説明

HIV指向性を診断するための分子アッセイ

本発明は、標的配列を増幅する、被検試料中のHIVのサブタイプ用の組成物、方法、およびキットを目的とする。次いで、増幅された標的配列を幾つもの質量分析技術によって解析し、このデータを、HIVサブタイプの塩基組成シグネチャーのデータベースに対して照会する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の指向性を検出することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)は、免疫系の機能が重度に失われることを特徴とする感染症である後天性免疫不全症候群(「AIDS」)の病原体であるヒトレトロウイルスである。HIV−1およびHIV−2という2つのタイプのHIVが知られている。
【0003】
世界的に広まっているHVI−1系統株は、極度の遺伝的多様性を示している(Robertson et al.,1995)。世界規模でのHIV−1の多様性の程度を評価するために、多くの国々で発生したウイルス株の配列が比較されている。これらの研究は、HIV−1を2つの主なグループ、即ち、M群(「主要」という意味)およびO群(「分類外」という意味)に分類できることを明らかにした。HIV−1のM群およびO群は、系統樹上で明らかに異なるクラスターとなる。M群はHIV−1分離株の大部分を含み、AからIまでと名づけられた少なくとも9種類の配列のサブタイプまたはクレードにさらに細分することができるが、この分類体系には、さらなる変異体が頻繁に加えられているところである(Gao et al.,1996)。O群株は高度に分岐しているが、O群感染の臨床経過は、HIV−1のM群感染の臨床経過と同一である。
【0004】
HIV−1の標的となる主な細胞は、T細胞、マクロファージ、および樹状細胞である(Clapham and McKnight,2001)。HIV−1は、ウイルスをこれらの細胞に侵入させるために、これらの細胞表面上の幾つかの受容体と相互作用してウイルスと細胞膜との融合を引き起こす(Clapham and McKnight,2001)。HIV−1指向性とは、HIV−1が感染する細胞型を意味し、これを手段として感染が完成するのである。
【0005】
HIV−1は、CD4糖タンパク質および7回膜貫通型(7TM)の共受容体と相互作用して細胞への侵入を開始する(Clapham and McKnight,2001)。HIV−1は、膜貫通タンパク質であるgp41と非共有結合している細胞表層タンパク質gp120を含むエンベロープ糖タンパク質である「スパイク」を、この表面に含有している。HIV−1粒子上の各「スパイク」は、3個のgp120タンパク質および3個のgp41タンパク質の三量体からなる(Clapham and McKnight,2001)。CD4がgp120と結合すると、共受容体の結合部位を露出させる構造変化が起こる(Clapham and McKnight,2001)。共受容体が結合すると、さらなる構造再構成が開始する。これらの変化は、ウイルス膜と細胞膜との融合を引き起こして、ビリオンのコアが細胞の細胞質内に侵入できるようにするのに十分であると考えられている(Clapham and McKnight,2001)。
【0006】
14種を超える様々な7TM受容体が、HIV−1の共受容体である可能性があるものとして同定されている。これらの受容体は、ケモカイン受容体ファミリーの仲間であるか、これに非常によく似ている。ケモカイン受容体ファミリーの2つの主な共受容体はCCR5およびCXCR4である。全てのHIV−1分離株は、これらの共受容体の片方または両方を使用する。具体的には、CCR5受容体は、HIV−1の性感染において重要な役割を果たすマクロファージ指向性(R5)株の主要な共受容体である。T細胞株指向性(X4)ウイルスは、CXCR4を使用して標的細胞に侵入する。CXCR4を使用するウイルスは、病気が進行している患者のほぼ60%において、感染後期に出現する傾向があり、この出現は病気の進行の加速と一致する(Westby et al.,2006)。しかし、感染過程でCXCR4ウイルスが選択されるメカニズムについてはほとんど知られていないため、CXCR4の出現が重篤な免疫系障害の原因であるのか結果であるのかは不明である(Westby et al.,2006)。幾つかのHIV−1分離株は、必ずしも同じ効率とは限らないが、両方の共受容体を使用することができるため、二指向性である(R5X4)。
【0007】
CCR5共受容体およびCXCR4共受容体は、広範に使用されて良好な耐容性を示す幾つかの薬剤、例えば、デスロラジン(desloradine)、ラニチジン、およびテガセロドなどの標的となる一群のタンパク質であるGタンパク質共役型受容体スーパーファミリーの仲間であるため、薬剤開発の魅力的な標的となっている(Westby et al.,2006)。CCR5が特に興味深いが、これは、ヘテロ接合遺伝子型またはホモ接合遺伝子型においてそれぞれCCR5の細胞表面発現が減少するか、全くなくなるという結果をもたらす天然の多型性(CCR5−Δ32)がヒトに存在しているせいである(Westby et al.,2006)。CCR5−Δ32についてホモ接合性の個体は、HIV−1感染に対する自然抵抗性から恩恵を受けているように見えるが、一方、ヘテロ接合性CCR5−Δ32は、病気の進行の低下と関連している(Westby et al.,2006)。HIV−1がCCR5に結合するのを阻害するアンタゴニストが、宿主標的細胞に働く最初の抗HIV薬として開発されているところである。しかし、これらのアンタゴニストは、CXCR4共受容体をもたない患者においてのみ有効である。現在、CCR5アンタゴニストを用いた治療によるCCR5利用株の選択的抑制が、CXCR4変異株の出現率の増加をもたらしている可能性があると考えられている(Westby et al.,2006)。
【0008】
HIV−1集団の指向性を測定する幾つかのアッセイ法が当分野において知られている。これらのアッセイ法には、細胞表面に提示された受容体への結合を測定すること(表現型)または遺伝情報から指向性を推測することが含まれる。例えば、米国特許第7,294,458号には、感染患者からクローニングされたHIVエンベロープ遺伝子で細胞を形質転換し、この細胞を、HIVエンベロープ親和性共受容体を発現する指標細胞株と選択的に融合させてから、融合についてアッセイすることを含む表現型アッセイ法が記載されている。細胞表面エンベロープタンパク質の変異体は、CCR5共受容体またはCXCR4共受容体と選択的に相互作用をする。融合は、エンベロープタンパク質が、指標細胞の表面に存在する親和型の共受容体と相互作用する場合にのみ起きる。特定のエンベロープ遺伝子を発現する細胞は、患者のエンベロープ遺伝子の特異性に応じて、CCR5指標細胞またはCXCR4指標細胞のいずれかと融合するはずである。CCR5指標細胞またはCXCR4指標細胞と融合することで、共受容体利用のタイプが示される。米国特許第7,235,356号には、別の表現型アッセイ法が記載されているが、そこで開示された方法は以下の工程を含む:(a)ウイルスに感染した患者から、ウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を採取する工程;(b)第一の細胞に(i)工程(a)の核酸と、(ii)エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失し、検出可能なシグナルを産生する指標核酸を含むウイルス発現ベクターとを同時形質導入して、第一の細胞が、患者から採取された核酸によってコードされるエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生するようにさせる工程;(c)工程(b)で産生されたウイルス粒子を、化合物の存在下で、ウイルスが結合する細胞表面受容体を発現する第二の細胞と接触させる工程;(d)ウイルス粒子の感染力を判定するために、第二の細胞によって産生されたシグナル量を測定する工程;および(e)工程(d)で測定されたシグナル量を、化合物非存在下で産生されるシグナル量と比較する工程であって、化合物存在下で測定されたシグナル量が減少すれば、化合物が第二の細胞内へのウイルスの侵入を阻害することを示す工程。Van Baelenらも、別の表現型アッセイ法について説明している(Van Baelen et al.,2007)。米国特許出願公開番号US2006/0194227には、ヘテロプレックスアッセイ法(heteroplex assay)が記載されているが、そこでは、(a)患者からHIVウイルスのRNAを採取し;(b)共受容体利用の遺伝的決定因子を含有するウイルスゲノムの一部、例えば、gp120エンベロープ糖タンパク質のV3領域を含むゲノム部分を増幅し;(c)既知のHIV株の対応ゲノム領域から調製した標識核酸プローブを用いて、ヘテロ二本鎖および/またはホモ二本鎖を形成させ;(d)へテロ二本鎖およびホモ二本鎖を(例えば、ゲル上で)分離させると、共受容体の利用を判定できる特徴的な移動パターンが得られる。これらのアッセイ法の説明から明らかなように、これらは手間がかかる上に費用もかかる。
【0009】
CCR5アンタゴニスト、例えば、Marovic(4,4−ジフルオロ−N−$(1S)−3−[3−(3−イソプロピル−5−メチル−4H−l,2,4−トリアゾール−4−イル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタ−8−イル]−l−フェニルプロピル$シクロヘキサンカルボキサミドなどを導入すると、抗レトロウイルス治療計画を構築する上で利用可能な選択肢が増える。しかし、この選択肢は、CCR5アンタゴニストを利用する治療法を開始する前に、HIV共受容体指向性について患者を検査すべきであるという細心の注意と一体となったものである。CXCR4利用をスクリーニングしなければ、効果のない薬を使用するリスクが高まり、その結果、ウイルスを抑制する可能性が低下するとともに、抗レトロウイルス耐性を生じさせるリスクが高まる(Low et al.,2008)。
【0010】
短時間で行うことができる、HIV集団の指向性を判定するためのアッセイ法であって、患者をスクリーニングして、CXCR4型またはCCR5型のHIVサブタイプ療法に適した候補者を決めることができるアッセイ法が当分野において必要とされている。
【0011】
核酸を利用する分子診断法
病原体を同定するために分子診断法が支持されてきた。標的ポリヌクレオチド配列をインビトロで増幅してから検出するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用した診断法が、多様な病原体について首尾よく開発されてきた。
