説明

ID情報読取機能を有する照明装置

【課題】 近傍に存在するバーコードからID情報を読取った際に、読取ったID情報と位置情報を関連付けて記憶できるバーコードリーダ一体型の照明装置を提供する。
【解決手段】 本装置1の照明部11が照らしたエリアに存在するバーコードをバーコードリーダ部12が読取ると、制御部10は、読取ったID情報を、場所および日時と対応付けて読取ID記憶部13に記憶し、記憶したIDと登録ID記憶部に記憶しているデータを比較し、一致/不一致に応じて表示部17、ブザー18による表示内容を制御する。また、キー操作部16からの特定操作に応じて、制御部10は、通信制御部15を介して読取ったID情報ID情報管理装置4へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近傍を照らす照明手段と近傍に存在するバーコードからID(Identification)情報を読取るバーコードリーダとが一体化した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
懐中電灯のような近傍を照らす携帯型電灯と近傍に存在するバーコードや無線タグを読取るコードリーダとが一体化した保守点検装置に関する技術がある(例えば特許文献1)。
【0003】
この技術は、火力発電プラント機器の保守点検等、暗い場所での作業効率を向上するための、携帯型電灯とコードリーダを一体化させた携帯端末に関するものであり、電灯で機器のID情報を照射する作業とコードリーダでID情報を読み取る作業を同時に実行するものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、ID情報の読取り結果と、読取った場所の位置情報を関連付けていない。即ち、場所が移動しないプラント機器の保守点検等には適しているものの、IDが付与された物品が移動する物品管理や多地点を巡回する巡回管理等に適用しにくいという制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−133671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、近傍に存在するバーコードからID情報を読取った際に、読取ったID情報と位置情報を関連付けて記憶できるバーコードリーダ一体型の照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明は、近傍に存在するバーコードからID情報を読取る照明装置であって、近傍のエリアを照らす照明手段と、前記照明手段が照らしたエリアに存在するバーコードからID情報を読取るID情報読取手段と、前記読取ったID情報を自照明装置が備えるメモリの所定のエリアに記憶するID情報記憶手段と、自照明装置が存在している場所を検知する場所検知手段と、を有し、前記ID情報読取手段が所定のID情報を読取った場合または予め定められた特定操作が為された場合に、前記ID情報記憶手段は前記ID情報読取手段が読取ったID情報と前記場所検知手段が検知した場所を関連付けて記憶することを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、前記第1の発明の照明装置であって、前記ID情報読取手段が読取るべきID情報を自照明装置が備えるメモリの所定のエリアに予め登録するID情報登録手段をさらに有し、前記ID情報読取手段が前記ID情報登録手段に登録されているID情報を読取った場合に、前記ID情報記憶手段は前記ID情報読取手段が読取ったID情報と前記場所検知手段が検知した場所を関連付けて記憶すると共に、当該ID情報を読取った旨を音または光により通知することを特徴とする。
【0009】
さらに、第3の発明は、前記第1または第2の発明の照明装置であって、所定のID情報管理装置と通信するID情報通信手段をさらに有し、前記ID情報読取手段が所定のID情報を読取る毎にまたは予め定められた特定操作が為された場合もしくは前記ID情報読取手段が予め定められたID情報を読取った場合に、前記ID情報通信手段は前記読取ったID情報または前記ID情報記憶手段に記憶されているID情報を前記ID情報管理装置へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、読取ったID情報と読取った場所情報を関連付けて記憶できるので、物品管理システムや巡回管理システムに好適な照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による照明装置1の内部ブロック構成を含む全体図
【図2】本発明による登録ID記憶部14に記憶されたデータの例
【図3】本発明による読取ID記憶部13に記憶されたデータの例
