説明

ICトークン回収装置

【課題】投入口を返却口としても使用でき、装置全体の構成が簡素になり、ICトークン返却時に利用者が返却に気がつきやすく、取り忘れの事態をなくせるICトークン回収装置を提供する。
【解決手段】ICトークン回収装置16は、ICトークン31との間で無線通信を行ってデータの授受を行い、そのデータに基づいて所定の動作制御を行う非接触式ゲート装置10に設けられ、ICトークンが投入される投入口15と、投入口と回収通路とにつながる通路空間32と、投入されたICトークンの読取りデータに基づきICトークンについて回収または返却を判断し、この判断に基づき通路空間にあるICトークンを投入口側または回収通路側に振り分けるカム部材35を備える。さらにICトークンのデータを読み取るリーダライタ36と、読み取ったデータに基づき回収または返却を判断し、カム部材の振分動作を制御する制御部39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICトークン回収装置に関し、特に、非接触式ゲート装置に組み込まれかつ投入口と返却口が同じとなるように構成されたICトークン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の非接触式ゲート装置は、例えば、鉄道交通等において非接触で自動改札が行われるようにした非接触式自動改札システムでの自動改札機などとして利用されている。非接触式ゲート装置では、一般的には、無線通信機能を備えた非接触式券媒体である無線ICカードを利用し、利用者が所持する当該無線ICカードとの間で無線通信を行ってデータの送受を行い、そのデータに基づいてドアを開閉するようになっている。無線ICカードは、コスト的に高くなるため、通常的には、定期利用の非接触式券媒体として利用されている。
【0003】
他方、上記の非接触式ゲート装置では、製造コストが安価である観点からコイン状に形成した非接触式券媒体(無線IC媒体)を一時利用券として利用し、このコイン状の非接触式券媒体を装置本体内に回収することにより、繰り返し使用できるようにしている。当該コイン状の非接触式券媒体は一般的に「ICトークン」と呼ばれている。
【0004】
従来のICトークンの回収装置は、機器の仕様上、投入口と返却口は別々に設けられていた。そのため、回収装置の投入口に投入されたICトークンは、投入搬送通路を通り、リーダライタによって回収または返却の判定が行われた後、返却の場合には振分け部で返却搬送通路に振り分けられ、返却口に搬送されるという構造になっていた。
【0005】
ICトークン回収装置において、構造の簡素化の観点で関連する従来技術として、下記の特許文献1を挙げる。この特許文献1に開示される発明は、コイン型ICカード用リーダライタと称する装置である。この装置によれば、投入口を通して装置内部に投入されたICトークン(コイン型ICカード)について、情報の読取りおよび書込みの処理を行った後、処理結果に基づき当該ICトークンを第1の案内通路と第2の案内通路のいずれかに振り分けるための振分け手段を設けた構成を有している。第1の案内通路は回収通路であり、第2の案内通路は返却通路である。従って、特許文献1に開示される装置構成でも、投入口と返却口は別なものとして設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−24775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のICトークン回収装置では、その構造上、投入口から投入されたICトークンについて、その回収・返却の判定処理の後において、返却時に当該ICトークンを投入口に返却することはできなかった。ICトークンを返却時に投入口を返却口として使用することができれば、装置構造を簡素化することができる。そこで、措置構造の簡素化および製造コストの低減化の観点から投入口を返却口としても使用することができる装置構造が求められている。またこれによれば、投入口へICトークンを返却するという機器仕様に対応することが可能となる。
【0008】
また上記の特許文献1に開示される発明は、スロットマシン等の遊戯機器に組み込まれるコイン型ICカード用リーダライタを対象としているが、投入口につながる案内通路とは別に返却口につながる返却通路が形成されており、前述した通り投入口と返却口は別々の構造を有している。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題・要請に鑑み、投入口を返却口としても使用することができ、装置全体の構成が簡素になり、ICトークン返却時に利用者が返却に気がつきやすく、取り忘れの事態をなくすことができるICトークン回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るICトークン回収装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0011】
