説明

ICデバイス用ソケット

【課題】基板の厚みを増加させることなくかつ容易に、複数種類の電源設定及び/又はグラウンド設定を可能にする構造を備えたICデバイス用ソケットを提供する。
【解決手段】ICデバイス用ソケットは、基材21内にC成分を構成するよう配置された、少なくとも一つの誘電体層22と、その両面に形成された電源層222、222’及びGND層224、224’を備える。電源層222、222’及びGND層224、224’それぞれは、絶縁領域290を介して2以上に分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPU、メモリ等の半導体集積回路(以下、ICという)デバイスの検査に使用されるICデバイス用ソケットに関し、特に、半導体パッケージテスト用のコンデンサ機能を具備したICデバイス用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
BGA(ボールグリッドアレイ)デバイス等のICデバイスの信号伝送特性等の評価試験を行う際、そのICデバイスの端子それぞれに電気的に接続可能な接触子を備えたソケット(以下、ICデバイス用ソケットという)が使用される。近年、ICデバイスの扱う信号は、その処理速度の高速化に伴って高周波化している。信号の高速化に対応して、ICデバイス用ソケットも高速信号を伝送できることが求められている。また、電子機器の消費電力低減のためにICデバイスの動作電源の低電圧化もすすんでいる。このようにICデバイスの安定した高速動作には、該ICデバイスに対して安定的に電源が供給される必要である。なお、ICデバイスの高速化と低電圧化により、電源の安定供給がますます重要かつ難しくなっている。
【0003】
ICデバイスの高速動作時も安定的に電源が供給されるためには、電源とグラウンドのインピーダンスを高い周波数領域まで低く抑える必要がある。ICデバイス用ソケットにおいては、当該ICデバイス用ソケットに含まれる導電性コンタクトピンの自己インダクタンスを下げることが好ましい。このため、一般に導電性コンタクトピンは太くかつ短いものが好ましいとされている。
【0004】
高速信号伝送を志向するICデバイス用ソケットに対応する他の方法が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、「本発明のLSIソケット101は、プリント基板102、ポゴピン103、ポゴピン支持筐体部104の3つの部品から構成されている。プリント基板102には、印加される電圧値が異なる第1の電源ピン105と第2の電源ピン106、GNDピン107、信号ピン108用となるポゴピン103がそれぞれ挿入される複数のスルーホール109が設けられており、信号ピン108が貫通するスルーホール109以外の全てのスルーホール109内面にメッキ層116が形成されている」と記載されている。
【0005】
特許文献2には、「一般的に、電源用プローブのバイパス用チップコンデンサは、検査用ソケット下面側の配線基板上において、電気的な距離ができるだけデバイスに近い配線パターン上に実装される」及び「チップコンデンサを被検査デバイスの直下であり検査ソケットの上部である位置に実装する事が必要となった」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/006003号パンフレット
【特許文献2】特開2009−85948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、従来のICデバイス用ソケットについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、上述のように導電性コンタクトピンは太くかつ短いものが好ましいとされている。ところが、ICデバイスの端子間のピッチの狭小化によって導電性コンタクトピンの太さは必然的に制限される。一方、導電性コンタクトピンは高価であることから、繰り返し使用により信頼性が低下した導電性コンタクトピンは随時交換されることが一般的である。したがって、導電性コンタクトピンの交換時の作業性を考慮等すると該導電性コンタクトピンは一定以上の長さを有する必要がある。なお、導電性コンタクトピンが短いと、稼動長が短くなる。この場合、基板や半導体パッケージが平坦でない場合に追従できなくなる場合があるので、その意味においても導電性コンタクトピンは一定以上の長さを有するのがよい。
【0008】
或いは、ICデバイス用ソケットの筐体や当該ICデバイス用ソケットに組み込まれる導電性コンタクトピンの電源用ピンとグラウンド用ピンの間に直接コンデンサを接続することによりインピーダンスを下げていた。しかしながら、ICデバイス用ソケットの筐体や導電性コンタクトピンに直接コンデンサを接続すると、該ICデバイス用ソケットが占める体積が大きくなる。この場合、ICデバイス用ソケットの導電性コンタクトピンを高密度に配置することの妨げとなる虞がある。また、ICデバイス用ソケットの筐体や基板の周辺にコンデンサを配置・接続できたとしても、導電性コンタクトピンから離れた位置にしかコンデンサを配置・接続できない場合がある。その場合、コンデンサまでの配線長による自己インダクタンスによってコンデンサの効果が有効に作用しない虞がある。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するための構造を基本構造とし、具体的には、導電性コンタクトピンの交換作業性を低下させることなく、加えてICデバイスの検査時に信号伝送を安定させることが可能な構造を備える。
【0010】
最近では、SoC(System on Chip)やSiP(System in Package)のように、1つのパッケージ内に複数の電源及び/又はグラウンドを有する半導体デバイスが知られている。これら半導体デバイスは、1つのパッケージで、異なる電圧で動作する種々の機能を実現するものや、同じ電圧であっても、正常に動作させるために電源及び/又はグラウンドを独立に用意する必要のあるアナログ回路とディジタル回路の共存に対応することが必要な場合もある。
