説明

ICタグ及び鋼材管理システム

【課題】鋼材の各種処理工程を阻害することがなく、鋼材情報の消失を抑制することができる、ICタグ及び鋼材管理システムを提供する。
【解決手段】ICチップを内蔵したICタグ本体11と、ICタグ本体11を被覆する樹脂材により構成された保護カバー12と、保護カバー12内に配置された磁石13と、を有し、保護カバー12は、ICタグ本体11を格納する側面外周部が円形状に形成された突出部12aと、突出部12aから延設され鋼材に貼付されるフランジ部12bと、を有している。また、ICタグ1とICタグリーダー2とを有する鋼材管理システムにおいて、ICタグ1は、鋼材Pの搬送方向の前端面Pfに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグ及び鋼材管理システムに関し、特に、鋼材の搬入から塗装までの工程の管理に適したICタグ及び該ICタグを用いた鋼材管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の鋼材を使用するメーカー等は、無駄を減らすために、鋼材の長さ及び幅を10mm間隔、板厚を0.5mm間隔で発注することが多い。そのため、異なる大きさの鋼材でも外見上識別することが困難である。また、鋼材には、強度の異なる高張力鋼や軟鋼等の種類があり、これらの鋼材を外見から識別することも困難である。そこで、鋼種、規格、製品番号、サイズ等の鋼材情報を、鋼材の表面に印刷したり刻印したりラベルを貼付したりすることによって、鋼材を識別することが一般に行われている。
【0003】
しかしながら、鋼材は、積み重ねて保管されることが多く、鋼材の表面に鋼材情報を印刷等した場合には、直ちに鋼材情報を読み取ることができず、鋼材をずらしたり移動したりしなければ鋼材情報を読み取ることができない。そこで、鋼材の端面や側面に鋼材情報を印刷等する種々の識別方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1には、鋼板の端面に直接にバーコードを印字する識別方法が記載されている。特許文献2には、鋼材の端面に板厚方向に所定深さで鋼材情報を表すマーキングが施された金属板を貼付する識別方法が記載されている。特許文献3には、平面寸法が0.5mm以下の半導体チップを有するICタグを鋼材の側面に配置する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−15784号公報
【特許文献2】特開2001−334307号公報
【特許文献3】特開2003−296679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、鋼材は、製品に使用するまでの間、野外に放置されることも多く、上述した特許文献1に記載されたように、鋼材に鋼材情報を直接印刷した場合には、鋼材情報が錆びて見えなくなってしまうことがある。また、鋼材ヤードに搬入された鋼材は、水洗、乾燥、ショットブラスト、塗装等の処理が施されることから、その過程において、印刷、刻印、(紙製)ラベル貼付した鋼材情報が消失してしまうことがある。鋼材情報が消えてしまった場合には、再度、印刷、刻印、ラベル貼付等の作業をやり直さなければならない。
【0007】
また、造船等の分野で使用される鋼板は、搬送ラインの両脇に配置されたガイドローラによって案内されることが多く、特許文献2や特許文献3に記載されたように、鋼板の側面に金属製ラベルやICタグを配置した場合には、ガイドローラの邪魔になったり、ICタグが破損して鋼材情報を消失したりする可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されたような金属製ラベルを、板厚が数mm〜50mm程度の鋼板に使用する場合には、金属板に表示できる情報量に限界があり、文字等を小さくすれば視認性が低下してしまうこととなる。また、特許文献3に記載されたように、半導体チップを小型化したとしても、ICタグ全体の構成によっては、水洗、乾燥、ショットブラスト、塗装等の処理に耐えることができず、脱落して消失したり、破損したりしてしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、鋼材の各種処理工程を阻害することがなく、鋼材情報の消失を抑制することができる、ICタグ及び鋼材管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、鋼材情報を記憶したICチップを有するICタグにおいて、前記ICチップを内蔵したICタグ本体と、該ICタグ本体を被覆する樹脂材により構成された保護カバーと、該保護カバー内に配置された磁石と、を有し、前記保護カバーは、前記ICタグ本体を格納する側面外周部が円形状に形成された突出部と、該突出部から延設され鋼材に貼付されるフランジ部と、を有することを特徴とするICタグが提供される。なお、「側面外周部が円形状」であるとは、突出部が円柱形状又は球形状の一部であることを意味しており、例えば、突出部の鉛直方向断面が円形状であることを意味している。
