説明

IGF−1R結合タンパク質およびアンタゴニスト

インスリン様成長因子(IGF)のシグナル伝達は細胞の増殖を刺激し、細胞の生存期間を延長させる。循環血中IGF−1濃度の上昇に伴い、乳癌、前立腺癌および膵癌などよく見られるいくつかの癌のリスクが増大することが研究から示された。本発明は、ヒトインスリン様成長因子−1受容体(HIGF−1R)に結合する新規なペプチドおよびタンパク質と、それをコードする核酸と、そうした核酸を含むベクターおよび細胞と、そうした化合物を含む医薬組成物と、そのいずれかの使用方法とを対象とし、これを提供する。IGF−1受容体を標的にする治療戦略の多くには抗癌活性が明らかにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本願は、2007年4月24日に出願された米国仮特許出願第60/925,982号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/925,982号は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
本発明は、ヒトインスリン様成長因子−1受容体(IGF(insulin−like growth factor)−1R)に結合し、少なくともいくつかの態様でIGF−1Rアンタゴニストとして働く分子と、そうした分子を含む医薬組成物と、そうした組成物および分子の製造方法および使用方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
インスリン様成長因子(IGF)のシグナル伝達は細胞の増殖を刺激し、細胞の生存期間を延長させる。循環血中IGF−1濃度の上昇に伴い、乳癌、前立腺癌および膵癌などよく見られるいくつかの癌のリスクが増大することが研究から示された。IGF−1受容体を標的にする治療戦略の多くには抗癌活性が明らかにされている。
【0004】
本明細書に記載の本発明の発明者らの少なくとも一部の先行発明を示す特許文献1(および対応する特許文献2)には、特に、独特のIGF−1Rアンタゴニストおよびそれを含む医薬組成物と共に、そうした分子および組成物の生産方法および(たとえば、癌の処置における)使用方法が記載されている(また、関連する原理、方法、分子および組成物は特許文献3および特許文献4に記載されている)。本明細書に記載の主題の発明者らは、国際公開第’246号に示された研究を継続し、国際公開第’246号に記載されたアンタゴニストについて別の特性および/または改良された特性を持つ新たなIGF−1R結合分子およびIGF−1Rアンタゴニストと、それを含む組成物と、そうした化合物および組成物の使用方法とを同定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/027246号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0023887号明細書
【特許文献3】国際公開第01/72771号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0195147号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヒトインスリン様成長因子−1受容体(HIGF−1R)に結合する新規なペプチドおよびタンパク質と、それをコードする核酸と、その核酸を含むベクターおよび細胞と、そうした化合物を含む医薬組成物と、そのいずれかの使用方法とを対象とする。
【0007】
ある態様では、本発明は、インスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)に結合できるペプチドを含む単離されたペプチドであって、前記ペプチドの配列は配列番号18(F429)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、ペプチドを対象とする。
【0008】
ある実施形態では、このペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含む。
【0009】
ある実施形態では、このペプチドの配列は配列番号18(F429)を含む。
【0010】
ある実施形態では、このペプチドの配列は、配列番号18(F429)からなる。
【0011】
ある態様では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含む医薬組成物であって、このペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、医薬組成物を対象とする。
【0012】
ある実施形態では、この医薬組成物は、ヒト宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含む。
【0013】
ある実施形態では、この医薬組成物は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含有するペプチドを含む。
【0014】
ある実施形態では、この医薬組成物は、配列番号18(F429)からなるペプチドを含む。
【0015】
ある態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、処置の必要がある哺乳動物にIGF−1Rに結合できるペプチドを治療有効量で投与することを含み、このペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、方法を対象とする。
【0016】
ある実施形態では、IGF−1Rに結合できる治療有効量のペプチドを必要とする(in need thereof)哺乳動物はヒトである。
【0017】
ある実施形態では、本方法は、IGF−1および/またはIGF−1Rを発現する癌を処置する方法である。
【0018】
ある実施形態では、本方法は、IGF−1および/またはIGF−1Rを過剰に発現する癌を処置する方法である。
【0019】
ある実施形態では、本方法を用いて膵癌、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌および胃癌を処置する。
【0020】
ある実施形態では、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含有するペプチドを治療有効量で哺乳動物に投与する。
【0021】
ある実施形態では、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列からなるペプチドを治療有効量で哺乳動物に投与する。
【0022】
ある実施形態では、配列番号18(F429)を含むペプチドを治療有効量で哺乳動物に投与する。
【0023】
ある実施形態では、配列番号18(F429)からなるペプチドを治療有効量で哺乳動物に投与する。
【0024】
ある実施形態では、薬物の生産に本ペプチドを使用する。
【0025】
ある実施形態では、薬物の製造に本ペプチドを使用する。
【0026】
ある態様では、本発明は、IGF−1Rに結合できるペプチドを含む単離されたペプチドであって、このペプチドの配列は、
配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)ならびにこれらの組み合わせ
からなる群から選択される配列との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含むペプチドを対象とする。
【0027】
ある実施形態では、前記ペプチドの配列は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む。
【0028】
ある態様では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含む医薬組成物であって、このペプチドの配列は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、医薬組成物を対象とする。
【0029】
ある実施形態では、医薬組成物は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含有するペプチドを含む。
【0030】
ある態様では、本発明は、癌を処置する薬物の生産または調製におけるペプチドの使用であって、ペプチドは、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸またはその群から選択される配列を含有するアミノ酸を含む、ペプチドの使用を対象とする。
【0031】
ある態様では、本発明は、IGF−1Rに結合できるペプチドを含む単離されたペプチドであって、このペプチドの配列は、式1、式2、式3および式4ならびに、本出願の図のいずれかに開示されたペプチドなど、本出願の任意のペプチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含むペプチドを対象とする。
【0032】
ある態様では、本発明は、IGF−1Rに結合できるペプチドを含む医薬組成物であって、このペプチドの配列は、式1、式2、式3および式4ならびに、本出願の図のいずれかに開示されたペプチドなど、本出願の任意のペプチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む医薬組成物を対象とする。
【0033】
ある態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、その必要がある哺乳動物にIGF−1Rに結合できるペプチドを治療有効量で投与することを含み、このペプチドの配列は、式1、式2、式3および式4ならびに、本出願の図のいずれかに開示されたペプチドなど、本出願の任意のペプチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む方法を対象とする。
【0034】
ある態様では、本発明は、IGF−1Rに結合できる薬物の生産におけるペプチドの使用であって、このペプチドの配列は、式1、式2、式3および式4ならびに、本出願の図のいずれかに開示されたペプチドなど、本出願の任意のペプチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含むペプチドの使用を対象とする。
【0035】
ある態様では、本発明は、癌を処置する薬物の調製における、IGF−1Rに結合できるペプチドの使用であって、このペプチドの配列は、式1、式2、式3および式4ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含むペプチドの使用を対象とする。
【0036】
ある態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、IGF−1および/またはIGF−1Rを発現する癌の哺乳動物に、IGF−1Rのペプチドアンタゴニストを含む組成物を治療有効量で投与することを含み、ペプチドは配列FYxxLxxLを含む方法を対象とする。
【0037】
ある態様では、本発明は、癌を処置する方法であって、IGF−1および/またはIGF−1Rを過剰に発現する癌の哺乳動物に、IGF−1Rのペプチドアンタゴニストを含む組成物を治療有効量で投与することを含み、ペプチドは少なくとも15アミノ酸長であり、かつ配列FYxxLxxLを含む方法を対象とする。
【0038】
ある実施形態では、治療有効量の組成物は、IGF−1Rのペプチドアンタゴニストを含み(comprising)、このペプチドの配列は、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む。
【0039】
ある態様では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含む医薬組成物であって、前記ペプチドは配列FYxxLxxLを含む医薬組成物を対象とする。
【0040】
ある態様では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含む医薬組成物であって、前記ペプチドは少なくとも15アミノ酸長であり、かつ配列FYxxLxxLを含む医薬組成物を対象とする。
【0041】
ある態様では、この医薬組成物は、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含有するペプチドを含む。
【0042】
ある実施形態では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドの、薬物の生産における使用であって、ペプチドは配列FYxxLxxLを含むペプチドの使用を対象とする。
【0043】
ある実施形態では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドの、薬物の生産における使用であって、ペプチドは少なくとも15アミノ酸長であり、かつ配列FYxxLxxLを含むペプチドの使用を対象とする。
【0044】
ある態様では、ペプチドは、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む。
【0045】
ある態様では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドの、癌を処置する薬物の調製における使用であって、前記ペプチドは配列FYxxLxxLを含むペプチドの使用を対象とする。
【0046】
ある態様では、本発明は、哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を抑制するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドの、癌を処置する薬物の調製における使用であって、前記ペプチドは少なくとも15アミノ酸長であり、かつ配列FYxxLxxLを含むペプチドの使用を対象とする。
【0047】
ある実施形態では、ペプチドは、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1Aは、HIR(human insulin receptor)をコードするDNAをSGBS脂肪細胞にトランフェクトしてインスリンまたはIGF−1の存在下でのHグルコースの取り込みに対するペプチドF138の作用を判定する実験から得られたデータを示す。結果については、完全なインスリン反応に対する増加率で表し、インスリン反応のED20(近似値)に対するペプチドF138または(インスリンまたはIGF−1との組み合わせ)の作用としてグラフで示してある。データは完全なインスリン反応を基準に補正した。
【0049】
図1Bは、HIRをコードするDNAをSGBS脂肪細胞にトランフェクトしてインスリンまたはIGF−1の存在下でのHグルコースの取り込みに対するペプチドF293の作用を判定する実験から得られたデータを示す。結果については、完全なインスリン反応に対する増加率で表し、インスリン反応のED20(近似値)に対するF293または(インスリンまたはIGF−1との組み合わせ)の作用としてグラフで示してある。データは完全なインスリン反応を基準に補正した。
【図2】IGF−1R活性化を判定するためにペプチドF235およびF259を用いて行ったキナーゼアッセイの結果を示す。図2に示すように、ペプチドF235およびF259は、IGF−1によるIGF−1Rのキナーゼ活性化を完全に阻害する能力を示す。
【図3】図3Aは、脂肪細胞を刺激してインスリン受容体のチロシンリン酸化のレベルを調査(ウエスタンブロット)することで細胞のHIRの活性化を測定した試験の結果を示す。
【0050】
図3Bは、脂肪細胞を刺激してIGF−1Rのチロシンリン酸化のレベルを調査(ウエスタンブロット)することで細胞のHIGF−1Rの活性化を測定した試験の結果を示す。
【図4】IRSシグナル伝達のチロシンリン酸化(チロシンリン光体ウエスタンブロットの180kDaバンド)と、エフェクターMAPK44および42ならびにPKBの活性化とを活性型に特異的な抗体により解析した下流のシグナル伝達試験の結果を示す。
【図5】F138を用いて行ったミトコンドリア活性アッセイの細胞増殖/密度試験の結果を示す。
【図6】IGF−1またはF138を用いて行ったミトコンドリア活性アッセイの細胞増殖/密度試験の結果を示す。
【図7】3nMのIGF−1+/−(の存在下または非存在下で)F429あるいはF138の存在下でIRS−1リン酸化を調査した下流のシグナル伝達試験の結果を示す。
【図8】3nMのIGF−1+/−(の存在下または非存在下で)F429あるいはF138の存在下でIRS−1リン酸化を調査した下流のシグナル伝達試験の結果を示す。
【図9】図9Aは、MiaPaCa細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、IGF−1に対して用量関連的に増加することを示す。
【0051】
図9Bは、MCF−7細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、IGF−1に対して用量関連的に増加することを示す。
【0052】
図9Cは、MiaPaCa細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、IGF−2に対して用量関連的に増加することを示す。
【0053】
図9Dは、MCF−7細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、IGF−2に対して用量関連的に増加することを示す。
【0054】
図9Eは、MiaPaCa細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、インスリンに対して用量関連的に増加することを示す。
【0055】
図9Fは、MCF−7細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、インスリンに対して用量関連的に増加することを示す。
【図10】図10Aは、F250がIGF−1の結合と競合し、細胞を用いた癌モデルの活性を抑制することを明らかにする結合アッセイの結果を示す。F250の濃度に応じてIGF−1結合が阻害されることを示す。
【0056】
図10Bは、F250がIGF−1の結合と競合し、細胞を用いた癌モデルの活性を抑制することを明らかにする細胞増殖アッセイの結果を示す。MCF−7細胞のIGF−1活性に対するF250による拮抗作用を示す。
【0057】
図10Cは、F250がIGF−1の結合と競合し、細胞を用いた癌モデルの活性を抑制することを明らかにする細胞増殖アッセイの結果を示す。MiaPaCa細胞のIGF−1活性に対するF250による拮抗作用を示す。
【図11】図11Aは、IGF−1が癌細胞モデルのリン酸化を刺激すると共に、本発明の候補ペプチドにより阻止または抑制され得ることを明らかにする実験の結果を示す。IGF−1がMCF7細胞においてIRS−1の一過性のリン酸化を刺激することを示す。
【0058】
図11Bは、IGF−1が癌細胞モデルのリン酸化を刺激すると共に、本発明の候補ペプチドにより阻止または抑制され得ることを明らかにする実験の結果を示す。MCF7細胞においてIGF−1が引き起こすIRS−1のリン酸化が用量依存的(dose−dependant)であることを示す。
【0059】
図11Cは、IGF−1が癌細胞モデルのリン酸化を刺激すると共に、本発明の候補ペプチドにより阻止または抑制され得ることを明らかにする実験の結果を示す。
【図12】ペプチドF429、F441およびF408の拮抗作用を示す結合および拮抗作用アッセイの結果を表す。
【図13】F429の個別の血漿中濃度と、100μg/mLのF429のインキュベーション時間との関係を示す。
【図14】F429の平均の血漿中濃度と、100μg/mLのF429のインキュベーション時間との関係を示す。
【図15】被験物質F429の残存率の対数を示す。
【図16】図16Aは、遺伝子発現の変化をIGF−1で増殖させたANT−429間で解析した遺伝子アレイを示す。
【0060】
図16Bは、遺伝子発現の変化をIGF−1で増殖させたMiaPaCa細胞間で解析した遺伝子アレイを示す。
【図17】ANT−429で処置した細胞においてダウンレギュレートされることが分かった遺伝子のリストを示す。
【図18】図18Aは、ANT−429で処置した際にアップレギュレートされた遺伝子のリストを示す。
【0061】
図18Bは、ANT−429で処置した際にダウンレギュレートされた遺伝子のリストを示す。
【図19A】ANT−429が腫瘍増殖を阻害することを明らかにするデータを示す。
【図19B】ANT−429が腫瘍増殖を阻害することを明らかにするデータを示す。
【図20】ANT−429がインビボで毒性がないことを明らかにするデータを示す。
【図21】ヒト血漿中のANT−429の安定性を明らかにするデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の詳細な説明に先立ち、本発明は、他に記載がない限り、特定の製剤、活性剤、非活性剤、投与モードまたは処置方法もしくは使用方法に限定されるものではなく、したがって、変わる場合があることを理解されたい。さらに、言うまでもなく、本明細書に使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するための用語であり、限定的であることを意図するものではない。本書の様々なセクションで引用する科学出版物、特許または特許出願については、すべての面で参照によって本明細書に援用する。
【0063】
本明細書に記載の本発明は、ヒトIGF−1Rに結合し、通常アンタゴニストとして働く新規なタンパク質およびペプチドであって、本明細書に記載の式の1つに従うアミノ酸配列および/または本明細書に記載の特定のアミノ酸配列に従うアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなることで現れる一定の化学的性質を持つタンパク質およびペプチドを提供する。
【0064】
本明細書の文脈において「ペプチド」とは、長さは任意だが、好ましくは約20〜約35(たとえば、約25〜約30)など約15〜約40個のアミノ酸残基からなるアミノ酸の単鎖配列化合物を意味する。本明細書の文脈においてタンパク質とは、本明細書に記載の式の1つに従うアミノ酸配列あるいは他の形で本明細書に具体的に記載するアミノ酸配列を含有する、ペプチドよりかなり大きな(たとえば、少なくとも約40個のアミノ酸残基を含む)少なくとも1本の鎖を含む(1つまたは複数の鎖、単量体または多量体などを含むかを問わない)任意のタンパク質を意味する。本発明のペプチドおよびタンパク質の態様は、たとえば、生産のしやすさ、安定性、投与などの観点から大きく異なる場合がある。一般に、本発明の方法はペプチドを用いて実施し、本発明の組成物はペプチドを含む。
【0065】
本明細書では、「ペプチド」および「タンパク質」という語はどちらも、そうしたアミノ酸ポリマーの「誘導体」を包含する(および本質的にそれを示す)のが通常である。「誘導体」とは、1つまたは複数の異種置換基(たとえば、親油性置換基、PEG部分、好適な有機系リンカーにより結合したペプチド側鎖など)との共有結合などにより、そのアミノ酸残基の1つまたは複数に人工的に化学修飾(たとえば、アルキル化、アシル化、エステル形成、アミド形成または類似した他のタイプの修飾)を施してあるタンパク質、ペプチドまたはアミノ酸配列をいう。ある誘導体ではPEG部分、ペプチド側鎖または同種のものなどのかなり大きい異種置換基がアミノ酸配列「骨格」に結合しており、この誘導体は「コンジュゲート」と呼ばれることもある。本発明のタンパク質またはペプチドに1つまたは複数の修飾アミノ酸を付加すると、たとえば、(a)ポリペプチドの血清中半減期を延長させたり、(b)ポリペプチドの抗原性を低下させたり、あるいは(c)ポリペプチドの保存性を向上させたりするうえで都合がよい場合がある。アミノ酸(類)については、たとえば、組換え体の生産中に同時翻訳的に、あるいは翻訳後に修飾してもよいし(たとえば、哺乳動物細胞の発現中に導入されるN−X−S/TモチーフのN結合型グリコシル化)、合成手段によって修飾してもよい。修飾アミノ酸の非限定的な例として、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(prenlyated)(たとえば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、ペグ化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸および同種のものが挙げられる。アミノ酸修飾の際に当業者の指針となるような参考文献は枚挙に暇がない。例示的なプロトコルは、たとえば、Walker(1998)PROTEIN PROTOCOLS ON CD−ROM Humana Press,Towata,NJ.に掲載されている。したがって、たとえば、誘導体に付加してもよい修飾アミノ酸は、グリコシル化アミノ酸、ペグ化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸および有機誘導化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択することができる。また、タンパク質およびペプチドは、ポリマーに共有結合的にコンジュゲートすることで化学修飾を施して、たとえば、循環半減期を延長させてもよい。例示的なポリマーおよびそうしたポリマーをペプチドに結合する方法は、たとえば、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;および同第4,609,546号に説明されている。他の具体的なポリマーとして、ポリオキシエチル化ポリオール部分およびポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)部分が挙げられる(たとえば、融合タンパク質を、たとえば、分子量約3,000〜12,000、約2000〜約20,000のような約1,000〜約40,000のPEGにコンジュゲートすることができる)。さらに、あるいはその代わりに、放射性核種、酵素基質、補助因子、蛍光マーカー、化学発光マーカー、別のペプチドタグ、磁性粒子または薬剤など、新規な生物学的/薬理学的特性をタンパク質誘導体に付与できる第2の分子にタンパク質およびペプチドをコンジュゲートしてもよい。誘導体化アミノ酸の他の例については、たとえば、米国特許第6,800,740号に記載されている。
【0066】
一態様では、分子量(「MW:molecular weight」)が約1750〜5000など約1500〜約6000の本発明のペプチドを提供する。より具体的な態様では、MWが約2000〜約3000、さらに約2000〜約2500など約2000〜約4000のペプチドを提供する。
【0067】
本発明により提供されるペプチドおよびタンパク質は通常、ヒトIGF−1Rに対する親和性(K)が約10−7〜約10−15Mである。一般には、親和性は約10−10〜約10−12Mなど10−8〜約10−12Mである。このアミノ酸配列を他のリガンドを同定するために競合結合アッセイで試薬として使用する場合、受容体に対する親和性は通常、約10−5〜約10−12Mである。本発明の一部のペプチドおよびタンパク質は、HIGF−1Rに対する親和性が約5×10−6から5×約10−9〜10−11M(たとえば、約5×10−9または約10−10M)である。
【0068】
ほとんどの場合、本発明のペプチドおよびタンパク質は、ヒトインスリン受容体(HIR)よりもヒトIGF−1R(HIGF−1R)に対する親和性が高く、多くの場合、その選択性は少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍またはそれ以上を示す。一態様では、このペプチドは、たとえば、本書の実験方法およびデータのセクションに記載した方法を用いて判定する場合、HIRに対して検出可能な親和性をまったく示さない。
【0069】
本発明により提供されるペプチドおよびタンパク質は、IGF−1Rアンタゴニストとして働くことができる。拮抗作用については、任意の好適な方法を用いて検出可能なIGF−1R活性および/またはシグナル伝達の低下などから測定できる。より具体的な態様では、本発明により提供されるペプチドおよびタンパク質は、IGF−1R拮抗作用を示すものの、インスリンまたはIGFによるグルコース取り込みに対しては顕著な作用、あるいはおそらく検出可能な作用さえも示さない。さらなる態様では、本発明のペプチドおよびタンパク質は、望ましいことにヒト患者などの哺乳動物宿主において検出可能で治療上有益な血管新生阻害作用および/または他の抗癌作用も示す。
【0070】
特定の「親」(参照)ペプチド/配列に対して高度の同一性を持つが、(親配列/ペプチドのアミノ酸残基に)1つまたは複数の挿入、欠失、付加および/または置換を含む、本明細書に記載の特定のペプチド/配列の「アナログ」は、その親ペプチド/配列に類似したIGF−1R結合性、場合によってはIGF−1Rアンタゴニスト特性を示す場合がある(たとえば、そのアナログには、親ペプチドが示す親和性および/または活性の少なくとも約33%、少なくとも約50%または少なくとも約75%、場合によっては親ペプチド/配列が示す活性および/または親和性の約100%、あるいは100%を超えて(たとえば、少なくとも約125%)持つ場合がある)。一般に実際に置換を行う場合、大部分は「保存的」置換であり、欠失および/または挿入を回避する。保存的置換とは、以下の3つのアミノ酸分類表の1つまたは複数に示すアミノ酸クラス内での置換と定義することができる:
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

