III族窒化物半導体成長用基板、III族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板、ならびに、これらの製造方法
【課題】成長温度が1050℃以下のAlGaNやGaNやGaInNだけでなく、成長温度が高い高Al組成のAlxGa1-xNにおいても結晶性の良いIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子、III族窒化物半導体自立基板およびこれらを製造するためのIII族窒化物半導体成長用基板、ならびに、これらを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも表面部分2がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板3と、前記表面部分2上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層4と、前記単一金属層4上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層5と、を具える。
【解決手段】少なくとも表面部分2がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板3と、前記表面部分2上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層4と、前記単一金属層4上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層5と、を具える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体成長用基板、III族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板、ならびに、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、Al、GaなどとNとの化合物からなるIII族窒化物半導体で構成される例えばIII族窒化物半導体素子は、発光素子または電子デバイス用素子として広く用いられている。このようなIII族窒化物半導体は、現在、例えばサファイアからなる結晶成長基板上に、MOCVD法により形成されるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、III族窒化物半導体と結晶成長基板(一般にはサファイア)とは、格子定数が大きく異なるため、この格子定数の差に起因する転位が生じ、結晶成長基板上に成長させたIII族窒化物半導体層の結晶品質が低下してしまうという問題がある。
【0004】
この問題を解決するため、従来技術としては、例えばサファイア基板上に、低温多結晶または非晶質状態のバッファ層を介してGaN層を成長させる方法がある。しかしながら、この形成されたGaN層の転位密度は109〜1010cm-2と大きく、十分な結晶性を得ることは難しかった。
【0005】
また、他の従来技術としては、特許文献1〜3に、サファイア基板上に、金属窒化物層を介してGaN層を成長させる技術が開示されている。この方法によれば、GaN層の転位密度を上記技術と比較して低減することができ、高品質のGaN層を成長させることが可能である。これは、金属窒化物層であるCrN層等とGaN層との格子定数および熱膨張係数の差が比較的小さいためである。また、このCrN層は、化学エッチング液で選択的にエッチングすることができ、ケミカルリフトオフ法を用いるプロセスにおいて有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/126330号公報
【特許文献2】特開2008−91728号公報
【特許文献3】特開2008−91729号公報
【0007】
しかしながら、青色よりも短波長領域(例えば波長が400nm以下)の光を発生させるための窒化物半導体素子において、発生させるべき光の波長を短波長化するほど、窒化物半導体素子のAlxGa1-xN層のAl組成を大きくする必要がある。概ねAl組成30原子%を越えるAlxGa1-xNの成長温度は、CrNの融点である1050℃程度を超える。このため、CrNを用いて概ねAl組成30原子%を越えるAlxGa1-xNを含むIII族窒化物半導体層を成長させると、CrNが溶融して結晶性が失われ、その上に形成したIII族窒化物半導体層の結晶性が低下するおそれがある。したがって、成長温度が高い高Al組成のAlxGa1-xNを成長させるためのバッファ層としては、CrNを用いることはできず、1050℃を超える高温の熱処理に耐え得る材料を用いることが必要である。また、金属窒化物層としてCrN層を形成する場合、窒化工程を経るため、歩留まりが低下し、スループットの低下が製造コストを増加させてしまうという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題を解決し、成長温度が1050℃以下のAlGaNやGaNやGaInNだけでなく、成長温度が高い高Al組成のAlxGa1-xNにおいても結晶性の良いIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子、III族窒化物半導体自立基板およびこれらを製造するためのIII族窒化物半導体成長用基板、ならびに、これらを効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期
成長層と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板。
【0010】
(2)前記単一金属層の厚さは、5〜100nmである上記(1)に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【0011】
(3)前記少なくとも表面部分が、Al組成が50原子%以上のAlxGa1-xN(0.5≦x≦1)からなる上記(1)または(2)に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一に記載のIII族窒化物半導体成長用基板上に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
【0013】
(5)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【0014】
(6)前記熱処理の温度が1200〜1300℃である上記(5)に記載のIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【0015】
(7)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させてIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程と、前記少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を素子分離する工程と、前記III族窒化物半導体層側に支持基板を形成する工程と、前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体素子を得る工程と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0016】
(8)前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む上記(7)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0017】
(9)前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度1050〜1300℃の範囲で成長させることを含む上記(7)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0018】
(10)前記熱処理を施した後、前記単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程をさらに具える上記(7)、(8)または(9)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0019】
(11)前記初期成長層が、第1バッファ層および該第1バッファ層上に成長された第2バッファ層からなり、前記第1バッファ層の成長温度が900〜1260℃の範囲で、前記第2バッファ層の成長温度が1030〜1300℃の範囲で、かつ前記第1バッファ層の成長温度が前記第2バッファ層の成長温度と等しいか低い上記(10)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0020】
(12)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHfからなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体自立基板を得る工程と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【0021】
(13)前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む上記(12)に記載のIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のIII族窒化物半導体成長用基板は、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができる。
【0023】
また、本発明によれば、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いることにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を提供することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができるIII族窒化物半導体成長用基板を製造することができる。
【0025】
加えて、本発明は、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いて、ケミカルリフトオフ法を行うことにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従う窒化物半導体用基板の断面構造を示す模式図である。
