説明

IL−1アンタゴニスト製剤

【課題】インターロイキン-1(IL-1)アンタゴニストの安定な製剤の提供。
【解決手段】5〜100mMヒスチジン、0.5〜3.0%PEG、0.25〜3%グリシン、5〜50mMアルギニン、0.5〜30%スクロース、および5〜50mg/mlのIL-1タンパク質アンタゴニストを含む製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、インターロイキン-1(IL-1)を阻害することができる物質を含む薬学的製剤、ならびにそのような製剤の製造法および使用法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
IL-1の生物学的作用を遮断するか阻害することができるインターロイキン-1(IL-1)アンタゴニストが記載されている。IL-1アンタゴニストの一例として、IL-1トラップが2003年7月31日公開の米国特許公報第2003/0143697号(特許文献1)に記載されている。IL-1トラップは、2つのIL-1受容体成分および多量体化成分を含む、IL-1特異的融合タンパク質である。
【0003】
凍結乾燥(制御された条件下でのフリーズドライ)は、タンパク質の長期保存のために一般に使用される。フリーズドライ状態の間、凍結乾燥されたタンパク質は、分解、凝集、酸化、および他の変性プロセスに実質的に耐性を有する(例えば米国特許第6,436,897号(特許文献2)を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公報第2003/0143697号
【特許文献2】米国特許第6,436,897号
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な概要
インターロイキン-1(IL-1)アンタゴニストの安定な製剤が、本明細書中に提供される。本発明の薬学的に許容される製剤は、薬学的に許容される担体をともなうIL-1トラップを含む。特定の態様において、液体製剤、およびフリーズドライ製剤、すなわち凍結乾燥製剤が提供される。
【0006】
第1の例示的な局面において本発明は、IL-1に結合し、かつその生物学的作用を阻害することができるIL-1タンパク質アンタゴニスト、緩衝剤、有機共溶媒または充填剤、および1つまたは複数の凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)を含むインターロイキン-1(IL-1)アンタゴニストの凍結乾燥前の製剤を特徴とする。特定の態様において、IL-1アンタゴニストはIL-1に結合することができる融合タンパク質であり、緩衝剤はヒスチジンであり、有機共溶媒または充填剤はPEGであり、凍結乾燥保護剤はグリシン、アルギニン、およびスクロースのうちの少なくとも1つである。1つの態様において、本発明の凍結乾燥前の製剤は保存薬を含まない。
【0007】
本発明の凍結乾燥前の製剤の1つの態様において、製剤はpH約6.5で5〜100mMヒスチジン、0.5〜3.0%PEG、0.25〜3.0%グリシン、5〜50mMアルギニン、0.5〜30.0%スクロース、および5〜50mg/mlのIL-1アンタゴニストを含む。1つの態様において、凍結乾燥前の製剤は最高5mMまでのクエン酸塩および/または0.003〜0.005%のポリソルベートをさらに含んでもよい。存在するポリソルベートは、例えばポリソルベート20または80であってもよい。
【0008】
より特定の態様において、凍結乾燥前のIL-1アンタゴニスト製剤は、pH約6.5で約20mMヒスチジン、約1.5%PEG3350、約0.5%グリシン、約25mMアルギニン、約1.0%スクロース、および約40mg/mlのIL-1トラップを含む。特定の態様において、IL-1アンタゴニストはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示すようなIL-1トラップ融合タンパク質である。より好ましくは、IL-1トラップはSEQ ID NO:10に示すトラップである。
【0009】
好ましい態様において、凍結乾燥前のIL-1アンタゴニスト製剤は本質的に、pH約6.5で約20mMヒスチジン、約1.5%PEG3350、約0.5%グリシン、約25mMアルギニン、約1.0%スクロース、および約40mg/mlのSEQ ID NO:10の配列を有するIL-1融合タンパク質からなる。クエン酸塩(約0.15mM以下)およびポリソルベート(約0.005%以下)が存在してもよい。
【0010】
