ICデバイス用ソケット
【課題】導電性コンタクトピンの効率的な利用と交換作業の効率化を可能にする、ICデバイス用ソケットを提供する。
【解決手段】ICデバイス用ソケット100は、第1基板210と、第2基板220と、第3基板230からなるピンホルダ1を備える。第1基板210は、第1配列パターンを形成するよう配置された第1ピン4を有する。第2基板220は、第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成するよう配置された第2ピン6を有する。第3基板230は、第1及び第2基板210、220の間に配置され、第1及び第2ピン4,6のうち同一機能を有するピン同士を電気的にそれぞれ接続する複数の導電路を有し、第3基板230は、第1及び第2基板210、220の少なくとも一方から分離されている。
【解決手段】ICデバイス用ソケット100は、第1基板210と、第2基板220と、第3基板230からなるピンホルダ1を備える。第1基板210は、第1配列パターンを形成するよう配置された第1ピン4を有する。第2基板220は、第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成するよう配置された第2ピン6を有する。第3基板230は、第1及び第2基板210、220の間に配置され、第1及び第2ピン4,6のうち同一機能を有するピン同士を電気的にそれぞれ接続する複数の導電路を有し、第3基板230は、第1及び第2基板210、220の少なくとも一方から分離されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセッサ、メモリ等の半導体集積回路(LSI)のような電子デバイス(以下、ICデバイスという)が有する各端子を別の回路基板に電気的に接続するために使用されるコンタクトピンを保持するICデバイス用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なICデバイスが利用されている。ICデバイスは、一般に、当該ICデバイスを動作させる回路基板から種々の信号を受け取ったり該ICデバイスから出力される信号を回路基板へ伝達するための複数の信号端子と、当該ICデバイスへ電力を供給するための電源端子と、グラウンド端子とを有する。また、各種の端子間の間隔(ピッチ)は、ICデバイスによって様々である。そこで、ICデバイスを動作させるための一つの回路基板、例えば、ICデバイス用検査基板を用いて、端子間のピッチの異なる複数種類のICデバイスを動作させるためには、該ICデバイスが有する各端子と、回路基板の対応する端子とを電気的に接続する必要がある。その際、それぞれの端子間のピッチに合わせて配列された複数のコンタクトピンを有するICデバイス用ソケットが利用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、端子ピッチ変換基板が開示されている。そして、特許文献1には、「端子ピッチ変換基板は、基板本体1の中央部に、BGAパッケージを装着したバーンインソケット2の個々の端子ピン2aの位置に適合するように、個々の端子ピン2aと接続される複数のソケット端子挿入穴3を設けるとともに、基板本体1の外周部に、プリント配線板4に設けられた各端子接続穴4aの位置に適合するように、個々の端子接続穴4aと接続される複数の接続ピン5を設け、互いに端子間ピッチの異なるバーンインソケット2とプリント配線板4との端子間接続を実現するようにしたものである」と記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ICデバイス用ソケットに関して、「裏側電極23の配列ピッチを表側電極22の配列ピッチに対して拡大するようにしてもよい」ことが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されたICデバイス用ソケットは、「下側ブラケット11と、上側ブラケット20と、調整用ブラケット30と、カバー40と、下側異方導電シート50と、パッドピッチ変換基板60と、上側異方導電シート70と」を有する。そして、特許文献3には、「パッドピッチ変換基板60は、上面に半導体装置側パッド81等が格子状に並んでおり、下面では、マザーボード側パッドが半導体装置側パッド間ピッチの約2倍のピッチに変換されて格子状に並んでいる。マザーボードのパッドはパッドピッチ変換基板60のマザーボード側パッドのピッチで配列している」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−67396号公報
【特許文献2】特開2000−82553号公報
【特許文献3】特開2007−80592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、従来のICデバイス用ソケットについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来のICデバイス用ソケットにおける端子(又はパッド)ピッチ変換は、ICデバイスの端子に対応して複数の接続ピン(導電性コンタクトピン)が配置された接触部分と回路基板に対応して複数の接続ピン(導電性コンタクトピン)が配置された接触部分とが一体化された変換部材により行われる。加えて、これら導電性コンタクトピンは高価であることから、繰り返し使用により信頼性が低下した接続ピンは随時交換されることが一般的である。そのため、一方の接触部分における導電性コンタクトピンを交換する場合であっても、変換部材全体を取り替える必要があり、取替え作業の効率が著しく低下していた。また、変換部材全体を取り替える場合、現実には取替えの必要のない導電性コンタクトピンまでも一体的に取り替えなければならないため、高価な導電性コンタクトピンの効率的な利用が図れなかった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、導電性コンタクトピンの効率的な利用を可能にするとともに該導電性コンタクトピンの交換作業の効率化を可能にするための構造を備えたICデバイス用ソケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係るICデバイス用ソケットは、それぞれが内部において延伸した複数の第1導電性コンタクトピンを有する第1基板と、それぞれが内部において延伸した複数の第2導電性コンタクトピンを有する第2基板と、第1基板における複数の第1導電性コンタクトピンと第2基板における複数の第2導電性コンタクトピンのうち同一機能を有するピン同士を電気的に接続する第3基板を備える。第1基板において、複数の第1導電性コンタクトピンは、第1配列パターンを形成するよう配置されている。第2基板において、複数の第2導電性コンタクトピンは、第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成するよう配置されており、各第2導電性コンタクトピンは、1つの第1導電性コンタクトピンに対応している。第3基板は、第1及び第2基板の間に配置され、その内部に複数の導電路を有する。各導電路は、1つの第1導電性コンタクトピンを対応する第2導電性コンタクトピンに電気的に接続する。
【0010】
なお、第3基板は、その内部に誘電体層と、第1基板側及び第2基板側の双方から該誘電体層を挟む一対の導電層とが包埋された構造(後述するECM構造)を備えてもよい。近年、LSI等のICデバイスの扱う信号は、その処理速度の高速化に伴って高周波化しており、このような高周波デバイスへの電源の安定供給がますます重要になってきている。ICデバイスに供給される電源の安定化には、グラウンドと電源との間のインピーダンスを下げる必要があるが、グラウンドと電源との間に上記構造によりキャパシタンスを設けることで、インピーダンスを下げることが可能になる。
【0011】
また、第3基板は、その内部にストリップライン及びマイクロストリップラインの少なくともいずれかが包埋された構造を有するのが好ましい。この場合、高周波デバイス用のピンホルダの一部として、第3基板での信号インピーダンスのコントロールが容易になる。また、第1及び第2基板でも、少なくとも信号経路となり得る導電性コンタクトピンについては、挿入される貫通孔内面に設けられた導体材料から電気的に絶縁された構造(後述の同軸構造)が採用され得る。このような構造も、信号インピーダンスのコントロールが容易になるため、本願発明に係るICデバイス用ソケットは、ICデバイスの取り扱う信号の高周波化にも十分に対応可能である。
【0012】
特に、本願発明に係るICデバイス用ソケットにおいて、第3基板は、第1基板及び第2基板のうち少なくともいずれかから分離されている。したがって、第3基板は、第1及び第2基板とは別体であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1導電性コンタクトピンが第1配列パターンを形成するよう配置された第1基板と、第2導電性コンタクトピンが該第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成するよう配置された第2基板との間に、第1及び第2基板の少なくとも一方から分離され、かつ、第1及び第2導電性コンタクトピンのうち同一機能を有するピン同士を導通接続する複数の導電路を有する第3基板が配置されている。この構成により、必要な部分のみの交換が可能になり、導電性コンタクトピンの効率的な利用及びその交換作業の効率が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るICデバイス用ソケットの一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のI−I線に沿ったICデバイス用ソケットの断面構造を示す図である。
【図3】第1基板に配置された第1導電性コンタクトピンの第1配置パターンの一例を示す平面図である。
【図4】第2基板に配置された第2導電性コンタクトピンの第2配置パターンの一例を示す平面図である。
【図5】図2に示されたピンホルダの第1実施形態における要部断面を拡大した図である。
【図6】第3基板内に設けられた信号伝送用の導電路の構造を説明するための平面図である。
【図7】ストリップラインを説明するための図である。
【図8】マイクロストリップラインを説明するための図である。
【図9】第3基板内に設けられた信号伝送用の導電路の立体構造の例を説明するための図である。
【図10】本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピンの一例を示す断面図である。
【図11】本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピンの他の例を示す断面図である。
【図12】第1基板に配置された第1導電性コンタクトピンの第1配置パターンの他の例を示す平面図である。
【図13】第2基板に配置された第2導電性コンタクトピンの第2配置パターンの他の例を示す平面図である。
【図14】図2に示されたピンホルダの第2実施形態における要部断面を拡大した図である。
【図15】図2に示されたピンホルダの第3実施形態における要部断面を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るICデバイス用ソケットの各実施形態を、図1〜図15を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係るICデバイス用ソケットは、ICデバイスが取り付けられる側に位置し、該ICデバイスに対面する面上に配置された複数の第1導電性コンタクトピンを有する第1基板と、ICデバイスを動作させる回路基板側に位置し、該回路基板に対面する面上に配置された複数の第2導電性コンタクトピンを有する第2基板と、第1及び第2基板の間に配置され、複数の第1導電性コンタクトピンと複数の第2導電性コンタクトピンのうち同一機能を有するピン同士を導通接続するための複数の導電路を有する第3基板を備える。第3基板は、第1及び第2基板のうち少なくともいずれかから分離されている。また、ICデバイスの各端子を回路基板の対応する端子と電気的に接続できるように、第1基板のICデバイス側面に配置される第1導電性コンタクトピンの配列パターンと、第2基板の回路基板側面に配置される第2導電性コンタクトピンの配列パターンとは異なっている。
【0017】
一方、近年、ICデバイスの処理速度の高速化に伴い、ICデバイスが扱う信号の高周波数化が進んでいる。ICデバイスによっては数百MHz、更には1GHzよりも高い周波数を持つ信号が用いられる。そのため、信号の高周波数化に対応して、ICデバイス用ソケットも高周波数信号を伝送できることが求められている。そこで、本実施形態において、第1及び第2基板には、信号経路の一部を構成する導電性コンタクトピンの保持構造として同軸構造が採用されるとともに、第1及び第2基板の間に配置される第3基板は、例えば、ストリップライン構造やマイクロストリップライン構造を有することにより、インピーダンスを整合させてもよい。これにより、本実施形態に係るICデバイス用ソケットは、当該ICデバイス用ソケットに取り付けられたICデバイスと回路基板間での高周波数信号の伝送損失を低減する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係るICデバイス用ソケットの一実施形態の構成を示す斜視図である。図2は、図1のI−I線に沿った、ICデバイス用ソケット100の断面構造を示す図である。本実施形態に係るICデバイス用ソケット100は、ピンホルダ1と、該ピンホルダ1の外周に設けられ、該ピンホルダ1を支持するボディ8とを有する。ピンホルダ1は、第1導電性コンタクトピン4を有する第1基板210と、第2導電性コンタクトピン6を有する第2基板220と、第1及び第2基板210、220の間に配置された第3基板230を備える。第1基板210の上面210a(ICデバイス側面)には、第1配置パターンを形成するよう配置された複数の孔が設けられ、複数の第1導電性コンタクトピン4それぞれが対応する孔に挿入されることにより、これら第1導電性コンタクトピン4が第1配列パターンを形成する。また、第2基板220の下面220b(検査装置などの回路基板側面)には、第1配列パターンとは異なる第2配置パターンを形成するよう配置された複数の孔が設けられ、複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれが対応する孔に挿入されることにより、これら第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターンを形成する。第3基板230は、複数の導電路を有しており、各導電路が複数の第1導電性コンタクトピン4と複数の第2導電性コンタクトピン6のうち同一機能を有するピン同士を導通接続している。すなわち、各導電路は、複数の第1導電性コンタクトピン4と複数の第2導電性コンタクトピン6のうち、電源供給用ピンとして機能する導電性コンタクトピン同士、接地用ピンとして機能する導電性コンタクトピン同士、信号伝送用ピンとして機能する導電性コンタクトピン同士を、それぞれ導通接続する。上記第1〜第3基板210〜230は、固定具83により一体的にボディ8に固定されており、この固定具83により、ボディ8に対する第1〜第3基板210〜230それぞれの相対位置の変動が抑制されている。
【0019】
ボディ8は、ICデバイス(図示せず)を第1基板210の上面210a上の所定位置に配置するためのガイド部又はガイド壁81を有し、さらに、ピンホルダ1をICデバイスを動作させる装置、例えば、ICデバイスを検査する検査装置(図示せず)が有する回路基板の所定位置に配置するための位置決め部(本実施形態では図2に示す位置決めピン82)を有する。なお、ボディ8は、必要に応じてピンホルダ1に取り付けられる。また第1〜第3基板210〜230それぞれは、位置決め部と協働して位置決めを行う孔や切欠きを有していてもよい。
【0020】
また、ピンホルダ1に対してICデバイスを正確な位置に取り付けるために、ピンホルダ1とは別個に設けられた位置決め装置が用いられてもよい。この場合、ボディ8は省略される。
【0021】
図3は、第1基板210の上面210a上に配置された第1導電性コンタクトピン4の第1配置パターンの一例を示す平面図である。また、図4は、第2基板220の下面220b上に配置された第2導電性コンタクトピン6の第2配置パターンの一例を示す平面図である。
【0022】
図3に示されたように、第1基板210の上面210aには、複数の第1導電性コンタクトピン4のそれぞれが、ピンホルダ1に取り付けられるICデバイスの各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第1導電性コンタクトピン4それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第1導電性コンタクトピン4により第1配列パターンPA1aが形成される。なお、図3には、第1導電性コンタクトピン4の第1配列パターンPA1aが6x6矩形配列パターンで構成された例が示されている。また、図3に示された821a〜821dは、固定具83を貫通させるための貫通孔である。
【0023】
一方、図4に示されたように、第2基板220の下面220b上には、複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれが、ピンホルダ1が取り付けられる回路基板の各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第2導電性コンタクトピン6により第1配列パターンPA1aとは異なる第2配列パターンPA1bが形成される。なお、図4には、第2導電性コンタクトピン6の第2配列パターンPA1bが2つの6x3矩形配列パターンで構成された例が示されている。また、図4に示された822a〜822dは、固定具83を貫通させるための貫通孔である。
【0024】
図3及び図4に示された例では、第1及び第2配列パターンPA1a、PA1bは、縦方向及び横方向に沿ったピン間のピッチは同じであるが、ピン配置が異なっている。なお、縦方向と横方向でピン間のピッチが異なってもよい。また、第1及び第2配列パターンは、ピン間のピッチのみが異なる相似形の関係であってもよい(後述する図8及び図9)。さらには、第1配列パターンと第2配列パターン間でパターンを構成するピンの本数が異なっていてもよい。
【0025】
このように、本実施形態におけるピンホルダ1では、第1導電性コンタクトピン4の第1配列パターンPA1aと第2導電性コンタクトピン6の第2配列パターンPA1bは異なっている。そして、図5に示されたように、各第1導電性コンタクトピン4は、第3基板230内に設けられた複数の導電路を介して第2導電性コンタクトピン6のうちの対応する第2導電性コンタクトピンと電気的に接続される。そのため、ピンホルダ1は、回路基板の端子間のピッチ、配列及びピン本数と異なる端子間のピッチ、配列及びピン本数を持つICデバイスの各端子を、回路基板の対応する端子に電気的に接続させることができる。
【0026】
図5は、図2に示されたピンホルダの一実施形態における要部断面を拡大した図である。なお、図5に示された実施形態では、第3基板230が第1基板210及び第2基板220とは別体構成になっている。
【0027】
図5において、まず、第1基板210は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材2110と、この基材2110に包埋された少なくとも1つの誘電体層2111を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層2111の上面側及び下面側には銅等の導電層2112、2113が形成されている。したがって、誘電体層2111とその両面上に形成された導電層2112、2113は、協働してコンデンサを構成する。つまり、第1基板210は、基材2110を構成する材料(基材の一部)と、導電層2112、2113と、誘電体層2111とを積層することにより構成されている。また、コンデンサの容量を高めるためには誘電体層2111の誘電体の誘電率は高い程好ましく、例えば誘電体層2111は、基材2110の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体からなるのが好ましい。例えば、高誘電体としてスリーエム社製のEmbedded Capacitor Material(ECM)が使用可能である。ECMは、高誘電材料を柔軟性のあるシート状に形成したものである。このような基板は、印刷回路板を作製する方法によって、作製することができる。なお、ECM等で実現されるコンデンサは、高周波特性には影響しないため、特に基板内には設けられなくともよいが、電源安定化のためには有効な構造である。また、第1基板210を構成する材料、すなわち、基材2110の材料は、ガラス繊維の代わりに紙を含んでいてもよいし、エポキシ樹脂の代わりにフェノール樹脂やポリアミド樹脂を含んでもよい。また導電層2112、2113を構成する材料として、銅以外に銀や金が使用されてもよい。誘電体層2111は、ポリマーを含んでもよい。好ましくは、誘電体層2111は、ポリマーと複数の粒子とを含み、具体的には樹脂と粒子とを混合することによって作製される。好適な樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、シアノエチルプルラン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリレート樹脂、及びそれらの混合物が挙げられる。粒子は、ポリマーの比誘電率より高い比誘電率を持つ誘電性(又は絶縁性)粒子を含み、その代表例としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、酸化チタン、チタン酸鉛ジルコニウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
誘電体層2111の厚みは、例えば0.5マイクロメートル以上とすることができ、100マイクロメートル以下とすることができる。該厚みはより薄い方が、キャパシタの静電容量を高くできるので好ましく、例えば15マイクロメートル以下、或いは10マイクロメートル以下とすることができる。ただし、該厚みはより厚い方が、接着強度の点からは好ましく、例えば1マイクロメートル以上とすることができる。
【0029】
また、誘電体の比誘電率は高い程好ましく、例えば10以上、或いは12以上とすることができる。比誘電率の上限には特に制限はないが、例えば30以下、20以下、或いは16以下とすることができる。
【0030】
誘電体層2111の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層2112は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2113は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。なお、図5に示された第1基板210の上面210aは、基材2110の上面と一致しており、第1基板210の下面210bは、基材2110の下面に一致している。また、各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、第1基板210に全面的に配置される。したがって、第1基板210の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。
【0031】
第1基板210は、更に、上面210aと下面210bを連絡する複数の貫通孔を有し、これら貫通孔それぞれの内面には、銅、金又は銀等の金属がメッキされることにより導電材料2151〜2156が設けられている。第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれは、対応する貫通孔に少なくとも一部が挿入されている。図5に示された実施形態では、第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2141、2146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2144が電源供給用ピンである。