【0012】
臨床現場でPCRアッセイ法を利用することの主な欠点は、バックグラウンドとなるDNAの混入を除去できないこと、競合基質によってPCR増幅が妨害されること、ならびに種分化、抗生物質耐性、および病原体サブタイプを識別する能力が限られていることなどである。顕著な進歩が見られているにもかかわらず、混入は依然として厄介な問題であり、外からのDNAを除去するための方法は、しばしば分析感度の顕著な低下ももたらしてしまう。PCR産物を同定し、この特徴を調べるために簡単なDNA配列決定を行うことができるが、配列決定とその後の分析は、多大な労力と時間を要することがある。
【0013】
質量分析技術、例えば、高分解能エレクトロスプレーイオン化−フーリエ変換−イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(ESI−FT−ICR MS)などを、PCR産物の迅速な検出および特徴付けに利用することができる。正確な質量を精密に測定することと、少なくとも1種類のヌクレオチドの数に関する知識とを組み合わせることによって、約100個の塩基対の二本鎖PCR産物の全塩基組成を計算することが可能となる(Muddiman and Smith,1998)。例えば、Aaserudらは、高速質量分析法によって得られた正確な質量測定結果を、二本鎖の相補的性質によって課される数学的な制約を使用して合成二本鎖DNA構築物から塩基組成を導き出すために用いることができることを示した(Aaserud et al.,1996)。Muddimanらは、相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドの正確な質量測定結果から一義的に塩基組成を導き出すことができるアルゴリズムを開発した(Muddiman et al.,1997)。Wunschelらは、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)由来の16/23SrDNAの遺伝子間領域から増幅されたPCR産物において、ヌクレオチドが1つ異なる鋳型から増幅されたPCR産物を、ESI−FTICR法を用いて、89−bpレベルで解析および同定できることを示した(Wunschel et al.,1998)。エレクトロスプレーイオン化−フーリエ変換−イオンサイクロトロン耐性(ESI−FT−ICR)MS法を用いて、平均分子量を介して二本鎖で500塩基対のPCR産物の質量を決定することができる(Hurst et al.,1996)。PCR産物を特徴付けるためにマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法を利用することも開発されている(Muddiman et al.,1999)。
【0014】
ポリヌクレオチドの質量分析の例には以下のものがある:
米国特許第5,965,363号には、質量分析技術を用いて、増幅された標的核酸を解析することによって、核酸の多型性をスクリーニングする方法、およびこれらの方法の質量分析能および質量精度を向上させるための手順が開示されている。
【0015】
WO99/14375には、予め選択されたDNAヌクレオチド縦列反復対立遺伝子を質量分析によって解析する際に用いられるPCR用プライマーおよびキットが記載されている。
【0016】
WO98/12355には、標的核酸を切断してこの長さを短くし、標的を一本鎖にし、MS法を用いて、短くした一本鎖標的の質量を測定することにより、質量分析法によって、標的核酸の質量を測定する方法が開示されている。また、標的核酸を増幅する工程、第一鎖を固形支持体に結合させる工程、第二鎖を遊離させる工程、および、その後第一鎖を遊離させて、これをMSで解析する工程を含む、MS分析のために二本鎖標的核酸を調製する方法も開示されている。標的核酸を調製するためのキットも提供されている。
【0017】
PCT WO97/33000には、標的を一組の無作為でない長さの一本鎖断片に作為的に断片化し、MS法によってこれらの質量を測定することによって、標的核酸中の突然変異を検出する方法が開示されている。
【0018】
米国特許第5,605,798号には、診断目的で、生体試料中に特定の核酸が存在することを検出するための高速で高精度の質量分析法が記載されている。
【0019】
WO98/21066には、質量分析によって特定の標的核酸の配列を決定する工程が記載されている。PCR増幅と質量分析検出によって、生体試料に存在する標的核酸を検出する方法が、制限部位と標識を含有するプライマーで標的を増幅し、増幅された核酸を伸長および切断し、伸長産物の存在を検出することによって試料中に存在する標的核酸を検出する方法として開示されている。ここで、野生型とは異なる質量をもつDNA断片の存在が突然変異の指標となる。質量分析法による核酸の配列決定法も記載されている。
【0020】
WO97/37041、WO99/31278、および米国特許第5,547,835号には、質量分析法を用いた核酸配列決定法が記載されている。米国特許第5,622,824号、第5,872,003号、および第5,691,141号には、エクソヌクレアーゼを介した質量分析によって配列を決定する方法、装置、およびキットが記載されている。
【0021】
米国特許第7,217,510号、第7,108,974号、第7,255,992号、第7,226,739号、およびUS2004/0219517には、少なくとも1対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用する、1つ以上の病原体を同定するための方法および組成物であって、1対は、病原体のリボソームRNAをコードする核酸の2つの別個の保存領域にハイブリダイズし、この2つの別個の保存領域は、増幅されるとこの病原体の特徴を示す塩基組成「シグネチャー」を作り出す可変核酸領域に隣接位置するものである方法および組成物が記載されている。この塩基組成シグネチャー、即ち増幅産物の分子量から決定された正確な塩基組成は、質量分析によって増幅産物の分子量をまず測定し、その後、この分子量から塩基組成を決定することによって決定される。この塩基組成シグネチャーを、データベースに保存されているものとマッチさせて、病原体を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第7,294,458号明細書
【特許文献2】米国特許第7,235,356号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0194227号明細書
【特許文献4】米国特許第5,965,363号明細書
【特許文献5】国際公開第99/14375号
【特許文献6】国際公開第98/12355号
【特許文献7】国際公開第97/33000号
【特許文献8】米国特許第5,605,798号明細書
【特許文献9】国際公開第98/21066号
【特許文献10】国際公開第97/37041号
【特許文献11】国際公開第99/31278号
【特許文献12】米国特許第5,547,835号明細書
【特許文献13】米国特許第5,622,824号明細書
【特許文献14】米国特許第5,872,003号明細書
【特許文献15】米国特許第5,691,141号明細書
【特許文献16】米国特許第7,217,510号明細書
【特許文献17】米国特許第7,108,974号明細書
【特許文献18】米国特許第7,255,992号明細書
【特許文献19】米国特許第7,226,739号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2004/0219517号明細書
【発明の概要】
【0023】
第一の態様において、本発明は、被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の分子量を決定する工程;および
増幅産物の分子量を、データベース内にある標的配列の計算上の分子量または測定された分子量と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法を目的とする。
【0024】
第二の態様において、本発明は、被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の塩基組成を決定する工程;および
増幅産物の塩基組成を、データベース内にある標的配列の計算上の塩基組成または測定された塩基組成と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法を目的とする。
【0025】
第一および第二の態様のいずれにおいても、標的配列を同定する工程は、増幅産物の配列を決定することを含まず、質量分析法は、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT−ICR−MS)または飛行時間型質量分析法(TOF−MS)、例えば、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析法(ESI−TOF)などであってもよい。さらに、第一および第二の態様のいずれにおいても、プライマーセットは少なくとも1個のヌクレオチド類似体を含むことができ、ここで、ヌクレオチド類似体は、例えば、イノシン、ウリジン、2,6−ジアミノプリン、プロピンC、およびプロピンTであり、反応混合液は、少なくとも2つのプライマーセットを含む。両方の態様の増幅産物は、炭素同位体のような分子量修飾標識、例えば13Cを組み込むことをさらに含むことができる。
【0026】
第三の態様において、本発明は、被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の分子量を決定する工程;および
増幅産物の分子量を、データベース内にある標的配列の計算上の分子量または測定された分子量と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法を目的とする。
【0027】
第四の態様において、本発明は、被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の塩基組成を決定する工程;および
増幅産物の塩基組成を、データベース内にある標的配列の計算上の塩基組成または測定された塩基組成と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法を目的とする。
【0028】