第2の局面において本発明は本質的に、pH約6.5で約20mMヒスチジン、約1.5%PEG3350、約0.5%グリシン、約25mMアルギニン、約1.0%スクロース、および約40mg/mlのSEQ ID NO:10の配列を有するIL-1融合タンパク質からなる凍結乾燥前のIL-1アンタゴニスト製剤を特徴とし、ここで凍結乾燥前の製剤は、保存薬、リン酸緩衝剤、微量を上回るNaCl、および/または1.5%を上回るスクロースを含まない。クエン酸塩は約0.15mM未満の量で存在してもよく、約0.005〜0.01%までのポリソルベート20も存在してよい。
【0011】
第3の局面において本発明は、本発明の凍結乾燥前のIL-1アンタゴニスト製剤を凍結乾燥に供して、凍結乾燥IL-1アンタゴニスト製剤を生成する工程を含む、凍結乾燥IL-1アンタゴニスト製剤を生産する方法を特徴とする。凍結乾燥製剤は、液体を凍結乾燥するための、当技術分野において公知の任意の方法で凍結乾燥することができる。
【0012】
第4の関連する局面において、本発明は、本発明の凍結乾燥製剤を再構成製剤へと再構成する工程を含む、再構成凍結乾燥IL-1アンタゴニスト製剤の生産方法を特徴とする。1つの態様において再構成製剤は、凍結乾燥前の製剤の2倍の濃度であり、例えば本発明の方法は(a)pH約6.5で約20mMヒスチジン、約1.5%PEG3350、約0.5%グリシン、約25mMアルギニン、約1.0%スクロース、および約40mg/mlのIL-1タンパク質アンタゴニストからなる凍結乾燥前のIL-1アンタゴニスト製剤を生産する工程;(b)工程(a)の凍結乾燥前の製剤を凍結乾燥に供する工程;ならびに(c)工程(b)の凍結乾燥製剤を、約40mMヒスチジン、約3%PEG3350、約1%グリシン、約50mMアルギニン、約2.0%スクロース、および約80mg/mlのIL-1タンパク質アンタゴニストからなる組成物へと再構成する工程を含み、ここで再構成製剤は約0.2mMクエン酸塩および/または約0.008%ポリソルベート20をさらに含んでもよい。特定の態様において、IL-1アンタゴニストはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示すようなIL-1トラップ融合タンパク質である。より好ましくは、IL-1トラップはSEQ ID NO:10に示すトラップである。異なる態様において、再構成製剤は凍結乾燥前の製剤の3倍の濃度であり、例えば20mgIL-1アンタゴニストタンパク質/mlの凍結乾燥前の製剤は、60mgIL-1アンタゴニストタンパク質/mlの最終製剤へと再構成される。一般に凍結乾燥製剤は、注射に適した滅菌水で再構成される。1つの態様において、再構成液体は静菌性の水であってもよい。
【0013】
再構成凍結乾燥製剤を生産する方法の特定の態様において、凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥前の製剤の溶液1ml当たり40mgのIL-1アンタゴニストタンパク質としてバイアル中に存在し、凍結乾燥されて80mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、20mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて40mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、25mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて50mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、12.5mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて25mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、12.5mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて50mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、25mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて75mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、40mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて120mg/mlの溶液へと再構成される。別の態様において、40mg/mlの凍結乾燥前の溶液は、凍結乾燥されて20mg/mlの溶液へと再構成される。好ましくは、再構成凍結乾燥製剤は保存薬を含まない。別の態様において、再構成製剤は、最高30%までのスクロース、および1つまたは複数の保存薬を含む。
