HLA抗体解析装置及びその方法並びにプログラム
【課題】複数種類のHLA抗原が固定された固定相を、複数用いて検体との抗原−抗体反応の反応量から、検体中のHLA抗体が反応したHLA抗原を検出し、かつ解析結果が適切か否かを検出するHLA抗体解析装置を提供する。
【解決手段】本発明のHLA抗体解析装置は、固定されるHLA抗原の組合せが各々異なる複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組合せに含まれる複数の固定相を用い、検体に含まれるHLA抗体が何れのHLA抗原に反応するかを検出する装置であり、固定相のHLA抗原とHLA抗体との抗原−抗体反応で測定された、反応する抗原−抗体の組合せの反応量を入力する反応量入力手段と、HLA抗原の種類毎に対応させ、HLA抗原が固定された固定相の識別情報を表示画面に表示する固定相表示部と、閾値を基準とし、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、識別情報をマークする固定相マーク手段とを有する。
【解決手段】本発明のHLA抗体解析装置は、固定されるHLA抗原の組合せが各々異なる複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組合せに含まれる複数の固定相を用い、検体に含まれるHLA抗体が何れのHLA抗原に反応するかを検出する装置であり、固定相のHLA抗原とHLA抗体との抗原−抗体反応で測定された、反応する抗原−抗体の組合せの反応量を入力する反応量入力手段と、HLA抗原の種類毎に対応させ、HLA抗原が固定された固定相の識別情報を表示画面に表示する固定相表示部と、閾値を基準とし、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、識別情報をマークする固定相マーク手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原−抗体反応によって得られた情報を用いて、検体中のHLA抗体の解析を行うHLA抗体解析装置及びその方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
HLA(ヒト白血球型:Human Leukocyte Antigen)抗原は別名、組織適合性抗原、または主要組織適合性複合体と呼ばれ、自己の細胞と異物とみなされる細胞の区別を行う際の指標となるものであり、生体組織の移植や血小板輸血の時に考慮される。
すなわち、HLA抗原の型が異なる場合、その移植された生体組織や血液が異物として認識され、免疫細胞(B細胞など)によって排除される。
上述したように、HLA抗原は、生体における組織及び血液の自己−非自己を区別する指標であり、非常に多くのタイプ(型)が存在する。
【0003】
特に、出血、感染症、発熱、肝脾腫、またはDIC(播種性血管内凝固症候群)などにより、血液中の血小板が少なくなった場合、対象処置として血小板輸血が行われる。
この血小板輸血を行う際、輸血する血小板のHLA抗原の型を一致させる必要があり、また、血小板の供給側の事情により、患者の免疫応答に反応しない抗原の型(許容抗原)、すなわち、該HLA抗原を認識するHLA抗体が患者の血液中に産生されていないHLA抗原の型を選ぶ必要がある。
しかしながら、輸血された血小板は、3〜4日で半減してしまうため、定期的な輸血が必要であるが、上記許容抗原の血小板を複数回にわたって輸血した場合、この許容抗原に対するHLA抗体を産生する可能性が高くなる。
【0004】
そして、HLA抗原に対するHLA抗体がいったん患者の血液中に産生された場合、長期間にわたってそのHLA抗体が保持されることになるため、HLA抗体が認識するHLA抗原を持つ血小板の輸血は異物と認識され排除されるため、その効果を発揮しなくなる。
したがって、血小板輸血の効果を発揮させるため、患者の血液中にHLA抗体が産生されているか否か、そしてHLA抗体が産生されていることが検出された場合、検出されたHLA抗体が非自己として認識するHLA抗原の型をスクリーニングする必要がある。
【0005】
HLA抗体のスクリーニングは、パネルリンパ球を用いたリンパ球細胞毒試験(例えば、非特許文献1参照)、ヒト免疫グロブリン−LCT(例えば、非特許文献2参照)、混合受身凝集法(例えば、非特許文献3参照)、またはこれら技術を応用し、蛍光ビーズを利用して抗原−抗体反応量を発光強度によって検出する方法が知られている。
生きたリンパ球細胞をパネル(パネル細胞)として利用する場合、抗体の検出感度が低い、抗原−抗体反応のばらつき、及び検出のための操作が煩雑といった問題がある。
そのため、上述した問題を解決するため、近年、蛍光ビーズを用いたHLA抗体の検出方法が普及し始めている。
この蛍光ビーズを用いたHLA抗体の検出方法は、蛍光ビーズにパネルリンパ球(パネル細胞)のHLA抗原を固定させ、患者の血液などの検体と反応させることによって得られる反応量を測定する方法である。
【0006】
上記蛍光ビーズに固定させる主要なHLA抗原としては、HLA−A、HLA−B、HLA−Cを構成するHLAクラスI抗原、HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQを構成するHLAクラスII抗原があり、これらがハプロタイプを形成している。
血小板輸血の際には血小板が持つHLAクラスI抗原を認識する抗体をスクリーニングし、一方、組織の移植の際にはHLAクラスI抗原およびHLAクラスII抗原を認識する抗体をスクリーニングする。
【0007】
HLA抗体の検出方法としては、1つのパネル細胞から各抗原を単離した後、この単離した各抗原を異なる蛍光ビーズに固定、すなわち1つの蛍光ビーズに1種類のHLA抗原を固定し、HLA抗体の検出に使用することが望ましい。
しかしながら、HLA抗原自体の単離が煩雑な上、HLA抗原の多様性から、結果として多種類の蛍光ビーズが必要となり、検出キットが非常に高価となってしまう。
そこで、1つの蛍光ビーズを1つのパネル細胞とみなし、パネル細胞上のHLA抗原をそのまま蛍光ビーズに固定させることにより、高感度が維持された、安価な検出キットが登場している。
【0008】
上記検出キットの欠点としては、生きたリンパ球細胞を用いた場合と同様に、蛍光ビーズに数種類の抗原を固定するので、抗原−抗体反応を示した蛍光ビーズにおいて、いずれのHLA抗原が、患者の検体中のHLA抗体と反応したのかの判別が困難であるという問題が残る。
このため、抗原−抗体反応において反応量が閾値を超えた、すなわち陽性の反応を示す蛍光ビーズに固定されたHLA抗原全てを排除することとなり、結果として血小板輸血における許容抗原の選択の幅が狭くなってしまう。
上記キットの欠点である許容抗原の選択の幅を確保するため、蛍光を示した蛍光ビーズに固定されているどの抗原が、検体中のHLA抗体と反応したのかを解析する必要がある。
【0009】
そのため、陽性と検出された蛍光ビーズから、その蛍光ビーズに固定されたいずれのHLA抗原に対して、検体に含まれるHLA抗体が反応したかの検出を行う。
すなわち、HLA抗体が反応したHLA抗原の解析方法としては、%PRA、相関係数、SI、セログラフ、交差反応性、HLA−Bw4とBw6、許容抗原、遺伝子解析、判定スコアなどいくつか方法が試されている(例えば、非特許文献4参照)。
【非特許文献1】LCT;Terasaki,P.I.,McClelland,J.B:Microdroplet assay of human serum cytotoxins. Nature,204:998-1000,1964
【非特許文献2】Johnson,A.H.,Rossen,R.D.,Butler,W.T.:Detection of alloantibodies using a sensitive antiglobulin microcytotoxicity test:Identification of low levels of pre-formed antibodies in accelerated allograft rejection.Tissue Antigens,2:215-226,1972
【非特許文献3】Shibata,Y.,Juji,T.,Nishizawa,Y.,et al.:Detection of platelet antibodies by a newly developed mixed agglutination with platelets. Vox Sang,41:25-31,1981
【非特許文献4】HLA抗体の解析手法、中島文明、MHC Vol.13,No.2 131-137(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に、上記交差反応性は、抗原名の血清学的なグループ分けと、抗原エピトープとから、交差反応性抗原(CREG:Cross Reactive Group Antigens)という、大まかな分類を行い、HLA抗原に対する抗体特異性を把握する手段として利用されてきた。
しかしながら、上述した従来の解析方法は、図13に示す一覧表により結果が表示され、検体内のHLA抗体に対して反応するHLA抗原を大まかに推定するに留まり、いずれのHLA抗原が反応したかが不明であり、十分使用に耐えうるものではなかった。
【0011】
すなわち、図13において、検体と固定相(例えば、パネル細胞)の反応量(蛍光値あるいはインデックス値、図13ではインデックス値)の高い順に並べた図である。
例えばPc12という識別情報を有する固定相は、A24、B7、Cw7の3種類のHLA抗原を有しており、そのインデックス値から該固定相は検査対象の検体と陽性反応を有することが分かる。しかしながら、この状態においてPc12に固定されたHLA抗原のいずれに対し、検体に含まれるHLA抗体が抗原−抗体反応したのかが不明である。
【0012】
判定者は、反応した抗原を判定するために、例えば、以下の手順によって行う。
あるHLA抗原が固定された固定相は、全て反応強度が陽性/陰性の判定値(閾値)より高い(陽性)か否かの判定を行う。
そして、例えばB7のHLA抗原が固定された固定相は全て陽性であるので、検体はそのHLA抗原B7を認識するHLA抗体を有していることがわかる。
また、A24のHLA抗原を有する固定相のように、一つでも反応量が閾値よりも低い値(陰性)を有する固定相があれば、検体はそのHLA抗原A24を認識する抗体を有していないことがわかる。
【0013】
上述したように、従来の一般的な解析方法は、閾値以上の反応を示した固定相(例えば、蛍光ビーズ)をソーティングし、それぞれに共通して含まれるHLA抗原を選別していた。この操作は、文字列で表現されたHLA抗原の型を、判定者がグルーピングする必要があり、処理が煩雑であり、慣れない判定者には不明である部分が多い。また、ある固定相の反応量が陽性を示していれば、その固定相に固定されたHLA抗原のうち、少なくとも1つは検体のHLA抗体が反応するHLA抗原があるはずなので、その確認も行う必要がある。
【0014】
また、HLA抗体解析処理において、閾値近傍にて陽性値と陰性値の差が少なく、閾値が適切に定められているか判断が困難な場合もある。
そして、閾値が間違っていると判定者が判断した場合、新たに閾値を定める必要があるが、その閾値が全てのHLA抗原に対して矛盾なく適切に処理されているかを、前述のように再度確認しなければならず、コンピュータにて上記処理を行った場合においても、その結果が本当に正しいか、判定者が確認する必要がある。
ここで、得られたインデックス値に対して閾値が適しているか否かのチェックにおいて、棒グラフが汎用的に用いられている。しかしながら、閾値近傍の陽性と陰性の差がどの程度あるかが視覚的にわかるのみで、検体のHLA抗体と反応するHLA抗原を特定するには、判定者が上記確認をする必要がある。
【0015】
また、HLA抗原の中には配列類似性が高い理由で、一つのHLA抗体が複数のHLA抗原を認識する場合がある(交差反応性)。
そして、HLA抗原の名称からだけでは、その交差反応する関係や類似度がわからないことも、判定を困難にさせている。例えば、HLA抗原B7、B13、B48、B60、B61は、類似度が高く、検体中にHLA抗原B7を認識するHLA抗体が存在する場合、このHLA抗体がその他のHLA抗原B13、B48、B60、B61に対しても認識する可能性があるということを判定者は知っておく必要がある。
