説明

ICコイン処理装置の発行処理方法

【課題】発行不可のICコインを事前に排除でき、ICコインの発行処理動作の高速化に有利なICコイン処理装置の発行処理方法を提案すること。
【解決手段】ICコイン処理装置10は、ICコインの発行要求を受けると、収納されているICコインをデータ読み書き位置Aに搬送し、当該位置Aで所定のデータを書き込み、ICコインを発行する。ICコインの発行要求を受ける前の時点において、当該発行要求によって発行される発行対象のICコインは、収納位置からデータ読み書き位置Aに搬送され(ST51)、コインデータが読み出される。読み出し不能、データ不良の場合には使用不可であるとして警告を発生する(ST52、53、54)。使用可能な場合には、読み出されたコインデータが記憶保持される(ST52、53、55)。この後に、ICコインは再びデータ読み書き位置Aから元の位置に戻される(ST56)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技媒体の貸し出し処理をICコインを用いたプリペイド方式により行う場合等に用いられるICコイン処理装置に関する。更に詳しくは、発行ICコインの不良を事前に検出しておくことにより、ICコインの発行動作を迅速かつ円滑に行うことができるようにしたICコイン処理装置の発行処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICメモリチップが内蔵された非接触型のICコインを用いたプリペイド方式により遊技媒体の貸し出し処理を行うことのできる遊技台用台間機が知られている。かかる遊技台用台間機では、ICコインの発行、返却、回収、およびデータの読み書き処理を行うICコイン処理装置が組み込まれている。遊技者が紙幣などの金銭を投入すると、投入金額に対応する価値データが書き込まれたICコインが発行される。ICコインを使用して遊技媒体の貸し出しを受けると、記憶されている価値データが、貸し出し金額分だけ減算処理された値に更新され、遊技終了時には、残高が残っているICコインが遊技者に返却される。また、残高が零になったICコインは、返却されずにICコイン処理装置に回収されるようになっている。
【0003】
特許文献1、2にはこのようなコイン型記憶媒体(ICコイン)の処理機が開示されている。これらに開示されているコイン型記憶媒体の処理機は、周縁にコイン型記憶媒体を収納可能な凹部が形成されたローターを回転させることにより、コイン型記憶媒体を投入路から受け取り、リーダーライターによってその記憶情報を読み取る動作、コイン型記憶媒体を排出路から返却する動作、または、ストッカに収納する動作を行うように構成されている。また、ローターを逆回転させることにより、ストッカに収納されているコイン型記憶媒体を取り出して、リーダーライターによって金銭情報を書き込み、排出口から発行する動作を行うように構成されている。
【特許文献1】特開2003−135829号公報
【特許文献2】特開2005−34279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなICコイン処置装置においては次のような解決すべき課題がある。遊技者によって紙幣などが投入されると、ICコイン処理装置は、収納部(ストッカ)に収納されているICコインを取り出し、当該ICコインに記憶保持されているコインデータ(コインID、使用頻度、遊技店データなど)を読み出すと共に、投入金額に対応する価値データの書き込みを行う。収納部から取り出されたICコインに不具合があり、データの読み書きが不能な場合には、この時点で発行処理が中断され、警告表示などが行われる。この後は、遊技店の店員などによって回復処理が施され、しかる後に遊技者にICコインが発行される。
【0005】
遊技者は、発行動作が中断されると、店員が来て回復処理が終了するまで待っていなければならない。遊技者は、遊技を直ちに行いたいのにも拘わらず、待っていなければならないので極めて苦痛であり、また、不便を感ずる。
【0006】
一方、ICコイン処理装置が正常に発行動作を行う場合においても、発行時には、ICコインに記憶されているコインデータを全て読み出し、投入金額に対応する価値データを書き込むなどのデータ読み書き処理が必要である。ICコインに対するデータの読み書き処理時間を短縮できれば、コイン型記憶媒体の発行動作が高速化され、より短時間でコイン型記憶媒体を発行できる。処理の高速化は遊技者にとっては極めて望ましいことである。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、使用不可のICコインを事前に排除しておくことの可能なICコイン処理装置の発行処理方法を提案することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、ICコインの発行動作の高速化に有利なICコイン処理装置の発行処理方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、ICコインの発行要求を受けると、収納されているICコインを、当該ICコインに対するデータの読み書きを行うデータ読み書き位置に搬送し、当該データ読み書き位置において所定のデータを書き込み、データ書き込み後に当該ICコインを発行するICコイン処理装置の発行処理方法において、
