説明

II型糖尿病の検査方法

【課題】 II型糖尿病を予測するための検査方法を提供する。
【解決手段】 KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいてII型糖尿病を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はII型糖尿病の検査方法およびそれに使用するプローブやプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
II型糖尿病は、全世界で2億人以上の患者が存在し、日本を含め多くの国で現在もさらに増加している。その発症メカニズムは不明であるが、遺伝的要因と環境的要因が複雑に関係していると考えられている。ゲノム全体にわたる相関解析により、いくつかのII型糖尿病関連SNPs(一塩基多型)が報告されている(非特許文献1〜5)。
【0003】
KCNQ1(potassium voltage-gated channel, KQT-like subfamily, member 1)は、主に心臓に発現する遅延整流性電位依存性カリウムチャネルIKsK+の孔形成αサブユニットである(非特許文献6)。KCNQ1はJervell and Lange-Nielsen症候群の原因遺伝子であることが報告されている(非特許文献7)。これまでに、KCNQ1遺伝子の一塩基多型と二次性副甲状腺機能亢進症(特許文献1)、QT延長症候群、心不整脈、てんかん、聴力喪失、SIDS、SUDEP、心筋梗塞合併症後のSUDS、および後天性突然死症候群から成る群から選択されたイオン・チャネル疾患(特許文献2)との相関に関して報告されているが、KCNQ1遺伝子の一塩基多型とII型糖尿病との相関は知られていない。
【特許文献1】特開2005−102601号公報
【特許文献2】特表2005−503149号公報
【非特許文献1】Nature Genetics 38, 320-323 (2006).
【非特許文献2】Nature 445, 881-885 (2007).
【非特許文献3】Science 316, 1336-1341 (2007).
【非特許文献4】Science 316, 1341-1345 (2007).
【非特許文献5】Science 316, 1331-1336 (2007).
【非特許文献6】Journal of Clinical Investigation 106, 1447-1455 (2000).
【非特許文献7】Nature Genetics 15, 186-189 (1997).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、II型糖尿病の発症や進行を正確に予測するための検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する特定の塩基の一塩基多型がII型糖尿病に関連することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいてII型糖尿病を検査する方法。
(2)前記KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する塩基が、配列番号1〜16のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基または該塩基と連鎖不平衡にある塩基である、(1)の方法。
(3)配列番号1〜16のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有するII型糖尿病検査用プローブ。
(4)配列番号1〜16のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含
む領域を増幅することのできるII型糖尿病検査用プライマー。
【発明の効果】
【0007】
本発明の検査方法により、II型糖尿病の発症リスクを正確に非侵襲的に予測することができる。II型糖尿病の発症リスクが高いと判定された被検者はあらかじめ食事や運動などによってII型糖尿病の予防に努めることができるため、発症を防ぐことができ、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<1>本発明の検査方法
本発明の検査方法は、KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する塩基の一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphism)を分析し、該分析に基づいてII型糖尿病を検査する方法である。糖尿病の診断基準は、例えば、世界保健機構(WHO)で定められており、具体的には、空腹時血糖値126mg/dl(7mmol/L)以上、随時血糖値あるいは75g糖負荷試験2時間値が200mg/dl(11.1mmol/L)以上というような状態が持続的に認められる場合に糖尿病と診断される。ヘモグロビンA1c(HbA1c)の値が6.5%以上であればこのような高血糖状態が持続していると考えられ、糖尿病とほぼ診断できる。II型糖尿病とは、このうち成人発症で緩徐に進行するものを指し、全糖尿病患者の90%以上を占める。なお、本発明において、「検査」とは将来、II型糖尿病になるかどうかを予測するための検査、及びII型糖尿病の程度が悪化する(例えば、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症などを発症する)かどうかを予測するための検査を含む。
【0009】
KCNQ1遺伝子としては、ヒトの第11染色体上に存在するKCNQ1遺伝子(GenBank Accession No. NC_000011.8の2422797..2826916)が好ましい。ただし、該遺伝子は人種の違いなどによって1又は複数の塩基に置換や欠失等が存在する可能性があるため、上記配列の遺伝子に限定されない。
【0010】
II型糖尿病に関連するKCNQ1遺伝子の一塩基多型は、以下に示すSNP-1〜SNP-16が挙げられる。
【0011】
【表1】

