III族窒化物半導体微細柱状結晶の製造方法およびIII族窒化物構造体
【課題】III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、III族窒化物半導体微細柱状結晶の位置および形状を制御する。
【解決手段】微細柱状結晶の製造方法が、基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記基板表面に成長原料を導き、少なくとも前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程とを含む。
【解決手段】微細柱状結晶の製造方法が、基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記基板表面に成長原料を導き、少なくとも前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体微細柱状結晶の製造方法およびIII族窒化物構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物は、高品質短波長発光ダイオードおよびレーザーダイオードを実現できる素子として注目されている。このようなIII族窒化物構造を利用した電子デバイス等の実用化にあたっては解決すべき多くの問題がある。
【0003】
半導体結晶の成長技術、例えばエピタキシャル技術、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)技術等は、積層方向には制御性を有するが、通常、面内方向に構造を作るためには別の技術を用いて加工する必要がある。結晶加工技術は大別して、結晶成長後に結晶を加工するトップダウン型と、結晶成長前に基板を加工し、結晶成長と同時に構造が作製されるボトムアップ型がある。トップダウン型は加工により結晶にダメージが与えられ、特に微細な構造では表面積が多くなるために問題となる。一方、ボトムアップ型の作製法は構造の制御性と結晶品質の両方を確保できる場合が多い。
【0004】
窒化物半導体に関しては、ボトムアップ型の微細構造作製技術として酸化珪素などのマスクを用いる方法がある。基板にパターニングしたマスクの開口部分に選択的に結晶成長するこの方法は気相成長法では実用的に使われている手法であるが、分子線エピタキシー法(以下、MBEと略記する)においてはマスク上に多結晶が析出してしまう。
【0005】
M.Yoshizawaらは、窒素源として高周波プラズマ励起の活性窒素を用いるMBEにおいて、窒素過剰下で窒化ガリウムを成長することによって、直径100nm程度の微細な柱状の窒化ガリウム結晶を自己組織的に形成する方法を見出した(非特許文献1参照)。
【0006】
さらにH.Sekiguchiらは、サファイア基板上に薄膜窒化アルミニウムをバッファ層として成長する窒化ガリウム微細柱状結晶の直径、密度、および独立度が、バッファ層の表面モホロジーに大きく依存することを報告している(非特許文献2参照)。薄膜窒化アルミニウムバッファ層は凹凸を持った形状に成長する。そのモホロジーは膜厚に依存し、膜厚が薄いと小さなグレインが多数形成され、厚くなるとグレインサイズが大きくなる傾向がある。さらにこの上に成長した柱状の窒化ガリウム結晶は、窒化アルミニウムの膜厚が厚くなるほど径が小さく、互いに独立する傾向である。上記報告ではサファイア基板を用いているが、他の基板においても、バッファ層のモホロジーとその上に成長した柱状結晶の形状は大きく関連している。
【0007】
H.Tangらは、結晶成長法にアンモニアを用いたMBE法を用いてSi(111)基板上に25nmの薄膜AlNを作製した後に、光露光技術を用いてレジストパターンを作製し、薄膜AlNを選択的にエッチングしてAlNのパターンを作製し、さらにアンモニアMBE法を用いてGaNを結晶成長することにより、AlN上にGaNを選択成長し、AlNが除去された部分にはGaNが成長しないことを実証した(非特許文献3参照)。アンモニアMBEにおいて、Si上に比べてAlN上はGaNの成長核形成温度が高いため、適切な温度で成長を行えばGaNの選択成長が実現できることが示されている。
【0008】
T.MartenssonらはInP基板上にパターニングした粒子状Auを触媒として用い、VLSモード成長によって規則配列し、形状の制御されたInPナノワイヤーを作製している(非特許文献4参照)。
【非特許文献1】M.Yoshizawa,A.Kikuchi,M.Mori,N.Fujita,and K.Kishino,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997),pp.L459−L462
【非特許文献2】H.Sekiguchi,T.Nakazato,A.Kikuchi,and K.Kishino,Journal of Crystal Growth
【非特許文献3】H.Tang,S.Haffouz,and J.A.Bardwell,Applied Physics Letters 88.172110(2006)
【非特許文献4】T.Martensson,P.Carlberg,M.Borgstrom,L.Montelius,W.Seifert,and L.Samuelson,Nano Letters 4,699(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、基板上の微細柱状結晶は自然核発生により成長されるため、基板表面上に不規則に配置される。また、微細柱状結晶の高さおよび間隔も不均一である。従って、従来の方法で製造される微細柱状結晶は位置および形状にばらつきがあり、そのような位置および形状のばらつきが窒化物半導体の性質のばらつきにつながっていると考えられる。
前述の非特許文献2の方法のように、バッファ層の成長条件や、GaN柱状結晶の成長条件によって柱状結晶の形成が可能であるという報告は多数ある。しかしながら、上記文献の方法を用いても、ばらつきの低減、および柱状結晶の形状や位置を任意に変化させるような高度な制御(例えば意図的に欠陥を導入したフォトニック結晶など)は困難であった。
【0010】
また、薄膜窒化アルミニウムをバッファ層として成長したGaN結晶の形状がバッファ層の表面モホロジーに大きく依存することから、バッファ層のパターニングにより結晶の位置と形状を制御することが可能であることがわかっている。しかしながら、非特許文献3では、膜状のGaN結晶を成長させており、柱状結晶ではない。また、非特許文献3に示した方法では2回の結晶成長が必要であり、煩雑な方法である。
【0011】
従って、III族窒化物半導体の微細柱状結晶のデバイス応用へ向けて、位置および形状のばらつきを低減し、均一化することが課題となっている。しかしながら、従来、窒化物半導体の微細柱状結晶を成長させる条件下で、結晶の位置や形状を簡易な方法により制御することは困難であった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、III族窒化物半導体の微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、位置および形状を制御し、微細柱状結晶の均一な成長を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、III族窒化物半導体からなるナノメーターオーダーの微細柱状結晶(ナノコラムまたはナノピラーともいう)成長の位置および形状制御に関して鋭意検討し、結晶成長前工程として、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を基板上に形成することにより、微細柱状結晶の成長を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記基板表面に成長原料を導き、少なくとも前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程とを含む微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
【0014】
すなわち、予め基板上に金属窒化物または金属酸化物の薄膜パターンを形成し、成長促進領域上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、III族窒化物半導体微細柱状結晶の成長を高度に制御することができる。前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域は微細柱状結晶の成長促進領域としての役割を果たし、該領域上においては微細柱状結晶の成長が促進される。
【0015】
また、本発明は、微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記基板表面のうち、前記境界近傍の前記基板表面を除く領域を成長抑制領域として、前記成長抑制領域以外の領域上のみに、前記微細柱状結晶を選択的に成長させる微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
【0016】
また、本発明は、微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶を成長させるとともに、前記微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において、III族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む、微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
【0017】
成長促進領域上では、微細柱状結晶の成長が他の領域、例えば上記成長抑制領域と比較して促進される。従って、微細柱状結晶を成長抑制領域を除く領域上のみに選択的に成長させることができる。あるいは、成長促進領域上に成長する微細柱状結晶は成長促進領域以外の領域上に成長する微細柱状結晶よりも高さが高い。
【0018】
さらに、本発明は、本発明の微細柱状結晶の製造方法により製造したIII族窒化物構造体に関するものである。
【発明の効果】
【0019】
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜の周縁部と基板表面とが接する部分を含む領域では、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶の成長が促進される。従って、金属窒化物膜または金属酸化物膜のパターン形成によるIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶の位置および形状の制御が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態におけるIII族窒化物構造体100は、図1に示すように、シリコン基板101表面の所定領域に形成された金属窒化物からなる表面を有する膜102を含み、さらに、少なくとも金属窒化物からなる表面を有する膜102およびシリコン基板101表面の境界近傍であって、該膜102の周縁部とシリコン基板101表面とが接する部分を含む領域上に、選択的に形成されたIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶103を含む。本実施形態においては、該境界近傍を除くシリコン基板101表面上には微細柱状結晶が形成されない。
【0022】
図2(a)〜(f)を参照して、本実施形態における微細柱状結晶の製造方法について説明する。
まず、基板表面の所定領域に、金属窒化物からなる表面を有する膜を形成する。金属窒化物からなる表面を有する膜の形成工程は、例えば、基板上にフォトレジスト204をコーティングした後、電子ビーム露光技術(EBL)を用いて所定領域にパターンを形成する。
【0023】
具体的には、まず、シリコン基板202表面にレジスト材料の溶液を塗布、乾燥してフォトレジスト膜204を形成する(図2(a))。本実施形態では、基板202として単結晶シリコンを用いる。このフォトレジスト膜204を真空中に照射される電子ビームにより露光、現像してパターニングし、所望の位置に溝206を形成する(図2(b))。溝の断面形状は、本実施形態では図2(b)に示すように溝底部に近づくにつれて幅が広くなるテーパ状としているが、これに限られず、溝底部に近づくにつれて幅が狭くなる逆テーパ状、溝の底面と側面とが直角である矩形等であってもよい。次に、溝206を含む基板上全面に金属膜208を蒸着させる(図2(c))。金属膜208は溝206の側面には蒸着しない場合もある。
