説明

ICタグ付製品の収納箱およびICタグ確認システム

【課題】電波の誤信受信を回避することができ、更に、電波非透過性材料で作成された収納箱においても、箱を開放せずに、収納物に付されたICタグを読取ることができる収納箱及びその読み取りシステムを提供する。
【解決手段】前記収納箱1は、その箱の全部または一部が電波を遮断または強度を減衰させる材料からなり、箱の内部空間と外界とが前記材料によって電磁的に遮断されており、箱の内側にICタグ用の電波発信機12と受信アンテナ13を少なくとも1対内蔵し、ICタグ8から発信され、受信アンテナが受信した信号を箱の外部に取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを付した製品を収納するための収納箱、及び前記収納箱を含むICタグ情報の確認システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグ(RFIDタグ)の原理は、外部よりある周波数の電波が発信され、その電波をICタグが受信することにより、ICタグ自身の情報を発信し、受信機がその電波を受けるというものである。現在、物流の分野において、ICタグは製品の数量、属性を明確化し、製品の流通物流に関するトレーサビリティを簡易に取得できることから、さらなる普及が期待される。
具体的には、ダンボールの箱の内容物(製品)の個々に、その製品の情報を入力したICタグをつけることにより、ダンボールの外部より、電波を発信することにより、内部のICタグを発信させ、その信号を段ボール外部のアンテナにより受信し、ダンボール内の製品の情報数量を即座に読み取ることができる。通常は電波を発信する発信機とICタグの発信データを受信する受信アンテナからなるゲートに、ICタグのついた製品を内容物とする段ボール箱を通過させることにより、製品の数量、情報を得ることができる。
このような物流システムのメリットとして、ダンボール等の電波透過性のある箱を開放せずに内容物の数量、情報を即座に得ることができることから、現在物流部門において、急速に拡大して来ている。
【0003】
特に臨床検査の分野では、病院等において採取された検査に用いる検体をその場で検査するのではなく、別の検査場所(同病院内の検査所や、離れた土地にある集合検査所)に輸送して行う場合があり、同様なシステムが導入されつつある。例えば、医師の検査依頼書に従って、検査用の検体(健常人や患者から採取された組織、血液、尿など)は、病院等において採取される。複数の患者から、複数の検体が採取され、更に、同一の検体であっても、検査項目に併せて採取方法が変わるため、複数の検査用の検体が得られる。これらの検体は、個々に識別可能なように管理されている(例えば、その検体の属性や内容がインプットされたバーコード)。しかし、採取もれ、あるいは、収集もれが発生する場合があり、検査依頼書の通りに検体が採取・収集されているかを確認する必要がある。バーコード等の識別があったとしても、多くの検体が集められる営業所等の中間拠点での確認作業は、収納されている箱を開梱し、収納ラックから検体を取り出し、確認作業を実施するため、検体の紛失が発生したり、依頼書との照合作業等、非常に煩雑で難しい状況であった。そこで、ICタグの利用は、簡単且つ正確にこれらの確認作業が行えるため有用であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3733386号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
数多くのICタグ付きの製品の情報を引き出すためには、読み取ろうとするICタグ付製品の近くに電波の発信機があり、目的とするICタグ付き製品に電波を照射、発信させ、その信号を近くのリーダーで受信する。そのため、発信機、リーダーのゲートをICタグ付の製品が通る場合、容易にICタグの電波をそのリーダーが受信できるという利点がある一方、測定したいICタグ以外のICタグや、別の類似の電波を受信しないように電波の強度を調整する必要がある。適正に調整されない場合は、読取りを意図していないICタグ付きの製品を読取ってしまう等で、誤った結果を得てしまう恐れがある。
一方、ICタグのついたものを認識するためには、発信した電波を遮断するような遮蔽物があってはならない。つまり、製品が電波透過性のない材料でできた箱の中に収納されている場合、製品にICタグを付与しても、発信された電波が遮断されるために、ICタグによる物流システムは使用することができない。このような箱には、例えば、ジュラルミンケース等金属製の箱、アルミ箔、アルミ蒸着素材等を使用したものがある。特に検体を搬送する検体搬送用の箱の場合、発砲スチロールの表面をアルミシートやアルミ含有樹脂で箱の全体または一部を覆ったり、箱外装の素材表面に金属含有塗料を塗布したりして、保冷性を高めた箱がある。
【0006】
