説明

ICチップ実装体の製造装置

【課題】ICチップが搭載された後のベースシートに対してICチップを破損しないように当接する当接ローラを備えたICチップ実装体の製造装置の提供し、加えてベースシートの蛇行を防止できるようにする。
【解決手段】ICチップ実装体の製造装置1として、一方の面にアンテナ回路82が形成されてフィルム基板8とされたベースシート81の搬送経路上において、ベースシート81上の所定位置にICチップ83が搭載される工程よりも下流側に配置されてベースシート81に当接する当接ローラ36を備えるものとして、この当接ローラ36に、ベースシート81上のICチップ83への圧迫を避ける待避部36bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ実装体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップを搭載した実装体として、RFID(Radio Frequency Identification)の一種である無線ICタグが実用されてきている。ICタグのなかでも、パッシブタグと呼ばれるものは、電池を搭載せず、固有の識別情報が記録されたICチップと小型のアンテナ回路とをフィルム基板に貼付した構成を有しており、ICタグリーダから発せられる電波によって回路内に微量な電力を発生させ、その電力でICタグリーダとの通信を行ってICチップ内の情報を読み書きするものであり、非接触ICカードとして、乗車カード、電子マネー、認証用カード等の分野で広く利用されるようになっている。また最近では、電池を搭載して自ら電波を発するアクティブタグと呼ばれるICタグも登場してきており、通信方式や使用する電波の周波数帯なども種々実用化又は検討されている。
【0003】
このようなICタグに代表されるICチップ実装体は、ベースシートとカバーシートとの間にICチップとアンテナ回路とを挟んで固定しているという、共通した構成を有している。斯かるICチップ実装体の製造装置としては、例えば、予めベースシートの一方の面にアンテナ回路が形成されたフィルム基板を搬送し、このアンテナ回路と接続するように接着剤を介してICチップを搭載し、さらに一方の面を粘着面(この面に接着剤を塗布して粘着面としてもよい)としたカバーシートを貼り合わせることによってICチップ実装体を製造するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの何れの装置においても、ベースシート又はフィルム基板は、長尺なシートをロール状として搬送経路の開始位置に配置され、ICチップ実装体の製造装置に順次供給されてICチップ実装体が製造された後に、所定の長さに切断されて、非接触ICカード等の製造装置へと送られる。
【特許文献1】特開2005−209144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ICチップは微細な(例えば1mm角以下)精密部材であり、外部からの圧迫や衝撃には非常に弱いものである。したがって、ICチップ実装体の製造装置において、ベースシートに搭載された後の工程でICチップが圧迫を受けると破損する可能性があると考えられ、ICチップ実装体の歩留まりが低下する要因となりかねない。
【0005】
また、上述のようにベースシート(あるいは予めアンテナ回路が形成されたフィルム基板とされているベースシート)は、長尺なシートをロール状にしてICチップ実装体の製造装置における搬送経路の開始位置に配置されており、そのロールから順次搬送経路(ICチップ実装体の製造経路)へと繰り出されてゆくが、例えばベースシートへの接着剤の塗布やICチップの搭載、若しくは回路シートの貼付、さらにカバーシートの貼り合わせ等の種々の工程へと進めるために、間欠的に配置された当接ローラにベースシートを沿わせることによって、ベースシートの搬送が行われることがある。また、このような当接ローラは、前工程から次工程へベースシートを進める際に、その進行方向を変化させる場合にも用いられることがある。この種のローラには、耐摩耗性などの観点から、硬質な金属製のものが適用されることが多い。この場合、ベースシートにICチップが搭載された後の工程に配置される当接ローラがICチップと接触したり、特に当接ローラによりICチップに圧迫が加わったりすると、ICチップの破損を招きかねない。また、ICチップの搭載前に、ベースシート(フィルム基板)に接着剤を塗布する構成の製造装置において、接着剤を乾燥させる工程の前に用いられる当接ローラの場合、この当接ローラに乾燥していない接着剤が付着すると、その後のベースシートを汚損したり、ベースシートの安定走行の妨げとなることも考えられる。