【0011】
また、本発明によれば、鋼材情報を記憶したICチップを有するICタグと、該ICタグから前記鋼材情報を読み取るICタグリーダーと、を有する鋼材管理システムにおいて、前記ICタグは、前記ICチップを内蔵したICタグ本体と、該ICタグ本体を被覆する樹脂材により構成された保護カバーと、該保護カバー内に配置された磁石と、を有し、前記保護カバーは、前記ICタグ本体を格納する側面外周部が円形状に形成された突出部と、該突出部から延設され鋼材に貼付されるフランジ部と、を有するICタグにより構成されるとともに、鋼材の搬送方向の前端面に配置され、前記ICタグリーダーは、前記鋼材の搬送に伴って前記鋼材の前端面に沿って移動可能に構成されている、ことを特徴とする鋼材管理システムが提供される。
【0012】
上述したICタグ及び鋼材管理システムにおいて、前記磁石は、前記突出部に内蔵されてもよいし、前記フランジ部に内蔵されてもよい。また、前記保護カバーは、前記フランジ部に形成された引き剥がし用のタブを有していてもよい。また、前記保護カバーは、前記鋼材の種類に応じて異なる着色が施されていてもよい。また、前記保護カバーは、前記ICタグ本体を格納する第一突出部と、該第一突出部の両側に配置され前記磁石を格納する第二突出部と、有し、前記フランジ部は、前記第一突出部及び前記第二突出部を連結するように形成されていてもよい。さらに、前記磁石を貼付面に対して外側から覆う磁束調整部材を有していてもよい。
【0013】
上述した鋼材管理システムにおいて、前記ICタグリーダーは、前記鋼材の前端面に対峙する平板状のリーダー本体部と、該リーダー本体部の両側に配置され前記鋼材の前端面上を転動するガイドローラと、を備えた移動体と、該移動体を前記鋼材の前端面に沿って移動可能に支持する平行リンク機構と、該平行リンク機構に接続され前記鋼材が通過した後に前記移動体を元の位置に復帰させる付勢部材と、を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明に係るICタグ及び鋼材管理システムによれば、ICタグ本体を格納する突出部の側面外周部を円形状に形成したことにより、ショットブラストの投射材(例えば、鉄球)がICタグ(保護カバー)に対して垂直に入射する面積を低減することができ、ショットブラスト時に生じる衝撃を緩和することができ、ICタグの脱落や破損を抑制することができ、鋼材情報の消失を抑制することができる。また、ICタグの貼付に磁石を使用し、保護カバーに樹脂材を使用したことにより、鋼材の水洗、乾燥、塗装等の処理に強く、鋼材情報の消失を抑制することができる。したがって、鋼材の各種処理工程を阻害することがなく、鋼材情報の消失を抑制することができる。その結果、鋼材情報の再印刷等のやり直し工程を省略することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、上述した本発明に係る鋼材管理システムによれば、ICタグを鋼材の搬送方向の前端面に配置することにより、ICタグが鋼材を案内するガイドローラを邪魔することがなく、ICタグの破損を抑制することもできる。したがって、鋼材の搬送工程を阻害することがなく、鋼材情報の消失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るICタグを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は作用を示す説明図、を示している。
【図2】図1に示したICタグの変形例を示す図であり、(a)は第一変形例、(b)は第二変形例、(c)は第三変形例、を示している。
【図3】本発明の第二実施形態に係るICタグを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は変形例の断面図、を示している。
【図4】本発明の実施形態に係る鋼材管理システムを示す図であり、(a)はICタグの貼付状態、(b)はICタグとICタグリーダーとの位置関係、(c)はICタグリーダーの正面図、(d)はICタグリーダーの移動機構、を示している。
【図5】図4に示したICタグリーダーの読み取り動作を示す説明図であり、(a)は読取開始時、(b)は読取作業時、(c)は読取終了時、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るICタグを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は作用を示す説明図、を示している。図2は、図1に示したICタグの変形例を示す図であり、(a)は第一変形例、(b)は第二変形例、(c)は第三変形例、を示している。
【0018】