第1のICトークン回収装置(請求項1に対応)は、無線通信機能を備えたICトークンとの間で無線通信を行ってデータの授受を行い、そのデータに基づいて所定の動作制御を行う非接触式のゲート装置等に設けられ、ICトークンが投入される投入口と、投入口と回収通路とにつながる通路空間と、投入されたICトークンの読取りデータに基づきICトークンについて回収または返却を判断し、この判断に基づき通路空間にあるICトークンを投入口側または回収通路側に振り分ける振分機構(カム部材)とを備えるように構成される。
【0012】
第2のICトークン回収装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、投入されたICトークンのデータを読み取るデータ読取手段と、データ読取手段による読取りデータに基づきICトークンについて回収または返却を判断する判断手段と、判断手段が回収と判断したとき振分機構によりICトークンを回収通路側に移動させ、判断手段が返却と判断したとき振分機構によりICトークンを投入口側に移動させるように、振分機構を制御する制御手段と、備えることを特徴とする。
【0013】
上記のICトークン回収装置では、投入口から投入されかつ通路空間に存在するICトークンが判断手段によって回収または返却を判断されたとき、回収通路側または投入口側の通路へ振り分けるように構成された特殊な形状を有するカム部材に構成された振分機構を設けるようにした。従って、投入されたICトークンが返却と判断されたときには、投入口側に移動され、投入口を介して返却されることになる。すなわち、投入口が返却口としての機能を有し、別個に返却口を設ける必要がなくなり、投入用通路(通路空間)とは別個の返却通路を設ける必要もない。
【0014】
第3のICトークン回収装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、上記の振分機構は、通路空間に沿って設けられかつ回収動作方向(例えば時計方向)または返却動作方向(例えば反時計方向)に回転自在なカム部材と、このカム部材を回転させる駆動装置とから構成され、上記の制御手段は、判断手段が回収と判断したときカム部材を回収動作方向に回転させてICトークンを回収通路に移動させ、判断手段が返却と判断したときカム部材を返却動作方向に回転させてICトークンを投入口側に移動させるように、駆動装置の動作を制御することを特徴としている。
【0015】
第4のICトークン回収装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、上記のカム部材は、時計方向または反時計方向に回転自在な板状部材であり、回収動作と共に2枚目のICトークンの進入阻止に用いられるレバー部と返却動作用領域部とを有することを特徴としている。例えば回収動作方向として時計方向にカム部材が回転するとき、通路空間に存在するICトークンは回収動作用レバー部によって回収通路の側へ押し出される。このとき2枚目のICトークンが入って来るときにはレバー部によってその進入を阻止する。また例えば返却動作方向として反時計方向にカム部材が回転するとき、通路空間に存在するICトークンは返却動作用領域部の輪郭形状に基づいて投入口側へ押し出される。その結果、返却時には、投入されたICトークンは投入口から返却されることになる。換言すれば、投入口を返却口としても併用し、投入口と返却口が同じになる。
【0016】
第5のICトークン回収装置(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、投入口に2枚のICトークンが続けて投入された時でも、判断手段は1枚のICトークンごとに回収または返却を判断し、回収または返却の処理動作が行われることを特徴としている。
【0017】
第6のICトークン回収装置(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、上記の判断手段と制御手段は、それぞれ、非接触式の装置に設けられた制御装置の判断処理機能および制御処理機能により構成されることを特徴とする。
【0018】