したがって、出力された結果を用いて、選択した血小板が十分効果を示さないことがあってはならず、抗原−抗体反応量の数値から得られた解析結果が適切であるか否かの確認方法も望まれている。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数種類のHLA抗原が固定された固定相を、複数用いてHLAにおける抗原−抗体反応の反応量から、検体に含まれるHLA抗体が反応したHLA抗原を検出し、かつHLAにおける抗原−抗体反応量によって解析された結果が適切か否かを検出するHLA抗体解析装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のHLA抗体解析装置は、固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置であり、前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力手段と、HLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示部と、予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク手段とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記固定相表示部がそれぞれの固定相に固定されているHLA抗原間の交差反応性の対応関係を表示することを特徴とする。
【0019】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記同一のHLA抗原が固定された複数の固定相のうち、少なくとも一つの固定相における反応量が閾値以下であることを検出すると、該HLA抗原は、前記HLA抗体が認識しない抗原である許容抗原であることを示すマークを、前記HLA抗原の種類に付与する許容抗原検出手段をさらに有することを特徴とする。
【0020】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記許容抗原検出手段が、前記閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されている抗原のうち、少なくとも1つが許容抗原でないか否かの検出を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記許容抗原検出手段が、前記閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されている抗原のうち、少なくとも一つが許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを通知し、一方全てが許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを通知することを特徴とする。
【0022】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記許容抗原検出手段が、前記閾値をバックグラウンドの反応量の2倍に設定することを特徴とする。
【0023】
本発明のHLA抗体解析方法は、固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析方法であり、反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力過程と、固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示過程と、固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク過程とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明のHLA抗体解析プログラムは、固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置の処理をコンピュータに実行させるHLA抗体解析プログラムであり、反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する処理と、固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する処理と、固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする処理とを有するコンピュータが実行可能なプログラムである。
【0025】
本発明は、解析に用いる各固定相(あるいはパネル細胞)が有するHLA抗原型をデータベースから入手し、交差反応性相関図に表記したHLA抗原型の名称の下部に、そのHLA抗原型を有する固定相名などといった固定相識別情報を表記する。
これにより、本発明は、同一の抗原を有する固定相群のグルーピングを、表示画面上に相関図として表現し、検体に含まれる抗体と、固定相に固定されたHLA抗原との抗原−抗体反応量のデータを上記相関図に当てはめることによって、所定のHLA抗原に対するHLA抗体の反応性を、視覚的に解析することができる。
【0026】
すなわち、本発明は、血液、血清、血しょう、若しくは腹水などから精製された抗体などの検体中のHLA抗体を解析する装置、方法またはプログラムであって、交差反応性相関図に表記されたHLA抗原型の下部に、同じHLA抗原を有する固定相識別情報を列記することにより、同一HLA抗原を有する固定相のグルーピングを行い、検体に含まれるHLA抗体と、各固定相に固定されたHLA抗原(または各パネル細胞から分離され、固定相に固定されたHLA抗原)との抗原−抗体反応量を測定し、相関図に列記した各固定相識別情報を閾値を基準として、その反応量に応じて異なる色に変換し、図示することにより、検体と反応するHLA抗原、すなわち検体に含まれるHLA抗体を容易に確認するHLA抗体解析方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、視覚的に分かり易く表示画面に、HLA抗原毎に対応して、このHLA抗原が固定された固定相識別情報が表示され、抗原−抗体の反応量が予め設定された閾値として設定されているため、この閾値を超えた反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相がマーク(例えば、異なる色にて彩色、強調、枠、網掛けなど)されるため、固定相に固定されているいずれのHLA抗原に反応するHLA抗体が、検査対象の検体に含まれているかを、表示画面に表示された画像により視覚的に容易に確認することができる。
ここでの「及び/又は」の定義は、以下のA及びBの2つの場合を意味している。
A.閾値を超える反応量が検出された固定相と閾値以下の反応量が検出された固定相との双方をそれぞれ異なる彩色、強調、枠、網掛けなどにてマークする。
B.閾値を超える反応量が検出された固定相、または閾値以下の反応量が検出された固定相のいずれか一方をマークする。
また、本発明によれば、表示画面において、各HLA抗原間の交差反応性を示しているため、抗原−抗体反応を示したHLA抗原と交差反応性を有する他のHLA抗原を視覚的に確認することができ、血小板輸血をする際に、許容抗原としてのHLA抗原とHLA抗体に反応したHLA抗原を、容易に区別し、HLA抗体に反応したHLA抗原(非許容抗原)を除外することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態によるHLA抗体解析装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態によるHLA抗体解析装置の構成例を示すブロック図である。
この図において、本実施形態のHLA抗体解析装置は、HLA抗体解析部1、反応量データベース2、固定相データベース3、キーボード5及びマウス6を有している。
上記HLA抗体解析部1は、反応量入力部11、固定相表示部12、固定相マーク部13及び許容抗原検出部14を有している。
【0029】
反応量入力部11は、判定者により、例えばキーボード5等の入力装置から入力される検体データ、すなわち、検体を識別する検体識別情報(例えば、検体名)、患者名、固定相を識別する識別情報(抗原−抗体反応に用いた複数種類)、及び各固定相と検体との間で反応させたそれぞれ抗原−抗体反応の反応量とを少なくとも含む検体データを、後のHLA抗体解析の処理を行う検体データとして後述する各部に出力する。
また、反応量入力部11は、判定者により入力される上記検体データを検体識別情報に対応して一端反応量データベース2に記憶させ、判定者が入力する患者名により該検体データを検索して、後のHLA抗体解析の処理を行う検体データとして出力するようにしても良い。
【0030】
ここで、反応量とは、HLA抗原とHLA抗体との抗原−抗体反応の反応強度(たとえば、蛍光ビーズの場合、蛍光強度)であり、固定相(例えば、蛍光ビーズ)に固定されたHLA抗原と、検体中のHLA抗体とにおける抗原−抗体反応の強度を示す測定値であり、固定相毎の識別情報と対応して入力される。
また、反応量入力部11は、上記検体データが入力されると、抗原−抗体反応の検査に用いられた固定相の種類を示す識別情報、例えば蛍光ビーズの種類を示す識別情報を検出して各部に出力する。したがって、HLA抗原が複数種類固定された固定相を識別情報により検出すると、固定相データベース3からこの識別情報を用いて、各々の固定相に固定されているHLA抗原の種類の組み合わせを抽出することができる(固定相表示部12が行う処理)。
【0031】
固定相表示部12は、上記識別情報に対応した各固定相のHLA抗原の種類の組み合わせの情報を固定相データベース3から入力し、この各固定相に固定されているHLA抗原毎に、このHLA抗原が固定されている固定相を検出してグルーピングする。
また、固定相表示部12は、HLA抗原の種類毎に対応させ、該HLA抗原が固定された固定相の識別情報を表示、すなわち、例えばHLAクラスI抗原を例にすると、図2に示すように、HLA抗原の名称に対応させて固定相の識別情報を列記して表示画面に表示する。このとき、固定相表示部12は、各HLA抗原が対応するローカス毎にまとめ、さらに交差反応を示す相関図として、表示部4に表示する。
例えば、 固定相表示部12は、図2に示すように、表示領域203において、HLA抗原「A24」が固定されている固定相の識別情報として、このHLA抗原「A24」の名称の下に、このHLA抗原が固定されている固定相の識別情報「Pc04」、「Pc05」、「Pc08」、「Pc10」、「Pc12」、「Pc13」、「Pc17」、「Pc18」、「Pc19」が記載されている。
【0032】
また、固定相表示部12は、固定相に固定されているHLA抗原毎に、それぞれのHLA抗原間の交差反応性の対応関係を表示、例えば、図2に示すように、HLA抗原「A24」と交差反応性を有するHLA抗原「A23」とのそれぞれの名称を直線により対応付けて表示する。
固定相データベース3には、固定相の識別情報と、その固定相に固定されているHLA抗原の名称(名称の組み合わせ)が対応付けられて記憶されている。
また、固定相データベース3に記憶される情報も、必要に応じて反応量入力部11を介して、判定者により、例えばキーボード5等の入力装置から入力することができる。すなわち、判定者は、固定相の識別情報と、その固定相に固定されているHLA抗原の名称とを対応付ける登録処理を行うことにより、任意に固定相データベース3にこれらの組合せを記憶させることができる。
【0033】
固定相マーク部13は、画面上に表示されている固定相の識別情報に対し、固定相に対応する反応量が予め設定された閾値を基準として、この閾値を超える場合及び/又は閾値以下の場合にこの固定相の識別情報を抽出し、この固定相の識別情報にマークを付与、例えば、固定相の識別情報の文字を他と異なる色(一例として、閾値以下の場合に青色、閾値を超える場合に赤色)にて彩色する。
許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定されている固定相グループのうち、少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であることを検出すると、検体に該HLA抗原に対応するHLA抗体が含まれていない許容抗原であることを検出し、許容抗原であることを示すマークを、HLA抗原の名称に付与する。
【0034】
また反応量は、固定相と検体との間の抗原−抗体反応の測定値そのもの、例えば測定された蛍光値以外に、該蛍光値を、バックグラウンドの固定相(HLA抗原が全く固定されていないブランクビーズ)と検体との反応で得られた蛍光値により補正したものを示したインデックス値を用いてもよい。
このインデックス値は、「(検体と反応した任意の固定相の蛍光値)を(検体と反応したブランクビーズの蛍光値)により除算した数値」を、「(コントロール検体と反応した任意の固定相の蛍光値)を、(コントロール検体と反応したブランクビーズの蛍光値)により除算した数値」により除算した数値である。ここで、コントロール検体とは、全くHLA抗原に対するHLA抗体が全く存在しない検体を意味している。
【0035】
また、許容抗原検出部14は、閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも一つのHLA抗原が許容抗原でないか否かの検出を行う。
そして、許容抗原検出部14は、該固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも一つのHLA抗原が許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを示す情報を表示部4の表示画面に表示して通知し、一方、全てのHLA抗原が許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを示す情報を表示部4の表示画面に表示して通知する。