【0024】
金属(Al)膜208形成後、フォトレジスト膜204を除去することにより、その上に形成されたAl膜208を同時に除去する(リフトオフ法)。これにより、基板表面の所定領域にAl膜208を形成する(図2(d))。リフトオフ条件によりAl膜縁の突起はないこともある。また、窒化温度をAl融点以上とすれば突起物は溶けてなくなる。次いで、このAl膜208の表面を窒化することにより、基板表面の所定領域に金属窒化物(AlN)からなる表面を有する膜(AlN膜)210が形成される(図2(e))。
【0025】
金属膜を窒化する方法としては、例えば、金属膜208の設けられたシリコン基板202を高真空チェンバーに搬送後、該Si基板202を室温(25℃)〜1100℃程度に加熱し、基板表面に高周波プラズマ励起の活性窒素、またはアンモニアやヒドラジン等の含窒素化合物を照射して金属窒化物を形成することができる。
この時の基板温度は、上記の範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは700℃以上、950℃以下であり、さらに好ましくは750℃以上、900℃以下である。
【0026】
ここで、AlN膜210は、所定領域に所定のパターンで形成できる。所定のパターン形状は特に限定されないが、例えば、基板1上に、ドット形状の金属膜2を斜方格子状または正方格子状に配置したもの(図3(a)および(b))である。その他のパターン形状としては、例えば、ドット形状を円形のほか、四角、六角形等の多角形としたもの、縞状(図4)、または基板1の露出部分と金属膜2の配置を逆転させた、これらの反転パターン等が挙げられる。反転パターンの例としては、基板表面全体を覆った金属膜2に、所定幅のホールまたはスリット等の開口部を所定のパターンで形成したものである。例えば、上記に挙げたドット形状、縞状等のパターンで基板表面を露出させたものが挙げられる(例えば、図5)。ドット、縞形状等のAlN膜の直径または幅、およびホール、スリット等の開口部の直径または幅は特に限定されないが、金属膜と基板表面とが接する部分を含む領域から微細柱状結晶が成長した場合に、微細柱状結晶で開口部全体が覆われる程度に狭い直径または幅とすることができ、例えば20nm以上、100nm以下とすることができる。
さらに、多数のドット形状の小パターンから構成される円形の大パターン等が例として挙げられる(例えば、図11(a))。大パターンの形状は特に限定されず、円形のほか、多角形、縞状等が挙げられる。
【0027】
図2に戻り、AlN膜210を形成した後、基板表面に、III族窒化物半導体として窒化ガリウム(GaN)からなる微細柱状結晶212を成長させる(図2(f))。ここで、AlN膜210およびシリコン基板202表面の境界214近傍であって、AlN膜210の周縁部とシリコン基板202表面とが接する部分を含む領域を微細柱状結晶の成長促進領域と呼ぶこととする。具体的には、成長促進領域は、AlN膜210の周縁部とシリコン基板202表面とが接する部分と、AlN膜210およびシリコン基板202表面の境界214近傍のAlN膜210と、境界214近傍のシリコン基板202表面とを含む。さらに、上記の範囲に加えて、境界214近傍以外のAlN膜210上の領域を成長促進領域としてもよい。例えば、AlN膜210の直径または幅を微細柱状結晶で全体が覆われる程度に狭くした場合、境界部分214近傍のシリコン基板202表面およびAlN膜210全体を成長促進領域とすることができる。
【0028】
また、AlN膜に所定幅の開口部を所定のパターンで形成した場合、AlN膜210の周縁部とシリコン基板202表面とが接する部分と、AlN膜210およびシリコン基板202表面の境界214近傍のAlN膜210と、境界214近傍のシリコン基板202表面に加えて、境界部分214近傍のシリコン基板202表面以外のシリコン基板202表面も成長促進領域としてもよい。例えば、開口部の直径または幅を微細柱状結晶で基板表面の露出部分全体が覆われる程度に狭くした場合、境界214近傍のAlN膜210および開口部全体のシリコン基板202を成長促進領域とすることができる。
【0029】
上記範囲を成長促進領域とする理由は以下の通りである。微細柱状結晶103は、少なくとも上記成長促進領域上に成長する。ここで、微細柱状結晶103は、上記成長促進領域上に、AlN膜102およびシリコン基板101表面の両方にまたがるようにして成長する(図1)。あるいは、図6(a)および(b)に示すように、微細柱状結晶603は、上記成長促進領域上に、AlN膜602の側面に沿って基板601表面上に直立して成長する。図6(a)は、サファイア基板601上に成長したGaN微細柱状結晶603の基板界面近傍の断面透過電子顕微鏡像を示す図である。サファイア基板601上に形成されたAlN膜602ドットとサファイア基板との境界から、GaN微細柱状結晶603が成長している様子がわかる。また、図6(b)は図6(a)の図を模式的に示す概略図である。
このように成長するのは、AlN膜102およびシリコン基板101表面の境界近傍において微細柱状結晶の成長が促進されるためである。成長が促進される理由としては、必ずしも明らかではないが、AlN膜の周縁部と基板表面とが接する部分において核成長レートが速くなる結果、AlN膜の周縁部に形成された核から、微細柱状結晶の成長が促進されると推測される。AlN膜以外の基板表面ではマイグレーションにより、AlN膜の縁へ材料が吸着することが確認されている。
【0030】
一方、シリコン基板101表面のうち、AlN膜102およびシリコン基板101表面の境界近傍を除く領域は、上記成長促進領域と比較して、微細柱状結晶の成長が促進されないため、微細柱状結晶の成長抑制領域として定義することができる。本実施形態においては、成長抑制領域以外の領域上のみに、微細柱状結晶が選択的に成長する。
【0031】
微細柱状結晶は、AlN膜および基板表面の境界において生成した成長核から、AlN膜側面に沿うように成長していき、基板表面上のAlN膜に接する位置を含んで直立して形成される。具体的には、微細柱状結晶はAlN膜および基板表面の両方にまたがるようにして、またはAlN膜の側面に沿って基板表面上に成長し、基板に対して略垂直に直立して形成される。このように形成された微細柱状結晶の成長パターンとしては以下の例が挙げられる。
【0032】
図1に示すように、AlN膜102周縁に沿って成長した微細柱状結晶103は、複数の独立した微細柱状結晶であってもよいし、別個の微細柱状結晶が成長過程において結合した一本以上の微細柱状結晶であってもよい。複数の微細柱状結晶が結合した場合、AlN膜102周縁に沿って成長した微細柱状結晶103は、例えば、AlN膜がドット形状であった場合には、AlN膜102周縁部を覆うようにして、中空形状を有する一本の微細柱状結晶として形成される。また、図7は、AlN膜102周縁に沿って、境界近傍のAlN膜102および基板101表面上のみに選択的に微細柱状結晶103が成長した他の例である。
【0033】
さらに、ナノメーターオーダーの微細なAlN膜パターンを形成することにより、微細柱状結晶の高度な位置制御が可能となる。例えば、図8に示すように、個々のAlN膜上に一本の微細柱状結晶を形成することができる。ここで、微細柱状結晶103はAlN膜102および基板101表面の境界において生成した成長核から、AlN膜102全体を覆うように成長し、その結果、一本の中実形状を有する微細柱状結晶103が形成される。図8の例では、AlN膜102の直径は一本の微細柱状結晶103よりも小さいため、AlN膜102全体が覆われるように微細柱状結晶103が成長する。
【0034】
また、AlN膜上に所定のパターンでドット形状のホールを形成し、基板101の露出表面に一本の微細柱状結晶を形成することもできる(図9)。この場合、AlN膜102は基板101表面全体を覆うように形成し、さらに、AlN膜102に所定幅の開口部を所定のパターンで形成する。かかる所定幅は、開口部全体が前記境界近傍に含まれる程度に狭い。すなわち、開口部の直径は、一本の微細柱状結晶103で基板101の露出部分全体が覆われる程度に狭く、AlN膜102および基板101表面の境界において生成した成長核から、開口部全体を覆うようにして一本の微細柱状結晶103が形成される。
【0035】
さらに、所定のパターンでストライプ形状を有するAlN膜を形成した場合、AlN膜端に沿って、板形状を有する微細柱状結晶を形成することができる。AlN膜周縁部と基板表面とが接する部分から成長した複数の微細柱状結晶が、成長過程において結合した場合、一枚の板形状を有する微細柱状結晶が形成される。
【0036】
以上に説明した通り、微細柱状結晶103は、AlN膜102の周縁部と基板101表面とが接する部分を含む領域において形成されやすい。上記範囲の成長促進領域において、微細柱状結晶の成長が促進されるため、所望のAlN膜パターンを形成することにより、微細柱状結晶の位置および形状を制御することが可能となる。さらに、ナノメーターオーダーの微細なAlN膜パターンを形成することにより、微細柱状結晶の一本一本の位置および形状を高度に制御することが可能となり、均一な結晶を成長させることができる。
【0037】
本実施形態の方法によって成長するIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶は、ナノメーターオーダーの大きさからなる断面を有する柱状構造の単結晶であり、ナノコラムまたはナノピラーと称される場合もある。結晶の断面形状、直径、高さ等は結晶の成長条件により変動し得るが、通常は以下の通りとなる。
【0038】
微細柱状結晶は、上述の通り、中空形状であってもよいし、中実形状であってもよい。すなわち、微細柱状結晶はAlN膜の周縁部と基板表面とが接する部分を含む領域において、AlN膜を囲むようにチューブ状に形成してもよく、AlN膜およびAlN膜近傍の基板表面を覆って中実形状を有する一本の柱状結晶として形成してもよい。
【0039】
微細柱状結晶の断面形状としては、例えば、六角形、Cの字やくの字状、略円形、楕円形状、またはいくつかの略円形の柱状結晶が結合した形状の微細柱状結晶が挙げられる。例えば、直径20nm以上、100nm以下の微細ドット形状のAlNパターンの場合、AlN膜の周縁部と基板表面とが接する部分を含む領域から成長した微細柱状結晶がAlN膜の周縁に沿って形成され、断面形状は六角形や中心に穴の空いた六角形等となる。また、直線状のAlN膜パターンの場合、AlN膜縁に沿って板状の微細板状結晶が形成され、断面形状は上記の六角形、略円形等が直線状に結合した形状、直線状に延伸した長方形等となる。
【0040】
微細柱状結晶の直径は、AlN膜の大きさ、結晶の成長条件等によっても変動し得るが、例えば、10nm以上、300nm以下である。特に、AlN膜をナノメーターオーダー幅の微細パターンとした場合、AlN膜の形状に微細柱状結晶が形成され、微細柱状結晶の形状および成長位置を高度に制御することができる。
【0041】
微細柱状結晶の高さは、特に限定されず、金属窒化膜の厚さ、結晶の成長条件等によっても変動し得るが、例えば、0.2μm以上、5μm以下である。
【0042】
本実施形態の成長促進領域上に形成される微細柱状結晶は、金属窒化物および金属酸化物の膜厚等に依存して変化し得るが、基板表面に対して略垂直方向に起立して成長する。金属膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、5〜50nmである。
膜厚が上記の範囲内であると、基板表面に対して略垂直方向に起立した微細柱状結晶が成長し、微細柱状結晶の形状および成長位置を高度に制御することができる。ただし、前記数値は例示であり、微細柱状結晶の形状は、Al膜厚のほか、基板または窒化方法等の条件も複雑に関連して変動し得る。
【0043】
金属膜厚の違いにより結晶の成長にも違いが生じる原因としては、必ずしも明らかではないが、以下のように推測できる。金属膜厚が厚すぎる場合、窒化工程において十分に金属が窒化されない可能性がある。金属の十分な窒化がなされない場合、基板からの結晶情報が成長する窒化物半導体結晶に引き継がれにくいため、柱状結晶が傾いて成長する場合もあると考えられる。一方、金属膜厚が薄すぎる場合、表面の金属膜が途中工程において一部離脱してしまう可能性が考えられる。
