説明

ICカードリーダライタの接点保護構造

【課題】ICカードリーダライタにおいて、外部から挿入された異物による接点部の変形や異物の付着を防ぎ、且つ接点上の汚れを除去し、長期間に渡って高い接触信頼性を維持できるICリーダライタ機構を実現する。
【解決手段】ICカードリーダライタにおいて、カード搬送面に接点部6が突出するための開口部11を設けたカバー及び、カバー内面にクリーニング材8を設ける。前記接点部6が前記開口部11から突出するまでの移動の過程で、前記接点部6がカバー内面に取り付けられた前記クリーニング材8に接点自体の弾性で押し付けられながら移動することによって、前記接点部6の表面が清掃される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードリーダライタにおいて、ICカードに接する接点部分の変形・破損を防ぎ、且つ動作毎にクリーニングすることにより、ICカードとの電気的な接触の信頼性を高めたICカードリーダライタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICカード処理装置としては、カードを手で装置内に挿入し、カードと装置内の接点部分を接触させる手動式のものや、ローラ等によって自動でカードを接点部まで搬送し、接点を押下させることによって接触させるモータ式のもの等が実用に供されている。
【0003】
これらに共通する課題として、接点部の変形・破損・汚れの付着がある。
【0004】
接点部の構造は、ICカードが挿入される搬送路上に配置され、ICカードが搬送路上に露出した接点部に押し込まれることによって接触を得る構造(特許文献1参照)や、カード挿入と共に接点部が降下し接触を得る構造(特許文献2参照)が一般的となっている。これらは共に搬送路上に接点部が露出していることから、搬送路内に異物が挿入されると、接点部に異物が直接当たり、接点部の変形・破損が生じたり、接点部に汚れが付着することによって、ICカードとの接触時に電気的な導通が得られず通信エラーが発生するという問題がある。
【0005】
これらの対策として、搬送面と接点部との間に接点部が突出するための開口部を持つ保護面を儲け、さらにスリット上に取り付けられたクリーニング材によって接点部を清掃する構造(特許文献3参照)が提案されている。
【0006】
また、クリーニングの方法についてはクリーニングカードを用いた清掃方法(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2006−339238号
【特許文献2】特願平8−134313号
【特許文献3】特開2005−216246号
【特許文献4】特開平6−176208号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来例(特許文献3参照)では、搬送面に接点部が突出するための開口部を有しており異物に対する効果は高いが、IC接点部の上下動によりスリットに設けられたクリーニング材の間を通過し接点部がクリーニングされる構造であるため、接点部とクリーニング材はクリーニング材の弾性のみで接触し、またクリーニング材を通過する間しか接しないため、十分なクリーニング効果が得られ難い。
【0009】
また、専用のクリーニングカードを用いたクリーニング方法(特許文献3参照)は、接点部にクリーニング材が直接接する清掃方法であるため清掃の効果は高いが、人による保守が前提となるため、定期的な清掃を行うには限界がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、接点を外部から挿入される異物から保護する構造を持ち、かつ十分なクリーニング能力を有する構造を持ったICカードリーダライタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するために、ICリーダライタユニットのICカードと対向する面にスリットの付いたカバー及び、カバー内部にクリーニング材を有し、IC接点部がカードに接触するまでの動作の過程で、接点が接点自体の弾性によってクリーニング材に押し付けられながら移動することによって、接点の表面が清掃される機構とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部からの異物挿入による接点部の変形・破損を防止し、且つ、動作毎のクリーニングにより接点部に付着した異物を除去することすることができる。
【0013】
クリーニングにおいては、接点部自身の弾性で押圧させながら、クリーニング材上を平行に移動させることによって、高いクリーニング効果を実現し、長期間に渡って安定した接触状態保つICカードリーダライタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例を示したICリーダライタ部断面図である。
【図2】本発明の実施例の動作過程を示したフローチャートである。
【図3】本発明の動作を示したICリーダライタ部断面図である。
【図4】本発明の実施例を示した清掃凹凸部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図1〜4を参照して説明する。
【0016】
図1aは本実施形態のICカードリーダライタの断面図であり、図1bはその底面図、図1cは クリーニング材8の詳細図である。
【0017】
本実施形態は、モータ式カードリーダライタにICカードリードライトの機能を付加するために、ICカードリードライトに係る機能のみを別ユニットとして構成したものを想定している。
【0018】
ICリーダライタは、各部品を取り付ける基礎となる ブラケット1と、 ソレノイド2、レバー3、 ベース4から構成される。
【0019】
ソレノイド2は プランジャ2aを介して レバー2とリンクしている。 レバー3は レバー軸3aを支点として取り付けられ、一方は プランジャ2aにリンクしており、もう一方は ベース4の上面に接している。
ベース4はその部品上の形状として左右4本の 支点軸9を持つ。
支点軸9は、 ブラケット1上の形状である ガイド溝10に挿入されており、 ベース復帰バネ5によって元位置に引っ張られた状態で静止している。さらに、 ベース4にはバネ性を持った 接点部6、 接点部6とベース4に固定するための ピン7で構成されている。