さらなる保存的アミノ酸残基の置換群として、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリンおよびアスパラギン−グルタミンが挙げられる。たとえば、Creighton(1984)PROTEINS:STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載された原理を用いて他のアミノ酸群を形成することもできる。場合によっては、上記の特徴の2つ以上を基準に置換の特徴付けをさらに行うと有用な場合がある(たとえば、Thr残基などの「低分子極性」残基と置換を行えば、適切な場合に高度な保存的置換を示す場合がある)。
【0074】
また、上述の群の1つに特定されたアミノ酸残基と類似した既知の生理化学的性質を持つ、既知の合成アミノ酸残基、珍しいアミノ酸残基または修飾アミノ酸残基を、ある配列中の特定のアミノ酸残基の「保存的」置換基として用いることができる場合もある。たとえば、D−Arg残基は、通常の(L−)Arg残基に代わる置換基として役立つことがある。さらに、上述のクラスの2つ以上に記載された残基についても、こうした特定の置換を行える場合もある(たとえば、低分子で疎水性の残基による置換とは、上述のこの2つのクラスに記載されている残基による置換を意味しても、2つの定義を満たすそうした残基に類似した生理化学的性質を持つ当該技術分野において公知の他の合成残基、珍しい残基また修飾残基による置換を意味してもよい)。
【0075】
多くの場合、本明細書のアナログは、特定の残基における置換の観点から記載されている。その場合、保存的置換は、その位置に通常認められる残基によって判断される。場合によっては、本明細書のアナログは、(本明細書に記載するような)従来の研究により一般に確認された1つまたは複数の特定の残基により、ある残基が置換されていることを基準に記載されていることもある。そうした場合、保存的置換は、置換される残基と、その残基の置換に好適であると認められた残基との両方から判断することができる。一般に、任意の好適なアミノ酸残基を置換残基と交換することができる。置換に使用する残基は、ヒトタンパク質に頻繁に組み込まれる20種の残基の1つであるのが一般的あるが、珍しい人工的な誘導体化アミノ酸残基を本発明のペプチド/配列に組み込むこともできる。適合性に関しては、生物学的機能の保持を基準に判定するのが一般的である。タンパク質工学の当業者であれば、柔軟性部位または剛直性部位の不適切な導入;機能的に重要な残基の除去;または重要な構造特性を与える残基の除去のため、ある種の置換が好適でないことが認識できるであろう。
【0076】
タンパク質/ドメイン/配列機能については、上記で定義した群に示してある置換ほど保存的でない置換を選択することで、大幅に変更することができる。したがって、いくつかの態様では、アナログは、1つまたは複数の非保存的残基を含んでも構わない。たとえば、変更領域におけるペプチドの構造;分子の標的部位の電荷または疎水性;または側鎖の大部分に顕著な影響を与える非保存的置換を作製することができる。ペプチドの特性に通常大きな変化を与えると予想される置換は、1)親水性残基、たとえば、セリルまたはトレオニルが疎水性残基、たとえば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルに(によって)置換される;2)システインまたはプロリンが任意の他の残基に(によって)置換される;3)陽性側鎖を持つ残基、たとえば、リジル、アルギニルまたはヒスチジルが陰性残基、たとえば、グルタミルまたはアスパルチルに(によって)置換される;あるいは4)かさ高い側鎖を持つ残基、たとえば、フェニルアラニンが側鎖を持たない残基、たとえば、グリシンに(によって)置換される置換である。したがって、機能/構造の大きな変更が望ましい場合、こうした非保存的置換および他の非保存的置換をペプチドアナログに導入してもよく、構造/機能の保存が望ましい場合、そうした変更を回避してもよい。
【0077】
当業者であれば、ペプチドアナログの設計および選択に有用な原則を新たに認識するであろう。たとえば、ペプチドの表面位置の残基は一般に親水性アミノ酸に対して強い選択性。アミノ酸の立体特性は、タンパク質に導入または選択される局所構造に大きく影響する場合がある。たとえば、プロリンはねじれの自由度が低いため、ペプチド骨格のコンフォメーションをターンに閉じ込めて水素結合を消失させることがあり、さらにこの残基はタンパク質の表面ループに出現することも多い。Proとは対照的にGlyは、ペプチドの主鎖の周りで完全なねじれ自由度を持っているため、タンパク質の内部に埋もれた堅固なターンおよび領域に関係していることが多い(たとえば、疎水性ポケット)。こうした残基はその特徴により、二次構造への関与が限定的になることが多い。一方、二次構造の形成に典型的に関与する残基も知られている。たとえば、Ala、LeuおよびGluなどの残基(あまりかさ高くない、および/または極性残基を持たないアミノ酸)は一般にαヘリックスの形成に関連しているのに対し、Val、Ile、Ser、AspおよびAsnなどの残基はαヘリックスの形成を妨げる場合がある。βシート構造を形成し、組み込まれやすい残基にはValおよびIleがあり、ターン構造に関連している残基にはPro、AspおよびGlyがある。当業者は、好適なペプチドアナログの設計および選択に際し、こうしたアミノ酸特性および類似のアミノ酸特性を考慮できるため、通常の実験を用いるのみで好適なアナログを調製することができる。
【0078】
また、親ペプチドと比較したアナログペプチドの保存性は、ハイドロパシー/親水性特性の面でも実質的に維持される場合が多い(たとえば、2つの配列の重量クラス、ハイドロパシースコアまたはその両方は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上(たとえば、約65〜99%)維持されている)。残基/配列におけるハイドロパシー特性の保存性を評価する方法は、当該技術分野において公知であり、SDSC Biology Workbenchから入手できるGREASEプログラムなどの市販のソフトウェアパッケージに組み込まれている(GREASEおよび類似のプログラムに組み込まれた原理の考察には、たとえば、Kyte and Doolittle et al.,J.Mol.Biol.157:105−132(1982);Pearson and Lipman,PNAS(1988)85:2444−2448,and Pearson(1990)Methods in Enzymology 183:63−98も参照されたい)。
【0079】
したがって、置換、欠失、挿入、付加および同種のものを行う場合、(他の因子に加えて)アミノ酸のハイドロパシーインデックスを考慮してもよい。各アミノ酸には、疎水性および電荷特性に基づき、以下のハイドロパシーインデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタマート(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパルタート(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。
【0080】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のアミノ酸ハイドロパシーインデックスの重要性は、当該技術分野において理解されている。Kyte et al.,J.Mol.Biol.,157:105−131(1982)を参照されたい。ある種のアミノ酸は、類似したハイドロパシーインデックスまたはスコアを持つ他のアミノ酸に置換されても、類似した生物活性を維持する場合があることが知られている。一般に、ハイドロパシーインデックスに基づき変更を行う際は、ハイドロパシーインデックスが±2以内のアミノ酸置換が好ましく、通常±1以内の値は特に好ましく、通常±0.5以内であれば特に一層好ましい。
【0081】
また、たとえば、類似のアミノ酸を置換するとき、置換により作製される生物学的機能が等価なタンパク質またはペプチドを特に本発明のように免疫学的な実施形態で使用することを意図している場合、親水性を基準にすると効果的に行うことができることも当該技術分野において理解されている。隣接するアミノ酸の親水性によって決まるタンパク質の局所平均親水性の最大値は、免疫原性および抗原性、すなわち、タンパク質の生物学的特性と相関する。
【0082】
アミノ酸残基には以下の親水性値が付与されている:アルギニン(+3.0);リジン(’3.0);アスパルタート(+3.0±1);グルタマート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。類似した親水性値に基づき変更を行う場合、親水性値が±2以内のアミノ酸置換が一般に好ましく、通常±1以内の値は特に好ましく、通常±0.5であれば特により一層好ましい。
【0083】
また、アナログペプチドの構造が親ペプチドの構造に実質的に類似していると都合がよい。保存的置換、ハイドロパシー特性、重量保存および類似の項目におけるペプチドの類似性を評価する方法は、たとえば、国際公開第03/048185号、国際公開第03/070747号および国際公開第03/027246号に記載されている。機能的なアナログタンパク質および配列を作製する例示的な方法(たとえば、「DNAシャフリング」、「合理的設計」法、アラニンスキャニング法およびランダム変異誘発法)も、上記の参考文献および本明細書に引用する他の参考文献に記載されている。構造の決定については、当該技術分野においてよく知られた核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)分光学的構造決定技法(たとえば、Wuthrich,NMR of Proteins and Nucleic Acids,Wiley,New York,1986;Wuthrich,K.Science 243:45−50(1989);Clore et al.,Crit.Rev.Bioch.Molec.Biol.24:479−564(1989);Cooke et al.Bioassays 8:52−56(1988)を参照されたい)を、一般にコンピューターモデリング法(たとえば、MACROMODEL(商標)、INSIGHT(商標)およびDISCOVER(商標)などのプログラムの使用と組み合わせて構造アナログの空間および配向条件を得るなど、任意の好適な手法で行うことができる。こうした好適な既知の技法および他の好適な既知の技法で得られた情報を用いて、合理性に基づいたアミノ酸の置換、挿入および/または欠失を行うことで、構造アナログを設計および作製することができる。こうした構造アナログは、本発明の方法の実施に有用な場合がある。二次構造の予測は、多くの科学出版物で取り上げられてきた。Moult J.,Curr.Op.in Biotech.,7(4):422−427(1996),Chou et al.,Biochemistry,13(2):222−245(1974);Chou et al.,Biochemistry,113(2):211−222(1974);Chou et al.,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol,47:45−148(1978);Chou et al.,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276 and Chou et al.,Biophys.J.,26:367−384(1979)を参照されたい。現在、二次構造の予測に役立つ様々なコンピュータープログラムが入手可能である。二次構造を予測する一方法は、ホモロジーモデリングに基づくものである。最近のタンパク質構造データベース(PDB:protein structural data base)の発達により、ポリペプチドまたはタンパク質の構造内の推定されるフォールド数など、二次構造の予測性が向上してきた。Holm et al.,Nucl.Acid.Res.,27(l):244−247(1999)を参照されたい;さらに、(関連する原理の考察にには)Brenner et al.,Curr.Op.Struct.Biol.,7(3):369−376(1997)も参照されたい。二次構造を予測する新たな方法として、「スレッディング」法(たとえば、Jones,D.,Curr.Opin.Struct.Biol.,7(3):377−87(1997);Sippl et al.,Structure,4(l):15−9(1996)),「profile analysis」(Bowie et al.,Science,253:164−170(1991);Gribskov et al.,Meth.Enzymol.,183:146−159(1990);Gribskov et al.,Proc.Nat.Acad.Sci,84(13):4355−4358(1987)を参照されたい)および「進化的連鎖」法が挙げられる(Home,supra,and Brenner,supraを参照されたい)。
【0084】
アミノ酸配列の挿入として、長さが1残基から、100あるいはそれ以上の残基を含むポリペプチドに及ぶアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合のほか、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例には、N末端にメチオニル残基を持つペプチドまたはエピトープタグとの融合体がある。ペプチド分子の他の挿入アナログとして、酵素、別のポリペプチド、またはこの鎖の血清中半減期を延長させるPEGのペプチドのアミノ酸配列(通常、NまたはC末端)との融合体が挙げられる。
【0085】
一般に、都合がよい配列変更は、当該アナログ配列/アナログペプチドについて(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)アナログ配列の結合親和性を変化させる(一般に親和性を高めることが望ましい)および/または(4)他の物理化学的特性または機能特性を付与したり、それを改変したりする変更である。
【0086】
一般に、本明細書に記載の具体的なペプチドまたは配列のアナログについては、本明細書に開示したペプチド/配列の定義済みの機能特性(たとえば、IGF−1R結合性および/またはIGF−1R拮抗作用)の少なくとも約50%、一般には約100%またはそれ以上など少なくとも約75%を示すタンパク質、ペプチドまたは配列として特徴付けることができる。
【0087】
アナログを含む本発明のペプチドおよびタンパク質は、1つまたは複数の任意の誘導体(たとえば、PEG部分、アシル部分など)の付加により誘導体化されていてもよい。
【0088】
さらなる態様では、アナログまたはその誘導体を含む本発明のペプチドおよびタンパク質は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%またはそれ以上(たとえば、約80%)など、少なくとも約15%IGF−1Rキナーゼ活性を低下させることを特徴としてもよい。
【0089】
さらに、あるいはその代わりに、追加の態様では、本発明のペプチドおよびタンパク質は、IGF−1Rに関連するMAPK44シグナル伝達を顕著に低下させることを特徴としてもよい。
【0090】
さらに、あるいはその代わりに、追加の態様では、本発明のペプチドおよびタンパク質は、IGF−1Rに関連するMAPK42シグナル伝達を顕著に低下させることを特徴としてもよい。
【0091】
さらに、あるいはその代わりに、追加の態様では、本発明のペプチドおよびタンパク質は、IGF−1Rに関連するIRS−1シグナル伝達を顕著に低下させることを特徴としてもよい。
【0092】
さらに、あるいはその代わりに、別の態様では、本発明のペプチドおよびタンパク質は、IGF−1のIGF−1Rキナーゼ活性化を完全に阻害できることを特徴としてもよい。
【0093】
さらに、あるいはその代わりに、なおさらなる側面では、本発明のペプチドおよびタンパク質は、(比較的低レベルのインスリン受容体のチロシンリン酸化を示すことで)IGF−1Rによるチロシンリン酸化を特異的に阻害することを特徴としてもよい。
【0094】
さらに、本発明のペプチドおよびタンパク質は、本明細書に記載の特定の式または配列のいずれかを特徴としてもよく、その具体的な例を次に説明する。
【0095】
式1のペプチドおよびタンパク質
第1の態様では、本発明は、ヒトIGF−1Rに結合し、通常アンタゴニストとして働く新規なタンパク質およびペプチドであって、式1に記載のアミノ酸配列を含む(あるいは、それからなる、あるいは、それから本質的になる)新規なタンパク質およびペプチドを提供する。
【0096】
式1は以下のとおり定義する:
SFYSCLESLVXPAEKSRGQWXCRX(配列番号1)、式中、Xは任意に存在するE残基を表し;Xは任意の好適な残基(ただし、通常N、A、QまたはT残基から選択される)を表し;Xは任意の好適なアミノ酸残基(ただし、通常は低分子残基、超低分子残基、さらにより詳細にはGまたはA残基(またはD−Ala(「a」)残基を表す)を表し;XはDまたはE残基を表し;Xは任意の好適な残基(ただし、通常は低分子残基、超低分子残基、さらにより詳細にはGまたはA残基を表す)を表し;Xは任意に存在するKまたはE残基を表し;Xは任意に存在するSまたはK残基を表し、このペプチドまたは配列はF249(SFYSCLESLVNGPAEKSRGQWDGCR−配列番号2)、F250(SFYSCLESLVNGPAEKSRGQWDGCRK−配列番号3)またはRP33−IGF(SFYSCLESLVNGPAEKSRGQWDGCRKK−配列番号4)ではない。
【0097】
式1配列は、IGF−1Rに結合し、IGF−1R拮抗作用を示すことが以前明らかにされたF249、F250およびRP33−IGF(それぞれ国際公開第’246号開示されている)非常に類似している。このことと、他の多くの式1配列がIGF−1R結合性、場合によっては拮抗作用を示すという知見とを合わせて判断すると、この配列の多くを通常の実験で同定できることが予想され得る。
【0098】
例示的な一態様では、このペプチドまたは配列は、F215(すなわち、ESFYSCLESLVNGPAEKSRGQWDGCRE−配列番号5)であるか、またはそれを含む。F215ペプチドは、IGF−1Rに対して0.8〜3×10−7Mの結合親和性を持つことが確認されている。別の態様では、本発明は、配列番号5に対する同一性が少なくとも約88%、少なくとも約92%または少なくとも約96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF215のアナログ(またはそれを含むタンパク質)を提供する。
【0099】