【0014】
第5の局面において本発明は、IL-1に結合し、かつその生物学的作用を阻害することができるIL-1アンタゴニストタンパク質、緩衝剤、有機共溶媒、および1つまたは複数の熱安定剤を含む、IL-1アンタゴニストの安定な液体製剤を特徴とする。特定の態様において、IL-1アンタゴニストはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示すようなIL-1トラップ融合タンパク質である。より好ましくは、IL-1トラップはSEQ ID NO:10に示すトラップである。1つの態様において、緩衝剤はリン酸緩衝剤である。1つの態様において、有機共溶媒剤はPEGであり、好ましくはPEG3350である。1つの態様において、熱安定剤はNaClおよび/またはスクロースである。より好ましくは、熱安定剤はNaClとスクロースの両方である。
【0015】
特定の態様において、安定な液体IL-1アンタゴニスト製剤は、pH約6〜6.5で5〜100mMリン酸緩衝剤、0.5〜3%PEG、25〜150mM NaCl、5〜30%スクロース、10〜500mg/mlのIL-1トラップタンパク質を含む。より特定の態様において、安定な液体IL-1アンタゴニスト製剤は、pH約6〜6.5で10mMリン酸緩衝剤、3%PEG3350、50mM NaCl、5〜20%スクロース、12.5〜50mg/mlのIL-1トラップタンパク質を含む。さらに、少量または微量のクエン酸緩衝剤またはポリソルベートが存在してもよい。本発明の安定な液体IL-1アンタゴニスト製剤は、50mg/mlのIL-1トラップ製剤を5℃で最高約29ヶ月まで保存した後、目視検査によって判定すると、わずかな沈殿物を示すかまたは全く沈殿物を示さない。さらに、50mg/mlのIL-1トラップ製剤を5℃で最高約24ヶ月まで保存した後、サイズ排除クロマトグラフィー、例えばHPLCによって測定すると、わずかな凝集が観測されるか、または全く観測されない。
【0016】
他の目的および利点は、次の詳細な説明の総説から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、特定の方法および記載された実験条件に限定されず、従って方法および条件は変更することができる。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様のみを記載するためにあり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、表示がない限り限定することを意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられるように、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り複数形の参照も含む。従って例えば「方法(a method)」に対する参照は、1つまたは複数の方法および/または本明細書に記載された種類の段階、および/または、本発明の開示を読むことにより当業者に明らかとなるものを含む。
【0019】
本明細書に用いられる全ての技術的および科学的な用語および表現は、特に明記しない限り、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等な、任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料が本明細書に記載される。
【0020】
一般的な説明
タンパク質を含む製剤の安全な取扱いおよび投与は、薬剤の調剤者にとって重要な課題の代表例である。タンパク質は、安定性の問題を引き起こす独特の化学的および物理的性質を有する。タンパク質には様々な分解経路が存在しており、結果として化学的および物理的不安定性の両方に影響を与えている。化学的不安定性は、脱アミノ化、凝集、ペプチド骨格のクリッピング、およびメチオニン残基の酸化を含む。物理的不安定性は、例えば凝集を含む多くの現象を包含する。
【0021】
化学的および物理的安定性は、タンパク質から水を取り除くことによって促進することができる。凍結乾燥(制御された条件下でのフリーズドライ)は、タンパク質の長期保存のために一般に使用される。フリーズドライ状態の間、凍結乾燥されたタンパク質は、分解、凝集、酸化、および他の変性プロセスに実質的に耐性を有する。凍結乾燥されたタンパク質は、投与前に、任意で静菌性の保存薬(例えばベンジルアルコール)を含む水で、通常再構成される。