【0011】
そこで本発明は、上記基本構造を採用し、更に導電性コンタクトピンが挿入される基板自体の厚みを増加させることなくかつ容易に、複数種類の電源設定及び/又はグラウンド設定を可能にするための構造を備えたICデバイス用ソケットと提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るICデバイス用ソケットは、基板と、複数の導電性コンタクトピンを有する。基板は、第1面と、該第1面に対向する第2面と、それぞれが該第1面と該第2面を連絡する複数の貫通孔を有する。複数の導電性コンタクトピンは、それぞれの一部が複数の貫通孔のうちいずれかに挿入された状態で、基板によって保持されている。また、基板は、基材と、少なくとも一つの誘電体層と、第1及び第2導電層とを少なくとも備える。基材は、絶縁性材料からなり、上記第1面と、上記第2面と、上記複数の貫通孔を有する。誘電体層は、複数の貫通孔と交差した状態で基材の第1面及び第2面の間に設けられており、該基材よりも高い誘電率を有する。第1及び第2導電層は、基材の第1面から第2面に向かう第1方向に沿って、誘電体層を挟んでいる。また、本発明に係るICデバイス用ソケットは、第1及び第2導電層の少なくともいずれかは、絶縁領域を介して水平方向に2以上に分割されていることを特徴としている。なお、水平方向は、上記基板の第1面から第2面に向かう上記第1方向に対して直交する方向に相当する。
【0013】
さらに、電源及びグラウンドの数が多いために、又は、容量を増やすために一つの平面に分割仕切れない場合は、分割された電源及びグラウンドに相当する導電層が複数枚配置されてもよい。すなわち、当該ICデバイス用ソケットにおける基板内に複数の誘電体層が積層配置された構造においては、少なくとも一方面に絶縁領域を介して分割された導電層が設けられた複数の誘電体層が含まれる一方、他の誘電体層は、少なくとも一方面に絶縁領域を介して分割された導電層が設けられた構造と、両面とも絶縁領域を介して分割された導電層が設けられた構造と、両面とも分割されていない導電層が設けられた構造のいずれも構造が採用されてもよい。
【0014】
また、誘電体層の両面に導電層が設けられることにより、これら互いに対面する導電層によりコンデンサ(以下、C成分という)が構成される。本発明では、該誘電体層の少なくとも一方の面に設けられた導電層が絶縁領域を介して分割された構成が採用されているため、一つの平面上に複数のC成分を形成することが可能になる。一方で、基板全面に導電層が配置された場合と比較して各C成分の容量は必然的に小さくなるが、該導電層の分割領域の面積は、必要とされる最小限容量を確保できれば、基本的にその面積及び平面パターン(形状)について制限はない。この場合、分割された導電層が少なくとも一方の面に設けられた複数の誘電体層が基材内に積層配置された場合であっても、誘電体層ごとに導電層の分割パターンがは異なっていてもよい。
【0015】
上記絶縁領域は、少なくとも一部が空気間隙であってもよい。また、絶縁性材料は、誘電体層とは異なる絶縁性材料(例えば基材材料などの絶縁性材料)であってもよい。この場合、上記導電層とともに誘電体層自体も水平方向に分割された構造となる。しかしながら、誘電体層自体は異なる絶縁性材料や空気間隙によって分割されたとしてもその機能に格別の差異が生じるわけではない。したがって、本明細書では、誘電体層に関して、水平方向に分割された構成であっても、これら分割領域を1つの誘電体層と規定する。
【0016】
本願発明に係るICデバイス用ソケットでは、上述のように、C成分を構成する誘電体層及びその両面に設けられた導電層とそれらを包埋する基材とにより実質一体物の基板が形成される。そのため、各導電性コンタクトピンとC成分との距離は極めて短くなり、その結果、当該ICデバイス用ソケットの性能を高めることができる。また、各導電性コンタクトピンは、基板に圧入等されることにより保持される。そのため、基板は各導電性コンタクトピンの支持体としても機能し、該各導電性コンタクトピンを支持するための他の部材が不要となる。
【0017】
上記複数の導電性コンタクトピンは、複数の第1導電性コンタクトピンと、該複数の第1導電性コンタクトピンとは接続状態の異なる複数の第2導電性コンタクトピンを含む。すなわち、複数の第1導電性コンタクトピンは、それぞれの一部が複数の貫通孔のうちいずれかに挿入され、該一部が対応する導体部材(貫通孔の内面に設けられた金属膜等)に接触している。複数の第2導電性コンタクトピンは、それぞれの一部が複数の貫通孔のうち別のいずれかに挿入され、第1及び第2導電層に非接触となっている。この非接触状態は、該第2導電性コンタクトピンに対応する貫通孔の内面に設けられた導体部材に対して非接触となっているか、又は、該第2導電性コンタクトピンに対応する貫通孔の内面自体に導体部材が存在しないことにより、第1及び第2導電層に対して非接触となっている状態を意味する。この場合、第1導電層又は第2導電層は、対応する導体部材を介して複数の第1導電性コンタクトピンのうちいずれかに電気的に接続される。
【0018】
以上のように本発明に係るICデバイス用ソケットにおける複数の第1導電性コンタクトピンのそれぞれは、第1導電層のみに電気的に接続される第1グループ(例えば電源ピンのグループ)と、第2導電層のみに電気的に接続される第2グループ(例えばグラウンドピンのグループ)とに区分される。また、第1及び第2導電層の何れにも電気的に接続されない複数の第2導電性コンタクトピンのそれぞれは信号ピンとして機能することになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るICデバイス用ソケットによれば、誘電体層とともにC成分を構成する第1及び第2導電層の少なくともいずれかが、絶縁領域を介して水平方向に2以上に分割されている。この構成により、異なる電源及び/又はグラウンドを基板内に積層配置する場合と比較して、基板の厚み増加をより効果的に抑制することが可能になる。また、基板製造時においては、基材の一部を介してC成分の積層工程自体の工程数を低減することが可能になるため、基板製造が容易になる(製造コストの削減)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るICデバイス用ソケットの一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたICデバイス用ソケットの、II−II線に沿った断面構造を示す図である。
