説明

III族窒化物半導体の種結晶の製造方法、III族窒化物半導体単結晶の製造方法、基板の製造方法、種結晶

【課題】拡大成長させた場合に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体単結晶を得ることができるIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法、およびIII族窒化物半導体単結晶の製造方法を提供すること。
【解決手段】III族窒化物半導体の種結晶の製造方法は、気相成長法により、種結晶形成用部材1上に複数のIII族窒化物半導体の核を離間させて形成し、前記複数の核を成長させて、前記複数の核から複数の種結晶2を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体の種結晶の製造方法、III族窒化物半導体単結晶の製造方法、基板の製造方法、種結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体基板を用いた高輝度発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)の実用化に伴い、良好な結晶品質を持つ窒化ガリウム基板の開発が望まれている。GaN基板等III族窒化物半導体基板は、たとえばサファイア基板を下地基板として使用し、ハイドライド気相成長法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法によりこのサファイア基板上にGaN結晶等のIII族窒化物半導体結晶をヘテロエピタキシャル成長させることで作製される。最終的に、サファイア基板をIII族窒化物半導体結晶から剥離することでIII族窒化物半導体基板を得る(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−55097号公報
【特許文献2】特表2003−527296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サファイアに代表される異種基板とIII族窒化物半導体との間には格子不整合や熱膨張係数差が存在するので、サファイアのような異種基板上に結晶性が良好なIII族窒化物半導体結晶を成長させることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、異種基板上にIII族窒化物半導体結晶を成長させるのではなく、III族窒化物半導体の種結晶を作製し、この種結晶を拡大成長させることで、結晶性が良好なIII族窒化物半導体結晶が得られると考えた。
そして、III族窒化物半導体の複数の核を形成し、複数の核から複数の種結晶を製造し、この種結晶を成長させることで、結晶性が良好なIII族窒化物半導体の単結晶を得ることができることがわかった。
【0006】
すなわち、本発明によれば、III族窒化物半導体の種結晶の製造方法であって、気相成長法により、基材上に複数のIII族窒化物半導体の核を離間させて形成し、前記複数の核を成長させて、前記複数の核から複数の種結晶を得るIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法が提供される。
【0007】
本発明では、気相成長法により、複数の核を形成し、複数の核から複数の種結晶を得ている。この方法により得られた種結晶は結晶性が良好であり、拡大成長させることで、結晶性が良好なIII族窒化物半導体の単結晶を得ることができる。
また、本発明では、複数の種結晶を得ることができ、種結晶の生産性が良好となる。
【0008】
さらに、本発明によれば、III族窒化物半導体単結晶の製造方法であって、III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する工程と、前記III族窒化物半導体単結晶の種結晶を拡大成長させる工程とを含み、III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する前記工程では、上述したIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法を実施するIII族窒化物半導体単結晶の製造方法も提供できる。
また、本発明によれば、上述したIII族窒化物半導体単結晶の製造方法により得られたIII族窒化物半導体単結晶を分割して複数の基板を得る基板の製造方法も提供できる。
さらに、本発明によれば、III族窒化物半導体の種結晶であって、直径が2mm以下である種結晶も提供できる。
このような種結晶は、上述した製造方法で製造することができる。
また、拡大成長させた際、転位は種結晶の直上に伝播することが多い。種結晶の直径を2mm以下とすることで、拡大成長させた場合に、転位密度の少ない領域を広く確保することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、拡大成長させた場合に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体単結晶を得ることができるIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法、およびIII族窒化物半導体単結晶の製造方法さらには、基板の製造方法、種結晶が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる種結晶形成用部材の断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる種結晶形成用部材の断面図である。
【図3】HVPE装置を示す模式図である。
【図4】種結晶形成用部材上に種結晶が形成された状態を示す断面図である。
【図5】種結晶間の間隔を調整した状態を示す断面図である。
【図6】種結晶を拡大成長させた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態において、種結晶を種結晶保持材上に配置した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態において、種結晶を種結晶保持材上に配置した状態を示す断面図である。