第三および第四の態様の方法のいずれにおいても、標的配列を同定する工程は、増幅産物の配列を決定することを含まず、質量分析法は、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT−ICR−MS)または飛行時間型質量分析法(TOF−MS)、例えば、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析法などであってもよい。さらに、第三および第四の態様のいずれにおいても、プライマーセットは少なくとも1個のヌクレオチド類似体を含むことができ、ここで、ヌクレオチド類似体は、例えば、イノシン、ウリジン、2,6−ジアミノプリン、プロピンC、およびプロピンTであり、反応混合液は、少なくとも2つのプライマーセットを含む。両方の態様の増幅産物は、分子量修飾標識を組み込むことをさらに含むことができる。
【0029】
第五の態様において、本発明は、以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セット、および増幅用試薬を含むキットであって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものであるキットを目的とする。
【0030】
第六の態様において、本発明は以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セット、および増幅用試薬を含むキットであって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットFが、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものであるキットを目的とする。
【0031】
別の態様において、本発明は、被検試料における少なくとも2つのHIVサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAは、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBは、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCは、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDは、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEは、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFは、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の分子量を決定する工程;および
増幅産物の分子量を、データベース内にある標的配列の計算上の分子量または測定された分子量と比較して、少なくとも2つのHIVサブタイプを同定するか、または増幅産物の塩基組成を、データベース内にある標的配列の計算上の塩基組成または測定された塩基組成と比較して、少なくとも2つのHIVサブタイプを同定する工程を含む方法を目的とする。これら2つのHIVのサブタイプは、CCR5結合HIVおよびCXCR4結合HIVを含むことが可能であり;CXCR4結合HIVは、被検試料における全HIVの少なくとも1%、1%以上、5%以上、および10%以上を含むことが可能である。
【0032】
(図面の簡単な説明)
該当なし
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な記述
HIV変異を検出するための現代的な一般的分子アッセイ法では、被検標本中に存在するHIVのサブタイプを同定するために明確に異なった分子プローブが使用される。本発明によって、HIVのサブタイプがアンプリコンの塩基組成のみに基づいて決定することが可能になり、その結果、種特異的な分子プローブおよび分子標識は必要でなくなる。そのため、本発明では、アッセイ用試薬−および労力−の必要が少なくなるという点で検出が簡略化されている。その他の利点には、複数のHIVサブタイプを同時に検出できること、多数の病原体のスクリーニングが同時に可能なことに起因する偽陽性または偽陰性の結果が減ること、およびスピードなどが含まれる。このようにして、本発明は、HIVの指向性を予測することを可能にするため、専らCCR5を指向する患者を、CXCR4指向性患者と区別できるようになる。
【0034】
本発明は、指向性を決定する遺伝子領域を含有する核酸増幅産物の塩基組成を測定するために質量分析法を利用することにより、HIV指向性を予測する方法を開示する。HIVエンベロープ遺伝子内部にある指向性決定領域に隣接するプライマーであって、広範なHIVサブタイプに由来するこの領域を増幅することが可能なプライマーが記載されている。これらの増幅産物の塩基組成の変化によって、HIV指向性の変化を予測する。
【0035】
本発明は、一部では分光技術を利用することによって、この顕著な利点を達成している。例えば、エレクトロスプレー注入飛行時間型質量分析(ESI−MS)法を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの標的増幅技術によって作製されたアンプリコンの正確な塩基組成を決定することができる。開示された発明は、HIVのgp120エンベロープタンパク質のV3ループ変異配列に隣接した、指向性に関連する保存領域に対応するプライマー対セット(セットAからF)を利用する。本発明のプライマーは、任意のHIV変異体からDNAを増幅するために用いることができる。次いで、ESI−MS法による塩基組成分析を用いて、どの変異体が被検試料に存在するかを同定することができる。
【0036】
発明のプライマー対セット、セットAからFを表1に示す。1つの実施形態において、本発明は、配列番号:1および2の新規のプライマー対(セットA)を用いる。別の実施形態において、本発明は、配列番号:3および4の新規のプライマー対(セットB)を用いる。別の実施形態において、本発明は、配列番号:5および6の新規のプライマー対(セットC)を用いる。別の実施形態において、本発明は配列番号:7および8の新規のプライマー対セット(セットD)を用いる。別の実施形態において、本発明は配列番号:7および8の新規のプライマー対(セットD)を用いる。別の実施形態において、本発明は配列番号:11および12の新規のプライマー対(セットE)を用いる。表2は、鋳型がHIV−1(配列番号:13;GenBank登録番号:AF033819;gp120ポリペプチドにプロセッシングされるgp160の遺伝子が、ヌクレオチド番号5771から8341に位置している。)である場合に、プライマー対セットAからCを用いた増幅配列の例を示している。表2は、プライマー対セットAからCを用いてHIV−1から配列を増幅する場合の増幅配列を示しているが、表3は、プライマーを、増幅初期に塩基対ミスマッチを起こす目的で使用しているため(実施例を参照)、プライマー対セットDからFによって増幅された標的配列のみを示している。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

HIVは、一本鎖RNAゲノムを有するレトロウイルスであるため、標的配列はまず逆転写される。本発明のプライマーはこの工程で用いることができる。逆転写プロトコールは公知である(Ausubel et al.,1987)。
【0040】
別の実施形態において、プライマーセットは増幅条件下に置かれるが、最初のサイクルは、反応混合液を、少なくとも1種類の核酸ポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼとともに、94℃で10秒間、次いで55から60℃で20秒間、その後72℃で20秒間インキュベートする工程を含む。このサイクルを、複数回、例えば35サイクル繰り返すこともできる。反応混合液を4℃に保持するという最終サイクルを追加することも可能である。1つの実施形態において、これらの条件は、プライマー対セットA、B、またはCを用いる場合に適用される。別の実施形態において、低ストリンジェンシー増幅条件、次いで高ストリンジェンシー増幅条件を用い、増幅用混合液を以下の条件に置く:94℃で10秒間、次いで40から50℃で20秒間、その後72℃で20秒間を約5サイクル、次いで94℃で10秒間、次いで55から60℃で20秒間、その後72℃で20秒間を約30サイクル。後者の増幅プロトコールは、1つの実施形態において、プライマー対セットD、E、またはFとともに用いられる。これらの条件は、必要に応じて当業者が容易に調整できる。
【0041】
増幅後、増幅混合液に分光分析、例えばESI−MSなどを行う。試料を、分光器に注入し、その後、任意の増幅産物の分子量または対応する「塩基組成シグネチャー」(BCS)を測定し、分子量またはBCSのデータベースと照合する。BCSは、病原体を同定する病原体の分子量から決定された正確な塩基組成である。BCSは、特定の生物の特定の遺伝子の有用な指標を提供する。シグネチャーが塩基の順序を決めるものではなく、その代わりに核酸(例えば、A、G、C、T)の核酸塩基組成を表すものであるという点で、核酸配列とは異なっている。このように、本発明の方法は、高速の処理能力を提供し、検出および同定のために、増幅された標的配列を核酸配列決定する必要がない。さらに、単純なゲル染色であれ、検出可能な標識を含むプローブによるハイブリダイゼーションであれ、分離した配列の検出と一緒に行われる、ゲル電気泳動のように手間のかかる分離技術を行わなくてすむ。本発明の方法では、ある試料における全てのHIVのサブタイプを、単純な検出工程およびデータベース照会によって検出することが可能である。
【0042】
1つの実施形態において、試料は、ヒトなど哺乳動物であってもよい被検体から取得する。試料は一般的には血液であるが、HIVを保持する可能性のある他の任意の組織であってもよい。
【0043】
定義
「特異的にハイブリダイズする」とは、核酸が検出可能で特異的に別の核酸に結合できることを意味する。ポリヌクレオチドは、非特異的核酸による感知できる量の検出可能な結合を最小限に抑えるハイブリダイゼーション・洗浄条件下で、標的核酸鎖と特異的にハイブリダイズする。
【0044】
