説明

ICカード

【課題】ざらつきが少なく、高濃度で、耐光性に優れた画像を形成することができるICカードを提供すること。
【解決手段】 非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能なICモジュールを内部に備えた基材と、前記基材上の少なくとも一方の面上に、クッション層と受容層を有するICカードにおいて、前記クッション層は、中空粒子と第一のバインダ樹脂を含み、前記受容層は第二のバインダ樹脂を含むことを特徴とするICカードとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICカードに関し、さらに詳しくは、ざらつきが少なく、高濃度で、耐光性に優れた印画物を形成することができるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書や銀行等のキャッシュカードなどのIDカードにおいて、個別認識できるように、その一方の面に、人物の顔写真等の画像情報とその人物の住所や名前等の文字情報とが記録されたものが使用されている。このようなIDカードは、プラスチック等のカードの一方の面に画像情報と文字情報とを記録することにより製造されている。このような情報記録体は、画像情報の鮮明性や文字情報を印字する際の簡便性を考慮して、熱転写シートを用いて製造されている。例えば、基材上にイエロー、マゼンタおよびシアン等の色材層を設けた熱転写シートを用いて、カード上にカラーの人物画像を記録し、次いで、ブラックの色材層を設けた熱転写シートを用いて、基材上の人物画像を形成した以外の部分に文字等を記録することにより製造されている。熱転写シートを用いて得られる画像は、中間色の再現性や階調性に優れ、フルカラー写真画像に匹敵する高品質な画像を形成できるため、特に、記録画像により個別認識を必要とするような情報記録体においては、熱転写シートを用いて製造することが一般的となっている。
【0003】
IDカードを製造する為のプラスチック等のカードとして、ICモジュールを備えたICカードが使用されている。ICモジュールとは、非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能な電子部品である。
【0004】
例えば特許文献1では、クッション層と受容層を形成したICカードが提案されている。また、クッション層によってノイズが少なくて、画像情報に対応した画像を再現性良く転写記録することができることや、この材料としてオレフィン系樹脂が好ましいことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−58847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリンタの更なる高速化が希求されており、従来使用されてきたクッション層では、ノイズが少なくて、画像情報に対応した画像を再現性良く転写記録することが困難になる場合があらわれ始めた。また、プリンタの高速化に伴って、高濃度の画像を得ることが困難になる虞があった。さらに、受容層中で充分に染料が拡散する事によって耐光性が高まる事が知られているが、プリンタの高速化によって受容層に付与される熱量が少なくなり、受容層中で充分に染料を拡散することができなくなり、これまで通りの画像の耐光性を得ることが困難な場合があった。
【0007】
そこで本発明者らは上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ざらつきが少なく、高濃度で、耐光性に優れた画像を形成することができるICカードを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ICモジュールを内部に備えた基材(以後、単に基材とも記す)と、前記基材上の一方の面上に、中空粒子を含むクッション層と受容層を有するICカードによって上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一態様によれば、非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能なICモジュールを内部に備えた基材と、前記基材上の少なくとも一方の面上に、クッション層と受容層を有するICカードにおいて、前記クッション層は、中空粒子と第一のバインダ樹脂を含み、前記受容層は第二のバインダ樹脂を含むことを特徴とするICカードが提供される。
【0010】
前記第一のバインダ樹脂はゼラチン、及び/又はスチレンアクリル酸共重合樹脂であってもよい。これによってICモジュールを内部に備えた基材と受容層との接着性を高める事ができる。また、印画物の耐水性を高める事ができる。
【0011】
前記第二のバインダ樹脂は塩ビ系樹脂であってもよい。これによって印画物の耐水性をより高める事ができる。
【0012】
前記クッション層はゼラチンと硬膜剤とをさらに含むものであってもよい。これによって、ICモジュールを内部に備えた基材と受容層との接着性を、より高める事ができる。また、印画物の耐水性をさらに高める事ができる。
【0013】
