説明

Haemophilusinfluenzae誘発性疾患のためのキメラワクチン

【課題】H.influenzaeに対する特異的でかつ制御性の免疫応答を惹起するワクチン候補物を開発すること。
【解決手段】キメラタンパク質であって、PilAの一部分およびLB1ペプチドの一部分を含む、キメラタンパク質。本発明は、LB1ペプチドのB細胞エピトープを提示するように改変されたPilAを含むキメラタンパク質を提供する。本発明はまた、本発明の1またはそれより多くのキメラタンパク質を含むワクチン組成物、および本発明のキメラタンパク質を用いて免疫応答を惹起する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年7月8日に出願した米国仮出願第60/697,642号および2006年5月19日に出願した米国仮出願第60/801,835号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本明細書中に記載される発明は、NTHi OMP P5タンパク質の一部分を提示するNTHi単収縮ピリ線毛(twitching pilus)主要サブユニットタンパク質(PilA)を含むキメラタンパク質に関する。本発明は、このキメラタンパク質を含むワクチン組成物、および本発明のキメラタンパク質を用いて免疫応答を惹起する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
中耳感染についての臨床用語は中耳炎(OM)である。非特許文献1によれば、OMは、健康管理を受ける病気の小児、および抗生物質を受けるかまたは全身麻酔を受ける米国の小児についての最も一般的な理由である。統計は、1990年にはOMについて2450万人の内科医院の訪問者があったことを示す。これは、1980年代に報告されたのよりも200%より高く増加していることを示す。死亡と関連することは稀であるとはいえ、OMに関連した死亡は重大である。難聴は、この疾患と関連した一般的な問題であり、しばしば、小児の行動、教育および言語習熟の発達に影響を与える(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。OMの社会経済的な影響もまた大きく、OMの診断および管理の直接的費用および間接的費用は、米国だけでも毎年50億ドルを超える(非特許文献5)。
【0004】
OMは、感染性要因、環境要因および宿主の遺伝学的要因から生じると考えられている。Haemophilus influenzae、Streptococcus pneumoniaeおよびMoraxella catarrhalisのような細菌は、OMにおいて最も一般的な感染性生物体である。急性OMは、中耳における炎症の徴候および症状の迅速な発症および短期間の持続期間によって特徴付けられる疾患であり、他方、慢性OMとは、中耳における比較的無症候性の流体(または滲出液)の存在によって定義される病的状態をいう。しかし、慢性OMにおいては、急性感染の特定の徴候(すなわち、耳の疼痛または発熱)が存在しないにもかかわらず、これらの異常な中耳液は、3ヶ月間を超える期間にわたって持続し得る。抗生物質治療による急性OMの処置が一般的であるが、OMの原因となる3つの属全ての細菌において、多剤耐性細菌が出現している。慢性OMの外科的管理は、小児では全身麻酔下をかけた状態での、耳の鼓膜を通しての中耳腔換気用チューブの挿入を含む。この手順はごく普通であり(罹患率は、米国において1年あたり挿入されるチューブが約100万本である;非特許文献6)、そして蓄積した流体を中耳から排出することにより有痛症状を軽減することに関しては非常に有効であるが、これは侵襲性であり、さしせまった危険性がある(非特許文献7;非特許文献6;Cimons,ASM News,60:527−528;非特許文献8)。従って、OMの管理、好ましくはOMの予防に対するさらなるアプローチが必要とされている。
【0005】
OMワクチンの開発はS.pneumoniaeについて最も進んでいる。S.pneumoniaeは、7価莢膜結合体ワクチンPREVNAR(登録商標)の近年の承認および発売により証明されたように、急性OM(AOM)の主な原因因子である(非特許文献9)。PREVNAR(登録商標)は侵襲性の肺炎球菌の疾患に関しては非常に有効であるが、OMに関する適用範囲は、ワクチンに含まれていない血清型に起因するOM症例数の増加が報告されており、失望されている(6〜8%)(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。
【0006】
H.influenzaeは、上記のように、OMにおいて役割を果たすグラム陰性細菌である。H.influenzaeの臨床単離体は、それぞれ、型特異的多糖莢膜がその細菌に存在するかまたは存在しないかに依存して、「a」〜「f」のいずれかとして、または分類不能型として分類される。H.influenzae b型についてのワクチンが開発されている。PREVNAR(登録商標)と同様に、b型H.influenzaeワクチンは、この生物体の多糖莢膜を標的とし、それゆえ、このワクチンは、タンパク質キャリアに結合した莢膜多糖から構成される。PREVNAR(登録商標)またはb型H.influenzaeワクチンのいずれも、OMを含めたNTHI誘発性気道疾患に対しては効力を有さない。分類不能型H.influenzae(NTHi)のためのワクチンに関しては、ほとんど進んでいない。NTHiは、小児における急性OMのうちの約20%を引き起こし、そして滲出液を有する慢性OMにおいて優勢である(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。NTHiはまた、肺炎、副鼻腔炎、敗血症、心内膜炎、喉頭蓋炎、化膿性関節、髄膜炎、分娩後感染および新生児感染、分娩後敗血症および新生児敗血症、急性卵管炎および慢性卵管炎、心膜(pericardis)、蜂巣炎、骨髄炎、心内膜炎、胆嚢炎、腹腔内感染、尿路感染、乳様突起炎、大動脈移植片感染、結膜炎(conjunctitivitis)、ブラジル紫斑熱、潜在性菌血症および基礎をなす肺疾患(例えば、慢性気管支炎、気管支拡張症(bronchietasis)および嚢胞性線維症)の増悪を引き起こし得る。基本型のNTHi単離体は、継代数の少ない単離体86−028NPである。86−028NPは、慢性OMを有する小児から回収された。この株は、インビトロにおいて(非特許文献17;非特許文献18)、ならびにチンチラOMモデルにおいて(非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21)、充分に特徴付けられている。NTHiの86−026NP株は、American Type Culture Collection,10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110に2001年10月16日に寄託され、そして登録番号PTA−4764が割り当てられた。86−028NP株のゲノムからのコンティグのセットは、Columbus Children’s Research Institute Center for Microbial Pathogenesisのウェブサイトにおいて見出され得る。
【0007】
付着およびコロニー形成は、H.influenzae誘発性疾患の病因において認められる最初の段階である。それゆえ、H.influenzaeは、赤血球凝集性のピリ線毛、線毛および非線毛性付着因子を含めた複数の付着因子を発現する(非特許文献22;非特許文献23;および非特許文献24)。特に、記載された付着因子はいずれも、運動性機能とはこれまで関連付けられていない。さらに、H.influenzaeは、運動性とも関連する鞭毛を発現しない。単収縮運動性は、水分のある表面上での鞭毛非依存性形態の細菌の移動であり、IV型ピリ線毛として公知の極構造体の伸長、係留、次いで収縮によって起こる(非特許文献25;非特許文献26;Wolfgang et al,EMBOJ.,19,6408−6418,;非特許文献27)。IV型ピリ線毛は、代表的には直径5〜7mmであり、長さは数マイクロメートルであり、1ターンあたり約5サブユニットのらせんコンホメーションへと組み立てられる、1つのタンパク質サブユニットから構成される(非特許文献28;非特許文献29)。IV型ピリンのサブユニットは、通常、145〜160アミノ酸長であり、グリコシル化されてもよく、またはリン酸化されてもよい。2つのクラスのピリンサブユニット(IVa型およびIVb型)が存在する。これらは、リーダーペプチドおよび成熟サブユニットの平均長、どのN−メチル化アミノ酸が成熟タンパク質のN末端位置を占めるか、およびD領域(ジスルフィド領域にちなむ)の平均長によって互いに区別される。呼吸器病原体の大部分は、IVaクラスのピリンを発現し、一方、腸病原体は、クラスIVbピリンをより代表的に発現する。IVa型ピリ線毛は、高度に保存された疎水性N末端メチル化フェニルアラニンの存在によって識別される。
【0008】
IV型ピリ線毛は、迅速移動手段および新たな表面のコロニー形成手段として役立つ。従って、IV型ピリ線毛の発現は、多くの細菌による付着およびバイオフィルム形成の両方(非特許文献30;非特許文献31;非特許文献32;非特許文献33)にとって、ならびにとりわけ、Neisseria種、Moraxella bovis、Vibrio cholerae、腸病原性Escherichia coliおよびPseudomonas aeruginosaのビルレンスにとって、重要である(非特許文献31;非特許文献32;非特許文献34;非特許文献35)。バイオフィルムは、エクソポリサッカリド(exopolysaccharide)または他の物質から構成される、細菌によって排出されたマトリックスを介して表面に係留された複雑な構成の細菌である。このマトリックスは細菌を覆い、そして人の免疫系から細菌を保護する。非特許文献36は、H.influenzaeによるバイオフィルム形成を記載する。IV型ピリ線毛と人の身体との間の相互作用をブロックすることにより、細菌感染を回避または停止させ得ると仮定されている(2001年7月31日に発行されたMeyerらの特許文献1)。
【0009】