【0032】
各第1導電性コンタクトピン2141〜2146は、上面210aから下面210bに向かって第1基板210を貫通している。詳細には、接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145は、導電材料2152、2153、2155にそれぞれ接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより各接地用ピンは第1基板210にそれぞれ保持される。また、導電材料2152、2153、2155のそれぞれは、グラウンド層である導電層2113に電気的に接触している。電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144は、導電材料2154に接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより、電源用ピンは第1基板210に保持される。導電材料2154は、電源層である導電層2112に電気的に接触している。
【0033】
一方、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146は、が導電材料2151、2156に接触することなく対応する貫通孔内に挿入されている。すなわち、第1導電性コンタクトピン2141、2146のピンボディの直径dに対して対応する貫通孔の開口径はD(>d)に設定されており、第1基板210内に同軸線路が構成されている。なお、第1導電性コンタクトピン2141、2146から一定距離れた導電材料2151、2156は、グラウンド層である導電層2113に電気的に接続されている。また、本願明細書における「同軸線路」は、第1導電性コンタクトピン2141、2146のピンボディと導電材料2151、2156とが接触せずに互いに絶縁され、かつピンボディが電気伝導性材料に覆われた(電磁シールドされた)形態を意味し、図示例のように導電性コンタクトピン及び導電材料のそれぞれが同一軸を中心とする円筒である場合のみを意味するものではない。したがって、例えば導電性コンタクトピンの外表面と導電材料の内表面とが互いに偏心した円筒面であってもよい。
【0034】
第1基板210の上面210a及び下面210bの上又は上方には、板状保持部材2121、2122が設けられている。これら板状保持部材2121、2122それぞれは、第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれに対応して設けられた貫通孔を有し、これら貫通孔はピンボディの直径dよりも小さな径をそれぞれ有する。第1導電性コンタクトピン2141〜2146は、各板状保持部材の対応する貫通孔にそれぞれのプランジャ先端が挿入されることにより、第1基板210に確実に保持される。なお、板状保持部材2121、2122は、第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれの抜け落ちを防止するとともに、第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれのプランジャ先端の、該第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれの軸方向に略垂直な方向への変位(振れ)量を制御する機能を備える。
【0035】
さらに、第1基材2110は、その表面(第1基板210の上面210a、下面210bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)2131、2132を有する。各接地用導体層は、基材2110の表面上において、各接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145に電気的に接続された導電材料2152、2153、2155(接地用ピンが挿入された貫通孔の内面に設けられたメッキ層)に電気的に接続されており、また、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146とは電気的に接続されない。このように、ピンボディより細径のプランジャ近傍にグラウンド層と同電位の導体層が配置されることにより、プランジャ先端のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用ピンの挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また、基材2110の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ、基材2110の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお、図5では、明瞭化のために接地用導体層2131、2132と板状保持部材2121、2122とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0036】
続いて、第1基板210において、同軸線路を構成している信号伝送用ピン(第1導電性コンタクトピン2141、2146)の構成について詳述する。すなわち、上述のように図5に示された第1基板210において、第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2141、2146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2144が電源供給用ピンである。
【0037】
各第1導電性コンタクトピンは、第1基板210の上面210aから下面210bに向かってに略垂直に延びて該第1基板210を貫通する。特に、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146は、対応した貫通孔内に挿入された状態で、対応する導電材料2151、2156とは接触せず、互いに絶縁されている。この構成により、第1導電性コンタクトピン2141、2146と、対応する導電材料2151、2156とは協働して同軸線路を構成する。なお、信号伝送用ピンと対応する導電材料との間には、樹脂又はセラミック等の誘電体が配置又は充填されてもよい。或いは、ピンボディの外表面と導電材料の内表面との間に誘電体等を充填せずに、空気、窒素又は酸素等の気相とすることもでき、或いは真空とすることもできる。
【0038】
上記同軸線路は、所定の特性インピーダンスを有するように構成される。例えば、第1導電性コンタクトピン2141、2146それぞれのピンボディが直径dの円筒であり、対応する導電材料2151、2156が内径Dの中空円筒であって、両円筒が互いに同軸である場合、該同軸線路の特性インピーダンスZ0は以下の式で表される。なお、εは、導電性コンタクトピンと導電材料との間の誘電体(本実施形態では誘電体又は空気)の誘電率である。D、d及びεを適宜選定することにより、各信号伝送用ピンについて所望の特性インピーダンスを得ることができる。
【0039】
Zo= 60/ε1/2・ln(D/d)
【0040】
図5に示されたように、第1基板210において、導電材料2151、2156は、基材2110内に配置されたグラウンド層である導電層2113電気的に接続されている。この図5の例では、導電層2113は基材2110内に配置された層状導体であり、電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144に接触した導電材料2154を除く導電材料それぞれが導電層2113によって互いに電気的に接続されている。しかしながら、導電材料2151、2156を接地するための接続部分の構造はこの図5の例には限定されず、例えば配線で構成されもよい。
【0041】
第1基板210は、実質一体物として形成されてもよいが、第1導電性コンタクトピンの組立性や上記グラウンド層(又は配線)の配置等を考慮して、いくつかの部材を組み合わせて作製することもできる。例えば、層状のグラウンド層(導電層2113)を基板210内に配置するため、板状の基材2110をその厚さ方向に積層された複数層から形成し、該層間に導電層を挟むことができるようにしてもよい。さらに、第1導電性コンタクトピンが挿入される貫通孔の内面への導電材料の形成(例えばコーティング)を考慮し、基材2110の厚さを各第1導電性コンタクトピン4のピンボディの長さと略等しくし、該導電材料を貫通孔の内面に形成した後に板状保持部材2121、2122を基材2110に接合することもできる。
【0042】
図5に示された実施形態のように、信号伝送用ピンのピンボディを同軸構造にした基板の場合、ピンボディの特性インピーダンスZ0は同軸構造により上式のように定義できるが、従来、プランジャは接地用導体で囲まれていなかったためインダクタンスとして振舞っていた。そこで、図5の実施形態のように、プランジャ近傍に接地用導体層を配置し、グラウンドとの容量成分を追加すると、プランジャのインダクタンス成分が補償され特性が向上する。より詳細には、プランジャのインダクタンス値をL0とした場合、Zo=(Lo/Co)1/2満たすようなCoを有するキャパシタンス成分がプランジャとグラウンドとの間に存在すれば、プランジャ部の特性インピーダンスとピンボディの特性インピーダンスとの差が所定の誤差以内となり、高周波特性の劣化を補償することができる。さらに同時に、信号伝送用ピンと接地用ピンとの電気的結合の存在により、隣接する信号伝送用ピン間のクロストークを小さくすることができる。
【0043】
次に、図5に示された第2基板220の構造について説明する。ただし、第2基板220は、第2導電性コンタクトピン6が第1配列パターンPA1a(図3)とは異なる第2配列パターンPA1b(図4)を形成している点を除き、その構造及び構成材料について第1基板210と同様であるため、重複する説明については省略するものとする。
【0044】
すなわち、第2基板220は、第1基板210の下面210bに対面した上面220aと、該上面220aに対向する下面220bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材2210と、この基材2210に包埋された少なくとも1つの誘電体層2211を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層2211の上面側及び下面側には銅等の導電層2212、2213が形成されている。なお、一方の導電層2212は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2213は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、基材2210には、挿入される第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターンPA1bを形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料2251〜2256が設けられている。
【0045】
第2基板220において、対応する貫通孔に挿入された第2導電性コンタクトピン6のうち、第2導電性コンタクトピン2242、2243、2245が接地用ピンであり、第2導電性コンタクトピン2241、2244が上述の同軸構造を構成する信号伝送用ピンであり、第2導電性コンタクトピン2246が電源供給用ピンである。
【0046】
第2基板220の上面220a及び下面220bの上又は上方には、板状保持部材2221、2222が設けられている。さらに、基材2210は、その表面(第2基板220の上面220a、下面220bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン2241、2244のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)2231、2232を有する。なお、図5では、明瞭化のために接地用導体層2231、2232と板状保持部材2221、2222とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0047】
次に、図5に示された第3基板230は、第1基板210と第2基板220との間に配置されている。すなわち、第3基板230は、第1基板210の下面210bと対面する上面230aと、第2基板220の上面220aに対面する下面230bを有する。さらに、第3基板230は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材2310と、この基材2310に包埋された2つの誘電体層2311、2314を有し、誘電体層2311の上面側及び下面側には銅等の導電層2312、2313が形成されている。また、誘電体層2314の上面側及び下面側には銅等の導電層2315、2316が形成されている。
【0048】
誘電体層2311の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層2312は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2313は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、誘電体層2314の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層2315は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2316は当該ICデバイス用ソケット100のグラウンドピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、図5に示された第3基板230の上面230aは、基材2310の上面と一致しており、第3基板230の下面230bは、基材2310の下面に一致している。各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、第3基板230に全面的に配置される。したがって、第3基板230の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。なお、以上の第3基板230の構造を実現する材料についても上述の第1及び第2基板210、220と同様である。
【0049】
第3基板230は、更に、第1導電性コンタクトピン4と第2導電性コンタクトピン6のうち同一機能を有するピン同士をそれぞれ導通接続するための複数の導電路を有する。これら導電路には、第1配列パターンPA1a(図3)に一致するよう配置されたグループと、第2配列パターンPA1b(図4)に一致するよう配置されたグループが、少なくとも含まれる。具体的に第3基板230内に形成される導電路には、接地用ピン間を電気的に接続するための導電路と、電源用ピン間を電気的に接続する導電路と、信号伝送用ピン間を電気的に接続する導電路がある。
【0050】
より詳細には、第3基板230内に形成される導電路には、上面230aと下面230bとを連絡する垂直接続要素と、上面230aから下面230bへ向かう方向に直交する方向に沿って各垂直接続要素間を連絡する水平接続要素により構成される。接続要素のうち、垂直接続要素2361〜2366は接地用ピン間を電気的に接続するための接続要素であり、グラウンド層である導電層2313、2316(接地用の水平接続要素)にそれぞれ電気的に接続されている。垂直接続要素2371、2372は、電源用ピン間を電気的に接続するための接続要素であり、電源層である導電層2312、2315(電源用の水平接続要素)にそれぞれ電気的に接続されている。垂直接続要素2381〜2384は信号伝送用ピン間を電気的に接続するための接続要素であり、上記グラウンド層2312、2316及び電源層2312、2315のいずれにも接触せず、絶縁されている。
【0051】
図5の例では、垂直接続要素2361は、上面230aに位置する接触パッド2361aと下面230bに位置する接触パッド2361bを有し、接触パッド2361bを介して接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2242と電気的に接触している。垂直接続要素2362は、上面230aに位置する接触パッド2362aと下面230bに位置する接触パッド2362bを有し、接触パッド2362bを介して接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2243と電気的に接触している。垂直接続要素2363は、上面230aに位置する接触パッド2363aと下面230bに位置する接触パッド2363bを有し、接触パッド2363aを介して接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142と電気的に接触している。垂直接続要素2364は、上面230aに位置する接触パッド2364aと下面230bに位置する接触パッド2364bを有し、接触パッド2364aを介して接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2143と電気的に接触している。垂直接続要素2365は、上面230aに位置する接触パッド2365aと下面230bに位置する接触パッド2365bを有し、接触パッド2365aを介して接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2145と電気的に接触している。垂直接続要素2366は、上面230aに位置する接触パッド2366aと下面230bに位置する接触パッド2366bを有し、接触パッド2366bを介して接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2245と電気的に接触している。なお、各垂直接続要素2361〜2366は、水平接続要素であるグラウンド層2313、2316を介して電気的に接続されており、これにより、接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145と、第2導電性コンタクトピン2242、2243、2245とが電気的に接続される。
【0052】
垂直接続要素2371は、上面230aに位置する接触パッド2371aと下面230bに位置する接触パッド2371bを有し、接触パッド2371aを介して電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144と電気的に接触している。垂直接続要素2372は、上面230aに位置する接触パッド2372aと下面230bに位置する接触パッド2372bを有し、接触パッド2372bを介して電源用ピンである第2導電性コンタクトピン2246と電気的に接触している。これら垂直接続要素2371、2372は、水平接続要素である電源層2312、2315に電気的に接続されており、電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144と第2導電性コンタクトピン2246とが電気的に接続される。
【0053】
さらに、垂直接続要素2381は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、該上面230a側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2381aが形成されている。また、垂直接続要素2381は、下面230bに位置する接触パッド2381bを有し、接触パッド2381bを介して信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン2241と電気的に接触している。垂直接続要素2382は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、下面230b側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2382bが形成されている。また、垂直接続要素2382は、上面230aに位置する接触パッド2382aを有し、接触パッド2382aを介して信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141と電気的に接触している。垂直接続要素2383は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、下面230b側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2383bが形成されている。また、垂直接続要素2383は、上面230aに位置する接触パッド2383aを有し、接触パッド2383aを介して信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2146と電気的に接触している。垂直接続要素2384は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、上面230a側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2384aが形成されている。また、垂直接続要素2384は、下面230bに位置する接触パッド2384bを有し、接触パッド2384bを介して信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン2244と電気的に接触している。垂直接続要素2381と垂直接続要素2382は水平接続要素2391により電気的に接続されている。また、垂直接続要素2383と垂直接続要素2384は水平接続要素2392により電気的に接続されている。なお、図6は、水平接続要素2391、2392の平面構造を説明するための図であり、図6中の線Lが図5に示された例の断面に一致している。
【0054】
特に、上記水平接続要素2391、2392は、絶縁材料(基材2310の一部)を介してグラウンド層2313、2316に挟まれた空間に配置されており、この構成により、ストリップライン構造が実現されている。なお、第3基板230内に設けられた誘電体層及びその両面に形成された導電層の一方はなくてもよい。この場合、水平接続要素2391、2392と一方のグラウンド層(2313又は2316)によりマイクロストリップライン構造が実現される。
【0055】
グラウンド層である導電層2313、2316は、第1導電性コンタクトピン4のうちの接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145、第2導電性コンタクトピン6のうち接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2242、2243、2245にそれぞれ電気的に接続されている。そして、導電層2313、2316それぞれは、信号伝送用ピン間を電気的に接続するための導電路を構成している水平接続要素2391、2392を挟むのに十分な面積を有することが好ましい。本実施形態では、導電層2313、2316それぞれは、第3基板230の水平面全体を覆うように配置される。ただし、導電層2313、2316それぞれは、接地用ピン以外の導電性コンタクトピンとは絶縁されるように配置される。
【0056】
このように、第3基板230は、信号を伝送する導電路の一部(水平接続要素2391、2392)と、その両側に位置する接地された導電層2313、2316を有するので、これら水平接続要素2391、2392はストリップラインとして機能する。そして、これら水平接続要素2391、2392の線幅及び隣接する導電層間の距離を、導電線の伝導率、基板2の比誘電率に応じて適切に設定することにより、ICデバイスに供給される信号が持つ周波数に対して、各信号伝送用ピンと、各信号伝送用ピンを電気的に接続する第3基板230内の導電路間での信号の反射が最小限に抑制される。これにより、第3基板230では、高周波数信号が信号伝送用の導電路2381、2391、2382や、別の信号伝送用導電路2383、2392、2384を経由して信号伝送用ピン間を伝送されることによる伝送損失を低減させることができる。
