ICカード機能を実行するデバイスの制御方法
【課題】 カード読み書き機能を備えた装置と、ICカードと有線接続された情報端末の間で、大容量のデータの高速転送を行なう。
【解決手段】 情報処理端末はICカードを介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しない非データ転送状態とを定義し、ICカードが情報処理端末の通信状態を管理する。ICカードは、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【解決手段】 情報処理端末はICカードを介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しない非データ転送状態とを定義し、ICカードが情報処理端末の通信状態を管理する。ICカードは、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触インターフェースを利用して機器間でデータを転送するデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に係り、特に、非接触インターフェースにアクセス可能な機器と、非接触インターフェースと有線接続された機器との間でデータ転送を行なうデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、ICカード機能部に対し非接触インターフェース経由でアクセスするカード読み書き装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間でデータ転送を行なうデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に係り、特に、カード読み書き機能を備えた装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間で高速データ転送を行なうデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に関する。
【背景技術】
【0003】
ICカードに代表される非接触・近接通信システムは、操作上の手軽さから、広範に普及している。ICカードの一般的な使用方法は、利用者がICカードをカード読み書き装置にかざすことによって行なわれる。カード読み書き装置側では常にICカードをポーリングしており外部のICカードを発見することにより、両者間の通信動作が開始する。例えば、暗証コードやその他の個人認証情報、電子チケットなどの価値情報などをICカードに格納しておくことにより、キャッシュ・ディスペンサやコンサート会場の出入口、駅の改札口などにおいて、入場者や乗車者の認証処理を行なうことができる。
【0004】
最近では、微細化技術の向上とも相俟って、比較的大容量のメモリを持つICカードが出現している。大容量メモリ付きのICカードによれば、メモリ空間上にファイル・システムを展開し、複数のアプリケーションを同時に格納しておくことにより、1枚のICカードを複数の用途に利用することができる。例えば、1枚のICカード上に、電子決済を行なうための電子マネーや、特定のコンサート会場に入場するための電子チケットなど、複数のアプリケーションを格納しておくことにより、1枚のICカードをさまざまな用途に適用させることができる。ここで言う電子マネーや電子チケットは、利用者が提供する資金に応じて発行される電子データを通じて決済(電子決済)される仕組み、又はこのような電子データ自体を指す。
【0005】
また、ICカードやカード用リーダ/ライタ(カード読み書き装置)が無線・非接触インターフェースの他に、外部機器と接続するための有線インターフェースを備え、携帯電話機、PDA(PersonalDigital Assistance)やCE(Consumer Electronics)機器、パーソナル・コンピュータなどの各機器に内蔵して用いることができる。すなわち、これらの機器にICカード及びカード読み書き装置のいずれか一方又は双方の機能を装備して、ICカードを利用した非接触通信技術を汎用性のある双方向の近接データ通信を行なうことができる。ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えており、この種の近接データ通信は、高いレベルでセキュリティを実現することができる。
【0006】
例えば、カード読み書き装置と、有線インターフェース経由でICカード若しくはICチップに接続される情報処理端末の間でICカード若しくはICチップを介在させた3者間通信システムについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。同システムでは、読み書き装置と、情報処理端末内に設けられたプログラム制御部と、情報処理端末に内蔵され、読み書き装置と無線通信を行なう無線通信インターフェースと、プログラム制御部に接続するための有線通信インターフェースと、メモリを備えたICカードとの間でデータ通信を行なう。
【0007】
情報処理端末に内蔵されるICチップは、読み書き装置からの搬送波検出に応じて無線通信インターフェースを介してトランザクションを行なう無線通信モードと、情報処理端末の内部電源の起動に応じて有線通信インターフェースを介してトランザクションを行なう有線通信モードとを備えている。そして、有線通信モード下では、情報処理端末のプログラム制御部は、有線通信モードを一時的に無線通信モードに切り換えるアクティベート・コマンドと、一時的に有効にされた無線通信モードを有線通信モードに戻す非アクティベート・コマンドを発行することができる。一方、無線通信モード下では、外部のカード読み書き装置は、無線通信モードを一時的に有線通信モードに切り換える第2のアクティベート・コマンドと、一時的に有効にされた有線通信モードを無線通信モードに戻す第2の非アクティベート・コマンドを発行する。
【0008】
有線通信モード下では、情報処理端末は、アクティベート・コマンドを発行して、一時的に無線通信モードに移行して、外部のカード読み書き装置からICチップへデータ書き込みを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻り、ICチップに書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカードを経由した外部のカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。また、情報処理端末は、ICカードにデータを書き込んでから、アクティベート・コマンドを発行して一時的に無線通信モードに移行し、外部のカード読み書き装置がICチップからのデータ読み取りを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻ることにより、ICカードを経由した情報処理端末から外部のカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。
【0009】
一方、無線通信モード下では、外部のカード読み書き装置は、第2のアクティベート・コマンドを発行して、一時的に有線通信モードに移行して、情報処理端末からICチップへデータ書き込みを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻り、ICチップに書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカードを経由した情報処理端末から外部のカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。また、外部のカード読み書き装置は、ICカードにデータを書き込んでから、第2のアクティベート・コマンドを発行して一時的に有線通信モードに移行し、情報処理端末がICチップからのデータ読み取りを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻ることにより、ICカードを経由した外部のカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。
【0010】
上述したような通信システムによれば、ICカードの介在により実現される非接触データ通信路を利用して、カード読み書き機能を備えた機器と、ICカードと有線接続される情報処理端末の間でセキュアなデータ通信を実現することができる。
【0011】
他方、従来の非接触ICカード通信プロトコルでは、コマンドを送信するとレスポンスを受信するという手順を採用しているので、URL(Uniform Resource Locator)のような比較的短いテキスト・データをセキュアに転送するには適しているものの、画像データのように比較的大容量のデータを高速に転送するには不向きとされている。
【0012】
また、カード読み書き装置側から情報処理端末側へデータを送ることを考えた場合、介在するICカードが情報処理端末への転送データを非接触インターフェースで受信した旨を有線インターフェース経由で通知するような機構を備えていない。このため、情報処理端末は、ICカードが自分宛てのデータを受け取ったかどうかを即座に検出又は確認することができないので、カード読み書き装置側で送信データの同期をとるのが難しいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−203212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、非接触インターフェースにアクセス可能な機器と、非接触インターフェースと有線接続された機器との間でデータ転送を好適に行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、ICカード機能部に対し非接触インターフェース経由でアクセスするカード読み書き装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間でセキュアなデータ転送を好適に行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、カード読み書き機能を備えた装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間で、大容量のデータの高速転送を行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、メモリを備えたICカード機能実行部と、前記ICカード機能実行部に対し非接触インターフェース経由で通信可能なカード読み書き装置と、前記ICカード機能実行部と有線インターフェース経由で通信可能な情報処理端末との間で前記ICカード機能実行部を介在させたデータ通信を行なうデータ通信システムであって、
前記カード読み書き装置が前記非接触インターフェース経由で前記ICカード機能実行部内のメモリに対しデータ転送動作し、又は、前記情報処理端末が前記有線インターフェース経由で前記ICカード機能実行部内のメモリに対しデータ転送動作する第1の通信モードと、
前記非接触インターフェース及び前記有線インターフェースで構成される通信路上で前記カード読み書き装置と前記情報処理端末間のデータ転送に前記ICカード機能実行部が介在する第2の通信モードと、
システムを前記第1の通信モード又は前記第2の通信モードに設定する通信モード制御手段と、
各通信モード下での通信動作を制御する通信制御手段と、
を具備することを特徴とするデータ通信システムである。
【0018】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない(以下、同様)。
【0019】
本発明は、カード読み書き機能を備えた機器と、有線インターフェース経由でICカード機能を備えたICチップに接続される情報処理端末の間で、ICチップを介在させた3者間通信システムに関する。なお、非接触ICカード機能実行部としてのICチップは、データ送受信機能とデータ処理部を有するが、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路(プロトコル制御、RF変復調、コマンド処理、暗号処理、メモリ管理)を1チップで構成してもよいし、あるいはこれらを分離した2チップ以上のICで構成するようにしてもよい。また、ICチップは、内蔵されるもの、並びにSIMカード・タイプのものを含む。以下では、これらを総称して、単に「ICカード機能実行部」と呼ぶこともある。
【0020】
ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えていることから、この種の3者間通信システムは、高いレベルでセキュリティを実現することができる。
【0021】
しかしながら、従来の非接触ICカード通信プロトコルでは、コマンドを送信するとレスポンスを受信するという手順を採用しているので、比較的大容量のデータを高速に転送するには不向きである。また、ICカードが情報処理端末に対し受信データがある旨を通知する機構を備えておらず、情報処理端末がデータを受け取ったかどうかを確認することができないので、カード読み書き装置側で送信データの同期をとるのが難しいという問題もある。
【0022】
これに対し、本発明に係る通信システムでは、情報処理端末がICカード機能部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能部が情報処理端末の通信状態を管理するようになっている。そして、ICカード機能部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に転送する。
【0023】
このように、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて情報処理端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【0024】
また、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高いことから、ICカード機能部は、非接触インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返すが、有線インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理を高速化することができる。
【0025】
本発明に係る3者間通信システムにおいて、カード読み書き装置と情報処理端末間に介在するICカード機能部は、ICカード機能部内のメモリへの通常のアクセス動作を行なう第1の通信モードとしての「一般通信モード」の他に、第2の通信モードとしての「アドホック通信モード」を備えている。アドホック通信モード下では、ICカード機能部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に直接転送する。