【図2】本発明に従う窒化物半導体素子構造体の製造工程を示す模式図である。
【図3】本発明に従う試料の表面SEM写真である。
【図4】本発明に従う試料の表面SEM写真である。
【図5】従来例に従う試料の表面SEM写真である。
【図6】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図7】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図8】従来例に従う試料の表面SEM写真である。
【図9】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図10】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図11】AFMによる本発明に従う試料の表面写真である。
【図12】AFMによる本発明に従う試料の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明のIII族窒化物半導体成長用基板の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、本発明におけるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板とは、上記III族窒化物半導体成長用基板上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層を成長させたものをいい、III族窒化物半導体素子とは、上記III族窒化物半導体エピタキシャル基板に対して、電極蒸着などのデバイスプロセスを施して素子分離したものをいい、そして、III族窒化物半導体自立基板とは、数百μm以上の厚さのIII族窒化物半導体層を上記III族窒化物半導体成長用基板上に成長させた後、このIII族窒化物半導体成長用基板を剥がして得られたものをいう。図1は、この発明に従うIII族窒化物半導体成長用基板の断面構造を模式的に示したものである。
【0028】
図1に示すIII族窒化物半導体成長用基板1は、少なくとも表面部分、図1では表面部分2が少なくともAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板3と、表面部分2上に形成され、結晶化されたZrまたはHf材料からなる単一金属層4とを具え、かかる構成を採用することにより、単一金属層4の表面平坦性の低下を抑制し、その後の熱処理により金属層の結晶性を向上させ、その上方に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板3をケミカルリフトオフにより剥離することを可能にしたものである。なお、図中のハッチングは、説明のため、便宜上施したものである。
【0029】
III族窒化物半導体成長用基板1は、前記単一金属層4上に形成された、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層、図1では2層のバッファ層5a,5bからなる初期成長層5をさらに具える。その上に成長させる窒化物半導体層結晶性を向上させるためである。これらバッファ層のAl組成は、その上に形成される材料に応じて適宜選択することができる。
【0030】
結晶成長基板3は、例えば、サファイア、Si、SiC若しくはGaNのようなベース基板6上に少なくともAlを含むIII族窒化物半導体2を有するテンプレート基板、AlN単結晶基板、または、サファイアの表面を窒化して形成される表面窒化サファイア基板とすることができる。図1は、結晶成長基板3が、サファイア基板6上にAlN単結晶層2を有するAlNテンプレート基板である場合を示したものである。この少なくともAlを含むIII族窒化物半導体からなる表面部分2は、この上方に成長させるAlGaN層の結晶欠陥を低減させる効果を有する。
【0031】
結晶成長基板3は、少なくとも表面部分2が、Al組成が50原子%以上のAlxGa1-xN(0.5≦x≦1)からなるのが好ましく、80原子%以上のAlxGa1-xN(0.8≦x≦1)からなるのがより好ましい。上方に成長させるIII族窒化物半導体層のAl組成と同等程度の場合、ホモエピタキシャル成長となり、転位欠陥密度の少ない良好な結晶性を持つ層を成長させることができるためである。また、上方に成長させるIII族窒化物半導体層のAl組成よりも高くすると、圧縮応力によりさらに転位低減の効果を期待できること、および、III族窒化物半導体材料の中で成長温度が最も高く、その上に成長させるIII族窒化物半導体層の成長時に劣化しないことから、少なくとも表面部分2はAlNからなるのが好ましい。
【0032】
単一金属層4は、ZrまたはHfからなるものとする。ZrまたはHf材料は、高融点であり、本発明の単一金属層として優れた物性を有するためである。また、結晶成長基板3の少なくとも表面部分2をAlを含むIII族窒化物半導体材料とした場合、このAlを含むIII族窒化物半導体の結晶構造と同じ六方最密充填(hcp)構造を有し、a軸の格子定数および線膨張係数が前記Alを含むIII族窒化物半導体のものと近いためである。
【0033】
単一金属層4の厚さは、5〜100nmとするのが好ましい。5nm未満であると、単一金属層4が薄すぎてエッチング液が入り込みにくくなったり、あるいは、単一金属層の厚さが熱処理によって不連続状態となり、下地基板である結晶成長基板表面が露出して、結晶成長基板上にIII族窒化物半導体層が直接成長したりして、ケミカルリフトオフが困難となる。一方、100nmを超えると、単一金属層自体の固相エピによる高結晶化が望めず、その上のIII族窒化物半導体層の結晶性が悪化し、欠陥が増加するためである。また、この単一金属層4は、スパッタ法や真空蒸着法などの方法を用いて結晶成長基板3上に成膜させることができる。
【0034】
図1には示されないが、上述した構成を有するIII族窒化物半導体成長用基板1上に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を具えることにより、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル成長基板を得ることができる。
【0035】
同様に、図1には示されないが、上述した構成を有するIII族窒化物半導体成長用基板1を用いて、本発明に従うIII族窒化物半導体自立基板およびIII族窒化物半導体素子を得ることができる。
【0036】
次に、本発明のIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明のIII族窒化物半導体成長用基板1は、図1に示すように、少なくとも表面部分2がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板3上にZrまたはHf材料からなる単一金属層4を形成する工程と、水素雰囲気中で、単一金属層4に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程とを具え、かかる構成を採用することにより、単一金属層4の表面平坦性の低下を抑制し、その後の熱処理により金属層の結晶性を向上させ、その上方に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板3をケミカルリフトオフにより剥離することを可能にしたものである
【0038】
上記熱処理は、圧力50〜760Torrの範囲、時間1〜60分の範囲で施すのが好ましい。単一金属層4を固相エピにより結晶化させ、その後単一金属層上に成長させるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させるためである。
【0039】
熱処理を施す工程の後、単一金属層4上に、AlxGa1-xN材料(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層5を形成する工程をさらに具える。その後形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性向上のためである。GaNの好適な成長温度は900〜1100℃であり、AlNの好適な成長温度は1000〜1300℃であり、また、AlxGa1-xN材料(0<x<1)はGaNとAlNの混晶であることから、AlxGa1-xN材料(0<x<1)は、900〜1300℃の範囲の成長温度で形成されるのが好ましい。
【0040】
本発明に従うIII窒化物半導体成長用基板1は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0041】
次に、図2(a)に示すように、本発明のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板8の製造方法は、上述した方法で作製されたIII族窒化物半導体成長用基板1の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層7をエピタキシャル成長させる工程を具え、かかる構成を有することにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を製造することができるものである。
【0042】
III族窒化物半導体層7は、GaN、AlxGa1-xN材料(0<x<1)、AlNのいずれかを含むことから、最高温度900〜1300℃の範囲で、MOCVD法、HVPE法、MBE法等を用いて成長させるのが好ましい。最高温度1050〜1300℃の範囲でも成長させることができるため、CrN材料を用いた場合と異なり、リフトオフ可能なIII族窒化物半導体材料およびその成長条件が制限されることが無く、より好ましい。
【0043】
熱処理を施す工程の後、単一金属層4上に、AlxGa1-xN材料(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層5を形成する工程をさらに具えるのが好ましい。その後形成されるIII族窒化物半導体層7の結晶性向上のためであって、その成長温度は、900〜1300℃の範囲とするのが好ましい。
【0044】