【0057】
図7はストリップラインを説明するための図であり、この図7に示すように、導電路S1の幅W、導電路S1の厚みt、導電路S1に対して基材(絶縁材料)I1を介して隣接する導電層G1、G2間の距離h、基材I1の誘電率εrからストリップラインの特性インピーダンスZ0は、以下の式(1)で表される。そのため、該式(1)中における各パラメータの値を調整することにより、第3基板230においてインピーダンス整合を図り、回路基板と当該ピンホルダ1のインピーダンスを整合させてもよい。
【数1】
【0058】
さらに、当該第3基板230は、その表層に導電路を配置することで、特性インピーダンスがコントロールされたマイクロストリップラインを備えてもよい。図8は、マイクロストリップラインを説明するための図であり、この図8に示すように、導電路S2の幅W、導電路S2の厚みt、導電路S2と導電層G3との間に設けられた基材(絶縁材料)I2の厚みh、基材I2の誘電率εrからマイクロストリップラインの特性インピーダンスZ0は、以下の式(2)で表される。そのため、該式(2)中における各パラメータの値を調整することにより、第3基板230においてインピーダンス整合を図り、回路基板と当該ピンホルダ1のインピーダンスを整合させてもよい。
【数2】
【0059】
なお、当該ピンホルダ1では、第1及び第2基板210、220において、信号伝送用ピン2141、2146、2241、2244のそれぞれは上述の同軸構造を有し、また、第3基板230内には信号伝送用の導電路としてストリップライン(又はマイクロストリップライン)2391、2392により信号インピーダンスがコントロールされるため、LSIなどのICデバイスの出力インピーダンスと回路基板の特性インピーダンスルとを、当該ピンホルダ1により整合させることが可能になる。なお、第3基板230内のインピーダンスは、ICデバイス及び回路基板の一方が、他方から送信された高周波数信号を受信できる程度に該他方のインピーダンスと整合されていればよく、当該ピンホルダ1は、第3基板230、特に導電路のインピーダンスがICデバイス及び回路基板のインピーダンスと完全に一致しているものに限定されない。
【0060】
また、第3基板230内に形成された信号伝送用の導電路(図5の例において、接続要素2381、2391、2382からなる信号経路、及び、接続要素2382、2392、2384からなる信号経路)は、図9に示すように構成されている。なお、図9は、第1導電性コンタクトピン4に属する信号伝送用ピン2141と第2導電性コンタクトピン6に属する信号伝送用ピン2241とを電気的に接続する第3基板230内の導電路の立体構造の例を示す図である。この図9に示すように、垂直接続要素2381、2382は、第3基板230の上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であるため、本来、水平接続要素(ストリップライン)2391に対して垂直接続要素2381の上面側の一部と、垂直接続要素2382の下面側の一部は、不要な導電路であり、スタブとして機能してしまう。そこで、図5の例では、これら不要部分をドリルにより除去することにより、掘削孔2381a、2382bがそれぞれ形成されている。
【0061】
以上に説明してきたように、本実施形態に係るICデバイス用ソケット100は、回路基板の端子間のピッチ及び配列と異なる端子間のピッチ及び配列を有するICデバイスの各端子を、回路基板の対応する端子と電気的に接続することができる。また、当該ICデバイス用ソケット100では、ICデバイスに供給される信号が持つ周波数に対する、該ICデバイスの信号端子と接続される導電性コンタクトピン(信号伝送用ピン)のインピーダンスと、回路基板の信号端子と接続される導電性コンタクトピン(信号伝送用ピン)のインピーダンスとを整合させるように構成された導電路を介して、信号伝送用ピン間が電気的に接続される。そのため、当該ICデバイス用ソケット100は、ICデバイスと回路基板間で伝達される信号の伝送損失を低減できる。
【0062】
(導電性コンタクトピンの構造)
上述の実施形態において使用可能な導電性コンタクトピンは、いわゆるスプリングプローブのような構成を有していてもよい。例えば、図10は、本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピン4、6の一例を示す断面図であり、これら導電性コンタクトピン4、6に相当する例として導電性コンタクトピン400の側面断面が示されている。
【0063】
導電性コンタクトピン400は、基板に挿入される略円筒状のピンボディ401と、ピンボディ401の一端(図示例では下端)から突出し、基板に形成される孔の底面又は基板に形成された貫通孔を介して回路基板等の別基板の端子に当接可能な第1接触部402と、ピンボディ401の他端(図示例では上端)から突出し、基板に形成される孔の上面又は基板に形成された貫通孔を介してICデバイス等の端子に当接可能な第2接触部403とを有する。ピンボディ401と各接触部402、403は、導電性を有する材料からなる。ピンボディ401の上端及び下端の開口の内径は、ピンボディ401の中央部の内径よりも狭くなっている。また、各接触部402、403の側面には、ピンボディ401の下端又は上端に対して内側から当接して各接触部402、403がピンボディ401から脱落することを防止するためにフランジが形成されている。
【0064】
ピンボディ401の内部には、金属製のスプリング404のような導電性を有する弾性部材が設けられる。スプリング404は、各接触部402、403がピンボディ401の軸方向に対して変異可能なように、両接触部402、403をそれぞれピンボディ401の下端又は上端へ向けて付勢する。そのため、コンタクトピン400の一端が、ICデバイスの端子等によりピンボディ401の軸方向に沿って押圧されると、接触部402、403には押圧された方向と逆向きの力が作用するので、接触部402、403とその端子間の接触が確実になる。そのため、導電性コンタクトピン400は、接触部402又は403と接触された端子等と確実に導通接続される。
【0065】
また、図11は、本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピン4、6の他の例を示す断面図であり、これら導電性コンタクトピン4、6に相当する例として導電性コンタクトピン410の側面断面が示されている。
【0066】
導電性コンタクトピン410は、基板に形成された孔又は貫通孔に挿入される、導電性金属により形成された略円筒状のピンボディ411と、細長いピン状のプランジャ412及びコイル状バネ413とを有する。プランジャ412及びコイル状バネ413は、いずれも導電性金属により形成され、ピンボディ411内に収容されている。
【0067】
ピンボディ411は、下側に開口している第一部分411aと、第一部分と同軸状に配置された第二部分411cと、内径がピンボディ411の延在方向に漸次変化し、第一部分411aと第二部分411cとを連絡する傾斜部分411bとを有する。ピンボディ411の下側開口(例えば、孔の底面又は貫通孔の開口のうち回路基板に対面する開口)の近傍である第一部分411aにおける内径は、ピンボディ411の中心部分である第二部分411cにおける内径よりも小さくなっている。ピンボディ411は、第二部分411cの上方に、第二部分411cと連通して第二部分411cよりも内径の狭い第三部分411dを有し、その第三部分411dに上面開口が形成されている。
【0068】
ピンボディ411内に収容されたコイル状バネ413は、ピンボディ411の第二部分411cに収容されている上側部分413aと、上側部分413aに連結されている下側部分413bとを備える。上側部分413aはその軸方向つまりピンボディ411の延在方向に圧縮可能な弾性を有する。また、上側部分413aは、その外径がピンボディ411の第二部分411cの内径と略同一か、それよりも小さい。下側部分413bは上側部分413aに連続して形成されており、下側部分413bでは、上側部分413aよりもバネが密に巻かれている。また、下側部分413bの外径は、上側部分413aよりも小さく、かつ、ピンボディ411の第一部分411aの内径と略同一かそれよりも小さい。したがって、コイル状バネ413の上側部分413a(すなわち、ピンボディ411の第二部分411c内に位置する部分)の直径は、ピンボディ411の第一部分411aの内径よりも大きい。そのため、ピンボディ411は、コイル状バネ413がピンボディ411から脱落することを防止できる。さらに、コイル状バネ413の上側部分413aの長さはピンボディ411の第二部分411cの長さと略同一の長さを有している。一方、コイル状バネ413の下側部分413bの長さはピンボディ411の第一部分411aよりも長い。したがって、ピンボディ411に挿入されたコイル状バネ413は、その下側部分413bがピンボディ411の下部の開口から突出し、コイル状バネ413の下端が回路基板の端子または孔の底面と接触し、電気的に接続されるようになっている。また、後述するプランジャ412はコイル状バネ413により、常に上方向に付勢された状態にある。
【0069】
コイル状バネ413の下側部分413bは、コイル状バネ413が自由状態(圧縮力を受けていない状態)でバネの隣接する巻き同士が接触するように構成されている。そのため、コイル状バネ413の下側部分413bでは、コイル状バネ413及びピンボディ411により形成される導電路の断面積が広くなるので、その導電路の導電抵抗を小さくすることができる。また、導電路がコイル状ではなく、コイル状バネ413の延在方向に略並行な、直線状に形成することができる。そのため、高周波信号がコンタクトピンに印加されても、この部分でインダクタンスが発生することを抑制できる。本実施形態では一つのバネの外径および巻きピッチを変化させることにより、上側部分413aと下側部分413bとが構成されている。そのため、少ない部品点数で、低コストに弾性部材を作製することができる。
【0070】
また、コイル状バネの下側部分は自由状態でバネの隣接する巻き同士が接触しないように構成しておき、ICデバイス又は回路基板がピンホルダに取り付けられてコイル状バネが圧縮されたときに、下側部分のバネの隣接する巻き同士が接触するよう、導電性コンタクトピン410は構成されてもよい。コイル状バネの下側部分において隣接するバネの巻き同士が予め接触するようにコイル状バネが構成される場合には、コイル状バネの圧縮程度にかかわらずコイル状バネの延在方向に略平行な導電路が形成されるので、より確実に導電路を短くすることができる。
【0071】
一方、ピンボディ411の第二部分411cでは、コイル状バネ413は疎に巻かれているので、コイル状バネ413はピンボディ411の長手方向に沿って弾性を有している。
【0072】
本実施形態では1本のコイル状バネによって弾性部材を構成しているが、弾性部材を他の形態でも構成することができる。例えば、外径またはバネ定数の異なる2つのコイル状バネを直列にピンボディ411に挿入してもよい。また、それらのコイル状バネが一体化されてもよい。
【0073】
或いは、コイル状バネの下側部分は金属スリーブ又は金属棒で構成されてもよい。これら金属スリーブ又は金属棒は、金属スリーブ又は金属棒の上端付近で、コイル状バネの上側部分と公知の方法で連結されてもよい。連結方法として、例えば、それらを機械的に係合させる方法または導電性接着剤で接着する方法を採用することができる。さらに、コイル状バネの上側部分は導電性を有する弾性部材であればよく、その上側部分は、例えば導電性を有するエラストマー、導電性材料で構成された空気バネ、若しくはピンボディ411の延在方向に圧縮可能な板バネ等により構成することができる。
【0074】
ピンボディ411に収容されたプランジャ412は、ICデバイスの端子又は基板に形成された孔の上面に設けられた導電体と、コイル状バネ413及びピンボディ411とを電気的に接続する。
【0075】
プランジャ412の上端は、ICデバイスの端子又は基板に形成された孔の上面に設けられた導電体と確実に接触するように、ピンボディ411の上部の開口から突出している。一方、プランジャ412の下端は、コイル状バネ413の内部に挿入される。プランジャ412の長手方向の略中央部には、プランジャ412の他の部分よりも直径が大きいフランジ412aが形成されている。そのフランジ412aの下端がコイル状バネ413の上端と衝合される。そのため、ICデバイスの端子等によりプランジャ412が押圧されると、プランジャ412が下方へ向けて移動するとともに、プランジャ412はコイル状バネ413をピンボディ411の長手方向に沿って圧縮する。これにより、プランジャ412とコイル状バネ413が確実に接触し、プランジャ412とコイル状バネ413が接触不良となることを防止できる。また、プランジャ412及びコイル状バネ413とピンボディ411との接触面積が増加するので、プランジャ412及びコイル状バネ413からピンボディ411を経由する導電路の抵抗を小さくすることができる。
【0076】
なお、プランジャ412の長さは、プランジャ412の移動範囲の下端に位置するときでも、プランジャ412の下端がピンボディ411の内径が大きい部分(すなわち、第2部分411c)に収まるように設計されることが好ましい。このようにプランジャ412の長さが設定されることで、ICデバイス又は回路基板がピンホルダから取り外されたときに、プランジャ412の下端がコイル状バネ413の径の細い部分に挟まって抜けなくなることを防止できる。
【0077】
また、コイル状バネ413が圧縮された状態において、プランジャ412の下端部分は、コイル状バネ413の疎に巻かれた部分と接触することが好ましい。プランジャ412がコイル状バネ413の内周面と接触するとコイル状バネ413が撓み、その弾性反発力でプランジャ412がコイル状バネ413によって押し返される。この弾性反発力が大きいと、コイル状バネ413とプランジャ412との間の摩擦が大きくなり、プランジャ412の上下方向の移動が阻害される虞れがある。コイル状バネ413の疎に巻かれた部分の剛性は、密に巻かれた部分の剛性よりも低くなる。そのため、プランジャ412の下端部分がコイル状バネ413と接触したときに、その接触したコイル状バネ413の部分が疎に巻かれている方が、プランジャ412に作用する弾性反発力を小さくでき、それによってプランジャ412の上下方向への動きを滑らかにすることができる。
【0078】
さらに、コイル状バネ413の密に巻かれた部分は短い方が好ましく、コイル状バネ413の上側部分413aが実質的に疎に巻かれている部分のみからなることが好ましい。
【0079】
コイル状バネ413の密に巻かれた部分が短いほど、長手方向への弾性を発揮する部分であるコイル状バネ413の疎に巻かれた部分の寸法を長くすることができる。そのため、コイル状バネ413の密にまかれた部分が短いほど、プランジャ412の移動量を大きくすることができる。さらに、プランジャ412の移動量を大きくすることができると、疎に巻かれた部分のバネ係数を小さくすることが可能となる。そのため、例えば、ピンホルダに保持された複数の導電性コンタクトピン410の上端に接するICデバイスの端子の高さ方向(導電性コンタクトピン410の長軸方向)における位置が異なっても、各導電性コンタクトピン間でのプランジャ412とICデバイスの端子との接圧の変化が小さくなり、安定した接触状態を得ることができる。
【0080】
ピンボディ411は、上部開口近傍で内径が細くなっている。その細くなった部分はプランジャ412のフランジ412aの上端を係止して、プランジャ412の移動範囲の上端を規定している。
【0081】
なお、他の実施形態によれば、ピンホルダの基板に形成される各孔の内側形状を、図11に示された導電性コンタクトピン410のピンボディ411の内側形状と同様に形成してもよい。そして各孔内に導電体を形成するとともに、図11に示された導電性コンタクトピン410のプランジャ412とコイル状バネ413が、図11に示されたように配置されてもよい。この場合、プランジャ412とコイル状バネ413とが、導電性コンタクトピンを構成する。
【0082】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【0083】
(配列パターンの変形例)
図12は、第1導電性コンタクトピン4の第1配置パターンの他の例を示す平面図である。また、図13は、第2導電性コンタクトピン6の第2配置パターンの他の例を示す平面図である。
【0084】
図12に示されたように、第1基板310の上面310a上には、複数の第1導電性コンタクトピン4のそれぞれが、ピンホルダに取り付けられるICデバイスの各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第1導電性コンタクトピン4それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第1導電性コンタクトピン4により第1配列パターンPA2aが形成される。なお、図12には、第1導電性コンタクトピン4の第1配列パターンPA2aがピッチP1の6x6矩形配列パターンで構成された例が示されている。また、図12に示された823a〜823dは、固定具83(図2)を貫通させるための貫通孔である。
【0085】
一方、図13に示されたように、第2基板320の下面320b上には、複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれが、ピンホルダが取り付けられる回路基板の各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第2導電性コンタクトピン6により第1配列パターンPA2aとは異なる第2配列パターンPA2bが形成される。なお、図13には、第2導電性コンタクトピン6の第2配列パターンPA2bも6x6矩形配列パターンで構成された例が示されているが、第1配列パターンPA2aとは導電性コンタクトピン間のピッチP2(>P1)が異なっている。また、図13に示された824a〜824dは、固定具83(図2)を貫通させるための貫通孔である。
【0086】
図12及び図13に示された例では、第1及び第2配列パターンPA2a、PA2bは、縦方向及び横方向の双方に沿ったピン間のピッチが異なる相似形である。なお、第1配列パターンと第2配列パターンは、ピッチ及び配列のみならず、ピン本数が異なっていてもよい。
【0087】
(第2実施形態)
図14は、本発明に係るICデバイス用ソケット100の、第2実施形態に係るピンホルダ1Aにおける要部断面を拡大した図である。この図14に示された実施形態に係るピンホルダ1Aも、図5の実施形態と同様に、図1及び図2に示された当該ICデバイス用ソケット100の一部を構成している。ただし、本実施形態に係るピンホルダ1Aは、第1基板410、第2基板420、第3基板430を備えるが、第1基板410と第3基板430が一体化される一方、第2基板420と第3基板430が別体構成となっている点で、図5の実施形態と異なる。なお、上記相違点を除き、各基板410〜430の構成及び材料は、上述の図5の実施形態と同様である。
【0088】
まず、図14に示された第1基板410の構造について詳述する。この第1基板410は、第3基板430上に積層又は接着されることにより該第3基板430と一体化された構造を有するが、実質的に図5の実施形態における第1基板210とその構造及び構成材料において同一である。
【0089】
すなわち、第1基板410は、ICデバイス(図示せず)に対面する上面410aと、該上面410aに対向する下面410bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材4110と、この基材4110に包埋された少なくとも1つの誘電体層4111を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層4111の上面側及び下面側には銅等の導電層4112、4113が形成されている。また、基材4110には、挿入される第1導電性コンタクトピン4が第1配列パターンPA1b(図12のパターンPA2aでもよい)を形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料4151〜4156が設けられている。
【0090】
誘電体層4111の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層4112は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層4113は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。なお、図14に示された第1基板410の上面410aは、基材4110の上面と一致しており、第1基板410の下面410bは、基材4110の下面に一致している。また、この下面410bは、第3基板430の上面430aに直接接している。各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、第1基板410に全面的に配置される。したがって、第1基板410の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。
【0091】
第1基板410において、対応する貫通孔に挿入された第1導電性コンタクトピン4のうち、第1導電性コンタクトピン4142、4143、4145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン4141、4146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン4144が電源供給用ピンである。
【0092】
各第1導電性コンタクトピン4141〜4146は、上面410aから下面410bに向かって第1基板410を貫通している。詳細には、接地用ピンである第1導電性コンタクトピン4142、4143、4145は、導電材料4152、4153、4155にそれぞれ接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより各接地用ピンは第1基板410にそれぞれ保持される。また、導電材料4152、4153、4155のそれぞれは、グラウンド層である導電層4113に電気的に接触している。電源用ピンである第1導電性コンタクトピン4144は、導電材料4154に接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより、電源用ピンは第1基板410に保持される。導電材料4154は、電源層である導電層4112に電気的に接触している。
【0093】
一方、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン4141、4146は、が導電材料4151、4156に接触することなく対応する貫通孔内に挿入されている。すなわち、第1導電性コンタクトピン4141、4146のピンボディの直径dに対して対応する貫通孔の開口径はD(>d)に設定されており、第1基板410内に同軸線路が構成されている。なお、第1導電性コンタクトピン4141、4146から一定距離れた導電材料4151、4156は、グラウンド層である導電層4113に電気的に接続されている。
【0094】
第1基板410の上面410aの上又は上方には、板状保持部材4121が設けられている。板状保持部材4121は、第1導電性コンタクトピン4141〜4146それぞれに対応して設けられた貫通孔を有し、これら貫通孔はピンボディの直径dよりも小さな径をそれぞれ有する。第1導電性コンタクトピン4141〜4146は、板状保持部材4121の対応する貫通孔にそれぞれのプランジャ先端が挿入されることにより、第1基板410に確実に保持される。
【0095】
