説明

HKI−272とビノレルビンとを含有する抗悪性腫瘍剤の組合せ

新生物の治療におけるHKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せを提供する。また、この組合せを、その他の抗悪性腫瘍剤または免疫調節物質と場合により組み合わせて使用する、転移性乳癌を含めた乳癌および肺癌を含む新生物を治療するためのレジメン、キットおよび方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
乳癌は、女性において最も頻繁に診断される悪性腫瘍であり、世界的に女性の癌に関連した死亡の上位2つの原因のうちの1つである。世界中で、乳癌の発生率は増加しており、この疾患は、今後10年間で、500万人の女性に影響を及ぼすであろうことが推定される。治療により、症状の制御、生存の延長、および生活の質の維持が可能となる。しかし、治癒を意図して治療された全ての患者のうち約40%〜50%において、不治の転移性疾患が発症する。転移性乳癌は治癒されないので、現在の治療の目標は緩和である。
【0003】
いくつかの癌の型において、増殖因子シグナル伝達の調節解除が観察され、これは、ErbB受容体の過剰活性化を伴う。ErbB受容体ファミリーは、ErbB−1(HER−1、上皮増殖因子受容体(EGFR)としても知られている)、ErbB−2(neuまたはHER−2としても知られている)、HER−3(ErbB−3としても知られている)、およびHER−4(ErbB−4としても知られている)を含む。ErbB−1の過剰発現が、非小細胞肺癌(NSCLC)(40%〜80%)、乳癌(14%〜91%)、および膵臓癌(30%〜89%)において観察される。NSCLCにおいてはまた、突然変異によるErbB−1の増幅の活性化も、患者の10%〜30%において生じる。
【0004】
ErbB−2の過剰発現は通常、erbB−2遺伝子の増幅の結果生じるが、これは、転移性乳癌(MBC)を有する患者の25%〜30%において、腫瘍組織中に観察され、悪性の形質転換と関係する。ErbB−2の過剰発現には通常、より侵襲性の腫瘍の表現型、より悪い全体的な予後、および癌の発生の全ての段階においてより速い再発時間と関係する。MBCを有する女性においては、この過剰発現によって、アントラサイクリン/アルキル化剤またはタキサンのいずれかに基づく化学療法を用いた治療に対して相対的な抵抗性が付与される。腫瘍形成におけるErbB−2の過剰発現は、主として乳癌において研究されているが、また、その他の癌においても観察される。
【0005】
癌についての現在の療法のうち、ErbB−2の過剰発現によって具体的に特徴付けられているものは、ビノレルビン、トラスツズマブおよびHKI−272である。ビノレルビンは、広い抗腫瘍活性を示す半合成ビンカアルカロイドであり、微小管の破壊を通して作用する。ビノレルビンは、ビンクリスチンまたはビンブラスチンよりも低い神経毒性プロファイルを示す。ビノレルビンは、ビンクリスチンまたはビンブラスチンよりも治療濃度では軸索の微小管に対する毒性が低いことが示されている。進行性の乳癌を有する対象に対して実施された研究では、ビノレルビンを単一の薬剤として用いた治療は、その他の化学療法と少なくとも同程度に効率的であるが、毒性のリスクはより低い。しかし、毒性のリスクは、以前の抗癌治療の数と並行して増加する。
【0006】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)薬物)は、ErbB−2の細胞外ドメインに対して特異的なヒト化モノクローナル抗体である。これは、第一選択の治療として転移性乳癌において、または化学療法後に腫瘍の進行を示す患者において、単独でまたはタキサンと組み合わせて使用する場合、顕著な臨床上の利益および顕著な抗腫瘍活性を示す。生存の改善により、トラスツズマブに基づく療法が、ErbB−2陽性MBCを有する女性のための治療の標準となっている。進行性のまたは転移性の疾患を有する女性の場合、乳癌は、トラスツズマブ治療にもかかわらず最終的には再発する。また、トラスツズマブに基づく療法には、潜在的な心臓毒性も伴う。特定の乳癌細胞は、細胞外ドメインErbB−2受容体の切断等の二次的なErbB−2の突然変異の発生により、トラスツズマブに抵抗性である。そのような突然変異の結果、抗体によって認識されない癌細胞が生じ得る。
【0007】
最近の研究において、ビノレルビンまたはタキサン(カルボプラチンを併用するもしくは併用しないパクリタキセル、またはドセタキセル)のいずれかと組み合わせたトラスツズマブを利用して、ErbB−2過剰発現MBCを有する対象を治療した。予想されたように、トラスツズマブとビノレルビンとの組合せについて最も頻繁に観察された毒性は好中球減少であった。
【0008】
HKI−272は、小型分子であり、上皮増殖因子受容体(ErbB−1またはEGFR)、ErbB−2(HER−2)およびErbB−4(HER−4)に対して特異的な不可逆性の汎ErbB受容体阻害剤である。HKI−272は、この受容体のキナーゼ活性を、受容体の細胞内アデノシン三リン酸(ATP)結合部位に結合することによって遮断する。HKI−272は、細胞内においては、ErbB受容体の自己リン酸化を、細胞増殖阻害と一致する用量で遮断する。in vitroにおいては、HKI−272は単独では、ErbB−1、ErbB−2およびHER−4のキナーゼ活性を阻害し、乳房腫瘍細胞系および肺腫瘍細胞系を用いた場合、腫瘍細胞の増殖を阻害し、ゲフィチニブまたはエルロチニブに抵抗性である肺癌細胞の強力な増殖阻害を示す。in vivoにおいては、HKI−272は、異種移植動物モデル中の腫瘍の増殖を遮断する。概して、HKI−272は、in vivoにおいては、ErbB−1依存性腫瘍よりもErbB−2依存性腫瘍に対してより強力であるが、in vitroにおいては、これら2つのキナーゼに対して同等の活性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当技術分野では、転移性乳癌および固形腫瘍を治療するのに有用である治療方法、レジメン、組成物およびキットが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固形腫瘍および転移性乳癌等の癌を治療するために、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを使用するレジメン、組成物および方法を提供することによって、当技術分野の必要性に対処する。
【0011】
1つの態様では、対象において新生物を治療するためのレジメンを提供し、このレジメンは、ビノレルビン化合物を投与するステップと、HKI−272化合物を投与するステップとを含む。望ましくは、ビノレルビン化合物はビノレルビンであり、HKI−272化合物はHKI−272である。1つの実施形態では、新生物は乳癌である。
【0012】
別の態様では、対象において、HER−2の過剰発現または増幅を伴う固形腫瘍を治療するためのレジメンを提供し、このレジメンの1サイクルは21日を含む。このレジメンは、サイクルの第1日に開始する、HKI−272の少なくとも1単位用量を経口投与するステップと、サイクルの第1日および第8日における、ビノレルビンの少なくとも1単位用量を静脈内投与するステップとを含む。
【0013】
さらなる態様では、対象において、HER−2の過剰発現または増幅を伴う転移性癌を治療するためのレジメンを提供する。このレジメンの1サイクルは21日を含み、このレジメンは、サイクルの第2日に開始する、HKI−272の少なくとも1単位用量を経口投与するステップと、サイクルの第1日および第8日における、ビノレルビンの少なくとも1単位用量を静脈内投与するステップとを含む。
【0014】
さらに別の態様では、ビノレルビン化合物とHKI−272化合物とを含む製品を、哺乳動物において新生物を治療する場合に、同時、別個または順次に使用するための組合せ調製物として提供する。
【0015】
その上さらなる態様では、1つの個体哺乳動物において新生物を治療するための薬学的パックを提供し、この薬学的パックは、(a)ビノレルビンの少なくとも1単位用量と、(b)HKI−272の少なくとも1単位用量とを含む。
【0016】
別の態様では、医薬組成物を記載し、これは、ビノレルビン、HKI−272および少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含有する。
【0017】
さらに別の態様では、治療を必要とする哺乳動物において、HER−2の過剰発現または増幅を伴う新生物を治療する方法を提供し、この方法は、ビノレルビン化合物の単位用量を投与するステップと、HKI−272化合物の単位用量を投与するステップとを含む。
【0018】
本発明のその他の態様および利点が、以下の本発明の詳細な説明から容易に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、癌を治療するために、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せを使用する組成物、方法およびレジメンを提供する。本発明は、1つの実施形態では、新生物を治療するためのHKI−272とビノレルビンとを含む組成物を提供する。また、哺乳動物において新生物を治療する場合に、同時、別個または順次に使用するために製剤化した、HKI−272とビノレルビンとを含有する製品も提供する。また、本発明は、乳癌のより早期のアジュバント療法および/またはネオアジュバント療法としても有用である。本発明は別の実施形態では、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを組み合わせて使用または投与するための方法を提供する。
【0020】
治療レジメンおよびその構成成分
理論に縛られる意図はないが、本発明者らは、HKI−272が、細胞外ドメインではなく、細胞内ErbB−2キナーゼを標的にすることから、新生物を治療するためにはHKI−272とビノレルビンとの組合せが望ましいと仮定する。したがって、この組合せは、感受性および抵抗性の異なる機構を有し、そのため、トラスツズマブとビノレルビンとの治療のための組合せを上回る利点を示す。さらに、HKI−272とビノレルビンとの組合せは、ビノレルビンとその他の汎ErbB阻害剤との組合せよりも有効であることが予期される。これは、HKI−272が、受容体のATP結合ポケット中の標的システイン残基における不可逆的な結合によってチロシンキナーゼ阻害活性を示すことに起因する。
【0021】
これらの方法、組合せおよび製品は、多様な新生物、特に、HER−2の過剰発現または増幅を伴うものを治療するのに有用である。1つの実施形態では、新生物は、固形腫瘍または進行性の固形腫瘍である。さらなる実施形態では、新生物は転移性である。別の実施形態では、本明細書の記載に従って治療することができる新生物として、例えば、肺癌(気管支肺胞上皮癌および非小細胞肺癌等)、乳癌(転移性乳癌およびHER−2陽性の乳癌等)、前立腺癌、骨髄腫、頭頚部癌、移行上皮癌、子宮頚部の小細胞および大細胞の神経内分泌癌が挙げられる。さらに別の実施形態では、新生物は、トラスツズマブに抵抗性である。
【0022】