【0006】
さらに、ベースシートは当接ローラの表面を走行するため、例えば当接ローラが円柱形状であればベースシートの幅方向にはその動きを抑制するものが存在せず、ベースシートが蛇行するという現象が生じる。このようなベースシートの蛇行は、ベースシートの搬送経路からの脱落やICチップの破損の原因となり得る。このような蛇行現象を防止するために、外側方よりも内側の半径が大きくなるように表面を連続的に湾曲させたローラ(「クラウン型ローラ」と称される場合がある)を用いることが考えられる。すなわち、回転している蛇行防止のためのクラウン型ローラの表面では、外側部と内側の径差により速度差が生じ、速度が速いローラの中央部付近にベースシートが両側部から寄ってくることとなり、ベースシートはローラの中央部で安定して走行するようになる。しかしながら、このようなローラを前述した当接ローラに適用しても、ベースシート上のICチップを圧迫して破壊してしまう可能性があるのは否めない。
【0007】
そこで本発明は、まず第一に、ICチップが搭載された後のベースシートに対してICチップを破損しないようにベースシートの搬送を補助することが可能な当接ローラを備えたICチップ実装体の製造装置の提供を主たる目的とし、さらに斯かる当接ローラを用いてベースシートの蛇行を防止することもできるICチップ実装体の製造装置をも提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るICチップ実装体の製造装置は、一方の面にアンテナ回路が形成されてフィルム基板とされたベースシートの搬送経路上において、このベースシート上の所定位置にICチップが搭載される工程よりも下流側に配置されてベースシートに当接する当接ローラを具備するものであり、この当接ローラに、ベースシート上のICチップへの圧迫を避ける待避部を形成していることを特徴としている。
【0009】
なお、本発明において単に「ベースシート」と表現する場合には、特に限定的な言及がない限り、ベースシートそのものを指すのはもちろん、ベースシートに予めアンテナ回路が形成された態様の「フィルム基板」も含むものとする。また、通常はベースシートの幅方向中央部にICチップが搭載されることが多いことから、当接ローラにおける待避部の形成位置は、当接ローラの幅方向中央部とすることが望ましいが、本発明では特にこれに限られるものではなく、ベースシートの幅方向におけるICチップの形成位置に対応して当接ローラにおける待避部の形成位置を決定すればよい。
【0010】
このような構成のICチップ実装体の製造装置であれば、ICチップが搭載されたベースシートが当接ローラに当接しながら通過する際に、当接ローラに形成された待避部の存在によって、当接ローラによるICチップへの圧迫を回避することができるため、少なくとも当接ローラによってICチップが破損されるのを防止することが可能となり、ICチップ実装体の歩留まり低下を抑制し、ひいては歩留まり向上に寄与できることとなる。
【0011】
特に簡易な構成で当接ローラによるICチップの破損を防止することができる具体例としては、当接ローラに形成される待避部を、ICチップの幅寸法よりも広く当接ローラの表面に開口させた溝又は間隙により構成したものを挙げることができる。このようにすることで、当接ローラを通過するベースシートに対して、当接ローラは溝又は間隙からなる待避部によりICチップを跨ぐ格好となるため、好適にICチップへの圧迫が避けられることとなる。
【0012】
また、当接ローラにこのような溝又は間隙から構成される待避部を形成する場合、当接ローラを、この溝又は間隙にICチップを圧迫しない緩衝部材を取り付けた構成とすることもできる。緩衝部材としては、例えばスポンジやウレタン等の適宜の柔軟な材料を採用することができるが、このような緩衝部材であれば、ベースシートが当接ローラを通過する際でも、ベースシート上のICチップへの圧迫が回避され、ICチップの破損を有効に防止することができる。
【0013】
また、本発明のICチップ実装体の製造装置は、搬送経路の一部を構成し、フィルム基板とされたベースシートを密着させつつ回転動作を行いながら搬送する過程で、このベースシートに順次接着剤塗布装置による接着剤の塗布と、ICチップ搭載装置による前記接着剤を介したICチップの搭載とを行わせる主ローラとをさらに具備するものとすることができ、この場合、当接ローラを、主ローラの前記搬送経路における下流側に対向配置される下流側当接ローラとして適用することができる。