初期成長層5は、第1バッファ層5aおよびこの第1バッファ層5a上に成長された第2バッファ層5bからなり、第1バッファ層5aの成長温度が900〜1260℃の範囲で、第2バッファ層5bの成長温度が1030〜1300℃の範囲で、かつ第1バッファ層5aの成長温度が第2バッファ層5bの成長温度よりも小さいのが好ましい。第1のバッファ層5aを成長させる成長初期の段階において、比較的低い温度で成長させることにより多数の成長初期核の形成を促して結晶性の向上を図り、その後の第2のバッファ層5bを成長させる際に成長温度を高くすることにより多数の初期核の間にできた溝・窪みを埋めることにより、結晶性の向上とともに平坦性を向上させるためである。また、バッファ層は3層以上としてもよく、その場合は、成長温度を順次高くしていくのが好ましい。
【0045】
本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板8は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0046】
次に、本発明のIII族窒化物半導体素子9の製造方法は、図2(a)および図2(b)に示すように、上述した方法で作成されたIII族窒化物半導体エピタキシャル基板8に対し、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層7を素子分離する工程と、III族窒化物半導体層7側に支持基板10を形成する工程と、単一金属層4を選択エッチングすることにより、III族窒化物半導体層7(図2(b)に示す場合にはIII族窒化物半導体層7およびバッファ層5)と結晶成長基板3とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体素子9を得る工程とを具え、かかる構成を採用することにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体素子を効率よく製造することができる。
【0047】
少なくとも一層のIII族窒化物半導体層7は、図2(a)および図2(b)に示すように、例えばn-AlGaN層11、AlInGaN系量子井戸活性層12、p-AlGaN層13とすることができる。なお、これらIII族窒化物半導体層11、12および13の導電型の積層順序は逆であってもよい。また、支持基板10は、放熱性を有する材料を用いて形成するのが好ましい。
【0048】
本発明に従うIII族窒化物半導体素子9は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0049】
次に、本発明のIII族窒化物半導体自立基板の製造方法は、上述した方法で作製されたIII族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、単一金属層を選択エッチングすることにより、III族窒化物半導体層と結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体自立基板を得る工程とを具え、かかる構成を採用することにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体自立基板を効率よく製造することができる。
【0050】
III族窒化物半導体層の厚さは、50μm以上とする。ハンドリング性確保のためである。
【0051】
本発明に従うIII族窒化物半導体自立基板は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0052】
なお、上述したところは、代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
サファイア上に、MOCVD法を用いてAlN単結晶層(厚さ:1μm)を成長させて、窒化物半導体成長用基板としてAlNテンプレート基板を作製した。
【0054】
得られたAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、表1に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜し、その後、水素雰囲気下で熱処理を施した。このようにして形成した試料の一部に、所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(厚さ:1μm)をさらに成膜し、試料1−1〜1−6を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
(評価)
試料1−1〜1−6について、表面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて倍率5000倍で観察した。その結果、金属種としてZrおよびHfをそれぞれ用いた試料1−1および1−3は、窒化処理をせず、水素雰囲気下での熱処理を施しても、図3および図4に示すように連続的に繋がった平坦な膜状態を維持していた。また、X線回折装置による2θ/ω測定により、結晶化していることがわかった。一方、金属種としてCrを用いた試料1−5は、図5に示すとおり、Crが不定形に凝集したものがランダムに点在し、下地のAlN面が現れており、Crによる被覆面積が著しく減少することが分かった。また、X線回折装置による2θ/ω測定により、Crはアモルファス状態であることが分かった。
【0057】
また、単一金属層上にAlNバッファ層を形成した試料1−2および1−4は、AlNバッファ層が単結晶となり、AFM(原子間力顕微鏡)による原子レベルでの平坦性も良好であった。また、フッ酸に浸すことで、金属層を容易にエッチングすることができ、ケミカルリフトオフが可能であった。一方、試料1−6は、Cr上に成長したAlNバッファ層は結晶性・平坦性とも非常に良好であったが、Crエッチング液に浸しても、ケミカルリフトオフすることができなかった。これは、このような表面を有する金属層上にAlNバッファ層を成長させると、下地AlN層上に直接接してホモエピタキシャル成長し、下地AlNの良好な結晶性および平坦性を引き継いで成長したためである。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、表2に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜した。このようにして形成した試料の一部に、表2に示す水素雰囲気下での熱処理または水素およびアンモニア雰囲気下での窒化処理を施し、あるいは所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(1μm)をさらに成膜し、試料2−1〜2−12を得た。
【0059】
【表2】
【0060】
(評価)
金属層の結晶化および結晶方位を確認するため、X線回折装置により、2θ/ω測定を行った。図6に示すとおり、単一金属層Zrをスパッタリングで成膜したままの試料2−1は、Zrの回折ピークが見られず、アモルファス状態であった。一方、試料2−3はZr(0002)および(0004)の回折ピークが見られ、水素雰囲気下での熱処理によってZr金属が結晶化していることが分かる。試料2−2のピークは、試料2−3と比較して僅かに高角側にずれていた。これは、試料2−2は、Zr中にZrNが僅かに混ざった状態になっているためと思われる。
【0061】
単一金属層Hfをスパッタリングで成膜したままの試料2−6は、図7に示すとおり、ある程度結晶配向性を持っていることが確認できたが、試料2−8とは異なる位置に回折ピークが見られる。試料2−7では、HfNに由来する回折ピークがいくつも見られ、多結晶になっていることが分かった。試料2−8では、Hf(0002)および(0004)の回折ピークが見られ、水素雰囲気下での熱処理によって、Hf金属が結晶化していることが分かる。
【0062】
CrNの融点以上の温度で窒化した試料2−11の表面をSEMで観察した結果を図8に示す。Crは窒化されて三角形の台形状に凝集したものがランダムに点在している。また、CrNによる被覆率が低下し、下地のAlNテンプレートがあらわになっている部分が多い状態であった。
【0063】
試料2−4、2−5、2−9、2−10、2−12のAlNバッファ層に対し、X線ロッキングカーブ測定、AFMによる表面平坦性の評価を行った結果を表3に示す。ZrおよびHfにおいて、金属層に窒化処理を施す場合と比べて、水素雰囲気下での熱処理を施した場合の方が、結晶性はほぼ同等か、より良好であり、かつ表面平坦性が大幅に改善できることがわかった。また、試料2−4、2−5、2−9、2−10をフッ酸に浸したところ、各金属が溶解してケミカルリフトオフが可能であることを確認した。
【0064】
一方、Crを窒化してCrNとし、このCrNの融点以上の温度でAlNバッファ層を成長させた試料2−12では、結晶性および表面平坦性とも非常に良好であるが、Crエッチング液に浸した所、ケミカルリフトオフできなかった。これは、図8に示すようにCrNによる被覆率が低下し、AlNバッファ層が、下地のAlNテンプレートの良好な結晶性・平坦性をそのまま引き継いで直接成長したためである。
【0065】
【表3】
【0066】
(実施例3)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、表4に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜した。このようにして形成した試料の一部に、表4に示す水素雰囲気下での熱処理を施し、あるいは所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(1μm)をさらに成膜し、試料3−2、3−4、3−6、3−8を得た。
【0067】
これとは別に、表面を窒化処理していないサファイア基板上に、スパッタ法を用いて、表4に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜した。このようにして形成した試料の一部に、表4に示す水素雰囲気下での熱処理を施し、あるいは所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(1μm)をさらに成膜し、試料3−1、3−3、3−5、3−7を得た。
【0068】
【表4】
【0069】
(評価)
試料3−1、3−2、3−5、3−6に対し、金属層の結晶化および結晶方位を確認するため、X線回折装置により、2θ/ωスキャンの測定を行った。図9および図10に示すとおり、AlNテンプレートを用いずともいずれの金属種の場合も金属膜は結晶化していることが分かる。
【0070】