本明細書に記載するレジメン、方法および組成物は、構成成分、すなわち、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との併行、同時、順次または別個の投与を含む。本明細書で使用する場合、「組成物」という用語によって、2つ以上の構成成分が混合されている医薬組成物、ならびに薬学的なキットおよびパック等、併行して、同時に、順次にまたは別個に投与するために、構成成分が個々に包装されている物質の組成物の両方を網羅することを意図する。本発明の1つの態様では、「組合せ」は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との同時投与を含む。本発明のさらなる態様では、「組合せ」は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との順次投与を含む。1つの実施形態では、HKI−272を、ビノレルビン化合物の前に投与する。別の実施形態では、ビノレルビン化合物を、HKI−272化合物の前に投与する。別の態様では、「組合せ」は、特定の治療レジメンにおける、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との別個の投与を含み、このレジメンにおいては、この組合せの2つの構成成分を、相互に関して特定の時期および量で投与する。1つの実施形態では、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せは、HKI−272化合物単独またはビノレルビン化合物単独のいずれかの投与によって達成可能な治療効果よりも有益な治療効果をもたらす。これらの薬剤を順次または別個に投与する場合、この併用療法がもたらす利益を失うように、第2の構成成分の投与を遅延させるべきでない。
【0023】
1つの実施形態では、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せは、転移性乳癌の治療に特によく適している。別の実施形態では、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せは、乳房、腎臓、膀胱、口腔、喉頭、食道、胃、結腸、卵巣および肺、ならびに多発性嚢胞腎疾患の治療によく適している。
【0024】
本明細書で使用する場合、記載がない限り、「個体」、「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用され、哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、その他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類およびヒトを含めた、任意の動物を指す。望ましくは、「個体」、「対象」または「患者」という用語は、ヒトを指す。特定の状況では、これらの用語は、ウサギ、ラットおよびマウス等の実験動物、ならびにその他の動物を指す。大部分の実施形態では、対象または患者は、治療処置を必要としている。したがって、本明細書で使用する場合、「対象」または「患者」という用語は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを投与することができる任意の哺乳動物の患者または対象を意味する。1つの実施形態では、本発明の方法に従って治療するための対象患者を同定するために、一般に認められているスクリーニングの方法を使用して、標的にするもしくは疑われる疾患もしくは状態と関係するリスク因子を決定するか、または対象中に現存する疾患もしくは状態の状況を決定する。これらのスクリーニングの方法として、例えば、標的にするまたは疑われる疾患または状態と関係するリスク因子を決定するための従来の精密検査が挙げられる。これらおよびその他の日常的な方法によって、臨床医が本発明の方法および製剤を使用する療法を必要とする患者を選択することが可能となる。1つの実施形態では、「個体」、「対象」または「患者」は、化学療法治療を以前に受けたことがなくてよい。別の実施形態では、「個体」、「対象」または「患者」は、化学療法治療を以前に受けたことがあってよい。別の実施形態では、「個体」、「対象」または「患者」は、アニリノキナゾリンクラス阻害剤を以前に投与されたことがあってよい。さらなる実施形態では、「個体」、「対象」または「患者」は、ラパチニブまたはゲフィチニブをアニリノキナゾリンクラス阻害剤として以前に投与されたことがあってよい。望ましくは、記載する組合せを用いる治療の前の患者の血球数が、十分に安定であって、本明細書に記載する組合せの投与を可能とする。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物とHKI−272化合物とを投与する前の患者の好中球数が、少なくとも1500である。別の実施形態では、ビノレルビン化合物とHKI−272化合物とを投与する前の患者の血小板数が、少なくとも100,000/Lである。
【0025】
本明細書で使用する場合、「HKI−272化合物」は1つの実施形態では、以下のコア構造を有する化合物、
【0026】
【化1】

またはその誘導体もしくは薬学的に許容できる塩を指す。適切な誘導体として、例えば、エステル、エーテルまたはカルバメートを挙げることができる。上記に示したコア構造は、具体的なHKI−272化合物であり、HKI−272と呼ばれ、これは、化学名(E)−N−{4−[3−クロロ−4−(2−ピリジニルメトキシ)アニリノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル}−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテンアミドを有する。1つの実施形態では、本明細書に記載する組成物および方法に有用なHKI−272化合物は、HKI−272である。
【0027】
別の実施形態では、HKI−272化合物は、
【0028】
【化2】

の構造を有し、
式中、
は、ハロゲンであり、
は、ピリジニル、チオフェニル、ピリミジニル、チアゾールイルまたはフェニルであり、Rは、最大3つの置換基で置換されていてもよく、
は、OまたはSであり、
は、CHまたはCHCHOCHであり、
は、CHまたはCHCHであり、かつ
nは、0または1である。
【0029】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」という用語は、Cl、Br、IおよびFを指す。
【0030】
これらのHKI−272化合物は、強力なHER−2阻害剤として作用する能力によって特徴付けられ、そのうち、HKI−272は、1つの種である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,288,082号および第6,297,258号、ならびに米国特許出願公開第2007/0104721号を参照されたい。これらの化合物およびそれらの調製が、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0059678号に詳細に記載されている。利便性のため、「HKI−272化合物」を、本明細書全体を通して使用する。しかし、上記に提供した(1つまたは複数の)構造の任意の化合物を、以下に詳細に記載する組合せ中のHKI−272の代わりに使うことができる。
【0031】
HKI−272、その他のHKI−272化合物、ならびにそれらを作製する方法および製剤化する方法が記載されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0059678号および米国特許第6,002,008号を参照されたい。また、これらの文献に記載されている方法を使用して、本明細書で使用する置換3−キノリン化合物を調製することもでき、これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれている。これらの文献に記載されている方法に加え、参照により本明細書に組み込まれている国際特許公開第WO−96/33978号および第WO−96/33980号も、これらのHKI−272化合物の調製に有用な方法を記載している。これらの方法は、特定のキナゾリンの調製を記載しているが、また、対応する置換3−シアノキノリンの調製にも適用でき、参照により本明細書に組み込まれている。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ビノレルビン化合物」という用語は、ビノレルビンまたはその薬学的に許容できる塩を意味し、これは、広い抗腫瘍活性を示し、微小管の破壊を通して作用する。Widakowichら、Anticancer Agents Med.Chem.、8(5):488〜496(June 2008)、およびWissnerら、Arch.Pharm.(Weinheim)、(May 20、2008、電子出版)を参照されたい。この用語は、中性のビノレルビン化合物、すなわち、4−(アセチルオキシ)−6,7−ジデヒドロ−15−((2R,6R,8S)−4−エチル−1,3,6,7,8,9−ヘキソヒドロ−8−(メトキシカルボニル)−2,6−メタノ−2H−アゼシノ(4,3−b)インドール−8−イル)−3−ヒドロキシ−16−メトキシ−1−メチル,メチルエステル(2β,3β,4β,5α,12R,19α)−アスピドスペルミジン−3−カルボン酸(ビノレルビン;商品名:Navelbine)を含む。ビノレルビンおよびその薬学的に許容できる塩、ならびに参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,235,564号に論じられているものを含めた、その他のビノレルビン化合物は、Adventrx/SD Pharmaceuticals(SDP−012(登録商標)薬物)、Hana(ALOCREST(登録商標)薬物)、およびInex Pharmaceuticals Corp.(INX−0125(商標)薬物)を含めて、市販供給元から入手可能である。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物は、以下のビノレルビン化合物の構造に対して構造類似性を有する化合物、例えば、治療の利益を増強するために改変されている類似のアルカロイド構造を有する化合物を含む。
【0033】
【化3】

【0034】
ビノレルビン化合物の調製が、Langloisら、J.Am.Chem.Soc.98:7017〜7024(1976)、およびMangeneyら、Tetrahedron、35:2175〜2179(1979)によって記載されている。
【0035】
HKI−272化合物およびビノレルビン化合物、ならびにそれらの対応する薬学的に許容できる塩またはエステルは、異性体を、個々にまたは鏡像異性体、ジアステレオマーおよび位置異性体等の混合物としてのいずれかで含む。
【0036】
「薬学的に許容できる塩およびエステル」は、薬学的に許容でき、所望の薬理学的特性を示す塩およびエステルを指す。そのような塩として、例えば、化合物中に存在する酸性のプロトンが無機または有機の塩基と反応することが可能である場合に形成することができる塩が挙げられる。適切な無機塩として、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウム、ならびにアルミニウムと形成される塩が挙げられる。適切な有機塩として、例えば、有機塩基、例として、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン等と形成された塩が挙げられる。また、薬学的に許容できる塩は、親化合物中の塩基性部分、例として、アミンと、無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)ならびに有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにアルカン−およびアレン−スルホン酸、例として、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸)との反応によって形成された酸付加塩も含むことができる。
【0037】