【図9】実施例6で得られた単結晶を拡大成長させた結晶のエッチピットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、本実施形態のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法の概要について説明する。
本実施形態のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法は、気相成長法により、種結晶形成用部材1上に複数のIII族窒化物半導体の核を離間させて形成し、前記複数の核を成長させて、前記複数の核それぞれから複数の種結晶2を得る方法である。
【0012】
(種結晶の製造方法)
次に、図1〜図4を参照して、本実施形態のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法について説明する。
【0013】
はじめに、図1に示すように、種結晶形成用部材(サセプター)1を用意する。この種結晶形成用部材1は、基材11と、この基材11に突設されるとともに離間配置された複数の立設部(種結晶形成部兼種結晶保持部)12と、基材11を支持する支持部13とを有する。
基材11は、たとえば、平板状であり、材料は特に限定されないが、石英、グラファイト、SiCコートグラファイト、ガラス状カーボンコートグラファイト、アルミナ等の材料で構成される。
基材11上には、複数の立設部12が柱状に突設されている。
【0014】
この立設部12は、柱状(たとえば、円柱状、四角柱状)であり、基材11に対し、着脱可能である。たとえば、基材11に凹部111を形成し、この凹部111内に立設部12の基端部をはめ込み、立設部12が凹部111から着脱可能なものであるとしてもよい。また、基材11の凹部111を雌ねじとし、立設部12の基材11側の基端部にねじを刻設して、凹部111と、立設部12とを螺合してもよい。
立設部12は、グラファイトを含んでなり、特には、グラファイトからなるものであることが好ましい。また、立設部12は、ガラス状カーボンやSiC、BNなどでコーティングされたグラファイトで構成されてもよい。
【0015】
ここで、種結晶形成用部材1の構造は、図1に示したものに限られず、図2に示すようなものとしてもよい。
この場合には、基材11上に複数の立設部12が隣接配置され、隣り合う立設部12は、互いに接している。ただし、立設部12は、凹部内(図2では、図示略)にはめ込まれたものであるため、基材11に対し、着脱可能である。
【0016】
次に、図3に示すHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)装置3内に、種結晶形成用部材1を設置する。具体的には、種結晶形成用部材1の支持部13を、HVPE装置3に固定する。
このHVPE装置3は、反応管30を備え、この反応管30内に、ソースボート39が設置されている。
ソースボート39内には、III族窒化物半導体の種結晶の原料となるIII族原料が配置される。たとえば、ガリウムが配置される。
また、ガス導入管33,34が、反応管30に接続されている。
HVPE装置3内に種結晶形成用部材1を設置した後、ガス導入管33、34より窒素(N2)ガスを供給して反応管30内をパージする。反応管30内に供給したガスは、排出口38より排出される。反応管30内を十分パージした後、水素(H2)ガスに切替えて、ヒータ35により反応管30を昇温する。成長領域36の温度がたとえば500℃前後となったら、ガス導入管34よりアンモニア(NH3)ガスを加えて昇温する。さらにGaソース37領域の温度がたとえば、850℃、成長領域36の温度がたとえば、1050℃になるまで昇温を続ける。
Gaソース37領域の温度及び成長領域36の温度が安定してからガス導入管33よりHClガスを加えて供給し、ソースボート39内のガリウム(Ga)と反応させて塩化ガリウム(GaCl)を生成し、成長領域36に輸送する。成長領域36では、NH3ガスとGaClが反応する。これにより、各立設部12の先端上にIII族窒化物半導体の核が形成され、この核が成長することで、種結晶2(たとえば、GaN種結晶)となる(図4参照)。
すなわち、複数の核が離間配置されて形成され、複数の核が合体せずに、それぞれ種結晶2となり、複数の種結晶2が同時に得られる。
ここで図1の種結晶形成用部材1の代わりに、図2の構成の種結晶形成用部材1を用いれば、立設部12の先端面へのIII族窒化物半導体の核形成を促進させることができるほか、立設部12を高密度に配置することにより、より多くの種結晶2を得ることも可能となる。
【0017】
種結晶2は、柱状(たとえば、略円柱状)であり、たとえば、柱状結晶の直径(幅)が2mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、種結晶2は、高さ(厚み)H200μm以上、2000μm以下、直径Lが50μm以上、500μm以下の柱状結晶となる。H/Lは、0.5以上であることが好ましい。また、H/Lの上限値は、種結晶2を拡大成長させる際の安定性の観点から30である。
拡大成長させた際、転位は種結晶2の直上に伝播することが多い。種結晶2の直径を2mm以下とすることで、拡大成長させた場合に、転位密度の少ない領域を広く確保することができる。また、種結晶2の直径を2mm以下とし、さらに、H/Lは、0.5以上とすることで、拡大成長させた場合に、転位密度の少ない領域を広くより確実に確保することができる。
なお、図4では、立設部12の先端に一つの核が形成し、その核が成長して一つの種結晶2となっている例を示しているが、立設部12に複数の核が離間して形成され、複数の核それぞれが種結晶2となってもよい。
隣り合う核間の間隔は100μm以上、100mm以下であれば、核同士が合体せずに種結晶2となりやすく、複数の核を効率良く形成しやすい。
核間の間隔をあけ、離間して複数の核を形成するためにはIII族ハロゲン化物ガス(ここでは、GaClガス)の分圧を1.4Pa以上、1.4×10Pa以下とし、V族元素を含むガス(ここではアンモニアガス)の分圧を1.4×10Pa以上、1.4×10Pa以下とし、核形成温度を800℃以上、1100℃以下とすることが好ましい。
このような核形成条件とすることで、核生成密度を小さくでき、核同士が合体せずに種結晶2となりやすい。すなわち、核間の間隔を調整し、さらに、成長温度や、原料ガスの分圧等を適宜調整することで、複数の核同士を合体させずに、複数の種結晶2を得ることが可能となる。なお、複数の核のうち、一部の核同士が合体する場合もあるが、このようなものは、種結晶2を拡大成長させ単結晶を得る工程では、使用しない方が好ましい。
