説明

HbA1c測定結果の表示方法、表示装置、及び表示プログラム

【課題】HbA1cの値が正常値とは異なる所定の値を示す試料、例えば、糖尿病型を示す試料の見落としの防止が可能な、HbA1c測定結果の表示方法。
【解決手段】試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定した結果のスペクトルデータの表示方法であって、試料中のHbA1c量、又はHbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付すことを含む表示方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HbA1c測定結果の表示方法、表示装置、及び表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分離分析法、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー法)を測定原理とするヘモグロビンA1c(HbA1c)の測定装置は、測定結果としてHbA1c値とともに、分離クロマトグラムが出力されることが多い。しかし、該クロマトグラムには、目的とするHbA1c以外にもピークが存在する。そこで、クロマトグラム上のHbA1c分画(ピーク領域)には、他のHb分画に対する識別性を高めるため、ハッチング処理が施されることがある(非特許文献1)。
【0003】
一方、日本においては糖尿病の新診断基準が2010年7月1日に施行され、HbA1c値が診断項目に追加された。すなわち、今後、臨床現場では、HbA1c値は従来のような糖尿病治療マーカーとしての役割のみならず、糖尿病診断マーカーとしての役割を担うこととなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】村上 卓司ら、「東ソー自動グリコヘモグロビン分析計HLC−723G8の開発」TOSOH Research & Technology Review Vol.50(2006), pp69-72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糖尿病治療マーカーとしてのHbA1c値は、治療効果の確認と新たな治療方針の決定のため、前回値と測定値との比較が重要な意味を持つ。一方、糖尿病診断マーカーとしてのHbA1c値は、糖尿病診断基準に従って、糖尿病型に属するのか非糖尿病型に属するのかが問題となる。また、多数の試料を測定する臨床現場においては、糖尿病型のサンプルの見落としをなくすことが求められることとなる。
【0006】
そこで、本発明は、HbA1c値が正常値とは異なる所定の値を示す試料、例えば、糖尿病型を示す試料の見落としの防止が可能な、HbA1c測定結果の表示方法、表示装置、及び表示プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一態様として、試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定した結果のスペクトルデータの表示方法であって、試料中のHbA1c量、又はHbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付すことを含む表示方法に関する。
【0008】
本発明は、その他の態様として、試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定し、測定されたHbA1c量及びスペクトルデータを得る測定部と、前記HbA1c量又は前記HbA1c量と血糖量とに応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付す表示データ変換部と、変換された表示データを表示する表示部、印刷する印刷部、及び、外部に送信する送信部の少なくともいずれかを備える装置に関する。
【0009】
本発明は、さらにその他の態様として、試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定して得られるHbA1c量及びスペクトルデータの表示を行うプロセッサに処理を実行させる表示プログラムであって、HbA1c量又はHbA1c量及び血糖量とデザインとの対応関係を示す対応関係データを予め記録した記録部にアクセスし、前記試料のHbA1c量又は前記HbA1c量及び血糖量に該当するデザインを決定する処理と、前記試料のスペクトルデータのHbA1cのピーク領域を、決定された前記デザインに変更する処理と、変更された前記スペクトルデータを表示、印刷、又は外部に出力する処理とを、プロセッサに実行させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