説明

IKK−ベータセリン−スレオニンプロテインキナーゼの阻害剤

式(IA) または (IB)の化合物は、IkB キナーゼ (IKK) の活性阻害剤であり、自己免疫性および炎症性疾患の治療に有用である。
【化1】


(式中、R7 は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、環 A は任意に置換されていてもよい、5-13の環原子を有するアリールもしくはヘテロアリール環であり、Z は式R-L1-Y1-(CH2)z-の基であり、ここで z は 0 または1であり、R は式(X) または (Y)の基であり、
【化2】


R1 はカルボン酸基(-COOH)または一以上の細胞内エステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解され得るエステル基であり、R6 は水素または
任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキル、C3-C7 シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであるか、あるいは-(C=O)R3、-(C=O)OR3または -(C=O)NR3 であり、ここで R3 は水素または任意に置換されていてもよい (C1-C6)アルキルであり、Y1 は結合手、-(C=O)-、-S(O2)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-(C=O)NR3-、-NR3(C=O)-、-S(O2)NR3-、-NR3S(O2)-または-NR3(C=O)NR4-であり、ここでR3および R4 は独立して水素または任意に置換されていてもよい (C1-C6)アルキルであり、L1は 式-(Alk1)m(Q)n(Alk2)p-の2価のリンカー基であり、ここでm、n、p、Q、Alk1 およびAlk2 は特許請求の範囲で定義されているとおりである)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分子内におけるアミノ酸エステル基の存在により特徴づけられるチオフェンカルボキサミド類、それらを含む組成物、それらの製造方法、ならびに慢性閉塞性肺疾患、喘息、リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、移植対宿主疾患、全身性狼瘡紅斑を含む自己免疫性疾患および炎症性疾患の治療のためのIKK阻害剤としての医薬におけるそれらの使用に関する。
これらの化合物は、癌のような増殖性病状の治療においても有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの炎症前遺伝子の発現は、転写調節活性化核因子−kB(NF−kB)により制御されている。これらの転写調節因子は、それらが慢性および急性の炎症性疾患において中心的な役割を果たしていることが分かってから疑われている。NF−kBの異常な制御は、自己免疫疾患および異なったタイプの癌の基礎をもなしているようである。
【0003】
NF−kBの活性化に依存する遺伝子の例は、サイトカイン腫瘍壊死因子TNF−α、インターロイキン(IL)−6、IL−8およびIL−1β;癒着分子E−セレクション、細胞間癒着分子(ICAM)−1および血管細胞癒着分子(VCAM)−1;ならびに酵素5酸化2窒素合成(NOS)およびシクロオキシゲナーゼ(COX)−2を含む。
【0004】
NF−kBは通常、IkB阻害プロテインファミリーの一つとの不活性な複合体として非刺激細胞の細胞質中に存在する。しかしながら、細胞の活性化に伴って、IkBはIkBキナーゼ(IKK)により加燐酸化されて、分解される。遊離のNF−kBは、次いで核へ移動してプロ炎症性遺伝子の発現を媒介する。
【0005】
三つの古典的なIkB:IkBα、IkBβおよびIkBεがあり;これらはすべてそれらが分解され得る前に二つのキーとなるセリン残基の加燐酸化を必要とする。二つの主な酵素IKK−αおよびIKKβは、IkB加燐酸化にとって責任があるようである。
【0006】
これらの酵素のいずれのドミナント−ネガティブ(DN)バージョンも(そこではATP結合がキーとなるキナーゼ支配残基の突然変異により無能化される)、TNF−α、IL−1βおよびLPSによるNF−kBの活性を抑制するのが分かった。特に、IKK−βDNはIKK−αよりはるかに強力な阻害剤であることが分かった(Zandi, E Cell, 1997, 91, 243)。
【0007】
さらに、IKK−αおよびIKK−β欠乏マウス生成は、プロ炎症性刺激によるNF−kBの活性化のためのIKK−βの必要性を立証し、示唆されたIKK−βの支配的な役割を生化学的なデータにより増強した。
実際、これらの刺激によるNF−kB活性化にとってIKK−αが必ずしも必要でないことが実証された(タナカ、M.; Immunity 1999, 10, 421)。
【0008】
かくして、IKK−βの阻害は、免疫機能の調節、したがって自己免疫疾患の治療用医薬開発のために、潜在的に魅力のある標的であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の簡単な説明
この発明は、IKKアイソフォーム(isoforms)特にIKK−βの強力でかつ選択的な阻害剤である一群のチオフェンカルボキサミドを入手可能にする。
したがって、これらの化合物は、例えばIKKの過度の活性に関連した症状のような種々の増殖性疾患およびNF−kBカスケードにより調節された疾病の治療用医薬において使用され得る。
さらに本発明の化合物は、発作、骨粗しょう症、リウマチ性関節炎、およびその他の炎症性障害の治療に有用である。
【0010】
上記の化合物は、分子内にアミノ酸モチーフまたは細胞内カルボキシエステラーゼにより加水分解され得るアミノ酸エステルモチーフが存在することにより特徴付けられる。
親油性のアミノ酸エステルモチーフを有する本発明の化合物は、細胞膜を通過し、分子内カルボキシエステラーゼにより加水分解されて酸になる。
【0011】
極性の加水分解産物は、細胞膜を簡単に通過しないので、細胞中に蓄積する。したがって、これらの化合物のIKK阻害活性は、持続し、細胞内で高められる。本発明の化合物は、国際特許出願WO 2004063186に開示されたIKK阻害剤に関連しているが、上記のアミノ酸エステルモチーフを有する点においてそれらとは異なっている。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明によれば、式(1A)または(1B)の化合物、またはその塩、N−オキサイド、水和物もしくは溶媒和物が提供される。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、
R7は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり;
環Aは、任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール環であり;
Zは、式:R-L1-Y1-(CH2)z-の基であり、ここで
R は、式 (X) または(Y) の基であり、
【0015】
【化2】

【0016】
ここで、R1 はカルボン酸基(-COOH)、または一以上の細胞内エステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解され得るエステル基であり、
R6 は水素、または任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキル、C3-C7 シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール、あるいは-(C=O)R3、 -(C=O)OR3もしくは-(C=O)NR3 (ここで、R3 は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
【0017】
Y1 は、結合手、 -(C=O)-、 -S(O2)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-(C=O)NR3-、
-NR3(C=O)-、-S(O2)NR3-、-NR3S(O2)-または-NR3(C=O)NR4-であり、ここで R3 および R4 は独立して水素または任意に置換されていてもよい (C1-C6)アルキルであり、
L1 は式-(Alk1)m(Q)n(Alk2)p-の2価の基であり、ここで
m、n および p は独立して0または1であり、
Q は、(i) 任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であるか、あるいは
(ii) p が0のとき、式-Q1-X2-の2価の基であり、ここでX2 は-O-、-S-または NRA-であり、ここでRA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルであり、Q1 は5〜13の環原子を有し、任意に置換されていてもよい、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であり、
Alk1 およびAlk2 は、独立して、任意に置換されていてもよい2価のC3-C7 シクロアルキル基、または任意に置換されていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状の、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)もしくはアミノ(-NRA-)結合(ここで、RA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルである)を任意に含んでいるかもしくは末端に有している、C1-C6 アルキレン、C2-C6 アルケニレンもしくはC2-C6 アルキニレン基を表し、
z は0または1である)。
【0018】
もう一つの広い観点によれば、本発明は、上記のように定義された式(IA) または(IB)の化合物、またはそのN-オキサイド、塩、水和物もしくは溶媒和物の、IKK、特にIKKβの活性を阻害する組成物の製造における使用、ならびにNF-kβカスケードにより調節される疾病における使用を提供する。
【0019】
本発明の化合物は、IKK、特にインビトロおよびインビボでIKKβの活性を阻害するのに用いられ得る。
本発明の化合物を一つ以上の医薬的に許容される担体および賦形剤とともに含む医薬組成物も、本発明の一部を構成する。
【0020】
本発明の一つの観点によれば、本発明の化合物は、腫瘍性/増殖性、自己免疫性もしくは炎症性の疾患、特にIKK、中でもIKKβ活性が役割を果たしている上記のような疾患の治療用組成物を製造するのに用いられ得る。
【0021】
もう一つの観点によれば、本発明は、上記のような疾患の患者に、上記のように定義された式(IA)または(IB)の化合物の有効量を投与することを含む、上記のようなタイプの疾患を治療する方法を提供する。
【0022】
用語
ここで用いられている用語「(Ca-Cb)アルキル」(ここで、aおよびbは整数である)とは、a〜bの炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基をいう。したがって、aが1であり、bが6であるとき、この用語は例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルを含む。
【0023】
ここで用いられている用語「2価の(Ca-Cb)アルキレン基」(ここで、aおよびbは整数である)とは、a〜bの炭素原子を有し、2つの遊離価を有する、飽和の炭化水素鎖をいう。
【0024】
ここで用いられている用語「(Ca-Cb)アルケニル」(ここで、aおよびbは整数である)とは、a〜bの炭素原子を有し、適用できるときEまたはZいずれかの立体化学の2重結合を少なくとも一つ有する、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルケニル部分をいう。この用語は、例えばビニル、アリル、1- および2-ブテニルならびに2-メチル-2-プロペニルを含む。
【0025】
ここで用いられている用語「2価の(Ca-Cb)アルケニレン基」は、a〜bの炭素原子を有し、少なくとも1つの2重結合、および2つの未飽和価を有する炭化水素鎖を意味する。
【0026】
ここで用いられている用語「(Ca-Cb)アルキニル」(ここで、aおよびbは整数である)とは、a〜bの炭素原子を有し、かつ一つの3重結合を有する、直鎖状もしくは分枝鎖状の炭化水素基をいう。この用語は、例えばエチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、 4-ヘキシニルおよび5-ヘキシニルを含む。
【0027】
ここで用いられている用語「2価の(Ca-Cb)アルキニレン基」(ここで、aおよびbは整数である)とは、a〜bの炭素原子を有し、少なくとも一つの3重結合を有する2価の炭化水素鎖をいう。
【0028】
ここで用いられている用語「炭素環」とは、16までの環原子を有する単環、2環もしくは3環式の基を意味し、環原子はすべて炭素であり、 アリールおよびシクロアルキルを含む。
【0029】
ここで用いられている用語「シクロアルキル」とは、3〜8の炭素原子を有する単環式の飽和炭素環式基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。
【0030】
ここで用いられている非限定的な用語「アリール」とは、単環、2環もしくは3環式の、芳香族炭素環式基を意味し、共有結合により直接結合している2つの単環式芳香族炭素環式基を含む。そのような基の具体的な例は、フェニル、ビフェニルおよびナフチルである。
【0031】
ここで用いられている非限定的な用語「ヘテロアリール」とは、単環、2環もしくは3環式の、S、NおよびOから選択されるヘテロ原子を一つ以上含む芳香族基を意味し、そのような単環を二つ有する基、またはそのような環1つと単環式アリール環とが共有結合により直接結合している基を含む。
【0032】
そのような基の具体的な例は、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イソキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ベンズトリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリルおよびインダゾリルである。
【0033】
ここで用いられている非限定的な用語「ヘテロサイクリル」または「ヘテロサイクリック」は、上記で定義されたような「ヘテロアリール」を含み、その非芳香族の意味において、S、NおよびOから選択されるヘテロ原子を一つ以上含む、単環、2環もしくは3環式の非芳香族基、ならびにもう一つのそのような基もしくは単環式の炭素環式基に共有結合している、そのようなヘテロ原子を一つ以上の含む単環の非芳香族基からなる基に関連している。
【0034】
そのような基の具体的な例は、ピロリル、フラニル、チエニル、ピペリジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピリミジニル、モルホリニル、ピペラジニル、インドリル、モルホリニル、ベンゾフラニル、ピラニル、イソキサゾリル、ベンズイミダゾリル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、マレイミドおよびスクシンイミド基である。
【0035】
「2価のフェニレン、ピリジニレン、ピリミジニレンまたはピラジニレン基」は、2つの未飽和価を有する、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンまたはピラジン環であり、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンおよび次のものを含む:
【0036】
【化3】