【0044】
微細柱状結晶の成長は、本実施形態では、MBE法を用いる。基板表面に前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とIII属金属を含む成長ガスを成長原料として同時に導き、細柱状結晶を成長させる。この際の成長条件は、III属金属に比べて活性窒素の実効的な供給量比を大きくし、柱状結晶が成長する条件とする。
【0045】
柱状結晶を成長させるために、MBEは以下の条件で行うことが望ましい。温度は、成長させるIII族窒化物半導体の種類に応じて適宜選択されるが、350℃以上、1100℃以下の範囲である。例えば、GaNの場合は400℃以上、1000℃以下であり、AlNの場合は500℃以上、1100℃以下、およびInNの場合は350℃以上、600℃以下が好ましい。特に、基板温度を一定温度以上(例えば、965℃以上)とした場合、シリコン表面に結晶が析出せず、AlN膜およびその近傍上のみに微細柱状結晶が形成される。
上記の温度範囲で、窒素リッチの条件下でMBEを行うことにより、窒化物半導体の微細柱状結晶を成長させることができる。
【0046】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、GaNからなる微細柱状結晶を例に挙げて説明したが、微細柱状結晶の構成材料としては、GaN以外のIII族窒化物半導体、例えば、AlN、InN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等の一般式AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、かつ0≦x+y≦1)で表される窒化物半導体や、BN等のボロン窒化物等を用いることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、基板の材料として、単結晶シリコンを用いたが、これに限られず、SiC、SiO2、Si3N4、GaN、サファイア基板等を用いることができる
【0049】
また、上記実施形態では、基板上にAl膜形成後、表面を窒化することで、表面がAlNで構成された膜を形成したが、金属窒化物膜の形成方法として、金属膜の代わりに金属窒化物を直接基板上にスパッタリング法等により形成してもよい。この場合、窒化工程を省略することができる。
【0050】
また、上記金属窒化膜の構成は、AlNに限られず、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどのIII族金属または亜鉛などのII族金属の窒化物または酸化物から構成されるものを用いてもよい。例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの窒化物、または亜鉛の酸化物が挙げられる。さらに、窒化物は酸窒化物も含む。
ここで、上記金属は、シリコンのみからなるものを含まないが、金属に基板のシリコンが拡散してシリサイドを形成しているものは含むものとする。
【0051】
金属酸化物からなる表面を有する膜の形成方法としては、例えば、上述の実施形態と同様に金属膜を基板上に形成した後、該基板を酸素雰囲気中、加熱することにより該金属膜の少なくとも表面を酸化させ、金属酸化物からなる表面を有する膜を形成することができる。
または、金属膜の代わりに金属酸化物を直接基板上にスパッタリング法等により形成してもよい。この場合、酸化工程を省略することができる。
【0052】
微細柱状結晶の成長方法については、上記実施形態ではMBEを用いた例を示したが、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法、またはハイドライド気相エピタキシー(HVPE)法を用いてもよい。
【0053】
上記実施形態では、成長促進領域上のみに、微細柱状結晶を選択的に成長させる場合について説明したが、成長促進領域以外の領域でも微細柱状結晶が形成されてもよい。この場合、成長促進領域上に成長した微細柱状結晶は、成長促進領域以外の領域で成長した微細柱状結晶よりも高さが高い。これは、成長促進領域上の微細柱状結晶の核形成が、それ以外の領域上と比較して、速くなるためである。成長促進領域以外の領域上で成長した微細柱状結晶の高さに対する、成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の高さの比は、成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の方が高ければよく、特に限定されないが、好ましくは1.05以上、2以下、より好ましくは1.3以上、2以下である。
【0054】
ここで、成長促進領域以外の領域とは、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜および基板表面の境界近傍以外の領域であり、基板表面のうち、境界近傍の基板表面を除く領域および、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜表面のうち、境界近傍の膜表面を除く領域が挙げられる。これら全ての領域において微細柱状結晶が形成される場合、他の領域と比較して、成長促進領域においては微細柱状結晶の成長が促進される。微細柱状結晶の高さは、成長促進領域上に形成された微細柱状結晶が一番高く、次に、成長促進領域以外の金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜上に形成された微細柱状結晶、および成長促進領域以外の基板表面上に形成された微細柱状結晶の順番で高くなる。
【0055】
また、基板としてサファイア基板などを用いた場合、サファイア表面には窒化物半導体の結晶自体が成長しない場合と、柱状結晶の代わりに膜状の結晶成長が生じる場合がある。この場合、微細柱状結晶の成長促進領域上にのみ、選択的にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶が成長し、上記成長促進領域以外の領域においては微細柱状結晶は成長しないことになる。
【0056】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
n−Si(111)基板上に電子ビーム(EB)リソグラフィーを用いて薄膜のアルミニウム(Al)パターンを形成した。Al膜の厚さは20nm、Al膜のパターンは、300nm周期で三角格子状に直径85nmの円形ディスク状薄膜アルミニウムが並んだパターンとした。図11(a)は、EB露光により作製したAlパターンのSEM像を示す図である。これを超高真空チェンバーに搬送後、基板温度860℃にて、高周波プラズマ励起の活性窒素を15分間照射して窒化アルミニウム(AlN)を形成した。さらに基板温度966℃にて前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とガリウムを同時に照射し、窒化ガリウム(GaN)の微細柱状結晶を1時間成長させた。この際の成長条件はガリウムに比べて活性窒素の実効的な供給量比を大きくし、柱状結晶が成長する条件とした。
【0058】
本実施例では、AlN膜と基板表面との境界近傍以外の基板表面上には、微細柱状結晶は形成されなかった。図10は、GaN微細柱状結晶成長後の基板表面のSEM像(低倍率)を示す図である。また、図11(b)および(c)は、GaN微細柱状結晶成長後の基板をさらに拡大したSEM像を示す図であり、図11(b)は表面SEM像を示す図、および図11(c)は鳥瞰SEM像を示す図である。通常の微細柱状結晶の成長温度より高い温度で成長させることで、Si基板上へのGaN析出が抑制された。また、AlN膜の形成された位置に微細柱状結晶が成長しており、AlN膜パターンが微細柱状結晶に転写されていることがわかる。本実施例では、AlNパターンを形成した領域近傍のみに選択的に微細柱状結晶を成長させることができ、微細柱状結晶の位置および形状の高度な制御が達成された。
【0059】
得られた微細柱状結晶の形状を評価した。
Al薄膜エッジからの微細柱状結晶の成長が確認できる。微細柱状結晶は、AlN膜および基板表面の境界近傍を成長促進領域として、AlN膜および基板表面の両方にまたがるようにしてAlN膜周縁に成長した。大部分のAlN膜の中心部分では微細柱状結晶が成長しておらず、チューブ状の柱状結晶が確認された。柱状結晶の断面形状は中空形状の六角形、O型、またはC型形状であった。形成された微細柱状結晶の高さは平均約1400nmであった。
【0060】
(実施例2)
基板温度957℃にて前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とガリウムを同時に照射し、窒化ガリウム(GaN)の微細柱状結晶を形成した以外は、実施例1と同様の方法によりGaNの微細柱状結晶を形成した。微細柱状結晶はAlN膜のエッジ部から成長し、断面形状は中空形状の六角形、O型、またはC型形状であった。図12(a)および(b)は、本実施例で得られたGaN微細柱状結晶の基板表面のSEM像を示す図である。
実施例1と異なり、本実施例では、成長促進領域以外の基板表面上にも微細柱状結晶が成長した。基板表面のうち、AlN膜と基板表面との境界近傍を除く領域上には、AlN膜を含む成長促進領域上に成長した微細柱状結晶と比較して、高さの低い微細柱状結晶が成長した。成長促進領域上に成長した微細柱状結晶の高さは平均約1500nmであり、成長促進領域以外の、基板表面に成長した微細柱状結晶の高さは平均約1000nm以下であった。また、成長促進領域を除く基板表面に成長した微細柱状結晶は、直径が小さく、成長密度も成長促進領域上と比較して低かった。さらに、成長促進領域を除く基板表面に成長した微細柱状結晶は、形状および位置が不均一であった。
【0061】
一方、AlN膜周縁に成長した微細柱状結晶の径のばらつきは、Si基板上に直接成長したものに比べて1/3に低減しており、高さの均一性も向上した。さらに、AlN膜のパターンに沿って微細柱状結晶が成長しており、高度な位置制御が達成された。
【0062】
(実施例3)
Al膜のパターンを、300nm周期で三角格子状に直径79nmの円形ディスク状薄膜アルミニウムが並んだパターンとした以外は、実施例1と同様の方法によりGaNの微細柱状結晶を形成した。図13は、本実施例で得られたGaN微細柱状結晶の基板表面のSEM像を示す図である。実施例1と同様に、基板表面のうち、AlN膜と基板表面との境界近傍を除く領域上には、微細柱状結晶は形成されなかった。微細柱状結晶はAlN膜のエッジ部から成長し、断面形状は中空形状の六角形、O型、またはC型形状であった。形成された微細柱状結晶の高さは平均約1400nmであった。
本実施例では、AlNパターンを形成した領域のみに選択的に微細柱状結晶を成長させることができ、微細柱状結晶の位置および形状の高度な制御が達成された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電子デバイスおよび光デバイスの分野において応用可能である。微細柱状結晶は優れた発光特性を持ち、発光デバイスへの応用が期待される。また、バイオチップ等の技術への応用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図2】薄膜Alパターン基板上GaN微細柱状結晶の成長プロセスの概略を示す断面図である。
【図3】(a)円形ドット形状の金属膜が斜方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。(b)円形ドット形状の金属膜が正方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。
【図4】縞状に金属膜が配置されたパターンを示す平面図である。
【図5】図3(a)の反転パターンで配置された金属膜を示す平面図である。