さらに、基材4110は、その表面(第1基板410の上面410aに一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン4141、4146のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)4131を有する。接地用導体層4131は、基材4110の表面上において、各接地用ピンである第1導電性コンタクトピン4142、4143、4145に電気的に接続された導電材料4152、4153、4155(接地用ピンが挿入された貫通孔の内面に設けられたメッキ層)に電気的に接続されており、また、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン4141、4146とは電気的に接続されない。このように、ピンボディより細径のプランジャ近傍にグラウンド層と同電位の導体層が配置されることにより、プランジャ先端のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用ピンの挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また、基材4110の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ、基材4110の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお、図14でも、明瞭化のために接地用導体層4131と板状保持部材4121とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0096】
次に、図14に示された第2基板420の構造について説明する。なお、第2基板420は、図5に示された第2基板220とその構造及び構成材料において実質的に同一であるため、重複する説明については省略するものとする。
【0097】
すなわち、第2基板420は、第1基板410に一体化された第3基板430の下面430bに対面した上面420aと、該上面420aに対向する下面420bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材4210と、この基材4210に包埋された少なくとも1つの誘電体層4211を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層4211の上面側及び下面側には銅等の導電層4212、4213が形成されている。なお、一方の導電層4212は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層4213は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、基材4210には、挿入される第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターン(図4又は図13)を形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料4251〜4256が設けられている。
【0098】
第2基板420において、対応する貫通孔に挿入された第2導電性コンタクトピン6のうち、第2導電性コンタクトピン4242、4243、4245が接地用ピンであり、第2導電性コンタクトピン4241、4244が上述の同軸構造を構成する信号伝送用ピンであり、第2導電性コンタクトピン4246が電源供給用ピンである。
【0099】
第2基板420の上面420a及び下面420bの上又は上方には、板状保持部材4221、4222が設けられている。さらに、さらに、第2基板420は、その表面(第2基板420の上面420a、下面420bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン4241、4244のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)4231、4232を有する。なお、図14では、明瞭化のために接地用導体層4231、4232と板状保持部材4221、4222とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0100】
次に、図14に示された第3基板430は、その上面430aと上述の第1基板410の下面410bとが直接接触している点を除き、その構造及び構成材料において、実質的に図5に示された実施形態の第3基板230と同様であるため、重複する説明については省略するものとする。
【0101】
すなわち、第3基板430は、第1基板410の下面410bと対面する上面430aと、第2基板420の上面420aに対面する下面430bを有する。さらに、第3基板430は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材4310と、この基材4310に包埋された2つの誘電体層4311、4314を有し、誘電体層4311の上面側及び下面側には銅等の導電層4312、4313が形成されている。また、誘電体層4314の上面側及び下面側には銅等の導電層4315、4316が形成されている。また、導電層4312、4315のそれぞれは当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、導電層4313、4316のそれぞれは当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。
【0102】
第3基板430内には、信号伝送用の導電路の一部を構成する垂直接続要素4381〜4384、接地用の導電路の一部を構成する垂直接続要素4361〜4366、電源用の導電路の一部を構成する垂直接続要素4371、4372が設けられている。また、垂直接続要素4381、4382は、水平接続要素4391により電気的に接続され、係る水平接続要素4391は、グラウンド層をそれぞれ構成する導電層4313、4316に基材4310を介して挟まれたストリップラインとして機能する。同様に、垂直接続要素4383、4384は、水平接続要素4392により電気的に接続され、係る水平接続要素4392は、グラウンド層をそれぞれ構成する導電層4313、4316に基材4310を介して挟まれたストリップラインとして機能する。
【0103】
なお、第3基板430内において、垂直接続要素4381、4384は、それぞれ、下面430b上に信号伝送用ピンである導電性コンタクトピン4241、4244と電気的に接続される接触パッド4381b、4384bを有する。また、垂直接続要素4381、4384の上面側には、信号経路のスタブを回避するため、垂直接続要素4381、4384それぞれの一部を除去するための掘削孔4381a、4384aが設けられている。一方、垂直接続要素4382、4383は、それぞれ、上面430aに信号伝送用ピンである導電性コンタクトピン4141、4146と電気的に接続される接触パッド4382a、4383aを有する。また、垂直接続要素4382、4383の下面側には、信号経路のスタブを回避するため、垂直接続要素4382、4383それぞれの一部を除去するための掘削孔4382b、4383bが設けられている。接地用の垂直接続要素4361〜4366には、それぞれ、上面430に位置する接触パッド4361a〜4366aを有するとともに、下面430b上に位置する接触パッド4361b〜4366bを有する。さらに、電源用の垂直接続要素4371、4372には、それぞれ、上面430に位置する接触パッド4371a、4372aを有するとともに、下面430b上に位置する接触パッド4371b〜4372bを有する。
【0104】
上述の図14に示された実施形態では、第3基板が第1基板と一体化され、第2基板から分離するよう構成されているが、第3基板が第2基板と一体化され、第1基板から分離するよう構成されてもよいことは言うまでもない。
【0105】
(第3実施形態)
図15は、本発明に係るICデバイス用ソケット100の、第3実施形態に係るピンホルダ1Bにおける要部断面を拡大した図である。この図15に示された実施形態に係るピンホルダ1Bも、図5及び図14に示された実施形態と同様に、図1及び図2に示された当該ICデバイス用ソケット100の一部を構成する。ただし、本実施形態に係るピンホルダ1Bは、上述の各実施形態における第1基板210、410と第3基板230、430の構造が一体化された複合基板510と、第2基板520を備える。すなわち、図15において、複合基板510の上半分が上記第1及び第2実施形態における第1基板210、410に相当する第1基板部分であり、複合基板510のした半分が上記第1及び第2実施形態における第3基板230、430に相当する第3基板部分である。したがって、本明細書において第1基板という場合、第3実施形態における複合基板510に関して言えば該複合基板510の上半分を指すものとする。また、本明細書において第3基板という場合には、第3実施形態における複合基板510に関して言えば該複合基板510の下半分を指すものとする。
【0106】
まず、複合基板510は、ICデバイス(図示せず)に対面する上面510aと、第2基板520に対面する下面510bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材5110と、この基材5110に包埋された誘電体層5111、5114を有する。誘電体層5111の上面側及び下面側には銅等の導電層5112、5113が形成され、誘電体層5114の上面側及び下面側には銅等の導電層5115、5116が形成されている。また、基材5110には、挿入される第1導電性コンタクトピン4が第1配列パターンPA1b(図12のパターンPA2aでもよい)を形成するよう、複数の貫通孔又は底面が導電材料で覆われた孔が形成されており、これら孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料5151〜5156が設けられている。さらに、基材5110には、第2基板520に挿入される第2導電性コンタクトピン6の配列パターンを形成するよう貫通孔又は孔が設けられており、これら孔の内面にも、第1導電性コンタクトピン4と第2導電性コンタクトピン6のうち同一機能を有するピン同士を導通接続する導電路として、垂直接続要素5381、5361、5362、5384、5363、5371が設けられている。
【0107】
誘電体層5111の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層5112は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層5113は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、誘電体層5114の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層5115は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層5116は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド層を構成する。なお、図15に示された複合基板510の上面510aは、基材5110の上面と一致しており、複合基板510の下面510bは、基材5110の下面に一致している。また、各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、複合基板510に全面的に配置される。したがって、複合基板510の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。
【0108】
複合基板510において、対応する孔に挿入された第1導電性コンタクトピン4のうち、第1導電性コンタクトピン5142、5143、5145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン5141、5146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン5144が電源供給用ピンである。
【0109】
接地用ピンである第1導電性コンタクトピン5142、5143、5145は、導電材料5152、5153、5155にそれぞれ接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより各接地用ピンは複合基板510にそれぞれ保持される。また、導電材料5152、5153、5155のそれぞれは、グラウンド層である導電層5113、5116の双方に電気的に接触している。電源用ピンである第1導電性コンタクトピン5144は、導電材料5154に接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより、電源用ピンは複合基板510に保持される。導電材料5154は、電源層である導電層5112、5115の双方に電気的に接続されている。
【0110】
一方、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン5141、5146は、が導電材料5151、5156に接触することなく対応する孔内に挿入されている。なお、これら孔の底部には、導電材料5151、5156とは電気的に絶縁された状態で、信号経路の一部を構成する接触パッド5382、5383が設けられている。すなわち、第1導電性コンタクトピン5141、5146のピンボディの直径dに対して対応する孔の開口径はD(>d)に設定されており、複合基板510内に同軸線路が構成されている。なお、第1導電性コンタクトピン5141、5146から一定距離れた導電材料5151、5156は、グラウンド層である導電層5113、5116の双方に電気的に接続されている。
【0111】
ここで、第1導電性コンタクトピン5141な挿入される孔の底部に設けられた接触パッド5382は、垂直接続要素5381と水平接続要素5391を介して電気的に接続されている。この水平接続要素5391は、当該複合基板510の基材5110内に設けられたグラウンド層5411、5412の間に位置しており、この構造により、該水平接続要素5391はストリップラインとして機能する。一方、第1導電性コンタクトピン5146な挿入される孔の底部に設けられた接触パッド5383は、垂直接続要素5384と水平接続要素5392を介して電気的に接続されている。水平接続要素5392も、水平接続要素5391と同様に、当該複合基板510の基材5110内に設けられたグラウンド層5411、5412の間に位置しており、この構造により、該水平接続要素5392もストリップラインとして機能する。なお、水平接続要素5391、5392を挟み込むグラウンド層5411、5412のそれぞれは、接地用ピンである導電性コンタクトピン5142,5143、5145に接触している導体材料5152、5153、5155に電気的に接続されている。また、信号伝送用の導電路の一部となる垂直接続要素5181の上部(複合基板510の上面側)と垂直接続要素5184の上部(複合基板510の上面側)には、それぞれ掘削孔5381a、5384aが設けられている。これら掘削孔5381a、5384aは、スタブを防止するため、ドリルにより垂直接続要素5381の一部と垂直接続要素5382の一部がそれぞれ除去されるように形成された孔である。
【0112】
複合基板510の上面510aの上又は上方には、板状保持部材5121が設けられている。板状保持部材5121は、第1導電性コンタクトピン5141〜5146それぞれに対応して設けられた貫通孔を有し、これら貫通孔はピンボディの直径dよりも小さな径をそれぞれ有する。第1導電性コンタクトピン5141〜5146は、板状保持部材5121の対応する貫通孔にそれぞれのプランジャ先端が挿入されることにより、複合基板510に確実に保持される。
【0113】
さらに、基材5110は、その表面(複合基板510の上面510a及び下面510bに一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン5141、5146のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)5131、5132を有する。接地用導体層5131、5132それぞれは、基材5110の表面上において、各接地用ピンである第1導電性コンタクトピン5142、5143、5145に電気的に接続された導電材料5152、5153、5155(接地用ピンが挿入された貫通孔の内面に設けられたメッキ層)に電気的に接続されており、また、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン5141、5146とは電気的に接続されない。このように、ピンボディより細径のプランジャ近傍にグラウンド層と同電位の導体層が配置されることにより、プランジャ先端のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用ピンの挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また、基材5110の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ、基材5110の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。
【0114】
なお、図15でも、明瞭化のために接地用導体層5131と板状保持部材5121とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。また、この図15に示された例では、基材5110の下面(複合基板510の下面510bに一致する面)上に設けられた接地用導体層5132が、第2基板520に保持された第2導電性コンタクトピン6のち、接地用ピンとして機能する導電性コンタクトピン5242、5243、5245が直接接触するパッドとしても機能する。一方、信号伝送用の導体路の一部として機能する垂直接続要素5381、5384は、基材5110の下面上に、第2基板520によって保持される導電性コンタクトピン6のうち、信号伝送用ピンである導電性コンタクトピン5241、5244に電気的に接続される接触パッド5381b、5384bを、それぞれ有している。
【0115】
次に、図15に示された第2基板520の構造について説明するが、該第2基板520は、上述の第1及び第2実施形態における第2基板220、420と、その構造及び構成材料について同様であるため、重複する説明は省略するものとする。
【0116】
すなわち、第2基板520は、複合基板510の下面510bに対面した上面520aと、該上面520aに対向する下面520bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材5210と、この基材5210に包埋された少なくとも1つの誘電体層5211を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層5211の上面側及び下面側には銅等の導電層5212、5213が形成されている。なお、一方の導電層5212は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層5213は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、基材5210には、挿入される第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターンPA1bを形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料5251〜5256が設けられている。
【0117】
第2基板520において、対応する貫通孔に挿入された第2導電性コンタクトピン6のうち、第2導電性コンタクトピン5242、5243、5245が接地用ピンであり、第2導電性コンタクトピン5241、5244が上述の同軸構造を構成する信号伝送用ピンであり、第2導電性コンタクトピン5246が電源供給用ピンである。
【0118】
第2基板520の上面520a及び下面520bの上又は上方には、板状保持部材5221、5222が設けられている。さらに、基材5210は、その表面(第2基板520の上面520a、下面520bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン5241、5244のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)5231、5232を有する。なお、図15では、明瞭化のために接地用導体層5231、5232と板状保持部材5221、5222とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1、1A、1B…ピンホルダ、100…ICデバイス用ソケット、210、410…第1基板、220、420、520…第2基板、230、430…第3基板、510…複合基板(第1基板+第3基板)、4、2141〜2146、4141〜4146、5141〜5146…第1導電性コンタクトピン、6、2241〜2246、4241〜4246、5241〜5246…第2導電性コンタクトピン、2361〜2366、2371〜2372、2381〜2384、2391〜2392、4361〜4366、4371〜4372、4381〜4384、4391〜4392、5381〜5384、5391〜5392…導電路、2121、2122、2221、2222、4121、4122、4221、4222、5121、5221、5222…保持部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセッサ、メモリ等の半導体集積回路(LSI)のような電子デバイス(以下、ICデバイスという)が有する各端子を別の回路基板に電気的に接続するために使用されるコンタクトピンを保持するICデバイス用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なICデバイスが利用されている。ICデバイスは、一般に、当該ICデバイスを動作させる回路基板から種々の信号を受け取ったり該ICデバイスから出力される信号を回路基板へ伝達するための複数の信号端子と、当該ICデバイスへ電力を供給するための電源端子と、グラウンド端子とを有する。また、各種の端子間の間隔(ピッチ)は、ICデバイスによって様々である。そこで、ICデバイスを動作させるための一つの回路基板、例えば、ICデバイス用検査基板を用いて、端子間のピッチの異なる複数種類のICデバイスを動作させるためには、該ICデバイスが有する各端子と、回路基板の対応する端子とを電気的に接続する必要がある。その際、それぞれの端子間のピッチに合わせて配列された複数のコンタクトピンを有するICデバイス用ソケットが利用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、端子ピッチ変換基板が開示されている。そして、特許文献1には、「端子ピッチ変換基板は、基板本体1の中央部に、BGAパッケージを装着したバーンインソケット2の個々の端子ピン2aの位置に適合するように、個々の端子ピン2aと接続される複数のソケット端子挿入穴3を設けるとともに、基板本体1の外周部に、プリント配線板4に設けられた各端子接続穴4aの位置に適合するように、個々の端子接続穴4aと接続される複数の接続ピン5を設け、互いに端子間ピッチの異なるバーンインソケット2とプリント配線板4との端子間接続を実現するようにしたものである」と記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ICデバイス用ソケットに関して、「裏側電極23の配列ピッチを表側電極22の配列ピッチに対して拡大するようにしてもよい」ことが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されたICデバイス用ソケットは、「下側ブラケット11と、上側ブラケット20と、調整用ブラケット30と、カバー40と、下側異方導電シート50と、パッドピッチ変換基板60と、上側異方導電シート70と」を有する。そして、特許文献3には、「パッドピッチ変換基板60は、上面に半導体装置側パッド81等が格子状に並んでおり、下面では、マザーボード側パッドが半導体装置側パッド間ピッチの約2倍のピッチに変換されて格子状に並んでいる。マザーボードのパッドはパッドピッチ変換基板60のマザーボード側パッドのピッチで配列している」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−67396号公報