【0037】
この明細書で特に限定されていなければ、いかなる基にも適用されている用語「置換された」は、4つまでの矛盾しない置換基で置換されていることを意味し、それらの置換基はそれぞれ独立して、例えば、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオ、フェニル、ハロ(フルオロ、ブロモおよびクロロを含む)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、ニトリル(-CN)、オキソ、-COOH、-COORA、-CORA、-SO2RA、-CONH2、-SO2NH2、-CONHRA、-SO2NHRA、-CONRARB、-SO2NRARB、-NH2、-NHRA
-NRARB、-OCONH2、-OCONHRA、-OCONRARB、-NHCORA、-NHCOORA、-NRBCOORA、-NHSO2ORA、-NRBSO2OH、-NRBSO2ORA、-NHCONH2、-NRACONH2、-NHCONHRB、-NRACONHRB -NHCONRARBまたは-NRACONRARB(ここで、RAおよびRBは、独立して(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、フェニルまたは5もしくは6の環原子を有する単環式のヘテロアリールであるか、あるいはRAおよびRBが同一の窒素原子に結合しているときは環状のアミノ基(例えばモルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニルもしくはテトラヒドロピロリル)を形成する)であり得る。「任意の置換基」は、上記の置換基の一つであり得る。
【0038】
ここで用いられている用語「塩」は、塩基付加塩、酸付加塩および4級塩を含む。
本発明の酸性の化合物は、水酸化アルカリ金属、例えば水酸化ナトリウムおよびカリウム;水酸化アルカリ土類金属、例えば水酸化カルシウム、バリウムおよびマグネシウムのような塩基;有機塩基、例えばN-メチル-D-グルカミン、コリントリス(ヒドロキシメチル)アミノ-メタン、L-アルギニン、L-リジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミンなどとの医薬的に許容される塩を含む、塩を形成することができる。
【0039】
塩基性である化合物(IA)および(IB)は、例えば塩酸または臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸もしくはリン酸などのような無機酸との塩、ならびに酢酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、乳酸およびマンデル酸などのような有機酸との塩を含む、医薬的に許容される塩を形成することができる。
【0040】
本発明の化合物は、水和物または溶媒和物の形態でも回収され得る。
「溶媒和物」という用語は、ここでは、本発明の化合物および1以上の医薬的に許容される溶媒分子、例えばエタノールの化学量論的な量を含む分子複合体を記述するのに用いられる。
「水和物」という用語は、上記の溶媒が水であるときに用いられる。
【0041】
不斉炭素原子の存在により、現実のもしくは潜在的なキラル中心を一つ以上含む本発明の化合物は、各キラル中心におけるRまたはS立体化学のいくつかのジアステレオマーとして存在し得る。本発明は、そのようなすべてのジアステレオマーおよびそれらの混合物を含む。
【0042】
上記の置換基R1と関連して、「エステル」または「エステル基」または「エステル化されたカルボキシ基」という用語は、基RxO(C=O)-(ここで、Rx はエステルを特徴づける基、概念的にはアルコールRxOHから誘導される基である)を意味する。
【0043】
本発明の化合物における種々の置換基を、以下に詳細に説明する:
置換基R7
R7は水素、または任意に置換されていてもよいメチル、エチルまたはn-もしくはイソプロピルのような(C1-C6)アルキルである。R7は水素であるときが好ましい。
【0044】
環A
環Aは、単環式の5-もしくは6-員環、あるいは2環式の5,6-、6,6-もしくは5,5-環システムのような、任意に置換されていてもよい5-13原子の2価のアリールもしくはヘテロアリール環である。
【0045】
具体例は、2価のフェニレン、ピリジニレン、ピリミジニレンおよびピラジニレン基を含む。好ましいのは、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレンである。
環A における任意の置換基は、例えば、フルオロ、クロロ、メチル、トリフルオロメチルから選択され得る。
【0046】
基Z
Z中の基R1
R1は、カルボン酸基または細胞内の1つ以上のカルボキシエステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解され得るエステル基である。
本発明の化合物のエステル基を対応する酸に加水分解し得る細胞内のカルボキシエステラーゼ酵素は、3つの公知のヒト酵素アイソタイプhCE-1、hCE-2およびhCE-3を含む。
これらは主な酵素であると考えられているが、ビフェニルヒドロラーゼ(BPH)のような他の酵素も、エステルを加水分解する役割を有している。
【0047】
一般に、カルボキシエステラーゼが遊離のアミノ酸エステルを親化合物の酸に加水分解すれば、それはIKK阻害剤に共有的に結合しているエステルモチーフをも加水分解するだろう。
【0048】
したがって、ここに記載されている破壊細胞アッセイは、要求される加水分解プロフィルを有するエステルのための率直、迅速かつ単純な第1のスクリーンを提供する。
そのような方法により選択されるエステルモチーフは、それがなお該背景におけるカルボキシエステラーゼ基質であることを確認するために、選択された結合化学を介してモジュレータに結合しているとき、同じカルボキシエステラーゼアッセイにおいて再びアッセイされる。
【0049】
それらが細胞内のカルボキシエステラーゼ酵素により加水分解され得るという要件を条件として、具体的なエステル基R1の例は、次の式のものを含む。
-(C=O)OR14(ここで、R14はR8R9R10C-であり、ここで
【0050】
(i)R8は水素、または任意に置換されていてもよい(C1-C3)アルキル-(Z1)a-[(C1-C3)アルキル]b-もしくは(C2-C3)アルケニル-(Z1)a-[(C1-C3)アルキル]b- (ここで、aおよびbは独立して0もしくは1であり、Z1は-O-、-S-または- NR11-(ここで、R11は水素または(C1-C3)アルキルであり;R9およびR10は独立して水素または(C1-C3)アルキル-である;
【0051】
(ii) R8は水素または任意に置換されていてもよいR12R13N-(C1-C3)アルキル- (ここで、R12は水素または (C1-C3)アルキルであり、R13は水素または(C1-C3)アルキルであるか;あるいはR12およびR13はそれらが結合している窒素と一緒になって、任意に置換されていてもよい、5-もしくは6-の環原子を有する単環の複素環、または8〜10の環原子を有する2環の複素環システムを形成し、R9およびR10は独立して水素または(C1-C3)アルキル-であるか;あるいは
【0052】
(iii)R8およびR9はそれらが結合している炭素と一緒になって、任意に置換されていてもよい、3〜7の環原子を有する単環の炭素環、または8〜10の環原子を有する2環の炭素環システムを形成し、
R10は水素である。
【0053】
R1は、例えばメチル、エチル、n- もしくはイソ-プロピル、n-、sec-もしくは tert-ブチル、シクロヘキシル、アリル、フェニル、ベンジル、2-、3- もしくは4-ピリジルメチル、N-メチルピペリジン-4-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、メトキシエチル、インダニル、ノルボルニル、ジメチルアミノエチルまたはモルホリノエチルエステル基であり得る。
シクロペンチルまたはtert-ブチルエステルが好ましい。
【0054】
Z における環D
R が式(Y)の基であるとき、Rの例は次のものを含む。
【化4】