薬学的に許容できるエステルは、本発明の化合物中に存在するカルボキシ基、スルホニルオキシ基およびホスホノキシ基から形成されたエステル、例えば、C1−6アルキルエステルを含む。2つの酸性の基が存在する場合には、薬学的に許容できる塩またはエステルは、一酸一塩もしくは一酸モノエステル、または二塩もしくはジエステルであり得、同様に、3つ以上の酸性の基が存在する場合には、そのような基の一部または全部が、塩化またはエステル化し得る。本明細書で利用する化合物は、塩化もしくはエステル化されていない形態で存在してもよく、または塩化および/もしくはエステル化された形態で存在してもよく、そのような化合物の命名は、元々の(塩化およびエステル化されていない)化合物、ならびにその薬学的に許容できる塩およびエステルを含むことを意図する。また、本明細書で利用する1つまたは複数の化合物は、2つ以上の立体異性体の形態で存在してもよく、そのような化合物の命名は、全ての単一の立体異性体およびそのような立体異性体の(ラセミまたはそれ以外のいずれであっても)全ての混合物を含むことを意図する。
【0038】
HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の、酸性部分を有する薬学的に許容できる塩を、有機および無機の塩基から形成することができ、これらとして、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムもしくはマグネシウム、または有機塩基との塩、およびN−テトラアルキルアンモニウム塩、例として、N−テトラブチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0039】
同様に、本明細書で利用する1つまたは複数の化合物が塩基性部分を含有する場合、塩を、有機および無機の酸から形成することができる。例えば、本発明の化合物が塩基性の官能基を含有する場合には、酸、例として、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、および類似の既知の許容できる酸から、塩を形成することができる。薬学的に許容できる塩のその他の適切な例として、これらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))、ならびに脂肪酸の塩、例として、カプロン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩およびリノレイン酸塩が挙げられる。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物は、酒石酸ビノレルビンである。
【0040】
また、これらの化合物を、エステル、カルバメートの形態、およびその他の従来のエステルの形態で使用することもでき、これらは、本明細書ではプロドラッグの形態とも呼ばれ、そのような形態で投与した場合、in−vivoにおいて活性な部分に転換する。本発明の化合物の例示的なエステルの形態として、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−メチルプロピルおよび1,1−ジメチルエチルエステル、シクロアルキルエステル、アルキルアリールエステル、ベンジルエステル等を含めた、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキルエステルまたは1〜6個の炭素原子を含有する分枝鎖アルキル基が挙げられる。
【0041】
したがって、医薬組成物を提供し、これは、有効量のHKI−272化合物とビノレルビン化合物とを、1つまたは複数の薬学的に許容できる担体と組み合わせてまたはそれらを付随させて含有する。本明細書で使用する薬学的担体の適切な例として、これらに限定されないが、賦形剤、希釈剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、および担体として機能することができるその他の薬剤が挙げられる。「薬学的に許容できる賦形剤」という用語は、通常、安全な、無毒性でかつ望ましい医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤を意味し、動物への使用およびヒトへの薬学的な使用に許容できる賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合には、気体であってよい。医薬組成物を、Remingtons Pharmaceutical Sciences、17版、Alfonoso R.Gennaro編、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1985)に記載されているもの等の許容できる薬学的手順に従って調製する。薬学的に許容できる担体は、製剤中のその他の成分に適合し、生物学的に許容できる担体である。錠剤またはカプレット剤の製剤のための適切な薬学的に許容できる賦形剤または担体として、例えば、不活性な賦形剤、例として、ラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウムまたは炭酸カルシウム、顆粒化剤および崩壊剤、例として、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸、結合剤、例として、ゼラチンまたはデンプン、滑沢剤、例として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク、保存剤、例として、エチルまたはプロピル4−ヒドロキシ安息香酸、および抗酸化剤、例として、アスコルビン酸が挙げられる。錠剤またはカプレット剤の製剤は、被覆されていなくてもよく、またはそれらの崩壊およびそれに続く消化管内における活性成分の吸収を改変するか、それらの安定性および/もしくは外観を改善するかのいずれかのために、従来の被覆剤および当技術分野で周知の手順を使用して被覆されていてもよい。1つの実施形態では、錠剤の重量は、少なくとも約20、30、40、50、60または70mgである。
【0042】
レジメンの任意の構成成分
また、本明細書に記載するレジメンは、その他の薬剤の投与も含むことができる。1つの実施形態では、レジメンは、タキサン、例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセル[例えば、卵白ナノ粒子に結合しているパクリタキセルの懸濁剤があり、これは、ABRAXANE(登録商標)試薬として入手可能である]の投与をさらに含む。また、パクリタキセルを、60〜100mg/mの用量を1時間かけて投与する週1回のスケジュールで、週に1回または2〜3週に1回投与して、その後、1週間休薬することができる。1つの実施形態では、パクリタキセルを175mg/mの用量で3時間かけて静脈内投与し、その後、シスプラチンを75mg/mの用量で場合により投与するか、またはパクリタキセルを135mg/mの用量で24時間かけて静脈内投与し、その後、シスプラチンを75mg/mの用量で場合により投与する。細胞癌のための療法を用いて以前に治療された患者の場合、パクリタキセルを、いくつかの用量およびスケジュールで注射することができる。しかし、最適なレジメンはまだ明らかではない。推奨されるレジメンでは、3週に1回、135mg/mまたは175mg/mのパクリタキセルを3時間かけて静脈内投与する。これらの用量は、必要に応じてまたは所望により変化させることができる。
【0043】
別の実施形態では、その他の活性な薬剤を、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せの中に含めることができ、これらとして、例えば、化学療法剤、例として、アルキル化剤もしくはmTOR阻害剤(ラパマイシンおよびその誘導体);ホルモン剤(すなわち、エストラムスチン、タモキシフェン、トレミフェン、アナストロゾールもしくはレトロゾール);抗生物質(すなわち、プリカマイシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ダクチノマイシン、マイトマイシンもしくはダウノルビシン);その他の有糸分裂阻害剤(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、テニポシド);トポイソメラーゼ阻害剤(すなわち、トポテカン、イリノテカン、エトポシドもしくはドキソルビシン、例えば、CAELYX(商標)試薬やDOXIL(登録商標)試薬、すなわち、ペグ化リポソームドキソルビシン塩酸塩);ならびにその他の薬剤(すなわち、ヒドロキシ尿素、アルトレタミン、リツキシマブ、パクリタキセル、ドセタキセル、L−アスパラギナーゼもしくはゲムツズマブ−オゾガマイシン);生化学的調節剤、イマチブ、EGFR阻害剤、例として、EKB−569もしくはその他のマルチキナーゼ阻害剤、例えば、腫瘍細胞および腫瘍血管構造の両方においてセリン/スレオニンおよび受容体チロシンキナーゼを標的にするもの、または免疫調節物質(すなわち、インターフェロン、IL−2もしくはBCG)を挙げることができる。適切なインターフェロンの例として、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
望ましくは、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せに、抗悪性腫瘍アルキル化剤、例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2002−0198137号に記載されているものをさらに組み合わせることができる。抗悪性腫瘍アルキル化剤は、それらの構造または反応性部分に従って、いくつかのカテゴリーに大まかに分類され、それらは、ナイトロジェンマスタード、例として、MUSTARGEN(登録商標)薬物(メクロレタミン)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランおよびクロラムブシル;アジジンおよびエポキシド、例として、チオテパ、マイトマイシンC、ジアンヒドロガラクチトールおよびジブロモダルシトール;アルキルスルフィナート、例として、ブスルファン;ニトロソウレア、例として、ビスクロロエチルニトロソウレア(BCNU)、シクロヘキシル−クロロエチルニトロソウレア(CCNU)およびメチルシクロヘキシルクロロエチルニトロソウレア(MeCCNU);ヒドラジンおよびトリアジンの誘導体、例として、プロカルバジン、ダカルバジンおよびテモゾロミド;ストレプタゾイン(streptazoin)、メルファラン、クロラムブシル、カルムスチン、メソクロレタミン(methclorethamine)、ロムスチン)、ならびに白金化合物を含む。白金化合物は、グアニン残基およびアデニン残基のN7位に優先的に反応して、多様な単官能性および二官能性の付加物を形成する白金含有薬剤である。(Johnson S W、Stevenson J P、O’Dwyer P J.、Cisplatin and Its Analogues、In Cancer Principles & Practice of Oncology、6版、DeVita V T、Hellman S、Rosenberg S A編、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia 2001、p.378.)。これらの化合物は、シスプラチン、カルボプラチン、白金IV化合物、および多核白金錯体を含む。アルキル化剤の代表的な例として、メクロレタミン(注射用;MUSTARGEN(登録商標)薬物)、シクロホスファミド(注射用;シクロホスファミド、凍結乾燥CYTOXAN(登録商標)薬物またはNEOSAR(登録商標)薬物;経口錠剤シクロホスファミドまたはCYTOXAN(登録商標)薬物)、イホスファミド(注射用;IFEX)、メルファラン(注射用、ALKERAN(登録商標)薬物;および経口錠剤、ALKERAN(登録商標)薬物)、クロラムブシル(経口錠剤、LEUKERAN(登録商標)薬物)、チオテパ(注射用、チオテパまたはTHIOPLEX(登録商標)薬物)、マイトマイシン(注射用、マイトマイシンまたはMUTAMYCIN(登録商標)薬物)、ブスルファン(注射用、BUSULFEX(登録商標)薬物;経口錠剤、MYLERAN(登録商標)薬物)、ロムスチン(経口カプセル剤;CEENU)、カルムスチン(頭蓋内インプラント、GLIADEL);注射用(BICNU)、プロカルバジン(経口カプセル剤、MATULANE(登録商標)薬物)、テモゾロミド(経口カプセル剤、TEMODAR(登録商標)薬物)、シスプラチン(注射用、シスプラチン、PLATINOL(登録商標)薬物またはPLATINOL(登録商標)−AQ)、カルボプラチン(注射用、PARAPLATIN(登録商標)薬物)、ならびにオキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)薬物)が挙げられる。