前記中空粒子は、体積平均粒径が5μm以下の架橋中空粒子であってもよい。これによって、印画物のざらつきを、より低減することができる。また、印画時にサーマルヘッドから受ける熱によるダメージ(凹み)の発生を低減する事ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ざらつきが少なく、高濃度で、耐光性に優れた画像を形成することができるICカードを提供することができる。。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるICカードの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、基材2と受像層3とクッション層4とを備えたICカード1の断面図を示したものである。基材2は、第1のシート部材5と第2のシート部材5‘との間に所定の厚みのICモジュールを備えている。ICモジュールは、アンテナ体8、ICチップ9等からなり、これらはインレット7に備えられている。また基材2は、第1のシート部材5と第2のシート部材5’との間にインレット7を配置し、接着剤6、6‘を介在して、各部材を積層した積層構造である。
【0017】
クッション層
ICカード1には、基材2の第1シート部材5側に、クッション層4が設けられている。クッション層は、ざらつきが少なく、高濃度で、耐光性に優れた印画物を得るためのものであり、本発明の必須の構成要件である。クッション層4は、中空粒子と第一のバインダ樹脂を含むものであり、親水性バインダーや硬膜剤、乳化剤などをさらに含んでいても良い。またクッション層4は、2層以上からなるものであっても良い。
【0018】
クッション層4の厚みは、断熱性、クッション性等を所望の程度に調整できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。また、クッション層4の密度は、例えば0.1g/cm3〜0.8g/cm3の範囲内、なかでも0.2g/cm3〜0.7g/cm3の範囲内であることが好ましい。
【0019】
(第一のバインダ樹脂)
本発明において、第一のバインダ樹脂は中空粒子を保持する機能を有するものである。本発明で使用する中空粒子は耐有機溶剤性が低い為ことから、第一のバインダ樹脂は水に分散又は溶解できるものが好ましい。ICカードには耐水性が要求されるので、第一のバインダ樹脂は乾燥後に耐水性を有することが好ましい。このようなものとして、例えばスチレンアクリル酸共重合樹脂、及び/又はゼラチンを好ましく用いる事ができる。
【0020】
(スチレンアクリル酸共重合樹脂)
スチレンアクリル酸共重合樹脂は、50℃以上、好ましく60℃以上120℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ150以上、好ましく180以上300以下、より好ましくは190以上300以下の酸価を有するものである。本発明において、ガラス転移温度(Tg)とは、DSC装置(示差走査熱量計)としてDSC−60(島津製作所製)を用い、昇温速度10℃/min、試料重量10mg、窒素雰囲気下の条件により測定される値である。また、固形分酸化とは、中和前の理論酸価(AV)であり、AV(mgKOH/g)=樹脂1g中に含まれるカルボキシル基の中和に必要なKOH量(mg)を指す。
【0021】
また本発明において、市販のスチレン・アクリル酸共重合樹脂を用いることもできる。例えば、ジョンクリル62J、ジョンクリルHPD−96J、ジョンクリル52J、およびジョンクリルPDX−6102B(以上、BASF(株)製)等が好ましい。
【0022】
(ゼラチン)
本発明において、ゼラチンを用いることで受容層とクッション層の層間接着性を向上させることができる。特に、水系塗布および同時重層塗布方式により各層を形成する場合には、塗布適性が向上できる。また、各塗布液の粘度を所望の範囲に調整し、所望の膜厚を得ることができる。本発明においては、市販のゼラチンを用いることもでき、例えば、RR、R、およびCLV(新田ゼラチン(株)製)等が好ましい
(中空粒子)
本発明で用いる中空粒子は、体積平均粒径が好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。中空粒子の体積平均粒径が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を断熱層に与えることができる。また、中空粒子の平均中空率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30〜80%である。中空粒子の平均中空率が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を断熱層に与えることができる。さらに、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。またエンボスへの耐性を高める観点からは、上記中空粒子は架橋中空粒子であることが好ましい。本発明においては、市販の中空粒子を用いることもでき、例えば、HP−1055、HP−91、およびローペイクSE(ロームアンドハース(株)製)、ならびにMH−5055(日本ゼオン)、SX8782(A)(JSR(株))等が好ましい。
【0023】
(硬膜剤)
本発明の好ましい態様によれば、クッション層等に含まれる硬膜剤としては、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N’−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報などに記載の化合物)、オキサゾリン系硬膜剤、カルボジイミド系硬膜剤を用いることができる。この様な硬膜剤を用いることによって、印画物の耐水性を向上することができる。N−メチロール系硬膜剤、オキサゾリン系硬膜剤、カルボジイミド系硬膜剤が、印画物の耐水性をさらに向上できるので特に好ましい。
【0024】
受容層
ICカード1には、基材2の第1シート部材5側に、クッション層4を介して受像層3が設けられている。受像層3は、熱転写記録方式で昇華もしくは熱拡散性染料画像を受容して、被記録体1に文字情報および画像情報を印画するためのものであり、本発明の必須の構成要件である。本発明において、受容層は、第二のバインダ樹脂を含むものであり、さらに乳化剤や離型剤を含んでいても良い。