【図3】図1に示されたICデバイス用ソケットにおける基板の平面図であり、ピン配置と分割された導電層の位置関係の一例を説明するための図である。
【図4】図2に示された断面構造のうちIII部を拡大した図である。
【図5】図3に示された平面図におけるIV部に相当する電源層の構成を示す平面図である。
【図6】図3に示された平面図におけるIV部に相当するグラウンド層の構成を示す平面図である。
【図7】本実施形態における電源層の他の構造を示す平面図である。
【図8】図7に示された電源層とともに誘電体層を挟み込むグラウンド層の構成を示す平面図である。
【図9】図7に示された構造を有する電源層(絶縁領域によって2以上に分割された電源層)と図8に示されたグラウンド層(絶縁領域によって2以上に分割された電源層)とで誘電体層を挟み込んだ構造(C成分層)の一部を、図3に示されたIV部に相当する基板領域とともに示す斜視図である。
【図10】基板内に積層配置された複数のC成分層(誘電体とその両面に設けられた導電層により構成されている)の組み合わせの一例を、図9の例に倣って示す斜視図である(その1)。
【図11】基板内に積層配置された複数のC成分層の組み合わせの一例を、図9の例に倣って示す斜視図である(その2)。
【図12】図9〜図11に示された構成の変形例として、絶縁領域が空気間隙である場合の当該ICデバイス用ソケットの構成を説明するための斜視図である。
【図13】本実施形態に係るICデバイス用ソケットにおける基板の平面図であり、ピン配置と分割された導電層の位置関係の他の例を説明するための図である(その1)。
【図14】本実施形態に係るICデバイス用ソケットにおける基板の平面図であり、ピン配置と分割された導電層の位置関係の他の例を説明するための図である(その2)。
【図15】本実施形態に係るICデバイス用ソケットにおける基板の平面図であり、ピン配置と分割された導電層の位置関係の他の例を説明するための図である(その3)。
【図16】本実施形態に係るICデバイス用ソケットにおける基板の平面図であり、ピン配置と分割された導電層の位置関係の他の例を説明するための図である(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るICデバイス用ソケットの各実施形態を、図1〜図16を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
まず、本実施形態に係るICデバイス用ソケットの基本構造を含む一実施形態について、図1〜図6を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るICデバイス用ソケット1の一実施形態の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示されたICデバイス用ソケットの、II−II線に沿った断面構造を示す図である。また、図3は、図1に示されたICデバイス用ソケット1における基板2の構成を示す平面図である。なお、図3中の矢印Lは、図1のII−II線に実質的に一致している。ICデバイス用ソケット1は、基板2と、基板2に圧入等により保持された複数の導電性のコンタクトピン3と、基板2を支持するボディ4とを備える。ボディ4は、検査すべきICデバイス(図示せず)を基板2上の所定位置に配置するためのガイド部又はガイド壁41を有し、さらにICデバイスを検査する検査装置(図示せず)の所定位置に、当該ICデバイス用ソケット1を配置するための位置決め部(本実施形態では図2に示す位置決めピン42)を有する。なお、ボディ4は、必要に応じてICデバイス用ソケット1に組み込まれる。また、基板2は、位置決め手段と協働して位置決めを行う孔や切欠きを有していてもよい。
【0024】
図4は、図2に示された断面構造のうちIII部を拡大した図である。図4に示されたように、基板2は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材21と、この基材21に包埋された少なくとも1つ(図示例では4つ)の第1〜第4誘電体層22〜25を有し、誘電体層の上面側及び下面側には銅等の導電層が形成されている。また、図2中にも示されたように、基材21内に包埋された各導電層は、絶縁領域290により水平方向に分割されている。この絶縁領域290は、基材材料や誘電体材料などの絶縁性材料からなる領域を意味しており、この図4に示された例では、基材21の一部及び第1〜第4誘電体層22〜25の一部が絶縁領域290に含まれる。
【0025】
上述のように一つの誘電体層とその両面上に形成された導電層は、協働してC成分を構成する。つまり、基板2は、基材21を構成する材料(基材の一部)と、導電層と、誘電体層とを積層することにより構成されている。また、C成分の容量を高めるためには各誘電体層の誘電率は高い程好ましく、例えば第1〜第4誘電体層22〜25それぞれは、基材21の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体からなるのが好ましい。例えば、高誘電体としてスリーエム社製のEmbedded Capacitor Material(ECM)が使用可能である。ECMは、高誘電材料を柔軟性のあるシート状に形成したものである。このような基板は、印刷回路板を作製する方法によって、作製することができる。
【0026】