【0045】
別の実施形態では、本明細書に記載する組合せは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0187184号または第2002/0183239号に記載されている抗悪性腫瘍代謝拮抗剤をさらに含むことができる。本明細書で使用する場合、「代謝拮抗剤」という用語は、DNAまたはRNAの合成に至る生化学経路中の重大な天然の中間体(代謝産物)に構造的に類似する物質であって、その経路中で宿主によって使用されるが、その経路の完了(すなわち、DNAまたはRNAの合成)を阻害するように作用する物質を意味する。より具体的には、代謝拮抗剤は典型的には、(1)DNAまたはRNAの合成において、主要な酵素の触媒部位もしくは調節部位について代謝産物と競合すること、または(2)DNAもしくはRNA中に通常組み込まれる代謝産物を置換し、それによって、複製を支援することができないDNAもしくはRNAを産生することによって機能する。代謝拮抗剤の主要なカテゴリーは、(1)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)阻害剤である葉酸類似体;(2)天然のプリン(アデニンまたはグアニン)を模倣するが、構造が異なり、したがって、DNAまたはRNAの核のプロセシングを競合的または不可逆的に阻害するプリン類似体;ならびに(3)天然のピリミジン(シトシン、チミジンおよびウラシル)を模倣するが、構造が異なり、したがって、DNAまたはRNAの核のプロセシングを競合的または不可逆的に阻害するピリミジン類似体を含む。代謝拮抗剤の代表的な例として、これらに限定されないが、5−フルオロウラシル(5−FU;5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン;外用クリーム剤、FLUOROPLEX(登録商標)薬物またはEFUDEX(登録商標)薬物;外用液剤、FLUOROPLEX(登録商標)薬物またはEFUDEX(登録商標)薬物;注射用、ADRUCIL(登録商標)薬物またはフルオロウラシル)、フロクスウリジン(2’−デオキシ−5−フルオロウリジン;注射用、FUDRまたはフロクスウリジン)、チオグアニン(2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6−H−プリン−6−チオン(経口錠剤、チオグアニン)、シタラビン(4−アミノ−1−(β)−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノン;注射用リポソームDEPOCYT(登録商標)試薬;注射用液剤、シタラビンまたはCYTOSAR−U(登録商標)薬物)、フルダラビン(9−H−プリン−6−アミン,2−フルオロ−9−(5−O−ホスホノ−(β)−D−アラビノフラノシル;注射用液剤、FLUDARA)、6−メルカプトプリン(1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン;経口錠剤、PURINETHOL)、メトトレキセート(MTX;N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸;注射用液剤、メトトレキセートナトリウムまたはFOLEX;経口錠剤、メトトレキセートナトリウム)、ゲムシタビン(2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩((β)−異性体);注射用液剤、GEMZAR)、カペシタビン(5’−デオキシ−5−フルオロ−N−[(ペンチルオキシ)カルボニル]−シチジン;経口錠剤、XELODA)、ペントスタチン((R)−3−(2−デオキシ−(ベータ)−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−オール;注射用液剤、NIPENT)、トリメトレキセート(2,4−ジアミノ−5−メチル−6−[(3,4,5−トリメトキシアニリノ)メチル]キナゾリン−D−グルクロン酸塩;注射用液剤、NEUTREXIN)、クラドリビン(2−クロロ−6−アミノ−9−(2−デオキシ−(β)−D−エリスロペント−フラノシル)プリン;注射用液剤、LEUSTATIN)が挙げられる。
【0046】
「生化学的調節剤」という用語は、抗癌療法の補助剤として投与される薬剤として当業者にはよく知られ、理解されており、これは、抗癌療法の抗悪性腫瘍活性を増強し、かつ活性な薬剤、例えば、代謝拮抗剤の副作用を相殺する働きがある。典型的には、ロイコボリンおよびレボホリナートが、メトトレキセート療法および5−FU療法のための生化学的調節剤として使用される。ロイコボリン(5−ホルミル−5,6,7,8−テトラヒドロ葉酸)が、注射用液剤(ロイコボリンカルシウムまたはWELLCOVORIN)および経口錠剤(ロイコボリンカルシウム)として市販されている。レボホリナート(5−ホルミルテトラヒドロ葉酸の薬理学的に活性な異性体)が、(ISOVORIN)を含有する注射剤または経口錠剤(ISOVORIN)として市販されている。
【0047】
さらに別の実施形態では、この組合せは、キナーゼ阻害剤をさらに含む。特に望ましいキナーゼ阻害剤は、腫瘍細胞および腫瘍血管構造の両方においてセリン/スレオニンおよび受容体チロシンキナーゼを標的にするマルチキナーゼ阻害剤を含む。適切なキナーゼ阻害剤の例として、これらに限定されないが、FDAから転移性腎臓細胞癌についてファーストトラック指定を受けているソラフェニブ(BAY43−9006、NEXAVARとして市販されている)、ザーネストラ(R115777、ティピファルニブ)、スニチニブ(SUTENT)、ならびに例えば、アバスチン、ISIS5132、およびMEK阻害剤、例として、CI−1040またはPD0325901を含めた、Ras/Raf/MEKおよび/またはMAPのキナーゼを標的にするその他の化合物が挙げられる。あるいは、キナーゼ阻害剤を、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を用いて治療する前またはその後に患者に投与してもよい。
【0048】
その上さらなる実施形態では、この組合せは、止痢薬を含むことができる。当業者であれば、これらに限定されないが、ロペラミドまたはジフェノキシラート塩酸塩および硫酸アトロピンを含めて、本明細書における使用に適した止痢薬を容易に選択することができるであろう。あるいは、止痢薬を、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を用いて治療する前またはその後に患者に投与してもよい。
【0049】
さらなる実施形態では、この組合せは、制吐剤をさらに含有する。制吐剤の例として、これらに限定されないが、とりわけ、メトクロプラミド、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロンおよびパロノセトロンが挙げられる。あるいは、制吐剤を、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を用いて治療する前またはその後に患者に投与してもよい。
【0050】
その上さらなる実施形態ではまた、この組合せは、抗ヒスタミン剤を含有する。抗ヒスタミン剤の例として、これらに限定されないが、とりわけ、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメチルヒドリナート(Gravol)、メクリジン、プロメタジン(Pentazine、Phenergan、Promacot)、またはヒドロキシジンが挙げられる。あるいは、抗ヒスタミン剤を、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を用いて治療する前またはその後に患者に投与してもよい。
【0051】
さらに別の実施形態では、この組合せは、好中球減少を阻止および/または治療するために増殖因子を含むことができる。そのような増殖因子は、当業者であれば、American Society of Clinical Oncology(ASCO;2006)の診療ガイドラインに従って容易に選択することができる。あるいは、増殖因子を、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を用いて治療する前またはその後に患者に投与してもよい。
【0052】
組成物/組合せの投与
本明細書で使用する場合、「有効量」または「薬学的有効量」という用語は、組織、系、動物、個体またはヒトにおいて、研究者、獣医、医師またはその他の臨床医が求める生物学的なまたは医薬としての応答を惹起する活性な化合物または医薬品の量を指す。そうした応答は、以下の1つまたは複数を含む:(1)疾患の阻止;例えば、疾患、状態または障害の素因を有する恐れがあるが、疾患の病態または総体症状はまだ経験しても提示してもいない個体中の疾患、状態または障害を阻止すること;(2)疾患の阻害;例えば、疾患、状態または障害の病態または総体症状を経験しているまたは提示している個体中の疾患、状態または障害を阻止する(すなわち、病態および/または総体症状のさらなる発生を停止させるまたは遅らせる)こと;ならびに(3)疾患の寛解;例えば、疾患、状態または障害の病態または総体症状を経験しているまたは提示している個体中の疾患、状態または障害を寛解させる(すなわち、病態および/または総体症状を逆転させる)こと。例えば、癌を治療するために対象に投与する場合の「有効量」は、癌を有する対象において、腫瘍の増殖を阻害する、遅らせる、縮小させるまたは排除するのに十分な量である。
【0053】
また、HKI−272化合物とビノレルビン化合物との組合せの使用は、一方または両方の薬剤が治療量以下の有効投与量で使用される、それらの薬剤のそれぞれの組合せの使用も提供する。治療量以下の有効投与量は、当業者であれば、本明細書の教示を考慮して容易に決定することができる。1つの実施形態では、治療量以下の有効投与量は、本明細書に記載する併用レジメンにおいて使用した場合、単独で使用した場合に効果を示す投与量と比較した際に、より低い投与量で効果を示す投与量である。また、本明細書の組合せ中の活性な薬剤のうちの1つまたは複数を提供して、治療量以上の量、すなわち、組合せ中で、単独で使用する場合よりも高い投与量でも使用する。この実施形態では、(1つまたは複数の)その他の活性な薬剤は、治療量または治療量以下で使用することができる。
【0054】