【0025】
(第二のバインダ樹脂)
本発明の第二のバインダ樹脂は、熱転写インクシートから転写される昇華性染料を受容できるポリマーである。本発明では、溶剤系樹脂をバインダ樹脂として使用できる。
【0026】
溶剤系樹脂とは、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、トルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒およびそれらの混合物を主成分とする溶媒に溶解するポリマーのことである。このようなものとして、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びこれらの共重合体を好ましく用いる事ができる。熱転写シートからの染料受容能力が高いという観点から、ビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が特に好ましい。熱転写シートとの熱融着が起こりにくい観点から、ビニル系樹脂がさらに好ましい。
【0027】
(乳化剤)
本発明の受容層は、乳化剤を含むものであっても良い。これによって、第二のバインダ樹脂を含む溶剤系溶液から水系分散液を製造することができる。本発明ではアニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤のいずれも用いることができるが、分散性の観点からアニオン系乳化剤が特に好ましく、有機の強酸と無機の強塩基との塩からなるアニオン系乳化剤がさらに好ましい。例えば、アルキルナフタレンスルホン酸Na、コハク酸ジオクチルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸イソブチルエステル硫酸ナトリウム、オレイン酸硫酸化ナトリウム、天然アルコールエーテルサルフェートのナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、およびフェノールスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
(離型剤)
本発明の好ましい態様によれば、受容層は離型剤をさらに含んでもよい。受容層用塗布液の調製においては、溶剤系溶液に含まれてもよい。離型剤としては、溶剤系シリコーンやフッ素系界面活性剤を挙げることができ、特に溶剤系シリコーンが好ましい。溶剤系シリコーンとしては、ジメチルシリコーン等の各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン、アミド変性シリコーン等を用い、これらを混合して用いたり、各種の反応を用いて重合させて用いたりすることもできる。また、2種以上の離型剤を混合して用いてもよい。このような離型剤を含む水系分散塗布液を用いて受容層を形成することで、印画時に熱転写インクシートとICカードの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。本発明においては、市販の溶剤系離型剤を用いることもでき、例えば、信越化学工業株式会社製のX−22−163、X−22−173D、X−22−343、X−22−2000、X−22−3000T、KF−101、KF−102、KF−1001、KF−1002、KP―1800U、X−22−4015、X−22−1660B、X−22−160ASD、KF−410等が好ましい。
【0029】
上記した各成分を溶媒に分散あるいは溶解させた受像層用塗工液を調製し、受像層用塗
工液をICカード基材の一方のシート部材上に塗布し、乾燥することよって受像層を形成することができる。受像層の厚みは、一般的に1〜50μm、好ましくは2〜10μm程度である。
【0030】
受像層には、画像情報や文字情報を印画する前に、予め、罫線等のフォーマット印刷がされていてもよい。フォーマット印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。
【0031】
基材
基材2は、ICモジュールを備えた本発明の必須の構成要件である。基材2は、第1のシート部材5と第2のシート部材5‘との間にインレット7を配置し、接着剤6、6’を介在して、各部材を積層した積層構造を有する。ICカード基材に用いられるシート部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の単層体、あるいはこれら2層以上の積層体が挙げられる。
【0032】
シート部材の厚みは30〜300μm、好ましくは50〜200μmである。50μm以下であるとシート部材5と7,及び5‘と7を互いに貼り合わせる際に熱収縮等を起こす場合がある。なお、熱収縮率を低減させるシート部材のアニール処理を行ってもよい。
【0033】
また、シート部材上に後加工上密着性向上のため易接処理を行っていても良く、チップ保護のために帯電防止処理を行っていても良い。具体的には、帝人デュポンフィルム株式会社製のU2シリーズ、U4シリーズ、ULシリーズ、東洋紡績株式会社製クリスパーGシリーズ、東レ株式会社製のE00シリーズ、E20シリーズ、E22シリーズ、X20シリーズ、E40シリーズ、E60シリーズQEシリーズを好適に用いることができる。
【0034】