前記発行要求を受ける前の時点において、当該発行要求によって発行される発行対象のICコインを、収納位置から前記データ読み書き位置に搬送し、
当該データ読み書き位置において、当該発行対象のICコインからのデータ読み出しを行い、
読み出されたコインデータを記憶保持し、
前記発行対象のICコインを、前記データ読み書き位置から前記収納位置に戻すことを特徴としている。
【0010】
本発明では、次に発行されるICコインのコインデータを先読みしている。したがって、当該ICコインの発行時には既に、当該ICコインが使用可能であることが確認されている。したがって、使用不可のICコインによって発行動作が強制中断され、遊技者を待たせてしまうという弊害を防止できる。
【0011】
また、本発明では、前記発行対象のICコインからのデータ読み出しが不能な場合あるいは読み出したデータが不備な場合には、当該発行対象のICコインが使用不可能であると判断して、その旨の警告を発することを特徴としている。
【0012】
この場合、使用不可能であると判断された前記発行対象のICコインを前記収納位置に戻さないようにすることができる。このようにすれば、ICコインの先読み時の警告によって、遊技店の店員などは、事前に使用不可のICコインをICコイン処理装置から除去しておくことができる。
【0013】
なお、使用不可能であると判断された発行対象のICコインを前記収納位置に戻すことも可能である。この場合には、新規にICコインを発行することはできなくなるが、発行済みのICコインが投入された場合には、それを処理することができる。よって、ICコイン処理装置の動作が完全に中断してしまうことを回避できる。
【0014】
次に、本発明では、前記発行対象のICコインの発行時には、前記データ読み書き位置において当該ICコインに記憶されているコインIDのみを読み出し、当該コインIDを記憶保持されている前記コインデータのコインIDと照合し、一致する場合には当該コインデータを前記発行対象のICコインのコインデータとして用いることを特徴としている。
【0015】
ICコインの発行時には、既に、そのコインデータが記憶保持されているので、そのコインIDのみを読み出すだけでよい。したがって、データ読み出しのための処理時間を省略でき、ICコインの発行動作の高速化に有利である。また、発行されるICコインに記憶保持されているコインデータが、実際に発行されるICコインに記憶保持されているデータであるか否かを確認している。遊技店の店員などによって、ICコイン処理装置に収納されているICコインの全て、あるいは一部が入れ替えられた場合などにおいて、誤ったコインデータを用いてしまうことを防止できる。
【0016】
ここで、前記発行要求を受ける前の時点としては次の時点(1)〜(4)を挙げることができる。
【0017】
(1)ICコイン処理装置の起動時
(2)発行対象のICコインの前に発行されるICコインが、発行のために前記データ読み書き位置から前記ICコイン処理装置のICコイン出口に向けて排出した後の時点
(3)前記ICコイン投入口から投入されて前記データ読み書き位置に保持されているICコインを、前記発行対象のICコインとして前記収納位置に向けて搬送を開始する前の時点
(4)前記ICコイン投入口から投入されて前記データ読み書き位置に保持されているICコインを、返却のために当該データ読み書き位置から前記ICコイン出口に向けて排出した後の時点
【0018】
次に、本発明の方法に用いる前記ICコイン処理装置は、
前記ICコイン投入口から投入されたICコインを自重によって案内するICコイン入口通路と、
ICコインを自重によって前記ICコイン出口に案内するICコイン出口通路と、
ICコインを下端開口部から受け入れて1枚ずつ直径方向に積み上げた状態に収納可能なICコイン収納部と、
1枚のICコインを外周側から受け入れ可能なポケットを少なくとも一つ備え、回転に伴って、当該ポケットが前記コイン入口通路の下流端に連通した前記データ読み書き位置、前記ICコイン出口通路の上流端に連通したICコイン排出位置、および前記ICコイン収納部の前記下端開口部に連通したICコイン収納位置を経由して移動するICコイン搬送ローターとを有していることを特徴としている。
【0019】