「治療する」または「治療」という用語は、損傷、病態または状態の寛解の成功の任意の徴候を指し、これらには、任意の客観的または主観的なパラメータ、例として、症状の減退、軽快、減少、もしくは損傷、病態や状態を患者にとってより耐えられるものとすること;変性もしくは衰えの速度を遅らせること;変性の最終点の衰弱の程度を弱めること;または対象の身体的もしくは精神的な健康状態を改善することが含まれる。症状の治療または寛解は、客観的または主観的なパラメータに基づくことができ、これらには、身体検査、神経学的検査および/または精神医学的評価の結果が含まれる。したがって、「治療する」という用語は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを対象に投与して、癌に伴う腫瘍の増殖を含めて、癌に伴う症状または状態の発生を阻止するもしくは遅延させること、軽減すること、または停止させるもしくは阻害することを含む。熟練の医師であれば、患者を検査し、患者が癌に罹患しているかどうかを決定することによって、患者が癌に伴う疾患に罹患しているかどうかを決定するための標準的な方法の使用の仕方が分かるであろう。
【0055】
本明細書で使用する場合、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを提供することに関する「提供する」という用語は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを直接投与すること、または体内で有効量のHKI−272化合物および/またはビノレルビン化合物を形成するプロドラッグ、誘導体もしくは類似体を投与することのいずれかを意味する。
【0056】
したがって、本発明は、患者において新生物を治療するために、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを患者に投与することを含む。1つの実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物とは別個に投与する。さらなる実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物の前に投与する。別の実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物の後に投与する。さらに別の実施形態では、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを同時にしかし別個に投与する。1つの実施形態では、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを、組合せ調製物として一緒に投与する。
【0057】
1つの実施形態では、製品は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを組合せ調製物として含有して、それを必要とする哺乳動物において新生物を治療する場合に、同時、別個または順次に使用する。1つの実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物とは別個に製剤化する。別の実施形態では、製品は、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを組合せ調製物として含有して、それを必要とする哺乳動物中の新生物において同時、別個または順次に使用する。
【0058】
1つの実施形態では、薬学的パックは、1つの個体哺乳動物のための新生物の治療コースを含有し、このパックは、単位剤型をとるHKI−272化合物の単位と単位剤型をとるビノレルビン化合物の単位とを含有する。別の実施形態では、薬学的パックは、1つの個体哺乳動物のための新生物の治療コースを含有し、このパックは、単位剤型をとるHKI−272化合物の単位と単位剤型をとるビノレルビン化合物の単位とを含有する。さらに別の実施形態では、薬学的パックは、本明細書に記載するように、1つの個体哺乳動物のための転移性乳癌の治療コースを含有する。
【0059】
個々の構成成分、または個々の構成成分のうちの2つ以上を含有する組成物の投与は、任意の適切な経路を使用することができる。そのような経路を、例えば、経口経路、静脈内経路(i.v.)、呼吸器経路(例えば、経鼻または気管支内)、注入、非経口経路(i.v.以外、病変内、腹腔内および皮下への注射等)、腹腔内経路、経皮経路(身体表面、および上皮組織や粘膜組織を含めた、身体経路の内層表面を越える全ての投与を含む)、ならびに膣経路(子宮内投与を含む)から選択することができる。また、その他の投与経路も実行可能であり、それらとして、これらに限定されないが、リポソーム媒介送達、外用経路、経鼻経路、舌下経路、尿管経路、くも膜下腔内経路、眼送達もしくは耳送達、インプラント、直腸経路、または鼻腔内経路が挙げられる。
【0060】
構成成分は、同じ経路を介して送達してもよいが、本明細書に記載する製品またはパックは、HKI−272化合物の経路とは異なる経路により送達するためのビノレルビン化合物を含有することができる。例えば、構成成分のうちの1つまたは複数を経口送達することができ、一方、その他の構成成分のうちの1つまたは複数は静脈内投与する。1つの実施形態では、HKI−272化合物を経口送達のために調製し、ビノレルビン化合物を静脈内送達のために調製する。別の実施形態では、HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の両方を静脈内送達のために調製する。さらに別の実施形態では、HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の両方を経口送達のために調製する。その他の活性な構成成分を、HKI−272化合物および/またはビノレルビン化合物と同じ経路または異なる経路により場合により送達することができる。当業者には、その他の変更形態が明らかであろう。
【0061】
さらに別の実施形態では、この治療レジメンの化合物または構成成分を、週に1回投与する。特定の状況では、HKI−272化合物の投与を、治療コースの間に短期間(例えば、1、2または3週間)遅延させるまたは中断することができる。そのような遅延または中断は、治療コースの間に1回起きてもよく、または2回以上起きてもよい。有効量は、当業者には既知であり、また、HKI−272化合物の形態にも依存する。当業者であれば、実験による活性試験を日常的に実施して、バイオアッセイにおけるHKI−272化合物の生物活性を決定し、したがって、投与するのに適した投与量を決定することができるであろう。
【0062】
本明細書に記載する組合せおよび製品中で使用するHKI−272化合物およびビノレルビン化合物またはその他の任意の化合物を、任意の適切な様式で製剤化することができる。しかし、単位用量中のそれぞれの化合物の量は、組成物の型、レジメン、単位投与量のサイズ、賦形剤の種類、および当業者に周知のその他の要因に応じて大幅に変化し得る。1つの実施形態では、単位用量は、例えば、0.000001重量パーセント(%w)〜10%wのそれぞれの化合物を含有することができる。別の実施形態では、単位用量は、約0.00001%w〜1%wを含有することができ、残りは、1つまたは複数の賦形剤である。
【0063】
本明細書に記載する組成物は、経口投与に適した形態、例えば、錠剤、カプレット剤、カプセル剤、バッカル錠、トローチ剤、ドロップ剤および経口の液体、懸濁剤もしくは液剤;非経口注射剤(静脈内注射剤、皮下注射剤、筋肉内注射剤、血管内注射剤もしくは注入液を含む)、例えば、無菌の液剤、懸濁剤もしくは乳剤として;外用投与、例えば、軟膏剤もしくはクリーム剤;直腸投与、例えば、坐剤であってよく、または投与経路は腫瘍内への直接注入もしくは領域送達もしくは局所送達によるものであってよい。その他の実施形態では、この併用治療の一方または両方の構成成分を、内視鏡によってか、または気管内、病変内、経皮的、静脈内、皮下、腹腔内もしくは腫瘍内に送達することができる。一般に、本明細書に記載する組成物を、従来の様式で、当技術分野で周知の従来の賦形剤または担体を使用して調製することができる。また、経口による使用のための医薬組成物は、硬質ゼラチンカプセル剤の形態であってもよく、その中では、活性成分が不活性の固体の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されており、または軟質ゼラチンカプセル剤としてもよく、その中では、活性成分が水もしくは油、例として、落花生油、液体パラフィンやオリーブ油と混合されている。1つの実施形態では、前記ビノレルビン化合物および前記HKI−272化合物の一方または両方が、前記対象に経口送達される。
【0064】
カプセル剤は、(1つまたは複数の)活性な化合物と、不活性な充填剤および/または希釈剤、例として、薬学的に許容できるデンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン)、糖、人工甘味料、結晶セルロースおよび微結晶セルロース等の粉末セルロース、小麦粉、ゼラチン、ガム等との混合物を含有することができる。
【0065】
有用な錠剤またはカプレット剤の製剤を、従来の圧縮、湿式造粒または乾式造粒の方法によって作製することができ、薬学的に許容できる希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改変剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定化剤を利用することができ、それらとして、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉砂糖が挙げられる。好ましい表面改変剤には、非イオン性および陰イオン性の表面改変剤が挙げられる。表面改変剤の代表的な例として、これらに限定されないが、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられる。
【0066】
本明細書の経口製剤、例えば、上記記載の錠剤、カプレット剤またはカプセル剤は、標準的な遅延放出処方または時間放出処方を利用して、(1つまたは複数の)活性な化合物の吸収を変化させることができる。また、経口製剤は、適切な可溶化剤または乳化剤を必要に応じて含有する水または果汁中の活性成分を投与することからなる場合がある。
【0067】
場合によっては、これらの化合物をエアロゾルの形態で気道に直接投与することが望ましい。
【0068】
注射用に使用するのに適した薬学的形態は、無菌の水性の液剤または分散剤、および無菌の注射用の液剤または分散剤を用時調製するための無菌の散剤を含む。全ての場合において、この形態は、無菌でなければならず、扱いやすいシリンジへの充填性が存在する程度に流動的でなければならない。これは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの適切な混合物ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒体であってよい。ビノレルビンを含有する好ましい注射用の製剤が、当技術分野において記載されている。1つの実施形態では、この化合物を、非経口投与してもよく、または腹腔内投与してもよい。遊離の塩基または薬理学的に許容できる塩としてのこれらの活性な化合物の液剤または懸濁剤を、ヒドロキシ−プロピルセルロース等の界面活性剤を適切に混合した水中で調製することができる。また、分散剤を、グリセロール中で、液体ポリエチレングリコール中で、および油中のそれらの混合物中で調製することもできる。通常の保管および使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を阻止するための保存剤を含有することができる。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物およびHKI−272化合物の一方または両方を静脈内送達する。
【0069】
