説明

IL−12レセプターβ1サブユニットに特異的な治療用抗体の組成物および使用方法

本発明は、IL12Rβ1、ヘテロダイマー型IL12レセプターの非シグナル伝達鎖(IL12Rβ2鎖と共に)およびIL23レセプター(IL23Rα鎖と共に)に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、より具体的には、T細胞のIL12/IL18誘導性IFNγ産生を阻害可能なIL12およびIL23レセプターアンタゴニストである特異的抗体、ならびにIFNγ産生の阻害によって処置できる病的障害、例えばリウマチ性関節炎、乾癬もしくは炎症性腸疾患または他の自己免疫性および炎症性障害を処置するための、当該抗体の組成物および使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL12Rβ1、ヘテロダイマー型IL12レセプターの非シグナル伝達鎖(IL12Rβ2鎖と共に)およびIL23レセプター(IL23Rα鎖と共に)に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、より具体的には、血球細胞のIL12/IL18誘導性IFNγ産生を阻害可能なIL12およびIL23レセプターアンタゴニストである特異的抗体、ならびにIFNγ産生の阻害によって処置できる病的障害、例えばリウマチ性関節炎、乾癬もしくは炎症性腸疾患または他の自己免疫性および炎症性障害を処置するための、当該抗体の組成物および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IL12レセプターベータ1(IL12Rβ1)鎖は、Th1/Th17介在性障害、例えば乾癬および他の自己免疫性および炎症性障害の処置の潜在的な治療標的として知られている。乾癬は上皮層の過増殖ならびに樹状細胞およびT細胞の高度浸潤によって特徴付けられる一般的な慢性炎症性皮膚疾患である。T細胞は、タイプ1サイトカイン(IFN−γおよびTNF−αを含む)を分泌することによって皮膚において生じる病的反応に深く関与し、そしてケラチノサイト過増殖、血管新生および好中球浸潤を誘導する。
【0003】
乾癬におけるTh1免疫応答の発生に重要であると思われる2種のサイトカインは、インターロイキン−12(IL12)およびインターロイキン−23(IL23)である。両サイトカインはマクロファージおよび樹状細胞のような抗原提示細胞によって産生され、T細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化することにより機能する。IL12およびIL23は、IL12においてp35/p40タンパク質サブユニット、そしてIL23においてp19/p40タンパク質サブユニットからなる、可溶性サイトカインのヘテロダイマーファミリーのメンバーである。サイトカインのIL12 p40サブユニットは、免疫細胞の表面で見られる膜貫通IL12レセプターβ1(IL12Rβ1)に結合する。IL12 p40/IL12Rβ1相互作用の阻害は、IL12およびIL23両方の生物学的活性を防止しうる。
【0004】
乾癬を含む多様な炎症性および自己免疫疾患は、悪化したTh1および/またはTh17応答に関連している。それらの多くは、現在、総合的な免疫抑制または極めて選択的に作用する生物学的薬剤、例えば抗TNF−α抗体のいずれかで処置されているが、全ての患者に有効なわけではない。これらは感染のリスクを上昇させ、反復処置の後には無効となることが見出された。したがって、上昇した安全性プロファイルおよび長期寛解または疾患治癒を誘導する同時能力を有する処置に対する、未だ満たされない医薬上の必要(アンメットメディカルニーズ)が存在する。
【0005】
乾癬様状態を誘導したT細胞サブセットの移入後に投与したときでさえ、マウスにおいて、IL12p40に対する中和抗体は、感染病変の消滅に成功した(Hong et al., J.Immunol. 162.12 (1999): 7480-91.)。IL12およびIL23の両方を標的とする抗IL12p40抗体は、現在乾癬(Kauffman et al. J.Invest Dermatol. 123.6 (2004): 1037-44、Papp et al. Lancet. 371.9625 (2008): 1675-84, Kimball et al. Arch.Dermatol. 144.2 (2008): 200-07)、クローン病(Sandborn et al., Gastroenterology. 135.4 (2008): 1130-41)および多発性硬化症(Segal et al., Lancet Neurol. 7.9 (2008): 796-804) について臨床試験中である。IL12Rβ1を標的とすること、したがってTh1およびTh17細胞集団の分化および維持ならびにこれらの細胞によるIL12およびIL23介在性炎症性サイトカイン産生は、改善された治療薬物の機会を提供する。
【0006】
米国特許6,046,012は、IL12Rβ1および抗IL12Rβ1に結合する抗体について一般的に言及している。抗マウスIL12Rβ1モノクローナル抗体はまた、Becton Dickinsonによって市販されている(Cat# 551455)。
【0007】
しかし、今日まで、乾癬またはクローン病のような自己免疫性および炎症性障害の処置に使用するための、IL12Rβ1アンタゴニスト活性を示すヒトIL12Rβ1に結合する分子の記載は、当該技術分野において存在しない。それぞれの相互作用パートナー(IL12p40)を標的とすることによる間接的な証拠のみが、当該経路を有効にしている。
【発明の概要】
【0008】
したがって、一つの局面において、本発明は、IL12Rβ1ポリペプチド(配列番号41)における標的に対する抗体の抗原結合部分を含む抗体または結合タンパク質であって、IL12Rβ1ポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする、抗体または結合タンパク質を提供する。一つの態様において、本発明の抗体は、ヒト由来であるか、ヒトもしくはラクダのような起源を有するか、あるいはヒト化抗体である。具体的な態様において、抗IL12Rβ1抗体は、標的タンパク質IL12Rβ1に特異的であり、IL12Rβ1またはIL12Rβ1のフラグメントに結合する抗原結合領域を有することを特徴とする。
【0009】
一つの態様において、本発明の抗体は、アゴニスト活性を有さないかまたは低いアゴニスト活性を有するIL12Rβ1アンタゴニストである。ある態様において、本抗体は標的タンパク質IL12Rβ1に結合し、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生を阻害する。
【0010】
他の態様において、本発明の抗体は、IL12Rβ1へのIL12およびIL23の結合を競合的に阻害する。より好ましくは、本抗体は、アゴニスト活性を有さないIL12Rβ1アンタゴニストである。
【0011】
結合は、本抗体によるアンタゴニズムまたはアゴニズムのいずれかの活性を測定するために用いることができる1種以上のアッセイによって測定できる。好ましくは、アッセイは、IL12Rβ1に対する本抗体の少なくとも1種の作用、例えばヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生、ヒト血球細胞におけるIL23/IL17依存的IFN−γ産生、霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFN−γ産生を測定する。
【0012】
他の態様において、本発明は、IL12Rβ1の共通のIL12/IL23p40リガンド結合領域に特異的に結合する抗体を提供する。
【0013】
別の具体的な態様において、本抗体は、100nM以下、10nM以下、1nM以下のKでIL12Rβ1と結合し、インビトロ競合結合アッセイで測定したとき約10nM以下、1nM以下、100pM以下のIC50でIL12Rβ1ポリペプチドとIL12およびIL23の結合を阻害する。
【0014】
さらに別の態様において、本抗体は、IL12Rβ1と特異的に結合し、インビトロ競合結合アッセイで測定したとき約10nM以下、1nM以下、100pM以下のIC50でIL12Rβ1ポリペプチドとIL12の結合を選択的に阻害するが、IL23との結合は阻害しない。
【0015】
他の態様において、本抗体は、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生を、約10nM以下、1nM以下、100pM以下のIC50で阻害する。
【0016】
別の関連態様において、本抗体は、処置をしないコントロール動物と比較したとき、IBDマウスモデルにおいて、疾患を軽減できる。別の関連態様において、本抗体は、単回投与量で処置したカニクイザルの末梢血単球細胞において延長された時間にわたってIFNγ応答を完全に阻止できる。PK/PD試験において、10μg/ml以上の抗IL12Rβ1 mAb血漿レベルが、エクスビボIL12誘導性IFNγ産生の完全抑制をもたらした。
【0017】
他の態様において、本抗体は、IL12Rβ1とそのサブユニットIL12Rβ2および/またはIL23Rのヘテロ二量体化を阻止する。
【0018】
いくつかの具体的な態様において、本発明の抗体は、少なくとも1種の他のサイトカインレセプターと交差反応しない。具体的な態様において、本発明の抗体は、ヒトIL4Rαレセプターと交差反応しない。
【0019】
好ましい態様において、本発明の抗体は、少なくともげっ歯類または霊長類IL12Rβ1レセプターと交差反応する。
【0020】
別の関連態様において、本発明の抗体は、完全ヒトであるか、あるいは抗体依存的細胞傷害活性(ADCC)を有さないヒト化IgG4抗体またはサイレント変異IgG1抗体であり、約10nM以下、1nM以下、100pM以下のIC50でヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生を阻害する。
【0021】
本発明はまた、IL12Rβ1ポリペプチド(配列番号41)における標的に対する抗体の抗原結合部分を含む結合タンパク質であって、当該抗原結合部分がペグ化されている、結合タンパク質に関する。関連態様において、ペグ化抗原結合部分は、ペグ化Fabである。
【0022】
本発明は、IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害し、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生を阻害する、単離された抗体、特にヒトまたはヒト化抗体に関する。ある態様において、本発明の抗体は、特定の重鎖および軽鎖配列に由来し、そして/または特定のアミノ酸配列を含むCDR領域のような特定の構造的特徴を含む。本発明は、単離された抗体、かかる抗体を作成する方法、免疫複合体およびかかる抗体を含む多価または多重特異的分子、ならびに本発明の抗体、免疫複合体または二重特異的分子を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、IL12、IL23および/またはIL12Rβ1によって介在される障害または状態の発生の阻害、例えば血球細胞におけるIFNγ産生の阻害によって処置できる病的障害、例えばリウマチ性関節炎、乾癬および炎症性腸疾患のようなTh1/Th17介在性障害の処置をもたらすために、IL12Rβ1の機能を阻害、すなわちアンタゴナイズするために本抗体を使用する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明をより容易に理解できるように、いくつかの用語についてまず定義する。さらなる定義は詳細な説明を通じて提供する。
【0024】
用語「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん細胞または自己免疫もしくは病的炎症の場合には正常ヒト細胞もしくは組織の選択的損傷、破壊または人体からのそれらの排除をもたらす、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球および上記細胞または肝臓で生産される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を意味する。
【0025】
「シグナル伝達経路」または「シグナル伝達活性」は、一般に増殖因子とレセプターの結合のようなタンパク質間相互作用によって開始される生化学的因果関係であって、細胞のある部分から細胞の別の部分にシグナルの伝達をもたらす関係を意味する。一般に、伝達は、シグナル伝達を引き起こす一連の反応における1個以上のタンパク質の1個以上のチロシン、セリンまたはスレオニン残基の特異的リン酸化を含む。最後から2番目のプロセスは、典型的には、遺伝子発現の変化をもたらす核事象を含む。
【0026】
用語IL12Rβ1またはIL12レセプターベータ1は、配列番号41で定義のヒトIL12Rβ1を意味する。
【0027】
用語「抗体」は、本明細書で用いるとき、抗体全体およびいずれかの抗原結合フラグメント(すなわち抗原結合部分)またはその一本鎖を含む。抗体の抗原結合部分を含む結合タンパク質も、用語「抗体」に包含される。特に、用語「IL12Rβ1に結合する抗体」は、抗体のIL12Rβ1結合部分を含むIL12Rβ1結合タンパク質を包含する。
【0028】
天然に生じる「抗体」は、ジスルフィド結合により相互に結合した少なくとも2個の重(H)鎖および軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は重鎖可変領域(Vと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3の3個のドメインを含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(Vと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域はCH1の1個のドメインを含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域によって区分けされた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割できる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順序でならんだ、3個のCDRおよび4個のFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと宿主組織または因子、例えば免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および常套の補体系の第一成分(C1q)の結合を仲介しうる。
【0029】
用語抗体の「抗原結合部分」または単に「抗原部分」は、本明細書において使用するとき、抗原(例えばIL12Rβ1の一部)に特異的に結合する能力を保持する、全長または1もしくは数種の抗体のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって行われうることが示されている。抗体の「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例は、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;2個のFabフラグメントがヒンジ領域でジスルフィド結合により連結しているF(ab)フラグメント;VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単腕のVおよびVドメインからなるFvフラグメント;VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);および単離された相補性決定領域(CDR)を含む。
【0030】
さらに、Fvフラグメントの2個のドメインVおよびVは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VおよびV領域を対にして一価の分子を形成する1個のタンパク質として作成されるように、合成リンカーによって、組換え法を用いて、結合することができる(一本鎖Fv(scFv)と知られている;例えばBird et al., 1988 Science 242:423-426; およびHuston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883参照)。かかる一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」なる用語に包含される。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の常套の技術を用いて得られ、該フラグメントはインタクトな抗体と同様の有用性についてスクリーニングされる。
【0031】
「単離された抗体」は、本明細書において使用するとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、IL12Rβ1と特異的に結合する単離された抗体は、IL12Rβ1以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、IL12Rβ1と特異的に結合する単離された抗体は、他の種由来のIL12Rβ1分子のような他の抗原と交差反応性を有していてもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないこともある。
【0032】
用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書において使用するとき、単一分子組成物の抗体分子の組成物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0033】
用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらにまた、本抗体が定常領域を含む場合、該定常領域もかかるヒト配列、例えばヒト生殖系列配列、またはヒト生殖系列配列の変異型もしくは例えばKnappik, et al. (2000. J Mol Biol 296, 57-86)に記載のように、ヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。
【0034】
本発明のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸配列を含んでいてもよい(例えばインビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞変異によって誘導される変異体)。しかし、用語「ヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、別の哺乳類種、例えばマウスの生殖系列由来のCDR配列をヒトフレームワーク配列に移植した抗体を含まない。
【0035】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト配列に由来する、単一の結合特異性を示す抗体を意味する。
【0036】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書において使用するとき、組換え手段によって製造、発現、作成または単離されるあらゆるヒト抗体、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)またはそれから作成したハイブリドーマから単離した抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離した抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全部または一部の他のDNA配列へのスプライシングを含む他のいずれかの手段によって製造、発現、作成または単離される抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、ある態様において、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(またはヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を用いるとき、インビボでの体細胞変異)に付すことができ、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、関連するが、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー中に天然には存在し得ない配列である。
【0037】
本明細書において使用するとき、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によって提供される抗体クラス(例えばIgM、IgE、IgG、例えばIgG1またはIgG4)を意味する。
【0038】
用語「抗原を認識する抗体」および「抗体に特異的な抗体」は、本明細書において、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と相互に交換可能なように使用される。
【0039】
本明細書において使用するとき、「IL12Rβ1ポリペプチドに特異亭に結合する」抗体は、ヒトIL12Rβ1ポリペプチドと100nM以下、10nM以下、1nM以下のKで結合する抗体を意味する。「IL12Rβ1以外の抗原と交差反応する」抗体は、その抗原と0.5 x 10-8 M以下、5 x 10-9 M 以下、または2 x 10-9 M以下のKで結合する抗体を意味する。「特定の抗原と交差反応しない」抗体は、その抗原と1.5 x 10-8 M以上のK、または5〜10 x 10-8 M もしくは 1 x 10-7 M 以上のKで結合する抗体を意味する。ある態様において、抗原と交差反応しない抗体は、標準的な結合アッセイにおいてこれらのタンパク質との実質的に検出不可能な結合を示す。
【0040】
本明細書において使用するとき、用語「アンタゴニスト」は、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生アッセイのようなヒト細胞アッセイにおいて、IL12の存在下で、IL12Rβ1誘導性シグナル伝達活性を阻害する抗体を意味する。ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生アッセイの例は、下記実施例においてより詳細に記載されている。いくつかの態様において、本抗体は、ヒト血球細胞アッセイで測定したとき、IL12依存的IFN−γ産生を10nM以下、1nM以下、または100pM以下のIC50で阻害する。
【0041】
本明細書において使用するとき、「アンタゴニスト活性を有さない」抗体は、ヒト血球細胞IFNγ産生アッセイのような細胞ベースのアッセイにおいて、IL12の存在下で、IL12Rβ1介在性シグナル伝達活性が顕著に上昇しない抗体を意味する。かかるアッセイは、下記実施例においてより詳細に記載されている。
【0042】
本明細書において使用するとき、IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害する抗体または結合タンパク質は、Bioveris(商標)アッセイのようなインビトロ競合結合アッセイにおいて測定したとき、IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を、10nM以下のEC50、好ましくは1nM以下のEC50、より100pM以下のEC50で阻害する抗体を意味する。かかるアッセイは、下記実施例においてより詳細に記載されている。
【0043】
本明細書において使用するとき、霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFNγ産生を阻害する抗体または結合タンパク質は、10μg/ml以上の抗IL12Rβ1 mAb血漿レベルで、コントロールレベルの10%未満のレベルにIL12エクスビボIFNγ産生を低下させる抗体を意味する。いくつかの態様において、10μg/ml以上の抗IL12Rβ1 mAb血漿レベルで、霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFNγ産生を完全に停止させる抗体を意味する。かかるアッセイは、下記実施例により詳細に記載されている。
【0044】
用語「Kassoc」または「K」は、本明細書において使用するとき、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を意味し、用語「Kdis」または「K」は、本明細書において使用するとき、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を意味する。用語「K」は、本明細書において使用するとき、KとKの比(すなわちK/K)から得られる解離定数を意味し、モル濃度(M)で示される。抗体のK値は、当該技術分野で十分に確立された方法を用いて決定できる。抗体のKを決定する方法は、表面プラズモン共鳴を用いるか、あるいはBiacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーを用いる。
【0045】
本明細書において使用するとき、用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体抗原間相互作用の強度を意味する。各抗原部位において、抗体「腕」の可変領域は、多数の部位で抗原と弱い非共有結合力を介して相互作用し;相互作用がより多くなれば、親和性がより強度になる。
【0046】
本明細書において使用するとき、用語「アビディティー」は、抗体−抗原複合体の全体的な安定性または強度の情報尺度を意味する。これは3つの主要な要因によって制御される:抗体エピトープ親和性;抗原および抗体両方の価数;および相互作用パーツの構造配列。最終的に、これらの要因は抗体の特異性、すなわち特定の抗体が正確な抗原エピトープと結合する可能性を定義する。
【0047】
よりアビディティーが高いプローブを得るために、二量体複合体(FACSマーカーと結合した抗体タンパク質の2個の分子)を構築してよく、したがって(例えば生殖系列抗体との)親和性相互作用を低くし、FACSによりより容易に検出できる。さらに、抗原結合のアビディティーを上昇させるための別の手段は、抗IL12Rβ1抗体の本明細書に記載の構築物のいずれかの二量体、三量体または多量体を作成することを含む。かかる多量体は、例えば天然のCからN末端結合をを模倣し、あるいは定常領域を介して一体に保持される抗体二量体を模倣して、個々の分子間の共有結合を介して作成できる。Fc/Fc界面に設計した結合は、共有結合または非共有結合であってよい。さらに、IL12Rβ1ハイブリッドにおいてFc以外の二量体化または多量体化パートナーを用いて、かかる高次構造を作成してもよい。例えば、Borean (WO2004039841)に記載の三量体化ドメインのような多量体化ドメインを用いてよい。
【0048】
本明細書において使用するとき、用語抗体の「選択性」は、抗体がある標的ポリペプチドに結合するが、密接に関連したポリペプチドには結合しないことを意味する。
【0049】
本明細書において使用するとき、用語抗体の「高い親和性」は、抗体が標的抗原に対して1nM以下のKを有することを意味する。本明細書において使用するとき、用語「対象」は、ヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0050】
用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば哺乳類および非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類を含む。
【0051】
本明細書において使用するとき、用語「最適化された」は、産生細胞または生物、一般に真核細胞、例えばピチカの細胞、トリコデルマの細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞における生産に好ましいコドンを用いてアミノ酸配列をコードするようにヌクレオチド配列が変化していることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列を操作して、「親」配列とも知られている出発ヌクレオチド配列によって本来コードされるアミノ酸配列を完全にまたは可能な限り保持させる。本明細書において、最適化された配列は、CHO哺乳類細胞において好ましいコドンを有するように操作されるが;他の真核細胞においてこれらの配列の最適化された発現も本明細書において想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、最適化とも称される。
【0052】
多様な種のIL12Rβ1に対する抗体の結合能を評価するための標準的なアッセイは、当該技術分野において知られており、例えばELISA、ウェスタンブロットおよびRIAを含む。好適なアッセイは実施例において詳細に記載されている。抗体の結合動態(例えば結合親和性)も、当該技術分野において既知の標準的なアッセイ、例えばBiacore分析によって評価できる。IL12Rβ1の機能的特性(例えばレセプター結合、IL12またはIL23リガンド結合阻害、IL12誘導性IFNγ産生阻害)に対する抗体の効果を評価するためのアッセイは、実施例においてさらに詳細に記載されている。
【0053】