【図6】サファイア基板上に成長したGaN微細柱状結晶の基板界面近傍の透過電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図8】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図9】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図10】GaN微細柱状結晶成長後の基板表面のSEM像を示す図である。
【図11】EB露光により作製したAlパターンのSEM像(a)、GaN微細柱状結晶成長後の基板の表面SEM像(b)および鳥瞰SEM像(c)を示す図である。
【図12】GaN微細柱状結晶成長後の基板の表面SEM像を示す図である。
【図13】GaN微細柱状結晶成長後の基板の表面SEM像を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 金属窒化物からなる表面を有する膜
100 III族窒化物構造体
101 シリコン基板
102 金属窒化物膜
103 III族窒化物半導体微細柱状結晶
202 シリコン基板
204 フォトレジスト膜
206 溝
208 金属膜
210 AlN膜
212 GaN微細柱状結晶
214 AlN膜と基板表面との境界
601 サファイア基板
602 AlN膜
603 GaN微細柱状結晶
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体微細柱状結晶の製造方法およびIII族窒化物構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物は、高品質短波長発光ダイオードおよびレーザーダイオードを実現できる素子として注目されている。このようなIII族窒化物構造を利用した電子デバイス等の実用化にあたっては解決すべき多くの問題がある。
【0003】
半導体結晶の成長技術、例えばエピタキシャル技術、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)技術等は、積層方向には制御性を有するが、通常、面内方向に構造を作るためには別の技術を用いて加工する必要がある。結晶加工技術は大別して、結晶成長後に結晶を加工するトップダウン型と、結晶成長前に基板を加工し、結晶成長と同時に構造が作製されるボトムアップ型がある。トップダウン型は加工により結晶にダメージが与えられ、特に微細な構造では表面積が多くなるために問題となる。一方、ボトムアップ型の作製法は構造の制御性と結晶品質の両方を確保できる場合が多い。
【0004】
窒化物半導体に関しては、ボトムアップ型の微細構造作製技術として酸化珪素などのマスクを用いる方法がある。基板にパターニングしたマスクの開口部分に選択的に結晶成長するこの方法は気相成長法では実用的に使われている手法であるが、分子線エピタキシー法(以下、MBEと略記する)においてはマスク上に多結晶が析出してしまう。
【0005】
M.Yoshizawaらは、窒素源として高周波プラズマ励起の活性窒素を用いるMBEにおいて、窒素過剰下で窒化ガリウムを成長することによって、直径100nm程度の微細な柱状の窒化ガリウム結晶を自己組織的に形成する方法を見出した(非特許文献1参照)。
【0006】
さらにH.Sekiguchiらは、サファイア基板上に薄膜窒化アルミニウムをバッファ層として成長する窒化ガリウム微細柱状結晶の直径、密度、および独立度が、バッファ層の表面モホロジーに大きく依存することを報告している(非特許文献2参照)。薄膜窒化アルミニウムバッファ層は凹凸を持った形状に成長する。そのモホロジーは膜厚に依存し、膜厚が薄いと小さなグレインが多数形成され、厚くなるとグレインサイズが大きくなる傾向がある。さらにこの上に成長した柱状の窒化ガリウム結晶は、窒化アルミニウムの膜厚が厚くなるほど径が小さく、互いに独立する傾向である。上記報告ではサファイア基板を用いているが、他の基板においても、バッファ層のモホロジーとその上に成長した柱状結晶の形状は大きく関連している。
【0007】
H.Tangらは、結晶成長法にアンモニアを用いたMBE法を用いてSi(111)基板上に25nmの薄膜AlNを作製した後に、光露光技術を用いてレジストパターンを作製し、薄膜AlNを選択的にエッチングしてAlNのパターンを作製し、さらにアンモニアMBE法を用いてGaNを結晶成長することにより、AlN上にGaNを選択成長し、AlNが除去された部分にはGaNが成長しないことを実証した(非特許文献3参照)。アンモニアMBEにおいて、Si上に比べてAlN上はGaNの成長核形成温度が高いため、適切な温度で成長を行えばGaNの選択成長が実現できることが示されている。
【0008】
T.MartenssonらはInP基板上にパターニングした粒子状Auを触媒として用い、VLSモード成長によって規則配列し、形状の制御されたInPナノワイヤーを作製している(非特許文献4参照)。
【非特許文献1】M.Yoshizawa,A.Kikuchi,M.Mori,N.Fujita,and K.Kishino,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997),pp.L459−L462
【非特許文献2】H.Sekiguchi,T.Nakazato,A.Kikuchi,and K.Kishino,Journal of Crystal Growth
【非特許文献3】H.Tang,S.Haffouz,and J.A.Bardwell,Applied Physics Letters 88.172110(2006)
【非特許文献4】T.Martensson,P.Carlberg,M.Borgstrom,L.Montelius,W.Seifert,and L.Samuelson,Nano Letters 4,699(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、基板上の微細柱状結晶は自然核発生により成長されるため、基板表面上に不規則に配置される。また、微細柱状結晶の高さおよび間隔も不均一である。従って、従来の方法で製造される微細柱状結晶は位置および形状にばらつきがあり、そのような位置および形状のばらつきが窒化物半導体の性質のばらつきにつながっていると考えられる。
前述の非特許文献2の方法のように、バッファ層の成長条件や、GaN柱状結晶の成長条件によって柱状結晶の形成が可能であるという報告は多数ある。しかしながら、上記文献の方法を用いても、ばらつきの低減、および柱状結晶の形状や位置を任意に変化させるような高度な制御(例えば意図的に欠陥を導入したフォトニック結晶など)は困難であった。
【0010】
また、薄膜窒化アルミニウムをバッファ層として成長したGaN結晶の形状がバッファ層の表面モホロジーに大きく依存することから、バッファ層のパターニングにより結晶の位置と形状を制御することが可能であることがわかっている。しかしながら、非特許文献3では、膜状のGaN結晶を成長させており、柱状結晶ではない。また、非特許文献3に示した方法では2回の結晶成長が必要であり、煩雑な方法である。
【0011】
従って、III族窒化物半導体の微細柱状結晶のデバイス応用へ向けて、位置および形状のばらつきを低減し、均一化することが課題となっている。しかしながら、従来、窒化物半導体の微細柱状結晶を成長させる条件下で、結晶の位置や形状を簡易な方法により制御することは困難であった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、III族窒化物半導体の微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、位置および形状を制御し、微細柱状結晶の均一な成長を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、III族窒化物半導体からなるナノメーターオーダーの微細柱状結晶(ナノコラムまたはナノピラーともいう)成長の位置および形状制御に関して鋭意検討し、結晶成長前工程として、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を基板上に形成することにより、微細柱状結晶の成長を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記基板表面に成長原料を導き、少なくとも前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程とを含む微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
【0014】
すなわち、予め基板上に金属窒化物または金属酸化物の薄膜パターンを形成し、成長促進領域上にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を選択的に成長させることにより、III族窒化物半導体微細柱状結晶の成長を高度に制御することができる。前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域は微細柱状結晶の成長促進領域としての役割を果たし、該領域上においては微細柱状結晶の成長が促進される。
【0015】
また、本発明は、微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記基板表面のうち、前記境界近傍の前記基板表面を除く領域を成長抑制領域として、前記成長抑制領域以外の領域上のみに、前記微細柱状結晶を選択的に成長させる微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
【0016】
また、本発明は、微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶を成長させるとともに、前記微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において、III族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む、微細柱状結晶の製造方法に関するものである。
【0017】
成長促進領域上では、微細柱状結晶の成長が他の領域、例えば上記成長抑制領域と比較して促進される。従って、微細柱状結晶を成長抑制領域を除く領域上のみに選択的に成長させることができる。あるいは、成長促進領域上に成長する微細柱状結晶は成長促進領域以外の領域上に成長する微細柱状結晶よりも高さが高い。
【0018】
さらに、本発明は、本発明の微細柱状結晶の製造方法により製造したIII族窒化物構造体に関するものである。
【発明の効果】
【0019】
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜の周縁部と基板表面とが接する部分を含む領域では、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶の成長が促進される。従って、金属窒化物膜または金属酸化物膜のパターン形成によるIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶の位置および形状の制御が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態におけるIII族窒化物構造体100は、図1に示すように、シリコン基板101表面の所定領域に形成された金属窒化物からなる表面を有する膜102を含み、さらに、少なくとも金属窒化物からなる表面を有する膜102およびシリコン基板101表面の境界近傍であって、該膜102の周縁部とシリコン基板101表面とが接する部分を含む領域上に、選択的に形成されたIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶103を含む。本実施形態においては、該境界近傍を除くシリコン基板101表面上には微細柱状結晶が形成されない。
【0022】
図2(a)〜(f)を参照して、本実施形態における微細柱状結晶の製造方法について説明する。
まず、基板表面の所定領域に、金属窒化物からなる表面を有する膜を形成する。金属窒化物からなる表面を有する膜の形成工程は、例えば、基板上にフォトレジスト204をコーティングした後、電子ビーム露光技術(EBL)を用いて所定領域にパターンを形成する。
【0023】