例示的な一態様では、このペプチドまたは配列は、RP30(すなわち、SFYSCLESLVNGGAERSDGQWEGCR−配列番号198)であるか、またはそれを含む。別の態様では、本発明は、配列番号198に対する同一性が少なくとも約88%、少なくとも約92%または少なくとも約96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないRP30のアナログ(またはそれを含むタンパク質)を提供する。
【0100】
別の説明に役立つ側面では、このペプチドまたは配列は、F258(すなわち、SFYSCLESLVAGPAEKSRGQWEGCR−配列番号6)であるか、またはそれを含む。別の態様では、本発明は、配列番号6に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF258のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。F258ペプチドは、F249(約2×10−7M)に類似した親和性を持つが、安定性が高いことが明らかになっている。
【0101】
本発明の別の側面は、F259、SFYSCLESLVAGPAEKSRGQWEGCRK(配列番号7)からなる、それから本質的になる、またはそれを含むペプチドまたはタンパク質に具体化される。F259ペプチドは、IGF−1Rに対して8×10−8Mの親和性を持つことと、SW480細胞およびMCF−7細胞のIGF−1依存性の増殖に対する拮抗作用を持ち、そのIC50が2×10−6Mであることと、F250よりも安定性が高いこととが明らかになっている。別の態様では、本発明は、配列番号7に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に別途記載されたペプチドではないF259のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0102】
なお別の側面では、本発明は、IGF−1Rに対して1×10−7Mの結合親和性を持つF292、SFYSCLESLVTGPAEKSRGQWEGCRK(配列番号8)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質またはペプチドを提供する。別の態様では、本発明は、配列番号8に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に別途記載されたペプチドではないF292のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0103】
本発明のさらなる例示的な態様は、F293(SFYSCLESLVQGPAEKSRGQWEGCRK−配列番号9)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質およびペプチドに具体化される。F293ペプチドは、IGF−1Rに対して9×10−8Mの結合親和性を持つことと、IGF−1依存性のSW480細胞およびMCF−7細胞の増殖に対して拮抗作用を持ち、IC50がそれぞれ1〜20×10−7M、1×10−5Mであることとが確認されている。SW480の場合、F293で基礎増殖の阻害が観察された(1実験のみ)。F293を用いることで、L6のIGF−1R(主として対称的IGF−1R)およびL6 hIRのIGF−1R(主としてハイブリッドIGF−1R/IR)に対するIGF−1の結合は、1.5×10−7Mで阻害することができ、IGF−1の処置を受けたIGF−1RおよびMAPK42/44のリン酸化は5×10−7MのIC50で阻害された。L6−hIRの場合、F293によるリン酸化の阻害は、インスリンによるリン酸化よりもIGF−1によるリン酸化の方が効果的であった。インスリン/IGF−1に応答したSGBS細胞のグルコース取り込みは、F293を<5×10−6Mで投与しても影響を受けない。別の態様では、本発明は、配列番号9に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または上記の国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に別途記載されたペプチドではないF293のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0104】
加えて、本発明は、F296(SFYSCLESLVNAPAEKSRGQWEGCRK−配列番号10)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質およびペプチドを提供する。F296ペプチドは、IGF−1Rに対して6×10−8Mの結合親和性を持つことが確認されている。別の態様では、本発明は、配列番号10に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF296のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0105】
本発明はまた、F297(SFYSCLESLVNaPAEKSRGQWEGCRK−配列番号11)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質およびペプチドも提供する。F297ペプチドは、D−Alaを含むIGF−1Rに対して5×10−8Mの結合親和性を持つことが明らかにされている。別の態様では、本発明は、配列番号11に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF297のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0106】
なお別の態様では、本発明は、F294(SFYSCLESLVNAPAEKSRGQWDGCRK−配列番号196)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質およびペプチドを提供する。別の態様では、本発明は、配列番号196に対する同一性が少なくとも92%または少なくとも96%であるF294のアナログを提供する。ただし、このアナログは、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に明示的に開示したペプチドではない。
【0107】
式2のペプチドおよびタンパク質
別の態様では、本発明は、ヒトIGF−1Rに結合し、通常アンタゴニストとして働く新規なタンパク質およびペプチドであって、式2に記載のアミノ酸配列を含む(あるいは、それからなる、あるいは、それから本質的になる)タンパク質およびペプチドを提供する。
【0108】
式2は以下のとおり定義される:
FYGCLLDLSLGVPSX10GWX111213CITX1415(配列番号12)、式中、Xは任意に存在するArg(R)残基を表し;Xは任意の好適な残基(通常は極性残基および普通はD、NまたはQ残基)を表し;X10は任意の好適な残基(通常はFまたはL残基)を表し;X11は任意の好適なアミノ酸残基(通常は極性残基、より一般的には塩基性残基、あるいはなおより詳細にはR、KまたはD−Arg(「r」)残基)を表し;X12は任意の好適なアミノ酸残基(通常は極性残基、より一般的には塩基性残基、あるいはなおより詳細にはR、KまたはD−Arg(「r」))を表し;X13は任意の好適なアミノ酸残基(通常は極性残基、より一般的には塩基性残基、あるいはなおより詳細にはR、KまたはD−Arg(「r」))を表し;X14は任意に存在するA残基を表し;X15は任意に存在するR残基を表し、このアミノ酸配列は、F138(QFYGCLLDLSLGVPSFG WRRRCITA−配列番号13)ではなく、それを含まない。
【0109】
式2の配列は、国際公開第’246号に記載されたF138に非常に類似している。F138は、IGF−1Rに対して6〜10×10Mの結合親和性を持つことが明らかにされている。さらに、F138は、IGF−1依存性のSW480の増殖に対する拮抗作用を持ち、そのIC50が1.5×10−7Mであること;約1〜5×10−7Mの範囲のMCF−7では、そのIC50が5×10−7Mであることも明らかにされている。また、F138は、>1×10−7Mで投与するとSW480の基礎増殖も阻害する。SW480では、IGF−1依存性の増殖で観察されたF138に伴う阻害作用が、IGF−2依存性の増殖でも同様に見られた。L6のIGF−1Rに対するIGF−1の結合は、1×10−7MのF138で阻害できた。L6細胞(主として対称的IGF−1R)およびL6 hIR(主としてハイブリッドIGF−1R/IR)の場合、IGF−1R、IRS−1、MAPK42/44およびPKB/AktのIGF−1によるリン酸化は、ペプチドF138で阻害され、そのIC50は1〜6×10−7Mであった。L6−hIRとF138との関係では、インスリンによるリン酸化に比べてIGF−1によるチロシンリン酸化を阻害する選択性がある程度認められる。さらに、インスリン/IGF−1に応答したSGBS細胞のグルコース取り込みは、ペプチドF138を<5×10−6Mで投与しても影響を受けない。こうした特性と、IGF−1Rに結合し、場合によってはIGF−1R拮抗作用を示す式2のペプチドが他にも多く同定されていることとを踏まえると、IGF−1Rに対して結合性を示し、さらにIGF−1R拮抗作用を示す可能性がある式2の新たな特異的配列が通常の実験で同定されると予想できる。
【0110】
特定の例示的な態様では、本発明は、配列F391(QFYGCLLDLSLGVPSFGWrrrCITA−配列番号208)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になる式2のタンパク質またはペプチドを提供する。ペプチドF391は、IGF−1Rに対して8×10−7Mの結合親和性を持つことが明らかにされている。別の態様では、本発明は、F391に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF391のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0111】
別の代表的な式2のタンパク質およびペプチドは、配列F392(QFYGCLLDLSLGVPSFGWKKKCITA−配列番号14)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質およびペプチドに具体化される。ペプチドF392は、IGF−1Rに対して2×10−8Mの結合親和性を持つことが明らかにされている。さらに、ペプチドF392は、SW480のIGF−1依存性の増殖に対して拮抗作用を示し、そのIC50が8×10−7Mであることも明らかになった。別の態様では、本発明は、配列番号14に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF392のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0112】
さらなる例示的態様では、本発明は、配列F407(RQFYGCLLDLSLGVPSFGWRRRCITAR−配列番号15)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質またはペプチドを提供する。ペプチドF407は、7×10−8Mの結合でIGF−1Rに結合することが明らかにされている。別の態様では、本発明は、配列番号15に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF407のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0113】
なお別の特定の態様では、本発明は、配列F408(NFYGCLLDLSLGVPSFGWRRRCITA−配列番号16)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるタンパク質またはペプチドを提供する。ペプチドF408は、IGF−1Rに対して2×10−9Mの結合親和性を持つことが明らかにされている。別の態様では、本発明は、配列番号16に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF408のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0114】
別の例示的な式2のペプチドおよびタンパク質は、配列F428(DFYGCLLDLSLGVPSLGWRRRCIT−配列番号17)を含む。ペプチド428は、IGF−1Rに対して1×10−9Mの結合親和性を持つことが確認されている。さらに、ペプチド428は、SW480のIGF−1依存性の増殖に対して拮抗作用を持ち、そのIC50が5〜10×10−7Mであることが実験で確認されている。別の態様では、本発明は、配列番号17に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF428のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0115】
なおさらなる態様では、本発明は、配列F429(DFYGCLLDLSLGVPSLGWRRRCITA−配列番号18)からなり、それから本質的になる、あるいは、それを含むペプチドおよびタンパク質を提供する。ペプチドF429は、IGF−1Rに対して6×10−10Mの結合親和性を持つことが確認されている。さらに、ペプチドF429は、SW480のIGF−1依存性の増殖に対して拮抗作用を持ち、そのIC50が3〜10×10−7Mであることも明らかになっている。別の態様では、本発明は、配列番号18に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF429のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0116】
別の態様では、本発明は、N末端ピログルタマート残基を含むF138の誘導体(F138P)を提供する。F138Pは、F138と同様にIGF−1Rに対して結合親和性を持つことが明らかにされている。F138Pは、IGF−1依存性のSW480の増殖に対して拮抗作用を示し、そのIC50が5×10−7Mであることが示されている。さらに、F138Pは、>1×10−7Mで投与するとSW480の基礎増殖も阻害する。
【0117】
式3のタンパク質およびペプチド
別の態様では、本発明はさらに、ヒトIGF−1Rに結合し、通常アンタゴニストとして働くタンパク質およびペプチドであって、式3に記載のアミノ酸配列を含む(あるいは、それからなる、あるいは、それから本質的になる)タンパク質およびペプチドを提供する。
【0118】
式3は以下のとおり定義される:
1617FYSCLASLX1819GX202122232425GX26WERCRX2728(配列番号19)、式中、X16は任意に存在するE残基を表し;X17はTまたはS残基を表し;X18は任意の好適な残基(ただし、通常は疎水性残基、脂肪族非電荷残基、脂肪族残基、あるいはなおより詳細にはLまたはV残基)を表し;X19は任意の好適な残基(ただし、通常はTまたはA残基などの低分子残基および/または疎水性残基)を表し;X20は任意の好適な残基(ただし、通常はTまたはP残基などの低分子残基)を表し;X21は任意の好適な残基(ただし、通常はPまたはR残基などの柔軟な残基)を表し;X22は任意の好適な残基(たとえば、Q、EまたはW残基)を表し;X23は任意の好適な残基(ただし、通常はPまたはQ残基などの柔軟な残基)を表し;X24は任意の好適な残基(ただし、通常はNまたはK残基などの極性残基)を表し;X25は任意の好適な残基(ただし、通常はRまたはG残基などの疎水性および/または柔軟な残基)を表し;X26は任意の好適な残基(ただし、通常はS、AまたはP残基などの低分子残基)を表し;X27は任意に存在する柔軟な残基および/または極性残基(たとえば、E、RまたはK残基)を表し;X28は任意に存在する柔軟な残基および/または極性残基(たとえば、KまたはE残基)を表し、この配列は、(国際公開第’246号に開示されている)RP6(TFYSCLASLLTGTPQPNRGPWERCR−配列番号20)ではない(それを含まない)。
【0119】
例示的な一態様では、式3のペプチドまたはタンパク質は、配列F230(ESFYSCLASLVAGTPWPKGGSWERCREE−配列番号21)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になる。ペプチドF230は、IGF−1Rに対して2〜5×10−8Mの結合親和性を持つことが実験で確認された。別の態様では、本発明は、配列番号21に対する同一性が少なくとも約80%、84%、87%、90%、93%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF230のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0120】
別の例示的な(exemplar)側面では、本発明は、配列F142(TFYSCLASLLTGPREQNRGAWERCRR−配列番号22)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になる式3のペプチドおよびタンパク質を提供する。ペプチドF142は、IGF−1Rに対して4×10−8Mの結合親和性を持つことが確認されている。別の態様では、本発明は、配列番号22に対する同一性が少なくとも約80%、85%、88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF142のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0121】
式4の配列を含む新たなIGF1Rアンタゴニスト
別の態様では、本発明はさらに、ヒトIGF−1Rに結合し、通常アンタゴニストとして働くタンパク質およびペプチドであって、式4に記載のアミノ酸配列を含む(あるいは、それからなる、あるいは、それから本質的になる)タンパク質およびペプチドを提供する。
【0122】
式4は以下のとおり定義される:
