説明

IL−13およびIL−13レセプター鎖の拮抗による線維症の処置

【課題】IL−13とそのレセプターおよびレセプター成分との相互作用の拮抗による線維症の処置および阻害のための手段を提供すること。
【解決手段】本発明は、IL−13とそのレセプターおよびレセプター成分との相互作用の拮抗による、線維症の処置および阻害に関する。本発明に従って、インターロイキン−13レセプターのIL−13結合鎖をコードするポリヌクレオチドが開示される。本発明のタンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物もまた提供される。本発明はさらに、本発明のタンパク質と特異的に反応する抗体を含む組成物を提供する。この化合物は、IL−13bcタンパク質またはIL−13レセプターへのIL−13の結合を阻害し得る。これらの方法によって同定されたIL−13Rのインヒビター、およびそれを含む薬学的組成物もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1997年4月30日出願の出願番号08/841,751号の一部係属出願(これは、1996年3月1日に出願の出願番号08/609,527号の分割出願である)である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、IL−13とそのレセプターおよびレセプター成分との相互作用の拮抗による、線維症の処置および阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
インターロイキン−13(IL−13)を含む、サイトカインとして公知の種々の調節分子が、同定されている。IL−13の種々のタンパク質形態およびIL−13活性の種々の形態をコードするDNAは、McKenzieら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:3735(1993);Mintyら、Nature362:248(1993);およびAversaら、WO94/04680に記載される。従って、用語「IL−13」は、これらの文献に記載される配列および/または生物学的活性を有するタンパク質を含み、このIL−13は、遺伝子組換え技術によって産生されるか;天然で因子を産生する細胞源から、または他の因子での誘導により精製されるか;化学技術によって合成されるか;あるいは上記の組み合わせである。
【0004】
IL−13は、以下:IgG4とIgEのスイッチングの誘導(ヒトの未熟B細胞(Punnonenら、J.Immunol.152:1094(1994)を含む);正常のヒトB細胞中の生殖細胞系IgE重鎖(ε)の転写およびCD23の発現の誘導(Punnonenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3730(1993));およびCD40Lまたは抗CD40mAbの存在下でのB細胞増殖の誘導(Cookra,Int.Immunol.5:657(1993))を含む数種の生物学的活性の産物に関連するサイトカインである。IL−13の多くの活性は、IL−4の活性と類似しているが、IL−4に対してIL−13は、活性化T細胞またはT細胞クローンにおいて、増殖促進効果を有さない(Zurawskiら、EMBO.J.12:2663(1993))。
【0005】
ほとんどのサイトカインのように、IL−13は、標的細胞の表面上でIL−13レセプター(「IL−13R」)と相互作用することによって、特定の生物学的活性を示す。IL−13RおよびIL−4レセプター(「IL−4R」)は、レセプター活性に必要とされる共通の成分を共有するが、IL−13は、130kDIL−4R(Zurawskiら、前出)を用いてトランスフェクトされる細胞に結合しない。従って、このIL−13Rは、少なくとも1つの他のリガンド結合鎖を含まなければならない。サイトカインレセプターは、一般に2または3の鎖からなる。IL−13に対する、1つのリガンド結合鎖のクローニングが、最近報告されている(Hiltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.93:497−501)。
【0006】
IL−13の任意の他のIL−13結合鎖に対して配列を同定およびクローン化することが所望されており、IL−13タンパク質が、種々の理由から産生され得、レセプターおよびレセプターシグナル伝達に結合するIL−13結合の阻害のための、治療法およびスクリーニングの生成を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明に従って、インターロイキン−13レセプターのIL−13結合鎖をコードするポリヌクレオチドが開示され、これには、マウスレセプターおよびヒトレセプター由来のポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本発明は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号1のヌクレオチド256〜ヌクレオチド1404のヌクレオチド配列;
(b)配列番号3のヌクレオチド103〜ヌクレオチド1242のヌクレオチド配列;
(c)遺伝コードの縮重の結果として、(a)または(b)において特定されるヌクレオチド配列の配列とは異なるヌクレオチド配列;
(d)(a)または(b)において特定されるヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチド配列;
(e)(a)または(b)において特定される配列の種ホモログをコードするヌクレオチド配列;および
(f)(a)または(b)において特定されるヌクレオチド配列の対立遺伝子改変体。
好ましくは、このヌクレオチド配列は、ヒトIL−13レセプターの生物学的活性を有するタンパク質をコードする。このヌクレオチド配列は、発現制御配列に作動可能に連結され得る。好ましい実施形態では、このポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド256〜ヌクレオチド1404のヌクレオチド配列;配列番号1のヌクレオチド319〜1257のヌクレオチド配列;配列番号1のヌクレオチド1324〜ヌクレオチド1404のヌクレオチド配列;配列番号3のヌクレオチド103〜ヌクレオチド1242のヌクレオチド配列;配列番号3のヌクレオチド178〜ヌクレオチド1125のヌクレオチド配列;または、配列番号3のヌクレオチド1189〜ヌクレオチド1242のヌクレオチド配列を含む。
【0008】
本発明はまた、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する:
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ酸配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;および
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物学的活性を有する、(a)〜(f)のフラグメント。他の好ましい実施形態は、配列番号2のアミノ酸1〜331のアミノ酸配列および配列番号2のアミノ酸26〜331のアミノ酸配列をコードする。
【0009】
このポリヌクレオチドで形質転換された、宿主細胞(好ましくは、哺乳動物細胞)もまた提供される。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、IL−13bcタンパク質を産生するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下を包含する:
(a)適切な培養培地において、本発明の宿主細胞の培養物を増殖させる工程;および
(b)この培養物からヒトIL−13bcタンパク質を精製する工程。
これらの方法に従って産生されたタンパク質もまた提供される。
【0011】
本発明はまた、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたIL−13bcタンパク質を提供する:
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ酸配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;および
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物学的活性を有する(a)〜(f)のフラグメント。
好ましくは、このタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列;配列番号2のアミノ酸22〜334の配列;配列番号4の配列;または、配列番号4のアミノ酸26〜341の配列を含む。他の好ましい実施形態では、特性されたアミノ酸配列は、融合タンパク質(IL−13bc由来ではない、さらなるアミノ酸配列を有する)の部分である。好ましい融合タンパク質は、抗体フラグメント(例えば、Fcフラグメント)を含む。特に好ましい実施形態は、配列番号2のアミノ酸1〜331のアミノ酸配列および配列番号2のアミノ酸26〜331のアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明のタンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物もまた提供される。
【0013】
本発明はさらに、本発明のタンパク質と特異的に反応する抗体を含む組成物を提供する。
【0014】
IL−13bcまたはIL−13レセプターに対するIL−13の結合のインヒビターを同定する方法もまた、提供される。これらの方法は、以下:
(a)IL−13bcタンパク質またはそのフラグメントと、IL−13またはそのフラグメントとを結合させる工程であって、この結合が、第1の結合混合物を形成する、工程;
(b)この第1の結合混合物において、タンパク質と、IL−13またはフラグメントとの結合の量を測定する工程;
(c)化合物を、タンパク質およびIL13またはフラグメントと結合させて、第2の結合混合物を形成する工程;
(d)この第2の結合混合物における結合の量を測定する工程;ならびに
(e)この第1の結合混合物における結合の量を、この第2の結合混合物における結合の量と比較する工程;
を包含し、ここで、第2の結合混合物の結合の量において減少が生じた場合に、この化合物は、IL−13bcタンパク質またはIL−13レセプターへのIL−13の結合を阻害し得る。これらの方法によって同定されたIL−13Rのインヒビター、およびそれを含む薬学的組成物もまた、提供される。
【0015】
哺乳動物被験体において、IL−13bcタンパク質またはIL−13レセプターへのIL−13の結合を阻害する方法もまた開示され、この方法は、IL−13bcタンパク質、IL−13bcもしくはIL−13Rインヒビター、またはIL−13bcタンパク質に対する抗体を含む、治療的有効量の組成物を投与する工程を包含する。
【0016】
IL−13活性を増強するための方法もまた提供され、この方法は、IL−13活性を有するタンパク質を、本発明のタンパク質と結合させる工程、およびこのような結合物を、IL−13bc以外のIL−13Rの少なくとも1つの鎖を発現する細胞と接触させる工程を包含する。好ましくは、この接触させる工程は、哺乳動物被験体に、治療的有効量のこのような結合物を投与することによって実施される。
【0017】
哺乳動物被験体におけるIL−13関連状態を処置するためのさらなる方法が提供され、この方法は、IL−13アンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療的有効量の組成物を投与する工程を包含する。哺乳動物被験体における、IL−13とIL−13bcタンパク質との相互作用を阻害する方法についての他の方法が提供され、この方法は、IL−13アンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療的有効量の組成物を投与する工程を包含する。好ましくは、このアンタゴニストは、IL−13bcタンパク質、IL−13Rα1の可溶性形態、IL−13に対する抗体もしくはそのIL−13結合フラグメント、IL−13bcに対する抗体もしくはそのIL−13bc結合フラグメント、IL−13Rα1に対する抗体もしくはそのIL−13Rα1結合フラグメント、IL−4のIL−13R−結合変異体、IL−13とIL−13bcとの相互作用を阻害し得る低分子、およびIL−13とIL−13Rα1との相互作用を阻害し得る低分子、からなる群から選択される。
【0018】
さらに他の実施形態では、本発明は、哺乳動物被験体において組織線維症を処置する方法を提供する。この方法は、タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療的有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで、このタンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む:
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ酸配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;および
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物学的活性を有する、(a)〜(f)のフラグメント。
【0019】
本発明はまた、哺乳動物被験体において、組織線維症の形成を阻害する方法を提供する。この方法は、タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療的有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここでこのタンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む:
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ酸配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;および
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物学的活性を有する(a)〜(f)のフラグメント。
【0020】