【0036】
また、固定相表示部12は、図2の表示領域200に示すように、抗原−抗体の反応量としての蛍光値と、その蛍光値から求められたインデックス値(以下、反応量)を、固定相の識別情報毎に対応させて表示する。
また、固定相表示部12は、図2の表示領域201に示すように、各固定相の識別情報(横軸)と、その識別情報の固定相と検体との抗原−抗体反応の反応量(縦軸)として、反応量の値を棒グラフの画像情報として、数値の大きい順(すなわち降順)に並べて表示部4に表示する。
【0037】
また、固定相表示部12は、閾値(カットオフ値)を示す情報、図2における閾値ライン202として、棒グラフに対して書き込む。このように、表示部4に棒グラフにて、閾値と反応量とを表示することにより、判定者がこの表示された画像を見ることにより、閾値と反応量との対応関係を明確に理解できる。この閾値は、バックグラウンドの反応量の2倍をディフォルト値として、後述する許容抗原検出部14により設定され、反応量入力部11により判定者が入力する任意の数値に任意に変更することができる。
【0038】
許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原を有する複数の固定相のうち、少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下である場合、該HLA抗原を許容抗原として、固定相表示部12に出力する。
固定相表示部12は、入力される許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力して通知する。この際、例えば日本人に多く認められる抗原を特にマークしたり、別途表示させることもできる。
また、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原を有する複数の固定相のうち、全ての固定相の反応量が閾値を超えた場合、該HLA抗原を非許容抗原として、固定相表示部12に出力する。
このとき、固定相表示部12は、入力される非許容抗原を、表示部4の非許容抗原を表示する領域204に出力して通知する。
【0039】
固定相表示部12は、図2における「結果検証」のボタン205を選択してクリックすることにより、図3に示すように、結果検証画面300を表示する。
結果検証画面300には「反応性適否解析」、「陽性反応絞込み」、「γ値」、「Bw4,Bw6表示」、「C抗原表示」の各ボタンが設けられており、判定者が各ボタンを選択してクリックすることにより、固定相表示部12は、いずれのボタンが選択されたかを検出し、いずれのボタンの処理を行うかを示す制御情報を固定相マーク部13及び許容抗原検出部14へ出力する。
【0040】
固定相マーク部13または許容抗原検出部14は、上記制御情報が入力されると、制御情報に対応する処理を実行する。
・反応性適否解析の処理
制御情報が「反応性適否解析」の処理を示すことを検出すると、許容抗原検出部14は、陽性と判定された任意の固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも一つのHLA抗原が許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを表示部4の表示画面に表示して通知し、一方、全てのHLA抗原が許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを表示部4の表示画面に表示して通知する。
【0041】
・陽性反応絞込み
この陽性反応絞込みの処理は、検体に含まれるHLA抗体の反応性を確認するための補助的機能である。すなわち、図2の各HLA抗原の相関図において、陽性と判定された任意のHLA抗原について、該HLA抗原が固定された固定相に付加された陽性を示すマークを、相関図全体から一時的に取り除く処理であり、取り除いたHLA抗原を固定した固定相以外で検体に反応するHLA抗原の有無を視覚的に確認することができる。
制御情報が「陽性反応絞込み」の処理を示すことを検出すると、固定相マーク部13は、図4に示す「陽性反応絞込み」の入力画面400を表示する。
【0042】
ここで、判定者がマークを取り除く対象のHLA抗原の識別情報を、上記入力画面400の入力欄にキーボード5から入力し、絞込みボタンを選択してクリックすることにより、固定相マーク部13は、入力欄に入力されたHLA抗原を固定した固定相の識別情報のマークを外す、すなわち識別情報の色を、陽性に対応する色から、例えば白色などの異なる色に変更して彩色する。これにより、検体中のHLA抗体に対していずれのHLA抗原が反応しているか否かが文字を読まなくとも、色により直感的に容易に確認することができる。
【0043】
たとえば、図4に示すように、判定者が入力画面400の入力欄にHLA抗原「A26」と入力すると、図5に示すように、HLA抗原「A26」を固定する固定相「Pc03」、「Pc06」、「Pc15」、「Pc17」の識別情報のマークが固定相マーク部13により相関図全体から外され、他のHLA抗原「A33」及び「B44」が陽性であることが明確となる。
また、上記「陽性反応絞込み」の処理を解除する場合、入力画面400における解除のボタンを選択してクリックすることにより、固定相マーク部13は、陽性であるが陽性の色と異なる色にて彩色されたHLA抗原の識別情報を、陽性の色に変更して彩色して図2の相関図の状態に戻す。
【0044】
・Bw4,Bw6表示
このBw4、Bw6表示の処理も、検体に含まれるHLA抗体の反応性を確認するための補助的機能である。HLA−B抗原と一部のHLA−A抗原は分子内の共通エピトープからそれぞれBw4抗原またはBw6抗原と分類される。そこで、許容抗原検出部14は、図2の各HLA抗原の相関図において、Bw4またはBw6に対応するHLA抗原の名称部分に対して、図6に示すように、固定相表示部12を介して、Bw4またはBw6と、重ね合わせて表示部4に表示する。ここで、許容抗原検出部14は、各HLA抗原がBw4、Bw6抗原のいずれかに対応するかを示すテーブルを記憶しており、このテーブルをHLA抗原の名称をキーとして検索して、このHLA抗原が対応するBw4抗原あるいはBw6抗原を抽出することとなる。
例えば、図3におけるHLA抗原の相関図における「B44」の抗原はBw4抗原に分類されるため、領域310に示すように、「B44」の文字列の上に、「Bw4」の文字列を上書きし、一方、「B46」の抗原はBw6抗原に分類されるため、領域320に示すように、「B46」の文字列の上に、「Bw6」の文字列を上書きすることで、Bw4抗原、またはBw6抗原に反応する抗体であるかどうかを視覚的に確認することができる。
【0045】
・C抗原表示
このC抗原表示の処理も、検体に含まれるHLA抗体の反応性を確認するための補助的機能である。すなわち、HLA−C抗原の情報も、例えば、表示部4において図7に示すように別ウインドウに表示することによって、判定者にとって、検体に含まれるHLA抗体の反応性をより判別しやすくなる。固定相マーク部13は、C抗原情報として、HLA抗原の名称、このHLA抗原が固定されている固定相の識別情報を固定相表示部12を介して表示部4に表示し、この識別情報に対して閾値を超えた反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相それぞれが区別できるように、それぞれの結果に対応したマーク(彩色、強調、枠、網掛けなどを変更する等のデータ)を識別情報に付加する。
【0046】
また、固定相マーク部13は、上述した識別情報に対するマークの付加に加え、必要に応じてHLA抗原のアリル(対立遺伝子)情報(DNAの配列の個体差を示す遺伝子多型を識別する識別情報)を、固定相表示部12を介して表示部4に表示する。
例えば、図7に示すように、C抗原としてCw1〜Cw10の種類の名称を表示し、そのHLA−C抗原の名称の下部に、それぞれに対応するHLA抗原の識別情報を記述し、検体が有するHLA抗体のHLA−C抗原に対する反応の有無を示すマークをHLA抗原の識別情報に付加する。
【0047】
・γ値表示
制御情報が「γ値」の処理を示すことを検出すると、許容抗原検出部14は、各固定相の反応量から、固定相に固定されている各HLA抗原の陽性反応の統計的優位性を判定するためのγ値をかい2乗(χ2)検定にて算出し、例えば、図8に示すように、表示部4に表示することができる。
【0048】
また、図2における検体型入力ボタンを判定者が選択してクリックすると、検体型入力欄が表示され、判定者は検体を採取した患者が有しているHLA抗原(基本的にHLA抗体が産生されない)の型を入力する。
これにより、反応量入力部11は、入力されたHLA抗原型を固定相表示部12へ出力する。固定相表示部12は、図2の領域204の検体抗原の位置に、検体を採取した患者のHLA抗原を表示する。これにより、仮に該HLA抗原が陽性と判定された場合でも、該HLA抗原に対するHLA抗体は産生されないため、該HLA抗原が固定された固定相上の異なるHLA抗原が反応したと考えることができる。
【0049】
HLAクラスII抗原についても、図9に示すように、図2ですでに説明したHLAクラスI抗原と同様に各情報を表示する。
すなわち、固定相表示部12は、表示部4の表示領域900に対して、図2の表示領域200と同様に、抗原−抗体の反応量としての蛍光値と、その蛍光値から求められたインデックス値(以下、反応量)とを示す。
また、固定相表示部12は、表示部4の表示領域901に対して、図2の表示領域201と同様に、固定相マーク部13及び許容抗原検出部14の処理結果として、各固定相の識別情報(横軸)と、その識別情報の固定相と検体との抗原-抗体反応の反応量(縦軸)として、反応量の値を棒グラフの画像情報として、数値の大きい順(すなわち降順)に並べて表示する。
【0050】
また、固定相表示部12は、表示部4の表示領域201に対して、図2の表示領域201と同様に閾値(カットオフ値)を示す情報として閾値ライン902を表示し、また表示領域903に対して、図2の表示領域203と同様に、HLA抗原の相関図を表示する。
例えば、 固定相表示部12は、図9に示すように、表示領域903において、HLA抗原「DQ6」が固定されている固定相の識別情報として、このHLA抗原「DQ6」の名称の下に、このHLA抗原が固定されている固定相の識別情報「Pc18」、「Pc19」、「Pc01」、「Pc16」、「Pc14」、「Pc13」、「Pc08」、「Pc07」が記載されている。
【0051】
さらに、固定相表示部12は、表示部4の表示領域904に対して、図2の表示領域204と同様に許容抗原又は非許容抗原を表示し、表示領域905に対して、図2の表示領域205と同様に「結果検証」ボタンを表示する。
そして、上記図9の表示領域の「結果検証」ボタンをユーザが押すことにより、図3に示す検証結果画面300が同様に表示され、「反応性適否解析」、「陽性反応絞込み」、「γ値」の各ボタンがユーザに押され、固定相表示部12から、いずれのボタンの処理を行う表示情報が入力されると、固定相マーク部13または許容抗原検出部14は、上記情報が入力されることにより、制御情報に対応した処理を、図2ですでに説明したHLAクラスI抗原の処理と同様に行う。
【0052】
次に、図を用いて本実施形態によるHLA抗体解析装置の動作を説明する。
<第1の動作例>
以下、図10を用いてHLA抗体解析装置の動作例を説明する。図10はHLA抗体解析装置による第1の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS400において、判定者はキーボード5により、または測定機器から直接入力された反応量データベース2に記憶された各データによりHLA抗体の解析処理を行うため、上記検体データを入力する。
【0053】
そして、固定相表示部12は、上記検体データにおける識別情報が反応量入力部11を介して入力されると、抗原−抗体反応の検査に用いられた識別情報を検出し、各識別情報に対応する固定相に固定されているHLA抗原の種類を、固定相毎に固定相データベース3から読み出す。
また、このとき、許容抗原検出部14は、上記検体データにおける固定相毎の測定された蛍光値が反応量入力部11を介して入力されると、各蛍光値とバックグラウンド値とから、各固定相と検体との抗原−抗体反応のインデックス値(以下、反応量)を算出する。
【0054】
次に、ステップS401において、固定相表示部12は、上記識別情報に対応した各固定相に固定されたHLA抗原の種類の組み合わせの情報を、固定相データベース3から入力し、この各固定相に固定されているHLA抗原を全て抽出する。
そして、固定相表示部12は、抽出したHLA抗原毎に、このHLA抗原が固定されている固定相を抽出して、HLA抗原毎の固定相グループを作成する。