IV型ピリ線毛の発現は、複雑で高度に調節された細菌機能である。P.aeruginosaにおいては、IV型ピリ線毛の生物合成および機能は、40個を超える遺伝子によって制御される(非特許文献35)。今日まで、極めて多数の関連するIV型ピリ線毛遺伝子のうちのごくわずかのセブセット(非特許文献26;非特許文献37)しか、HAP(Haemophilus、ActinobacillusおよびPasteurella)科の数種のメンバーにおいては見出されていない(非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40)が、IV型ピリ線毛の発現も単収縮運動のいずれもこれまでのところ、あらゆるH.influenzae単離株について記載されていない。実際、H.influenzaeは、Rd株ゲノム内での潜在的遺伝子クラスターの存在(非特許文献41)にもかかわらず、これらの構造を発現しない細菌であると古典的に記載されている(非特許文献42;非特許文献43)。Rd株は、H.influenzae血清型d生物体の非被包性誘導株である(非特許文献44;非特許文献45;非特許文献46)。Rd株はいくつかのビルレンス特性を有するが、血清型dの株は一般に、片利共生であると考えられる;これらは、疾患を頻繁には引き起こさない(非特許文献47)。それゆえ、それゆえ、疾患を引き起こす株のH.influenzaeとRd株とを識別することが重要である。
【0010】
線毛は、分類不能型Haemophilus influenzae上で見出される表面の付属器であり、慢性中耳炎を有する小児の中耳および鼻咽頭領域から回収された100%の細菌によって産生される。分類不能型Haemophilus influenzaeの線毛に由来する糸状タンパク質であるフィンブリンから構成されるワクチンが以前に開発された。それは、中耳炎の研究、予防または重篤度の軽減に有用である。しかし、細菌外膜からフィンブリンタンパク質を単離する既存の方法論は、退屈で時間がかかる。同様に、他の宿主ベクター中のフィンブリン遺伝子によって発現されるフィンブリンの精製もまた、フィンブリンタンパク質と宿主ベクターの外膜タンパク質との間での相同性に起因して退屈である。
【0011】
LB1と示され、特許文献2において記載されている合成キメラワクチン候補物は、2匹の齧歯動物宿主において、複数の前臨床ワクチン試験においてすさまじい効力を示した。この合成ペプチドは、麻疹ワクチンの融合タンパク質由来のT細胞無差別(promiscuous)エピトープと共線的に合成されたP5−フィンブリンのB細胞エピトープを含む。LB1ペプチドは前臨床試験において有効であることが示されているが、非常に若い小児における使用が意図されるT細胞無差別エピトープを含むワクチンを試験および販売する能力についての懸念が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,268,171号明細書
【特許文献2】米国特許第5,843,464号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Klein,Vaccine,19(Suppl.1):S2−S8,2000
【非特許文献2】Baldwin,Am.J.Otol,14:601−604,1993
【非特許文献3】Hunter et al,Ann.Otol.Rhinol.Laryngol Suppl.,163:59−61,1994
【非特許文献4】Teele et al,J.Infect.Dis.,162:685−694,1990
【非特許文献5】Kaplan et al,Pediatr.Infect.Dis.J.,16:S9−11,1997
【非特許文献6】Bright et al,Am.J.Public Health,83(7):1026−8,1993
【非特許文献7】Berman et al,Pediatrics,93(3):353−63,1994
【非特許文献8】Paap,Ann.Pharmacother.,30(11):1291−7,1996
【非特許文献9】Eskola and Kilpi,Pedriatr.Infect.Dis.J.16:S72−78,2000
【非特許文献10】Black et al,Pedriatr.Infect.Dis J,19:187−195,2000
【非特許文献11】Eskola et al,Pedriatr.Infect.Dis J,19:S72−78,2000
【非特許文献12】Eskola et al,N.Engl.J.Med,344:403−409,2001
【非特許文献13】Snow et al,Otol Neurotol.,23:1−2,2002
【非特許文献14】Coleman et al,Inf and Immunity,59(5),1716−1722,1991
【非特許文献15】Klein,Pedriatr.Infect.Dis J,16,S5−8,1997
【非特許文献16】Spinola et al,J.Infect.Dis.,154,100−109,1986
【非特許文献17】Bakaletz et al.,Infect.Immun.,53:331−5,1988
【非特許文献18】Holmes et al,Microb.Pathog.,23:157−66,1997
【非特許文献19】Bakaletz et al,Vaccine,15:955−61,1997
【非特許文献20】Suzuki et al,Infect.Immun.,62:1710−8,1994
【非特許文献21】DeMaria et al,Infect.Immun.,64:5187−92,1996
【非特許文献22】Gilsdorf et al,Pediatr Res 39,343−348,1996
【非特許文献23】Gilsdorf,Infect.Immun.,65,2997−3002,1997
【非特許文献24】St.Geme III,Cell.Microbiol,4,191−200,2002
【非特許文献25】Bardy.,Microbiology,149,295−304,2003
【非特許文献26】Tonjum and Koomey,Gene,192,155−163,1997
【非特許文献27】Mattick,Annu.Rev.Microbiol,56,289−314,2002
【非特許文献28】Bardy et al,Microbiology,149,295−304,2003
【非特許文献29】Wall and Kaiser,Mol.Microbiol,32,1−10,1999
【非特許文献30】Mattick,Annu.Rev.Microbiol,56,289−314 2002
【非特許文献31】O’Toole and Kolter,Mol.Microbiol,30,295−304,1998
【非特許文献32】Klausen et al,Mol.Microbiol,50,61−68,2003
【非特許文献33】Jesaitis et al,J.Immunol,171,4329−4339,2003
【非特許文献34】Klausen et al,Mol.Microbiol,48,1511−1524,2003
【非特許文献35】Strom and Lory,Annu.Rev.Microbiol,47,565−596,1993
【非特許文献36】Ehrlich et al,JAMA,287(13),1710−1715(2002)
【非特許文献37】DarzinsおよびRussell,Gene,192,109−115,1997
【非特許文献38】Stevenson et al,Vet.Microbiol,92,121−134,2003
【非特許文献39】Doughty et al,Vet.Microbiol,72,79−90,2000
【非特許文献40】Dougherty and Smith,Microbiology,145,401−409 1999
【非特許文献41】Fleischmann et al,Science,269,496−512,1995
【非特許文献42】Friedrich et al.Appl.Environ.Microbiol.,69,3695−3700,2003
【非特許文献43】Fussenegger et al,Gene,192,125−134,1997
【非特許文献44】Zwahlen et al,Infect.Immun.,42,708−715,1983
【非特許文献45】Bendler and Goodgal,J Microbiol,70,411−422,1972
【非特許文献46】Risberg et al,Eur.J.Biochem.,261,171−180,1999
【非特許文献47】Daines et al,J.Med.Microbiol,52,277−282,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、H.influenzaeに対する特異的でかつ制御性の免疫応答を惹起するワクチン候補物を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、分類不能型H.influenzae(NTHi)のIV型ピリ線毛主要サブユニットタンパク質(PilA)の一部およびNTHi OMP P5タンパク質(P5−フィンブリン、フィンブリンまたはOMP P5−相同付着因子ともいう)の一部を含むキメラタンパク質に関する。特に、本発明は、LB1ペプチドのB細胞エピトープを提示するように改変されたPilAを含むキメラタンパク質を提供する。本発明はまた、本発明の1またはそれより多くのキメラタンパク質を含むワクチン組成物、および本発明のキメラタンパク質を用いて免疫応答を惹起する方法を提供する。
【0016】
LB1ペプチドは、40アミノ酸の合成キメラP5−フィンブリン由来ペプチド(配列番号53)であり、NTHiに対する免疫原性応答を誘導し、退屈な精製技術を必要としないので、有利である。LB1ペプチドは、B細胞エピトープ(配列番号4)であるN末端19アミノ酸のペプチドを含む。このB細胞エピトープは、OMP P5(P5−フィンブリンまたはOMP P5相同付着因子ともいわれる)と示されるNTHiの外膜タンパク質(フィンブリン)の予測された表面露出ループ3から誘導された。LB1ペプチドは、短い5マーのリンカーペプチドおよび16残基のT細胞無差別エピトープをさらに含む。このT細胞エピトープは、麻疹ウイルスの融合タンパク質から誘導された。このT細胞無差別エピトープは、このエピトープに曝露された個体において、非常に強いT細胞応答を誘導する。
【0017】
