説明

ICカード

【課題】情報処理素子、制御素子の配置、寸法の設計自由度が向上したICカードを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、ICカードは、第1表面12aおよびこれと反対向きの第2表面12bを有し、回路パターン14が埋め込まれたカード基材12と、前記カード基材のいずれか一方の表面に露出してカード基材に実装され、前記回路パターンに電気的に接続された情報処理素子20と、前記カード基材の前記第1表面側に実装され前記回路パターンに電気的に接続されたカード駆動用のIC17と、前記カード基材の前記第2表面側に実装され、前記回路パターンに電気的に接続され、前記情報処理素子を駆動する制御素子24と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報表示素子あるいは入力装置等の情報処理素子を備えたICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ICカードと呼ばれるものには、ISO/IEC7816に規定される接触式ICカード、ISO/IEC14443に規定される非接触カード(無線カード)、およびその双方の機能を有するデュアルインターフェイスカードがある。デュアルインターフェイスカードは、接触通信、無線通信の機能を1つのICでまかなうコンビカードと、それぞれの機能を個々のICでまかなうハイブリッドカードとに分類される。
【0003】
例えば、接触式ICカードは一般的に、内部にICを有するICモジュールをカード基材内に埋め込むことで形成される。また、電子マネーの残高表示などの内部情報を可視化するため電子ペーパーなどのディスプレイを搭載したICカードが提案されている。通常のICカードの機能の他に情報処理素子が実装されたICカードへの関心が高まっている。
【0004】
このようなディスプレイ付きのICカードの製造方法は、デュアルインターフェイスのカードの製造に用いられる製造方法が利用されることが多い。このタイプのICカードは、カード内部に回路パターンが印刷されたシート状の回路とアンテナパターンが挟み込まれ、接触式ICモジュールとディスプレイとは、カード内部の回路パターンにより電気的に接続される。また、ICモジュールおよびディスプレイは、カード表面に形成された凹所に実装され、導電部材を介して、回路パターンに電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−276435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスプレイ付きICカードにおいては、接触式ICモジュールのLSIや非接触式ICモジュールのLSIに加えて、ディスプレイ駆動用の制御素子を組み込むか、もしくはカード内部に挟み込まれるシート状の回路基板上にディスプレイ駆動用のLSIを実装する必要がある。これらLSIの実装方法に関して汎用性の高い設計が困難となる。ディスプレイや入力素子を大きくすると、駆動用制御素子の設置が制約され、設計の自由度が低下する。そのため、ディスプレイの寸法、配置も制約を受け易い。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その課題は、情報処理素子、制御素子の配置、寸法の設計自由度が向上したICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、ICカードは、第1表面およびこれと反対向きの第2表面を有し、回路パターンが埋め込まれたカード基材と、前記カード基材のいずれか一方の表面に露出してカード基材に実装され、前記回路パターンに電気的に接続された情報処理素子と、前記カード基材の前記第1表面側に実装され前記回路パターンに電気的に接続されたカード駆動用のICと、前記カード基材の前記第2表面側に実装され、前記回路パターンに電気的に接続され、前記情報処理素子を駆動する制御素子と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図2】図2は、図1の線A−Aに沿ったICカードの断面図。
【図3】図3は、前記ICカードの製造工程をそれぞれ示す平面図および断面図。
【図4】図4は、第2の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図5】図5は、第3の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図6】図6は、第3の実施形態に係るICカードを示す断面図。
【図7】図7は、第4の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図8】図8は、第4の実施形態に係るICカードを示す断面図。
【図9】図9は、第5の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図10】図10は、第5の実施形態に係るICカードを示す断面図。
【図11】図11は、第6の実施形態に係るICカードを示す平面図。
【図12】図12は、第6の実施形態に係るICカードを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、この発明の種々の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1および図2は、第1の実施形態に係る接触式のICカード10を示している。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12上に設けられた情報処理素子としてのディスプレイ20と、カード基材12に埋め込まれた接触式のICモジュール16と、カード基材12に埋め込まれたディスプレイ駆動用の制御素子(LSI)24と、を備えている。
【0011】
カード基材12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)などの材料からなる薄厚のプラスチックシートを複数積層し、熱プレスで接着してISO/IEC7810に規定される厚さのシートを形成した後、このシートを所定サイズのカード形状に打ち抜くことにより、形成される。その他、カード基材12は、カード形状の金型を用いて、合成樹脂により射出成形してもよい。カード基材12は、平坦な表面(第1表面)12aおよびこれと反対側の平坦な裏面(第2表面)12bを有している。カード基材12内の厚さ方向、ほぼ中央に、回路パターン14が埋め込まれ、表面12aとほぼ平行に延在している。