【0022】
定義
「治療的有効量または薬学的有効量」という用語は、それが投与されるものに所望の効果をもたらす量を意味する。正確な量は処置の目的に依存し、当業者は公知の技術を使用して確かめることができる(例えばLloyd(1999)The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0023】
「遮断剤」、「阻害剤」、または「アンタゴニスト」という用語は、化学的もしくは生理的な反応もしくは応答を、遅らせるまたは妨げる物質を意味する。一般的な遮断剤または阻害剤は、アンチセンス分子、抗体、アンタゴニスト、およびそれらの誘導体を含むがそれらに限定されない。
【0024】
「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の管理機関による承認、または米国薬局方もしくは他の一般に認められた動物用の薬局方、より詳細にはヒト用の薬局方に記載されているものを含む。
【0025】
「担体」という用語は、組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを含む。担体は、例えば水、または、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのような、石油、動物性、植物性、もしくは合成起源の油を含む油などの滅菌した液体を含むことができる。
【0026】
「賦形剤」という用語は、薬学的組成物に添加して所望の粘稠度または安定効果を提供する非治療薬を含む。適した薬学的賦形剤は、例えばデンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。
【0027】
「凍結乾燥」または「フリーズドライ」という用語は、凍結乾燥のような乾燥処置に供し、少なくとも50%の水分が取り除かれた物質の状態を含む。
【0028】
「充填剤」という表現は、薬学的に許容され、かつ凍結乾燥ケーキ(lyo cake)に嵩を加える化合物を含む。一般に、当技術分野で公知の許容される充填剤は、例えば、デキストロース、リボース、フルクトースなどのような単糖、マンニトール、イノシトール、およびソルビトールのような糖アルコール、トレハロース、スクロース、およびラクトースを含む二糖を含む炭水化物、デンプン、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸、タンパク質(例えばゼラチンおよび血清アルブミン)、グリコーゲンのような天然高分子、ならびに合成単量体および合成高分子を含む。本発明の製剤においてPEG3350は、IL-1タンパク質アンタゴニストの撹拌、混合、または取扱いの際に安定化させるために使用され、および条件に合った嵩を産生するのを助ける充填剤として使用される有機共溶媒である。
【0029】
「凍結乾燥保護剤」という用語は、フリーズドライまたは凍結乾燥される際にタンパク質構造を維持するのを助ける、フリーズドライまたは凍結乾燥製剤に添加してもよい物質を含む。
【0030】
「保存薬」は、一般に製剤中の細菌または他の混入微生物の増殖を抑制するかまたは除去するために添加される静菌性、殺菌性、静真菌性、または殺真菌性の化合物を含む。保存薬は例えば、ベンジルアルコール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、m-クレゾール、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベンなどを含む。他の薬学的に許容される保存薬の例は、USP中に見ることができる。
【0031】
IL-1アンタゴニスト
IL-1アンタゴニストは、IL-1の生物学的作用を遮断または阻害することができる化合物であり、IL-1トラップのようなIL-1をトラップすることができる融合タンパク質を含む。好ましい態様において、IL-1トラップは2つのIL-1受容体成分および多量体化成分、例えば2003年7月31日公開の米国特許公報第2003/0143697号に記載されたIL-1トラップを含む、IL-1特異的融合タンパク質である。特定の態様においてIL-1トラップは、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示すような融合タンパク質である。好ましいIL-1トラップをSEQ ID NO:10に示す。