本発明の他の実施形態は、哺乳動物被験体において組織線維症を処置または阻害する方法を提供する。この方法は、(a)IL−13アンタゴニストおよびIL−4アンタゴニストからなる群から選択される分子、ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療的有効量の組成物を投与する工程を包含する。
【0021】
線維症を処置または阻害するこのような方法を実施する際に、好ましくは、組織線維症は、以下からなる群から選択される組織に罹患している:肝臓、皮膚表皮、皮膚内皮(endodermis)、筋肉、腱、軟骨、心臓組織、膵臓組織、肺組織、子宮組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、弁、結腸、小腸、胆管、および腸;最も好ましくは、肝臓組織(住血吸虫属に感染した組織を含む)。特定の実施形態では、線維症は、創傷(外科的切開を含む)の治癒から生じる。
【0022】
アンタゴニストを用いて、線維症を処置または阻害するこのような方法を実施する際に、好ましくは、このようなアンタゴニストは、以下からなる群から選択される:IL−13bcタンパク質、IL−13Rα1の可溶性形態、IL−13に対する抗体もしくはそのIL−13結合フラグメント、IL−13bcに対する抗体もしくはそのIL−13bc結合フラグメント、IL−13Rα1に対する抗体もしくはそのIL−13Rα1結合フラグメント、IL−4のIL−13R結合変異体、IL−13とIL−13bcとの相互作用を阻害し得る低分子、およびIL−13とIL−13Rα1との相互作用を阻害し得る低分子。特定の好ましい実施形態では、アンタゴニストは、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むIL−13bcタンパク質である:
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ酸配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;および
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物学的活性を有する、(a)〜(f)のフラグメント。
【0023】
アンタゴニストを使用して、このような方法を実施する他の好ましい方法において、アンタゴニストは、IL−4Rの可溶性形態、IL−4に対する抗体もしくはそのIL−4結合フラグメント、IL−4Rに対する抗体もしくはそのIL−4R結合フラグメント、およびIL−4とIL−4Rとの相互作用を阻害し得る低分子からなる群から選択される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)哺乳動物の被験体の組織線維症を処置する方法であって、該方法は、タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで、該タンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列:
(a)配列番号2のアミノ配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物活性を有する(a)〜(f)のフラグメント、を含む、方法。
(項目2)項目1に記載の方法であって、前記組織線維症が、肝臓、皮膚の内皮、皮膚の表皮、筋肉、腱、軟骨、心臓の組織、膵臓の組織、肺の組織、子宮の組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、大腸、結腸、小腸、胆管および腸からなる群から選択される、組織に影響を与える、方法。
(項目3)前記組織が、肝臓である、項目2に記載の方法。
(項目4)前記線維症が、住血吸虫属の感染の結果である、項目2に記載の方法。
(項目5)前記線維症が、創傷の治癒の結果である、項目1に記載の方法。
(項目6)哺乳動物被験体の組織線維症の形成を阻害する方法であって、該方法は、タンパク質および薬学的に受容可能なキャリアを含む、治療有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで、該タンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列:
(a)配列番号2のアミノ配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;および
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物活性を有する(a)〜(f)のフラグメント、を含む、方法。
(項目7)項目6に記載の方法であって、前記組織線維症が、肝臓、皮膚の内皮、皮膚の表皮、筋肉、腱、軟骨、心臓の組織、膵臓の組織、肺の組織、子宮の組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、大腸、結腸、小腸、胆管および腸からなる群から選択される、組織に影響を与える、方法。
(項目8)前記組織が、肝臓である、項目7に記載の方法。
(項目9)前記線維症が、住血吸虫属の感染の結果である、項目7に記載の方法。
(項目10)前記線維症が、創傷の治癒の結果である、項目6に記載の方法。
(項目11)前記創傷が、外科的切開である、項目10に記載の方法。
(項目12)前記創傷が、外科的切開である、項目5に記載の方法。
(項目13)哺乳動物被験体の組織線維症を処置する方法であって、該方法は、以下:
(a)IL−13アンタゴニストおよびIL−4アンタゴニストからなる群から選択される分子、ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目14)項目13に記載の方法であって、前記アンタゴニストは、以下:IL−13bcタンパク質、IL−13Rα1の可溶性形態、IL−13に対する抗体またはそのIL−13結合フラグメント、IL−13bcに対する抗体またはそのIL−13bc結合フラグメント、IL−13Rα1に対する抗体またはそのIL−13Rα1−結合フラグメント、IL−4のIL−13R−結合変異体、IL−13とIL−13bcとの相互作用を阻害し得る低分子、およびIL−13とIL−13Rα1との相互作用を阻害し得る低分子からなる群から選択される、方法。
(項目15)項目14に記載の方法であって、前記IL−13bcタンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列:
(a)配列番号2のアミノ配列;
(b)ア配列番号2のミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物活性を有する(a)〜(f)のフラグメント、を含むタンパク質である、方法。
(項目16)項目13に記載の方法であって、前記組織線維症が、肝臓、皮膚の内皮、皮膚の表皮、筋肉、腱、軟骨、心臓の組織、膵臓の組織、肺の組織、子宮の組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、大腸、結腸、小腸、胆管および腸からなる群から選択される、組織に影響を与える、方法。
(項目17)前記組織が、肝臓である、項目16に記載の方法。
(項目18)前記線維症が、住血吸虫属の感染の結果である、項目17に記載の方法。
(項目19)前記線維症が、創傷の治癒の結果である、項目13に記載の方法。
(項目20)前記創傷が、外科的切開である、項目19に記載の方法。
(項目21)哺乳動物被験体の組織線維症の形成を阻止する方法であって、該方法は、以下:
(a)IL−13アンタゴニストおよびIL−4アンタゴニストからなる群から選択される分子、ならびに
(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む、治療有効量の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目22)項目21に記載の方法であって、前記アンタゴニストは、以下:IL−13bcタンパク質、IL−13Rα1の可溶性形態、IL−13に対する抗体またはそのIL−13結合フラグメント、IL−13bcに対する抗体またはそのIL−13bc結合フラグメント、IL−13Rα1に対する抗体またはそのIL−13Rα1−結合フラグメント、IL−4のIL−13R−結合変異体、IL−13とIL−13bcとの相互作用を阻害し得る低分子、あるいはIL−13とIL−13Rα1との相互作用を阻害し得る低分子からなる群から選択される、方法。
(項目23)項目22に記載の方法であって、前記IL−13bcタンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列:
(a)配列番号2のアミノ配列;
(b)配列番号2のアミノ酸22〜334のアミノ酸配列;
(c)配列番号2のアミノ酸357〜383のアミノ酸配列;
(d)配列番号4のアミノ配列;
(e)配列番号4のアミノ酸26〜341のアミノ酸配列;
(f)配列番号4のアミノ酸363〜380のアミノ酸配列;
(g)IL−13レセプター結合鎖の生物活性を有する(a)〜(f)のフラグメント、を含むタンパク質である、方法。
(項目24)項目21に記載の方法であって、前記組織線維症が、肝臓、皮膚の内皮、皮膚の表皮、筋肉、腱、軟骨、心臓の組織、膵臓の組織、肺の組織、子宮の組織、神経組織、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、大腸、結腸、小腸、胆管および腸からなる群から選択される、組織に影響を与える、方法。
(項目25)前記組織が、肝臓である、項目24に記載の方法。
(項目26)前記線維症が、住血吸虫属の感染の結果である、項目25に記載の方法。
(項目27)前記線維症が、創傷の治癒の結果である、項目21に記載の方法。
(項目28)前記創傷が、外科的切開である、項目27に記載の方法。
(項目29)項目21に記載の方法であって、前記アンタゴニストが、IL−4Rの可溶性形態、IL−4に対する抗体またはそのIL−4結合フラグメント、IL−4Rに対する抗体またはそのIL−4R結合フラグメント、およびIL−4とIL−4Rとの相互作用を阻害し得る低分子からなる群から選択される、方法。
(項目30)項目13に記載の方法であって、前記アンタゴニストが、IL−4Rの可溶性形態、IL−4に対する抗体またはそのIL−4結合フラグメント、IL−4Rに対する抗体またはそのIL−4R結合フラグメント、およびIL−4とIL−4Rとの相互作用を阻害し得る低分子からなる群から選択される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この図は、上記の実施例4に記載されたように、IL−13bc−Fcへの曝露後に、IL−13、IL−4、IL−11および偽性(mock)トランスフェクトされたCOS細胞の写真を表す。
【図2】住血吸虫症病因におけるIL−4およびIL−13の役割の特徴付け。C57BL/6WTおよびIL−4欠損(4KO)マウスに、Schistosoma mansoniの25ケルカリアを感染させ、次いで、感染の8週間後に屠殺して、肝臓肉芽腫のサイズ(パネルA)、組織好酸球増加(パネルB)、および肝臓線維症(パネルC)を評価した。個々の群のマウスを、方法の節で記載した様に、コントロール−FcまたはsIL−13Rα2−Fcで処理した。示されるデータは、個々のマウスからの測定値であり、そして直線は、各群についての平均を示す。統計的比較を、スチューデントt検定(パネルAおよびB)および共分散分析(パネルC)によって実施した。統計的比較およびそれらのp値を、図中に示す。すべてのデータが、第2の研究において再現された。
【図3】肝臓コラーゲンが、sIL−13Rα2−Fc処理/感染マウスにおいて減少する。肝臓切片を、チャレンジ感染の8週間後に調製した。コントロールFc−処理マウス(パネルAおよびB)およびsIL−13Rα2−Fc処理WT感染マウス(これらは、ほぼ同一の組織卵負荷量(tissue egg burden)を含んだ)を、ピクロシリウスレッド(picrosirius red)(パネルAおよびC)で染色し、そしてコラーゲンに富む領域を強調させるために、偏光を使用して照射した(パネルBおよびD)。複屈折領域は、陽性のコラーゲン染色を示し、そして示される領域は、各肝臓についての代表である(倍率、×40)。sIL−13Rα2−Fc処理マウス由来の肝臓切片は、コントロール動物と比較して、非常にわずかな肉芽腫および門脈管関連コラーゲンを示した。
【図4A】Th1/Th2型サイトカインプロフィールは、sIL−13Rα2−Fc処理によって影響を受けない。C57BL/6WTおよびIL−4欠損(4KO)マウスに、Schistosoma mansoniの25ケルカリアを感染させ、そして個々の群のマウスを、方法の節で記載したように、コントロールFcまたはsIL−13Rα2−Fcで処理した。腸間膜リンパ節細胞を、個々のマウスから単離し、そして単一細胞懸濁液を調製し(24ウェルプレート中で3×106細胞/ウェル)、そして培地単独(四角)、SEA(20μg/ml)(丸)、またはSEAおよび50μg/mlの抗CD4 mAb(三角)で刺激した。すべてのサイトカインを、方法の節において記載したように、刺激の72時間後にELISAによって、培養上清中でアッセイした。記号は、個々のマウスの値を示し、そして棒は、各群内の平均を示す。
【図4B】Th1/Th2型サイトカインプロフィールは、sIL−13Rα2−Fc処理によって影響を受けない。C57BL/6WTおよびIL−4欠損(4KO)マウスに、Schistosoma mansoniの25ケルカリアを感染させ、そして個々の群のマウスを、方法の節で記載したように、コントロールFcまたはsIL−13Rα2−Fcで処理した。腸間膜リンパ節細胞を、個々のマウスから単離し、そして単一細胞懸濁液を調製し(24ウェルプレート中で3×106細胞/ウェル)、そして培地単独(四角)、SEA(20μg/ml)(丸)、またはSEAおよび50μg/mlの抗CD4 mAb(三角)で刺激した。すべてのサイトカインを、方法の節において記載したように、刺激の72時間後にELISAによって、培養上清中でアッセイした。記号は、個々のマウスの値を示し、そして棒は、各群内の平均を示す。
【図4C】Th1/Th2型サイトカインプロフィールは、sIL−13Rα2−Fc処理によって影響を受けない。C57BL/6WTおよびIL−4欠損(4KO)マウスに、Schistosoma mansoniの25ケルカリアを感染させ、そして個々の群のマウスを、方法の節で記載したように、コントロールFcまたはsIL−13Rα2−Fcで処理した。腸間膜リンパ節細胞を、個々のマウスから単離し、そして単一細胞懸濁液を調製し(24ウェルプレート中で3×106細胞/ウェル)、そして培地単独(四角)、SEA(20μg/ml)(丸)、またはSEAおよび50μg/mlの抗CD4 mAb(三角)で刺激した。すべてのサイトカインを、方法の節において記載したように、刺激の72時間後にELISAによって、培養上清中でアッセイした。記号は、個々のマウスの値を示し、そして棒は、各群内の平均を示す。