前記ICコイン搬送ローターとして、前記ポケットとして、外周部に120度間隔で、3つのポケットを備えたものを用いることができる。この場合には、前記ICコイン排出位置は前記データ読み書き位置から60度回転した位置であり、前記ICコイン収納位置は前記データ読み書き位置から同一回転方向に240度回転した位置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のICコイン処理装置の発行処理方法では、次に発行されるICコインに記憶保持されているコインデータを、当該ICコインの発行要求がある前の時点において先読みするようにしている。したがって、発行対象のICコインの使用の可否を事前に知ることができるので、使用不可のICコインによって発行動作が強制中断して、遊技者を待たせてしまうという弊害を防止できる。
【0021】
また、ICコインのコインデータの先読み時に使用不可であると判明した場合には警告を発するようにしているので、このようなICコインを事前に排除することができる。
【0022】
さらに、ICコインの発行時には先読みしたコインデータを利用するので、コインデータの読み出し時間を短縮できるので、発行処理動作の高速化に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したICコインの発行を行うICコイン処理装置が内蔵されている遊技台用台間機の一例を説明する。
【0024】
[全体構成]
図1は遊技台用台間機の分解斜視図であり、図2は遊技台用台間機の側面図である。本例の遊技台用台間機1は、会員遊技者用のICカードと一般遊技者(ビジター)用のICコインを用いたプリペイド方式により遊技媒体の貸し出し処理を行うことができるものである。
【0025】
遊技台用台間機1は、遊技店の遊技島に配列されている遊技台(図示せず)の間の縦長の狭い隙間に、前向きの垂直姿勢で遊技島枠(図示せず)に取り付けられる台間機ホルダ2と、この台間機ホルダ2に対して前方から着脱可能な状態で装着される台間機本体3とから構成されている。
【0026】
台間機本体3は、全体として縦長の扁平な直方体形状のシャーシ4を備えており、このシャーシ4には、その上側から紙幣識別機5、制御ボックス6および電源ボックス7がこの順序に取り付けられている。シャーシ4の前面には前面パネル8が取り付けられており、当該前面パネル8には上側から、多機能ランプ8a、紙幣挿入口8b、ICカードやICコインの残高などを表示するための表示部8c、会員が再プレイする際に暗証番号などを入力するために用いるテンキー8d、ICコインを投入するICコイン投入口8e、ICコインを発行あるいは返却のために排出するICコイン出口8fがこの順序で配置されており、ICコイン出口8fの隣接位置にはICカード挿入口8gが配置されている。
【0027】
制御ボックス6の側面にはICコイン処理装置10が組み込まれている。ICコイン処理装置10は、ICコインの発行(貸し出し)、返却、回収およびデータの読み書きを行うためのものである。ICコイン処理装置10の側面には水平に延びる矩形の凹部10aが形成されており、ここには、ICカードの読み書きを行うカード処理装置100が装着されている。
【0028】
一方、台間機ホルダ2は、縦枠2aと、その上下の端から直角に折れ曲がって前方に延びている上下のガイド板2b、2cとを備えている。縦枠2aには外部通信用の中継基板16が取り付けられている。中継基板16には上下一対のガイドピン17a、17bが前方に突出しており、これらの間には通信用のホルダ側コネクタ18が前向きに取り付けられている。
【0029】
台間機ホルダ2の上下のガイド板2b、2cの間に台間機本体3を位置決めして、これらのガイド板2b、2cに沿って台間機本体3を押し込むと、先細り形状のガイドピン17a、17bの先端部がガイド穴14a、14bに差し込まれ、この後は、台間機本体3の差込動作によって、本体側コネクタ15がホルダ側コネクタ18に自動的に位置決めされる。台間機本体3を台間機ホルダ2に差し込むと、本体側コネクタ15がホルダ側コネクタ18に差し込まれて接続された状態が自動的に形成される。
【0030】
[ICコイン処理装置]
図3はICコイン処理装置10の内部構造を示す説明図である。ICコイン処理装置10は、扁平なユニットケース21を備えており、その前面21aには、遊技台用台間機1の前面パネル8のICコイン投入口8eおよびICコイン出口8fにそれぞれ連通するICコイン投入口22およびICコイン出口23が形成されている。
【0031】
ユニットケース21の内部には、ICコイン投入口22から投入されたICコインを案内するためのICコイン入口通路24が形成されている。ICコイン入口通路24の通路幅および通路高さは1枚のICコインが立った状態で通過可能な寸法であり、ICコイン投入口22から装置後方に向かって僅かに下方に傾斜している部分と、この先から下方に湾曲して垂直に伸びる部分とを備え、ICコインが自重によってその通路底面24aに沿って滑落可能となっている。
【0032】
