説明

HPV16およびHPV18ならびにHPV31、45または52から選ばれる少なくとも1つの別のHPV型に対するワクチン

【課題】複数の(例えば、2以上の)HPV型に対して防御するワクチンを提供する。
【解決手段】HPV16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPを含んでなる免疫原性組成物であって、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPの用量がHPV 16または18のものより低い、免疫原性組成物、ならびに該組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトパピローマウイルスに対するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
パピローマウイルスは、高度に種特異的な小さなDNA腫瘍ウイルスである。現在までに100を超えるヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子型が記載されている。HPVは、一般には、皮膚(例えば、HPV-1および-2)または粘膜表面(例えば、HPV-6および-11)に特異的であり、通常は、数ヶ月または数年間持続する良性腫瘍(疣贅)を引き起こす。そのような良性腫瘍は、気になる人にとっては悩ましいものではあるが、少数の例外を除き、生命を脅かす傾向にはない。
【0003】
また、いくつかのHPVは癌に関連しており、発癌性HPV型として知られる。HPVとヒトの癌との間の最も強い正の相関は、HPV-16およびHPV-18と子宮頚癌との間に存在するものである。子宮頚癌は、発展途上国において最もよく見られる悪性疾患であり、全世界で毎年約500,000の新たな症例が生じている。
【0004】
癌に関して特に関心が持たれる他のHPVは31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82、26、53および66型である。
【0005】
HPVウイルス様粒子(VLP)がHPVの治療のための潜在的なワクチンとして示唆されている。VLPを使用する二価ワクチンは、若い女性におけるHPV 16および18型の感染の予防に有効であることが示されている(Lancet, vol 364, issue 9447, November 2004, pages 1757-1765)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lancet, vol 364, issue 9447, November 2004, pages 1757-1765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の(例えば、2以上の)HPV型に対して防御するワクチンが依然として望まれている。
【0008】
本発明はこの要求に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPを含んでなる免疫原性組成物であって、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPの用量がHPV 16または18のものより低い、免疫原性組成物に関する。
【0010】
関連態様において、本発明は、HPV 16および少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPを含んでなる免疫原性組成物であって、その別の癌型が、HPV 31および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPの用量がHPV 16のものより低い、免疫原性組成物に関する。
【0011】
関連態様において、本発明は、HPV 18およびHPV 45に由来するVLPを含んでなる免疫原性組成物であって、HPV 45 VLPの用量がHPV 18のものより低い、免疫原性組成物に関する。
【0012】
本発明は更に、アジュバントおよび/または担体と組合わされた前記の免疫原性組成物に関する。
【0013】
本発明は更に、前記の免疫原性組成物と製薬上許容される賦形剤とを含んでなるワクチンに関する。
【0014】
本発明は更に、HPV感染および/または疾患の予防方法であって、それを要する個体に前記の組成物またはワクチンを投与することを含んでなる方法に関する。
【0015】
本発明は更に、HPV 16および18に由来するVLPを少なくとも1つの別のHPV癌型と混合することを含んでなる、前記免疫原性組成物の製造方法であって、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPの用量がHPV 16または18のものより低い、製造方法に関する。
【0016】
本発明の前記態様においては、VLPではなくHPVカプソメアを使用することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明者らは、驚くべきことに、HPV 16および18 VLPが、特定の別のHPV癌型(すなわち、HPV 31、HPV 45およびHPV 52)による感染および/または疾患に対して交差防御をもたらしうることを確認した。本明細書中の実施例においてデータを記載する。
【0018】
交差防御は、1つのHPV型を含有するワクチンによりもたらされる、異なるHPV型が引き起こす感染(偶発性(incident)または持続性)および/または疾患に対する防御とみなされうる。偶発性および持続性感染は、HarperらによるLancetの論文(Vol 364, issue 9447, November 2004, pages 1757-1765)に記載されているとおりに定義される。交差防御は、ワクチン有効性(V.E.)を考慮することにより評価されうる。ここで、V.E.は、ある所定の型に関する、プラシーボ群と比較した場合の、該ワクチンによる感染防御の改善率(%)である。
【0019】
したがって、HPV 16および18 VLPを含むHPVワクチンは、より低用量の別の(非HPV 16/18)癌型VLP(31、45または52)を使用して(さもなければHPV 16および18 VLPの非存在下で必要であろう用量と比較した場合)製剤化することができ、それでも尚、該ワクチンはその別の型に関する偶発性および/または持続性HPV感染に対して同じ防御応答を達成しうる。多価ワクチン計画における別の癌型VLPの用量の減少は、それらの別の型により引き起こされる防御に対する有意な影響を伴わないのであれば、抗原の合計量が例えば物理的な、化学的なまたは規制上の制約により制限されうる場合には好都合であろう。それは、所定の抗原量当たり、より多くのワクチン用量の製造を可能にし、全体的なワクチンのコストを潜在的に減少させうる。
【0020】
本明細書におけるVLPの用量は、好適には、重量で測定されるVLPの量である。
【0021】
すなわち、偶発性および/または持続性の感染および/または疾患に対して同じ防御応答を達成するために、HPV 16および/またはHPV 18 VLPと組合わせて使用する必要のある(HPV 16/HPV 18ではない)「別の癌型」VLPの用量を、そのような16および/または18型VLPの非存在下で要求されるレベルと比較して減少させることが可能である。
【0022】
したがって、本発明は、HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPを含んでなり、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPの用量がHPV 16または18のものより低い、免疫原性組成物に関する。
【0023】
もう1つの態様においては、本発明は、HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPを含んでなる免疫原性組成物であって、その別の癌型が、HPV型31、45および52よりなる群から選ばれ、その別の癌型による偶発性および/または持続性HPV感染に対する同じ防御をもたらすために、その少なくとも1つの別の癌型のVLPの用量が、HPV16または18の非存在下でさもなければ必要となる用量より低い、免疫原性組成物に関する。
【0024】
1つの態様においては、(HPV 16、18ではない)別の癌型VLPの用量は、その型による偶発性および/または持続性感染に対する防御をもたらすのに十分なものであり、本発明の1つの態様においては、少なくとも偶発性感染に対する防御をもたらすのに十分なものである。
【0025】
本発明の1つの態様においては、本発明の組成物はヒト対象における感染および/または疾患の防御に適している。
【0026】
適当な用量は、例えば、本明細書中の実施例に記載されているようなヒトにおける治験により決定されうる。
【0027】
ある所与のHPV型、例えばHPV 16、18、31、45または52による偶発性および/または持続性感染に対する防御は、好適には、その型による感染に対するワクチン接種集団の50%における防御であり、本発明の1つの態様においては60%の防御であり、さらなる態様においては70%の防御であり、さらなる態様においては80%の防御であり、さらなる態様においては90%の防御であり、さらなる態様においては95%の防御であり、さらなる態様においては96%の防御であり、さらなる態様においては97%の防御であり、さらなる態様においては98%の防御であり、さらなる態様においては99%の防御であり、なおさらなる態様においては100%の防御である。
【0028】
好適には、この防御は、少なくとも6ヶ月の期間にわたって、例えば少なくとも9ヶ月、少なくとも1年、少なくとも18ヶ月の期間にわたって、好適には、2年または2年を越える期間にわたって評価される。
【0029】
本発明の1つの態様においては、該防御は、HPV 16および/またはHPV 18により引き起こされる感染または疾患に対して、また、1つの態様においては、HPV 16およびHPV 18の両方の感染および/または疾患に対して認められる。
【0030】
感染の予防は、例えば、PCR分析および/またはハイブリダイゼーション技術(例えば、参照により本明細書に組み入れるWO03014402およびWO9914377に記載されているもの)により、ワクチン接種された個体におけるHPV種を分析することにより、評価されうる。
【0031】
