説明

HLA結合ペプチドおよびその使用方法

【課題】HLA、HLA-B、およびHLA-C対立遺伝子をコードする糖タンパク質に結合し、HLA対立遺伝子によって制限されるT細胞におけるT細胞活性化を誘導できるペプチド組成物、特異的なMHCクラスI対立遺伝子を発現する患者において事前に選択された抗原に対する細胞障害性T細胞応答を誘導する方法を提供する。
【解決手段】B7様のスーパーモチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物。薬学的に許容される賦形剤をさらに含む組成物。患者の細胞障害性T細胞に、免疫原性ペプチドを含む組成物を接触させる段階を含む方法。本ペプチドは、所望の抗原に対する免疫応答を誘起するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、1996年1月23日に出願された米国特許出願第08/590,298号の一部継続出願であり、1994年7月21に出願された米国特許出願第08/278,634号の一部継続出願である、1994年11月23日に出願された米国特許出願第08/344,824号の一部継続出願である、1996年11月27日に出願された米国特許出願第08/753,615号および1995年5月30日に出願された米国特許出願第08/452,843号に関連し、これらは全て参照として本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、ウイルス性疾患および癌のような多くの病理状態の予防、治療または診断のための組成物ならびに方法に関するものである。特に、本発明は、選択性主要組織適合複合体(MHC)分子を結合し、免疫応答を誘導することのできる新規のペプチドを提供する。
【0003】
MHC分子は、クラスI分子またはクラスII分子のどちらかに分類される。クラスII MHC分子は、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ等のような免疫応答の開始および持続に関わる細胞に主に発現する。クラスII MEC分子は、ヘルパーTリンパ球によって認識され、ヘルパーTリンパ球の増殖および示される特定の免疫原性ペプチドに対する免疫応答の増幅を誘導する。クラスI MHC分子は、ほとんどすべての有核細胞に発現し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)によって認識され、その後、抗原を有する細胞を破壊する。CTLは、特に腫瘍拒絶とウイルス感染と闘う際に重要である。
【0004】
CTLは、無傷の外来抗原そのものよりもMHCクラスI分子に結合するペプチド断片という形で抗原を認識する。抗原は、通常、細胞によって内因的に合成される必要があり、タンパク質抗原の一部は、細胞質においてペプチド小断片に分解される。これらの小ペプチドには、前ゴルジ区画に転位し、クラスI重鎖と相互作用して正しい折りたたみとサブユニットβ2ミクログロブリンとの会合を促進するものもある。その後、ペプチド-MHCクラスI複合体は、発現と可能性のある特異的なCTLによる認識のために細胞表面に送達される。
【0005】
MHCクラスI抗原はHLA-A、BおよびC遺伝子座によってコードされる。HLA-AおよびHLA-B抗原は、ほぼ等しい密度で細胞表面に発現されるが、HLA-Cの発現は有意に低い(おそらく、10倍程度に低い)。これらの遺伝子座は各々数多くの対立遺伝子を有する。
【0006】
主要なHLA-A対立遺伝子のいくつかの特異的なモチーフ(同時係属出願として本明細書に引用される同時継続中の米国特許出願第08/159,339号(特許文献1)および同第08/205,713号(特許文献2))およびHLA-B対立遺伝子が記載されている。数人の著者(Melief, Eur. J. Immunol., 21: 2963-2970(1991)(非特許文献1); Bevanら, Nature 353: 852-955(1991)(非特許文献2))は、クラスI結合モチーフを動物モデルにおいて免疫原性ペプチドの可能性を有するものの同定に適用できるという予備的な証拠となっている。多重MHC対立遺伝子と相互作用することができるペプチドまたはペプチド領域を同定する方法は文献に記載されている。
【0007】
人種および民族を含むヒト集団は別個のHLA対立遺伝子分布パターンを有するため、全ての集団を十分にカバーするためには、1つより多くのHLA対立遺伝子に結合することができるペプチドを記載するモチーフを同定することが有用になる。本発明はこれらの必要性および他の必要性に対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第08/159,339号
【特許文献2】米国特許出願第08/205,713号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Melief, Eur. J. Immunol., 21: 2963-2970(1991)
【非特許文献2】Bevanら, Nature 353: 852-955(1991)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、HLA対立遺伝子の結合モチーフを有する免疫原性ペプチドを含む組成物を提供する。免疫原性ペプチドは鎖長約9〜10残基であり、位置2のプロリンのような特定の位置に保存された残基、およびカルボキシ末端に芳香族残基(例えば、Y、W、F)または疎水性残基(例えば、L、I、V、MまたはA)を含む。特に、本発明のペプチドの利点は、2つまたはそれ以上の異なるHLA対立遺伝子に結合する能力である。
【0011】
本発明は、HLA-A、HLA-BまたはHLA-C対立遺伝子の1つより多くに効率的に結合するペプチドを選択することができるモチーフ内の位置を規定する。免疫原性ペプチドのモチーフを保有するエピトープは、B型肝炎コア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン‐バーウィルス抗原、1型ヒト免疫不全ウィルス(HIV1)、ラッサ熱ウィルス、p53、CEA、およびHer2/neuを含む標的抗原と思われるものを同定している。従って、本発明は、標的抗原の配列を含む免疫原性ペプチドをさらに提供する。
【0012】
本発明のペプチドは、インビボおよびエクスビボにおける治療的適用および診断的適用のための薬学的組成物に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】B7様の特異性を共有するHLA対立遺伝子に結合することができるペプチドの結合モチーフを示す。
【図2】B7様の交差反応モチーフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
「ペプチド」という用語は、本明細書において「オリゴペプチド」と互換的に用いられ、典型的には隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基間のペプチド結合によってある残基を別の残基に結合した一連の残基を示し、典型的にはL-アミノ酸を示す。本発明のオリゴペプチドは長さが約15残基未満であり、通常は約8〜約11残基、好ましくは9残基または10残基からなる。
【0015】
「免疫原性ペプチド」は、ペプチドがMHC分子を結合し、CTL応答を誘導するような対立遺伝子特異的なモチーフを含むペプチドである。本発明の免疫原性ペプチドは適切なHLA分子に結合し、免疫原性ペプチドの由来となる抗原に対する細胞傷害性T細胞応答を誘導することができる。
【0016】
「保存残基」は、ペプチドモチーフで特定の位置を占める保存アミノ酸であり、典型的にはその1つでは、MHC構造が免疫原性ペプチドとの接触点を提供しうる。規定の長さのペプチド内の1〜3個、典型的には2個の保存残基は、免疫原性ペプチドについてのモチーフを決定する。これらの残基は典型的には、ペプチド結合溝と、すなわち溝そのものの特異的なポケットに埋め込まれたそれらの側鎖とほとんど接触している。
【0017】
「モチーフ」という用語は、規定の長さ、通常約8〜約11個のアミノ酸のペプチドにおける残基のパターンを意味し、特定のMHC対立遺伝子により認識される。各々のヒトMHC対立遺伝子についてのペプチドモチーフは、典型的には異なる。
