参照すること)。
【0179】
ライブラリーの増幅
ライブラリーの形質変換を、製造会社の使用説明書に従って、大腸菌(XL10-Gold(登録商標)、超コンピテント細胞(Ultracompetent Cells)、ストラタジーン(Stratagene))により実施した。ライブラリーの増幅において、大部分のcDNAを確実に増幅cDNAライブラリーにより表されるようにするために、1×107個の個別のクローンが必要であった。したがって、160mmのペトリ皿をライブラリー増幅に使用した。ペトリ皿毎に、約5×104個のコロニー形成単位(cfu)を増殖することができる。購入した胸腺cDNAライブラリーの大腸菌株の滴定量は、1μあたり2.6×105個の大腸菌であった。プレートに0.20μlの大腸菌ライブラリー株を接種して、所望の数のcfuを達成した。
大腸菌ライブラリー株を氷上で解凍した。解凍した後、大腸菌懸濁液を穏やかに混合し、41μlをLB培地(2.5%(w/v)LB、ミラー(Miller))で1:25に希釈した。LBクロラムフェニコールプレート(LBクロラムフェニコールアガー:1mlの濾過滅菌クロラムフェニコールを30μg ml-1の濃度で補充したLBアガー)の接種の前に、続いて添加される大腸菌株のより良好な分布のため、100μlのLB培地をそれぞれのプレートに加えた。次に、5μlの希釈大腸菌ライブラリー株を各ペトリ皿に加え、オートクレーブしたガラスビーズ(2.85〜3.3mm、ロス(Roth))の助けを借りて分布させた。37℃で一晩インキュベートした後、大腸菌コロニーを、ラバーポリスマンを用いて、プレートからこすり取った。
10枚のプレートの大腸菌を50mlの遠心分離管に移し、50mlのLBクロラムフェニコール培地に注意深く再懸濁した。次にそのような5本の遠心分離管の内容物を500mlの滅菌遠心分離ビーカーに移し、15分間(4℃、6000rpm(JA-10))遠心分離した。上澄みを廃棄し、細胞ペレットの重量を測定した。ペレットを、10%グリセロールを含有する、20mlの氷冷STE緩衝液(0.1MのNaCl、10mMのトリス、pH8.0、1mMのEDTA)に再懸濁した。終了時に、3gの大腸菌細胞ペレットを含有する適切な容量を、10mlのクリオチューブ(cryotube)に移し、−80℃で保存した。4つの胸腺cDNAプールを、50個のペトリ皿のそれぞれのプールから生成した。プラスミド単離には、Kit AX2000(マケレイ−ナゲル(Macherey-Nagel))を使用した。
【0180】
酵母の形質転換
cdc25−2酵母細胞(MATα、ura3、lys2、Leu2、trpl cdc25−2、his3Δ200、ade100、GAL+)の形質転換を、シーストル(Schiestl)及びギーツ(Gietz)(1989)の高効率形質転換法を変更したプロトコールに従って実施した。コンピテント酵母細胞の調製には、10mlのYEPD培地にcdc25−5酵母細胞を接種し、24℃で一晩インキュベートした。一晩培養の適切な容量を使用し50mlのYEPD培地に接種して、0.2のOD600を得た。24℃でインキュベートした後(約0.8のOD600まで)、培養を沈降させ(1000g、5分間、室温)、ペレットを滅菌ddH2Oで洗浄し、前記に記載されているように遠心分離した。その後、ペレットを10mlのLiSORB(100mMの酢酸リチウム、10mMのトリス中の1MのD−ソルビトール、1mMのEDTA、pH7.5、濾過滅菌)に再懸濁し、再び沈降させた。ペレットを、形質転換毎に50μlのLiSORBに再懸濁した(最大500μl)。細胞は形質転換に直接使用した。
担体DNAミックスの調製には、形質転換毎に10μlの断片化担体DNA(サケ精子DNA、TE緩衝液中10mg ml-1)を、95℃で5分間沸騰させた。次に担体DNAを、形質転換毎に40μlのLiSORBと混合し、氷上に置いて室温に冷却した。
実際の形質転換では、0.5〜1μgのプラスミドDNA、50μlの担体DNAミックス及び50μlのコンピテント酵母細胞を混合した。混合物を、振とうしながら24℃で30分間インキュベートした。900μlのLiPEG(100mMの酢酸リチウム(pH7.5)、10mMのトリス中40%(w/v)PEG4000、1mMのEDTA(pH7.5)、濾過滅菌)を各試料に加え、再び、振とうしながら24℃で30分間インキュベートした。100μlのDMSOを加え、細胞に、振とうすることなく、42℃で7分間熱ショックを与えた。細胞を沈降させ(1分間、1000g)、100μlの1Mソルビトール(濾過滅菌)に再懸濁した。50μlの懸濁液を、適切に選択したプレートに接種し、24℃でインキュベートした。コロニーは、4〜6日後に現れた。