したがって、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載されている方法論に従って決定したとき、これらのIL12Rβ1機能的特性(例えば生化学的、免疫化学的、細胞、生理的または他の生物学的活性)の1個以上を「阻害する」抗体は、当該抗体の非存在下において(例えば、または無関係な特異性のコントロール抗体が存在する場合に)みられるものと比較して、特定の活性において統計的に有為に減少していることを意味すると理解される。IL12Rβ1活性を阻害する抗体は、測定したパラメーターの少なくとも10%、少なくとも50%、80%または90%の統計的に有為な低下をもたらし、ある態様において、本発明の抗体は、IL12Rβ1機能的活性の95%、98%または99%以上を阻害しうる。
【0054】
用語「交差阻止する」、「交差阻止された」および「交差阻止」は、本明細書において相互に交換可能なように使用され、標準的な競合結合アッセイにおいて他の抗体または結合剤とIL12Rβ1の結合を妨げる抗体または他の結合剤の能力を意味する。
【0055】
他の抗体または結合剤とIL12Rβ1の結合を妨げる抗体または他の結合剤の能力または程度、したがって本発明に従う交差阻止といえるかどうかは、標準的な競合結合アッセイを用いて決定できる。一つの好適なアッセイは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定可能なBiacore技術(例えばBIAcore 3000 装置 (Biacore, Uppsala, Sweden)の使用を含む)を含む。交差阻止を測定する別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを用いる。
【0056】
これらの方法のさらなる詳細は、実施例に記載されている。
【0057】
本発明に従って、本発明の交差阻止抗体または他の結合剤は、記載のBIAcore交差阻止アッセイにおいて、本抗体または結合剤の組合せ(混合物)の実測での結合が組み合わせた2種の抗体または結合剤の最大理論結合の80%〜0.1%(例えば80%〜4%)、特に最大理論結合の75%〜0.1%(例えば75%〜4%)、より具体的には最大理論結合の65%〜0.1%(例えば65%〜4%)であるように、IL12Rβ1に結合する。
【0058】
抗体は、実施例に記載のELISAアッセイにおいて、液相抗IL12Rβ1抗体(すなわちポジティブコントロールウェル)の非存在下で得られるIL12Rβ1検出シグナルと比較して、液相抗IL12Rβ1抗体が60%〜100%、特に70%〜100%、より具体的には80%〜100%のIL12Rβ1検出シグナル(すなわち被覆抗体によって結合されるIL12Rβ1の量)の減少を引き起こしうるとき、交差阻止と定義される。
【0059】
組換え抗体
本発明の抗体は、実施例に記載のとおりに単離され、構造的に特徴付けられているヒト組換え抗体を含む。本発明の単離された抗体のVアミノ酸配列は、配列番号29〜32に示されている。本発明の単離された抗体のVアミノ酸配列は、配列番号25〜28にそれぞれ示されている。他の本発明の抗体は、上記配列に示されているCDR領域について、CDR配列において少なくとも60、70、80、90または95%の同一性を有する、アミノ酸欠失、挿入または置換によって変異されているアミノ酸を含む。いくつかの態様において、上記配列に示されたCDR領域と比較したとき1、2、3、4または5アミノ酸以下がCDR領域において欠失、挿入または置換によって変異されている変異アミノ酸配列を含む。
【0060】
可変軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号33〜36に示されている。可変重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号37〜40に示されている。本発明の抗体をコードする他の核酸は、上記配列と少なくとも60、70、80、90または95%の同一性を有する、変異されている核酸を含む。いくつかの態様において、上記配列に示された可変領域と比較したとき1、2、3、4または5ヌクレオチド以下が可変領域においてヌクレオチド欠失、挿入または置換によって変化している変異核酸を含む。
【0061】
同じエピトープに結合する抗体について、V、V、全長軽鎖および全長重鎖配列(ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)は、本発明の他の抗IL12Rβ1結合分子を作成するために混合し、マッチさせてよい。かかる「混合し、マッチした」抗体のIL12Rβ1結合は、上記および実施例に記載の結合アッセイ(例えばELISA)を用いて試験してよい。これらの鎖が混合され、マッチされている場合、特定のV/V対由来のV配列は、構造的に類似するV配列で置き換えられるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対由来の全長重鎖配列は、構造的に類似する全長重鎖配列で置き換えられるべきである。同様に、特定のV/V対由来のV配列は、構造的に類似するV配列で置き換えられるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対由来の全長軽鎖配列は、構造的に類似する全長軽鎖配列で置き換えられるべきである。したがって、一つの局面において、本発明は、配列番号29〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号25〜28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する単離された組換え抗体であって、IL12Rβ1に特異的に結合する、単離された組換え抗体を提供する。
【0062】
別の局面において、本発明は、配列番号29〜32からなる群から選択されるVアミノ酸配列を含む全長重鎖および配列番号25〜28からなる群から選択されるVアミノ酸配列を含む全長軽鎖を有し、IL12Rβ1と特異的に結合する、単離された組換え抗体を提供する。
【0063】
別の局面において、本発明は、配列番号37〜40からなる群から選択される配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる全長重鎖および配列番号33〜36からなる群から選択される配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる全長軽鎖を有し、IL12Rβ1と特異的に結合する、単離された組換え抗体を提供する。
【0064】
本発明の抗体のV CDR1のアミノ酸配列の例は、配列番号1〜4に示されている。本発明の抗体のV CDR2のアミノ酸配列の例は、配列番号5〜8に示されている。本発明の抗体のV CDR3のアミノ酸配列の例は、配列番号9〜12に示されている。本発明の抗体のV CDR1のアミノ酸配列の例は、配列番号13〜16に示されている。本発明の抗体のV CDR2のアミノ酸配列の例は、配列番号17〜20に示されている。本発明の抗体のV CDR3のアミノ酸配列の例は、配列番号21〜24に示されている。CDR領域は、Kabat システムを用いて描画される(Kabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。
【0065】
これらの抗体はそれぞれIL12Rβ1に結合でき、抗原結合特異性は主としてCDR1、2および3領域によって与えられることを考慮すると、V CDR1、2および3配列ならびにV CDR1、2および3配列は、「混合し、マッチさせる」ことができる(すなわち、V CDR1、2および3ならびにV CDR1、2および3を含む異なる抗体それぞれ由来のCDRを組合せてマッチさせ、本発明の他の抗IL12Rβ1結合分子を作成する)。かかる「混合し、マッチした」抗体のIL12Rβ1結合は、上記および実施例に記載の結合アッセイ(例えばELISA)を用いて試験してよい。V CDR配列が混合され、マッチされている場合、特定のV配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似するCDR配列で置き換えられているべきである。同様に、V CDR配列が混合され、マッチされている場合、特定のV配列由来のCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似するCDR配列で置き換えられているべきである。1個以上のVおよび/またはV CDR領域配列を、本発明のモノクローナル抗体について本明細書において示した当該CDR配列由来の構造的に類似する配列で置換して、新たなVおよびV配列を作成できると当業者は容易に理解しよう。
【0066】
単離された組換え抗体またはその抗原結合領域は、配列番号1〜4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号5〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、配列番号9〜12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、配列番号13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号17〜20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および配列番号21〜24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を有し、IL12Rβ1抗体と特異的に結合する。
【0067】
ある態様において、本抗体は、配列番号1の重鎖可変領域CDR1、配列番号5の重鎖可変領域CDR2、配列番号9の重鎖可変領域CDR3、配列番号13の軽鎖可変領域CDR1、配列番号17の軽鎖可変領域CDR2および配列番号21の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0068】
ある態様において、本抗体は、配列番号2の重鎖可変領域CDR1、配列番号6の重鎖可変領域CDR2、配列番号10の重鎖可変領域CDR3、配列番号14の軽鎖可変領域CDR1、配列番号18の軽鎖可変領域CDR2および配列番号22の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0069】
ある態様において、本抗体は、配列番号3の重鎖可変領域CDR1、配列番号7の重鎖可変領域CDR2、配列番号11の重鎖可変領域CDR3、配列番号15の軽鎖可変領域CDR1、配列番号19の軽鎖可変領域CDR2および配列番号23の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0070】
ある態様において、本抗体は、配列番号4の重鎖可変領域CDR1、配列番号8の重鎖可変領域CDR2、配列番号12の重鎖可変領域CDR3、配列番号16の軽鎖可変領域CDR1、配列番号20の軽鎖可変領域CDR2および配列番号24の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0071】
本明細書において使用するとき、ヒト抗体は、当該抗体の可変領域または全長鎖がヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を用いた系から得られているとき、特定の生殖系列配列の「産物」であるかまたはそれに「由来する」重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。かかる系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫することまたはファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子を目的の抗原でスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の「産物」であるかまたはそれに「由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列とヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列を比較して、ヒト抗体の配列と最も配列が近い(すなわち同一性%が最大)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択して、それ自体を同定できる。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列の「産物」であるかまたはそれに「由来する」ヒト抗体は、例えば天然に生じる体細胞変異または部位特異的突然変異誘発の意図的導入のため、当該生殖系列配列と比較して異なるアミノ酸を含んでいてもよい。しかし、選択したヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において典型的には少なくとも90%同一であり、他の種(例えばマウス生殖系列配列)と比較したときヒトであるとヒト抗体を同定するアミノ酸残基を含む。ある場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列において少なくとも60%、70%、80%、90%または少なくとも95%、さらには少なくとも96%、97%、98%または99%同一でありうる。典型的には、特定のヒト生殖系列配列由来のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から、10以下のアミノ酸の相違を示す。ある場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列から、5以下、さらには4、3、2または1以下のアミノ酸の相違を示しうる。
【0072】
相同抗体
さらに別の態様において、本発明の抗体は、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列と相同な、全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列、全長重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列、可変領域重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列または可変領域重鎖および軽鎖アミノ酸配列を有し、本発明の抗IL12Rβ1抗体の所望の機能的特性を保持している。
【0073】
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離された組換え抗体(またはその抗原結合部分を含む結合タンパク質)であって、該重鎖可変領域が配列番号29〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%同一であり、該軽鎖可変領域が配列番号25〜28からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%同一であり、当該抗体がIL12Rβ1と特異的に結合し、そして当該抗体が下記機能的特性の少なくとも1個を示す、抗体を提供する:IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL23依存的IFNγ産生を阻害する、または霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFN−γ産生を阻害する。
【0074】
別の例において、本発明は、全長重鎖および全長軽鎖を含む単離された組換え抗体であって、該全長重鎖が配列番号37〜40からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%または少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされ、該全長軽鎖が配列番号33〜36からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%または少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列によってコードされ、当該抗体がIL12Rβ1と特異的に結合し、そして当該抗体が下記機能的特性の少なくとも1個を示す、抗体を提供する:IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL23依存的IFNγ産生を阻害する、または霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFN−γ産生を阻害する。
【0075】
多様な態様において、該抗体は、上記機能的特性の1個以上、2個以上、3個以上または4個以上を示しうる。本抗体は、例えばヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってよい。好ましくは本抗体は完全ヒトサイレントIgG1抗体である。
【0076】
他の態様において、Vおよび/またはVアミノ酸配列は、上記配列と50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であってよい。他の態様において、Vおよび/またはVアミノ酸配列は、1、2、3、4または5箇所以下のアミノ酸におけるアミノ酸置換を除き、同一であってよい。それぞれ配列番号29〜32および配列番号25〜28のVおよびV領域と高い(すなわち80%以上)同一性を有するVおよびV領域を有する抗体は、それぞれ配列番号37〜40および33〜36をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば部位特異的またはPCR介在突然変異誘発)、次いで本明細書に記載の機能的アッセイを用いて保持される機能(すなわち上記機能)についてのコードされる改変抗体の試験により、得ることができる。
【0077】
本明細書において使用するとき、2個の配列間の同一性%は、2個の配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮し、該配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/全位置数×100)。配列の比較および2個の配列間の同一性%の決定は、下記のような数学アルゴリズムを用いて実施できる。
【0078】
2個のアミノ酸配列間の同一性%は、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれており、PAM120ウェイト残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いる、E. Meyers and W. Millerのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17, 1988)を用いて決定できる。あるいは、2個のアミノ酸配列間の同一性%は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれており、Blossom 62 マトリックス またはPAM250 マトリックスならびにギャップウェイト16、14、12、10、8、6または4および長さウェイト1、2、3、4、5または6を用いて、Needleman and Wunsch (J. Mol, Biol. 48:444-453, 1970)アルゴリズムを用いて決定できる。
【0079】
保存的修飾を有する抗体
ある態様において、本発明の抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここでこれらのCDR配列の1個以上は、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列またはその保存的修飾を有し、そして該抗体は本発明の抗IL12Rβ1抗体の所望の機能的特性を保持している。したがって、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなる抗原結合部分を含む、単離された組換え抗体であって、該重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が配列番号1〜4およびその保存的修飾からなる群から選択され、該重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が配列番号5〜8およびその保存的修飾からなる群から選択され、該重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列が配列番号9〜12およびその保存的修飾からなる群から選択され、該軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が配列番号13〜16およびその保存的修飾からなる群から選択され、該軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列が配列番号17〜20およびその保存的修飾からなる群から選択され、該軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列が配列番号21〜24およびその保存的修飾からなる群から選択され、IL12Rβ1と特異的に結合し、そして下記機能的特性の少なくとも1個を示す抗体を提供する:IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL23依存的IFNγ産生を阻害する、または霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFN−γ産生を阻害する。
【0080】
多様な態様において、該抗体は、上記機能的特性の1個以上、2個以上、3個以上または4個以上を示しうる。本抗体は、例えばヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってよい。
【0081】
他の態様において、哺乳類細胞での発現に最適化された本発明の抗体は、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を有し、ここでこれらの配列の1個以上は、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列またはその保存的修飾を有し、そして当該抗体は本発明の抗IL12Rβ1抗体の所望の機能的特性を保持する。したがって、本発明は、全長重鎖および全長軽鎖からなる哺乳類細胞での発現に最適化された単離されたモノクローナル抗体であって、該全長重鎖が配列番号29〜32およびその保存的修飾からなる群から選択される可変アミノ酸配列を含み、該全長軽鎖が配列番号25〜28およびその保存的修飾からなる群から選択される可変アミノ酸配列を含み、IL12Rβ1と特異的に結合し、そして下記機能的特性の少なくとも1個を示す抗体を提供する:IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生を阻害する、ヒト血球細胞におけるIL23依存的IFNγ産生を阻害する、または霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFN−γ産生を阻害する。
【0082】
多様な態様において、該抗体は、上記機能的特性の1個以上、2個以上、3個以上または4個以上を示しうる。本抗体は、例えばヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってよい。
【0083】
本明細書において使用するとき、用語「保存的配列修飾」は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著に影響しないかまたは変化させない、アミノ酸修飾を意味する。かかる保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。
【0084】
保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族性側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体のCDR領域中の1個以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換されていてよく、そして本明細書に記載の機能的アッセイを用いて、保持される機能について改変した抗体を試験してよい。
【0085】
修飾は当該技術分野において既知の標準的な技術、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR介在突然変異誘発によって、本発明の抗体に導入できる。
【0086】
本発明の抗IL12Rβ1抗体と同じエピトープに結合する抗体
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の本発明の多用な特異的抗IL12Rβ1抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。
【0087】
したがって、さらなる抗体は、標準的なIL12Rβ1結合アッセイにおいて、他の本発明の抗体と統計的に有為に、交差競合する(例えば結合を競合的に阻害する)能力に基づいて同定できる。ヒトIL12Rβ1と本発明の抗体の結合を阻害する試験抗体の能力は、ヒトIL12Rβ1との結合について当該抗体と試験化合物が競合しうることを示しており、かかる抗体は、理論に限定されないが、それが競合する抗体とヒトIL12Rβ1上の同一または関連(例えば構造的に類似または空間的に近接)エピトープと結合しうる。ある態様において、本発明の抗体とヒトIL12Rβ1上の同じエピトープと結合する抗体は、ヒト組換え抗体である。かかるヒト組換え抗体は、実施例に記載のとおりに製造し、単離できる。
【0088】
改変および修飾された抗体
本発明の抗体は、さらに、出発物質として本明細書に示すVおよび/またはV配列の1個以上を有する抗体を用いて、修飾された抗体を製造し、改変できる。当該修飾された抗体は、出発抗体とは異なる特性を有していてもよい。抗体は、例えば1個以上のCDR領域および/または1個以上のフレームワーク領域内の1個または両方の可変領域(すなわちVおよび/またはV)内の1個以上の残基を修飾して、改変できる。さらにまたは別に、定常領域の残基を修飾して抗体を改変して、抗体のエフェクター機能を変化させてもよい。
【0089】
行いうる可変領域改変の一つのタイプは、CDR移植である。抗体は、主として6個の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は多くの抗体−抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワークに移植した特定の天然に生じる抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に生じる抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現できる(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad参照。 U.S.A. 86:10029-10033; Winterの米国特許第5,225,539号およびQueenらの米国特許第5,530,101号; 第5,585,089号; 第5,693,762号および第6,180,370号参照)。
【0090】
したがって、本発明の別の態様は、単離されたモノクローナル抗IL12Rβ1抗体であって、配列番号1〜4からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号5〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列および配列番号9〜12からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列をそれぞれ含む重鎖可変領域、ならびに配列番号13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列、配列番号17〜20からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列および配列番号21〜24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列をそれぞれ含む軽鎖可変領域を含む抗体に関する。したがって、かかる抗体は、モノクローナル抗体のVおよびV CDR配列を含むが、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含みうる。
【0091】
かかるフレームワーク配列は、公表されているDNAデータベースまたは公表されている生殖系列抗体遺伝子配列を含む文献から得られる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子についての生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットwww.mrc- cpe.cam.ac.uk/vbaseで閲覧可能)ならびにKabat、E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. Mol. Biol. 227:776-798; および Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836で見られる。
