説明

IBD関連微生物抗原、およびIBD関連微生物抗原を使用する方法

【課題】ヒト炎症性腸疾患(IBD)に関連する、新規のI−1ポリペプチドおよびI−2ポリペプチドの核酸配列およびアミノ酸配列を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を含む、単離された炎症性腸疾患関連I−2ポリペプチド。特定のアミノ酸配列を有するI−2ポリペプチドに選択的に結合する、実質的に精製された抗体物質。このIBD関連I−1抗原およびI−2抗原を使用して、炎症性腸疾患を診断する方法および炎症性腸疾患を処置する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(謝辞)
本研究は、国立衛生研究所より授与された助成金番号DK46763によって支援された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般的に、免疫学、微生物学、および炎症性腸疾患の分野に関し、そしてより詳細には、微生物抗原を使用する、炎症性腸疾患の診断および処置に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景情報)
炎症性腸疾患(IBD)は、病因が未知である2つの胃腸障害(クローン病(CD)および潰瘍性結腸炎(UC))を記載するために使用される、集合的な用語である。世界的に発生し、そして200万人もの多くの人々に罹患したことが報告されているIBDの経過および予後は、広範に変動する。IBDの発症は、主に若い成人においてであり、3つの最も一般的に現われる症状である下痢、腹痛、および発熱を伴なう。下痢は、軽度なものから重篤なものまで変動し得、そして貧血および体重減少が、IBDのさらなる一般的な症状である。IBDを有するすべての患者のうちの10%〜15%が、10年間にわたって外科手術を必要とする。さらに、IBDを有する患者は、腸癌の発症の危険が増加する。心理学的問題(不安およびうつ病を含む)の発症の増加に関する報告は、これがしばしば壮年の盛りにある人々を襲う衰弱疾患であるので、おそらく驚くべき症状ではない。
【0004】
不幸なことに、炎症性腸疾患について利用可能な治療はわずかであり、そして診断および処置の両方ともが、この疾患の病因に関する見識の欠如によって妨害されている。しかし、明らかなのは、遺伝的因子、外因性の誘因、および内因性の微生物叢の組合せが、炎症性腸疾患において見られる腸粘膜への免疫媒介性損傷に寄与し得るということである。クローン病では、細菌が、疾患の開始および進行に関与しており:クローン病における腸炎症は、その頻繁な抗生物質に対する応答性および細菌糞便流に対する感受性で有名である。一般的な腸の居住物(colonist)および新規の病原体が、直接的な検出によってか、または疾患に関連した抗微生物免疫応答によって、クローン病に関連付けられている。さらに、慢性結腸炎の遺伝学的に感受性の多くのモデルにおいて、管腔微生物は、疾患に必須の補助因子であり;微生物のいない環境に閉じ込められた動物は、結腸炎を発症しない。しかし、クローン病における腸内微生物の役割についての多くの直接的証拠および間接的証拠にも関わらず、この疾患において見られる免疫調節不全に寄与する病原性生物および抗原は、同定されていない。
【0005】
クローン病についての現在の診断用アッセイは、この疾患を有するすべての患者を検出し得ない。従って、クローン病に関連する新規の微生物抗原の同定は、現在の診断用アッセイの感度を増加させ得る試薬を提供する。さらに、このような微生物抗原は、疾患に関連したT細胞エピトープを保有し得、そしてこの疾患に関連する免疫応答の元々の誘発因子または一助的誘発因子として、炎症性腸疾患を処置するための有効な寛容原性抗原であり得る。IBD関連微生物抗原の同定はまた、関与する微生物種の同定を容易にし、炎症性腸疾患を処置するための新規の抗生物質または薬物の発見を可能にし、このような薬物は、疾患の微生物性誘発因子を排除することによって、疾患を改善する。
【0006】
従って、炎症性腸疾患に罹患している多くの個体を診断および処置するための、微生物性IBD関連抗原の同定および単離についての必要性が存在する。本発明は、IBD関連I−1微生物抗原およびI−2微生物抗原を提供することによって、この必要性を満たす。関連する利点も同様に提供される。
【発明の概要】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を有する、単離された炎症性腸疾患関連I−2ポリペプチドを提供する。本発明はまた、配列番号2の一部分と実質的に同じアミノ酸配列を有する、I−2ポリペプチドの単離された免疫反応性フラグメントを提供する。I−2ポリペプチドの単離された免疫反応性フラグメントは、例えば、配列番号2の少なくとも10個連続したアミノ酸を有し得る。
【0008】
本発明によって、配列番号2を有するI−2ポリペプチドに選択的に結合する、実質的に精製された抗体物質もまた提供される。このような実質的に精製された抗体物質は、例えば、実質的に精製されたポリクローナル抗体物質またはモノクローナル抗体物質であり得る。
【0009】
本発明はさらに、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸配列を有する、単離された核酸分子を提供する。本発明の単離された核酸分子は、例えば、配列番号1の核酸配列を有し得る。
【0010】
本発明によって、被験体における炎症性腸疾患(IBD)を診断する方法もまた提供される。この方法は、以下の工程:被験体からサンプルを得る工程;I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントと、I−2ポリペプチドに対する抗体との複合体を形成するに適切な条件下で、そのサンプルを、I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントと接触させる工程;ならびに、その複合体の存在または不在を検出する工程、を包含し、ここでその複合体の存在は、その被験体がIBDを有することを示す。炎症性腸疾患を診断するための本発明の方法は、例えば、クローン病を診断するために有用であり得る。炎症性腸疾患を診断するための本発明の方法において、その複合体の存在または不在は、例えば、I−2ポリペプチドに対する抗体のクラス決定部分(class determining portion)に対して特異性を有する検出可能な二次抗体で検出され得る。
【0011】
本発明によって、IBDを有する該患者に、有効用量のI−2ポリペプチドまたはその寛容原性(tolerogenic)フラグメントを投与することによって、炎症性腸疾患を有する患者において寛容を誘導する方法がさらに提供される。本発明のこの方法は、クローン病を有する患者を処置するために特に有用であり得る。寛容を誘導するための本発明の方法において、投与されるI−2ポリペプチドは、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。
【0012】
本発明はまた、寛容化分子(tolerogizing molecule)と組合せて、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を有するI−2ポリペプチド、またはその寛容原性フラグメントを含む、組成物を提供する。本発明のこの組成物において、I−2ポリペプチドは、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。本発明のこの組成物において有用な寛容原性フラグメントは、例えば、配列番号2の少なくとも10個連続したアミノ酸を有し得る。
【0013】
本発明はまた、炎症性腸疾患を処置する際に有用な薬剤を同定する方法を提供する。この方法は、以下の工程:炎症性腸疾患を有する患者から腸内細菌の標本を得る工程;この標本から、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を含む微生物種を単離する工程;この微生物種を、薬剤と接触させる工程;および、この薬剤の不在下におけるこの微生物種の増殖または生存率と比較した場合の、この微生物種の増殖または生存率の減少についてアッセイする工程、を包含し、ここで、この微生物種の増殖または生存率の減少は、この薬剤が、炎症性腸疾患を処置する際に有用な薬剤であることを示す。本発明の方法は、例えば、クローン病を処置するための薬剤を同定するために有用であり得る。本発明のこの方法は、抗生物質である薬剤をスクリーニングするために特に有用であり得る。
【0014】
本発明はさらに、新規の動物モデルを使用して、炎症性腸疾患を処置する際に有用な薬剤を同定する方法を提供する。この方法は、以下の工程:非ヒト動物にI−2ポリペプチドを投与する工程であって、これによって、IBDの1以上の症状が示される、工程;この非ヒト動物に、薬剤を投与する工程;および、IBDに特徴的な1以上の症状のレベルをアッセイする工程、を包含し、ここで、コントロールレベルと比較した場合の、1以上のこの症状のレベルにおける減少は、この薬剤が、IBDを処置する際に有用な薬剤であることを示す。本発明の方法は、例えば、クローン病を処置する際に有用な薬剤を同定するために適用され得る。投与されるI−2ポリペプチドは、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。本発明の方法において特に有用な非ヒト動物は、例えば、Gαi2、TCRα、およびIL−10を欠損しているマウスであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1は、I−1およびI−2の核酸配列およびコードされるポリペプチドを示す。A.I−2核酸配列(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)が示される。
【図1B】図1は、I−1およびI−2の核酸配列およびコードされるポリペプチドを示す。B.I−1核酸配列(配列番号3)およびI−1のオープンリーディングフレーム1(上部;配列番号4)およびオープンリーディングフレーム2(下部;配列番号5)が示される。
【図2】図2は、I−2アミノ酸配列(配列番号2)と、相同配列とのアラインメントを示す。配列を、非重複性(non−redundant)データベースに対して、tBLASTx検索によって同定した。アラインメントを、Genedocによる改変を伴なうCLUSTALWによって作成した。「Clostridium」は、Clostridium pasteurianum由来の推定タンパク質4(配列番号6;登録番号481591)であり;「Mycobacterium」は、Mycobacterium tuberculosis由来の推定タンパク質Rv3557c(配列番号7;登録番号1877288)であり;そして、「Aquifex」は、Aquifex aeolicus由来の転写制御因子(配列番号8;登録番号2984362)である。4つのポリペプチド間で同一または保存的に置換された残基を、黒色で示し;3つのポリペプチド間で同一または保存的に置換された残基を、濃灰色で示し;そして、2つのポリペプチド間で同一または保存的に置換された残基を、薄灰色で示す。コンセンサス残基を、アラインメントの真下に、保存されたアミノ酸を示す1文字コードで示し;「6」は、保存された非極性(疎水性)残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリンまたはメチオニン)を示し;そして、「5」は、保存された芳香族残基(フェニルアラニンまたはチロシン)を示す。
【図3】図3は、CD患者、UC患者およびコントロール個体由来のパラフィン包埋結腸サンプルを使用した、I−2(配列番号1)特異的プライマーでのPCR分析の結果を示す。「N」は、アッセイされたサンプルの数を示し、そして「N+」は、陽性サンプルの数を示す。「Ca」は、癌切除サンプルを示し;「Divertic」は、憩室炎サンプルを示し;「append」は、虫垂炎サンプルを示し;そして、「I−col」は、虚血性結腸炎を示す。
【図4A】図4は、種々の集団におけるI−2ポリペプチド(配列番号2)に対するIgGおよびIgA反応性を示す。A.クローン病患者および正常個体由来の血清を、示される希釈率でELISAによって、GST−I−2融合ポリペプチド(配列番号2)に対するIgG反応性についてアッセイした。吸光度の値は、GST単独に対する吸光度を差し引くことによって算出された。
【図4B】図4は、種々の集団におけるI−2ポリペプチド(配列番号2)に対するIgGおよびIgA反応性を示す。B.クローン病、潰瘍性結腸炎、および正常な個体由来の血清を、ELISAによって、GST−I−2融合ポリペプチド(配列番号2)に対するIgA反応性についてアッセイした。吸光度の値は、GST単独に対する吸光度を差し引くことによって算出された。カットオフ(破線)を、正常集団についての平均値を超える2つの標準偏差として設定した。
【図5】図5は、正常なC57BL/6Jマウス由来のCD4+T細胞を使用する、T細胞増殖アッセイを示す。T細胞を、示されるGST−I−2融合タンパク質濃度(Y軸上に示される)で刺激した。X軸は、取り込まれた[3H]−チミジンの計数を示す。SEBは、陽性コントロールであるStaphylococcus aureusエンテロトキシンBによって刺激されたT細胞を示す。
【図6】図6は、GST−I−2融合タンパク質でのチャレンジに応答したT細胞サイトカイン発現を示す。
【図7】図7は、IBD患者から単離された微生物を培養するための種々の条件を示す。
【図8】図8は、I−2刺激に際しての未処理CD4+T細胞の活性を示す。(A)ネイティブCD4+T細胞の[3H]−チミジン増殖アッセイ。(B)記憶CD4+T細胞の[3H]−チミジン増殖アッセイ。
【図9】図9は、組換えI−2がスーパー抗原であることを示す。(A)脾性C57 BL/6J CD4+T細胞を、I−2−GSTを適用(pulse)されたか、またはパラホルムアルデヒドで固定され、次いで、I−2−GSTを一晩適用された、C57 BL/6由来の抗原提示細胞と共に培養した。(B)ハトのシトクロムC(PPC)特異的CD4+T細胞を、PPCを適用されたか、またはパラホルムアルデヒドで固定され、次いで、PPCを一晩適用された、同系の抗原提示細胞と共に培養した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
炎症性腸疾患に関する病因は、理解が乏しいものの、究極的には、免疫媒介性組織損傷を含む。糖尿病および多発性硬化症のような自己免疫障害と類似して、炎症性腸疾患は、種々の免疫学的な異常に関連し、そして免疫調節不全のプロセスを示し得る。しかし、他の障害とは異なり、炎症性腸疾患は、腸の管腔と連係する粘膜部位において生じ、従って、炎症性腸疾患における主要な免疫標的は、慢性の微生物居住物のような外因性の因子であり得る。この場合、炎症性腸疾患に特徴的な粘膜損傷は、常在性の実質細胞に対する炎症性の傍観物(bystander)損傷の結果である。
【0017】