基板2を構成する材料、すなわち、基材21の材料は、絶縁性材料であればよく、ガラス繊維の代わりに紙を含んでいてもよいし、エポキシ樹脂の代わりにフェノール樹脂やポリアミド樹脂を含んでもよい。また導電層を構成する材料として、銅以外に銀や金が使用されてもよい。第1〜第4誘電体層22〜25のそれぞれは、ポリマーを含んでもよい。好ましくは、第1〜第4誘電体層22〜25のそれぞれは、ポリマーと複数の粒子とを含み、具体的には樹脂と粒子とを混合することによって作製される。好適な樹脂としては、エポキシ、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ベンゾシクロブテン、ポリノルボルネン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリレート、及びそれらの混合物が挙げられる。粒子は、誘電性(又は絶縁性)粒子を含み、その代表例としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、酸化チタン、チタン酸鉛ジルコニウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
第1〜第4誘電体層22〜25それぞれの厚みは、例えば0.5μm以上とすることができ、100μm以下とすることができる。該厚みはより薄い方が、キャパシタの静電容量を高くできるので好ましく、例えば15μm以下、或いは10μm以下とすることができる。ただし、該厚みはより厚い方が、接着強度の点からは好ましく、例えば1μm以上とすることができる。
【0028】
また、誘電体の比誘電率は高い程好ましく、例えば10以上、或いは12以上とすることができる。比誘電率の上限には特に制限はないが、例えば30以下、20以下、或いは16以下とすることができる。
【0029】
第1〜第4誘電体層22〜25のそれぞれの両面に形成された導電層のうち、一方の導電層は当該ICデバイス用ソケット1の電源ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層は当該ICデバイス用ソケット1のグラウンド(以下、GNDという)ピンと電気的に接続されたGND層を構成する。詳細には、基板2のICデバイス側の面(図2では上面)26に最も近い第1誘電体層22の上面221には絶縁領域290を介して第1電源層を構成する分割領域222、222′が形成され、下面223には絶縁領域290を介して第1GND層を構成する分割領域224、224′が形成される。同様に、第1誘電体層22の直下に位置する第2誘電体層23の上面231には絶縁領域290を介して第2電源層を構成する分割領域232、232′が形成され、下面233には絶縁領域290を介して第2GND層を構成する分割領域234、234′が形成される。さらに、基板2の検査装置側の面(図2では下面)27に最も近い第4誘電体層25の上面251には絶縁領域290を介して第4電源層を構成する分割領域252、252′が形成され、下面253には絶縁領域290を介して第4GND層を構成する分割領域254、254′が形成される。同様に、第4誘電体層25の直上に位置する第3誘電体層24の上面241には絶縁領域290を介して第3電源層を構成する分割領域242、242′が形成され、下面243には絶縁領域290を介して第3GND層を構成する分割領域244、244′が形成される。なお、図4に示された断面構造では、基板2の上面26は、基材21の上面と一致しており、基板2の下面27は、基材21の下面に一致している。
【0030】
ここで、第1電源層の分割領域222、222′それぞれは異なる電位に設定されてもよく、第1GND層の分割領域224、224′も異なるGND設定が可能である(異なるGNDピンへの電気的接続)。第2電源層の分割領域232、232′それぞれについても異なる電位に設定可能であり、第2GND層の分割領域234、234′それぞれも別個にGND設定可能である。第3電源層の分割領域242、242′それぞれも異なる電位に設定可能であり、第3GND層の分割領域244、244′それぞれも共通のGNDピンに電気的に接続される必要はない。さらに、第4電源層の分割領域252、252′それぞれについても異なる電位設定が可能であり、第4GND層の分割領域254、254′も共通のGNDピンに電気的に接続される必要はない。
【0031】
なお、図4に示された例では、第1〜第4誘電体層22〜25全てが、その両面に絶縁領域290を介して水平方向に分割された導電層が設けられているが、基板2内に複数の誘電体層が積層配置される構成においては、その両面に分割されていない導電層が設けられた誘電体層が含まれていてもよい。例えば、分割されていない導電体層が基板2の全面に配置された場合、基板2の面積と略等しい面積のC成分が形成可能である。また、分割されていない導電層の面積は、必ずしも基板2の全面に一致する程度の面積を確保する必要はなく、その面積は、必要とされるC成分の容量に基づいて決定されればよい。加えて、分割されるか否かに関わらず、導電層の平面形状は基板2内において任意に決定されればよい。
【0032】
導電性コンタクトピン3のそれぞれは、基板2の上面26又は下面27に略垂直に基板2を貫通する。詳細には、基板2を構成する基材21、各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層には、各導電性コンタクトピン3を圧入可能な貫通孔28が形成されており、さらに、各貫通孔28の内面には銅、金又は銀等の導体部材281がメッキ等により形成されている。導体部材281が導電層のいずれか1つに導通接続されることにより、貫通孔28内に圧入された導電性コンタクトピン3のピンボディ31は、該導電性コンタクトピン3が信号ピンである場合を除き、導体部材281を介していずれかの導電層に電気的に接続されることになる。なお、信号ピン用の孔の内面にも導体部材281を形成してもよいが、しなくてもよい。
【0033】