【0181】
ライブラリースクリーニング
胸腺ライブラリーを、大規模形質転換(シーストル(Schiestl)及びギーツ(Gietz)、1995)によりベイト株に形質転換した。ベイト株は、cdc25−2酵母株を、上記に記載されたpADH−SOS−2xSpc−vifプラスミドで形質転換することによって生成した。新たなベイト株培養(600mlでODが1.0)を、70μgの上記に記載されているライブラリープラスミドDNAの形質転換に使用し、160mmの−Leu−Ura+グルコースプレートで平板培養した。24℃で3〜4日間インキュベートすると、1プレートあたりおよそ30000個の形質転換体をもたらした。Vif相互作用タンパク質を発現するクローンの選択には、形質転換体を、−Leu−Ura+ガラクトースプレートにおいて膜フィルターによりレプリカ平板培養し、37℃で4〜10日間増殖させた。
【0182】
現れたコロニーを取り出し、200μlの−Leu−Ura+グルコース培地に再懸濁し、24℃で一晩インキュベートした。推定される相互作用候補の37℃での増殖がプレイ(餌)発現に依存しているかを試験するため、クローンを−Leu−Ura+ガラクトースプレートにより、また同様に−Leu−Ura+グルコースプレートにより平板培養し、続いて37℃で5〜7日間インキュベートした。Vif相互作用融合タンパク質の発現は、ライブラリープラスミドのGAL1誘発性プロモーターの制御下である。したがって、発現は培地(3%ガラクトース及び2%ラフィノース)へのガラクトースの添加により誘発されたが、グルコースの添加により抑圧された。胸腺ライブラリーのVif相互作用タンパク質を発現する酵母細胞は、ガラクトースプレート(3%ガラクトース及び2%ラフィノース)においてのみ増殖するが、グルコースプレートでは増殖しない(図1を参照すること)。
【0183】
コードされたVif相互作用タンパク質を含むプラスミドの単離
プラスミドを、QIAprep(登録商標)スピン・ミニプレップ・キット(Spin Miniprep Kit)(www.qiagen.com/literature/protocols/pdf/PR04.pdf)を使用し、マイケルジョーンズ(Michael Jones)のプロトコールに従って単離した。単一酵母コロニーを、5mlの−Ura+グルコース培地に接種し、振とうしながら24℃で24時間増殖させた。細胞を、5000×gで5分間遠心分離して採取し、0.1mg/mlのRNアーゼA(RNase A)(キアゲン(Qiagen))を含有する250μlの緩衝液P1(キアゲン)に再懸濁した。細胞懸濁液を、新たな1.5mlのマイクロ遠心分離管に移した。崩壊のために、50〜100μlの酸洗浄ガラスビーズ(シグマ(Sigma))を加え、懸濁液を5分間ボルテックスした。ビーズが沈降した後、上澄みを新たな1.5mlのマイクロ遠心分離管に移した。次に、250μlの溶解緩衝液P2(キアゲン(Qiagen))を管に加え、管を4〜6回逆さまにし、室温で5分間インキュベートした。インキュベートした後、350μlの中和緩衝液N3(キアゲン(Qiagen))を管に加え、直ぐにしかし穏やかに管を4〜6回逆さまにした。溶解産物を15000×gで10分間遠心分離した。その後、清澄になった溶解産物をQIAprepスピンカラム(Spin Column)に移し、15000×gで1分間遠心分離した。カラムを、0.75mlの緩衝液PE(キアゲン(Qiagen))の添加により洗浄し、15000×gで1分間遠心分離した。DNAの溶離は、25μlのEBキアゲン(Qiagen)をQIAprepスピンカラム(Spin Column)の中心に添加することにより実施した。1分間のインキュベーション時間の後、溶離液を15000×gで1分間の遠心分離により得た。続く、CaCl2コンピテント大腸菌への形質転換は、10μlの溶離液で実施した。細菌を、50μg/mlのクロラムフェニコールを含有するLBプレートで平板培養した。プレイ(餌)プラスミドを、大腸菌から単離し、挿入断片を放出するEcoRI/XhoI制限消化により分析した。
【0184】
実施例2:酵母細胞におけるVifタンパク質複合体の検出
この実施例は、本発明が、Vif融合タンパク質及び同定された宿主因子の融合タンパク質の発現により、酵母において特定のタンパク質複合体を検出することにも有用であることを実証する。
【0185】
