説明

ICカード

【課題】カード制御用素子、外部装置、ディスプレイ制御用素子で相互に通信を行うことが可能であるとともに、製造コストの増加を抑制可能なICカードを提供する。
【解決手段】ICカード10は、カード基材と、カード基材上に設けられたディスプレイ14と、外部装置50に接続可能な通信用の入出力部C7と、前記入出力部C7に接続されたカード制御用素子32と、前記入出力部C7と前記外部装置50との通信伝送路に接続され前記ディスプレイ14を制御するディスプレイ制御用素子34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ディスプレイを備えたICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICカードと呼ばれるものには、ISO/IEC 7816に規定される接触式ICカード、ISO/IEC 14443に規定される非接触カード(無線カード)、およびその双方の機能を有するデュアルインターフェイスカードがある。デュアルインターフェイスカードは、接触通信、無線通信の機能を1つのICでまかなうコンビカードと、それぞれの機能を個々のICでまかなうハイブリッドカードとに分類される。
【0003】
例えば、接触式ICカードは一般的に、内部にICを有するICモジュールをポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、紙などのカード基材内に埋め込むことで形成される。ICモジュールは6つないしは8つの外部と通信するための端子を備え、接触端子裏側に配置したICと各端子が、金線などにより電気的に接続され、更に、ICと金線は熱硬化樹脂などで封止されている。それぞれの端子の機能はISO/IEC 7816にて規定されている。ICモジュールのカードへの埋め込みは、一般的に、接着テープを貼り付けられたICモジュールを、カード基材の定められた位置に設けられたザグリ穴に設置し、加熱圧着することでICモジュールとカード基材との接着が行われる。
【0004】
また、液晶などのディスプレイを搭載したICカードが提案されている。しかし、ディスプレイ付きICカードは、製造コストや曲げなどに対する耐久性、電源の必要性などの問題から現在まで普及には至っていない。近年、電子ペーパーに代表されるようなフレキシブルで低消費電力にて駆動可能なディスプレイが開発され、これまでの問題点を解決し得るため、ディスプレイ付きカードが普及する実現性が急速に高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−108387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイ付きICカードを実現する場合、ICカード機能用IC、外部端末、ディスプレイ制御用ICの3つのデバイスでどのように通信を行うかを考える必要がある。
【0007】
外部端末がICカード機能用ICとディスプレイ制御用ICのそれぞれと通信を行う場合、外部端末とディスプレイ制御用ICが通信を行うためのインターフェイスを新たに設ける必要がある。また、ICカード機能用ICが外部端末とディスプレイ制御用ICのそれぞれと通信を行う場合、ICカード機能用ICはディスプレイ制御用ICと通信を行うためのインターフェイスを新たに設ける必要がある。そのため、ICカードの製造コストが高くなる。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その課題は、カード制御用素子、外部装置、ディスプレイ制御用素子で相互に通信を行うことが可能であるとともに、製造コストの増加を抑制可能なICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、ICカードは、カード基材と、前記カード基材上に設けられたディスプレイと、外部装置に接続可能な通信用の入出力部と、前記入出力部に接続されたカード制御用素子と、前記入出力部と外部装置との通信伝送路に接続され前記ディスプレイを制御するディスプレイ制御用素子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿ったICカードの断面図。
【図3】図3は、前記ICカードのICモジュールを示す平面図。
【図4】図4は、前記ICモジュールの裏面側を示す平面図。
【図5】図5は、前記ICカードのICモジュールとカード基材を分解して示す平面図。
【図6】図6は、前記ICカードのICモジュールとカード基材を分解して示す断面図。