【特許文献2】特開2000−82553号公報
【特許文献3】特開2007−80592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、従来のICデバイス用ソケットについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来のICデバイス用ソケットにおける端子(又はパッド)ピッチ変換は、ICデバイスの端子に対応して複数の接続ピン(導電性コンタクトピン)が配置された接触部分と回路基板に対応して複数の接続ピン(導電性コンタクトピン)が配置された接触部分とが一体化された変換部材により行われる。加えて、これら導電性コンタクトピンは高価であることから、繰り返し使用により信頼性が低下した接続ピンは随時交換されることが一般的である。そのため、一方の接触部分における導電性コンタクトピンを交換する場合であっても、変換部材全体を取り替える必要があり、取替え作業の効率が著しく低下していた。また、変換部材全体を取り替える場合、現実には取替えの必要のない導電性コンタクトピンまでも一体的に取り替えなければならないため、高価な導電性コンタクトピンの効率的な利用が図れなかった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、導電性コンタクトピンの効率的な利用を可能にするとともに該導電性コンタクトピンの交換作業の効率化を可能にするための構造を備えたICデバイス用ソケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明に係るICデバイス用ソケットは、それぞれが内部において延伸した複数の第1導電性コンタクトピンを有する第1基板と、それぞれが内部において延伸した複数の第2導電性コンタクトピンを有する第2基板と、第1基板における複数の第1導電性コンタクトピンと第2基板における複数の第2導電性コンタクトピンのうち同一機能を有するピン同士を電気的に接続する第3基板を備える。第1基板において、複数の第1導電性コンタクトピンは、第1配列パターンを形成するよう配置されている。第2基板において、複数の第2導電性コンタクトピンは、第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成するよう配置されており、各第2導電性コンタクトピンは、1つの第1導電性コンタクトピンに対応している。第3基板は、第1及び第2基板の間に配置され、その内部に複数の導電路を有する。各導電路は、1つの第1導電性コンタクトピンを対応する第2導電性コンタクトピンに電気的に接続する。
【0010】
なお、第3基板は、その内部に誘電体層と、第1基板側及び第2基板側の双方から該誘電体層を挟む一対の導電層とが包埋された構造(後述するECM構造)を備えてもよい。近年、LSI等のICデバイスの扱う信号は、その処理速度の高速化に伴って高周波化しており、このような高周波デバイスへの電源の安定供給がますます重要になってきている。ICデバイスに供給される電源の安定化には、グラウンドと電源との間のインピーダンスを下げる必要があるが、グラウンドと電源との間に上記構造によりキャパシタンスを設けることで、インピーダンスを下げることが可能になる。
【0011】
また、第3基板は、その内部にストリップライン及びマイクロストリップラインの少なくともいずれかが包埋された構造を有するのが好ましい。この場合、高周波デバイス用のピンホルダの一部として、第3基板での信号インピーダンスのコントロールが容易になる。また、第1及び第2基板でも、少なくとも信号経路となり得る導電性コンタクトピンについては、挿入される貫通孔内面に設けられた導体材料から電気的に絶縁された構造(後述の同軸構造)が採用され得る。このような構造も、信号インピーダンスのコントロールが容易になるため、本願発明に係るICデバイス用ソケットは、ICデバイスの取り扱う信号の高周波化にも十分に対応可能である。
【0012】
特に、本願発明に係るICデバイス用ソケットにおいて、第3基板は、第1基板及び第2基板のうち少なくともいずれかから分離されている。したがって、第3基板は、第1及び第2基板とは別体であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1導電性コンタクトピンが第1配列パターンを形成するよう配置された第1基板と、第2導電性コンタクトピンが該第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成するよう配置された第2基板との間に、第1及び第2基板の少なくとも一方から分離され、かつ、第1及び第2導電性コンタクトピンのうち同一機能を有するピン同士を導通接続する複数の導電路を有する第3基板が配置されている。この構成により、必要な部分のみの交換が可能になり、導電性コンタクトピンの効率的な利用及びその交換作業の効率が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るICデバイス用ソケットの一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のI−I線に沿ったICデバイス用ソケットの断面構造を示す図である。
【図3】第1基板に配置された第1導電性コンタクトピンの第1配置パターンの一例を示す平面図である。
【図4】第2基板に配置された第2導電性コンタクトピンの第2配置パターンの一例を示す平面図である。
【図5】図2に示されたピンホルダの第1実施形態における要部断面を拡大した図である。
【図6】第3基板内に設けられた信号伝送用の導電路の構造を説明するための平面図である。
【図7】ストリップラインを説明するための図である。
【図8】マイクロストリップラインを説明するための図である。
【図9】第3基板内に設けられた信号伝送用の導電路の立体構造の例を説明するための図である。
【図10】本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピンの一例を示す断面図である。
【図11】本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピンの他の例を示す断面図である。
【図12】第1基板に配置された第1導電性コンタクトピンの第1配置パターンの他の例を示す平面図である。
【図13】第2基板に配置された第2導電性コンタクトピンの第2配置パターンの他の例を示す平面図である。
【図14】図2に示されたピンホルダの第2実施形態における要部断面を拡大した図である。
【図15】図2に示されたピンホルダの第3実施形態における要部断面を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るICデバイス用ソケットの各実施形態を、図1〜図15を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態に係るICデバイス用ソケットは、ICデバイスが取り付けられる側に位置し、該ICデバイスに対面する面上に配置された複数の第1導電性コンタクトピンを有する第1基板と、ICデバイスを動作させる回路基板側に位置し、該回路基板に対面する面上に配置された複数の第2導電性コンタクトピンを有する第2基板と、第1及び第2基板の間に配置され、複数の第1導電性コンタクトピンと複数の第2導電性コンタクトピンのうち同一機能を有するピン同士を導通接続するための複数の導電路を有する第3基板を備える。第3基板は、第1及び第2基板のうち少なくともいずれかから分離されている。また、ICデバイスの各端子を回路基板の対応する端子と電気的に接続できるように、第1基板のICデバイス側面に配置される第1導電性コンタクトピンの配列パターンと、第2基板の回路基板側面に配置される第2導電性コンタクトピンの配列パターンとは異なっている。
【0017】
一方、近年、ICデバイスの処理速度の高速化に伴い、ICデバイスが扱う信号の高周波数化が進んでいる。ICデバイスによっては数百MHz、更には1GHzよりも高い周波数を持つ信号が用いられる。そのため、信号の高周波数化に対応して、ICデバイス用ソケットも高周波数信号を伝送できることが求められている。そこで、本実施形態において、第1及び第2基板には、信号経路の一部を構成する導電性コンタクトピンの保持構造として同軸構造が採用されるとともに、第1及び第2基板の間に配置される第3基板は、例えば、ストリップライン構造やマイクロストリップライン構造を有することにより、インピーダンスを整合させてもよい。これにより、本実施形態に係るICデバイス用ソケットは、当該ICデバイス用ソケットに取り付けられたICデバイスと回路基板間での高周波数信号の伝送損失を低減する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係るICデバイス用ソケットの一実施形態の構成を示す斜視図である。図2は、図1のI−I線に沿った、ICデバイス用ソケット100の断面構造を示す図である。本実施形態に係るICデバイス用ソケット100は、ピンホルダ1と、該ピンホルダ1の外周に設けられ、該ピンホルダ1を支持するボディ8とを有する。ピンホルダ1は、第1導電性コンタクトピン4を有する第1基板210と、第2導電性コンタクトピン6を有する第2基板220と、第1及び第2基板210、220の間に配置された第3基板230を備える。第1基板210の上面210a(ICデバイス側面)には、第1配置パターンを形成するよう配置された複数の孔が設けられ、複数の第1導電性コンタクトピン4それぞれが対応する孔に挿入されることにより、これら第1導電性コンタクトピン4が第1配列パターンを形成する。また、第2基板220の下面220b(検査装置などの回路基板側面)には、第1配列パターンとは異なる第2配置パターンを形成するよう配置された複数の孔が設けられ、複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれが対応する孔に挿入されることにより、これら第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターンを形成する。第3基板230は、複数の導電路を有しており、各導電路が複数の第1導電性コンタクトピン4と複数の第2導電性コンタクトピン6のうち同一機能を有するピン同士を導通接続している。すなわち、各導電路は、複数の第1導電性コンタクトピン4と複数の第2導電性コンタクトピン6のうち、電源供給用ピンとして機能する導電性コンタクトピン同士、接地用ピンとして機能する導電性コンタクトピン同士、信号伝送用ピンとして機能する導電性コンタクトピン同士を、それぞれ導通接続する。上記第1〜第3基板210〜230は、固定具83により一体的にボディ8に固定されており、この固定具83により、ボディ8に対する第1〜第3基板210〜230それぞれの相対位置の変動が抑制されている。
【0019】
ボディ8は、ICデバイス(図示せず)を第1基板210の上面210a上の所定位置に配置するためのガイド部又はガイド壁81を有し、さらに、ピンホルダ1をICデバイスを動作させる装置、例えば、ICデバイスを検査する検査装置(図示せず)が有する回路基板の所定位置に配置するための位置決め部(本実施形態では図2に示す位置決めピン82)を有する。なお、ボディ8は、必要に応じてピンホルダ1に取り付けられる。また第1〜第3基板210〜230それぞれは、位置決め部と協働して位置決めを行う孔や切欠きを有していてもよい。
【0020】
また、ピンホルダ1に対してICデバイスを正確な位置に取り付けるために、ピンホルダ1とは別個に設けられた位置決め装置が用いられてもよい。この場合、ボディ8は省略される。
【0021】
図3は、第1基板210の上面210a上に配置された第1導電性コンタクトピン4の第1配置パターンの一例を示す平面図である。また、図4は、第2基板220の下面220b上に配置された第2導電性コンタクトピン6の第2配置パターンの一例を示す平面図である。
【0022】
図3に示されたように、第1基板210の上面210aには、複数の第1導電性コンタクトピン4のそれぞれが、ピンホルダ1に取り付けられるICデバイスの各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第1導電性コンタクトピン4それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第1導電性コンタクトピン4により第1配列パターンPA1aが形成される。なお、図3には、第1導電性コンタクトピン4の第1配列パターンPA1aが6x6矩形配列パターンで構成された例が示されている。また、図3に示された821a〜821dは、固定具83を貫通させるための貫通孔である。
【0023】
一方、図4に示されたように、第2基板220の下面220b上には、複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれが、ピンホルダ1が取り付けられる回路基板の各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第2導電性コンタクトピン6により第1配列パターンPA1aとは異なる第2配列パターンPA1bが形成される。なお、図4には、第2導電性コンタクトピン6の第2配列パターンPA1bが2つの6x3矩形配列パターンで構成された例が示されている。また、図4に示された822a〜822dは、固定具83を貫通させるための貫通孔である。
【0024】
図3及び図4に示された例では、第1及び第2配列パターンPA1a、PA1bは、縦方向及び横方向に沿ったピン間のピッチは同じであるが、ピン配置が異なっている。なお、縦方向と横方向でピン間のピッチが異なってもよい。また、第1及び第2配列パターンは、ピン間のピッチのみが異なる相似形の関係であってもよい(後述する図8及び図9)。さらには、第1配列パターンと第2配列パターン間でパターンを構成するピンの本数が異なっていてもよい。
【0025】
このように、本実施形態におけるピンホルダ1では、第1導電性コンタクトピン4の第1配列パターンPA1aと第2導電性コンタクトピン6の第2配列パターンPA1bは異なっている。そして、図5に示されたように、各第1導電性コンタクトピン4は、第3基板230内に設けられた複数の導電路を介して第2導電性コンタクトピン6のうちの対応する第2導電性コンタクトピンと電気的に接続される。そのため、ピンホルダ1は、回路基板の端子間のピッチ、配列及びピン本数と異なる端子間のピッチ、配列及びピン本数を持つICデバイスの各端子を、回路基板の対応する端子に電気的に接続させることができる。
【0026】
図5は、図2に示されたピンホルダの一実施形態における要部断面を拡大した図である。なお、図5に示された実施形態では、第3基板230が第1基板210及び第2基板220とは別体構成になっている。
【0027】
図5において、まず、第1基板210は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材2110と、この基材2110に包埋された少なくとも1つの誘電体層2111を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層2111の上面側及び下面側には銅等の導電層2112、2113が形成されている。したがって、誘電体層2111とその両面上に形成された導電層2112、2113は、協働してコンデンサを構成する。つまり、第1基板210は、基材2110を構成する材料(基材の一部)と、導電層2112、2113と、誘電体層2111とを積層することにより構成されている。また、コンデンサの容量を高めるためには誘電体層2111の誘電体の誘電率は高い程好ましく、例えば誘電体層2111は、基材2110の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体からなるのが好ましい。例えば、高誘電体としてスリーエム社製のEmbedded Capacitor Material(ECM)が使用可能である。ECMは、高誘電材料を柔軟性のあるシート状に形成したものである。このような基板は、印刷回路板を作製する方法によって、作製することができる。なお、ECM等で実現されるコンデンサは、高周波特性には影響しないため、特に基板内には設けられなくともよいが、電源安定化のためには有効な構造である。また、第1基板210を構成する材料、すなわち、基材2110の材料は、ガラス繊維の代わりに紙を含んでいてもよいし、エポキシ樹脂の代わりにフェノール樹脂やポリアミド樹脂を含んでもよい。また導電層2112、2113を構成する材料として、銅以外に銀や金が使用されてもよい。誘電体層2111は、ポリマーを含んでもよい。好ましくは、誘電体層2111は、ポリマーと複数の粒子とを含み、具体的には樹脂と粒子とを混合することによって作製される。好適な樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、シアノエチルプルラン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリレート樹脂、及びそれらの混合物が挙げられる。粒子は、ポリマーの比誘電率より高い比誘電率を持つ誘電性(又は絶縁性)粒子を含み、その代表例としては、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、酸化チタン、チタン酸鉛ジルコニウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0028】
誘電体層2111の厚みは、例えば0.5マイクロメートル以上とすることができ、100マイクロメートル以下とすることができる。該厚みはより薄い方が、キャパシタの静電容量を高くできるので好ましく、例えば15マイクロメートル以下、或いは10マイクロメートル以下とすることができる。ただし、該厚みはより厚い方が、接着強度の点からは好ましく、例えば1マイクロメートル以上とすることができる。
【0029】
また、誘電体の比誘電率は高い程好ましく、例えば10以上、或いは12以上とすることができる。比誘電率の上限には特に制限はないが、例えば30以下、20以下、或いは16以下とすることができる。
【0030】
誘電体層2111の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層2112は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2113は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。なお、図5に示された第1基板210の上面210aは、基材2110の上面と一致しており、第1基板210の下面210bは、基材2110の下面に一致している。また、各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、第1基板210に全面的に配置される。したがって、第1基板210の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。
【0031】
第1基板210は、更に、上面210aと下面210bを連絡する複数の貫通孔を有し、これら貫通孔それぞれの内面には、銅、金又は銀等の金属がメッキされることにより導電材料2151〜2156が設けられている。第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれは、対応する貫通孔に少なくとも一部が挿入されている。図5に示された実施形態では、第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2141、2146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2144が電源供給用ピンである。
【0032】
各第1導電性コンタクトピン2141〜2146は、上面210aから下面210bに向かって第1基板210を貫通している。詳細には、接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145は、導電材料2152、2153、2155にそれぞれ接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより各接地用ピンは第1基板210にそれぞれ保持される。また、導電材料2152、2153、2155のそれぞれは、グラウンド層である導電層2113に電気的に接触している。電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144は、導電材料2154に接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより、電源用ピンは第1基板210に保持される。導電材料2154は、電源層である導電層2112に電気的に接触している。
【0033】
一方、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146は、が導電材料2151、2156に接触することなく対応する貫通孔内に挿入されている。すなわち、第1導電性コンタクトピン2141、2146のピンボディの直径dに対して対応する貫通孔の開口径はD(>d)に設定されており、第1基板210内に同軸線路が構成されている。なお、第1導電性コンタクトピン2141、2146から一定距離れた導電材料2151、2156は、グラウンド層である導電層2113に電気的に接続されている。また、本願明細書における「同軸線路」は、第1導電性コンタクトピン2141、2146のピンボディと導電材料2151、2156とが接触せずに互いに絶縁され、かつピンボディが電気伝導性材料に覆われた(電磁シールドされた)形態を意味し、図示例のように導電性コンタクトピン及び導電材料のそれぞれが同一軸を中心とする円筒である場合のみを意味するものではない。したがって、例えば導電性コンタクトピンの外表面と導電材料の内表面とが互いに偏心した円筒面であってもよい。
【0034】
第1基板210の上面210a及び下面210bの上又は上方には、板状保持部材2121、2122が設けられている。これら板状保持部材2121、2122それぞれは、第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれに対応して設けられた貫通孔を有し、これら貫通孔はピンボディの直径dよりも小さな径をそれぞれ有する。第1導電性コンタクトピン2141〜2146は、各板状保持部材の対応する貫通孔にそれぞれのプランジャ先端が挿入されることにより、第1基板210に確実に保持される。なお、板状保持部材2121、2122は、第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれの抜け落ちを防止するとともに、第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれのプランジャ先端の、該第1導電性コンタクトピン2141〜2146それぞれの軸方向に略垂直な方向への変位(振れ)量を制御する機能を備える。
【0035】
さらに、第1基材2110は、その表面(第1基板210の上面210a、下面210bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)2131、2132を有する。各接地用導体層は、基材2110の表面上において、各接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145に電気的に接続された導電材料2152、2153、2155(接地用ピンが挿入された貫通孔の内面に設けられたメッキ層)に電気的に接続されており、また、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146とは電気的に接続されない。このように、ピンボディより細径のプランジャ近傍にグラウンド層と同電位の導体層が配置されることにより、プランジャ先端のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用ピンの挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また、基材2110の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ、基材2110の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお、図5では、明瞭化のために接地用導体層2131、2132と板状保持部材2121、2122とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0036】