【0012】
カード基材12の表面12aには、ICモジュール16が装着される段付きの第1凹所26およびディスプレイ20が搭載される第2凹所28が形成され、それぞれカード基材12の表面12aに開口している。また、カード基材12の裏面12bには、制御素子24が埋め込まれる第3凹所28が形成されている。
【0013】
ICモジュール16を埋設する第1凹所26は、矩形状の大径凹所と、大径凹所の中心部に、この大径凹所よりも深く形成された矩形状の小径凹所とを有し、矩形状の2段凹所に形成されている。ICモジュール16は、絶縁材料で形成された矩形状の基板と、この基板の上面上に形成されISO/IEC7816にて規定される接触通信用の外部端子18と、基板の裏面に実装されたカード制御用IC17と、を備えている。カード制御用IC17は、接触通信インターフェースを有し、IC17のパッドは、ボンディングワイヤ等により外部端子18に電気的に接続されている。カード制御用IC17、およびボンディングワイヤは、熱硬化樹脂、モールド樹脂等の封止材によって封止されている。
【0014】
上記のように構成されたICモジュール16は、カード基材12の第1凹所26に埋め込まれ、接着材によりカード基材12に加熱圧着される。ICモジュール16の基板および外部端子18が、大径凹所内に収容され、外部端子C18は、カード基材12の表面12aとほぼ面一に配置され、外部に露出している。ICモジュール16の封止部分は、小径凹所に収容されている。ICモジュール16の基板は、金属柱等の導体32を介して、回路パターン14に電気的に接続されている。
【0015】
ディスプレイ20を収容する第2凹所28は、例えば、ディスプレイサイズに対応した細長い矩形状に形成されている。ディスプレイ20は第2凹所28に装着され、カード基材12の表面12a側に実装されている。ディスプレイ20の表示面は、カード基材12の表面12aに露出し、この表面12aとほぼ面一に位置している。また、ディスプレイ20は、金属柱等の導体36を介して回路パターン14に電気的に接続されている。カード基材12の最も外側の面に透明のオーバーコート層をさらに積層してもよい。
【0016】
ディスプレイ20としては、フレキシブルかつ低消費電力のものが望ましい。例えば、ディスプレイ20は、白黒の顔料粒子を収めたマイクロカプセルが並べられて電界により粒子を移動させて白黒表示を行う電気泳動方式の電子ペーパーを用いる。あるいは、薄型の液晶パネルや有機ELパネルを用いてもよい。また、情報処理素子は、ディスプレイに限らず、タッチパネル等の情報入力出力装置、あるいは、個人認証、指紋検出器等の入力検知装置としてもよい。
【0017】
カード基材12の裏面12bに形成された第3凹所28には制御素子24が埋め込まれ、回路パターン14に対して裏面12b側に位置している。制御素子24は、金属柱等の導体34を介して回路パターン14に電気的に接続されている。ディスプレイ20の表示や書換えに必要な電力は、例えば、ICモジュール16の電源から供給される。制御素子30は、ディスプレイ20を駆動および制御し、ディスプレイ20に任意の情報、例えば、時間、駅名、カード番号、カード残高等を表示する。
【0018】
図3は、上述したICカード10の製造工程を示している。ICカード10の製造においては、図3(a)に示すように、まず、回路パターン14および導体32、34、36が埋め込まれたカード基材12を形成する。次いで、図3(b)に示すように、カード基材12の表面12aをザグリ加工することで、第1凹所26および第2凹所28を形成する。この際、導体32、36がそれぞれ第1凹所26の底面および第2凹所28の底面に露出するように、ザグリ加工を施す。また、カード基材12の裏面12bをザグリ加工することで、第3凹所28を形成するとともに、導体34を第3凹所28の底面に露出させる。
【0019】
続いて、図3(c)に示すように、ICモジュール16およびディスプレイ20を第1凹所26および第2凹所28にそれぞれ実装し、導電ペースト等を用いて、導体32、36に電気的に接続する。更に、制御素子24を第3凹所28に実装し、導電ペースト等を用いて導体34に電気的に接続する。その後、必要に応じて、ICカードの表面12aおよび裏面12bに保護層を形成する。
【0020】
以上のように構成されたICカード10によれば、ICモジュール16の実装面をカード基材12の表面12aとし、ICモジュールと情報処理素子を制御する制御素子24をICモジュール16と反対の裏面12bに実装し、更に、ディスプレイ等の情報処理素子をカード基材の表面あるいは裏面に実装することにより、情報処理素子および制御素子をカード基材に実装する際、実装場所および寸法に関して自由度高く設計することができ、ICモジュールや制御素子に依存しない実装を行うことができる。これにより、情報処理素子、制御素子の配置、寸法の設計自由度が向上したICカードを提供が得られる。
【0021】
次に、他の実施形態に係るICカードについて説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
【0022】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る接触式のICカード10を示している。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12の表面12aに実装された接触式のICモジュール16と、カード基材12の表面12aに実装された情報処理素子として、2つのディスプレイ20a、20bと、カード基材12の裏面12b側に実装され、ディスプレイ20a、20bを駆動する制御素子24と、を備えている。ディスプレイ20a、20b、制御素子24、およびICモジュール16は、カード基材12内に埋め込まれた回路パターン14に電気的に接続されている。
ディスプレイの数は、2つに限らず、3つ以上としてもよい。
【0023】
(第3の実施形態)