「標的配列」または「標的核酸配列」は、配列番号:1および2、配列番号:3および4、配列番号:5および6、配列番号:7および8、配列番号:9および10、および配列番号:11および12のポリヌクレオチドプライマーセットの1つ以上を使用して、増幅、検出、またはこの両方が行われる、HIVの核酸配列またはこの相補配列を意味する。また、標的配列という用語は、二本鎖核酸配列を意味することもあるが;標的配列は一本鎖であってもよい。標的が二本鎖の場合、本発明のポリヌクレオチドプライマー配列は、好ましくは、標的配列の両方の鎖を増幅する。特定の生物に対してより特異性の高い、または低い標的配列を選択することも可能である。例えば、標的配列は、全ての属、1つ以上の属、種もしくは亜種、血清学的グループ、栄養要求型、血清型、系統、単離株、またはその他の生物の部分集合に対して特異的であることも可能である。
【0045】
「被検試料」は、HIV標的配列を含有する可能性がある、蚊などの生物、または体液から採取された試料を意味する。被検試料は任意の採取源、例えば、組織、血液、唾液、痰、粘液、汗、尿、尿道スワブ、子宮頸部スワブ、泌尿器もしくは肛門のスワブ、結腸スワブ、眼球の水晶体液、脳脊髄液などから採取することができる。被検試料は、(i)採取源から得たものをそのまま、または(ii)試料の性質を改変するための前処理の後に使用することができる。即ち、被検試料は、使用する前に、例えば、血液から血漿もしくは血清を調製したり、細胞またはウイルス粒子を粉砕したり、固形物から液体を調製したり、粘液を希釈したり、液体を濾過したり、試薬を添加したり、核酸を精製したりなどして前処理することができる。一般的に、被検試料は血液を含有する。
【0046】
「被検体」は、哺乳動物、鳥、または爬虫類を含む。被検体は、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、または霊長類であってもよい。また、生物体はヒトであってもよい。生物体は、生体であっても死体であってもよい。
【0047】
「ポリヌクレオチド」とは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、修飾されたRNAもしくはDNA、またはRNAまたはDNAの模倣体(PNAなど)、ならびにこの誘導体、ならびにこの相同体である核酸高分子である。即ち、ポリヌクレオチドには、天然の核酸塩基、糖、共有ヌクレオシド間結合(骨格)からなる高分子、ならびに同様の働きをする非天然部分を有する高分子などがある。このような修飾または置換された核酸高分子が当分野において周知であり、本発明の目的では「類似体」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、通常、約10ヌクレオチドから約160ヌクレオチドまたは200ヌクレオチドまでの短いポリヌクレオチドである。
【0048】
「変異型ポリヌクレオチド」または「変異型核酸配列」は、配列番号1から12の核酸配列に対し、少なくとも約60%の核酸配列同一性、より好ましくは、少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の核酸配列同一性、さらにより好ましくは、少なくとも約99%の核酸配列同一性を有するポリヌクレオチドを意味する。変異体は、天然型ヌクレオチド配列を含まない。
【0049】
普通、変異型ポリヌクレオチドは、長さが少なくとも約8ヌクレオチドあり、しばしば、少なくとも約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60ヌクレオチドの長さであり、さらには、長さが約75から200ヌクレオチド以上ある。
【0050】
核酸配列に関する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るために配列を並べて、必要ならば、ギャップを挿入した後、目的とする配列中のヌクレオチドと一致する、候補配列中のヌクレオチドの割合(パーセンテージ)であると定義される。%核酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当分野の範囲内にある様々な方法、例えば、BLASTソフトウェア、BLAST−2ソフトウェア、ALIGNソフトウェアまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、公開され入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて行うことができる。当業者は、比較されている配列の全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムなど、アラインメントを測定するのに適したパラメータを決定できる。
【0051】
ヌクレオチド配列を整列させたら、所定の核酸配列Dに対する所定の核酸配列Cの%核酸配列同一性(または、所定の核酸配列Dに対して一定の%核酸配列同一性を有するか、またはこれを含む所定の核酸配列Cと言うこともできる。)を次のように計算することができる:
%核酸配列同一性=W/Z*100
ただし、式中、
Wは、CおよびDの配列アラインメントプログラムもしくはアルゴリズムの配列比較によって完全に一致するとスコアされたヌクレオチドの数であり
Zは、D中のヌクレオチドの総数である。
【0052】
核酸配列Cの長さが、核酸配列Dの長さに等しくないときは、Dに対するCの%核酸配列同一性と、Cに対するDの%核酸配列同一性とは一致しない。
【0053】
「%配列同一性を有するポリヌクレオチドから本質的になる」とは、このポリヌクレオチドが、長さは実質的には異ならないが、配列が実質的に異なる可能性があることを意味する。即ち、100ヌクレオチドの既知の配列「B」に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチドから本質的になるポリヌクレオチド「A」とは、ポリヌクレオチド「A」が、約100ntの長さであるが、最大20ntまで「B」配列と異なっている可能性があることを意味する。問題となっているポリヌクレオチド配列は、実質的に非同一の配列を付加して意図した2次構造を作出するときのように、末端を修飾して、例えば、特定の型のプローブ、プライマー、およびその他の分子ツールなどを作成するために1から15個のヌクレオチドを付加するなどして、長くしたり短くしたりすることもできる。配列が「から本質的になる」という語によって修飾される場合、このような非同一のヌクレオチドは、配列同一性を計算する際に考慮されない。
【0054】
相補的な断片にハイブリダイズする一本鎖DNAの特異性は、反応条件のストリンジェンシーによって決まる。DNA二本鎖を形成する傾向が減るに従い、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは増す。核酸のハイブリダイゼーション反応では、特異的ハイブリダイゼーションが起こりやすくなるよう、ストリンジェンシーを選択できる(高ストリンジェンシー)。特異性の低いハイブリダイゼーション(低ストリンジェンシー)を利用して、関連しているが同一ではない(相同であるが同一ではない)DNA分子または断片を同定することができる。
【0055】
DNA二本鎖は、(1)相補的塩基対の数、(2)塩基対の型、(3)反応混合液の塩濃度(イオン強度)、(4)反応温度、および(5)DNA二本鎖の安定性を低下させる一定の有機溶媒、例えばホルムアミドなどの存在によって安定する。一般的な方法は、温度を変えることである:相対温度を高くすれば、反応条件がよりストリンジェントになる。Ausubelらが、ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーについて卓越した説明をしている(Ausubel et al.,1987)。
【0056】
「ストリンジェントな条件」下でのハイブリダイゼーションとは、互いに少なくとも60%相同なヌクレオチド配列同士がハイブリダイズしたままになるハイブリダイゼーションプロトコールを意味する。
【0057】
ポリヌクレオチドは、ペプチドなど他の付加基を(例えば、インビボで宿主細胞の受容体を標的とするため)、または細胞膜を通過する輸送を促進する因子を含むことができる。さらに、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤(van der Krol et al.,1988)または挿入剤(Zon,1988)で、オリゴヌクレオチドを修飾することも可能である。オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤などに結合させることも可能である。
【0058】
有用なポリヌクレオチド類似体には、修飾された骨格または非天然型のヌクレオシド間結合を有する高分子などがある。修飾された骨格には、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルリン酸およびその他のアルキルリン酸などのように、骨格にリン原子を保持しているもの、ならびに、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、混合されたへテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖へテロ原子もしくはヘテロ環のヌクレオシド間結合によって形成された骨格などのように、もはやリン原子を有さないものがある。修飾された核酸高分子(類似体)は、1つ以上の修飾糖成分を含有することもできる。
【0059】
ヌクレオチドユニットの糖およびヌクレオシド間結合の両方が新しい基に置き換えられている、RNAまたはDNAの模倣体である類似体も有用である。これらの模倣体では、標的配列にハイブリダイゼーションするための塩基単位が維持されている。このような模倣体の例がペプチド核酸(PNA)であり、極めて良好なハイブリダイゼーション特性を有することが示されている(Buchardt et al.,1992;Nielsen et al.,1991)。別の例は、2’位および4’位のグリコシド炭素が2’−O−メチレン架橋によって結合されているロックド核酸(LNA)である。
【0060】
ヌクレオチドの範囲には、置換、化学的手段、酵素的手段、またはその他の手段によって、天然型ヌクレオチド以外の成分で核酸分子が共有結合的に修飾されている誘導体が含まれる。
【0061】
このように、本発明のポリヌクレオチドは、標的配列に特異的にハイブリダイズするプライマー、例えば、配列番号:1から12の核酸配列のいずれか1つを有する核酸分子、これらの核酸配列の類似体および/または誘導体、ならびにこの相同体を含む核酸分子などのプライマーを含む。本発明のポリヌクレオチドは、HIV変異型ポリヌクレオチドを増幅または検出するためのプライマーとして使用することができる。
【0062】