複数の種結晶2を得た後、複数の種結晶2中に複数の核が結合して得られた種結晶2がある場合には、複数の核が結合して得られた種結晶2を除去し、核が合体せずに成長した種結晶2を選択する(選別工程)。
そして、選択した種結晶2を後段のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法に使用する。このような選別工程を設けることで、結晶性の良好なIII族窒化物半単結晶を得ることができる。
なお、すべての種結晶2が、複数の核が合体せずに成長したものである場合には、前記選別工程は不要である。
【0018】
(III族窒化物半導体単結晶の製造方法)
次に、以上のようにして得られたIII族窒化物半導体の種結晶2を拡大成長させる工程について説明する。
立設部12上に形成されたIII族窒化物半導体の種結晶2を拡大成長させる。このとき、種結晶2が設けられた立設部12間の間隔をあけるため、種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出す。そして、図5に示すように、一部の立設部12を基材11から外し、隣り合う立設部12間に一定の隙間を形成する。立設部12間の間隔は隣り合う種結晶2同士が合体することを抑制する観点から1mm以上が好ましい。
このようにすることで、複数の種結晶2が離間配置され、複数の種結晶2を同時に拡大成長させることができる。
なお、あらかじめ、立設部12間の間隔が広く確保されている場合には、HVPE装置3から種結晶形成用部材1を取り出さず、種結晶2を連続して、拡大成長させてもよい。
【0019】
次に、図3に示したHVPE装置3により、種結晶2を拡大成長させる。
HVPE装置3内に種結晶2が設けられた種結晶形成用部材1を設置した後、ガス導入管33、34より窒素(N2)ガスを供給して反応管30内をパージする。反応管30内に供給したガスは、排出口38より排出される。反応管30内を十分パージした後、水素(H2)ガスに切替えて、ヒータ35により反応管30を昇温する。成長領域36の温度がたとえば500℃前後となったら、ガス導入管34よりアンモニア(NH3)ガスを加えて昇温する。さらにGaソース37領域の温度が850℃、成長領域36の温度がたとえば1050℃になるまで昇温を続ける。
Gaソース37領域の温度及び成長領域36の温度が安定してからガス導入管33よりHClガスを加えて供給し、ソースボート39内のガリウム(Ga)と反応させて塩化ガリウム(GaCl)を生成し、成長領域36に輸送する。成長領域36では、NH3ガスとGaClが反応する。これにより、図6に示すように、各立設部12上の種結晶2が拡径するとともに、縦方向にも成長し、III族窒化物半導体の単結晶21を得ることができる。
ここで、アンモニアガスの分圧は、種結晶2周辺へのIII族窒化物半導体の多結晶付着防止という観点から、1.4×10Pa以下が好ましい。また、製造性の観点から、アンモニアガスの分圧は、7.1×10Pa以上が好ましい。
【0020】
ここで、種結晶2を成長させる際に、基材11上にIII族窒化物半導体の多結晶が堆積することがある。この場合、基材11上の多結晶の層が非常に厚くなってしまうと、種結晶2に付着してしまうおそれがある。そこで、立設部12の基端部の外周にねじを刻設するとともに、基材11表面に形成された凹部111に雌ねじを形成し、立設部12の先端部の種結晶2の基材11からの高さを調整し、基材11上の多結晶が種結晶2に付着してしまうことを防止してもよい。
さらに、基材11表面の位置によって多結晶の堆積のしやすさに違いがあるため、各立設部12の先端の基材11からの高さをそれぞれ調整することもできる。
さらに、種結晶2をある程度拡大成長させた後、基材11上に堆積した多結晶が種結晶2に付着する前に、種結晶2が設けられた種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、立設部12を基材11から取り外した後に基材11上に堆積した多結晶を除去(基材11を洗浄)してもよい。その後、立設部12を基材11に取り付け、種結晶2を再度拡大成長させることができる。
さらに、種結晶2を成長させる前に、予め基材11上に薄く多結晶を堆積させるか、成長によって基材11上に厚く付着した多結晶の層を除去する際にわずかに残すなどして、基材11上に多結晶の層を形成する。このようにすることで、立設部12周辺に供給される原料が、基材11上の多結晶に優先的に消費され、立設部12に新たに多結晶が発生することが抑制できる。そのため、単結晶21を多結晶との合体なしに単独で拡大できるため、III族窒化物半導体の単結晶21の結晶性を良好なものとすることができる。
また、種結晶2をある程度拡大成長させた後、基材11から一部の立設部12を取り外し、立設部12間の間隔をあけて、拡大成長した種結晶2同士がぶつからないように調整してもよい。拡大成長した種結晶2同士を合体させずに、複数のIII族窒化物半導体の単結晶を得ることが好ましい。たとえば、N個(複数)の種結晶2を拡大成長させて、そのうちの10%以上の種結晶2(N×0.1個以上)が互いに合体することなく成長し、複数のIII族窒化物半導体の単結晶(N×0.1個以上)が得られることが好ましい。
さらに、種結晶2をある程度拡大成長させた後、基材11から一部の立設部12を取り外し、結晶性が良好でないものを間引いてもよい。
【0021】
以上のようにして得られたIII族窒化物半導体の単結晶を分割して、複数のIII族窒化物半導体自立基板を得ることができる。
【0022】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、気相成長法により、複数の核を形成し、複数の核から複数の種結晶2を得ている。隣り合う核同士を合体させずに、種結晶2を得ているため、この方法により得られた種結晶2は結晶性が良好であり、拡大成長させることで、結晶性が良好なIII族窒化物半導体の単結晶を得ることができる。
また、本実施形態では、複数の種結晶を得ることができ、種結晶の生産性が良好となる。
【0023】
