説明

ICカード用コネクタのイジェクト機構

【課題】 イジェクトボタンを折りたためるようにするとともに、イジェクトボタンの状態を確認できる構造を有し、確実なICカーとの装着、取り外しが可能であり、製造も容易であるICカード用コネクタのイジェクト機構を提供する。
【解決手段】 ハウジングに回動自在に取り付けられ、自由端としての一端部がICカードと当接するカムレバーと、末端部において前記カムレバーの他端部と回動自在に係合連結し、ハウジングに摺動自在に取り付けられている操作レバーと、一端部が前記操作レバーの基端部と回動自在に連結されているイジェクトボタンとを備える、搭載されているICカードを排出するためのICカード用コネクタのイジェクト機構であって、前記イジェクトボタンと前記操作レバーが少なくとも一直線になった時、前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部とで抵抗感又は音と抵抗感を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話器、PDA(personal digital assistance)、小型携帯用オーディオ、デジタルスチルカメラ、ゲーム機等の携帯型電子機器に取り付けられるICカード用コネクタからICカードを排出するイジェクト機構に関し、より詳細には、該イジェクト機構におけるイジェクトボタンを折りたためるようにするとともに、該イジェクトボタンの折りたたみを認識できるようにしたイジェクト機構に関する。
【0002】
【従来の技術】携帯電話器、PDA、携帯型オーディオ、カメラ等の電子機器においては、CPUあるいはメモリ用のIC(integrated circuit;集積回路)が内蔵されたSIM(subscriber identity module)カード、MMC(multi media card)カード、SD(secure digital)カード、スマートメディア(商標名)等のICカードを装着させることで、各種の機能拡張などを行うようにしている。このようなICカードを着脱自在に装着するためのICカード用コネクタにおいては、コネクタが装着される電子機器側の各種信号処理回路及び電源回路と接続された複数のコンタクト端子がコネクタハウジング内に設けられ、これら複数のコンタクト端子が、装填されたICカードの表面又は裏面に形成されたコンタクトパッドと接触する。すなわち、コネクタに設けられたコンタクト端子を介して、ICカードと該コネクタが取り付けられている電子機器とが電気的に接続される。
【0003】このようなICカード用コネクタにおいては、該コネクタ内に装着されているICカードを容易に取り出す機構として、イジェクトボタンを単に押し込むことによりICカードをコネクタ内から排出できるようにしたイジェクト機構が従来知られている(例えば、特開平8−90969号公報、特開2001−143789号公報等参照)。
【0004】このような従来のイジェクト機構においては、イジェクト機構を操作するためのイジェクトボタンは、コネクタのカード挿入口の近傍に配置され、該カード挿入口より前方に突出するように形成されている。これにより、カード挿入口からICカードをイジェクトするために、カード挿入口側でイジェクト操作ができるようになっている。
【0005】したがって、ICカード用コネクタを内蔵する電子機器において、機能拡張等のためにするICカードの交換が容易となり、電子機器のケース構造も、簡易な構造のものとすることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例に示されイジェクト機構においては、特に、コネクタ内にICカード挿入した状態において、該イジェクトボタンがコネクタ挿入口から前方にさらに突出することになり、ICカード用コネクタ自体が電子機器を構成するケース内に設けられているため、該イジェクトボタンがケース外へはみ出してしまい、蓋をすることができなくなる恐れがある。
【0007】この問題点を避けるべく、例えば、電子機器のケースを大きくすることは、近年のこのような電子機器のコンパクト化の流れに逆行することになり望ましくない。さらに、イジェクトボタンをケース内に折りたたむことも想定されるが、イジェクトボタンが折りたたみ状態からイジェクト操作可能な真っ直ぐの状態になることなくイジェクト操作を実行すると、イジェクトボタンの押圧が不安定になり、ICカードの排出がうまく行われない恐れもある。また、イジェクトボタンがきちんと折りたたまれていないと、上記従来例と同様にケースの蓋を閉めることができない。
