説明

IGFシグナル伝達経路の活性化方法

【課題】医師による処置や薬剤投与を必要としないIGFシグナルの活性化方法の提供。
【解決手段】患部又は全身に温熱刺激を付与することを特徴とするIGFシグナル伝達経路の活性化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな生体機能に関与するIGF(Insulin like growth factor)シグナル伝達経路を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IGFは、インスリン様作用をもつ血清中成分として1978年に同定され、その活性本体が2種類のポリペプチドであったことから、IGF−1、IGF−2と命名された。どちらもインスリンと構造の似た70アミノ酸からなっており、糖代謝促進作用についてはインスリンに似ているが、インスリンに比較して細胞増殖促進作用が強いという特徴を持っている。
【0003】
現在では、IGF−1は、出生後の成長ホルモンの主要な作用を媒介し、他の増殖因子との相互作用もあることから、発生、分化、発育といった一連の過程で重要な役割を担っていると考えられている。一方、IGF−2は、IGF−1と類似の作用を有するが、主に出生前に機能し、胎児の成長に主要な役割を果たしていると考えられている。
【0004】
IGFの細胞増殖促進作用に関しては、多くの研究がなされており、IGFシグナル伝達経路として一連の関連分子が明らかになっている(非特許文献1)。このシグナルは、主にタンパク質のリン酸化によって伝達されており、IGFが膜上に存在するIGFレセプターに結合すると、ホスホイノシチド−3−キナーゼ(PI3 kinase)が活性化し、Aktをリン酸化する。リン酸化により活性化されたAktのシグナルは、mTOR(mammalian target of rapamycin)、p70S6キナーゼ(p70 ribosomal S6 protein kinase)へとリン酸化によって伝達されていき、最終的にS6リボソームタンパク質がリン酸化によって活性化される。これにより、リボソームは翻訳を促進させるため、結果として細胞増殖が引き起こされる。また、mTORは翻訳を負に制御する4E−BP1(eukaryotic translation initiation factor 4E binding protein 1)の調節も行っていることが知られている。活性化したmTORは4E−BP1を抑制することで、eIF4E(eukaryotic translation initiation factor 4E)による翻訳を促進することから、この経路によっても細胞増殖が誘導される。
【0005】
このようなIGFシグナルは、全身における多くの代謝経路に関与しており、多くの組織・器官で機能するとともに、様々な疾病にも関与することが明らかになっている。
【0006】
筋肉においては、IGF−1レセプターを欠損させIGFシグナルを阻害すると、インスリン抵抗性を引き起こすことが知られており、IGFシグナルは、インスリン様の作用を有するだけでなく、インスリンそのものの感受性を増加させることで糖代謝を調節することが報告されている(非特許文献2)。また、IGF−1は筋肉におけるGlucose transporter 3 (GLUT3)の発現を調節することで、糖代謝を制御していることも報告されている(非特許文献3)。
【0007】
また、IGFシグナルは、肌においては細胞の増殖・分化を調節しており、また角質化を予防することが知られている(非特許文献4)。実際にIGFを活性成分とする美肌剤も報告されており(特許文献1)、また、IGFシグナルは皮膚の再生にも大きく関わっていることから、皮膚の老化保護やダメージへの処置法としてIGFを用いた技術も報告されている(特許文献2及び3)。
【0008】
また、血中のIGF−1が上昇している人の中に、多毛症になる者が認められることから、IGFシグナルは発毛、育毛にも関与していることが知られている(非特許文献5)。ラットの毛周期の退行期にはIGF−1の発現が低下することや(非特許文献6)、細胞分裂が盛んな毛母細胞において、IGF−1の受容体が高発現していること(非特許文献7)、IGF−1が毛胞の増殖・分化を調節することも報告されている(非特許文献8)。また、すでにIGF−1を有効成分とする育毛剤や(特許文献4)、IGF−1活性を有する毛母細胞活性化剤が報告されている(特許文献5)。
【0009】
以上のように、IGFは生体内の様々な代謝経路や疾病に関与することが知られているが、その作用はIGFに結合するタンパク質Insulin like growth factor binding protein (IGFBP)により調節されており、IGFBPは現在までにIGFBP1からIGFBP6までの6種類が同定されている。
IGFBPの機能的役割については、正確にはわかっていない部分も多いが、主にIGFシグナルの抑制または促進であり(非特許文献9及び19)、6種類のIGFBPは様々な臓器や器官で機能している。
【0010】
IGFBP1は、そのノックアウトマウスの研究から、肝炎・肝障害などによる肝細胞のアポトーシス抑制作用を有することが報告されている(非特許文献11)。また、IGFBP1を高発現するトランスジェニックマウスは、野生型マウスよりも脂肪量が少なく、脂肪細胞サイズも小さいことから、IGFBP1が脂肪細胞におけるIGF−1の作用を抑制し、分化を阻害することも報告されている(非特許文献12)。