ICコイン入口通路24の下端開口部24bは下方に向いており、この真下には、ICコイン搬送ローター25が装置幅方向(通路幅方向)に延びる支軸26を中心として回転自在の状態で配置されている。ICコイン搬送ローター25は120度間隔で形成した3つのポケット25(1)〜25(3)を備えている。ポケット25(1)〜25(3)はローター外周端面25aに向けて広がった形状をしたICコインの厚さ分の深さ寸法の凹部あるいは溝であり、ローター外周端面25aに位置しているポケット開口部25bからICコインを受け入れ可能である。
【0033】
ICコイン入口通路24の通路底面24aの側の下方には、支軸26を中心とする円弧状のコインガイド用内周端面27が形成されている。このコインガイド用内周端面27の厚さはICコインCとほぼ同一であり、ポケット25(1)〜25(3)に受け入れられたICコインは、ICコイン搬送ローター25が回転すると、ポケット25(1)〜25(3)に入った状態で当該コインガイド用内周端面27に沿う円弧状軌跡に沿って搬送される。
【0034】
ここで、ICコイン入口通路24の下端開口部24bの真下の位置が、ICコインに対するデータ読み書き位置Aとされている。このデータ読み書き位置Aの近傍に配置されているICコインリーダーライター(図示せず)のアンテナ28によってICコインに対するデータの読み書きが行われる。本例では、ICコイン入口通路24の下端開口部24bの真下において上向き姿勢となるポケット25(1)〜25(3)に保持されたICコインの位置が当該データ読み書き位置Aである。
【0035】
ICコイン出口23にはICコイン出口通路30が連通している。このICコイン出口通路30はICコイン出口23に向けて下方に傾斜した通路であり、ICコインが自重によって滑落してICコイン出口23から排出可能となっている。このICコイン出口通路30とICコイン搬送ローター25の間を仕切っているコインガイド用内周端面27の部分は、出口シャッター31の端面31aによって規定されている。出口シャッター31を開くと、ICコイン出口通路30の上端側開口部30aが開き、ICコイン搬送ローター25の側に連通する。本例では、データ読み書き位置Aに位置しているポケット25(1)〜25(3)が時計回りに60度回転すると、上端側開口部30aに連通可能なICコイン排出位置Bに位置決めされるようになっている。
【0036】
ICコイン出口通路30の上端側開口部30aの下端近傍におけるICコイン搬送ローター25との間には、ポケット25(1)〜25(3)からICコイン出口通路30にICコインを導くためのコイン出口補助通路片32が配置されている。このコイン出口補助通路片32は、出口シャッター31がICコイン出口通路30内に突出して当該通路を遮断すると、ICコイン出口通路30から退避し、出口シャッター31がICコイン出口通路30を開放すると、ICコイン出口通路30内に突出してICコインをICコイン出口通路30の側に案内する。
【0037】
ICコイン出口通路30における上端側開口部30aの近傍位置には出口センサ40が配置されている。出口センサ40によってICコインが通過したことが検出されると、出口シャッター31が閉じ、コイン出口補助通路片32が突出位置から退避する。これら出口シャッター31およびコイン出口補助通路片32は、共通のソレノイドなどの駆動機構(図示せず)によって駆動される。
【0038】
ICコイン搬送ローター25の後側にはICコイン収納通路33が配置されている。ICコイン収納通路33は、ICコイン1枚分を通すことのできる通路から形成されており、ICコインを立てた状態で下端開口部33aから送り込むようになっている。この下端開口部33aの下側の端面33bには、コインガイド用内周端面27の下端側の部分が直線状に延びて滑らかに連続している。本例では、データ読み書き位置Aに位置しているポケット25(1)〜25(3)が時計回りに240度回転すると、下端開口部33aにICコインを押し込み可能なICコイン収納位置Cに位置決めされるようになっている。
【0039】
この下端開口部33aの上側には、ICコイン搬送ローター25のローター外周端面25aに僅かの隙間で対峙しているコインガイド用内周端面34が形成されている。このコインガイド用内周端面34はICコイン入口通路24の下端開口部24bまで延びている。ポケット25(1)〜25(3)に収納されているICコインは、ICコイン搬送ローター25の回転に伴って、当該コインガイド用内周端面34の角部によってポケットから押し出され、ポケットの内側面によってICコイン収納通路33の下端開口部33aから押し込まれるようになっている。
【0040】
次に、ICコイン投入口22に連通しているICコイン入口通路24の部位には入口シャッター35が配置されている。入口シャッター35はICコインが投入されていない状態ではICコイン入口通路24から退避している。入口シャッター35の下流側の部位には入口センサ36が配置されており、ここを通過するICコインを検出する。入口センサ36によって投入されたICコインが検出されると、入口シャッター35が閉じてICコイン投入口22が封鎖され、当該ICコイン投入口22からICコインが投入できないようになる。