本発明は、LB1ペプチドの一部分またはフラグメントを、B細胞応答誘導の有効性を低減しない、より安全でかつ選択的なキャリアタンパク質へと挿入することを意図する。好ましくは、LB1ペプチドの一部分は、それ自体もまたNTHi誘発性疾患に対する防御を付与するキャリアへと挿入される。NTHi誘発性疾患に対する防御を誘導し得る1つのこのようなキャリアは、PilAタンパク質(配列番号2)としても公知のNTHiのIV型ピリ線毛(単収縮ピリ線毛)タンパク質を含むタンパク質である。PilAタンパク質は、pilA遺伝子(配列番号1)によってコードされる。
【0018】
本発明は、LB1ペプチドを提示して免疫原性応答を誘導するための、LB1ペプチドの一部分を含むキメラタンパク質を提供する。本発明は、12〜35アミノ酸であるLB1ペプチドの一部分を提示することを、より好ましくは15〜30アミノ酸であるLB1ペプチドの一部分を提示することを、最も好ましくは18〜19アミノ酸でありフィンブリンタンパク質のサブユニットであるLB1ペプチドの一部分を提示することを意図する。LB1ペプチドの好ましい部分は、N末端アミノ酸配列RSDYKFYEDANGTRDHKKG(配列番号4)である。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、キメラタンパク質を提供し、ここで、PilAタンパク質は、24アミノ酸のペプチドを提示するように改変される。24アミノ酸のペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列(LVRSDYKFYEDANGTRDHKKGRHT)中に設定されるように改変されたLB1ペプチドのB細胞エピトープを含み得、ここで、ロイシンおよびバリンが、LB1のB細胞エピトープのN末端に付加されており、そしてアルギニン、ヒスチジンおよびトレオニンがLB1のB細胞エピトープのC末端に付加されている。B細胞エピトープに対するこれらの改変は、タンパク質の折り畳みおよび/または抗原提示を補助することが意図される。本発明はさらに、タンパク質の折り畳みおよび/または抗原提示を補助する、LB1のB細胞エピトープに対する任意の改変を意図する。
【0020】
NTHi OMP P5の表面に露出したループ3のアミノ酸配列は、NTHi株毎に変化し得る。本発明は、NTHi OMP P5のループ3の任意の改変体アミノ酸配列のB細胞エピトープを提示するように改変された、PilAタンパク質の一部分を含むキメラタンパク質を意図する。特に、本発明は、キメラタンパク質を提供し、ここで、PilAタンパク質は、以下の改変体NTHi OMP P5アミノ酸配列のうちの1つを提示するように改変されている:RSDYKLYNKNSSSNSTLKNLGE(配列番号6)、RSDYKLYNKNSSTLKDLGE(配列番号7)およびRSDYKFYDNKRID(配列番号8)。これらの改変体ペプチドはまた、ロイシンおよびバリンをN末端に付加し、アルギニン、ヒスチジンおよびトレオニンをC末端に付加して、またはタンパク質の折り畳みおよび/もしくは抗原提示を補助する任意の他の改変を行って提示され得る。
【0021】
本発明のキメラタンパク質は、改変PilAアミノ酸を含み、ここで、ネイティブなPilAアミノ酸は、LB1ペプチドの一部分によって置換されている。さらに、本発明のキメラタンパク質は、改変PilAアミノ酸配列を含み、ここで、LB1ペプチドの一部分が、ネイティブPilAアミノ酸に加えて、その中に挿入されている。本発明のキメラタンパク質は、2つのタンパク質に対する抗体形成を誘導する能力を有し、それゆえ、より有効でかつより特異的なワクチン候補物である。
【0022】
1つの実施形態では、これらのキメラタンパク質は、NTHi PilAタンパク質(配列番号2)の成熟アミノ酸配列(残基13〜残基149)を含み、ここで、LB1ペプチドの一部分が、配列番号2の62位のシステイン残基と72位のシステイン残基との間に挿入されており、そしてネイティブアミノ酸配列と置き換わり得る(例えば、配列番号54のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質)。このキメラタンパク質は、配列番号2の残基40〜残基149を含み、そして配列番号2の残基62と残基72との間に挿入されたLB1のB細胞エピトープ(配列番号5)を有する。別の実施形態では、LB1ペプチドの一部分が、配列番号2の131位のシステイン残基と144位のシステイン残基との間に挿入され、そしてネイティブアミノ酸と置き換わり得る(例えば、配列番号55のアミノ酸配列を有するタンパク質)。このキメラタンパク質は、配列番号2の残基40〜149を含み、そして配列番号2の残基131と残基144との間に挿入されたLB1のB細胞エピトープ(配列番号5)を有する。
【0023】
別の実施形態では、このキメラタンパク質は、NTHi PilAタンパク質(配列番号2)の成熟アミノ酸配列(残基13〜149)を含み、ここで、LB1ペプチドの一部分が、PilAタンパク質のC末端に挿入されている。例えば、配列番号56のキメラタンパク質は、配列番号2の残基40〜残基149を含み、そしてLB1のB細胞エピトープ(配列番号5)が配列番号2の残基149の後ろに挿入されている。
【0024】
別の実施形態では、このキメラタンパク質は、NTHi PilAタンパク質(配列番号2)の成熟アミノ酸配列(残基13〜残基149)を含み、ここで、LB1ペプチドの一部分がPilAタンパク質のN末端に挿入されている。例えば、配列番号57のキメラタンパク質は、配列番号2の残基40〜残基149を含み、そしてLB1のB細胞エピトープ(配列番号5)が配列番号2の残基40の前に挿入されている。
【0025】
さらなる実施形態では、本発明は、NTHi PilAタンパク質の一部分および本明細書中に記載されるLB1ペプチドのうちの1つまたはそれより多くを含むキメラタンパク質を提供する。本発明のキメラタンパク質は、NTHi PilAタンパク質の一部分内に同じLB1ペプチドを1回より多く提示するもの、およびNTHi PilAタンパク質の一部分内に2つまたはそれより多くの異なるLB1ペプチドを提示するものを包含する。
【0026】
本発明はさらに、NTHi PilAタンパク質の一部分および免疫応答を惹起する任意の抗原性タンパク質を含むキメラタンパク質を提供する。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下のタンパク質、方法などが提供される:
(項目1)
キメラタンパク質であって、PilAの一部分およびLB1ペプチドの一部分を含む、キメラタンパク質。
(項目2)
前記LB1ペプチドの一部分が、LB1ペプチドのB細胞エピトープを含む、項目1に記載のキメラタンパク質。
(項目3)
前記LB1ペプチドの一部分が、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のアミノ酸配列を含む、項目2に記載のキメラタンパク質。
(項目4)
配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号54、配列番号55、配列番号56または配列番号57のアミノ酸配列を含む、項目1に記載のキメラタンパク質。
(項目5)
項目1〜4のいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
(項目6)
項目5に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
(項目7)
項目1〜4のいずれか1項に記載のキメラタンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目8)
項目1〜4のいずれか1項に記載のキメラタンパク質に特異的に結合する、抗体。
(項目9)
項目8に記載の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目10)
NTHi細菌に対する免疫応答を惹起するための方法であって、免疫原性用量の項目1〜4のいずれか1項に記載の1以上のキメラタンパク質を、NTHi細菌感染の危険性がある患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目11)
前記NTHi感染が、中耳においてである、項目10に記載の方法。
(項目12)
NTHi細菌感染を処置または予防する方法であって、項目8に記載の抗体を、その必要がある患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目13)
前記NTHi感染が、中耳においてである、項目12に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、実施例5に記載される効力実験に関する免疫レジメン、ウイルス接種、細菌チャレンジおよびOM疾患の評価期間のタイムラインを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(本発明のNTHiのIV型ピリ線毛(PilA)のポリヌクレオチドおよびポリペプチド)
本発明のキメラタンパク質は、pilA遺伝子によってコードされる、NTHiのIV型ピリ線毛の主要サブユニットの全長または一部分を含み得る。NTHi単離株86−028NPのPilAタンパク質は、配列番号2として示される核酸配列によってコードされる。配列番号2は、米国特許出願第11/019,005号中に記載される。米国特許出願第11/019,005号は、本明細書中にその全体が参考として援用される。また提供されるのは、NTHiの臨床単離株1728MEE、1729MEE、3224A、10548MEE、1060MEE、1885MEE、1714MEE、1236MEE、1128MEEおよび214NP由来のPilAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。これらのPilAポリペプチドのアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50および配列番号52に示される。代替的なコドン使用法の可能性が、これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにおいて特に意図される。1つの実施形態では、これらのポリペプチドは、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51に示されるヌクレオチド配列によってそれぞれコードされる。
