説明

ICチップを埋着した和紙及びその製造方法

【課題】ICチップを埋着した和紙を簡単に製造する方法の提供。
【解決手段】紙料12を収容した第1槽8に取付けた第1シリンダー10を回転して網目から外周へ流れ出た紙料にてベース紙3を作り、第1シリンダー10には該紙料12が内部から外周へ流れ出る量を規制する部位を設けてベース紙3の一部には凹溝6を連続して形成し、この凹溝6にICチップ7,7・・・を一定間隔で取付けたテープ2を嵌めて一体化し、その後、紙料12を収容した第2槽9の内部に水平に取付けた第2シリンダー11を回転して網目から外周へ流れ出る紙料12にてカバー紙4を作ると共に上記ベース紙3に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICチップを埋着した和紙、及び該和紙を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙にICチップを埋め込んだものは色々知られている。例えば、特開2002−298118号に係る「非接触方式のタグ部材が漉き込まれてなる用紙」は、用紙基材の紙層間に、非接触方式のタグ部材を漉き込まれた状態で内蔵することにより、用紙にタグ部材を貼着又は添付させる為の加工の手間を不要とし、タグ部材が剥ぎ取られたりする危険性を防止することが出来る。
【0003】
特開2002−321475号に係る「証券」は、印刷可能な素材に証券の内容などを表すデータを記録した記録素子を備えることにより、紙幣や有価証券の内容を目で直接見ることによって確認出来るだけでなく、電子化された情報として容易に取出せるようにしている。
【0004】
特開2002−342735号に係る「アンテナ部が漉き込まれている用紙」は、用紙に、導電性物質がアンテナとしての機能を備える状態でパルプ基紙中に漉き込むことにより、用紙の印刷デザインをアンテナパターンで阻害されることなく、製造工程が少なくて済むアンテナ部が漉き込まれている用紙である。
【0005】
このように1Cタグを紙の内部に埋着する技術は色々知られている。ここで、紙の製造工程においてICタグを埋め込む際に損傷しないようにしなくてはならないが、従来技術では該ICタグを埋着する場合に既存の製造設備をそのまま利用することは出来ない。又、和紙は一定幅にて連続して漉かれ、このように漉かれた和紙は所定のサイズに裁断される。従って、裁断されて小さなサイズになっても少なくとも1個のICタグが埋着されていることが必要である。
【0006】
裁断される和紙のサイズが前以て分かっている場合であれば、ICチップが埋着されるピッチは定まる。しかし、その為には製造装置の一部機構を変更しなくてはならない。
【特許文献1】特開2002−298118号に係る「非接触方式のタグ部材が漉き込まれてなる用紙」
【特許文献2】特開2002−321475号に係る「証券」
【特許文献3】特開2002−342735号に係る「アンテナ部が漉き込まれている用紙」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、ICチップを埋め込んだ紙は色々と知られている。しかし、紙を製造する工程において該ICチップをどのように埋め込むかが課題であり、埋め込み工程中にICチップが損傷して機能しないようでは問題となる。そこで、本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、従来の紙漉き装置をそのまま利用する簡単な工程で、裁断されるサイズの如何に関わらずICチップを安く埋め込むことが出来る高品質の和紙、及びICチップを埋め込んだ和紙を作る製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はICチップを埋め込む和紙の製造方法であり、埋め込み工程中にICチップが損傷しないように、又ICチップを埋め込んだ箇所の和紙の厚みが大きくならないようにしている。そこで、和紙はベース紙とカバー紙の2層で構成され、ベース紙にICチップを貼着した状態でカバー紙が貼り合わされるが、本発明ではICチップが個々に独立したものでなく、細長いテープに等間隔で取付けられている。