【0041】
ICコインのデータ読み書き位置Aには当該位置にICコインが保持されているか否かを検出するためのセンサ37が配置されている。また、ICコイン収納通路33には、その下端開口部33aの近傍位置にICコインエンプティセンサ38が配置され、その上端近傍位置にはICコインフルセンサ39が配置されている。これらの出力に基づき、ICコイン収納通路33が空になったのか、満杯になったのかを知ることができる。
【0042】
なお、ICコイン搬送ローター25を回転駆動するための駆動機構は、例えば、そこに同心状に取り付けたメインギヤ、このメインギヤに噛み合っているウォームホイール、このウォームホイールに噛み合っているウォームおよび当該ウォームが出力軸に固着されている駆動モータを備えた構成とすることができる。また、ICコイン搬送ローター25の回転位置を検出するためのセンサ(図示せず)が配置されており、これらの出力に基づき、ICコイン搬送ローター25の各ポケット25(1)〜25(3)の回転位置が制御される。
【0043】
[ICコイン処理装置の動作説明]
図4はICコイン処理装置10の処理動作を示す状態遷移図であり、図5および図6は、処理動作の概略フローチャートである。
【0044】
まず、図4の状態S1はコイン処理装置10の典型的な待機状態を示してある。この待機状態S1では、ICコイン収納通路33に複数枚のICコインC1〜C5が収納されており、ICコイン搬送ローター25は待機状態にある。待機状態では、一つの空のポケットがデータ読み書き位置Aに位置している。図示の例では、空のポケット25(1)がデータ読み書き位置Aに位置してICコインを受け入れ可能である。また、ICコイン収納位置Cに位置しているポケット25(3)とICコイン収納通路33の下端開口部33aの間にはICコインC6が収納されており、データ読み書き位置Aから時計回りに120度回転した位置にあるポケット25(2)にはICコインC7が収納されている。
【0045】
(起動時のICコインの先読み動作)
ICコイン処理装置10の起動時には、図5(a)のフローチャートに示すように、最初に発行されるICコインC7のコインデータの先読み動作が行われる。まず、図4の待機状態S1から、ICコイン搬送ローター25を、反時計回りに120度回転させて、ポケット25(2)をデータ読み書き位置Aに位置決めする(図5(a)のステップST51)。この結果、図4の状態S2に移行する。この後は、ポケット25(2)に収納されているICコインC7のコインデータを読み出す(図5(a)のステップST52)。
【0046】
コインデータの読み出しが不可能な場合、あるいは、読み出したコインデータに不備がある場合は、ICコインC7は発行不可であると判断する。発行不可の場合には、その旨の警告を出力し、たとえば、多機能ランプ8aを点灯駆動する(図5(a)のステップST53→ST54)。コインデータが正常に読み出された場合には、コインデータを記憶保持しておく(図5(a)のステップST55)。
【0047】
この後は、ICコイン搬送ローター25を時計回りに120度回転して、当該ICコインC7が収納されているポケット25(2)をICコイン排出位置Bに戻す(図5(a)のステップST56、図4の待機状態S1)。
【0048】
ICコインC7が発行不可と判断されて警告が出力されている場合には、店員などが当該ICコインC7を取り除き、不図示のリセットボタンなどを操作することにより、警告が止む。
【0049】
なお、警告が出力されている状態においても、遊技者がICコイン投入口22から投入する発行済みのICコインを処理することは可能である。したがって、遊技台用台間機1の動作を完全に中止する必要がない。
【0050】
勿論、図5(b)のフローチャートに示すように、警告が出力された後に、発行不可と判断されたICコインC7をデータ読み書き位置Aにそのまま保持し、当該ICコインC7が取り出されるまで動作を中断して待機するようにしてもよい(ステップST57)。
【0051】
(ICコインの発行動作)
この後において、紙幣が投入され、紙幣識別機によって入金額が検出されると、図6のフローチャートに示すICコインの発行動作が行われる。
【0052】
発行動作においては、まず、図4の待機状態S1から、ICコイン搬送ローター25を120度だけ反時計回りに回転させて、ポケット25(2)をデータ読み書き位置Aに位置決めし、図4の状態S2とする(図6のステップST61)。この状態S2において、ポケット25(2)に入っているICコインC7に記憶保持されているコインIDのみを、アンテナ28を用いて読み出す(図6のステップST62)。読み出したコインIDを、記憶保持されているコインデータに含まれているコインIDと照合し、記憶保持されているコインデータ、すなわち、先読みしておいたコインデータが当該ICコインC7のコインデータであることを確認する(図6のステップST63)。確認がとれた場合には、先読みしておいたコインデータをそのまま用いて入金処理を行う。すなわち、入金額の書き込み、使用回数の更新などを行い、更新後のコインデータをICコインC7に書き込む(図6のステップST64)。