【0029】
本発明は、ストリンジェントな条件下で以下にハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する:(a)配列番号1、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51に示されるヌクレオチド配列の相補体;(b)上記の任意のポリヌクレオチドの対立遺伝子改変体であるポリヌクレオチド;(c)上記のタンパク質のうちのいずれかの種ホモログをコードするポリヌクレオチド;または(d)本発明のポリペプチドの特定のドメインまたは短縮物を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。他の分類不能型H.influenzae株由来の、ならびにH.influenzaeのa株、b株、c株、e株およびf株由来のPilAポリヌクレオチドが特に意図される。これらのポリヌクレオチドは、それぞれ、プローブまたはプライマーとして配列番号1、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51のポリヌクレオチドの一部分または全てを用いて、当該分野において標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ連鎖反応)によって同定および単離され得る。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドはまた、上記のポリヌクレオチドに実質的に均等なヌクレオチド配列を包含する。本発明によるポリヌクレオチドは、例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%または89%の、より代表的には少なくとも90%、91%、92%、93%または94%の、さらにより代表的には少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を、上記のNTHiポリヌクレオチドに対して有し得る。
【0031】
本発明の核酸配列の範囲内に含まれるのは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51のNTHiヌクレオチド配列またはそれらの相補体にハイブリダイズする核酸配列フラグメントであり、このフラグメントは、約5ヌクレオチドより大きく、好ましくは7ヌクレオチドより大きく、より好ましくは9ヌクレオチドより大きく、最も好ましくは17ヌクレオチドよりも大きい。例えば、選択的である(すなわち、本発明のPilAポリヌクレオチドのうちのいずれか1つに対して特異的にハイブリダイズする)、15ヌクレオチド、17ヌクレオチドもしくは20ヌクレオチドまたはそれより大きなヌクレオチドのフラグメントが意図される。本発明のNTHi PilAポリヌクレオチドに対して特異的にハイブリダイズし得るこれらの核酸配列フラグメントは、本発明のNTHi PilAポリヌクレオチドを検出するためのプローブとして用いられ得るか、そして/または本発明のNTHi PilAポリヌクレオチドを他の細菌遺伝子から識別し得、そして好ましくは独特なヌクレオチド配列に基づく。
【0032】
用語「ストリンジェント」は、本明細書中では、当該分野においてストリンジェントと通常理解される条件をいうために使用される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度および変性剤(例えば、ホルムアミド)の濃度によって主に決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄のためのストリンジェントな条件の例は、65〜68℃にて0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または42℃にて0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドである。Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,(Cold Spring Harbor,N.Y.1989)を参照のこと。
【0033】
よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)もまた使用され得るが、ハイブリダイゼーション速度が影響される。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに関する例では、さらなる例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、37℃(14塩基のオリゴについて)、48℃(17塩基のオリゴについて)、55℃(20塩基のオリゴについて)、および60℃(23塩基のオリゴについて)での6×SSC 0.05%ピロリン酸ナトリウムにおける洗浄が挙げられる。
【0034】
他の薬剤もまた、非特異的ハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドハイブリダイゼーションを減らすことを目的として、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液中に含まれ得る。例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニル−ピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO、(SDS))、フィコール、デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(または他の非相補的DNA)およびデキストラン硫酸であるが、他の適切な薬剤もまた使用され得る。これらの添加剤の濃度およびタイプは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、pH6.8〜7.4において通常実施されるが、代表的なイオン強度条件では、ハイブリダイゼーション速度はpHとはほぼ独立している。Anderson et al,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach,Ch.4,IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。ハイブリダイゼーション条件は、これらの変数を適合させるために、そして異なる配列関連性のDNAにハイブリッドを形成させるために、当業者によって調整され得る。
【0035】
上記のように、本発明によって意図されるポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51の特定のPilAポリヌクレオチドに限定されないが、例えば、それらの対立遺伝子バリエーションおよび種バリエーションをも包含する。対立遺伝子バリエーションおよび種バリエーションは、配列番号1、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51中に提供される配列(好ましくはそれらの中のオープンリーディングフレーム、それらの代表的なフラグメント、または配列番号1、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49および配列番号51内のオープンリーディングフレームに対して少なくとも90%同一の(好ましくは95%同一の)ヌクレオチド配列)を、同種または別種の別の単離株由来の配列と比較することによって慣用的に決定され得る。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法としては、GAP(Devereux et al,Nucl.Acid.Res.,12:387,1984;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI)、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul et al,J.Mol.Biol.,215:403−410,1990)を含むGCGプログラムパッケージが挙げられるがこれに限定されない。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の供給源(BLAST Manual,Altschul et al NCB/NLM/NIH Bethesda,MD 20894;Altschul et al,前出)から公に入手され得る。周知のSmith−Watermanアルゴリズムを使用しても、同一性を決定し得る。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドは、天然の供給源から単離されてもよく、または標準的な化学技術(例えば、Matteucci et al,J Am Chem Soc,103:3185(1981)において記載されるホスホトリエステル法)によって合成されてもよい。
【0037】
本発明は、NTHi PilAタンパク質の一部分を含むキメラタンパク質を提供する。1つの実施形態では、これらのポリペプチドは、配列番号2においてそれぞれ示される、NTHi 86−028NPアミノ酸配列を含む。本発明のポリペプチドとしてはまた、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50および配列番号52に示されるPilAポリペプチドが挙げられる。さらなる実施形態では、本発明のPilAポリペプチドは、他の分類不能型H.influenzae株のものおよびH.influenzaeのa株、b株、c株、e株およびf株由来のものである。
【0038】
本発明のポリペプチドとしては、本発明の全長ポリペプチドの1つまたはそれより多くの生物学的特性または免疫学的特性を保持する、PilAポリペプチドのペプチドフラグメント(すなわち、ペプチド)またはフラグメントが特に挙げられる。1つの実施形態では、本発明によって提供されるPilAペプチドフラグメントは、TfpQ2、TfpQ3、TfpQ4およびOLP3と命名され、そしてそれぞれ、配列番号2のアミノ酸35〜68、配列番号2のアミノ酸69〜102、配列番号2のアミノ酸103〜137、および配列番号2のアミノ酸21〜35を含む。本発明によって提供される別のPilAペプチドフラグメントは、配列番号2のアミノ酸40〜149を含む。