さらに、本実施形態では、グラファイトを含む種結晶形成用部材1上に種結晶2を形成している。グラファイトと、種結晶2を構成するIII族窒化物半導体との熱膨張係数差は小さいため、種結晶2に歪み等が発生しにくくなる。そのため、結晶性が良好な種結晶2を得ることができ、種結晶2を拡大成長させた場合に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体の単結晶21を得ることができる。
【0024】
また、本実施形態では、HVPE法により種結晶2を製造しているため、この種結晶2を、HVPE法を使用して拡大成長させた場合に、結晶性の良好なIII族窒化物半導体の単結晶を得ることができる。
たとえば、アモノサーマル法や、Naフラックス法等の液相成長で種結晶を製造し、その後、成長速度の比較的速い、気相成長法のHVPE法により、種結晶を拡大成長させた場合、種結晶の製造方法と、種結晶を拡大成長させる方法とが大きく異なり、製法の違いによる不純物元素の種類とその濃度差などに起因して、III族窒化物半導体の単結晶に歪みやクラック等が発生しやすいと考えられる。
本実施形態のように、種結晶2の製造および拡大成長を、同じ成長方法で実施することでこのような問題を解決することができる。
なお、本実施形態では、種結晶2の製造および拡大成長をHVPE法で実施したが、たとえば、種結晶2の製造をMOCVD法で実施し、種結晶の拡大成長をHVPE法で実施した場合にも、アモノサーマル法や、Naフラックス法等で種結晶を製造し、その後、HVPE法により拡大成長させる場合に比べれば、HVPE法と同じ気相成長という点でドーピングガスによる不純物制御が容易であり、HVPE成長時に結晶に取り込まれる不純物元素とその濃度を近づけた種結晶を得ることができるので、III族窒化物半導体の単結晶の歪み等を抑制することができる。
【0025】
さらに、本実施形態では、HVPE装置3内で、種結晶2を形成しており、種結晶2をHVPE装置3から出さずに、種結晶2を拡大成長させる場合には、種結晶2が汚染されてしまうことを抑制できる。
一方、HVPE装置3内から種結晶形成用部材1を取り出し、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外す際も、立設部12が種結晶形成用部材1から着脱可能に設けられているため、作業者が拡大成長させる種結晶2にふれずに、立設部12を種結晶形成用部材1から取り外すことができ、種結晶2が汚染されてしまうことを防止できる。
さらに、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外すことで、種結晶2間の間隔を大きく確保することができ、種結晶2同士が拡大成長する際に合体してしまうことを抑制できる。
【0026】
(第二実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。
前記実施形態では、種結晶形成用部材1の立設部12上に形成された種結晶2を拡大成長させていた。
これに対し、本実施形態では、種結晶形成用部材1の立設部12上に形成された種結晶2を立設部12から取り外す。
具体的には、前記実施形態と同様に、種結晶2を種結晶形成用部材1上に形成する。
次に、立設部12上に設けられた種結晶2をピンセット等で挟み、立設部12から取り外す。
その後、図7に示すような、種結晶保持材4を用意する。この種結晶保持材4は、基材41上に突設する立設部42が設けられたものである。立設部42の先端面で種結晶を保持する。
基材41は、平板状であり、この基材41の表面に立設部(種結晶保持部)42が設けられ、基材41の表面から立設部42が突出している。
基材41の材料は、たとえば材料は特に限定されないが、石英、グラファイト、SiCコートグラファイト、ガラス状カーボンコートグラファイト、アルミナ等である。
また、立設部42は、基材41に対し着脱可能であってもよいが、着脱できないものであってもよい。立設部42は、所定の間隔をあけて離間配置されている。
立設部42は、III族窒化物半導体との平均熱膨張係数差を小さくする観点からグラファイトや、SiCコートグラファイト等で構成されることが好ましい。
立設部42は柱状であり、基端部が基材41に固定され、先端部で種結晶2を保持する。
具体的には、立設部42の先端に、グラファイト、アルミナ、SiO、アルミナイトライド等を母材とする接着剤6を塗布し、この接着剤6を介して、種結晶2を立設部42の先端に固定する。
複数の立設部42上に種結晶2を固定した後、前記実施形態と同様に種結晶を拡大成長させ、単結晶21を得る。そして、以上のようにして得られたIII族窒化物半導体の単結晶を分割して、複数のIII族窒化物半導体自立基板を得ることができる。
【0027】
このような本実施形態では、第一実施形態と同様に、結晶性の高いIII族窒化物半導体の単結晶21を得ることができるうえ、以下の効果を奏することができる。
本実施形態では、種結晶2を、立設部12から取り外し、立設部42の先端に固定しているので、種結晶2の成長方向を所望の方向に設定することができる。
たとえば、第一実施形態のように、種結晶2を立設部12から取り外さずに、拡大成長させる場合、立設部12の側面に付着した種結晶2が成長し、隣り合う立設部12に接触してしまう場合がある。
これに対し、本実施形態のように、種結晶2を、立設部12から取り外し、立設部42の先端に固定することで、種結晶2の結晶方位を所望の方向に設定することができる。
【0028】
(第三実施形態)
図8を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。
はじめに、本実施形態では、第一実施形態、第二実施形態と同様の方法で、種結晶2を製造する。
次に、図7に示す種結晶保持材5を用意する。
この種結晶保持材5は、基材51と、立設部(種結晶保持部)52とを備える。
基材51は平板状である。基材51の材料としては、特に限定されないが、石英、グラファイト、SiCコートグラファイト、ガラス状カーボンコートグラファイト、アルミナ等が挙げられる。
立設部52は、基材51の表面に設けられ、基材51の表面から立設部52が突出している。立設部52は、基材51に対し着脱可能であってもよいが、着脱できないものであってもよい。立設部52の先端面で種結晶2を保持する。
基材51の表面であって、立設部52の基端部側の周囲の部分は、GaNの多結晶、単結晶、低温堆積層等のいずれかで構成される。具体的には、本実施形態では、基材51は、板状の基材本体511と、この基材本体511を被覆する被覆材料512とを備える。基材本体511は、石英、グラファイト、SiCコートグラファイト、ガラス状カーボンコートグラファイト、アルミナ等で構成される。