具体的には、まず、シリコン基板202表面にレジスト材料の溶液を塗布、乾燥してフォトレジスト膜204を形成する(図2(a))。本実施形態では、基板202として単結晶シリコンを用いる。このフォトレジスト膜204を真空中に照射される電子ビームにより露光、現像してパターニングし、所望の位置に溝206を形成する(図2(b))。溝の断面形状は、本実施形態では図2(b)に示すように溝底部に近づくにつれて幅が広くなるテーパ状としているが、これに限られず、溝底部に近づくにつれて幅が狭くなる逆テーパ状、溝の底面と側面とが直角である矩形等であってもよい。次に、溝206を含む基板上全面に金属膜208を蒸着させる(図2(c))。金属膜208は溝206の側面には蒸着しない場合もある。
【0024】
金属(Al)膜208形成後、フォトレジスト膜204を除去することにより、その上に形成されたAl膜208を同時に除去する(リフトオフ法)。これにより、基板表面の所定領域にAl膜208を形成する(図2(d))。リフトオフ条件によりAl膜縁の突起はないこともある。また、窒化温度をAl融点以上とすれば突起物は溶けてなくなる。次いで、このAl膜208の表面を窒化することにより、基板表面の所定領域に金属窒化物(AlN)からなる表面を有する膜(AlN膜)210が形成される(図2(e))。
【0025】
金属膜を窒化する方法としては、例えば、金属膜208の設けられたシリコン基板202を高真空チェンバーに搬送後、該Si基板202を室温(25℃)〜1100℃程度に加熱し、基板表面に高周波プラズマ励起の活性窒素、またはアンモニアやヒドラジン等の含窒素化合物を照射して金属窒化物を形成することができる。
この時の基板温度は、上記の範囲内であれば特に限定されないが、好ましくは700℃以上、950℃以下であり、さらに好ましくは750℃以上、900℃以下である。
【0026】
ここで、AlN膜210は、所定領域に所定のパターンで形成できる。所定のパターン形状は特に限定されないが、例えば、基板1上に、ドット形状の金属膜2を斜方格子状または正方格子状に配置したもの(図3(a)および(b))である。その他のパターン形状としては、例えば、ドット形状を円形のほか、四角、六角形等の多角形としたもの、縞状(図4)、または基板1の露出部分と金属膜2の配置を逆転させた、これらの反転パターン等が挙げられる。反転パターンの例としては、基板表面全体を覆った金属膜2に、所定幅のホールまたはスリット等の開口部を所定のパターンで形成したものである。例えば、上記に挙げたドット形状、縞状等のパターンで基板表面を露出させたものが挙げられる(例えば、図5)。ドット、縞形状等のAlN膜の直径または幅、およびホール、スリット等の開口部の直径または幅は特に限定されないが、金属膜と基板表面とが接する部分を含む領域から微細柱状結晶が成長した場合に、微細柱状結晶で開口部全体が覆われる程度に狭い直径または幅とすることができ、例えば20nm以上、100nm以下とすることができる。
さらに、多数のドット形状の小パターンから構成される円形の大パターン等が例として挙げられる(例えば、図11(a))。大パターンの形状は特に限定されず、円形のほか、多角形、縞状等が挙げられる。
【0027】
図2に戻り、AlN膜210を形成した後、基板表面に、III族窒化物半導体として窒化ガリウム(GaN)からなる微細柱状結晶212を成長させる(図2(f))。ここで、AlN膜210およびシリコン基板202表面の境界214近傍であって、AlN膜210の周縁部とシリコン基板202表面とが接する部分を含む領域を微細柱状結晶の成長促進領域と呼ぶこととする。具体的には、成長促進領域は、AlN膜210の周縁部とシリコン基板202表面とが接する部分と、AlN膜210およびシリコン基板202表面の境界214近傍のAlN膜210と、境界214近傍のシリコン基板202表面とを含む。さらに、上記の範囲に加えて、境界214近傍以外のAlN膜210上の領域を成長促進領域としてもよい。例えば、AlN膜210の直径または幅を微細柱状結晶で全体が覆われる程度に狭くした場合、境界部分214近傍のシリコン基板202表面およびAlN膜210全体を成長促進領域とすることができる。
【0028】
また、AlN膜に所定幅の開口部を所定のパターンで形成した場合、AlN膜210の周縁部とシリコン基板202表面とが接する部分と、AlN膜210およびシリコン基板202表面の境界214近傍のAlN膜210と、境界214近傍のシリコン基板202表面に加えて、境界部分214近傍のシリコン基板202表面以外のシリコン基板202表面も成長促進領域としてもよい。例えば、開口部の直径または幅を微細柱状結晶で基板表面の露出部分全体が覆われる程度に狭くした場合、境界214近傍のAlN膜210および開口部全体のシリコン基板202を成長促進領域とすることができる。
【0029】
上記範囲を成長促進領域とする理由は以下の通りである。微細柱状結晶103は、少なくとも上記成長促進領域上に成長する。ここで、微細柱状結晶103は、上記成長促進領域上に、AlN膜102およびシリコン基板101表面の両方にまたがるようにして成長する(図1)。あるいは、図6(a)および(b)に示すように、微細柱状結晶603は、上記成長促進領域上に、AlN膜602の側面に沿って基板601表面上に直立して成長する。図6(a)は、サファイア基板601上に成長したGaN微細柱状結晶603の基板界面近傍の断面透過電子顕微鏡像を示す図である。サファイア基板601上に形成されたAlN膜602ドットとサファイア基板との境界から、GaN微細柱状結晶603が成長している様子がわかる。また、図6(b)は図6(a)の図を模式的に示す概略図である。
このように成長するのは、AlN膜102およびシリコン基板101表面の境界近傍において微細柱状結晶の成長が促進されるためである。成長が促進される理由としては、必ずしも明らかではないが、AlN膜の周縁部と基板表面とが接する部分において核成長レートが速くなる結果、AlN膜の周縁部に形成された核から、微細柱状結晶の成長が促進されると推測される。AlN膜以外の基板表面ではマイグレーションにより、AlN膜の縁へ材料が吸着することが確認されている。
【0030】
一方、シリコン基板101表面のうち、AlN膜102およびシリコン基板101表面の境界近傍を除く領域は、上記成長促進領域と比較して、微細柱状結晶の成長が促進されないため、微細柱状結晶の成長抑制領域として定義することができる。本実施形態においては、成長抑制領域以外の領域上のみに、微細柱状結晶が選択的に成長する。
【0031】
微細柱状結晶は、AlN膜および基板表面の境界において生成した成長核から、AlN膜側面に沿うように成長していき、基板表面上のAlN膜に接する位置を含んで直立して形成される。具体的には、微細柱状結晶はAlN膜および基板表面の両方にまたがるようにして、またはAlN膜の側面に沿って基板表面上に成長し、基板に対して略垂直に直立して形成される。このように形成された微細柱状結晶の成長パターンとしては以下の例が挙げられる。
【0032】
図1に示すように、AlN膜102周縁に沿って成長した微細柱状結晶103は、複数の独立した微細柱状結晶であってもよいし、別個の微細柱状結晶が成長過程において結合した一本以上の微細柱状結晶であってもよい。複数の微細柱状結晶が結合した場合、AlN膜102周縁に沿って成長した微細柱状結晶103は、例えば、AlN膜がドット形状であった場合には、AlN膜102周縁部を覆うようにして、中空形状を有する一本の微細柱状結晶として形成される。また、図7は、AlN膜102周縁に沿って、境界近傍のAlN膜102および基板101表面上のみに選択的に微細柱状結晶103が成長した他の例である。
【0033】
さらに、ナノメーターオーダーの微細なAlN膜パターンを形成することにより、微細柱状結晶の高度な位置制御が可能となる。例えば、図8に示すように、個々のAlN膜上に一本の微細柱状結晶を形成することができる。ここで、微細柱状結晶103はAlN膜102および基板101表面の境界において生成した成長核から、AlN膜102全体を覆うように成長し、その結果、一本の中実形状を有する微細柱状結晶103が形成される。図8の例では、AlN膜102の直径は一本の微細柱状結晶103よりも小さいため、AlN膜102全体が覆われるように微細柱状結晶103が成長する。
【0034】
また、AlN膜上に所定のパターンでドット形状のホールを形成し、基板101の露出表面に一本の微細柱状結晶を形成することもできる(図9)。この場合、AlN膜102は基板101表面全体を覆うように形成し、さらに、AlN膜102に所定幅の開口部を所定のパターンで形成する。かかる所定幅は、開口部全体が前記境界近傍に含まれる程度に狭い。すなわち、開口部の直径は、一本の微細柱状結晶103で基板101の露出部分全体が覆われる程度に狭く、AlN膜102および基板101表面の境界において生成した成長核から、開口部全体を覆うようにして一本の微細柱状結晶103が形成される。
【0035】
さらに、所定のパターンでストライプ形状を有するAlN膜を形成した場合、AlN膜端に沿って、板形状を有する微細柱状結晶を形成することができる。AlN膜周縁部と基板表面とが接する部分から成長した複数の微細柱状結晶が、成長過程において結合した場合、一枚の板形状を有する微細柱状結晶が形成される。
【0036】
以上に説明した通り、微細柱状結晶103は、AlN膜102の周縁部と基板101表面とが接する部分を含む領域において形成されやすい。上記範囲の成長促進領域において、微細柱状結晶の成長が促進されるため、所望のAlN膜パターンを形成することにより、微細柱状結晶の位置および形状を制御することが可能となる。さらに、ナノメーターオーダーの微細なAlN膜パターンを形成することにより、微細柱状結晶の一本一本の位置および形状を高度に制御することが可能となり、均一な結晶を成長させることができる。
【0037】
本実施形態の方法によって成長するIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶は、ナノメーターオーダーの大きさからなる断面を有する柱状構造の単結晶であり、ナノコラムまたはナノピラーと称される場合もある。結晶の断面形状、直径、高さ等は結晶の成長条件により変動し得るが、通常は以下の通りとなる。
【0038】
微細柱状結晶は、上述の通り、中空形状であってもよいし、中実形状であってもよい。すなわち、微細柱状結晶はAlN膜の周縁部と基板表面とが接する部分を含む領域において、AlN膜を囲むようにチューブ状に形成してもよく、AlN膜およびAlN膜近傍の基板表面を覆って中実形状を有する一本の柱状結晶として形成してもよい。
【0039】
微細柱状結晶の断面形状としては、例えば、六角形、Cの字やくの字状、略円形、楕円形状、またはいくつかの略円形の柱状結晶が結合した形状の微細柱状結晶が挙げられる。例えば、直径20nm以上、100nm以下の微細ドット形状のAlNパターンの場合、AlN膜の周縁部と基板表面とが接する部分を含む領域から成長した微細柱状結晶がAlN膜の周縁に沿って形成され、断面形状は六角形や中心に穴の空いた六角形等となる。また、直線状のAlN膜パターンの場合、AlN膜縁に沿って板状の微細板状結晶が形成され、断面形状は上記の六角形、略円形等が直線状に結合した形状、直線状に延伸した長方形等となる。
【0040】
微細柱状結晶の直径は、AlN膜の大きさ、結晶の成長条件等によっても変動し得るが、例えば、10nm以上、300nm以下である。特に、AlN膜をナノメーターオーダー幅の微細パターンとした場合、AlN膜の形状に微細柱状結晶が形成され、微細柱状結晶の形状および成長位置を高度に制御することができる。
【0041】
微細柱状結晶の高さは、特に限定されず、金属窒化膜の厚さ、結晶の成長条件等によっても変動し得るが、例えば、0.2μm以上、5μm以下である。
【0042】
本実施形態の成長促進領域上に形成される微細柱状結晶は、金属窒化物および金属酸化物の膜厚等に依存して変化し得るが、基板表面に対して略垂直方向に起立して成長する。金属膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、5〜50nmである。
膜厚が上記の範囲内であると、基板表面に対して略垂直方向に起立した微細柱状結晶が成長し、微細柱状結晶の形状および成長位置を高度に制御することができる。ただし、前記数値は例示であり、微細柱状結晶の形状は、Al膜厚のほか、基板または窒化方法等の条件も複雑に関連して変動し得る。
【0043】