本明細書において使用するために、経皮投与は、身体表面、および上皮組織や粘膜組織を含めた、身体経路の内層表面を越える全ての投与を含む。そのような投与を、ローション剤、クリーム剤、発泡剤、パッチ、懸濁剤、液剤ならびに坐剤(直腸および膣)中で、本発明の化合物またはそれらの薬学的に許容できる塩を使用して実施することができる。活性な化合物と、その活性な化合物に対して不活性であり、皮膚に対して無毒性であり、その薬剤を、全身性の吸収のために、皮膚を介して血流中に送達するのを可能にする担体とを含有する経皮パッチの使用により、経皮投与を達成することができる。担体は、クリーム剤および軟膏剤、ペースト剤、ジェル剤、および密封型の装置等、かなり多数の形態をとることができる。クリーム剤および軟膏剤は、水中油型または油中水型のいずれかの粘性の液体または半固体の乳剤であってよい。また、活性成分を含有する、石油または親水性の石油中に分散させた吸収性粉末から構成されるペースト剤も適切であり得る。活性成分を担体がある状態もしくはない状態で含有するリザーバを覆う半透過性メンブランまたは活性成分を含有するマトリックス等、多様な密封型の装置を使用して、活性成分を血流中に放出することができる。その他の密封型の装置が文献において知られている。
【0070】
坐剤の製剤を、カカオバターを含めた、伝統的な材料から作製することができ、坐剤の融点を変化させるためのろう、およびグリセリンを添加する場合もあればまたはそうでない場合もある。また、種々の分子量のポリエチレングリコール等の水溶性坐剤基剤も使用することができる。
【0071】
別の実施形態では、HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の一方または両方を、リポソームを使用することによって送達することができ、これらのリポソームは、細胞膜と融合するか、または形質膜陥入される。すなわち、リポソームに結合するまたはオリゴヌクレオチドに直接結合するリガンドであって、細胞表面の膜タンパク質受容体に結合し、その結果、エンドサイトーシスをもたらすリガンドを使用することによって、これらのリポソームが形質膜陥入される。リポソームを使用することによって、特に、リポソーム表面が、標的細胞に特異的なリガンドを担持するまたはそれ以外では特定の臓器を優先的に対象とする場合には、in vivoにおいて、1つまたは複数の化合物を標的細胞内に集中的に送達することができる。(例えば、Al−Muhammed,J.Microencapsul.13:293〜306、1996;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.6:698〜708、1995;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.46:1576〜1587、1989を参照されたい)。その他の場合、構成成分の1つまたは複数の好ましい調製物は、凍結乾燥した散剤であり得る。
【0072】
また、これらの化合物の1つまたは複数と共に、被包材料を使用することもでき、「組成物」という用語は、製剤として、被包材料と組み合わせた活性成分を含むことができ、その他の担体を有する場合または有しない場合がある。また、例えば、化合物を、マイクロスフェアとして送達して、体内で緩慢に放出させることもできる。1つの実施形態では、マイクロスフェアは、皮下に緩慢に放出する薬物含有マイクロスフェアの皮内注射によって(Rao、J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623〜645、1995を参照されたい)、生分解性および注射用のジェル剤の製剤として(例えば、Gao、Pharm.Res.12:857〜863、1995を参照されたい)、または経口投与のためのマイクロスフェアとして(例えば、Eyles、J.Pharm.Pharmacol.49:669〜674、1997を参照されたい)投与することができる。経皮経路および皮内経路の両方によって、一定の送達が数週間または数ヵ月間もたらされる。また、カシェ剤を、本発明の化合物、例えば、抗アテローム硬化性薬の送達において使用することもできる。
【0073】
HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の投与量
腫瘍学的治療における通例に従って、担当医が、疾患の重症度、疾患に対する応答、任意の治療関連毒性、患者の年齢および健康を含めた、多数の要因に基づいて、レジメンを密接にモニターする。レジメンは、投与経路に従って変化することが予想される。
【0074】
これまでに本明細書に記載した投与量およびスケジュールは、特定の疾患状況および患者の全体的な状態に従って変化させることができる。例えば、毒性を低下させるために、この併用治療の構成成分の上記で言及した用量を低下させることが必要である場合またはそれが望ましい場合がある。また、HKI−272化合物とビノレルビンとの組合せに加え、1つまたは複数の追加の化学療法剤を使用する場合にも、投与量およびスケジュールは変化させることができる。スケジュールは、任意の特定の患者を治療する医師が専門的な技能および知識を使用して決定することができる。
【0075】
HKI−272化合物および/またはビノレルビン化合物については、組み合わせた化合物のそれぞれの化合物が単位用量の形態をとることが望まれる。本明細書で使用する場合、「単位用量」または「単位用量形態」という用語は、これらに限定されないが、上記に記載したような錠剤、カプレット剤、カプセル剤、サシェまたはバイアル中の散剤、食塩水注入バッグを含めた、単回用量の形態を記載する。
【0076】
単位用量形態は、約0.1〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、約5〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、約50〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。さらなる実施形態では、単位用量形態は、約75〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。その上さらなる実施形態では、単位用量形態は、約100〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。さらに別の実施形態では、単位用量形態は、約120〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。その上さらなる実施形態では、単位用量形態は、約160〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、約200〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。さらに別の実施形態では、単位用量形態は、約240〜約300mgのHKI−272化合物を含有する。さらなる実施形態では、単位用量形態は、少なくとも約120mgを含有する。その上さらなる実施形態では、単位用量形態は、少なくとも約160mgを含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、少なくとも約240mgを含有する。
【0077】
HKI−272化合物は、例えば、経口で、約0.01〜100mg/kgの用量範囲で投与することができる。1つの実施形態では、HKI−272化合物を、約0.1〜約90mg/kgの用量範囲で投与する。別の実施形態では、HKI−272化合物を、約1〜約80mg/kgの用量範囲で投与する。さらなる実施形態では、HKI−272化合物を、約10〜約70mg/kgの用量範囲で投与する。さらに別の実施形態では、HKI−272化合物を、約15〜約60mg/kgの用量範囲で投与する。その上さらなる実施形態では、HKI−272化合物を、約20〜約50mg/kgの用量範囲で投与する。別の実施形態では、HKI−272化合物を、約30〜約50mg/kgの用量範囲で投与する。当業者であれば、実験による活性試験を日常的に実施して、バイオアッセイにおけるこの化合物の生物活性を決定し、したがって、投与すべき投与量がいくつであるかを決定することができるであろう。
【0078】
1つの実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、少なくとも約700mg/週である。別の実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、約800mg/週〜少なくとも約1700mg/週である。別の実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、約840mg/週〜約1680mg/週である。別の実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、約900mg/週〜約1600mg/週である。さらなる実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、約1000mg/週〜約1500mg/週である。さらに別の実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、約1100mg/週〜約1400mg/週である。その上さらなる実施形態では、HKI−272化合物の経口投与量は、約1200mg/週〜約1300mg/週である。正確な投与量は、投与を担当する医師が、治療すべき個々の対象に関する経験に基づいて決定する。その他の投与のレジメンおよび変更形態が予測でき、医師の助言を介して決定される。
【0079】
望ましくは、約0.1〜約50mg/kgのビノレルビン化合物を患者に投与する。1つの実施形態では、約1〜約30mg/kgのビノレルビン化合物を患者に投与する。別の実施形態では、約5〜約25mg/kgのビノレルビン化合物を患者に投与する。さらなる実施形態では、約10〜約20mg/kgのビノレルビン化合物を患者に投与する。その上さらなる実施形態では、約20mg/kgのビノレルビン化合物を患者に投与する。
【0080】
単位用量形態は、約0.1〜約100mgのビノレルビン化合物を含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、約1〜約70mgのビノレルビン化合物を含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、約5〜約500mgのビノレルビン化合物を含有する。さらなる実施形態では、単位用量形態は、約10〜約250mgのビノレルビン化合物を含有する。その上さらなる実施形態では、単位用量形態は、約15〜約100mgのビノレルビン化合物を含有する。さらに別の実施形態では、単位用量形態は、約20〜約75mgのビノレルビン化合物を含有する。その上さらなる実施形態では、単位用量形態は、約25〜約50mgのビノレルビン化合物を含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、約30〜約40mgのビノレルビン化合物を含有する。さらに別の実施形態では、単位用量形態は、約240〜約300mgのビノレルビン化合物を含有する。さらなる実施形態では、単位用量形態は、少なくとも約120mgを含有する。その上さらなる実施形態では、単位用量形態は、少なくとも約160mgを含有する。別の実施形態では、単位用量形態は、少なくとも約240mgを含有する。
【0081】