(式中、R1 は上記のとおりである)
【0055】
Z における基R6
R6 は、任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキル、C3-C7 シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、例えば、メチル、エチル、n-もしくはイソプロピル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはピリジルであり得る。
【0056】
マクロファージ特異性が要求されない場合には、R6 は水素または-(C=O)RDであり得る(ここで、RD は任意に置換されていてもよい、メチル、エチル、n-もしくはイソプロピル、またはn-、イソ- もしくはsec-ブチルのような(C1-C6)アルキル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルのような(C3-C7)シクロアルキル、フェニル、ピリジル、チエニル、ベンジル、4-メトキシフェニルメチルカルボニル、チエニルメチルもしくはピリジルメチルのようなフェニル (C1-C6 アルキル)-、チエニル (C1-C6 アルキル)-もしくはピリジル(C1-C6 アルキル)-である)。
【0057】
R6 は、例えば、-(C=O)ORDまたは-(C=O)NHRDでもあり得る(ここで、 RD は水素または任意に置換されていてもよいメチル、エチルまたはn-もしくはイソプロピルのような(C1-C6)アルキルである)。
【0058】
本発明の全身投与される化合物では、エステラーゼ開裂速度の遅いエステルが、プレシステミック代謝に対して敏感でないので好ましい。
かかる化合物は分解されないで標的の組織へ到達する度合いが増し、該エステルは標的とする組織の細胞内で酸物質に変換され得る。
【0059】
しかしながら、エステルが標的とする組織へ直接適用されるか、あるいは例えば吸入のように標的とする組織へ向けられる局所投与では、エステラーゼ開裂速度の速いエステルは、全身性の露呈が少なくなり、したがって望ましくない副作用を低減できるので、好ましい場合もある。
【0060】
もし、基R の結合している炭素原子が置換されていなければ、すなわち R がメチレン(-CH2)-基に結合していれば、該エステルは、炭素が置換されているか、あるいはフェニルもしくはシクロヘキシル環のように環システムの一部である場合よりも、速やかに開裂される傾向がある。
【0061】
Z における基-L1-Y1-[CH2]z-
この基(または結合手)は、置換基Zにおけるアミノ酸エステルモチーフR を当該分子の残基に結合させるために選択された特殊な化学的戦略から生じる。
明らかに、そのような結合のための化学的戦略は広範に変動することができ、したがって変動し得るY1、 L1およびzの多くの組合せが可能である。
【0062】
しかしながら、阻害剤が酵素の活性部位に結合しているとき、アミノ酸エステルモチーフは通常、酵素から離れた方向へ伸び、したがって阻害剤の結合モードによる妨害を最小限にするか、あるいは回避する。
したがって、アミノ酸エステルモチーフと分子の残基との間の結合を作る的確な組合せは、全体として化合物の主要な結合モードに当てはまらないこともある。
【0063】
上記の一般的な展望に留意して、基-L1-Y1-[CH2]z-を構成する種々のものを順次取り上げる。
zは、0または1であり、したがって分子の残基に結合するメチレン基は任意である、Y1は、例えば、-NR3-、-S-、-O-、-C(=O)NR3-、- NR3C(=O)-または
-C(=O)O-(ここで、R3 は水素または任意に置換されていてもよい、-CH2CH2OHのようなC1-C6 アルキルであり;
【0064】
基L1において、Alk1およびAlk2基の例は、存在するとき、-CH2-、-CH2CH2-、 -CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH=CH-、-CH=CHCH2-、-CH2CH=CH-、-CH2CH=CHCH2-、-C≡C-、-C≡CCH2-、CH2C≡C-および-CH2C≡CCH2-を含む。
【0065】
Alk1およびAlk2の追加の例は、-CH2W-、-CH2CH2W-、-CH2CH2WCH2-、-CH2CH2WCH(CH3)-、-CH2WCH2CH2-、-CH2WCH2CH2WCH2-および-WCH2CH2-(ここで、 Wは-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-または-CH2CH2N(CH2CH2OH)CH2-である)を含む。
【0066】
Alk1およびAlk2のさらなる例は、2価のシクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基を含む。
Alk1およびAlk2は、存在するとき、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、またはどちら向きでもよい-CH2CH(CH3)-、-CH2C(CH3)2-のような、分枝鎖状のアルキルであってもよい。
【0067】
L1において、n が 0であるとき、該基は任意に置換されていてもよく、エーテル、チオエーテルもしくはアミノ結合を有していてもよい炭化水素鎖である。L1中に任意の置換基がないのが好ましい。
【0068】
mおよびpがともに0であるとき、L1 は、5〜13の環原子を有する、任意に置換されていてもよい、2価の単環もしくは2環の炭素環もしくは複素環基である。
【0069】
n が1であり、m および p の少なくとも一方が1 であるとき、L1は一つもしくは複数の炭化水素鎖、ならびに任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、単環もしくは2環の炭化水素環もしくは複素環式基を含む2価の基である。
【0070】
存在するとき、Q は例えば2価のフェニル、ナフチル、シクロプロピル、シクロペンチルもしくはシクロヘキシル、またはピペリジニル、ピペラジニル、インドリル、ピリジル、チエニルもしくはピロリル基のような、5 〜13 の環原子を有する単環もしくは2環の複素環式基であり得る。
【0071】
具体的には、本発明のある実施態様において、n が1であるとき、L1、m および p は0であり得る。その他の実施態様において、m が1であるとき、n および p は0であり得る。さらなる実施態様において、m、n および p はすべて0であってもよい。
【0072】
さらなる実施態様において、Q が単環の複素環式基であるとき、m は0であり、nは1であり、p may 0 または1であり得る。
. Alk1 および Alk2は、存在するとき、-CH2-、-CH2CH2-および-CH2CH2CH2-から選択することができ、Q は1,4-フェニレンであり得る。
【0073】
基-L1-Y1-[CH2]z-の具体的な例は、Z における-L1-Y1-(CH2)z - が-(CH2)a(O)d(CH2)a (ここで、aは1、2または3であり、bは0、1または2であり、d は 0 または1である)、-CH=CH-または -CH2CH=CH-. -CH=CHCH2-、-C(C-、-CH2C(C-、-C(CCH2-、-(CH2)3NH-、- CH2C(=O)NH-、-CH2CH2C(=O)NH-、-CH2C(O)O-、-CH2S-、-CH2CH2C(O)O-、-(CH2) 4NH-、-CH2CH2S-、
【化5】

を含む。
【0074】
本発明の具体的な化合物は、以下の実施例で得られた化合物、それらの塩、N-オキサイド、水和物および溶媒和物を含む。
【0075】
上記のように、本発明の化合物は、IKK、特にIKKβキナーゼ活性の阻害剤であり、したがってIKK活性およびNF-kBカスケードにより調節される疾患の治療において有用である。
【0076】
そのような疾患は、腫瘍性/増殖性、免疫性および炎症性疾患を含む。特に、本発明の化合物の使用は、ヘパトセルラー(hepatocellular)癌またはメラノーマのような癌だけでなく、腸癌、 卵巣癌、頭部および首部および頚部の鱗状癌、胃もしくは肺の癌、形成外科の膠腫、グリア芽細胞多形もしくは髄芽腫のような癌の治療;ならびにリウマチ性関節炎の治療;ならびに乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺過膨張疾患、喘息、多発性硬化症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、移植対宿主病もしくは全身性狼瘡紅斑の治療を含む。
【0077】
本発明の化合物は、それらの薬物動態的性質に適った経路により投与するために製剤化され得る。
経口投与可能な組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ、経口用、局所用もしくは非経口用の無菌の溶液もしくは懸濁液のような液剤またはゲル製剤の形態であり得る。
【0078】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、単回投与の形態であってよく、結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガントもしくはポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、砂糖、とうもろこし澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;打錠用滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールもしくはシリカ;崩壊剤、例えばジャガイモ澱粉、またはラウリル硫酸ナトリウムのような許容される湿潤剤のごとき通常の賦形剤を含むことができる。
錠剤は、通常の医薬分野で周知の方法に従って、コーティングされていてもよい。
【0079】
経口用の液体製剤は、例えば水性もしくは油性の懸濁液、溶液、乳液、シロップもしくはエリキシルの形態であってもよく、あるいは使用前に水またはその他の適当な媒体で再構成される乾燥製品としても提供され得る。
【0080】
そのような液体製剤は、懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、水素添加食用油脂;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシア;(食用油脂を含み得る)非水性媒体、例えばアーモンド油、分別ココナッツ油、グリセリン、プロピレングリコールのような油性エステル、またはエチルアルコール;保存剤、例えばメチルもしくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸、ならびに所望により通常の香料または着色剤のような通常の添加剤を含んでいてもよい。
【0081】
皮膚への局所投与のために、医薬はクリーム、ローションまたは軟膏に製剤化され得る。医薬に用いられるクリームまたは軟膏は、当該分野で周知の通常の製剤、例えば英国薬局方のような標準的な医薬教科書に記載されているような製剤である。
【0082】
本発明の化合物は、吸入剤の形態で投与され得る。エアロゾルの生成は、例えば加圧式噴霧器または超音波噴霧器を用いて行うことができ、噴射剤式定量エアロゾル、または噴射剤なしで例えば吸入カプセルもしくはその他の乾燥粉末送達システムからの微細化された活性化合物を投与するのが好ましい。
【0083】
活性化合物は、用いられる吸入システムに記載されているような量で投与される。活性化合物に加えて、投与形態は、例えば噴射剤(定量エアロゾルの場合、例えばフリゲン(Frigen))、界面活性物質、乳化剤、安定化剤、保存剤、香料、充填剤(粉末吸入の場合、例えばラクトース)のような賦形剤、あるいは適当ならば他の活性化合物をさらに含んでいてもよい。
【0084】
吸入目的のために、患者に適した吸入技術を用いて、最適粒子径のエアロゾルが生成され、投与され得る多くのシステムが入手可能である。
定量エアロゾル用には、アダプター(スペーサー、エクスパンダー)および洋梨型のコンテナー(例えば、Nebulator(商標)、Volumatic(商標))ならびに噴射スプレーを噴出する自動器具 (Autohaler(商標)) の使用に加えて、特に粉末吸入の場合には、多くの技術的な解決方法 (例えば、Diskhaler(商標)、Rotadisk(商標)、Turbohaler(商標)またはEP-A-0505321に記載のインヘイラー) がある。
【0085】
眼への局所適用のために、適当な水性もしくは非水性の媒体中の溶液または懸濁液に製剤化され得る。添加剤、例えばメタビサルファイトナトリウムまたはエデト酸2ナトリウムのような緩衝剤;フェニル酢酸水銀もしくはナイトレート、塩化ベンザルコニウムまたはクロルヘキシジンのような殺菌剤を含む保存剤、およびヒプロメロースのような濃稠化剤も含まれ得る。
【0086】
活性成分は、無菌媒体中で非経口的にも投与され得る。用いられる媒体および濃度により、医薬は媒体中に溶解または懸濁され得る。好ましくは、局所麻酔剤、保存剤および緩衝剤のようなアジュバントが媒体中に溶解され得る。
【0087】
本発明の化合物は、多くの医薬的に活性な公知の物質と組み合わせて用いられ得る。例えば、本発明の化合物は、細胞障害物質、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、bcl-2 アンタゴニスト、mTorおよびモノクロナル抗体(例えば生長因子レセプタに向けられたもの)の阻害剤とともに用いられ得る。
好ましい細胞障害物質は、例えばtaxanes、platins、5-フルオラシルのような抗代謝剤、トポイソメラーゼ阻害剤などを含む。
【0088】
式(IA)または(IB)のアミノ酸誘導体、その互変異性体またはそれらの医薬的に許容される塩、N-オキサイド、水和物もしくは溶媒和物を含む本発明の医薬は、したがって典型的には細胞障害物質、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤および/またはモノクロナル抗体をさらに含み得る。
【0089】
さらに、本発明は、次のものを含む医薬組成物を提供する:
(a) 式(IA)または(IB)のアミノ酸誘導体、またはその医薬的に許容される塩、N-オキサイド、水和物もしくは溶媒和物;
(b) 細胞障害剤、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、bcl-2 アンタゴニスト、mTの阻害剤および/またはモノクロナル抗体;ならびに
(c) 医薬的に許容される担体または希釈剤。
【0090】
また、次のものを含む、ヒトまたは動物の治療において、別々に、同時にもしくは連続して用いられるための製品も提供される:
(a) 式(IA)または(IB)のアミノ酸誘導体、その医薬的に許容される塩、またはそれらのN-オキサイド、水和物もしくは溶媒和物;ならびに
(b) 細胞障害剤、HDAC阻害剤、キナーゼ阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、bcl-2 アンタゴニスト、mTの阻害剤および/またはモノクロナル抗体。
【0091】
合成
本発明の化合物(I)を合成するためのいくつかの合成方法があるが、いずれも有機合成化学者に知られている公知の化学に依存している。
したがって、式(I)の化合物は、標準的な文献に記載された当業者に周知の方法に従って合成され得る。
【0092】
典型的な文献のソースは、Advanced organic chemistry、第4版 (Wiley)、J March, Comprehensive Organic Transformation,第2版(Wiley)、R.C. Larock , Handbook of Heterocyclic Chemistry、第2版(Pergamon)、A.R. Katritzky), Synthesis、Acc. Chem. Res、Chem. Rev、または標準的な文献オンラインサーチにより特定される一次文献ソース中に見出されるようなレビュー記事、あるいはChemical AbstractsもしくはBeilsteinのような2次ソースからのものである。
【0093】
本発明の化合物は、以下に一般的に記載されている方法、より具体的には以下の実施例におけるいくつかの方法により製造することができる。
以下に記載の反応において、反応性の官能基、例えばヒドロキシ、アミノおよびカルボキシ基が最終物質で望まれる場合には、これらの基が反応に関与するのを避けるために、保護することが必要だろう。 [例えば、Greene, T.W. Protecting Groups in Organic Synthesis、John Wiley and Sons, 1999参照]。
【0094】
通常の保護基が標準的な手法でもって用いられる。ある事例では、脱保護は、一般式(IA)または(IB)の化合物の合成における最後の工程であり、以下に記載の本発明による方法は、そのような保護基の脱離まで含むものと理解されるべきである。
【0095】
上記のように、本発明の化合物は、IkB ファミリー、すなわちIKK-αおよびIKK-βの阻害剤であり、したがってヒトおよびその他の動物における癌のような細胞増殖性疾患および炎症の治療に有用である。
【0096】
略語
MeOH = メタノール
EtOH = エタノール
IPA = イソプロピルアルコール
EtOAc = 酢酸エチル
DCM = ジクロロメタン
DMF = ジメチルホルムアミド
DME = ジメチルエーテル
DMSO = ジメチルスルホキサイド
DMAP = ジメチルアミノピリジン
【0097】
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
FMOC = 9-フルオレニルメトキシカルボニル
Na2CO3 = 炭酸ナトリウム
HCl = 塩酸
DIPEA = ジイソプロピルエチルアミン
MP-CNBH3 = マクロポーラス トリエチルアンモニウム メチルポリスチレン シアノボロハイドライド
BEMP = 2-t-ブチルアミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-パーヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン
NaH = 水素化ナトリウム
【0098】
NaOH = 水酸化ナトリウム
NaHCO3 = 炭酸水素ナトリウム
HCl = 塩酸
Pd/C = パラジウム炭素
PdCl2(dppf) = [1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン] ジクロロパラジウム(II).
EDC = 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
KOAc = 酢酸カリウム
【0099】
TBAI = テトラブチルアンモニウムヨーダイド
ml = ミリリットル
g = グラム
mg = ミリグラム
mol = モル
mmol = ミリモル
Sat = 飽和の
LCMS =高性能液体クロマトグラフィ/質量分析
NMR = 核磁気共鳴吸収
【0100】
市販の反応試剤および溶媒 (HPLC グレード) は、さらに精製することなく用いられた。溶媒はBuchiロータリーエバポレーターを用いて除去された。 マイクロ波照射は、CEM Discovery モデルを用い、300Wにセットして行われた。フラッシュクロマトグラフィによる化合物の精製は、Fluorochem から得られた粒子径40〜63μm (230〜400メッシュ)のシリカゲルを用いて行われた。
【0101】
プレパラティブHPLCによる化合物の精製は、逆相Agilent prep-C18カラム(5μm, 50 x 21.2 mm)を用いてAgilent prep システムで、次の条件下に行われた。グラディエント0-100% B (A = 水/ 0.1% アンモニアまたは0.1%ギ酸およびB = アセトニトリル/ 0.1%アンモニアまたは0.1%ギ酸)10分以上、流速= 28 ml/分、UV 254 nmで検出。
【0102】
1H NMR スペクトルは重水素化溶媒中、Bruker 400または300 MHz AV スペクトロメーターで記録された。ケミカルシフト(δ)は、ppmである。薄層クロマトグラフィ(TLC)分析は、Kieselgel 60 F254 (Merck)プレートで、UV光を用い可視化して行われた。
【0103】
分析HPLC/MSは次のようにして得られた:Agilent Prep-C18 Scalarカラム、 5 μm (4.6 x 50 mm、流速2.5 ml/min)、 0.1% v/vギ酸グラジエント含有H2O-MeCNで溶出、7分以上、254 nmでUV検出。
【0104】
グラディエント情報:0.0 - 0.5 分:95% H2O-5% MeCN; 0.5 -5.0分; 95% H2O-5% MeCNから 5% H2O-95% MeCNに傾斜をつける; 5.0 - 5.5分: 5% H2O-95% MeCNでホールド; 5.5 - 5.6 分: 5% H2O-95% MeCNでホールド、流速3.5 ml/分まで上げる; 5.6 - 6.6分: 5% H2O-95% MeCNでホールド、流速3.5 ml/分; 6.6 - 6.75分:95% H2O-5% MeCNにリターン、流速 3.5 ml/分; 6.75 - 6.9 分:95% H2O-5% MeCNでホールド、流速3.5 ml/分; 6.9 - 7.0分:95% H2O-5% MeCNでホールド、流速2.5 ml/分まで下げる。
【0105】
マススペクトルは、ポジティブ(APCI + ESI+)またはネガティブ(APCI + ESI-) モードのいずれかで、Agilent マルチモードソースを用いて得られた。
【0106】
一般式(IA)および(IB)の化合物の合成に採用され得る方法の実施例が以下に記載されるが、以下のスキーム1-10に示される反応に限定されない。
【0107】
スキーム1は、関連のボロネートエステル中間体(2a-5c および 7a-12)を中央のチオフェン骨格(中間体1 および 13)と結合させる典型的なスズキ反応を用いる、以下に記載の実施例の一般的な合成経路を示す。
【0108】
【化6】