2930DCX3132RPCGDAX3334FYX35WFX36QQX37SX38(配列番号23)、式中、X29は任意の好適な残基(たとえば、Y残基)を表すが、頻繁にQ残基であり、X30は任意の好適な残基を表し;X31は任意の好適な残基(たとえば、W)を表し、ただし、通常はR残基であり;X32は任意の好適な残基(ただし、通常はA、DまたはG残基などの低分子残基)を表し;X33は任意の好適な残基(たとえば、A、P、EまたはD残基)を表し;X34は任意の好適な残基を表し、ただし、通常はNまたはS(または他の低分子および/または極性残基)であり;X35は任意の好適な残基を表し、ただし、通常はDまたはEであり;X36は任意の好適な残基を表し、ただし、通常はDまたはV残基(または他の低分子残基)であり;X37は任意の好適な残基(ただし、通常はAまたはR残基などの疎水性残基)を表し;X38は任意に存在する任意のEまたはD残基(一般にE残基)を表し、この配列は、C1またはD112(CWARPCGDAANFYDWFVQQAS−配列番号24)(この2つの名称で国際公開第’246号開示されている)ではなく、それを含まない。
【0123】
特定の例示的一態様では、本発明は、配列F263(VQDDCRGRPCGDADSFYEWFDQQAS−配列番号25)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になる式4のタンパク質またはペプチドを提供する。F263ペプチドは、3×10−8MのIGF−1Rに対して結合親和性を持つことが確認されている。別の態様では、本発明は、配列番号25に対する同一性が少なくとも約88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF263のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0124】
別の例示的な態様では、本発明は、配列F264(RQWDCRGRPCGDAESFYEWFDQQRS−配列番号26)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になる式4のペプチドおよびタンパク質を提供する。ペプチドF264は、IGF−1Rに対して4×10−8Mの結合親和性を持つことが確認されている。さらに、ペプチドF264は、IGF−1依存性のSW480細胞の増殖に対する拮抗作用を持ち、そのIC50が>1×10−6Mであることも明らかにされている。別の態様では、本発明は、配列番号26に対して少なくとも約88%、少なくとも92%、少なくとも約96%など少なくとも約80%の同一性(ただし、同一性は100%未満)を示すが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されていないIGF−1R結合ペプチド(および少なくともいくつかの場合にはIGF−1Rアンタゴニスト)を提供する。
【0125】
別の例示的な実施形態は、配列F270(ESYGDCRDRPCGDAPNFYDWFVQQASE−配列番号27)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるペプチドおよびタンパク質で提供される。ペプチドF270は、IGF−1Rに対して7×10−8Mの結合親和性を持つことが確認されている。さらに、ペプチドF270は、IGF−1依存性のSW480細胞の増殖に対する拮抗作用を示し、そのIC50が20×10−7Mであることも確認されている。しかしながら、MCF−7に対するアゴニスト作用が認められた(1実験のみ)。別の態様では、本発明は、配列番号27に対する同一性が少なくとも約80%、85%、89%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF270のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0126】
なお別の態様では、本発明は、配列F265(VQRDCRGRPCGDAASFYDWFDQQRS−配列番号197)を含む、それからなる、あるいは、それから本質的になるペプチドおよびタンパク質を提供する。さらなる態様では、本発明は、配列番号197に対する同一性が少なくとも約80%、88%、92%または96%であるが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されたペプチドではないF265のアナログ(またはそのアナログを含むタンパク質)を提供する。
【0127】
F364およびそのアナログ
本発明はまた、F364(FVQDDCRGRPCGDADSFYEWFDQQAGYGSSSRRAPQT−配列番号28)を含むタンパク質を提供し、さらに、本発明は、F364からなるか、あるいは、F364から本質的になるペプチドも提供する。F364ペプチドは、5×10−8Mの結合親和性でIGF−1Rに結合することが確認されている。別の態様では、本発明は、配列番号28に対する同一性が、たとえば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%など、少なくとも約80%を示すが、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に具体的に記載されていないIGF−1R結合ペプチドを提供する。
【0128】
新たなIGF−1R結合ペプチド/タンパク質
本発明は、本書の例示的な実験方法およびデータのセクションに示した各表に記載した新たなIGF−1R結合ペプチド(たとえば、表4に示した配列番号29〜54および56〜195で定義したペプチドおよび/またはその配列番号の少なくとも1つを含むタンパク質)を提供する。また、そうしたペプチドに対する同一性が、たとえば、少なくとも約82%(たとえば、約85%またはそれ以上)、少なくとも約86%(たとえば、約90%またはそれ以上)、少なくとも約92%、あるいは少なくとも約96%(たとえば、約95%またはそれ以上)など、高い同一性を持ち、類似したIGF−1R結合特性および/または拮抗作用特性を持つそうしたペプチドのアナログも、本発明のさらなる側面として提供する(ただし、そうしたアナログは、本明細書または国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に明示的に開示されていない。表4に開示したペプチドに見られるように、本明細書に記載した配列のいずれかの多量体も有用な生物学的特性を示す場合がある。そうしたペプチドおよびタンパク質は、本発明の別の特徴である。本発明の新たな特徴は、別の機能的部分(たとえば、抗癌剤(たとえば、毒性タンパク質)または血管新生阻害薬(たとえば、色素上皮由来因子(PEDF:pigment epithelium−derived factor))または検出しやすくする配列(たとえば、緑色蛍光タンパク質またはエピトープタグ配列))に連結されている、本明細書に開示した配列の1つまたは複数を含む融合タンパク質である。機能的部分または検出しやすくする配列は、本発明の1つまたは複数の配列に直接コンジュゲートされていても、リンカーでコンジュゲートされていてもよい。リンカーについては、たとえば、「柔軟な」アミノ酸配列リンカー(たとえば、GSGS(配列番号55)または以下に記載するLigまたはPox部分などの化学部分)であってもよい。
【0129】
ペプチド/タンパク質を作製する核酸、ベクター、細胞および方法
別の態様では、本発明は、上述の本発明のペプチドまたはタンパク質のいずれかの少なくとも1個をコードする配列を含む単離された核酸配列を提供する。この核酸は、任意の好適な組成物の核酸で構わない。たとえば、この核酸は、DNA分子(一本鎖または二本鎖)、RNA分子(一本鎖または二本鎖)、ハイブリッドDNA/RNA分子または上述のペプチドの1個をコードする発現可能な核酸配列を含む他の核酸分子であってもよい。この核酸は、ホスホチオアート骨格など、他の修飾および/または特徴を含んでも構わない。
【0130】
追加的な側面では、本発明は、上述したばかりの態様に記載の核酸を含むベクターを提供する。「ベクター」とは、(a)ペプチド/タンパク質をコードする核酸配列の発現を促し、(b)そこからペプチド/タンパク質を産生しやすくし、(c)標的細胞にそのトランスフェクション/形質転換を促進し、(d)核酸配列の複製を促し、(e)核酸の安定性を高め、(f)核酸および/または形質転換/トランスフェクト細胞を検出しやすくし、および/または(g)ペプチド/タンパク質をコードする核酸に有利な生物学的および/または生理化学的機能を別途付与する送達ビヒクルをいう。本明細書の文脈において、ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクターおよび合成核酸ベクター(一連の好適な発現制御エレメントを含む核酸配列)など、任意の好適なベクターで構わない。そうしたベクターの例として、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAを組み合わせて得られるベクターおよびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。例示的な一態様では、核酸は、たとえば、直鎖状発現エレメント(たとえば、Sykes and Johnston(1997)Nat Biotech 17:355−59に記載されている)、コンパクト核酸ベクター(たとえば、米国特許第6,077,835号および/または国際公開第00/70087号に記載されている)、pBR322、pUC19/18またはpUC118/119などのプラスミドベクター、「midge:minimalistic,immunologically defined gene expression」最小核酸ベクター(たとえば、Schakowski et al.(2001)Mol Ther 3:793−800に記載されている)またはCaPO沈殿法によるコンストラクトなどの沈殿法による核酸ベクターコンストラクト(たとえば、国際公開第00/46147号,Benvenisty and Reshef(1986)Proc Natl Acad Sci USA 83:9551−55,Wigler et al.(1978),Cell 14:725,and Coraro and Pearson(1981)Somatic Cell Genetics 7:603に記載されている)などの裸のDNAまたはRNAベクターに含まれる。こうした核酸ベクターおよびその使用法は、当該技術分野において周知である(たとえば、米国特許第5,589,466号および同第5,973,972号を参照されたい)。
【0131】
ベクターについては、任意の好適な細胞型(たとえば、哺乳動物細胞、酵母細胞など)で発現できるかどうかを基準に選択すればよい。一態様では、ベクターは、細菌細胞でのペプチド/タンパク質の発現に好適である。そうしたベクターの例として、たとえば、精製しやすい融合タンパク質の高度な発現を誘導するベクター(たとえば、BLUESCRIPT(Stratagene)およびpINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem 264:5503−5509(1989)などの多機能の大腸菌クローニングおよび発現ベクター;pETベクター(Novagen,Madison WI);および同種のもの)が挙げられる。さらに、あるいはその代わりに、発現ベクターは、たとえば、酵母系での発現に好適なベクターであってもよい。酵母系での発現に好適であれば、どのような任意のベクターを用いても構わない。たとえば、Saccharomyces cerevisiaeに使用される好適なベクターには、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなど、構成的または誘導性プロモーターを含むベクターがある(たとえば、Ausubel,supra,and Grant et al.,Methods in Enzymol 153:516−544(1987)を参照されたい)。
【0132】
ベクターは、任意の好適なプロモーター、エンハンサーおよび他の発現を促進するエレメントを含んでいても、それと結合していてもよい。そうしたエレメントの例として、強力な発現プロモーター(たとえば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー、RSVプロモーター、SV40プロモーター、SL3−3プロモーター、MMTVプロモーターまたはHIV LTRプロモーター)、効率的なpoly(A)終止配列、大腸菌のプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗生物質耐性遺伝子および/または簡便なクローニング部位(たとえば、ポリリンカー)が挙げられる。さらに、ベクターは、CMV IEなどの構成的プロモーターではなく誘導性プロモーターを含んでも構わない(一定の条件下での遺伝子発現の相対的な度合いを実際にこうした用語で記述することを当業者であれば理解するであろう)。一態様では、本発明は、癌関連組織などの標的組織における配列の発現を促す組織特異的プロモーターに作動的に連結された、ペプチド/タンパク質をコードする配列を含有する核酸を提供する。そうした癌関連組織に特異的なプロモーター系の例については、たとえば、Fukazawa et al.,Cancer Res.2004 Jan 1;64(1):363−9;Latham et al.,Cancer Res.2000 Jan 15;60(2):334−41;and Shirakawa et al.,Mol Urol.2000 Summer;4(2):73−82に記載されている。
【0133】
別の態様では、この核酸は、ウイルスベクターを介して宿主細胞または宿主動物内に位置する、および/または、そこに送達される。この場合、任意の好適なウイルスベクターを用いてもよく、複数のベクターが当該技術分野において公知である。ウイルスベクターは、単独で、あるいは所望の宿主細胞で本発明の核酸の送達、複製および/または発現を促進する1つまたは複数のウイルスタンパク質を組み合わせて、どのようなウイルスポリヌクレオチドを含んでもよい。ウイルスベクターは、ウイルスゲノムの全部または一部を含むポリヌクレオチド、ウイルスタンパク質/核酸コンジュゲート、ウイルス様粒子(VLP:virus−like particle)またはウイルス核酸および本発明の核酸を含むインタクトなウイルス粒子であってもよい。ウイルス粒子のウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子を含んでも、改変されたウイルス粒子を含んでもよい。ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター単位複製配列など、複製および/または発現に別のベクターまたは野生型ウイルスの存在が欠かせないベクターでも構わない(すなわち、ウイルスベクターはヘルパー依存ウイルスでもよい)。一般に、そうしたウイルスベクターは、野生型ウイルス粒子、あるいは導入遺伝子の容量を増加させたり、核酸のトランスフェクションおよび/または発現を補助したりするためタンパク質および/または核酸の内容が改変されたウイルス粒子から本質的になる(そうしたベクターの例として、ヘルペスウイルス/AAV単位複製配列がある)。一般に、ウイルスベクターは、通常ヒトに感染するウイルスに類似している、および/またはそれに由来する。この場合、好適なウイルスベクター粒子として、たとえば、アデノウイルスベクター粒子(アデノウイルス科またはアデノウイルス科のウイルスに由来する任意のウイルス)、アデノ随伴ウイルスベクター粒子(AAVベクター粒子)または他のパルボウイルスおよびパルボウイルスベクター粒子、パピローマウイルスベクター粒子、フラビウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターがある。ウイルスベクターまたは他のベクターは、複製欠損性を特徴とする場合が多い。そうしたウイルスおよびウイルスベクターの例は当該技術分野において周知である。
【0134】
本発明の他の特徴として、核酸、ベクターまたはそのいずれかあるいは両方を含む、酵母細胞、細菌細胞および哺乳動物細胞(たとえば、不死化した哺乳動物細胞)などの組換え細胞が挙げられる。たとえば、例示的な一態様では、本発明は、本発明の様々な態様の1つに記載のペプチド/タンパク質の発現をコードする配列を含むプラスミド、コスミド、ファージミドまたは直鎖状発現エレメントなどの組み込まれてない核酸を含む細胞を提供する。
【0135】
なお別の態様では、本発明は、上述の本発明の態様のいずれかに記載のペプチドまたはタンパク質を作製する方法であって、ペプチド/タンパク質の発現をコードする核酸またはそれを含むベクターで細胞を形質転換/トランスフェクトすることと、通常核酸の発現に好適な条件下で細胞を培養することと、そこから発現産物を(たとえば、分泌産物の場合、細胞ライセートまたは細胞培地から)回収することを含み、通常それと共におよび/またはその後に単離されたタンパク質/ペプチドを得るための1つまたは複数の精製方法(たとえば、遠心分離、クロマトグラフィー精製および/または濾過)を含む方法を提供する。タンパク質およびペプチドのトランスフェクション/形質転換、培養および精製の方法は、当該技術分野において公知であり、したがって、本明細書に記載する必要はない。
【0136】
また、本発明により提供されるペプチドは、化学「合成」法で作製してもよい。数多くの化学合成の方法が公知で利用可能であり、作製にはそうした方法の任意の好適なタイプを用いればよい。そうした技法の例として、単独の固相合成、部分的な固相法、フラグメント縮合、古典的な溶液合成が挙げられる。さらに、ペプチドを作製する組換え法および合成法を組み合わせて半合成ペプチドを作製してもよい。このため、たとえば、その鎖については、Merrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149;1997に記載されているような固相ペプチド合成で調製することができる。一実施形態では、α−アミノ基末端が保護されているアミノ酸で合成を行う。また、不安定な側鎖を持つ三官能性アミノ酸については、ペプチドの構築過程で好ましくない化学反応が起こらないように好適な基で保護してもよい。α−アミノ基の保護基は、アミノ末端で後続反応が起こるように選択的に除去することができる。この条件では、α−アミノ基の保護基を除去しても側鎖の保護基は除去されない。こうした方法に関する他の原理は、たとえば、Merrifield R B.Angew Chem Int Ed Engl.1985;97:799−810,Methods Enzymol.1997;289:3−13;Hackeng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.96,pp.10068−10073,August 1999;Goeddel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76,106−110,1979;Hunkapillar et al.,1984,Nature(London),310:105−111;and Becker et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2003 April 29;100(9):5075−5080に記載されている。