本発明は、いくつかの微生物DNA配列が、無関与の粘膜と比較した場合に、関与したクローン病(CD)粘膜において優先的に見出されるという興味深い発見に関する。本明細書中で開示されるように、感染した領域において優先的に見出されるDNA配列を同定するための、PCR駆動性サブトラクティブクローニングアプローチである提示的差異分析(representational difference analysis)(RDA)を使用して、巨視的に疾患を含まない領域と比較した場合に、潰瘍化を有する領域における固有層由来の単核細胞において示差的に存在した、クローン病患者由来のDNA配列を単離した(実施例Iを参照のこと)。本明細書中に開示されるように、2つのIBD関連配列は、微生物起源であった。I−1(配列番号3〜5)およびI−2(配列番号1および2)と称される、核酸配列およびアミノ酸配列を、図1に示す。本明細書中でさらに開示されるように、CD患者、UC患者、および非IBD患者由来の結腸サンプルのPCR分析によって、I−2配列(配列番号1)は、UCサンプルまたは非IBDサンプルにおいてよりも、関与したCD組織においてより頻繁に見出されることが明らかになった(実施例Iおよび図3)。従って、炎症性腸疾患、特に、炎症性CD病変に関連した、新規の微生物配列が同定された。IBDと関連した微生物配列の単離は、IBDの病因における微生物を含意し、そして炎症性腸疾患を診断または改善するために有益な試薬を提供する。
【0018】
従って、本発明は、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を有する、単離された炎症性腸疾患関連I−2ポリペプチドを提供する。本発明はまた、配列番号2の一部分と実質的に同じアミノ酸配列を有する、I−2ポリペプチドの単離された免疫反応性フラグメントを提供する。I−2ポリペプチドの単離された免疫反応性フラグメントは、例えば、配列番号2の少なくとも10個連続したアミノ酸を有し得る。
【0019】
用語「単離された」は、ポリペプチドを参照して本明細書中で使用される場合、細胞においてそのポリペプチドに通常付随する、夾雑している脂質、ポリペプチド、核酸、または他の細胞性物質を比較的含まない形態にあるポリペプチドを意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「I−2ポリペプチド」は、図1Aに示される微生物性I−2ポリペプチド(配列番号2)と実質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。微生物性I−2ポリペプチド(配列番号2)は、細菌の転写調節因子に対して幾分かの類似性を共有する(アミノ末端の30個のアミノ酸において最も高い類似性を有する)、100個のアミノ酸のポリペプチドである。図2で例示されるように、I−2ポリペプチドは、C.pasteurianum由来の推定タンパク質4(配列番号6);Mycobacterium tuberculosis由来のRv3557c(配列番号7);およびAquifex aeolicus由来の転写調節因子(配列番号8)と、弱い相同性を共有する。実施例Iで開示されるように、I−2コード核酸(配列番号1)は、巨視的に疾患を含まない粘膜と比較した場合に、関与したクローン病組織において示差的に存在する。
【0021】
配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を有するI−2ポリペプチドは、天然に存在するI−2ポリペプチド(配列番号2)またはこの配列に対して実質的なアミノ酸配列類似性を有する関連のポリペプチドであり得る。このような関連のポリペプチドは、C.pasteurianum配列(配列番号6)に対してよりも配列番号2のI−2ポリペプチドに対してより高い配列類似性を示し、そしてこれには、図1Aに示されるアミノ酸配列のアイソタイプ改変体またはホモログが含まれる。本明細書中で使用される場合、用語I−2ポリペプチドは、一般的に、配列番号2と、約50%より高い同一性、好ましくは約60%よりも高い同一性、より好ましくは約70%よりも高い同一性を有するアミノ酸配列を一般的に有するポリペプチドを記載し、そして、配列番号2と、約80%、約90%、約95%、約97%、または約99%よりも高いアミノ酸同一性を有するポリペプチドであり得る。このアミノ酸配列同一性は、デフォルトパラメーターでBLOSUM 62行列(matrix)を使用するCLUSTALWで決定される。C.pasteurianumタンパク質4(配列番号6)は、配列番号2のI−2ポリペプチドと約21%のアミノ酸同一性を有し、従って、本明細書中で規定されるようなI−2ポリペプチドではない。
【0022】
I−1核酸配列(配列番号3)は、対立鎖において2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。図1Bにおいて示される上部の鎖のI−1ORFは、原核生物転写因子ptxRとの相同性を有する115個のアミノ酸の推定ポリペプチド(配列番号4)をコードする。下部の鎖のORFは、114個のアミノ酸の推定ポリペプチド(配列番号5)をコードする。I−1コード核酸(配列番号3)はまた、関与したCD粘膜において優先的に見出される配列として、RDA分析によって単離された(実施例Iを参照のこと)。
【0023】
I−1ポリペプチドは、配列番号4または配列番号5と実質的に同じアミノ酸配列を有し得る。このようなI−1ポリペプチドは、天然に存在するI−1ポリペプチド(配列番号4または5)または、関連のポリペプチド(例えば、これらの配列の1つに対して実質的なアミノ酸配列類似性を有する、アイソタイプ改変体または異なる細菌種由来のホモログ配列)であり得る。本明細書中で使用される場合、用語I−1ポリペプチドは、一般的に、配列番号4または5と、約50%より高い同一性、好ましくは約60%よりも高い同一性、より好ましくは約70%よりも高い同一性を有するアミノ酸配列を一般的に有するポリペプチドを記載し、そして、配列番号4または5と、約80%、約90%、約95%、約97%、または約99%よりも高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドであり得る。このアミノ酸同一性は、デフォルトパラメーターでBLOSUM 62行列(matrix)を使用するCLUSTALWで決定される。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「実質的に同じアミノ酸配列」は、I−1ポリペプチドまたはI−2ポリペプチドを参照して用いられる場合には、図1Aもしくは図1Bに示されるような配列、または機能的に等価なアミノ酸配列であると当業者にみなされる、類似の非同一配列を意味することを意図する。例えば、I−1ポリペプチド(配列番号4または5)またはI−2ポリペプチド(配列番号2)と実質的に同じアミノ酸配列を有するアミノ酸配列は、改変されたポリペプチドが、I−1またはI−2の実質的に少なくとも1つの生物学的活性(例えば、以下にさらに記載される、免疫反応性または寛容原性活性)を保持するという条件で、それぞれ、配列番号4もしくは5、または配列番号2のアミノ酸配列と比較して、1以上の改変(例えば、アミノ酸の付加、欠失、または置換)を有し得る。アミノ酸配列間の実質的な類似性についての比較は、通常、約6〜100残基、好ましくは約10〜100残基、そしてより好ましくは約25〜35残基の配列で実施される。
【0025】
従って、制限された改変が、以下にさらに記載されるように、その生物学的機能を破壊することなく、I−1もしくはI−2ポリペプチドに対して、またはその免疫反応性フラグメントもしくは寛容原性フラグメントに対してなされ得ることが理解される。免疫反応性を破壊しないI−1もしくはI−2ポリペプチドの改変体、または寛容原性活性を破壊しないI−1もしくはI−2ポリペプチドの改変体が、本明細書中で使用されるような、用語I−1ポリペプチドまたはI−2ポリペプチドの意味に包含される。改変は、例えば、1以上のアミノ酸残基の付加、欠失、もしくは置換;アミノ酸の構造もしくは機能を模倣する化合物の置換;または、化学的部分(例えば、アミノ基またはアセチル基)の付加、であり得る。改変されたI−1もしくはI−2ポリペプチドまたはそれらのフラグメントの活性は、例えば、本明細書中に開示される免疫反応性または寛容原性活性についてのアッセイの1つを使用して、アッセイされ得る(以下を参照のこと)。
【0026】
本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントの特に有用な改変は、例えば、安定性の増加を付与する改変である。1以上のD−アミノ酸の組み込みは、ポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントの安定性を増加させるに有用な改変である。同様に、リシンの欠失または置換は、分解に対して保護することによって、安定性を増加させ得る。例えば、このような置換は安定性を増加させ得、従って、本明細書中に開示されるポリペプチド抗原の1つのバイオアベイラビリティを増加させ得る。
【0027】
I−2ポリペプチドおよびそのフラグメントは、I−2ポリペプチド(配列番号2)に選択的に結合する、実質的に精製された抗体物質を調製するために有用であり得る。抗体物質は、例えば、実質的に精製されたポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体物質であり得る。本発明の抗体物質は、例えば、罹患した患者の粘膜内におけるI−2ポリペプチドの存在または位置を決定するにおいて、および炎症性腸疾患を診断するにおいて、有用であり得る。本発明の実質的に精製された抗体物質は、例えば、クローン病を診断するためのELISAまたは免疫組織病理学アッセイにおいて、有用であり得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体物質(antibody material)」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに少なくとも約1×105-1のI−2ポリペプチドに対する選択的結合活性を保持する抗体のポリペプチドフラグメントを含むように、その最も広範な意味において使用される。当業者は、Fab、F(ab’)2およびFvフラグメントのような抗I−2抗体フラグメントが、I−2ポリペプチドに対する選択的結合活性を保持し得、従って、抗体の定義に含まれることを知る。さらに、用語抗体物質は、本明細書中で使用される場合、最少で1つのVHドメインおよび1つのLLドメインを含む、天然には存在しない抗体およびフラグメント(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖Fvフラグメント(scFv)(I−2ポリペプチドに選択的に結合する))を含む。このような天然には存在しない抗体は、固相ペプチド合成によって構築され得るか、組換え的に生成され得るか、または例えば、Borrebaeck(編)、Antibody Engineering(第2版)New York:Oxford University Press(1995)(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載されるような、可変性重鎖および可変性軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって獲得され得る。
【0029】
I−2ポリペプチド「に対して選択的な」抗体物質、またはI−2ポリペプチドに「選択的に結合する」抗体物質は、関連のないポリペプチドに対してよりもそのポリペプチドに対して、実質的により高い親和性で結合する。本発明の実質的に精製された抗体物質はまた、I−2ポリペプチドに対して特異的であり得、それにより、その結合親和性は、配列番号6〜8のような関連のポリペプチドに対してよりもI−2ポリペプチドに対して有意により高い。
【0030】
抗I−2抗体物質は、免疫原として、例えば、I−2融合タンパク質またはI−2ポリペプチド(配列番号2)の一部分をコードする合成ペプチドを使用して、調製され得る。当業者は、組換え的に生成され得る、精製されたI−2ポリペプチドまたはI−2のフラグメント(合成ペプチドのような、I−2のペプチド部分を含む)が、免疫原として使用され得ることを知る。I−2の非免疫原性のフラグメントまたは合成ペプチドは、そのハプテンを、キャリア分子(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))とカップリングすることによって、免疫原性になされ得る。さらに、種々の他のキャリア分子、およびハプテンをキャリア分子とカップリングするための方法が、例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988)(これは、本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、当該分野において周知である。
【0031】
用語「実質的に精製された」は、抗体物質を参照して本明細書中で使用される場合、その抗体物質が、細胞においてその抗体に通常付随する、ポリペプチド、核酸、および他の細胞性物質を実質的に欠いていることを意味する。I−2ポリペプチド(配列番号2)に選択的に結合する、特許請求される抗体物質はさらに、関連のない特異性の(すなわち、I−2ポリペプチドに選択的に結合しない)抗体物質を実質的に欠く。本発明の抗体物質は、例えば、ポリクローナル抗I−2抗血清のI−2アフィニティー精製によってか、ファージに提示される抗体をI−2ポリペプチド(配列番号2)に対してスクリーニングすることによってか、またはハイブリドーマから調製されるモノクローナル抗体として、実質的に精製された形態で調製され得る。
【0032】
本明細書中で開示されるように、I−2配列は、従来の条件下で飼育されたマウスにおいて存在し、そして用量依存性の増殖応答およびIL−10分泌を誘導する(実施例V)。本明細書中でさらに開示されるように、未処理および記憶CD4+T細胞集団の両方ともが、I−2に応答して、同時に増殖し、そしてIL−10を生成する(図8を参照のこと)。さらに、I−2応答は、MHCクラスII媒介性認識に依存性であるが、パラホルムアルデヒド固定細胞がI−2応答を誘導する能力によって示されるように、抗原のプロセシングを必要としない(図9を参照のこと)。これらの結果は、I−2が新規のスーパー抗原であることを実証し、そしてI−2スーパー抗原応答をブロックする方法が、クローン病を予防または改善し得ることを示す。
【0033】
従って、本発明は、配列番号2を有するI−2ポリペプチドに選択的に結合する薬剤の有効用量をIBDを有する患者に投与することによって、この患者を処置する方法を提供する。本発明の方法において、有用な薬剤は、例えば、実質的に精製された抗体物質(例えば、ポリクローナル抗体物質またはモノクローナル抗体物質)であり得、これは、配列番号2を有するI−2ポリペプチドに選択的に結合する。本発明の方法は、IBDを有する患者(例えば、クローン病を有する患者)の処置に有用である。
【0034】
配列番号2を有するI−2ポリペプチドによって誘導されるスーパー抗原応答を阻害することによって、IBDを有する患者を処置する方法が、本発明によってさらに提供される。そのようなスーパー抗原応答は、例えば、T細胞増殖またはIL−10分泌であり得る。本発明の方法は、クローン病を有する患者のスーパー抗原応答の阻害に特に有用であり得る。
【0035】
本明細書中に使用される場合、用語「スーパー抗原応答」は、T細胞のスーパー抗原に対する応答をいい、そして一般的に増殖応答である。とりわけ既知の最も強力なT細胞マイトジェンであるスーパー抗原は、T細胞レセプターのVβドメイン中の残基および抗原結合裂溝の外側のクラスII MHC分子中の残基に結合する。従って、スーパー抗原は、抗原独立な様式でT細胞とクラスII MHC分子を架橋するように作用し得、そして特定のVβドメインを有するT細胞レセプターを発現する全てのT細胞を活性化し得る。
【0036】