【0109】
スキーム2は、中間体2aへの合成を示す。
【化7】

【0110】
スキーム3は、中間体3aへの合成を示す。
【化8】

【0111】
スキーム4は、中間体5aへの合成を示す。
【化9】

【0112】
スキーム5は、中間体6aへの合成を示す。
【化10】

【0113】
スキーム6は、中間体8および11への合成を示す。
【化11】

【0114】
スキーム7は、中間体9への合成を示す。
【化12】

【0115】
スキーム8は、中間体10への合成を示す。
【化13】

【0116】
スキーム9は、実施例19への合成を示す。
【化14】

【0117】
スキーム10は、中間体12への合成を示す。
【化15】

中間体
中間体1 5-ブロモ-2-(カルバモイルアミノ)チオフェン-3-カルボキサミド
【化16】

スキーム1の工程1〜4に示す中間体1の合成は、WO03104218に詳細に記載されている。
【0118】
中間体2a シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-D-ホモセリネート
【化17】

中間体2aの合成は、スキーム2に詳細に記載されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0119】
工程1 O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-D-ホモセリン
D-ホモセリン(1 g, 8.4 mmol)のアセトニトリル(10 ml)中の懸濁物に、0℃にて、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(1.32 ml, 8.8 mmol, 1.05 eq)を加えた。塩化tert-ブチル-ジメチルシリル(1.33 g, 8.8 mmol, 1.05 eq)を、次いで、5分間かけて少しずつ加え、反応混合物を室温まで温めて16時間撹拌した。白色の沈殿物が形成され、これをろ過して、アセトニトリルで洗浄した後に、真空下で乾燥させた。表題化合物を、白色固体として単離した(1.8 g, 92%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 7.5 (1H, br s), 3.7 (1 H, m), 3.35 (4H, bm), 1.95 (1H, m), 1.70 (1H, m), 0.9 (9 H, s), 0.1 (6H, s).
【0120】
工程2 N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-D-ホモセリン
O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-D-ホモセリン (1.8 g, 7.7 mmol)のDCM (100 ml)中の懸濁物を、0℃にて、トリエチルアミン(2.15 ml, 15.4 mmol, 2 eq)およびジ-tert-ブチル ジカーボネート(1.77 g, 8.1 mmol, 1.05 eq)で処理した。反応混合物を室温にて16時間、反応の完了まで撹拌した。DCMを減圧下で除去し、混合物を酢酸エチル/塩水で処理した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させた。未精製の生成物を、さらなる精製を行わずに、次に用いた(2.53 g, 99%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 7.5 (1H, br s), 5.85 (1H, d, J=6.5Hz), 4.3 (1H, m), 3.75 (2H, m), 1.95 (2H, m), 1.40 (9H, s), 0.85 (9H, s), 0.1 (6H, s).
【0121】
工程3 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-D-ホモセリネート
N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-D-ホモセリン(2.53 g, 7.6 mmol)のDCM (50 ml)溶液に、0℃にて、シクロペンタノール(1.39 ml, 15.3 ml, 2 eq)、EDC (1.61 g, 8.4 mmol, 1.1 eq)およびDMAP (0.093 g, 0.76 mmol, 0.1 eq)を加えた。反応混合物を、室温にて16時間撹拌した後に、減圧下に蒸発させた。未精製の残渣を酢酸エチル(100 ml)に溶解し、1M HCl、1M Na2CO3および塩水で洗浄した。有機層を、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させた。生成物を、酢酸エチル/ヘプタン(1:4)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製して、2.24 g、73%収率の表題化合物を得た。
LCMS純度 100%, m/z 402.5 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 5.2 (1H, d, J=6.3Hz), 5.15 (1H, m), 4.2 (1H, m), 3.6 (2H, m), 2.0 (1H, m), 1.95-1.55 (9H, bm), 1.4 (9H, s), 0.85 (9H, s), 0.1 (6H, s).
【0122】
工程4 シクロペンチル (2R)-4-ヒドロキシ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[tert-ブチル(ジメチル)シリル]-D-ホモセリネート(1.57 g, 3.9 mmol)を、酢酸:THF:水(3:1:1, 100 ml)に溶解した。反応混合物を、30℃にて16時間、反応の完了まで撹拌した。酢酸エチル(200 ml)を加え、1M Na2CO3、1M HClおよび塩水で洗浄した。酢酸エチル抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させて、生成物を澄明な油として得て、これを放置して結晶化させた(1.0 g, 95%)。
LCMS純度 100%, m/z 310.3 [M+Na]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 5.4 (1H, d, J=6.5Hz), 5.2 (1H, m), 4.4 (1H, m), 3.65 (2H, m), 2.15 (1H, m), 1.9-1.55 (9H, bm), 1.45 (9H, s).
【0123】
工程5 シクロペンチル (2R)-4-ブロモ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
DCM (16.2 ml)中のN-ブロモスクシンイミド(1.86 g, 10.4 mmol)のスラリーに、トリフェニルホスフィン(2.56 g, 9.74 mmol)のDCM (7.2 ml)溶液を加えた。溶液を、添加の後にさらに5分間撹拌した。ピリジン(338μl, 4.18 mmol)、次いでDCM (8.8 ml)中のシクロペンチル(2R)-4-ヒドロキシ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(1.0 g, 3.48 mmol)の溶液を加えた。溶液を18時間撹拌し、真空濃縮し、残存溶媒を、トルエン(3×16 ml)と共沸させた。残渣を、ジエチルエーテル(10 ml)および酢酸エチル:ヘプタン(1:9, 2×10 ml)で粉砕した。合わせたエーテルおよびヘプタン溶液をシリカ上で濃縮し、酢酸エチル/ヘプタン(1:9〜2:8)を用いるカラムクロマトグラフィーで精製して、1.02 g (84%収率)の表題化合物を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 5.3-5.05(2 H, m), 4.45-4.3(1H, m), 3.45 (2H, t, J=7.3Hz), 2.50-2.30 (1H, m), 2.25-2.10 (1H, m), 1.95-1.60 (8H, b m), 1.47 (9H, s).
【0124】
工程6 シクロペンチル O-(4-ブロモフェニル)-D-ホモセリネート
4-ブロモフェノール(0.593 g, 3.43 mmol)のDMF (5 ml)溶液を、氷浴で0℃まで冷却し、NaH (0.137 g, 3.43 mmol)を一度に加えた。反応物を室温まで温め、短く超音波破砕し、0℃まで再び冷却した。シクロペンチル(2R)-4-ブロモ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(1.2 g, 3.43 mmol)のTHF (10 ml)中の溶液を、次いで滴下し、反応物を室温まで温めた。1時間後に、反応物を50℃まで加熱し、TLCにより反応の完了をモニターした。4時間後に、反応は完了したようであり、これを室温まで冷却して、EtOAcおよび飽和NaHCO3の混液に注いだ。有機層を回収し、水で3回と、塩水で洗浄し、次いで、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、真空蒸発させた。残渣は、少量の4-ブロモフェノールをまだ含有しており、これを、DCM (7 ml)中のMP-カーボネート(2 g)を用いて捕捉することにより除去し、ろ過物を蒸発させて、生成物を白色固体として得た(1.2 g, 79%)。m/z 443 [M+H]+.
【0125】
工程7 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-D-ホモセリネート
シクロペンチルO-(4-ブロモフェニル)-D-ホモセリネート(1.2 g, 2.71 mmol)、KOAc (0.346 g, 3.53 mmol)、ビス[ピナコラート]ジボロン(1.378 g, 5.43 mmol)およびPdCl2(dppf) (0.198 g, 0.271 mmol)のDMSO中の混合物を、窒素雰囲気下に65℃に加熱し、生成物の形成をLC-MSによりモニターした。1時間後に反応が完了したので、反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcおよび1M HClの混液に注いだ。層を分離し、有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下に蒸発させた。残渣を、ヘキサン中の5%〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した(0.65 g, 49%)。m/z 490 [M+H]+.
【0126】
中間体2b シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリネート
【化18】