各貫通孔28の寸法は、該貫通孔内に保持された導電性コンタクトピン3が、検査装置の基板にICデバイス用ソケット1を配置したときに生ずる当該導電性コンタクトピン3の内蔵バネの反力によって脱落しないように決定される。例えば、導電性コンタクトピン3の圧入保持力は0.1N以上であることが好ましい。また、各貫通孔28の寸法は、導電性コンタクトピン3の保守・交換時等には貫通孔28から導電性コンタクトピン3が比較的容易に抜き出すことができるように決定され、また、導電性コンタクトピン3を基板2から引き抜いたときに貫通孔28内面の導体部材281が剥離しないように決定される。例えば、導電性コンタクトピン3の圧入保持力は2.0N以下であることが好ましい。
【0034】
導電性コンタクトピン3のそれぞれは、基板2に圧入保持される略円筒状のピンボディ31と、該ピンボディ31の一端(図示例では下端)から突出することで検査装置(図示せず)に電気的に当接すなわち導通接続可能な第1接触部32と、ピンボディ31の他端(図示例では上端)から突出することでICデバイス(図示せず)に電気的に当接すなわち導通接続可能な第2接触部33とを有する。導電性コンタクトピン3としては、種々の形態が適用可能であるが、例えば、スプリングプローブと呼ばれるタイプのように、両接触部32、33がピンボディ31に対してスプリング等(図示せず)によってピンボディ31の軸方向に変位可能なものが好適である。
【0035】
導電性コンタクトピン3のピンボディ31は、円筒状であることが好ましい。このような形状を有する導電性コンタクトピン3の場合、ピンボディ31の外周表面と貫通孔28とが広い面積で接するので、当該導電性コンタクトピン3を貫通孔28に対して略同軸上に配置することが容易になる。さらに、導体部材281と導電性コンタクトピン3との接触面積が増えるため、電気的に安定した接続を実現できる。
【0036】
導電性コンタクトピン3は、上述の電源層に電気的に接続される電源ピンのグループと、GND層に接続されるGNDピンのグループと、いずれの層にも接続されない信号ピンのグループとに分類される。例えば、図4に示されたように、導電性コンタクトピン3bは第1電源層の分割領域222及び第3電源層の分割領域242の双方に接続される一方、導電性コンタクトピン3iは第1電源層の分割領域222′及び第3電源層の分割領域242′の双方に接続され、第1電源ピンとして機能する。導電性コンタクトピン3cは第2電源層の分割領域232及び第4電源層の分割領域252の双方に接続される一方、導電性コンタクトピン3fは第2電源層の分割領域232′及び第4電源層の分割領域252′の双方に接続され、それぞれ第2電源ピンとして機能する。同様に、導電性コンタクトピン3aは第1GND層の分割領域224及び第3電源層の分割領域244の双方に接続される一方、導電性コンタクトピン3hは第1GND層の分割領域224′及び第3電源層の分割領域244′の双方に接続され、それぞれ第1GNDピンとして機能する。導電性コンタクトピン3dは第2GND層の分割領域234及び第4電源層の分割領域254の双方に接続される一方、導電性コンタクトピン3gは第2GND層の分割領域234′及び第4電源層の分割領域254′の双方に接続され、それぞれ第2GNDピンとして機能する。また、導電性コンタクトピン3eはいずれの導電層にも接続されておらず、信号ピンとして機能する。
【0037】
本実施形態では、C成分を構成する各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層とそれらを包埋する基材とにより実質一体物の基板2が形成されている。したがって、導電性コンタクトピン3とC成分との距離を極めて短くすることができる。また、導電性コンタクトピン3のそれぞれは、摩擦力によって基板2に保持される等、簡単な方法で基板2に保持される。そのため、基板2は導電性コンタクトピン3の支持体としても作用し、導電性コンタクトピン3を支持するための他の部材が不要になる。つまり、導電性コンタクトピン3は、実質的に基板2のみによって保持及び位置決めされる。また、高誘電体からなる誘電体層を使用することにより、基板2のさらなる薄型化が図られる。
【0038】
図4に示されたように、基板2は高誘電体(誘電体層)を挟む電源層とGND層とで構成されるC成分を、基板2の上面26及び下面27(基材21の上面及び下面にぞれぞれ一致)になるべく近い位置(すなわち表層側)に具備することが好ましい。この理由は、基板2の表面と導電層との距離が小さい方が、ICデバイス検査時において電源供給の安定性が得られるからである。より具体的に言えば、基板2の上面26と第1及び第2誘電体層22、23との距離が短い程、検査対象であるICデバイスの入力感度が上昇する。したがって、第1及び第2誘電体層22、23は、基板2の上面26と下面27の中間点を基準にして、該上面26側に配置されるのが好ましい。また、第3及び第4誘電体層24、25は、基板2の上面26と下面27の中間点を基準にして、該下面27側に配置されるのが好ましい。本実施形態では、基板2が電源層とGND層とに挟まれた高誘電体からなる誘電体層を内包した実質一体物として構成されている。そのため、C成分を基板2の表面近傍に配置した構成が容易に実現可能になり、より正確なICデバイスの検査が実現できる。
【0039】
上述のように、導電性コンタクトピン3は実質的に基板2のみによって保持される。そのため、基板2内における任意の位置に、必要な容量を有するC成分を複数に分割した状態で配置することが可能になる。また、基板2は、その厚さ方向の中心付近に、誘電体層とその両面に形成された導電層とからなるC成分をさらに備えてもよい。
【0040】
導電性コンタクトピン3の長さは、電気特性等の観点からは短い方が好ましい。しかしながら、導電性コンタクトピン3の長さが短い程、ピン交換の作業性や組立性は落ちることになる。これに対し、本基本構造によれば、上記基板2の構成により、電気特性は実際より短いポゴピンが使用された場合と同様の効果が得られるので、比較的長い導電性コンタクトピン3を使用しても当該ICデバイス用ソケット1の性能低下を考慮する必要はない。
【0041】