【0020】
ブラケット1の底面には接点部ICが搬送路上に突出する時に通過する 開口部(図1b)11を備える。 また、ブラケット1の内面側には、不織布などの拭き取り性に優れた材質で作られる クリーニング材8が、斜めの面に対して取り付けられている(図1c)。
【0021】
図2は本実施形態の動作のフローチャートであり、図3はその動作過程を示した断面図である。
(S200)
ICカードリーダライタ内にカードが取り込まれる。
(S201)
各センサやスィッチなどによって、ICカードリーダ内にICカードが挿入されたかを判断する。カード挿入が確認されるまで待機する。
(S202)
ICカードが挿入されると、上位からの動作指示によって ソレノイド2に通電され、プランジャ2aが吸引される。
(S203)
吸引されたプランジャ2aとリンクしている レバー3が レバー軸3aを中心に回転する。
(S204)
レバー3のもう一方の腕によって ベース4の上面が押し下げられ、カード挿入待機(図3b)の状態となる。
(S205)
カードリーダ内部へとICカード121が搬送されると、ICカード121端面が ベース4に当たり、ICカード121の移動に伴い ベース4を奥にスライドさせる。この時、 ベース4と一体となっている 支点軸9が ブラケット1に設けられている ガイド溝10に沿って移動するため、ICカード121が図左側に移動すると共に。 ベース4および ベース4に取り付けられた 接点部6が降下する(図3c)。
(S206)
さらに ベース4が項かすることによって 接点部6は、 ブラケット1内面に取り付けられた クリーニング材8に接する(図3d)。 この時接点部は、接点部自体にバネ弾性を持つため、 クリーニング材8に 接点部6自体の弾性で押し付けられながらクリーニング材上を移動することにより、手で表面を拭き取ったのと同様に、接点上の汚れを落とす効果を得ることができる。
(S207)
さらにICカード121が押し込まれると ベース4がさらに降下し、 接点部6が ブラケット開口部11から突出し、ICカード121表面のICチップに接触する(図3e)。
【0022】
本実施形態では、図1bのように、 接点部6に対して ブラケット開口部11を極力小さくしている。外部から挿入されるものは、カード形状のものばかりではなく、紙のような薄いものや棒状のものなども想定されるため、極力小さくすることが望ましい。これにより、外部から挿入された異物が保護面によって遮られることにより、接点部が直接接することがなく、変形や破損を防ぐことができる。
(S208)
カードリーダはカードが所定の位置に達するまで搬送動作を継続する。
(S209)
ICカード121がICの通信を行う位置まで搬送されると、カードの搬送を停止する。
(S210)
ソレノイド2の吸着を停止させる。この時 ベース4はICカード121の端面で押された状態であるため、ソレノイド2の通電を停止し、 プランジャ2aの吸着がなくなっても位置は変化しない。
(S211)
ICカード121との通信を行う。
(S212)
上位からカード返却指示があるまで待機する。
(S213)
上位からの指示によりICカード121が返却される。
(S214)
カードが返却されると、 ベース4は ベース復帰バネ5によって元位置方向に引っ張られているため、ICカード121に追従して、元位置へと復帰する。
(S215)
ICカード121がカードリーダ外へ排出される。
【0023】
ベース4は元位置に戻り、待機状態となる。
【0024】
上記例ではでは、カードリーダに組み込む独立したICカードリーダライタユニットを想定したものであるため、 ブラケット1を基礎部品として各部品を取り付ける構成としているが、カードリーダ本体を構成する部品の1つに ブラケット1と同等の形状を持たせることによって、上記例と同様に接点部の保護及び、接点部クリーニングの機能を持たせることも可能である。
【0025】
また上記例では、 ブラケット1 ICの底面に開口部を設けた一体成形のものとしたが、クリーニング材を取り付けた底面部分を別部品化し、着脱を可能にすることにより、底面部分全体または底面部分のクリーニング材を新品に交換することで、ICリーダライタの主要部品を交換することなくクリーニング材の定期的な交換を可能とすることができ、著しく汚れの多い環境下に設置された機器においては、長期的に安定したクリーニング性能を保持することが可能である。
【0026】
さらに、上記例ではクリーニング材として不織布のような汚れを拭き取りやすい材質のものを別部品として構成することを想定しているが、 ブラケット1底面内側に 凹凸部13のような形状を成形し、その部分に接点部を押し付けることにより、クリーニング材を使用せずに表面の異物を除去することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…ブラケット、2…ソレノイド、2a…プランジャ、3…レバー、3a…レバー軸、4…ベース、5…ベース復帰バネ、6…接点部、7…ピン、8…クリーニング材、9…支点軸、10…ガイド溝、11…ブラケット開口部、12…ICカード、13…凹凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード搬送路と接点部との間に接点部が突出するための開口部を備えた保護面を持ち、かつ保護面の接点部側には接点部を清掃するためのクリーニング材を備えており、IC接点部がICカードに接触するまでの動作の過程で、接点部がクリーニング材によって清掃されることを特徴とするICリーダライタ。
【請求項2】
上記の構成で、クリーニング材を備えた保護面を着脱可能にしたことを特徴とするICカードリーダライタ。
【請求項3】
上記の構成で、接点部のクリーニング材を保護面内面に設けた凹凸形状にしたことを特徴とするICカードリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−20318(P2013−20318A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151368(P2011−151368)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】