【図5】Th2型サイトカインmRNA発現は、感染したIL−4欠損マウス(しかし、IL−13遮断に罹患していない)の肝臓において減少する。C57BL/6WTおよびIL−4欠損(4KO)マウスに、Schistosoma mansoniの25ケルカリアを感染させ、そして個々の群のマウスを、方法の節で記載したように、コントロールFcまたはsIL−13Rα2−Fcで処理した。すべての動物を、感染の8週間後に屠殺し、そして方法の節で記載したように、RT−PCR分析のために肝臓標本を調製した。示されるデータは、一群あたり9〜10匹の動物の個々の値であり、そして棒は、各群内の平均を示す。*記号は、データが、スチューデントt検定(p<0.05)によって決定される場合に、WTコントロール−Fc群とは有意に異なることを示す。5匹の非感染WT(黒丸)および5匹の非感染IL−4欠損マウス(白丸)からの平均値を、各サイトカインについてのY軸に示す。すべてのデータが、第2の研究において再現された。
【図6】コラーゲンIおよびコラーゲンIIIのmRNA発現は、感染したsIL−13Rα2−Fc処理マウス(しかし、IL−4欠損に罹患していない)の肝臓において減少する。C57BL/6WTおよびIL−4欠損(4KO)マウスに、Schistosoma mansoniの25ケルカリアを感染させ、そして個々の群のマウスを、方法の節で記載したように、コントロールFcまたはsIL−13Rα2−Fcで処理した。すべての動物を、感染の8週間後に屠殺し、そして方法の節で記載したように、RT−PCR分析のために肝臓標本を調製した。示されるデータは、一群あたり9〜10匹の動物の個々の値であり、そして棒は、各群内の平均を示す。*記号は、データが、スチューデントt検定(p<0.05)によって決定される場合に、WTおよびIL−4欠損コントロール−Fc群とは有意に異なることを示す。5匹の非感染WT(黒丸)および5匹の非感染IL−4欠損マウス(白丸)からの平均値を、各サイトカインについてのY軸に示す。これらデータは、個々のにおいて再現された。
【図7】IL−13は、マウス3T3線維芽細胞においてI型コラーゲン合成を誘導する。細胞を、培地(レーン1)、rIL−4(1000U/ml)(レーン2)、またはrIL−13(20ng/ml)(レーン3および4(それぞれ、R&D SystemsおよびGenetics Instituteから))で48時間刺激した。還元条件下で、6%SDS−PAGEにおいて全細胞溶解産物を分離し、ニトロセルロースメンブレンに転写し、そしてウサギIgG抗マウスI型コラーゲンでプロービングした。上部の二重バンドおよび下部のバンド(矢印)は、レーン5において分離された精製ラットI型コラーゲンに対応する(パネルA)。下の図(パネルB)は、濃度計の値(任意のピクセル単位)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本願の発明者らは、IL−13RのIL−13結合鎖(以後「IL−13bc」)をコードするポリヌクレオチド(マウスおよびヒトのIL−13bcをコードするポリヌクレオチドを含むが、限定はされない)を初めて同定および提供した。
【0026】
配列番号1は、マウスIL−13bcをコードするcDNAのヌクレオチド配列を提供する。配列番号2は、推定シグナル配列アミノ酸1〜21を含む、レセプター鎖の推定アミノ酸配列を提供する。その成熟マウスIL−13bcは、配列番号2のアミノ酸22〜383の配列を有すると考えられる。その成熟マウスレセプター鎖は、少なくとも3つの異なるドメイン:細胞外ドメイン(配列番号2のおよそアミノ酸22〜334を含む)、膜貫通ドメイン(配列番号2のおよそアミノ酸335〜356を含む)および細胞内ドメイン(配列番号2のおよそアミノ酸357〜383を含む)を有する。
【0027】
配列番号3は、ヒトIL−13bcをコードするcDNAのヌクレオチド配列を提供する。配列番号4は、推定シグナル配列アミノ酸1〜25を含む、レセプター鎖の推定アミノ酸配列を提供する。その成熟ヒトIL−13bcは、配列番号4のアミノ酸26〜380の配列を有すると考えられる。その成熟ヒトレセプター鎖は、少なくとも3つの異なるドメイン:細胞外ドメイン(配列番号4のおよそアミノ酸26〜341を含む)、膜貫通ドメイン(配列番号4のおよそアミノ酸342〜362を含む)および細胞内ドメイン(配列番号4のおよそアミノ酸363〜380を含む)を有する。
【0028】
ヒトIL−13bc配列の最初の81アミノ酸は、「yg99f10.r1 Homo sapiens cDNA clone 41648 5」として同定されかつデータベースアクセス番号R52795.gb_est2を割り当てられた発現配列タグ(EST)の翻訳配列と同一である。このEST配列中には、コードされたタンパク質を当業者がサイトカインレセプターとして同定することをもたらす相同性または配列モチーフは存在しない。このデータベースエントリーの対応するcDNAクローンは、I.M.A.G.E.Consortiumから公に利用可能である。本願の優先日後に、このようなクローンは、本出願人により順序付けられそして配列決定された。このようなクローンの配列は、本明細書中の配列番号3として本出願人により以前に報告された配列であることが決定された。
【0029】
IL−13bcタンパク質の可溶性形態もまた、産生され得る。このような可溶性形態は、配列番号2のアミノ酸1〜334または22〜334を含むタンパク質、あるいは配列番号4のアミノ酸1〜341または26〜341を含むタンパク質が挙げられるが、限定はされない。IL−13bcの可溶性形態は、好ましくは室温にて、水溶液中で可溶性であることによりさらに特徴付けられる。細胞内ドメインまたはその一部のみを含むIL−13bcタンパク質もまた、産生され得る。全長より短いIL−13bcの任意の形態が、本発明内に包含され、そして本明細書中で全長および成熟形態とまとめて「IL−13bc」または「IL−13bcタンパク質」と呼ばれる。全長より短いIL−13bcタンパク質は、全長IL−13bcタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号1または配列番号3)の対応するフラグメントを発現することにより、産生され得る。これらの対応するポリヌクレオチドフラグメントもまた、本発明の一部である。上記のような改変型ポリヌクレオチドは、標準的分子生物学技術(適切な所望の欠失変異体の構築、部位特異的変異誘発法、または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応を含む)によって、作製され得る。
【0030】
本発明の目的のために、タンパク質は、以下の特徴のうちの1つ以上を保有する場合に、「IL−13レセプター結合鎖の生物学的活性」を有する:(1)IL−13またはそのフラグメント(好ましくは、その生物学的に活性なフラグメント)に結合する能力;および/あるいは(2)IL−13Rの第2の非IL−13結合鎖と相互作用して、IL−13がIL−13Rに結合するというシグナル特徴を生成する能力。好ましくは、そのタンパク質により保有される生物学的活性は、IL−13またはそのフラグメントに結合する能力であり、好ましくは、KDが、約0.1〜約100nMである。特定のタンパク質またはペプチドがこのような活性を有するか否かを決定するための方法としては、本明細書中にて提供される実施例に記載される方法が挙げられるが、限定はされない。
【0031】
IL−13bcまたはその活性フラグメント(IL−13bcタンパク質)は、キャリア分子(例えば、免疫グロブリン)に融合され得る。例えば、IL−13bcの可溶性形態が、「リンカー」配列を介して免疫グロブリンのFc部分に融合され得る。他の融合タンパク質(例えば、GST、Lex−AまたはMBPとの融合タンパク質)もまた、使用され得る。
【0032】
本発明はまた、IL−13bcタンパク質をまたコードする、配列番号1または配列番号3に示されるようなヌクレオチド配列の対立遺伝子改変体(すなわち、配列番号1または配列番号3の単離されたポリヌクレオチドの天然に存在する代替形態)(好ましくはIL−13bcの生物学的活性を有するタンパク質)を包含する。また本発明に含まれるのは、配列番号1または配列番号3に示されるヌクレオチド配列に、非常にストリンジェントな条件(例えば、65℃で0.1×SSC)下でハイブリダイズする単離されたポリヌクレオチドである。遺伝コードの縮重によって、IL−13bcタンパク質をコードするが配列番号1または配列番号3に示されるヌクレオチド配列とは異なる、単離されたポリヌクレオチドもまた、本発明により包含される。点変異または誘導された改変によって生じる、配列番号1または配列番号3に示されるヌクレオチド配列におけるバリエーションもまた、本発明に含まれる。
【0033】
本発明はまた、他の動物種(特に、他の哺乳動物種)由来のマウスIL−13bcおよびヒトIL−13bcのホモログをコードするポリヌクレオチドを提供する。種ホモログは、本明細書中に開示されるマウス配列またはヒト配列からプローブまたはプライマーを作製すること、および適切な種由来のライブラリー(例えば、関連する種のPBMC、胸腺または精巣から構築されたライブラリー)をスクリーニングすることによって、同定および単離され得る。
【0034】
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、IL−13bcタンパク質を組換え産生するために、発現制御配列(例えば、Kaufmanら、Nucleic Acids Res.19:4485〜4490(1991)に開示されるMT2発現ベクターまたはpED発現ベクター)に、作動可能に連結され得る。多くの適切な発現制御配列が、当該分野で公知である。組換えタンパク質を発現させる一般的方法もまた公知であり、そしてR.Kaufman、Methods in Enzymology 185、537〜566(1990)に例示される。本明細書中にて定義される場合、「作動可能に連結された」とは、そのIL−13bcタンパク質が、連結されたポリヌクレオチド/発現制御配列で形質転換(トランスフェクト)された宿主細胞により発現されるような様式で、本発明の単離されたポリヌクレオチドとその発現制御配列との間に共有結合が形成されるように酵素によってかまたは化学的に連結されていることを意味する。
【0035】
多数の型の細胞が、IL−13bcタンパク質の発現のために適切な宿主細胞として作用し得る。機能的なIL−13bcタンパク質を発現し得る任意の細胞型が、使用され得る。適切な哺乳動物宿主細胞としては、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換された霊長類細胞株、正常な二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養物に由来する細胞株、初代移植片のインビトロ培養物に由来する細胞株、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK細胞、HL−60細胞、U−937細胞、HaK細胞、Rat2細胞、BaF3細胞、32D細胞、FDCP−1細胞、PC12細胞、M1x細胞またはC2C12細胞。
【0036】
IL−13bcタンパク質はまた、本発明の単離されたポリヌクレオチドを、1つ以上の昆虫発現ベクター中の適切な制御配列に作動可能に連結すること、および昆虫発現系を使用することによって、産生され得る。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系についての材料および方法は、例えば、Invitrogen、San Diego、California、U.S.A.からのキット(MaxBac(登録商標)キット)にて市販されており、そしてそのような方法は、SummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)(本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、当該分野で周知である。IL−13bcタンパク質の可溶性形態はまた、上記のような適切な単離されたポリヌクレオチドを使用して、昆虫細胞において産生され得る。
【0037】
あるいは、そのIL−13bcタンパク質は、下等真核生物(例えば、酵母)または原核生物(例えば、細菌)において産生され得る。適切な酵母株としては、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces株、Candida、または異種タンパク質を発現し得る任意の酵母株が、挙げられる。適切な細菌株としては、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、または異種タンパク質を発現し得る任意の細菌株が、挙げられる。
【0038】
細菌における発現は、その組換えタンパク質を組み込んだ封入体の形成を生じ得る。従って、その組換えタンパク質の再折り畳みが、活性な物質またはより活性な物質を産生するためには必要であり得る。正確に折り畳まれた異種タンパク質を細菌の封入体から得るためのいくつかの方法が、当該分野で公知である。これらの方法は、一般には、その封入体からタンパク質を可溶化すること、次いでそのタンパク質を、カオトロピック剤を使用して完全に変性することを包含する。システイン残基がそのタンパク質の一次アミノ酸配列中に存在する場合に、ジスルフィド結合の正確な形成が可能である環境(酸化還元系)においてその再折り畳みを達成することが、しばしば必要である。再折り畳みの一般的方法は、Kohno、Meth.Enzym.185:187〜195(1990)に開示されている。EP 0433225および同時係属中の米国特許出願第08/163,877号は、他の適切な方法を記載する。
【0039】
本発明のIL−13bcタンパク質はまた、IL−13bcタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む体細胞または生殖細胞により特徴付けられるトランスジェニック動物の生成物として(例えば、トランスジェニックウシ、トランスジェニックヤギ、トランスジェニックブタ、またはトランスジェニックヒツジの、乳の成分として)、発現され得る。