【0018】
「スーパーモチーフ」という用語は、免疫原性ペプチド内に存在する場合に、ペプチドと1つより多くのHLA抗原とが結合するモチーフをいう。スーパーモチーフは、好ましくは、ヒト集団に広範に分布する少なくとも1つのHLA対立遺伝子によって認識され、好ましくは、少なくとも2つの対立遺伝子によって認識され、さらに好ましくは少なくとも3つの対立遺伝子によって認識され、最も好ましくは3つより多くの対立遺伝子によって認識される。
【0019】
「単離した」または「生物学的に純粋な」という表現は、その天然の状態で見出される場合にそれに通常伴う構成成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。従って、本発明のペプチドは、インサイチュー環境と通常関連する物質、例えば抗原提示細胞のMHC I分子を含まない。タンパク質が同質のバンドまたは優性なバンドにまで単離された場合でさえ、所望のタンパク質とともに同時に精製される5〜10%の範囲の非変性タンパク質の微量混入物がある。本発明の単離ペプチドは、このような内因性の同時精製されたタンパク質を含まない。
【0020】
「残基」という用語は、アミド結合またはアミド結合模倣体によってオリゴペプチドに組み込まれるアミノ酸またはアミノ酸模倣体を意味する。
【0021】
好ましい態様の説明
本発明は、ヒトクラスI MHC(HLAと呼ばれることもある)対立遺伝子サブタイプの対立遺伝子特異的モチーフの決定に関する。特に、本発明は、1つより多くのHLA対立遺伝子が結合するペプチドに共通のモチーフを提供する。モチーフの同定およびMHC-ペプチド相互作用の検討を組み合わせることによって、ペプチドワクチンに有用なペプチドが同定されている。
【0022】
上記の同時係属出願に記載されている方法により、共通のモチーフを保有する多重HLA対立遺伝子に結合することができるある種のペプチドが同定されている。そのようなペプチドのモチーフは以下のように特徴付けられている:

多重対立遺伝子に結合することができるモチーフは、本明細書において「スーパーモチーフ」と呼ばれる。上記の特定のスーパーモチーフは、特に、「B7様スーパーモチーフ」と呼ばれる。
【0023】
本発明の免疫原性ペプチドは、典型的には、スーパーモチーフの存在について、望ましい抗原のアミノ酸配列を走査するためのコンピュータを使用して同定される。抗原の例として、ウィルス抗原および癌に関連する抗原が挙げられる。癌に関連する抗原は、悪性腫瘍中の細胞を特徴とする(すなわち、それによって発現される)が、正常では、健康な細胞によって発現される、黒色腫などの抗原である。好適な抗原の例として、特に、B型肝炎コア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs)、C型肝炎抗原、エプスタイン‐バーウィルス抗原、およびヒト免疫不全ウィルス(HIV)抗原が挙げられ、前立腺特異的抗原(PSA)、黒色腫抗原(例、MAGE-1)、ヒトパピローマウィルス(HPV)抗原、ラッサ熱ウィルス、p53、CEAおよびHer2/neuも挙げられる。このリストは、他の抗原起源を排除することを意図するものではない。
【0024】
潜在的な抗原起源に由来するタンパク質において見出されたものを含む、スーパーモチーフ配列を含むペプチドを合成し、次いで、様々なアッセイ法により適当なMHC分子に結合するそれらの能力について試験する。アッセイ法には、例えば、精製クラスI分子および放射性ヨウ素化ペプチドを使用することができる。または、空の(empty)クラスI分子を発現する細胞の結合を、例えば免疫蛍光染色およびフローマイクロ蛍光定量法によって検出することができる。クラスI分子に結合するそのようなペプチドを、感染個体または免疫化された個体由来のCTLの標的として作用する能力についてさらに評価してもよく、またウィルス感染した標的細胞またはマイナー細胞と反応することができるCTL集団を生じることができるインビトロまたはインビボにおける一次CTL応答を誘発するそれらの能力を治療薬として評価する。
【0025】
しかしながら、最近の証拠は、高親和性MHC結合物質は、ほとんどの場合において、免疫原性であると思われ、ペプチドエピトープはMHC結合のみに基づいて選択しうることを示唆している。
【0026】
スーパーモチーフ配列を含むペプチドは、抗原源である可能性のあるものをスクリーニングすることによって、上記のように同定することができる。有用なペプチドも、スーパーモチーフに可変残基の系統的または無作為的置換を有するペプチドを合成し、提供されているアッセイ法によりそれらを試験することによって同定することができる。以下に証明されているように、標的HLA分子の配列を参照することも有用である。
【0027】
ペプチド化合物を記載するために使用する命名法は、従来の方法に従い、アミノ基を各アミノ酸残基の左側(N末端)に、カルボキシル基を右側(C末端)に示す。本発明の選択された具体的な態様を示す式において、アミノ末端基およびカルボキシル末端基は、具体的には示していないが、特に明記しない限り、生理的なpH値において取ると思われる形態で存在する。アミノ酸構造式において、各残基は、一般に、標準的な3文字表記または1文字表記で表される。L型のアミノ酸残基は大文字1文字または3文字記号の最初の大文字で表され、D型を有するD型のそのようなアミノ酸は小文字1文字または小文字3文字記号で表される。グリシンは非対称炭素原子がなく、単純に「Gly」またはGと呼ばれる。モチーフ中の文字Xは、表1に見られる20種のアミノ酸のいずれか、および非天然型アミノ酸またはアミノ酸模倣物を示す。1つより多くのアミノ酸を囲む大括弧は、モチーフがそのアミノ酸のいずれか1つを含むことを示す。例えば、スーパーモチーフ

は、以下のペプチド

の各々を含む。
【0028】
ペプチドに基づいたワクチンでは、本発明のペプチドは、集団において十分に表されている数多くのHLA対立遺伝子に結合するモチーフを含むことが好ましい。表2は、ヒト集団におけるある種のHLA対立遺伝子の分布を示す。
【0029】
(表1)

【0030】
(表2) 現在利用可能なアッセイ法による集団範囲の要約

【0031】
ペプチド-HLA相互作用のアッセイ法(例えば、定量的結合アッセイ法)には、規定のMHC分子を有する細胞が有用である。規定のMHC分子、特にMHCクラスI分子を有する細胞は数多く知られており、容易に入手可能である。例えば、ヒトEBV-形質転換したB細胞系統は、クラスIおよびクラスII MHC分子の分取的単離の優れた供給源であることが示されている。十分に特徴付けられた細胞系統は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(「細胞系統およびハイブリドーマのカタログ(Catalogue of Cell Lines and Hybridomas)」、第6版(1988) メリーランド州ロックビル、米国)、National Institute of General Medical Sciences 1990/1991 細胞系統のカタログ(Catalog of Cell Lines)(NIGMS) Human Genetic Mutant Cell Repository、ニュージャージー州カンデン;およびASHI Repository, Bingham and Women's Hospital, 75 Francis Street Boston, MA 02115などの個人的および市販の供給元から入手可能である。様々なHLA-A対立遺伝子の供給源として適当な細胞系統は、同時係属中の出願に記載されている。表3は、特に本発明において有用な、HLA-BおよびHLA-C対立遺伝子の供給源として使用するのに適当なB細胞系統をいくつか列挙する。これらの細胞系統は全て大規模バッチで増殖させることができるので、MHC分子の大規模産生に有用である。当業者は、これらは単に例示的にすぎない細胞系統であること、および多数の他の細胞起源を使用することができることを認識している。
【0032】
(表3) ヒト細胞系統(HLA-BおよびHLA-C起源)

【0033】