図5および図6は、第3の実施形態に係る接触式のICカード10を示している。本実施形態によれば、情報処理素子としてのディスプレイ20は、カード基材12の裏面12bに実装され、導体を介して回路パターン14に電気的に接続されている。ICモジュール16はカード基材12の表面12a側に実装され、制御素子24はカード基材12の裏面12b側に実装されている。
【0024】
(第4の実施形態)
図7および図8は、第4の実施形態に係る非接触式のICカード10を示している。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12内で、回路パターン14に対して表面12a側に埋め込まれた非接触式のIC21(カード制御用IC)と、カード基材12の表面12aに実装された情報処理素子としてディスプレイ20と、カード基材12の裏面12b側に実装され、ディスプレイ20を駆動する制御素子24と、を備えている。更に、ICカード10は、カード基材12内に埋め込まれた無線通信用のアンテナ40を備えている。アンテナ40は、絶縁被膜処理された銅線を巻いたものやプラスチック製のフィルム上に銅やアルミニウムをエッチング処理して成形したものが用いられる。アンテナ50は、カード基材12の外周部に沿ってほぼ矩形状に捲回され、その入力端および出力端は、回路パターン14を介してIC21に接続されている。IC21、ディスプレイ20、制御素子24、アンテナ40は、カード基材12内に埋め込まれた回路パターン14にそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】
(第5の実施形態)
図9および図10は、第5の実施形態に係るICカード10を示している。ICカード10は、非接触式、接触式の両方を兼ね備えたコンビカードとして構成されている。ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12の表面12a側に埋め込まれた接触式のICモジュール16と、カード基材12の表面12aに実装された情報処理素子としてディスプレイ20と、カード基材12の裏面12b側に実装され、ディスプレイ20を駆動する制御素子24と、を備えている。更に、ICカード10は、カード基材12内に埋め込まれカード基材の外周部に沿ってほぼ矩形状に巻回された無線通信用のアンテナ40を備えている。アンテナ40の入力端および出力端は、回路パターン14を介してICモジュール16の制御用IC17に電気的に接続されている。ICモジュール16、ディスプレイ20、制御素子24、アンテナ40は、カード基材12内に埋め込まれた回路パターン14にそれぞれ電気的に接続されている。
【0026】
(第6の実施形態)
図11および図12は、第6の実施形態に係るICカード10を示している。ICカード10は、接触通信、無線通信を別々のICで行うハイブリッドカードとして構成されている。すなわち、ICカード10は、矩形板状のカード基材12と、カード基材12の表面12a側に実装された接触式のICモジュール16と、カード基材12内で、回路パターン14に対して表面12a側に埋め込まれた非接触式のIC21と、カード基材12の表面12aに実装された情報処理素子としてディスプレイ20と、カード基材12の裏面12b側に実装され、ディスプレイ20を駆動する制御素子24と、を備えている。更に、ICカード10は、カード基材12内に埋め込まれた無線通信用のアンテナ40を備えている。アンテナ40は、絶縁被膜処理された銅線を巻いたものやプラスチック製のフィルム上に銅やアルミニウムをエッチング処理して成形したものが用いられる。アンテナ50は、カード基材12の外周部に沿ってほぼ矩形状に捲回され、その入力端および出力端は、配線を介してIC21に接続されている。ICモジュール16、ディスプレイ20、制御素子24は、カード基材12内に埋め込まれた回路パターン14にそれぞれ電気的に接続されている。
【0027】
上記のように構成された第2ないし第6の実施形態に係るICカードにおいても、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…ICカード、12…カード基材、14…回路パターン、16…ICモジュール、
18…外部端子、17…カード制御用IC、20、20a、20b…ディスプレイ、
21…制御用IC、24…制御素子、26…第1凹所、28…第2凹所、
30…第3凹所、32、34、36…導体、40…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面およびこれと反対向きの第2表面を有し、回路パターンが埋め込まれたカード基材と、
前記カード基材のいずれか一方の表面に露出してカード基材に実装され、前記回路パターンに電気的に接続された情報処理素子と、
前記カード基材の前記第1表面側に実装され前記回路パターンに電気的に接続されたカード駆動用のICと、
前記カード基材の前記第2表面側に実装され、前記回路パターンに電気的に接続され、前記情報処理素子を駆動する制御素子と、を備えるICカード。
【請求項2】
前記情報処理素子は、前記カード基材の第1表面に実装されている請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記情報処理素子は、前記カード基材の第2表面に実装されている請求項1に記載のICカード。
【請求項4】
前記カード駆動用のICと、前記ICに電気的に接続され前記カード基材の第1表面に露出する外部端子と、を有するICモジュールを備える請求項1ないし3のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項5】
前記カード基材に埋め込まれた無線通信用のアンテナを備え、このアンテナは、前記カード駆動用のICに電気的に接続されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のICカード。
【請求項6】
前記情報処理素子は、前記カード基材の表面に露出する表示面を有するディスプレイである請求項1ないし5のいずれか1項に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−77237(P2013−77237A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217906(P2011−217906)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】