本発明の免疫原性組成物がHPV 16 VLPおよびHPV 18 VLPの両方を含む場合には、非HPV 16/18癌型VLPは31型または45型または52型またはそれらの組合わせである。1つの態様においては、本発明の免疫原性組成物は、HPV 16、18、31および45に由来するVLPを含む。1つの態様においては、本発明の免疫原性組成物は、HPV 16、18、31および52に由来するVLPを含む。1つの態様においては、本発明の免疫原性組成物は、HPV 16、18、45および52に由来するVLPを含む。1つの態様においては、本発明の免疫原性組成物は、HPV 16、18、31、52および45に由来するVLPを含む。2以上の別の癌型VLP(例えば、31および45、31および52、45および52)が存在する場合には、これらの別の癌型の少なくとも1つはHPV 16またはHPV 18のものより低い用量で存在する。
【0032】
1つの態様においては、HPV 31の用量はHPV 16のものより低い。
【0033】
1つの態様においては、HPV 52の用量はHPV 16のものより低い。
【0034】
1つの態様においては、HPV 45の用量はHPV 18のものより低い。
【0035】
好適には、前記の免疫原性組成物は、HPV 16、HPV 18、および前記の群内に存在する1以上の別の(31、45または52の)HPV型により引き起こされる偶発性感染および/または持続性感染および/または疾患(例えば、偶発性感染)に対する防御をもたらす。
【0036】
本発明の免疫原性組成物がHPV 16 VLPは含むがHPV 18 VLPは含まない場合には、好適には、非HPV 16/18 VLP癌型は31型および/または52型である。
【0037】
本発明の免疫原性組成物がHPV 18 VLPは含むがHPV 16 VLPは含まない場合には、好適には、非HPV 16/18 VLP癌型は45型である。
【0038】
本発明の1つの態様においては、該組成物は、HPV 16 VLPおよびHPV 18 VLPを、HPV 31 VLPおよびHPV 45 VLPの一方または両方と共に含む。
【0039】
本発明の1つの態様においては、該組成物は、少なくともHPV 16 VLPを、HPV 31 VLPと共に含む。
【0040】
本発明の組成物は、低い用量のVLPに加えて、任意の適当な用量の別のHPV VLPを含みうる。例えば、本発明の組成物は、追加的な「高リスク」癌型、例えば、HPV 33、35、39、51、56、58、59、66または68のうち1以上を含みうる。
【0041】
1つの態様においては、該組成物は、追加的ないわゆる「性器疣贅」型、例えばHPV 6および/または11、あるいはいわゆる「皮膚」型、例えばHPV 5および/または8を含みうる。1つの態様においては、該追加的VLPは、HPV 16および/またはHPV 18と同じ用量またはそれらより高い用量で存在する。
【0042】
本発明の1つの態様においては、該組成物は、HPV 39および/またはHPV 51 VLPを含み、これらのうち少なくとも1つの用量はHPV 16および/またはHPV 18より低い。
【0043】
1つの態様においては、任意の追加的なVLPの量は、該追加的型に対して感染または疾患に対して或る程度の防御が得られるように選択される。
【0044】
以下に個々に示す本発明の特定の組成物は、以下の用量のVLPを含む。
【0045】

【0046】
好適には、本発明の組成物中のHPV VLP間に、有意なまたは生物学的に関連した干渉は存在せず、本発明の混合(combined)VLPワクチンは、該ワクチンにおいて代表される各HPV VLP型による感染に対して有効な防御をもたらしうる。好適には、該組合わせに含まれる所定のVLP型に対する免疫応答は、個別に測定された場合のその同じVLP型の免疫応答の少なくとも50%であり、好ましくは100%または実質的に100%である。HPV 16およびHPV 18 VLP成分に対する応答の場合、本発明の混合ワクチンは、好ましくは、混合HPV 16/HPV 18 VLPワクチンによりもたらされる免疫応答の少なくとも50%である免疫応答を刺激する。好適には、本発明のワクチンにより生成される免疫応答は、各VLP型の防御効果が尚も見られるレベルのものである。該免疫応答は、好適には、例えば、ELISAのような標準的な技術を用いる抗体応答により、および本明細書に記載の臨床試験により測定されうる。
【0047】
1つの態様においては、本発明の組成物は熱ショックタンパク質またはその断片を含まない。
【0048】
1つの態様においては、本発明の組成物は、HPV L2タンパク質またはペプチドを含まない。もう1つの態様においては、本発明の組成物はHPV L2タンパク質またはペプチドを含。
【0049】
HPV VLPおよびVLPの製造方法は当技術分野でよく知られている。VLPは、典型的には、該ウイルスのL1および場合によってはL2構造タンパク質から構築される。例えば、WO9420137、WO9629413およびWO9405792を参照されたい。本発明においては、L1またはL1+L2 VLPのような任意の適当なHPV VLPが使用されうる。
【0050】
VLPの形成は、標準的な方法、例えば電子顕微鏡検査および動的レーザー光散乱により評価されうる。
【0051】
本発明の1つの態様においては、VLPは、L1のみのVLPである。
【0052】
該VLPは完全長L1タンパク質を含みうる。
【0053】
本発明の1つの態様においては、VLPを形成させるために使用するL1タンパク質は、末端切断型(トランケート化)L1タンパク質である。末端切断型HPV L1タンパク質は、例えば、参照により本明細書に組み入れるUS6361778に開示されている。1つの態様においては、該末端切断は核局在化シグナルを除去する。さらなる態様においては、該末端切断はC末端切断である。さらなる態様においては、C末端切断は50個未満のアミノ酸、好適には40個未満のアミノ酸を除去する。好適には、HPV 16 L1配列は、例えば以下の配列内に示す第2メチオニンコドンから、あるいは別のHPV型における同様の位置から始まる。VLPがHPV 16 VLPである場合には、1つの態様においては、C末端切断はHPV 16 L1配列から34個のアミノ酸を除去する。VLPがHPV 18 VLPである場合には、1つの態様においては、C末端切断はHPV 18 L1配列から35個のアミノ酸を除去する。
【0054】
1つの態様においては、HPV 16配列は以下の配列である。
MSLWLPSEATVYLPPVPVSKVVSTDEYVARTNIYYHAGTSRLLAVGHPYFPIKKPNNNKI 60
LVPKVSGLQYRVFRIHLPDPNKFGFPDTSFYNPDTQRLVWACVGVEVGRGQPLGVGISGH 120
PLLNKLDDTENASAYAANAGVDNRECISMDYKQTQLCLIGCKPPIGEHWGKGSPCTNVAV 180
NPGDCPPLELINTVIQDGDMVDTGFGAMDFTTLQANKSEVPLDICTSICKYPDYIKMVSE 240
PYGDSLFFYLRREQMFVRHLFNRAGAVGENVPDDLYIKGSGSTANLASSNYFPTPSGSMV 300
TSDAQIFNKPYWLQRAQGHNNGICWGNQLFVTVVDTTRSTNMSLCAAISTSETTYKNTNF 360
KEYLRHGEEYDLQFIFQLCKITLTADVMTYIHSMNSTILEDWNFGLQPPPGGTLEDTYRF 420
VTSQAIACQKHTPPAPKEDPLKKYTFWEVNLKEKFSADLDQFPLGRKFLLQ 471
【0055】
該HPV 16配列は、例えば、好適には末端切断された、WO9405792またはUS6649167に開示されているものでありうる。適当な末端切断体は、配列比較により評価した場合に、前記に示すものと同等の位置で末端切断されている。
【0056】
1つの態様においては、HPV 18配列は以下の配列である。
MALWRPSDNTVYLPPPSVARVVNTDDYVTRTSIFYHAGSSRLLTVGNPYFRVPAGGGNKQ 60
DIPKVSAYQYRVFRVQLPDPNKFGLPDNSIYNPETQRLVWACVGVEIGRGQPLGVGLSGH 120
PFYNKLDDTESSHAATSNVSEDVRDNVSVDYKQTQLCILGCAPAIGEHWAKGTACKSRPL 180
SQGDCPPLELKNTVLEDGDMVDTGYGAMDFSTLQDTKCEVPLDICQSICKYPDYLQMSAD 240
PYGDSMFFCLRREQLFARHFWNRAGTMGDTVPPSLYIKGTGMRASPGSCVYSPSPSGSIV 300
TSDSQLFNKPYWLHKAQGHNNGVCWHNQLFVTVVDTTRSTNLTICASTQSPVPGQYDATK 360
FKQYSRHVEEYDLQFIFQLCTITLTADVMSYIHSMNSSILEDWNFGVPPPPTTSLVDTYR 420
FVQSVAITCQKDAAPAENKDPYDKLKFWNVDLKEKFSLDLDQYPLGRKFLVQ 472
【0057】
代替的なHPV 18配列はWO9629413に開示されており、好適には末端切断されうる。適当な末端切断体は、配列比較により評価した場合に、前記に示すものと同等の位置で末端切断されている。
【0058】
他のHPV 16およびHPV 18配列は当技術分野でよく知られており、本発明での使用に好適でありうる。
【0059】
また、HPV 31、HPV 45およびHPV 52の適当な末端切断体は、好適には、配列アライメントにより評価した場合に前記のものと同等のL1タンパク質C末端部分を除去することにより得られうる。
【0060】
末端切断型L1タンパク質は、例えば、参照により本明細書に組み入れるWO9611272およびUS6066324に開示されている。
【0061】
1つの態様においては、末端切断型L1タンパク質は、好適には、(必要に応じて、適切にアジュバント化されている場合に)免疫応答を生成させうる機能性L1タンパク質誘導体であり、該免疫応答は、完全長L1タンパク質および/または該L1タンパク質が由来するHPV型よりなるVLPを認識しうる。
【0062】
本発明のVLPは、完全長または末端切断型HPV L1タンパク質の突然変異体(例えば、欠失、置換または挿入突然変異体)を含む別の型の機能性タンパク質誘導体をも含みうる。また、該L1タンパク質または誘導体は、融合タンパク質、例えばL1タンパク質とL2または初期タンパク質との融合体でありうる。該L1タンパク質または機能性タンパク質誘導体はVLPを形成しうる。VLPの形成は、標準的な技術、例えば電子顕微鏡検査および動的レーザー光散乱により評価されうる。