【0008】本発明の目的は、このような問題点に鑑み、イジェクトボタンを折りたたむことにより電子機器のケース内に収容できるようにするとともに、イジェクトボタンの状態を確認できる構造を有し、確実なICカードとの装着、取り外しが可能であり、製造も容易であるICカード用コネクタのイジェクト機構を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のICカード用コネクタのイジェクト機構は、ハウジングに回動自在に取り付けられ、自由端としての一端部がICカードと当接するカムレバーと、末端部において前記カムレバーの他端部と回動自在に係合連結し、ハウジングに摺動自在に取り付けられている操作レバーと、一端部が前記操作レバーの基端部と回動自在に連結されているイジェクトボタンとを備える、搭載されているICカードを排出するためのICカード用コネクタのイジェクト機構であって、前記イジェクトボタンと前記操作レバーが少なくとも一直線になった時、前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部とで抵抗感又は音と抵抗感を生じさせるようにしたことを特徴とする。
【0010】さらに、前記イジェクトボタンと前記操作レバーが直角になった時、前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部とで音と抵抗感を生じるようにしてもよい。
【0011】また、前記抵抗感又は音と抵抗感を生じさせるべく、前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部のいずれか一方に突起を形成し、他方に前記突起が嵌合する凹部を形成するようにしてもよいし、前記イジェクトボタンの連結部は、該イジェクトボタンの回転軸に平行であって、互いに直交する2つの面を備え、前記操作レバーの連結部は、前記直交する2つの面に当接する板バネを備えるようにしてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】先ず、本発明の第1の実施形態について図1を用いて説明する。
【0013】図1は、ICカードを排出した状態のICカード用コネクタを示しており、(a)は、コネクタの裏面側から見たイジェクト機構のイジェクトボタンを含む部分斜視図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【0014】ICカード用コネクタ1は、電子機器のケース2内に配置されており(図2、3参照)、ICカード(不図示)と電子機器の各種信号処理回路及び電源回路(不図示)とを電気的に接続する複数のコンタクト30を内蔵するハウジング10を含んでいる。該ハウジング10は、上面側を構成するカバー部材11と下面側を構成するベース部材12から形成され、前方にICカード挿入口13を備えている。
【0015】ICカード用コネクタ1は、また、該コネクタ1に装着されているICカードの取り出しを容易にするためのイジェクト機構20を含んでいる。
【0016】このイジェクト機構20は、概略、イジェクトボタン21、操作レバー22、カムレバー230(図2参照)を含んでいる。該イジェクト機構20は、ハウジング10の一方の側壁に沿って形成されている。具体的には、イジェクト機構20の操作レバー22が、ハウジング10のカバー部材11及びベース部材12のそれぞれに一体形成されている複数の支持部材11a、12aにより、ハウジング10の側壁に沿って摺動自在に支持されている。
【0017】イジェクトボタン21は、合成樹脂製である。図1(b)に示されるように、イジェクトボタン21の一端部は、後述する操作レバー22との連結部として形成される。すなわち、該一端部には、係合溝21a及び該係合溝21a内適所に凹部21bが形成されるとともに、連結ピン24を回転軸として、操作レバー22に対して回動自在に取り付けられる。また、イジェクトボタン21の自由端としての他端部は、押圧面21dとして構成されている。
【0018】操作レバー22は、基端部22aと末端部22cを有し、該基端部22aと末端部22cとの間には、金属製の棒状レバー22bが延在している。操作レバー22の基端部22aは、イジェクトボタン21との連結部として構成されており、合成樹脂で形成されている。該基端部22aの一端側は、図1(b)に示されるように、イジェクトボタン21の係合溝21aに連結ピン24を介して回動自在に連結する係合突出端部22dが形成されている。該係合突出端部22dは、イジェクトボタン21の係合溝21aの凹部21bに対応し、該凹部21bに嵌り込むように形成されている突起22eを有する。また、該基端部22aの他端側は、金属製の棒状レバー22bが圧入固定されている。