典型的な場合には、所望の対立遺伝子を単離するために免疫沈降を使用する。使用する抗体の特異性に依存して、数多くのプロトコールを使用することができる。例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C分子を親和性精製するために、対立遺伝子特異的mAb試薬を使用することができる。様々なHLA分子を単離するために利用可能なモノクローナル抗体には、表4に列挙される抗体が含まれる。標準的な技術を使用してこれらのmAbを用いて調製される親和性カラムを使用して、それぞれのHLA対立遺伝子産物を精製する。
【0034】
(表4) 抗体試薬

【0035】
MHCクラスI分子に結合する能力を種々の異なる方法で測定する。1つの手段は、例えば、以下の実施例2に記載されているクラスI分子結合アッセイ法である。文献に記載されている別法には、抗原提示の阻害(Setteら、J. Immunol., 141: 3893 (1991))、インビトロアセンブリーアッセイ法(Townsendら、Cell, 62: 285 (1990))およびRMA.Sなどの変異細胞を使用するFACSに基づいたアッセイ法(Meliefら、Eur. J. Immunol., 21: 2963 (1991))が挙げられる。
【0036】
次に、MHCクラスI結合アッセイ法において陽性の試験結果を示すペプチドを、インビトロにおいて特異的なCTL応答を誘導するペプチドの能力についてアッセイする。例えば、ペプチドと共にインキュベーションされた抗原提示細胞を、応答細胞集団におけるCTL応答を誘導する能力についてアッセイすることができる。抗原提示細胞は末梢血液単核細胞または樹状細胞などの正常な細胞であってもよい(Inabaら、J. Exp. Med., 166: 182(1987)、Boog, Eur. J. Immunol., 18: 219 (1988))。または、適当なHLA導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスをペプチドの能力をアッセイするために使用して、原理的には同時係属中の米国特許出願第08/205,713号に記載のように細胞傷害性Tリンパ球の応答を誘導する。
【0037】
または、インビトロにおける一次CTL応答を誘導するペプチドの能力を試験するために、ペプチドを添加する場合には、マウス細胞系統RMA-S(Karreら、Nature, 319: 675 (1986);Ljunggrenら、Eur. J. Immunol., 21: 2963-2970 (1991))およびヒトT細胞ハイブリドーマ、T-2(Cerundoloら、Nature, 345: 449-452(1990))などの、内部的に処理されたペプチドを有するクラスI分子を負荷する能力が欠損し、適当なヒトクラスI遺伝子がトランスフェクトされている突然変異哺乳類細胞系統が便利に使用される。使用可能な他の真核細胞系統には、蚊の幼虫(ATCC 細胞系統 125, 126, 1660, 1591, 6585, 6586)、カイコ(ATTC CRL 8851)、ヨトウムシ(armyworm)(ATCC CRL 1711)、ガ(ATCC CCL 80)およびシュナイダー細胞系統(Schneider J. Embryol. Exp. Morphol., 27: 353-365[1927])などのショウジョウバエ細胞系統などの種々の昆虫細胞系統が挙げられる。
【0038】
末梢血リンパ球は、便利なことに、正常なドナーまたは患者の単純な静脈穿刺または白血球分離により単離され、CTL前駆体の応答細胞起源として使用される。一態様において、適当な抗原提示細胞を、適当な培養条件下において無血清培地で10〜100μMのペプチドと共に4時間インキュベーションする。次いで、ペプチド負荷した抗原提示細胞を、最適な培養条件下において応答細胞集団と共にインビトロにおいて7〜10日間インキュベーションする。放射性標識した標的細胞を死滅させるCTLの存在、特異的なペプチド-パルス標識した(pulsed)標的並びにペプチド配列を誘導する関連ウィルスまたは腫瘍抗原の内因的に処理された形態を発現する標的細胞について、培養物をアッセイすることによって陽性のCTL活性化を測定することができる。
【0039】
CTLの特異性およびMHC制限性は、適当または不適当なヒトMHCクラスIを発現する異なるペプチド標的細胞に対して試験することによって測定される。MHC結合アッセイ法において陽性の試験結果を示し、特異的なCTL応答を生じるペプチドは本明細書において免疫原性ペプチドと呼ぶ。
【0040】
免疫原性ペプチドは合成または組換えDNA技術によって作製することができる。ペプチドは、好ましくは、他の天然型宿主細胞タンパク質およびそれらの断片を実質的に含有しないが、ある態様では、ペプチドを未変性の断片または粒子に合成により結合させることもある。
【0041】
ポリペプチドまたはペプチドは種々の鎖長であっても、中性(非荷電)の形態または塩である形態であってもよく、グリコシル化、側鎖の酸化もしくはリン酸化などの改変を含有しなくても、または本明細書に記載するように改変がポリペプチドの生物学的活性を破壊しない状態を条件としてこれらの改変を含有してもよい。
【0042】
望ましくは、大型のペプチドの生物学的活性の実質的に全てを維持する限りは、ペプチドは可能な限り小型であると考えられる。可能な場合には、本発明のペプチドを、細胞表面上にMHCクラスI分子を結合する内因性に処理されたウィルスペプチドまたは腫瘍細胞ペプチドに見合う大きさである鎖長9または10のアミノ酸残基に最適化することが望ましいことがある。
【0043】
所望の活性を有するペプチドは、適宜、改変して、ある種の所望の特性を提供することができる、例えば、薬理学的な特性が改善されるが、所望のMHC分子に結合し、適当なT細胞を活性化する未改変ペプチドの生物学的活性の実質的に全てを増加または少なくとも維持する。例えば、ペプチドに保存的はまた非保存的置換などの種々の変化を実施することができ、この場合には、このような変化は、MHC結合の改善などの使用時の利点を提供すると思われる。保存的置換は、アミノ酸残基を、生物学的および/または化学的に類似した別のアミノ酸残基と置換する、例えば、疎水性残基を別の疎水性残基と置換し、または極性残基を別の極性残基と置換することを意味する。置換には、Gly、Ala;Val、Ile、Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組み合わせが挙げられる。1つのアミノ酸置換の影響はまた、D-アミノ酸を使用して探索することができる。このような改変は、例えば、参照として本明細書に組み入れられているMerrifield, Science, 232: 341-347(1986)、BaranyおよびMerrifield, 「ペプチド(The Peptides)」, GrossおよびMeienhofer編(N.Y., Academic Press), pp. 1-284(1979);ならびにStewartおよびYoung, 「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」, (Rockford, Ill., Pierce), 第2版(1984)に記載されているように、既知のペプチド合成手法を使用して実施することができる。
【0044】
ペプチドは、例えば、アミノ酸の付加または欠損によって、化合物のアミノ酸配列を伸長または減少することによっても改変することができる。本発明のペプチドまたは類似物はある種の残基の順序または組成を変更することによっても改変することができ、例えば、重要な接触部位におけるものまたは保存された残基のような、生物学的活性に必須なある種のアミノ酸残基は、生物学的活性に有害な影響を与えない限り、一般に変更しなくてもよいことは容易に理解される。重要でないアミノ酸はL-α-アミノ酸またはそれらのD-異性体などのタンパク質に天然に生ずるものに限られる必要はなく、β-γ-δ-アミノ酸およびL-α-アミノ酸の多数の誘導体などの非タンパク質アミノ酸を同様に含んでもよい。
【0045】