【0039】
本発明はまた、PilAポリペプチドの生物学的活性および/または免疫学的活性に影響を与えない1つまたはそれより多くの保存的アミノ酸置換を有する、PilAポリペプチドの一部分を含むキメラタンパク質を提供する。あるいは、本発明のPilAポリペプチドは、生物学的活性を変えてもよくまたは変えなくてもよい、保存的アミノ酸置換を有することが意図される。用語「保存的アミノ酸置換」とは、ネイティブなアミノ酸残基を、その位置でのアミノ酸残基の極性または電荷に対してほとんどまたは全く影響がないように非ネイティブ残基(天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸を包含する)で置換することをいう。例えば、保存的置換は、ポリペプチド中の非極性残基を任意の他の非極性残基で置換することによる。さらに、ポリペプチド中の任意のネイティブ残基はまた、「アラニンスキャニング変異誘発」の方法に従ってアラニンで置換され得る。天然に存在するアミノ酸は、それらの側鎖に基づいて以下のとおりに特徴付けられる:塩基性:アルギニン、リジン、ヒスチジン;酸性:グルタミン酸、アルパラギン酸;非荷電で極性:グルタミン、アスパラギン、セリン、トレオニン、チロシン;および非極性:フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、グリシン、アラニン、バリン、プロリン、メチオニン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン。アミノ酸置換についての一般則を以下の表1に示す。
【0040】
【表1】

本発明はまた、本発明のNTHi PilAポリペプチドの改変体の一部分を含み、生物学的活性および/または免疫学的活性を保持する、キメラタンパク質(例えば、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、代表的には少なくとも約95%、96%、97%、より代表的には少なくとも約98%、または最も代表的には少なくとも約99%のアミノ酸同一性を、配列番号2、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50および配列番号52のポリペプチドに対して示すポリペプチド)を提供する。
【0041】
本発明は、本発明のPilAポリヌクレオチドが増幅または発現用のベクター中に挿入され得ることを意図する。発現のために、これらのポリヌクレオチドは、適切な発現制御配列(例えば、プロモーター配列およびポリアデニル化シグナル配列)に作動可能に連結される。さらに提供されるのは、本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞である。例示的な原核生物宿主細胞としては、細菌(例えば、E.coli、Bacillus、Streptomyces、Pseudomonas、SalmonellaおよびSerratia)が挙げられる。宿主細胞を増殖させ、そして宿主細胞または増殖培地からポリペプチドを単離することによって本発明のポリペプチドを産生する方法が特に意図される。あるいは、本発明のポリペプチドは、標準的な手段を用いて化学合成によって調製され得る。特に便利であるのは、固相技術(例えば、Erikson et al.,The Proteins(1976)v.2,Academic Press,New York,p.255を参照のこと)である。自動固相合成機は市販されている。さらに、配列中の改変が、適切な残基の置換、付加または省略によって容易に作製される。例えば、システイン残基がカルボキシ末端に付加されて、キャリアタンパク質への便利な結合のためにスルフヒドリル基が提供されてもよく、またはスペーサーエレメント(例えば、さらなるグリシン残基)が、C末端の連結アミノ酸とペプチドの残りの部分との間に配列中に組み込まれてもよい。
【0042】
用語「単離された」とは、その物質が天然に存在する環境中の他の成分から取り出されており、そして本質的にその他の成分を含まない物質をいう。例えば、ポリペプチドは、他の細胞性タンパク質から分離されるか、またはDNAは、それが天然で存在するゲノム中でそれと隣接している他のDNAから分離される。
【0043】
組換えPilAタンパク質(rPilA)は、より容易に更新可能な生成物として役立たせるために生成され得る。これを行うために、Keizerら(J.Biol.Chem.,276:24186−14193,2001)の公開されたプロトコルを利用する。Keizerらは、ネイティブなピリンサブユニットの機能的特性を保有するようにrPilAが同様に適切に折り畳まれることが重要であるので、ピリン(これもまた、4つのCys残基を有する)を研究した。手短に述べると、短縮されたピリンが操作され、ここで、凝集を防ぐために最初の28残基がN末端から除去され、そしてこの短縮化ピリンは、構築物中にOmpAリーダー配列を組み込むことにより、ペリプラズムへと輸送されるようにさらに操作される。このストラテジーを用いて、Keizerらは、組換え可溶性モノマーP.aeruginosaピリンタンパク質を生成した。このピリンタンパク質は、そのレセプター(アシアロGM1)にインビトロアッセイで結合し得、そしてこのペプチドを異種チャレンジの15分前に送達した場合、マウスにおける罹患率および死亡率を減少させ得た。この可溶性でモノマーの短縮形態のNTHi PilAは、本明細書中に記載される研究において有用である。
【0044】
本発明はまた、合成キメラタンパク質を提供する。これらのキメラタンパク質は、標準的な技術を用いて合成、精製および配列決定され得る。例えば、これらのキメラタンパク質は、段階的Fmoc−tert−ブチル固相合成によって半ば手動で集合させられ得、そしてHPLCによって精製され得る。組換えキメラタンパク質および合成キメラタンパク質の組成およびアミノ酸配列は、アミノ酸分析および/または質量スペクトル分析により確認され得る。
【0045】
(抗体)
本発明は、本発明のキメラタンパク質の抗原性エピトープに結合する抗体を提供する。これらの抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらの独特のエピトープに対するそれらの結合能力を保持した抗体フラグメント(例えば、Fvフラグメント、FabフラグメントおよびF(ab)フラグメント)、単鎖抗体およびヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。抗体は、本発明のキメラタンパク質または本発明のキメラタンパク質を発現する宿主細胞を抗原として用いて、当該分野で標準的な技術によって作製され得る。
【0046】
本発明は、本発明のキメラタンパク質およびそれらのフラグメントに特異的な抗体を提供し、この抗体は、H.influenzae細菌を殺傷する能力およびヒトを感染から防御する能力の両方を示す。本発明はまた、本発明のキメラタンパク質に特異的な抗体を提供し、この抗体は、ビルレンスを低減し、付着を阻害し、バイオフィルム形成を阻害し、単収縮運動性を阻害し、細胞分裂を阻害し、そして/またはH.influenzae細菌の上皮への透過を阻害し、そして/またはH.influenzae細菌の食作用を増強する。
【0047】
インビトロでの補体媒介性殺細菌アッセイ系(Musher et al.,Infect.Immun.39:297−304,1983;Anderson et al,J.Clin.Invest.51:31−38,1972)を用いて、抗キメラタンパク質抗体の殺細菌活性を測定し得る。
【0048】
本発明のキメラタンパク質に対して予め形成された抗体の投与による受動免疫療法によって短期防御を宿主に付与することもまた可能である。従って、本発明の抗体は、受動免疫療法において用いられ得る。ヒト免疫グロブリンは、ヒトの医薬において好ましい。なぜなら、異種の免疫グロブリンは、その外来免疫原性成分に対して免疫応答を惹起し得るからである。このような受動免疫は、特別な危険性に曝される未免疫の個体の迅速な防御に関して緊急時に用いられ得る。
【0049】
別の実施形態では、本発明の抗体は、抗イディオタイプ抗体の産生において用いられ得、この抗イディオタイプ抗体は次いで、このキメラタンパク質エピトープまたはH.influenzaeエピトープに対する免疫応答を刺激するための抗原として用いられ得る。
【0050】
(免疫応答を惹起するための方法およびそれらのための組成物)
本発明は、個体におけるH.influenzaeに対する免疫応答を個体において惹起する方法を意図する。特定の実施形態では、これらの方法は、本発明のキメラタンパク質に対する免疫応答を惹起する。これらの方法は、1つまたはそれより多くの免疫応答を惹起し、これらの応答としては、細菌複製を阻害する免疫応答、細胞へのH.influenzaeの付着をブロックする免疫応答、H.influenzaeの単収縮を予防する免疫応答、H.influenzae細菌を殺傷する免疫応答およびバイオフィルム形成を防御する免疫応答が挙げられるがこれらに限定されない。1つの実施形態では、これらの方法は、本発明の1つまたはそれより多くのキメラタンパク質を含む組成物の免疫原性用量を投与する工程を包含する。別の実施形態では、これらの方法は、本発明の1つまたはそれより多くのキメラタンパク質を発現する細胞を含む組成物の免疫原性用量を投与する工程を包含する。なお別の実施形態では、これらの方法は、本発明の1つまたはそれより多くのキメラタンパク質をコードする1つまたはそれより多くのポリヌクレオチドを含む組成物の免疫原性用量を投与する工程を包含する。これらのポリヌクレオチドは、他のあらゆる核酸と会合していない裸のポリヌクレオチドであってもよく、またはプラスミドもしくはウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスベクターまたはアデノウイルスベクター)のようなベクター中に存在してもよい。これらの方法は、1個体において組み合わせて用いられ得る。これらの方法は、個体のH.influenzae感染の前または感染後に用いられ得る。本発明の方法および組成物は、H.influenzae(分類可能型(typeable)株および分類不能型株)に関連する任意の病理学的状態(例えば、OM、肺炎、副鼻腔炎、敗血症、心内膜炎、喉頭蓋炎、化膿性関節炎、髄膜炎、分娩後感染および新生児感染、分娩後敗血症および新生児敗血症、急性卵管炎および慢性卵管炎、喉頭蓋(epiglottis)、心膜、蜂巣炎、骨髄炎、心内膜炎、胆嚢炎、腹腔内感染、尿路感染、乳様突起炎、大動脈移植片感染、結膜炎、ブラジル紫斑熱、潜在性菌血症および慢性閉塞性肺疾患および基礎をなす肺疾患(例えば、慢性気管支炎、気管支拡張症および嚢胞性線維症)の悪化を処置または予防するために用いられ得る。