被覆材料512は、立設部52と異なる材料であり、立設部52よりも、単結晶の原料であるIII族窒化物半導体の多結晶が付着しやすい材料で構成される。すなわち、被服材料512は、GaNの多結晶、単結晶、低温堆積層等のいずれかで構成される。
GaNの多結晶、GaNの単結晶、GaNの低温堆積層等のいずれかで構成される被覆材料512を基材本体511上に配置する方法としては、HVPE法、MOCVD法など、一般的なGaN成長方法によりGaNを堆積させる方法や、GaN単結晶基板を被覆材料512として配置する方法などがある。
被覆材料512は、基材本体511の表面を覆うように層状に設けられているが、立設部52の周囲に配置されていればよく、基材本体511の表面を完全に被覆されていなくてもよい。
【0029】
立設部52は、グラファイトや、SiCコートグラファイト等で構成され、基材51の表面に設けられたGaNの多結晶等で構成される被覆材料512よりもIII族窒化物半導体が付着しにくい材料で構成されている。
立設部52は柱状であり、基端部が基材51に固定され、先端部で種結晶2を保持する。種結晶2は、第二実施形態と同様に接着剤6を介して立設部52に固定される。
【0030】
このような種結晶保持材5を使用して、第一実施形態、第二実施形態と同様に、種結晶2を拡大成長させる。
このとき、基材51の表面は、GaNの多結晶、単結晶、低温堆積層等のいずれかで構成されるので、立設部52の表面に多結晶が新たに発生するよりも、基材51上のGaNにIII族窒化物半導体の原料が優先的に利用されることとなる。
このようにして立設部52には多結晶が発生しにくくなるため、立設部52上に形成される単結晶が他の多結晶と合体して多結晶化してしまうことを確実に抑制でき、より結晶性の高いIII族窒化物半導体単結晶を得ることができる。
なお、本実施形態では、立設部52の基端部の外周にねじを刻設するとともに、基材51表面に形成された凹部513に雌ねじを形成し、立設部52の先端部の種結晶2の基材51からの高さを調整し、基材51上に堆積する多結晶が種結晶2に接触してしまうことを防止してもよい。
さらに、種結晶2の拡大成長を行い、単結晶21を得た後、単結晶21をウェハ状に加工する。そして、このウェハ状の単結晶21を再度、立設部52上に設置するとともに、HVPE装置3内に配置し、拡大成長させてもよい。
また、以上のようにして得られたIII族窒化物半導体の単結晶を分割して、複数のIII族窒化物半導体自立基板を得ることができる。
【0031】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば前記各実施形態では、種結晶2をHVPE法により成長させていたが、これに限らず、MOCVD法で成長させてもよい。ただし、比較的成長速度の速いHVPE法により成長させることで、MOCVD法と比較して短時間で種結晶2が得られるという利点がある。
さらに、第三実施形態では、種結晶2を拡大成長させる際に、被覆材料512を備える種結晶保持材5を使用したが、たとえば、種結晶2を製造する際にも、被覆材料512を備える種結晶保持材5を使用し、種結晶保持材5に形成された状態の種結晶2を拡大成長させ、単結晶を得てもよい。
【0032】
さらに、前記第一実施形態では、複数の核が合体しないように、III族ハロゲン化物ガスの分圧等を調整するとしたが、これに限らず、たとえば、複数の核が形成された後、一部の核を除去して、核同士の間隔をあけ、残った複数の核を成長させて種結晶2を製造してもよい。
【0033】
また、核を形成する際、あるいは形成後に、立設部12へむけて塩化水素ガスを供給し、立設部12上に形成される核の一部が塩化水素ガスでエッチングされるようにしてもよい。このようにすることで、核間の間隔を広く確保することができ、核同士を合体させずに、種結晶2を成長させることができる。
さらに、第二実施形態では、立設部12上に設けた種結晶2を用いたが、取り外して再度保持させることが前提のため、立設部12上に形成した種結晶2を用いることに限定されるものではなく、取り外しの可否や、立設形状によらず、形成された種結晶2を取り外して用いることができる。例えば平板状の種結晶形成用部材に種結晶2を形成した後、種結晶2を取り外して用いても良い。
【0034】
さらに、第二実施形態、第三実施形態では、立設部42,52に対し、接着剤を介して種結晶2を固定していたが、これに限らず、種結晶2が立設部から落下しないような構造とすれば、接着剤は使用しなくてもよい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
(種結晶を製造する工程)
第一実施形態と同様の方法で種結晶2を製造した。
種結晶形成用部材1としては、図1に示したものを使用し、種結晶形成用部材1は、基材11と、立設部12とを備える。基材11には雌ねじとなる凹部111が形成され、立設部12は、基材11に対して螺合しており、着脱可能である。
基材11の材料は、グラファイトであり、立設部12の材料はグラファイトである。また、立設部12は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部12間の間隔は、5mmであり、種結晶形成用部材1の基材11表面側からみて、立設部12は、正方格子の格子点上に配置されている。HVPE装置3を使用し、立設部12上に核を形成し種結晶2を形成した。製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
成長温度:1050℃
原料ガス:HClガス 10cc/min、NHガス100cc/min
キャリアガス:Hガス 3.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
成長時間:6時間
【0036】
このような方法では、複数の核から、複数の種結晶2を得ることができた。
また、核同士が合体していない、複数の単結晶の種結晶2を得ることができた。種結晶2の直径は、50μm〜300μmであり、高さ(厚みH)/直径(L)は、0.5〜20であった。
以上のようにして、立設部12上に種結晶2を形成した後、種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外した。そして、立設部12間の間隔を20mmとした。