【0009】
すなわち、テープにICチップが一定間隔で組み込まれているために、紙漉き工程において該テープを挟み込むことで製造することが出来る。ベース紙には厚さを薄くしてテープが埋め込まれる凹溝が長手方向に連続して形成され、この溝に該テープが嵌って取付けられる。厚さを薄くした部位は、和紙製造装置の一部であるシリンダーの網目から紙料が流れ出難いようにシールなどを施すことで作ることが可能である。これは、和紙に透かし模様を作る場合と同じであるが、本発明ではこの技術を利用して凹溝にテープを埋め込んでいる。
【0010】
ところで、上記テープはリール巻きされており、ベース紙の走行と同一速度になるように巻き戻しされ、該ベース紙に形成される凹溝に嵌る。その後、別のカバー紙と貼り合わされて積層され、テープが埋め込まれた和紙が出来上がる。ここで、テープの具体的な材質は問わないが、基本的には和紙で構成している。一方、テープは濡れた状態のベース紙とカバー紙に挟み込まれる為に、該ベース紙に凹溝を形成しなくても厚さ均一化することも可能である。そして、テープは少なくとも1本挟まれるが、この本数は特に限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明が対象とする和紙はICチップを埋着したものであり、和紙と一体化される為にICチップが簡単に剥ぎ取られることはない。そして、ベース紙に厚さを薄くした凹溝を作り、この凹溝にICチップが取付けられているテープが嵌り、カバー紙が貼り合わされる。厚さを薄くして作った凹溝にテープが嵌められてカバー紙が貼り合わされることから、出来上がった和紙の厚さは一定となる。該テープには一定間隔でICチップが取付けられている為に、漉かれた和紙にはICチップが埋着されていることになる。
【0012】
そして、本発明の和紙製造方法はICチップを取付けたテープを紙漉き工程に合わせて貼り合わせることが出来るために生産性は高くなる。そして、ICチップはテープに取付けられており、紙漉き工程時には個々のICチップを取付ける方法ではない為に、取付けに際してICチップが損傷することはない。さらに、テープには和紙が裁断される最小サイズにおいて少なくとも1個のICタグが埋着される間隔で取付けられ、又複数本のテープを同一工程で挟み込むことが出来る。
【実施例】
【0013】
図1はICタグを埋着した和紙を示す具体例で、(a)は平面図、(b)はA−A断面図を表している。同図の1は和紙、2はテープをそれぞれ示し、該和紙1は一定幅で長手方向に連続して延びている。又、図2は図1(b)のB部拡大図を表しており、該和紙1はベース紙3とカバー紙4が積層した構造と成っている。
【0014】
和紙1は槽に収容されている紙料を漉くって作られ、この和紙1の片側縁5に沿って上記テープ2が延びている。そして、テープ2は互いに積層されているベース紙3とカバー紙4の間に介在している。ところで、本発明に係る和紙1の具体的な製造方法は特に限定しないが、ベース紙3は第1槽に収容されている紙料を漉いて作られ、カバー紙4は第2槽に収容されている紙料を漉いて作られ、テープ2はベース紙3とカバー紙4とで挟み込まれる。
【0015】
ベース紙3の側縁5に沿って凹溝6が形成され、この凹溝6にテープ2が嵌っている。そして、該凹溝6にテープ2が嵌った状態でカバー紙4が貼り合わされて積層され、従って、テープ2は該カバー紙4の積層によってベース紙3との間に挟まれる。図3はテープ2を単独で表している具体例である。該テープ2は紙製であって、その中にICチップ7,7・・・が一定間隔で取付けられている。
【0016】
ICチップ7,7・・・を取付ける方法は色々ある為に特に限定しないが、例えばテープ2を2層構造とし、各層の間にICチップ7,7・・・を挟み込む構造とすることが出来る。本発明ではICチップ7,7・・・を一定間隔で取付けたテープ2を別途製作し、和紙1を製造するに際して該テープ2をベース紙3とカバー紙4とで挟持する構造としている。テープ2にはICチップ7,7・・・が取付けられている為に、テープ2を内部に組み込むように漉くことで、個々のICチップ7,7・・・を和紙1に取付ける場合に比較して便利である。