分離分析法を用いたHbA1c測定において、注意を要する測定結果の見落としを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施形態における装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、実施形態における装置のさらなる構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、表示装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、表示装置の動作のその他の例を示すフローチャートである。
【図5】図5Aは、表示されたクロマトグラムの一例であり、図5Bは、表示されたクロマトグラムのその他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」とは、赤血球のタンパク質成分の1つであり、ヘモグロビンのβ鎖のN末にグルコースが結合したものをいい、特に言及しない限り、安定型HbA1c(s−HbA1c)のことをいう。血液又は血液由来の試料を分離分析法で分析した場合に検出されうる安定型HbA1c以外の成分としては、ヘモグロビンA0(HbA0)、ヘモグロビンA1a(HbA1a)、ヘモグロビンA1b(HbA1b)、ヘモグロビンA2(HbA2)、ヘモグロビンS(HbS、鎌状赤血球ヘモグロビン)、ヘモグロビンF(HbF、胎児ヘモグロビン)、ヘモグロビンM(HbM)、ヘモグロビンC(HbC)、ヘモグロビンD(HbD)、ヘモグロビンE(HbE)、メト化ヘモグロビン、カルバミル化ヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン、不安定型HbA1c(l−HbA1c)等が挙げられる。
【0013】
本明細書において「試料」とは、試料原料から調製したものあるいは該原料そのものをいう。試料原料としては、生体由来成分を含む生体試料が挙げられ、上記分析対象物を含むものが好ましく、より好ましくはヘモグロビンを含む試料である。生体試料としては、血液、赤血球成分を含む血液由来物、唾液、髄液等が含まれる。血液としては、生体から採取された血液が挙げられる。赤血球成分を含む血液由来物としては、血液から分離又は調製されたものであって赤血球成分を含むものが挙げられ、例えば、血漿が除かれた血球画分や、血球濃縮物、血液又は血球の凍結乾燥物、全血を溶血処理した溶血試料、遠心分離血液、自然沈降血液、洗浄血球などを含む。
【0014】
本明細書において「HbA1c量」とは、試料中又は血液中のHbA1cの濃度をいい、実用的な観点からは、HbA1c値を指すことが好ましい。本明細書において「HbA1c値」とは、試料又は血液におけるヘモグロビンに対するHbA1cの割合(HbA1c濃度/ヘモグロビン濃度)をいい、単位は%である。
【0015】
一方、わが国で使用されているHbA1c値(JDS値)は、他国に先駆けて標準化が成された等の特徴を有するが、世界の多くの国で使用されているHbA1c値(NGSP値)と比較すると、約0.4%低値であるという問題を有する。そこで日本糖尿病学会では、従来からのJDS値で表記されたHbA1c値に0.4%を加えた新しいHbA1c値を国際標準値と呼ぶこととし、当面はJDS値を基準に、追って発表される施行日以降は国際標準値を基準に糖尿病診断を行うことを決めた。
【0016】
2010年7月1日に改定された糖尿病新診断基準によると、HbA1c値及び血糖値による糖尿病の判定区分は以下の通りである。
a)空腹時血糖値≧126mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
b)OGTT2時間後の血糖値≧200mg/dl、
かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
c)随時血糖値≧200mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
ここで、OGTTとは、経口ブドウ糖負荷試験を指す。
【0017】
糖尿病は、インスリンの作用不足による慢性の高血糖状態を特徴とする疾患群であり、持続的高血糖状態が長期間続くと糖尿病性合併症の発症により最終的には死に至る疾患である。糖尿病治療は合併症の発症予防に主眼が置かれており、糖尿病の早い段階からの治療介入を行い血糖値の上昇を抑えて継続的に維持管理することが大きな意味を持つ。このため、糖尿病の早期治療開始のためには、健診や糖尿病の疑いのある患者の検査やなどが特に重要となる。
【0018】