試料3−3、3−4、3−7、3−8のAlNバッファ層に対し、X線ロッキングカーブの評価を行った結果を表5に示す。金属層の下にAlN単結晶層がない場合、金属層の上のAlNバッファ層に対する回折X線のピークが見られず、アモルファス状態になっていた。したがって、金属層が結晶配向性を持つだけでは不十分であり、少なくとも表面部分がAlN単結晶からなる結晶成長基板を用いて、その上に単一金属層を形成した方が、結晶性が格段に良好な初期成長層を得ることができる。
【0071】
【表5】
【0072】
(実施例4)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、単一金属層としてHfを20nm成膜した。このようにして形成した試料に、表6に示す水素雰囲気下での熱処理を施した。その後、表6に示す所定の条件下でAlNバッファ層(厚さ:1μm)をさらに成膜し、試料4−1および4−2を得た。さらに、試料4−1で得られたAlNバッファ層上に、厚さ100μmのAlN層を1250℃で48時間かけて成膜し、その後、BHF(バッファードフッ酸)に浸漬することより、Hf金属層を選択的にエッチングし、成長用のAlNテンプレート基板を剥離して、直径2インチのAlN単結晶の自立基板を得た。
【0073】
【表6】
【0074】
(評価)
AlNバッファ層に対するX線ロッキングカーブの測定、AFMによる表面平坦性の評価を行った。図11に示すように、単一条件で成長させた試料4−2では、一部表面が荒れており、ピットも見られるのに対して、成長温度を途中で変えて成長した試料4−1では、図12に示すように、表面が非常に平坦な膜が得られている。また、表7に示すとおり、ロッキングカーブの半値幅も測定誤差の範囲内で同等であり、良好な結晶が得られている。したがって、単一条件での成長でも結晶性が良好で原子レベルで平坦なバッファ層を得ることができるが、成長温度を段階的に高くすることにより、良好な結晶性を維持しつつ、さらに表面をより良好に平坦化することができる。また、平坦な表面上に厚く成膜を行い、自立基板を得ることができる。また、Hf金属層をエッチングした後のAlNテンプレート基板は、次の成長用基板として再利用することもできる。
【0075】
【表7】
【0076】
(実施例5)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて厚み10nmのHfを成膜した。当該試料をMOCVD装置にセットし、水素雰囲気下で圧力200Torr、基板温度1250℃、10分間の熱処理を施した。次に、基板温度を1100℃まで降温させ、アンモニアガスおよびTMA(トリメチルアルミニウム)の供給を行って初期成長層の第1バッファ層であるAlN層を50nm成膜した。次いで基板温度を1250℃まで昇温し初期成長層の第2バッファ層であるAlN層を900nm成膜した。
【0077】
引続き、nクラッド層としてSiドープAl0.32Ga0.68N層を1070℃で1.3μm、発光層としてAlInGaN MQW(多重量子井戸)層を0.15μm、pクラッド層としてMgドープAl0.32Ga0.68Nを0.2μm、pコンタクト層としてMgドープAl0.25Ga0.75Nを0.02μm成膜して、LED(発光ダイオード)構造の積層層を形成した。
【0078】
LED素子加工では、個々の素子(略1mm角)の輪郭部形成のためpクラッド層側からHf金属層を除去しサファイア基板に至るまでドライエッチングによって溝加工を行った。個々の素子のpクラッド層側上面にスパッタ法でRh(ロジウム)を100nm成膜し、600℃の熱処理を施してp側オーミック電極を形成した。前記の溝加工部をレジストで埋め込んだ後、Auをスパッタ法で成膜し、電気めっき用の種層を形成し、次いでAuを電気めっきによって70μmの厚膜層を得た。
【0079】
溝加工部のレジストをアセトンで除去したのち、BHF(バッファードフッ酸)により、Hf金属層を選択的にエッチングし、成長用基板を剥離した。次に、剥離面であるAlN層をドライエッチングにより除去し、nクラッド(コンタクト)層を露呈させ、当該表面上にTi/Alのオーミック電極をスパッタ法にて形成後、500℃で熱処理し縦型構造のLED素子を得た。
【0080】
(評価)
得られたLED素子20個を抜き取り、特性を評価したところ、順方向電流が300mAの時に平均発光波長は325nm、平均出力73mWと良好であった。
【0081】
以上、実施の形態および実施例において具体例を示しながら本発明を詳細に説明したが、本発明は上記発明の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲であらゆる変更や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のIII族窒化物半導体成長用基板は、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができる。
【0083】
また、本発明によれば、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いることにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を提供することができる。
【0084】
さらに、本発明によれば、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができるIII族窒化物半導体成長用基板を製造することができる。
【0085】
加えて、本発明は、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いて、ケミカルリフトオフ法を行うことにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 III族窒化物半導体成長用基板
2 表面部分
3 結晶成長基板
4 単一金属層
5 初期成長層
5a 第1バッファ層
5b 第2バッファ層
6 ベース基板
7 III族窒化物半導体層
8 III族窒化物半導体エピタキシャル基板
9 III族窒化物半導体素子
10 支持基板
11 n-AlGaN層
12 AlInGaN系量子井戸活性層
13 p-AlGaN層
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体成長用基板、III族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板、ならびに、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、Al、GaなどとNとの化合物からなるIII族窒化物半導体で構成される例えばIII族窒化物半導体素子は、発光素子または電子デバイス用素子として広く用いられている。このようなIII族窒化物半導体は、現在、例えばサファイアからなる結晶成長基板上に、MOCVD法により形成されるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、III族窒化物半導体と結晶成長基板(一般にはサファイア)とは、格子定数が大きく異なるため、この格子定数の差に起因する転位が生じ、結晶成長基板上に成長させたIII族窒化物半導体層の結晶品質が低下してしまうという問題がある。
【0004】
この問題を解決するため、従来技術としては、例えばサファイア基板上に、低温多結晶または非晶質状態のバッファ層を介してGaN層を成長させる方法がある。しかしながら、この形成されたGaN層の転位密度は109〜1010cm-2と大きく、十分な結晶性を得ることは難しかった。
【0005】
また、他の従来技術としては、特許文献1〜3に、サファイア基板上に、金属窒化物層を介してGaN層を成長させる技術が開示されている。この方法によれば、GaN層の転位密度を上記技術と比較して低減することができ、高品質のGaN層を成長させることが可能である。これは、金属窒化物層であるCrN層等とGaN層との格子定数および熱膨張係数の差が比較的小さいためである。また、このCrN層は、化学エッチング液で選択的にエッチングすることができ、ケミカルリフトオフ法を用いるプロセスにおいて有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/126330号公報
【特許文献2】特開2008−91728号公報
【特許文献3】特開2008−91729号公報
【0007】
しかしながら、青色よりも短波長領域(例えば波長が400nm以下)の光を発生させるための窒化物半導体素子において、発生させるべき光の波長を短波長化するほど、窒化物半導体素子のAlxGa1-xN層のAl組成を大きくする必要がある。概ねAl組成30原子%を越えるAlxGa1-xNの成長温度は、CrNの融点である1050℃程度を超える。このため、CrNを用いて概ねAl組成30原子%を越えるAlxGa1-xNを含むIII族窒化物半導体層を成長させると、CrNが溶融して結晶性が失われ、その上に形成したIII族窒化物半導体層の結晶性が低下するおそれがある。したがって、成長温度が高い高Al組成のAlxGa1-xNを成長させるためのバッファ層としては、CrNを用いることはできず、1050℃を超える高温の熱処理に耐え得る材料を用いることが必要である。また、金属窒化物層としてCrN層を形成する場合、窒化工程を経るため、歩留まりが低下し、スループットの低下が製造コストを増加させてしまうという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題を解決し、成長温度が1050℃以下のAlGaNやGaNやGaInNだけでなく、成長温度が高い高Al組成のAlxGa1-xNにおいても結晶性の良いIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子、III族窒化物半導体自立基板およびこれらを製造するためのIII族窒化物半導体成長用基板、ならびに、これらを効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期
成長層と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板。
【0010】
(2)前記単一金属層の厚さは、5〜100nmである上記(1)に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【0011】