続いて、第1基板210において、同軸線路を構成している信号伝送用ピン(第1導電性コンタクトピン2141、2146)の構成について詳述する。すなわち、上述のように図5に示された第1基板210において、第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2141、2146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン2144が電源供給用ピンである。
【0037】
各第1導電性コンタクトピンは、第1基板210の上面210aから下面210bに向かってに略垂直に延びて該第1基板210を貫通する。特に、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141、2146は、対応した貫通孔内に挿入された状態で、対応する導電材料2151、2156とは接触せず、互いに絶縁されている。この構成により、第1導電性コンタクトピン2141、2146と、対応する導電材料2151、2156とは協働して同軸線路を構成する。なお、信号伝送用ピンと対応する導電材料との間には、樹脂又はセラミック等の誘電体が配置又は充填されてもよい。或いは、ピンボディの外表面と導電材料の内表面との間に誘電体等を充填せずに、空気、窒素又は酸素等の気相とすることもでき、或いは真空とすることもできる。
【0038】
上記同軸線路は、所定の特性インピーダンスを有するように構成される。例えば、第1導電性コンタクトピン2141、2146それぞれのピンボディが直径dの円筒であり、対応する導電材料2151、2156が内径Dの中空円筒であって、両円筒が互いに同軸である場合、該同軸線路の特性インピーダンスZ0は以下の式で表される。なお、εは、導電性コンタクトピンと導電材料との間の誘電体(本実施形態では誘電体又は空気)の誘電率である。D、d及びεを適宜選定することにより、各信号伝送用ピンについて所望の特性インピーダンスを得ることができる。
【0039】
Zo= 60/ε1/2・ln(D/d)
【0040】
図5に示されたように、第1基板210において、導電材料2151、2156は、基材2110内に配置されたグラウンド層である導電層2113電気的に接続されている。この図5の例では、導電層2113は基材2110内に配置された層状導体であり、電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144に接触した導電材料2154を除く導電材料それぞれが導電層2113によって互いに電気的に接続されている。しかしながら、導電材料2151、2156を接地するための接続部分の構造はこの図5の例には限定されず、例えば配線で構成されもよい。
【0041】
第1基板210は、実質一体物として形成されてもよいが、第1導電性コンタクトピンの組立性や上記グラウンド層(又は配線)の配置等を考慮して、いくつかの部材を組み合わせて作製することもできる。例えば、層状のグラウンド層(導電層2113)を基板210内に配置するため、板状の基材2110をその厚さ方向に積層された複数層から形成し、該層間に導電層を挟むことができるようにしてもよい。さらに、第1導電性コンタクトピンが挿入される貫通孔の内面への導電材料の形成(例えばコーティング)を考慮し、基材2110の厚さを各第1導電性コンタクトピン4のピンボディの長さと略等しくし、該導電材料を貫通孔の内面に形成した後に板状保持部材2121、2122を基材2110に接合することもできる。
【0042】
図5に示された実施形態のように、信号伝送用ピンのピンボディを同軸構造にした基板の場合、ピンボディの特性インピーダンスZ0は同軸構造により上式のように定義できるが、従来、プランジャは接地用導体で囲まれていなかったためインダクタンスとして振舞っていた。そこで、図5の実施形態のように、プランジャ近傍に接地用導体層を配置し、グラウンドとの容量成分を追加すると、プランジャのインダクタンス成分が補償され特性が向上する。より詳細には、プランジャのインダクタンス値をL0とした場合、Zo=(Lo/Co)1/2満たすようなCoを有するキャパシタンス成分がプランジャとグラウンドとの間に存在すれば、プランジャ部の特性インピーダンスとピンボディの特性インピーダンスとの差が所定の誤差以内となり、高周波特性の劣化を補償することができる。さらに同時に、信号伝送用ピンと接地用ピンとの電気的結合の存在により、隣接する信号伝送用ピン間のクロストークを小さくすることができる。
【0043】
次に、図5に示された第2基板220の構造について説明する。ただし、第2基板220は、第2導電性コンタクトピン6が第1配列パターンPA1a(図3)とは異なる第2配列パターンPA1b(図4)を形成している点を除き、その構造及び構成材料について第1基板210と同様であるため、重複する説明については省略するものとする。
【0044】
すなわち、第2基板220は、第1基板210の下面210bに対面した上面220aと、該上面220aに対向する下面220bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材2210と、この基材2210に包埋された少なくとも1つの誘電体層2211を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層2211の上面側及び下面側には銅等の導電層2212、2213が形成されている。なお、一方の導電層2212は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2213は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、基材2210には、挿入される第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターンPA1bを形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料2251〜2256が設けられている。
【0045】
第2基板220において、対応する貫通孔に挿入された第2導電性コンタクトピン6のうち、第2導電性コンタクトピン2242、2243、2245が接地用ピンであり、第2導電性コンタクトピン2241、2244が上述の同軸構造を構成する信号伝送用ピンであり、第2導電性コンタクトピン2246が電源供給用ピンである。
【0046】
第2基板220の上面220a及び下面220bの上又は上方には、板状保持部材2221、2222が設けられている。さらに、基材2210は、その表面(第2基板220の上面220a、下面220bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン2241、2244のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)2231、2232を有する。なお、図5では、明瞭化のために接地用導体層2231、2232と板状保持部材2221、2222とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0047】
次に、図5に示された第3基板230は、第1基板210と第2基板220との間に配置されている。すなわち、第3基板230は、第1基板210の下面210bと対面する上面230aと、第2基板220の上面220aに対面する下面230bを有する。さらに、第3基板230は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材2310と、この基材2310に包埋された2つの誘電体層2311、2314を有し、誘電体層2311の上面側及び下面側には銅等の導電層2312、2313が形成されている。また、誘電体層2314の上面側及び下面側には銅等の導電層2315、2316が形成されている。
【0048】
誘電体層2311の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層2312は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2313は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、誘電体層2314の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層2315は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層2316は当該ICデバイス用ソケット100のグラウンドピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、図5に示された第3基板230の上面230aは、基材2310の上面と一致しており、第3基板230の下面230bは、基材2310の下面に一致している。各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、第3基板230に全面的に配置される。したがって、第3基板230の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。なお、以上の第3基板230の構造を実現する材料についても上述の第1及び第2基板210、220と同様である。
【0049】
第3基板230は、更に、第1導電性コンタクトピン4と第2導電性コンタクトピン6のうち同一機能を有するピン同士をそれぞれ導通接続するための複数の導電路を有する。これら導電路には、第1配列パターンPA1a(図3)に一致するよう配置されたグループと、第2配列パターンPA1b(図4)に一致するよう配置されたグループが、少なくとも含まれる。具体的に第3基板230内に形成される導電路には、接地用ピン間を電気的に接続するための導電路と、電源用ピン間を電気的に接続する導電路と、信号伝送用ピン間を電気的に接続する導電路がある。
【0050】
より詳細には、第3基板230内に形成される導電路には、上面230aと下面230bとを連絡する垂直接続要素と、上面230aから下面230bへ向かう方向に直交する方向に沿って各垂直接続要素間を連絡する水平接続要素により構成される。接続要素のうち、垂直接続要素2361〜2366は接地用ピン間を電気的に接続するための接続要素であり、グラウンド層である導電層2313、2316(接地用の水平接続要素)にそれぞれ電気的に接続されている。垂直接続要素2371、2372は、電源用ピン間を電気的に接続するための接続要素であり、電源層である導電層2312、2315(電源用の水平接続要素)にそれぞれ電気的に接続されている。垂直接続要素2381〜2384は信号伝送用ピン間を電気的に接続するための接続要素であり、上記グラウンド層2312、2316及び電源層2312、2315のいずれにも接触せず、絶縁されている。
【0051】
図5の例では、垂直接続要素2361は、上面230aに位置する接触パッド2361aと下面230bに位置する接触パッド2361bを有し、接触パッド2361bを介して接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2242と電気的に接触している。垂直接続要素2362は、上面230aに位置する接触パッド2362aと下面230bに位置する接触パッド2362bを有し、接触パッド2362bを介して接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2243と電気的に接触している。垂直接続要素2363は、上面230aに位置する接触パッド2363aと下面230bに位置する接触パッド2363bを有し、接触パッド2363aを介して接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142と電気的に接触している。垂直接続要素2364は、上面230aに位置する接触パッド2364aと下面230bに位置する接触パッド2364bを有し、接触パッド2364aを介して接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2143と電気的に接触している。垂直接続要素2365は、上面230aに位置する接触パッド2365aと下面230bに位置する接触パッド2365bを有し、接触パッド2365aを介して接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2145と電気的に接触している。垂直接続要素2366は、上面230aに位置する接触パッド2366aと下面230bに位置する接触パッド2366bを有し、接触パッド2366bを介して接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2245と電気的に接触している。なお、各垂直接続要素2361〜2366は、水平接続要素であるグラウンド層2313、2316を介して電気的に接続されており、これにより、接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145と、第2導電性コンタクトピン2242、2243、2245とが電気的に接続される。
【0052】
垂直接続要素2371は、上面230aに位置する接触パッド2371aと下面230bに位置する接触パッド2371bを有し、接触パッド2371aを介して電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144と電気的に接触している。垂直接続要素2372は、上面230aに位置する接触パッド2372aと下面230bに位置する接触パッド2372bを有し、接触パッド2372bを介して電源用ピンである第2導電性コンタクトピン2246と電気的に接触している。これら垂直接続要素2371、2372は、水平接続要素である電源層2312、2315に電気的に接続されており、電源用ピンである第1導電性コンタクトピン2144と第2導電性コンタクトピン2246とが電気的に接続される。
【0053】
さらに、垂直接続要素2381は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、該上面230a側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2381aが形成されている。また、垂直接続要素2381は、下面230bに位置する接触パッド2381bを有し、接触パッド2381bを介して信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン2241と電気的に接触している。垂直接続要素2382は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、下面230b側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2382bが形成されている。また、垂直接続要素2382は、上面230aに位置する接触パッド2382aを有し、接触パッド2382aを介して信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2141と電気的に接触している。垂直接続要素2383は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、下面230b側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2383bが形成されている。また、垂直接続要素2383は、上面230aに位置する接触パッド2383aを有し、接触パッド2383aを介して信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン2146と電気的に接触している。垂直接続要素2384は、上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であり、上面230a側には、ドリルにより導体材料の一部が削り取られた掘削孔2384aが形成されている。また、垂直接続要素2384は、下面230bに位置する接触パッド2384bを有し、接触パッド2384bを介して信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン2244と電気的に接触している。垂直接続要素2381と垂直接続要素2382は水平接続要素2391により電気的に接続されている。また、垂直接続要素2383と垂直接続要素2384は水平接続要素2392により電気的に接続されている。なお、図6は、水平接続要素2391、2392の平面構造を説明するための図であり、図6中の線Lが図5に示された例の断面に一致している。
【0054】
特に、上記水平接続要素2391、2392は、絶縁材料(基材2310の一部)を介してグラウンド層2313、2316に挟まれた空間に配置されており、この構成により、ストリップライン構造が実現されている。なお、第3基板230内に設けられた誘電体層及びその両面に形成された導電層の一方はなくてもよい。この場合、水平接続要素2391、2392と一方のグラウンド層(2313又は2316)によりマイクロストリップライン構造が実現される。
【0055】
グラウンド層である導電層2313、2316は、第1導電性コンタクトピン4のうちの接地用ピンである第1導電性コンタクトピン2142、2143、2145、第2導電性コンタクトピン6のうち接地用ピンである第2導電性コンタクトピン2242、2243、2245にそれぞれ電気的に接続されている。そして、導電層2313、2316それぞれは、信号伝送用ピン間を電気的に接続するための導電路を構成している水平接続要素2391、2392を挟むのに十分な面積を有することが好ましい。本実施形態では、導電層2313、2316それぞれは、第3基板230の水平面全体を覆うように配置される。ただし、導電層2313、2316それぞれは、接地用ピン以外の導電性コンタクトピンとは絶縁されるように配置される。
【0056】
このように、第3基板230は、信号を伝送する導電路の一部(水平接続要素2391、2392)と、その両側に位置する接地された導電層2313、2316を有するので、これら水平接続要素2391、2392はストリップラインとして機能する。そして、これら水平接続要素2391、2392の線幅及び隣接する導電層間の距離を、導電線の伝導率、基板2の比誘電率に応じて適切に設定することにより、ICデバイスに供給される信号が持つ周波数に対して、各信号伝送用ピンと、各信号伝送用ピンを電気的に接続する第3基板230内の導電路間での信号の反射が最小限に抑制される。これにより、第3基板230では、高周波数信号が信号伝送用の導電路2381、2391、2382や、別の信号伝送用導電路2383、2392、2384を経由して信号伝送用ピン間を伝送されることによる伝送損失を低減させることができる。
【0057】
図7はストリップラインを説明するための図であり、この図7に示すように、導電路S1の幅W、導電路S1の厚みt、導電路S1に対して基材(絶縁材料)I1を介して隣接する導電層G1、G2間の距離h、基材I1の誘電率εrからストリップラインの特性インピーダンスZ0は、以下の式(1)で表される。そのため、該式(1)中における各パラメータの値を調整することにより、第3基板230においてインピーダンス整合を図り、回路基板と当該ピンホルダ1のインピーダンスを整合させてもよい。
【数1】
【0058】
さらに、当該第3基板230は、その表層に導電路を配置することで、特性インピーダンスがコントロールされたマイクロストリップラインを備えてもよい。図8は、マイクロストリップラインを説明するための図であり、この図8に示すように、導電路S2の幅W、導電路S2の厚みt、導電路S2と導電層G3との間に設けられた基材(絶縁材料)I2の厚みh、基材I2の誘電率εrからマイクロストリップラインの特性インピーダンスZ0は、以下の式(2)で表される。そのため、該式(2)中における各パラメータの値を調整することにより、第3基板230においてインピーダンス整合を図り、回路基板と当該ピンホルダ1のインピーダンスを整合させてもよい。
【数2】
【0059】
なお、当該ピンホルダ1では、第1及び第2基板210、220において、信号伝送用ピン2141、2146、2241、2244のそれぞれは上述の同軸構造を有し、また、第3基板230内には信号伝送用の導電路としてストリップライン(又はマイクロストリップライン)2391、2392により信号インピーダンスがコントロールされるため、LSIなどのICデバイスの出力インピーダンスと回路基板の特性インピーダンスルとを、当該ピンホルダ1により整合させることが可能になる。なお、第3基板230内のインピーダンスは、ICデバイス及び回路基板の一方が、他方から送信された高周波数信号を受信できる程度に該他方のインピーダンスと整合されていればよく、当該ピンホルダ1は、第3基板230、特に導電路のインピーダンスがICデバイス及び回路基板のインピーダンスと完全に一致しているものに限定されない。
【0060】
また、第3基板230内に形成された信号伝送用の導電路(図5の例において、接続要素2381、2391、2382からなる信号経路、及び、接続要素2382、2392、2384からなる信号経路)は、図9に示すように構成されている。なお、図9は、第1導電性コンタクトピン4に属する信号伝送用ピン2141と第2導電性コンタクトピン6に属する信号伝送用ピン2241とを電気的に接続する第3基板230内の導電路の立体構造の例を示す図である。この図9に示すように、垂直接続要素2381、2382は、第3基板230の上面230aと下面230bとを連絡する貫通孔の内面に設けられた導体材料であるため、本来、水平接続要素(ストリップライン)2391に対して垂直接続要素2381の上面側の一部と、垂直接続要素2382の下面側の一部は、不要な導電路であり、スタブとして機能してしまう。そこで、図5の例では、これら不要部分をドリルにより除去することにより、掘削孔2381a、2382bがそれぞれ形成されている。
【0061】
以上に説明してきたように、本実施形態に係るICデバイス用ソケット100は、回路基板の端子間のピッチ及び配列と異なる端子間のピッチ及び配列を有するICデバイスの各端子を、回路基板の対応する端子と電気的に接続することができる。また、当該ICデバイス用ソケット100では、ICデバイスに供給される信号が持つ周波数に対する、該ICデバイスの信号端子と接続される導電性コンタクトピン(信号伝送用ピン)のインピーダンスと、回路基板の信号端子と接続される導電性コンタクトピン(信号伝送用ピン)のインピーダンスとを整合させるように構成された導電路を介して、信号伝送用ピン間が電気的に接続される。そのため、当該ICデバイス用ソケット100は、ICデバイスと回路基板間で伝達される信号の伝送損失を低減できる。
【0062】
(導電性コンタクトピンの構造)
上述の実施形態において使用可能な導電性コンタクトピンは、いわゆるスプリングプローブのような構成を有していてもよい。例えば、図10は、本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピン4、6の一例を示す断面図であり、これら導電性コンタクトピン4、6に相当する例として導電性コンタクトピン400の側面断面が示されている。
【0063】