また、固定相表示部12は、検査に用いた固定相に固定されているHLA抗原間の交差反応の関係の有無を、固定相データベース3に記憶されている、HLA抗原と、そのHLA抗原に対し交差反応性を有するHLA抗原との対応表を参照して、交差反応性を有するHLA抗原同士を関連づけて記憶する。
【0055】
次に、ステップS402において、許容抗原検出部14は、閾値(カットオフ値)を算出する。また、ここで、判定者は算出されるディフォルトの閾値を用いず、キーボード5等により任意に入力しても良い。
そして、固定相マーク部13は、各固定相の反応量が上記閾値を超えているか否かの判定を行う。
判定後、固定相マーク部13は、上記各固定相グループに含まれる固定相のうち、閾値を超えた反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相の識別情報にマーク(彩色、強調、枠、網掛けなどを変更する等のデータ)を付加する。
【0056】
次に、ステップS403において、固定相表示部12は、HLA抗原の名称に対応させ、固定相グループに含まれる固定相の識別情報を表示し、HLA抗原の名称に対応させ、各HLA抗原の下部に、HLA抗原に対応する固定相グループに含まれる固定相の識別情報を表示する。
そして、固定相表示部12は、各HLA抗原間において交差反応を有しているHLA抗原同士を線で結び相関図を生成して表示部4の表示画面に表示する。
相関図が表示されると、固定相マーク部13は、固定相の識別情報にマークがあるか否かの判定を行い、マークが付加されている識別情報に従い彩色、強調、枠、網掛けなどの表示をする。また、固定相表示部12は、図2に示すように、表示領域200に棒グラフを表示し、上記閾値を付加することにより、いずれの固定相が陽性反応を有しているかを明確に表示する。
【0057】
<第2の動作例>
以下、図11を用いてHLA抗体解析装置の動作例を説明する。図11はHLA抗体解析装置による第2の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
図11のフローチャートにおけるステップS500〜S503各々は、図10のフローチャートにおけるステップS400〜S403とそれぞれ同様のため、その動作の説明を省略する。
ステップS504において、許容抗原検出部14は、領域203に表示されたHLA抗原の相関図において、各HLA抗原の名称に対応して表示されている識別情報がマークされていないか、あるいはマークされているか、若しくは異なっているかを検出する。
【0058】
すなわち、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相グループの少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であるか否かを検出する。
このとき、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相のグループの少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であることを検出すると、処理をステップS505へ進める。
一方、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原を固定する固定相グループの全ての固定相の反応量が閾値を超えることを検出すると、処理をステップS507へ進める。
【0059】
そして、ステップS505において、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相グループの少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であることを検出すると、このHLA抗原が陰性であると判定し、血小板輸血が可能な許容抗原として検出する。
許容抗原の検出後、ステップS506において、固定相表示部12は、許容抗原検出部14から入力される許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力し、判定者に通知する。
【0060】
そして、ステップS507において、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相グループの全ての固定相の反応量が閾値を超えていることを検出すると、このHLA抗原が陽性であると判定し、血小板輸血が不可能な非許容抗原として検出する。
非許容抗原の検出後、ステップS508において、固定相表示部12は、許容抗原検出部14から入力される非許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力し、判定者に通知する。
【0061】
領域203に表示されたHLA抗原の名称(あるいは型)を有する固定相の識別情報は、陽性/陰性が異なる色彩、強調、枠、網掛けなどで表示されている。
このため、識別情報色彩などのパターンにより、検体に含まれるHLA抗体の各HLA抗原に対する抗原−抗体反応の反応性を、判定者が容易に(かつ視覚的に)判断することが可能となる。
【0062】
<第3の動作例>
以下、図12を用いてHLA抗体解析装置の動作例を説明する。図12はHLA抗体解析装置による第3の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
図12のフローチャートにおけるステップS600〜S605、S607、S608各々は、図11のフローチャートにおけるステップS500〜S505、S507、S508とそれぞれ同様のため、その動作の説明を省略する。
ステップS605にて許容抗原を検出した後、ステップS606において、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を示した固定相に固定されたHLA抗原において、そのいずれか1つでも陽性と判定されたHLA抗原があるか否かの検出を行う。
【0063】
すなわち、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を有する固定相に固定されたHLA抗原の全てが陰性、すなわち該固定相に固定されているHLA抗原の全てが許容抗原であるか否かの検出を行う。
このとき、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を示した固定相に固定されたHLA抗原において、そのいずれか1つでも陽性と判定されたHLA抗原が存在していることが検出された場合、処理をステップS609へ進める。
一方、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を示した固定相に固定されたHLA抗原において、そのすべてが陰性と判定された場合、処理をステップS611へ進める。
【0064】
次に、ステップS609において、許容抗原検出部14は、いずれか1つでも陽性と判定されたため、上述したHLA抗体解析の処理が適切であったことを検出し、許容抗原の名称を固定相表示部12に対して出力し、処理をステップS610へ進める。
そして、ステップS610において、固定相表示部12は、許容抗原検出部14から入力される許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力し、判定者に通知する。
【0065】
一方、ステップS611において、許容抗原検出部14は、反応量を超える固定相に固定された全てのHLA抗原の全てが陰性であれば、HLA抗体解析は不適切であると判定し、閾値の再設定を判定者に促す通知を表示部4に表示する。
【0066】
なお、図1におけるHLA抗体解析装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりHLA抗体解析処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0067】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態によるHLA抗体解析装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】HLA抗体解析部1により表示部4に表示されるHLA抗体解析処理を行う画面構成を示す概念図(HLAクラスI抗原)である。
【図3】図2の検証結果のボタンがクリックされると固定相表示部12により表示される結果検証画面300の構成を示す概念図である。
【図4】図3の結果検証画面300の陽性反応絞込みボタンを選択してクリックすると固定相マーク部13により表示される対象のHLA抗原の名称を入力する陽性反応絞込みの入力画面400の構成を示す概念図である
【図5】上記入力画面400に入力された識別情報のマークが外された相関図を示している。
【図6】図3の結果検証画面300のBw4,Bw6表示ボタンを選択してクリックすると固定相表示部12により表示されるBw4,Bw6の抗原情報を示す概念図である。
【図7】図3の結果検証画面300のC抗原表示ボタンを選択してクリックすると固定相表示部12により表示されるC抗原情報を示す概念図である。
【図8】各HLA抗原の陽性反応の統計的優位性を判定するγ値解析結果を示す表の一例である。
【図9】HLA抗体解析部1により表示部4に表示されるHLA抗体解析処理を行う画面構成を示す概念図(HLAクラスII抗原)である。
【図10】一実施形態によるHLA抗体解析装置の第1の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】一実施形態によるHLA抗体解析装置の第2の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】一実施形態によるHLA抗体解析装置の第3の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】従来のHLA抗体解析処理の結果として出力される、各固定相に対応して、固定されているHLA抗原、固定相と検体との蛍光値と、蛍光値から求められたインデックス値の関係を示す一覧表である。
【符号の説明】
【0069】
1…HLA抗体解析部
2…反応量データベース
3…固定相データベース
4…表示部
5…キーボード
6…マウス
11…反応量入力部
12…固定相表示部
13…固定相マーク部
14…許容抗原検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原−抗体反応によって得られた情報を用いて、検体中のHLA抗体の解析を行うHLA抗体解析装置及びその方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
HLA(ヒト白血球型:Human Leukocyte Antigen)抗原は別名、組織適合性抗原、または主要組織適合性複合体と呼ばれ、自己の細胞と異物とみなされる細胞の区別を行う際の指標となるものであり、生体組織の移植や血小板輸血の時に考慮される。
すなわち、HLA抗原の型が異なる場合、その移植された生体組織や血液が異物として認識され、免疫細胞(B細胞など)によって排除される。
上述したように、HLA抗原は、生体における組織及び血液の自己−非自己を区別する指標であり、非常に多くのタイプ(型)が存在する。
【0003】
特に、出血、感染症、発熱、肝脾腫、またはDIC(播種性血管内凝固症候群)などにより、血液中の血小板が少なくなった場合、対象処置として血小板輸血が行われる。
この血小板輸血を行う際、輸血する血小板のHLA抗原の型を一致させる必要があり、また、血小板の供給側の事情により、患者の免疫応答に反応しない抗原の型(許容抗原)、すなわち、該HLA抗原を認識するHLA抗体が患者の血液中に産生されていないHLA抗原の型を選ぶ必要がある。
しかしながら、輸血された血小板は、3〜4日で半減してしまうため、定期的な輸血が必要であるが、上記許容抗原の血小板を複数回にわたって輸血した場合、この許容抗原に対するHLA抗体を産生する可能性が高くなる。
【0004】
そして、HLA抗原に対するHLA抗体がいったん患者の血液中に産生された場合、長期間にわたってそのHLA抗体が保持されることになるため、HLA抗体が認識するHLA抗原を持つ血小板の輸血は異物と認識され排除されるため、その効果を発揮しなくなる。
したがって、血小板輸血の効果を発揮させるため、患者の血液中にHLA抗体が産生されているか否か、そしてHLA抗体が産生されていることが検出された場合、検出されたHLA抗体が非自己として認識するHLA抗原の型をスクリーニングする必要がある。
【0005】
HLA抗体のスクリーニングは、パネルリンパ球を用いたリンパ球細胞毒試験(例えば、非特許文献1参照)、ヒト免疫グロブリン−LCT(例えば、非特許文献2参照)、混合受身凝集法(例えば、非特許文献3参照)、またはこれら技術を応用し、蛍光ビーズを利用して抗原−抗体反応量を発光強度によって検出する方法が知られている。
生きたリンパ球細胞をパネル(パネル細胞)として利用する場合、抗体の検出感度が低い、抗原−抗体反応のばらつき、及び検出のための操作が煩雑といった問題がある。
そのため、上述した問題を解決するため、近年、蛍光ビーズを用いたHLA抗体の検出方法が普及し始めている。