本発明の第一実施形態に係るICタグは、鋼材情報を記憶したICチップを有するICタグ1であって、ICチップを内蔵したICタグ本体11と、ICタグ本体11を被覆する樹脂材により構成された保護カバー12と、保護カバー12内に配置された磁石13と、を有し、保護カバー12は、ICタグ本体11を格納する側面外周部が円形状に形成された突出部12aと、突出部12aから延設され鋼材Pに貼付されるフランジ部12bと、を有している。
【0019】
ICタグ1は、ICタグ本体11内にICチップと小型のアンテナを埋め込み、ICチップに記憶された情報を電波によって非接触で読み取り可能に構成したものである。情報の読み取りには無線(RF:Radio Frequency)を使った専用のリーダー(読み取り機)を使用し、ICタグ1に記憶されているID番号(個体を表す情報)を読み取ることから、RFIDタグとも称される。ICチップには、ID番号のほか、鋼種(例えば、高張力鋼、軟鋼等)、規格、製品番号、サイズ(長さ、幅、板厚)、形状(平鋼、型鋼、鋼管等)等の鋼材情報が記憶される。
【0020】
ICタグ1には、例えば、HF(High Frequency)帯を使用した電磁誘導方式であって、20〜60mm程度の通信距離である近傍通信に適したものが使用される。HF(短波)とは、電磁波のうち短波帯(3〜30MHz)の周波数の電波である。電磁誘導方式のICタグ1は、いわゆるパッシブタグであり、リーダーの電波から電力を得て電波を送信するものである。例えば、造船用の鋼板は数mm〜50mm程度の板厚を有し、積み重ねて保管されることが多いことから、ICタグ1の通信距離が長くなると、リーダーで受信した電波がどのICタグ1から送信されたものか区別し難くなる。そこで、通信距離が短いICタグ1が使用される。なお、必要に応じて、ICタグ本体11内に電池を有するアクティブタグを使用してもよい。
【0021】
磁石13は、例えば、ネオジム磁石であり、水洗、乾燥、ショットブラスト、塗装等の処理において、ICタグ1が鋼材Pから脱落したりずれたりしないような磁力(吸着力)を有している。また、磁石13の磁力を補完するために、図1(b)に示したように、保護カバー12の貼付面に粘着材14(接着剤、粘着テープ等)を配置するようにしてもよい。
【0022】
保護カバー12は、ICタグ本体11及び磁石13を保持するとともに外力から保護する部材である。鋼板等の鋼材Pは、錆び落しや研磨のために鉄球等の投射材を打ち付けるショットブラスト処理が施される。そこで、保護カバー12は、このショットブラスト処理における衝撃を緩和するために、ゴム材やシリコン樹脂材等の弾性力を有する樹脂材により構成される。
【0023】
保護カバー12は、図1(a)及び(b)に示したように、例えば、略円柱形状の突出部12aを有する。この突出部12aには、ICタグ本体11及び磁石13が内蔵される。このように突出部12aに内蔵する部品を集約することにより、フランジ部12bの板厚を薄くすることができ、ショットブラスト時における抵抗値を低減することができる。また、図1(c)に示したように、突出部12aは側面外周部が円形状を有していることから、上方からショットブラストの投射材が打ち込まれた場合であっても、ICタグ1に垂直に入射する面積を低減することができ、ショットブラスト時に生じる衝撃を緩和することができる。
【0024】
フランジ部12bは、図1(a)に示したように、例えば、突出部12aの両側に延設された幅Wの板形状を有する。フランジ部12bを形成することにより、鋼材Pとの接触面積を増大させることができ、吸着力を向上させることができる。ICタグ1を鋼板に貼付する場合には、幅Wは所望の鋼板の板厚よりも小さくなるように形成される。ICタグ1を貼付する十分な面積を有する鋼材Pの場合には、フランジ部12bは、突出部12aの全周に渡って拡張された略円形状や矩形形状であってもよい。
【0025】
上述した本発明に係るICタグ1によれば、ICタグ本体11を格納する突出部12aの側面外周部を円形状に形成したことにより、ショットブラスト時に生じる衝撃を緩和することができ、ICタグ1の脱落や破損を抑制することができ、鋼材情報の消失を抑制することができる。また、ICタグ1の貼付に磁石13を使用し、保護カバー12に樹脂材を使用したことにより、鋼材Pの水洗、乾燥、塗装等の処理に強く、鋼材情報の消失を抑制することができる。
【0026】
次に、上述したICタグ1の変形例について説明する。図2(a)に示した第一変形例は、保護カバー12に鋼材Pの種類に応じて異なる着色を施したものである。図では、斜線の方向を変えることにより、着色が異なっていることを表現している。例えば、高張力鋼を赤色、軟鋼を黄色等の色に着色することにより、ICタグ1の鋼材情報をリーダーで読み取らなくても、目視によって容易に鋼種を識別することができ、取り間違い等の不具合を低減することができる。保護カバー12は、樹脂材そのものに顔料等を含有して着色するようにしてもよいし、表面に着色されたフェルト材等のシート部材を貼付するようにしてもよい。
【0027】