【0026】
アドホック通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取ることができる「データ転送状態」にある。すなわち、アドホック通信モード下では、ICカード機能部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送を直接行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。この場合のカード読み書き装置からのデータ転送は、ICカードに対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違する情報処理端末に対するICカード機能部を介在したデータ転送であり、また、通信インターフェースの相違するカード読み書き装置に対するICカード機能部を介在したデータ転送である。
【0027】
また、本発明の第2の側面は、メモリと、カード読み書き装置と通信可能な非接触インターフェースと、情報処理端末と有線接続する有線インターフェースと、前記メモリに対するアクセス動作、及び前記非接触インターフェース及び前記有線インターフェースを介した通信動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末との間で設定された通信モードを管理し、現在の通信モードに応じて、前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末間での通信路の動作を制御することを特徴とするICカード機能を実行するデバイスである。
【0028】
また、本発明の第3の側面は、非接触インターフェース、メモリ、及び有線インターフェースを備えたICカード機能実行部と、ユーザ入出力手段と、前記有線インターフェースを介したICカード機能実行部との通信動作、及び前記ユーザ入出力手段を介したユーザ・インタラクションに応じた処理動作を制御するプログラム制御手段を備え、前記プログラム制御手段は、前記ICカード機能実行部との前記有線インターフェースを介したデータ転送を許容するデータ転送状態と、前記ICカード機能実行部との前記有線インターフェースを介したデータ転送を許容しないデータ非転送状態を備えることを特徴とする情報処理端末である。
【0029】
本発明の第2の側面に係るICカード機能を実行するデバイスは、本発明の第1の側面に係るデータ通信システムにおいて、ICカード機能実行部として作用することができる。このデバイスは、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路(プロトコル制御、RF変復調、コマンド処理、暗号処理、メモリ管理)を1チップで構成してもよいし、あるいはこれらを分離した2チップ以上のICで構成するようにしてもよい。また、ICチップは、内蔵されるもの、並びにSIMカード・タイプのものを含む。
【0030】
ICカード機能実行部はカード読み書き装置との非接触ICカード・インターフェースと、情報処理端末との有線インターフェースを持つが、無線LAN機能と有線LAN機能を装備するハブに対し同様の機能を搭載することにより、無線ネットワークと有線ネットワークからなる通信システムにおいて、本発明の第1の側面と同様の転送制御を実現することができる。
【0031】
また、本発明の第3の側面に係る情報処理端末は、本発明の第1の側面に係るデータ通信システムにおいて、ICカード機能実行部と有線インターフェース経由で通信可能な情報処理端末として作用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ICカード機能部に対し非接触インターフェース経由でアクセスするカード読み書き装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間でセキュアなデータ転送を好適に行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、カード読み書き機能を備えた装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間で、大容量のデータの高速転送を行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することができる。
【0034】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、電磁誘導に基づくカード読み書き装置とICカード機能実行部との無線通信の仕組みを概念的に示した図である。
【図2】図2は、カード読み書き装置とICカードからなる系を1個のトランスとして捉えてモデル化した図である。
【図3】図3は、非接触ICカード通信システムの構成を模式的に示した図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るICカード機能実行部のハードウェア構成を模式的に示した図である。
【図5】図5は、3者間通信システムにおいて、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカードの状態遷移図を示した図である。
【図6】図6は、一般通信モード下で、ICカード機能実行部にアクセスするための3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図7】図7は、アドホック通信モード下で、ICカード機能実行部にアクセスするための3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図8】図8は、カード読み書き装置がICカード機能実行部に対しアドホック通信要求する動作シーケンスを示した図である。
【図9】図9は、情報処理端末がアドホック通信開始モードに応諾する際の動作シーケンスを示した図である。
【図10】図10は、アドホック通信モード下での3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図11】図11は、アドホック通信モード下での3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図12】図12は、ICカード機能実行部がアドホック通信モードから一般通信モードに遷移する際の3者間通信システムの動作シーケンスを示した図である。
【図13】図13は、図5に示した状態遷移をコントロールするための機能的構成を模式的に示した図である。
【図14】図14は、図13に示した制御構成によりアドホック通信を開始するための動作フローを示した図である。
【図15】図15は、図13に示した制御構成によりアドホック通信を実行するための動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0037】
本発明は、カード読み書き機能を備えた機器と、有線インターフェース経由でICカード機能部に接続され又はICチップを内蔵する情報処理端末の間で、非接触ICカード機能を介在させた3者間通信システムに関する。
【0038】
ここで、非接触ICカード機能を搭載したICチップは、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路(プロトコル制御、RF変復調、コマンド処理、暗号処理、メモリ管理)を1チップで構成してもよいし、あるいはこれらを分離した2チップ以上のICで構成するようにしてもよい。以下では、これらを総称して、単に「ICカード」と呼ぶこともある。また、ICチップは、内蔵されるものやSIMカード・タイプのものがある。以下では、ICカードやICチップを含めて、「ICカード機能実行部」とも呼ぶ。
【0039】
ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えていることから、この種の3者間通信システムは、高いレベルでセキュリティを実現することができる。まず、ICカード機能実行部を利用した非接触データ通信の仕組みについて説明する。
【0040】
カード読み書き装置とICカード機能実行部の間での無線通信は、例えば電磁誘導の原理に基づいて実現される。図1には、電磁誘導に基づくカード読み書き装置とICカード機能実行部との無線通信の仕組みを概念的に図解している。カード読み書き装置は、ループ・コイルで構成されたアンテナLRWを備え、このアンテナLRWに電流IRWを流すことでその周辺に磁界を発生させる。一方、ICカード機能実行部側では、電気的にはICカード機能実行部の周辺にループ・コイルLcが形設されている。ICカード機能実行部側のループ・コイルLc端にはカード読み書き装置側のループ・アンテナLcが発する磁界による誘導電圧が生じて、ループ・コイルLc端に接続されたICカード機能実行部の端子に入力される。
【0041】
カード読み書き装置側のアンテナLRWとICカード機能実行部側のループ・コイルLcは、その結合度は互いの位置関係によって変わるが、系としては1個のトランスを形成していると捉えることができ、ICカードの読み書き動作を図2に示すようにモデル化することができる。
【0042】
カード読み書き装置側では、アンテナLRWに流す電流IRWを変調することによって、ICチップ上のループ・コイルLcに誘起される電圧VOは変調を受け、そのことを利用してカード読み書き装置はICカード機能実行部へのデータ送信を行なうことができる。
【0043】
また、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置へ返送するためのデータに応じてループ・コイルLcの端子間の負荷を変動させる機能(Load Switching)を持つ。ループ・コイルLcの端子間の負荷が変動すると、カード読み書き装置側ではアンテナ端子間のインピーダンスが変化して、アンテナLRWの通過電流IRWや電圧VRWの変動となって現れる。この変動分を復調することで、カード読み書き装置はICカード機能実行部の返送データを受信することができる。
【0044】
すなわち、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からの質問信号に対する応答信号に応じて自身のアンテナ間の負荷を変化させることによって、カード読み書き装置側の受信回路に現れる信号に振幅変調をかけて通信を行なうことができる訳である。
【0045】
非接触カード・システム自体は、図3に示すように、カード読み書き装置1と、ICカード機能実行部2と、コントローラ3で構成され、カード読み書き装置1とICカード2との間では、電磁波を利用して非接触で、データの送受信が行なわれる。すなわち、カード読み書き装置1がICカード機能実行部2に所定のコマンドを送信し、ICカード機能実行部2は受信したコマンドに対応する処理を行なう。そして、ICカード機能実行部2は、その処理結果に対応する応答データをカード読み書き装置1に送信する。
【0046】
カード読み書き装置1は、所定のインターフェース(例えば、RS−485Aの規格などに準拠したもの)を介してコントローラ3に接続されている。コントローラ3は、カード読み書き装置1に対し制御信号を供給することで、ICカード機能実行部2に対する所定の処理を行なわせる。
【0047】
本発明に係る3者間通信システムでは、ICカード機能実行部は、無線・非接触インターフェースの他に、外部機器と接続するための有線インターフェースを備え、携帯電話機、PDA(PersonalDigital Assistance)やCE(Consumer Electronics)機器、パーソナル・コンピュータなどの情報処理端末に内蔵若しくはケーブル接続して用いることができる。
【0048】
図4には、この種のICカード機能実行部のハードウェア構成を模式的に示している。同図に示すように、ICカード機能実行部は、アンテナ部101に接続されたアナログ部102と、ディジタル制御部103と、メモリ104と、外部インターフェース105とで構成され、携帯端末110に内蔵されている。このICカード機能実行部は、1チップの半導体集積回路で構成してもよいし、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路部を分離して2チップの半導体集積回路で構成してもよい。
【0049】
アンテナ部101は、図示しないカード読み書き装置との間で非接触データの送受信を行なう。アナログ部102は、検波、変復調、クロック抽出など、アンテナ部101から送受信されるアナログ信号の処理を行なう。これらは、ICカード機能実行部とカード読み書き装置間の非接触インターフェースを構成する。
【0050】
ディジタル制御部103は、送受信データの処理やICカード機能実行部内で行なわれるその他の動作を統括的にコントロールする。ディジタル制御部103は、アドレス可能なメモリ104をローカルに接続している。メモリ104は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性記憶装置で構成され、電子マネーや電子チケットなどの利用者データを格納したり、ディジタル制御部103が実行するプログラム・コードを書き込んだり、実行中の作業データを保存するために使用することができる。
【0051】
本実施形態では、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からのICカード機能実行部内のメモリ104に対する一般的なアクセス動作を制御する一般通信モードと、インターフェース・プロトコルの相違するカード読み書き装置と情報処理端末との直接的なデータ転送の間に介在するアドホック通信モードを備えている。ディジタル制御部103は、外部イベントに応じてこれらモード間の状態遷移のコントロール、並びに各通信モードにおける通信動作のコントロールも行なうようになっているが、この点の詳細については後述に譲る。
【0052】
外部インターフェース105は、カード読み書き装置(図示しない)と結ぶ非接触インターフェースとは相違するインターフェース・プロトコルにより、ディジタル制御部103が携帯端末110などの装置と接続するための機能モジュールである。メモリ104に書き込まれたデータは、外部インターフェース105を経由して、携帯端末110に転送することができる。
【0053】
ここで、カード読み書き装置と通信を行なう際に、カード読み書き装置からの受信データをそのまま、あるいは適当な変換規則で変換し、あるいは別のパケット構造に変換して、外部インターフェース105を介して携帯端末110に送信する。また逆に、外部インターフェース105を介して携帯端末110から受信したデータをそのまま、あるいは適当な変換規則で変換し、あるいは別のパケット構造に変換して、非接触インターフェースを介してカード読み書き装置に送信する。