実施例1において同定された「陽性相互作用物質」の同定には、対応するライブラリー配列のDNAを細胞から単離した。
【0186】
新規Vif相互作用タンパク質の同定に加えて、この相互作用を、特異性について、すなわち第1融合タンパク質(ベイト)の発現へのタンパク質−タンパク質相互作用の依存性について、すなわち標的タンパク質がVifであることについて試験した。したがって、Vif相互作用タンパク質の単離されたライブラリープラスミドを、標的タンパク質としてコードされた第1融合タンパク質、すなわちVifを含むベクターpADH−Sos−2xSpc−vifを含有する酵母株に導入するばかりでなく、追加的に、「陰性対照」標的タンパク質としてcJunを提供する融合タンパク質を含む対照として異質ベイトベクターpADH−Sos−2xSpc−cJunを含有するcdc25−5酵母株にも導入した。上記に記載されているように、細胞をYNB−Leu、−Ura及びグルコースプレートで平板培養し、24℃でインキュベートした。それぞれの形質転換アッセイのクローンを液体培地に懸濁し、1セットのガラクトースプレート及び2セットのグルコースプレート(それぞれ、−Ura−Leu)にそれぞれ移し、37℃でインキュベートした。ガラクトースプレートでは、相互作用の依存性を、ガラクトース誘発性プロモーターの制御下にあるプレイ(餌)タンパク質の発現によって試験した。37℃でインキュベートしたグルコースプレートを、復帰突然変異体の潜在的な増殖についての試験に使用した。24℃でインキュベートしたグルコースプレートのセットを、一般的な増殖対照として使用した。制限温度37℃での対照ベクター(「陰性対照」標的タンパク質を提供する)は、同定された新規宿主因子を非関連pADH−Sos−2xSpc−cJun作成物と組み合わせて含有する細胞の増殖がなかったので、pADH−Sos−2xSpcベイト作成物への同定された新規宿主細胞相互作用物質の結合特異性を示す(図2及び図7を参照すること)。Vifへの結合について相互作用宿主タンパク質の特異性を実証した後、対応するライブラリー配列のDNAを配列決定した。
【0187】
実施例3:HIV Vifタンパク質複合体のインビトロ形成(GSTプルダウン)
Vifベクター
pNL4.3の完全長Vif遺伝子を、プライマーのVif/Bam(5′−CGCGGATCCACCATGGAAAACAGATGGCAGGTGATG−3′;配列番号39)及びVif/Xho(5′−CCGCTCGAGCTAGTGACCATTCATTGTATG−3′;配列番号40)を使用してPCRにより増幅した。PCR増幅Vif DNAを、BamHI/XhoIで切断し、BamHI/XhoI消化pGEX−4T2発現ベクター(アマシャム・ファーマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech))にサブクローンして、pGEX−4T2−Vifをもたらし、これはGST−Vif融合オープンリーディングフレームを含有する(図4を参照すること)。
【0188】
GST−Vifの発現及び精製
GST−Vifの発現及び精製は、ハサイン(Hassaine)ら、生物科学ジャーナル(J. Biol. Chem.)276(2001)、16885〜16893を変更したプロトコールに従って実施した。したがって、pGEX−4T2−Vifプラスミドで形質転換された大腸菌BL21コドン+RP(ストラタジーン(Stratagene))を30℃で増殖させた。タンパク質発現を、0.1mMのイソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシドを30℃で3時間用いて、600nmのODが0.5〜0.7で誘発した。細菌を5000×gで15分間遠心分離し、ペレットを、プロテアーゼインヒビター(ロッシュ(Roche))及びリゾチーム(1mg/ml)を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)に再懸濁した。細菌を、氷上で超音波処理(3×30秒)により溶解し、溶解産物を、1%トリトンXの存在下、振とうしながら、4℃で30分間インキュベートした。不溶性物質を14000×gで40分間ペレット化し、上澄みを、50%(v/v)グルタチオン(GSH)アガロースビーズ(アマシャム(Amersham))と共に4℃で一晩インキュベートした。PBS中の0.5M NaClで3回洗浄した後、GSHアガロースビーズに固定したGST融合タンパク質を、12%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルによるアリコートの電気泳動、続くクーマシーブリリアントブルーによるゲルの染色によって定量化した。