【0019】なお、該突起22eと凹部21bとは、イジェクトボタン21と操作レバー22が一直線状になった時、操作レバー22の突起22eがイジェクトボタン21の凹部21bに嵌り込むように、それぞれ係合突出端部22d及び係合溝21aに設けられている。すなわち、該突起22eと凹部21bとは、イジェクトボタ21と操作レバー22とを一直線状態にロックするロック機構として作用する。
【0020】さらに、操作レバー22の末端部22cは、カムレバー230に回動自在に係合し、連結されている。
【0021】カムレバー230は、図2に示されるように、カバー部材11のカード挿入口13と反対側である後方位置において、回転軸としてのリベット部材233を介して該カバー部材11に回動自在に軸支されている。カムレバー230の一端部232は、下方に折り曲げられ、その折り曲げられた先端部234は、カバー部材11に形成されているU溝14を通って、ハウジング10内に配置され、挿入されるICカードに当接するように構成されており、他端部231は、操作レバー22の末端部22cと係合連結している。
【0022】このように構成されているイジェクト機構20の動作について以下に簡単に説明する。
【0023】図1(a)に示されるように、ICカードが装着されていない状態にあるコネクタ1に、ICカードがカード挿入口13からハウジング10内に挿入される。該ICカードの複数のパッドと対応する複数のコンタクトが電気的に接触するように充分にハウジング10内に押し込まれるにつれて、挿入されるICカードの先端部が、カムレバー230のハウジング10内に位置しているカムレバー230の折り曲げられている先端部234に当接し、該カムレバー230を回動させる。
【0024】このカムレバー230の回動に伴い、該カムレバー230と係合連結している操作レバー22を前方へ押し出し、結果としてイジェクトボタン21を図に示されている位置よりさらに前方に押し出す。次に、イジェクトボタン21は、連結ピン24回りに上方に回動され、操作レバー22に対して略直角になるまで折りたたまれる。これにより、電子機器ケース2の蓋3を閉めることが可能となる。
【0025】なお、イジェクトボタン21が折りたたまれている時、操作レバー22の基端部22aの係合突出端部22dに設けられている突起22eは、イジェクトボタン21の係合溝21aに形成されている凹部21bから抜け出ている。イジェクトボタン21や操作レバー22の基端部22aが合成樹脂製であり、それによって、該イジェクトボタン21の係合溝21aの周囲壁21cや操作レバー22の基端部22a係合突出端部22dの突起22eが若干の弾性変形をするため、突起22eは、凹部21bから抜け出すことができる。
【0026】コネクタ1からICカードを取り出す時は、先ず、折りたたまれているイジェクトボタン21を操作レバー22とが一直線をなすように開く。上記したように、イジェクトボタン21と操作レバー22が一直線状になった時、操作レバー22の突起22eがイジェクトボタン21の凹部21bに嵌り込むように形成されている。したがって、突起22eが凹部21bに嵌まり込んだ時、若干のスナップ音を発生し、さらにイジェクトボタン21を開こうとする場合突起22eが凹部21bから脱出するための抵抗感もあって、イジェクトボタン21と操作レバー22が一直線状になったことが感知される。なお、これを応用して、上記イジェクトボタン21が操作レバー22に対して略直角に折りたたまれた位置に対応して、イジェクトボタン21の係合溝21aに凹部21bとは別に第2の凹部を形成してもよい。このように構成すれば、イジェクトボタン21が折りたたまれた時、突起22eが第2の凹部に嵌り込むことにより、イジェクトボタン21と操作レバー22が一直線状になった時と同様の上記作用効果が期待できる。
【0027】イジェクトボタン21と操作レバー22が一直線状になった時点で、該イジェクトボタン21の押圧部21dを後方に押し込むと、カムレバー230がカバー部材11上で回転する。この回転により、ICカードに当接しているカムレバー230の折れ曲げられている先端部234がICカードをカード挿入口13からICカードの一部を前方に押し出す。すなわち、ICカードがコネクタ1からイジェクトされる。次に、この押し出されたICカードの一部を掴むことにより、ICカードは、コネクタ1からケース2外に完全に取り出されることが可能となる。