本発明は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26のタンパク質と実質的に同一なIL-1トラップ、すなわち、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26のタンパク質と少なくとも95%の同一性、好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性を有し、かつIL-1に結合して阻害することができるタンパク質の使用を包含する。さらに、特定の態様においてIL-1アンタゴニストは、1つまたは複数の受容体成分、ならびにIL-1および/またはIL-1受容体に特異的な1つまたは複数の免疫グロブリン由来成分を含む、改変IL-1トラップである。別の態様において、IL-1アンタゴニストは、IL-1および/またはIL-1受容体に特異的な1つまたは複数の免疫グロブリン由来成分を含む、改変IL-1トラップである。
【0032】
本発明の方法および製剤のIL-1トラップは、IL-1トラップを調製するのに有用な、当技術分野で公知の、または公知となる任意の適した方法で調製することができる。IL-1トラップは、薬学的に許容される製剤を調製するために使用される時点で、好ましくは実質的にタンパク質混入物を含まない。「実質的にタンパク質混入物を含まない」とは、好ましくは、IL-1トラップを含む製剤の製造に使用されるIL-1トラップ調製物のタンパク質重量の、少なくとも90%はIL-1トラップタンパク質であり、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%がIL-1トラップタンパク質であることを意味する。IL-1トラップは、好ましくは実質的に凝集物を含まない。「実質的に凝集物を含まない」とは、IL-1トラップが薬学的に有効な製剤を調製するために使用される時点で、IL-1トラップタンパク質重量の少なくとも90%が凝集物中に存在しないことを意味する。本発明の方法および製剤のIL-1トラップは、精製プロセスの結果としての少量または微量の化合物、例えば少量または微量のクエン酸塩および/またはポリソルベートを含んでもよい。約40mg/mlのIL-1トラップを含む本発明の凍結乾燥前の製剤の1つの態様において、約0.1mMの濃度でクエン酸塩が存在してもよく、および/または約0.004%の濃度でポリソルベートが存在してもよい。元の容積の2分の1まで凍結乾燥した(例えば80mg/mlのIL-1トラップ)後に凍結乾燥前の製剤が再構成される場合、得られる濃度は0.2mMシトラートおよび/または0.008%ポリソルベートであってもよい。元の容積の3分の1まで凍結乾燥した(例えば120mg/mlのIL-1トラップ)後に凍結乾燥前の製剤が再構成される場合、得られる濃度は0.6mMシトラートおよび/または0.012%ポリソルベートであってもよい。
【0033】
凍結乾燥および凍結乾燥製剤
本発明の1つの局面において、IL-1トラップを含む、薬学的に許容されるフリーズドライまたは凍結乾燥製剤が提供される。好ましくは、フリーズドライまたは凍結乾燥製剤は薬学的有効量のIL-1トラップを含む。凍結乾燥製剤は、溶液、懸濁液、乳濁液、または任意の他の投与もしくは使用に適した形状へと再構成することができる。凍結乾燥製剤は、典型的にはまず液体として調製され、次に冷凍されて凍結乾燥される。凍結乾燥前の液体総容積は、凍結乾燥製剤の最終再構成容積より少ないか、等しいか、またはより多い場合がある。凍結乾燥プロセスは当業者に周知であり、典型的には制御された条件下での冷凍製剤からの水の昇華を含む。
【0034】
凍結乾燥製剤は広範囲の温度で保存することができる。凍結乾燥製剤は、30℃またはそれ未満で、例えば4℃に冷蔵されて、または室温(例えば約25℃)で保存されてもよい。好ましくは、凍結乾燥製剤は約25℃未満で、より好ましくは約4〜20℃、約4℃未満、約-20℃未満、約-40℃、または約-70℃で保存される。
【0035】
凍結乾燥製剤は使用するために、典型的には凍結乾燥製剤を溶解するための水溶液の添加により再構成される。凍結乾燥製剤を再構成するために、様々な水溶液を使用することができる。好ましくは、凍結乾燥製剤は水を使用して再構成される。凍結乾燥製剤は、好ましくは実質的に水(例えばUSP WFI、または注射用の水)または静菌性の水(例えば0.9%ベンジルアルコールを有するUSP WFI)からなる溶液で再構成される。しかしながら、緩衝剤、および/または賦形剤、および/または1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む溶液もまた使用することができる。
【0036】