【0011】
また、IGFBP1同様、IGFBP2を高発現するトランスジェニックマウスも脂肪量が減少し、体重増加が抑制されたことから、IGFBP2もIGF−1による脂肪細胞の分化・増殖を抑制していると考えられている(非特許文献13)。また、この様な作用を有することからIGFBP2は肥満やインスリン抵抗性から生体を防御しているとの報告もなされている(非特許文献14)。IGFBP2は、前立腺癌発症時に高発現する遺伝子の一つであることから、癌にも関与していると考えられており(非特許文献15)、グリオーマ細胞では、IGFBP2が血小板由来増殖因子や癌遺伝子K−rasと協同的に働くことで、癌の進行を促進していることが報告されている(非特許文献16)。
【0012】
IGFBP3は、循環系ではもっとも多く存在するIGFBPであり、血中のIGF−1のほとんどがIGFBP3およびacid-labile subunit (ALS)と結合して存在している(非特許文献17)。IGFBP3ノックアウトマウスは野生型マウスと表現型にあまり差が認められなかったが、(非特許文献18)。IGFBP3トランスジェニックマウスにおいて、角化細胞の増殖が遅れたことから、IGFBP3は角化細胞の増殖・分化に関与していると考えられている(非特許文献19)。また、in vitroでの試験から、アポトーシス誘導にも関与するとされている(非特許文献20および30)。
【0013】
IGFBP4は、骨細胞が産生するIGFBPの中では最も多く、IGF−1による骨芽細胞の増殖作用や骨形成作用を阻害すると考えられている(非特許文献22および32)。また、IGFBP4は、子宮の生理機能にも関与するとされており、着床から胚発生、性周期の調節などに関与すると報告されている(非特許文献33及び34)。
【0014】
IGFBP6は、その機能があまり明らかになっていないが、IGF−1よりもIGF−2に結合することで、IGF−2の作用を抑制することから、胎生期の発生や成長に関与していると考えられている(非特許文献26)。
【0015】
IGFBP5は毛髪の形成や成長に関与することが報告されている。毛髪の成長は、主にfibroblast growth factor(FGF)シグナルによって制御されており、特に、FGF−1、FGF−2、FGF−5、FGF−7、FGF−10、FGF−13及びFGF−22は、毛包細胞において発現し、毛髪成長を制御していることが報告されている(非特許文献27、28及び29)。これらのFGFのうち、FGF−7、FGF−10はその受容体であるfibroblast growth factor receptor 2-IIIb(FGFR2-IIIb)を介してシグナルが伝達されるが、マウスにIGFBP5を強制発現させるとFGFR2−IIIbを介したシグナルが抑制され、毛が減少することが報告されており、IGFBP5はFGFシグナルを調節することで毛髪の成長や形態形成に関与していると考えられている(非特許文献30)。また、内毛根鞘と毛髄質特異的にIGFBP5を発現するトランスジェニックマウスを作成したところ、そのマウスの毛が屈曲していたことから、IGFBP5は直毛や縮毛など毛髪のタイプの決定にも関与することが報告されている(非特許文献31)。
【0016】
また、アデノウイルスを用いてマウスにIGFBP5を高発現させると、ウイルスの容量依存的に、コラーゲン沈着の増加と皮膚結合組織密度の増加が起こり、皮膚の線維化が促進することから、IGFBP5は、皮膚の線維化にも関与すると考えられている(非特許文献32)。
【0017】
以上のように、IGFBPはIGFシグナルを制御することにより、さまざまな臓器、器官で細胞の分化や増殖の調節を行っている。したがって、IGFBPを調節することで、IGFシグナルを制御することができると考えられ、斯かる技術は美肌や育毛等に有用であると考えられる。
【0018】
しかしながら、IGFシグナル伝達系制御に関する既存の方法の多くは、IGFそのものを用いたり、オリゴヌクレオチドを用いたりするものであり、安全性や有効性、利便性の面で大きな課題があった。また、核酸やタンパク質、その他剤などを用いることなく、IGFシグナルを活性化する方法はこれまでに知られていなかった。
【特許文献1】特開平8−133943号公報
【特許文献2】特表2006−510679号公報
【特許文献3】特表2004−502788号公報
【特許文献4】特公平4−60567号公報
【特許文献5】特開2000−154118号公報
【非特許文献1】Butler AA, et al. (1998) Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol. 121 : 19-26
【非特許文献2】Clemmons DR. (2006) Curr Opin Pharmacol. 6 : 620-625
【非特許文献3】Copland JA, et al. (2007) Biochim Biophys Acta. 69 : 631-640
【非特許文献4】Sadagurski M, et al. (2006) Mol Cell Biol. 26 : 2675-2687
【非特許文献5】Freinkel N. (1987) Verh Dtsch Ges Inn Med. 93 : 266-274