【0063】
VLPは、任意の適当な細胞基質、例えば酵母細胞または昆虫細胞、例えばバキュロウイルス細胞において製造うるが、VLPの製造技術は当技術分野でよく知られている(例えば、WO9913056およびUS6245568ならびにそれらに記載の参考文献など。それらの全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)。
【0064】
1つの態様においては、VLPは分解(disassembly)および再構築(reassembly)技術により製造され、これは、より安定および/または均一なパピローマウイルスVLPを与えうる。例えば、McCarthyら, 1998 "Quantitative Disassembly and Reassembly of Human Papillomavirus Type 11 Viruslike Particles in Vitro" J. Virology 72(1):33-41は、VLPの均一調製物を得るための、昆虫細胞から精製された組換えL1 HPV 11 VLPの分解および再構築を記載している。また、WO9913056およびUS6245568は、HPV VLPを製造するための分解/再集合方法を記載している。
【0065】
1つの態様においては、本発明のHPV VLPは、WO9913056またはUS6245568に記載されているようにして製造される。
【0066】
本発明のVLPは、アジュバントまたは免疫刺激物質、例えば、限定するものではないが、任意の起源に由来する無毒化リピドAおよびリピドAの非毒性誘導体、サポニン、およびTH1型応答を刺激しうる他の試薬と組合わされうる。
【0067】
腸内細菌リポ多糖(LPS)は免疫系の強力な刺激物質であることが古くから公知であるが、アジュバントにおける腸内細菌リポ多糖(LPS)の使用はその毒性作用により削減されてきている。コア炭水化物基とホスファートとを還元末端グルコサミンから除去することにより産生されるLPSの非毒性誘導体であるモノホスホリルリピドA(MPL)が、Ribiら(1986, Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)により記載されており、以下の構造を有する。
【化1】

【0068】
MPLの更なる無毒化形態が、該二糖バックボーンの3位からアシル鎖を除去することにより得られ、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と称される。それは、GB 2122204Bに教示されている方法により精製し調製することが可能であり、その参考文献はまた、ジホスホリルリピドAおよびその3-O-脱アシル化変異体の製造を開示している。
【0069】
1つの態様においては、3D-MPLは、直径0.2μm未満の小さな粒径を有するエマルションの形態であり、その製造方法はWO 94/21292に開示されている。モノホスホリルリピドAと界面活性剤とを含む水性製剤がWO 98/43670A2に記載されている。
【0070】
本発明の組成物に製剤化される細菌リポ多糖由来アジュバントは、細菌源から精製し加工してもよく、あるいはそれは合成物であってもよい。例えば、精製されたモノホスホリルリピドAはRibiら 1986(前掲)に記載されており、Salmonella sp.由来の3-O-脱アシル化モノホスホリルまたはジホスホリルリピドAはGB 2220211およびUS 4912094に記載されている。他の精製リポ多糖および合成リポ多糖が既に記載されている(Hilgersら, 1986, Int. Arch. Allergy. Immunol., 79(4):392-6; Hilgersら, 1987, Immunology, 60(1):141-6; およびEP 0 549 074 B1)。1つの態様においては、該細菌リポ多糖アジュバントは3D-MPLである。
【0071】
したがって、本発明で使用しうるLPS誘導体は、LPSまたはMPLまたは3D-MPLと構造において類似した免疫刺激物質である。本発明のもう1つの態様においては、該LPS誘導体は、MPLの前記構造の副次的部分であるアシル化単糖でありうる。
【0072】
サポニンは、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。サポニンは、植物界および海洋動物界に広く分布するステロイドまたはトリテルペン配糖体である。サポニンは、振とうされると発泡する水中コロイド溶液を形成する点およびコレステロールを沈殿させる点で注目される。サポニンが細胞膜付近に存在する場合には、それは、該膜を破裂させる該膜内の孔様構造体を形成する。赤血球の溶血がこの現象の一例であり、これは、すべてという訳ではないが或る種のサポニンの特性の1つである。
【0073】
サポニンは全身投与用のワクチン中のアジュバントとして公知である。個々のサポニンのアジュバントおよび溶血活性が、当技術分野において詳細に研究されている(Lacaille-DuboisおよびWagner, 前掲)。例えば、Quil A(クウィルA)(南米産樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する)およびその画分が、US 5,057,540および「ワクチンアジュバントとしてのサポニン(Saponins as vaccine adjuvants)」, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12(1-2);1-55およびEP 0 362 279 B1に記載されている。Quil Aの画分を含む免疫刺激性複合体(Immune Stimulating Complexes)(ISCOM)と称される微粒子構造体は溶血性であり、ワクチンの製造において使用されている(Morein, B., EP 0 109 942 B1; WO 96/11711; WO 96/33739)。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は強力な全身性アジュバントとして記載されており、それらの製造方法は米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。全身ワクチン接種研究において使用されている他のサポニンには、ギプソフィラ(Gypsophila)およびサポナリア(Saponaria)のような他の植物種に由来するものが含まれる(Bomfordら, Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0074】
増強された系は、非毒性リピドA誘導体とサポニン誘導体との組合わせ、特に、QS21と3D-MPLとの組合わせ(WO 94/00153に開示されているもの)、またはQS21がコレステロールで抑制された、より低い反応性の組成物(WO 96/33739に開示されているもの)を含む。
【0075】
1つの態様においては、アジュバントは、WO 95/17210に記載されている、水中油エマルション中にQS21と3D-MPLとを含む特に強力なアジュバント製剤である。
【0076】
したがって、本発明の1つの実施形態においては、無毒化リピドAまたはリピドA非毒性誘導体でアジュバント化された、より好ましくは、モノホスホリルリピドAまたはその誘導体でアジュバント化された組成物を提供する。
【0077】
1つの態様においては、該組成物は更に、サポニン、より好ましくはQS21を含む。
【0078】
1つの態様においては、アジュバント製剤は更に、水中油エマルションを含む。本発明はまた、本発明のVLPを製薬上許容される賦形剤、例えば3D-MPLと混合することを含む、ワクチン製剤の製造方法を提供する。
【0079】
本発明のアジュバント化組成物中に好ましくは存在する追加的成分としては、本明細書に記載するような非イオン性界面活性剤、例えばオクトキシノールおよびポリオキシエチレンエステル、特にt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X-100)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80);本明細書に記載するような胆汁酸塩またはコール酸誘導体、特にデオキシコール酸ナトリウムまたはタウロデオキシコール酸ナトリウムが包含される。1つの態様においては、該アジュバント製剤は、適当なワクチンを得るためにHPV VLPと組合わされうる3D-MPL、Triton X-100、Tween 80およびデオキシコール酸ナトリウムを含む。
【0080】
本発明の1つの実施形態においては、該組成物は、コレステロール、サポニンおよびLPS誘導体を含む小胞アジュバント製剤を含む。これに関しては、該アジュバント製剤は、ジオレオイルホスファチジルコリンを好適には含む脂質二重層を有する、コレステロールを含む単層小胞を含むことが可能であり、ここで、該サポニンおよびLPS誘導体は該脂質二重層と会合しているかまたはその中に包埋されている。より好ましくは、これらのアジュバント製剤は、サポニンとしてのQS21と、LPS誘導体としての3D-MPLとを含み、ここで、QS21:コレステロールの比は1:1〜1:100重量/重量であり、最も好ましくは1:5重量/重量である。そのようなアジュバント製剤はEP 0 822 831 B(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0081】
1つの態様においては、本発明の組成物はアルミニウムと共に使用され、好適には、アルミニウムアジュバント上に吸着または部分的に吸着される。好適には、該アジュバントはアルミニウム塩であり、これは1つの態様においては3D MPLと組合わされる(例えば、リン酸アルミニウムと3D MPL)。もう1つの態様においては、該アジュバントは、所望により3D MPLと組合わされていてもよい水酸化アルミニウムである。
【0082】
もう1つの態様においては、該組成物は、VLPと、アルミニウム塩またはアルミニウム塩+3D MPLとの組合わせである。本発明の1つの態様においては、該アルミニウム塩は水酸化アルミニウムである。
【0083】
また、本発明の組成物は、安定剤としてアルミニウムまたはアルミニウム化合物を含みうる。
【0084】