用語、阻害(阻害する)は、本明細書中でスーパー抗原応答を参照して使用される場合、配列番号2を有するI−2スーパー抗原によって誘導される特異的応答の部分的または完全な減少をいう。本明細書中の実施例Vに開示されるように、I−2スーパー抗原は、増殖応答ならびにIL−10分泌を生じる。従って、増殖応答またはIL−10分泌における部分的または完全な減少は、本発明の方法において有用な薬剤を同定するために使用され得る。
【0037】
本発明はさらに、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸配列を有する、単離された核酸分子を提供する。本発明の単離された核酸分子は、例えば、配列番号1の核酸配列を有し得る。これらの核酸分子は、例えば、組換えポリペプチドを産生する際およびI−2 mRNA発現を検出するためのプローブとして有用である。配列番号1のヌクレオチド部分はまた、例えば、PCR分析のためのプライマーとして有用である(実施例1を参照のこと)。
【0038】
本発明の単離された核酸分子としては、例えば、I−2ポリペプチドホモログをコードする核酸分子、関連するが異なりかつ遺伝子暗号の縮重に起因して配列番号2のポリペプチドをコードする核酸分子、および関連するが異なりかつ免疫反応性または免疫寛容活性を示す配列番号2とは異なるI−2ポリペプチドをコードする核酸分子が挙げられる。
【0039】
本発明の方法は、炎症性腸疾患(これは、クローン病および潰瘍性結腸炎の広範な分類を含む名称である)の診断および処置に関する。クローン病(限局性腸炎)は、胃腸管の任意の部分を含み得る慢性炎症の疾患である。通常、小腸(回腸)および盲腸の遠位部分が冒される。別の場合、この疾患は、小腸、結腸または肛門直腸領域に限定される。クローン病は、時々、十二指腸および胃、そしてより希に食道および口腔を含む。
【0040】
クローン病の可変性臨床発現は一部、この疾患の変化する解剖学的局在の結果である。CDの最も頻繁な症状は、腸の痛み、下痢および回帰熱である。例えば、CDは通常、腸閉塞またはフィステル(これは、腸の疾患ループの間の異常な経路である)と関連する。クローン病はまた、目、関節および皮膚の炎症;肝臓疾患;腎臓結石またはアミロイド症のような合併症を含む。さらに、CDは、腸癌の危険性の増加と関連する。
【0041】
いくつかの特徴が、クローン病の病理に特徴的である。経壁炎症として公知のCDと関連する炎症は、腸壁の全ての層を含む。例えば、典型的には腸壁にわたってもまた表れる線維症を伴う、肥厚および水腫は、長期間の疾患にもまた存在する。CDに特徴的な炎症はまた、炎症組織のセグメントにおいて不連続であり(「スキップ病巣」として公知)、これは明らかに正常な腸によって分離されている。さらに、直線潰瘍形成、水腫、および介在組織の炎症は、CDの特徴である腸粘膜の敷石状概観を導く。
【0042】
クローン病の特徴は、炎症細胞の離散性凝集(肉芽種として公知)の存在であり、これは、一般的に粘膜下組織で見出される。いくつかのクローン病の場合は、典型的な離散性肉芽腫を示すが、なかには散在性肉芽腫性反応または非特異的経壁炎症を示すものもある。結論として、離散性肉芽腫は、CDの指標であるが、肉芽腫がないこともまたこの疾患と一致する。従って、肉芽腫の存在よりも、経壁炎症または不連続炎症が、クローン病の好ましい診断指標である(RubinおよびFarber,Patholoqy(第2版)Philadelphia:J.B.Lippincott Company(1994)(これは、本明細書中に参考として援用される))。
【0043】
潰瘍性結腸炎(UC)は、絞めつける腸の痛みを伴う慢性的な下痢、直腸出血、ならびに血液、膿および粘液のゆるい排泄によって特徴付けられる大腸の疾患である。潰瘍性結腸炎の発現は広く変化する。増悪および寛解のパターンは、ほとんどのUC患者(70%)の臨床コースを分類するが、寛解を伴わない連続した症状が、UCを有するいくらかの患者に存在する。UCの局所または全身性の合併症としては、関節炎、目の炎症(例えば、ブドウ膜炎)、皮膚潰瘍および肝疾患が挙げられる。さらに、潰瘍性結腸炎、そして特に、長期間の伸展した疾患は、結腸癌腫の危険性の増加と関連する。
【0044】
いくつかの病理特徴は、他の炎症性腸疾患に対する識別においてUCを特徴付ける。潰瘍性結腸炎は、散在性疾患である。この疾患は、通常、直腸の最も遠位部分から可変性遠隔に近位に広がる。用語、左側結腸炎は、結腸の遠位部分を含む炎症を記載し、左結腸曲まで広がる。直腸回避または右側結腸(近位部分)の単独の関与は、潰瘍性結腸炎では珍しい。潰瘍性結腸炎の炎症プロセスは、結腸に限定され、例えば、小腸、胃または食道を含まない。さらに、潰瘍性結腸炎は、一般的に腸壁のより深い層を回避する粘膜の表面炎症によって識別される。変性した腸の陰窩が好中球で充填される陰窩膿瘍がまた、潰瘍性結腸炎の典型である(RubinおよびFarber、前出、1994)。
【0045】
直腸の頻繁な回避を伴う斑状疾患であるクローン病と比較して、潰瘍性結腸炎は、通常近位よりも遠位でより重篤である結腸の連続性炎症によって特徴付けられる。潰瘍性結腸炎における炎症は、通常粘膜層に対して制限されかつ好中球および陰窩膿瘍を伴う急性炎症性浸潤によって特徴付けられる点で、表層性である。対照的に、クローン病は、肉芽腫(いつもではないが、しばしば存在する)を伴う腸壁の全体の厚さを冒す。回盲弁で終わる疾患またはそれに対して遠位の結腸における疾患は、潰瘍性結腸炎の指標であるが、末端回腸の関与、栗石様の出現、離散性潰瘍またはフィステルは、クローン病を示唆する。クローン病の潰瘍性結腸炎からの識別に役立つ特徴を、表1に要約する(RubinおよびFarber、前出、1994)。
【0046】
【表1】

【0047】
特定の免疫媒介障害(全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫肝炎を含む)は、自己抗体産生の異なるパターンと密接に関連する。疾患特異的マーカー抗体がまた、IBD中で観察された。潰瘍性結腸炎の場合、核周囲染色パターン(pANCA)を生成する(例えば、アルコール固定好中球の間接的免疫蛍光顕微鏡観察の際)抗好中球細胞質抗体は、UC患者の68〜80%に上昇し、そして結腸の他の障害において低い頻度であった。クローン病において、Saccharomyces uvarum(ビール酵母)の細胞壁マンナン多糖類に対する血清反応性は、クローン病を有する個体の大多数に対する血液学マーカーである(Sendidら、Clin.Diag.Lab.Immunol.,3:219−226(1996)(これは、本明細書中に参考として援用される))。
【0048】
本明細書中に開示されるように、ELISA分析によって、正常な個体と比較して、クローン病を有する患者においてGST−I−2融合ポリペプチド(配列番号2)に対する増加したIgG血清反応性が示された(図4Aを参照のこと)。図4Bに示されるように、クローン病患者の10人のうち9人が、正常集団に関する平均値を超えた2つの標準偏差よりも、より大きいGST−I−2融合ポリペプチドに対するIgA血清反応性を有した。対照的に、正常血清サンプルは、このカットオフを超えた抗I−2 IgA反応性は含まなかった。抗I−2血清IgA反応性はまた、潰瘍性結腸炎患者と比較して、クローン病患者からのサンプルにおいて平均して有意に高かった。これらの結果により、I−2ポリペプチド(配列番号2)に対する反応性が、クローン病の、正常な個体およびUCを有する個体からの区別に使用され得ることが示された。
【0049】
上記の知見に基づいて、本発明は、被験体の炎症性腸疾患(IBD)の診断方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:サンプルを被験体から得る工程;このサンプルをI−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントと、I−2ポリペプチドもしくはその免疫反応性フラグメントとI−2ポリペプチドに対する抗体との複合体形成に適した条件下で、接触させる工程;および、その複合体の存在または不在を検出する工程。ここで、複合体の存在は、被験体がIBDを有していることを示す。炎症性腸疾患の診断のための本発明の方法は、例えば、クローン病の診断に有用であり得る。複合体の存在または不在は、例えば、I−2ポリペプチドに対する抗体のクラス決定部分に特異性を有する検出可能な二次抗体を用いて検出され得る。
【0050】
本明細書中に使用される場合、用語「被験体」は、炎症性腸疾患を有し得る任意の動物(ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ、ラットまたはマウスを含み、特にヒト)を意味する。被験体は、一般的に、1つ以上の潰瘍性結腸炎またはクローン病の症状を有する。
【0051】
本発明の方法に有用なサンプルは、抗体を有する任意の生物学的な液体(例えば、全血、血漿、唾液または他の体液もしくは組織などであり、好ましくは血清)から得られ得る。本発明の方法に従って評価されるサンプルは、任意のそのような被験体から得られ得る。
【0052】
本明細書中に使用される場合、用語「複合体」は、「免疫複合体」と同意義であり、そして抗原(例えば、タンパク質またはペプチド)と抗体との間の特異的結合から生じる二つ以上の分子の凝集を意味する。本発明の方法において、複合体は、抗体に対するI−2ポリペプチドの特異的結合によって形成される。
【0053】
本発明の方法において、複合体は、I−2ペプチドに対する抗体のクラス決定部分に特異性を有する、検出可能な二次抗体を用いて検出され得る。そのような二次抗体は、例えば、抗IgA二次抗体、抗IgG二次抗体または抗IgA二次抗体および抗IgG二次抗体の組合せであり得る。
【0054】
本明細書中に使用される場合、用語「二次抗体」は、配列番号2のアミノ酸配列を実質的に有するI−2ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合する、抗体または抗体の組合せを意味する。好ましくは、二次抗体がI−2抗原の一次抗体への結合と競合しないことを、当業者は理解する。二次抗体は、I−2ポリペプチドに特異的に結合する抗体の任意のエピトープに結合し得る。特に有用な二次抗体は、一次抗体のクラス決定部分に対する特異性を有する、抗IgAまたは抗IgG抗体である。有用な二次抗体は、サンプルが得られた種に特異的である。例えば、ヒト血清が評価されるサンプルである場合、マウス抗ヒトIgAまたはIgGは、有用な二次抗体であり得る。本発明の方法に有用であり得る異なる抗体の組み合わせはまた、用語、二次抗体の意味の内に含まれる。但し、組合せのうちの少なくとも1つの抗体が、I−2ポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合する。
【0055】
本明細書中に使用される場合、用語「クラス決定部分」は、二次抗体に関して使用される際、アイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)を決定する抗体の重鎖定常領域配列を意味する。従って、例えば、IgA分子のクラス決定部分に対する特異性を有する二次抗体は、他の抗体アイソタイプに優先してIgAに結合する。
【0056】
本発明で有用な二次抗体は、商業的にか、または当該分野で周知の技術によって入手され得る。このような抗体は、ポリクローナル、または好ましくはモノクローナル抗体であり得る。例えば、IgG反応性ポリクローナル抗体は、本明細書中で参考として援用されるHarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Laboratory(1988)で記載されたように、ウサギ、ヤギ、ヒツジまたはげっ歯類のような動物の抗血清において、抗体の産生を刺激するために、IgGまたはIgGのFcフラグメントを免疫原として使用して調製され得る。特定の抗原エピトープに結合し得るイディオトープの1つの種のみを含む抗体分子の集団であるモノクローナル二次抗体はまた、慣用的な方法(例えばHarlowおよびLane、前出、1988を参照のこと)によって産生され得るか、または商業的に入手され得る。
【0057】
「検出可能な二次抗体」という用語は、分析的方法によって検出または測定され得る、上記で定義したような二次抗体を意味する。従って、二次抗体という用語は、検出または測定され得る検出可能なマーカーで直接または間接的に標識され、そして酵素結合イムノソルベント検定法、ラジオイムノアッセイ、放射状免疫拡散アッセイ、またはウェスタンブロッティングアッセイのような簡便なアッセイで使用される抗体を含む。二次抗体は、例えば酵素、放射性同位元素、蛍光色素、または化学発光マーカーで標識され得る。さらに、検出可能なマーカーが二次抗体に結合するように、二次抗体を、ビオチン−アビジン結合を用いて検出可能にし得る。しかし、二次抗体の標識化は、二次抗体のI−2ポリペプチドへの結合を損なってはならない。所望される場合には、複数の抗体系を、上記で議論したような二次抗体として使用し得る。そのような系では、少なくとも1つの抗体が1次抗I−2抗体に結合し得、そして少なくとも1つの抗体が分析的方法によって容易に検出または測定され得る。
【0058】
二次抗体を、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、またはウレアーゼのような酵素で標識することによって検出可能にし得る。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出系は、例えば色素生産性基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に使用され得、TMBは、過酸化水素の存在下で450nmでの吸光度を測定することによって検出可能な可溶性産物を産生する。アルカリホスファターゼ検出系は、例えば色素生産性基質p−ニトロフェニルホスフェートと共に使用され得、p−ニトロフェニルホスフェートは、405nmでの吸光度を測定することによって容易に検出可能な可溶性産物を産生する。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出系は、色素生産性基質o−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)と共に使用され得、ONPGは、410nmでの吸光度を測定することによって検出され得る可溶性産物を産生する。または、ウレアーゼ検出系は、尿素−ブロモクレゾールパープル(Sigma Immunochemicals、St.Louis、MO)のような基質と共に使用され得る。二次抗体を、当該分野で周知の方法によって酵素に結合し得る(HarlowおよびLane、前出、1988)か、または多くの商業的供給源から入手され得る。例えば、ヤギF(ab’)2抗−ヒトIgG−アルカリホスファターゼは、Jackson Immuno−Research(West Grove、PA)から購入され得る、有用な検出可能な二次抗体である。
【0059】
二次抗体をまた、蛍光色素で標識することによって検出可能にし得る。そのような蛍光色素は、光または他のエネルギー源による励起の後、紫外または可視波長の光を放射する。例えばDAPI、フルオレセイン、Hoechst 33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、テキサスレッド、またはリサミンが、二次抗体に結合し得、そして複合体の存在または不在を検出するために使用され得る蛍光色素である。特に有用な蛍光色素は、フルオレセインまたはローダミンである。これらまたは他の適切な蛍光色素を結合体化および使用する方法は、例えば、Van VunakisおよびLangone、Methods in Enzymology、第74巻、パートC(1991)に記載されている(これは本明細書中で参考として援用される)。蛍光色素に結合した二次抗体も、商業的供給源から入手され得る。例えば、ヤギF(ab’)2抗−ヒトIgG−FITCは、Tago Immunologicals(Burlingame、CA)から入手可能である。