典型的には、1つのアミノ酸置換を有する一連のペプチドを使用して、結合に対する静電荷、疎水性等の影響を求める。例えば、一連の正電荷(例えば、LysまたはArg)または負電荷(例えば、Glu)アミノ酸置換はペプチド鎖に実施され、種々のMHC分子およびT細胞受容体に対する感受性の異なるパターンを明らかにする。また、Ala、Gly、Proまたは同様の残基などの小型で比較的中性の部分を使用する多重置換を使用することができる。置換はホモ-オリゴマーまたはヘテロ-オリゴマーであってもよい。置換または付加される残基の数および種類は、必須の接触点の間に必要な空間および検討されるある種の機能的特質(例えば、疎水性および親水性)に依存する。親ペプチドの親和性と比較したとき、MHC分子またはT細胞受容体に対する高い結合親和性もこのような置換によって達成することができる。任意の事象において、このような置換は、結合を妨害する可能性のある、例えば、立体障害および荷電障害を回避するために選択されるアミノ酸残基または他の分子断片を使用するべきである。
【0046】
アミノ酸置換は典型的には、1残基である。置換、欠損、挿入または任意のそれらの組み合わせを組み合わせて、最終的なペプチドに到達することができる。置換種は、ペプチドの少なくとも1つの残基が除去されており、異なる残基がその位置に挿入されるものである。ペプチドの特徴を微妙に調節することが望ましい場合には、このような置換は、一般に、表1により実施される。
【0047】
機能の実質的な変化(例えば、MHC分子またはT細胞受容体に対する親和性)は、表1のものより保存性の低い置換を選択することによって、すなわち、(a)例えば、シートまたはヘリックス立体配座のような、置換領域のペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の荷電もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさばりを維持することに対する影響がより大きく異なる残基を選択することによって実施される。ペプチドの特性の最も大きな変化を生ずることが期待される置換は、(a)親水性残基、例えば、セリルもしくはトレオニルが疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルもしくはアラニルから(または、によって)置換される、(b)システインもしくはプロリンが任意の他の残基から(または、によって)置換される、(c)正電荷側鎖を有する残基、例えば、リジル、アルギニルもしくはヒスチジルが負電荷残基、例えば、グルタミルもしくはアスパルチルから(または、によって)置換される、または(d)かさの高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが側鎖のないもの、例えば、グリシンと(または、によって)置換されるものである。
【0048】
ペプチドは、免疫原性ペプチド中に2つまたはそれ以上の残基の同配体を含んでもよい。本明細書において規定する同配体は、第1の配列の立体配座は第2の配列に特異的な結合部位に適合するので、第2の配列と置換することができる2つまたはそれ以上の残基の配列である。この用語は、具体的には、当業者に既知のペプチド骨格改変を含む。このような改変は、アミド窒素、α-炭素、アミドカルボニルの改変、アミド結合の完全な置換、伸長、欠損または骨格架橋を含む。一般に、Spatola, 「アミノ酸、ペプチド、およびタンパク質の化学および生化学(Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, peptides and Proteins)」 VII巻(Weinstein編、1983)参照のこと。
【0049】
例えばN末端またはC末端で、種々のアミノ酸模倣物またはD-アミノ酸によりペプチドを改変することは、インビボにおけるペプチドの安定性を増加する上で特に有用である。安定性は、多数の方法によりアッセイされる。例えば、ペプチダーゼ並びにヒト血漿および血清などの種々の生物学的媒体は安定性を試験するために使用されている。例えば、Verhoefら、Eur. J. Drug Metab Pharmacokin, 11: 291-302 (1986)を参照のこと。本発明のペプチドの半減期は、便利なことに、25%ヒト血清(v/v)アッセイ法を使用して決定される。プロトコールは、一般に、以下のようである。ヒトプール血清(AB型、非加熱不活性化)を使用前に遠心分離によって脱脂する。次いで、血清をRPMI組織培養培地で希釈して、ペプチドの安定性を試験するために使用する。所与の時間間隔で、少量の反応溶液を取り出して、6%のトリクロロ酢酸またはエタノールに添加する。濁った反応試料を15分間冷却し(4℃)、次いで遠心して、沈降した血清タンパク質をペレット化する。次いで、安定性-特異性クロマトグラフィー条件を使用して、ペプチドの存在を逆相HPLCによって測定する。
【0050】
CTL刺激活性を有する本発明のペプチドまたはそれらの類似物を改変して、血清半減期の改善以外の所望の特質を提供することができる。例えば、Tヘルパー細胞応答を誘導することができる少なくとも1つのエピトープを含有する配列に結合することによって、CTL活性を誘導するペプチドの能力を増強することができる。特に好ましい免疫原性ペプチド/Tヘルパー複合体にはスペーサー分子が結合している。スペーサーは、典型的には、生理学的条件下において実質的に非荷電であり、且つ直鎖状または分枝した側鎖を有しうるアミノ酸またはアミノ酸模倣物などの比較的小型で中性の分子を含む。スペーサーは、典型的には、例えば、Ala、Glyまたは非極性アミノ酸もしくは中性の極性アミノ酸の他の中性スペーサーから選択される。必要に応じて存在するスペーサーは同一の残基を含む必要がなく、従ってヘテロ-またはホモ-オリゴマーであってもよいことが理解される。存在する場合には、スペーサーは、通常は、少なくとも1残基または2残基であり、さらに通常は、3〜6残基である。または、CTLペプチドは、スペーサーなしで、Tヘルパーペプチドに結合してもよい。
【0051】
免疫原性ペプチドは、直接またはCTLペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端のスペーサーを介してTヘルパーペプチドに結合することができる。免疫原性ペプチドまたはTヘルパーペプチドのアミノ末端はアシル化されてもよい。例示的なTヘルパーペプチドには、破傷風トキソイド830-843、インフルエンザ307-319、マラリア サーカムスポロゾイト(circumsporozoite)382-398および378-389。
【0052】
ある態様では、CTLを抗原刺激する少なくとも1つの成分を本発明の薬学的組成物中に含むことが望ましいことがある。脂質は、ウィルス抗原に対するインビボにおけるCTLの抗原刺激可能な物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、Lys残基のαおよびεアミノ基に結合することができ、次いでGly、Gly-Gly-、Ser、Ser-Ser等などの1つ以上の結合残基を介して免疫原性ペプチドに結合される。次いで、脂質を結合したペプチドをミセル形態で直接注射しても、リポソームに導入しても、例えば、フロイントの不完全アジュバントのようなアジュバントの形態に乳化してもよい。好ましい態様において、特に有効な免疫原は、免疫原性ペプチドのアミノ末端に、Ser-Serのような結合を介して結合している、Lysのαおよびεアミノ基に結合したパルミチン酸を含む。
【0053】
CTL応答の脂質抗原刺激の別の例として、適当なペプチドに共有結合している場合には、トリパルミトイル-S-グリセリルシステインリセリル-セリン(P3CSS)Iなどの大腸菌(E. coli)リポタンパク質を使用して、ウィルス特異的CTLを抗原刺激することができる。参照として本明細書に組み入れられているDeresら、Nature, 342: 561-564 (1989)を参照のこと。本発明のペプチドを例えば、P3CSSに結合し、リポペプチドを個体に投与して、標的抗原に対するCTL応答を特異的に抗原刺激することができる。さらに、中和抗体の誘導も、適当なエピトープを示すペプチドに結合したP3CSSで抗原刺激することができるので、2つの組成物を組み合わせて、感染に対する液性および細胞性応答をさらに効果的に誘導することができる。
【0054】