【0014】
この場合、主ローラと対向配置される下流側当接ローラは、次の工程に向けてベースシート(ここではフィルム基板)の方向を変化させる機能を有することがあることから、特にフィルム基板が強く接するため、待避部が形成された下流側当接ローラによるICチップの破損防止機能が大いに発揮される。また、下流側当接ローラを通過するフィルム基板上では、ICチップを取り付けるための接着剤がまだ乾燥されていないため、待避部の存在によって下流側当接ローラへの接着剤の付着も防止される。
【0015】
また、当接ローラを通過するベースシートの蛇行防止を図りつつ、ICチップの破損防止も同時に実現するには、当接ローラを、待避部を除いてこの当接ローラの回転中心となる中心軸からベースシートと接触する表面までの距離が、外側方から内方に向けて連続的に大きくなる形状とすることが望ましい。すなわち、上述したように、回転する当接ローラの径を外側方から内側に向けて連続的に大きくすることで、ベースシートに対して当接ローラの外側方よりも内側における速度が大きくなり、ベースシートが当接ローラの中央部近傍を安定して走行できるようにすることができる。
【0016】
これと同様の作用は、前述した主ローラを備えるICチップ実装体の製造装置においては、主ローラを、その回転中心となる中心軸からベースシートと接触する表面までの距離が外側方から内方に向けて連続的に大きくなる形状としても実現することができる。
【0017】
さらに、これらの当接ローラ又は主ローラの具体的形状としては、当接ローラ又は主ローラの表面を、外側方から内方に向けて中心軸からの距離が大きくなる湾曲形状又は傾斜形状としたものが好適なものとして挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ICチップ実装体の製造装置において、ベースシートの搬送経路のうちICチップがベースシートに搭載された後の工程において配置されてベースシートの搬送の補助を行う当接ローラに、ICチップを圧迫しない待避部を形成した構成としていることから、当接ローラがベースシート上のICチップを破損するのを防止できるため、ICチップ実装体の製造効率を向上することが可能である。
【0019】
また、当接ローラや、それと対向配置される主ローラの形状を、外側部よりも内側が膨らんだ形状とすることで、ベースシートの蛇行を防止できる上に、それによってもICチップの破損防止効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
まず、本発明に係るICチップ実装体の製造装置により製造されるICチップ実装体の一例であるICタグ10について説明する。図1は、ICチップ実装体9(図4参照)から切断された1つのICタグ10を平面図として、図2は同ICタグを縦断面図として示す模式図である。アンテナ回路82は、ベースシート81上に予め印刷やエッチングによって形成されたものであり、図3に示すように、ベースシート81上に間隔をあけて(例えば等間隔とすることができる)で連続的に複数形成されている。ICタグ10は、ベースシート81の一方の面の所定位置にアンテナ回路82を形成されたフィルム基板8と、このアンテナ回路82の所定位置に接続されるように搭載されるICチップ83と、これらアンテナ回路82とICチップ83とを覆うようにフィルム基板8に対向して貼り付けられるカバーシート85とから構成される。図4はICタグ10として切り出される前のシート状のICチップ実装体9を模式図として示す平面図である。以下、ベースシート81上にアンテナ回路82を形成したものをフィルム基板8と呼ぶものとする。ICチップ83は、裏面にアンテナ回路82に接続するための例えば銅や金等の金属で形成されたバンプ83aが設けられており、例えば導電性ペースト等からなる接着剤84を介してアンテナ回路82に接続される。カバーシート85は、一方の面を粘着面として、フィルム基板8の表面をICチップ83と共に覆うようにフィルム基板8に貼り付けられている。本実施形態においてICチップ実装体9は、このような個々のICタグ10に切り出される前の長尺なシート状のものを指している。
【0022】
このようなICチップ実装体9を製造する本実施形態に係るICチップ実装体の製造装置1について概略的に説明する。このICチップ実装体の製造装置1は、図5に模式的に示すように、フィルム基板搬送経路(以下、「搬送経路」という)の始点となり搬送フィルム基板8を収容し順次送り出すフィルム基板供給部2、フィルム基板8の所定位置に順次ICチップ83を搭載するICチップ実装部3、カバーシート85を収容し順次送り出すカバーシート供給部4、ICチップ83が搭載されたフィルム基板8にカバーシート85を貼り合わせ且つICチップ83をフィルム基板8に固定してICチップ実装体9を形成する貼り合わせ部5、ICチップ実装体9を検査し順次巻き取る製品検査・巻取部6、これら各部を制御する制御部7を主たる構成機構として備えている。