【0037】
(種結晶を拡大成長させる工程)
その後、再度、種結晶形成用部材1をHVPE装置3内に配置し、複数の種結晶2を同時に拡大成長させた。
製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
成長温度:1050℃
原料ガス:HClガス 50cc/min、NHガス1.0L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
成長時間:50時間
複数の種結晶2は互いに合体することなく成長し、直径5mm程度の複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。
【0038】
(実施例2)
(種結晶を製造する工程)
第一実施形態と同様の方法で種結晶2を製造した。
種結晶形成用部材1としては、図1に示したものを使用し、種結晶形成用部材1は、基材11と、立設部12とを備える。立設部12は、基材11から着脱可能である。
基材11の材料は、グラファイトであり、立設部12の材料はグラファイトである。また、立設部12は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部12間の間隔は、5mmであり、種結晶形成用部材1の基材11表面側からみて、立設部12は、正方格子の格子点上に配置されている。HVPE装置3を使用し、立設部12上に核を形成し種結晶2を形成した。製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
製造温度:1050℃
製造ガス:HClガス 50cc/min、NHガス250cc/min
キャリアガス:Hガス 3.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
製造時間:6時間
【0039】
このような方法では、複数の核それぞれから、複数の種結晶2を得ることができた。
また、複数の核同士は合体しておらず、単結晶の種結晶2を得ることができた。種結晶2の直径は、150μm〜400μmであり、高さ/直径は、0.8〜8であった。
以上のようにして、立設部12上に種結晶2を形成した後、種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外した。そして、立設部12間の間隔を20mmとした。
【0040】
(種結晶を拡大成長させる工程)
その後、再度、種結晶形成用部材1をHVPE装置3内に配置し、複数の種結晶2を同時に拡大成長させた。
製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
製造温度:1050℃
製造ガス:HClガス 80cc/min、NHガス1.5L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
製造時間:1時間
複数の種結晶2は互いに合体することなく成長し、複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。
【0041】
(実施例3)
(種結晶を製造する工程)
第一実施形態と同様の方法で種結晶2を製造した。
種結晶形成用部材1としては、図1に示したものを使用し、種結晶形成用部材1は、基材11と、立設部12とを備える。立設部12は、基材11から着脱可能である。
基材11の材料は、グラファイトであり、立設部12の材料はグラファイトである。また、立設部12は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部12間の間隔は、5mmであり、種結晶形成用部材1の基材11表面側からみて、立設部12は、正方格子の格子点上に配置されている。HVPE装置3を使用し、立設部12上に核を形成し種結晶2を形成した。製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
製造温度:1050℃
製造ガス:HClガス 50cc/min、NHガス500cc/min
キャリアガス:Hガス 3.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
製造時間:6時間
【0042】
このような方法では、複数の核それぞれから、複数の種結晶2を得ることができた。
また、複数の核同士は合体しておらず、単結晶の種結晶2を得ることができた。種結晶2の直径は、250μm〜500μmであり、高さ/直径は、0.6〜4であった。
以上のようにして、立設部12上に種結晶2を形成した後、種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外した。そして、立設部12間の間隔を20mmとした。
【0043】
(種結晶を拡大成長させる工程)
その後、再度、種結晶形成用部材1をHVPE装置3内に配置し、複数の種結晶2を同時に拡大成長させた。
製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
製造温度:1050℃
製造ガス:HClガス 50cc/min、NHガス1.5L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
製造時間:1時間
複数の種結晶2は互いに合体することなく成長し、複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。
【0044】
(実施例4)
(種結晶を製造する工程)
第一実施形態と同様の方法で種結晶2を製造した。
種結晶形成用部材1としては、図1に示したものを使用し、種結晶形成用部材1は、基材11と、立設部12とを備える。立設部12は、基材11から着脱可能である。
基材11の材料は、グラファイトであり、立設部12の材料はグラファイトである。また、立設部12は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部12間の間隔は、5mmであり、種結晶形成用部材1の基材11表面側からみて、立設部12は、正方格子の格子点上に配置されている。HVPE装置3を使用し、立設部12上に核を形成し種結晶2を形成した。製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
製造温度:1050℃