また、追加のアミノ酸をペプチドの末端に付加して、担体の支持体に結合するために、ペプチドの互いの結合を容易にするか、またはペプチドもしくはオリゴペプチドの物理的もしくは化学的特性を改良するためにより長いペプチドとの結合を容易にする等が可能である。チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸等などのアミノ酸を、ペプチドまたはオリゴペプチドのC末端またはN末端に導入することができる。いくつかの場合には、C末端の改変がペプチドの結合特性を変更することがある。また、末端-NH2アシル化、例えば、アルカノイル(C1〜C20)またはチオグリコリルアセチル化、末端-カルボキシルアミド化、例えば、アンモニア、メチルアミン等によって改変されることによって、ペプチドまたはオリゴペプチド配列は天然の配列と異なることがある。いくつかの場合において、これらの改変は、支持体または他の分子に結合する部位を提供することができる。
【0055】
本発明のペプチドは多種多様の方法で作製することができる。ペプチドは、サイズが比較的短いので、従来の技術により溶液中または固相支持体上で合成することができる。種々の自動合成装置を購入可能であり、既知のプロトコールにより使用することができる。例えば、StewartおよびYoung、「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」、第2版、Pierce Chemical Co. (1984)、上記参照。
【0056】
または、関心対象の免疫原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトし、発現に好適な条件下において培養する組換えDNA技術を使用することができる。参照として本明細書に組み入れられているSambrookら、「分子クローニング、実験マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Mannual)」, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York(1982)に一般に記載されているように、これらの手法は一般に当技術分野において既知である。従って、本発明の1つまたは複数のペプチド配列を含む融合タンパク質を使用して、適当なT細胞エピトープを発現することができる。
【0057】
本明細書において考慮される鎖長のペプチドのコード配列は、化学的技術、例えば、Matteucciら、J. Am. Chem. Soc., 103: 3185(1981)のホスホトリエステル方法によって合成することができるので、適当な塩基を、未変性のペプチド配列をコードするものと置換することによって改変を簡単に実施することができる。次いで、コード配列に適当なリンカーを提供し、当技術分野において通常入手可能な発現ベクターにライゲーションし、そのベクターを使用して、所望の融合タンパク質を作製するために好適な宿主を形質転換することができる。現在、このようなベクターおよび好適な宿主系は数多く入手可能である。融合タンパク質を発現させるためには、機能的に結合した開始コドンおよび停止コドン、プロモーター領域およびターミネーター領域、並びに通常複製系をコード配列に提供して、望ましい細胞宿主中で発現させるための発現ベクターを提供する。例えば、細菌宿主と適合性のプロモーター配列を、所望のコード配列を挿入するための便利な制限酵素切断部位を含有するプラスミドに提供する。得られた発現ベクターを好適な細菌宿主に形質転換する。当然のことながら、好適なベクターおよび制御配列を使用して、酵母または哺乳類細胞宿主を使用することもできる。
【0058】
本発明のペプチド、並びにそれらの薬学的組成物およびワクチン組成物は、ウィルス感染症および癌を治療および/または予防するために、哺乳類、特にヒトに投与するのに有用である。本発明の免疫原性ペプチドを使用して治療することができる疾患の例には、前立腺癌、B型肝炎、C型肝炎、AIDS、腎臓癌、子宮頸癌、リンパ腫、CMV、および尖圭コンジロームが挙げられる。
【0059】
薬学的組成物については、本発明の免疫原性ペプチドを、すでに癌に罹患している個体または関心対象のウィルスに感染している個体に投与する。潜伏期の個体または感染の急性期の個体は、適宜、別個にまたは他の治療法と併用して免疫原性ペプチドで治療することができる。治療的用途では、ウィルスまたは腫瘍抗原に対する効果的なCTL応答を誘導し、症状および/または合併症を治癒または少なくとも一部阻止するのに十分な量の組成物を患者に投与する。これを実施するのに十分な量は、「治療的に有効な用量」として規定される。このように使用するのに有効な量は、例えば、ペプチド組成物、投与方法、被治療疾患の病期および重症度、患者の体重および全身の健康状態、並びに処方する医師の判断に依存するが、一般に初回免疫では(すなわち、治療的または予防的投与のため)、70kgの患者に対して約1.0μg〜約5000μgのペプチドを投与し、次に患者の血液中の特異的なCTL活性を測定することによって、患者の応答および状態に応じて、数週間〜数ヶ月にわたって追加免疫投与療法に従って、約1.0μg〜約1000μgのペプチドを追加免疫投与する。本発明のペプチドおよび組成物は、一般に、重篤な疾患状態、すなわち、生命を脅かすか、または生命を脅かす可能性のある状況に使用することができることを留意するべきである。このような症例では、外来物質が最小であることおよびペプチドが比較的低毒性であることを考慮すると、実質的に過剰量のこれらのペプチド組成物を投与することが可能であり、望ましいと治療医が考えることがある。
【0060】
治療的用途では、ウィルス感染症の最初の徴候が出現した時、または腫瘍検出時もしくは外科的切除時、急性感染症の症例では診断直後に投与を開始するべきである。この次に、少なくとも症状が実質的に軽減するまで、およびその後の期間にわたって追加免疫投与する。慢性感染症では、初回負荷投与、次に追加免疫投与が必要になることがある。
【0061】
本発明の組成物による感染個体の治療は、急性感染個体では感染症の消炎を早めることができる。慢性感染症を発症しやすい(または、発症する素因のある)個体では、本発明の組成物は、急性から慢性感染症への移行を予防する方法において特に有用である。例えば、本明細書に記載されているように、罹患しやすい個体が感染前または感染時に同定される場合には、本発明の組成物をそのような個体に標的化することができ、大集団に投与する必要性を小さくすることができる。
【0062】
本発明のペプチド組成物は、慢性感染症を治療するため、および免疫系を刺激して保菌者のウィルス感染細胞を排除するためにも使用することができる。細胞障害性T細胞応答を効果的に刺激するのに十分な量の免疫賦活ペプチドを製剤および投与様式に提供することは重要である。従って、慢性感染症を治療するためには、代表的な用量は、70kgの患者の投与あたり約1.0μg〜約5000μg、好ましくは約5μg〜1000μgの範囲である。個体を効果的に免疫化するためには、免疫投与の次におそらく長期間にわたって一定の期間、例えば、1〜4週間追加免疫投与が必要になることがある。慢性感染症の症例では、少なくとも臨床症状または臨床試験が、ウィルス感染が排除されたか、または実質的に軽減されたことを示すまで、およびその後の期間も投与を継続するべきである。
【0063】
治療的治療のための薬学的組成物は、非経口、局所、経口、または局部的投与が意図されている。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的、例えば、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内に投与される。従って、本発明は、許容される担体、好ましくは水性担体に溶解または懸濁させた免疫原性ペプチド溶液を含む非経口投与用組成物を提供する。種々の水性担体、例えば、水、緩衝液、0.4%食塩液、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等を使用することができる。これらの組成物は、従来の既知の滅菌技術で滅菌されても、またはろ過滅菌されてもよい。得られた水溶液はそのままの使用または凍結乾燥して使用するように包装してもよく、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌溶液と組み合わせる。本発明の組成物は、pH調節剤および緩衝剤、張性調節剤、湿潤剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン等などの適当な生理的条件に必要な薬学的に許容される補助物質を含有してもよい。
【0064】