本発明は、全般的には、VLPの組合わせに関する。しかし、VLPの本質的成分はL1タンパク質であると理解される。L1タンパク質は会合して五量体(カプソメア)を形成し、ついでこれがモザイク状に合わさって(集合)してVLPを形成する。したがって、本発明はまた、本明細書に記載のVLPの代わりにL1タンパク質またはL1タンパク質含有カプソマーを含む、前記の免疫原性組成物に関する。好適には、L1タンパク質は防御免疫応答を刺激しうる。好適には、L1タンパク質はコンホメーション的に正しいものである。
【0085】
したがって、疑義を避けるために、本発明は、前記の機能性L1誘導体、例えばL1の末端切断、欠失、置換または挿入突然変異体および融合タンパク質(好適には、HPVウイルスを認識しうる免疫応答を惹起しうるもの)の使用に関する。そのようなタンパク質を含むカプソメアも本発明に含まれる。免疫原性物質としてのカプソメアは、例えばWO0204007に記載されている。また、WO9901557は、HPVカプソメア含有組成物を開示している。L1タンパク質、誘導体およびカプソメアは、前記でVLPに関して記載されているのと同様にして使用されうる。
【0086】
したがって、本発明は、HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するL1タンパク質またはその機能性誘導体を含んでなる免疫原性組成物に関すると理解されうる。ここで、その別の癌型は、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のL1タンパク質またはその誘導体の用量はHPV 16または18のものより低い。
したがって、本発明は、HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するHPVカプソメアを含んでなる免疫原性組成物に関すると理解されうる。ここで、その別の癌型は、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のカプソメアの用量はHPV 16または18のものより低い。
1つの態様においては、本発明は、製薬上許容される賦形剤と組合わされた前記の免疫原性組成物に関する。適当な賦形剤は当業者によく知られており、それらには、例えばバッファーおよび水が包含される。
【0087】
本発明の組成物およびワクチンは、種々の任意の経路、例えば経口、局所、皮下、粘膜(典型的には膣内)、静脈内、筋肉内、鼻腔内、舌下、皮内経路および坐剤により投与され送達されうる。
【0088】
本発明の1つの態様においては、該組成物またはワクチンは、HPV初期抗原、例えば、HPV E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7およびE8よりなる群から選ばれる抗原と共に、製剤化または共投与されうる。もう1つの態様においては、該ワクチンは、HPV初期抗原、例えば、HPV E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7およびE8よりなる群から選ばれる抗原を欠如していてもよい。
【0089】
また、所望により、該組成物またはワクチンは非HPV抗原と共に製剤化または共投与されうる。好適には、これらの非HPV抗原は、他の疾患、最も好ましくは性行為感染症、例えば単純ヘルペスウイルス、EBV、クラミジアおよびHIVに対する防御をもたらしうる。特に、該組成物またはワクチンは、HSVに由来するgDまたはその末端切断体、好適には、gD2tとして公知の、HSV-2に由来するC末端切断体を含むことが好ましい。このように、該組成物またはワクチンはHPVおよびHSVの両方に対する防御をもたらす。
【0090】
該組成物またはワクチン成分の用量は、個体の状態、性別、年齢および体重、投与経路ならびに該ワクチンのHPVに左右されるであろう。また、その量はVLP型の数によって様々となりうる。好適には、該供給は、免疫学的防御応答を生成するのに適したワクチン量の供給である。好適には、各ワクチン量は1〜100μgの各VLP、1つの態様においては5〜80μg、さらなる態様においては5〜30μgの各VLP、さらなる態様においては5〜20μgの各VLP、更に別の態様においては特に5μg、6μg、10μg、15μgまたは20μgを含む。
【0091】
ヒトにおける使用に適した用量は、典型的には、20〜40μgのHPV 16およびHPV 18 VLPを、本明細書に記載の低い用量(好適には、VLP当たり20μg未満のレベル、好適には、少なくとも一部のワクチン接種個体において防御免疫応答を惹起しうるレベル)の別のHPV癌型(31、45、52)と共に含む。
【0092】
ヒトにおける使用に適した他の用量は、そのような用量が、本明細書に記載の治験で評価されうるようにヒトにおいて防御的である限り、より低い量のHPV 16および/または18を含みうる。そのような用量は、本発明のVLPを例えば強力なアジュバントと組合わせる場合に適当でありうる。
【0093】
1つの態様においては、本発明の組成物は、20μgのHPV 16、20μgのHPV 18、および別の癌型(31、45または52)に由来する各VLP5〜18μg、例えば5〜15μg、ならびにさらなる態様においては特に、各非HPV 16/18癌型に由来するVLPを5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15μg含む。
【0094】
1つの態様においては、本発明の組成物は、10〜15μgのHPV 16、10〜15μgのHPV 18、および別の癌型(31、45または52)に由来する各VLP5〜9μg、ならびに1つの態様においては、特に、各非HPV 16/18癌型に由来するVLPを5、6、7、8または9μg含む。
【0095】
1つの態様においては、HPV 16 VLPと別の癌型(31、45または52)VLPとの重量比は1:0.9〜1:0.1(HPV 16:別の型)の範囲、好適には1:0.9〜1:0.3、好適には1:0.8〜1:0.4の範囲内である。
【0096】
1つの態様においては、HPV 18 VLPと別の癌型(31、45または52)VLPとの重量比は1:0.9〜1:0.1(HPV 18:別の型)の範囲、好適には1:0.9〜1:0.3、好適には1:0.8〜1:0.4の範囲内である。
【0097】
すなわち、低い用量は、好適には、HPV 16またはHPV 18 VLPの用量の10〜90%、1つの態様においては、HPV 16またはHPV 18 VLPの用量の20〜80%、さらなる態様においては、30〜70%、更に別の態様においては、30〜60%、特に、HPV 16またはHPV 18の用量の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。
【0098】
1つの態様においては、該組成物は、好適には、HPV-16および/またはHPV-18感染、持続性HPV-16および/またはHPV-18感染ならびにHPV-16および/またはHPV-18関連子宮頚新生物のうち1以上を予防するために使用される。
【0099】
好適には、本発明の免疫原性組成物の使用は、別の(HPV 16、18ではない)発癌型による感染に関連した子宮頚新生物および/または偶発性(incident)感染および/または持続性感染を予防するために使用される。
【0100】
好適には、本発明の免疫原性組成物は、成人および10歳以降の青春期女性の能動免疫化において使用される。本発明の全ての組成物およびワクチンに関しては、該組成物またはワクチンは、好適には、10〜15歳、好ましくは10〜13歳の青春期少女のワクチン接種のために使用される。該組成物またはワクチンは、異常なパパニコロースミアの後の、またはHPVにより引き起こされた病変の除去を伴う手術の後の、またはHPV癌型に関して血清陰性かつDNA陰性である、より年長の成人女性にも投与されうる。10〜55歳の女性は別の好適な標的群である。別の態様においては、該ワクチンは、乳児以降の全ての年齢の少女および女性において使用され、さらなる態様においては、該ワクチンは少年または男性に投与されうる。もう1つの態様においては、該ワクチンは、HPVウイルスに関して血清陽性である女性において治療用に使用されうる。
【0101】
1つの態様においては、本発明の組成物は、HPV感染により引き起こされる子宮頚癌またはCIN I、CIN IIもしくはCIN III病状を予防または治療するために使用されうる。
【0102】
1つの態様においては、該ワクチンは、2〜3回の投与計画で、例えば、それぞれ、0、1ヶ月の計画もしくは0、2ヶ月の計画、または0、2、6ヶ月の計画もしくは0、1および6ヶ月の計画で投与される。好適には、該ワクチン接種計画は、3〜10年後または5〜10年後、例えば好ましくは3、4、5、6、7、8、9または10年後の追加免疫注射を含む。
【0103】
1つの態様においては、本発明の組成物またはワクチンは液体ワクチン製剤であるが、該ワクチンは凍結乾燥され、投与前に再構成されるものでもよい。また、例えば局所用製剤、例えば膣内クリーム剤も使用されうる。
【0104】
特許出願および許可された特許を含む、本出願中の全ての参考文献の教示を、参照により完全に本明細書中に組み入れることとする。
【0105】
本発明の組成物およびワクチンは、前記の所定のHPV成分を含む。本発明のさらなる態様においては、該ワクチンは、該成分から本質的になるか、または該成分からなる。
【0106】
本明細書では、HPV 16およびHPV 18 VLPによる交差防御に関連する以下の非限定的な実施例、ならびにHPV VLPの製造を示す以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明を説明する。
【実施例】
【0107】
実施例1
15〜25歳の健康な女性をHPV 16およびHPV 18 L1 VLPの混合物で免疫化した。参加した女性は、1)HPV-16およびHPV-18に関して血清陰性であり、2)(HPV PCRにより検出される)子宮頚の高リスクHPV感染に関して陰性であり、3)これまでに性交渉をもった相手が6人以下であり、そして4)正常なパパニコロースミアを示した。
【0108】
該混合物は0.5ml用量当たり20μgのHPV-16 L1 VLP、20μgのHPV-18 L1 VLPを含み、該混合物を500μgの水酸化アルミニウムおよび50μgの3D-MPLでアジュバント化した。プラシーボ群には500μgの水酸化アルミニウム単独を注射した。
【0109】
高リスク癌HPV型に対するワクチン有効性(V.E.)を評価した。ここで、V.E.は、プラシーボ群と比較した場合の、該ワクチンによる感染防御の改善率(%)である。