ピンボディ31の長さが基板2の厚さよりも長ければ、結果的に導電性コンタクトピン3も長くなって電気特性が低下する。一方、ピンボディ31の長さが基板2の厚さよりも短すぎてピンボディ31の軸方向端部がある導電層よりも基板厚さ方向について基板内部側に位置する場合、導電性コンタクトピン3からその導電層に至る経路が複雑になってICデバイス用ソケットの性能低下につながる。したがって、各導電性コンタクトピン3のピンボディ31の軸方向長さは、基板2の厚さと概ね同等であることが好ましい。なお、基板2の厚さは、各導電性コンタクトピン3を保持するために必要とされる構造強度を考慮して決定され、強度が十分であれば、できるだけ薄いものとするのが好ましい。
【0042】
加えて、本実施形態に係るICデバイス用ソケット1は、一例として、4つの誘電体層22〜25(それぞれの両面には電源層及びGND層が形成されている)が基材21の一部を介して積層された構造を備える。この構成によれば、例えば第1電源層と第2電源層とで、異なる電位設定が可能なことから、当該ICデバイス用ソケット1によっても、1つのパッケージ内において異なる電源設定及び又はグラウンド設定が可能である。また、同一面内であっても、分割領域ごとに異なる電源設定及び/又はグラウンド設定が可能である。例えば、第1電源層の分割領域222と分割領域222′とで異なる電源設定が行われてもよく、また、第2電源層の分割領域232と分割領域232′とで異なる電源設定が行われてもよい。
【0043】
すなわち、第1電源層は、一例として図5に示されたような平面形状を有する一方、第1GND層は、一例として図6に示されたような平面形状を有する。なお、図5は、図3に示された平面図におけるIV部に相当する第1電源層の構成を示す平面図であるが、他の第2〜第4導電層の何れも同様の平面形状を有してもよい。また、図6は、図3に示された平面図におけるIV部に相当する第1GND層の構成を示す平面図であるが、他の第2〜第4GND層の何れも同様の平面形状を有してもよい。
【0044】
図5に示されたように、第1電源層は、絶縁領域290を介して水平方向に分割された分割領域222と分割領域222′から構成されている。また、これら分割領域222、222′には、基板2に設けられた貫通孔28に相当する位置に、それぞれ直径の異なる2種類の開口280a、280bが設けられている。なお、分割領域222、222′それぞれに設けられた、これら2種類の開口280a、280bは、図5中の矢印L1に沿った方向に配置されており、この矢印L1は、図1中のII−II線に実質的に一致している(図4に示された断面に実質的に一致)。開口280aは、貫通孔28の直径と略一致した直径を有しており、より詳細には、該貫通孔28の内面に形成された導体部材281と当該第1電源層を構成する分割領域222、222′との間で十分に電気的接触状態が維持できる程度の開口径を有する。一方、開口280bは、貫通孔28の直径よりも大きな直径を有しており、より詳細には、該貫通孔28の内面に形成された導体部材281と当該第1電源層を構成する分割領域222、222′との間で十分に電気的分離状態が維持できる程度、例えば貫通孔28の直径よりも50μm程度大きな開口径を有する。
【0045】
また、図6に示されたように、第1GND層も絶縁領域290を介して水平方向に分割された分割領域224と分割領域224′から構成されている。また、これら分割領域224、224′も、上述の第1電源層の分割領域222、222′と同様に、基板2に設けられた貫通孔28に相当する位置に、それぞれ直径の異なる2種類の開口280a、280bが設けられている。なお、これら分割領域224、224′それぞれに設けられた、これら2種類の開口280a、280bは、図6中の矢印L2に沿った方向に配置されており、この矢印L2は、図1中のII−II線に実質的に一致している(図4に示された断面に実質的に一致)。開口280aは、貫通孔28の直径と略一致した直径を有しており、より詳細には、該貫通孔28の内面に形成された導体部材281と当該第1GNDを構成する分割領域224、224′との間で十分に電気的接触状態が維持できる程度の開口径を有する。一方、開口280bは、貫通孔28の直径よりも大きな直径を有しており、より詳細には、該貫通孔28の内面に形成された導体部材281と当該第1GND層の分割領域224、224′との間で電気的分離状態が十分に維持できる程度の開口径を有する。
【0046】
このように、本実施形態によれば、それぞれ基板2内に絶縁性材料からなる基材21の一部を介して電源層が積層配置されており、第1〜第4電源層ごとに異なる電位設定が可能になるとともに、各電源層でも、分割領域ごとに異なる電位設定が可能になる。特に、ICデバイス用ソケット1内において電位設定が複雑化すると、積層すべき層の数が多くなるため、基板2の厚み(上面26と下面27の間隔)の増加を回避する意味においても本実施形態の構造は有効である。
【0047】
以上、図1〜図6に示された実施形態では、C成分を構成する誘電体層とその両面に設けられた導電層からなる構造(以下、C成分層という)は、第1〜第4誘電体層22〜25それぞれについて、導電層が分割された構造が採用されているが、C成分層ごとに異なる導電層分割パターンが採用されてもよい。
【0048】
なお、最も基本的な構造は、基板2内に一つのC成分層を含む構造(図9)である。この図9に示す構造に採用可能な電源層の例を図7に示す。図7に示されたように、電源層2100は、絶縁領域2100cを介して水平方向(基板2の上面26から下面27に向かう方向に対して直交する方向)に分割領域2100aと分割領域2100bに分割されている。なお、電源層2100に設けられた、2種類の開口280a、280bは、図7中の矢印L3に沿った方向に配置されており、この矢印L3は、図1中のII−II線に実質的に一致している(図4に示された断面に実質的に一致)。
【0049】