ある態様では、CTLの抗原刺激を増強する少なくとも1つの成分を薬学的組成物中に含むことが望ましいことがある。脂質は、ウィルス抗原に対するインビボにおけるCTLの抗原刺激を増強することができる物質として同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、Lys残基のαおよびεアミノ基に結合することができ、次いで、典型的にはGly、Gly-Gly-、Ser、Ser-Ser等などの1つ以上の結合残基を介してクラスI制限CTLエピトープを含む合成ペプチドに結合される。次いで、脂質を結合したペプチドを食塩液を溶媒として投与しても、例えばフロイントの不完全アジュバントのようなアジュバントの形態に乳化されたリポソームに導入して投与してもよい。好ましい態様において、特に有効な免疫原は、本明細書に記載のペプチドのようなT細胞決定基を有するクラスI制限ペプチドのアミノ酸末端、およびそのような決定基を有するものとして同定された他のペプチドのアミノ末端に、Ser-Serのような結合を介して結合している、Lysのαおよびεアミノ基に結合したパルミチン酸を含む。
【0065】
CTL応答の脂質抗原刺激の別の例として、適当なペプチドに共有結合している場合には、トリパルミトイル-S-グリセリルシステインリセリル-セリン(P3CSS)などの大腸菌(E. coli)リポタンパク質を使用して、ウィルス特異的CTLを抗原刺激することができる。参照として本明細書に組み入れられているDeresら、Nature, 342: 561-564 (1989)を参照のこと。本発明のペプチドを例えば、P3CSSに結合し、リポペプチドを個体に投与して、CTL応答を特異的に抗原刺激することができる。さらに、中和抗体の誘導も、適当なエピトープを示すペプチドに結合したP3CSSで抗原刺激することができるので、2つの組成物を組み合わせて、ウィルス感染に対する液性および細胞性応答をさらに効果的に誘導することができる。
【0066】
薬学的製剤中の本発明のCTL刺激ペプチドの濃度は大きく、すなわち、約0.1重量パーセント未満から、通常約2重量パーセントまたは少なくとも約2重量パーセント、20重量パーセント〜50重量パーセント以上まで異なってもよく、選択した特定の投与様式により体液の容量、粘性等によって主に選択される。
【0067】
本発明のペプチドはまた、リンパ組織などの特定の組織にペプチドを標的化する作用をするか、または感染細胞に選択的に標的化するだけでなく、ペプチド組成物の半減期を増加させるリポソームを介して投与することもできる。リポソームには、エマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散物、層状の層等が挙げられる。これらの製剤において、送達されるペプチドは、単独で、または例えば、CD45抗原に結合するモノクローナル抗体などのリンパ系細胞に多く見られる受容体に結合する分子または他の治療的組成物もしくは免疫原性組成物と併用して、リポソームの一部として組み入れられる。従って、本発明の所望のペプチドを充填したリポソームをリンパ系細胞部位に誘導することができ、リポソームは選択された治療的/免疫原性ペプチド組成物を送達する。本発明に使用するためのリポソームは、一般に、中性および負荷電のリン脂質並びにコレステロールなどのステロールを含む、標準的な小胞形成脂質から形成される。脂質の選択は、一般に、血流中の例えば、リポソームサイズ、酸不安定性、およびリポソームの安定性を考慮することによって誘導される。参照として本明細書に組み入れられている、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9: 467(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号に記載されているように、リポソームを作製するために種々の方法を利用可能である。
【0068】
免疫細胞を標的化するためには、リポソームに組み入れるリガンドは、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定因子に特異的な抗体またはその断片を含んでもよい。ペプチドを含有するリポソーム懸濁液は、特に投与方法、送達されるペプチド、および被治療疾患の病期により様々な用量で、静脈内、局部的に、局所的等で投与することができる。
【0069】
固形組成物では、例えば、薬学等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、ブドウ糖、ショ糖、炭酸マグネシウム等を含む従来の無毒性固形担体を使用することができる。経口投与では、以前に掲載したような担体などの通常使用される賦形剤のいずれかを、一般に作用成分、すなわち、本発明の1つまたは複数のペプチドの10%〜95%、さらに好ましくは25%〜75%の濃度で組み入れることによって、薬学的に許容される無毒性の組成物が形成される。
【0070】
エアゾール投与では、免疫原性ペプチドは、好ましくは、細粒化された形態で、界面活性剤および噴射剤と共に供給される。ペプチドの典型的な割合は0.01重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%である。界面活性剤は、当然のことながら、無毒性でなければならず、好ましくは噴射剤に可溶性でなければならない。このような薬剤の代表は、脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物を有するカプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸(steamic acid)、リノール酸、リノレン酸、オレステリック-アシッド(olesteric acid)およびオレイン酸などの炭素原子数6〜22個の脂肪酸のエステルまたは部分的なエステルである。混合または天然グリセリドなどの混合エステルを使用することができる。界面活性剤は組成物の0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.25%〜5%を構成してもよい。組成物の平衡は通常推進的である。例えば、鼻腔内送達のためのレシチンの場合と同様に、望ましい場合には、担体を含めることができる。
【0071】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載する免疫原性ペプチドの免疫学的に有効な量を作用成分として含有する。ペプチドは、それ自身の担体に結合して、または活性なペプチド単位のホモポリマーもしくはヘテロポリマーとして、ヒトを含む宿主に導入することができる。このようなポリマーは、免疫学的反応が高いという利点を有し、また、異なるペプチドを使用してポリマーを作製する場合には、ウィルスまたは腫瘍細胞の異なる抗原決定因子と反応する抗体および/またはCTLを誘導する追加の能力という利点を有する。有用な担体は当技術分野において既知であり、例えば、サイログロブリン、ウシ血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(リジン:グルタミン酸)などのポリアミノ酸、B型肝炎ウィルスコアタンパク質、B型肝炎ウィルス組換えワクチン等を含む。ワクチンはまた、水、リン酸緩衝食塩液、または食塩液などの生理学的に耐えられる(許容される)希釈剤を含有してもよく、典型的には、アジュバントをさらに含んでもよい。フロイントの不完全アジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、またはミョウバンなどのアジュバントは当技術分野に既知の物質である。また、上記のように、本発明のペプチドをP3CSSなどの脂質に結合することによってCTL応答を刺激することができる。本明細書に記載したようにペプチド組成物で、注射、エアゾール、経口、経皮、または他の経路により免疫化すると、宿主の免疫系は、所望の抗原に特異的な大量のCTLを産生することによってワクチンに応答し、宿主は後の感染に対して少なくとも部分的に免疫を有するか、または慢性感染症を発症しない。
【0072】