ICモジュールは、一般的に、電子カードの利用者の情報を電気的に記憶するICチップ9およびICチップ9に接続されたコイル状のアンテナ体8とから構成される。ICチップはメモリのみやそれに加えてマイクロコンピューターなどである。場合により電子部品にコンデンサーを含んでもよい。この発明はこれに限定はされず情報記録部材に必要な電子部品であれば特に限定はない。電子部品で構成されるICモジュールは、アンテナコイルを有するものであるが、アンテナパターンを有する場合、導電性ペースト印刷加工、または銅箔エッチング加工、巻線溶着加工等のいずれかの方法を用いてもよい。プリント基板としては、ポリエステル等の熱可塑性のフィルムが用いられ、更に耐熱性が要求される場合はポリイミドが有利である。ICチップとアンテナパターンとの接合は銀ペースト、銅ペースト、カーボンペースト等の導電性接着剤(日立化成工業のEN−4000シ
リーズ、東芝ケミカルのXAPシリーズ等)や、異方性導電フィルム(日立化成工業製アニソルム等)を用いる方法、あるいは半田接合を行う方が知られているが、いずれの方法を用いてもよい。
【0035】
予めICチップを含む部品を所定の位置に載置してから樹脂を充填するために、樹脂の流動による剪断力で接合部が外れたり、樹脂の流動や冷却に起因して表面の平滑性を損なったりと安定性に欠けることを解消するため、インレットが用いられる。インレットは、予め基板シートに樹脂層を形成しておいて前記樹脂層内に部品を封入するために電子部品を多孔質の樹脂フィルム、多孔質の発泡性樹脂フィルム、可撓性の樹脂シート、多孔性の樹脂シートまたは不織布シート状にして使用されることが好ましい。樹脂シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、アクリル等のシートを好適に使用することができるが、機械的強度や寸法安定性、耐溶剤性の観点から、PET、PET−GまたはPENが好ましい。また、これらの中でも、透明性、加工適性およびコストの観点から、PETまたはPET−Gが特に好ましい。
【0036】
例えば、不織シート部材として、不織布などのメッシュ状織物や、平織、綾織、繻子織の織物などがある。また、モケット、プラッシュベロア、シール、ベルベット、スウェードと呼ばれるパイルを有する織物などを用いることができる。材質としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン8等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ポリエチレン等のポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系、ポリシアン化ビニリデン系、ポリフルオロエチレン系、ポリウレタン系等の合成樹脂、絹、綿、羊毛、セルロース系、セルロースエステル系等の天然繊維、再生繊維(レーヨン、アセテート)、アラミド繊維の中から選ばれる1種または2種以上を組み合わせた繊維が上げられる。これらの繊維材料において好ましくは、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアイド等のアクリル系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、再生繊維としてのセルロース系、セルロースエステル系であるレーヨン及びアセテート、アラミド繊維があげられる。
【0037】
また、ICモジュールを含むインレット7または接着剤6中には、ICチップは点圧強度が弱いためにICチップ近傍に補強板10を備えていてもよい。インレットを含む電子部品の全厚さは100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0038】
第1のシート部材と第2のシート部材との間に所定の電子部品と設けた積層構造を形成する方式としては、熱貼合法、接着剤貼合法、接着剤塗布法及び射出成形法が挙げられるが、いずれの方法で各部材を貼り合わせてもよい。貼り合わせに接着剤を使用する場合、特に制限されることなく従来公知の接着剤を用いることができるが、本発明においては、ホットメルト接着剤等を好適に使用することができ、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系や、ポリエステル系、ポリアミド系、熱可塑性エラストマー系、ポリオレフィン系の接着剤を挙げることができる。これらのなかでも、湿気硬化型の接着剤が好ましい。上記したもの以外でも、湿気硬化型接着剤として、特開2000−036026号公報、特開2000−211278号公報、特開2000−219855号公報等に開示されている接着剤を好適に使用することができる。なお、接着剤を用いて、各部材を貼り合わせる場合、接着剤の層と電子部品の層(インレットの厚み)との合計の厚みで100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0039】
また、接着剤には、ワックス、熱可塑性樹脂、無機微粒子、レベリング剤、ゴム弾性粒子、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、粘着剤、硬化剤、硬化触媒、流展剤、平板状粒子、針状粒子等のその他添加剤等を含有させてもよい。
【0040】
インレット(電子部品)の裏表、あるいは第1および第2シート部材の一方の面に、接着剤を、所定厚となるように塗布し、各部材を貼り合わせることにより、ICカード基材を作製することができる。接着剤の塗布方法としては、ローラー方式、Tダイ方式、ダイス方式等の従来公知の方式を用いることができるが、これらの塗工方法に限定されるものではなく、ストライプ状に接着剤を塗布したり、特開2000−036026号公報、特開2000−219855号公報、特開2000−211278号公報、特開平10−316959号公報、特開平11−5964号公報等で提案されている塗布方法を採用してもよい。