【0137】
医薬組成物
本発明の本発明の化合物(タンパク質、ペプチド、核酸、ベクターなど)および/または任意の第2の作用物質(たとえば、1つまたは複数の新たな抗癌および/または血管新生阻害化合物/組成物)は、任意の好適なキャリア、希釈液、賦形剤および同種のものと一緒に製剤化してもよい(たとえば、Powell et al.「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)を参照されたい。「ビヒクル」および「キャリア」という語を用いる場合、本発明において記載されたそうしたタイプの作用物質および/または指定の投与経路(および意図した保存など)に適切な機能性向上剤(たとえば、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、充填剤、塩(類)、可溶化剤、洗浄剤、抗凝集剤(たとえば、抗凝集アミノ酸製剤)分散媒、等張剤、組織固定液、キレート化剤、緩衝液、抗菌薬、酸化防止剤、色素、着香剤、吸収遅延剤、放出制御剤など)をすべて総称し、参照によって個別に指称することがある。そのような追加成分が、本発明の医薬製剤の全体的な安定性によくない影響を与えてはならないことは言うまでもない。好適なキャリア、希釈液、アジュバントおよび機能性向上剤、さらにそうした組成物の投与モード/製剤化については、医薬品技術分野でよく知られている。たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th edition,1995を参照されたい。さらに、たとえば、Berge et ah,J.Pharm.Sci.,6661),1−19(1977);Wang and Hanson,J.Parenteral.Sci.Tech:42,S4−S6(1988),米国特許第6,165,779号および同第6,225,289号も参照されたい。これに関連する新たな原理、方法および作用物質は、たとえば、Urquhart et al.,Lancet,16,367(1980),Lieberman et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS−DISPERSE SYSTEMS(2nd ed.,vol.3,1998);Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS & DRUG DELIVERY SYSTEMS(7th ed.2000);Martindale,THE EXTRA PHARMACOPEIA(31st edition),Remington’s PHARMACEUTICAL SCIENCES(16th−20th editions);The Pharmacological Basis Of Therapeutics,Goodman and Gilman,Eds.(9th ed.−1996);Wilson and Gisvolds’ TEXTBOOK OF ORGANIC MEDICINAL AND PHARMACEUTICAL CHEMISTRY,Delgado and Remers,Eds.(10th ed.−1998)ならびに米国特許第5,708,025号および同第5,994,106号に記載されている。また、薬学的に許容される組成物を製剤化する原理は、たとえば、Platt,Clin.Lab Med.,7:289−99(1987),Aulton,PHARMACEUTICS:THE SCIENCE OF DOSAGE FORM DESIGN,Churchill Livingstone(New York)(1988),EXTEMPORANEOUS ORAL LIQUID DOSAGE PREPARATIONS,CSHP(1998)および「Drug Dosage,」 J.Kans.Med.Soc,70(I),30−32(1969)に記載されている。
【0138】
本発明の組成物は、たとえば、溶液(たとえば、注射および注入溶液)、分散液または懸濁液および同種のものなど、液体剤形、半固形剤形および固形剤形のように任意の好適な形態で製剤化してもよい。任意の組成物の最適な形態は、予定の投与モード、組成物または組み合わせの性質、および治療分野または他の用途によって異なる。本発明の組成物の典型的な送達モードは、非経口投与(たとえば、静脈内投与)である。一態様では、点滴静注または注射で本発明の組成物をヒト患者に投与する。
【0139】
薬学的に許容される組成物は一般に無菌であり、十分な量の本発明(および含まれている任意の第2の作用物質)の化合物を溶解し、製造および保存の条件下で安定であり、かつ使用を予定している被検体に危険性がない(すなわち、たとえば、臨床試験で判定した場合に類似した被検体の多く、ほとんどの場合、かなりの多数(少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%など)に少なくとも危険性がない)。このようにして本発明により提供される(および/または本明細書の他の箇所に記載した様々な方法で用いられる)組成物は、滅菌、精製など従来の製剤工程に供してもよい(このため、組成物の活性成分は、少なくとも実質的に単離されるか、または単離されると考えられる)。
【0140】
本発明の一実施形態では、この医薬製剤は、水性製剤、すなわち、水を含む製剤である。こうした製剤は一般に溶液か懸濁液である。本発明のさらなる実施形態では、医薬製剤は水溶液である。「水性製剤」という語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤と定義される。同様に、「水溶液」という語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液と定義され、「水性懸濁液」という語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液と定義される。
【0141】
別の実施形態では、この医薬製剤は凍結乾燥製剤であり、使用前に医師または患者が溶媒および/または希釈液を加える。
【0142】
注射用医薬品は一般に、無菌で実質的にパイロジェンフリーであり、かつ医学的に許容されない作用がなければ、「治療的使用に問題がない」と考えられる。たとえば、この医薬品はヒト被験者に注射したとき、医学的に許容されない免疫学的反応を起こしてはならない。医学的に許容されない作用については、医療分野の当業者であれば判定できる。組成物の成分を精製して、本明細書に記載し当該技術分野において公知の原理によるそうした成分の製剤化を行い、かつ標準的な試験手順を用いることで、こうした特徴および/または本明細書に記載のそれ以外の特徴に適合した組成物を、過度の実験または作業を行うことなく得ることができる。
【0143】
治療の用途/方法への応用
本発明により提供される化合物および組成物は、多様な分野で有用である。
【0144】
例示的な一態様では、本発明のある種の化合物および組成物は抗癌特性を持つ。このため、本発明の少なくともいくつかの化合物および組成物は、癌の処置に使用することができる(本発明の態様は以下にさらに記載する)。本発明に関して文法上様々な形をとる「処置する」という語は、疾患(癌)の状態、疾患(癌)の進行、疾患(癌)の原因因子または他の異常な癌性状態、前癌状態または新生物状態の有害な影響を予防したり、取り除いたり、消失させたり、減弱したり、緩和したり、最小限に抑えたり、抑制したり、阻止したりすることをいう。
【0145】
別の例示的な態様では、本発明の化合物および組成物は血管新生阻害特性を示す。この場合、そうした化合物および組成物を、用途の類似した既知の他の血管新生阻害薬の代用物および/または既知の他の血管新生阻害薬と組み合わせた第2の作用物質として用いることができる(たとえば、一態様では、糖尿病性網膜症を処置するため、あるいは、より一般的には網膜血管新生の抑制/予防のため、たとえば、眼に注射する、および/または点眼剤に加えることで、本発明の化合物または組成物を患者に投与あるいは別途送達してもよい)。
【0146】
さらなる側面では、IGF−1Rに対して拮抗作用を持つ新たな化学物質のスクリーニングの参照物質/ツールとして本発明のペプチドを使用してもよい(そうしたスクリーニング方法の例は、国際公開第’246号、国際公開第’771号もしくは米国特許出願公開第’147号に記載されている)。
【0147】
なお別の態様では、(「天然の」CDR/可変領域残基/配列/モチーフと、本明細書に開示したペプチド/配列の残基/配列/モチーフとの置換により)改変された抗IGF−1R抗体のCDR/可変領域配列の最適化における参照物質として本発明のペプチドを使用してもよい。
【0148】
別の態様では、本発明のIGF−1R結合ペプチド/配列を融合タンパク質の標的物質として使用することもできる。
【0149】
さらに、IGF−1R分子を精製するために本発明のペプチド/タンパク質を用いてもよい。
【0150】
さらに、たとえば、体内または他の媒体におけるIGF−1Rの分布を追跡するため、本発明のペプチド/タンパク質を診断剤として使用することもできる(たとえば、蛍光タンパク質部分およびIGF−1R結合部分など、検出可能な部分を含む融合タンパク質の場合)。
【0151】
癌の処置に関しては、以下に限定されるものではないが、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌および卵巣癌など、様々なタイプの癌の処置に本発明により提供されるIGF−1Rアンタゴニストを使用することができる。
【0152】
特定の態様では、本発明のIGF−1Rアンタゴニスト化合物または組成物を膵癌または乳癌の処置剤として使用する。特定の態様では、そうした方法に使用するIGF−1Rアンタゴニストの選択については、1つには培養膵癌細胞または乳癌細胞に対してナノモル範囲またはピコモル範囲のIC50(たとえば、約600ピコモル)および/またはED50(たとえば、ED50が約10−9)を基準に行う。一般に、IGF−1Rアンタゴニスト化合物または組成物は、ヌードマウスまたは他の好適な動物モデル(最も好ましいのはヒト患者)の膵臓腫瘍の増殖に対して阻害作用を示す。
【0153】
本発明の化合物については、任意の好適な用量で任意の好適な送達レジメンにより送達することができる。一態様では、癌の処置に送達される本発明の化合物または組成物を、注射または注入により皮下、静脈内または腫瘍内に投与する。
【0154】
動物モデル(たとえば、ヌードマウスまたはヒト患者)に対する例示的な投与量は、少なくとも約4週間、週2回投与で約3.75mg/kgである。この投与量は1日、週間、隔週、月間または年間のレジメンに置き換えられることが理解されるであろう。たとえば、患者には、20〜16mg/kgまたは15〜10mg/kgまたは9〜5mg/kgまたは4〜1mg/kgまたは1mg/kg〜100μg/kgまたは100μg/kg〜10μg/kgの範囲の一定の投与量を週2回、あるいは、1日間、3日間、5日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間など数日間、数週間、数ヶ月間または数年間にわたり投与してもよい。
【0155】
一般に、本発明の治療方法に使用するIGF−1Rアンタゴニストの量は、有効量(治療効果のある量および/または予防有効量)であることが確認されている量である。
【0156】
本発明の組成物は、本発明の化合物(または本発明の化合物および第2の作用物質を含む組み合わせ組成物の場合、第1および第2の量)の「治療有効量」または「予防有効量」を含んでもよい。「治療有効量」とは、宿主において所望の治療結果(たとえば、血管形成または癌の進行の抑制に関連した生理反応の誘導、促進および/または増強)が得られる適切な投与量で適切な期間にわたり送達した際に有効な量をいう。治療有効量は、個体の病状、年齢、性別および体重および個体に所望の反応を惹起する化合物(または化合物/第2の作用物質)の能力など、要因によって異なる場合がある。また、治療有効量は、治療上有益な作用が、本発明のペプチド/分子の任意の毒性作用または有害作用を凌駕する量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防結果(たとえば、予防レジメンを受けていない類似の患者と比較した際の障害が発症する可能性の低下、障害の強度または拡大の抑制、差し迫った障害における生存可能性の向上、疾患状態の発症の遅延、差し迫った状態の進展が抑制されていることなど)を得るのに必要な投与量および期間で有効な量をいう。一般に、予防用量は疾患になる前または疾患の比較的初期に被検体に使用するため、予防有効量は、治療有効量よりも少なくなる。本明細書で「処置」という語は、任意の症状または病状の発症を予防するため、あるいは、すでに発症しているそうした症状または病状を緩和したり、軽減したり、根絶(治癒)したりするために有効量の本発明の治療活性化合物を送達することをいう。このため、「処置」という語は、予防的処置を含むことを意図している。しかしながら、本発明の治療レジメンおよび予防レジメンはやはり本発明の別々に独立した態様と考えられることも理解されよう。したがって、この語が本明細書のどこで使用されても、やはり、そうした別々の予防および緩和/治療用途を示すものとして理解すべきである。
【0157】
他のタイプの癌についても、本発明の化合物または組成物を有効量で投与または送達することで処置できる。非限定的な例として、そうした癌は、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病およびリンパ腫のほか、腺扁平上皮癌、混合性中胚葉腫、癌肉腫および奇形癌などの混合型の癌であってもよい。代表的な癌として、膀胱癌、肺癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、頭頸部癌、前立腺癌およびメラノーマがあるが、これに限定されるものではない。具体的には、AIDS関連癌(たとえば、カポジ肉腫、AIDS関連リンパ腫)、骨癌(たとえば、骨肉腫、骨の悪性線維性組織球腫、ユーイング肉腫およびそれに関連する癌)および血液の癌/血液癌(たとえば、成人急性リンパ芽球性白血病、小児急性リンパ芽球性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、皮膚T細胞リンパ腫、成人ホジキン病、小児ホジキン病、妊娠中のホジキン病、菌状息肉腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、セザリー症候群、皮膚T細胞リンパ腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群および骨髄増殖性障害)が挙げられる。
【0158】
さらに、本発明の方法の実施による処置の対象として、脳癌(たとえば、成人脳腫瘍、小児脳幹グリオーマ、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児上衣腫、小児髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性および松果体部ならびに小児視経路および視床下部グリオーマ)、消化器/胃腸癌(たとえば、肛門癌、肝外胆管癌、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、成人原発性肝癌、小児肝癌、膵癌、直腸癌、小腸癌および胃癌)、筋骨格癌(たとえば、小児横紋筋肉腫、成人軟部組織肉腫、小児軟部組織肉腫および子宮肉腫)および内分泌癌(たとえば、副腎皮質癌、消化管カルチノイド腫瘍、膵島細胞癌(膵内分泌部)、副甲状腺癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍および甲状腺癌)が挙げられる。
【0159】
さらに、本明細書に記載の本発明の方法の実施における対象として、神経癌(たとえば、神経芽細胞腫、下垂体腫瘍および原発性中枢神経系リンパ腫)、眼癌(たとえば、眼内黒色腫および網膜芽細胞腫)、尿生殖器癌(たとえば、膀胱癌、腎(腎細胞)癌、陰茎癌、腎盂と尿管の移行上皮癌、精巣癌、尿道癌、ウィルムス腫瘍および他の小児腎腫瘍)、呼吸器/胸部癌(たとえば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫および悪性胸腺腫)、胚細胞癌(たとえば、小児頭蓋外胚細胞腫瘍および性腺外胚細胞腫瘍)、皮膚癌(たとえば、メラノーマおよびメルケル細胞癌)、婦人科癌(たとえば、子宮頸癌、子宮内膜癌、妊娠性絨毛性腫瘍、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、子宮肉腫、腟癌および外陰癌)および未知の原発癌が挙げられる。
【0160】
本発明の実施により処置できる具体的な乳癌として、非浸潤性乳管癌(DCIS:ductal carcinoma in situ)、乳管癌非浸潤性小葉癌(LCIS:lobular carcinoma in situ)、乳頭癌および面皰癌などの非浸潤性癌または、たとえば、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、浸潤性乳管および小葉癌、髄様癌、粘液(膠様)癌腫、面皰癌、パジェット病、乳頭癌、管状癌および炎症性癌のような腺癌または癌腫などの浸潤癌があるが、これに限定されるものではない。具体的な前立腺癌としては、腺癌および肉腫または前立腺上皮内新生物(PIN:prostate intraepithelial neoplasia)などの前癌状態が挙げられる。具体的な肺癌には、気管支カルチノイド(気管支腺腫)、軟骨性過誤腫(良性)、孤立性リンパ腫および肉腫(悪性)腫瘍などの腫瘍に関係した肺癌のほか、多中心性リンパ腫に関係した肺癌がある。気管支原性癌については、扁平上皮癌、小細胞癌、非小細胞癌または腺癌として現れる場合がある。具体的な癌の場合、たとえば、脾臓、肝臓、前立腺、卵巣、結腸または中枢神経系などの患部または患部臓器に本ペプチドを直接送達してもよいことが理解されよう。
【0161】