(3)前記少なくとも表面部分が、Al組成が50原子%以上のAlxGa1-xN(0.5≦x≦1)からなる上記(1)または(2)に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一に記載のIII族窒化物半導体成長用基板上に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
【0013】
(5)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【0014】
(6)前記熱処理の温度が1200〜1300℃である上記(5)に記載のIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【0015】
(7)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させてIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程と、前記少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を素子分離する工程と、前記III族窒化物半導体層側に支持基板を形成する工程と、前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体素子を得る工程と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0016】
(8)前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む上記(7)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0017】
(9)前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度1050〜1300℃の範囲で成長させることを含む上記(7)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0018】
(10)前記熱処理を施した後、前記単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程をさらに具える上記(7)、(8)または(9)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0019】
(11)前記初期成長層が、第1バッファ層および該第1バッファ層上に成長された第2バッファ層からなり、前記第1バッファ層の成長温度が900〜1260℃の範囲で、前記第2バッファ層の成長温度が1030〜1300℃の範囲で、かつ前記第1バッファ層の成長温度が前記第2バッファ層の成長温度と等しいか低い上記(10)に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【0020】
(12)少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHfからなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体自立基板を得る工程と、を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【0021】
(13)前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む上記(12)に記載のIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明のIII族窒化物半導体成長用基板は、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができる。
【0023】
また、本発明によれば、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いることにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を提供することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができるIII族窒化物半導体成長用基板を製造することができる。
【0025】
加えて、本発明は、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いて、ケミカルリフトオフ法を行うことにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に従う窒化物半導体用基板の断面構造を示す模式図である。
【図2】本発明に従う窒化物半導体素子構造体の製造工程を示す模式図である。
【図3】本発明に従う試料の表面SEM写真である。
【図4】本発明に従う試料の表面SEM写真である。
【図5】従来例に従う試料の表面SEM写真である。
【図6】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図7】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図8】従来例に従う試料の表面SEM写真である。
【図9】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図10】X線回折装置による2θ/ωスキャン測定の結果を示すグラフである。
【図11】AFMによる本発明に従う試料の表面写真である。
【図12】AFMによる本発明に従う試料の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明のIII族窒化物半導体成長用基板の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、本発明におけるIII族窒化物半導体エピタキシャル基板とは、上記III族窒化物半導体成長用基板上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層を成長させたものをいい、III族窒化物半導体素子とは、上記III族窒化物半導体エピタキシャル基板に対して、電極蒸着などのデバイスプロセスを施して素子分離したものをいい、そして、III族窒化物半導体自立基板とは、数百μm以上の厚さのIII族窒化物半導体層を上記III族窒化物半導体成長用基板上に成長させた後、このIII族窒化物半導体成長用基板を剥がして得られたものをいう。図1は、この発明に従うIII族窒化物半導体成長用基板の断面構造を模式的に示したものである。
【0028】
図1に示すIII族窒化物半導体成長用基板1は、少なくとも表面部分、図1では表面部分2が少なくともAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板3と、表面部分2上に形成され、結晶化されたZrまたはHf材料からなる単一金属層4とを具え、かかる構成を採用することにより、単一金属層4の表面平坦性の低下を抑制し、その後の熱処理により金属層の結晶性を向上させ、その上方に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板3をケミカルリフトオフにより剥離することを可能にしたものである。なお、図中のハッチングは、説明のため、便宜上施したものである。
【0029】
III族窒化物半導体成長用基板1は、前記単一金属層4上に形成された、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層、図1では2層のバッファ層5a,5bからなる初期成長層5をさらに具える。その上に成長させる窒化物半導体層結晶性を向上させるためである。これらバッファ層のAl組成は、その上に形成される材料に応じて適宜選択することができる。
【0030】
結晶成長基板3は、例えば、サファイア、Si、SiC若しくはGaNのようなベース基板6上に少なくともAlを含むIII族窒化物半導体2を有するテンプレート基板、AlN単結晶基板、または、サファイアの表面を窒化して形成される表面窒化サファイア基板とすることができる。図1は、結晶成長基板3が、サファイア基板6上にAlN単結晶層2を有するAlNテンプレート基板である場合を示したものである。この少なくともAlを含むIII族窒化物半導体からなる表面部分2は、この上方に成長させるAlGaN層の結晶欠陥を低減させる効果を有する。
【0031】
結晶成長基板3は、少なくとも表面部分2が、Al組成が50原子%以上のAlxGa1-xN(0.5≦x≦1)からなるのが好ましく、80原子%以上のAlxGa1-xN(0.8≦x≦1)からなるのがより好ましい。上方に成長させるIII族窒化物半導体層のAl組成と同等程度の場合、ホモエピタキシャル成長となり、転位欠陥密度の少ない良好な結晶性を持つ層を成長させることができるためである。また、上方に成長させるIII族窒化物半導体層のAl組成よりも高くすると、圧縮応力によりさらに転位低減の効果を期待できること、および、III族窒化物半導体材料の中で成長温度が最も高く、その上に成長させるIII族窒化物半導体層の成長時に劣化しないことから、少なくとも表面部分2はAlNからなるのが好ましい。
【0032】
単一金属層4は、ZrまたはHfからなるものとする。ZrまたはHf材料は、高融点であり、本発明の単一金属層として優れた物性を有するためである。また、結晶成長基板3の少なくとも表面部分2をAlを含むIII族窒化物半導体材料とした場合、このAlを含むIII族窒化物半導体の結晶構造と同じ六方最密充填(hcp)構造を有し、a軸の格子定数および線膨張係数が前記Alを含むIII族窒化物半導体のものと近いためである。
【0033】
単一金属層4の厚さは、5〜100nmとするのが好ましい。5nm未満であると、単一金属層4が薄すぎてエッチング液が入り込みにくくなったり、あるいは、単一金属層の厚さが熱処理によって不連続状態となり、下地基板である結晶成長基板表面が露出して、結晶成長基板上にIII族窒化物半導体層が直接成長したりして、ケミカルリフトオフが困難となる。一方、100nmを超えると、単一金属層自体の固相エピによる高結晶化が望めず、その上のIII族窒化物半導体層の結晶性が悪化し、欠陥が増加するためである。また、この単一金属層4は、スパッタ法や真空蒸着法などの方法を用いて結晶成長基板3上に成膜させることができる。
【0034】