【0110】
該ワクチン接種者および対照群において、種々の発癌型に特異的な核酸の存在を検出することにより、交差防御を評価した。検出は、WO03014402およびそこに記載の参考文献に記載の技術、特に、HPV DNAの非特異的増幅およびそれに続くLiPA系を用いたDNA型の検出のための技術(WO 99/14377およびKleterら, [Journal of Clinical Microbiology (1999), 37 (8): 2508-2517]に記載されている)(それらの刊行物の全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)を用いて行った。
【0111】
しかし、サンプル中のHPV DNAの検出のためには、任意の適当な方法、例えば、関心のある各HPV型に特異的なプライマーを使用する、型特異的PCRが用いられうる。適当なプライマーは当業者に公知であるか、あるいは、発癌性HPV型の配列が知られていれば容易に構築されうる。
【0112】
12個の高リスク癌型、HPV-16に系統発生学的に関連した型(31、35および58の群;31、33、35、52および58の群)およびHPV-18に系統発生学的に関連した型(45および59)の全てに関して、感染に対するワクチン有効性を評価した。
【0113】
「ITT」(Intention To Treat cohort[意図した治療に基づくコホート解析];少なくとも1用量のワクチンが投与された全ての個体を含む)に対して初期解析を行った。このデータを表1に示す。
【0114】
表2および3に示す結果は、該治験の全ての基準に従った患者を示す「ATP」(According To Protocol[プロトコール遵守])群に関するものである。表2は、コホート(集団)の少なくとも50%が彼女らの初回ワクチン接種後18ヶ月である時点で全ての患者から取得したデータを用いた中点(midpoint)分析である。表3は最終結果を示し、その全てのデータは初回ワクチン接種(第0月)の18ヶ月後の対象者からのものである。ATP群においては、すべての患者は0、1および6ヶ月の時点でワクチンを3回投与され、6ヶ月の時点で血清陰性であった。
【0115】
表1に示すデータから示されるとおり、HPV 16およびHPV 18 VLPの混合物を用いた免疫化は、別のHPV型に対する見掛け上の交差防御をもたらした。この時点では、厳密な統計分析を行うにはサンプルサイズが小さすぎた。しかし、該データは正の傾向を示しており、HPV 16およびHPV 18 VLPでの免疫化が別のHPV型による感染に対して有効であることを示唆している。
【0116】
これは、この研究が進行するにつれて証明された。
【0117】
該プロトコールの詳細は、実施例3において更に詳しく説明する。
【0118】
表2は、HPV 16およびHPV 18が、高リスク癌型31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66および68の群に対する統計的に有意な交差防御をもたらすことを示している。
【0119】
表3は、HPV-18関連型(これは非常に強い傾向を示す)を除き、評価したHPV 31、35、58の群;HPV 31、33、35、52、58の群;および12個の高リスク(非HPV-16/18)型の群に対する統計的に有意な交差防御が認められることを示している。
【0120】
該治験データのその後の解析は、実施例1で使用した混合HPV 16および18ワクチンが、HPV 31による統計的偶発性感染に対する統計的に有意な交差防御をもたらすことを示している(ワクチン有効性 75.1%、p = 0.007)。該サンプルサイズは尚も、別の型について統計的に有意な結論を導き出すことを可能にするものではないが、例えば39、45、51および52のような別の型に関するデータは、HPV 16およびHPV 18 VLPを用いた免疫化が別のHPV型の感染に対して有効であることについて、正の傾向を示し、それを示唆している。
【0121】
実施例3に示すデータは、同じ研究において得た更なるデータを示しており、ある特定の型に対してもたらされる交差防御に焦点を絞ったものである。
【0122】

【0123】

【0124】

【0125】
実施例2
HPV 16およびHPV 18 VLPは以下の方法で製造されうる。
【0126】
例1
HPV 16およびHPV 18 L1 VLPの組合わせは本明細書に詳細に記載されている。別のHPV遺伝子型に由来するL1タンパク質は、当技術分野で既に公知の同様の方法により容易に製造されうる。
【0127】
A.HPV 16/18 L1 VLPの製造
標準的なプロトコール(例えば、WO9913056を参照されたい)を用いて、HPV 16およびHPV 18 VLPの製造を行った。HPV 16/18タンパク質を、関心のあるHPV 16または18 L1遺伝子をコードする組換えバキュロウイルス(0.3のMOI)に感染させたTrichoplusia ni (High Five(商標))細胞(約350000細胞/mlの密度)中で発現させた。感染の約72時間後に細胞を集めた。
【0128】
4.1 B 細胞回収/抗原抽出
濃縮、抽出、清澄化の3段階のプロセスで、抗原(L1-16/18)をHi5細胞から抽出した。濃縮工程では培地の90%までを除去するが、これは接線流(tangential flow)濾過により行った。抽出工程は低張バッファー(Tris 20mM, pH 8.5)で行った。該抽出を行うためには、培養体積に等しい体積を使用した。滑らかな攪拌下で少なくとも30分間の接触時間を用いた。清澄化は接線流濾過により行った。
【0129】
C 精製
精製プロセスは室温で行った。L1-16/18の両方の抗原に関しても、VLPをカプソメアに分解するために、該抽出物にβ-メルカプトエタノール(4% w/w)を加えた。β-メルカプトエタノールの添加の直前に、グリセロールを10% w/wの濃度まで加えた。
【0130】
2℃〜8℃での保存の前に、使用した全てのバッファーを0.22μmフィルター上で濾過した。各精製の実施の前に、ゲルマトリックスを消毒し、適当なバッファーで平衡化した後、サンプルのローディングを行う。
【0131】
精製方法は、HPV 16および18からのL1の別々の精製に関して記載されている。これらの方法は概ね類似しており、以下の工程を含む:
陰イオン交換クロマトグラフィー(ジメチルアミノエチル -DMAE)、
陰イオン交換クロマトグラフィー(トリメチルアミノエチル -TMAE)、
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、
ナノメトリック(Nanometric)濾過(Planova)、
限外濾過、
HPV 18については疎水性相互作用クロマトグラフィー(オクチルセファロースを使用)、あるいはHPV 16については陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE)、ならびに
滅菌濾過。
【0132】
4.1.1 詳細
4.1.2 C1 L1-18抗原の精製
4.1.2.1 陰イオン交換クロマトグラフィーDMAE
清澄化抽出物(約150mg/mlのL1タンパク質を含有する約1g/ml濃度のタンパク質)を陰イオン交換カラム(ジメチルアミノエチル)にアプライする。溶出は、バッファー(Tris 20mM|NaCl 200mM|4% β-メルカプトエタノールBME)(pH 7.9±0.2)で行う。該抗原は約5カラム容量中に溶出される。溶出プロフィールは280nmでモニターする。
【0133】
4.1.2.2 陰イオン交換クロマトグラフィーTMAE
第1工程の溶出液を1容量のH2O/BME 4%で希釈する。ついで、その希釈した溶出液を第2の陰イオン交換カラム(トリメチルアミノエチル)にアプライする。溶出はバッファー(20mM Tris|NaCl 200mM|4%BME)(pH 7.9±0.2)で行う。該抗原は約4カラム容量中に溶出される。溶出プロフィールは280nmでモニターする。
【0134】
4.1.2.3 ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
該TMAE工程の溶出液をヒドロキシアパタイト(HA)カラムにアプライする。サンプルをアプライした後、該ゲルを約2.5カラム容量のバッファー(NaH2PO4 100mM|NaCl 30mM|4%BME)(pH 6.0±0.2)で溶出する。
【0135】
4.1.2.4 ナノメトリック(Nanometric)濾過(Planova)
該HA溶出液を希釈して、以下の条件となるようにする:バッファー(NaH2PO4 25mM|NaCl 10mM|4%BME)(pH 7.5±0.2)。ついでそれを0.2μmプレフィルター上および0.12 m2のPlanova 15Nフィルター上で連続的に濾過する。該濾過は、200 mbar±20 mbarの一定の圧力で行う。
【0136】
4.1.2.5 限外濾過
ポリエーテルスルホン膜(Centramateカセット0.1 m2, 100kD)を備えた接線流(tangential flow)限外濾過系で限外濾過を行う。該Planova溶出液を以下の条件となるように処理する:(NaH2PO4 100mM|NaCl 30mM|4%BME)、pH 6.0±0.2。ついでそれを該系内にローディングし、5倍濃縮し、バッファー(NaH2PO4 20mM|NaCl 500mM)(pH 6.0±0.2)の約10倍の開始容量の連続的注入でダイアフィルトレーションに付す。
【0137】
4.1.2.6 疎水性相互作用クロマトグラフィー(オクチルセファロース)
該限外濾過透過液をオクチルセファロースカラムにアプライする。このクロマトグラフィー工程は、バッファー(Na3PO4 20mM|NaCl 500mM)(pH 6.0±0.2)の約5カラム容量でネガティブモードで行う。
【0138】
4.1.2.7 滅菌濾過
精製されたL1-18抗原溶液を0.22μm膜上の濾過により滅菌する。
【0139】
4.1.3
4.1.4 C2 L1-16抗原の精製
4.1.4.1 陰イオン交換クロマトグラフィーDMAE
該清澄化抽出物を陰イオン交換カラム(ジメチルアミノエチル)にアプライする。溶出はバッファー(Tris 20mM|NaCl 180mM|4%BME)(pH 7.9±0.2)で行う。該抗原は約4カラム容量中に溶出される。溶出プロフィールは280nmでモニターする。
【0140】
4.1.4.2 陰イオン交換クロマトグラフィーTMAE