【0028】以上説明したように、本実施形態におけるイジェクト機構20は、確実に且つ安全で容易に、ICカードをコネクタ1から取り出すことができる。
【0029】次に、本発明の第2の実施形態について図2〜6を用いて説明する。
【0030】図2は、本発明の第2の実施形態であるICカード用コネクタを示すものであり、電子機器ケース内に配置されている、ICカードを排出した状態にある該ICカード用コネクタの斜視図である。図3は、図2に示されるICカード用コネクタと同様にICカードを排出した状態を示しており、コネクタの裏面側から見たイジェクト機構のイジェクトボタンを含む部分斜視図である。図4は、図2に示される状態から、ICカードを装着して後、イジェクトボタンを折りたたんだ状態にあるICカード用コネクタの斜視図である。図5は、イジェクトボタンの折りたたみを説明するためのイジェクト機構の一部拡大側断面図であり、(a)は、イジェクトボタンが折りたたまれている時、(b)は、イジェクトボタンと操作レバーが一直線状になっている時、(c)は、その中間位置にある時を示しており、(d)は、イジェクトボタンの別の実施形態を示している。図6は、操作レバーの展開図である。
【0031】ICカード用コネクタ1は、図2、4に示されるように、電子機器のケース2内に配置されており、ICカード5(図4参照)と電子機器の各種信号処理回路及び電源回路とを電気的に接続する複数のコンタクト30を内蔵するハウジング10を含んでいる。該ハウジング10は、上記第1の実施形態と同様に、上面側を構成するカバー部材11と下面側を構成するベース部材12から形成され、前方にICカード挿入口13を備えている。なお、40(図3参照)は、ICカード用コネクタ1を電子機器のケース2内の回路基板(不図示)に固定するための固定脚であり、コンタクト30の脚と同じ高さを有している。
【0032】ICカード用コネクタ1は、また、該コネクタ1に装着されているICカードの取り出しを容易にするためのイジェクト機構200を含んでいる。
【0033】このイジェクト機構200は、概略、イジェクトボタン210、操作レバー220、カムレバー230を含んでおり、このような基本構成では、従来例と同様である。該イジェクト機構200は、ハウジング10の一方の側壁に沿って形成されている。具体的には、イジェクト機構200の操作レバー220(より詳細には、該操作レバー22の棒状レバー222)が、ハウジング10のカバー部材11及びベース部材12のそれぞれに一体形成されている複数の支持部材11a、12aにより、ハウジング10の側壁に沿って摺動自在に支持されている。
【0034】イジェクトボタン210は、金属製で、略四角柱に形成され、その一端部は、連結部212として構成され、自由端としての他端部は、押圧部211として構成されている。連結部212は、回転軸としての連結ピン240を介して操作レバー220に対して回動自在に連結される。図5に示されるように、イジェクトボタン210の連結部212における連結ピン240に平行で、互いには直交している下壁面213及び底壁面214は、後述する操作レバー220の基端部221に設けられている板バネ225に当接するように構成されている。
【0035】また、イジェクトボタン210の下壁面213と底壁面214は、連結ピン240の回転中心から略等距離に形成されるとともに、イジェクトボタン210の下壁面213と底壁面214までの連結ピン240の回転中心からの距離(回転半径)rが、同じく該下壁面213と底壁面214とが交叉する角部216までの距離(回転半径)Rより小さくなるように形成されている。なお、角部216には、回転半径Rをさらに大きくするために、凸部217が形成されていてもよい。この場合、該凸部217は、図5(d)に示されるように、下壁面213に沿って底壁面214に垂直に突出するように形成されるとともに、イジェクトボタン210が操作レバー220と略直角に折り曲げられた時、該凸部217が板バネ225先端から外れるように設けられることが好ましい。
【0036】さらに、イジェクトボタン210の連結部212における連結ピン240に垂直な対向する2つの第2の側壁面215、215は、操作レバー22の第1、2の側壁224、226に対応し、これらを連結ピン240が貫通して、イジェクトボタン210と操作レバー220を回動自在に連結している。