第7のICトークン回収装置(請求項7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、非接触式の装置は自動改札機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るICトークン回収装置によれば、ICトークンを回収側または返却側に振り分ける振分装置を特定の形状を有したカム部材を利用して構成したため、ICトークン投入口をICトークン返却口としても使用することができ、これにより装置全体の構成が簡素になり、ICトークン返却時に利用者が返却の状態に気がつきやすく、取り忘れの事態をなくすことができるという効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るICトークン回収装置が組み込まれた非接触式ゲート装置の正面図である。
【図2】非接触式ゲート装置の平面図である。
【図3】図1および図2におけるA方向矢視図である。
【図4A】初期状態(カム部材の通常の基準姿勢)におけるICトークン回収装置の要部の垂直縦断面図である。
【図4B】図4Aに示した動作状態に対応するカム装置の背面構造図である。
【図5A】ICトークンを回収側に移動させた状態(カム部材の回収側姿勢)におけるICトークン回収装置の要部の垂直縦断面図である。
【図5B】図5Aに示した動作状態に対応するカム装置の背面構造図である。
【図6A】ICトークンを返却側に移動させた状態(カム部材の回収側姿勢)におけるICトークン回収装置の要部の垂直縦断面図である。
【図6B】図6Aに示した動作状態に対応するカム装置の背面構造図である。
【図7】ICトークン回収装置の制御系のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係るICトークン回収装置が組み込まれた非接触式ゲート装置の正面図を示し、図2は非接触式ゲート装置の平面図を示し、図3は図1および図2におけるA方向矢視図を示す。なお本発明に係るICトークン回収装置が組み込まれる装置は、この非接触式ゲート装置には限定されない。本発明に係るICトークン回収装置は、一般的にコイン状の非接触式券媒体であるICトークンが利用される非接触式の装置(遊戯器具等)であれば、任意の装置に適用することができる。
【0023】
図1〜図3において、非接触式ゲート装置10は、ゲートとしての通路を形成する壁部をなす構造部であり、通常的には、1台の非接触式ゲート装置10に対して他の非接触ゲート装置または壁部が平行に設置され、その間にゲート通路が形成される。非接触式ゲート装置10の代表例は駅構内に設置された自動改札機である。図では1台の非接触式ゲート装置のみを示している。このゲート装置10は、筐体部11における通路中央部に相当する箇所に垂直ドア12が設けられている。垂直ドア12は、略扇型の形状を有しており、図3に示す矢印Bのように開閉動作を行う。図に示した状態は、垂直ドア12が筐体部11の収容場所13から外に出した状態にあり、閉動作状態を示している。開動作状態のときには垂直ドア12は収容場所13に収容され、通路を遮るものはなく、通路を通行できる状態に保つ。
【0024】
なお、図に示した非接触式ゲート装置10は、定期利用される非接触式券媒体である非接触式ICカードと、一次利用される非接触式券媒体であるICトークンのいずれにも対応できる構成を有している。しかしながら、本発明との関係において、非接触式ゲート装置10としては、少なくともICトークンに対応できる構成を有していれば十分である。
【0025】
非接触式ゲート装置10において、その筐体部11の一方の端部(図中左端部)の上面領域にはICカードタッチ部14AとICトークン投入口15とが設けられ、他方の端部(図中右端部)の上面領域にはICカードタッチ部14Bが設けられている。この実施形態で示した例では、一例として、筐体部11の右端部が「入口側」に設定され、その左端部が「出口側」に設定されている。ICカードタッチ部14A,14Bは、通常的に知られるように、利用者が無線ICカードを使用する場合に対応する機能部分であり、その内部には、無線ICカードとの間で無線通信を行うアンテナ(図示せず)と、無線ICカードとの間でデータの送受を行うICカードリーダライタ(図示せず)を備えている。またICトークン投入口15は、筐体部11の左端部の上面領域に形成されたスリット状の孔である。ICトークン投入口15は、図1に示すように筐体部11の内部に設けられたICトークン回収装置16(破線で示す)の上面部に形成された投入口となっている。このICトークン回収装置16の内部には、ICトークン投入口15から投入されたICトークンを移動させる1本の案内通路が形成され、さらに、この案内通路の投入口側の通路空間内に存在する当該ICトークンを回収側または返却側に振り分けるための振分機構が設けられている。ICトークン回収装置16の下側には、回収側に振り分けられたICトークンを回収するための回収容器17が設けられている。筐体部11の中央部の上面領域には通過表示灯18が設けられ、また通路側壁面には水平に所定の長さを有するバー状の人間検知センサ19が設けられている。また非接触式ゲート装置10の筐体部11の内部には、破線ブロックで示されるように、制御部(マイコン等)21、AC電源入力部22、電源部23が設けられている。