【0051】
本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物は、プライミング用量として投与され、続いて1またはそれより多くの追加免疫用量として投与される。免疫を有益に増強するタンパク質またはポリペプチド(例えば、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−12、GM−CSF)、サイトカイン誘発性分子(例えば、Leaf)または補助刺激分子)の共投与(co−administration)もまた意図される。
【0052】
本発明の組成物の「免疫原性用量」は、投与後に、投与前に検出可能な免疫応答と比較して、または投与前の標準的な免疫応答と比較して、検出可能な体液性(抗体)免疫応答および/または細胞性(T細胞)免疫応答を生じる用量である。本発明は、これらの方法によって得られる免疫応答が防御性および/または治療性であり得ることを意図する。好ましい実施形態では、この抗体および/またはT細胞免疫応答は、個体をH.influenzae感染(特に、中耳および/または鼻咽頭もしくは下気道の感染)から防御する。この用途では、正確な用量は、患者の健康状態および体重、投与様式、処方物の性質などに依存するが、一般的には、70kgの患者1人あたり約1.0μg〜約5000μg、より一般的には体重70kgあたり約10μg〜約500μgの範囲に及ぶ。
【0053】
体液性免疫応答は、多くの周知の方法(例えば、単放射状免疫拡散アッセイ(Single Radial Immunodiffussion Assay;SRID)、酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay;EIA)および赤血球凝集阻害アッセイ(Hemagglutination Inhibition Assay;HAI))によって測定され得る。特に、SRIDは、試験される免疫原を含むゲル(例えば、アガロース)の層を利用する。このゲル中にウェルが切り出され、そして試験される血清がそのウェル中に配置される。ゲルへの抗体の拡散により沈降環が形成され、その沈降環の面積は、試験される血清中での抗体濃度に比例する。EIA(ELISA(酵素結合免疫アッセイ;Enzyme Linked Immunoassay)としても公知)は、サンプル中の抗体の合計を決定するために用いられる。この免疫原は、マイクロタイタープレートの表面に吸着される。この試験血清は、プレートに曝露され、続いて酵素結合免疫グロブリン(例えば、IgG)に曝露される。このプレートに付着した酵素活性は、任意の便利な手段(例えば、分光測光法)によって定量され、そして試験サンプル中に存在する免疫原に対する抗体の濃度に比例する。HAIは、免疫原(例えば、ウイルスタンパク質)のニワトリ赤血球(など)凝集能力を利用する。このアッセイは、中和抗体(すなわち、赤血球凝集を阻害し得る抗体)を検出する。試験血清の希釈物は、標準濃度の免疫原とともにインキュベートされ、続いて赤血球が添加される。中和抗体の存在は、免疫原による赤血球の凝集を阻害する。細胞性免疫応答を測定する試験としては、遅延型過敏症の決定または標的免疫原に対するリンパ球の増殖応答の測定が挙げられる。
【0054】
本発明は、本発明のキメラタンパク質に対する免疫応答を惹起するために適切な組成物を対応して提供する。上記のように、これらの組成物は、1つもしくはそれより多くのキメラタンパク質、1つもしくはそれより多くのキメラタンパク質を発現する細胞、または1つもしくはそれより多くのキメラタンパク質をコードする1つもしくはそれより多くのポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、他の成分(例えば、キャリアおよびアジュバント)も含み得る。
【0055】
本発明の組成物では、キメラタンパク質は、組換え法によって産生される場合、別のタンパク質に融合され得る。1つの実施形態では、この他のタンパク質は、それ単独では、抗体を惹起しないかもしれないが、第1のタンパク質を安定化し、そして免疫原性活性を保持する融合タンパク質を形成する。別の実施形態では、この融合タンパク質は、免疫原性である別のタンパク質(例えば、融合タンパク質を可溶化し、そしてそれらの産生および精製を容易にする比較的大きな共タンパク質(co−protein)である、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)またはβ−ガラクトシダーゼ)を含む。この他のタンパク質は、免疫系の全身刺激を提供するという意味でアジュバントとして作用し得る。この他のタンパク質は、本発明のキメラタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかへと融合され得る。
【0056】
本発明の他の組成物では、キメラタンパク質は、他の方法でキャリア物質へと連結され得る。当該分野で公知のこのような連結を作製する任意の方法が用いられ得る。連結は、一方の官能基端にジスルフィド結合を生じ、他方にペプチド結合を生じる、ヘテロ二官能性薬剤(例えば、ジスルフィドアミド形成剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロプリオネート(N−succidimidyl−3−(2−pyridyldithio)proprionate;SPDP)(例えば、Jansen et al,Immun.Rev.62:185,1982)を参照のこと))およびジスルフィド結合ではなくチオエーテル結合を形成する二官能性カップリング剤(例えば、6−マレイミドカプロン酸、2−ブロモ酢酸、2−ヨード酢酸、4−(N−マレイミド−メチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸などの反応性エステル)、ならびにナトリウム塩(例えば、スクシンイミジル4−(N−マレイミド−メチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC))についてはスクシンイミドまたは1−ヒドロキシ−2−ニトロ−4−スルホン酸と合わせることによりカルボキシル基を活性化するカップリング剤を用いて形成され得る。
【0057】
これらのキメラタンパク質は、中性形態または塩形態で処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基を用いて形成される)および無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸)を用いて形成される塩が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄(II))および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカイン)から形成され得る。
【0058】
本発明の組成物は、アジュバントをさらに含み得る。既知のアジュバントとしては、例えば、乳濁液(例えば、フロイントアジュバントおよび他の油乳濁液)、Bordetella pertussis、MF59、Quillaja saponariaからの精製サポニン(QS21)、アルミニウム塩(例えば、水酸化物、リン酸塩および明礬)、リン酸カルシウム(および他の金属塩)、ゲル(例えば、水酸化アルミニウム塩)、マイコバクテリウム生成物(ムラミルジペプチドが挙げられる)、固体物質、粒子(例えば、リポソームおよびビロソーム(virosome))が挙げられる。アジュバントとして使用されることが公知の天然の生成物および細菌性生成物の例としては、モノホスホリルリピドA(MPL)、RC−529(合成MPL様アシル化モノサッカリド)、OM−174(これは、E.coliからのリピドA誘導体である)、ホロトキシン(holotoxin)(例えば、コレラ毒素(CT)またはその誘導体のうちの1つ、百日咳毒素(PT)およびE.coliの熱不安定性毒素(LT)またはその誘導体のうちの1つ)、ならびにCpGオリゴヌクレオチドが挙げられる。アジュバント活性は、多くの要因(例えば、キャリア効果、蓄積物形成、改変されたリンパ球再循環、Tリンパ球の刺激、Bリンパ球の直接刺激およびマクロファージの刺激)によって影響され得る。
【0059】
本発明の組成物は代表的に、液体の溶液または懸濁液のいずれかとしての注射可能物として処方される;注射の前に液体中に溶解または懸濁するために適切な固体形態もまた調製され得る。この調製物はまた、乳化され得る。活性な免疫原性成分はしばしば賦形剤と混合され、これらの賦形剤は、薬学的に受容可能であり、かつこの活性成分と適合性である。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組み合わせである。さらに、所望の場合、これらのワクチンは、小量の補助物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤またはアジュバント(これはワクチンの有効性を増強する))を含み得る。これらのワクチンは、非経口で、注射により(例えば、皮下または筋肉内のいずれかで)従来どおりに投与される。
【0060】
他の投与形態に適切であるさらなる処方物としては坐剤が挙げられ、場合によっては経口処方物が挙げられる。坐剤については、伝統的な結合剤およびキャリアとしては、例えば、ポリアルキレン(polyalkalene)グリコールまたはトリグリセリドが挙げられ得る;このような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成され得る。経口処方物としては、例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常用いられる賦形剤が挙げられる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出処方物または粉剤の形態をとり、そして10%〜95%(好ましくは25%〜70%)の活性成分を含む。