本発明は、HbA1c値が糖尿病の診断マーカーとして利用される臨床現場において、糖尿病として分類される試料又はその疑いがあるとして分類される試料が見落とされるおそれの増大に着目したものである。そして、測定ごとに表示又は印刷されるクロマトグラムのHbA1cのピーク領域のデザインを、例えば、「糖尿病型」と「非糖尿病型」で分ければ、そのような見落としを簡便に低減できるという知見に基づく。
【0019】
すなわち、本発明は一態様において、試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定した結果のスペクトルデータの表示方法(以下、「本発明の表示方法」ともいう。)であって、試料中のHbA1c量、又はHbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付すことを含む表示方法に関する。
【0020】
本発明の表示方法によれば、例えば、多数の試料を測定する臨床現場において、注意が喚起されるべきHbA1c値を示す試料の見落としを低減できるという効果を奏する。なお、本発明の表示方法は、個体を診断、例えば、試料を提供した個体の糖尿病診断をすることは含まない。本発明の表示方法は、その試料の分類を表示することに関し、医師が行う診断の指標又は情報を提供できる。但し、本発明の表示方法は、診断目的に限定されない。
【0021】
本明細書において「分離分析法」とは、試料に含まれる分析対象物を個別に分離しながら分析を行う方法であって、HbA1cの分離分析ができる方法をいう。具体的には、液体クロマトグラフィ法、電気泳動法、ガスクロマトグラフィ法、又は電気クロマトグラフィ法が挙げられる。液体クロマトグラフィ法としては、特に高速液体クロマトグラフィ法(HPLC法)、例えば、陽イオン交換クロマトグラフィ法、陰イオン交換クロマトグラフィ法、分配クロマトグラフィ法、逆相分配クロマトグラフィ法、ゲルろ過クロマトグラフィ法等が挙げられる。電気泳動法としては、特にキャピラリ電気泳動法(CE法)、例えば、キャピラリゾーン電気泳動法、キャピラリ等電点電気泳動法、キャピラリ動電クロマトグラフィ法、及びキャピラリゲル電気泳動法等が挙げられる。
【0022】
本明細書において「スペクトルデータ」とは、試料中のHbA1cを含む成分の分離状態を示す波形グラフをいい、分離分析法がクロマトグラフィ法であれば、クロマトグラムを指し、分離分析法がキャピラリ電気泳動法であれば、エレクトロフェログラムを指す。また、本明細書において「HbA1cのピーク領域」とは、スペクトルデータにおいてHbA1cが占める領域、すなわち、HbA1c分画をいう。
【0023】
本明細書において「デザイン」とは、スペクトルデータを表示や印刷するときにHbA1cのピーク領域に付すマーキング、パターン、色、及びこれらの組み合わせをいう。ピーク領域に付すデザインは、無色無地を含む。当業者であれば、混同の恐れが少ない、両者の識別が容易な適切な2つ、又はそれ以上のデザインの組み合わせを選択できる。
【0024】
本発明の一実施形態として、HbA1cのピーク領域に付すデザインの種類は、糖尿病診断基準であるHbA1c値を基準に変更される。糖尿病診断基準であるHbA1c値としては、上述のとおり、例えば、国際標準値6.5%以上(JDS値6.1%以上)が挙げられる。なお、糖尿病診断基準が当該数値から変更された場合には、その変更後の値とすることができる。
【0025】
本発明のその他の実施形態として、日本の新しい糖尿病診断基準にならい、HbA1c値に加え、血糖値を利用して表示を切り替えることもできる。この実施形態では、HbA1cのピーク領域に付す2つのデザインを「糖尿病型」と「非糖尿病型」とすることができる。より具体的には、上述のとおり、下記条件a)〜c)のいずれかに該当すれば「糖尿病型」のデザインとし、該当しなければ「非糖尿型」とすることができる。さらに、「糖尿病型」を下記条件a)〜c)でそれぞれデザインを異なるものとしてもよい。
a)空腹時血糖値≧126mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
b)OGTT2時間後の血糖値≧200mg/dl、
かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
c)随時血糖値≧200mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
【0026】
血糖値の情報は、同一試料に基づくものであることが好ましい。血糖値は、HbA1c量を測定する装置に内蔵されたグルコース測定ユニットで測定されてもよく、あるいは、HbA1c量を測定する装置以外の測定装置で測定されたものであってよい。
【0027】
本発明の表示方法における表示の形態は、従来のHbA1c測定装置による表示と同様であってよく、例えば、プリンタなどによる印刷、表示装置などによる表示、通信・電子媒体などへの電気的出力を含み、適宜選択できる。