また、GND層2200も、図8に示されたように、絶縁領域2200cを介して水平方向に分割領域2200aと分割領域2200bに分割されている。また、これら分割領域2200a、2200bにも、2種類の直径を有する開口280a、280bが形成されている。なお、これら2種類の開口280a、280bは、図8中の矢印L4に沿った方向に配置されており、この矢印L4は、図1中のII−II線に実質的に一致している(図4に示された断面に実質的に一致)。
【0050】
以上のように、それぞれが水平方向に2分割された電源層2100とGND層2200で誘電体層2000を挟み込んだ層構造を基板2に設けることにより、図9に示す基本的な構造が実現される。この場合、基板2の厚みを増加させることなく、複数種類の電源設定が可能になる。なお、図9は、図7に示された構造を有する電源層(絶縁領域によって2以上に分割された電源層)と図8に示されたGND層(絶縁領域によって2以上に分割された電源層)とで誘電体層を挟み込んだ構造(C成分層)の一部を、図3に示されたIV部に相当する基板領域とともに示す斜視図である。
【0051】
上述のように図9に示された例では、1つの平面上(誘電体層200とその両面に設けられた電源層2100及びGND層で構成されたC成分層の接地平面に相当)に複数のC成分を実現しているが、基板2内に複数のC成分層が積層配置された構造では、さらに、図9に示されたC成分層に更に他の導電層分割パターンを有するC成分層を組み合わせることも可能である。
【0052】
図10及び図11は、基板内に積層配置された複数のC成分層(誘電体とその両面に設けられた導電層により構成されている)の組み合わせの一例を、図9の例に倣って示す斜視図である。
【0053】
まず、図10に示された例では、図9に示された第1C成分層と、導電層分割パターンの異なる第2C成分層が基板2内に積層配置されている。第1C成分層は、上述のように、誘電体層2000と、それぞれが絶縁領域2100cを介して誘電体層2000の一方の面上に設けられた分割領域2100a、2100bを含む電源層2100と、それぞれが絶縁領域2200cを介して誘電体層2000の他方の面上に設けられた分割領域2200a、2200bを含むGND層2200から構成されている。一方、第2C成分は、誘電体層3000と、それぞれが絶縁領域3100cを介して誘電体層3000の一方の面上に設けられた分割領域3100a、3100bを含む電源層3100と、誘電体層3000の他方の面上に設けられた、分割されていないGND層3200から構成されている。なお、第1C成分層の電源層2100における絶縁領域2100cの形状(分割パターン)と、第2C成分層の電源層3100における絶縁領域3100cの形状(分割パターン)とは、当然のことながら異なっていてもよい。また、第2C成分層の分割されていないGND層3200は、基板2の上面26又は下面27に一致する程度の面積を有する必要はない。GND層3200の面積は、電源層3100の各分割領域3100a、3100bとの間で必要な容量が確保できる程度であればよい。
【0054】
また、図11に示された例では、図9に示された第1C成分層と、導電層分割パターンの異なる第3C成分層が基板2内に積層配置されている。第1C成分層の構造は、上述の図9及び図10と同様である。第3C成分は、誘電体層4000と、該誘電体層4000の一方の面上に設けられた、分割されていない電源層4100と、該誘電体層4000の他方の面上に設けられた、分割されていないGND層4200から構成されている。この第3C成分層の電源層4100及びGND層4200の各面積も、基板2の上面26又は下面27に一致する程度の面積を有する必要はない。C成分の容量は、基板2の上面26から下面27に向かう方向に沿ってみたときに電源層4100とGND層4200とが重なり合う領域の面積によって決まる。そのため、電源層4100の面積と平面形状、及び、GND層4200の面積と平面形状は、それぞれ必要な容量が確保できる範囲で決定されればよい。
【0055】
なお、導電層を分割する絶縁領域の少なくとも一部は間隙、例えば、空気間隙であってもよい。例えば、上述の図9に示されたC成分層を含む複数のC成分層全てが分割された導電層を有する場合、空気間隙である絶縁領域2100cは、図12に示されたように、その上面が基板2の上面26に到達するまで伸びる一方、その下面が基板2の下面27に到達するまで伸びた形状を有するのが好ましい。このとき、図12に示されたように、誘電体層2000は、2つの部分2000a、2000bに水平方向に分割され、電源層2100も、2つの部分2100a、2100bに水平方向に分割され、さらに、GND層2200も、2つの部分2200a、2200bに水平方向に分割される。本実施形態に係るICデバイス用ソケットでは、上記誘電体層2000、電源層2100、GND層2200の他、他の構成部分についても空気間隙である絶縁領域2100cによって水平方向に分割されてもよい。なお、図12も、図3のIV部に相当する基板2の内部構造を示している。また、図12の構成において、複数の誘電体層、すなわち複数のC成分層が積層配置される場合には、図12に示されたC成分層とともに、図10や図11に示されたような他のC成分層が含まれてもよい。
【0056】
図12の例では、絶縁領域2100cに空気間隙が適用されることにより、電源層2100及びGND層2200とともに、誘電体層2000も、水平方向に分割されることになる。しかしながら、誘電体層自体は異なる絶縁性材料や空気間隙によって分割されたとしてもその機能に格別の差異が生じるわけではない。よって、本明細書では、誘電体層に関して、水平方向に分割された構成であっても、これら分割領域を1つの誘電体層と規定する。
【0057】
以上のように、誘電体層2000とともにC成分を構成する電源層2100及びGND層2200の少なくともいずれかが、絶縁領域2100cを介して水平方向に2以上に分割された構成は、異なる電源及び/又はグラウンドを基板内に積層配置する場合と比較して、基板の厚み増加の抑制効果を顕著にする。また、基板製造時においては、基材の一部を介してC成分層の積層工程自体の工程数を低減することが可能になるため、基板製造が容易になる(製造コストの削減)。
【0058】