図1には示されないが、上述した構成を有するIII族窒化物半導体成長用基板1上に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を具えることにより、本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル成長基板を得ることができる。
【0035】
同様に、図1には示されないが、上述した構成を有するIII族窒化物半導体成長用基板1を用いて、本発明に従うIII族窒化物半導体自立基板およびIII族窒化物半導体素子を得ることができる。
【0036】
次に、本発明のIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明のIII族窒化物半導体成長用基板1は、図1に示すように、少なくとも表面部分2がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板3上にZrまたはHf材料からなる単一金属層4を形成する工程と、水素雰囲気中で、単一金属層4に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程とを具え、かかる構成を採用することにより、単一金属層4の表面平坦性の低下を抑制し、その後の熱処理により金属層の結晶性を向上させ、その上方に形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板3をケミカルリフトオフにより剥離することを可能にしたものである
【0038】
上記熱処理は、圧力50〜760Torrの範囲、時間1〜60分の範囲で施すのが好ましい。単一金属層4を固相エピにより結晶化させ、その後単一金属層上に成長させるIII族窒化物半導体層の結晶性を向上させるためである。
【0039】
熱処理を施す工程の後、単一金属層4上に、AlxGa1-xN材料(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層5を形成する工程をさらに具える。その後形成されるIII族窒化物半導体層の結晶性向上のためである。GaNの好適な成長温度は900〜1100℃であり、AlNの好適な成長温度は1000〜1300℃であり、また、AlxGa1-xN材料(0<x<1)はGaNとAlNの混晶であることから、AlxGa1-xN材料(0<x<1)は、900〜1300℃の範囲の成長温度で形成されるのが好ましい。
【0040】
本発明に従うIII窒化物半導体成長用基板1は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0041】
次に、図2(a)に示すように、本発明のIII族窒化物半導体エピタキシャル基板8の製造方法は、上述した方法で作製されたIII族窒化物半導体成長用基板1の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層7をエピタキシャル成長させる工程を具え、かかる構成を有することにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を製造することができるものである。
【0042】
III族窒化物半導体層7は、GaN、AlxGa1-xN材料(0<x<1)、AlNのいずれかを含むことから、最高温度900〜1300℃の範囲で、MOCVD法、HVPE法、MBE法等を用いて成長させるのが好ましい。最高温度1050〜1300℃の範囲でも成長させることができるため、CrN材料を用いた場合と異なり、リフトオフ可能なIII族窒化物半導体材料およびその成長条件が制限されることが無く、より好ましい。
【0043】
熱処理を施す工程の後、単一金属層4上に、AlxGa1-xN材料(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層5を形成する工程をさらに具えるのが好ましい。その後形成されるIII族窒化物半導体層7の結晶性向上のためであって、その成長温度は、900〜1300℃の範囲とするのが好ましい。
【0044】
初期成長層5は、第1バッファ層5aおよびこの第1バッファ層5a上に成長された第2バッファ層5bからなり、第1バッファ層5aの成長温度が900〜1260℃の範囲で、第2バッファ層5bの成長温度が1030〜1300℃の範囲で、かつ第1バッファ層5aの成長温度が第2バッファ層5bの成長温度よりも小さいのが好ましい。第1のバッファ層5aを成長させる成長初期の段階において、比較的低い温度で成長させることにより多数の成長初期核の形成を促して結晶性の向上を図り、その後の第2のバッファ層5bを成長させる際に成長温度を高くすることにより多数の初期核の間にできた溝・窪みを埋めることにより、結晶性の向上とともに平坦性を向上させるためである。また、バッファ層は3層以上としてもよく、その場合は、成長温度を順次高くしていくのが好ましい。
【0045】
本発明に従うIII族窒化物半導体エピタキシャル基板8は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0046】
次に、本発明のIII族窒化物半導体素子9の製造方法は、図2(a)および図2(b)に示すように、上述した方法で作成されたIII族窒化物半導体エピタキシャル基板8に対し、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層7を素子分離する工程と、III族窒化物半導体層7側に支持基板10を形成する工程と、単一金属層4を選択エッチングすることにより、III族窒化物半導体層7(図2(b)に示す場合にはIII族窒化物半導体層7およびバッファ層5)と結晶成長基板3とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体素子9を得る工程とを具え、かかる構成を採用することにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体素子を効率よく製造することができる。
【0047】
少なくとも一層のIII族窒化物半導体層7は、図2(a)および図2(b)に示すように、例えばn-AlGaN層11、AlInGaN系量子井戸活性層12、p-AlGaN層13とすることができる。なお、これらIII族窒化物半導体層11、12および13の導電型の積層順序は逆であってもよい。また、支持基板10は、放熱性を有する材料を用いて形成するのが好ましい。
【0048】
本発明に従うIII族窒化物半導体素子9は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0049】
次に、本発明のIII族窒化物半導体自立基板の製造方法は、上述した方法で作製されたIII族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、単一金属層を選択エッチングすることにより、III族窒化物半導体層と結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体自立基板を得る工程とを具え、かかる構成を採用することにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体自立基板を効率よく製造することができる。
【0050】
III族窒化物半導体層の厚さは、50μm以上とする。ハンドリング性確保のためである。
【0051】
本発明に従うIII族窒化物半導体自立基板は、上述した方法を用いて製造することができる。
【0052】
なお、上述したところは、代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
サファイア上に、MOCVD法を用いてAlN単結晶層(厚さ:1μm)を成長させて、窒化物半導体成長用基板としてAlNテンプレート基板を作製した。
【0054】
得られたAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、表1に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜し、その後、水素雰囲気下で熱処理を施した。このようにして形成した試料の一部に、所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(厚さ:1μm)をさらに成膜し、試料1−1〜1−6を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
(評価)
試料1−1〜1−6について、表面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて倍率5000倍で観察した。その結果、金属種としてZrおよびHfをそれぞれ用いた試料1−1および1−3は、窒化処理をせず、水素雰囲気下での熱処理を施しても、図3および図4に示すように連続的に繋がった平坦な膜状態を維持していた。また、X線回折装置による2θ/ω測定により、結晶化していることがわかった。一方、金属種としてCrを用いた試料1−5は、図5に示すとおり、Crが不定形に凝集したものがランダムに点在し、下地のAlN面が現れており、Crによる被覆面積が著しく減少することが分かった。また、X線回折装置による2θ/ω測定により、Crはアモルファス状態であることが分かった。
【0057】
また、単一金属層上にAlNバッファ層を形成した試料1−2および1−4は、AlNバッファ層が単結晶となり、AFM(原子間力顕微鏡)による原子レベルでの平坦性も良好であった。また、フッ酸に浸すことで、金属層を容易にエッチングすることができ、ケミカルリフトオフが可能であった。一方、試料1−6は、Cr上に成長したAlNバッファ層は結晶性・平坦性とも非常に良好であったが、Crエッチング液に浸しても、ケミカルリフトオフすることができなかった。これは、このような表面を有する金属層上にAlNバッファ層を成長させると、下地AlN層上に直接接してホモエピタキシャル成長し、下地AlNの良好な結晶性および平坦性を引き継いで成長したためである。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、表2に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜した。このようにして形成した試料の一部に、表2に示す水素雰囲気下での熱処理または水素およびアンモニア雰囲気下での窒化処理を施し、あるいは所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(1μm)をさらに成膜し、試料2−1〜2−12を得た。