【0028】
次に、本発明の装置について説明する。
【0029】
本発明は一態様において、試料中のHbA1cを分離分析法で測定して測定されたHbA1c量及びスペクトルデータを得る測定部と、前記HbA1c量、又は前記HbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付す表示データ変換部と、変換された表示データを表示する表示部、印刷する印刷部、及び、外部に送信する送信部の少なくともいずれかとを備える装置に関する。本態様の装置によれば、HbA1cの測定と、本発明の表示方法による表示とを行うことができる。
【0030】
本態様の装置を図1に示す一実施形態を用いて説明する。図1は、本態様の装置の一実施形態の構成例を示す機能ブロック図である。図1に示す装置10は、分離分析法を用いたHbA1c測定装置でもあり、かつ、本発明の表示方法を行う装置でもある。装置10は、測定部1と変換部2と表示部3と記録部4とを備える。測定部1では、分離分析法を用いてHbA1c測定を行う。得られた測定データからのスベクトルデータの作成、校正、及び、HbA1c値の算出は、測定部1で行ってもよく、変換部2で行ってもよい。変換部2では、得られたスペクトルデータ及びHbA1c値に基づいて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかが前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付されるようにスペクトルデータが変換される。変換されたスペクトルデータは表示部3で表示される。変換部2における具体的な変換方法は、上述の本発明の表示方法を参照できる。
【0031】
変換部2において血糖値を利用する場合には、測定部1が血糖値測定部(例えば、グルコース測定ユニット)を備えてもよい。あるいは、装置外の測定装置で測定されたデータを使用できる。その場合、装置10は、通信ポート、キーボード、バーコードリーダー等のI/Oポートを備え、該I/Oポートから血糖値が入力されることができる。表示部3は、液晶表示器、有機EL表示器、プリンタ等の視覚的表示手段であってもよく、通信ポート、I/Oポート、電子媒体等の電気的出力であってもよい。記録部4は、本態様の装置においては必須の構成ではないが、例えば、HbA1c量とデザインとの対応関係、及び/又はHbA1c量及び血糖値とデザインとの対応関係を示す対応関係データを記録しておくことができる。
【0032】
図2において、装置10のさらなる実施形態を示す。図2において、測定部1、変換部2、及び表示部3の構成例、並びに、記録部4に記録されるデータ例を示す。測定部1は、HbA1c測定部11、クロマトグラム作成部12、HbA1c値算出部13、及び血糖値測定部14を備える。変換部2は、分析部21、クロマトグラム変換部22、及び出力部23を備える。表示部3は、表示画面31、印刷部32、及び外部出力部33を備える。記録部4には、例えば、変換前のクロマトグラム、HbA1c値、対応関係データ、及び変換後のクロマトグラムを記録する。
【0033】
測定部1のHbA1c測定部11で試料を測定し、測定データを得る。この測定データを使ってクロマトグラム作成部12でクロマトグラムを作成し、このクロマトグラムからHbA1c値算出部13でHbA1c値を算出する。前記クロマトグラム及びHbA1c値は記録部4に記録される。また、必要に応じて、血糖値測定部14にて同一試料の血糖値が測定され、記録部4に記録されてもよい。次に、変換部2の分析部21において、測定部1で得られたHbA1c値、及び、記録部4にアクセスして得られた対応関係データに基づき、HbA1cのピーク領域に付すべきデザインを決定する。クロマトグラム変換部22では、決定されたデザインを測定部1で得られたクロマトグラムのHbA1cピーク領域に適用して変換する。変換されたクロマトグラムは、記録部4に記録される。変換されたクロマトグラムは出力部23から表示部3に送られる。表示部3は、変換されたクロマトグラムを、表示画面31、印刷部32、及び/又は外部出力部33に出力する。表示部3は、必要に応じて記録部4にアクセスして記録された変換後のクロマトグラムを表示、印刷、又は外部出力できる。
【0034】
図1及び図2における変換部2の機能は、例えば、本態様の装置に内蔵されたプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現することができる。記録部4は、プロセッサからアクセス可能なメモリ、HDD等の記録装置により構成することができる。
【0035】