導電性コンタクトピン400は、基板に挿入される略円筒状のピンボディ401と、ピンボディ401の一端(図示例では下端)から突出し、基板に形成される孔の底面又は基板に形成された貫通孔を介して回路基板等の別基板の端子に当接可能な第1接触部402と、ピンボディ401の他端(図示例では上端)から突出し、基板に形成される孔の上面又は基板に形成された貫通孔を介してICデバイス等の端子に当接可能な第2接触部403とを有する。ピンボディ401と各接触部402、403は、導電性を有する材料からなる。ピンボディ401の上端及び下端の開口の内径は、ピンボディ401の中央部の内径よりも狭くなっている。また、各接触部402、403の側面には、ピンボディ401の下端又は上端に対して内側から当接して各接触部402、403がピンボディ401から脱落することを防止するためにフランジが形成されている。
【0064】
ピンボディ401の内部には、金属製のスプリング404のような導電性を有する弾性部材が設けられる。スプリング404は、各接触部402、403がピンボディ401の軸方向に対して変異可能なように、両接触部402、403をそれぞれピンボディ401の下端又は上端へ向けて付勢する。そのため、コンタクトピン400の一端が、ICデバイスの端子等によりピンボディ401の軸方向に沿って押圧されると、接触部402、403には押圧された方向と逆向きの力が作用するので、接触部402、403とその端子間の接触が確実になる。そのため、導電性コンタクトピン400は、接触部402又は403と接触された端子等と確実に導通接続される。
【0065】
また、図11は、本発明の各実施形態に適用可能な導電性コンタクトピン4、6の他の例を示す断面図であり、これら導電性コンタクトピン4、6に相当する例として導電性コンタクトピン410の側面断面が示されている。
【0066】
導電性コンタクトピン410は、基板に形成された孔又は貫通孔に挿入される、導電性金属により形成された略円筒状のピンボディ411と、細長いピン状のプランジャ412及びコイル状バネ413とを有する。プランジャ412及びコイル状バネ413は、いずれも導電性金属により形成され、ピンボディ411内に収容されている。
【0067】
ピンボディ411は、下側に開口している第一部分411aと、第一部分と同軸状に配置された第二部分411cと、内径がピンボディ411の延在方向に漸次変化し、第一部分411aと第二部分411cとを連絡する傾斜部分411bとを有する。ピンボディ411の下側開口(例えば、孔の底面又は貫通孔の開口のうち回路基板に対面する開口)の近傍である第一部分411aにおける内径は、ピンボディ411の中心部分である第二部分411cにおける内径よりも小さくなっている。ピンボディ411は、第二部分411cの上方に、第二部分411cと連通して第二部分411cよりも内径の狭い第三部分411dを有し、その第三部分411dに上面開口が形成されている。
【0068】
ピンボディ411内に収容されたコイル状バネ413は、ピンボディ411の第二部分411cに収容されている上側部分413aと、上側部分413aに連結されている下側部分413bとを備える。上側部分413aはその軸方向つまりピンボディ411の延在方向に圧縮可能な弾性を有する。また、上側部分413aは、その外径がピンボディ411の第二部分411cの内径と略同一か、それよりも小さい。下側部分413bは上側部分413aに連続して形成されており、下側部分413bでは、上側部分413aよりもバネが密に巻かれている。また、下側部分413bの外径は、上側部分413aよりも小さく、かつ、ピンボディ411の第一部分411aの内径と略同一かそれよりも小さい。したがって、コイル状バネ413の上側部分413a(すなわち、ピンボディ411の第二部分411c内に位置する部分)の直径は、ピンボディ411の第一部分411aの内径よりも大きい。そのため、ピンボディ411は、コイル状バネ413がピンボディ411から脱落することを防止できる。さらに、コイル状バネ413の上側部分413aの長さはピンボディ411の第二部分411cの長さと略同一の長さを有している。一方、コイル状バネ413の下側部分413bの長さはピンボディ411の第一部分411aよりも長い。したがって、ピンボディ411に挿入されたコイル状バネ413は、その下側部分413bがピンボディ411の下部の開口から突出し、コイル状バネ413の下端が回路基板の端子または孔の底面と接触し、電気的に接続されるようになっている。また、後述するプランジャ412はコイル状バネ413により、常に上方向に付勢された状態にある。
【0069】
コイル状バネ413の下側部分413bは、コイル状バネ413が自由状態(圧縮力を受けていない状態)でバネの隣接する巻き同士が接触するように構成されている。そのため、コイル状バネ413の下側部分413bでは、コイル状バネ413及びピンボディ411により形成される導電路の断面積が広くなるので、その導電路の導電抵抗を小さくすることができる。また、導電路がコイル状ではなく、コイル状バネ413の延在方向に略並行な、直線状に形成することができる。そのため、高周波信号がコンタクトピンに印加されても、この部分でインダクタンスが発生することを抑制できる。本実施形態では一つのバネの外径および巻きピッチを変化させることにより、上側部分413aと下側部分413bとが構成されている。そのため、少ない部品点数で、低コストに弾性部材を作製することができる。
【0070】
また、コイル状バネの下側部分は自由状態でバネの隣接する巻き同士が接触しないように構成しておき、ICデバイス又は回路基板がピンホルダに取り付けられてコイル状バネが圧縮されたときに、下側部分のバネの隣接する巻き同士が接触するよう、導電性コンタクトピン410は構成されてもよい。コイル状バネの下側部分において隣接するバネの巻き同士が予め接触するようにコイル状バネが構成される場合には、コイル状バネの圧縮程度にかかわらずコイル状バネの延在方向に略平行な導電路が形成されるので、より確実に導電路を短くすることができる。
【0071】
一方、ピンボディ411の第二部分411cでは、コイル状バネ413は疎に巻かれているので、コイル状バネ413はピンボディ411の長手方向に沿って弾性を有している。
【0072】
本実施形態では1本のコイル状バネによって弾性部材を構成しているが、弾性部材を他の形態でも構成することができる。例えば、外径またはバネ定数の異なる2つのコイル状バネを直列にピンボディ411に挿入してもよい。また、それらのコイル状バネが一体化されてもよい。
【0073】
或いは、コイル状バネの下側部分は金属スリーブ又は金属棒で構成されてもよい。これら金属スリーブ又は金属棒は、金属スリーブ又は金属棒の上端付近で、コイル状バネの上側部分と公知の方法で連結されてもよい。連結方法として、例えば、それらを機械的に係合させる方法または導電性接着剤で接着する方法を採用することができる。さらに、コイル状バネの上側部分は導電性を有する弾性部材であればよく、その上側部分は、例えば導電性を有するエラストマー、導電性材料で構成された空気バネ、若しくはピンボディ411の延在方向に圧縮可能な板バネ等により構成することができる。
【0074】
ピンボディ411に収容されたプランジャ412は、ICデバイスの端子又は基板に形成された孔の上面に設けられた導電体と、コイル状バネ413及びピンボディ411とを電気的に接続する。
【0075】
プランジャ412の上端は、ICデバイスの端子又は基板に形成された孔の上面に設けられた導電体と確実に接触するように、ピンボディ411の上部の開口から突出している。一方、プランジャ412の下端は、コイル状バネ413の内部に挿入される。プランジャ412の長手方向の略中央部には、プランジャ412の他の部分よりも直径が大きいフランジ412aが形成されている。そのフランジ412aの下端がコイル状バネ413の上端と衝合される。そのため、ICデバイスの端子等によりプランジャ412が押圧されると、プランジャ412が下方へ向けて移動するとともに、プランジャ412はコイル状バネ413をピンボディ411の長手方向に沿って圧縮する。これにより、プランジャ412とコイル状バネ413が確実に接触し、プランジャ412とコイル状バネ413が接触不良となることを防止できる。また、プランジャ412及びコイル状バネ413とピンボディ411との接触面積が増加するので、プランジャ412及びコイル状バネ413からピンボディ411を経由する導電路の抵抗を小さくすることができる。
【0076】
なお、プランジャ412の長さは、プランジャ412の移動範囲の下端に位置するときでも、プランジャ412の下端がピンボディ411の内径が大きい部分(すなわち、第2部分411c)に収まるように設計されることが好ましい。このようにプランジャ412の長さが設定されることで、ICデバイス又は回路基板がピンホルダから取り外されたときに、プランジャ412の下端がコイル状バネ413の径の細い部分に挟まって抜けなくなることを防止できる。
【0077】
また、コイル状バネ413が圧縮された状態において、プランジャ412の下端部分は、コイル状バネ413の疎に巻かれた部分と接触することが好ましい。プランジャ412がコイル状バネ413の内周面と接触するとコイル状バネ413が撓み、その弾性反発力でプランジャ412がコイル状バネ413によって押し返される。この弾性反発力が大きいと、コイル状バネ413とプランジャ412との間の摩擦が大きくなり、プランジャ412の上下方向の移動が阻害される虞れがある。コイル状バネ413の疎に巻かれた部分の剛性は、密に巻かれた部分の剛性よりも低くなる。そのため、プランジャ412の下端部分がコイル状バネ413と接触したときに、その接触したコイル状バネ413の部分が疎に巻かれている方が、プランジャ412に作用する弾性反発力を小さくでき、それによってプランジャ412の上下方向への動きを滑らかにすることができる。
【0078】
さらに、コイル状バネ413の密に巻かれた部分は短い方が好ましく、コイル状バネ413の上側部分413aが実質的に疎に巻かれている部分のみからなることが好ましい。
【0079】
コイル状バネ413の密に巻かれた部分が短いほど、長手方向への弾性を発揮する部分であるコイル状バネ413の疎に巻かれた部分の寸法を長くすることができる。そのため、コイル状バネ413の密にまかれた部分が短いほど、プランジャ412の移動量を大きくすることができる。さらに、プランジャ412の移動量を大きくすることができると、疎に巻かれた部分のバネ係数を小さくすることが可能となる。そのため、例えば、ピンホルダに保持された複数の導電性コンタクトピン410の上端に接するICデバイスの端子の高さ方向(導電性コンタクトピン410の長軸方向)における位置が異なっても、各導電性コンタクトピン間でのプランジャ412とICデバイスの端子との接圧の変化が小さくなり、安定した接触状態を得ることができる。
【0080】
ピンボディ411は、上部開口近傍で内径が細くなっている。その細くなった部分はプランジャ412のフランジ412aの上端を係止して、プランジャ412の移動範囲の上端を規定している。
【0081】
なお、他の実施形態によれば、ピンホルダの基板に形成される各孔の内側形状を、図11に示された導電性コンタクトピン410のピンボディ411の内側形状と同様に形成してもよい。そして各孔内に導電体を形成するとともに、図11に示された導電性コンタクトピン410のプランジャ412とコイル状バネ413が、図11に示されたように配置されてもよい。この場合、プランジャ412とコイル状バネ413とが、導電性コンタクトピンを構成する。
【0082】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【0083】
(配列パターンの変形例)
図12は、第1導電性コンタクトピン4の第1配置パターンの他の例を示す平面図である。また、図13は、第2導電性コンタクトピン6の第2配置パターンの他の例を示す平面図である。
【0084】
図12に示されたように、第1基板310の上面310a上には、複数の第1導電性コンタクトピン4のそれぞれが、ピンホルダに取り付けられるICデバイスの各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第1導電性コンタクトピン4それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第1導電性コンタクトピン4により第1配列パターンPA2aが形成される。なお、図12には、第1導電性コンタクトピン4の第1配列パターンPA2aがピッチP1の6x6矩形配列パターンで構成された例が示されている。また、図12に示された823a〜823dは、固定具83(図2)を貫通させるための貫通孔である。
【0085】
一方、図13に示されたように、第2基板320の下面320b上には、複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれが、ピンホルダが取り付けられる回路基板の各端子と電気的に接続されるように、複数の孔が設けられている。複数の第2導電性コンタクトピン6それぞれは、対応する孔に挿入されており、複数の第2導電性コンタクトピン6により第1配列パターンPA2aとは異なる第2配列パターンPA2bが形成される。なお、図13には、第2導電性コンタクトピン6の第2配列パターンPA2bも6x6矩形配列パターンで構成された例が示されているが、第1配列パターンPA2aとは導電性コンタクトピン間のピッチP2(>P1)が異なっている。また、図13に示された824a〜824dは、固定具83(図2)を貫通させるための貫通孔である。
【0086】
図12及び図13に示された例では、第1及び第2配列パターンPA2a、PA2bは、縦方向及び横方向の双方に沿ったピン間のピッチが異なる相似形である。なお、第1配列パターンと第2配列パターンは、ピッチ及び配列のみならず、ピン本数が異なっていてもよい。
【0087】
(第2実施形態)
図14は、本発明に係るICデバイス用ソケット100の、第2実施形態に係るピンホルダ1Aにおける要部断面を拡大した図である。この図14に示された実施形態に係るピンホルダ1Aも、図5の実施形態と同様に、図1及び図2に示された当該ICデバイス用ソケット100の一部を構成している。ただし、本実施形態に係るピンホルダ1Aは、第1基板410、第2基板420、第3基板430を備えるが、第1基板410と第3基板430が一体化される一方、第2基板420と第3基板430が別体構成となっている点で、図5の実施形態と異なる。なお、上記相違点を除き、各基板410〜430の構成及び材料は、上述の図5の実施形態と同様である。
【0088】
まず、図14に示された第1基板410の構造について詳述する。この第1基板410は、第3基板430上に積層又は接着されることにより該第3基板430と一体化された構造を有するが、実質的に図5の実施形態における第1基板210とその構造及び構成材料において同一である。
【0089】
すなわち、第1基板410は、ICデバイス(図示せず)に対面する上面410aと、該上面410aに対向する下面410bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材4110と、この基材4110に包埋された少なくとも1つの誘電体層4111を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層4111の上面側及び下面側には銅等の導電層4112、4113が形成されている。また、基材4110には、挿入される第1導電性コンタクトピン4が第1配列パターンPA1b(図12のパターンPA2aでもよい)を形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料4151〜4156が設けられている。
【0090】
誘電体層4111の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層4112は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層4113は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。なお、図14に示された第1基板410の上面410aは、基材4110の上面と一致しており、第1基板410の下面410bは、基材4110の下面に一致している。また、この下面410bは、第3基板430の上面430aに直接接している。各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、第1基板410に全面的に配置される。したがって、第1基板410の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。
【0091】
第1基板410において、対応する貫通孔に挿入された第1導電性コンタクトピン4のうち、第1導電性コンタクトピン4142、4143、4145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン4141、4146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン4144が電源供給用ピンである。
【0092】
各第1導電性コンタクトピン4141〜4146は、上面410aから下面410bに向かって第1基板410を貫通している。詳細には、接地用ピンである第1導電性コンタクトピン4142、4143、4145は、導電材料4152、4153、4155にそれぞれ接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより各接地用ピンは第1基板410にそれぞれ保持される。また、導電材料4152、4153、4155のそれぞれは、グラウンド層である導電層4113に電気的に接触している。電源用ピンである第1導電性コンタクトピン4144は、導電材料4154に接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより、電源用ピンは第1基板410に保持される。導電材料4154は、電源層である導電層4112に電気的に接触している。
【0093】
一方、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン4141、4146は、が導電材料4151、4156に接触することなく対応する貫通孔内に挿入されている。すなわち、第1導電性コンタクトピン4141、4146のピンボディの直径dに対して対応する貫通孔の開口径はD(>d)に設定されており、第1基板410内に同軸線路が構成されている。なお、第1導電性コンタクトピン4141、4146から一定距離れた導電材料4151、4156は、グラウンド層である導電層4113に電気的に接続されている。
【0094】
第1基板410の上面410aの上又は上方には、板状保持部材4121が設けられている。板状保持部材4121は、第1導電性コンタクトピン4141〜4146それぞれに対応して設けられた貫通孔を有し、これら貫通孔はピンボディの直径dよりも小さな径をそれぞれ有する。第1導電性コンタクトピン4141〜4146は、板状保持部材4121の対応する貫通孔にそれぞれのプランジャ先端が挿入されることにより、第1基板410に確実に保持される。
【0095】
さらに、基材4110は、その表面(第1基板410の上面410aに一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン4141、4146のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)4131を有する。接地用導体層4131は、基材4110の表面上において、各接地用ピンである第1導電性コンタクトピン4142、4143、4145に電気的に接続された導電材料4152、4153、4155(接地用ピンが挿入された貫通孔の内面に設けられたメッキ層)に電気的に接続されており、また、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン4141、4146とは電気的に接続されない。このように、ピンボディより細径のプランジャ近傍にグラウンド層と同電位の導体層が配置されることにより、プランジャ先端のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用ピンの挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また、基材4110の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ、基材4110の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。なお、図14でも、明瞭化のために接地用導体層4131と板状保持部材4121とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0096】
次に、図14に示された第2基板420の構造について説明する。なお、第2基板420は、図5に示された第2基板220とその構造及び構成材料において実質的に同一であるため、重複する説明については省略するものとする。
【0097】
すなわち、第2基板420は、第1基板410に一体化された第3基板430の下面430bに対面した上面420aと、該上面420aに対向する下面420bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材4210と、この基材4210に包埋された少なくとも1つの誘電体層4211を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層4211の上面側及び下面側には銅等の導電層4212、4213が形成されている。なお、一方の導電層4212は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層4213は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、基材4210には、挿入される第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターン(図4又は図13)を形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料4251〜4256が設けられている。
【0098】
第2基板420において、対応する貫通孔に挿入された第2導電性コンタクトピン6のうち、第2導電性コンタクトピン4242、4243、4245が接地用ピンであり、第2導電性コンタクトピン4241、4244が上述の同軸構造を構成する信号伝送用ピンであり、第2導電性コンタクトピン4246が電源供給用ピンである。
【0099】
第2基板420の上面420a及び下面420bの上又は上方には、板状保持部材4221、4222が設けられている。さらに、さらに、第2基板420は、その表面(第2基板420の上面420a、下面420bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン4241、4244のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)4231、4232を有する。なお、図14では、明瞭化のために接地用導体層4231、4232と板状保持部材4221、4222とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【0100】
次に、図14に示された第3基板430は、その上面430aと上述の第1基板410の下面410bとが直接接触している点を除き、その構造及び構成材料において、実質的に図5に示された実施形態の第3基板230と同様であるため、重複する説明については省略するものとする。
【0101】
すなわち、第3基板430は、第1基板410の下面410bと対面する上面430aと、第2基板420の上面420aに対面する下面430bを有する。さらに、第3基板430は、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材4310と、この基材4310に包埋された2つの誘電体層4311、4314を有し、誘電体層4311の上面側及び下面側には銅等の導電層4312、4313が形成されている。また、誘電体層4314の上面側及び下面側には銅等の導電層4315、4316が形成されている。また、導電層4312、4315のそれぞれは当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、導電層4313、4316のそれぞれは当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。