【0189】
タンパク質複合体のインビトロ形成
相互作用候補の放射能標識タンパク質は、対応するライブラリープラスミドをテンプレートとして使用し製造会社の推奨に従って、35S(1000Ci/mmol;アマシャム・ファーマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech))の存在下、共役インビトロ転写−翻訳(TNT T7共役網状赤血球溶解産物系、プロメガ(Promega))により生成した。翻訳タンパク質抽出物の1/5を、アガロースビーズに結合したGST−Vifと共にインキュベートした。
一つの結合実験において、Vifを発現するBL21細胞40mlに対応するVifタンパク質を、GST融合タンパク質として使用した。精製プロトコールは上記に記載されている。
Vifへの相互作用候補の結合は、20mMのNaCl、20mMのトリス、pH8.0、0.5%のNP40及び100μg/mlのウシ血清アルブミンを含有する結合緩衝液の中、室温で1時間振とうすることにより実施した。インキュベートした後、ビーズを500gで2分間回転してペレット化し、続いて1mlの洗浄緩衝液(血清アルブミンなしの結合緩衝液)による4工程の洗浄を行った。タンパク質を30μlの2×SDS試料緩衝液で溶離し、溶離液の半分をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により、続いてオートラジオグラフィーにより分析した(図3a〜cを参照すること)。
【0190】
実施例4:相互作用ドメインの同定
相互作用ドメインの同定には、相互作用タンパク質のタンパク質配列から誘導した14個のアミノ酸長ペプチドを含有するマイクロアレイを、例えば国際出願WO05/111061に記載されているように作製した。ペプチドは、完全自動化合成機(マルチペン自動化ペプチド合成機(Multipep Automated Peptide Synthesizer)、インタビスAGバイオアナリティカル・インストルメント(Intavis AG Bioanalytical Instruments))を使用して、Fmoc方法論に従って合成した。単一ペプチドを、別個の誘導体化セルロースディスク(Fmoc−β−アラニンセルロース)で合成した。合成が終了し、TFAにより側鎖保護基を除去した後、セルロースディスクを、90%TFA(89.5%TFA、4%トリフルオロメタンスルホン酸、2.5%トリイソプロピルシラン、4%H2O)に一晩溶解した。セルロース結合ペプチドを、冷tert−ブチルメチルエーテルと関与させ、遠心分離した(5分間、1500rpm)。tert−ブチルメチルエーテルで洗浄した後、ペレットをDMSOに溶解した。その後、得られたDMSO中セルロース結合ペプチドの溶液を、0.06μl容量の溶液を顕微鏡スライドにスポットすることにより、アレイの作製に使用した。
【0191】
ペプチドアレイを、供給者の推奨に従って、相互作用スクリーニング及びプロメガ(Promega)TNT共役転写/翻訳系の陽性クローンから単離されたプラスミドを使用してインビトロで産生された、35S標識相互作用タンパク質の溶液と共にインキュベートした。タンパク質の形成は、SDSゲル電気泳動、オートラジオグラフィー及び銀染色によって確認した。50μlの粗インビトロ合成タンパク質を、10mlの10×膜遮断緩衝液(シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、カゼインに基づいた遮断緩衝液、0.05%アジ化ナトリウム)に加え、十分に混合した。この混合物を、予め一晩遮断したペプチドアレイに直接適用した。インキュベーションを、持続的にゆっくりと水平に撹拌しながら、室温で4時間実施した。上澄みを除去し、膜をTBST(25mMのトリス−Cl、pH7.5;125mMのNaCl;0.1%ツイーン20)により10分間で3回洗浄した。ペプチドと35S標識タンパク質との複合体形成を、スポット膜のサランに覆われた面上に70時間設置し、使用前に常に消去した画像化スクリーンK(Imaging screen K)(バイオラッド(Biorad))により検出し、パーソナル分子画像機FX(Personel Molecular Imager FX)(バイオラッド、解像度:50μm)により読み取った。得られた画像ファイルを、バイオラッド数量ワンソフトウエア(Biorad Quantity One software)(バージョン4.4)を使用して、スポットの強度に関して直接評価した。