左側の塩基がメジャーアレルであり、下線を付した塩基がII型糖尿病のリスクアレルである。
【0012】
表1において、例えば、SNP-1は第11染色体上の2,777,641番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)の多型を意味し、この塩基がCである場合はII型糖尿病になる確率が高い。また、アレルを考慮して解析した場合は、SNP-1がCC>CT>TTの順でII型糖尿病になる確率が高い。SNP-1はKCNQ1遺伝子のイントロン15の21798番目に存在するSNPである。なお、dbSNPはNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。
その他のSNPについても同様であるが、下線で示したように、SNP-2の場合、A/GのうちAの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-3の場合、C/AのうちCの場合がII型糖尿病になりやすい、SNP-4の場合、G/TのうちGの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-5の場合、C/TのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-6の場合、C/TのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-7の場合、C/TのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-8の場合、T/CのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-9の場合、C/TのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-10の場合、C/TのうちTの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-11の場合、T/GのうちGの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-12の場合、A/CのうちAの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-13の場合、A/CのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-14の場合、C/TのうちCの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-15の場合、G/AのうちGの場合がII型糖尿病になりやすく、SNP-16の場合、C/TのうちCの場合がII型糖尿病になりやすい。
なお、SNP-1〜SNP-16について、SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列を、それぞれ配列番号1〜16に示した。それぞれ61番目の塩基が多型を有する。
これらの塩基に相当する塩基を本発明においては解析する。ここで、「相当する」とは、ヒトKCNQ1遺伝子上の上記配列を有する領域中の該当塩基を意味し、仮に、人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、その中の該当塩基を解析することも含む。
【0013】
上記SNPの塩基の種類を調べることによって、II型糖尿病を検査することができる。検査するSNPの数は、一種類でもよいし、複数を組合わせてもよい。なお、KCNQ1遺伝子の配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。
また、本発明において解析する塩基は上記のものに限定されず、上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基の多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、上記の塩基とr2>0.5の関係を満たす塩基をいう。
【0014】
KCNQ1遺伝子の一塩基多型の解析に用いる試料としては、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されないが、例えば、血液、尿等の体液サンプル、細胞、毛髪等の体毛、爪などが挙げられる。一塩基多型の解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
【0015】
KCNQ1遺伝子の一塩基多型の解析は、通常の一塩基多型解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
シークエンスは通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンスを行う場合、あらかじめ多型を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
【0017】
また、PCRによる増幅の有無を調べることによっても解析することができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0018】
また、多型を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single−strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139−146.)が挙げられる。具体的には、まず、KCNQ1遺伝子の多型部位を含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0019】
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料をPCRで増幅し、それを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
【0020】
ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
【0021】
<2>本発明の検査用試薬
本発明はまた、II型糖尿病を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、KCNQ1遺伝子における上記多型部位を含み、ハイブリダイズの有無によって多型部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具
体的には、配列番号1〜16のいずれかの塩基配列の61番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さはより好ましくは15〜35塩基であり、20〜35塩基がさらに好ましい。このようなプローブとして、配列番号19や配列番号20のプローブ(SNP-1)などが例示される。他のSNPsについても配列番号2〜16に基づいて設計できる。
また、プライマーとしては、KCNQ1遺伝子における上記多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記多型部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜16のいずれかの塩基配列の61番目の塩基含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。このようなプライマーとして、配列番号21や配列番号22のプライマー(SNP-1)などが例示される。他のSNPsについても配列番号2〜16や染色体上のその前後の配列に基づいて設計できる。
上記多型部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0023】
<被検サンプル>
日本各地の病院から集められ、BioBank Japan(http://biobankjp.org/)に登録されたサンプルから、II型糖尿病および糖尿病網膜症を発症した症例群として、ケース1(194人)、およびケース2(1367人)を選択した。
【0024】
コントロール群として、BioBank Japanに登録されたII型糖尿病以外の疾病患者サンプルを、コントロール1(1558人)およびコントロール2(1266人)として選択した。
【0025】
ケース3として、滋賀医大および川崎医大の外来でII型糖尿病と診断された1630名(男性978名、女性652名)を選択した。ケース3の特徴は、年齢61.5 ( 11.6歳、HbA1c7.4 ( 1.6 %、BMI(Body Mass Index)23.7 ( 3.9 kg/m2であった。
【0026】
コントロール3として、慶応義塾大学病院および順天堂大学病院で健康診断を受けた1064名(男性638名および女性426名)を選択した。コントロール3の特徴は、年齢45.5 ( 9.5 歳、HbA1c 4.7 ± 0.4 %、BMI 22.9 ( 3.0 kg/m2であった。
【0027】
ケース4として、滋賀医大、東京女子医大等でII型糖尿病と診断された1304名(男性774名、女性530名)を選択した。ケース4の特徴は、年齢61.1 ( 11.2 歳、HbA1c 7.6 ( 2.8 %、BMI 23.7 ( 3.6 kg/m2であった。
【0028】
ケース5として、東大病院および広島原爆障害対策協議会健康管理センターでII型糖尿病と診断された654名(男性392名、女性262名)を選択した。ケース5の特徴は、年齢67.2 ( 8.4歳、HbA1c 7.5 ( 3.6 %、BMI 23.9 ( 3.3 kg/m2であった。
【0029】
コントロール4として、広島原爆障害対策協議会健康管理センターで健康診断を受けた288名(男性112名、女性176名)を選択した。コントロール4の特徴は、年齢71.6 ( 6.2歳、HbA1c、5.2 ( 0.2 %、BMI 22.6 ( 3.2 kg/m2であった。
【0030】
なお、II型糖尿病は世界保健機構(WHO)の基準で診断された。ケース3,4,5からは、抗GAD抗体陽性患者(I型糖尿病患者)、ミトコンドリア病(ミトコンドリアミオパシー、ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、脳卒中様発作 [MELAS])患者および若年発症糖尿病(MODY)患者は除外されている。
全ての被検者から、本研究への参加に先立って書面によるインフォームド・コンセントを得た。研究のプロトコルは理化学研究所の研究委員会の承認を得たものである。
【0031】
<DNAの調製およびSNPのジェノタイピング>
ゲノムDNAは、ケース、コントロールそれぞれの血液サンプルから常法により調製した。
ケース1とコントロール1を用いた1次解析では、high-density oligonucleotide array (Perlegen Sciences)によりSNPsを解析した。
ケース2とコントロール2を用いた2次解析では、Affymetrix GeneChip SNP arrayによりSNPsを解析した。
replication studyにおけるジェノタイピングは、multiplex-PCR invader assay(J Hum Genet 46, 471-477 (2001))またはTaqMan assay(Applied Biosystems)を用いた。
【0032】
<統計分析>
HWE (Hardy-Weinberg Equilibrium)テストはAm. J. Hum. Genet. 76, 887-893 (2005).の記載に従った。HWEテストのカットオフ値は1次解析では0.000001、2次解析では0.01とし、P値がカットオフ値より低いSNPsは解析から除いた。
1次解析と2次解析において、ケースとコントロール間のジェノタイプ分布およびアレル頻度は、優性モデル、劣性モデル、アレルモデルを用いたFisher's exact testによって解析した。
3次解析以降のreplication studyにおいて、各SNPsとII型糖尿病との相関は付加モデルを用いたχ2 testによって解析した。