【図7】図7は、前記ICカードの伝送データとして用いる通信フレームを模式的に示す図。
【図8】図8は、前記ICカードと外部端末との通信状態を模式的に示す平面図。
【図9】図9は、前記ICカードのカード制御用IC、ディスプレイ制御用IC、外部端末の相互の通信状態を模式的に示す平面図。
【図10】図10は、第2の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図11】図11は、図10の線B−Bに沿ったICカードの断面図。
【図12】図12は、前記ICカードのICモジュールを示す平面図。
【図13】図13は、前記ICモジュールの裏面側を示す平面図。
【図14】図14は、前記ICカードのICモジュールとカード基材を分解して示す平面図。
【図15】図15は、前記ICカードのICモジュールとカード基材を分解して示す断面図。
【図16】図16は、第3の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図17】図17は、図16の線C−Cに沿ったICカードの断面図。
【図18】図18は、前記ICカードのICモジュールを示す平面図。
【図19】図19は、前記ICモジュールの裏面側を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、この発明の種々の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1ないし図4は、第1の実施形態に係る接触式のICカードを示している。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12上に設けられたディスプレイ14と、カード基材12に埋め込まれたICモジュール16と、を備えている。
【0013】
図1、図2および図5に示すように、カード基材12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)などの材料からなる薄厚のプラスチックシートを複数積層し、熱プレスで接着してISO/IEC7810に規定される厚さ(0.76±0.08mm)のシートを形成した後、このシートを所定サイズのカード形状に打ち抜くことにより、形成される。その他、カード基材12は、カード形状の金型を用いて、合成樹脂により射出成形してもよい。
【0014】
カード基材12には、ディスプレイ14が搭載される第1凹所18、およびICモジュール16が装着される段付きの第2凹所20が形成され、それぞれカード基材12の表面に開口している。カード基材12内にディスプレイ接続用の配線22が埋め込まれ、この配線22は、第1凹所18から第2凹所20まで延びている。配線22の一端は第1凹所18内に露出し、他端は第2凹所20内に露出している。また、凹所18の近傍でカード基材12内に、ディスプレイ制御用IC34が埋め込まれている。
【0015】
第1凹所18は、例えば、ディスプレイサイズに対応した細長い矩形状に形成されている。ディスプレイ14は第1凹所18に装着され、カード基材12に固定されているとともに、第1凹所18内に露出する配線22に電気的に接続されている。ディスプレイ制御用IC(ディスプレイ制御用素子)34は、配線22に電気的に接続され、更に、ディスプレイ14の基板25上の複数の配線に接続されている。ディスプレイ制御用IC34は、ディスプレイ14を制御し、ディスプレイ14に任意の情報、例えば、時間、駅名、カード番号、カード残高等を表示する。
【0016】
製造においては、ディスプレイサイズに対応した孔をプラスチックシートに開けて、プラスチックシート間にディスプレイ14をセットした状態で熱プレスを行い、カードサイズに打ち抜いて形成する。カード基材12の最も外側の面に透明のオーバーコート層をさらに積層してもよい。
【0017】
ディスプレイ14としては、フレキシブルかつ低消費電力のものが望ましい。例えば、ディスプレイ14は、白黒の顔料粒子を収めたマイクロカプセルが並べられて電界により粒子を移動させて白黒表示を行う電気泳動方式の電子ペーパーを用いる。あるいは、薄型の液晶パネルや有機ELを用いてもよい。ディスプレイ14の表示や書換えに必要な電力の供給は接触式ICモジュール16の電源を用いてもよいが、薄型の電池をカード基材12に内蔵してもよいし、非接触ICカードのようにカード基材内部にアンテナを設けて電磁誘導方式で電力を供給してもよい。
【0018】