本発明の課題は、ダンボール等の電波透過性材料でできた収納箱で生じる恐れのある電波の誤信受信を回避することができ、更に、電波非透過性材料で作成された収納箱においても、箱を開放せずに、収納物に付されたICタグを読取ることができる収納箱及びその読み取りシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明に関する。
[1]ICタグを付した製品を収納するための箱であって、その箱の全部または一部が電波を遮断または強度を減衰させる材料からなり、箱の内部空間と外界とが前記材料によって電磁的に遮断されており、箱の内側にICタグ用の電波発信機と受信アンテナを少なくとも1対内蔵し、ICタグから発信され、受信アンテナが受信した信号を箱の外部に取り出すことができる、前記収納箱。
[2]受信アンテナが受信した信号を箱の外部に取り出す手段として、発信機および受信アンテナの各リード線が箱の外に導かれている、[1]の収納箱。
[3]ICタグを付す製品が検体収容容器である、[1]又は[2]の収納箱。
[4]ICタグ用の電波発信機から延びるリード線に電波発信を誘導する電流を通電させるための端子;
ICタグ用の受信アンテナから延びるリード線から得られる信号を受信するための端子;および
受信電気信号を演算するユニット
を含む、物流搬送用ライン。
[5][1]〜[3]のいずれの収納箱と、[4]の物流搬送用ラインとを含む、確認システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、収納箱が電波非透過性材料で囲まれているため、ダンボール等の電波透過性材料でできた収納箱で生じる恐れのある電波の誤信受信、例えば、測定したいICタグ以外のICタグからの受信、あるいは、別の類似の電波の受信を回避することができる。また、電波非透過性材料を使用していながら、箱を開放せずに、収納物に付されたICタグを読取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の収納箱の一態様を模式的に示す斜視図である。なお、図面中の点線で示す部分は、外側からは実際に見えない部分である。
【図2】図1に示す本発明の収納箱の一態様の模式的断面図である。
【図3】本発明の物流搬送用ラインの一態様と、図1に示す本発明の収納箱の一態様とからなる、本発明のICタグ確認システムの一態様の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図3に示す本発明の収納箱の一態様(以下、収納箱1)、並びに、図3に示す本発明の物流搬送用ラインの一態様(以下、物流搬送用ライン2)及び確認システムの一態様(以下、確認システム3)に基づいて、本発明を説明する。
【0011】
本発明の確認システムは、本発明の収納箱と本発明の物流搬送用ラインとを含む。
図1〜図3に示す本発明の収納箱の一態様(収納箱1)は、箱の全体が、電波を遮断する金属材料からなり、上蓋11aを開放することによって、ICタグ8を付した製品9をその内部に収納、あるいは、内部から取り出すことができる。収納箱1の内部には、相対する側壁11b,11cの内側表面に、一対の電波発信機12および受信アンテナ13が設けられている。電波発信機からは電波発信用導線14が延びており、その導線の一端は、箱の底面11dの外側に設けられた通電端子16に連結されている。受信アンテナからは受信信号リード線15が延びており、その一端は、箱の底面の外側に設けられた受信信号端子17に連結されている。
【0012】
一方、図3に示す本発明の物流搬送用ラインの一態様(物流搬送用ライン2)では、搬送ラインの途中に、収納箱1の通電端子16および受信信号端子17と、それぞれ、電気的に通電可能な読取りユニット側通電端子21および読み取りユニット側受信信号端子22が設けられている。これらの読み取りユニット側端子21,22は、受信電気信号を演算する発信受信演算ユニット23に連結されている。
【0013】
図3に示す本発明の確認システムの一態様(確認システム3)では、収納箱1が物流搬送用ライン2上を搬送され、所定の位置、すなわち、収納箱1の通電端子16および受信信号端子17と、読取りユニット側通電端子21および読み取りユニット側受信信号端子22とが電気的に通電可能な位置に到達すると、発信受信演算ユニット23からの指令により、通電端子16から電波発信を誘導する電流が通電させ、電波発信機12から所定の周波数の電波が発信される。その電波をICタグ8が受信すると、ICタグに記録された情報が電波としてICタグ8から発信される。ICタグ8から発信された電波は受信アンテナ13で受信され、その信号は受信信号端子17に送られるため、収納箱1の外部に取り出すことができる。
【0014】
収納箱1は、箱の全体が電波を遮断する金属材料からなるため、箱の外側に、測定したいICタグ以外のICタグが存在しても、あるいは、ICタグに類似した電波が存在しても、これらの影響を回避することができる。また、収納箱1が金属材料からなるにもかかわらず、箱を開放することなく、製品に付されたICタグの情報を読み取ることができる。