【0060】
二次抗体はまた、化学発光マーカーで標識され得る。そのような化学発光二次抗体は、I−2ポリペプチドを含む複合体の、高感度の非放射活性検出のために都合良く、そしてAmersham Lifesciences,Inc.(Arlington Heights、IL)のような種々の供給源から商業的に入手され得る。
【0061】
二次抗体をさらに、放射性同位元素で標識することによって検出可能にし得る。ヨウ素−125標識二次抗体は、特に有用な検出可能な二次抗体である(例えば、HarlowおよびLane、前出、1988を参照のこと)。
【0062】
検出可能な二次抗体からのシグナルを、例えば色素生産性基質からの色を検出するための分光光度計;特定波長の光の存在下で蛍光を検出するための蛍光計;またはヨウ素−125を検出するガンマカウンターのような、放射線を検出するための放射線カウンターを用いて分析し得る。酵素結合二次抗体の検出のために、例えばEMAX Microplate Reader(Molecular Devices、Menlo Park、CA)のような分光光度計を、製造会社の指示に従って用いて、定量的分析を行い得る。所望される場合には、本発明のアッセイは、自動化され得るか、または自動装置(robotically)によって行い得、そして複数のサンプルからのシグナルを同時に検出し得る。
【0063】
本発明のアッセイは、本明細書中で参考として援用される、Davidらに対して1983年3月8日に発行された米国特許第4,376,110号に記載されたように、順方向、逆方向、または同時であり得る。順方向アッセイでは、各試薬を連続的に本発明のI−2ポリペプチドに接触させる。所望される場合には、未結合試薬からの結合試薬の分離を、次の試薬を加える前に行い得る。逆方向アッセイでは、全ての試薬をI−2ポリペプチドと接触させる前に前もって混合する。改変逆方向アッセイが、本明細書中で参考として援用される、El Shamiらに対して1988年10月18日に発行された米国特許第4,778,751号に記載されている。同時アッセイでは、全ての試薬を別々であるが同時期に本発明のI−2ポリペプチドと接触させる。試薬は、本発明のアッセイを実施するのに有用なあらゆる成分、例えばサンプル、I−2ポリペプチド、検出可能な二次抗体、洗浄緩衝液または他の溶液である。
【0064】
複合体からの結合していない二次抗体の除去を含む、本明細書中で記載された種々のアッセイ形式の分離工程は、当該分野で公知の方法によって実施し得る(HarlowおよびLane、前出、1988)。例えば、適切な緩衝液による洗浄に続いて、ろ過、吸引、または磁気分離を行い得る。I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントが微小粒子のような粒状支持体に固定化されている場合、その粒子材料を遠心分離し得、所望される場合には続いて洗浄液の除去を行い得る。I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントが膜、フィルターまたはウェルに固定化されている場合、真空または液体吸着装置をその膜、フィルター、ウェルの反対側に適用して、複合体から洗浄液を除去し得る。
【0065】
本発明はまた、サンプルを個体から得ること;サンプルをI−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントと、I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントとI−2ポリペプチドに対する抗体との複合体を形成するに適切な条件下で接触させること;そして複合体の存在または不在を検出することによって、個体のIBDに対する感受性を決定する方法を提供する。ここで、複合体の存在は、その個体がIBDに感受性であることを示す。
【0066】
本明細書中で使用する場合、「個体」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、ウサギ、ラットまたはマウスを含む、炎症性腸疾患を有し得るあらゆる動物を意味するが、但しこの動物は、本明細書中で開示される臨床的、内視鏡的、および組織病理学的パラメーターで定義されるような炎症性腸疾患を有さない。本発明の方法によってアッセイされるサンプルは、そのようなあらゆる個体から入手され得る。
【0067】
本明細書中で使用する場合、I−2ポリペプチドとI−2ポリペプチドに対する抗体との複合体の存在によって示されるような、「IBDに対する感受性の増加した」という用語は、I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントと接触させた時に複合体を形成しないサンプルが得られる個体と比べて、IBDを引き起こす因子に対して抵抗する能力が減少していることを意味する。個体における増加したIBDに対する感受性の増加は、必ずしもその個体がIBDを発症することを意味しない。しかし、個体における増加したIBDに対する感受性の増加は、将来IBDを有する可能性の増加と関連する。
【0068】
I−2ポリペプチドを参照して使用する場合、「免疫反応性フラグメント」という用語は、抗I−2抗体陽性サンプルがI−2ポリペプチドと複合体を形成する能力によって定義されるような免疫反応性を有する、I−2ポリペプチドのペプチドまたはポリペプチド部分を意味する。従って、本明細書中で使用する場合、「I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメント」という用語は、配列番号2として提供されたアミノ酸配列の一部分と実質的に同じアミノ酸配列、およびクローン病患者由来のI−2反応性血清サンプルのような、抗I−2抗体陽性サンプルと複合体を形成する能力によって定義されるような免疫反応性を有するペプチドまたはポリペプチドを意味する。一般的に、免疫反応性フラグメントは、I−2ポリペプチドの約3アミノ酸から全長までを有する。I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントは、例えば少なくとも5、8、10、12、15、18、20、または25アミノ酸を有し得る。例えば、I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントは、5〜50アミノ酸、8〜50アミノ酸、または10〜50アミノ酸であり得る。より好ましくは、免疫反応性フラグメントは、8〜20アミノ酸または10〜20アミノ酸を有する。最も好ましくは、免疫反応性フラグメントは、12〜20アミノ酸または15〜20アミノ酸を有する。
【0069】
I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントは、I−2反応性サンプル、例えばI−2反応性CD患者血清サンプルと複合体を形成する能力によって同定され得る。例えば、I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントは、I−2反応性CD血清と接触させた場合に複合体を形成する能力によって同定され得る。抗原と抗I−2血清サンプルとの間の複合体形成についてのアッセイは、本明細書中で開示される。ELISAアッセイは、I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントを同定するのに特に有用であり得る(実施例IIBを参照のこと)。
【0070】
IBDと関連する微生物配列の同定は、IBDの病因における微生物を含意し、そして炎症性腸疾患を改善する有益な試薬を提供する。さらに、本明細書中で開示されるように、I−2ポリペプチドは、GST−I−2融合ポリペプチド(配列番号2)に反応したマウスT細胞の増殖によって示されるように、T細胞応答を誘発し得、I−2ポリペプチド抗原が炎症性腸疾患の病因に寄与し得ることを示す。IBD関連I−2配列の同定および単離に基づいて、IBDを有する患者において寛容を誘導する方法、および健康な個体においてIBDを予防する方法が提供される。
【0071】
従って、本発明は、IBDを有する患者に、有効用量のI−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントを投与することによって、炎症性腸疾患を有する患者において寛容を誘導する方法を提供する。本発明の方法は、クローン病を有する患者を治療するのに特に有用であり得る。寛容を誘導する本発明の方法において、投与されるI−2ポリペプチドは、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。
【0072】
本明細書中で使用する場合、「炎症性腸疾患を有する患者」という用語は、クローン病または潰瘍性結腸炎を有する患者を意味する。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「有効用量」という用語は、IBDを有する患者において寛容を誘導するのに有用なI−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントの量を意味する。経口的寛容の誘導のために、例えば複数の少ない経口用量が投与されても、または多い用量が投与されても良い。そのような用量は、例えば動物モデルにおける寛容の誘導から推定され得る(例えばTrenthamら、Science 261:1727−1730(1993)を参照のこと、これは本明細書中で参考として援用される)。
【0074】
寛容を誘導のためのI−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントの有効用量は、当該分野で周知の方法によって投与され得る。経口的寛容は、当該分野で自己免疫疾患を処置する方法として十分に認識されている(例えば、Weiner、Hospital Practice、53−58頁(9月15日、1995)を参照のこと、これは本明細書中で参考として援用される)。例えば、経口投与された自己抗原は、いくつかの実験的自己免疫モデルを、疾患および抗原特異的な方法で抑制する。その疾患としては、実験的自己免疫脳脊髄炎、ブドウ膜炎、および筋無力症、コラーゲンおよびアジュバント誘発性関節炎、およびNODマウスにおける糖尿病が挙げられる(例えば、Weinerら、Ann.Rev.Immunol.12:809−837(1994)を参照のこと、これは本明細書中で参考として援用される)。さらに、経口的寛容の臨床試験は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、およびブドウ膜炎の処置においてポジティブな結果を生じた。さらに、I−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントの非経口投与を、寛容を誘導するために使用し得る。例えば、皮下注射を、I−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントを、IBD患者、例えばクローン病を有する患者に送達するために使用し得る(Johnson、Ann.Neurology 36(補遺):S115−S117(1994)、これは本明細書中で参考として援用される)。
【0075】
本発明のI−2ポリペプチドを参照して使用する場合、「寛容原性フラグメント」という用語は、単独または別の分子と組み合わせてかのいずれかで、減少した免疫学的応答を生じるその能力によって定義されるような寛容原性活性を有するポリペプチドのペプチドまたはポリペプチド部分を意味する。従って、I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、配列番号2の一部分と実質的に同じアミノ酸配列を有し、そして単独または別の分子と組み合わせてかのいずれかで、減少した免疫学的応答を生じるその能力によって定義されるような寛容原性活性を有する、ペプチドまたはポリペプチドである。I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、約3アミノ酸〜約90アミノ酸を有し得る。I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、例えば少なくとも5、8、10、12、15、18、20、または25アミノ酸を有し得る。例えば、I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、5〜50アミノ酸、8〜50アミノ酸、または10〜50アミノ酸を有し得る。より好ましくは、寛容原性フラグメントは、8〜20アミノ酸または10〜20アミノ酸を有する。最も好ましくは、寛容原性フラグメントは12〜20アミノ酸または15〜20アミノ酸を有する。
【0076】
I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、T細胞増殖またはサイトカイン分泌アッセイのようなインビトロアッセイ、および炎症性腸疾患のマウスモデルにおける寛容の誘導のようなインビボアッセイを含む、種々のアッセイを用いて同定され得る。例えば、T細胞増殖アッセイは、寛容原性活性の予測として当該分野で十分に認識されている(例えばMiyaharaら、Immunol.86:110−115(1995)またはLundinら、J.Exp.Med.178:187−196(1993)を参照のこと、これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される)。T細胞増殖アッセイは、T細胞を、正常脾臓細胞のような照射した抗原提示細胞と、マイクロタイターウェル中で3日間、アッセイされる種々の濃度のI−2ポリペプチドのフラグメントと共に培養すること;3H−チミジンを添加すること;およびDNAへの3H−チミジンの取り込みを測定することによって行い得る。そのようなアッセイにおいて、I−2ポリペプチドのフラグメントを、例えば20μg/mlおよび40μg/mlの濃度で活性を試験し得る。
【0077】
I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、当該分野で公知のT細胞サイトカイン分泌アッセイを用いて同定し得る。例えば、T細胞を、照射した抗原提示細胞と共に、種々の濃度の目的のフラグメントを有するマイクロタイターウェル中で培養し得、そして3日後にその培養上清を、本明細書中で参考として援用されるCzerinskyら、Immunol.Rev.119:5−22(1991)で記載されたように、IL−2、IL−4、またはIFN−γに関してアッセイし得る。
【0078】
T細胞増殖アッセイまたはサイトカイン分泌アッセイに使用する一次T細胞は、例えば固有層または末梢血から単離し得る。さらに、寛容原性活性に関するインビトロアッセイに使用するT細胞の簡便な供給源は、クローン病患者のようなIBD患者から、IBDのマウスモデルから、または本発明のI−2ポリペプチドで免疫した健康動物から確立したT細胞株であり得る。I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントを同定するのに使用する好ましいT細胞の供給源は、クローン病患者である。
【0079】