製造ガス:HClガス 25cc/min、NHガス500cc/min
キャリアガス:Hガス 3.5L/min
ソース :Gaソース(850℃)
製造時間:6時間
【0045】
このような方法では、複数の核それぞれから、複数の種結晶2を得ることができた。
また、複数の核同士は合体しておらず、単結晶の種結晶2を得ることができた。種結晶2の直径は、250μm〜400μmであり、高さ/直径は、0.8〜4であった。
以上のようにして、立設部12上に種結晶2を形成した後、種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外した。そして、立設部12間の間隔を20mmとした。
【0046】
(種結晶を拡大成長させる工程)
その後、再度、種結晶形成用部材1をHVPE装置3内に配置し、複数の種結晶2を同時に拡大成長させた。
製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
製造温度:1050℃
製造ガス:HClガス 50cc/min、NHガス1.5L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
製造時間:1時間
複数の種結晶2は互いに合体することなく成長し、複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。
【0047】
(実施例5)
(種結晶を製造する工程)
実施例1と同様の方法で立設部12上に種結晶2を製造した。
(種結晶を拡大成長させる工程)
形成された種結晶2の立設部付近を先の尖ったピンセットで挟みながら、立設部12から種結晶2を取り外した。
その後、図7に示すような、基材41上に突設する立設部42が設けられた種結晶保持材4を用意し、立設部42の先端面で種結晶を保持した。
基材41、立設部42の材料はグラファイトである。また、立設部42は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部42間の間隔は、20mmであり、種結晶形成用部材4の基材41表面側からみて、立設部42は、正方格子の格子点上に配置されている。
立設部42の先端に、アルミナを母材とする接着剤6を塗布し、種結晶2を結晶のC軸方向と立設部42の中心軸の方向がなるべく一致するように固定した。固定後に自然乾燥および乾燥炉内で150℃1時間乾燥させ、再度、種結晶形成用部材4をHVPE装置3内に配置し、複数の種結晶2を同時に拡大成長させた。
製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
成長温度:1050℃
原料ガス:HClガス 50cc/min、NHガス1.0L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
成長時間:50時間
複数の種結晶2は互いに合体することなく、しかも結晶方位がほぼ揃った状態で成長し、直径5mm程度の複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。
【0048】
(実施例6)
(種結晶を製造する工程)
実施例1と同様の方法で立設部12上に種結晶2を製造した。
(種結晶を拡大成長させる工程)
次に、図8に示す基材51と、立設部(種結晶保持部)52とを備えた種結晶保持材5を用意した。立設部52は、円柱形状であり、その径は3mmである。基材本体511には雌ねじとなる凹部513が形成されており、立設部52は、基材本体511に対して螺合しており、着脱可能とした。立設部52間の間隔は、20mmであり、種結晶形成用部材5の基材本体511表面側からみて、立設部52は、正方格子の格子点上に配置できる構成となっている。基材本体511、立設部52の材料はグラファイトである。
まず、基材本体511から立設部52を外した状態で、基材本体511上に被覆材料512として、HVPE法でGaNの多結晶を堆積させた。基材本体511の表面を被覆するため、堆積厚さは200μm程度とした。
次に実施例5と同様の方法で、立設部12から種結晶2を取り外し、立設部52の先端にアルミナ接着剤で固定した。固定後、立設部52の基端部を基材本体の凹部513に固定した。
このような種結晶保持材5を使用して、種結晶2を拡大成長させた。
製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
成長温度:1050℃
原料ガス:HClガス 50cc/min、NHガス1.0L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
成長時間:100時間
複数の種結晶2は互いに合体することなく、しかも結晶方位がほぼ揃った状態で成長し、直径7mm程度の複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。また、被覆材料512を設けたため、被覆材料512にGaNの多結晶が付着しやすく、立設部52に発生するGaNの多結晶を抑制しながら成長することが可能であった。
【0049】
(実施例1〜6の評価)
実施例1〜6で得られた結晶を評価した。
実施例1〜6で得られた結晶(種結晶を拡大成長させた結晶)は、X線回折でいずれも単結晶(半値幅FWHMが70arcsec以下)であることがわかった。
また、実施例1、実施例5、実施例6で得られた単結晶をスライスし、基板を得た。
基板の表面をリン酸硫酸溶液中で240℃、1.5時間処理してエッチピットを形成し、基板の転位密度を評価したところ、いずれも良好な結晶品質であることがわかった。
図9には、実施例6で得られた単結晶をスライスした基板のエッチピットの様子を示す。
種結晶直上部分の転位密度は4×10cm−2であり、種結晶直上部分よりも外側の周辺部分では、転位密度が5×10cm−2以下であることが確かめられた。
【符号の説明】
【0050】
1 種結晶形成用部材
2 種結晶
3 HVPE装置
4 種結晶保持材
5 種結晶保持材
6 接着剤
11 基材
12 立設部
13 支持部
21 単結晶
30 反応管
33 ガス導入管
34 ガス導入管
35 ヒータ
36 成長領域
37 ソース
38 排出口
39 ソースボート
41 基材
42 立設部
51 基材
52 立設部
111 凹部
511 基材本体
512 被覆材料