【0017】
図4は本発明の和紙1を製造する為の装置を示している実施例であり、この製造装置を用いて本発明に係る製造方法を説明する。同図の8は第1槽、9は第2槽、10は第1シリンダー、11は第2シリンダーをそれぞれ表している。第1槽8及び第2槽9には紙の原料となる液状をした紙料12が収容されている。
上記第1シリンダー10は両端が開口して網目を外周に有す筒体をなして第1槽8の内部に水平に取付けられ、同じく第2シリンダー11は同じく両端が開口して網目を外周に有す筒体を成して第2槽の内部に水平に取付けられている。そして第1シリンダー10及び第2シリンダー11の下側部分は紙料12に浸かっており、各シリンダー10,11が回転するならば開口から入っている紙料12は第1シリンダー10及び第2シリンダー11と共に回転する。そして、シリンダー内部の紙料は網目から外周へ流れ出る。
【0018】
ところで、第1槽8に取付けられている第1シリンダー10が回転することで、網目から外周に流れ出た紙料が付着し、和紙1を構成するベース紙3が形成される。ベース紙3は下ガイド12に沿って移動し、第2シリンダー11側へ送られる。ここで、第1シリンダー10の上には第1ローラ13が配置され、第1シリンダー10の回転に伴う周速に合わせて回転する。
【0019】
図5は図4のC−C断面拡大図を表しているが、該ベース紙3の下面には凹溝6が形成されている。この凹溝6は、上記第1シリンダー10の網目の粗さを細かくすることで紙料12の通過が抑制され、その為にこの部分のベース紙3の厚さが薄くなる。すなわち、該第1シリンダー10は網目を有す筒状を成し、片側端部には網目を細かくした部位が設けられている。
【0020】
第1シリンダー10は両端が開口した筒状であり、開口から流入した紙料12は第1シリンダー10の内面に付着し、回転に伴って上昇する。同時に網目を通過することで外周面に流れ出て第1ローラ13にて押えられ、第1シリンダー10の外周面から剥離してベース紙3が作られる。ところが、第1シリンダー10の片側端部に細かくした網目を設けることで、紙料が通過し難くなり、ベース紙3に凹溝14が形成される。
【0021】
そして、水分を含んで軟らかいベース紙3は下ガイド12に載って滑り移動し、途中でテープ2が組み込まれる。該テープ2はテープローラ15に巻かれており、ローラ16が回転してテープ2を巻き戻し、上記ベース紙3に形成した凹溝6にテープ2を嵌め込む。ローラ16の回転速度はベース紙3が移動する速度と一致し、凹溝6にダブ付くことなくテープ2が嵌って組み込まれる。
【0022】
図6は図4のD−D断面拡大図を表している。このようにベース紙3に形成した凹溝6にテープ2が嵌り、その状態で下ガイド12に支えられて移動する。ここで、ベース紙3は水分を含んで十分湿っている為に、紙製のテープ2はベース紙3の凹溝6に嵌って接することで同じく湿って該ベース紙3と一体化される。すなわち、接着剤を使用する必要はない。
【0023】
凹溝6にテープ2が嵌って組み込まれたベース紙3は下ガイド12に沿って移動し、第2シリンダー11へ進入する。第2シリンダー11はベース紙3と同一速度で回転し、カバー紙4が積層される。すなわち、第1シリンダー10の場合と同じように、第2槽9に収容されている紙料12が第2シリンダー11の内部に流れ込み、回転と共に内面に付着した紙料12は上昇すると共に、網目から外周へ流出する。
【0024】
外周へ流れ出た紙料12が移動してきたベース紙3の下面に合わさって積層される。前記図2はベース紙3にカバー紙4が積層した状態の断面図であり、ベース紙3、テープ2、及びカバー紙4が一体化して和紙1と成る。図2はカバー紙4がベース紙3の上側に積層されているが、図4に示す製造工程では第2シリンダー11によって下側にカバー紙4が積層される。
【0025】