本発明のIGF−1Rアンタゴニストペプチドおよびタンパク質については、個別に投与しても、他のIGF−1もしくはIGF−1Rアンタゴニストまたは阻害剤と組み合わせて投与もしてもよい。あるいは、開示したIGF−1Rアンタゴニストペプチドを他の癌治療、たとえば、手術、放射線、生物学的応答調節、免疫療法、ホルモン療法および/または化学療法と組み合わせて用いてもよい。前立腺癌の場合、化学療法剤の非限定的な例として、ドセタキセル、パクリタキセル、エストラムスチン、エトポシド、ビンブラスチン、ミトキサントロンおよびパクリタキセルが挙げられる。乳癌の場合、化学療法剤および生物学的作用物質の非限定的な例として、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、タモキシフェン、パクリタキセル、ドセタキセル、ナベルビン、カペシタビン、マイトマイシンC、インターフェロン、インターロイキン−2、リンパ球活性化キラー細胞、腫瘍壊死因子およびモノクローナル抗体(たとえば、HER−2/neu受容体に対するmAb(トラスツズマブ)Herceptin(登録商標))が挙げられる。肺癌の場合、化学療法剤および生物学的作用物質の非限定的な例として、白金化合物(たとえば、シスプラチンまたはカルボプラチン)、ビンカアルカロイド類(たとえば、ビノレルビン、ビンクリスチンまたはビンブラスチン)、タキシン(たとえば、ドセタキセルまたはパクリタキセル)および様々なトポイソメラーゼ阻害剤があるが、これに限定されるものではない。
【0162】
別の態様では、本発明のIGF−1Rアンタゴニストを用いて、ヒト患者などの哺乳動物宿主の癌の進行または腫瘍の進行の1つまたは複数の段階を抑制する。「癌の進行」とは通常、正常な非腫瘍性細胞の癌性の腫瘍細胞への変化;そうした腫瘍細胞の移動;およびその後の腫瘍の形成、増殖および拡大(後者の態様を腫瘍の進行と呼ぶこともある)を促すか、それを示す任意の現象または現象の組み合わせをいう。そうした現象の例として、正常な非腫瘍性細胞の、前腫瘍と認められる表現型への形質転換に伴う細胞の表現型の変化と、前腫瘍細胞から腫瘍細胞への形質転換を示す細胞の表現型の変化とが挙げられる。本発明の方法を用いてIGF−1Rに関連する癌または腫瘍の進行の任意の段階を抑制することができる。特定の例示的な態様では、癌の進行の抑制とは、前腫瘍および/または腫瘍細胞の増加(増殖)および/または生存の減少を意味する。
【0163】
キット
さらに、本方法を実施するためのキットも提供する。本キットは、含まれる成分が大きく異なる場合がある。本キットは、ヒトインスリン様成長因子−1受容体(HIGF−1R)に結合する本発明のペプチドおよび/またはタンパク質を少なくとも含む。ある態様では、本キットは、本発明のペプチドまたはタンパク質をコードする核酸と、そうした核酸を含むベクターおよび細胞と、そうした化合物を含む医薬組成物とをさらに含む場合がある。
【0164】
ある実施形態では、本キットは、癌処置の投与を患者が行うための説明書を含む。
【0165】
この説明書は、好適な記録媒体または基盤に記録されていればよい。たとえば、この説明書は、紙またはプラスチックなど基盤に記録されている場合がある。このため、説明書は添付文書としてキットに含まれいることもあれば、キットまたはその要素の容器のラベル表示に含まれている(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに貼付されている)場合などもある。他の実施形態では、説明書は、好適なコンピューター読み取り可能な記録媒体、たとえば、CD−ROM、ディスケット上に存在する電子記憶データファルとして含まれている。なお他の実施形態では、実際の説明書はキットに含まれていないが、たとえば、インターネットにより、説明書を遠隔の送信元から取得する手段が提供されている。この実施形態の例として、説明書を閲覧できる、および/または説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットが挙げられる。説明書を取得するこの手段は、説明書と同様、好適な基盤に記載されている
本キットの要素の一部または全部は、無菌性を保つため好適なパッケージングに包装されている。本キットの多くの実施形態では、キットの要素をキット収納エレメントに包装して取り扱いやすい単一ユニットにしてある。箱または類似の構造などのキット収納エレメントは、たとえば、キット要素の一部または全部の無菌性をさらに保つため、気密容器であることもあれば、そうでない場合もある。
【実施例】
【0166】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、こうした実施例を限定的に解釈してはならない。本出願において引用された参考文献、特許および公開された特許出願の内容についてはすべて参照によって本明細書に援用する。
【0167】
以下の例示的な実験方法およびデータは、本発明の様々な態様に関する説明を分かりやすくするために提示するものであり、いかなる場合も、本発明の範囲を限定するものと見なしてはならない。
【0168】
材料および方法の簡単な説明
本明細書に記載したデータの取得に用いた実験については、上記の国際公開第’246号、国際公開第’771号および米国特許出願公開第’147号に以前記載されたものに類似した標準的な方法を用いて行った。このため、本明細書では、本データの取得に使用した具体的な方法の一部をごく簡単に説明する。
【0169】
(実施例1)
IGF−1Rの親和性試験
IGF−1Rの親和性試験は原則として以下のとおり行った。ヒトIGF−1R(HIGF−1R)を様々な濃度の被検物質で125I標識ヒトIGF−1とインキュベートし、Kを算出した。HIGF−1Rについては、IGF−1RのcDNAを安定にトランフェクトしたBHK細胞の細胞培養液から精製した。回収の前日に細胞を無血清状態に置き、回収前に細胞を氷冷PBS溶液でリンスした。この細胞を、冷たい溶解緩衝液(4mlの溶解緩衝液/1×10細胞)に可溶化し(solubillized);激しくボルテックスして溶解緩衝液(50mMのHepes(pH8.0);150mMのNaCl;1%トリトンX−100;2mMのEDTA;10μg/mlのアプロチニン;0.5mMのPEFABLOC(Roche))に溶解し;このライセートを20000rpm、4℃で15分間遠心した。HIGF−1R部分をWGA−アガロースビーズに吸収させ、クロマトグラフィーによる精製(Pharmacia biotech No 17−0760−01)に供した(カラムはカラム体積の20倍量の洗浄用緩衝液−50mMのHepes(pH8.0);150mMのNaCl;0.1%トリトンX−100;0.5mMのPEFABLOC(Roche)で洗浄した)。次いでHIGF−1R部分を、溶出緩衝液(50mMのHepes(pH8.0);150mMのNaCl;0.1%トリトンX−100;0.5mMのPEFABLOC(Roche);0.5Mのn−アセチルグルコサミン;10%グリセロール)に加えた0.5Mのn−アセチルグリコサミン(NAG:n−Acetyl Glycosamine)、10%グリセロールで溶出した。溶出液についてIGF−1受容体チロシンキナーゼ活性およびIGF−1結合活性(以下でさらに記載する)を検査し、そうした活性を示す画分(HIGF−1R部分に相当する)を本明細書に記載の実験に使用できるように回収した。親和性の測定では、通常、受容体濃度を、125Iで標識したリガンド(Tyr31−125I−IGF1)2000cpm(3pM)が30〜60%結合するように選択し、検査対象の物質の希釈系列を加えた。4℃で2日間平衡化させてから、通常、各サンプル(200μl)を、400μlの25%PEG6000を加えて沈殿させ、遠心し、1mlの15%PEG6000で洗浄し、γカウンターでカウントした。場合によって、主な被検ペプチドのヒトインスリン受容体(HIR)親和性を同様に測定した。
【0170】
一部の例では、シンチレーション近接アッセイ(SPA(scintillation proximity assay)アッセイ)を用いてIGF−1R親和性を判定した。簡単に説明すると、抗マウスSPAビーズをHIGF−1R抗体(24−31)およびトランスフェクト細胞由来のWGA精製HIGF−1Rと混合した。結合緩衝液は、0.1MのHepes、pH7.8、0.1MのNaCl、10mMのMgCl、0.025%ツイーン20、0.5%BSAであった。この混合物に125I−IGF1およびIGF1の希釈系列または判定対象のペプチドを加えた。室温で16時間インキュベートしてから、96ウェルプレートを遠心し、トップカウンターでカウントし、結合に対するIC50をKの指標として使用した。
【0171】
多くのペプチドおよびペプチド誘導体に関するこの親和性試験の結果を表4に示す。この調査から、IGF−1Rに対して高親和性を示す多くの新規なペプチドが同定された。
【0172】
(実施例2)
IGF−1R活性化試験
被検ペプチドによるIGF−1R活性化を判定するため、原則として以下の条件によりキナーゼアッセイを採用した。キナーゼ緩衝液(Hepes100mM(pH8,0)、MgCl 8mM、MgCl 6mM、トリトンX100 0.1%v/v、BSA0.2%w/v、4μg/mlのIRS−1ペプチド(PBS+1mg/mlに加えたビオチン−KSRGDYMTMQIG))に溶かした各被検ペプチドの溶液を調製した。サンプルをマイクロタイタープレートで3回混合した。50μlの2×キナーゼ緩衝液を各ウェルに加えた。IGF−1を当該ウェルにであった(10−7M、10−8M、10−9M、5×10−10M、10−10Mおよび10−11M)。容積を88μLに調整してから、精製HIGF−1R(2μl/ウェル)を加えた。プレートを振盪し、室温(RT:room temperature)で50分間インキュベートした。DTTおよび10μl/ウェルのATPを加え、ウェルを10分間インキュベートしてから、10μlの停止緩衝液(50mMのEDTA(pH8.0))/ウェルを加え、振盪させて反応を停止させた。次いでこのサンプルをストレプトアビジンコートプレートに移し、RTで1時間インキュベートした。このコートプレートを吸引し、TBS−Tで3回洗浄した。100μlのP−tyr Ab−PO(ホスホチロシン−RC20:TBS−Tで希釈したHRPO(1:1000))を加え、各プレートをRTで30分間インキュベートした。このプレートを吸引し、TBS−Tで3回洗浄した。次いで(RTに温めておいた)100μlのTMB−One基質(Kem−En−Tec Diagnostics A/S−Denmark)を加え、このプレートをRTで約20分間さらにインキュベートした。10μlのHSOを加えてこの反応を止め、その後5〜10分以内にプレートをELIZAリーダーにて450nMで読み取った。ペプチドF235およびF259を用いて行った試験の結果を図2にグラフで示す。表7は、そうした実験の追加の結果を含めてある。
【0173】
図2に示すように、ペプチドF235およびF259は、IGF−1によるIGF−1Rキナーゼ活性化を完全に阻害する能力を示す。2つのペプチドは類似した効力を示し、IC50は2〜3×10−7Mである。表7に示すペプチドの一部も、IGF−1によるIGF−1R活性化を阻害しており、こうしたペプチドが受容体に結合するだけでなく、IGF−1Rアンタゴニストとしても働くとする結論が裏付けられる。作用を示さないペプチドのみがアンタゴニストとして機能しなかった。この拮抗ペプチドの一部では、IGF−1を加えない場合の受容体の自己リン酸化の基準レベル未満まで自己リン酸化を阻害した(データなし)。このデータは、本発明のペプチドがIGF−1Rアンタゴニストとして働き得ることを示す。
【0174】
(実施例3)
細胞増殖/密度試験
細胞増殖/密度試験では、以下に例示するようなミトコンドリア活性アッセイを用いた。細胞(SW480、MCF−7S8)を完全培地(DME:F12、10%FCS(SW480)または5%FCS(MCF−7S8、P/S))で増殖させ、トリプシン処理し、0.5%FCSを含む培地に10,000細胞/ウェルになるように96ウェルプレートに播種した。ウェルの外周をすべて除いて培地のみで満たした。一晩展開させてから、ウェルの容積を50μLに調整し、この細胞に、所望の濃度の2倍で50μLの培地を加えてIGF−1および/または被検ペプチドを投与した。すべての処置を3回行った。実験ごとにIGF−1の用量反応曲線を作成した(IGF−1:100、10、2、1、0.1、0.01nM最終濃度)。処置を48時間(SW480細胞)または72時間(MCF−7S8細胞)継続してから細胞密度を定量した。培地は毎日交換した。培地およびペプチドをDMSOで希釈した。細胞密度の測定の際、各ウェルの容積を100μLに調整した。希釈しておいたWST−I(1ml+1.5mlのDME:F12)を、バックグラウンドサンプルを含む各ウェルに25μL加えた。培地のみを含む3つのウェルをバックグラウンドコントロールとした。インキュベーター内で光を遮断して、細胞を90分間インキュベートした。ELISAリーダーを用いて450nmの吸光度を読み取った(参照波長620nm)。
【0175】
こうした実験の結果を表5および表6に示し、ペプチドF138の実験結果を図5および図6に(それぞれ様々な用量と、IGF−1との関連とで)グラフで示してある(表5に報告したSW480細胞およびMCF−7S8細胞の細胞密度に対するペプチドの作用については、ペプチド処置単独のほか、IGF−1(10nM)と競合するペプチドでも同時に測定したのに対し(該当する行に示した特定のペプチドで繰り返し実験も行った)、表6は、IGF−1(10nM)と競合するペプチドで処置したSW480のデータのみを示す。空のセルは、表記のパラメーターのデータが収集できなかったことを意味する。ED50とは最大効果の50%の有効用量を意味し、IC50とは50%阻害の阻害濃度を意味する)。IC50を判定できなかったペプチドについては、やや拮抗的(高用量で作用が一部見られる傾向があった)、あるいは細胞密度に変化が見られない場合、作用なしと報告してある。
【0176】
IGF−1刺激によるL6細胞の増殖を阻害するF138およびF293ペプチドの拮抗作用を類似のやり方で試験した。3nMのIGF−1による増殖の刺激作用は、2つのペプチドで阻害することができた。F138の方が増殖を強力に阻害し、そのIC50が4×10−6Mであったの対し、F293の阻害はIC50>1×10−5Mであった。
【0177】
こうした結果から、本発明により提供されるペプチドは、IGF−1Rアンタゴニスト特性を示し、場合によってはIGF−1Rアンタゴニストが強力であることが明らかである。こうした結果からは、本発明により提供されるペプチドは、癌細胞で増殖抑制作用を示す場合があり、したがって、新規な抗癌治療薬として、あるいは、その開発に有用である可能性があることも明らかである。
【0178】
(実施例4)
インスリンアゴニスト活性の評価
インスリンは、脂肪細胞内へのHグルコースの取り込みおよびその脂質への変換を促進する。脂質相へのHの取り込みについては、閃光を発する混合物に脂質相を分割し、水溶性のH産物を取り除くことで判定した。国際公開第’246号の実施例4に記載された方法にかなり類似した方法により、HIRをコードするDNAをトランスフェクトされたSGBS脂肪細胞を用いて、インスリンまたはIGF−1の存在下でのHグルコース取り込みに対するペプチドF293およびペプチドF138の作用を(別々に)判定(および対照との比較)を行った。結果を完全なインスリン反応に対する増加率として表す。この実験から得られたデータを、インスリン反応のED20(近似値)に対するペプチドF138またはペプチドF293または(インスリンまたはIGF−1との組み合わせ)の作用として図1Aおよび図1Bにグラフで示してある。データはそれぞれ完全なインスリン反応を基準に補正した。この実験の結果から、ペプチドF138もペプチドF293も、インスリンまたはIGF−1により誘導されるグルコース取り込みに何ら実質的な作用を与えないことが明らかである。この実験の結果からは、(国際公開第’247号に記載されているように)2つの受容体が著しく類似しているにもかかわらず、本発明のペプチドはIGF−1Rのブロックには特性を示し、インスリン受容体には示さないことも明らかである。
【0179】
(実施例5)
HIRおよび/またはHIGF−1Rのリン酸化
脂肪細胞のHIRまたはHIGF−1Rの活性化を、この細胞を刺激し、インスリン受容体/IGF−1Rのチロシンリン酸化のレベルを調査(ウエスタンブロット)することで測定した。これを行うには、L6−hIR(生理的レベルのインスリン受容体を発現する細胞クローン、すなわち、100,000受容体/細胞)および高レベルのIGF−1Rをインキュベートし、この細胞を、インスリンまたはIGF−1を単独で増量しながら、あるいは、被検ペプチドの存在下で増量しながら10分間インキュベートした。IGF−1Rは、対称的なホモ二量体複合体ばかりでなく、半分がインスリン受容体のヘテロ二量体として存在する。インスリンの濃度を上げながら10分間刺激すると、基準レベル(1に設定)と比較してL6−hIR細胞のインスリン受容体のチロシンリン酸化が促進され、L6−hIR細胞のIGF−1の場合よりも強力に促進される(図3A、図3B)。2μMのF293を用いると、インスリン刺激によるチロシンリン酸化に対する作用が軽微である一方、IGF−1によるチロシンリン酸化は阻害される。こうした結果から、F293はIGF−1Rのチロシンリン酸化を特異的に阻害することが示唆される。高濃度のインスリンで刺激ではハイブリッド(IGF−1R/IR)受容体のみ(軽微な作用として)リン酸化が見られる一方、IGF−1による刺激ではこの受容体活性化がより明確に阻害される。
【0180】
(実施例6)
下流のシグナル伝達試験
IRSシグナル伝達のチロシンリン酸化(チロシンリン光体ウエスタンブロットの180kDaバンド)と、エフェクターMAPK44および42ならびにPKBの活性化とについて、国際公開第’246号の実施例14に記載された方法にかなり類似した方法により活性型に特異的な抗体を用いて解析した。IRSは、インスリンでもIGF−1でも10分でチロシンリン酸化され、作用はほぼ類似していた(図4を参照)。ペプチドF293が存在すると、IGF−1刺激によるIRS−1リン酸化はやはり非常に顕著に阻害されることから、F293はIGF−1R結合に対して特異性があるが、インスリン受容体に対してはないことが示唆される(図4を参照)。
【0181】
同様に、3nMのIGF−1+/−F429あるいはF138の存在下でのIRS−1リン酸化の試験では、IGF−1刺激によるIRS−1を介した下流のシグナル伝達を阻害する効力はF429の方がF138よりも大きく、基準レベルに影響しないことが示される(図7および図8)。
【0182】
さらに、下流のシグナル伝達(MAPK44、MAPK42、PKB/Akt、IRS−1およびIGF−1R)に対する主なペプチドの作用も、主としてIGF−1Rを発現し、インスリン受容体の発現が非常に限れているL6細胞のシグナル伝達を調べることで測定した。この実験結果を表8に示す(数字は、基準レベルに対する3nMのIGF−1による刺激作用のダウンレギュレーションのIC50である)。ペプチドの拮抗作用は、IGF−1Rの下流のシグナル伝達すべてに作用していることが認められる。
【0183】
こうしたデータから、本発明のペプチドはIRS−1の下流のシグナル伝達をダウンレギュレートできることが明らかであり、さらに本発明により提供されるペプチドのIGF−1R特異的性質が示される。
【0184】
【表4−1】