【0037】操作レバー220は、イジェクトボタン210との連結部としての基端部221とカムレバー230との連結部としての末端部223を有し、該基端部221と末端部223との間には、棒状レバー222が延在している。操作レバー220は、金属製で、基端部221、末端部223及びそれらの間に延在する金属製の棒状レバー222を含めて一体に形成されている。すなわち、以下に示すように、金属板をプレス加工により折り曲げられ、特に基端部221は、イジェクトボタン210の断面形状に略等しい四角形の断面形状を有する角筒に加工成形される。
【0038】操作レバー220は、図6に示されるような形状に打ち抜かれた金属板をプレス加工により折り曲げて成形される。先ず、点線で示される折線aに沿って折り返し、重ね合わせることにより、補強された棒状レバー222が形成され、続いて、実線で示される折線b、c、dに沿って折り曲げ、基端部221の第1の側壁224、下壁225、第2の側壁226及び上壁227が形成され、全体として、角筒形の基端部221を有する操作レバー220として加工成形される。なお、下壁225は、板バネとして機能する。該下壁225は、図6に示されるように、折り線eに沿って若干内側に折り込むようにして板バネとしてのバネ性を増大させてもよい。
【0039】また、図6に示される228は、イジェクトボタン210と回転自在に連結されるための連結ピン240が嵌合する軸孔であり、図3に示される229は、棒状レバー222の適所に設けられている案内溝であり、該案内溝229には、案内溝229に対応してベース部材12から突出形成されている案内兼用支持部材12bが摺動自在に係合しており、同時に棒状レバー222(すなわち、操作レバー220)を支持している。このような案内溝229及び支持部材12bを設けることにより、操作レバー220の前後方向の移動距離を案内溝229の長さ以内に規制することができる。
【0040】カムレバー230は、上記第1の実施形態と同じ構造を有しているが、再度簡単に説明しておく。カムレバー230は、カバー部材11のICカード挿入口と反対側である後方位置において回動自在に該カバー部材11にリベット部材233で軸支されており、他方の端部231は、上記したように操作レバー220の末端部223と回動自在に係合連結し、一方の端部232は、下方に折り曲げられている。該端部232の折り曲げられた先端部234は、カバー部材11後方端から切り欠き形成されているU溝14を通ってハウジング10内に配置されている。
【0041】このように構成されている本実施形態におけるイジェクト機構200の動作について以下に簡単に説明する。
【0042】図2に示されるように、コネクタ1にICカード5が装着されていない状態において、カード挿入口13からコネクタ1のハウジング10内にICカード5が挿入される。該ICカード5の複数のパッドと対応する複数のコンタクトが電気的に接触するように充分にハウジング10内に押し込まれるにつれて、挿入されるICカード5の先端部が、カムレバー230の他方の端部232においてハウジング10内に折り曲げられている先端部234に当接し、該折り曲げられている先端部234を後方に押し込み、カムレバー230をカバー部材11上でリベット部材233周りに回動させる。
【0043】このカムレバー230の回動に伴い、該カムレバー230の他方の端部231と係合連結されている操作レバー220が前方へ押し出され、結果としてイジェクトボタン210が図2に示されるよりもさらに前方に押し出される。この時、操作レバー220の案内溝229と支持部材12bとにより移動距離が規制されているので、例えば、カムレバー230の折り曲げられている先端部234が、カバー部材11のU溝14から外れることがない。
【0044】次に、図3に示されるように、イジェクトボタン210は、連結ピン240回りに上方に回動され、操作レバー220に対して略直角になるまで折りたたまれる。これにより、ICカード用コネクタ1を搭載している電子機器の蓋3を閉じることが可能となる。
【0045】ここで、本発明の特徴とするイジェクトボタン210の折りたたみ及びイジェクト操作が可能となるイジェクトボタン210の開放を感知する機構について説明する。
【0046】イジェクトボタン210が折りたたまれる前、すなわちイジェクトボタン210が操作レバー220と一直線上にあるように開いている時、該イジェクトボタン210の下壁面213は、図5(b)に示されるように、操作レバー220の基端部221の下壁を構成する板バネ225に当接(又は押圧)されている。