【0092】
本発明の抗体に使用するフレームワーク配列の例は、選択された本発明の抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のもの、例えば本発明のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列である。V CDR1、2および3配列ならびにV CDR1、2および3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同一の配列を有するフレームワークに移植でき、あるいは該CDR配列は、生殖系列配列と比較して1個以上の変異を含むフレームワーク領域に移植できる。例えば、ある例において、抗体の抗原結合能を維持しあるいは向上させるためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有利であることが知られている(例えばQueenらの米国特許第5,530,101号; 第5,585,089号; 第5,693,762号および第6,180,370参照)。
【0093】
別のタイプの可変領域修飾は、Vおよび/またはV CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって目的の抗体の1個以上の結合特性(例えば親和性)を改善することである(「親和性変異」と知られる)。部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発を行って、変異を導入し、本明細書に記載および実施例に提供するインビトロまたはインビボアッセイで抗体結合または他の興味のある機能的特性に対する影響を評価してもよい。保存的修飾(上記)を導入してもよい。変異はアミノ酸置換、付加または欠失であってよい。さらには、典型的にはCDR領域内の1、2、3、4または5個以下の残基が変化する。
【0094】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号1〜4から選択されるアミノ酸配列または配列番号1〜4と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるV CDR1領域、配列番号5〜8から選択されるアミノ酸配列または配列番号5〜8と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるV CDR2領域、配列番号9〜12から選択されるアミノ酸配列または配列番号9〜12と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるV CDR3領域、配列番号13〜16から選択されるアミノ酸配列または配列番号13〜16と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるV CDR1領域、配列番号17〜20から選択されるアミノ酸配列または配列番号17〜20と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるV CDR2領域、および配列番号21〜24から選択されるアミノ酸配列または配列番号21〜24と比較して1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるV CDR3領域を含む、単離された抗IL12Rβ1モノクローナル抗体を提供する。
【0095】
抗原結合ドメインを別のフレームワークまたはスキャフォールドに移植する
得られるポリペプチドが少なくとも1個のIL12Rβ1と特異的に結合する結合領域を有する限り、広範な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドが使用できる。かかるフレームワークまたはスキャフォールドは、ヒト免疫グロブリンまたはそのフラグメントの5個の主なイディオタイプ(例えば本明細書の他の箇所に記載のもの)を含み、好ましくはヒト化局面を有する別の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダにおいて同定されるもののような重鎖1個の抗体は、この点において特に興味深い。新たなフレームワーク、スキャフォールドおよびフラグメントは、当業者によって探索および開発し続けられている。
【0096】
一つの局面において、本発明は、本発明のCDRを移植できる非免疫グロブリンスキャフォールドを用いて、非免疫グロブリンベースの抗体を作成することに関する。配列番号41の標的タンパク質に特異的な結合領域を含む限り、既知のまたは将来の非免疫グロブリンフレームワークおよびスキャフォールドが使用できる。かかる化合物は、本明細書において、「標的特異的結合領域を含むポリペプチド」と称する。非免疫グロブリンフレームワークの例は、さらに以下のセクションに記載されている(ラクダ抗体および非抗体スキャフォールド)。
【0097】
ラクダ抗体
ラマ種(Lama paccos、Lama glama および Lama vicugna)のような新世界メンバーを含むラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCalelus dromaderius)ファミリーのメンバーから得た抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑性およびヒトに対する抗原性について、特徴付けられている。天然に見出される哺乳類のこのファミリー由来の特定のIgG抗体は軽鎖を欠いており、したがって他の動物由来の抗体における2個の重鎖および2個の軽鎖を有する4鎖4級構造とは構造的に異なる。PCT/EP93/02214 (1994年3月3日公開のWO 94/04678)を参照されたい。
【0098】
HHと同定される小さな1個の可変ドメインであるラクダ抗体の領域を遺伝子操作によって入手して、標的に高い親和性を有し、「ラクダナノ抗体」として知られる低分子量抗体由来タンパク質を得ることができる。1998年6月2日公開の米国特許第5,759,808参照;Stijlemans, B. et al., 2004 J Biol Chem 279: 1256-1261; Dumoulin, M. et al., 2003 Nature 424: 783-788; Pleschberger, M. et al. 2003 Bioconjugate Chem 14: 440-448; Cortez-Retamozo, V. et al. 2002 Int J Cancer 89: 456-62; および Lauwereys, M. et al. 1998 EMBO J 17: 3512-3520も参照されたい。ラクダ抗体および抗体フラグメントの操作されたライブラリーは、例えばAblynx, Ghent, Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体として、ラクダ抗体のアミノ酸配列を組換え的に変化させて、ヒト配列により似た配列を得てもよい。すなわち、ナノ抗体を「ヒト化」してよい。したがって、ヒトに対するラクダ抗体の天然の低抗原性をさらに低下させうる。
【0099】
ラクダ抗体はヒトIgG分子の約10分の1の分子量を有し、該タンパク質はわずか数ナノメートルの物理系を有する。小さなサイズの一つの帰結は、より大きな抗体タンパク質には機能的に不可視の抗原部位に結合するというラクダ抗体の能力であり、すなわちラクダナノ抗体は、常套の免疫学的技術を用いると隠される抗原を検出する試薬として、そして可能性のある治療薬物として、有用である。したがって、小さなサイズのさらに別の帰結は、標的タンパク質の溝または小さな割れ目の特定の部位に結合することの結果として、阻害でき、したがって伝統的な抗体のものよりも伝統的な低分子量薬物の機能により似た能力を提供できることである。
【0100】
低分子量およびコンパクトなサイズは、さらに、極めて熱安定であり、極端なpHおよびタンパク分解に安定であり、そして低い抗原性をラクダナノ抗体にもたらす。別の帰結は、ラクダナノ抗体は循環系から組織に容易に移動することおよび血液脳関門を通過して神経組織に作用する障害を処置しうることである。ナノ抗体はさらに、薬物の血液脳関門通過を促進しうる。2004年8月19日公開の米国特許出願20040161738を参照されたい。ヒトへの低抗原性と組み合わさったこれらの特徴は、大きな治療ポテンシャルを示す。さらに、これらの分子は、大腸菌のような原核細胞において十分に発現され、バクテリオファージで融合タンパク質として発現され、そして機能的である。
【0101】
したがって、本発明の特徴は、IL12Rβ1に高い親和性を有するラクダ抗体またはナノ抗体である。ここである態様において、ラクダ抗体またはナノ抗体は、ラクダ科動物において天然に生産され、すなわち他の抗体について本明細書に記載の技術を用いて、IL12Rβ1またはそのペプチドフラグメントでラクダを免疫して作成される。あるいは、抗IL12Rβ1ラクダナノ抗体を設計し、すなわち例えば本明細書の実施例に記載の標的としてIL12Rβ1を用いるパニング法を用いて適切に変異誘発したラクダナノ抗体を提示する例えばファージディスプレイライブラリーから選択して作成する。例えば、抗IL12Rβ1ラクダナノ抗体は、IL12Rβ1とIL12およびIL23の結合を阻害し、そして/またはヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生を阻害し、そして/またはヒト血球細胞におけるIL23依存的IFNγ産生を阻害するものから選択される。対応するアッセイは実施例に記載されている。
【0102】
操作されたナノ抗体は、45分〜2週間の受容対象における半減期を有するようにさらに遺伝子操作によってカスタマイズしてもよい。具体的な態様において、ラクダ抗体またはナノ抗体は、PCT/EP93/02214の実施例に記載のとおり、本発明のヒト抗体の重鎖または軽鎖のCDR配列をナノ抗体またはシングルドメイン抗体フレームワーク配列に挿入して得られる。
【0103】
非抗体スキャフォールド
既知の非免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドは、アドネクチン(フィブロネクチン)(Compound Therapeutics, Inc., Waltham, MA)、アンキリン(Molecular Partners AG, Zurich, Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis, Ltd (Cambridge, MA) および Ablynx nv (Zwijnaarde, Belgium))、リポカリン(アンチカリン)(Pieris Proteolab AG, Freising, Germany)、小モジュラー免疫医薬(Trubion Pharmaceuticals Inc., Seattle, WA)、マキシボディー(Avidia, Inc. (Mountain View, CA))、プロテインA(Affibody AG, Sweden) および アフィリン(ガンマ結晶またはユビキチン)(Scil Proteins GmbH, Halle, Germany)、タンパク質エピトープ模倣物(Polyphor Ltd, Allschwil, Switzerland)を含むが、これらに限定されない。
【0104】
(i) フィブロネクチンスキャフォールド
フィブロネクチンスキャフォールドは、好ましくはフィブロネクチンタイプIIIドメイン(例えばフィブロネクチンタイプIIIの第10モジュール(10 Fn3ドメイン))に基づく。フィブロネクチンタイプIIIドメインは、それら自体が互いをパックしてタンパク質のコアを形成する2個のベータシート間に分布する7または8個のベータ鎖を有し、さらにベータ鎖と互いに結合し、溶媒に曝されるループ(CDRに類似する)を含む。ベータシートサンドイッチの各端に、かかるループが少なくとも3個存在し、該端はベータ鎖の方向に垂直なタンパク質の境界である(US 6,818,418)。
【0105】
これらのフィブロネクチンベースのスキャフォールドは、免疫グロブリンではないが、全体的な折り畳みは、最も小さな機能的抗体フラグメントでありラクダおよびラマIgGの全抗原認識ユニットを含む重鎖可変領域のものと極めて関連している。この構造のため、非免疫グロブリン抗体は、抗体のものと性質および親和性において類似する抗原結合特性を模倣する。これらのスキャフォールドは、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスと類似の、インビトロでのループランダム化およびシャッフル戦略に使用できる。これらのフィブロネクチンベース分子は、該分子のループ領域が標準的なクローニング技術を用いる本発明のCDRで置換され、スキャフォールドとして使用されうる。
【0106】
(ii) アンキリン−分子パートナー
この技術は、異なる標的に対する結合のために使用しうる可変領域を保持するスキャフォールドとしてアンキリン由来反復モジュールを使用することに基づく。アンキリン反復モジュールは、2個の逆平衡のαヘリックスおよびβターンからなる33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、多くの場合、リボソームディスプレイを用いて最適化される。
【0107】
(iii) マキシボディー/アビマー−アビディア
アビマーは、LRP−1のような、天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。これらのドメインはタンパク質間相互作用のために天然に用いられ、ヒトでは250種以上のタンパク質が構造的にAドメインに基づいている。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して結合した多数の「Aドメイン」モノマー(2〜10個)からなる。標的抗原に結合しうるアビマーは、例えば20040175756; 20050053973; 20050048512;および 20060008844に記載の方法論を用いて作成できる。
【0108】
(vi) プロテインA−アフィボディ
Affibody(登録商標)親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインの1個のスキャフォールドに基づいた3ヘリックスバンドルからなる、小さく、単純なタンパク質である。この58アミノ酸からなるスキャフォールドタンパク質は、その13個がランダムかされて多数のリガンド変異体を
存在を示唆するAffibody(登録商標)ライブラリーを作成する(例えばUS 5,831,012参照)。Affibody(登録商標)分子は抗体を模倣し;それらは150kDaの抗体の分子量と比較して、6kDaの分子量を有する。その小さなサイズにもかかわらず、Affibody(登録商標)分子の結合部医は抗体のものと同様である。
【0109】
(v) アンチカリン−Pieris
Anticalins(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG社によって開発された製品である。それらは、化学的に感受性または不溶性の化合物の生理的輸送または貯蔵に通常関与する広範なグループの小さく強固なタンパク質であるリポカリンに由来する。多様な天然リポカリンがヒト組織または体液中に生じる。
【0110】
タンパク質構造は免疫グロブリンに類似しており、強固なフレームワークの上端に超可変ループを有する。しかし、抗体またはその組換えフラグメントとは異なり、リポカリンは、単一免疫グロブリンドメインよりも僅かに大きな160〜180アミノ酸残基を有する単一ポリペプチド鎖からなる。
【0111】
結合ポケットを構成する4個のループのセットは、顕著な構造可塑性を示し、多様な側鎖に耐容性である。したがって、結合部位は、高い親和性および特異性で異なる形の所定の標的分子を認識するため、特許方法で再形成してよい。
【0112】
リポカリンファミリーの一つのタンパク質である、Pieris Brassicaeのビリン結合タンパク質(BBP)は、4個のループのセットを変異させてアンチカリンを開発するために使用されている。「アンチカリン」について記載する特許出願の一例は、PCT WO 199916873である。
【0113】
(vi) アフィリン−Scilタンパク質
Affilin(商標)分離は、タンパク質および低分子に対する特定の親和性について設計されている小さな非免疫グロブリンタンパク質である。新たなAffilin(商標)分子は、各々異なるヒト由来スキャフォールドタンパク質に基づく2個のライブラリーから極めて速やかに選択しうる。
【0114】
Affilin(商標)分子は免疫グロブリンタンパク質に対して何ら構造的相同性を示さない。Scil Proteinsは2種のAffilin(商標)スキャフォールドを用い、一方はガンマ結晶、ヒトの構造的眼レンズタンパク質であり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。いずれのヒトスキャフォールドも極めて小さく、高い温度安定性を示し、pH変化および変性剤にほぼ耐性である。この高い安定性は、主として該タンパク質の伸長ベータシート構造のためである。ガンマ結晶由来タンパク質の例はWO200104144に記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例はWO2004106368に記載されている。
【0115】
(vii) タンパク質エピトープ模倣物(PEM)
PEMは、タンパク質間相互作用に関与する主な二次構造であるタンパク質のベータヘアピン二次構造を模倣した、中間サイズの環状ペプチド様分子(分子量1〜2kDa)である。
【0116】
フレームワークまたはFc操作
本発明の操作された抗体は、例えば抗体の特性を改善するため、Vおよび/またはV内のフレームワーク残基に修飾を行ったものを含む。典型的にはかかるフレームワーク修飾は、抗体の免疫源性を低下させるために行う。例えば、一つのアプローチは、対応する生殖系列配列への1個以上のフレームワーク残基の「戻し変異」である。より具体的には、体細胞変異を行った抗体は、当該抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含みうる。かかる残基は抗体フレームワーク配列と当該抗体が由来する生殖系列配列を比較して同定できる。フレームワーク領域配列をその生殖系列立体配置に戻すため、例えば部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発によって、体細胞変異を生殖系列配列に「戻し変異」できる。かかる「戻し変異」された抗体も本発明に含まれる。
【0117】
別のタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内または1個以上のCDR領域内の1個以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それによって潜在的な抗体の免疫源性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも称され、Carrらの米国特許公開第20030153043号により詳細に記載されている。
【0118】
フレームワークまたはCDR領域に行う修飾に加えてまたはそれとは別に、本発明の抗体は、典型的には抗体の1個以上の機能的特性、例えば血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合および/または抗原依存的細胞損傷性を変化させるため、Fc領域内の修飾を含むように操作してよい。さらにまた、本発明の抗体は、化学的に修飾されてよく(例えば1個以上の化学部分が抗体に結合されてよい)、あるいは再度抗体の1個以上の機能的特性を変化させるため、その糖修飾を修飾してよい。これらの態様は各々さらに詳細に以下に記載される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。
【0119】
一つの態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基数が変化、例えば増加または減少するように修飾される。このアプローチはBodmerらによる米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基数は、例えば軽鎖および重鎖のアセンブリを促進させるため、あるいは抗体の安定性を上昇または低下させるために変化される。
【0120】
他の態様において、抗体のFcヒンジ領域を変異させて該抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、抗体が天然FcヒンジドメインSpA結合と比較してブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を損なうように、1個以上のアミノ酸変異をFcヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン界面領域に導入する。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0121】
他の態様において、抗体を修飾してその生物学的半減期を増加させる。多様なアプローチが可能である。例えば、Wardらの米国特許第6,277,375号に記載のとおり、下記変異の1個以上を導入しうる:T252L、T254S、T256F。あるいは生物学的半減期を増加させるために、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に記載のとおり、CH1またはCL領域内でIgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから得たサルベージレセプター結合エピトープを含むように抗体は変化されうる。
【0122】
さらに別の態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変化させるために、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換して変化される。例えば、1個以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対する異なる親和性を有するが親抗体の抗原結合能を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換されうる。親和性を変化させるエフェクターリガンドは、例えばFcレセプターまたは補体のC1成分であり得る。このアプローチはWinterらによる米国特許第5,624,821号および第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0123】
他の態様において、抗体が異なるC1q結合および/または補体依存的細胞傷害性(CDC)が低下もしくは消滅するように、アミノ酸残基から選択される1個以上のアミノ酸は、異なるアミノ酸残基で置換されうる。このアプローチはIdosugieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
【0124】
他の態様において、1個以上のアミノ酸残基を変化させて、抗体の補体に結合する能力を変化させる。このアプローチはBodmerらによるPCT公開公報WO 94/29351にさらに記載されている。
【0125】
さらに別の態様において、Fc領域を修飾して抗体依存的細胞傷害性(ADCC)を仲介する抗体の能力を上昇させ、そして/または1個以上のアミノ酸を修飾してFcγレセプターに対する抗体の親和性を上昇させる。このアプローチは、PrestaによるPCT公開公報WO 00/42072にさらに記載されている。さらにまた、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIに対する結合部位はマッピングされており、改善された結合性を有する変異体が記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604参照)。
【0126】
ある態様において、IgG1アイソタイプのFcドメインが使用される。いくつかの具体的な態様において、IgG1 Fcフラグメントの変異体、例えば抗体依存的細胞傷害性(ADCC)を仲介し、そして/またはFcγレセプターに結合する融合ポリペプチドの能力を低下または消滅させたサイレントIgG1 Fcが使用される。IgG1アイソタイプの例は、HezarehらのJ. Virol 2001 Dec;75(24):12161-8に記載されているアミノ酸位置234および235でロイシン残基がアラニン残基で置換されているサイレント変異体である。
【0127】
ある態様において、Fcドメインは、Fcドメインの297位の残基での糖修飾を防止する変異体である。例えば、Fcドメインは297位のアスパラギン残基のアミノ酸置換を含む。かかるアミノ酸置換の例は、N297のグリシンまたはアラニンによる置換である。
【0128】
さらに別の態様において、抗体の糖修飾は修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作成してよい(すなわち抗体は糖修飾を欠く)。糖修飾は、例えば抗原に対する抗体の親和性を上昇させるために、変化されてよい。かかる糖修飾は、例えば抗体配列中の1個以上の糖修飾部位を変化させることによって行われうる。例えば、1個以上の可変領域フレームワーク糖修飾部位をもたらし、それによってその部位での糖修飾を排除する、1個以上のアミノ酸置換が行われうる。かかる非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を上昇させうる。かかるアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0129】
さらにまたはあるいは、変化した糖修飾のタイプを有する抗体、例えばフコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体または二分GlcNac構造が増加した抗体を作成してよい。かかる糖修飾は、例えば変化した糖修飾機構を有する宿主細胞内で抗体を発現させることによって行いうる。変化した糖修飾機構を有する細胞は、当該技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現し、それによって変化した糖修飾を有する組換え抗体を発現する宿主細胞として使用できる。例えば、HangらによるEP 1,176,195は、細胞系で発現される抗体が低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊されている細胞系を記載している。したがって、一つの態様において、本発明の抗体は、低フコシル化パターンを示す細胞系、例えばフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠損した哺乳類細胞での組み換え発現によって作成される。PrestaによるPCT公開公報WO 03/035835は、Asn(297)結合糖にフコースを結合させる能力が低下し、また宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化をもたらすCHO細胞系変異体であるLecl3細胞を記載している(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。UmanaらによるPCT公開公報WO 99/54342は、細胞系で発現される抗体が増加した二分GlcNac構造を示し、該抗体の増加したADCC活性をもたらすように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えばベータ(1,4))−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GntIII))を発現するように操作された細胞系を記載している(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。あるいは、本発明の抗体は、哺乳類様糖修飾パターンについて操作されており、糖修飾パターンとしてフコースを欠く抗体を産生しうる酵母または糸状菌において作成してもよい(例えばEP1297172B1参照)。
【0130】
本明細書において、本発明が意図する本抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体をペグ化して、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を上昇させることができる。抗体をペグ化するため、抗体またはそのフラグメントは、典型的にはポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1個以上のPEG基が抗体または抗体フラグメントに結合するような条件下で、反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(または同様の反応性水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応またはアルキル化反応によって実施できる。本明細書において使用するとき、用語「ポリエチレングリコール」は他のタンパク質を誘導体化するために使用されているあらゆる形態のPEG,、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを含む。ある態様において、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は、当該技術分野において既知であり、本発明の抗体に適用できる。例えば、NishimuraらによるEP 0 154 316およびIshikawaらによるEP 0 401 384を参照されたい。