【0061】
組成物はまた、ジェット式注射器、顕微針、エレクトロポレーション、ソノポレーション(sonoporation)、マイクロカプセル化、ポリマーまたはリポソームを利用して経皮経路を通して、ネブライザー、エアゾールおよび鼻スプレーを使用して経粘膜経路および鼻腔内経路を通して、投与され得る。天然または合成のポリマー(例えば、澱粉、アルギネートおよびキトサン、D−ポリL−ラクテート(PLA)、D−ポリDL−乳酸−coグリコール酸マイクロスフェア、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物およびポリホスファゼン、ポリホスファタゼン)を用いたマイクロカプセル化は、経皮投与および経粘膜投与の両方について有用である。合成ポリオルニテート(poly−ornithate)、ポリリジンおよびポリアルギニンまたは両親媒性ペプチドを含むポリマー複合体は、経皮送達系に有用である。さらに、それらの両親媒性という性質に起因して、リポソームは、経皮ワクチン送達系、経粘膜ワクチン送達系および鼻腔内ワクチン送達系が意図される。ワクチン送達のために使用される通常の脂質としては、N−(1)2,3−(ジオレイル−ジヒドロキシプロピル)−N,N,N,−トリメチルアンモニウム−メチルスルフェート(DOTAP)、ジオレイルオキシ−プロピル−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジミスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウム(dimystyloxypropyl−3−dimethyl−hydroxyethyl ammonium;DMRIE)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)および9N(N’,N−ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC−Choi)が挙げられる。ヘルパー脂質とリポソームとの組み合わせは、皮膚を通してのリポソームの取り込みを増強する。これらのヘルパー脂質としては、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)が挙げられる。さらに、チリシャボンノキ樹皮(Quillaja saponaria)由来のトリテルペノイドグリコシドまたはサポニンおよびキトサン(脱アセチル化キタン(chitan))は、鼻腔内ワクチン送達および経粘膜ワクチン送達に有用なアジュバントであることが意図される。
【0062】
処方物は、単位用量容器または複数用量容器(例えば、封のされたアンプルおよびバイアル)中で提示され得、そして使用直前の滅菌液体キャリアの添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存され得る。
【0063】
(H.influenzaeの阻害方法)
あるいは、本発明は、H.influenzae IV型ピリ線毛機能を個体において阻害する方法を包含する。この方法は、この個体に、例えば、1もしくはそれより多くの本発明の抗体および/または1もしくはそれより多くの本発明のキメラタンパク質を、ピリ線毛の機能を阻害する量で投与する工程を包含する。インビトロアッセイを用いて、ピリ線毛機能を阻害する能力を実証し得る。これらの方法の実施形態としては、例えば、IV型ピリ線毛によって媒介される付着のインヒビターを用いる方法、IV型ピリ線毛によって媒介される既存のバイオフィルムを破壊するインヒビターを用いる方法、および単収縮のインヒビターを用いる方法が挙げられる。
【0064】
阻害は、H.influenzaeに関与する任意の病理学的状態(例えば、OM、肺炎、副鼻腔炎、敗血症、心内膜炎、喉頭蓋炎、化膿性関節炎、髄膜炎、分娩後感染および新生児感染、分娩後敗血症および新生児敗血症、急性卵管炎および慢性卵管炎、喉頭蓋、心膜、蜂巣炎、骨髄炎、心内膜炎、胆嚢炎、腹腔内感染、尿路感染、乳様突起炎、大動脈移植片感染、結膜炎、ブラジル紫斑熱、潜在性菌血症、慢性閉塞性肺疾患および基礎をなす肺疾患(例えば、慢性気管支炎、気管支拡張症および嚢胞性線維症)の悪化)について意図される。
【0065】
H.influenzaeのIV型ピリ線毛機能のインヒビターを含む組成物が提供される。この組成物は、上記の活性成分のうちの1つのみからなってもよく、上記の活性成分の組み合わせを含んでもよく、または、細菌感染を処置するために用いられるさらなる活性成分を含んでもよい。上記で考察したとおり、これらの組成物は、1またはそれより多くのさらなる成分(例えば、薬学的に有効なキャリア)を含み得る。上記でも考察されるように、これらの組成物の投与量および投与頻度は、標準的な技術によって決定され、そして例えば、個体の体重および齢、投与経路、ならびに症状の重篤度に依存する。これらの薬学的組成物の投与は、当該分野で標準的な(例えば、非経口、静脈内、経口、頬内、鼻腔、肺、直腸、鼻腔内または膣の)経路によって行われ得る。
【0066】
(動物モデル)
本発明の方法は、OMについての実験モデルとして広く受け入れられているチンチラモデルにおいて実証され得る。特に、NTHi誘発性OMのチンチラモデルはよく特徴付けられており(Bakaletz et al,J.Infect.Dis.,168:865−872,1993;BakaletzおよびHolmes,Clin.Diagn.Lab.Immunol.,4:223−225,1997;SuzukiおよびBakaletz,Infect.Immun.,62:1710−1718,1994;Mason et al,Infect.Immun.,71:3454−3462,2003)、そしてOMに対するいくつかのNTHi外膜タンパク質、外膜タンパク質の組み合わせ、キメラ合成ペプチドワクチン成分、およびアジュバント処方物の防御効力を決定するために用いられている(Bakaletz et al,Vaccine,15:955−961,1997;Bakaletz et al,Infect.Immun.,67:2746−2762,1999;Kennedy et al,Infect.Immun.,68:2756−2765,2000;Kyd et al,Infect.Immun.,66:2272−2278,2003;NovotnyおよびBakaletz,J.Immunol,171,1978−1983,2003)。
【0067】
このモデルでは、アデノウイルスは、チンチラをH.influenzae誘発性OM媒体に罹りやすくする。このことは、NTHiの生物学的評価のための関連した細胞、組織および器官の培養系の確立を可能にした(Bakaletz et al,J.Infect.Dis.,168:865−72,1993;Suzuki et al,Infect.Immunity 62:1710−8,1994)。アデノウイルス感染単独を用いて、誘導された血清抗体の鼓室への漏出が評価されており(Bakaletz et al,Clin.Diagnostic Lab Immunol,4(2):223−5,1997)、そしてNTHiとともに共病原体(co−pathogen)として用いられて、中耳炎に対する痘苗原としての種々のNTHi外膜タンパク質、OMPの組み合わせ、キメラ合成ペプチドワクチン成分、およびアジュバント処方物を標的とするいくつかの能動免疫レジメンおよび受動免疫レジメンの防御効力が決定されている(Bakaletz et al,Infect Immunity,67(6):2746−62,1999;Kennedy et al,Infect.Immun.,68(5):2756−65,2000;Novotny et al,Infect Immunity 68(4):2119−28,2000;Poolman et al,Vaccine 19(Suppl.1):S108−15,2000)。
【実施例】
【0068】
(発明の詳細な説明)
以下の実施例は、本発明を例示し、ここで、実施例1は、本発明のキメラタンパク質の組換え産生を記載し、実施例2は、本発明のキメラタンパク質の免疫原性を試験するアッセイを記載し、実施例3は、受動免疫を評価するためのアッセイを記載し、実施例4は、能動免疫を評価するためのアッセイを記載し、そして実施例5は、本発明のキメラタンパク質の評価を記載する。
【0069】
(実施例1 キメラタンパク質の合成)
本発明のキメラタンパク質を、標準的な組換え法を用いて産生した。最初に、遺伝子合成会社(Blue Heron Biotechnology Inc.)が、E.coliの好ましいコドン使用法に最適化した、本明細書中に記載のキメラタンパク質のアミノ酸配列に基づいて最初のプラスミドを作製するという契約を結んだ。手短に述べると、N末端(配列番号2の残基1〜39)を切り落とし、そして配列番号3に示すHISタグ配列およびトロンビン切断部位を付加することにより、ネイティブなNTHiピリンタンパク質配列を改変した。このHISタグの前には、発現を補助するための配列(MGSS)があった。トロンビン切断部位は、HISタグの放出を可能にした。次いで、これらのプラスミドをE.coli発現ベクターpET−15bベクター(Novagen)中にクローニングした。次いでこのプラスミドを、可溶性Hisタグ化キメラタンパク質の発現のための宿主としてE.coli株「Origami(DE3)」(Novagenから入手可能)中に形質転換した。使用され得る別のE.coli宿主細胞発現株は、Origami B(DE3)(Novagen)である。
【0070】
このキメラタンパク質のHisタグ化改変体を、ニッケルカラムクロマトグラフィーによって回収し、次いで最初の研究に用いて、以下のうちのいずれかに対する抗血清と反応性であるか否かを決定する:ネイティブなOMP P5−フィンブリン、LB1(全長40アミノ酸ペプチド)、LB1(1)(LB1の19アミノ酸のB細胞エピトープのみを提示する合成ペプチド)、組換えPilAタンパク質またはネイティブなPilAタンパク質。一旦Hisタグがトロンビン部位切断によって除去されると、この組換えキメラタンパク質は免疫原として用いられて、それらの免疫原性および防御能力が決定される。
【0071】