【0040】
本発明のIL−13bcタンパク質は、所望のタンパク質を発現するために必要な培養条件下で、培養形質転換宿主細胞を増殖させることによって、調製され得る。次いで、生じた発現したタンパク質は、培養培地または細胞抽出物から精製され得る。本発明のIL−13bcタンパク質の可溶性形態は、馴化培地から精製され得る。本発明のIL−13bcタンパク質の膜結合形態は、その発現タンパク質から総膜画分を調製すること、および非イオン性界面活性剤(例えば、Triton X−100)でその膜を抽出することによって、精製され得る。
【0041】
IL−13bcタンパク質は、当業者に公知の方法を使用して精製され得る。例えば、本発明のIL−13bcタンパク質は、市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を使用して、精製され得る。濃縮工程の後、その濃縮物が、ゲル濾過マトリックスのような精製マトリックスにアプライされ得る。あるいは、アニオン交換樹脂(例えば、垂れ下がったジエチルアミノエチル(DEAE)基またはポリエチレンイミン(PEI)基を有する、マトリックスまたは基質)が使用され得る。そのマトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製にて一般的に使用される他の型であり得る。あるいは、カチオン交換工程が、使用され得る。適切なカチオン交換剤としては、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む、種々の不溶性マトリックスが挙げられる。スルホプロピル基が、好ましい(例えば、S−Sepharose(登録商標)カラム)。培養上清からのIL−13bcタンパク質の精製はまた、コンカナバリンA−アガロース、heparin−toyopearl(登録商標)またはGibacrom blue 3GA Sepharose(登録商標)のような親和性樹脂に対する1つ以上のカラム工程;あるいはフェニルエーテル、ブチルエーテル、またはプロピルエーテルのような樹脂を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィー;あるいは免疫アフィニティークロマトグラフィーを含み得る。最後に、疎水性RP−HPLC媒体(例えば、垂れ下がったメチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲル)を使用する1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)が、そのIL−13bcタンパク質をさらに精製するために使用され得る。IL−13またはそのフラグメントを含むアフィニティーカラム、あるいはIL−13bcタンパク質に対する抗体を含むアフィニティーカラムもまた、公知の方法に従う精製にて使用され得る。上記の精製工程のいくつかまたはすべてがまた、種々の組み合わせでかまたは他の公知の方法とともに、実質的に精製された単離された組換えタンパク質を提供するために使用され得る。好ましくは、その単離されたIL−13bcタンパク質は、それが他の哺乳動物タンパク質を実質的に含まないように、精製されている。
【0042】
本発明のIL−13bcタンパク質はまた、IL−13bcまたはIL−13Rに結合し得る薬剤、あるいはIL−13またはIL−13bc(細胞外ドメインまたは細胞内ドメインのいずれか)へのIL−13の結合を妨害し、従って、正常な結合およびサイトカイン作用のインヒビターとして作用し得る薬剤(「IL−13Rインヒビター」)についてスクリーニングするために使用され得る。所望の結合タンパク質(固定されているかまたはされていない)を使用する結合アッセイが、当該分野で周知であり、そして本発明のIL−13bcタンパク質を使用してこの目的のために使用され得る。精製細胞に基づくスクリーニングアッセイまたはタンパク質に基づく(無細胞)スクリーニングアッセイが、このような薬剤を同定するために使用され得る。例えば、IL−13bcタンパク質は、キャリア上に精製形態で固定され得、そして精製IL−13bcタンパク質への結合が、潜在的阻害剤の存在下および不在下で測定され得る。適切な結合アッセイは、あるいは本発明のIL−13bcの可溶性形態を使用し得る。インヒビターがスクリーニングされ得る系の別の例が、下記実施例2にて記載される。
【0043】
このようなスクリーニングアッセイにおいて、第1の結合混合物が、IL−13またはそのフラグメントをIL−13タンパク質と混合することにより形成され、そしてその第1の結合混合物における結合の量(BO)が測定される。第2の結合混合物もまた、IL−13またはそのフラグメント、IL−13bcタンパク質、およびスクリーニングされる化合物または薬剤を混合することにより形成され、そしてその第2の結合混合物における結合の量(B)が測定される。第1の結合混合物における結合の量と第2の結合混合物における結合の量が、例えば、比B/BOの算出を行うことによって、比較される。化合物または薬剤は、第1の結合混合物と比較した場合に第2の結合混合物において結合の減少が観察された場合に、結合を阻害し得ると見なされる。必要に応じて、IL−13Rの第2鎖が、その結合混合物の1つまたは両方に添加され得る。結合混合物の処方および最適化は、当業者のレベル内であり、このような結合混合物はまた、結合を増大または最適化するために必要な緩衝液または塩を含み得、そしてさらなるコントロールアッセイが、本発明のスクリーニングアッセイに含まれ得る。
【0044】
IL−13またはそのフラグメントへのIL−13bcタンパク質の結合活性を、いくらかの程度、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは約50%以上減少させることが見出される化合物は、このように同定され得、次いで他の結合アッセイおよびインビボアッセイにおいて二次スクリーニングされ得る。これらの手段によって、治療剤として適切であり得るIL−13bc結合についての阻害活性を有する化合物が、同定され得る。
【0045】
IL−13bcタンパク質、およびそれをコードするポリヌクレオチドもまた、IL−13bc、IL−13R、IL−13、あるいはIL−13bcを発現する細胞、IL−13Rを発現する細胞、またはIL−13を発現する細胞の発現または存在を検出するための診断剤として使用され得る。そのタンパク質またはポリヌクレオチドは、これらの型の物質を使用する診断アッセイについての標準的手順において、このような目的のために使用され得る。適切な方法が、当業者に周知である。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「IL−13R」とは、「IL−13Rα1」または「NR4」として公知であるIL−13bcおよび/または第2のIL−13レセプター鎖をいう(マウスレセプター鎖、Hiltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1996、93:497〜501;ヒトレセプター鎖、Amanら、J.Biol.Chem.1996、271:29265〜70、およびGauchatら、Eur.J.Immunol.1997、27:971〜8を参照のこと)。
【0047】
IL−13bcは、IL−13の公知の生物学的活性のモジュレーターとして作用する。結果として、IL−13bcタンパク質(特に、可溶性IL−13bcタンパク質)、IL−13Rインヒビター(すなわち、IL−13RとのIL−13の相互作用のアンタゴニスト(例えば、IL−13R(特に、IL−13bc、またはIL−13Rα1を含む)に対する抗体およびそのフラグメント、IL−13に対する抗体およびそのフラグメント、可溶性IL−13Rα1タンパク質、ならびにIL−13RとのIL−13の相互作用(IL−13bcおよび/またはIL−13Rα1との相互作用を含む)の低分子インヒビターまたは他のインヒビター)が、IL−13が関係する種々の医学的状態またはIL−13の活性(またはその欠失)によりもたらされる種々の医学的状態(まとめて、「IL−13関連状態」)の処置または調節において有用であり得る。IL−13Rに結合するIL−4の変異形態もまた、IL−13アンタゴニストとして使用され得る(例えば、Shanafeltら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1998、95:9454〜8;Aversaら、J.Exp.Med.1993、178:2213〜8;ならびにGrunewaldら、J.Immunol.1998、160:4004〜9に開示されるものを参照のこと)。
【0048】
IL−13関連状態としては、Ig媒介性の状態および疾患(特に、IgE媒介性状態(アトピー、アレルギー状態、喘息、免疫複合体病(例えば、狼瘡、ネフローゼ症候群、腎炎、糸球体腎炎、甲状腺炎およびグレーブス病)を含むが、限定はされない);肺の炎症状態;免疫欠乏(特に、造血前駆体細胞における欠乏、またはそれに関する障害;癌および他の疾患が挙げられるが、限定はされない。このような病理学的状態は、疾患、放射線への曝露または薬物から生じ得、そして例えば、白血球減少症、細菌感染およびウイルス感染、貧血、B細胞欠乏またはT細胞欠乏(例えば、骨髄移植後の免疫細胞欠乏または造血細胞欠乏)を含む。IL−13はマクロファージ活性化を阻害するので、IL−13bcはまた、マクロファージ活性を増強するため(すなわち、ワクチン接種、ミコバクテリア感染または細胞内生物感染または寄生生物感染の処置において)有用であり得る。
【0049】
IL−13bcタンパク質をまた用いて、IL−13の効果をインビトロおよびインビボで強化し得る。例えば、IL−13bcタンパク質は、IL−13活性を有するタンパク質(好ましくは、IL−13)と合わされ得、そして得られる組み合わせを、IL−13bc以外の、IL−13Rの少なくとも1つの鎖(好ましくは、IL−13bc以外のIL−13Rの全ての鎖(例えば、IL−13Rα1))を発現する細胞と接触させ得る。好ましくは、接触工程は、治療有効量のこのような組み合わせを哺乳動物被験体にインビボで投与することによって行われる。IL−13タンパク質とIL−13bcタンパク質との予め樹立した会合は、適切なシグナル伝達に必要な完全なIL−13/IL−13R複合体の形成を助ける。例えば、Economidesら、Science 270:1351(1995)に記載の方法を参照のこと。
【0050】
細胞から精製されたかまたは組換え産生された、IL−13bcタンパク質およびIL−13Rインヒビターは、薬学的に受容可能なキャリアと合わされた場合、薬学的組成物として用いられ得る。このような組成物は、IL−13bcまたはインヒビターおよびキャリアに加えて、当該分野で周知の種々の希釈剤、フィラー、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、および他の材料を含み得る。用語「薬学的に受容可能な」とは、活性成分の生物学的活性を有効性を妨害しない非中毒性の物質を意味する。キャリアの特徴は、投与経路に依存する。
【0051】
本発明の薬学的組成物はまた、サイトカイン、リンホカインまたは他の造血因子(例えば、M−CSF、GM−CSF、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4...IL−24、1L−25)、G−CSF、幹細胞因子およびエリスロポエチン)を含み得る。薬学的組成物はまた、抗サイトカイン抗体を含み得る。薬学的組成物はさらに、他の抗炎症剤を含み得る。このようなさらなる因子および/または薬剤は、薬学的組成物中に含まれて、単離されたIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターとの相乗効果を生じ得るか、単離されたIL−13bcまたはIL−13bcインヒビターによって引き起こされる副作用を最小にし得る。逆に、単離されたIL−13bcまたはIL−13bcインヒビターは、特定のサイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓崩壊因子もしくは抗血栓因子、または抗炎症剤の処方物中に含まれて、このサイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓崩壊因子もしくは抗血栓因子、または抗炎症剤の副作用を最小にし得る。
【0052】
本発明の薬学的組成物は、単離されたIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターが、他の薬学的に受容可能なキャリアに加えて、水溶液中でミセル、不溶性単層、脂質結晶またはラメラ層のような凝集した形態で両親媒性薬剤(例えば、脂質存在する)と合わされている、リポソームの形態であり得る。リポソーム処方のために適切な脂質としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、ホスホリピド、サポニン、胆汁酸など。このようなリポソーム処方物の調製は、例えば、米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号;および米国特許第4,737,323号(これらは全て本明細書中に参考として援用される)に開示されるように、当該分野のレベルの範囲内である。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」とは、患者にとって意味のある利益(例えば、このような状態の症状の改善、治癒、または治癒速度の上昇)を示すに充分である、薬学的組成物または方法の各活性成分の総量を意味する。単独で投与される個々の活性な成分に適用される場合、この用語は、その成分単独をいう。組み合わせに適用される場合、この用語は、組み合わせで投与されるか、逐次投与されるかまたは同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす、活性成分の合わせた量をいう。
【0054】
本発明の処置または使用の方法を実施する際に、治療有効量の単離されたIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターは、哺乳動物に投与される。単離されたIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターは、単独で、または他の治療(例えば、サイトカイン、リンホカインまたは他の造血因子を用いる処置)との組み合わせのいずれかで、本発明の方法に従って投与され得る。1以上のサイトカイン、リンホカインまたは他の造血因子と同時投与される場合、IL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターは、サイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓崩壊因子もしくは抗血栓因子と同時に、または逐次にのいずれかで投与され得る。逐次で投与された場合、主治医は、サイトカイン、リンホカイン、他の造血因子、血栓崩壊または抗血栓因子と組み合わせてIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを投与する適切な順序を決定する。