【0054】
本実施形態では、ICカード機能実行部は、情報処理端末としての携帯端末110に内蔵して用いられることを想定しており、外部インターフェース105には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)のような有線インターフェースを使用する。
【0055】
ICカード機能実行部は、例えば、アンテナ部101経由で受信されるカード読み書き装置からの受信信号から得られるエネルギによって駆動することができる。勿論、携帯端末110側からの有線インターフェース105を介した供給電力によって、一部又は全部が動作するように構成されていてもよい。
【0056】
また、有線インターフェース105中には、ICカード機能実行部がカード読み書き装置からデータ転送を要求するためのアドホック通信要求コマンドを受信した旨を情報処理端末110側に通知するためのハードウェア信号線(後述)を含むものとする。
【0057】
携帯端末110は、例えば携帯電話機やPDA、パーソナル・コンピュータ(PC)などの情報処理端末に相当する。携帯端末110は、プログラム制御部111と、表示部112と、ユーザ入力部113とで構成される。
【0058】
プログラム制御部111は、例えばマイクロプロセッサと、RAMと、ROMで構成され(いずれも図4には図示しない)、マイクロプロセッサは、ROMに格納されたプログラム・コードに従って、RAMを作業領域に用いてさまざまな処理サービスを実行する。処理サービスには、携帯電話機など携帯端末1100本来の機能の他に、ICカード機能実行部に対する処理も含まれる。勿論、プログラム制御部111は、ハード・ディスクなどの外部記憶装置や、その他の周辺装置を備えていてもよい。
【0059】
本実施形態では、プログラム制御部111は、情報処理端末110がICカード機能実行部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能実行部が情報処理端末110の通信状態を管理するようになっている。
【0060】
なお、図4に示した構成例では、非接触ICカード・インターフェース用のアンテナ部101は、ICカード機能実行部としてのICチップ内に搭載されているが、アンテナ構成はこれに限定されない。例えば、ICチップ・モジュールに対しアンテナ部101が外付け接続される場合や、ICチップ・モジュールを内蔵する携帯端末101側にアンテナ部101を配設するという実装形態も考えられる。
【0061】
ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えていることから、非接触インターフェースを利用した3者間通信システムは、高いレベルでセキュリティを実現することができる。しかしながら、従来の非接触ICカード通信プロトコルでは、コマンドを送信するとレスポンスを受信するという手順を採用しているので、比較的大容量のデータを高速に転送するには不向きである。また、ICカードが情報処理端末110へ受信データがある旨を通知する機構を備えておらず、端末がデータを受け取ったかどうかを確認することができないので、カード読み書き装置側で送信データの同期をとるのが難しいという問題もある。
【0062】
これに対し、本発明に係る通信システムでは、情報処理端末110がICカード機能実行部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能実行部が情報処理端末110の通信状態を管理するようになっている。そして、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末110から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に直接転送する。
【0063】
このように、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能実行部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【0064】
また、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高い。そこで、ICカード機能実行部は、非接触インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返すが、有線インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理を高速化することができる。
【0065】
以下、本発明に係る3者間通信システムにおける通信動作について詳解する。
【0066】
図5には、3者間通信システムにおいて、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能実行部の状態遷移図を示している。同図に示すように、ICカード機能実行部は、データ非転送状態に相当する「一般通信モード」と、データ転送状態に相当する「アドホック通信モード」を備えている。このような状態遷移動作は、ICカード機能実行部内のディジタル制御部103が外部イベントに応じてコントロールする。
【0067】
一般通信モード下では、ICカード機能実行部に対しては一般的なアクセス動作が行なわれる。図6には、一般通信モード下で、ICカード機能実行部にアクセスするための3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示している。カード読み書き装置がICカード機能実行部に書き込むデータがあるとき又はICカード機能実行部から読み取るデータがあるときには、非接触インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンド(Transmit Data Command)を送信して、ICカード機能実行部に対してデータの書き込み又は読出しを行なう。また、情報処理端末がICカード機能実行部に書き込むデータがあるとき又はICカード機能実行部から読み取るデータがあるときには、有線インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンドを送信して、ICカード機能実行部に対してデータの書き込み又は読出しを行なう。
【0068】
一般通信モード下でのICカード機能実行部を介在させた3者間通信手順は、例えば本出願人に既に譲渡されている特開2003−203212号公報に開示されている通信方法に従う。
【0069】
すなわち、情報処理端末は、アクティベート・コマンドを発行して、一時的に有線通信モードから無線通信モードに移行して、カード読み書き装置からICカード機能実行部へデータ書き込みを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻り、ICカード機能実行部に書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカード機能実行部を経由したカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。また、情報処理端末は、ICカード機能実行部にデータを書き込んでから、アクティベート・コマンドを発行して一時的に無線通信モードに移行し、カード読み書き装置がICカード機能実行部からのデータ読み取りを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻ることにより、ICカード機能実行部を経由した情報処理端末からカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。
【0070】
また、一般通信モード下では、カード読み書き装置は、第2のアクティベート・コマンドを発行して、一時的に無線通信モードから有線通信モードに移行して、情報処理端末からICカード機能実行部へデータ書き込みを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻り、ICカード機能実行部に書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカード機能実行部を経由した情報処理端末からカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。また、カード読み書き装置は、ICカード機能実行部にデータを書き込んでから、第2のアクティベート・コマンドを発行して一時的に有線通信モードに移行し、情報処理端末がICカード機能実行部からのデータ読み取りを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻ることにより、ICカード機能実行部を経由したカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。
【0071】
このように一般通信モード下では、ICカード機能実行部は、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置から受信したデータを有線インターフェース経由で情報処理端末へ直接転送したり、有線インターフェース経由で情報処理端末から受け取ったデータを非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に直接転送したりすることはない。言い換えれば、ICカード機能実行部を介在したカード読み書き装置と情報処理端末間でデータ伝送の同期はとられていない。一般通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能実行部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取らない「データ非転送状態」にある。
【0072】
これに対し、アドホック通信モード下では、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に直接転送する。
【0073】
アドホック通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能実行部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取ることができる「データ転送状態」にある。すなわち、アドホック通信モード下では、ICカード機能実行部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送を直接行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【0074】
図7には、アドホック通信モード下で3者間通信を行なう動作シーケンスを模式的に示している。
【0075】
カード読み書き装置は、転送データがあるときには、非接触インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンドを送信する。
【0076】
ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、有線インターフェース経由で情報処理端末に転送する。この場合のカード読み書き装置からのデータ転送は、ICカード機能実行部内のメモリに対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違する情報処理端末に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0077】
また、情報処理端末は、転送データがあるときには、有線インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンドを送信する。
【0078】
ICカード機能実行部は、情報処理端末からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に転送する。この場合の情報処理端末からのデータ転送は、ICカード機能実行部内のメモリに対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違するカード読み書き装置に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0079】
なお、図7に示すように、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータ転送コマンドを受信し、これを有線インターフェース経由で情報処理端末に転送すると同時に、カード読み書き装置に対しデータ転送レスポンスを返している。他方、ICカード機能実行部は、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータ転送コマンドを受信し、これを非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に転送したときには、レスポンスを返すことはない。これは、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高いことから、レスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理のさらなる高速化を図るためである。
【0080】
ICカード機能実行部は、一般通信モード下で、カード読み書き装置側からアドホック通信要求コマンド(Propose Ad−hoc Command)を受信すると、一時的にアドホック通信モードへの移行状態になる(図5を参照のこと)。
【0081】
図8には、カード読み書き装置がICカード機能実行部に対しアドホック通信要求する動作シーケンスを示している。カード読み書き装置は、情報処理端末とのデータ転送を行ないたいときには、任意のセッション番号を生成して、アドホック通信要求コマンドをICカード機能実行部に送信する。
【0082】
ICカード機能実行部と情報処理端末を接続する有線インターフェース中には、ICカード機能実行部がカード読み書き装置からデータ転送を要求するためのアドホック通信要求コマンドを受信した旨を情報処理端末側に通知するためのハードウェア信号線が含まれている(前述)。一般通信モード下のICカード機能実行部は、このコマンドを受信したことに応答して、この信号線をロー・レベルからハイ・レベルに転じることによって、情報処理端末に対して状態の遷移を促し、応諾命令の返信を待機する。
【0083】
ICカード機能実行部は、アドホック通信開始コマンドを転送してから所定期間内に情報処理端末から応諾を受信するとアドホック通信モードに移行する。一方、所定期間内に応諾を確認することができなかったら、一般通信モードに戻る(図5を参照のこと)。
【0084】