T細胞株を、CDまたはUCを有する患者から、例えばTリンパ球を約1μg/mlの組換えI−2ポリペプチドまたはGST−I−2と、低濃度の増殖支持IL−2(約10μg/ml)の存在下で培養することによって確立し得る。本明細書中で参考として援用される、Nandaら、J.Exp.Med.176:297−302(1992)で記載されたように、T細胞株を、Tリンパ球を抗原提示細胞とともに培養すること、および細胞に4〜5日サイクルで交互にIL−2およびI−2ポリペプチドまたはIL−2単独のいずれかを供給することによって確立し得る。I−2ポリペプチドの存在に依存して、信頼性良く増殖する細胞株へと発達する細胞株は、I−2の寛容原性フラグメントを同定するのに特に有用である。小腸粘膜からのT細胞株の確立が、例えば、Lundinら、前出、1993に記載されている。I−2ポリペプチドの存在に依存し、そしてI−2寛容原性フラグメントを同定するのに有用なT細胞株を同様に調製し得る。
【0080】
I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントをまた、減少した免疫学的応答で示されるような、インビボで寛容を誘導するその能力によって同定し得る。減少した免疫学的応答は、上記で記載したような減少した増殖応答またはサイトカイン分泌応答のような減少したT細胞応答、または抗原に対する減少した抗体力価であり得る。新生仔または成体のマウスを、例えばI−2ポリペプチドのフラグメントで寛容化し得、そしてT細胞応答または抗I−2ポリペプチド抗体力価を、免疫による抗原投与の後アッセイし得る。例えば、新生仔マウスを、誕生から48時間以内に、不完全フロイントアジュバントで乳化した約100μgのI−2ポリペプチドフラグメントの腹腔内投与によって寛容化し、そして続いて約8週齢で、I−2ポリペプチドで免疫し得る(例えば、Miyahara、前出、1995を参照のこと)。成体マウスを、約0.33mgのI−2ポリペプチドフラグメントを3日間毎日静脈内投与して寛容化(全用量1mg)し、そして1週間後I−2ポリペプチドで免疫し得る。寛容原性活性を示す、減少した増殖またはサイトカイン分泌のような減少したT細胞応答を、免疫から10日後に採取したT細胞を用いて測定し得る。さらに、寛容原性活性をも示す減少した抗I−2ポリペプチド抗体力価を、免疫から4〜8週間後に採取した血液を用いてアッセイし得る。T細胞応答または抗I−2ポリペプチド抗体力価をアッセイする方法は、上記で記載され、そして当該分野で周知である。
【0081】
I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントはまた、炎症性腸疾患のマウスモデルを用いて同定され得る。IBD様疾患を有する新生仔または成体のマウスを、上記で記載したようにI−2ポリペプチドのフラグメントで寛容化し得、そしてT細胞応答または抗I−2ポリペプチド抗体力価をアッセイし得る。減少したT細胞応答または抗原に対する減少した抗体力価は、減少した免疫学的応答を示し、そして従って、I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントを同定するために役立つ。さらに、I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、IBDのマウスモデルにおいて結腸炎の頻度、発症の時間または重症度を低下させる能力によって同定され得る。
【0082】
いくつかのよく受け入れられた炎症性腸疾患のマウスモデルが、本発明のI−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントを同定するのに有用であり得る。例えば、Gタンパク質Gi2のαサブユニットをコードする遺伝子の標的破壊を有するマウスは、ヒト腸疾患の特徴を示す周知のモデルである(Hornquistら、J.Immunol.158:1068−1077(1997);Rudolphら、Nat.Genet.10:143−150(1995)(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。本明細書中で参考として援用されるKuehnら、Cell 75:263−274(1993)で記載されたようなIL−10欠損マウス、および本明細書中で参考として援用されるSadlackら、Cell 75:253−261(1993)で記載されたようなIL−2欠損マウスもまた、結腸炎様の疾患を有し、そして本発明のI−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントを同定するのに有用である。さらに、本明細書中で参考として援用されるMombaertsら、Cell 75:275−282(1993)で記載されたような、T細胞レセプター(TCR)α、TCRβ、TCRβ×σ、またはクラスII主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)に変異を有するマウスは、炎症性腸疾患を発現し、そして従って、I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントを同定するのに有用である。同様に、本明細書中で参考として援用されるPowrieら、Immunity 1:553−562(1994)で記載されたような、炎症性腸疾患のよく受け入れられたモデルである、CD45RB CD4+T細胞で再構成したSCIDマウスで、フラグメントを寛容原性活性に関してアッセイし得る。IBDのさらなる動物モデルもまた、当該分野で周知である(例えばPodolsky、Acta Gastroenterol.Belg.60:163−165(1997);およびBregenholtら、APMIS 105:655−662(1997)を参照のこと(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。従って、I−2ポリペプチドの寛容原性フラグメントは、本明細書中で開示されるインビトロもしくはインビボでのアッセイによって、または当該分野で周知の別のアッセイによって容易に同定され得る。
【0083】
I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントまたは寛容原性フラグメントは、目的のペプチドのまたはランダムペプチドの、大きなコレクションまたはライブラリーを、免疫反応性または寛容原性活性に関してスクリーニングすることによって同定し得る。例えば、I−2ポリペプチドの全配列にわたるペプチドのパネルを、上記で記載したように免疫反応性または寛容原性活性に関してスクリーニングし得る。そのようなパネルは、本明細書中で参考として援用されるGeysenら、Science 235:1184(1987)で記載されたような、Mimotope切断可能ピン技術(Mimotope cleavable pin technology)(Cambridge Research Biochemicals、Wilmington、DE)を用いた、それぞれ3残基または5残基のずれで重複する、I−2ポリペプチド(配列番号2)の配列にわたる15マーペプチドのパネルであり得る。続いて、パネルを、上記で記載したアッセイのうちの1つを用いて免疫反応性または寛容原性活性に関してスクリーニングする(例えば、Miyaharaら、前出、1995を参照のこと(これは本明細書中で参考として援用される))。スクリーニングされるペプチドのライブラリーはまた、配列番号2のアミノ酸配列と関連するが、配列番号2とは異なる1つ以上のアミノ酸を有するペプチドの集団であり得る。
【0084】
スクリーニングされるさらなるペプチドは、例えば、ペプチドおよびペプチド模倣物分子の、タグ化された化学的ライブラリーを含む。ペプチドライブラリーはまた、ファージディスプレイ技術によって産生されたペプチドライブラリーを含む。ファージディスプレイ技術は、ファージ表面におけるペプチド分子の発現、ならびにタンパク質リガンドをそれをコードする核酸と結合しているか、またはそれと結合させ得る他の方法論を含む。発現されるペプチドの集団を多様化させるベクターおよび方法を含む、ファージディスプレイライブラリーの産生方法は、当該分野で周知である(例えば、SmithおよびScott、Methods Enzymol.217:228−257(1993);ScottおよびSmith、Science 249:386−390(1990);およびHuse、第WO91/07141号および第WO91/07149号を参照のこと(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。これらまたは他の周知の方法を、免疫反応性または寛容原性活性に関して、例えば、開示されたアッセイのうちの1つでスクリーニングされ得る、ファージディスプレイライブラリーを産生するのに使用し得る。所望される場合には、ペプチドの集団を活性に関してひとまとめにアッセイし得る。例えば、I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントを同定するために、ペプチドの集団を、抗I−2ポリペプチド反応性を含むサンプルと複合体を形成する能力に関してアッセイし得る;活性な集団をさらに分けて、そして集団から免疫反応性フラグメントを単離するためにアッセイを繰り返す。
【0085】
I−2ポリペプチドの免疫反応性フラグメントまたは寛容原性フラグメントはまた、例えば化学的切断またはタンパク質分解切断によって産生されたポリペプチドのフラグメントをスクリーニングすることによって同定され得る。化学的切断方法およびタンパク質分解切断方法、ならびに得られたタンパク質フラグメントの精製方法は、当該分野で周知である(例えば、Deutscher、Methods in Enzymology 第182巻、「Guide to Protein Purification」、San Diego:Academic Press,Inc.(1990)を参照のこと(これは本明細書中で参考として援用される))。例えば、臭化シアンのような化学物質、またはトリプシン、キモトリプシン、V8プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼLys−C、エンドプロテイナーゼArg−CもしくはエンドプロテイナーゼAsp−Nのようなプロテアーゼを、本明細書中で開示されたアッセイのうちの1つを用いて免疫反応性または寛容原性活性に関してスクリーニングされ得る、I−2ポリペプチドの簡便なフラグメントを産生するために使用し得る。
【0086】
本明細書中で使用する場合、「フラグメント」という用語は、ペプチド、ポリペプチド、または天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸もしくは化学的に修飾したアミノ酸を含む化合物を意味する。I−2ポリペプチドの免疫反応性または寛容原性フラグメントはまた、ペプチド模倣物が本明細書中で定義されたような免疫反応性または寛容原性活性を保持するならば、ペプチド模倣物であり得る。ペプチド模倣物は、アミノ酸配列を有するペプチドの構造を模倣する非アミノ酸化学構造物である。そのような模倣物は一般的に、そのペプチド対応物で見出されるものと同じ空間的配置で、大きさ、電荷、または疎水性のような同様の物理的特徴を示すものとして特徴付けられる。ペプチド模倣物の特定の例は、1つ以上のアミノ酸間のアミド結合が、例えば、炭素−炭素結合または当該分野で周知の他の結合で置換されている化合物である(例えば、Sawyer、Peptide Based Drug Design、ACS、Washington(1995)を参照のこと(これは、本明細書中で参考として援用される))。
【0087】
本明細書中で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、他に述べなければ、L−アミノ酸およびD−アミノ酸を含む、天然に存在する20個のアミノ酸のうちの1つをいう。アミノ酸という用語はまた、アミノ酸アナログ、ノルロイシンのような通常タンパク質には組み込まれない天然に存在するアミノ酸を含む化学的に修飾されたアミノ酸のような化合物、およびその化合物が免疫反応性または寛容原性活性を保持するようにペプチド中で置換され得るならば、アミノ酸に特有であると当該分野で公知である特性を有する化学的に合成された化合物のような化合物をいう。アミノ酸およびアミノ酸アナログの例は、GrossおよびMeienhofer、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology、Academic Press,Inc.、New York(1983)に列挙されている。これは本明細書中で参考として援用される。アミノ酸はまた、アミノ酸模倣物であり得る。アミノ酸模倣物は、アミノ酸と実質的に同じ官能基の空間的配置を示すが、アミノ酸に特有のα−アミノ基およびα−カルボキシル基の両方を必ずしも有すわけではない構造物である。
【0088】
I−2ポリペプチドの免疫反応性または寛容原性フラグメントを、当該分野で周知の方法を用いて産生または合成し得る。そのような方法は、組換えDNA方法およびペプチド産生のための化学的合成方法を含む。適切な宿主細胞におけるペプチドをコードする核酸配列の発現によってペプチドを産生する組換え方法は、当該分野で周知であり、そして例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、第1巻〜第3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1989)で記載されている。これは、本明細書中で参考として援用される。I−2ポリペプチドをコードする核酸分子の配列は、本明細書中で配列番号1として開示されている。
【0089】
I−2ポリペプチドの免疫反応性または寛容原性フラグメントはまた、化学的合成、例えば本明細書中で参考として援用されるMerrifieldら、J.Am.Chem.Soc.85:2149(1964)の固相ペプチド合成方法によって産生され得る。当該分野で周知の標準溶液方法も、本発明で有用な免疫反応性または寛容原性フラグメントを合成するために使用され得る(例えば、Bodanszky、Principles of Peptide Synthesis、Springer−Verlag、Berlin(1984)およびBodanszky、Peptide Chemistry、Springer−Verlag、Berlin(1993)を参照のこと(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。新しく合成したペプチドを、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し得、そして例えば、質量分析法またはアミノ酸配列分析を用いて特徴付けし得る。
【0090】
本発明はまた、I−2ポリペプチドを含み、そしてIBDを有する患者で寛容を誘導するのに有用な寛容原性組成物を提供する。特に、本発明は、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を有するI−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントを、寛容化(tolerogizing)分子と組み合わせて含む組成物を提供する。本発明の組成物では、I−2ポリペプチドは、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有し得る。本発明の組成物で有用な寛容原性フラグメントは、例えば、配列番号2の少なくとも10個連続したアミノ酸を有し得る。
【0091】