【0131】
本発明が意図する抗体の他の修飾は、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域と血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンの複合またはタンパク質融合であり、これにより得られた分子の半減期が上昇する。かかるアプローチは、例えばBallanceらのEP0322094に記載されている。
【0132】
別の可能性は、得られる分子の半減期を上昇させるため、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンと結合しうるタンパク質と、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域の融合である。かかるアプローチは、例えばNygrenらのEP 0 486 525に記載されている。
【0133】
改変された抗体を操作する方法
上記の通り、本明細書に示すVおよびV配列または全長重鎖および軽鎖配列を有する抗IL12Rβ1抗体を用いて、全長重鎖および/または軽鎖配列、Vおよび/またはV配列、またはそれに結合した定常領域を修飾して、新たな抗IL12Rβ1抗体を作成できる。したがって、本発明の別の局面において、本発明の抗IL12Rβ1抗体の構造的特徴を用いて、本発明の抗体の少なくとも1個の機能的特性、例えばヒトIL12Rβ1との結合およびIL12Rβ1の1個以上の機能的特性の阻害(例えばIL12Rβ1とIL12および/またはIL23の結合の阻害、血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生の阻害など)を保持する、構造的に関連した抗IL12Rβ1抗体を作成する。
【0134】
例えば、本発明の抗体またはその変異体の1個以上のCDR領域を既知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換え的に結合して、上記の通り、本発明のさらなる組換え操作された抗IL12Rβ1抗体を作成できる。他のタイプの修飾は、前のセクションに記載のものを含む。操作方法の出発物質は、本明細書で提供されるVおよび/またはV配列の1個以上またはそのCDR配列の1個以上である。操作された抗体を作成するためには、本明細書で提供されるVおよび/またはV配列の1個以上またはそのCDR配列の1個以上を有する抗体を実際に作成する(すなわちタンパク質として発現する)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報を出発物質として用いて、元の配列に由来する「第二世代」配列を作成し、当該「第二世代」配列が調製され、タンパク質として発現される。
【0135】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号1〜4からなる群から選択されるCDR1配列を有する重鎖可変領域抗体配列、配列番号5〜8からなる群から選択されるCDR2配列および/または配列番号9〜12からなる群から選択されるCDR3配列;ならびに配列番号13〜16からなる群から選択されるCDR1配列を有する軽鎖可変領域抗体配列、配列番号17〜20からなる群から選択されるCDR2配列および/または配列番号21〜24からなる群から選択されるCDR3配列からなる抗IL12Rβ1抗体を作成する方法であって、少なくとも1個の変化した抗体配列を作成するために重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列中の少なくとも1個のアミノ酸残基を変化させ、そして変化した抗体配列をタンパク質として発現させることを含む方法を提供する。
【0136】
したがって、他の態様において、本発明は、配列番号29〜32からなる群から選択される可変配列を含む全長重鎖抗体配列および配列番号25〜28からなる群から選択される可変配列を含む全長軽鎖抗体配列からなる、哺乳類細胞における発現に最適化した抗IL12Rβ1抗体を作成する方法であって、少なくとも1個の変化した抗体配列を作成するために重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列中の少なくとも1個のアミノ酸残基を変化させ、そして変化した抗体配列をタンパク質として発現することを含む方法を提供する。
【0137】
変化した抗体配列は、それぞれ配列番号9〜12および配列番号21〜24からなる群から選択される固有の重鎖および軽鎖CDR3配列またはUS20050255552に記載の最小必須結合決定部分およびCDR1およびCDR2配列の多様性を有する抗体ライブラリーをスクリーニングして、作成できる。スクリーニングは、抗体ライブラリーから抗体をスクリーニングするための適切な技術、例えばファージディスプレイ技術に従って、実施できる。
【0138】
標準的な分子生物学技術を用いて、変化した抗体配列を作成し、発現させることができる。変化した抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書に記載の抗IL12Rβ1抗体の1個、数個または全ての機能的特性を保持するものであり、ここで該機能的特性は、ヒトIL12Rβ1との特異的結合および/またはIL12Rβ1ポリペプチドとIL12およびIL23の結合阻害および/またはヒト血球細胞におけるIL12依存的IFNγ産生の阻害および/またはヒト血球細胞におけるIL23依存的IFNγ産生の阻害および/または霊長類血球細胞におけるIL12エクスビボIFNγ産生を含むがこれらに限定されない。
【0139】
変化した抗体は、上記機能的特性を1個以上、2個以上または3個以上示しうる。
【0140】
変化した抗体の機能的特性は、当該技術分野において利用可能でありそして/または本明細書に記載の標準的なアッセイ、例えば実施例に記載のもの(例えばELISA)を用いて、評価できる。
【0141】
本発明の抗体を操作する方法のある態様において、抗IL12Rβ1抗体コーディング配列の全部または一部にわたってランダムにまたは選択的に変異を挿入でき、そして得られた修飾抗IL12Rβ1抗体は、結合活性および/または本明細書に記載の他の機能的特性についてスクリーニングされうる。変異方法は当該技術分野において記載されている。例えば、ShortによるPCT公開公報WO 02/092780は、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリまたはそれらの組合せを用いた抗体変異体の作成およびスクリーニング法を記載している。あるいは、LazarらによるPCT公開公報WO 03/074679は、抗体の物理化学的特性を最適化するための計算スクリーニング法を用いる方法を記載している。
【0142】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の別の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。可変軽鎖ヌクレオチド配列の例は、配列番号33〜36に示す。可変重鎖ヌクレオチド配列の例は、配列番号37〜40に示す。本発明はまた、哺乳類細胞、例えばCHO細胞系におけるタンパク質発現に最適化された、配列番号33〜40の後者配列(latter sequence)に由来する核酸分子に関する。
【0143】
核酸は細胞全体中、細胞溶解物中に存在していてよく、あるいは部分的に精製または実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、他の細胞成分または他の不純物、例えば他の細胞核酸もしくはタンパク質から、標準的な技術、例えばアルカリ/SDS処理、CsCl結合、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および他の当該技術分野で周知のものによって精製されているとき、「単離されている」かまたは「実質的に純粋になって」いる。F. Ausubel, et al., ed. 1987 Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってよく、イントロン配列を含んでいても含んでいなくてもよい。ある態様において、本核酸は、cDNA分子である。核酸はベクター、例えばファージディスプレイベクター中または組換えプラスミドベクター中に存在していてもよい。
【0144】
本発明の核酸は、分子生物学の技術をを用いて得られる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載のとおりヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから調製したハイブリドーマ)による抗体発現のために、該ハイブリドーマによって作成した抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAが、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えばファージディスプレイ技術を用いて)抗体を得るために、当該ライブラリーのメンバーである多様なファージクローンから抗体をコードする核酸が回収できる。
【0145】
およびVセグメントをコードするDNAフラグメントを得たのち、これらのDNAフラグメントはさらに、例えば可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術で操作できる。この操作において、V−またはV−コードDNAフラグメントは、他のDNA分子または他のタンパク質、例えば抗体定常領域もしくはフレキシブルリンカーをコードするフラグメントと、作動可能に連結している。用語「作動可能に連結」は、この文脈で使用するとき、2個のDNAフラグメントが機能的に、例えば当該2個のDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム中に残存するようにまたは該タンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように、結合していることを意味する。
【0146】
領域をコードする単離されたDNAは、V−コードDNAと重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子を作動可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において既知であり(例えば、Kabat, E. A., el al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であってよい。いくつかの態様において、重鎖定常領域はIgG1アイソタイプから選択される。Fabフラグメント重鎖遺伝子について、V−コードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結していてよい。
【0147】
領域をコードする単離されたDNAは、V−コードDNAと軽鎖可変領域であるCLをコードする別のDNA分子を作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において既知であり(例えば、Kabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域であってよい。
【0148】
scFv遺伝子を作成するため、V−およびV−コードDNAフラグメントは、VおよびV配列がフレキシブルリンカーで結合したVおよびV領域を有する近接一本鎖タンパク質として該配列が発現されるように、フレキシブルリンカー、例えばアミノ酸配列(Gly4 -Ser)3をコードする別のフラグメントと作動可能に連結する(例えばBird et al., 1988 Science 242:423-426; Huston et at., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., 1990 Nature 348:552-554参照)。
【0149】
本発明のモノクローナル抗体の作成
モノクローナル抗体(mAb)は、常套のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein, 1975 Nature 256: 495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む多様な技術によって作成できる。モノクローナル抗体を作成する多くの技術は、例えばBリンパ球のウイルスまたは発がん形質転換を使用できる。
【0150】
ハイブリドーマを作成するための動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生産は十分に確立された手法である。免疫プロトコルおよび融合のための免疫化脾細胞の単離の技術は、当該技術分野において既知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合法も既知である。
【0151】
本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上記の通り作成されるマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて作成できる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、目的のマウスハイブリドーマから得られ、そして標準的な分子生物学の技術を用いて非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作してよい。例えば、キメラ抗体を作成するため、当該技術分野において既知の方法を用いてマウス可変領域をヒト定常領域に連結してよい(例えばCabillyらの米国特許第4,816,567号参照)。ヒト化抗体を作成するため、マウスCDR領域は、当該技術分野において既知の方法を用いて、ヒトフレームワークに挿入されうる。例えば、Winterの米国特許第5225539号およびQueenらの米国特許第5530101号; 第5585089号; 第5693762号および第6180370号参照。
【0152】
ある態様において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。かかるIL12Rβ1に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりもむしろヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニックまたはトランス染色体マウスを用いて作成できる。これらのトランスジェニックまたはトランス染色体マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと称されるマウスを含み、集合的に「ヒトIgマウス」と称する。
【0153】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、非再配列ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列を、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異と共に、コードするヒト免疫グロブリン遺伝子小遺伝子座を含む(例えばLonberg, et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859参照)。したがって、マウスは低下したマウスIgMまたはκの発現を示し、免疫化に応答して、導入したヒト重鎖および軽鎖トランスジーンがクラススイッチおよび体細胞変異を引き起こして、高い親和性のヒトヒトIgGκモノクローナルが作成される(Lonberg, N. et al., 1994 supra; reviewed in Lonberg, N., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D., 1995 Intern. Rev. Immunol.13: 65-93, および Harding, F. and Lonberg, N., 1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMAbマウスの作成および使用、ならびにかかるマウスにより担持されるゲノムの修飾は、Taylor, L. et al., 1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et at., 1993 International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720-3724; Choi et al., 1993 Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al., 1993 EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al., 1994 J. Immunol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al., 1994 International Immunology 579-591;および Fishwild, D. et al., 1996 Nature Biotechnology 14: 845-851にさらに記載されており、それらの全ての内容を参照によりその全体について本明細書に引用する。さらに、LonbergとKayの米国特許第5,545,806号; 第5,569,825号; 第5,625,126号; 第5,633,425号; 第5,789,650号; 第5,877,397号; 第5,661,016号; 第5,814,318号; 第5,874,299号; および 第5,770,429号、Suraniらの米国特許第5,545,807号、LonbergとKayのPCT公開公報WO 92103918、WO 93/12227、WO 94/25585、WO 97113852、WO 98/24884 および WO 99/45962、ならびにKormanらのPCT公開公報WO 01/14424も参照されたい。
【0154】
他の態様において、本発明のヒト抗体は、ヒト重鎖トランス遺伝子およびヒト軽鎖トランス染色体を担持するマウスのような、トランス遺伝子およびトランス染色体上にヒト免疫グロブリン配列を担持するマウスを用いて、産生してもよい。かかるマウスは、本明細書において「KMマウス」と称し、IshidaらのPCT公開公報WO 02/43478に詳細に記載されている。
【0155】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランスジェニック動物系が当該技術分野において利用可能であり、それを用いて本発明の抗IL12Rβ1抗体を産生できる。例えば、Xenomouse (Abgenix, Inc.)と称される別のトランスジェニック系が使用できる。かかるマウスは例えば、Kucherlapatiらの米国特許第5,939,598号; 第6,075,181号; 第6,114,598号; 第6,150,584号および第6,162,963号に記載されている。
【0156】
さらにまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランス染色体動物系が当該技術分野において利用可能であり、それを用いて本発明の抗IL12Rβ1抗体を産生できる。例えば、「TCマウス」と称されるヒト重鎖トランス染色体およびヒト軽鎖トランス染色体の両方を担持するマウスが使用でき、かかるマウスはTomizuka et al., 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。さらに、ヒト重鎖およびヒト軽鎖トランス染色体を担持するウシが当該技術分野において記載されており(Kuroiwa et al., 2002 Nature Biotechnology 20:889-894)、それを用いて本発明の抗IL12Rβ1抗体を産生できる。
【0157】
本発明のヒト組換え抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のスクリーニングライブラリーについてのファージディスプレイ法を用いて作成してもよい。ヒト抗体を単離するためのかかるファージディスプレイ法は当該技術分野において確立されているか、または下記実施例に記載されている。例えば、Ladnerらの米国特許5,223,409; 5,403,484および 5,571,698、Dowerらの米国特許5,427,908および5,580,717、McCaffertyらの米国特許5,969,108および6,172,197ならびにGriffithsらの米国特許5,885,793; 6,521,404; 6,544,731; 6,555,313; 6,582,915 および 6,593,081を参照されたい。
【0158】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、免疫によってヒト抗体応答が生じるようにヒト免疫細胞が再構築されているSCIDマウスを用いて作成してもよい。かかるマウスは、例えばWilsonらの米国特許5,476,996および5,698,767に記載されている。
【0159】
ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作成
本発明のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作成するために、免疫したマウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離して、適切な不死化細胞系、例えばマウス骨髄腫細胞系に融合させる。得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングしてよい。例えば、50%のPEGを含む6分の1の数のP3X63-Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)と、免疫したマウスからの脾リンパ球の単一細胞懸濁液を融合できる。細胞を平底マイクロタイタープレートに約2×145で播種し、20% 胎児クローン血清、18% "653" 調節培地、5% オリジェン(IGEN)、4 mM L−グルタミン、1 mM ピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0:055 mM 2−メルカプトエタノール、50 単位/ml ペニシリン、50 mg/ml ストレプトマイシン、50 mg/ml ゲンタマイシンおよび1X HAT (Sigma; HATは融合の24時間後に加える)を含む選択培地中で2週間インキュベーションする。約2週間後、HATをHTに置き換えた培地で細胞を培養してよい。ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体について、各ウェルをELISAでスクリーニングできる。激しいハイブリドーマ増殖が生じた後、通常10〜14日後に中程度の増殖が観察できる。抗体分泌ハイブリドーマを再度播種し、スクリーニングし、ヒトIgGについてなおも陽性であれば、当該モノクローナル抗体を限界希釈により少なくとも2回サブクローニングしてよい。安定なサブクローンをインビトロで培養して、特徴付けのために組織培養培地中で少量の抗体を作成してよい。
【0160】
ヒトモノクローナル抗体を生成するため、モノクローナル抗体精製のために2リットルスピナーフラスコ中で選択したハイブリドーマを増殖してよい。上清を濾過し、濃縮した後、プロテインA−セファロース(Pharmacia, Piscataway, N.J.)でアフィニティークロマトグラフィーに付す。溶出したIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーで確認し、純度を確保する。バッファー溶液をPBSに交換してもよく、濃度は吸光係数1.43を用いるOD280により測定できる。モノクローナル抗体を等分し、-80℃で保存できる。
【0161】
モノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作成
本発明の抗体はまた、例えば組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の当該技術分野において周知の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生してもよい(例えばMorrison, S. (1985) Science 229:1202)。
【0162】
例えば、本抗体またはその抗体フラグメントを発現させるため、標準的な分子生物学の技術(例えばPCR増幅または本発明の抗体を発現するハイブリドーマを用いたcDNAクローニング)によって部分または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを得てよく、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結するようにDNAを発現ベクターに挿入してもよい。この文脈において、用語「作動可能に連結」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を制御する意図した機能を発揮するように抗体遺伝子がベクターにライゲートされていることを意味する。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用する発現宿主に適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は別個のベクターに挿入してよく、あるいはより典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は標準的な方法(例えば抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補的制限部位のライゲーションまたは制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)により発現ベクターに挿入する。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域を用いて、Vセグメントがベクター内のCHセグメントに作動可能に連結し、Vセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結するように、所望のアイソタイプの重鎖および軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターに挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作成できる。さらにまたはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードしうる。抗体鎖遺伝子は、フレーム内の抗体鎖遺伝子のアミノ末端にシグナルペプチドが結合するように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングしてよい。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってよい。
【0163】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御するための制御配列を担持する。用語「制御配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御因子(例えばポリアデニル化シグナル)を含む。かかる制御配列は、例えばGoeddel (Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA 1990)に記載されている。制御配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、望まれるタンパク質の発現レベルなどの要因に依存しうることが当業者には理解される。哺乳類宿主細胞発現の制御配列は、哺乳類細胞における高レベルタンパク質発現を指示するウイルス要素、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、Simian ウイルス40 (SV40)、アデノウイルス(多追えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。あるいは制御配列は、ユビキチンプロモーターまたはP−グロビンプロモーターのような非ウイルス性制御配列を用いてもよい。さらに、SV40早期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルスタイプ1の長末端反復を含むSRaプロモーター系のような、異なる源からの配列からなる(Takebe, Y. et al., 1988 Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0164】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)および選択マーカー遺伝子を担持してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞の選択を促進する(例えばAxelらの米国特許4,399,216、4,634,665 および 5,179,017参照)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞に薬物、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子は、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅によるdhfr−宿主細胞に使用するため)およびネオ遺伝子(G418選択のため)を含む。