【0053】
次に、ICコイン搬送ローター25を時計回りに60度回転して、ポケット25(2)をICコイン排出位置Bに位置決めする。この時点では、出口シャッター31が開き、コイン出口補助通路片32がICコイン出口通路30に突出した状態とされる。この結果、ポケット25(2)からICコインC7が自重により転がり出て、コイン出口補助通路片32に案内されて、ICコイン出口通路30を通って、ICコイン出口23から発行される(図6のステップST65、図4の状態S3)。
【0054】
コインIDが一致しなかった場合には、アンテナ28を用いてICコインC7のコインデータを読み出し(ステップS66)、入金額に対応する価値データを書き込む。しかる後にICコインC7を発行する(ステップS65)。
【0055】
(ICコイン発行後のICコインの先読み動作)
ICコインC7が発行された後は、再び図5(a)に示す手順により、次に発行されるICコインC6のコインデータの先読み動作が行われる。ICコインC7が発行された後に、ICコイン搬送ローター25を180度反時計方向に回転させて、次の発行予定のICコインC6が収納されているポケット25(3)をデータ読み書き位置Aに位置決めする(図5(a)のステップST51、図4の状態S4)。次に、ポケット25(3)に収納されているICコインC6のコインデータを読み出す(図5(a)のステップST52)。
【0056】
コインデータの読み出しが不可能な場合、あるいは、読み出したコインデータに不備がある場合は、ICコインC6は発行不可であると判断する(図5(a)のステップST53)。発行不可の場合には、その旨の警告を出力し、たとえば、多機能ランプ8aを点灯駆動する(図5(a)のステップST54)。これに対して、コインデータが正常に読み出された場合には、コインデータを記憶保持しておく(図5(a)のステップST55)。
【0057】
次に、ICコイン搬送ローター25を時計回りに120度回転して、空のポケット25(2)をデータ読み書き位置Aに待機させる(図5(a)のステップST56、図4の待機状態S5)。
【0058】
ここで、ICコインC6が発行不可と判断されて警告が出力されている場合には、店員などが当該ICコインC6を取り除き、不図示のリセットボタンなどを操作することにより、警告が止む。なお、警告が出力されている状態においても、遊技者がICコイン投入口22から投入する発行済みのICコインを処理することは可能である。したがって、遊技台用台間機1の動作を完全に中止する必要がない。
【0059】
勿論、図5(b)のフローチャートに示すように、警告が出力された後に、発行不可と判断されたICコインC6をデータ読み書き位置Aにそのまま保持し、当該ICコインC6が取り出されるまで動作を中断して待機するようにしてもよい(ステップST57)。
【0060】
(遊技媒体の貸し出し時の処理動作)
待機状態S5において、ICコイン投入口22から既に発行されているICコインCaが投入されると、投入されたICコインCaはICコイン入口通路24を自重によって滑落して、ICコイン搬送ローター25のポケット25(2)に受け入れられる(図4の状態S6)。ICコインCaの投入が入口センサ36によって検出されると、入口シャッター35が閉じる。ポケット25(2)に入ったICコインCaはアンテナ28によってコインデータが読み出される。プリペイド残高がある場合には遊技媒体の貸し出しが可能であり、貸し出し指令を受けると遊技台用台間機1によって遊技媒体の貸し出し処理が行われる。遊技媒体の貸し出し処理を行った後はプリペイド残高から貸し出し料を減算し、減算後の残高をICコインCaに書き込む。
【0061】
遊技終了後などにICコインCaの返却指令が入力されると、プリペイド残高を確認し、残高が零の場合には、図4の状態S7に示すように、ICコインCaを返却することなく、内部に回収する。すなわち、ICコイン搬送ローター25を時計回りに120度回転させ、空のポケット25(1)をデータ読み書き位置Aに位置決めし、そこに待機させる。
【0062】
(ICコイン回収時のコインデータの先読み)
ここで、上記のICコインCaの収納動作に先立って、当該ICコインCaのコインデータの先読み動作が行われる。すなわち、ICコインCaからコインデータの読み出しが行われ、コインデータが記憶保持される。しかる後に、ICコイン搬送ローター25を時計回りに120度回転させる。
【0063】
(ICコイン返却後のICコインの先読み)