【0059】
【表2】
【0060】
(評価)
金属層の結晶化および結晶方位を確認するため、X線回折装置により、2θ/ω測定を行った。図6に示すとおり、単一金属層Zrをスパッタリングで成膜したままの試料2−1は、Zrの回折ピークが見られず、アモルファス状態であった。一方、試料2−3はZr(0002)および(0004)の回折ピークが見られ、水素雰囲気下での熱処理によってZr金属が結晶化していることが分かる。試料2−2のピークは、試料2−3と比較して僅かに高角側にずれていた。これは、試料2−2は、Zr中にZrNが僅かに混ざった状態になっているためと思われる。
【0061】
単一金属層Hfをスパッタリングで成膜したままの試料2−6は、図7に示すとおり、ある程度結晶配向性を持っていることが確認できたが、試料2−8とは異なる位置に回折ピークが見られる。試料2−7では、HfNに由来する回折ピークがいくつも見られ、多結晶になっていることが分かった。試料2−8では、Hf(0002)および(0004)の回折ピークが見られ、水素雰囲気下での熱処理によって、Hf金属が結晶化していることが分かる。
【0062】
CrNの融点以上の温度で窒化した試料2−11の表面をSEMで観察した結果を図8に示す。Crは窒化されて三角形の台形状に凝集したものがランダムに点在している。また、CrNによる被覆率が低下し、下地のAlNテンプレートがあらわになっている部分が多い状態であった。
【0063】
試料2−4、2−5、2−9、2−10、2−12のAlNバッファ層に対し、X線ロッキングカーブ測定、AFMによる表面平坦性の評価を行った結果を表3に示す。ZrおよびHfにおいて、金属層に窒化処理を施す場合と比べて、水素雰囲気下での熱処理を施した場合の方が、結晶性はほぼ同等か、より良好であり、かつ表面平坦性が大幅に改善できることがわかった。また、試料2−4、2−5、2−9、2−10をフッ酸に浸したところ、各金属が溶解してケミカルリフトオフが可能であることを確認した。
【0064】
一方、Crを窒化してCrNとし、このCrNの融点以上の温度でAlNバッファ層を成長させた試料2−12では、結晶性および表面平坦性とも非常に良好であるが、Crエッチング液に浸した所、ケミカルリフトオフできなかった。これは、図8に示すようにCrNによる被覆率が低下し、AlNバッファ層が、下地のAlNテンプレートの良好な結晶性・平坦性をそのまま引き継いで直接成長したためである。
【0065】
【表3】
【0066】
(実施例3)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、表4に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜した。このようにして形成した試料の一部に、表4に示す水素雰囲気下での熱処理を施し、あるいは所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(1μm)をさらに成膜し、試料3−2、3−4、3−6、3−8を得た。
【0067】
これとは別に、表面を窒化処理していないサファイア基板上に、スパッタ法を用いて、表4に示す金属種および厚さの単一金属層を成膜した。このようにして形成した試料の一部に、表4に示す水素雰囲気下での熱処理を施し、あるいは所定の条件下でAlN材料からなるバッファ層(1μm)をさらに成膜し、試料3−1、3−3、3−5、3−7を得た。
【0068】
【表4】
【0069】
(評価)
試料3−1、3−2、3−5、3−6に対し、金属層の結晶化および結晶方位を確認するため、X線回折装置により、2θ/ωスキャンの測定を行った。図9および図10に示すとおり、AlNテンプレートを用いずともいずれの金属種の場合も金属膜は結晶化していることが分かる。
【0070】
試料3−3、3−4、3−7、3−8のAlNバッファ層に対し、X線ロッキングカーブの評価を行った結果を表5に示す。金属層の下にAlN単結晶層がない場合、金属層の上のAlNバッファ層に対する回折X線のピークが見られず、アモルファス状態になっていた。したがって、金属層が結晶配向性を持つだけでは不十分であり、少なくとも表面部分がAlN単結晶からなる結晶成長基板を用いて、その上に単一金属層を形成した方が、結晶性が格段に良好な初期成長層を得ることができる。
【0071】
【表5】
【0072】
(実施例4)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて、単一金属層としてHfを20nm成膜した。このようにして形成した試料に、表6に示す水素雰囲気下での熱処理を施した。その後、表6に示す所定の条件下でAlNバッファ層(厚さ:1μm)をさらに成膜し、試料4−1および4−2を得た。さらに、試料4−1で得られたAlNバッファ層上に、厚さ100μmのAlN層を1250℃で48時間かけて成膜し、その後、BHF(バッファードフッ酸)に浸漬することより、Hf金属層を選択的にエッチングし、成長用のAlNテンプレート基板を剥離して、直径2インチのAlN単結晶の自立基板を得た。
【0073】
【表6】
【0074】
(評価)
AlNバッファ層に対するX線ロッキングカーブの測定、AFMによる表面平坦性の評価を行った。図11に示すように、単一条件で成長させた試料4−2では、一部表面が荒れており、ピットも見られるのに対して、成長温度を途中で変えて成長した試料4−1では、図12に示すように、表面が非常に平坦な膜が得られている。また、表7に示すとおり、ロッキングカーブの半値幅も測定誤差の範囲内で同等であり、良好な結晶が得られている。したがって、単一条件での成長でも結晶性が良好で原子レベルで平坦なバッファ層を得ることができるが、成長温度を段階的に高くすることにより、良好な結晶性を維持しつつ、さらに表面をより良好に平坦化することができる。また、平坦な表面上に厚く成膜を行い、自立基板を得ることができる。また、Hf金属層をエッチングした後のAlNテンプレート基板は、次の成長用基板として再利用することもできる。
【0075】
【表7】
【0076】
(実施例5)
実施例1と同様にAlNテンプレート基板上に、スパッタ法を用いて厚み10nmのHfを成膜した。当該試料をMOCVD装置にセットし、水素雰囲気下で圧力200Torr、基板温度1250℃、10分間の熱処理を施した。次に、基板温度を1100℃まで降温させ、アンモニアガスおよびTMA(トリメチルアルミニウム)の供給を行って初期成長層の第1バッファ層であるAlN層を50nm成膜した。次いで基板温度を1250℃まで昇温し初期成長層の第2バッファ層であるAlN層を900nm成膜した。
【0077】
引続き、nクラッド層としてSiドープAl0.32Ga0.68N層を1070℃で1.3μm、発光層としてAlInGaN MQW(多重量子井戸)層を0.15μm、pクラッド層としてMgドープAl0.32Ga0.68Nを0.2μm、pコンタクト層としてMgドープAl0.25Ga0.75Nを0.02μm成膜して、LED(発光ダイオード)構造の積層層を形成した。
【0078】
LED素子加工では、個々の素子(略1mm角)の輪郭部形成のためpクラッド層側からHf金属層を除去しサファイア基板に至るまでドライエッチングによって溝加工を行った。個々の素子のpクラッド層側上面にスパッタ法でRh(ロジウム)を100nm成膜し、600℃の熱処理を施してp側オーミック電極を形成した。前記の溝加工部をレジストで埋め込んだ後、Auをスパッタ法で成膜し、電気めっき用の種層を形成し、次いでAuを電気めっきによって70μmの厚膜層を得た。
【0079】
溝加工部のレジストをアセトンで除去したのち、BHF(バッファードフッ酸)により、Hf金属層を選択的にエッチングし、成長用基板を剥離した。次に、剥離面であるAlN層をドライエッチングにより除去し、nクラッド(コンタクト)層を露呈させ、当該表面上にTi/Alのオーミック電極をスパッタ法にて形成後、500℃で熱処理し縦型構造のLED素子を得た。
【0080】
(評価)
得られたLED素子20個を抜き取り、特性を評価したところ、順方向電流が300mAの時に平均発光波長は325nm、平均出力73mWと良好であった。
【0081】
以上、実施の形態および実施例において具体例を示しながら本発明を詳細に説明したが、本発明は上記発明の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲であらゆる変更や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のIII族窒化物半導体成長用基板は、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができる。
【0083】
また、本発明によれば、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いることにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を提供することができる。
【0084】
さらに、本発明によれば、少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程とを具えることにより、単一金属層の表面平坦性の低下を抑制し、その後形成されるIII族窒化物半導体層AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)の結晶性を向上させ、かつ、III族窒化物半導体層から結晶成長基板をケミカルリフトオフにより容易に剥離することができるIII族窒化物半導体成長用基板を製造することができる。
【0085】
加えて、本発明は、上記III族窒化物半導体成長用基板を用いて、ケミカルリフトオフ法を行うことにより、CrN材料を用いた場合の波長制限を超えて、III族窒化物半導体材料でカバーできる波長帯全域(200nm〜1.5μm)をカバーする、結晶性が良好なIII族窒化物半導体エピタキシャル基板、III族窒化物半導体素子およびIII族窒化物半導体自立基板を効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 III族窒化物半導体成長用基板
2 表面部分
3 結晶成長基板
4 単一金属層
5 初期成長層
5a 第1バッファ層
5b 第2バッファ層
6 ベース基板
7 III族窒化物半導体層
8 III族窒化物半導体エピタキシャル基板