【0026】
上記のように、本実施形態に係るICトークン回収装置16は、非接触式ゲート装置10に対して利用者が一次利用される非接触式券媒体であるコイン形状のICトークンを使用する場合に、ICトークン投入口15から投入されたICトークンの回収または返却を判別し、回収または返却の振分処理動作を行うように構成されている。
【0027】
次に、図4A〜図7を参照して、本実施形態に係るICトークン回収装置16の特徴的な構造、機構、および動作を説明する。
【0028】
図4A〜図6Bは、それぞれ、ICトークン回収装置16の要部の垂直縦断面図(図4A,5A,6A)と、当該垂直縦断面図の動作状態に対応するカム装置の背面構造図(図4B,5B,6B)を示す。
図4A,4Bは、ICトークン31がICトークン投入口15から投入されかつ当該ICトークン投入口15に近い通路空間32に存在する初期状態(通常の基準姿勢)を示している。
図5A,5Bは、図4A,4Bの初期状態を基準にして、カム装置が回収側に動作し、ICトークン31を回収容器17の側へ移動させた状態を示している。
図6A,6Bは、図4A,4Bの初期状態を基準にして、カム装置が返却側に動作し、ICトークン31をICトークン投入口15の側へ移動させた状態を示している。
図7は、ICトークン回収装置16の制御系の構成を示している。
【0029】
図4A,4Bを参照してICトークン回収装置16の基本的な構成を説明する。ICトークン回収装置16のボディー部16Aにはほぼ中央部に上下方向に1つの案内通路33が形成されている。案内通路33は、上端開口部33aが上記のICトークン投入口15につながっており、下端開口部33bが上記の回収容器17の上部入口部につながっている。案内通路33は、ICトークン投入口15からICトークン回収装置16内に投入された上記ICトークン31を、例えば回収容器17へ移動させるための通路であり、扁平なコイン形状を有するICトークン31を案内するのに適した通路形状を有している。この案内通路33において、ICトークン投入口15に近い上端開口部33a近傍のスペース部分が上記の通路空間32になっている。
【0030】
さらに図4Aにおいて、案内通路33には、当該案内通路33に沿って軸34の周りにおいて時計方向または反時計方向(D1)に回転自在に取り付けられたカム部材35が設けられている。カム部材35は、所要の厚みを有する板状の形状を有すると共に、ICトークン31を回収するための動作に用いられるレバー部35Aと、ICトークン31を返却するための動作に用いられる膨出領域部35Bと、を備えた平面形状を有している。通常の基準姿勢では、図4Aに示されるように、カム部材35は、膨出領域部35Bが案内通路33内に突き出て案内通路33でのICトークンの通過を阻止し、かつレバー部35Aは案内通路33の外側に配置されるような姿勢で保持されている。このような基準姿勢において、ICトークン31がICトークン投入口15および上端開口部33aを通して投入されると、図4Aに示されるごとく、当該ICトークン31はカム部材35の膨出領域部35Bに当たって通路空間32の箇所に停止した状態に保持される。この状態で、ICトークン31と、ICトークン回収装置16内に設けられたICトークンリーダライタ36との間で無縁通信を介してデータの送受が行われる。ICトークン31とICトークンリーダライタ36との間のデータの送受に基づいて、当該ICトークン31が回収されるべきものか、または返却すべきものかについての情報がICトークン回収装置16の側で取得できる。ICトークン回収装置16では、その情報に基づいてカム部材35を反時計方向(回収側)または時計方向(返却側)に回転動作させ、通路空間32に存在するICトークン31についての回収動作または返却動作を行う。
【0031】