これに対して、ICコインCaの残高が零でない場合には、返却指令が入力されると、図4の状態S8に示すように、ICコインCaをICコイン出口23から返却する返却動作が行われる。この返却動作では、出口シャッター31が開き、コイン出口補助通路片32がICコイン出口通路30に突出した状態とされ、ICコイン搬送ローター25が時計回りに60度回転して、ポケット25(2)がICコイン出口通路30に連通したICコイン排出位置Bに位置決めされる。この結果、ポケット25(2)からICコインCaが自重により転がり出て、コイン出口補助通路片32に案内されて、ICコイン出口通路30を通って、ICコイン出口23から返却される。
【0064】
ここで、ICコインCaの返却動作の後において、次に発行されるICコインC6のコインデータの先読み動作を行うこともできる。ICコインC6のコインデータは、すでに先読みされて記憶保持されているので、基本的にはICコインCaの返却時には次に発行されるICコインC6の先読みは不要である。先読み動作を行う場合には、ICコイン発行後の先読み動作と同様な動作を行えばよい(図5(a)、(b)のフローチャート参照)。
【0065】
以上説明したように、本例のICコイン処理装置10では、次に発行されるICコインのコインデータの先読みを(1)〜(4)の場合のうち、少なくとも(1)〜(3)の場合に行うようにしている。
【0066】
(1)ICコイン処理装置の起動時
(2)発行対象のICコインの前に発行されるICコインが、発行のためにデータ読み書き位置AからICコイン排出位置Bに到りICコイン出口通路30に向けて排出された後の時点
(3)ICコイン投入口22から投入されてデータ読み書き位置Aに保持されているICコインが、残高が零となり、次に発行されるICコインとして、データ読み書き位置Aから120度回転したICコイン収納位置Cに搬送される前の時点
(4)ICコイン投入口22から投入されてデータ読み書き位置Aに保持されているICコインが、返却のために当該位置AからICコイン排出位置Bに到り、ICコイン出口通路30に向けて排出された後の時点
【0067】
本例のICコイン処理装置10によれば、次に発行されるICコインに記憶保持されているコインデータが、当該ICコインの発行要求がある前の時点において先読みされ、記憶保持される。よって、発行対象のICコインの使用の可否を事前に知ることができるので、使用不可のICコインが原因となって、ICコインの発行動作が強制中断され、遊技者を待たせてしまうという弊害を防止できる。
【0068】
また、ICコインのコインデータの先読み時に発行不可であると判明した場合には警告を発するようにしているので、このようなICコインを事前にICコイン処理装置10から排除することができる。
【0069】
さらに、ICコインの発行時には先読みしたコインデータを利用するので、コインデータの読み出し時間を短縮でき、発行処理動作の高速化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明を適用した遊技台用台間機の分解斜視図である。
【図2】図1の遊技台用台間機の側面図である。
【図3】図1の遊技台用台間機に組み込まれているICコイン処理装置の内部構造を示す説明図である。
【図4】図3のICコイン処理装置の状態遷移図である。
【図5】(a)は図3のICコイン処理装置におけるコインデータの先読み動作を示すフローチャートであり、(b)は別の動作例を示す部分フローチャートである。
【図6】図3のICコイン処理装置のICコイン発行動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 遊技台用台間機
2 台間機ホルダ
3 台間機本体
4 シャーシ
5 紙幣識別機
6 制御ボックス
7 電源ボックス
8 前面パネル
8a 多機能ランプ
8b 紙幣挿入口
8c 表示部
8d テンキー
8e ICコイン投入口
8f ICコイン出口
8g ICカード挿入口
10 ICコイン処理装置
14a、14b ガイド穴
15 本体側コネクタ
16 中継基板
17a、17b ガイドピン
18 ホルダ側コネクタ
21 ユニットケース
21a 前面
22 ICコイン投入口
23 ICコイン出口
24 ICコイン入口通路
24a 通路底面
24b 下端開口部
25 ICコイン搬送ローター
25(1)〜25(3) ポケット
25a ローター外周端面
25b ポケット開口部
25c 部分
26 支軸
27 コインガイド用内周端面
28 アンテナ
30 ICコイン出口通路
30a 上端側開口部
31 出口シャッター
31a 端面
32 コイン出口補助通路片
33 ICコイン収納通路
33a 下端開口部
33b 端面
34 コインガイド用内周端面
35 入口シャッター
36 入口センサ
37 センサ
38 ICコインエンプティセンサ
39 ICコインフルセンサ
40 出口センサ
C1〜C7 ICコイン
A データ読み書き位置
B ICコイン排出位置