この蛍光ビーズを用いたHLA抗体の検出方法は、蛍光ビーズにパネルリンパ球(パネル細胞)のHLA抗原を固定させ、患者の血液などの検体と反応させることによって得られる反応量を測定する方法である。
【0006】
上記蛍光ビーズに固定させる主要なHLA抗原としては、HLA−A、HLA−B、HLA−Cを構成するHLAクラスI抗原、HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQを構成するHLAクラスII抗原があり、これらがハプロタイプを形成している。
血小板輸血の際には血小板が持つHLAクラスI抗原を認識する抗体をスクリーニングし、一方、組織の移植の際にはHLAクラスI抗原およびHLAクラスII抗原を認識する抗体をスクリーニングする。
【0007】
HLA抗体の検出方法としては、1つのパネル細胞から各抗原を単離した後、この単離した各抗原を異なる蛍光ビーズに固定、すなわち1つの蛍光ビーズに1種類のHLA抗原を固定し、HLA抗体の検出に使用することが望ましい。
しかしながら、HLA抗原自体の単離が煩雑な上、HLA抗原の多様性から、結果として多種類の蛍光ビーズが必要となり、検出キットが非常に高価となってしまう。
そこで、1つの蛍光ビーズを1つのパネル細胞とみなし、パネル細胞上のHLA抗原をそのまま蛍光ビーズに固定させることにより、高感度が維持された、安価な検出キットが登場している。
【0008】
上記検出キットの欠点としては、生きたリンパ球細胞を用いた場合と同様に、蛍光ビーズに数種類の抗原を固定するので、抗原−抗体反応を示した蛍光ビーズにおいて、いずれのHLA抗原が、患者の検体中のHLA抗体と反応したのかの判別が困難であるという問題が残る。
このため、抗原−抗体反応において反応量が閾値を超えた、すなわち陽性の反応を示す蛍光ビーズに固定されたHLA抗原全てを排除することとなり、結果として血小板輸血における許容抗原の選択の幅が狭くなってしまう。
上記キットの欠点である許容抗原の選択の幅を確保するため、蛍光を示した蛍光ビーズに固定されているどの抗原が、検体中のHLA抗体と反応したのかを解析する必要がある。
【0009】
そのため、陽性と検出された蛍光ビーズから、その蛍光ビーズに固定されたいずれのHLA抗原に対して、検体に含まれるHLA抗体が反応したかの検出を行う。
すなわち、HLA抗体が反応したHLA抗原の解析方法としては、%PRA、相関係数、SI、セログラフ、交差反応性、HLA−Bw4とBw6、許容抗原、遺伝子解析、判定スコアなどいくつか方法が試されている(例えば、非特許文献4参照)。
【非特許文献1】LCT;Terasaki,P.I.,McClelland,J.B:Microdroplet assay of human serum cytotoxins. Nature,204:998-1000,1964
【非特許文献2】Johnson,A.H.,Rossen,R.D.,Butler,W.T.:Detection of alloantibodies using a sensitive antiglobulin microcytotoxicity test:Identification of low levels of pre-formed antibodies in accelerated allograft rejection.Tissue Antigens,2:215-226,1972
【非特許文献3】Shibata,Y.,Juji,T.,Nishizawa,Y.,et al.:Detection of platelet antibodies by a newly developed mixed agglutination with platelets. Vox Sang,41:25-31,1981
【非特許文献4】HLA抗体の解析手法、中島文明、MHC Vol.13,No.2 131-137(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に、上記交差反応性は、抗原名の血清学的なグループ分けと、抗原エピトープとから、交差反応性抗原(CREG:Cross Reactive Group Antigens)という、大まかな分類を行い、HLA抗原に対する抗体特異性を把握する手段として利用されてきた。
しかしながら、上述した従来の解析方法は、図13に示す一覧表により結果が表示され、検体内のHLA抗体に対して反応するHLA抗原を大まかに推定するに留まり、いずれのHLA抗原が反応したかが不明であり、十分使用に耐えうるものではなかった。
【0011】
すなわち、図13において、検体と固定相(例えば、パネル細胞)の反応量(蛍光値あるいはインデックス値、図13ではインデックス値)の高い順に並べた図である。
例えばPc12という識別情報を有する固定相は、A24、B7、Cw7の3種類のHLA抗原を有しており、そのインデックス値から該固定相は検査対象の検体と陽性反応を有することが分かる。しかしながら、この状態においてPc12に固定されたHLA抗原のいずれに対し、検体に含まれるHLA抗体が抗原−抗体反応したのかが不明である。
【0012】
判定者は、反応した抗原を判定するために、例えば、以下の手順によって行う。
あるHLA抗原が固定された固定相は、全て反応強度が陽性/陰性の判定値(閾値)より高い(陽性)か否かの判定を行う。
そして、例えばB7のHLA抗原が固定された固定相は全て陽性であるので、検体はそのHLA抗原B7を認識するHLA抗体を有していることがわかる。
また、A24のHLA抗原を有する固定相のように、一つでも反応量が閾値よりも低い値(陰性)を有する固定相があれば、検体はそのHLA抗原A24を認識する抗体を有していないことがわかる。
【0013】
上述したように、従来の一般的な解析方法は、閾値以上の反応を示した固定相(例えば、蛍光ビーズ)をソーティングし、それぞれに共通して含まれるHLA抗原を選別していた。この操作は、文字列で表現されたHLA抗原の型を、判定者がグルーピングする必要があり、処理が煩雑であり、慣れない判定者には不明である部分が多い。また、ある固定相の反応量が陽性を示していれば、その固定相に固定されたHLA抗原のうち、少なくとも1つは検体のHLA抗体が反応するHLA抗原があるはずなので、その確認も行う必要がある。
【0014】
また、HLA抗体解析処理において、閾値近傍にて陽性値と陰性値の差が少なく、閾値が適切に定められているか判断が困難な場合もある。
そして、閾値が間違っていると判定者が判断した場合、新たに閾値を定める必要があるが、その閾値が全てのHLA抗原に対して矛盾なく適切に処理されているかを、前述のように再度確認しなければならず、コンピュータにて上記処理を行った場合においても、その結果が本当に正しいか、判定者が確認する必要がある。
ここで、得られたインデックス値に対して閾値が適しているか否かのチェックにおいて、棒グラフが汎用的に用いられている。しかしながら、閾値近傍の陽性と陰性の差がどの程度あるかが視覚的にわかるのみで、検体のHLA抗体と反応するHLA抗原を特定するには、判定者が上記確認をする必要がある。
【0015】
また、HLA抗原の中には配列類似性が高い理由で、一つのHLA抗体が複数のHLA抗原を認識する場合がある(交差反応性)。
そして、HLA抗原の名称からだけでは、その交差反応する関係や類似度がわからないことも、判定を困難にさせている。例えば、HLA抗原B7、B13、B48、B60、B61は、類似度が高く、検体中にHLA抗原B7を認識するHLA抗体が存在する場合、このHLA抗体がその他のHLA抗原B13、B48、B60、B61に対しても認識する可能性があるということを判定者は知っておく必要がある。
したがって、出力された結果を用いて、選択した血小板が十分効果を示さないことがあってはならず、抗原−抗体反応量の数値から得られた解析結果が適切であるか否かの確認方法も望まれている。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数種類のHLA抗原が固定された固定相を、複数用いてHLAにおける抗原−抗体反応の反応量から、検体に含まれるHLA抗体が反応したHLA抗原を検出し、かつHLAにおける抗原−抗体反応量によって解析された結果が適切か否かを検出するHLA抗体解析装置及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のHLA抗体解析装置は、固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置であり、前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力手段と、HLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示部と、予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク手段とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記固定相表示部がそれぞれの固定相に固定されているHLA抗原間の交差反応性の対応関係を表示することを特徴とする。
【0019】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記同一のHLA抗原が固定された複数の固定相のうち、少なくとも一つの固定相における反応量が閾値以下であることを検出すると、該HLA抗原は、前記HLA抗体が認識しない抗原である許容抗原であることを示すマークを、前記HLA抗原の種類に付与する許容抗原検出手段をさらに有することを特徴とする。
【0020】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記許容抗原検出手段が、前記閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されている抗原のうち、少なくとも1つが許容抗原でないか否かの検出を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記許容抗原検出手段が、前記閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されている抗原のうち、少なくとも一つが許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを通知し、一方全てが許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを通知することを特徴とする。
【0022】
本発明のHLA抗体解析装置は、前記許容抗原検出手段が、前記閾値をバックグラウンドの反応量の2倍に設定することを特徴とする。
【0023】
本発明のHLA抗体解析方法は、固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析方法であり、反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力過程と、固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示過程と、固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク過程とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明のHLA抗体解析プログラムは、固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置の処理をコンピュータに実行させるHLA抗体解析プログラムであり、反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する処理と、固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する処理と、固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする処理とを有するコンピュータが実行可能なプログラムである。
【0025】
本発明は、解析に用いる各固定相(あるいはパネル細胞)が有するHLA抗原型をデータベースから入手し、交差反応性相関図に表記したHLA抗原型の名称の下部に、そのHLA抗原型を有する固定相名などといった固定相識別情報を表記する。
これにより、本発明は、同一の抗原を有する固定相群のグルーピングを、表示画面上に相関図として表現し、検体に含まれる抗体と、固定相に固定されたHLA抗原との抗原−抗体反応量のデータを上記相関図に当てはめることによって、所定のHLA抗原に対するHLA抗体の反応性を、視覚的に解析することができる。
【0026】