配列列番号:1から12のポリヌクレオチドは、市販の装置、例えば、Applied Biosystems USA Inc.(Foster City,CA;USA)、DuPont(Wilmington,DE;USA)、またはMilligen(Bedford,MA;USA)から入手可能なものを用いる固相合成法など、従来からの技術によって調製することができる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの修飾されたポリペプチドは、当分野において知られている同様の方法によって容易に調製することができる(Fino,1995;Mattingly,1995;Ruth,1990)。
【0063】
本発明の実施
本発明は、HIV変異体の核酸を検出する方法であって、被検試料を集め、逆転写用試薬、および配列番号:1から12のプライマーなどのプライマーを加えて、逆転写の後、試薬と配列番号:1から12のプライマーなどのHIV特異的プライマーを用いて増幅を行い、増幅された核酸(アンプリコン)があれば、質量分析法を用いてこれを解析し、得られたデータを用いてデータベースを検索する方法を含む。
【0064】
HIV核酸の増幅
配列番号:1から12のポリヌクレオチドは、試料中のHIVポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして使用することができる。ポリヌクレオチドは、増幅用プライマー対が、セットA、配列番号:1および2;セットB、配列番号:3および4;セットC、配列番号:5および6;セットD、配列番号:7および8;セットE、配列番号:9および10;セットF、配列番号:11および12であるプライマーとして使用される。
【0065】
プライマー対セットAからFによって直接増幅する前に、鋳型HIVポリヌクレオチドを逆転写する。1つの実施形態においては、A群からF群の中から選択されるプライマー対セットを逆転写に用いるが、別の実施形態においては、ポリTプライマーが使用される。
【0066】
増幅方法は、通常、(a)核酸増幅用試薬、セットAからFよりなる群から選択される少なくとも1つのプライマーセット、および少なくとも1つの標的配列を含有するおそれがある被検試料を含む反応混合液;ならびに(b)混合液を増幅条件に置き、標的配列が存在する場合には、該標的配列に相補的な核酸配列の少なくとも1つのコピーを生成させることを含む。
【0067】
上記方法の工程(b)は、例えば、検出工程の前に、例えば、反応混合液を10回から100回(またはそれ以上)、一般的には約20回から約60回、より一般的には約25回から約45回の熱サイクル処理することによって適切な回数繰り返すことができる。
【0068】
核酸増幅用試薬は、ポリメラーゼ活性を有する酵素、酵素の補因子、例えば、マグネシウムまたはマンガンなど;塩類;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD);およびデオキシヌクレオチド三リン酸(dNPT)、(dATP、dGTP、dCTP、およびdTTP)を含む。
【0069】
増幅条件とは、1つ以上の核酸配列のアニーリングおよび伸長を促進する条件である。このようなアニーリングは、ある程度予測可能な様式で、温度、イオン強度、配列の長さ、相補性、および配列のG:C含有量など、幾つかのパラメータに依存している。例えば、相補的核酸配列の環境温度を低下させると、アニーリングが促進される。一般的に、診断的適用には、融点Tよりも約2℃から18℃(例えば、約10℃)低いハイブリダイゼーション温度を用いる。イオン強度も、Tに影響を及ぼす。一般的な塩濃度は、陽イオンの性質および価数に依存するが、当業者には容易に理解される。同様に、高G:C含量および配列が長いほど二重鎖形成が安定化される。
【0070】
最後に、ハイブリダイゼーション温度は、プライマーのTまたはこの付近から選択される。従って、特定のプライマーセットに適したハイブリダイゼーション条件を得ることは、PCR技術の通常の技術範囲に含まれる。
【0071】
増幅手順は当分野において周知されており、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、転写介在増幅(TMA)法、ローリングサークル増幅法、核酸配列増幅(NASBA)法、リガーゼ連鎖反応、および鎖置換増幅(SDA)法などがある。当業者は、一定の増幅技術で使用するためには、プライマーを修飾する必要があるかもしれないこと;例えば、SDAプライマーは、通常、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を構成する付加的ヌクレオチドを5’末端付近に含んでいることを理解している。NASBA法では、プライマーは、RNAポリメラーゼのプロモーターを構成する付加的ヌクレオチドを5’末端付近に含むこともできる。このように修飾されたポリヌクレオチドは、本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0072】
本発明は、配列番号:1から12のポリヌクレオチドを、被検試料中の標的核酸配列を特異的に増幅する方法に使用することを含む。
【0073】
プライマーの化学修飾
プライマーを化学的に修飾して、例えば、ハイブリダイゼーション効率を高めることができる。例えば、種間の保存領域における変異(第3位におけるコドンのゆらぎによる。)が、DNAトリプレットの第3位においてしばしば生じるため、この位置に対応するヌクレオチドが、1種類よりも多くのヌクレオチドに結合できる「普遍塩基」となるよう、配列番号:1から12のプライマーを修飾することができる。例えば、イノシン(I)はU、CまたはAに結合し;グアニン(G)はUまたはCに結合し、ウリジン(U)はAまたはGに結合する。普遍塩基のその他の例には、5−ニトロインドールまたは3−ニトロピロールなどのニトロインドール類(Loakes et al.,1995)、変性ヌクレオチドdPまたはdK(Hill et al.)、5−ニトロインダゾールを含有する非環状ヌクレオシド類似体(Van Aerschot et al.,1995)またはプリン類似体であるl−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−イミダゾール−4−カルボキサミド(Sala et al.,1996)などがある。
【0074】
別の実施形態において、「ゆらぎ」塩基によるやや弱い結合を補うために、各トリプレットの第1位および第2位が非修飾型ヌクレオチドよりも大きな結合力で結合するヌクレオチド類似体によって占められるよう、オリゴヌクレオチドプライマーを設計することもできる。これらの類似体の例には、チミンに結合する2,6−ジアミノプリン;アデニンに結合するプロピンT;ならびにGに結合するプロピンC、およびG−クランプなどのフェノキサジンなどがある。プロピニル化ピリミジンが、米国特許第5,645,985号、第5,830,653号、および第5,484,908号に記載されている。フェノキサジンは、米国特許第5,502,177号、第5,763,588号、および第6,005,096号に記載されている。G−クランプは米国特許第6,007,992号および第6,028,183号に記載されている。
【0075】
対照
例えば、増幅条件が最適であることを保証するために、様々な対照を本発明の方法中に設定することができる。反応には、内部標準を含ませることができる。このような内部標準は、通常、対照となる標的核酸配列を含む。内部標準は、必要に応じて、付加的なプライマー対をさらに含むことができる。これら対照用プライマーの一次配列は、本発明のポリヌクレオチドと無関係で、対照となる標的核酸配列に対して特異的なものであってもよい。
【0076】
本発明に関して、対照である標的核酸配列は、
(a)特定の反応で使用されているプライマーもしくはプライマー対によって、または異なる対照用プライマーによって増幅することができ、
(b)質量分析技術によって検出される
核酸配列である。
【0077】
アンプリコンの質量分析による特性評価
PCR産物の質量分析(MS)法を利用する検出および特徴付けには、幾つかの際立った利点を有する。MS法は、全ての増幅産物を、この分子量によって同定するため、本質的に、放射性標識または蛍光標識を必要としない並行検出方式である。フェムトモルよりも少ない量の物質を必要とする。試料の分子量の正確な評価が、短時間で得られる。試料をガス相に変換するための様々なイオン化技術の1つを用いて、増幅産物から完全なままの分子イオンを生じさせることができる。これらのイオン化法には、エレクトロスプレーイオン化(ES)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、および高速原子衝撃(FAB)法などがある。例えば、核酸のMALDI法が、核酸のMALDI法に使用するためのマトリックスの例とともに、WO98/54751に記載されている。
【0078】
イオン化すると、異なった電荷をもつイオンが形成されるため、1つの試料から幾つかのピークが観察される。単一の質量スペクトルから得られた分子量の複数回の測定結果を平均して、アンプリコンの分子量の評価を提供する。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)法は、有意な量の断片化を引き起こすことなしに、試料の多価分子の分布が得られるため、10kDaよりも大きな分子量を有するタンパク質および核酸などの非常に分子量が大きい高分子にとって特に有用である。
【0079】
本発明に適した質量検出装置は、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT−ICR−MS)、イオントラップ、四重極、磁場、飛行時間(TOF)、Q−TOF、およびトリプル四重極などが挙げられる。
【0080】
一般的に、本発明において使用できる有用な質量分析技術は、タンデム質量分析法、赤外多光子解離法、および熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(PGC−MS)などが挙げられる。
【0081】