513 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体の種結晶の製造方法であって、
気相成長法により、複数のIII族窒化物半導体の核を離間して形成し、
前記複数の核を成長させて、前記複数の核から複数の種結晶を得るIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法において、
前記気相成長法は、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法であるIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法において、
前記複数の核を合体させずに成長させて、前記複数の核それぞれから種結晶を得るIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法において、
前記複数の核は、サセプタに設けられた種結晶形成部にそれぞれ形成され、
前記種結晶形成部は、グラファイトを含んで構成されるIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法において、
当該種結晶は、気相成長法により、拡径するように拡大成長させてIII族窒化物半導体単結晶を得るためのものであるIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法。
【請求項6】
III族窒化物半導体単結晶の製造方法であって、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する工程と、
前記III族窒化物半導体単結晶の種結晶を拡大成長させる工程とを含み、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する前記工程では、請求項1乃至4のいずれかに記載のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法を実施するIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法において、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する前記工程では、複数の種結晶を製造し、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する前記工程の後段で、複数の種結晶中に、複数の核が結合して得られた種結晶がある場合には、複数の核が結合して得られた種結晶を除去し、核が合体せずに成長した種結晶を選択する工程を実施し、
前記III族窒化物半導体の種結晶を拡大成長させる前記工程では、
核が合体せずに成長した種結晶を拡大成長させるIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法であって、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を拡大成長させる前記工程では、
複数の種結晶を離間配置して、前記複数の種結晶を成長させるIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法において、
前記複数の種結晶を合体させずに拡大成長させて、複数のII族窒化物半導体単結晶を得るIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法において、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を製造する前記工程において、
基材と、この基材上に立設されて着脱可能に設けられた複数の種結晶形成部とを有する種結晶形成用部材の前記各種結晶形成部上に核を形成して、前記種結晶を形成し、
種結晶を拡大成長させる前記工程では、
前記複数の種結晶形成部のうち、一部の種結晶形成部を前記基材から取り外し、前記基材上に残された種結晶形成部上の種結晶を成長させるIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項11】
請求項8または9に記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法であって、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を拡大成長させる前記工程では、
基材と、この基材上に立設された種結晶保持部とを備える種結晶保持材を用意し、
前記種結晶を前記種結晶保持材の種結晶保持部上に接着剤を介して固定するIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれかに記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法であって、
III族窒化物半導体単結晶の種結晶を拡大成長させる前記工程では、
HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法により、前記種結晶を拡大成長させるIII族窒化物半導体単結晶の製造方法。
【請求項13】
請求項6乃至12のいずれかに記載のIII族窒化物半導体単結晶の製造方法により得られたIII族窒化物半導体単結晶を分割して複数の基板を得る基板の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれかに記載のIII族窒化物半導体の種結晶の製造方法により得られたIII族窒化物半導体の種結晶であって、
直径が2mm以下である種結晶。
【請求項15】
請求項14に記載の種結晶であって、
直径Lと、厚みHとの比率であるH/Lが0.5以上である種結晶。
【請求項16】
請求項14または15に記載の種結晶において、
当該種結晶は、複数の核を合体させずに成長させて、前記複数の核それぞれから得られたものである種結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−246304(P2011−246304A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120116(P2010−120116)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】