金属膜厚の違いにより結晶の成長にも違いが生じる原因としては、必ずしも明らかではないが、以下のように推測できる。金属膜厚が厚すぎる場合、窒化工程において十分に金属が窒化されない可能性がある。金属の十分な窒化がなされない場合、基板からの結晶情報が成長する窒化物半導体結晶に引き継がれにくいため、柱状結晶が傾いて成長する場合もあると考えられる。一方、金属膜厚が薄すぎる場合、表面の金属膜が途中工程において一部離脱してしまう可能性が考えられる。
【0044】
微細柱状結晶の成長は、本実施形態では、MBE法を用いる。基板表面に前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とIII属金属を含む成長ガスを成長原料として同時に導き、細柱状結晶を成長させる。この際の成長条件は、III属金属に比べて活性窒素の実効的な供給量比を大きくし、柱状結晶が成長する条件とする。
【0045】
柱状結晶を成長させるために、MBEは以下の条件で行うことが望ましい。温度は、成長させるIII族窒化物半導体の種類に応じて適宜選択されるが、350℃以上、1100℃以下の範囲である。例えば、GaNの場合は400℃以上、1000℃以下であり、AlNの場合は500℃以上、1100℃以下、およびInNの場合は350℃以上、600℃以下が好ましい。特に、基板温度を一定温度以上(例えば、965℃以上)とした場合、シリコン表面に結晶が析出せず、AlN膜およびその近傍上のみに微細柱状結晶が形成される。
上記の温度範囲で、窒素リッチの条件下でMBEを行うことにより、窒化物半導体の微細柱状結晶を成長させることができる。
【0046】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、GaNからなる微細柱状結晶を例に挙げて説明したが、微細柱状結晶の構成材料としては、GaN以外のIII族窒化物半導体、例えば、AlN、InN、AlGaN、InGaN、AlInGaN等の一般式AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、かつ0≦x+y≦1)で表される窒化物半導体や、BN等のボロン窒化物等を用いることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、基板の材料として、単結晶シリコンを用いたが、これに限られず、SiC、SiO2、Si3N4、GaN、サファイア基板等を用いることができる
【0049】
また、上記実施形態では、基板上にAl膜形成後、表面を窒化することで、表面がAlNで構成された膜を形成したが、金属窒化物膜の形成方法として、金属膜の代わりに金属窒化物を直接基板上にスパッタリング法等により形成してもよい。この場合、窒化工程を省略することができる。
【0050】
また、上記金属窒化膜の構成は、AlNに限られず、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどのIII族金属または亜鉛などのII族金属の窒化物または酸化物から構成されるものを用いてもよい。例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの窒化物、または亜鉛の酸化物が挙げられる。さらに、窒化物は酸窒化物も含む。
ここで、上記金属は、シリコンのみからなるものを含まないが、金属に基板のシリコンが拡散してシリサイドを形成しているものは含むものとする。
【0051】
金属酸化物からなる表面を有する膜の形成方法としては、例えば、上述の実施形態と同様に金属膜を基板上に形成した後、該基板を酸素雰囲気中、加熱することにより該金属膜の少なくとも表面を酸化させ、金属酸化物からなる表面を有する膜を形成することができる。
または、金属膜の代わりに金属酸化物を直接基板上にスパッタリング法等により形成してもよい。この場合、酸化工程を省略することができる。
【0052】
微細柱状結晶の成長方法については、上記実施形態ではMBEを用いた例を示したが、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)法、またはハイドライド気相エピタキシー(HVPE)法を用いてもよい。
【0053】
上記実施形態では、成長促進領域上のみに、微細柱状結晶を選択的に成長させる場合について説明したが、成長促進領域以外の領域でも微細柱状結晶が形成されてもよい。この場合、成長促進領域上に成長した微細柱状結晶は、成長促進領域以外の領域で成長した微細柱状結晶よりも高さが高い。これは、成長促進領域上の微細柱状結晶の核形成が、それ以外の領域上と比較して、速くなるためである。成長促進領域以外の領域上で成長した微細柱状結晶の高さに対する、成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の高さの比は、成長促進領域上で成長した微細柱状結晶の方が高ければよく、特に限定されないが、好ましくは1.05以上、2以下、より好ましくは1.3以上、2以下である。
【0054】
ここで、成長促進領域以外の領域とは、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜および基板表面の境界近傍以外の領域であり、基板表面のうち、境界近傍の基板表面を除く領域および、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜表面のうち、境界近傍の膜表面を除く領域が挙げられる。これら全ての領域において微細柱状結晶が形成される場合、他の領域と比較して、成長促進領域においては微細柱状結晶の成長が促進される。微細柱状結晶の高さは、成長促進領域上に形成された微細柱状結晶が一番高く、次に、成長促進領域以外の金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜上に形成された微細柱状結晶、および成長促進領域以外の基板表面上に形成された微細柱状結晶の順番で高くなる。
【0055】
また、基板としてサファイア基板などを用いた場合、サファイア表面には窒化物半導体の結晶自体が成長しない場合と、柱状結晶の代わりに膜状の結晶成長が生じる場合がある。この場合、微細柱状結晶の成長促進領域上にのみ、選択的にIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶が成長し、上記成長促進領域以外の領域においては微細柱状結晶は成長しないことになる。
【0056】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
n−Si(111)基板上に電子ビーム(EB)リソグラフィーを用いて薄膜のアルミニウム(Al)パターンを形成した。Al膜の厚さは20nm、Al膜のパターンは、300nm周期で三角格子状に直径85nmの円形ディスク状薄膜アルミニウムが並んだパターンとした。図11(a)は、EB露光により作製したAlパターンのSEM像を示す図である。これを超高真空チェンバーに搬送後、基板温度860℃にて、高周波プラズマ励起の活性窒素を15分間照射して窒化アルミニウム(AlN)を形成した。さらに基板温度966℃にて前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とガリウムを同時に照射し、窒化ガリウム(GaN)の微細柱状結晶を1時間成長させた。この際の成長条件はガリウムに比べて活性窒素の実効的な供給量比を大きくし、柱状結晶が成長する条件とした。
【0058】
本実施例では、AlN膜と基板表面との境界近傍以外の基板表面上には、微細柱状結晶は形成されなかった。図10は、GaN微細柱状結晶成長後の基板表面のSEM像(低倍率)を示す図である。また、図11(b)および(c)は、GaN微細柱状結晶成長後の基板をさらに拡大したSEM像を示す図であり、図11(b)は表面SEM像を示す図、および図11(c)は鳥瞰SEM像を示す図である。通常の微細柱状結晶の成長温度より高い温度で成長させることで、Si基板上へのGaN析出が抑制された。また、AlN膜の形成された位置に微細柱状結晶が成長しており、AlN膜パターンが微細柱状結晶に転写されていることがわかる。本実施例では、AlNパターンを形成した領域近傍のみに選択的に微細柱状結晶を成長させることができ、微細柱状結晶の位置および形状の高度な制御が達成された。
【0059】
得られた微細柱状結晶の形状を評価した。
Al薄膜エッジからの微細柱状結晶の成長が確認できる。微細柱状結晶は、AlN膜および基板表面の境界近傍を成長促進領域として、AlN膜および基板表面の両方にまたがるようにしてAlN膜周縁に成長した。大部分のAlN膜の中心部分では微細柱状結晶が成長しておらず、チューブ状の柱状結晶が確認された。柱状結晶の断面形状は中空形状の六角形、O型、またはC型形状であった。形成された微細柱状結晶の高さは平均約1400nmであった。
【0060】
(実施例2)
基板温度957℃にて前述の高周波プラズマ励起の活性窒素とガリウムを同時に照射し、窒化ガリウム(GaN)の微細柱状結晶を形成した以外は、実施例1と同様の方法によりGaNの微細柱状結晶を形成した。微細柱状結晶はAlN膜のエッジ部から成長し、断面形状は中空形状の六角形、O型、またはC型形状であった。図12(a)および(b)は、本実施例で得られたGaN微細柱状結晶の基板表面のSEM像を示す図である。
実施例1と異なり、本実施例では、成長促進領域以外の基板表面上にも微細柱状結晶が成長した。基板表面のうち、AlN膜と基板表面との境界近傍を除く領域上には、AlN膜を含む成長促進領域上に成長した微細柱状結晶と比較して、高さの低い微細柱状結晶が成長した。成長促進領域上に成長した微細柱状結晶の高さは平均約1500nmであり、成長促進領域以外の、基板表面に成長した微細柱状結晶の高さは平均約1000nm以下であった。また、成長促進領域を除く基板表面に成長した微細柱状結晶は、直径が小さく、成長密度も成長促進領域上と比較して低かった。さらに、成長促進領域を除く基板表面に成長した微細柱状結晶は、形状および位置が不均一であった。
【0061】
一方、AlN膜周縁に成長した微細柱状結晶の径のばらつきは、Si基板上に直接成長したものに比べて1/3に低減しており、高さの均一性も向上した。さらに、AlN膜のパターンに沿って微細柱状結晶が成長しており、高度な位置制御が達成された。
【0062】
(実施例3)
Al膜のパターンを、300nm周期で三角格子状に直径79nmの円形ディスク状薄膜アルミニウムが並んだパターンとした以外は、実施例1と同様の方法によりGaNの微細柱状結晶を形成した。図13は、本実施例で得られたGaN微細柱状結晶の基板表面のSEM像を示す図である。実施例1と同様に、基板表面のうち、AlN膜と基板表面との境界近傍を除く領域上には、微細柱状結晶は形成されなかった。微細柱状結晶はAlN膜のエッジ部から成長し、断面形状は中空形状の六角形、O型、またはC型形状であった。形成された微細柱状結晶の高さは平均約1400nmであった。
本実施例では、AlNパターンを形成した領域のみに選択的に微細柱状結晶を成長させることができ、微細柱状結晶の位置および形状の高度な制御が達成された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、電子デバイスおよび光デバイスの分野において応用可能である。微細柱状結晶は優れた発光特性を持ち、発光デバイスへの応用が期待される。また、バイオチップ等の技術への応用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図2】薄膜Alパターン基板上GaN微細柱状結晶の成長プロセスの概略を示す断面図である。
【図3】(a)円形ドット形状の金属膜が斜方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。(b)円形ドット形状の金属膜が正方格子状に配置されたパターンを示す平面図である。
【図4】縞状に金属膜が配置されたパターンを示す平面図である。
【図5】図3(a)の反転パターンで配置された金属膜を示す平面図である。
【図6】サファイア基板上に成長したGaN微細柱状結晶の基板界面近傍の透過電子顕微鏡像を示す図である。
【図7】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図8】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図9】GaN微細柱状結晶の構造の概略を示す断面図である。