図9には、情報処理端末がアドホック通信開始モードに応諾する際の動作シーケンスを示している。情報処理端末は、ICカード機能実行部との有線インターフェース中の特定の信号線がロー・レベルからハイ・レベルに転じたこと検出し、アドホック通信要求が発生したことを認識する。
【0085】
ここで、情報処理端末は、アドホック通信、すなわちICカード機能実行部を介在したカード読み書き装置とのデータ転送を許可するときには、自らはデータ非転送状態からデータ転送状態に移行し、アドホック通信開始コマンド(Start Ad−hoc Command)をICカード機能実行部に返す。
【0086】
ICカード機能実行部は、情報処理端末から、アドホック通信開始コマンドを受信すると、アドホック通信モードに移行して、有線インターフェースから情報処理端末にアドホック通信開始レスポンスを返すとともに、非接触インターフェースからカード読み書き装置に対しアドホック通信要求レスポンスを返す。また、ICカード機能実行部は、アドホック通信開始コマンドに含まれているセッション番号を記憶しておく。
【0087】
なお、図示しないが、情報処理端末側から有線通信インターフェース経由でアドホック通信開始コマンドを発行することによっても、3者間通信システムにおけるアドホック通信を開始することもできる。
【0088】
アドホック通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能実行部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取ることができる「データ転送状態」にある。ICカード機能実行部は、情報処理端末又はカード読み書き装置からデータ転送コマンドが続く限り、アドホック通信モードを保つ(図5を参照のこと)。
【0089】
ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、有線インターフェース経由で情報処理端末に転送する。この場合のカード読み書き装置からのデータ転送は、ICカード機能実行部に対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違する情報処理端末に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0090】
また、ICカード機能実行部は、情報処理端末からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に転送する。この場合の情報処理端末からのデータ転送は、ICカード機能実行部に対する一般的な非接触アクセスとは相違し、通信インターフェースの相違するカード読み書き装置に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0091】
図10及び図11には、アドホック通信モード下での3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示している。
【0092】
カード読み書き装置は、ICカード機能実行部からアドホック通信要求レスポンスを受け取ると、非接触インターフェース経由で、データ転送コマンドを送信する。これに対し、ICカードは、自身がアドホック通信モード下にあり(すなわち、情報処理端末が転送状態にあり)、且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、有線インターフェース経由で情報処理端末にデータ転送コマンドを転送する。そして、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置に対しデータ転送レスポンスを返す。
【0093】
また、ICカード機能実行部は、有線インターフェース経由で情報処理端末からデータ転送コマンドを受信すると、自身がアドホック通信モード下にあり(すなわち、情報処理端末が転送状態にあり)、且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置にデータ転送コマンドを転送する。但し、この場合は、ICカード機能実行部はデータ送信元の情報処理端末にレスポンスを返すことはない。これは、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高いことから、レスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理のさらなる高速化を図るためである。
【0094】
また、アドホック通信モード下のICカード機能実行部は、カード読み書き装置からアドホック通信終了コマンドを受信すると、一般通信モードに戻る(図5を参照のこと)。
【0095】
図12には、ICカード機能実行部がアドホック通信モードから一般通信モードに遷移する際の3者間通信システムの動作シーケンスを示している。
【0096】
カード読み書き装置は、情報処理端末に対する送信データ、あるいは情報処理端末からの受信データがなくなると、アドホック通信終了コマンドをICカードに送信する。
【0097】
ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でアドホック通信終了コマンドを受信すると、これを有線インターフェース経由で情報処理端末に転送する。情報処理端末は、これに応答して、データ転送状態からデータ非転送状態に遷移する。また、ICカード機能実行部は、自らは一般通信モードに遷移するとともに、カード読み書き装置に対しアドホック通信終了レスポンスを返す。
【0098】
なお、図示しないが、情報処理端末側から有線通信インターフェース経由でアドホック通信終了コマンドを発行することによっても、アドホック通信を終了して一般通信モードに戻ることもできる。
【0099】
ICカード機能実行部内のディジタル制御部103は、カード読み書き装置からのアドホック通信開始/終了コマンドなどの外部イベントに応じて、図5に示した状態遷移のコントロールを行なうようになっている。図13には、ディジタル制御部103において、状態遷移をコントロールするための機能的構成を模式的に示している。
【0100】
有線通信制御機能部103−1は、有線インターフェースを介した情報処理端末との通信動作の制御を行なう。また、無線通信制御機能部103−2は、非接触インターフェースを介したカード読み書き装置との通信動作の制御を行なう。
【0101】
アドホック通信管理機能部103−3は、外部イベントに応じて、ICカード機能実行部の動作モードのコントロールを行なう。具体的には、カード読み書き装置又は情報処理端末からのアドホック通信開始コマンドに応じて、一般通信モードからアドホック通信モードに遷移し、カード読み書き装置又は情報処理端末からのアドホック通信終了コマンドに応じて、アドホック通信を終了して一般通信モードに復帰する。アドホック通信管理機能部103−3は、カード読み書き装置からアドホック通信開始コマンドを受信したときには、有線通信制御機能部103−1を介さず、有線インターフェース中の特定の信号線を用いて情報処理端末に直接通知する。
【0102】
アドホック状態管理機能部103−4は、アドホック通信管理機能部103−3によって設定された現在の動作モードを不揮発的に保持する。
【0103】
通信路制御機能部103−5は、アドホック状態管理機能部103−4に保持されている現在の動作モードに従って、非接触インターフェース並びに有線インターフェース経由でのICカード機能実行部に対するアクセス動作を制御する。また、通信路制御機能部103−5は、非接触インターフェース及び有線インターフェースで構成されるカード読み書き装置〜情報処理端末間の通信路の動作を制御する。
【0104】
一般通信モード下でのアクセスは、ICカード機能実行部内のメモリ104に対するデータ書き込み又は読み出し動作である。この場合、通信路制御機能部103−5は、非接触インターフェース経由でのカード読み書き装置からのメモリ・アクセス動作、又は有線インターフェース経由での情報処理装置からのメモリ・アクセス動作が排他的に行なわれるように、通信動作の制御を行なう。
【0105】
一方、アドホック通信動作モード下では、カード読み書き装置や情報処理端末からのICカード機能実行部へのアクセスは、ICカード機能実行部内のメモリ104に対するアクセスではなく、ICカード機能実行部を介在した両者間の直接的なデータ転送に相当する。この場合、通信路制御機能部103−5は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送するとともに、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に直接転送するように、通信路の制御を行なう。
【0106】
図14には、図13に示した制御構成によりアドホック通信を開始するための動作フローを示している。
【0107】
情報処理端末から非接触インターフェース経由でアドホック通信開始要求コマンド(Propose Ad−hoc Command)を受信すると、無線通信制御機能部103−2は、これをアドホック管理機能部103−3に通知する。
【0108】
アドホック管理機能部103−3は、ハードウェア信号線を用いて情報処理端末のこの要求コマンドを通知すると、アドホック通信開始コマンドを受信するまで待機する。
【0109】
情報処理端末は、アドホック通信を応諾する場合には、自らはデータ非転送状態からデータ転送状態に移行するとともに、有線インターフェース経由でアドホック通信開始コマンドを返す。
【0110】
有線通信制御機能部103−1は、アドホック通信開始コマンドを受信すると、これをアドホック管理機能部103−3に通知する。これに応答して、アドホック管理機能部103−3は、ICカード機能実行部の動作モードを一般通信モードからアドホック通信モードに遷移させ、現在の動作モードをアドホック状態管理機能部103−4に設定する。また、カード読み書き装置から受け取ったアドホック通信開始コマンドに含まれているセッション番号を記憶しておく。
【0111】
また、図15には、図13に示した制御構成によりアドホック通信を実行するための動作フローを示している。
【0112】
有線インターフェース経由でカード読み書き装置からデータ転送コマンドが送られてくると、有線通信制御機能部103−1は、通信路制御機能部103−5に通知する。
【0113】
通信路制御機能部103−5は、アドホック状態管理部に問い合わせ、ICカード機能実行部の現在の動作モードを確認する。そして、アドホック通信モード下にあり且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、無線通信制御機能部103−2にデータ転送コマンドを渡して、カード読み書き装置に転送する。
【0114】
また、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置からデータ転送コマンドが送られてくると、無線通信制御機能部103−2は、通信路制御機能部103−5に通知する。
【0115】
通信路制御機能部103−5は、アドホック状態管理部に問い合わせ、ICカード機能実行部の現在の動作モードを確認する。そして、アドホック通信モード下にあり且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、無線通信制御機能部103−2にデータ転送レスポンスを渡して、カード読み書き装置に返信する。そして、有線通信制御機能部103−1にデータ転送コマンドを渡して、情報処理端末に転送する。
【0116】
以上説明してきたように、本発明に係る通信システムでは、情報処理端末がICカード機能実行部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能実行部が情報処理端末の通信状態を管理するようになっている。そして、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に転送する。
【0117】
このように、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能実行部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本明細書では、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0119】
本明細書では、メモリを備えたICカード機能実行部と、ICカード機能実行部に対し非接触インターフェース経由で通信可能なカード読み書き装置と、ICカード機能実行部と有線インターフェース経由で通信可能な情報処理端末で構成される3者間通信システムに本発明を適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨は必ずしもこれに限定されるものではない。勿論、非接触インターフェース以外の通信インターフェースを用いて構成される3者間通信システムにも、同様に本発明を適用することができる。
【0120】
例えば、ICカード機能実行部はカード読み書き装置との非接触ICカード・インターフェースと、情報処理端末との有線インターフェースを持つが、無線LAN機能と有線LAN機能を装備するハブに対し同様の機能を搭載することにより、無線ネットワークと有線ネットワークからなる通信システムにおいて同様の転送制御を実現することができる。
【0121】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の記載を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0122】
1…カード読み書き装置
2…ICカード機能実行部
3…コントローラ
101…アンテナ部
102…アナログ部
103…ディジタル制御部
104…メモリ
105…外部インターフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触インターフェースを利用して機器間でデータを転送するデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に係り、特に、非接触インターフェースにアクセス可能な機器と、非接触インターフェースと有線接続された機器との間でデータ転送を行なうデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、ICカード機能部に対し非接触インターフェース経由でアクセスするカード読み書き装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間でデータ転送を行なうデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に係り、特に、カード読み書き機能を備えた装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間で高速データ転送を行なうデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末に関する。