9 III族窒化物半導体素子
10 支持基板
11 n-AlGaN層
12 AlInGaN系量子井戸活性層
13 p-AlGaN層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、
前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、
前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板。
【請求項2】
前記単一金属層の厚さは、5〜100nmである請求項1に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【請求項3】
前記少なくとも表面部分が、Al組成が50原子%以上のAlxGa1-xN(0.5≦x≦1)からなる請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体成長用基板上に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
【請求項5】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、
水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、
前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理の温度が1200〜1300℃である請求項5に記載のIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【請求項7】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、
水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、
前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させてIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程と、
前記少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を素子分離する工程と、
前記III族窒化物半導体層側に支持基板を形成する工程と、
前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体素子を得る工程と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む請求項7に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度1050〜1300℃の範囲で成長させることを含む請求項7に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理を施した後、前記単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程をさらに具える請求項7、8または9に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記初期成長層が、第1バッファ層および該第1バッファ層上に成長された第2バッファ層からなり、前記第1バッファ層の成長温度が900〜1260℃の範囲で、前記第2バッファ層の成長温度が1030〜1300℃の範囲で、かつ前記第1バッファ層の成長温度が前記第2バッファ層の成長温度と等しいか低い請求項10に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項12】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHfからなる単一金属層を形成する工程と、
水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、
前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体自立基板を得る工程と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【請求項13】
前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む請求項12に記載のIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【請求項1】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板と、
前記表面部分上に形成され、結晶化されたZrまたはHfからなる単一金属層と、
前記単一金属層上に形成され、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板。
【請求項2】
前記単一金属層の厚さは、5〜100nmである請求項1に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【請求項3】
前記少なくとも表面部分が、Al組成が50原子%以上のAlxGa1-xN(0.5≦x≦1)からなる請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体成長用基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体成長用基板上に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体エピタキシャル基板。
【請求項5】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、
水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化する工程と、
前記結晶化された単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理の温度が1200〜1300℃である請求項5に記載のIII族窒化物半導体成長用基板の製造方法。
【請求項7】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHf材料からなる単一金属層を形成する工程と、
水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、
前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させてIII族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程と、
前記少なくとも一層のIII族窒化物半導体層を素子分離する工程と、
前記III族窒化物半導体層側に支持基板を形成する工程と、
前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体素子を得る工程と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む請求項7に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度1050〜1300℃の範囲で成長させることを含む請求項7に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理を施した後、前記単一金属層上に、AlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる少なくとも一層のバッファ層からなる初期成長層を形成する工程をさらに具える請求項7、8または9に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記初期成長層が、第1バッファ層および該第1バッファ層上に成長された第2バッファ層からなり、前記第1バッファ層の成長温度が900〜1260℃の範囲で、前記第2バッファ層の成長温度が1030〜1300℃の範囲で、かつ前記第1バッファ層の成長温度が前記第2バッファ層の成長温度と等しいか低い請求項10に記載のIII族窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項12】
少なくとも表面部分がAlを含むIII族窒化物半導体からなる結晶成長基板上に、ZrまたはHfからなる単一金属層を形成する工程と、
水素雰囲気中で、前記単一金属層に温度1000〜1300℃の熱処理を施して結晶化し、III族窒化物半導体成長用基板を作製する工程と、
前記III族窒化物半導体成長用基板の上方に、少なくとも一層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、
前記単一金属層を選択エッチングすることにより、前記III族窒化物半導体層と前記結晶成長基板とをケミカルリフトオフにより分離して、III族窒化物半導体自立基板を得る工程と、
を具えることを特徴とするIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【請求項13】
前記III族窒化物半導体エピタキシャル基板を作製する工程において、前記III族窒化物半導体層を最高温度900〜1300℃の範囲で成長させることを含む請求項12に記載のIII族窒化物半導体自立基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−119742(P2011−119742A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273024(P2010−273024)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【分割の表示】特願2009−293875(P2009−293875)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【分割の表示】特願2009−293875(P2009−293875)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】
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