【図10】GaN微細柱状結晶成長後の基板表面のSEM像を示す図である。
【図11】EB露光により作製したAlパターンのSEM像(a)、GaN微細柱状結晶成長後の基板の表面SEM像(b)および鳥瞰SEM像(c)を示す図である。
【図12】GaN微細柱状結晶成長後の基板の表面SEM像を示す図である。
【図13】GaN微細柱状結晶成長後の基板の表面SEM像を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 金属窒化物からなる表面を有する膜
100 III族窒化物構造体
101 シリコン基板
102 金属窒化物膜
103 III族窒化物半導体微細柱状結晶
202 シリコン基板
204 フォトレジスト膜
206 溝
208 金属膜
210 AlN膜
212 GaN微細柱状結晶
214 AlN膜と基板表面との境界
601 サファイア基板
602 AlN膜
603 GaN微細柱状結晶
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、
前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、
前記基板表面に成長原料を導き、少なくとも前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む微細柱状結晶の製造方法。
【請求項2】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記基板表面のうち、前記境界近傍の前記基板表面を除く領域を成長抑制領域として、前記成長抑制領域以外の領域上のみに、前記微細柱状結晶を選択的に成長させる、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項3】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶を成長させるとともに、前記微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において、III族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項4】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜および前記基板表面の両方にまたがるようにして、前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項5】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜の側面に沿って前記基板表面上に直立する前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項6】
前記成長促進領域が、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分と、前記膜および前記基板表面の境界近傍の前記膜と、前記境界近傍の前記基板表面とを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記境界近傍以外の前記膜上の領域を成長促進領域とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項8】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜周縁部を覆うようにして一本の中空形状を有する前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1乃至6のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項9】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜全体を覆うようにして一本の中実形状を有する前記微細柱状結晶を成長させる、請求項7に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項10】
膜を形成する前記工程において、前記基板表面全体を覆い、所定幅のドット形状の開口部を所定のパターンで有する前記膜を形成し、前記所定幅が開口部全体が前記境界近傍に含まれる程度に狭く、
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記開口部全体を覆うようにして一本の前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項11】
膜を形成する前記工程において、ドット形状の前記金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を所定のパターンで形成する、請求項1乃至9のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項12】
前記ドット形状の金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜の平均直径が100nm以下である、請求項11に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項13】
膜を形成する前記工程において、ストライプ形状の前記金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を所定のパターンで形成する、請求項1乃至9のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項14】
膜を形成する前記工程は、
基板表面の所定領域に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の少なくとも表面を窒化または酸化する工程と
を含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項15】
前記微細柱状結晶が単結晶である、請求項1乃至14のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項16】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、分子線エピタキシー法(MBE)によりIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を形成する、請求項1乃至15のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項17】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、分子線エピタキシー法による微細柱状結晶の成長温度を350℃以上、1100℃以下とする、請求項16に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項18】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、窒素源として高周波プラズマ励起した活性窒素を用いる、請求項1乃至17のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項19】
金属膜の少なくとも表面を窒化する前記工程において、窒素源として高周波プラズマ励起した活性窒素を用いる、請求項14乃至18のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項20】
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜における前記金属がIII族金属またはII族金属である、請求項1乃至19のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項21】
前記金属がアルミニウム、ガリウム、インジウム、および亜鉛からなる群より選択されるいずれかである、請求項20に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項22】
前記金属がアルミニウムである、請求項21に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項23】
前記III族窒化物半導体がAlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、かつ0≦x+y≦1)の一般式で表される、請求項1乃至22のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項24】
前記III族窒化物半導体が窒化ガリウムである、請求項23に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載の方法により製造した微細柱状結晶を含むIII族窒化物構造体。
【請求項26】
基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、
前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記成長促進領域上に選択的に形成されたIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶とを含み、
前記境界近傍を除く前記基板表面上には前記微細柱状結晶が形成されていない、
III族窒化物構造体。
【請求項27】
基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、
少なくとも前記膜および前記基板表面の境界近傍上であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記成長促進領域上に形成されたIII族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶と、
前記境界近傍を除く前記基板表面上に形成されたIII族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶と、
を含むIII族窒化物構造体。
【請求項28】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜および前記基板表面の両方にまたがるようにして形成された微細柱状結晶である、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項29】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜の側面に沿って前記基板表面上に直立するようにして形成された微細柱状結晶である、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項30】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜周縁を覆うようにして形成された一本の中空形状を有する微細柱状結晶である、請求項26乃至29のいずれかに記載のIII族窒化物構造体。
【請求項31】
さらに、前記境界近傍を除く前記膜上に形成されたIII族窒化物半導体からなる前記微細柱状結晶を含む、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項32】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記境界近傍上および前記境界近傍以外の前記膜上に、前記膜全体を覆うようにして形成された一本の中実形状を有する微細柱状結晶である、請求項31に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項33】
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する前記膜が、ストライプ形状を有する所定のパターンで形成され、
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜端に沿って形成された一枚の板形状を有する微細柱状結晶である、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項1】