【0047】図5(b)に示されるイジェクトボタン210が操作レバー220と一直線上にあるように開いている状態から、図5(a)に示されるイジェクトボタン210が操作レバー220に略直角状態となる位置までイジェクトボタン210を折りたたむ時、先ず、板ばね225に当接する部材が、イジェクトボタン210の下壁面213から角部216へ変わる。この時、イジェクトボタン210の下壁面213の回転半径rより、角部216における回転半径Rのほうが大きいので、イジェクトボタン210の角部216が板バネ225に当接し、該板バネ225を下方に押し下げる。続いて、板ばね225に当接する部材が、イジェクトボタン210の角部216から底壁面214へ変わる。この時、角部216における回転半径Rと底壁面214の回転半径rとの差分下方に押し下げられていた板バネ225は、付与されていたバネ力により瞬時に底壁面214に当たり、スナップ音を発する。このスナップ音により、イジェクトボタン210が所定の位置まで折れ曲がったことが感知される。また、イジェクトボタン210のこれ以上の折り曲げは、操作レバー220の基端部221を構成する上壁227がロック機構として作用する。
【0048】次に、折り曲げられているイジェクトボタン210を操作レバー220と一直線状になるように開く時は、上記イジェクトボタン210を折り曲げるときと反対に、板ばね225に当接する部材が、底壁面214から角部216を経て下壁面213へと移る。この時、同様に、角部216における回転半径Rと底壁面214の回転半径rとの差分下方に押し下げられていた板バネ225は、付与されていたバネ力により瞬時に下壁面213に当たり、スナップ音を発する。
【0049】また、操作レバー220の基端部221を構成する下壁すなわち板バネ225がロック機構として作用し、イジェクトボタン210のこれ以上の開放が妨げられる。すなわち、イジェクトボタン210のさらなる開放に対し、板バネ225のバネ力が下壁面213に作用し抵抗感を与えるとともに、イェクトボタン210を押し戻す。
【0050】イジェクトボタン210と操作レバー220が一直線状になった時点で、該イジェクトボタン210の押圧部211を後方に押し込むと、カムレバー230がカバー部材11上で回転する。この回転により、ICカード5に当接しているカムレバー230の折れ曲げられている先端部234がICカード5の一部をカード挿入口13から前方に押し出す。すなわち、ICカード5がコネクタ1からイジェクトされる。次に、この押し出されたICカード5の一部を掴むことにより、ICカード5は、コネクタ1からケース2外に完全に取り出されることが可能となる。
【0051】以上説明したように、本実施形態におけるイジェクト機構200は、上記第1の実施形態におけるイジェクト機構20のように、イジェクトボタン21の折り曲げや開放に伴う突起22eの摩耗やイジェクトボタン21の回転軸24方向における変形の繰り返しによる疲労等がなく、イジェクトボタン210の角部216が単に板バネとしての下壁225を上下動させるだけの構造であるから、第1の実施形態よりもより確実に且つ安全で容易に、ICカード5をコネクタ1から取り出すことができる。
【0052】
【発明の効果】本発明におけるICカード用コネクタのイジェクト機構は、上記したように、イジェクトボタンを折り曲げ可能としたので、電子機器のケースの小型化を維持できるとともに、抵抗感又は音と抵抗感とで、該イジェクト機構のイジェクトボタンの折り曲げ及び一直線化を感知できるようにしたので、確実に且つ安全で容易に、ICカードをコネクタに装着し又はコネクタから取り出すことができる。また、その構造も簡単であるため、容易に且つ安価に製造可能である。
【0053】さらに、イジェクト機構の操作レバー部分全体を金属板で一体に形成することにより、構造的に強度を増すとともに、音と抵抗感を与える構造の動きに無駄がなく寿命も長くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ICカードを排出した状態のICカード用コネクタを示しており、(a)は、コネクタの裏面側から見たイジェクト機構のイジェクトボタンを含む部分斜視図であり、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるICカード用コネクタを示すものであり、電子機器ケース内に配置されている、ICカードを排出した状態にある該ICカード用コネクタの斜視図である。
【図3】図2に示されるICカード用コネクタと同様にICカードを排出した状態を示しており、コネクタの裏面側から見たイジェクト機構のイジェクトボタンを含む部分斜視図である。