ICモジュール16を埋設する第2凹所20は、矩形状の大径凹所20aと、大径凹所の中心部に、この大径凹所20aよりも深く形成された矩形状の小径凹所20bとを有し、矩形状の2段凹所に形成されている。第2凹所20は、積層時にプラスチックシートに孔を開けて、ディスプレイ14からの配線22を露出した状態で予め設けてもよく、あるいは、ICモジュールの接着前に、板状に形成されたカード基材を切削加工することにより第2凹所を形成し、配線22を露出させてもよい。
【0019】
図2ないし図5に示すように、ICモジュール16は、絶縁材料で形成された矩形状の基板30と、この基板30の上面上に形成されISO/IEC7816にて規定される接触通信用の接触端子C1〜C8と、基板30の裏面に実装されたカード制御用IC(カード制御用素子)32と、を備えている。例えば、接触端子C1は電源、接触端子C2はリセット、接触端子C3はクロック、接触端子C5はグランド、接触端子C7は伝送(入出力(I/O))として機能する。
【0020】
カード制御用IC32は、接触通信インターフェイスを有し、IC32のパッドは、金線のボンディングワイヤ37等により外部端子C1、C2、C3、C5、C7に電気的に接続されている。基板30の裏面上に、ディスプレイ接続用の接続端子36が形成されている。接続端子36は、細長い帯状に形成され、基板30の幅方向に沿って、基板の一側縁から中心部側に延びている。接続端子36は、接触端子C7の近傍に設けられている。接続端子36は、配線、例えば、ボンディングワイヤ35により、基板30の透孔を介して接触端子C7に電気的に接続されている。
【0021】
基板30の裏面上に実装されたカード制御用IC32、ボンディングワイヤ35、37、および、接続端子36の中央側の端部は、熱硬化樹脂、モールド樹脂等の封止材42によって封止されている。接続端子36の外側の端部は、封止材42で覆われることなく、基板30の裏面側に露出している。
【0022】
上記のように構成されたICモジュール16は、図2および図5に示すように、カード基材12の第2凹所20に埋め込まれ、接着剤44によりカード基材12に加熱圧着される。第2凹所20の大径凹所20aは、基板30に対応した大きさおよび形状に形成され、ICモジュール16の基板30および接触端子が、大径凹所20a内に収容されている。基板30は、裏面の周縁部が接着剤44により大径凹所20aの底に接着される。ICモジュール16の接触端子C1〜C8は、カード基材12の表面とほぼ面一に配置され、外部に露出している。小径凹所20bは、ICモジュール16の封止部分に対応した大きさおよび深さに形成され、この小径凹所20bに封止部分が収容されている。
【0023】
2段の第2凹所20のうち、浅い大径凹所20aを切削加工することにより、ディスプレイ14からの配線22が大径凹所20aの底に露出している。ICモジュール16の基板裏面に設けられた接続端子36は、導電性接着剤46などにより配線22に物理的に接着され、かつ電気的に接続されている。これにより、ディスプレイ制御用IC34が、配線22、接続端子36、およびボンディングワイヤ35を介して通信用の接触端子C7に電気的に接続される。すなわち、ディスプレイ14を制御するディスプレイ制御用IC34は、入出力部(接触端子C7)と外部装置との通信伝送路に接続され、更に、カード制御用IC32にも入出力部を介して電気的に接続されている。
以上により、接触式のICカード10が形成される。
【0024】
上記のように構成されたICカード10と外部端末50との通信は、T=1プロトコルの場合、図7に示すようなブロックフレームにより行われる。フレームの先頭のNAD(Node Address)にて送信先DAD(外部端末50、カード制御用IC32、ディスプレイ制御用IC34)、送信元SAD(外部端末50、カード制御用IC32、ディスプレイ制御用IC34)のアドレスが指定される。通常、外部端末50とICカード10は1対1で通信を行うため、未使用(”00”)となる。その他、ブロックフレームは、NAD、PCB、LENを含むプロローグ領域、情報領域、エピローグ領域を有している。LENは、フレームの長さを示している。
【0025】
図7ないし図9に示すように、外部端末50、カード制御用IC32、ディスプレイ制御用IC34のそれぞれにNode Addressを割り付け、T=1プロトコルのブロックフレーム先頭のNAD(Node Address)にて送信先のアドレスを指定することで、外部端末、カード用制御IC、ディスプレイ制御用ICのそれぞれが相互に通信を行うことができる。
【0026】
仮に、Node addressをそれぞれ、外部端末50をNode#0、カード制御用ICをNode#1、ディスプレイ制御用ICをNode#7とした場合、外部端末50からカード制御用IC32への通信にはNAD=10、カード制御用IC32から外部端末50への通信にはNAD=1、外部端末50からディスプレイ制御用ICへの通信にはNAD=70のようになる。