1つの実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、約5〜約25mg/Lである。ビノレルビン化合物の最初の注入投与量は、担当医の決定に従って、より多くてもまたはより少なくてもよい。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、約10〜約20mg/Lである。さらなる実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、約20〜約25mg/Lである。さらに別の実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、少なくとも約10mg/Lである。別の実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、少なくとも約15mg/Lである。さらに別の実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、少なくとも約20mg/Lである。さらに別の実施形態では、ビノレルビン化合物のi.v.注入投与量は、少なくとも約25mg/Lである。正確な投与量は、投与を担当する医師が、治療すべき個々の対象に関する経験に基づいて決定する。その他の投与のレジメンおよび変更形態が予測でき、医師の助言を介して決定される。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物を、i.v.注入により投与するか、または経口投与し、好ましくは錠剤もしくはカプセル剤の形態をとる。
【0082】
本明細書に記載するように、治療量以下の有効量のHKI−272化合物とビノレルビン化合物とを使用して、組み合わせて投与した場合には、治療効果を達成することができる。1つの実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物と併せて提供する場合、5〜50%低い投与量で提供する。別の実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物と併せて提供する場合、10〜25%低い投与量で提供する。さらなる実施形態では、HKI−272化合物を、ビノレルビン化合物と併せて提供する場合、15〜20%低い投与量で提供する。1つの実施形態では、その結果、HKI−272化合物の投与量は約8〜40mgとなる。別の実施形態では、その結果、HKI−272化合物の投与量は約8〜30mgとなる。さらなる実施形態では、その結果、HKI−272化合物の投与量は約8〜25mgとなる。治療量以下の有効量のHKI−272化合物とビノレルビン化合物とによって、治療の副作用が低下することが予想される。
【0083】
あるいは、本明細書に記載する組合せ中の活性な薬剤のうちの1つまたは複数を、治療量以上の量、すなわち、組合せ中で、単独で使用する場合よりも高い投与量で使用するものとする。この実施形態では、(1つまたは複数の)その他の活性な薬剤は、治療量または治療量以下で使用する。
【0084】
HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを使用するレジメン
本明細書で使用する場合、治療の「併用」レジメンの構成成分、すなわち、HKI−272化合物とビノレルビン化合物とを同時に投与することができる。あるいは、これらの2つの構成成分をずらしたレジメンで投与する、すなわち、HKI−272化合物を、化学療法のコースの間にビノレルビン化合物とは異なる時期に投与することができる。この時間の差は、これら少なくとも2つの薬剤を投与する間の数分、数時間、数日、数週またはそれより長い範囲に及ぶことができる。したがって、組合せ(または組み合わせた)という用語は必ずしも、同じ時期における投与、または1つに統一された用量もしくは単一の組成物としての投与を意味するとは限らないが、これらの構成成分のそれぞれが所望の治療期間の間に投与される。また、これらの薬剤を異なる経路によって投与することもできる。本明細書で使用する場合、1つの実施形態では、1「サイクル」は3週を含む。
【0085】
これらのレジメンまたはサイクルを、所望により繰り返すまたは交互に行うことができる。その他の投与のレジメンまたは変更形態が予測でき、医師の助言を介して決定される。レジメンは、スクリーニング期間および治療後の期間を含めて、「非治療」のステップ/来診を含むことができる。1つの実施形態では、このレジメンを、少なくとも約2週間、少なくとも約6週間、少なくとも約12週間、少なくとも約24週間、少なくとも約33週間、少なくとも約40週間、および少なくとも約46週間継続する。また、追加のスクリーニングの週および最終的にモニターする週も含むことができる。例えば、レジメンは、4週間のスクリーニングおよび最終的な来診のための6週間を含むことができる。
【0086】
単回用量および複数回用量を企図する。1つの実施形態では、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を、治療中に1回のみ投与する。別の実施形態では、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を、21日の間に少なくとも1回投与する。さらなる実施形態では、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を、21日の間に少なくとも2回投与する。さらに別の実施形態では、ビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を、サイクルの第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および/または21日に投与する。さらなる実施形態では、ビノレルビンおよび/またはHKI−272化合物を、サイクルの第1日および第8日に投与する。その上さらなる実施形態では、ビノレルビンおよび/またはHKI−272化合物を、少なくとも1日1回投与する。さらに別の実施形態では、ビノレルビンおよび/またはHKI−272化合物を、第1日に投与する。望ましくは、新生物が非転移性の場合には、HKI−272化合物を第1日に投与する。さらなる実施形態では、ビノレルビンおよび/またはHKI−272化合物を、前記レジメンの第2日に投与する。望ましくは、新生物が転移性の場合には、HKI−272化合物を、第2日に投与する。その上さらなる実施形態では、HKI−272化合物を、少なくとも1日1回経口投与する。別の実施形態では、HKI−272化合物を、少なくとも1日1、2、3、4、5または6回投与する。さらなる実施形態では、HKI−272化合物を、1日1〜4回投与する。
【0087】
1つの実施形態では、単一の初回負荷量のビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物を投与する。単一の初回負荷量のビノレルビン化合物および/またはHKI−272化合物は、それに続く用量と同じ用量であってもよく、または単一の初回負荷量は、残りの治療の全体を通して患者に投与する用量よりも多くてもよい。さらなる実施形態では、ビノレルビン化合物/またはHKI−272化合物を、より大きな用量で、1サイクル当たり1回のみ、すなわち、1サイクル当たり1日投与することができる。
【0088】
特定の対象が、この組成物の構成成分のうちの1つまたは複数、すなわち、HKI−272化合物またはビノレルビン化合物を許容しない場合、または対象が治療関連毒性から連続3週間超経っても回復しない場合、または治療に関連する任意のグレード4の非造血系毒性が生じた場合、用量の低下を実施することができる。1つの実施形態では、患者が、これらに限定されないが、ニューロパシー、好中球減少、血小板減少、悪心、嘔吐、血小板数の減少、およびビリルビン数の増加からなる群から選択される1つまたは複数の症状を獲得した場合、HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の一方または両方の投与を中断する。別の実施形態では、患者の好中球数が約1000/L未満である場合、HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の一方または両方の投与を中断するまたは休止する。さらなる実施形態では、患者の血小板数が75,000/L未満である場合、HKI−272化合物およびビノレルビン化合物の一方または両方の投与を中断するまたは休止する。
【0089】
あるいは、この組成物の構成成分のうちの1つまたは複数、すなわち、HKI−272化合物またはビノレルビン化合物を許容しない対象については、用量の低下を実施することができる。1つの実施形態では、1または2回の用量の低下を実施する。より望ましくは、1回のみの用量の低下を実施する。
【0090】
ビノレルビンまたはHKI−272に関連する毒性から、連続3週間超経っても回復しない対象については、ビノレルビンまたはHKI−272を用いる治療を個別に中断することができる。しかし、他方の薬剤、すなわち、HKI−272またはビノレルビンの投与は個別に継続してよい。
【0091】
レジメンは典型的には、少なくとも約2週間継続する。1つの実施形態では、レジメンは46週間以下継続する。別の実施形態では、レジメンは約6週間継続する。関与の長さは、対象の治療耐性および患者の疾患状況に依存する。しかし、担当医が、より短期の治療またはより長期の治療を進めてよいことを決定することができる。例えば、忍容性が良好である場合、新生物が進行していない場合、対象が臨床的に安定である場合、および対象が全体的な利益を受けている場合には、対象は、12サイクル超の治療を受けることができる。
【0092】
さらにまた、ビノレルビン化合物/またはHKI−272化合物を、維持療法として、化学療法の完了後に投与することもできる。
【0093】
薬学的なパックおよびキット
また、1つの個体哺乳動物のための抗悪性腫瘍治療コースを含有する製品または薬学的パックも含み、この薬学的パックは、1つまたは複数の容器を含み、これらの容器は、1つ、1〜4つまたは5つ以上の単位の、単位剤型をとるHKI−272化合物を有し、1つ、1〜4つまたは5つ以上の単位のHKI−272化合物とビノレルビン化合物を場合により有し、別の活性な薬剤を場合により有する。これらの組合せは、部品のキットの形態をとることができる。
【0094】
1つの実施形態では、キットは、HKI−272化合物を含有する適切な組成物を有する第1の容器と、ビノレルビン化合物を含有する適切な組成物を有する第2の容器とを含む。したがって、癌の治療または予防において使用するためのキットを提供する。このキットは、a)第1の単位剤型中の、薬学的に許容できる賦形剤または担体と一緒になったHKI−272化合物;b)第2の単位剤型中の、薬学的に許容できる賦形剤または担体と一緒になったビノレルビン化合物;ならびにc)前記第1および第2の剤型を含有するための容器を含む。
【0095】
別の実施形態では、薬学的パックは、1つの個体哺乳動物のための抗悪性腫瘍治療コースを含有し、この薬学的パックは、1単位の、単位剤型をとるHKI−272化合物を有する容器と、1単位のビノレルビン化合物を含有する容器とを含み、別の活性な薬剤を有する容器を場合により含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、これらの組成物は、パック中で、投与の準備が整った形態をとる。その他の実施形態では、これらの組成物は、パック中で、濃縮された形態をとり、投与のための最終的な液剤を作製するのに必要な希釈剤が場合により伴う。さらなるその他の実施形態では、この製品は、固体の形態をとる本明細書に記載する化合物を含有し、適切な溶媒または担体を有する別個の容器を場合により含有する。
【0097】