【0185】
【表4−2】

【0186】
【表4−3】

【0187】
【表4−4】

【0188】
【表4−5】

【0189】
【表4−6】

【0190】
【表4−7】

【0191】
【表4−8】

【0192】
【表4−9】

表5
以下のデータは、主な被検ペプチドに関して行った細胞密度アッセイおよびキナーゼアッセイの結果を示す。細胞密度アッセイのIC50は2つの値、すなわち、10nMのIGF−1によるIGF−1の作用を低下させるのに必要な濃度および0.5%FCSでの基準レベルを阻害するのに必要な濃度で示す。
【0193】
【表5−1】

【0194】
【表5−2】

【0195】
【表5−3】

【0196】
【表5−4】

以下の表(表6)に記載のデータは、IGF−1(10nM)によるSW480細胞の増殖に対する主な被検ペプチドの阻害作用を示す。数字は、ペプチドのμM単位のIC50値である。
【0197】
【表6】

【0198】
【表7】

表8−IGF−1Rに関連した下流のシグナル伝達に対する主なペプチドの作用
拮抗ペプチドの作用を、主としてIGF−1Rを発現し、インスリン受容体の発現が非常に限れているL6細胞のシグナル伝達を調べることで測定した。数字は、基準レベルに対する3nMのIGF−1による刺激作用のダウンレギュレーションのIC50である。
【0199】
【表8】

(実施例7)
以下の追加試験は、本発明の様々な態様をさらに例証し、裏付けるのに役立つ。
【0200】
材料および方法
追加試験の実施に際しては以下の材料および方法を用いた:
細胞および試薬。MCF7細胞およびMiaPaCa細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(「ATCC:American Type Culture Collection」)(Manassas VA)から入手した。細胞を、10%ウシ胎仔血清および1%glutamaxを補充したRPMI1640培地で常法により増殖させた。IGF−1Rの細胞外ドメインをR&D Systems(Minneapolis MN)から組換えタンパク質として入手した。
【0201】
全細胞ライセートの調製、免疫沈降およびウエスタンブロット解析。IRS−1リン酸化の定性分析では、単層培養のMCF7細胞(約80%コンフルーエント状態)を用いた。無血清のRPMI培地(GibcoBRL)で約20時間飢餓状態に置いた後、細胞を、IGF−1(Peprotech)を含む、またはIGF−1と合成ペプチド(Research Genetics)を含む、または陰性対照としてそのどちらも含まない同じ培地で10分間刺激した。処置後、0.2mMのPMSFおよび1mMのNaVO(すべてSIGMA社製)を含む氷冷PBSで細胞を2回リンスした。細胞を同じ緩衝液に削り取り、200gで3分間遠心分離してペレット状にした。ホスファターゼ阻害剤カクテル1および2(SIGMA)およびプロテアーゼカクテルインヒビタータブレット(Boehringer Mannheim)を含むRIPA緩衝液(0.8766%NaCl、0.11%SDS、0.5%デオキシコール酸(すべてSIGMA社製)、1%トリトンX−100(Boehringer Mannheim))にて氷上で5分間溶解させた。細胞ライセートを14000gで5分間遠心分離して除き、得られた上清をEtOH−ドライアイスで急速凍結し、−80℃で保存した。タンパク質濃度は、Dcタンパク質アッセイキット(Bio−Rad Laboratories)を用いて判定した。
【0202】
1μgのポリクローナル抗IRS−1抗体(Upstate Biotechnology)および25μLのプロテインA/アガローススラリー(SIGMA)を含む総タンパク質0.3〜0.5mgを用いて、40℃で4時間プレクリアしたライセートの免疫沈降を行った。固定化タンパク質を含むアガロースビーズをIP洗浄用緩衝液(50mMのトリス、pH7.5(GibcoBRL)、150mMのNaCl、1mMのNaVO、0.2mMのPMSF)で3回洗浄した。タンパク質の溶出および変性を、0.5Mのβ−メルカプトエタノール(SIGMA)を含む30μLのLaemmleサンプル緩衝液(Bio−Rad Laboratories)にて95℃で3分間行った。
【0203】
免疫沈降物を4〜15%トリス−HCl Ready GelsのSDS−PAGEにかけ、Trans−Blot Transfer Mediumニトロセルロース膜(どちらもBio−Rad Laboratories社製)にトランスファーした。膜を、2%脱脂乳を含むPBS−ツイーン20(SIGMA)でブロッキングした。IRS−1タンパク質の検出では、ブロットを抗IRS−1抗体(二次抗体−ヤギ抗ウサギIgG、HRPコンジュゲート)とインキュベートした。リン酸化IRS−1の検出では、ブロットを、抗ホスホチロシン(4G10)HRPコンジュゲートモノクローナル抗体(抗体はすべてUpstate Biotechnology社製)とインキュベートした。ブロットを高機能の化学蛍光基質(ECL Western Blotting Analysis System,Amersham Pharmacia Biotech)に接触させた。膜を展開し、定性解析のため蛍光シグナルを可視化した。
【0204】
細胞アッセイ。MCF7細胞またはMiaPaCa細胞を、75μLの無血清のRPMI−1640を用いて濃度3×10細胞/ウェルで96ウェルプレートに蒔き、37℃で一晩インキュベートした。ペプチドの希釈液を別々のワーキングプレートで調製し、75μLを細胞に加えた。アンタゴニストアッセイでは、IGF−1を各ウェルにED50(約50nM)の10倍量加えた。プレートを37℃で48〜72時間インキュベートした。製造者の指示に従い10μLのWST−1/ウェル(Roche)を加えて生存率を測定した。
【0205】
結合アッセイ。IGF−1と比較したホットスポットペプチドリガンド(HP:hot spot peptide ligand)(すなわち、「候補ペプチド」または単に「候補物質」)の相対効力を、ビオチン標識ヒトIGF−1(b−hIGF−1)およびHisタグ可溶性組換えヒトIGF−1R(srhIGF−1R−his;R&D systems,Inc.,Minneapolis,MN)を用いて競合系で解析した。受容体リガンド相互作用の検出を増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ(ALPHAScreen;BioSignal−Packard,Montreal)で測定した。このアッセイは、最終容量を40μLとして384ウェルNunc(商標)白色ポリスチレンマイクロプレート(Nalge Nunc International,Naperville,IL)で行った。最終のインキュベーション条件は、1nMのb−hIGF−1、10nMのsrhIGF−1R−his、0.025MのHEPES(25℃でpH7.4)、0.100MのNaCl、0.1%BSA(Cohn Fraction V;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)、10μg/mLのニッケルコンジュゲートアクセプタービーズおよび10μg/mLのストレプトアビジンコンジュゲートドナービーズとした。アッセイの第1ステップでは、hIGF−1(PeproTech,Inc.,Rocky Hill,NJ)、b−hIGF−1(以下を参照されたい)および候補物質を室温で2時間インキュベートした。競合物質の各濃度を2回ずつアッセイした。3×10−5MのhIGF−1の存在下で非特異的結合を判定した。アッセイの第2のステップではアクセプタービーズを加え、インキュベーションを0.5時間継続した。最終ステップではドナービーズを加え、インキュベーションをさらに1時間継続した。インキュベーション時間の終了時に、520nmの蛍光シグナルをFusion−α HTプレートリーダー(Packard BioScience Company,Meriden,CT)で読み取った。主要なデータのバックグラウンド補正を行い、緩衝液対照を基準に補正してから、特異的結合に対する比率で表した。データを4変数非線形回帰分析(y=min+(max−min)/(1+10((logIC50−x)*Hillslope)))にフィッティングさせ、これを用いてIC50値を判定した。このアッセイのZ’−factorは、0.7(Z’=1−(3σ++3σ−)/|μ+−μ−|)よりも大きく、シグナル対バックグラウンド(S/B)比は40〜70であった。
【0206】
Pierce EZ−Link(商標)スルホ−NHS−LC−ビオチン化キット(PN#21430,Pierce,Rockford,IL)を用いてヒトIGF−1の遊離アミノ基をビオチン化した。pH7.2のPBSに加えた2mg/mLのヒトIGF−1を、理論的な全遊離アミノ基に対して20倍過剰のスルホ−NHS−LC−ビオチンと室温で30分間インキュベートした。未反応ビオチンをPBSで十分に透析(Pierce Slide−A−Lyzer(登録商標)Dialysis Cassettes)して除去し、コンジュゲーションの程度をHABA(2−(4’−ヒドロキシアゾベンゼン)安息香酸)アッセイ(Pierce製品カタログ#21430)で判定した。ビオチン/hIGF−1の数は3〜5であった。
【0207】
追加試験の結果
MiaPaCa細胞およびMCF−7細胞を用いた癌モデルの細胞増殖が、IGF−1、IGF−2およびインスリンに対して用量関連的に増加することを図9(9A〜9F)に示す。上記のように細胞を、IGF−1、IGF−2またはインスリンで72時間処置した。具体的には、図9A、図9Bはそれぞれ、IGF−1のMiaPaCa(ヒト膵癌)およびMCF7(ヒト乳癌)細胞の増殖に対する作用を示し、図9C、図9Dはそれぞれ、IGF−2のMiaPaCaおよびMCF7に対する作用を示し、図9E、図9Fはそれぞれ、インスリンのMiaPaCaおよびMCF7に対する作用を示す。こうしたデータから、MiaPaCa細胞とMCF7細胞は共に3つのホルモン作用のどれにも反応しており、IGF−1Rアンタゴニストの生物学的作用を実証するモデルとして使用できることが明らかになる。
【0208】
図10に示すように、結合および細胞増殖アッセイにより、F250はIGF−1の結合と競合し、細胞を用いた癌モデルの活性を抑制することが明らかになる。具体的には、図10Aは、F250の濃度に応じてIGF−1結合が阻害されることを示す。上記のようにALPHAScreenアッセイフォーマットを用いて競合実験を行った(データは阻害率を示す。結合速度パラメーターを判定するため、データを4変数ロジスティック式にフィッティングさせた)。
【0209】
図10Bは、MCF−7細胞のIGF−1活性に対するF250による拮抗作用を示す。材料および方法のセクションに記載されているように細胞を処置した。細胞に5×10−8MのIGF−1の存在下でF250を加え、72時間インキュベートしてから、細胞数を判定した。データは阻害率で示してある。結合速度パラメーターを判定するため、データを4変数ロジスティック式にフィッティングさせた。
【0210】
図10Cは、MiaPaCa細胞のIGF−1活性に対するF250による拮抗作用を示す。材料および方法のセクションに記載されているようにMiaPaCa細胞を処置した。細胞に5×10−8MのIGF−1の存在下でF250を加え、72時間インキュベートしてから、細胞数を判定した。このデータは阻害率で示してある。結合速度パラメーターを判定するため、データを4変数ロジスティック式にフィッティングさせた。
【0211】
図11に示した実験結果から、IGF−1が癌細胞モデルのリン酸化を刺激すると共に、本発明の候補ペプチドにより阻止または抑制され得ることが明らかになる。具体的には、図11aに示したデータは、IGF−1がMCF7細胞においてIRS−1の一過性のリン酸化を刺激することを示す。この細胞については、10nMのIGF−1で0、2,10、30、60分間刺激した。上記の解析ごとに総タンパク質0.5mgを免疫沈降させた。図のパートAは、内因性IRS−1のウエスタンブロット解析結果であり、パート(B)は、リン酸化IRS−1のウエスタンブロット解析結果である[(1)添加なし;(2)2分;(3)10分;(4)30分;(5)60分]。図11Bに示した結果は、MCF7細胞においてIGF−1が引き起こすIRS−1のリン酸化が用量依存的(dose−dependant)であることを示す。この細胞を、濃度を上げながらIGF−1に10分間曝露した。解析ごとに総タンパク質0.5mgを免疫沈降させた。0.50nMのIGF−1による刺激では、リン酸化のレベルは最大下にあり、ウエスタンブロット解析で常に可視化できた:(A)は内因性IRS−1のウエスタンブロット解析結果;(B)はリン酸化IRS−1のウエスタンブロット解析結果[(1)添加なし;(2)0.05nMのIGF−1;(3)0.1nMのIGF−1;(4)5nMのIGF−1;(5)1nMのIGF−1;(6)0.5nMのIGF−1;(7)10nMのIGF−1;(8)50nMのIGF−1]。図11Cは、MCF細胞においてIGF−1が引き起こすIRS−1のリン酸化に対する候補ペプチド(HP)RP6KKおよびF250による遮断を示す。ペプチド(30μM)の存在下または非存在下で0.5nMのIGF−1で細胞を10分間刺激した。解析ごとに総タンパク質0.3mgを免疫沈降させた。RP6KKおよびF250ペプチドは、IGF−1が引き起こすIRS−1のリン酸化を阻害したが、無関係な2つの(対照)ペプチドKCB7およびDGI3−D8は阻害しなかった。具体的には、図11Cのパート(A)は、発現したIRS−1のウエスタンブロット解析結果であり、パート(B)は、リン酸化IRS−1のウエスタンブロット解析結果である[(1)添加なし;(2)無関係なペプチド1;(3)無関係なペプチド2;(4)IGF−1+無関係なペプチド1;(5)IGF−1+無関係なペプチド2;(6)IGF−1+RP6KK;(7)IGF−1+F250;(8)IGF−1]。
【0212】
(実施例8)
結合および拮抗作用の追加アッセイ
候補ペプチドを用いて結合および拮抗作用の追加アッセイを行った。拮抗作用アッセイでは、原則として以下の方法を用いた。細胞MCF7細胞を「飢餓状態にし」(0.1%FBSで培養)、103細胞/ウェルに蒔いた。ウェルにIGF−1(ED80(1nM))および候補ペプチドを同時に加えた。ペプチドの用量反応を評価した(解析は30μMから開始)。アッセイを72時間行った。細胞の生存率を発光アッセイで判定し、標準的な技法を用いてIC50を算出した。
【0213】
こうした試験の結果を以下の表および図12(ペプチドF429、F441およびF408の拮抗作用を示す)に示す。
【0214】
【表9】

表10−F138の変異体
ペプチドF138の変異体を作製し、以下の表に示すとおりIGF−1R結合性および拮抗作用の特性が改良されたペプチドを選択した:
【0215】
【表10】

表11−主な候補ペプチドの結合性および細胞に関する追加データ
他のペプチドも同様に解析し、アンタゴニストまたは候補物質であると判定した:
【0216】
【表11】