第1工程の溶出液を1容量のH2O/BME 4%で希釈する。ついで、その希釈した溶出液を第2の陰イオン交換カラム(トリメチルアミノエチル)にアプライする。溶出はバッファー(20mM Tris|NaCl 180mM|4%BME)(pH 7.9±0.2)で行う。該抗原は約5カラム容量中に溶出される。溶出プロフィールは280nmでモニターする。
【0141】
4.1.4.3 ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HA)
該TMAE工程の溶出液をHAカラムにアプライする。サンプルをアプライした後、該ゲルを約3カラム容量のバッファー(NaH2PO4 100mM|NaCl 30mM|4%BME)(pH 6.0±0.2)で溶出する。
【0142】
4.1.4.4 ナノメトリック(Nanometric)濾過(Planova)
該HA溶出液を希釈して、以下の条件となるようにする:バッファー(NaH2PO4 25mM|NaCl 10mM|4%BME)(pH 7.5±0.2)。ついでそれを0.2μmプレフィルターおよび0.12 m2のPlanova 15Nフィルターで連続的に濾過する。該濾過は、200 mbar±20 mbarの一定の圧力で行う。
【0143】
4.1.4.5 限外濾過
ポリエーテルスルホン膜(Centramateカセット0.1 m2, 100kD)を備えた接線流(tangential flow)限外濾過系で限外濾過を行う。該Planova溶出液を以下の条件となるように処理する:(NaH2PO4 100mM|NaCl 30mM|4%BME)、pH 6.0±0.2。ついでそれを該系内にローディングし、5倍濃縮し、バッファー(NaH2PO4 20mM|NaCl 500mM)(pH 6.0±0.2)の約10倍の開始容量の連続的注入でダイアフィルトレーションに付す。
【0144】
4.1.4.6 陰イオン交換クロマトグラフィーDEAE
該限外濾過溶出液を平衡バッファー(Na3PO4 20mM|NaCl 250mM)(pH 6.0±0.2)の伝導度に調節し、陰イオン交換カラム(ジエチルアミノエチル)上にアプライする。溶出はバッファー(NaH2PO4 20mM|NaCl 500mM)(pH 6.0±0.2)で行う。該抗原は約3カラム容量中に溶出される。溶出プロフィールは280nmでモニターする。
【0145】
4.1.4.7 滅菌濾過
精製されたL1-18抗原溶液を0.22μm膜での濾過により滅菌する。
【0146】
C3
各VLP型を別々に吸着させて、濃縮された吸着一価体を得る。
【0147】
VLP16濃縮吸着一価体の製造
HPV 16からの60μgの精製VLPを、穏やかに攪拌しながら室温にて1時間にわたり、6.0±0.2のpHでAl(OH)3からの150μgのAl3+上に吸着させる。この濃縮吸着一価体を±4℃で保存する。吸着は、該調製物を遠心分離し、その上清中のVLPを定量することにより、確認する。
【0148】
VLP 18濃縮吸着一価体の製造
HPV 18からの60μgの精製VLPを、穏やかに攪拌しながら室温にて1時間にわたり、6.0±0.2のpHでAl(OH)3からの150μgのAl3+上に吸着させる。この濃縮吸着一価体を±4℃で保存する。吸着は、該調製物を遠心分離し、上清中のVLPを定量することにより、確認する。
【0149】
D 最終的なワクチン調製
上記方法により製造された濃縮吸着一価体を組み合わせて、用量当たり20μgの各VLPを含有する懸濁液を構成してもよい。最終的なワクチンは+4℃で保存する。
【0150】
別の癌型由来のVLPは、本発明に従い、適宜、適当な濃度で加えられうる。そのような型の配列は当技術分野でよく知られており、そのようなタンパク質を含むVLPは当業者により容易に発現されうる。
【0151】
組み合わせた吸着バルクまたは個々の吸着バルクは、例えば3D-MPLのようなアジュバントと更に混合されうる。
【0152】
実施例3
行った実験の厳密な詳細はHarperら, the Lancet. 2004 Nov 13;364(9447):1757-65に記載されている。
【0153】
要約すると、15〜25歳の健康な女性をHPV 16およびHPV 18 L1 VLPの混合物で免疫化した。参加した女性は、1)HPV-16およびHPV-18に関して血清陰性であり、2)(HPV PCRにより検出される)子宮頚の高リスクHPV感染に関して陰性であり、3)これまでに性交渉をもった相手が6人以下であり、そして4)正常なパパニコロースミアを示した。
【0154】
該混合物は0.5ml用量当たり20μgのHPV-16 L1 VLP、20μgのHPV-18 L1 VLPを含み、該混合物を500μgの水酸化アルミニウムおよび50μgの3D-MPLでアジュバント化した。プラシーボ群には500μgの水酸化アルミニウム単独を注射した。
【0155】
HPV 16 VLPは、471アミノ酸からなる、34アミノ酸が欠失したC末端切断型HPV L1タンパク質から構成されている。HPV 18 VLPは、35アミノ酸が欠失した、C末端切断型の472アミノ酸HPV L1タンパク質から構成されている。
【0156】
所定の癌HPV型に対するワクチン有効性(V.E.)を評価した。ここで、V.E.は、プラシーボ群と比較した場合の、該ワクチンによる感染防御の改善率(%)である。
【0157】
該ワクチン接種者および対照群において、種々の発癌型に特異的な核酸の存在を検出することにより、交差防御を評価した。検出は、WO03014402およびそこに記載の参考文献に記載の技術、特に、HPV DNAの非特異的増幅およびそれに続くLiPA系を用いたDNA型の検出のための技術(WO 99/14377およびKleterら, [Journal of Clinical Microbiology (1999), 37 (8): 2508-2517]に記載されているもの)(それらの刊行物の全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)を用いて行った。
【0158】
しかし、サンプル中のHPV DNAの検出のためには、任意の適当な方法、例えば、関心のある各HPV型に特異的なプライマーを使用する型特異的PCRが用いられうる。適当なプライマーは当業者に公知であるか、あるいは、発癌性HPV型の配列が知られていれば容易に構築されうる。
【0159】
本明細書においては、完全を期すために、前記のLancet文献の方法の部を以下に詳細に複製する。
【0160】
Harpeら, the Lancet. 2004 Nov 13;364(9447):1757-65 - 実験の詳細
本研究の主要目的は、HPV-16/18に関してELISAで血清陰性でありHPV-16/18 DNAに関してPCRで陰性であることが予め示された参加者において、6〜18ヶ月間、HPV-16、HPV-18またはそれらの両方(HPV-16/18)の感染の予防におけるワクチン有効性を評価することであった。二次的な目的としては以下が含まれた:HPV-16/18の持続性感染の予防におけるワクチン有効性の評価、ならびにHPV-16/18感染に関連した細胞学的に確認された軽度扁平上皮内病変(LSIL)、重度扁平上皮内病変(HSIL)および組織学的に確認されたLSIL(CIN 1)、HSIL(CIN 2または3)扁平上皮細胞癌または腺癌の予防におけるワクチン有効性の評価(第6〜18ヶ月および第6〜27ヶ月におけるもの)。HPV-16/18感染と細胞学的に関連した意義不明異型扁平上皮細胞(ASCUS)の予防を、結果の解析に事後的に加えた。
【0161】
我々は、病変組織内でPCRにより検出されたHPV-16/18 DNAと関連した組織病理学的エンドポイントCIN 1および2の精査分析も行った。他の目的には、ワクチンの免疫原性、安全性および忍容性の評価が含まれた。
【0162】
北米(カナダおよび米国)およびブラジルの研究者は、この有効性研究のために、広告により、あるいは以前の2000年7月〜12月に実施したHPV横断的疫学研究の参加者から、女性を募集した。
【0163】
32の研究実施箇所のそれぞれについて、施設内審査機関がプロトコール、同意書および修正を承認した。女性は、研究への参加および膣鏡検査に関する別々の同意書面に署名した。18歳未満の女性については、両親の同意および参加者からの承諾が必須であった。
【0164】
以下の2つの研究段階で実施した。すなわち、ワクチン接種および追跡調査のための18ヶ月で完了する第一段階、そして、18ヶ月で完了する盲検化拡張追跡調査段階である。
【0165】
第一段階(0ヶ月〜18ヶ月)に適格な女性には、15〜25歳の健康な女性であって、これまでに性交渉をもった相手が6人以下であり、異常なパパニコロー検査結果または子宮頚部の除去もしくは切除処置の前歴を有さず、外部コンジローマの治療中ではなく、また、研究への参加の90日前以降に細胞学的に陰性であり、HPV-16およびHPV-18抗体に関してELISAで血清陰性であり、14種の高リスクHPV型(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66および68)に関してPCRでHPV-DNA陰性であった女性が、含められた。
【0166】
該研究の初期段階を最も早く完了し、登録後に子宮頚部の除去もしくは切除療法または子宮摘出術を受けなかった女性が、該研究の拡張段階(18ヶ月〜27ヶ月)に参加する資格を得た。
【0167】
方法
二価HPV-16/18ウイルス様粒子ワクチン(GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)の各投与量は、20μgのHPV-16 L1ウイルス様粒子および20μgのHPV-18 L1ウイルス様粒子を含有していた。単回用量バイアルとして供給された500μgの水酸化アルミニウムおよび50μgの3-デアシル化モノホスホリルリピドA(MPL, Corixa, Montana, USA)を含有するAS04アジュバントを使用して、Spodoptera frugiperda Sf-9およびTrichoplusia ni Hi-5細胞基質上で、各型のウイルス様粒子を産生させた。プラシーボは投与量当たり500μgの水酸化アルミニウムを含有し、外見上はHPV-16/18ワクチンと同一であった。0ヶ月、1ヶ月および6ヶ月の時に、各研究参加者に0.5mL用量のワクチンまたはプラシーボを投与した。
【0168】