【背景技術】
【0003】
ICカードに代表される非接触・近接通信システムは、操作上の手軽さから、広範に普及している。ICカードの一般的な使用方法は、利用者がICカードをカード読み書き装置にかざすことによって行なわれる。カード読み書き装置側では常にICカードをポーリングしており外部のICカードを発見することにより、両者間の通信動作が開始する。例えば、暗証コードやその他の個人認証情報、電子チケットなどの価値情報などをICカードに格納しておくことにより、キャッシュ・ディスペンサやコンサート会場の出入口、駅の改札口などにおいて、入場者や乗車者の認証処理を行なうことができる。
【0004】
最近では、微細化技術の向上とも相俟って、比較的大容量のメモリを持つICカードが出現している。大容量メモリ付きのICカードによれば、メモリ空間上にファイル・システムを展開し、複数のアプリケーションを同時に格納しておくことにより、1枚のICカードを複数の用途に利用することができる。例えば、1枚のICカード上に、電子決済を行なうための電子マネーや、特定のコンサート会場に入場するための電子チケットなど、複数のアプリケーションを格納しておくことにより、1枚のICカードをさまざまな用途に適用させることができる。ここで言う電子マネーや電子チケットは、利用者が提供する資金に応じて発行される電子データを通じて決済(電子決済)される仕組み、又はこのような電子データ自体を指す。
【0005】
また、ICカードやカード用リーダ/ライタ(カード読み書き装置)が無線・非接触インターフェースの他に、外部機器と接続するための有線インターフェースを備え、携帯電話機、PDA(PersonalDigital Assistance)やCE(Consumer Electronics)機器、パーソナル・コンピュータなどの各機器に内蔵して用いることができる。すなわち、これらの機器にICカード及びカード読み書き装置のいずれか一方又は双方の機能を装備して、ICカードを利用した非接触通信技術を汎用性のある双方向の近接データ通信を行なうことができる。ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えており、この種の近接データ通信は、高いレベルでセキュリティを実現することができる。
【0006】
例えば、カード読み書き装置と、有線インターフェース経由でICカード若しくはICチップに接続される情報処理端末の間でICカード若しくはICチップを介在させた3者間通信システムについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。同システムでは、読み書き装置と、情報処理端末内に設けられたプログラム制御部と、情報処理端末に内蔵され、読み書き装置と無線通信を行なう無線通信インターフェースと、プログラム制御部に接続するための有線通信インターフェースと、メモリを備えたICカードとの間でデータ通信を行なう。
【0007】
情報処理端末に内蔵されるICチップは、読み書き装置からの搬送波検出に応じて無線通信インターフェースを介してトランザクションを行なう無線通信モードと、情報処理端末の内部電源の起動に応じて有線通信インターフェースを介してトランザクションを行なう有線通信モードとを備えている。そして、有線通信モード下では、情報処理端末のプログラム制御部は、有線通信モードを一時的に無線通信モードに切り換えるアクティベート・コマンドと、一時的に有効にされた無線通信モードを有線通信モードに戻す非アクティベート・コマンドを発行することができる。一方、無線通信モード下では、外部のカード読み書き装置は、無線通信モードを一時的に有線通信モードに切り換える第2のアクティベート・コマンドと、一時的に有効にされた有線通信モードを無線通信モードに戻す第2の非アクティベート・コマンドを発行する。
【0008】
有線通信モード下では、情報処理端末は、アクティベート・コマンドを発行して、一時的に無線通信モードに移行して、外部のカード読み書き装置からICチップへデータ書き込みを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻り、ICチップに書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカードを経由した外部のカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。また、情報処理端末は、ICカードにデータを書き込んでから、アクティベート・コマンドを発行して一時的に無線通信モードに移行し、外部のカード読み書き装置がICチップからのデータ読み取りを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻ることにより、ICカードを経由した情報処理端末から外部のカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。
【0009】
一方、無線通信モード下では、外部のカード読み書き装置は、第2のアクティベート・コマンドを発行して、一時的に有線通信モードに移行して、情報処理端末からICチップへデータ書き込みを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻り、ICチップに書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカードを経由した情報処理端末から外部のカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。また、外部のカード読み書き装置は、ICカードにデータを書き込んでから、第2のアクティベート・コマンドを発行して一時的に有線通信モードに移行し、情報処理端末がICチップからのデータ読み取りを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻ることにより、ICカードを経由した外部のカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。
【0010】
上述したような通信システムによれば、ICカードの介在により実現される非接触データ通信路を利用して、カード読み書き機能を備えた機器と、ICカードと有線接続される情報処理端末の間でセキュアなデータ通信を実現することができる。
【0011】
他方、従来の非接触ICカード通信プロトコルでは、コマンドを送信するとレスポンスを受信するという手順を採用しているので、URL(Uniform Resource Locator)のような比較的短いテキスト・データをセキュアに転送するには適しているものの、画像データのように比較的大容量のデータを高速に転送するには不向きとされている。
【0012】
また、カード読み書き装置側から情報処理端末側へデータを送ることを考えた場合、介在するICカードが情報処理端末への転送データを非接触インターフェースで受信した旨を有線インターフェース経由で通知するような機構を備えていない。このため、情報処理端末は、ICカードが自分宛てのデータを受け取ったかどうかを即座に検出又は確認することができないので、カード読み書き装置側で送信データの同期をとるのが難しいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−203212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、非接触インターフェースにアクセス可能な機器と、非接触インターフェースと有線接続された機器との間でデータ転送を好適に行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、ICカード機能部に対し非接触インターフェース経由でアクセスするカード読み書き装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間でセキュアなデータ転送を好適に行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、カード読み書き機能を備えた装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間で、大容量のデータの高速転送を行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、メモリを備えたICカード機能実行部と、前記ICカード機能実行部に対し非接触インターフェース経由で通信可能なカード読み書き装置と、前記ICカード機能実行部と有線インターフェース経由で通信可能な情報処理端末との間で前記ICカード機能実行部を介在させたデータ通信を行なうデータ通信システムであって、
前記カード読み書き装置が前記非接触インターフェース経由で前記ICカード機能実行部内のメモリに対しデータ転送動作し、又は、前記情報処理端末が前記有線インターフェース経由で前記ICカード機能実行部内のメモリに対しデータ転送動作する第1の通信モードと、
前記非接触インターフェース及び前記有線インターフェースで構成される通信路上で前記カード読み書き装置と前記情報処理端末間のデータ転送に前記ICカード機能実行部が介在する第2の通信モードと、
システムを前記第1の通信モード又は前記第2の通信モードに設定する通信モード制御手段と、
各通信モード下での通信動作を制御する通信制御手段と、
を具備することを特徴とするデータ通信システムである。
【0018】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない(以下、同様)。
【0019】
本発明は、カード読み書き機能を備えた機器と、有線インターフェース経由でICカード機能を備えたICチップに接続される情報処理端末の間で、ICチップを介在させた3者間通信システムに関する。なお、非接触ICカード機能実行部としてのICチップは、データ送受信機能とデータ処理部を有するが、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路(プロトコル制御、RF変復調、コマンド処理、暗号処理、メモリ管理)を1チップで構成してもよいし、あるいはこれらを分離した2チップ以上のICで構成するようにしてもよい。また、ICチップは、内蔵されるもの、並びにSIMカード・タイプのものを含む。以下では、これらを総称して、単に「ICカード機能実行部」と呼ぶこともある。
【0020】
ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えていることから、この種の3者間通信システムは、高いレベルでセキュリティを実現することができる。
【0021】
しかしながら、従来の非接触ICカード通信プロトコルでは、コマンドを送信するとレスポンスを受信するという手順を採用しているので、比較的大容量のデータを高速に転送するには不向きである。また、ICカードが情報処理端末に対し受信データがある旨を通知する機構を備えておらず、情報処理端末がデータを受け取ったかどうかを確認することができないので、カード読み書き装置側で送信データの同期をとるのが難しいという問題もある。
【0022】
これに対し、本発明に係る通信システムでは、情報処理端末がICカード機能部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能部が情報処理端末の通信状態を管理するようになっている。そして、ICカード機能部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に転送する。
【0023】
このように、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて情報処理端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【0024】
また、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高いことから、ICカード機能部は、非接触インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返すが、有線インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理を高速化することができる。
【0025】
本発明に係る3者間通信システムにおいて、カード読み書き装置と情報処理端末間に介在するICカード機能部は、ICカード機能部内のメモリへの通常のアクセス動作を行なう第1の通信モードとしての「一般通信モード」の他に、第2の通信モードとしての「アドホック通信モード」を備えている。アドホック通信モード下では、ICカード機能部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に直接転送する。
【0026】
アドホック通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取ることができる「データ転送状態」にある。すなわち、アドホック通信モード下では、ICカード機能部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送を直接行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。この場合のカード読み書き装置からのデータ転送は、ICカードに対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違する情報処理端末に対するICカード機能部を介在したデータ転送であり、また、通信インターフェースの相違するカード読み書き装置に対するICカード機能部を介在したデータ転送である。
【0027】
また、本発明の第2の側面は、メモリと、カード読み書き装置と通信可能な非接触インターフェースと、情報処理端末と有線接続する有線インターフェースと、前記メモリに対するアクセス動作、及び前記非接触インターフェース及び前記有線インターフェースを介した通信動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末との間で設定された通信モードを管理し、現在の通信モードに応じて、前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末間での通信路の動作を制御することを特徴とするICカード機能を実行するデバイスである。
【0028】