【0055】
本発明の薬学的組成物において用いられるかまたは本発明の方法を実施するために用いられるIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターの投与は、種々の従来の方法で、例えば、経口摂取、吸入、または皮膚注射、皮下注射もしくは静脈内注射において実施され得る。患者に対する静脈内投与が好ましい。
【0056】
治療有効量のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターが経口投与される場合、IL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターは、錠剤、カプセル剤、散剤、溶液またはエリキシル剤の形態である。錠剤形態で投与される場合、本発明の薬学的組成物はさらに、固体キャリア(例えば、ゼラチンまたはアジュバント)を含み得る。錠剤、カプセル剤および散剤は、約5%〜95%のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを含み、好ましくは、約25%〜90%のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを含む。液体形態で投与される場合、液体キャリア(例えば、水、石油、動物もしくは植物起源の油(例えば、ラッカセイ油、鉱油、ダイズ油もしくはゴマ油)、または合成油)が添加され得る。液体形態の薬学的組成物はさらに、生理学的食塩水溶液、デキストロースもしくは他の糖の溶液、またはグリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール)を含み得る。液体形態で投与される場合、薬学的組成物は、約0.5重量%〜90重量%のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを含み、好ましくは約1%〜50%のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを含む。
【0057】
治療有効量のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターが静脈内注射、皮膚注射または皮下注射によって投与される場合、IL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターは、発熱物質を含まない、非経口的に受容可能な水溶液の形態である。pH、張度(isotonicity)、安定性などに関する制限(due)を有するこのような非経口的に受容可能なタンパク質溶液の調製は、当該分野の技術範囲内である。静脈内注射、皮膚注射または皮下注射のために好ましい薬学的組成物は、IL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターに加えて、等張性ビヒクル(例えば塩化ナトリウム注射剤(Sodium Chloride Injection)、リンゲル注射剤(Ringer’s Injection)、デキストロース注射剤(Dextrose Injection)、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射剤(Dextrose and Sodium Chloride Injection)、乳酸加リンゲル注射剤(Lactated Ringer’s Injection)、または当該分野で公知のような他のビヒクル)を含むべきである。本発明の薬学的組成物はまた、安定剤、保存剤、緩衝液、抗酸化剤または当業者に公知の他の添加剤を含み得る。
【0058】
本発明の薬学的組成物中のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターの量は、処置されるべき状態の性質および重篤度、ならびに患者が受けた以前の処置の性質に依存する。最終的に、主治医は、各個体患者を処置する、IL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターの量を決定する。最初に、主治医は、低用量のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを投与し、そして患者の応答を観察する。最適な治療効果がその患者について得られるまで、さらに多くの用量のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターが投与され得、そしてその時点で、投薬量は一般にさらには増加されない。本発明の方法を実施するために用いられる種々の薬学的組成物が、1kg体重あたり、約0.1μg〜約100mg(好ましくは、約20μg〜約500μg)のIL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターを含むべきであることが意図される。
【0059】
本発明の薬学的組成物を用いる静脈内治療の持続時間は、処置されるべき疾患の重篤度、ならびに各個体患者の状態および可能性のある特異体質応答に依存して変化する。IL−13bcタンパク質またはIL−13bcインヒビターの各適用の持続時間が、12時間〜24時間の範囲の連続静脈内投与であることが意図される。最終的に、主治医は、本発明の薬学的組成物を用いた静脈内治療の適切な持続時間を決定する。
【0060】
本発明のIL−13bcタンパク質をまた用いて動物を免疫して、IL−13bcタンパク質と特異的に反応しかつそのレセプターに対するIL−13またはそれらのフラグメントの結合を阻害し得る、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を入手し得る。このような抗体は、IL−13bc全体を免疫原として用いて、またはL−13bcのフラグメント(例えば、可溶性成熟IL−13bc)を用いることによって入手され得る。IL−13bcのより小さなフラグメントをまた用いて、動物を免疫し得る。ペプチド免疫原はさらに、システイン残基をカルボキシル末端に含み得、そしてハプテン(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に結合体化される。さらなるペプチド免疫原は、チロシン残基を硫酸化チロシン残基で置換することによって作製され得る。このようなペプチドを合成するための方法は、例えば、R.P.Merrifield、J.Amer.Chem.Soc.85、2149−2154(1963);J.L.Krstenanskyら、FEBS Lett.211,10 (1987)においてように、当該分野で公知である。
【0061】
IL−13bcタンパク質に結合する、中和抗体または非中和抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)もまた、特定の腫瘍について、そしてまた上記の状態の処置において有用な治療剤であり得る。これらの中和モノクローナル抗体は、IL−13bcに対するIL−13の結合をブロックし得る。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
(IL−13bc cDNAの単離)
(マウスIL−13レセプター鎖の単離)
5μgのポリA+RNAを、6〜8週齢のC3H/HeJマウスの胸腺から調製した。二本鎖のヘミメチル化cDNAを、StratageneのcDNA合成キットを製造業者の説明書に従って用いて調製した。手短に述べると、第1鎖を、オリゴdT−Xhoプライマーを用いてプライム(prime)し、そして第2鎖合成の後、EcoRIアダプターを添加し、そしてcDNAをXhoIで消化し、そして精製した。cDNAを、Zap Express(Stratagene)λベクターのXhoI−EcoRI部位に連結し、そしてGigapak II Goldパッケージング抽出物(Stratagene)を製造業者の説明書に従って用いてパッケージングした。1.5×106の得られた組換えファージのライブラリーを、製造業者の説明書に従って増幅した。このライブラリーを、配列KSRCTCCABK CRCTCCA(配列番号5)(K=G+T;S=C+G;R=A+G;B=C+G+T)の縮重17マーオリゴヌクレオチドプローブを用い、記載された(Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley and Sons、1995、6.4.3節)通りの標準的なTMACハイブリダイゼーション条件を用いてスクリーニングした。クローンA25が同定された。なぜなら、クローンA25はこの17マープローブにハイブリダイズするが、公知の造血素レセプター由来のプローブにはハイブリダイズしないからである。このクローンを、製造業者の説明書に従ってZapExpressベクターからプラスミド形態で単離し、そしてDNA配列を決定した。DNA配列は、造血素レセプターファミリーの新規なメンバーをコードしていた。
【0063】
配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドを含むクローンA25を1996年2月22日に受託番号69997でpA25pBKCMVとしてATCCに寄託した。
【0064】
(ヒトIL−13レセプター鎖の単離)
マウスレセプターのヒトホモログの部分的フラグメントを、マウス配列に由来するオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって単離した。cDNAを、Clontechから得たヒト精巣ポリA+RNAから調製した。274塩基対のDNAフラグメントを、30サイクルのインキュベーション(94℃×1分間、42℃にて1分間および72℃にて1分間)について1.5mM MgCl2を含む1×Taq緩衝液中で、以下のオリゴヌクレオチドを用い、AmpliTaqポリメラーゼ(Promega)を用いたPCRによってこのcDNAから増幅した:ATAGTTAAACCATTGCCACC(配列番号6)およびCTCCATTCGCTCCAAATTCC(配列番号7)。このフラグメントのDNA配列を決定し、そして2つのオリゴヌクレオチドを、以下の配列を用いてこのフラグメントの内部部分から調製した:AGTCTATCTTACTTTTACTCG(配列番号8)およびCATCTGAGCAATAAATATTCAC(配列番号9)。これらのオリゴヌクレオチドをプローブとして用いて、CLONTECH(カタログ番号HL1161)から購入したヒト精巣cDNAライブラリーをスクリーニングした。フィルターを、標準的な5×SSCハイブリダイゼーション条件を用いて52℃にてハイブリダイズし、そして2×SSC中で52℃にて洗浄した。400,000クローンのスクリーニングにおいて両方のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする22個のクローンを単離した。これらのcDNAクローンのうちの4つのDNA配列を決定し、そして全てが同じ新規な造血素レセプターをコードしていた。全長ヒトレセプター鎖の推定されるDNA配列を配列番号3として示す。
【0065】
このヒトクローンを、1996年2月22日に受託番号69998でphA25#11pDR2としてATCCに寄託した。
【0066】
(実施例2)
(可溶性IL−13bcタンパク質の発現および活性のアッセイ)
(可溶性IL−13bc−Igの産生および精製)
マウスIL−13bcの細胞外ドメインのアミノ酸1〜331をコードするDNAを、gly−ser−glyをコードするスペーサー配列にPCRによって融合し、そしてCOS−1発現ベクターpED.FcのヒトIgG1のヒンジCH2 CH3領域をコードする配列とインフレームで連結した。IL−13bc−IgをDEAE−デキストラントランスフェクトCOS−1細胞から産生し、そしてプロテインAセファロースクロマトグラフィー(Pharmacia)によって精製した。
【0067】
(B9増殖アッセイ)
IL−13またはIL−4に応じたB9細胞(Aardenら、Eur.J.Immunol.1987.17:1411−1416)の増殖刺激を、DNA中への3H−チミジン取り込みによって測定した。細胞(5×103/ウェル)を、1μg/mlのIL−13bc−Igの存在下または非存在下で種々の濃度の増殖因子を含む培地を有する96ウェルプレートに播種した。3日間のインキュベーション後、1uCi/ウェルの3H−チミジンを添加し、そして細胞をさらに4時間インキュベートした。取り込まれた放射能を、LKB 1205 Plateリーダーを用いて決定した。
【0068】
B9細胞株は、IL−13、IL−4またはIL−6に応じて増殖した。IL−13に対する応答のみが、可溶性IL−13bc−Igによって阻害された。このことは、このレセプターがIL−13に特異的に結合するが、IL−4にもIL−6にも結合しないことを示す。この表はcpmを示す。2つの別個の実験を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

(実施例3)
(表面プラズモン共鳴(Biacore分析)によって測定した、IL−13に対する可溶性IL−13bcの直接結合)
Biacoreのバイオセンサーを用いて、精製されたIL−13bc−Ig(Pharmacia、Johnssonら、1991)に対するIL−13の特異的結合を直接測定した。約10,000〜17,000の共鳴単位(RU)の精製されたIL−13bc−Ig、ヒトIgG1または無関係のレセプターを各々、製造業者によって推奨されるようにセンサーチップ上の異なるフローセルに共有結合によって固定した。(RUは、センサーチップ表面に結合したタンパク質の質量を反映するもの(refelction)である。)精製されたIL−13を、過剰の精製IL−13bc−Igの存在下または非存在下で10分間にわたって5μl/分でフローセルと交差して注入した。結合を、サンプル注入の前と後とのRUの差として定量した。481.9RUの特異的IL−13結合は、固定化IL−13bc−Igについてのみ観察され、一方、IL−13+IL−13bc−Igの結合体化は、固定化IL−13bc−Igに対する結合がないことをもたらした(4RU)。IL−13結合は、固定化IgGまたはIL−11R−Igのいずれについても観察されなかった(それぞれ、5.4RUおよび3.7RU)。