中間体2aと同様の方法により、L-ホモセリンをスキーム2の工程1で用いて合成した。LCMS: m/z 490 [M+H]+.
【0127】
中間体3a シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]-L-ノルバリネート
【化19】

中間体3aの合成は、スキーム3に詳細に示されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0128】
工程1 (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 5-ベンジルエステル 1-シクロペンチルエステル
Boc-L-Glu(OBzl)-OH (15 g, 44.5 mmol)のジクロロメタン(220 ml)溶液に、氷浴中で、シクロペンタノール(4.8 ml, 53.3 mmol, 1.2 eq)、EDC (9.4 g, 48.9 mmol, 1.1 eq)およびDMAP (543 mg, 4.4 mmol, 0.1 eq)を加えた。反応混合物を、室温まで温め、12時間、反応の完了まで撹拌した。反応混合物をDCM (200 ml)で希釈し、1M HCl、1M Na2CO3および塩水で洗浄した。有機層を、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下に蒸発させた。生成物を、酢酸エチル/ヘプタン(1:4)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製して、12.4 g、69%収率の表題化合物を、白色固体として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 7.38 (5H, m), 5.70 (1H, m), 5.10 (2H, s), 5.05 (1H, m), 4.25 (1H, m), 2.47 (2H, m), 2.15 (1H, m), 1.95-1.55 (9H, bm), 1.47 (9H, s).
【0129】
工程2 (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 1-シクロペンチルエステル
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 5-ベンジルエステル 1-シクロペンチルエステル(12.4 g, 30.5 mmol)を、EtOAc (200 ml)に溶解し、窒素でパージした後に、20% Pd(OH)2-カーボン触媒(1.3 g)を加えた。反応フラスコを、次いで、水素ガスで5分間パージした後に、水素バルーンの下で5時間、反応の完了まで放置した。触媒をろ過により除去し、50 ml EtOAcで洗浄し、合わせた母液を減圧下に蒸発させた。表題化合物を、澄明な油として単離し(7.73 g, 85%)、さらなる精製は必要なかった。
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 10.0 (1H, br s), 5.70 (2H, m), 4.28 (1H, m), 2.47 (2H, m), 2.15 (1H, m), 1.95-1.55 (9H, bm), 1.47 (9H, s).
【0130】
工程3 (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-5-ヒドロキシ-ペンタン酸 シクロペンチルエステル
エチルクロロホルメート(2.45 ml, 25.6 mmol, 1.2 eq)を、-20℃にて、(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン二酸 1-シクロペンチルエステル(6.73 g, 21.4 mmol)およびN-メチルモルホリン(3.05 ml, 27.8 mmol, 1.3 eq)のTHF (50 ml)溶液に撹拌しながら加えた。反応混合物は、非常に濃密になり、白色固体の沈殿が生じた。反応物を、よって、THF (100 ml)でさらに希釈して混合を助け、-20℃にて2時間、撹拌を継続した。沈殿した塊をろ過し、ろ過物を、水素化ホウ素ナトリウム(2.43 g, 64.1 mmol, 3 eq)のTHF (20 ml)および水(5 ml)中の溶液に、0℃にて、20分かけて加えた。反応混合物を室温まで撹拌し、反応の完了まで4時間放置した。混合物をpH 5まで1M HClを用いて酸性にし、THFを減圧下で除去した。水溶液をEtOAc (3×100 ml)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。生成物を、カラムクロマトグラフィーにより精製して(DCM-5% MeOH/DCM)、澄明な油として単離した(5.0 g, 78%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 5.20 (2H, m), 4.25 (1H, m), 3.65 (2H, m), 2.00-1.57 (12H, bm), 1.47 (9H, s).
【0131】
工程4 (S)-5-ブロモ-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン酸 シクロペンチルエステル
N-ブロモ スクシンイミド(3.54 g, 19.9 mmol, 3 eq)のDCM (30 ml)中のスラリーに、トリフェニルホスフィン(4.87 g, 18.8 mmol, 2.8 eq)のDCM (15 ml)中の溶液を加えた。溶液をさらに5分間撹拌した後に、ピリジン(644μl, 7.96 mmol, 1.2 eq)、および(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-5-ヒドロキシ-ペンタン酸 シクロペンチルエステル(2.0 g, 6.64 mmol)のDCM (20 ml)中の溶液を加えた。溶液を18時間撹拌し、真空濃縮し、残存溶媒をトルエン(3×30 ml)と共沸させた。残渣をジエチルエーテル(30 ml)および酢酸エチル:ヘプタン(1:9, 2×30 ml)で粉砕した。併せたエーテルおよび酢酸エチル/ヘプタン溶液をシリカ上で濃縮し、酢酸エチル/ヘプタン(1:9〜2:8)を用いるカラムクロマトグラフィーで精製して、1.34 g (55%収率)の表題化合物を、澄明な油として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 5.25 (1 H, m), 5.05 (1H, bd), 3.45 (2H, m), 2.00-1.55 (12H, bm), 1.45 (9H, s).
【0132】
工程5 シクロペンチル 5-(4-ブロモフェノキシ)-N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-ノルバリネート
4-ブロモフェノール(261 mg, 1.510 mmol)のアセトニトリル(2 ml)溶液に、窒素の下で、BEMP (397μl, 1.373 mmol)を加えた。混合物を50℃にて30分間撹拌した後に、室温まで冷却し、(S)-5-ブロモ-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン酸 シクロペンチルエステル (500 mg, 1.373 mmol)を、アセトニトリル(2 ml)中の溶液として加えた。反応物を50℃にさらに1時間加熱し、次いで、混合物をLCMSにより分析した。反応物を2M Na2CO3 (100 ml)に注ぎ、EtOAc (2×100 ml)で抽出した。合わせた有機層を2M Na2CO3 (3×100 ml)および塩水(100 ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空濃縮して、無色の油を得た。MP-カーボネート(1.0 g)を、ジクロロメタン(3.4 ml)中の未精製の生成物の溶液に加え、溶液を室温にて一晩放置した。LCMSは、4-ブロモフェノールの完全な除去を示したので、反応物をろ過してMP-カーボネートを除去し、樹脂をDCM (2×50ml)で洗浄した。ろ過物を濃縮して未精製の生成物を得て、これを、イソヘキサン中5% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製した。表題化合物の収量= 435 mg、0.953 mmol、69.4%収率。m/z 456および458 [M+H]+.
【0133】
工程6 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]-L-ノルバリネート
DMSO (1.6 ml)を、シクロペンチル 5-(4-ブロモフェノキシ)-N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-ノルバリネート(430 mg, 0.942 mmol)、ビス[ピナコラート]ジボロン(479 mg, 1.884 mmol)、酢酸カリウム(120 mg, 1.225 mmol)およびPdCl2(dppf) (77 mg, 0.094 mmol)を含有するバイアルに、窒素の下で加えた。窒素を溶液に約5分間通気し、次いで、反応物を65℃まで一晩加熱した。LCMSは反応の完了を示したので、反応物を室温まで冷却し、エーテルと水に分配した。層を分離し、有機層を水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。精製は、イソヘキサン中の10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより行った。表題化合物の収量 = 380 mg、0.755 mmol、80%収率。m/z 504 [M+H]+.
【0134】
中間体3b シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]-D-ノルバリネート
【化20】

中間体3aと同様の方法により、Boc-D-Glu(OBzl)-OHをスキーム3の工程1で用いて合成した。m/z 504 [M+H]+.
【0135】
中間体4a シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[3-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリネート
【化21】

中間体2bに類似の方法により、4-ブロモ-3-メチル-フェノールをスキーム2の工程6で用いて合成した。m/z 504 [M+H]+.
【0136】
中間体4b シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[2-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリネート
【化22】

中間体2bに類似の方法により、4-ブロモ-2-メチル-フェノールをスキーム2の工程6で用いて合成した。m/z 504 [M+H]+.
【0137】
中間体4c シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[3-クロロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリネート
【化23】

中間体2bに類似の方法により、4-ブロモ-3-クロロ-フェノールをスキーム2の工程6で用いて合成した。m/z 524 [M+H]+.
【0138】
中間体4d シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[2-クロロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-L-ホモセリネート
【化24】

中間体2bに類似の方法により、4-ブロモ-2-クロロ-フェノールをスキーム2の工程6で用いて合成した。m/z 524 [M+H]+.
【0139】
中間体5a シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
【化25】

中間体5aの合成は、スキーム4に示されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0140】
工程1 シクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-エノエート
DMAP (0.057 g, 0.465 mmol)のDCM (20ml)中の溶液に、撹拌しながらEDC (0.980 g, 5.11 mmol)を加えた。Boc-L-アリルグリシン(1.0 g, 4.65 mmol)のDCM (5 ml)中の溶液を加え、混合物を室温にて20分間撹拌した。シクロペンタノール(0.506 ml, 5.58 mmol)を、次いで加え、混合物を室温にて一晩、反応の完了まで撹拌した。反応溶媒を真空で濃縮した後に、残渣を、ヘキサン中の6% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した。
収量 = 0.907 g、3.20 mmol、68.9%収率。m/z 284 [M+H]+.
【0141】
工程2 シクロペンチル (2S,4E)-5-(4-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-エノエート
シクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-エノエート(0.88 g, 3.11 mmol)、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン(0.966 g, 3.42 mmol)、TBAI (1.262 g, 3.42 mmol)およびNaHCO3 (0.783 g, 9.32 mmol)のアセトニトリル(10 ml)中の溶液を、N2でパージし、酢酸パラジウム(0.070 g, 0.311 mmol)を加えた。反応物を、次いで、70℃に一晩加熱した。LCMSは、不完全な変換を示したので、反応物を窒素で再びパージして、0.05 eq (35 mg)のPd(OAc)2、0.25 eq (460 mg)のTBAIおよび0.25 eqのNaHCO3 (65 mg)をさらに加え、さらに24時間、70℃にて撹拌した。室温まで冷却した後に、溶媒を減圧下で除去した。未精製の残渣をシリカに吸着させ、イソヘキサン中の10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製した。収量 = 715 mg、1.631 mmol、52.5%収率。LCMS純度>90%: m/z 438および440 [M+H]+.
【0142】
工程3 シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
DMSO (4 ml)を、シクロペンチル (2S,4E)-5-(4-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-エノエート(700 mg, 1.597 mmol)、ビス[ピナコラート]ジボロン(811 mg, 3.19 mmol)、酢酸カリウム(204 mg, 2.076 mmol)およびPdCl2(dppf) (130 mg, 0.160 mmol)に、窒素雰囲気下に加えた。窒素を約5分間通気し、次いで、反応物を65℃に一晩加熱した。LCMSは、完全な変換を示したので、反応物を室温まで冷却し、ジエチルエーテルと水に分配した。層を分離し、有機層を水および塩水で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。精製は、イソヘキサン中の6〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーで行った。収量 = 315 mg、0.649 mmol、40.6%収率。LCMS純度>90%: m/z 486 [M+H]+.
【0143】
中間体5b シクロペンチル (2R,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
【化26】