フリーズドライまたは凍結乾燥製剤は、典型的には液体、すなわち溶液、懸濁液、乳濁液などから調製される。従って、フリーズドライまたは凍結乾燥を受ける液体は、好ましくは最終再構成液体製剤において所望の全ての成分を含む。このため、再構成された場合、フリーズドライまたは凍結乾燥製剤は、再構成と同時に所望の液体製剤を与える。フリーズドライまたは凍結乾燥製剤を生成するために使用される好ましい液体製剤は、薬学的有効量のIL-1トラップ、緩衝剤、安定剤、および充填剤を含む。IL-1トラップを凍結乾燥する場合、ヒスチジンはリン酸と比べてIL-1トラップを安定化させるのにより有効であるため、フリーズドライまたは凍結乾燥製剤は、好ましくはヒスチジンを含む。PEG3350のような有機共溶媒は、撹拌、混合、または取扱いの際にIL-1トラップを安定化させるために使用される。凍結乾燥保護剤は、好ましくはフリーズドライまたは凍結乾燥製剤中に使用される。凍結乾燥保護剤は、フリーズドライまたは凍結乾燥の際にタンパク質の二次構造を維持するのを助ける。凍結乾燥保護剤の3つの好ましい例は、グリシン、アルギニン、およびスクロースであり、それらは好ましくは一緒に使用される。
【0037】
安定な液体製剤
1つの局面において本発明は、IL-1トラップを含む、安定な薬学的に許容される液体製剤を提供する。好ましくは、液体製剤は薬学的有効量のIL-1トラップを含む。製剤はまた、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、緩衝剤、充填剤、安定剤、保存薬、および/または賦形剤も含み得る。IL-1トラップを含む薬学的に許容される液体製剤の例には、薬学的有効量のIL-1トラップ、緩衝剤、共溶媒、および1つまたは複数の安定剤が含まれる。
【0038】
好ましい液体製剤は、保存時の凝集物および低分子量産物の形成を最小限にするためのリン酸緩衝剤、有機共溶媒、および1つまたは複数の熱安定剤、ならびに約12.5mg/ml〜約50mg/mlのIL-1トラップを含み、ここで製剤はpH約6.0〜pH約6.75である。より好ましい液体製剤は、10mMリン酸緩衝剤、3%PEG、50mM NaCl、5〜20%スクロース、および10〜100mg/mlのIL-1トラップを含み、ここで製剤はpH約6.0〜pH約6.5である。NaClまたはスクロースのどちらも安定剤として使用することができるが、NaClおよびスクロースの併用は、どちらかの個々の安定剤のみよりも、より有効にIL-1トラップを安定化させることが証明されている。好ましくは、PEGはIL-1トラップ安定性を増強することが証明されているPEG3350である。
【0039】
表1は、最高24ヶ月までの期間にわたって5℃でインキュベートされた場合に測定された、5または20%スクロースのどちらかを含む試料中の未変性IL-1トラップの割合または凝集IL-1トラップの割合を示す。20%スクロースの存在下では、未変性(非凝集)形態のIL-1トラップが0日目の92.6%から24ヶ月の88.9%に低下し、凝集率は同じ期間にわたって2.3%から3.4%に増加した。5%スクロース製剤は、未変性(非凝集)形態のIL-1トラップが0日目の92.4%から24ヶ月の86.9%に低下し、凝集率は同じ期間にわたって2.6%から3.6%に増加した。
【0040】
【表1】

【0041】
表2は、最高2.9ヶ月までの期間にわたって5℃でインキュベートされた場合(50mg/ml IL-1トラップ、10mMリン酸、0.2%ポリソルベート-20、50または135(0%スクロースの場合)mM NaCl、pH6.5)に測定された、0、5、または20%スクロースのいずれかを含む試料中の未変性IL-1トラップの割合を示す。0%スクロースの存在下で、未変性(非凝集)形態のIL-1トラップは、0日目の96.4%から2.9ヶ月の0.5%に低下した。5%スクロース製剤は、0日目の96.5%から2.9ヶ月の39.2%に低下した未変性(非凝集)形態のIL-1トラップを有した。20%スクロース製剤は、0日目の96.4%から2.9ヶ月の95.3%に低下した未変性(非凝集)形態のIL-1トラップを有した。
【0042】
【表2】

【0043】
製剤は、液体であってもフリーズドライおよび凍結乾燥されていても、酸素欠乏環境中で保存することができる。酸素欠乏環境は、例えばアルゴン、窒素、またはヘリウムのような不活性ガス中で製剤を保存することによって生成することができる。
【0044】