【0165】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトする。多様な形態の用語「トランスフェクション」は、異種DNAを原核または真核宿主細胞に挿入するために一般に使用される広範な技術、例えばエレクトロポレーション、カルシウム−リン酸沈殿、DEAEデキストラントランスフェクションなどを含む。原核または真核宿主細胞のいずれかにおいて本発明の抗体を発現させることが理論上可能である。真核細胞、特に哺乳類細胞は原核細胞よりも適切に折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体を構築し分泌する可能性が高いため、真核細胞、例えば哺乳類宿主細胞、酵母または糸状菌における抗体の発現について説明する。抗体遺伝子の原核細胞発現は、活性抗体の高収率での生産には不向きであると報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R., 1985 Immunology Today 6:12-13)。
【0166】
本発明の組換え抗体を発現する哺乳類宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(dhfr−CHO細胞を含む、Urlaub and Chasin, 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されている。DH FR選択マーカーで使用される。例えばR.J. Kaufman and P.A. Sharp、1982 Mol. Biol. 159:601-621に記載)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞での使用について、別の発現系はWO 87/04462、WO 89/01036およびEP 338,841に示されているGS遺伝子発現系である。一つの態様において、本発明の組換え抗体を発現する哺乳類宿主細胞は、例えばUS6,946,292B2に記載のとおり、FUT8遺伝子発現を欠損している哺乳類細胞系を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されているとき、該抗体は、宿主細胞内で抗体の発現にまたは宿主細胞が増殖する培養培地中に抗体が分泌されるのに十分な期間、宿主細胞を培養して産生する。抗体は標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収できる。
【0167】
免疫複合体
別の局面において、本発明は、細胞毒、薬物(例えば免疫抑制剤)または放射性毒素のような治療部分と結合した、抗IL12Rβ1抗体またはそのフラグメントを特徴とする。かかる複合体は、本明細書において、「免疫複合体」と称する。1個以上の細胞毒を含む免疫複合体は、「免疫毒」と称する。細胞毒または細胞毒性剤は、細胞に有害な(例えば殺す)あらゆる薬物を含む。例えば、タキサン、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、t.コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラチンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびプロマイシン、ならびにそれらのアナログまたはホモログを含む。また治療剤は、例えば、代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、切除剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンCおよびcis-ジクロロジアミンプラチナ(II)(DDP)、シスプラチン、アントラサイクリン類(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))ならびに抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含む。
【0168】
本発明の抗体に結合しうる治療用細胞毒の他の例は、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、マイタンシンおよびアウリスタチンならびにそれらの誘導体を含む。カリケアマイシン抗体複合体の例は、商業的に入手可能である(MylotargTm; Wyeth-Ayerst)。
【0169】
細胞毒は、当該技術分野において利用可能なリンカー技術を用いて本発明の抗体に結合できる。細胞毒と抗体を結合するために用いるリンカータイプの例は、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーを含むが、これらに限定されない。リンカーは、例えばリソソーム内の低pHによる切断に受容性であるか、またはカテプシン(例えばカテプシンB、C、D)のような腫瘍組織で専ら発現されているプロテアーゼのようなプロテアーゼによる切断に受容性であるものが選択される。
【0170】
細胞毒、リンカーおよび抗体に治療剤を結合させる方法のさらなる説明は、以下の文献も参照されたい:Saito, G. et al., 2003 Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215; Trail, P.A. et al., 2003 Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337; Payne, G., 2003 Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M., 2002 Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan, I. and Kreitman, R. J., 2002 Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091; Senter, P.D. and Springer, C.J., 2001 Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264。
【0171】
本発明の抗体を放射性同位元素と結合させて、細胞毒放射性医薬を作成してもよい。これは放射性免疫複合体とも称する。診断または治療的使用のために抗体と結合させることができる放射性同位元素の例は、ヨウ素l31、インジウム111、イットリウム90およびルテチウム177を含むが、これらに限定されない。放射性免疫複合体を製造する方法は当該技術分野において確立されている。放射性免疫複合体の例は商業的に入手可能であり、Zevalin(商標)(DEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa Pharmaceuticals)を含み、また同様の方法を用いて、本発明の抗体を用いた放射性免疫複合体を製造できる。
【0172】
本発明の抗体複合体を用いて、所定の生物学的応答を修飾でき、そして薬物部分は常套の化学治療剤に限られることがない。例えば、薬物部分は所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。かかるタンパク質は、例えば酵素的に活性な毒素またはその活性フラグメント、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素またはジフテリア毒素、腫瘍壊死因子またはインターフェロンγのようなタンパク質、または生物学的応答修飾剤、例えばリンホカイン、インターロイキン1(IL1)、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン6(IL6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または他の増殖因子を含みうる。
【0173】
抗体とかかる治療部分を結合する技術は周知であり、例えばAmon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et at., "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); "Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibodies In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985), および Thorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antiboy-Toxin Conjugates", Inmunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照されたい。
【0174】
二重特異的分子
別の局面において、本発明は、本発明の抗IL12Rβ1抗体を含む二重特異的または多重特異的分子を特徴とする。本発明の抗体は、少なくとも2種の異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異的分子を作成するために、別の機能的分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えばあるレセプターに対する別の抗体またはリガンド)に誘導体化または結合しうる。本発明の抗体は、実際に、2種以上の異なる結合部位および/標的分子に結合する多重特異的分子を作成するために、1個以上の他の機能的分子に誘導体化または結合させてもよく、かかる多重特異的分子も、本明細書において使用するとき、用語「二重特異的分子」に包含する。本発明の二重特異的分子を作成するために、本発明の抗体は、1個以上の結合分子、例えば別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣物と機能的に(例えば化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合または他のものにより)結合して、二重特異的分子を得てよい。
【0175】
したがって、本発明は、少なくとも1個のIL12Rβ1に対する第一の結合特異性および第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性を含む二重特異的分子を含む。例えば、第二の標的エピトープは、第一の標的エピトープとは異なるIL12Rβ1の別のエピトープである。別の例は、少なくとも1個のIL12Rβ1に対する第1の結合特異性およびIL12Rβ2またはIL23Rα内のエピトープに対する第二の結合特異性を含む二重特異的分子である。
【0176】
さらに、二重特異的分子が多重特異的である本発明に関して、該分子はさらに、第一および第二の標的エピトープに加えて、第三の結合特異性を含んでいてもよい。
【0177】
一つの態様において、本発明の二重特異的分子は、結合特異性として、少なくとも1種の抗体またはその抗体フラグメント、例えばFab、Fab’、F(ab’)、Fvまたは一本鎖Fvを含む。本抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体またはそのいずれかの最小フラグメント、例えばFvまたはLadnerらの米国特許4,946,778に記載の一本鎖構築物であってもよい。
【0178】
本発明の二重特異的分子に使用できる他の抗体は、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
【0179】
本発明の二重特異的分子は、当該技術分野において既知の方法を用いて、構成要素である結合特異性を複合して作成してもよい。例えば、二重特異的分子の各結合特異性は、別個に作成し、次いで互いに複合してよい。結合特異性がタンパク質またはペプチドであるとき、多様化カップリングまたは架橋剤が共有結合複合化のために使用できる。架橋剤の例は、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニルエネジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシレート(スルホ−SMCC)を含む(例えばKarpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648)を参照されたい)。他の方法はPaulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78,118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83,およびGlennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375に記載のものをふくむ。複合化剤はSATAおよびスルホ−SMCCであり、いずれもPierce Chemical Co. (Rockford, IL)から入手可能である。
【0180】
結合特異性が抗体であるとき、それは2個の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルホヒドリル結合によって複合化してもよい。具体的な態様において、奇数、例えば1個のスルホヒドリル残基を含むようにヒンジ領域を修飾したのち、複合化する。
【0181】
あるいは、両方の結合特異性が同じベクター内でコードされ、同じ宿主細胞で発現されそして組み立てられてもよい。この方法は、二重特異的分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)またはリガンド×Fabの融合タンパク質である場合に特に有用である。本発明の二重特異的分子は、1個の単鎖抗体および結合決定因子を含む一本鎖分子であるか、あるいは2個の結合決定因子を含む一本鎖二重特異的分子であってよい。二重特異的分子は、少なくとも2個の一本鎖分子を含んでいてもよい。二重特異的分子を作成する方法は、例えば米国特許5,260,203; 米国特許5,455,030; 米国特許4,881,175; 米国特許5,132,405; 米国特許5,091,513; 米国特許5,476,786; 米国特許5,013,653; 米国特許5,258,498; および米国特許5,482,858に記載されている。
【0182】
二重特異的分子とその特異的標的との結合は、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば沿右側阻害)またはウェスタンブロットアッセイによって確認できる。これらのアッセイはそれぞれ、一般に、目的の複合体に特異的な標識化された試薬(例えば抗体)を用いて、特定の目的のタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
【0183】
多価抗体
別の局面において、本発明は、IL12Rβ1に結合する本発明の抗体の少なくとも2個の同一または異なる抗原結合部分を含む多価抗体を提供する。一つの態様において、多価抗体は本抗体の少なくとも2個、3個または4個の抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、タンパク質融合または共有もしくは非共有結合によって一体に結合されうる。あるいは、結合方法は、二重特異的分子について説明した。例えば本発明の抗体と本発明の抗体の定常領域、例えばFcまたはヒンジ領域に結合する抗体の架橋により、四価化合物が得られる。
【0184】
医薬組成物
別の局面において、本発明は、薬学的に許容される担体と共に製剤された、本発明の抗体の一つまたは組合せを含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。かかる組成物は、本発明の抗体または免疫複合体もしくは二重特異的分子の一つまたは組合せ(例えば2つ以上)を含んでいてもよい。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するかまたは相補的な活性を有する組合せを含んでいてよい。
【0185】
本発明の医薬組成物はまた、組合せ療法で投与してよく、すなわち他の薬物との組み合わせてよい。例えば、組合せ療法は、本発明の抗IL12Rβ1抗体と少なくとも1種の他の抗炎症剤または他の化学療法剤、例えば免疫抑制剤との組合せを含みうる。組合せ療法に使用できる治療薬物の例は、下記本発明の抗体の使用のセクションにおいて、より詳細に記載されている。
【0186】
本明細書において使用するとき、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合性の、任意のあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤等を含む。担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば注射または輸液による)に適するべきである。一つの態様において、担体は皮下経路に適するべきである。投与経路に依存して、活性化合物、すなわち抗体、免疫複合体または二重特異的分子は、該化合物を不活性化しうる酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するための物質で被覆してよい。
【0187】
本発明の医薬化合物は、1種以上の薬学的に許容される塩を含みうる。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒性効果を与えることのない塩を意味する(例えばBerge, S.M., et al., 1977 J. Pharm. Sci. 66:1-19参照)。かかる塩の例は、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、非毒性の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに非毒性有機酸、例えば脂肪族モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族性酸、脂肪族および芳香族性スルホン酸等に由来するものを含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等に由来するもの、ならびに非毒性有機アミン類、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等に由来するものを含む。
【0188】
本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガラート、アルファトコフェロール等;および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等を含む。
【0189】
本発明の医薬組成物に使用できる好適な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物、植物油、例えばオリーブ油ならびに注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。例えばレシチンのようなコーティング剤を用いて、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持して、そして界面活性剤を使用して、適切な流動性が維持できる。
【0190】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含んでいてもよい。微生物の存在の防止は、上記滅菌手法ならびに多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることによって確保しうる。糖、塩化ナトリウム等の等張化剤を組成物に含めることも望まれうる。さらに、注射組成物形態の延長された吸収は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンのような吸収を遅延させる物質を含めることによってもたらされうる。
【0191】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液または分散剤および滅菌注射液または分散剤の即時調製用滅菌粉末を含む。薬学的活性物質のためのかかる媒体および物質の使用は、当該技術分野において既知である。いずれかの常套の媒体または物質が活性化合物に不適合である場合を除き、本発明の医薬組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物も組成物に加えてよい。
【0192】
治療用組成物は、典型的には滅菌されており、製造および保存条件下で安定であるべきである。組成物は溶液、ミクロエマルジョン、リポソームまたは他の高薬物濃度に好適な規則構造として製剤しうる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液性ポリエチレングリコール等)およびそれらの好適な混合物を含む、溶媒または分散媒であってよい。例えばレシチンのようなコーティング剤を用いて、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持して、そして界面活性剤を使用して、適切な流動性が維持できる。多くの場合、等張化剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含んでいてよい。注射組成物形態の延長された吸収は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンのような吸収を遅延させる物質を含めることによってもたらされうる。
【0193】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に、所望により上記成分の1種または組合せと共に加え、次いで滅菌濾過して製造できる。一般に、基礎分散媒および上記所望の他の成分を含む滅菌ビークルに活性化合物を加えて、分散剤を製造する。滅菌注射液の製造用滅菌粉末の場合、製造法は、活性化合物と任意の所望の追加成分をその予め滅菌濾過した溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥(乾燥凍結)である。
【0194】
単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせられる活性化合物の量は、処置する対象および具体的な投与形態に依存して変化する。単剤形態を製造するために担体物質と組み合わせられる有効成分の量は、一般に、治療効果を奏する組成物の量である。一般に、薬学的に許容される担体と組み合わせて100%としたうち、この量は有効成分約0.01%〜約99%、約0.1%〜約70%、または有効成分約1%〜約30%の範囲である。
【0195】
投与レジメンを調節して、最適な望まれる応答(例えば治療応答)を提供する。例えば、単回ボーラスを投与し、複数回分割用量をある時間にわたって投与し、あるいは治療状況の緊急性によって示されるとおり用量を比例的に減少または増加してよい。投与の簡便さおよび用量均一性のため、単位投与形態に非経腸組成物を製剤することが特に有利である。単位投与形態は、本明細書において使用するとき、処置する対象に対する単位投与に好適な物理的に区別された単位を意味し、各単位は、所望の医薬担体と共に望まれる治療効果を奏するように計算された所定の量の活性化合物を含む。本発明の単位投与形態の規格は、活性化合物の固有の特徴および得られるべき具体的な治療効果、ならびに個人の感受性の処置のためかかる活性化合物を当該技術分野において内在する配合の限界によって指示され、直接依存する。
【0196】
本抗体の投与のための用量範囲は、約0.0001〜100 mg/kg、より一般には0.01〜5 mg/kg宿主体重である。例えば、用量は0.3 mg/kg体重、1 mg/kg体重、3 mg/kg体重、5 mg/kg体重もしくは10 mg/kg体重または1〜10 mg/kgの範囲である。代表的な処置レジメンは、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回または3〜6ヶ月に1回の投与を必要とする。本発明の抗IL12Rβ1抗体の投与レジメンは、投与する抗体について1 mg/kg体重または3 mg/kg体重の静脈内投与を含み、以下の投与スケジュールを用いる:6投与量につき4週間ごと、次いで3ヶ月ごと;3週間ごと;3 mg/kg体重を1回、次いで3週間ごとに1 mg/kg体重。
【0197】
いくつかの方法において、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、その場合投与される各抗体の投与量は、示した範囲内で減少する。抗体は通常、複数回投与する。単剤間の間隔は、1週間、1ヶ月、3ヶ月または1年でありうる。間隔はまた、患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定して示されるとおりに、不規則であってもよい。いくつかの方法において、投与量は、約1〜1000 μg/ml、いくつかの方法において約25〜300 μg/mlの血漿抗体濃度を得られるように調節する。
【0198】
あるいは、徐放製剤として抗体を投与してよく、その場合、必要な投与頻度が減少する。用量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変化する。一般に、ヒト抗体は最も長い半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体そして非ヒト抗体と続く。投与量および投与頻度は、その処置が予防用か治療用かによっても変化する。予防的使用では、比較的低用量が比較的まれな間隔で長期にわたって投与される。残りの人生にわたって処置を受け続ける患者もいる。治療的使用では、相対的に短い間隔での相対的に高用量が、疾患が低減または終了するまで、あるいは患者が疾患の症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、必要とされることがある。その後、該患者は予防的レジメンを投与されうる。
【0199】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与レベルは、具体的な患者、組成物および投与形態について、当該患者に毒性なく望まれる治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るために、変化しうる。選択された用量レベルは、使用する具体的な本発明の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミド、投与経路、投与時間、使用する具体的な化合物の排出速度、処置期間、使用する具体的な組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康および薬歴ならびに医学分野で周知の要因を含む多様な薬物動態因子に依存する。
【0200】
本発明の抗IL12Rβ1抗体の「治療上有効量」は、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない時間の頻度および期間の増加または疾患による苦痛のための障害もしくは能力障害の防止をもたらしうる。
【0201】
本発明の組成物は、当該技術分野において既知の多様な方法の1つ以上を用いて、1つ以上の投与経路によって投与できる。当業者に理解されるとおり、投与経路および/または形態は、望まれる結果に依存して変化する。本発明の抗体の投与経路は、例えば注射または輸液による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。用語「非経腸投与」は、本明細書において使用するとき、通常注射による、経腸および局所投与以外の投与形態を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および幹内(intrastemal)注射および輸液を含むがこれらに限定されない。
【0202】
あるいは、本発明の抗体は、局所、上皮または粘膜投与経路で、例えば鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下または局所投与できる。
【0203】
活性化合物は、該化合物を速やかな放出から保護する担体、例えば制御放出製剤、例えばインプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル送達系で製剤してもよい。生分解性生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用できる。かかる製剤の製造のための多くの方法は、特許されているかまたは当業者に周知である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。.