図2(b)に示した第二変形例は、突出部12aを球体面により形成したものである。かかる構成によれば、保護カバー12の突出方向についても傾斜面を形成することができ、ショットブラスト時における投射材の衝撃を緩和することができる。
【0028】
図2(c)に示した第三変形例は、磁石13をフランジ部12bに内蔵したものである。鋼材Pのショットブラストにおける投射材Bには粒状の鉄球が使用されることが多く、ICタグ1に磁石13を使用した場合には、投射材Bが磁石13の周囲に吸着され易い。そこで、ICタグ本体11から磁石13を離隔することによって、ICタグ本体11が投射材Bに埋もれないようにすることができる。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態に係るICタグ1について説明する。ここで、図3は、本発明の第二実施形態に係るICタグを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は変形例の断面図、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0030】
本発明の第二実施形態に係るICタグ1は、図3(a)及び(b)に示したように、保護カバー12が、ICタグ本体11を格納する第一突出部12cと、第一突出部12cの両側に配置され磁石13を格納する第二突出部12dと、有し、フランジ部12bが、第一突出部12c及び第二突出部12dを連結するように形成されたものである。また、保護カバー12は、フランジ部12bの一端に形成された引き剥がし用のタブ12eを有している。
【0031】
第一突出部12c及び第二突出部12dは、基本的に第一実施形態における突出部12aと略同じ形状を有しており、略円柱形状又は球体面形状を有している。このように、ICタグ本体11と磁石13とを離隔して配置することにより、図3(b)に示したように、ショットブラストに使用される投射材Bは、磁石13(第二突出部12d)の周囲にのみ吸着し、ICタグ本体11(第一突出部12c)の周囲に投射材Bが吸着しないようにすることができる。したがって、ショットブラスト処理をした後であっても、投射材Bを取り払うことなくリーダーによりICタグ1を読み取ることができる。ICタグ本体11(第一突出部12c)と磁石13(第二突出部12d)との離隔距離は、フランジ部12bの長さを調整することにより、任意に設定することができる。
【0032】
また、ICタグ本体11の両側に磁石13を配置することにより、ICタグ1を鋼材Pに貼付した状態を安定させることができる。また、ICタグ1の吸着力が高い場合には、ICタグ1の取り外しが困難になる可能性がある。そこで、図示したように、引き剥がし用のタブ12eを形成している。タブ12eは、ICタグ1の貼付面と鋼材Pとの表面の間に隙間が生じるように形成される。この隙間によって、作業員は容易にタブ12eを掴んでICタグ1を引き剥がすことができる。なお、タブ12eは、図1及び図2に示した第一実施形態及びその変形例に係るICタグ1に形成するようにしてもよい。
【0033】
また、図3(c)に示した変形例は、磁石13を貼付面に対して外側から覆う磁束調整部材15を有するものである。磁束調整部材15は、鉄等の磁性体により構成され、断面コ字形状を有する。磁束調整部材15の底面は、磁石13と接触しないように、一定の隙間を有するように配置される。かかる磁束調整部材15を配置することにより、図示したように、ICタグ1の貼付面側に磁束を集中させることができ、吸着力を向上させることができるとともに、貼付面と反対側の表面の吸着力を低下させることができ、ショットブラスト時の投射材Bの吸着量を低減することができる。
【0034】
続いて、本発明の実施形態に係る鋼材管理システムについて、図4及び図5を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の実施形態に係る鋼材管理システムを示す図であり、(a)はICタグの貼付状態、(b)はICタグとICタグリーダーとの位置関係、(c)はICタグリーダーの正面図、(d)はICタグリーダーの移動機構、を示している。図5は、図4に示したICタグリーダーの読み取り動作を示す説明図であり、(a)は読取開始時、(b)は読取作業時、(c)は読取終了時、を示している。
【0035】
本発明の実施形態に係る鋼材管理システムは、鋼材情報を記憶したICチップを有するICタグ1と、ICタグ1から鋼材情報を読み取るICタグリーダー2と、を有する鋼材管理システムであって、ICタグ1は、ICチップを内蔵したICタグ本体11と、ICタグ本体11を被覆する樹脂材により構成された保護カバー12と、保護カバー12内に配置された磁石13と、を有し、保護カバー12は、ICタグ本体11を格納する側面外周部が円形状に形成された突出部12aと、突出部12aから延設され鋼材Pに貼付されるフランジ部12bと、を有するICタグ1により構成されるとともに、鋼材Pの搬送方向の前端面Pfに配置され、ICタグリーダー2は、鋼材Pの搬送に伴って鋼材Pの前端面Pfに沿って移動可能に構成されている。