【0041】
また、IC基材カード1の受像層3を設ける側とは反対の面に位置する第2シート部材5‘の表面(すなわち、画像情報等が印画される面とは反対側の面)には、筆記層(図示せず)が設けられていてもよい。筆記層とは、IDカードの裏面に筆記をすることができるようにした層である。筆記層としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、ケイソウ土、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機微細粉末を含有させた熱可塑性樹脂(ポリエチレン等のポリオレフィン類や、各種共重合体等)フィルムを第2のシート部材の最表面に設けることにより形成することができる。
【0042】
各部材を貼り合わせる際には、シート基材の表面平滑性や、第1のシート部材と第2のシート部材との間に設ける電子部品の密着性を向上させるために、加熱及び加圧を行うことが好ましく、上下プレス方式、ラミネート方式等で製造することが好ましい。加圧によるIC部品の破損を考慮して、ローラプレスよりも平面プレス型とするのが好ましい。加熱は、10〜180℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃である。加圧は、1〜300kgf/cm2が好ましく、より好ましくは1〜200kgf/cm2である。これより圧が高いとICチップが破損する場合がある。加熱および加圧時間は、加熱および加圧条件にもよるが、概ね0.001〜90秒が好ましく、より好ましくは0.001〜60秒である。
【0043】
基材は、接着剤貼合法や樹脂射出法で連続シートとして形成された貼り合わせた枚葉シートまたは連続塗工ラミロールとして形成してもよく、それらシートないしラミロールを所定のカードサイズに成形して所望の大きさの基材を作製することができる。なお、ICカード基材を作製した後、受像層を設ける前又は後に、他方の面上に、個人識別情報ではない一般的な書誌事項を印刷することもできるが、シートないしラミロール状の状態で、連続して一般的な書誌事項を印刷しておく方が好ましい。所定のカードサイズに成形する方法としては、打ち抜く方法、断裁する方法等を主として採用できる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。なお、表記の質量部は固形分で記載し、純水を用いて希釈して、各塗布液の全固形分が15〜30%となるように調整した。
実施例1
ICカード1の作製
基材シートとして、PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、U2L98W 低熱収グレード)を用い、その一方の面に、下記組成のクッション層用塗布液1および受容層用塗布液1(水系分散塗布液)を40℃にそれぞれ加熱し、スライドコーティングを用いて、乾燥時の厚みがそれぞれ12μm、3μmとなるように塗布し、5℃にて30秒間冷却した後、50℃にて2分間乾燥した。得られたシートを使用し、特開2006−178566の実施例に記載された方法でICカードを作製した。ICカード1は、図1に示されるような層構成を有していた。
【0045】
クッション層用塗布液1の組成
・中空粒子(日本ゼオン(株)製、商品名:MH5055、体積平均粒径0.5μm)
70質量部
・スチレンアクリル酸共重合樹脂(BASF(株)製、商品名:ジョンクリル62J)
25質量部
受容層用塗布液1の組成
・塩酢ビ系樹脂(日信化学(株)製、商品名:ソルバインC)
45質量部
・アニオン系乳化剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製、商品名:ペレックス NBL) 2.5質量部
なお、受容層用塗布液1(水系分散塗布液)は、以下のようにして調製した。まず、下記の組成となるように、水系溶液1および溶剤系溶液1を調製した。この水系溶液1と溶剤系溶液1とを、混合・撹拌した後、ホモジナイザーを用いて分散を行い、溶剤系塩ビ系樹脂を水溶液中に乳化させ、その後有機溶媒を除去して水系分散塗布液を調製し、これを受容層用塗布液として用いた。調製した水系分散塗布液の固形分量は、15%であった。以下、各実施例および比較例においても、同様の方法により受容層用塗布液を調製した。
【0046】
水系溶液1の組成
・アニオン系乳化剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製、商品名:ペレックス NBL) 2.5重量部
・純水 270重量部
溶剤系溶液1の組成
・塩酢ビ系樹脂(日信化学(株)製、商品名:ソルバインC)
45重量部
・酢酸エチル(溶剤) 450重量部
実施例2
クッション層用塗布液1の組成を、下記のクッション層用塗布液2とした以外は、実施例1と同様にしてICカード2を得た。
【0047】
クッション層用塗布液2の組成
・架橋中空粒子(JSR(株)製、商品名:SX8782(A)、体積平均粒径1.1μm、内孔径0.9μm、中空率55%)
70質量部
・スチレンアクリル酸共重合樹脂(BASF(株)製、商品名:ジョンクリル62J)
25質量部
実施例3
クッション層用塗布液1の組成を、下記のクッション層用塗布液3とした以外は、実施例1と同様にしてICカード3を得た。
【0048】
クッション層用塗布液3の組成
・中空粒子(日本ゼオン(株)製、商品名:MH5055、体積平均粒径0.5μm)
70質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:RR) 23質量部
・ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)(硬膜剤、特開2002−4059
5および特開2002−62610参照) 2重量部
実施例4
クッション層用塗布液1の組成を、下記のクッション層用塗布液4とした以外は、実施例1と同様にしてICカード4を得た。
【0049】
クッション層用塗布液4の組成
・架橋中空粒子(JSR(株)製、商品名:SX8782(A)、体積平均粒径1.1μm、内孔径0.9μm、中空率55%)
70質量部
・スチレンアクリル酸共重合樹脂(BASF(株)製、商品名:ジョンクリル62J)
15質量部
・ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:RR) 8質量部
・ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア)(硬膜剤、特開2002−4059
5および特開2002−62610参照) 2重量部
比較例1
クッション層を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にしてICカード5を得た。
【0050】
(耐水性評価)
上記で作製したICカードを、36度に加温した温水に1分間浸漬し、温浴から取り出し余分な水分を流れ落とす。取り出し後30秒でHEIDON測定器にて20g荷重で0.5mmφ針にて引っかき試験を行い、その傷の巾により、耐水性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
・評価基準
○:巾200μm以下の傷があった。
【0051】
△:巾200μm以上500μm未満の傷があった。
【0052】
×:巾500μm以上の傷があった。または、塗布層が水に溶解した。
【0053】
(耐光性評価)
作製したICカードを昇華型熱転写プリンターCX120(日本ビクター(株)製)にて、RGB値が15*n(n=0〜17)のブラックの18階調グラデーション画像を印画した。得られた印画物について、下記条件のキセノンフェードメーターにより耐光性の評価を行った。
(i)耐光性評価の条件
・照射試験器:アトラス社製Ci4000
・光源:キセノンランプ
・フィルター:内側=CIRA、外側=ソーダライム
・ブラックパネル温度:45(℃)
・照射強度:1.2(W/m2 )―420(nm)での測定値
・照射エネルギー:300(kJ/m2 )−420(nm)での積算値
(ii)耐光性評価
印画物の一部をアルミ箔で覆った後に、上記の条件で耐光性試験を行なった。得られた印画物のアルミ箔を剥がし、以下の基準で目視評価を行なった。得られた結果を表1に示す。
・評価基準
○:ほとんど退色していない。
△:若干の退色が確認できるが、実使用上問題ない。
【0054】
×:退色している。
【0055】
(ざらつき評価)
上記の耐光性評価にて作製した印画物を、目視にて以下の基準で評価した。
・評価基準
○:粒状感などのムラがほとんど見当たらない。
【0056】
×:印画面に粒状感がある。
【0057】
(エンボス評価)
上記の耐光性評価にて作製した印画物の濃度の高い部分と濃度の低い部分の印画物の凸凹を、以下の基準で目視にて評価した。
・評価基準
○:外観に凸凹が見られなかった。
【0058】
△:外観に凸凹が見られたが、実用上問題のないレベルであった。
【0059】
×:外観に凸凹がはっきりと見られた。
【0060】
【表1】

表1から明らかなように、本願発明で製造された実施例1〜4のICカードは、耐水性、耐光性、ざらつき、エンボス共に良好な評価結果を得ることができた。
【符号の説明】
【0061】
1 ICカード
2 基材
3 受容層
4 クッション層
5、5‘ シート部材
6、6‘ 接着剤層
7 インレット
8 アンテナ体
9 ICチップ
10 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で電子情報の書込みおよび/または読出しが可能なICモジュールを内部に備えた基材と、前記基材上の少なくとも一方の面上に、クッション層と受容層を有するICカードにおいて、
前記クッション層は、中空粒子と第一のバインダ樹脂を含み、
前記受容層は第二のバインダ樹脂を含む、
ことを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記第一のバインダ樹脂がゼラチン、及び/又はスチレンアクリル共重合樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載されたICカード。
【請求項3】
前記第二のバインダ樹脂が塩ビ系樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載されたICカード。
【請求項4】
前記クッション層が、硬膜剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載されたICカード。
【請求項5】
前記中空粒子は、体積平均粒径が5μmの架橋中空粒子であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載されたICカード。

【図1】
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【公開番号】特開2013−28069(P2013−28069A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165560(P2011−165560)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】