【0204】
治療用組成物は当該技術分野において既知の医学デバイスで投与してもよい。例えば、一つの態様において、本発明の治療用組成物は、無針皮下注射デバイス、例えば米国特許5,399,163; 5,383,851; 5,312,335; 5,064,413; 4,941,880; 4,790,824または 4,596,556に示されているデバイスで投与してもよい。本発明において有用な周知のインプラントおよびモジュールの例は次のものを含む:制御された速度で医薬を分散させるインプラント可能なマイクロ輸液ポンプを示す米国特許4,487,603;皮膚を介して医薬を投与する治療デバイスを示す米国特許4,486,194;正確な輸液速度で医薬を送達する投薬輸液ポンプを示す米国特許4,447,233;連続的薬物送達のための流量が変化しうるインプラント可能な輸液装置を示す米国特許4,447,224;複数チャンバーのコンパートメントを有する浸透薬物送達系を示す米国特許4,439,196;および浸透薬物送達系を示す米国特許4,475,196。多くの他のかかるインプラント、送達系およびモジュールが当業者に既知である。
【0205】
ある態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボでの適切な分散を確保するために製剤してもよい。例えば、血液脳幹門(BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療化合物がBBBを通過することを(所望により)確保するため、例えばリポソーム中にそれを製剤できる。リポソームを製造する方法については、例えば米国特許4,522,811; 5,374,548; および5,399,331を参照されたい。リポソームは特定の細胞または臓器に選択的に輸送される1個以上の部分を含んでいてよく、したがって標的化された薬剤送達を促進する(例えば、V.V. Ranade, 1989 J. Cline Pharmacol. 29:685参照)。ターゲティング分子の例は、葉酸またはビオチン(例えばLowらの米国特許参照);マンノシド(Umezawa et al., 1988 Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al., 1995 FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al., 1995 Antimicrob. Agents Chernother. 39:180); 界面活性タンパク質Aレセプター(Briscoe et al., 1995 Am. J. Physiol.1233:134);p120(Schreier et al.、1994 J. Biol. Chem. 269:9090)を含み、K. Keinanen; M.L. Laukkanen, 1994 FEBSLett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler, 1994 Imrnunomethods 4:273も参照されたい。
【0206】
本発明の使用および方法
本発明の抗体は、インビトロおよびインビボでの診断および治療有用性を有する。例えば、これらの分子は、培養中の細胞に、例えばインビトロまたはインビボで、あるいは対象に、例えばインビボで、多様な障害を処置、予防または診断するために投与できる。
【0207】
本方法は、IL12Rβ1関連障害および/または自己免疫性および炎症性障害、例えば乾癬または炎症性腸疾患の処置、予防または診断に特に好適である。
【0208】
本発明はまた、治療上有効量の本発明の抗体を含む組成物を投与することによる、ヒト血球細胞におけるIL12またはIL23誘導性シグナル伝達応答を低下または抑制する方法を提供する。
【0209】
本明細書において使用するとき、「IL12Rβ1関連障害」は、以上なIL12および/またはIL23レベルに関連するかもしくはそれによって特徴付けられる状態および/またはヒト血球細胞におけるIL12および/またはIL23誘導性シグナル伝達応答、例えば血漿中で測定したIFNγもしくはIL17の生産またはフローサイトメトリー法もしくはウェスタンブロットで測定したSTAT4タンパク質のリン酸化の程度の低下または抑制によって処置しうる疾患または状態を含む。これには、炎症性状態および自己免疫疾患、例えばリウマチ性関節炎、乾癬および炎症性腸疾患が含まれる。これらはさらに、アレルギーおよびアレルギー性状態、過敏反応および臓器または組織移植片拒絶を含む。
【0210】
例えば本発明の抗体は、同種移植片拒絶反応または異種移植片拒絶を含む、心臓、肺、心肺の組合せ、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植のレシピエントの処置ならびに例えば骨髄移植後の移植片対宿主病および臓器移植関連動脈硬化の予防に使用できる。
【0211】
本発明の抗体は、自己免疫疾患および炎症性状態、特に炎症状態ならびに骨量減少、炎症性疼痛、脊椎炎を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎および腸関連関節炎(enterophathis arthritis)が関与するリウマチ性疾患を含む関節炎(例えば、関節リウマチ、慢性進行性関節炎および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患、過敏性反応(気道過敏症および皮膚過敏症の両方を含む)およびアレルギーのような自己免疫要素を含む病因の炎症性状態の処置、防止、または寛解のために特に有用である。本発明の抗体が使用できる特定の自己免疫疾患は、自己免疫血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆、および特発性血小板減少性紫斑病を含む)、全身性エリテマトーデス、炎症性筋疾患、多発性軟骨炎、強皮症、ウェグナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブンジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病および過敏性腸症候群を含む)、内分泌性眼障害、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁肝硬変、若年性糖尿病(I型真性糖尿病)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎および糸球体腎炎(例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化型腎症を含むネフローゼ症候群を伴うか伴わない)、腫瘍、多発性硬化症、皮膚および角膜の炎症性疾患、筋肉炎、骨インプラントの緩み、アテローム動脈硬化症、糖尿病、および脂質代謝異常のような代謝性疾患を含む。
【0212】
本発明の抗体は、また、喘息、気管支炎、塵肺症、肺気腫および気道の他の閉塞性または炎症性疾患の処置、予防または寛解に有用である。
【0213】
本発明の抗体は、特に骨関節炎、骨粗鬆症および他の炎症性関節炎および加齢による骨喪失を含む一般的な骨喪失、および特に歯周病を含む骨代謝疾患を処置するのに有用である。
【0214】
本発明の抗体は、例えば、上記疾患の処置または防止のために、唯一の有効成分として投与することもできるし、あるいは、例えば他の薬剤(例えば、免疫抑制剤または免疫調節剤または他の抗炎症剤または他の細胞傷害剤または他の抗がん剤)のアジュバントとしてか、またはこうした薬剤と組み合わせて、他の薬剤と共に投与できる。例えば、本発明の抗体は、DMARD、例えば金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、メトトレキサート、D−ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、サイクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、グルココルチコイド;例えば、サイクロスポリンAまたはFK 506であるカルシニューリン阻害剤;例えば、FTY720およびFTY720類似体であるリンパ球再循環調整剤;例えば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573またはTAFA−93であるmTOR阻害剤;例えば、ABT−281、ASM981などの免疫抑制特性を有するアスコマイシン;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン(azathioprene);メトトレキサート;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリン(15-deoxyspergualine)またはその免疫抑制ホモログ、アナログまたは誘導体;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86またはそのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節性化合物、例えば、CTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば非CTLA4蛋白質配列に結合したCTLA4またはその変異体の少なくとも細胞外部分を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えば、ATCC68629として受託されている)またはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、例えばパクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシンまたは5−フルオロウラシル;抗TNF剤、例えば、TNFの対するモノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF−RIまたはTNF−RIIに対する受容体構築物、例えば、エタネルセプト、PEG−TNF−RI;炎症誘発性サイトカインブロッカー、IL−1ブロッカー、例えば、アナキンラまたはIL−1 トラップ(IL-1 trap)、AAL160、IL13ブロッカー、IL4ブロッカー、IL6ブロッカー;ケモカインブロッカー、例えば、プロテアーゼ、例えば、メタロプロテアーゼの阻害剤または活性化剤、抗IL−15抗体、抗IL−6抗体、抗IL17抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗CD20抗体、抗Blysまたは抗BAFFR抗体、アスピリンのようなNSAIDまたは抗感染症剤と組み合わせて使用することができる(リストは、上記に言及した薬剤に限定されない)。
【0215】
上記に従って、本発明はさらに別の局面において次に記載のことを提供する:
治療上有効量のIL12Rβ1アンタゴニスト、例えば本発明の抗体および少なくとも1種の第二の薬剤物質を、例えば、同時または逐次的に共投与することを含んでなる上記に定義される方法であって、ここで第二の薬剤物質は、免疫抑制薬/免疫調節薬、抗炎症化学療法薬または抗感染症薬、例えば上記のものである。
【0216】
または、治療的に有効な量のa)例えば、IL12Rβ1アンタゴニスト、例えば本発明の抗体、およびb)免疫抑制薬/免疫調節薬、抗炎症化学療法薬または抗感染症薬から選択される少なくとも1種の第二の薬剤物質、例えば上記のものを含んでなる、治療的組み合わせ、例えばキット。このキットは、その投与のための指示を含んでいてもよい。
【0217】
本発明の抗体を他の免疫抑制薬/免疫調節薬、抗炎症化学療法薬または抗感染症薬と組み合わせて投与するとき、共投与される組合せ化合物の投与量は、使用される共薬物の種類、例えばそれがDMARD、抗TNF、IL−1ブロッカーまたは他の薬物であるかどうか、使用される特定の薬物、処置される障害その他に応じて当然に異なる。
【0218】
一つの具体的な態様において、本発明の抗体は、抗TNF剤と組み合わせて投与できる。
【0219】
他の態様において、本発明の抗体は、SLEまたはRAに罹患している患者および異常なIL12、IFNγもしくはIL17それぞれの血清レベルまたは血球細胞中のホスホSTAT4の上昇したレベルもしくは頻度を示す患者から選択される患者集団にのみ投与する。他の態様において、本発明の抗体は、抗IL12または抗p40処置に応答する患者群から選択される患者集団にのみ投与する。抗IL12(または抗p40)処置に応答する可能性が高い患者を同定するバイオマーカーは、次のもののいずれかであり得るがそれらに限定されない:上昇した血清IL12レベル、上昇したあるT細胞サブセットレベル、単離された末梢血単球細胞(PBMC)からのIFNγ、TNFα、IL12Rβ2もしくはSTAT4のmRNAレベル、皮膚生検中のホスホSTAT4発現、それぞれPBMC。
【0220】
一つの態様において、本発明の抗体を用いてIL12Rβ1のレベルまたはIL12Rβ1を含む細胞のレベルを検出できる。これは例えば、サンプル(例えばインビトロサンプル)およびコントロールサンプルを抗IL12Rβ1抗体と、該抗体およびIL12Rβ1の複合体の形成が可能な条件下で接触させることによって実施できる。抗体およびIL12Rβ1のあらゆる複合体が検出され、サンプルとコントロールを比較する。例えば当該技術分野において周知の標準的な検出方法、例えばELISAおよびフローサイトメトリーアッセイが、本発明の組成物を用いて実施できる。
【0221】
したがって、一つの局面において、本発明はさらに、サンプル中のIL12Rβ1(例えばヒトIL12Rβ1抗原)の存在を検出するかまたはIL12Rβ1の量を測定する方法であって、該サンプルおよびコントロールサンプルを本発明の抗体またはIL12Rβ1と特異的に結合するその抗原結合領域と、該抗体またはその一部およびIL12Rβ1の複合体の形成が可能な条件下で接触させることを含む方法を提供する。次に複合体の形成を検出し、ここでコントロールサンプルと比較してサンプル間で複合体形成が異なっていることが、サンプル中にIL12Rβ1が存在することの指標である。
【0222】
本発明の組成物(例えば抗体、ヒト抗体および二重特異的分子)および使用のための指示書からなるキットも、本発明の範囲である。キットはさらに、少なくとも1種のさらなる薬剤または1種以上のさらなる本発明の抗体(例えば第一の抗体とは異なる標的抗原のエピトープに結合する相補的活性を有する抗体)を含んでいてもよい。キットは典型的には、キットの内容物の意図する用途を示すラベルを含む。用語ラベルは、キットの上または添付の記載物または記録物、あるいはその他キットの付属物を含む。キットはさらに、患者が上記定義の抗IL12Rβ1抗体処置に応答するグループに属するかを診断するツールを含んでいてもよい。
【0223】
本発明は十分に説明されているが、下記実施例および特許請求の範囲によりさらに説明する。これらは例示であり、さらなる限定を意図しない。
【実施例】
【0224】
実施例
方法
1. スクリーニング アッセイ
本発明の抗体をスクリーニングするためにHuCAL(登録商標)GOLD ファージミドライブラリーを用いた。このライブラリーはHuCAL(登録商標)コンセプト(Knappik, A. et al. 2000, J Mol Biol 296, 57-86)に基づき、繊維状ファージの表面上にFab抗体フラグメントを提示するCysDisplay(商標)技術を用いている(Loehning,C. 2001. WO 01/05950)。下記スクリーニング戦略は、他のタイプのライブラリーおよびスキャフォールド、例えば非免疫グロブリンスキャフォールドのライブラリーに適用でき、それにより本発明の抗体と同様の顕著な特性を有するが異なるスキャフォールドのIL12Rβ1結合物質を同定することができる。
【0225】
1.1 直接被覆組換えヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質でのIL12Rβ1に対する標準固相パニング
抗体選択のため、Maxisorp(登録商標)プレート(F96 Nunc-Immunoplate)に直接被覆したヒト組換えヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質での固相パニング(3回)にHuCAL GOLD(登録商標)抗体−ファージを供した。詳細には、Maxisorp(登録商標)プレートの2つのウェルを300 μlの10μg/ml ヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質で22℃で被覆した。被覆したウェルを350μlのPBSで2回洗浄し、350μlの5% MPBSで2時間、室温(RT)で、マイクロタイタープレートシェーカー上でブロックした。各パニングについて約2×1013 HuCAL GOLD(登録商標)のファージを、最終濃度1%のヒトγグロブリンを含む等量のPBST/5%ミルク粉末(MP)で2時間、RTでブロックした。ブロックの後、被覆したウェルを350μlのPBSで2回洗浄した。300μlの事前にブロックしたHuCAL GOLD(登録商標)ファージを各抗原被覆ウェルに加え、シェーカー上で2時間RTでインキュベートした。350μlのPBS/0.05%ツイーン20 (Sigma, St. Louis, MO, USA)を5回加えて洗浄を行い、次いでPBSで5回洗浄した。プレートからのファージの溶出は、ウェルあたり10mMのTris/HCl pH8中の20mM DTT 300 μlで10分間行った。DTTファージ溶出物を、15 mlのE.coli TG1に加え、これを37℃、2xYT培地中でOD600 0.6〜0.8に増殖させ、ファージ感染のため、振盪なしで37℃で45分間、50mlのプラスチックチューブでインキュベートした。ファージに感染したE.coli TG1の滴定を行ってファージ産出量力価を決定し、次いで5000rpmで10分間遠心分離した。細菌ペレットをそれぞれ500μlの2xYT培地に再懸濁し、2xYT-CG寒天プレートに播種し、30℃でインキュベートした。次いでプレートからコロニーを掻き取り、ファージを回収し、上記の通り増幅した。直接被覆ヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質での固相パニングの2回目3回目は、洗浄方法のストリンジェンシーを上昇させる以外、1回目のプロトコルに従って行った。
【0226】
1.2 抗ヒトFc被覆ヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質を介した捕捉による固相パニング
抗原の被覆条件以外は上記固相パニングと同じ方法である。ここでは、2.5 μg/mlの抗原を10μg/mlのAffiniPureヤギ抗ヒトIgG(Fcガンマフラグメント特異的)で捕捉した。Maxisorp(登録商標)プレート(F96 Nunc-Immunoplate)のパニングあたり2つのウェルを被覆した。最終濃度1%の1% マウスまたはヤギガンマグロブリン(どの捕捉抗体を用いるかに依存する。パニングの1回目および3回目にはヤギ、2回目にはマウス抗ヒトIgGを用いた)および最終濃度1%のヒトガンマグロブリンでファージをさらにブロックした。捕捉抗体を350μlの5% MPBSで、RTで1時間ブロックし、次いでPBSで2時間洗浄した後、事前にブロックしたファージ混合物を捕捉抗原にRTで2時間加えた。後の工程は全て、直接被覆抗原について上に記載のとおりに行った。
【0227】
1.3 Ba/F3親細胞での吸着ステップを含む、Ba/F3/IL12Rβ1発現細胞での全細胞パニング
抗体選択のため、HuCAL GOLD(登録商標)抗体−ファージをBa/F3/IL12Rβ1発現細胞での全細胞パニング(3回)にそれぞれ供した。詳細には、5x106 〜1x107個の細胞を1mlの2%PBS/BSA(=ブロッキングバッファー)で予備的にブロックし、5x106個の細胞をそれぞれパニングごとに用いた。各パニングにつき、約2x1013 HuCAL GOLD(登録商標)ファージを等量のPBS/4% BSAで、4℃で1.5時間ブロックした。事前にブロックしたHuCAL GOLD(登録商標)ファージを事前にブロックした標的細胞に加え、4℃で2時間、回転ホイール上でインキュベートした。1.5mlの2%PBS/BSAで4℃で5分間洗浄を3回行い、次いでPBSで4℃で5分間、回転ホイール上で洗浄した。細胞を2000rpmで4℃で1分間遠心分離した。ファージの溶出は1mlの0.1M グリシン、0.5M NaCl、pH 2.2で、RTで10分間の産生溶出により行った。遠心分離したファージ溶出物に30μlの2M 非緩衝化Trisを加えて溶出物を中和した。次いで、Ba/F3親細胞への吸着を、各パニング溶出物につき1E+7細胞で3回、4℃で20分間、回転ホイール上で行った。2000rpm、4℃で1分間、細胞を遠心分離した。9 mlのE.coli TG1の添加によりE. coli TG-1の感染について最後のSNを用い、これを37℃、2xYT培地中でOD600 0.6〜0.8に増殖させ、ファージ感染のため、振盪なしで水浴中、37℃で45分間、50mlのプラスチックチューブでインキュベートした。感染したファージの滴定を行い、次いで5000rpmで10分間遠心分離を行い、細菌ペレットをそれぞれ500μlの2xYT培地に再懸濁し、2xYT-CG寒天プレートに播種し、30℃でインキュベートした。次いでプレートからコロニーを掻き取り、ファージを回収し、上記の通り増幅した。Ba/F3/IL12Rβ1発現細胞でパニングした細胞全体のパニングの2回目3回目は、洗浄方法のストリンジェンシーを上昇させる以外、1回目のプロトコルに従って行った。