【0036】
ICタグ1は、上述した第一実施形態、第二実施形態又はこれらの変形例により構成される。かかる本発明の実施形態に係るICタグ1を使用することにより、鋼材管理に適した運用を実施することができ、鋼材Pの各種処理工程(水洗、乾燥、ショットブラスト、塗装等)を阻害することがなく、鋼材情報の消失を抑制することができる。なお、ICタグ1は、読み取り漏れ等を低減するために、同じICタグ1を複数配置するようにしてもよいし、各処理工程に適した鋼材情報を個別に記憶した複数のICタグ1を配置するようにしてもよい。
【0037】
ICタグ1は、図4(a)に示したように、鋼材Pの前端面Pfに貼付される。鋼板等の鋼材Pは、積み重ねて保管されることが多いことから、鋼材Pの表面に配置することは好ましくない。また、搬送ラインの両脇に配置されたガイドローラGによって案内されることが多いことから、鋼材Pの側面Psに配置するとガイドローラGの邪魔になったり、ICタグ1が破損したりしてしまうこととなる。したがって、ICタグ1は、鋼材Pの前端面Pf又は後端面に配置することが好ましい。特に、本実施形態のように搬送ライン中にICタグリーダー2を配置する場合には、鋼材Pの前端面Pfに配置することにより、効率よくICタグ1を読み取ることができる。
【0038】
ICタグリーダー2は、図4(c)に示したように、例えば、鋼材Pの前端面Pfに対峙する平板状のリーダー本体部21aと、リーダー本体部21aの両側に配置され鋼材Pの前端面Pf上を転動するガイドローラ21bと、を備えた移動体21と、移動体21を鋼材Pの前端面Pfに沿って移動可能に支持する平行リンク機構22と、平行リンク機構22に接続され鋼材Pが通過した後に移動体21を元の位置に復帰させる付勢部材23と、を有している。なお、移動体21は、リーダー本体部21a及びガイドローラ21bを支持する支持部材21cを有している。
【0039】
移動体21にガイドローラ21bを配置することにより、リーダー本体部21aを鋼材Pの前端面Pfに沿って移動可能に支持することができるとともに、鋼材Pの前端面Pfとリーダー本体部21aとの間に一定の隙間(例えば、30〜100mm程度)を形成することができる。したがって、図4(b)に示したように、鋼材Pの前端面Pf上でガイドローラ21bを転動させることにより、鋼材Pの前端面Pfに貼付されたICタグ1と通信可能な近接した位置にリーダー本体部21aを配置したまま、ICタグ1上を通過させることができ、ICタグ1を容易に読み取ることができる。なお、移動体21は、床面と一定の隙間を有するように平行リンク機構22により支持されていてもよいし、移動体21の平行リンク機構22による回動を補助する車輪を有していてもよい。
【0040】
平行リンク機構22は、一対の平行に配置されたリンク22aを有し、リンク22aの一端は床面に接続され、他端は移動体21に接続されている。したがって、移動体21は、図4(d)に一点鎖線で示したように、一定の範囲内で回動することができる。この回動によって、移動体21は、鋼材Pの搬送を阻害しないように、鋼材Pの搬送に伴って退避することができる。なお、ICタグリーダー2の移動機構は、上述した平行リンク機構22に限定されるものではなく、鋼板Pの搬送に伴って移動体21を退避させることができるものであれば、他の構成であってもよい。
【0041】
付勢部材23は、図4(d)に示したように、スプリングコイルやゴム紐等の弾性体を有する部材であって、一端は床面に接続され、他端はリンク22aに接続される。かかる付勢部材23を配置することによって、鋼材Pの搬送によって退避された移動体21を鋼材Pが通過した後に元の位置に自動的に復帰させることができる。
【0042】
例えば、図5(a)に示したように、読取開始時には、ICタグリーダー2は、搬送される鋼材Pの前端面Pfと接触可能となるように搬送ライン内に配置されている(平行リンク機構22が折り畳まれた図示した位置を0度の位置とする)。ICタグ1は、鋼材Pの前端面Pfにおいて、ICタグリーダー2が配置された側に寄った位置に配置されている。一方、ICタグリーダー2は、鋼材Pの前端面Pfに配置されたICタグ1を読み取り可能な位置まで搬送ライン内に挿入されている。
【0043】
図5(a)の状態で、鋼材Pの前端面Pfに接触した移動体21は、図5(b)に示したように、鋼材Pの搬送に伴って、押し退けられて平行リンク機構22により回動しつつ、前端面Pfに沿ってスライドする。このとき、リーダー本体部21aは、ICタグ1と一定の距離を保持しつつ通過することとなり、このときにICタグ1の鋼材情報を読み取ることができる。
【0044】
その後、図5(c)に示したように、鋼材Pの搬送に伴って、鋼材Pの前端面Pfから完全に押し退けられた移動体21は、ICタグ1の読み取りを終了し、略90度の位置に移動した状態を維持したまま、付勢部材23により鋼材Pの側面Psに押し付けられながら、ガイドローラ21bが鋼材Pの側面Psに沿って回転する。最終的に、鋼材Pが通過し終わると、移動体21は支えを失い、付勢部材23の作用により、図5(a)に示した初期状態(0度の位置)に復帰する。