【非特許文献6】Little JC, et al. (1994) J Invest Dermatol. 103 : 715-720
【非特許文献7】Hodak E, et al. (1996) J Invest Dermatol. 106 : 564-570
【非特許文献8】Weger N, Schlake T. (2005) J Invest Dermatol. 125 : 873-882
【非特許文献9】Cohen P, Rosenfeld RG. (1994) Curr Opin Pediatr. 6 : 462-467
【非特許文献10】Beattie J, et al. (2006) Biochem J. 395 : 1-19
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【非特許文献22】Miyakoshi N, et al. (1999) Endocrinology. 140 : 5719-5728
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【非特許文献26】Lipinski RJ, et al. (2005) Dev Dyn. 233 : 829-836
【非特許文献27】du Cros DL (1993) J Invest Dermatol 101 : 106-113
【非特許文献28】du Cros DL, et al. (1993) J Cell Sci 105 : 667-674,
【非特許文献29】Rosenquist TA, Martin GR (1996) Developmental Dynamics 205:379-386
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【非特許文献31】Schlake T. (2005) Mech Dev. 122 : 988-997
【非特許文献32】Yasuoka H, et al. (2006) Arthritis Rheum. 54 : 3001-3010
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、美肌や育毛等を主目的としたIGFシグナル伝達経路の活性化方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、生体への負荷が小さく、容易に実施できるIGFシグナル伝達経路の抑制方法について検討したところ、生体に安全な温度で温熱刺激を与えることにより、IGFBP5の遺伝子発現が低下し、IGFシグナルを活性化できることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明は以下の1)〜4)の発明に係るものである。
1)患部又は全身に温熱刺激を付与することを特徴とするIGFシグナル伝達経路の活性化方法。
2)IGFBP5の発現を減少させることによりIGFシグナル伝達経路を活性化する上記1)の方法。
3)患部又は全身に温熱刺激を付与することを特徴とするIGFBP5の発現抑制方法。
4)温熱刺激が、40〜43℃で30〜60分の温熱負荷である上記1)〜3)の何れかの方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法は、生体への負荷が小さく、医師による処置や薬剤投与を必要とせず、エステシャン等が容易に実施できる。従って、本発明によれば、簡易且つ安全にIGFシグナルを活性化でき、育毛や皮膚性状の維持・改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のIGFシグナル伝達経路の活性化方法は、育毛や皮膚性状の維持・改善を図るものであり、医療目的以外の目的、主に美容を目的として行われるものであって、いわゆる医療行為を含むものではない。
【0024】
後記実施例に示すとおり、マウスに温熱刺激を与えることにより、IGFBP5の遺伝子発現が有意に低下する(図1)。従って、温熱刺激はIGFBP5の発現を低下させることによって、IGFシグナル伝達経路の活性化を図ることができ、これによって育毛、美肌、また表皮の角化抑制等の諸現象の制御が可能であると考えられる。
【0025】
本発明に用いる温熱刺激としては、ヒト又は動物の患部、すなわちIGFシグナル伝達経路の活性化が必要な部位(臓器・器官)、もしくは全身に外部から温熱負荷を与えるのが好ましい。
人の場合、少なくとも38℃以上の温熱負荷を30分以上、好ましくは40〜43℃の温熱負荷を30〜60分与えるのがよい。
【0026】
温熱刺激は、最低1週間に1回、好ましくは3日に1回とし、この温熱刺激を1回もしくは複数回繰り返すことにより行うことができる。
【0027】
温熱刺激は、IGFシグナル伝達経路の活性化が可能な温熱負荷手段を用いて行えばよいが、好適には、既存の温熱負荷装置又は器具を用いて、上記の温熱負荷を与えるのがよい。
【0028】
熱負荷装置・器具は、ヒト又は動物の患部又は全身に温熱刺激を加えることができ、その熱量、温度が制御可能であれば、どのような熱負荷装置又は器具を用いてもよい。
【0029】