また、本発明の第3の側面は、非接触インターフェース、メモリ、及び有線インターフェースを備えたICカード機能実行部と、ユーザ入出力手段と、前記有線インターフェースを介したICカード機能実行部との通信動作、及び前記ユーザ入出力手段を介したユーザ・インタラクションに応じた処理動作を制御するプログラム制御手段を備え、前記プログラム制御手段は、前記ICカード機能実行部との前記有線インターフェースを介したデータ転送を許容するデータ転送状態と、前記ICカード機能実行部との前記有線インターフェースを介したデータ転送を許容しないデータ非転送状態を備えることを特徴とする情報処理端末である。
【0029】
本発明の第2の側面に係るICカード機能を実行するデバイスは、本発明の第1の側面に係るデータ通信システムにおいて、ICカード機能実行部として作用することができる。このデバイスは、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路(プロトコル制御、RF変復調、コマンド処理、暗号処理、メモリ管理)を1チップで構成してもよいし、あるいはこれらを分離した2チップ以上のICで構成するようにしてもよい。また、ICチップは、内蔵されるもの、並びにSIMカード・タイプのものを含む。
【0030】
ICカード機能実行部はカード読み書き装置との非接触ICカード・インターフェースと、情報処理端末との有線インターフェースを持つが、無線LAN機能と有線LAN機能を装備するハブに対し同様の機能を搭載することにより、無線ネットワークと有線ネットワークからなる通信システムにおいて、本発明の第1の側面と同様の転送制御を実現することができる。
【0031】
また、本発明の第3の側面に係る情報処理端末は、本発明の第1の側面に係るデータ通信システムにおいて、ICカード機能実行部と有線インターフェース経由で通信可能な情報処理端末として作用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ICカード機能部に対し非接触インターフェース経由でアクセスするカード読み書き装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間でセキュアなデータ転送を好適に行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、カード読み書き機能を備えた装置と、ICカード機能部と有線接続されあるいはICチップを内蔵する情報端末の間で、大容量のデータの高速転送を行なうことができる、優れたデータ通信システム、ICカード機能を実行するデバイス及びその制御方法、並びに情報処理端末を提供することができる。
【0034】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、電磁誘導に基づくカード読み書き装置とICカード機能実行部との無線通信の仕組みを概念的に示した図である。
【図2】図2は、カード読み書き装置とICカードからなる系を1個のトランスとして捉えてモデル化した図である。
【図3】図3は、非接触ICカード通信システムの構成を模式的に示した図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るICカード機能実行部のハードウェア構成を模式的に示した図である。
【図5】図5は、3者間通信システムにおいて、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカードの状態遷移図を示した図である。
【図6】図6は、一般通信モード下で、ICカード機能実行部にアクセスするための3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図7】図7は、アドホック通信モード下で、ICカード機能実行部にアクセスするための3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図8】図8は、カード読み書き装置がICカード機能実行部に対しアドホック通信要求する動作シーケンスを示した図である。
【図9】図9は、情報処理端末がアドホック通信開始モードに応諾する際の動作シーケンスを示した図である。
【図10】図10は、アドホック通信モード下での3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図11】図11は、アドホック通信モード下での3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示した図である。
【図12】図12は、ICカード機能実行部がアドホック通信モードから一般通信モードに遷移する際の3者間通信システムの動作シーケンスを示した図である。
【図13】図13は、図5に示した状態遷移をコントロールするための機能的構成を模式的に示した図である。
【図14】図14は、図13に示した制御構成によりアドホック通信を開始するための動作フローを示した図である。
【図15】図15は、図13に示した制御構成によりアドホック通信を実行するための動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0037】
本発明は、カード読み書き機能を備えた機器と、有線インターフェース経由でICカード機能部に接続され又はICチップを内蔵する情報処理端末の間で、非接触ICカード機能を介在させた3者間通信システムに関する。
【0038】
ここで、非接触ICカード機能を搭載したICチップは、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路(プロトコル制御、RF変復調、コマンド処理、暗号処理、メモリ管理)を1チップで構成してもよいし、あるいはこれらを分離した2チップ以上のICで構成するようにしてもよい。以下では、これらを総称して、単に「ICカード」と呼ぶこともある。また、ICチップは、内蔵されるものやSIMカード・タイプのものがある。以下では、ICカードやICチップを含めて、「ICカード機能実行部」とも呼ぶ。
【0039】
ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えていることから、この種の3者間通信システムは、高いレベルでセキュリティを実現することができる。まず、ICカード機能実行部を利用した非接触データ通信の仕組みについて説明する。
【0040】
カード読み書き装置とICカード機能実行部の間での無線通信は、例えば電磁誘導の原理に基づいて実現される。図1には、電磁誘導に基づくカード読み書き装置とICカード機能実行部との無線通信の仕組みを概念的に図解している。カード読み書き装置は、ループ・コイルで構成されたアンテナLRWを備え、このアンテナLRWに電流IRWを流すことでその周辺に磁界を発生させる。一方、ICカード機能実行部側では、電気的にはICカード機能実行部の周辺にループ・コイルLcが形設されている。ICカード機能実行部側のループ・コイルLc端にはカード読み書き装置側のループ・アンテナLcが発する磁界による誘導電圧が生じて、ループ・コイルLc端に接続されたICカード機能実行部の端子に入力される。
【0041】
カード読み書き装置側のアンテナLRWとICカード機能実行部側のループ・コイルLcは、その結合度は互いの位置関係によって変わるが、系としては1個のトランスを形成していると捉えることができ、ICカードの読み書き動作を図2に示すようにモデル化することができる。
【0042】
カード読み書き装置側では、アンテナLRWに流す電流IRWを変調することによって、ICチップ上のループ・コイルLcに誘起される電圧VOは変調を受け、そのことを利用してカード読み書き装置はICカード機能実行部へのデータ送信を行なうことができる。
【0043】
また、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置へ返送するためのデータに応じてループ・コイルLcの端子間の負荷を変動させる機能(Load Switching)を持つ。ループ・コイルLcの端子間の負荷が変動すると、カード読み書き装置側ではアンテナ端子間のインピーダンスが変化して、アンテナLRWの通過電流IRWや電圧VRWの変動となって現れる。この変動分を復調することで、カード読み書き装置はICカード機能実行部の返送データを受信することができる。
【0044】
すなわち、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からの質問信号に対する応答信号に応じて自身のアンテナ間の負荷を変化させることによって、カード読み書き装置側の受信回路に現れる信号に振幅変調をかけて通信を行なうことができる訳である。
【0045】
非接触カード・システム自体は、図3に示すように、カード読み書き装置1と、ICカード機能実行部2と、コントローラ3で構成され、カード読み書き装置1とICカード2との間では、電磁波を利用して非接触で、データの送受信が行なわれる。すなわち、カード読み書き装置1がICカード機能実行部2に所定のコマンドを送信し、ICカード機能実行部2は受信したコマンドに対応する処理を行なう。そして、ICカード機能実行部2は、その処理結果に対応する応答データをカード読み書き装置1に送信する。
【0046】
カード読み書き装置1は、所定のインターフェース(例えば、RS−485Aの規格などに準拠したもの)を介してコントローラ3に接続されている。コントローラ3は、カード読み書き装置1に対し制御信号を供給することで、ICカード機能実行部2に対する所定の処理を行なわせる。
【0047】
本発明に係る3者間通信システムでは、ICカード機能実行部は、無線・非接触インターフェースの他に、外部機器と接続するための有線インターフェースを備え、携帯電話機、PDA(PersonalDigital Assistance)やCE(Consumer Electronics)機器、パーソナル・コンピュータなどの情報処理端末に内蔵若しくはケーブル接続して用いることができる。
【0048】
図4には、この種のICカード機能実行部のハードウェア構成を模式的に示している。同図に示すように、ICカード機能実行部は、アンテナ部101に接続されたアナログ部102と、ディジタル制御部103と、メモリ104と、外部インターフェース105とで構成され、携帯端末110に内蔵されている。このICカード機能実行部は、1チップの半導体集積回路で構成してもよいし、RFアナログ・フロントエンドとロジック回路部を分離して2チップの半導体集積回路で構成してもよい。
【0049】
アンテナ部101は、図示しないカード読み書き装置との間で非接触データの送受信を行なう。アナログ部102は、検波、変復調、クロック抽出など、アンテナ部101から送受信されるアナログ信号の処理を行なう。これらは、ICカード機能実行部とカード読み書き装置間の非接触インターフェースを構成する。
【0050】
ディジタル制御部103は、送受信データの処理やICカード機能実行部内で行なわれるその他の動作を統括的にコントロールする。ディジタル制御部103は、アドレス可能なメモリ104をローカルに接続している。メモリ104は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性記憶装置で構成され、電子マネーや電子チケットなどの利用者データを格納したり、ディジタル制御部103が実行するプログラム・コードを書き込んだり、実行中の作業データを保存するために使用することができる。
【0051】
本実施形態では、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からのICカード機能実行部内のメモリ104に対する一般的なアクセス動作を制御する一般通信モードと、インターフェース・プロトコルの相違するカード読み書き装置と情報処理端末との直接的なデータ転送の間に介在するアドホック通信モードを備えている。ディジタル制御部103は、外部イベントに応じてこれらモード間の状態遷移のコントロール、並びに各通信モードにおける通信動作のコントロールも行なうようになっているが、この点の詳細については後述に譲る。
【0052】
外部インターフェース105は、カード読み書き装置(図示しない)と結ぶ非接触インターフェースとは相違するインターフェース・プロトコルにより、ディジタル制御部103が携帯端末110などの装置と接続するための機能モジュールである。メモリ104に書き込まれたデータは、外部インターフェース105を経由して、携帯端末110に転送することができる。
【0053】
ここで、カード読み書き装置と通信を行なう際に、カード読み書き装置からの受信データをそのまま、あるいは適当な変換規則で変換し、あるいは別のパケット構造に変換して、外部インターフェース105を介して携帯端末110に送信する。また逆に、外部インターフェース105を介して携帯端末110から受信したデータをそのまま、あるいは適当な変換規則で変換し、あるいは別のパケット構造に変換して、非接触インターフェースを介してカード読み書き装置に送信する。
【0054】
本実施形態では、ICカード機能実行部は、情報処理端末としての携帯端末110に内蔵して用いられることを想定しており、外部インターフェース105には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)のような有線インターフェースを使用する。
【0055】
ICカード機能実行部は、例えば、アンテナ部101経由で受信されるカード読み書き装置からの受信信号から得られるエネルギによって駆動することができる。勿論、携帯端末110側からの有線インターフェース105を介した供給電力によって、一部又は全部が動作するように構成されていてもよい。
【0056】
また、有線インターフェース105中には、ICカード機能実行部がカード読み書き装置からデータ転送を要求するためのアドホック通信要求コマンドを受信した旨を情報処理端末110側に通知するためのハードウェア信号線(後述)を含むものとする。
【0057】
携帯端末110は、例えば携帯電話機やPDA、パーソナル・コンピュータ(PC)などの情報処理端末に相当する。携帯端末110は、プログラム制御部111と、表示部112と、ユーザ入力部113とで構成される。
【0058】
プログラム制御部111は、例えばマイクロプロセッサと、RAMと、ROMで構成され(いずれも図4には図示しない)、マイクロプロセッサは、ROMに格納されたプログラム・コードに従って、RAMを作業領域に用いてさまざまな処理サービスを実行する。処理サービスには、携帯電話機など携帯端末1100本来の機能の他に、ICカード機能実行部に対する処理も含まれる。勿論、プログラム制御部111は、ハード・ディスクなどの外部記憶装置や、その他の周辺装置を備えていてもよい。
【0059】
本実施形態では、プログラム制御部111は、情報処理端末110がICカード機能実行部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能実行部が情報処理端末110の通信状態を管理するようになっている。