本発明のペプチドを含有するワクチン組成物は、抗原に対する免疫応答を誘発し、患者自身の免疫応答能力を増強するために、ウィルス感染または癌に罹患しやすい患者またはそのリスクのある患者に投与される。このような量は、「免疫学的に有効な用量」と規定される。このように使用する際にも、正確な量は患者の健康状態および体重、投与様式、製剤の性質等に依存するが、一般に70キログラムの患者あたり約1.0μg〜約5000μgの範囲であり、さらに通常は体重70kgあたり約10μg〜約500μg mgの範囲である。
【0073】
いくつかの例において、本発明のペプチドワクチンを、関心対象のウィルス、特にウィルスの外被抗原に対する中和抗体応答を誘導するワクチンと組み合わせることが望ましいことがある。
【0074】
治療的目的または免疫目的のためには、本発明のペプチドの1つまたは複数をコードする核酸を患者に投与することもできる。患者に核酸を送達するために、数多くの方法が便利なことに使用される。例えば、核酸を「裸のDNA」として直接送達することができる。この方法は、例えば、Wolffら、Science 247: 1465-1468 (1990)、並びに米国特許第5,580,859号および同第5,589,466号に記載されている。例えば、米国特許第5,204,253号に記載されているように、弾道的(ballistic)送達を使用して、核酸を投与することもできる。DNAのみを含む粒子を投与してもよい。または、DNAを金粒子などの粒子に接着してもよい。核酸はまた、陽イオン脂質などの陽イオン化合物と複合体を形成して送達することもできる。脂質を介する遺伝子送達方法は、例えば、国際公開公報第96/18372号、国際公開公報第93/24640号、ManninoおよびGould-Forerite (1988) BioTechniques 6(7):682-691、Roseの米国特許第5,279,833号、国際公開公報第91/06309号、およびFelgnerら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413-7414に記載されている。本発明のペプチドはまた、ワクシニアまたは鶏痘などの弱毒化ウィルス宿主によっても発現させることができる。本発明の方法は、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するベクターとしてワクシニアウィルスを使用することを含む。急性もしくは慢性感染宿主または非感染宿主に導入すると、組換えワクシニアウィルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって宿主CTL応答を誘導する。免疫化プロトコールに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、参照として本明細書に組み入れられている米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット-ゲラン杆菌:Bacille Calmette Guerin)である。BCGベクターは、参照として本明細書に組み入れられている、Stoverら(Nature 351: 456-460 (1991))に記載されている。本発明のペプチドの治療的投与または免疫化に有用な多種多様な他のベクター、例えば、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター等は本明細書の説明から当業者に明らかになると思われる。
【0075】
本発明のペプチドをコードする核酸を投与する好ましい手段では、本発明の多重エピトープをコードするミニ遺伝子構築物を使用する。ヒト細胞において発現させるために選択されたCTLエピトープ(ミニ遺伝子)をコードするDNA配列を作製するために、エピトープのアミノ酸配列を逆翻訳する。ヒトコドン利用表を使用して、各アミノ酸のコドン選択をガイドする。これらのエピトープ-コードDNA配列を直接隣接させて、連続ポリペプチド配列を作製する。発現および/または免疫原性を最適化するために、追加の要素をミニ遺伝子デザインに組み入れてもよい。逆翻訳して、ミニ遺伝子配列に含めてもよいアミノ酸配列の例には、ヘルパーTリンパ球エピトープ、リーダー(シグナル)配列、および小胞体保持シグナルが挙げられる。また、CTLエピトープに隣接する合成(例えば、ポリ-アラニン)または天然型隣接配列を含めることによって、CTLエピトープのMHC発現を改善することができる。
【0076】
ミニ遺伝子のプラス鎖およびマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドを集成することによって、ミニ遺伝子配列をDNAに変換する。既知の技術を使用して、適当な条件下において、重複オリゴヌクレオチド(鎖長30〜100塩基)を合成し、リン酸化し、精製し、アニーリングする。T4 DNAリガーゼを使用して、オリゴヌクレオチドの末端が接続される。CTLエピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニ遺伝子を、次いで所望の発現ベクターにクローニングすることができる。
【0077】
当業者に既知の標準的な調節配列をベクターに挿入して、標的細胞において確実に発現させる。いくつかのベクター要素が必要とされる:ミニ遺伝子挿入のための下流のクローニング部位を有するプロモーター、効率的な転写停止のためのポリアデニル化シグナル、大腸菌複製開始点、および大腸菌選択マーカー(例えば、アンピシリンまたはカナマイシン耐性)。例えば、ヒトサイトメガロウィルス(hCMV)プロモーターのような数多くのプロモーターを本発明の目的のために使用することができる。他の好適なプロモーター配列は、米国特許第5,580,859号および同第5,589,466号を参照のこと。
【0078】
ミニ遺伝子発現および免疫原性を最適化するために、追加のベクター改変が望ましいことがある。いくつかの場合において、イントロンは効率的な遺伝子発現のために必要とされ、1つまたは複数の合成または天然型イントロンがミニ遺伝子の転写領域に組み込まれてもよい。ミニ遺伝子発現を増加するためにmRNA安定化配列の挿入を考慮することもできる。免疫刺激配列(ISSまたはCpG)がDNAワクチンの免疫原性に役割を果たしていることが最近提案されている。これらの配列は、免疫原性を増強することが判明している場合には、ベクターのミニ遺伝子コード配列の外側に挿入されてもよい。
【0079】
いくつかの態様において、ミニ遺伝子がコードするエピトープの産生を可能にするためのバイシストロン性発現ベクターおよび免疫原性を増強または低下させるために挿入される第2のタンパク質を使用することができる。同時発現される場合に、免疫応答を有用に増強すると思われるタンパク質またはポリペプチドの例には、サイトカイン(例えば、1L2、1L12、GM-CSF)、サイトカイン誘導分子(例えば、LeIF)、または共刺激分子が挙げられる。ヘルパー(HTL)エピトープを細胞内標的シグナルに結合して、CTLエピトープとは別個に発現してもよい。こうすることにより、HTLエピトープを、CTLエピトープとは別の細胞コンパートメントに誘導することができる。必要な場合には、これにより、HTLエピトープがMHCクラスII経路にさらに効率的に流入しやすくなり、それによってCTL誘導を改善すると思われる。CTL誘導とは異なり、免疫抑制分子(例えば、TGF-β)の同時発現による免疫応答を特異的に低下させることは、ある種の疾患に恩典を有することがある。
【0080】
発現ベクターが選択されると、ミニ遺伝子が、プロモーターの下流のポリリンカー領域にクローニングされる。このプラスミドを適当な大腸菌株に形質転換し、標準的な技術を使用してDNAを作製する。制限酵素マッピングおよびDNA配列分析を使用して、ミニ遺伝子の配向およびDNA配列、並びにベクターに含まれる他の全ての要素を確認する。適切なプラスミドを保有する細菌細胞を、マスター細胞バンクおよび検討用細胞バンクとして保管することができる。
【0081】
治療量のプラスミドDNAは、大腸菌における発酵、それに続く精製によって作製される。検討用の細胞バンクのアリコートを使用して、(テリフィック培地(Terrific Broth)などの)発酵培地に接種し、既知の技術により振とうフラスコまたはバイオリアクターで飽和するまで増殖する。キアゲン社(Quiagen)によって供給される固相陰イオン交換樹脂などの標準的な生物分離技術を使用して、プラスミドDNAを精製することができる。必要な場合には、ゲル電気泳動または他の方法を使用して、超コイルDNAを開環状体および直鎖状体から単離することができる。