LDマッピングは Genomics 20, 311-322 (1995)に記載の方法に従った。
【0033】
<発現解析>
ヒト各組織およびラット培養インスリン分泌細胞RIN-5FにおけるKCNQ1遺伝子の発現を調べるため、RT-PCRを行った。用いたプライマーは以下のとおりである。
5'-GTG GTT GTA GCCTCT ATG GT-3'配列番号17
5'-TCT TTC TCA GCC AGG TAG AC-3'配列番号18
【0034】
<結果>
ケース1とコントロール1を用いた1次解析では、JSNP(J Hum Genet 47, 605-610 (2002))または HapMap database(Nature 449, 851-861 (2007))に登録された268,068種類のSNPsを解析した。ジェノタイピングに成功した207,097個のSNPsのうち、P値の低い上位8,323個の SNPsを選択した。
次に、1次解析で選択された8323個のSNPsのうち、6,731個について、ケース2とコントロール2を用いた2次解析を行った。その結果、図1に示すように、P値の低いSNPsがいくつか得られたので、そのうち、P < 0.0001の上位9つのSNPsを選択した。
【0035】
9つのSNPsについて、ケース3とコントロール3の間で3次解析を行った。3次解析の結果を、2次解析の結果と合わせて表2に示す。
【0036】
【表2】

11/12/22は、ケース群およびコントロール群における、メジャーアレルのホモを持つ個体、メジャーアレルとマイナーアレルのヘテロを持つ個体、マイナーアレルのホモを持つ個体、それぞれの数を表す。
【0037】
その結果、CDKAL1 locus (染色体上の位置6p22.3)の3つのSNPs (rs4712524、rs9295475およびrs9460546)、IGF2BP2 locus(染色体上の位置3q27.2)の2つのSNPs(rs6769511およびrs4376068)、KCNQ1 遺伝子 locus(染色体上の位置11p15.5)の1つのSNP(rs2283228)がII型糖尿病と有意な相関を示した。
これらの候補遺伝子うち、CDKAL1およびIGF2BP2のSNPsはすでにII型糖尿病との関連が報告されていたため、KCNQ1 遺伝子についてさらに解析を行った。
【0038】
ランドマークSNP(rs2283228)の近傍領域についてLD mappingを行ったところ、40-kb の高LD ブロックが見出された(図2)。この領域はKCNQ1 遺伝子のイントロン15のみを含んでいたため、KCNQ1 遺伝子のイントロン15に含まれる他のSNPsについても調べた。
【0039】
II型糖尿病群として、ケース3,4,5の3,557名を、コントロール群として、コントロール3,4の1,352名を選択し、ランドマークSNP(rs2283228)とともに、KCNQ1 遺伝子のイントロン15に含まれる他のSNPsのII型糖尿病との相関を調べた(replication study)。
結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

不等号で示した塩基は、左がメジャーアレルで、右がマイナーアレルを示す。下線で示した塩基がII型糖尿病のリスクアレルである。
【0041】
イントロン15に含まれるSNPsのうち、上記16個のSNPsがII型糖尿病と強い相関を示すことがわかった。
【0042】
KCNQ1遺伝子のII型糖尿病との関連を調べるため、ヒトの各組織およびラットRIN5F細胞におけるKCNQ1遺伝子の発現をRT-PCRにより調べた。その結果(図3)、膵臓およびRIN5F細胞にも発現が認められ、KCNQ1遺伝子の膵臓における機能がII型糖尿病に関係していることが予想された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】2次解析における各SNPsとII型糖尿病との相関を示すグラフ。
【図2】ランドマークSNP(rs2283228:*)の近傍領域のLD mapping(a)と遺伝子構造(b)およびKCNQ1遺伝子のイントロン15に含まれるSNPsのII型糖尿病との相関(c)を示す図。
【図3】ヒトの各組織およびラットRIN-5F細胞におけるKCNQ1遺伝子の発現を示す図(写真)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいてII型糖尿病を検査する方法。
【請求項2】
前記KCNQ1遺伝子のイントロン15内に存在する塩基が、配列番号1〜16のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基または該塩基と連鎖不平衡にある塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
配列番号1〜16のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有するII型糖尿病検査用プローブ。
【請求項4】
配列番号1〜16のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできるII型糖尿病検査用プライマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−219458(P2009−219458A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69220(P2008−69220)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 文部科学省、科学技術試験研究「個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(508067851)有限責任中間法人徳洲会 (12)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(803000034)学校法人日本医科大学 (37)
【出願人】(506286928)地方独立行政法人 大阪府立病院機構 (13)
【Fターム(参考)】