【図4】図2に示される状態から、ICカードを装着して後、イジェクトボタンを折りたたんだ状態にあるICカード用コネクタの斜視図である。
【図5】イジェクトボタンの折りたたみを説明するためのイジェクト機構の一部拡大側断面図であり、(a)は、イジェクトボタンが折りたたまれている時、(b)は、イジェクトボタンと操作レバーが一直線状になっている時、(c)は、その中間位置にある時を示しており、(d)は、イジェクトボタンの別の実施形態を示している。
【図6】操作レバーの展開図である。
【符号の説明】
1 ICカード用コネクタ
2 電子機器ケース
3 ケース用蓋
5 ICカード
10 ハウジング
11 カバー部材
11a 支持部材
12 ベース部材
12a 支持部材
12b 案内兼用支持部材
13 カード挿入口
14 U溝
20、200 イジェクト機構
21、210 イジェクトボタン
21a 係合溝
21b 凹部
21c 周囲壁
21d 押圧面
22、220 操作レバー
22a 基端部(連結部)
22b 棒状レバー
22c 末端部
22d 係合突出端部
22e 突起
24、240 連結ピン(回転軸)
30 コンタクト
(210 イジェクトボタン)
211 押圧部
212 連結部
213 下壁面
214 底壁面
215 側壁面
216 角部
217 凸部
(220 操作レバー)
221 基端部(連結部)
222 棒状レバー
223 末端部
224 第1の側壁
225 下壁(板バネ)
226 第2の側壁
227 上壁
228 軸孔
229 案内溝
230 カムレバー
231 他方の端部
232 一方の端部
233 リベット部材
234 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングに回動自在に取り付けられ、自由端としての一端部がICカードと当接するカムレバーと、末端部において前記カムレバーの他端部と回動自在に係合連結し、ハウジングに摺動自在に取り付けられている操作レバーと、一端部が前記操作レバーの基端部と回動自在に連結されているイジェクトボタンと、を備える、搭載されているICカードを排出するためのICカード用コネクタのイジェクト機構において、前記イジェクトボタンと前記操作レバーが少なくとも一直線になった時、前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部とで抵抗感又は音と抵抗感を生じさせるようにしたことを特徴とするICカード用コネクタのイジェクト機構。
【請求項2】 さらに、前記イジェクトボタンと前記操作レバーが直角になった時、前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部とで抵抗感又は音と抵抗感を生じさせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のICカード用コネクタのイジェクト機構。
【請求項3】 前記イジェクトボタンの連結部と前記操作レバーの連結部のいずれか一方に突起を形成し、他方に前記突起が嵌合する凹部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のICカード用コネクタのイジェクト機構。
【請求項4】 前記イジェクトボタンの連結部は、該イジェクトボタンの回転軸に平行であって、互いに直交する2つの面を備え、前記操作レバーの連結部は、前記直交する2つの面に当接する板バネを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のICカード用コネクタのイジェクト機構。
【請求項5】 前記直交する2つの面が交叉する角部に凸部が設けられることを特徴とする請求項4に記載のICカード用コネクタのイジェクト機構。
【請求項6】 前記操作レバーは、その連結部を含めて1枚の金属板から成形されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のICカード用コネクタのイジェクト機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−331986(P2003−331986A)
【公開日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−138960(P2002−138960)
【出願日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】