次に、図4Bに基づいてICトークン回収装置16の背面側の構造について説明する。カム部材35の上記の軸34の背面側の端部には遮光板37が固定されている。軸34の回転動作に従ってカム部材35が回転するとき、遮光板37も同期して回転することになる。軸34を回転させるための駆動装置は、ICトークン回収装置16のボディー16Aのボックス16A−1の内部に設けられている。図4Bにおいて、ボックス16A−1内で破線で示したブロック38が駆動装置(モータおよびギヤ機構等)を示し、ブロック39が駆動装置38の動作を制御する制御部を示している。制御部39は、情報処理機能と、駆動装置38の動作、すなわちカム部材35の動作を制御する機能とを有している。上記のICトークンリーダライタ36の取得情報は制御部39に提供される。
【0032】
上記の遮光板37は、その円周方向において一定の間隔で形成された3つの遮光片部37a,37b,37cを有している。またICトークン回収装置16の背面側には、遮光板27との関係において、2つのフォトセンサ41,42が所定の位置に設けられている。2つのフォトセンサ41,42は、軸34を中心点とした円上においてほぼ90度の角度をなすように配置されている。2つのフォトセンサ41,42の各々は、遮光板37の3つの遮光片部37a〜37cのいずれかが適宜に遮光しまたは通過するためのスリット状の光通路を有している。フォトセンサ41,42は、遮光板37の遮光片部37a〜37cが上記光通路に存在するときには光が遮断されてオフ動作状態になり、当該光通路に存在しないときには光が遮断されずオン動作状態になる。フォトセンサ41,42のオン・オフ動作状態に基づいてカム部材35の動作状態を検知することができる。フォトセンサ41,42による検知信号は上記の制御部39に入力される。
【0033】
図4Bに示されたICトークン回収装置16の動作状態によれば、遮光板37の遮光片部37aがフォトセンサ41をオフ動作状態にし、他方、フォトセンサ42はオン動作状態になっている。この動作状態は、図4Aに示したカム部材35の通常の基準姿勢に対応している。当該通常の基準姿勢は、回収動作(回収位置)または返却動作(返却位置)に移る前のカム部材35の姿勢のことを意味している。
【0034】
なお図4Bでは軸34を中心点としてθ1とθ2の2つの角度が定義されている。角度θ1は回収動作時の軸34の回転範囲であり、例えば72°である。角度θ2は返却動作時の軸34の回転範囲であり、例えば90°である。
【0035】
次に、上記ICトークン回収装置16の制御系の構成を図7を参照して説明する。
この制御系の中心要素は上記の制御部39である。当該制御部39は、本実施形態によれば、ICトークン回収装置16の専用の制御部として構成され、非接触式ゲート装置10についての上記の制御部21とは別のものとして構成されている。
制御部39はマイコン等によって構成される。制御部39の入力側には上記のICトークンリーダライタ36とフォトセンサ41,42が配備され、これらの要素からの出力される信号またはデータが制御部39に入力される。制御部39の出力側にはカム部材35を回転動作させるための上記の駆動装置38である。制御部39は、ICトークンリーダライタ36とフォトセンサ41,42から与えられる情報に基づいて、駆動装置38の動作を制御し、ICトークンを振り分ける働きを有するカム部材35の動作状態を条件に応じたものに制御する。
【0036】
次に、図4A,4Bに示したカム部材35の基準姿勢に係る動作状態からのICトークン回収装置16の回収または返却の各動作を、前述した図5A,5Bと図6A,6Bを参照して説明する
【0037】
先ず回収動作について説明する。ICトークン投入口15に投入されかつ図4Aに示した位置にあるICトークン31が、ICトークンリーダライタ36との間のデータ送受および制御部39による判断処理等(データ読取手段および判断手段)に基づいて「回収すべきものである」と判断された場合には、制御部39は、駆動装置38の動作を制御し、カム部材35を図5Aに示すように反時計方向(矢印D2:回収側方向)に回転させる。この結果、カム部材35は反時計方向(D2)に角度θ1だけ回転し、レバー部35AによってICトークン31が案内通路33で回収容器17側に押し出される。カム部材35における角度θ1だけの反時計方向の回転動作は、図5Bに示されるように、遮光板37の遮光片部37cがフォトセンサ42をオフ動作させ、かつ遮光板37の遮光片部37aが移動してフォトセンサ41をオン動作させることにより、制御される。かかるフォトセンサ41,42のオン・オフ動作に係る信号が制御部39に入力されることにより、カム部材35の姿勢は図5Aに示される状態になって停止する。この段階で、通路空間32に存在したICトークン31(図4Aの状態)は回収容器17側へ移動させられ、自由落下により回収容器17内へ搬送される(図5Aの状態)。この場合において、レバー部35AによってICトークン31を回収容器17へフィードするカム部材35は、案内通路33において、下方への通路を開くのと同時に、当該レバー部35Aにより上方から2枚目のICトークンが入って来た場合には当該2枚目のICトークンの進入・落下を阻止することになる。