【0023】
フィルム基板供給部2は、ロール状に巻回したフィルム基板8を収容するとともに、制御部7により制御されて一定速度且つ一定張力で搬送経路へフィルム基板8を連続的に繰り出して供給するものである。
【0024】
ICチップ実装部3は、フィルム基板供給部2から搬送されてきたフィルム基板8に対して、所定間隔で接着剤84を塗布し、且つ塗布された接着剤を介してICチップ83をアンテナ回路81に接続するように搭載する。そのための構成として、ICチップ実装体3は、図6に示すように、制御部7により回転速度を制御されて図示しないモータにより回転する主ローラ31と、この主ローラ31に沿って搬送されるフィルム基板8に対して接着剤84を塗布する接着剤塗布装置32と、フィルム基板8にICチップ83を搭載するICチップ供給部(パーツフィーダ、図中に想像線で示す)33及び同期ローラ34と、搬送経路の上流側からフィルム基板8を主ローラ31へ導く上流側補助ローラ35と、主ローラ31から搬送経路の下流側へフィルム基板8を導く下流側補助ローラ36とを備えている。この下流側補助ローラ36は、本発明における当接ローラとして機能するものであり、その具体的構成については後段で詳述する。同期ローラ34は、制御部7の制御により主ローラ31と同期して回転し、ICチップ供給部33から供給されたICチップ83を1つずつ、主ローラ31上のフィルム基板8に塗布された接着剤84に載せてゆく。すなわち、ICチップ83が搭載されたフィルム基板8が下流側補助ローラ36を通過する際には、接着剤84はまだ乾燥していない状態である。なお、このICチップ実装部3では、主ローラ31上におけるフィルム基板8の接着剤を塗布する位置やICチップ83を載せる位置が複数台のカメラ37で撮影されており、所定の位置から誤差などがあれば随時制御部7と通信して補正できるようにしている。
【0025】
カバーシート供給部4は、ロール状に巻回したカバーシート85を、搬送経路上のフィルム基板8に重ね合わせるように順次繰り出すものである。
【0026】
貼り合わせ部5は、ICチップ実装部3から搬送されてきたICチップ83が搭載されたフィルム基板8と、カバーシート供給部4から搬送されたカバーシート85とを、加熱することにより貼り合わせるとともに、フィルム基板8上の接着剤54を乾燥固化させてICチップ83をアンテナ回路52に固定することによって、一体のICチップ実装体9として作製するものである。
【0027】
製品検査・巻取部6は、作製されたICチップ実装体9の検査を行い、ロール状に巻き取って収容するものである。
【0028】
さて、前述した下流側補助ローラ36は、図5及び図6に示すように、主ローラ31の下流側に対向させて配置されるものであり、主ローラ31によるフィルム基板8の搬送を補助し、次の工程である貼り合わせ部5へ向けてフィルム基板8の方向を変える働きをしている。さらに図7に拡大して示すように、この下流側補助ローラ36は、中空の概略樽型をなす形状を有している。具体的には、下流側補助ローラ36の外周面を、幅方向両外側端部36a,36aから内側に向けてなだらかに湾曲して連続的に直径が大きくなる形状(いわゆる、クラウン形状)をなす湾曲面36sとしている。さらに、下流側補助ローラ36の幅方向中央部には、フィルム基板8(図中、ベースシート81にアンテナ回路82を形成した状態のものを指す。以下の各図について同様)上に搭載されたICチップ83よりも広い幅寸法の溝36bを周回させて形成し、この溝36bをICチップ83を避ける待避部としている。ここで、本実施形態で用いられるICチップ83には例えば1mm角、高さ1mm未満のものを採用しているので、溝36bの幅を例えば10mm、深さ1.3mmとしているが、これらの数値は適宜に設定することができる。なお、下流側補助ローラ36の中空部36cは、図示しない回転軸を挿通させるためのものである。
【0029】