そして、カバー紙4が積層された和紙1は第2ローラ14に巻き付いて方向を変え、乾燥工程へ送られる。前記図2は図4のE−E断面拡大図である。このように、ICチップ7,7・・・を連続したテープ2に取付けることで、和紙1の製造工程において簡単に該テープ2を組み込むことが可能である。すなわち、テープ2を巻き付けたテープローラ15とローラ16を既存の装置に付加することで、本発明に係るICチップを埋着した和紙1を簡単に製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る和紙を示す実施例で、(a)は平面図、(b)はA−A断面図。
【図2】図1(b)のB部拡大図。
【図3】和紙に組み込まれるテープ。
【図4】本発明に係る和紙の製造装置。
【図5】図4のC−C断面拡大図。
【図6】図4のD−D断面拡大図。
【符号の説明】
【0027】
1 和紙
2 テープ
3 ベース紙
4 カバー紙
5 側縁
6 凹溝
7 ICチップ
8 第1槽
9 第2槽
10 第1シリンダー
11 第2シリンダー
12 紙料
13 第1ローラ
14 第2ローラ
15 テープローラ
16 ローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップを埋着した和紙において、該和紙は連続したベース紙とカバー紙の2層構造とし、ベース紙とカバー紙との間に長手方向に延びるテープを挟み込んで一体化し、そして該テープには一定間隔でICチップを取付けていることを特徴とするICチップを埋着した和紙。
【請求項2】
ICチップを埋着した和紙において、該和紙は連続したベース紙とカバー紙の2層構造とし、ベース紙には長手方向に連続して形成した凹溝に長手方向に延びるテープを嵌めて一体化し、そして該テープには一定間隔でICチップを取付けていることを特徴とするICチップを埋着した和紙。
【請求項3】
凹溝をベース紙の側縁に沿って形成した請求項1、又は請求項2記載のICチップを埋着した和紙。
【請求項4】
上記テープを同じ材質の紙製とした請求項1、請求項2、又は請求項3記載のICチップを埋着した和紙。
【請求項5】
ICチップを埋着した和紙を製造する方法において、紙料を収容した第1槽の内部に水平に取付けた第1シリンダーを回転することで網目から外周へ流れ出た上記紙料にてベース紙を連続して作り、そして帯状の該ベース紙にICチップを一定間隔で取付けたテープを長手方向に宛がって積層し、その後、紙料を収容した第2槽の内部に水平に取付けた第2シリンダーを回転することで網目から外周へ流れ出る紙料にてカバー紙を作ると共に上記ベース紙に積層してテープを挟み込んだことを特徴とするICチップを埋着した和紙の製造方法。
【請求項6】
ICチップを埋着した和紙を製造する方法において、紙料を収容した第1槽の内部に水平に取付けた第1シリンダーを回転することで網目から外周へ流れ出た上記紙料にてベース紙を連続して作り、そして第1シリンダーには該紙料が内部から外周へ流れ出る量を規制する部位を設けてベース紙の一部には凹溝を連続して形成し、この凹溝にICチップを一定間隔で取付けた一連のテープを嵌めて一体化し、その後、紙料を収容した第2槽の内部に水平に取付けた第2シリンダーを回転することで網目から外周へ流れ出る紙料にてカバー紙を作ると共に上記ベース紙に積層して上記テープを挟み込んだことを特徴とするICチップを埋着した和紙の製造方法。
【請求項7】
上記テープはテープローラに巻き付け、ベース紙の移動速度に合わせてテープローラから巻き戻し、ベース紙の下面に接するように配置したローラにて凹溝に嵌めるようした請求項5、又は請求項6記載のICチップを埋着した和紙の製造方法。
【請求項8】
上記第1シリンダーの網目を細かくすることで紙料が外周へ流れ出る量を規制して該ベース紙に凹溝を形成した請求項6、又は請求項7記載のICチップを埋着した和紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−159516(P2010−159516A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3027(P2009−3027)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(504030738)有限会社 小畑製紙所 (3)
【Fターム(参考)】