温熱負荷装置・器具の熱源は、通常ガス、電気等であり、熱源で作られた熱の搬送手段は、パイプ、電線等が挙げられる。これらの熱をヒト、動物等に伝える媒体としては、気体、液体、伝熱性のある固体等が挙げられる。例えば、温熱負荷装置として、電源を必要とするエアーインキュベーターである場合、電気により発生させた熱を、電線やパイプで搬送し、気体を媒体として生体に熱を伝えればよい。また、超音波振動や、マイクロ波による温熱負荷等も、本発明の温熱負荷法として用いることができる。
また、熱を発生する市販の温熱カイロ類や温熱貼布剤を用いることもできる。
【実施例】
【0030】
試験動物はC57BL/6Jマウス(6週齢 ♂)(日本クレア)を用いた。
室温23±2℃、湿度55±10%、12時間の明暗サイクル(明期;AM7:00〜PM7:00)下で1週間飼育した後、平均体重が等しくなるように、C57BL/6Jマウスをコントロール群(5匹)と加温群(5匹)の2群に分けた。加温群のマウスは、41℃のヒートチャンバーに1時間入れることで温熱刺激を与え、その後はコントロール群と同様に飼育を行った。温熱刺激時には、ヒートチャンバー内で41℃の水を自由摂取できるようにした。尚、飼育期間中、すべてのマウスに、CE−2固形食を自由摂食させるとともに、水道水を自由飲水させた。
【0031】
温熱刺激から12時間後、コントロール群、加温群それぞれのヒラメ筋、ひふく筋を採取した。定量的PCRに用いる遺伝子発現解析用サンプルは、1mLのISOGEN(ニッポンジーン)内でホモジナイズ後、−80℃で凍結保存した(N=5)。
【0032】
遺伝子発現解析用のサンプルからのRNAの調製は、ISOGENのマニュアルに従った。
【0033】
調製したRNAは濃度をそろえ、65℃、10分間の熱処理を行い、急冷後に使用した。逆転写には、125ng相当のRNAを使用し、20μLの反応液(1×PCR buffer II(Roche)、5mM MgCl2(Roche)、1mM dNTP mix(Takara),2.5mM Oligo d(T)18 mRNA primer(New England Biolabs)、1U/μl RNase inhibitor(Takara))を調製した。反応は42℃,60分→52℃、30分→99℃、5分→4℃で行い、得られたcDNAは、使用時まで−20℃で保存した。また、定量的PCRのスタンダード用として、500ng相当のRNAを使用し、同様の反応系で逆転写を行った。
【0034】
逆転写反応によって得られたcDNAを鋳型として、ABI PRISM7500 Real−time PCR System(Applied Biosystems)にて定量的PCRを行った。スタンダード用cDNAを7段階希釈したものをスタンダードとして、作成した標準曲線に基づき、定量を行った。得られた解析結果は36B4の発現量を内部標準として補正し、相対的mRNA発現量として表した。反応液は、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems) 25μL、100μM Forward primer 1μL、100μM Reverse primer 1μL、dH2O 22μL、cDNA 1μL、となるように調製した。定量的PCRの温度条件は50℃2分、95℃10秒の後、95℃15秒と60℃1分の反応を40サイクル繰り返した。
【0035】
IGFシグナル伝達経路に関与する遺伝子、IGFBP5を定量的PCRにて測定した。表1に、定量的PCRに用いたプライマーの配列を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
試験結果は平均値±標準偏差(Average(Ave)±standard deviation(SD))で表し、コントロール群を1とした相対値で示した。有意差検定はt−testを用いて行い、p値が0.05未満のものを統計学的有意差があるとした。
【0038】
定量的PCRを行った結果、温熱刺激によって、ヒラメ筋及びひふく筋においてIGFBP5の遺伝子発現が有意に低下することが明らかになった(図1及び図2)。
【0039】
以上のことから、温熱刺激はIGFBP5遺伝子の発現を低下させることによって、IGFシグナル伝達経路を活性化させると考えられた。従って、温熱刺激は、育毛、美肌、また表皮の角化抑制等の諸現象の制御に有効であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】温熱刺激を負荷した場合のヒラメ筋におけるIGFBP5遺伝子の発現量を示す図。
【図2】温熱刺激を負荷した場合のひふく筋におけるIGFBP5遺伝子の発現量を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部又は全身に温熱刺激を付与することを特徴とするIGFシグナル伝達経路の活性化方法。
【請求項2】
IGFBP5の発現を減少させることによりIGFシグナル伝達経路を活性化する請求項1記載の方法。
【請求項3】
患部又は全身に温熱刺激を付与することを特徴とするIGFBP5の発現抑制方法。
【請求項4】
温熱刺激が、40〜43℃で30〜60分の温熱負荷である請求項1〜3の何れか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−278888(P2009−278888A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132295(P2008−132295)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】