【0045】
また、図示しないが、ICタグリーダー2により読み取られたICタグ1の鋼材情報は、有線又は無線により接続されたデータ管理装置に送信され、集中的に鋼材管理を行うことができる。データ管理装置に受信された鋼材情報に基づいて、鋼材Pの処理工程を変更したり、搬送ルートを変更したり、保管ヤードの設定を行ったりすることができる。また、上述したように、本実施形態に係るICタグ1を使用することにより、水洗、乾燥、ショットブラスト、塗装等の各処理工程における鋼材情報の消失を抑制することができ、鋼材管理を安定して効率よく行うことができる。
【0046】
なお、上述した鋼材管理システムでは、移動体21を有するICタグリーダー2により、鋼材Pの搬送により自動的にICタグ1を読み取るように構成しているが、かかる構成に限定されるものではなく、作業員がICタグリーダーを携帯して積み重ねられた鋼材Pや搬送中の鋼材Pに配置されたICタグ1を手動で読み取るようにしてもよい。
【0047】
本発明は上述した実施形態に限定されず、ICタグ1は鋼材Pの後端面に配置してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 ICタグ
2 ICタグリーダー
11 ICタグ本体
12 保護カバー
12a 突出部
12b フランジ部
12c 第一突出部
12d 第二突出部
12e タブ
13 磁石
15 磁束調整部材
21 移動体
21a リーダー本体部
21b ガイドローラ
22 平行リンク機構
23 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材情報を記憶したICチップを有するICタグにおいて、
前記ICチップを内蔵したICタグ本体と、
該ICタグ本体を被覆する樹脂材により構成された保護カバーと、
該保護カバー内に配置された磁石と、を有し、
前記保護カバーは、前記ICタグ本体を格納する側面外周部が円形状に形成された突出部と、該突出部から延設され鋼材に貼付されるフランジ部と、を有することを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記磁石は、前記突出部又は前記フランジ部に内蔵される、ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
前記保護カバーは、前記フランジ部に形成された引き剥がし用のタブを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項4】
前記保護カバーは、前記鋼材の種類に応じて異なる着色が施されている、ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項5】
前記保護カバーは、前記ICタグ本体を格納する第一突出部と、該第一突出部の両側に配置され前記磁石を格納する第二突出部と、有し、前記フランジ部は、前記第一突出部及び前記第二突出部を連結するように形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項6】
前記磁石を貼付面に対して外側から覆う磁束調整部材を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項7】
鋼材情報を記憶したICチップを有するICタグと、該ICタグから前記鋼材情報を読み取るICタグリーダーと、を有する鋼材管理システムにおいて、
前記ICタグは、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のICタグにより構成されるとともに、鋼材の搬送方向の前端面に配置され、
前記ICタグリーダーは、前記鋼材の搬送に伴って前記鋼材の前端面に沿って移動可能に構成されている、ことを特徴とする鋼材管理システム。
【請求項8】
前記ICタグリーダーは、前記鋼材の前端面に対峙する平板状のリーダー本体部と、該リーダー本体部の両側に配置され前記鋼材の前端面上を転動するガイドローラと、を備えた移動体と、該移動体を前記鋼材の前端面に沿って移動可能に支持する平行リンク機構と、該平行リンク機構に接続され前記鋼材が通過した後に前記移動体を元の位置に復帰させる付勢部材と、を有することを特徴とする請求項7に記載の鋼材管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109480(P2013−109480A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252769(P2011−252769)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】