種々の分子が、当該分野で寛容を引き起こす、促進する、または増強すると知られている。例えば、本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,268,454号およびその中の引用を参照のこと。本明細書中で使用する場合、「寛容化分子」という用語は、本発明のI−2ポリペプチドまたはそのフラグメントと組み合わせた場合に、寛容原性活性を引き起こす、促進する、または増強する、分子、化合物またはポリマーを意味する。寛容化分子は、例えば、I−2ポリペプチドに結合体化され得る。そのような寛容化分子は、例えばポリエチレングリコールを含み、そして当該分野で周知である(例えば、米国特許第5,268,454号、前出を参照のこと)。
【0092】
本発明はまた、有効用量のI−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントを個体に投与することによって、個体におけるIBDを予防する方法を提供する。本発明の方法は、IBDに対する罹患しやすさが増大した個体において、IBD、例えばクローン病を予防するのに特に有用である。そのような方法は、有効用量の抗原または寛容原性フラグメントが新生仔個体に投与される場合、IBDを予防するのに特に有用であり得る。
【0093】
腸内細菌が、いくつかの疾患の病因において役割をはたしていることが示された。例えば、H.pyloriは、消化性潰瘍疾患の病因に関わっており、そしてH.pyloriに対する抗生物質を、この疾患を有効に処置するために使用し得る(例えば、Sontag、Am.J.Gastroenterol.92:1255−1261(1997);およびPipkinら、Helicobactor 2:159−171(1997)を参照のこと(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。クローン病では、腸の炎症は、その抗生物質に対する頻繁な応答性、および細菌糞便流(bacterial fecal flow)へのなりやすさに関して注目に値する(Guiら、J.Antimicrob.Chemother.39:393−400(1997);Pranteraら、Am.J.Gastroenterol.91:328−332(1996);およびJanowitzら、Inflamm.Bowel.Dis.4:29−39(1998)(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。通常の腸居住物(colonist)および新規病原体が、直接の検出によって、または疾患に関連した抗微生物免疫応答によって、CDに関係していた(Blaserら、Gastroenterology 87:888−894(1984);Elsaghierら、Clin.Exp.Immunol.90:503−508(1992);Del Preteら、J.Microbiol.Methods 33:105−114(1998);Metcalf、British Medical Journal 316:166(1998)(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される);およびSendidら、前出、1996)。さらに、慢性結腸炎のほとんどの動物モデルで、管腔の微生物は、疾患に必要な補助因子である。食物抗原もまた、IBDの病因に関係していた(Sonnenberg、Gut 31:1037−1040(1990);Davidsonら、Clin.Exp.Immunol.35:147−148(1979);およびKnoflachら、Gastroenterology 92:479−485(1987)(これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される))。大規模な研究にも関わらず、病因となる生物は同定されないままである。
【0094】
本明細書中で開示されるように、クローン病患者の炎症病巣に存在する結腸の微生物は、I−2ポリペプチド抗原(配列番号2)をコードする核酸配列を含む。この知見に基づいて、微生物を単離し、そしてこの生物の生存率または増殖を低下させる薬剤を発見するために使用して、それによってクローン病に寄与している免疫刺激を減少させ、そしてこの疾患の症状を改善し得る。
【0095】
従って、本発明は、炎症性腸疾患を処置するのに有用な薬剤を同定する方法を提供する。その方法は、炎症性腸疾患を有する患者から腸内微生物の標本を得る工程;標本からI−2ポリペプチドをコードする核酸分子を含む微生物種を単離する工程;その微生物種を薬剤と接触させる工程;および薬剤の不在下での増殖または生存率と比較して、微生物種の低下した増殖または生存率に関してアッセイする工程を含む。ここで、微生物種の低下した増殖または生存率は、その薬剤が炎症性腸疾患を処置するのに有用な薬剤であることを示す。本発明の方法は、抗生物質である薬剤をスクリーニングするのに、そしてクローン病の処置のための治療する薬剤を同定するのに特に有用であり得る。当業者は、本発明の方法で薬剤と接触させる微生物種が、単一の微生物種、または2つ以上の微生物種の混合物であり得ることを理解する。ここで、少なくとも1つの種は、I−2ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0096】
I−2ポリペプチドをコードしている核酸分子を有する微生物種は、実施例IVで述べているように、そのI−2陽性微生物を、種々の培地を用いることや、好気的あるいは嫌気的条件下での培養によって単離できる。単離された微生物にI−2配列が存在するか否かを確かめるために、例えばPCR解析などを用いてさらにスクリーニングを行う。代表的な培養条件は図7で示すとおりである。
【0097】
本明細書中で使用されているように、「薬剤」なる用語は、単体あるいは複合有機分子、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、またはオリゴヌクレオチドなどのような生物学的、化学的化合物を意味している。
【0098】
本発明の本方法で同定された薬剤は、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を有する微生物種の生存率または増殖を低下させる。このように、IBDの治療に有用な薬剤は、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を有する微生物種を死滅させるか、または増殖スピードを抑制する機能を有する薬剤であり得る。IBD治療に有用な薬剤は、微生物もしくは植物によって産生される分子、またはそのような分子の化学誘導体である、細菌に対する抗生物質などの静菌剤または殺菌剤で、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を有する微生物の増殖や生存率を抑制し得るものであり得る。当業者は、種々の機構によって、例えば、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を有する微生物のタンパク質合成阻害、DNA合成阻害、細胞壁合成阻害、またはその微生物種に必要な基本的栄養素の合成の抑制によってIBD治療に有用な薬剤が機能し得ることを理解する。このような薬剤は、選択的にI−2ポリペプチドをコードする核酸分子を有する特定の微生物種の生存率や増殖を抑制し得る。IBD治療に有用な薬剤はまた、微生物に対する広い抗菌スペクトルを有し、その増殖または生存を抑制する活性を有し得る。当業者は、より好ましくは、IBD治療に有効な薬剤が、哺乳動物細胞、特にヒト細胞に対して、その増殖や生存率に大きな変化を及ぼすことなく、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を有する微生物種の増殖または生存率を抑制することを理解する。
【0099】
本明細書中で使用されている場合、「IBDを処置する際に有用な薬剤」とは、炎症性腸疾患の1つ以上の症状の重症度、頻度、または発症時間を減少させる薬剤を意味している。
【0100】
炎症性腸疾患の動物モデルが知られているにもかかわらず、これらの動物モデルはヒトIBDと関連している抗原を含まない。IBD関連I−2ポリペプチド抗原(配列番号2)の単離が開示されたこと、およびマウスT細胞がこの抗原に対して反応性があるという実証(実施例IIIを参照のこと)に基づいて、本発明は、新規のIBD動物モデルを提供する。この動物モデルの疾患はヒトの疾患と関連のある、I−2抗原によって開始される。従って、優れたIBD動物モデルは、抗生物質、抗炎症剤、および他の薬剤を含む新しいIBD治療法を同定するために提供される。
【0101】
特に、本発明は1つあるいは症候群としてIBDの症状を示すヒト以外の動物に対してI−2ポリペプチドを投与すること、その非ヒト動物に薬剤を投与すること;IBDに特徴的な1つ以上の症状の重症度を分析し、コントロールのレベルと比較して1つ以上の症状のレベルが軽減していればその薬剤がIBDを処置する際に有用な薬剤であることを示すことによって、炎症性腸疾患を処置する際に有用な薬剤を同定する方法を提供する。本発明の本方法を、例えばクローン病治療に有用な薬剤を同定するために使用し得る。投与されるI−2ポリペプチドは、例えばそのアミノ酸配列(配列番号2)を有し得る。本発明の本方法において特に有用な、ヒト以外の動物は、例えばGαi2、TCRαまたはIL−10欠損マウスであり得る。
【0102】
先に示したように、「薬剤」なる用語は、単体あるいは複合有機分子、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、またはオリゴヌクレオチドなどのような生物学的、化学的化合物を意味している。薬剤は、例えば抗生物質や抗炎症剤であり得る。
【0103】
本発明の方法は、抗原性誘発因子に応答して炎症性腸疾患の1つ以上の症状を示し得る、ヒト以外の動物の使用、に依存している。ヒト以外の霊長類、ラットまたはマウスのIBDモデルも含めて、ヒト以外のいかなる疾患動物モデルも本発明の本方法において有用であり得る。当該分野で周知の種々のIBDマウスモデルが、本発明において特に有用であり得る(例として、Podolsky,前出,1997;Bregenholtら、前出,1997を参照のこと)。このようなマウスモデルは本明細書で既に述べたモデル、例えばGαi2欠損マウス(Gαi2−/−;Rudolphら、前出,1995)、IL−10欠損マウス(IL−10−/−;Kuhnら、前出,1995)、TCRα欠損マウス(TCRα−/−);TCRβ欠損マウス(TCRβ−/−)、keratin8欠損マウス、IL−2欠損マウス(IL−2−/−;Sadlack,前出,1993)およびCD45RB CD4+T細胞を再構成されたSCIDマウス(Powrieら、前出,1994)を含んでいる。本発明の本方法に有用なヒト以外の動物モデルとしてはまた、ヒトHLA−27遺伝子(β2−ミクログロブリン遺伝子と共に)の導入遺伝子を発現している動物、または機能的にN−カドヘリンをブロックするドミナントネガティブな構築物を発現している動物が挙げられる(Podolsky,前出,1997)。
【0104】
当業者は、ヒト以外の動物モデルにおいてIBDの1つ以上の症状を引き起こすために、本発明のI−2ポリペプチドが種々の投与経路で投与され得るということを理解する。この疾患のヒト以外の動物モデルにおいてIBDの1つ以上の症状を引き起こすために好ましいI−2ポリペプチド投与方法は、浣腸による投与またはE.coli.を用いてI−2ポリペプチドを発現している細胞成分を投与することである。
【0105】
遊離抗原の局所的な投与は、例えばMahlerら(Am.J.Physiol.274:G544−G551(1998))が述べているように、浣腸によって達成され得る。I−2ポリペプチドはまた、マウス結腸に、抗原を保有する微生物、例えばE.coli.(Cahillら、Infect Immun.,65:3126−3131(1997))または別の細菌種(Kullbergら、Infect Immun.,66:5157−5166(1998):Liら、Infect Immun.,66:5477−5484(1998);Cahill,前出,1997)をコロニーを形成させることにより投与され得る。IBDに対するヒト以外の動物モデルにおいて、IBDの1つ以上の症状はまた、細菌抗原と反応するT細胞株を用いて誘導され得る。ここで使用するT細胞は結腸炎感受性がある系統のマウスから由来するものである。このようなT細胞株は、例えば、C3H/HeJBirマウスで産生された、E.coli.と反応性のあるT細胞株であり得る(Congら、J.Exp.Med.187:855−864(1998))。C.B−17Scid マウスにおいてはまた、自然にかまたは腸内感染のいずれかによって、抗原を保有する細菌のコロニー形成が可能である(Kullbergら、前出,1998;Liら、前出,1998;Congら、前出,1998)。このようなマウスにT細胞株を移入することによって、強力な抗原特異的炎症性腸疾患モデルが得られる(Kullbergら、前出,1998;Congら、前出,1998)。
【0106】
以下の実施例は本発明を例示するものであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0107】
(実施例I)
(I−2およびI−1標的抗原の同定)
本実施例は、I−1およびI−2ポリペプチドをコードする新規微生物の核酸配列の単離について記述している。
【0108】
(A.提示的差異分析(Representational difference analysis))
提示的差異分析(RDA)は、感染領域にて特異的に検出されるDNA配列を同定するために、PCRを利用したサブストラクションクローニングを用いて行う分析であり、CD粘膜が関与する場合と関与しない場合とで異なっている配列を調べるために利用される。
【0109】
RDAは基本的に、本明細書中で参考として援用している Changら、Science 266:1865−1869(1994)で記述されているように行った。簡潔に説明すると、クローン病患者の粘膜固有層の潰瘍を伴う部位(tester細胞:テスター細胞)と巨視的に疾患のない部位(driver細胞:ドライバー細胞)からそれぞれ単核細胞を採取、単離し、それぞれの細胞群からDNAを精製した。RDAを用いて、疾患のない部位由来のDNA(driver DNA)配列を潰瘍のある部位の細胞由来のDNA(tester DNA)から差し引いて、炎症領域で特異的に検出される配列を残した。
【0110】
4つの配列が得られ、そのうち2つがヒトの配列であった。それぞれI−1とI−2と命名した残りの2配列は、ヒト遺伝子のどれとも意味のある相同性を示さなかった。I−2の核酸配列(配列番号1)およびコードされたポリペプチド(配列番号:2)を図1Aで示している。I−1の核酸配列(配列番号3)およびコードされた二つのオープンリーディングフレーム(配列番号4および5)は図1Bで示している。
【0111】
(B.保存パラフィン包埋組織サンプルのPCR分析)
CD患者、UC患者、または非IBDコントロールからのパラフィン包埋組織サンプルに対して、PCR分析を行った。簡潔に説明すると、I−2特異的プライマー 5’−CCGTGGGCATCCAGTCCG−3’(配列番号9)および5’−TCTGCTCATACACGTCACG−3’(配列番号10)を用いて、最終濃度4mM MgCl2を添加し標準的なPCR条件によってサンプルを増幅した。特に、本反応の組成は、26.75ul H2O、5.0μl 10×PCR緩衝液、5.0μl 25mM MgCl2;10mM 各dNTPをそれぞれ1.0μlずつ;配列番号:9および10をそれぞれ1.0μlずつ;ならびに0.25μl Taqポリメラーゼ(5μnits/ul)であった。反応系は94℃で5分間インキュベートした後、94oCで30秒、65oCで30秒、72℃で30秒を1サイクルとして39サイクル繰り返した。その後、最後に72℃で5分間、伸長反応を行った。反応系は2%アガロースゲルで、285bpのフラグメントが予想されるI−2配列とともに分析した。