【0015】
本発明の収納箱は、電波を遮断または強度を減衰させる材料(以下、電波非透過性材料と称することがある)からなり、前記電波非透過性材料によって箱の内部空間と外界とを電磁的に遮断することができる限り、図1〜図3に示すように、箱の全部が電波非透過性材料からなることもできるし、あるいは、箱の一部のみが電波非透過性材料からなることもできる。後者の例としては、任意の素材からなる箱の外側表面及び/又は内側表面に、金属箔(例えば、アルミ箔)を貼付、あるいは、金属含有塗料を蒸着(例えば、アルミ蒸着)した箱を挙げることができる。
【0016】
本発明で用いることのできる電波非透過性材料としては、例えば、アルミニューム、鉄、ジュラルミン、金属を表面に蒸着したプラスチック等の金属およびその加工品を挙げることができる。
具体的には、ジュラルミンケース等金属製の箱、アルミ箔、アルミ蒸着素材等を使用した箱が挙げられる。特に検体を搬送する検体搬送用の箱の場合、発砲スチロール表面をアルミシートやアルミ含有樹脂等で箱を覆ったり、箱外装の素材表面に金属含有塗料を塗布したりして、保冷性を高めた箱等が挙げられる。
【0017】
本発明の収納箱の内部に設ける電波発信機および受信アンテナの数は、それぞれ少なくとも1つずつ設けることができれば、その上限は限定されるものではない。1対の発信機及びアンテナの組合せにより、複数のICタグの情報を一度に処理することができるため、通常は、1対の発信機及びアンテナを内蔵させることで充分であるが、より正確性をきすため、前面及び後面、左右、上下等に発信、受信アンテナを複数配置させ、時間差によりICタグを異なる方向から読取ることにより、より読取り精度を高めることができる。なお、電波発信機と受信アンテナの数は、ICタグの情報を処理することができれば、同数であっても、異なっていても構わない。
【0018】
箱の内部での電波発信機および受信アンテナの配置位置は、製品に付されたICタグの情報を漏れなく正確に処理することができれば特に限定されるものではないが、多数の製品を収納することができ、且つ、箱の内部空間を充分に利用することができる点で、図1〜図3に示すように、内壁(特には、対向する内壁)の表面に設けることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、各種製品の物流の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1・・・収納箱;
11a・・・上蓋;11b,11c・・・側壁;11d・・・底面;
12・・・電波発信機;13・・・受信アンテナ;
14・・・電波発信用導線;15・・・受信信号リード線;
16・・・通電端子;17・・・受信信号端子;
2・・・物流搬送用ライン;
21・・・読取りユニット側通電端子;22・・・読み取りユニット側受信信号端子;
23・・・発信受信演算ユニット;
8・・・ICタグ;9・・・製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを付した製品を収納するための箱であって、その箱の全部または一部が電波を遮断または強度を減衰させる材料からなり、箱の内部空間と外界とが前記材料によって電磁的に遮断されており、箱の内側にICタグ用の電波発信機と受信アンテナを少なくとも1対内蔵し、ICタグから発信され、受信アンテナが受信した信号を箱の外部に取り出すことができる、前記収納箱。
【請求項2】
受信アンテナが受信した信号を箱の外部に取り出す手段として、発信機および受信アンテナの各リード線が箱の外に導かれている、請求項1に記載の収納箱。
【請求項3】
ICタグを付す製品が検体収容容器である、請求項1又は2に記載の収納箱。
【請求項4】
ICタグ用の電波発信機から延びるリード線に電波発信を誘導する電流を通電させるための端子;
ICタグ用の受信アンテナから延びるリード線から得られる信号を受信するための端子;および
受信電気信号を演算するユニット
を含む、物流搬送用ライン。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の収納箱と、請求項4に記載の物流搬送用ラインとを含む、確認システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−216925(P2012−216925A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79504(P2011−79504)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591122956)三菱化学メディエンス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】