【0217】
【表12】

(実施例9)
この試験では、37℃でのインキュベーション後に12のサンプリング時点でCD−1マウスの血漿中の被験物質F429の安定性を評価した。被験物質F429の血漿レベルについては、LC−MS/MSで判定し、結果を処理して判断した(半減期)。
【0218】
材料
被験物質F429を水溶液として取得し、使用前に−80℃で保存しておいた。被験物質F429は分子量2812.34のペプチドである。このペプチドは、25個のアミノ酸を含み、配列は、[H]DFYGCLLDLSLGVPSLGWRRRCITA[OH]である。CD−1マウスの血漿は、Bioreclamation Inc.(Hicksville,NY)から購入し、使用する前に2〜8℃で保存しておいた。
【0219】
被験物質調製
被験物質F429溶液を、水溶液を用いて濃度2.0mg/mLに調製し、−80℃で凍結してAbsorption Systemsに輸送した。
【0220】
試験デザイン
以下の表13に試験デザインを示す。被験物質F429の150μLのアリコート(2.0mg/mL)をCD−1マウスの血漿2850μLに加え、被験物質F429の最終濃度を100μg/mLとした。このサンプルを混合し、直ちに37℃の往復振盪湯浴(Precision,Winchester,VA)に入れた。75μLのアリコートを12の時点(被検物質未添加、1、2、5、10、15、20、30、60分および2、4および24時間)で3回ずつサンプル採取した。アリコートは直ちに−80℃で凍結した。
【0221】
【表13】

血漿サンプルの解析−MSに導入するイオン化モード(ポジティブまたはネガティブESI/APCI)の判定
DMSOを用いてF429の原液1.0mg/mLを調製した。原液1.0mg/mLから使用溶液100μg/mLおよび10μg/mLを調製した。
【0222】
被験物質のLC−MS/MS法を最適化するため、3:1(v/v)アセトニトリル:HOに加えたF429(100μg/mL)を用いた。F429にはポジティブモードMSおよびエレクトロスプレーイオン化(ESI:electrospray ionization)を、トランジションをm/z938.2/235.10として用いた。
【0223】
被験物質F429をCD−1マウスのブランク血漿にスパイクした。スパイクしたサンプルは、F429を100、75、50、37.5、25、10、5、2.5および0μg/mL(ブランク)含んでいた。
【0224】
固相抽出の評価のためのサンプル調製
マウスの血漿サンプルを自家製のCD−1マウスのブランク血漿ですべて2倍希釈した。次いで、マウスの血漿およびF429をスパイクしたマウス血漿のサンプルのアリコート(50μL)を200μLの水に加えてから、pH7.4、10mMのリン酸塩緩衝溶液250μLと組み合わせてよく混合した。調製溶液の最終容量は、固相抽出サンプルを調製しやすい500μLとした。
【0225】
血漿の解析−標準物質および未知物質
Strata X96ウェルプレート固相抽出カートリッジ(8E−S100−TGB,Phenomenex)を真空マニホールドに載せ、サンプル調製の真空度を5mmHgとした。最初に、このプレートを1.0mLの水で平衡化してから1.0mLのアセトニトリルで処理した。次いで、プレートに500μLのサンプルを添加し、その後0.5mLの5%アセトニトリル水溶液で2回洗浄した。レシーバーを96ディープウェル捕集プレートに交換した。次いで、このカートリッジを、1%水酸化アンモニウムを含む80%アセトニトリル水溶液で2回溶出させた。溶出サンプルの各アリコート100μLをLC−MS/MSによる解析のためバイアルに移した。マウスの血漿中の被験物質F429の定量を、被験物質をマウスのブランク血漿にスパイクして作成した検量線(100、75、50、37.5、25、10、5および2.5μg/mL最終濃度)を参照して行った。
【0226】
被験物質F429のHPLC条件を以下の表14に示し、勾配プログラムを表15に示す。
【0227】
【表14】

【0228】
【表15】

被験物質F429の質量分析計条件を以下の表16に示し、モニターした電圧およびイオンのデータを表17に示す。
【0229】
【表16】

【0230】
【表17】

解析方法の評価
各試験において、各濃度レベルでの8点標準曲線に3回ずつサンプルを当てはめた。各濃度の最も近い測定値を少なくとも2つ用いて検量線を作成した。許容基準は、8つの標準物質のうち5つが血漿サンプルの安定性解析の±30%以内であることとした。検量線の結果は表18に示す。
【0231】
データ解析
CD−1マウスの血漿を用いて、被験物質F429の血漿中安定性をインキュベーション後に評価した。
【0232】
結果−血漿サンプルの解析
被験物質F429のラットの個別の血漿中濃度と時間とのデータ、および各投与群に関する平均値データを表19および表20に示す。F429の個別の血漿中濃度および平均の血漿中濃度と、100μg/mLのF429のインキュベーション時間との関係を図13および図14に示す。定量限界未満のサンプルはすべてゼロ値とした。データはすべてF429遊離薬剤のμg/mLで表す。
【0233】
データ解析および半減期
ゼロ時から様々な時点での被験物質F429の残存率を表21に示す。残存被験物質F429の比率の対数を図15に示す。F429の半減期は、73.2分と算出した。(図21)。
【0234】
【表18】

【0235】
【表19】

【0236】
【表20−1】

【0237】
【表20−2】

【0238】
【表20−3】

【0239】
【表20−4】

【0240】
【表21】

考察
被験物質F429のイオン、m/z938.45の[M+3H]をポジティブモードのMSでモニターした。サンプルの調製には、Strata X96ウェルSPEプレートを用いてした。2.5〜100μg/mLの範囲で8点標準検量線を用いてF429の血漿解析を行った。この解析方法は特異性が高く、定量下限(LLOQ:lower limit of quantitation)は2.5μg/mLである。
【0241】
結論
被験物質F429の血漿中安定性は37℃で行い、CD−1マウスの血漿中の安定性半減期は、73.2分であった。被験物質F429は4時間でなお確認できた(残存率9.65%)。この解析方法は特異性に非常に優れている。
【0242】
(実施例10)
MiaPaCa細胞をIGF−1(25ng/ml)+/−ANT−429で24時間処置してから、PBSで3回洗浄し、削り取り(scrap)、遺伝子発現のために処理した(process)。図16Aおよび16Bは、遺伝子発現の変化を、IGF−1で増殖させたMiaPaCa細胞間とANT−429間とで解析した遺伝子アレイである。図17は、ANT−429で処置した細胞においてダウンレギュレートされることが分かった遺伝子のリストである。IGF−1で増殖させたMiaPaCa細胞とANT−429による処置とにおけるアポトーシス遺伝子発現の変化を調べた試験で、ANT−429はアポトーシス遺伝子を調節することが示された。図18Aおよび18Bは、ANT−429で処置した際にアップレギュレートまたはダウンレギュレートされた遺伝子のリストである。
【0243】
(実施例11)
動物試験での阻害作用
ヌードマウスの側腹部にMiaPaCa細胞(マトリゲル中の細胞100万個)を接種し、腫瘍容積が100mmを超えるまで続けた。動物を無作為に抽出し、5つの処置群:対照(注射なし)、ビヒクル、ANT−G12、300ug/注射(12mg/kg)の標的が異なるHP、50ug/注射(2.5mg/kg)のANT−429および300ug/注射(12mg/kg)のANT−429に割り付けた。動物に週4回の注射を3週間皮下経路で行い、その後2週間は注射を行わなかった。腫瘍を週2回測定した。動物を屠殺し、腫瘍を切除し、秤量し、撮影した。この結果からは対照群およびビヒクル群で活発な増殖が認められる。15mg/kgのANT−429群では、完全寛解1例を含め、増殖が著しく阻害された。2.5mg/kgの群では、完全寛解1例を含め5匹の動物のうち2匹が処置に反応した(図19Aおよび図19B)。こうした結果から、ANT−429は腫瘍増殖を阻害することが明らかである。
【0244】
(実施例12)
毒性試験
ヌードマウスの側腹部にMiaPaCa細胞(マトリゲル中の細胞100万個)を接種し、腫瘍容積が100mmを超えるまで続けた。動物を無作為に抽出し、3つの処置群:対照(注射なし)、ビヒクル、500ug/注射(20mg/kg)のANT−429およびビヒクルに割り付けた。動物に週4回の注射を3週間皮下経路で行い、その後2週間は注射を行わなかった。腫瘍および体重を週2回測定した。ANT−429で処置した動物は明らかな有害作用を何ら示さなかった(図20)。この結果から、ANT−429はインビボで毒性がないことが明らかである。
【0245】
解釈
本明細書に記載する本発明の様々な態様の説明については、以下の原則に従って解釈すべきである。
【0246】
本明細書に引用する刊行物、特許出願および特許などの参考文献についてはすべて、本明細書の他の箇所で各文書を個別にどのように援用しようとも、参照によって援用するために各参考文献を1つ1つ個々に示し、その全体を(法律で最大限認められる限度まで)本明細書に記載しているのと同程度まで、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0247】
本発明を説明する文脈で「a」、「an」および「the」ならびに類似の限定語を使用する場合、本明細書で他に記載がない限り、あるいは、文脈に明らかに矛盾する場合を除き、単数と複数を共に包含するものと解釈すべきである。
【0248】
他に記載がない限り、本明細書に記載する具体的な値はすべて、その近似値を代表した値である(たとえば、個々の計数または測定値に関して記載する例示的な具体値はすべて、必要に応じて「約(about)」で修飾した、その近似した測定値をも示すと考えることができる)。
【0249】
本明細書に他に記載がない限り、本明細書における数値範囲の記載には、その範囲に含まれ、かつその範囲の小さい方の端点と同じ桁内および同じ重要度(すなわち、すべての同じ有効数字)内にある1つ1つの値を個別に示す簡略な方法を単純に用いるものとし、1つ1つの値は個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。したがって、たとえば、本明細書の範囲1〜100は、1〜100(1と100を含む)の各整数(すなわち、1、2、3、4、...98、99および100)を表し、範囲0.1〜1は、2つの端点を含む端点の間で0.1と同じ桁数および有効数字の各値(すなわち、0.1、0.2、0.3、...0.9、1.0)を表す。
【0250】
本明細書では、要素(単数または複数)に関して「を含む(comprising)」、「を持つ(having)」、「を含む(including)」または「を含む(containing)」などの語を用いて本発明の任意の態様または実施形態を説明する場合、他に記載がない限り、あるいは、文脈に明らかに矛盾する場合を除き、その特定の要素(単数または複数)「からなる」、それ「から本質的になる」、あるいは、それ「を実質的に含む」、本発明の類似した態様または実施形態を示すことを意図している(たとえば、本明細書において、ある組成物が特定の要素を含むと記載する場合、他に記載がない限り、あるいは、文脈に明らかに矛盾する場合を除き、その要素からなる組成物についても記載していると理解すべきである)。本明細書に記載の特定の配列またはペプチド誘導体からなるタンパク質またはペプチドは一般にペプチド誘導体の参照配列に対して十分な構造的類似性を保持しており、タンパク質またはペプチドは、配列またはペプチド誘導体に類似した生物学的特性(たとえば、IGF−1R結合性、IGF−1R拮抗作用など)を示すことができる。
【0251】
本明細書では、式を使用して配列ファミリーを説明している場合がある。これは単に便宜のためであり、式のパラメーターに該当する各配列も、明示しなくても本発明の態様として本明細書に個々に開示されたものと見なすべきであることが理解されよう。
【0252】
本明細書の見出しおよび小見出しはすべて便宜のために使用しているに過ぎず、いかなる意味でも本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【0253】
本明細書に記載したすべての例または例示表現(たとえば、「など(such as)」)は、本発明を分かりやすくすることだけを意図して使用したものであり、他に記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる表現も、請求項に記載されていない要素が本発明の実施に不可欠なものであることを示していると解釈してはならない。
【0254】
本明細書における特許文書の引用および援用は単に便宜のためのものであり、その特許文書の妥当性、特許性および/または実行可能性に関するいかなる見解も反映するものではない。
【0255】
本発明は、準拠法で認められているように、本明細書に含まれる特許請求の範囲および/または本発明の態様に記載した主題の変形形態および等価物をすべて含む。
【0256】
等価物
当業者であれば、ごく通常の実験を用いるのみで、本明細書に記載の具体的な手順に対する等価物を数多く認識するか、あるいは確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、以下の特許請求の範囲に包含される。特許請求の範囲で規定する本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の様々な代用形態、変更形態および変形形態が可能な場合がある。記載された以外の態様、利点および変形形態も、本発明の範囲内にある。本出願において引用した参考文献、発行された特許および公開された特許出願の内容についてはすべて、全体を参照によって本明細書に援用する。そうした特許、出願および他の文書から適切な要素、プロセスおよび方法を選択して本発明およびその実施形態を行ってもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたペプチドであって、
インスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)に結合することができるペプチドを含み、前記ペプチドの配列は配列番号18(F429)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、
ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)を含む、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)からなる、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
医薬組成物であって、
哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を低減するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含み、前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、
医薬組成物。
【請求項6】
前記哺乳動物宿主はヒト宿主である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)からなる、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌を処置する方法であって、
その必要がある哺乳動物にIGF−1Rに結合できるペプチドを治療有効量で投与することを含み、ここで前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項11】
前記哺乳動物はヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、IGF−1および/またはIGF−1Rが発現される癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)との同一性が少なくとも98%であるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)からなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
薬物の生産における、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項17】
癌の処置のための薬物の調製における、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項18】
単離されたペプチドであって、
IGF−1Rに結合できるペプチドを含み、前記ペプチドの配列は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)からなる群から選択される配列との同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列を含む、
ペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドの配列は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)からなる群から選択される配列を含む、請求項18に記載のペプチド。
【請求項20】
医薬組成物であって、
哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を低減するのに効果的な量で請求項18に記載のペプチドを含む、
医薬組成物。
【請求項21】
前記ペプチドの配列は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)からなる群から選択される配列を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
癌を処置する方法であって、
その必要がある哺乳動物に請求項18に記載のペプチドを治療有効量で投与することを含む、
方法。
【請求項23】
前記ペプチドの配列は、配列番号8(F292)、配列番号9(F293)、配列番号196(F294)、配列番号7(F259)、配列番号10(F296)、配列番号11(F297)、配列番号14(F392)、配列番号16(F408)、配列番号22(F142)、配列番号21(F230)、配列番号27(F270)、配列番号26(F264)、配列番号197(F265)、配列番号136(F298)、配列番号192(F441)および配列番号28(F364)からなる群から選択される配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
薬物の生産における、請求項18または19に記載のペプチドの使用。
【請求項25】
癌の処置のための薬物の調製における、請求項18または19に記載のペプチドの使用。
【請求項26】
単離されたペプチドであって、
IGF−1Rに結合できるペプチドを含み、前記ペプチドの配列は、式1、式2、式3および式4からなる群から選択される配列を含む、
ペプチド。
【請求項27】
医薬組成物であって、
哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を低減するのに効果的な量で請求項26に記載のペプチドを含む、
医薬組成物。
【請求項28】
癌を処置する方法であって、
その必要がある哺乳動物に請求項26に記載のペプチドを治療有効量で投与することを含む、
方法。
【請求項29】
薬物の生産における、請求項26に記載のペプチドの使用。
【請求項30】
癌の処置のための薬物の調製における、請求項26に記載のペプチドの使用。
【請求項31】
癌を処置する方法であって、
IGF−1および/またはIGF−1Rが発現される癌をもつ哺乳動物に、IGF−1Rのペプチドアンタゴニストを含む組成物を治療有効量で投与することを含み、ここで前記ペプチドは配列FYxxLxxLを含む、
方法。
【請求項32】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)からなる群から選択される配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
医薬組成物であって、
哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を低減するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドを含み、前記ペプチドは配列FYxxLxxLを含む、
医薬組成物。
【請求項34】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)からなる群から選択される配列を含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を低減するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドの、薬物の生産における使用であって、前記ペプチドは配列FYxxLxxLを含む、使用。
【請求項36】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)からなる群から選択される配列を含む、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
哺乳動物宿主における血管形成および/または癌の進行を低減するのに効果的な量でIGF−1Rに結合できるペプチドの、癌の処置のための薬物の調製における使用であって、前記ペプチドは配列FYxxLxxLを含む、使用。
【請求項38】
前記ペプチドの配列は、配列番号18(F429)、配列番号20(RP6)、配列番号3(RP33/F250)、配列番号13(F138)および配列番号198(RP30)からなる群から選択される配列を含む、請求項37に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−526776(P2010−526776A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506268(P2010−506268)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005316
【国際公開番号】WO2008/133961
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509294106)アンタイラ インコーポレイテッド (1)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】