さらに、本実施形態に係るICデバイス用ソケット1において、基板2に保持される導電性コンタクトピン3の配置は、図3に示されたような矩形形状には限定されず、種々の配置パターンが採用可能である。また、採用される導電性コンタクトピン3の配列パターンによって分割される電源層及び/又はGND層の面積及び形状の任意に設定される。例えば、その一例を図13〜図16に示す。なお、図13〜図16は、それぞれ、本実施形態に係るICデバイス用ソケットにおける基板の平面図であり、ピン配置と分割された導電層の位置関係の他の例を説明するための図である。また、これら図13〜図16は、図3の例に倣って、基板2と第1電源層の分割領域222、222′に相当する要素の位置関係が示されている。
【0059】
図13に示された例において、基板2aには、矩形外周と矩形内周とで挟まれた矩形リング領域に導電性コンタクトピン3が配置されており、基板2a内に配置されるC成分層を構成する導電層のいずれかは、絶縁領域290aを介して水平方向に、2つの分割領域222a、222′aに分割される。
【0060】
また、図14に示された例において、基板2bには、内側矩形領域に導電性コンタクトピン3が配置されるとともに、該内側矩形領域を取り囲む矩形リング領域にも導電性コンタクトピン3が配置されている。この場合、基板2b内に配置されるC成分層を構成する導電層のいずれかは、例えば絶縁領域290bを介して分割領域222′bを分割領域222bが取り囲むように分割されてもよい。
【0061】
図15に示された例において、基板2cには、矩形領域の最外周に沿って導電性コンタクトピン3が配置されている。この場合、基板2c内に配置されるC成分層を構成する導電層のいずれかは、例えば絶縁領域290cを介して、導電性コンタクトピン3の配列に沿った形状の分割領域222c、222′cに分割されてもよい。
【0062】
さらに、図16に示された例において、基板2dには、所定距離だけ離間した状態で2列に導電性コンタクトピン3が配置されている。この場合、基板2d内に配置されるC成分層を構成する導電層のいずれかは、例えば絶縁領域290dを介して各列に対応した分割領域222d、222′dに分割領域されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ICデバイス用ソケット、2、2a、2b、2c、2d…基板、21…基材、22〜25、2000、2000a、2000b、3000、4000、5000…誘電体層、222、222′、222a、222′a、222b、222′b、222c、222′c、222d、222′d、232、232′、242、242′、252、252′、2100、2100a、2100b、3100、3100a、3100b、4100…電源層、224、224′、234、234′、244、244′、254、254′、2200、2200a、2200b、3200、4200…GND層、28…貫通孔、3、3a〜3i…導電性コンタクトピン、31…ピンボディ、32…第1接触部、33…第2接触部、4…ボディ、290、290a、290b、290c、290d、2100c、2200c、3100c…絶縁領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面に対向する第2面と、それぞれが該第1面と該第2面を連絡する複数の貫通孔と、を有する基板と、
それぞれの一部が前記複数の貫通孔のうちいずれかに挿入された複数の導電性コンタクトピンと、を備えたIC用ソケットであって、
前記基板は、
前記第1面と、前記第2面と、前記複数の貫通孔と、を有する基材と、
前記複数の貫通孔と交差した状態で前記基材の第1面及び第2面の間に設けられた、該基材よりも高い誘電率を有する少なくとも一つの誘電体層と、
前記基材の第1面から第2面に向かう方向に沿って、前記誘電体層を挟む第1及び第2導電層と、を備え、前記複数の導電性コンタクトピンは、
それぞれの一部が前記複数の貫通孔のうちいずれかに挿入され、該一部が前記第1導電層又は前記第2導電層に電気的に接続された複数の第1導電性コンタクトピンと、
それぞれの一部が前記複数の貫通孔のうち別のいずれかに挿入され、該一部が前記第1及び第2導電層に電気的に接続されていない複数の第2導電性コンタクトピンと、を含み、
前記第1及び第2導電層の少なくともいずれかは、絶縁領域を介して水平方向に2以上に分割されている、ICデバイス用ソケット。
【請求項2】
前記絶縁領域は、その一方の面が前記基材の第1面に到達するまで伸びる一方、該一方の面と対向する他方の面が前記基材の第2面に到達するまで伸びた形状を有することを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項3】
前記絶縁領域は、少なくとも一部が空気間隙であることを特徴とする請求項2記載のICデバイス用ソケット。
【請求項4】
前記複数の貫通孔のいずれかは、その内面に導体部材が設けられており、前記第1導電層は、対応する導体部材を介して前記複数の第1導電性コンタクトピンのうちいずれかに電気的に接続される一方、前記第2導電層は、対応する導体部材を介して前記複数の第1導電性コンタクトピンのうち別のいずれかに電気的に接続されている請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項5】
前記基板を支持するボディであって、検査すべきICデバイスを前記基板上の所定位置に配置するためのガイド部と、前記ICデバイスを検査する検査装置の所定位置に当該ICデバイス用ソケットを配置させるための位置決め部と、を有するボディを、更に備えたことを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−159422(P2012−159422A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19937(P2011−19937)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】