すなわち、本発明は、血液、血清、血しょう、若しくは腹水などから精製された抗体などの検体中のHLA抗体を解析する装置、方法またはプログラムであって、交差反応性相関図に表記されたHLA抗原型の下部に、同じHLA抗原を有する固定相識別情報を列記することにより、同一HLA抗原を有する固定相のグルーピングを行い、検体に含まれるHLA抗体と、各固定相に固定されたHLA抗原(または各パネル細胞から分離され、固定相に固定されたHLA抗原)との抗原−抗体反応量を測定し、相関図に列記した各固定相識別情報を閾値を基準として、その反応量に応じて異なる色に変換し、図示することにより、検体と反応するHLA抗原、すなわち検体に含まれるHLA抗体を容易に確認するHLA抗体解析方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、視覚的に分かり易く表示画面に、HLA抗原毎に対応して、このHLA抗原が固定された固定相識別情報が表示され、抗原−抗体の反応量が予め設定された閾値として設定されているため、この閾値を超えた反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相がマーク(例えば、異なる色にて彩色、強調、枠、網掛けなど)されるため、固定相に固定されているいずれのHLA抗原に反応するHLA抗体が、検査対象の検体に含まれているかを、表示画面に表示された画像により視覚的に容易に確認することができる。
ここでの「及び/又は」の定義は、以下のA及びBの2つの場合を意味している。
A.閾値を超える反応量が検出された固定相と閾値以下の反応量が検出された固定相との双方をそれぞれ異なる彩色、強調、枠、網掛けなどにてマークする。
B.閾値を超える反応量が検出された固定相、または閾値以下の反応量が検出された固定相のいずれか一方をマークする。
また、本発明によれば、表示画面において、各HLA抗原間の交差反応性を示しているため、抗原−抗体反応を示したHLA抗原と交差反応性を有する他のHLA抗原を視覚的に確認することができ、血小板輸血をする際に、許容抗原としてのHLA抗原とHLA抗体に反応したHLA抗原を、容易に区別し、HLA抗体に反応したHLA抗原(非許容抗原)を除外することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態によるHLA抗体解析装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態によるHLA抗体解析装置の構成例を示すブロック図である。
この図において、本実施形態のHLA抗体解析装置は、HLA抗体解析部1、反応量データベース2、固定相データベース3、キーボード5及びマウス6を有している。
上記HLA抗体解析部1は、反応量入力部11、固定相表示部12、固定相マーク部13及び許容抗原検出部14を有している。
【0029】
反応量入力部11は、判定者により、例えばキーボード5等の入力装置から入力される検体データ、すなわち、検体を識別する検体識別情報(例えば、検体名)、患者名、固定相を識別する識別情報(抗原−抗体反応に用いた複数種類)、及び各固定相と検体との間で反応させたそれぞれ抗原−抗体反応の反応量とを少なくとも含む検体データを、後のHLA抗体解析の処理を行う検体データとして後述する各部に出力する。
また、反応量入力部11は、判定者により入力される上記検体データを検体識別情報に対応して一端反応量データベース2に記憶させ、判定者が入力する患者名により該検体データを検索して、後のHLA抗体解析の処理を行う検体データとして出力するようにしても良い。
【0030】
ここで、反応量とは、HLA抗原とHLA抗体との抗原−抗体反応の反応強度(たとえば、蛍光ビーズの場合、蛍光強度)であり、固定相(例えば、蛍光ビーズ)に固定されたHLA抗原と、検体中のHLA抗体とにおける抗原−抗体反応の強度を示す測定値であり、固定相毎の識別情報と対応して入力される。
また、反応量入力部11は、上記検体データが入力されると、抗原−抗体反応の検査に用いられた固定相の種類を示す識別情報、例えば蛍光ビーズの種類を示す識別情報を検出して各部に出力する。したがって、HLA抗原が複数種類固定された固定相を識別情報により検出すると、固定相データベース3からこの識別情報を用いて、各々の固定相に固定されているHLA抗原の種類の組み合わせを抽出することができる(固定相表示部12が行う処理)。
【0031】
固定相表示部12は、上記識別情報に対応した各固定相のHLA抗原の種類の組み合わせの情報を固定相データベース3から入力し、この各固定相に固定されているHLA抗原毎に、このHLA抗原が固定されている固定相を検出してグルーピングする。
また、固定相表示部12は、HLA抗原の種類毎に対応させ、該HLA抗原が固定された固定相の識別情報を表示、すなわち、例えばHLAクラスI抗原を例にすると、図2に示すように、HLA抗原の名称に対応させて固定相の識別情報を列記して表示画面に表示する。このとき、固定相表示部12は、各HLA抗原が対応するローカス毎にまとめ、さらに交差反応を示す相関図として、表示部4に表示する。
例えば、 固定相表示部12は、図2に示すように、表示領域203において、HLA抗原「A24」が固定されている固定相の識別情報として、このHLA抗原「A24」の名称の下に、このHLA抗原が固定されている固定相の識別情報「Pc04」、「Pc05」、「Pc08」、「Pc10」、「Pc12」、「Pc13」、「Pc17」、「Pc18」、「Pc19」が記載されている。
【0032】
また、固定相表示部12は、固定相に固定されているHLA抗原毎に、それぞれのHLA抗原間の交差反応性の対応関係を表示、例えば、図2に示すように、HLA抗原「A24」と交差反応性を有するHLA抗原「A23」とのそれぞれの名称を直線により対応付けて表示する。
固定相データベース3には、固定相の識別情報と、その固定相に固定されているHLA抗原の名称(名称の組み合わせ)が対応付けられて記憶されている。
また、固定相データベース3に記憶される情報も、必要に応じて反応量入力部11を介して、判定者により、例えばキーボード5等の入力装置から入力することができる。すなわち、判定者は、固定相の識別情報と、その固定相に固定されているHLA抗原の名称とを対応付ける登録処理を行うことにより、任意に固定相データベース3にこれらの組合せを記憶させることができる。
【0033】
固定相マーク部13は、画面上に表示されている固定相の識別情報に対し、固定相に対応する反応量が予め設定された閾値を基準として、この閾値を超える場合及び/又は閾値以下の場合にこの固定相の識別情報を抽出し、この固定相の識別情報にマークを付与、例えば、固定相の識別情報の文字を他と異なる色(一例として、閾値以下の場合に青色、閾値を超える場合に赤色)にて彩色する。
許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定されている固定相グループのうち、少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であることを検出すると、検体に該HLA抗原に対応するHLA抗体が含まれていない許容抗原であることを検出し、許容抗原であることを示すマークを、HLA抗原の名称に付与する。
【0034】
また反応量は、固定相と検体との間の抗原−抗体反応の測定値そのもの、例えば測定された蛍光値以外に、該蛍光値を、バックグラウンドの固定相(HLA抗原が全く固定されていないブランクビーズ)と検体との反応で得られた蛍光値により補正したものを示したインデックス値を用いてもよい。
このインデックス値は、「(検体と反応した任意の固定相の蛍光値)を(検体と反応したブランクビーズの蛍光値)により除算した数値」を、「(コントロール検体と反応した任意の固定相の蛍光値)を、(コントロール検体と反応したブランクビーズの蛍光値)により除算した数値」により除算した数値である。ここで、コントロール検体とは、全くHLA抗原に対するHLA抗体が全く存在しない検体を意味している。
【0035】
また、許容抗原検出部14は、閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも一つのHLA抗原が許容抗原でないか否かの検出を行う。
そして、許容抗原検出部14は、該固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも一つのHLA抗原が許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを示す情報を表示部4の表示画面に表示して通知し、一方、全てのHLA抗原が許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを示す情報を表示部4の表示画面に表示して通知する。
【0036】
また、固定相表示部12は、図2の表示領域200に示すように、抗原−抗体の反応量としての蛍光値と、その蛍光値から求められたインデックス値(以下、反応量)を、固定相の識別情報毎に対応させて表示する。
また、固定相表示部12は、図2の表示領域201に示すように、各固定相の識別情報(横軸)と、その識別情報の固定相と検体との抗原−抗体反応の反応量(縦軸)として、反応量の値を棒グラフの画像情報として、数値の大きい順(すなわち降順)に並べて表示部4に表示する。
【0037】
また、固定相表示部12は、閾値(カットオフ値)を示す情報、図2における閾値ライン202として、棒グラフに対して書き込む。このように、表示部4に棒グラフにて、閾値と反応量とを表示することにより、判定者がこの表示された画像を見ることにより、閾値と反応量との対応関係を明確に理解できる。この閾値は、バックグラウンドの反応量の2倍をディフォルト値として、後述する許容抗原検出部14により設定され、反応量入力部11により判定者が入力する任意の数値に任意に変更することができる。
【0038】
許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原を有する複数の固定相のうち、少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下である場合、該HLA抗原を許容抗原として、固定相表示部12に出力する。
固定相表示部12は、入力される許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力して通知する。この際、例えば日本人に多く認められる抗原を特にマークしたり、別途表示させることもできる。
また、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原を有する複数の固定相のうち、全ての固定相の反応量が閾値を超えた場合、該HLA抗原を非許容抗原として、固定相表示部12に出力する。
このとき、固定相表示部12は、入力される非許容抗原を、表示部4の非許容抗原を表示する領域204に出力して通知する。
【0039】
固定相表示部12は、図2における「結果検証」のボタン205を選択してクリックすることにより、図3に示すように、結果検証画面300を表示する。
結果検証画面300には「反応性適否解析」、「陽性反応絞込み」、「γ値」、「Bw4,Bw6表示」、「C抗原表示」の各ボタンが設けられており、判定者が各ボタンを選択してクリックすることにより、固定相表示部12は、いずれのボタンが選択されたかを検出し、いずれのボタンの処理を行うかを示す制御情報を固定相マーク部13及び許容抗原検出部14へ出力する。
【0040】
固定相マーク部13または許容抗原検出部14は、上記制御情報が入力されると、制御情報に対応する処理を実行する。
・反応性適否解析の処理
制御情報が「反応性適否解析」の処理を示すことを検出すると、許容抗原検出部14は、陽性と判定された任意の固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも一つのHLA抗原が許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを表示部4の表示画面に表示して通知し、一方、全てのHLA抗原が許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを表示部4の表示画面に表示して通知する。
【0041】
・陽性反応絞込み
この陽性反応絞込みの処理は、検体に含まれるHLA抗体の反応性を確認するための補助的機能である。すなわち、図2の各HLA抗原の相関図において、陽性と判定された任意のHLA抗原について、該HLA抗原が固定された固定相に付加された陽性を示すマークを、相関図全体から一時的に取り除く処理であり、取り除いたHLA抗原を固定した固定相以外で検体に反応するHLA抗原の有無を視覚的に確認することができる。
制御情報が「陽性反応絞込み」の処理を示すことを検出すると、固定相マーク部13は、図4に示す「陽性反応絞込み」の入力画面400を表示する。
【0042】
ここで、判定者がマークを取り除く対象のHLA抗原の識別情報を、上記入力画面400の入力欄にキーボード5から入力し、絞込みボタンを選択してクリックすることにより、固定相マーク部13は、入力欄に入力されたHLA抗原を固定した固定相の識別情報のマークを外す、すなわち識別情報の色を、陽性に対応する色から、例えば白色などの異なる色に変更して彩色する。これにより、検体中のHLA抗体に対していずれのHLA抗原が反応しているか否かが文字を読まなくとも、色により直感的に容易に確認することができる。