【0038】
制御部39による上記の回収のための動作制御が終了すると、回収確認後、制御部39は、カム部材35の姿勢が図4Aに示される通常の基準姿勢になるように、駆動装置38の動作を制御する。すなわち、制御部39は、駆動装置38の動作を制御し、カム部材35を時計方向(D3)に角度θ1だけ戻すように回転させる。カム部材35における角度θ1だけの時計方向の回転動作は、図4Bに示されるように、遮光板37の遮光片部37aがフォトセンサ41をオフ動作させ、かつ遮光板37の遮光片部37cが移動してフォトセンサ42をオン動作させることにより、制御される。かかるフォトセンサ41,42のオン・オフ動作に係る信号が制御部39に入力されることにより、カム部材35の姿勢は図4Aに示される状態になって停止する。ただしこの場合、次のICトークンが投入されていないのが一般的である。
【0039】
次に返却動作について説明する。ICトークン投入口15に投入されかつ図4Aに示した位置にあるICトークン31が、ICトークンリーダライタ36との間のデータ送受および制御部39による判断処理に基づいて「返却すべきものである」と判断された場合には、制御部39は、駆動装置38の動作を制御し、カム部材35を図6Aに示すように時計方向(矢印D3:返却側方向)に回転させる。この結果、カム部材35は時計方向(D3)に角度θ2だけ回転し、膨出領域部35Bによって、その湾曲の輪郭形状を利用してICトークン31を押し上げ、当該ICトークン31は案内通路33においてICトークン投入口15側に押し出される。これにより、返却されるICトークン31は、ICトークン投入口15をICトークン返却口として用いることにより返却される。カム部材35における角度θ2だけの時計方向の回転動作は、図6Bに示されるように、遮光板37の遮光片部37aがフォトセンサ42をオフ動作させ、かつ遮光板37の遮光片部37bがフォトセンサ41をオフ動作させることにより、制御される。かかるフォトセンサ41,42のオン・オフ動作に係る信号が制御部39に入力されることにより、カム部材35の姿勢は図6の(A)に示される状態になって停止する。この段階で、通路空間32に存在したICトークン31(図4Aの状態)はICトークン投入口15側へ移動させられる(図6Aの状態)。
【0040】
制御部39による上記の返却のための動作制御が終了すると、抜き取り確認後、制御部39は、カム部材35の姿勢が図4Aに示される通常の基準姿勢になるように、駆動装置38の動作を制御する。すなわち、制御部39は、駆動装置38の動作を制御し、カム部材35を反時計方向(D2)に角度θ2だけ戻すように回転させる。カム部材35における角度θ2だけの反時計方向の回転動作は、図4Bに示されるように、遮光板37の遮光片部37aがフォトセンサ41をオフ動作させ、かつ遮光板37の遮光片部37aが移動してフォトセンサ42をオン動作させることにより、制御される。かかるフォトセンサ41,42のオン・オフ動作に係る信号が制御部39に入力されることにより、カム部材35の姿勢は図4Aに示される状態になって停止する。ただしこの場合、次のICトークンが投入されていないのが一般的である。
【0041】
以上のごとくして、ICトークン回収装置16において、ICトークン投入口15から投入されたICトークン31を回収側に移動させるかまたは返却側に移動させるための振分装置が、上記のカム部材35、ICトークンカードリーダ36、遮光板37、駆動装置38、フォトセンサ41,42等によって構成される。また返却側に振り分けられたICトークン31は、ICトークン投入口15を返却口として利用して返却される。利用者は、返却されるICトークン31がICトークン投入口15から戻ってくるので、確実に返却を確認することができ、取り忘れの状態を防止することができる。
【0042】
前述の実施形態の説明では、ICトークン回収装置16に対して1枚のICトークン31が投入された場合の例を説明した。例えば2枚のICトークン31が順次に投入された場合であっても、判定対象となるICトークンは、定位置すなわち通路空間32に位置する1枚目のICトークン31のみであるので、上記と同様に1枚ごとのICトークン31が判断処理される。また返却の振分動作が行われた場合には、カム部材35は2枚のICトークン31の両方を一緒に押し上げる回転力を有している。
【0043】