【0102】
第3基板430内には、信号伝送用の導電路の一部を構成する垂直接続要素4381〜4384、接地用の導電路の一部を構成する垂直接続要素4361〜4366、電源用の導電路の一部を構成する垂直接続要素4371、4372が設けられている。また、垂直接続要素4381、4382は、水平接続要素4391により電気的に接続され、係る水平接続要素4391は、グラウンド層をそれぞれ構成する導電層4313、4316に基材4310を介して挟まれたストリップラインとして機能する。同様に、垂直接続要素4383、4384は、水平接続要素4392により電気的に接続され、係る水平接続要素4392は、グラウンド層をそれぞれ構成する導電層4313、4316に基材4310を介して挟まれたストリップラインとして機能する。
【0103】
なお、第3基板430内において、垂直接続要素4381、4384は、それぞれ、下面430b上に信号伝送用ピンである導電性コンタクトピン4241、4244と電気的に接続される接触パッド4381b、4384bを有する。また、垂直接続要素4381、4384の上面側には、信号経路のスタブを回避するため、垂直接続要素4381、4384それぞれの一部を除去するための掘削孔4381a、4384aが設けられている。一方、垂直接続要素4382、4383は、それぞれ、上面430aに信号伝送用ピンである導電性コンタクトピン4141、4146と電気的に接続される接触パッド4382a、4383aを有する。また、垂直接続要素4382、4383の下面側には、信号経路のスタブを回避するため、垂直接続要素4382、4383それぞれの一部を除去するための掘削孔4382b、4383bが設けられている。接地用の垂直接続要素4361〜4366には、それぞれ、上面430に位置する接触パッド4361a〜4366aを有するとともに、下面430b上に位置する接触パッド4361b〜4366bを有する。さらに、電源用の垂直接続要素4371、4372には、それぞれ、上面430に位置する接触パッド4371a、4372aを有するとともに、下面430b上に位置する接触パッド4371b〜4372bを有する。
【0104】
上述の図14に示された実施形態では、第3基板が第1基板と一体化され、第2基板から分離するよう構成されているが、第3基板が第2基板と一体化され、第1基板から分離するよう構成されてもよいことは言うまでもない。
【0105】
(第3実施形態)
図15は、本発明に係るICデバイス用ソケット100の、第3実施形態に係るピンホルダ1Bにおける要部断面を拡大した図である。この図15に示された実施形態に係るピンホルダ1Bも、図5及び図14に示された実施形態と同様に、図1及び図2に示された当該ICデバイス用ソケット100の一部を構成する。ただし、本実施形態に係るピンホルダ1Bは、上述の各実施形態における第1基板210、410と第3基板230、430の構造が一体化された複合基板510と、第2基板520を備える。すなわち、図15において、複合基板510の上半分が上記第1及び第2実施形態における第1基板210、410に相当する第1基板部分であり、複合基板510のした半分が上記第1及び第2実施形態における第3基板230、430に相当する第3基板部分である。したがって、本明細書において第1基板という場合、第3実施形態における複合基板510に関して言えば該複合基板510の上半分を指すものとする。また、本明細書において第3基板という場合には、第3実施形態における複合基板510に関して言えば該複合基板510の下半分を指すものとする。
【0106】
まず、複合基板510は、ICデバイス(図示せず)に対面する上面510aと、第2基板520に対面する下面510bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材5110と、この基材5110に包埋された誘電体層5111、5114を有する。誘電体層5111の上面側及び下面側には銅等の導電層5112、5113が形成され、誘電体層5114の上面側及び下面側には銅等の導電層5115、5116が形成されている。また、基材5110には、挿入される第1導電性コンタクトピン4が第1配列パターンPA1b(図12のパターンPA2aでもよい)を形成するよう、複数の貫通孔又は底面が導電材料で覆われた孔が形成されており、これら孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料5151〜5156が設けられている。さらに、基材5110には、第2基板520に挿入される第2導電性コンタクトピン6の配列パターンを形成するよう貫通孔又は孔が設けられており、これら孔の内面にも、第1導電性コンタクトピン4と第2導電性コンタクトピン6のうち同一機能を有するピン同士を導通接続する導電路として、垂直接続要素5381、5361、5362、5384、5363、5371が設けられている。
【0107】
誘電体層5111の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層5112は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層5113は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、誘電体層5114の両面に形成された導電層のうち、一方の導電層5115は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層5116は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド層を構成する。なお、図15に示された複合基板510の上面510aは、基材5110の上面と一致しており、複合基板510の下面510bは、基材5110の下面に一致している。また、各誘電体層及びそれぞれの両面に形成された導電層は、複合基板510に全面的に配置される。したがって、複合基板510の面積と略等しい面積を有するコンデンサが形成可能である。
【0108】
複合基板510において、対応する孔に挿入された第1導電性コンタクトピン4のうち、第1導電性コンタクトピン5142、5143、5145が接地用ピンであり、第1導電性コンタクトピン5141、5146が信号伝送用ピンであり、第1導電性コンタクトピン5144が電源供給用ピンである。
【0109】
接地用ピンである第1導電性コンタクトピン5142、5143、5145は、導電材料5152、5153、5155にそれぞれ接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより各接地用ピンは複合基板510にそれぞれ保持される。また、導電材料5152、5153、5155のそれぞれは、グラウンド層である導電層5113、5116の双方に電気的に接触している。電源用ピンである第1導電性コンタクトピン5144は、導電材料5154に接触した状態で対応する貫通孔内に圧入され、これにより、電源用ピンは複合基板510に保持される。導電材料5154は、電源層である導電層5112、5115の双方に電気的に接続されている。
【0110】
一方、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン5141、5146は、が導電材料5151、5156に接触することなく対応する孔内に挿入されている。なお、これら孔の底部には、導電材料5151、5156とは電気的に絶縁された状態で、信号経路の一部を構成する接触パッド5382、5383が設けられている。すなわち、第1導電性コンタクトピン5141、5146のピンボディの直径dに対して対応する孔の開口径はD(>d)に設定されており、複合基板510内に同軸線路が構成されている。なお、第1導電性コンタクトピン5141、5146から一定距離れた導電材料5151、5156は、グラウンド層である導電層5113、5116の双方に電気的に接続されている。
【0111】
ここで、第1導電性コンタクトピン5141な挿入される孔の底部に設けられた接触パッド5382は、垂直接続要素5381と水平接続要素5391を介して電気的に接続されている。この水平接続要素5391は、当該複合基板510の基材5110内に設けられたグラウンド層5411、5412の間に位置しており、この構造により、該水平接続要素5391はストリップラインとして機能する。一方、第1導電性コンタクトピン5146な挿入される孔の底部に設けられた接触パッド5383は、垂直接続要素5384と水平接続要素5392を介して電気的に接続されている。水平接続要素5392も、水平接続要素5391と同様に、当該複合基板510の基材5110内に設けられたグラウンド層5411、5412の間に位置しており、この構造により、該水平接続要素5392もストリップラインとして機能する。なお、水平接続要素5391、5392を挟み込むグラウンド層5411、5412のそれぞれは、接地用ピンである導電性コンタクトピン5142,5143、5145に接触している導体材料5152、5153、5155に電気的に接続されている。また、信号伝送用の導電路の一部となる垂直接続要素5181の上部(複合基板510の上面側)と垂直接続要素5184の上部(複合基板510の上面側)には、それぞれ掘削孔5381a、5384aが設けられている。これら掘削孔5381a、5384aは、スタブを防止するため、ドリルにより垂直接続要素5381の一部と垂直接続要素5382の一部がそれぞれ除去されるように形成された孔である。
【0112】
複合基板510の上面510aの上又は上方には、板状保持部材5121が設けられている。板状保持部材5121は、第1導電性コンタクトピン5141〜5146それぞれに対応して設けられた貫通孔を有し、これら貫通孔はピンボディの直径dよりも小さな径をそれぞれ有する。第1導電性コンタクトピン5141〜5146は、板状保持部材5121の対応する貫通孔にそれぞれのプランジャ先端が挿入されることにより、複合基板510に確実に保持される。
【0113】
さらに、基材5110は、その表面(複合基板510の上面510a及び下面510bに一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン5141、5146のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)5131、5132を有する。接地用導体層5131、5132それぞれは、基材5110の表面上において、各接地用ピンである第1導電性コンタクトピン5142、5143、5145に電気的に接続された導電材料5152、5153、5155(接地用ピンが挿入された貫通孔の内面に設けられたメッキ層)に電気的に接続されており、また、信号伝送用ピンである第1導電性コンタクトピン5141、5146とは電気的に接続されない。このように、ピンボディより細径のプランジャ近傍にグラウンド層と同電位の導体層が配置されることにより、プランジャ先端のインダクタンス成分を補償し、信号伝送用ピンの挿入損失や近端クロストークを小さくすることができる。また、基材5110の表層に接地用導体層を設けることは、通常の多層基板製造プロセスにより実現でき、かつ、基材5110の内層に接地用導体層を設ける場合よりも大きな容量成分を得ることができる。
【0114】
なお、図15でも、明瞭化のために接地用導体層5131と板状保持部材5121とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。また、この図15に示された例では、基材5110の下面(複合基板510の下面510bに一致する面)上に設けられた接地用導体層5132が、第2基板520に保持された第2導電性コンタクトピン6のち、接地用ピンとして機能する導電性コンタクトピン5242、5243、5245が直接接触するパッドとしても機能する。一方、信号伝送用の導体路の一部として機能する垂直接続要素5381、5384は、基材5110の下面上に、第2基板520によって保持される導電性コンタクトピン6のうち、信号伝送用ピンである導電性コンタクトピン5241、5244に電気的に接続される接触パッド5381b、5384bを、それぞれ有している。
【0115】
次に、図15に示された第2基板520の構造について説明するが、該第2基板520は、上述の第1及び第2実施形態における第2基板220、420と、その構造及び構成材料について同様であるため、重複する説明は省略するものとする。
【0116】
すなわち、第2基板520は、複合基板510の下面510bに対面した上面520aと、該上面520aに対向する下面520bを有するとともに、ガラスエポキシ樹脂等の誘電体からなる基材5210と、この基材5210に包埋された少なくとも1つの誘電体層5211を有し(更に別の誘電体層を備えてもよい)、誘電体層5211の上面側及び下面側には銅等の導電層5212、5213が形成されている。なお、一方の導電層5212は当該ICデバイス用ソケット100の電源供給用ピンと電気的に接続された電源層を構成し、他方の導電層5213は当該ICデバイス用ソケット100の接地用ピンと電気的に接続されたグラウンド(GND)層を構成する。また、基材5210には、挿入される第2導電性コンタクトピン6が第2配列パターンPA1bを形成するよう、複数の貫通孔が形成されており、これら貫通孔の内面には、銅、金又は銀等の導電材料5251〜5256が設けられている。
【0117】
第2基板520において、対応する貫通孔に挿入された第2導電性コンタクトピン6のうち、第2導電性コンタクトピン5242、5243、5245が接地用ピンであり、第2導電性コンタクトピン5241、5244が上述の同軸構造を構成する信号伝送用ピンであり、第2導電性コンタクトピン5246が電源供給用ピンである。
【0118】
第2基板520の上面520a及び下面520bの上又は上方には、板状保持部材5221、5222が設けられている。さらに、基材5210は、その表面(第2基板520の上面520a、下面520bにそれぞれ一致した面)上又は該表面の上方であって、信号伝送用ピンである第2導電性コンタクトピン5241、5244のプランジャ近傍に、接地される層状の接地用導体(接地用導体層)5231、5232を有する。なお、図15では、明瞭化のために接地用導体層5231、5232と板状保持部材5221、5222とは離れて図示されているが、両者は当接していてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1、1A、1B…ピンホルダ、100…ICデバイス用ソケット、210、410…第1基板、220、420、520…第2基板、230、430…第3基板、510…複合基板(第1基板+第3基板)、4、2141〜2146、4141〜4146、5141〜5146…第1導電性コンタクトピン、6、2241〜2246、4241〜4246、5241〜5246…第2導電性コンタクトピン、2361〜2366、2371〜2372、2381〜2384、2391〜2392、4361〜4366、4371〜4372、4381〜4384、4391〜4392、5381〜5384、5391〜5392…導電路、2121、2122、2221、2222、4121、4122、4221、4222、5121、5221、5222…保持部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部において延伸するとともに第1配列パターンを形成する複数の第1導電性コンタクトピンを有する第1基板と、
その内部において延伸するとともに前記第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成する複数の第2導電性コンタクトピンを有する第2基板であって、各第2導電性コンタクトピンが1つの第1導電性コンタクトピンに対応した第2基板と、
前記第1及び第2基板の間に配置され、その内部に複数の導電路を有する第3基板であって、各導電路が1つの第1導電性コンタクトピンをその対応する第2導電性コンタクトピンに電気的に接続する第3基板と、
を備えたICデバイス用ソケットであって、
前記第3基板は、前記第1基板及び前記第2基板のうち少なくともいずれかから分離されていることを特徴とするICデバイス用ソケット。
【請求項2】
前記第3基板は、前記第1及び第2基板から分離されていることを特徴とする請求項1記載のICデバイス検査用ソケット。
【請求項3】
前記第1〜第3基板を支持するボディであって、検査すべきICデバイスを前記第1基板の面上の所定位置に配置するためのガイド部と、前記第1〜第3基板の相対位置の変動を抑制する構造と、を有するボディを更に備えたことを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項4】
前記第1基板は、前記第2基板に対面する下面と、該下面に対向する上面と、該上面から該下面に向かって伸びる複数の孔であって、1つの対応した第1導電性コンタクトピンの少なくとも一部がそれぞれ挿入された複数の孔と、該上面及び下面の少なくともいずれかの上又は上方に設けられた保持部材とを有し、
前記保持部材は、1つの対応する第1導電性コンタクトピンの一部がそれぞれ挿入される複数の貫通孔であって、前記複数の第1導電性コンタクトピンそれぞれの長手方向の軸を前記第1基板の対応する孔の中心軸に略一致させる複数の貫通孔を有し、
前記第1基板における各孔の内面上には、導体材料が設けられ、
前記複数の第1導電性コンタクトピンのうち少なくともいずれかは、前記第1基板における対応する孔の内面に設けられた前記導体材料と電気的に絶縁されるように、該対応する孔に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項5】
前記対応する孔の内面上に設けられた前記導体材料と、該対応する孔に挿入された第1導電性コンタクトピンとの間隙に、誘電体が配置されたことを特徴とする請求項4記載のICデバイス用ソケット。
【請求項6】
前記第2基板は、前記第1基板に対面する上面と、該上面に対向する下面と、該下面から該上面に向かって伸びる複数の孔であって、1つの対応した第2導電性コンタクトピンの少なくとも一部がそれぞれ挿入された複数の孔と、該下面及び上面の少なくともいずれかの上又は上方に設けられた保持部材とを有し、
前記保持部材は、1つの対応する第2導電性コンタクトピンの一部がそれぞれ挿入される複数の貫通孔であって、前記複数の第2導電性コンタクトピンそれぞれの長手方向の軸を前記第2基板の対応する孔の中心軸に略一致させる複数の貫通孔を有し、
前記第2基板における各孔の内面上には、導体材料が設けられ、
前記複数の第2導電性コンタクトピンのうち少なくともいずれかは、前記第2基板における対応する孔の内面に設けられた前記導体材料と電気的に絶縁されるように、該対応する孔に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項7】
前記第3基板は、その内部に誘電体層と、第1基板側及び第2基板側の双方から該誘電体層を挟む一対の導電層とが包埋された構造を有することを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項8】
前記第3基板は、その内部にストリップライン及びマイクロストリップラインの少なくともいずれかが包埋された構造を有することを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項1】
その内部において延伸するとともに第1配列パターンを形成する複数の第1導電性コンタクトピンを有する第1基板と、
その内部において延伸するとともに前記第1配列パターンとは異なる第2配列パターンを形成する複数の第2導電性コンタクトピンを有する第2基板であって、各第2導電性コンタクトピンが1つの第1導電性コンタクトピンに対応した第2基板と、
前記第1及び第2基板の間に配置され、その内部に複数の導電路を有する第3基板であって、各導電路が1つの第1導電性コンタクトピンをその対応する第2導電性コンタクトピンに電気的に接続する第3基板と、
を備えたICデバイス用ソケットであって、
前記第3基板は、前記第1基板及び前記第2基板のうち少なくともいずれかから分離されていることを特徴とするICデバイス用ソケット。
【請求項2】
前記第3基板は、前記第1及び第2基板から分離されていることを特徴とする請求項1記載のICデバイス検査用ソケット。
【請求項3】
前記第1〜第3基板を支持するボディであって、検査すべきICデバイスを前記第1基板の面上の所定位置に配置するためのガイド部と、前記第1〜第3基板の相対位置の変動を抑制する構造と、を有するボディを更に備えたことを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項4】
前記第1基板は、前記第2基板に対面する下面と、該下面に対向する上面と、該上面から該下面に向かって伸びる複数の孔であって、1つの対応した第1導電性コンタクトピンの少なくとも一部がそれぞれ挿入された複数の孔と、該上面及び下面の少なくともいずれかの上又は上方に設けられた保持部材とを有し、
前記保持部材は、1つの対応する第1導電性コンタクトピンの一部がそれぞれ挿入される複数の貫通孔であって、前記複数の第1導電性コンタクトピンそれぞれの長手方向の軸を前記第1基板の対応する孔の中心軸に略一致させる複数の貫通孔を有し、
前記第1基板における各孔の内面上には、導体材料が設けられ、
前記複数の第1導電性コンタクトピンのうち少なくともいずれかは、前記第1基板における対応する孔の内面に設けられた前記導体材料と電気的に絶縁されるように、該対応する孔に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項5】
前記対応する孔の内面上に設けられた前記導体材料と、該対応する孔に挿入された第1導電性コンタクトピンとの間隙に、誘電体が配置されたことを特徴とする請求項4記載のICデバイス用ソケット。
【請求項6】
前記第2基板は、前記第1基板に対面する上面と、該上面に対向する下面と、該下面から該上面に向かって伸びる複数の孔であって、1つの対応した第2導電性コンタクトピンの少なくとも一部がそれぞれ挿入された複数の孔と、該下面及び上面の少なくともいずれかの上又は上方に設けられた保持部材とを有し、
前記保持部材は、1つの対応する第2導電性コンタクトピンの一部がそれぞれ挿入される複数の貫通孔であって、前記複数の第2導電性コンタクトピンそれぞれの長手方向の軸を前記第2基板の対応する孔の中心軸に略一致させる複数の貫通孔を有し、
前記第2基板における各孔の内面上には、導体材料が設けられ、
前記複数の第2導電性コンタクトピンのうち少なくともいずれかは、前記第2基板における対応する孔の内面に設けられた前記導体材料と電気的に絶縁されるように、該対応する孔に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項7】
前記第3基板は、その内部に誘電体層と、第1基板側及び第2基板側の双方から該誘電体層を挟む一対の導電層とが包埋された構造を有することを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【請求項8】
前記第3基板は、その内部にストリップライン及びマイクロストリップラインの少なくともいずれかが包埋された構造を有することを特徴とする請求項1記載のICデバイス用ソケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−164469(P2012−164469A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22735(P2011−22735)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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