【0071】
【表3】

(実施例4)
(標識IL−13BC−Ig融合タンパク質に対する、COS細胞中で発現されたIL−13の結合:IL−13bc−Fcを用いたIL−13のCOSインサイチュ検出)
IL−13、IL−4、IL−11についての発現ベクターまたは空のベクターを、DEAE−デキストラン方法によって二連のプレート中のCOS−1細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で2回洗浄し、そして4℃にてメタノールで10分間、培養ディッシュ中で固定した。固定後、細胞をPBSで2回洗浄し、次いで結合緩衝液(PBS、1%(w/v)ウシ血清アルブミン、0.1%(w/v)アジ化ナトリウム)で1回リンスし、そして1.0ug/mlでIL−13bc−Fcを有するか関連する抗サイトカイン抗血清を有する結合緩衝液中で4℃で2時間インキュベートした。細胞を、PBSで2回洗浄し、そして結合緩衝液中に500倍希釈したアルカリホスファターゼ標識ウサギF(ab)2’抗ヒトIgG(Fc融合体検出のため)またはウサギF(ab)2’抗ラットIgG(抗サイトカイン検出のため)中で振盪しながら4℃でインキュベートした。細胞をさらに、PBS中で2回洗浄した。アルカリホスファターゼ活性を、ニトロブルーテトラゾリウム(nitro blue tetrazolium)および5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェートを用いて可視化した。
【0072】
特異的結合を、顕微鏡下で可視化した。IL−13でトランスフェクトした細胞のみが、IL13bc−Igに対する特異的結合を示した(図面の、トランスフェクトした細胞の写真を参照のこと)。
【0073】
(実施例5)
(IL−13bcタンパク質の生物学的活性を決定するための他の系)
他の系を用いて、特定のIL−13bcタンパク質が、本明細書中で定義される通りのIL−13bcの「生物学的活性」を示すか否かをを決定し得る。以下は、このような系の例である。
【0074】
(IL−13結合についてのアッセイ)
IL−13bcタンパク質がIL−13またはそのフラグメントを結合する能力は、このような結合を検出し得る任意の適切なアッセイによって決定され得る。いくつかの適切な例が以下に続く。
【0075】
IL−13bcタンパク質の細胞外領域に対するIL−13の結合は、レセプタータンパク質に対するホスホチロシンの迅速な誘導を特異的に引き起こす。リン酸化の誘導によって測定した場合のリガンド結合活性についてのアッセイを以下に記載する。
【0076】
あるいは、IL−13bcタンパク質(例えば、細胞外ドメインの可溶性形態など)を産生し、そしてこれを用いてIL−13結合を検出する。例えば、細胞外ドメイン(推定される膜貫通ドメインの前で、好ましくは、直前で短縮化される)が、ヒト免疫グロブリン(Ig)γ1のヒンジCH2ドメインおよびCH3ドメインをコードするcDNAにインフレームで連結されたDNA構築物を調製する。この構築物は、COS細胞について適切な発現ベクター(例えば、pEDΔCまたはpMT2)中で作製される。このプラスミドは、COS細胞中に一時的にトランスフェクトされる。分泌されたIL−13bc−Ig融合タンパク質は、馴化培地中で回収され、そしてプロテインAクロマトグラフィーによって精製される。
【0077】
精製されたIL−13bc−Ig融合タンパク質を用いて、多数の適用においてIL−13結合を実証する。IL−13を、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)プレートの表面上にコーティングし得、次いで、さらなる結合部位を、標準的なELISA緩衝液を用いてウシ血清アルブミンまたはカゼインでブロックし得る。次いで、IL−13bc−Ig融合タンパク質を固相IL−13に結合させ、そして西洋ワサビペルオキシダーゼに結合体化された二次ヤギ抗ヒトIgを用いて結合を検出する。特異的に結合した酵素の活性は、比色基質(例えば、テトラメチルベンジジン)および吸光度の読み取りを用いて測定され得る。
【0078】
IL−13はまた、例えば、膜貫通ドメインまたはグルコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合を提供することによって細胞表面に発現され得る。膜に結合したIL−13を発現する細胞は、IL−13bc−Ig融合タンパク質を用いて同定され得る。可溶性IL−13bc−Ig融合体はこれらの細胞の表面に結合し、そして蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)に結合体化したヤギ抗ヒトIgおよびフローサイトメトリーを用いて検出される。
【0079】
(相互作用捕捉)
酵母の遺伝的選択方法である「相互作用捕捉(interaction trap)」[Gyurisら、Cell 75:791−803,1993]を用いて、IL−13bcタンパク質が、本明細書中で定義したとおりのIL−13bcの生物学的活性を有するか否かを決定し得る。この系では、LexAop−Leu2およびLexAop−LacZの両方からのレポーター遺伝子の発現は、ベイト(bait)タンパク質(例えば、この場合、ヒトIL−13bcと相互作用する種)と、プレイ(prey)(例えば、この場合、ヒトIL−13bcタンパク質)との間の相互作用に依存する。従って、Leu2発現またはLacZ発現のレベルによって相互作用の強さを測定し得る。最も単純な方法は、LacZコードタンパク質であるβ−ガラクトシダーゼの活性を測定することである。この活性は、X−Gal含有培地またはフィルター上の青色の程度によって判断され得る。β−ガラクトシダーゼ活性の定量的測定について、標準的なアッセイは、「Methods in Yeast Genetics」、Cold Spring Harbor、New York、1990(Rose,M.D.、Winston,F.およびHieter,P.による)に見出され得る。
【0080】
このような方法では、IL−13bcタンパク質が特定の種(例えば、IL−13bcの細胞内ドメインとインビボで結合する細胞質ゾルタンパク質など)と相互作用するか否かを決定しようとする場合、その種は、相互作用捕捉において「ベイト」として用いられ得、試験されるべきIL−13bcタンパク質は「プレイ」として供給され得るか、またはその逆であり得る。
【0081】
(実施例6)
(可溶性IL−13Rを用いた線維症の阻害)
線維性組織の発達は、損傷後の治癒の正常なプロセスの一部である。それにもかかわらず、いくつかの状況では、罹患組織の正常な機能を妨害する、過剰のコラーゲンの破壊的蓄積が存在する。実際、コラーゲン合成およびおよび組織瘢痕形成(tissue scaring)は、いくつかの自己免疫、アレルギー性疾患および感染性疾患を含めた多数の慢性および消耗性の病気の主な病理学的症状発現である1-7。瘢痕組織形成のプロセスに関する機構のたくさんの情報が存在する8、9が、線維性プロセスの開始における炎症細胞およびサイトカインの役割の理解にはなお大きな隔たりが存在する。
【0082】
本明細書中で使用される場合「線維症」は、線維性組織の形成を含む任意の状態を含む(このような形成が望ましいか望ましくないかにかかわらず)。このような状態としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:結合組織炎、線維腫の形成(線維腫症)、線維形成(肺の線維形成を含む)、線維弾性症(心内膜線維弾性症を含む)、線維筋症の形成、線維性剛直症、類線維の形成、線維線腫の形成、線維粘液腫の形成および線維膀胱炎(fibrocystotitis)(嚢胞性線維症を含む)。
【0083】
IL−13レセプター複合体は、IL−4レセプター、低親和性結合性IL−13Rα1鎖、および高親和性結合性鎖IL−13Rα2を含む、少なくとも3つの別個の成分から構成される35、4244。近年、可溶性IL−13Rα2−Fc融合タンパク質が調製され、そしてこれを用いてIL−13をインビトロ35およびインビボ30、3941の両方で好首尾に中和した。この融合タンパク質はIL−13に高親和性で結合するが、IL−4を中和することができないので、このタンパク質は、IL−13の特異的役割を決定するための優れたツールを提供した。本研究では、本発明者らは、野生型マウスおよびIL−4欠損マウスにおいてIL−13アンタゴニストを用いて、マウス住血吸虫症における肝臓線維症の発症に対するIL−13の寄与とIL−4の寄与とを分離した。これらの研究では、肉芽腫形成を詳細に試験し、好酸球および肥満細胞の補充に焦点を当て、そしてより重要なことには、卵誘発性線維症の発症を、生化学的技術、組織学的技術および分子技術を用いて定量した。本発明者らはまた、Th1/Th2型サイトカイン応答の調節に対するIL−4およびIL−13の寄与を、腸間膜リンパ節培養物においてインビトロで、そして肉芽腫性肝臓においてインビボでの両方で調べた。この研究からの結果は、IL−13およびIL−4が住血吸虫症の病因においていくつかの重複した活性を示すことを示す一方、両方のサイトカインについての別個の機能もまた明確に解明された。おそらく、最も重要かつ新規な知見は、IL−13が、感染したマウスにおけるI型およびIII型のコラーゲンmRNA産生および肝臓線維症を駆動する主要なTh2型サイトカインであり、そしてIL−4はそうでないという、観察であった。従って、本発明者らの知見は、IL−13インヒビター/アンタゴニスト(例えば、sIL−13Rα2−Fc)が、線維症(例えば、慢性感染性疾患に関連した線維症など)を予防する際に治療的に有益なものであり得ることを確立する。
【0084】
(結果)
(住血吸虫症病因における、IL−4、IL−13またはIL−4/IL−13二重欠損の匹敵する効果:sIL−13Rα2−Fc処置は、S.mansoni感染マウスにおける肝臓線維症を有意に減少させる)
住血吸虫症の病因におけるIL−4およびIL−13の調節の役割を比較するために、本発明者らは、C57BL/6WTマウスおよびIL−4欠損マウスを25のS.mansoni cercariaeに経皮的に感染させた。別個の群の動物を、「材料および方法」に記載されるように、sIL−13Rα2−Fcまたはコントロール−Fcのいずれかで処置した。処置を産卵開始時である5週目に始め、そして全ての動物を感染8週後に屠殺し、そしていくつかの寄生生物学的および免疫学的パラメーターについて調べた。表IIIに示すように、4群のマウスは全て、類似した寄生生物負荷を宿しており、そして1対の寄生生物あたりに産生される組織卵は群の間でそれほど異ならなかった。ピーク組織応答の時点である45感染8週間後に、WTマウスは、IL−13遮断の結果として、肉芽腫の大きさにおける有意な変化を示さなかった(図2A)。興味深いことに、コントロール−Fc処置IL−4欠損マウスはまた、減少した肉芽腫性応答を示すことができず、そして実際に、肉芽腫はこれらのマウスにおいて有意に大きかった。これらの観察とは著しく対照的に、IL−4欠損マウスは、IL−13が阻害された場合著しく減少した肉芽腫性応答を提示した(図2A、一番右)。実際、IL−4二重欠損/sIL−13Rα2−Fc処置マウスは、コントロールまたはsIL−13Rα2−Fc処置WT動物のいずれもと比較した場合、肉芽腫容量における平均40%〜50%の減少を提示し、そしてコントロール−Fc処置IL−4欠損マウスと比較した場合、75%を超える減少を提示した。
【0085】
病巣の細胞組成をまた、ギムザ染色した肝臓切片において評価し、そして表IIIに示すように、IL−4欠損マウスは、肉芽腫関連肥満細胞の顕著な減少を提示した。対照的に、IL−13阻害単独によって肥満細胞数に変化はなく、そしてIL−13遮断は、IL−4欠損マウスにおける既に高度に減少した数の肥満細胞に対して付加的な効果を有さなかった。いくぶん同様に、肉芽腫関連好酸球を評価した場合、なお別個の知見が観察された(図2B)。ここで、好酸球の数は、IL−13遮断によってWTマウスにおいて46%から64%へと増加し、そしてIL−4欠損の結果として有意に減少した(28%)。組織好酸球増加症におけるIL−13およびIL−4についての明らかに対照的な役割にもかかわらず、IL−4欠損マウスをIL−13インヒビターで処置した場合、なおさらに著しい、合わされた阻害効果が観察された。これらのマウスでは、肉芽腫好酸球の平均数は10%未満であった。最後に、WT動物対IL−4欠損動物において実質関連肝臓壊死の程度でも卵関連肝臓壊死の程度でも変化は存在しなかったが、sIL−13Rα2−Fc処置WT群およびIL−4欠損群の両方は、実質壊死全体においては顕著な減少を示した。
【0086】
おそらく最も重要なことに、sIL−13Rα2−Fc処置は単独で、ピクロシリウスレッド(picrosirius red)で染色した組織切片において評価した場合、WTマウスにおける肝臓肉芽腫のコラーゲン含有量を有意に減少させた(表IIIおよび図3)。対照的に、感染させたIL−4欠損マウスは、顕微鏡分析によって、肉芽腫コラーゲン沈着において検出可能な変化を示さなかった。興味深いことに、このパラメーターにおいて、IL−13およびIL−4について合わされた役割も相乗的な役割も存在しないようであった。なぜなら、sIL−13Rα2−Fc処置WTマウスとsIL−13Rα2−Fc処置IL−4欠損マウスとの間に有意な差が存在しなかったからである(表III)。図3は、類似の寄生生物数、組織卵負荷、および肉芽腫の大きさがコントロールおよびsIL−13Rα2−Fc処置WTマウスにおいて見出されたとはいえ、IL−13の遮断は、肝臓内のコラーゲン沈着に対してかなりの阻害効果を有したことを示す。最後に、肝臓線維症の程度をまた、ヒドロキシプロリンレベルの評価によって測定した(図2C)。ヒドロキシプロリンレベルは、上記の組織学的技術よりも定量的である。可溶性IL−13アンタゴニストは単独で、肝臓のヒドロキシプロリンレベルを顕著に減少させ、一方、IL−4欠損は、それほど有意でない減少をもたらした。IL−4/IL−13二重欠損は、ヒドロキシプロリンをsIL−13Rα2−Fc処置WTマウスにおいて既に観察されたレベルより低く減少させることができなかったが(図2C)、第2の研究においてわずかな傾向が存在した(有意ではない)。まとめると、これらのデータは、IL−13が、マウス住血吸虫症における肝臓線維症の発達を担う主なTh2関連サイトカインであることを実証する。
【0087】