したがって、本発明は、その態様において、試料中のHbA1cを分離分析法で測定して得られるHbA1c量及びスペクトルデータの表示を行うプロセッサに処理を実行させる表示プログラムであって、HbA1c量又はHbA1c量及び血糖量とデザインとの対応関係を示す対応関係データを予め記録した記録部にアクセスし、前記試料のHbA1c量又はHbA1c量及び血糖量に該当するデザインを決定する処理と、前記試料のスペクトルデータのHbA1cのピーク領域を、決定された前記デザインに変更する処理と、変更された前記スペクトルデータを表示、印刷、又は外部に出力する処理とをプロセッサに実行させるプログラムに関する。
【0036】
図1及び図2における装置10は、測定部1、変換部2、表示部3、及び記録部4が一体となった構成であってもよいし、独立した測定部1に変換部2、表示部3及び記録部4を備える表示装置が接続された構成であってもよい。
【0037】
したがって、本発明は、その態様において、試料中のHbA1cを分離分析法で測定した結果のHbA1c量及びスペクトルデータを得る受信部と、前記HbA1c量、又は前記HbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付す表示データ変換部と、変換された表示データを表示する表示部、印刷する印刷部、及び、外部に送信する送信部の少なくともいずれかとを備える装置に関する。
【0038】
図3は、図1に示す実施形態の装置10の動作例を示すフローチャートである。測定部1でHbA1c測定を行う(S301)。次に、変換部2において、該測定で得られたHbA1c値に基づきHbA1cピーク領域に適用すべきデザインを決定する(S302)。HbA1c値が6.5%以上(国際標準値、JDS値6.1%以上)であれば、記録部4に記録されたパターンAを選択してクロマトグラムの変換を行う(S303)。また、HbA1c値が6.5%未満(国際標準値、JDS値6.1%未満)であれば、記録部4に記録されたパターンBを選択してクロマトグラムの変換を行う(S304)。変換後のクロマトグラムを表示部3で表示する(S305)。パターンAを適用したクロマトグラムの一例が図5Aであり、パターンBを適用したクロマトグラムの一例が図5Bである。
【0039】
図4は、図2に示す実施形態の装置10の動作例を示すフローチャートである。HbA1c測定部11及び血糖値測定部14でそれぞれ試料の測定を行う(S401)。次に、分析部21において前記試料の採取時の状態を判断する(S402)。空腹時採取であればS403に進み、OGTT2時間後採取であればS404に進み、随時採取であればS405に進む。これら3つのステップにおいて所定の血糖値以上であれば、S406に進む。S406において、HbA1c値に基づく処理がされる。すなわち、HbA1c値が6.5%以上であれば、記録部4に記録されたパターンA(糖尿病型)を選択してクロマトグラムの変換を行う(S407)。また、HbA1c値が6.5%未満(国際標準値、JDS値6.1%未満)であれば、記録部4に記録されたパターンB(非糖尿病型)を選択してクロマトグラムの変換を行う(S408)。また、S403、S404、及びS405において所定の血糖値未満であり、HbA1c値が6.5%未満(国際標準値、JDS値6.1%未満)であれば、記録部4に記録されたパターンB(非糖尿病型)を選択してクロマトグラムの変換を行う(S408)。変換後のクロマトグラムは表示部3で表示される(S409)。パターンAを適用したクロマトグラムの一例が図5Aであり、パターンBを適用したクロマトグラムの一例が図5Bである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、医療機器、臨床検査機器等の分野において有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 測定部
2 変換部
3 表示部
4 記録部
11 HbA1c測定部
12 クロマトグラム作成部
13 HbA1c値算出部
14 血糖値測定部
21 分析部
22 クロマトグラム変換部
23 出力部
31 表示画面
32 印刷部
33 外部出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定した結果のスペクトルデータの表示方法であって、
試料中のHbA1c量、又はHbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付すことを含む、表示方法。
【請求項2】
糖尿病診断基準であるHbA1c値を基準にHbA1cのピーク領域に付すデザインの種類を変えることを含む、請求項1記載の表示方法。
【請求項3】
前記試料のHbA1c値が国際標準値6.5%以上(JDS値6.1%以上)の場合と国際標準値6.5%未満(JDS値6.1%未満)とでHbA1cのピーク領域に付すデザインの種類を変えることを含む、請求項1又は2に記載の表示方法。