【0060】
なお、図4に示した構成例では、非接触ICカード・インターフェース用のアンテナ部101は、ICカード機能実行部としてのICチップ内に搭載されているが、アンテナ構成はこれに限定されない。例えば、ICチップ・モジュールに対しアンテナ部101が外付け接続される場合や、ICチップ・モジュールを内蔵する携帯端末101側にアンテナ部101を配設するという実装形態も考えられる。
【0061】
ICカード技術は、内部の情報の複製や改竄が困難で、耐タンパ性を備えていることから、非接触インターフェースを利用した3者間通信システムは、高いレベルでセキュリティを実現することができる。しかしながら、従来の非接触ICカード通信プロトコルでは、コマンドを送信するとレスポンスを受信するという手順を採用しているので、比較的大容量のデータを高速に転送するには不向きである。また、ICカードが情報処理端末110へ受信データがある旨を通知する機構を備えておらず、端末がデータを受け取ったかどうかを確認することができないので、カード読み書き装置側で送信データの同期をとるのが難しいという問題もある。
【0062】
これに対し、本発明に係る通信システムでは、情報処理端末110がICカード機能実行部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能実行部が情報処理端末110の通信状態を管理するようになっている。そして、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末110から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に直接転送する。
【0063】
このように、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能実行部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【0064】
また、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高い。そこで、ICカード機能実行部は、非接触インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返すが、有線インターフェース上でのデータ転送時にはコマンドに対してレスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理を高速化することができる。
【0065】
以下、本発明に係る3者間通信システムにおける通信動作について詳解する。
【0066】
図5には、3者間通信システムにおいて、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能実行部の状態遷移図を示している。同図に示すように、ICカード機能実行部は、データ非転送状態に相当する「一般通信モード」と、データ転送状態に相当する「アドホック通信モード」を備えている。このような状態遷移動作は、ICカード機能実行部内のディジタル制御部103が外部イベントに応じてコントロールする。
【0067】
一般通信モード下では、ICカード機能実行部に対しては一般的なアクセス動作が行なわれる。図6には、一般通信モード下で、ICカード機能実行部にアクセスするための3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示している。カード読み書き装置がICカード機能実行部に書き込むデータがあるとき又はICカード機能実行部から読み取るデータがあるときには、非接触インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンド(Transmit Data Command)を送信して、ICカード機能実行部に対してデータの書き込み又は読出しを行なう。また、情報処理端末がICカード機能実行部に書き込むデータがあるとき又はICカード機能実行部から読み取るデータがあるときには、有線インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンドを送信して、ICカード機能実行部に対してデータの書き込み又は読出しを行なう。
【0068】
一般通信モード下でのICカード機能実行部を介在させた3者間通信手順は、例えば本出願人に既に譲渡されている特開2003−203212号公報に開示されている通信方法に従う。
【0069】
すなわち、情報処理端末は、アクティベート・コマンドを発行して、一時的に有線通信モードから無線通信モードに移行して、カード読み書き装置からICカード機能実行部へデータ書き込みを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻り、ICカード機能実行部に書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカード機能実行部を経由したカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。また、情報処理端末は、ICカード機能実行部にデータを書き込んでから、アクティベート・コマンドを発行して一時的に無線通信モードに移行し、カード読み書き装置がICカード機能実行部からのデータ読み取りを行なった後、今度は非アクティベート・コマンドを発行して有線通信モードに戻ることにより、ICカード機能実行部を経由した情報処理端末からカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。
【0070】
また、一般通信モード下では、カード読み書き装置は、第2のアクティベート・コマンドを発行して、一時的に無線通信モードから有線通信モードに移行して、情報処理端末からICカード機能実行部へデータ書き込みを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻り、ICカード機能実行部に書き込まれたデータを読み取ることにより、ICカード機能実行部を経由した情報処理端末からカード読み書き装置へのデータ伝送を行なう。また、カード読み書き装置は、ICカード機能実行部にデータを書き込んでから、第2のアクティベート・コマンドを発行して一時的に有線通信モードに移行し、情報処理端末がICカード機能実行部からのデータ読み取りを行なった後、今度は第2の非アクティベート・コマンドを発行して無線通信モードに戻ることにより、ICカード機能実行部を経由したカード読み書き装置から情報処理端末へのデータ伝送を行なう。
【0071】
このように一般通信モード下では、ICカード機能実行部は、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置から受信したデータを有線インターフェース経由で情報処理端末へ直接転送したり、有線インターフェース経由で情報処理端末から受け取ったデータを非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に直接転送したりすることはない。言い換えれば、ICカード機能実行部を介在したカード読み書き装置と情報処理端末間でデータ伝送の同期はとられていない。一般通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能実行部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取らない「データ非転送状態」にある。
【0072】
これに対し、アドホック通信モード下では、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に直接転送する。
【0073】
アドホック通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能実行部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取ることができる「データ転送状態」にある。すなわち、アドホック通信モード下では、ICカード機能実行部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送を直接行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【0074】
図7には、アドホック通信モード下で3者間通信を行なう動作シーケンスを模式的に示している。
【0075】
カード読み書き装置は、転送データがあるときには、非接触インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンドを送信する。
【0076】
ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、有線インターフェース経由で情報処理端末に転送する。この場合のカード読み書き装置からのデータ転送は、ICカード機能実行部内のメモリに対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違する情報処理端末に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0077】
また、情報処理端末は、転送データがあるときには、有線インターフェース経由で、所定の認証手続を経てセッションを確立した後(図示しない)、データ転送コマンドを送信する。
【0078】
ICカード機能実行部は、情報処理端末からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に転送する。この場合の情報処理端末からのデータ転送は、ICカード機能実行部内のメモリに対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違するカード読み書き装置に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0079】
なお、図7に示すように、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータ転送コマンドを受信し、これを有線インターフェース経由で情報処理端末に転送すると同時に、カード読み書き装置に対しデータ転送レスポンスを返している。他方、ICカード機能実行部は、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータ転送コマンドを受信し、これを非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に転送したときには、レスポンスを返すことはない。これは、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高いことから、レスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理のさらなる高速化を図るためである。
【0080】
ICカード機能実行部は、一般通信モード下で、カード読み書き装置側からアドホック通信要求コマンド(Propose Ad−hoc Command)を受信すると、一時的にアドホック通信モードへの移行状態になる(図5を参照のこと)。
【0081】
図8には、カード読み書き装置がICカード機能実行部に対しアドホック通信要求する動作シーケンスを示している。カード読み書き装置は、情報処理端末とのデータ転送を行ないたいときには、任意のセッション番号を生成して、アドホック通信要求コマンドをICカード機能実行部に送信する。
【0082】
ICカード機能実行部と情報処理端末を接続する有線インターフェース中には、ICカード機能実行部がカード読み書き装置からデータ転送を要求するためのアドホック通信要求コマンドを受信した旨を情報処理端末側に通知するためのハードウェア信号線が含まれている(前述)。一般通信モード下のICカード機能実行部は、このコマンドを受信したことに応答して、この信号線をロー・レベルからハイ・レベルに転じることによって、情報処理端末に対して状態の遷移を促し、応諾命令の返信を待機する。
【0083】
ICカード機能実行部は、アドホック通信開始コマンドを転送してから所定期間内に情報処理端末から応諾を受信するとアドホック通信モードに移行する。一方、所定期間内に応諾を確認することができなかったら、一般通信モードに戻る(図5を参照のこと)。
【0084】
図9には、情報処理端末がアドホック通信開始モードに応諾する際の動作シーケンスを示している。情報処理端末は、ICカード機能実行部との有線インターフェース中の特定の信号線がロー・レベルからハイ・レベルに転じたこと検出し、アドホック通信要求が発生したことを認識する。
【0085】
ここで、情報処理端末は、アドホック通信、すなわちICカード機能実行部を介在したカード読み書き装置とのデータ転送を許可するときには、自らはデータ非転送状態からデータ転送状態に移行し、アドホック通信開始コマンド(Start Ad−hoc Command)をICカード機能実行部に返す。
【0086】
ICカード機能実行部は、情報処理端末から、アドホック通信開始コマンドを受信すると、アドホック通信モードに移行して、有線インターフェースから情報処理端末にアドホック通信開始レスポンスを返すとともに、非接触インターフェースからカード読み書き装置に対しアドホック通信要求レスポンスを返す。また、ICカード機能実行部は、アドホック通信開始コマンドに含まれているセッション番号を記憶しておく。
【0087】
なお、図示しないが、情報処理端末側から有線通信インターフェース経由でアドホック通信開始コマンドを発行することによっても、3者間通信システムにおけるアドホック通信を開始することもできる。
【0088】
アドホック通信モード下では、情報処理端末は、ICカード機能実行部が非接触インターフェース経由で受信したデータをそのまま受け取ることができる「データ転送状態」にある。ICカード機能実行部は、情報処理端末又はカード読み書き装置からデータ転送コマンドが続く限り、アドホック通信モードを保つ(図5を参照のこと)。
【0089】
ICカード機能実行部は、カード読み書き装置からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、有線インターフェース経由で情報処理端末に転送する。この場合のカード読み書き装置からのデータ転送は、ICカード機能実行部に対するデータの書き込みとは相違し、通信インターフェースの相違する情報処理端末に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0090】