図3で示すように、I−2配列(配列番号1)は、UCサンプルやIBD疾患を示さないサンプルと比較して、CDサンプルにおいて有意により高頻度に存在した。これらの結果からI−2ポリペプチド抗原(配列番号2)が炎症性腸疾患、特にクローン病と関連があるということが示される。
【0112】
(実施例II)
(I−2ポリペプチドに対するIBD患者血清および正常血清の異なる反応)
本実施例は、I−2ポリペプチドに対してクローン病患者の血清が、正常血清とは異なる反応性を示すということを説明している。
【0113】
(A.GST−I−2融合タンパク質)
I−2の全長をコードしている核酸配列(配列番号1)をGST発現ベクターであるpGEXにクローニングした。E.coli.で発現させた後、そのタンパク質をGSTカラムで精製した。精製したタンパク質は、銀染色により、予想される分子量であることが示され、またウエスタン分析において抗GST反応を有していた。
【0114】
(B.ELISA分析)
ELISA分析はGST−I−2(配列番号2)融合ポリペプチドを用いて、希釈した患者または正常者の血清に対して行われた。反応性はGST単独に対する反応性を差し引いて評価された。種々の希釈率のCD血清および正常者からの血清について、GST−I−2融合ポリペプチドに対するIgGの反応性を解析した。図4Aで示されているように、1:100から1:1000の希釈率のサンプルで、正常血清と比較して有意に高い、CD血清の抗I−2ポリペプチド反応が観察された。これらの結果から、I−2ポリペプチド(配列番号2)が、クローン病血清に対して、正常血清とは異なる反応性を引き起こすということが示される。
【0115】
I−2ポリペプチド(配列番号2)に対するUC、CDおよび正常血清の血清IgAの反応性を下記に述べるような方法で解析した。図4Bに示すように、カットオフ値=正常群の平均値+2×標準偏差という基準を用いたところ、10例のCD測定値のうち9例が陽性であると判定された。その一方、正常血清サンプルで陽性と判定されたものは皆無だった。さらに、クローン病患者の血清10例のうち7例でOD450の吸光度測定値が0.3以上を示した。その一方、UC血清サンプルと正常血清サンプルでOD450が0.3以上を示すものは皆無であった。これらの結果からI−2ポリペプチドに対する免疫反応性、特にIgAの免疫反応性をクローン病の診断に使用し得るということが示される。
【0116】
基本的に次のような直接的ELISA分析によってI−2ポリペプチド(配列番号2)に結合するヒトIgAおよびIgG抗体を検出した。プレート(Immulon3;DYNEX Technology;Chantilly,VA)を100μl/ウェルのGST−I−2融合ポリペプチド(ホウ酸緩衝化生理食塩水(pH8.5)で5μg/mlに調製)によって一晩、4oCでコートした。0.05% Tween20/リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で3回洗った後、プレートを0.5%ウシ胎児血清アルブミン/PBS、pH7.4(BSA−PBS)を150μl/ウェルずつ添加し、30分間、室温でブロッキングした。次いで、ブロッキング液を捨て、かわりに100μl/ウェルずつ、1:100に希釈したクローン病血清、潰瘍性結腸炎血清、または正常コントロール血清を加えた。次いで、プレートを2時間、室温でインキュベートし、前記と同様に洗浄した。アルカリホスファターゼ標識二次抗体[ヤギ 抗ヒト IgA(α鎖特異的)、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA]をBSA−PBSで1:1000に希釈してIgAプレートに添加した。IgG反応性を解析するために、アルカリホスファターゼ標識二次抗体[ヤギ 抗ヒト IgG(γ鎖特異的)、Jackson ImmunoResearch]を添加した。プレートを2時間、室温でインキュベートした後、0.05% Tween20/PBSで3回洗浄し、さらに3回、Tris緩衝化正常生理食塩水(pH7.5)で洗浄した。基質溶液(1.5mg/mlリン酸P−ニトロフェノール二ナトリウム(Aresco;Solon,OH)を含有する2.5mM MgCl2、0.01M Tris、pH8.6)を100μl/ウェルずつ添加し1時間、発色反応を進めた。次いで、プレートの各ウェルの405nm吸光度を測定した。
【0117】
(C.組織学的分析)
免疫原として精製GST−I−2融合タンパク質を用い、ウサギ 抗I−2抗体を調製する。アガロース支持体(Pierce)に結合しているGSTに対する接着性を利用して、GST結合抗体を解離させ、ELISA分析によってウサギ血清の抗I−2免疫反応性を確認する。
【0118】
パラフィン包埋されたCD、UCおよび正常コントロール由来の生検標本からスライド標本を用意する。ヘマトキシリンーエオシンン染色を行い、次にI−2特異的抗血清と共にインキュベーションを行う。抗体の結合はペルオキシダ−ゼラベルされた抗ウサギ二次抗体(Pierce)を用いて検出する。この解析はバックグラウンドに対するシグナルおよび、CD群とコントロール群の間の差異を最大にするように最適化される。
【0119】
(実施例III)
(I−2ポリペプチドとの、CD4+T細胞の反応性)
本実施例は、正常マウス由来T細胞がI−2抗原(配列番号2)に対して反応して増殖することを実証する。
【0120】
CD4+T細胞を正常C57BL/6Jマウスから単離し、以下のようにI−2抗原に対するT細胞の増殖反応性を解析した。CD4+T細胞を用意するために、8−10週齢の雌性マウスから脾臓を摘出し、細胞懸濁液を調製した。ナイロンウールを用いて細胞集団からB細胞と抗原提示細胞(APC)を除き、さらに抗CD-8磁気ビーズを用いてCD8+T細胞を除いた。フローサイトメトリーを用いてCD4+T細胞懸濁液の純度を測定した。
【0121】
APCを調製するために、8−10週齢の雌性マウスから脾臓を摘出し、細胞懸濁液を調製した後、0、2、10、または15μg/mlのI−2ポリペプチドを一晩適用(pulse)した。T細胞培養に添加する前に、APCに3,000radsの放射線を照射した。抗原特異的なT細胞の増殖を解析するために、96ウェル平底組織培養プレートで、37oC、5%CO2、加湿空気中で、4×105のCD4+T細胞/ウェルを4×105の抗原適用APC/ウェルとともにインキュベートした。種々のインキュベーション時間の後に、0.5μCiの[3H]−チミジンをそれぞれの培養液中に添加しさらに18時間インキュベートした。細胞を回収し、細胞DNAに取り込まれた[3H]−チミジン量をシンチレーションカウンターを用いて測定し増殖を評価した。
【0122】
図5で示されているように、I−2ポリペプチド抗原(配列番号2)は5μg/mlおよび25μg/mlの濃度で、T細胞増殖を刺激する。これらの結果は、ヒト炎症性腸疾患と関連しているI−2ポリペプチド(配列番号2)が、マウス細胞に対してT細胞反応を惹起し得ることを説明しており、またI−2ポリペプチドが炎症性腸疾患の病因解明の手がかりになり得ることを示している。
【0123】
(B.I−2ポリペプチドに対する応答におけるサイトカイン発現)
調節性T細胞についての役割はCD45RBlow細胞、CD28+CD45RBlow細胞、およびCD25+CD45RBlow細胞に関する研究によって裏付けられている。従って、サイトカイン発現を、I−2ポリペプチドに対する応答によって分析した。サイトカインアッセイのためにT細胞培養集団を使用した。T細胞増殖アッセイの4日目に、上清をIL−10およびインターフェロンーγの発現について解析した。図6で示しているように、インターフェロンーγ、つまりTh1サイトカイン調節因子の発現がGST−I−2ポリペプチド(配列番号2)によって誘導される。さらに、図6において、Th1サイトカイン応答をダウンレギュレートするように作用し得るIL−10の発現が、CD4+T細胞を2μg/ml程度まで少ないGST−I−2ポリペプチド(配列番号2)へ曝露することによって誘導されているということが示されている。これらの結果から、I−2ポリペプチド抗原(配列番号2)によって疾患が誘導されるIBDの動物モデルはヒトにおける疾患の有益なモデルになり得るということが示される。
【0124】
(実施例IV)
(I−2配列を含む生物の単離および同定)
この実施例は、I−2配列を含む生物の単離および同定について記載する。
【0125】
CD患者からの組織標本は、嫌気的条件下でCedars−Sinaiより得られる。Qiagen tissue prep kitを用いて組織の小片からDNAを抽出し、上記のPCRアッセイを用いてI−2核酸配列(配列番号1)の存在を調べる。I−2核酸配列(配列番号1)の存在が確認された組織小片の細胞を種々の条件下(図7を参照のこと)で培養し、その単離物を分類する。
【0126】
標的DNAを増幅に利用できることを確認するために、上記の単離物を、16S RNAについてPCRによって分析した後、実施例Iに記載するように、I−2核酸配列(配列番号1)に対するPCRによってその組織小片を分析する。その微生物を同定するために、基本的に本明細書中で参考として援用される、WilsonおよびBlitchington(Applied and Environ.Microbiol.62:2273−2278(1996))において記載されている方法を用いて、I−2核酸を含む単離物の16S RNAの配列決定を行う。
【0127】
(実施例V)
(I−2の、腸内、T細胞スーパー抗原活性の実証)
この実施例は、正常C57BL/6Jマウスで存在しているI−2を含有する微生物がCD4+T細胞応答の標的であるということを実証する。この実施例はさらに、I−2応答がMHCクラスIIによって介在される認識に依存しているが、抗原プロセシングは必要としていないことを実証し、このことは、I−2がT細胞スーパー抗原の新しいクラスを表しているということを示す。
【0128】
(A.I−2配列を有するマウス組織)
I−2配列が正常マウス組織において存在するか否かについて決定するために、正常C57BL/6Jマウスの遠位の結腸、近位の結腸、盲腸、遠位の小腸、近位の小腸、および胃よりゲノムDNAを調製した。PCR分析によって、ヒトサンプルで見られるパターンと同一の、遠位の小腸、盲腸、近位の小腸から調製したDNAにおいてI−2配列に特徴的な285bpのフラグメントを検出した。この結果とは対照的に、Clostridiumの非病原性系統を含む、限定された微生物叢のみを有するC57BL/6Jマウスの同様の組織から抽出したゲノムDNAからは検出可能なI−2フラグメントが増幅されなかった。これらの結果は、I−2発現微生物が通常の状態で飼育されているマウスに存在しているが、限定された微生物叢を有するマウスでは存在していないということを示す。
【0129】
マウスを次のような条件下で維持、飼育した。C57BL/6Jマウスは The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)より購入した。8週齢以上の正常C57BL/6Jマウスは、他に示されない限り、通常の設備で飼育した。雌雄両方のマウスを使用した。C57BL/6Jバックグラウンドと交配された、限定された微生物叢を含むRag−/−マウスは Dr.W.McBrideのUCLA繁殖コロニーより入手し、特異的な病原体不在下で飼育した。
【0130】
I−2およびマウス グリセルアルデヒド3−ホスファターゼデヒドロゲナーゼ(GAPDH)のPCRを次のように行った。マウスゲノムDNAを、NucleoSpin Tissue Kit(Clonetech)により種々の組織より調製した。配列番号9および10のプライマーを用いて増幅させた場合、PCR応答によりネイティブのI−2からは285bpの生成物が、陽性コントロールである模倣物I−2からは606bpの生成物がそれぞれ生じた。陰性コントロールのPCR応答(緩衝液のみ)では、いかなるPCR産物も検出されなかった。PCRの条件は、合成I−2テンプレートから606bpフラグメントの増幅から示されるように、I−2に特異的だった。それぞれのゲノムDNAサンプルテンプレートからの340bpマウスGAPDHフラグメントの増幅によって示されるように、それぞれのサンプルに同量のDNAが存在した。GADPHプライマーは、5’−GCCAAGATGTCATTTGAATGGG−3’(配列番号11)および5’−GAATCCATATAGAGGCTGGG−3’、配列番号12)を用いた。全ての応答は、94oC、30秒間を1サイクル、94oCで30秒間、65oCで30秒間、72oCで40秒間を39サイクル、その後、72oCで10分間を1サイクル行った。
【0131】
(B.正常C57BL/6Jマウスおよび129SvマウスのCD4+T細胞は、I−2適用を受けた抗原提示細胞に応答して自発的に増殖しIL−10を産生する)
I−2抗原に対する本来の応答を、通常の状態で飼育された正常マウス系統において測定した。脾臓CD4+T細胞を、非免疫C57BL/6Jマウスおよび129Svマウスより単離し、種々の濃度のGST−I−2、GST単独、またはStaphylococcus enterotoxin(SEB)で前処理した同系の脾臓抗原提示細胞とともに培養した。[3H]−チミジン取り込みによって増殖を評価し、種々のサイトカイン(IL−10、IFN−γ、TNF−α、およびIL−4)の分泌についてELISAにより定量した。
【0132】
C57BL/6Jマウス由来のCD4+T細胞はGST−I−2に対する用量依存的な増殖応答を示した。GST単独に対する応答が最小であることから示されるように、この応答はI−2配列に対して特異的であった。T細胞増殖アッセイに対する陽性コントロールであるStaphylococcus enterotoxin(SEB)はI−2に対する最大の応答と同程度の応答の大きさを生じた。さらに、C57BL/6J CD4+T細胞は、GST−I−2に応答してサイトカインIL−10を分泌したが、IFN−γ、IL−4、およびTNF−αなど、いくつかの他のサイトカインの分泌は検出されなかった。GST単独では、どのサイトカイン分泌も刺激されなかったことから、この応答がI−2抗原特異的であることが示された。これらの結果から、通常の条件で飼育されているC57BL/6JマウスのCD4-T細胞は、I−2で前処理された抗原提示細胞に対して応答し、自発的に増殖してIL−10を産生するということが示される。
【0133】
増殖およびサイトカイン分泌アッセイを以下のように行った。基本的に実施例IIIに記載した方法により、脾臓CD4+T細胞を非免疫C57BL/6Jマウスおよび129Svマウスより単離した。C57BL/6Jマウスおよび129Svマウスより摘出した脾臓から抗原提示細胞を単離し、細胞懸濁液を調製した。15mlのコニカルチューブ(Corning,Acton,MA)中で、4mlあたり2×107個の有核脾臓細胞に対して種々の濃度のGST−I−2、GST、またはStaphylococcus enterotoxinを添加して12−16時間、37oCで処理した。洗浄後、細胞を4×106個/mlになるようにPRMI 1640、5%ウシ胎仔血清(FCS)、0.05% 2−メルカプトエタノール、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む完全培地で懸濁した。T細胞培養に添加する前に、抗原提示細胞を、3000rads(567.7cGy/分 で5.5分間)で放射線照射した。
【0134】