基板表面の所定領域に、金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を形成する工程と、
前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、
前記基板表面に成長原料を導き、少なくとも前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む微細柱状結晶の製造方法。
【請求項2】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記基板表面のうち、前記境界近傍の前記基板表面を除く領域を成長抑制領域として、前記成長抑制領域以外の領域上のみに、前記微細柱状結晶を選択的に成長させる、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項3】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、III族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶を成長させるとともに、前記微細柱状結晶の成長促進領域以外の領域において、III族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶を成長させる工程と、
を含む、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項4】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜および前記基板表面の両方にまたがるようにして、前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項5】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜の側面に沿って前記基板表面上に直立する前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項6】
前記成長促進領域が、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分と、前記膜および前記基板表面の境界近傍の前記膜と、前記境界近傍の前記基板表面とを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記境界近傍以外の前記膜上の領域を成長促進領域とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項8】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜周縁部を覆うようにして一本の中空形状を有する前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1乃至6のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項9】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記膜全体を覆うようにして一本の中実形状を有する前記微細柱状結晶を成長させる、請求項7に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項10】
膜を形成する前記工程において、前記基板表面全体を覆い、所定幅のドット形状の開口部を所定のパターンで有する前記膜を形成し、前記所定幅が開口部全体が前記境界近傍に含まれる程度に狭く、
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、前記成長促進領域上に、前記開口部全体を覆うようにして一本の前記微細柱状結晶を成長させる、請求項1に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項11】
膜を形成する前記工程において、ドット形状の前記金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を所定のパターンで形成する、請求項1乃至9のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項12】
前記ドット形状の金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜の平均直径が100nm以下である、請求項11に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項13】
膜を形成する前記工程において、ストライプ形状の前記金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜を所定のパターンで形成する、請求項1乃至9のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項14】
膜を形成する前記工程は、
基板表面の所定領域に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の少なくとも表面を窒化または酸化する工程と
を含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項15】
前記微細柱状結晶が単結晶である、請求項1乃至14のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項16】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、分子線エピタキシー法(MBE)によりIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶を形成する、請求項1乃至15のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項17】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、分子線エピタキシー法による微細柱状結晶の成長温度を350℃以上、1100℃以下とする、請求項16に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項18】
微細柱状結晶を成長させる前記工程において、窒素源として高周波プラズマ励起した活性窒素を用いる、請求項1乃至17のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項19】
金属膜の少なくとも表面を窒化する前記工程において、窒素源として高周波プラズマ励起した活性窒素を用いる、請求項14乃至18のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項20】
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜における前記金属がIII族金属またはII族金属である、請求項1乃至19のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項21】
前記金属がアルミニウム、ガリウム、インジウム、および亜鉛からなる群より選択されるいずれかである、請求項20に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項22】
前記金属がアルミニウムである、請求項21に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項23】
前記III族窒化物半導体がAlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、かつ0≦x+y≦1)の一般式で表される、請求項1乃至22のいずれかに記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項24】
前記III族窒化物半導体が窒化ガリウムである、請求項23に記載の微細柱状結晶の製造方法。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載の方法により製造した微細柱状結晶を含むIII族窒化物構造体。
【請求項26】
基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、
前記膜および前記基板表面の境界近傍であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記成長促進領域上に選択的に形成されたIII族窒化物半導体からなる微細柱状結晶とを含み、
前記境界近傍を除く前記基板表面上には前記微細柱状結晶が形成されていない、
III族窒化物構造体。
【請求項27】
基板表面の所定領域に形成された金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する膜と、
少なくとも前記膜および前記基板表面の境界近傍上であって、前記膜の周縁部と前記基板表面とが接する部分を含む領域を成長促進領域として、前記成長促進領域上に形成されたIII族窒化物半導体からなる第一の微細柱状結晶と、
前記境界近傍を除く前記基板表面上に形成されたIII族窒化物半導体からなる前記第一の微細柱状結晶よりも高さの低い第二の微細柱状結晶と、
を含むIII族窒化物構造体。
【請求項28】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜および前記基板表面の両方にまたがるようにして形成された微細柱状結晶である、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項29】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜の側面に沿って前記基板表面上に直立するようにして形成された微細柱状結晶である、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項30】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜周縁を覆うようにして形成された一本の中空形状を有する微細柱状結晶である、請求項26乃至29のいずれかに記載のIII族窒化物構造体。
【請求項31】
さらに、前記境界近傍を除く前記膜上に形成されたIII族窒化物半導体からなる前記微細柱状結晶を含む、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項32】
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記境界近傍上および前記境界近傍以外の前記膜上に、前記膜全体を覆うようにして形成された一本の中実形状を有する微細柱状結晶である、請求項31に記載のIII族窒化物構造体。
【請求項33】
金属窒化物または金属酸化物からなる表面を有する前記膜が、ストライプ形状を有する所定のパターンで形成され、
前記成長促進領域上に形成された前記微細柱状結晶が、前記膜端に沿って形成された一枚の板形状を有する微細柱状結晶である、請求項26または27に記載のIII族窒化物構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−218477(P2008−218477A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49765(P2007−49765)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(502350504)学校法人上智学院 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(502350504)学校法人上智学院 (50)
【Fターム(参考)】
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