C ICコイン収納位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICコインの発行要求を受けると、収納されているICコインを、当該ICコインに対するデータの読み書きを行うデータ読み書き位置に搬送し、当該データ読み書き位置において所定のデータを書き込み、データ書き込み後に当該ICコインを発行するICコイン処理装置の発行処理方法において、
前記発行要求を受ける前の時点において、当該発行要求によって発行される発行対象のICコインを、収納位置から前記データ読み書き位置に搬送し、
当該データ読み書き位置において、当該発行対象のICコインからのデータ読み出しを行い、
読み出されたコインデータを記憶保持し、
しかる後に、前記発行対象のICコインを、前記データ読み書き位置から前記収納位置に戻すことを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記発行対象のICコインからのデータ読み出しが不能な場合、あるいは、読み出したデータに不備がある場合には、当該発行対象のICコインが使用不可能であると判断し、その旨の警告を発することを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項3】
請求項2において、
使用不可能であると判断された前記発行対象のICコインを前記収納位置には戻さないことを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記発行対象のICコインの発行時には、前記データ読み書き位置において当該ICコインに記憶されているコインIDのみを読み出し、
当該コインIDを記憶保持されている前記コインデータのコインIDと照合し、一致する場合には当該コインデータを前記発行対象のICコインのコインデータとして用いることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記発行要求を受ける前の時点は、前記ICコイン処理装置の起動時であることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記発行要求を受ける前の時点は、前記発行対象のICコインの前に発行されるICコインが、発行のために前記データ読み書き位置から前記ICコイン処理装置のICコイン出口に向けて排出された後の時点であることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記発行要求を受ける前の時点は、ICコイン投入口から投入されて前記データ読み書き位置に保持されているICコインを、前記発行対象のICコインとして前記収納位置に向けて搬送を開始する前の時点であることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記発行要求を受ける前の時点は、前記ICコイン投入口から投入されて前記データ読み書き位置に保持されているICコインを、返却のために当該データ読み書き位置から前記ICコイン出口に向けて排出した後の時点であることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記ICコイン処理装置は、
前記ICコイン投入口から投入されたICコインを自重によって案内するICコイン入口通路と、
ICコインを自重によって前記ICコイン出口に案内するICコイン出口通路と、
ICコインを下端開口部から受け入れて1枚ずつ直径方向に積み上げた状態に収納可能なICコイン収納部と、
1枚のICコインを外周側から受け入れ可能なポケットを少なくとも一つ備え、回転に伴って、当該ポケットが前記ICコイン入口通路の下流端に連通した前記データ読み書き位置、前記ICコイン出口通路の上流端に連通したICコイン排出位置、および前記ICコイン収納部の前記下端開口部に連通したICコイン収納位置を経由して移動するICコイン搬送ローターとを有していることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記ICコイン搬送ローターは、前記ポケットとして、外周部に120度間隔で形成された3つのポケットを備えており、
前記ICコイン排出位置は前記データ読み書き位置からから60度回転した位置であり、前記ICコイン収納位置は前記データ読み書き位置から同一方向に240度回転した位置であることを特徴とするICコイン処理装置の発行処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−83930(P2008−83930A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262383(P2006−262383)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】