さらなるその他の実施形態では、上記のパック/キットは、その他の構成成分、例えば、製品の希釈、混合および/または投与のための指示、その他の容器、シリンジ、針等を含む。当業者であれば、その他のそのようなパック/キットの構成成分が容易に明らかとなる。
【0098】
併行治療
上記の任意の化学療法剤および任意の化合物に加え、本明細書に記載するレジメンおよび方法を、その他の非医薬品的手順の前、それと併行して、またはその後に実施することができる。1つの実施形態では、放射線照射を、HKI−272とビノレルビン化合物とを用いる治療の前、それと併行して、またはその後に実施することができる。
【0099】
好ましい実施形態
1つの実施形態では、対象において、HER−2の過剰発現または増幅を伴う固形腫瘍を治療するためのレジメンを提供する。このレジメンの1サイクルは21日を含み、このレジメンは、サイクルの第1日に開始する、HKI−272の少なくとも1単位用量を経口投与するステップと、サイクルの第1日および第8日における、ビノレルビンの少なくとも1単位用量を静脈内投与するステップとを含む。
【0100】
別の実施形態では、対象において、HER−2の過剰発現または増幅を伴う転移性癌を治療するためのレジメンを提供する。このレジメンの1サイクルは21日を含み、このレジメンは、サイクルの第2日に開始する、HKI−272の少なくとも1単位用量を経口投与するステップと、サイクルの第1日および第8日における、ビノレルビンの少なくとも1単位用量を静脈内投与するステップとを含む。
【0101】
さらなる実施形態では、ビノレルビンとHKI−272とを含有する製品を提供する。この製品は、哺乳動物において新生物を治療する場合に、同時、別個または順次に使用するための組合せ調製物として有用である。
【0102】
その上さらなる実施形態では、1つの個体哺乳動物において新生物を治療するための薬学的パックを提供する。この薬学的パックは、ビノレルビンの少なくとも1単位と、HKI−272の少なくとも1単位とを含有する。
【0103】
別の実施形態では、医薬組成物を提供し、この医薬組成物は、ビノレルビン、HKI−272および少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含有する。望ましくは、この医薬組成物は、哺乳動物において新生物を治療するのに有用である。
【0104】
さらに別の実施形態では、治療を必要とする哺乳動物において、HER−2の過剰発現または増幅を伴う新生物を治療する方法を提供する。この方法は、ビノレルビン化合物の単位用量を投与するステップと、HKI−272化合物の単位用量を投与するステップとを含む。
【0105】
以下の実施例によって、本発明の組合せの使用を例示する。当業者に既知の理由で、例えば、構成成分の製剤、送達経路および投与における変更または改変を行うことができることは容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
肺癌細胞増殖アッセイにおける、HKI−272とビノレルビンとの併用レジメン
標準的な細胞増殖アッセイを利用して、肺細胞系NCI−H1666、NCI−H1650およびNCI−H1975の、HKI−272およびビノレルビンの種々の希釈度の組合せに対する応答を独立に解析した。手短に述べると、ウシ胎仔血清(FBS)RPM1−1640(培地)を、これらの細胞系のうちの1つを含有する96ウエルプレートの各ウエルに添加した。ウエルの各列は、異なる希釈度のHKI−272を含有し、ビノレルビン溶液を各ウエルに、HKI−272の希釈度に関して多様な希釈度で添加した(H1650細胞系およびH1666細胞系についてのHKI−272の最も高い最終濃度は、1μMであり;H1975細胞系についてのHKI−272の最も高い最終濃度は、9μMであり;ビノレルビンの最も高い最終濃度は、細胞系の全てについて0.1μMであった)。プレートを、37℃、5%COで72時間インキュベーションした後、細胞増殖を判定した。
【0107】
細胞増殖は、HKI−272およびビノレルビンと共にインキュベーションした後に低下した。
【0108】
(実施例2)
非転移性乳癌の治療における、HKI−272とビノレルビンとの併用レジメン
非転移性乳癌と診断された患者を、HKI−272とビノレルビンとのレジメンを使用して治療する。HKI−272を、用量レベル1または2のいずれかで患者に投与する。HKI−272の投与をサイクル1の第1日において開始し、HKI−272を表3の投与量で1日1回経口投与する。HKI−272を、各サイクルの残りの日に経口投与する。HKI−272とビノレルビンとを同じ日に投与する日、すなわち、サイクルの第1日および第8日には、HKI−272を、ビノレルビン注入の前に投与する。
【0109】
【表1】

【0110】
HKI−272とビノレルビンとの組合せの忍容性が良好であり、疾患の進行の証拠がないならば、ビノレルビンを、各21日サイクルの第1日および第8日に投与する。ビノレルビンを、中心静脈経路を選択的に使用し、およそ10分かけてIVラインを自由に流して静脈内投与し、その後、125mLの生理食塩水をおよそ30分かけて注入する。
【0111】
患者が、治療の間に任意の重大な副作用を示す場合には、HKI−272および/またはビノレルビンの用量の調節が可能である。表4および5を参照されたい。
【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
腫瘍増殖の減少が観察されることが予測される。
【0115】
(実施例3)
転移性乳癌の治療における、HKI−272とビノレルビンとの併用レジメン
転移性乳癌と診断された患者を、HKI−272とビノレルビンとのレジメンを使用して治療する。
【0116】
ビノレルビンを、実施例2の表3または5に記載した投与量を使用して、サイクルの第1日および第8日に投与する。ビノレルビンを、インラインフィルターおよび自動化投薬ポンプを使用して、30分かけて投与する。抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、25〜50mgIVまたは等価物)を、ビノレルビン注入の約30前に場合により投与する。
【0117】
HKI−272の投与をサイクル1の第2日において開始し、HKI−272を実施例の2の表3または4に提供した投与量で1日1回経口投与する。HKI−272を、各サイクルの残りの日に経口投与する。HKI−272とビノレルビンとを同じ日に投与する日、すなわち、サイクルの第8日には、HKI−272を、ビノレルビン注入の前に投与する。患者が、治療の間に任意の重大な副作用を示す場合には、HKI−272および/またはビノレルビンの用量の調節が可能である。
【0118】
腫瘍増殖の減少が観察されることが予測される。
【0119】
本明細書において参照する特許、特許公開、論文およびその他の文献は全て、参照により組み込まれている。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載する特定の実施形態に対する改変を行うことができることは当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において新生物を治療するためのレジメンであって、
ビノレルビン化合物を投与するステップと、
HKI−272化合物を投与するステップと
を含むレジメン。
【請求項2】
投与ステップが、特定の順序で併行して、順次に、同時に、または特定の時間的な関係に従って行われる、請求項1に記載のレジメン。
【請求項3】
前記ビノレルビン化合物が、単位用量で投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項4】
前記HKI−272化合物が、単位用量で投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項5】
前記ビノレルビン化合物がビノレルビンである、請求項1に記載のレジメン。
【請求項6】
前記HKI−272化合物がHKI−272である、請求項1に記載のレジメン。
【請求項7】
前記ビノレルビン化合物および前記HKI−272化合物の一方または両方が、前記対象に静脈内送達される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項8】
前記ビノレルビン化合物および前記HKI−272化合物の一方または両方が、前記対象に経口送達される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項9】
前記新生物が、HER−2の過剰発現または増幅を伴う、請求項1に記載のレジメン。
【請求項10】
前記新生物が転移性である、請求項1に記載のレジメン。
【請求項11】
前記新生物が、肺癌、乳癌、骨髄腫、前立腺癌、頭頚部癌、移行上皮癌、子宮頚部の小細胞神経内分泌癌、および子宮頚部の大細胞神経内分泌癌からなる群から選択される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項12】
前記新生物が乳癌である、請求項11に記載のレジメン。
【請求項13】
前記乳癌が、転移性のHER−2陽性乳癌である、請求項12に記載のレジメン。
【請求項14】
前記新生物が、進行性の固形腫瘍である、請求項1に記載のレジメン。
【請求項15】
前記ビノレルビン化合物が、少なくとも約20mg/Lの量で投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項16】
前記ビノレルビン化合物が、約20mg/L〜約25mg/Lの量で投与される、請求項15に記載のレジメン。
【請求項17】
前記ビノレルビン化合物が、約25mg/Lの量で投与される、請求項16に記載のレジメン。
【請求項18】
前記HKI−272化合物が、少なくとも約120mgの量で投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項19】
前記HKI−272化合物が、少なくとも約160mgの量で投与される、請求項18に記載のレジメン。
【請求項20】
前記HKI−272化合物が、少なくとも約240mgの量で投与される、請求項19に記載のレジメン。
【請求項21】
前記単位用量が錠剤である、請求項4に記載のレジメン。
【請求項22】
前記HKI−272化合物が、毎日投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項23】
前記HKI−272化合物が、少なくとも1日1回投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項24】
前記HKI−272化合物が、前記レジメンの第1日に投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項25】
前記HKI−272化合物が、前記レジメンの第2日に投与される、請求項10に記載のレジメン。
【請求項26】
前記HKI−272化合物が、少なくとも2週間連続的に投与される、請求項1に記載のレジメン。
【請求項27】
少なくとも1つの薬学的に許容できる担体をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項28】
放射線照射をさらに含む、請求項1に記載のレジメン。

【公表番号】特表2011−524423(P2011−524423A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514774(P2011−514774)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/047643
【国際公開番号】WO2010/008744
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】