【0082】
種々の製剤を使用して、精製プラスミドDNAを注射用に製剤化することができる。これらのうち最も簡単なものは、滅菌リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で凍結乾燥したDNAを溶解することである。種々の方法が記載されており、新規な技術が利用可能になることもある。上記のように、核酸は、便利なことに、陽イオン脂質を用いて製剤化される。また、糖脂質、フソゲンリポソーム、ペプチドおよび集合的に保護的、対話的、非凝縮(protective, interactive, non-condensing)(PINC)と呼ばれる化合物を精製プラスミドDNAと複合体化し、安定性、筋肉内分散または特異的な器官もしくは細胞種との相互作用(trafficking)などの変数に影響を与えてもよい。
【0083】
標的細胞感受性を、ミニ遺伝子がコードするCTLエピトープの発現およびMHCクラスI発現の機能的アッセイ法として使用することができる。標準的なCTLクロム放出アッセイ法の標的として好適である哺乳類細胞系統にプラスミドDNAを導入する。使用するトランスフェクション方法は、最終的な製剤に依存する。エレクトロポレーションは「裸の」DNAに使用することができるが、陽イオン脂質はインビトロにおけるトランスフェクションに向けることができる。緑色の蛍光タンパク質(GFP)を発現するプラスミドを同時トランスフェクトして、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使用して、トランスフェクトした細胞を濃縮することができる。次いで、これらの細胞をクロム-51標識し、エピトープ特異的CTL系統の標的細胞として使用される。51Cr放出で検出するとき、細胞溶解は、ミニ遺伝子がコードするCTLエピトープのMHC発現が生じたことを示す。
【0084】
インビボにおける免疫原性は、ミニ遺伝子DNA製剤の機能的試験の第2の方法である。適当なヒトMHC分子を発現する遺伝子組換えマウスをDNA産物で免疫化する。用量および投与経路は製剤依存的である(例えば、DNAのPBS溶液は筋肉内注射であり、脂質-複合体DNAは腹腔内注射である)。免疫から21日後、脾臓を採取し、試験対象の各エピトープをコードするペプチドの存在下において1週間再度刺激する。標準的な技術を使用して、ペプチド負荷したクロム-51標識標的細胞の細胞溶解についてこれらのエフェクター細胞(CTL)をアッセイする。ミニ遺伝子がコードするエピトープに相当するペプチドのMHC負荷によって感作される標的細胞の溶解は、CTLをインビボにおいて誘導するためのDNAワクチン機能を証明している。
【0085】
同様に、抗原性ペプチドを使用して、エクスビボでCTLを誘導することができる。得られたCTLを使用して、従来の他の形態の治療に応答しない、またはペプチドワクチン治療方法に応答しない患者の慢性感染症(ウィルスまたは細菌)または腫瘍を治療することができる。特定の病因(感染性物質または腫瘍抗原)に対するエクスビボのCTL応答は、組織培養において、患者のCTL前駆細胞(CTLp)を抗原提示細胞(APC)および適当な免疫原性ペプチドと共にインキュベーションすることによって誘導される。CTLpが活性化されて成熟し、エフェクターCTLに増殖する適当なインキュベーション期間(典型的には、1〜4週)後、細胞を患者に注入し、患者の生体内で、細胞は特異的な標的細胞(感染細胞または腫瘍細胞)を破壊する。
【0086】
ペプチドはさらに診断試薬としての用途を見出すことができる。例えば、本発明のペプチドを使用して、本発明のペプチドまたは関連ペプチドを使用する治療方法に対する特定の個体の感受性を判定することができ、従って既存の治療プロトコールを改良する際または罹患個体の予後を判定する際に有用となりうる。また、ペプチドは、どの個体が慢性感染症を発症する実質的な危険状態にあるかを予測するためにも使用することができる。
【0087】
下記の実施例は、例示的な方法として提供されるものであり、制限的な方法として提供されるものではない。
【実施例】
【0088】
実施例1
免疫原性ペプチドの同定
上記の特許出願において同定されたB7様スーパーモチーフを使用して、多数の抗原に由来する配列をこのモチーフの存在について解析した。表5〜表7はこれらの検索結果を提供する。
【0089】
上記の説明は本発明を例示するために提供されているが、本発明の範囲を限定するために提供されるものではない。本発明の他の形態は当業者に容易に明らかになり、添付の特許請求の範囲内に含まれる。本明細書に引用されている刊行物、特許、および特許出願は全て参照として本明細書に組み入れられる。
【0090】
(表5)


【0091】
表6に掲載するペプチドは上記のように同定し、それらが由来する病原菌または抗原により分類される。
【0092】
(表6)


【0093】
表7は、上記の方法を用いて同定されたさらなるペプチドを提供する。
【0094】
(表7)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
B7様のスーパーモチーフを有し、配列番号:1〜127からなる群より選択される免疫原性ペプチドを含む組成物。
【請求項2】
免疫原性ペプチドが、B型肝炎ウィルス由来の配列を有し、配列番号:56〜配列番号:60からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
免疫原性ペプチドが、C型肝炎由来の配列を有し、配列番号:61である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
免疫原性ペプチドが、ヒト免疫不全ウィルス由来の配列を有し、配列番号:62〜配列番号:64からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
免疫原性ペプチドが黄帯熱マラリヤ原虫(Plasmodium falciparum)由来の配列を有し、配列番号:65である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
免疫原性ペプチドが、MAGE2またはMAGE3由来の配列を有し、配列番号:66〜配列番号:68からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
免疫原性ペプチドが、He2/neu由来の配列を有し、配列番号:69〜配列番号:71からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ペプチドが第2の分子に混合または結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
リポソームをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
ペプチドが、抗原-提示細胞に存在するB7様の特異性を共有するHLA分子と複合体形成される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
B7様のスーパーモチーフを有し、配列番号:1〜127からなる群より選択される免疫原性ペプチドをコードする組換え核酸配列。
【請求項13】
特異的なMHCクラスI対立遺伝子を発現する患者において事前に選択された抗原に対する細胞障害性T細胞応答を誘導する方法であって、患者の細胞障害性T細胞に、配列番号:1〜配列番号:127からなる群より選択される免疫原性ペプチドを含む組成物を接触させる段階を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−139706(P2011−139706A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25587(P2011−25587)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【分割の表示】特願2002−524518(P2002−524518)の分割
【原出願日】平成12年9月1日(2000.9.1)
【出願人】(503082963)エピミューン インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】