また、ICカード機能実行部は、情報処理端末からのデータ転送コマンドに対し、所定のプロトコル変換を行なった後、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に転送する。この場合の情報処理端末からのデータ転送は、ICカード機能実行部に対する一般的な非接触アクセスとは相違し、通信インターフェースの相違するカード読み書き装置に対するICカード機能実行部を介在したデータ転送である。
【0091】
図10及び図11には、アドホック通信モード下での3者間通信システムの動作シーケンスを模式的に示している。
【0092】
カード読み書き装置は、ICカード機能実行部からアドホック通信要求レスポンスを受け取ると、非接触インターフェース経由で、データ転送コマンドを送信する。これに対し、ICカードは、自身がアドホック通信モード下にあり(すなわち、情報処理端末が転送状態にあり)、且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、有線インターフェース経由で情報処理端末にデータ転送コマンドを転送する。そして、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置に対しデータ転送レスポンスを返す。
【0093】
また、ICカード機能実行部は、有線インターフェース経由で情報処理端末からデータ転送コマンドを受信すると、自身がアドホック通信モード下にあり(すなわち、情報処理端末が転送状態にあり)、且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置にデータ転送コマンドを転送する。但し、この場合は、ICカード機能実行部はデータ送信元の情報処理端末にレスポンスを返すことはない。これは、有線インターフェースは、非接触インターフェースに比し、データ転送中のエラー発生率が極めて低く信頼性が高いことから、レスポンスを返す手続を省略することにより、さらにデータ転送処理のさらなる高速化を図るためである。
【0094】
また、アドホック通信モード下のICカード機能実行部は、カード読み書き装置からアドホック通信終了コマンドを受信すると、一般通信モードに戻る(図5を参照のこと)。
【0095】
図12には、ICカード機能実行部がアドホック通信モードから一般通信モードに遷移する際の3者間通信システムの動作シーケンスを示している。
【0096】
カード読み書き装置は、情報処理端末に対する送信データ、あるいは情報処理端末からの受信データがなくなると、アドホック通信終了コマンドをICカードに送信する。
【0097】
ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でアドホック通信終了コマンドを受信すると、これを有線インターフェース経由で情報処理端末に転送する。情報処理端末は、これに応答して、データ転送状態からデータ非転送状態に遷移する。また、ICカード機能実行部は、自らは一般通信モードに遷移するとともに、カード読み書き装置に対しアドホック通信終了レスポンスを返す。
【0098】
なお、図示しないが、情報処理端末側から有線通信インターフェース経由でアドホック通信終了コマンドを発行することによっても、アドホック通信を終了して一般通信モードに戻ることもできる。
【0099】
ICカード機能実行部内のディジタル制御部103は、カード読み書き装置からのアドホック通信開始/終了コマンドなどの外部イベントに応じて、図5に示した状態遷移のコントロールを行なうようになっている。図13には、ディジタル制御部103において、状態遷移をコントロールするための機能的構成を模式的に示している。
【0100】
有線通信制御機能部103−1は、有線インターフェースを介した情報処理端末との通信動作の制御を行なう。また、無線通信制御機能部103−2は、非接触インターフェースを介したカード読み書き装置との通信動作の制御を行なう。
【0101】
アドホック通信管理機能部103−3は、外部イベントに応じて、ICカード機能実行部の動作モードのコントロールを行なう。具体的には、カード読み書き装置又は情報処理端末からのアドホック通信開始コマンドに応じて、一般通信モードからアドホック通信モードに遷移し、カード読み書き装置又は情報処理端末からのアドホック通信終了コマンドに応じて、アドホック通信を終了して一般通信モードに復帰する。アドホック通信管理機能部103−3は、カード読み書き装置からアドホック通信開始コマンドを受信したときには、有線通信制御機能部103−1を介さず、有線インターフェース中の特定の信号線を用いて情報処理端末に直接通知する。
【0102】
アドホック状態管理機能部103−4は、アドホック通信管理機能部103−3によって設定された現在の動作モードを不揮発的に保持する。
【0103】
通信路制御機能部103−5は、アドホック状態管理機能部103−4に保持されている現在の動作モードに従って、非接触インターフェース並びに有線インターフェース経由でのICカード機能実行部に対するアクセス動作を制御する。また、通信路制御機能部103−5は、非接触インターフェース及び有線インターフェースで構成されるカード読み書き装置〜情報処理端末間の通信路の動作を制御する。
【0104】
一般通信モード下でのアクセスは、ICカード機能実行部内のメモリ104に対するデータ書き込み又は読み出し動作である。この場合、通信路制御機能部103−5は、非接触インターフェース経由でのカード読み書き装置からのメモリ・アクセス動作、又は有線インターフェース経由での情報処理装置からのメモリ・アクセス動作が排他的に行なわれるように、通信動作の制御を行なう。
【0105】
一方、アドホック通信動作モード下では、カード読み書き装置や情報処理端末からのICカード機能実行部へのアクセスは、ICカード機能実行部内のメモリ104に対するアクセスではなく、ICカード機能実行部を介在した両者間の直接的なデータ転送に相当する。この場合、通信路制御機能部103−5は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送するとともに、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには非接触インターフェース経由でカード読み書き装置に直接転送するように、通信路の制御を行なう。
【0106】
図14には、図13に示した制御構成によりアドホック通信を開始するための動作フローを示している。
【0107】
情報処理端末から非接触インターフェース経由でアドホック通信開始要求コマンド(Propose Ad−hoc Command)を受信すると、無線通信制御機能部103−2は、これをアドホック管理機能部103−3に通知する。
【0108】
アドホック管理機能部103−3は、ハードウェア信号線を用いて情報処理端末のこの要求コマンドを通知すると、アドホック通信開始コマンドを受信するまで待機する。
【0109】
情報処理端末は、アドホック通信を応諾する場合には、自らはデータ非転送状態からデータ転送状態に移行するとともに、有線インターフェース経由でアドホック通信開始コマンドを返す。
【0110】
有線通信制御機能部103−1は、アドホック通信開始コマンドを受信すると、これをアドホック管理機能部103−3に通知する。これに応答して、アドホック管理機能部103−3は、ICカード機能実行部の動作モードを一般通信モードからアドホック通信モードに遷移させ、現在の動作モードをアドホック状態管理機能部103−4に設定する。また、カード読み書き装置から受け取ったアドホック通信開始コマンドに含まれているセッション番号を記憶しておく。
【0111】
また、図15には、図13に示した制御構成によりアドホック通信を実行するための動作フローを示している。
【0112】
有線インターフェース経由でカード読み書き装置からデータ転送コマンドが送られてくると、有線通信制御機能部103−1は、通信路制御機能部103−5に通知する。
【0113】
通信路制御機能部103−5は、アドホック状態管理部に問い合わせ、ICカード機能実行部の現在の動作モードを確認する。そして、アドホック通信モード下にあり且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、無線通信制御機能部103−2にデータ転送コマンドを渡して、カード読み書き装置に転送する。
【0114】
また、非接触インターフェース経由でカード読み書き装置からデータ転送コマンドが送られてくると、無線通信制御機能部103−2は、通信路制御機能部103−5に通知する。
【0115】
通信路制御機能部103−5は、アドホック状態管理部に問い合わせ、ICカード機能実行部の現在の動作モードを確認する。そして、アドホック通信モード下にあり且つ、データ転送コマンドに付されているセッション番号がアドホック通信モード移行時に保存したセッション番号と一致する場合には、無線通信制御機能部103−2にデータ転送レスポンスを渡して、カード読み書き装置に返信する。そして、有線通信制御機能部103−1にデータ転送コマンドを渡して、情報処理端末に転送する。
【0116】
以上説明してきたように、本発明に係る通信システムでは、情報処理端末がICカード機能実行部を介在させた非接触データ通信を許容するデータ転送状態と、この非接触データ通信を許容しないデータ非転送状態とを定義し、ICカード機能実行部が情報処理端末の通信状態を管理するようになっている。そして、ICカード機能実行部は、カード読み書き装置から非接触インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ、受信データを有線インターフェース経由で情報処理端末に直接転送する。また、情報処理端末から有線インターフェース経由でデータが送られてきたときには、データ転送状態のときのみ非接触インターフェース経由で受信データをカード読み書き装置に転送する。
【0117】
このように、カード読み書き装置と情報処理端末の間に介在するICカード機能実行部は、情報処理端末からの通知に依らず、データ転送状態又はデータ非転送状態のいずれであるかに応じて端末側へデータ転送を行なうことができるので、同期をとり易く、転送速度を高速化することができ、大容量のデータ転送が実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本明細書では、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0119】
本明細書では、メモリを備えたICカード機能実行部と、ICカード機能実行部に対し非接触インターフェース経由で通信可能なカード読み書き装置と、ICカード機能実行部と有線インターフェース経由で通信可能な情報処理端末で構成される3者間通信システムに本発明を適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨は必ずしもこれに限定されるものではない。勿論、非接触インターフェース以外の通信インターフェースを用いて構成される3者間通信システムにも、同様に本発明を適用することができる。
【0120】
例えば、ICカード機能実行部はカード読み書き装置との非接触ICカード・インターフェースと、情報処理端末との有線インターフェースを持つが、無線LAN機能と有線LAN機能を装備するハブに対し同様の機能を搭載することにより、無線ネットワークと有線ネットワークからなる通信システムにおいて同様の転送制御を実現することができる。
【0121】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の記載を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0122】
1…カード読み書き装置
2…ICカード機能実行部
3…コントローラ
101…アンテナ部
102…アナログ部
103…ディジタル制御部
104…メモリ
105…外部インターフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、カード読み書き装置と通信可能な非接触インターフェースと、情報処理端末と有線接続する有線インターフェースとを備えたICカード機能を実行するデバイスにおける前記メモリに対するアクセス動作、及び前記非接触インターフェース及び前記有線インターフェースを介した通信動作を制御するICカード機能を実行するデバイスの制御方法であって、
前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末との間で設定された通信モードを管理する通信モード管理ステップと、
現在の通信モードに応じて、前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末間での通信路の動作を制御する通信動作制御ステップと、
を具備することを特徴とするICカード機能を実行するデバイスの制御方法。
【請求項1】
メモリと、カード読み書き装置と通信可能な非接触インターフェースと、情報処理端末と有線接続する有線インターフェースとを備えたICカード機能を実行するデバイスにおける前記メモリに対するアクセス動作、及び前記非接触インターフェース及び前記有線インターフェースを介した通信動作を制御するICカード機能を実行するデバイスの制御方法であって、
前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末との間で設定された通信モードを管理する通信モード管理ステップと、
現在の通信モードに応じて、前記カード読み書き装置及び前記情報処理端末間での通信路の動作を制御する通信動作制御ステップと、
を具備することを特徴とするICカード機能を実行するデバイスの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−94187(P2012−94187A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24846(P2012−24846)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2005−185586(P2005−185586)の分割
【原出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(504134520)フェリカネットワークス株式会社 (129)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2005−185586(P2005−185586)の分割
【原出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(504134520)フェリカネットワークス株式会社 (129)
【Fターム(参考)】
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