【0192】
実施例5:細胞溶解産物におけるタンパク質複合体の検出
この実施例は、ヒト細胞の細胞溶解産物における本発明のタンパク質複合体の検出を実証する。本明細書に記載される実験的方法を、タンパク質複合体の記載されている形成に影響を及ぼす(それを阻害する又は増強する)潜在的薬剤、作用物質、組成物又は化合物の開発又は確認に使用することもできる。
【0193】
改質ヒト胎児腎細胞株293Tを、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン及びストレプトマイシン、1%グルタミンを補充したダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)から構成される完全培地に維持した。293T細胞を、100mm皿に5×106個の細胞で接種した。
陽性対照を生成するには、293T細胞に、FLAGタグApobec3Gをvif相互作用タンパク質として発現するpFLAG−A3Gの3μgを形質移入した(接種の24時間後)。上澄みを形質移入の48時間後に除去し、細胞を5mlの冷PBSで1回洗浄した。FLAG−A3G形質移入及び非形質移入細胞を、冷ラジオイムノ沈殿アッセイ(RIPA)緩衝液(ピアース(Pierce)、100mm皿あたり800μl)で溶解した。
細胞溶解産物を、供給者の推奨に従って、プロメガ(Promega)TNT共役転写/翻訳系を使用してpcDNA−vifプラスミドからインビトロで産生した、35S標識vifタンパク質の溶液と共にインキュベートした。タンパク質複合体の形成には、10μlのインビトロ翻訳35S標識vifタンパク質を、600μlの総細胞溶解産物と共に、撹拌しながら、室温で1時間インキュベートした。タンパク質複合体の免疫沈降は、25μlの一次抗体の懸濁液(撹拌しながら4℃で4時間インキュベートした)の添加、続く30μlのアガロース結合タンパク質A/Gアガロースの懸濁液(サンタクルーズ(Santa Cruz)、撹拌しながら4℃で1時間インキュベートした)とのインキュベーションにより実施した。遠心分離し(8000×g、5分間、4℃)、TBSで洗浄した後、得られたペレットを、10μlの4×濃縮電気泳動試料緩衝液(125mMのトリス、pH6.8、4%のSDS、10%のグリセロール、2%のβ−メルカプトエタノール)に再懸濁し、5分間沸騰させた。
得られた試料の等量のアリコートを、2つのSDS−Pageゲル(12%)に装填し、電気泳動で分離した。第1ゲルのタンパク質をPVDF膜に移し、適切な一次及び二次抗体でイムノブロットした。第2ゲルを乾燥し、画像化スクリーンK(Imaging screen K)(バイオラッド(Biorad))による、複合体中の35S標識vifタンパク質の検出に使用した。したがって、使用前には常に消去したスクリーンを、膜の上に48時間設置し、パーソナル画像機FX(Personal Imager FX)(バイオラッド(Biorad)、解像度50μm)で読み取った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトロウイルス科のファミリーからのウイルス感染因子タンパク質(Vif)又はその 約12個を超えるアミノ酸のペプチドフラグメントと、ElF4A2タンパク質又はその約12個を超えるアミノ酸のペプチドフラグメントとを含み、前記のタンパク質又はペプチドフラグメントが、互いに結合することができる組成物。
【請求項2】
前記ウイルス感染因子タンパク質(Vif)がHIVからのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
HIVからの前記ウイルス感染因子タンパク質(Vif)が、配列番号2の配列である、又は、配列番号1の配列でコードされている、又はElF4A2に結合することができるそのペプチドフラグメントである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記の2つのタンパク質又はペプチドが複合体の中にある、請求項1〜3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項4の複合体に特異的に結合する、或いは対応するHIVタンパク質及び/又はヒトタンパク質又はペプチドそれぞれの結合ドメインに特異的に結合する、抗体。
【請求項6】