【図4】本発明による照明装置1の動作フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、物品管理システムを例に図面を用いて説明する。図1は、本発明の全体図であって、1は本発明による照明装置(以下、本装置と略す)、2は管理対象の物品、3は場所を特定するバーコードシール、4は物品をID情報で管理するID情報管理装置である。なお、バーコードは1次元バーコードだけでなく、QRコード(登録商標)等の2次元バーコードも含む。
【0013】
まず、本装置1を含むシステムの全体構成を説明する。物品2は管理対象の物品であって、当該物品を識別する物品コード21を含むバーコードが印刷されているまたはシールとして貼られている。物品2が例えば出荷待ちの商品であれば、このバーコード21は梱包箱の所定の位置に印刷されたシールが貼られている。
【0014】
シール3は物品2が存在する場所の近傍(例えば、物品2が存在する倉庫の入り口や棚)に貼られたバーコードシールであって、場所を特定する場所コード31がバーコードとして印刷されている。
【0015】
ID情報管理装置4は、本装置1からID情報を授受する物品管理装置(例えば、在庫管理ソフトウェアがインストールされたパソコン)であり、在庫管理室や倉庫事務所等に設置されており、各物品の在庫状況等を管理する。
【0016】
次に、本装置1の内部ブロック構成について説明する。本装置1は、制御部10、照明部11、バーコードリーダ部12、読取ID記憶部13、登録ID記憶部14、通信制御部15、キー操作部16、表示部17、ブザー18から構成される。
【0017】
制御部10は、本装置の全体を制御し、例えば、通信制御部15を介して、ID情報管理装置4へ読取ったID情報を読み取り毎にまたは一括して送信する、または、登録ID記憶部14に登録すべきID情報をID情報管理装置4から受信する。
【0018】
照明部11は、光源およびレンズ系により懐中電灯として近傍のエリアを照らすと共に、バーコードリーダ部12が読取るべきバーコードを照らす照明手段である。
【0019】
バーコードリーダ部12は、照明部11が照らしたエリアに存在する物品コード21、場所コード31を含むバーコードからID情報を読取る手段である。読取ったID情報は制御部10を介して読取ID記憶部13に記憶される。
【0020】
読取ID記憶部13は、バーコードリーダ部12が読取った物品コード21を、場所コード31および読取った日時と対応付けて記憶する手段である。読取ID記憶部13に記憶したID情報は制御部を介して、表示部17に表示できる。また、通信制御部15を介してID情報管理装置4へ送信できる。なお、物品コード21と場所コード31の対応付けについては後述する。
【0021】
登録ID記憶部14は本装置1に予め登録すべきID情報を記憶する手段である。登録ID記憶部に記憶されている情報は制御部を介して、表示部17に表示できる。登録ID記憶部14に記憶するID情報は、通信制御部15を介してID情報管理装置4から受信できる。また、登録IDは、キー操作部16を操作して入力こともできる。さらに、バーコードリーダ部12によりバーコードそのものから入力することもできる。
【0022】
読取ID記憶部13または登録ID記憶部14は、SDカードやUSBメモリ等のリムーバブルな記憶媒体を含む記憶ユニットであってもよい(図示せず)。その場合、調査すべきID情報が予め登録されている記憶媒体を記憶ユニットに挿入する、または、読取ったID情報を記憶した記憶媒体を記憶ユニットから取り出すことが容易である。なお、読取ID記憶部13または登録ID記憶部14を同一の情報記憶手段で共用することも可能である。
【0023】
通信制御部15は、ID情報管理装置4と通信を行う手段であり(例えば、無線LAN)、制御部10からの指示に従いID情報をID情報管理装置4と授受する。
【0024】
キー操作部16は、照明部11のON/OFFやブザー18の鳴動停止、ID情報の表示や通信に係る操作手段である。制御部10は、キー操作部16からの操作データに応じて本装置1を制御する。
【0025】
表示部17は、制御部10から転送されるID情報を操作者が理解できる文字や記号に変換して表示する手段である(例えば、液晶ディスプレイ)。
【0026】
ブザー18は、制御部10からの指示に従い、警報音や通知音を鳴動する手段である。例えば、制御部10は、バーコードリーダ部12が登録ID記憶部14に記憶されている探索中の物品のID情報と一致するID情報を近傍のバーコードから読み取った場合等に所定の鳴動パターンでブザー18を鳴動させる。
【0027】
図2は、登録ID記憶部14に記憶されている登録IDの例であり、列201には物品コード21に対応する品1〜品4という具体的な物品コードが登録されている。また、列202には列201に登録された物品コードに対応する場A〜場Dという具体的な場所コード31が登録されている。この例では、品1と品2の物品が場Aの場所に、品3と品4が場Bの場所に存在しているはずであることを示す。
【0028】