大きなDNAについて分子量を正確に測定することは、PCR反応から生じた陽イオンの各鎖への付加、天然に豊富に存在する13C同位体および15N同位体由来の同位体ピークの解明、および任意のイオンへの荷電状態の割り当てによって制約される。これらの陽イオンは、流れに対して直角の電場勾配存在下で、PCR産物を含有する溶液を、酢酸アンモニウムを含有する溶液に接触させるフロースルーチップを使用するインライン透析によって除去される。あと2つの問題は、100,000よりも大きい解析能で操作すること、および同位体が枯渇したヌクレオチド三リン酸をDNAに取り込ませることによって対処することができる。機器の解析能も考慮すべき事柄である。10,000の解析能では、84量体のPCR産物の[M−14H+]14−荷電状態からのモデル化されたシグナルは十分に特徴付けされておらず、荷電状態の割り当て、または正確な質量は不可能である。33,000の解析能では、個々の同位体成分に由来するピークを見ることができる。100,000の解析能では、同位体ピークが基準値まで分解され、イオンへの荷電状態の割り当てはそのまま行うことができる。[13C、15N]−枯渇三リン酸塩は、例えば、枯渇培地で微生物を増殖させて、ヌクレオチドを回収することによって得られる(Batey et al.,1992)。
【0082】
タンデム質量分析技術は、分子の同一性または配列に関連した、より決定的な情報を提供することができる。タンデムMS法は、分離および検出の両工程が質量分析法に基づいている質量分析の2つ以上の段階を併用することを含む。第一の段階は、さらなる構造情報を得ようとする試料のイオンまたは成分を選択するために使われる。その後、選択されたイオンを、例えば、黒体放射法、赤外多光子解離法、または衝突活性化法を用いて断片化する。例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法によって生じたイオンを、IR多光子解離法を用いて断片化することができる。この活性化が、グリコシド結合およびリン酸骨格の解離をもたらして、wシリーズ(内部切断後、本来の3’末端および5’リン酸を有する。)およびa−Baseシリーズ(本来の5’末端および3’フランを有する。)と呼ばれる2組の断片イオンを生成する。
【0083】
その後、質量分析の第二の段階を用いて、これらの得られた生成イオン断片の質量を検出し測定する。試料の分子配列を本質的に完全に分析するために、このようなイオン選択に続く断片化作業を何度も行うことができる。
【0084】
PCRアンプリコンは、ESI−TOF質量分析法によって解析されると、二本鎖DNAアンプリコンの各鎖の質量である一組の質量をもたらす。一方の鎖のみの分子量が、所定のHIVサブタイプを明確に同定するのに十分な情報を提供する場合もある。一方、両方の鎖から情報を決定することが好ましい場合もある。
【0085】
また、一本鎖の分子量が、1つよりも多いBCSと一致する可能性もある。同じことが、相補鎖についても言うことが可能である。これらの曖昧さは、別の相補性という制約を適用すれば、解消される。即ち、A28242925というBCSをもつ鎖は、この相補鎖A24282529と対合する。一般的には、あるアンプリコンの二本鎖について可能なBCS解のセットを比較すると、通常、一対の鎖のみが互いの相補鎖である。この一対が、アンプリコンのBCSについての一意解を表し、その他の可能な解は、非相補的であるため捨てられる。
【0086】
例えば、2つの質量をもたらすESI−TOF質量分析法によってアンプリコンが解析する:第一の質量は、一方の鎖に関するもので、32,889.45Daであり、第二の質量は、第二鎖に関するもので、33,071.46Daである。DNA塩基の平均質量を次のように仮定する:
A=313.0576amu
G=328.0526amu
C=289.0464amu;および
T=304.0461amu。
【0087】
各鎖には5個の解が可能であり、各解から測定質量が得られる。第一鎖および第二鎖について計算された可能な解は以下の通りである:
【0088】
【表4】

【0089】
これらの可能な解を調べると、相補性という制約を適用した場合に、第一鎖が第二鎖の相補配列となるただ1つの解が存在する;即ち、第一鎖の全てのAに対し、第二鎖ではTが存在し;第一鎖の全てのGに対し、第二鎖ではCが存在するなどである。従って、唯一の解は以下の通りである:
第一鎖:A28292524
第二鎖:T28292524
【0090】
質量修飾「標識」を使用することもできる。質量の違いがより明確になるよう非修飾塩基とは異なる分子量を有するヌクレオチド類似体または「標識」を、増幅過程で取り込ませる(例えば5−(トリフルオロメチル)デオキシチミジン三リン酸)。このような標識は、例えば、WO97/33000に記載されている。これは、いずれかの質量と一致する可能性のある塩基組成の数をさらに限定する。例えば、別の核酸増幅反応において、dTTPの代わりに5−(トリフルオロメチル)デオキシチミジン三リン酸を使用することができる。通常の増幅産物と、標識された産物との間で質量の変化が測定されることを使用して、一本鎖のそれぞれにおけるチミジンヌクレオチドの数を定量する。鎖は相補的であるため、各鎖におけるアデノシンヌクレオチドの数も決定される。
【0091】
別の増幅反応では、各鎖におけるG残基およびC残基の数が、例えば、シチジンの類似体である5−メチルシトシン(5−meC)またはプロピンCを用いて決定される。A/T反応およびG/C反応を組み合わせて、その後、分子量測定を行うと、一意的な塩基組成が得られる。この方法を表4にまとめる。
【0092】
【表5】

【0093】
表4では、質量標識であるホスホロチオエートA(A)を使用してバシラス・アンスラシス(Bacillus anthracis)クラスターを区別した。ESI−TOF質量分析法によって測定したところ、B.アンスラシス(A1414)の平均MWは14072.26、B.アンスラシス(A1314)の平均分子量は14281.11であり、ホスホロチオエートAの平均分子量は+16.06であった。
【0094】
別の例では、各鎖の測定分子量をそれぞれ30,000.115Daおよび31,000.115Daであると仮定し、dT残基およびdA残基の測定数を(30,28)および(28,30)とする。分子量が100ppmまで正確であれば、各鎖にとって可能なdG+dCの組み合わせが可能であるのは7通りである。しかし、測定分子量が10ppmまで正確であれば、dG+dCの組み合わせは2通りしかなく、1ppmの精度では、各鎖の塩基組成の可能性はただ1つしかない。
【0095】
アンプリコンを同定する指標としての塩基組成シグネチャーとデータベース照会
分子量のデータを塩基組成シグネチャーに変換することは、一定の解析にとって有用である。「塩基組成シグネチャー」(BCS)は、アンプリコンの分子量から決定された正確な塩基組成である。BCSは、特定の生物の特定の遺伝子の指標を提供できる。
【0096】
塩基組成は、配列と同様に、同一種内の単離株間でわずかに異なるだけである。各HIVサブタイプについて組成制約の周囲に「塩基組成の確率クラウド」を作ることによって、この多様性を管理することが可能である。これによって、配列解析と同様のやり方で、HIVのサブタイプを同定することが可能になる。「疑似4次元プロット」を用いて、塩基組成確率クラウドの概念を視覚化することができる。例えば、米国特許第7,217,510号、第7,108,974号、第7,255,992号、第7,226,739号およびUS2004/0219517参照。
【0097】
質量分析結果から集められたBCSを用いて、様々なHIVサブタイプのプライマー対セットAからFによって増幅された配列からの情報、例えば、G+C含量、分子量、および、当然のことながら、BCSなどを含むデータベースに照会することができる。この検索から、増幅された標的配列からHIVのサブタイプを同定することができる。例えば、米国特許第7,217,510号、第7,108,974号、第7,255,992号、第7,226,739号およびUS2004/0219517参照。
【0098】
データベース
保存配列に隣接する可変領域、例えば、プライマーセットAからFに隣接する領域などを使用して、BCSのデータベースを構築することができる。この戦略は、HIVのgp120エンベロープタンパク質のV3ループ変異体の配列の構造に基づくアラインメントを作出することを含む。また、プライマーセットAからFを用いて、幾つかのHIV野外分離株を調べることによっても、データベースを組み立てることができる。別の実施形態では、データベースが、既知の配列のデータと野外から集められたデータをまとめる。
【0099】
本発明にとって有用なデータベースは、既知のHIV変異体の分子量および(プライマーセットAからFによって定義された)標的配列のBCS、ならびに、必要に応じて、無害のバックグラウンド生物に由来する相同領域の質量およびBCSを含む。後者を用いて、バックグラウンド生物によって生み出されたシグネチャーを評価し、差し引く。任意に、整合フィルターおよびノイズの共分散の累積和評価(running−sum estimate)を用いて、既知のバックグラウンド生物の最尤検出が実施される。バックグラウンドのシグナル強度を評価し、整合フィルターと一緒に使用して、シグネチャーを形成し、次にこれを差し引く。生物に整合フィルターを用い、整理されたデータにノイズ共分散の累積和評価を用いるのと同様の様式で、最尤法をこの「整理された」データに適用する。
【0100】
プライマー対セットAからCを用いて、HIV−1に関する簡単なデータベースに蓄積することができたデータの一例を表5に示すが、この表は、プライマーセットAからCから増幅された配列(配列番号:14から16の配列を生じた;ただし、増幅配列にはプライマー配列そのものも含まれていることに留意されたい。)に由来するBCS、G+C含量、および分子量を示している。
【0101】
【表6】

【0102】
キット
HIVサブタイプの核酸の検出を可能にするキットの一部として、配列番号:1から12のポリヌクレオチドを含ませることができる。このようなキットは、本発明のポリヌクレオチドの1つ以上を含む。1つの実施形態において、被検試料においてHIVサブタイプの核酸を特異的に増幅するためのプライマーとして使用するために、ポリヌクレオチドを組み合わせてキットの中で提供する。
【0103】
また、HIVサブタイプの核酸を検出するためのキットは、対照用の標的核酸を含むことも可能である。また、キットは、対照用標的核酸配列の配列を特異的に増幅する対照用プライマーを含むこともできる。
【0104】
また、キットは、増幅試薬、反応成分、および/または反応用容器を含むことも可能である。ポリヌクレオチドの1つ以上を、前述したように修飾することができる。本キットの1つ以上の成分を凍結乾燥することができ、本キットは、さらに、凍結乾燥された製品を再構築するのに適した試薬を含むことも可能である。本キットは、さらに使用説明書を含むこともができる。
【0105】