さらに前述の実施形態では、ICトークン回収装置16はそれ自体独立した装置として専用の制御部39を備え、当該制御部39によって前述の判断機能および制御機能を実現するようにしたが、装置設計上、当該ICトークン回収装置16に専用の制御部39を備えず、当該ICトークン回収装置16が組み込まれる非接触式ゲート装置10に元々備えられている制御部(マイコン等)21の演算処理機能を利用して上記の判断機能および制御機能を実現するように構成することもできる。すなわち、図7に示された制御系の回路構成において制御部39の代わりに制御部21が用いられる。
【0044】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るICトークン回収装置は、非接触式ゲート装置においてICトークンが利用される場合に当該ICトークンの回収または返却を行うのに利用され、ICトークン投入口を同時に返却口として用いることを可能にしている。
【符号の説明】
【0046】
10 非接触式ゲート装置
11 筐体部
12 垂直ドア
13 収容容器
14A,14B ICカードタッチ部
15 ICトークン投入口
16 ICトークン回収装置
17 回収容器
18 通過表示灯
19 人間検知センサ
21 制御部
22 AC電源入力部
23 電源部
31 ICトークン
32 通路空間
33 案内通路
34 軸
35 カム部材
35A レバー部
35B 膨出領域部
36 ICトークンリーダライタ
37 遮光板
38 駆動装置
39 制御部
41,42 フォトセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を備えたICトークンとの間で無線通信を行ってデータの授受を行い、そのデータに基づいて所定の動作制御を行う非接触式の装置に設けられるICトークン回収装置であって、
前記ICトークンが投入される投入口と、
前記投入口と回収通路とにつながる通路空間と、
投入された前記ICトークンの読取りデータに基づき前記ICトークンについて回収または返却を判断し、この判断に基づき前記通路空間にある前記ICトークンを前記投入口側または前記回収通路側に振り分ける振分機構と、
を備えることを特徴とするICトークン回収装置。
【請求項2】
投入された前記ICトークンのデータを読み取るデータ読取手段と、
前記データ読取手段による読取りデータに基づき前記ICトークンについて回収または返却を判断する判断手段と、
前記判断手段が回収と判断したとき前記振分機構により前記ICトークンを前記回収通路側に移動させ、前記判断手段が返却と判断したとき前記振分機構により前記ICトークンを前記投入口側に移動させるように、前記振分機構を制御する制御手段と、
備えることを特徴とする請求項1記載のICトークン回収装置。
【請求項3】
前記振分機構は、前記通路空間に沿って設けられかつ回収動作方向または返却動作方向に回転自在なカム部材と、前記カム部材を回転させる駆動装置とから構成され、
前記制御手段は、前記判断手段が回収と判断したとき前記カム部材を回収動作方向に回転させて前記ICトークンを前記回収通路に移動させ、前記判断手段が返却と判断したとき前記カム部材を返却動作方向に回転させて前記ICトークンを前記投入口側に移動させるように、前記駆動装置の動作を制御することを特徴とする請求項1または2記載のICトークン回収装置。
【請求項4】
前記カム部材は、時計方向または反時計方向に回転自在な板状部材であり、回収動作と共に2枚目のICトークンの進入阻止に用いられるレバー部と返却動作用領域部とを有することを特徴とする請求項3記載のICトークン回収装置。
【請求項5】
前記投入口に2枚の前記ICトークンが続けて投入された時でも、前記判断手段は1枚の前記ICトークンごとに回収または返却を判断し、回収または返却の処理動作が行われることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のICトークン回収装置。
【請求項6】
前記判断手段と前記制御手段は、それぞれ、前記非接触式の装置に設けられた制御装置の判断処理機能および制御処理機能により構成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のICトークン回収装置。
【請求項7】
前記非接触式の装置は自動改札機であることを特徴とする請求項6記載のICトークン回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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