(Th2型サイトカイン産生は、IL−4欠損マウスにおいて減少するが、IL−13阻害による影響を受けない)
IL−4はCD4+Th2細胞発達を駆動する主なサイトカインであることが周知である21、22が、Th2型応答の生成および維持におけるIL−13の役割は、議論の余地があり、そして研究されている宿主の遺伝および感染性疾患モデルの両方によって影響を受け得る30、34、38。それゆえ、肝臓病理におけるsIL−13Rα2−Fc誘導性変化がTh1/Th2サイトカインバランスにおける変化によって生じたか否かを決定するために、本発明者らは、腸間膜リンパ節および脾臓を、感染させたマウスから単離し、単細胞懸濁物を調製し、そしてこの培養物を寄生生物抗原でインビトロで再刺激した。さらなる細胞培養物を、抗CD4 mAbの存在下で寄生生物抗原に曝露して、サイトカイン産生がCD4+T細胞応答に依存性であるか否かを決定した。培養上清を、IL−4、IL−13、IL−5、IL−10およびIFN−γについてELISAによって分析した。予測され得るように15、WTマウスから調製された腸間膜培養物(図5)および脾臓培養物(データは示さず)は、非常に偏ったTh2型サイトカイン応答を提示した。これらは、SEA刺激に応じて高レベルのIL−4、IL−5、IL−10およびIL−13を産生し、そしてIFN−γをほとんどまたは全く産生しなかった。対照的に、IL−4欠損マウスは、より混ざったTh1/Th2型プロフィールを示した。実際、有意なSEA特異的IFN−γ応答がIL−4欠損マウスにおいて検出された。これは、以前の研究23、24と一致する。IL−13、IL−10、そしてより低い程度でIL−5もまた、これらの動物において検出され、一方、これらのサイトカインのレベルは、WTマウスと比較した場合、顕著に減少した。重要なことに、低いがしかし有意なIL−4依存性IL−13応答の維持が、IL−4の非存在下で維持される著しい肉芽腫性応答を説明するようである(図2)。驚くべきことに、肝臓線維症に対するその顕著な阻害効果にもかかわらず、sIL−13Rα2−Fcは、WTマウスまたはIL−4欠損マウスのいずれでも、Th1型サイトカイン応答にもTh2型サイトカイン応答にも有意な影響を有さなかった。全ての場合、サイトカイン産生がCD4+T細胞応答に非常に依存していたことにもまた留意すべきである。なぜなら、抗CD4 mAb処置SEA刺激培養物のいずれにおいてもサイトカイン発現がほとんどまたは全く検出されなかったからである。
【0088】
(IL−4欠損およびsIL−13Rα2−Fc処置マウスの肉芽腫性肝臓におけるTh1/Th2型サイトカインmRNA発現の変化)
類似のパターンのサイトカイン発現が、肉芽腫形成部位でインビボで観察されるか否かを決定するために、本発明者らは、感染8週間後に種々の群のマウスから肝臓mRNAを単離し、そして定量的RT−PCRを行った。図5に示すように、感染したWTマウスは、強力なTh2型サイトカインmRNAプロフィールを示した。これは、IL−4、IL−13、IL−5およびIL−10のmRNAにおける顕著な増加を示す。WTマウスはまた、IFN−γ mRNAの発現における中程度の増加を示した。これは、以前の観察19と一致した。これらの知見とは対照的に、IL−13およびIL−5のmRNAレベルは、IL−4欠損マウスにおいてずっと低く、一方、IL−10およびTNF−αのmRNAは有意に増加し、そしてIFN−γ mRNA発現は変化しなかった。さらに、腸間膜リンパ節培養物および脾細胞培養物から得られたインビトロでの結果と同様に、IL−13遮断は、WTマウスまたはIL−4欠損マウスのいずれにもサイトカインmRNA発現に対して有意な影響を有さなかった。しかし、sIL−13Rα2−Fcで処置したIL−4欠損マウスにおけるIL−10 mRNAレベルには中程度の増加が存在したが、これは、線維症における減少を説明しないようである。なぜなら、IL−4欠損マウスと比較して非常に多様なレベルのIL−10がsIL−13Rα2−Fc処置WTマウスにおいて検出され、依然として線維症における類似の減少が観察されたからである。TGF−β1およびTGF−β2bのmRNA発現をまた、肉芽腫性組織において調べたが、感染したIL−4欠損マウスでもsIL−13Rα2−Fcで処置した動物でも有意差は観察されなかった(データは示さず)。
【0089】
(コラーゲンIおよびコラーゲンIIIのmRNAレベルは、sIL−13Rα2−Fc処置マウスの肝臓において減少するが、IL−4欠損によっては影響を受けない)
上記のインビトロおよびインビボでのサイトカイン研究は、sIL−13Rα2−Fcの抗線維症効果が、Th1型またはTh2型のサイトカイン発現における変化によって説明されないようであることを示唆した。それゆえ、その後の実験では、本発明者らは、コラーゲンI(Col I)およびコラーゲンIII(Col III)のmRNA発現パターンを調査して、sIL−13Rα2−Fc誘導性の線維症減少が、これらの2つの重要なコラーゲン産生遺伝子19における発現における直接変化を伴うか否かを決定した。図6に示すように、IL−13遮断は、Col IおよびCol IIIのmRNA発現をWTマウスおよびIL−4欠損マウスの両方で有意に減少させた。IL−4欠損マウスにおいてCol IまたはCol IIIのmRNAの感染誘導レベルにおける変化は存在せず、そしてsIL−13Rα2−Fc処置WTマウスと比較した場合、同様に処置したIL−4欠損マウスにおいてさらなる減少は存在しなかった。
【0090】
(IL−13は、マウス3T3線維芽細胞におけるコラーゲン産生を刺激する)
IL−13遮断が、感染させたWTマウスおよびIL−4欠損マウスの肝臓におけるCol IおよびCol IIIのmRNA発現をインビボで有意に減少させることを示したので、本発明者らは、IL−13が線維芽細胞におけるコラーゲン合成を直接刺激するか否かを決定しようとした。この問題に答えるために、本発明者らは、マウス3T3線維芽細胞におけるI型コラーゲンの誘導を、ウェスタンブロッティングによって調べた。図7に示すように、IL−13は、刺激の48時間後にコラーゲン合成を誘導した。最小のI型コラーゲンが、未刺激の細胞において検出された(図7、レーン1)かまたはサイトカイン活性化培養物において、より早期の時点で検出された(データは示さず)。IL−4はまた、コラーゲンI合成を誘導し(レーン2)、そして高レベルの分泌コラーゲンが、サイトカインで刺激した両方の培養物において得られた上清において容易に検出可能であった(データは示さず)。反応の特異性を、精製したI型コラーゲンを用いて確認し(レーン5)、そして細菌のコラゲナーゼ処置は、抗体がコラーゲンについて特異的であることを示した(データは示さず)。
【0091】
(考察)
CD4+Th2型サイトカインパターンは、S.mansoniで感染されたマウスにおける免疫応答を支配する12、13。しかし、IL−4欠損マウスを用いた以前のIL−4除去の研究および実験は、住血吸虫症の病因におけるこのサイトカインの不可欠な役割を示すことができなかった15、23、24。実際は、線維症における部分的な減少がいくつかの研究で観察されたが15、卵細胞(egg)誘導肉芽腫形成は、IL−4が完全に無い中で進行し得た23、24。これらの知見と対照的に、肝線維症の肉芽腫形成および発達は、Stat6欠損マウスにおいて厳しく損傷しており16、これは、いくつかのTh2関連サイトカインの産生における主要な欠損を示した46。IL−4およびIL−13は両方ともStat6を介してシグナル伝達し、従って、感染されたIL−4欠損マウスとStar6欠損マウスとの間に観察される明らかな病理の差違は、IL−13によって説明され得る。それにもかかわらず、疾患進行におけるIL−4およびIL−13の異なる寄与は、Stat6欠損マウスまたはIL−4欠損マウスの単独研究からは認められ得なかった。本研究において、本発明者らは、感染されたWTおよびIL−4欠損マウスにIL−13の強力なインヒビターを使用し、IL−13およびIL−4が重複することならびに住血吸血病の病因における独特の役割を示すことを証明する。
【0092】
いくつかの研究により、Th2型サイトカイン応答が、IL−4またはIL−4レセプターの非存在下においてインビボで発達し得ることが示された26、39。これは、本発明者らの知見と一致する。なぜなら、減少されたが有意なIL−13、IL−10およびIL−5発現が、感染されたIL−4欠損マウスの腸間膜リンパ節(図4)および肝臓(図5)に検出されたからである。これらの産生はまた、CD4+T細胞応答に非常に依存し(図4)、これはさらに、従来のTh2型応答が確立されたことを示す。これらの知見によって、最大のIL−13発現はIL−4に依存するが、連続性のIL−13の産生がIL−4の非存在下での有意な肉芽腫性応答の維持を説明し得るという証拠が提供される23-25。確かに、IL−13単独の阻害はWTマウスの肉芽腫の大きさに影響を与えなかったが、IL−4欠損マウスにおいて残りのIL−13を阻害することは、肉芽腫体積に顕著かつ非常に有意な減少を生じた(図2A)。これらの知見により、IL−4およびIL−13の両方は肉芽腫発達を媒介するのに十分であることが示され、IL−4欠損マウスにおける肉芽腫の産生対Stat6欠損マウスにおける肉芽腫のほとんど完全な欠失が形式的に説明される16、24。これらはまた、肺性卵細胞肉芽腫モデルにおける近年の知見を支持する30。なぜなら、肉芽腫は、卵細胞によって放出される強力に致死の肝臓毒素を遮ることによって重要な宿主保護的役割に貢献し47、この宿主が、好ましい宿主−寄生虫関係を保証するために、肉芽腫形成に対して重複した機構を発展し得るからである。
【0093】
これらの知見によって、IL−4およびIL−13が、肉芽腫形成に活動的に関与することが明確に示されたが、肥満細胞リクルートメント、組織好酸球増加症、および最も重要には肝線維症の生成における両方のサイトカインの特有の役割がこれらの研究で明らかになった。感染されたマウス由来の肝臓切片の組織学的試験によって、IL−13が肥満細胞(表III)または好酸球(図2B)分化およびリクルートメントに必要ではないことが示された。なぜなら、sIL−13Rα2−Fc処理されたWTマウスの肉芽腫が、いずれの細胞型においても減少を示さなかったからである。実際、好酸球数は、IL−13阻害されたWTマウスの病巣において有意に増加し(図2B)、これは、IL−13がこの効果を部分的にアンタゴナイズし得ることを示唆する。対照的に、肥満細胞は、IL−4欠損マウス中の病巣でほとんど完全に存在せず、そして好酸球は、50%以上減少されていた。興味深いことに、IL−13は、IL−4欠損マウスにおいて、減少されたが有意な卵細胞誘導の組織好酸球増加症を部分的に支持しているようである。なぜなら、好酸球は、IL−4−欠損/sIL−13Rα2−Fc処置動物において10%より下に減少されたからである。それにもかかわらず、これらのデータは、IL−4が肉芽腫内の好酸球および肥満細胞集団の発達の原因である優性サイトカインであることを示す。
【0094】
おそらく、本研究からの最も重要な進歩は、肝線維症がsIL−13Rα2−Fcによってブロックされ得るという知見であった。確かに、顕微鏡技術(表III)、生化学的技術(図2C)および分子技術(図6)は全て、IL−4ではなくIL−13が、卵細胞誘導肝線維症の発達に主要な役割を果たしていることを示した。以前の研究により、Thl/Th2サイトカインのバランスが、S.mansoni感染されたマウスにおけるの組織線維症の程度に有意に影響を与え得ることが示された19。それにもかかわらず、本研究は、sIL−13Rα2−Fcの効果が、Th細胞サイトカイン応答の傾斜を介して媒介されないことを示唆する。IL−13の阻害は、インビトロで腸間膜リンパ節(図4)または脾細胞によるIFN−γ、IL−4、IL−5、IL−10またはIL−13の産生に有意な効果を示さなかった。そしてまた、病巣形成の部位において、インビボでサイトカインのmRNA発現に変化は存在しなかった(図5)。これらの知見と対照的に、IL−4欠損マウスは、流入領域リンパ節において増加したIFN−γ応答(図4)を示し、そしてリンパ節(図4)および肝臓(図5)の両方において減少したIL−5発現およびIL−13発現を示した。従って、ヒドロキシプロリン分析によってIL−4欠損マウスで検出された線維症におけるわずかな減少(図2C)は、減少したIL−13産生に起因し得る。IL−4産生がIL−13封鎖によって影響されず、線維症がさらにこれらの動物において最大に減少されたという事実は、IL−13によって果たされる重要な役割を強調する。実際、sIL−13Rα2−Fc処置IL−4欠損マウスは、同様に処置されたWTマウスでの観察に対して、ヒドロキシプロリンレベルにほとんどさらなる減少を示さず(図2C)、かつコラーゲンIまたはIIIのmRNA発現における差違も示されなかった(図6)。コントロール−Fc−処置IL−4−欠損マウスにおけるコラーゲンIまたはIII発現にも、WT動物と比較した場合、変化はなく、さらにIL−4の寄与に重視をしない。さらに、3T3細胞を用いたインビトロ研究により、初めて線維芽細胞におけるコラーゲン産生を刺激するためのIL−13の能力が示された(図7)。従って、線維症に対するIL−13の効果は、より直接的であり得、そしてThl/Th2サイトカイン応答における調節に依存しない。この結論を支持して、近年の研究により、IL−13レセプターが線維芽細胞上で発現され32、そしてIL−13はヒト肺線維芽細胞で接着分子および炎症性サイトカインの発現を増加することが示された48。最後に、IL−13(図7)およびIL−449は両方とも、線維芽細胞におけるコラーゲン産生を促進し得るが、培養されたリンパ節細胞がIL−4よりも、100倍近く多いIL−13を産生したという事実は(図4)、このプロセスにおけるIL−13の強力に重要な寄与を強調するためのみに提供される。確かに、肺性肉芽腫モデルにおける研究は、IL−4 mRNA発現は病巣形成部位でよりきつく調節され、一方、IL−13 mRNAの誘導はより多くその間維持されることを明らかにした30。それにもかかわらず、本研究者らは、感染された動物におけるIL−4およびIL−13のmRNA発現の運動を調べなかった。従って、本研究者らは、同様のパターンが肉芽腫性肝臓であてはまるか否かを言及することはできない。
【0095】