この列201および列202へのデータの登録は、ID情報管理装置4からダウンロードしてもよいし、ID情報管理装置4以外の所定の情報装置(例えば、物品管理者が所持する携帯型パソコン)からダウンロードしてもよい。さらに、バーコードの一覧が印刷された紙資料(図示せず)からバーコードリーダ部12を介して必要なバーコードを読込んで登録してもよい。この登録ID記憶部14による本装置1の動作の詳細は後述する。
【0029】
図3は、読取ID記憶部13に記憶されている読取ID(バーコードリーダ部12読取ったID情報)の例であり、列301にはバーコードリーダ部12が物品2の物品コード21または場所コード31に対応するバーコードを読み取った読取日時が記憶されている。また、列302には前記読取日時に読取った、場A,品1等のID情報が記憶されている。
【0030】
バーコードリーダ部12が読取ったID情報が物品コード21と場所コード31のいずれであるかが識別可能となるように、コード体系は予め定められている。例えば、データ長を固定とし(例えば256バイト)、最初の1バイトを物品コード21,場所コード31,その他のコードのいずれであるかを識別する識別バイトと定義すればよい。
【0031】
そして、場所コード31を読取った場合は、次の場所コード31を読取るまで場所を移動していないと定義し、図3の例では場Aの場所で品1,品2のID情報を読取ったことを示している。即ち、この場合、品1,品2,品3は場Aと対応付けられて読取ID記憶部13に記憶され、品4は場Bと対応付けられて読取ID記憶部13に記憶される。
【0032】
なお、列302で、10:45に読取ったID情報である品3にハッチングしているのは、図2で例示した登録ID記憶部14に記憶されている品3の場所(場B)と違っていることを示す。このように登録IDと読取IDに差異があった場合、本装置1はブザー18で警報音を鳴動すると共に、そのID情報を表示部17に表示できる。そして、本装置1を所持する物品管理者は、この登録IDと読取IDの違いに気付いて、物品管理リストを修正するまたは当該物品を本来あるべき場所に戻すことが容易となる。この読取ID記憶部13による本装置1の動作の詳細は後述する。
【0033】
図4は本装置1の動作フローチャートである。以下、図1,図2、図3を併用して、本装置1の動作フローを説明する。本フローは本装置1の電源が投入された状態からスタートする(S400)。
【0034】
本装置1を所持する操作者がキー操作部16を操作して、照明部11を点灯すると共にバーコードリーダ部12を起動すると(S401,YES)、バーコードリーダ部12は照明部11が照らしたエリアにバーコードが存在するかサーチする。そして、バーコードリーダ部12がバーコードを読み取れない場合(S410,NO)、S430へ進む。以降、S430のNOとS432のNOを介してS410に戻り、バーコードが存在しないまたはバーコードを読み取れない状態では、本装置1は単なる懐中電灯として機能する。
【0035】
バーコードリーダ部12がバーコードを読取った場合(S410,YES)、制御部10は読取ったバーコードが場所コード31か否かを判定する(S411)。場所コード31でない場合(S411,NO)、S420へ進む。場所コード31であった場合(S411,YES)、読取った場所コード31を、読取日時と共に読取ID記憶部13に記憶し(S412)、S420へ進む。
【0036】
S420において、制御部10は読取ったバーコードが物品コード21か否かを判定する。読取ったバーコードが物品コード21でなかった場合(S420,NO)、S422へ進む。読取ったバーコードが物品コード21であった場合(S420,YES)、読取った物品コード21を、読取日時と共に読取ID記憶部13に記憶し(S421)、S422へ進む。
【0037】
S422において、制御部10は読取ID記憶部13に記憶したID情報と、登録ID記憶部に登録されているID情報を比較する。ID情報が一致した場合(S422,YES)、制御部10は、表示部17、ブザー18を制御し、登録されているID情報と一致するID情報を読取ったことを表示部17またはブザー18により表示し(S423) 、S430へ進む。これにより、登録ID記憶部14に登録されているID情報が探索中の物品の物品コードであれば、前記の表示で探索中の物品であったことが分る。
【0038】
ID情報が一致しない場合(S422,NO)、登録IDと一致しないIDを読取った旨を表示部17またはブザー18により表示し(S424)、S430へ進む。これにより、登録ID記憶部14に登録されているID情報と異なる内容の物品が当該場所に紛れ込んでいることが分る。
【0039】
キー操作部16から特定の操作が為された場合(S430,YES)、為された特定操作に応じて、読取ID記憶部13に記憶したID情報に付加情報を追記する(例えば、登録データと不一致であることを示すフラグ)、または読取ID記憶部13に蓄積されているID情報(読取ID)をID情報管理装置4へ送信する(S431)。特定の操作がなかった場合(S430,NO)、S431をスキップしてS432へ進む。
【0040】