さらなる実施形態において、本キットは、BCSの同定を可能にするデータベースを含む、コンピューターで読み取り可能な媒体をさらに含む。必要に応じて、コンピューターで読み取り可能な媒体は、データ収集および/またはデータベース検索を可能にするソフトウェアを含むことも可能である。キットは、教材とともに供給することもできる。使用説明は、紙またはその他の基板上に印刷してもよく、および/または、電子的に読むことができる媒体、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどとして供給することもできる。
【0106】
キットを供給するとき、組成物の相異なる成分を個別の容器に入れておき、使用直前に混合するようにすることもできる。成分をこのように個別に包装すれば、活性成分を長期間保存することが可能になる。例えば、ポリヌクレオチドが付着している粒子の1つ以上、基質、および核酸酵素を個別の容器に入れて供給する。
【0107】
本キットに含まれる試薬は、相異なる成分が保存され、容器の素材によって吸収されたり変質したりしないような任意の種類の容器に入れて供給することができる。例えば、密封型ガラス製アンプルは、窒素などの中性で非反応性の気体下で包装された1つ以上の試薬または緩衝液を含むことができる。アンプルは、任意の適切な素材、例えば、ガラス、有機ポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレンなど;セラミック、金属、または同様の試薬を保持するために一般的に使用されている、その他の任意の素材などから成り立ち得る。適切な容器の別例には、アンプルと同様の物質から製造することができる簡単なビン、およびアルミニウムまたは合金などのホイルで裏打ちされた内部を有することも可能な封筒などがある。その他の容器は、試験管、バイアル、フラスコ、ビン、注射器などである。
【0108】
実施例
以下の実施例は単に例示のためのものであって、特許請求の範囲に記載された発明を制限するものと解すべきではない。目的とする発明の実施を同様に成功させ得る、当業者にとって利用可能な様々な代替的技術および手順が存在する。
【実施例1】
【0109】
プライマー設計
本実施例では、T3細胞/マクロファージ指向性に関与するHIVgp120エンベロープタンパク質のV3ループ変異体の同定を可能にするための質量分析に適した増幅産物を生成させるために、ポリメラーゼ連鎖反応法およびその他のポリヌクレオチド増幅プロトコールを使用するのに適したAからFの増幅プライマーセットを設計した。
【0110】
OLIGO6ソフトウェア(Molecular Biology Insights,Inc.;Cascade,CO)を用い、以下の設計パラメータを用いて、プライマーを設計した:
200nMのプライマー濃度
50mMの1価陽イオン
0.7mMの遊離2価陽イオン
【実施例2】
【0111】
標的配列を増幅するプライマーの有効性の実証:プライマーセットA、B、およびC(予測)
表1に示され、表6に再掲されているプライマーセットのA(配列番号:1および2)およびB(配列番号:3および4)およびC(配列番号:5および6)を、標的配列増幅することができるか、および検出すべき増幅配列について試験する。プライマー自体は、イノシン、ウリジン、2,6−ジアミノプリン、プロピンC、またはプロピンTなどのヌクレオチド類似体をさらに取り込むことができる。増幅反応の前に逆転写反応を行って、HIVのRNAゲノムからcDNA鋳型を作成しておく。
【0112】
【表7】

【0113】
PCRの条件は以下の通りである:
【0114】
【表8】

【0115】
または、PCRの初期段階での誤ったプライミングを避けるために、「ホットスタート」ポリメラーゼを使用することも可能である。PCRサイクリングのパラメータへの調整には、標準PCRサイクリングの前に熱活性化工程が含まれる。
【0116】
【表9】

【0117】
予測された増幅産物に対して質量分析を行い、これらのBCSを決定して、各標的配列の質量および/またはBCSなど、プライマーセットA(配列番号:1および2)、B(配列番号:3および4)、およびC(配列番号:5および6)の標的となる領域から得たBCS情報を含むデータベースの検索を併用する。このプロトコールは、プライマーセットD、E、およびFで行うことも可能である。
【実施例3】
【0118】
標的配列を増幅するプライマーの有効性の実証:プライマーセットD、E、およびF(予測)
表1に示され表6に再掲されているプライマーセットD(配列番号:7および8)およびE(配列番号:9および10)およびF(配列番号:11および12)を、標的配列増幅することができるか、および検出すべき増幅配列について試験する。ただし、この増幅反応は2段階に分けられる:即ち、低ストリンジェンシーPCR条件下で増幅を行う第一段階、次に、高ストリンジェンシーPCR条件下での第二段階。低ストリンジェンシーでは、プライマー配列とHIVのcDNA配列との間に塩基対のミスマッチが起こる余地があり、異なったHIVサブタイプへのプライマーのハイブリダイゼーションが起こる可能性がある。これらのプライマー自体は、イノシン、ウリジン、2,6−ジアミノプリン、プロピンC、またはプロピンTなどのヌクレオチド類似体をさらに取り込むことができる。増幅反応の前に逆転写反応を行って、HIVのRNAゲノムからcDNA鋳型を作成しておく。
【0119】
低ストリンジェンシーのPCRサイクルは以下の通りである。
【0120】
【表10】

【0121】
高ストリンジェンシーのPCRサイクルは以下の通りである。
【0122】
【表11】

【0123】
予測された増幅産物に対して質量分析を行い、これらのBCSを決定して、各標的配列の質量および/またはBCSなど、プライマーセットA(配列番号:7および8)、B(配列番号:9および10)、およびC(配列番号:11および12)の標的となる領域から得たBCS情報を含むデータベースの検索を併用する。このプロトコールは、プライマーセットA、B、およびCで行うことも可能である。
【実施例4】
【0124】
質量分析法(予測)
フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析法
機器類:FT−ICR機器は、7テスラの能動遮蔽型超伝導磁石および改良型Bruker Daltonics ApexII 70cイオン光学機器(Bruker Daltonics;Billerica;MA)ならびに真空チャンバーから基本的に構成されている。分光計は、LEAP PAL自動サンプリング装置(LEAP Technologies;Carrboro,NC)およびハイスループット・スクリーニング用に特注製作された流体制御装置に接続されている。試料を、約1試料/分の速さで96ウェルもしくは384ウェルのマイクロタイタープレートから直接解析する。Brukerデータ収集用プラットフォームには、自動サンプリング装置を制御し、タンデムMS実験用の複合rf励起波形(周波数掃引、フィルター処理されたノイズ、保存波形逆フーリエ変換(SWIFT)など)を発生させることができる任意波形発生器を含む、研究室製の補助データステーションが補充されている。一般的な性能特性には、100,000超の質量分解能(FWHM)、低ppm質量測定誤差、および50m/zから5000m/zの動作可能m/z範囲などがある。
【0125】
改良型ESI源:供試量制限分析においては、被検溶液を、3−Dマイクロマニピュレーターに取り付けられた内径30mmの溶融石英ESIエミッターに、150nL/分で送達する。このESIイオン光学機器は、加熱金属キャピラリ、rfのみの六重極、スキマーコーン、および補助ゲート電極からなる。6.2cmのrfのみの六重極は、直径1mmのロッドからなり、周波数5MHz、電圧380Vppで操作される。電気機械式シャッターを用いて、エレクトロスプレープルームが、データステーションからのTTLパルスによって「開」の位置に置かれない限り入口キャピラリに侵入することを防止することができる。「閉」の位置にあるときには、ESIエミッターとシャッターの表面との間で安定したエレクトロスプレープルームが維持される。シャッターアームの背面は、入口キャピラリと真空シールを形成するように配置することができるゴム状シールを含んでいる。このシールを取り除くと、シャッターのブレードとキャピラリの入口との間にできる1mmの隙間によって、シャッターが開の位置にあるか閉の位置にあるかに関係なく、外付けイオン貯蔵容器内を一定の圧力に保つことが可能になる。シャッターを始動させると、イオンの「タイムスライス」が入口キャピラリに侵入できるようになり、その後、外付けイオン貯蔵容器内に蓄積される。イオンシャッターの反応応答時間が迅速ならば(<25ms)、再現可能でユーザーが定義した間隔で、イオンを外付けイオン貯蔵容器の中に注入して蓄積することが可能になる。
【0126】
赤外多光子解離用装置:10.6μmにおける25ワットのCW COレーザー操作を分光測定器に連動させて、タンデムMSに適用するための赤外多光子解離(IRMPD)ができるようにする。アルミニウム製の光学台を、能動遮蔽型超伝導磁石から約1.5mの所において、レーザー光が、磁石の中心軸と揃うようにする。標準的な赤外線に適合する鏡と運動論的鏡台(kinematic mirror mount)を用いて、非集束3mmレーザー光を、FT−ICR捕捉イオンセルの捕捉用電極にある3.5mmの穴を真っすぐに横断し、最終的にスキマーコーンに作用する外付けイオン誘導装置の六重極領域を縦断するように調整する。この手順によって、赤外多光子解離(IRMPD)を、捕捉イオンセルの中でm/z選択的な様式で(例えば、目的とする種をSWIFT単離した後)、または中性分子との衝突によって、IRMPDによって生じた準安定断片イオンを安定させて、断片イオン収率および配列カバー率の増加をもたらす、外付けイオン貯蔵容器の高圧領域の中で広帯域方式で行うことが可能になる。
【実施例5】
【0127】
被検試料からHIVの存在を測定する(予測)
HIVを保菌している疑いのある生物または被験者からの試料を、周知の方法で処理し、その後逆転写を行って、実施例2または3に示されている方法など、標準的な方法を用いるPCRを用いて、AからFよりなる群から選択されるプライマーセットを用いてアッセイを行う。増幅産物を、実施例4に記載されている装置構成を用いた質量分析によってアッセイを行う。
【0128】
必要があれば、例えば、細胞溶解、遠心分離、およびエタノール沈殿、またはその他当分野において周知の技術によって、試料から核酸を単離する。
【0129】
PCR産物のESI−MS実験における内部質量標準を用いて、質量測定の精度を測定することができる。プライマーセットAからEおよび/またはHIVからのF PCR産物を含有する溶液に加えられた20量体のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドなどの質量標準。