凍結乾燥前の製剤および凍結乾燥製剤の安定性が測定された。pH6.5で40mg/mlのIL-1トラップ(SEQ ID NO:10)、20mMヒスチジン、1.5%PEG-3350、1%スクロース、0.5%グリシン、25mMアルギニン-HClを含む凍結乾燥前の製剤が、5℃で0〜52週間インキュベートされた。表3に示すように、未変性(非凝集)形態のIL-1は、94.9(0週間)から92.3(52週間)に減少し、凝集率は同じ期間に1%から1.8%に増加した。
【0045】
【表3】

【0046】
pH6.5で40mg/mlのIL-1トラップ(SEQ ID NO:10)、20mMヒスチジン、1.5%PEG-3350、1%スクロース、0.5%グリシン、25mMアルギニン-HCl(凍結乾燥前の濃度)を含む凍結乾燥製剤の安定性は、25℃で0〜56週間インキュベートされた。表4に示すように、未変性(非凝集)形態のIL-1は、97.0(0週間)から94.0(56週間)に減少し、凝集率は同じ期間に0.8%から3.6%に増加した。
【0047】
【表4】

【0048】
上記の発明を例証または実例の目的で詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく本発明の教示に照らして一定の変更または改変がされ得ることは、当業者にとって容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜100mMヒスチジン、0.5〜3.0%PEG、0.25〜3%グリシン、5〜50mMアルギニン、0.5〜30%スクロース、および5〜50mg/mlのIL-1タンパク質アンタゴニストを含む、凍結乾燥に適した製剤。
【請求項2】
IL-1アンタゴニストが、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、および26から選択される融合タンパク質のダイマー、好ましくはSEQ ID NO:10のダイマーである、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
約20mMヒスチジン、約1.5%PEG3350、約0.5%グリシン、約25mMアルギニン、約1.0%スクロース、および約40mg/mlのIL-1アンタゴニストを含む、請求項1または2記載の製剤。
【請求項4】
リン酸緩衝剤、約1.5%を上回るスクロース、約0.15mMを上回るクエン酸塩、および約0.005%を上回るポリソルベート20を含まない、前記請求項のいずれか一項記載の製剤。
【請求項5】
pHが6〜6.75、好ましくは6〜6.5、より好ましくは6.5であり得る、前記請求項のいずれか一項記載の製剤。
【請求項6】
前記請求項のいずれか一項記載の製剤を再構成して、凍結乾燥IL-1アンタゴニスト製剤を生成する工程を含む、凍結乾燥IL-1アンタゴニスト製剤を生産する方法。
【請求項7】
再構成製剤が約20〜120mg/mlのIL-1アンタゴニストを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
IL-1に結合し、かつその生物学的作用を阻害することができるIL-1タンパク質アンタゴニスト、緩衝剤、有機共溶媒または充填剤、および1つまたは複数の熱安定剤を含む安定な液体製剤であって、IL-1アンタゴニストがSEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26に示す2つの融合タンパク質を含むダイマーである、安定な液体製剤。
【請求項9】
融合タンパク質がSEQ ID NO:10を含む、請求項8記載の液体製剤。
【請求項10】
5〜100mMリン酸緩衝剤、好ましくは10mMリン酸緩衝剤、0.5〜3%PEG3350、好ましくは3%PEG3350、25〜150mM NaCl、好ましくは50mM NaCl、5〜30%スクロース、好ましくは5〜20%スクロース、および10〜100mg/mlのIL-1アンタゴニストを含む、請求項8または9記載の液体製剤。
【請求項11】
50mg/mlのIL-1トラップ製剤を5℃で約29ヶ月間保存した後、目視検査でIL-1アンタゴニストが4%未満の凝集を示す、請求項8〜10のいずれか一項記載の液体製剤。

【公開番号】特開2012−121894(P2012−121894A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13973(P2012−13973)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2007−528019(P2007−528019)の分割
【原出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】