【0228】
1.4 Ba/F3/IL12Rβ1発現細胞および組換えヒトIL12Rβ1/Fcでの鑑別細胞パニング
マウスモノクローナル抗ヒトIL12Rβ1コントロール抗体(R&D Systems)でのFACS分析により細胞表面の発現を確認した。細胞パニング中のBa/F3親細胞での吸着ステップを含む、1〜3回目のパニングについての全細胞パニングについて上に記載の通りの通り、パニングを行った。2回目は、直接被覆組換えヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質でのIL12Rβ1に対する標準固相パニング(rh IL12Rβ1)について上に記載のとおり、直接被覆組換えヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質で行った。
【0229】
1.5 ELISAによるIL12Rβ1特異的Fabの一次スクリーニング(直接または捕捉法)
直接スクリーニング法について、PBS中の10 μg/mlの組換えヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質(R&D Systems)を384ウェルMaxisorp(登録商標)プレートに22℃で被覆した。捕捉法におけるスクリーニングのために、384ウェルMaxisorp(登録商標)プレートのウェルを20μlのPBS中10μg/ml Affini Pure Goat抗ヒトIgG Fcガンマ特異的で4℃で被覆した。被覆後、ウェルをPBSTで5回洗浄した。次いでウェルを5%MPBSTで、RTで2時間ブロックした。並行して15μlのBEL抽出物を15μlの12.5%MPBSTで、22℃でブロックした。直接スクリーニング法につき、ブロックしたMaxisorp(登録商標)プレートをPBSTで5回洗浄した後、 20μl のブロックしたBEL抽出物をウェルに加え、RTで2時間インキュベートした。捕捉法につき、2.5μg/mlの組換えヒトIL12Rβ1/Fc融合タンパク質(R&D Systems)を加え、RTで1時間インキュベートし、次いでブロックしたBEL抽出物と共にインキュベートした。一次Fab抗体の検出のため、以下の二次抗体を適用した:アルカリホスファターゼ(AP)-複合化AffiniPure F(ab’)2 フラグメント、ヤギ抗ヒトおよび抗マウスまたは抗ヒツジIgG(Jackson Immuno Research) を対応するコントロール抗体について加えた。AP-複合体の検出のため、製造業者の指示書に従って蛍光基質AttoPhos (Roche)を用いた。全インキュベーション工程間で、マイクロタイタープレートのウェルを二次抗体での最終インキュベーション工程後にPBSTで3回、TBSTで3回洗浄した。蛍光はTecan GENios Proプレートリーダーで測定した。
【0230】
2. スクリーニングアッセイから同定された抗体の親和性測定
2.1 表面プラズモン共鳴を用いた親和性測定
抗ヒトFc捕捉(Dianova)アッセイを確立した。捕捉Fc融合体をリガンドとして用い、Fabを分析物として用いた。
【0231】
詳細:標準的なEDC-NHS アミンカップリング化学を用いて、4つのフローセル全てについて、CM5チップ(Biacore, Sweden) を5000-6000 RU 抗Fc(Dianova, Goat anti-Human IgG, Fc フラグメント特異的; 10mM 酢酸バッファーpH4.5中80μg/ml)で被覆した。フローセル2をIL12R1−/Fc融合体(20 μlの100nM リガンド、流速5 μl/ml、300-400RU)で捕捉した。次いで分析物を濃度15.6 nM〜500 nM で注入した(20 μl、流速20 μl/分)。実行条件:PBS pH7.2。各サイクルの後、フローセルを10 mM グリシン pH 1.5で再生した。得られたバッファーセンサグラムを手作業で二重参照(バッファー注入)の特異的シグナルから引いた。BIA 評価ソフトウェア3.1 (Biacore)を用いて全センサグラムをプロットし、評価した。当該方法で測定した比とIL12Rβ1に対する親Fab抗体のおよその親和性は、2 〜450 nMの範囲であった。
【0232】
2.2 細菌溶解物中のIL12Rβ1結合Fabの検出のための、電気化学発光(BioVeris)を利用した結合アッセイ
E. coli溶解物(BEL抽出物)中の親和性改善IL12Rβ1特異的抗体フラグメントの検出のため、BioVeris M-384 SERIES(登録商標)Workstationにより結合を分析した。96ウェルポリプロピレンマイクロタイタープレートでBioVerisスクリーニングを実施した。BEL抽出物は、アッセイバッファー(0.5%BSAおよび0.05%ツイーン20を補ったPBS)で希釈した。製造業者の指示書に従い、ビオチニル化IL12Rβ1を常磁性ビーズ(M-280, Dynal)で被覆したストレプトアビジンに結合させた。BEL抽出物およびビオチニル化IL12Rβ1で被覆されたストレプトアビジンビーズをHeidolphシェーカー(1000 rpm)上、室温でインキュベートした。検出のため、ルテニウム複合体(BV-tag(商標))で標識した抗ヒト(Fab)’2(Dianova)を用いた。
【0233】
2.3 溶液平衡滴定(SET)を用いたピコモル親和性の測定
溶液平衡滴定(SET)によるK決定のため、Fabタンパク質のモノマー分画(分析SEC; Superdex75, Amersham Pharmaciaで分析したとき、少なくとも90%モノマー含量)を用いた。適用したFab濃度は予期したKと同様またはそれ以下であった。
【0234】
溶液中の電気化学発光(ECL)を利用した親和性測定およびデータ評価は、溶液中の組換えヒトIL12Rβ1/Fc(出発濃度1 nM)について基本的に既報の通りに行った(Haenel, C., (2005) et al. Anal Biochem 339, 182-184)。常磁性ビーズ(M-280 Streptavidin, Dynal)およびルビジウム含有BV-tag(商標)(BioVeris Europe)標識抗ヒト(Fab)’2(Dianova)と結合したビオチニル化ヒトIL12Rβ1/Fcを加え、30分間インキュベートした。次いで、M-SERIES(登録商標)384アナライザー(BioVeris Europe)を用いたECL検出により結合していないFabの濃度を定量した。
【0235】
Fab分子のK決定のためのデータ評価について、下記フィットモデルを用いた(Abraham et al. J Mol Recognit. 9, 456-461 (1996)に従い改変した):
y=Bmax-(Bmax/(2*cFab)*(x +cFab+KD-sqrt((x+cFab+ KD)*(x+cFab+ KD)-4*x*cFab)))
cFab: 適用したFab濃度
cIgG: 適用したIgG濃度、完全分子(非結合部位)
x: 適用した全可溶性抗原濃度(結合部位)
sqrt: 平方根
上記アッセイ条件を用いて、親和性最適化抗IL12Rβ1 Fabの(モノマー)親和性を溶液中で測定した。
【0236】
2.4 IL12Rβ1−IL12/IL23インビトロ競合結合アッセイ
IL12およびIL23結合阻害アッセイのために、25 μgの組換えヒトIL12および20 μgのIL23(R&D Systems)を250 μlのカルボン酸 M-270 Dynal磁性ビーズ(2 x 109 ビーズ/ml)に直接結合させた(NHS/EDC カップリング)。1:4希釈工程において、ウェルあたり50 μlのFab抗体(20 nMの原液) (Fab濃度: 0.6 pM〜10 nM)を96ウェルプレート(Nunc)で50 μlの40〜100 pM IL12Rβ1/Fc融合体と共に2時間インキュベートした。25 μlのIL12またはIL23被覆ビーズおよび1:500に希釈した、供給者(BioVeris Europe)の指示書に従ってBV-tag(商標)で標識下ストレプトアビジン検出抗体を各ウェルに加え、1.5時間インキュベートした。BioVeris M-384 SERIES(登録商標)Workstation (BioVeris Europe)により検出を行った。4パラメーター論理フィットモデル(XLfit, IDBS)による得られたデータの評価によって、EC50測定を行った。
【0237】
3. 細胞利用機能的アッセイを含む抗体のインビトロ特徴付け
3.1 ヒト血球細胞のIL12依存的IFNγ産生の阻害
Histopaqueグラジエントにより上記の通りドナー血液から末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。X-Vivo 15培地で細胞を2E+6細胞/mlに調節した。50μlの細胞(1E+5)を96ウェルU底プレートに移し、阻害抗体、例えば抗ヒトIL12Rβ1 FabまたはIgG4と共に、シェーカー上、RTで30分間インキュベートした。2μg/mlの抗CD3および抗CD28mAbならびに2ng/mlの組換えヒトサイトカインIL12での刺激を、5%CO2インキュベーター中で、37℃で20時間行った。翌日250g、RTで5分間細胞を遠心分離して、上清を回収し、新しい96ウェルプレートに移し、ELISA測定に用いたか、あるいはアッセイを行うまで-20℃で保存した。
【0238】
IFNγ ELISAのために、上記回収した上清をX-Vivo15培地で希釈し、BenderMed Systems #BMS228HSまたはBiozol/Biolegend #BLD-430105の製造業者のプロトコルに従ってELISAを実施した。IFNγ標準滴定曲線に従って、IFNγ生産を測定した。
【0239】
3.2 ヒト血球細胞のIL23依存的IFNγ生産の阻害
PHA刺激PBMCを用いて別のアッセイ系を試験した。この細胞集団において、レクチン曝露によってT細胞増殖およびしたがって該集団におけるT細胞の割合が増加した。予備実験において、IL−12、IL−23、IL−18およびLPS単独または組合せに対するこれらの細胞の応答性を評価し、最適な刺激条件を確立した。IFNγ分泌に対するIL−12+IL−18およびIL−23+IL−18の効果は、それぞれ約7ng/mlおよび800pg/mlの誘導であった。
【0240】
3.3 全血におけるIL12依存的IFNγ生産の阻害
200μlの抗凝固血液のアリコートをU底96ウェルプレート(Costar, 3799)の個々のウェルに分注し、一番上および一番下の列は、PBSで満たした。化合物を製造し、20倍X-Vivo 15培地(Bio-Whitaker, BE04-418F)中で所望の最終濃度で滴定し、条件ごとに3連ウェルに加えた(10μl)。サイトカインIL−12(R&D Systems, 219-IL)およびIL−18(R&D, B001-5)をそれぞれ製造し、20倍の濃度で組合せ、上に加え(10μl)、全培養体積220μlとした。刺激または阻害化合物なしの3連ウェルを適切に培地のみで満たした。
【0241】
37℃、5%CO2で20〜24時間インキュベーション後、全血を含むプレートを650gで10分間遠心分離し、上から血漿を注意深く採取した。標準曲線の平行範囲内で測定結果を得るため、血漿をPBS/2mM EDTAで1:5に希釈した。誘導がより強い場合には、1:10〜1:20のより高い希釈でのさらなる測定を行った。
【0242】
3.4 FACS分析によって測定したIL12Rβ1発現Ba/F3細胞の特異的細胞結合
それぞれの細胞系(カニクイザルおよびヒトIL12Rβ1で安定にトランスフェクトしたBaF3細胞;カニクイザルIL12Rβ1で安定にトランスフェクトしたHEK EBNAおよびJurkat細胞)の細胞を計測し、PBS/3% FCS/0.02%NaN3(FACSバッファー)で2x 107細胞/mlに調節した。V底96ウェルマイクロタイタープレート(NUNCTM, Wiesbaden, Germany)中でFACS染色を行い、ウェルあたり1x 105細胞をa) 精製Fabフラグメントまたは b) 精製IgG4または c) ポジティブコントロール抗体(マウス抗IL12Rβ1、R&D Systems, Cat#:MAB839)と混合し、FACSバッファーで希釈し、40℃で1時間インキュベートした。次いで細胞を200 μlのFACSバッファー/ウェルで2回洗浄し、FACSバッファーで1:200に希釈したフィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Jackson ImmunoResearch) 100 μl中にとった。4℃で45分間インキュベーションした後、細胞をFACSバッファーで3回洗浄し、100μlのFACSバッファーに再懸濁し、FACSCalibur(商標)(Becton Dickinson)において、細胞のFL2蛍光強度によりIL12Rβ1特異的抗体の細胞表面結合を測定した。
【0243】
4. インビボ/エクスビボ機能的アッセイ
4.1. カニクイザル薬動力学(PD)アッセイ
ヘパリン化血液サンプルを96−Uウェルプレート(190 μl/ウェル)に分注した。組換えヒトIL−12(R&D Systems; 最終100 ng/ml)およびIL−18(MBL; 最終50 ng/ml)を各ウェルに加え、プレートを緩やかに3分間撹拌した。6%CO2、37℃で24時間インキュベーションした後、2000 rpmで10分間プレートを遠心分離した。血漿を回収し、さらなる処理まで-80℃に保った。
【0244】
IL−2、TNFαおよびINFγを評価し、NHP特異的ELISAキット(CT711、CT148およびCT141)で、製造業者(UcyTech Biosciences, Utrecht)により説明されたとおりに行った。
【0245】
PD読み出しのため、各サンプル中に見出されるリンパ球数によりINFγ/mlのpgでの結果を補正して、pg/106リンパ球として最終的に表した。
【0246】
循環IL−2/TNFα/INFγレベルのモニタリングについて、結果をpg サイトカイン/mlで表した。
【0247】
4.2. ラットインビボ適合性アッセイ
ラットに所定量のmAbをを注射し、血液サンプルを様々な間隔で採取して、ピーク血漿濃度および放出速度をモニターし、血漿半減期を決定した。ラット標的への交差反応性が予測されるため、標的関連効果(内部化、ターンオーバー)が結果に影響しないとも予測できる。
【0248】
4.3 CD45RBhi移植炎症性腸疾患マウスモデル
体重減少により特徴付けられる疾患を誘発するため、FACSソートによりBALB/cマウス脾臓からCD4+CD45RBHi Tリンパ球を単離し、10週齢雌SCIDマウスに注射する(2 x 105 細胞/マウス、腹腔内)(0日目)。ネガティブコントロールマウスにはPBSを腹腔内投与し、かかるマウス1匹を、この免疫欠損コロニーにおける感染の可能性をモニターするためのセンチネルとして各ケージに入れる。マウス群は、1、7、14および21日目に、mAb(抗IL12p40クローンC17.8または抗IL12Rβ1抗体またはアイソタイプコントロール)またはPBSの皮下注射による処置を受ける。試験中および終了時点で、各マウスの体重をモニターする。
【0249】
結果
実施例1: アンタゴニスト抗ヒトIL12Rβ1抗体候補の同定
1.1 直接被覆IL12Rβ1/Fcでのファージパニング
Maxisorpで直接被覆したIL12Rβ1/Fcでのパニングは、直接被覆IL12Rβ1/Fcのスクリーニングにおいて、353の一次ヒットをもたらした。配列分析により30個の固有のFab配列が導かれた。1個のFabはHCDR2、LCDR1およびLCDR2中に複数の潜在的Nグリコシル化部位を有し、したがってさらなる分析から除外した。
【0250】
1.2 抗Fc抗体により捕捉されたIL12Rβ1でのパニング
ヤギ抗ヒトIgG Fcガンマ特異的抗体により捕捉されたIL12Rβ1/Fcでのパニングおよび続くIL12Rβ1/Fc捕捉抗原での一次スクリーニングは、75の一次ヒットをもたらした。配列分析により8個の固有のFab配列が示された。
【0251】
1.3 Baf3/IL12Rβ1発現細胞での全細胞パニング
Baf3/IL12Rβ1発現細胞での3回の選択を含む全細胞パニング(WCP)は、Baf3親細胞での吸着工程を含んでいた。直接被覆抗原について112の一次ヒットが同定され、捕捉抗原について122の一次ヒットが同定された。鑑別細胞パニング(DCP)について、1回目のパニングは細胞で行ったが、2回目はMaxisorpに直接被覆されたIL12Rβ1/Fcで行い、次いで3回目には再び細胞で行った。DCPの一次スクリーニングにより、直接被覆抗原について50ヒット、捕捉抗原について51ヒットが示された。合計14個(WCPから11個、DCPから3個)のさらなる固有のFabが同定された。IL12Rβ1/Fc(直接および捕捉)での先のパニングからの4個のFabが細胞パニングにおいて再び同定された。
【0252】
ELISAで合計52個のFabがヒトIL12Rβ1/Fcを認識すると同定された。
【0253】
1.4 ヒトIL4Rα/Fcに対する交差反応性を含むELISAにおけるFabの特徴付け
ELISAでヒトIL12Rβ1/FcおよびヒトIL4Rα/Fcへの結合を試験した。各Fc融合タンパク質1および10 μg/mlをMaxisorp上に直接被覆し、並行してそれぞれ1および10 μg/mlを抗Fcで捕捉した。抗原捕捉法において1個のFabがIL4Rα/Fcと交差反応性を示したが、直接被覆IL12Rα/Fcには示さなかった(データ示さず)。このFabはさらなる分析から除外した。他の全ての試験したFabは、直接被覆および捕捉抗原の両方で、IL12Rβ1/Fcへの特異的結合を示し、ヒトIL4Rα/Fcへの結合は示さなかった。
【0254】
1.5 IL12Rβ1トランスフェクトBaf3細胞でのFabのFACS分析
Baf3細胞上で発現されたヒトIL12Rβ1/Fcとの結合をFACSで分析した。まず、異なるヒトIL12Rβ1の発現レベルを有する、ヒトIL12Rβ1トランスフェクト細胞の2つの細胞集団を検出した。2回のFACSソートにより、均一な細胞集団の検出が導かれた。ELISA陽性Fab52個のうち48個は、ヒトIL12Rβ1トランスフェクトBaF3細胞とのFACS結合を示し、さらなる分析に付した。
【0255】
1.6 Fab抗体を用いたIL12およびIL23結合阻害アッセイ(BioVeris)
FACS陽性FabをIL12およびIL23レセプター結合阻害について分析した。BioVeris(商標)において、26個のFabはIL12/IL12Rβ1結合阻害を示したが、BioVeris(商標)では、14個のFabのみがIL23/IL12Rβ1結合阻害を示した。異なるサイズ、わずかに異なる結合エピトープまたは単純に異なるリガンドレセプター親和性がこの矛盾を引き起こしたと思われる。とりわけ、並行してIL12およびIL23/IL12Rβ1結合阻害が、12個のFabについて検出可能であった。一般に、IL12阻害から得られたEC50値は、IL12阻害と比較して僅かに低かった(表1)。12個のFabの1個は、ELISAにおけるrh IL4Ra/Fc との交差反応的結合のために、除外した。最終的に、52個のFabのうち11個をさらなる評価のために選択した。11個のFabのうち3個は細胞パニングに由来し、8個はIL12Rβ1/Fcでのパニング(直接および捕捉法)に由来した。EC50値は低nM〜数百nMの範囲であった(表1参照)。
【0256】
【表1】

【0257】
1.7 ヒトFc捕捉IL12Rβ1/FcでのBiacore親和性測定
親Fabについて、Biacoreにおいて捕捉IL12Rβ1/Fcで親和性を測定した。11個の予め選択したFabの親和性は、2〜450 nMの範囲であった(表2)。
【0258】
【表2】

【0259】
1.8 11個の予め選択した候補全てのIgG4変換
11個の予め選択したFab候補全てをIgG4形式に変換した。11個のIgG4全てを≦1 mgスケールで発現し、精製した。MOR04580およびMOR04581は低いIgG4発現レベルを示した。
【0260】
1.9 抗IL12Rβ1抗体のアンタゴニスト能を測定するための一次ヒトT細胞
PBMC内のヒト一次T細胞を抗CD3/抗CD28で刺激して、IFNγのIL12依存的誘導を可能にした。選択したIgG4抗体をIL12誘導性IFNγ生産の用量依存的阻害について試験した。ポリクローナルポジティブコントロール抗IL12Rβ1抗体AF839 (R&D Systems)は、用量依存的にIFNγ生産を阻害したが、モノクローナルMab839は明確な阻害を示さなかった。MOR04557、04559および04580は、このアッセイにおいて最も活性であった(表3)。
【0261】
表3は親和性成熟について選択した抗体のデータを要約している。
【表3】