【0130】
予測された増幅産物に、各標的配列の質量および/またはBCSなど、プライマーセットAからFの標的となる領域から得られた情報を含むデータベースの検索と一体となった質量分析を行う。
【0131】
【表12】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の分子量を決定する工程;および
増幅産物の分子量を、データベース内にある標的配列の計算上の分子量または測定された分子量と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法。
【請求項2】
被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の塩基組成を決定する工程;および
増幅産物の塩基組成を、データベース内にある標的配列の計算上の塩基組成または測定された塩基組成と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法。
【請求項3】
標的配列の同定が、増幅産物の配列決定を含まない、請求項1または2の方法。
【請求項4】
質量分析法が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT−ICR−MS)、飛行時間型質量分析法(TOF−MS)、またはエレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析法である、請求項1または2の方法。
【請求項5】
プライマーセットが、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む、請求項1または2の方法。
【請求項6】
ヌクレオチド類似体が、イノシン、ウリジン、2,6−ジアミノプリン、プロピンC、およびプロピンTからなる群より選択される、請求項5の方法。
【請求項7】
分子量修飾標識が増幅産物に取り込まれる、請求項1または2の方法。
【請求項8】
被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の分子量を決定する工程;および
増幅産物の分子量を、データベース内にある標的配列の計算上の分子量または測定された分子量と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法。
【請求項9】
被検試料におけるHIVのサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
セットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
前記混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
前記増幅産物の塩基組成を決定する工程;および
前記増幅産物の塩基組成を、データベース内にある標的配列の計算上の塩基組成または測定された塩基組成と比較してHIVのサブタイプを同定する工程を含む方法。
【請求項10】
標的配列の同定が、増幅産物の配列決定を含まない、請求項8または9の方法。
【請求項11】
質量分析法が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT−ICR−MS)、飛行時間型質量分析法(TOF−MS)、またはエレクトロスプレーイオン化飛行時間型質量分析法である、請求項8または9の方法。
【請求項12】
プライマーセットが、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む、請求項8または9の方法。
【請求項13】
ヌクレオチド類似体が、イノシン、ウリジン、2,6−ジアミノプリン、プロピンC、およびプロピンTからなる群より選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
分子量修飾標識が増幅産物に取り込まれる、請求項9または10の方法。
【請求項15】
以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セット、および増幅用試薬を含むキットであって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFが、配列番号:11の核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列を含むリバースプライマーを含むものであるキット。
【請求項16】
HIVのサブタイプを同定するために、データベース内にある標的配列の計算もしくは測定された塩基組成もしくは分子量を含むデータベースにアクセスする手段をさらに含む、請求項15のキット。
【請求項17】
以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セット、および増幅用試薬を含むキットであって、
セットAが、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBが、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットCが、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDが、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEが、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットFが、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものであるキット。
【請求項18】
HIVのサブタイプを同定するために、データベース内にある標的配列の計算もしくは測定された塩基組成もしくは分子量を含むデータベースにアクセスする手段をさらに含む、請求項17のキット。
【請求項19】
被検試料における少なくとも2つのHIVサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAは、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBは、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットCは、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDは、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEは、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFは、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の分子量を決定する工程;および
増幅産物の分子量を、データベース内にある標的配列の計算上の分子量または測定された分子量と比較して、少なくとも2つのHIVサブタイプを同定する工程を含む方法。
【請求項20】
被検試料における少なくとも2つのHIVサブタイプを同定する方法であって、
被検試料を提供する工程;
以下のセットA、B、C、D、E、およびFからなる群より選択されるプライマー対セットを含む反応混合液を作成する工程であって、
セットAは、配列番号:1の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:2の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットBは、配列番号:3の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:4の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットCは、配列番号:5の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:6の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットDは、配列番号:7の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:8の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、
セットEは、配列番号:9の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:10の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含み、ならびに
セットFは、配列番号:11の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むフォワードプライマー、および配列番号:12の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含むリバースプライマーを含むものである工程;
混合液を増幅条件において増幅産物を生成させる工程;
増幅産物の塩基組成を決定する工程;および
増幅産物の塩基組成を、データベース内にある標的配列の計算上の塩基組成または測定された塩基組成と比較して、少なくとも2つのHIVサブタイプを同定する工程を含む方法。
【請求項21】
少なくとも2つのサブタイプが、CCR5結合型サブタイプおよびCXCR4結合型サブタイプを含む、請求項19または20の方法。
【請求項22】
CXCR4結合型サブタイプが、被検試料中全HIVの少なくとも1%を含む、請求項21の方法。
【請求項23】
CXCR4結合型サブタイプが、被検試料中全HIVの少なくとも5%を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
CXCR4結合型サブタイプが、被検試料中全HIVの少なくとも10%を含む、請求項22の方法。

【公表番号】特表2012−512663(P2012−512663A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542468(P2011−542468)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068665
【国際公開番号】WO2010/080582
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】