【0027】
上記のようにNADにて指定される送信先識別情報DADおよび送信元識別情報SADは、外部端末50、カード制御用IC32、ディスプレイ制御用IC34ごとの固定情報として用いられる。
【0028】
なお、送信先識別情報DADおよび送信元識別情報SADは、適用する外部端末が変更された場合、これに応じて、変更可能な可変情報としてもよい。DAD、SADは端末側から初めに情報が送信される際に設定され、以降の通信に使用される値とすれば、外部端末が変更されても、外部端末からアドレスが指定されるので変更が可能となる。ただし、端末側から初めに送信される情報がカード制御用ICへ送信されているのか、ディスプレイ制御用ICに送信されているのかの区別が必要であり、例えば端末側から初めに送信される情報は、カード制御用ICが応答することとする、といった法則を予め決めておくことが望ましい。
【0029】
カード制御用IC32およびディスプレイ制御用IC34は、通信フレームの送信先識別情報に応じて、処理すべき通信フレームであるか否かを判定する判定部をそれぞれ有している。また、カード制御用IC32およびディスプレイ制御用IC34は、送信先識別情報および送信元識別情報を予め記憶したメモリ32a、34aを備えている。
【0030】
上記のように構成されたICカード10によれば、共通の入出力部(入出力端子)を用いて、カード制御用ICおよびディスプレイ制御用ICと外部端末50との間の通信、並びに、カード制御用ICおよびディスプレイ制御用IC相互の通信を行うことができる。このように、カード制御用IC、外部端末、ディスプレイ制御用ICが相互に通信を行うことが可能になる上に、カード制御用ICと外部端末は新たなインターフェイスを設ける必要がないため、低コストにディスプレイ付ICカードを実現することができる。
【0031】
また、ICモジュール16をカード基材12に装着することで、ICモジュール16の接続端子とディスプレイ制御用IC34とを接続することができる。これにより、従来の製造方法を流用して、ICモジュール16の接着およびICモジュール16とディスプレイ14とを接続を行うことができ、製造設備の投資コストを抑えることができるとともに、信頼性の高いICカードを得ることができる。以上のことから、低コストで製造することができるとともにカードとしての信頼性が向上したディスプレイ付きのICカードが得られる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るICカードについて説明する。図10ないし図13は、第2の実施形態に係る接触式のICカード10を示している。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12上に設けられたディスプレイ14と、カード基材12に埋め込まれたICモジュール16と、を備えている。
【0033】
第2の実施形態によれば、ディスプレイ制御用IC34は、ICモジュール16内に設けられている。すなわち、ICモジュール16は、矩形状の基板30と、この基板30の上面上に形成されISO/IEC7816にて規定される接触通信用の接触端子C1〜C8と、基板30の裏面に実装されたカード制御用IC(カード制御用素子)32と、基板30の裏面に実装されたディスプレイ制御用IC34と、を備えている。例えば、接触端子C1は電源、接触端子C2はリセット、接触端子C3はクロック、接触端子C5はグランド、接触端子C7は伝送(入出力(I/O))として機能する。
【0034】
カード制御用IC32は、接触通信インターフェイスを有し、IC32のパッドは、金線のボンディングワイヤ37等により外部端子C1、C2、C3、C5、C7に電気的に接続されている。
【0035】
ディスプレイ制御用IC34は、カード制御用IC32と同一平面上に設けられている。すなわち、ディスプレイ制御用IC34は、基板30の裏面上に実装され、カード制御用IC32と並んで位置している。また、基板30の裏面上に、ディスプレイ接続用の複数の接続端子36が形成されている。これらの接続端子36は、それぞれ細長い帯状に形成され、基板30の長手方向に沿って、基板の一側縁から中心部側に延びている。また、複数の接続端子36は、互いに僅かな隙間を置いて、並んでいる。
【0036】
ディスプレイ制御用IC34の複数のパッドは、ボンディングワイヤ38等により接続端子36の一端に電気的に接続されている。更に、ディスプレイ制御用IC34は、配線、例えば、ボンディングワイヤ40により、基板30の透孔を介して接触端子C7に電気的に接続されている。