スクリーニング時ならびに6ヶ月、12ヶ月および18ヶ月時に、細胞学的検査およびHPV DNA試験のために、子宮頚刷毛およびへら(PreservCyt, Cytyc Corporation, Boxborough, MA, USA中で洗浄されたもの)を用いて医療提供者が子宮頚部検体を得た。0ヶ月および6ヶ月時、その後は3ヶ月ごとに、女性は、HPV DNA試験のために2つの逐次スワブ(PreservCyt内に配置される)で子宮頚膣サンプルを自分で採取した。[DM Harper, WW Noll, DR BelloniおよびBF. Cole, Randomized clinical trial of PCR-determined human papillomavirus detection methods: self-sampling versus clinician-directed −biologic concordance and women's preferences. Am J Obstet Gynecol 186 (2002), pp. 365-373]。中央検査室(Quest Diagnostics, Teterboro, NJ, USA)は、1991 Bethesda分類系を用いて細胞学的検査の結果(ThinPrep, Cytyc Corporation)を報告した。
【0169】
プロトコールガイドラインは、ASCUSについての2つの論文または意義不明異型腺細胞(atypical glandular cells of undetermined significance)、LSILもしくはHSIL、扁平上皮細胞癌、in situ腺癌または腺癌についての1つの論文の後、膣鏡検査を推奨した。これらのガイドラインは、疑わしい病変がある場合にはその生検をも推奨した。
【0170】
中央組織検査室は、臨床管理のためのホルマリン固定組織検体の初期診断を行った。3名の病理学者の一団が、CIN系によるHPV-16およびHPV-18関連病変について後日一致した診断を行った。この一致した診断は、病変部HPV DNAのPCR検出のために顕微解剖時に採取された切片の精査をも含むものであった。
【0171】
細胞学的検体から単離したHPV DNA(MagNaPure Total Nucleic Acid system, Roche Diagnostics, Almere, Netherlands)および子宮頚生検検体から単離されたHPV DNA(プロテイナーゼK抽出)を、L1遺伝子の65bpの領域を増幅するSPF10広域スペクトルプライマーを使用して、精製された全DNAのアリコートから増幅した[B Kleter, LJ van Doorn, J ter Scheggetら, Novel short-fragment PCR assay for highly sensitive broad-spectrum detection of anogenital human papillomaviruses. Am J Pathol 153 (1998), pp. 1731-1739: LJ van Doorn, W Quint, B Kleterら, Genotyping of human papillomavirus in liquid cytology cervical specimens by the PGMY line blot assay and the SPF(10) line probe assay. J Clin Microbiol 40 (2002), pp. 979-983 およびWG Quint, G Scholte, LJ van Doorn, B Kleter, PH SmitsおよびJ. Lindeman, Comparative analysis of human papillomavirus infections in cervical scrapes and biopsy specimens by general SPF(10) PCR and HPV genotyping. J Pathol 194 (2001), pp. 51-58]。増幅産物をDNA酵素イムノアッセイにより検出した。ラインプローブアッセイ(LiPA Kit HPV INNO LiPA HPVジェノタイピングアッセイ, SPF-10システム バージョン1, Innogenetics, Gent, Belgium, Labo Bio-medical Products製, Rijswijk, Netherlands)は25個のHPV遺伝子型(6、11、16、18、31、33、34、35、39、40、42、43、44、45、51、52、53、56、58、59、66、68、70および74)を検出した[B Kleter, LJ van Doorn, L Schrauwenら, Development and clinical evaluation of a highly sensitive PCR-reverse hybridization line probe assay for detection and identification of anogenital human papillomavirus. J Clin Microbiol 37 (1999), pp. 2508-2517]。DNA酵素イムノアッセイにより陽性であった任意の検体を型特異的HPV-16およびHPV-18 PCRにより試験した。HPV-16型特異的PCRプライマーはE6/E7遺伝子の92bpの断片を増幅し、HPV-18型特異的PCRプライマーはL1遺伝子の126bpの断片を増幅した[MF Baay, WG Quint, J Koudstaalら, Comprehensive study of several general and type-specific primer pairs for detection of human papillomavirus DNA by PCR in paraffin-embedded cervical carcinomas. J Clin Microbiol 34 (1996), pp. 745-747]。
【0172】
我々は、HPV-16/18による偶発性(incident)子宮頚感染を、該治験中のHPV-16またはHPV-18に関する少なくとも1つの陽性のPCR結果として定義し、HPV-16/18による持続性感染を、少なくとも6ヶ月間隔を空けて行った同じウイルス遺伝子型に関するHPV-DNA PCRアッセイでの少なくとも2つの陽性結果として定義した[H Richardson, G Kelsall, P Tellierら, The natural history of type-specific human papillomavirus infections in female university students. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 12 (2003), pp. 485-490ならびにAB Moscicki, JH Ellenberg, S FarhatおよびJ. Xu, Persistence of human papillomavirus infection in HIV-infected and -uninfected adolescent girls: risk factors and differences, by phylogenetic type. J Infect Dis 190 (2004), pp. 37-45]。HPV-DNA試験結果は該研究中は研究者には秘密にし、臨床管理目的に細胞学的および組織学的診断のみが明らかにされた。分析は、子宮頚検体ならびに組み合わせた子宮頚および自己採取子宮頚膣検体に関するHPV-16/18 DNA結果を含むものであった。
【0173】
我々は0、1、6、7、12および18ヶ月時に免疫原性の評価のために研究参加者から血清を集めた。HPV-16およびHPV-18ウイルス様粒子に対する抗体に関する血清学的試験はELISAによるものであった。抗体検出のためのコーティング抗原として、組換えHPV-16またはHPV-18ウイルス様粒子を使用した(ウェブ添付書類http://image.thelancet.com/extras/04art10103webappendix.pdfを参照されたい)。血清陽性は、HPV-16に関しては8 ELISA単位/mLでおよびHPV-18に関しては7 ELISA単位/mlで確立されたアッセイカットオフ力価と同等かそれより大きい力価として定義された。典型的な自然力価は、ELISAによりHPV-16またはHPV-18に関して血清陽性であることが判明した先行疫学研究において女性から得た血液サンプルを使用することにより測定した。
【0174】
女性は、ワクチン接種後の最初の7日間に経験した症状を3等級スケールの症状強度として日記カードに記録した。また、彼女らは、ワクチン接種後の最初の30日以内の全ての有害事象を、面接により、研究職員に報告した。該研究全体を通じて、重大な有害事象および妊娠に関する情報を集めた。
【0175】
統計的方法
12ヶ月にわたるHPV-16型およびHPV18型の感染の両方の累積発生率を6%と仮定して、我々は、処理群当たり500人の女性が、0を超えるワクチン有効性の95% CIの下限を評価する上で80%の検出力(power)を有すると見積もった。我々は18ヶ月にわたる80%の維持率(retention rate)を仮定した。専ら将来の研究計画目的のために、有効性、安全性および免疫原性に関する中間解析を行った。中間解析を行った後の最終分析のためにα値を補正するためには、O'BrienおよびFlemingの方法を用いた(総α= 0.05; 両側検定)[PC O'BrienおよびTR. Fleming, A multiple testing procedure for clinical trials. Biometrics 35 (1979), pp. 549-556]。
【0176】
有効なアルゴリズムによる層別ブロックランダム化をインターネットランダム化システムで集中制御した。層別は年齢(15〜17歳、18〜21歳および22〜25歳)および地域(北米およびブラジル)によるものであった。各ワクチン用量は、研究職員によりコンピューター化ランダム化システムに入力された特定の参加者情報に基づいて無作為に選択された数によるものであった。処理割付けは、研究者および長期追跡研究に参加している女性には秘密にされたままである。
【0177】