中間体5aに類似の方法により、Boc-D-アリルグリシンをスキーム4の工程1で用いて合成した。LCMS: m/z 486 [M+H]+.
【0144】
中間体5c tert-ブチル (2S,4E)-2-アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
【化27】

中間体5cの合成を以下に詳細に示す。
【0145】
工程1 Fmoc-L-アリルグリシン tert-ブチルエステル
Fmoc-L-アリルグリシン(4 g, 11.86 mmol)のジクロロメタン(120 ml)中の溶液に、tert-ブチル-2,2,2-トリクロロアセトイミデート(4.24 ml, 23.71 mmol)のシクロヘキサン(6 ml)溶液を加えた。三フッ化ホウ素エーテラート(1.502 ml, 11.86 mmol)を次いで加え、反応混合物を室温にて一晩、撹拌したままにした。LCMSは、いくらかの出発材料が残存することを示したので、0.5 eqの三フッ化ホウ素エーテラートおよび0.5 eqのtert-ブチル-2,2,2-トリクロロアセトイミデートを反応混合物にさらに加えた。4時間撹拌した後に、反応が完了した。反応混合物に、飽和NaHCO3溶液(100 ml)を加えた。有機層を分離し、濁った水層を、さらにジクロロメタン(2×30 ml)で2回抽出した。合わせた有機物を、飽和NaHCO3溶液および塩水で連続的に洗浄し、その後、乾燥し(MgSO4)、真空濃縮して、不透明な油を得た。未精製の生成物を、イソヘキサン中の5%酢酸エチルで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製した。収量 = 3.4 g, 8.64 mmol, 58%。
【0146】
工程2および3は、中間体5aの合成の工程2および3に類似の実験の詳細に従った。9-フルオレニルメトキシカルボニル保護基は、工程3で用いた反応条件を用いて簡便に除去される。LCMS: m/z 374 [M+H]+.
【0147】
中間体6a シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-L-ノルバリネート
【化28】

中間体6aの合成は、スキーム5に詳細に示されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0148】
工程1 シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]ペント-4-エノエート
シクロペンチル(2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート(中間体5a) (810 mg, 1.669 mmol)、中間体1 (401 mg, 1.517 mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン) Pd触媒(175 mg, 0.152 mmol)の混合物に、DME (8 ml)、続いて、NaHCO3の飽和溶液(3 ml)を加えた。混合物を、80℃に予め加熱した油浴に入れた。4時間後に、LCMSにより、反応が完了したと判断した。混合物を室温まで冷却し、シリカに吸着させ、DCM中の5% MeOHで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した。収量 = 0.5 g、0.857 mmol、56.5%収率。LCMS純度 93%: m/z 543 [M+H]+, 541 [M-H]+.
【0149】
工程2 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-L-ノルバリネート
水素ガスを、ウィルキンソン触媒(767 mg, 0.829 mmol)のIPA (10 ml)およびトルエン(5 ml)中の懸濁物に通気した。5分後に、シクロペンチル(2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]ペント-4-エノエート(300 mg, 0.553 mmol)のIPA (10 ml)溶液を加えた。混合物を水素雰囲気下に維持し、80℃に予め加熱した油浴に入れた。4時間後に、LCMSにより、反応が完了したと判断した。混合物を熱い間にろ過し、ろ過物を真空蒸発させた。残渣を、DCM中の4% MeOHで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した。収量=120 mg、0.198 mmol、36%収率。LCMS純度 90%: m/z 543 [M-H]+.
【0150】
中間体6b シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ノルバリネート
【化29】

中間体6aに類似の方法により、中間体5bをスキーム5の工程1で用いて合成した。m/z 545 [M+H]+.
【0151】
中間体7a シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[3-クロロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
【化30】

中間体5aに類似の方法により、4-ブロモ-3-クロロ-ヨードベンゼンをスキーム4の工程2で用いて合成した。m/z 520 [M+H]+.
【0152】
中間体7b シクロペンチル (2S,4E)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[2-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
【化31】

中間体5aに類似の方法により、4-ブロモ-2-メチル-ヨードベンゼンをスキーム4の工程2で用いて合成した。m/z 500 [M+H]+.
【0153】
中間体8 シクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-イノエート
【化32】

中間体8の合成は、スキーム6に詳細に示されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0154】
工程1 シクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-イノエート
Boc-L-プロパルギルグリシン(5 g, 23.45 mmol)のDCM (100 ml)溶液に、シクロペンタノール(3.03 g, 35.2 mmol)、EDC (4.93 g, 25.8 mmol)およびDMAP (0.286 g, 2.345 mmol)を加えた。混合物を、室温にて一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を、ヘキサン中の7〜12% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した。収量 = 5.5 g、19.55 mmol、83%収率。
【0155】
工程2 シクロペンチル (2S)-5-(4-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-イノエート
シクロペンチル(2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-イノエート(2.45 g, 8.72 mmol)および4-ヨード-ブロモベンゼン(2.96 g, 10.46 mmol)のジエチルエーテル(4 ml)中の混合物に、ヨウ化銅(0.166 g, 0.872 mmol)およびPdCl2(PPh3)2 (0.306 g, 0.436 mmol)を加えた。ジエチルアミン(5.43 ml, 52.3 mmol)を次いで加え、混合物を室温にて撹拌した。2時間後に、LCMSは反応の完了を示した。混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機層を、水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空蒸発させた。未精製の残渣を、ヘキサン中の5〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した。収量 = 2.9 g、6.51 mmol、75%収率。LCMS純度 98%: m/z 437 [M+H]+.
【0156】
工程3 シクロペンチル (2S)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-イノエート
シクロペンチル (2S)-5-(4-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-イノエート(2.9 g, 6.65 mmol)、ビス[ピナコラート]ジボロン(2.025 g, 7.98 mmol)、PdCl2(dppf) (0.246 g, 0.332 mmol)および酢酸カリウム(0.978 g, 9.97 mmol)の混合物に、DMSO (10 ml)を加えた。混合物を窒素でパージし、80℃に予め加熱した油浴に12時間入れた。混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。合わせたエーテル抽出物を、水(×3)および塩水(×2)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、真空蒸発させた。残渣を、ヘキサン中の5〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した。収量 = 2.1 g、3.69 mmol、55.6%収率。LCMS純度 85%: m/z 484 [M+H]+.
【0157】
中間体9 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-L-フェニルアラニネート
【化33】

中間体9の合成は、スキーム7に詳細に記載されており、既に上に示した同様の実験の詳細に従う。m/z 460 [M+H]+.
【0158】
中間体10 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル]-L-ホモセリネート
【化34】

中間体10の合成は、スキーム8に詳細に示されており、以下に示す実験の詳細に従う。
【0159】
工程1: O-(4-ブロモベンジル)-N-(tert-ブトキシカルボニル)-L-ホモセリン
THF (50 ml)中のBoc-L-ホモセリン(5.181 g, 23.63 mmol)を含有するフラスコに、水素化ナトリウム(2.93 g, 73.3 mmol)を加え、0℃にて30分間撹拌したままにした。反応混合物を室温まで温め、2時間放置した。4-ブロモ-ベンジルブロミド(11.81 g, 47.3 mmol)を、次いで、THF溶液(15 ml)として滴下した。反応物を、室温にて20時間放置した。反応物を、MeOHでクエンチし、溶媒を真空除去した。残渣を水に溶解し、Et2Oで洗浄した。水層を、2M HClを用いて酸性にし、EtOAcで徹底的に抽出した。有機層を、水および塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。油状の残渣(11 g)を、ヘキサン中の50〜100% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製し、EtOAc中の10〜50% MeOHでフラッシュした。粘性の油として収量 = 927 mg、2.388 mmol、10%収率。m/z 386/388 [M-H]+.
【0160】
工程2および3は、上記の実験の詳細と同様に記載される。m/z 504 [M+H]+.
【0161】
中間体11 シクロペンチル (2S,4Z)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-5-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ペント-4-エノエート
【化35】

中間体11の合成は、スキーム6に詳細に示されており、以下に示す実験手順に従う。
【0162】
工程4 シクロペンチル (2S,4Z)-5-(4-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-エノエート
シクロペンチル(2S)-5-(4-ブロモフェニル)-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ペント-4-イノエート(750 mg, 1.719 mmol)、キノリン(41μl, 3.44 mmol)、CaCO3上の5% Pd(500 mg)の混合物を窒素でパージした。EtOH (60 ml)を加え、混合物をH2雰囲気下に、室温にて21時間撹拌した。反応が完了しなかったので、混合物をセライトろ過し、新しい触媒(500 mg)で処理し、H2雰囲気下に室温にてさらに18時間撹拌した。混合物をセライトろ過し、ろ過物を真空蒸発させて、未精製の生成物を無色の油として得た。5% EtOAc/イソヘキサンを用いるカラム精製により、生成物(640 mg, 1.416 mmol, 82%収率)を、澄明な無色の油として得た。LCMS純度 97%: m/z 439 [M+H]+. 1H NMRは、8 wt%のトランス-アルケンを示した。
【0163】
工程5は、上記の実験の詳細と同様に記載される。m/z 486 [M+H]+.
【0164】
中間体12 シクロペンチル (2S)-4-[ベンジル[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]アミノ]-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
【化36】