【0037】
基板30の裏面上に実装されたカード制御用IC32、ディスプレイ制御用IC34、ボンディングワイヤ37、38、40、および、接続端子36の中央側の端部は、熱硬化樹脂、モールド樹脂等の封止材42によって封止されている。接続端子36の外側の端部は、封止材42で覆われることなく、基板30の裏面側に露出している。これにより、カード制御用ICとディスプレイ制御用ICとを搭載したICモジュール16が形成される。
【0038】
図10、図11、図14、図15に示すように、カード基材12内にディスプレイ接続用の複数本の配線22が埋め込まれ、これらの配線22は、第1凹所18から第2凹所20まで延びている。各配線22の一端は第1凹所18内に露出し、他端は第2凹所20内に露出している。
【0039】
第1凹所18は、例えば、ディスプレイサイズに対応した細長い矩形状に形成されている。ディスプレイ14は第1凹所18に装着され、カード基材12に固定されているとともに、第1凹所18内に露出する配線22に電気的に接続されている。
【0040】
ICモジュール16は、カード基材12の第2凹所20に埋め込まれ、接着剤44によりカード基材12に加熱圧着される。第2凹所20の大径凹所20aは、基板30に対応した大きさおよび形状に形成され、ICモジュール16の基板30および外部端子が、大径凹所20a内に収容されている。基板30は、裏面の周縁部が接着剤44により大径凹所20aの底に接着される。ICモジュール16の外部端子C1〜C8は、カード基材12の表面とほぼ面一に配置され、外部に露出している。
【0041】
2段の第2凹所20のうち、浅い大径凹所20aを切削加工することにより、ディスプレイ14からの配線22が大径凹所20aの底に露出している。ICモジュール16の基板裏面に設けられた複数の接続端子36は、導電性接着剤46などにより配線22に物理的に接着され、かつ電気的に接続されている。これにより、ディスプレイ制御用IC34が、接続端子36および配線22を介してディスプレイ14に電気的に接続される。
【0042】
同一面上に複数の配線22が露出している場合、隣り合う配線同士が短絡しないように、導電性接着剤46として、厚さ方向のみに通電する異方性導電性接着剤を用いることが望ましい。この場合、大径凹所20aの配線22が露出していない面であっても、共通の異方性導電性接着剤を用いて電気的接続を行うことができる。なお、個々の配線22毎に小さな凹部を設け、この凹所内部を導電性接着剤で満たすことにより配線22と接続端子36とを接続する場合は、通電するための距離が長いため、等方性導電性接着剤を用いることが望ましい。
ICカード10の他の構成は、前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
第2の実施形態によれば、カード制御用IC、外部端末、ディスプレイ制御用ICが相互に通信を行うことが可能になる上に、カード制御用ICと外部端末は新たなインターフェイスを設ける必要がないため、低コストにディスプレイ付ICカードを実現することができる。また、ICモジュール16にカード制御用IC32とディスプレイ制御用IC34とを設け、モジュール内部にてこれらのICを入出力端子に接続することができる。これにより、低コストでディスプレイ付き接触式ICカードの製造を行うことが可能となる。また、ICモジュール16をカード基材12に装着することで、ICモジュール16とディスプレイ14とを接続することができる。これにより、従来のコンビカードの製造方法を流用して、ICモジュール16の接着およびICモジュール16とディスプレイ14とを接続を行うことができ、製造設備の投資コストを抑えることができるとともに、信頼性の高いICカードを得ることができる。以上のことから、低コストで製造することができるとともにカードとしての信頼性が向上したディスプレイ付きのICカードが得られる。
【0044】
上述した第2の実施形態において、ICモジュールの2つの制御用ICは、ワイヤボンディングにより直接、接続する構成としたが、これに限らず、基板上に配線を形成し、2つのICをそれぞれワイヤボンディングにより同じ配線に接続することにより、2つのICを入出力部に電気的に接続するようにしてもよい。
【0045】