【0043】
たとえば、図4に示すように、判定者が入力画面400の入力欄にHLA抗原「A26」と入力すると、図5に示すように、HLA抗原「A26」を固定する固定相「Pc03」、「Pc06」、「Pc15」、「Pc17」の識別情報のマークが固定相マーク部13により相関図全体から外され、他のHLA抗原「A33」及び「B44」が陽性であることが明確となる。
また、上記「陽性反応絞込み」の処理を解除する場合、入力画面400における解除のボタンを選択してクリックすることにより、固定相マーク部13は、陽性であるが陽性の色と異なる色にて彩色されたHLA抗原の識別情報を、陽性の色に変更して彩色して図2の相関図の状態に戻す。
【0044】
・Bw4,Bw6表示
このBw4、Bw6表示の処理も、検体に含まれるHLA抗体の反応性を確認するための補助的機能である。HLA−B抗原と一部のHLA−A抗原は分子内の共通エピトープからそれぞれBw4抗原またはBw6抗原と分類される。そこで、許容抗原検出部14は、図2の各HLA抗原の相関図において、Bw4またはBw6に対応するHLA抗原の名称部分に対して、図6に示すように、固定相表示部12を介して、Bw4またはBw6と、重ね合わせて表示部4に表示する。ここで、許容抗原検出部14は、各HLA抗原がBw4、Bw6抗原のいずれかに対応するかを示すテーブルを記憶しており、このテーブルをHLA抗原の名称をキーとして検索して、このHLA抗原が対応するBw4抗原あるいはBw6抗原を抽出することとなる。
例えば、図3におけるHLA抗原の相関図における「B44」の抗原はBw4抗原に分類されるため、領域310に示すように、「B44」の文字列の上に、「Bw4」の文字列を上書きし、一方、「B46」の抗原はBw6抗原に分類されるため、領域320に示すように、「B46」の文字列の上に、「Bw6」の文字列を上書きすることで、Bw4抗原、またはBw6抗原に反応する抗体であるかどうかを視覚的に確認することができる。
【0045】
・C抗原表示
このC抗原表示の処理も、検体に含まれるHLA抗体の反応性を確認するための補助的機能である。すなわち、HLA−C抗原の情報も、例えば、表示部4において図7に示すように別ウインドウに表示することによって、判定者にとって、検体に含まれるHLA抗体の反応性をより判別しやすくなる。固定相マーク部13は、C抗原情報として、HLA抗原の名称、このHLA抗原が固定されている固定相の識別情報を固定相表示部12を介して表示部4に表示し、この識別情報に対して閾値を超えた反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相それぞれが区別できるように、それぞれの結果に対応したマーク(彩色、強調、枠、網掛けなどを変更する等のデータ)を識別情報に付加する。
【0046】
また、固定相マーク部13は、上述した識別情報に対するマークの付加に加え、必要に応じてHLA抗原のアリル(対立遺伝子)情報(DNAの配列の個体差を示す遺伝子多型を識別する識別情報)を、固定相表示部12を介して表示部4に表示する。
例えば、図7に示すように、C抗原としてCw1〜Cw10の種類の名称を表示し、そのHLA−C抗原の名称の下部に、それぞれに対応するHLA抗原の識別情報を記述し、検体が有するHLA抗体のHLA−C抗原に対する反応の有無を示すマークをHLA抗原の識別情報に付加する。
【0047】
・γ値表示
制御情報が「γ値」の処理を示すことを検出すると、許容抗原検出部14は、各固定相の反応量から、固定相に固定されている各HLA抗原の陽性反応の統計的優位性を判定するためのγ値をかい2乗(χ2)検定にて算出し、例えば、図8に示すように、表示部4に表示することができる。
【0048】
また、図2における検体型入力ボタンを判定者が選択してクリックすると、検体型入力欄が表示され、判定者は検体を採取した患者が有しているHLA抗原(基本的にHLA抗体が産生されない)の型を入力する。
これにより、反応量入力部11は、入力されたHLA抗原型を固定相表示部12へ出力する。固定相表示部12は、図2の領域204の検体抗原の位置に、検体を採取した患者のHLA抗原を表示する。これにより、仮に該HLA抗原が陽性と判定された場合でも、該HLA抗原に対するHLA抗体は産生されないため、該HLA抗原が固定された固定相上の異なるHLA抗原が反応したと考えることができる。
【0049】
HLAクラスII抗原についても、図9に示すように、図2ですでに説明したHLAクラスI抗原と同様に各情報を表示する。
すなわち、固定相表示部12は、表示部4の表示領域900に対して、図2の表示領域200と同様に、抗原−抗体の反応量としての蛍光値と、その蛍光値から求められたインデックス値(以下、反応量)とを示す。
また、固定相表示部12は、表示部4の表示領域901に対して、図2の表示領域201と同様に、固定相マーク部13及び許容抗原検出部14の処理結果として、各固定相の識別情報(横軸)と、その識別情報の固定相と検体との抗原-抗体反応の反応量(縦軸)として、反応量の値を棒グラフの画像情報として、数値の大きい順(すなわち降順)に並べて表示する。
【0050】
また、固定相表示部12は、表示部4の表示領域201に対して、図2の表示領域201と同様に閾値(カットオフ値)を示す情報として閾値ライン902を表示し、また表示領域903に対して、図2の表示領域203と同様に、HLA抗原の相関図を表示する。
例えば、 固定相表示部12は、図9に示すように、表示領域903において、HLA抗原「DQ6」が固定されている固定相の識別情報として、このHLA抗原「DQ6」の名称の下に、このHLA抗原が固定されている固定相の識別情報「Pc18」、「Pc19」、「Pc01」、「Pc16」、「Pc14」、「Pc13」、「Pc08」、「Pc07」が記載されている。
【0051】
さらに、固定相表示部12は、表示部4の表示領域904に対して、図2の表示領域204と同様に許容抗原又は非許容抗原を表示し、表示領域905に対して、図2の表示領域205と同様に「結果検証」ボタンを表示する。
そして、上記図9の表示領域の「結果検証」ボタンをユーザが押すことにより、図3に示す検証結果画面300が同様に表示され、「反応性適否解析」、「陽性反応絞込み」、「γ値」の各ボタンがユーザに押され、固定相表示部12から、いずれのボタンの処理を行う表示情報が入力されると、固定相マーク部13または許容抗原検出部14は、上記情報が入力されることにより、制御情報に対応した処理を、図2ですでに説明したHLAクラスI抗原の処理と同様に行う。
【0052】
次に、図を用いて本実施形態によるHLA抗体解析装置の動作を説明する。
<第1の動作例>
以下、図10を用いてHLA抗体解析装置の動作例を説明する。図10はHLA抗体解析装置による第1の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS400において、判定者はキーボード5により、または測定機器から直接入力された反応量データベース2に記憶された各データによりHLA抗体の解析処理を行うため、上記検体データを入力する。
【0053】
そして、固定相表示部12は、上記検体データにおける識別情報が反応量入力部11を介して入力されると、抗原−抗体反応の検査に用いられた識別情報を検出し、各識別情報に対応する固定相に固定されているHLA抗原の種類を、固定相毎に固定相データベース3から読み出す。
また、このとき、許容抗原検出部14は、上記検体データにおける固定相毎の測定された蛍光値が反応量入力部11を介して入力されると、各蛍光値とバックグラウンド値とから、各固定相と検体との抗原−抗体反応のインデックス値(以下、反応量)を算出する。
【0054】
次に、ステップS401において、固定相表示部12は、上記識別情報に対応した各固定相に固定されたHLA抗原の種類の組み合わせの情報を、固定相データベース3から入力し、この各固定相に固定されているHLA抗原を全て抽出する。
そして、固定相表示部12は、抽出したHLA抗原毎に、このHLA抗原が固定されている固定相を抽出して、HLA抗原毎の固定相グループを作成する。
また、固定相表示部12は、検査に用いた固定相に固定されているHLA抗原間の交差反応の関係の有無を、固定相データベース3に記憶されている、HLA抗原と、そのHLA抗原に対し交差反応性を有するHLA抗原との対応表を参照して、交差反応性を有するHLA抗原同士を関連づけて記憶する。
【0055】
次に、ステップS402において、許容抗原検出部14は、閾値(カットオフ値)を算出する。また、ここで、判定者は算出されるディフォルトの閾値を用いず、キーボード5等により任意に入力しても良い。
そして、固定相マーク部13は、各固定相の反応量が上記閾値を超えているか否かの判定を行う。
判定後、固定相マーク部13は、上記各固定相グループに含まれる固定相のうち、閾値を超えた反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相の識別情報にマーク(彩色、強調、枠、網掛けなどを変更する等のデータ)を付加する。
【0056】
次に、ステップS403において、固定相表示部12は、HLA抗原の名称に対応させ、固定相グループに含まれる固定相の識別情報を表示し、HLA抗原の名称に対応させ、各HLA抗原の下部に、HLA抗原に対応する固定相グループに含まれる固定相の識別情報を表示する。
そして、固定相表示部12は、各HLA抗原間において交差反応を有しているHLA抗原同士を線で結び相関図を生成して表示部4の表示画面に表示する。
相関図が表示されると、固定相マーク部13は、固定相の識別情報にマークがあるか否かの判定を行い、マークが付加されている識別情報に従い彩色、強調、枠、網掛けなどの表示をする。また、固定相表示部12は、図2に示すように、表示領域200に棒グラフを表示し、上記閾値を付加することにより、いずれの固定相が陽性反応を有しているかを明確に表示する。
【0057】
<第2の動作例>
以下、図11を用いてHLA抗体解析装置の動作例を説明する。図11はHLA抗体解析装置による第2の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
図11のフローチャートにおけるステップS500〜S503各々は、図10のフローチャートにおけるステップS400〜S403とそれぞれ同様のため、その動作の説明を省略する。
ステップS504において、許容抗原検出部14は、領域203に表示されたHLA抗原の相関図において、各HLA抗原の名称に対応して表示されている識別情報がマークされていないか、あるいはマークされているか、若しくは異なっているかを検出する。
【0058】
すなわち、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相グループの少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であるか否かを検出する。
このとき、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相のグループの少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であることを検出すると、処理をステップS505へ進める。
一方、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原を固定する固定相グループの全ての固定相の反応量が閾値を超えることを検出すると、処理をステップS507へ進める。
【0059】
そして、ステップS505において、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相グループの少なくとも一つの固定相の反応量が閾値以下であることを検出すると、このHLA抗原が陰性であると判定し、血小板輸血が可能な許容抗原として検出する。
許容抗原の検出後、ステップS506において、固定相表示部12は、許容抗原検出部14から入力される許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力し、判定者に通知する。
【0060】
そして、ステップS507において、許容抗原検出部14は、同一のHLA抗原が固定された固定相グループの全ての固定相の反応量が閾値を超えていることを検出すると、このHLA抗原が陽性であると判定し、血小板輸血が不可能な非許容抗原として検出する。
非許容抗原の検出後、ステップS508において、固定相表示部12は、許容抗原検出部14から入力される非許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力し、判定者に通知する。
【0061】
領域203に表示されたHLA抗原の名称(あるいは型)を有する固定相の識別情報は、陽性/陰性が異なる色彩、強調、枠、網掛けなどで表示されている。
このため、識別情報色彩などのパターンにより、検体に含まれるHLA抗体の各HLA抗原に対する抗原−抗体反応の反応性を、判定者が容易に(かつ視覚的に)判断することが可能となる。