中間体12の合成は、スキーム10に詳細に示されており、完全な実験の詳細を以下に示す。
【0165】
工程1 N-(4-ブロモフェニル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド
4-ブロモアニリン(3 g, 17.44 mmol)のDCM (40 ml)中の氷冷溶液に、トリエチルアミン(3.53 g, 34.9 mmol)を加え、続いて無水トリフルオロ酢酸(2.67 ml, 19.18 mmol)を滴下した。この温度にて30分間撹拌した後に、反応物を室温まで温め、さらに1時間撹拌した。混合物を、次いで、飽和NaHCO3に注ぎ、層を分離して、水層をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物を、水および塩水で洗浄し、次いで乾燥し(MgSO4)、ろ過し、真空蒸発させて、生成物をオフホワイトの固体として得た(4.6 g, 17 mmol, 98%収率)。LCMS純度 95%: m/z 269 [M+H]+.
【0166】
工程2 シクロペンチル (2S)-4-[(4-ブロモフェニル)アミノ]-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
アセトニトリル(40 ml)を、N-(4-ブロモフェニル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド (1.3 g, 3.71 mmol)、シクロペンチル(2S)-4-ブロモ-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(0.904 g, 3.37 mmol)およびK2CO3 (0.933 g, 6.75 mmol)の混合物に加えた。得られた懸濁物を60℃まで加熱し、DMF (2 ml)を加え、生成物の形成をモニターした。6日後に、反応は完了しなかったが、反応物から形成されていた生成物を単離した。溶媒を蒸発させ、残渣を水およびEtOAcの混液に溶解し、層を分離した。水層を、さらなるEtOAcで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、ろ過し、真空蒸発させて、黄色の油を得た(約1.8 g)。これを、ヘキサン中の10〜15% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供して、表題化合物を無色の油として得た(660 mg, 1.5 mmol, 44%収率)。LCMS純度 95%: m/z 442 [M+H]+.
【0167】
工程3 シクロペンチル (2S)-4-[ベンジル(4-ブロモフェニル)アミノ]-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
シクロペンチル(2S)-4-[(4-ブロモフェニル)アミノ]-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(0.66 g, 1.495 mmol)、臭化ベンジル(1.023 g, 5.98 mmol)およびK2CO3 (0.620 g, 4.49 mmol)の混合物に、MeCN (15 ml)およびDMF (1 ml)を加えた。懸濁物を60℃にて一晩加熱した。反応物を、次いで、水およびEtOAcの混液に注ぎ、層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層を水および塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、ろ過し、真空蒸発させて、油(約1.5 g)を得て、これを、ヘキサン中の5〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供して、生成物を得た(550 mg, 1.1 mmol, 69%収率)。LCMS純度 95%: m/z 532 [M+H]+.
【0168】
工程4 シクロペンチル (2S)-4-[ベンジル[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]アミノ]-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート
シクロペンチル(2S)-4-[ベンジル(4-ブロモフェニル)アミノ]-2-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ブタノエート(0.55 g, 1.035 mmol)、KOAc (0.152 g, 1.552 mmol)、ビス[ピナコラート]ジボロン(1.051 g, 4.14 mmol)およびPdCl2(dppf) (0.076 g, 0.103 mmol)の混合物に、DMSOを加えた。懸濁物を窒素でパージし、70℃に加熱し、生成物の形成をLCMSによりモニターした。一晩加熱した後に、反応物を飽和NaHCO3およびEtOAcの混液に注ぎ、層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層を、水(×2)および塩水で洗浄し、次いで乾燥し(MgSO4)、ろ過し、真空蒸発させた。濃色の残渣を、ヘキサン中の5〜10% EtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーに供して、生成物を無色の油として得た(420 mg, 0.72 mmol, 70%収率)。LCMS純度 95%: m/z 579 [M+H]+.
【0169】
中間体13 5-ブロモ-3-(カルバモイルアミノ)チオフェン-2-カルボキサミド
【化37】

中間体13の合成は、WO2004063186に詳細に記載されている。
【0170】
実施例
以下の実施例は、本発明の具体的な化合物の製造、およびそのIKK阻害特性を示す。
実施例1 シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリネート
【化38】

LC/MS純度 94%, m/z 447 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6), δ: 10.9 (1H, s), 8.5 (3H, br s), 7.6 (1H, br s), 7.5 (1H, s), 7.4 (2H, d, J=8.8Hz), 7.2 (1H, br s), 6.9 (2H, d, J=8.8Hz), 5.1 (1H, m), 4.1 (3H, m), 2.2 (2H, m), 1.9-1.5 (8H, m).
実施例1の合成をスキーム1に示す。
【0171】
工程5 シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリネート
DME (6 ml)を、シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-D-ホモセリネート(中間体2a) (0.50 g, 1.022 mmol)、中間体1 (0.297 g, 1.124 mmol)およびNaHCO3 (0.681 ml, 2.043 mmol)の混合物に加えた。反応物を、窒素で充分にフラッシュし、テトラキス(トリフェニルホスフィン) Pd触媒(0.118 g, 0.102 mmol)を加えた。反応物を、80℃まで一晩加熱した。反応物を室温まで冷却し、DCMおよび飽和NaHCO3の混合物に注いだ。層を分離し、水層を2×DCM (30 ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、シリカに吸着させ、DCM中の2% MeOH〜4% MeOHで溶出するカラムクロマトグラフィーに供した(198 mg, 36%)。LCMS: m/z 548 [M+H]+.
【0172】
工程6 シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリネート
シクロペンチル N-(tert-ブトキシカルボニル)-O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリネート(0.24 g, 0.439 mmol)のTHF (2 ml)溶液を、0℃まで冷却した。ジオキサン中の4M HCl (2.195 ml, 8.78 mmol)を加え、溶液を室温まで撹拌しながら温めた。10分後に、ジオキサン中のHClの等量(2.195 ml, 8.78 mmol)をさらに加えた。反応は2時間後に完了し、溶媒を減圧下に蒸発させ、残渣をTHF (10 ml)で粉砕した。固体を回収し、多量のジエチルエーテルで洗浄し、真空下で一晩乾燥させた(201 mg, 95%)。LCMS: m/z 447 [M+H]+.
【0173】
以下の実施例の化合物は、スキーム1に示す経路に従って、中間体1および適切なボロン酸エステルを用いて、実施例1と同様の様式で調製した。
【0174】
【化39】

【0175】
【表1−1】

【0176】
【表1−2】

【0177】
【表1−3】

【0178】
【表1−4】

【0179】
【表1−5】

【0180】
* 実施例19の化合物の合成は、スキーム9に示されており、詳細な実験を以下に示す。
工程1 シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)チオフェン-2-イル]フェニル]-N-シクロヘキシル-L-ホモセリネート
シクロヘキサノン(50.4 mg, 514μmol)を、実施例2 (153 mg, 343μmol)のTHF (5 ml)溶液に加え、室温にて30分間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム (363 mg, 1713μmol)を次いでゆっくりと加えた。室温にて1時間撹拌した後に、LCMSは生成物への良好な変換を示した。反応混合物を0.5M HCl (5 ml)およびDCM (10 ml)に注ぎ、10分間撹拌したままにした。混合物を、次いで、多量の飽和NaHCO3に注ぎ、層を分離し、水層をDCMでさらに2回抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、真空蒸発させて、褐色の油を得た(約300 mg)。未精製の生成物を、DCM中の5% MeOHで溶出するカラムクロマトグラフィーで精製して、生成物を白色固体として得た(65 mg, 123μmol, 36%)。
【0181】
** 実施例20の化合物の合成は、実施例19と同様の実験の詳細に従った。
【0182】
以下の実施例の化合物は、中間体13を用いて実施例1と同様の様式で調製した。
【化40】

【0183】
【表2】

【0184】
NMRデータ
【表3−1】

【0185】
【表3−2】

【0186】
実施例25 O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリン
【化41】

LC/MS純度 94%, m/z 379 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6), δ: 10.9 (1H, s), 8.5 (3H, br s), 7.6 (1H, br s), 7.5 (1H, s), 7.29 (2H, d, J=8.8Hz), 7.2 (1H, br s), 6.9 (2H, d, J=8.8Hz), 4.1 (3H, m), 2.2 (2H, m).
実施例25の合成経路は、実施例1の化合物を用いるスキーム1に詳細に示されている。
【0187】
工程7 シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリネート(実施例1) (0.05 g, 0.104 mmol)のTHF中の溶液に、1 mlの水中の水素化リチウム(25 mg, 1.035 mmol)を加えた。溶液を室温にて撹拌し、生成物の形成についてLCMSによりモニターした。2時間後に、反応が完了したと判断した。THFを真空下に蒸発させ、水層を水(2 ml)でさらに希釈した。酢酸を、pHが酸性になるまで滴下し(約10滴)、形成した沈殿物をろ過により回収して、水(3 ml)、エタノール(5 ml)およびジエチルエーテル(10 ml)で洗浄した。生成物をオフホワイトの固体として単離した(29 mg, 74%)。
【0188】
以下の実施例の化合物は、実施例25と同様の様式で調製した。
【化42】

【0189】
【表4−1】

【0190】
【表4−2】

【0191】
【表4−3】

【0192】
【表4−4】

【0193】
以下の実施例の化合物は、実施例25と同様の方法で調製した。
【化43】

【0194】
【表5】

【0195】
生物学的活性の測定
IKKβ酵素アッセイ
化合物のIKKβ キナーゼ活性阻害作用を、Invitrogen (Paisley, UK)により行われたアッセイにおいて測定した。Z´-LYTE(商標)生化学的アッセイは、フルオレッセンスベースのカップル酵素フォーマットを用い、蛋白質加水分解開裂に対する、ホスホリレートおよび非ホスホリレートペプチドのディファレンシャル感受性に基づいている。ペプチドの基質は、FRETペアを作る2つの発蛍光団−各末端におけるもの−でラベルされている。
【0196】
最初の反応において、キナーゼはATPのガンマ−ホスフェートを、合成FRET-ペプチドにおける単一のセリンまたはスレオニン残基へ移す。第2の反応において、部位−特異的プロテアーゼは、非ホスホリレートFRET-ペプチドを認識し、開裂する。
【0197】
FRET-ペプチドのホスホリレーションは、Development Reagentによる開列を抑制する。開裂は、FRET-ペプチドの発蛍光団、 FRETをドナー(すなわち、クマリン) とアクセプター(すなわち、フルオレセイン)との間で分裂させる。一方、開裂しないホスホリレートされたFRET-ペプチドはFRETを維持する。
【0198】
ドナー発蛍光団の400nmにおける励起後のアクセプター放射物に対するドナー放射物の割合(エミッション比)を計算する放射線測定方法は、反応の進展を定量化するのに用いられる。
【0199】
最終の10μL キナーゼ反応は、0.9-8.0ng IKBKB (IKKβ)、50mM HEPES pH 7.5中の2μM Ser/Thr 05 ペプチドおよびATP、0.01% BRIJ-35、10mM MgCl2、1mM EGTAからなっている。アッセイは、Km またはKmに近いATP濃度で行われる。60 分間のキナーゼ反応の後、室温で培養し、5μL の 1:128 希釈のDevelopment Reagentを加える。アッセイプレートを室温でさらに60分間培養し、蛍光プレートリーダーで読み取る。
【0200】
2つのデータポイントを、DMSO中の試験化合物のストック溶液の1/3 log 希釈シリーズから描く。10μMの最高濃度から9段階の希釈を行い、無化合物のブランクを含む。データを集め、IDBS からのXLfit ソフトウェアを用いて、分析した。容量リスポンス曲線は、モデル番号205 (sigmoidal 容量-リスポンスモデル)に合致する曲線である。描かれた曲線から、50%阻害を与える濃度を決定し、報告する。
【0201】
THP-1 細胞のLPS-刺激
THP-1 細胞を、V-ボトムの 96 ウェル組織培養プレートに4 x 104 細胞/ウェルの密度で100μl置き、5% CO2 中、37℃で16時間培養した。組織培養媒体100μl中に阻害化合物を添加して2時間後、細胞を最終濃度1μg/mlで、 LPS (E coli 005:B5 株, Sigma)で刺激し、5% CO2 中、37℃で6時間培養した。サンドウィッチELISA (R&D Systems #QTA00B)により、TNF-α レベルを細胞非含有上澄液から測定した。
【0202】
ヒト全血のLPS-刺激
ヘパリン処理された吸引器(Becton Dickinson)を用いて、ビーナスパンクチュア(venous puncture)により採血し、等量のRPMI1640 組織培養媒体中に希釈した。100μlをV-ボトムの96 ウェル組織培養プレートに入れ、100μlの RPMI1640 媒体中の阻害化合物を添加して2時間後、最終濃度100ng/mlで、細胞をLPS (E coli 005:B5 株, Sigma)で刺激し、5% CO2 中、i37℃で6時間培養した。サンドウィッチ ELISA (R&D Systems #QTA00B)により、TNF-α レベルを細胞非含有上澄液から測定した。
【0203】
次のようにして、IC50 値を3つの範囲の1つに配分した。
範囲 A: IC50 < 1000nM
範囲 B: 1000nM < IC50 <5000nM
範囲 C: IC50 >5000nM
NT = 試験しなかった
【0204】
【表6−1】