【請求項4】
糖尿病診断基準であるHbA1c値及び血糖値を基準に、糖尿病型のデザインと非糖尿病型のデザインのいずれかをHbA1cのピーク領域に付すことを含む、請求項1から3のいずれかに記載の表示方法。
【請求項5】
下記の条件a)〜c)のいずれかの場合に、糖尿病型のデザインをHbA1cのピーク領域に付すことを含む、請求項1から4のいずれかに記載の表示方法。
a)空腹時血糖値≧126mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
b)OGTT2時間後の血糖値≧200mg/dl、
かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
c)随時血糖値≧200mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
【請求項6】
試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定し、測定されたHbA1c量及びスペクトルデータを得る測定部と、
前記HbA1c量、又は前記HbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付す表示データ変換部と、
変換された表示データを表示する表示部、印刷する印刷部、及び、外部に送信する送信部の少なくともいずれかとを備える装置。
【請求項7】
試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定した結果のHbA1c量及びスペクトルデータを得る受信部と、
前記HbA1c量、又は前記HbA1c量と血糖量に応じて少なくとも2種類の異なるデザインのいずれかを前記スペクトルデータのHbA1cのピーク領域に付す表示データ変換部と、
変換された表示データを表示する表示部、印刷する印刷部、及び、外部に送信する送信部の少なくともいずれかとを備える装置。
【請求項8】
前記変換部は、糖尿病診断基準であるHbA1c値を基準にHbA1cのピーク領域に付すデザインの種類を変える、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記変換部は、前記試料のHbA1c値が国際標準値6.5%以上(JDS値6.1%以上)の場合と国際標準値6.5%未満(JDS値6.1%未満)とでHbA1cのピーク領域に付すデザインの種類を変える、請求項6から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記変換部は、糖尿病診断基準であるHbA1c値及び血糖値を基準に、糖尿病型のデザインと非糖尿病型のデザインのいずれかをHbA1cのピーク領域に付す、請求項6から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記変換部は、下記の条件a)〜c)のいずれかの場合に、糖尿病型のデザインをHbA1cのピーク領域に付す、請求項6から10のいずれかに記載の装置。
a)空腹時血糖値≧126mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
b)OGTT2時間後の血糖値≧200mg/dl、
かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
c)随時血糖値≧200mg/dl、かつ、HbA1c値≧国際標準値6.5%(JSD値6.1%)
【請求項12】
前記分離分析法が、液体クロマトグラフィ法、電気泳動法、ガスクロマトグラフィ法、又は電気クロマトグラフィ法であって、前記スペクトルデータが、クロマトグラム又はエレクトロフェログラムのデータである、請求項6から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
試料中のヘモグロビンA1c(HbA1c)を分離分析法で測定して得られるHbA1c量及びスペクトルデータの表示を行うプロセッサに処理を実行させる表示プログラムであって、
HbA1c量又はHbA1c量及び血糖量とデザインとの対応関係を示す対応関係データを予め記録した記録部にアクセスし、前記試料のHbA1c量HbA1c量又はHbA1c量及び血糖量に該当するデザインを決定する処理と、
前記試料のスペクトルデータのHbA1cのピーク領域を、決定された前記デザインに変更する処理と、
変更された前記スペクトルデータを表示、印刷、又は外部に出力する処理とを、プロセッサに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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