IL−13はまた、近年、腸の線虫に対する耐性に重要であることが示された27、37-39。IL−4欠損マウス39およびIL−13欠損マウス37、38における研究は、IL−4と対照的にIL−13がN.brasiliensisおよびT.murisの両方の排除において必須の役割を果たすことを示唆した。それにもかかわらず、寄生虫排除における特定の機構は未知のままである。しかし、上皮細胞中のIL−4およびIL−13誘導の変化および腸の生理が可能な標的として示唆されてきた50、51。IL−13はまた、マウス喘息モデルにおいて中心的な役割を果たす。これらの研究において、IL−13がアレルギー性喘息の発現に必要かつ十分であることが見いだされた40、41。上皮下線維症および気道平滑筋肥大は、慢性重篤喘息の共通の特徴であり5、そして慢性肺性線維症は、疾患の初期および後期段階におけるIII型およびI型コラーゲンの産生とそれぞれ関連する。従って、本研究で明らかになったIL−13と線維症との間のつながりが、いくつかの重要なヒト疾患の病因を解明し、そしてより有効な線維症性疾患の処置の型を一般的に提供する。
【0096】
本発明者らの以前の研究は、卵細胞特異的IL−12誘導Thl記憶応答が、連続して感染されたマウスにおける肝線維症を効果的に減少し得ることを示した19。病理における減少は、正常なTh2応答からThl型サイトカインによる優性応答への変換を伴った。近年の研究からの知見により、このIL−12ベースのワクチン化プロトコールの抗病理効果が、IL−13の阻害によって説明され得ることが示唆された。興味深いことに、異なるプロトコールを用いた第2の研究は、肉芽腫瘍形成のTh2優性期の間に6〜8週間与えられたrIL−12の反復注射が、肉芽腫形成および線維症の阻害にほとんど完全に効果的でなかったということを示した52。関連する研究は、IL−12が、確立されたTh2型応答をほとんど調節し得ないということを示唆し53、これは、後の研究において病理の調節の欠失を説明するようである52。これらの知見と対照的に、sIL−13Rα2−Fcは、たとえ感染の後期段階の間のみに投与されたとしても、肝線維症の減少に非常に効果的であった。これらの知見は、IL−13アンタゴニスト作用が、病原性Th2型免疫応答が既に確立された状況における線維症の検証に、より十分に効果的な治療手段であることを示唆する。要約すると、本発明者らの知見は、IL−13インヒビター(例えば、sIL−13Rα2−Fc)が、慢性感染性疾患と関連する線維症の予防における一般的な治療的利点のインヒビターである証拠を提供し、そして住血吸血病の病因におけるIL−13の重要かつ希少な役割を示す。
【0097】
(方法)
(動物、寄生虫およびAg調製物)
6〜8週齢の雌のC57BL/6マウスおよびIL−4欠損マウス(C57BL/6背景、10代戻し交配)を、Taconic Farms,Inc.(Germantown,NY)から得た。全てのマウスは、研究動物の取り扱いの認定に関するNIH米国協会が承認した動物施設で、滅菌したフィルタートップのケージ中で飼育し、そして滅菌水で維持した。Schistosoma mansoniのPuerto Rican種のケルカリア(NMRI)は、感染させたBiomphalaria glabrata巻貝から得た(Biomedical Research Institute,Rockville,MD)。可溶性卵細胞抗原(SEA)は、以前に記載されるように15、ホモジナイズした卵細胞から精製した。
【0098】
(試薬)
可溶性IL−13レセプターα2−Fc融合タンパク質(sIL−13Rα2−Fc)は、以前に記載されるように調製され35、そしてGenetics Institute,Cambridge MA.によって提供された。内毒素混入は、Cape Cod Associates LALアッセイ(Limulus Amebocyte Lysate,Woods Hole,MA)によって測定された場合<2EU/mgであった。B9増殖アッセイにおいて3ng/mlのマウスIL−13を中和する能力によって決定された場合、インビトロID50は、約10ng/mlであった。sIL−13Rα2−Fcに対するコントロールとして使用されたヒトIgG(コントロール−Fc)は、sIL−13Rα2−Fcに関して記載されるように35、組換えプロテインA−セファロースクロマトグラフィーによってアフィニティー精製された。以前に記載されたように、コントロール−Fcは、感染されたマウスにおける病理学またはサイトカイン発現に検出可能な効果を有さなかった30
【0099】
(感染および処置)
マウスは、20と25との間のケルカリアを含む水の中で、尾の皮膚に40分間経皮チャレンジをすることによって感染させた。動物は、卵細胞産生が発症した後(第5週)1日おきに、0.5ml PBS中、ヒトコントロールFcまたはsIL−13Rα2−Fcのいずれかを用い腹腔することによって処置した。インビボ使用のための最適な濃度(200μg/マウス/日)は、動力学的アッセイおよび感作/静脈内卵細胞注射されたマウスにおける用量応答実験に基づいて選択した30。血清は、屠殺した日にマウスから収集した。全ての動物は、第8週にフェノバルビタールナトリウムの腹腔内投与(18mg/マウス、Sigma、St.Louis,MO)によって屠殺し、そしてクエン酸生理食塩水を用いて灌流し、寄生虫負荷を評価した15。処置されたいずれの群においても死亡は観察されなかった。
【0100】
(組織病理学および線維症測定)
肉芽腫の測定に関して、肝臓の約半分をBouin−Hollande固定液を用い、そして以前に記載されたように15進めて固定した。肝肉芽腫の大きさは、ライトギムザ染色(Histopath of America,Clinton,MD)によって染色された組織学的切片で測定された。単一の生存可能な卵細胞を含む肉芽腫の各直径は、接眼マイクロメータを用いて測定し、そして肉芽腫の各体積は、球形を想定して算出した。最も長い直径およびこれに対して垂直の直径の平均を使用した。好酸球、肥満細胞および他の細胞型のパーセンテージは、同じ切片中で評価した。実質ネクローシスは、0〜4のスコアで得点付けし、0は最も小さい広がりのネクローシスであり、4は最も大きい広がりのネクローシスであった。肥満細胞のこの頻度はまた、類似の尺度に対して割り当てられ、これは0〜4の範囲を用いた。肝臓および腸における住血吸虫卵細胞の数ならびに肝臓のコラーゲン含量(ヒドロキシプロリンとして測定される)は、以前記載されたように測定した15。線維症はまた、ピクロシリウスレッド(picrosirius red)を用いて染色された切片を用いて組織的に得点付けした。ピクロシリウス試薬は、コラーゲンを特異的に染色し、切片が偏光下で観察される場合、コラーゲンが沈着する明るい領域が照射される。各切片内の全ての肉芽腫は、尺度1〜4に基づいてピクロシリウス(レッド)「密度」に対して得点付けされ、「関連する領域」の第2の測定はまた、同じ尺度を用いて測定された。全線維症スコアは、各肉芽腫に対する密度と領域を乗算することによって決定された(すなわち、16のスコアが最大である)。マウス1匹あたり平均30個の肉芽腫が、全ての分析に含まれた。一貫性を制御するために、同じ個体が全ての組織学的特徴を得点付けされ、そして実験的な設計は全く認識していない。
【0101】
(RNAの単離および精製)
各動物由来の肝臓の2つの部分を合わせて、1mlのRNA−STAT 60(Tel−Test)中に置き、ドライアイス上で凍結しそして使用するまで−70℃で保存した。組織ポリトロン(Omni International Inc.,Waterbury,CT)を用いて組織をホモジナイズし、そして全RNAを製造者らの推奨に従って抽出した。RNAをDEPC処理水に再懸濁し、分光光度的に定量化した。
【0102】
(サイトカインmRNAのRT−PCR検出)
RT−PCR手順を使用して、IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、IFN−γ、コラーゲンI、コラーゲンIII、TGFβl、TGFβ2およびHPRT(ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)のmRNAの相対量を測定した。cDNAは、記載されるように14、1μgのRNAの逆転写後に得た。全ての遺伝子のプライマーおよびプローブは、以前に公開された14、19、54。各サイトカインに対して使用したPCRサイクルは、以下のようであった:IL−4(33)、IL−5(31)、IFN−γ(29)、コラーゲンI(26)、コラーゲンIII(22)、TGFβl(34)、TGFβ2(34)およびHPRT(23)。
【0103】
(PCR産物の分析および定量化)
増幅されたDNAを、以前に記載されるように14、電気泳動、サザンブロットおよび非放射性サイトカイン特異的プローブを用いたハイブリダイゼーションによって分析した。PCR産物は、ECL検出系(Amersham)を用いて検出した。化学発光シグナルは、平らな土台のスキャナー(Microtek model 600 ZS,Torrance,CA)を用いて量を測定した。PCR産物の量は、個体サンプルにおける、HPRT特異的シグナル密度に対するサイトカイン特異的シグナル密度の比を比較することによって決定した。引き続いて、個体サンプルに関する任意の濃度測定単位に100という因数を掛けた。
【0104】
(インビトロ培養)
腸間膜リンパ節(MLN)細胞および脾臓を、マウスから抽出し、そして単一細胞懸濁液を調製した。赤血球を、ACK溶解緩衝液(Biofluids,Inc.,Rockville,MD)を用いた浸透処理によって溶解した。細胞を、37℃、5% CO2で、10% FCS、2mMグルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、25mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、および50μM 2−MEを補充したRPMI 1640培地に置いた。細胞を、24ウェルプレート(3×106/ml,lml)に置き、SEA(20μg/ml)で刺激し、そして上清をIL−4、IL−5、IL−10、IL−13およびIFN−γのレベルを測定するために72時間後に収集した。さらなるSEA刺激された培養物はまた、50μg/mlの抗−CD4 mAb(GK1.5)を用いて処理した。抗−CD4 mAb単独で処置した培養物は、コントロール培地の培養物で観察されたものと比較した場合、サイトカイン発現に変化を見せなかった(データには示さない)。IL−5、IL−10およびIFN−γは、特定のサンドイッチELISAを用いて測定した15。IL−13レベルは、マウスIL− 13ELISAキット(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて測定した。サイトカインレベルは、組換えサイトカインを用いて作成されたカーブから計算した。IL−4は、IL−4感受性細胞株CT.4Sを用いて測定した。これらの細胞の増殖は、(3H)TdR取り込みによって量を測定し、そしてサイトカインの量は、既知の量の組換えIL−4を用いた比較によって測定した。
【0105】
(コラーゲンIのウエスタンブロット検出)
3T3線維芽細胞を、37℃、5%CO2で、10% FCS、2mM グルタメート、100U/mlペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、25mM HEPES、1mM ピルビン酸ナトリウム、0.1mM 非必須アミノ酸、および50μM 2−MEを補充したRPMI1640培地で培養した。コンフルエントの細胞を、24ウェルプレート(500,000細胞/ml)にプレートし、そしてIL−4(1000U/ml)またはrIL−13(R&D Systems,Minneapolis,MN)(20ng/ml)を用いて6、24および48時間刺激した。培養上清を収集し、分泌されたコラーゲン1を分析した。細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水で一度洗浄し、そしてSDS−PAGEサンプル緩衝液に溶解した。細胞溶解液および培養上清を、還元状態を使用する6%トリス−グリシンゲル(Novel Experimental Technology,San Diego,CA)中の電気泳動分離に供し、そしてニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell,Keene,NH)に移した。ブロットは、ウサギIgG抗マウスI型コラーゲン(Biodesign International,Kennenbunk,ME)を用いてプローブ化し、そしてペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG(Amersham Pharmacia Biotech,Inc.,Piscataway,NJ)を2次Abとして使用した。バンドは、ウエスタンブロット化学発光試薬を用いて可視化した(NEN Life Science Products,Boston,MA)。コラーゲンバンドの同一性を確認するために、細胞溶解液を、PBS(1mM CaCl2および1%FCSを補充する)中の0.5 mg/mlのコラゲナーゼ(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)を用いて、37℃で1時間処理した。精製されたラットコラーゲンI調製物をまた、コントロールとして使用した。
【0106】
(統計)
住血吸虫および卵細胞の数、サイトカインmRNAの変化、およ分泌されたサイトカインタンパク質の値を、スチューデントの2テールの(two−tailed)t−検定を用いて比較した。肝線維症は、共分散の分析によって比較し、これは、卵細胞1個あたりの、共分散(covariate)としての全肝臓卵細胞のログおよびヒドロキシプロリンのログを使用した。p<0.05が有効であると考えられた。
【0107】
(参考文献)
【0108】
【数1】







全ての特許および参考文献は、完全に記載されるように参考として援用される。
[配列表]
【数2】











【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78432(P2011−78432A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2569(P2011−2569)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2000−614293(P2000−614293)の分割
【原出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(501418214)ジェネティクス インスティテュート,エルエルシー (35)
【出願人】(305056858)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ,センターズ フォー  (15)
【Fターム(参考)】