【表6−2】

【0205】
破壊細胞カルボキシエステラーゼアッセイ
R1 がエステル基である本発明の化合物は、以下のアッセイで試験することにより、該化合物が細胞内エステラーゼにより加水分解されるという要件を満たすかどうかを決定することができる。
【0206】
細胞抽出物の調製
U937 または HCT 116 腫瘍細胞(〜109) を4 倍容量のDulbeccos PBS (〜1リットル)で洗浄し、4℃ 、525 g で10 分間ペレットした。これを2回繰返し、最終の細胞ペレットをホモゲナイズされた冷緩衝液(Trizma 10 mM, NaCl 130 mM, CaCl2 0.5 mM pH 7.0 、25℃) 35 mlに再懸濁した。窒素キャビテーション(700 psi、50 分間、4℃で)によりホモゲネートを調製した。このホモゲネートを氷上に保ち、以下の最終濃度の阻害物質のカクテルで補足した。
【0207】
ロイペプチン 1μM
アプロチニン 0.1μM
E64 8μM
ペプスタチン 1.5μM
ベスタチン 162μM
キモスタチン 33μM
【0208】
525 gで10 分間遠心分離することにより、細胞ホモゲネートを澄明にした後、得られた上澄液をエステラーゼ活性のソースとして用い、必要となるまで-80℃で貯蔵した。
【0209】
エステル開裂の測定
エステルの対応カルボン酸への加水分解は、上記のようにして調製した細胞抽出物を用いて測定することができる。この趣旨で、細胞抽出物(〜30 μg / 全アッセイ容量0.5 ml)を、Tris- HCl 25 mM, 125 mM NaCl 25℃でpH 7.5緩衝液中、37℃で培養した。ゼロ時にエステル(基質)を最終濃度2.5μMで加え、試料を37℃で、適当な時間(通常 0または80 分間) 培養した。3倍容量のアセトニトリルを加えて、反応を終結させた。
【0210】
ゼロ時の試料について、エステル化合物に先立って、アセトニトリルを加えた。12000 g で5 分間遠心分離した後、試料を、エステルおよびその対応カルボン酸について、LCMS (Sciex API 3000, HP1100 2連ポンプ, CTC PAL)により室温で分析した。クロマトグラフィは、AcCN (75x2.1mm)カラムおよび5-95 % 水中アセトニトリル/0.1 % ギ酸移動相に基づいている。
【0211】
表1は、いくつかの異なったリンカーにより、種々の細胞内酵素阻害剤に結合している、いくつかのアミノ酸エステルモチーフは、すべて細胞内カルボキシエステラーゼにより、対応する酸に加水分解されたことを示すデータを表している。
【0212】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1A)または(1B)の化合物、またはその塩、N−オキサイド、水和物もしくは溶媒和物:
【化1】

(式中、
R7は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり;
環Aは、任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール環であり;
Zは、式:R-L1-Y1-(CH2)z-の基であり、ここで
R は、式 (X) または(Y) の基であり、
【化2】

ここで、R1 はカルボン酸基(-COOH)、または一以上の細胞内エステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解され得るエステル基であり、
R6 は水素、または任意に置換されていてもよいC1-C6 アルキル、C3-C7 シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール、あるいは-(C=O)R3、 -(C=O)OR3もしくは-(C=O)NR3 であり、ここでR3 は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C6)アルキルであり、
Y1 は、結合手、 -(C=O)-、 -S(O2)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-(C=O)NR3-、
-NR3(C=O)-、-S(O2)NR3-、-NR3S(O2)-または-NR3(C=O)NR4-であり、ここで R3 および R4 は独立して水素または任意に置換されていてもよい (C1-C6)アルキルであり、
L1 は式-(Alk1)m(Q)n(Alk2)p-の2価の基であり、ここで
m、n および p は独立して0または1であり、
Q は、(i) 任意に置換されていてもよい、5〜13の環原子を有する、2価の単環もしくは2環の炭素環式基もしくは複素環式基であるか、あるいは
(ii) p が0のとき、式-Q1-X2-の2価の基であり、ここでX2 は-O-、-S-または NRA-であり、ここでRA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルであり、Q1 は5〜13の環原子を有し、任意に置換されていてもよい、2価の単環もしくは2環の炭素環式基または複素環式基であり;
Alk1 およびAlk2 は、独立して、任意に置換されていてもよい2価のC3-C7 シクロアルキル基、または任意に置換されていてもよい直鎖状もしくは分枝鎖状の、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)もしくはアミノ(-NRA-)結合(ここで、RA は水素または任意に置換されていてもよいC1-C3 アルキルである)を任意に含んでいるか、もしくは末端に有している、C1-C6 アルキレン、C2-C6 アルケニレンもしくはC2-C6 アルキニレン基を表し、
z は0または1である)。
【請求項2】
R7 が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Aが、任意に置換されていてもよい1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレンである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
環Aにおける任意の置換基が、フルオロ、クロロ、メチルおよびトリフルオロメチルから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
R1 が式-(C=O)OR14 のエステル基であり、ここでR14 がR8R9R10C-であり、ここで
(i) R8 は水素または任意に置換されていてもよい(C1-C3)アルキル-(Z1)a-[(C1-C3)アルキル]b- または(C2-C3)アルケニル-(Z1)a-[(C1-C3)アルキル]b-であり、ここで a および b は独立して0 または 1 であり、Z1 は -O-、-S-または-NR11-であり、ここでR11 は水素または(C1-C3)アルキルであり、R9 および R10 は独立して水素または (C1-C3)アルキル-であるか、あるいは
(ii) R8 は水素または任意に置換されていてもよいR12R13N-(C1-C3)アルキルであり、ここでR12 は水素または(C1-C3)アルキルであり、R13 は水素または(C1-C3)アルキルであるか、またはR12 および R13 はそれらが結合している窒素と一緒になって、任意に置換されていてもよい、5- もしくは6-環原子を有する単環の複素環、もしくは8〜10の環原子を有する2環の複素環システムを形成し、R9 および R10 は独立して水素または (C1-C3)アルキルであるか、あるいは
(iii) R8 および R9 はそれらが結合している炭素と一緒になって、任意に置換されていてもよい、3〜 7環原子を有する単環の炭素環、もしくは8 〜10 環原子を有する2環の炭素環システムを形成し、R10 は水素である、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
R1が、メチル、エチル、n-もしくはイソ-プロピル、n-、sec-もしくはtert-ブチル、シクロヘキシル、アリル、フェニル、ベンジル、2-、3-もしくは 4-ピリジルメチル、N-メチルピペリジン-4-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、メトキシエチル、インダニル、ノルボルニル、ジメチルアミノエチルまたはモルホリノエチルエステル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
R1 がシクロペンチルまたはtert-ブチルエステルである、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
R6 が水素である、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
Z 中の-L1-Y1-(CH2)z -が、 -(CH2)a(O)d(CH2)a、(ここでa は 1、2 または 3であり、b は 0、1 または2であり、d は 0 または 1である)、 -CH=CH-、 -CH2CH=CH-、-CH=CHCH2-、 -C(C-、-CH2C(C-,または -C(CCH2-である、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ホモセリネート、
シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-3-メチルフェニル]-L-ホモセリネート、
シクロペンチル O-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-3-クロロフェニル]-L-ホモセリネート、
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]ペント-4-エノエート、
シクロペンチル (2R,4E)-2-アミノ-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]ペント-4-エノエート、
シクロペンチル 5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-L-ノルバリネート、
シクロペンチル 5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]フェニル]-D-ノルバリネート、
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-3-クロロフェニル ]ペント-4-エノエート、
シクロペンチル (2S,4E)-2-アミノ-5-[4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-2-メチルフェニル]ペント-4-エノエート、および
シクロペンチル 4-[4-カルバモイル-5-(カルバモイルアミノ)-2-チエニル]-L-フェニルアラニネート
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその塩、N-オキサイド、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の化合物を、一つ以上の医薬的に許容される担体および/または賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項12】
IKK 酵素の活性を阻害する組成物の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項13】
エクスビボまたはインビボでIKKβ活性を阻害するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
腫瘍性/増殖性、免疫性または炎症性疾患の治療用組成物の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項15】
IKK 酵素を、該酵素の活性を阻害するのに有効な量の請求項1〜10のいずれかに記載の化合物と接触させることを含む、IKK 酵素の活性を阻害する方法。
【請求項16】
エクスビボまたはインビボでIKKβの活性を阻害するための、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍性/増殖性、免疫性または炎症性疾患の患者に、請求項1〜10のいずれかに記載の化合物の有効量を投与することを含む、腫瘍性/増殖性、免疫性または炎症性疾患の治療方法。
【請求項18】
癌細胞の増殖を治療するための、請求項12に記載の使用、または請求項15に記載の方法。
【請求項19】
肝細胞の癌またはメラノーマを治療するための、請求項12に記載の使用、または請求項15に記載の方法。
【請求項20】
腸癌、 卵巣癌、頭部および首部および頚部の鱗状癌、胃もしくは肺の癌、形成外科の膠腫、グリア芽細胞多形もしくは髄芽腫を治療するための、請求項12に記載の使用、または請求項15に記載の方法。
【請求項21】
リウマチ性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性閉塞性肺疾患、喘息、多発性硬化症、糖尿病、アトピー性皮膚炎、移植対宿主疾患または全身性狼瘡紅斑を治療するための、請求項12に記載の使用、または請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2010−508337(P2010−508337A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535117(P2009−535117)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004117
【国際公開番号】WO2008/053185
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(507288718)クロマ セラピューティクス リミテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】CHROMA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】93 Milton Park,Abingdon,Oxfordshire OX14 4RY,UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】