本発明の例示的なキメラタンパク質は、以下の表2に示す配列を有する。配列番号10のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質、配列番号12のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質および配列番号14のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質が、上記のとおりにE.coliによって発現されている。
【0072】
【表2−1】

【0073】
【表2−2】

【0074】
【表2−3】

本発明のさらなる例示的なキメラタンパク質は、以下の表3に示すとおりのアミノ酸配列を有する。これらのキメラタンパク質は、上記のとおりに、E.coliによって発現されており、そしてHISタグを用いて精製されている。表3に示されるキメラタンパク質は、免疫原として使用するために除去されるHISタグ配列を有する。配列番号56のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質を、実施例5に記載した研究において用いた。
【0075】
【表3】

(実施例2 キメラタンパク質の免疫原性)
ウサギまたはチンチラを、これらのキメラタンパク質で免疫する。ウサギは、完全フロイントアジュバント中の500μgの第1免疫用量のキメラタンパク質を受ける。これらのウサギは、400μgの第2用量のキメラタンパク質を21日後に受ける。これらのウサギは、完全フロイントアジュバント中の第3用量のキメラタンパク質を、IFAまたはPBSのいずれか中での400μgの同じペプチド(1つの希釈剤あたり1羽のウサギ)とともに、第1免疫用量の42日後に受ける。各投与の3週間後に血清を得る。チンチラは、アジュバントであるモノホスホリルリピドA(MPL)中の10μgの第1免疫用量のキメラタンパク質を受ける。1ヵ月(約30日)後、チンチラは、第2の同一の用量を受ける。第3用量でかつ最終用量を第2用量の約30日後に送達する。各用量の約10〜14日後に血清を得る。全ての動物からの血清を、ELISA、ウェスタンブロットおよびバイオセンサーによって、LB1ペプチド(40マー)、LB1(1)、PilAタンパク質およびキメラタンパク質に対する力価および特異性について評価する。抗血清をまた、フローサイトメトリー(FACS)分析により、細菌全体に対して試験する。
【0076】
(実施例3 受動免疫の評価)
本発明のキメラタンパク質に対する動物の免疫応答によって付与される防御を、実験的中耳炎のチンチラモデルにおいて決定する。チンチラを、本発明のキメラタンパク質に対する超免疫チンチラ血清または超免疫ヒト血清5ml/kgで受動免疫する。コントロールのチンチラは、正常なチンチラ血清または正常なヒト血清を受ける。次に、これらのチンチラは、まず、ウイルス共病原体を鼻腔内に受け、次いで1週間後に、NTHi細菌による鼻腔内チャレンジを受ける。これらのチンチラを検査し、そして細菌チャレンジ後35日目まで毎日または2日毎に評価する。免疫チンチラ血清またはヒト血清を受ける免疫したチンチラは、ビデオ耳鏡検査法およびティンパノメトリの両方によって決定したところ、減少した鼓膜病状を表し、そして中耳空間の感染の徴候は減少しているかまたは徴候はない。このアッセイでは、コントロールと比較したとき、チンチラまたはヒトの抗キメラタンパク質血清を受けるチンチラ中の中耳液の存在は減少している。
【0077】
(実施例4 能動免疫の評価)
各々5〜10匹のチンチラのコホートに、食塩水コントロール調製物、アジュバントのみの調製物または適切なアジュバントと混合した本発明のキメラタンパク質のうちの1つのいずれかを能動免疫する。これらの免疫原を、Whittaker Bioproductsから名称QCL−1000の下で市販される色素形成性変形溶解産物アッセイによって、免疫源としてのそれらの使用の前に、内毒素含有量について評価する。次いで、これらのチンチラに、アジュバントMPL(または別の適切なアジュバント)中の10μgの免疫原を皮下注射する。次いで30日後に、これらは、MPL中の10μgの同じ免疫原を受ける。2回目の免疫の30日後、これらの動物は最終免疫用量を受ける。最後の免疫用量を送達してから約10〜14日後、チンチラにNTHiの1株を経水疱(transbullarly)および鼻腔内の両方でチャレンジする。これらのチンチラを、35日間の期間にわたって、以下について評価する:ビデオ耳鏡検査法およびティンパノメトリにより、鼓膜の病状;下水疱(inferior bulla)の鼓室上部穿刺および鼻咽頭の受動洗浄によって回収されたNTHiの半定量;ならびに組織病理学についての固定された中耳粘膜上皮および鼓膜の光学顕微鏡検査。例えば、本発明のキメラタンパク質で免疫されたチンチラは、減少した鼓膜病状を有し、中耳滲出液がないかもしくは培養陰性である滲出液を含み、鼓室に存在するバイオフィルムは減少しているかもしくは存在せず、中耳粘膜の最小の厚みがあり、最小の骨新生(osteoneogensis)があり、そして上皮下空間における赤血球および炎症細胞の両方の存在が減少している。
【0078】
(実施例5 キメラタンパク質の評価)
配列番号56のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質(本明細書中では「chim−V3」という)の防御効力を、OMのチンチラ受動転移超感染モデルを用いて評価した。このキメラペプチドは、組換えPilA(配列番号2の残基40〜149)のC末端グルタミン残基の後に発現されたLB1ペプチドのB細胞エピトープ(配列番号5)からなっていた。受動転移効力研究において使用するためのポリクローナル抗血清を作製するために、chim−V3タンパク質を、アジュバントであるモノホスホリルリピドA(MPL)+トレハロースジミコレート(Corixa)とともに成体チンチラのコホートに送達した。免疫レジメンを示すタイムラインを図1に示す。免疫血清プールを作製するために、警戒しやすい(alert prone)チンチラに30μgのchim−V3+10μgのMPLまたは10μg MPL単独を21日間毎に3回皮下免疫した。56日目に、接種した動物の最後の採血を収集し、そして未刺激の若齢動物への転移のために血清をプールした。効力を研究するために、別々のコホートの若齢チンチラを、−7日目に最初にアデノウイルスでチャレンジした。6日後(−1日目)、プールした抗chim−V3免疫血清を、アデノウイルスに曝したこれらの動物へと受動転移した。翌日(0日目)、受動転移による抗chim−V3血清を受けた動物に、分類不能型Haemmophilus influenzae細菌をチャレンジした。次いで、これらの動物を、ビデオ耳鏡検査およびティンパノメトリによって毎日、ならびにXenogenインビボ画像化によって1日おきに、(細菌チャレンジに対して)26日間の時間経過にわたって、疾患の発生率および重篤度についてモニタリングした。
【0079】
抗chim−V3抗体の力価を、接種した動物から収集した免疫血清において、ELISAを用いて測定した。この分析は、収集された抗血清がchim−V3タンパク質に特異的な抗体を含むことを実証した。収集された抗血清における抗chim−V3抗体の存在はまた、ウェスタンブロット分析を用いても確認された。
【0080】
FACS分析を用いて、免疫された動物からの血清免疫グロブリンが、NTHi 86−028 NPによって発現される表面に露出したネイティブ構造を認識する能力を測定した。NTHi細菌を、chim−V3抗血清とともにインキュベートし、洗浄し、次いで未刺激FITC−プロテインAまたは免疫FITC−プロテインAとともにインキュベートし、洗浄し、そしてFACS分析により分析した。chim−V3タンパク質の接種は、NTHi表面タンパク質またはchim−V3タンパク質を認識し得る抗体の顕著な増加を誘導した。得られたデータは、抗体力価およびアビディティの両方、ならびにインビトロで増殖させた場合のNTHiによるIV型ピリ線毛およびOMP P5相同接着因子の両方の相対発現に依存した。
【0081】
発光レポーターNTHi 86−028 NP pKMLN−1を用い、Xenogenインビボリアルタイム画像化を用いて、chim−V3タンパク質を接種した動物におけるNTHi感染を検出した。発光株NTHi 86−028 NP pKMLN−1および親株NTHi 86−028の増殖曲線は、発光NTHi株の増殖が親株と匹敵することを実証した。接種した動物の鼻咽頭に住み着いたNTHiの発光画像化は容易に達成されたが、罹患した中耳の微好気性に起因して、中耳内に存在するNTHiの発光を疾患経過全体にわたってモニタリングすることはできなかった。なぜなら、発光は、酸素利用可能性に依存するからである。動物を、発光性細菌の存在について1日おきにモニタリングし、そして細菌が検出された場合、これを発光事象として記録した。接種された動物において、チャレンジ後少なくとも6日間発光性感染が検出された。chim−V3接種動物中の発光事象の総数は、(MPLのみを接種した)コントロール動物における発光事象の総数よりも少なかった。
【0082】
研究の経過全体をとおして、毎日のビデオ耳鏡検査およびティンパノメトリを用いて、OMを有するチンチラ中耳のパーセントを決定した。chim−V3の接種は、(MPLのみを接種した)コントロール動物と比較して、OMを有する中耳を有する動物数の53%の低下を引き起こした。
【0083】
これらの研究の全ては、chim−V3タンパク質が免疫原性であったこと、および抗chim−V3抗体がOMのチンチラ受動転移超感染モデルにおいて防御性であったことを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2010−172332(P2010−172332A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237768(P2009−237768)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2008−520357(P2008−520357)の分割
【原出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(502200830)ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】