複合体形成及び/又は複合体安定性を調節することができる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)試験化合物を、
(i)請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物、及び/又は
(ii)請求項4記載の複合体
に付す工程;
(b)複合体形成及び/又は複合体安定性における変化をモニタリングする工程;並びに
(c)(i)のタンパク質の複合体形成を変える及び/又は(ii)の安定性を変える能力に基づいて、化合物が、対照と比較して複合体形成及び/又は安定性を調節できるかを決定する工程
を含む方法。
【請求項7】
VIFとEIF4A2の複合体形成及び/又は複合体安定性を調節することができる化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)試験化合物を、EIF4A2タンパク質又は配列番号9でコードされているタンパク質又はそれらのフラグメントを含む組成物に付す工程;
(b)EIF4A2タンパク質又は配列番号9でコードされているタンパク質又はそれらのフラグメントに結合することができる化合物を同定する工程;
(c)工程(b)の同定された候補化合物を、
(i)請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物、及び/又は
(ii)請求項4に記載の複合体
に付す工程;
(b)複合体形成及び/又は複合体安定性における変化をモニタリングする工程;並びに
(c)(i)のタンパク質の複合体形成を変える及び/又は(ii)の安定性を変える能力に基づいて、化合物が、対照と比較して複合体形成及び/又は安定性を調節できるかを決定する工程
を含む方法。
【請求項8】
レトロウイルス科のファミリーのウイルス感染因子タンパク質(Vif)に結合することができる、EIF4A2の配列(配列番号9)を有するタンパク質又はその小型ペプチドフラグメント若しくはその誘導体。
【請求項9】
前記のタンパク質、誘導体又はペプチドが、HIVウイルス感染因子タンパク質(Vif)に結合することができる、請求項8に記載のタンパク質。
【請求項10】
PTEN(配列番号4及び5)、HERC4(配列番号6及び7)、Tom1L1(配列番号8)、EIF4A2(配列番号9)、TCTP(TPT1:配列番号10、11、12及び13)、NUP50(配列番号14)、CTCF(配列番号15)、hnRPU(配列番号16)、MRCL(MRCL3:配列番号17)、SDCCAG1(配列番号18及び19)、PTGES3(配列番号20)、HSPs(HSP90:配列番号21;HSPA1:配列番号:22、23、24、25、26、27及び28;HSPA5:配列番号:29、30及び31;HSPA8:配列番号:32、33及び34;HSPH1:配列番号:35)、CSDE1(配列番号36)、KIA1429(配列番号42)、CUL4A(配列番号43)、RAG2(配列番号44)、CCT5(配列番号45)、VCP(配列番号46)、PDIA3(配列番号47)、PTPRC(配列番号48)、CAB39(配列番号49)、PPM1B(配列番号50)、RAB4A(配列番号51)、RAB21(配列番号52)からなる群より選択される配列を有するタンパク質又はこれらのいずれかのフラグメント若しくは誘導体であって、前記のタンパク質又はペプチドがVifに結合することができる、タンパク質又はこれらのいずれかのフラグメント若しくは誘導体。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物及び/又は請求項5に記載の抗体及び/又は請求項8〜10に記載のタンパク質を含むキット又はアッセイ系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−535846(P2010−535846A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520571(P2010−520571)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060631
【国際公開番号】WO2009/021971
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510040101)ネクシーゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】