上述した第2の実施形態において、カード制御用ICおよびディスプレイ制御用ICは、基板の同一平面上に設けられているが、これに限らず、一方のICの上に、他方のICを重ねて搭載するスタック構造としてもよい。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るICカードについて説明する。図16ないし図19は、第3の実施形態に係るICカード10を示している。ICカード10は、非接触式、接触式の両方を兼ね備えたコンビカードとして構成されている。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12上に設けられたディスプレイ14と、カード基材12に埋め込まれたICモジュール16と、を備えている。カード基材12に無線通信用のアンテナ52が埋め込まれている。
【0047】
アンテナ52は、絶縁被膜処理された銅線を巻いたものやプラスチック製のフィルム上に銅やアルミニウムをエッチング処理して成形したものが用いられる。アンテナ52は、カード基材12の外周部に沿ってほぼ矩形状に捲回され、その入力端および出力端は、カード基材12の第2凹所20の近傍に引き出されている。
【0048】
ICモジュール16は、絶縁材料で形成された矩形状の基板30と、この基板30の上面上に形成されISO/IEC7816にて規定される接触通信用の接触端子C1〜C8と、基板30の裏面に実装されたカード制御用IC32およびディスプレイ制御用IC34と、を備えている。基板30の裏面上に、ディスプレイ接続用の複数の接続端子36が形成されている。また、基板30の裏面上に、一対の無線通信用の接続端子52が形成されている。
【0049】
カード制御用IC32は、接触通信インターフェイスを有し、ICの接触通信用のパッドは、金線のボンディングワイヤ37等により接触端子C1、C2、C3、C5、C7に電気的に接続されている。カード制御用IC32の無線通信用のパッドは、同様に、金線のボンディングワイヤ35などにより接続端子52に電気的に接続される。
【0050】
ディスプレイ制御用IC34は、カード制御用IC32と同一平面上に設けられている。すなわち、ディスプレイ制御用IC34は、基板30の裏面上に実装され、カード制御用IC32と並んで位置している。また、基板30の裏面上に、ディスプレイ接続用の複数の接続端子36が形成されている。これらの接続端子36は、それぞれ細長い帯状に形成され、基板30の長手方向に沿って、基板の一側縁から中心部側に延びている。また、複数の接続端子36は、互いに僅かな隙間を置いて、並んでいる。
【0051】
ディスプレイ制御用IC34の複数のパッドは、ボンディングワイヤ38等により接続端子36の一端に電気的に接続されている。更に、ディスプレイ制御用IC34は、配線、例えば、ボンディングワイヤ40により、基板30の透孔を介して通信用の接触端子C7に電気的に接続されている。
【0052】
基板30の裏面上に実装されたカード制御用IC32、ディスプレイ制御用IC34、ボンディングワイヤ35、37、38、40、および、接続端子36の中央側の端部は、熱硬化樹脂、モールド樹脂等の封止材42によって封止されている。接続端子36の外側の端部、および接続端子52の大部分は、封止材42で覆われることなく、基板30の裏面側に露出している。これにより、カード制御用ICとディスプレイ制御用ICとを搭載したICモジュール16が形成される。
【0053】
図16および図17に示すように、ICモジュール16は、カード基材12の第2凹所20に埋め込まれ、接着剤44によりカード基材12に加熱圧着される。接着剤44は、基板30の裏面において、封止材42、接続端子36、52を除く部分に設けられる。ディスプレイ用の接続端子36は、例えば、異方性導電接着剤46により配線22に物理的かつ電気的に接続されている。また、無線通信用の接続端子52は、導電性接着剤56等により、アンテナ52の入力端および出力端に物理的かつ電気的に接続される。このように、ICモジュール16をカード基材12に接着固定することにより、同時に、ICモジュール16はディスプレイ14およびアンテナ52に電気的に接続される。また、ICモジュール16の外部端子C1〜C8は、カード基材12の表面とほぼ面一に配置され、外部に露出している。
ICカード10の他の構成は、前述した第2の実施形態と同一であり、同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0054】
第3の実施形態によれば、カード制御用IC、外部端末、ディスプレイ制御用ICが相互に通信を行うことが可能になる上に、カード制御用ICと外部端末は新たなインターフェイスを設ける必要がないため、低コストにディスプレイ付ICカードを実現することができる。また、アンテナを備えることにより、無線通信が可能なコンビカードが得られる。第1の実施形態と同様に、低コストでディスプレイ付きICカードの製造を行うことが可能となる。ICモジュール16をカード基材12に装着することで、ICモジュール16とディスプレイ14との接続、および、ICモジュールとアンテナとの接続を行うことができる。これにより、低コストで製造することができるとともにカードとしての信頼性が向上したディスプレイ付きのICカードが得られる。