ITT(intention-to-treat;意図した治療)およびATP(according-to-protocol;プロトコール遵守)コホートが図に示されている。ここでは、分析から除外される理由が順位で列挙されており、2以上の除外基準を満たした女性は、最高順位付け基準に従い1度だけカウントされた。ITTおよびATP解析に参加した参加者の集合はコホートと称されるが、ATPへの対象者の組み入れを制限するために用いた情報は、追跡調査後に初めて知らされた。
【0178】
我々は有効性に関してATP分析およびITT分析の両方を行った。ATP 18ヶ月解析におけるワクチン有効性の計算は、ワクチン接種群 対 プラシーボ群におけるHPV-16/18感染を有する参加者の割合に基づくものであった。ワクチン有効性は、これらの2つの割合間の比率を1から引き算したものと定義され、95% CIは有効性推定の精度を示すものであった。p値は、フィッシャーの直接両側検定で計算した。対応する比率は、その結果を有する症例数を、リスクを有する参加者数で割り算して得られた値として表した。ATP 18ヶ月コホートは、3回の計画されたワクチン投与を受け、図に記載のプロトコールに従った登録女性を含めた。
【0179】
ITTおよびATP 27ヶ月解析におけるワクチン有効性の計算は、ワクチン接種群 対 プラシーボ群におけるHPV-16/18感染症例の発生までに要した期間を用いたコックス比例ハザードモデルに基づくものであった。これは、各群における累計個人-時間データに関するコントロールを可能にした。ワクチン有効性は、1からハザード比率を引き算した値を使用して計算し、p値は、ログランク検定を用いて計算した。対応する比率は、症例数を合計の個人-時間(person-time)で割り算して得た値として表した。ワクチンまたはプラシーボの少なくとも1回の投与を受け、0ヶ月において高リスクHPV-DNAに関して陰性であり、結果測定のために入手可能なデータを有する全ての登録女性を、ITTコホートに含めた。ATP 27ヶ月コホートには、ATP 18ヶ月コホートから得た結果、および拡張段階(18ヶ月〜27ヶ月)の間に生じた結果を含めた。
【0180】
安全性解析のためのp値の計算は、フィッシャーの直接検定比較を用いて行った。ワクチンまたはプラシーボの少なくとも1回の投与を受け、特定の最小限のプロトコール要件に従った全ての登録女性を、安全性分析のためのコホートに含めた(以下の図を参照されたい)。
【0181】

【0182】
ATP安全性コホートの部分集団において免疫原性を評価した。その亜集団には、0ヶ月、7ヶ月および18ヶ月時の血清学的結果を有する女性であって、スケジュール通りに研究ワクチンまたはプラシーボの3回の投与を全て受け、血液採取スケジュールを遵守し、該治験中にHPV-16/18-DNAに関して陽性にならなかった女性を含めた。ワクチン群とプラシーボ群との間で血清陽性率をフィッシャーの直接検定(p < 0.001を有意と判定)で比較した。幾何平均力価をANOVAおよびKruskal-Wallis検定で比較した。
【0183】
ブロックランダム化および統計解析はSAS version 8.2 (SAS Institute, Cary, North Carolina)を用いて行った。
【0184】
結果
交差防御に関する最初の解析の結果を、参照によりその内容全体を本明細書に組み入れる特許出願WO2004/056389に示している。
【0185】
更なる解析
該治験の基準のすべてを遵守した患者について「ATP」(According To Protocol)群として解析を行った。該ATP群において、すべての患者は0、1および6ヶ月時の3回のワクチン投与を受け、6ヶ月時に血清陰性であった。
【0186】
表4に示すデータにより示されるとおり、HPV 16およびHPV 18 VLPの混合物を用いた免疫化は、対照と比較して、HPV 31、52および45型による偶発性感染に対して統計的に有意な交差防御をもたらした。
【0187】
偶発性感染に対する統計的に有意な交差防御は、すべてのHPV 16関連型(HPV-31、33、35、52および58)の群、および16と18とを除くすべての高リスク型(HPV 31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66および68)の群に対しても認められた。
【0188】
また、持続性感染に対する統計的に有意な交差防御が、31および52型に対して認められ(表5を参照されたい)、すべてのHPV 16関連型の群に対しても認められた(表5を参照されたい)。
【0189】
統計的に有意な交差防御は、HPV 52に関連した細胞学的異常に対しても認められた。表6を参照されたい。すべてのHPV 16関連型(HPV-31、33、35、52および58)の群および16と18とを除くすべての高リスク型(31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66および68)の群に関連した細胞学的異常に対しても、統計的に有意な防御が認められた。
【0190】

【0191】

【0192】

【0193】
表4、5および6中、
N = 特定のコホート内の対象者の数
AR = 発病率 = n(表毎に適宜、HPVの偶発性感染、持続性感染または細胞学的異常のいずれかを有する対象者の数)/ N
ワクチン有効性(%) = 1 - (A / B) × 100[ワクチン群およびプラシーボ群の相対サイズに関して補正した]
上記式中、
A = 表毎に適宜、偶発性感染、持続性感染または細胞学的異常を有するワクチン群に含まれる女性の%
B = 表毎に適宜、偶発性感染、持続性感染または細胞学的異常を有するプラシーボ群に含まれる女性の%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPまたはカプソメアを含んでなる免疫原性組成物であって、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPまたはカプソメアの用量がHPV 16または18のものより低い、免疫原性組成物。
【請求項2】
別の癌型がHPV 31である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
別の癌型がHPV 45である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
別の癌型がHPV 52である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
別の癌型がHPV 31およびHPV 45である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
別の癌型がHPV 31およびHPV 52である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
別の癌型がHPV 52およびHPV 45である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
別の癌型がHPV 31、HPV 45およびHPV 52である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が10μg以上のHPV 16および/またはHPV 18のVLPまたはカプソメアと、別の癌型に由来する2〜9μgのVLPまたはカプソメアとを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記組成物が20μg以上のHPV 16および/またはHPV 18のVLPまたはカプソメアと、別の癌型に由来する5〜15μgのVLPまたはカプソメアとを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記組成物が、別の癌型に由来する10μgのVLPまたはカプソメアを含む、請求項10記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
アジュバントと組合わされた、請求項1〜11のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
アジュバントがアルミニウム塩である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
アジュバントが水酸化アルミニウムである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
アジュバントがリピドA誘導体である、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
アジュバントが3D MPLである、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
アジュバントが3D MPLおよび水酸化アルミニウムである、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項記載の免疫原性組成物と製薬上許容される賦形剤とを含んでなるワクチン。
【請求項19】
HPV感染および/または疾患の予防方法であって、それを要する個体に、上記記載の組成物またはワクチンを投与することを含んでなる方法。
【請求項20】
HPV 16および18に由来するVLPまたはカプソメアを、少なくとも1つの別のHPV癌型と混合することを含んでなる、上記記載の免疫原性組成物の製造方法であって、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPまたはカプソメアの用量がHPV 16または18のものより低い、製造方法。
【請求項21】
HPV 16および18ならびに少なくとも1つの別のHPV癌型に由来するVLPまたはカプソメアを含む免疫原性組成物を個体に送達することを含んでなるHPV感染および/または疾患の予防または治療方法であって、その別の癌型が、HPV 31、45および52型よりなる群から選ばれ、その少なくとも1つの別の癌型のVLPまたはカプソメアの用量がHPV 16または18のものより低い、方法。

【公開番号】特開2012−102132(P2012−102132A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1102(P2012−1102)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2007−515878(P2007−515878)の分割
【原出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】