【0062】
<第3の動作例>
以下、図12を用いてHLA抗体解析装置の動作例を説明する。図12はHLA抗体解析装置による第3の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
図12のフローチャートにおけるステップS600〜S605、S607、S608各々は、図11のフローチャートにおけるステップS500〜S505、S507、S508とそれぞれ同様のため、その動作の説明を省略する。
ステップS605にて許容抗原を検出した後、ステップS606において、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を示した固定相に固定されたHLA抗原において、そのいずれか1つでも陽性と判定されたHLA抗原があるか否かの検出を行う。
【0063】
すなわち、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を有する固定相に固定されたHLA抗原の全てが陰性、すなわち該固定相に固定されているHLA抗原の全てが許容抗原であるか否かの検出を行う。
このとき、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を示した固定相に固定されたHLA抗原において、そのいずれか1つでも陽性と判定されたHLA抗原が存在していることが検出された場合、処理をステップS609へ進める。
一方、許容抗原検出部14は、閾値以上の反応量を示した固定相に固定されたHLA抗原において、そのすべてが陰性と判定された場合、処理をステップS611へ進める。
【0064】
次に、ステップS609において、許容抗原検出部14は、いずれか1つでも陽性と判定されたため、上述したHLA抗体解析の処理が適切であったことを検出し、許容抗原の名称を固定相表示部12に対して出力し、処理をステップS610へ進める。
そして、ステップS610において、固定相表示部12は、許容抗原検出部14から入力される許容抗原を、表示部4の許容抗原を表示する領域204に出力し、判定者に通知する。
【0065】
一方、ステップS611において、許容抗原検出部14は、反応量を超える固定相に固定された全てのHLA抗原の全てが陰性であれば、HLA抗体解析は不適切であると判定し、閾値の再設定を判定者に促す通知を表示部4に表示する。
【0066】
なお、図1におけるHLA抗体解析装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりHLA抗体解析処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0067】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態によるHLA抗体解析装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】HLA抗体解析部1により表示部4に表示されるHLA抗体解析処理を行う画面構成を示す概念図(HLAクラスI抗原)である。
【図3】図2の検証結果のボタンがクリックされると固定相表示部12により表示される結果検証画面300の構成を示す概念図である。
【図4】図3の結果検証画面300の陽性反応絞込みボタンを選択してクリックすると固定相マーク部13により表示される対象のHLA抗原の名称を入力する陽性反応絞込みの入力画面400の構成を示す概念図である
【図5】上記入力画面400に入力された識別情報のマークが外された相関図を示している。
【図6】図3の結果検証画面300のBw4,Bw6表示ボタンを選択してクリックすると固定相表示部12により表示されるBw4,Bw6の抗原情報を示す概念図である。
【図7】図3の結果検証画面300のC抗原表示ボタンを選択してクリックすると固定相表示部12により表示されるC抗原情報を示す概念図である。
【図8】各HLA抗原の陽性反応の統計的優位性を判定するγ値解析結果を示す表の一例である。
【図9】HLA抗体解析部1により表示部4に表示されるHLA抗体解析処理を行う画面構成を示す概念図(HLAクラスII抗原)である。
【図10】一実施形態によるHLA抗体解析装置の第1の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】一実施形態によるHLA抗体解析装置の第2の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】一実施形態によるHLA抗体解析装置の第3の動作例における処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】従来のHLA抗体解析処理の結果として出力される、各固定相に対応して、固定されているHLA抗原、固定相と検体との蛍光値と、蛍光値から求められたインデックス値の関係を示す一覧表である。
【符号の説明】
【0069】
1…HLA抗体解析部
2…反応量データベース
3…固定相データベース
4…表示部
5…キーボード
6…マウス
11…反応量入力部
12…固定相表示部
13…固定相マーク部
14…許容抗原検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置であり、
前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力手段と、
HLA抗原が固定された固定相の識別情報を該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示部と、
予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク手段と
を有することを特徴とするHLA抗体解析装置。
【請求項2】
前記固定相表示部がそれぞれの固定相に固定されているHLA抗原間の交差反応性の対応関係を表示することを特徴とする請求項1記載のHLA抗体解析装置。
【請求項3】
前記同一のHLA抗原が固定された複数の固定相のうち、少なくとも一つの固定相における反応量が閾値以下であることを検出すると、該HLA抗原は、前記HLA抗体が認識しない抗原である許容抗原であることを示すマークを、前記HLA抗原の種類に付与する許容抗原検出手段をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項4】
前記許容抗原検出手段が、前記閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも1つが許容抗原でないか否かの検出を行うことを特徴とする請求項3に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項5】
前記許容抗原検出手段が、前記少なくとも1つが許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを通知し、一方、全てが許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを通知することを特徴とする請求項4に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項6】
前記許容抗原検出手段が、前記閾値をバックグラウンドの反応量の2倍に設定することを特徴とする請求項5に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項7】
固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析方法であり、
反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力過程と、
固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示過程と、
固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク過程と
を有することを特徴とするHLA抗体解析方法。
【請求項8】
固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置の処理をコンピュータに実行させるHLA抗体解析プログラムであり、
反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する処理と、
固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する処理と、
固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする処理と
を有するコンピュータが実行可能なHLA抗体解析プログラム。
【請求項1】
固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置であり、
前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力手段と、
HLA抗原が固定された固定相の識別情報を該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示部と、
予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク手段と
を有することを特徴とするHLA抗体解析装置。
【請求項2】
前記固定相表示部がそれぞれの固定相に固定されているHLA抗原間の交差反応性の対応関係を表示することを特徴とする請求項1記載のHLA抗体解析装置。
【請求項3】
前記同一のHLA抗原が固定された複数の固定相のうち、少なくとも一つの固定相における反応量が閾値以下であることを検出すると、該HLA抗原は、前記HLA抗体が認識しない抗原である許容抗原であることを示すマークを、前記HLA抗原の種類に付与する許容抗原検出手段をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項4】
前記許容抗原検出手段が、前記閾値を超える反応量を有する固定相が検出された場合、該固定相に固定されているHLA抗原のうち、少なくとも1つが許容抗原でないか否かの検出を行うことを特徴とする請求項3に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項5】
前記許容抗原検出手段が、前記少なくとも1つが許容抗原でないことを検出した場合、解析が適切であることを通知し、一方、全てが許容抗原であることを検出した場合、解析が不適切であることを通知することを特徴とする請求項4に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項6】
前記許容抗原検出手段が、前記閾値をバックグラウンドの反応量の2倍に設定することを特徴とする請求項5に記載のHLA抗体解析装置。
【請求項7】
固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析方法であり、
反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する反応量入力過程と、
固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する固定相表示過程と、
固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする固定相マーク過程と
を有することを特徴とするHLA抗体解析方法。
【請求項8】
固定されるHLA抗原の組み合わせがそれぞれ異なった複数の固定相を用い、同一のHLA抗原が複数の組み合わせに含まれる複数の固定相を用いて、検体に含まれるHLA抗体がいずれのHLA抗原に反応するかを検出するHLA抗体解析装置の処理をコンピュータに実行させるHLA抗体解析プログラムであり、
反応量入力手段が前記固定相のHLA抗原と前記HLA抗体との抗原−抗体反応において測定された、反応する抗原−抗体の組み合わせの反応量を入力する処理と、
固定相表示部がHLA抗原が固定された固定相の識別情報を、該HLA抗原の種類毎に対応させ、表示画面に表示する処理と、
固定相マーク手段が予め設定された閾値を基準として、閾値を超える反応量が検出された固定相及び/又は閾値以下の反応量が検出された固定相を抽出し、その識別情報をマークする処理と
を有するコンピュータが実行可能なHLA抗体解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−80096(P2009−80096A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106129(P2008−106129)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
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