【0055】
この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、前述した実施形態において、ICモジュールのカード制御用ICおよびディスプレイ制御用ICは、独立した2つのICとしたが、これに限らず、単一のICで形成してもよい。また、ICモジュールに搭載されるICは2つに限らず、カード機能用ICとディスプレイ制御用ICとの間の通信を制御する3つ目のICを備えていてもよい。あるいは、別機能のICがICモジュールに搭載されていてもよい。また、この発明は、ICカードに限定されることなく、他の形態の携帯可能電子装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…ICカード、12…カード基材、14…ディスプレイ、16…ICモジュール、
18…第1凹所、20…第2凹所、22…配線、32…カード制御用IC、
34…ディスプレイ制御用IC、36…接続端子、35、37、38…配線、
52…アンテナ、C1〜C7…接触端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、
前記カード基材上に設けられたディスプレイと、
外部装置に接続可能な通信用の入出力部と、
前記入出力部に接続されたカード制御用素子と、
前記入出力部と外部装置との通信伝送路に接続され前記ディスプレイを制御するディスプレイ制御用素子と、を備えるICカード。
【請求項2】
前記カード基材に露出して設けられ、外部装置に接続可能な複数の接触端子を備え、これらの接触端子は、前記入出力部を構成する入出力端子を含んでいる請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記通信伝送路に伝送されるデータは、前記外部装置、前記カード制御用素子およびディスプレイ制御用素子を送信先とする送信先識別情報を含む通信フレームを備え、前記カード制御用素子およびディスプレイ制御用素子は、前記通信フレームの送信先識別情報に応じて、処理すべき通信フレームであるか否かを判定する判定部を備える請求項1又は2に記載のICカード。
【請求項4】
前記通信フレームは、送信元を識別する送信元識別情報を含んでいる請求項3に記載のICカード。
【請求項5】
前記送信先識別情報および送信元識別情報は、前記外部装置、カード制御用素子、ディスプレイ制御用素子ごとの固定情報である請求項4に記載のICカード。
【請求項6】
前記送信先識別情報および送信元識別情報を予め記憶したメモリを備えている請求項4又は5に記載のICカード。
【請求項7】
前記送信先識別情報および送信元識別情報は、可変情報である請求項4に記載のICカード。
【請求項8】
前記カード基材に埋め込まれたICモジュールを備え、
前記ICモジュールは、基板と、この基板の上面上に形成された通信用の接触端子と、前記基板の裏面に実装され、前記接触端子に接続された前記カード制御用素子と、前記基板に設けられ、前記接触端子に接続された接続用端子と、を備え、
前記ディスプレイ制御用素子は、前記カード基材内に設けられ配線を介して前記接続用端子に接続されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項9】
前記カード基材に埋め込まれたICモジュールを備え、
前記ICモジュールは、基板と、この基板の上面上に形成された通信用の接触端子と、前記基板の裏面に実装され、前記接触端子に接続された前記カード制御用素子と、前記基板の裏面に実装され、前記接触端子に接続された前記ディスプレイ制御用素子と、前記基板の裏面に設けられ前記ディスプレイ制御用素子に接続されたディスプレイ接続用端子と、を備え、
前記ディスプレイ接続用端子は配線を介して前記ディスプレイに電気的に接続されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−4028(P2013−4028A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137708(P2011−137708)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】