このように、クラウン形状の下流側補助ローラ36を用いることで、湾曲面36sの幅方向中央部(溝36bの開口周縁部)は外側端部36aよりも回転速度を大きくすることができることから、下流側補助ローラ36に案内されるフィルム基板8はより速度が大きい幅方向中央部に引き寄せられるため、高速で搬送されるフィルム基板8の蛇行を防ぐことができる。さらに、下流側補助ローラ36に待避部として形成した溝36bにより、下流側補助ローラ36の湾曲した外周面がフィルム基板8上のICチップ83に直接接触して圧迫することを避けることができ、ICチップ83の破損を効果的に防止することが可能である。さらにこの下流側補助ローラ36は、溝36bによりICチップ83と共に未乾燥の接着剤84をも跨ぐようにフィルム基板8を通過させるため、接着剤84が下流側補助ローラ36の表面に付着してその後のフィルム基板8を汚損したり、下流側補助ローラ36によるフィルム基板8の案内機能を損ねることもない。したがって、このような下流側補助ローラ36をICチップ実装部3の主ローラ31の出口側、すなわち搬送経路上においてフィルム基板8への接着剤84の塗布とICチップ83の搭載よりも後の工程に設けているため、ICチップ実装体9の歩留まりを向上することが可能である。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態と同様のICチップ実装体の製造装置1において適用される下流側補助ローラの形状は、次のようなものとすることが可能である。図8に第1変形例として示す下流側補助ローラ136は、上記実施形態と同様に中空の樽形状をなすものであるが、その外周面を、幅方向両外側端部136a,136aから内側に向けてなだらかに且つ直線的に直径が大きくなる形状(いわゆる、テーパ形状)をなす傾斜面136sとしている。このように、外周面を傾斜面136sとした下流側補助ローラ136であっても、外周面を湾曲面36sとした上記実施形態の場合と同様に、フィルム基板8の搬送時の蛇行を防止することが可能である。また、この下流側補助ローラ136には、上記実施形態と同様の溝136bを形成することで、フィルム基板8上のICチップ83への圧迫・破壊を避け、且つ接着剤84の付着を防止するようにしている。
【0031】
また、図9にICチップ実装部の一部を拡大して第2変形例と示すICチップ実装体の製造装置においては、下流側補助ローラ236には、円筒形状をなすものを採用している。具体的にこの下流側補助ローラ236の幅方向中央部には、上記実施形態や第1変形例と同様の溝236bを待避部として形成しているが、外周面236sは図示されるように断面視平坦である。このような下流側補助ローラ236に対して、それと対面する主ローラ231の外周面231sを、上記実施形態における下流側補助ローラ36と同様に、幅方向中央部における直径を外側端部における直径よりも大きくし、なだらかに湾曲したクラウン形状としている。このように、下流側補助ローラ236に形成した待避部としての溝236bにより、フィルム基板8上のICチップ83への圧迫と接着剤84の付着を避けつつ、主ローラ231の外周面をクラウン形状とすることで、高速で搬送されるフィルム基板8の蛇行防止を図ることができる。なお、本変形例では、主ローラ231として外周面がクラウン形状をなすものに代えて、上述した第1変形例における下流側補助ローラ136と同様に、外周面がテーパ形状をなすものを採用しても、同様の効果を得ることができる。
【0032】
さらにまた、上記実施形態で説明したような下流側補助ローラ36においては、例えば図10に第3変形例として一部を拡大して示すように、待避部として形成した溝36に、ICチップ83と接触しても破損が生じるほどの圧迫を加えない程度に柔軟な緩衝部材36dを取り付けても構わない。緩衝部材36dとしては、例えばスポンジやウレタン等の柔軟な材料を利用することができる。このようにすることで、下流側補助ローラ36とフィルム基板8との接触面積を大きくしてフィルム基板8の安定した搬送と蛇行防止を図りつつ、ICチップ83の破損防止も図ることができる。
【0033】
以上の他にも、下流側補助ローラを幅方向に中央部で2分割される態様として、左右の部品の間にフィルム基板8上のICチップを跨ぐことができる程度の間隙を形成し、この間隙により待避部を構成してもよい。また、以上に説明した下流側補助ローラと同様に、ICチップへの圧迫を避けるための待避部を形成したローラや、待避部に加えて表面形状をクラウン形状やテーパ形状としたローラは、ICチップ実装部の出口側に主ローラと対面して設けられる補助ローラにのみ適用されるものではなく、ICチップ実装体の製造装置におけるベースシート(或いはベースシートにアンテナ回路が形成されたフィルム基板も含む)の搬送経路上で、ICチップが搭載された後の工程においてベースシートに当接する各種の当接ローラにも適用することができる。さらに本発明は、ICチップ実装体の製造装置の全体構成についても、上記実施形態のようなものに限らず、種々の構成を備えたものに適用することができる。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態により製造されるICチップ実装体から作製されるICタグを模式的に示す平面図。