【0262】
1.10 親和性成熟
成熟について選択した7個の抗体を3つの異なるプールにグループ分けした。
プール1: MOR04557; MOR04559 (H-CDR2およびL-CDR3並行最適化)
プール2: MOR04558; MOR04715 (H-CDR2およびL-CDR3並行最適化)
プール3: MOR04561; MOR04580; MOR04601 (H-CDR2およびL-CDR3並行)
【0263】
1.11 ライブラリークローニング、ファージ作成および選択
8個の異なるFab成熟ライブラリーをクローン化し、無作為に選択したクローンの配列決定は、〜100%の多様性を示した。8個のライブラリーからのファージ作成は、部分的にプールして、最終的に成熟パニングのためのインプットとして6個のファージを得た。合計3つの異なる成熟戦略を適用して、最適化された抗体を選択した。ビオチニル化ヒトIL12Rβ1/Fcでの溶液パニングのために、抗原の減少およびIL12Rβ1/Fc競合(オフレート選択)を用いて、選択中のストリンジェンシーを上昇させた。第二の戦略として、IL12Rβ1/Fc捕捉パニングとも呼ばれる半溶液を用いた。ここで、抗原の減少および洗浄の延長を実施した。最後に、細胞数の減少および洗浄の延長を含む全細胞パニングを用いた。各選択方法について、3回の成熟パニングを実施した。
【0264】
1.12 親和性スクリーニング
BioVerisで親和性スクリーニングを行い、パニング全てに由来する合計2790個のシングルクローンを、IL12Rβ1/Fcに対する改善された親和性についてスクリーニングした。全パニングから得られた264個の一次ヒットを二次スクリーニングのために選択し、最良のヒットを配列決定した。主としてH-CDR3の多様性に基づいて、発現及び精製のために、32個の結合物質を選択した。
【0265】
実施例2: 本発明のFabおよびIgGの特徴付け
2.1 SET(BioVeris)における親和性測定
選択した親和性最適化抗IL12Rβ1Fabのモノマー親和性を溶液中で測定した。表4に概要を示す。
【表4】

【0266】
いくつかの最適化Fabは、それらの親Fabと比較して700倍までの親和性の改善を示した。BioVerisで測定したSET親和性は、1〜1200 pM(表4)の範囲であり、多くの親和性は1〜100 pMの範囲であった。
【0267】
2.2 ELISAにおけるIL4Rα/Fcに対する交差反応性
ELISAでは直接被覆IL4Rα/Fcに対する交差反応性は検出されなかった。Fc捕捉ELISAにおいて、ほとんどのFabは特異的であったが、MOR05291およびMOR05292は、IL4Rα/FcおよびCD28/Fcに対する結合を示したが、これら2個の結合物質は、IgG変換に進んでいない(データは示さず)。
【0268】
2.3 ヒトIL12Rβ1トランスフェクトBaf3細胞に対するFACS結合
全最適化FabはヒトIL12Rβ1トランスフェクトBaf3細胞に対する良好なFACS結合を示した(概要データについて表5参照)。
【0269】
2.4 要約FabデータおよびIgG4変換のための選択
IgG4変換および発現のために20個のFabを選択し、そのうち16個のIgG4は成熟から直接、4個のIgG4はMOR04561 誘導体の交差クローニングからであった(表5)。選択されたIgG4は7個の親結合物質中5個をカバーしており、高い多様性を維持するため、3つのプールのそれぞれから少なくとも1個のIgG4が選択された。
【表5】

【0270】
2.5 20個の予め選択した候補のIgG4変換
20個のIgG4を変換し、発現し、精製した。一般に、IgGは良好な発現を示したが(データは示さず)、MOR05286およびMOR05287は、標準PBS pH 7.2へのバッファー交換がタンパク質の沈殿および顕著な喪失をもたらすため、最終バッファーPBS pH 6.5に対して透析しなければならなかった。MOR05286およびMOR05287の等電点がpH 7.2での沈殿の理由であろう。MOR05273は極めて低い発現速度を示したので、さらなる分析から除外した。
【0271】
2.6 最適化IgGの特徴付け
ELISAにおけるIL4Rα/Fcに対するIgGの公差反応性
19個のIgG4全てがELISAでの直接被覆IL4Rα/Fcに対する交差反応性を示さず、MOR05358はIL12Rβ1との結合を示さず、さらなる評価から除外した(データは示さず)。
【0272】
2.7 ヒトおよびカニクイザルIL12Rβ1トランスフェクトBaf3細胞とIgGのFACS結合
ヒトおよびカニクイザルIL12Rβ1トランスフェクトBaf3細胞とのFACS結合について、19個のIgG4を分析したところ、全てカニクイザルIL12Rβ1と比較してヒトでほぼ同一のEC50値を示した。飽和相における最大結合シグナルの違いは、おそらく抗ヒトFab検出抗体が異なるフレームワーク間を区別するためである(表6)。一価親和性とFACS結合EC50値の違いは、レセプター抗原の異なるコンホメーションまたは糖修飾のからもたらされると考えられる。IgGの異なるアビディティー効果も関与しているかもしれない。さらに、カニクイザルIL12Rβ1はヒトHEK293およびヒトJurkat細胞(ヒト、末梢血、白血病、T細胞)でも発現された。MOR05286はヒト細胞で発現されたカニクイザルIL12Rβ1との明らかなFACS結合を示した。MFI(平均蛍光強度)値を表7に示す。
【0273】
【表6】

【0274】
【表7】

【0275】
実施例3: リード候補の選択および特徴付け
3.1 リード候補の配列
最終的に4個のリードIgG4を親和性および異なるバイオアッセイでの活性によって選択した:MOR05271、MOR05286、MOR05278、MOR05281。
【0276】
下記表8は選択した本発明の抗体の対応するCDRの配列番号を記載する。HCDR1、HCDR2およびHCDR3は抗体重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を意味し、LCDR1、LCDR2およびLCDR3は抗体軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を意味する。
【表8】

【0277】
3.2 インビトロでのMOR05286のアゴニスト能
単独または架橋剤の存在下でのMOR5286の潜在的なアゴニスト活性を評価するため、一連の実験を行った。これらのアッセイは、ヒトIgG定常領域に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体のいずれかを用い、T細胞の表面上の活性化マーカーならびにサイトカイン産生および増殖応答をモニターした。
【0278】
アゴニスト抗CD28mAbをポジティブコントロールとして使用した。このmAbは、コントロールサンプルの約10倍を超えるCD25およびCD69蛍光強度の平均上昇ならびにCD69を発現するヒトCD4+ T細胞の>80%で、活性化マーカーの明らかな誘導を示した(データは示さず)。逆に、MOR05286は、IL−12+IL−18刺激にもかかわらず、いずれの一般活性化応答も誘導しなかった。
【0279】
いくつかの実験において、架橋mAb抗IgG4 Aの存在下で、MOR05286 によるヒトPBMCの活性化の後、少量のIFNγ生産が観察された(データは示さず)。しかし、この効果は、IL−12+IL−18のIFNγ誘導カクテルをさらに補った細胞培養において、再現されなかった。これらの条件下で、コントロールIgG4によって観察されるものよりも、予測したとおり、応答がむしろ低かった。さらにまた、IFNγ生産は、IL−12+IL−18で刺激していないかまたは刺激した、ヒト全血またはアカゲザルPBMC培養物において誘発されなかったが、サイトカイン介在性IFNγ生産に対するMOR05286の阻害効果は両方の種において一貫していた。あわせると、これらのデータは、MOR05286がヒトT細胞の活性化マーカーの発現を誘導せず、ヒトおよびNHP T細胞によるサイトカイン生産を促進する能力を有さないことを示している。
【0280】
実施例4: 本発明のIL12Rβ1結合抗体を交差阻止するスクリーニング抗体
4.1 Biacore交差阻止アッセイ
以下は抗体または他の結合剤が、本発明の抗体を交差阻止するかあるいは交差阻止しうるかを決定するための好適なBiacoreアッセイを一般的に記載している。該アッセイは本明細書に記載のIL12Rβ1結合剤のいずれかで使用できると理解される。
【0281】
Biacore装置(例えばBIAcore 3000)は、製造者の推奨に従って操作する。
【0282】
IL12Rβ1細胞外ドメインは、通常用いられるアミンカップリング化学、例えばEDC−NHSアミンカップリングによって例えばCM5 Biacoreチップと結合して、IL12Rβ1被覆表面を作成できる。測定可能な結合のレベルを得るために、典型的には、IL12Rβ1の200〜800共鳴単位を該チップと結合させてよい(この量は、測定可能な結合のレベルを与えると同時に、使用する試験試薬の濃度によって容易に飽和しうる)。
【0283】
IL12Rβ1をBIAcoreチップに結合させる別の方法は、IL12Rβ1の「タグ化」版、例えばN末端またはC末端Hisタグ化IL12Rβ1を用いることである。この形式において、抗His抗体がBiacoreチップに結合し、次いでHisタグ化IL12Rβ1がチップの表面を通過し、抗His抗体に捕捉される。
【0284】
互いに交差阻止する能力について評価される2種の抗体を結合部位の化学量論量、例えば1:1のモル比で、好適なバッファー中で混合して、試験混合物を製造する。使用したバッファーは典型的には、タンパク質化学に通常使用されるバッファー、例えばPBS(136 mM NaCl、2.7 mM KCl、10 mM Na2HPO4、1.76 mM KH2PO4、pH 7.4)である。結合部位基準で濃度を計算すると、抗体の分子量は、当該抗体の標的(すなわちIL12Rβ1)結合部位の数で除した抗体の全分子量と推定される。
【0285】
試験混合物中の各抗体の濃度は、BIAcoreチップに結合しているIL12Rβ1分子における抗体結合部位の飽和を確保するために十分に高いべきである。混合物中の抗体は、同じ分子濃度(結合に基づいて)であり、その濃度は典型的には1.0mM〜1.5mM (結合部位に基づいて)である。
【0286】
それら自身について別々の抗体を含む別々の溶液も製造できる。これらの別々の溶液に使用するバッファーは、同じバッファーであり、かつ試験混合物として使用する際に同じ濃度であるべきである。
【0287】
試験混合物をIL12Rβ1被覆BIAcoreチップを通過させ、その結合を記録する。その後、チップを例えば酸、例えば30mM HClで約1分間処理して、結合した抗体を除去する。チップに結合しているIL12Rβ1分子が損傷を受けないことが重要である。
【0288】
次いで第一抗体のみの溶液をIL12Rβ1被覆表面を通過させ、結合を記録する。その後、例えば上記酸処理によってチップを処理して、チップ結合IL12Rβ1に損傷を与えることなく、全結合抗体を除去する。
【0289】
第二抗体のみの溶液をIL12Rβ1被覆表面を通過させ、結合量を記録する。
【0290】
理論上最大の結合は、各抗体のIL12Rβ1との結合の合計として個別に定義されうる。次いでこれを測定した抗体の混合物の実際の結合と比較する。実際の結合が理論上の結合のものよりも低い場合、2種の抗体は互いに交差阻止している。
【0291】
4.2 Elisa利用交差阻止アッセイ
抗IL12Rβ1抗体または別のIL12Rβ1結合剤の交差阻止は、ELISAアッセイを用いて検出してもよい。
【0292】
ELISAアッセイの一般的な原理は、ELISAプレートのウェルに抗IL12Rβ1抗体を被覆することを含む。過剰量の第二の、潜在的に交差阻止する、抗IL12Rβ1抗体を溶液に(すなわち、ELISAプレートのウェルプレートに結合していない)を加える。次いで限定量のIL12Rβ1−Fcをウェルに加える。
【0293】
ウェルへと被覆されている抗体および溶液中の抗体は、限定数のIL12Rβ1分子の結合について競合する。次いでプレートを洗浄して被覆抗体と結合していないIL12Rβ1分子を除去し、また第二の溶液相抗体および第二の、溶液相抗体とIL12Rβ1−Fc間で形成された複合体も除去する。次いで、適切なIL12Rβ1検出試薬を用いて、結合したIL12Rβ1の量を測定する。被覆抗体を交差阻止しうる溶液中の抗体は、被覆抗体が第二の溶液相抗体の非存在下で結合しうるIL12Rβ1分子の数と比較して、被覆抗体が結合しうるIL12Rβ1分子の数を減少させうる。
【0294】
このアッセイは、Ab-XおよびAb-Yと称する2種の抗体について、以下により詳細にさらに説明する。Ab-Xが不動化抗体と選択された場合、それはELISAプレートのウェルに被覆され、その後好適な阻止溶液でプレートをブロックして、続いて加える試薬の非特異的結合を最小限とする。次いで、ELISAプレートの被覆中、ウェルあたりのAb-Y IL12Rβ1結合部位のモル量が、使用したウェルあたりのAb-X IL12Rβ1結合部位のモル量の少なくとも10倍であるように、過剰量のAb-YをELISAプレートに加える。次いで、加えるウェルあたりのIL12Rβ1−Fcのモル量が各ウェルのコーティングに使用したAb-X IL12Rβ1結合部位のモル量の少なくとも25倍であるように、IL12Rβ1−Fcを加える。好適なインキュベーション期間の後、ELISAプレートを洗浄し、IL12Rβ1検出試薬を加えて、被覆抗IL12Rβ1抗体(この場合Ab-X)によって特異的に結合されたIL12Rβ1の量を測定する。このアッセイのバックグラウンドシグナルは、被覆抗体(この場合Ab-X)、第二溶液相抗体(この場合Ab-Y)、スクレロスチン(scierostin)バッファーのみ(すなわちIL12Rβ1)およびIL12Rβ1検出試薬を含むウェルで得られたシグナルと定義される。このアッセイのポジティブコントロールシグナルは、被覆抗体(この場合Ab-X)、バッファーのみ(すなわち第二溶液相抗体なし)、IL12Rβ1およびIL12Rβ1検出試薬を含むウェルで得られたシグナルと定義される。ELISAアッセイは、ポジティブコントロールシグナルがバックグラウンドシグナルの少なくとも6倍であるように実行する必要がある。
【0295】
被覆抗体として使用する抗体および第二(競合)抗体として使用する抗体の選択によってもたらされるあらゆる影響(例えばIL12Rβ1に対するAb-XおよびAb-Y間で顕著に異なる親和性)を回避するため、交差阻止アッセイは、2つの形式で実行する必要がある:1)形式1は、Ab-XがELISAプレートに被覆される抗体であり、Ab-Yが可溶性である競合抗体である場合であり、そして2)形式2は、Ab-YがELISAプレートに被覆される抗体であり、Ab-Xが溶液中に存在する競合抗体である場合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的IL12Rβ1ポリペプチド(配列番号41)に対する抗体の抗原結合部分を含む単離された抗体またはタンパク質であって、100nM以下のKでIL12Rβ1ポリペプチドに結合し、そしてインビトロ競合結合アッセイで測定したときIL12Rβ1ポリペプチドへのIL12および/またはIL23の結合を阻害することを特徴とする、単離された抗体またはタンパク質。
【請求項2】
さらに約1nM以下のIC50でヒト血球細胞におけるIL12依存的IFN−γ産生を阻害する、請求項1の単離された抗体またはタンパク質。
【請求項3】
完全ヒトまたはヒト化抗体である、請求項1または2の抗体。
【請求項4】
変異されまたは化学的に修飾されたアミノ酸Fc領域を含み、当該変異されまたは化学的に修飾されたアミノ酸Fc領域が、野生型Fc領域と比較したとき、ADCC活性の削除または低減を提供する、請求項1または2の抗体。
【請求項5】
変異されまたは化学的に修飾されたアミノ酸Fc領域がサイレントIgG1 Fc領域である、請求項4の抗体。
【請求項6】
IL12Rβ1ポリペプチド(配列番号41)に対する抗体のペグ化抗原結合部分から本質的になる、請求項1または2のタンパク質。
【請求項7】
配列番号9〜12からなる群から選択される重鎖領域CDR3配列と少なくとも60、70、80、90、95または100%配列同一性を有する重鎖領域CDR3を含む、請求項1〜6のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項8】
配列番号29〜32の少なくとも一つと少なくとも60、70、80、90、95または100%配列同一性を有するVポリペプチド配列を含む、請求項1〜7のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項9】
配列番号25〜28の少なくとも一つと少なくとも60、70、80、90、95または100%配列同一性を有するVポリペプチド配列を含む、請求項1〜8のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項10】
(a)配列番号29の重鎖および配列番号25の軽鎖;
(b)配列番号30の重鎖および配列番号26の軽鎖;
(c)配列番号31の重鎖および配列番号27の軽鎖;または
(d)配列番号32の重鎖および配列番号28の軽鎖
のいずれかを含む、抗体。
【請求項11】
請求項10の少なくとも一つの抗体のVおよびV対応配列と少なくとも60、70、80、90、95または100%配列同一性を有するVおよびV配列を含む、請求項1〜9のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項12】
配列番号1〜4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号5〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号9〜12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号17〜20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;配列番号21〜24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、請求項1の抗体または結合タンパク質。
【請求項13】
請求項10の少なくとも一つの抗体によってIL12Rβ1との結合が交差阻止される、請求項1〜12のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項14】
IL12Rβ1との結合を交差阻止するかまたは請求項10の少なくとも一つの抗体によって交差阻止される、請求項1〜13のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1〜14のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項16】
IL12Rβ1によって介在されるかまたはIFNγ産生の阻害によって処置できる病的障害の処置のための、請求項1〜15のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項17】
自己免疫性および炎症性障害、例えばリウマチ性関節炎、乾癬または炎症性腸疾患の処置のための、請求項1〜16のいずれか1項の抗体または結合タンパク質。
【請求項18】
1種以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と共に、請求項1〜17のいずれか1項の抗体または結合タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項の抗体または結合タンパク質をコードする、単離された核酸。
【請求項20】
請求項19の1個以上の核酸を含む、クローニングまたは発現ベクター。
【請求項21】
配列番号33〜40または少なくとも1個のCDR領域をコードするフラグメントからなる群から選択される少なくとも1個の核酸を含む、請求項20のクローニングまたは発現ベクター。
【請求項22】
請求項20または21のクローニングまたは発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1項の抗体または結合タンパク質の製造方法であって、請求項22の宿主細胞を培養することおよび抗体または機能的タンパク質を単離することを含む方法。
【請求項24】
自己免疫性および炎症性障害、例えばリウマチ性関節炎、乾癬または炎症性腸疾患の処置に有用な医薬の製造における、請求項1〜14のいずれか1項の抗体の使用。

【公表番号】特表2012−524524(P2012−524524A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502617(P2012−502617)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054093
【国際公開番号】WO2010/112458
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】