同系抗原提示細胞(4×105個)を0、1、5μg/mlのGST単独またはGST−I−2および1μg/mlのSEB(SIGMA)で抗原適用(pulse)し、C57BL/6Jマウス由来の4×105個の脾臓CD4+T細胞とともに、マイクロタイターウェル中で培養した。GSTおよびGST−I−2タンパク質を実施例IIで記載したように産生させた。48時間後に、培養上清を収集すること、および市販キットに添付されている製造業者の説明書(R&D;Minneapolis,MN)に従うIL−4、IL−10、TNF−α、およびIFN−γについてのELISA法によって、細胞のサイトカイン産生をアッセイした。値は、2連のサンプルの平均値である。72時間後、基本的に実施例IIIで記載したように、[3H]−チミジンを用いる適用によって細胞の増殖をアッセイし、各3連の培養物について、取り込まれたcpm(平均値±標準偏差)を算出した。
【0135】
(C.限定された微生物叢を含むマウス由来のCD4+T細胞は、I−2に応答して自発的に増殖するが、IL−10を産生しない)
正常C57BL/6Jマウスの、GST−I―2に対する応答性を、限定された微生物叢を含み、そして特定の病原体不在下で飼育されているC57BL/6Jマウスと比較した。限定された微生物叢を含むC57BL/6Jマウスから単離されたCD4+T細胞は、GST−I−2タンパク質に対する増殖応答を示した。しかし、慣用的条件下で飼育されている通常のC57BL/6Jマウスで観察されるようなGST−I−2に対する応答性とは対照的に、サイトカイン応答は検出されなかった。これらの細胞はSEB陽性コントロールで示されるように、増殖可能であり、さらに、GST単独に対する応答において、増殖性応答またはサイトカイン応答が観察されなかったことから、その応答はI−2特異的であった。
【0136】
GST−I−2に対する、限定された微生物叢を含むマウスの応答は、I−2抗原が、抗原によって前処理されていないCD4+T細胞を刺激することができたということを示している。I−2配列が、限定された微生物叢を含むC57BL/6Jマウスには存在しないという実証と結びつけて考えると、これらの結果から、GST−I―2応答がスーパー抗原またはマイトジェンの結果であり得るということが示される。
【0137】
(D.正常C57BL/6Jマウスの未処理CD4+T細胞集団と記憶CD4+T細胞集団の両方がI−2に応答して自発的に増殖し、IL−10を産生する)
I−2に対する応答を未処理CD4+T細胞集団を用いて評価した。通常の方法で飼育されたC57BL/6Jマウス由来のCD4+T細胞を、CD62LhiCD44low未処理T細胞とCD62LlowCD44hi記憶T細胞に分画し、引き続いて、GST−I−2、GST単独、またはSEBを適用した抗原提示細胞とともに培養した。未処理CD4+T細胞と記憶CD4+T細胞の両方がGST−I−2に対して強い増殖性応答とIL−10分泌性応答を有した(図8Aおよび8B)。どちらの細胞集団も、GST単独に対しては応答性ではなく(図8Aおよび8B)、そして両集団とも陽性コントロールであるSEBを用いて示されるように増殖可能であったことから、その応答はI−2に対して特異的であった。これらの結果から、GST−I−2抗原が、通常のMHCクラスIIの、プロセシングを受けた抗原ではなく、スーパー抗原またはマイトジェンであることが実証される。
【0138】
通常の方法で飼育されている正常C57BL/6Jマウス由来のCD4+T細胞の未処理T細胞サブ集団および記憶T細胞サブ集団を得て、以下のように分析した。未処理CD4+T細胞をCD4+T細胞より得て、上記のVB節に記載されるように単離し、そしてラット抗マウスCD44とともに30分間、氷上でインキュベートした。記憶CD4+T細胞をCD4+T細胞より得て、ラット抗マウスCD45RBとラット抗マウスCD62Lとともに30分間氷上にてインキュベートした。それらの細胞を洗浄し、ヒツジ抗ラットIgGによってコートされたDynal magnetic beadsで30分間氷上にて処理した。枯渇後、未結合T細胞を陰性選択し、そして4×106個/mlになるように、5%FCSを含む完全RPMI培地で再懸濁した。分画したT細胞の純度を、FITC結合体化抗CD4、CD44、CD45RBおよびCD62L(Pharmingen;San Diego,CA)を用いるフローサイトメトリーによって評価した。細胞集団は典型的に、85%より多くが記憶CD4+T細胞または未処理CD4+T細胞であった。
【0139】
C57BL/6Jマウス由来の分画した未処理CD4+T細胞および記憶CD4+T細胞(4×105)を、上記のようにマイクロタイターウェル中で、抗原(0、1、5μg/ml;GST;またはGST−I−2)または1μg/mlの陽性コントロールSEBで予め抗原適用を行った4×105の同系抗原提示細胞とともに培養した。増殖およびサイトカイン産生を上記の方法でアッセイした。
【0140】
(E.I−2に対するCD4+T細胞応答の、MHCクラスIIの制限)
I−2応答性を、MHCクラスIIプロセシングへの依存性に関して分析した。CD4+T細胞を、I−A−bMHCクラスII分子またはI−A―dMHCクラスII分子に対するモノクローナル抗体のいずれかの存在下でI−2適用した抗原提示細胞とともに培養した。抗I−A−b抗体はSEBおよびGST−I−2両方に対するT細胞増殖応答をブロックしたが、一方、抗I−A−d抗体はSEBまたはGST−I−2の増殖性応答に対して最小の効果を有した。これらの結果から、I−2応答性は、MHCクラスII媒介認識に依存しており、従って、この応答はマイトジェン応答ではないことが示される。
【0141】
MHCクラスIIの、T細胞増殖に対するブロッキングは以下のようにして行う。上記VB節において記載するように、10μg/mlのモノクローナル抗I−A−bまたは抗I−A−d(Pharmingen)の存在下または不在下で、CD4+T細胞(4×105)を、抗原適用を受けた4×105の抗原提示細胞とともにインキュベートした。インキュベーション開始48時間後、0.5μCi[3H]−チミジンをそれぞれの培養液中に添加し、18時間さらに培養し、前記のように収集した。結果を、3連の培養物の例ずつの平均CPM+/−SDとして表す。
【0142】
(F.I−2に対するCD4+T細胞の応答において抗原プロセシングは必要ではない)
以前に明らかにされた結果から、I−2抗原はマイトジェンではないが、むしろ通常のMHCクラスIIのプロセシングを受けた抗原か、または、抗原プロセシングを受けずに増殖性応答を刺激し得るものとして部分的に特徴づけられる抗原であるスーパー抗原のいずれかであることが示される。I−2応答性が抗原プロセシングを必要とするか否かを決定するために、正常C57BL/6Jマウス由来の抗原提示細胞を、抗原プロセシングが起こらないようにパラホルムアルデヒドで固定し、次いでGST―I―2またはSEBを適用した。図9Aに示されるように、CD4+T細胞は依然としてGST−I―2およびSEBに対して強く応答した。さらに、GST単独では増殖性応答が誘導されなかったことから、その応答はI−2に対して特異的であった。その結果とは対照的に、ハト チトクロムC(PPC)で一晩適用した固定された抗原提示細胞によってPPC特異的CD4+T細胞の増殖応答は誘導されなかった(図9B)。これらの結果から、GST−I−2増殖応答には抗原プロセシングが必要ではなく、従って、GST−I−2がスーパー抗原として働くということが実証される。
【0143】
パラホルムアルデヒド固定した抗原提示細胞を調製し、次のように分析した。C57BL/6Jマウス由来の脾臓C57BL/6J CD4+T細胞を、GST−I−2を一晩適用した後さらに30分間適用したC57BL/6Jマウス由来の抗原提示細胞、またはパラホルムアルデヒドで30分間固定し、PBSで洗浄した後、PBSで30分間インキュベートし、そして2回PBSで洗浄したC57BL/6Jマウス由来の抗原提示細胞とともに培養を行った。この固定した細胞を、1μg/mlおよび5μg/mlのGST−I−2で一晩適用した。GSTおよびSEBを、陰性コントロール抗原および陽性コントロール抗原としてそれぞれ使用した。固定実験のコントロールとして、ハト チトクロームC(PPC)特異的CD4+T細胞を、PPCを一晩適用したか、または、パラホルムアルデヒドで固定した後、PPCを一晩適用した同系抗原提示細胞とともに培養した。3日間の培養のうち、最後の18時間は1μCiの[3H]TdRを各ウェルに添加した。結果を、3連の培養物の平均値CPM±SDとして表現する。
【0144】
(G.TCR Vβ発現は、応答するT細胞集団応答において限定される)
大部分のスーパー抗原は特異的なTCR Vβによって特徴づけられる。GST−I−2注射後、15のVβのパネルから、Vβ9およびVβ17がCD4-T細胞において拡大される。これらの結果により、GST−I−2がスーパー抗原であることが確証される。
【0145】
Vβの限定は以下のように特徴付けられた。GST−I−2タンパク質(5μg)を正常8週齢雌C57BL/6Jマウスに静脈内注射した。投与1日後、脾臓を摘出し、細胞懸濁液を調製した。赤血球を溶解し、有核脾臓細胞を5%FCSを含む完全RPMI培地(5ml)で再懸濁した。細胞(2×106)をPERCP結合体化抗CD4+(Pharmingen)および種々のFITC結合体化抗Vβ(Pharmingen)で二重染色した。染色された細胞がCD4+およびVβ陽性であることについてフローサイトメトリーにより評価した。
【0146】
括弧内の、またはその他の、上記で提供された雑誌論文、参考文献、特許引用は全て、以前に言及されているか否かに関わらず、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0147】
本発明は上記の実施例と関連して記載されているが、本発明の精神から逸脱することなく、種々の変更がなされ得るということを理解されるべきである。従って、本発明は先に記載した特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された炎症性腸疾患関連I−2ポリペプチドであって、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたI−2ポリペプチド。
【請求項3】
I−2ポリペプチドの単離された免疫反応性フラグメントであって、I−2ポリペプチド(配列番号2)の一部分と実質的に同じアミノ酸配列を含む、フラグメント。
【請求項4】
配列番号2の少なくとも10個連続したアミノ酸を含む、請求項3に記載の単離された免疫反応性フラグメント。
【請求項5】
配列番号2を有するI−2ポリペプチドに選択的に結合する、実質的に精製された抗体物質。
【請求項6】
モノクローナル抗体物質である、請求項5に記載の実質的に精製された抗体物質。
【請求項7】
単離された核酸分子であって、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項8】
配列番号1の核酸配列を含む、請求項7に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
被験体における炎症性腸疾患(IBD)を診断する方法であって、以下:
(a)該被験体からサンプルを得る工程;
(b)I−2ポリペプチドまたはその免疫反応性フラグメントと、該I−2ポリペプチドに対する抗体との複合体を形成するに適切な条件下で、該サンプルを、該I−2ポリペプチドまたはその該免疫反応性フラグメントと接触させる工程;ならびに
(c)該複合体の存在または不在を検出する工程、を包含し、ここで該複合体の存在は、該被験体がIBDを有することを示す、方法。
【請求項10】
前記複合体の存在または不在が、前記I−2ポリペプチドに対する前記抗体のクラス決定部分に対して特異性を有する検出可能な二次抗体で検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記IBDがクローン病である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記I−2ポリペプチドが、配列番号2の配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
IBDを有する患者において寛容を誘導する方法であって、IBDを有する該患者に、有効用量のI−2ポリペプチドまたはその寛容原性フラグメントを投与する工程を包含する、方法。
【請求項14】
前記IBDがクローン病である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記I−2ポリペプチドが、配列番号2の配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
寛容化分子と組合せて、配列番号2と実質的に同じアミノ酸配列を有するI−2ポリペプチド、またはその寛容原性フラグメントを含む、組成物。
【請求項17】
前記I−2ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
配列番号2の少なくとも10個連続したアミノ酸を有する寛容原性フラグメントを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
炎症性腸疾患(IBD)を処置する際に有用な薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)IBDを有する患者から腸内細菌の標本を得る工程;
(b)該標本から、I−2ポリペプチドをコードする核酸分子を含む微生物種を単離する工程;
(c)該微生物種を、薬剤と接触させる工程;および
(d)該薬剤の不在下における該微生物種の増殖または生存率と比較した場合の、該微生物種の増殖または生存率の減少についてアッセイする工程、を包含し、ここで、該微生物種の増殖または生存率の該減少は、該薬剤が、IBDを処置する際に有用な薬剤であることを示す、方法。
【請求項20】
前記IBDがクローン病である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が抗生物質である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
炎症性腸疾患(IBD)を処置する際に有用な薬剤を同定する方法であって、以下:
(a)非ヒト動物にI−2ポリペプチドを投与する工程であって、これによって、IBDの1以上の症状が示される、工程;
(b)該非ヒト動物に、薬剤を投与する工程;および
(c)IBDに特徴的な1以上の該症状のレベルをアッセイする工程、を包含し、ここで、コントロールレベルと比較した場合の、1以上の該症状のレベルにおける減少は、該薬剤が、IBDを処置する際に有用であることを示す、方法。
【請求項23】
前記IBDがクローン病である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記I−2ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記非ヒト動物が、Gαi2−/−マウス;TCRα−/−マウス、およびIL−10−/−マウスからなる群から選択されるマウスである、請求項22に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−19515(P2011−19515A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168183(P2010−168183)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【分割の表示】特願2000−614953(P2000−614953)の分割
【原出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】