【図2】同ICタグを模式的に示す縦断面図。
【図3】同実施形態に適用されるフィルム基板の一部を示す平面図。
【図4】同実施形態においてICタグとして切り出される前のシート上のICチップ実装体の一部を示す平面図。
【図5】同実施形態に係るICチップ実装体の製造装置の全体構成を模式的に示す図。
【図6】同実施形態におけるICチップ実装部を拡大して示す概略側面図。
【図7】同ICチップ実装部に適用される下流側補助ローラ及びICチップが搭載されたフィルム基板を示す拡大断面図。
【図8】同実施形態の第1変形例として適用される下流側補助ローラ及びICチップが搭載されたフィルム基板を示す拡大断面図。
【図9】同実施形態の第2変形例として適用されるICチップ実装部の一部を示す拡大断面図。
【図10】同実施形態の第3変形例として適用される下流側補助ローラ及びICチップが搭載されたフィルム基板の一部を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0035】
1…ICチップ実装体の製造装置
31,231…主ローラ
231s…外周面
36、136、236…下流側補助ローラ(当接ローラ)
36a,136a…外側端部
36b,136b,236b…溝(待避部)
36d…緩衝部材
36s,136s,236s…外周面
8…フィルム基板
81…ベースシート
82…アンテナ回路
83…ICチップ
84…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面にアンテナ回路が形成されてフィルム基板とされたベースシートの搬送経路上において、当該ベースシート上の所定位置にICチップが搭載される工程よりも下流側に配置され、前記ベースシートに当接する当接ローラを具備し、
前記当接ローラに、前記ベースシート上のICチップへの圧迫を避ける待避部を形成していることを特徴とするICチップ実装体の製造装置。
【請求項2】
前記待避部は、前記ICチップの幅寸法よりも広く前記当接ローラの表面に開口させた溝又は間隙により構成したものである請求項1に記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項3】
前記当接ローラは、前記ICチップを圧迫しない緩衝部材を前記溝又は間隙に取り付けたものである請求項2に記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項4】
前記搬送経路の一部を構成し、前記フィルム基板とされたベースシートを密着させつつ回転動作を行いながら搬送する過程で、当該ベースシートに順次接着剤塗布装置による接着剤の塗布と、ICチップ搭載装置による前記接着剤を介したICチップの搭載とを行わせる主ローラをさらに具備し、
前記当接ローラは、前記主ローラの前記搬送経路における下流側に対向配置される下流側当接ローラである請求項1乃至3の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項5】
前記当接ローラを、前記待避部を除いて当該当接ローラの回転中心となる中心軸から前記ベースシートと接触する表面までの距離が、外側方から内方に向けて連続的に大きくなる形状としている請求項1乃至4の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項6】
前記主ローラを、当該主ローラの回転中心となる中心軸から前記ベースシートと接触する表面までの距離が、外側方から内方に向けて連続的に大きくなる形状としている請求項4に記載のICチップ実装体の製造装置。
【請求項7】
前記当接ローラ又は前記主ローラの表面を、外側方から内方に向けて中心軸からの距離が大きくなる湾曲形状又は傾斜形状としている請求項5又は6の何れかに記載のICチップ実装体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−252184(P2009−252184A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102888(P2008−102888)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】