S432において、制御部10はID送信条件を満足しているか否かを判定し、送信条件を満足していると判定した場合(S432,YES)、読取ったID情報、または読取ID記憶部13に蓄積されているID情報をID情報管理装置4へ通信制御部15を介して送信し(S433)、S410に戻る。送信条件を満足していないと判定した場合(S432,NO)、S433をスキップしてS410に戻る。
【0041】
なお、S432の送信条件は、予め制御部10に登録されており(図示せず)、例えば、物品調査において、登録ID記憶部14に登録されている最後の物品2の物品コード21を読取った場合や、制御部10が管理するタイマ(図示せず)により定期的な送信タイミングが到来した場合等である。
【0042】
以上説明した通り、本発明によれば、読取ったID情報と読取った場所情報を関連付けて記憶していくので、例えば、暗い倉庫内の物品の棚卸し作業におけるリストデータと実際の物品の照合等が効率的になる。
【0043】
なお、本発明の実施形態として物品管理システムを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本装置1を巡回管理システムに応用することも可能である。この場合、本装置1を携帯する巡回管理者(例えば夜間警備員)が巡回先の所定の箇所に貼られているバーコードシール3を順に読取って巡回すれば、巡回状況の管理が容易である。この場合、場所コード31は巡回先(展示コーナーや倉庫)に対応させ、物品コード21は巡回先に存在すべき警備対象品(例えば宝石や金庫)に対応させればよい。
【0044】
また、本装置は懐中電灯とバーコードリーダが一体化したものとして説明したが、ヘッドライトとバーコードリーダが一体化した自動車であってもよい。この場合、広い展示会場や観光地に設置された設備を巡回するシステムに好適である。
【0045】
さらに、場所コード31はバーコードリーダが所定の箇所に貼られたシール3のバーコードを読み取るとして説明したが、GPS等による位置検索手段を内蔵し(図示せず)、バーコードリーダが所定の物品コードを読み取る毎に、前記位置検索手段が検索した位置情報を読取った物品コードと対応付けて記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・照明装置
2・・・物品
3・・・シール
4・・・ID情報管理装置
10・・・制御部
11・・・照明部(光源、レンズ)
12・・・バーコードリーダ部
13・・・読取ID記憶部
14・・・登録ID記憶部
15・・・通信制御部
16・・・キー操作部
17・・・表示部
18・・・ブザー
21・・・物品コード
31・・・場所コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近傍に存在するバーコードからID情報を読取る照明装置であって、近傍のエリアを照らす照明手段と、前記照明手段が照らしたエリアに存在するバーコードからID情報を読取るID情報読取手段と、前記読取ったID情報を自照明装置が備えるメモリの所定のエリアに記憶するID情報記憶手段と、自照明装置が存在している場所を検知する場所検知手段と、を有し、
前記ID情報読取手段が所定のID情報を読取った場合または予め定められた特定操作が為された場合に、前記ID情報記憶手段は前記ID情報読取手段が読取ったID情報と前記場所検知手段が検知した場所を関連付けて記憶することを特徴とするID情報読取機能を有する照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、前記ID情報読取手段が読取るべきID情報を自照明装置が備えるメモリの所定のエリアに予め登録するID情報登録手段をさらに有し、
前記ID情報読取手段が前記ID情報登録手段に登録されているID情報を読取った場合に、前記ID情報記憶手段は前記ID情報読取手段が読取ったID情報と前記場所検知手段が検知した場所を関連付けて記憶すると共に、当該ID情報を読取った旨を音または光により通知することを特徴とするID情報読取機能を有する照明装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照明装置であって、所定のID情報管理装置と通信するID情報通信手段をさらに有し、
前記ID情報読取手段が所定のID情報を読取る毎にまたは予め定められた特定操作が為された場合もしくは前記ID情報読取手段が予め定められたID情報を読取った場合に、前記ID情報通信手段は前記読取ったID情報または前記ID情報記憶手段に記憶されているID情報を前記ID情報管理装置へ送信することを特徴とするID情報読取機能を有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65201(P2013−65201A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203474(P2011−203474)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】